(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-29
(54)【発明の名称】レンチウイルスベクター製剤
(51)【国際特許分類】
C12N 15/12 20060101AFI20221121BHJP
C12N 15/867 20060101ALI20221121BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20221121BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20221121BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20221121BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20221121BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20221121BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20221121BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20221121BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20221121BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20221121BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20221121BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20221121BHJP
C12N 5/10 20060101ALN20221121BHJP
【FI】
C12N15/12
C12N15/867 Z ZNA
C12N7/01
C12N15/113 Z
C12N15/11 Z
A61K48/00
A61P7/04
A61K35/76
A61K47/26
A61K47/18
A61K47/04
A61K47/10
A61K31/7088
C12N5/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022519675
(86)(22)【出願日】2020-09-30
(85)【翻訳文提出日】2022-05-19
(86)【国際出願番号】 US2020053463
(87)【国際公開番号】W WO2021067389
(87)【国際公開日】2021-04-08
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512147244
【氏名又は名称】バイオベラティブ セラピューティクス インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】511262290
【氏名又は名称】フォンダツィオーネ テレトン
(71)【出願人】
【識別番号】514194370
【氏名又は名称】オスペダーレ サン ラファエレ エス.アール.エル
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・クレチ
(72)【発明者】
【氏名】イシドロ・ザラガ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA91X
4B065AA93Y
4B065AA97X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C076BB13
4C076CC14
4C076DD23Z
4C076DD26Z
4C076DD33
4C076DD46F
4C076DD51Z
4C076DD67
4C076EE23F
4C084AA13
4C084NA03
4C084NA05
4C084ZA531
4C084ZA532
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA03
4C086MA05
4C086NA03
4C086NA05
4C086ZA53
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087NA03
4C087NA05
4C087ZA53
(57)【要約】
安定性が改善された、全身投与に適するレンチウイルスベクター(LV)製剤、およびそのようなLV製剤を含む医薬組成物を提供する。LV製剤の全身投与を使用して、障害、特に血液障害を治療する方法も提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換えレンチウイルスベクター調製物であって、以下のもの:
(a)組換えレンチウイルスベクターの治療有効用量;
(b)TRIS非含有緩衝系;
(c)塩;
(d)界面活性剤;および
(e)炭水化物
を含み、医薬組成物はヒト患者への全身投与に適する、前記組換えレンチウイルスベクター調製物。
【請求項2】
緩衝系または調製物のpHは、約6.0~約8.0である、請求項1に記載の調製物。
【請求項3】
緩衝系または調製物のpHは、約6.0~約7.5である、請求項1または2に記載の調製物。
【請求項4】
緩衝系または調製物のpHは、約6.0~約7.0である、請求項1~3のいずれか1項に記載の調製物。
【請求項5】
緩衝系または調製物のpHは、約6.5である、請求項1~4のいずれか1項に記載の調製物。
【請求項6】
緩衝系または調製物のpHは、約7.0~約8.0である、請求項1~5のいずれか1項に記載の調製物。
【請求項7】
緩衝系または調製物のpHは、約7.3である、請求項1~6のいずれか1項に記載の調製物。
【請求項8】
レンチウイルスベクターは、VSV-Gまたはその断片をコードするヌクレオチド配列を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の調製物。
【請求項9】
緩衝系は、リン酸緩衝液またはヒスチジン緩衝液を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の調製物。
【請求項10】
リン酸緩衝液の濃度は、約5mM~約30mMである、請求項9に記載の調製物。
【請求項11】
リン酸緩衝液の濃度は、約10mM~約20mM、約10mM~約15mM、約20mM~約30mM、約20mM~約25mM、または約15mM~約20mMである、請求項10に記載の調製物。
【請求項12】
ヒスチジン緩衝液の濃度は、約5mM~約30mMである、請求項9に記載の調製物。
【請求項13】
ヒスチジン緩衝液の濃度は、約10mM~約20mM、約10mM~約15mM、約20mM~約30mM、約20mM~約25mM、または約15mM~約20mMである、請求項12に記載の調製物。
【請求項14】
塩の濃度は、約80mM~約150mMである、請求項1~13のいずれか1項に記載の調製物。
【請求項15】
塩の濃度は、約100mM、約110mM、約130mM、または約150mMである、請求項1~14のいずれか1項に記載の調製物。
【請求項16】
塩は、塩化物塩である、請求項1~15のいずれか1項に記載の調製物。
【請求項17】
塩化物塩は、NaClである、請求項16に記載の調製物。
【請求項18】
界面活性剤は、ポロクサマーである、請求項1~17のいずれか1項に記載の調製物。
【請求項19】
ポロクサマーは、ポロクサマー101(P101)、ポロクサマー105(P105)、ポロクサマー108(P108)、ポロクサマー122(P122)、ポロクサマー123(P123)、ポロクサマー124(P124)、ポロクサマー181(P181)、ポロクサマー182(P182)、ポロクサマー183(P183)、ポロクサマー184(P184)、ポロクサマー185(P185)、ポロクサマー188(P188)、ポロクサマー212(P212)、ポロクサマー215(P215)、ポロクサマー217(P217)、ポロクサマー231(P231)、ポロクサマー234(P234)、ポロクサマー235(P235)、ポロクサマー237(P237)、ポロクサマー238(P238)、ポロクサマー282(P282)、ポロクサマー284(P284)、ポロクサマー288(P288)、ポロクサマー331(P331)、ポロクサマー333(P333)、ポロクサマー334(P334)、ポロクサマー335(P335)、ポロクサマー338(P338)、ポロクサマー401(P401)、ポロクサマー402(P402)、ポロクサマー403(P403)、ポロクサマー407(P407)、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項18に記載の調製物。
【請求項20】
ポロクサマーは、ポロクサマー188(P188)である、請求項18または19に記載の調製物。
【請求項21】
ポロクサマーは、ポロクサマー407(P407)である、請求項18または19に記載の調製物。
【請求項22】
界面活性剤は、ポリソルベートである、請求項1~17のいずれか1項に記載の調製物。
【請求項23】
ポリソルベートは、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項22に記載の調製物。
【請求項24】
界面活性剤の濃度は、約0.01%(w/v)~約0.1%(w/v)である、請求項1~23のいずれか1項に記載の調製物。
【請求項25】
界面活性剤の濃度は、約0.03%(w/v)、約0.05%(w/v)、約0.07%(w/v)、または約0.09%(w/v)である、請求項1~24のいずれか1項に記載の調製物。
【請求項26】
炭水化物の濃度は、約0.5%(w/v)~約5%(w/v)である、請求項1~25のいずれか1項に記載の調製物。
【請求項27】
炭水化物の濃度は、約1%(w/v)、約2%(w/v)、約3%(w/v)、または約4%(w/v)である、請求項1~26のいずれか1項に記載の調製物。
【請求項28】
炭水化物は、スクロースである、請求項1~27のいずれか1項に記載の調製物。
【請求項29】
以下のもの:
(a)組換えレンチウイルスベクターの治療有効用量;
(b)約10mMのリン酸塩;
(c)約100mMの塩化ナトリウム;
(d)約0.05%(w/v)のポロクサマー188;および
(e)約3%(w/v)のスクロース
を含み、調製物のpHは約7.3であり、医薬組成物はヒト患者への全身投与に適する、請求項1~28のいずれか1項に記載の調製物。
【請求項30】
以下のもの:
(a)組換えレンチウイルスベクターの治療有効用量;
(b)約10mMのリン酸塩;
(c)約130mMの塩化ナトリウム;
(d)約0.05%(w/v)のポロクサマー188;および
(e)約1%(w/v)のスクロース
を含み、調製物のpHは約7.3であり、医薬組成物はヒト患者への全身投与に適する、請求項1~28のいずれか1項に記載の調製物。
【請求項31】
以下のもの:
(a)組換えレンチウイルスベクターの治療有効用量;
(b)約20mMヒスチジン;
(c)約100mMの塩化ナトリウム;
(d)約0.05%(w/v)のポロクサマー188;および
(e)約3%(w/v)のスクロース
を含み、調製物のpHは約6.5であり、医薬組成物はヒト患者への全身投与に適する、請求項1~28のいずれか1項に記載の調製物。
【請求項32】
以下のもの:
(a)組換えレンチウイルスベクターの治療有効用量;
(b)約10mMのリン酸塩;
(c)約100mMの塩化ナトリウム;
(d)約0.05%(w/v)のポロクサマー188;および
(e)約3%(w/v)のスクロース
を含み、調製物のpHは約7.0であり、医薬組成物はヒト患者への全身投与に適する、請求項1~28のいずれか1項に記載の調製物。
【請求項33】
以下のもの:
(a)組換えレンチウイルスベクターの治療有効用量;
(b)約20mMヒスチジン;
(c)約100mMの塩化ナトリウム;
(d)約0.05%(w/v)のポロクサマー188;および
(e)約3%(w/v)のスクロース
を含み、調製物のpHは約7.0であり、医薬組成物はヒト患者への全身投与に適する、請求項1~28のいずれか1項に記載の調製物。
【請求項34】
組換えレンチウイルスベクターは、配列番号1または配列番号2に示される第VIII因子(FVIII)コード配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%同一なヌクレオチド配列を含む核酸を含む、請求項1~33のいずれか1項に記載の調製物。
【請求項35】
組換えレンチウイルスベクターは、配列番号1または配列番号2に示される第VIII因子(FVIII)コード配列を含む核酸を含む、請求項34に記載の調製物。
【請求項36】
組換えレンチウイルスベクターは、配列番号1または配列番号2に示される第VIII因子(FVIII)コード配列からなる核酸を含む、請求項34または35に記載の調製物。
【請求項37】
組換えレンチウイルスベクターは、配列番号3に示される第IX因子(FIX)コード配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%同一なヌクレオチド配列を含む核酸を含む、請求項1~36のいずれか1項に記載の調製物。
【請求項38】
組換えレンチウイルスベクターは、配列番号3に示される第IX因子(FIX)コード配列を含む核酸を含む、請求項37に記載の調製物。
【請求項39】
組換えレンチウイルスベクターは、配列番号3に示される第IX因子(FIX)コード配列からなる核酸を含む、請求項37または38に記載の調製物。
【請求項40】
組換えレンチウイルスベクターは、強化トランスサイレチン(ET)プロモーターを含む、請求項1~39のいずれか1項に記載の調製物。
【請求項41】
組換えレンチウイルスベクターはさらに、配列番号7に示されるmiR-142の標的配列と少なくとも90%同一なヌクレオチド配列を含む、請求項1~40のいずれか1項に記載の調製物。
【請求項42】
組換えレンチウイルスベクターは、以下の群:CHO細胞、HEK293細胞、BHK21細胞、PER.C6細胞、NSO細胞、およびCAP細胞から選択されるトランスフェクト宿主細胞から単離される、請求項1~41のいずれか1項に記載の調製物。
【請求項43】
宿主細胞は、CD47陽性宿主細胞である、請求項42に記載の調製物。
【請求項44】
障害を有するヒト患者を治療する方法であって、請求項1~43のいずれか1項に記載の組換えレンチウイルスベクター調製物をヒト患者に投与する工程を含む、前記方法。
【請求項45】
調製物は、ヒト患者に全身投与される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
調製物は、静脈内に投与される、請求項44または45に記載の方法。
【請求項47】
障害は、出血性障害である、請求項44~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
出血性障害は、血友病Aまたは血友病Bである、請求項47に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2019年9月30日に出願された米国仮特許出願第62/908,390号に対する優先権を主張し、その開示は参照によってその全体が本明細書に組み入れられる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCII書式で電子的に提出された配列表を含み、これはその全体が参照によって本明細書に組み入れられる。2020年9月28日に作成された前記ASCIIの写しは、「709718_SA9-472PC_SeqList_ST25.txt」の名称であり、サイズは104,426バイトである。
【0003】
発明の分野
本開示は、疾患の治療に使用するための組換えレンチウイルスベクター(LV)の製剤および関連する医薬製品に関する。特に、本開示は、LVの安定性および質を改善し、その一方で、血友病Aおよび血友病Bなどの出血性障害を含む疾患を治療するための対象への全身投与および他の種類の投与における使用への適合性も備える製剤に関する。
【背景技術】
【0004】
レンチウイルスベクター(LV)および他のウイルスベクターは、遺伝子療法のための魅力的なツールである(非特許文献1)。LVは、肝細胞、ニューロンおよび造血幹細胞などの非分裂細胞を含む広範な組織に形質導入を行うことができる。さらに、LVは標的細胞ゲノムへの組み込みを行い、長期的な導入遺伝子発現をもたらすことができる。
【0005】
遺伝子療法およびワクチン開発の分野において現存する課題の一つは、LVが、より長期間にわたって構造的に安定で生物学的に活性であり続けること、ならびに撹拌、凍結/解凍および一定範囲の温度での貯蔵などの条件に耐えることを可能にする無毒性の液体製剤を作製することである。LV力価は、凍結/解凍サイクルの増加および比較的高温での貯蔵に伴って二相性様式で減少することが観察されている(非特許文献2)。遺伝子療法を最も有効にするためには、生物活性または効力を維持するレンチウイルスベクターを有することが望ましい。
【0006】
LVの生物活性は、少なくとも以下のものからなる囲い込み構造の立体構造的完全性に依存する:(a)コアポリヌクレオチド、(b)コアポリヌクレオチドを取り囲む相互連結したカプシドタンパク質のシェル、および(c)相互連結したカプシドタンパク質のシェルを取り囲む、糖タンパク質が埋め込まれた脂質膜。有機性薬物および無機性薬物とは異なり、LVは非常に複雑な生体構造物であり、些細な化学的または物理的なストレス要因であっても囲い込み構造の構造的完全性の分解に寄与し得る。そのようなストレス要因としては、浸透圧、緩衝液、pH、粘性、電解質、撹拌、および温度変動が挙げられる。LVの構造的または立体構造的完全性は、その生物活性または効力に直接結びつく。それ故に、LVは、変性、可溶性および不溶性凝集、沈殿ならびに吸着を含む物理的不安定性、さらには加水分解、脱アミドおよび酸化を含む化学的不安定性の結果として効力を失い得る。これらの種類の分解はいずれも生物活性の低下をもたらす可能性があり、毒性の増加および/または免疫原性の変化を伴う副生成物または誘導体の形成をもたらす可能性もある。それ故に、LVの優れた製剤は、妥当な貯蔵寿命だけでなく、全身投与などを介した対象への投与時の毒性の低さを保証するためにも極めて重要である。広範囲の条件にわたってLVが安定であるような、LVを安定化して堅牢な製剤をもたらすビヒクルを見出すためには、緩衝液の種類、pH、および賦形剤の綿密な最適化が必要である。試験する条件の各セットについて、LVの安定性を種々の実験方法によって測定する必要がある。それ故に、変化させ得るすべての因子を考慮すると、LVを製剤化するための最適な条件を見出すことは困難であり、優れた製剤の組成は先験的には予測不能である。
【0007】
したがって、対象への投与に適していて、一定範囲の条件下でLVの数量、構造的完全性、および効力を保たせることによってLV安定性を改善する製剤を調製することには、当技術分野において需要がある。本明細書において、本発明者らは、様々な条件下でLVの安定性の改善を示す、対象への全身投与に適する製剤を開示する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Thomasら、2003年
【非特許文献2】KigashikawaおよびChang、2001年、Virology 280、124~131頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、TRIS非含有緩衝系(例えば、リン酸緩衝液またはヒスチジン緩衝液)を炭水化物(例えば、スクロース)、界面活性剤(例えば、ポロクサマーまたはポリソルベート)および塩(例えば、NaClまたは他の塩化物塩)との組合せで含むビヒクル中にレンチウイルスベクター(LV)が懸濁化された場合に、安定性が改善したLV製剤を実現することができるという予想外の発見に基づく。界面活性剤、例えば、ポロクサマーのLV安定性への寄与は、界面活性剤は脂質膜に結合した粒子を不安定化することが当技術分野において知られていることから、驚くべきものであった。LV製剤が約6.0から約7.5の範囲のpH(例えば、pH 6.5)で、LV表面タンパク質(例えば、カプシドタンパク質およびVSV-Gタンパク質)を不安定化してLVの解体または崩壊を促進する代わりに、LV安定性を改善したという観察も驚くべきものであった。さらに、本開示は、本開示のLV製剤が、対象への全身投与(例えば、静脈内投与)に特に適することも示す。
【0010】
一態様では、本開示は、(a)組換えレンチウイルスベクターの治療有効用量;(b)TRIS非含有緩衝系;(c)塩;(d)界面活性剤;および(e)炭水化物を含む組換えレンチウイルスベクター調製物を提供し、ここで医薬組成物はヒト患者への全身投与に適する。
【0011】
ある特定の実施形態では、レンチウイルスベクターは、VSV-Gまたはその断片をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0012】
ある特定の実施形態では、緩衝系はリン酸緩衝液を含む。
【0013】
ある特定の実施形態では、リン酸緩衝液の濃度は5mM~30mMの間である。
【0014】
ある特定の実施形態では、リン酸緩衝液の濃度は、約10~約20mM、約10~約15mM、約20~約30mM、約20~約25mM、または約15~約20mMである。
【0015】
ある特定の実施形態では、塩の濃度は、80mM~150mMの間である。
【0016】
ある特定の実施形態では、塩の濃度は、約100mM、約110mM、約130mM、または約150mMである。
【0017】
ある特定の実施形態では、塩は塩化物塩である。
【0018】
ある特定の実施形態では、塩化物塩はNaClである。
【0019】
ある特定の実施形態では、界面活性剤はポロクサマーである。
【0020】
ある特定の実施形態では、ポロクサマーは、ポロクサマー101(P101)、ポロクサマー105(P105)、ポロクサマー108(P108)、ポロクサマー122(P122)、ポロクサマー123(P123)、ポロクサマー124(P124)、ポロクサマー181(P181)、ポロクサマー182(P182)、ポロクサマー183(P183)、ポロクサマー184(P184)、ポロクサマー185(P185)、ポロクサマー188(P188)、ポロクサマー212(P212)、ポロクサマー215(P215)、ポロクサマー217(P217)、ポロクサマー231(P231)、ポロクサマー234(P234)、ポロクサマー235(P235)、ポロクサマー237(P237)、ポロクサマー238(P238)、ポロクサマー282(P282)、ポロクサマー284(P284)、ポロクサマー288(P288)、ポロクサマー331(P331)、ポロクサマー333(P333)、ポロクサマー334(P334)、ポロクサマー335(P335)、ポロクサマー338(P338)、ポロクサマー401(P401)、ポロクサマー402(P402)、ポロクサマー403(P403)、ポロクサマー407(P407)、およびそれらの組合せからなる群から選択される。
【0021】
ある特定の実施形態では、ポロクサマーはポロクサマー188(P188)である。
【0022】
ある特定の実施形態では、ポロクサマーはポロクサマー407(P407)である。
【0023】
ある特定の実施形態では、界面活性剤はポリソルベートである。
【0024】
ある特定の実施形態では、ポリソルベートは、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、およびそれらの組合せからなる群から選択される。
【0025】
ある特定の実施形態では、界面活性剤の濃度は、0.01%(w/v)~0.1%(w/v)の間である。
【0026】
ある特定の実施形態では、界面活性剤の濃度は、約0.03%(w/v)、約0.05%(w/v)、約0.07%(w/v)、または約0.09%(w/v)である。
【0027】
ある特定の実施形態では、炭水化物の濃度は、0.5%(w/v)~5%(w/v)の間である。
【0028】
ある特定の実施形態では、炭水化物の濃度は、約1%(w/v)、約2%(w/v)、約3%(w/v)、または約4%(w/v)である。
【0029】
ある特定の実施形態では、炭水化物はスクロースである。
【0030】
ある特定の実施形態では、緩衝系または調製物のpHは、6.0~8.0の間である。
【0031】
ある特定の実施形態では、pHは、6.0~7.0の間である。
【0032】
ある特定の実施形態では、pHは約6.5である。
【0033】
ある特定の実施形態では、pHは約7.0~約8.0である。
【0034】
ある特定の実施形態では、pHは約7.3である。
【0035】
一態様では、本発明は、(a)組換えレンチウイルスベクターの治療有効用量;(b)ヒスチジン緩衝系;(c)塩;(d)界面活性剤;および(e)炭水化物を含む組換えレンチウイルスベクター調製物を対象とし、ここで医薬組成物はヒト患者への全身投与に適する。
【0036】
ある特定の実施形態では、レンチウイルスベクターは、VSV-Gまたはその断片をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0037】
ある特定の実施形態では、ヒスチジン緩衝液の濃度は、5mM~30mMの間である。
【0038】
ある特定の実施形態では、ヒスチジン緩衝液の濃度は、約10~約20mM、約10~約15mM、約20~約30mM、約20~約25mM、または約15~約20mMである。
【0039】
ある特定の実施形態では、塩の濃度は、80mM~150mMの間である。
【0040】
ある特定の実施形態では、塩の濃度は、約100mM、約110mM、約130mM、または約150mMである。
【0041】
ある特定の実施形態では、塩は塩化物塩である。
【0042】
ある特定の実施形態では、塩化物塩はNaClである。
【0043】
ある特定の実施形態では、界面活性剤はポロクサマーである。
【0044】
ある特定の実施形態では、ポロクサマーは、ポロクサマー101(P101)、ポロクサマー105(P105)、ポロクサマー108(P108)、ポロクサマー122(P122)、ポロクサマー123(P123)、ポロクサマー124(P124)、ポロクサマー181(P181)、ポロクサマー182(P182)、ポロクサマー183(P183)、ポロクサマー184(P184)、ポロクサマー185(P185)、ポロクサマー188(P188)、ポロクサマー212(P212)、ポロクサマー215(P215)、ポロクサマー217(P217)、ポロクサマー231(P231)、ポロクサマー234(P234)、ポロクサマー235(P235)、ポロクサマー237(P237)、ポロクサマー238(P238)、ポロクサマー282(P282)、ポロクサマー284(P284)、ポロクサマー288(P288)、ポロクサマー331(P331)、ポロクサマー333(P333)、ポロクサマー334(P334)、ポロクサマー335(P335)、ポロクサマー338(P338)、ポロクサマー401(P401)、ポロクサマー402(P402)、ポロクサマー403(P403)、ポロクサマー407(P407)、およびそれらの組合せからなる群から選択される。
【0045】
ある特定の実施形態では、ポロクサマーはポロクサマー188(P188)である。
【0046】
ある特定の実施形態では、ポロクサマーはポロクサマー407(P407)である。
【0047】
ある特定の実施形態では、界面活性剤はポリソルベートである。
【0048】
ある特定の実施形態では、ポリソルベートは、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、およびそれらの組合せからなる群から選択される。
【0049】
ある特定の実施形態では、界面活性剤の濃度は、0.01%(w/v)~0.1%(w/v)の間である。
【0050】
ある特定の実施形態では、界面活性剤の濃度は、約0.03%(w/v)、約0.05%(w/v)、約0.07%(w/v)、または約0.09%(w/v)である。
【0051】
ある特定の実施形態では、炭水化物の濃度は、0.5%(w/v)~5%(w/v)の間である。
【0052】
ある特定の実施形態では、炭水化物の濃度は、約1%(w/v)、約2%(w/v)、約3%(w/v)、または約4%(w/v)である。
【0053】
ある特定の実施形態では、炭水化物はスクロースである。
【0054】
ある特定の実施形態では、緩衝系または調製物のpHは、6.0~8.0の間である。
【0055】
ある特定の実施形態では、pHは、6.0~7.0の間である。
【0056】
ある特定の実施形態では、pHは約6.5である。
【0057】
ある特定の実施形態では、pHは約7.0~約8.0である。
【0058】
ある特定の実施形態では、pHは約7.3である。
【0059】
一態様では、本発明は、(a)組換えレンチウイルスベクターの治療有効用量;(b)リン酸緩衝系;(c)塩;(d)界面活性剤;および(e)炭水化物を含む組換えレンチウイルスベクター調製物を対象とし、ここで医薬組成物はヒト患者への全身投与に適する。
【0060】
ある特定の実施形態では、レンチウイルスベクターは、VSV-Gまたはその断片をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0061】
ある特定の実施形態では、リン酸緩衝液の濃度は、5mM~30mMの間である。
【0062】
ある特定の実施形態では、リン酸緩衝液の濃度は、約10~約20mM、約10~約15mM、約20~約30mM、約20~約25mM、または約15~約20mMである。
【0063】
ある特定の実施形態では、塩の濃度は、80mM~150mMの間である。
【0064】
ある特定の実施形態では、塩の濃度は、約100mM、約110mM、約130mM、または約150mMである。
【0065】
ある特定の実施形態では、塩は塩化物塩である。
【0066】
ある特定の実施形態では、塩化物塩はNaClである。
【0067】
ある特定の実施形態では、界面活性剤はポロクサマーである。
【0068】
ある特定の実施形態では、ポロクサマーは、ポロクサマー101(P101)、ポロクサマー105(P105)、ポロクサマー108(P108)、ポロクサマー122(P122)、ポロクサマー123(P123)、ポロクサマー124(P124)、ポロクサマー181(P181)、ポロクサマー182(P182)、ポロクサマー183(P183)、ポロクサマー184(P184)、ポロクサマー185(P185)、ポロクサマー188(P188)、ポロクサマー212(P212)、ポロクサマー215(P215)、ポロクサマー217(P217)、ポロクサマー231(P231)、ポロクサマー234(P234)、ポロクサマー235(P235)、ポロクサマー237(P237)、ポロクサマー238(P238)、ポロクサマー282(P282)、ポロクサマー284(P284)、ポロクサマー288(P288)、ポロクサマー331(P331)、ポロクサマー333(P333)、ポロクサマー334(P334)、ポロクサマー335(P335)、ポロクサマー338(P338)、ポロクサマー401(P401)、ポロクサマー402(P402)、ポロクサマー403(P403)、ポロクサマー407(P407)、およびそれらの組合せからなる群から選択される。
【0069】
ある特定の実施形態では、ポロクサマーはポロクサマー188(P188)である。
【0070】
ある特定の実施形態では、ポロクサマーはポロクサマー407(P407)である。
【0071】
ある特定の実施形態では、界面活性剤はポリソルベートである。
【0072】
ある特定の実施形態では、ポリソルベートは、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、およびそれらの組合せからなる群から選択される。
【0073】
ある特定の実施形態では、界面活性剤の濃度は、0.01%(w/v)~0.1%(w/v)の間である。
【0074】
ある特定の実施形態では、界面活性剤の濃度は、約0.03%(w/v)、約0.05%(w/v)、約0.07%(w/v)、または約0.09%(w/v)である。
【0075】
ある特定の実施形態では、炭水化物の濃度は、0.5%(w/v)~5%(w/v)の間である。
【0076】
ある特定の実施形態では、炭水化物の濃度は、約1%(w/v)、約2%(w/v)、約3%(w/v)、または約4%(w/v)である。
【0077】
ある特定の実施形態では、炭水化物はスクロースである。
【0078】
ある特定の実施形態では、緩衝系または調製物のpHは、6.0~8.0の間である。
【0079】
ある特定の実施形態では、pHは、6.0~7.0の間である。
【0080】
ある特定の実施形態では、pHは約6.5である。
【0081】
ある特定の実施形態では、pHは約7.0~約8.0である。
【0082】
ある特定の実施形態では、pHは約7.3である。
【0083】
ある特定の実施形態では、組換えレンチウイルスベクターはさらに、配列番号1または配列番号2に示される第VIII因子(FVIII)コード配列と少なくとも80%同一なヌクレオチド配列を含む。
【0084】
ある特定の実施形態では、組換えレンチウイルスベクターはさらに、配列番号1または配列番号2に示される第VIII因子(FVIII)コード配列を含む。
【0085】
ある特定の実施形態では、組換えレンチウイルスベクターはさらに、配列番号3に示される第IX因子(FIX)コード配列と少なくとも80%同一なヌクレオチド配列を含む。
【0086】
ある特定の実施形態では、組換えレンチウイルスベクターはさらに、配列番号3に示される第IX因子(FIX)コード配列を含む。
【0087】
ある特定の実施形態では、組換えレンチウイルスベクターはさらに、強化トランスサイレチン(ET)プロモーターを含む。
【0088】
ある特定の実施形態では、組換えレンチウイルスベクターはさらに、配列番号7に示されるmiR-142の標的配列と少なくとも90%同一なヌクレオチド配列を含む。
【0089】
ある特定の実施形態では、組換えレンチウイルスベクターは、以下の群:CHO細胞、HEK293細胞、BHK21細胞、PER.C6細胞、NSO細胞、およびCAP細胞から選択されるトランスフェクト宿主細胞から単離される。
【0090】
ある特定の実施形態では、宿主細胞は、CD47陽性宿主細胞である。
【0091】
一態様では、本発明は、障害を有するヒト患者を治療する方法であって、(a)組換えレンチウイルスベクターの治療有効用量;(b)TRIS非含有緩衝系;(c)塩;(d)界面活性剤;および(e)炭水化物を含む組換えレンチウイルスベクター調製物がヒト患者に投与される方法を対象とし、ここで医薬組成物はヒト患者への全身投与に適する。
【0092】
ある特定の実施形態では、調製物は、ヒト患者に全身投与される。
【0093】
ある特定の実施形態では、調製物は静脈内投与される。
【0094】
ある特定の実施形態では、障害は出血性障害である。
【0095】
ある特定の実施形態では、出血性障害は、血友病Aまたは血友病Bである。
【0096】
別の態様では、(a)組換えレンチウイルスベクターの治療有効用量;(b)TRIS非含有緩衝系;(c)塩;(d)界面活性剤;および(e)炭水化物を含む組換えレンチウイルスベクター調製物が提供され、ここで緩衝系または調製物のpHは約6.0~約7.5であり、医薬組成物はヒト患者への全身投与に適する。
【0097】
ある特定の例示的な実施形態では、レンチウイルスベクターは、VSV-Gまたはその断片をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0098】
ある特定の例示的な実施形態では、緩衝系は、リン酸緩衝液またはヒスチジン緩衝液を含む。ある特定の例示的な実施形態では、リン酸緩衝液の濃度は、約5mM~約30mMである。ある特定の例示的な実施形態では、リン酸緩衝液の濃度は、約10mM~約20mM、約10mM~約15mM、約20mM~約30mM、約20mM~約25mM、または約15mM~約20mMである。ある特定の例示的な実施形態では、ヒスチジン緩衝液の濃度は、約5mM~約30mMである。ある特定の例示的な実施形態では、ヒスチジン緩衝液の濃度は、約10mM~約20mM、約10mM~約15mM、約20mM~約30mM、約20mM~約25mM、または約15mM~約20mMである。
【0099】
ある特定の例示的な実施形態では、塩の濃度は、約80mM~約150mMである。ある特定の例示的な実施形態では、塩の濃度は、約100mM、約110mM、約130mM、または約150mMである。ある特定の例示的な実施形態では、塩は塩化物塩である。ある特定の例示的な実施形態では、塩化物塩はNaClである。
【0100】
ある特定の例示的な実施形態では、界面活性剤はポロクサマーである。ある特定の例示的な実施形態では、ポロクサマーは、ポロクサマー101(P101)、ポロクサマー105(P105)、ポロクサマー108(P108)、ポロクサマー122(P122)、ポロクサマー123(P123)、ポロクサマー124(P124)、ポロクサマー181(P181)、ポロクサマー182(P182)、ポロクサマー183(P183)、ポロクサマー184(P184)、ポロクサマー185(P185)、ポロクサマー188(P188)、ポロクサマー212(P212)、ポロクサマー215(P215)、ポロクサマー217(P217)、ポロクサマー231(P231)、ポロクサマー234(P234)、ポロクサマー235(P235)、ポロクサマー237(P237)、ポロクサマー238(P238)、ポロクサマー282(P282)、ポロクサマー284(P284)、ポロクサマー288(P288)、ポロクサマー331(P331)、ポロクサマー333(P333)、ポロクサマー334(P334)、ポロクサマー335(P335)、ポロクサマー338(P338)、ポロクサマー401(P401)、ポロクサマー402(P402)、ポロクサマー403(P403)、ポロクサマー407(P407)、およびそれらの組合せからなる群から選択される。ある特定の例示的な実施形態では、ポロクサマーはポロクサマー188(P188)である。ある特定の例示的な実施形態では、ポロクサマーはポロクサマー407(P407)である。
【0101】
ある特定の例示的な実施形態では、界面活性剤はポリソルベートである。ある特定の例示的な実施形態では、ポリソルベートは、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、およびそれらの組合せからなる群から選択される。ある特定の例示的な実施形態では、界面活性剤の濃度は、約0.01%(w/v)~約0.1%(w/v)である。ある特定の例示的な実施形態では、界面活性剤の濃度は、約0.03%(w/v)、約0.05%(w/v)、約0.07%(w/v)、または約0.09%(w/v)である。
【0102】
ある特定の例示的な実施形態では、炭水化物の濃度は、約0.5%(w/v)~約5%(w/v)である。ある特定の例示的な実施形態では、炭水化物の濃度は、約1%(w/v)、約2%(w/v)、約3%(w/v)、または約4%(w/v)である。ある特定の例示的な実施形態では、炭水化物はスクロースである。
【0103】
ある特定の例示的な実施形態では、調製物は、(a)組換えレンチウイルスベクターの治療有効用量;(b)約10mMのリン酸塩;(c)約100mMの塩化ナトリウム;(d)約0.05%(w/v)のポロクサマー188;および(e)約3%(w/v)のスクロースを含み、調製物のpHは約7.3であり、医薬組成物はヒト患者への全身投与に適する。
【0104】
ある特定の例示的な実施形態では、調製物は、(a)組換えレンチウイルスベクターの治療有効用量;(b)約10mMのリン酸塩;(c)約130mMの塩化ナトリウム;(d)約0.05%(w/v)のポロクサマー188;および(e)約1%(w/v)のスクロースを含み、調製物のpHは約7.3であり、医薬組成物はヒト患者への全身投与に適する。
【0105】
ある特定の例示的な実施形態では、調製物は、(a)組換えレンチウイルスベクターの治療有効用量;(b)約20mMヒスチジン;(c)約100mMの塩化ナトリウム;(d)約0.05%(w/v)のポロクサマー188;および(e)約3%(w/v)のスクロースを含み、調製物のpHは約6.5であり、医薬組成物はヒト患者への全身投与に適する。
【0106】
ある特定の例示的な実施形態では、調製物は(a)組換えレンチウイルスベクターの治療有効用量;(b)約10mMのリン酸塩;(c)約100mMの塩化ナトリウム;(d)約0.05%(w/v)のポロクサマー188;および(e)約3%(w/v)のスクロースを含み、調製物のpHは約7.0であり、医薬組成物はヒト患者への全身投与に適する。
【0107】
ある特定の例示的な実施形態では、調製物は、(a)組換えレンチウイルスベクターの治療有効用量;(b)約20mMヒスチジン;(c)約100mMの塩化ナトリウム;(d)約0.05%(w/v)のポロクサマー188;および(e)約3%(w/v)のスクロースを含み、調製物のpHは約7.0であり、医薬組成物はヒト患者への全身投与に適する。
【0108】
ある特定の例示的な実施形態では、組換えレンチウイルスベクターは、配列番号1または配列番号2に示される第VIII因子(FVIII)コード配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%同一であるヌクレオチド配列を含む核酸を含む。ある特定の例示的な実施形態では、組換えレンチウイルスベクターは、配列番号1または配列番号2に示される第VIII因子(FVIII)コード配列を含む核酸を含む。ある特定の例示的な実施形態では、組換えレンチウイルスベクターは、配列番号1または配列番号2に示される第VIII因子(FVIII)コード配列からなる核酸を含む。
【0109】
ある特定の例示的な実施形態では、組換えレンチウイルスベクターは、配列番号3に示される第IX因子(FIX)コード配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%同一なヌクレオチド配列を含む核酸を含む。ある特定の例示的な実施形態では、組換えレンチウイルスベクターは、配列番号3に示される第IX因子(FIX)コード配列を含む核酸を含む。ある特定の例示的な実施形態では、組換えレンチウイルスベクターは、配列番号3に示される第IX因子(FIX)コード配列からなる核酸を含む。
【0110】
ある特定の例示的な実施形態では、組換えレンチウイルスベクターは、強化トランスサイレチン(ET)プロモーターを含む。
【0111】
ある特定の例示的な実施形態では、組換えレンチウイルスベクターはさらに、配列番号7に示されるmiR-142の標的配列と少なくとも90%同一なヌクレオチド配列を含む。
【0112】
ある特定の例示的な実施形態では、組換えレンチウイルスベクターは、以下の群:CHO細胞、HEK293細胞、BHK21細胞、PER.C6細胞、NSO細胞、およびCAP細胞から選択されるトランスフェクト宿主細胞から単離される。ある特定の例示的な実施形態では、宿主細胞は、CD47陽性宿主細胞である。
【0113】
別の態様では、障害を有するヒト患者を治療する方法であって、本明細書に記載の組換えレンチウイルスベクター調製物をヒト患者に投与する工程を含む方法が提供される。
【0114】
ある特定の例示的な実施形態では、調製物は、ヒト患者に全身投与される。ある特定の例示的な実施形態では、調製物は静脈内投与される。
【0115】
ある特定の例示的な実施形態では、障害は出血性障害である。ある特定の例示的な実施形態では、出血性障害は、血友病Aまたは血友病Bである。
【0116】
本発明の前記および他の特徴および利点は、添付の図面と併せて行う例示的な実施形態の以下の詳細な説明から、より完全に理解されるであろう。本特許ファイルまたは出願ファイルは、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面を含む本特許または特許出願公開の写しは、請求に応じて、必要な手数料が支払われた場合に、所轄庁により提供される。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【
図1】リン酸ビヒクル(10mMリン酸塩、100mM NaCl、3%(w/v)スクロース、0.05%(w/v)P188、pH 7.3)中への処理後のレンチウイルスベクター(LV)製剤の特性決定を描写したグラフである。原体(DS)プールは明瞭な単量体ピークを示し、これは最終的なビヒクル緩衝液への限外濾過/透析濾過の後(タンジェンシャルフロー濾過-TFFの後)には、より大きなサイズの方に幾分移行し、より大きな一部の粒子の存在がみられる。理論に拘束されるわけではないが、これは材料を処理するストレスの間の粒子の物理的分解に起因する可能性がある。0.22μmサイズのフィルター膜を通して濾過した最終的なDPでは、プロファイルが処理開始時のDSプールに一致するように復帰する。TFFストレスの影響は、
図2A~
図2Bに示す写真に画像として認めることができる。
【
図2】
図2A~
図2Bは、タンジェンシャルフロー濾過(TFF)後(
図2A)および最終的な原体(DS)プール(
図2B)における、リン酸ビヒクル(10mMリン酸塩、100mM NaCl、3%(w/v)スクロース、0.05%(w/v)P188、pH 7.3)中のレンチウイルスベクター(LV)に対する無菌濾過の影響の写真である。
【
図3】
図3A~
図3Bは、p24 ELISAを使用したp24濃度によって測定した、1%(w/v)P188の添加を伴わない場合(
図3A)および1%(w/v)P188の添加を伴う場合(
図3B)の、ビヒクルTSSM(20mM TRIS、100mM NaCl、1%(w/v)スクロース、1%(w/v)マンニトール、pH 7.3)中でのレンチウイルスベクター(LV)の安定性を描写したグラフである。
【
図4】NanoSightを使用した粒子濃度および粒子径によって測定した、撹拌後のビヒクルTSSM(20mM TRIS、100mM NaCl、1%(w/v)スクロース、1%(w/v)マンニトール、pH 7.3)中のレンチウイルスベクター(LV)の安定性を描写したグラフである。ポロクサマー188(P188)の存在下および非存在下で示される、TSSM製剤:20mM Tris、100mM NaCl、1%(w/v)スクロース、1%(w/v)マンニトール、pH 7.3を使用した安定性試験。測定はNanoSightを使用して行った。
【
図5】
図5A~
図5Bは、NanoSightを使用した粒子濃度および粒子径によって測定した、撹拌後のビヒクルTSSM(20mM TRIS、100mM NaCl、1%(w/v)スクロース、1%(w/v)マンニトール、pH 7.3)中のレンチウイルスベクター(LV)の安定性を描写したグラフである。
図5Aは、撹拌ストレスに応じて、レンチウイルス粒子のサイズが幾分増したように見えることを示している。主ピークは単量体レンチウイルスベクター(約130nm)であると推定され、より小さい大型のピークは単量体粒子の分解によると考えられる。
図5Bは、1%(w/v)ポロクサマー188(P188)の添加がレンチウイルス粒子に干渉しなかったことを示す。
【
図6】
図6A~
図6Bは、ddPCRを使用したTU/ml単位(
図6A)およびT0に対する%(
図6B)としての機能的力価によって測定した、37℃での0日、3日間、7日間および14日間にわたる、ビヒクルTSSM(20mM TRIS、100mM NaCl、1%(w/v)スクロース、1%(w/v)マンニトール、pH 7.3)中のレンチウイルスベクター(LV)の安定性を描写したグラフである。
図6Bは、時間0に対して標準化している。各群のバーは、希釈系列:非希釈(希釈なし)、20倍希釈(20×)、100倍希釈(100×)を表す。
【
図7】
図7A~
図7Bは、ddPCRを使用したTU/ml単位での機能的力価、およびNanoSightを使用した粒子濃度(
図7A)または機能的力価とp24データの重ね合わせ(
図7B)によって測定した、37℃での0日、3日間、7日間および14日間にわたる、ビヒクルTSSM(20mM TRIS、100mM NaCl、1%(w/v)スクロース、1%(w/v)マンニトール、pH 7.3)中でのレンチウイルスベクター(LV)の安定性を描写したグラフである。
【
図8】
図8Aは、Nanosightを使用した粒子濃度および粒子径によって測定した、日および週の単位でのインキュベーション時間に応じた、37℃でのビヒクルTSSM(20mM TRIS、100mM NaCl、1%(w/v)スクロース、1%(w/v)マンニトール、pH 7.3)中のレンチウイルスベクター(LV)の安定性を描写したグラフである。
図8Bは、経時的な粒子径の差異をより明瞭に見るための、対数尺度での37℃安定性実験の結果を報告しているグラフである。
【
図9】ddPCRを使用したT0に対する%としての機能的力価およびp24 ELISAを使用したp24濃度によって測定した、日単位でのインキュベーション時間、インキュベーション温度、撹拌、および凍結/解凍(F/T)サイクルに応じた、ビヒクルリン酸製剤(10mMリン酸塩、100mM NaCl、3%(w/v)スクロース、0.05%(w/v)P188、pH 7.3)中のレンチウイルスベクター(LV)の安定性を描写したグラフである。
【
図10】
図10A~
図10Bは、NanoSightを使用した粒子濃度および粒子径分布によって測定した、日単位での時間に応じた、リン酸製剤(10mMリン酸塩、100mM NaCl、3%(w/v)スクロース、0.05%(w/v)P188、pH 7.3)を使用した37℃でのレンチウイルスベクター(LV)の安定性を描写したグラフである。
図10Aは、分解ピークの差異をより見やすくするために、1に対して標準化したNanoSightデータを報告している。
図10Bは、37℃インキュベーションでの経時的な単量体ピークの減少を示す生データを提示している。
【
図11】
図11A~
図11Bは、ddPCRを使用した機能的力価によって測定した、5サイクルおよび10サイクルの凍結および解凍(F/T)を行い(
図11A)、室温(RT)および撹拌(オービタルシェーカー、350rpm)を伴うRTで3日間比較(
図11B)した、3種類の製剤:製剤1.リン酸製剤:10mMリン酸塩、100mM NaCl、3%(w/v)スクロース、0.05%(w/v)P188、pH 7.3;製剤2.10mMリン酸塩、130mM NaCl、1%(w/v)スクロース、0.05%(w/v)P188、pH 7.3;製剤3.20mMヒスチジン、100mM NaCl、3%(w/v)スクロース、0.05%(w/v)P188、pH 6.5を比較した、レンチウイルスベクター(LV)の安定性を描写したグラフである。
【
図12】
図12A~
図12Bは、NanoSightを使用する粒子数によって測定した、3種類の製剤:製剤1(Phos).リン酸製剤:10mMリン酸塩、100mM NaCl、3%(w/v)スクロース、0.05%(w/v)P188、pH 7.3;製剤2(Phos.higherSalt).10mMリン酸塩、130mM NaCl、1%(w/v)スクロース、0.05%(w/v)P188、pH 7.3;製剤3(Hist).20mMヒスチジン、100mM NaCl、3%(w/v)スクロース、0.05%(w/v)P188、pH 6.5を比較した、レンチウイルスベクター(LV)の安定性を描写したグラフである。
図12Aは、室温(RT)および撹拌(オービタルシェーカー、350rpm)を伴うRTでの3日間のデータを示し、一方、
図12Bは、5サイクルおよび10サイクルの凍結および解凍(F/T)に関するデータを示している。
【
図13】IVバッグに対して室温で6時間曝露させた1つの製剤:製剤1(リン酸緩衝液):10mMリン酸塩、100mM NaCl、3%(w/v)スクロース、0.05%(w/v)P188、pH 7.3を用いる、模擬実用安定性試験を描写したグラフである。
【
図14】1回の凍結および解凍サイクル(-80℃で一晩、37℃水浴中で解凍)での容器閉鎖(Schott 1型ガラス製バイアルおよびWest CZ COPバイアル)の性能を比較する製剤化緩衝液安定性試験を描写したグラフである:製剤1(リン酸緩衝液):10mMリン酸塩、100mM NaCl、3%(w/v)スクロース、0.05%(w/v)P188、pH 7.3。粒子濃度は、Microflow Imaging(MFI)を使用して入手した。
【
図15】1回の凍結および解凍サイクル(-80℃、37℃水浴中で解凍)による、Schott 1型ガラス製バイアルを使用したバイアル歪み試験を描写したグラフである:製剤1(リン酸緩衝液のみ):10mMリン酸塩、100mM NaCl、3%(w/v)スクロース、0.05%(w/v)P188、pH 7.3。データは、歪みゲージおよび熱電対を使用して収集した。
【
図16-1】
図16A~
図16Cは様々な安定性条件に対する、容器閉鎖(Schott 1型ガラス製バイアルおよびWest CZバイアル)性能を比較するLVV材料適合性を描写したグラフであり、1FT=1サイクルの凍結および解凍;2hr=室温への2時間の曝露;発泡×3回は、ピペットでの激しい吸引および吐出を行って容器内に視認しうる泡を生じさせることである;10xは、10倍希釈と同じ安定性パラメーターである。LVVは製剤1(リン酸緩衝液):10mMリン酸塩、100mM NaCl、3%(w/v)スクロース、0.05%(w/v)P188、pH 7.3.とし、機能的力価(
図16A)、p24濃度(
図16B)、および粒子濃度(
図16C)によって測定した。データは、歪みゲージおよび熱電対を使用して収集した。粒子濃度は、NanoSightを使用して入手した。
【
図17】10サイクルの凍結および解凍(F/T)にわたって2つの製剤を比較し、室温(RT)で1日間および3日間を比較した、安定性試験を描写したグラフである:製剤1(リン酸緩衝液):10mMリン酸塩、100mM NaCl、3%(w/v)スクロース、0.05%(w/v)P188、pH 7.3;製剤3(ヒスチジン緩衝液)。20mMヒスチジン、100mM NaCl、3%(w/v)スクロース、0.05%(w/v)P188、pH 6.5。
【
図18】リン酸製剤およびヒスチジン製剤について、長期安定性(-80℃で凍結貯蔵した9カ月の時点(9 mo.))データを描写したグラフである:製剤1(リン酸):10mMリン酸塩、100mM NaCl、3%(w/v)スクロース、0.05%(w/v)P188、pH 7.3;製剤3(ヒスチジン)。20mMヒスチジン、100mM NaCl、3%(w/v)スクロース、0.05%(w/v)P188、pH 6.5。
【
図19-1】
図19A~19Dは、機能的力価(
図19A)、標準化機能的力価(
図19B)、p24濃度(
図19C)、および粒子濃度(
図19D)によって測定して、同じpHであるpH 7.0でリン酸緩衝液およびヒスチジン緩衝液を比較した安定性試験を描写したグラフである:製剤4(リン酸):10mMリン酸塩、100mM NaCl、3%(w/v)スクロース、0.05%(w/v)P188、pH 7.0;製剤5(ヒスチジン)。20mMヒスチジン、100mM NaCl、3%(w/v)スクロース、0.05%(w/v)P188、pH 7.0。結果は、機能的力価の単位で、および出発材料(T0)に対するパーセンテージとして標準化して示している。粒子濃度は、NanoSightを使用して入手した。
【発明を実施するための形態】
【0118】
本開示は、とりわけ、組換えLVを含むレンチウイルスベクター(LV)の調製物(製剤)および医薬組成物を提供する。本開示はまた、LV調製物を使用して、血友病Aまたは血友病Bなどの出血性障害を含む障害を有する対象を治療する方法も提供する。本開示はさらに、LV調製物を製造するための工程も提供する。
【0119】
一般に、本明細書において細胞培養および組織培養、分子生物学、生物物理学、免疫学、微生物学、遺伝学、ならびにタンパク質化学および核酸化学に関連して使用される命名法は、当技術分野において周知であり、一般的に使用されるものである。本明細書中に提供される方法および手法は、別の指示がない限り、一般に、本明細書の全体にわたって引用および考察される様々な一般的およびより特定的な参考文献に記載される、当技術分野において周知の従来法に従って実施される。酵素反応および精製手法は、製造元の仕様書に従って、当技術分野において一般的に遂行されるように、または本明細書に記載されるように実施される。本明細書に記載される分析化学、合成有機化学、ならびにそれらの医薬品化学および製薬化学に関連して使用される命名法、ならびにそれらの検査手順および手法は、当技術分野において周知であり、一般的に使用される。化学合成、化学分析、医薬品調製、製剤化、および送達、ならびに患者の治療には、標準的な手法が使用される。
【0120】
本明細書で別に定義しない限り、本明細書中で使用される科学用語および技術用語は、当業者によって一般に理解される意味を有する。何らかの潜在的な曖昧性がある場合には、本明細書中に提供される定義が、あらゆる辞書または付帯的な定義よりも優先される。文脈によって必要とされない限り、単数形の語は複数形を含み、複数形の語は単数形を含むものとする。別に明記する場合を除き、「または」の使用は、「および/または」を意味する。「含む(including)」という用語の使用は、「含む(includes)」および「含まれる(included)」などの他の形態と同様に、限定的ではない。
【0121】
本発明がより容易に理解されるように、ある特定の用語をまず定義する。
【0122】
本明細書で用いる場合、「ベクター」という用語は、核酸のクローニングおよび/または宿主細胞への移入のための任意のビヒクルを指す。ベクターは、別の核酸セグメントを結びつけて、結びついたセグメントの複製をもたらすことができるレプリコンであってよい。「レプリコン」は、インビボでの自律的複製単位として機能する、すなわち、それ自身の制御下での複製が可能である、任意の遺伝子エレメント(例えば、プラスミド、ファージ、コスミド、染色体、ウイルス)を指す。「ベクター」と言う用語は、インビトロ、エクスビボまたはインビボで核酸を細胞に導入するためのウイルス性ビヒクルおよび非ウイルス性ビヒクルの両方を含む。例えば、プラスミド、改変真核生物ウイルス、または改変細菌ウイルスを含む多数のベクターが、当技術分野において公知であり、使用される。適するベクターへのポリヌクレオチドの挿入は、相補的な付着末端を有する選択されたベクター中に、適切なポリヌクレオチド断片をライゲートすることによって実現することができる。
【0123】
本明細書で用いる場合、「組換えレンチウイルスベクター」という語句は、パッケージング構成要素の存在下で、標的細胞を感染させ得るウイルス粒子へのRNAゲノムのパッケージングを可能にする十分なレンチウイルス遺伝情報を有するベクターを指す。標的細胞の感染は、逆転写および標的細胞ゲノムへの組み込みを含み得る。組換えレンチウイルスベクターは、ベクターによって標的細胞に送達されることになる非ウイルス性コード配列を保有する。組換えレンチウイルスベクターは、最終的な標的細胞内で独立に複製して感染性レンチウイルス粒子を生成することが不可能である。通常、組換えレンチウイルスベクターは、機能的なgag-polおよび/またはenv遺伝子および/または複製のために必須な他の遺伝子を欠く。本発明のベクターを、分割イントロンベクターとして構成することもできる。
【0124】
本明細書で用いる場合、「治療する」という用語は、障害の1つまたはそれ以上の症状の改善または軽減を指す。治療することが、治癒である必要はない。
【0125】
本明細書で用いる場合、「ヒト患者」という用語は、疾患または障害を有し、この疾患または障害に対する治療を必要とするヒトを指す。
【0126】
本明細書で用いる場合、「全身投与する」という語句は、LVが対象の血流に直接導入されるように、LVを含む医薬組成物を対象に処方するかまたは与えることを指す。全身投与の経路の例としては、静脈内、例えば、静脈内注射および静脈内注入、例えば、中心静脈アクセスを介するものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0127】
本明細書で用いる場合、「約」という用語は、特定の記載された数値を参照して使用される場合、その値が、記載された値の10%を超えない範囲で変化し得ることを意味する。例えば、本明細書中で使用する場合、「約100」という表現は、90および110、ならびにその間にあるすべての値(例えば、90、91、92、93、94、95など)を含む。
【0128】
A.TRIS非含有緩衝系を含むレンチウイルスベクター(LV)の製剤
一態様では、本発明は、(a)組換えレンチウイルスベクターの有効用量;(b)TRIS非含有緩衝系;(c)塩;(d)界面活性剤;および(e)炭水化物を含む組換えレンチウイルスベクター調製物を対象とし、ここで医薬組成物はヒト患者への全身投与に適する。ある特定の実施形態では、ベクターは、VSV-Gまたはその断片をコードするヌクレオチド配列を含む。ある特定の実施形態では、緩衝系のpHは、約6.0~約8.0である。ある特定の実施形態では、緩衝系のpHは、約6.0~約7.5である。ある特定の実施形態では、緩衝系のpHは、約6.0~約7.0である。ある特定の実施形態では、緩衝系のpHは、約6.0~約8.0である。ある特定の実施形態では、緩衝系のpHは約6.5である。ある特定の実施形態では、緩衝系のpHは約7.3である。ある特定の実施形態では、緩衝系はリン酸緩衝液またはヒスチジン緩衝液である。ある特定の実施形態では、リン酸緩衝液またはヒスチジン緩衝液の濃度は、約5mM~約30mMである。ある特定の実施形態では、リン酸緩衝液の濃度は、約10mM~約20mM、約10mM~約15mM、約20mM~約30mM、約20mM~約25mM、または約15mM~約20mMである。ある特定の実施形態では、塩は塩化物塩である。ある特定の実施形態では、塩化物塩の濃度は、約80mM~約150mMである。ある特定の実施形態では、塩の濃度は、約100mM、約110mM、約130mM、または約150mMである。ある特定の実施形態では、界面活性剤は、ポロクサマーまたはポリソルベートである。ある特定の実施形態では、ポロクサマーまたはポリソルベートの濃度は、約0.01%(w/v)~約0.1%(w/v)である。ある特定の実施形態では、炭水化物はスクロースである。ある特定の実施形態では、炭水化物の濃度は、約0.5%(w/v)~約5%(w/v)である。ある特定の実施形態では、塩化物塩は、塩化ナトリウム(NaCl)である。ある特定の実施形態では、ポロクサマーは、ポロクサマー101(P101)、ポロクサマー105(P105)、ポロクサマー108(P108)、ポロクサマー122(P122)、ポロクサマー123(P123)、ポロクサマー124(P124)、ポロクサマー181(P181)、ポロクサマー182(P182)、ポロクサマー183(P183)、ポロクサマー184(P184)、ポロクサマー185(P185)、ポロクサマー188(P188)、ポロクサマー212(P212)、ポロクサマー215(P215)、ポロクサマー217(P217)、ポロクサマー231(P231)、ポロクサマー234(P234)、ポロクサマー235(P235)、ポロクサマー237(P237)、ポロクサマー238(P238)、ポロクサマー282(P282)、ポロクサマー284(P284)、ポロクサマー288(P288)、ポロクサマー331(P331)、ポロクサマー333(P333)、ポロクサマー334(P334)、ポロクサマー335(P335)、ポロクサマー338(P338)、ポロクサマー401(P401)、ポロクサマー402(P402)、ポロクサマー403(P403)、ポロクサマー407(P407)、およびそれらの組合せからなる群から選択される。ある特定の実施形態では、ポリソルベートは、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、およびそれらの組合せからなる群から選択される。ある特定の実施形態では、リン酸緩衝液またはヒスチジン緩衝液のpHは、約6.1、約6.3、約6.5、約6.7、約6.9、約7.1、約7.3、約7.5、約7.7、または約7.9である。ある特定の実施形態では、リン酸緩衝液またはヒスチジン緩衝液の濃度は、約10mM、約15mM、約20mM、または約25mMである。ある特定の実施形態では、塩化物塩は、約100mM、約110mM、約130mM、または約150mMである。ある特定の実施形態では、ポロクサマーまたはポリソルベートの濃度は、約0.03%(w/v)、約0.05%(w/v)、約0.07%(w/v)、または約0.09%(w/v)である。ある特定の実施形態では、炭水化物の濃度は、約1%(w/v)、約2%(w/v)、約3%(w/v)、または約4%(w/v)である。ある特定の実施形態では、ポロクサマーはポロクサマー188(P188)である。ある特定の実施形態では、ポロクサマーはポロクサマー407(P407)である。
【0129】
ある特定の実施形態では、本開示は、(a)組換えレンチウイルスベクターの治療有効用量;(b)約10mMのリン酸塩;(c)約100mMの塩化ナトリウム;(d)約0.05%(w/v)のポロクサマー188;および(e)約3%(w/v)のスクロースを含む組換えレンチウイルスベクター調製物を提供し、ここで調製物のpHは約7.3であり、医薬組成物はヒト患者への全身投与に適する。
【0130】
ある特定の実施形態では、本開示は、(a)組換えレンチウイルスベクターの治療有効用量;(b)約10mMのリン酸塩;(c)約130mMの塩化ナトリウム;(d)約0.05%(w/v)のポロクサマー188;および(e)約1%(w/v)のスクロースを含む組換えレンチウイルスベクター調製物を提供し、ここで調製物のpHは約7.3であり、医薬組成物はヒト患者への全身投与に適する。
【0131】
ある特定の実施形態では、本開示は、(a)組換えレンチウイルスベクターの治療有効用量;(b)約20mMヒスチジン;(c)約100mMの塩化ナトリウム;(d)約0.05%(w/v)のポロクサマー188;および(e)約3%(w/v)のスクロースを含む組換えレンチウイルスベクター調製物を提供し、ここで調製物のpHは約6.5であり、医薬組成物はヒト患者への全身投与に適する。
【0132】
ある特定の実施形態では、本開示は、(a)組換えレンチウイルスベクターの治療有効用量;(b)約10mMのリン酸塩;(c)約100mMの塩化ナトリウム;(d)約0.05%(w/v)のポロクサマー188;および(e)約3%(w/v)のスクロースを含む組換えレンチウイルスベクター調製物を提供し、ここで調製物のpHは約7.0であり、医薬組成物はヒト患者への全身投与に適する。
【0133】
ある特定の実施形態では、本開示は、(a)組換えレンチウイルスベクターの治療有効用量;(b)約20mMヒスチジン;(c)約100mMの塩化ナトリウム;(d)約0.05%(w/v)のポロクサマー188;および(e)約3%(w/v)のスクロースを含む組換えレンチウイルスベクター調製物を提供し、ここで調製物のpHは約7.0であり、医薬組成物はヒト患者への全身投与に適する。
【0134】
A.1.レンチウイルスベクター
レンチウイルスベクターは、より大きな群であるレトロウイルスベクターの一部である(Coffinら(1997年)、「Retroviruses」、Cold Spring Harbor Laboratory Press Eds:J M Coffin、S M Hughes、H E Varmus 758~763頁)。霊長類レンチウイルスの例としては、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)およびサル免疫不全ウイルス(SIV)が挙げられる。レンチウイルスファミリーは、レンチウイルスが分裂細胞および非分裂細胞の両方を感染させる能力を有する点で、レトロウイルスとは異なる(Lewisら(1992年);LewisおよびEmerman(1994年))。
【0135】
レンチウイルスベクターは、本明細書中で使用する場合、レンチウイルスに由来し得る少なくとも1つの構成部分を含むベクターである。好ましくは、その構成部分は、ベクターが細胞を感染させる、遺伝子を発現する、または複製される生物学的機構に関与する。組換えレンチウイルスベクターでは、複製のために必須である1つまたはそれ以上のタンパク質コード領域の少なくとも一部をウイルスから除去することができる。このことは、ウイルスベクターを複製能欠損性にする。また、ウイルスゲノムの部分を導入遺伝子に置換して、それにより、ベクターが、標的非分裂宿主細胞の形質導入および/またはそのゲノムの宿主ゲノム中への組み込みを行えるようにしてもよい。
【0136】
組換えレンチウイルスは通常、シュードタイプ化される。シュードタイプ化は、1つまたはそれ以上の利点を付与しうる。例えば、HIVを基にしたベクターのenv遺伝子産物は、これらのベクターが、CD4と呼ばれるタンパク質を発現する細胞のみを感染させるように制限すると考えられる。しかし、これらのベクター中のenv遺伝子が他のRNAウイルス由来のenv配列に置き換えられると、それらはより広い感染スペクトルを有し得る(VermaおよびSomia(1997年))。ラブドウイルスの1つである水疱性口内炎ウイルス(VSV)のエンベロープ糖タンパク質(G)は、ある特定のレトロウイルスをシュードタイプ化し得ることが示されているエンベロープタンパク質である。シュードタイプ化されたVSV-Gベクターは、広範な哺乳動物細胞の形質導入のために使用することができる。VSV-Gタンパク質などの非レンチウイルス性シュードタイプ化エンベロープを組み込むことには、ベクター粒子を、感染性を失うことなく高力価に濃縮し得るという利点がある(Akkinaら(1996年)、J.Virol.70:2581~5頁)。レンチウイルスおよびレトロウイルスのエンベロープタンパク質は、超遠心分離時の剪断力に耐えられないようであり、これはおそらく、それらが非共有結合性に連結した2つのサブユニットからなるためである。このサブユニット間の相互作用は遠心分離によって破壊される。これに比べ、VSV糖タンパク質は単一のユニットで構成される。このため、VSV-Gタンパク質のシュードタイプ化は潜在的な利点をもたらし得る。
【0137】
レンチウイルスには、ウシレンチウイルス群、ウマレンチウイルス群、ネコレンチウイルス群、ヒツジヤギレンチウイルス群、および霊長類レンチウイルス群のメンバーが含まれる。遺伝子療法のためのレンチウイルスベクターの開発は、Klimatchevaら(1999年)、Frontiers in Bioscience 4:481~496頁にレビューされている。遺伝子療法に適するレンチウイルスベクターの設計および使用は、例えば、米国特許第6,207,455号および同第6,615,782号に記載されている。レンチウイルスの例には、HIV-1、HIV-2、HIV-1/HIV-2シュードタイプ化、HIV-1/SIV、FIV、ヤギ関節炎脳炎ウイルス(CAEV)、ウマ伝染性貧血ウイルス、およびウシ免疫不全ウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0138】
一部の実施形態では、本開示のレンチウイルスベクターは、「第三世代」レンチウイルスベクターである。本明細書で用いる場合、「第三世代」レンチウイルスベクターという用語は、第二世代ベクターシステムの特徴を有し、さらに機能的tat遺伝子を欠くレンチウイルスパッケージングシステム、例えば、tat遺伝子が欠失しているかまたは不活性化されているものを指す。典型的には、revをコードする遺伝子は、別個の発現構築物上に提供される。例えば、Dullら(1998年)、J.Virol.72:8463~8471を参照のこと。本明細書で用いる場合、「第二世代」レンチウイルスベクターシステムとは、機能的アクセサリー遺伝子を欠くレンチウイルスパッケージングシステム、例えば、アクセサリー遺伝子vif、vpr、vpu、およびnefが欠失しているかまたは不活性化されているものを指す。例えば、Zuffereyら(1997年)、Nat.Biotechnol.15:871~875頁を参照のこと。本明細書で用いる場合、「パッケージングシステム」とは、組換えウイルスのパッケージングに関与するウイルスタンパク質をコードするウイルス構築物のセットを指す。典型的には、パッケージングシステムの構築物は、最終的にパッケージング細胞に組み込まれる。
【0139】
一部の実施形態では、本開示の第三世代レンチウイルスベクターは、自己不活性化レンチウイルスベクターである。一部の実施形態では、レンチウイルスベクターは、VSV.Gシュードタイプレンチウイルスベクターである。一部の実施形態では、レンチウイルスベクターは、導入遺伝子発現のための肝細胞特異的プロモーターを含む。一部の実施形態では、肝細胞特異的プロモーターは、強化トランスサイレチンプロモーターである。一部の実施形態では、レンチウイルスベクターは、導入遺伝子産物に対する免疫応答を低下させるためのmiR-142の1つまたはそれ以上の標的配列を含む。一部の実施形態では、miR-142の1つまたはそれ以上の標的配列を本開示のレンチウイルスベクターに組み込むことは、所望の導入遺伝子発現プロファイルを可能にする。例えば、miR-142の1つまたはそれ以上の標的配列を組み込むことで、血管内および血管外の造血細胞系列における導入遺伝子発現を抑制することができ、一方、非造血細胞では導入遺伝子発現が維持される。本開示のレンチウイルスベクターシステムで処置された腫瘍傾向マウスにおいて、発がんは全く検出されていない。Brownら(2007年)Blood 110:4144~52頁、Brownら(2006年)、Nat.Ned.12:585~91頁、およびCantoreら(2015年)、Sci.Transl.Med.7(277):277ra28を参照のこと。
【0140】
本開示のレンチウイルスベクターは、特定のタンパク質、例えば本明細書に記載のFVIIIまたはFIXタンパク質をコードする導入遺伝子のコドン最適化ポリヌクレオチドを含む。一実施形態では、FVIIIまたはFIXタンパク質の最適化されたコード配列は、発現制御配列に作動可能に連結される。本明細書で使用する場合、2つの核酸配列は、それらが各構成要素の核酸配列がその機能を保持することを可能にするような様式で共有結合している場合、作動可能に連結されている。コード配列および遺伝子発現制御配列は、それらがコード配列の発現もしくは転写および/または翻訳を遺伝子発現制御配列の影響下または制御下に置くような様式で共有結合する場合、作動可能に連結されると言われる。2つのDNA配列は、5’遺伝子発現配列におけるプロモーターの誘導がコード配列の転写をもたらす場合、および2つのDNA配列間の連結の性質が、(1)フレームシフト突然変異の導入をもたらさない、(2)プロモーター領域がコード配列の転写を導く能力に干渉しない、または(3)対応するRNA転写物がタンパク質に翻訳される能力に干渉しない場合、作動可能に連結されると言われる。それ故に、遺伝子発現配列は、結果として生じる転写物が所望のタンパク質またはポリペプチドに翻訳されるように、遺伝子発現配列がそのコード核酸配列の転写を生じさせ得る場合には、コード核酸配列に作動可能に連結されていると考えられる。
【0141】
ある特定の実施形態では、レンチウイルスベクターは、非分裂細胞を感染させることができる組換えレンチウイルスのベクターである。ある特定の実施形態では、レンチウイルスベクターは、肝臓細胞(例えば、肝細胞)を感染させることができる組換えレンチウイルスのベクターである。レンチウイルスゲノムおよびプロウイルスDNAは、典型的には、レトロウイルスに見出される3つの遺伝子、gag、polおよびenvを有し、これらには2つの長末端反復(LTR)配列が隣接している。gag遺伝子は内部構造(マトリックス、カプシドおよびヌクレオカプシド)タンパク質をコードし;pol遺伝子はRNA指向性DNAポリメラーゼ(逆転写酵素)、プロテアーゼおよびインテグラーゼをコードし;env遺伝子はウイルスのエンベロープ糖タンパク質をコードする。5’および3’LTRは、ビリオンRNAの転写およびポリアデニル化を促進する働きをする。LTRは、ウイルス複製のために必要な他のすべてのシス作用性配列を含有する。レンチウイルスは、vif、vpr、tat、rev、vpu、nefおよびvpxを含む追加の遺伝子を有する(HIV-1、HIV-2および/またはSIVにおいて)。
【0142】
5’LTRには、ゲノムの逆転写のため(tRNAプライマー結合部位)、およびウイルスRNAの粒子への効率的なカプシド形成のため(Psi部位)に必要な配列が隣接している。カプシド形成(またはレトロウイルスRNAの感染性ビリオンへのパッケージング)のために必要な配列がウイルスゲノムに欠けている場合は、シス欠損のためにゲノムRNAのカプシド形成が妨げられる。
【0143】
しかし、結果として生じる突然変異体は、すべてのビリオンタンパク質の合成を導くことが可能なままである。本開示は、非分裂細胞を感染させることができる組換えレンチウイルスを作製する方法であって、パッケージング機能、すなわちgag、polおよびenv、ならびにrevおよびtatを保有する2つまたはそれ以上のベクターを、適する宿主細胞にトランスフェクトする工程を含む方法を提供する。本明細書で以下に開示されるように、ある特定の用途のためには、機能的tat遺伝子を欠くベクターが望ましい。それ故に、例えば、第1のベクターがウイルスgagおよびウイルスpolをコードする核酸を提供し、別のベクターがウイルスenvをコードする核酸を提供することで、パッケージング細胞を生成することができる。本明細書で移入ベクターとして特定される、異種遺伝子を提供するベクターをパッケージング細胞に導入することにより、目的の外来遺伝子を保有する感染性ウイルス粒子を放出するプロデューサー細胞が生じる。
【0144】
ベクターおよび外来遺伝子の上記の構成によれば、第2のベクターは、ウイルスエンベロープ(env)遺伝子をコードする核酸を提供することができる。env遺伝子は、レトロウイルスを含む、ほぼあらゆる適するウイルスに由来し得る。一部の実施形態では、envタンパク質は、ヒトおよび他の種の細胞の形質導入を可能にする両種指向性エンベロープタンパク質である。
【0145】
レトロウイルス由来のenv遺伝子の例としては、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMuLVまたはMMLV)、ハーベイマウス肉腫ウイルス(HaMuSVまたはHSV)、マウス乳がんウイルス(MuMTVまたはMMTV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLVまたはGALV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)およびラウス肉腫ウイルス(RSV)が挙げられるが、これらに限定されない。他のenv遺伝子、例えば、水疱性口内炎ウイルス(VSV)タンパク質G(VSV-G)、肝炎ウイルスおよびインフルエンザのそれも使用することができる。一部の実施形態では、ウイルスenv核酸配列は、本明細書の他の箇所に記載される調節配列と作動可能に関連付けられる。ある特定の実施形態では、本開示の製剤化緩衝液は、特に、VSV-Gを含むレンチウイルスについて、レンチウイルス安定性を付与し、長期凍結貯蔵をもたらす。本発明の製剤化緩衝液は、特に、VSV-Gを含むレンチウイルスについて、凍結および解凍ならびに高温への曝露に対するレンチウイルス安定性の強化を提供する。
【0146】
ある特定の実施形態では、レンチウイルスベクターは、ベクターが非分裂細胞に形質導入する能力を損なうことなく、HIV病原性遺伝子env、vif、vpr、vpuおよびnefが欠失している。一部の実施形態では、レンチウイルスベクターは、3’LTRのU3領域の欠失を含む。U3領域の欠失は、完全欠失または部分的欠失であり得る。
【0147】
一部の実施形態では、本明細書に記載のFVIIIヌクレオチド配列を含む本開示のレンチウイルスベクターは、(a)gag、pol、またはgagおよびpol遺伝子を含む第1のヌクレオチド配列、ならびに(b)異種env遺伝子を含む第2のヌクレオチド配列を有する細胞内でトランスフェクトすることができ;ここでレンチウイルスベクターは機能的tat遺伝子を欠く。他の実施形態では、細胞はさらに、rev遺伝子を含む第4のヌクレオチド配列でトランスフェクトされる。ある特定の実施形態では、レンチウイルスベクターは、vif、vpr、vpu、vpxおよびnef、またはそれらの組合せから選択される機能的遺伝子を欠く。
【0148】
ある特定の実施形態では、本開示のレンチウイルスベクターは、gagタンパク質、Rev応答エレメント、セントラルポリプリン配列(cPPT)、またはその任意の組合せをコードする1つまたはそれ以上のヌクレオチド配列を含む。
【0149】
一部の実施形態では、レンチウイルスベクターは、レンチウイルスベクターまたはコードされるFVIIIポリペプチドの標的化および/または活性を改善する1つまたはそれ以上のポリペプチドをその表面に発現する。1つまたはそれ以上のポリペプチドは、レンチウイルスベクターによってコードされるか、または宿主細胞からのレンチウイルスベクターの出芽の間に組み込むことができる。レンチウイルスの生成の間に、ウイルス粒子は産生宿主細胞から出芽する。出芽過程の間に、ウイルス粒子は脂質コートを獲得し、それは宿主細胞の脂質膜に由来する。その結果として、ウイルス粒子の脂質コートは、宿主細胞の表面に前から存在していた膜結合ポリペプチドを含むことができる。
【0150】
一部の実施形態では、レンチウイルスベクターは、ヒト対象への投与後のレンチウイルスベクターに対する免疫応答を阻害する、1つまたはそれ以上のポリペプチドをその表面に発現する。一部の実施形態では、レンチウイルスベクターの表面は、1つまたはそれ以上のCD47分子を含む。CD47は「自己マーカー」タンパク質であり、ヒト細胞上に遍在的に発現される。CD47の表面発現は、CD47とマクロファージにより発現されるSIRPαとの相互作用を通じて、内因性細胞のマクロファージ誘導食作用を阻害する。高レベルのCD47を発現する細胞は、インビボでヒトマクロファージによって標的化されて破壊される可能性が低い。
【0151】
一部の実施形態では、レンチウイルスベクターは、高濃度のCD47ポリペプチド分子をその表面に発現する。一部の実施形態では、レンチウイルスベクターは、高いCD47発現レベルを有する細胞系において生成される。ある特定の実施形態では、レンチウイルスベクターはCD47high細胞で生成され、細胞は細胞膜上にCD47の高発現を有する。特定の実施形態では、レンチウイルスベクターはCD47highHEK 293T細胞で生成され、HEK 293Tは細胞膜上にCD47の高発現を有する。一部の実施形態では、HEK 293T細胞は、非改変HEK 293T細胞に比してCD47の発現が増加するように改変される。ある特定の実施形態では、CD47はヒトCD47である。
【0152】
一部の実施形態では、レンチウイルスベクターは、主要組織適合性複合体クラスI(MHC-I)の表面発現をほとんどまたは全く有しない。表面に発現されるMHC-Iは、細胞内からの「非自己」タンパク質のペプチド断片、例えば、感染を示すタンパク質断片を提示し、細胞に対する免疫応答を促進する。一部の実施形態では、レンチウイルスベクターはMHC-Ilow細胞で生成され、細胞は細胞膜上のMHC-Iの発現低下を有する。一部の実施形態では、レンチウイルスベクターは、MHC-I-(または「MHC-Ifree」、「MHC-1neg」または「MHC陰性」)細胞において生成され、細胞はMHC-Iの発現を欠く。
【0153】
特定の実施形態では、レンチウイルスベクターは、高濃度のCD47ポリペプチドを含みMHC-Iポリペプチドを欠く脂質コートを含む。ある特定の実施形態では、レンチウイルスベクターは、CD47high/MHC-Ilow細胞系、例えば、CD47high/MHC-IlowHEK 293T細胞系において生成される。一部の実施形態では、レンチウイルスベクターは、CD47high/MHC-Ifree細胞系、例えば、CD47high/MHC-IfreeHEK 293T細胞系において生成される。
【0154】
レンチウイルスベクターの例は、米国特許第9,050,269号ならびにWO9931251、WO9712622、WO9817815、WO9817816、およびWO9818934に開示されており、これらはその全体が参照によって本明細書に組み入れられる。
【0155】
一部の実施形態では、本開示は、表1に示されるヌクレオチド配列を含むヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子を含むレンチウイルスベクターを提供する。
【0156】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【0157】
本開示のレンチウイルスベクターは、5×1010TU/kgまたはそれ未満、109TU/kgまたはそれ未満、または108TU/kgまたはそれ未満の用量で投与される場合、治療的に有効である。そのような投与量では、本開示のレンチウイルスベクターの投与は、対象における基礎レベルに比して、対照レンチウイルスベクターを投与された対象におけるレベルに比して、対照核酸分子を投与された対象におけるレベルに比して、または対照核酸分子によってコードされるポリペプチドの投与後の対象におけるレベルに比して、それを必要とする対象における血漿中FVIII活性の、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約11倍、少なくとも約12倍、少なくとも約13倍、少なくとも約14倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約25倍、少なくとも約30倍、少なくとも約35倍、少なくとも約40倍、少なくとも約45倍、少なくとも約50倍、少なくとも約55倍、少なくとも約60倍、少なくとも約65倍、少なくとも約70倍、少なくとも約75倍、少なくとも約80倍、少なくとも約85倍、少なくとも約90倍、少なくとも約95倍、少なくとも約100倍、少なくとも約110倍、少なくとも約120倍、少なくとも約130倍、少なくとも約140倍、少なくとも約150倍、少なくとも約160倍、少なくとも約170倍、少なくとも約180倍、少なくとも約190倍、または少なくとも約200倍への増加をもたらし得る。
【0158】
ある特定の実施形態では、レンチウイルスベクター内に、例えば、導入遺伝子、例えば最適化FVIII導入遺伝子に作動可能に連結される、1つまたはそれ以上のmiRNA標的配列を含めることが有用であると考えられる。それ故に、本開示はまた、最適化FVIIIもしくは最適化FIXヌクレオチド配列に作動可能に連結されるか、または他の様式でレンチウイルスベクター内に挿入される、少なくとも1つのmiRNA配列標的も提供する。レンチウイルスベクターに含まれるmiRNA標的配列の1つを上回るコピーは、システムの有効性を高めることができる。
【0159】
異なるmiRNA標的配列も含められる。例えば、1つを上回る導入遺伝子を発現するレンチウイルスベクターは、同じであっても異なってもよい、1つを上回るmiRNA標的配列の制御下にある導入遺伝子を有し得る。miRNA標的配列は縦列性であってよいが、他の配置も含まれる。miRNA標的配列を含有する導入遺伝子発現カセットを、アンチセンスの向きでレンチウイルスベクター内に挿入することもできる。アンチセンスの向きは、ウイルス粒子の生成において、通常であればプロデューサー細胞に有毒な可能性のある遺伝子産物の発現を回避するために有用となり得る。
【0160】
他の実施形態では、レンチウイルスベクターは、同じまたは異なるmiRNA標的配列の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つまたは8つのコピーを含む。ある特定の実施形態では、レンチウイルスベクターは、いかなるmiRNA標的配列も含まない。miRNA標的配列を含めるか否か(およびその数)の選択は、意図する組織標的、要求される発現のレベル等の公知のパラメーターによって導かれると考えられる。
【0161】
一実施形態では、標的配列は、骨髄球拘束前駆細胞において最も効果的に、およびより初期のHSPCにおいて少なくとも部分的に発現をブロックすることが報告されている、miR-223標的である。miR-223標的は、顆粒球、単球、マクロファージ、骨髄樹状細胞を含む分化した骨髄系細胞における発現をブロックすることができる。miR-223標的はまた、リンパ球系列または赤血球系列における強固な導入遺伝子発現に依拠する遺伝子療法の適用に適する可能性もある。miR-223標的はまた、ヒトHSCにおいて非常に効果的に発現をブロックすることもできる。
【0162】
別の実施形態では、標的配列は、miR142標的(tccataaagtaggaaacactaca(配列番号7))である。一実施形態では、レンチウイルスベクターは、miR-142標的配列の4つのコピーを含む。ある特定の実施形態では、造血特異的マイクロRNAの相補的配列、例えばmiR-142(142T)は、レンチウイルスベクターの3’非翻訳領域に組み込まれ、導入遺伝子をコードする転写物をmiRNA介在ダウンレギュレーションに対して感受性にする。この方法により、導入遺伝子発現を、非造血細胞では維持しながら、造血系列の抗原提示細胞(APC)で阻止することができる(Brownら、Nat Med、2006年)。この戦略は、導入遺伝子発現に対してストリンジェントな転写後制御を課すことができ、それ故に、導入遺伝子の安定した送達および長期発現を可能にする。一部の実施形態では、miR-142調節は、形質導入された細胞の免疫介在性除去を阻止し、かつ/または抗原特異的調節性T細胞(T reg)を誘導して、導入遺伝子によってコードされる抗原に対する強固な免疫寛容を媒介する。
【0163】
一部の実施形態では、標的配列は、miR181標的である。Chen C-ZおよびLodish H、Seminars in Immunology(2005年) 17(2):155~165頁は、マウス骨髄内のB細胞において特異的に発現されるmiRNAであるmiR-181を開示している(ChenおよびLodish、2005年)。それはまた、一部のヒトmiRNAが白血病に関連付けられることも開示している。
【0164】
標的配列は、miRNAに対して完全または部分的に相補的であり得る。「完全に相補的な」という用語は、標的配列が、それを認識するmiRNAの配列に対して100%相補的である核酸配列を有することを意味する。「部分的に相補的な」という用語は、標的配列が、それが認識するmiRNAの配列に対して部分的にのみ相補的であり、その際、部分的に相補的な配列が依然としてmiRNAによって認識されることを意味する。換言すれば、本開示の文脈において、部分的に相補的な標的配列は、対応するmiRNAを認識して、そのmiRNAを発現する細胞における導入遺伝子発現の阻止または低下を生じさせるのに有効である。miRNA標的配列の例は、WO2007/000668、WO2004/094642、WO2010/055413、またはWO2010/125471に記載されており、それらはその全体が参照によって本明細書に組み入れられる。
【0165】
A.2.製剤の賦形剤、担体、および他の成分
遺伝子療法のために、レンチウイルスベクター(LV)はしばしば、全身性に、すなわち、患者の血流中に直接的に投与される。それ故に、毒性がなく、それでもなおLVの安定性および効力を維持するLVの製剤を作製することには広く関心が持たれる。LV製剤を作製するためにビヒクルを試験する場合には、いくつかの基本原則に留意しなければならない。製剤が投与される対象のショックを確実に最小限に抑えるために、pH、イオン濃度、および浸透圧を、生理的条件に適合するように最適化しなければならない。どの緩衝液、塩、および炭水化物を組み合わせるか(それぞれpH、イオン濃度、および浸透圧を調節するために)は、先験的には決定不能であり、実験的に試験する必要がある。
【0166】
例えば、米国特許出願公開第20170073702A1号は、TSSMビヒクル(20mM TRIS、100mM NaCl、1%(w/v)スクロース、1%(w/v)マンニトール、pH 7.3)を開示しており、これは哺乳動物への全身投与において無毒性であると予想することができた。しかし、TSSMを単独で、またはLVと組み合わせて使用した製剤は、マウスに対して毒性があることが判明した(実施例2参照)。しかし、驚くべきことに、リン酸ビヒクル(10mMリン酸塩、100mM NaCl、3%(w/v)スクロース、0.05%(w/v)P188、pH 7.3)またはヒスチジンビヒクル(20mMヒスチジン、100mM NaCl、3%(w/v)スクロース、0.05%(w/v)P188、pH 6.5)を使用した場合には、製剤はマウスに対して無毒性であった。
【0167】
先験的には予想されなかったことであろうが、リン酸ビヒクルを用いた製剤は、TSSM製剤と比較して、LVのより高い安定性および完全性をもたらした(実施例3および実施例4)。予想外のことに、ヒスチジンビヒクルは、リン酸ビヒクルよりも高い安定性をLVに付与した(実施例4)。ヒスチジン製剤のこの重要な特徴、すなわち、リン酸緩衝液またはTRIS緩衝液の中性pH(pH 7.3)と比較してpHが低いビヒクル(pH 6.5)にもレンチウイルスベクターが適合性であることは、少なくとも以下の理由から驚くべきものであった。VSV-Gエンベロープタンパク質はレンチウイルスベクターの重要な構成要素であり、これは細胞内へのその感染性を促進する。VSV-GのpI(等電点)はおよそ5であり、これは溶液のpHがこのpIに近づくほど、タンパク質の電荷がより中性になることを意味する。タンパク質の電荷がより中性になるほど、それらが互いに引き合う能力は強くなり、これは凝集(分解機構)を招いて、それによって感染能力を損なう可能性がある。
【0168】
界面活性剤であるポロクサマー188(P188)をリン酸製剤およびヒスチジン製剤に含めることにより、TSSM製剤と比較してLVの安定性および完全性が向上したことも、驚くべきことであった。界面活性剤はLVの外側脂質膜エンベロープを不安定化し、それ故にLVの安定性および完全性を低下させると予想されていたことから、これは予想外であった。同様に、製剤からのマンニトールの除去が、LVの安定性および完全性がより高い製剤をもたらすことは、先験的には明らかではなかった(実施例3および実施例4)。
【0169】
このようにして、本明細書に記載される知見に基づいて、TRIS非含有緩衝系を含むレンチウイルスベクター調製物は、向上したレンチウイルスベクター安定性および完全性を提供することが見出された。TRIS非含有緩衝系が、TRIS(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、トロメタミン、またはTHAMとしても知られる)を含まない任意の緩衝系を指すことは、当業者には理解されるであろう。ある特定の実施形態では、TRIS非含有緩衝系はリン酸塩を含む。ある特定の実施形態では、TRIS非含有緩衝系はヒスチジンを含む。
【0170】
ある特定の実施形態では、TRIS非含有緩衝系または調製物のpHは、約6.0~約8.0である。ある特定の実施形態では、TRIS非含有緩衝系または調製物のpHは、約6.0~約7.5である。ある特定の実施形態では、TRIS非含有緩衝系または調製物のpHは、約6.0~約7.0である。ある特定の実施形態では、TRIS非含有緩衝系または調製物のpHは、約7.0~約8.0である。ある特定の実施形態では、TRIS非含有緩衝系または調製物のpHは、約6.5である。ある特定の実施形態では、TRIS非含有緩衝系または調製物のpHは、約7.3である。
【0171】
当業者は、標的pHまたは標的pH範囲を維持するために、本明細書に開示される調製物のTRIS非含有緩衝系において採用されるべき好適な緩衝液構成成分を決定することができると考えられる。ある特定の実施形態では、TRIS非含有緩衝系は、約6.0~約8.0の有効pH緩衝範囲を有する緩衝液構成成分を含む。ある特定の実施形態では、TRIS非含有緩衝系は、約6.0~約7.5の有効pH緩衝範囲を有する緩衝液構成成分を含む。ある特定の実施形態では、TRIS非含有緩衝系は、約6.0~約7.0の有効pH緩衝範囲を有する緩衝液構成成分を含む。ある特定の実施形態では、TRIS非含有緩衝系は、約7.0~約8.0の有効pH緩衝範囲を有する緩衝液構成成分を含む。ある特定の実施形態では、TRIS非含有緩衝系は、pH 6.5を維持し得る有効pH緩衝範囲を有する緩衝液構成成分を含む。ある特定の実施形態では、TRIS非含有緩衝系は、pH 7.3を維持し得る有効pH緩衝範囲を有する緩衝液構成成分を含む。
【0172】
本明細書に開示されるレンチウイルス遺伝子療法ベクターを含有する組成物、または本開示の宿主細胞(例えば、本明細書に開示されるレンチウイルス遺伝子療法ベクターによって標的化される肝細胞)は、好適な薬学的に許容される担体を含有することができる。例えば、それらは、作用部位への送達のために設計された調製物への活性化合物のプロセシングを促進する賦形剤および/または補助剤を含有することができる。
【0173】
医薬組成物は、ボーラス注射による非経口投与(すなわち、静脈内、皮下、または筋肉内)用に製剤化することができる。注射用の製剤は、単位剤形で、例えば、アンプルまたは複数回投与容器に保存剤を添加した状態で提供することができる。組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁剤、液剤、または乳剤などの形態をとることができ、懸濁化剤、安定化剤および/または分散化剤などの製剤化剤を含有することができる。あるいは、活性成分が、好適なビヒクル、例えば、パイロジェンフリー水による構成のための粉末形態であってもよい。
【0174】
非経口投与用の好適な製剤としては、水溶性形態、例えば、水溶性塩である活性化合物の水性液剤も挙げられる。加えて、適切な油性注射懸濁剤として活性化合物の懸濁剤を投与することもできる。好適な親油性溶媒またはビヒクルとしては、脂肪油、例えば、ゴマ油、または合成脂肪酸エステル、例えば、オレイン酸エチルまたはトリグリセリドが挙げられる。水性注射用懸濁剤は、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールおよびデキストランを含む、懸濁剤の粘性を高める物質を含有することができる。場合により、懸濁剤が安定化剤を含有することもできる。細胞または間質腔への送達用に本開示の分子を封入するためにリポソームを使用することもできる。例示的な薬学的に許容される担体は、生理的に適合性のある溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどである。一部の実施形態では、組成物は、等張化剤、例えば、糖、マンニトール、ソルビトールなどの多価アルコール、または塩化ナトリウムを含む。他の実施形態では、組成物は、湿潤剤などの薬学的に許容される物質、または活性成分の貯蔵寿命もしくは有効性を向上させる湿潤剤もしくは乳化剤、保存剤もしくは緩衝剤などの少量の補助物質を含む。
【0175】
本開示の組成物は、例えば、液体(例えば、注射用溶液および注入用溶液)、分散液、懸濁液、半固体および固体の剤形を含む、様々な形態であり得る。好ましい形態は、投与様式および治療用途に応じて変わる。
【0176】
組成物は、液剤、マイクロエマルジョン剤、分散剤、リポソーム、または高い薬物濃度に適する他の規則的構造物として製剤化することができる。滅菌注射用液剤は、必要に応じて、上に列挙した成分のうちの1つまたは組合せとともに、活性成分を所要量で適切な溶媒中に組み込んで濾過滅菌することによって調製することができる。一般に、分散剤は、塩基性分散媒および上に列挙したもののうち必要な他の成分を含有する滅菌ビヒクルに、活性成分を組み込むことによって調製される。滅菌注射用液剤を調製するための滅菌散剤の場合には、好ましい調製方法は、事前に滅菌濾過した溶液から、活性成分に任意の所望の追加成分を加えた粉末を得る真空乾燥および凍結乾燥である。溶液の適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散剤の場合には所要の粒子径の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持することができる。注射用組成物の吸収時間の延長は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸塩およびゼラチンを組成物に含めることによって実現することができる。
【0177】
活性成分は、放出制御製剤または放出制御デバイスを用いて製剤化することができる。そのような製剤およびデバイスの例としては、インプラント、経皮パッチ、およびマイクロカプセル化送達系が挙げられる。生分解性生体適合性ポリマー、例えば、エチレンビニルアセテート、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸を使用することができる。そのような製剤およびデバイスの調製方法は、当技術分野で公知である。例えば、Sustained and Controll ed Release Drug Delivery Systems、J.R.Robinson編、Marcel Dekker,Inc.、New York、1978年を参照のこと。
【0178】
注射用デポー製剤は、ポリ乳酸-ポリグリコリドなどの生分解性ポリマー中に薬物のマイクロカプセル化マトリックスを形成することによって作製することができる。薬物のポリマーに対する比率、および採用するポリマーの性質に応じて、薬物放出の速度を制御することができる。他の例示的な生分解性ポリマーには、ポリオルトエステルおよびポリ酸無水物がある。注射用デポー製剤は、薬物をリポソームまたはマイクロエマルジョン中に捕捉することによって調製することもできる。
【0179】
補足的な活性化合物を組成物中に組み込むことができる。一実施形態では、本開示のキメラタンパク質は、他の凝固因子、またはそのバリアント、断片、類似体もしくは誘導体とともに製剤化される。例えば、凝固因子としては、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XII因子、第XIII因子、プロトロンビン、フィブリノーゲン、フォンビルブランド因子もしくは組換え可溶性組織因子(rsTF)または前記のいずれかの活性化形態が挙げられるが、これらに限定されない。止血剤の凝固因子として、抗線溶薬、例えば、イプシロン-アミノカプロン酸、トラネキサム酸を挙げることもできる。
【0180】
投薬レジメンは、最適な所望の応答が得られるように調整することができる。例えば、単回ボーラス投与を行うこと、数回の分割投与を時間をかけて行うこと、または治療状況の緊急性によって示されるのに応じて用量を相応に減少もしくは増加させることもできる。投与の容易さおよび投薬量の均一化のために、非経口組成物を投薬量単位形態で製剤化することが有益である。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Pub.Co.、Easton、Pa.1980年)を参照のこと。
【0181】
活性化合物に加えて、液体剤形は、水、エチルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油、グリセリン、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステルなどの不活性成分を含有することができる。
【0182】
好適な医薬担体の非限定的な例は、E.W.MartinによるRemington’s Pharmaceutical Sciencesにも記載されている。賦形剤のいくつかの例としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセリンモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂乳、グリセリン、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが挙げられる。組成物は、pH緩衝試薬、および湿潤剤または乳化剤を含有することもできる。
【0183】
経口投与用には、医薬組成物は、従来の手段によって調製した錠剤またはカプセル剤の形態をとることができる。組成物を液剤、例えば、シロップ剤または懸濁剤として調製することもできる。液剤は、懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ剤、セルロース誘導体または水素添加食用脂)、乳化剤(レシチンまたはアラビアガム)、非水性ビヒクル(例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコール、または分別植物油)、および保存剤(例えば、メチルもしくはプロピル-p-ヒドロキシベンゾエートまたはソルビン酸)を含むことができる。調製物は、矯味矯臭剤、着色剤および甘味剤を含むこともできる。あるいは、組成物を、水または別の好適なビヒクルで構成するための乾燥製品として提供することもできる。
【0184】
口腔内投与用には、組成物は、従来のプロトコールに従って錠剤またはロゼンジ剤の形態をとることができる。
【0185】
吸入による投与用には、本開示に従う使用のための化合物は、賦形剤を含むかもしくは含まない噴霧エアロゾル剤の形態で、または場合によっては噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロメタン、二酸化炭素もしくは他の好適な気体とともに加圧パックもしくはネブライザーからのエアロゾルスプレーの形態で、好都合に送達される。加圧エアロゾル剤の場合には、投薬量単位は、計量された量を送達するための弁を設けることによって決定することができる。化合物とラクトースまたはデンプンなどの好適な粉末基剤との粉末混合物を含有する、吸入器または注入器において使用するための、例えば、ゼラチンのカプセル剤およびカートリッジを製剤化することができる。
【0186】
また、医薬組成物を、例えば、カカオ脂または他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を含有する、坐薬または滞留浣腸として直腸投与用に製剤化することもできる。
【0187】
一実施形態では、医薬組成物は、第VIII因子活性または第IX因子活性を有するポリペプチドをコードする最適化された核酸分子を含むレンチウイルスベクター、および薬学的に許容される担体を含む。別の実施形態では、医薬組成物は、第VIII因子活性または第IX因子活性を有するポリペプチドをコードする最適化された核酸分子を含むレンチウイルスベクターを含む宿主細胞(例えば、肝細胞)、および薬学的に許容される担体を含む。
【0188】
一部の実施形態では、組成物は、局所投与、眼内投与、非経口投与、髄腔内投与、硬膜下投与および経口投与からなる群から選択される経路によって投与される。非経口投与は、静脈内投与または皮下投与であり得る。
【0189】
治療用製剤を研究室から、製造可能で市場性のある高い一貫した品質の製品に確実に移行させるための基本的側面は、剤形におけるその安定性である。ウイルスの表面タンパク質およびカプシドタンパク質などのタンパク質は、その複雑な化学的特性および構造のために、最終的製品の生物学的効能および安全性を損なうおそれのある、様々な形の物理的および化学的分解を受けやすい。例えば、タンパク質の凝集は、タンパク質を原料とする製品で慣行的にモニターされる重要な品質属性であり、製品の貯蔵寿命の決定にとって極めて重要である。基本的なレベルで、タンパク質の凝集は、タンパク質のネイティブ形態の安定性と関連しており、非ネイティブ細胞(例えば、非ネイティブ哺乳動物細胞)における成長は一般に凝集の速度および範囲の増加と関連している。したがって、製品の貯蔵寿命(速度論的安定性)中の凝集を制御して最小限に抑える試みが、しばしばタンパク質のコンフォメーション安定性を高めることを意図した賦形剤または製剤化条件の使用を介して行われることは、驚くには当たらない。基本的には、凝集能を持つ「非ネイティブ」種の集団を最小限に抑えるために、タンパク質をそのネイティブなコンフォメーションで安定化することが意図される。スクロース、トレハロース、マンニトール、ソルビトールなどの糖およびポリオールは、タンパク質をネイティブな状態で安定化して凝集速度を低下させるためにしばしば使用される。しかし、これらの安定化剤を使用することの望ましくない影響の一つに、溶液粘性の濃度依存的な増加がある。
【0190】
溶液粘性は、タンパク質製品、特に高タンパク質濃度で配合されるものの重要な属性であり、製品の有用性および成果に決定的な影響を与え得る。製品の製造可能性および患者または医療従事者による最終的な使用は、溶液が途切れずに流れる能力と密接に関連している。例えば、粘性が高い場合には、所望の集団に常に適するとは限らない特殊な投与デバイス装置またはプロトコールの使用を必要とすることがあり、それによって製品の使用が制限される。他の例では、溶液粘性が高い場合には、タンパク質の安定性に悪影響を及ぼす可能性のある製造技術(例えば、高温処理)の適用を必要とすることがある。このため、高タンパク質濃度の溶液に、塩およびアミノ酸などの粘性低下賦形剤を採用することは珍しいことではない。しかし、これらの賦形剤はタンパク質の安定性に悪影響を与え、それにより、粘性低下剤を含まない高粘性対照溶液と比較して凝集速度が高い溶液が結果として生じることがある。要するに、一般的に採用される安定化剤および粘性低下賦形剤は、製品の性能に対して逆効果を及ぼすことがあり、それによってその開発が複雑になるおそれがある。
【0191】
注射用製品(ほとんどはタンパク質を原材料とする製品)にとって考慮しなければならないもう一つの重要な属性は、その浸透圧である。静脈内注射用溶液は一般に等張である必要があるが、皮下注射用溶液は高張であることが珍しくない。実際、高張製剤が皮下投与後のタンパク質の生物学的利用能を高めるという文献上のエビデンスがある(Fathallah,A.M.ら、Biopharm Drug Dispos.2015年3月;36(2):115~25頁)。したがって、患者集団における注射部位の不快感および/または反応、ならびに生物学的利用能に対する溶液浸透圧(およびそれ故に張性)の影響は、臨床開発段階において慎重にモニターして特徴付ける必要がある。
【0192】
製剤は時に、特定の利益を付与し得る、ポロクサマーおよびポリソルベートなどの界面活性剤を含有してもよい。ポロクサマーは、非イオン性ポリ(エチレンオキシド)(PEO)-ポリ(プロピレンオキシド)(PPO)共重合体である。これは界面活性剤、乳化剤、可溶化剤、分散剤、インビボ吸光度強化剤として医薬品の製剤に使用される。ポロクサマーは、以下のコア式を有する合成トリブロック共重合体である:(PEO)a-(PPO)b-(PEO)a。ポロクサマーはすべて類似した化学構造を有するが、分子量および親水性PEOブロックと疎水性PPOブロックとの組成が異なる。最も一般的に使用されるポロクサマーは、分子量が7680~9510Daの範囲であるポロクサマー188(a=80、b=27)、および分子量が9840~14600Daの範囲であるポロクサマー407(a=101、b=56)の2つである。他のポロクサマーとしては、以下のものが挙げられる:ポロクサマー101(P101)、ポロクサマー105(P105)、ポロクサマー108(P108)、ポロクサマー122(P122)、ポロクサマー123(P123)、ポロクサマー124(P124)、ポロクサマー181(P181)、ポロクサマー182(P182)、ポロクサマー183(P183)、ポロクサマー184(P184)、ポロクサマー185(P185)、ポロクサマー212(P212)、ポロクサマー215(P215)、ポロクサマー217(P217)、ポロクサマー231(P231)、ポロクサマー234(P234)、ポロクサマー235(P235)、ポロクサマー237(P237)、ポロクサマー238(P238)、ポロクサマー282(P282)、ポロクサマー284(P284)、ポロクサマー288(P288)、ポロクサマー331(P331)、ポロクサマー333(P333)、ポロクサマー334(P334)、ポロクサマー335(P335)、ポロクサマー338(P338)、ポロクサマー401(P401)、ポロクサマー402(P402)、およびポロクサマー403(P403)。
【0193】
ポリソルベートは、いくつかの医薬製剤および食品調製製剤に使用される乳化剤のクラスである。ポリソルベートは、ソルビトールの誘導体であるエトキシル化ソルビタンを脂肪酸でエステル化したものに由来する油状の液体である。ポリソルベートの一般的な商品名としては、Scattics、Alkest、Canarcel、およびTweenが挙げられる。ポリソルベートの命名規則は通常、以下の通りである:ポリソルベートx(ポリオキシエチレン(y)ソルビタンモノ‘z’)、式中、xはポリオキシエチレンソルビタンに結合した脂肪酸(z)の種類に関し、yはポリソルベート分子中に見出されるオキシエチレン-(CH2CH2O)-基の総数を指す。ポリソルベートの例としては、以下のものが挙げられる:(a)ポリソルベート20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)、(b)ポリソルベート40(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート)、(c)ポリソルベート60(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート)、(d)ポリソルベート80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)。
【0194】
B.血液障害の治療に使用するためのレンチウイルスベクター(LV)製剤
一態様では、本発明は、(a)組換えレンチウイルスベクターの有効用量;(b)TRIS非含有緩衝系;(c)塩;(d)界面活性剤;(e)炭水化物、および(f)配列番号1もしくは配列番号2に示される第VIII因子(FVIII)コード配列または配列番号3に示される第IX因子(FIX)コード配列と少なくとも80%同一なヌクレオチド配列を含む組換えレンチウイルスベクター調製物を対象とし、ここで医薬組成物はヒト患者への全身投与に適する。ある特定の実施形態では、ベクターは、配列番号1または配列番号2に示される第VIII因子(FVIII)コード配列を含む。ある特定の実施形態では、ベクターは、配列番号3に示される第IX因子(FIX)コード配列を含む。
【0195】
別の態様では、本発明は、(a)組換えレンチウイルスベクターの治療有効用量;(b)TRIS非含有緩衝系;(c)塩;(d)界面活性剤;および(e)炭水化物を含む組換えレンチウイルスベクター調製物を提供し、ここで組換えレンチウイルスベクターは、配列番号1もしくは配列番号2に示される第VIII因子(FVIII)コード配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%同一なヌクレオチド配列、または配列番号3に示される第IX因子(FIX)コード配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%同一なヌクレオチド配列を含む組換えレンチウイルスベクターを含み、医薬組成物はヒト患者への全身投与に適する。ある特定の実施形態では、組換えレンチウイルスベクターは、配列番号1または配列番号2に示される第VIII因子(FVIII)コード配列を含む核酸を含む。ある特定の実施形態では、組換えレンチウイルスベクターは、配列番号3に示される第IX因子(FIX)コード配列を含む核酸を含む。ある特定の実施形態では、組換えレンチウイルスベクターは、配列番号1または配列番号2に示される第VIII因子(FVIII)コード配列からなる核酸を含む。ある特定の実施形態では、組換えレンチウイルスベクターは、配列番号3に示される第IX因子(FIX)コード配列からなる核酸を含む。
【0196】
ある特定の実施形態では、緩衝系のpHは、約6.0~約8.0である。ある特定の実施形態では、緩衝系のpHは、約6.0~約7.5である。ある特定の実施形態では、緩衝系のpHは、約6.0~約7.0である。ある特定の実施形態では、緩衝系のpHは、約6.0~約8.0である。ある特定の実施形態では、緩衝系のpHは約6.5である。ある特定の実施形態では、緩衝系のpHは約7.3である。ある特定の実施形態では、緩衝系はリン酸緩衝液またはヒスチジン緩衝液である。ある特定の実施形態では、リン酸緩衝液またはヒスチジン緩衝液の濃度約5mM~約30mMである。ある特定の実施形態では、リン酸緩衝液の濃度は、約10mM~約20mM、約10mM~約15mM、約20mM~約30mM、約20mM~約25mM、または約15mM~約20mMである。ある特定の実施形態では、塩は塩化物塩である。ある特定の実施形態では、塩化物塩の濃度は、約80mM~約150mMである。ある特定の実施形態では、塩の濃度は、約100mM、約110mM、約130mM、または約150mMである。ある特定の実施形態では、界面活性剤はポロクサマーまたはポリソルベートである。ある特定の実施形態では、ポロクサマーまたはポリソルベートの濃度は、約0.01%(w/v)~約0.1%(w/v)である。ある特定の実施形態では、炭水化物はスクロースである。ある特定の実施形態では、炭水化物の濃度は、約0.5%(w/v)~約5%(w/v)である。ある特定の実施形態では、塩化物塩は、塩化ナトリウム(NaCl)である。ある特定の実施形態では、ポロクサマーは、ポロクサマー101(P101)、ポロクサマー105(P105)、ポロクサマー108(P108)、ポロクサマー122(P122)、ポロクサマー123(P123)、ポロクサマー124(P124)、ポロクサマー181(P181)、ポロクサマー182(P182)、ポロクサマー183(P183)、ポロクサマー184(P184)、ポロクサマー185(P185)、ポロクサマー188(P188)、ポロクサマー212(P212)、ポロクサマー215(P215)、ポロクサマー217(P217)、ポロクサマー231(P231)、ポロクサマー234(P234)、ポロクサマー235(P235)、ポロクサマー237(P237)、ポロクサマー238(P238)、ポロクサマー282(P282)、ポロクサマー284(P284)、ポロクサマー288(P288)、ポロクサマー331(P331)、ポロクサマー333(P333)、ポロクサマー334(P334)、ポロクサマー335(P335)、ポロクサマー338(P338)、ポロクサマー401(P401)、ポロクサマー402(P402)、ポロクサマー403(P403)、ポロクサマー407(P407)、およびそれらの組合せからなる群から選択される。ある特定の実施形態では、ポリソルベートは、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、およびそれらの組合せからなる群から選択される。ある特定の実施形態では、リン酸緩衝液またはヒスチジン緩衝液のpHは、約6.1、約6.3、約6.5、約6.7、約6.9、約7.1、約7.3、約7.5、約7.7、または約7.9である。ある特定の実施形態では、リン酸緩衝液またはヒスチジン緩衝液の濃度は、約10mM、約15mM、約20mM、または約25mMである。ある特定の実施形態では、塩化物塩は、約100mM、約110mM、約130mM、または約150mMである。ある特定の実施形態では、ポロクサマーまたはポリソルベートの濃度は、約0.03%(w/v)、約0.05%(w/v)、約0.07%(w/v)、または約0.09%(w/v)である。ある特定の実施形態では、炭水化物の濃度は、約1%(w/v)、約2%(w/v)、約3%(w/v)、または約4%(w/v)である。ある特定の実施形態では、ポロクサマーはポロクサマー188(P188)である。ある特定の実施形態では、ポロクサマーはポロクサマー407(P407)である。
【0197】
ある特定の実施形態では、本開示は、(a)組換えレンチウイルスベクターの治療有効用量;(b)約10mMのリン酸塩;(c)約100mMの塩化ナトリウム;(d)約0.05%(w/v)のポロクサマー188;および(e)約3%(w/v)スクロースを含む組換えレンチウイルスベクター調製物を提供し、ここで調製物のpHは約7.3であり、医薬組成物はヒト患者への全身投与に適し、組換えレンチウイルスベクターは、配列番号1もしくは配列番号2に示される第VIII因子(FVIII)コード配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%同一なヌクレオチド配列、または配列番号3に示される第IX因子(FIX)コード配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%同一なヌクレオチド配列を含む核酸を含み、医薬組成物はヒト患者への全身投与に適する。ある特定の実施形態では、組換えレンチウイルスベクターは、配列番号1または配列番号2に示される第VIII因子(FVIII)コード配列を含む核酸を含む。ある特定の実施形態では、組換えレンチウイルスベクターは、配列番号3に示される第IX因子(FIX)コード配列を含む核酸を含む。ある特定の実施形態では、組換えレンチウイルスベクター配列番号1または配列番号2に示される第VIII因子(FVIII)コード配列からなる核酸を含む。ある特定の実施形態では、組換えレンチウイルスベクターは、配列番号3に示される第IX因子(FIX)コード配列からなる核酸を含む。
【0198】
ある特定の実施形態では、本開示は、(a)組換えレンチウイルスベクターの治療有効用量;(b)約10mMのリン酸塩;(c)約130mMの塩化ナトリウム;(d)約0.05%(w/v)のポロクサマー188;および(e)約1%(w/v)スクロースを含む組換えレンチウイルスベクター調製物を提供し、ここで調製物のpHは約7.3であり、医薬組成物はヒト患者への全身投与に適し、組換えレンチウイルスベクターは、配列番号1もしくは配列番号2に示される第VIII因子(FVIII)コード配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%同一なヌクレオチド配列、または配列番号3に示される第IX因子(FIX)コード配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%同一なヌクレオチド配列を含む核酸を含み、医薬組成物はヒト患者への全身投与に適する。ある特定の実施形態では、組換えレンチウイルスベクターは、配列番号1または配列番号2に示される第VIII因子(FVIII)コード配列を含む核酸を含む。ある特定の実施形態では、組換えレンチウイルスベクターは、配列番号3に示される第IX因子(FIX)コード配列を含む核酸を含む。ある特定の実施形態では、組換えレンチウイルスベクター配列番号1または配列番号2に示される第VIII因子(FVIII)コード配列からなる核酸を含む。ある特定の実施形態では、組換えレンチウイルスベクターは、配列番号3に示される第IX因子(FIX)コード配列からなる核酸を含む。
【0199】
ある特定の実施形態では、本開示は、(a)組換えレンチウイルスベクターの治療有効用量;(b)約20mMのヒスチジン;(c)約100mMの塩化ナトリウム;(d)約0.05%(w/v)のポロクサマー188;および(e)約3%(w/v)スクロースを含む組換えレンチウイルスベクター調製物を提供し、ここで調製物のpHは約6.5であり、医薬組成物はヒト患者への全身投与に適し、組換えレンチウイルスベクターは、配列番号1もしくは配列番号2に示される第VIII因子(FVIII)コード配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%同一なヌクレオチド配列、または配列番号3に示される第IX因子(FIX)コード配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%同一なヌクレオチド配列を含む核酸を含み、医薬組成物はヒト患者への全身投与に適する。ある特定の実施形態では、組換えレンチウイルスベクターは、配列番号1または配列番号2に示される第VIII因子(FVIII)コード配列を含む核酸を含む。ある特定の実施形態では、組換えレンチウイルスベクターは、配列番号3に示される第IX因子(FIX)コード配列を含む核酸を含む。ある特定の実施形態では、組換えレンチウイルスベクター配列番号1または配列番号2に示される第VIII因子(FVIII)コード配列からなる核酸を含む。ある特定の実施形態では、組換えレンチウイルスベクターは、配列番号3に示される第IX因子(FIX)コード配列からなる核酸を含む。
【0200】
ある特定の実施形態では、本開示は、(a)組換えレンチウイルスベクターの治療有効用量;(b)約10mMのリン酸塩;(c)約100mMの塩化ナトリウム;(d)約0.05%(w/v)のポロクサマー188;および(e)約3%(w/v)スクロースを含む組換えレンチウイルスベクター調製物を提供し、ここで調製物のpHは約7.0であり、医薬組成物はヒト患者への全身投与に適し、組換えレンチウイルスベクターは、配列番号1もしくは配列番号2に示される第VIII因子(FVIII)コード配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%同一なヌクレオチド配列、または配列番号3に示される第IX因子(FIX)コード配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%同一なヌクレオチド配列を含む核酸を含み、医薬組成物はヒト患者への全身投与に適する。ある特定の実施形態では、組換えレンチウイルスベクターは、配列番号1または配列番号2に示される第VIII因子(FVIII)コード配列を含む核酸を含む。ある特定の実施形態では、組換えレンチウイルスベクターは、配列番号3に示される第IX因子(FIX)コード配列を含む核酸を含む。ある特定の実施形態では、組換えレンチウイルスベクター配列番号1または配列番号2に示される第VIII因子(FVIII)コード配列からなる核酸を含む。ある特定の実施形態では、組換えレンチウイルスベクターは、配列番号3に示される第IX因子(FIX)コード配列からなる核酸を含む。
【0201】
ある特定の実施形態では、本開示は、(a)組換えレンチウイルスベクターの治療有効用量;(b)約20mMのヒスチジン;(c)約100mMの塩化ナトリウム;(d)約0.05%(w/v)のポロクサマー188;および(e)約3%(w/v)スクロースを含む組換えレンチウイルスベクター調製物を提供し、ここで調製物のpHは約7.0であり、医薬組成物はヒト患者への全身投与に適し、組換えレンチウイルスベクターは、配列番号1もしくは配列番号2に示される第VIII因子(FVIII)コード配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%同一なヌクレオチド配列、または配列番号3に示される第IX因子(FIX)コード配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%同一なヌクレオチド配列を含む核酸を含み、医薬組成物はヒト患者への全身投与に適する。ある特定の実施形態では、組換えレンチウイルスベクターは、配列番号1または配列番号2に示される第VIII因子(FVIII)コード配列を含む核酸を含む。ある特定の実施形態では、組換えレンチウイルスベクターは、配列番号3に示される第IX因子(FIX)コード配列を含む核酸を含む。ある特定の実施形態では、組換えレンチウイルスベクター配列番号1または配列番号2に示される第VIII因子(FVIII)コード配列からなる核酸を含む。ある特定の実施形態では、組換えレンチウイルスベクターは、配列番号3に示される第IX因子(FIX)コード配列からなる核酸を含む。
【0202】
ある特定の実施形態では、組換えレンチウイルスベクターは、VSV-Gまたはその断片をコードするヌクレオチド配列を含む。ある特定の実施形態では、組換えレンチウイルスベクターは、強化トランスサイレチン(ET)プロモーターを含む。ある特定の実施形態では、組換えレンチウイルスベクターは、配列番号7に示されるmiR-142の標的配列と少なくとも90%同一なヌクレオチド配列を含む。
【0203】
ある特定の実施形態では、組換えレンチウイルスベクターは、CHO細胞、HEK293細胞、BHK21細胞、PER.C6細胞、NSO細胞、およびCAP細胞を含むトランスフェクト宿主細胞から単離される。ある特定の実施形態では、宿主細胞は、CD47陽性宿主細胞である。
【0204】
ある特定の実施形態では、調製物は、ヒト患者に全身投与される。ある特定の実施形態では、調製物は静脈内に投与される。
【0205】
ある特定の実施形態では、緩衝系のpHは、6.0~8.0の間である。ある特定の実施形態では、緩衝系はリン酸緩衝液またはヒスチジン緩衝液である。ある特定の実施形態では、リン酸緩衝液またはヒスチジン緩衝液の濃度は、5mM~30mMの間である。ある特定の実施形態では、リン酸緩衝液の濃度は、約10~約20mM、約10~約15mM、約20~約30mM、約20~約25mM、または約15~約20mMである。ある特定の実施形態では、塩は塩化物塩である。ある特定の実施形態では、塩化物塩の濃度は、80mM~150mMの間である。ある特定の実施形態では、塩の濃度は、約100mM、約110mM、約130mM、または約150mMである。ある特定の実施形態では、界面活性剤はポロクサマーまたはポリソルベートである。ある特定の実施形態では、ポロクサマーまたはポリソルベートの濃度は、0.01%(w/v)~0.1%(w/v)の間である。ある特定の実施形態では、炭水化物はスクロースである。ある特定の実施形態では、炭水化物の濃度は、0.5%(w/v)~5%(w/v)の間である。ある特定の実施形態では、塩化物塩はNaClである。ある特定の実施形態では、ポロクサマーは、ポロクサマー101(P101)、ポロクサマー105(P105)、ポロクサマー108(P108)、ポロクサマー122(P122)、ポロクサマー123(P123)、ポロクサマー124(P124)、ポロクサマー181(P181)、ポロクサマー182(P182)、ポロクサマー183(P183)、ポロクサマー184(P184)、ポロクサマー185(P185)、ポロクサマー188(P188)、ポロクサマー212(P212)、ポロクサマー215(P215)、ポロクサマー217(P217)、ポロクサマー231(P231)、ポロクサマー234(P234)、ポロクサマー235(P235)、ポロクサマー237(P237)、ポロクサマー238(P238)、ポロクサマー282(P282)、ポロクサマー284(P284)、ポロクサマー288(P288)、ポロクサマー331(P331)、ポロクサマー333(P333)、ポロクサマー334(P334)、ポロクサマー335(P335)、ポロクサマー338(P338)、ポロクサマー401(P401)、ポロクサマー402(P402)、ポロクサマー403(P403)、ポロクサマー407(P407)、およびそれらの組合せからなる群から選択される。ある特定の実施形態では、ポリソルベートは、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、およびそれらの組合せからなる群から選択される。ある特定の実施形態では、リン酸緩衝液またはヒスチジン緩衝液のpHは、6.1、6.3、6.5、6.7、6.9、7.1、7.3、7.5、7.7、または7.9である。ある特定の実施形態では、リン酸緩衝液またはヒスチジン緩衝液の濃度は、10mM、15mM、20mM、または25mMである。ある特定の実施形態では、塩化物塩は、100mM、110mM、130mM、または150mMである。ある特定の実施形態では、ポロクサマーまたはポリソルベートの濃度は、0.03%(w/v)、0.05%(w/v)、0.07%(w/v)、または0.09%(w/v)である。ある特定の実施形態では、炭水化物の濃度は、1%(w/v)、2%(w/v)、3%(w/v)、または4%(w/v)である。ある特定の実施形態では、ポロクサマーはポロクサマー188(P188)である。ある特定の実施形態では、ポロクサマーはポロクサマー407(P407)である。
【0206】
一態様では、本発明は、(a)組換えレンチウイルスベクターの有効用量;(b)TRIS非含有緩衝系;(c)塩;(d)界面活性剤;(e)炭水化物、および(f)強化トランスサイレチン(ET)プロモーターを含む組換えレンチウイルスベクター調製物を対象とし、ここで医薬組成物はヒト患者への全身投与に適する。ある特定の実施形態では、ベクターはさらに、配列番号1もしくは配列番号2に示される第VIII因子(FVIII)コード配列または配列番号3に示される第IX因子(FIX)コード配列と少なくとも80%同一なヌクレオチド配列を含み、ここで医薬組成物はヒト患者への全身投与に適する。ある特定の実施形態では、ベクターは、配列番号1または配列番号2に示される第VIII因子(FVIII)コード配列を含む。ある特定の実施形態では、ベクターは、配列番号3に示される第IX因子(FIX)コード配列を含む。
【0207】
ある特定の実施形態では、ベクターはさらに、VSV-Gまたはその断片をコードするヌクレオチド配列を含む。ある特定の実施形態では、緩衝系のpHは、6.0~8.0の間である。ある特定の実施形態では、緩衝系はリン酸緩衝液またはヒスチジン緩衝液である。ある特定の実施形態では、リン酸緩衝液またはヒスチジン緩衝液の濃度は、5mM~30mMの間である。ある特定の実施形態では、リン酸緩衝液の濃度は、約10~約20mM、約10~約15mM、約20~約30mM、約20~約25mM、または約15~約20mMである。ある特定の実施形態では、塩は塩化物塩である。ある特定の実施形態では、塩化物塩の濃度は、80mM~150mMの間である。ある特定の実施形態では、塩の濃度は、約100mM、約110mM、約130mM、または約150mMである。ある特定の実施形態では、界面活性剤はポロクサマーまたはポリソルベートである。ある特定の実施形態では、ポロクサマーまたはポリソルベートの濃度は、0.01%(w/v)~0.1%(w/v)の間である。ある特定の実施形態では、炭水化物はスクロースである。ある特定の実施形態では、炭水化物の濃度は、0.5%(w/v)~5%(w/v)の間である。ある特定の実施形態では、塩化物塩はNaClである。ある特定の実施形態では、ポロクサマーは、ポロクサマー101(P101)、ポロクサマー105(P105)、ポロクサマー108(P108)、ポロクサマー122(P122)、ポロクサマー123(P123)、ポロクサマー124(P124)、ポロクサマー181(P181)、ポロクサマー182(P182)、ポロクサマー183(P183)、ポロクサマー184(P184)、ポロクサマー185(P185)、ポロクサマー188(P188)、ポロクサマー212(P212)、ポロクサマー215(P215)、ポロクサマー217(P217)、ポロクサマー231(P231)、ポロクサマー234(P234)、ポロクサマー235(P235)、ポロクサマー237(P237)、ポロクサマー238(P238)、ポロクサマー282(P282)、ポロクサマー284(P284)、ポロクサマー288(P288)、ポロクサマー331(P331)、ポロクサマー333(P333)、ポロクサマー334(P334)、ポロクサマー335(P335)、ポロクサマー338(P338)、ポロクサマー401(P401)、ポロクサマー402(P402)、ポロクサマー403(P403)、ポロクサマー407(P407)、およびそれらの組合せからなる群から選択される。ある特定の実施形態では、ポリソルベートは、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、およびそれらの組合せからなる群から選択される。ある特定の実施形態では、リン酸緩衝液またはヒスチジン緩衝液のpHは、6.1、6.3、6.5、6.7、6.9、7.1、7.3、7.5、7.7、または7.9である。ある特定の実施形態では、リン酸緩衝液またはヒスチジン緩衝液の濃度は、10mM、15mM、20mM、または25mMである。ある特定の実施形態では、塩化物塩は、100mM、110mM、130mM、または150mMである。ある特定の実施形態では、ポロクサマーまたはポリソルベートの濃度は、0.03%(w/v)、0.05%(w/v)、0.07%(w/v)、または0.09%(w/v)である。ある特定の実施形態では、炭水化物の濃度は、1%(w/v)、2%(w/v)、3%(w/v)、または4%(w/v)である。ある特定の実施形態では、ポロクサマーはポロクサマー188(P188)である。ある特定の実施形態では、ポロクサマーはポロクサマー407(P407)である。一態様では、本発明は、(a)組換えレンチウイルスベクターの有効用量;(b)TRIS非含有緩衝系;(c)塩;(d)界面活性剤;(e)炭水化物、および(f)配列番号7に示されるmiR-142の標的配列と少なくとも90%同一なヌクレオチド配列を含む組換えレンチウイルスベクター調製物を対象とし、ここで医薬組成物はヒト患者への全身投与に適する。ある特定の実施形態では、ベクターはさらに、強化トランスサイレチン(ET)プロモーターを含む。ある特定の実施形態では、ベクターはさらに、配列番号1もしくは配列番号2に示される第VIII因子(FVIII)コード配列または配列番号3に示される第IX因子(FIX)コード配列と少なくとも80%同一なヌクレオチド配列を含む。ある特定の実施形態では、ベクターは、配列番号1または配列番号2に示される第VIII因子(FVIII)コード配列を含む。ある特定の実施形態では、ベクターは、配列番号3に示される第IX因子(FIX)コード配列を含む。
【0208】
ある特定の実施形態では、ベクターはさらに、VSV-Gまたはその断片をコードするヌクレオチド配列を含む。ある特定の実施形態では、緩衝系のpHは、6.0~8.0の間である。ある特定の実施形態では、緩衝系はリン酸緩衝液またはヒスチジン緩衝液である。ある特定の実施形態では、リン酸緩衝液またはヒスチジン緩衝液の濃度は、5mM~30mMの間である。ある特定の実施形態では、リン酸緩衝液の濃度は、約10~約20mM、約10~約15mM、約20~約30mM、約20~約25mM、または約15~約20mMである。ある特定の実施形態では、塩は塩化物塩である。ある特定の実施形態では、塩化物塩の濃度は、80mM~150mMの間である。ある特定の実施形態では、塩の濃度は、約100mM、約110mM、約130mM、または約150mMである。ある特定の実施形態では、界面活性剤はポロクサマーまたはポリソルベートである。ある特定の実施形態では、ポロクサマーまたはポリソルベートの濃度は、0.01%(w/v)~0.1%(w/v)の間である。ある特定の実施形態では、炭水化物はスクロースである。ある特定の実施形態では、炭水化物の濃度は、0.5%(w/v)~5%(w/v)の間である。ある特定の実施形態では、塩化物塩はNaClである。ある特定の実施形態では、ポロクサマーは、ポロクサマー101(P101)、ポロクサマー105(P105)、ポロクサマー108(P108)、ポロクサマー122(P122)、ポロクサマー123(P123)、ポロクサマー124(P124)、ポロクサマー181(P181)、ポロクサマー182(P182)、ポロクサマー183(P183)、ポロクサマー184(P184)、ポロクサマー185(P185)、ポロクサマー188(P188)、ポロクサマー212(P212)、ポロクサマー215(P215)、ポロクサマー217(P217)、ポロクサマー231(P231)、ポロクサマー234(P234)、ポロクサマー235(P235)、ポロクサマー237(P237)、ポロクサマー238(P238)、ポロクサマー282(P282)、ポロクサマー284(P284)、ポロクサマー288(P288)、ポロクサマー331(P331)、ポロクサマー333(P333)、ポロクサマー334(P334)、ポロクサマー335(P335)、ポロクサマー338(P338)、ポロクサマー401(P401)、ポロクサマー402(P402)、ポロクサマー403(P403)、ポロクサマー407(P407)、およびそれらの組合せからなる群から選択される。ある特定の実施形態では、ポリソルベートは、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、およびそれらの組合せからなる群から選択される。ある特定の実施形態では、リン酸緩衝液またはヒスチジン緩衝液のpHは、6.1、6.3、6.5、6.7、6.9、7.1、7.3、7.5、7.7、または7.9である。ある特定の実施形態では、リン酸緩衝液またはヒスチジン緩衝液の濃度は、10mM、15mM、20mM、または25mMである。ある特定の実施形態では、塩化物塩は、100mM、110mM、130mM、または150mMである。ある特定の実施形態では、ポロクサマーまたはポリソルベートの濃度は、0.03%(w/v)、0.05%(w/v)、0.07%(w/v)、または0.09%(w/v)である。ある特定の実施形態では、炭水化物の濃度は、1%(w/v)、2%(w/v)、3%(w/v)、または4%(w/v)である。ある特定の実施形態では、ポロクサマーはポロクサマー188(P188)である。ある特定の実施形態では、ポロクサマーはポロクサマー407(P407)である。
【0209】
一態様では、本発明は、組換えレンチウイルスベクター調製物を対象とし、ここで組換えレンチウイルスベクターは、CHO細胞、HEK293細胞、BHK21細胞、PER.C6細胞、NSO細胞、およびCAP細胞を含むトランスフェクト宿主細胞から単離され、組換えレンチウイルスベクター調製物は、(a)組換えレンチウイルスベクターの有効用量;(b)TRIS非含有緩衝系;(c)塩;(d)界面活性剤;および(e)炭水化物を含み、医薬組成物はヒト患者への全身投与に適する。ある特定の実施形態では、宿主細胞はCD47陽性宿主細胞である。ある特定の実施形態では、ベクターはさらに、強化トランスサイレチン(ET)プロモーターを含む。ある特定の実施形態では、ベクターはさらに、配列番号7に示されるmiR-142の標的配列と少なくとも90%同一なヌクレオチド配列を含む。ある特定の実施形態では、ベクターはさらに、配列番号1もしくは配列番号2に示される第VIII因子(FVIII)コード配列または配列番号3に示される第IX因子(FIX)コード配列と少なくとも80%同一なヌクレオチド配列を含む。ある特定の実施形態では、ベクターは、配列番号1または配列番号2に示される第VIII因子(FVIII)コード配列を含む。ある特定の実施形態では、ベクターは、配列番号3に示される第IX因子(FIX)コード配列を含む。
【0210】
ある特定の実施形態では、ベクターはさらに、VSV-Gまたはその断片をコードするヌクレオチド配列を含む。ある特定の実施形態では、緩衝系のpHは、6.0~8.0の間である。ある特定の実施形態では、緩衝系はリン酸緩衝液またはヒスチジン緩衝液である。ある特定の実施形態では、リン酸緩衝液またはヒスチジン緩衝液の濃度は、5mM~30mMの間である。ある特定の実施形態では、リン酸緩衝液の濃度は、約10~約20mM、約10~約15mM、約20~約30mM、約20~約25mM、または約15~約20mMである。ある特定の実施形態では、塩は塩化物塩である。ある特定の実施形態では、塩化物塩の濃度は、80mM~150mMの間である。ある特定の実施形態では、塩の濃度は、約100mM、約110mM、約130mM、または約150mMである。ある特定の実施形態では、界面活性剤はポロクサマーまたはポリソルベートである。ある特定の実施形態では、ポロクサマーまたはポリソルベートの濃度は、0.01%(w/v)~0.1%(w/v)の間である。ある特定の実施形態では、炭水化物はスクロースである。ある特定の実施形態では、炭水化物の濃度は、0.5%(w/v)~5%(w/v)の間である。ある特定の実施形態では、塩化物塩はNaClである。ある特定の実施形態では、ポロクサマーは、ポロクサマー101(P101)、ポロクサマー105(P105)、ポロクサマー108(P108)、ポロクサマー122(P122)、ポロクサマー123(P123)、ポロクサマー124(P124)、ポロクサマー181(P181)、ポロクサマー182(P182)、ポロクサマー183(P183)、ポロクサマー184(P184)、ポロクサマー185(P185)、ポロクサマー188(P188)、ポロクサマー212(P212)、ポロクサマー215(P215)、ポロクサマー217(P217)、ポロクサマー231(P231)、ポロクサマー234(P234)、ポロクサマー235(P235)、ポロクサマー237(P237)、ポロクサマー238(P238)、ポロクサマー282(P282)、ポロクサマー284(P284)、ポロクサマー288(P288)、ポロクサマー331(P331)、ポロクサマー333(P333)、ポロクサマー334(P334)、ポロクサマー335(P335)、ポロクサマー338(P338)、ポロクサマー401(P401)、ポロクサマー402(P402)、ポロクサマー403(P403)、ポロクサマー407(P407)、およびそれらの組合せからなる群から選択される。ある特定の実施形態では、ポリソルベートは、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、およびそれらの組合せからなる群から選択される。ある特定の実施形態では、リン酸緩衝液またはヒスチジン緩衝液のpHは、6.1、6.3、6.5、6.7、6.9、7.1、7.3、7.5、7.7、または7.9である。ある特定の実施形態では、リン酸緩衝液またはヒスチジン緩衝液の濃度は、10mM、15mM、20mM、または25mMである。ある特定の実施形態では、塩化物塩は、100mM、110mM、130mM、または150mMである。ある特定の実施形態では、ポロクサマーまたはポリソルベートの濃度は、0.03%(w/v)、0.05%(w/v)、0.07%(w/v)、または0.09%(w/v)である。ある特定の実施形態では、炭水化物の濃度は、1%(w/v)、2%(w/v)、3%(w/v)、または4%(w/v)である。ある特定の実施形態では、ポロクサマーはポロクサマー188(P188)である。ある特定の実施形態では、ポロクサマーはポロクサマー407(P407)である。
【0211】
一態様では、本発明は、障害を有するヒト患者を治療する方法であって、(a)組換えレンチウイルスベクターの有効用量;(b)TRIS非含有緩衝系;(c)塩;(d)界面活性剤;および(e)炭水化物を含む組換えレンチウイルスベクター調製物がヒト患者に全身投与される方法を対象とし、ここで医薬組成物はヒト患者への全身投与に適する。ある特定の実施形態では、調製物は、ヒト患者に全身投与される。ある特定の実施形態では、調製物は静脈内に投与される。
【0212】
ある特定の実施形態では、障害は出血性障害である。ある特定の実施形態では、出血性障害は、血友病Aまたは血友病Bである。
【0213】
ある特定の実施形態では、ベクターはさらに、強化トランスサイレチン(ET)プロモーターを含む。ある特定の実施形態では、ベクターはさらに、配列番号7に示されるmiR-142の標的配列と少なくとも90%同一なヌクレオチド配列を含む。ある特定の実施形態では、ベクターはさらに、配列番号1もしくは配列番号2に示される第VIII因子(FVIII)コード配列または配列番号3に示される第IX因子(FIX)コード配列と少なくとも80%同一なヌクレオチド配列を含む。ある特定の実施形態では、ベクターは、配列番号1または配列番号2に示される第VIII因子(FVIII)コード配列を含む。ある特定の実施形態では、ベクターは、配列番号3に示される第IX因子(FIX)コード配列を含む。
【0214】
ある特定の実施形態では、ベクターはさらに、VSV-Gまたはその断片をコードするヌクレオチド配列を含む。ある特定の実施形態では、緩衝系のpHは、6.0~8.0の間である。ある特定の実施形態では、緩衝系はリン酸緩衝液またはヒスチジン緩衝液である。ある特定の実施形態では、リン酸緩衝液またはヒスチジン緩衝液の濃度は、5mM~30mMの間である。ある特定の実施形態では、リン酸緩衝液の濃度は、約10~約20mM、約10~約15mM、約20~約30mM、約20~約25mM、または約15~約20mMである。ある特定の実施形態では、塩は塩化物塩である。ある特定の実施形態では、塩化物塩の濃度は、80mM~150mMの間である。ある特定の実施形態では、塩の濃度は、約100mM、約110mM、約130mM、または約150mMである。ある特定の実施形態では、界面活性剤はポロクサマーまたはポリソルベートである。ある特定の実施形態では、ポロクサマーまたはポリソルベートの濃度は、0.01%(w/v)~0.1%(w/v)の間である。ある特定の実施形態では、炭水化物はスクロースである。ある特定の実施形態では、炭水化物の濃度は、0.5%(w/v)~5%(w/v)の間である。ある特定の実施形態では、塩化物塩はNaClである。ある特定の実施形態では、ポロクサマーは、ポロクサマー101(P101)、ポロクサマー105(P105)、ポロクサマー108(P108)、ポロクサマー122(P122)、ポロクサマー123(P123)、ポロクサマー124(P124)、ポロクサマー181(P181)、ポロクサマー182(P182)、ポロクサマー183(P183)、ポロクサマー184(P184)、ポロクサマー185(P185)、ポロクサマー188(P188)、ポロクサマー212(P212)、ポロクサマー215(P215)、ポロクサマー217(P217)、ポロクサマー231(P231)、ポロクサマー234(P234)、ポロクサマー235(P235)、ポロクサマー237(P237)、ポロクサマー238(P238)、ポロクサマー282(P282)、ポロクサマー284(P284)、ポロクサマー288(P288)、ポロクサマー331(P331)、ポロクサマー333(P333)、ポロクサマー334(P334)、ポロクサマー335(P335)、ポロクサマー338(P338)、ポロクサマー401(P401)、ポロクサマー402(P402)、ポロクサマー403(P403)、ポロクサマー407(P407)、およびそれらの組合せからなる群から選択される。ある特定の実施形態では、ポリソルベートは、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、およびそれらの組合せからなる群から選択される。ある特定の実施形態では、リン酸緩衝液またはヒスチジン緩衝液のpHは、6.1、6.3、6.5、6.7、6.9、7.1、7.3、7.5、7.7、または7.9である。ある特定の実施形態では、リン酸緩衝液またはヒスチジン緩衝液の濃度は、10mM、15mM、20mM、または25mMである。ある特定の実施形態では、塩化物塩は、100mM、110mM、130mM、または150mMである。ある特定の実施形態では、ポロクサマーまたはポリソルベートの濃度は、0.03%(w/v)、0.05%(w/v)、0.07%(w/v)、または0.09%(w/v)である。ある特定の実施形態では、炭水化物の濃度は、1%(w/v)、2%(w/v)、3%(w/v)、または4%(w/v)である。ある特定の実施形態では、ポロクサマーはポロクサマー188(P188)である。ある特定の実施形態では、ポロクサマーはポロクサマー407(P407)である。
【0215】
B.1.出血性障害
出血性障害は、血管損傷部位で血餅を形成する血液の能力が損なわれる結果である。出血性障害には、血友病A、血友病B、フォンビルブランド病、および稀な因子欠乏症を含む、いくつかの種類がある。血友病Aは、第VIII因子の遺伝子の突然変異または低発現によって引き起こされる第VIII因子(FVIII)の欠乏に起因し、一方、血友病Bは、第IX因子の遺伝子の突然変異または低発現によって引き起こされる第IX因子(FIX)の欠乏に起因する。
【0216】
米国疾病対策センターによれば、血友病は約5,000人の出生に1人の割合で発生する。米国には約20,000人の血友病患者がいる。すべての人種および民族が罹患している。血友病Aの頻度は血友病Bの4倍であり、血友病Aの患者の過半数が重症型の血友病を有する。血友病に罹患した人々には、生涯にわたって広範な医療モニタリングが必要である。介入がなければ、罹患個体には関節の自然出血が起こり、これは激しい痛みおよび衰弱性不動を生じさせる。出血が筋肉内に及ぶとその組織に血液の蓄積が生じ、一方、頭頸部における自然出血は、直ちに治療されなければ窒息を引き起こす可能性がある。手術、事故による軽度の負傷、または抜糸の後の腎出血および重度の出血もよくみられる。
【0217】
本明細書には、それを必要とする対象における出血性疾患または状態を治療するために使用される製剤が開示される。出血性疾患または状態は、出血性凝固障害、関節血症、筋肉出血、口内出血、出血、筋肉への出血、口腔内出血、外傷、頭部外傷、胃腸出血、頭蓋内出血、腹腔内出血、胸腔内出血、骨折、中枢神経系出血、咽頭後隙における出血、後腹膜腔における出血、腸腰筋鞘における出血、およびそれらの任意の組合せからなる群から選択される。さらに他の実施形態では、対象は、手術を受けることが予定されている。さらに他の実施形態では、治療は予防的またはオンデマンドである。
【0218】
レンチウイルスベクター(LV)の安定で効力のある製剤を使用した遺伝子療法は、十分なレベルの機能的な第VIII因子または第IX因子の発現をもたらす、第VIII因子または第IX因子遺伝子の細胞への安定した組み込みを通じて、血友病AまたはBに罹患した個体の治療において大きな有望性を示す。
【0219】
体細胞遺伝子療法は、出血性障害に対する可能性のある治療として検討されている。遺伝子療法は、各々の凝固因子をコードするベクターの単回投与後にFVIIIまたはFIXの連続的な内因性産生を通じて疾患を治癒させる可能性があることから、血友病に対する特に魅力的な治療である。血友病A(FVIIIの欠乏)および血友病B(FIXの欠乏)は、その臨床病態が血漿中を微量(200ng/ml)に循環する単一の遺伝子産物(FVIIIまたはFIX)の欠如に完全に起因するため、遺伝子補充アプローチによく適する。
【0220】
レンチウイルスは、その収容力が大きく、組み込みを介して導入遺伝子の発現を維持する能力があることから、遺伝子送達ビヒクルとして注目を集めている。レンチウイルスは、過去10年間にわたり、数多くのエクスビボ細胞療法臨床プログラムで評価され、有望な有効性および安全性プロファイルが示されており、広く経験を得ている。レンチウイルスのインビボ遺伝子療法における使用が一般に認められつつあることから、長期貯蔵のためにレンチウイルスの安定性を高める、改良された製剤を提供することが、当技術分野で必要とされている。
【0221】
本開示は、レンチウイルス安定性を付与し、長期冷凍貯蔵を可能にする製剤化緩衝液またはビヒクルを提供することによって、当技術分野における重要な必要性を満たす。ある特定の例示的な実施形態では、製剤化緩衝液は、投与経路が全身性である場合、レンチウイルス安定性を付与し、長期冷凍貯蔵を可能にする。一部の実施形態では、レンチウイルスは精製後に、本開示の製剤化緩衝液またはビヒクル中で処理される。製剤化されると、レンチウイルスは凍結貯蔵される。本発明の製剤化緩衝液またはビヒクルは、凍結および解凍ならびに高温への曝露に対して、より高い安定性を提供する。
【0222】
本明細書には、対象における発現の増加を示し、遺伝子治療の方法に使用された場合により高い治療効果をもたらす可能性のある、コドン最適化FVIII配列またはコドン最適化FIX配列を含むレンチウイルスベクターが提供される。本開示の実施形態は、本明細書に記載されるように、FVIII活性を有するポリペプチドをコードする1つもしくはそれ以上のコドン最適化核酸分子を含むレンチウイルスベクター、またはFIX活性を有するポリペプチドをコードする1つもしくはそれ以上のコドン最適化核酸分子を含むレンチウイルスベクター、レンチウイルスベクターを含む宿主細胞(例えば、肝細胞)、および開示されるレンチウイルスベクターの使用方法(例えば、本明細書に開示されるレンチウイルスベクターを使用する出血性障害に対する治療)を対象とする。ある特定の実施形態では、レンチウイルスベクターは、スケールアップ処理中に、本開示の製剤化緩衝液またはビヒクル中に処理されるレンチウイルスの中にパッケージングされる。
【0223】
一般に、本明細書に開示される治療方法は、FVIII凝固因子をコードする少なくとも1つのコドン最適化核酸配列を含む核酸分子を含むレンチウイルスベクター、またはFIX凝固因子をコードする少なくとも1つのコドン最適化核酸配列を含む核酸分子を含むレンチウイルスベクターの投与を伴う。一部の実施形態では、FVIII凝固因子をコードする核酸配列は、好適な発現制御配列に作動可能に連結され、それは一部の実施形態では、レンチウイルスベクター(例えば、複製能欠損レンチウイルスウイルスベクター)に組み込まれる。一部の実施形態では、FIX凝固因子をコードする核酸配列は、好適な発現制御配列に作動可能に連結され、それは一部の実施形態では、レンチウイルスベクター(例えば、複製能欠損レンチウイルスウイルスベクター)に組み込まれる。
【0224】
本開示は、それを必要とする対象における出血性障害(例えば、血友病Aまたは血友病B)を治療する方法であって、FVIIIまたはFIX活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を含むレンチウイルスベクターの少なくとも1回の用量を対象に投与する工程を含む方法を提供する。ある特定の実施形態では、レンチウイルスベクターは、本発明の製剤化緩衝液中に処理されるレンチウイルスの中にパッケージングされる。ある特定の実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、表1に示されている配列番号1に示される核酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、または少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。ある特定の実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、表1に示されている配列番号1に示されるヌクレオチド配列からなる。ある特定の実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、表1に示されている配列番号2に示される核酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、または少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。ある特定の実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、表1に示されている配列番号2に示されるヌクレオチド配列からなる。ある特定の実施形態では、FIX活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、表1に示されている配列番号3に示される核酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、または少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。ある特定の実施形態では、FIX活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、表1に示されている配列番号3に示されるヌクレオチド配列からなる。
【0225】
本開示は、それを必要とする対象における出血性障害(例えば、血友病Aまたは血友病B)を治療する方法であって、FVIIIまたはFIX活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を含むレンチウイルスベクターの少なくとも1回の用量を対象に投与する工程を含む方法を提供する。ある特定の実施形態では、レンチウイルスベクターは、本発明の製剤化緩衝液またはビヒクル中に処理されるレンチウイルスの中にパッケージングされる。ある特定の実施形態では、本明細書に記載されるFVIIIまたはFIX活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を含むレンチウイルスベクターの、5×1010またはそれ未満の形質導入単位/kg(TU/kg)(または109TU/kgまたはそれ未満、もしくは108TU/kgまたはそれ未満)である少なくとも1回の用量が、対象に投与される。
【0226】
一部の実施形態では、用量は、約5.0×1010TU/kg、約4.9×1010TU/kg、約4.8×1010TU/kg、約4.7×1010TU/kg、約4.6×1010TU/kg、約4.5×1010TU/kg、約4.4×1010TU/kg、約4.3×1010TU/kg、約4.2×1010TU/kg、約4.1×1010TU/kg、約4.0×1010TU/kg、約3.9×1010TU/kg、約3.8×1010TU/kg、約3.7×1010TU/kg、約3.6×1010TU/kg、約3.5×1010TU/kg、約3.4×1010TU/kg、約3.3×1010TU/kg、約3.2×1010TU/kg、約3.1×1010TU/kg、約3.0×1010TU/kg、約2.9×1010TU/kg、約2.8×1010TU/kg、約2.7×1010TU/kg、約2.6×1010TU/kg、約2.5×1010TU/kg、約2.4×1010TU/kg、約2.3×1010TU/kg、約2.2×1010TU/kg、約2.1×1010TU/kg、約2.0×1010TU/kg、約1.9×1010TU/kg、約1.8×1010TU/kg、約1.7×1010TU/kg、約1.6×1010TU/kg、約1.5×1010TU/kg、約1.4×1010TU/kg、約1.3×1010TU/kg、約1.2×1010TU/kg、約1.1×1010TU/kg、または約1.0×1010TU/kgである。
【0227】
一部の実施形態では、用量は、約9.9×109TU/kg、約9.8×109TU/kg、約9.7×109TU/kg、約9.6×109TU/kg、約9.5×109TU/kg、約9.4×109TU/kg、約9.3×109TU/kg、約9.2×109TU/kg、約9.1×109TU/kg、約9.0×109TU/kg、約8.9×109TU/kg、約8.8×109TU/kg、約8.7×109TU/kg、約8.6×109TU/kg、約8.5×109TU/kg、約8.4×109TU/kg、約8.3×109TU/kg、約8.2×109TU/kg、約8.1×109TU/kg、約8.0×109TU/kg、約7.9×109TU/kg、約7.8×109TU/kg、約7.7×109TU/kg、約7.6×109TU/kg、約7.5×109TU/kg、約7.4×109TU/kg、約7.3×109TU/kg、約7.2×109TU/kg、約7.1×109TU/kg、約7.0×109TU/kg、約6.9×109TU/kg、約6.8×109TU/kg、約6.7×109TU/kg、約6.6×109TU/kg、約6.5×109TU/kg、約6.4×109TU/kg、約6.3×109TU/kg、約6.2×109TU/kg、約6.1×109TU/kg、約6.0×109TU/kg、約5.9×109TU/kg、約5.8×109TU/kg、約5.7×109TU/kg、約5.6×109TU/kg、約5.5×109TU/kg、約5.4×109TU/kg、約5.3×109TU/kg、約5.2×109TU/kg、約5.1×109TU/kg、約5.0×109TU/kg、約4.9×109TU/kg、約4.8×109TU/kg、約4.7×109TU/kg、約4.6×109TU/kg、約4.5×109TU/kg、約4.4×109TU/kg、約4.3×109TU/kg、約4.2×109TU/kg、約4.1×109TU/kg、約4.0×109TU/kg、約3.9×109TU/kg、約3.8×109TU/kg、約3.7×109TU/kg、約3.6×109TU/kg、約3.5×109TU/kg、約3.4×109TU/kg、約3.3×109TU/kg、約3.2×109TU/kg、約3.1×109TU/kg、約3.0×109TU/kg、約2.9×109TU/kg、約2.8×109TU/kg、約2.7×109TU/kg、約2.6×109TU/kg、約2.5×109TU/kg、約2.4×109TU/kg、約2.3×109TU/kg、約2.2×109TU/kg、約2.1×109TU/kg、約2.0×109TU/kg、約1.9×109TU/kg、約1.8×109TU/kg、約1.7×109TU/kg、約1.6×109TU/kg、約1.5×109TU/kg、約1.4×109TU/kg、約1.3×109TU/kg、約1.2×109TU/kg、約1.1×109TU/kg、または約1.0×109TU/kgである。
【0228】
一部の実施形態では、用量は、約9.9×108TU/kg、約9.8×108TU/kg、約9.7×108TU/kg、約9.6×108TU/kg、約9.5×108TU/kg、約9.4×108TU/kg、約9.3×108TU/kg、約9.2×108TU/kg、約9.1×108TU/kg、約9.0×108TU/kg、約8.9×108TU/kg、約8.8×108TU/kg、約8.7×108TU/kg、約8.6×108TU/kg、約8.5×108TU/kg、約8.4×108TU/kg、約8.3×108TU/kg、約8.2×108TU/kg、約8.1×108TU/kg、約8.0×108TU/kg、約7.9×108TU/kg、約7.8×108TU/kg、約7.7×108TU/kg、約7.6×108TU/kg、約7.5×108TU/kg、約7.4×108TU/kg、約7.3×108TU/kg、約7.2×108TU/kg、約7.1×108TU/kg、約7.0×108TU/kg、約6.9×108TU/kg、約6.8×108TU/kg、約6.7×108TU/kg、約6.6×108TU/kg、約6.5×108TU/kg、約6.4×108TU/kg、約6.3×108TU/kg、約6.2×108TU/kg、約6.1×108TU/kg、約6.0×108TU/kg、約5.9×108TU/kg、約5.8×108TU/kg、約5.7×108TU/kg、約5.6×108TU/kg、約5.5×108TU/kg、約5.4×108TU/kg、約5.3×108TU/kg、約5.2×108TU/kg、約5.1×108TU/kg、約5.0×108TU/kg、約4.9×108TU/kg、約4.8×108TU/kg、約4.7×108TU/kg、約4.6×108TU/kg、約4.5×108TU/kg、約4.4×108TU/kg、約4.3×108TU/kg、約4.2×108TU/kg、約4.1×108TU/kg、約4.0×108TU/kg、約3.9×108TU/kg、約3.8×108TU/kg、約3.7×108TU/kg、約3.6×108TU/kg、約3.5×108TU/kg、約3.4×108TU/kg、約3.3×108TU/kg、約3.2×108TU/kg、約3.1×108TU/kg、約3.0×108TU/kg、約2.9×108TU/kg、約2.8×108TU/kg、約2.7×108TU/kg、約2.6×108TU/kg、約2.5×108TU/kg、約2.4×108TU/kg、約2.3×108TU/kg、約2.2×108TU/kg、約2.1×108TU/kg、約2.0×108TU/kg、約1.9×108TU/kg、約1.8×108TU/kg、約1.7×108TU/kg、約1.6×108TU/kg、約1.5×108TU/kg、約1.4×108TU/kg、約1.3×108TU/kg、約1.2×108TU/kg、約1.1×108TU/kg、または約1.0×108TU/kgである。
【0229】
一部の実施形態では、用量は、5.0×1010TU/kg未満、4.9×1010TU/kg未満、4.8×1010TU/kg未満、4.7×1010TU/kg未満、4.6×1010TU/kg未満、4.5×1010TU/kg未満、4.4×1010TU/kg未満、4.3×1010TU/kg未満、4.2×1010TU/kg未満、4.1×1010TU/kg未満、4.0×1010TU/kg未満、3.9×1010TU/kg未満、3.8×1010TU/kg未満、3.7×1010TU/kg未満、3.6×1010TU/kg未満、3.5×1010TU/kg未満、3.4×1010TU/kg未満、3.3×1010TU/kg未満、3.2×1010TU/kg未満、3.1×1010TU/kg未満、3.0×1010TU/kg未満、2.9×1010TU/kg未満、2.8×1010TU/kg未満、2.7×1010TU/kg未満、2.6×1010TU/kg未満、2.5×1010TU/kg未満、2.4×1010TU/kg未満、2.3×1010TU/kg未満、2.2×1010TU/kg未満、2.1×1010TU/kg未満、2.0×1010TU/kg未満、1.9×1010TU/kg未満、1.8×1010TU/kg未満、1.7×1010TU/kg未満、1.6×1010TU/kg未満、1.5×1010TU/kg未満、1.4×1010TU/kg未満、1.3×1010TU/kg未満、1.2×1010TU/kg未満、1.1×1010TU/kg、または1.0×1010TU/kg未満である。
【0230】
一部の実施形態では、用量は、9.9×109TU/kg未満、9.8×109TU/kg未満、9.7×109TU/kg未満、9.6×109TU/kg未満、9.5×109TU/kg未満、9.4×109TU/kg未満、9.3×109TU/kg未満、9.2×109TU/kg未満、9.1×109TU/kg未満、9.0×109TU/kg未満、8.9×109TU/kg未満、8.8×109TU/kg未満、8.7×109TU/kg未満、8.6×109TU/kg未満、8.5×109TU/kg未満、8.4×109TU/kg未満、8.3×109TU/kg未満、8.2×109TU/kg未満、8.1×109TU/kg未満、8.0×109TU/kg未満、7.9×109TU/kg未満、7.8×109TU/kg未満、7.7×109TU/kg未満、7.6×109TU/kg未満、7.5×109TU/kg未満、7.4×109TU/kg未満、7.3×109TU/kg未満、7.2×109TU/kg未満、7.1×109TU/kg未満、7.0×109TU/kg未満、6.9×109TU/kg未満、6.8×109TU/kg未満、6.7×109TU/kg未満、6.6×109TU/kg未満、6.5×109TU/kg未満、6.4×109TU/kg未満、6.3×109TU/kg未満、6.2×109TU/kg未満、6.1×109TU/kg未満、6.0×109TU/kg未満、5.9×109TU/kg未満、5.8×109TU/kg未満、5.7×109TU/kg未満、5.6×109TU/kg未満、5.5×109TU/kg未満、5.4×109TU/kg未満、5.3×109TU/kg未満、5.2×109TU/kg未満、5.1×109TU/kg未満、5.0×109TU/kg未満、4.9×109TU/kg未満、4.8×109TU/kg未満、4.7×109TU/kg未満、4.6×109TU/kg未満、4.5×109TU/kg未満、4.4×109TU/kg未満、4.3×109TU/kg未満、4.2×109TU/kg未満、4.1×109TU/kg未満、4.0×109TU/kg未満、3.9×109TU/kg未満、3.8×109TU/kg未満、3.7×109TU/kg未満、3.6×109TU/kg未満、3.5×109TU/kg未満、3.4×109TU/kg未満、3.3×109TU/kg未満、3.2×109TU/kg未満、3.1×109TU/kg未満、3.0×109TU/kg未満、2.9×109TU/kg未満、2.8×109TU/kg未満、2.7×109TU/kg未満、2.6×109TU/kg未満、2.5×109TU/kg未満、2.4×109TU/kg未満、2.3×109TU/kg未満、2.2×109TU/kg未満、2.1×109TU/kg未満、2.0×109TU/kg未満、1.9×109TU/kg未満、1.8×109TU/kg未満、1.7×109TU/kg未満、1.6×109TU/kg未満、1.5×109TU/kg未満、1.4×109TU/kg未満、1.3×109TU/kg未満、1.2×109TU/kg未満、1.1×109TU/kg、または1.0×109TU/kg未満である。
【0231】
一部の実施形態では、用量は、9.9×108TU/kg未満、9.8×108TU/kg未満、9.7×108TU/kg未満、9.6×108TU/kg未満、9.5×108TU/kg未満、9.4×108TU/kg未満、9.3×108TU/kg未満、9.2×108TU/kg未満、9.1×108TU/kg未満、9.0×108TU/kg未満、8.9×108TU/kg未満、8.8×108TU/kg未満、8.7×108TU/kg未満、8.6×108TU/kg未満、8.5×108TU/kg未満、8.4×108TU/kg未満、8.3×108TU/kg未満、8.2×108TU/kg未満、8.1×108TU/kg未満、8.0×108TU/kg未満、7.9×108TU/kg未満、7.8×108TU/kg未満、7.7×108TU/kg未満、7.6×108TU/kg未満、7.5×108TU/kg未満、7.4×108TU/kg未満、7.3×108TU/kg未満、7.2×108TU/kg未満、7.1×108TU/kg未満、7.0×108TU/kg未満、6.9×108TU/kg未満、6.8×108TU/kg未満、6.7×108TU/kg未満、6.6×108TU/kg未満、6.5×108TU/kg未満、6.4×108TU/kg未満、6.3×108TU/kg未満、6.2×108TU/kg未満、6.1×108TU/kg未満、6.0×108TU/kg未満、5.9×108TU/kg未満、5.8×108TU/kg未満、5.7×108TU/kg未満、5.6×108TU/kg未満、5.5×108TU/kg未満、5.4×108TU/kg未満、5.3×108TU/kg未満、5.2×108TU/kg未満、5.1×108TU/kg未満、5.0×108TU/kg未満、4.9×108TU/kg未満、4.8×108TU/kg未満、4.7×108TU/kg未満、4.6×108TU/kg未満、4.5×108TU/kg未満、4.4×108TU/kg未満、4.3×108TU/kg未満、4.2×108TU/kg未満、4.1×108TU/kg未満、4.0×108TU/kg未満、3.9×108TU/kg未満、3.8×108TU/kg未満、3.7×108TU/kg未満、3.6×108TU/kg未満、3.5×108TU/kg未満、3.4×108TU/kg未満、3.3×108TU/kg未満、3.2×108TU/kg未満、3.1×108TU/kg未満、3.0×108TU/kg未満、2.9×108TU/kg未満、2.8×108TU/kg未満、2.7×108TU/kg未満、2.6×108TU/kg未満、2.5×108TU/kg未満、2.4×108TU/kg未満、2.3×108TU/kg未満、2.2×108TU/kg未満、2.1×108TU/kg未満、2.0×108TU/kg未満、1.9×108TU/kg未満、1.8×108TU/kg未満、1.7×108TU/kg未満、1.6×108TU/kg未満、1.5×108TU/kg未満、1.4×108TU/kg未満、1.3×108TU/kg未満、1.2×108TU/kg未満、1.1×108TU/kg、または1.0×108TU/kg未満である。
【0232】
一部の実施形態では、用量は、1×108TU/kg~5×1010TU/kgの間、1.5×108TU/kg~5×1010TU/kgの間、2×108TU/kg~5×1010TU/kgの間、2.5×108TU/kg~5×1010TU/kgの間、3×108TU/kg~5×1010TU/kgの間、3.5×108TU/kg~5×1010TU/kgの間、4×108TU/kg~5×1010TU/kgの間、4.5×108TU/kg~5×1010TU/kgの間、5×108TU/kg~5×1010TU/kgの間、5.5×108TU/kg~5×1010TU/kgの間、6×108TU/kg~5×1010TU/kgの間、6.5×108TU/kg~5×1010TU/kgの間、7×108TU/kg~5×1010TU/kgの間、7.5×108TU/kg~5×1010TU/kgの間、8×108TU/kg~5×1010TU/kgの間、8.5×108TU/kg~5×1010TU/kgの間、9×108TU/kg~5×1010TU/kgの間、9.5×108TU/kg~5×1010TU/kgの間、1×109TU/kg~5×1010TU/kgの間、1.5×109TU/kg~5×1010TU/kgの間、2×109TU/kg~5×1010TU/kgの間、2.5×109TU/kg~5×1010TU/kgの間、3×109TU/kg~5×1010TU/kgの間、3.5×109TU/kg~5×1010TU/kgの間、4×109TU/kg~5×1010TU/kgの間、4.5×109TU/kg~5×1010TU/kgの間、5×109TU/kg~5×1010TU/kgの間、5.5×109TU/kg~5×1010TU/kgの間、6×109TU/kg~5×1010TU/kgの間、6.5×109TU/kg~5×1010TU/kgの間、7×109TU/kg~5×1010TU/kgの間、7.5×109TU/kg~5×1010TU/kgの間、8×109TU/kg~5×1010TU/kgの間、8.5×109TU/kg~5×1010TU/kgの間、9×109TU/kg~5×1010TU/kgの間、9.5×109TU/kg~5×1010TU/kgの間、1010TU/kg~5×1010TU/kgの間、1.5×1010TU/kg~5×1010TU/kgの間、2×1010TU/kg~5×1010TU/kgの間、2.5×1010TU/kg~5×1010TU/kgの間、3×1010TU/kg~5×1010TU/kgの間、3.5×1010TU/kg~5×1010TU/kgの間、4×1010TU/kg~5×1010TU/kg、または4.5×1010TU/kg~5×1010TU/kgの間である。
【0233】
一部の実施形態では、用量は、1×108TU/kg~5×1010TU/kgの間、1×108TU/kg~4.5×1010TU/kgの間、1×108TU/kg~4×1010TU/kgの間、1×108TU/kg~3.5×1010TU/kgの間、1×108TU/kg~3×1010TU/kgの間、1×108TU/kg~2.5×1010TU/kgの間、1×108TU/kg~2×1010TU/kgの間、1×108TU/kg~1.5×1010TU/kgの間、1×108TU/kg~1010TU/kgの間、1×108TU/kg~9×109TU/kgの間、1×108TU/kg~8.5×109TU/kgの間、1×108TU/kg~8×109TU/kgの間、1×108TU/kg~7.5×109TU/kgの間、1×108TU/kg~7×109TU/kgの間、1×108TU/kg~6.5×109TU/kgの間、1×108TU/kg~6×109TU/kgの間、1×108TU/kg~5.5×109TU/kgの間、1×108TU/kg~5×109TU/kgの間、1×108TU/kg~4.5×109TU/kgの間、1×108TU/kg~4×109TU/kgの間、1×108TU/kg~3.5×109TU/kgの間、1×108TU/kg~3×109TU/kgの間、1×108TU/kg~2.5×109TU/kgの間、1×108TU/kg~2×109、1×108TU/kg~1.5×109TU/kgの間、1×108TU/kg~1×109TU/kgの間、1×108TU/kg~9.5×108TU/kgの間、1×108TU/kg~9×108TU/kgの間、1×108TU/kg~8.5×108TU/kgの間、1×108TU/kg~8×108TU/kgの間、1×108TU/kg~7.5×108TU/kgの間、1×108TU/kg~7×108TU/kgの間、1×108TU/kg~6.5×108TU/kgの間、1×108TU/kg~6×108TU/kgの間、1×108TU/kg~5.5×108TU/kgの間、1×108TU/kg~5×108TU/kgの間、1×108TU/kg~4.5×108TU/kgの間、1×108TU/kg~4×108TU/kgの間、1×108TU/kg~3.5×108TU/kgの間、1×108TU/kg~3×108TU/kgの間、1×108TU/kg~2.5×108TU/kgの間、1×108TU/kg~2×108、または1×108TU/kg~1.5×108TU/kgの間である。
【0234】
一部の実施形態では、用量は、1×1010TU/kg~2×1010TU/kgの間、1.1×1010TU/kg~1.9×1010TU/kgの間、1.2×1010TU/kg~1.8×1010TU/kgの間、1.3×1010TU/kg~1.7×1010TU/kg、または1.4×1010TU/kg~1.6×1010TU/kgの間である。一部の実施形態では、用量は約1.5×1010TU/kgである。一部の実施形態では、用量は1.5×1010TU/kgである。
【0235】
一部の実施形態では、用量は、1×109TU/kg~2×109TU/kgの間、1.1×109TU/kg~1.9×109TU/kgの間、1.2×109TU/kg~1.8×109TU/kgの間、1.3×109TU/kg~1.7×109TU/kg、または1.4×109TU/kg~1.6×109TU/kgの間である。一部の実施形態では、用量は1.5×109TU/kgである。ある特定の実施形態では、用量は約3.0×109TU/kgである。
【0236】
一部の実施形態では、本開示のレンチウイルスベクターの投与後24時間、36時間、または48時間の時点での血漿中FVIII活性は、対照レンチウイルスベクターを投与された対象における血漿中FVIII活性に比して増加する。一部の実施形態では、本開示のレンチウイルスベクターの投与後24時間、36時間、または48時間の時点での血漿中FVIII活性は、対照核酸分子を投与された対象における血漿中FVIII活性に比して増加する。
【0237】
一部の実施形態では、本開示のレンチウイルスベクターの投与後24時間、36時間、または48時間の時点での血漿中FIX活性は、対照レンチウイルスベクターを投与された対象における血漿中FIX活性に比して増加する。一部の実施形態では、本開示のレンチウイルスベクターの投与後24時間、36時間、または48時間の時点での血漿中FIX活性は、対照核酸分子を投与された対象における血漿中FIX活性に比して増加する。
【0238】
一部の実施形態では、血漿中FVIII活性または血漿中FIX活性は、本開示のレンチウイルスベクターの投与後約6時間、約12時間、約18時間、約24時間、約36時間、約48時間、約3日、約4日、約5日、約6日、約7日、約8日、約9日、約10日、約11日、約12日、約13日、約14日、約15日、約16日、約17日、約18日、約19日、約20日、約21日、約22日、約23日、約24日、約25日、約26日、約27日、または約28日の時点で、対照レンチウイルスベクターまたは対照核酸分子を投与された対象に比して増加する。
【0239】
一部の実施形態では、対象における血漿中FVIII活性または血漿中FIX活性は、対象における基礎レベルに比して、対照レンチウイルスベクターまたは対照核酸分子を投与された対象におけるレベルに比して、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約11倍、少なくとも約12倍、少なくとも約13倍、少なくとも約14倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約25倍、少なくとも約30倍、少なくとも約35倍、少なくとも約40倍、少なくとも約45倍、少なくとも約50倍、少なくとも約55倍、少なくとも約60倍、少なくとも約65倍、少なくとも約70倍、少なくとも約75倍、少なくとも約80倍、少なくとも約85倍、少なくとも約90倍、少なくとも約95倍、少なくとも約100倍、少なくとも約110倍、少なくとも約120倍、少なくとも約130倍、少なくとも約140倍、少なくとも約150倍、少なくとも約160倍、少なくとも約170倍、少なくとも約180倍、少なくとも約190倍、または少なくとも約200倍に増加する。
【0240】
一部の実施形態では、レンチウイルスベクターは、単回用量または複数回用量として投与される。一部の実施形態では、レンチウイルスベクター用量は、一度に、または複数の部分用量、例えば、2つの部分用量、3つの部分用量、4つの部分用量、5つの部分用量、6つの部分用量、もしくは6つを上回る部分用量に分割して投与される。一部の実施形態では、複数のレンチウイルスベクターが投与される。
【0241】
一部の実施形態では、レンチウイルスベクターの用量は、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回、少なくとも8回、少なくとも9回、または少なくとも10回、繰り返して投与される。一部の実施形態では、レンチウイルスベクターは、静脈内注射を介して投与される。
【0242】
一部の実施形態では、対象は小児対象である。一部の実施形態では、対象は成人対象である。
【0243】
一部の実施形態では、レンチウイルスベクターは、少なくとも1つの組織特異的プロモーター、すなわち、特定の組織または細胞型におけるFVIII活性を有するポリペプチドまたはFIX活性を有するポリペプチドの発現を調節すると考えられるプロモーターを含む。一部の実施形態では、レンチウイルスベクターの中の組織特異的プロモーターは、標的肝臓細胞においてFVIII活性を有するポリペプチドの発現を選択的に強化する。一部の実施形態では、標的肝臓細胞においてFVIII活性を有するポリペプチドの発現を選択的に強化する組織特異的プロモーターは、mTTRプロモーターを含む。一部の実施形態では、標的肝臓細胞においてFIX活性を有するポリペプチドの発現を選択的に強化する組織特異的プロモーターは、APOA2プロモーター、SERPINA1(hAAT)プロモーター、mTTRプロモーター、MIR122プロモーター、ETプロモーター(GenBank第AY661265号;Vignaら、Molecular Therapy 11(5):763頁(2005年)も参照のこと)、またはその任意の組合せを含む。一部の実施形態では、標的肝臓細胞は肝細胞である。
【0244】
レンチウイルスベクターは、すべての肝臓細胞型に形質導入を行うことができるため、異なる細胞型における導入遺伝子(例えば、FVIIIまたはFIX)の発現を、レンチウイルスベクター中の異なるプロモーターを使用して制御することができる。それ故に、レンチウイルスベクターは、異なる組織または細胞型、例えば異なる肝組織または細胞型におけるFVIII導入遺伝子またはFIX導入遺伝子の発現を制御すると考えられる特異的プロモーターを含み得る。それ故に、一部の実施形態では、レンチウイルスベクターは、肝内皮組織におけるFVIII導入遺伝子もしくはFIX導入遺伝子の発現を制御すると考えられる内皮特異的プロモーター、もしくは肝細胞におけるFVIII導入遺伝子もしくはFIX導入遺伝子の発現を制御すると考えられる肝細胞特異的プロモーター、またはその両方を含むことができる。
【0245】
一部の実施形態では、レンチウイルスベクターは、肝臓以外の組織におけるFVIII導入遺伝子またはFIX導入遺伝子の発現を制御する、1つまたは複数の組織特異的プロモーターを含む。一部の実施形態では、単離された核酸分子は、標的細胞または標的組織のゲノム、例えば、肝細胞のゲノムまたは肝内皮細胞のゲノムの中に安定して組み込まれる。
【0246】
一部の実施形態では、本開示のレンチウイルスベクターの中の単離された核酸分子は、異種アミノ酸配列(例えば、半減期延長剤)をコードする異種ヌクレオチド配列をさらに含む。一部の実施形態では、異種アミノ酸配列は、免疫グロブリン定常領域またはその一部分、XTEN、トランスフェリン、アルブミン、またはPAS配列である。一部の実施形態では、異種アミノ酸配列は、ヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列のN末端もしくはC末端に連結されるか、または表2から選択される1つもしくはそれ以上の挿入部位のヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列の中の2つのアミノ酸の間に挿入される。異種ヌクレオチド配列については本明細書中にさらに説明する。
【0247】
一部の実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドは、ヒトFVIIIである。一部の実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドは、完全長FVIIIである。一部の実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドは、Bドメイン欠失FVIIIである。
【0248】
一部の実施形態では、FIX活性を有するポリペプチドは、ヒトFIXである。一部の実施形態では、FIX活性を有するポリペプチドは、完全長FIXである。一部の実施形態では、FIX活性を有するポリペプチドは、ヒトFIXのバリアントである。ある特定の実施形態では、FIX活性を有するポリペプチドは、ヒトFIXのR338Lバリアントである。ある特定の実施形態では、FIX活性を有するポリペプチドは、Paduaバリアントである。
【0249】
本明細書に開示されるレンチウイルスベクターは、治療的に有益であると考えられる、出血性凝固障害、関節血症、筋肉出血、口内出血、出血、筋肉への出血、口腔内出血、外傷、頭部外傷、胃腸出血、頭蓋内出血、腹腔内出血、胸腔内出血、骨折、中枢神経系出血、咽頭後隙における出血、後腹膜腔における出血、腸腰筋鞘における出血、およびそれらの任意の組合せからなる群から選択される出血性疾患または障害の治療のための遺伝子療法アプローチを使用して、哺乳動物、例えば、ヒト患者においてインビボで使用することができる。一実施形態では、出血性疾患または障害は血友病である。別の実施形態では、出血性疾患または障害は血友病Aである。別の実施形態では、出血性疾患または障害は血友病Bである。
【0250】
一部の実施形態では、標的細胞(例えば、肝細胞)は、患者に投与される前に、本明細書に開示されるレンチウイルスベクターにより、インビトロで処理される。ある特定の実施形態では、標的細胞(例えば、肝細胞)は、患者に投与される前に、本明細書に開示されるレンチウイルスベクターにより、インビトロで処理される。さらに別の実施形態では、患者からの細胞(例えば、肝細胞)は、患者に投与される前に、本明細書に開示されるレンチウイルスベクターにより、インビトロで処理される。
【0251】
一部の実施形態では、本明細書に開示されるレンチウイルスベクター(例えば、1010TU/kgもしくはそれ未満、109TU/kgもしくはそれ未満、または108TU/kgもしくはそれ未満で投与される)の投与後の血漿中FVIII活性は、生理的に正常なFVIIIレベルに比して、少なくとも約100%、少なくとも約110%、少なくとも約120%、少なくとも約130%、少なくとも約140%、少なくとも約150%、少なくとも約160%、少なくとも約170%、少なくとも約180%、少なくとも約190%、少なくとも約200%、少なくとも約210%、少なくとも約220%、少なくとも約230%、少なくとも約240%、少なくとも約250%、少なくとも約260%、少なくとも約270%、少なくとも約280%、少なくとも約290%、または少なくとも約300%増加する。
【0252】
一部の実施形態では、本明細書に開示されるレンチウイルスベクター(例えば、1010TU/kgもしくはそれ未満、109TU/kgもしくはそれ未満、または108TU/kgもしくはそれ未満で投与される)の投与後の血漿中FIX活性は、生理的に正常な流血中FIXレベルに比して、少なくとも約100%、少なくとも約110%、少なくとも約120%、少なくとも約130%、少なくとも約140%、少なくとも約150%、少なくとも約160%、少なくとも約170%、少なくとも約180%、少なくとも約190%、少なくとも約200%、少なくとも約210%、少なくとも約220%、少なくとも約230%、少なくとも約240%、少なくとも約250%、少なくとも約260%、少なくとも約270%、少なくとも約280%、少なくとも約290%、または少なくとも約300%増加する。
【0253】
一実施形態では、本開示のレンチウイルスベクターの投与後の血漿中FVIII活性は、生理的に正常なFVIIIレベルに比して、少なくとも約3,000%~約5,000%増加する。一部の実施形態では、本明細書に記載の第VIII因子(FVIII)活性を有するポリペプチドをコードするコドン最適化遺伝子を含むレンチウイルスベクターの投与後に、血漿中FVIII活性は、対照レンチウイルスベクターまたは対照核酸分子を投与された対象に比して、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約60倍、少なくとも約70倍、少なくとも約80倍、少なくとも約90倍、少なくとも約100倍、少なくとも約110倍、少なくとも約120倍、少なくとも約130倍、少なくとも約140倍、少なくとも約150倍、少なくとも約160倍、少なくとも約170倍、少なくとも約180倍、少なくとも約190倍、または少なくとも約200倍増加する。
【0254】
一実施形態では、本開示のレンチウイルスベクターの投与後の血漿中FIX活性は、生理的に正常な流血中FIXレベルに比して、少なくとも約3,000%~約5,000%増加する。一部の実施形態では、本明細書に記載の第IX因子(FIX)活性を有するポリペプチドをコードするコドン最適化遺伝子を含むレンチウイルスベクターの投与後に、血漿中FIX活性は、対照レンチウイルスベクターまたは対照核酸分子を投与された対象に比して、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約60倍、少なくとも約70倍、少なくとも約80倍、少なくとも約90倍、少なくとも約100倍、少なくとも約110倍、少なくとも約120倍、少なくとも約130倍、少なくとも約140倍、少なくとも約150倍、少なくとも約160倍、少なくとも約170倍、少なくとも約180倍、少なくとも約190倍、または少なくとも約200倍増加する。
【0255】
本開示はまた、それを必要とする対象における止血障害(例えば、血友病Aまたは血友病Bなどの出血性障害)を治療する、予防する、または改善する方法であって、FVIII活性を有するポリペプチドまたはFIX活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子を含むレンチウイルスベクターの治療有効量を対象に投与する工程を含む方法も提供する。
【0256】
本開示のレンチウイルスベクターによる治療、改善、および予防は、バイパス療法であってよい。バイパス療法を受ける対象は、凝固因子、例えば、FVIIIまたはFIXに対するインヒビターを既に生じているか、または凝固因子インヒビターを生じやすい状態にある。
【0257】
本開示のレンチウイルスベクターは、フィブリン塊の形成を促進することによって、止血障害を治療または予防する。本開示の核酸分子によってコードされるFVIIIまたはFIX活性を有するポリペプチドは、凝固カスケードのメンバーを活性化することができる。凝固因子は、外因性経路、内因性経路またはその両方に関与するものであり得る。
【0258】
本開示のレンチウイルスベクターは、FVIIIまたはFIXによって治療し得ることが知られている止血障害を治療するために使用することができる。本開示の方法を使用して治療し得る止血障害には、血友病A、血友病B、フォンビルブランド病、第XI因子欠乏症(PTA欠乏症)、第XII因子欠乏症、ならびにフィブリノーゲン、プロトロンビン、第V因子、第VII因子、第X因子または第XIII因子の欠乏症または構造的な異常、関節血症、筋肉出血、口内出血、出血、筋肉への出血、口腔内出血、外傷、頭部外傷、胃腸出血、頭蓋内出血、腹腔内出血、胸腔内出血、骨折、中枢神経系出血、咽頭後隙における出血、後腹膜腔における出血、腸腰筋鞘における出血が挙げられるが、これらに限定されない。
【0259】
対象への投与のための組成物としては、FVIII凝固因子またはFIX凝固因子をコードする本開示の最適化されたヌクレオチド配列を含む核酸分子を含むレンチウイルスベクター(遺伝子療法用途のため)、ならびにFVIIIまたはFIXポリペプチド分子が挙げられる。一部の実施形態では、投与のための組成物は、本開示のレンチウイルスベクターとインビボ、インビトロ、またはエクスビボで接触させた細胞である。
【0260】
一部の実施形態では、止血障害は遺伝性障害である。一実施形態では、対象は血友病Aを有する。他の実施形態では、止血障害は、FVIIIの欠乏の結果である。他の実施形態では、止血障害は、欠陥のあるFVIII凝固因子の結果であり得る。一実施形態では、対象は血友病Bを有する。他の実施形態では、止血障害は、FIXの欠乏の結果である。他の実施形態では、止血障害は、欠陥のあるFIX凝固因子の結果であり得る。
【0261】
別の実施形態では、止血障害は、後天性障害であり得る。後天性障害は、基礎にある二次性の疾患または状態に起因し得る。非関連性の状態としては、限定的ではないが、一例として、がん、自己免疫疾患、または妊娠が挙げられる。後天性障害は、老齢に、または基礎にある二次障害を治療するための薬物療法(例えば、がん化学療法)に起因し得る。
【0262】
本開示はまた、止血障害または止血障害の獲得をもたらす二次性の疾患もしくは状態を有しない対象を治療する方法にも関する。本開示はそれ故に、一般的な止血剤を必要とする対象を治療する方法であって、本開示のレンチウイルスベクターの治療有効量を投与する工程を含む方法に関する。例えば、一実施形態では、一般的な止血剤を必要とする対象は、手術を受けているか、または受けようとしている。本開示のレンチウイルスベクターは、予防薬として手術の前後に投与することができる。
【0263】
本開示のレンチウイルスベクターは、急性出血エピソードを制御するために、手術中または手術後に投与することができる。手術としては、肝移植、肝切除、または幹細胞移植が挙げられるが、これらに限定されない。
【0264】
別の実施形態では、本開示のレンチウイルスベクターは、止血障害を有しない、急性出血エピソードを有する対象を処置するために使用することができる。急性出血エピソードは、重度の外傷、例えば、手術、自動車事故、創傷、裂傷銃撃、または止血不能な出血をもたらす任意の他の外傷イベントに起因し得る。
【0265】
レンチウイルスベクターは、止血障害を有する対象を予防的に処置するために使用することができる。レンチウイルスベクターは、止血障害を有する対象において急性出血エピソードを治療するために使用することもできる。
【0266】
別の実施形態では、本明細書に開示されるレンチウイルスベクターの投与および/またはFVIIIタンパク質もしくはFIXタンパク質のその後の発現は、対象における免疫応答を誘導しない。一部の実施形態では、免疫応答は、FVIIIまたはFIXに対する抗体の発生を含む。一部の実施形態では、免疫応答は、サイトカイン分泌を含む。一部の実施形態では、免疫応答は、B細胞、T細胞、またはB細胞とT細胞の両方の活性化を含む。一部の実施形態では、免疫応答は、対象における免疫応答が、免疫応答を生じていない対象におけるFVIIIの活性に比してFVIIIタンパク質の活性を低下させる、抑制性免疫応答である。ある特定の実施形態では、本開示のレンチウイルスベクターを投与することによるFVIIIタンパク質の発現は、単離された核酸分子またはレンチウイルスベクターから発現されるFVIIIタンパク質またはFVIIIタンパク質に対する抑制性免疫応答を阻止する。
【0267】
一部の実施形態では、本開示のレンチウイルスベクターは、止血を促進する少なくとも1つの他の薬剤と組み合わせて投与される。止血を促進する前記他の薬剤は、凝固活性を有することが実証されている治療薬である。止血剤としては、限定的ではないが、一例として、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第X因子、第XI因子、第XII因子、第XIII因子、プロトロンビン、もしくはフィブリノーゲン、または前記のいずれかの活性化形態が挙げられる。凝固因子または止血剤として、抗線溶剤、例えば、イプシロン-アミノカプロン酸、トラネキサム酸を挙げることもできる。
【0268】
本開示の一実施形態では、組成物(例えば、レンチウイルスベクター)は、対象に投与された場合にFVIIIが活性化可能な形態で存在するものである。本開示の一実施形態では、組成物(例えば、レンチウイルスベクター)は、対象に投与された場合にFVIXが活性化可能な形態で存在するものである。そのような活性化可能な分子は、対象への投与後に凝固部位においてインビボで活性化し得る。
【0269】
本開示のレンチウイルスベクターは、静脈内、皮下、筋肉内に、または任意の粘膜表面を通して、例えば、経口、舌下、口腔内、舌下、経鼻、直腸、経膣により、または肺経路を介して投与することができる。レンチウイルスベクターは、所望の部位へのベクターの徐放を可能にするバイオポリマー固体支持体の中に植え込むか、またはそれに接続することができる。
【0270】
一実施形態では、レンチウイルスベクターの投与経路は、非経口的である。非経口的という用語は、本明細書中で使用する場合、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、直腸または膣投与を含む。静脈内形態の非経口投与が好ましい。投与のこれらのすべての形態は本開示の範囲内にあると明らかに企図されるが、投与のための形態は注射用溶液になると考えられ、特に静脈内または動脈内の注射または点滴のためにはそうである。通常、注射のための好適な医薬組成物は、緩衝液(例えば、酢酸、リン酸またはクエン酸緩衝液)、界面活性剤(例えば、ポリソルベート)、場合により安定化剤(例えば、ヒトアルブミン)などを含むことができる。しかし、本明細書における教示に適合する他の方法では、レンチウイルスベクターは、有害な細胞集団の部位に直接送達して、それにより、患部組織の治療剤への曝露を増加させることができる。
【0271】
非経口投与のための調製物としては、無菌の水性または非水性の溶液、懸濁液、および乳剤が挙げられる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、植物油、例えばポリエチレングリコール、オリーブ油、および注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルである。水性担体としては、食塩水および緩衝媒体を含む、水、アルコール性/水性の溶液、乳濁液または懸濁液が挙げられる。本開示では、薬学的に許容される担体としては、0.01~0.1M、好ましくは0.05Mのリン酸緩衝液または0.8%食塩水が挙げられるが、これらに限定されない。他の一般的な非経口ビヒクルとしては、リン酸ナトリウム溶液、リンゲルブドウ糖液、ブドウ糖および塩化ナトリウム、乳酸加リンゲル液、または固定油が挙げられる。静脈内ビヒクルとしては、補液および栄養素補液、電解質補液、例えば、リンゲルブドウ糖液をベースにするものが挙げられる。保存剤および他の添加物、例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート化剤、および不活性ガスが存在してもよい。
【0272】
より詳細には、注射用に適する医薬組成物としては、無菌の水性溶液(水溶性)または分散液、および無菌の注射用溶液または分散液の即時使用調製物のための無菌の粉末が挙げられる。そのような場合、組成物は無菌でなければならず、容易に注射し得る程度に流動性である必要がある。それは製造および貯蔵の条件下で安定であるべきであり、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に抗して保存されることが好ましいと考えられる。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)およびその好適な混合物を含有する、溶媒または分散媒体であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材の使用によって、分散液の場合は要求される粒子径の維持によって、および界面活性剤の使用によって、維持することができる。
【0273】
微生物活動の防止は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって達成することができる。多くの場合には、等張剤、例えば、糖、多価アルコール、例えばマンニトール、ソルビトール、または塩化ナトリウムを組成物に含めることが好ましいと考えられる。吸収を遅らせる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物に含めることによって、注射用組成物の長期吸収をもたらすことができる。
【0274】
いずれの場合にも、無菌の注射溶液は、必要に応じて、本明細書に列挙された成分の1つまたはその組合せと一緒に、活性化合物(例えば、ポリペプチド単独または他の活性剤との組合せ)を必要な量で適切な溶媒に組み込み、続いて濾過滅菌を行うことによって調製することができる。一般に、分散液は、塩基性分散媒体および上に列挙されるものからの必要とされる他の成分を含有する無菌ビヒクルに活性化合物を組み込むことによって調製される。無菌注射用溶液の調製のための無菌粉末の場合は、好ましい調製方法は、有効成分とあらかじめ濾過滅菌しておいた溶液からの任意の所望の追加成分との粉末が得られる真空乾燥および凍結乾燥である。注射のための調製物は、処理されて、アンプル、バッグ、ボトル、シリンジまたはバイアルなどの容器に充填され、当技術分野で公知の方法に従って無菌条件下で密封される。さらに、調製物をキットの形でパッケージ化して販売することができる。そのような製造品は、付随する組成物が、凝固障害に罹患しているかまたはその素因を有する対象を治療するために有用であることを示すラベルまたは添付文書を有することが好ましいと考えられる。
【0275】
また、医薬組成物を、例えば、カカオ脂または他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を含有する、坐薬または滞留浣腸として直腸投与用に製剤化することもできる。
【0276】
状態の治療のための本開示の組成物の有効用量は、投与の手段、標的部位、患者の生理的状態、患者がヒトであるかまたは動物であるか、投与される他の医薬品、および治療が予防的であるかまたは治療的であるかを含む、多くの異なる因子によって異なる。通常、患者はヒトであるが、トランスジェニック哺乳動物を含む非ヒト哺乳動物を治療することもできる。安全性および有効性を最適化するために、当業者に公知である慣行的な方法を使用して、治療投薬量を調節することができる。
【0277】
レンチウイルスベクターは、単回用量としてまたは複数回用量として投与することができ、複数回用量は連続的にまたは特定の時間間隔で投与することができる。最適な用量範囲および/または投与スケジュールを決定するために、インビトロアッセイを用いることができる。凝固因子活性を測定するインビトロアッセイは、当技術分野で公知である。加えて、有効用量を、動物モデル、例えば血友病のイヌ(Mountら、2002年、Blood 99(8):2670頁)から得られる用量反応曲線から外挿して推定することもできる。
【0278】
上記の範囲内にある中間の用量も、本開示の範囲内にあるものとする。そのような用量を、毎日、隔日、毎週または実証的分析によって決定される任意の他のスケジュールに従って、対象に投与することができる。例示的な治療は、長期間、例えば、少なくとも6カ月にわたる複数の投薬による投与を必要とする。
【0279】
本開示のレンチウイルスベクターは、複数の機会に投与することができる。単一の投薬の間隔は、週、週、月または年の単位であってよい。また、間隔が、患者で改変ポリペプチドまたは抗原の血中レベルを測定することによって指示される通りに不規則であってもよい。本開示のレンチウイルスベクターの投薬量および頻度は、患者における導入遺伝子によってコードされるFVIIIポリペプチドまたはFIXポリペプチドの半減期によって異なる。
【0280】
本開示のレンチウイルスベクターの投与の投薬量および頻度は、治療が予防的であるかまたは治療的であるかに応じて異なり得る。予防的適用では、本開示のレンチウイルスベクターを含有する組成物は、まだ疾患状態にはない患者に対して、患者の抵抗性を強化するかまたは疾患の影響を最小にするために投与される。そのような量は、「予防的有効用量」と定義される。長期間にわたって、比較的低頻度の間隔で、比較的低い投薬量が投与される。一部の患者は、残りの存命期間中、治療を受け続ける。
【0281】
本開示のレンチウイルスベクターは、場合により、治療(例えば、予防的または治療的)を必要とする障害または状態の治療において有効である他の薬剤と組み合わせて投与することができる。
【0282】
本明細書で使用する場合、補助療法と併用してまたは組み合わせての本開示のレンチウイルスベクターの投与は、その療法および開示されるポリペプチドの逐次的な、同時の、共存性の、並行性の、併存性のまたは同時発生的な投与または適用を意味する。当業者は、組み合わせる治療レジメンの様々な構成要素の投与または適用の時間を、治療の全体的な効果を強化するために調整し得ることを理解するであろう。当業者(例えば、医師)は、選択される補助療法および本明細書の教示に基づいて、不必要な実験を行わずに有効な併用療法レジメンを容易に見極めることができると考えられる。
【0283】
さらに、本開示のレンチウイルスベクターを、(例えば、併用療法レジメンを提供するために)1つまたは複数の薬剤と併用して、または組み合わせて使用し得ることが理解されるであろう。本開示のレンチウイルスベクターと組み合わせることができる例示的な薬剤としては、治療される特定の障害に対する現行の標準医療に相当する薬剤が挙げられる。そのような薬剤は、化学的または生物学的な性質のものであり得る。「生物学的」または「生物学的薬剤」という用語は、生体および/またはその産物から作製される、治療薬としての使用を目的とする任意の薬学的活性薬剤を指す。
【0284】
本開示のレンチウイルスベクターと組み合わせて使用される薬剤の量は、対象によって異なることがあり、または当技術分野で公知であるものに従って投与することができる。例えば、GOODMAN&GILMAN’S THE PHARMACOLOG ICAL BASIS OF THERAPEUTICS 1233~1287頁の、Bruce A Chabnerら、Antineoplastic Agents(Joel G.Hardmanら編、第9版、1996年)を参照のこと。別の実施形態では、標準医療に合致するそのような薬剤の量が投与される。
【0285】
ある特定の実施形態では、本開示のレンチウイルスベクターは、免疫抑制剤、抗アレルギー剤または抗炎症剤と併用して投与される。これらの薬剤は一般に、本明細書において治療される対象の免疫系を抑制またはマスキングするように作用する物質を指す。これらの薬剤には、サイトカイン産生を抑制するか、自己抗原の発現をダウンレギュレートもしくは抑制するか、またはMHC抗原をマスキングする物質が含まれる。そのような薬剤の例としては、2-アミノ-6-アリール-5置換ピリミジン;アザチオプリン;シクロホスファミド;ブロモクリプチン;ダナゾール;ダプソン;グルタルアルデヒド;MHC抗原およびMHC断片に対する抗イディオタイプ抗体;シクロスポリンA;糖質コルチコイドなどのステロイド、例えば、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、およびデキサメタゾン;抗インターフェロン-γ、-βまたは-α抗体、抗腫瘍壊死因子-α抗体、抗腫瘍壊死因子-β抗体、抗インターロイキン-2抗体および抗IL-2受容体抗体を含むサイトカインまたはサイトカイン受容体アンタゴニスト;抗CD11aおよび抗CD18抗体を含む抗LFA-1抗体;抗L3T4抗体;異種抗リンパ球グロブリン;pan-T抗体;LFA-3結合ドメインを含有する可溶性ペプチド;ストレプトキナーゼ;TGF-β;ストレプトドルナーゼ;FK506;RS-61443;デオキシスペルグアリン;ならびにラパマイシンが挙げられる。ある特定の実施形態では、薬剤は抗ヒスタミン剤である。本明細書で使用される「抗ヒスタミン剤」は、ヒスタミンの生理作用に拮抗する薬剤である。抗ヒスタミン剤の例としては、クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミン、プロメタジン、クロモリンナトリウム、アステミゾール、マレイン酸アザタジン、マレイン酸ブロフェニラミン、マレイン酸カルビノキサミン、塩酸セチリジン、フマル酸クレマスチン、塩酸シプロヘプタジン、d-マレイン酸ブロムフェニラミン、d-マレイン酸クロルフェニラミン、ジメンヒドリナート、塩酸ジフェンヒドラミン、コハク酸ドキシラミン、塩酸フェキソフェンダジン、塩酸テルフェナジン、塩酸ヒドロキシジン、ロラチジン、塩酸メクリジン、クエン酸トリペラナミン、塩酸トリペレナミン、および塩酸トリプロリジンが挙げられる。
【0286】
免疫抑制剤、抗アレルギー剤または抗炎症剤を、レンチウイルスベクター投与レジメンに組み込んでもよい。例えば、免疫抑制剤または抗炎症剤の投与を、開示されるレンチウイルスベクターの投与の前に開始してよく、その後に単回またはそれ以上の回数の投与を続けてもよい。ある特定の実施形態では、免疫抑制剤または抗炎症剤は、レンチウイルスベクターの前投薬として投与される。
【0287】
以前に考察したように、本開示のレンチウイルスベクターは、凝固障害のインビボ治療のために薬学的有効量で投与することができる。この点に関して、本開示のレンチウイルスベクターを、投与を助けて活性薬剤の安定性を促進するために製剤化し得ることが理解されるであろう。好ましくは、本開示による医薬組成物は、生理的食塩水、非毒性緩衝液、保存剤などの薬学的に許容される非毒性無菌担体を含む。当然ながら、本開示の医薬組成物は、ポリペプチドの薬学的有効量を提供するために、単回または複数回の用量で投与することができる。
【0288】
凝固系の機能を判定するために、いくつかの試験が利用可能である:活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)試験、発色アッセイ、ROTEM(登録商標)アッセイ、プロトロンビン時間(PT)試験(INRの決定にも使用される)、フィブリノーゲン試験(しばしばクラウス法による)、血小板数、血小板機能試験(しばしばPFA-100による)、TCT、出血時間、混合試験(患者の血漿を正常な血漿と混合した場合に異常が是正されるか否か)、凝固因子アッセイ、抗リン脂質抗体、D-ダイマー、遺伝子検査(例えば、V因子ライデン、プロトロンビン突然変異G20210A)、希釈ラッセル蛇毒時間(dRVVT)、その他の血小板機能試験、トロンボエラストグラフィ(TEGまたはSonoclot)、トロンボエラストメトリー(TEM(登録商標)、例えば、ROTEM(登録商標))、またはオイグロブリン溶解時間(ELT)。
【0289】
aPTT試験は、「内因性」凝固経路(接触活性化経路とも呼ばれる)および一般的な凝固経路の効力を測定する性能指数である。この試験は、市販されている組換え凝固因子、例えば、FVIIIまたはFIXの凝固活性を測定するために一般的に使用される。これは外因性経路を測定するプロトロンビン時間(PT)と併用して使用される。
【0290】
ROTEM(登録商標)分析は、止血の全体的な動態:凝固時間、クロット形成、血塊の安定性および溶解に関する情報を提供する。トロンボエラストメトリーにおける種々のパラメーターは、血漿凝固系の活性、血小板機能、線溶、またはこれらの相互作用に影響を及ぼす多くの因子に依存する。このアッセイは、二次性止血の完全な像を提供することができる。
【0291】
B.2.組織特異的発現
ある特定の実施形態では、レンチウイルスベクター内に、例えば、最適化FVIII導入遺伝子に作動可能に連結される、1つまたはそれ以上のmiRNA標的配列を含めることが有用であると考えられる。それ故に、本開示はまた、最適化FVIIIもしくは最適化FIXヌクレオチド配列に作動可能に連結されるか、または他の様式でレンチウイルスベクター内に挿入される、少なくとも1つのmiRNA配列標的も提供する。レンチウイルスベクターに含まれるmiRNA標的配列の1つを上回るコピーは、システムの有効性を高めることができる。
【0292】
異なるmiRNA標的配列も含められる。例えば、1つを上回る導入遺伝子を発現するレンチウイルスベクターは、同じであっても異なってもよい、1つを上回るmiRNA標的配列の制御下にある導入遺伝子を有し得る。miRNA標的配列は縦列性であってよいが、他の配置も含まれる。miRNA標的配列を含有する導入遺伝子発現カセットを、アンチセンスの向きでレンチウイルスベクター内に挿入することもできる。アンチセンスの向きは、ウイルス粒子の生成において、通常であればプロデューサー細胞に有毒な可能性のある遺伝子産物の発現を回避するために有用となり得る。
【0293】
他の実施形態では、レンチウイルスベクターは、同じまたは異なるmiRNA標的配列の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つまたは8つのコピーを含む。ある特定の実施形態では、レンチウイルスベクターは、いかなるmiRNA標的配列も含まない。miRNA標的配列を含めるか否か(およびその数)の選択は、意図する組織標的、要求される発現のレベルなどの公知のパラメーターによって導かれると考えられる。
【0294】
一実施形態では、標的配列は、骨髄球拘束前駆細胞において最も効果的に、およびより初期のHSPCにおいて少なくとも部分的に発現をブロックすることが報告されている、miR-223標的である。miR-223標的は、顆粒球、単球、マクロファージ、骨髄樹状細胞を含む分化した骨髄系細胞における発現をブロックすることができる。miR-223標的はまた、リンパ球系列または赤血球系列における強固な導入遺伝子発現に依拠する遺伝子療法の適用に適する可能性もある。miR-223標的はまた、ヒトHSCにおいて非常に効果的に発現をブロックすることもできる。
【0295】
別の実施形態では、標的配列は、miR142標的(tccataaagtaggaaacactaca(配列番号7))である。一実施形態では、レンチウイルスベクターは、miR-142標的配列の4つのコピーを含む。ある特定の実施形態では、造血特異的マイクロRNAの相補的配列、例えばmiR-142(142T)は、レンチウイルスベクターの3’非翻訳領域に組み込まれ、導入遺伝子をコードする転写物をmiRNA介在ダウンレギュレーションに対して感受性にする。この方法により、導入遺伝子発現を、非造血細胞では維持しながら、造血系列の抗原提示細胞(APC)で阻止することができる(Brownら、Nat Med 2006年)。この戦略は、導入遺伝子発現に対してストリンジェントな転写後制御を課すことができ、それ故に、導入遺伝子の安定した送達および長期発現を可能にする。一部の実施形態では、miR-142調節は、形質導入された細胞の免疫介在性除去を阻止し、かつ/または抗原特異的調節性T細胞(T reg)を誘導して、導入遺伝子によってコードされる抗原に対する強固な免疫寛容を媒介する。
【0296】
一部の実施形態では、標的配列は、miR181標的である。Chen C-ZおよびLodish H、Seminars in Immunology(2005年) 17(2):155~165頁は、マウス骨髄内のB細胞において特異的に発現されるmiRNAであるmiR-181を開示している(ChenおよびLodish、2005年)。それはまた、一部のヒトmiRNAが白血病に関連付けられることも開示している。
【0297】
標的配列は、miRNAに対して完全または部分的に相補的であり得る。「完全に相補的な」という用語は、標的配列が、それを認識するmiRNAの配列に対して100%相補的である核酸配列を有することを意味する。「部分的に相補的な」という用語は、標的配列が、それが認識するmiRNAの配列に対して部分的にのみ相補的であり、その際、部分的に相補的な配列が依然としてmiRNAによって認識されることを意味する。換言すれば、本開示の文脈において、部分的に相補的な標的配列は、対応するmiRNAを認識して、そのmiRNAを発現する細胞における導入遺伝子発現の阻止または低下を生じさせるのに有効である。miRNA標的配列の例は、WO2007/000668、WO2004/094642、WO2010/055413、またはWO2010/125471に記載されており、これらはその全体が参照によって本明細書に組み入れられる。
【0298】
B.3.異種ヌクレオチド配列
一部の実施形態では、単離された核酸分子は、異種ヌクレオチド配列をさらに含む。一部の実施形態では、単離された核酸分子は、少なくとも1つの異種ヌクレオチド配列をさらに含む。異種ヌクレオチド配列は、本開示のFVIIIもしくはFIXコード配列に5’末端、3’末端で連結することができるか、または中間に挿入することができる。それ故に、一部の実施形態では、異種ヌクレオチド配列によってコードされる異種アミノ酸配列は、ヌクレオチド配列によってコードされるFVIIIアミノ酸配列もしくはFIXアミノ酸配列のN末端もしくはC末端に連結されるか、またはFVIIIアミノ酸配列もしくはFIXアミノ酸配列の中の2つのアミノ酸の間に挿入される。一部の実施形態では、異種アミノ酸配列は、表2から選択される1つまたはそれ以上の挿入部位でFVIIIポリペプチドの2つのアミノ酸の間に挿入することができる。一部の実施形態では、異種アミノ酸配列は、その全体が参照によって本明細書に組み入れられる、国際公開WO2013/123457A1および同WO2015/106052A1または米国特許出願公開第2015/0158929A1号に開示される任意の部位で、本開示の核酸分子によってコードされるFVIIIポリペプチドの中に挿入することができる。
【0299】
一部の実施形態では、異種ヌクレオチド配列によってコードされる異種アミノ酸配列は、Bドメインまたはその断片の中に挿入される。一部の実施形態では、異種アミノ酸配列は、FVIIIの中の、成熟ヒトFVIII(配列番号4)のアミノ酸745に対応するアミノ酸のすぐ下流に挿入される。特定の一実施形態では、FVIIIは、成熟ヒトFVIII(配列番号4)に対応するアミノ酸746~1646の欠失を含み、異種ヌクレオチド配列によってコードされる異種アミノ酸配列は、成熟ヒトFVIII(配列番号4)に対応するアミノ酸745のすぐ下流に挿入される。
【0300】
【0301】
他の実施形態では、単離された核酸分子は、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つまたは8つの異種ヌクレオチド配列をさらに含む。一部の実施形態では、すべての異種ヌクレオチド配列は同一である。一部の実施形態では、少なくとも1つの異種ヌクレオチド配列は、他の異種ヌクレオチド配列と異なる。一部の実施形態では、本開示は、2つ、3つ、4つ、5つ、6つまたは7つを超える異種ヌクレオチド配列を縦列性に含むことができる。
【0302】
一部の実施形態では、異種ヌクレオチド配列は、アミノ酸配列をコードする。一部の実施形態では、異種ヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列は、FVIII分子の半減期を延長することができる異種部分(「半減期延長剤」)である。
【0303】
一部の実施形態では、異種部分は、本開示のタンパク質に組み込まれた場合にインビボ半減期の延長を伴う、非構造的または構造的な特徴のいずれかを有するペプチドまたはポリペプチドである。非限定的な例として、アルブミン、アルブミン断片、免疫グロブリンのFc断片、ヒト絨毛性ゴナドトロピンのβサブユニットのC末端ペプチド(CTP)、HAP配列、XTEN配列、トランスフェリンもしくはその断片、PASポリペプチド、ポリグリシンリンカー、ポリセリンリンカー、アルブミン結合部分、またはこれらのポリペプチドの任意の断片、誘導体、バリアント、もしくは組合せが挙げられる。特定の一実施形態では、異種アミノ酸配列は、免疫グロブリン定常領域もしくはその一部分、トランスフェリン、アルブミン、またはPAS配列である。
【0304】
一部の態様では、異種部分は、フォンビルブランド因子またはその断片を含む。他の関連する態様では、異種部分は、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、ポリシアル酸、またはこれらのエレメントの任意の誘導体、バリアント、もしくは組合せなどの非ポリペプチド部分に対する結合部位(例えば、システインアミノ酸)を含み得る。一部の態様では、異種部分は、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、ポリシアル酸、またはこれらのエレメントの任意の誘導体、バリアント、もしくは組合せなどの非ポリペプチド部分に対する結合部位として機能するシステインアミノ酸を含む。
【0305】
具体的な一実施形態では、第1の異種ヌクレオチド配列は、当技術分野で公知の半減期延長性分子である第1の異種部分をコードし、第2の異種ヌクレオチド配列は、当技術分野で公知の半減期延長性分子であってもよい第2の異種部分をコードする。ある特定の実施形態では、第1の異種部分(例えば、第1のFc部分)および第2の異種部分(例えば、第2のFc部分)は、互いに会合して二量体を形成する。一実施形態では、第2の異種部分は第2のFc部分であり、ここで第2のFc部分は、第1の異種部分、例えば、第1のFc部分に連結しているかまたはそれと会合する。例えば、第2の異種部分(例えば、第2のFc部分)は、リンカーによって第1の異種部分(例えば、第1のFc部分)に連結することができるか、または共有結合もしくは非共有性結合によって第1の異種部分と会合することができる。
【0306】
一部の実施形態では、異種部分は、少なくとも約10個、少なくとも約100個、少なくとも約200個、少なくとも約300個、少なくとも約400個、少なくとも約500個、少なくとも約600個、少なくとも約700個、少なくとも約800個、少なくとも約900個、少なくとも約1000個、少なくとも1100個、少なくとも約1200個、少なくとも約1300個、少なくとも約1400個、少なくとも約1500個、少なくとも約1600個、少なくとも約17 00個、少なくとも約1800個、少なくとも約1900個、少なくとも約2000個、少なくとも約2500個、少なくとも約3000個、または少なくとも約4000個のアミノ酸を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなるポリペプチドである。
【0307】
他の実施形態では、異種部分は、約100~約200アミノ酸、約200~約300アミノ酸、約300~約400アミノ酸、約400~約500アミノ酸、約500~約600アミノ酸、約600~約700アミノ酸、約700~約800アミノ酸、約800~約900アミノ酸、または約900~約1000アミノ酸を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなるポリペプチドである。
【0308】
ある特定の実施形態では、異種部分は、その生物活性または機能に重大な影響を及ぼすことなく、FVIIIまたはFIXタンパク質の1つまたはそれ以上の薬物動態特性を改善する。
【0309】
ある特定の実施形態では、異種部分は、本開示のFVIIIまたはFIXタンパク質のインビボおよび/またはインビトロ半減期を延長する。他の実施形態では、異種部分は、本開示のFVIIIもしくはFIXタンパク質またはその断片(例えば、FVIIIまたはFIXタンパク質のタンパク質分解切断後の異種部分を含む断片)の可視化または局在化を促進する。本開示のFVIIIもしくはFIXタンパク質またはその断片の可視化および/または局在化は、インビボ、インビトロ、エクスビボ、またはこれらの組合せであり得る。
【0310】
他の実施形態では、異種部分は、本開示のFVIIIもしくはFIXタンパク質またはその断片(例えば、FVIIIまたはFIXタンパク質のタンパク質分解切断後の異種部分を含む断片)の安定性を高める。本明細書で使用する場合、「安定性」という用語は、環境条件(例えば、温度上昇または低下)に応じて、FVIIIまたはFIXタンパク質の1つまたはそれ以上の物理特性の維持についての当技術分野で認識される尺度を指す。ある特定の態様では、物理特性は、FVIIIまたはFIXタンパク質の共有結合構造の維持(例えば、タンパク質分解切断、望ましくない酸化または脱アミド化のないこと)である。他の態様では、物理特性は、正しくフォールディングされた状態にあるFVIIIまたはFIXタンパク質の存在(例えば、可溶性または不溶性の凝集または沈殿のないこと)でもあり得る。
【0311】
一態様では、FVIIIまたはFIXタンパク質の安定性は、FVIIIまたはFIXタンパク質の生物物理学的特性、例えば、熱安定性、pHアンフォールディングプロファイル、グリコシル化の安定な除去、溶解度、生化学的機能(例えば、タンパク質、受容体またはリガンドに結合する能力)など、および/またはこれらの組合せをアッセイすることによって測定される。別の態様では、生化学的機能は、相互作用の結合親和性によって実証される。一態様では、タンパク質安定性の尺度は、熱安定性、すなわち、熱の負荷に対する耐性である。安定性は、HPLC(高性能液体クロマトグラフィー)、SEC(サイズ排除クロマトグラフィー)、DLS(動的光散乱)などの当技術分野で公知の方法を使用して測定することができる。熱安定性を測定する方法としては、示差走査熱量測定(DSC)、示差走査蛍光定量(DSF)、円二色性(CD)、および熱負荷アッセイが挙げられるが、これらに限定されない。
【0312】
ある特定の態様では、本開示の核酸分子によってコードされるFVIIIまたはFIXタンパク質は、少なくとも1つの半減期延長剤、すなわち、FVIIIまたはFIXタンパク質のインビボ半減期を、異種部分を欠く対応するFVIIIまたはFIXタンパク質のインビボ半減期に比して増加させる、そのような異種部分を含む。FVIIIまたはFIXタンパク質のインビボ半減期は、当業者に公知の任意の方法、例えば、活性アッセイ(発色アッセイまたは一段階凝固aPTTアッセイ)、ELISA、ROTEM(登録商標)などによって決定することができる。
【0313】
一部の実施形態では、1つまたはそれ以上の半減期延長剤の存在は、FVIIIまたはFIXタンパク質の半減期を、そのような1つまたはそれ以上の半減期延長剤を欠く対応するタンパク質の半減期と比較して延長させる。半減期延長剤を含むFVIIIまたはFIXタンパク質の半減期は、そのような半減期延長剤を欠く対応するFVIIIまたはFIXタンパク質のインビボ半減期よりも、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約11倍、または少なくとも約12倍の長さである。
【0314】
一実施形態では、半減期延長剤を含むFVIIIまたはFIXタンパク質の半減期は、そのような半減期延長剤を欠く対応するタンパク質のインビボ半減期よりも、約1.5倍~約20倍、約1.5倍~約15倍、または約1.5倍~約10倍の長さである。別の実施形態では、半減期延長剤を含むFVIIIまたはFIXタンパク質の半減期は、そのような半減期延長剤を欠く対応するタンパク質のインビボ半減期と比較して、約2倍~約10倍、約2倍~約9倍、約2倍~約8倍、約2倍~約7倍、約2倍~約6倍、約2倍~約5倍、約2倍~約4倍、約2倍~約3倍、約2.5倍~約10倍、約2.5倍~約9倍、約2.5倍~約8倍、約2.5倍~約7倍、約2.5倍~約6倍、約2.5倍~約5倍、約2.5倍~約4倍、約2.5倍~約3倍、約3倍~約10倍、約3倍~約9倍、約3倍~約8倍、約3倍~約7倍、約3倍~約6倍、約3倍~約5倍、約3倍~約4倍、約4倍~約6倍、約5倍~約7倍、または約6倍~約8倍に延長される。
【0315】
他の実施形態では、半減期延長剤を含むFVIIIまたはFIXタンパク質の半減期は、少なくとも約17時間、少なくとも約18時間、少なくとも約19時間、少なくとも約20時間、少なくとも約21時間、少なくとも約22時間、少なくとも約23時間、少なくとも約24時間、少なくとも約25時間、少なくとも約26時間、少なくとも約27時間、少なくとも約28時間、少なくとも約29時間、少なくとも約30時間、少なくとも約31時間、少なくとも約32時間、少なくとも約33時間、少なくとも約34時間、少なくとも約35時間、少なくとも約36時間、少なくとも約48時間、少なくとも約60時間、少なくとも約72時間、少なくとも約84時間、少なくとも約96時間、または少なくとも約108時間である。
【0316】
さらに他の実施形態では、半減期延長剤を含むFVIIIまたはFIXタンパク質の半減期は、約15時間~約2週間、約16時間~約1週間、約17時間~約1週間、約18時間~約1週間、約19時間~約1週間、約20時間~約1週間、約21時間~約1週間、約22時間~約1週間、約23時間~約1週間、約24時間~約1週間、約36時間~約1週間、約48時間~約1週間、約60時間~約1週間、約24時間~約6日間、約24時間~約5日間、約24時間~約4日間、約24時間~約3日間、または約24時間~約2日間である。
【0317】
一部の実施形態では、半減期延長剤を含むFVIIIまたはFIXタンパク質の対象あたりの平均半減期は、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、約24時間(1日間)、約25時間、約26時間、約27時間、約28時間、約29時間、約30時間、約31時間、約32時間、約33時間、約34時間、約35時間、約36時間、約40時間、約44時間、約48時間(2日間)、約54時間、約60時間、約72時間(3日間)、約84時間、約96時間(4日間)、約108時間、約120時間(5日間)、約6日間、約7日間(1週間)、約8日間、約9日間、約10日間、約11日間、約12日間、約13日間、または約14日間である。
【0318】
1つまたはそれ以上の半減期延長剤を、FVIIIもしくはFIXのC末端もしくはN末端に融合させること、またはFVIIIもしくはFIXの内部に挿入することができる。
【0319】
B.3.a.免疫グロブリン定常領域またはその一部分
別の態様では、異種部分は、1つまたはそれ以上の免疫グロブリン定常領域またはその部分(例えば、Fc領域)を含む。一実施形態では、本開示の単離された核酸分子は、免疫グロブリン定常領域またはその一部分をコードする異種核酸配列をさらに含む。一部の実施形態では、免疫グロブリン定常領域またはその部分は、Fc領域である。
【0320】
免疫グロブリン定常領域は、CH(定常重鎖)ドメイン(CH1、CH2など)で示されるドメインから構成される。アイソタイプ(すなわち、IgG、IgM、IgA IgD、またはIgE)に応じて、定常領域は3つまたは4つのCHドメインから構成される。いくつかのアイソタイプ(例えば、IgG)定常領域は、ヒンジ領域も含有する。Janewayら、2001年、Immunobiology、Garland Publishing、N.Y.、N.Y.を参照のこと。
【0321】
本開示のFVIIIまたはFIXタンパク質を生成するための免疫グロブリン定常領域またはその一部分は、いくつかの異なる供給源から得ることができる。一実施形態では、免疫グロブリン定常領域またはその一部分は、ヒト免疫グロブリンに由来する。しかし、免疫グロブリン定常領域またはその一部分は、例えば、齧歯類(例えば、マウス、ラット、ウサギ、モルモット)または非ヒト霊長類(例えば、チンパンジー、マカクザル)種を含む、別の哺乳動物種の免疫グロブリンに由来し得ることも理解されよう。さらに、免疫グロブリン定常領域またはその一部分は、IgM、IgG、IgD、IgAおよびIgEを含む任意の免疫グロブリンクラス、ならびにIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含む任意の免疫グロブリンアイソタイプにも由来し得る。一実施形態では、ヒトアイソタイプIgG1が使用される。
【0322】
種々の免疫グロブリン定常領域の遺伝子配列(例えば、ヒト定常領域の遺伝子配列)が、公的にアクセス可能な寄託物の形態で利用可能である。特定のエフェクター機能を有する(または特定のエフェクター機能を欠く)か、または免疫原性を低下させる特定の改変を伴う定常領域ドメインの配列を選択することができる。抗体および抗体をコードする遺伝子の多くの配列が公開されており、好適なIg定常領域の配列(例えば、ヒンジ、CH2、および/もしくはCH3配列、またはその部分)を、当技術分野で認識される技法を使用して、これらの配列から導き出すことができる。続いて、前述の方法のいずれかを使用して得られる遺伝物質を変更または合成して、本開示のポリペプチドを得ることができる。この開示の範囲は、定常領域DNA配列の対立遺伝子、バリアントおよび突然変異を包含することがさらに認識されるであろう。
【0323】
免疫グロブリン定常領域またはその一部分の配列は、例えば、目的のドメインを増幅するために選択されるポリメラーゼ連鎖反応およびプライマーを使用してクローニングすることができる。抗体から免疫グロブリン定常領域またはその一部分の配列をクローニングするために、mRNAを、ハイブリドーマ、脾臓、またはリンパ細胞から単離し、DNAに逆転写させて、PCRによって抗体遺伝子を増幅することができる。PCR増幅方法は、米国特許第4,683,195号;同第4,683,202号;同第4,800,159号;同第4,965,188号;および例えば、「PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications」、Innisら編、Academic Press、San Diego、CA(1990年);Hoら、1989年、Gene 77:51頁;Hortonら、1993年、Methods Enzymol.217:270頁に詳述されている。PCRは、コンセンサス定常領域のプライマーによって、または公開された重鎖および軽鎖のDNAおよびアミノ酸配列に基づく、より特異的なプライマーによって開始することができる。PCRは、抗体の軽鎖および重鎖をコードするDNAクローンを単離するためにも使用することができる。この場合には、コンセンサスプライマー、またはより大きな同種プローブ、例えばマウス定常領域のプローブによって、ライブラリーをスクリーニングすることができる。抗体遺伝子の増幅に好適な多数のプライマーセットが、当技術分野で公知である(例えば、精製抗体のN末端配列に基づく5’プライマー(BenharおよびPastan.1994年、Protein Engineering 7:1509頁);cDNA末端の迅速増幅(Ruberti,F.ら、1994年、J.Immunol.Methods 173:33頁);抗体リーダー配列(Larrickら、1989年、Biochem.Biophys.Res.Commun.160:1250頁)。抗体配列のクローニングは、1995年1月25日に出願されたNewmanらの米国特許第5,658,570号にさらに記載されており、これは参照によって本明細書に組み入れられる。
【0324】
本明細書で使用される免疫グロブリン定常領域は、すべてのドメインおよびヒンジ領域またはそれらの部分を含むことができる。一実施形態では、免疫グロブリン定常領域またはその一部分は、CH2ドメイン、CH3ドメイン、およびヒンジ領域、すなわち、Fc領域またはFcRn結合パートナーを含む。
【0325】
本明細書で使用する場合、「Fc領域」という用語は、ネイティブIgのFc領域に対応するポリペプチドの部分として、すなわち、その2つの重鎖の各々のFcドメインの二量体会合によって形成される部分として定義される。ネイティブFc領域は、別のFc領域とホモ二量体を形成する。対照的に、「遺伝子的に融合されるFc領域」または「単鎖Fc領域」(scFc領域)という用語は、本明細書で使用する場合、単一ポリペプチド鎖内で遺伝子的に連結される(すなわち、単一の連続した遺伝子配列でコードされる)Fcドメインから構成される合成二量体Fc領域を指す。その全体が参照によって本明細書に組み入れられる、国際特許出願公開WO2012/006635を参照のこと。
【0326】
一実施形態では、「Fc領域」は、パパイン切断部位のすぐ上流のヒンジ領域(すなわち、重鎖定常領域の第1の残基を114とした場合の、IgGの残基216)で始まって、抗体のC末端で終わる、単一のIg重鎖の部分を指す。したがって、完全Fc領域は、少なくともヒンジドメイン、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含む。
【0327】
免疫グロブリン定常領域またはその一部分は、FcRn結合パートナーであり得る。FcRnは成体上皮組織で活性であり、腸の管腔、肺気道、鼻腔面、膣表面、結腸および直腸表面において発現される(米国特許第6,485,726号)。FcRn結合パートナーは、FcRnに結合する免疫グロブリンの一部分である。
【0328】
FcRn受容体は、ヒトを含むいくつかの哺乳動物種から単離されている。ヒトFcRn、サルFcRn、ラットFcRn、およびマウスFcRnの配列が公知である(Storyら、1994年、J.Exp.Med.180:2377頁)。FcRn受容体は、IgG(IgA、IgM、IgD、およびIgEなどの他の免疫グロブリンクラスではなく)に比較的低いpHで結合し、IgGを管腔から漿膜の方向に経細胞的に能動輸送し、続いて間質液で見られる比較的高いpHでIgGを遊離する。これは、肺および腸の上皮(Israelら、1997年、Immunology 92:69頁)、腎近位尿細管上皮(Kobayashiら、2002年、Am.J.Physiol.Renal Physiol.282:F358頁)ならびに鼻腔上皮、膣表面、および胆道系表面を含む、成体上皮組織(米国特許第6,485,726号、同第6,030,613号、同第6,086,875号;WO03/077834;米国特許出願公開第2003-0235536A1号)において発現される。
【0329】
本開示において有用なFcRn結合パートナーは、IgG全体、IgGのFc断片、およびFcRn受容体の完全結合領域を含む他の断片を含む、FcRn受容体が特異的に結合することができる分子を範囲に含む。FcRn受容体に結合するIgGのFc部分の領域は、X線結晶学に基づいて記載されている(Burmeisterら、1994年、Nature 372:379頁)。FcのFcRnとの主な接触領域は、CH2およびCH3ドメインの接合部に近い。Fc-FcRn接触はすべて、単一のIg重鎖内である。FcRn結合パートナーとしては、IgG全体、IgGのFc断片、およびFcRnの完全結合領域を含むIgGの他の断片が挙げられる。主な接触部位としては、CH2ドメインのアミノ酸残基248、250~257、272、285、288、290~291、308~311および314、ならびにCH3ドメインのアミノ酸残基385~387、428および433~436が挙げられる。免疫グロブリンもしくは免疫グロブリン断片、または領域のアミノ酸番号付けに対してなされる言及はすべて、Kabatら、1991年、Sequences of Proteins of Immunological Interest、U.S.Department of Public Health、Bethesda、Md.に基づく。
【0330】
FcRnに結合したFc領域またはFcRn結合パートナーは、FcRnによって上皮障壁を越えて効率的に行き来し得るため、所望の治療用分子を全身投与するための非侵襲的手段を提供する。さらに、Fc領域またはFcRn結合パートナーを含む融合タンパク質は、FcRnを発現する細胞によって貪食される。しかし、これらの融合タンパク質は分解の対象とはされず、リサイクルされて再び血液循環に入るため、これらのタンパク質のインビボ半減期は延長する。ある特定の実施形態では、免疫グロブリン定常領域の部分は、典型的にはジスルフィド結合および他の非特異的相互作用を介して別のFc領域または別のFcRn結合パートナーと会合して、二量体およびより高次の多量体を形成する、Fc領域またはFcRn結合パートナーである。
【0331】
2つのFcRn受容体が単一のFc分子に結合することができる。結晶学的データから、各FcRn分子がFcホモ二量体の単一のポリペプチドに結合することが示唆される。一実施形態では、FcRn結合パートナー、例えば、IgGのFc断片を生物活性分子に連結させることにより、生物活性分子を、経口、口腔内、舌下、直腸、膣内に、経鼻的もしくは経肺経路によるエアロゾル投与として、または眼経路によって送達する手段が得られる。別の実施形態では、FVIIIタンパク質を、侵襲的に、例えば、皮下、静脈内に投与することができる。
【0332】
FcRn結合パートナー領域は、FcRn受容体が特異的に結合し、その結果、FcRn受容体によるFc領域の能動輸送を可能にする分子またはその部分である。特異的な結合とは、生理的条件下で、比較的安定である複合体を形成する2つの分子を指す。特異的結合は、高い親和性および低いないし中程度の結合能によって特徴付けられ、通常は親和性が低く結合能が中程度から高度である非特異的結合と区別される。典型的には、親和性定数KAが106M-1よりも高いか、または108M-1よりも高い場合に、結合は特異的であると考えられる。必要に応じて、非特異的結合は、結合条件を変えることによって、特異的な結合に実質的な影響を及ぼすことなく減少させ得る。適切な結合条件、例えば、分子の濃度、溶液のイオン強度、温度、結合させる時間、ブロッキング剤(例えば、血清アルブミン、乳カゼイン)の濃度を、当業者は慣行的な技法を使用して最適化することができる。
【0333】
ある特定の実施形態では、本開示の核酸分子によってコードされるFVIIIタンパク質は、短縮されているにもかかわらず、Fc領域にFc受容体(FcR)結合特性を付与するのに十分な、1つまたはそれ以上の短縮されたFc領域を含む。例えば、FcRnに結合するFc領域の部分(すなわち、FcRn結合部分)は、EUの番号付けで、IgG1のアミノ酸約282~438を含む(主要な接触部位は、CH2ドメインのアミノ酸248、250~257、272、285、288、290~291、308~311および314、ならびにCH3ドメインのアミノ酸残基385~387、428および433~436である)。それ故に、本開示のFc領域は、FcRn結合部分を含むか、またはそれからなる場合がある。FcRn結合部分は、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含む、任意のアイソタイプの重鎖に由来し得る。一実施形態では、ヒトアイソタイプIgG1の抗体由来のFcRn結合部分が使用される。別の実施形態では、ヒトアイソタイプIgG4の抗体由来のFcRn結合部分が使用される。
【0334】
Fc領域は、いくつかの異なる供給源から得ることができる。一実施形態では、ポリペプチドのFc領域は、ヒト免疫グロブリンに由来する。しかし、Fc部分が、例えば、齧歯類(例えば、マウス、ラット、ウサギ、モルモット)または非ヒト霊長類(例えば、チンパンジー、マカクザル)種を含む、別の哺乳動物種の免疫グロブリンに由来し得ることも理解されよう。さらに、Fcドメインまたはその部分は、IgM、IgG、IgD、IgAおよびIgEを含む任意の免疫グロブリンクラス、ならびにIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含む任意の免疫グロブリンアイソタイプにも由来し得る。別の実施形態では、ヒトアイソタイプIgG1が使用される。
【0335】
ある特定の実施形態では、Fcバリアントは、前記野生型Fcドメインを含むFc部分によって付与される少なくとも1つのエフェクター機能に変化をもたらす(例えば、Fc領域が、Fc受容体(例えば、FcγRI、FcγRII、またはFcγRIII)もしくは補体タンパク質(例えば、C1q)に結合するか、または抗体依存性細胞障害性(ADCC)、食作用、もしくは補体依存性細胞障害性(CDCC)を誘発する能力の改善または低下)。他の実施形態では、Fcバリアントは、操作されたシステイン残基をもたらす。
【0336】
本開示のFc領域は、エフェクター機能および/またはFcRもしくはFcRnの結合の変化(例えば、増強または低下)をもたらすことが知られている、当技術分野で認識されるFcバリアントを用いることができる。具体的には、本開示のFc領域は、例えば、そのそれぞれが参照によって本明細書に組み入れられる、国際PCT出願公開WO88/07089A1、同WO96/14339A1、同WO98/05787A1、同WO98/23289A1、同WO99/51642A1、同WO99/58572A1、同第WO00/09560A2、同WO00/32767A1、同WO00/42072A2、同WO02/44215A2、同WO02/060919A2、同WO03/074569A2、同WO04/016750A2、同WO04/029207A2、同WO04/035752A2、同WO04/063351A2、同WO04/074455A2、同WO04/099249A2、同WO05/040217A2、同WO04/044859、同WO05/070963A1、同WO05/077981A2、同WO05/092925A2、同WO05/123780A2、同WO06/019447A1、同WO06/047350A2および同WO06/085967A2;米国特許出願公開第2007/0231329号、同第2007/0231329号、同第2007/0237765号、同第2007/0237766号、同第2007/0237767号、同第2007/0243188号、同第2007/0248603号、同第2007/0286859号、同第2008/0057056号;または米国特許第5,648,260号、同第5,739,277号、同第5,834,250号、同第5,869,046号、同第6,096,871号、同第6,121,022号、同第6,194,551号、同第6,242,195号、同第6,277,375号、同第6,528,624号、同第6,538,124号、同第6,737,056号、同第6,821,505号、同第6,998,253号、同第7,083,784号、同第7,404,956号、および同第7,317,091号に開示されているアミノ酸位置のうちの1つまたはそれ以上に、変更(例えば、置換)を含むことができる。一実施形態では、具体的な変更(例えば、当技術分野において開示される1つまたはそれ以上のアミノ酸の具体的な置換)を、開示されるアミノ酸位置のうちの1つまたはそれ以上において行うことができる。別の実施形態では、開示されるアミノ酸位置のうちの1つまたはそれ以上において、異なる変更(例えば、当技術分野において開示される1つまたはそれ以上のアミノ酸位置の異なる置換)を行うことができる。
【0337】
部位特異的突然変異誘発などの十分に認識されている手順に従って、IgGのFc領域またはFcRn結合パートナーを改変して、FcRnが結合する改変されたIgGもしくはFc断片またはその部分を得ることができる。そのような改変としては、FcRn接触部位から離れた部位の改変のほかに、FcRnへの結合を保持するかまたはさらには増強する、接触部位内での改変が挙げられる。例えば、FcRnに対するFc結合親和性を著しく失うことなく、ヒトIgG1 Fc(Fc 1)における以下の単一のアミノ酸残基を置換することができる:P238A、S239A、K246A、K248A、D249A、M252A、T256A、E258A、T260A、D265A、S267A、H268A、E269A、D270A、E272A、L274A、N276A、Y278A、D280A、V282A、E283A、H285A、N286A、T289A、K290A、R292A、E293A、E294A、Q295A、Y296F、N297A、S298A、Y300F、R301A、V303A、V305A、T307A、L309A、Q311A、D312A、N315A、K317A、E318A、K320A、K322A、S324A、K326A、A327Q、P329A、A330Q、P331A、E333A、K334A、T335A、S337A、K338A、K340A、Q342A、R344A、E345A、Q347A、R355A、E356A、M358A、T359A、K360A、N361A、Q362A、Y373A、S375A、D376A、A378Q、E380A、E382A、S383A、N384A、Q386A、E388A、N389A、N390A、Y391F、K392A、L398A、S400A、D401A、D413A、K414A、R416A、Q418A、Q419A、N421A、V422A、S424A、E430A、N434A、T437A、Q438A、K439A、S440A、S444A、およびK447A、ここで例えばP238Aは、位置番号238における野生型プロリンのアラニンへの置換を表す。一例として、具体的な一実施形態では、N297A突然変異を組み込んで、高度に保存されたNグリコシル化部位を除去する。アラニンに加えて、上で特定した位置の野生型アミノ酸を他のアミノ酸で置換することもできる。突然変異を個々にFcに導入して、ネイティブFcと異なる100種を上回るFc領域を生じさせることができる。さらに、これらの個々の突然変異のうちの2つ、3つ、またはそれ以上の組合せを一緒に導入して、さらに数百ものFc領域を生じさせることができる。
【0338】
上記のうちのある特定の突然変異により、Fc領域またはFcRn結合パートナーに新たな機能を付与することができる。例えば、一実施形態では、N297Aを組み込んで、高度に保存されたN-グリコシル化部位を除去する。この突然変異の効果は、免疫原性を低下させて、それにより、Fc領域の循環血液中半減期を強化すること、およびFcRnに対する親和性を損なうことなく、Fc領域がFcγRI、FcγRIIA、FcγRIIB、およびFcγRIIIAに結合不能にすることである(Routledgeら、1995年、Transplantation 60:847頁;Friendら、1999年、Transplantation 68:1632頁;Shieldsら、1995年、J.Biol.Chem.276:6591頁)。上記の突然変異によって生じる新たな機能のさらなる例として、いくつかの場合に、FcRnに対する親和性を野生型の親和性よりも高めることができる。この親和性の増加は、「会合」速度の上昇、「解離」速度の低下、または「会合」速度の上昇および「解離」速度の低下の両方を反映し得る。FcRnに対する親和性の増加をもたらすと考えられる突然変異の例としては、T256A、T307A、E380A、およびN434Aが挙げられるが、これらに限定されない(Shieldsら、2001年、J.Biol.Chem.276:6591頁)。
【0339】
さらに、少なくとも3つのヒトFcγ受容体は、下流のヒンジ領域、一般的にはアミノ酸234~237において、IgG上の結合部位を認識すると考えられる。したがって、新たな機能および免疫原性の潜在的な減少の別の例を、この領域の突然変異、例えば、ヒトIgG1のアミノ酸233~236「ELLG」(配列番号8)を、IgG2由来の対応する配列「PVA」(1アミノ酸の欠失を有する)で置換することなどによって生じさせることができる。そのような突然変異が導入された場合には、様々なエフェクター機能を媒介するFcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIが、IgG1に結合しなくなることが示されている。WardおよびGhetie、1995年、Therapeutic Immunology 2:77頁およびArmourら、1999年、Eur.J.Immunol.29:2613頁。
【0340】
別の実施形態では、免疫グロブリン定常領域またはその一部分は、第2の免疫グロブリン定常領域またはその一部分と1つまたはそれ以上のジスルフィド結合を形成するアミノ酸配列を、ヒンジ領域またはその一部分に含む。第2の免疫グロブリン定常領域またはその一部分は、第2のポリペプチドに連結して、FVIIIタンパク質および第2のポリペプチドを一つにすることができる。一部の実施形態では、第2のポリペプチドはエンハンサー部分である。本明細書で使用する場合、「エンハンサー部分」という用語は、FVIIIの凝固促進活性を強化することが可能な分子、その断片またはポリペプチドの構成要素を指す。エンハンサー部分は、可溶性組織因子(sTF)などの補因子であるか、または凝固促進ペプチドであり得る。それ故に、FVIIIが活性化されると、エンハンサー部分が利用可能となってFVIIIの活性を強化する。
【0341】
ある特定の実施形態では、本開示の核酸分子によってコードされるFVIIIタンパク質は、免疫グロブリン定常領域またはその一部分に対するアミノ酸置換(例えば、Fcバリアント)を含み、これはIg定常領域の抗原依存性エフェクター機能、特に、タンパク質の流血中半減期を変化させる。
【0342】
B.3.b.scFc領域
別の態様では、異種部分は、scFc(単鎖Fc)領域を含む。一実施形態では、本開示の単離された核酸分子は、ScFc領域をコードする異種核酸配列をさらに含む。scFc領域は、同じ直鎖状ポリペプチド鎖内に、フォールディング(例えば、分子内または分子間フォールディング)を行って、Fcペプチドリンカーによって連結される1つの機能性scFc領域を形成することが可能な、少なくとも2つの免疫グロブリン定常領域またはその部分(例えば、Fc部分またはFcドメイン(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、またはそれ以上のFc部分またはドメイン))を含む。例えば、一実施形態では、本開示のポリペプチドは、半減期を改善する、または免疫エフェクター機能(例えば、抗体依存性細胞障害作用(ADCC)、食作用、または補体依存性細胞障害作用(CDCC))を誘発する、かつ/または製造性を改善する目的で、そのScFc領域を介して、少なくとも1つのFc受容体(例えば、FcRn、FcγR受容体(例えば、FcγRIII)、または補体タンパク質(例えば、C1q))に結合することが可能である。
【0343】
B.3.CTP
別の態様では、異種部分は、ヒト絨毛性ゴナドトロピンのβサブユニットの1つのC末端ペプチド(CTP)またはその断片、バリアントもしくは誘導体を含む。組換えタンパク質に挿入された1つまたはそれ以上のCTPペプチドは、そのタンパク質のインビボ半減期を延長させることが知られている。例えば、その全体が参照によって本明細書に組み入れられる、米国特許第5,712,122号を参照のこと。
【0344】
例示的なCTPペプチドとしては、DPRFQDSSSSKAPPPSLPSPSRLPGPSDTPIL(配列番号9)またはSSSSKAPPPSLPSPSRLPGPSDTPILPQ(配列番号10)が挙げられる。例えば、参照によって組み入れられる、米国特許出願公開第2009/0087411A1号を参照のこと。
【0345】
B.3.d.XTEN配列
一部の実施形態では、異種部分は、1つまたはそれ以上のXTEN配列、その断片、バリアントまたは誘導体を含む。本明細書で使用する場合、「XTEN配列」は、小型の親水性アミノ酸で主に構成され、生理的条件下では二次構造または三次構造をとる程度が低いかまたはとらない、天然に存在しない実質的に非反復性の配列を有する、伸長したポリペプチドを指す。異種部分として、XTENは、半減期延長部分としての役割を果たすことができる。加えて、XTENは、薬物動態パラメーターおよび溶解特性の強化を含むがこれらに限定されない、所望の特性をもたらすことができる。
【0346】
XTEN配列を含む異種部分を、本開示のタンパク質への組み込むことにより、以下の有利な特性:コンフォメーションの柔軟性、水溶解性の向上、高度なプロテアーゼ耐性、免疫原性の低さ、哺乳動物受容体への結合性の低さ、または流体力学的(またはストークス)半径の増加、のうちの1つまたはそれ以上を、タンパク質に付与することができる。
【0347】
ある特定の態様では、XTEN配列は、より長いインビボ半減期または曲線下面積(AUC)の増加といった薬物動態特性を向上させることができ、その結果、本開示のタンパク質はインビボに留まり、XTEN異種部分を有しないこと以外は同じであるタンパク質と比較して長い期間にわたって凝固促進活性を有する。
【0348】
一部の実施形態では、本開示に関して有用なXTEN配列は、約20個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個、100個、150個、200個、250個、300個、350個、400個、450個、500個、550個、600個、650個、700個、750個、800個、850個、900個、950個、1000個、1200個、1400個、1600個、1800個、または2000個を上回るアミノ酸残基を有するペプチドまたはポリペプチドである。ある特定の実施形態では、XTENは、約20~約3000個を上回るアミノ酸残基、30~約2500個を上回る残基、40~約2000個を上回る残基、50~約1500個を上回る残基、60~約1000個を上回る残基、70~約900個を上回る残基、80~約800個を上回る残基、90~約700個を上回る残基、100~約600個を上回る残基、110~約500個を上回る残基、または120~約400個を上回る残基を有するペプチドまたはポリペプチドである。特定の一実施形態では、XTENは、長さが42アミノ酸よりも長く144アミノ酸よりも短いアミノ酸配列を含む。
【0349】
本開示のXTEN配列は、5~14個(例えば、9~14個)のアミノ酸残基の1つもしくはそれ以上の配列モチーフ、または配列モチーフと少なくとも80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%同一であるアミノ酸配列を含むことができ、そのモチーフは、グリシン(G)、アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T)、グルタミン酸(E)およびプロリン(P)からなる群から選択される4~6種のアミノ酸(例えば、5種類のアミノ酸)を含むか、これらから本質的になるか、またはこれらからなる。米国特許出願第2010-0239554A1号を参照のこと。
【0350】
一部の実施形態では、XTENは、配列の約80%、または少なくとも約85%、または少なくとも約90%、または約91%、または約92%、または約93%、または約94%、または約95%、または約96%、または約97%、または約98%、または約99%または約100%が、表3から選択される単一のモチーフファミリーから選択される非重複配列の複数ユニットからなり、その結果ファミリー配列をもたらす、非重複配列モチーフを含む。
【0351】
本明細書で使用する場合、「ファミリー」は、XTENが表3からの単一モチーフカテゴリー、すなわち、AD、AE、AF、AG、AM、AQ、BC、またはBD XTENのみから選択されるモチーフを有すること、およびファミリーモチーフに由来しないXTENにおける任意の他のアミノ酸は、コードするヌクレオチドによる制限部位の組込み、切断配列の組込みを可能にするといった必要とされる特性を実現するために、またはFVIIIへのより良好な連結を実現するために選択されることを意味する。XTENファミリーの一部の実施形態では、XTEN配列は、ADモチーフファミリー、またはAEモチーフファミリー、またはAFモチーフファミリー、またはAGモチーフファミリー、またはAMモチーフファミリー、またはAQモチーフファミリー、またはBCファミリー、またはBDファミリーの非重複配列モチーフを複数ユニット含み、結果として得られるXTENは、上記の範囲の相同性を示す。他の実施形態では、XTENは、表3のモチーフファミリーのうちの2つまたはそれ以上からのモチーフ配列を複数ユニット含む。
【0352】
これらの配列は、以下にさらに詳しく説明される、モチーフのアミノ酸組成によって付与される実効電荷、親水性、二次構造の欠如、または反復性の欠如などの特性を含む、所望の物理的/化学的特徴を実現するように選択することができる。この段落で説明される上記の実施形態では、本明細書に記載される方法を使用して、XTENに組み込まれるモチーフを選択して組み立てて、約36~約3000アミノ酸残基のXTENを実現することができる。
【0353】
【0354】
本開示のキメラタンパク質において異種部分として使用し得るXTEN配列の例は、例えば、それぞれその全体が参照によって本明細書に組み入れられる、米国特許出願公開第2010/0239554A1号、同第2010/0323956A1号、同第2011/0046060A1号、同第2011/0046061A1号、同第2011/0077199A1号もしくは同第2011/0172146A1号、または国際特許出願公開WO2010/091122A1、同WO2010/144502A2、同WO2010/144508A1、同WO2011/028228A1、同WO2011/028229A1、もしくは同WO2011/028344A2に開示されている。
【0355】
XTENは、FVIIIへの挿入または連結のために様々な長さを有し得る。一実施形態では、XTEN配列の長さは、融合タンパク質において実現しようとする特性または機能に基づいて選択される。意図する特性または機能に応じて、XTENは、長さが短いかもしくは中程度の配列であってもよく、または担体としての役割を果たし得るより長い配列であってもよい。ある特定の実施形態では、XTENは、約6~約99個のアミノ酸残基という短いセグメント、約100~約399個のアミノ酸残基という中程度の長さ、および約400~約1000個、最大で約3000個のアミノ酸残基というより長い長さを含む。それ故に、FVIIIに挿入または連結されるXTENは、約6個、約12個、約36個、約40個、約42個、約72個、約96個、約144個、約288個、約400個、約500個、約576個、約600個、約700個、約800個、約864個、約900個、約1000個、約1500個、約2000個、約2500個、または最大で約3000個のアミノ酸残基長を有する場合がある。他の実施形態では、XTEN配列は、約6~約50個、約50~約100個、約100~150個、約150~250個、約250~400個、約400~約500個、約500~約900個、約900~1500個、約1500~2000個、または約2000~約3000個のアミノ酸残基長である。
【0356】
FVIIIに挿入または連結されるXTENの正確な長さは、FVIIIの活性に有害な影響を及ぼすことなく、様々であり得る。一実施形態では、本発明で使用されるXTENのうちの1つまたはそれ以上は、42個のアミノ酸、72個のアミノ酸、144個のアミノ酸、288個のアミノ酸、576個のアミノ酸、または864個のアミノ酸長を有し、XTENファミリー配列、すなわち、AD、AE、AF、AG、AM、AQ、BCまたはBDのうちの1つまたはそれ以上から選択することができる。
【0357】
一部の実施形態では、本開示で使用されるXTEN配列は、AE42、AG42、AE48、AM48、AE72、AG72、AE108、AG108、AE144、AF144、AG144、AE180、AG180、AE216、AG216、AE252、AG252、AE288、AG288、AE324、AG324、AE360、AG360、AE396、AG396、AE432、AG432、AE468、AG468、AE504、AG504、AF504、AE540、AG540、AF540、AD576、AE576、AF576、AG576、AE612、AG612、AE624、AE648、AG648、AG684、AE720、AG720、AE756、AG756、AE792、AG792、AE828、AG828、AD836、AE864、AF864、AG864、AM875、AE912、AM923、AM1318、BC864、BD864、AE948、AE1044、AE1140、AE1236、AE1332、AE1428、AE1524、AE1620、AE1716、AE1812、AE1908、AE2004A、AG948、AG1044、AG1140、AG1236、AG1332、AG1428、AG1524、AG1620、AG1716、AG1812、AG1908、AG2004、およびそれらの任意の組合せからなる群から選択される配列と少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である。米国特許出願第2010-0239554A1号を参照のこと。特定の一実施形態では、XTENは、AE42、AE72、AE144、AE288、AE576、AE864、AG42、AG72、AG144、AG288、AG576、AG864、またはそれらの任意の組合せを含む。
【0358】
本開示のキメラタンパク質において、異種部分として使用することができる例示的なXTEN配列としては、XTEN AE42-4(配列番号41)、XTEN 144-2A(配列番号42)、XTEN A144-3B(配列番号43)、XTEN AE144-4A(配列番号44)、XTEN AE144-5A(配列番号45)、XTEN AE144-6B(配列番号46)、XTEN AG144-1(配列番号47)、XTEN AG144-A(配列番号48)、XTEN AG144-B(配列番号49)、XTEN AG144-C(配列番号50)、およびXTEN AG144-F(配列番号51)が挙げられる。特定の一実施形態では、XTENは、配列番号52によってコードされる。
【0359】
一部の実施形態では、XTENのアミノ酸の100%未満が、グリシン(G)、アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T)、グルタミン酸(E)およびプロリン(P)から選択されるか、または配列の100%未満が、表3からの配列モチーフもしくは本明細書において提供されるXTEN配列からなる。そのような実施形態では、XTENの残りのアミノ酸残基は、他の14種の天然L-アミノ酸のうちのいずれかから選択されるが、XTEN配列が、親水性アミノ酸を少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または少なくとも約99%含有するように、親水性アミノ酸から優先的に選択することができる。
【0360】
コンジュゲーション構築物中に利用されるXTENにおける疎水性アミノ酸の含有率は、5%未満、または2%未満、または1%未満である。XTENの構築においてそれほど好ましくない疎水性残基としては、トリプトファン、フェニルアラニン、チロシン、ロイシン、イソロイシン、バリン、およびメチオニンが挙げられる。さらに、XTEN配列は、以下のアミノ酸:メチオニン(例えば、酸化を回避するため)、またはアスパラギンおよびグルタミン(脱アミド化を回避するため)を、5%未満または4%未満または3%未満または2%未満または1%未満または0%含有することができる。
【0361】
1つまたはそれ以上のXTEN配列を、ヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列のC末端もしくはN末端に挿入することができるか、またはヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列の2つのアミノ酸の間に挿入することができる。例えば、XTENは、表2から選択される1つまたはそれ以上の挿入部位の2つのアミノ酸の間に挿入することができる。XTEN挿入を許容するFVIIIの中の部位の例は、例えば、参照によってその全体が本明細書に組み入れられる、国際公開番号WO2013/123457A1または米国特許出願公開第2015/0158929A1号に見出すことができる。
【0362】
B.3.e.アルブミンまたはその断片、誘導体、もしくはバリアント
一部の実施形態では、異種部分は、アルブミンまたはその機能的断片を含む。完全長形態では609アミノ酸のタンパク質であるヒト血清アルブミン(HSA、またはHA)は、血清の浸透圧のかなりの部分を担っており、内因性および外因性リガンドの担体としても機能する。本明細書で使用する場合、「アルブミン」という用語は、完全長アルブミンまたはその機能的断片、バリアント、誘導体、もしくは類似体を含む。アルブミンまたはその断片もしくはバリアントの例は、その全体が参照によって本明細書に組み入れられる、米国特許出願公開第2008/0194481A1号、同第2008/0004206A1号、同第2008/0161243A1号、同第2008/0261877A1号、もしくは同第2008/0153751A1号、またはPCT特許出願公開WO2008/033413A2、同WO2009/058322A1、もしくは同WO2007/021494A2に開示されている。
【0363】
一実施形態では、本開示の核酸分子によってコードされるFVIIIタンパク質は、免疫グロブリン定常領域またはその部分(例えばFc領域)、PAS配列、HES、およびPEGからなる群から選択される第2の異種部分にさらに連結されたアルブミン、その断片、またはバリアントを含む。
【0364】
B.3.f.アルブミン結合部分
ある特定の実施形態では、異種部分は、アルブミン結合ペプチド、細菌アルブミン結合ドメイン、アルブミン結合抗体断片、またはこれらの任意の組合せを含むアルブミン結合部分である。
【0365】
例えば、アルブミン結合タンパク質は、細菌アルブミン結合タンパク質、ドメイン抗体を含む抗体または抗体断片であってよい(米国特許第6,696,245号を参照のこと)。アルブミン結合タンパク質は、例えば、連鎖球菌タンパク質Gのものなどの細菌アルブミン結合ドメインであってよい(Konig,TおよびSkerra,A.(1998年)J.Immunol.Methods 218、73~83頁)。コンジュゲーションパートナーとして使用することができるアルブミン結合ペプチドの他の例は、例えば、米国特許出願公開第2003/0069395号またはDennisら(Dennisら(2002年)J.Biol.Chem.277、35035~35043頁)に記載されている、Cys-Xaa1-Xaa2-Xaa3-Xaa4-Cysコンセンサス配列(配列番号52)(式中、Xaa1は、Asp、Asn、Ser、Thr、またはTrpであり、Xaa2は、Asn、Gln、His、Ile、Leu、またはLysであり、Xaa3は、Ala、Asp、Phe、Trp、またはTyrであり、Xaa4は、Asp、Gly、Leu、Phe、Ser、またはThrである)を有するものである。
【0366】
Kraulisら、FEBS Lett.378:190~194頁(1996年)およびLinhultら、Protein Sci.11:206~213頁(2002年)に開示されているように、連鎖球菌タンパク質G由来のドメイン3は、細菌アルブミン結合ドメインの一例である。アルブミン結合ペプチドの例として、コア配列DICLPR WGCLW(配列番号54)を有する一連のペプチドが挙げられる。例えば、Dennisら、J.Biol.Chem.2002年、277:35035~35043頁(2002)を参照のこと。アルブミン結合抗体断片の例は、その全体が参照によって本明細書に組み入れられる、MullerおよびKontermann、Curr.Op 40 in.Mol.Ther.9:319~326頁(2007年);Rooversら、Cancer Immunol.Immunother.56:303~317頁(2007年)、およびHoltら、Prot.Eng.Design Sci.、21:283~288頁(2008)に開示されている。そのようなアルブミン結合部分の例は、Trusselら、Bioconjugate Chem.20:2286~2 292頁(2009年)に開示されている、2-(3-マレイミドプロパンアミド)-6-(4-(4-ヨードフェニル)ブタンアミド)ヘキサノエート(「Albu」タグ)である。
【0367】
脂肪酸、特に、長鎖脂肪酸(LCFA)および長鎖脂肪酸様アルブミン結合化合物を使用して、本開示のFVIIIタンパク質のインビボ半減期を延長することができる。LCFA様アルブミン結合化合物の例は、16-(1-(3-(9-(((2,5-ジオキソピロリジン-1-イルオキシ)カルボニルオキシ)-メチル)-7-スルホ-9H-フルオレン-2-イルアミノ)-3-オキソプロピル)-2,5-ジオキソピロリジン-3-イルチオ)ヘキサデカン酸である(例えば、WO2010/140148を参照のこと)。
【0368】
B.3.g.PAS配列
他の実施形態では、異種部分はPAS配列である。PAS配列は、本明細書で使用する場合、アラニン残基およびセリン残基を主に含むか、またはアラニン残基、セリン残基、およびプロリン残基を主に含むアミノ酸配列であって、生理的条件下でランダムコイルコンフォメーションを形成するアミノ酸配列を意味する。したがって、PAS配列は、キメラタンパク質において異種部分の一部として使用し得るアラニン、セリン、およびプロリンを含むか、これらから本質的になるか、またはこれらからなる構成単位、アミノ酸ポリマー、または配列カセットである。ただし、PAS配列における微量構成要素としてアラニン、セリン、およびプロリン以外の残基が付加される場合にも、アミノ酸ポリマーがランダムコイルコンフォメーションを形成し得ることを当業者は周知している。
【0369】
「微量構成要素」という用語は、本明細書で使用する場合、アラニン、セリン、およびプロリン以外のアミノ酸を、PAS配列にある特定の程度まで、例えば、最大で約12%、すなわちPAS配列の100個のアミノ酸のうちの約12個、最大で約10%、すなわちPAS配列の100個のアミノ酸のうちの約10個、最大で約9%、すなわち100個のアミノ酸のうちの約9個、最大で約8%、すなわち100個のアミノ酸のうちの約8個、約6%、すなわち100個のアミノ酸のうちの約6個、約5%、すなわち100個のアミノ酸のうちの約5個、約4%、すなわち100個のアミノ酸のうちの約4個、約3%、すなわち100個のアミノ酸のうちの約3個、約2%、すなわち100個のアミノ酸のうちの約2個、約1%、すなわち100個のアミノ酸のうちの約1個を付加し得ることを意味する。アラニン、セリン、およびプロリンと異なるアミノ酸は、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Thr、Trp、Tyr、およびValからなる群から選択することができる。
【0370】
生理的条件下では、PAS配列ストレッチは、ランダムコイルコンフォメーションを形成し、それにより、FVIIIタンパク質に対して、インビボおよび/またはインビトロ安定性の増加を媒介することができる。ランダムコイルドメインそれ自体は安定な構造または機能を有しないため、FVIIIタンパク質によって媒介される生体活性は、本質的に保持される。他の実施形態では、ランダムコイルドメインを形成するPAS配列は、特に血漿中でのタンパク質分解、免疫原性、等電点/静電挙動、細胞表面受容体への結合または内部移行に関して生物学的に不活性であるが、生分解性を保っており、そのことがPEGなどの合成ポリマーを上回る明らかな利点をもたらす。
【0371】
ランダムコイルコンフォメーションを形成するPAS配列の非限定な例は、ASPAAPAPASPAAPAPSAPA(配列番号55)、AAPASPAPAAPSAPAPAAPS(配列番号56)、APSSPSPSAPSSPSPASPSS(配列番号57)、APSSPSPSAPSSPSPASPS(配列番号58)、SSPSAPSPSSPASPSPSSPA(配列番号59)、AASPAAPSAPPAAASPAAPSAPPA(配列番号60)およびASAAAPAAASAAASAPSAAA(配列番号61)またはこれらの任意の組合せからなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。PAS配列のさらなる例は、例えば、米国特許出願公開第2010/0292130A1号およびPCT特許出願公開WO2008/155134A1から公知である。
【0372】
B.3.h.HAP配列
ある特定の実施形態では、異種部分は、グリシンリッチホモアミノ酸ポリマー(HAP)である。HAP配列は、少なくとも50個のアミノ酸、少なくとも100個のアミノ酸、120個のアミノ酸、140個のアミノ酸、160個のアミノ酸、180個のアミノ酸、200個のアミノ酸、250個のアミノ酸、300個のアミノ酸、350個のアミノ酸、400個のアミノ酸、450個のアミノ酸、または500個のアミノ酸の長さを有するグリシン反復配列を含み得る。一実施形態では、HAP配列は、HAP配列に融合または連結された部分の半減期を延長することが可能である。HAP配列の非限定な例としては、(Gly)n、(Gly4Ser)nまたはS(Gly4Ser)n(式中、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20である)が挙げられるが、これに限定されない。一実施形態では、nは、20、21、22、23、24、25、26、26、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40である。別の実施形態では、nは、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、または200である。
【0373】
B.3.i.トランスフェリンまたはその断片
ある特定の実施形態では、異種部分は、トランスフェリンまたはその断片である。任意のトランスフェリンを使用して、本開示のFVIIIタンパク質を作製することができる。一例として、野生型ヒトTF(TF)は、およそ75KDaの679アミノ酸のタンパク質であり(グリコシル化は考慮せず)、2つの主要ドメイン、N(約330アミノ酸)およびC(約340アミノ酸)を有し、これらは遺伝子重複に起因すると考えられる。GenBankアクセッション番号NM001063、XM002793、M12530、XM039845、XM039847およびS95936(www.ncbi.nlm.nih.gov/)を参照されたく、これらはすべてその全体が参照によって本明細書に組み入れられる。トランスフェリンは、NドメインおよびCドメインという2つのドメインを含む。Nドメインは、N1ドメインおよびN2ドメインという2つのサブドメインを含み、Cドメインは、C1ドメインおよびC2ドメインという2つのサブドメインを含む。
【0374】
一実施形態では、トランスフェリン異種部分として、トランスフェリンスプライスバリアントが挙げられる。一例では、トランスフェリンスプライスバリアントは、ヒトトランスフェリンのスプライスバリアント、例えば、GenBankアクセッションAAA61140であり得る。別の実施形態では、キメラタンパク質のトランスフェリン部分は、トランスフェリン配列の1つまたはそれ以上のドメイン、例えば、Nドメイン、Cドメイン、N1ドメイン、N2ドメイン、C1ドメイン、C2ドメインまたはこれらの任意の組合せを含む。
【0375】
B.3.j.クリアランス受容体
ある特定の実施形態では、異種部分は、クリアランス受容体、その断片、バリアント、または誘導体である。LRP1は、第X因子などの種々のタンパク質の受容体媒介性クリアランスに関与する600KDaの膜内在性タンパク質である。例えば、Naritaら、Blood 91:555~560頁(1998)を参照のこと。
【0376】
B.3.k.フォンビルブランド因子またはその断片
ある特定の実施形態では、異種部分は、フォンビルブランド因子(VWF)またはその1つもしくはそれ以上の断片である。
【0377】
VWF(F8VWFとしても知られる)は、血漿中に存在し、内皮(バイベルパラーデ小体内)、巨核球(血小板のα顆粒)、および内皮下結合組織において恒常的に産生される大きな多量体糖タンパク質である。基本的なVWF単量体は、2813アミノ酸のタンパク質である。各単量体は、D’およびD3ドメイン(ともに第VIII因子に結合する)、A1ドメイン(血小板GPIb受容体、ヘパリン、および/またはおそらくコラーゲンに結合する)、A3ドメイン(コラーゲンに結合する)、C1ドメイン(このドメインが活性化すると、RGDドメインが血小板インテグリンαIIbβ3に結合する)、ならびにタンパク質のC末端にある「システインノット」ドメイン(VWFは、このドメインを血小板由来成長因子(PDGF)、形質転換成長因子-β(TGFβ)およびβ-ヒト絨毛性ゴナドトロピン(βHCG)と共有する)という、特有の機能を有するいくつかの特有のドメインを含有する。
【0378】
ヒトVWFの2813個の単量体アミノ酸配列は、GenBankのアクセッション番号NP000543.2として報告されている。ヒトVWFをコードするヌクレオチド配列は、GenBankのアクセッション番号NM00552.3として報告されている。配列番号62は、GenBankアクセッション番号NM00552.3に報告されているアミノ酸配列である。D’ドメインは、配列番号62のアミノ酸764から866までを含む。D3ドメインは、配列番号44のアミノ酸867から1240までを含む。
【0379】
血漿中では、FVIIIの95~98%は、完全長VWFとの強固な非共有結合複合体として循環する。この複合体の形成は、インビボでFVIIIIの適切な血漿中レベルを維持するために重要である。Lentingら、Blood.92(11):3983~96(1998年);Lentingら、J.Thromb.Haemost.5(7):1353~60頁(2007年)。重鎖の372位および740位、ならびに軽鎖の1689位におけるタンパク質分解によってFVIIIが活性化されると、FVIIIに結合したVWFが、活性化FVIIIから離脱する。
【0380】
ある特定の実施形態では、異種部分は、完全長フォンビルブランド因子である。他の実施形態では、異種部分は、フォンビルブランド因子断片である。本明細書で使用する場合、「1つのVWF断片」または「複数のVWF断片」という用語は、FVIIIと相互作用して、完全長VWFによってFVIIIに通常もたらされる少なくとも1つまたはそれ以上の特性、例えば、FVIIIaに対する早期活性化を阻止すること、早期タンパク質分解を阻止すること、早期クリアランスを招き得るリン脂質膜との会合を阻止すること、裸のFVIIIには結合し得るがVWFの結合したFVIIIには結合することができないFVIIIクリアランス受容体への結合を阻止すること、および/またはFVIIIの重鎖および軽鎖の相互作用を安定化することを保持する、任意のVWF断片を意味する。具体的な一実施形態では、異種部分は、VWFのD’ドメインおよびD3ドメインを含む(VWF)断片である。D’ドメインおよびD3ドメインを含むVWF断片は、A1ドメイン、A2ドメイン、A3ドメイン、D1ドメイン、D2ドメイン、D4ドメイン、B1ドメイン、B2ドメイン、B3ドメイン、C1ドメイン、C2ドメイン、CKドメイン、これらの1つまたはそれ以上の断片、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択されるVWFドメインをさらに含むことができる。VWF断片に融合したFVIII活性を有するポリペプチドのさらなる例は、いずれも参照によってその全体が本明細書に組み入れられる、2012年7月3日に出願された米国仮特許出願第61/667,901号、および米国特許出願公開第2015/0023959A1号に開示されている。
【0381】
B.3.l.リンカー部分
ある特定の実施形態では、異種部分はペプチドリンカーである。
【0382】
本明細書で使用する場合、「ペプチドリンカー」または「リンカー部分」という用語は、ポリペプチド鎖の直鎖状アミノ酸配列における2つのドメインを接続するペプチドまたはポリペプチド配列(例えば、合成ペプチドまたはポリペプチド配列)を指す。
【0383】
一部の実施形態では、ペプチドリンカーをコードする異種ヌクレオチド配列は、本開示の最適化FVIIIポリヌクレオチド配列と、例えばアルブミンなどの上記の異種部分の1つをコードする異種ヌクレオチド配列との間に挿入することができる。ペプチドリンカーは、キメラポリペプチド分子に柔軟性を提供することができる。リンカーは典型的には切断されないが、そのような切断が望ましいことがある。一実施形態では、これらのリンカーは、処理の間に除去されない。
【0384】
本開示のキメラタンパク質中に存在することができるタイプのリンカーは、切断部位(すなわち、プロテアーゼ切断部位基質、例えば、第XIa因子、第Xa因子、またはトロンビン切断部位)を含み、その切断部位のN末端もしくはC末端のいずれかまたは両側に追加のリンカーを含むことができる、プロテアーゼで切断可能なリンカーである。これらの切断可能なリンカーは、本開示の構築物に組み込まれると、異種切断部位を有するキメラ分子を生じる。
【0385】
一実施形態では、本開示の核酸分子によってコードされるFVIIIポリペプチドは、単一のポリペプチド鎖に含まれるFc領域を形成するように、cscFcリンカーを介して連結された2つまたはそれ以上のFcドメインもしくはFc部分を含む。cscFcリンカーは、少なくとも1つの細胞内プロセシング部位、すなわち、細胞内酵素によって切断される部位に隣接している。少なくとも1つの細胞内プロセシング部位でポリペプチドが切断されると、少なくとも2本のポリペプチド鎖を含むポリペプチドが得られる。
【0386】
他のペプチドリンカーを、本開示の構築物において、例えば、FVIIIタンパク質をFc領域に接続するために、場合により使用することができる。本開示との関連で使用し得るいくつかの例示的なリンカーとしては、例えば、下にさらに詳述されるGlySerアミノ酸を含むポリペプチドが挙げられる。
【0387】
一実施形態では、ペプチドリンカーは、合成性、すなわち天然に存在しないものである。一実施形態では、ペプチドリンカーは、アミノ酸からなる第1の直鎖状配列を、天然においては連結されていないかまたは自然においては遺伝的に融合されていないアミノ酸からなる第2の直鎖状配列に連結または遺伝的に融合するアミノ酸配列を含むペプチド(またはポリペプチド)(天然に存在し得るか、または存在することができない)を含む。例えば、一実施形態では、ペプチドリンカーは、天然に存在するポリペプチドの改変形態である(例えば、付加、置換または欠失などの突然変異を含む)天然に存在しないポリペプチドを含むことができる。別の実施形態では、ペプチドリンカーは、天然に存在しないアミノ酸を含むことができる。別の実施形態では、ペプチドリンカーは、自然においては存在しない直鎖状配列中に存在する、天然に存在するアミノ酸を含むことができる。さらに別の実施形態では、ペプチドリンカーは、天然に存在するポリペプチド配列を含むことができる。
【0388】
例えば、ある特定の実施形態では、ペプチドリンカーを使用して、同一のFc部分に融合させ、それによって、ホモ二量体scFc領域を形成することができる。他の実施形態では、ペプチドリンカーを使用して、異なるFc部分(例えば、野生型Fc部分およびFc部分バリアント)に融合させ、それによって、ヘテロ二量体scFc領域を形成することができる。
【0389】
別の実施形態では、ペプチドリンカーは、gly-serリンカーを含むかまたはそれからなる。一実施形態では、scFcまたはcscFcリンカーは、免疫グロブリンヒンジおよびgly-serリンカーの少なくとも一部分を含む。本明細書で使用する場合、「gly-serリンカー」という用語は、グリシン残基およびセリン残基からなるペプチドを指す。ある特定の実施形態では、前記gly-serリンカーは、ペプチドリンカーの2つの他の配列の間に挿入することができる。他の実施形態では、gly-serリンカーは、ペプチドリンカーの別の配列の一端または両端に結合する。また他の実施形態では、2つまたはそれ以上のgly-serリンカーは、ペプチドリンカーに直列に組み込まれる。一実施形態では、本開示のペプチドリンカーは、ヒンジ領域(例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4分子に由来する)上流の少なくとも一部、ヒンジ領域(例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4分子に由来する)中央の少なくとも一部、および一連のgly/serアミノ酸残基を含む。
【0390】
本開示のペプチドリンカーは、少なくとも1アミノ酸長であり、様々な長さであり得る。一実施形態では、本開示のペプチドリンカーは、約1~約50アミノ酸長である。この文脈で使用する場合、「約」という用語は、+/-2個のアミノ酸残基を示す。リンカー長は、正の整数でなければならないため、約1~約50アミノ酸長の長さは、1~3から48~52アミノ酸長の長さを意味する。別の実施形態では、本開示のペプチドリンカーは、約10~約20アミノ酸長である。別の実施形態では、本開示のペプチドリンカーは、約15~約50アミノ酸長である。別の実施形態では、本開示のペプチドリンカーは、約20~約45アミノ酸長である。別の実施形態では、本開示のペプチドリンカーは、約15~約35または約20~約30アミノ酸長である。別の実施形態では、本開示のペプチドリンカーは、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40、50、60、70、80、90、100、500、1000または2000アミノ酸長である。一実施形態では、本開示のペプチドリンカーは、20または30アミノ酸長である。
【0391】
一部の実施形態では、ペプチドリンカーは、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも10個、少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも50個、少なくとも60個、少なくとも70個、少なくとも80個、少なくとも90個、または少なくとも100個のアミノ酸を含むことができる。他の実施形態では、ペプチドリンカーは、少なくとも200個、少なくとも300個、少なくとも400個、少なくとも500個、少なくとも600個、少なくとも700個、少なくとも800個、少なくとも900個、または少なくとも1000個のアミノ酸を含むことができる。一部の実施形態では、ペプチドリンカーは、少なくとも約10個、20個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個、100個、150個、200個、300個、400個、500個、600個、700個、800個、900個、1000個、1100個、1200個、1300個、1400個、1500個、1600個、1700個、1800個、1900個、または2000個のアミノ酸を含むことができる。ペプチドリンカーは、1~5個のアミノ酸、1~10個のアミノ酸、1~20個のアミノ酸、10~50個のアミノ酸、50~100個のアミノ酸、100~200個のアミノ酸、200~300個のアミノ酸、300~400個のアミノ酸、400~500個のアミノ酸、500~600個のアミノ酸、600~700個のアミノ酸、700~800個のアミノ酸、800~900個のアミノ酸、または900~1000個のアミノ酸を含むことができる。
【0392】
ペプチドリンカーは、当技術分野で公知の技法を使用して、ポリペプチド配列に導入することができる。改変は、DNA配列解析によって確認することができる。プラスミドDNAを使用して、産生されるポリペプチドが安定して産生されるように宿主細胞を形質転換することができる。
【0393】
B.3.m.単量体-二量体ハイブリッド
一部の実施形態では、異種ヌクレオチド配列をさらに含む本開示の単離された核酸分子は、FVIIIを含む単量体-二量体ハイブリッド分子をコードする。
【0394】
本明細書で使用される「単量体-二量体ハイブリッド」という用語は、ジスルフィド結合によって互いに会合する第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖を含むキメラタンパク質を指し、第1の鎖は、第VIII因子および第1のFc領域を含み、第2の鎖は、FVIIIを含まない第2のFc領域を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる。よって、単量体-二量体ハイブリッド構築物は、1つの凝固因子のみを有する単量体の態様、および2つのFc領域を有する二量体の態様を含むハイブリッドである。
【0395】
B.3.n.発現制御エレメント
一部の実施形態では、本開示の核酸分子またはベクターは、少なくとも1つの発現制御配列をさらに含む。発現制御配列は、本明細書で使用する場合、プロモーター配列またはプロモーターとエンハンサーの組合せなどの任意の調節ヌクレオチド配列であって、その配列が作動可能に連結するコード核酸の効率的な転写と翻訳を促進する配列である。例えば、本開示の単離された核酸分子は、少なくとも1つの転写制御配列に作動可能に連結される。
【0396】
遺伝子発現制御配列は、例えば、哺乳動物またはウイルスのプロモーター、例えば構成的または誘導可能なプロモーターであってよい。哺乳動物の構成的プロモーターとしては、以下の遺伝子に関するプロモーター:ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)、アデノシンデアミナーゼ、ピルベートキナーゼ、ベータアクチンプロモーター、および他の構成的プロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。真核細胞において構成的に機能する例示的なウイルスプロモーターとしては、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)、シミアンウイルス(例えば、SV40)、パピローマウイルス、アデノウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ラウス肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、モロニー白血病ウイルスの長鎖末端反復配列(LTR)、および他のレトロウイルスからのプロモーター、ならびに単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼプロモーターが挙げられる。
【0397】
他の構成的プロモーターは、当業者に知られている。本開示の遺伝子発現配列として有用なプロモーターとして、誘導性プロモーターも挙げられる。誘導性プロモーターは、誘導剤の存在下で発現する。例えば、メタロチオネインプロモーターは、ある特定の金属イオンの存在下で、転写および翻訳を促進するように誘導される。他の誘導性プロモーターは、当業者に知られている。
【0398】
一実施形態では、本開示は、組織特異的プロモーターおよび/またはエンハンサーの制御下で、導入遺伝子を発現させることを含む。別の実施形態では、プロモーターまたは他の発現制御配列は、肝細胞における導入遺伝子の発現を選択的に増強する。肝特異的プロモーターの例として、マウスチレチンプロモーター(mTTR)、内因性ヒト第VIII因子プロモーター(F8)、ヒトアルファ1-アンチトリプシンプロモーター(hAAT)、ヒトアルブミン最小プロモーター、およびマウスアルブミンプロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、プロモーターは、mTTRプロモーターを含む。mTTRプロモーターは、R.H.Costaら、1986年、Mol.Cell.Biol.6:4697頁に記載されている。F8プロモーターは、FigueiredoおよびBrownlee、1995年、J.Biol.Chem.270:11828~11838頁に記載されている。
【0399】
1つまたはそれ以上のエンハンサーを使用して、発現レベルをさらに高めて、治療効能を達成することができる。1つまたはそれ以上のエンハンサーは、単独でまたは1つまたはそれ以上のプロモーターエレメントと一緒に提供することができる。典型的には、発現制御配列は、複数のエンハンサーエレメントおよび組織特異的プロモーターを含む。一実施形態では、エンハンサーは、α1-ミクログロブリン/ビクニンエンハンサーの1つまたはそれ以上の複製を含む(Rouetら、1992年、J.Biol.Chem.267:20765~20773頁;Rouetら、1995年、Nucleic Acids Res.23:395~404頁;Rouetら、1998年、Bioch em.J.334:577~584頁;Illら、1997年、Blood Coa gulation Fibrinolysis 8:S23~S30頁)。別の実施形態では、エンハンサーは、EBP、DBP、HNF1、HNF3、HNF4、HNF6のような肝特異的転写因子結合部位に由来し、Enh1は、HNF1、(センス)-HNF3、(センス)-HNF4、(アンチセンス)-HNF1、(アンチセンス)-HNF6、(センス)-EBP、(アンチセンス)-HNF4(アンチセンス)を含む。
【0400】
特定の一例では、本開示のために有用なプロモーターは、配列番号63(すなわち、ETプロモーター)を含み、この配列はGenBank番号AY661265としても公知である。Vignaら、Molecular Therapy 11(5):763頁(2005年)も参照のこと。他の好適なベクターおよび遺伝子調節エレメントの例は、その全体が参照によって本明細書に組み入れられる、WO02/092134、EP1395293、または米国特許第6,808,905号、同第7,745,179号、もしくは同第7,179,903号に記載されている。
【0401】
一般に、発現制御配列は、必要に応じて、それぞれ転写および翻訳の開始に関与する5’非転写および5’非翻訳配列、例えば、TATAボックス、キャッピング配列、CAAT配列などを含むものとする。特に、そのような5’非転写配列は、作動可能に連結されたコード核酸の転写制御のためのプロモーター配列を含むプロモーター領域を含む。遺伝子発現配列は、場合により、所望に応じたエンハンサー配列または上流の活性化因子配列を含む。
【実施例1】
【0402】
組換えレンチウイルスベクター(LV)調製物
レンチウイルスベクター医薬製品の安定性を、様々なストレス条件(例えば、凍結および解凍(F/T)、高温(37℃)、撹拌)へのベクターの曝露、および経時的な変化のモニタリングによって判定した。安定性を判定する方法には以下を含めた:機能的力価に関するddPCR、p24濃度に関するp24 ELISA、ならびに粒子径分布および粒子濃度に関するNanoSight。機能的力価は、LVを細胞とインキュベートして細胞ゲノム中に組み込ませ、抽出し、DNAをddPCRによって測定する、細胞ベースのアッセイ(HEK293)である。ELISAベースのp24法は、ウイルスカプシドタンパク質p24を測定して総粒子濃度と関連付ける、キットベースの方法(Invitrogen)である。NanoSightは、粒子のブラウン運動を使用して、溶液中のLV粒子のサイズおよび濃度を評価する方法である。
【0403】
機能的力価は用量を規定するパラメーターであり、重要な尺度である。これは、LVが安定であり、そのためそのペイロードを細胞に組み込むことができるか否かに関する情報(薬物の安定性および作用機序に関連する)を提供する。機能的力価は、用量を規定する基準である。
【0404】
ベクターの作製および測定
VSV-シュードタイプ化第三世代レンチウイルスベクター(LV)を、HEK293T細胞への一過性の4プラスミドコトランスフェクションによって作製し、OXB社への特許(米国特許第9,169,491 B2号)に記載された通りに、陰イオン交換によって精製した。ベクター粒子をまず機能的力価およびHIV-I gag p24抗原イムノキャプチャー(NEN Life Science Products)によって分析して、適正なトランスフェクション、産生および精製収量であることを確かめた。濃縮ベクター発現力価または機能的力価は、すべてのベクターについて1~10E8 TU/mL形質導入単位293T(TU)/mlであった。
【0405】
細胞培養
付着性HEK293T細胞にレンチベクターによる形質導入を行うことによって、機能的力価を測定した。細胞を3回分割し、続いてゲノムDNA単離のために採取した。LVの組込みを、レンチベクター特異的プライマーおよびプローブを使用するドロップレットデジタルPCR(ddPCR)により、ゲノムDNAにおいて測定した。HEK293T付着細胞は、10%ウシ胎仔血清(FBS;Gibco)ならびにペニシリン-ストレプトマイシンおよびグルタミンの組合せを添加したイスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM;Gibco)中で維持した。
【0406】
LVのビヒクル中への処理(製剤化)
精製後にLV材料(原体‐DS)をプールし、ホローファイバー膜を使用して、緩衝液を各々の製剤化緩衝液に交換した。まずDSをおよそ10倍に濃縮し、続いて濃縮DSの6倍容積の各々の製剤化緩衝液に交換した(例えば、1mLの濃縮DSごとに緩衝液6mL)。最終的な製剤化されたLVを医薬製品(DP)と考えて、安定性に関して試験した。
図7A~
図7Bおよび
図8A~
図8Bは、ビヒクルTSSM(20mM Tris、100mM NaCl、1%(w/v)スクロース、1%(w/v)マンニトール、pH 7.3)からリン酸ビヒクル(製剤1)(10mMリン酸塩、100mM NaCl、3%(w/v)スクロース、0.05%(w/v)P188、pH 7.3)に再処理した時の製剤の特性決定を示している。TSSMのほかに、本明細書で試験した代替的製剤は4つあった:製剤2(Phosphate HigherSalt)。10mMリン酸塩、130mM NaCl、1%(w/v)スクロース、0.05%(w/v)P188、pH 7.3;製剤3(ヒスチジン)。20mMヒスチジン、100mM NaCl、3%(w/v)スクロース、0.05%(w/v)P188、pH 6.5;製剤4(リン酸塩 pH 7.0)。10mMリン酸塩、100mM NaCl、3%(w/v)スクロース、0.05%(w/v)P188、pH 7.0;製剤5(ヒスチジン pH 7.0)。20mMヒスチジン、100mM NaCl、3%(w/v)スクロース、0.05%(w/v)P188、pH 7.0。
【実施例2】
【0407】
レンチウイルスベクター(LV)調製物のインビボ投与
5週齢のCD-1マウスおよびC57BL6マウスをCharles Rivers Laboratories社から購入し、特定病原体除去条件下で保った。6匹の雄性HemAマウスは、Charles River社で飼育されている本発明者らのコロニーから入手した。ベクター+ビヒクルまたはビヒクルのみの投与は、マウスにおける尾静脈注射または側頭静脈注射によって実施した。動物の処置はすべて、Bioverativ社/Sanofi社のIACUCによって承認されたプロトコール(動物プロトコール547)に従って行った。3種類の製剤を試験した:(1)20mM Tris、100mM NaCl、1%(w/v)スクロース、1%(w/v)マンニトール、pH 7.3(TSSM);(2)10mMリン酸塩、100mM NaCl、3%(w/v)スクロース、0.05%(w/v)P188、pH 7.3(リン酸塩);および(3)20mMヒスチジン、100mM NaCl、3%(w/v)スクロース、0.05%(w/v)P188、pH 6.5(ヒスチジン)(表4)。
【0408】
【0409】
製剤:ビヒクル(TSSM)のみ、およびLVを有するビヒクル(TSSM)
LV-coFIXの用量反応試験を、C57BL6およびCD-1成体マウスにおいて単回静脈内投与後に実施した。11匹の雄性C57BL6マウス(5週齢)および11匹の雄性CD-1マウス(5週齢)を使用した。投与した用量は以下の通りである:6E10(n=3)、2E10(n=4)、および7.5E9(n=4)TU/kg。製剤ビヒクルはTSSM緩衝液とした。
【0410】
C57BL6マウスおよびCD-1マウスに、TSSM緩衝液中に製剤化したLV-FIXベクターを投与した。6E10 TU/kgの用量は、希釈せずにそのまま13.3~15ml/kgを投与した。より低い他の2つの用量は、投与前にPBSで希釈した。各系統のマウス3匹に高用量を投与した。C57BL6マウス1匹は、6E10 TU/kg用量の注射後直ちに心停止に至って死亡した。この群の他のマウスは約30分後に有害作用を呈した。過度のグルーミングに続き、被毛の粗さ、気力低下、および不活動が観察された。これらのマウスは注射後数時間で回復したように見えた。高用量(6E10 TU/kg)群のマウスのみが有害作用を示した。希釈用量を投与されたマウスは有害作用を全く示さなかった。その後に、CD-1マウスの2匹およびC57BL6マウスの2匹に、TSSMビヒクル製剤化緩衝液のみを10~15ml/kg投与した。これらのマウスも注射後に有害作用(過度のグルーミング、その後の被毛の粗さ、気力低下、および不活動)を呈したが、約1時間後に正常化した。結果を表4にまとめた。
【0411】
製剤:ビヒクル(リン酸塩)のみ
HemAマウスを用いて用量反応試験を実施した。3匹の雄性HemAマウス(9週齢)を使用した。投与する用量は15ml/kgとした。製剤化ビヒクルはリン酸緩衝液とした。
【0412】
インビボ有害作用の試験のために、3匹のHemAマウスに15ml/kgのリン酸製剤化緩衝液を投与した。以後2日間にわたってマウスを詳細に観察した。TSSM製剤化緩衝液で認められた、過度のグルーミング、被毛の粗さ、気力低下、および不活動を含む有害作用は認められなかった。
【0413】
製剤:LVを有するビヒクル(リン酸塩)
LV-coFVIII-6XTENを使用する用量反応試験を、HemA仔マウスにおいて側頭静脈注射によって実施した。22匹の雄性および雌性HemA仔マウス(2日齢)を使用した。投与した用量は以下の通りである:3E9および1.5E9 TU/kg。製剤化ビヒクルはリン酸緩衝液とした。
【0414】
2日齢マウスに対して、リン酸緩衝液中に製剤化したLV-FVIIIXTENを、3E9または1.5E9 TU/kgで側頭静脈注射によって投与した。高用量(3E9)は希釈せずに投与した。これらのマウスでは注射後に有害作用は認められなかった。
【0415】
製剤:ビヒクル(ヒスチジン)のみ
HemAマウスを使用して用量反応試験を実施した。3匹の雄性HemAマウス(19週齢)を使用した。投与する用量は15ml/kgとした。製剤化ビヒクルはヒスチジン緩衝液とした。
【0416】
インビボ有害作用の試験のために、3匹のHemAマウスに15ml/kgのヒスチジン製剤化緩衝液を投与した。以後2日間にわたってマウスを詳細に観察した。TSSM製剤化緩衝液で認められた、過度のグルーミング、被毛の粗さ、気力低下、および不活動を含む有害作用は認められなかった。
【0417】
製剤:LVを有するビヒクル(ヒスチジン)
LV-coFVIII-6XTENを使用する用量反応試験を、寛容化した成体HemAマウスにおいて尾静脈注射によって実施した。4匹の雄性HF8マウス(12週齢)を使用した。投与する用量は15ml/kgとした。製剤化ビヒクルはヒスチジン緩衝液とした。
【0418】
4匹の寛容化HemAマウス(HF8)に対して、ヒスチジン製剤化緩衝液中に製剤化したLV-FVIIIXTENベクターを15ml/kg投与した。TSSM製剤で認められた、過度のグルーミング、被毛の粗さ、気力低下、および不活動を含む有害作用は認められなかった。
【0419】
以上をまとめると、製剤の各々について、マウスにベクター+ビヒクルまたはビヒクルのみを注射した。表4は、TSSM注射はベクター+ビヒクルおよびビヒクルのみの両方で、1匹の死亡を含め、マウスに有害な毒性作用を及ぼしたことを示している。その反対に、リン酸製剤およびヒスチジン製剤は、ベクター+ビヒクルもビヒクルのみも、マウスにおける反応(毒性作用)を生じさせなかった。
【実施例3】
【0420】
ビヒクルTSSMを使用する製剤の試験
撹拌、凍結-解凍、および温度の条件
最終濃度1%(w/v)P188での1%(w/v)P188の添加を伴うかまたは伴わない、TSSM製剤(ベクター+ビヒクル)の安定性を、製剤を撹拌、凍結-解凍(F/T)サイクル(5回および10回)、および6時間の室温インキュベーションに供することによって試験した(
図3A~
図3B、
図4、
図5A~
図5B、表5)。ベクターの安定性は、機能的力価、p24濃度、ならびに粒子径および分布(NanoSight)を決定することによって測定した。
図3A~
図3B、
図4、
図5A~
図5B、および表5に示すように、P188の存在下および非存在下で、製剤に対する種々の条件下でベクター安定性の有意な変化はみられなかった。ベクターの完全性は、NanoSightを使用する粒子径測定によって判定した。
【0421】
【0422】
希釈条件
TSSM製剤(ベクター+ビヒクル)を1倍、20倍、および100倍に希釈し、37℃でインキュベートした上で、第0日、第3日、第7日および第14日にddPCRを介した機能的力価の測定によって安定性を判定した。
図6Aおよび
図6Bは、希釈が高温での2週間にわたる安定性に影響を及ぼさなかったことを示している。
【0423】
種々の期間にわたるインキュベーション
TSSM製剤(ベクター+ビヒクル)を、37℃で0日、3日間、7日間、または14日間インキュベートした。ddPCRを介した機能的力価の決定によって安定性を測定し、一方、粒子完全性(粒子濃度)についてはNanosightまたはp24 ELISAを使用して測定した。
図7A~
図7Bおよび
図8A~
図8Bに示すように、インキュベーション時間に応じた安定性およびベクター完全性(粒子濃度)を判定した。ベクター安定性はインキュベーション時間が長くなると低下し、一方、粒子濃度は増加した。
【0424】
37℃での長時間インキュベーション
TSSM製剤(ベクター+ビヒクル)を37℃で0日、3日間、1週間、または2週間インキュベートした。Nanosightを使用して粒子径分布を測定した。
図7A~
図7Bおよび
図8A~
図8Bに示すように、インキュベーション時間が長くなると、粒子径分布の幅が広くなり、一方、粒子濃度は増加した。これらの結果は以下のように説明し得る。総粒子濃度が増加するとともに感染性は低下するが、これは37℃の温度への長期曝露がカプシドの崩壊を引き起こし、ELISAで測定される見かけのp24の増加をもたらすためである。その上、ウイルス崩壊はより小径の種の増加にもつながる。
【実施例4】
【0425】
リン酸ビヒクルおよびヒスチジンを使用した製剤の試験
リン酸製剤
レンチウイルスベクター(LV)製剤を、リン酸ビヒクル(10mMリン酸塩、100mM NaCl、3%(w/v)スクロース、0.05%(w/v)P188、pH 7.3)中への処理後に特性決定した。Nanosightを使用して粒子径および分布を測定した(
図1)。
図1は、Nanosightによる結果を示すプロットであり、原体(DS)プールの明瞭な単量体ピークを示すが、最終的なビヒクル緩衝液中への限外濾過/透析濾過の後(タンジェンシャルフロー濾過-TFFの後)には、より大きな一部の粒子の存在の様相を伴って、より大きな粒子径の方に幾分移行する。理論に拘束されるわけではないが、これは材料を処理するストレスの間の粒子の物理的分解に起因する可能性がある。0.22μmサイズのフィルター膜を通して濾過した最終的な医薬製品(DP)では、粒子径および粒子分布プロファイルが、処理開始時のDSプールに一致するように復帰する。TFFストレスは、
図2A~
図2Bの写真に画像として示されている。
【0426】
リン酸製剤(ベクター+ビヒクル)について、ベクターの安定性を、撹拌、37℃でのインキュベーション、持続時間および希釈を含む、種々の条件下で試験した(
図9および
図10A~
図10B)。
【0427】
図10A~
図10Bは、37℃での1週間にわたるリン酸緩衝液に関するNanoSightのサイズデータを示している。インキュベーション時間に伴って、より高分子量の種がわずかに増加し、それとともに総粒子数が全体的に減少している。このデータは、RTまたは37℃での安定性の経過を通じて
図9に示された機能的力価の損失が、
図10A~
図10Bに観察される粒子の物理的損失に対応する可能性を示唆する。
【0428】
臨床投与時の典型的な注入場面の過程におけるリン酸製剤の安定性を判定する目的で、模擬実用試験を行った。LVV材料をリン酸ビヒクルで希釈して、空のIVバッグに注入した。室温で6時間かけてデータを収集した、
図13。安定性試験からは機能的力価およびp24の損失の徴候は示されず、このことはベクターが試験期間にわたって安定であったことを示す。
【0429】
予期される容器閉鎖システムとの適合性を検討するために、Schott 1型ガラス製バイアルおよびWest CZ COPバイアルにおけるベクターおよびリン酸ビヒクルの安定性を調べるための試験を行った(
図14、
図15、および
図16A~
図16C)。このデータは、1型バイアルおよびCZバイアルのいずれにおいても、ビヒクルのみで処理した場合には有意な粒子が生成されなかったことを示す、
図14。凍結および解凍の際にバイアルに加わる歪みを判定するために、歪みゲージをガラス製バイアルに接着固定し、-80℃フリーザーに入れて2時間置き、その後に37℃水浴で急速に温めた、
図15。この試験では、バイアルに測定可能な明確な歪みは示されず、このことは、特定のバイアルを損傷させることが文献で示されている、5mLというこの比較的多い充填容積で、リン酸製剤が容器に高度のストレスを与えなかったことを示唆する。
図16A~
図16Cに示すように、LVV材料を各々の容器との適合性についても検討した。形質導入力価(
図16A)、p24(
図16B)、および粒子濃度(
図16C)の各試験を通じて、ガラス製およびプラスチック製バイアルの両方の容器閉鎖形式との適合性を示す、ベクターの比較上の安定性および完全性が認められた。
【0430】
リン酸製剤とヒスチジン製剤の比較
リン酸製剤(製剤1および製剤2)およびヒスチジン製剤(製剤3)(ベクター+ビヒクル)について、種々のストレス条件下でのベクター安定性を検討した(
図11A~
図11B、
図12A~
図12B)。凍結-解凍サイクル試験では、リン酸製剤では両方とも、サイクルの繰り返しに応じた機能的力価の低下が観察された。対照的に、ヒスチジン製剤は機能低下を示さず、安定に保たれた。室温保持および撹拌のストレス条件下では、リン酸製剤は高レベルの機能低下を示した(定量限界まで低下)。驚いたことに、ヒスチジン製剤は、室温での3日間のインキュベーションによっても3日間の撹拌によっても影響を受けないままであった。さらに、リン酸製剤に対する塩化ナトリウムの追加およびスクロースの減少(製剤1と製剤2の比較)は、ベクター安定性に影響を及ぼさなかった。
【0431】
材料の別の調製物において、
図11A~
図11Bにおける安定性試験の再試験を繰り返して
図17に報告した。機能的力価の損失はリン酸製剤の場合ほど激しくはないが、傾向はヒスチジン製剤とリン酸製剤との間で一貫していた。
【0432】
9カ月間の過程にわたる凍結(-80℃)、安定性試験で、リン酸製剤1およびヒスチジン製剤3の両方の緩衝液は、安定したLVV DPを可能にするようであった、
図18。機能的力価に基づけば、このデータは、アッセイ変動の範囲内で、-80℃での貯蔵にわたって材料の損失がなかったことを示唆する。
【0433】
最後に、緩衝液のみ(リン酸およびヒスチジン)の影響を評価する目的で、2つの製剤を同じpHである7.0で全く同じように調製した。すなわち、製剤4と製剤5との唯一の違いは、緩衝液構成成分(リン酸またはヒスチジンのいずれか)である。製造工程の状況では、この2つの製剤は、限外濾過および透析濾過(TFF)、ならびに最終の無菌濾過を通じて類似の挙動であるようである、表6。
【0434】
【0435】
各々の製剤を調製した上で、緩衝液成分を比較するために安定性試験を実施した。
図19A~19Dは、機能的および標準化した機能的力価、p24および粒子濃度にわたる安定性条件に応じて示された、いずれの製剤のLVV安定性の間にもわずかな差しかなかったという知見をまとめている。このことは、
図11A~
図11B、
図12A~
図12Bおよび
図13に提示された結果は、安定性のレベルの変化が、緩衝液組成(リン酸またはヒスチジン)ではなく、pHの違い(7.3および6.5)に起因することを反映するようであることを示唆すると思われる。
【配列表】
【国際調査報告】