(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-29
(54)【発明の名称】海藻ベースの組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 17/60 20160101AFI20221121BHJP
A23L 29/238 20160101ALI20221121BHJP
A23L 29/269 20160101ALI20221121BHJP
A23L 29/25 20160101ALI20221121BHJP
A23L 29/244 20160101ALI20221121BHJP
A23L 29/256 20160101ALI20221121BHJP
A23L 29/30 20160101ALI20221121BHJP
A23L 2/38 20210101ALI20221121BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20221121BHJP
A61K 8/9717 20170101ALI20221121BHJP
A61K 36/04 20060101ALI20221121BHJP
A61K 47/46 20060101ALI20221121BHJP
A23K 10/30 20160101ALI20221121BHJP
【FI】
A23L17/60 Z
A23L29/238
A23L29/269
A23L29/25
A23L29/244
A23L29/256
A23L29/30
A23L2/38 F
A23L2/52
A23L17/60 B
A23L17/60 W
A23L2/00 E
A61K8/9717
A61K36/04
A61K47/46
A23K10/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022516635
(86)(22)【出願日】2020-09-15
(85)【翻訳文提出日】2022-04-15
(86)【国際出願番号】 US2020050897
(87)【国際公開番号】W WO2021055365
(87)【国際公開日】2021-03-25
(32)【優先日】2019-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397058666
【氏名又は名称】カーギル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】アゴダ‐タンジャワ,ゲバ
(72)【発明者】
【氏名】マゾイエ,ジャック,アンドレ クリスチアン
(72)【発明者】
【氏名】ル・ガーネック,シンディ
(72)【発明者】
【氏名】ルフワンソワ,クローディーヌ
【テーマコード(参考)】
2B150
4B019
4B041
4B117
4C076
4C083
4C088
【Fターム(参考)】
2B150AA00
2B150AB03
2B150BA01
2B150BD06
2B150BE01
2B150CE26
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4C088AA14
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4C088NA20
(57)【要約】
本発明は、水、海藻粉末、及び付加的成分を含む海藻ベースの組成物であって、上記の付加的成分は、グルコマンナン、ガラクトマンナン、天然澱粉、及びそれらの組み合わせを含む群から選ばれる、海藻ベースの組成物に関する。好ましくは、紅藻は、スギノリ科、ウシケノリ綱、ダルス科、イバラノリ科、シストクロニウム科、ミリン科、オキツノリ科、及びススカケベニ科、又はそれらの組み合わせの科から選択される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、海藻粉末、及び付加的成分を含む海藻ベースの組成物であって、前記付加的成分は、グルコマンナン、ガラクトマンナン、天然澱粉、及びそれらの組み合わせを含む群から選ばれ、前記海藻は紅藻を含む、海藻ベースの組成物。
【請求項2】
前記付加的成分は、グアーガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、カシアガム、タラガム、コンニャクガム、アルギン酸、寒天、カラギーナン、ベータ1,3グルカン、天然澱粉、及びそれらの組み合わせを含む群から選ばれる、請求項1に記載の海藻ベースの組成物。
【請求項3】
前記付加的成分は、当該組成物の総乾燥固形分含量に基づき少なくとも1.5重量%の量で使用される、請求項1又は2に記載の海藻ベースの組成物。
【請求項4】
前記水は、当該組成物の総重量に基づき少なくとも5重量%の量で当該組成物中に存在する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の海藻ベースの組成物。
【請求項5】
前記海藻は紅藻である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の海藻ベースの組成物。
【請求項6】
前記海藻は、紅藻植物(Rhodophyta)門に属する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の海藻ベースの組成物。
【請求項7】
前記海藻は、スギノリ科(Gigartinaceae)、ウシケノリ綱(Bangiophyceae)、ダルス科(Palmariaceae)、イバラノリ科(Hypneaceae)、シストクロニウム科(Cystocloniaceae)、ミリン科(Solieriaceae)、オキツノリ科(Phyllophoraceae)、及びススカケベニ科(Furcellariaceae)、又はそれらの組み合わせの科から選択される紅藻である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の海藻ベースの組成物。
【請求項8】
前記海藻粉末は海藻粒子を有し、前記粒子は、少なくとも20μm、好ましくは最大で750μmのD50を有している、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の海藻ベースの組成物。
【請求項9】
前記海藻粉末は海藻粒子を有し、前記粒子は、少なくとも125μm、好ましくは最大で800μmのD90を有している、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の海藻ベースの組成物。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の海藻ベースの組成物を含む、食品、飲料、栄養製品、栄養補助食品、飼料製品、パーソナルケア製品、医薬製品、又は工業製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品、飲料、栄養製品、栄養補助食品、飼料、パーソナルケア用途、医薬用途、及び工業用途において使用するための海藻ベースの組成物に関する。本発明は、海藻ベースの組成物の製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
世界の海藻生産量は20,000,000トン/年程度と信じられている。近年、海藻の栽培及び収穫方法の改善が行われ、生産量の増加だけでなく、より効率的な生育制御も可能となった。特許文献1、特許文献2、及び特許文献3が、海藻の栽培システムの例を開示している。しかし、海藻の栽培及び収穫における近年の発展にもかかわらず、生産された海藻は、幅広い用途において効果的に使用されるには依然として多用途性を欠いていると信じられている。
【0003】
海藻は、一般的には海洋環境において岩又は他の硬い基層に付着して生存する植物様の生物である。海藻は、微細藻類等の顕微鏡的なものであり得るが、海底にあるそれらのホールドファストから「森」及び塔のような水中の森林の中で生育するジャイアントケルプ等の巨大なものでもあり得る。海藻種の大部分は、緑色(6500種以上)、褐色(約2000種)、又は赤色(約7000種)の種類である。
【0004】
数百年前から、海藻はヒトの健康だけでなく動物の健康にも有益であるということを人々は認識し、さらに、近年では、様々な研究によって、海藻は脂肪代替物として効果的であることが実証されている。食生活と健康との関係を人々がより意識するようになるに従い、海藻の摂取が注目を集めるようになり、ますます注目されている。現在、海藻をベースとする多くの新しい食品が開発及び販売されており、健康上の利益を高め、さらに、疾病のリスクを下げる可能性を提供している。直接摂取されたとき、又は栄養補助食品としてわずかに予め処理された後に摂取されたときの圧倒的な健康上の利益に加えて、海藻は、栄養学的、物理化学的、及びテクスチャー的な特性等、広範な自然の機能的特性を有しており、さらに、様々な製品を製造するための成分として使用される場合には、海藻は、これらの製品に、それらの有利な機能的特性を移すことができる。
【0005】
例えば、海藻は、保水性及びレオロジー特性を示し、粘度を増加させ、ゲルを形成し、及び/又は乳化剤として作用する自然の能力を有している。しかし、それらの優れた特性にもかかわらず、海藻は、商品と見なされることからかけ離れており、これは、主に、それらの低い加工適性によるものである。ほとんどの場合、海藻は、そこから製造される製品の様々なレオロジー特性を改変又は強化するために、収穫された、すなわち未加工のものとして使用される。しかし、収穫したての海藻は貯蔵寿命が短いため、人々は、貯蔵性を延ばすためにそれらを乾燥させ、さらに、海藻の取り扱い又は梱包を容易にするためにそれらを粉砕又は押しつぶして、粉末と呼ばれることが多くある粉状のものにしていた。特許文献4は、粉砕された藻類の粉末を開示しており;特許文献5、特許文献6、及び特許文献7は、粉砕された乾燥した海藻及び湿った海藻から作製されたバイオコンポジット、パーソナルケア組成物、及び硬カプセル剤等の製品を開示しており;さらに、いくつかの種類の海藻粉が市販されており、オンラインで注文することさえもできる。
【0006】
そのような処理の1つの欠点は、乾燥及び粉砕した海藻がその自然のレオロジー特性を失う可能性があるということである。市販の海藻粉及び既知のプロセスに従って製造されたものは、粘度を高める及びゲルを形成する能力が低下している可能性があるということが観察されている。
【0007】
従って、優れたレオロジー特性を有する海藻ベースの組成物が必要とされている。また、最適なレオロジー特性を有する自然の、すなわち化学的に修飾されていない海藻ベースの組成物が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】EP 2 230 895
【特許文献2】EP 3 246 292
【特許文献3】WO 2017/131510
【特許文献4】US 2018/0000137
【特許文献5】WO 2008/050945
【特許文献6】WO 2015/033331
【特許文献7】WO 2017/204617
【特許文献8】WO 2016/085322
【特許文献9】WO 2009/079002
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Modified starches: Properties and Uses. Ed. Wurzburg, CRC Press, Inc., Florida (1986)
【非特許文献2】“Codex standard for food grade salt”, CX STAN 150-1985, Rev. 1-1997, Amend, 1-1999, Amend 2-2001
【非特許文献3】C. W. Schneider and M. J. Wynne in Botanica Marina 50 (2007): 197-249
【非特許文献4】G. W. Sauders and M. H. Hommersand in American Journal of Botany 91(10): 1494-1507, 2004
【非特許文献5】Athanasiadis, A. in Bocconea 16(1): 193-198.2003. - ISSN 1120-4060
【非特許文献6】Naselli-Flores L and Barone R. (2009) Green Algae. In: Gene E. Likens, (Editor) Encyclopedia of Inland Waters. volume 1, pp. 166-173 Oxford: Elsevier
【非特許文献7】John D. Wehr in Freshwater Algae of North America - Ecology and Classification, Edition: 1, Chapter: 22, Publisher: Academic Press, Editors: John D. Wehr, Robert G. Sheath, pp.757-773
【非特許文献8】Agoda-Tandjawa, G., Dieude-Fauvel, E., Girault, R. & Baudez, J.-C. (2013). Chemical Engineering Journal, 228, 799-805
【発明の概要】
【0010】
本発明は、改善された機能性を有する、すなわち優れたレオロジー特性を有する海藻ベースの組成物(以下、本発明の組成物という)を提供する。特に、本発明の海藻ベースの組成物は、それを含有する製品の粘度に影響を与える能力を有している。また、当該組成物は、ゲルを生成することができてもよく、それを含有する製品の他の特性に影響を与えないか又はより少ない程度でしか影響を与えないよう十分に少ない量で使用することができる。
【0011】
従って、様々な製品の製造における本発明の組成物の利用は、それらの製品に優れたレオロジー特性及びテクスチャーを与えると考えられる。加えて、本発明の組成物は、色、味、臭い、食感、及び外観等、それを含有する製品の他の特性に与える影響をより小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】海藻粉末試料のC
0を決定するための方法論を示した図である。
【
図2】(a)蒸留水中で調製された50/50の混合比で1%w/wの総濃度のローカストビーンガム及びネッタイキリンサイ(Kappaphycus alvarezii)粉末を含有する本発明による海藻ベースの組成物の、及び(b)対応する個々の成分の機械的スペクトル(10℃での周波数の関数としての貯蔵弾性率(G´)及び損失弾性率(G´´)の変化)を示した図である。
【
図3】蒸留水中で調製された50/50の混合比で1%w/wの総濃度のローカストビーンガム及びネッタイキリンサイ粉末を含有する本発明による海藻ベースの組成物の、及び、対応する個々の成分の機械的スペクトルから得られた10℃及び0.1Hzにおける貯蔵弾性率(G´)及びtanδ(G´´/G´)を示した図である。
【
図4】(a)及び(b)は、ネッタイキリンサイ粉末対ローカストビーンガムの比を変えた場合の貯蔵弾性率(G´)及びtanδ(G´´/G´)の変化を示した図である。
【
図5】0.3%KClの存在下で、蒸留水中で調製された、0.3/2の混合比のネッタイキリンサイ粉末/Simpure 99400天然澱粉混合物の、及び、参照として得られた、個々の成分(0.3%w/wのネッタイキリンサイ粉末及び2%w/wのSimpure 99400天然澱粉)の機械的スペクトル(10℃での周波数の関数としての貯蔵弾性率(G´)及び損失弾性率(G´´)の変化)を示した図である。
【
図6】0.3%KClの存在下で、蒸留水中で調製された、0.3/2の混合比のネッタイキリンサイ粉末/Simpure 99400天然澱粉混合物の、及び、参照として得られた、個々の成分(0.3%w/wのネッタイキリンサイ粉末及び2%w/wのSimpure 99400天然澱粉)の機械的スペクトルから得られた10℃及び0.1Hzにおける貯蔵弾性率(G´)及びtanδ(G´´/G´)を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、水、海藻粉末、及び付加的成分を含む海藻ベースの組成物に関し、上記の付加的成分は、グルコマンナン、ガラクトマンナン、天然澱粉、及びそれらの組み合わせを含む群から選ばれる。好ましくは、付加的成分は、グアーガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、カシアガム、タラガム、コンニャクガム、アルギン酸、寒天、カラギーナン、ベータ1,3グルカン、天然澱粉、及びそれらの組み合わせを含む群から選ばれる。より好ましくは、付加的成分は、グアーガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、天然澱粉、及びそれらの組み合わせを含む群から選ばれる。最も好ましくは、付加的成分は、ローカストビーンガム及び/又は天然澱粉を含む群から選ばれる。
【0014】
好ましくは、付加的成分は、当該組成物の総乾燥固形分含量に基づき少なくとも1.5重量%、より好ましくは少なくとも2.0重量%、さらにより好ましくは少なくとも2.5重量%、さらにより好ましくは少なくとも3.0重量%、さらにより好ましくは少なくとも3.5重量%、最も好ましくは少なくとも4.0重量%の量で使用される。好ましくは、上記の量は、最大で90重量%、より好ましくは最大で85重量%、さらにより好ましくは最大で80重量%、さらにより好ましくは最大で70重量%、さらにより好ましくは最大で60重量%、最も好ましくは最大で55重量%である。好ましくは、付加的成分は、当該組成物によって含有される総乾燥物質量に基づき1.5重量%から90重量%の量、より好ましくは2.0重量%から80重量%の量、さらにより好ましくは2.5重量%から70重量%の量、さらにより好ましくは3.0重量%から65重量%の量、さらにより好ましくは3.5重量%から60重量%の量、最も好ましくは4.0重量%から55重量%の量で使用される。
【0015】
本明細書において使用される場合、「乾燥固形分」(DS)という用語は、試料によって含有される固形分含量の重量及び上記の試料の総重量の比を意味する。固形分含量は、本明細書において、真空(例えば、0.5バール未満)下で、120℃で4時間、5gの試料を乾燥させることによって、上記の試料により含有される水を蒸発させることによって得られる試料の含有量であると理解される。
【0016】
好ましくは、海藻粉末及び付加的成分は、15.0:85.0から98.5:1.5、より好ましくは20.0:80.0から98.0:2.0、さらにより好ましくは30.0:70.0から97.5:2.5、さらにより好ましくは40:60から97.0:3.0、最も好ましくは45.0:55.0から96.0:4.0の重量比である。
【0017】
好ましくは、付加的成分が天然澱粉(本明細書においては単に澱粉とも呼ばれる)である場合、澱粉は、当該組成物の総乾燥固形分含量に基づき少なくとも5重量%、より好ましくは少なくとも20重量%、さらにより好ましくは少なくとも40重量%、最も好ましくは少なくとも60重量%の量で利用される。好ましくは、澱粉量は、最大で98重量%、より好ましくは最大で94重量%、さらにより好ましくは最大で90重量%、最も好ましくは最大で88重量%である。本発明において使用される天然澱粉は、任意の天然源に由来する任意の澱粉であってもよい。天然澱粉は、化学的に修飾されていない、すなわち、化学反応を介して添加される化学化合物を含有していない澱粉でもある。本明細書において使用される場合天然澱粉は、自然界に存在するものであり、その特性は、物理的処理によって改変及び/又は増強されてもよい。また、任意の知られた育種技術によって得られる植物由来の澱粉も適している。天然澱粉の典型的な供給源は、穀類、塊茎及びホールドファスト、マメ科植物、並びに果実である。天然の供給源は、限定されるものではないが、トウモロコシ、ジャガイモ、サツマイモ、オオムギ、コムギ、イネ、サゴ、アマランス、タピオカ(キャッサバ)、アローホールドファスト、カンナ、エンドウマメ、バナナ、カラスムギ、ライムギ、ライコムギ、及びソルガム、並びにそれらの低アミロース(ワキシー)及び高アミロースの変種を含む任意の変種であり得る。低アミロース又はワキシーの変種は、澱粉の重量で最大10%のアミロース、好ましくは最大5%、より好ましくは最大2%、及び、最も好ましくは重量で最大1%のアミロースを含有する澱粉を意味することを意図している。高アミロースの変種は、全て澱粉の重量で、少なくとも30%のアミロース、好ましくは少なくとも50%のアミロース、より好ましくは少なくとも70%のアミロース、さらにより好ましくは少なくとも80%のアミロース、及び、最も好ましくは少なくとも90%のアミロースを含有する澱粉を意味することを意図している。変換及び/又はプレゼラチン化を含む、せん断することによって又は澱粉の顆粒又は結晶の性質を変化させることによって等、澱粉を機械的及び/又は熱的に変化させるための、当技術分野において知られる任意の方法によって、天然澱粉は物理的に処理されてもよい。当技術分野において知られる物理的処理の方法には、ボールミル、均質化、高せん断混合、ジェット調理又はホモジナイザーにおけるもの等の高せん断調理、ドラム乾燥、噴霧乾燥、噴霧調理、チルソネーション(chilsonation)、ロールミル及び押出し、並びに、低い(例えば、最大2重量%)及び高い(2重量%を超える)水分含有澱粉の熱処理が含まれる。上述のように、天然澱粉は、当技術分野において知られる任意の試薬又は試薬の組合せを用いた処理によって化学的に修飾されるべきではない。化学修飾の例としては、多糖類の架橋、アセチル化、有機エステル化、有機エーテル化、ヒドロキシアルキル化(ヒドロキシプロピル化及びヒドロキシエチル化を含む)、リン酸化、無機エステル化、イオン(カチオン、アニオン、非イオン、及び双性イオン)修飾、スクシニル化、及び置換スクシニル化が挙げられる。漂白は、本発明の目的で化学修飾として考慮されない。そのような修飾は、例えば非特許文献1において等、当技術分野において知られている。
【0018】
本発明の組成物は、好ましくは当該組成物の総重量に基づき少なくとも5重量%、より好ましくは少なくとも10重量%、さらにより好ましくは少なくとも15重量%、最も好ましくは少なくとも20重量%の量の水も含む。実用的な理由から、本発明の組成物によって含有される水の量には上限はなく、水の量は、好ましくは、最大で99重量%である。
【0019】
本発明の組成物は、さらに、添加剤;保存剤;ビタミン;ファイトステロールのようなステロール;ポリフェノールのような抗酸化剤;ヒトの栄養に有益なミネラル;全野菜抽出物;ミクロフィブリル化セルロース及びセルロースゲル等のセルロース;デキストリン;マルトデキストリン;スクロース、グルコースのような糖;マンニトール、エリスリトール、グリセロール、ソルビトール、キシリトール、マルチトールのようなポリオール;植物又は野菜のタンパク質及び乳製品のタンパク質のようなタンパク質又はタンパク質加水分解物;油及び脂肪;界面活性剤;レシチン;及びそれらの組み合わせ;を含んでもよい。これらの物質は、組成物の用途に応じて広く変化し得る量で使用することができ、大部分の用途では、上記の量は、典型的には、当該組成物の総重量に基づき0.01重量%から50重量%である。
【0020】
本発明の組成物はまた、塩を含有してもよく;水に可溶な任意の塩を利用することができる。塩の非限定的な例としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、及び塩化アンモニウム等の塩化物塩;例えば、硫酸マグネシウム、硫酸鉄、硫酸カルシウム、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム等の硫酸塩;例えば、硝酸カルシウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等の硝酸塩;例えば、リン酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸カリウム等のリン酸塩;有機酸の塩;及びそれらの組み合わせ;が挙げられる。好ましくは、塩は、塩化ナトリウム又は塩化カリウムである。最も好ましくは、使用される塩は、食品グレードの塩、すなわち、非特許文献2において定められている塩である。塩を使用することは、付加的成分が天然澱粉である場合に特に有益であることが分かっている。
【0021】
海藻粉末は、本明細書において、海藻粒子の集合体であると理解され、すなわち、上記の粉末は海藻粒子を含有すると理解される。上記の粒子は、湿った又は乾燥した形態の海藻を粉砕又は製粉することによって、又は以下において詳述するように海藻を加工することによって得られてもよい。好ましくは、海藻粒子は、好ましくは少なくとも20μm、より好ましくは少なくとも50μm、さらにより好ましくは少なくとも75μm、さらにより好ましくは少なくとも85μm、最も好ましくは少なくとも120μmのD50を有している。好ましくは、上記のD50は、最大で750μm、より好ましくは最大で500μm、さらにより好ましくは最大で350μm、最も好ましくは最大で250μmである。好ましくは、上記のD50は、20μmから750μm、より好ましくは50μmから350μm、最も好ましくは75μmから250μmである。
【0022】
好ましくは、海藻粒子は、好ましくは少なくとも125μm、より好ましくは少なくとも100μm、さらにより好ましくは少なくとも175μm、最も好ましくは少なくとも220μmのD90を有している。好ましくは、上記のD90は、最大で800μm、より好ましくは最大で600μm、最も好ましくは最大で400μmである。好ましくは、上記のD90は、125μmから800μm、より好ましくは175μmから600μm、最も好ましくは220μmから400μmである。
【0023】
好ましくは、海藻粒子は、少なくとも20μmのD50及び少なくとも125μmのD90、より好ましくは少なくとも50μmのD50及び少なくとも175μmのD90、最も好ましくは少なくとも75μmのD50及び少なくとも220μmのD90を有している。
【0024】
好ましくは、本発明の組成物において利用される海藻粉末は、当該組成物に添加される前に、少なくとも80%無水ベース、より好ましくは少なくとも90%無水ベース、さらにより好ましくは少なくとも92%無水ベース、最も好ましくは少なくとも96%重量%無水ベースの海藻粒子を含有している。100重量%までの残りの重量%は、例えば、藻類、他の海藻の系統等、バイオマスの一部を形成する海藻粒子以外の異物を含有してもよい。
【0025】
海藻粉末は、好ましくは、上記の粉末の0.3重量%水性分散系に対して決定されたときに、少なくとも10Paの貯蔵弾性率(G´)を有する。好ましくは、上記の粉末は、最大で0.5重量%、より好ましくは最大で0.3重量%、最も好ましくは最大で0.1重量%の臨界ゲル化濃度(C0)を有する。好ましくは、上記の粉末は、少なくとも15Pa、より好ましくは少なくとも20Pa、より好ましくは少なくとも30Pa、より好ましくは少なくとも50Pa、より好ましくは少なくとも70Pa、より好ましくは少なくとも90Pa、さらにより好ましくは少なくとも110Pa、最も好ましくは少なくとも120PaのG´を有する。好ましくは、上記のG´は、最大で500Pa、より好ましくは最大で400Pa、さらにより好ましくは最大で300Pa、最も好ましくは最大で200Paである。
【0026】
海藻粉末の機能性は、上記の粉末の生産において原料として使用される海藻のタイプに応じて、広い範囲内で変わり得る。例えば、少なくとも30Pa及び少なくとも50PaさえのG´値を有する海藻粉末は、スピノサム(Spinosum)から得られてもよく、少なくとも120Pa及び少なくとも180Paさえのより高いG´は、それぞれツノマタ(Chondrus)又はコットニー(Cottonii)から得ることができる。
【0027】
貯蔵弾性率G´は、一般的に、製品のレオロジー特性を分析するために使用され、ほとんどの場合、上記の製品は、分散系を作るために使用されている。G´は、せん断力の印加中に分散系に貯えられた変形エネルギーの尺度であり、分散系の粘弾性挙動に影響を与える上記の製品の能力の優れた指標を提供する。本発明の目的で、G´を、水性媒体の総重量に対して0.3重量%の減少した量の本発明の粉末を含有する水性媒体上で測定した。可能な限り低い粉末濃度で可能な限り高いG´値を有する分散系を達成することが非常に望ましい。海藻粉末の機能性を示す別の指標は、その臨界ゲル化濃度(C0)である。C0は、それ以下ではゲル様の挙動を観察することができない水性媒体中の海藻粉末の最低濃度を表している。C0は、ゲル化の臨界濃度とも呼ばれ、G´と共に、本明細書の測定方法のセクションにおいて示されているように、海藻粉末を特徴づけるために使用される。
【0028】
本発明の粉末を含有する「水性分散系」は、本明細書において、上記の粉末が水性媒体中に分散され、該水性媒体が、好ましくは、連続相を形成する組成物と理解される。好ましくは、上記の粉末は、上記の媒体中に均質に分散される。粉末は、水性媒体の内側(すなわち、バルク中)に分散されてもよいが、上記の水性媒体中に存在する任意の界面、例えば、水と粉末以外の任意の成分、例えば、油との間の界面において存在することもできる。分散系の例としては、懸濁液、乳化剤、及び溶液等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
本明細書において使用される場合「水性媒体」という用語は、水、純水を含むその非限定的な例、水溶液、及び水懸濁液を含有する液体媒体だけでなく、例えば、還元脱脂粉乳、ミルク、及びヨーグルト等の乳製品によって含有されるもの等の水性液体媒体;ローション、クリーム、及び軟膏剤等のパーソナルケア製品;並びに医薬製品;も意味する。本発明に関して、G´の決定のために最も好ましい水性媒体は還元脱脂粉乳であり、従って、G´を、溶液の総重量に対して0.3重量%の本発明の粉末を含有する還元脱脂粉乳の溶液上で測定した。
【0030】
海藻粉末は、好ましくは少なくとも0.001重量%、より好ましくは少なくとも0.005重量%、さらにより好ましくは少なくとも0.010重量%、最も好ましくは少なくとも0.015重量%のC0を有する。好ましくは、上記のC0は、最大で0.100重量%、より好ましくは最大で0.095重量%、より好ましくは最大で0.090重量%、さらにより好ましくは最大で0.085重量%、最も好ましくは最大で0.080重量%である。好ましくは、C0は、0.001から0.100重量%、より好ましくは0.005から0.090重量%、最も好ましくは0.010から0.080重量%である。より好ましくは、C0は、0.001から0.5重量%、より好ましくは0.005から0.3重量%、さらにより好ましくは0.010から0.1重量%、最も好ましくは0.010から0.08重量%である。
【0031】
海藻粉末は、好ましくは、少なくとも50、好ましくは少なくとも60、好ましくは少なくとも70、好ましくは少なくとも74、より好ましくは少なくとも76、さらにより好ましくは少なくとも78、最も好ましくは少なくとも80のCIELAB L*値を有する。好ましくは、本発明の粉末は、最大で5.0、より好ましくは最大で3.5、最も好ましくは最大で2.0のCIELAB a*値を有する。好ましくは、本発明の粉末は、最大で20、より好ましくは最大で17、最も好ましくは最大で15のCIELAB b*値を有する。そのようなL*、a*、及びb*の値は、海藻粉末が使用される製品の所望の色への海藻粉末の干渉が少なくなる、すなわち、海藻粉末は色が中立であることを確実にする。
【0032】
好ましくは、海藻粉末は、粉末の重量に対して最大で20重量%、より好ましくは最大で15重量%、さらにより好ましくは最大で10重量%、最も好ましくは最大で5重量%のCl-含有量を有する。好ましくは、上記のCl-含有量は、少なくとも0.01重量%、より好ましくは少なくとも0.1重量%、最も好ましくは少なくとも1重量%である。そのようなCl-含有量の値は、海藻粉末が使用される製品の味への海藻粉末の干渉が少なくなる、すなわち、海藻粉末は味が中立であることを確実にする。
【0033】
好ましくは、海藻粉末は、粉末の重量に対して最大で50重量%、より好ましくは最大で40重量%、さらにより好ましくは最大で30重量%、最も好ましくは最大で20重量%の量の酸不溶性材料(AIM)を含有する。好ましくは、上記のAIM含有量は、少なくとも1重量%、より好ましくは少なくとも5重量%、最も好ましくは少なくとも10重量%である。海藻粉末が好ましい範囲内のAIM含有量を有する場合、その栄養特性は最適化されることを観察した。
【0034】
好ましくは、海藻粉末は、粉末の重量に対して最大で5.0重量%、より好ましくは最大で3.0重量%、さらにより好ましくは最大で1.0重量%、最も好ましくは最大で0.80重量%の量の酸不溶性灰分(AIA)を含有する。好ましくは、上記のAIA含有量は、少なくとも0.01重量%、より好ましくは少なくとも0.05重量%、最も好ましくは少なくとも0.10重量%である。好ましい範囲内のAIA含有量を有する海藻粉末は、上記の製品に異物を導入しないか又はより少ない程度でしか導入せず、異物の導入は、次に、上記の製品のさらなる精製ステップを要求し得るため、食品、パーソナルケア、及び医薬製品における使用により適しているということを観察した。
【0035】
本発明に適した海藻は、多数のタイプの海藻から選択されてもよい。本明細書において、「海藻」は、野生で生育することができるか又は養殖することができる、巨視的で多細胞の海藻類であると理解される。野生の海藻は、典型的には、人間による栽培又はケアなしで、海又は海洋の底生領域において生育する。養殖された海藻は、典型的には、ロープ、布、ネット、チューブネット等のような様々な支持体上で栽培され、様々な支持体は、典型的には、海又は海洋の表面の下に配置される。海藻はまた、海水を含有するプール、池、タンク、又は反応器において養殖されてもよく、海岸又は内陸に配置されてもよい。「海藻」という用語は、赤色、褐色、及び緑色の海藻のメンバーを含む。
【0036】
本明細書全体を通して、海藻の科、属等の特定の分類学が使用されている。参照される分類学は、海藻の栽培及び収穫の技術分野、及び/又は、海藻抽出の技術分野で典型的に使用されるものである。紅藻(red seaweeds)の分類学の説明は、例えば、非特許文献3によって;非特許文献4によって;及び非特許文献5によって;与えられている。緑藻(green seaweeds)の分類学の説明は、例えば、非特許文献6によって与えられている。褐藻(brown seaweeds)の分類学の説明は、例えば、非特許文献7によって与えられている。
【0037】
本発明に従って使用される海藻は、紅藻、すなわち、紅藻植物(Rhodophyta)門に属する海藻を含み;より好ましくは、上記の海藻は紅藻である。紅藻に加えて、海藻はまた、褐藻、すなわち褐藻(Phaeophycaeae)綱の目、科、及び属を含んでもよい。紅藻は、例えばフィコエリトリン等、海藻に存在し且つフィコビリンと呼ばれる色素によって与えられる特徴的な赤い色又は紫がかった色を有している。
【0038】
本発明はまた、水、海藻粉末、及び付加的成分を含む海藻ベースの組成物に関し、上記の成分は、グルコマンナン、ガラクトマンナン、天然澱粉、及びそれらの組み合わせを含む群から選ばれ、ここで海藻は、紅藻植物門に属している。好ましくは、付加的成分は、グアーガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、カシアガム、タラガム、コンニャクガム、アルギン酸、寒天、カラギーナン、ベータ1,3グルカン、天然澱粉、及びそれらの組み合わせを含む群から選ばれる。より好ましくは、付加的成分は、グアーガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、天然澱粉、及びそれらの組み合わせを含む群から選ばれる。最も好ましくは、付加的成分は、ローカストビーンガム及び/又は天然澱粉を含む群から選ばれる。より好ましくは、海藻は、スギノリ科(Gigartinaceae)、ウシケノリ綱(Bangiophyceae)、ダルス科(Palmariaceae)、イバラノリ科(Hypneaceae)、シストクロニウム科(Cystocloniaceae)、ミリン科(Solieriaceae)、オキツノリ科(Phyllophoraceae)、及びススカケベニ科(Furcellariaceae)、又はそれらの組み合わせの科から選択される紅藻である。最も好ましくは、海藻は、ウシケノリ(Bangiales)、ツノマタ(Chondrus)、イリダエ(Iridaea)、ダルス(Palmaria)、スギノリ(Gigartina)、オゴノリ(Gracilaria)、テングサ(Gelidium)、エダウチギンナン(Rhodoglossum)、イバラノリ(Hypnea)、キリンサイ(Eucheuma)、オオキリンサイ(Kappaphycus)、Agarchiella、オキツノリ(Gymnogongrus)、Sarcothalia、フィロフォラ(Phyllophora)、イタニグサ(Ahnfeltia)、アカバギンナンソウ(Mazzaella)、イボノリ(Mastocarpus)、スギノリ(Chondracanthus)、ススカケベニ(Furcellaria)、及びそれらの組み合わせの属から選択される。アマノリ種(Porphyra sp.)、ダルス(Palmaria palmata)、スピノサム(Eucheuma spinosum)、キリンサイ(Eucheuma denticulatum)、キリンサイ種(Eucheuma sp.)、コットニー(Eucheuma cottonii)(ネッタイキリンサイ(Kappaphycus alvarezii)としても知られる)、オオキリンサイ(Kappaphycus striatus)、キリンサイ種(Kappaphycus sp.)、ヤハズツノマタ(Chondrus crispus)、アイリッシュモス(Irish moss)、ヒバマタ(Fucus crispus)、ツノマタ種(Chondrus sp.)、Sarcothalia crispata、アカバギンナンソウ(Mazzaella laminaroides)、アカバギンナンソウ種(Mazzaella sp.)、スギノリ(Chondracanthus acicularis)、スギノリ(Chondracanthus chamissoi)、スギノリ種(Chondracanthus sp.)、スギノリ(Gigartina pistilla)、スギノリ(Gigartina mammillosa)、スギノリ(Gigartina skottsbergii)、スギノリ種(Gigartina sp.)、オゴノリ種(Gracilaria sp.)、テングサ種(Gelidium sp.)、マストカルパスステラタス(Mastocarpus stellatus)、及びその組み合わせを含む海藻の群から海藻を選んだ場合に、最良の結果を得た。
【0039】
例えばネッタイキリンサイ等の紅藻の一部は、緑色又は褐色の系統を有し得るということが知られているが、本発明に関して、例えば、海藻が紅藻であると言及する場合、それは、本明細書においては門を意味し、系統の色を意味しない。
【0040】
最も好ましい褐藻は、ヒバマタ(Acsophyllum)、ダービリア(Durvillaea)、カジメ(Ecklonia)、ハイパーボリア(Hyperborea)、コンブ(Laminaria)、レッソニア(Lessonia)、マクロシスチス(Macrocystis)、ヒバマタ(Fucus)、及びホンダワラ(Sargassum)の科から選ばれるものである。褐藻の具体例としては、ブルケルプ(Durvillae potatorum)、ダービリア種(Durvillae species)、ダービリア(D. antarctica)、及びノッティドケルプ(Knotted Kelp)(アスコフィルムノドスム(Ascophyllum nosodum))が挙げられる。
【0041】
好ましくは、海藻粉末は、0.3重量%の該粉末の水性分散系で決定した場合、少なくとも10Paの貯蔵弾性率(G´)、及び、最大で0.5重量%の臨界ゲル化濃度(C0)を有し、ここで、海藻は、紅藻、すなわち紅藻植物門に属する海藻である。G´及びC0の好ましい範囲は、すでに記載しており、本明細書においては繰り返されない。好ましくは、上記の粉末は、少なくとも50、好ましくは少なくとも60、好ましくは少なくとも70、好ましくは少なくとも74、より好ましくは少なくとも76、さらにより好ましくは少なくとも78、最も好ましくは少なくとも80のCIELAB L*値を有する。好ましくは、海藻は、スギノリ科、ウシケノリ綱、ダルス科、イバラノリ科、シストクロニウム科、ミリン科、オキツノリ科、及びススカケベニ科、又はそれらの組み合わせの科から選択される紅藻である。最も好ましくは、海藻は、ウシケノリ、ツノマタ、イリダエ、ダルス、スギノリ、オゴノリ、テングサ、エダウチギンナン、イバラノリ、キリンサイ、オオキリンサイ、Agarchiella、オキツノリ、Sarcothalia、フィロフォラ、イタニグサ、アカバギンナンソウ、イボノリ、スギノリ、ススカケベニ、及びそれらの組み合わせの属から選択される。
【0042】
最も好ましくは、海藻粉末は、0.3重量%の該粉末の水性分散系で決定した場合、少なくとも10Paの貯蔵弾性率(G´)、及び、最大で0.5重量%の臨界ゲル化濃度(C0)を有し、ここで、海藻は、スピノサム、コットニー(ネッタイキリンサイ)、ヤハズツノマタ、及びそれらの組み合わせを含む群から選ばれる紅藻である。G´及びC0の好ましい範囲は、すでに記載しており、本明細書においては繰り返されない。好ましくは、上記の粉末は、少なくとも50、好ましくは少なくとも60、好ましくは少なくとも70、好ましくは少なくとも74、より好ましくは少なくとも76、さらにより好ましくは少なくとも78、最も好ましくは少なくとも80のCIELAB L*値を有する。
【0043】
本発明の組成物は、例えば知られた混ぜ合わせ又は混合方法等、任意の知られた方法に従って製造することができる。一実施形態において、本発明の組成物は:
(a) 海藻粉末及び付加的成分を提供するステップ;
(b) 海藻粉末を付加的成分と混ぜ合わせるステップ;
(c) ステップ(b)の前、間、又は後に、水を添加するステップ;
を含むプロセスによって製造される。
【0044】
海藻粉末及び付加的成分の実施形態及び量は、本明細書においてすでに示しており、本明細書において繰り返されない。
【0045】
例えば、ブレンダー又は任意の知られたミッシングデバイス(missing device)を使用した、任意の混合方法を使用することができる。成分を混ぜ合わせている間又は成分が混ぜ合わされた後に、水を個々の成分に添加することができる。水は、本明細書において、例えば、ミルク、脱脂粉乳、シロップ等、水を含有する任意の水溶液と理解される。好ましくは、海藻粉末は:
(a) 海藻及び水を含有し、少なくとも5重量%の乾燥固形分(DS)含量を有するバイオマスを提供するステップ;
(b) バイオマスに滲出プロセスを受けさせて、海藻の内側に存在する水を滲出させ、さらに、滲出された海藻を含有する滲出されたバイオマスを得るステップ;
(c) 任意的に、滲出されたバイオマスを最大で40重量%の水分レベルまで乾燥させ、乾燥した滲出されたバイオマスを得るステップ;
(d) 滲出されたバイオマスをかん水溶液において調理して、調理されたバイオマスを得るステップ;
(e) 任意的に、調理されたバイオマスを洗浄及び/又は乾燥するステップ;並びに
(f) ステップ(d)又は(e)の調理されたバイオマスを海藻粉末に変換するステップ;
を含むプロセスによって製造される。
【0046】
本発明の方法は、分解及び/又は発酵による影響をほとんど受けていない生の海藻を使用することが好ましい。従って、本発明の方法は、海藻の発酵を含まないこと、すなわち、非発酵の方法であることが非常に望ましい。
【0047】
本発明の方法のステップ(a)では、海藻の全ての部分、例えば、ホールドファスト、茎、及び葉等を、バイオマスを作製するために使用することができる。海藻を、全体的に使用する、切断する、又は他の方法で機械的に操作することができる。
【0048】
好ましくは、ステップ(a)において、バイオマスは洗浄された海藻を含有し、さらに、少なくとも15重量%、より好ましくは少なくとも30重量%、最も好ましくは少なくとも55重量%のDSを有する。好ましくは、DSは、最大で95重量%、より好ましくは最大で85重量%、最も好ましくは最大で80重量%である。好ましくは、上記のDSは、5から95重量%、より好ましくは30から85重量%、最も好ましくは55から80重量%である。
【0049】
滲出させることができる海藻を含有するバイオマスに対して、本発明の方法のステップ(b)を実行することが必要不可欠である。ステップ(b)のプロセスは、注意深く制御された環境において、海藻の内側に存在する水(海藻の水和水としても知られる海藻の内部の水)、すなわち、そのホールドファスト、茎、及び葉の内側に存在する水を滲出させることを目的としている。
【0050】
好ましくは、ステップ(b)は、生のバイオマス、すなわち、海藻の収穫から滲出ステップの開始までに乾燥されなかったバイオマスを利用する。「生の、収穫された」海藻は、本明細書において、収穫後に生きたまま保たれ、呼吸等の生物学的活性を有し、さらに、滲出させる能力を有する海藻であると理解される。生の、収穫された海藻との明確な区別において、乾燥した海藻は死んでおり、呼吸等の生物学的活性を有しておらず、さらに、もはや滲出させることはできない。死んだ海藻は、ある程度、水で再水和されてもよく、この場合、その水の一部を滲出させることができ得るが、本発明の方法のステップ(b)において、再水和された死んだ海藻を利用することは、それほど好ましくない。好ましくは、バイオマスも新鮮である。
【0051】
本発明の方法のステップ(b)で利用されるバイオマスが、生の新鮮なバイオマスであることを確実にするために、好ましくは、ステップ(b)は、海藻の収穫から15日以内、より好ましくは収穫から2日以内、さらにより好ましくは収穫から24時間以内、最も好ましくは収穫から4時間以内に生じる。本発明の方法において使用される滲出プロセスは自然のプロセスであるため、ステップ(b)を実行した後でも、滲出された海藻は、依然として、植物学的及び分類学的に海藻として認識可能であり得る。
【0052】
ステップ(b)における滲出プロセスは、好ましくは、例えば、少なくとも50重量%の水分、より好ましくは少なくとも70重量%の水分、さらにより好ましくは少なくとも80重量%の水分、さらにより好ましくは少なくとも90重量%の水分、最も好ましくは少なくとも95重量%の水分を含有する環境(以下において「滲出環境」という)において等、注意深く調整された条件下で生じる。高い含水量の滲出環境に達するために、水、好ましくは海水を、海藻上又は滲出環境の内側に添加するか又は振りかけることができる。
【0053】
好ましくは、滲出は、少なくとも20℃、より好ましくは少なくとも30℃、さらにより好ましくは少なくとも40℃、さらにより好ましくは少なくとも50℃、さらにより好ましくは少なくとも60℃、最も好ましくは少なくとも70℃の滲出温度で実行される。好ましくは、上記の温度は、最大で150℃、より好ましくは最大で120℃、最も好ましくは最大で90℃である。好ましくは、上記の温度は、40から150℃、より好ましくは50から120℃、最も好ましくは60から90℃である。そのような温度を使用することによって、最適な滲出プロセスが保証される。
【0054】
滲出に対する典型的な持続時間は、種、収穫の季節、滲出環境に存在する水分量、及び滲出温度によって異なる。一般的に、滲出期間は、少なくとも3時間、好ましくは少なくとも8時間、より好ましくは少なくとも12時間、最も好ましくは少なくとも24時間である。好ましくは、滲出期間は、3時間から10日間、より好ましくは8時間から4日間、最も好ましくは12時間から2日間である。
【0055】
滲出プロセスによって、滲出された海藻、すなわち、乾燥又は脱水された海藻を含有するバイオマスが生じる。好ましくは、上記のプロセスは、海藻の内側に存在する水の少なくとも5重量%、より好ましくは少なくとも10重量%、最も好ましくは少なくとも15重量%を抽出するために実行される。好ましくは、抽出される水の量は、海藻の内側に存在する水の最大で50重量%、より好ましくは最大で30重量%、最も好ましくは最大で20重量%である。海藻の内側の水の量は、特定の時間間隔で海藻試料を採取し、重量の変化が生じなくなるまで120℃の温度で乾燥させる前後に海藻の重さを量ることによって決定することができる。
【0056】
好ましくは、滲出ステップが実行される環境は、閉鎖環境、すなわち、空気の流れが好ましくは1m/s未満である環境である。
【0057】
かん水溶液中で調理される前に、滲出されたバイオマスに任意の乾燥プロセスを受けさせてもよい。乾燥ステップは、好ましくは、滲出されるバイオマスによって含有される水分の量を、バイオマスの重量に基づき最大で40重量%まで減少させる。好ましくは、乾燥したバイオマスの含水量は、最大で35重量%、さらにより好ましくは最大で30重量%、最も好ましくは最大で25重量%である。好ましくは、上記の乾燥したバイオマスの含水量は、少なくとも5重量%、より好ましくは少なくとも10重量%、最も好ましくは少なくとも15重量%である。滲出されたバイオマスを調理前に乾燥させることによって、より容易なその操作を可能にすることができる。
【0058】
任意の乾燥後及び調理前に、滲出されたバイオマスは、好ましくは、淡水又は海藻の水であり得る水の添加によって再水和される。再水和によって、好ましくは、少なくとも20重量%、より好ましくは少なくとも30重量%、最も好ましくは少なくとも40重量%のDSを有する再水和されたバイオマスが生じる。好ましくは、DSは、最大で80重量%、より好ましくは最大で70重量%、最も好ましくは最大で60重量%である。好ましくは、上記のDSは、20から80重量%、より好ましくは30から70重量%、最も好ましくは40から60重量%である。
【0059】
任意の乾燥方法を使用して、バイオマスの含水量を減らすことができる。有利な乾燥方法は、除湿空気を使用した低温乾燥である。そのような乾燥方法は、タンパク質、繊維、澱粉、及び他の栄養素等、海藻の感熱性化合物を保存する能力を有し、従って、海藻の品質を保持している。他の技術として、換気チャンバー乾燥、オーブン乾燥、天日乾燥、(強制流式)蒸発、フラッシュ乾燥、ゼオライト乾燥、及び流動層乾燥等が含まれてもよい。
【0060】
滲出されたバイオマス(乾燥及び再水和されているかどうかに関わりない)は、その後、かん水溶液中で調理されて、調理されたバイオマスが得られる。かん水は、少なくとも1つの塩を含有し、且つ室温(20℃)で溶液の総重量に対して好ましくは少なくとも3重量%の塩濃度を有する水溶液である。好ましくは、塩の濃度は、少なくとも5重量%、より好ましくは少なくとも7重量%、最も好ましくは少なくとも10重量%である。好ましくは、上記の塩濃度は、最大で50重量%、より好ましくは最大で40重量%、最も好ましくは最大で30重量%である。
【0061】
調理は、好ましくは、少なくとも85℃、より好ましくは少なくとも86℃、さらにより好ましくは少なくとも88℃、最も好ましくは少なくとも90℃の調理温度で生じる。好ましくは、調理温度は、最大で100℃、より好ましくは最大で98℃、さらにより好ましくは最大で96℃、最も好ましくは最大で95℃である。好ましくは、調理温度は、85から100℃、より好ましくは86から96℃、さらにより好ましくは88から96℃、最も好ましくは90から95℃である。
【0062】
調理時間は、好ましくは少なくとも25分、より好ましくは少なくとも30分、最も好ましくは少なくとも35分である。好ましくは、調理時間は、最大で60分、より好ましくは最大で55分、さらにより好ましくは最大で50分、最も好ましくは最大で40分である。好ましくは、調理時間は、25から60分、より好ましくは30から55分、さらにより好ましくは30から50分、最も好ましくは30から40分である。
【0063】
調理ステップは、バイオマスをかん水溶液と、該溶液の浴中又は該溶液の一連の浴中で接触させることによって実行することができる。調理プロセスの間、好ましくは、海藻を完全に覆うのに十分なかん水溶液が使用される。好ましくは、例えば、密閉容器中で調理を実行することによって、かん水溶液の蒸発及び塩濃度の変化を防ぐように注意が払われる。或いは、調理の間に水を加えて、海藻が空気に曝露されないように防ぐことができる。
【0064】
本発明の目的で非常に効果的であることが分かっているかん水溶液は、塩化ナトリウム又は塩化カリウムの溶液である。しかし、塩化ナトリウム又は塩化カリウム以外の任意の塩を使用することができ、非限定的な例は、他の塩化物塩、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、リン酸塩、有機酸の塩、及びそれらの組み合わせを含むということが理解されたい。唯一の必要条件は、必要な濃度のかん水溶液の形成を可能にするように、塩は十分に可溶性であるべきだということである。また、塩は、その反応において過度に酸性でも塩基性でもないことが好ましく、すなわち、水溶液中では、溶液のpHは、好ましくは6.0から10.0である。生成された海藻粉末が、食品、飼料、パーソナルケア製品、又は医薬製品において利用されることを意図している場合、好ましくは、塩は、そのような製品中に存在することが許された塩である。
【0065】
本発明者等は、そのような注意深い調理プロセスが海藻の分解を防ぎ、優れた特性を有する粉末の生産に寄与することができるということを観察した。さらにより驚くべきことに、本発明者等は、調理ステップが本発明の組成物の分散性を改善することができるということを観察した。本発明の組成物を、塊又は微粒子状物質の発生なしに水性媒体の内側で均質に分散させることができ、一方、非調理の海藻は、可視の微粒子状物質を生成するということを観察した。調理後、次の洗浄ステップの前に、バイオマスに濾過ステップを受けさせて水を除去してもよい。濾過は、任意の適したタイプの装置によって成し遂げることができ、装置の多くが、例えばフィルタープレスシリンダー型フィルター等、よく知られている。必要に応じて、遠心分離機を使用することもできる。
【0066】
本発明のプロセスのステップ(e)に従って、バイオマスは洗浄される。任意の洗浄方法を、例えば、水流下ですすぐ、ある体積の水の中にバイオマスを置く、及びそれらの組み合わせとして使用することができる。洗浄は、1つ又はいくつかの水浴内で、適した攪拌手段が提供されたタンク内で、又は、バッチ若しくは連続システム等の任意の洗浄システム内で、並流又は対向流構成で実行されてもよい。バイオマスを淡水で数回すすいだ場合に良好な結果を得た。
【0067】
乾燥させる前に、洗浄されたバイオマスに濾過ステップを受けさせて、そこから水を除去し、乾燥を支援することができる。濾過は、任意の適したタイプの装置によって成し遂げることができ、その装置の多くが、例えば、フィルタープレス、シリンダー型フィルター、プレス、又はふるい等、よく知られている。必要に応じて、遠心分離機を使用することもできる。
【0068】
洗浄されたバイオマスは、該バイオマスの機械的操作を可能にするのに適した含水量まで乾燥される。真空乾燥機、ドラム乾燥機、エアリフト乾燥機のような任意のタイプの乾燥機を使用することができる。好ましくは、乾燥したバイオマスの含水量は、最大で25重量%、より好ましくは最大で20重量%、さらにより好ましくは最大で15重量%、最も好ましくは最大で12重量%である。好ましくは、上記のバイオマスの含水量は、少なくとも4重量%、より好ましくは少なくとも6重量%、さらにより好ましくは少なくとも8重量%、最も好ましくは少なくとも10重量%である。好ましくは、上記の含水量は、最大で20重量%、より好ましくは最大で15重量%、最も好ましくは最大で12重量%である。好ましくは、上記の含水量は、4重量%から20重量%、より好ましくは6重量%から15重量%、最も好ましくは8重量%から12重量%である。
【0069】
乾燥したバイオマスは、機械的処理を使用することによって海藻粉末に変換されてもよい。機械的処理には、例えば、切断、製粉、プレス、研削、せん断、及び切り刻みが含まれる。製粉は、例えば、ボールミル製粉、ハンマーミル製粉、コニカル若しくはコーンミル製粉、ディスクミル製粉、エッジミル製粉、ローター/ステーター乾式若しくは湿式製粉、又は他のタイプの製粉を含んでもよい。他の機械的処理には、砥石研削、クラッキング、機械的な引き裂き又は断裂、ピン研削、バリ研削、又は空気摩耗ミル製粉が含まれてもよい。例えば、表面積、空隙率、容積密度等の特定の形態特徴、及び、繊維状の海藻の場合には、長さ対幅比等の繊維特徴を有する粉末を生産するように機械的処理を構成することができる。
【0070】
必要に応じて、得られた粉末を、例えば、0.25mm以下の平均開口サイズを有するスクリーンに通すことができる。
【0071】
プロセスの間の任意のステップにおいて、好ましくはステップ(b)の後で、バイオマスに滅菌ステップを受けさせて、その微生物叢を減らす及び/又は有害種を排除することができる。海藻の表面は、一般的にバイオフィルム内で多種多様な微生物叢(真菌、細菌、ウイルス、胞子形態等)を支持することが知られており、一部の種、例えば、大腸菌(Escherichia coli)及び腸球菌(Enterococcus)等は、ヒトに有害である。滅菌は、熱、照射、高圧、及び濾過の適切な組み合わせを適用することによって達成されてもよい。水の存在又は非存在下での熱処理は、微生物レベルを低下させることが知られている。例えば、多湿な環境における121℃での少なくとも10分間の海藻の処理は、滅菌を確実にすることが知られている。ガンマ線又はマイクロ波による照射、オゾン処理、パルス光処理、アルコールによる消毒、及びそれらの組み合わせを含む他の滅菌方法が使用されてもよい。
【0072】
本発明の組成物は、ヒト及び動物の食品の混合、シート化、押し出し、焼き付け、フライ、及び焙煎の特徴に良い影響を与えることができ;ソース、ディップ、飲料、スープ、及び他の液体、半液体、及び/又は半固体の製品のレオロジーを有利に改変するために使用されてもよく;興味深いテクスチャー及び良好な外観等を製品に提供するために使用されてもよい;ということを本発明者等は観察した。
【0073】
本発明はまた、本発明の組成物と、吸収変化剤、食欲変化剤、代謝変化剤、コレステロール変化剤、又はそれらの任意の組合せ等の治療剤と含む食物の混合に関する。そのような薬剤の例は、参照により本明細書に援用する特許文献8に記載されている。
【0074】
本発明はまた、本発明の組成物と、薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤及び/又は希釈剤とを含む医薬品の混合に関する。1つ又は複数の賦形剤/希釈剤/担体は、治療剤と適合性であり且つそのレシピエントに有害ではないという意味で「許容され」なければならない。
【0075】
本発明の組成物は、食品、飲料、栄養製品、栄養補助食品、飼料製品、パーソナルケア製品、医薬製品、又は工業製品の一部を成すことができる。従って、本発明の一態様は、本発明の組成物を含む食品、飲料、栄養製品、栄養補助食品、飼料製品、パーソナルケア製品、医薬製品、又は工業製品に関する。本明細書において、「食品」は、ヒトによる摂取に適した食用材料を指し、飼料は、動物による摂取に適した食用材料を指す。食品又は飼料の成分も、食品又は飼料製品の一部を成すことができる。
【0076】
本発明は、さらに、本発明の組成物及び栄養素を含有する食品又は飼料製品に関する。いかなる理論にも拘束されることなく、上記の食品又は飼料製品を摂取する者による栄養素取り込みの動力学及び動態学には、本発明の組成物の有利な特性によって良い影響が与えられ得るということを本発明者等は信じている。特に、本発明の組成物は、(栄養、感覚、及び物理化学的な)食品機能性に関連している輸送、拡散、及び溶解現象の最適化を可能にし得る。さらに、上記の製品は、特定の流動挙動、テクスチャー、及び外観を有するように容易に設計することができる。従って、上記の食品機能性を最適化する本発明の組成物の能力は、食品構造の設計に非常に有益であってもよく、これは、古典的なニーズ(例えば、テクスチャー及び食感等)と共に、異なる生理学的応答をトリガするための調節された消化を含む、ウエルネス及び健康への影響を強めることができる。
【0077】
本発明の組成物は、各種の食品組成物の生産において適切に使用される。本発明が関係する、それを含む食品組成物の例として:コーヒー、紅茶、粉末緑茶、ココア、小豆スープ、ジュース、大豆ジュース等の嗜好性飲料;生乳、加工乳、乳酸飲料等の乳成分含有飲料;カルシウム強化飲料等の栄養強化飲料及び食物繊維含有飲料を含む種々の飲料;バター、チーズ、ヨーグルト、コーヒー用クリーム、ホイップクリーム、カスタードクリーム、カスタードプディング等の乳製品;アイスクリーム、ソフトクリーム、ラクトアイス、アイスミルク、シャーベット、フローズンヨーグルト等のアイス製品;マヨネーズ、マーガリン、スプレッド、ショートニング等の加工脂肪食品;スープ;シチュー;ソース、たれ、(シーズニングソース)、ドレッシング等の調味料;練りマスタードに代表される種々のペースト調味料;ジャム及び小麦粉ペーストに代表される種々の詰め物;餡子、ゼリー、及び嚥下障害者のための食品を含む種々のゲル又はペースト状の食品;パン、麺、パスタ、ピザパイ、コーンフレーク等、主成分として穀物を含有する食品;キャンディ、クッキー、ビスケット、ホットケーキ、チョコレート、餅等の日本、米国、及び欧州のケーキ;茹でたフィッシュケーキ、フィッシュケーキ等に代表される水産練り製品;ハム、ソーセージ、ハンバーグステーキ等に代表される畜産物;クリームコロッケ、中華料理用ペースト、グラタン、ダンプリング等の惣菜;塩辛、酒粕に漬けた野菜等の繊細な風味の食品;経管栄養液状食品等の流動食;サプリメント;及びペットフード;クリーマー(乳製品及び非乳製品)、コンデンスミルク、及びアルコール飲料、特に、例えばアイリッシュクリームウイスキー等の乳製品を含有するもの;並びに、スポーツドリンク;が挙げられる。これらの食品は、レトルト食品、冷凍食品、電子レンジ調理用食品等に見られるように、調製時の形態及び加工操作におけるいかなる違いにもかかわらず、全て本発明に包含される。その中立的な味及び匂いのために、そのような食品は、海藻の本来の味又は匂いによる影響を受けないか又は受けにくい。
【0078】
本発明は、さらに、例えば、ヨーグルト(例えば、スプーンで食べる(spoonable)ヨーグルト、飲むヨーグルト、及びフローズンヨーグルト等)、サワークリーム、チーズ製品、ソース(チーズソース及びホワイトソース)、プディング、及び冷凍デザート等の乳製品における本発明の組成物の使用に関する。意外にも、本発明の組成物は、滑らかなテクスチャーを結果として生じ且つ本質的に粘度又はクリーミーさにおいていかなる損失もなく、乳製品に使用することができるということを観察した。上記の本発明の組成物は、成分として、又は乳製品への添加剤として、すなわち、そのような製品によって含有される脂肪に加えて使用することができる。或いは、上記の本発明の組成物は、乳製品中の脂肪の一部又は全てにさえも代わるように使用して、低脂肪又は無脂肪の製品を得ることができ、この場合、そのような使用によって、最終的な乳製品のカロリー含有量を減少(例えば、少なくとも10%又は少なくとも50%減少)させることができる。
【0079】
本明細書において使用される場合、「添加剤」は、明確な目的のために低濃度で基材に添加される任意の物質を意味する。米国では、アメリカ食品医薬品局が、添加物の安全性及び毒性を評価した上で、食品添加物の許容レベルを設定している。マヨネーズにおける乳化剤の使用又はパン製品における膨張剤の使用等、添加剤は最終製品の存在に必要不可欠であり得る。或いは、添加剤は、二次的機能を果たすことができ、例えば、増粘剤、香味剤、又は着色剤として機能することができる。本明細書において記載される本発明の組成物は、乳製品における添加剤としてだけでなく、成分としても使用することができる。
【0080】
本明細書において使用される場合、乳製品は、乾燥形態であろうと非乾燥形態であろうと、非植物性ミルク(例えば、牛乳、羊乳、及び山羊乳)から調製されるミルク、又は、バター、チーズ、アイスクリーム、プディング、サワークリーム、ヨーグルト(例えば、スプーンで食べるヨーグルト、飲むヨーグルト、及びフローズンヨーグルト等)、並びにコンデンスミルクを含む任意の食品を意味する。より好ましくない実施形態では、例えば豆乳等の植物性ミルクを用いて製造された製品、及び植物性ミルクベースの製品も、本明細書に記載の実施例において使用することができる。
【0081】
チーズは、本明細書において、プレス加工されたミルクのカードから調製され、しばしば味付けされ且つ熟成された食品として理解される。
【0082】
脂質は、脂肪及び/又は脂肪由来の材料を含む製品を記載する用語である。脂肪は、本明細書において、3つの脂肪酸及びグリセロールのエステルとして理解される。脂肪酸は、典型的には、長さが4~22個の炭素原子由来の炭素鎖を有し、且つ、通常、鎖中に偶数個の炭素原子を有するカルボン酸である。脂肪酸は、飽和であってもよく、すなわち二重結合を有さなくてもよく、又は、不飽和であってもよく、すなわち1つ以上の二重結合を有してもよい。脂肪は、動物性製品及び一部の植物性製品の両方に存在し得る。
【0083】
アイスクリームは、本明細書において、ミルク製品及び香料の冷凍混合物から調製された滑らかで甘く冷たい食品として理解される。米国では、アイスクリームは、最低10%の乳脂及び10%の無脂乳固形分を含有している(2 1 C.F.R. §135.1 10を参照)。しかし、アイスクリーム中の乳脂及び無脂乳固形分の必要とされる割合は、他の国又は管轄区域において異なり得るため、本開示はこの特定の範囲に限定されない。
【0084】
ヨーグルトは、本明細書において、ラクトバチルス・デルブルエッキイ(Lactobacillus delbrueckii)亜種及びストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)等の乳酸産生細菌を含有する特徴づけ細菌培養(a characterizing bacterial culture)を用いてクリーム、ミルク、部分脱脂乳、又は脱脂粉乳を培養することによって生産される乳製品として理解される。例証的なヨーグルトとして、スプーンで食べるヨーグルト、ヨーグルトディップ、フローズンヨーグルト、及び飲むヨーグルトが含まれるが、これらに限定されない。2 1 C.F.R. §13 1.200の定義によると、米国における一般的なヨーグルトは、少なくとも3.25%の乳脂肪含有量を有する。一般的なヨーグルトの脂肪含有量は、典型的には、3.25%から約3.8%に及ぶが、市場には約10%の脂肪含有量を有するヨーグルトがある。21 C.F.R. §13 1.203に定義されているように、米国では、低脂肪ヨーグルトは、0.5%以上の乳脂肪及び2%以下の乳脂肪を有する。無脂肪ヨーグルトは、2 1 C.F.R. §131.206に定義されているように、米国では、0.5%未満の乳脂肪を有する。しかし、他の範囲が、他の国々において観察され得る。
【0085】
本発明の組成物は、乳製品中の脂肪の一部又は全てに代わるために添加又は使用されるということを除いて、乳製品は、例えば特許文献9等、当業者に知られた方法を使用して調製されてもよい。上記の本発明の組成物は、乳製品の製造中のいくつかの点のうち1つにおいて添加することができ、例えば、低温殺菌に先立ちミルクに添加されてもよい。上記の本発明の組成物は、その乾燥形態で添加することができ、或いは、上記の本発明の組成物を水性環境中に分散させ、次に、上記の分散系をミルクに添加することによって水性分散液が調製されてもよい。
【0086】
本発明の組成物は、乳製品中の脂肪の一部又は全てに代わるために使用することができる。好ましくは、上記の本発明の組成物は、脂肪の少なくとも5%に代わるのに十分な量で使用され、より好ましくは、上記の量は、上記の脂肪の少なくとも10%に代わり、さらにより好ましくは少なくとも20%、さらにより好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは本質的に全ての脂肪が、上記の本発明の組成物によって置換される。
【0087】
本発明の組成物は、好ましくは、乳製品の重量に対して10重量%まで、より好ましくは7重量%まで、さらにより好ましくは5重量%まで、最も好ましくは3重量%までの量で乳製品に添加される。好ましくは、上記の量は、0.01から10重量%、より好ましくは0.03から7重量%、最も好ましくは0.05から5重量%である。
【0088】
本発明の組成物は、化粧品製剤にも使用することができる。従って、本発明は、上記の組成物を含む化粧品製剤に関する。化粧品製剤の非限定的な例として、基礎化粧品(フェイシャルトイレ(facial toilet)、ミルク、クリーム、軟膏、ローション、オイル、及びパック)、フェイシャルウォッシュ、スキンウォッシュ、シャンプー及びリンス等のヘア化粧品、並びに、リップスティック、ファンデーション、チーク、アイシャドウ、及びマスカラ等のメイクアップ化粧品が挙げられる。
【0089】
本発明の組成物は、バスソルト、歯磨き粉、消臭剤、脱脂綿、及びウェットティッシュ等にも利用することができる。従って、本発明は、上記の組成物を含有するそのような製品にも関する。
【0090】
本発明の組成物は、例えばシーラント、接着剤、紙、及び他の建築材料等の工業製品の製造にも使用することができる。
【0091】
本発明の特定の実施形態のいかなる特徴も、本発明の任意の他の実施形態において利用することができる。「含む」という用語は、「含む」を意味することを意図しているが、必ずしも「から成る」又は「構成される」を意味するわけではない。言い換えると、列挙されたステップ又は選択肢は網羅的である必要はない。以下で本明細書において与えられる実施例は、本発明を明確にすることを意図したものであり、それらの実施例自体に本発明を限定することを意図したものではないということに留意されたい。同様に、全ての割合は、別段の指示がない限り、重量/重量パーセンテージである。実施例及び比較実験、又は他の方法で明示的に示されている場合を除き、材料の量又は反応の条件、材料の物理的特性、及び/又は使用を示す本明細書における全ての数字は、「約」という用語によって修飾されたものとして理解されることになる。別段の定めがない限り、「xからyまで」の形で表現された数値範囲は、x及びyを含むものと理解される。特定の特徴に対して、多数の好ましい範囲が「xからyまで」の形で記述される場合、異なるエンドポイントを組み合わせる全ての範囲も熟考されると理解される。本発明の目的で、周囲温度(又は室温)は、摂氏約20度の温度として定義される。
【0092】
測定方法
- Cl-量を、AgNO3を用いた電位差滴定(Metrohm)によって測定した。200から300mgの試料(W試料)を、250mlビーカー中の150mlの浸透水に添加した。試料の均質な分散が達成されるまで、試料を撹拌した。4から5滴の発煙硝酸を試料に添加した。ポテンショメーター(682 Titroprocessor、Metrohm)及び組み合わされた電極Ag/AgNO3を用いて滴定を実行した。塩化物の重量%は、式:%Cl=V×C×M[Cl]×100/W試料を用いて直接計算することができ、M[Cl]は35.5g/molであり、ここで、Vは、利用されるAgNO3(mL)溶液の体積であり、Cは、その濃度、すなわち0.1Nである。
【0093】
- 0.5gの試料(W試料)を250mLビーカー中の150mlの浸透水に分散させることによってAIMを測定した。そこに、1.5mLの濃硫酸を添加した。ビーカーを、蒸発を防ぐためにプラスチック箔で覆い、2時間沸騰温度において湯煎で加熱した。この分散系を、10分間4000rpm(3250gに相当)で遠心分離した。
AP 25フィルター及び結晶皿の総質量(Wフィルター+皿)を決定した。酸性分散系を濾過し、そのpHが(pH紙でチェックされたときに)中性のままになるまで50℃の浸透水ですすぎ、約500mLの水を使用した。
試料を有するフィルターを室温で一晩乾燥させ、さらに1日60℃のオーブンにおいて乾燥させ、試料、フィルター、及び皿の総重量を決定した(W最終)。AIM(%)=[(W最終-Wフィルター+皿)/W試料]x100。
【0094】
- AIAを以下のように測定した:2,000(2)グラム(W試料)の試料を、シリカ又は白金のるつぼ上に置き、500℃のホットプレート上で約1時間燃やし、その後、16時間550℃の炉内に置いた。得られた灰を、10mlの濃HCl及び20mlの脱塩水を含有する溶液に添加した。灰を含有する溶液を、約30分間80℃まで加熱し、その後、Whatman N°40(無灰フィルター)を使用して濾過した。灰を含有するフィルターを、試料中にClが検出されなくなるまで水ですすいだ。試料中のCl-の存在を、AgNO3を用いてチェックした(AgClの沈殿が、Cl-の存在を示す)。
第二のシリカ又は白金のるつぼを、10分間550℃のオーブン内に置き、次に、デシケーター内で室温まで冷却した。その後、るつぼの重さを、無水環境で量った(Wるつぼ)。灰を有するフィルターをるつぼ上に置き、少なくとも1時間、室温で開始し500℃まで、ホットプレート上で徐々に加熱した。次に、るつぼを炉に移し、16時間800℃で加熱した。デシケーター内で室温にて冷却した後、るつぼの重さを、無水環境で再度量った(Wるつぼ+灰)。AIA(%)=[(Wるつぼ+灰-Wるつぼ)/W試料]x100。
【0095】
- D50、D90:粒径分布を決定する方法は、米国薬局方(USP40)の方法<429>に従っており、ISO規格13320-1に基づいている。第一に、試料粉末が振動ホッパーの内側に注がれて、Mastersizer 3000(Malvern)に規則的な流量を供給する。空気分散装置を使用して、粉末粒子を、1から15%の光の遮蔽でレーザービームを通して吹き付けて、検出器の十分な信号対雑音比に達し、さらに、多重散乱を回避した。異なる角度で粒子によって散乱された光は、マルチエレメント検出器によって測定される。ミー理論に関連する赤色及び青色の光の使用によって、体積サイズ分布の計算が可能となり、ここで、粒子を球とみなし、従って同等の球サイズを決定した。得られたサイズ分布から、10、50、及び90%の累積体積分率を決定し、それぞれD10、D50、及びD90とした。中位径D50は、粉末の粒径の概念を与え、D10及びD90は、より微細な粒径及びより粗い粒径を定量化するのを可能にしている。
【0096】
- CIELAB L*、a*、及びb*は、国際照明委員会(Commission Internationale d’Eclairage)によって特定された最も完全な色空間を表している。これは、ヒトの眼に可視の色全てを記述し、参照として使用されることになる装置独立モデルとして役立つように作成された。試料のL*及びb*値は、比色計のガラスセル内に試料を置く(約半分を満たす)ことによって得られる。使用した比色計は、Minolta CR400 Colorimeterであった。
【0097】
- C0の決定:
レオロジー測定のための試料調製:
還元脱脂粉乳を、水性媒体として使用した。粉末形態の脱脂粉乳は、Isigny-Ste-Mere(Isigny.France)によって提供された。脱脂粉乳は、室温で4時間攪拌しながら、10%w/wの粉末の脱脂粉乳を超純水(18.2MΩ.cmの抵抗率)に溶解することによって還元した。特に、1000gの還元脱脂粉乳を調製するために、108.66gの脱脂粉乳の粉末(DS=92.03wt%)を891.34gの超純水に溶解した。様々な海藻粉末の分散系を、還元脱脂粉乳において可変の比率(0.1から1%w/w.乾物ベース)で調製した。海藻粉末の重さを、適した最終比率で量り、(再水和を促進するため)5wt%のスクロースと完全に混ぜ合わせ、さらに、磁気撹拌(500rpm)下で還元脱脂粉乳においてゆっくりと分散させた。撹拌を、室温で30分間維持した。その後、500rpmで攪拌しながら、約30分間80℃まで試料を加熱し、この温度でさらに3分間保持した。
【0098】
貯蔵弾性率G´の測定:
レオロジー測定を、上面と下面の両方にクロスハッチが付けられた50mmプレート及びプレート幾何学的形状を備えたMCR 302応力制御レオメータ(Anton Paar Physica)を使用して実行した。レオメータは、ペルチェ温度制御装置も備えている。ギャップを、1mmに固定した。測定前に、試料の縁においてパラフィン油の薄い層によって試料を覆って、測定中の蒸発を回避した。動的振動又は粘弾性測定を選択して、各組み立てられた体系のゲル化速度及びテクスチャーを加える特性を評価した。これらの測定のために、80℃で予熱したMCR 302プレート上に試料を注ぎ、80℃から10℃までの温度掃引試験(2℃/分)を受けさせ、その後、0.4Hzの周波数で15分間の時間掃引実験を受けさせて、再構築(構造的再編成)のための10℃でのこの考慮された時間の後に体系が平衡状態に達することを確実にした。その後、0.2%に固定した線形粘弾性領域(LVE)における一定せん断ひずみでの100から0.01Hzの周波数掃引を試料に受けさせた。粘弾性測定がLVEドメインにおいて実行されるのを確実にするために、0.4Hzで0.01%から100%までひずみ掃引実験を行った。
【0099】
これら全てのレオロジー実験において、各測定を少なくとも2回行った。
【0100】
データ処理:G´
本特許で考慮されるG´値は、10℃で0.4Hzでの機械的スペクトル(周波数掃引試験)から収集された。実際、機械的スペクトルは、得られたゲルの実際の構造的挙動を表すため、このG´値を最も適切なパラメータとして使用することが適していると思われた。
様々な濃度の全ての調査した試料について得られたG´値に基づき、べき乗則関係(式1を参照)を使用してデータを記述した。c*は、それ以下ではゲル様の挙動がない最低濃度、又は暗に限界ゲル化濃度を表しているということに留意されたい。Cは海藻粉末濃度(乾物ベース)であり;nはフィッティングモデルの指数値を表し;k及びk´はフィッティングモデルの定数係数である。
【0101】
G´=k´*(C-C0)n 式1
試料を比較するために、式2~4を使用し:
G´=p*k*Cn 式2
G´試料A=k*Cn 式3
G´試料B=p*k*Cn 式4
ここで、pは並進シフト係数である。p=1の場合、試料Aは試料Bと類似のゲル強度を示すことを意味し;p>1の場合、試料Bは試料Aよりも高いG´を示すことを意味し;p<1の場合、試料Bは試料Aよりも低いG´を示すことを意味する。
【0102】
データ処理:C
0
C
0を決定するために、以下のステップを重視した:
(i)上記の機械的スペクトルから収集した貯蔵弾性率G´値を、対数スケールで、海藻粉末濃度C(%、DS)の関数としてプロットした(
図1を参照)。
図1では、破線及び実線が、べき乗則の式3及び1の、それぞれ実験データ(生データ)及び推定データへのフィッティングを表している。
図1において利用されているデータは、実施例1に属する。
(ii)文献(例えば、非特許文献8等)に記載されたアプローチに従って、方程式G´=kC
nを、線形回帰を使用してG´=k´(C-C
0)
nの形に数学的に変換した。この第2の方程式において、k´はスケーリングファクタを表し、C
0は、それ以下ではゲル様の挙動を達成することができない濃度を表している。G´=kC
n=k´(C-C
0)
nの条件に従い、全ての調査した海藻粉末に対して線形回帰を行い、両方の指数(n)値は同一であり、C>C
0であったことに留意されたい。
上記のフィッティングモデルを使用して決定したC
0の妥当性を、他で既に記載したような類似の条件で全ての海藻粉末のレオロジー挙動を評価して、ゲル様の挙動を証明することによって検証した。
【0103】
次に、本発明は、以下の実施例及び比較実験の助けを借りて記載されるが、それらに限定されない。
【実施例1】
【0104】
ネッタイキリンサイベースの粉末
新鮮な収穫された(収穫から6時間未満の)ネッタイキリンサイ(コットニー)海藻を海水ですすぎ、約10重量%のDSを有するバイオマスを作製するために使用した。収穫場所の海水を使用した。バイオマスを木製テーブル上に置いて、約10Kg/m2の面密度を有するバイオマスのベッドを形成した。テーブルを、晴れた場所に置き、透明な防水シートで覆って、テーブルを完全に囲い、さらに、空気流を防いだ。太陽の作用により、防水シート下の温度は約60℃に達し、湿度は90%を超えた。天候に応じて、24時間から72時間、海藻をこの環境において自然に滲出させた。
【0105】
滲出後、防水シートを除去し、バイオマスを太陽の下でさらに24時間野外に保ち、約78重量%のDSに達するまで乾燥させた。
【0106】
その後、乾燥したバイオマスを、海藻全体を覆うのに十分な量の水道水内に置き、海藻を、撹拌することなく室温で1時間再水和させた。次に、再水和した海藻を、フィルターを使用して回収し、約40重量%のDSを有するバイオマスを得た。
【0107】
再水和した海藻を含有するバイオマスを、30分間90℃のかん水溶液(100g/LのKCl)において調理した。調理に使用したかん水溶液の重量は、海藻の質量の約6倍であった。調理後、かん水溶液を排出し、回収した海藻を、10分間室温のある量の水道水内に置くことによって洗浄した。十分な量の水を、海藻を完全に覆うために使用した。
【0108】
次に、海藻を、フィルターを使用して回収し、60℃で30分間ベルト乾燥機を使用して乾燥させ、約94.9%のDSの最終生成物を得た。乾燥した生成物を、Retschミル(0.25mmの最終ふるい)を用いて製粉して粉末にした。得られた海藻粉末の特性が表1において示されている:
【0109】
【実施例2】
【0110】
ヤハズツノマタ海藻粉末
新鮮なヤハズツノマタを野生から収穫し、実施例1のように処理し、防水シート下で3から72時間保った。場合によっては、滲出の間に海藻をひっくり返して、日光への均質な曝露を可能にした。次に、海藻を、天候に応じて1から3,5日に及ぶ期間にわたって、約65重量%のDS(約35重量%の水分)に達するように日干しした。海藻を、実施例1のようにさらに処理した。
【0111】
その後、乾燥したバイオマスを、海藻全体を覆うのに十分な量の水道水内に置き、海藻を、撹拌することなく室温で1時間再水和させた。次に、再水和した海藻を、フィルターを使用して回収し、約40重量%のDSを有するバイオマスを得た。
【0112】
再水和した海藻を含有するバイオマスを、30分間90℃のかん水溶液(350g/LのKCl)において二度調理した。調理に使用したかん水溶液の重量は、海藻の質量の約16倍であった。調理後、かん水溶液を排出し、回収した海藻を、10分間室温のある量の水道水内に置くことによって洗浄した。十分な量の水を、海藻を完全に覆うために使用した。
【0113】
次に、海藻を、フィルターを使用して回収し、60℃で30分間ベルト乾燥機を使用して乾燥させ、約94.3%のDSの最終生成物を得た。乾燥した生成物を、Retschミル(0.25mmの最終ふるい)を用いて製粉して粉末にし、0.25mmのふるいにかけた。得られた海藻粉末の特性が表2において示されている:
【0114】
【実施例3】
【0115】
様々な海藻
新鮮な収穫した(収穫から6時間未満の)海藻を、太陽の下で屋外において24時間保って、60から95重量%のDSに達するように乾燥させた。
【0116】
次に、海藻を、一晩60℃のオーブンにおいてさらに乾燥させた。
【0117】
乾燥した海藻を、Retschミル(0.25mmの最終ふるい)を用いて製粉して粉末にし、0.25mmのふるいにかけた。得られた粉末の特性が、表3において示されている。
【0118】
【実施例4】
【0119】
実施例1のネッタイキリンサイ(コットニー)粉末及びローカストビーンガム(LBG)組成物を、蒸留水において可変の比率(25/75、40/60、50/50、60/40、75/25、90/10、95/5、及び97.5/2.5)で、1w/w%の総海藻及びLBG濃度で調製した。試料調製のために、ローカストビーンガム粉末及び海藻粉末の重さを、適した最終比率で量り、完全に混ぜ合わせ、磁気撹拌(500rpm)下で水中にゆっくりと分散させた。撹拌を、室温で30分間維持して、良好な分散を確実にした。次に、試料を、500rpmで攪拌しながら、(30分間)80℃まで加熱した。
【0120】
実施例4の結果及びレオロジー特徴づけ
- レオロジー測定
レオロジー測定を、Couette装置を備えたMCR 301応力制御レオメータ(Anton Paar Physica)を使用して実行した。レオメータは、ペルチェ温度制御装置も備えていた。測定前に、パラフィン油の薄い層によって試料を覆って、測定中の蒸発を回避した。動的振動又は粘弾性測定を選択して、各調査した組成物のゲル化速度及びテクスチャーを加える特性を評価した。これらの測定のために、80℃で予熱したMCR 302プレート上に試料を注ぎ、80℃から10℃までの温度掃引試験(2℃/分)を受けさせ、その後、0.4Hzの周波数で15分間の時間掃引実験を受けさせて、体系が平衡状態(構造的再編成)に達することを確実にした。その後、0.3%に固定した線形粘弾性領域(LVE)における一定せん断ひずみでの100から0.01Hzの周波数掃引を試料に受けさせた。粘弾性測定がLVEドメインにおいて実行されるのを確実にするために、0.4Hzで0.01%から100%までひずみ掃引実験を行った。これら全てのレオロジー実験において、各測定を、新たな試料調製から少なくとも2回行った。
0.1Hz及び10℃での機械的スペクトルから収集した貯蔵弾性率(G´)値は、全ての調査した試料の比較に使用される。
【0121】
図2は、蒸留水中でネッタイキリンサイ粉末とローカストビーンガムとを適切な総濃度及び混合比で混合すると、相乗的なゲルが得られるが、各成分のみでは実験条件でゲルは形成されなかったことを実証している。実際に、相乗的相互作用によって誘導される本発明の組成物のゲル形成は、G´>10G´´及び比較的周波数に依存しない係数によって証明される(
図2a)が、個々の成分のレオロジー挙動は、広い周波数範囲にわたってG´´>G´を有する典型的な液体粘弾性特徴のものである(
図2b)。
【0122】
結果として生じるネッタイキリンサイ粉末とローカストビーンガムの混合(50/50)のゲル強度を表す貯蔵弾性率(G´)は68.88Pa±0.64であるが、個々のLBG及びネッタイキリンサイ粉末の粘性溶液では無視できる値(G´<<10
-4Pa)が得られた(
図3)。ネッタイキリンサイ/ローカストビーンガムの混合比を25/75から97.5/2.5に変えると、相乗的ゲルは、最適な相乗作用(G´=103Pa±0.64)に達する25%w/wから90%w/wへの混合系中のネッタイキリンサイ含有量の増加に伴って粘弾性特性の増加を示し、次に、90%w/wから97.5%w/wへのネッタイキリンサイ含有量のさらなる増加に伴って減少を示した(
図4a)。加えて、混合系におけるLBG含有量が低いほど、実験条件に関して、相乗的なゲルに対して、より構造化された又は十分に組織化されたネットワーク構造が得られる(
図4b)。
【実施例5】
【0123】
次の段落を参照されたい。
【実施例6】
【0124】
ネッタイキリンサイ又はスピノサム粉末を、0.3%KCl(ネッタイキリンサイを使用した場合)又は1.5%NaCl(スピノサムを使用した場合)の存在下で、可変の比率で蒸留水において天然のワキシートウモロコシ澱粉(Cargill社がSimPure(商標)99400として販売)又は天然のジャガイモ澱粉(Cargill社がSimPure(商標)99500として販売)と混ぜ合わせた。混合物中の海藻粉末及び澱粉濃度は、それぞれ0.30%w/w及び2%w/wであった。試料調製のために、澱粉及び海藻粉末の重さを、適した最終比率で量り、完全に混ぜ合わせ、磁気撹拌(500rpm)下で水中にゆっくりと分散させた。撹拌を、室温で30分間維持して、海藻粉末の均質な分散及び澱粉粒子の完全な水和を確実にした。次に、試料を、依然として500rpmでの攪拌下で、(SimPure(商標)99500ベースの試料に対して)80℃又は(SimPure(商標)99400ベースの試料に対して)95℃まで、(いずれの場合も)30分未満の間加熱し、この温度で追加の10分間保持した。同じ試料調製方法を厳密に使用して、蒸留水において各海藻粉末分散系(0.30%w/w)及び澱粉懸濁系(2%w/w)を調製した。
【0125】
実施例5及び6の結果及びレオロジー特徴づけ
- レオロジー測定
レオロジー測定を、上面と下面の両方にクロスハッチが付けられた50mmプレート及びプレート幾何学的形状を備えたMCR 302応力制御レオメータ(Anton Paar Physica)を使用して実行した。レオメータは、ペルチェ温度制御装置も備えていた。測定前に、試料の縁においてパラフィン油の薄い層によって試料を覆って、測定中の蒸発を回避し、ギャップを、1mmに固定した。動的振動又は粘弾性測定を選択して、各組み立てられた組成物のゲル化速度及びテクスチャーを加える特性を評価した。これらの測定のために、80℃で予熱したMCR 302プレート上に試料を注ぎ、80℃から10℃までの温度掃引試験(2℃/分)を受けさせ、その後、0.4Hzの周波数で15分間の時間掃引実験を受けさせて、体系が平衡状態(構造的再編成)に達することを確実にした。その後、0.3%に固定した線形粘弾性領域(LVE)における一定せん断ひずみでの100から0.01Hzの周波数掃引を試料に受けさせた。粘弾性測定がLVEドメインにおいて実行されるのを確実にするために、0.4Hzで0.01%から100%までひずみ掃引実験を行った。
これら全てのレオロジー実験において、各測定を、新たな試料調製から少なくとも2回行った。
0.1Hz及び10℃での機械的スペクトルから収集した貯蔵弾性率(G´)値を、全ての調査した試料の比較に使用した。加えて、海藻粉末/澱粉組成物の相乗効果を、以下のようにレオロジー相乗作用(R)を計算することによって決定した:
【0126】
【数1】
ここで、G´
混合物は、組成物について得られたG´値を表し、G´
澱粉及びG´
海藻は、それぞれ個々の澱粉懸濁系及び海藻粉末について得られた値であった。
【0127】
図5は、ネッタイキリンサイ粉末/Simpure 99400澱粉混合物が、定められた媒体条件に関して、純粋なネッタイキリンサイ粉末に対してG´>10G´´及び比較的周波数に依存しない係数を有する典型的な真のゲル様挙動を示したことを実証している。蒸留水における懸濁系中の澱粉粒子に対しては、低周波数においてG´>G´´を有し且つG´がこの周波数範囲でプラトーを示す特定の非常に弱いゲル様挙動を観察した。ネッタイキリンサイゲルネットワークに充填された膨張した澱粉粒子は、純粋なネッタイキリンサイ粉末と比較して粘弾性特性を改善した(
図6)。Simpure 99500を含有する組成物についても類似の結果を得た。
【0128】
明らかに、上記のように得られたR値は正(R=0.60)であり、これは、真の相乗効果の証拠であり、ゲル強度を改善した(
図5及び6)。
【実施例7】
【0129】
スピノサム粉末/LBG組成物を用いたビーガンミルク
とりわけ0.042%のゲランガム及び水を含有する市販のアーモンドミルクを、対照として使用した。ゲランガムは、表4において示された比でスピノサム粉末/LBG組成物によって置換された。
【0130】
【表4】
スピノサム粉末/LBG組成物を含有する試料では分離は観察されなかった。試料は、良好な食感を有し、18日後でもゲル化はなかった。
【国際調査報告】