(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-29
(54)【発明の名称】金属物体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C22C 1/08 20060101AFI20221121BHJP
C23C 24/08 20060101ALI20221121BHJP
B22F 3/11 20060101ALI20221121BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20221121BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20221121BHJP
B01J 23/755 20060101ALI20221121BHJP
B01J 23/86 20060101ALI20221121BHJP
B22F 1/10 20220101ALI20221121BHJP
【FI】
C22C1/08 C
C23C24/08 B
C22C1/08 D
B22F3/11 B
B22F1/00 N
B01J37/02 301H
B01J23/755 M
B01J23/86 M
B22F1/10
B22F3/11
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022519029
(86)(22)【出願日】2020-09-25
(85)【翻訳文提出日】2022-03-24
(86)【国際出願番号】 EP2020076822
(87)【国際公開番号】W WO2021058702
(87)【国際公開日】2021-04-01
(32)【優先日】2019-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ルネ ポス
(72)【発明者】
【氏名】モニカ ベアヴァイラー
(72)【発明者】
【氏名】マイケ ロース
【テーマコード(参考)】
4G169
4K018
4K044
【Fターム(参考)】
4G169AA01
4G169AA08
4G169AA11
4G169BB02A
4G169BB02B
4G169BC10A
4G169BC16A
4G169BC16B
4G169BC31A
4G169BC50A
4G169BC58A
4G169BC58B
4G169BC59A
4G169BC66A
4G169BC67A
4G169BC67B
4G169BC68A
4G169BC68B
4G169BD05A
4G169DA05
4G169EB11
4G169EC28
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4G169EE09
4K018AA03
4K018AA07
4K018AA10
4K018AA14
4K018AA24
4K018AA40
4K018BA02
4K018BA04
4K018BA08
4K018BA13
4K018BB04
4K018KA22
4K044AA06
4K044AB08
4K044BA02
4K044BA10
4K044BB01
4K044BB13
4K044CA22
4K044CA24
4K044CA27
4K044CA53
4K044CA62
(57)【要約】
本発明は、金属物体に金属粉末組成物を施与することによりコーティングされた金属物体を得るが、ただし、そのコーティングは、1つ以上のワックス成分を含むものとし、このコーティングされた金属物体を、ワックス成分のうち少なくとも1つの溶融温度まで加熱した後に室温まで冷却することによりコーティングされた金属物体を得て、このコーティングされた金属物体を熱処理して、金属物体の金属部分と金属粉末組成物との間に合金を形成することによりコーティングされた金属物体を製造する方法であって、ここで、金属物体は、ニッケル、コバルト、銅および/または鉄を含み、金属粉末組成物は、粉末状金属成分を含み、この粉末状金属成分は、アルミニウム、ケイ素またはマグネシウムを、単体のまたは合金化された形態で含むものとする方法に関する。本方法では、ワックスを溶融および冷却することで、より均一な合金被覆を有する金属物体が得られる。本発明はさらに、次いで、金属物体を塩基性溶液で処理する方法に関する。さらに本発明は、本発明による方法により得られる金属物体を含み、この金属物体は、例えば支持部品および構造部品として、ならびに触媒技術において用いられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティングされた金属物体の製造方法であって、前記方法は、
(a)金属物体に金属粉末組成物を施与することにより、コーティングされた金属物体1を得るが、ただし、そのコーティングは、1つ以上のワックス成分を含むものとするステップと、
(b)前記コーティングされた金属物体1を、前記ワックス成分のうち少なくとも1つの溶融温度まで加熱した後に室温まで冷却することにより、コーティングされた金属物体2を得るステップと、
(c)前記コーティングされた金属物体2を熱処理して、金属物体の金属部分と金属粉末組成物との間に合金を形成することにより、金属物体3を得るステップと
を含み、ここで、
前記ステップ(a)で使用される金属物体は、ニッケル、コバルト、銅、鉄の群から選択される金属成分を含み、
前記ステップ(a)で使用される金属粉末組成物は、粉末状金属成分を含み、前記粉末状金属成分は、アルミニウム、ケイ素またはマグネシウムを、単体のまたは合金化された形態で含む、方法。
【請求項2】
前記ステップ(a)で使用される金属物体は、金属発泡体である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ステップ(a)で使用される金属物体は、以下:
(i)金属ニッケル
(ii)金属コバルト
(iii)金属銅
(iv)ニッケルとコバルトとの合金
(v)ニッケルと銅との合金
(vi)2つの別個の金属成分の2つの重なり合う層の集合体であって、この場合、前記金属成分の一方が前記金属物体の内側の層を形成し、前記金属成分の他方が前記金属物体の外側の層を形成し、前記金属成分は、以下の組み合わせのリストから選択される:内側のニッケルおよび外側のコバルト、内側の鉄および外側のニッケル
のいずれかからなる、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記ステップ(a)で使用される金属物体は、Ni、Fe、Co、Cuの群から選択される金属からなる、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記方法のステップ(a)で使用される金属粉末組成物は、以下:アルミニウム、ケイ素、マグネシウム、アルミニウムとクロムとの合金、アルミニウムとモリブデンとの合金、アルミニウムと銅との合金、アルミニウムと鉄との合金、アルミニウムと鉄とクロムとの合金、アルミニウムとチタンとの合金、アルミニウムとモリブデンとチタンとの合金、ケイ素とクロムとの合金、ケイ素とモリブデンとの合金、ケイ素と銅との合金、ケイ素と鉄との合金、ケイ素と鉄とクロムとの合金、ケイ素とチタンとの合金、ケイ素とモリブデンとチタンとの合金、マグネシウムとクロムとの合金、マグネシウムとモリブデンとの合金、マグネシウムと銅との合金、マグネシウムと鉄との合金、マグネシウムと鉄とクロムとの合金、マグネシウムとチタンとの合金、マグネシウムとモリブデンとチタンとの合金の群から選択される1つ以上の粉末状金属成分を含む、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記ステップ(a)で使用される金属粉末組成物は、粉末状アルミニウムと1つ以上の粉末状ワックス成分とからなる、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記ステップ(a)で得られたコーティングされた金属物体1のコーティング中のワックス成分のうち少なくとも1つは、45~160℃の範囲の凝固温度を有する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
1つ以上のワックス成分を、前記ステップ(a)で使用される金属粉末組成物に添加する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
(d)前記金属物体3を塩基性溶液で処理するステップ
をさらに含む、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記塩基性溶液による金属物体3の処理を、20~120℃の範囲の温度で、5分~8時間の範囲の継続時間で行い、前記塩基性溶液は、2~30重量%のNaOH濃度を有するNaOH水溶液である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
請求項1から8までのいずれか1項記載の方法により得られた、コーティングされた金属物体。
【請求項12】
請求項9または10記載の方法により得られた、コーティングされた金属物体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
本発明は、コーティングされた金属物体の製造方法であって、金属物体に金属粉末組成物を施与することによりコーティングされた金属物体を得るが、ただし、そのコーティングは、1つ以上のワックス成分を含むものとする方法に関する。次いで、該金属物体をワックスの溶融温度まで加熱し、再度室温まで冷却した後に熱処理して、金属物体の一部と施与した金属粉末との間に合金を形成する。ワックスの溶融およびその後の冷却により、より均一な合金被覆を有する金属物体を得ることができる。これに対応する方法は、特に焼結技術において用いられる。本発明はさらに、この熱処理された金属物体を、その後、塩基性溶液で処理する方法にも関する。これに対応する方法は、特に触媒の製造において用いられる。本発明はさらに、本明細書に開示されている方法により得られる金属物体にも関し、該金属物体は、例えば支持部品および構造部品として、ならびに触媒技術において用いられる。
【0002】
先行技術
合金でコーティングされた金属物体の製造方法は、例えば国際公開第2019057533号などの先行技術から知られている。この方法は、金属物体に金属粉末を施与し、その後、該金属物体を熱処理することで、金属物体と金属粉末との接触領域に合金を形成するものである。
【0003】
この方法の問題点の1つは、金属物体の表面のある部分の合金被覆率が高く、他の部分の合金被覆率が低いという、金属物体の不均一な合金被覆率が生じることにある。そのため、目的とする用途によっては様々な欠点が生じる場合がある。合金被覆率が不均一になる理由はまだ明らかになっていない。
【0004】
合金でコーティングされた金属物体の幅広い用途の可能性を考慮して、その製造方法であって、金属物体のより均一な合金被覆を達成する方法が必要とされている。
【0005】
本発明
本発明は、金属物体のより均一な合金被覆を達成する、対応する方法を提供する。本発明によるコーティングされた金属物体の製造方法は、
(a)金属物体に金属粉末組成物を施与することにより、コーティングされた金属物体1を得るが、ただし、そのコーティングは、1つ以上のワックス成分を含むものとするステップと、
(b)コーティングされた金属物体1を、ワックス成分のうち少なくとも1つの溶融温度まで加熱した後に室温まで冷却することにより、コーティングされた金属物体2を得るステップと、
(c)コーティングされた金属物体2を熱処理して、金属物体の金属部分と金属粉末組成物との間に合金を形成することにより、金属物体3を得るステップと
を含み、ここで、
ステップ(a)で使用される金属物体は、ニッケル、コバルト、銅、鉄の群から選択される金属成分を含み、
ステップ(a)で使用される金属粉末組成物は、粉末状金属成分を含み、該粉末状金属成分は、アルミニウム、ケイ素またはマグネシウムを、単体のまたは合金化された形態で含む。
【0006】
先行技術の方法とは対照的に、本発明による方法では、熱処理による合金形成の前に、まずワックスを溶融させ、次いで再度冷却する(ステップ(b)参照)。本発明に関して得られた実験結果から、目標とするより均一な合金被覆を実現するためには、熱処理による合金形成の前に、ステップ(b)に記載されたワックスの溶融および冷却を実際に行うことが必要であることがわかった。単に金属粉末にワックスを加え、金属粉末の施与(ステップ(a))に続いて熱処理による合金形成(ステップ(c))を行うだけでは不十分である。
【0007】
本発明による方法1のステップ(a)では、金属物体に金属粉末組成物を施与することにより、コーティングされた金属物体1を得るが、ただし、そのコーティングは、1つ以上のワックス成分を含む。
【0008】
本発明による方法のステップ(a)における金属粉末組成物の施与は、様々な方法で行うことができ、例えば、金属物体を圧延または浸漬により金属粉末組成物と接触させることや、金属粉末組成物を吹付け、散布または注型により施与することにより行うことができる。このために、金属粉末組成物は、懸濁液として存在していてもよいし、粉末の形態であってもよい。
【0009】
ここで、好ましくは、本発明による方法のステップ(a)における金属粉末組成物の金属物体への実際の施与の前に、あらかじめ金属物体にバインダーを含浸させる。この含浸は、例えば、バインダーの吹付けや、バインダーへの金属物体の浸漬により行うことができるが、これらの方法に限定されるものではない。このようにして準備した金属物体に、次いで、金属粉末組成物を施与することができる。
【0010】
これに代えて、バインダーおよび金属粉末組成物をワンステップで施与することもできる。このために、金属粉末組成物を、施与前に液体バインダー自体に懸濁させるか、または金属粉末組成物およびバインダーを補助液体Fに懸濁させる。
【0011】
バインダーは、100~400℃の温度範囲での熱処理により完全にガス状物に変換できる組成物であり、金属物体への金属粉末組成物の密着を促進する有機化合物を含む。ここで好ましくは、有機化合物は、以下の群から選択される:ポリエチレンイミン(PEI)、ポリビニルピロリドン(PVP)、エチレングリコール、これらの化合物の混合物。特にPEIが好ましい。ポリビニルピロリドンの分子量は、好ましくは10,000~1,300,000g/molの範囲にある。ポリエチレンイミンの分子量は、好ましくは10,000~1,300,000g/molの範囲にある。ポリエチレンイミン(PEI)の分子量は、特に好ましくは700,000~800,000g/molの範囲にある。
【0012】
補助液体Fは、金属粉末組成物およびバインダーを懸濁させるのに適しており、かつ100~400℃の温度範囲で熱処理することにより完全にガス状物に変換できるものでなければならない。好ましくは、補助液体Fは、以下の群から選択される:水、エチレングリコール、PVP、およびこれらの化合物の混合物。通常、補助液体を使用する場合には、バインダーを1~10重量%の範囲の濃度で水に懸濁させた後、この懸濁液に金属粉末組成物を懸濁させる。
【0013】
本発明による方法のステップ(a)の終わりに、そのコーティングが1つ以上のワックス成分を含む、コーティングされた金属物体1を得るためには、1つ以上のワックス成分をコーティングに加えなければならない。このために、以下の手法を単独でまたは組み合わせて選択することができる:
(i)1つ以上のワックス成分を、金属粉末組成物に添加する
(ii)1つ以上のワックス成分を、バインダーに添加する
(iii)1つ以上のワックス成分を、補助液体Fに添加する
(iv)1つ以上のワックス成分を、コーティングされていない金属物体に施与する
(v)1つ以上のワックス成分を、バインダーでコーティングされた金属物体に施与する
(vi)1つ以上のワックス成分を、金属粉末組成物でコーティングされた金属物体1に施与する。
【0014】
本発明の好ましい実施形態では、1つ以上のワックス成分を、金属粉末組成物に添加する(手法(i))。
【0015】
ワックスは、その機械的・物理的特性によって規定される物質である。その化学組成や起源は、非常に異なり得る。ワックスが類似の合成物や天然物(例えば、樹脂、プラスチック材料、金属石鹸など)と異なる点は主に、一般的に約50~90℃において、例外的に約250℃までにおいて、溶融液状の低粘度の状態に変化することと、灰分を形成する化合物を実質的に含まないことである。ワックスは、その起源によって3つの群に分けられ、すなわち、(i)天然ワックスであり、これには、植物性ワックス(例えば、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、木ロウ、エスパルトグラスロウ、コルクロウ、グアルマ(Guaruma)ロウ、米胚芽油ロウ、サトウキビロウ、オーリクリーロウ、モンタンロウなど)、動物性ワックス(例えば、ミツロウ、シェラックロウ、鯨ロウ、ラノリンあるいは羊毛ロウ、尾腺グリースなど)、および鉱物性ワックス(例えば、セレシン、オゾケライトあるいはアースワックスなど)が含まれる;(ii)化学修飾ワックスであり、これには、硬ロウ(例えば、モンタンエステルロウ、サソールロウ、水添ホホバロウなど)が含まれる;および(iii)合成ワックスであり、これには、ポリアルキレンワックス、ポリアルキレングリコールワックス(例えば、ポリエチレングリコールワックス)が含まれる、などの群に分けられる。再生可能な天然ワックスの主成分は、長鎖脂肪酸(ワックス酸)と長鎖脂肪アルコールとのエステル、またはトリテルペンもしくはステロイドアルコールのエステルであり、これらのワックスエステルには、遊離のカルボキシル基および/またはヒドロキシル基も含まれる。例えば褐炭や石油に由来する、天然の化石ワックスは、フィッシャー・トロプシュ合成によるワックスやポリアルキレンワックス(例えば、ポリエチレンワックス)と同様に、主に直鎖状の炭化水素からなるが、産地によっては分岐状や脂環式の炭化水素が含まれている場合もある。多くの場合、これらの「炭化水素ワックス」は、その後の酸化によって、またはポリオレフィンワックスの場合にはカルボキシル基を有するコモノマーによって、官能化される。ワックスという用語のさらなる詳細については、Roempp Chemielexikon, 10. edition, vol. 6, 1999, Georg Thieme Verlag Stuttgart/New York, p. 4906, 見出し語「Wachse」、およびそこで言及されている文献、特にCosm. Toil. 101, 49 (1986)のほか、DGF-Einheitsmethoden, Abteilung M- Wachse und Wachsprodukte, 7. Ergaenzungslieferung 05/1999, Stuttgart: Wissenschaftliche Verlagsgesellschaftが参照され、前述の文献はその全体が参照により本願に組み込まれる。
【0016】
物質または物質混合物は、以下の場合に、本発明の意味におけるワックス成分と称される:
(i)20℃で混練可能な固体であり、
(ii)40℃超の温度範囲で分解せずに溶融し、かつ
(iii)100~400℃の温度範囲での熱分解により完全にガス状物に変換できる
【0017】
疎水性のワックス成分が好ましく、すなわち、これらの物質もしくは物質混合物から構成された表面、またはこれらの物質もしくは物質混合物でコーティングされた表面の、水との接触角が90度よりも大きいことが好ましい。
【0018】
好ましくは、すべてのワックス成分は、90~250℃の範囲の凝固温度を有する。
【0019】
特に好ましいのは、凝固温度が45~160℃、特に100~160℃であるワックス成分である。
【0020】
特に好ましくは、ワックス成分は、ステアラミドワックス(エチレンビス(ステアラミド)、EBS)である。
【0021】
全ワックス成分の総量は、(本発明による方法のステップ(b)により得られる)金属物体2のコーティングの総重量に対するその割合が0.5~5重量%となるように選択される。好ましくは、金属物体2のコーティングの総重量に対する全ワックス成分の総量の割合は、1重量%~4重量%である。金属物体2のコーティングの総重量は、金属物体2とステップ(a)で使用されるコーティングされていない金属物体との重量差に相当する。
【0022】
本発明によれば、ステップ(a)で使用される金属物体は、ニッケル、コバルト、銅、鉄の群から選択される金属成分を含む。
【0023】
好ましい実施形態では、ステップ(a)で使用される金属物体は、以下のいずれかからなる:
(i)金属ニッケル
(ii)金属コバルト
(iii)金属銅
(iv)ニッケルとコバルトとの合金
(v)ニッケルと銅との合金
(vi)2つの別個の金属成分の2つの重なり合う層の集合体であって、この場合、金属成分の一方が金属物体の内側の層を形成し、金属成分の他方が金属物体の外側の層を形成し、金属成分は、以下の組み合わせのリストから選択される:内側のニッケルおよび外側のコバルト、内側の鉄および外側のニッケル。
【0024】
さらなる好ましい実施形態では、ステップ(a)で使用される金属物体は、Ni、Fe、Co、Cuの群から選択される金属からなる。
【0025】
本発明による方法のステップ(a)で使用される金属物体は、例えば、立方体形、直方体形、円筒形などの任意の所望の形状を有することができる。しかし、金属物体は、発泡体、網目状物、織物、緯編物(loop-drawn knits)または経編物(loop-formed knits)の形態を有することもでき、これらは、モノリスに成形されてもよい。好ましくは、本発明による方法のステップ(a)で使用される金属物体は、発泡体、網目状物、織物、緯編物または経編物の形態である。
【0026】
本発明による方法の特に好ましい実施形態では、ステップ(a)で使用される金属物体は、金属発泡体である。本発明に関して、金属発泡体とは、例えば2012年7月15日付でオンライン公開されたUllmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,「Metallic Foams」の章, DOI: 10.1002/14356007.c16_c01.pub2に開示されているようなフォーム状の金属物体を意味すると理解される。原理的には、孔径および細孔の形状、層厚、面密度、幾何学的表面、気孔率などに関して様々な形態的特性を有する金属発泡体が適している。好ましくは、Ni、Cuおよび/またはCoから構成される金属発泡体は、400~1500g/m2の範囲の密度、400~3000μm、好ましくは400~800μmの孔径、および0.5~10mm、好ましくは1.0~5.0mmの範囲の厚さを有する。製造は、公知の方法で行うことができる。例えば、有機ポリマー製の発泡体を少なくとも1つの第1の金属でコーティングした後、例えば熱分解や適切な溶媒への溶解などによりポリマーを除去することができ、その際に金属発泡体が得られる。少なくとも1つの第1の金属またはその前駆体でコーティングするために、有機ポリマー製の発泡体を、第1の金属を含む溶液または懸濁液と接触させてもよい。これは、例えば、吹付けや浸漬によって行うことができる。また、化学気相成長法(chemical vapor deposition、CVD)による堆積も可能である。例えば、ポリウレタンフォームに第1の金属をコーティングした後、ポリウレタンフォームを熱分解させることができる。発泡体の形態の成形体を製造するのに適したポリマー発泡体は、好ましくは100~5000μm、特に好ましくは450~4000μm、特に450~3000μmの範囲の孔径を有する。適切なポリマー発泡体は、好ましくは5~60mm、特に好ましくは10~30mmの層厚を有する。適切なポリマー発泡体は、好ましくは300~1200kg/m3の密度を有する。比表面積は、好ましくは100~20000m2/m3、特に好ましくは1000~6000m2/m3の範囲にある。気孔率は、好ましくは0.50~0.95の範囲にある。
【0027】
本発明による方法のステップ(a)で使用される金属粉末組成物は、1つ以上の粉末状金属成分に加えて、1つ以上のワックス成分および/または流動性もしくは耐水性の向上に寄与する添加剤を含むことができる。このような添加剤は、100~400℃の温度範囲で熱処理することにより完全にガス状物に変換できるものでなければならない。本発明による方法のステップ(a)で使用される金属粉末組成物は、以下の群から選択される1つ以上の粉末状金属成分を含む:アルミニウム、アルミニウム合金、ケイ素、ケイ素合金、マグネシウム、マグネシウム合金。好ましい実施形態では、ステップ(a)で使用される金属粉末組成物は、以下:アルミニウム、ケイ素、マグネシウム、アルミニウムとクロムとの合金、アルミニウムとモリブデンとの合金、アルミニウムと銅との合金、アルミニウムと鉄との合金、アルミニウムと鉄とクロムとの合金、アルミニウムとチタンとの合金、アルミニウムとモリブデンとチタンとの合金、ケイ素とクロムとの合金、ケイ素とモリブデンとの合金、ケイ素と銅との合金、ケイ素と鉄との合金、ケイ素と鉄とクロムとの合金、ケイ素とチタンとの合金、ケイ素とモリブデンとチタンとの合金、マグネシウムとクロムとの合金、マグネシウムとモリブデンとの合金、マグネシウムと銅との合金、マグネシウムと鉄との合金、マグネシウムと鉄とクロムとの合金、マグネシウムとチタンとの合金、マグネシウムとモリブデンとチタンとの合金の群から選択される1つ以上の粉末状金属成分を含む。本発明による方法のさらなる好ましい実施形態では、ステップ(a)で使用される金属粉末組成物は、粉末状アルミニウムを含む。本発明による方法の特に好ましい実施形態では、ステップ(a)で使用される金属粉末組成物は、粉末状アルミニウムと1つ以上の粉末状ワックス成分とからなる。
【0028】
好ましい実施形態では、本発明による方法のステップ(a)で使用される金属粉末組成物は、1つ以上のワックス成分を含む。ワックス成分を添加することで、金属粉末組成物の流動性が高まり、ひいては工業的な搬送性が向上する。また、ワックス成分は、金属粉末組成物を吸水から保護し、粉末状金属と水との化学反応の程度をさらに低下させ、ひいては水素形成を抑制する場合もある。
【0029】
好ましくは、金属粉末組成物は、80~99.8重量%の範囲の金属成分含有量を有する。ここで、金属成分粒子が5μm以上200μm以下の粒径を有する組成物が好ましい。特に好ましいのは、金属成分粒子の95%が5μm以上75μm以下の粒径を有する組成物である。組成物は、単体形態の金属成分に加えて、酸化形態の金属成分も含むことができる。この酸化成分は、通常、例えば酸化物、水酸化物および/または炭酸塩などの酸化性化合物の形態である。典型的には、酸化成分の重量分率は、金属粉末組成物の総重量の0.05~10%の範囲にある。
【0030】
本発明による方法のステップ(b)では、コーティングされた金属物体1を、ワックス成分のうち少なくとも1つの溶融温度まで加熱した後に室温まで冷却することにより、コーティングされた金属物体2を得る。典型的には、このステップでは、コーティングされた金属物体1を90~250℃の範囲の温度に加熱する。コーティングされた金属物体1をステップ(b)で加熱するための熱源としては、通常はオーブンが用いられるが、原理的には、例えば赤外線ランプなどの他の熱源を用いることもできる。室温への冷却は、制御された冷却速度で行う必要はなく、典型的には、加熱に使用した熱源をオフにして、金属物体を室温に平衡させることによって達成される。金属物体は、ステップ(b)の実施中に、空気、酸素または不活性保護ガスから構成されるガス雰囲気に包囲されていてもよく、このガス雰囲気は、周囲圧、常圧、またはわずかに減圧(1~300mbar)であってよい。本発明による方法のステップ(b)を実施する際の目的は、単にワックス成分を溶融および冷却することだけであり、このステップでは、熱分解によって有機成分を除去することや、金属成分間の合金形成を誘発したりすることは意図していない。本発明に関して、室温は、25℃の温度と理解される。
【0031】
本発明の一実施形態では、コーティングされた金属物体1を、ワックス成分のうち正確に1つの溶融温度まで加熱した後に室温まで冷却する。別の実施形態では、コーティングされた金属物体1を、すべてのワックス成分が溶融するまで加熱した後に室温まで冷却する。好ましい実施形態では、コーティングされた金属物体1を、すべてのワックス成分の総重量の少なくとも半分が溶融するまで加熱した後に室温まで冷却する。
【0032】
本発明による方法のステップ(c)では、コーティングされた金属物体2を熱処理して、金属物体の金属部分と金属粉末組成物との間に合金を形成することにより、金属物体3を得る。熱処理は、コーティングされた金属物体2を通常は段階的に加熱することと、その後に室温まで冷却することとを含む。ステップ(c)の適切な合金化条件は、関与する金属および金属間相の相図、例えば、NiおよびAlの相図から得られる。例えば、NiAl3やNi2Al3などのAlリッチな浸出性成分の割合を制御することができる。熱処理は、不活性ガスまたは還元的な条件下で行われる。還元的な条件とは、水素と、反応条件下で不活性な少なくとも1つのガスとを含むガス混合物の存在を意味し、例えば、50体積%のN2と50体積%のH2とを含むガス混合物が適している。不活性ガスとしては、窒素が好ましく使用される。加熱は、例えばコンベヤー炉などで行うことができる。適切な加熱速度は、10~200K/分、好ましくは20~180K/分の範囲にある。徐々に加熱および/または冷却を行うように、熱処理のある期間では温度を一定に保つことが有利な場合がある。熱処理の間に、通常はまず室温から約300~400℃まで温度を上げ、この温度で約2~30分の時間にわたって水分や有機成分をコーティングから除去した後、金属物体の金属部分と金属粉末組成物との間に合金が形成されるまで約650~750℃に温度を上げ、その後、金属物体を約200℃の温度の保護ガス環境に接触させて急冷する。
【0033】
さらなる態様では、本発明は、以下のステップ(d)を含む方法をさらに含む:金属物体3を塩基性溶液で処理する。塩基性溶液による金属物体3の処理は、施与した金属粉末組成物の金属成分や、金属物体の金属部分と金属粉末組成物との間の合金を少なくとも部分的に溶解させ、このようにして金属物体から除去する役割を果たし得る。典型的には、施与した金属粉末組成物の金属成分および金属物体の金属部分と金属粉末組成物との間の合金の総重量の30~70重量%が、塩基性溶液による処理によって金属物体から除去される。塩基性溶液としては、通常、NaOH、KOH、LiOHまたはこれらの混合物の塩基性水溶液が用いられる。塩基処理の温度は、通常は25~120℃の範囲で保持される。塩基性溶液による処理の継続時間は、通常は5分~8時間の範囲にある。金属成分を適切に選択した場合、塩基性溶液で処理した結果として得られる金属物体は、国際公開第2019057533号に開示されているように、触媒として使用することができる。
【0034】
好ましい実施形態では、塩基性溶液による金属物体3の処理は、20~120℃の範囲の温度で、5分~8時間の範囲の継続時間で行われ、塩基性溶液は、2~30重量%のNaOH濃度を有するNaOH水溶液である。
【0035】
さらなる態様では、本発明は、本発明による方法により得られるコーティングされた金属物体をさらに含む。
【0036】
さらなる好ましい実施形態では、本発明はさらに、以下の方法、およびそれにより得られる金属物体に関する:
ステップ(a)で使用される金属物体は、Ni、Fe、Co、Cuの群から選択される金属からなり、
ステップ(d)において、金属物体3を塩基性溶液で処理する。
【0037】
さらなる好ましい実施形態では、本発明はさらに、以下の方法、およびそれにより得られる金属物体に関する:
ステップ(a)で使用される金属粉末組成物は、以下:アルミニウム、ケイ素、マグネシウム、アルミニウムとクロムとの合金、アルミニウムとモリブデンとの合金、アルミニウムと銅との合金、アルミニウムと鉄との合金、アルミニウムと鉄とクロムとの合金、アルミニウムとチタンとの合金、アルミニウムとモリブデンとチタンとの合金、ケイ素とクロムとの合金、ケイ素とモリブデンとの合金、ケイ素と銅との合金、ケイ素と鉄との合金、ケイ素と鉄とクロムとの合金、ケイ素とチタンとの合金、ケイ素とモリブデンとチタンとの合金、マグネシウムとクロムとの合金、マグネシウムとモリブデンとの合金、マグネシウムと銅との合金、マグネシウムと鉄との合金、マグネシウムと鉄とクロムとの合金、マグネシウムとチタンとの合金、マグネシウムとモリブデンとチタンとの合金の群から選択される1つ以上の粉末状金属成分を含み、
ステップ(d)において、金属物体3を塩基性溶液で処理する。
【0038】
さらなる好ましい実施形態では、本発明はさらに、以下の方法、およびそれにより得られる金属物体に関する:
ステップ(a)で使用される金属物体は、Ni、Fe、Co、Cuの群から選択される金属からなり、
ステップ(a)で使用される金属粉末組成物は、以下:アルミニウム、ケイ素、マグネシウム、アルミニウムとクロムとの合金、アルミニウムとモリブデンとの合金、アルミニウムと銅との合金、アルミニウムと鉄との合金、アルミニウムと鉄とクロムとの合金、アルミニウムとチタンとの合金、アルミニウムとモリブデンとチタンとの合金、ケイ素とクロムとの合金、ケイ素とモリブデンとの合金、ケイ素と銅との合金、ケイ素と鉄との合金、ケイ素と鉄とクロムとの合金、ケイ素とチタンとの合金、ケイ素とモリブデンとチタンとの合金、マグネシウムとクロムとの合金、マグネシウムとモリブデンとの合金、マグネシウムと銅との合金、マグネシウムと鉄との合金、マグネシウムと鉄とクロムとの合金、マグネシウムとチタンとの合金、マグネシウムとモリブデンとチタンとの合金の群から選択される1つ以上の粉末状金属成分を含む。
【0039】
さらなる好ましい実施形態では、本発明はさらに、以下の方法、およびそれにより得られる金属物体に関する:
ステップ(a)で使用される金属物体は、Ni、Fe、Co、Cuの群から選択される金属からなり、
ステップ(a)で使用される金属粉末組成物は、以下:アルミニウム、ケイ素、マグネシウム、アルミニウムとクロムとの合金、アルミニウムとモリブデンとの合金、アルミニウムと銅との合金、アルミニウムと鉄との合金、アルミニウムと鉄とクロムとの合金、アルミニウムとチタンとの合金、アルミニウムとモリブデンとチタンとの合金、ケイ素とクロムとの合金、ケイ素とモリブデンとの合金、ケイ素と銅との合金、ケイ素と鉄との合金、ケイ素と鉄とクロムとの合金、ケイ素とチタンとの合金、ケイ素とモリブデンとチタンとの合金、マグネシウムとクロムとの合金、マグネシウムとモリブデンとの合金、マグネシウムと銅との合金、マグネシウムと鉄との合金、マグネシウムと鉄とクロムとの合金、マグネシウムとチタンとの合金、マグネシウムとモリブデンとチタンとの合金の群から選択される1つ以上の粉末状金属成分を含み、
ステップ(d)において、金属物体3を塩基性溶液で処理する。
【0040】
さらなる好ましい実施形態では、本発明はさらに、以下の方法、およびそれにより得られる金属物体に関する:
ステップ(a)で使用される金属物体は、Ni、Fe、Co、Cuの群から選択される金属からなり、
ステップ(a)で使用される金属粉末組成物は、以下:アルミニウム、ケイ素、マグネシウム、アルミニウムとクロムとの合金、アルミニウムとモリブデンとの合金、アルミニウムと銅との合金、アルミニウムと鉄との合金、アルミニウムと鉄とクロムとの合金、アルミニウムとチタンとの合金、アルミニウムとモリブデンとチタンとの合金、ケイ素とクロムとの合金、ケイ素とモリブデンとの合金、ケイ素と銅との合金、ケイ素と鉄との合金、ケイ素と鉄とクロムとの合金、ケイ素とチタンとの合金、ケイ素とモリブデンとチタンとの合金、マグネシウムとクロムとの合金、マグネシウムとモリブデンとの合金、マグネシウムと銅との合金、マグネシウムと鉄との合金、マグネシウムと鉄とクロムとの合金、マグネシウムとチタンとの合金、マグネシウムとモリブデンとチタンとの合金の群から選択される1つ以上の粉末状金属成分を含み、
1つ以上のワックス成分を、金属粉末組成物に添加する。
【0041】
さらなる好ましい実施形態では、本発明はさらに、以下の方法、およびそれにより得られる金属物体に関する:
ステップ(a)で使用される金属物体は、Ni、Fe、Co、Cuの群から選択される金属からなり、
ステップ(a)で使用される金属粉末組成物は、以下:アルミニウム、ケイ素、マグネシウム、アルミニウムとクロムとの合金、アルミニウムとモリブデンとの合金、アルミニウムと銅との合金、アルミニウムと鉄との合金、アルミニウムと鉄とクロムとの合金、アルミニウムとチタンとの合金、アルミニウムとモリブデンとチタンとの合金、ケイ素とクロムとの合金、ケイ素とモリブデンとの合金、ケイ素と銅との合金、ケイ素と鉄との合金、ケイ素と鉄とクロムとの合金、ケイ素とチタンとの合金、ケイ素とモリブデンとチタンとの合金、マグネシウムとクロムとの合金、マグネシウムとモリブデンとの合金、マグネシウムと銅との合金、マグネシウムと鉄との合金、マグネシウムと鉄とクロムとの合金、マグネシウムとチタンとの合金、マグネシウムとモリブデンとチタンとの合金の群から選択される1つ以上の粉末状金属成分を含み、
1つ以上のワックス成分を、金属粉末組成物に添加し、
ステップ(d)において、金属物体3を塩基性溶液で処理する。
【0042】
さらなる好ましい実施形態では、本発明はさらに、以下の方法、およびそれにより得られる金属物体に関する:
ステップ(a)で使用される金属物体は、Ni、Fe、Co、Cuの群から選択される金属からなり、
ステップ(a)で使用される金属粉末組成物は、以下:アルミニウム、ケイ素、マグネシウム、アルミニウムとクロムとの合金、アルミニウムとモリブデンとの合金、アルミニウムと銅との合金、アルミニウムと鉄との合金、アルミニウムと鉄とクロムとの合金、アルミニウムとチタンとの合金、アルミニウムとモリブデンとチタンとの合金、ケイ素とクロムとの合金、ケイ素とモリブデンとの合金、ケイ素と銅との合金、ケイ素と鉄との合金、ケイ素と鉄とクロムとの合金、ケイ素とチタンとの合金、ケイ素とモリブデンとチタンとの合金、マグネシウムとクロムとの合金、マグネシウムとモリブデンとの合金、マグネシウムと銅との合金、マグネシウムと鉄との合金、マグネシウムと鉄とクロムとの合金、マグネシウムとチタンとの合金、マグネシウムとモリブデンとチタンとの合金の群から選択される1つ以上の粉末状金属成分を含み、
1つ以上のワックス成分を、金属粉末組成物に添加し、
ステップ(a)で使用される金属物体は、金属発泡体である。
【0043】
さらなる好ましい実施形態では、本発明はさらに、以下の方法、およびそれにより得られる金属物体に関する:
ステップ(a)で使用される金属物体は、Ni、Fe、Co、Cuの群から選択される金属からなり、
ステップ(a)で使用される金属粉末組成物は、以下:アルミニウム、ケイ素、マグネシウム、アルミニウムとクロムとの合金、アルミニウムとモリブデンとの合金、アルミニウムと銅との合金、アルミニウムと鉄との合金、アルミニウムと鉄とクロムとの合金、アルミニウムとチタンとの合金、アルミニウムとモリブデンとチタンとの合金、ケイ素とクロムとの合金、ケイ素とモリブデンとの合金、ケイ素と銅との合金、ケイ素と鉄との合金、ケイ素と鉄とクロムとの合金、ケイ素とチタンとの合金、ケイ素とモリブデンとチタンとの合金、マグネシウムとクロムとの合金、マグネシウムとモリブデンとの合金、マグネシウムと銅との合金、マグネシウムと鉄との合金、マグネシウムと鉄とクロムとの合金、マグネシウムとチタンとの合金、マグネシウムとモリブデンとチタンとの合金の群から選択される1つ以上の粉末状金属成分を含み、
1つ以上のワックス成分を、金属粉末組成物に添加し、
ステップ(d)において、金属物体3を塩基性溶液で処理し、
ステップ(a)で使用される金属物体は、金属発泡体である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】ワイヤーメッシュ製の平坦なブランクを示す図。
【
図2】コバルト発泡体製の平坦なブランクの透光性を示す図。
【
図3】コバルト発泡体製の平坦なブランクの透光性を示す図。
【
図4】ニッケル/コバルト発泡体のサンプルのSEM像を示す図。
【
図5】ニッケル発泡体製の平坦なブランクを示す図。
【0045】
実施例
A - ニッケル発泡体のコーティング
1.金属物体への金属粉末組成物の施与
単位面積当たりの重量1000g/m2、平均孔径580μmの平板状の2つのニッケル製金属発泡体(1.9mm×300mm×860mm)に、まずそれぞれ40gのバインダー溶液(2.5重量%のポリエチレンイミン水溶液)を吹き付けた。その直後に、乾燥した粉末状アルミニウム(粒径d99=90μm)に粉末状Ceretan(登録商標)-7080ワックス(融点140~160℃の範囲)を3重量%混合したものを金属物体に施与した(約400g/m2)。
【0046】
2.ワックス成分の溶融および再固化
その後、金属発泡体のうち一方を実験室用オーブンで160℃まで加熱した後、再び室温まで冷却した。
【0047】
3.熱処理による合金形成
その後、双方の金属発泡体を、コンベヤー焼結炉(メーカー:Sarnes)で窒素雰囲気下にて熱処理による合金形成に供した。その際、その炉を室温から725℃まで15分かけて加熱し、温度を725℃で2分間保持した後、200℃の窒素雰囲気に接触させて急冷した。
【0048】
4.合金被覆の均一性の判定
最後に、双方の金属発泡体の合金被覆の均一性に関する情報を得るために、双方の金属発泡体の部分領域の単位面積当たりの重量のばらつきを調べた。このために、双方の金属発泡体のすべての部分領域から、それぞれ直径30mmの円形の切り抜き部分を36個打ち抜いて、秤量した。
【0049】
続いて、PFR値(powder foam ratio、粉体発泡倍率)を、以下から求めた:
PFR=100×(m[焼結後]-m[初期発泡体])/m[焼結後]
ここで、
m[焼結後]は、合金形成後に打ち抜かれたそれぞれ直径30mmの円形の切り抜き部分の重量であり、
m[初期発泡体]は、実験開始前の金属発泡体の直径30mmの円形の切り抜き部分の重量である。
【0050】
最後に、双方の金属発泡体について、一連の各PFR値の平均値と実験による標準偏差とを求めた。
【0051】
ワックスの溶融および再固化ステップを経た金属発泡体について、以下の結果が得られた:
平均値:29.7
標準偏差:0.5
【0052】
ワックスの溶融および再固化ステップを経ていない金属発泡体について、以下の結果が得られた:
平均値:27.7
標準偏差:2.3
【0053】
この結果は、ワックスを添加し、熱処理による合金形成の前に溶融および再冷却のステップを行うことで、本発明による金属物体において合金被覆の均一性の大幅な向上が達成されることを明確に示している。
【0054】
B - ワイヤーメッシュのコーティング
1.金属物体への金属粉末組成物の施与
市販の平板状のニッケルワイヤーメッシュ(メッシュサイズ0.163mm)製の2つの金属物体に、まずバインダー溶液(2.5重量%のポリエチレンイミン水溶液)を吹き付けた。その直後、双方の金属物体に、乾燥した粉末状アルミニウム(粒径d99=90μm)に粉末状Ceretan(登録商標)-7080ワックス(融点140~160℃の範囲)を3重量%混合したものを同量施与した。
【0055】
2.ワックス成分の溶融および再固化
その後、金属物体のうち一方を実験室用オーブンで160℃まで加熱した後、再び室温まで冷却した。もう一方の金属物体は、空気中で室温にて24時間乾燥させた。
【0056】
その後、明るいランプで片面を照明して、双方の金属物体の透光性を調べた。その結果、ワックスの溶融および再固化ステップを経た金属物体は、空気中で室温にて乾燥させた物体に比べて、透光性がはるかにより均一であることがわかった。これは、160℃で積極的に乾燥させた金属物体上で、施与した粉末がより均一に分布していることを示している。
【0057】
3.熱処理による合金形成
その後、双方の金属物体を、工業用ベルト焼結炉で窒素雰囲気下にて熱処理による合金形成に供した。その際、オーブンを室温から725℃まで15分かけて加熱し、温度を725℃で2分間保持した後、200℃の窒素雰囲気に接触させて急冷した。
【0058】
C - コバルト発泡体のコーティング
1.金属物体への金属粉末組成物の施与
単位面積当たりの重量1000g/m2、平均孔径580μmの平板状の2つのコバルト製金属発泡体(1.9mm×300mm×860mm)に、まずそれぞれ40gのバインダー溶液(2.5重量%のポリエチレンイミン水溶液)を吹き付けた。その直後に、Al/Cr乾燥粉末(Cr5重量%含有)(粒径d90<63μm、d50=35μm)に粉末状Ceretan(登録商標)-7080ワックス(融点140~160℃の範囲)を3重量%混合したものを金属物体に施与した(約400g/m2)。
【0059】
2.ワックス成分の溶融および再固化
その後、金属物体のうち一方を実験室用オーブンで160℃まで加熱した後、再び室温まで冷却した。もう一方の金属物体は、空気中で室温にて24時間乾燥させた。
【0060】
その後、明るいランプで片面を照明して、双方の金属物体の透光性を調べた。その結果、ワックスの溶融および再固化ステップを経た金属物体は、空気中で室温にて乾燥させた物体に比べて、透光性がはるかにより均一であることがわかった。これは、空気中で室温にて乾燥させた物体において、施与した粉末の分布の均一性がより低いことを示唆している。この結果は、SEM像で確認することができた。SEM像では、細孔が閉じており、この物体に局所的な過負荷が生じていることが識別できた。
【0061】
3.熱処理による合金形成
その後、双方の金属物体を、ベルト焼結炉(メーカー:Sarnes)で窒素雰囲気下にて熱処理による合金形成に供した。その際、その炉を室温から700℃まで15分かけて加熱し、温度を700℃で2分間保持した後、200℃の窒素雰囲気に接触させて急冷した。
【0062】
4.合金被覆の均一性の判定
最後に、双方の金属物体の合金被覆の均一性に関する情報を得るために、双方の金属物体の部分領域の単位面積当たりの重量のばらつきを調べた。このために、双方の金属発泡体のすべての部分領域から、それぞれ直径30mmの円形の切り抜き部分を36個打ち抜いて、秤量した。
【0063】
続いて、PFR値を、以下から求めた:
PFR=100×(m[焼結後]-m[初期物体])/m[焼結後]
ここで、
m[焼結後]は、合金形成後に打ち抜かれたそれぞれ直径30mmの円形の切り抜き部分の重量であり、
m[初期物体]は、実験開始前の金属発泡体の直径30mmの円形の切り抜き部分の重量である。
【0064】
最後に、双方の金属物体について、一連の各PFR値の平均値と実験による標準偏差とを求めた。
【0065】
ワックスの溶融および再固化ステップを経た金属物体について、以下の結果が得られた:
平均値:28.2
標準偏差:0.7
【0066】
ワックスの溶融および再固化ステップを経ていない金属物体について、以下の結果が得られた:
平均値:26.8
標準偏差:2.7
【0067】
この結果は、ワックスを添加し、熱処理による合金形成の前に溶融および再冷却のステップを行うことで、本発明による金属物体において合金被覆の均一性の大幅な向上が達成されることを改めて示している。
【0068】
D - ニッケル/コバルト発泡体のコーティング
1.金属物体への金属粉末組成物の施与
単位面積当たりの重量1000g/m2、平均孔径580μmの平板状の2つのニッケル/コバルト(ニッケル42重量%、コバルト58重量%、テンプレート支援式の層状電気メッキにより製造)製金属発泡体(1.9mm×300mm×860mm)に、まずそれぞれ40gのバインダー溶液(2.5重量%のポリエチレンイミン水溶液)を吹き付けた。その直後に、Al/Cr乾燥粉末(Cr5重量%含有)(粒径d90<63μm、d50=35μm)に粉末状Ceretan(登録商標)-7080ワックス(融点140~160℃の範囲)を3重量%混合したものを金属物体に施与した(約400g/m2)。
【0069】
2.ワックス成分の溶融および再固化
その後、金属物体のうち一方を実験室用オーブンで160℃まで加熱した後、再び室温まで冷却した。もう一方の金属物体は、空気中で室温にて24時間乾燥させた。
【0070】
その後、明るいランプで片面を照明して、双方の金属物体の透光性を調べた。その結果、ワックスの溶融および再固化ステップを経た金属物体は、空気中で室温にて乾燥させた物体に比べて、透光性がはるかにより均一であることがわかった。これは、空気中で室温にて乾燥させた物体において、施与した粉末の分布の均一性がより低いことを示唆している。この結果は、SEM像で確認することができた。SEM像では、細孔が閉じており、この物体に局所的な過負荷が生じていることが識別できた。
【0071】
3.熱処理による合金形成
その後、双方の金属物体を、ベルト焼結炉(メーカー:Sarnes)で窒素雰囲気下にて熱処理による合金形成に供した。その際、その炉を室温から700℃まで15分かけて加熱し、温度を700℃で2分間保持した後、200℃の窒素雰囲気に接触させて急冷した。
【0072】
4.合金被覆の均一性の判定
最後に、双方の金属物体の合金被覆の均一性に関する情報を得るために、双方の金属物体の部分領域の単位面積当たりの重量のばらつきを調べた。このために、双方の金属発泡体のすべての部分領域から、それぞれ直径30mmの円形の切り抜き部分を36個打ち抜いて、秤量した。
【0073】
続いて、PFR値を、以下から求めた:
PFR=100×(m[焼結後]-m[初期物体])/m[焼結後]
ここで、
m[焼結後]は、合金形成後に打ち抜かれたそれぞれ直径30mmの円形の切り抜き部分の重量であり、
m[初期物体]は、実験開始前の金属発泡体の直径30mmの円形の切り抜き部分の重量である。
【0074】
最後に、双方の金属物体について、一連の各PFR値の平均値と実験による標準偏差とを求めた。
【0075】
ワックスの溶融および再固化ステップを経た金属物体について、以下の結果が得られた:
平均値:28.4
標準偏差:0.6
【0076】
ワックスの溶融および再固化ステップを経ていない金属物体について、以下の結果が得られた:
平均値:27.1
標準偏差:2.4
【0077】
この結果は、ワックスを添加し、熱処理による合金形成の前に溶融および再冷却のステップを行うことで、本発明による金属物体において合金被覆の均一性の大幅な向上が達成されることを改めて示している。
【0078】
E - ニッケル発泡体を用いた落下試験
1.金属物体への金属粉末組成物の施与
単位面積当たりの重量1000g/m2、平均孔径580μmの平板状のニッケル製金属発泡体(1.9mm×300mm×860mm)に、まずそれぞれ40gのバインダー溶液(2.5重量%のポリエチレンイミン水溶液)を吹き付けた。その直後に、乾燥した粉末状アルミニウム(粒径d99=90μm)に粉末状Ceretan(登録商標)-7080ワックス(融点140~160℃の範囲)を3重量%混合したものを金属物体に施与した(約400g/m2)。
【0079】
2.ワックス成分の溶融および再固化
その後、金属物体を、1.9×300×200mmの寸法の部分に切断した。1つを実験室用オーブンで160℃まで加熱した後、再び室温まで冷却した。他の金属物体を、空気中で室温にて24時間乾燥させた。1.9×300×200mmの寸法の金属物体の重量は、約85gである。この重量は、粉末23g、ワックス1g未満、およびNi発泡体約61gから構成されている。
【0080】
その後、明るいランプで片面を照明して、双方の金属物体の透光性を調べた。その結果、ワックスの溶融および再固化ステップを経た金属物体は、空気中で室温にて乾燥させた物体に比べて、透光性がはるかにより均一であることがわかった。これは、空気中で室温にて乾燥させた物体において、施与した粉末の分布の均一性がより低いことを示唆している。この結果は、SEM像で確認することができた。SEM像では、細孔が閉じており、この物体に局所的な過負荷が生じていることが識別できた。
【0081】
3.落下試験
続いて、双方の金属物体を秤量した後、10cmの高さから卓上に落下させた。最後に、金属物体を再度秤量した。
【0082】
その結果、空気中で室温にて24時間乾燥させた金属物体では、卓上への落下によって、施与した金属粉末組成物の重量の約6%が失われたのに対し、溶融および再固化ステップを経た金属物体では、施与した金属粉末組成物の重量損失が1%未満であることがわかった。
【0083】
図面の説明
図1
本図は、ワイヤーメッシュ製の平坦なブランクを示している。右側は、元の、つまりコーティングされていない形態であり、左側は、コーティングされた形態、つまり実施例Bに記載されているように、まずアルミニウム粉末組成物を施与し、次にワックス成分の溶融および再固化サイクルを実施した後の形態である。しかし、このアルミニウム粉末組成物に対して、その後、熱処理による合金化を行わなかった。
【0084】
図2
本図は、実施例Cで使用したようなコバルト発泡体製の平坦なブランクに、実施例Cに記載されているように、まず金属粉末組成物を施与し、次に空気中で室温にて24時間乾燥させたものを明るいランプで片面照明した場合の透光性を示す。しかし、この金属粉末組成物に対して、その後、熱処理による合金化を行わなかった。
図3に比べて、透光性の分布の均一性が低いことがわかる。非透光部分は、細孔が閉じているため、金属粉末組成物が局所的に過負荷になっていることを示しており、したがって、施与した金属粉末組成物の分布が不均一であることを示唆している。
【0085】
図3
本図は、コバルト発泡体製の平坦なブランクに、実施例Cに記載されているように、まず金属粉末組成物を施与し、次にワックス成分の溶融および再固化サイクルを経たものを明るいランプで片面照明した場合の透光性を示す。しかし、この金属粉末組成物に対して、その後、熱処理による合金化を行わなかった。
図2に比べて、透光性の分布の均一性がはるかに高いことがわかる。これは、施与した金属粉末組成物の分布がより均一であることを示唆している。
【0086】
図4
本図は、コーティングされた形態のニッケル/コバルト発泡体のサンプル、すなわち、実施例Dに記載されているように金属粉末組成物を施与したが、その後、熱処理による合金化を行っていないサンプルの走査型電子顕微鏡(SEM)像を示す。左側のサンプルは、金属粉末組成物を施与した後に空気中で室温にて24時間乾燥させ、次いでSEMで調べたものである。右側のサンプルは、金属粉末組成物を施与した後にワックス成分の溶融および再固化サイクルを経てからSEMで調べたものである。左側のサンプルでは、閉じた細孔、および部分的にコーティングされていない金属ウェブがはっきりと見える。右側のサンプルでは、閉じた細孔がなく、金属ウェブが均一にコーティングされているのが見える。
【0087】
図5
本図の左側に、ニッケル発泡体製の平坦なブランクを示す。このブランクは、実施例Eに記載されているように、まずアルミニウム粉末組成物を施与した後、空気中で室温にて24時間乾燥させたものである。この金属粉末組成物に対して、その後、熱処理による合金化を行わなかった。本図の右側に、粉末コーティングされた発泡体を下に置いて再度持ち上げた後に残る粉末残渣を示す。
【国際調査報告】