(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-29
(54)【発明の名称】静摩擦の軽減のための油圧弁のディザリング
(51)【国際特許分類】
F16K 31/12 20060101AFI20221121BHJP
【FI】
F16K31/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022512851
(86)(22)【出願日】2020-08-22
(85)【翻訳文提出日】2022-02-24
(86)【国際出願番号】 US2020047544
(87)【国際公開番号】W WO2021061316
(87)【国際公開日】2021-04-01
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505315742
【氏名又は名称】トプコン ポジショニング システムズ, インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【氏名又は名称】前川 直輝
(72)【発明者】
【氏名】ヴァーノン ジョセフ ブラベック
【テーマコード(参考)】
3H056
【Fターム(参考)】
3H056BB05
3H056BB06
3H056CC02
3H056CD02
3H056GG12
(57)【要約】
油圧弁をディザリングして、油圧弁に関連する静摩擦(「スティクション」)を軽減する方法および装置。第一の油圧弁および第二の油圧弁は、ディザリングされてこれら弁に関するスティクションを軽減する。前記第一および第二の油圧弁に対するディザリングは、第一および第二の油圧弁に関連付けられた主油圧弁にディザリングを生じさせる。したがって、油圧システムの三つの油圧弁のスティクションが軽減される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の油圧弁をディザリングして、第二の油圧弁の第一の入力に印加される、第一の周期的に変動する油圧流体圧力を生成することと、
第三の油圧弁をディザリングして、前記第一の周期的に変動する油圧流体圧力と位相が180度ずれており、前記第二の油圧弁の第二の入力に印加される第二の周期的に変動する油圧流体圧力を生成することと、を含む方法であって、
前記第二の油圧弁の前記第一の入力および前記第二の入力に印加される前記第一の周期的に変動する油圧流体圧力および前記第二の周期的に変動する油圧流体圧力が前記第二の油圧弁のディザリングを生じさせる、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第二の油圧弁の前記ディザリングは、油圧シリンダの第一の入力および前記油圧シリンダの第二の入力に油圧流体圧力を印加させ、
印加された前記油圧流体圧力は前記油圧シリンダを作動させるために必要となる値より低い値である、
ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第一の油圧弁の前記ディザリングは、前記第一の油圧弁の第一の入力に印加される周期的に変動する油圧流体圧力および前記第一の油圧弁の第二の入力に印加される周期的に変動する油圧流体圧力に対応する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第三の油圧弁の前記ディザリングは、前記第三の油圧弁の第一の入力に印加される周期的に変動する油圧流体圧力および前記第三の油圧弁の第二の入力に印加される周期的に変動する油圧流体圧力に対応する、
ことを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第一の油圧弁の前記ディザリングおよび前記第三の油圧弁の前記ディザリングは、前記第一の油圧弁および前記第三の油圧弁のスティクションを軽減する、
ことを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記第二の油圧弁の前記第一の入力および前記第二の入力に印加される前記周期的に変動する油圧流体圧力の振幅は、前記第二の油圧弁に結合する油圧シリンダの作動を生じさせない、
ことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第二の油圧弁の前記第一の入力および前記第二の入力に印加される前記周期的に変動する油圧流体圧力の振幅は、前記第一の油圧弁の前記ディザリングおよび前記第三の油圧弁の前記ディザリングに対応する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
第一の出力を有する第一の油圧弁と、
第二の出力を有する第二の油圧弁と、
前記第一の出力に接続される第一の入力および前記第二の出力に接続される第二の入力を有する第三の油圧弁と、
前記第一の油圧弁および前記第二の油圧弁と通信する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記第一の油圧弁をディザリングして、前記第三の油圧弁の前記第一の入力に印加される、第一の周期的に変動する油圧流体圧力を生成することと、
前記第二の油圧弁をディザリングして、前記第三の油圧弁の前記第二の入力に印加される、第二の周期的に変動する油圧流体圧力を生成することと、を含む動作を行い、
前記第三の油圧弁の前記第一の入力および前記第二の入力に印加される前記第一の周期的に変動する油圧流体圧力および前記第二の周期的に変動する油圧流体圧力は位相が180度ずれており、第三の油圧弁にディザリングを生じさせる、
ことを特徴とする装置。
【請求項9】
前記第三の油圧弁の前記ディザリングは、油圧シリンダの第一の入力および前記油圧シリンダの第二の入力に油圧流体圧力を印加させ、
印加された前記油圧流体圧力は前記油圧シリンダを作動させるために必要となる値より低い値である、
ことを特徴とする、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記第一の油圧弁の前記ディザリングは、前記第一の油圧弁の第一の入力に印加される周期的に変動する油圧流体圧力および前記第一の油圧弁の第二の入力に印加される周期的に変動する油圧流体圧力に対応する、
ことを特徴とする、請求項8に記載の装置。
【請求項11】
前記第二の油圧弁の前記ディザリングは、前記第二の油圧弁の第一の入力に印加される周期的に変動する油圧流体圧力および前記第二の油圧弁の第二の入力に印加される周期的に変動する油圧流体圧力に対応する、
ことを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記第一の油圧弁の前記ディザリングおよび前記第二の油圧弁の前記ディザリングは、前記第一の油圧弁および前記第二の油圧弁のスティクションを軽減する、
ことを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項13】
前記第三の油圧弁の前記第一の入力および前記第二の入力に印加される前記周期的に変動する油圧流体圧力の振幅は、前記第三の油圧弁に結合する油圧シリンダの作動を生じさせない、
ことを特徴とする、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記第三の油圧弁の前記第一の入力および前記第二の入力に印加される前記周期的に変動する油圧流体圧力の振幅は、前記第一の油圧弁の前記ディザリングおよび前記第二の油圧弁の前記ディザリングに対応する、
ことを特徴とする、請求項8に記載の装置。
【請求項15】
掘削機の器具部材に関連付けられた油圧シリンダと、
第一の出力を有する第一の油圧弁と、
第二の出力を有する第二の油圧弁と、
前記第一の出力に接続される第一の入力と、前記第二の出力に接続される第二の入力と、前記油圧シリンダの第一の側に接続された第三の出力と、前記油圧シリンダの第二の側に接続された第四の出力と、を有する第三の油圧弁と、
前記第一の油圧弁および前記第二の油圧弁と通信する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記第一の油圧弁をディザリングして、前記第三の油圧弁の前記第一の入力に印加される、第一の周期的に変動する油圧流体圧力を生成することと、
前記第二の油圧弁をディザリングして、前記第三の油圧弁の前記第二の入力に印加される、第二の周期的に変動する油圧流体圧力を生成することと、を含む動作を行い、
前記第三の油圧弁の前記第一の入力および前記第二の入力に印加される前記第一の周期的に変動する油圧流体圧力および前記第二の周期的に変動する油圧流体圧力は位相が180度ずれており、第三の油圧弁にディザリングを生じさせる、
ことを特徴とする掘削機。
【請求項16】
前記器具部材は、前記掘削機のブームである、
ことを特徴とする、請求項15に記載の掘削機。
【請求項17】
前記器具部材は、前記掘削機のスティックである、
ことを特徴とする、請求項15に記載の掘削機。
【請求項18】
前記器具部材は、前記掘削機のバケットである、
ことを特徴とする、請求項15に記載の掘削機。
【請求項19】
前記第三の油圧弁の前記ディザリングは、前記油圧シリンダの第一の入力および前記油圧シリンダの第二の入力に油圧流体圧力を印加させ、
印加された前記油圧流体圧力は前記油圧シリンダを作動させるために必要となる値より低い値である、
ことを特徴とする、請求項15に記載の掘削機。
【請求項20】
前記第一の油圧弁の前記ディザリングは、前記第一の油圧弁の第一の入力に印加される周期的に変動する油圧流体圧力および前記第一の油圧弁の第二の入力に印加される周期的に変動する油圧流体圧力に対応し、前記第二の油圧弁の前記ディザリングは、前記第二の油圧弁の第一の入力に印加される周期的に変動する油圧流体圧力および前記第二の油圧弁の第二の入力に印加される周期的に変動する油圧流体圧力に対応する、
ことを特徴とする、請求項15に記載の掘削機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本出願は、2019年9月27日に出願された米国出願第16/585784号に基づく優先権を主張するものであり、その開示内容全体をここに参照により援用する。
【0002】
本開示は全般的に油圧弁に関し、より具体的には静摩擦によって引き起こされる、ユーザ入力と油圧シリンダの動きとの間の遅延を軽減する技術に関する。
【背景技術】
【0003】
掘削機のような建設機械は、表面を改修するための器具を有する。一般的な掘削機の器具は、油圧駆動ブーム、スティックおよびバケット部材を含んでおり、これら部材は各々が油圧シリンダを有しており、これらシリンダに油圧流体圧力を印加することにより可動する。ユーザからの入力に基づいて、シリンダに油圧流体圧力を印加するために様々な弁が用いられる。
【0004】
これらの弁には、ユーザ入力と器具の動作との間に遅延が生じるという問題が付随する。この遅延の原因は、少なくとも部分的に静摩擦にあり、油圧流体圧力による弁構成要素の即時の作動を妨げる。静摩擦は、二つの表面間で発生する摩擦であって、表面の互いに対する動きに対抗する摩擦である。構成要素を動かす油圧流体圧力が増加するにつれて、静摩擦が解消されて、動摩擦のみが残る。この動摩擦を解消する力は、静摩擦の解消に求められる力より少ない。例えば、パイロット弁がユーザ入力を受けて作動するパイロット式システムでは、パイロット弁によって油圧流体圧力が増加し、油圧構成要素を作動させ、静摩擦が解消されて、運動摩擦のみが残る。これらの静摩擦による遅延は、ユーザによる器具の部材の動きの制御をより複雑かつ煩雑にし得る。
【発明の概要】
【0005】
一実施形態において、静摩擦(「スティクション」)を軽減する方法は、第一の油圧弁をディザリングすること(即ち、弁の連続的な前後運動)と、第二の油圧弁をディザリングすることとを含む。前記第一の油圧弁および前記第二の油圧弁それぞれの出力は、主油圧弁の入力に接続されている。前記主油圧弁は、その入力に、前記第一の油圧弁および前記第二の油圧弁のディザリングによって生じる油圧流体圧力が印加されると、ディザリングを行う。前記主弁に関連付けられた油圧シリンダを作動させるユーザ入力が受信される。制御部は、前記ユーザ入力を受けて前記主弁の入力のうちの一つに油圧流体圧力を印加する第一の油圧弁に信号を送信する。前記主弁に関連付けられた前記油圧シリンダは、前記主弁の対応する入力に油圧流体圧力が印加されると、前記主弁の前記出力から油圧流体圧力が印加されて作動する。
【0006】
油圧弁をディザリングして静摩擦を軽減する装置および掘削機も開示される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1B】
図1Bは、建設現場を改修するための建設機械、具体的には掘削機を示す図である。
【
図2】
図2は、掘削機に関連する電子制御システムを示す図である。
【
図3】
図3は、掘削機の油圧システムの一部の概略を示す図である。
【
図4】
図4は、制御部から制御部ブームアップ弁に印加される信号のグラフである。
【
図5】
図5は、制御部からユーザ・ブームアップ弁に印加される信号のグラフである。
【
図6】
図6は、ブームアップ弁から出力される油圧流体圧力のグラフである。
【
図7】
図7は、主弁の第一の入力における油圧流体圧力のグラフである。
【
図8】
図8は、主弁の第二の入力における油圧流体圧力のグラフである。
【
図9】
図9は、主弁の第一および第二の出力における油圧流体圧力のグラフである。
【
図10】
図10は、主弁の第一の入力における油圧流体圧力のグラフである。
【
図11】
図11は、主弁の第二の入力における油圧流体圧力のグラフである。
【
図12】
図12は、主弁の第一の出力および第二の出力における油圧流体圧力のグラフである。
【
図13】
図13は、本発明の実施形態による方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書に記載する方法および装置は、ここで「スティクション」と称する静摩擦を軽減する。スティクションとは、一般的に、油圧弁またはシリンダが現在動いていない場合に、当該油圧弁またはシリンダに送信された指示(例えば、電気信号または油圧流体圧力)に対して即座に且つ充分に応答できない状態のことである。例えば、指示を受信していない電気機械油圧弁は、特定の位置で休止したままである。休止中の弁は、動摩擦よりも高い静摩擦を受ける。静摩擦が動摩擦よりもはるかに大きいため、油圧弁が静止している状態で油圧弁の作動を開始するには、弁が動いているときよりも大きな力が必要である。スティクションは、入力を受けてから各油圧シリンダが油圧弁に駆動されて作動するまでに遅延を生じさせる。この遅延によって、建設機械などの様々な機械で使用される油圧シリンダに駆動される構成要素の動作制御が困難になることがある。
【0009】
図1Aは、油圧流体圧力を受ける二つの入力14、16と、油圧流体圧力を印加する一つの出力18とを有する油圧弁10を示している。油圧弁10は、弁体20内に配置されたスライダ12を有している。
図1Aに示されるように、スライダ12は、弁体20の対応する円筒状空洞に嵌合する大きさの円筒状の物体である。
【0010】
油圧弁10は以下のように動作する。入力14に加えられた油圧流体圧力は、スライダが入力14から離れて入力16に向かうように付勢し、バネ26を圧縮する。入力16に加えられた油圧流体圧力は、スライダ12を入力16から離れて入力14に向かうように付勢し、バネ28を圧縮する。入力14および入力16に印加される油圧流体圧力が略同じである場合、スライダ12は静止したままである。一方の入力に印加された油圧流体圧力が、もう一方の入力に印加された油圧流体圧力より高い場合、スライダ12は高い油圧流体圧力が印加される入力から離れる方向に移動する。スライダ12が充分に移動すると、出力18が露出し、入力14または16いずれかからの油圧流体圧力が、どちらの入力に対してより高い油圧流体圧力が印加されたかに応じて、印加される。
【0011】
スライダ12は、スライダ12と弁体20の内面との間の静摩擦により、油圧流体圧力が増加しても移動しない。入力14に印加される油圧流体圧力が静摩擦の解消に充分な高さになると、スライダ12が移動を開始し、スライダ12と弁体20の内面との間に静摩擦よりも低い動摩擦が発生する。静摩擦は、油圧弁10の作動がリクエストされたときと、油圧弁10が作動するときとの間に遅延を生じさせる。一実施形態において、スライダ12は、スライダ12と弁体20との間を油圧流体が流れないようにするために、弁体20の内面に嵌合するサイズに形成されている。別の実施形態では、Oリングが使用されるが、依然としてスライダ12と弁体20との間に静摩擦が生じ、多くの場合、Oリングを使用しない場合よりも、高いスティクションが生じる。
【0012】
図1Bは、建設機械、具体的には掘削機100を示している。掘削機100は、ブーム102と、スティック104と、バケット106とを有し、これらの各々は、掘削機100のキャビン108内に位置するユーザによって制御可能である。ブーム102、スティック104およびバケット106は共に、掘削機100の器具(例えば、表面改修器具)と称す。キャビン108は、掘削機100の本体と称されるものの一部であり、トレッドまたは他の運搬手段を含んでいてもよい。一実施形態において、ユーザは、キャビン108内に位置する制御装置(例えば、ジョイスティック)を作動させて、油圧シリンダ110に印加される油圧流体圧力を介して、最終的にブーム102を動かす。ユーザは、別の制御装置を作動させて、油圧シリンダ112に印加される油圧流体圧力を介して、スティック104を動かす。ユーザは、別の制御装置を作動させて、油圧シリンダ116に印加される油圧流体圧力を介して、バケット106を動かす。
【0013】
図2は、一実施形態による、ブーム102の制御に関する掘削機100の構成要素を概略的に示している。制御部202は、プログラム可能なロジック制御部、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、等の電気制御装置であってもよい。一実施形態において、制御部202はコンピュータを使って実装される。制御部202は、このような動作を規定するコンピュータプログラム指示を実行することによって、制御部202の全体動作を制御するプロセッサ218を含む。コンピュータプログラム指示は、記憶装置222または他のコンピュータ読み取り可能媒体(例えば、磁気ディスク、CD-ROMなど)に記憶され、コンピュータプログラム指示を実行したいときにメモリ220に取り込まれてもよい。したがって、
図13における方法ステップ(以下に記載)は、メモリ220および/または記憶装置222に記憶されたコンピュータプログラム指示によって規定でき、コンピュータプログラム指示を実行するプロセッサ218により制御できる。例えば、コンピュータプログラム指示は、
図13の方法ステップに規定されるアルゴリズムを実行するように当業者によってプログラムされたコンピュータ実行可能コードとして実現できる。したがって、コンピュータプログラム指示を実行することにより、プロセッサ218は、
図13の方法ステップに規定されるアルゴリズムを実行する。当業者とって当然のことながら、制御部の実装形態は、他の構成要素も同様に含んでもよく、制御部202は例示を目的としてそのような制御部の構成要素のうち、いくつかの構成要素を上位表示したものである。
【0014】
センサ204は、器具の向き、流体圧力や温度等の動作パラメータのような掘削機100の状態を検出する一以上のセンサを表している。一実施形態において、器具の向きは、器具のブーム102、スティック104およびバケット106の位置を判定する線形または回転センサおよび/または慣性測定ユニットを使用して判定される。
【0015】
入力208、212および216は、掘削機100を操作するための各種入力装置を表している。一実施形態において、入力208は、ブーム102、スティック104およびバケット106を動かす一以上の制御装置(例えば、ジョイスティック)を含んでもよい。例えば、ブーム・ジョイスティックは、ユーザによって動かされ、ブーム102の上昇または下降を指示できる。同様に、スティック・ジョイスティック(即ち、スティック104の動きを制御するジョイスティック)は、ユーザによって動かされて、スティック104を掘削機100の本体へ向けて、または掘削機100の本体から離れるように指示できる。バケット・ジョイスティックは、ユーザによって動かされ、バケット106を掘削機100の本体へ向けて、または掘削機100の本体から離れるように指示できる。一実施形態において、ジョイスティックに関連する入力は、ジョイスティックそれぞれに関連するセンサからの信号である。入力208はまた、タッチ・スクリーン、ボタンおよびその他の入力等の入力装置を介したユーザからの入力を含んでいてもよい。
【0016】
一実施形態において、表示部206は、掘削機100のキャビンに配置されておりユーザに情報を表示する。表示部206は、タッチ・スクリーン、発光ダイオード・ディスプレイ、液晶ディスプレイ等、任意の表示部であってもよい。表示部206は、関連する機械、現在の現場プラン、所望の現場プラン等に関する様々な情報をユーザに提示する。
【0017】
制御部202は、掘削機100のブーム102の動きにそれぞれ関連付けられた複数の電気機械制御弁(例えば、210、214、および図示されない他のもの)に接続されている。電気機械制御弁210は、制御部202から電気信号を受信し、当該電気信号に応答して、その出力に油圧流体圧力を印加する。一実施形態において、制御部ブームアップ弁210は油圧流体圧力を、ブーム102に関するシリンダ110を制御する油圧主弁10の第一の入力に向けることにより、掘削機100のブーム102の上方向の動きを制御する。制御部ブームダウン弁214は油圧流体圧力を、ブーム102に関する油圧シリンダ110に接続された油圧主弁10の第二の入力に向けることにより、掘削機100のブーム102の下方向の動きを制御する電気機械制御弁である。制御部202は、一般的に入力208を介して、スティック104およびバケット106、または掘削機100に関連付けられたその他の機器を制御する電気ジョイスティック制御弁に接続されている(図示せず)。スティック104およびバケット106を制御する電気機械制御弁は、ブームを制御する電気機械制御弁と同様に動作するため、図示を省略する。
【0018】
一実施形態において、制御部202は入力208およびセンサ204からデータを受信する。制御部202は、受信したデータを解析して掘削機動作情報を判定し、表示部206を介してユーザに表示し、出力を制御部ブームアップ弁210、および/または制御部ブームダウン弁214に送信してブーム102を制御するか否かを判定する。一実施形態において、制御部202は、以下に記載されるように、スティクションを緩和するために、ユーザからの制御入力がない場合に、制御部ブームアップ弁210および/または制御部ブームダウン弁214に信号を出力する。
【0019】
図3は、ブーム(
図1の102)の動きを制御する、掘削機100の油圧システム300の一部を概略的に示す図である。スティック(
図1の104)およびバケット(
図1の106)の動きを制御する、掘削機100の油圧システムも同様であり、図示を省略する。油圧シリンダ110は、主弁304から油圧流体圧力が印加されると作動するブーム102に接続されている。主弁304は、主弁304の入力328または入力330に油圧流体圧力が印加されると、油圧流体圧力を、出力332または出力334を介して、油圧シリンダ110に印加する油圧弁である。例えば、入力328に油圧流体圧力が印加され、入力330に油圧流体圧力が印加されない場合、主弁304は出力332に油圧流体圧力を出力することによって、当該油圧流体圧力を油圧シリンダ110に印加して作動させ、ブーム(
図1Bの102)を上方向に作動させる。入力330に油圧流体圧力が印加され、入力328に油圧流体圧力が印加されない場合、主弁304は出力334に油圧流体圧力を出力することによって、当該油圧流体圧力を油圧シリンダ110に印加して作動させ、ブーム(
図1Bの102)を下方向に作動させる。
【0020】
入力328は、ユーザ・ブームアップ入力212を受けて、または内部で生成された信号を受けて、制御部202からの信号を受信する制御部ブームアップ弁210からの油圧流体圧力を受ける。
【0021】
入力330は、ユーザ・ブームダウン入力216介して受信されるユーザ入力に基づいて制御部202から信号を受信する、または内部で生成された信号を受信する、制御部ブームダウン弁214からの油圧流体圧力を受ける。
【0022】
主弁304には、弁が制御部202によって作動される時点と、油圧シリンダ110が動作を開始する時点との間に遅延を生じさせるスティクションが発生する。一実施形態において、主弁304のスティクションは、その入力328および330を介して主弁304をディザリングすることによって軽減される。
【0023】
図4~
図12は、様々な振幅でディザリングされる弁の様々な例を示す。
図4~
図6には、制御部ブームアップ弁210および制御部ブームダウン弁214の両方がディザリングされているが、これら弁に対するディザリングが不充分であり出力がディザリングされないグラフが示されている。
図7~
図9には、制御部ブームアップ弁210および制御部ブームダウン弁214の両方が、
図4~
図6の場合よりも高い信号レベルでディザリングされており、主弁304のディザリングには不充分ではあるものの、出力圧力に変動があるグラフが示されている。
図10~
図12には、制御部ブームアップ弁210および制御部ブームダウン弁214が、主弁の入力328および330で、ディザリングされた圧力制御信号を生成するのに充分な振幅でディザリングされているグラフが示されている。
【0024】
図4~
図6には、制御部202によって制御部ブームアップ弁210および制御部ブームダウン弁214に印加されるディザリング電気信号、およびこれにより発生し、入力328および330を介して主弁304に印加される油圧流体圧力602のグラフが示されている。
図4~
図6のグラフは、同一の時間尺度を有しており、T0、T1、T2、T3等に関する信号イベントが示されている。
図6は、ディザリング振幅が不充分である場合、210または214のいずれからの出力もディザリングされないことを示している。
【0025】
図4は、ディザリング電気信号402の経時的な電圧を示すグラフ400を示している。本実施形態では、ディザリング電気信号402は、制御部202によって制御部ブームアップ弁210に加えられる矩形波である。制御部ブームアップ弁210に印加されたディザリング電気信号402によって、制御部ブームアップ弁210から出力され主弁304に印加される油圧流体圧力が生じる。
図5は、信号502の経時的な電圧を示すグラフ500を示している。信号502は、制御部202によって制御部ブームダウン214に印加される。信号402および502は、210および214の出力での油圧流体圧力が変調されるように選択されたデューティ・サイクルを有するパルス幅変調信号である。一実施形態において、信号402および502はまた、弁210および214から出力される所望の油圧流体圧力によって、変化する別の信号を有する。
【0026】
図4および
図5に示すように、ディザリング電気信号402および502は位相が180度ずれている。
図4および
図5に示すように、時間T0において、信号402はハイであり、信号502はローである。時間T1において、信号402はローであり、信号502はハイである。信号402および502の振幅と位相のずれとの組合せにより、周期的に変動する油圧流体圧力がブームの主弁304の入力328および330に印加される。信号402および502は位相がずれているため、入力328および330に加えられる油圧流体圧力の位相もずれる。主弁304は、ブームアップ弁210からの主弁304の入力328における油圧流体圧力を受けて、油圧シリンダ110に油圧流体圧力を印加する。
【0027】
図6は、主弁304の入力328における、経時的な油圧流体圧力のグラフ600を示している。
図6には、出力圧力602が示されており、一実施形態において、ゼロから、主弁304を作動させる油圧流体圧力の前の値までの範囲内の一定値を有している。
図4に示される制御部ブームアップ弁210の動作は、主弁304の入力328に印加される油圧流体圧力の変動が
図6の出力圧力602で示されるように最小の場合、主弁304に動きを生じさせず、スティクションも低減されない。
【0028】
ブームダウン弁214は、上述したブームアップ弁210の動作と同様に動作し得る。
【0029】
図7および
図8は、例えば
図4および
図5に示すようにブームアップ弁210およびブームダウン弁214がディザリングされ、ユーザ入力が受信されてない場合に、主弁304の入力328および330に印加される油圧流体圧力のグラフを示している。
図7~
図9のグラフは、同一の時間尺度を有しており、T0、T1、T2、T3等に関するイベントが示されている。
【0030】
図7は、主弁304の入力328における、経時的な油圧流体圧力のグラフ700を示している。図示される油圧流体圧力702は、ディザリング信号に対する弁の反応である正弦波形状を形成する経時的な値を有している。
【0031】
図8は、主弁304の入力330における、経時的な油圧流体圧力のグラフ800を示している。図示される油圧流体圧力802は、ブームダウン弁320のディザリングに対応する正弦波形状を形成する経時的な値を有している。
【0032】
図7および
図8に示される正弦波形702および802は、位相が180度ずれている。
図7および
図8に示されるように、時間T0において、波形702によって示される油圧流体圧力はより高く上昇している一方で、波形802によって示される油圧流体圧力はより低く下降している。時間T1において、波形702は下降している一方、波形802は上昇している。一実施形態において、波形702および802のこの交互のハイとローは、ブーム102の動作を指示するユーザ入力が受信されない限り継続する。
図7および
図8に示す波形702および802の振幅は、主弁304をディザリングさせるには不充分である。
【0033】
図9のグラフ900は、主弁304の入力328および330のそれぞれに、
図7および
図8で示される油圧流体圧力を印加した場合の、主弁304の出力332および出力334における経時的な油圧流体圧力を示している。
図9には、出力332における油圧流体圧力902が示されており、一実施形態において、ゼロから、油圧シリンダ110を作動させ得る油圧流体圧力の前の値までの範囲内の一定値を有している。
図9には、出力334における油圧流体圧力904が示されており、一実施形態において、ゼロから、油圧シリンダ110を作動させ得る油圧流体圧力の前の値までの範囲内の一定値を有している。
【0034】
図10および
図11は、ユーザ入力が受信されてない場合に、主弁304の入力328および330に印加される油圧流体圧力のグラフを示している。グラフは、増加したディザ振幅を示し、正弦波形1002および1102が依然として180度位相がずれていることも示す。
図10~
図12のグラフは、同一の時間尺度を有しており、T0、T1、T2、T3等に関するイベントが示されている。
【0035】
図10は、主弁304の入力328における、経時的な油圧流体圧力のグラフ1000を示している。図示される油圧流体圧力1002は、ブームアップ弁210のディザリングに対応する正弦波形状を形成する経時的な値を有している。
【0036】
図11は、主弁304の入力330における、経時的な油圧流体圧力のグラフ1100を示している。図示される油圧流体圧力1102は、ブームダウン弁214のディザリングに対応する正弦波形状を形成する経時的な値を有している。
【0037】
尚、波形1002および1102は、波形700および800と類似している。波形702、802、1002および1102の各々は、特定の点における周期的に変動する油圧流体圧力を示す。波形1002および1102の振幅は、波形702および802の振幅よりも大きい。波形1002および1102のより高い振幅は、主弁304をディザリングし、主弁304のスティクションを軽減する。
【0038】
図12は、入力328に印加される経時的な油圧流体圧力、および入力330に印加される経時的な油圧流体圧力のグラフ1200を示している。
図12に示されるように、波形1202は波形1204と位相が180度ずれている。入力328および330を介して印加される交番圧力は、スティクション低減に必要な量を超えるディザリング量を有する弁210および214のディザリングに対応する。尚、主弁304に対するディザリングによって、主弁304のスティクションが解消される。しかし、入力328および330に印加される油圧流体圧力は、出力332および334に変動を生じさせるのに充分な正弦波の変動が含まれていないため、油圧シリンダ110はディザリングを受けても作動しない。したがって、主弁304のスティクションは、油圧シリンダ110の作動を引き起こすことなく軽減される。
【0039】
図10における信号1002のグラフは、形状をそのままに、平均圧力レベルを高くし、主弁304がシフトして332において圧力を生じさせ、シリンダ110を伸長させてブーム102を持ち上げるように、制御信号を加えたものに変更することができる。
【0040】
図11における信号1102のグラフは、形状をそのままに、平均圧力レベルを高くし、主弁304がシフトして334において圧力を生じさせ、シリンダ110を収縮させてブーム102を降ろすように、制御信号を加えたものに変更することができる。
【0041】
主弁304に対するディザリングの正味量は、ディザ信号402および502の振幅を変化させることによって調整することができる。この正味量もまた、グラフ1000または1100において加算された制御信号の値に基づいて変化させることができ、主値304に対する正味の差はそのままで、非アクティブな反対側がゼロに達し、それに対応するディザリングが消失し、アクティブ側のみのディザリングに置き換えられる。この残ったアクティブ・ディザリング+制御信号が、出力332または334の制御と、主弁および対応するアクティブな制御弁におけるスティクションの低減と、の両方に必要な量と等しくなる。
【0042】
図13は、一実施形態による油圧システムの弁(即ち、二つのパイロット制御弁および主弁)のスティクションを軽減する方法1300のフローチャートを示す。ステップ1302において、第一の油圧弁が、その固有のディザの除去に必要とされるものを超える信号でディザリングされる。一実施形態において、
図3に示すブームアップ制御弁210が、ディザリングされる。ステップ1304において、第二の油圧弁214も、その固有のディザの除去に必要とされるものを超える信号でディザリングされる。ブームアップ弁210およびブームダウン弁214のディザリングによって、主弁304の入力328および330に、
図10および
図11に示されるような油圧流体圧力が印加される。ステップ1306において、主弁304が、入力328および330に加えられた油圧流体圧力でディザリングされる。主弁304のディザリングによって、主弁304のスプール12におけるスティクションが低減または除去される。一実施形態において、328および330における圧力の変動は、主弁304のスプール12におけるスティクションを軽減するには充分であるが、出力332および334における油圧流体圧力を変動させ、これによって油圧シリンダ110を作動させるには不充分である。
【0043】
ステップ1308において、
図2に示される制御部202によって、油圧シリンダ110を作動させる入力が受信される。一実施形態において、入力は、
図2に示される入力208のジョイスティックから受信される。ステップ1310において、制御部202は、ジョイスティックに対する入力を受けて、
図3に示す制御部ブームアップ210または制御部ブームダウン214の一方に信号を出力する。この信号によって、油圧流体圧力がディザ信号に追加され、弁210によって入力328に、または弁214によって主弁304の入力330に印加される。弁304は、入力328および330における正味の圧力差に反応し、ステップ1312において、主弁304の出力332または334を介して印加される油圧流体圧力によって油圧シリンダ110が作動する。
【0044】
尚、様々な用途の他種の油圧弁のスティクションは、同様にディザリングしてスティクション軽減を図ることができる。したがって、掘削機100のスティック104およびバケット106を作動させる油圧弁に関するスティクションは、ブーム102に関して上述したものと同様の方法で軽減することができる。
【0045】
以上の「発明を実施するための形態」は、あらゆる点において例示的であって限定的ではないものとして理解されるべきであり、本明細書に開示される本発明概念の範囲は、「発明を実施するための形態」から判断されるのではなく、各特許法において認められる全容に渡って解釈される特許請求の範囲から判断されるべきものである。当然のことながら、本明細書に図示、説明された実施形態は、本発明概念の原理を例示したにすぎず、本発明概念の範囲および趣旨から逸脱することなく、当業者によって様々な修正が行われてもよい。当業者は、本発明の概念の範囲および趣旨から逸脱することなく、他の様々な特徴の組合せを実現できるであろう。
【国際調査報告】