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特表2022-549861コバルト含有金属発泡体およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-29
(54)【発明の名称】コバルト含有金属発泡体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/75 20060101AFI20221121BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20221121BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20221121BHJP
   B01J 37/14 20060101ALI20221121BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20221121BHJP
   B01J 23/755 20060101ALI20221121BHJP
【FI】
B01J23/75 M
B01J35/04 331A
B01J37/08
B01J37/14
B01J37/02 301E
B01J23/755 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022519027
(86)(22)【出願日】2020-09-25
(85)【翻訳文提出日】2022-03-24
(86)【国際出願番号】 EP2020076854
(87)【国際公開番号】W WO2021058719
(87)【国際公開日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】19199651.1
(32)【優先日】2019-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ルネ ポス
(72)【発明者】
【氏名】マイケ ロース
(72)【発明者】
【氏名】モニカ ベアヴァイラー
(72)【発明者】
【氏名】マクシミリアン グレーザー
【テーマコード(参考)】
4G169
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA09
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA01C
4G169BA02A
4G169BA02C
4G169BA04A
4G169BA04C
4G169BA47C
4G169BB02A
4G169BB02B
4G169BB02C
4G169BB05C
4G169BC02C
4G169BC03C
4G169BC04C
4G169BC16A
4G169BC16B
4G169BC16C
4G169BC31A
4G169BC31C
4G169BC32A
4G169BC32C
4G169BC33A
4G169BC33C
4G169BC43A
4G169BC43C
4G169BC66A
4G169BC66C
4G169BC67A
4G169BC67B
4G169BC68A
4G169BC70A
4G169BC70C
4G169BC71A
4G169BC71C
4G169BC72A
4G169BC72C
4G169BC73A
4G169BC73C
4G169BC74A
4G169BC74C
4G169BC75A
4G169BC75C
4G169CB01
4G169DA06
4G169EB10
4G169EB11
4G169EB14Y
4G169EB17Y
4G169EC22Y
4G169ED03
4G169FA01
4G169FA02
4G169FB17
4G169FB24
4G169FB32
4G169FB40
4G169FC02
4G169FC04
4G169FC07
(57)【要約】
本発明は、担持触媒の製造方法であって、金属コバルト、ニッケルとコバルトとの合金、またはニッケルとコバルトとの重なり合う層の集合体から作製される金属発泡体Aを提供するステップと、金属発泡体Aにアルミニウム含有粉末MPを施与して、金属発泡体AXを得るステップと、金属発泡体AXを熱処理して、金属発泡体Aとアルミニウム含有粉末MPとの間に合金を形成し、金属発泡体Bを得るステップと、金属発泡体Bを酸化処理して、金属発泡体Cを得るステップと、金属発泡体Cの表面の少なくとも一部に、少なくとも1つの担体酸化物と少なくとも1つの触媒活性成分とを含む触媒活性層を施与して、担持触媒を得るステップとを含む方法に関する。本発明はさらに、該方法により得られる担持触媒、および化学変換におけるその使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
担持触媒の製造方法であって、
(a)金属コバルト、ニッケルとコバルトとの合金、またはニッケルとコバルトとの重なり合う層の集合体から作製される金属発泡体Aを提供するステップと、
(b)金属発泡体Aにアルミニウム含有粉末MPを施与して、金属発泡体AXを得るステップと、
(c)金属発泡体AXを熱処理して、金属発泡体Aとアルミニウム含有粉末MPとの間に合金を形成し、金属発泡体Bを得るステップであって、
ここで、前記金属発泡体AXの熱処理の最高温度は、680~715℃の範囲にあり、かつ
前記680~715℃の温度範囲での熱処理の合計時間は、5~240秒であるものとするステップと、
(d)金属発泡体Bを酸化処理して、金属発泡体Cを得るステップと、
(e)金属発泡体Cの表面の少なくとも一部に、少なくとも1つの担体酸化物と少なくとも1つの触媒活性成分とを含む触媒活性層を施与して、担持触媒を得るステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記ステップ(d)における金属発泡体Bの酸化処理を、以下:
- 前記金属発泡体の表面上にあらかじめ水酸化アルミニウムを形成することなく、金属発泡体Bを酸化性ガス雰囲気と接触させて加熱すること
- 前記金属発泡体の表面上にあらかじめ水酸化アルミニウムを形成した後に、金属発泡体Bを酸化性ガス雰囲気と接触させて加熱すること
から選択する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ステップ(d)における金属発泡体Bの酸化処理のために、前記金属発泡体の表面上にあらかじめ水酸化アルミニウムを形成することなく、金属発泡体Bを酸化性ガス雰囲気と接触させて加熱する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記酸化性ガス雰囲気と接触させて行う加熱を、空気中で200℃~700℃の温度で1~60分の時間にわたって実施する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
ステップ(d)における金属発泡体Bの酸化処理のために、前記金属発泡体の表面上にあらかじめ水酸化アルミニウムを形成した後に、金属発泡体Bを酸化性ガス雰囲気と接触させて加熱する、請求項1または2記載の方法。
【請求項6】
前記金属発泡体をアルカリ水溶液と接触させることにより、前記表面上に水酸化アルミニウムを形成する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記アルカリ水溶液は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、またはそれらの組み合わせを含み、前記アルカリ水溶液に前記金属発泡体を最大で30分の時間にわたって接触させる、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記金属発泡体の表面上にあらかじめ水酸化アルミニウムを形成した後に酸化性ガス雰囲気と接触させて行う加熱を、空気中で200℃~700℃の温度で1~60分の時間にわたって実施する、請求項5から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記ステップ(e)で施与する触媒活性層の前記担体酸化物は、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化チタン、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記触媒活性成分は、遷移金属または遷移金属化合物であり、前記遷移金属は、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、セリウム、銅、銀、金、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項記載の方法により得られる、担持触媒。
【請求項12】
化学変換における、請求項1から10までのいずれか1項記載の担持触媒の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
本発明は、担持触媒の製造方法であって、金属コバルト、ニッケルとコバルトとの合金、またはニッケルとコバルトとの重なり合う層の集合体から構成される金属発泡体をアルミニウムでコーティングするステップと、次いで熱処理を行って、金属発泡体とアルミニウムとの間に合金を形成するステップと、その後、アルミニウム表面を酸化処理するステップと、少なくとも1つの担体酸化物と少なくとも1つの触媒活性成分とを含む触媒活性層を施与するステップとを含む方法に関する。本発明はさらに、本方法によって得られる担持触媒、および化学変換におけるその使用に関する。
【0002】
先行技術
先行技術から、触媒活性コーティングの担体として金属発泡体を使用することが知られている。金属担体上の触媒活性コーティングは、典型的には、微視的表面を増加させる担体酸化物と、該担体酸化物に施与された触媒活性金属とから構成される(例えば、国際公開第9511752号参照)。このようにして得られたモノリス型担持触媒は、様々な用途に使用することができるが、主に酸化物成分から構成される触媒活性コーティングの金属製担体への密着性が極めて低いため、その使用性には限界がある。密着性が低いと、機械的負荷がかかった際に触媒活性層の一部が剥離し、場合によってはフロースルー反応器での担持触媒の運転時にも剥離し、それに伴い触媒の寿命が短くなり、また場合によっては剥離した固体粒子によりプラントの運転に支障をきたすことがある。
【0003】
また、触媒担体としての金属発泡体のコーティングには、ゾルゲル法が用いられる。しかし、これらの方法には特別な装置が必要であり、また危険性が高く取扱いが困難な高価な試薬の使用も必要である。
【0004】
金属発泡体担持触媒の、先行技術から知られているもう1つの製造方法では、「原子層堆積法(atomic layer deposition)」(ALD)によって金属表面に比較的安定した酸化層を形成できることを利用している。例えば、米国特許出願公開第20120329889号明細書には、フィッシャー・トロプシュ合成用の金属発泡体担持触媒の製造方法が開示されており、この方法では、原子層堆積法(ALD)によって金属発泡体上に薄いAl膜を形成し、その後、ディップコーティング、乾燥、および後続のか焼によって酸化物コーティングを施す。米国特許出願公開第20120329889号明細書には、金属発泡体表面と酸化物コーティングとの安定した結合が困難であり(段落[0068]~[0069]参照)、ALDによる中間酸化物層の施与によってこれが実現されることが明示されている。しかし、米国特許出願公開第20120329889号明細書に開示されている方法は、設備的に非常に複雑である。
【0005】
安定した金属発泡体担持触媒の入手が困難であることに鑑み、本発明の課題は、触媒的に不活性な金属発泡体から触媒コーティングを施した担持触媒を製造するための、可能な限り簡便でかつ大量生産に適した方法を提供することであった。その際、発泡体ベース構造により設けられた孔が目詰まりしないようにし、触媒コーティングを可能な限り容易に施与できるようにするとともに、金属発泡体への密着性が非常に高いことを特徴とすることも望ましい。本発明の方法および該方法によって得られる生成物は、この要件を満たすものである。
【0006】
本発明
本発明による担持触媒の製造方法は、
(a)金属コバルト、ニッケルとコバルトとの合金、またはニッケルとコバルトとの重なり合う層の集合体から作製される金属発泡体Aを提供するステップと、
(b)金属発泡体Aにアルミニウム含有粉末MPを施与して、金属発泡体AXを得るステップと、
(c)金属発泡体AXを熱処理して、金属発泡体Aとアルミニウム含有粉末MPとの間に合金を形成し、金属発泡体Bを得るステップであって、
ここで、金属発泡体AXの熱処理の最高温度は、680~715℃の範囲にあり、かつ
680~715℃の温度範囲での熱処理の合計時間は、5~240秒であるものとするステップと、
(d)金属発泡体Bを酸化処理して、金属発泡体Cを得るステップと、
(e)金属発泡体Cの表面の少なくとも一部に、少なくとも1つの担体酸化物と少なくとも1つの触媒活性成分とを含む触媒活性層を施与して、担持触媒を得るステップと
を含む。
【0007】
先行技術から、古典的なラネー型触媒に代わるものとして、まずアルミニウムを施与して合金化した後に再び部分的に浸出させたニッケル発泡体が知られている(例えば、欧州特許出願公開第2764916号明細書参照)。このようにして得られた発泡体は、活性化された全金属製のラネー型触媒であり、通常は水素化反応に使用される。
【0008】
先行技術からさらに、まずアルミニウムを施与して合金化した後に酸化させた金属発泡体が知られている(Wen-Wen Zeng et al. “Synthesis and compression property of oxidation-resistant Ni-Al foams”, Acta metallurgica Sinica, Band 30, Nr. 10, 1. Oktober 2017, p. 965-972参照)。しかし、このWen-Wen Zengらの方法では、元の金属発泡体の断面全体をアルミニウムと合金化させる(第972頁「結論」参照)のに対し、本発明の方法では、合金形成が金属発泡体の上層に限定されるため、金属発泡体の中心領域には非合金化領域が残っている。
【0009】
本発明に関して得られた実験結果から、合金形成のための熱処理の温度条件の選択が結果にかなりの影響を与えることがわかった。本発明による方法では、合金形成を金属発泡体の上層に限定することができるため、金属発泡体の中心領域に非合金化領域が残る。この非合金化領域の存在は、特に得られる担持触媒の機械的安定性に影響を及ぼす。破壊/圧縮強度は合金化度の増加とともに著しく低下し、金属発泡体の完全な合金化により、機械的応力がかかると破壊しやすい非常に脆い担持触媒となる。大工業的に用いられる連続運転される固定床反応器は、固定床の容積が100mに達することもあり、使用する固定床のかさ密度や高さによっては数メートルトンの重量が下層にかかることもあるため、このような状況は実用上大きな意味を持つ。固定床の構築に使用される担持触媒が、数千時間の運転でこれらの重量を支えるのに十分な機械的安定性や耐荷重性を有していない場合、担持構造が破損し、その結果、触媒活性領域が機械的に破壊される場合がある(触媒破壊)。破損した材料は、反応器からの流体と一緒にプラントの隣接部分に排出され、かつ/または固定床でのケーキングを引き起こすおそれがある。いずれの場合も、プラントの運転に大きな支障をきたすことになる。
【0010】
本発明に関して、金属発泡体Aとは、フォーム状の金属物体を意味すると理解される。フォーム状の金属物体は、例えば2012年7月15日付でオンライン公開されたUllmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,「Metallic Foams」の章, DOI: 10.1002/14356007.c16_c01.pub2に開示されている。原理的には、孔径および細孔の形状、層厚、面密度、幾何学的表面、気孔率などに関して様々な形態的特性を有する金属発泡体が適している。好ましくは、金属発泡体Aは、400~1500g/mの範囲の密度、400~3000μm、好ましくは400~800μmの孔径、および0.5~10mm、好ましくは1.0~5.0mmの範囲の厚さを有する。その製造は、自体公知の方法で行うことができる。例えば、有機ポリマー製の発泡体をまず金属でコーティングした後、熱分解によってポリマーを除去することができ、その際に金属発泡体が得られる。少なくとも1つの第1の金属またはその前駆体でコーティングするために、有機ポリマー製の発泡体を、第1の金属を含む溶液または懸濁液と接触させてもよい。これは、例えば、吹付けや浸漬によって行うことができる。また、化学気相成長法(chemical vapor deposition、CVD)による堆積も可能である。発泡体の形態の成形体を製造するのに適したポリマー発泡体は、好ましくは100~5000μm、特に好ましくは450~4000μm、特に450~3000μmの範囲の孔径を有する。適切なポリマー発泡体は、好ましくは0.5~10mm、特に好ましくは1.0~5.0mmの層厚を有する。適切なポリマー発泡体は、好ましくは300~1200kg/mの密度を有する。比表面積は、好ましくは100~20000m/m、特に好ましくは1000~6000m/mの範囲にある。気孔率は、好ましくは0.50~0.95の範囲にある。
【0011】
本発明による方法のステップ(a)で使用される金属発泡体Aは、例えば、立方体形、直方体形、円筒形など、任意の形状を有することができる。しかし、金属発泡体は、例えばモノリスのように成形されていてもよい。
【0012】
本発明による方法のステップ(b)におけるアルミニウム含有粉末MPの施与は、様々な方法で行うことができ、例えば、金属発泡体Aを圧延または浸漬によりアルミニウム含有粉末MPの組成物と接触させることや、アルミニウム含有粉末MPの組成物を吹付け、散布または注型により施与することにより行うことができる。このために、アルミニウム含有粉末MPの組成物は、懸濁液として存在してもよいし、粉末の形態で存在してもよい。
【0013】
ここで、好ましくは、本発明による方法のステップ(b)におけるアルミニウム含有粉末MPの組成物の金属発泡体Aへの実際の施与の前に、あらかじめ金属発泡体Aにバインダーを含浸させる。この含浸は、例えば、バインダーの吹付けや、バインダーへの金属発泡体Aの浸漬により行うことができるが、これらの方法に限定されるものではない。このようにして準備した金属発泡体Aに、次いで、金属含有粉末MPの組成物を施与することができる。
【0014】
これに代えて、バインダーおよびアルミニウム含有粉末MPの組成物をワンステップで施与することもできる。このために、アルミニウム含有粉末MPの組成物を、施与前に液体バインダー自体に懸濁させるか、またはアルミニウム含有粉末MPの組成物およびバインダーを補助液体Fに懸濁させる。
【0015】
バインダーは、100~400℃の温度範囲での熱処理により完全にガス状物に変換できる組成物であり、金属発泡体へのアルミニウム含有粉末MPの組成物の密着を促進する有機化合物を含む。ここで好ましくは、有機化合物は、以下の群から選択される:ポリエチレンイミン(PEI)、ポリビニルピロリドン(PVP)、エチレングリコール、これらの化合物の混合物。特にPEIが好ましい。ポリエチレンイミンの分子量は、好ましくは10,000~1,300,000g/molの範囲にある。ポリエチレンイミン(PEI)の分子量は、好ましくは700,000~800,000g/molの範囲にある。
【0016】
補助液体Fは、アルミニウム含有粉末MPの組成物およびバインダーを懸濁させるのに適しており、かつ100~400℃の温度範囲で熱処理することにより完全にガス状物に変換できるものでなければならない。好ましくは、補助液体Fは、以下の群から選択される:水、エチレングリコール、PVP、およびこれらの化合物の混合物。通常、補助液体を使用する場合には、バインダーを1~10重量%の範囲の濃度で水に懸濁させた後、この懸濁液にアルミニウム含有粉末MPの組成物を懸濁させる。
【0017】
本発明による方法のステップ(b)で使用されるアルミニウム含有粉末MPは、粉末状のアルミニウムを含むが、流動性や耐水性の向上に寄与する添加剤をさらに含んでいてもよい。このような添加剤は、100~400℃の温度範囲で熱処理することにより完全にガス状物に変換できるものでなければならない。
【0018】
アルミニウム含有粉末MPは、好ましくは、80~99.8重量%の範囲のアルミニウム含有量を有する。ここで、好ましいのは、アルミニウム粒子が5μm以上200μm以下の粒径を有する粉末である。特に好ましいのは、アルミニウム粒子の95%が5μm以上75μm以下の粒径を有する粉末である。アルミニウム含有粉末MPは、単体形態のアルミニウム成分に加えてさらに、酸化形態のアルミニウム成分を含んでいてもよい。この酸化成分は、通常は、例えば、酸化物、水酸化物および/または炭酸塩などの酸化性化合物の形態である。典型的には、酸化アルミニウムの重量分率は、アルミニウム含有粉末MPの全重量の0.05~10重量%の範囲にある。
【0019】
本発明による方法のステップ(c)では、熱処理により1つ以上の合金を形成する。本発明に関して得られた実験結果から、合金形成のための熱処理の温度条件の選択が、合金形成の経過にかなりの影響を与えることがわかった。本発明による方法では、合金形成を金属発泡体の上層に限定することができるため、金属発泡体の中心領域に非合金化領域が残る。
【0020】
本発明による方法のステップ(c)では、金属発泡体AXを熱処理して、金属発泡体Aとアルミニウム含有粉末MPとの間に合金を形成し、金属発泡体Bを得て、ここで、金属発泡体AXの熱処理の最高温度は、680~715℃の範囲にあり、かつ680~715℃の温度範囲での熱処理の合計時間は、5~240秒である。
【0021】
熱処理は、金属発泡体AXを通常は段階的に加熱することと、その後に室温まで冷却することとを含む。熱処理は、不活性ガスまたは還元的な条件下で行われる。還元的な条件とは、水素と、反応条件下で不活性な少なくとも1つのガスとを含むガス混合物の存在を意味する。例えば、50体積%のNと50体積%のHとを含むガス混合物が適している。不活性ガスとしては、窒素が好ましく使用される。加熱は、例えばベルト炉などで行うことができる。適切な加熱速度は、10~200K/分、好ましくは20~180K/分の範囲にある。熱処理の間に、通常はまず室温から約300~400℃まで温度を上げ、この温度で約2~30分の時間にわたって水分や有機成分をコーティングから除去する。その後、温度を680~715℃の範囲まで上昇させると、金属発泡体Aとアルミニウム含有粉末MPとの間で合金形成が生じる。その後、金属発泡体を約200℃の温度で不活性ガス環境と接触させることにより急冷する。
【0022】
本発明に関与する金属において、合金形成を金属発泡体の上部領域に限定し、金属発泡体の内部に非合金化領域を残すためには、ステップ(c)における金属発泡体AXの熱処理の最高温度が680~715℃の範囲にあること、さらには680~715℃の温度範囲での熱処理の合計時間が5~240秒であることが必要である。ある程度まで、熱処理の継続時間が最高処理温度の水準を補う場合もあり、その逆の場合もある。しかし、熱処理の最高温度が680~715℃の温度範囲から逸脱し、かつ/または680~715℃の温度範囲での熱処理の継続時間が5~240秒の範囲外であると、金属発泡体の上部領域で合金が形成されると同時に金属発泡体の内部に非合金領域が残る実験の頻度が大幅に減少することがわかった。最高温度が高すぎるおよび/または金属発泡体が最高温度の範囲に留まる時間が長すぎると、金属発泡体の最深層まで合金化が進み、非合金化領域が残らなくなる。最高温度が低すぎるおよび/または金属発泡体が最高温度の範囲に留まる時間が短すぎると、合金形成が全く始まらない。
【0023】
本発明による方法のステップ(c)における金属発泡体の熱処理により、アルミニウム含有相が形成される。金属発泡体Bと金属発泡体Aとの重量比Vは、V=m(金属発泡体B)/m(金属発泡体A)であり、これは、本発明による方法のステップ(c)でどれだけのアルミニウムが発泡体に合金化されたかを示す指標である。好ましい実施形態では、金属発泡体Bと金属発泡体Aとの重量比V=m(金属発泡体B)/m(金属発泡体A)は、1.1:1~1.5:1の範囲にある。さらなる好ましい実施形態では、金属発泡体Bと金属発泡体Aとの重量比V=m(金属発泡体B)/m(金属発泡体A)は、1.2:1~1.4:1の範囲にある。
【0024】
本発明による方法のステップ(d)では、金属発泡体Bを酸化処理して、金属発泡体Cを得る。
【0025】
本発明による方法のステップ(d)における金属発泡体Bの酸化処理の目的は、金属発泡体Bの表面に存在するアルミニウムに外部酸化アルミニウム層を付与することである。この目的は、例えば、金属発泡体Bを加熱状態で酸化性ガス雰囲気(例えば、空気)に曝すか、またはまず金属発泡体Bの表面に例えばアルカリ溶液との接触により水酸化アルミニウムを形成しておき、その後、この水酸化アルミニウムを酸化性条件下での熱処理により酸化アルミニウムに変換することによって達成できる。
【0026】
金属発泡体Bを加熱状態で酸化性ガス雰囲気に曝すには、例えば、空気導入下で金属発泡体を炉で適切な温度に加熱すれば十分である。
【0027】
あらかじめ水酸化アルミニウムを形成せずに金属発泡体Bを空気導入下で加熱する場合、その温度は200℃~1200℃、または200℃~1000℃、または200℃~750℃で選択することが望ましい。好ましくは、本発明によれば、熱酸化は、空気中で200℃~700℃の温度で1~60分の時間にわたって行われる。
【0028】
まず金属発泡体Bの表面に例えばアルカリ溶液との接触により水酸化アルミニウムを形成しておき、その後にようやく熱処理を行う場合、表面に存在するアルミニウムの少なくとも一部がまず水酸化アルミニウムに変換され、その後、表面に形成されたこの水酸化アルミニウムの少なくとも一部が酸化アルミニウムに変換される。
【0029】
好ましくは、表面に存在するアルミニウムの少なくとも一部の水酸化アルミニウムへの変換は、金属発泡体をアルカリ水溶液と接触させることによって達成される。
【0030】
特に好ましくは、このアルカリ水溶液は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、またはそれらの組み合わせを0.05~30重量%、好ましくは0.5~5重量%の濃度で含み、このアルカリ水溶液に金属発泡体Bを、5~120分、好ましくは最大で30分、特に好ましくは最大で10分の時間にわたって接触させる。この処理は、10℃~110℃の温度範囲で行うことができる。20℃(室温)での処理が好ましい。
【0031】
その後、表面に形成された水酸化アルミニウムの少なくとも一部を、酸化性雰囲気中で酸化アルミニウムに熱変換させる。そのために、空気導入下に1分~8時間の時間にわたって20℃(室温)~700℃の温度に加熱する。好ましくは、本発明によれば、熱酸化は、空気中で200℃~700℃の温度で1~60分の時間にわたって行われる。
【0032】
金属発泡体Cは、適切な触媒の担体として機能し、触媒すべき特定の反応のために具体的に選択されてよい。
【0033】
本発明による方法のステップ(e)では、金属発泡体Cの表面の少なくとも一部に、少なくとも1つの担体酸化物と少なくとも1つの触媒活性成分とを含む触媒活性層を施与して、担持触媒を得る。
【0034】
本発明による金属発泡体Cには、本発明による触媒活性層を特に良好に付与することができる。なぜならば、金属発泡体Cの表面に生成された酸化アルミニウム被膜は、担体酸化物の顕著に良好な結合を保証し、長い耐久性および耐用年数、ならびに顕著に高い機械的安定性、特に摩耗安定性をもたらすためである。
【0035】
少なくとも1つの担体酸化物と少なくとも1つの触媒活性成分とを含む触媒活性層は、例えば連続気泡型の金属発泡体Cの連続した空洞を通じたコーティング懸濁液の吸引または吸い込みによって、金属発泡体Cに施与することができる。なぜならば、連続した空洞および高い形状安定性という点で、金属発泡体Cは自動車の排出ガス用触媒に使用されるモノリス基材に近いためである。また、浸漬法(いわゆる「ディップコーティング」)や吹付け法(いわゆる「スプレーコーティング」)でコーティング懸濁液を施与することも可能である。先行技術で基本的に知られている施与方法のうちどの方法が好ましいかは、第一に、コーティング懸濁液の組成および流動特性に依存し、及び第二に、本発明による金属発泡体の実際の構造に依存する。ディップコーティングは、コーティング懸濁液の様々な特性に対して可能な限り高い許容性を有するため、本発明によるすべての金属発泡体のコーティングに適している。
【0036】
本発明によれば、ステップ(e)において、コーティング懸濁液との接触に続いて、コーティングされた金属発泡体のか焼を行い、担持触媒を得る。
【0037】
本発明によれば、触媒活性層は、少なくとも1つの担体酸化物を含む。本発明の意味での担体酸化物とは、典型的には50~200m/gの高い比表面積を有する無機酸化物である。これらの担体酸化物は、完成した触媒において複数の機能を有する。第一に、これらの担体酸化物は、本発明による金属発泡体によって提供される巨視的な、すなわち幾何学的な表面(これは、本発明の文脈では触媒と反応媒体との接触面と呼ばれる)を、微視的なレベルで増加させる役割を果たす。第二に、これらの担体酸化物は、触媒活性種と相互作用して、反応の過程に影響を及ぼし得る。例えば、担体酸化物の選択は、有機基質分子の複数の官能基が水素と反応し得るような複雑な水素化反応の選択性に影響を及ぼす。さらに担体酸化物は、触媒活性成分が分布する微細な表面を提供する。さらに担体酸化物は、さらなる機能性成分や添加剤を分散させることができるマトリックスを形成し、これは、触媒を特定の用途へ適応させる際に、特定の触媒機能を調整する役割を果たす。
【0038】
好ましくは、担体酸化物は、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化チタン、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0039】
触媒活性層の触媒活性成分としては、遷移金属または遷移金属化合物が用いられ、遷移金属は、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、セリウム、銅、銀、金、およびそれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。
【0040】
さらなる機能性成分および添加剤として、触媒活性層は、アルカリ土類金属の酸化物、遷移金属の酸化物、希土類の酸化物、アルミニウムおよびガリウムの酸化物、ケイ素、ゲルマニウムおよびスズの酸化物、ならびに/またはそれらの混合物から好ましく選択される、無機酸化物を含むことができる。
【0041】
本発明による触媒活性層は、1つ以上の担体酸化物と、1つ以上の触媒活性成分と、任意にさらなる機能性成分および添加剤とを含むことができる。
【0042】
本発明による金属発泡体に触媒を施与するために、成分を水に導入することによりコーティング懸濁液が製造される。ここで、触媒成分は、あらかじめ担体酸化物に対応する金属塩溶液(前駆体溶液)を含浸させておくか、または前駆体溶液をコーティング懸濁液に直接添加し、適宜、すでに懸濁している1つ以上の担体酸化物上に前駆体化合物を沈殿させる、もしくは化学的に誘導して堆積もしくは分解させることで、担体酸化物に施与される。機能性成分および添加剤も、このように導入してもよいし、酸化性固体として直接添加してもよい。あるいは、本発明による金属発泡体に担体酸化物を施与した後に、可溶性前駆体から生じる触媒の全成分を含浸法で添加することもできる。製造方法の選択は、得られる触媒の目標とする組成と調整すべき特性とによって決まる。
【0043】
好ましくは、本発明による方法のステップ(e)で金属発泡体に施与された触媒活性層の固定化は、空気中でのか焼によって行われる。
【0044】
本発明によれば、このか焼は、空気中で200℃~800℃の温度で、1分~8時間の時間にわたって行われる。好ましくは本発明によれば、か焼は、空気中で200℃~680℃の温度で、1~480分の時間にわたって行われる。特に好ましくは、か焼は、空気中で300℃~650℃の温度で1~480分の時間にわたって行われる。
【0045】
好ましくは、本発明によれば、ステップ(d)の熱酸化は、空気中で200℃~680℃の温度で1~60分の時間にわたって行われ、ステップ(e)のか焼は、空気中で200℃~680℃の温度で1~480分の時間にわたって行われる。
【0046】
本発明による担持触媒の製造方法は、既存の方法に比べて著しく低コストである。さらに、本発明による金属発泡体は、表面上にAlが過剰に存在するため純粋な酸化アルミニウム層を形成し、これは、担体材料と触媒層との間の拡散障壁の意義がある。
【0047】
担体酸化物である酸化アルミニウムをベースとする触媒層と、金属発泡体の表面上の酸化アルミニウムとは、同様の系である。そのため、膨張係数が類似しており、熱負荷時の剥離(フレーキング)が少なく、か焼工程後の化合物安定性が非常に優れている。
【0048】
本発明による担持触媒の製造方法に加えて、該方法によって得られる担持触媒自体、および化学変換におけるその使用も、本発明により提供される。
【0049】
本発明による担持触媒は、例えば、固定床式化学プロセスに有利に使用することができる。
【0050】
Co発泡体の実施例
1.金属発泡体の提供
ポリウレタン発泡体上にコバルトを電着させ、その後プラスチック部分を熱分解することにより製造したコバルト製の6つの金属発泡体(a~f)を準備した(メーカー:AATM、寸法:100mm×100mm×2mm、単位面積当たりの重量:1000g/m、平均孔径:580μm)。
【0051】
2.アルミニウムの施与
その後、まず金属発泡体a,b,c,d,e,fにバインダー溶液(ポリエチレンイミン(2.5重量%)水溶液)を吹付け、次に粉末状アルミニウム(メーカー:AMG、平均粒径:<63μm、エチレンビス(ステアラミド)を3重量%添加)を乾燥粉末として施与した(約400g/m)。
【0052】
3.熱処理
その後、金属発泡体a,b,c,d,eを、窒素雰囲気下で炉にて熱処理に供した。その際、まず室温から最高温度まで約15分で加熱し、この温度を規定時間保持した後、200℃の窒素雰囲気に接触させて急冷した。
【0053】
金属発泡体a,d,eの最高温度:
700℃で2分間
金属発泡体bの温度推移:
600℃で2分間
金属発泡体cの温度推移:
750℃で2分間。
【0054】
4.合金化の程度の判定
その後、金属発泡体における合金形成の程度を測定した。このために、金属発泡体の断面を顕微鏡および走査型電子顕微鏡で調べた。金属発泡体a,d,eでは、表面では合金形成が起きているが金属発泡体の内部には非合金化領域が残っているのに対し、金属発泡体bでは合金形成が起きておらず、金属発泡体cでは、金属発泡体の内部に非合金化領域が残らない程度に合金形成が進んでいた。
【0055】
5.酸化処理
続いて、金属発泡体aおよびdの酸化処理を行った。
【0056】
金属発泡体aを、加熱状態で酸化性ガス雰囲気に曝した。このために、金属発泡体を、空気導入下で炉にて700℃に加熱した。
【0057】
金属発泡体dを、まずアルカリ溶液(5重量%のNaOH水溶液、20℃で10分間)と接触させた。発泡体上に白色の析出物が生じる。この析出物は、アルミニウムから水酸化アルミニウムへの変換物である。その後、金属発泡体dを空気中で乾燥させた。白色の析出物を含む乾燥した金属発泡体を、700℃で通常の雰囲気で予熱した炉で予備酸化させて、水酸化アルミニウムを酸化アルミニウムに変換させる。
【0058】
酸化性の前処理には、複数の役割がある:
- さらなる酸化から担体材料を保護する
- 金属系とセラミック系との接着を促進する
- 担体材料上の合金元素の、触媒セラミック層への拡散の障壁となる
【0059】
6.比較処理
以前は未処理のままであった金属発泡体fに、先行技術に記載されているように(国際公開第95/11752号、実施例3参照)酸化アルミニウム層を設けた。このために、金属発泡体fを飽和アルミン酸ナトリウム溶液に3時間完全に浸した後、加水分解反応がおさまるまで脱イオン水中で振り動かし、最後に空気導入下で500℃にて3時間加熱した。
【0060】
7.触媒活性層の施与
その後、金属発泡体a,d,eおよびfに、吹付けにより触媒活性層を施与した。そのために、金属発泡体を水で湿らせた。その後、2.5%のポリエチレンイミン懸濁液を高表面積のχ-酸化アルミニウムとともに撹拌した。水/ポリエチレンイミンと酸化アルミニウムとの混合物を吹き付けた。この吹付けの後に、乾燥オーブン中で空気中にて140℃で30分間の乾燥工程を行った。か焼のために、サンプルを炉中で650℃にて5時間焼成した。コーティング、乾燥、およびか焼の工程を、所望のコーティング量が施与されるまで数回繰り返した。
【0061】
8.得られた担持触媒の試験
最後に、得られた担持触媒について、特に金属発泡体上の触媒活性層の機械的応力に対する耐久性を試験した。多くの場合、引掻試験を実施して、担体発泡体への酸化物触媒活性層の結合品質を調べることができる。しかし、本事例では発泡体の構造が不規則なため、この試験を行うことはできない。そこで、触媒活性層の機械的安定性を調べるために、担体発泡体への酸化物層の結合品質の指標となる温度変化試験を実施した。そのために、金属発泡体a,d,eおよびfを500℃に加熱した後、冷水で急冷した。次いで、各サンプルの損失量、すなわち剥離された触媒層の重量を、剥離された材料のろ過、乾燥および重量測定によって求めた。
【0062】
次の結果が得られた:
金属発泡体aおよびd:3mgの損失
金属発泡体f:10mgの損失
金属発泡体e:50mgの損失
【0063】
金属発泡体aおよびd上の触媒活性層は機械的応力に対して高い耐久性を示したが、金属発泡体f上の触媒活性層の耐久性は著しく低く、金属発泡体e上の触媒活性層の耐久性は非常に低かった。
【0064】
NiCo発泡体の実施例
2.金属発泡体の提供
ポリウレタン発泡体上にニッケルを電着させ、このニッケル上にさらにコバルトを堆積させ、その後プラスチック部分を熱分解することにより製造したニッケル-コバルト製の6つの金属発泡体(a~f)を準備した(メーカー:AATM、寸法:100mm×100mm×2mm、単位面積当たりの重量:1000g/m、平均孔径:580μm)。
【0065】
2.アルミニウムの施与
その後、まず金属発泡体a,b,c,d,e,fにバインダー溶液(ポリエチレンイミン(2.5重量%)水溶液)を吹付け、次に粉末状アルミニウム(メーカー:AMG、平均粒径:<63μm、エチレンビス(ステアラミド)を3重量%添加)を乾燥粉末として施与した(約400g/m)。
【0066】
3.熱処理
その後、金属発泡体a,b,c,d,eを、窒素雰囲気下で炉にて熱処理に供した。その際、まず室温から最高温度まで約15分で加熱し、この温度を規定時間保持した後、200℃の窒素雰囲気に接触させて急冷した。
【0067】
金属発泡体a,d,eの最高温度:
700℃で2分間
金属発泡体bの温度推移:
600℃で2分間
金属発泡体cの温度推移:
750℃で2分間。
【0068】
4.合金化の程度の判定
その後、金属発泡体における合金形成の程度を測定した。このために、金属発泡体の断面を顕微鏡および走査型電子顕微鏡で調べた。金属発泡体a,d,eでは、表面では合金形成が起きているが金属発泡体の内部には非合金化領域が残っているのに対し、金属発泡体bでは合金形成が起きておらず、金属発泡体cでは、金属発泡体の内部に非合金化領域が残らない程度に合金形成が進んでいた。
【0069】
5.酸化処理
続いて、金属発泡体aおよびdの酸化処理を行った。
【0070】
金属発泡体aを、加熱状態で酸化性ガス雰囲気に曝した。このために、金属発泡体を、空気導入下で炉にて700℃に加熱した。
【0071】
金属発泡体dを、まずアルカリ溶液(5重量%のNaOH水溶液)と、20℃で10分間接触させた。発泡体上に白色の析出物が生じる。この析出物は、アルミニウムから水酸化アルミニウムへの変換物である。その後、金属発泡体dを空気中で乾燥させた。白色の析出物を含む乾燥した金属発泡体を、700℃で通常の雰囲気で予熱した炉で予備酸化させて、水酸化アルミニウムを酸化アルミニウムに変換させる。
【0072】
酸化性の前処理には、複数の役割がある:
- さらなる酸化から担体材料を保護する
- 金属系とセラミック系との接着を促進する
- 担体材料上の合金元素の、触媒セラミック層への拡散の障壁となる
【0073】
6.比較処理
以前は未処理のままであった金属発泡体fに、先行技術に記載されているように(国際公開第95/11752号、実施例3参照)酸化アルミニウム層を設けた。このために、金属発泡体fを飽和アルミン酸ナトリウム溶液に3時間完全に浸した後、加水分解反応がおさまるまで脱イオン水中で振り動かし、最後に空気導入下で500℃にて3時間加熱した。
【0074】
7.触媒活性層の施与
その後、金属発泡体a,d,eおよびfに、吹付けにより触媒活性層を施与した。そのために、金属発泡体を水で湿らせた。その後、2.5%のポリエチレンイミン懸濁液を高表面積のχ-酸化アルミニウムとともに撹拌した。水/ポリエチレンイミンと酸化アルミニウムとの混合物を吹き付けた。この吹付けの後に、乾燥オーブン中で空気中にて140℃で30分間の乾燥工程を行った。か焼のために、サンプルを炉中で650℃にて5時間焼成した。コーティング、乾燥、およびか焼の工程を、所望のコーティング量が施与されるまで数回繰り返した。
【0075】
8.得られた担持触媒の試験
最後に、得られた担持触媒について、特に金属発泡体上の触媒活性層の機械的応力に対する耐久性を試験した。多くの場合、引掻試験を実施して、担体発泡体への酸化物触媒活性層の結合品質を調べることができる。しかし、本事例では発泡体の構造が不規則なため、この試験を行うことはできない。そこで、触媒活性層の機械的安定性を調べるために、担体発泡体への酸化物層の結合品質の指標となる温度変化試験を実施した。そのために、金属発泡体a,d,eおよびfを500℃に加熱した後、冷水で急冷した。次いで、各サンプルの損失量、すなわち剥離された触媒層の重量を、剥離された材料のろ過、乾燥および重量測定によって求めた。
【0076】
次の結果が得られた:
金属発泡体aおよびd:4mgの損失
金属発泡体f:12mgの損失
金属発泡体e:48mgの損失
【0077】
金属発泡体aおよびd上の触媒活性層は機械的応力に対して高い耐久性を示したが、金属発泡体f上の触媒活性層の耐久性は著しく低く、金属発泡体e上の触媒活性層の耐久性は非常に低かった。
【国際調査報告】