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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-29
(54)【発明の名称】真空コーティングデバイス
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/24 20060101AFI20221121BHJP
【FI】
C23C14/24 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022519383
(86)(22)【出願日】2020-09-25
(85)【翻訳文提出日】2022-05-20
(86)【国際出願番号】 CN2020117882
(87)【国際公開番号】W WO2021057921
(87)【国際公開日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】201910915434.7
(32)【優先日】2019-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514216801
【氏名又は名称】バオシャン アイアン アンド スティール カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100170184
【弁理士】
【氏名又は名称】北脇 大
(72)【発明者】
【氏名】レン、サンビン
(72)【発明者】
【氏名】ファン、ジュンフェイ
(72)【発明者】
【氏名】リ、シャンチン
(72)【発明者】
【氏名】シオン、フェイ
(72)【発明者】
【氏名】ワン、イル
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029AA02
4K029AA25
4K029BA18
4K029CA01
4K029DB03
4K029DB12
4K029DB13
4K029DB19
4K029FA04
4K029FA05
(57)【要約】
本発明は真空コーティングデバイスを開示し、当該真空コーティングデバイスは、るつぼを有し、該るつぼの周囲に提供された誘導ヒーターを有し、蒸気パイプを介して前記るつぼの頂部に接続された流れ分配ボックスを有し、前記蒸気パイプは圧力調整バルブを備え、前記流れ分配ボックスは水平圧力安定化プレートを内部に備え、前記流れ分配ボックスは頂部でノズルと接続され、かつ、前記ノズルより上には蒸気の放出方向に沿って偏向器が配置される。ノズル出口から鋼板までの距離Daは10~200mmであり、前記偏向器の高さDbは10~199mmであり;前記偏向器の頂部から鋼板までの距離Dcは1~190mmであり;前記偏向器と前記ノズル出口との間の角度Ddは60°~135°である。本発明における真空コーティングデバイスは、コーティングの収率を改善し得、かつ、一定の厚さを有する均一なコーティングも形成し得る。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空コーティングデバイスであって、当該真空コーティングデバイスは:
るつぼを有し、
前記るつぼの周囲に提供された誘導ヒーターを有し、
蒸気パイプを介して前記るつぼの頂部に接続された流れ分配ボックスを有し、
前記蒸気パイプは圧力調整バルブを備え、前記流れ分配ボックスは水平圧力安定化プレートを内部に備え、前記流れ分配ボックスは頂部でノズルと接続され、
前記ノズルより上には蒸気の放出方向に沿って偏向器が配置され、かつ、
ノズル出口から鋼板までの距離Daが10~200mmであり、
前記偏向器の高さDbが10~199mmであり;
前記偏向器の頂部から鋼板までの距離Dcが1~190mmであり;
前記偏向器と前記ノズル出口との間の角度Ddが60°~135°である、
前記真空コーティングデバイス。
【請求項2】
前記圧力安定化プレートが多孔構造のものであり、孔は長方形、円または三角形の形状であり、かつ、直線もしくは曲線方向に走るか、または、多層構造を有する、請求項1に記載の真空コーティングデバイス。
【請求項3】
前記ノズル出口がスリット状または多孔のものである、請求項1に記載の真空コーティングデバイス。
【請求項4】
前記ノズル出口が直線状スリットまたは曲線状スリットのものである、請求項3に記載の真空コーティングデバイス。
【請求項5】
前記の多孔のノズル出口が、長方形、丸または台形の形状である、請求項3に記載の真空コーティングデバイス。
【請求項6】
前記ノズルが、グラファイト、セラミックまたは金属製である、請求項3に記載の真空コーティングデバイス。
【請求項7】
Da、Db、DcおよびDdが以下の関係を満たし、該関係は:
Da=Db+Dcであり;
Da=100~200mmであり、かつ、Db=(1/5~1/2)Daであるとき、Dd=60°~90°であり;
Da=100~200mmであり、かつ、Db=(1/2~2/3)Daであるとき、Dd=70°~110°であり;
Da=100~200mmであり、かつ、Db=(2/3~4/5)Daであるとき、Dd=80°~135°であり;
Da=10~100mmであり、かつ、Db=(1/5~1/2)Daであるとき、Dd=60°~100°であり;
Da=10~100mmであり、かつ、Db=(1/2~2/3)Daであるとき、Dd=70°~120°であり;
Da=10~100mmであり、かつ、Db=(2/3~4/5)Daであるとき、Dd=80°~135°である、
請求項1に記載の真空コーティングデバイス。
【請求項8】
真空チャンバーをさらに有し、前記流れ分配ボックスおよび前記鋼板が前記真空チャンバーに配置される、請求項1に記載の真空コーティングデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は真空コーティング分野に関し、かつ、とりわけ真空コーティングデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
物理蒸着(PVD)とは、真空下でコーティングされる金属を加熱して、基材上に気体状の様式で金属を堆積させてコーティングを形成する加工技術のことをいう。PVDは、加熱方法によって電気加熱PVD(抵抗タイプまたは誘導タイプ)、電子ビーム加熱PVD(EBPVD)、および、その他の方式に分類され得る。表面修飾およびコーティング加工として、電子工学、ガラス、プラスチック、および、その他の産業において、真空コーティングが広く用いられてきた。真空コーティング技術の主たる利点としては、環境保護、良好なコーティング性能およびコーティング材料の多様性が挙げられる。連続帯鋼に真空コーティング技術を適用するための鍵としては、連続的であり、領域が広く、高速であり、かつ、大規模のコーティング製造のようないくつかの態様が挙げられる。1980年代以来、世界の主要な鉄鋼会社は、この技術について多くの研究を実行してきた。溶融亜鉛メッキおよび電気亜鉛メッキ技術の成熟とともに、この技術は、これまでにない注目を集めてきており、かつ、革新的な表面コーティング加工であると考えられている。
【0003】
真空コーティング加工において鍵となる問題は、どのようにノズルの配置構成を通して一貫した厚さを有する均一なコーティングを得るかである。現在、外国の公開された情報は主として、次の態様を含む。
【0004】
1)蒸発るつぼ、および、流れ分配ノズルの一体構造
出願BE1009321A6およびBE1009317A61は各々、図1および図2に示されているようなるつぼノズル構造を開示している。図1の構造では、るつぼ1の上部に上蓋2が配置され、上蓋2と炉壁との間に、蒸発した金属の直接噴霧のためのノズル構造が形成されるようになっている。図2の構造では、蒸発るつぼにフィルタープレート3が追加的に配置され、かつ、そのときには頂部におけるスリットノズルから金属蒸気が噴霧される。2つのデバイスのノズル設計工程では、一方はドラバルノズルを採用し、かつ、他方は先細ノズルを採用する。ノズルの配向に関しては、一方は横方向噴霧を採用し、かつ、他方は鉛直方向噴霧を採用する。
【0005】
出願JPS59177370AおよびUS4552092Aもまた、関連する蒸発るつぼおよびノズル構造を開示している。図3は、溶融金属の自動補充を伴う、るつぼノズル構造を示している。ノズル4は幅の広い出口を用い、かつ、るつぼの上部には、るつぼを加熱するためのヒーター5もまた配置される。図4に示されているるつぼノズル構造では、該構造は一方の側でアーク6によって広げられ、横方向噴霧を実現し;かつ、るつぼ壁の周囲には、周面を加熱するための加熱チューブ7もまた配置される。
【0006】
2)蒸発るつぼ、および、流れ分配ノズルの分割構造
出願WO2018/020311A1は、分割るつぼノズル構造を開示している。図5に示されているように、該デバイスでは、るつぼの底が溶融金属供給タンク8に接続され、かつ、供給タンク8の上部が、分割パイプ9を通して前端にて管状分配器および蒸気ノズルへと金属蒸気を搬送し;かつ、その後、ノズルが高速で金属板に金属蒸気を噴霧する。
【0007】
出願CN103249860Aは、流れ分配器およびノズルの分割構造を開示している。図6に示されているように、鉛直方向パイプを通して上部水平パイプ10の中へと蒸気が送達される。水平パイプ10は、頂部に多孔ノズルを備え、金属板の表面上に金属蒸気を均一に噴霧する。
【0008】
出願CN101175866Aは、金属蒸気流れ分配器およびノズル形態を開示している。図7に示されているようなノズルの断面形状については、流れ分配器パイプ11の外側にワイヤーが巻かれてパイプを加熱し;かつ、ノズルは正方形シェルを有する。図8に示されているように、別の材料製のリング状パイプが、正方形シェル12の内部に入れ子になり、かつ、金属蒸気を噴霧するために用いられる。ノズルの蒸気出口は、多孔である。
【0009】
上記出願はすべて、ノズルの特定の形態に関する。しかしながら、これらのノズルがすべて、一定の厚さを有する十分に均一なコーティングを達成し得るわけではない。さらに、それらの研究者は、コーティングの収率に焦点を当てていない。
【発明の概要】
【0010】
概要
先行技術における上記の欠点を解決するために、本発明は、一定の厚さを有する均一なコーティングを形成し、かつ、コーティングの収率を改善し得る、真空コーティングデバイスを提供することを目的とする。コーティングの収率とは、鋼板の幅に対する有効なコーティングの幅の比のことをいい、有効なコーティングは、厚さが1~20μmであるコーティングとして理解され得る。厚み偏差(dmax-dmin)は、25%より小さいか、または、25%に等しい。
【0011】
前記の目的を達成するために、本発明は以下の技術的解決策を提供する。
【0012】
使用時には鋼板の下に配置される真空コーティングデバイスは、るつぼを有し、るつぼの周囲に提供された誘導ヒーターを有し、蒸気パイプを介して前記るつぼの頂部に接続された流れ分配ボックスを有し、前記蒸気パイプは圧力調整バルブを備え、前記流れ分配ボックスは水平圧力安定化プレートを内部に備え、前記流れ分配ボックスは頂部でノズルと接続され、前記ノズルより上には蒸気の放出方向に沿って偏向器が配置される。
【0013】
先行技術では、蒸気がノズルから放出され、かつ、広がり、したがって、鋼板の縁部における蒸気の量は比較的少なく、鋼板の中心領域および縁領域上に金属蒸気によって形成される均一でないコーティングに繋がる。その後、鋼板の等しくなくコーティングされた部分を切り落とすのに、追加の工程が必要とされる。切断比は通常15~20%に達し、コーティングの良好でない収率に繋がるだけでなく、製造コストを増大させる。本発明において採用される技術的解決策は、偏向器の配置構成によってノズルから鋼板への蒸気の経路を制限し、このことは、金属蒸気が広がることを妨げ、かつ、鋼板が通る領域に蒸気を集中させ、このようにして均一なコーティングが得られ得る。
【0014】
前記ノズル出口から前記鋼板までの距離Daは、10~200mmである。ノズル出口から鋼板までの実際の設置距離に基づくと、Daは通常、10mmより大きいか、10mmに等しい。Da≧200mmであるときには、蒸気の注入角度は増大し、注入範囲は大きく、かつ、コーティング厚さは減少し、コーティングが浸食防止の効果を有し得ないことをもたらす。さらに、Da≧200mmであるときには、鋼板への蒸気吐出の速度が低下し、接着の不良および低密度のコーティングに繋がる。
【0015】
前記偏向器の高さDbは、10~199mmである。かかる高さは、ノズル出口と鋼板との間の距離によって決定される。ノズル出口が鋼板に非常に近いとき、偏向器の高さは10mmである下限に達し;ノズル出口が鋼板から離れているとき、偏向器の高さは199mmである上限に達する。本願の技術的解決策では、Daは通常、Dbより大きいか、Dbに等しい。すなわち、鋼板の幅がノズル出口の有効な幅より小さいときに、偏向器は、高さにおいて鋼板の縁と同一平面にある。
【0016】
前記偏向器の頂部から鋼板までの距離Dcは、1~190mmである。例えば、Db=199mmであるとき、Dc=1mmであり;Db=10mmであるとき、Dcは10mmであり得る。
【0017】
ノズル内部の圧力が500~100,000Paであり、かつ、ノズルが配置される外部環境の圧力が10-4~10Paであるとき、前記偏向器と前記ノズル出口との間の角度Ddは60°~135°である。鋼板の幅がノズル出口の幅より小さいとき、または、コーティングされる必要のある鋼板の有効な幅がノズル出口の幅より小さいとき、Ddは製造ニーズにより90°より小さくなり得る。例えば、Ddは60°であり得、かつ、その後、均一なコーティングが得られ得る。鋼板の幅がノズル出口の幅より大きいとき、製造ニーズにより大きいDdが採用され得る。例えば、鋼板の縁におけるコーティング厚さの均一性を改善するために、135°のDdが採用され得る。しかしながら、Ddが135°より大きいとき、鋼板の縁における噴射の速度および範囲が満たされ得ない。
【0018】
前記圧力安定化プレートは、多孔媒質製の圧力安定化プレートである。かかるタイプの圧力安定化プレートは、ハニカムに似た不規則な孔を通して気体をフィルタリングする。そして、製造ニーズにより、蒸気分配を変更して均一な蒸気を有するために、異なる多孔度が用いられ得る。
【0019】
または、前記圧力安定化プレートは、多孔構造のものである。前記圧力安定化プレートにおける孔は、長方形、円または三角形の形状である。または、孔の形状は、任意の多角形または円であり得る。そして、それらの孔は、直線状、曲線状に走り、または、蒸気上昇の方向における多層構造を有する。圧力安定化プレートは特定の厚さを有するので、孔の分配方向とは、圧力安定化プレートの蒸気の厚さ方向を通る蒸気の経路のことをいう。すなわち、蒸気が圧力安定化プレートを通過するとき、圧力安定化プレートにおける孔の分布によって蒸気の分配が変更され得るだけでなく、その上昇の経路も孔の方向によって変更され得る。多層構造とは、孔の分配方向が蒸気を段階的に上昇するように方向付ける構造のことをいう。例えば、多層構造は、多数の折り目のセットによって形成される段であり得、このことは、蒸気上昇の抵抗を増大させ得るが、いっそう等しく分配された蒸気を可能にする。
【0020】
前記ノズル出口は、スリット状または多孔のものである。好ましくは、ノズル出口はスリット状のものである。
【0021】
ノズル出口は、直線状スリットまたは曲線状スリットのものである。スリット状とは、ノズル出口が、間隔をおいて設定された多数の小さいスリットからなるよりはむしろ、全スリットであることをいう。それはなぜなら、蒸気がそれぞれの小さいスリットから放出されれば、それがある程度広がり、かつ、重複領域がコーティングの厚さを大きくし、かつ、均一なコーティングを形成しないからである。
【0022】
多孔のノズル出口は、長方形、丸または台形の形状である。
【0023】
前記ノズルは、グラファイト、セラミックまたは金属製である。
【0024】
Da、Db、DcおよびDdは、以下の関係を満たす:
Da=Db+Dcであり;
Da=100~200mmであり、かつ、Db=(1/5~1/2)Daであるとき、Dd=60°~90°であり;
Da=100~200mmであり、かつ、Db=(1/2~2/3)Daであるとき、Dd=70°~110°であり;
Da=100~200mmであり、かつ、Db=(2/3~4/5)Daであるとき、Dd=80°~135°であり;
Da=10~100mmであり、かつ、Db=(1/5~1/2)Daであるとき、Dd=60°~100°であり;
Da=10~100mmであり、かつ、Db=(1/2~2/3)Daであるとき、Dd=70°~120°であり;
Da=10~100mmであり、かつ、Db=(2/3~4/5)Daであるとき、Dd=80°~135°である。
【0025】
上記の関係が満たされれば、収率は90%より多くに達し得;かつ、上記の関係が満たされなければ、収率は90%に達し得ない。
【0026】
当該真空コーティングデバイスはさらに、真空チャンバーを有し、前記流れ分配ボックスおよび前記鋼板は両方とも、前記真空チャンバーに配置される。この技術的解決策を採用することによって、一方でそれはノズル材料および鋼板コーティングの酸化を防止し得る。他方でそれは、ノズル出口から放出される蒸気が超音速に達し得るように、ノズルの内外圧力差を引き起こし得る。
【0027】
本発明は、真空コーティングの収率を改善させるための真空コーティングデバイスを開示し、るつぼにおいて金属材料を溶かし、かつ、蒸発させることによって金属蒸気が得られる。蒸気はパイプを通って流れ分配ボックスに入り、流れ分配ボックスは圧力安定化プレート、および、その他の関連デバイスとともに配置され、かつ、その後、均一な蒸気がノズルから流れ得る。前記ノズルの頂部に偏向器が配置されるので、偏向器とコーティングされる鋼片との間に均一な蒸気分配が与えられ得る。鋼片の縁における蒸気範囲の偏向は、偏向器と鋼片との間の距離を変えることによって調整され得、したがって鋼片上のコーティングの収率が改善される。本発明は、低コストであり、操作が容易であり、かつ、将来的に真空コーティング技術とともにセットで輸出され得る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、出願BE1009321A6の概略図である。
図2図2は、出願BE1009317A61の概略図である。
図3図3は、出願JPS59177370Aの概略図である。
図4図4は、出願US4552092Aの概略図である。
図5図5は、出願WO2018/020311A1の概略図である。
図6図6は、出願CN103249860Aの概略図である。
図7図7は、出願CN101175866Aの概略図である。
図8図8は、図7における正方形シェルの概略図である。
図9図9は、本発明の真空コーティングデバイスの構造の概略図である。
図10図10は、図9の真空コーティングデバイスの側面図である。
図11図11は、図9の真空コーティングデバイスにおける、流れ分配ボックス、偏向器および鋼板の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
実施形態の詳細な説明
本発明の技術的解決策は、添付の図面および実施形態を参照して、以下でさらに説明される。
【0030】
図9および図10を参照すると、本発明は真空コーティングデバイスを提供する。前記真空コーティングデバイスは、使用時には鋼板100の下に配置される。当該真空コーティングデバイスはるつぼ13を有し、かつ、るつぼ13は溶融金属14を含有する。るつぼ13の周囲には誘導ヒーター15が配置され、溶融金属14および金属蒸気22は、るつぼ13における金属材料が誘導ヒーター15によって加熱された後で得られ得る。誘導ヒーター15の動力は調整可能であり、したがって、るつぼ13における金属蒸気22の圧力は制御され得る。前記るつぼ13の頂部には、蒸気パイプ16を介して流れ分配ボックス17が接続され、前記流れ分配ボックス17および前記鋼板100は真空チャンバー23に配置される。前記蒸気パイプ16には圧力調整バルブ18が配置され、るつぼ13における蒸気と流れ分配ボックス17および真空チャンバー23における蒸気との間の交換は、圧力調整バルブ18によって妨げられ得る。前記流れ分配ボックス17には水平圧力安定化プレート19が配置され、かつ、前記流れ分配ボックス17の頂部にはノズル20が接続される。さらに、前記ノズル20の頂部には、蒸気放出の方向に沿って偏向器21が配置されて、収率を増大させる。前記蒸気パイプ16上の前記圧力調整バルブ18が開いているとき、前記金属蒸気22は、前記圧力安定化プレート19および前記ノズル20を通して前記鋼板100に達し、その後でコーティングが形成される。
【0031】
好ましくは、前記偏向器21は、蒸気が前記鋼板100に向かってできるだけ垂直方向に前記ノズル出口を通るようにするために役立ち、流れの偏向を回避させ、したがって鋼板100上のコーティングの収率を増大させる。
【0032】
前記ノズル20の出口から前記鋼板100までの距離Daは10~200mmであり;前記偏向器21の高さDbは10~199mmであり;前記偏向器21の頂部から前記鋼板100までの距離Dcは1~190mmであり;前記偏向器21と前記ノズル20の出口との間の角度Ddは60°~135°である。
【0033】
さらに、Da、Db、DcおよびDdは、以下の関係を満たす:
Da=Db+Dcであり;
Da=100~200mmであり、かつ、Db=(1/5~1/2)Daであるとき、Dd=60°~90°であり;
Da=100~200mmであり、かつ、Db=(1/2~2/3)Daであるとき、Dd=70°~110°であり;
Da=100~200mmであり、かつ、Db=(2/3~4/5)Daであるとき、Dd=80°~135°であり;
Da=10~100mmであり、かつ、Db=(1/5~1/2)Daであるとき、Dd=60°~100°であり;
Da=10~100mmであり、かつ、Db=(1/2~2/3)Daであるとき、Dd=70°~120°であり;
Da=10~100mmであり、かつ、Db=(2/3~4/5)Daであるとき、Dd=80°~135°である。
【0034】
好ましくは、前記ノズル20は、500~500,000Paの内圧で作動する。
【0035】
好ましくは、ノズル20は、グラファイト、セラミックまたは不活性金属、および、耐高温性、耐摩耗性であり、かつ、加工され得るその他の材料製である。
【0036】
好ましくは、前記ノズル出口は、スリット状または多孔のものである。スリット状のノズル出口は直線状または曲線状であり、かつ、多孔の出口は、長方形、丸または台形の形状である。
【0037】
好ましくは、前記圧力安定化プレート19は多孔構造を有し、前記圧力安定化プレートにおける孔は、長方形、円または三角形の形状である。または、孔の形状は任意の多角形または円であり得、本願は孔の形状を具体的に限定しない。そして、それらの孔は、直線もしくは曲線方向に走るか、または、多層構造を有する。
【0038】
好ましくは、前記溶融金属14は、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、錫、ニッケル、銅、鉄などの金属、加えてそれらの金属の低融点(2000°より下)酸化物を含有する。
【0039】
好ましくは、鋼板100は、真空コーティング前にプラズマ、または、その他のデバイスによってクリーニングされ、かつ、予熱温度は80~300℃に達する。
【0040】
本発明の真空コーティングデバイスを用いるための特定のステップは、以下の通りである。
1)誘導ヒーター15によって、固体金属がるつぼ13において溶融金属14へと溶かされ、かつ、溶融金属14は高過熱温度および低圧にて蒸発し始め、徐々に金属蒸気22を形成する。
【0041】
2)初期段階では、るつぼ13に接続された蒸気パイプ16に配置された圧力調整バルブ18は閉じている。
【0042】
3)溶融金属14が連続的に蒸発するにつれて、るつぼ13の内部チャンバーにおける蒸気圧は増大する。るつぼ13の内部キャビティ-の圧力が特定の値(例えば、5,000~500,000Pa)に達したとき、圧力調整バルブ18が開かれて、蒸気が一定の圧力にて流出することを可能にする。
【0043】
4)圧力調整バルブ18が開いたことに起因する減圧を補償するための誘導ヒーター15の動力の増大、および、るつぼ13の内部キャビティーの圧力が特定の範囲で維持されることを確実にするための誘導ヒーター15の動力の調整。
【0044】
5)圧力調整バルブ18が開いた後、金属蒸気22は蒸気パイプ16に沿って流れる。金属蒸気22が流れ分配ボックス17に入るとき、金属蒸気によって形成された高速の流れの圧力は、圧力安定化プレート19の制限に起因して減少する。そして、圧力安定化プレートにおける孔の分布は、金属蒸気が圧力安定化プレート19における孔に沿って均一に流れ、かつ、その後で流れ分配ボックス17の頂部におけるノズル20から均一に流れるように高速の流れを分配する。
【0045】
6)ノズル20の頂部における偏向器21の配置構成に起因して、蒸気がノズル20から放出された後で偏向した流れは、金属蒸気22が鋼板100を通過した後で鋼板100の両側から流出し得るようにコーティング工程の最中に減少し、したがってコーティングの収率が改善される。
【0046】
7)ノズルの狭い出口に起因して、金属蒸気22は大きい速度にて流出する。このとき、移動している鋼板100がノズル出口より上に配置され、金属蒸気22の温度は高く、金属蒸気が低温の鋼板100に達したとき、それは急速に固化し、金属コーティング24を形成する。
【実施例
【0047】
実施形態
鋼板100は亜鉛メッキされ、かつ、鋼板100の幅は1,000mmである。クリーニングおよび乾燥後、鋼板100は120℃まで加熱される。誘導ヒーター15によって鋼板表面上の亜鉛が蒸発し、かつ、その後で、るつぼ13における圧力を20,000Paまで上昇させるために誘導ヒーターの動力が調整され、その時点で圧力調整バルブ18は閉じている。るつぼ13における圧力が20,000Paに達したとき、圧力調整バルブ18が開かれ、かつ、その後で金属蒸気22が蒸気パイプ16を通して流れ分配ボックス17の中に入る。流れ分配ボックス17における圧力安定化プレートは、多孔構造を有するか、または、多孔媒質製の圧力安定化プレートを採用する。流れ分配ボックス17における作動圧力は、5,000Paである。ノズル20はグラファイト製であり、かつ、ノズル出口は直線状スリットのものである。
【0048】
偏向器21は長方形であり、かつ、関連パラメーターは以下の通りである:
Da=120mmであり;
Db=70mmであり;
Dc=50mmであり;
Dd=90°である。
【0049】
コーティングの収率は、95%に達する。
【0050】
当業者であれば、上記の実施形態は本発明を説明するために用いられただけであり、本発明を限定するために用いられたのではないことを理解すべきである。本発明の本質的精神範囲から逸脱することなく上記の実施形態に対してなされる変更および修正は、すべて本発明の請求の範囲内に属するべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2022-05-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図9
【補正方法】変更
【補正の内容】
図9
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図10
【補正方法】変更
【補正の内容】
図10
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図11
【補正方法】変更
【補正の内容】
図11
【手続補正4】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図12
【補正方法】削除
【補正の内容】
【国際調査報告】