(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-29
(54)【発明の名称】触覚フィードバックを有する内視鏡カプセルシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 1/00 20060101AFI20221121BHJP
【FI】
A61B1/00 611
A61B1/00 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022519256
(86)(22)【出願日】2020-09-23
(85)【翻訳文提出日】2022-05-25
(86)【国際出願番号】 EP2020076623
(87)【国際公開番号】W WO2021058601
(87)【国際公開日】2021-04-01
(32)【優先日】2019-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510285610
【氏名又は名称】オヴェスコ エンドスコピー アーゲー
【住所又は居所原語表記】FRIEDRICH-MIESCHER-STRASSE 9, 72076 TUEBINGEN, GERMANY
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】セバスチャン ショステク
(72)【発明者】
【氏名】マルク シュァー
【テーマコード(参考)】
4C161
【Fターム(参考)】
4C161DD07
4C161FF15
4C161GG28
4C161JJ08
4C161JJ11
(57)【要約】
内視鏡カプセルシステムであって、磁気特性を有しかつ患者の身体の中空臓器内へ導入されるように構成された内視鏡カプセルと;内視鏡カプセルのための体外案内移動機器であって、体外案内移動機器は可動多ヒンジカンチレバーアームを有し、可動多ヒンジカンチレバーアームは一方端部において支持台に枢着されかつエフェクタを備え、エフェクタは磁気特性を有しかつカンチレバーアームの他方自由端部において枢着されており、エフェクタの実際の動きに従って、内視鏡カプセルを追跡し、回転させ、ヨーイングおよび/またはピッチングさせるための、体外案内移動機器と;エフェクタに対する内視鏡カプセルの位置および向きを定めるように設計および構成された制御装置とを備え、少なくともカンチレバーアームおよび/またはエフェクタの事前選択された動きに関して体外案内移動機器に影響を与えるように構成された、力および/もしくはモーメント生成装置または制動装置が設けられており、力および/もしくはモーメント生成装置または制動装置は、制御装置に接続されて、エフェクタに対する内視鏡カプセルの実際に定められた位置および/または向きに従って、カンチレバーアームおよび/またはエフェクタへ手動でかけられる移動力および/または案内力に対する反力および/もしくは反モーメントまたは制動力を生成する、内視鏡カプセルシステム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡カプセルシステム(1)であって、
磁気特性を有しかつ患者の身体(3)の中空臓器内へ導入されるように構成された内視鏡カプセル(2)と、
前記内視鏡カプセル(2)を案内し動かすための体外案内移動機器(4)であって、前記体外案内移動機器(4)は可動多ヒンジカンチレバーアーム(5)を有し、前記カンチレバーアーム(5)は一方端部において支持台(6)に枢着されかつエフェクタ(7)を備え、前記エフェクタ(7)は磁気特性を有しかつ前記カンチレバーアーム(5)の他方自由端部において枢着されており、前記エフェクタ(7)の実際の動きに従って前記内視鏡カプセル(2)を追跡し、回転させ、ヨーイングおよび/またはピッチングさせるための、体外案内移動機器(4)と、
前記エフェクタ(7)に対する前記内視鏡カプセル(2)の位置および/または向きを定めるように設計および構成された制御装置(8)と、
を備え、
少なくとも前記カンチレバーアーム(5)および/または前記エフェクタ(7)の事前選択された動きに関して前記体外案内移動機器(4)に影響を与えるように構成された、力および/もしくはモーメント生成装置または制動装置(9)であって、前記力および/もしくはモーメント生成装置または前記制動装置(9)は、前記制御装置(8)に接続されて、前記エフェクタ(7)に対する前記内視鏡カプセル(2)の前記実際に定められた位置および/または向きに従って、前記カンチレバーアーム(5)および/またはエフェクタ(7)へ手動でかけられる移動力に対する反力および/もしくは反モーメントまたは制動力を生成する、力および/もしくはモーメント生成装置または制動装置(9)を
更に備えることを特徴とする、
内視鏡カプセルシステム(1)。
【請求項2】
前記内視鏡カプセル(2)の傾斜角(α
C)の修正角度(Δα
M)および/または前記内視鏡カプセル(2)のロール角(β
C)は、前記カンチレバーアーム(5)および/またはエフェクタ(7)へ手動でかけられる移動力に対する前記反力および/もしくは反モーメントまたは前記制動力のための基準となることを特徴とする、請求項1に記載の内視鏡カプセルシステム(1)。
【請求項3】
前記カンチレバーアーム(5)および/またはエフェクタ(7)へ手動でかけられる移動力に対する前記反力および/または反モーメントは、前記カンチレバーアーム(5)の少なくとも1つのトルク制御されたアクチュエータ(10)によって生成されることを特徴とする、請求項1または2に記載の内視鏡カプセルシステム(1)。
【請求項4】
前記カンチレバーアーム(5)および/またはエフェクタ(7)へ手動でかけられる移動力に対する前記制動力は、ブレーキディスク上のブレーキライニングによって生成されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の内視鏡カプセルシステム(1)。
【請求項5】
前記エフェクタ(7)の前記位置および/または前記向きは、少なくとも1つの角度センサ(11)によって定められ、前記内視鏡カプセル(2)の前記位置および/または前記向きは、前記内視鏡カプセル(2)内に設けられた慣性センサによって定められることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の内視鏡カプセルシステム(1)。
【請求項6】
前記体外案内移動機器(4)は回転可能かつ傾斜可能なハンドル/ジョイスティック(12)を有し、前記ハンドル/ジョイスティック(12)により前記エフェクタ(7)の前記位置および/または前記向きが手動で調整されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の内視鏡カプセルシステム(1)。
【請求項7】
前記エフェクタ(7)の前記手動で調整された位置および/または向きは、前記ハンドル/ジョイスティック(12)が放されると維持されることを特徴とする、請求項6に記載の内視鏡カプセルシステム(1)。
【請求項8】
前記ハンドル/ジョイスティック(12)は、前記オペレータ(17)が自身の腕の重量を載せることが可能な部材を有し、前記ハンドル/ジョイスティック(12)の少なくとも1角自由度は前記部材から独立して働いていることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の内視鏡カプセルシステム(1)。
【請求項9】
前記体外案内移動機器(4)の前記多ヒンジカンチレバーアーム(5)は、スプリング要素またはスプリング―ダンパ要素(14)を有する平行四辺形アーム(13)を有することを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の内視鏡カプセルシステム(1)。
【請求項10】
前記平行四辺形アーム(13)は、トルク制御で作動されることを特徴とする、請求項9に記載の内視鏡カプセルシステム(1)。
【請求項11】
前記平行四辺形アーム(13)は、前記ハンドル/ジョイスティック(12)が放されると前記磁場が遮断される位置へ前記エフェクタ(7)を導くことを特徴とする、請求項9または10に記載の内視鏡カプセルシステム(1)。
【請求項12】
前記平行四辺形アーム(13)は、前記ハンドル/ジョイスティック(12)が放されると前記エフェクタ(7)が前記内視鏡カプセル(2)の真上に来る位置へエフェクタ(7)を導くことを特徴とする、請求項9または10に記載の内視鏡カプセルシステム(1)。
【請求項13】
前記ハンドル/ジョイスティック(12)の回転作動は、トルク制御で作動されることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の内視鏡カプセルシステム(1)。
【請求項14】
前記エフェクタ(7)は当接せずにローリングするように作動されることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の内視鏡カプセルシステム(1)。
【請求項15】
前記エフェクタ(7)は、変位制御または角度駆動で作動されることを特徴とする、請求項14に記載の内視鏡カプセルシステム(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体内内視鏡カプセルを磁気的に案内するための内視鏡カプセルシステムに関する。以下に、消化器科における用途を例として、本発明の局面に係る案内装置を説明する。しかし、本発明はまた、呼吸器系、内臓手術、関節鏡検査、もしくは神経外科などの医療または技術システムにおける他の分野の用途にも、その全内容において適用可能である。そのような技術システムは、例えば、制御対象の物体が配されたチューブシステムであってよい。
【背景技術】
【0002】
磁気駆動される内視鏡カプセルシステムは、好ましくは内視鏡カプセル(であるがプローブまたはカテーテルでもよい)が、例えばピルまたはカプセル様式で患者によって嚥下されることにより患者の身体内へ導入されるタイプの内視鏡である。導入後、内視鏡カプセルは、実質的には自然なぜん動運動により腸管内を進む。嚥下された内視鏡カプセルの動きおよび向きに影響を与えるため、内視鏡カプセル内の磁石(以下、カプセル磁石と称する)ならびに患者の身体外にある体外磁石(以下、磁気エフェクタと称する)が設けられる。
【0003】
カプセル磁石および磁気エフェクタの両方は、既知の極性(polarization)の磁場を生成するように構成(adapted)される。この目的のために、ソレノイドおよび永久磁石の両方ならびにこれら2つの可能性の1つまたは複数の組合せが、適している。装置は、複数の磁場が重なって1つの磁場を形成する、複数の永久磁石または複数のソレノイドからなっていてもよい。しかし、永久磁石を使用すると、カプセルおよびエフェクタ構造は単純ではあるが比較的強い磁場を生成する、という利点がある。これが、永久磁石が医療用使用に特に適している理由である。更に、永久磁石は、ソレノイドと比較して磁場を維持するためにエネルギー供給を必要としない。
【0004】
今日、特に食道、胃、小腸、および大腸を検査するために開発および設計された、いくつかの異なるタイプの磁気内視鏡カプセルシステムが知られている。したがって、その方法は元々、かつては内視鏡的にアクセスするのが困難であった小腸の検査のために開発されたのだが、今日では消化管の全ての部分がカプセル内視鏡検査によって検査可能である。特に胃や大腸の診察は、食道や小腸の診察よりも臨床的にずっと重要である。なぜなら、胃や結腸の内視鏡検査はがんの早期発見に重大な役割を果たすからである。
【0005】
現在の従来技術によれば、嚥下された磁気内視鏡カプセルの動きおよび向きは、(事前プログラムされた)コンピュータ制御されたシステム(いわゆるロボットシステム)を介して制御されるか、オペレータによる手動案内を介して制御される。
【0006】
特許文献1は、例えば、体内磁気内視鏡カプセルと、コンピュータ制御ロボットアームに搭載された好ましくは永久に作用する体外磁石とを有する、磁石駆動カプセルタイプ内視鏡を開示している。内視鏡カプセル内に設けられたカプセル磁石の配置および向きにより、体外(永久)磁石との相互作用を通して、内視鏡カプセルは、自身の交差軸(cross axis)の周りに傾けられ、自身の縦軸の周りに回転され、自身の長手方向軸の周りにローリング(rolled)され得る。このようにして、デカルト座標系(x,y,z軸)の3つの軸全ての周りで内視鏡カプセルの向きの制御が提供される。
【0007】
特許文献1によれば、体外永久磁石の位置および向きは、ロボットアクターを介して制御される。そして、ロボットアクターはコンピュータによって制御される。コンピュータは、内視鏡カプセルを動かすための制御指示をオペレータが入力できるオペレーターマシンインターフェースと内視鏡カプセル内に一体化された位置センサとから、センサ信号/フィードバック信号を受信する。次いで、これらのセンサ信号はコンピュータによって処理され、体外磁石を修正する動きへと変換される。これらの動きは、ロボットアクターによって行われ、オペレータによって直接的に影響され得ず、オペレータが入力した制御指示を実施するための最適範囲内に内視鏡カプセルと体外永久磁石との間の相対位置を維持することを容易にする。換言すると、内視鏡カプセルとロボットアームと間の直接的な情報フィードバックにより、制御者にとって直感的かつ予想可能な内視鏡カプセルの位置および向きの制御が得られる。本発明による内視鏡カプセルの構造/組立ておよび機能を完全に理解するために、特許文献1に開示される内視鏡カプセルをここで参照する。
【0008】
しかし、特許文献1に開示される磁石駆動カプセルタイプ内視鏡は、内視鏡カプセルを案内するためのコンピュータ制御ロボットアームが、患者の身体に対して力の作用を与えるまたは与えない衝突となり得、したがって患者や制御者に対しその身体を危険にさらす行為となり得る動きも行う可能性があり得る、という欠点を有する。換言すると、従来概念のロボットは、間違った動きをすると、容易に致命的に人を傷つけたり近くの物体を損傷したりしかねない。
【0009】
磁石駆動カプセルタイプ内視鏡を患者に適用している間、コンピュータに制御指示を入力することによって体外永久磁石の位置および向きを、したがって磁気内視鏡カプセルの位置および向きも、制御し/案内し/動かしているオペレータは、体外永久磁石と磁気内視鏡カプセルとの互いに対する距離が大きすぎるため、無意識のうちに現在の磁場を遮断してしまう、ということが更に起こるかもしれない。そうすると、磁気内視鏡カプセルはもはや体外永久磁石によって案内されなくなり、少なくとも自然なぜん動運動の影響が考慮されない場合、最後に磁場が存在した消化管内のその場所に留まる。この場合、オペレータはまず、体外永久磁石と磁気内視鏡カプセルとの間の磁場を回復させなければならない。したがって、オペレータは、内視鏡カプセルが体外永久磁石の動きに再度反応するまで、体外永久磁石が搭載されているロボットアームを患者の腹壁の上へ案内する必要がある。そのような事態は、明らかに非常に時間がかかるものであり、不必要に処置を長引かせてしまう。
【0010】
更に、オペレータが制御指示をコンピュータに入力し、それによって、体外永久磁石が内視鏡カプセルとの非最適距離において動かされる/案内される、ということもあり得る。その結果、概して、内視鏡カプセルは、動き/位置決めが困難となる、または自身を非常に低速でしか動かす/位置付けることができなくなる。これは、処置を長引かせ、同時に非効率的である。要約すると、磁石駆動カプセルタイプ内視鏡のオペレータは、両磁気部品の位置に基づく磁力に対する感覚がなく、これが実際の適用をますます困難にしている。
【0011】
特許文献2では、最大3自由度を有する体外モータ駆動位置決め装置を有する内視鏡カプセルを磁気的に案内するための医療用ロボットシステムが開示されている。この位置決め装置は、位置決め装置の遠位接続インターフェースの並進運動のために作動可能であり、位置決め装置には磁気エンドエフェクタが接続される/接続可能である。磁気エンドエフェクタ自体は、最大2自由度を有し、磁場発生器(それによって患者の身体内で磁気内視鏡カプセルが制御される)の好ましくは回転運動のために作動される。
【0012】
体外磁場発生器のロボット案内される向きによる傷害のリスクを低減するために、特定の自由度を有する磁場発生器が、一体的にケースに入れられるまたは封入されている。したがって、外部から自由にアクセス可能な磁場発生器のロボット案内される向きの自由度数は、特許文献2に開示されるロボットシステムでは低減されている。このようにして、この装置の機能は制限されておらず、装置は、患者にとって有害な患者の身体に対する影響を最小にしつつ、患者の身体に直接接触する医療用途の場合に使用され得る。
【0013】
しかし、内視鏡カプセルを磁気的に案内するためのロボットシステムのそのような設計は、非常に複雑であり、数個の製造工程と多くの個々の部品とを必要とし、結果的に、製造コストを増大させる。これに関連して、病院または医師の手術にとってそのようなロボットシステムの取得コストもまた非常に高い。より低価格で同様の結果をもたらし得る代替の内視鏡システムと比較して、そのような複雑なロボットシステムはむしろ非経済的であり、したがって市場では少数派となり得る。
【0014】
他方、体外磁場発生器の手動案内制御は、装置構造の複雑さが最小限である、という利点を有する。換言すると、体外磁場発生器の手動案内は、同じ機能を実現するための部品の数がロボットシステムよりも少ない。そのため、製造がより容易であり、関連コストがより低い。
【0015】
更に、オペレータは、運動パラメータと、特に、少なくともオペレータの触覚により体外磁場発生器を手動方向付けすることによる、患者の身体に対する力の作用を有するまたは有しない衝突と、についての永久情報フィードバックを得る。したがって、そもそも、磁場発生器を方向付ける際に患者を危険にさらす作用が排除されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】EP2347699A1
【特許文献2】DE102011054910A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従来技術に鑑み、本発明の目的は、より高い機能性を示す磁気特性を有する内視鏡カプセルシステムを提供することである。本発明の特別な目的は、このようにして、特に内視鏡カプセルの向きの意識的な制御性を可能にすることによって、内視鏡カプセルシステムの位置付け能力を向上させ、検査精度を高め、必要適用時間を最小にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本目的は、請求項1の特徴を備える内視鏡カプセルシステムによって達成される。本発明の有利な更なる発展形は、従属請求項の主題である。
【0019】
したがって、本発明の核心は、従来技術によって提案されたような磁気エフェクタに対する内視鏡カプセルの位置および/または向きを定めるまたは決定することだけでなく、カプセルを制御するために使用される内視鏡カプセルシステムの体外案内移動機器に対してオペレータによって手動でかけられる移動力に対抗するべく、エフェクタに対する内視鏡カプセルの実際に定められたまたは決定された位置および/または向きに従って、力および/もしくはモーメント生成装置または制動装置を介し、反力(counter force)および/もしくは反モーメントまたは制動力をも生成することである。
【0020】
換言すると、一方端部において搭載されたエフェクタを有する体外案内移動機器をあまりに早くもしくは突然に動かす/案内すると、または、磁気エフェクタと内視鏡カプセルとの間の距離が大きすぎる場合に体外案内移動機器を動かす/案内すると、内視鏡カプセルと磁気エフェクタとの間の磁場が遮断されてしまい、したがって、上述したように、内視鏡カプセルの制御性が失われてしまう。エフェクタに対する内視鏡カプセルの位置および/または向きを(連続的に)定める/決定することによって、オペレータによって行われる体外案内移動機器および/またはエフェクタの手動変位を確定することができる。これに基づき、オペレータによって行われる体外案内移動機器および/またはエフェクタの手動変位に対抗するべく、反力および/もしくは反モーメントまたは制動力が生成される。このようにして、オペレータは、生成された反力および/もしくは反モーメントまたは制動力により、体外案内移動機器および/またはエフェクタを更に変位させると内視鏡カプセルと磁気エフェクタとの間の磁場を遮断してしまう可能性があることをオペレータに示す、触覚フィードバックを受ける。この生成された触覚フィードバックにより、オペレータは、体外案内移動機器および/またはエフェクタの変位が続くと内視鏡カプセルの方向が分からなくなってしまうという情報も受ける。このようにして、適用中に、磁場の遮断によって内視鏡カプセルが無意識のうちに分からなくなってしまうことが回避され、内視鏡カプセルの制御性が向上する。
【0021】
更に、従来技術と比べると、システムの一般的なハンドリングがより効率的である。例えば、生成された触覚フィードバックが磁気エフェクタと磁気内視鏡カプセルとの間の変位に依存するため、オペレータは、エフェクタと内視鏡カプセルとの間のゴムバンド様(エフェクタと内視鏡カプセルとの間の変位が増大するにつれ、触覚フィードバックによって生成された反力が、まるでゴムバンドが引き伸ばされて、増大する反力を生むかのように、増大する)の接続に例えられ得るような方法で体外案内移動機器および/またはエフェクタの動作を知覚し得る。このゴムバンド様効果は、センサデータの適切な解釈と結果的に生じるアクチュエータの制御とを通してシステムによって生み出され/シミュレートされて、それぞれの触覚フィードバック力を実現する。患者の肌を貫通しなければならないのでゴムバンドはシステムに実際には含まれないことは明らかであるが、この制御原理は、磁気エフェクタと磁気内視鏡カプセルとの間の「仮想ゴムバンド」として表現できる。
【0022】
詳しくは、内視鏡カプセルシステムであって、磁気特性を有しかつ患者の身体の中空臓器内へ導入されるように構成された内視鏡カプセルと;内視鏡カプセルのための体外案内移動機器であって、体外案内移動機器は可動多ヒンジカンチレバーアームを有し、可動多ヒンジカンチレバーアームは一方端部において支持台に枢着されかつエフェクタを備え、エフェクタは磁気特性を有しかつカンチレバーアームの他方自由端部において枢着されており、エフェクタの実際の動きに従って内視鏡カプセルを追跡し、回転させ、ヨーイング(yawing)および/またはピッチング(pitching)させるための、体外案内移動機器と;エフェクタに対する内視鏡カプセルの位置および向きを定めるように設計および構成された制御装置と、を備える、内視鏡カプセルシステムが提供される。本発明によれば、少なくともカンチレバーアームおよび/またはエフェクタの事前選択された動きに関して体外案内移動機器に影響を与えるように構成された、力および/もしくはモーメント生成装置または制動装置であって、力および/もしくはモーメント生成装置または制動装置は、制御装置に接続されて、エフェクタに対する内視鏡カプセルの実際に定められた位置および/または向きに従って、カンチレバーアームおよび/またはエフェクタへ手動でかけられる移動力に対する反力および/もしくは反モーメントまたは制動力を生成する、力および/もしくはモーメント生成装置または制動装置が更に提供される。
【0023】
カンチレバーアームおよび/またはエフェクタへ手動でかけられる移動力に対するこれらの反力および/もしくは反モーメントまたは制動力を制御および生成するために、内視鏡カプセルの傾斜角の修正角度および/または内視鏡カプセルのロール角は、カンチレバーアームおよび/またはエフェクタへ手動でかけられる移動力に対する反力および/もしくは反モーメントまたは制動力のための基準となる。
【0024】
カンチレバーアームおよび/またはエフェクタへ手動でかけられる移動力に対する反力および/もしくは反モーメントまたは制動力は、オペレータのための触覚フィードバックであるが、案内移動機器において様々な方法で生成され得る。例えば、カンチレバーアームおよび/またはエフェクタへ手動でかけられる移動力に対する反力および/または反モーメントは、カンチレバーアームの少なくとも1つのトルク制御されたアクチュエータによって生成され得る。あるいは、カンチレバーアームおよび/またはエフェクタへ手動でかけられる移動力に対する制動力は、ブレーキディスク上のブレーキライニングによって生成され得る。
【0025】
内視鏡カプセルとエフェクタの位置および/または向きを効率的に定めるまたは決定するために、内視鏡カプセルシステムは、数個のセンサを備えてよい。発明の他の局面によれば、エフェクタの位置および/または向きは、少なくとも1つの角度センサによって定められ得るまたは決定され得る。内視鏡カプセルの位置および/または向きは、内視鏡カプセル内に設けられた慣性センサによって定められ得る。
【0026】
体外案内移動機器は、エフェクタの位置および/または向きを手動で調整可能とする、回転可能かつ傾斜可能なハンドル/ジョイスティックを備えてよい。それによって、磁気エフェクタのヨーイングとなるハンドル/ジョイスティックの手動回転が、磁気エフェクタの保持フォークの形の保持構造へ機械的に伝達され、当接する/停止する/制限されることなく生じる。更に、ハンドル/ジョイスティックは、手動で傾けられた場合、略±80°の動きの自由度を有する。更に、ハンドル/ジョイスティックは、オペレータが放すと、エフェクタの手動で調整された角度位置を維持するようにも設計されている。このように、ハンドル/ジョイスティックおよびエフェクタの両方の最後の位置/向きが維持される。
【0027】
患者の腹壁へ向かってまたは患者の腹壁から遠ざけるようにエフェクタを動かすための体外案内移動機器の鉛直移動のために、体外案内移動機器の多ヒンジカンチレバーアームはスプリング要素またはスプリング―ダンパ要素を有する平行四辺形アームを有してよい。それによって、スプリング要素またはスプリング―ダンパ要素はエフェクタの重量補償のために使用され、エフェクタが鉛直方向に動いている間には持ち上げる作業が行われないが加速および制動のための力のみがかかるようになる。更に、スプリング要素またはスプリング―ダンパ要素は、筋肉疲労が進まずリラックスして体外案内移動機器を連続的に操作できるような様式でオペレータが自身の腕を体外案内移動機器上に載せることができるように、オペレータの腕の重量を補償するように設計され得る。本発明の他の局面によれば、ハンドル/ジョイスティックは更に、オペレータの腕を支持するように設計される/オペレータが自身の腕の重量を載せることができる、部材を有する。この部材に腕の重量を載せている間、ハンドルの/ジョイスティックの角自由度(例えば、傾き、ヨーイング)の精密なモータ操作が維持できるように、ハンドル/ジョイスティックの少なくとも1角自由度が上記部材から切り離されている/独立して働いている。内視鏡カプセルシステムの使用を更に容易にするために、平行四辺形アームは、トルク制御で作動されてもよい。
【0028】
本発明の他の局面によれば、平行四辺形アームは更に、ハンドル/ジョイスティックが放されるとエフェクタと内視鏡カプセルとの間の磁気リンクが遮断される位置へエフェクタを導くように、設計されてもよい。換言すると、例えば使用中断のためにオペレータによってハンドル/ジョイスティックが放されると、エフェクタは、平行四辺形アームによって鉛直方向に患者の腹壁および内視鏡カプセルから自動的に遠ざけられて、エフェクタと内視鏡カプセルとの間の現在の磁場が遮断される。
【0029】
あるいは、平行四辺形アームはまた、ハンドル/ジョイスティックが放されると、エフェクタが内視鏡カプセルの真上に来る位置へエフェクタを導くように設計されてもよい。これは、オペレータがハンドル/ジョイスティックを放すと、エフェクタが、平行四辺形アームによって、鉛直方向においてかつエフェクタと内視鏡カプセルとの間の現在の磁場内で、内視鏡カプセルの真上に位置する患者の腹壁部分のできるだけ近くに動かされることを意味する。
【0030】
内視鏡カプセルシステムは、完全自動化されてもよく、そうすると、システムの一般的なハンドリングが更に便利になる。これを実現するために、ハンドル/ジョイスティックの回転作動は、トルク制御で作動されるように設計されてもよい。
【0031】
本発明の更なる局面によれば、エフェクタは、当接する/停止する/制限されることなくローリングするように作動され得る。このように、360度以上にハンドル/ジョイスティックが傾けられることに応じたエフェクタのローリングが可能になる。しかし、エフェクタのローリングは、トルク制御された作動に限定されない。代わりに、本発明のある局面によれは、磁気エフェクタは、変位制御または角度駆動で作動され得る。
【0032】
上記局面が個々にまたはそれぞれの組合せにおいて本発明の目的を解決でき、したがって、本願明細書の範囲において個々にまたは任意の組み合わせにおいて特許請求可能であることは、明白である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
以下、添付の図面を参照し、本発明を好ましい実施形態により詳細に説明する。
【
図1】
図1は、本発明に係る内視鏡カプセルシステムの臨床用途と対応する制御とを模式的に示す。
【
図2】
図2は、対応するアクチュエータとセンサとを有する体外案内移動機器の基本構造を模式的に示す。
【
図3a】本発明に係る内視鏡カプセルの傾斜角の制御機構を示す。
【
図3b】本発明に係る内視鏡カプセルの傾斜角の制御機構を示す。
【
図4a】本発明に係る内視鏡カプセルのロール角の制御機構を示す。
【
図4b】本発明に係る内視鏡カプセルのロール角の制御機構を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、通常の臨床用途における内視鏡カプセルシステム1全体を示す。内視鏡カプセルシステム1は、模式的に表した患者3の消化管へ既に導入されている内視鏡カプセル2と;可動多ヒンジカンチレバーアーム5を有する体外案内移動機器4であって、可動多ヒンジカンチレバーアーム5は一方端部において支持台6に枢着されかつ磁気エフェクタ7を備え、磁気エフェクタ7はカンチレバーアーム5の他方自由端部において枢着されている、体外案内移動機器4と;エフェクタ7に対する内視鏡カプセル2の位置および向きを定めるまたは決定するように設計および構成された制御装置8と、を備える。更に、内視鏡カプセルシステム1は、少なくともカンチレバーアーム5および/またはエフェクタ7の事前選択された動きに関して体外案内移動機器4に影響を与えるように構成された、力および/もしくはモーメント生成装置または制動装置9を備える。力および/もしくはモーメント生成装置または制動装置9は、更に制御装置8に接続されており、エフェクタ7に対する内視鏡カプセル2の実際に定められたまたは決定された位置および/または向きに従って、カンチレバーアーム5および/またはエフェクタ7へ手動でかけられる移動力に対する反力および/もしくは反モーメントまたは制動力を生成する。
【0035】
オペレータ17によるエフェクタ7の手動による動き/案内を可能にするために、エフェクタ7が搭載されているカンチレバーアーム5の端部にハンドル/ジョイスティック12が設けられている。ハンドル/ジョイスティック12は、エフェクタ7の更に不図示の、例えば保持フォークの形状の、保持構造に接続されている。これにより、ハンドル/ジョイスティック12の動きがエフェクタ7へ伝達可能となる。これにより、ハンドル/ジョイスティック12を傾けるおよび/または回転すると、エフェクタ7がローリングおよび/またはヨーイングする。
【0036】
多ヒンジカンチレバーアーム5自体は、デカルト座標系(x,y,z軸)の3つの軸全ての周りにおいてエフェクタ7の動きを提供するために、数個の部分、好ましくは3つの部分、を有するように設計される。カンチレバーアーム5の鉛直方向(z軸)の動きを可能にする部分は、エフェクタ7の重量を補償するためのスプリング要素またはスプリング―ダンパ要素14を備える平行四辺形アーム13の形で設計される。体外案内移動機器4の連続的な動作が可能となるようにオペレータ17が体外案内移動機器4上に自身の腕を載せることができるように、スプリング要素またはスプリング―ダンパ要素14は、更に、オペレータ17の腕の重量を補償するように設計され得る。更に、ハンドル/ジョイスティック12は、オペレータ17が自身の腕の重量を載せることができる、更に不図示の部材を有してもよい。この部材にオペレータ17の腕の重量を載せつつハンドル/ジョイスティック12の角自由度(例えば、傾ける、ヨーイングする)の精密なモータ操作を維持するために、ハンドル/ジョイスティック12の少なくとも1つの角自由度が上記部材から独立して働いている。上述したように、カンチレバーアーム5は自身の他方の端部において支持台6に枢着されている。床に接触している支持台6の端は、体外案内移動機器4を移動可能とするローラ/車輪18を有してもよい。
【0037】
内視鏡カプセルシステムは更に、ビデオプロセッサ15を備えており、ビデオプロセッサ15は、内視鏡カプセル2によって記録された消化管の無線送信された画像データを受信し、これらを処理する。リアルタイムビデオの形のこれらのデータの視覚化は、電気ケーブル20を介して内視鏡画面16にビデオプロセッサ15を接続することによってもたらされる。このように、オペレータ17は、内視鏡カプセル2の傾きおよび/または視認方向を監視でき、ハンドル/ジョイスティック12を傾けるおよび/または回転することによって内視鏡カプセル2を適宜調整することができる。
【0038】
更に、好ましい実施形態では、内視鏡カプセル2および体外案内移動機器4の両方が、それぞれ、内視鏡カプセル2および磁気エフェクタ7の位置および/または向きを定めるためのセンサを備える。内視鏡カプセル2が更に不図示の慣性センサを備える一方で、体外案内移動機器4は少なくとも1つの、好ましくは数個の角度センサ11を備える。オペレータ17がハンドル/ジョイスティック12を介してカンチレバーアーム5および/またはエフェクタ7に手動で移動力をかけると、角度センサ11は、エフェクタ7の実際の位置および/または向きを決定/記録する。角度センサ11によって測定されたエフェクタ7のこれらの位置および/または向きデータは、次いで制御装置8へ送信される。同時に、内視鏡カプセル2内に配置された慣性センサは、体外案内移動機器4内に配置された無線周波受信器19へ無線信号の形で内視鏡カプセル2の位置および/または向きについてのデータを送信する。エフェクタ7の位置および/または向きデータと同様に、無線周波受信器19によって受信された無線信号は制御装置8へ送信される。制御装置8は、内視鏡カプセル2および磁気エフェクタ7のこれらの位置および/または向きデータを処理し、それに基づいて、力および/もしくはモーメント生成装置または制動装置9を介して反力および/もしくは反モーメントまたは制動力の生成を制御/調節する。他の実施形態では、内視鏡カプセル2内のセンサは、少なくともエフェクタ7に関して内視鏡カプセル2の位置および向きの確定を可能とする任意のセンサまたは複数センサの構成物であってよい。体外案内移動機器4内のセンサは、少なくとも内視鏡カプセル2に関してエフェクタ7の位置および向きの確定を可能とする任意のセンサまたは複数センサの構成物であってよい。
【0039】
図2に、対応するアクチュエータおよびセンサを有する体外案内移動機器4の基本構造が、好ましい実施形態において模式的に図示されている。基本構造および参照符号は、
図1に示した体外案内移動機器4から変わっていない。したがって、以下では、
図1と
図2の体外案内移動機器4における違いのみを強調する。
図2は、角度センサ11を示す。これらの角度センサ11は、
図1では単に示されているだけであるが、カンチレバーアーム5と、エフェクタ7が搭載されているカンチレバーアーム5の端部とに亘って、具体的な位置に配置されている。体外案内移動機器4は、好ましくは6つの角度センサ11を備え、各角度センサ11は、エフェクタ7の位置および/または向きを正確に決定可能とするために、カンチレバーアーム5および磁気エフェクタ7の個々の位置/向きを決定する。
【0040】
特に、多ヒンジカンチレバーアーム5の各ヒンジにつき、したがってカンチレバーアーム5の各動作軸(x,y,z軸)につき、1つの角度センサ11が設けられ、カンチレバーアーム5の角度、したがって、各部分の位置を決定する。更に、磁気エフェクタ7自体が角度センサ11を備えており、エフェクタ7が当接する/停止する/制限されることなくローリング可能であるがゆえに、この角度センサ11は、無制限の角度領域の決定を可能とする。更に、ハンドル/ジョイスティック12は角度センサ11を備えており、傾いている間にハンドル/ジョイスティック12の角度を測定することによって、エフェクタ7の向きを決定可能である。最後の角度センサ11は、ハンドル/ジョイスティック12の回転角度を決定するために設けられ、したがって、エフェクタ7のヨー角を決定する。この角度センサ11は、エフェクタ7の角度センサ11と同様に、無制限の角度領域を決定するように設計されている。
【0041】
上述したように、制御装置8は、慣性センサおよび角度センサ11によって測定された内視鏡カプセル2およびエフェクタ7の位置および/または向きデータに基づいて、力および/もしくはモーメント生成装置または制動装置9を制御する。一般に、力および/もしくはモーメント生成装置または制動装置9は、反力および/もしくは反モーメントまたは制動力を生成可能な様々な部品によって実現される。
図2において、カンチレバーアーム5および/または磁気エフェクタ7へ手動でかけられる移動力に対する反力および/もしくは反モーメントは、カンチレバーアーム5のトルク制御されたアクチュエータ10によって生成される。例えば、それぞれのアクチュエータ10に反モーメントをかけることによって、対応する反力が生成され得、これをオペレータ17が触覚フィードバックとして知覚する。あるいはまたは加えて、ディスクブレーキまたは他のタイプのブレーキを使用して、カンチレバーアーム5および/またはエフェクタ7へ手動でかけられる移動力に対し、適切な制動力を生成することができる。したがって、反力および/もしくは反モーメントまたは制動力は様々な方法で生成され得る。
図2には示していないが、平行四辺形アーム13はまた、トルク制御で作動され得、これにより、内視鏡カプセルシステム1の使用が更に容易になる。
【0042】
カンチレバーアーム5のトルク制御されたアクチュエータ10に加えて、
図2示すように、他のアクチュエータ21が磁気エフェクタ7に設けられている。しかし、エフェクタ7のアクチュエータ21は、トルク制御されたアクチュエータではなく、エフェクタを当接/停止/制限することなくローリング可能とする、変位制御または角度駆動されるアクチュエータ21である。他の実施形態では、内視鏡カプセル2内のセンサは、少なくともエフェクタ7に関して内視鏡カプセル2の位置および向きの確定を可能とする任意のセンサまたは複数センサの構成物であってよい。体外案内移動機器4内のセンサは、少なくとも内視鏡カプセル2に関してエフェクタ7の位置および向きの確定を可能とする任意のセンサまたは複数センサの構成物であってよい。
【0043】
通常、内視鏡カプセル2は、邪魔されずにエフェクタ7の動き/案内に従う。このため、この場合は、力および/もしくはモーメント生成装置または制動装置9によって反力および/もしくは反モーメントまたは制動力が生成されない。しかし、内視鏡カプセル2の動きがエフェクタ7の動きに対応しなくなった場合、すなわち、中空の臓器がxまたはy方向の動きを阻止するので内視鏡カプセル2がエフェクタ7に追従できない場合、内視鏡カプセル2およびエフェクタ7の互いに対する位置および/または向きにおけるずれが生じる。この場合、反力および/もしくは反モーメントまたは制動力が、力および/もしくはモーメント生成装置または制動装置9によって生成され、したがって、生成された触覚フィードバックの形で現在のずれがオペレータ17に示される。内視鏡カプセル2とエフェクタ7との間のずれにより生成された触覚フィードバックを制御/調節するために、本発明は2つの制御機構を提供する。
【0044】
図3aおよび
図3bに示す制御機構は、水平面のx方向に内視鏡カプセル2を直線運動させるためにハンドル/ジョイスティック12を介してオペレータ17がエフェクタ7を手動変位させると、内視鏡カプセル2の傾斜角を制御/調節するように働く。内視鏡カプセル2が傾くことを回避するための補償動作が、
図3bに示されている。
【0045】
具体的にいうと、
図3aは、磁気エフェクタ7が内視鏡カプセル2の真上(以下、磁気エフェクタ7のホームポジションと称する)に来た場合の内視鏡カプセル2の向きを示している。したがって、内視鏡カプセル2は、カプセル磁石の極性(N/S)がエフェクタ7の極性(N/S)とは反平行になるように向いている。同時に、本発明によれば、エフェクタ7の傾斜角の制御は、(水平面に対する)ハンドル/ジョイスティック12の傾斜角(以下、α
Hと称する)が(水平面に対する)内視鏡カプセル2の傾斜角(以下、α
Cと称する)に対応するように、設計されている。
【数1】
【0046】
これに対し、α
Hは、内視鏡カプセル2とエフェクタ7との互いに対する反平行極性により、ホームポジションにあるエフェクタ7の傾斜角α
M,α
M,0と以下のような関係がある。
【数2】
【0047】
図3bは、エフェクタ7を、
図3aに示すようにホームポジションから始めて、内視鏡カプセル2に対して水平面のx方向にハンドル/ジョイスティック12を介して手動で変位させ、エフェクタ7のx位置と内視鏡カプセル2のx位置とがx方向に差分Δxだけ互いからずれたときの、エフェクタ7の向きに対する効果を示す。水平面のx方向においてハンドル/ジョイスティック12を介してエフェクタ7を変位させると、通常は、現在の円形磁場により、内視鏡カプセル2が傾く。しかし、本発明によれば、磁気エフェクタ7の位置および/または向きの変化は、上述したように、体外案内移動機器4の角度センサ11によって連続的に登録される。これらのセンサデータは同時に制御装置8も利用可能であり、制御装置8は、エフェクタ7のx位置と内視鏡カプセル2のx位置とがずれている場合には、結果的に、式(1)が有効でありつづけ内視鏡カプセル2の傾きが防止されるように、磁気エフェクタ7の傾斜角α
Mを制御/調節する。したがって、α
Mは、修正角度Δα
Mによって連続的に修正される。これに基づき、エフェクタ7の実際の傾斜角α
Mが、ホームポジションにおけるエフェクタ7の傾斜角α
M,0とエフェクタ7の傾斜角の修正角度Δα
Mとの和として表される。
【数3】
【0048】
換言すると、α
Hは、内視鏡カプセル2の対象傾斜角を表し、この対象傾斜角は、オペレータ17によって手動で調整され、ハンドル/ジョイスティック12に設けられた角度センサ11によって測定される。他方、α
Cは、内視鏡カプセル2の実際の傾斜角を表し、この実際の傾斜角は、内視鏡カプセル2とエフェクタ7との間の磁場によって調整され、内視鏡カプセル2内に設けられた慣性センサによって測定される。α
Cがα
Hに対応することを確実にするために、α
Mは、角度センサ11によって連続的に決定され、それにしたがって、アクチュエータ10、21によって調整される。この関係は、内視鏡カプセル2の傾斜角α
Cの制御/調節のために使用される以下の式を導く。
【数4】
【0049】
上述の文脈に基づくと、鉛直方向における内視鏡カプセル2と磁気エフェクタ7との間の距離Δzが分からないため正確な変位Δxは分からないが、Δα
Mは水平面のx方向におけるエフェクタ7の手動変位Δxのための基準であると考えることができる。したがって、Δα
Mは、水平面のx方向における触覚反力F
H,xの制御および生成のための基準として使用される。
【数5】
【0050】
実際には、上述した制御方法では、無線信号を介した内視鏡カプセル2の位置および/または向きデータの送信とエフェクタ7の修正再調整とにより、遅延が生じる。しかし、これはあまり関係がない。なぜなら、使用中にはオペレータ17からは遅い動作が期待されるからである。
【0051】
図4aおよび
図4bは、本発明に係る内視鏡カプセル2の他の制御機構を示す。この制御機構は、内視鏡カプセル2のy軸22が水平面に来るように、ハンドル/ジョイスティック12を介してエフェクタ7をエフェクタ7のy軸に沿って手動で変位させることによりエフェクタ7を内視鏡カプセル2の鉛直上方に向けるためのものである。
【0052】
図4aは、磁気エフェクタ7が内視鏡カプセル2の鉛直上方に位置し、磁気エフェクタ7の極性が鉛直方向である場合の、内視鏡カプセル2の向きならびに内視鏡カプセル2のy軸22を示す。内視鏡カプセル2は、内視鏡カプセル2内に設けられたカプセル磁石の極性が体外永久磁石13の極性とは反平行であり、すなわち、内視鏡カプセル2のy軸22が水平に向いており、内視鏡カプセル2のローリングが生じないような向きになっている。本発明によれば、内視鏡カプセル2は安定した水平状態を有するように設計され、これは、内視鏡カプセル2が自身の長手方向軸/x軸23周りにローリングしないことを意味する。
【0053】
図4bは、
図4aに示すような状態から始めて、内視鏡カプセル2に対して磁気エフェクタ7が自身のy軸に沿って、すなわち内視鏡カプセル2の横方向に、手動で変位されるときの、内視鏡カプセル2の向きに対する効果を示す。この場合、内視鏡カプセル2は自身の長手方向軸/x軸23の周りにローリングし始め、その結果、内視鏡カプセル2のいわゆるロール角β
Cが内視鏡カプセル2のy軸22と水平面との間に形成される。この向きの変化は、内視鏡カプセル2内の慣性センサと体外案内移動機器4の角度センサ11とによって等しく登録され、適切なセンサデータが制御装置8に利用可能となる。
図3bのΔα
Mと同様に、β
Cは、水平面のy方向におけるエフェクタ7の手動変位Δyのための基準となり、内視鏡カプセル2の自身の長手方向軸/x軸23周りのローリングに対抗する、水平面のy方向における触覚反力F
H,yの計算および生成のための基準として使用される。
【数6】
【0054】
傾斜角αCの制御/調節機構とは対照的に、ロール角βCは、修正角度によっては直接的に制御および調整されない。代わりに、内視鏡カプセルシステム1のオペレータ17が、水平面のy方向における生成された触覚反力FH,yを介して得られたフィードバックにより、直感的に水平面のy方向における磁気エフェクタ7のそのような変位Δyを補償することができる。内視鏡カプセルシステム1の実際の使用中に、結腸の左深部の湾曲部に内視鏡カプセル2を操作するような事態が起こるかもしれない。そのような事態では、磁場を介して内視鏡カプセル2に所望の力を与えるために内視鏡カプセル2の側方に磁気エフェクタ7を位置付けることが有用である。この場合、オペレータ17は、所望の位置に内視鏡カプセル2を持っていくために、内視鏡カプセル2の自身の長手方向軸/x軸23周りにおけるローリングと、水平面のy方向における生成された反力FH,yとを意識的に受け入れ制御する。
【0055】
従って、要約すると、本発明は、内視鏡カプセルシステム1であって、磁気特性を有しかつ患者の身体3の中空臓器内へ導入されるように構成された内視鏡カプセル2と;内視鏡カプセル2のための体外案内移動機器4であって、体外案内移動機器4は可動多ヒンジカンチレバーアーム5を有し、可動多ヒンジカンチレバーアーム5は一方端部において支持台6に枢着されかつエフェクタ7を備え、エフェクタ7は磁気特性を有しかつカンチレバーアーム5の他方自由端部において枢着されており、エフェクタ7の実際の動きに従って内視鏡カプセル2を追跡し、回転させ、ヨーイングおよび/またはピッチングさせるための、体外案内移動機器4と;エフェクタ7に対する内視鏡カプセル2の位置および向きを定めるように設計および構成された制御装置8と、を備える内視鏡カプセルシステム1に関する。本発明によれば、そのような内視鏡カプセルシステム1は、少なくともカンチレバーアーム5および/またはエフェクタ7の事前選択された動きに関して体外案内移動機器4に影響を与えるように構成された、力および/もしくはモーメント生成装置または制動装置9を更に備える。この力および/もしくはモーメント生成装置または制動装置9は、制御装置8に接続されて、エフェクタ7に対する内視鏡カプセル2の実際に定められた位置および/または向きに従って、カンチレバーアーム5および/またはエフェクタ7へ手動でかけられる移動力および/または案内力に対する反力および/もしくは反モーメントまたは制動力を生成する。
【符号の説明】
【0056】
1 内視鏡カプセルシステム
2 内視鏡カプセル
3 患者の身体
4 体外案内移動機器
5 カンチレバーアーム
6 支持台
7 エフェクタ
8 制御装置
9 力および/もしくはモーメント生成装置または制動装置
10 カンチレバーアームのアクチュエータ
11 角度センサ
12 ハンドル/ジョイスティック
13 平行四辺形アーム
14 スプリング要素またはスプリング―ダンパ要素
15 ビデオプロセッサ
16 内視鏡画面
17 オペレータ
18 ローラ/車輪
19 無線周波受信器
20 電気ケーブル
21 エフェクタのアクチュエータ
22 内視鏡カプセルのY軸
23 内視鏡カプセルのX軸
N N極
S S極
αC 内視鏡カプセルの傾斜角
αH ハンドル/ジョイスティックの傾斜角
αM エフェクタの傾斜角
αM,0 ホームポジションにおけるエフェクタの傾斜角
ΔαM エフェクタの傾斜角の修正角度
Δx 水平面のx方向におけるエフェクタの変位
FH,x 水平面のx方向における反力
βC 内視鏡カプセルのロール角
Δy 水平面のy方向におけるエフェクタの変位
FH,y 水平面のy方向における反力
Δz 鉛直方向におけるエフェクタと内視鏡カプセルとの間の距離
【手続補正書】
【提出日】2022-06-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡カプセルシステ
ムであって、
磁気特性を有しかつ患者の身
体の中空臓器内へ導入されるように構成された内視鏡カプセ
ルと、
前記内視鏡カプセ
ルを案内し動かすための体外案内移動機
器であって、前記体外案内移動機
器は可動多ヒンジカンチレバーアー
ムを有し、前記カンチレバーアー
ムは一方端部において支持
台に枢着されかつエフェク
タを備え、前記エフェク
タは磁気特性を有しかつ前記カンチレバーアー
ムの他方自由端部において枢着されており、前記エフェク
タの実際の動きに従って前記内視鏡カプセ
ルを追跡し、回転させ、ヨーイングおよび/またはピッチングさせるための、体外案内移動機
器と、
前記エフェク
タに対する前記内視鏡カプセ
ルの位置および/または向きを定めるように設計および構成された制御装
置と、
を備え、
少なくとも前記カンチレバーアー
ムおよび/または前記エフェク
タの事前選択された動きに関して前記体外案内移動機
器に影響を与えるように構成された、力および/もしくはモーメント生成装置または制動装
置であって、前記力および/もしくはモーメント生成装置または前記制動装
置は、前記制御装
置に接続されて、前記エフェク
タに対する前記内視鏡カプセ
ルの前記実際に定められた位置および/または向きに従って、前記カンチレバーアームおよび/またはエフェク
タへ手動でかけられる移動力に対する反力および/もしくは反モーメントまたは制動力を生成する、力および/もしくはモーメント生成装置または制動装
置を
更に備えることを特徴とする、
内視鏡カプセルシステ
ム。
【請求項2】
前記内視鏡カプセ
ルの傾斜
角の修正角
度および/または前記内視鏡カプセ
ルのロール
角は、前記カンチレバーアー
ムおよび/またはエフェク
タへ手動でかけられる移動力に対する前記反力および/もしくは反モーメントまたは前記制動力のための基準となることを特徴とする、請求項1に記載の内視鏡カプセルシステ
ム。
【請求項3】
前記カンチレバーアー
ムおよび/またはエフェク
タへ手動でかけられる移動力に対する前記反力および/または反モーメントは、前記カンチレバーアー
ムの少なくとも1つのトルク制御されたアクチュエー
タによって生成されることを特徴とする、請求項1または2に記載の内視鏡カプセルシステ
ム。
【請求項4】
前記カンチレバーアー
ムおよび/またはエフェク
タへ手動でかけられる移動力に対する前記制動力は、ブレーキディスク上のブレーキライニングによって生成されることを特徴とする、請求項
1に記載の内視鏡カプセルシステム。
【請求項5】
前記エフェク
タの前記位置および/または前記向きは、少なくとも1つの角度セン
サによって定められ、前記内視鏡カプセ
ルの前記位置および/または前記向きは、前記内視鏡カプセ
ル内に設けられた慣性センサによって定められることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の内視鏡カプセルシステ
ム。
【請求項6】
前記体外案内移動機器は回転可能かつ傾斜可能なハンドル/ジョイスティッ
クを有し、前記ハンドル/ジョイスティッ
クにより前記エフェク
タの前記位置および/または前記向きが手動で調整されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の内視鏡カプセルシステ
ム。
【請求項7】
前記エフェク
タの前記手動で調整された位置および/または向きは、前記ハンドル/ジョイスティッ
クが放されると維持されることを特徴とする、請求項6に記載の内視鏡カプセルシステ
ム。
【請求項8】
前記ハンドル/ジョイスティッ
クは、前記オペレー
タが自身の腕の重量を載せることが可能な部材を有し、前記ハンドル/ジョイスティッ
クの少なくとも1角自由度は前記部材から独立して働いていることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の内視鏡カプセルシステ
ム。
【請求項9】
前記体外案内移動機
器の前記多ヒンジカンチレバーアー
ムは、スプリング要素またはスプリング―ダンパ要素を有する平行四辺形アームを有することを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の内視鏡カプセルシステ
ム。
【請求項10】
前記平行四辺形アー
ムは、トルク制御で作動されることを特徴とする、請求項9に記載の内視鏡カプセルシステ
ム。
【請求項11】
前記平行四辺形アー
ムは、前記ハンドル/ジョイスティッ
クが放されると前記磁場が遮断される位置へ前記エフェク
タを導くことを特徴とする、請求項9または10に記載の内視鏡カプセルシステ
ム。
【請求項12】
前記平行四辺形アー
ムは、前記ハンドル/ジョイスティッ
クが放されると前記エフェクタが前記内視鏡カプセ
ルの真上に来る位置へエフェク
タを導くことを特徴とする、請求項9または10に記載の内視鏡カプセルシステ
ム。
【請求項13】
前記ハンドル/ジョイスティッ
クの回転作動は、トルク制御で作動されることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の内視鏡カプセルシステ
ム。
【請求項14】
前記エフェク
タは当接せずにローリングするように作動されることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の内視鏡カプセルシステ
ム。
【請求項15】
前記エフェク
タは、変位制御または角度駆動で作動されることを特徴とする、請求項14に記載の内視鏡カプセルシステ
ム。
【国際調査報告】