(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-29
(54)【発明の名称】糖尿病性網膜症を処置するための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20221121BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20221121BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20221121BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20221121BHJP
【FI】
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P27/02
A61K45/00
C07K16/18 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022519436
(86)(22)【出願日】2020-09-28
(85)【翻訳文提出日】2022-05-20
(86)【国際出願番号】 US2020053046
(87)【国際公開番号】W WO2021062355
(87)【国際公開日】2021-04-01
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500213834
【氏名又は名称】メモリアル スローン ケタリング キャンサー センター
(71)【出願人】
【識別番号】508007514
【氏名又は名称】ボード オブ トラスティーズ オブ ミシガン ステイト ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】BOARD OF TRUSTEES OF MICHIGAN STATE UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100137626
【氏名又は名称】田代 玄
(72)【発明者】
【氏名】コールスニック リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ブシク ジュリア
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084ZA331
4C084ZB112
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085BB50
4C085EE01
4C085GG01
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
(57)【要約】
本開示は、抗セラミド抗体および抗体断片を用いて糖尿病性網膜症および眼の炎症性疾患を処置する方法を提供する。糖尿病性網膜症の処置を以前に受けた対象を処置するための方法もまた提供される。一部の実施形態では、本開示は、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片の単回用量を用いて糖尿病性網膜症を処置する方法をさらに提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象に抗セラミド抗体またはその抗原結合断片を眼投与することを含む、それを必要とする対象における糖尿病性網膜症を治療または予防する方法。
【請求項2】
抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が一本鎖可変断片(scFv)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
眼投与が、局所投与、眼内投与、結膜下投与、前房内投与、角膜輪部を介した前房への注射、角膜輪部内投与、角膜内投与、網膜下投与、房水注射、テノン嚢下投与、脈絡膜上腔(SCS)への投与、毛様体上腔への投与、および硝子体内投与からなる群から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
投与が硝子体内投与である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
対象が糖尿病性網膜症の前処置を受けている、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
対象が糖尿病性網膜症の前処置に応答しなかった、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前処置が、硝子体切除およびレーザー手術から選択される治療手順、またはステロイドおよび抗血管内皮増殖因子(VEGF)療法から選択される治療剤である、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
抗VEGF療法が、ベバシズマブ、ラニビズマブ、およびアフリベルセプトからなる群から選択される抗VEGF抗体である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、単回用量として投与される、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、少なくとも2週間、少なくとも3週間、または少なくとも4週間の間隔を置いて2回以上の用量で投与される、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、約2週間~約4週間の間隔を置いて2回以上の用量で投与される、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、少なくとも1カ月、少なくとも2カ月、少なくとも3カ月、少なくとも4カ月、少なくとも5カ月、少なくとも6カ月、少なくとも7カ月、少なくとも8カ月、少なくとも9カ月、少なくとも10カ月、または少なくとも11カ月の間隔を置いて2回以上の用量で投与される、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、約1カ月~約6カ月の間隔を置いて2回以上の用量で投与される、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、少なくとも1年の間隔を置いて2回以上の用量で投与される、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、糖尿病性網膜症の1種以上の症状の発症前に投与される、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、糖尿病性網膜症の1種以上の症状の発症後に投与される、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、糖尿病性網膜症の非増殖期の間に投与される、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、糖尿病性網膜症の増殖期の間に投与される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
対象に抗セラミド抗体またはその抗原結合断片を投与することを含む、それを必要とする対象における糖尿病性網膜症を治療または予防する方法であって、対象が糖尿病性網膜症の前処置を受けている方法。
【請求項20】
対象が糖尿病性網膜症の前処置に応答しなかった、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が一本鎖可変断片(scFv)である、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
投与が眼投与である、請求項19~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
眼投与が、局所投与、眼内投与、結膜下投与、前房内投与、角膜輪部を介した前房への注射、角膜輪部内投与、角膜内投与、網膜下投与、房水注射、テノン嚢下投与、脈絡膜上腔(SCS)への投与、毛様体上腔への投与、および硝子体内投与からなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
眼投与が硝子体内投与である、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
前処置が、硝子体切除、レーザー手術、ステロイド、および/または抗血管内皮増殖因子(VEGF)療法であった、請求項19~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
抗VEGF療法が、ベバシズマブ、ラニビズマブ、およびアフリベルセプトからなる群から選択される抗VEGF抗体である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、単回用量として投与される、請求項19~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、少なくとも2週間、少なくとも3週間、または少なくとも4週間の間隔を置いて2回以上の用量で投与される、請求項19~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、約2週間~約4週間の間隔を置いて2回以上の用量で投与される、請求項19~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、少なくとも1カ月、少なくとも2カ月、少なくとも3カ月、少なくとも4カ月、少なくとも5カ月、少なくとも6カ月、少なくとも7カ月、少なくとも8カ月、少なくとも9カ月、少なくとも10カ月、または少なくとも11カ月の間隔を置いて2回以上の用量で投与される、請求項19~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、約1カ月~約6カ月の間隔を置いて2回以上の用量で投与される、請求項19~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、少なくとも1年の間隔を置いて2回以上の用量で投与される、請求項19~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、糖尿病性網膜症の1種以上の症状の発症前に投与される、請求項19~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、糖尿病性網膜症の1種以上の症状の発症後に投与される、請求項19~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、糖尿病性網膜症の非増殖期の間に投与される、請求項19~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、糖尿病性網膜症の増殖期の間に投与される、請求項19~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
単回用量の抗セラミド抗体またはその抗原結合断片を対象に投与することを含む、対象における糖尿病性網膜症を治療または予防する方法。
【請求項38】
2回以上の用量の抗セラミド抗体またはその抗原結合断片を対象に投与することを含む、対象における糖尿病性網膜症を治療または予防する方法であって、2回以上の用量が少なくとも2週間の間隔を置かれる、方法。
【請求項39】
抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、少なくとも2週間、少なくとも3週間、または少なくとも4週間の間隔を置いて2回以上の用量で投与される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、約2週間~約4週間の間隔を置いて2回以上の用量で投与される、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、少なくとも1カ月、少なくとも2カ月、少なくとも3カ月、少なくとも4カ月、少なくとも5カ月、少なくとも6カ月、少なくとも7カ月、少なくとも8カ月、少なくとも9カ月、少なくとも10カ月、または少なくとも11カ月の間をおいた間隔を置いて2回以上の用量で投与される、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、約1カ月~約6カ月の間隔を置いて2回以上の用量で投与される、請求項38に記載の方法。
【請求項43】
抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、少なくとも1年の間隔を置いて2回以上の用量で投与される、請求項38に記載の方法。
【請求項44】
抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が一本鎖可変断片(scFv)である、請求項37~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
投与が眼投与である、請求項37~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
眼投与が、局所投与、眼内投与、結膜下投与、前房内投与、角膜輪部を介した前房への注射、角膜輪部内投与、角膜内投与、網膜下投与、房水注射、テノン嚢下投与、脈絡膜上腔(SCS)への投与、毛様体上腔への投与、および硝子体内投与からなる群から選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
眼投与が硝子体内投与である、請求項45または46に記載の方法。
【請求項48】
対象が糖尿病性網膜症の前処置を受けている、請求項37~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
対象が糖尿病性網膜症の前処置に反応しなかった、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前処置が、硝子体切除、レーザー手術、ステロイド、および/または抗血管内皮増殖因子(VEGF)療法であった、請求項48または49に記載の方法。
【請求項51】
抗VEGF療法が、ベバシズマブ、ラニビズマブ、およびアフリベルセプトからなる群から選択される抗VEGF抗体である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、糖尿病性網膜症の1種以上の症状の発症前に投与される、請求項37~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、糖尿病性網膜症の1種以上の症状の発症後に投与される、請求項37~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、糖尿病性網膜症の非増殖期の間に投与される、請求項37~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、糖尿病性網膜症の増殖期の間に投与される、請求項37~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
抗セラミド抗体またはその抗原結合断片を眼投与することを含む、眼の炎症性疾患を治療する方法。
【請求項57】
抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が一本鎖可変断片(scFv)である、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
眼投与が、局所投与、眼内投与、結膜下投与、前房内投与、角膜輪部を介した前房への注射、角膜輪部内投与、角膜内投与、網膜下投与、房水注射、テノン嚢下投与、脈絡膜上腔(SCS)への投与、毛様体上腔への投与、および硝子体内投与からなる群から選択される、請求項56または57に記載の方法。
【請求項59】
眼の炎症性疾患が、網膜血管新生、脈絡膜血管新生、角膜血管新生、黄斑変性症、加齢性黄斑変性症、糖尿病性網膜症、硝子体出血、網膜出血、脈絡膜炎、血管新生緑内障、脈絡膜疾患、毛細血管拡張症、網膜動脈閉塞症、網膜静脈閉塞症、脈絡網膜炎、網膜上膜、脈絡膜新生物、未熟児の網膜症、嚢胞性黄斑浮腫、鬱血乳頭、再発性虚血、眼の出血、および増殖性硝子体網膜症からなる群から選択される、請求項56~58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
眼投与が硝子体内投与である、請求項56~59のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
対象が糖尿病性網膜症の前処置を受けている、請求項56~60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
対象が糖尿病性網膜症の前処置に反応しなかった、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前処置が、硝子体切除およびレーザー手術から選択される治療手順、またはステロイドおよび抗血管内皮増殖因子(VEGF)療法から選択される治療剤である、請求項61または62に記載の方法。
【請求項64】
抗VEGF療法が、ベバシズマブ、ラニビズマブ、およびアフリベルセプトからなる群から選択される抗VEGF抗体である、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、単回用量として投与される、請求項56~64のいずれか1項に記載の方法。
【請求項66】
抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、少なくとも2週間、少なくとも3週間、または少なくとも4週間の間隔を置いて2回以上の用量で投与される、請求項56~64のいずれか1項に記載の方法。
【請求項67】
抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、約2週間~約4週間の間隔を置いて2回以上の用量で投与される、請求項56~64のいずれか1項に記載の方法。
【請求項68】
抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、少なくとも1カ月、少なくとも2カ月、少なくとも3カ月、少なくとも4カ月、少なくとも5カ月、少なくとも6カ月、少なくとも7カ月、少なくとも8カ月、少なくとも9カ月、少なくとも10カ月、または少なくとも11カ月の間をおいた2回以上の用量で投与される、請求項56~64のいずれか1項に記載の方法。
【請求項69】
抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、約1カ月~約6カ月の間隔を置いて2回以上の用量で投与される、請求項56~64のいずれか1項に記載の方法。
【請求項70】
抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、少なくとも1年の間隔を置いて2回以上の投与で投与される、請求項56~64のいずれか1項に記載の方法。
【請求項71】
抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、眼の炎症性疾患の1種以上の症状の発症前に投与される、請求項56~70のいずれか1項に記載の方法。
【請求項72】
抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、眼の炎症性疾患の1種以上の症状の発症後に投与される、請求項56~70のいずれか1項に記載の方法。
【請求項73】
抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、可変重鎖(V
H)および可変軽鎖(V
L)を含み、
a)V
Hは、GYTFTDHTIH(配列番号1)のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、YNYPRDGSTKYNEKFKG(配列番号2)のアミノ酸配列を含むHCDR2、およびGFITTVVPSAY(配列番号3)のアミノ酸配列を含むHCDR3を含み、ならびに
b)V
Lは、RASKSISKYLA(配列番号4)のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、SGSTLQS(配列番号5)のアミノ酸配列を含むLCDR2、およびQQHNEYPWT(配列番号6)のアミノ酸配列を含むLCDR3を含む、請求項1~72のいずれか1項に記載の方法。
【請求項74】
V
Hが配列番号7のアミノ酸配列を含み、V
Lが配列番号8のアミノ酸配列を含む、請求項1~72のいずれか1項に記載の方法。
【請求項75】
抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が6B5抗体である、請求項1~74のいずれか1項に記載の方法。
【請求項76】
抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が6B5 scFvである、請求項1~74のいずれか1項に記載の方法。
【請求項77】
抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、可変重鎖(V
H)および可変軽鎖(V
L)を含み、
a)V
Hは、GYTFTNYWMH(配列番号33)のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、AIYPGDSDTSYNQKFKG(配列番号34)のアミノ酸配列を含むHCDR2、およびGLYYGYD(配列番号35)のアミノ酸配列を含むHCDR3を含み、ならびに
b)V
Lは、KSSQSLIDSDGKTFLN(配列番号36)のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LVSKLDS(配列番号37)のアミノ酸配列を含むLCDR2、およびWQGTHFPYT(配列番号38)のアミノ酸配列を含むLCDR3を含む、請求項1~72のいずれか1項に記載の方法。
【請求項78】
V
Hが配列番号39のアミノ酸配列を含み、V
Lが配列番号40のアミノ酸配列を含む、請求項1~72のいずれか1項に記載の方法。
【請求項79】
抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が2A2抗体である、請求項1~72および77~78のいずれか1項に記載の方法。
【請求項80】
抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が2A2 scFvである、請求項1~72および77~78のいずれか1項に記載の方法。
【請求項81】
抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、可変重鎖(V
H)および可変軽鎖(V
L)を含み、
a)V
Hは、配列番号1および43から選択されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、配列番号44~47から選択されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるHCDR2、およびGFITTVVPSAY(配列番号3)のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるHCDR3を含み、ならびに
b)V
Lは、RASKSISKYLA(配列番号4)のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、SGSTLQSのアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるLCDR2(配列番号5)、およびQQHNEYPWTのアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるLCDR3(配列番号6)を含む、請求項1~72のいずれか1項に記載の方法。
【請求項82】
HCDR1がGYTFTDHTIH(配列番号1)のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、HCDR2がYNYPRDGSTKYNEKFQG(配列番号44)のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
HCDR1がGYTFTDHTIH(配列番号1)のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、HCDR2がYNYPREGSTKYNEKFQG(配列番号45)のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、請求項81に記載の方法。
【請求項84】
HCDR1がGYTFTDHTIH(配列番号1)のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、HCDR2がYNYPRDVSTKYNEKFQG(配列番号46)のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、請求項81に記載の方法。
【請求項85】
HCDR1がGYTFTDHTIH(配列番号1)のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、HCDR2がYNYPRDGSTKYAEKFQG(配列番号47)のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、請求項81に記載の方法。
【請求項86】
HCDR1がGYTFTDHTMH(配列番号43)のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、HCDR2がYNYPRDGSTKYNEKFQG(配列番号44)のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、請求項81に記載の方法。
【請求項87】
HCDR1がGYTFTDHTMH(配列番号43)のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、HCDR2がYNYPREGSTKYNEKFQG(配列番号45)のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、請求項81に記載の方法。
【請求項88】
HCDR1がGYTFTDHTMH(配列番号43)のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、HCDR2がYNYPRDVSTKYNEKFQG(配列番号46)のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、請求項81に記載の方法。
【請求項89】
HCDR1がGYTFTDHTMH(配列番号43)のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、HCDR2がYNYPRDGSTKYAEKFQG(配列番号47)のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、請求項81に記載の方法。
【請求項90】
VHが、配列番号48と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、または100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、VLが、配列番号53と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、または100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、請求項81に記載の方法。
【請求項91】
VHが、配列番号48と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、または100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、VLが、配列番号54と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、または100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、請求項81に記載の方法。
【請求項92】
VHが、配列番号48と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、または100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、VLが、配列番号55と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、または100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、請求項81に記載の方法。
【請求項93】
VHが、配列番号49と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、または100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、VLが、配列番号53と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、または100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、請求項81に記載の方法。
【請求項94】
VHが、配列番号49と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、または100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、VLが、配列番号54と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、または100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、請求項81に記載の方法。
【請求項95】
VHが、配列番号49と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、または100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、VLが、配列番号55と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、または100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、請求項81に記載の方法。
【請求項96】
VHが、配列番号50と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、または100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、VLが、配列番号53と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、または100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、請求項81に記載の方法。
【請求項97】
VHが、配列番号50と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、または100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、VLが、配列番号54と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、または100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、請求項81に記載の方法。
【請求項98】
VHが、配列番号50と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、または100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、VLが、配列番号55と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、または100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、請求項81に記載の方法。
【請求項99】
VHが、配列番号51と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、または100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、VLが、配列番号53と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、または100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、請求項81に記載の方法。
【請求項100】
VHが、配列番号51と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、または100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、VLが、配列番号54と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、または100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、請求項81に記載の方法。
【請求項101】
VHが、配列番号51と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、または100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、VLが、配列番号55と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、または100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、請求項81に記載の方法。
【請求項102】
VHが、配列番号52と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、または100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、VLが、配列番号53と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、または100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、請求項81に記載の方法。
【請求項103】
VHが、配列番号52と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、または100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、VLが、配列番号54と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、または100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、請求項81に記載の方法。
【請求項104】
VHが、配列番号52と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、または100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、VLが、配列番号55と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、または100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、請求項81に記載の方法。
【請求項105】
抗セラミド抗体またはその抗原結合断片がヒト化6B5(h6B5)抗体である、請求項81~104のいずれか1項に記載の方法。
【請求項106】
抗セラミド抗体またはその抗原結合断片がh6B5 scFvである、請求項81~104のいずれか1項に記載の方法。
【請求項107】
抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が可変重鎖(V
H)および可変軽鎖(V
L)を含み、V
Hが配列番号48のアミノ酸配列を含み、V
Lが配列番号53のアミノ酸配列を含む、請求項1~72のいずれか1項に記載の方法。
【請求項108】
抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が可変重鎖(V
H)および可変軽鎖(V
L)を含み、V
Hが配列番号48のアミノ酸配列を含み、V
Lが配列番号55のアミノ酸配列を含む、請求項1~72のいずれか1項に記載の方法。
【請求項109】
抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が可変重鎖(V
H)および可変軽鎖(V
L)を含み、V
Hが配列番号49のアミノ酸配列を含み、V
Lが配列番号53のアミノ酸配列を含む、請求項1~72のいずれか1項に記載の方法。
【請求項110】
抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が可変重鎖(V
H)および可変軽鎖(V
L)を含み、V
Hが配列番号49のアミノ酸配列を含み、V
Lが配列番号54のアミノ酸配列を含む、請求項1~72のいずれか1項に記載の方法。
【請求項111】
抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が可変重鎖(V
H)および可変軽鎖(V
L)を含み、V
Hが配列番号50のアミノ酸配列を含み、V
Lが配列番号53のアミノ酸配列を含む、請求項1~72のいずれか1項に記載の方法。
【請求項112】
抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が可変重鎖(V
H)および可変軽鎖(V
L)を含み、V
Hが配列番号50のアミノ酸配列を含み、V
Lが配列番号54のアミノ酸配列を含む、請求項1~72のいずれか1項に記載の方法。
【請求項113】
抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が可変重鎖(V
H)および可変軽鎖(V
L)を含み、V
Hが配列番号51のアミノ酸配列を含み、V
Lが配列番号53のアミノ酸配列を含む、請求項1~72のいずれか1項に記載の方法。
【請求項114】
抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が可変重鎖(V
H)および可変軽鎖(V
L)を含み、V
Hが配列番号52のアミノ酸配列を含み、V
Lが配列番号53のアミノ酸配列を含む、請求項1~72のいずれか1項に記載の方法。
【請求項115】
抗セラミド抗体またはその抗原結合断片がヒト化抗体である、請求項107~114のいずれか1項に記載の方法。
【請求項116】
抗セラミド抗体またはその抗原結合断片がヒト化scFvである、請求項107~114のいずれか1項に記載の方法。
【請求項117】
糖尿病性網膜症または眼の炎症性疾患を予防することが、糖尿病性網膜症または眼の炎症性疾患の発症を遅延させることを含む、請求項1~116のいずれか1項に記載の方法。
【請求項118】
糖尿病性網膜症または眼の炎症性疾患の1種以上の症状が、対照の対象と比較して、または抗セラミド抗体もしくはその抗原結合断片による処置前の対象と比較して、対象において低減される、請求項1~117のいずれか1項に記載の方法。
【請求項119】
糖尿病性網膜症または眼の炎症性疾患の1種以上の症状が、網膜炎症、無細胞毛細血管形成、網膜新生血管形成、網膜内皮細胞死、網膜血管透過性、網膜虚血性-再潅流損傷、網膜漏出領域、および閉塞破壊から選択される、請求項118に記載の方法。
【請求項120】
糖尿病性網膜症または眼の炎症性疾患の1種以上の症状が、対照の対象と比較して、または抗セラミド抗体もしくはその抗原結合断片による処置前の対象と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%低減される、請求項118または119に記載の方法。
【請求項121】
眼における1種以上の炎症マーカーの発現レベルが、対照の対象の眼における発現レベルと比較して、または抗セラミド抗体もしくはその抗原結合断片による処置前の対象の眼における発現レベルと比較して低減される、請求項1~120のいずれか1項に記載の方法。
【請求項122】
1種以上の炎症マーカーが、サイトカイン、増殖因子、および接着分子から選択される、請求項121に記載の方法。
【請求項123】
サイトカインが、TNFα、IL-1β、IL-6、またはMCP1から選択される、請求項122に記載の方法。
【請求項124】
増殖因子がVEGFである、請求項122に記載の方法。
【請求項125】
接着分子がICAM-1またはVCAM-1である、請求項122に記載の方法。
【請求項126】
対象の眼における1種以上の炎症マーカーの発現レベルが、対照の対象の眼における発現レベルと比較して、または抗セラミド抗体もしくはその抗原結合断片による処置前の対象の眼における発現レベルと比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%減少する、請求項121~125のいずれか1項に記載の方法。
【請求項127】
1種以上の視覚パラメータが、対照の対象の視覚パラメータと比較して、または抗セラミド抗体もしくはその抗原結合断片による処置前の対象の視覚パラメータと比較して、対象において増加する、請求項1~126のいずれか1項に記載の方法。
【請求項128】
1つ以上の視覚パラメータが、周辺視力、夜間視力、色覚、遠方視力、近距離視力、および視覚明瞭性から選択される、請求項127に記載の方法。
【請求項129】
対象の眼における網膜血管透過性が、対照の対象の眼における網膜血管透過性と比較して、または抗セラミド抗体もしくはその抗原結合断片による処置前の対象の眼における発現レベルと比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%減少する、請求項1~128のいずれか1項に記載の方法。
【請求項130】
対象群における平均早期処置糖尿病網膜症研究(ETDRS)グレードスコアが、対照の対象群における平均ETDRSグレードスコアと比較して、または抗セラミド抗体もしくはその抗原結合断片による処置前の対象群における平均ETDRSグレードスコアと比較して、少なくとも0.2、少なくとも0.5、少なくとも1、少なくとも1.5、少なくとも2、または少なくとも2.5低下する、請求項1~129のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2019年9月27日に出願された米国仮出願第62/907,287号の優先権を主張し、その内容は全体として参照により本明細書に組み込まれる。
配列表に関する陳述
本出願に関連付けられる配列表は、ペーパーコピーの代わりにテキスト形式で提供され、参照により本明細書に組み込まれる。配列表のコンピュータで読み込み可能なフォーマットコピー:ファイル名:CERA-011_01WO_SeqList_ST25.txt、記録日:2020年9月28日、ファイルサイズ32.9キロバイト。
本開示は、糖尿病性網膜症を処置するための抗セラミド組成物およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病性網膜症(DR)は、眼の裏側を覆う網膜と呼ばれる光感受性組織の血管を冒す。これは糖尿病を有する患者の失明の最も一般的な原因であり、労働年齢の成人の視力障害および盲目の主要原因である。糖尿病性網膜症の結果、黄斑と呼ばれる網膜の一部に腫れが生じ、糖尿病性黄斑浮腫(DME)と呼ばれる。
DRおよびDMEの既存の処置には、新生血管性糖尿病性網膜症(DR)と糖尿病性黄斑浮腫(DME)の両方の処置において、ある程度の効果を有する抗VEGF免疫療法が含まれる。しかしながら、いくつかの大規模臨床研究では、患者の約40%が抗VEGF療法に応答しないことが明らかにされている。さらに、抗VEGF処置は、網膜損傷の完全な回復が困難である場合、疾患の非常に後期の段階に向けられる。
DRおよびDMEに対する安全で効果的な処置の必要性は未だ満たされていない。
【図面の簡単な説明】
【0003】
【
図1】虚血性-再潅流(I/R)損傷を伴う糖尿病性網膜症のマウスモデルにおける硝子体内の抗セラミドscFv投与の効果を測定するための例示的な実験設計を示す図である。
【
図2A-2B】糖尿病網膜症のマウスモデルにおける網膜虚血性-再潅流(I/R)損傷マウスにおける硝子体内の抗セラミドscFv投与の結果を示す図である。
図2Aは、シクロフィリンAと比較した、TNFα、IL-1β、IL6、ICAM-1、VCAM-1、およびMCP1の発現の変化を以下の順に示す:対照の眼(白色バー)、I/R眼(黒色バー)、および抗セラミドscFv投与を伴うI/R眼(灰色バー)。
図2Bは、対照の眼(左パネル、左バー)、I/R眼(中央パネル、中央バー)、および抗セラミドscFv投与を伴うI/R眼(右パネル、右バー)における蛍光顕微鏡画像および定量的棒グラフ分析によって示される網膜血管透過性を示す。画像中のスケールバーは50μmを表す。
【
図3】糖尿病のマウスモデルにおける硝子体内の抗セラミドscFv投与の効果を測定するための例示的な実験設計を示す図である。
【
図4】糖尿病ラットにおける抗セラミドscFv投与の結果を示す図である。
【
図5】糖尿病性網膜症のマウスモデルにおける硝子体内および全身の抗セラミドscFv投与の効果を比較するための例示的な実験設計を示す図である。
【
図6】糖尿病性網膜症のマウスモデルにおける抗セラミドscFv投与およびDHA投与の効果を比較するための例示的な実験設計を示す図である。
【
図7】DHA処置された対照マウスにおける無細胞毛細血管を示す図である。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片を眼投与することを含む、糖尿病性網膜症を処置する方法に関する。また、糖尿病性網膜症の処置を以前に受けたことがある対象を処置する方法も提供される。一部の実施形態では、本開示は、さらに、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片の単回用量で糖尿病性網膜症を処置する方法を提供する。さらに、少なくとも2週間~少なくとも1年の間隔を置いて2回以上の用量の抗セラミド抗体またはその抗原結合断片を用いて糖尿病性網膜症を処置する方法が提供される。本開示の別の態様は、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片を用いて眼の炎症性疾患を処置する方法に関する。
一部の実施形態では、本開示は、対象に抗セラミド抗体またはその抗原結合断片を眼投与することを含む、それを必要とする対象における糖尿病性網膜症を処置または予防する方法を提供する。一部の実施形態では、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片は一本鎖可変断片(scFv)である。
一部の実施形態では、眼投与(ocular administration)は、局所投与、眼内投与、結膜下投与、前房内投与、角膜輪部を介した前房への注射、角膜輪部内投与、角膜内投与、網膜下投与、房水注射、テノン嚢下投与、脈絡膜上腔(SCS)への投与、毛様体上腔への投与、および硝子体内投与からなる群から選択される。一部の実施形態では、投与は硝子体内投与である。
【0005】
一部の実施形態では、対象は、糖尿病性網膜症の前処置を受けている。一部の実施形態では、対象は、糖尿病性網膜症の前処置に応答しなかった。一部の実施形態では、前処置は、硝子体切除およびレーザー手術から選択される治療手順、またはステロイドおよび抗血管内皮増殖因子(VEGF)療法から選択される治療薬である。一部の実施形態では、抗VEGF療法は、ベバシズマブ、ラニビズマブ、およびアフリベルセプトからなる群から選択される抗VEGF抗体である。
一部の実施形態では、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片は、単回用量として投与される。一部の実施形態では、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片は、少なくとも2週間、少なくとも3週間、または少なくとも4週間の間隔を置いて2回以上の用量で投与される。一部の実施形態では、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片は、約2週間~約4週間の間隔を置いて2回以上の用量で投与される。一部の実施形態では、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片は、少なくとも1カ月、少なくとも2カ月、少なくとも3カ月、少なくとも4カ月、少なくとも5カ月、少なくとも6カ月、少なくとも7カ月、少なくとも8カ月、少なくとも9カ月、少なくとも10カ月、または少なくとも11カ月の間隔を置いて2回以上の用量で投与される。一部の実施形態では、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片は、約1カ月~約6カ月の間隔を置いて2回以上の用量で投与される。一部の実施形態では、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片は、少なくとも1年の間隔を置いて2回以上の用量で投与される。一部の実施形態では、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片は、糖尿病性網膜症の1種以上の症状の発症前に投与される。一部の実施形態では、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片は、糖尿病性網膜症の1種以上の症状の発症後に投与される。一部の実施形態では、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、糖尿病性網膜症の非増殖期の間に投与される。一部の実施形態では、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、糖尿病性網膜症の増殖期の間に投与される。
【0006】
一部の実施形態では、本開示は、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片を対象に投与することを含む、それを必要とする対象における糖尿病性網膜症を処置または予防する方法を提供し、対象は糖尿病性網膜症の前処置を受けている。一部の実施形態では、対象は、糖尿病性網膜症の前処置に応答しなかった。一部の実施形態では、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片は一本鎖可変断片(scFv)である。
一部の実施形態では、投与は眼投与である。一部の実施形態では、眼投与は、局所投与、眼内投与、結膜下投与、前房内投与、角膜輪部を介した前房への注射、角膜輪部内投与、角膜内投与、網膜下投与、房水注射、テノン嚢下投与、脈絡膜上腔(SCS)への投与、毛様体上腔投与、および硝子体内投与からなる群から選択される。一部の実施形態では、眼投与は硝子体内投与である。
一部の実施形態では、前処置は、硝子体切除、レーザー手術、ステロイド、および/または抗血管内皮増殖因子(VEGF)療法であった。一部の実施形態では、抗VEGF療法は、ベバシズマブ、ラニビズマブ、およびアフリベルセプトからなる群から選択される抗VEGF抗体である。
【0007】
一部の実施形態では、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片は、単回用量として投与される。一部の実施形態では、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片は、少なくとも2週間、少なくとも3週間、または少なくとも4週間の間隔を置いて2回以上の用量で投与される。一部の実施形態では、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片は、約2週間~約4週間の間隔を置いて2回以上の用量で投与される。一部の実施形態では、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片は、少なくとも1カ月、少なくとも2カ月、少なくとも3カ月、少なくとも4カ月、少なくとも5カ月、少なくとも6カ月、少なくとも7カ月、少なくとも8カ月、少なくとも9カ月、少なくとも10カ月、または少なくとも11カ月の間隔を置いて2回以上の用量で投与される。一部の実施形態では、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片は、約1カ月~約6カ月の間隔を置いて2回以上の用量で投与される。一部の実施形態では、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片は、少なくとも1年の間隔を置いて2回以上の用量で投与される。
一部の実施形態では、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片は、糖尿病性網膜症の1種以上の症状の発症前に投与される。一部の実施形態では、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片は、糖尿病性網膜症の1種以上の症状の発症後に投与される。一部の実施形態では、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片は、糖尿病性網膜症の非増殖期の間に投与される。一部の実施形態では、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片は、糖尿病性網膜症の増殖期の間に投与される。
【0008】
一部の実施形態では、本開示は、単回用量の抗セラミド抗体またはその抗原結合断片を対象に投与することを含む、対象における糖尿病性網膜症を処置または予防する方法を提供する。
一部の実施形態では、本開示は、2回以上の用量の抗セラミド抗体またはその抗原結合断片を対象に投与することを含む、対象における糖尿病性網膜症を処置または予防する方法を提供し、2回以上の用量は少なくとも2週間の間隔を置かれる。一部の実施形態では、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片は、少なくとも2週間、少なくとも3週間、または少なくとも4週間の間隔を置いて2回以上の用量で投与される。一部の実施形態では、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片は、約2週間~約4週間の間隔を置いて2回以上の用量で投与される。一部の実施形態では、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片は、少なくとも1カ月、少なくとも2カ月、少なくとも3カ月、少なくとも4カ月、少なくとも5カ月、少なくとも6カ月、少なくとも7カ月、少なくとも8カ月、少なくとも9カ月、少なくとも10カ月、または少なくとも11カ月の間隔を置いて2回以上の用量で投与される。一部の実施形態では、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片は、約1カ月~約6カ月の間隔を置いて2回以上の用量で投与される。一部の実施形態では、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片は、少なくとも1年の間隔を置いて2回以上の用量で投与される。
【0009】
一部の実施形態では、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片は一本鎖可変断片(scFv)である。
一部の実施形態では、投与は眼投与である。一部の実施形態では、眼投与は、局所投与、眼内投与、結膜下投与、前房内投与、角膜輪部を介した前房への注射、角膜輪部内投与、角膜内投与、網膜下投与、房水注射、テノン嚢下投与、脈絡膜上腔(SCS)への投与、毛様体上腔への投与、および硝子体内投与からなる群から選択される。一部の実施形態では、眼投与は硝子体内投与である。
一部の実施形態では、対象は、糖尿病性網膜症の前処置を受けている。一部の実施形態では、対象は、糖尿病性網膜症の前処置に応答しなかった。一部の実施形態では、前処置は、硝子体切除、レーザー手術、ステロイド、および/または抗血管内皮増殖因子(VEGF)療法であった。一部の実施形態では、抗VEGF療法は、ベバシズマブ、ラニビズマブ、およびアフリベルセプトからなる群から選択される抗VEGF抗体である。
【0010】
一部の実施形態では、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片は、糖尿病性網膜症の1種以上の症状の発症前に投与される。一部の実施形態では、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片は、糖尿病性網膜症の1種以上の症状の発症後に投与される。一部の実施形態では、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片は、糖尿病性網膜症の非増殖期の間に投与される。一部の実施形態では、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片は、糖尿病性網膜症の増殖期の間に投与される。
一部の実施形態では、本開示は、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片を眼投与することを含む、眼の炎症性疾患を処置する方法を提供する。一部の実施形態では、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片は一本鎖可変断片(scFv)である。
一部の実施形態では、眼投与は、局所投与、眼内投与、結膜下投与、前房内投与、角膜輪部を介した前房への注射、角膜輪部内投与、角膜内投与、網膜下投与、房水注射、テノン嚢下投与、脈絡膜上腔(SCS)への投与、毛様体上腔への投与、および硝子体内投与からなる群から選択される。一部の実施形態では、眼の炎症性疾患は、網膜血管新生、脈絡膜血管新生、角膜血管新生、黄斑変性症、加齢性黄斑変性症、糖尿病性網膜症、硝子体出血、網膜出血、脈絡膜炎、血管新生緑内障、脈絡膜疾患、毛細血管拡張症、網膜動脈閉塞症、網膜静脈閉塞症、脈絡網膜炎、網膜上膜、脈絡膜新生物、未熟児の網膜症、嚢胞性黄斑浮腫、鬱血乳頭、再発性虚血、眼の出血、および増殖性硝子体網膜症からなる群から選択される。
【0011】
一部の実施形態では、眼投与は硝子体内投与である。
一部の実施形態では、対象は、糖尿病性網膜症の前処置を受けている。一部の実施形態では、対象は、糖尿病性網膜症の前処置に応答しなかった。一部の実施形態では、前処置は、硝子体切除およびレーザー手術から選択される治療手順、またはステロイドおよび抗血管内皮増殖因子(VEGF)療法から選択される治療薬であった。一部の実施形態では、抗VEGF療法は、ベバシズマブ、ラニビズマブ、およびアフリベルセプトからなる群から選択される抗VEGF抗体である。
一部の実施形態では、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片は、単回用量として投与される。一部の実施形態では、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片は、少なくとも2週間、少なくとも3週間、または少なくとも4週間の間隔を置いて2回以上の用量で投与される。一部の実施形態では、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片は、約2週間~約4週間の間隔を置いて2回以上の用量で投与される。一部の実施形態では、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片は、少なくとも1カ月、少なくとも2カ月、少なくとも3カ月、少なくとも4カ月、少なくとも5カ月、少なくとも6カ月、少なくとも7カ月、少なくとも8カ月、少なくとも9カ月、少なくとも10カ月、または少なくとも11カ月の間隔を置いて2回以上の用量で投与される。一部の実施形態では、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片は、約1カ月~約6カ月の間隔を置いて2回以上の用量で投与される。一部の実施形態では、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片は、少なくとも1年の間隔を置いて2回以上の用量で投与される。
【0012】
一部の実施形態では、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片は、眼炎症性疾患の1種以上の症状の発症前に投与される。一部の実施形態では、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片は、眼炎症性疾患の1種以上の症状の発症後に投与される。
一部の実施形態では、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片は、可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)を含み、VHは、GYTFTDHTIH(配列番号:1)のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、YNYPRDGSTKYNEKFKG(配列番号2)のアミノ酸配列を含むHCDR2、およびGFITTVVPSAY(配列番号3)のアミノ酸配列を含むHCDR3を含み、VLは、RASKSISKYLA(配列番号4)のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、SGSTLQS(配列番号5)のアミノ酸配列を含むLCDR2、およびQQHNEYPWT(配列番号6)のアミノ酸配列を含むLCDR3を含む。一部の実施形態では、VHは配列番号7のアミノ酸配列を含み、VLは配列番号8のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片は、6B5抗体である。一部の実施形態では、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片は、6B5 scFvである。
【0013】
一部の実施形態では、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片は、ヒト化6B5(h6B5)抗体である。一部の実施形態では、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片は、h6B5 scFvである。一部の実施形態では、h6B5抗体、scFv、またはその抗原結合断片は、可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)を含み、VHは、配列番号1および43から選択されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、配列番号44~47から選択されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるHCDR2、およびGFITTVVPSAY(配列番号3)のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるHCDR3を含み、ならびにVLは、RASKSISKYLA(配列番号4)のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、SGSTLQS(配列番号5)のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるLCDR2、およびQQHNEYPWT(配列番号6)のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるLCDR3を含む。一部の実施形態では、HCDR1は、GYTFTDHTIH(配列番号1)のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、およびHCDR2は、YNYPRDGSTKYNEKFQG(配列番号44)のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。一部の実施形態では、HCDR1は、GYTFTDHTIH(配列番号1)のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、およびHCDR2は、YNYPREGSTKYNEKFQG(配列番号45)のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。一部の実施形態では、HCDR1は、GYTFTDHTIH(配列番号1)のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、およびHCDR2は、YNYPRDVSTKYNEKFQG(配列番号46)のアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなる。一部の実施形態では、HCDR1は、GYTFTDHTIH(配列番号1)のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、およびHCDR2は、YNYPRDGSTKYAEKFQG(配列番号47)のアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなる。一部の実施形態では、HCDR1は、GYTFTDHTMH(配列番号43)のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、およびHCDR2は、YNYPRDGSTKYNEKFQG(配列番号44)のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。一部の実施形態では、HCDR1は、GYTFTDHTMH(配列番号43)のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、およびHCDR2は、YNYPREGSTKYNEKFQG(配列番号45)のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。一部の実施形態では、HCDR1は、GYTFTDHTMH(配列番号43)のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、およびHCDR2は、YNYPRDVSTKYNEKFQG(配列番号46)のアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなる。一部の実施形態では、HCDR1は、GYTFTDHTMH(配列番号43)のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、およびHCDR2は、YNYPRDGSTKYAEKFQG(配列番号47)のアミノ酸配列を含むかまたはそれらからなる。一部の実施形態では、VHは、配列番号48と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、VLは、配列番号53と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。一部の実施形態では、VHは、配列番号48と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、VLは、配列番号54と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。一部の実施形態では、VHは、配列番号48と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、VLは、配列番号55と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。一部の実施形態では、VHは、配列番号49と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、VLは、配列番号53と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。一部の実施形態では、VHは、配列番号49と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、VLは、配列番号54と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。一部の実施形態では、VHは、配列番号49と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、VLは、配列番号55と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。一部の実施形態では、VHは、配列番号50と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、VLは、配列番号53と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。一部の実施形態では、VHは、配列番号50と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、VLは、配列番号54と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。一部の実施形態では、VHは、配列番号50と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、VLは、配列番号55と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。一部の実施形態では、VHは、配列番号51と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、VLは、配列番号53と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。一部の実施形態では、VHは、配列番号51と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、VLは、配列番号54と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。一部の実施形態では、VHは、配列番号51と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、VLは、配列番号55と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。一部の実施形態では、VHは、配列番号52と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、VLは、配列番号53と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。一部の実施形態では、VHは、配列番号52と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、VLは、配列番号54と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。一部の実施形態では、VHは、配列番号52と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、VLは、配列番号55と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、もしくは100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる。一部の実施形態では、h6B5抗体またはその抗原結合断片は、可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)を含み、VHは配列番号48のアミノ酸配列を含み、およびVLは配列番号53のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、h6B5抗体またはその抗原結合断片は、可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)を含み、VHは配列番号48のアミノ酸配列を含み、およびVLは配列番号55のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、h6B5抗体またはその抗原結合断片は、可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)を含み、VHは配列番号49のアミノ酸配列を含み、およびVLは配列番号53のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、h6B5抗体またはその抗原結合断片は、可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)を含み、VHは配列番号49のアミノ酸配列を含み、およびVLは配列番号54のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、h6B5抗体またはその抗原結合断片は、可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)を含み、VHは配列番号50のアミノ酸配列を含み、およびVLは配列番号53のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、h6B5抗体またはその抗原結合断片は、可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)を含み、VHは配列番号50のアミノ酸配列を含み、およびVLは配列番号54のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、h6B5抗体またはその抗原結合断片は、可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)を含み、VHは配列番号51のアミノ酸配列を含み、およびVLは配列番号53のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、h6B5抗体またはその抗原結合断片は、可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)を含み、VHは配列番号52のアミノ酸配列を含み、およびVLは配列番号53のアミノ酸配列を含む。
【0014】
一部の実施形態では、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片は、可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)を含み、VHは、GYTFTNYWMH(配列番号33)のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、AIYPGDSDTSYNQKFKG(配列番号34)のアミノ酸配列を含むHCDR2、およびGLYYGYD(配列番号35)のアミノ酸配列を含むHCDR3を含み、VLは、KSSQSLIDSDGKTFLN(配列番号36)のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LVSKLDS(配列番号37)のアミノ酸配列を含むLCDR2、およびWQGTHFPYTのアミノ酸配列を含むLCDR3(配列番号38)を含む。一部の実施形態では、VHは配列番号39のアミノ酸配列を含み、VLは配列番号40のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片は2A2抗体である。一部の実施形態では、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片は2A2 scFvである。
【0015】
一部の実施形態では、糖尿病性網膜症または眼の炎症性疾患を予防することは、糖尿病性網膜症または眼の炎症性疾患の発症を遅らせることを含む。一部の実施形態では、糖尿病性網膜症または眼の炎症性疾患の1種以上の症状は、対照の対象と比較して、または抗セラミド抗体もしくはその抗原結合断片による処置前の対象と比較して、対象において低減される。一部の実施形態では、糖尿病性網膜症または眼の炎症性疾患の1種以上の症状は、網膜炎症、無細胞毛細血管形成、網膜新生血管形成、網膜内皮細胞死、網膜血管透過性、網膜虚血性-再潅流損傷、網膜漏出領域、および閉塞破壊から選択される。一部の実施形態では、糖尿病性網膜症または眼の炎症性疾患の1種以上の症状は、対照の対象と比較して、または抗セラミド抗体もしくはその抗原結合断片による処置前の対象と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%低減される。
【0016】
一部の実施形態では、眼における1種以上の炎症マーカーの発現レベルは、対照の対象の眼における発現レベルと比較して、または抗セラミド抗体もしくはその抗原結合断片による処置前の対象の眼における発現レベルと比較して低減される。一部の実施形態では、1種以上の炎症マーカーは、サイトカイン、増殖因子、および接着分子から選択される。一部の実施形態では、サイトカインは、TNFα、IL-1β、IL-6、またはMCP1から選択される。一部の実施形態では、増殖因子はVEGFである。一部の実施形態では、接着分子は、ICAM-1またはVCAM-1である。一部の実施形態では、対象の眼における1種以上の炎症マーカーの発現レベルは、対照の対象の眼における発現レベルと比較して、または抗セラミド抗体もしくはその抗原結合断片による処置前の対象の眼における発現レベルと比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%減少する。
【0017】
一部の実施形態では、1種以上の視覚パラメータは、対照の対象の視覚パラメータと比較して、または抗セラミド抗体もしくはその抗原結合断片による処置前の対象の視覚パラメータと比較して、対象において増加する。一部の実施形態では、1つ以上の視覚パラメータは、周辺視力、夜間視力、色覚、遠方視力、近距離視力、および視覚明瞭性から選択される。
一部の実施形態では、対象の眼における網膜血管透過性は、対照の対象の眼における網膜血管透過性と比較して、または抗セラミド抗体もしくはその抗原結合断片による処置前の対象の眼における発現レベルと比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%減少する。
一部の実施形態では、対象群における平均早期処置糖尿病網膜症研究(ETDRS)グレードスコアが、対照の対象群における平均ETDRSグレードスコアと比較して、または抗セラミド抗体もしくはその抗原結合断片による処置前の対象群における平均ETDRSグレードスコアと比較して、少なくとも0.2、少なくとも0.5、少なくとも1、少なくとも1.5、少なくとも2、または少なくとも2.5低下する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
概説
本開示は、糖尿病性網膜症を処置するための組成物および方法に関する。一部の実施形態では、抗セラミド抗体およびその抗原結合断片(例えば、scFvs)の組成物、ならびに糖尿病性網膜症の処置または予防における使用方法が提供される。このような組成物および方法は、糖尿病性網膜症のための別の処置、例えば、抗VEGF抗体療法に以前失敗した患者における糖尿病性網膜症の処置に使用することができる。さらに、抗セラミドscFvを硝子体内に投与する方法が提供される。
定義
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、内容が明確に別段の指示をしない限り、複数の参照を含む。
本明細書で使用される場合、用語「および/または」は、別段の指示がない限り、「および」または「または」のいずれかを意味するために、本開示において使用される。
【0019】
本明細書全体を通して、文脈上別の意味がない限り、用語「含む(comprise)」,または「含む(comprises)」または「含んでいる(comprising)」などの変形は、記述された要素もしくは整数、または要素もしくは整数のグループを包含することを意味するが、他の要素もしくは整数、または要素もしくは整数のグループを除外することを意味しないものと理解される。
本出願で使用される場合、「約」および「およそ」という用語は、同等物として使用される。本出願で使用される数字は、約/およその有無は、関連技術の当業者に理解されるいずれの通常の変動もカバーすることを意味する。特定の実施形態では、「ほぼ」または「約」という用語は、別段の記載がない限り、または文脈から明らかでない限り、記載された参照値のいずれかの方向で(より大きいまたはより小さい)10%以下に入る値の範囲を指す(このような数が可能な値の100%を超えるか、可能な値の0%を下回る場合を除く)。
用語「試料」は、分析および/または修飾に供される生物学的組成物(例えば、細胞または組織の一部)を指す。一部の実施形態では、試料は、対象から直接得られるという点で「一次試料」であり;一部の実施形態では、「試料」は、一次試料の処理の結果であり、例えば、ある種の成分を除去し、および/または目的とするある種の成分を単離もしくは精製するためである。
【0020】
用語「対象」は、例えば、哺乳動物などの動物を含む。一部の実施形態では、哺乳動物は霊長類である。一部の実施形態では、哺乳動物はヒトである。一部の実施形態では、対象は、畜牛、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ブタなどの家畜;またはイヌおよびネコなどの飼育動物である。一部の実施形態では(例えば、特に研究状況では)、対象は、げっ歯類(例えば、マウス、ラット、ハムスター)、ウサギ、霊長類、またはブタ、例えば、近交系ブタなどである。用語「対象」および「患者」は、本明細書において互換的に使用される。一部の実施形態では、対象は、新生児、幼児、または成人であり得る。特に興味深いのは、哺乳動物対象である。本方法で処理することができる哺乳動物種には、イヌおよびネコ;ウマ;ウシ;ヒツジなど、および霊長類、特にヒトが含まれる。動物モデル、特に小型哺乳動物(例えば、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギなど)を実験的調査に用いることができる。
本明細書で使用される場合、用語「処置」、「処置する」、または「改善する」とは、治療的処置または予防的(prophylactic)/予防的(preventative)処置のいずれかを指す。処置は、処置を受けている個体における疾患の少なくとも1種の症状が改善するか、または処置が個体における進行性疾患の悪化を遅らせることができるか、または追加の関連疾患の発症を予防することができる場合、治療である。
【0021】
本明細書で使用される場合、用語「有効量」とは、特定の生理学的効果をもたらすのに必要な薬物または組成物の最小量を指す。特定の薬物の有効量は、薬物の性質に基づいて、種々の方法で表すことができ、例えば、質量/体積、細胞数/体積、粒子/体積、(薬物の質量)/(対象の質量)、細胞数/(対象の質量)、または粒子/(対象の質量)が挙げられる。また、特定の作用物質の有効量は、基準レベルと最大応答レベルとの間の半分である特定の生理学的反応の大きさをもたらす作用物質の濃度を指す、半分最大有効濃度(EC50)として表すこともできる。
用語「抗体」とは、免疫グロブリン(Ig)分子の可変領域に位置する少なくとも1種のエピトープ認識部位を介して、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、またはポリペプチドなどの特異的標的に結合することができるIg分子を指す。本明細書で使用される場合、該用語は、無傷のポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体およびその抗原結合断片を包含する。例えば、天然の免疫グロブリン分子は、2つの重鎖ポリペプチドおよび2つの軽鎖ポリペプチドで構成される。重鎖ポリペプチドの各々は、重鎖ポリペプチドと軽鎖ポリペプチドの間の鎖間ジスルフィド結合により軽鎖ポリペプチドと結合して、2つのヘテロ二量体タンパク質またはポリペプチド(すなわち、2つの異種ポリペプチド鎖で構成されるタンパク質)を形成する。次に、2つのヘテロ二量体タンパク質は、重鎖ポリペプチド間のさらなる鎖間ジスルフィド結合により結合して、免疫グロブリンタンパク質またはポリペプチドを形成する。
【0022】
用語「抗原結合断片」とは、本明細書で使用される場合、目的とする抗原の少なくとも1種のエピトープに結合する免疫グロブリン重鎖および/または軽鎖の少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含むポリペプチド断片を指す。この点に関して、本明細書に記載される抗体の抗原結合断片は、セラミドに特異的に結合する抗体からの可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)配列の1、2、3、4、5または全6個のCDRを含み得る。抗原結合断片には、全長抗体の一部を含むタンパク質、一般的には、その抗原結合または可変領域、例えば、Fab、F(ab’)2、Fab’、Fv断片、ミニボディ、ダイアボディ、一本鎖抗体(dAb)、一本鎖可変断片(scFv)、抗体断片から形成された多特異的抗体、および必要な特異性の抗原結合部位または断片を含む免疫グロブリン分子の他の修飾された構成が含まれる。本開示のある種の実施形態では、無傷の抗体ではなく抗原結合断片が、組織浸透または腫瘍浸透を増加させるために使用される。他の実施形態では、抗原結合断片は、血清半減期を増加させるためにさらに修飾される。
【0023】
「Fc領域」または「Fcドメイン」とは、細胞上のFc受容体および/または補体のC1q成分に結合することができ、それによって抗体のエフェクター機能を媒介することができる抗体の部分に対応するかまたはそれに由来するポリペプチド配列を指す。Fcは、タンパク質結晶を容易に形成する抗体の断片である「断片結晶性」を意味する。タンパク質分解消化によって最初に記述された区別できるタンパク質断片は、免疫グロブリンタンパク質の全体的な構造を定義することができる。文献で最初に定義されたように、Fc領域は、ジスルフィド結合によって結合される2つのポリペプチドを含み、各々がヒンジ領域、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含むホモ二量体タンパク質である。しかし、より最近になって、該用語は、CH3、CH2、およびヒンジの少なくとも一部からなる一本鎖モノマー成分に適用され、第2のこのような鎖とジスルフィド結合された二量体を形成するのに十分である。したがって、文脈に応じて、用語「Fc領域」または「Fcドメイン」の使用は、本明細書において、二量体形態、または二量体タンパク質を形成するために結合する個々のモノマーのいずれかを指す。免疫グロブリンの構造と機能の概説については、Putnam, The Plasma Proteins, Vol. V (Academic Press, Inc., 1987), pp. 49-140; and Padlan, Mol. Immunol. 31:169-217, 1994を参照されたい。本明細書で使用される場合、Fcドメインなる用語は、天然に存在する配列の変異体を含む。
【0024】
用語「免疫グロブリン定常領域」または「定常領域」とは、免疫グロブリンの1種以上の定常ドメイン(例えば、CH1、CH2、CH3)の一部もしくは全部に対応するかまたはそれに由来するペプチドまたはポリペプチド配列を指す。ある種の実施形態では、定常領域は、CH1ドメインを含まない。ある種の実施形態では、定常領域を構成する定常ドメインは、ヒトである。
用語「軽鎖可変領域」(「軽鎖可変ドメイン」または「VL」とも呼ばれる)および「重鎖可変領域」(「重鎖可変ドメイン」または「VH」とも呼ばれる)は、それぞれ抗体軽鎖および重鎖由来の可変結合領域を指す。可変結合領域は、「相補性決定領域」(CDR)および「フレームワーク領域」(FR)として公知である、離散的であり、明確に定義されたサブ領域から構成される。
用語「免疫グロブリン軽鎖定常領域」(「軽鎖定常領域」または「CL」とも呼ばれる)は、抗体軽鎖由来の定常領域である。
用語「免疫グロブリン重鎖定常領域」(「重鎖定常領域」または「CH」とも呼ばれる)とは、抗体重鎖由来の定常領域を指す。CHは、抗体のアイソタイプに応じて、CH1、CH2、およびCH3(IgA、IgD、IgG)、またはCH1、CH2、CH3、およびCH4ドメイン(IgE、IgM)にさらに分割され得る。
【0025】
用語「F(ab)」とは、酵素パパインによるIgG分子のタンパク質分解的切断から生じるタンパク質断片の2つを指す。各F(ab)は、VH鎖およびVL鎖の共有結合ヘテロ二量体を含み、無傷の抗原結合部位を含む。各F(ab)は、一価の抗原結合断片である。用語「Fab’」とは、F(ab’)2に由来する断片を指し、Fcのほんの一部を含み得る。各Fab’断片は、一価の抗原結合断片である。
用語「F(ab’)2」は、酵素ペプシンによるタンパク質分解的切断によって生じるIgGのタンパク質断片を指す。各F(ab’)2断片は、2つのF(ab’)断片を含み、したがって、二価抗原結合断片である。
「Fd断片」は、VHおよびCH1ドメインを含む。
「Fv断片」とは、未変性抗体分子の抗原認識および結合能力の大部分を保持するが、Fab内に含まれるCH1およびCLドメインを欠く抗原結合部位を含む、非共有VH::VLヘテロ二量体を指す。Inbar et al. (1972) Proc. Nat. Acad. Sci. USA 69:2659-2662; Hochman et al. (1976) Biochem 15:2706-2710; and Ehrlich et al. (1980) Biochem 19:4091-4096。一部の実施形態では、Fv断片は、IgM、およびまれにIgGまたはIgA免疫グロブリン分子の優先的タンパク質分解切断によって生成され得る。しかしながら、Fv断片は、当該技術分野において公知である組換え技術を用いてより一般的に誘導される。
【0026】
「dAb断片」(Ward et al., Nature 341:544 546, 1989)は、VHドメインを含む。
「一本鎖抗体」または「scFv」は、10~約25個のアミノ酸の短いリンカーペプチドと連結された、免疫グロブリンの重鎖(VH)および軽鎖(VL)の可変領域の融合タンパク質である。リンカーは、可溶性のためにグリシンに富み、溶解性のためにセリンまたはスレオニンに富み、VHのN末端をVLのC末端に連結するか、またはその逆のいずれかであり得る。scFvは、定常領域の除去およびリンカーの導入にもかかわらず、元の免疫グロブリンの特異性を保持する。本開示において、抗体もしくは抗体断片またはその使用のいずれの記載も、scFv分子およびその使用を含むことが意図される。
「ミニボディ」とは、CH3ドメインに接続したscFvを含む融合タンパク質を指し、本明細書にも含まれる(S. Hu et al., Cancer Res., 56, 3055-3061, 1996).例えば、Ward, E. S. et al., Nature 341, 544-546 (1989); Bird et al., Science, 242, 423-426, 1988; Huston et al., PNAS USA, 85, 5879-5883, 1988); PCT/US92/09965; WO94/13804; P. Holliger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90 6444-6448, 1993; Y. Reiter et al., Nature Biotech, 14, 1239-1245, 1996; S. Hu et al., Cancer Res., 56, 3055-3061, 1996を参照)。
【0027】
用語「ダイアボディ」は、VHおよびVLドメインが、同じ鎖上の2つのドメイン間の対合を可能にするには短すぎるリンカーを用いて単一のポリペプチド鎖中で発現され、それによって、ドメインを別の鎖の相補性ドメインと対合させ、2つの抗原結合部位を作り出す二特異的抗体を指す(例えば、Holliger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-48 (1993) and Poljak et al., Structure 2:1121-23 (1994)を参照されたい)。
用語「ナノボディ」または「単一ドメイン抗体」とは、単一の単量体可変抗体ドメインからなる抗原結合断片を指す。ナノクローン法は、B細胞の自動化されたハイスループット選択に基づいて、所望の標的に対してナノボディを生じさせるための方法である。(国際公開第2006/079372号を参照されたい)。
用語「モノクローナル抗体」とは、本明細書で使用される場合、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体、すなわち、集団を含む個々の抗体は、少量で存在し得る可能性のある天然に存在する突然変異を除いて、同一である。
【0028】
用語「キメラ抗体」とは、本明細書で使用される場合、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種に由来するか、または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一または相同であるモノクローナル抗体を指し、一方、残りの鎖は、所望の生物学的活性を示す限り、別の種に由来するか、または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体、ならびにそのような抗体の断片における対応する配列と同一または相同である。
用語「一本鎖可変断片」または「scFv」は、10~約25個のアミノ酸の短いリンカーペプチドと連結された、免疫グロブリンの重鎖(VH)および軽鎖(VL)の可変領域の融合タンパク質を指す。Huston et al. (1988) Proc. Nat. Acad. Sci. USA 85(16):5879-5883。リンカーは、VHのN末端をVLのC末端に接続することができ、またはその逆である。天然に凝集したが、化学的に分離した、軽ポリペプチド鎖および重ポリペプチド鎖を抗体V領域からscFv分子に変換するための化学構造を識別するための多数の方法が記載されており、抗原結合部位の構造と実質的に類似した三次元構造に折り畳まれる。例えば、Hustonらの米国特許第5,091,513号および第5,132,405号;ならびにLadnerらの米国特許第4,946,778号を参照されたい。
【0029】
本明細書で使用される場合、用語「CDR」とは、免疫グロブリン(抗体)分子の「相補性決定領域」を指す。CDRは、抗体がその特異的抗原に結合する抗体中の可変ドメインの一部である。可変ドメインあたり3つのCDR(すなわち、軽鎖の可変ドメインにおけるCDR1、CDR2およびCDR3、ならびに重鎖の可変ドメインにおけるCDR1、CDR2およびCDR3)がある。可変ドメイン内では、CDR1およびCDR2は、ポリペプチド鎖の可変(V)領域に見出され、CDR3は、それが軽鎖領域の場合にはVJの組換えによりコードされ、重鎖領域の場合にはVDJによりコードされるため、最大の可変性を示す。
「単離された抗体」は、(1)天然状態でそれに付随する、他の天然に関連する抗体を含む天然に関連する成分としない、(2)同種からの他のタンパク質を含まない、(3)異種の細胞によって発現される、または(4)天然において発生しない抗体である。
用語「ヒト抗体」には、ヒト免疫グロブリン配列に由来する1種以上の可変領域および定常領域を有するすべての抗体が含まれる。好ましい実施形態では、可変ドメインおよび定常ドメインのすべては、ヒト免疫グロブリン配列(完全ヒト抗体)に由来する。これらの抗体は、以下に記載するように、種々の方法で調製することができる。
【0030】
本明細書で使用される場合、用語「ヒト化された」とは、元の非ヒト抗体の抗原結合特性を保持する非ヒト種に由来する抗体またはその抗原結合断片を指す。一部の実施形態では、抗体の結合断片(例えば、軽鎖および重鎖可変領域、Fab、scFv)は、ヒト化される。非ヒト抗原結合断片は、CDRグラフト化(Jones et al., Nature 321:522 (1986))およびその変形、例えば、「再形成」(Verhoeyen, et al., 1988 Science 239:1534-1536; Riechmann, et al., 1988 Nature 332:323-337; Tempest, et al., Bio/Technol 1991 9:266-271)、超キメラ化(Queen, et al., 1989 Proc Natl Acad Sci USA 86:10029-10033; Co, et al., 1991 Proc Natl Acad Sci USA 88:2869-2873; Co, et al., 1992 J Immunol 148:1149-1154)、および「ベニヤリング」(Mark, et al., “Derivation of therapeutically active humanized and veneered anti-CD18 antibodies.” In: Metcalf BW, Dalton BJ, eds. Cellular adhesion: molecular definition to therapeutic potential. New York: Plenum Press, 1994: 291-312)として公知である技術を用いてヒト化することができる。非ヒト供給源から由来の場合、抗体の他の領域、例えば、ヒンジ領域および定常領域ドメインもまたヒト化することができる。
【0031】
本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容される」とは、当該技術分野において公知である経路を使用して投与された場合に、一般的に、アレルギー性または他の重篤な副作用を生じない分子実体および組成物を指す。連邦または州政府の規制当局により承認されたか、または米国薬局方もしくは他の一般的に認められた薬局方に列挙された、動物、より具体的にはヒトにおける使用のための分子実体および組成物は、「薬学的に許容される」と考えられる。
用語「予防(prevent)」、「予防(prophylaxis)」、および「予防的に(prophylactically)」は、疾患の発症前(例えば、疾患のある種の症状の発症前)に、化合物、例えば、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片の投与を指す。疾患を予防するには、疾患が発生する可能性を低減させること、疾患の発症を遅らせること、長期症状を改善すること、または疾患の最終的な進行を遅らせることが含まれる。
本明細書では、用語「特異的に結合する」とは、少なくとも105M-1の結合親和力(Ka)で標的抗原に結合する一方で、混合物中に存在する他の成分または抗原に有意に結合しない抗体またはその抗原結合断片の能力を指す。本明細書における抗セラミド抗体への参照は、セラミドに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を指す。
【0032】
本明細書で使用される場合、用語「配列同一性」とは、2つ以上のポリヌクレオチド配列間、または2つ以上のポリペプチド配列間の関係を指す。一方の配列の位置が比較配列の対応する位置の同一の核酸塩基またはアミノ酸残基によって占められている場合、配列は、その位置で「同一」であると言われる。配列同一性パーセントは、同一の核酸塩基またはアミノ酸残基が両方の配列中に存在する位置の数を決定して、同一の位置の数を得ることによって計算される。次に、同じ位置の数を、比較ウィンドウ内の位置の総数で割り、100を掛けて、配列同一性パーセントを得る。配列同一性パーセントは、比較ウィンドウ上で2つの最適に整列した配列を比較することによって決定される。ポリヌクレオチド配列の比較ウィンドウは、例えば、長さが、少なくとも20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、300、400、500、600、700、800、900、もしくは1000、またはそれ以上の核酸であり得る。ポリペプチド配列の比較ウィンドウは、例えば、長さが、少なくとも20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、300、またはそれ以上のアミノ酸であり得る。比較のために配列を最適に整列させるために、比較ウィンドウ内のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の部分は、参照配列が一定に保たれている間、ギャップと呼ばれる付加または欠失を含むことができる。最適なアラインメントは、ギャップを含むとしても、参照配列と比較配列の間に最大の可能な数の「同一」位置を生成するアラインメントである。2つの配列間の「配列同一性」パーセントは、2004年9月1日現在、国立バイオテクノロジー情報センターから入手可能であったプログラム「BLAST 2 Sequences」のバージョンを用いて決定することができ、このプログラムは、KarlinおよびAltschul (Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90(12):5873-5877, 1993)のアルゴリズムに基づく、プログラムであるBLASTN(ヌクレオチド配列比較のため)およびBLASTP(ポリペプチド配列比較のため)を組み込んでいる。「BLAST 2 Sequences」を利用する場合、2004年9月1日現在、デフォルトパラメータであるパラメータは、ワードサイズ(3)、オープンギャップペナルティ(11)、拡張ギャップペナルティ(1)、ギャップドロップオフ(50)、期待値(10)、およびマトリックスオプションを含むがこれらに限定されない他の必要なパラメータに使用することができる。2つのヌクレオチド配列またはアミノ酸配列は、2つの配列が、互いに対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する場合、「実質的に類似した配列同一性」または「実質的な配列同一性」を有すると考えられる。
【0033】
「血管新生」とは、新たな血管の形成を指す。
本明細書で使用される場合、用語「眼」または「眼に」とは、眼および周囲組織への薬剤の投与を指す。例えば、一部の実施形態では、眼投与は、局所投与(例えば、強膜などの眼の表面への投与)、眼内投与、結膜下投与(眼球結膜の下または眼瞼投与の結膜内層の下など)、前房内投与、角膜輪部を介した前房への注射、角膜輪部内投与、角膜内投与、網膜下投与、房水注射、テノン嚢下投与、脈絡膜上腔(SCS)への投与、毛様体上腔への投与、または硝子体内投与を含む。
【0034】
抗セラミド抗体、抗体断片、および誘導体
本開示は、糖尿病性網膜症を処置するための抗セラミド抗体およびその抗原結合断片に関する。セラミドは、ろう様脂質分子のファミリーである。セラミドは、スフィンゴシンと脂肪酸で構成される。セラミドは、脂質二重層における主要な脂質の1つであるスフィンゴミエリンを構成する成分脂質であるため、真核細胞の細胞膜内に高濃度で見出される。セラミドは、細胞の分化、増殖、およびプログラム細胞死(PCD)の調節を含む、種々の細胞シグナル伝達に関与する。生理活性脂質として、セラミドは、アポトーシス、細胞増殖停止、分化、細胞老化、細胞移動および接着を含む種々の生理学的機能に関与している。セラミドおよびその下流代謝物の役割はまた、がん、神経変性、糖尿病、微生物病理発生機序、肥満、および炎症を含む多くの病理学的状態において示唆されている。
【0035】
例示的な抗セラミド抗体の配列および特性はまた、米国特許出願公開第2010/0239572号および同第2017/0335014号に開示され、各々は参照により本明細書に組み込まれる。例示的な抗セラミド抗体の配列を表1に示す。しかしながら、開示される方法および使用に従って、任意の抗セラミド抗体またはその抗原結合断片を使用することができる。
【0036】
【0037】
一部の実施形態では、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片は、ヒト化6B5(h6B5)である。一部の実施形態では、h6B5抗体またはその抗原結合断片は、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3を含む。一部の実施態様では、h6B5抗体の配列は、2020年3月18日に出願された米国仮出願第62/991,232号に提供され、その内容は、すべての目的で全体が参照により組み込まれる。h6B5抗体またはその抗原結合断片の各CDRの配列は、本明細書全体に開示され、下記の表2に要約される。
【0038】
【0039】
一部の実施形態では、抗セラミド抗体は、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、組換え抗体、または合成抗体からなる群から選択される。一部の実施形態では、抗セラミド抗原結合抗体断片は、上記のいずれか1種の抗原結合断片である。一部の実施形態では、抗セラミド抗原結合抗体断片は、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fv断片、Fd断片、dAb断片、ダイアボディ、scFvなどである。一部の実施形態では、抗セラミド抗体およびその抗原結合断片は、組換えDNA技術を用いて生成される。組換えタンパク質の発現および精製のための手順は、当該技術分野において十分に確立されている。
一部の実施形態では、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片は、一本鎖可変断片(scFv)である。一部の実施形態では、scFvは、2A2、h2A2、6C8、7B10、9H10、h6B5、または6B5抗体のCDR配列および/または可変鎖配列を含む。
【0040】
一部の実施形態では、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片は、米国特許出願公開第2010/0239572号に記載される、2A2抗体またはその抗原結合断片である。一部の実施形態では、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片は、米国特許出願公開第2017/0335014号に記載される、6B5抗体またはその抗原結合断片である。一部の実施形態では、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片は、本開示のh6B5抗体またはその抗原結合断片である。一部の実施形態では、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片は、scFvである。一部の実施形態では、scFVは、表1に開示される抗体のいずれかのCDR配列を含む。一部の実施形態では、scFvは、2A2のCDR配列を含む。一部の実施形態では、scFvは、6B5のCDR配列を含む。一部の実施形態では、scFvは、h6B5のCDR配列を含む。一部の実施形態では、scFvは、h2A2の可変重鎖および軽鎖配列を含む。一部の実施形態では、scFvは、6B5の可変重鎖および軽鎖配列を含む。一部の実施形態では、scFvは、h6B5の可変重鎖および軽鎖配列を含む。
【0041】
一部の実施形態では、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片は、任意の免疫グロブリンアイソタイプを有する。免疫グロブリンは、限定されないが、IgA、分泌型IgA、IgGおよびIgMを含む、一般的に公知であるアイソタイプのいずれかに由来し得る。IgGアイソタイプは、ある種ではサブクラスに分けられ、ヒトではIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4、マウスではIgG1、IgG2a、IgG2bおよびIgG3である。一部の実施形態では、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片は、Fc領域における1種以上の修飾を含む。ある種の修飾は、所望のエフェクター機能または血清半減期を提供し得る。一部の実施形態では、適切なFc領域を用いて、細胞表面に結合した裸の抗体は、例えば、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を介して、または補体依存性細胞傷害性(CDC)において補体を動員することによって、または標的細胞上の結合抗体を認識し、その後、抗体依存性細胞媒介食作用(ADCP)において標的細胞の食作用を引き起こす1種以上のエフェクターリガンドを発現する非特異的な細胞傷害性細胞を動員することによって、または他のある機構によって、細胞傷害性を誘導することができる。副作用または治療上の合併症を最小限に抑えるために、エフェクター機能を除去または低減させることが望ましい場合には、ある種の他のFc領域を使用することができる。抗体のFc領域を修飾して、FcRnに対する結合親和性を増加させ、したがって血清半減期を増加させることができる。あるいは、Fc領域をPEGまたはアルブミンにコンジュゲートさせて、血清半減期、または所望の効果をもたらすいくつかの他のコンジュゲーションを増加させることができる。
【0042】
一部の実施形態では、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片は、検出可能な標識またはタグを含む。例示的な検出可能な標識は、蛍光タグ、親和性タグ、放射性同位元素、発光マーカー、粒子標識、発色団、リン光マーカー、および酵素標識を含む。例示的な蛍光標識は、GFP、RFP、およびYFPを含む。例示的な酵素標識は、西洋ワサビペルオキシダーゼおよびアルカリホスファターゼを含む。例示的なペプチドタグは、His-タグ、MBP、およびストレプトアビジンを含む。
検出手段は、選択された標識によって決定される。標識またはその反応生成物の外観は、標識が粒子状であり、適切なレベルで蓄積する場合、または分光光度計、ルミノメーター、蛍光計などの機器を使用して、またはELISAもしくはウエスタンブロットによって、肉眼で得ることができる。
【0043】
糖尿病性網膜症
一部の実施形態では、本開示は、糖尿病性網膜症を処置するための方法および組成物を提供する。糖尿病性網膜症とは、真性糖尿病によって網膜が損傷を受ける病態を指す。糖尿病による慢性的な高血糖は、網膜の小さな血管の損傷と関連付けられ、糖尿病性網膜症を引き起こす。糖尿病性網膜症では、網膜の血管から水分が漏れたり、出血したりすると、視力が低下することがある。最も進行した段階では、網膜の表面で新たな異常な血管が増殖し、網膜に瘢痕化や細胞の喪失を引き起こす。
一部の実施形態では、開示された方法および組成物は、糖尿病性網膜症の異なる段階を処置するために使用され得る。糖尿病性網膜症は、早期とも呼ばれる非増殖期、および後期とも呼ばれる増殖期を経て進行することがある。
【0044】
一部の実施形態では、本開示は、非増殖期の間、糖尿病性網膜症を処置するために使用され得る方法および組成物を提供する。非増殖性糖尿病網膜症(NPDR)は、軽度、中等度、または重度である。軽度のNPDRは、網膜血管の微小動脈瘤によって特徴付けられる。これらの微小動脈瘤は、網膜内に液体を漏出させることがある。疾患が中等度のNPDR期に進行するにつれて、網膜血管が歪んで血液輸送能力を失い、網膜の外観に特徴的な変化をもたらし、糖尿病性黄斑浮腫の一因となることがある。重症のNPDRの段階では、さらに多くの血管が閉塞し、網膜の領域への血液供給が遮断される。次に、これらの領域は血管新生促進性増殖因子を分泌する。眼の血管新生分子には、VEGF、FGF、PIGF、TGF-アルファ、TGF-ベータ、IGF、PDGF、MMP、HGF/SF、TNF-アルファ、CTGF、IL-1、IL-8、MCP-1、レプチン、インテグリン、およびアンギオゲニンが含まれる。一部の実施形態では、本方法は、糖尿病性網膜症の1種以上のマーカーを予防または減少させることによって特徴付けられる。一部の実施形態では、本方法は、網膜微小動脈瘤、網膜液漏出、糖尿病黄斑浮腫、および/または網膜血管新生促進性増殖因子のレベルを予防し、低減させ、抑制し、または低下させることができる。一部の実施形態では、VEGF、FGF、P1GF、TGF-アルファ、TGF-ベータ、IGF、PDGF、MMP、HGF/SF、TNF-アルファ、CTGF、IL-1、IL-8、MCP-1、インテグリン、およびアンギオゲニンのうちの1種以上は、本方法によって減少する。
一部の実施形態では、本開示は、増殖段階中に糖尿病性網膜症を処置するために使用され得る方法および組成物を提供する。増殖性糖尿病網膜症(PDR)は疾患の進行期である。この段階で、網膜から分泌される血管新生促進性増殖因子は、網膜の内側表面に沿って増殖し、硝子体ゲルに入る新たな血管の増殖を引き起こす。新生血管は脆弱で、漏出や出血を起こしやすくなる。付随する瘢痕組織が収縮し、網膜剥離(すなわち、下層組織から網膜を引き離すこと)を引き起こし、永久的な視力喪失につながることがある。一部の実施形態では、本方法は、網膜血管新生、網膜出血、網膜瘢痕、網膜剥離、および視力喪失のレベルを予防し、減少させ、抑制し、または低下させることができる。
【0045】
一部の実施形態では、本開示は、糖尿病性網膜症の発症前、例えば、その1種以上の症状の発症前に、糖尿病対象に投与することによって、糖尿病性網膜症を予防するために使用され得る方法および組成物を提供する。最も一貫した危険因子の中で、糖尿病の期間は、網膜症の発症および進行の強力な予測因子である。若年発症糖尿病患者の有病率は、3年で約8%、5年で25%、10年で60%、15年で80%と推定されている。一部の実施形態では、開示された方法および組成物を使用して、糖尿病性網膜症の発症を、例えば、糖尿病の発症後の3年以上、5年以上、10年以上、または15年以上遅延させることができる。
一部の実施形態では、開示された方法および組成物は、糖尿病性網膜症を発症するリスクがある対象、例えば、糖尿病性網膜症の発症に関連する1つ以上の危険因子を有する対象における糖尿病性網膜症を予防するために使用することができる。高血糖、高血圧、高脂血症、および腎疾患は、かなりの危険因子である。男性であること、糖尿病の重症度が高いこと(インスリンおよび経口糖尿病治療薬の単独投与または錠剤単独投与と無治療との比較により示される)、平均収縮期血圧が高いこと、およびヘモグロビンA1cが高いことも考慮すべき追加の因子である。
【0046】
症状および検出
一部の実施形態では、本方法は、糖尿病性網膜症の1種以上の症状および/または検出可能なマーカーに影響を及ぼし得る。糖尿病性網膜症の初期の非増殖期には、通常、症状はみられない。一部の実施形態では、本方法および組成物は、糖尿病性網膜症の症状の発現前に糖尿病患者において使用するためのものである。この疾患は、しばしば視力に影響を与えるまで気づかずに進行する。疾患の初期段階で網膜血管から出血すると、「浮いた」斑点が現れ、自然に消失することがあり得る。速やかな治療を行わなければ、出血が再発することが多く、永続的な視力喪失のリスクが高くなる。糖尿病性黄斑浮腫が起こると、かすみ目を引き起こすことがある。一部の実施形態では、本組成物および方法は、浮遊スポット、網膜出血、視力喪失、および/またはかすみ目の発生率、重症度、またはレベルを低減することができる。一部の実施形態では、限定されないが、全体視力、周辺視力、夜間視力、色視力、遠方視力、近距離視力、および視力明瞭度を含む、視力の1種以上のパラメータを本方法によって改善することができる。
【0047】
糖尿病性網膜症および糖尿病性黄斑浮腫は、視力検査(様々な距離での視力を測定するための眼底検査)、トモメトリー(眼圧測定)、瞳孔散大、および光干渉断層撮影(OCT)を含む包括的な眼の検査で発見されることがある。このような検査中に、医師は、次の1つ以上をチェックすることがある:新しい血管の形成、腫れ、および出血などの網膜血管の変化;網膜血管の漏出、または脂肪沈着、血管壁の弱体化、血管壁の膨らみなどの漏出血管の警告サイン;黄斑の腫れ;湾曲または白内障形成の変化を含む水晶体の変化;神経組織への損傷。
一部の実施形態では、本組成物および方法は、糖尿病性網膜症のこれらの症状のいずれか1種を用いて、対象を処置するために使用され得る。一部の実施形態では、本組成物および方法は、これらの症状のいずれか1種を予防し、処置し、または改善し得る。糖尿病性黄斑浮腫または重度の糖尿病性網膜症が疑われる場合は、フルオレセイン血管造影を用いて血管の損傷や漏出を調べることができる。この検査では、蛍光色素を血流中に注射して腕の静脈に注射する。色素が眼球に到達すると、網膜血管の画像が撮影される。一部の実施形態では、本組成物および方法は、眼の損傷血管および/または漏出血管の発生率、有病率、または重症度を予防または軽減するために使用され得る。
糖尿病性網膜症に対する既存の処置には、抗VEGF療法、ステロイド、レーザー手術、硝子体切除が含まれる。
【0048】
抗VEGF注射治療。血管新生促進性増殖因子VEGFの作用を遮断するために、抗VEGF薬を硝子体ゲルに注射する。VEGFの遮断は、網膜の異常な血管増殖を逆転させ、液体を減少させることができる。抗VEGF薬には、Avastin(登録商標)(ベバシズマブ)、Lucentis(登録商標)(ラニビズマブ)、およびEylea(登録商標)(アフリベルセプト)が含まれる。Lucentis(登録商標)(ラニビズマブ)およびEylea(登録商標)(アフリベルセプト)は、糖尿病性黄斑浮腫の治療薬として米国食品医薬品局(FDA)により承認されている。Avastin(登録商標)(ベバシズマブ)は、がんを処置するためにFDAに承認されたが、糖尿病性黄斑浮腫などの眼疾患の処置に一般的に使用される。ほとんどのヒトは、治療の最初の6カ月間は月1回の抗VEGF注射を必要とする。その後、注射の必要性はそれほど多くはない:典型的には、処置後の6カ月間は3~4回、処置後の2年目は約4回、3年目は2回、4年目は1回、5年目はなし。最近の研究では、抗VEGF処置は、糖尿病性黄斑浮腫の処置およびPDRを含む糖尿病性網膜症の進行の遅延に有効であることが示されており、抗VEGFがPDRの第一選択処置としてますます使用されるようになっている。しかしながら、いくつかの大規模臨床研究では、患者の約40%が抗VEGF療法に応答しないことが明らかにされている。さらに、抗VEGF処置は、網膜損傷の完全な回復が困難な場合、疾患の非常に後期の段階に向けられる。
【0049】
レーザー手術。限局性/格子状黄斑レーザー手術では、黄斑の中心付近の浮腫領域にある血管を漏らすために、数~数百個の小さなレーザー熱傷が起こる。糖尿病性黄斑浮腫に対するレーザー熱傷は、水分の漏出を遅らせ、網膜の腫れを低減する。この手順は、通常、1回のセッションで完了するが、一部の患者は、1回を超える処置を必要とする場合がある。局所/格子レーザー処置は、抗VEGF療法と組み合わせて使用することができる。例えば、局所/格子レーザー処置は、ときには抗VEGF注射の前に、ときには抗VEGF注射の同日または数日後に、ときには糖尿病黄斑浮腫が6カ月間の抗VEGF療法後に適切に改善しない場合にのみ適用される。
PDRはまた、汎網膜レーザー手術または汎網膜光凝固術と呼ばれる散乱レーザー手術によっても処置され得る。処置は、黄斑から離れた網膜の領域に1,000~2,000個の小さなレーザー熱傷の作製を伴う。これらのレーザー熱傷は、異常な血管を収縮させることを目的とする。処置は、1回のセッションで完了することができるが、2回以上のセッションが必要となることもある。中心視力を温存できるが、散乱レーザー手術では、側面(周辺部)、色、および夜間視力が若干低下することがある。散乱レーザー手術は、脆弱な新生血管が出血し始める前に最も効果がある。
【0050】
コルチコステロイド。コルチコステロイドは、糖尿病性黄斑浮腫を処置するために、単独でもしくは他の薬と併用するか、またはレーザー手術を行うことがある。コルチコステロイドは、眼に注射するかまたはインプラントすることができる。Ozurdex(登録商標)(デキサメタゾン)インプラントは短期間使用され、一方、Iluvien(登録商標)(フルオシノロンアセトニド)インプラントは長期間使用される。いずれも生分解性であり、糖尿病性黄斑浮腫を抑制するためにコルチコステロイドの持続投与量を放出する。
硝子体切除術。硝子体切除術とは、眼の中心部にある硝子体ゲルを外科的に取り除く手術である。この手順は、硝子体内への重度の出血の処置に用いられ、局所麻酔または全身麻酔下で行われる。透明な塩溶液は、手術中の眼圧を維持し、取り除かれた硝子体を置き換えるために、1つ以上のポートを通して眼に穏やかにポンプで注入される。また、硝子体切除術と同じ器具を用いて瘢痕組織を切除するか、または剥離した網膜を修復することができる。
【0051】
糖尿病網膜症におけるセラミドおよびASMの役割
いずれか1つの理論に拘束されることを望まないが、本処置は、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片の眼の処置を介して網膜中のセラミドを選択的に阻害することにより、網膜炎症シグナル伝達を下方制御することができると考えられる。
スフィンゴ脂質は、膜ミクロドメインの主要成分であり、セラミドに富むミクロドメインは炎症性サイトカインシグナル伝達の前提条件であると考えられる。酸性スフィンゴミエリナーゼ(ASM)および中性スフィンゴミエリナーゼ(NSM)は、スフィンゴ脂質代謝の重要な調節酵素であり、スフィンゴミエリン加水分解を促進して炎症性セラミドになる。ASMは、炎症性サイトカインシグナル伝達における重要な早期レスポンダーである。スフィンゴミエリナーゼ経路は、糖尿病性網膜症の影響を受ける常在血管系であるヒト網膜内皮細胞(HREC)における炎症性シグナル伝達に重要である。炎症性サイトカインTNFαおよびIL-1βはHRECにおける細胞接着分子(CAM)発現とASMおよびNSM活性の急速な増加を誘導する。
【0052】
以前の研究は、例えば、ASM-/-マウスモデルおよびDHAおよびイミプラミンなどのASM阻害剤を用いて、糖尿病性網膜症におけるASM活性の重要性を示している。このような遺伝子ノックアウトモデルおよび抗ASM阻害剤投与は、網膜炎症マーカーを減少させた。各々が参照により全体として本願明細書に組み込まれるFox et al., Diabetes 2006;55(12):3573-80; Opreanu et al., Diabetes 2011;60(9):2370-8; Opreanu et al., Investigative Ophthalmology & Visual Science 2010;51(6):3253-63; およびChakravarthy et al., Stem Cells 2016; 34:972-83を参照されたい。
しかしながら、ASMは必要な酵素であり、その欠損または阻害はNiemann-Pick症を引き起こす可能性があり、致死的となり得る。このように、ASM遺伝子ノックアウトおよび酵素の直接的阻害は、糖尿病性網膜症の処置のための実行可能な治療戦略ではない。対照的に、本明細書における抗セラミド抗体および抗原結合断片の投与は、ASMの直接的阻害に関連付けられる負の副作用を誘導することなく、眼における糖尿病性網膜症の炎症マーカー、血管新生、および他の症状を選択的に阻害するという驚くべき結果を提供する。
【0053】
追加の疾患
一部の実施形態では、本組成物および方法は、糖尿病性網膜症の処置に使用される。一部の実施形態では、本組成物および方法は、糖尿病性黄斑浮腫を処置するために使用される。一部の実施形態では、本組成物および方法は、網膜静脈閉塞(RVO)後の黄斑浮腫を処置するために使用される。一部の実施形態では、本組成物および方法は、近視性脈絡膜新生血管(mCNV)を処置するために使用される。
本開示は、基礎にある血管新生を伴う疾患または障害を処置するための方法を提供する。眼の例示的な疾患および障害には、網膜血管新生、脈絡膜血管新生、角膜血管新生、黄斑変性、加齢性黄斑変性、糖尿病性網膜症、硝子体出血、網膜出血、脈絡膜炎、血管新生緑内障、脈絡膜疾患、毛細血管拡張症、網膜動脈閉塞症、網膜静脈閉塞症、脈絡網膜炎、網膜上膜、脈絡膜新生物、未熟児網膜症、嚢胞性黄斑浮腫、乳頭浮腫、再発性虚血、眼出血、および増殖性硝子体網膜症が含まれる。
医薬組成物、投与経路、投薬量、および投与スケジュール
一部の実施形態では、本開示は、糖尿病性網膜症の処置のための抗セラミド抗体またはその抗原結合断片を含む医薬組成物を提供する。
【0054】
投与のために、本開示の抗体または断片(例えば、抗セラミド抗体およびその抗原結合断片)は、医薬組成物として製剤化することができる。医薬組成物は、(i)抗セラミド抗体またはその抗原結合断片;および(ii)薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤を含み得る。抗セラミド抗体またはその抗原結合断片、および/またはscFvを含む医薬組成物は、医薬的に有用な組成物を調製するための公知の方法に従って製剤化することができ、それによって、治療分子は、薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤とともに混合物に組み合わせられる。適切な担体、希釈剤または賦形剤は、当業者に公知である(例えば、Gennaro (ed.), Remington's Pharmaceutical Sciences (Mack Publishing Company, 19th ed. 1995)を参照されたい)。製剤は、さらに、1種以上の賦形剤、保存剤、可溶化剤、緩衝剤、バイアル表面でのタンパク質損失を防止するためのアルブミンなどを含むことができる。
一部の実施形態では、医薬組成物は、経口単位剤形、静脈単位剤形、鼻腔内単位剤形、坐剤単位剤形、皮内単位剤形、筋肉内単位剤形、腹腔内単位剤形、皮下単位剤形、硬膜下単位剤形、舌下単位剤形、脳内単位剤形、前房内単位剤形、結膜下単位剤形、テノン嚢下単位剤形、眼球後単位剤形、後部強膜近傍単位剤形、および硝子体内単位剤形からなる群から選択される剤形で製剤化され得る。一部の実施形態では、医薬組成物は、硝子体内投与形態で製剤化され得る。抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が血液脳関門を通過することが期待されないため、全身投与経路は、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片を眼に送達することは期待されない。
【0055】
本明細書に記載される抗セラミド抗体およびその抗原結合断片は、様々な投与様式によって、例えば、筋肉内、皮下、静脈内、心房内、関節内、非経口、鼻腔内、肺内、経皮、胸膜内、髄腔内、経口、局所、眼内、前房内、結膜下、テノン嚢下、眼球後部、後強膜上、脈絡膜上腔(SCS)への投与、毛細血管上腔への投与、および硝子体内投与経路によって対象に投与することができる。
一部の実施形態では、本明細書に開示される抗セラミド抗体およびその抗原結合断片、ならびにその医薬組成物は、局所(例えば、点眼薬)、局所眼、硝子体内、前房内、結膜下、テノン嚢下、眼球後部、および後部強膜を含む任意の公知の投与経路によって眼に直接投与され得る。
限定されないが、眼内適用または局所適用を含む、多数の可能な送達様式を使用することができる。一実施形態では、適用は眼内であり、限定されないが、結膜下注射、毛細血管内注射、側頭肢を介した前腔への注射、間質内注射、角膜内注射、網膜下注射、水性体液注射、テノン嚢下注射もしくは持続送達デバイス、または硝子体内注射(例えば、前部、中部、または後部硝子体注射)である。一実施形態では、適用は局所的であり、限定されないが、角膜への点眼薬を含む。
一部の実施形態では、開示される抗体、その抗原結合断片、およびその組成物は、硝子体内投与のために調製される。一部の実施形態では、開示された抗体、抗原結合断片、およびその組成物は硝子体内に投与される。
【0056】
予防および治療目的のために、抗セラミド抗体およびその抗原結合断片は、長期間にわたる連続送達(例えば、連続経皮送達)を介して、または反復投与プロトコール(例えば、1時間毎、毎日、毎週、毎月、または毎年)で、単一ボーラス送達で対象に投与することができる。
一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、治療的に有効な用量の抗セラミド抗体またはその抗原結合断片を投与することを含む。治療的に有効な用量、投薬量、または量とは、上記で定義されるように、特定の生理学的効果、例えば、糖尿病性網膜症の1種以上の症状の予防または向上をもたらすために必要とされる、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片の最小量を指す。この文脈における治療的に有効な投薬量の決定は、典型的には、ヒトの臨床試験によって追跡される動物モデル研究に基づいており、モデル対象における糖尿病性網膜症の発生または重症度を有意に低減する有効な投薬量および投与プロトコールを決定することによって導かれる。本開示の組成物の有効用量は、投与手段、標的部位、患者の生理学的状態、患者がヒトであるか動物であるかどうか、投与される他の薬物、処置が予防的であるか治療的であるかどうか、ならびに組成物自体の特異的活性および個体において所望の応答を引き出すその能力を含む多数の異なる因子に依存して変化する。典型的には、投薬レジメンは、最適な治療応答を提供するように、すなわち、安全性および有効性を最適化するように調整される。
【0057】
一部の実施形態では、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片の用量は、約0.1μg~100mg/kg、または1μg/kg~約50mg/kg、または10μg~5mg/kgである。一部の実施形態では、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片の有効量は、約1μg/kg~約20mg/kg、約10μg/kg~約10mg/kg、または約0.1~約5mg/kgの間である。本明細書に記載される抗セラミド抗体およびその抗原結合断片はまた、体重1kgあたり約0.001~約10ミリグラム(mg)の投薬量で投与することができ、単回投与または2回以上の用量で投与することができる。ヒト成人患者への投与の場合、治療有効量は、限定されないが、0.2mg/用量、0.5mg/用量、1mg/用量、5mg/用量、10mg/用量、25mg/用量、100mg/用量、200mg/用量、および400mg/用量を含む0.2mgから800mg/用量の範囲の用量で投与することができ、1回以上の用量を処置の過程で投与することができる。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗セラミド抗体およびその抗原結合断片の1日総投薬量は、約1mg~約2g、約100mg~約1.5g、または約200mg~約1200mgの範囲であり得る。
【0058】
一部の実施形態では、抗セラミド抗体、その抗原結合断片、またはそれを含む組成物は、約0.1mg/mL、0.5mg/mL、1mg/mL、5mg/mL、10mg/mL、15mg/mL、20mg/mL、25mg/mL、30mg/mL、35mg/mL、40mg/mL、45mg/mL、または50mg/mLの濃度で製剤化され得る。濃度は、0.1~1mg/mL、1~5mg/mL、5~10mg/mL、または10~50mg/mLであり得る。一部の実施形態では、開示される抗体、断片または組成物は、約0.05mg、0.1mg、0.2mg、0.3mg、0.4mg、0.5mg、0.6mg、0.7mg、0.8mg、0.9mg、または1mgの用量で硝子体内に投与され得る。用量の体積は、約0.005mL、0.01mL、0.02mL、0.03mL、0.04mL、0.05mL、0.06mL、0.07mL、0.08mL、0.09mL、または0.1mLであり得る。
【0059】
本明細書に記載される抗セラミド抗体およびその抗原結合断片は、1日の異なる時間に投与することができる。一部の実施形態では、用量は、夕方に投与することができる。別の実施形態では、用量は、朝に投与することができる。投薬量は、例えば、週に複数回、隔週に1回、月に1回、または年に1回の投与を含む、単回または複数回の投与で行うことができる。一部の実施形態では、抗セラミド抗体または抗体断片の単回投与は、それを必要とする対象に投与される。一部の実施形態では、患者は、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、少なくとも7週間、少なくとも8週間、少なくとも1カ月、少なくとも2カ月、少なくとも3カ月、少なくとも4カ月、少なくとも5カ月、少なくとも6カ月、少なくとも7カ月、少なくとも8カ月、少なくとも9カ月、少なくとも10カ月、少なくとも11カ月、または少なくとも1年の間隔を置いて2回以上の用量の抗セラミド抗体処置を受けることができる。一部の実施形態では、2回以上の用量は、約1週間~約2週間、約2週間~約4週間、約1カ月~約2カ月、約2カ月~約4カ月、約1カ月~約6カ月、約6カ月~約1年、または約1年~約2年の間隔を置いて、それを必要とする患者に投与され得る。一部の実施形態では、投与は、障害の臨床症状をモニタリングすることによって示されるように、不規則に行うことができる。
【0060】
抗セラミド抗体およびその抗原結合断片を含む医薬組成物の投薬量は、標的部位で所望の濃度を維持するために、主治医によって変化させることができる。高濃度または低濃度は、送達様式に基づいて選択することができる。抗セラミド抗体、またはその抗原結合断片は、対象の生涯の間いつでも投与することができる。一部の実施形態では、投与は、糖尿病性網膜症の症状が発症する前に起こる。このような実施形態では、投与は、糖尿病性網膜症の発症を予防または遅延させるための予防薬として使用され得る。一部の実施形態では、投与は、早期疾患の間に起こる。一部の実施形態では、投与は、後期疾患の間に起こる。
【0061】
処置方法および用途
一部の実施形態では、本開示は、治療有効量の抗セラミド抗体またはその抗原結合断片を対象に投与することを含む、対象における炎症性眼疾患の症状を処置するか、予防するか、または向上する方法を提供する。
一部の実施形態では、本開示は、治療有効量の抗セラミド抗体または抗セラミド抗体断片を対象に投与することを含む、それを必要とする対象における糖尿病性網膜症を予防および/または処置する方法を提供する。
以前の研究は、炎症および網膜の血管透過性亢進に至る最初の代謝障害には、スフィンゴ脂質シグナル伝達の中心的酵素である酸性スフィンゴミエリナーゼ(ASM)の活性化が関与し、スフィンゴミエリンをセラミドに変換するとしている。ASM-/-動物は網膜虚血性-再潅流モデルにおける血管変性から保護され、野生型マウスに移植したASM-/-骨髄を有するキメラはまた糖尿病誘発性血管損傷から保護された。ASM活性を阻害するために、ドコサヘキサエン酸(DHA)に富む魚油および三環系抗うつ薬デシプラミンの投与を含むいくつかの戦略が実施されている。いずれの戦略も、細胞培養モデルにおいてある程度の効果を示す。しかしながら、デシプラミンは、糖尿病動物の網膜の健康を改善したにもかかわらず、長期の研究(実施例8を参照されたい)および長期の高用量DHA処置において動物の忍容性は良好ではなかったが、対照動物において網膜の病理を引き起こした(実施例9を参照されたい)。さらに、ASMは必須酵素であり、ASMの欠損は神経変性疾患を引き起こす(Niemann-Pick)。したがって、ASMの直接阻害は、DRの処置における実行可能な臨床戦略ではない。抗セラミド抗体およびその抗原結合断片は、内皮および他の細胞の表面上に生成されたモノマーセラミドの結合において非常に効果的であり、それにより、本質的なリソソームASM機能に影響を及ぼすことなく、ASM誘発性セラミドリッチプラットフォーム形成、結果としての炎症誘発性およびアポトーシスシグナル伝達を妨げる。
【0062】
対象
本明細書に開示される方法による処置の対象は、糖尿病性網膜症を発症するかまたは発症するリスクがある対象を含む。糖尿病性網膜症を有する対象は、早期または後期疾患を有する可能性がある。
一部の実施形態では、対象は、糖尿病性網膜症のための1種以上の処置を以前に受けたが、以前の処置に応答しなかったものである。このような実施形態において、「応答の失敗」は、以前の処置が糖尿病性網膜症の1種以上の症状を向上および/または改善しなかったことを示す。一部の実施形態では、以前の治療は、視力または網膜血管の健康の改善をもたらさなかった可能性がある。一部の実施形態では、以前の治療は、いくつかの結果を示している可能性があるが、所望の性能を達成していない可能性があるか、またはある期間後に効力を示すことを停止している可能性がある。
糖尿病性網膜症に対する既存の処置には、硝子体切除およびレーザー手術などの治療手順、ならびにステロイドおよび抗血管内皮増殖因子(VEGF)療法などの治療薬が含まれる。一部の実施形態では、対象は、以前の糖尿病性網膜症処置に部分的に応答している可能性がある:すなわち、糖尿病性網膜症の1種以上の症状が十分には向上されず、および/または以前の治療の効果が十分に持続しなかった。
一部の実施形態では、対象は、以前に抗VEGF処置を受け、応答しなかった。一部の実施形態では、抗VEGF処置は、Eylea(登録商標)(アフリベルセプト)、Avastin(登録商標)(ベバシズマブ)、またはLucentis(登録商標)処置(ラニビズマブ)から選択される。
【0063】
処置読み出し
糖尿病性網膜症の処置および/または予防は、様々な手段によって測定することができる。一部の実施形態では、処置または予防は、それを必要とする対象における糖尿病性網膜症におけるアポトーシス、炎症、無細胞毛細血管形成、血管新生、網膜内皮細胞死、網膜血管透過性、虚血性再潅流損傷、および閉塞破壊のうちの1種以上を処置または予防することを含む。本方法は、糖尿病患者における糖尿病性網膜症の発症前または糖尿病患者における糖尿病性網膜症の発症後に、有効量の抗セラミド抗体またはその抗原結合断片を投与することを含む。
糖尿病性網膜症を抗セラミド抗体またはその抗原結合断片で処置する方法が提供される。このような処置の有効性は、いくつかのパラメータに基づいて特徴付けられ、評価され、測定され、および/またはモニターされ得る。
【0064】
一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、眼内でのアポトーシスおよび/または内皮細胞死の減少をもたらす。細胞死は、公知の方法に従ってモニターすることができる。細胞死を検出するための例示的方法は、ヨウ化プロピジウム、Hoechst-33342、4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)、アクリジンオレンジ-エチジウムブロミド染色などの核染色技術を含む。非核染色技術には、アネキシンV染色が含まれる。一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、対照の眼の試料と比較して、本方法を受ける眼の試料中アポトーシスのレベルを少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%低減する。一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、アポトーシスおよび/または内皮細胞死のレベルを少なくとも10%低減する。一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、アポトーシスおよび/または内皮細胞死のレベルを少なくとも20%低減する。一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、アポトーシスおよび/または内皮細胞死のレベルを少なくとも30%低減する。一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、アポトーシスおよび/または内皮細胞死のレベルを少なくとも50%低減する。一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、アポトーシスおよび/または内皮細胞死のレベルを少なくとも70%減少する。
【0065】
一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、虚血性-再潅流(IR)損傷を予防する。IR損傷を検出するためのさらなる方法には、フルオレセイン分析、蛍光亜鉛2,2’-ジピコリルアミン配位錯体PSVue(登録商標)794、99mTcグルカレート、およびエレクトロレチノグラフィーが含まれる。
一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、1種以上の炎症マーカーのレベルを低減する。一部の実施形態では、1種以上の炎症マーカーは、TNFα、IL-1β、IL-6、VEGF、ICAM-1、VCAM-1、およびMCP1から選択される。炎症マーカーレベルは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、Luminex、サイトカインビーズアレイ、Proteo Plex、FAST Quantなどを介してモニターすることができる。一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、対照の眼の試料と比較して、本方法を受ける眼の試料中の1種以上の炎症性マーカーのレベルを少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%低減する。
【0066】
一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、対照の眼の試料と比較して、本方法を受ける眼の試料中のTNFαのレベルを少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%低減する。一部の実施態様では、本明細書に提供される方法は、TNFαのレベルを少なくとも10%低減する。一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、TNFαのレベルを少なくとも20%低減する。一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、TNFαのレベルを少なくとも30%低減する。一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、TNFαのレベルを少なくとも50%低減する。一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、TNFαのレベルを少なくとも70%低減する。
【0067】
一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、対照の眼の試料と比較して、本方法を受ける眼の試料中のIL-1βのレベルを少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%低減する。一部の実施態様では、本明細書に提供される方法は、IL-1βのレベルを少なくとも10%低減する。一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、IL-1βのレベルを少なくとも20%低減する。一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、IL-1βのレベルを少なくとも30%低減する。一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、IL-1βのレベルを少なくとも50%低減する。一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、IL-1βのレベルを少なくとも70%低減する。
【0068】
一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、対照の眼の試料と比較して、本方法を受ける眼の試料中のIL-6のレベルを少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%低減する。一部の実施態様では、本明細書に提供される方法は、IL-6のレベルを少なくとも10%低減する。一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、IL-6のレベルを少なくとも20%低減する。一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、IL-6のレベルを少なくとも30%低減する。一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、IL-6のレベルを少なくとも50%低減する。一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、IL-6のレベルを少なくとも70%低減する。
【0069】
一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、対照の眼の試料と比較して、本方法を受ける眼の試料中のVEGFのレベルを少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%低減する。一部の実施態様では、本明細書に提供される方法は、VEGFのレベルを少なくとも10%低減する。一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、VEGFのレベルを少なくとも20%低減する。一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、VEGFのレベルを少なくとも30%低減する。一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、VEGFのレベルを少なくとも50%低減する。一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、VEGFのレベルを少なくとも70%低減する。
一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、対照の眼の試料と比較して、本方法を受ける眼の試料中のICAM-1のレベルを少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%低減する。一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、ICAM-1のレベルを少なくとも10%低減する。一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、ICAM-1のレベルを少なくとも20%低減する。一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、ICAM-1のレベルを少なくとも30%低減する。一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、ICAM-1のレベルを少なくとも50%低減する。一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、ICAM-1のレベルを少なくとも70%低減する。
【0070】
一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、対照の眼の試料と比較して、本方法を受ける眼の試料中のVCAM-1のレベルを少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%低減する。一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、VCAM-1のレベルを少なくとも10%低減する。一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、VCAM-1のレベルを少なくとも20%低減する。一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、VCAM-1のレベルを少なくとも30%低減する。一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、VCAM-1のレベルを少なくとも50%低減する。一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、VCAM-1のレベルを少なくとも70%低減する。
【0071】
一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、対照の眼の試料と比較して、本方法を受ける眼の試料中のMCP1のレベルを少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%低減する。一部の実施態様では、本明細書に提供される方法は、MCP1のレベルを少なくとも10%低減する。一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、MCP1のレベルを少なくとも20%低減する。一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、MCP1のレベルを少なくとも30%低減する。一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、MCP1のレベルを少なくとも50%低減する。一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、MCP1のレベルを少なくとも70%低減する。
【0072】
一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、網膜血管透過性、網膜血管新生、または網膜健康の他の症状を低減する。一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、網膜血管系における糖尿病性網膜症の典型的な症状を予防し得るかまたはさらなる悪化を予防し得る。血管透過性および網膜血管健康の他の測定値は、例えば、フルオレセイン血管造影によって測定することができる。一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、対象における網膜血管透過性を、対照の対象と比較してまたは開示の方法を受ける前の対象と比較して、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%低減する。一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、網膜血管透過性を少なくとも10%低減する。一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、網膜血管透過性を少なくとも20%低減する。一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、網膜血管透過性を少なくとも30%低減する。一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、網膜血管透過性を少なくとも50%低減する。一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、網膜血管透過性を少なくとも70%低減する。
【0073】
一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、1種以上の視覚パラメータを改善するかまたは1種以上の視覚パラメータの低下を防止する。視覚パラメータには、夜間視力低下、かすみ目、浮遊斑点、視野内の黒い斑点または点滅光、変動する視力、色覚障害、視力の暗いまたは空の領域、視力喪失、突然の重度の無痛性視力喪失が含まれる。一部の実施形態では、本明細書に提供される方法に従って処置を受ける対象は、以下の効果のうちの1種以上を経験し得る:改善された視力、低減した視力喪失、改善された夜間視力、改善された低光視力、改善された読書能力、改善された周辺視野、低減した視野内の斑点、低減した視野内の点滅光、低減した疼痛、および改善された目の外観。これらのパラメータの多くは、日常的な眼の検査によってモニターすることができる。
【0074】
一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、糖尿病性網膜症の対象における早期治療糖尿病性網膜症研究(ETDRS)グレードスコアを改善する。一部の実施形態では、対象はヒトである。ETDRSグレーディングスケールは、3つの標準写真を使用する。標準写真1は軽度の顕微鏡的動脈瘤および出血を示し、標準写真2Aは中程度の顕微鏡的動脈瘤および出血を示し、標準写真2Bは重度の顕微鏡的動脈瘤および出血を示す。ETDRSでは、微小動脈瘤は、鋭利な辺縁を有する最も長い寸法で125μmの赤い斑点として定義される。これは、不規則な辺縁と125μmを超える寸法の赤い斑点として定義される出血とは区別される。非増殖性糖尿病網膜症(NPDR)を標準眼底写真と比較するために、微小動脈瘤および/または出血で覆われた網膜の範囲を用いて、非増殖性網膜症(NPDR)の記述のためのグレードスコアは以下の通りである:グレード0=微小動脈瘤または出血なし;グレード1=疑わしい微小動脈瘤または出血;グレード2=標準写真1未満の明瞭な微小動脈瘤または出血;グレード3=標準写真1を超えるかまたはそれに等しいが、標準写真2A未満の微小動脈瘤または出血;グレード4=標準写真2Aを超えるかまたはそれに等しいが、標準写真2B未満の微小動脈瘤または出血;グレード5=標準写真2B以上の微小動脈瘤または出血。一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、DRを有する対象における平均ETDRSグレードスコアを、対照の対象と比較してまたは開示の方法を受ける前の対象と比較して、少なくとも0.1、少なくとも0.2、少なくとも0.3、少なくとも0.4、少なくとも0.5、少なくとも0.6、少なくとも0.7、少なくとも0.8、少なくとも0.9、少なくとも1.0、少なくとも1.2、少なくとも1.5、少なくとも1.7、少なくとも2、少なくとも2.2、少なくとも2.5、少なくとも2.7、少なくとも3.0、少なくとも3.2、少なくとも3.5、少なくとも3.7、または少なくとも4低下させる。一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、DRを有する対象における平均ETDRSグレードスコアを少なくとも0.2低下させる。一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、DRを有する対象における平均ETDRSグレードスコアを少なくとも0.5低下させる。一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、DRを有する対象における平均ETDRSグレードスコアを少なくとも1低下させる。一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、DRを有する対象における平均ETDRSグレードスコアを少なくとも1.5低下させる。一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、DRを有する対象における平均ETDRSグレードスコアを少なくとも2低下させる。一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、DRを有する対象における平均ETDRSグレードスコアを少なくとも2.5低下させる。一部の実施形態では、対象はヒトである。
【0075】
一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、糖尿病性網膜症を予防する。本方法は、糖尿病性網膜症を発症するリスクのある患者に投与することができる。このような対象では、糖尿病性網膜症の予防は、視力の維持または糖尿病性網膜症の典型的な特徴の欠如によってモニターすることができる。例えば、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が予防的に投与された対象は、以下の症状のうちの1種の発生率の低減を経験しないかまたは経験する可能性がある:微小動脈瘤、出血、網膜内微小血管異常、静脈の数珠化、綿毛斑、他の場所および視神経における新しい血管の形成(血管新生)、他の場所および視神経における線維性増殖、網膜前および硝子体出血、瘢痕組織の形成による網膜剥離、緑内障、夜間視力低下、かすみ目、浮遊斑点、視野内の黒い斑点または点滅光、変動する視力、色覚障害、視力の暗いまたは空の領域、視力喪失、突然の重度の無痛性視力喪失、牽引網膜剥離、黄斑浮腫、静脈拡張、および網膜内微小血管異常。
一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、黄斑浮腫を予防または低減させる。黄斑浮腫は、細隙灯顕微鏡検査では、網膜層の隆起およびぼやけとして見ることができる。
【0076】
一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、糖尿病性網膜症の発症を遅延させる。したがって、開示された方法を使用して、糖尿病性網膜症の平均発症を、最初の糖尿病診断後、5年超、10年超、11年超、12年超、13年超、14年超、15年超、16年超、17年超、18年超、19年超、または20年超遅延させることができる。
一部の実施形態では、開示された方法を使用して、糖尿病性網膜症の1種以上の症状を低減し、向上し、重症度を軽減し、または逆転させることができる。一部の実施形態では、抗セラミド抗体またはその抗原結合断片を用いて糖尿病性網膜症を処置する方法は、以下の症状のうちの1種以上を低減し、向上し、重症度を軽減し、または逆転することができる:微小動脈瘤、出血、網膜内微小血管異常、静脈の数珠化、綿毛斑、他の場所および視神経における新しい血管の形成(血管新生)、他の場所および視神経における線維性増殖、網膜前および硝子体出血、瘢痕組織の形成による網膜剥離、視力喪失、緑内障、夜間視力低下、かすみ目、浮遊斑点、視野内の黒い斑点または点滅光、突然の重度の無痛性視力喪失、牽引網膜剥離、黄斑浮腫、静脈拡張、および網膜内微小血管異常。
【0077】
一部の実施形態では、糖尿病性網膜症を処置する開示された方法は、限定されるものではないが、透過性、NFkBレベル、炎症マーカーレベル、アポトーシス発生率、スフィンゴ脂質代謝、および再内皮化を含む網膜血管系の1種以上のパラメータに影響を及ぼす。一部の実施形態では、本明細書に開示される糖尿病性網膜症を処置する方法は、網膜血管透過性を減少させる。網膜血管透過性は、蛍光、トレーサー色素、光学的検査などを介してモニターすることができる。一部の実施形態では、本明細書に開示される糖尿病性網膜症を処置する方法は、網膜血管系におけるNFkBおよび/または他の炎症マーカーレベルを減少させる。上記で検討したように、炎症性サイトカインレベルは、従来の手段(例えば、ELISA)によって測定することができる。一部の実施形態では、本明細書に開示される糖尿病性網膜症を処置する方法は、網膜血管系におけるアポトーシスの発生を減少させる。上記で検討したように、アポトーシスは、従来の手段、例えば、核染色および非核染色技術を用いて測定することができる。一部の実施形態では、本明細書に開示される糖尿病性網膜症を処置する方法は、スフィンゴ脂質代謝を阻害または下方制御する。一部の実施形態では、本明細書に開示される糖尿病性網膜症を処置する方法は、健常組織の再内皮化を増加させることができる。
【実施例】
【0078】
(実施例1)
抗セラミドscFvは、糖尿病性網膜症のマウスモデルにおいてI/R炎症および網膜血管透過性を阻害する。
図1に示されるように、糖尿病性網膜症のマウス虚血性-再潅流(I/R)モデルを用いて、網膜血管系における糖尿病性網膜症の損傷作用をシミュレートした。
網膜虚血性-再潅流(I/R):各マウスは1つのI/R眼と1つの損傷のない対照の眼を有した。網膜I/Rは、眼圧(IOP)を90mmHgに一時的に上昇させることにより、以下のように作製された。体重25~30gの雄C57BL/6Jマウスを麻酔した。一方の眼の前眼房に、生理食塩水を注入するラインに取り付けた30ゲージ針をカニューレートした。眼圧はハンドヘルド眼圧計(TONO Pen;Medtronic Solan,Jacksonville,FL)によりマウスの眼において測定し、眼圧は圧力注入器(Infu-surg;Ethox Corp.,Buffalo,NY)で80~90mmHgに調節した。同じ動物の他方の眼を対照として設定した。虚血の持続時間はマウスで90分間であった。虚血後、針を抜去し、IOPを正常化し、網膜循環のリフローを視覚的に記録した。I/R損傷後、異なる時間で動物を殺処分した。網膜I/Rの2日または7日後に網膜を単離した。
【0079】
ビヒクル対照または抗セラミドscFv投与:I/Rの24時間前に、対照マウスにビヒクル(リン酸緩衝生理食塩水)を注射し、試験マウスに1.73mg/mLの1μLの抗セラミドscFv 6B5を硝子体内注射した。
炎症性サイトカインレベル:I/Rの48時間後に、定量PCR分析を用いて、TNFα、IL-1β、IL6、ICAM-1、VCAM-1、およびMCP1の炎症性マーカー発現レベルの測定を行った。
行われる可能性のあるさらなる測定:このモデルを用いた比較実験では、48時間後に透過性、炎症マーカー、およびスフィンゴ脂質代謝の測定を行い、7日後に、
図2A~
図2Bに示されるように、アポトーシス、無細胞毛細血管、およびスフィンゴ脂質代謝の測定を行う。
【0080】
網膜血管透過性:網膜をI/Rから48時間後に単離した。簡単に述べると、マウスにFITC-アルブミン(100μL PBS中0.5mg)(Sigma-Aldrich,St.Louis,MO)を注射した。2時間後、各マウスから血液を採取し、遠心分離して血漿を得た;動物を1%ホルムアルデヒドを用いて潅流し、核除去した。網膜を除去し、4つのスリットで平らにマウントし、Fluoromountマウンティング培地(Sigma-Aldrich,St.Louis,MO)を用いてガラススライド上に置いた。オリンパスFluoView 1000走査レーザー共焦点顕微鏡を用いて画像を取得し、各サンプルの画像を回収するために少なくとも5つの異なる視野領域を選択した。網膜は機械的に破壊され、遠心分離によって除去された。上清中のFITC-アルブミンを分光蛍光度計を用いて定量し、血漿蛍光に正規化した(Kielczewski et al., 2011)。
【0081】
結果
図2Aに示されるように、抗セラミド処理したI/R眼におけるサイトカイン発現は、試験されたマーカー(TNFα、IL-1β、IL6、ICAM-1、VCAM-1、およびMCP1)の各々について、未処理のI/R眼よりも低かった。TNFα、IL6、ICAM-1、およびMCP1において観察された減少は、統計学的に有意であった。
図2Bは、蛍光顕微鏡画像および定量分析によって示されるように、網膜血管透過性における明確な差異を示す。透過性は、未処置のI/R眼では、対照の眼または抗セラミド処置したI/R眼のいずれよりも有意に高かった。
この実施例は、糖尿病の発症時に抗セラミドscFvを硝子体内に単回注射することが、内皮細胞の喪失とそれに続く網膜の損傷を防ぐことにより、最終的な糖尿病性網膜症の転帰を改善することを示す。
【0082】
(実施例2)
糖尿病網膜症のラットモデルにおける抗セラミドscFv投与の有効性
糖尿病性網膜症のSTZ誘発モデルをラットに採用して、例えば、
図3に示すように、網膜血管系に対する糖尿病性網膜症の損傷効果をシミュレートした。
動物およびSTZ誘発性糖尿病の誘発:体重237~283gの雄Sprague-Dawleyラットを、体重1kgあたり65mgのストレプトゾトシン(STZ)の単回腹腔内注射により糖尿病とした。ラットは、Harlan-Teklad実験用飼料(番号8,640)および水を自由摂取させて飼育した。対照群およびSTZ誘発性糖尿病群の体重増加および血糖値を隔週でモニターした。
ビヒクル対照または抗セラミドscFv投与:糖尿病の確認後(250mg/dL以上の高血糖、STZ注射後7~10日)、糖尿病対照ラットは、ビヒクルPBS注射を受け、糖尿病試験ラットは抗セラミドscFv6B5 2μLを1.73mg/mLで硝子体内注射を受けた。非糖尿病対照ラットはまた、ビヒクル対照または抗セラミドscFvのいずれかの注射を受けた。
【0083】
網膜血管透過性分析:網膜をI/Rから48時間後に単離した。簡単に述べると、マウスにFITC-アルブミン(100μL PBS中0.5mg)(Sigma-Aldrich,St.Louis,MO)を注射した。2時間後、各マウスから血液を採取し、遠心分離して血漿を得た;動物を1%ホルムアルデヒドを用いて潅流し、核除去した。網膜を除去し、4つのスリットで平らにマウントし、Fluoromountマウンティング培地(Sigma-Aldrich,St.Louis,MO)を用いてガラススライド上に置いた。オリンパスFluoView 1000走査レーザー共焦点顕微鏡を用いて画像を取得し、各サンプルの画像を回収するために少なくとも5つの異なる視野領域を選択した。網膜は機械的に破壊され、遠心分離によって除去された。上清中のFITC-アルブミンを分光蛍光度計を用いて定量し、血漿蛍光に正規化した(Kielczewski et al., 2011)。
【0084】
追加の測定:比較可能な実験において、実験は、
図3に示されるように、マウスモデルにおいて行われるか、または糖尿病モデルがdb/dbレプチン欠乏である。さらに、STZ誘発モデルにおける糖尿病誘発の6~8週間後に、
図3に示されるように、各動物の網膜血管系を、透過性、NFkBおよび炎症マーカー、アポトーシス、およびスフィンゴ脂質代謝について評価する。
結果
図4に含まれる結果は、抗セラミドscFvの硝子体内投与を受けた糖尿病ラットが糖尿病性網膜症を示す血管漏出を発現しなかったことを示し、したがって、抗セラミドscFvの単回硝子体内注射が、この条件のラットモデルにおける高血糖誘発性mp糖尿病性網膜症を排除するのに十分であることを示す。
【0085】
(実施例3)
DRにおける糖尿病誘発性の炎症誘発性変化を処置するための抗セラミドscFvの硝子体内投与対全身投与
DRマウスモデルにおける糖尿病誘発性の炎症誘発性変化における硝子体内抗セラミド処置対全身性抗セラミド処置の効果を比較するために実験を行う。STZ誘発性1型糖尿病マウスは、糖尿病発症時に6B5 scFvによる単回の硝子体内または全身(静脈内)抗セラミド処置を受ける。STZ投与の6~8週間後に、対照、糖尿病および抗セラミド処置した糖尿病動物を屠殺する。各動物から網膜を分離し、炎症性サイトカイン、増殖因子および接着分子をプロファイリングし、網膜における内皮ASMの発現および活性を測定する。これらの測定は、qPCR、ウエスタンブロット、ESI-MS/MS、蛍光顕微鏡、および免疫金電子顕微鏡実験を用いて行われる。例示的な実験プロトコールを
図5に示す。
抗セラミドscFvの単回硝子体内注射は、DRの発症においてより大きな治療効果を有することが期待される。追加の実験は、既存のDR病理を処置するための抗セラミド抗体またはその抗原結合断片の単回硝子体内投与の能力を評価するために行われる。
【0086】
(実施例4)
DR血管機能不全の治療のための抗セラミドscFvの硝子体内投与対全身投与
DRマウスモデルにおいて、網膜血管透過性における硝子体内対全身性抗セラミド処置の効果を比較するために実験を行う。この実施例では、糖尿病誘発性の網膜血管損傷における6B5抗セラミドscFv投与の効果を測定する。初期の血液-網膜関門破壊を評価するために、マウスは、糖尿病発症時に抗セラミドscFvを硝子体内または全身(静脈内)に単回投与を受ける。糖尿病の誘発から6~8週間後、実施例2に記載したようにフルオレセインを用いて網膜血管透過性を評価する。実験プロトコールの例を
図5に示す。
scFvの単回硝子体内注射は、DR血管機能障害においてより大きな治療効果を有することが期待される。追加の実験は、既存のDR病理を処置するための抗セラミド抗体またはその抗原結合断片の単回硝子体内投与の能力を評価するために行われる。
【0087】
(実施例5)
DRにおける炎症誘発性変化を低減するための抗セラミドscFv対DHAまたはデシプラミン
DRマウスモデルにおいて、糖尿病誘発炎症誘発性変化における単回の抗セラミド硝子体内または全身scFv処理の効果を、DHAに富む魚油またはデシプラミン処理の効果と比較するために実験を行った。STZ誘発性1型糖尿病マウスは、単回用量のDHAに富む魚油の強制経口投与、デシプラミンの単回静脈内注射、抗セラミドscFvの単回硝子体内注射、または糖尿病発症時の抗セラミドscFvの全身注射を受ける。STZによる糖尿病誘発の6~8週間後に動物を屠殺し、網膜を単離する。炎症性サイトカイン、増殖因子および接着分子をプロファイリングする。内皮ASMの発現および活性を測定する。これらの測定は、実施例3に記載したように、一連のqPCR、ウエスタンブロット、ESI-MS/MS、蛍光顕微鏡、および免疫金電子顕微鏡実験において行われる。例示的な実験プロトコールを
図6に示す。
抗セラミドscFvの単回硝子体内注射は、DRの発症においてより大きな治療効果を有することが期待される。追加の実験は、既存のDR病理を処置するための抗セラミド抗体またはその抗原結合断片の単回硝子体内投与の能力を評価するために行われる。
【0088】
(実施例6)
DR血管機能不全を処置するための抗セラミドscFv投与対DHAまたはデシプラミン
DRマウスモデルにおいて、単回の硝子体内または全身抗セラミドscFv処理対単回のDHAに富む魚油またはデシプラミン処理の網膜血管透過性における効果を比較するために実験を行う。STZ誘発性1型糖尿病マウスは、単回用量のDHAに富む魚油の強制経口投与、デシプラミンの単回静脈内注射、抗セラミドscFvの単回硝子体内注射、または糖尿病発症時の抗セラミドscFvの全身注射を受ける。糖尿病の誘発から6~8週間後、実施例4に記載したようにフルオレセインを用いて網膜血管透過性を評価する。実験プロトコールの例を
図6に示す。
scFvの単回硝子体内注射は、DR血管機能障害においてより大きな治療効果を有することが期待される。追加の実験は、既存のDR病理を処置するための抗セラミド抗体またはその抗原結合断片の単回硝子体内投与の能力を評価するために行われる。
【0089】
(実施例7)
抗セラミドscFv投与はストレス誘発性アポトーシスを阻害する
実験は、抗セラミドscFvが培養中のヒト網膜内皮細胞(HREC)に有効であり、抗血管新生薬が無効な条件下でストレス誘発性アポトーシスを阻害することを実証するために行われる。抗セラミドscFvおよび抗血管新生薬によるDR療法のメカニズムは、以前に特徴付けられたメカニズムとは区別される。理論に限定されるものではないが、抗VEGF処置によっては対処することができないが、抗セラミドに応答する糖尿病において継続的な死亡およびリモデリングが存在すると考えられている。したがって、抗VEGFは、新血管新生のみを予防することができるが、抗セラミド抗体投与は、進行中の内皮細胞死を予防し、血管回復を促進し、低酸素症およびそれに続く新血管新生を予防することができる。抗血管新生薬が無効な条件下で抗セラミドscFvがインビトロで作用するかどうかを試験するために、HRECは、ASM/セラミド媒介性アポトーシス死(例えば、IL-1βおよびTNFサイトカインまたはH2O2への曝露)を誘導する多様なストレス条件に供される。HRECは、抗VEGF阻害剤(抗VEGFR2 DC101 AbまたはVEGFR TK阻害剤ソラフェニブ)または抗セラミド抗体のいずれかで処置される。
抗セラミドscFv投与は、内皮細胞死の阻害においてより大きな治療効果を有することが期待される。
【0090】
(実施例8)
糖尿病マウスのデシプラミン処理
糖尿病は、雄C57BL/6Jマウス(20~25g)にSZT(65mg/kg)を連続5日間、腹腔内注射することにより誘導された。対照動物にクエン酸ビヒクル(pH4.5)を注射した。最後の注射から2週間後、足背静脈から採取した血液の1滴から血糖値を測定した。血糖値>300mg/dLにより糖尿病を確認した。体重減少、多尿、水分および摂餌量を毎日モニターした。糖尿病が確認された最初の日に、処置開始のため、最初のSZT注射から約2週間後にデシプラミンを水に加えた。デシプラミン投与は対照動物に影響を及ぼさなかった。しかしながら、糖尿病動物は脱水状態になり、2~4日以内に体重の25%以上が減少し、この時点で、IACUCの人道的動物使用規制に従って実験を中止しなければならなかった。
糖尿病動物は、多飲およびポリ尿素を有するため、水中のデシプラミンは脱水を引き起こす飲み方に影響を及ぼしている可能性がある。したがって、この実験は、20mg/kgの用量で2mg/mlのデシプラミンのIP注射を用いて繰り返された。水処理におけるデシプラミンと同様に、対照動物はこの薬物に良好に耐性を示した。しかしながら、糖尿病動物は異常な振戦を示し、衰弱するようになり、身づくろい、食餌、および飲水を停止し、毎日の注射の5~7日以内に体重の25%以上を減少させ、この時点でIACUCの人道的動物使用規制に従って実験を中止しなければならなかった。
【0091】
(実施例9)
野生型マウスのDHA処理
雄Sprague-Dawleyラット(237-283)に、Dyets Inc.(Bethlehem,PA)の50.8%リノール酸を含有する大豆油として、10%カロリー摂取した対照AIN-93M精製げっ歯類飼料、またはDHAに富む魚油飼料であって、大豆油の半分、もしくは5%カロリー摂取量を10.26% DHAおよび14.16% EPAを含有するMenhaden油に置き換えた該魚油飼料を与えた。食餌から9カ月後、ラット網膜血管系をトリプシン消化により分離し、2名の独立した研究者が、無細胞毛細血管を網膜中部で系統的にカウントした。
図7に示されるように、DHAに富む魚油処理は対照動物に有害であり、無細胞毛細血管の発生を引き起こした。
トリグリセリド低下剤としての魚油の健康上の利点は良く受け入れられているが、網膜への影響に必要な用量は約5%のカロリー摂取であり、これは魚油約12g/日に対応し、ヒトで推奨される量の3倍である。ヒト、特に糖尿病であるヒトにおける高用量のDHAは、高血糖値、過剰な出血、創傷治癒の低減、頻繁な感染、胃腸障害および体重増加などの、多くのよく知られた副作用と関連付けられる。これらの懸念により、DHAは糖尿病性合併症には推奨されない。
【0092】
さらなる番号付けの実施形態
本発明のさらなる実施形態は、以下の番号付けされた実施形態に提供される:
実施形態1.対象に抗セラミド抗体またはその抗原結合断片を眼投与することを含む、それを必要とする対象における糖尿病性網膜症を治療または予防する方法。
実施形態2.抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が一本鎖可変断片(scFv)である、実施形態1に記載の方法。
実施形態3.眼投与が、局所投与、眼内投与、結膜下投与、前房内投与、角膜輪部を介した前房への注射、角膜輪部内投与、角膜内投与、網膜下投与、房水注射、テノン嚢下投与、脈絡膜上腔(SCS)への投与、毛様体上腔への投与、および硝子体内投与からなる群から選択される、実施形態1または2に記載の方法。
【0093】
実施形態4.投与が硝子体内投与である、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
実施形態5.対象が糖尿病性網膜症の前処置を受けている、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法。
実施形態6.対象が糖尿病性網膜症の前処置に応答しなかった、実施形態5に記載の方法。
実施形態7.前処置が、硝子体切除およびレーザー手術から選択される治療手順、またはステロイドおよび抗血管内皮増殖因子(VEGF)療法から選択される治療剤である、実施形態5または6に記載の方法。
実施形態8.抗VEGF療法が、ベバシズマブ、ラニビズマブ、およびアフリベルセプトからなる群から選択される抗VEGF抗体である、実施形態7に記載の方法。
実施形態9.前記抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、単回用量として投与される、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法。
実施形態10.抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、少なくとも2週間、少なくとも3週間、または少なくとも4週間の間隔を置いて2回以上の用量で投与される、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法。
【0094】
実施形態11.抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、約2週間~約4週間の間隔を置いて2回以上の用量で投与される、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法。
実施形態12.抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、少なくとも1カ月、少なくとも2カ月、少なくとも3カ月、少なくとも4カ月、少なくとも5カ月、少なくとも6カ月、少なくとも7カ月、少なくとも8カ月、少なくとも9カ月、少なくとも10カ月、または少なくとも11カ月の間隔を置いて2回以上の用量で投与される、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法。
実施形態13.抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、約1カ月~約6カ月の間隔を置いて2回以上の用量で投与される、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法。
実施形態14.抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、少なくとも1年の間隔を置いて2回以上の用量で投与される、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法。
実施形態15.抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、糖尿病性網膜症の1種以上の症状の発症前に投与される、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法。
実施形態16.抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、糖尿病性網膜症の1種以上の症状の発症後に投与される、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法。
【0095】
実施形態17.抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、糖尿病性網膜症の非増殖期の間に投与される、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法。
実施形態18.抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、糖尿病性網膜症の増殖期の間に投与される、実施形態17に記載の方法。
実施形態19.対象に抗セラミド抗体またはその抗原結合断片を投与することを含む、それを必要とする対象における糖尿病性網膜症を治療または予防する方法であって、対象が糖尿病性網膜症の前処置を受けている方法。
実施形態20.対象が糖尿病性網膜症の前処置に応答しなかった、実施形態19に記載の方法。
実施形態21.抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が一本鎖可変断片(scFv)である、実施形態19または20に記載の方法。
実施形態22.投与が眼投与である、実施形態19~21のいずれか1つに記載の方法。
実施形態23.眼投与が、局所投与、眼内投与、結膜下投与、前房内投与、角膜輪部を介した前房への注射、角膜輪部内投与、角膜内投与、網膜下投与、房水注射、テノン嚢下投与、脈絡膜上腔(SCS)への投与、毛様体上腔への投与、および硝子体内投与からなる群から選択される、実施形態22に記載の方法。
【0096】
実施形態24.眼投与が硝子体内投与である、実施形態22または23に記載の方法。
実施形態25.前処置が、硝子体切除、レーザー手術、ステロイド、および/または抗血管内皮増殖因子(VEGF)療法であった、実施形態19~24のいずれか1つに記載の方法。
実施形態26.抗VEGF療法が、ベバシズマブ、ラニビズマブ、およびアフリベルセプトからなる群から選択される抗VEGF抗体である、実施形態25に記載の方法。
実施形態27.抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、単回用量として投与される、実施形態19~26のいずれか1つに記載の方法。
実施形態28.抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、少なくとも2週間、少なくとも3週間、または少なくとも4週間の間隔を置いて2回以上の用量で投与される、実施形態19~26のいずれか1つに記載の方法。
実施形態29.抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、約2週間~約4週間の間隔を置いて2回以上の用量で投与される、実施形態19~26のいずれか1つに記載の方法。
【0097】
実施形態30.抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、少なくとも1カ月、少なくとも2カ月、少なくとも3カ月、少なくとも4カ月、少なくとも5カ月、少なくとも6カ月、少なくとも7カ月、少なくとも8カ月、少なくとも9カ月、少なくとも10カ月、または少なくとも11カ月の間隔を置いて2回以上の用量で投与される、実施形態19~26のいずれか1つに記載の方法。
実施形態31.抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、約1カ月~約6カ月の間隔を置いて2回以上の用量で投与される、実施形態19~26のいずれか1つに記載の方法。
実施形態32.抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、少なくとも1年の間隔を置いて2回以上の用量で投与される、実施形態19~26のいずれか1つに記載の方法。
実施形態33.抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、糖尿病性網膜症の1種以上の症状の発症前に投与される、実施形態19~32のいずれか1つに記載の方法。
実施形態34.抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、糖尿病性網膜症の1種以上の症状の発症後に投与される、実施形態19~32のいずれか1つに記載の方法。
実施形態35.抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、糖尿病性網膜症の非増殖期の間に投与される、実施形態19~32のいずれか1つに記載の方法。
【0098】
実施形態36.抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、糖尿病性網膜症の増殖期の間に投与される、実施形態19~32のいずれか1つに記載の方法。
実施形態37.単回用量の抗セラミド抗体またはその抗原結合断片を対象に投与することを含む方法、対象における糖尿病性網膜症を治療または予防する方法。
実施形態38.2回以上の用量の抗セラミド抗体またはその抗原結合断片を対象に投与することを含む、対象における糖尿病性網膜症を治療または予防する方法であって、2回以上の用量が少なくとも2週間の間隔を置かれる、方法。
実施形態39.抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、少なくとも2週間、少なくとも3週間、または少なくとも4週間の間隔を置いて2回以上の用量で投与される、実施形態38に記載の方法。
実施形態40.抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、約2週間~約4週間の間隔を置いて2回以上の用量で投与される、実施形態38に記載の方法。
実施形態41.抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、少なくとも1カ月、少なくとも2カ月、少なくとも3カ月、少なくとも4カ月、少なくとも5カ月、少なくとも6カ月、少なくとも7カ月、少なくとも8カ月、少なくとも9カ月、少なくとも10カ月、または少なくとも11カ月の間隔を置いて2回以上の用量で投与される、実施形態38に記載の方法。
【0099】
実施形態42.抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、約1カ月~約6カ月の間隔を置いて2回以上の用量で投与される、実施形態38に記載の方法。
実施形態43.抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、少なくとも1年の間隔を置いて2回以上の用量で投与される、実施形態38に記載の方法。
実施形態44.抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が一本鎖可変断片(scFv)である、実施形態37~43のいずれか1つに記載の方法。
実施形態45.投与が眼投与である、実施形態37~44のいずれか1つに記載の方法。
実施形態46.眼投与が、局所投与、眼内投与、結膜下投与、前房内投与、角膜輪部を介した前房への注射、角膜輪部内投与、角膜内投与、網膜下投与、房水注射、テノン嚢下投与、脈絡膜上腔(SCS)への投与、毛様体上腔への投与、および硝子体内投与からなる群から選択される、実施形態45に記載の方法。
実施形態47.眼投与が硝子体内投与である、実施形態45または46に記載の方法。
実施形態48.対象が糖尿病性網膜症の前処置を受けている、実施形態37~47のいずれか1つに記載の方法。
【0100】
実施形態49.対象が糖尿病性網膜症の前処置に反応しなかった、実施形態48に記載の方法。
実施形態50.前処置が、硝子体切除、レーザー手術、ステロイド、および/または抗血管内皮増殖因子(VEGF)療法であった、実施形態48または49に記載の方法。
実施形態51.抗VEGF療法が、ベバシズマブ、ラニビズマブ、およびアフリベルセプトからなる群から選択される抗VEGF抗体である、実施形態50に記載の方法。
実施形態52.抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、糖尿病性網膜症の1種以上の症状の発症前に投与される、実施形態37~51のいずれか1つに記載の方法。
実施形態53.抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、糖尿病性網膜症の1種以上の症状の発症後に投与される、実施形態37~51のいずれか1つに記載の方法。
実施形態54.抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、糖尿病性網膜症の非増殖期の間に投与される、実施形態37~51のいずれか1つに記載の方法。
実施形態55.抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、糖尿病性網膜症の増殖期の間に投与される、実施形態37~51のいずれか1つに記載の方法。
【0101】
実施形態56.抗セラミド抗体またはその抗原結合断片を眼投与することを含む、眼の炎症性疾患を治療する方法。
実施形態57.抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が一本鎖可変断片(scFv)である、実施形態56に記載の方法。
実施形態58.眼投与が、局所投与、眼内投与、結膜下投与、前房内投与、角膜輪部を介した前房への注射、角膜輪部内投与、角膜内投与、網膜下投与、房水注射、テノン嚢下投与、脈絡膜上腔(SCS)への投与、毛様体上腔への投与、および硝子体内投与からなる群から選択される、実施形態56または57に記載の方法。
実施形態59.眼の炎症性疾患が、網膜血管新生、脈絡膜血管新生、角膜血管新生、黄斑変性症、加齢性黄斑変性症、糖尿病性網膜症、硝子体出血、網膜出血、脈絡膜炎、血管新生緑内障、脈絡膜疾患、毛細血管拡張症、網膜動脈閉塞症、網膜静脈閉塞症、脈絡網膜炎、網膜上膜、脈絡膜新生物、未熟児の網膜症、嚢胞性黄斑浮腫、鬱血乳頭、再発性虚血、眼の出血、および増殖性硝子体網膜症からなる群から選択される、実施形態56~58のいずれか1つに記載の方法。
実施形態60.眼投与が硝子体内投与である、実施形態56~59のいずれか1つに記載の方法。
【0102】
実施形態61.対象が糖尿病性網膜症の前処置を受けている、実施形態56~60のいずれか1つに記載の方法。
実施形態62.対象が糖尿病性網膜症の前処置に反応しなかった、実施形態61に記載の方法。
実施形態63.前処置が、硝子体切除およびレーザー手術から選択される治療手順、またはステロイドおよび抗血管内皮増殖因子(VEGF)療法から選択される治療剤である、実施形態61または62に記載の方法。
実施形態64.抗VEGF療法が、ベバシズマブ、ラニビズマブ、およびアフリベルセプトからなる群から選択される抗VEGF抗体である、実施形態63に記載の方法。
実施形態65.抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、単回用量として投与される、実施形態56~64のいずれか1つに記載の方法。
実施形態66.抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、少なくとも2週間、少なくとも3週間、または少なくとも4週間の間隔を置いて2回以上の用量で投与される、実施形態56~64のいずれか1つに記載の方法。
実施形態67.抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、約2週間~約4週間の間隔を置いて2回以上の用量で投与される、実施形態56~64のいずれか1つに記載の方法。
【0103】
実施形態68.抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、少なくとも1カ月、少なくとも2カ月、少なくとも3カ月、少なくとも4カ月、少なくとも5カ月、少なくとも6カ月、少なくとも7カ月、少なくとも8カ月、少なくとも9カ月、少なくとも10カ月、または少なくとも11カ月の間隔を置いて2回以上の用量で投与される、実施形態56~64のいずれか1つに記載の方法。
実施形態69.抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、約1カ月~約6カ月の間隔を置いて2回以上の用量で投与される、実施形態56~64のいずれか1つに記載の方法。
実施形態70.抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、少なくとも1年の間隔を置いて2回以上の投与で投与される、実施形態56~64のいずれか1つに記載の方法。
実施形態71.抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、眼の炎症性疾患の1種以上の症状の発症前に投与される、実施形態56~70のいずれか1つに記載の方法。
実施形態72.抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、眼の炎症性疾患の1種以上の症状の発症後に投与される、実施形態56~70のいずれか1つに記載の方法。
【0104】
実施形態73.抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)を含み、VHは、GYTFTDHTIH(配列番号1)のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、YNYPRDGSTKYNEKFKG(配列番号2)のアミノ酸配列を含むHCDR2、およびGFITTVVPSAY(配列番号3)のアミノ酸配列を含むHCDR3を含み、ならびにVLは、RASKSISKYLA(配列番号4)のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、SGSTLQS(配列番号5)のアミノ酸配列を含むLCDR2、およびQQHNEYPWT(配列番号6)のアミノ酸配列を含むLCDR3を含む、実施形態1~72のいずれか1つに記載の方法。
実施形態74.VHが配列番号7のアミノ酸配列を含み、VLが配列番号8のアミノ酸配列を含む、実施形態1~72のいずれか1つに記載の方法。
実施形態75.抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が6B5抗体である、実施形態1~74のいずれか1つに記載の方法。
実施形態76.抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が6B5 scFvである、実施形態1~74のいずれか1つに記載の方法。
【0105】
実施形態77.抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)を含み、VHは、GYTFTNYWMH(配列番号33)のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、AIYPGDSDTSYNQKFKG(配列番号34)のアミノ酸配列を含むHCDR2、およびGLYYGYD(配列番号35)のアミノ酸配列を含むHCDR3を含み、ならびにVLは、KSSQSLIDSDGKTFLN(配列番号36)のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、LVSKLDS(配列番号37)のアミノ酸配列を含むLCDR2、およびWQGTHFPYT(配列番号38)のアミノ酸配列を含むLCDR3を含む、実施形態1~72のいずれか1つに記載の方法。
実施形態78.VHが配列番号39のアミノ酸配列を含み、VLが配列番号40のアミノ酸配列を含む、実施形態1~72のいずれか1つに記載の方法。
実施形態79.抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が2A2抗体である、実施形態1~72および77~78のいずれか1つに記載の方法。
実施形態80.抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が2A2 scFvである、実施形態1~72および77~78のいずれか1つに記載の方法。
【0106】
実施形態81.抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が、可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)を含み、
a)VHは、配列番号1および43から選択されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖相補性決定領域1(HCDR1)、配列番号44~47から選択されるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるHCDR2、およびGFITTVVPSAY(配列番号3)のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるHCDR3を含み、ならびに
b)VLは、RASKSISKYLA(配列番号4)のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖相補性決定領域1(LCDR1)、SGSTLQSのアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるLCDR2(配列番号5)、およびQQHNEYPWTのアミノ酸配列を含むかまたはそれからなるLCDR3(配列番号6)を含む、実施形態1~72のいずれか1つに記載の方法。
実施形態82.HCDR1がGYTFTDHTIH(配列番号1)のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、HCDR2がYNYPRDGSTKYNEKFQG(配列番号44)のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、実施形態81に記載の方法。
実施形態83.HCDR1がGYTFTDHTIH(配列番号1)のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、HCDR2がYNYPREGSTKYNEKFQG(配列番号45)のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、実施形態81に記載の方法。
実施形態84.HCDR1がGYTFTDHTIH(配列番号1)のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、HCDR2がYNYPRDVSTKYNEKFQG(配列番号46)のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、実施形態81に記載の方法。
【0107】
実施形態85.HCDR1がGYTFTDHTIH(配列番号1)のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、HCDR2がYNYPRDGSTKYAEKFQG(配列番号47)のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、実施形態81に記載の方法。
実施形態86.HCDR1がGYTFTDHTMH(配列番号43)のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、HCDR2がYNYPRDGSTKYNEKFQG(配列番号44)のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、実施形態81に記載の方法。
実施形態87.HCDR1がGYTFTDHTMH(配列番号43)のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、HCDR2がYNYPREGSTKYNEKFQG(配列番号45)のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、実施形態81に記載の方法。
実施形態88.HCDR1がGYTFTDHTMH(配列番号43)のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、HCDR2がYNYPRDVSTKYNEKFQG(配列番号46)のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、実施形態81に記載の方法。
実施形態89.HCDR1がGYTFTDHTMH(配列番号43)のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、HCDR2がYNYPRDGSTKYAEKFQG(配列番号47)のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、実施形態81に記載の方法。
【0108】
実施形態90.VHが、配列番号48と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、または100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、VLが、配列番号53と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、または100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、実施形態81に記載の方法。
実施形態91.VHが、配列番号48と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、または100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、VLが、配列番号54と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、または100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、実施形態81に記載の方法。
実施形態92.VHが、配列番号48と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、または100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、VLが、配列番号55と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、または100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、実施形態81に記載の方法。
実施形態93.VHが、配列番号49と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、または100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、VLが、配列番号53と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、または100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、実施形態81に記載の方法。
【0109】
実施形態94.VHが、配列番号49と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、または100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、VLが、配列番号54と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、または100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、実施形態81に記載の方法。
実施形態95.VHが、配列番号49と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、または100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、VLが、配列番号55と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、または100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、実施形態81に記載の方法。
実施形態96.VHが、配列番号50と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、または100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、VLが、配列番号53と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、または100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、実施形態81に記載の方法。
【0110】
実施形態97.VHが、配列番号50と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、または100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、VLが、配列番号54と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、または100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、実施形態81に記載の方法。
実施形態98.VHが、配列番号50と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、または100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、VLが、配列番号55と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、または100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、実施形態81に記載の方法。
【0111】
実施形態99.VHが、配列番号51と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、または100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、VLが、配列番号53と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、または100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、実施形態81に記載の方法。
実施形態100.VHが、配列番号51と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、または100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、VLが、配列番号54と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、または100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、実施形態81に記載の方法。
実施形態101.VHが、配列番号51と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、または100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、VLが、配列番号55と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、または100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、実施形態81に記載の方法。
【0112】
実施形態102.VHが、配列番号52と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、または100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、VLが、配列番号53と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、または100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、実施形態81に記載の方法。
実施形態103.VHが、配列番号52と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、または100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、VLが、配列番号54と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、または100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、実施形態81に記載の方法。
実施形態104.VHが、配列番号52と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、または100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなり、VLが、配列番号55と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%同一、または100%同一であるアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる、実施形態81に記載の方法。
実施形態105.抗セラミド抗体またはその抗原結合断片がヒト化6B5(h6B5)抗体である、実施形態81~104のいずれか1つに記載の方法。
【0113】
実施形態106.抗セラミド抗体またはその抗原結合断片がh6B5 scFvである、実施形態81~104のいずれか1つに記載の方法。
実施形態107.抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)を含み、VHが配列番号48のアミノ酸配列を含み、VLが配列番号53のアミノ酸配列を含む、実施形態1~72のいずれか1つに記載の方法。
実施形態108.抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)を含み、VHが配列番号48のアミノ酸配列を含み、VLが配列番号55のアミノ酸配列を含む、実施形態1~72のいずれか1つに記載の方法。
実施形態109.抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)を含み、VHが配列番号49のアミノ酸配列を含み、VLが配列番号53のアミノ酸配列を含む、実施形態1~72のいずれか1つに記載の方法。
【0114】
実施形態110.抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)を含み、VHが配列番号49のアミノ酸配列を含み、VLが配列番号54のアミノ酸配列を含む、実施形態1~72のいずれか1つに記載の方法。
実施形態111.抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)を含み、VHが配列番号50のアミノ酸配列を含み、VLが配列番号53のアミノ酸配列を含む、実施形態1~72のいずれか1つに記載の方法。
実施形態112.抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)を含み、VHが配列番号50のアミノ酸配列を含み、VLが配列番号54のアミノ酸配列を含む、実施形態1~72のいずれか1つに記載の方法。
実施形態113.抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)を含み、VHが配列番号51のアミノ酸配列を含み、VLが配列番号53のアミノ酸配列を含む、実施形態1~72のいずれか1つに記載の方法。
実施形態114.抗セラミド抗体またはその抗原結合断片が可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)を含み、VHが配列番号52のアミノ酸配列を含み、VLが配列番号53のアミノ酸配列を含む、実施形態1~72のいずれか1つに記載の方法。
【0115】
実施形態115.抗セラミド抗体またはその抗原結合断片がヒト化抗体である、実施形態107~114のいずれか1つに記載の方法。
実施形態116.抗セラミド抗体またはその抗原結合断片がヒト化scFvである、実施形態107~114のいずれか1つに記載の方法。
実施形態117.糖尿病性網膜症または眼の炎症性疾患を予防することが、糖尿病性網膜症または眼の炎症性疾患の発症を遅延させることを含む、実施形態1~116のいずれか1つに記載の方法。
実施形態118.糖尿病性網膜症または眼の炎症性疾患の1種以上の症状が、対照の対象と比較して、または抗セラミド抗体もしくはその抗原結合断片による処置前の対象と比較して、対象において低減される、実施形態1~117のいずれか1つに記載の方法。
実施形態119.糖尿病性網膜症または眼の炎症性疾患の1種以上の症状が、網膜炎症、無細胞毛細血管形成、網膜新生血管形成、網膜内皮細胞死、網膜血管透過性、網膜虚血性-再潅流損傷、網膜漏出領域、および閉塞破壊から選択される、実施形態118に記載の方法。
実施形態120.糖尿病性網膜症または眼の炎症性疾患の1種以上の症状が、対照の対象と比較して、または抗セラミド抗体もしくはその抗原結合断片による処置前の対象と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%低減される、実施形態118または119に記載の方法。
【0116】
実施形態121.眼における1種以上の炎症マーカーの発現レベルが、対照の対象の眼における発現レベルと比較して、または抗セラミド抗体もしくはその抗原結合断片による処置前の対象の眼における発現レベルと比較して低減される、実施形態1~120のいずれか一1つに記載の方法。
実施形態122.1種以上の炎症マーカーが、サイトカイン、増殖因子、および接着分子から選択される、実施形態121に記載の方法。
実施形態123.サイトカインが、TNFα、IL-1β、IL-6、またはMCP1から選択される、実施形態122に記載の方法。
実施形態124.増殖因子がVEGFである、実施形態122に記載の方法。
実施形態125.接着分子がICAM-1またはVCAM-1である、実施形態122に記載の方法。
実施形態126.対象の眼における1種以上の炎症マーカーの発現レベルが、対照の対象の眼における発現レベルと比較して、または抗セラミド抗体もしくはその抗原結合断片による処置前の対象の眼における発現レベルと比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%減少する、実施形態121~125のいずれか1つに記載の方法。
【0117】
実施形態127.1種以上の視覚パラメータが、対照の対象の視覚パラメータと比較して、または抗セラミド抗体もしくはその抗原結合断片による処置前の対象の視覚パラメータと比較して、対象において増加する、実施形態1~126のいずれか1つに記載の方法。
実施形態128.1つ以上の視覚パラメータが、周辺視力、夜間視力、色覚、遠方視力、近距離視力、および視覚明瞭性から選択される、実施形態127に記載の方法。
実施形態129.対象の眼における網膜血管透過性が、対照の対象の眼における網膜血管透過性と比較して、または抗セラミド抗体もしくはその抗原結合断片による処置前の対象の眼における発現レベルと比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%減少する、実施形態1~128のいずれか1つに記載の方法。
実施形態130.対象群における平均早期処置糖尿病網膜症研究(ETDRS)グレードスコアが、対照の対象群における平均ETDRSグレードスコアと比較して、または抗セラミド抗体もしくはその抗原結合断片による処置前の対象群における平均ETDRSグレードスコアと比較して、少なくとも0.2、少なくとも0.5、少なくとも1、少なくとも1.5、少なくとも2、または少なくとも2.5低下する、実施形態1~129のいずれか1つに記載の方法。
【0118】
参照による組み込み
本明細書に引用されるすべての参考文献、論文、刊行物、特許、特許公開、および特許出願は、すべての目的のために、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。しかしながら、本明細書に引用されているいずれの参考文献、論文、刊行物、特許、特許公開、および特許出願の記載も、それらが有効な先行技術を構成すること、または世界のいずれかの国における一般的な技術常識の一部を構成することの確認または何らかの形式の示唆として解釈されず、また解釈されるべきではない。
【配列表】
【国際調査報告】