(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-29
(54)【発明の名称】ノッティン-免疫刺激剤複合体ならびに関連組成物および方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/11 20060101AFI20221121BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20221121BHJP
C07K 14/00 20060101ALI20221121BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20221121BHJP
C07K 14/46 20060101ALI20221121BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20221121BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20221121BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221121BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20221121BHJP
A61K 49/00 20060101ALI20221121BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20221121BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221121BHJP
【FI】
C12N15/11 Z
C07K19/00 ZNA
C07K14/00
C07K16/00
C07K14/46
A61K47/64
A61P37/04
A61P43/00 111
A61K31/7088
A61K49/00
A61K39/395 N
A61K39/395 D
A61K39/395 T
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022519458
(86)(22)【出願日】2020-09-29
(85)【翻訳文提出日】2022-05-20
(86)【国際出願番号】 US2020053258
(87)【国際公開番号】W WO2021067261
(87)【国際公開日】2021-04-08
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503115205
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】サジブ―バルフィ、 イディト
(72)【発明者】
【氏名】レヴィ、 ロナルド
(72)【発明者】
【氏名】ミラー、 ケイトリン
(72)【発明者】
【氏名】コクラン、 ジェニファー アール.
(72)【発明者】
【氏名】ベルトッツィ、 キャロライン アール.
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076BB01
4C076BB13
4C076CC07
4C076CC27
4C076EE59
4C085AA13
4C085BB01
4C085BB11
4C085BB42
4C085HH01
4C085KA26
4C085KB82
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA55
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA13
4C086ZB09
4C086ZB26
4C086ZC41
4H045BA18
4H045BA41
4H045BA50
4H045BA54
4H045DA75
4H045EA28
(57)【要約】
細胞表面分子に結合する改変されたループを含むノッティンペプチドと、リンカーを介してノッティンペプチドにコンジュゲートされた免疫刺激剤とを含む、複合体が提供される。いくつかの実施形態によれば、免疫刺激剤は、病原体認識受容体(PRR)を活性化する。例えば、免疫刺激剤は、トール様受容体(TLR)アゴニスト、例えば、TLR7、TLR8および/またはTLR9のアゴニストであり得る。本開示の複合体を含む組成物(例えば医薬組成物)、ならびにそのような組成物を含むキット、および、例えばがんを有する個体を治療するためにそのような組成物を使用する方法もまた提供される。本開示の複合体を作製する方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞表面分子に結合する改変されたループを含むノッティンペプチドと、
リンカーを介して前記ノッティンペプチドにコンジュゲートされた免疫刺激剤と
を含む、複合体。
【請求項2】
前記免疫刺激剤は、病原体認識受容体(PRR)を活性化する、請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
前記PRRは、トール様受容体(TLR)、RIG-I様受容体(RLR)、NOD様受容体(NLR)、C型レクチン受容体(CLR)、サイトゾルdsDNAセンサー(CDS)、インターフェロン遺伝子の刺激因子(STING)、およびそれらのいずれかの組み合わせからなる群から選択される、請求項2に記載の複合体。
【請求項4】
前記免疫刺激剤は、トール様受容体(TLR)アゴニストである、請求項2に記載の複合体。
【請求項5】
前記TLRアゴニストは、TLR9アゴニストである、請求項4に記載の複合体。
【請求項6】
前記TLRアゴニストは、オリゴヌクレオチドベースのTLRアゴニストである、請求項4または5に記載の複合体。
【請求項7】
前記オリゴヌクレオチドベースのTLRアゴニストは、1つ以上のCpGジヌクレオチドを含む、請求項6に記載の複合体。
【請求項8】
前記オリゴヌクレオチドベースのTLRアゴニストは、CpGオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)である、請求項7に記載の複合体。
【請求項9】
前記CpG ODNは、クラスA(タイプD)、クラスB(タイプK)、およびクラスCからなる群から選択されるクラスからのものである、請求項8に記載の複合体。
【請求項10】
前記TLRアゴニストは、TLR7、TLR8、またはそれらの両方のアゴニストである、請求項4に記載の複合体。
【請求項11】
前記TLRアゴニストは、イミダゾキノリン(IMZQ)化合物を含む、請求項10に記載の複合体。
【請求項12】
前記TLRアゴニストは、T78a、ハイブリッド-2、パラアミン、メタアミン、XG1-236、DS802、CL075、CL097、およびR848からなる群から選択される、請求項11に記載の複合体。
【請求項13】
前記TLRアゴニストは、T78aである、請求項12に記載の複合体。
【請求項14】
前記ノッティンペプチドは、2つ以上の免疫刺激剤にコンジュゲートされる、請求項1~13のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項15】
前記2つ以上の免疫刺激剤のうちの2つは、同じものである、請求項14に記載の複合体。
【請求項16】
前記2つ以上の免疫刺激剤のうちの2つは、異なるものである、請求項14または15に記載の複合体。
【請求項17】
前記2つ以上の免疫刺激剤は、独立して、請求項2~13のいずれか一項に定義される免疫刺激剤から選択される、請求項14~16のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項18】
前記ノッティンペプチドは、検出可能な標識にさらにコンジュゲートされる、請求項1~17のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項19】
前記検出可能な標識は、インビボ画像化剤である、請求項18に記載の複合体。
【請求項20】
前記ノッティンペプチドは、1つ以上の異種ポリペプチドに融合されている、請求項1~19のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項21】
前記1つ以上の異種ポリペプチドは、Fcドメイン、アルブミン、トランスフェリン、XTEN、ホモアミノ酸ポリマー、プロリン-アラニン-セリンポリマー、エラスチン様ペプチド、またはそれらのいずれかの組み合わせを含む、請求項20に記載の複合体。
【請求項22】
前記1つ以上の異種ポリペプチドは、Fcドメインを含む、請求項21に記載の複合体。
【請求項23】
前記Fcドメインは、ヒトFcドメインである、請求項22に記載の複合体。
【請求項24】
前記1つ以上の異種ポリペプチドは、インビボで検出可能なポリペプチドを含む、請求項20~23のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項25】
前記ノッティンペプチドは、EETI-IIペプチド、AgRPペプチド、ω-コノトキシンペプチド、カラタB1ペプチド、MCoTI-IIペプチド、アガトキシンペプチド、およびクロロトキシンペプチドからなる群から選択される、請求項1~24のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項26】
前記ノッティンペプチドは、EETI-IIペプチドである、請求項25に記載の複合体。
【請求項27】
前記ノッティンペプチドは、配列番号8に記載されるアミノ酸配列に対して70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項26に記載の複合体。
【請求項28】
前記ノッティンペプチドは、配列番号9に記載されるアミノ酸配列に対して70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項26に記載の複合体。
【請求項29】
前記ノッティンペプチドは、配列番号10に記載されるアミノ酸配列に対して70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項26に記載の複合体。
【請求項30】
前記細胞表面分子は、がん細胞表面分子である、請求項1~29のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項31】
前記がん細胞表面分子は、固形腫瘍のがん細胞上に存在する、請求項30に記載の複合体。
【請求項32】
前記がん細胞表面分子は、液性腫瘍のがん細胞上に存在する、請求項30に記載の複合体。
【請求項33】
前記細胞表面分子は、細胞表面受容体である、請求項1~32のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項34】
前記細胞表面受容体は、細胞接着受容体である、請求項33に記載の複合体。
【請求項35】
前記細胞接着受容体は、インテグリンである、請求項34に記載の複合体。
【請求項36】
前記インテグリンは、αvβ1インテグリン、αvβ3インテグリン、αvβ5インテグリン、αvβ6インテグリン、α5β1インテグリン、およびそれらのいずれかの組み合わせからなる群から選択される、請求項35に記載の複合体。
【請求項37】
前記細胞接着受容体は、腫瘍血管系細胞上に存在する、請求項34~36のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項38】
前記細胞表面受容体は、成長因子受容体、ケモカイン受容体、免疫細胞受容体、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項33に記載の複合体。
【請求項39】
前記細胞表面分子は、膜プロテアーゼである、請求項1~32のいずれか一項に記載の複合体。
【請求項40】
請求項1~39のいずれか一項に記載の複合体を含む、組成物。
【請求項41】
前記組成物は、
前記複合体と、
薬学的に許容される担体と
を含む、医薬組成物である、請求項40に記載の組成物。
【請求項42】
前記医薬組成物は、非経口投与のために製剤化される、請求項41に記載の組成物。
【請求項43】
前記医薬組成物は、経口投与のために製剤化される、請求項41に記載の組成物。
【請求項44】
治療有効量の請求項41~43のいずれか一項に記載の医薬組成物と、
それを必要とする個体に前記医薬組成物を投与するための説明書と
を含む、キット。
【請求項45】
前記医薬組成物は、1つまたは複数の単位投与量で存在する、請求項44に記載のキット。
【請求項46】
治療有効量の請求項41~43のいずれか一項に記載の医薬組成物を、それを必要とする個体に投与することを含む、方法。
【請求項47】
前記投与は、全身投与による、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記全身投与は、非経口投与による、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記非経口投与は、静脈内投与による、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記全身投与は、経口投与による、請求項47に記載の方法。
【請求項51】
前記個体は、がんを有し、改変されたループが、前記個体に存在するがん細胞上の細胞表面分子に結合し、前記方法は、前記個体の前記がんを治療する方法である、請求項46~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記細胞表面分子は、細胞表面受容体である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記細胞表面受容体は、細胞接着受容体である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記細胞接着受容体は、インテグリンである、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記インテグリンは、αvβ1インテグリン、αvβ3インテグリン、αvβ5インテグリン、αvβ6インテグリン、α5β1インテグリン、およびそれらのいずれかの組み合わせからなる群から選択される、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記個体は、前記がん細胞を含む固形腫瘍を有する、請求項51~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記投与は、全身投与によるものであり、前記固形腫瘍の免疫細胞微小環境は、前記免疫刺激剤のみが前記個体に全身投与されるときの腫瘍の免疫細胞微小環境と比較して、増加した割合のCD8+T細胞、増加した割合のCD4+T細胞、増加した割合のB細胞、および/または減少した割合の骨髄由来抑制細胞(MDSC)のうちの1つまたはいずれかの組み合わせにより特徴付けられる、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記投与は、全身投与によるものであり、CD8+T細胞の割合、CD4+T細胞の割合、B細胞の割合、および/または骨髄由来抑制細胞(MDSC)の割合のうちの1つまたはいずれかの組み合わせによって評価される前記固形腫瘍の免疫細胞微小環境は、前記免疫刺激剤のみが個体に腫瘍内投与されるときの腫瘍の免疫細胞微小環境と比較して、統計学的に有意に異ならない、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
前記個体は、前記がん細胞を含む液性腫瘍を有する、請求項51~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
ノッティン-免疫刺激剤複合体を作製する方法であって、リンカーを介して免疫刺激剤をノッティンペプチドにコンジュゲートすることを含む、方法。
【請求項61】
前記コンジュゲートすることは、
前記免疫刺激剤を官能化することと、
官能化された前記免疫刺激剤を前記ノッティンペプチドにコンジュゲートすることと
を含む、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記免疫刺激剤は、一級アミンを含み、前記免疫刺激剤を官能化することは、前記一級アミンをアミン反応性リンカーと反応させることを含む、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記アミン反応性リンカーは、アミン反応性NHSエステルリンカーである、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記アミン反応性リンカーは、ビシクロ[6.1.0]ノニン(BCN)、ジベンゾシクロオクチン(DBCO)、およびアジド部分からなる群から選択される部分を含む、請求項62または63に記載の方法。
【請求項65】
前記官能化された免疫刺激剤を前記ノッティンペプチドにコンジュゲートすることは、前記アミン反応性リンカーの前記部分を前記ノッティンペプチドの部分と反応させることを含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記ノッティンペプチドは、前記ノッティンペプチドの前記部分を含む非天然アミノ酸を含む、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記非天然アミノ酸は、5-アジド-L-ノルバリンである、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記ノッティンペプチドの前記部分は、N末端アミン基である、請求項65に記載の方法。
【請求項69】
前記免疫刺激剤は、請求項2~13のいずれか一項に定義される免疫刺激剤である、請求項60~68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
前記ノッティンペプチドは、請求項20~39のいずれか一項に定義されるノッティンペプチドである、請求項60~69のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2019年9月30日に出願された、米国仮特許出願第62/908,305号の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
in situがんワクチン接種は、トール様受容体(TLR)アゴニストなどの免疫増強剤の腫瘍内注射を伴う治療方策を表し、免疫活性化を誘起して腫瘍部位で利用可能な腫瘍関連抗原を利用する。この手法の利点は、事実上あらゆる種類のがんが、特定の腫瘍抗原の事前知識がなくても治療され得ることである。この方策の主な制限は、腫瘍内注射の必要性であり、これは、アクセス可能性が限定されたがん(例えば、肺がん、膵臓がん、腎がんなど)にとって、および原発腫瘍が外科的に切除されている状況での転移性疾患の場合に非常に困難である。
【発明の概要】
【0003】
提供されるものは、細胞表面分子に結合する改変されたループを含むノッティンペプチドと、リンカーを介してノッティンペプチドにコンジュゲートされた免疫刺激剤とを含む、複合体である。いくつかの実施形態によれば、免疫刺激剤は、病原体認識受容体(PRR)を活性化する。例えば、免疫刺激剤は、トール様受容体(TLR)アゴニスト、例えば、TLR7、TLR8および/またはTLR9のアゴニストであり得る。本開示の複合体を含む組成物(例えば、医薬組成物)、ならびにそのような組成物を含むキット、および例えば、がんを有する個体を治療するためにそのような組成物を使用する方法もまた提供される。本開示の複合体を作製する方法もまた提供される。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1】インテグリン結合ノッティンペプチドおよびノッティン-Fc融合体を標的化剤として使用する、腫瘍標的化免疫刺激剤複合体の概略図。
【
図2】本開示のいくつかの実施形態による、免疫刺激剤を官能化するための方策。
【
図3】本開示のいくつかの実施形態による、ノッティンペプチドの配列および概略図。
【
図4】本開示のいくつかの実施形態による、ノッティンペプチドを官能化された免疫刺激剤にコンジュゲートするための方策。
【
図5】本開示のいくつかの実施形態による、CpGが異なる部位に組み込まれたノッティン-CpG複合体。
【
図6】本開示のいくつかの実施形態による、異なるリンカーを伴って合成されたノッティン-CpG複合体。
【
図7】本開示のいくつかの実施形態による、ノッティン-TLR7/8アゴニスト複合体。
【
図8】本開示のいくつかの実施形態による、ノッティン-Fc免疫刺激剤複合体。
【
図9】本開示のいくつかの実施形態による、インビボ蛍光追跡を可能にするために検出可能標識にコンジュゲートされたノッティンペプチドを含む複合体。
【
図10】腫瘍内および腫瘍周囲に投与された本開示の複合体のインビボ蛍光画像化を示すデータ。
【
図11】静脈内投与された本開示の複合体のインビボ蛍光画像化を示すデータ。
【
図12】切除された腫瘍における本開示の複合体のエクスビボ蛍光画像化を示すデータ。
【
図13】4T1-Luc乳がんにおける3CM-CpGの治療有効性を実証する生存曲線(n=9~10)。
【
図14】経時的な4T1-Luc平均腫瘍成長を示すデータ。
【
図15】個々の4T1-Luc腫瘍成長曲線を示すデータ。
【
図16】免疫細胞浸潤データを提供する。4T1-luc細胞腫瘍を伴うマウスが、以下の群、すなわち、ビヒクルIV、CpG IV、3CM-CpG IV、およびCpG ITについて、静脈内(IV)または腫瘍内(IT)注射を用いて、概略図に従って処置された。腫瘍が、処置後に切除され、FACSを介して腫瘍浸潤免疫細胞について分析された。提供されているのは、異なる免疫集団の存在量を生存単一細胞全体の%として示すプロットである。
【
図17】
図16で記載された各処置群について、免疫細胞集団および2つの非特性化細胞集団(「その他」)の平均存在量(生存単一細胞全体の%)を要約する、円グラフ。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本開示の複合体、組成物、キットおよび方法がさらに詳細に説明される前に、該複合体、組成物、キット、および方法は、説明される特定の実施形態に限定されず、当然のことながら変更され得ることを理解されたい。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的のためのものにすぎず、(複合体、組成物、キット、および方法の範囲は添付の特許請求の範囲のみによって限定されるため)限定的であることは意図されないこともまた理解されたい。
【0006】
値の範囲が提供される場合、その範囲の上限と下限との間の(文脈上明確に指示されていない限り、下限の単位の10分の1に至るまでの)各介在値、およびその記載された範囲内の他のあらゆる記載されたまたは介在する値は、当該複合体、組成物、キットおよび方法内に包含されることを理解されたい。これらのより小さい範囲の上限および下限は、独立して、より小さい範囲に含められ得、やはり当該複合体、組成物、キットおよび方法内に包含され、ただし記載された範囲内で特に除外されている制限を受ける。記載される範囲に上下限の一方または両方が含まれている場合、その含まれる上下限のいずれかまたは両方を除く範囲も、当該複合体、組成物、キットおよび方法に含まれる。
【0007】
特定の範囲は、数値の前に用語「約」が付された状態で本明細書に提示される。「約」という用語は、それが先行する正確な数字、およびその用語が先行する数字に近接または近似する数字に逐語的支持を提供するために本明細書において使用される。ある数が特定の列挙された数に近接または近似するかどうかを決定するにあたり、近似または近似するが列挙されていない数とは、それが提示されている文脈において具体的に列挙された数と実質的に等価な数であり得る。
【0008】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、該複合体、組成物、キット、および方法が属する分野の当業者に一般に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと類似または同等である任意の複合体、組成物、キット、および方法もまた、複合体、組成物、キット、および方法の実践または試験において使用され得るが、代表的な例示的複合体、組成物、キット、および方法が、ここに記載される。
【0009】
本明細書に引用されるすべての刊行物および特許は、各個々の刊行物または特許が参照により組み込まれるように具体的かつ個別に示されているかのように、参照により本明細書に組み込まれ、刊行物が引用されるところに関連する方法および/または材料を開示かつ説明するために、参照により本明細書に組み込まれる。刊行物の引用は、出願日前のその開示についてのものであり、提供される刊行年は、個別に確認を必要とし得る実際の刊行年とは異なる場合があるので、本複合体、組成物、キット、および方法がそのような刊行物よりも先行する権利がないことを認めるものと解釈されるべきではない。
【0010】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。特許請求の範囲は任意選択的な要素を排除するように起草されてもよいことにさらに留意されたい。このように、この記述は、クレーム要素の列挙に関連する「専ら」、「のみ」などのような排他的な用語の使用または「負の」限定の使用のための文言的根拠としての役割を果たすことを意図する。
【0011】
明瞭さのために別々の実施形態の文脈中で記載された、複合体、組成物、キットおよび方法の特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わされても提供され得ることが認識される。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈で説明される、複合体、組成物、キットおよび方法の様々な特徴は、別々にまたは任意の好適なサブコンビネーションで提供されてもよい。実施形態のすべての組み合わせは、本開示によって具体的に包含され、このような組み合わせが実施可能なプロセスおよび/または組成物を包含する限りにおいて、ありとあらゆる組み合わせが個々にまたは明示的に開示されているかのように本明細書に開示される。さらに、そのような可変要素を記載している実施形態に列挙されているすべてのサブコンビネーションも、本複合体、組成物、キットおよび方法によって具体的に包含され、そのようなすべてのサブコンビネーションが個々におよび明示的に開示されているかのように、本明細書に開示される。
【0012】
本開示を読むと当業者には明らかであるように、本明細書に説明され例証された個々の実施形態の各々は、本開示の方法の範囲または趣旨から逸脱することなく、他のいくつかの実施形態のいずれかの特徴から容易に分離され得る、または組み合わせられ得る個別の構成要素および特徴を有する。いかなる列挙された方法も、列挙された事象の順序で、または論理的に可能なあらゆる他の順序で、実行され得る。
【0013】
複合体
本開示は、ノッティンペプチド-免疫刺激剤複合体を提供する。複合体は、細胞表面分子に結合する改変されたループを含むノッティンペプチドと、リンカーを介して該ノッティンペプチドにコンジュゲートされた免疫刺激剤とを含む。そのような複合体は、種々の用途で有用である。例えば、がん療法との関連で、本明細書に実証されるように、複合体は、予測できなかったことに全身投与後に固形腫瘍に局在化することが可能であり、対応する非コンジュゲート免疫刺激剤よりも実質的に高い治療有効性を達成する。さらに、複合体は、CD8+T細胞、CD4+T細胞、およびB細胞の割合の増加、ならびに骨髄由来抑制細胞(MDSC)の減少によって示されるように、ノッティンペプチドにコンジュゲートされない免疫刺激剤の全身投与と比較して、腫瘍免疫の様相を予想外かつ有意に転換する。ノッティンペプチド-免疫刺激剤複合体を使用した免疫細胞プロファイルのこの劇的な変化は、腫瘍内投与(IT)された免疫刺激剤による治療から観察された変化と区別できなかった。本開示の複合体に関する詳細が、ここで説明される。
【0014】
「免疫刺激剤」とは、免疫系の1つ以上のタイプの細胞の活性化または成熟を直接的または間接的に誘導する、物質を意味する。様々なタイプの免疫刺激剤が、本開示の複合体において提供され得る。採用され得る免疫刺激剤の非限定的な例は、ポリペプチド、核酸(例えば、オリゴヌクレオチド)、炭水化物、抗体、リガンド、アプタマー、ナノ粒子、および小分子を含む。いくつかの実施形態では、免疫刺激剤は、非免疫細胞(例えば、上皮細胞、内皮細胞、腫瘍細胞など)を刺激して、炎症性サイトカインを産生させる。
【0015】
いくつかの実施形態によれば、本開示の複合体は、自然免疫系の1つ以上のタイプの細胞の活性化または成熟を直接的または間接的に誘導する、免疫刺激剤を含む。免疫刺激剤によって直接的または間接的に活性化され得る自然免疫系細胞型の非限定的な例は、マクロファージ、樹状細胞、NK細胞、好中球、好塩基球、好酸球、ランゲルハンス細胞、肥満細胞、および/または単球を含む。特定の実施形態では、本開示の複合体は、適応免疫系の1つ以上のタイプの細胞の活性化または成熟を誘導する、免疫刺激剤を含む。免疫刺激剤によって活性化され得る適応免疫系細胞型の非限定的な例は、T細胞およびB細胞を含む。T細胞の例は、ナイーブT細胞(TN)、細胞毒性T細胞(TCTL)、記憶T細胞(TMEM)、T記憶幹細胞(TSCM)、中枢記憶T細胞(TCM)、エフェクター記憶T細胞(TEM)、組織常駐記憶T細胞(TRM)、エフェクターT細胞(TEFF)、調節性T細胞(TREG)、ヘルパーT細胞(TH、TH1、TH2、TH17)CD4+T細胞、CD8+T細胞、ウイルス特異的T細胞、アルファベータT細胞(Tαβ)、およびガンマデルタT細胞(Tγδ)を含む。
【0016】
特定の実施形態では、免疫刺激剤は、病原体関連分子パターン(PAMP:pathogen-associated molecular pattern)を含む。PAMPは、病原体のライフサイクルの一部として発現される、病原体特異的な糖、リポタンパク質、および/または核酸(例えば、ジヌクレオチドCpGの1つ以上の非メチル化反復を含むDNA、二本鎖RNA(dsRNA)、一本鎖RNA(ssRNA)、または同等物)を含む。そのような特定の微生物パターンを認識することができる宿主タンパク質は、病原体認識受容体(PRR)と呼ばれる。いくつかの実施形態によれば、本開示の複合体の免疫刺激剤は、病原体認識受容体(PRR)を活性化する。特定の実施形態では、PRRは、トール様受容体(TLR)、RIG-1様受容体(RLR)、ヌクレオチド結合オリゴマー化ドメイン(NOD)様受容体(NLR)、C型レクチン受容体(CLR)、サイトゾルdsDNAセンサー(CDS)、インターフェロン遺伝子の刺激因子(STING)、およびそれらの任意の組み合わせから選択される。いくつかの実施形態によれば、免疫刺激剤は、PRRを活性化し、天然または非天然PAMPを含む。採用され得る非天然PRR活性化因子は、合成小分子PRRアゴニストを含むが、それらに限定されない。
【0017】
いくつかの実施形態によれば、免疫刺激剤は、トール様受容体(TLR)アゴニストである。TLRは、侵入する病原体または内因性損傷シグナルを感知し、自然および適応免疫応答を開始する、I型膜貫通PRRのファミリーである。ヒトには10個の機能的TLR(TLR1~10)があり、マウスには12個の機能的TLR(TLR1~9、11~13)がある。TLRの様々な組み合わせは、単球、マクロファージ、樹状細胞、好中球、B細胞、T細胞、線維芽細胞、内皮細胞、および上皮細胞などの免疫および非免疫細胞型の異なるサブセットによって発現される。ヒトTLRのうち、TLR1、2、4、5、6、および10は細胞表面上に発現され、主に、微生物の膜および/または細胞壁成分を認識する一方で、TLR3、7、8、および9は、エンドリソソームコンパートメントの膜で発現され、核酸を認識する。TLRは、それらのN末端において異なる数のリガンド感知性ロイシンリッチ反復(LRR)と、細胞質トール/IL-1 R(TIR)ドメインとを有する。TIRドメインは、MyD88、TRIF、TRAM、およびTIRAP/MALを含む、TLRシグナル伝達の調節に関与するアダプタータンパク質とTLRとの間の相互作用を仲介する。これらのアダプター分子の下流で活性化されるシグナル伝達経路は、炎症性サイトカイン、ケモカイン、ならびにI型およびIII型インターフェロンの発現を促進する。
【0018】
特定の実施形態では、本開示の複合体は、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、およびTLR10のうちの1つ以上のアゴニストである、免疫刺激剤を含む。いくつかの実施形態によれば、免疫刺激剤はTLR9アゴニストである。ヒトTLR9遺伝子は、転写の際に異なるアイソフォームにスプライスして、5つのTLR9アイソフォーム(TLR9A、B、C、D、およびE)を生成することができる。これらのTLR9アイソフォームは、脾臓、末梢血単核細胞(PBMC)、およびリンパ節などの様々な免疫器官および細胞で差次的に発現される。
【0019】
いくつかの実施形態では、免疫刺激剤は、オリゴヌクレオチドベースのTLR9アゴニストである。本明細書で使用される場合、「オリゴヌクレオチド」は、5~500個のヌクレオチド、例えば、5~100個のヌクレオチドによる、ヌクレオチドの一本鎖マルチマーである。オリゴヌクレオチドは、合成であってもよく、または酵素的に作製されてもよく、いくつかの実施形態では、5~50個のヌクレオチドの長さである。オリゴヌクレオチドは、リボヌクレオチドモノマーを含有し(すなわち、オリゴリボヌクレオチドまたは「RNAオリゴヌクレオチド」であり)、デオキシリボヌクレオチドモノマーを含有し(すなわち、オリゴデオキシリボヌクレオチドまたは「DNAオリゴヌクレオチド」であり)、またはそれらの組み合わせを含有し得る。オリゴヌクレオチドは、例えば、10~20、20~30、30~40、40~50、50~60、60~70、70~80、80~100、100~150、もしくは150~200、または最大500個のヌクレオチドの長さであり得る。
【0020】
免疫刺激剤がオリゴヌクレオチドベースのTLR9アゴニストであるとき、免疫刺激剤は、1つ以上の非メチル化CpGジヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドであり得る。非メチル化CpGモチーフを含有する細菌および合成DNAに対する自然免疫応答においてTLR9が果たす役割は、十分に特性化されている。例えば、Uematsu S,Akira S.(2006)Journal of Molecular Medicine 84(9):712-725を参照されたい。いくつかの実施形態によれば、免疫刺激剤がオリゴヌクレオチドベースのTLR9アゴニストであるとき、免疫刺激剤は、CpGオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)である。CpG ODNは、インビトロおよびインビボで証明されているように白血球を活性化することができる、特定の配列コンテキスト(CpGモチーフ)において非メチル化CpGジヌクレオチドを含有する合成一本鎖DNA分子である。CpG ODNの3つの主要なクラスが、それらの構造的および生物学的特性に基づいて識別されており、クラスA、クラスB、およびクラスCと指定される。中央パリンドローム性CpG含有ホスホジエステル(PO)構造の後にホスホロチオエート(PS)ホモポリマーGストレッチが続くものを特徴とする、クラスAオリゴは、インターフェロン-α(IFN-α)産生および樹状細胞成熟の強力な誘導因子である。クラスBオリゴは、対照的に、通常、完全なホスホロチオエート(PS)骨格を含む。これらのオリゴもまたIFN-α産生を刺激するが、その程度はより低い。しかしながら、それらは、B細胞を強力に活性化する。クラスCオリゴは、クラスAおよびBの特性を組み合わせ、完全なPS骨格およびパリンドローム性CpG含有モチーフを特徴とする。CpG ODNは、特定の配列コンテキストにおいて1つ以上の非メチル化CpGジヌクレオチドを含有し、哺乳類のゲノムにおいてこの構造は稀であることから、これは微生物の侵入の兆候として哺乳類細胞によって容易に認識される。特定の実施形態では、本開示の複合体は、クラスA(タイプD)、クラスB(タイプK)、およびクラスCから選択されるクラスからのCpG ODNを含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、免疫刺激剤が、1つ以上の非メチル化CpGジヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドベースのTLR9アゴニスト(例えば、CpG ODN)であるとき、免疫刺激剤は、少なくとも5個のヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、免疫刺激剤は、2~100、例えば、約8~約40個のヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、免疫刺激剤は、10~30個のヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、免疫刺激剤は、15~25個のヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、免疫刺激剤は、1つ以上のポリT配列を含み、かつ/または約25%を超えるTヌクレオチド残基を有する、Tリッチオリゴヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、免疫刺激剤は、CGジヌクレオチドの代わりにGTCトリヌクレオチドを有する。いくつかの実施形態では、免疫刺激剤は、1つ以上の修飾シトシンを有する。いくつかの実施形態では、免疫刺激剤は、部分的に一本鎖で、ダンベル型であって、共有結合で閉鎖される、デオキシリボ核酸分子である。いくつかの実施形態では、免疫刺激剤は、以下の構造のうちの1つ以上、すなわち、[CGN]x、[NaCG]x、[NaCGNb]x、[NaCGTTNb]x、および[NaCGNbCGNc]xを含み、ここで、Nは任意のヌクレオチド塩基であり、xは0~25であり、a、b、およびcは独立して1~15である。例えば、[NaCGNb]x内に該当する配列は、ACGT、GTCGTT、TCGGTT、TGACGTT、およびACGTACGTを含む。
【0022】
CpGモチーフは、種特異性を示す。例えば、最適なマウスCpGモチーフがGACGTTである一方で、ヒトの文脈での使用のための最適モチーフはGTCGTTである。クラスB CpG ODNである、CpG ODN 1826は、明確に定義されたマウスTLR9アゴニストであり、したがって、げっ歯類モデルで広く使用される。このオリゴは、マウスB細胞増殖、抗原提示細胞の成熟、および極性化されたTh1型細胞応答の誘発に効果的である。CpG ODN 1826は、2つのCpGジヌクレオチドを含有し、両方とも5’末端に-GA、3’末端に-TTが隣接している。その骨格は、完全にホスホチオエート化され、細菌またはウイルスゲノムで見出される天然PO骨格とは対照的に、ヌクレアーゼ耐性を提供する。
【0023】
特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドベースのTLR9アゴニストは、ヒトCpG ODNである。そのようなヒトCpG ODNは、CpGモチーフGTCGTTを含み得る。そのようなヒトCpG ODNの非限定的な例は、配列TCGTCGTTTTGTCGTTTTGTCGTT(配列番号1)を有する。いくつかの実施形態によれば、オリゴヌクレオチドベースのTLR9アゴニストは、マウスCpG ODNである。そのようなマウスCpG ODNは、CpGモチーフGACGTTを含み得る。そのようなマウスCpG ODNの非限定的な例は、配列TCCATGACGTTCCTGACGTT(配列番号2)を有する。
【0024】
オリゴヌクレオチドベースの免疫刺激剤は、例えば、ヌクレアーゼ感受性を減少させる、または防ぐために、1つ以上の修飾を含み得る。そのような修飾の例は、天然のホスホジエステルオリゴデオキシリボヌクレオチドおよびリボヌクレオチドのポリマーへの修飾を含む。例えば、オリゴヌクレオチドベースの免疫刺激剤は、1つ以上のホスホロチオエート(PS)結合を含み得る。PS結合は、オリゴヌクレオチドのホスフェート骨格内の非架橋酸素に硫黄原子を置換する。PS修飾は、ヌクレオチド間結合をヌクレアーゼ分解に対してより耐性にする。
【0025】
いくつかの実施形態によれば、免疫刺激剤は、TLR7アゴニスト、TLR8アゴニスト、またはそれらの両方である。多種多様なTLR7および/またはTLR8アゴニストが、公知である。特定の実施形態では、TLR7および/またはTLR8アゴニストは、イミダゾキノリン(IMZQ)化合物を含む。イミダゾキノリンは、トール様受容体、特に、TLR7およびTLR8を通して機能する、強力な免疫刺激剤である。特定の実施形態では、IMZQ化合物を含むTLR7および/またはTLR8アゴニストは、T78aであり、その構造は、
図2に提供されている。いくつかの実施形態によれば、IMZQ化合物を含むTLR7および/またはTLR8アゴニストは、ハイブリッド-2(1-(4-アミノ-2-ブチル-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-1-イル)-2-メチルプロパン-2-オール)、XG1-236(2-ブチル-2H-ピラゾロ[3、4-c]キノリン-4-アミン)、DS802(2-ブチル[1、3]オキサゾロ[4、5-c]キノリン-4-アミン)、CL075(2-プロピル[1、3]チアゾロ[4、5-c]キノリン-4-アミン)、CL097(2-(エトキシメチル)-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-4-アミン)、R848(1-[4-アミノ-2-(エトキシメチル)-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-1-イル]-2-メチルプロパン-2-オール)、メタアミン、またはパラアミンである。例えば、Kubli-Garfias et al.(2017)PLoS ONE 12(6):e0178846、およびGanapathi et al.(2015)PLoS ONE 10(8):e0134640を参照されたい。
【0026】
特定の実施形態では、本開示の複合体は、ノッティンペプチドにコンジュゲートされた2つ以上の免疫刺激剤を含む。例えば、ノッティンペプチドは、2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上、8つ以上、9つ以上、または10個以上の免疫刺激剤にコンジュゲートされ得る。ノッティンペプチドが2つ以上の免疫刺激剤にコンジュゲートされるとき、2つ以上の免疫刺激剤のうちの2つは、同じまたは異なり得る。いくつかの実施形態によれば、2つ以上の免疫刺激剤は、独立して、本明細書に説明される免疫刺激剤(例えば、TLR9アゴニスト、TLR7および/または8アゴニスト、ならびに/もしくは同等物)のいずれかから選択される。
【0027】
いくつかの実施形態によれば、本開示の複合体のノッティンペプチドは、検出可能な標識にさらにコンジュゲートされる。「検出可能な標識」とは、複合体が目的の用途(例えば、インビトロおよび/またはインビボ研究ならびに/もしくは臨床用途)で検出され得るようにノッティンペプチドを標識する薬剤を意味する。目的の検出可能な標識は、蛍光標識(例えば、本明細書の実験の節に説明されるAlexaFluor 680などのAlexaFluorフルオロフォア)、放射性同位体、検出可能な生成物を生成する酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ルシフェラーゼなど)、蛍光タンパク質、常磁性原子、および同等物を含む。特定の態様では、ノッティンペプチドは、検出可能な標識の特異的結合パートナーにコンジュゲートされ、例えば、アビジン/ストレプトアビジンを含む検出可能な標識を介して検出が起こり得るように、ビオチンにコンジュゲートされる。
【0028】
特定の実施形態によれば、検出可能な標識は、近赤外線(NIR)光学画像化、単一光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)/CT画像化、陽電子放出断層撮影(PET)、核磁気共鳴(NMR)分光法、または同等物などのインビボ画像化において使用を見出す。そのような用途で使用を見出す検出可能な標識は、蛍光標識、放射性同位体、および同等物を含むが、これらに限定されない。特定の態様では、検出可能な標識は、2つ以上の画像化手法を使用したインビボ画像化を可能にする、マルチモーダルインビボ画像化剤である(例えば、Thorp-Greenwood and Coogan(2011)Dalton Trans.40:6129-6143を参照されたい)。
【0029】
特定の実施形態では、検出可能な標識は、近赤外線(NIR)画像化用途で使用を見出す、インビボ画像化剤である。そのような薬剤は、Kodak X-SIGHT色素、Pz 247、DyLight 750および800 Fluors、Cy 5.5および7 Fluors、Alexa Fluor 680および750 Dyes、IRDye 680および800CW Fluorsを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態によれば、検出可能な標識は、SPECT画像化用途で使用を見出す、インビボ画像化剤であり、その非限定的な例は、99mTc、111In、123In、201T1、および133Xeを含む。特定の実施形態では、検出可能な標識は、例えば11C、13N、15O、18F、64Cu、62Cu、124I、76Br、82Rb、68Ga、または同等物など、陽電子放出断層撮影(PET)画像化用途で使用を見出すインビボ画像化剤である。
【0030】
ノッティンペプチド
本開示の複合体は、細胞表面分子に結合する改変されたループを含む、ノッティンペプチドを含む。本開示の複合体で採用されるノッティンペプチドのタイプは様々であり得る。採用され得るノッティンペプチドの非限定的な例は、EETI-IIペプチド、AgRPペプチド、ω-コノトキシンペプチド、カラタB1ペプチド、MCoTI-IIペプチド、アガトキシンペプチド、およびクロロトキシンペプチドを含む。ノッティンペプチドの三次元構造は、3つのジスルフィド結合の特定の配置によって最小限定義される。この特徴的なトポロジーは、1つのジスルフィド結合が他の2つの鎖内ジスルフィド架橋によって形成されたマクロ環を通過する、分子ノットを形成する。それらの二次構造含量は一般に低いが、ノッティンは、ジスルフィド結合フレームワークによって安定化される小さな三本鎖逆平行βシートが共通している。ノッティンの折り畳みおよび機能的活性は、多くの場合、長さおよびアミノ酸組成の両方が多様であるループ領域によって媒介される。3つのジスルフィド結合が、このペプチドファミリーの折り畳みを定義する最小数であるが、ノッティンは、付加的システイン残基を含有することもでき、それらの構造に4つ以上のジスルフィド結合および付加的拘束ループを伴う分子を生じさせる。「シスチン」という用語は、硫黄基がジスルフィド結合を通して別のアミノ酸に連結されているCys残基を指す。「システイン」という用語は、その残基の-SH(「半シスチン」)形態を指す。結合ループ部分は、該結合ループの一次配列中に他の介在するシスチンが存在しないように、シスチンに隣接し得る。
【0031】
ノッティンペプチドは、シスチンノットモチーフを含むと識別された数千のポリペプチドの詳細なアミノ酸配列、構造、分類、および機能情報を含む、オンラインのKNOTTINデータベースに記載されているペプチドであり得る。ノッティンは、種々の植物、動物、昆虫、および菌類で見出される。
【0032】
ノッティンペプチドは全長(すなわち、野生型のペプチド/ポリペプチドの長さ)であるか、ノッティンペプチドは野生型のペプチド/ポリペプチドの長さに対して短縮されるか、またはノッティンペプチドは、ペプチドが野生型のペプチド/ポリペプチドの長さに比べてより長くなるように付加的アミノ酸を含み得る。
【0033】
特定の実施形態によれば、本開示のノッティン薬物複合体(KDC)は、Ecballium elateriumトリプシン阻害剤II(EETI-II)ペプチド、アグーチ関連タンパク質(AgRP)ペプチド、ω-コノトキシンペプチド、カラタB1ペプチド、MCoTI-IIペプチド、アグーチキシンペプチド、またはクロロトキシンペプチドのうちのいずれか1つに基づくノッティンペプチドを含む。いくつかの実施形態では、ノッティンペプチドは、Ecballium elateriumトリプシン阻害剤II(EETI-II)ペプチドに基づく。いくつかの実施形態では、ノッティンペプチドは、アグーチ関連タンパク質(AgRP)ペプチドに基づく。
【0034】
「EETI」とは、Protein Data Bank Entry(PDB)2ETIを意味する。KNOTTINデータベース内のそのエントリは、EETI-IIである。特定の様態では、本開示の複合体のノッティンペプチドは、以下のアミノ酸配列を有するEETI-IIペプチドに基づく。
GCPRILMRCKQDSDCLAGCVCGPNGFCG(配列番号3)
【0035】
「AGRP」とは、PDBエントリ1HYKおよびKNOTTINデータベースエントリSwissProt AGRP_HUMANを意味する。AGRPは、ヒトの脳内のメラノコルチン受容体に結合し、代謝および食欲の調節に関与する、132アミノ酸神経ペプチドである。AgRPの生物学的活性は、5つのジスルフィド結合を含有するC末端システインノットドメインによって仲介されるが、4つのジスルフィド結合のみを含有する完全に活性な34アミノ酸短縮型AgRPが開発されている。特定の様態では、本開示の複合体のノッティンペプチドは、以下のアミノ酸配列を有する短縮型AGRPペプチドに基づく。
CVRLHESCLGQQVPCCDPAATCYCRFFNAFCYCR(配列番号4)
【0036】
いくつかの実施形態によれば、本開示の複合体のノッティンペプチドは、以下のアミノ酸配列を有するカラタB1ペプチドに基づく。
CGETCVGGTCNTPGCTCSWPVCTRNGLPV(配列番号5)
【0037】
特定の実施形態では、本開示の複合体のノッティンペプチドは、以下のアミノ酸配列を有するMCoTI-IIペプチドに基づく。
SGSDGGVCPKILKKCRRDSDCPGACICRGNGYCG(配列番号6)
【0038】
特定の実施形態によれば、本開示の複合体のノッティンペプチドは、以下のアミノ酸配列を有するクロロトキシンペプチドに基づく。
MCMPCFTTDHQMARKCDDCCGGKGRGKCYGPQCLCR(配列番号7)
【0039】
EETI-II、AgRP、ω-コノトキシン、カラタB1、MCoTI-II、アガトキシン、クロロトキシン、および本開示の複合体のノッティンペプチドが基づく可能性がある他のノッティンペプチドの配列および構造(例えば、ループ)情報が、PDB、KNOTTINデータベース、および他のタンパク質データベースに見出され得る。
【0040】
ノッティンペプチドは、細胞表面分子に結合する、改変されたループを包含し、すなわち、ループは、細胞の表面上の標的分子に結合するように改変される。ノッティンは、ループ領域を逆平行βシートのコアに拘束する、分子「ノット」に織り込まれた3つのジスルフィド結合を含有する。野生型EETIは、例えば、ループ1(トリプシン結合ループ、残基3~8)、ループ2(残基10~14)、およびループ3(残基22~26)という3つのジスルフィド拘束ループを有する28個のアミノ酸で構成される。プロテアーゼ阻害剤、毒素、および抗菌剤を含むノッティンファミリーメンバーは、それらのコアシステイン残基を除いて、配列相同性をほとんど共有しない。その結果、それらのジスルフィド拘束ループは多くの配列多様性を許容し、ノッティンを、その三次元折り畳みを廃止することなく、タンパク質に突然変異を導入することを要するタンパク質操作アプリケーションに適したものにする。
【0041】
改変されたループは、ノッティンペプチドの既存のループにおけるアミノ酸置換、挿入、および/もしくは欠失を含み得、または改変されたループは、ノッティンタンパク質に付加されたループであり得る。すなわち、複合体のノッティンペプチドは、野生型ペプチドに存在する1つ以上のループに加えて、ループを含み得る。指向進化と計算共分散分析を組み合わせることにより、ノッティン足場のループ領域に改変(アミノ酸配列およびループ長の両方)を導入するためのガイドラインが解明された。例えば、Lahti et al.(2009)PloS Comput.Biol.5(9):e1000499を参照されたい。
【0042】
いくつかの実施形態では、ノッティンのループは、がん細胞表面分子に結合するように改変される。「がん細胞」とは、例えば、異常な細胞成長、異常な細胞増殖、密度依存性の成長阻害の損失、足場非依存性の成長能力、免疫無防備状態の非ヒト動物モデルにおける腫瘍成長および/もしくは発生を促進する能力、ならびに/または細胞形質転換の任意の適切な指標のうちの1つ以上を特徴とし得る、新生物細胞表現型を示す細胞を意味する。「がん細胞」は、本明細書において「腫瘍細胞」、「悪性細胞」、または「がん性細胞」と互換的に使用され得、固形腫瘍、半固形腫瘍、液性腫瘍、原発腫瘍、転移性腫瘍、および同等物のがん細胞を包含する。そのような改変されたループは、ノッティンペプチドに、野生型ペプチドには存在しないがん細胞表面分子認識特性を与える。特定の態様では、がんは、1つ以上の腫瘍抗原を有することが知られているがんである。ノッティンの改変されたループが結合し得る、腫瘍抗原の非限定的な例は、5T4、AXL受容体チロシンキナーゼ(AXL)、B細胞成熟抗原(BCMA)、c-MET、C4.4a、炭酸アンヒドラーゼ6(CA6)、炭酸アンヒドラーゼ9(CA9)、カドヘリン-6、CD19、CD22、CD25、CD27L、CD30、CD33、CD37、CD44v6、CD56、CD70、CD74、CD79b、CD123、CD138、がん胚性抗原(CEA)、cKit、Criptoタンパク質、CS1、デルタ様カノニカルノッチリガンド3(DLL3)、エンドセリン受容体タイプB(EDNRB)、エフリンA4(EFNA4)、上皮成長因子受容体(EGFR)、EGFRvIII、エクトヌクレオチドピロホスファターゼ/ホスホジエステラーゼ3(ENPP3)、EPH受容体A2(EPHA2)、線維芽細胞成長因子受容体2(FGFR2)、線維芽細胞成長因子受容体3(FGFR3)、FMS様チロシンキナーゼ3(FLT3)、葉酸受容体1(FOLR1)、糖タンパク質非転移性B(GPNMB)、グアニル酸シクラーゼ2C(GUCY2C)、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)、ヒト上皮成長因子受容体3(HER3)、インテグリンアルファ、リソソーム関連膜タンパク質1(LAMP-1)、ルイスY、LIV-1、15含有ロイシンリッチ反復(LRRC15)、メソセリン(MSLN)、ムチン1(MUC1)、ムチン16(MUC16)、ナトリウム依存性リン酸輸送タンパク質2B(NaPi2b)、ネクチン-4、NMB、NOTCH3、p-カドヘリン(p-CAD)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、プロテインチロシンキナーゼ7(PTK7)、溶質担体ファミリー44メンバー4(SLC44A4)、SLIT様ファミリーメンバー6(SLITRK6)、STEAPファミリーメンバー1(STEAP1)、組織因子(TF)、T細胞免疫グロブリンおよびムチンタンパク質-1(TIM-1)、ならびに栄養芽細胞表面抗原(TROP-2)を含む。
【0043】
いくつかの実施形態によれば、ノッティンの改変されたループが結合する細胞表面分子は、受容体、例えば、細胞接着受容体、可溶性因子の受容体(例えば、成長因子、ケモカイン、または他の可溶性因子の受容体)、免疫細胞受容体、または同等物である。いくつかの実施形態によれば、ノッティンの改変されたループが結合する細胞表面分子は、細胞接着受容体、例えば、がん細胞の表面上に発現される、腫瘍血管系細胞の表面上に発現される、および/または同等物である、細胞接着受容体(例えば、インテグリン)である。特定の実施形態では、受容体が細胞接着受容体であるとき、受容体は、インテグリンである。例えば、本開示の複合体は、αvβ1インテグリン、αvβ3インテグリン、αvβ5インテグリン、αvβ6インテグリン、α5β1インテグリン、またはそれらの任意の組み合わせのいずれか1つに結合するように改変されたループを有する、ノッティンペプチドを含み得る。特定の実施形態によれば、改変されたループは、αvβ1インテグリン、αvβ3インテグリン、αvβ5インテグリン、αvβ6インテグリン、およびα5β1インテグリンのそれぞれに結合する。
【0044】
本開示の複合体で採用され得る、αvβ1インテグリン、αvβ3インテグリン、αvβ5インテグリン、αvβ6インテグリン、およびα5β1インテグリンのそれぞれに結合する、改変された結合ループを有するEETIベースのノッティンペプチド(EETI-2.5Dと指定)は、以下のアミノ酸配列を有する(インテグリン結合ループに下線が引かれている)。
GCPQGRGDWAPTSCKQDSDCRAGCVCGPNGFCG(配列番号8)
【0045】
本開示の複合体で採用され得る、αvβ1インテグリン、αvβ3インテグリン、αvβ5インテグリン、αvβ6インテグリン、およびα5β1インテグリンのそれぞれに結合する、改変された結合ループを有するEETIベースのノッティンペプチド(EETI-2.5Fと指定)は、以下のアミノ酸配列を有する(インテグリン結合ループに下線が引かれている)。
GCPRPRGDNPPLTCSQDSDCLAGCVCGPNGFCG(配列番号9)
【0046】
本開示の複合体で採用され得る、αvβ1インテグリン、αvβ3インテグリン、αvβ5インテグリン、αvβ6インテグリン、およびα5β1インテグリンのそれぞれに結合する、改変された結合ループを有するEETIベースのノッティンペプチド(3CMと指定)は、Z=5-アジド-L-ノルバリンである、以下のアミノ酸配列を有する(インテグリン結合ループに下線が引かれている)。
GCPRPRGDNPPLTCZQDSDCLAGCVCGPNGYCG(配列番号10)
【0047】
いくつかの実施形態では、本開示の複合体のノッティンペプチドは、表1に記載されるようなインテグリン結合EETIベースのノッティンペプチドである。
【表1】
【0048】
いくつかの実施形態では、本開示の複合体のノッティンペプチドは、表2に記載されるようなインテグリン結合AgRPベースのノッティンペプチドである。
【表2】
【0049】
いくつかの実施形態によれば、本開示の複合体のノッティンペプチドは、プロテアーゼに結合する改変されたループを含む。プロテアーゼの非限定的な例は、膜プロテアーゼ、例えば、マトリプターゼを含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、ノッティンペプチドは、1つ以上の非天然アミノ酸を含む。そのような1つ以上の非天然アミノ酸は、例えば、薬物のノッティンペプチドへの結合を促進するために使用され得る。例えば、本開示の複合体を調製するために使用を見出す非天然アミノ酸は、アジド、アルキン、アルケン、アミノオキシ、ヒドラジン、アルデヒド、ニトロン、ニトリルオキシド、シクロプロペン、ノルボルネン、イソシアニド、ハロゲン化アリール、およびボロン酸官能基から選択される官能基を有するものを含む。本開示のノッティン薬物複合体のノッティンペプチドに組み込まれ得る非天然アミノ酸であって、目的の官能基を提供するために選択され得る、非天然アミノ酸が、公知であり、例えば、Maza et al.(2015)Bioconjug.Chem.26(9):1884-9、Patterson et al.(2014)ACS Chem.Biol.9:592-605、Adumeau et al.(2016)Mol.Imaging Biol.(2):153-65、および他の場所に記載されている。特定の実施形態では、ノッティンペプチドは、1つ以上の5-アジド-L-ノルバリン残基またはその誘導体、例えば、官能化された免疫刺激剤に該残基をコンジュゲートする際に産生される誘導体を含む。
【0051】
本開示の複合体は、例えば上記の表1または表2に提供されるノッティンペプチド配列のいずれかなど、本明細書に記載されるノッティンペプチドのアミノ酸配列に対して70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、または100%の同一性を有するノッティンペプチドを含み得る。
【0052】
いくつかの実施形態によれば、本開示の複合体のノッティンペプチドは、1つ以上の異種ポリペプチドに融合される。ノッティンペプチドは、異種ポリペプチドに直接融合され得る。特定の実施形態では、ノッティンペプチドは、リンカーを介して異種ポリペプチドに直接融合される。採用され得るリンカーの非限定的な例は、アミノ酸配列GGGGSGGGGSGGGGS(G
4S)
3(配列番号44)を含むセリン-グリシンリンカーなどのセリン-グリシンリンカーである。目的の異種ポリペプチドは、Fcドメイン(例えば、ヒトまたはマウスFcドメイン)、アルブミン、トランスフェリン、XTEN、ホモアミノ酸ポリマー、プロリン-アラニン-セリンポリマー、エラスチン様ペプチド、またはそれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、異種ポリペプチドは、異種ポリペプチドに融合されていない同じノッティンペプチドと比較して、必要とする個体へのその投与の際にノッティンペプチドの安定性および/または血清半減期を増加させる。特定の実施形態では、ヒトFcドメイン(例えば、全長ヒトFcドメインまたはその断片)に融合された本開示のノッティンペプチドのいずれかを含む、融合タンパク質が提供される。本開示のいくつかの実施形態による、Fcドメインに融合され免疫刺激剤にコンジュゲートされたノッティンペプチドを含む複合体の概略図が、
図1に概略的に図示されている。いくつかの実施形態によれば、そのような融合タンパク質は、例えば、本開示の方法に従ってそれを必要とする個体(例えばがんを有する個体)に投与すことにおいて使用を見出す。本開示の複合体のノッティンペプチドに融合され得るヒトFcドメインの非限定的な例は、以下の表3に記載される配列(配列番号45)を有するヒトIgG1 Fcドメインまたはその断片である。
【表3】
【0053】
いくつかの実施形態では、ノッティンペプチドが1つ以上の異種ポリペプチドに融合される場合、ノッティンペプチドは、インビボで検出可能な異種ポリペプチドに融合される。インビボで検出可能なポリペプチドの非限定的な例は、生物発光レポーターを含む。特定の実施形態では、生物発光レポーターは、ルシフェラーゼ、例えば、ナノルシフェラーゼである。
【0054】
細胞表面分子に結合する改変されたループを有するノッティンペプチドが開発される様式は、変化し得る。合理的かつコンビナトリアルな手法が、新しい分子認識特性を有するノッティンを設計するために使用されている。例えば、ノッティンタンパク質のライブラリーが作成され、例えば、細菌ディスプレイ、ファージディスプレイ、酵母表面ディスプレイ、蛍光活性化細胞選別(FACS)、および/または任意の他の好適なスクリーニング方法によってスクリーニングされ得る。
【0055】
酵母表面ディスプレイは、新規の分子認識特性、増加した標的結合親和性、適切な折り畳み、および改善された安定性を伴うタンパク質を作製するために使用されてきた強力なコンビナトリアル技術である。このプラットフォームでは、所望の生化学的および生物物理学的特性を伴う変異体を単離するために、タンパク質バリアントのライブラリーが高スループット様式で生成およびスクリーニングされる。酵母表面ディスプレイは、改変された分子認識を伴うノッティンを作製するための成功したコンビナトリアル方法であることが証明されている。酵母表面ディスプレイは、真核生物分泌経路、シャペロンの補助による折り畳み、および効率的なジスルフィド結合形成の品質管理機構から利益を得る。
【0056】
目的の細胞表面分子に結合する、改変されたループを有するノッティンペプチドを開発するための1つの例示的な手法は、2つのジスルフィド結合によって酵母細胞壁タンパク質Aga1pに付着される酵母接合アグルチニンタンパク質Aga2pに該ペプチドを遺伝子的に融合させることを伴う。このAga2p融合構築物、および染色体に組み込まれたAga1p発現カセットは、ガラクトース誘導性プロモーター等の好適なプロモーターの制御下で発現され得る。NまたはC末端エピトープタグが、蛍光標識された一次または二次抗体を使用するフローサイトメトリーによって細胞表面発現レベルを測定するために含まれ得る。この構築物は、ノッティン(または操作される他のタンパク質)のN末端がAga2に融合される、最も広く使用されているディスプレイフォーマットを表すが、酵母表面ディスプレイプラスミドのいくつかの代替変形例が記述されており、本開示の複合体で使用するためのノッティンペプチドを開発するために採用され得る。ファージまたはmRNAディスプレイで使用されるパニングに基づく方法に勝る、このスクリーニングプラットフォームの利点の1つは、2色FACSを使用して、所望の標的に対する結合親和性がわずか2倍程しか異ならないクローンを定量的に判別し得ることである。
【0057】
DNAレベルでノッティンループ領域を選択的に変異させるために、例えば、重複伸長PCRを使用したオリゴヌクレオチドアセンブリによって縮重コドンが導入されることができる。次に、酵母における相同組換えのために酵母ディスプレイベクターと十分に重複する隣接プライマーを使用して遺伝物質が増幅され得る。このアセンブリーおよび増幅の方法により、ノッティンライブラリーを比較的低いコストおよび労力で作成することができる。ライブラリー組成に対する明確な制御を可能にする、合成オリゴヌクレオチドライブラリーおよび最新の方法が開発されている。
【0058】
特定の態様では、ディスプレイライブラリー(例えば、酵母ディスプレイライブラリー)が、FACSによって目的の細胞表面分子への結合についてスクリーニングされる。FACSによってノッティンライブラリーをスクリーニングするとき、一般的に4~7ラウンドのソーティングで、結合剤の富化されたプールが出現する。ライブラリースクリーニングのために2色FACSが使用されてもよく、その場合一方の蛍光標識はc-mycエピトープタグを検出するために使用され、他方の蛍光標識は目的の結合標的に対するノッティン変異体の相互作用を測定するために使用されることができる。単一細胞分解能で2つの蛍光体の励起および発光特性を測定するために、異なる機器レーザーおよび/またはフィルターセットが使用され得る。これにより、結合によって酵母の発現レベルを正規化することが可能になる。すなわち、低い酵母発現を示すが高量の標的に結合するノッティンを、高レベルで発現されるが標的に弱く結合するノッティンから区別することができる。したがって、結合対発現の二次元フローサイトメトリープロットでは、対角線上に標的抗原に結合する酵母細胞の集団が現れる。高親和性結合剤は、ライブラリー選別ゲートを使用して単離されることができる。代替的に、最初の選別ラウンドにおいて、全長タンパク質を発現しない望ましくないクローンをライブラリーから除去することが有用であり得る。スクリーニングで使用される標的は、最終的なアプリケーションに構造的および機能的に関連しており、例えば、目的の細胞表面分子を模倣するものである。
【0059】
目的の細胞表面分子に対する結合剤についてノッティンライブラリーを濃縮することに続いて、酵母プラスミドが回収され、配列決定される。増加された選別ストリンジェンシーの下で、さらなるラウンドのFACSが実施され得る。次いで、個々の酵母に提示されたノッティンクローンの結合親和性または動的解離速度が測定され得る。
【0060】
目的の細胞表面分子に結合する、改変されたループを有するノッティンペプチドが表面ディスプレイ(例えば、酵母表面ディスプレイ)によって識別されると、改変されたノッティンは、適切な方法を使用して産生され得る。ノッティンはサイズが小さいため、化学合成および組換え発現の両方による産生が可能となる。特定の実施形態によれば、ノッティンペプチドは、固相ペプチド合成とそれに続くインビトロ折り畳みによって産生され得る。化学合成により、非天然アミノ酸または他の化学的ハンドルをノッティンペプチドに容易に組み込むことができる。
【0061】
大きな異種ドメインに融合されていないノッティンペプチドは、自動シンセサイザー上で固相ペプチド化学を使用して容易に合成される。例えば、標準的な9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)ベースの固相ペプチド化学が利用され得る。線状ペプチドは、次いで、システイン側鎖チオールの酸化を促進してジスルフィド結合を形成する条件下で折り畳まれ、続いて、例えば、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)によって精製され得る。
【0062】
特定の様態では、ノッティンペプチドまたはそれを含む融合タンパク質は、組換えDNA手法を使用して産生される。種々の宿主細胞型において組換え法を使用してノッティンペプチドを産生するための任意の適切な方策が利用され得る。例えば、E.coliのペリプラズム空間における折り畳みを促進して有用な精製ハンドルとしての役割を果たす、バルナーゼを遺伝子融合パートナーとして用いて機能的ノッティンが産生された。特定の実施形態によれば、改変されたノッティンペプチドは、酵母で発現される。例えば、酵母菌株Pichia pastorisが、2~10mg/Lの精製された改変ノッティンを産生するために成功裏に利用された。酵母発現構築物は、1つ以上のタグ(例えば金属キレートクロマトグラフィー(Ni-NTA)による精製のための、例えば、C末端ヘキサヒスタジンタグ)をコードしてもよい。次いで、凝集物、誤って折り畳まれた多量体等を除去するためにサイズ排除クロマトグラフィーが使用され得る。
【0063】
本開示の態様は、本開示の複合体で採用されるノッティンペプチドおよび融合タンパク質をコードする核酸を含む。すなわち、目的の細胞表面分子に結合する改変されたループを有する、本明細書に記載されるノッティンペプチドおよび融合タンパク質のいずれかをコードする核酸が提供される。特定の態様では、そのような核酸は、発現ベクター中に存在する。発現ベクターは、ノッティンペプチドをコードする核酸に作動可能に連結されたプロモーターを含み、プロモーターは、ノッティンペプチドを発現するために選択された宿主細胞のタイプに基づいて選択される。本開示のノッティンペプチドをコードする核酸のいずれかを含む宿主細胞、ならびにそれを含む任意の発現ベクターも提供される。
【0064】
直接結合または競合結合アッセイを使用して、細胞(例えば、哺乳動物がん細胞等のがん細胞)の表面上に発現される分子に対するノッティンの親和性を測定するための方法が利用可能である。直接結合アッセイでは、平衡結合定数(KD)は、フルオロフォアもしくは放射性同位体にコンジュゲートされたノッティン、または標識抗体による検出のためのN末端もしくはC末端エピトープタグを含有するノッティンを使用して、測定され得る。標識またはタグが実行可能でないまたは望ましくない場合には、競合結合アッセイが、標識競合物の最大シグナルの50%が検出可能な非標識ノッティンの量である最大半量阻害濃度(IC50)を決定するために使用されることができる。次いで、測定されたIC50値からKD値を計算することができる。リガンドの枯渇は、高親和性相互作用因子を低濃度範囲で測定する場合により顕著になり、実験に添加される細胞の数を減少させることによって、または結合反応体積を増加させることによって、回避または最小限化することができる。
【0065】
特定の様態では、ノッティンペプチドは、約0.01nM~100nM、例えば約0.025nM~75nM、約0.05nM~50nm、約0.075nM~25nM、または約0.1nM~10nMの、細胞表面分子に対する平衡結合定数(KD)を有する。いくつかの実施形態では、ノッティンペプチドは、約0.1nM~10nMの、細胞表面分子に対する平衡結合定数(KD)を有する。いくつかの実施形態では、ノッティンペプチドは、約0.1nMの、細胞表面分子に対する平衡結合定数(KD)を有する。いくつかの実施形態では、ノッティンペプチドは、約0.5nMの、細胞表面分子に対する平衡結合定数(KD)を有する。いくつかの実施形態では、ノッティンペプチドは、約1nMの、細胞表面分子に対する平衡結合定数(KD)を有する。いくつかの実施形態では、ノッティンペプチドは、約5nMの、細胞表面分子に対する平衡結合定数(KD)を有する。いくつかの実施形態では、ノッティンペプチドは、約10nMの、細胞表面分子に対する平衡結合定数(KD)を有する。
【0066】
ノッティンライブラリーの構築およびスクリーニングを含む、酵母表面ディスプレイ技術によるノッティンの操作、ならびに化学合成および組換え発現によるノッティン産生、さらに直接結合または競合結合アッセイを用いた細胞表面発現分子(例えば受容体)に対するノッティンの親和性を測定する細胞結合アッセイのための詳細なガイダンスおよび具体的なプロトコルが、Moore,S. and Cochran,J.(2012)Engineering Knottins as Novel Binding Agents, Methods in Enzymology,503,223-251に記載されている。
【0067】
リンカー
本開示の免疫刺激剤は、種々の適切なリンカーを介してノッティンペプチドにコンジュゲートされ得る。本開示の複合体で使用を見出すリンカーには、エステルリンカー、アミドリンカー、マレイミドまたはマレイミドベースのリンカー、バリン-シトルリンリンカー、ヒドラゾンリンカー、N-スクシンイミジル-4-(2-ピリジルジチオ)ブチレート(SPDB)リンカー、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)リンカー、ビニルスルホンベースのリンカー、ポリエチレングリコール(PEG)を含むリンカー(テトラエチレングリコールなどであるがこれらに限定されない)、プロパン酸を含むリンカー、カプロレイン酸を含むリンカー、およびそれらの任意の組み合わせを含む、リンカーが含まれる。
【0068】
特定の態様では、リンカーは、化学的に不安定なリンカーであり、例えば中性pH(血流pH7.3~7.5)で安定であるが標的細胞(例えば、がん細胞)の弱酸性エンドソーム(pH5.0~6.5)およびリソソーム(pH4.5~5.0)への内部移行の際に加水分解を受ける、酸切断性リンカーなどである。化学的に不安定なリンカーには、ヒドラゾン系リンカー、オキシム系リンカー、カーボネート系リンカー、エステル系リンカーなどが含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態によれば、リンカーは酵素不安定性リンカーであり、例えば、血流中で安定であるが、標的細胞への内部移行の際に、例えば標的細胞(例えばがん細胞)のリソソーム内のリソソームプロテアーゼ(カテプシンまたはプラスミンなど)によって酵素的切断を受ける酵素不安定性リンカーである。酵素不安定性リンカーには、ペプチド結合を含むリンカー、例えば、バリン-シトルリンリンカー(例えばマレイミドカプロイル-バリン-シトルリン-p-アミノベンジル(MC-vc-PAB)リンカー)、バリル-アラニル-パラ-アミノベンジルオキシ(Val-Ala-PAB)リンカー、および同等物などのジペプチドベースのリンカーが含まれるが、これらに限定されない。化学的に不安定なリンカー、酵素不安定性リンカー、および切断不可能なリンカーは、公知であり、例えば、Ducry&Stump (2010)Bioconjugate Chem.21:5-13に詳細に記載されている。
【0069】
特定の実施形態では、本開示の複合体は、本開示で後述する複合体を作製する方法および実験のセクションならびに図面に記載される、リンカーを介してノッティンペプチドにコンジュゲートされた免疫刺激剤を含む。
【0070】
複合体を作製する方法
複合体を作製する方法も提供される。いくつかの実施形態によれば、ノッティン-免疫刺激剤複合体を作製する方法であって、リンカーを介して免疫刺激剤をノッティンペプチドにコンジュゲートすることを含む、方法が提供される。特定の実施形態では、コンジュゲートすることは、免疫刺激剤を官能化することと、官能化された免疫刺激剤をノッティンペプチドにコンジュゲートすることとを含む。いくつかの実施形態によれば、ノッティンペプチドおよび/または免疫刺激剤は、本明細書の先行部分および下記の実験セクションに記載されているノッティンペプチドおよび/または免疫刺激剤のいずれかから選択される。
【0071】
いくつかの実施形態によれば、免疫刺激剤は、一級アミンを含み、免疫刺激剤を官能化することは、一級アミンをアミン反応性リンカーと反応させることを含む。種々のアミン反応性リンカーが、ノッティン-免疫刺激剤複合体を作製する方法を実践するときに採用され得る。1つの非限定的な例によれば、アミン反応性リンカーは、アミン反応性NHSエステルリンカーである。特定の実施形態では、アミン反応性リンカーが採用される場合において、アミン反応性リンカーは、ビシクロ[6.1.0]ノニン(BCN)、ジベンゾシクロオクチン(DBCO)、およびアジド部分から選択される部分(moiety)を含む。アミン反応性リンカーがそのような部分を含むとき、官能化された免疫刺激剤をノッティンペプチドにコンジュゲートすることは、アミン反応性リンカーの当該部分をノッティンペプチドの部分と反応させることを含み得る。いくつかの実施形態によれば、ノッティンペプチドは、ノッティンペプチドの上記部分を含む非天然アミノ酸を含む。例えば、非天然アミノ酸は、アジド部分を提供し得る。1つの非限定的な例では、アジド部分は、1つ以上の5-アジド-L-ノルバリンをノッティンペプチドの所望の位置に組み込むことによって提供される。特定の実施形態では、官能化された免疫刺激剤が反応されるノッティンペプチドの部分は、N末端アミン基である。
【0072】
いくつかの実施形態では、本開示のノッティン-免疫刺激剤複合体は、
図2~4、8および9に図示される手法のいずれかに従って、かつ/または以下の実験の節に記載されるように作製される。
【0073】
図2は、免疫刺激剤を官能化するための例示的な方策を提供する。(A)コンジュゲート化に利用可能な一級アミンを伴う免疫刺激剤は、(B)クリックケミストリーハンドル(例えば、BCN、DBCO、アジド)を有するアミン反応性NHSエステルリンカーと反応され、(C)クリックケミストリーハンドル(例えば、BCN、DBCO、アジド)を有する官能化された免疫刺激剤をもたらし得、これは、免疫刺激剤を腫瘍標的化剤にコンジュゲートするために使用される(
図4に記載)。
【0074】
図3は、ノッティンペプチドの例示的な配列および図解を提供する。(A)インテグリン結合ループ(PRPRGDNPPLT)およびシステインノット足場のジスルフィド結合が示されたノッティンペプチド2.5Fおよび3CMの配列。(B)N末端アミン基が示されている2.5FおよびX
1位置に5-アジド-L-ノルバリンが示された3CMのノッティンペプチド構造の図解。ノッティンペプチド2.5FはN末端アミン基においてコンジュゲートされることができる一方で、3CMは、X
1アジド部位(この目的のために組み込まれた非天然アミノ酸)においてコンジュゲートされることができる。3CMはまた、免疫刺激剤またはフルオロフォアなどのプローブと反応され得る、利用可能なN末端アミン基も有する(
図9参照)。さらに、2.5FのX
2位置におけるフェニルアラニンは、UV吸収による濃度測定を促進するように、3CMにおいてチロシンに置き換えられ得る。X
2におけるどちらのアミノ酸も結合親和性を損なうことなく使用され得る。
【0075】
図4に示されているものは、官能化された免疫刺激剤にノッティンペプチドをコンジュゲートするための例示的な方策である。(A)3CMのX
1アジドは、ひずみ促進アジド-アルキン付加環化(SPAAC)を使用して、BCNまたはDBCOで官能化された免疫刺激剤(例えば、本明細書では図面、その説明、および実験のセクションにおいて「CpG」と称されることもある、1つ以上のCpGジヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドベースのTLR 9アゴニスト(例えば、CpG ODN)、またはT78a)と反応され得る。(B)2.5FのN末端アミンは、N末端アジドを組み込むように、アジド-PEG4-NHSエステルリンカーを使用して修飾され得る。N末端アジドは、SPAACを使用して、BCNまたはDBCO官能化免疫刺激剤と反応され得る。
【0076】
図8(上)は、本開示の実施形態によるノッティン-免疫刺激剤複合体(この例ではノッティン-Fc-T78a)を作製する方法を概略的に図示する。示されるように、ノッティン-Fc(KFc)をT78aにコンジュゲートしてKFc-T78aを産生するために、BCN修飾KFcとアジド-T78aが利用された。
【0077】
図9(上)は、ノッティンが検出可能な標識にさらにコンジュゲートされる、ノッティン-免疫刺激剤複合体を作製する方法を概略的に図示する。この例では、検出可能な標識は、AlexaFluor 680である。3CM-CpG-AF680を合成するためのこの例示的手法によれば、3CMは、N末端においてAF680-NHSエステル(フルオロフォア)で修飾され、X
1アジドにおいてDBCO-CpGで修飾された。
【0078】
組成物
上記に要約されたように、本開示は、組成物を提供する。組成物は、上記の複合体のセクション(ここに組み込まれるが、簡潔にするためにここでは繰り返さない)に記載された複合体を含め、本開示の複合体のいずれかを含み得る。
【0079】
特定の態様では、組成物は、液体媒体中に存在する本開示の複合体を含む。液体媒体は、水、緩衝溶液、および同等物等の水性液体媒体であり得る。塩(例えば、NaCl、MgCl2、KCl、MgSO4)、緩衝剤(トリス緩衝剤、N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(2-エタンスルホン酸)(HEPES)、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸ナトリウム塩(MES)、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、N-トリス[ヒドロキシメチル]メチル-3-アミノプロパンスルホン酸(TAPS)等)、プロテアーゼ阻害剤、グリセロール、および同等物などの1つ以上の添加剤が、そのような組成物中に存在し得る。
【0080】
医薬組成物もまた、提供される。医薬組成物は、本開示の複合体のいずれか、および薬学的に許容される担体を含む。医薬組成物は、一般に、治療有効量の複合体を含む。「治療有効量」とは、所望の結果を生じるために十分な投与量、例えば、改変されたループが結合するところの細胞表面分子に関連する細胞増殖性障害(例えば、がん)を有する個体における細胞増殖の減少などの、有益なまたは所望の治療的(予防を含む)結果をもたらすために十分な量を意味する。有効量は、1回または複数回の投与で投与され得る。
【0081】
本開示の複合体は、治療用投与のための種々の製剤に組み込まれることができる。より具体的には、複合体は、適切な薬学的に許容される賦形剤または希釈剤との組み合わせによって、医薬組成物に製剤化されることができ、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、軟膏、溶液、注射液、吸入剤、およびエアロゾルなどの固体、半固体、液体またはガス状形態の製剤に製剤化され得る。
【0082】
個体への投与に好適な(例えば、ヒト投与に好適な)本開示の複合体の製剤は、一般に無菌であり、さらに、選択される投与経路に従って個体に投与するためには禁忌である検出可能な発熱物質または他の混入物質を含まない状態であり得る。
【0083】
医薬剤形において、複合体は、単独で、または他の薬学的に活性な化合物との適切な会合や組み合わせで投与されることができる。以下の方法および賦形剤は単なる例であり、決して限定するものではない。
【0084】
経口製剤の場合、複合体は、例えば、ラクトース、マンニトール、トウモロコシデンプンまたはジャガイモデンプンなどの従来の添加剤、結晶セルロース、セルロース誘導体、アラビアゴム、コーンスターチ、またはゼラチンなどの結合剤、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、またはカルボキシメチルセルロースナトリウムなどの崩壊剤、タルクまたはステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、所望される場合、希釈剤、緩衝剤、湿潤剤、防腐剤、および香味剤を用いて、錠剤、散剤、顆粒剤、またはカプセル剤を製造するために、単独で、または適切な添加剤と組み合わせて、使用されることができる。
【0085】
複合体は、植物油もしくは他の類似の油、合成脂肪酸グリセリド、高次脂肪酸のエステル、またはプロピレングリコール等の水性もしくは非水性溶媒に溶解、懸濁、または乳化することによって、また、所望される場合、可溶化剤、等張剤、懸濁化剤、乳化剤、安定剤、および防腐剤等の従来の添加剤を用いて、注射用製剤に製剤化されることができる。
【0086】
医薬組成物は、液体形態、凍結乾燥形態、または凍結乾燥形態から再構成された液体形態であってもよく、凍結乾燥調製物は、投与前に滅菌溶液で再構成されるべきである。凍結乾燥組成物を再構成するための標準的な手順は、一定量の純水(典型的には、凍結乾燥中に除去された体積と等量である)を加え戻すことであるが、抗菌剤を含む溶液が、非経口投与用の医薬組成物の産生のために使用されてもよい。
【0087】
複合体の水性製剤は、例えば、約4.5~約7.5などの約4.0~約8.0、例えば、約5.0~約7.0の範囲のpH緩衝溶液中で調製され得る。この範囲内のpHに好適である緩衝液の例には、リン酸、ヒスチジ、クエン酸、コハク酸、酢酸、および他の有機酸緩衝液が含まれる。緩衝液の濃度は、例えば、緩衝液および製剤の所望の張性に応じて、約1mM~約100mM、または約5mM~約50mMであり得る。
【0088】
キット
本開示の態様は、キットをさらに含む。いくつかの実施形態では、主題キットは、本開示の複合体のいずれか(ここ組み込まれるが簡潔性のためにここでは繰り返さない、上記の複合体のセクションに記載された複合体のいずれかを含む)またはそれを含む医薬組成物、およびそれを必要とする個体に医薬組成物を投与するための説明書を含む。特定の実施形態では、複合体は、がん細胞表面分子および/または腫瘍血管系細胞の表面上の分子に結合する、改変されたループ(例えば、本明細書の他の場所に記載される、腫瘍抗原、細胞接着受容体(例えば、インテグリン)等に結合する、改変されたループ)を含む、ノッティンペプチドを含み、説明書は、がんを有する個体に医薬組成物を投与し、がんを治療するためのものである。
【0089】
いくつかの実施形態では、複合体または医薬組成物は、1つまたは複数(例えば、2つ以上)の単位投与量で存在する。「単位投与量」という用語は、本明細書で使用される場合、ヒトおよび動物対象のための単一の投与量として適切な物理的に別個の単位を指し、各単位は、所望の効果を生じるために十分な量で計算された所定量の複合体または組成物を含有する。単位投与量の量は、採用される特定の複合体、達成されるべき効果、および個体における複合体と関連付けられる薬力学などの様々な要因に依存する。さらに他の実施形態では、キットは、複合体または医薬組成物の単一の複数回投与量を含み得る。
【0090】
キットの構成要素は、別々の容器内に存在し得、または複数の構成要素が単一の容器内に存在し得る。
【0091】
キットに含まれる説明書は、適切な記録媒体上に記録され得る。例えば、説明書は、紙またはプラスチックなどの基材上に印刷され得る。したがって、説明書は、添付文書としてキット内に、またはキットの容器もしくはその構成要素のラベル内などに(すなわち、包装または副包装に付随して)存在し得る。他の実施形態では、説明書は、適切なコンピュータ可読記憶媒体、例えば、ポータブルフラッシュドライブ、DVD、CD-ROM、ディスケットなどに存在する、電子記憶データファイルとして存在する。さらに他の実施形態では、キット中には実際の説明書は存在しないが、例えば、インターネットを介してリモートソースから説明書を取得するための手段が提供される。この実施形態の一例は、説明書が閲覧され得る、かつ/または説明書がダウンロードされ得る、ウェブアドレスを含むキットである。説明書と同様に、説明書を取得するための手段は、好適な基材上に記録される。
【0092】
使用方法
上記に要約されたように、本開示の複合体を使用する方法も提供される。いくつかの実施形態では、当該方法は、ここに組み込まれるが簡潔にするためにここでは繰り返さない、上記の複合体のセクションに記載された複合体のいずれかを使用することを含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、治療有効量の本開示の複合体のいずれかまたは本開示の医薬組成物のいずれかを、それを必要とする個体に投与することを含む、方法が提供される。特定の実施形態では、個体は、がんを有し、複合体のノッティンペプチドは、個体に存在するがん細胞および/または腫瘍血管系細胞上の細胞表面分子に結合する、改変されたループを含み、複合体を含む医薬組成物は、がんを治療するために有効な量で個体に投与される。したがって、本開示の態様は、がんを有する個体に、治療有効量の本開示の複合体のいずれかまたは医薬組成物のいずれかを投与することによって、がんを治療する方法を含む。
【0094】
種々の個体が、主題の方法に従って治療可能である。一般に、そのような個体は、「哺乳動物」または「哺乳類」であり、これらの用語は、肉食動物(例えば、イヌおよびネコ)、げっ歯類(例えば、マウス、モルモット、およびラット)、ならびに霊長類(例えば、ヒト、チンパンジー、およびサル)を含む哺乳動物のクラス内にある生物を記述するために広く使用される。いくつかの実施形態では、個体は、ヒトである。いくつかの実施形態では、個体は、マウスモデルなどの動物モデルである。
【0095】
いくつかの実施形態では、有効量の複合体(または同複合体を含む医薬組成物)は、単独で(例えば、単剤療法において)、または1つ以上の付加的な治療薬剤と組み合わせて(例えば、併用療法において)、1回以上の用量で投与されたときに、複合体または医薬組成物を用いた治療が存在しない状態での個体における症状と比較して、個体の病状(例えば、がんなど)の症状を、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%またはそれ以上低減させるために有効な量である。
【0096】
いくつかの実施形態では、個体は、がんを有し、本開示の方法は、個体のがんを治療する際に使用を見出す。特定の実施形態では、個体は、固形腫瘍、半固形腫瘍、原発腫瘍、転移性腫瘍、液性腫瘍(例えば、白血病、リンパ腫等)、および/または同等物の存在によって特徴付けられる、がんを有する。いくつかの実施態様では、個体は、膠芽腫、神経芽細胞腫、頭頸部がん、胃がん、卵巣がん、皮膚がん(例えば、基底細胞がん、メラノーマ、または同等物)、肺がん、結腸直腸がん、前立腺がん、神経膠腫、膀胱がん、子宮内膜がん、腎臓がん、白血病(例えば、急性骨髄性白血病(AML))、肝臓がん(例えば、原発性または再発性HCCなどの肝細胞がん(HCC))、非ホジキンリンパ腫、膵臓がん、甲状腺がん、B細胞悪性腫瘍、それらの任意の組み合わせ、およびそれらの任意の亜型から選択される、がんを有する。特定の実施形態によれば、個体は、腫瘍性および/または悪性細胞の存在によって特徴付けられる状態を有する。
【0097】
「治療する(treat)」、「治療すること(treating)」、または「治療(treatment)」とは、個体の病状(例えば、細胞増殖性障害、例えば、がん)と関連付けられる症状の少なくとも改善を意味し、改善は、治療されている病状と関連付けられるパラメータ、例えば、症状の大きさの少なくとも低減を指すために広義に使用される。したがって、治療はまた、個体が、病状または少なくとも病状を特徴付ける症状にそれ以上苦しむことがないように、病状(例えば、がん)または少なくともそれと関連付けられる症状が、完全に阻害された、例えば、発生することを防止された、または停止された、例えば、中止された状況も含む。
【0098】
複合体または医薬組成物は、インビボおよびエクスビボでの方法、ならびに全身および局所的投与経路を含む、薬物送達に好適な任意の利用可能な方法および経路を使用して、個体に投与され得る。従来の医薬的に許容される投与経路には、鼻腔内、筋肉内、気管内、皮下、皮内、局所適用、眼内、静脈内、動脈内、経鼻、経口、および他の経腸ならびに非経口投与経路が含まれる。いくつかの態様では、投与は、非経口投与によるものである。投与経路は、複合体および/または所望の効果に応じて、望ましい場合は組み合わせられ、または調節され得る。複合体または医薬組成物は、単回用量または複数回用量で投与され得る。いくつかの実施形態では、複合体または医薬組成物は、静脈内投与される。いくつかの実施形態では、複合体または医薬組成物は、例えば、全身送達(例えば、静脈内注入)のために、または局所部位に、例えば、腫瘍内注射、腫瘍周囲注射、および/または同等物によって投与される。
【0099】
いくつかの実施形態では、個体は、固形腫瘍を有する。いくつかの実施形態では、個体が固形腫瘍を有する場合において、方法は、本開示のノッティン-免疫刺激剤複合体を個体に投与することを含む。本明細書に実証されるように、そのような複合体は、全身投与に続いて固形腫瘍に局在化する、予想外の能力を示し、対応する非コンジュゲート免疫刺激剤よりも実質的に高い治療有効性を達成する。いくつかの実施形態によれば、個体は、固形腫瘍を有し、投与は、全身投与によるものであり、固形腫瘍の免疫細胞微小環境は、免疫刺激剤のみが個体に全身投与されるときの腫瘍の免疫細胞微小環境と比較して、増加した割合のCD8+T細胞、増加した割合のCD4+T細胞、増加した割合のB細胞、および/または減少した割合の骨髄由来抑制細胞(MDSC)の1つまたは任意の組み合わせを特徴とする。いくつかの実施形態によれば、個体は、固形腫瘍を有し、投与は、全身投与によるものであり、CD8+T細胞の割合、CD4+T細胞の割合、B細胞の割合、および/また骨髄由来抑制細胞(MDSC)の割合のうちの1つまたは任意の組み合わせによって評価される固形腫瘍の免疫細胞微小環境は、免疫刺激剤のみが個体に腫瘍内投与されるときの腫瘍の免疫細胞微小環境と比較して、統計学的に有意に異ならない。
【0100】
いくつかの実施形態では、個体は、その治療が血液脳関門(BBB)を通過することを複合体に要求する、がんを有する。そのようながんの非限定的な例は、脳腫瘍、例えば、膠芽腫または同等物である。いくつかの実施形態では、個体が、その治療がBBBを通過することを複合体に要求するがんを有する場合において、方法は、本開示のノッティン-薬物複合体などの低分子量複合体を個体に投与することを含む。
【0101】
以下の実施例は、限定ではなく、例示として提供される。
【実施例】
【0102】
実験
実施例1―異なる部位に組み込まれたCpGを伴うノッティン-CpG複合体
この実施例では、異なる部位に組み込まれた免疫刺激剤を用いて、ノッティンペプチド-免疫刺激剤複合体が調製された。この特定の実施例は、異なる部位に組み込まれたCpG ODN(本明細書および図面では「CpG」と称される)にコンジュゲートされたノッティンペプチド2.5Fおよび3CMを含む。
図5の左側のパネルには、アミノ-CpG、3CM-CpG(X
1アジド)、および2.5F-CpG(N末端アジド)についてのRAW-Blue NF-κB活性化アッセイの結果が示される。BCN-CpGが、括弧内に示される部位でコンジュゲートされた。
図5の右側のパネルには、3CM、3CM-CpG(X
1アジド)、および2.5F-CpG(N末端アジド)を比較する競合結合アッセイの結果が示される。
【0103】
ノッティン-CpG複合体は(いずれかのコンジュゲーション部位においても)アミノ-CpG(陽性対照)と比較して同様のNF-κB活性化プロファイルを示し、また、未修飾3CM(陽性対照)と比較して同様の結合プロファイルを示した。したがって、どちらのコンジュゲーション部位(X1アジドまたはN末端アジド)も、TLRアゴニスト活性または結合親和性に悪影響を与えることなく、ノッティン-CpG複合体を合成するために使用されることができる。アミノ-CpGは、未修飾CpGと同じNF-κB活性化プロファイルを示した(データは示していない)。
【0104】
実施例2―異なるリンカーを伴って合成されたノッティン-CpG複合体
この実施例では、異なるリンカーを使用してノッティンペプチド-免疫刺激剤複合体が調製された。この特定の実施例は、異なるリンカーを使用してCpGにコンジュゲートされたノッティンペプチド3CMが関わる。
図6の左側のパネルには、アミノ-CpG、3CM-CpG(DBCO)、および3CM-CpG(BCN)についてのRAW-Blue NF-κB活性化アッセイの結果が示される。両方の複合体について、CpGは3CM上のX
1アジドにコンジュゲートされた。
図6の右側のパネルには、3CM、3CM-CpG(DBCO)、および3CM-CpG(BCN)を比較した競合結合アッセイの結果が示される。
【0105】
ノッティン-CpG複合体は(いずれかのリンカーを伴ってもアミノ-CpG(陽性対照)と比較して同様のNF-κB活性化プロファイルを示し、また、未修飾3CM(陽性対照)と比較して同様の結合プロファイルを示した。したがって、どちらののリンカー方策(DBCOまたはBCN)も、TLRアゴニスト活性または結合親和性に悪影響を与えることなく、ノッティン-CpG複合体を合成するために使用されることができる。
【0106】
実施例3―ノッティン-TLR7/8アゴニスト(T78a)複合体
この実施例では、ノッティンペプチド-免疫刺激剤が調製され試験されたが、ここでノッティンペプチドは3CMであり、免疫刺激剤はTLR7/8アゴニストT78aであった。
図7の左側のパネルには、3CM、T78a、および3CM-T78aについてのRAW-Blue NF-κB活性化アッセイの結果が示される。
図7の右側のパネルには、3CMおよび3CM-T78aを比較する競合結合アッセイの結果が示される。
【0107】
TLR7/8アゴニスト(T78a)が、試験された高濃度(500~5,000nM)でのみNF-κBを活性化した一方で、3CM-T78a複合体は、より低い濃度で活性化を誘発した(50~5,000nM)。さらに、3CM-T78aは、非コンジュゲート化3CMと同様の結合プロファイルを示し、したがって、インテグリンに対する高い親和性を保持した。
【0108】
実施例4―ノッティン-Fc免疫刺激剤複合体
この実施例では、Fcドメインに融合され免疫刺激剤にコンジュゲートされたノッティンペプチドを含む複合体が、合成され試験された。
図8(上)は、複合体(この例では、ノッティン-Fc-T78a)を作製する方法を概略的に図示する。示されるように、ノッティン-Fc(KFc)をT78aにコンジュゲートしてKFc-T78aを産生するために、BCN修飾KFcおよびアジド-T78aが採用された。
図8(下のパネル)は、KFc、T78a、およびKFc-T78a複合体についてのRAW-Blue NF-κB活性化アッセイの結果を示す。
【0109】
KFc-T78aのNF-κB活性化は、試験された各濃度でKFcまたはT78aよりも有意に高い(p<0.0001)。合成については、KFcがアジド-NHSエステルリンカーで修飾されてBCN-T78a(またはBCN-CpG)にコンジュゲートされるように、BCN基とアジド基は交換され得る。DBCOがBCNに代用されることもできる。
【0110】
実施例5―検出可能に標識されたノッティン-免疫刺激剤複合体
この実施例では、免疫刺激剤および検出可能標識(ここでは、AlexaFluor 680)にコンジュゲートされたノッティンペプチドを含む複合体が、合成され試験された。
図9(上)は、この実施例で採用された手法を概略的に図示する。3CM-CpG-AF680を合成するために、3CMは、N末端においてAF680-NHSエステル(フルオロフォア)で修飾され、X
1アジドにおいてDBCO-CpGで修飾された。
図9(下)は、3CMと比較した3CM-CpG-AF680についての競合結合アッセイの結果を示す。
【0111】
3CM-CpG-AF680の結合親和性は、3CMと有意に異ならない(対応のないスチューデントのt検定によって決定)。データは、3回の独立した実験の平均(±標準偏差、SD)を表す。
【0112】
実施例6―非侵襲的インビボおよびエクスビボ蛍光画像化
この実施例では、腫瘍内および腫瘍周囲に注射された3CM-CpG-AF680複合体の非侵襲的インビボ蛍光画像化が実施された。結果が、
図10に示される。左右の肩に2つのCT26結腸がん腫瘍を有するマウスの、腫瘍内に(IT、左腫瘍内に)または腫瘍周囲に(PT、左腫瘍に隣接して)、示された用量で3CM-CpG-AF680を注射した。「用量」は、腫瘍内CpG療法のための典型的な用量(等モル)=5.2nmol(50μg)である。画像の左側に時間数で示される時間は、注射後の時間数である。3CM-CpG-AF680複合体は、ITまたはPT注射に続いて、4時間または26時間の後、非注射腫瘍部位には局在しなかった。
【0113】
この実施例ではまた、静脈内注射された3CM-CpG-AF680複合体の非侵襲的インビボ蛍光画像化が実施された。結果が、
図11に示される。左右の肩に2つのCT26結腸がん腫瘍を有するマウスに、示された用量で3CM-CpG-AF680を静脈内に(IV、尾静脈)注射した。「用量」は、腫瘍内CpG療法ためのの典型的な用量(等モル)=5.2nmol(50μg)である。画像の左側に時間数で示される時間は、注射後の時間数である。3CM-CpG-AF680(4×用量)は、IV注射後4時間以内に両方の腫瘍に局在し、24時間以上腫瘍部位内に保持される。より低い用量もまた、腫瘍への局在化をもたらし得るが、インビボ蛍光画像化によって測定可能ではない。
【0114】
腫瘍は、26時間後に切除され、2×用量および4×用量(
図12参照)を注射されたマウスからのエクスビボでの腫瘍蛍光が観察された。結果が、
図12に示される。左右の肩に2つのCT26結腸がん腫瘍を有するマウスの、腫瘍内に(IT、左腫瘍内に)、腫瘍周囲に(PT、左腫瘍に隣接して)、または静脈内に(IV、尾静脈に)、示された用量で3CM-CpG-AF680を注射した。「用量」は、腫瘍内CpG療法のための典型的な用量(等モル)=5.2nmol(50ug)である。腫瘍は、注射後26時間で画像化のために切除された。エクスビボ画像は、インビボ画像化からの観察を支持している。A)3CM-CpG-AF680は、ITまたはPT注射に続いて、26時間の後、注射されていない腫瘍(右腫瘍)には局在しない。
B)PTで送達された3CM-CpG-AF680は、注射後26時間で腫瘍取り込みをもたらし、複合体は腫瘍周囲注射部位に(腫瘍を囲む領域内に)も存在し得る。C)IVで送達された3CM-CpG-AF680(4×用量)は、注射後26時間で両方の腫瘍に局在する。局在化は、3CM-CpG-AF680(2×用量)をIV送達された1つの腫瘍でも観察された。
【0115】
実施例7―腫瘍成長によって示されるノッティン-免疫刺激剤複合体の治療有効性
この実施例では、例示的ノッティン-免疫刺激剤複合体の治療有効性が評価された。原理の証明として、3CM-CpG複合体がこの実施例で採用された。侵襲性4T1乳がんマウスモデルが使用された。4T1-Luc乳がん(n=9~10)における3CM-CpGの治療有効性を実証する生存曲線が、
図13に示される。3用量の静脈内ノッティン-CpGを受けた、確立された腫瘍有するマウスは、3用量の静脈内未修飾CpGまたはビヒクル対照で処置されたマウスと比較して、有意に延長された生存を有した。
【0116】
さらに、ノッティン-CpG処置は、9匹中6匹のマウスで完全な腫瘍退縮を誘発し、残りの3匹は、ビヒクル処置マウスと比較して、腫瘍成長の遅延を示した。完全な腫瘍退縮を示したマウスでは、マウスの50%(6匹中3匹)が、腫瘍退縮に続いて数ヶ月間、腫瘍再発の兆候を伴わずに治癒された。代替の全身単剤療法を用いて4T1モデルにおいて治癒を達成することは前例がないため、これらの結果は、重要かつ予想外である。
【0117】
また、接種後141日目に、生存マウスが、元の接種に使用された数の2倍の細胞を使用して、反対側の腹部の皮下に4T1-luc腫瘍細胞を再注射された、再負荷実験も実施された。ナイーブマウスもまた、同数の腫瘍細胞を注射された。接種後16日で、上記生存マウスのいずれも腫瘍を有していなかった一方、すべてのナイーブマウスが腫瘍を確立していた。
【0118】
図14には、経時的な4T1-Luc平均腫瘍成長が示される。(ビヒクル群からの)最初のマウスが安楽死させられたときまでの平均腫瘍体積が各群についてプロットされている。矢印は、3用量を受けた群についての処置日(7、9、11)を示し、1用量群については第7日のみであった。データは、平均±SEMを表す(n=9~10)。
【0119】
図15には、個々の4T1-Luc腫瘍成長曲線が示される。再発を伴わない完全応答(CR)を実証する各群からのマウス(「長期生存者」)の割合および再発を伴うCRを示すマウスの割合が、個々のプロット上に示される。CRは、腫瘍の完全な退縮として定義される。再発を伴うCRは、腫瘍退縮後のある時点での再成長が後に続く、腫瘍の完全な退縮として定義される。
【0120】
実施例8―ノッティン-免疫刺激剤複合体による腫瘍免疫微小環境の転換
この実施例では、静脈内投与された例示的なノッティン-免疫刺激剤複合体の治療有効性の機構が、腫瘍浸潤性免疫細胞についてアッセイを行うことによって評価された。ノッティン-免疫刺激剤複合体の開発の背後にある1つの動機は、腫瘍部位への標的化送達を伴う全身注射を可能にすることであった。ノッティン-免疫刺激剤が腫瘍部位に到達して免疫応答を刺激する場合、この抗腫瘍免疫応答を促進するために、腫瘍内の免疫細胞プロファイルが変化するであろうと予期される(例えば、CD8+T細胞の増加)。原理の証明として、3CM-CpG複合体がこの実施例で採用された。免疫細胞プロファイルの所望の変化の陽性対照として、腫瘍に直接注射され(したがって腫瘍部位に到達し)免疫応答を局所的に刺激することが知られる、腫瘍内CpGで処置されたマウスの群が含められた。
【0121】
4T1-luc細胞が、BALB/cマウスの腹部の片側に皮下移植され、9日間成長させられた。腫瘍が発達すると、マウスは、概略図(
図16、左上)に従って、以下の群(n=群あたり3匹のマウス)について静脈内(IV)または腫瘍内(IT)注射で2回処置された:ビヒクルIV、CpG IV(18.2nmol)、3CM-CpG IV(18.2nmol)、およびCpG IT(5.2nmol、典型的なIT用量)。処置後3日目に、腫瘍は、切除され、FACSを介して腫瘍浸潤免疫細胞について分析された。
図16には、CD8+T細胞、CD4+T細胞、B細胞、骨髄由来抑制細胞(MDSC)、およびNK細胞を含む、異なる免疫集団の存在量のプロットが(生存単一細胞全体の%として)示される。テューキーの多重比較検定とともに一元配置分散分析を使用して統計学的分析が実施された。各群が、すべての他の群と比較された。統計学的に有意であった群比較は、右側にアスタリスクが付いた、2つの群の間に引かれた黒い線でマークされ、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、****P<0.0001である。すべての他のマークされていない群比較は、有意差がなかった。
図17には、各処置群の免疫細胞集団および2つの非特性化細胞集団(「その他」)の平均存在量(生存単一細胞全体の%)を要約する円グラフが示される。腫瘍細胞、間質細胞、およびこの分析で定義されていない他の免疫細胞を含み得る、非特性化細胞は、それらのCD11b発現を示すために2つの集団に分けられた。
【0122】
これらの結果は、3CM-CpG IVが、CD8+T細胞、CD4+T細胞、およびB細胞の割合の増加、ならびに骨髄由来抑制細胞(MDSC)の減少によって示されるように、ビヒクルIVおよびCpG IV処置と比較して、腫瘍免疫の様相を有意に転換することを実証する。さらに、3CM-CpG IVによる免疫細胞プロファイルのこの劇的な変化は、CpG ITを用いた処置から観察された変化と区別できなかった。これらの結果は、ノッティン-免疫刺激剤複合体の全身注射が、あたかも免疫刺激剤がその腫瘍部位に直接注射されたかのように、免疫細胞集団を誘発させ得ることを実証する。
【0123】
材料および方法
細胞株およびマウス
B16F10メラノーマおよびCT26結腸がん株はATCCから取得され、4T1-Luc乳がん細胞株は贈与として取得された。腫瘍細胞は、10%ウシ胎児血清および1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含有する完全培地(4T1-LucおよびCT26については、50μMの2-メルカプトエタノールを伴うRPMI 1640、B16-F10についてはDMEM)内で培養された。細胞株はマイコプラズマ汚染について定期的に検査された。6~8週齢の雌のBALB/cマウスは、Charles River Laboratoryから購入された。
【0124】
NF-κB活性化アッセイ
アゴニストの効力は、マウスRAW 264.7マクロファージに由来するRAW-Blueレポーター細胞株(Invivogen)を使用して評価された。TLRアゴニストを用いたレポーター細胞株の刺激は、NF-κBおよびAP-1の活性化、ならびに後続の分泌型胚性アルカリホスファターゼ(SEAP)の産生につながる、シグナル伝達経路を誘導する。RAW-Blue細胞は、様々な濃度のTLRアゴニスト(遊離または複合体化)とともに24時間インキュベートされた。上清中のSEAPのレベルは、製造元のプロトコル(Invivogen)に従ってQUANTI-Blue検出培地を使用した比色分析によって定量化された。データは、未処置対照と比較して、NF-κB活性の倍数変化として報告される。エラーバーは、3回実施された実験の標準偏差を表す。処置条件と未処置対照との間の統計学的差異は、Prismソフトウェア(GraphPad)を使用した通常の二元配置分散分析およびTukeyの多重比較検定によって決定された。統計学的有意性については、未処置対照と比較して、*p≦0.05、**p≦0.01、***p≦0.001、および****p≦0.0001である。
【0125】
競合結合アッセイ
非標識ノッティンおよびノッティン-TLRアゴニスト複合体の相対的結合親和性を比較するために、細胞ベースの競合結合アッセイが、いくつかの修正を伴ってCox et al.(2016)Angew Chem Int Ed.55(34):9894-7に以前に記載されたように実施された。非標識リガンド(すなわち、非蛍光3CM-免疫刺激剤複合体)の結合親和性を比較するために、Alexa Fluor 488標識3CM(3CM-AF488)が競合剤として使用された。
【0126】
B16F10メラノーマ細胞(サンプルあたり5×104)が、細胞解離緩衝液を用いて脱離され、PBSで洗浄され、200μLのインテグリン結合緩衝液(IBB:25mMのトリスpH7.4、150mMのNaCl、2mMのCaCl2、1mMのMgCl2、1mMのMnCl2、および0.1%BSA)中の0.5nMの3CM-AF488および種々の濃度の非標識リガンドと共に、4℃で3時間インキュベートされた。CpGが関わる結合アッセイでは、細胞表面のDNA結合相互作用を通じて媒介されるリガンドの枯渇を低減させるように、細胞は、インテグリン結合剤とのインキュベーションの前に未修飾CpGで前処理された。細胞は、競合剤および非標識リガンドの溶液(最終体積200μL/サンプル)を添加する前に、500nMの未修飾CpG(100μL/サンプル)で室温において10分間前処理された。
【0127】
PBS+0.5%BSAで数回洗浄した後に残っている細胞結合蛍光が、フローサイトメトリーによって分析された。各サンプルからの幾何平均蛍光強度(MFI)が決定され、データセットは、競合剤のみで処理された細胞からのMFIが100%結合に等しくなるように正規化された。半最大阻害濃度(IC50)値は、Cheng-Prusoffの関係を使用して、平衡解離定数(Ki)値に変換するための非線形回帰分析によって決定された。
【0128】
インビボ蛍光画像化
CT26結腸がん細胞(5×105)が、左右の肩の両方に皮下注射された。両方の腫瘍が確立された5日後、マウスに、腫瘍内(IT、左腫瘍内)、腫瘍周囲(PT、左腫瘍の隣)、または尾静脈を介した静脈内(IV)のいずれかで、示された用量での3CM-CpG-AF680を注射した。「用量」は、CpGの標準腫瘍内用量の等モル量(5.2nmol、50ug)である。したがって、0.2×用量=1nmol、1×用量=5.2nmol、2×用量=10.4nmol、および4×用量=20.8nmolである。
【0129】
注射後4時間および26時間で、マウスは、2%イソフルランガスを使用して麻酔され、Spectral Instruments Imaging Ami Imagerを使用して画像化された。注射後26時間での最後のスキャンの後、群あたり1匹のマウスが、犠牲にされ、腫瘍が切除および画像化された。蛍光画像化設定:励起/発光:640/730nm、励起出力=10、ビニング=2、露光時間=10秒、Fstop=2、FOV=25であった。
【0130】
腫瘍接種および治療研究
4T1-Luc腫瘍細胞(1×104)が、BALB/cマウスの腹部の右側に皮下注射された(0日目)。接種の7日後、マウスは、無作為に実験群分けされた(群あたりn=9~10)。マウスに、尾静脈を介して、3用量(7、9、11日目)もしくは1用量(7日目のみ)のCpG(18.2nmol、176ug)、または等モル量の3CM-CpG(18.2nmol、250ug)を注射した。ビヒクル群のマウスには、滅菌PBSを静脈内注射した(7、9、11日目)。すべての処置は、滅菌PBS中で製剤化され、注射前に濾過された(0.2um滅菌フィルター)。腫瘍の大きさは、デジタルノギス(Mitutoyo)で2~3日毎に監視され、体積(長さ×幅×高さ)として表された。マウスは、腫瘍サイズが最大直径で1.5cmに達した場合、または腫瘍がガイドラインに従って潰瘍化した場合、安楽死させられた。記録された生存日は、所与のマウスが安楽死基準に達したときを示す。カプランマイヤー法が、生存分析に使用された。P値はログランク(Mantel-Cox)検定を使用して計算された。
【0131】
合成―官能化免疫刺激剤
免疫刺激剤は、ひずみ促進アジド-アルキン付加環化反応(SPAAC)を使用した標的化薬剤への取り付け可能にするように、クリックケミストリーハンドルで官能化された。一級アルキルアミン修飾TLR7/8アゴニスト(T78aと称される)および5’アミン修飾クラスC CpG-C792(アミノ-CpGと称される)は、それぞれ、Acme BiosciencesおよびIntegrated DNA Technologiesから購入された。免疫刺激剤は、修飾を受けられると報告されている部位においてコンジュゲート化され、イミダゾキノリンについてはN1結合、クラスC CpGについては5’リン酸であった。
【0132】
免疫刺激剤(アミノ-CpGまたはT78a)の一級アルキルアミンは、対応するリンカー、すなわち、BCN-PEG2-NHSエステル、DBCO-PEG4-NHSエステル、またはアジド-PEG4-NHSエステルを使用してビシクロノニン(BCN)、ジベンゾシクロオクチン(DBCO)、またはアジドハンドルを組みむように、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルリンカーを用いて官能化された(
図2参照)。アミノ-CpG(1等量)が、25%DMSO/75%100mMホウ酸ナトリウム緩衝液(pH8.5)中でNHSエステルリンカー(15等量)と混合され、室温で一晩撹拌された。サンプル装填の前にPBSに緩衝液交換されたZebaスピン脱塩カラム(7K MWCO)を使用したサイズ排除により、官能化CpGが残りのNHSエステルリンカーから精製された。T78a(1.2等量)は、4.4等量トリエチルアミンを伴う無水DMSO中のNHSエステルリンカー(1等量)と混合され、室温で5~8時間撹拌された。反応は、分析用C18カラムを使用した分析用HPLCおよび/またはLCMSを使用して監視された。CpG官能化を監視するためのHPLC方法:30分にわたる5%~65%溶媒Bの直線勾配(溶媒A:水中の100mM酢酸トリエチルアンモニウム、pH7;溶媒B:アセトニトリル;35℃)。T78aの官能化を監視するためのHPLC方法:2分間の5%溶媒Bにおける定組成保持の後、15分間にわたる5%~75%溶媒の直線勾配(溶媒A:水+0.1%TFA;溶媒B:アセトニトリル+0.1% TFA;室温)。
【0133】
DBCO-CpGの合成に加えて、DBCO-CpGもまた、Integrated DNA Technologies(IDT)から直接注文された。
【0134】
合成―ノッティンペプチド複合体
固相ペプチド合成(SPPS)が、標準的Fmoc条件を使用して、ノッティンペプチドを合成するために使用された。ペプチド合成、開裂、折り畳み、およびHPLC精製プロトコルは、Cox et al.(2016)Angew Chem Int Ed.55(34):9894-7に記載されている。ノッティンペプチドはリジン残基を有しないため、2.5Fは、以下のようにしてN末端アミンにおいて部位特異的にコンジュゲートされた:DMSO中の4.4当量のTEAを伴うアジド-PEG4-NHSエステルリンカーを使用し、室温で一晩撹拌して、N末端アジド修飾2.5Fを産生し、これをRP-HPLCによって精製した。3CMと称される、2.5Fの改変バージョンは、代替的コンジュゲーション部位(
図3AでX
1アジドとして示される)を提供するように、2.5Fの配列の15位において非天然アミノ酸5-アジド-L-ノルバリンを用いて合成された。加えて、31位におけるフェニルアラニン(
図3AでX
2として示される)が、UV吸収による濃度測定を容易にするために、3CMではチロシンに置換された。しかしながら、31位におけるどちらのアミノ酸も、結合親和性を損なうことなく使用されることができる。
【0135】
図4に示されるように、アジド含有ノッティン(3CMまたはアジド-2.5F)(1.2等量)が、PBS中のBCN修飾またはDBCO修飾CpG(1等量)と30℃で一晩反応させられ、ノッティン-CpG複合体(3CM-CpGまたは2.5F-CpG)を産生した。サンプル装填の前にPBSに緩衝液交換されたZebaスピン脱塩カラム(7K MWCO)を使用したサイズ排除により、ノッティン-CpG複合体を、未反応のノッティンペプチドから精製した。3CM-T78aを産生するためには、BCN-T78a(1.15等量)が、1:1 DMSO/PBS中で3CM(1等量)と室温で一晩撹拌されて反応させられた。反応物は、以下のメソッドを用いたC18カラム上のRP-HPLCによって精製した:2分間の5%溶媒Bにおける定組成保持から開始し、、続いて、30分にわたる5%~75%溶媒の直線勾配(溶媒A:水+0.1%TFA;溶媒B:アセトニトリル+0.1%TFA;室温)。生成物画分が収集され、水で希釈され、凍結され、凍結乾燥された。CpGおよびT78aについての「官能化免疫刺激剤」のセクションに記載されたのと同じ方法を使用して、反応を監視するために分析用HPLCおよび/またはLCMSが使用された。
【0136】
合成―ノッティン-Fc複合体
ノッティン-Fc(KFc)融合タンパク質が、組換え発現され、以前に記載されたように精製された(B.H.Kwan,et al.,J Exp Med.2017,214(6):1679-90)。
図8に示されるように、BCN-PEG2-NHSエステルリンカーを使用してクリック可能なハンドル(BCN基)でKFc融合体を官能化するために、NHSエステル標識が使用された。NHSエステルは、タンパク質中の一級アミン(リジン残基およびN末端)と反応して、安定したアミド結合を形成する。KFcは、pH8.3の100mM重炭酸ナトリウム緩衝液中のBCN-PEG2-NHSエステルリンカー(6等量)と、室温で2時間混合された。この標識プロトコルは、典型的には、KFcあたり2~3個の連結を産生する。サンプル装填の前にPBSに緩衝液交換されたZebaスピン脱塩カラム(7K MWCO)を使用したサイズ排除により、BCN修飾KFcを残りのリンカーから精製した。
【0137】
KFc-免疫刺激剤複合体を産生するために、BCN修飾KFc(1等量)が、PBS中のアジド-T78a(6等量)と室温で一晩撹拌されて反応させられた。サンプル装填の前にPBSに緩衝液交換されたZebaスピン脱塩カラム(7K MWCO)を使用したサイズ排除により、KFc-T78a複合体が未反応のアジド-T78aから精製された。
【0138】
合成については、KFcがアジド-NHSエステルリンカーで修飾されてBCN-T78aにコンジュゲートされるように、BCNとアジド基を交換することができる。官能化CpGを官能化T78aに代用することもできる。BCNもいつでもDBCOで代用し得る。
【0139】
免疫細胞浸潤
4T1-luc細胞(2×104)が、BALB/cマウスの腹部の片側に皮下移植され、9日間成長させられた。腫瘍が発達すると(処置後0日目と称される)、マウスは、処置後0日目にIV処置、および2日目に以下の群(n=群あたり3匹のマウス)について静脈内(IV)または腫瘍内(IT)注射された:ビヒクルIV(PBS)、CpG IV(18.2nmol)、3CM-CpG IV(18.2nmol)、およびCpG IT(5.2nmol)。CpG IT用量(5.2nmol=50ug)は、マウスに投与される典型的なIT用量であり、IV用量よりも低い。最初の用量から3日後、腫瘍が切除され、単細胞懸濁液へと機械的に解離された。
【0140】
抗体染色の前に、細胞は、LIVE/DEAD Fixable Aqua Dead Cell Stainと共にインキュベートされた。細胞は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、1%ウシ血清アルブミン、および0.01%アジ化ナトリウム中の蛍光標識抗体で表面染色され、2%パラホルムアルデヒドで固定され、フローサイトメトリーによって分析された。データは、Cytobank(www.cytobank.org)を使用して保存および分析された。
【0141】
データ分析のために、細胞は、生存単一細胞のみを含むようにゲートされた。骨髄由来抑制細胞(MDSC)は、CD11b+ GR1+として特徴付けられた。NK細胞は、CD3- CD49b+として特徴付けられた。CD8+T細胞は、CD3+ CD8+ CD49b-として特徴付けられた。CD4+T細胞は、CD3+ CD4+ CD49b-として特徴付けられた。CD8+B細胞は、CD3- B220+ CD49b-として特徴付けられた。
【0142】
このように、前述の内容は、単に本開示の原理を例証するにすぎない。本明細書に明示的に記述または図示されていないが本発明の原理を具現化しその趣旨および範囲内に含まれる、様々な構成を、当業者であれば工夫できるであろうことを理解されたい。さらに、本明細書に列挙されたすべての例および条件的文言は、主として本発明の原理および当該技術分野の促進のために発明者らにより寄与された概念を理解する上で読者を助けることを意図しており、そのような具体的に列挙された例および条件への限定を伴わないものとして解釈されるべきである。また、本発明の原理、態様、および実施形態、ならびにそれらの具体的な例を列挙する本明細書におけるすべての記述は、その構造的および機能的等価物の両方を包含することを意図する。加えて、そのような等価物は、現在公知である等価物および将来開発される等価物の両方、すなわち、構造にかかわらず同じ機能を果たす、開発されるあらゆる要素も含むことが意図される。したがって、本発明の範囲は、本明細書に示され説明された例示的な実施形態に限定されることを意図しない。
【配列表】
【国際調査報告】