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特表2022-549940スーパーキャパシタ電極用金属有機構造体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-29
(54)【発明の名称】スーパーキャパシタ電極用金属有機構造体
(51)【国際特許分類】
   H01G 11/30 20130101AFI20221121BHJP
   H01G 11/04 20130101ALI20221121BHJP
   H01G 11/86 20130101ALI20221121BHJP
【FI】
H01G11/30
H01G11/04
H01G11/86
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022519705
(86)(22)【出願日】2020-09-29
(85)【翻訳文提出日】2022-05-26
(86)【国際出願番号】 US2020053239
(87)【国際公開番号】W WO2021067251
(87)【国際公開日】2021-04-08
(31)【優先権主張番号】62/908,297
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】596060697
【氏名又は名称】マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー
(71)【出願人】
【識別番号】399016318
【氏名又は名称】オートモビリ ランボルギーニ ソチエタ ペル アツイオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ディンカ, ミルチャ
(72)【発明者】
【氏名】ドウ, ジンフー
(72)【発明者】
【氏名】ボリシェヴィチ, ミハル
(72)【発明者】
【氏名】パレンティ, リッカルド
(72)【発明者】
【氏名】バンダ, ハリシュ
【テーマコード(参考)】
5E078
【Fターム(参考)】
5E078AA01
5E078AB02
5E078AB03
5E078AB06
5E078BA30
5E078BA38
5E078BB30
(57)【要約】
金属有機構造体、スーパーキャパシタ電極、およびスーパーキャパシタが、概して提供される。本明細書に記述されるいくつかの金属有機構造体は、スーパーキャパシタ電極で使用するのに適切であり得、本明細書に記述されるいくつかのスーパーキャパシタ電極は、本明細書に記述される金属有機構造体を含んでいてもよく、そして、本明細書に記述されるいくつかのスーパーキャパシタは、本明細書に記述されるスーパーキャパシタ電極を含んでいてもよい。
【選択図】図23A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の配位子が配位した複数の金属イオンを含む金属有機構造体を含む、スーパーキャパシタ電極であって、
前記複数の配位子が、2個またはそれよりも多くの硫黄ドナー原子を含む配位子を含み、
前記金属イオンには、前記硫黄ドナー原子によって前記硫黄ドナー原子を含む前記配位子が配位している、
スーパーキャパシタ電極。
【請求項2】
複数の配位子が配位した複数の金属イオンを含む金属有機構造体を含む、スーパーキャパシタ電極であって、
前記金属有機構造体は、第2の複数のイオンが前記金属有機構造体内にインターカレートおよび/または吸収されるように、前記第2の複数のイオンと相互に作用するよう構成され、
前記金属有機構造体は、前記スーパーキャパシタ電極の充放電中に前記金属イオンの少なくとも一部がレドックス反応を受けるように構成されている、
スーパーキャパシタ電極。
【請求項3】
複数の配位子が配位した複数の金属イオンを含む、金属有機構造体内でレドックス反応を行うこと、および
第2の複数のイオンを、前記金属有機構造体内にインターカレートすることであって、前記第2の複数のイオンおよび前記金属有機構造体が一緒になって中性電荷を有する、こと
を含む、方法。
【請求項4】
複数の配位子が配位した複数の金属イオンを含む、金属有機構造体であって、
前記金属イオンが、ニッケルイオン、コバルトイオン、鉄イオン、白金イオン、および/またはパラジウムイオンを含み、
前記複数の配位子が、2個またはそれよりも多くの硫黄ドナー原子を含む配位子を含み、
前記金属イオンには、前記硫黄ドナー原子によって、前記硫黄ドナー原子を含む前記配位子が配位している、
金属有機構造体。
【請求項5】
第1の金属有機構造体を含む第1の電極と、
第2の金属有機構造体を含む第2の電極と
を含む、スーパーキャパシタであって、
各金属有機構造体は、複数の配位子が配位した複数の金属イオンを含み、
前記第2の金属有機構造体は、前記第1の金属有機構造体とは異なる、
スーパーキャパシタ。
【請求項6】
前記複数の金属イオンがニッケルイオンを含み、前記複数の配位子がベンゼンヘキサチオール配位子を含む、前記請求項のいずれかに記載のスーパーキャパシタ、スーパーキャパシタ電極、金属有機構造体、または方法。
【請求項7】
前記金属有機構造体が、下記の構造:
【化11】

を有し、式中、Mがニッケルイオンである、前記請求項のいずれかに記載のスーパーキャパシタ、スーパーキャパシタ電極、金属有機構造体、または方法。
【請求項8】
前記金属有機構造体が、二次元構造を有する、前記請求項のいずれかに記載のスーパーキャパシタ、スーパーキャパシタ電極、金属有機構造体、または方法。
【請求項9】
前記金属有機構造体が、複数の二次元シートを含む、前記請求項のいずれかに記載のスーパーキャパシタ、スーパーキャパシタ電極、金属有機構造体、または方法。
【請求項10】
前記複数の二次元シート間の相互作用エネルギーが、前記複数の二次元シート内の結合強度未満である、前記請求項のいずれかに記載のスーパーキャパシタ、スーパーキャパシタ電極、金属有機構造体、または方法。
【請求項11】
前記二次元シートが、互いに位置合わせされている、前記請求項のいずれかに記載のスーパーキャパシタ、スーパーキャパシタ電極、金属有機構造体、または方法。
【請求項12】
前記二次元シート間の平均間隔が、0.3nmよりも大きくまたはそれに等しくかつ1nm未満またはそれに等しい、前記請求項のいずれかに記載のスーパーキャパシタ、スーパーキャパシタ電極、金属有機構造体、または方法。
【請求項13】
前記金属有機構造体が、複数の細孔を含む、前記請求項のいずれかに記載のスーパーキャパシタ、スーパーキャパシタ電極、金属有機構造体、または方法。
【請求項14】
前記複数の細孔が、前記複数の二次元シート内に位置決めされている、前記請求項のいずれかに記載のスーパーキャパシタ、スーパーキャパシタ電極、金属有機構造体、または方法。
【請求項15】
前記金属イオンが、銅イオン、ニッケルイオン、コバルトイオン、鉄イオン、パラジウムイオン、および/または白金イオンを含む、前記請求項のいずれかに記載のスーパーキャパシタ、スーパーキャパシタ電極、金属有機構造体、または方法。
【請求項16】
前記金属イオンの一部が、2つまたはそれよりも多くの配位子に会合している、前記請求項のいずれかに記載のスーパーキャパシタ、スーパーキャパシタ電極、金属有機構造体、または方法。
【請求項17】
前記2個またはそれよりも多くの硫黄ドナー原子を含む前記配位子の一部が、2個またはそれよりも多くの金属イオンに会合している、前記請求項のいずれかに記載のスーパーキャパシタ、スーパーキャパシタ電極、金属有機構造体、または方法。
【請求項18】
前記2個またはそれよりも多くの硫黄ドナー原子を含む前記配位子が、多座配位子である、前記請求項のいずれかに記載のスーパーキャパシタ、スーパーキャパシタ電極、金属有機構造体、または方法。
【請求項19】
前記硫黄ドナー原子が、有機コアの周りに配置構成されている、前記請求項のいずれかに記載のスーパーキャパシタ、スーパーキャパシタ電極、金属有機構造体、または方法。
【請求項20】
前記有機コアが、アリールおよび/またはヘテロアリール環を含む、前記請求項のいずれかに記載のスーパーキャパシタ、スーパーキャパシタ電極、金属有機構造体、または方法。
【請求項21】
前記有機コアが、複数の縮合アリールおよび/またはヘテロアリール環を含む、前記請求項のいずれかに記載のスーパーキャパシタ、スーパーキャパシタ電極、金属有機構造体、または方法。
【請求項22】
前記2個またはそれよりも多くの硫黄ドナー原子が、ビシナルチオール基を含む、前記請求項のいずれかに記載のスーパーキャパシタ、スーパーキャパシタ電極、金属有機構造体、または方法。
【請求項23】
前記複数の配位子が、ベンゼンヘキサチオールおよび/またはトリフェニレンヘキサチオールを含む、前記請求項のいずれかに記載のスーパーキャパシタ、スーパーキャパシタ電極、金属有機構造体、または方法。
【請求項24】
前記第2の複数のイオンが、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、第四級アンモニウムイオン、第四級ホスホニウムイオン、および/またはイオン性液体からのイオンを含む、前記請求項のいずれかに記載のスーパーキャパシタ、スーパーキャパシタ電極、金属有機構造体、または方法。
【請求項25】
前記第2の複数のイオンが、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、アルミニウムイオン、アンモニウムイオン、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、テトラペンチルアンモニウムイオン、テトラヘキシルアンモニウムイオン、テトラヘプチルアンモニウムイオン、テトラオクチルアンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、テトラメチルホスホニウムイオン、テトラエチルホスホニウムイオン、テトラブチルホスホニウムイオン、テトラペンチルホスホニウムイオン、テトラヘキシルホスホニウムイオン、テトラヘプチルホスホニウムイオン、および/またはテトラオクチルホスホニウムイオンを含む、前記請求項のいずれかに記載のスーパーキャパシタ、スーパーキャパシタ電極、金属有機構造体、または方法。
【請求項26】
前記第1の金属有機構造体が、2個またはそれよりも多くの硫黄ドナー原子を含む配位子を含み、前記金属イオンには、前記硫黄ドナー原子によって、前記硫黄ドナー原子を含む前記配位子が配位している、前記請求項のいずれかに記載のスーパーキャパシタ、スーパーキャパシタ電極、金属有機構造体、または方法。
【請求項27】
前記第2の金属有機構造体にて、複数の配位子は2個またはそれよりも多くのアミン基を含み、前記金属イオンには、前記アミン基によって、前記アミン基を含む前記配位子が配位している、前記請求項のいずれかに記載のスーパーキャパシタ、スーパーキャパシタ電極、金属有機構造体、または方法。
【請求項28】
前記スーパーキャパシタが、電解質をさらに含む、前記請求項のいずれかに記載のスーパーキャパシタ、スーパーキャパシタ電極、金属有機構造体、または方法。
【請求項29】
前記電解質が水性電解質である、前記請求項のいずれかに記載のスーパーキャパシタ、スーパーキャパシタ電極、金属有機構造体、または方法。
【請求項30】
前記電解質が非水性電解質である、前記請求項のいずれかに記載のスーパーキャパシタ、スーパーキャパシタ電極、金属有機構造体、または方法。
【請求項31】
前記電解質が溶媒を含む、前記請求項のいずれかに記載のスーパーキャパシタ、スーパーキャパシタ電極、金属有機構造体、または方法。
【請求項32】
前記溶媒が、有機溶媒である、前記請求項のいずれかに記載のスーパーキャパシタ、スーパーキャパシタ電極、金属有機構造体、または方法。
【請求項33】
前記電解質が、イオン性液体を含む、前記請求項のいずれかに記載のスーパーキャパシタ、スーパーキャパシタ電極、金属有機構造体、または方法。
【請求項34】
前記金属有機構造体内に第2の複数のイオンをインターカレートおよび/または吸収することをさらに含む、前記請求項のいずれかに記載のスーパーキャパシタ、スーパーキャパシタ電極、金属有機構造体、または方法。
【請求項35】
前記第2の複数のイオンが、前記金属有機構造体内の細孔中に吸収される、前記請求項のいずれかに記載のスーパーキャパシタ、スーパーキャパシタ電極、金属有機構造体、または方法。
【請求項36】
前記第2の複数のイオンが、前記金属有機構造体の前記二次元シート間にインターカレートされる、前記請求項のいずれかに記載のスーパーキャパシタ、スーパーキャパシタ電極、金属有機構造体、または方法。
【請求項37】
前記金属有機構造体から前記第2の複数のイオンをデインターカレーションおよび/または脱着することをさらに含む、前記請求項のいずれかに記載のスーパーキャパシタ、スーパーキャパシタ電極、金属有機構造体、または方法。
【請求項38】
前記第2の複数のイオンが、前記金属有機構造体中の前記細孔から脱着される、前記請求項のいずれかに記載のスーパーキャパシタ、スーパーキャパシタ電極、金属有機構造体、または方法。
【請求項39】
前記第2の複数のイオンが、前記金属有機構造体の前記二次元シートの外にインターカレートされる、前記請求項のいずれかに記載のスーパーキャパシタ、スーパーキャパシタ電極、金属有機構造体、または方法。
【請求項40】
前記複数の金属イオンに関するレドックス電位が、標準水素電極と比較して、-3.0Vよりも大きくまたはそれに等しくかつ2V未満またはそれに等しい、前記請求項のいずれかに記載のスーパーキャパシタ、スーパーキャパシタ電極、金属有機構造体、または方法。
【請求項41】
前記スーパーキャパシタの両端の電位降下が、4V未満またはそれに等しい、前記請求項のいずれかに記載のスーパーキャパシタ、スーパーキャパシタ電極、金属有機構造体、または方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、米国特許法第119条(e)(35 U.S.C. §119(e))の下、2019年9月30日に出願されかつ「Metal-Organic Frameworks for Supercapacitor Electrodes」という題名の米国仮出願第62/908,297号の、優先権を主張し、この米国仮出願は、その全体があらゆる目的で参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
スーパーキャパシタ電極としての使用に適した金属有機構造体、金属有機構造体を含むスーパーキャパシタ電極、スーパーキャパシタ、ならびに関連ある物品および組成物が、概して提供される。
【背景技術】
【0003】
背景
スーパーキャパシタは、バッテリーの電力送出能よりも非常の高いその電力送出能に起因して、より多くの適用例で益々使用されつつある。一方、バッテリーは、高エネルギー容量に優れる。この理由のため、現行の技術研究および開発に立ちはだかる難題の1つは、スーパーキャパシタの高い電力密度とバッテリーの高いエネルギー密度との両方を示し得るセルの設計であり、したがって、高い電力密度および高いエネルギー密度の両方を有する新しい電極が必要とされる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
概要
金属有機構造体、スーパーキャパシタ電極、およびスーパーキャパシタについて、概略的に記述される。
【0005】
一部の実施形態では、スーパーキャパシタ電極が提供される。スーパーキャパシタ電極は、複数の配位子が配位した複数の金属イオンを含む金属有機構造体を含む。複数の配位子は、2個またはそれよりも多くの硫黄ドナー原子を含む配位子を含む。金属イオンには、硫黄ドナー原子によって、硫黄ドナー原子を含む配位子が配位している。
【0006】
一部の実施形態では、スーパーキャパシタ電極は、複数の配位子が配位した複数の金属イオンを含む金属有機構造体を含む。金属有機構造体は、第2の複数のイオンが金属有機構造体中にインターカレートおよび/または吸収されるように、第2の複数のイオンと相互作用するよう構成されている。金属有機構造体は、スーパーキャパシタ電極の充放電中に金属イオンの少なくとも一部がレドックス反応を受けるように構成されている。
【0007】
一部の実施形態では、方法が提供される。方法は、複数の配位子が配位した複数の金属イオンを含む金属有機構造体中でレドックス反応を行い、第2の複数のイオンを金属有機構造体中にインターカレートすることを含む。第2の複数のイオンおよび金属有機構造体は一緒になって、中性荷電を有する。
【0008】
一部の実施形態では、金属有機構造体が提供される。金属有機構造体は、複数の配位子が配位した複数の金属イオンを含む。金属イオンは、ニッケルイオン、コバルトイオン、鉄イオン、白金イオン、および/またはパラジウムイオンを含む。複数の配位子は、2個または複数の硫黄ドナー原子を含む配位子を含む。金属イオンには、硫黄ドナー原子によって、硫黄ドナー原子を含む配位子が配位している。金属有機構造体は、0.3nmよりも大きいまたはそれに等しくかつ1nm未満またはそれに等しい平均孔径を有する複数の細孔を含む。
【0009】
一部の実施形態では、スーパーキャパシタが提供される。スーパーキャパシタは、第1の金属有機構造体を含む第1の電極と、第2の金属有機構造体を含む第2の電極とを含む。各金属有機構造体は、複数の配位子が配位した複数の金属イオンを含む。第2の金属有機構造体は、第1の金属有機構造体とは異なる。
【0010】
本発明の他の利点および新規な特徴は、添付される図と合わせて考慮したときに、本発明の様々な非限定的な実施形態の下記の詳細な記述から明らかにされる。本明細書および参照により組み込まれた文書が、競合および/または矛盾する開示を含む場合、本明細書が優先されるものとする。
【0011】
本発明の非限定的な実施形態は、概略的でありかつ縮尺に合わせて描かれたものではない添付される図を参照しながら、例として記述されることになる。図中、例示される同一のまたはほぼ同一の構成要素のそれぞれは、単数によって典型的には表される。明瞭にする目的で、全ての構成要素が全ての図中で標識されているわけではなく、図によって当業者に本発明を理解させることが必ずしも必要でない場合には、本発明の各実施形態の全ての構成要素が示されているわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、一部の実施形態による、金属有機構造体の1つの非限定的な実施形態を示す。
図2図2は、一部の実施形態による、複数の二次元シートを含む金属有機構造体の1つの非限定的な実施形態を示す。
図3図3は、一部の実施形態による、複数の細孔を含む金属有機構造体の上面の、1つの非限定的な実施形態を示す。
図4図4は、一部の実施形態による、金属有機構造体内のそのような二次元シートの側面の、1つの非限定的な実施形態を示す。
図5図5は、一部の実施形態による、2枚の二次元シート間にある金属有機構造体内にイオンをインターカレートする方法の、1つの非限定的な実施形態を示す。
図6図6は、一部の実施形態による、金属有機構造体に、その内部の複数の細孔内にイオンを吸収する方法の、1つの非限定的な実施形態を示す。
図7図7は、一部の実施形態による、金属有機構造体を含むスーパーキャパシタ電極の1つの非限定的な実施形態を示す。
図8図8は、一部の実施形態による、金属有機構造体を含む電極を含むスーパーキャパシタの1つの非限定的な実施形態を示す。
図9A図9Aは、一部の実施形態による、金属有機構造体を含む構造の1つの非限定的な実施形態を示す。
図9B図9Bは、一部の実施形態による、水性LiCl電解質中のCuBHT電極のサイクリックボルタンメトリー(CV)曲線を示す。
図9C図9Cは、一部の実施形態による、金属有機構造体に関する定電流充放電掃引を示す。
図10図10は、一部の実施形態による、金属有機構造体に関するサイクリックボルタンメトリー曲線を示す。
図11A図11Aは、一部の実施形態による、CuBHT電極に関して収集された電気化学インピーダンス分光法(EIS)ナイキストプロットを示す。
図11B図11Bは、一部の実施形態による、CuBHTの粉末X線回折パターンを示す。
図12図12は、一部の実施形態による、アセトニトリルおよびLiPFを含む電解質の存在下でのCuBHT電極に関する、サイクリックボルタンメトリー曲線を示す。
図13A図13Aは、一部の実施形態による、NiBHT構造の概略図を示す。
図13B図13Bは、一部の実施形態による、金属有機構造体に関する、2mV/秒で得られたサイクリックボルタンメトリー曲線を示す。
図13C図13Cは、一部の実施形態による、金属有機構造体に関するスキャン速度の関数としての比容量を示す。
図14A図14A~14Cは、一部の実施形態による、種々のスキャン速度および電位窓での、アセトニトリルおよびLiPFを含む電解質中のNiBHTに関するサイクリックボルタンメトリー曲線を示す。
図14B-C】図14A~14Cは、一部の実施形態による、種々のスキャン速度および電位窓での、アセトニトリルおよびLiPFを含む電解質中のNiBHTに関するサイクリックボルタンメトリー曲線を示す。
図14D図14Dは、一部の実施形態による、金属有機構造体に関するスキャン速度の関数としての比容量を示す。
図15図15は、一部の実施形態による、20mV/秒のスキャン速度で行われた、アセトニトリルおよびNaPFを含む電解質中のNiBHTのサイクリックボルタンメトリー曲線形を示す。
図16図16は、一部の実施形態による、20mV/秒のスキャン速度で行われた、炭酸エチレン、炭酸ジメチル、およびLiPFを含む電解質中のNiBHTに関するサイクリックボルタンメトリー曲線を示す。
図17A図17A~17Dは、一部の実施形態による、アセトニトリルおよび塩を含む電解質中の、NiBHTに関するサイクリックボルタンメトリー曲線を示す。
図17B-C】図17A~17Dは、一部の実施形態による、アセトニトリルおよび塩を含む電解質中の、NiBHTに関するサイクリックボルタンメトリー曲線を示す。
図17D図17A~17Dは、一部の実施形態による、アセトニトリルおよび塩を含む電解質中の、NiBHTに関するサイクリックボルタンメトリー曲線を示す。
図18A図18A~18Bは、一部の実施形態による、NiBHTに関するサイクリックボルタンメトリー曲線を示す。
図18B図18A~18Bは、一部の実施形態による、NiBHTに関するサイクリックボルタンメトリー曲線を示す。
図19A図19Aは、一部の実施形態による、10mV/秒で行われたスーパーキャパシタに関するサイクリックボルタンメトリー曲線を示す。
図19B図19Bは、一部の実施形態による、スーパーキャパシタに関する定電流充放電掃引を示す。
図19C図19Cは、一部の実施形態による、10mV/秒で行われたスーパーキャパシタに関するサイクリックボルタンメトリー曲線を示す。
図19D図19Dは、一部の実施形態による、0Vから2.5Vの間の電圧で、2A/gでサイクルさせたときの、時間の関数としてのスーパーキャパシタの比容量を示す。
図20A図20Aは、一部の実施形態による、ベンゼンヘキサチオール配位子を合成する方法の概略図を示す。
図20B図20Bは、一部の実施形態による、ベンゼンヘキサチオール配位子により配位された金属塩化物から金属イオンを含む金属有機構造体を形成するために、ベンゼンヘキサチオール配位子および金属塩化物から金属有機構造体を合成する方法の概略図を示す。
図21図21は、一部の実施形態による、NiBHTの熱重量測定応答を示す。
図22図22は、一部の実施形態による、粉末X線回折パターンを示す。
図23A図23Aおよび23Bは、一部の実施形態による、NiBHTに関してシミュレートされた構造の図を示す。
図23B図23Aおよび23Bは、一部の実施形態による、NiBHTに関してシミュレートされた構造の図を示す。
図24図24は、一部の実施形態による、NiBHTに関して選択された領域の回折パターンを示す。
図25A図25Aおよび25Bは、一部の実施形態による、NiBHTに関してシミュレートされた選択領域の回折パターンを示す。
図25B図25Aおよび25Bは、一部の実施形態による、NiBHTに関してシミュレートされた選択領域の回折パターンを示す。
図26図26は、一部の実施形態による、NiBHTおよびNiBHTの構造を示す。
図27図27は、一部の実施形態による、NiBHTの走査型電子顕微鏡画像を示す。
図28図28は、一部の実施形態による、プローブガスとしてNを使用して得られたNiBHTに関するガス収着等温線を示す。
図29図29は、一部の実施形態による、圧縮されたNiBHTペレットの可変温度導電率を示す。
図30図30は、一部の実施形態による、1.0から1.7Vの還元電位窓を増大させる際の、5mV/秒のスキャン速度でのサイクリックボルタンメトリー曲線を示す。
図31A図31Aおよび31Bは、一部の実施形態による、3電極セル設定および低スキャン速度を使用した、1M LiPF/MeCN電解質中のNiBHTに関するサイクリックボルタンメトリー曲線を示す。
図31B図31Aおよび31Bは、一部の実施形態による、3電極セル設定および低スキャン速度を使用した、1M LiPF/MeCN電解質中のNiBHTに関するサイクリックボルタンメトリー曲線を示す。
図32図32は、一部の実施形態による、3電極セル設定および5mV/秒のスキャン速度を使用した、1M LiPF/MeCN電解質中のNiBHTに関するサイクリックボルタンメトリー曲線を示す。
図33図33は、一部の実施形態による、1.7Vの電位窓にわたる7から28mV/秒の間のスキャン速度の範囲に関する、サイクリックボルタンメトリー曲線を示す。
図34図34は、一部の実施形態による、電流対スキャン速度を示すプロットである。
図35図35は、一部の実施形態による、比放電容量を示すプロットである。
図36図36は、一部の実施形態による、8,000サイクルにわたる30mV/秒のスキャン速度での反復サイクリング下での、容量保持率を示すプロットである。
図37図37は、一部の実施形態による、1.7Vの電位窓および30mV/秒のスキャン速度を用いた、3電極設定での2,000サイクリックボルタンメトリーサイクルにわたる、NiBHTのサイクリング安定性を示すプロットである。
図38図38は、一部の実施形態による、NiBHT電極に関する10mHzから200kHzの間の周波数で得られたインピーダンスの、架空の対実際の素子のプロットである。
図39図39は、一部の実施形態による、5mV/秒のスキャン速度でのサイクリックボルタンメトリー曲線を示すプロットである。
図40図40は、一部の実施形態による、重量比容量を示す図である。
図41A図41Aは、一部の実施形態による、NiBHTのナイキストインピーダンススペクトルを示すプロットである。
図41B図41Bは、放電時間の関数としてNiBHTの比容量を示すプロットである。
図42図42は、一部の実施形態による、電気化学サイクルの前後の、Niフォーム上に加圧された未処理のNiBHTの粉末X線回折パターンを示すプロットであり、電気化学サイクリングが3電極設定で30mV/秒のスキャン速度で行われ、セルが、分析用に分解する前の5分間、OCPに対して-1.7Vの電圧で保持された、プロットである。
図43図43は、一部の実施形態による、1M LiPF/MeCN電解質中の、浸漬されかつ負に分極したNiBHTの、Li NMRスペクトルを示すプロットである。
図44図44は、一部の実施形態による、1M LiPF/MeCN電解質中の、浸漬されかつ負に分極したNiHITPの、Li NMRスペクトルを示すプロットである。
図45図45は、一部の実施形態による、Ni K-エッジXANESを示すプロットである。
図46図46は、一部の実施形態による、未処理のNiBHTに関するおよび負に分極したNiBHTペレットに関する、プレエッジX線吸収を示すプロットである。
図47図47は、一部の実施形態による、未処理のおよび負に分極したNiBHTに関するEXAFSのk-重み付きフーリエ変換を示すプロットである。
図48図48は、一部の実施形態による、未処理のNiBHTに関する、EXAFSのk-重み付きフーリエ変換の当て嵌めの質を示すプロットである。
図49図49は、一部の実施形態による、未処理のNiBHTに関するEXAFSのk-重み付きフーリエ変換の当て嵌めの質を示すプロットである。
図50図50は、一部の実施形態による、未処理のおよび負に分極したNiBHTのC 1s高分解能X線光電子スペクトルを示すプロットである。
図51図51は、一部の実施形態による、未処理のおよび負に分極したNiBHTのNi 2p高分解能X線光電子スペクトルを示すプロットである。
図52図52は、一部の実施形態による、未処理のおよび負に分極したNiBHTのS 2p高分解能X線光電子スペクトルを示すプロットである。
図53図53は、一部の実施形態による、未処理のNiBHTのS 2p高分解能X線光電子スペクトルを示すプロットである。
図54図54は、一部の実施形態による、負に分極したNiBHTペレットのS 2p高分解能X線光電子スペクトルを示すプロットである。
図55図55は、一部の実施形態による、NiBHTの2D層の間の、Liイオンの介入的イオン収着の概略図である。
図56図56は、一部の実施形態による、BHT配位子を使用することによるNiBHTの合成の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
詳細な説明
金属有機構造体、スーパーキャパシタ電極、およびスーパーキャパシタが、概して提供される。本明細書に記述されるいくつかの金属有機構造体は、スーパーキャパシタ電極での使用に適していてもよく、本明細書に記述されるいくつかのスーパーキャパシタ電極は、本明細書に記述される金属有機構造体を含んでいてもよく、本明細書に記述されるいくつかのスーパーキャパシタは、本明細書に記述されるスーパーキャパシタ電極を含んでいてもよい。
【0014】
一部の実施形態では、本明細書に記述される金属有機構造体は、スーパーキャパシタ電極での使用に関してその適切性を高める1つまたはそれよりも多くの特徴を有する。例として、金属有機構造体は、スーパーキャパシタ電解質中の1種またはそれよりも多種のイオンと好ましい手法で相互に作用する1つまたはそれよりも多くの構造的特徴を有していてもよい。例えば、金属有機構造体は、イオンを内部に容易に吸収させることができるサイズを有する細孔、および/またはイオンを内部に容易にインターカレートすることができるサイズを有する二次元シート間の空間など、内部にイオンを容易にインターカレートおよび/または吸収させることができる1つまたはそれよりも多くの構造的特徴を含んでいてもよい。1つまたはそれよりも多くのそのような特徴を有する金属有機構造体は、電解質からイオンをインターカレートおよび/または吸収する増大した能力を有利に示してもよく、その結果、電解質からのイオンによってその表面の任意の電荷の高度な中和が得られる。
【0015】
別の実施例として、金属有機構造体は、レドックスプロセス中の好ましい手法で、スーパーキャパシタ電解質中の1種またはそれよりも多種のイオンと相互に作用してもよい。例えば、金属有機構造体は、レドックス反応を受けるように構成された複数の金属イオンを含んでいてもよく、内部にインターカレートおよび/または吸収されるおよび/またはそこからデインターカレートおよび/または脱着されるイオンが、内部の金属イオン上の電荷の変化とバランスをとるように構成されていてもよい。この結果、金属有機構造体とその内部にインターカレートされた中性荷電を有するイオンとの組合せが得られる。そのような相互作用は、金属有機構造体の配位子および/または金属イオン上でのエネルギー貯蔵を可能にすることによって、金属有機構造体の可逆的エネルギー貯蔵容量を高め得る。
【0016】
一部の金属有機構造体は、スーパーキャパシタ電極としてのその性能を高める、1つまたはそれよりも多くの物理的または化学的性質を有していてもよい。例えば、一部の実施形態では、本明細書に記述される金属有機構造体は、有利に高い導電率を有する。いかなる特定の理論にも拘泥するものではないが、ジチオレン基を含む配位子などの硫黄ドナー原子を含む配位子は、それらが内部に位置決めされる金属有機構造体の導電率を高め得ることが考えられる。硫黄ドナー原子のp軌道は、それらが配位する金属イオンの隣接するd軌道とのおよび/または配位子の隣接部分のパイ軌道との高度な重なりを促進させる、好ましいエネルギーレベルおよび拡散性を有すると考えられる。高い導電率は、金属有機構造体が電子を外部回路におよび外部回路から輸送する能力を高めるので、その内部抵抗を望ましく低減させる。
【0017】
別の例として、金属有機構造体は、上述のスーパーキャパシタ電解質中の1種またはそれよりも多種のイオンと電気化学的に相互に作用させる化学組成を有していてもよい。例えば、金属有機構造体は、その内部へのスーパーキャパシタ電解質中の1種またはそれよりも多種のイオンのインターカレーションおよび/または吸収によっておよび/またはそこからのスーパーキャパシタ電解質中の1種またはそれよりも多種のイオンのデインターカレーションおよび/または脱着によって、金属イオンの電荷の変化がバランスをとる充放電中に可逆的レドックス反応が生じ得るように、レドックス電位を有する複数の金属イオンを含んでいてもよい。1つまたはそれよりも多くの硫黄ドナー原子を含む配位子(例えば、1つまたはそれよりも多くのジチオレン基を含む配位子)など、いくつかの配位子を持つ金属有機構造体中の複数の金属イオンの配位は、金属イオンのレドックス電位に影響を及ぼしてもよく、したがってそのような挙動を促進し得る。
【0018】
一部の実施形態では、金属有機構造体を含む少なくとも1つの電極を含むスーパーキャパシタが、提供される。金属有機構造体は、本明細書に記述される金属有機構造体の1種であってもよく、そして/または本明細書に記述される金属有機構造体の性質のうちの1つまたは複数を有していてもよい。そのようなスーパーキャパシタは、金属有機構造体に関して本明細書の他の箇所に記述される理由で、望ましく高い電力送出容量および/またはエネルギー密度を示してもよい。
【0019】
一部の実施形態では、スーパーキャパシタは、金属有機構造体を含む2つの電極、および/または金属有機構造体を含む電極のみを含む、2つの電極を含む。そのようなスーパーキャパシタは、金属有機構造体をそれぞれが含む2つの電極を含んでいてもよく、電極の一方の金属有機構造体は、他方の電極の金属有機構造体とは、1つまたはそれよりも多くの手法で異なる。例えば、スーパーキャパシタは、第1の電極電位を有する第1の金属有機構造体を含む第1の電極と、第2の、異なる電極電位を有する第2の金属有機構造体を含む第2の電極とを含んでいてもよい。第1および第2の電極電位は一緒になって、全体としてスーパーキャパシタの両端に所望の電位差を提供し得る。例として2つの電極は一緒になって、所望の電力密度および/または容量を提供する、その両端に電位差を示すスーパーキャパシタをもたらし得る。
【0020】
図1は、金属有機構造体100の1つの非限定的な実施形態を示す。一部の実施形態では、金属有機構造体は、二次元構造を有する(例えば、図2に示すような)。二次元構造を有する金属有機構造体は、二次元で一緒に強度に結合されてもよく(例えば、共有結合によって)、一緒に弱く結合および/または三次元で弱く相互に作用してもよい(例えば、ファンデルワースル相互作用によって)。言い換えれば、複数の二次元シートの間の相互作用エネルギーは、複数の二次元シート内の結合強度より低くてもよい。二次元で一緒に強く結合された二次元構造の部分は、二次元シートを形成してもよく、これは二次元でマクロまたはメソスコピック的に拡張してもよく、そして三次元でオングストローム規模またはナノメートル規模の厚さを有していてもよい。そのようなシートは、互いに位置合わせされていてもよく、また、別の手法で互いに対して位置決めされていてもよい。一部の実施形態では、二次元構造は、二次元で反復される(例えば、二次元シートで)が三次元で弱く秩序付けられた、構造モチーフを含む。本明細書の他の箇所に記述されるように、構造モチーフは、細孔、原子、および/または原子の配置構成であってもよい。図2は、複数の二次元シート202を含む金属有機構造体102の、1つの非限定的な実施形態を示す。
【0021】
一部の実施形態では、本明細書に記述される金属有機構造体は、複数の細孔を含む。そのような細孔は、様々な適切な形態を有していてもよい。図3は、複数の細孔304を含む金属有機構造体104の上面の、1つの非限定的な実施形態を示す。本明細書に記述される金属有機構造体中の細孔は、図3に示されるものに共通するいくつかの特徴を有していてもよく、そして/または図3に示されるものとは異なるいくつかの特徴を有していてもよい。例として、一部の実施形態では、金属有機構造体は、図3に示される細孔のように比較的均一なサイジングおよび/またはスペーシングを有する複数の細孔を含む。図3にも示されるように、一部の実施形態では、複数の細孔は、金属有機構造体の全体にわたって反復される格子を形成する手法で互いに対して位置決めされていてもよい。図3に示されるものとは異なってもよい複数の細孔の特徴の例として、一部の実施形態では、複数の細孔は、図3に示されるものとは異なる金属有機構造体の体積分率を占有する(例えば、金属有機構造体は、図3に示される金属有機構造体よりもその非常に大きい体積分率を占有し得る複数の細孔を含んでいてもよい)。別の例として、一部の実施形態では、金属有機構造体は、1つまたはそれよりも多くの手法で互いに異なっている2つの異なる複数の細孔を含む(例えば、第1の複数の細孔は第1の平均孔径を有し、第2の複数の細孔は、第2の平均孔径を有する)。第3の実施例として、一部の実施形態では、金属有機構造体は、孔径が均一ではない複数の細孔を含む。
【0022】
本明細書に記述される金属有機構造体は、ガス吸着により測定したときに多孔度に欠ける可能性があるが電解質中のイオンによってアクセス可能な細孔を含み得ること、および/またはガス吸着により測定したときに表面細孔を含み得るがガス吸着により測定したときにバルク細孔ではないことを、理解すべきである。同様に、本明細書に記述されるいくつかの金属有機構造体は、金属有機構造体の外部の環境と流体連通するバルク細孔を含んでいてもよく、いくつかの金属有機構造体は、金属有機構造体の外部の環境に流体連通していないバルク細孔を含んでいてもよい。
【0023】
一部の実施形態では、金属有機構造体は、細孔を含む二次元シートを含む。図4は、そのような金属有機構造体内の二次元シートの側面の、1つの非限定的な実施形態を示す。図4において、金属有機構造体206は、複数の細孔306を含む。図4において、細孔は、二次元シートを第1の面から第2の反対側の面まで通過する。
【0024】
本明細書に記述される一部の金属有機構造体は、1つまたはそれよりも多くの様式で図4に示されるものに類似した細孔を含む二次元シートを含み、本明細書に記述されるその他の金属有機構造体は、そのような細孔に欠けていてもよく、そして/またはその他のタイプの細孔を含んでいてもよい。例えば、一部の実施形態では、金属有機構造体は、二次元シートに欠けているが細孔を含み、そして/または二次元シート以外のその一部に細孔を含む。別の例として、一部の実施形態では、金属有機構造体は、全体として金属有機構造体の厚みを通過しない、および/または金属有機構造体内の1つまたはそれよりも多くの構造的特徴の厚みを通過しない、細孔を含む。別の例として、金属有機構造体は、その内部の粒(例えば、互いに対してランダムに配向された粒)の間に、さらなる細孔を含んでいてもよい。そのような細孔は、広範なサイズを有していてもよい。
【0025】
本明細書に記述される金属有機構造体内の二次元シートおよび/または細孔は、スーパーキャパシタ内の電極として使用される金属有機構造体の有用性を高める形態を有していてもよい。例えば二次元シートは、その間にイオンをインターカレートさせるような手法で互いに間隔を空けてもよく、そして/または金属有機構造体内の細孔は、その内部にイオンを吸収させる平均孔径を有していてもよい。一部の実施形態では、金属有機構造体は、二次元シートおよび細孔の両方を含む(および/または、その間でのイオンのインターカレーションを可能にする二次元シートと、その内部にイオンを吸収させる細孔との両方を含む)。
【0026】
図5は、2枚の二次元シート間で金属有機構造体にイオンをインターカレートする方法の、1つの非限定的な実施形態を示す。図5において、複数のイオン408は、複数の二次元シート208内の2枚の二次元シートの間にインターカレートされる。図6は、内部にある複数の細孔内へと、イオンを金属有機構造体内部に吸収させる、類似のプロセスを示す。図6において、複数のイオン410は、複数の細孔310内に吸収される。図5および6に示されるように、イオンの直径は、二次元シート間の間隔程度および/または細孔の平均孔径程度であってもよく、これはその内部へのイオンのインターカレーションおよび/または吸収を促進させると考えられる。しかしながら、本明細書に記述されるいくつかの金属有機構造体は、それぞれ1つより多くのイオンをインターカレートするのに適した平均孔径を有する細孔を含んでいてもよいことを理解すべきである。
【0027】
金属有機構造体へのイオンのインターカレーションおよび/または吸収は、レドックス反応を伴ってもよい。例えば一部の実施形態では、金属有機構造体は、レドックス反応を受け、金属有機構造体内にインターカレートおよび/または吸収する複数のイオンの少なくとも一部は、レドックス反応に関連する金属有機構造体の電荷の変化を補償する。別の例として、一部の実施形態では、金属有機構造体はレドックス反応を受け、金属有機構造体からデインターカレートおよび/または脱着される複数のイオンの少なくとも一部は、レドックス反応に関連した金属有機構造体の電荷の変化を補償する。レドックス反応を受ける金属有機構造体の部分は、その内部の金属イオン(または金属有機構造体の任意のその他の適切な部分)であってもよい。例として、複数のイオンの少なくとも一部は、金属有機構造体内の複数の金属イオンの一部が還元されながら、インターカレートおよび/または吸収されてもよい。同様に、一部の実施形態では、複数のイオンの少なくとも一部は、金属有機構造体内の複数の金属イオンの一部が酸化されながら、金属有機構造体内にインターカレートおよび/または吸収されてもよい。一部の金属有機構造体は、この挙動を有するように構成されていてもよい(即ち、上述の挙動が生じるように、複数のイオンと相互に作用するように構成されていてもよい)。
【0028】
本明細書に記述される金属有機構造体のいくつかは、レドックス反応を受けることなく、イオンをインターカレートし、吸収し、デインターカレートし、そして/または脱着するよう構成され得ることも理解すべきである。
【0029】
金属有機構造体へのイオンのインターカレーションおよび/または吸収と、金属有機構造体からのイオンのデインターカレーションおよび/または脱着とを伴うレドックス反応は、充放電中にレドックス反応を受けるのに適した範囲内のレドックス電位を有する金属有機構造体内の金属イオンの存在によって容易になり得る。金属有機構造体内の金属イオンのレドックス電位は、下記の因子:金属のタイプ、金属の酸化状態、それに配位している配位子のタイプ、それに配位している配位子の酸化状態、スーパーキャパシタ内の電解質の誘電定数、スーパーキャパシタ内の電解質中のイオンの電荷、およびスーパーキャパシタ内の電解質中のイオンの分極率のうちの、1つまたは複数によって影響を受ける可能性がある。
【0030】
本明細書の他の箇所に記述されるように、一部の実施形態は、金属有機構造体を含むスーパーキャパシタ電極におよび/またはそのような電極を含むスーパーキャパシタに関する。図7は、金属有機構造体112を含むスーパーキャパシタ電極512の、1つの非限定的な実施形態を示す。図7に示されるように、一部のスーパーキャパシタ電極は、集電子(図7では、集電子612として示される)を含んでいてもよい。他のスーパーキャパシタは、集電子に欠けていてもよく、そして/または図7に示されない1つもしくはそれよりも多くのさらなる構成要素を含んでいてもよい。図8は、金属有機構造体を含む電極を含むスーパーキャパシタの、1つの非限定的な実施形態を示す。図8では、スーパーキャパシタ714は、金属有機構造体を含む第1の電極514、第2の電極515、および電解質814を含む。本明細書に記述されるスーパーキャパシタは、図8に示されない他の構成要素(例えば、セパレーター、ハウジング、外部回路など)をさらに含んでいてもよいことを理解すべきである。
【0031】
本明細書に記述されるいくつかのスーパーキャパシタは、擬似キャパシタであってもよい。そのようなキャパシタは、充放電中にファラデー電荷移動をそれぞれ受ける2つの電極を含んでいてもよい。ファラデー電荷移動は、放電後のインターカレーションまたはデインターカレーションプロセス(および/または吸収もしくは脱着プロセス)と、充電後のインターカレーションおよびデインターカレーションプロセス(および/または吸収もしくは脱着プロセス)の他方を含んでいてもよい。言い換えれば、擬似キャパシタは、放電後にイオンがそこからデインターカレート(および/または脱着)されるおよび充電後にイオンがそこにインターカレート(および/または吸収)される1つの電極と、放電後にイオンがそこにインターカレート(および/または吸収)されるおよび充電後にイオンがそこからデインターカレート(および/または脱着)される別の電極とを含んでいてもよい。そのようなプロセスのいずれかまたは両方は、電極内でのレドックス反応をさらに含んでいてもよい。そのようなプロセスは、放電中の電気二重層の溶解および/または充電中の電気二重層の形成を含んでいてもよい。一部の擬似キャパシタでは、電極の1つまたは両方が、本明細書に記述された金属有機構造体を含んでいてもよい。イオンは、金属有機構造体にインターカレートされてもよく、そして/またはそこからデインターカレート(および/またはそこに吸収および/またはそこから脱着)されてもよい。
【0032】
本明細書に記述されるいくつかのスーパーキャパシタは、ハイブリッドキャパシタであってもよい。そのようなキャパシタは、充放電後にファラデープロセス(例えば、インターカレーションまたはデインターカレーションプロセス、吸収または脱着プロセス、レドックス反応)を受ける1つの電極を含んでいてもよい。この電極は、擬似キャパシタに関して既に述べた二重層容量を示してもよい。他の電極は、充放電中にファラデープロセスを受けなくてもよい(例えば、二重層容量を示すだけであってもよい)。そのようなスーパーキャパシタでは、ファラデープロセスを受ける電極は、金属有機構造体を含んでいてもよく、他の電極は、金属有機構造体以外の材料を含んでいてもよい。
【0033】
上述のように、一部の実施形態では、充放電プロセスは、金属有機構造体内に複数のイオンをインターカレートすることを含む。これは、電力送出のために金属有機構造体を含むスーパーキャパシタの使用中に生じてもよく、そして/または事前のコンディショニンングプロセスとして生じてもよい。例えば、一部の実施形態は、複数のイオンが金属有機構造体内にインターカレートされて、さらなるプロセス中にその内部へのさらなるイオン(例えば、異なるタイプのイオン)のインターカレーションを促進させる手法でコンディショニングする、コンディショニングプロセスを含んでいてもよい。例としてプロセスは、内部の二次元シート間の間隔を増大させるような手法で、複数の比較的大きいイオンを金属有機構造体内にインターカレーションすることを含んでいてもよい。次いでそのようなイオンは、金属有機構造体からデインターカレートされてもよく、その後、金属有機構造体が永続的に膨張してもよい。後続のプロセスは、さらなるイオンを金属有機構造体内にインターカレートすることを含んでいてもよい(例えばイオンは、その内部への第1の複数のイオンのインターカレーション前に、二次元シート間の間隔よりも大きいサイズを有し、その内部からの第1の複数のイオンのデインターカレーション後に、二次元シート間の間隔よりも小さいサイズを有する)。
【0034】
一部の実施形態では、複数の比較的大きいイオンは、金属有機構造体に引き続きインターカレートされる複数のイオンとは反対の電荷を有する。これらのイオンの存在下で金属有機構造体をコンディショニングするためのプロセスは、金属有機構造体を最初に充電して第1の電荷を持たせ(例えば、正に)、次いで金属有機構造体を充電して第2の反対の電荷を持たせる(例えば、負に)ことを含んでいてもよい。金属有機構造体を充電して第2の反対の電荷を持たせる場合、複数の比較的大きいイオンは、そこからデインターカレートされてもよく、第2の複数のイオンはその内部にインターカレートされてもよい。
【0035】
本明細書に記述される金属有機構造体は、複数の配位子が配位した複数の金属イオンを含んでいてもよい。「金属有機構造体」という用語には、当技術分野におけるその通常の意味が与えられ、有機構造単位として機能する金属イオンおよび配位子を含む一、二、または三次元配位ポリマーを指し、この金属イオンの一部は、少なくとも1つの配位子(例えば、二、三、および/または多座配位子)にそれぞれ化学的に結合する。金属イオンは、少なくとも1つの有機構造単位が配位していることに加え、本明細書でより詳細に記述されるように1つまたはそれよりも多くの補助配位子が配位していてもよい。
【0036】
本明細書に記述される金属有機構造体は、様々な適切な幾何形状を有していてもよい。一部の実施形態では、金属有機構造体が複数の金属イオンを含み、その少なくとも一部は1つまたはそれよりも多くの配位子が配位している。例えば、一部の実施形態では、金属有機構造体は複数の金属イオンを含み、金属イオンの少なくとも一部は、2、3、または4つの配位子に会合している。金属有機構造体はさらに、複数の配位子を含んでいてもよく、その少なくとも一部は、1つまたはそれよりも多くの金属イオンに配位している。例として、金属有機構造体中の配位子の少なくとも一部は(例えば、金属有機構造体の少なくとも一部および/または各非補助配位子)、2つまたはそれよりも多くの金属イオンに配位していてもよい。一部の実施形態では、金属有機構造体は、複数の配位子を含み、その少なくとも一部は3または4つの金属イオンに配位している。下記は、本明細書に記述される金属有機構造体中の金属イオンおよび配位子が:少なくとも2つの配位子が配位した金属イオンの少なくとも一部、および2つの金属イオンに配位した配位子の少なくとも一部、3つの配位子が配位した金属イオンの少なくとも一部、および3つの金属イオンに配位した配位子の少なくとも一部、2つの配位子が配位した金属イオンの少なくとも一部、および3つの金属イオンに配位した各配位子を有し得る形態のさらなる非限定的実施例である。
【0037】
本明細書に記述される金属有機構造体で使用するのに適した金属イオンおよび配位子の電荷は、一般に、望み通りに選択され得る。例えば、金属有機構造体は、(-1)、(-2)、(-3)、(-4)、(-5)、および/または(-6)の電荷を有する配位子を含んでいてもよい。別の例では、金属有機構造体は、(+1)、(+2)、および/または(+3)の電荷を有する金属イオンを含んでいてもよい。帯電していない金属有機構造体では、各配位子の電荷は、典型的には、配位した金属イオンの電荷によってバランスをとり、それによって、任意のイオンが金属有機構造体内に吸収および/またはインターカレートされる。
【0038】
本明細書に記述される金属有機構造体は、2つまたはそれよりも多くのタイプの配位子および/または2つまたはそれよりも多くのタイプのイオンを含み得ることを理解すべきである。2つまたはそれよりも多くのタイプの配位子が提供される場合、各タイプの配位子の相対量は、望み通りに選択され得る。同様に、2つまたはそれよりも多くのタイプの金属イオンが提供される場合、各タイプの金属イオンの相対量は、望み通りに選択され得る。本明細書に記述されるいくつかの金属有機構造体は、単一タイプの配位子および/または単一タイプの金属イオンを含むことも理解すべきである。
【0039】
金属イオンに配位する、様々な適切な官能基を含む配位子は、本明細書に記述される金属有機構造体に用いられてもよい。一部の金属有機構造体は、多座(例えば、二座)配位子を含んでいてもよい。そのような配位子は、2つまたはそれよりも多くの金属イオンに配位してもよく、多座様式で各金属イオンに配位してもよい。例として、2つの金属イオンに配位する配位子は、それぞれが二座様式であり、2組の2個の官能基を含んでいてもよく、各組の2個の官能基は金属イオンに配位するものである。別の例として、3つの金属イオンに配位する配位子は、それぞれが二座様式であり、3組の2個の官能基を含んでいてもよく、各組の2個の官能基は金属イオンに配位するものである。第3の例として、4つの金属イオンに配位する配位子は、それぞれが二座様式であり、4組の2個の官能基を含んでいてもよく、各組の2個の官能基は金属イオンに配位するものである。
【0040】
多座様式で金属イオンに配位する官能基は、様々な適切な形をとってもよい。一部の実施形態では、多座配位は、ビシナル官能基(例えば、オルト官能基)を介して実現される。言い換えれば、配位子が多座である場合、単一金属イオンに配位するように構成された官能基の組合せは、隣接していてもよい(例えば、オルト)。一部の実施形態では、多座配位は、隣接する官能基以外の官能基を介して実現される(例えば、オルト官能基、パラ官能基。上記のように、これは、単一の金属イオンに配位するように構成された官能基の組合せが、ビシナル以外(例えば、メタ、パラ)であってもよいことを意味する。
【0041】
一部の実施形態では、配位子が、単一タイプの官能基によって単一金属イオンに配位している。例えば配位子は、2個またはそれよりも多くの同一の官能基によって単一金属イオンに配位していてもよい。一部のそのような実施形態では、配位子により配位された金属イオンの全ては、その内部の単一タイプの官能基によって配位されている。
【0042】
他の実施形態では、配位子は、2つまたはそれよりも多くのタイプの官能基によって単一金属イオンに配位している。例えば、金属イオンは、オルト官能基を有する複数の配位子によって配位されていてもよく、パラおよび/またはメタ官能基を有する複数の配位子によって配位されていてもよい。一部の実施形態では、オルト官能基を含む第1の複数の配位子は、オルト官能基を介して複数の金属イオンに配位して二次元シートを形成してもよく、パラおよび/またはメタ官能基を含む第2の複数の配位子は、パラおよび/またはメタ官能基を介して複数の金属イオンに配位して、二次元シートを一緒に接合するピラーを形成してもよい。
【0043】
一部の実施形態は、複数の配位子が、2つまたはそれよりも多くのタイプの官能基を含む配位子を含んで、かつ/または複数の金属イオンが、2つまたはそれよりも多くのタイプの官能基によって配位された金属イオンを含んでいる、金属有機構造体に関するものであってもよいことも理解すべきである。
【0044】
本明細書に記述される一部の金属有機構造体は、特に有利な官能基を介して金属イオンに配位し得る。例えば、一部の実施形態では、金属有機構造体は、硫黄ドナー原子を含む官能基(例えば、ビシナルチオレート官能基、オルトチオレート官能基、チオレン官能基)によって金属イオンに配位する。別の例として、一部の実施形態では、金属有機構造体は、イミン官能基(例えば、ビシナルイミン官能基、オルトイミン官能基)によって金属イオンに配位する。
【0045】
本明細書に記述される配位子の有機コアは、様々な適切な構造を有していてもよい。一部の実施形態では、金属有機構造体は、導電性有機コアを有する配位子を含む。そのような有機コアは、共役二重結合および/または芳香族部分を含んでいてもよい。例えば、一部の実施形態では、金属有機構造体は、縮合アリールおよび/またはヘテロアリール環を含む配位子を含む。そのような配位子は、縮合アリールおよび/またはヘテロアリール環から形成された剛性構造を有する有機コアを有していてもよい。適切なアリールおよびヘテロアリール環の非限定的な例には、ベンジル環、チオフェニル環、カルバゾリル環、ピロリル環、インドリル環、およびフラニル環が含まれる。
【0046】
配位子に関する適切な構造の1つの例は:
【化1】

であり、式中、nは1、2、または3であり、Cは、環Aと各環Bとの間に形成された1つまたはそれよりも多くの結合を表し、Rは、金属イオンに配位した官能基である。一部の実施形態では、各Rは-Sである。一部の実施形態では、各Rは-NHである。ある場合には、nが1である。ある場合には、nが2である。ある場合には、nが3である。
【0047】
配位子に関して適切な構造の他の例には:
【化2】

が含まれ、式中、各Rは、同じであるかまたは異なり、水素、-NO、-R’、-F、-Cl、-Br、-I、-CN、-NC、-SOR’、-SOH、-OR’、-OH、-SR’、-SH、-POR’、-POH、-CF、-NR’、-NHR’、および-NHからなる群から選択され;各R’は、同じであるかまたは異なり、必要に応じて置換されたアルキルまたは必要に応じて置換されたアリールであり;各Rは、金属イオンに配位する官能基である。一部の実施形態では、R基と、R’基の少なくとも一部(または全て)との両方が、金属イオンに配位する官能基である。一部の実施形態では、各Rが-Sである。一部の実施形態では、各Rが-NHである。一部の実施形態では、各Rが水素である。一部の実施形態では、各R’がHである。
【0048】
配位子に関する適切な構造のさらに他の例には、:
【化3】

【化4】

が含まれ、式中、各Rは、同じであるかまたは異なり、水素、-NO、-R’、-F、-Cl、-Br、-I、-CN、-NC、-SOR’、-SOH、-OR’、-OH、-SR’、-SH、-POR’、-POH、-CF、-NR’、-NHR’、および-NHからなる群から選択され;各Xは、同じであるかまたは異なり、NR’、O、S、Se、およびTeからなる群から選択され;各R’は、同じであるかまたは異なり、必要に応じて置換されたアルキルまたは必要に応じて置換されたアリールであり;各Rは、金属イオンに配位する官能基である。一部の実施形態では、各Rが-Sである。一部の実施形態では、各Rが-NHである。一部の実施形態では、R基と、R’基の少なくとも一部(または全て)との両方が、金属イオンに配位する官能基である。一部の実施形態では、各Rが水素である。一部の実施形態では、各Xが、同じであるかまたは異なり、NR’、O、およびSからなる群から選択される。一部の実施形態では、各XがNR’である。一部の実施形態では、各XがOである。一部の実施形態では、各XがSである。一部の実施形態では、各XがSeである。一部の実施形態では、各XがTeである。一部の実施形態では、各R’がHである。
【0049】
本明細書の他の箇所に記述されるように、本明細書に記述される金属有機構造体中に含まれる金属イオンは、1価、2価、および/または3価であってもよい。そのような金属イオンは、遷移金属イオン、貴金属イオン、および/またはポスト遷移金属イオンであってもよい。一部の実施形態では、各金属イオンは、1価の金属イオンである。1価の金属イオンの非限定的な例は、Ag、Cu、およびAuである。ある場合には、金属有機構造体は、Cu(例えば、唯一のタイプの金属イオンとして、2つまたはそれよりも多くのタイプの金属イオンの1つとして)を含む。一部の実施形態では、各金属イオンは2価の金属イオンである。2価の金属イオンの非限定的な例は、Mg2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Cu2+、Pd2+、Pt2+、Ru2+、Cd2+、Zn2+、Pb2+、Hg2+、V2+、Cr2+、およびNi2+である。ある場合には、金属イオンはNi2+(例えば、唯一のタイプの金属イオンとして、2つまたはそれよりも多くのタイプの金属イオンの1つとして)である。ある場合には、金属イオンはCu2+(例えば、唯一のタイプの金属イオンとして、2つまたはそれよりも多くのタイプの金属イオンの1つとして)である。一部の実施形態では、各イオンは3価の金属イオンである。3価の金属イオンの非限定的な例は、Fe3+、V3+、Ti3+、Sc3+、Al3+、In3+、Ga3+、Mn3+、Co3+、およびCr3+である。一部の実施形態では、金属有機構造体は、ニッケルイオン、コバルトイオン、鉄イオン、銅イオン、白金イオン、および/またはパラジウムイオン(例えば、1価の形、2価の形、および/または3価の形をとる)を含む。
【0050】
本明細書の他の箇所にも記述されるように、一部の金属有機構造体は、充放電中(例えば、スーパーキャパシタ内で)に酸化反応を受けるのに適したレドックス電位を有する金属イオンを含む。例えば、金属有機構造体は、標準水素電極に対して-3Vよりも大きいまたはそれに等しい、-2.75Vよりも大きいまたはそれに等しい、-2.5Vよりも大きいまたはそれに等しい、-2.25Vよりも大きいまたはそれに等しい、-2Vよりも大きいまたはそれに等しい、-1.75Vよりも大きいまたはそれに等しい、-1.5Vよりも大きいまたはそれに等しい、-1.25Vよりも大きいまたはそれに等しい、-1Vよりも大きいまたはそれに等しい、-0.75Vよりも大きいまたはそれに等しい、-0.5Vよりも大きいまたはそれに等しい、-0.25Vよりも大きいまたはそれに等しい、0Vよりも大きいまたはそれに等しい、0.25Vよりも大きいまたはそれに等しい、0.5Vよりも大きいまたはそれに等しい、0.75Vよりも大きいまたはそれに等しい、1Vよりも大きいまたはそれに等しい、1.25Vよりも大きいまたはそれに等しい、1.5Vよりも大きいまたはそれに等しい、1.75Vよりも大きいまたはそれに等しい、2Vよりも大きいまたはそれに等しい、2.25Vよりも大きいまたはそれに等しい、2.5Vよりも大きいまたはそれに等しい、あるいは2.75Vよりも大きいまたはそれに等しいレドックス電位を有する複数のイオンを含んでいてもよい。一部の実施形態では、金属有機構造体は、標準水素電極に対して3V未満またはそれに等しい、2.75V未満またはそれに等しい、2.5V未満またはそれに等しい、2.25V未満またはそれに等しい、2V未満またはそれに等しい、1.75V未満またはそれに等しい、1.5V未満またはそれに等しい、1.25V未満またはそれに等しい、1V未満またはそれに等しい、0.75V未満またはそれに等しい、0.5V未満またはそれに等しい、0.25V未満またはそれに等しい、0V未満またはそれに等しい、-0.25V未満またはそれに等しい、-0.5V未満またはそれに等しい、-0.75V未満またはそれに等しい、-1V未満またはそれに等しい、-1.25V未満またはそれに等しい、-1.5V未満またはそれに等しい、-1.75V未満またはそれに等しい、-2V未満またはそれに等しい、-2.25V未満またはそれに等しい、-2.5V未満またはそれに等しい、あるいは-2.75V未満またはそれに等しいレドックス電位を有する複数のイオンを含む。上記言及された範囲の組合せも可能である(例えば、-3Vよりも大きくまたはそれに等しくかつ3V未満またはそれに等しい、-3Vよりも大きくまたはそれに等しくかつ2V未満またはそれに等しい)。他の範囲も可能である。
【0051】
金属有機構造体における金属イオンのレドックス電位は、金属有機構造体のレドックス電位を決定するためにサイクリックボルタンメトリーによって、およびレドックス電位が金属イオンのものであることを確認するためにX線吸着分光法によって、決定されてもよい。
【0052】
一部の実施形態では、1より多くのタイプの金属イオン、例えば第1のタイプの金属イオンおよび第2のタイプの金属イオンを用いてもよい。金属イオンのタイプの間の差は、金属イオンを形成する元素におよび/または金属イオンの価数に関係し得る。例えば、一部の金属有機構造体は、種々の価数を持つ2つまたはそれよりも多くのタイプの金属イオンを含んでいてもよい。そのようなタイプの金属イオンは、同じタイプの金属であるが異なるレドックス状態にあるもの(例えば、CuおよびCu2+)を含んでいてもよく、また、異なるレドックス状態にある異なるタイプの金属(例えば、CuおよびNi2+)を含んでいてもよい。別の例として、2つの異なるタイプの金属イオンは、同じレドックス状態にある異なるタイプの金属(例えば、Cu2+およびNi2+)を含んでいてもよい。いくつかの金属有機構造体は、単一価数のみ有する金属イオンおよび/または単一タイプの金属のみのものを含み得ることも理解すべきである。
【0053】
金属有機構造体が、異なる価数の2つまたはそれよりも多くのタイプの金属イオンを含み得る場合、金属イオンのタイプの組合せおよび金属イオンのタイプの相対量は、一般に望み通りに選択され得る。一部の実施形態では、金属有機構造体は、1つまたはそれよりも多くの1価の金属イオンと、1つまたはそれよりも多くの2価の金属イオンとを含む。一部のそのような実施形態では、金属有機構造体は、レドックス活性でありおよび/または金属イオンの種々のレドックス状態に順応することができる、1つまたはそれよりも多くの配位子を含んでいてもよい。
【0054】
一部の実施形態では、金属有機構造体は、複数の補助配位子を含む。そのような場合、その内部にある複数の金属イオンの少なくとも一部は、1つまたはそれよりも多くの補助配位子に会合していてもよい。補助配位子は、それが会合している金属イオンの上および/または下に位置決めされていてもよい(例えば、アピカル配位子として)。一部の適切な補助配位子は帯電していてもよく、他の補助配位子は帯電していなくてもよい。補助配位子の非限定的な例は、ハロゲン化物(例えば、塩素、フッ素、臭素、ヨウ素)、塩(例えば、硝酸塩、炭酸塩、スルホン酸塩など)、および配位性溶媒(例えば、水、ピリジン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなど)を含む。
【0055】
スーパーキャパシタの電極に使用するのに特に適していると考えられる金属有機構造体の2つの例を、以下に示し:
【化5】

式中、Mは金属イオンである。例えばMは、鉄イオン、コバルトイオン、ニッケルイオン、および/または銅イオンなどの遷移金属イオンであってもよい。
【0056】
一部の実施形態では、本明細書に記述される金属有機構造体は、過剰な金属イオンをほとんどまたは全く含まない。即ち金属有機構造体は、配位子が配位されていない(および/または金属イオンに配位するよう構成された官能基によって配位子が配位されていない)金属イオンを本質的に含まなくてもよい。そのような非配位金属イオンは、本明細書の他の箇所で「遊離金属イオン」とも呼ばれる。一部の実施形態では、金属有機構造体は、0.5重量%未満またはそれに等しい、0.4重量%未満またはそれに等しい、0.3重量%未満またはそれに等しい、0.2重量%未満またはそれに等しい、0.1重量%未満またはそれに等しい、0.05重量%未満またはそれに等しい、0.03重量%未満またはそれに等しい、0.02重量%未満またはそれに等しい、0.01重量%未満またはそれに等しい、0.005重量%未満またはそれに等しい、あるいは0.001重量%未満またはそれに等しい遊離金属イオンを含む。
【0057】
金属有機構造体内の遊離金属イオンの重量%は、X線光電子分光法によって決定されてもよい。
【0058】
一部の実施形態では、スーパーキャパシタは2つの電極を含み、それぞれは、上記にて示された金属有機構造体の1種を含む(例えば、カソードは上記にて示された金属有機構造体の1種を含み、アノードは、上記にて示された金属有機構造体の別のものを含む)。電極の1つは、硫黄ドナー原子によって硫黄ドナー原子を含む官能基を含む配位子が金属イオンに配位した金属有機構造体を含んでいてもよく、電極の1つは、イミン官能基によってイミン官能基を含む配位子が金属イオンに配位した金属有機構造体を含んでいてもよい。
【0059】
上述のように、一部の実施形態では、本明細書に記述される金属有機構造体は、スーパーキャパシタ電極で使用するためのその適切性を高める1つまたはそれよりも多くの物理的性質を有する。
【0060】
例として、金属有機構造体は、複数の細孔を含んでいてもよい。複数の細孔は、有利な平均孔径を有していてもよい。例えば、複数の細孔は、0.3nmよりも大きいまたはそれに等しい、0.5nmよりも大きいまたはそれに等しい、0.75nmよりも大きいまたはそれに等しい、1nmよりも大きいまたはそれに等しい、1.25nmよりも大きいまたはそれに等しい、1.5nmよりも大きいまたはそれに等しい、1.75nmよりも大きいまたはそれに等しい、2nmよりも大きいまたはそれに等しい、2.25nmよりも大きいまたはそれに等しい、2.5nmよりも大きいまたはそれに等しい、あるいは2.75nmよりも大きいまたはそれに等しい平均孔径を有していてもよい。一部の実施形態では、複数の細孔は、3nm未満またはそれに等しい、2.75nm未満またはそれに等しい、2.5nm未満またはそれに等しい、2.25nm未満またはそれに等しい、2nm未満またはそれに等しい、1.75nm未満またはそれに等しい、1.5nm未満またはそれに等しい、1.25nm未満またはそれに等しい、1nm未満またはそれに等しい、0.75nm未満またはそれに等しい、あるいは0.5nm未満またはそれに等しい平均孔径を有する。上記言及された範囲の組合せも可能である(例えば、0.3nmよりも大きくまたはそれに等しくかつ3nm未満またはそれに等しい)。他の範囲も可能である。
【0061】
秩序のある手法で位置決めされた複数の細孔の平均孔径は、X線結晶構造解析によって決定される(例えば、格子を形成するように位置決めされた細孔、二次元シートに反復構造を形成する細孔)。不規則なおよび/またはランダムな手法で位置決めされた複数の細孔の平均孔径は、Brunauer-Emmett-Teller(BET)吸着測定によって決定されてもよい。
【0062】
金属有機構造体が複数の細孔を含むとき、複数の細孔は、様々な適切な形状を有する細孔を含んでいてもよい。例えば、金属有機構造体は、円形、三角形、楕円、四角形、五角形、六角形、および/または任意のその他の適切な形状の細孔を含む二次元シートを含んでいてもよい。別の例として、金属有機構造体は、球形、卵形、円筒形、および/または任意のその他の適切な形状を有する三次元細孔を含んでいてもよい。一部の実施形態では、金属有機構造体は、上記言及した形状の1つに近いが同一ではない細孔を含む。例えば、金属有機構造体は、上記言及された形状の1つを描くことができる細孔であって、その面積の少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%が重なる細孔、および/またはその面積の少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%が上記言及された形状の1つのものに重なる細孔を含んでいてもよい。
【0063】
金属有機構造体が複数の細孔を含む場合、複数の細孔は、様々な適切な数の金属イオンによって境界が形成された細孔を含んでいてもよい。例えば、一部の実施形態では、複数の細孔は、3個よりも多いまたはそれに等しい金属イオン、4個よりも多いまたはそれに等しい金属イオン、あるいは5個よりも多いまたはそれに等しい金属イオンによって境界が形成された細孔を含む。一部の実施形態では、複数の細孔は、6個未満またはそれに等しい金属イオン、5個未満またはそれに等しい金属イオン、あるいは4個未満またはそれに等しい金属イオンによって境界が形成された細孔を含む。上記言及された範囲の組合せも可能である(例えば、3よりも大きくまたはそれに等しく、かつ6未満またはそれに等しい)。他の範囲も可能である。
【0064】
金属有機構造体が複数の細孔を含むとき、複数の細孔は、様々な適切な数のドナー原子(例えば、硫黄原子)によって境界が形成された細孔を含んでいてもよい。例えば、一部の実施形態では、複数の細孔は、3個よりも多いまたはそれに等しいドナー原子、4個よりも多いまたはそれに等しいドナー原子、5個よりも多いまたはそれに等しいドナー原子、6個よりも多いまたはそれに等しいドナー原子、7個よりも多いまたはそれに等しいドナー原子、8個よりも多いまたはそれに等しいドナー原子、9個よりも多いまたは等しいドナー原子、10個よりも多いまたは等しいドナー原子、あるいは11個よりも多いまたは等しいドナー原子によって境界が形成された細孔を含む。一部の実施形態では、複数の細孔は、12個未満またはそれに等しいドナー原子、10個未満またはそれに等しいドナー原子、9個未満またはそれに等しいドナー原子、8個未満またはそれに等しいドナー原子、7個未満またはそれに等しいドナー原子、6個未満またはそれに等しいドナー原子、5個未満またはそれに等しいドナー原子、あるいは4個未満またはそれに等しいドナー原子によって境界が形成された細孔を含む。上記言及された範囲の組合せも可能である(例えば、3よりも多くまたはそれに等しくかつ12未満またはそれに等しい)。他の範囲も可能である。
【0065】
スーパーキャパシタ電極で使用するためのその適切性を高め得る性質の別の例として、金属有機構造体は、1つまたはそれよりも多くの所望の構造的特徴を有する二次元シートを含んでいてもよい。例えば、金属有機構造体は、望ましい平均間隔を有する二次元シートを含んでいてもよい。一部の実施形態では、金属有機構造体は、0.3nmよりも大きいまたはそれに等しい、0.4nmよりも大きいまたはそれに等しい、あるいは0.5nmよりも大きいまたはそれに等しい、0.6nmよりも大きいまたはそれに等しい、0.7nmよりも大きいまたはそれに等しい、0.8nmよりも大きいまたはそれに等しい、あるいは0.9nmよりも大きいまたはそれに等しい平均間隔で、互いに間隔を空けて配置された二次元シートを含む。一部の実施形態では、金属有機構造体は、1nm未満またはそれに等しい、0.9nm未満またはそれに等しい、0.8nm未満またはそれに等しい、0.7nm未満またはそれに等しい、0.6nm未満またはそれに等しい、0.5nm未満またはそれに等しい、あるいは0.4nm未満またはそれに等しい平均間隔で、互いに間隔を空けて配置された二次元シートを含む。上記言及された範囲の組合せも可能である(例えば、0.3nmよりも大きくまたはそれに等しくかつ1nm未満またはそれに等しい)。他の範囲も可能である。
【0066】
二次元シート間の平均間隔は、X線結晶構造解析によって決定されてもよい。
【0067】
金属有機構造体が二次元シートを含む場合、様々な適切な手法で互いに対して位置決めされていてもよい。例えば、いくつかの金属有機構造体は、重なり合う状態で互いに対して位置決めされた二次元シートを含んでいてもよい。そのような金属有機構造体は、AA型積層を有する二次元シートを含んでいてもよい。一部の実施形態では、金属有機構造体は、互い違いの様式で互いに対して位置決めされた二次元シートを含む。そのような金属有機構造体は、AB型の積層を有する二次元シートおよび/または互いに対して最大限オフセットされた(例えば、その内部のモチーフの反復距離の半分)二次元シートを含んでいてもよい。二次元シートの他の位置決めも可能である。例えば、金属有機構造体は、それらの間で重なり合ったおよび互い違いにされた様式で互いに対して位置決めされた二次元シートを含んでいてもよく、そして/またはABC型もしくはその他のタイプの積層を有する二次元シートを含んでいてもよい。
【0068】
スーパーキャパシティ電極で使用するためのその適切性を高め得る性質の第3の例として、金属有機構造体は、充放電中にレドックス反応を容易にするレドックス電位を有していてもよい。例えば、金属有機構造体は、標準水素電極に対して-3Vよりも大きいまたはそれに等しい、-2.7Vよりも大きいまたはそれに等しい、-2.5Vよりも大きいまたはそれに等しい、-2.3Vよりも大きいまたはそれに等しい、-2Vよりも大きいまたはそれに等しい、-1.7Vよりも大きいまたはそれに等しい、-1.5Vよりも大きいまたはそれに等しい、-1.3Vよりも大きいまたはそれに等しい、-1Vよりも大きいまたはそれに等しい、-0.7Vよりも大きいまたはそれに等しい、-0.5Vよりも大きいまたはそれに等しい、-0.3Vよりも大きいまたはそれに等しい、0Vよりも大きいまたはそれに等しい、0.2Vよりも大きいまたはそれに等しい、0.5Vよりも大きいまたはそれに等しい、0.7Vよりも大きいまたはそれに等しい、1Vよりも大きいまたはそれに等しい、1.3Vよりも大きいまたはそれに等しい、1.5Vよりも大きいまたはそれに等しい、1.7Vよりも大きいまたはそれに等しい、2Vよりも大きいまたはそれに等しい、2.3Vよりも大きいまたはそれに等しい、2.5Vよりも大きいまたはそれに等しい、あるいは2.7Vよりも大きいまたはそれに等しいレドックス電位を有していてもよい。一部の実施形態では、金属有機構造体は、標準水素電極に対して3V未満またはそれに等しい、2.7V未満またはそれに等しい、2.5V未満またはそれに等しい、2.3V未満またはそれに等しい、2V未満またはそれに等しい、1.7V未満またはそれに等しい、1.5V未満またはそれに等しい、1.3V未満またはそれに等しい、1V未満またはそれに等しい、0.7V未満またはそれに等しい、0.5V未満またはそれに等しい、0.2V未満またはそれに等しい、0V未満またはそれに等しい、-0.3V未満またはそれに等しい、-0.5V未満またはそれに等しい、-0.7V未満またはそれに等しい、-1V未満またはそれに等しい、-1.3V未満またはそれに等しい、-1.5V未満またはそれに等しい、-1.7V未満またはそれに等しい、-2V未満またはそれに等しい、-2.3V未満またはそれに等しい、-2.5V未満またはそれに等しい、あるいは-2.7V未満またはそれに等しいレドックス電位を有する。上記言及された範囲の組合せも可能である(例えば、-3Vよりも大きくまたはそれに等しくかつ3V未満またはそれに等しく、-2.7Vよりも大きくまたはそれに等しくかつ1.3V未満またはそれに等しく、-2.7Vよりも大きくまたはそれに等しくかつ0.2V未満またはそれに等しく、あるいは-2Vよりも大きくまたはそれに等しくかつ1.3V未満またはそれに等しい)。その他の範囲も可能である。一部の実施形態では、スーパーキャパシタは、上記列挙された範囲の1つまたは複数においてレドックス電位をそれぞれが有している2つの金属有機構造体を含んでいてもよい(例えば、1つは、-2.7Vよりも大きくまたはそれに等しいかつ0.2V未満またはそれに等しいレドックス電位を有する金属有機構造体であり、もう1つは、-2Vよりも大きくまたはそれに等しくかつ1.3V未満またはそれに等しいレドックス電位を有する金属有機構造体である)。
【0069】
金属有機構造体のレドックス電位は、サイクリックボルタンメトリーによって決定されてもよい。
【0070】
スーパーキャパシタ電極で使用するためのその適切性を高め得る性質の第4の例として、金属有機構造体は、有利に高い導電率を有していてもよい。一部の実施形態では、本明細書に記述される金属有機構造体は、1S/cmよりも大きいまたはそれに等しい、2S/cmよりも大きいまたはそれに等しい、5S/cmよりも大きいまたはそれに等しい、7S/cmよりも大きいまたはそれに等しい、10S/cmよりも大きいまたはそれに等しい、15S/cmよりも大きいまたはそれに等しい、20S/cmよりも大きいまたはそれに等しい、25S/cmよりも大きいまたはそれに等しい、30S/cmよりも大きいまたはそれに等しい、35S/cmよりも大きいまたはそれに等しい、40S/cmよりも大きいまたはそれに等しい、50S/cmよりも大きいまたはそれに等しい、60S/cmよりも大きいまたはそれに等しい、70S/cmよりも大きいまたはそれに等しい、80S/cmよりも大きいまたはそれに等しい、90S/cmよりも大きいまたはそれに等しい、100S/cmよりも大きいまたはそれに等しい、150S/cmよりも大きいまたはそれに等しい、200S/cmよりも大きいまたはそれに等しい、500S/cmよりも大きいまたはそれに等しい、750S/cmよりも大きいまたはそれに等しい、1000S/cmよりも大きいまたはそれに等しい、あるいは1500S/cmよりも大きいまたはそれに等しい導電率を有する。金属有機構造体は、2000S/cm未満またはそれに等しい、1500S/cm未満またはそれに等しい、1000S/cm未満またはそれに等しい、750S/cm未満またはそれに等しい、500S/cm未満またはそれに等しい、200S/cm未満またはそれに等しい、150S/cm未満またはそれに等しい、100S/cm、90S/cm未満またはそれに等しい、80S/cm未満またはそれに等しい、70S/cm未満またはそれに等しい、60S/cm未満またはそれに等しい、50S/cm未満またはそれに等しい、40S/cm未満またはそれに等しい、35S/cm未満またはそれに等しい、30S/cm未満またはそれに等しい、25S/cm未満またはそれに等しい、20S/cm未満またはそれに等しい、15S/cm未満またはそれに等しい、10S/cm未満またはそれに等しい、7S/cm未満またはそれに等しい、5S/cm未満またはそれに等しい、あるいは2S/cm未満またはそれに等しい導電率を有していてもよい。上記言及された範囲の組合せも可能である(例えば、1S/cmよりも大きくまたはそれに等しくかつ2000S/cm未満またはそれに等しく、あるいは1S/cmよりも大きくまたはそれに等しくかつ100S/cm未満またはそれに等しい)。他の範囲も可能である。
【0071】
金属有機構造体の導電率は、金属有機構造体の500nm厚のフィルム上で、25℃で2プローブ直流測定を行うことにより決定されてもよい。
【0072】
スーパーキャパシタ電極で使用するためのその適切性を高め得る性質の第5の例として、金属有機構造体は、有利に高い電荷移動度を有していてもよい。金属有機構造体の電荷移動度は、0.1cm/(V・s)よりも大きくまたはそれに等しく、0.5cm/(V・s)よりも大きくまたはそれに等しく、1cm/(V・s)よりも大きくまたはそれに等しく、2cm/(V・s)よりも大きくまたはそれに等しく、3cm/(V・s)よりも大きくまたはそれに等しく、4cm/(V・s)よりも大きくまたはそれに等しく、5cm/(V・s)よりも大きくまたはそれに等しく、7.5cm/(V・s)よりも大きくまたはそれに等しく、10cm/(V・s)よりも大きくまたはそれに等しく、20cm/(V・s)よりも大きくまたはそれに等しく、30cm/(V・s)よりも大きくまたはそれに等しく、40cm/(V・s)よりも大きくまたはそれに等しく、50cm/(V・s)よりも大きくまたはそれに等しく、75cm/(V・s)よりも大きくまたはそれに等しく、100cm/(V・s)よりも大きくまたはそれに等しく、250cm/(V・s)よりも大きくまたはそれに等しく、500cm/(V・s)よりも大きくまたはそれに等しく、あるいは750cm/(V・s)よりも大きくまたはそれに等しくてもよい。一部の実施形態では、金属有機構造体は、1000cm/(V・s)未満またはそれに等しい、750cm/(V・s)未満またはそれに等しい、500cm/(V・s)未満またはそれに等しい、250cm/(V・s)未満またはそれに等しい、100cm/(V・s)未満またはそれに等しい、75cm/(V・s)未満またはそれに等しい、50cm/(V・s)未満またはそれに等しい、40cm/(V・s)未満またはそれに等しい、30cm/(V・s)未満またはそれに等しい、20cm/(V・s)未満またはそれに等しい、10cm/(V・s)未満またはそれに等しい、7.5cm/(V・s)未満またはそれに等しい、5cm/(V・s)未満またはそれに等しい、4cm/(V・s)未満またはそれに等しい、3cm/(V・s)未満またはそれに等しい、2cm/(V・s)未満またはそれに等しい、1cm/(V・s)未満またはそれに等しい、あるいは0.5cm/(V・s)未満またはそれに等しい電荷移動度を有する。上記言及された範囲の組合せも可能である(例えば、0.1 0.5cm/(V・s)よりも大きくまたはそれに等しくかつ1000 0.5cm/(V・s)未満またはそれに等しい)。他の範囲も可能である。
【0073】
金属有機構造体の電荷移動度は、金属有機構造体の単結晶でのホール測定を行うことによって決定されてもよい。
【0074】
本明細書に記述される金属有機構造体は、様々な適切な方法によって合成されてもよい。ある場合には、金属有機構造体を合成する方法は、複数の配位子の少なくとも一部がそれぞれ配位した複数の金属イオンの少なくとも一部を含む金属有機構造体を形成するために、酸化剤および塩基の存在下、複数の金属イオンを複数の前駆体配位子に曝露すること含む。一部の実施形態では、金属イオンは塩の陽イオンとして提供され、提供された少なくとも1つの前駆体配位子は、陽イオンと反応するように構成された官能基(例えば、チオール官能基、イミン官能基)を含む。官能基は、上述のように多座(例えば、二座)であってもよい。反応の過程で、陽イオンと反応するように構成された前駆体配位子の官能基は、対応する官能基に酸化され、最終の金属有機構造体中の金属イオンに配位する(例えば、硫黄ドナー原子および/またはイミン官能基を含む、最終の官能基)。例として、オルト-フェニレンジアミン基を含む前駆体配位子に関して、反応の過程で、前駆体配位子は酸化されて各オルト-フェニレンジアミン基がオルト-フェニレンジイミン基に変化されるようになり、それが金属イオンに配位する。
【0075】
金属イオンおよび前駆体配位子は、任意の適切な量で提供されてもよい。一部の実施形態では、金属イオンの前駆体配位子に対するモル比は、配位子に対する金属イオンの配位に基づいてもよい。例えば、配位子が3つの金属イオンに配位しかつ各金属イオンが2つの配位子に会合する実施形態では、金属イオンの前駆体配位子に対するモル比が約3:2であってもよい。実施形態における別の例として、配位子が2つの金属イオンに配位しかつ各金属イオンが1つの配位子に会合する場合、金属イオンの前駆体配位子に対するモル比は約2:1であってもよい。一部の実施形態では、前駆体配位子は、金属イオンと比較して僅かにモル過剰で提供されている。
【0076】
上述のように、金属イオンは塩の形で提供されてもよい。塩に含まれていてもよい陰イオンの非限定的な例には、塩化物、フッ化物、臭化物、ヨウ化物、トリフレート、BF 、PF 、NO 、SO 2-、およびClO 塩が含まれる。ある場合には、塩は、SO 2-陰イオンを含む。
【0077】
前駆体配位子に関する適切な構造の1つの例は:
【化6】

であり、式中、nは1、2、または3であり、Cは、環Aと各環Bとの間に形成された1つまたはそれよりも多くの結合を表し、Rは、金属イオンに配位するように構成された官能基である。一部の実施形態では、各Rが-Sである。一部の実施形態では、各Rが-NHである。ある場合には、nが1である。ある場合には、nが2である。ある場合には、nが3である。
【0078】
前駆体配位子に関する適切な構造の他の例には:
【化7】

が含まれ、式中、各Rは、同じでありまたは異なっており、かつ水素、-NO、-R’、-F、-Cl、-Br、-I、-CN、-NC、-SOR’、-SOH、-OR’、-OH、-SR’、-SH、-POR’、-POH、-CF、-NR’、-NHR’、および-NHからなる群から選択され;式中、各R’は、同じでありまたは異なっており、かつ必要に応じて置換されたアルキルまたは必要に応じて置換されたアリールであり;式中、各Rは、金属イオンに配位するよう構成された官能基である。一部の実施形態では、R基と、R’基の少なくとも一部(または全て)との両方は、酸化後に金属イオンに配位するよう構成された官能基である。一部の実施形態では、各Rが-Sである。一部の実施形態では、各Rが-NHである。一部の実施形態では、各Rが水素である。一部の実施形態では、各R’がHである。
【0079】
前駆体配位子に適した構造のさらに他の例には:
【化8】

【化9】

が含まれ、式中、各Rは、同じでありまたは異なっており、かつ水素、-NO、-R’、-F、-Cl、-Br、-I、-CN、-NC、-SOR’、-SOH、-OR’、-OH、-SR’、-SH、-POR’、-POH、-CF、-NR’、-NHR’、および-NHからなる群から選択され;式中、各Xは、同じでありまたは異なっており、かつNR’、O、S、Se、およびTeからなる群から選択され;式中、各R’は、同じでありまたは異なっており、必要に応じて置換されたアルキルまたは必要に応じて置換されたアリールであり;式中、各Rは、金属イオンに配位するように構成された官能基である。一部の実施形態では、各Rが-Sである。一部の実施形態では、各Rが-NHである。一部の実施形態では、R基と、R’基の少なくとも一部(または全て)との両方は、酸化後に金属イオンに配位するよう構成された官能基である。一部の実施形態では、各Rが水素である。一部の実施形態では、各Xは、同じでありまたは異なっており、NR’、O、およびSからなる群から選択される。一部の実施形態では、各XがNR’である。一部の実施形態では、各XがOである。一部の実施形態では、各XがSである。一部の実施形態では、各XがSeである。一部の実施形態では、各XがTeである。一部の実施形態では、各R’がHである。
【0080】
任意の適切な塩基は、本明細書に記述される合成方法で利用されてもよい。塩基の非限定的な例には、NR”(式中、各R”は、同じであるかまたは異なり、かつ水素、必要に応じて置換されたアルキル、または必要に応じて置換されたアリールである);QOH(式中、Qは陽イオン(例えば、金属陽イオン、半金属陽イオン、NH )である);およびアセテートが含まれる。一部の実施形態では、塩基がNHまたはNHOHである。一部の実施形態では、塩基は、それらに配位するため金属イオンと反応するように構成された前駆体配位子上の基と比較して、より高いpHを有するように選択される。任意の適切な酸化剤が用いられてもよい。一部の実施形態では、酸化剤が酸素である。一部の実施形態では、酸化剤が化学的酸化剤である。酸化剤の非限定的な例には、空気、酸素、フェリシニウム、ニトロソニウム、Ag2+、Ag、Fe3+、MnO 、およびCrO が含まれる。酸化剤は、前駆体配位子の酸化を支援するのに適した量で存在してもよい。一部の実施形態では、酸化剤は過剰に存在する。
【0081】
任意の適切な溶媒が、本明細書に記述される合成方法で利用されてもよい。溶媒の非限定的な例には、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ベンゼン、p-クレゾール、トルエン、キシレン、ジエチルエーテル、グリコール、ジエチルエーテル、石油エーテル、ヘキサン、シクロヘキサン、ペンタン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ヘキサメチル-リン酸トリアミド、酢酸エチル、ピリジン、トリエチルアミン、ピコリン、およびこれらの混合物が含まれる。一部の実施形態では、溶媒が水である。
【0082】
本明細書に記述される合成方法は、任意の適切な温度で実施されてもよい。ある場合には、反応は、ほぼ室温で実施される(例えば、25℃、20℃、20℃から25℃など)。しかしながら、ある場合には、反応は室温よりも低いまたは高い温度で実施される。一部の実施形態では、反応は、25℃から100℃、35℃から95℃、45℃から85℃、または55℃から75℃の温度で実施される。
【0083】
本明細書に記述された方法を使用して合成された金属有機構造体は、当業者に公知の技法を使用して精製されてもよい。一部の実施形態では、合成された金属有機構造体は洗浄されてもよく、場合によってはソックスレー抽出機を伴って、沸騰および/または超音波処理されてもよい(例えば、過剰な出発材料を除去するため)。
【0084】
本明細書に記述される合成方法は、広範な金属有機構造体の急速な合成のために提供されてもよい。急速に金属有機構造体を合成する能力は、スーパーキャパシタ電極で使用するためのその適切性を決定するために、新しい金属有機構造体と同様に公知のスクリーニングに役立ってもよい。
【0085】
本明細書に記述される金属有機構造体は、ある場合には、材料の表面のフィルムとして形成されてもよい。フィルムは、当業者に公知の技法を使用して形成されてもよい。例えば、フィルムは、スピンキャスティング法、ドロップキャスティング法、ディップコーティング法、ロールコーティング法、スクリーンコーティング法、噴霧コーティング法、スクリーン印刷法、インクジェット法などによって形成されてもよい。ある場合には、フィルムの厚さは、100ミクロン未満またはそれに等しく、10ミクロン未満またはそれに等しく、1ミクロン未満またはそれに等しく、100nm未満またはそれに等しく、10nm未満またはそれに等しく、あるいは1nm未満またはそれに等しくてもよい。ある場合には、フィルムは、1mmよりも大きいまたはそれに等しい厚さを有していてもよい。他の範囲も可能である。フィルムの厚さは、顕微鏡法によって測定されてもよい。
【0086】
上述のように、本明細書に記述されるスーパーキャパシタは、電解質を含んでいてもよく、本明細書に記述される電極は、電解質と共に使用するのに適切であってもよく、そして/または金属有機構造体は、電解質と相互に作用するよう構成されていてもよい。電解質は、スーパーキャパシタ電極間で容易にイオン移動させるように、スーパーキャパシタ電極の1つまたは複数へのイオンインターカレーションおよび/または吸収を容易に行わせるように、かつ/または電気二重層を容易に形成および/または溶解するように、典型的には構成されている。しかしながら電解質は、それらの間の明らかな電子移動を防止するように、典型的には構成されている。言い換えれば、電解質は、典型的にはイオン伝導性であるが導電性ではない。いかなる特定の理論にも拘泥するものではないが、液体電解質は、本明細書に記述されるスーパーキャパシタ、電極、および/または金属有機構造体の内部でおよび/またはそれらと共に使用するのに特に適切であってもよいと考えられるが、それは特に高いイオン移動度を有し得るからである。一部の実施形態では、ゲル電解質、固体電解質(例えば、ポリマー電解質)、および/または塩中液体電解質も適切であってもよくまたは代わりに適切であってもよい。
【0087】
一部の実施形態では、本明細書に記述される電解質は、溶媒を含む。溶媒は、その内部に溶解された塩からのイオンと溶媒和してもよい。例えば電解質は、水を含んでいてもよい(即ち、水性電解質であってもよい)。他の実施形態では、電解質は、水が不足していてもよい(即ち、非水性電解質であってもよい)。電解質は、水を含むことに加えまたは水を含む代わりに、1つまたはそれよりも多くの有機溶媒を含んでいてもよい。例えば、電解質は、アセトニトリル、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、ジメチルホルムアミド、炭酸ジエチル、アジポニトリル、および/またはジメチルスルホキシドを含んでいてもよい。
【0088】
一部の実施形態では、本明細書に記述される電解質は、1つまたはそれよりも多くの塩を含む。塩は、溶媒(例えば、上述の溶媒の1つまたは複数)に溶解されてもよく、また、イオン性液体を形成してもよい(例えば、塩は、室温および室圧で液体であってもよく、さらなる溶媒なしで提供されてもよい)。塩は、本明細書に記述される金属有機構造体および/またはスーパーキャパシタ電極にインターカレートおよび/または吸収されるように構成された1種またはそれよりも多種のイオンを含んでいてもよい。これらのイオンは、スーパーキャパシタの充放電中、本明細書に記述される金属有機構造体および/またはスーパーキャパシタ電極の内部および/または外にインターカレートされ(および/またはその内部に吸収および/またはそこから脱着され)てもよい。そのような塩は、典型的には、これらのイオンに対する対イオンを含んでいてもよい(一部の実施形態では、本明細書に記述される金属有機構造体および/またはスーパーキャパシタ電極にインターカレートするように構成されずおよび/または吸収されるように構成されず、しかし他の実施形態では、活性化プロセスにおいて本明細書に記述される金属有機構造体および/またはスーパーキャパシタ電極にインターカレートおよび/または吸収されるように構成されていてもよい)。一部の実施形態では、電解質は、本明細書に記述される金属有機構造体および/またはスーパーキャパシタ電極にインターカレートおよび/または吸収されるよう構成された、イオンが不足している1つまたはそれよりも多くの塩を含む。いずれかのタイプの塩は、やはり関連ある電極間を輸送される電子流のバランスをとるイオン電流を形成するように、充放電中にスーパーキャパシタ電極間を輸送されるイオンを含んでいてもよい。このイオン電流は、スーパーキャパシタ全体にわたって電荷中性を維持するよう働き得る。
【0089】
本明細書に記述される電解質は、様々な適切な直径、長さ、および/または幅を有するイオンを含む塩を含んでいてもよい。例えば電解質は、本明細書に記述される金属有機構造体の細孔よりも小さい、かつ/または本明細書に記述される金属有機構造体の二次元シート間の間隔よりも小さい、直径、長さ、および/または幅を有するイオンを含む塩を含んでいてもよい。一部の実施形態では、電解質は、0.1Åよりも大きいまたはこれに等しい、0.2Åよりも大きいまたはこれに等しい、0.5Åよりも大きいまたはこれに等しい、0.75Åよりも大きいまたはこれに等しい、1Åよりも大きいまたはこれに等しい、2Åよりも大きいまたはこれに等しい、5Åよりも大きいまたはこれに等しい、7.5Åよりも大きいまたはこれに等しい、10Åよりも大きいまたはこれに等しい、15Åよりも大きいまたはこれに等しい、あるいは20Åよりも大きいまたはこれに等しい直径、長さ、および/または幅を有するイオンを含む塩を含む。一部の実施形態では、電解質は、25Å未満またはこれに等しい、20Å未満またはこれに等しい、15Å未満またはこれに等しい、10Å未満またはこれに等しい、7.5Å未満またはこれに等しい、5Å未満またはこれに等しい、2Å未満またはこれに等しい、1Å未満またはこれに等しい、0.75Å未満またはこれに等しい、0.5Å未満またはこれに等しい、あるいは0.2Å未満またはこれに等しい直径、長さ、および/または幅を有するイオンを含む塩を含む。上記言及された範囲の組合せも可能である(例えば、0.1Åよりも大きくまたはこれに等しくかつ25Å未満またはこれに等しい)。その他の範囲も可能である。
【0090】
本明細書に記述される電解質は、裸のイオンの形をとる場合(即ち、真空中)に上述の範囲の1つまたは複数において直径、長さ、および/または幅を有するイオンを含んでいてもよく、そして/または溶媒和イオンの形をとる場合(即ち、溶媒に溶解する)に上述の範囲の1つまたは複数において直径、長さ、および/または幅を有するイオンを含んでいてもよいことを理解すべきである。
【0091】
本明細書に記述される電解質は、単原子陽イオンおよび/または多原子陽イオンを有する塩を含んでいてもよい。適切な単原子陽イオンの非限定的な例には、H、アルカリ金属陽イオン(例えば、Li、Na、K)、アルカリ土類金属陽イオン(例えば、Mg2+、Ca2+)、ポスト遷移金属陽イオン(例えば、Al3+)が含まれる。適切な多原子陽イオンの非限定的な例には、第四級アンモニウム陽イオン(例えば、アンモニウム陽イオン、テトラメチルアンモニウム陽イオン、テトラエチルアンモニウム陽イオン、テトラブチルアンモニウム陽イオン、テトラペンチルアンモニウム陽イオン、テトラヘキシルアンモニウム陽イオン、テトラヘプチルアンモニウム陽イオン、テトラオクチルアンモニウム陽イオン、テトラエチルメチルアンモニウム陽イオン)、第四級ホスホニウム陽イオン(例えば、ホスホニウム陽イオン、テトラメチルホスホニウム陽イオン、テトラエチルホスホニウム陽イオン、テトラブチルホスホニウム陽イオン、テトラペンチルホスホニウム陽イオン、テトラヘキシルホスホニウム陽イオン、テトラヘプチルホスホニウム陽イオン、およびテトラオクチルホスホニウム陽イオン)、ピロリジニウム陽イオン(例えば、N-メチル-N-ブチル-ピロリジニウム、N-メチル-N-メトキシエチル-ピロリジニウム、N-メチル-N-プロピル-ピロリジニウム)、およびイミダゾリウム陽イオン(例えば、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム)が含まれる。上記から理解され得るように、電解質塩は、様々な適切な価数を有する陽イオンを含んでいてもよい。例えば電解質塩は、1価の陽イオン、2価の陽イオン、3価の陽イオン、および/または4価の陽イオンを含んでいてもよい。
【0092】
同様に、本明細書に記述される電解質は、単原子陰イオンおよび/または多原子陰イオンを有する塩を含んでいてもよい。適切な単原子陰イオンの非限定的な例は、ハロゲン陰イオン(例えば、Cl)を含む。適切な多原子陰イオンの非限定的な例には、SO 2-、NO 、ClO 、CO 2-、PO 、OH、BF 、PF 、およびビス(トリフルオロメタン)スルホンアミド陰イオンが含まれる。上記考察から理解され得るように、電解質塩は、様々な適切な価数を有する陰イオンを含んでいてもよい。例えば、電解質塩は、1価の陰イオンおよび/または2価の陰イオンを含んでいてもよい。
【0093】
上述のように、スーパーキャパシタは、金属有機構造体を含む1つまたはそれよりも多くの電極を含んでいてもよく、金属有機構造体が不足している1つまたはそれよりも多くの電極を含んでいてもよい。金属有機構造体が不足している電極は、様々な適切な材料、例えば炭素(例えば、多孔質炭素、カーボンブラック、黒鉛、グラフェン、カーボンナノチューブ)、炭窒化物、遷移金属炭化物、金属酸化物(例えば、酸化ルテニウム、酸化モリブデン、酸化ニオブ、酸化マンガン、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化鉄)、金属硫化物(例えば、硫化ニッケル、硫化コバルト、硫化モリブデン、硫化銅)、金属水酸化物(例えば、水酸化ニッケル、水酸化コバルト)、および/または金属窒化物(例えば、窒化バナジウム、窒化チタン、窒化タングステン、窒化モリブデン、窒化ニオブ、窒化ガリウム)を含んでいてもよい。一部の実施形態では、金属有機構造体が不足している電極は、共有有機構造体またはMXeneの形をとる形態を有していてもよい。
【0094】
金属有機構造体が不足している電極は、カソード(例えば、炭素を含む電極、金属酸化物を含む電極、金属硫化物を含む電極、金属水酸化物を含む電極、および/または窒化金属を含む電極の場合)および/またはアノード(例えば、炭素を含む電極および/またはMXeneを含む電極の場合)として働いてもよい。カソードとして働く電極は、典型的には、銀線電極に対して-2Vよりも大きい電位を有し(例えば、-2Vから3Vの間)、アノードとして働く電極は、典型的には、銀線電極に対して-2V未満の電位を有する(例えば、-3Vから-2Vの間)。しかしながら上述の材料のいずれかは、カソードおよびアノードの他方として作用する適切な電極と対になった場合、カソードまたはアノードとして働いてもよいことを理解すべきである(例えば、銀線電極に対してより低い電位を有するアノードと対になった場合にはカソードとして、銀線電極に対してより高い電位を有するカソードと対になった場合はアノードとして)。
【0095】
金属有機構造体が不足している電極は、イオンをインターカレートおよび/または吸収するように構成されていてもよく(例えば、銀線電極に対して-2.5V未満またはそれに等しいまたは2.5Vよりも大きいまたはそれに等しい電位に分極した炭素を含む電極の場合)、あるいはイオンをインターカレートまたは吸収するように構成されていなくてもよい(例えば、他の手法で分極された炭素を含む電極)ことも理解すべきである。金属有機構造体が不足している電極は、充放電中にレドックス反応を受けるように構成されていてもよく(例えば、イオンをインターカレートおよび/または吸収するように構成された電極の場合)、または充放電中にレドックス反応を受けるように構成されていなくてもよい(例えば、イオンをインターカレートおよび/または吸収するように構成されていない電極の場合)。
【0096】
一部の実施形態では、本明細書に記述された電極(例えば、金属有機構造体を含む電極、金属有機構造体が不足している電極)は、集電子をさらに含んでいてもよい。集電子は、充放電中に電極へのおよび/または電極からの電流の輸送を支援する伝導性材料であってもよい。集電子は、フォームの形をとってもよく、また、別の形をとってもよい(例えば、箔、フィルム、ディスク、マトリックス、カーボンクロス、伝導性フレキシブルポリマー材料)。集電子に用いられてもよい材料の非限定的な例には、金属(例えば、ニッケル、金、白金)、合金(例えば、ステンレス鋼)、および炭素が含まれる。
【0097】
本明細書に記述されるスーパーキャパシタは、その両端で様々な適切な電位降下を有していてもよい。一部の実施形態では、スーパーキャパシタの両端での電位降下は、4V未満またはそれに等しく、3.5V未満またはそれに等しく、3V未満またはそれに等しく、2.5V未満またはそれに等しく、2V未満またはそれに等しく、1.5V未満またはそれに等しく、1V未満またはそれに等しく、あるいは0.5V未満またはそれに等しい。一部の実施形態では、スーパーキャパシタの両端での電位降下は、0Vよりも大きくまたはそれに等しく、0.5Vよりも大きくまたはそれに等しく、1Vよりも大きくまたはそれに等しく、1.5Vよりも大きくまたはそれに等しく、2Vよりも大きくまたはそれに等しく、2.5Vよりも大きくまたはそれに等しく、3Vよりも大きくまたはそれに等しく、あるいは3.5Vよりも大きくまたはそれに等しい。上記言及された範囲の組合せも可能である(例えば、4V未満またはそれに等しくかつ0Vよりも大きくまたはそれに等しい)。他の範囲も可能である。
【0098】
スーパーキャパシタの両端での電位降下は、電圧計の使用により決定されてもよい。
【0099】
一部の実施形態では、本明細書に記述されるスーパーキャパシタは、有利に高い重量比容量を有する。例えば、スーパーキャパシタは、50F/gよりも大きいまたはそれに等しい、75F/gよりも大きいまたはそれに等しい、100F/gよりも大きいまたはそれに等しい、125F/gよりも大きいまたはそれに等しい、150F/gよりも大きいまたはそれに等しい、200F/gよりも大きいまたはそれに等しい、250F/gよりも大きいまたはそれに等しい、300F/gよりも大きいまたはそれに等しい、350F/gよりも大きいまたはそれに等しい、400F/gよりも大きいまたはそれに等しい、450F/gよりも大きいまたはそれに等しい、500F/gよりも大きいまたはそれに等しい、550F/gよりも大きいまたはそれに等しい、600F/gよりも大きいまたはそれに等しい、650F/gよりも大きいまたはそれに等しい、あるいは700F/gよりも大きいまたはそれに等しい重量比容量を有していてもよい。一部の実施形態では、スーパーキャパシタは、750F/g未満またはそれに等しい、700F/g未満またはそれに等しい、650F/g未満またはそれに等しい、600F/g未満またはそれに等しい、550F/g未満またはそれに等しい、500F/g未満またはそれに等しい、450F/g未満またはそれに等しい、400F/g未満またはそれに等しい、350F/g未満またはそれに等しい、300F/g未満またはそれに等しい、250F/g未満またはそれに等しい、200F/g未満またはそれに等しい、150F/g未満またはそれに等しい、125F/g未満またはそれに等しい、100F/g未満またはそれに等しい、あるいは75F/g未満またはそれに等しい重量比容量を有する。上記言及された範囲の組合せも可能である(例えば、50F/gよりも大きくまたはそれに等しくかつ750F/g未満またはそれに等しい、50F/gよりも大きくまたはそれに等しくかつ400F/g未満またはそれに等しい、あるいは100F/gよりも大きくまたはそれに等しくかつ750F/g未満またはそれに等しい)。他の範囲も可能である。一部の実施形態では、他の点で同一のスーパーキャパシタは、水性電解質を含むとき、非水性電解質を含む場合よりも高い重量比容量を有していてもよい(例えば、水性電解質を含むスーパーキャパシタは、100F/gよりも大きくまたはそれに等しくかつ750F/g未満またはそれに等しい重量比容量を有していてもよく、非水性電解質を含みその他の点では均等なスーパーキャパシタは、50F/gよりも大きくまたはそれに等しくかつ400F/g未満またはそれに等しい重量比容量を有していてもよい)。
【0100】
スーパーキャパシタの重量比容量は、下記の手順によって決定されてもよい:(1)スーパーキャパシタを一晩、室温で静置させる;(2)そこに何回かのサイクリックボルタンメトリーサイクルを、20mV/秒のスキャン速度で、安定したサイクリックボルタンメトリー曲線が作成されるまで行う;および(3)そこに最終的なサイクリックボルタンメトリーサイクルを、600mVのスキャン窓全体にわたり1mV/秒のスキャン速度で行う;および(4)最終的なサイクリックボルタンメトリーサイクル中に測定された容量を、スーパーキャパシタの重量で除して、重量比容量を決定する。
【0101】
一部の実施形態では、本明細書に記述されるスーパーキャパシタは、有利に高い電力密度を有する。例えば、スーパーキャパシタは、0.5W/gよりも大きいまたはそれに等しい、0.75W/gよりも大きいまたはそれに等しい、1W/gよりも大きいまたはそれに等しい、1.25W/gよりも大きいまたはそれに等しい、1.5W/gよりも大きいまたはそれに等しい、2W/gよりも大きいまたはそれに等しい、2.5W/gよりも大きいまたはそれに等しい、3W/gよりも大きいまたはそれに等しい、3.5W/gよりも大きいまたはそれに等しい、4W/gよりも大きいまたはそれに等しい、4.5W/gよりも大きいまたはそれに等しい、5W/gよりも大きいまたはそれに等しい、5.5W/gよりも大きいまたはそれに等しい、6W/gよりも大きいまたはそれに等しい、6.5W/gよりも大きいまたはそれに等しい、7W/gよりも大きいまたはそれに等しい、7.5W/gよりも大きいまたはそれに等しい、8W/gよりも大きいまたはそれに等しい、8.5W/gよりも大きいまたはそれに等しい、9W/gよりも大きいまたはそれに等しい、あるいは9.5W/gよりも大きいまたはそれに等しい電力密度を有していてもよい。一部の実施形態では、スーパーキャパシタは、10W/g未満またはそれに等しい、9.5W/g未満またはそれに等しい、9W/g未満またはそれに等しい、8.5W/g未満またはそれに等しい、8W/g未満またはそれに等しい、7.5W/g未満またはそれに等しい、7W/g未満またはそれに等しい、6.5W/g未満またはそれに等しい、6W/g未満またはそれに等しい、5.5W/g未満またはそれに等しい、5W/g未満またはそれに等しい、4.5W/g未満またはそれに等しい、4W/g未満またはそれに等しい、3.5W/g未満またはそれに等しい、3W/g未満またはそれに等しい、2.5W/g未満またはそれに等しい、2W/g未満またはそれに等しい、1.5W/g未満またはそれに等しい、1.25W/g未満またはそれに等しい、1W/g未満またはそれに等しい、あるいは0.75W/g未満またはそれに等しい電力密度を有する。上記言及された範囲の組合せも可能である(例えば、0.5W/gよりも大きくまたはそれに等しくかつ10W/g未満またはそれに等しい)。他の範囲も可能である。
【0102】
スーパーキャパシタの電力密度は、本明細書の他の箇所に記述される重量比容量を決定するために最初の3つのステップを行い、次いで電力密度を決定するために最終的なサイクリックボルタンメトリーサイクル中に測定された電力をスーパーキャパシタの重量で除することによって、決定されてもよい。
【0103】
便宜上、本明細書、実施例、および添付される請求項で用いられるある特定の用語を、ここに列挙する。特定の官能基の定義および化学用語は、以下にさらに詳細に記述する。本発明の目的のため、化学元素は、Periodic Table of the Elements, CAS version, Handbook of Chemistry and Physics, 75th Ed.、表紙裏に従い特定され、特定の官能基は一般に、その中に記述されるとおりに定義される。さらに、有機化学の一般的原理ならびに特定の官能部分および反応性は、Organic Chemistry, Thomas Sorrell, University Science Books, Sausalito: 1999に記載されている。
【0104】
「脂肪族」という用語は、本明細書で使用される場合、飽和および不飽和の両方の、非芳香族、直鎖(即ち、非分岐)、分岐、非環式、および環式(即ち、炭素環式)炭化水素であって、1つまたはそれよりも多くの官能基で必要に応じて置換されたものを含む。当業者に理解されるように、「脂肪族」は、限定するものではないがアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、およびシクロアルキニル部分を含むことが、本明細書では意図される。したがって本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、直鎖、分岐状、および環状アルキル基を含む。類似の表現は、「アルケニル」、「アルキニル」、および同様のものなどの他の一般用語に適用される。さらに、本明細書で使用される場合、「アルキル」、「アルケニル」、「アルキニル」、および同様の用語は、置換および非置換の両方の基を包含する。ある特定の実施形態では、本明細書で使用される場合、「脂肪族」は、1~20個の炭素原子を有するような脂肪族基(環式、非環式、置換、非置換、分岐状、または非分岐状)を示すのに使用される。脂肪族基の置換基には、限定するものではないが、安定な部分の形成をもたらす本明細書に記述される置換基のいずれかが含まれる(例えば、脂肪族、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロ脂肪族、複素環式、アリール、ヘテロアリール、アシル、オキソ、イミノ、チオオキソ、シアノ、イソシアノ、アミノ、アジド、ニトロ、ヒドロキシル、チオール、ハロ、脂肪族アミノ、ヘテロ脂肪族アミノ、アルキルアミノ、ヘテロアルキルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、アルキルアリール、アリールアルキル、脂肪族オキシ、ヘテロ脂肪族オキシ、アルキルオキシ、ヘテロアルキルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、脂肪族チオキシ、ヘテロ脂肪族チオキシ、アルキルチオキシ、ヘテロアルキルチオキシ、アリールチオキシ、ヘテロアリールチオキシ、アシルオキシ、および同様のものであって、そのそれぞれは、さらに置換されても置換されなくてもよい)。
【0105】
「アルキル」という用語は、直鎖アルキル基、分岐鎖アルキル基、シクロアルキル(脂環式)基、アルキル置換シクロアルキル基、およびシクロアルキル置換アルキル基を含む、飽和脂肪族基のラジカルを指す。アルキル基は、以下にさらに十分記述されるように、必要に応じて置換されてもよい。アルキル基の例には、限定するものではないがメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、2-エチルヘキシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、および同様のものが含まれる。「ヘテロアルキル」基は、少なくとも1個の原子がヘテロ原子であり(例えば、酸素、硫黄、窒素、リンなど)、その残りの原子が炭素原子である、アルキル基である。ヘテロアルキル基の例には、限定するものではないがアルコキシ、ポリ(エチレングリコール)-、アルキル置換アミノ、テトラヒドロフラニル、ピペリジニル、モルホリニルなどが含まれる。
【0106】
「アルケニル」および「アルキニル」という用語は、上述のアルキル基に類似するが少なくとも1つの二重または三重結合をそれぞれ含有する、不飽和脂肪族基を指す。「ヘテロアルケニル」および「ヘテロアルキニル」は、1つまたはそれよりも多くの原子がヘテロ原子である(例えば、酸素、窒素、硫黄、および同様のもの)、本明細書に記述されるアルケニルおよびアルキニル基を指す。
【0107】
「アリール」という用語は、単環(例えば、フェニル)、多環(例えば、ビフェニル)、または多重縮合環であって、その少なくとも1つが芳香族であり(例えば、1,2,3,4-テトラヒドロナフチル、ナフチル、アントリル、またはフェナントリル)、全てが必要に応じて置換されたものを有する芳香族炭素環式基を指す。「ヘテロアリール」基は、芳香環の少なくとも1個の環原子がヘテロ原子であり、その残りの環原子が炭素原子である、アリール基である。ヘテロアリール基の例には、フラニル、チエニル、ピリジル、ピロリル、N低級アルキルピロリル、ピリジルNオキシド、ピリミジル、ピラジニル、イミダゾリル、インドリル、および同様のものであって、全て必要に応じて置換されたものが含まれる。
【0108】
「アミン」および「アミノ」という用語は、非置換および置換アミンの両方を指し、例えば一般式:N(R’)(R”)(R’’’)により表すことができる部分であり、式中、R’、R”、R’’’はそれぞれ独立して、原子価の法則により認められた基を表す。
【0109】
「アシル」、「カルボキシル基」、または「カルボニル基」という用語は、当技術分野では認識されており、一般式:
【化10】

(式中、Wは、H、OH、O-アルキル、O-アルケニル、またはこれらの塩である)
により表すことができるような部分を含むことができる。WがO-アルキルである場合、式は、「エステル」を表す。WがOHである場合、式は、「カルボン酸」を表す。一般に、上式の酸素原子が硫黄によって置き換えられた場合、式は、「チオールカルボニル」基を表す。WがS-アルキルである場合、式は、「チオールエステル」を表す。WがSHである場合、式は、「チオールカルボン酸」を表す。一方、Wがアルキルである場合、上式は「ケトン」基を表す。Wが水素である場合、上式は、「アルデヒド」基を表す。
【0110】
本明細書で使用される場合、「ヘテロ芳香族」または「ヘテロアリール」という用語は、炭素原子環員と1つまたはそれよりも多くのヘテロ原子環員(例えば、酸素、硫黄、または窒素など)とを含む単環式または多環式ヘテロ芳香環(またはそのラジカル)を意味する。典型的には、ヘテロ芳香環は、少なくとも1つの環員が酸素、硫黄、および窒素から選択されるヘテロ原子である、5から約14環員を有する。別の実施形態では、ヘテロ芳香環は、5または6員環であり、1から約4個のヘテロ原子を含有してもよい。別の実施形態では、ヘテロ芳香環系は、7から14環員を有し、1から約7個ノヘテロ原子を含有してもよい。代表的なヘテロアリールは、ピリジル、フリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イミダゾリル、インドリジニル、チアゾリル、イソキサゾリル、ピラゾリル、イソチアゾリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、トリアゾリル、ピリジニル、チアジアゾリル、ピラジニル、キノリル、イソキノリル、インダゾリル、ベンゾキサゾリル、ベンゾフリル、ベンゾチアゾリル、インドリジニル、イミダゾピリジニル、イソチアゾリル、テトラゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾキサジアゾリル、カルバゾリル、インドリル、テトラヒドロインドリル、アザインドリル、イミダゾピリジル、クニザオリニル、プリニル、ピロロ[2,3]ピリミジル、ピラゾロ[3,4]ピリミジル、ベンゾ(b)チエニル、および同様のものを含む。これらのヘテロアリール基は、1つまたはそれよりも多くの置換基で、必要に応じて置換されてもよい。
【0111】
「置換された」という用語は、有機化合物の全ての許容される置換基を含むことが企図され、「許容される」は、当業者に公知の原子価の化学的法則の文脈におけるものである。ある場合には、「置換された」は、一般に、本明細書に記述される置換基での水素の置換えを指してもよい。しかしながら「置換された」は、本明細書で使用される場合、例えば「置換された」官能基が置換を経て異なる官能基になるような、それによって分子が特定される重要な官能基の置換えおよび/または変更を包含しない。例えば「置換フェニル」は、この定義では、フェニル部分を依然として含まなければならず、例えばピリジンなどのヘテロアリール基になるような置換によって修飾することはできない。広範な態様で、許容される置換基は、有機化合物の、非環式および環式、分岐状および非分岐状、炭素環式および複素環式、芳香族および非芳香族置換基を含む。例示的な置換基には、例えば、本明細書に記述されるものが含まれる。許容される置換基は、1つまたはそれよりも多くの、適切な有機化合物に関して同じまたは異なるものとすることができる。本発明の目的で、窒素などのヘテロ原子は、水素置換基および/または本明細書に記述される有機化合物の任意の許容される置換基であって、ヘテロ原子の価数を満足させるものを有していてもよい。本発明は、有機化合物の許容される置換基により、いかなる手法でも限定するものではない。
【0112】
置換基の例には、限定するものではないがアルキル、アリール、アラルキル、環状アルキル、ヘテロシクロアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、パーハロアルコキシ、アラルコキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアラルコキシ、アジド、アミノ、ハロゲン、アルキルチオ、オキソ、アシル、アシルアルキル、カルボキシエステル、カルボキシル、カルボキサミド、ニトロ、アシルオキシ、アミノアルキル、アルキルアミノアリール、アルキルアリール、アルキルアミノアルキル、アルコキシアリール、アリールアミノ、アラルキルアミノ、アルキルスルホニル、カルボキサミドアルキルアリール、カルボキサミドアリール、ヒドロキシアルキル、ハロアルキル、アルキルアミノアルキルカルボキシ、アミノカルボキサミドアルキル、アルコキシアルキル、パーハロアルキル、アリールアルキルオキシアルキル、および同様のものが含まれる。
【実施例
【0113】
(実施例1)
この実施例は、高度に伝導する多孔質二次元金属有機構造体(2D-MOF)を利用する、新しいリチウムイオン高容量および低等価直列抵抗(ESR)電極について記述する。この二次元金属有機構造体では、電荷は、その構造体の擬似円形細孔内での、2D-MOF内へのリチウムインの挿入を経て貯蔵される。電極は、水性LiCl電解質中で475F/gの容量と、0.17オームの測定されたESRを有する。この性能は、効率的なリチウムイオン挿入には十分小さいアパーチャーと、低ESRを提供するのに十分高い伝導度との両方を含む、2D-MOFの構造および化学組成に関係することが考えられる。
【0114】
この実施例で用いられる伝導性2D-MOFは、銅ベンゼンヘキサチオール(CuBHT)であり、この銅イオンにはベンゼンヘキサチオール部分が配位している。この2D-MOFは、10m/g程度のBET表面積を示すが、この2D-MOFの真の表面積は、実際にこの値よりも大きいことが考えられる。CuBHTは、銅および硫黄原子により境界が形成される擬似三角形細孔を含み(図9A参照)、これはBET測定中に用いられるガスプローブ(例えば、N)が貫通するには小さ過ぎるが、スーパーキャパシタの適用例では特に十分大きいと考えられる。
【0115】
この理由で、この実施例は、CuBHTおよび構造的類似体であって下記の特徴:(1)共役芳香族配位子などの導電性配位子;(2)金属イオン;および(3)リチウムまたはその他のイオンの挿入に適切な直径を有する細孔、例えば0.3nmよりも大きくまたはそれに等しくかつ0.33nm未満またはそれに等しい細孔のうちの、1つまたは複数を有するものの使用を企図する。他のアルカリイオンおよび/またはアルカリ土類金属イオンをインターカレートおよび/または吸収するのに適した2D-MOFも、そのようなイオンを可溶化する水性および非水性溶媒の使用の場合と同様に、企図される。
【0116】
図9Bは、水性LiCl電解質中でのCuBHT電極のサイクリックボルタンメトリー(CV)曲線を示す。これらの曲線は、1mV/秒の掃引で2つの明らかな事象を示し、1つは-0.66Vで、他は-0.35Vで示される。いかなる特定の理論にも拘泥するものではないが、これらの事象はリチウムイオンと2D-MOFとの相互作用に関係し、かつそのような相互作用は容量の高い測定値に寄与すると考えられる。これらの同じ相互作用は、図9Cに示される定電流充放電掃引で見ることができる。CuBHT電極に関して記録された最大容量は、1mV/秒のサイクリング速度で475F/gであった。この電極は、良好な容量保持率も示し、その100F/gよりも大きい容量の値は10mV/秒のサイクル速度で記録した(図9Bの挿入図)。容量の安定性を、定電流充放電を行うことによって確認し、CuBHT電極は、5A/gの電流密度で5000回の充放電サイクル後、初期容量値の90%の保持率を示した。
【0117】
測定された容量は、ランプ速度と共に変化し得ることに留意されたい:図10は、10mV/秒で、NaCl溶液の存在下で得られたさらなるデータを示し、CuBHT電極は、290F/gの容量を示した。
【0118】
さらなる実験を行い、電気化学インピーダンス分光法(EIS)ナイキストプロットをCuBHT電極に関して収集した。これらのプロットは、20分の期間にわたり、下記のステップ:(1)-0.1Vの電圧を電極に印加すること;(2)電極に印加された電圧を、-0.6Vまで低減すること;および(3)電極に印加された電圧を元の-0.1Vに増大させることを行うことによって収集した(図11A)。電極に関するナイキストプロットは、3個の半円を含み:それぞれ1個ずつ、高、中、および低周波数にある。
【0119】
電圧掃引中、最も小さい半円の高周波数端でのESRの位置は、-0.2Vでの0.15オームから-0.6Vでの0.20オームへと、上向きにシフトした。このESRは、-0.2Vに戻った後、元の0.15オームにシフトした。
【0120】
中周波数の半円の半径は、同じ上述の電圧掃引中、1.4から1.7オームまで様々であり、電荷移動抵抗の変化に関連するものと考えられるばらつきを示した。
【0121】
低周波数の半円は、上述の電圧掃引にわたって最大のばらつきを示し:-0.2Vでの20オームから-0.6Vでの675オームまで変化した。図11Aから、低周波数半円の形状は、-0.4Vから-0.2Vの間で最も素早く変化しかつ-0.6V付近の領域ではそれほど素早くなく変化したことが明らかである。低周波数の半円は、電解質の抵抗率に関係すると考えられ:電極内へのLiイオンの導入の増大はその抵抗を高め、増大したESRおよび電荷移動抵抗を引き起こすと考えられる。電解質中遊離Liイオンの量は、電極内へのLiイオンのインターカレーションに起因して充電中に減少し、電解質の抵抗率を高めることも考えられる。
【0122】
CVトレース中のピークが生じる電圧で得られたCuBHTの粉末X線回折パターンは、その単位セルのいかなる変化も明らかにせず、その内部へのLi挿入およびそこからの除去によって、この材料は機械的ストレスを経験しなかったことを示唆した(図11B)。有利には、これはCuBHTの充放電を機械的ストレスなく行うことができることも示唆する。
【0123】
図12は、アセトニトリルおよびLiPFを含む電解質の存在下、CuBHT電極に関するサイクリックボルタンメトリー曲線を示す。このサイクリックボルタンメトリー曲線は20mV/秒で得られ、銀線と比較して、0.2Vから-1.2Vの電気化学窓において254F/gのCuBHT電極に関する容量を明らかにする。図12は、CuBHT電極が、非水性および/または有機電解質を含むスーパーキャパシタでも適切になり得ることを示す。
【0124】
CuBHT電極は、ペレットが形成されるように、合成された2D-MOFを加圧することによって製作した。Niフォームまたは金集電子のいずれかを使用してCuBHT電極を支持し、その両方によって電極は、上述の試験中に同じCV形状を示すことが可能になった。CVピーク絶対電圧値は、他の試験条件が変更されたときに僅かにシフトし(例えば、ビーカー内で行われた測定値からステンレス鋼セルで行われた測定値にシフトした)、しかしこれらのシフトは、これらの異なる試験条件での2D-MOF電極と炭素対電極との異なるセル幾何形状および異なる相対質量に起因すると考えられた。所与の実験設定では、結果は、数週間にわたって試験されかつCuBHTの種々のバッチから形成されたいくつかの種々のセル全体を通して一貫していた。
【0125】
(実施例2)
この実施例は、ニッケルベンゼンヘキサチオール(NiBHT)金属有機構造体を含む電極の性能について記述する。
【0126】
図13Aは、細孔を含む二次元シートを形成する、NiBHT構造の概略図を示す。
【0127】
NiBHT 2D-MOFは、図13B~13Cに示されるように(それぞれ、2mV/秒で得られたサイクリックボルタンメトリー曲線と、スキャン速度の関数としての比容量とを示す)、LiClおよび/またはNaClを含む水性電解質の存在下、容量の有利な値を示す。NiBHT 2D-MOFは、下記のイオン:Mg2+、K、Al 、SO 2-、CO 、およびNO のうちの1種または複数種を含む水性電解質を含むスーパーキャパシタに使用できたことも考えられる。
【0128】
NiBHT 2D-MOFは、非水性電解質の存在下でも容量の有利な値を示し、その例を以下に詳述する。
【0129】
図14A~14Cは、種々のスキャン速度および電位窓での、アセトニトリルおよびLiPFを含む電解質中での、NiBHTに関するサイクリックボルタンメトリー曲線を示す。図14Dは、スキャン速度の関数としてこのデータから抽出された比容量を示す。サイクリックボルタンメトリー曲線は、いかなる明瞭なレドックスピークも示さず、したがってリチウムイオンとNiBHT 2D-MOFとの間のレドックス反応なしに、NiBHT電極内へのリチウムイオンのインターカレーションを引き起こすことが可能であることに、留意すべきである。
【0130】
図15は、スキャン速度20mV/秒で行われた、アセトニトリルおよびNaPFを含む電解質中のNiBHTに関するサイクリックボルタンメトリー曲線を示し、ナトリウムイオンをインターカレートするように構成されたスーパーキャパシタ電極で使用されるこの2D-MOFの適切性が明らかにされる。
【0131】
図16は、20mV/秒のスキャン速度で行われた、炭酸エチレン、炭酸ジメチル、およびLiPFを含む電解質中の、NiBHTに関するサイクリックボルタンメトリー曲線を示し、他のタイプの非水性電解質を含むスーパーキャパシタ電極で使用されるこの2D-MOFの適切性が明らかにされた。
【0132】
図17A~17Dは、アセトニトリルおよび様々な塩の1種を含む電解質中の、NiBHTに関するサイクリックボルタンメトリー曲線を示す。これらのサイクリックボルタンメトリー曲線は、10mV/秒で得られ、NiBHTが、上述のアルカリ金属陽イオンに加えてより大きい陽イオン(イオン性液体中に典型的に見出されるものなど)をインターカレートすることができることを証明した。LiPFの存在下、NiBHTに関するサイクリックボルタンメトリー曲線は(図17A)、長方形に近い形状を有し、その内部へのイオンのインターカレーションを示す。しかしながら、代わりにより大きいEMIM、TEA、およびTBA陽イオンを含む塩の存在下でのNiBHTに関するサイクリックボルタンメトリー曲線は、鋭い形状を有する。
【0133】
いかなる特定の理論にも拘泥するものではないが、より大きい分極で低電流強度を含む形状を有するサイクリックボルタンメトリー曲線(-1Vから-2V)(例えば、図EAB~EADに示される形状など、より大きい分極で鋭い形状を有する)は、2D-MOFが、より大きいイオンではアクセスできないいくらかの表面積を有することを示すと考えられる。NiBHTでは、より大きいイオンは、その間の二次元シート間に浸透することができない可能性があると考えられる。NiBHT中の二次元シート間の間隔は約0.35nmであり、これはLiおよびNa陽イオンの直径よりも大きいが、EMIM、TEA、およびTBA陽イオンの直径よりも小さい(それぞれ0.7、0.68、および0.82nm)。
【0134】
図18A~18Bは、銀線参照電極に対して正および負の両方の部分を含む、電位窓上でのNiBHTに関するサイクリックボルタンメトリー曲線を示す。3回のサイクルを、20mV/秒で行い:第1のサイクルでは、その間に負電位が2D-MOFに印加され、第2のサイクルでは、その間に正電位が2D-MOFに印加され、次いで第3のサイクルは、第1のサイクルと同一であった。
【0135】
第1のサイクルからのサイクリックボルタンメトリー曲線は、上述のように鋭い形状を有する。しかしながら、第3のサイクルからの形状は、より長方形の形状を有していた。第2のサイクル中の2D-MOFへの正電荷の印加によって、電解質中に溶解した塩からの陰イオンはその内部にインターカレートされ、かつこのインターカレーションによって、その内部の二次元シート間の平均間隔が増大したことが考えられる。これにより、第3のサイクル中、2D-MOF内へのより大きい陽イオンのインターカレーションを増強することが可能になったことも考えられる。
【0136】
(実施例3)
この実施例は、図13Aに示される構造を有するニッケルベンゼンヘキサチオール(NiBHT)金属有機構造体を含むアノードと、多孔質炭素を含むカソードとを含む、スーパーキャパシタの性能について記述する。スーパーキャパシタはさらに、アセトニトリル中に1MのLiPFを含む電解質を含む。
【0137】
図19Aは、10mV/秒で行われた、スーパーキャパシタに関するサイクリックボルタンメトリー曲線を示す。これらの曲線は、2V、2.2V、および2.5Vの電圧窓で、安定した長方形の形状を示す。
【0138】
図19Bは、スーパーキャパシタに関する定電流充放電掃引を示す。これらの定電流充放電掃引は、2A/gの電流で行い、0V~2V、0V~2.2V、および0V~2.5Vの電圧間でサイクル動作させた。
【0139】
図19Cは、10mV/秒で行われたスーパーキャパシタに関するサイクリックボルタンメトリー曲線を示す。これらの曲線は、3Vまでの電圧窓での可逆性を証明する。しかしながら、2.5V過剰な電圧窓でのサイクル動作は、歪んだ形状の存在をもたらす。
【0140】
図19Dは、0Vから2.5Vの間の電圧で、2A/gでサイクル動作させたときの、時間の関数としてのスーパーキャパシタの比容量を示す。
【0141】
(実施例4)
この実施例は、スーパーキャパシタ用の電極として使用するのに適した構造を有する金属有機構造体を合成する方法について記述する。
【0142】
図20Aは、ベンゼンヘキサチオール配位子を合成する方法の概略図を示す。
【0143】
図20Bは、ベンゼンヘキサチオール配位子が配位した金属塩化物からの金属イオンを含む金属有機構造体を形成するために、ベンゼンヘキサチオール配位子および金属塩化物から金属有機構造体を合成する方法の概略図を示す。
【0144】
(実施例5)
スーパーキャパシタ(SC)は、高電力密度を提供する、信頼性ある高速充電電気化学エネルギー貯蔵デバイスとして出現した。それにも関わらず、その比較的低いエネルギー密度によってその使用は依然として限定されている。この実施例は、新しい非多孔質CP、(Ni(ベンゼンヘキサチオレート)(NiBHT)であって、500S/mを超える高い導電率を示すものについて記述する。スーパーキャパシタ用の電極として使用するとき、NiBHTは、非水性電解質中で245F/gおよび426F/cmの優れた比容量を送出する。構造および電気化学研究は、NiBHTの2D層間でのLiイオンの擬似容量インターカレーションのための好ましい性能に関する。
【0145】
合成および構造的特徴付け
NiBHTの微結晶質試料を、嫌気性条件下、室温で24時間にわたる脱気したメタノール中でのベンゼンヘキサチオール、C、とNiCl・6HOとの反応を通して得た。母液からの単離後、NiBHTは、200℃よりも低い温度で重量損失を示さず、その導電率は、空気中で少なくとも6カ月間維持された(図21)。合成されたままのNiBHTの粉末X線回折(PXRD)パターンは、Ni(BHT)のパターンと一致せず、代わりにCuBHTのパターンに似ている(図22)。制限視野電子回折(SAED)を経たさらなる分析は、確かにCuBHTの場合に類似している単位セルパラメーターa=14.16Å、b=8.86Å、c=3.45Å、α=90°、β=99.7°、およびγ=90°を明らかにした(図23~26)。まとめると、PXRDおよびSAEDデータは、NiBHTが、CuBHTに対して非常に似ている新しい相であり、平面四辺形のNi2+イオンで構成された2D層が、平面四辺形の配位中の4個のS原子と6個のNi原子により取り囲まれたBHT配位子とに結合していることを示唆する。これらは、NiBHTのより開放的な六角形のハニカム型構造とは対照的に、稠密な配置構成を形成する(図26)。元素分析は、CおよびSの含量がそれぞれ19.5%および44.6%であることを見出し、これはNiBHTに関するNiの化学組成に関する予測値に近く、配位子は反応中に脱硫を被らないことが確認された。消化を経たNi含量を決定する試みは、NiSの低い溶解度によって妨げられたようであった。
【0146】
NiBHTのバルク物理特性を、走査型電子顕微鏡法(SEM)、Nガス収着分析、およびvan der Pauw導電率測定を使用して研究した。SEM画像は、長さが100nmよりも大きく直径が数十ナノメートルである棒状構造を明らかにした(図27)。N収着分析は、NiBHTで予測された非多孔質性に則して、約25m/gの低いBrunauer-Emmett-Teller(BET)SSAを決定した(図28)。加圧されたNiBHTペレットの可変温度導電率は、2D MOFのいくつかのその他のバルク相に関して観察されたように、298Kで約500S/mの優れた導電率と、温度の低下と共に一定の減少とを実証した(図29)。全体として、NiBHTの2D層状構造およびその高い導電率および熱安定性は、スーパーキャパシタにおけるその性能を評価するのを支援した。電気化学分析は、1Mのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)/MeCN電解質を使用して行ったが、これはNiBHT層間におそらくはインターカレートできるように適切に小さい陽イオンサイズを有すると考えられる。
【0147】
スーパーキャパシタの電気化学性能
Niフォーム上で加圧されたNiBHT粉末のサイクリックボルタンメトリー(CV)は、対電極として十分に大きい多孔質炭素を、および擬似参照としてAg線を使用して、3電極セル内で行った。最大1.7Vの徐々に大きくなる電位窓で得られたCV曲線は、歪んだ長方形の曲線を示し、明らかなファラデープロセスを示さなかった(図30)。安定な長方形のボルタンモグラムは、スキャン速度が0.5mV/秒程度に低下した場合であっても観察され(図31AおよびB)、しかし開回路電位(OCP)に対して-1.7Vを超えたスキャンは、複数回のサイクル後に電流の急速減衰をもたらした(図32)。全体として、CV応答は、NiBHTで容量性電荷貯蔵プロセスを示し、1.7Vの安全な作用電位窓も特定する。NiBHTは、245F/gおよび426F/cmの高い比容量を、3mV/秒のスキャン速度で示し、これは表面積がNiBHTの場合ほどに低い材料に関して異常に高いものである。事実、その低い表面積に鑑み、NiBHTの大きい比容量は、理想的な二重層電荷貯蔵に起因する可能性がないと考えられる。代替のメカニズムは、インターカレーションをベースにした擬似容量のメカニズムである。
【0148】
つまりNiBHTの高容量を引き起こすメカニズムを問い質すことは、電極へのイオン収着の性質を評価する電気化学的動態研究を経ることを意味する。NiBHTにおける容量性の寄与は、3つの異なる電位で、ある範囲のスキャン速度に関し、i(V)/υ1/2対υ1/2として電流をプロットすることによって分析した(図33~34)。これらの曲線の勾配は、主な容量性の寄与が、-1.2、-1.5、および-1.7V対OCPで、それぞれ80、78、76%であることを示し、NiBHTでの表面制御されたイオン収着を示唆している。これらの曲線から計算された比容量は、7、14、および28mV/秒のスキャン速度でそれぞれ195、124、および85F/gの高い値に達する(図35)。種々の電位窓における、30mV/秒の高速スキャン速度での(56秒で放電)NiBHTの長期サイクル動作研究は、8,000サイクル後に80%を超える保持を示したが(図36)、1.7Vの最も広い窓でのサイクル動作は、容量保持率を2000サイクル後に70%まで減少させた(図37)。
【0149】
電気化学インピーダンススペクトル(EIS)を、様々な陰分極の下、OCPで記録して、動的条件下、NiBHTでのイオン輸送を分析した(図38)。EIS曲線は、中周波数領域において拡張された45°Warburg領域と、より低い周波数領域で垂直線からの強度の逸脱とを示し、これは電極材料における限られたイオン輸送に典型的には関連する非理想的な容量性挙動と矛盾がなかった。さらに、高周波数領域をよく見ると、より強い分極で半円直径の増大をもたらし(挿入図、図38)、擬似容量電極に典型的な電荷移動メカニズムが進行中の可能性があることを示している。
【0150】
電気分解イオンサイズの役割
次に、NiBHTが、インターカレーションをベースにした擬似容量を示すか否かを決定するために、実験を行った。このために、様々なサイズの陽イオンと陰イオンとの電解質塩が用いられた:ヘキサフルオロリン酸テトラエチルアンモニウム(NEtPF)、テトラフルオロホウ酸テトラエチルアンモニウム(NEtBF)、およびテトラフルオロホウ酸テトラブチルアンモニウム(NBuBF)。これらの電解質で得られたCV曲線の比較は、Liに対してテトラアルキルアンモニウム(TAA)陽イオンで、非常に低い電流を実証し(図39)、それに応じて、Li+での227F/gと比較して約30F/gのより低い容量を実証する(図40)。陰イオンを変更し、NEtPFをNEtBFと比較することにより、非常に類似したCVが得られ(図39)、挙動における何らかの相違が陽イオンによって引き起こされ、それに応じてイオン収着プロセスは主に陽イオンで推進されることを示唆している。TAA電解質におけるCVはさらに、ほぼ平らな形状を示し、OCPからカソード的にスキャンした後に電流はゼロに近付いている。観察されたイオン篩い分け挙動は、層間の間隔よりも小さいイオンのみがインターカレートされる、その秩序ある2D層構造に起因する可能性があると考えられる。事実、Liイオンはインターカレートするのに十分小さいと考えられ、そのEISの低周波数領域での応答は理想の垂直線から著しく逸れ、インターカレートするには嵩が大き過ぎると考えられるさらに大きいTAA陽イオンの場合とは異なる(図41A)。
【0151】
全体として電気化学研究は、NiBHTでのイオン収着が陽イオンサイズによって影響を受け、2D層へのイオンのインターカレーションが全容量に影響を及ぼすという推論を裏付ける。NiBHTは、3分未満で放電したときに性能の定常的な減少を示した(図41B)。これは、擬似容量性材料に関して予測される低EIS周波数で理想の垂直線からの明らかな逸脱と一緒になって、高い放電速度でイオン輸送が妨げられたことを指し示す。
【0152】
電極プロセスの特徴付け
電位バイアス下でのNiBHTの構造的および組成的進化を、様々なex situ X線および固相核磁気共鳴(SSNMR)分光測定技法を使用して調査した。1M LiPF/MeCN中でサイクル動作させかつ負に分極したNiBHT電極のPXRDパターンは、結晶化度の良好な保持率を証明し、電気化学条件下でNiBHTの安定性を強調している(図42)。
【0153】
電解質に浸漬したようにまたはSCで負に分極したように調製されたNiBHT試料のLi SSNMRスペクトルを比較して、分極下でイオン収着中のLiの種々の化学環境を特定した。比較点を提供するために、類似の試験をNiHITP(HITP=2,3,6,7,10,11-ヘキサイミノトリフェニレン)で行い、2D多孔質MOFは、そのミクロ細孔内にイオンを吸着することが考えられる。Li SSNMRスペクトルは、全ての条件下、両方の材料に関して約0ppmで、強力な等方性ピークを示した(図43および44)。これらのピークを、粒子のまたは細孔の表面に会合したLiイオンに割り当てた。1つの注目すべき相違は、約3ppmでの分極したNiBHT試料に関して観察された非対称性であり、これは約-70および-73ppmでのそのサテライトピークにおいてさらになお明確に表示される(挿入図、図43)。分極したNiBHT試料における異なる化学シフトは、明らかに異なる核四極子カップリング相互作用を持つものであるがリチウムの小さい反磁性化学シフト範囲に起因して類似の等方性化学シフトを持つ、明らかに異なるイオン性Li化学環境を示すことが考えられる。NiHITPは、ミクロ細孔を示し、したがって二重層イオン吸着が可能になるので、そのLi SSNMRスペクトルは、単一のガウス様共鳴を示す(図44)。NiBHTにおける追加のLi吸着部位は、電気化学データに則して、2Dシート間にインターカレートされたLiイオンから生じると考えられる。
【0154】
X線吸収分光法(XAS)は、NiBHTの擬似容量性挙動がNiベースではないことを証明すると考えられる。Ni-K端でのX線吸収近傍分光法(XANES)は、エッジおよびプリエッジエネルギーが、未処理のおよび分極したNiBHTに関してそれぞれ8.346keVおよび8.334keVであることを明らかにし、これはNiの2+酸化状態が、スーパーキャパシタの動作中に持続したことを示すと考えられる(図45および46)。さらに、X線吸収微細構造(EXAFS)からNiの周りの局所配位の分析は、本質的に同一のNi配位数が、分極の前および後で4(±0.4)および3.7(±0.4)であることを明らかにした(図47~48)。同様に、NiBHTにおけるNi-S結合長は、大きく変化しないままであったが、分極後の2.16(±0.02)から2.13(±0.02)Åの僅かな減少は、S原子での電子密度の増大を示唆する。これらの観察事項は、レドックスプロセスが金属ベースではなく、代わりに配位子に重点を置くことを示唆する。事実、高分解X線光電子分光法(XPS)は、C 1sおよびNi 2pピークが分極の影響を受けず、唯一観察可能な変化はS 2pピークであることを示す(図50~52)。特に、2p1/2および2p3/2の二重項構造を持つ様々な化学成分へのS信号のデコンボリューションは、分極後にS-H成分の損失およびS-Li成分の出現を特定し、電気陰性S部位に関連したLi+の還元およびその後のインターカレーションを示す(図53~54)。とりわけ、観察されたレドックスプロセスは、NiBHTを、インターカレーション中に金属イオン(Ru、Nb、またはMo)の多数の酸化状態にアクセスされるその他の遷移金属ベースの擬似容量性材料から、差別化すると考えられる。残念ながら、金属有機構造体上で拡張した共役構造は、配位子の酸化状態の正確な変化を明らかにすることを実現不可能にする。それにも関わらず、インターカレーション擬似容量による高い比容量および大きい還元電位窓は、高電圧非対称スーパーキャパシタの製作に向けた将来性ある負極として、NiBHTを特定する。
【0155】
結論
まとめると、その多孔度の欠如にも関わらず、NiBHTはスーパーキャパシタ用の将来性ある電極材料であり、1.7Vの大きい還元電位窓において245F/gの高い比容量を送出することが実証された。広範な電気化学分析は、インターカレーションをベースにしたイオン収着メカニズムによってそのような高容量がNiBHTにおいて可能になったという推論を裏付けた。このプロセスの概略を図55に示す。
【0156】
材料および方法
NiCl・6HOをSigma-Aldrichから購入し、さらに精製することなく使用した。メタノールおよびMeCNをVWRから購入し、アルミナカラム溶媒精製システムから収集した。メタノールを、NiBHT合成の前に屋内でNを使用して一晩脱気した。全ての電解質塩、LiPF、およびテトラアルキルアンモニウム塩を、Sigma-AldrichまたはBeantown Chemicalsから購入し、さらに精製することなく使用した。活性炭は、活性炭のスラリー、アセチレンブラック、およびPTFE溶液混合物を8:1:1の比でそれぞれエタノールと繰り返し混練し圧延することによって、薄膜として調製した。調製された被膜を120℃で一晩乾燥し、その後、スーパーキャパシタ内で使用した。
【0157】
NiBHTの合成
132mg(0.555mmol)のNiCl・6HOを、最初に100mLの脱気したメタノール中に、窒素雰囲気下で溶解した。BHT粉末(50mg、0.185mmol)を、30分間にわたりその溶液にゆっくり添加し、次いで混合物を24時間、室温で反応させた。得られた粉末を濾過し、水およびエタノールでそれぞれ2回清浄化し、100℃で、動的真空下で12時間乾燥した。収率:73mg、90%。
【0158】
元素分析は、Robertson Microlit Laboratories、NJ、USAにより、燃焼および滴定技法を使用して行われた。得られたデータを、材料中の溶媒残留物としてエタノールおよび水を使用して当て嵌めた。予測値C:19.43%、S:44.41%、およびH:1.61%。観察値C:19.54%、S:44.66%、およびH:1.56%。
【0159】
図56は、NiBHTの合成を概略的に示す。
【0160】
導電率
NiBHTの導電率を、3.0重量トン/cmで加圧された直径7mmのペレットに対する4点van der Pauw法により測定した。Keithley 2450ソースメーターを電流源として使用し、Keithley 2182Aユニットを電圧計として使用した。
【0161】
電気化学的特徴付けおよび分析
全ての電気化学的測定は、Biologic VSP-300ポテンショスタットを使用して実施した。EIS測定は、10mHz~200kHzの大きい周波数範囲にわたり10mVの大きさの複数正弦波信号を使用して行った。比重量比容量(C)を、方程式:
Cg=((∫I.dV)/(m.υ.dV))
(式中、m=作用電極の質量、dV=放電電位窓、υ=スキャン速度である)
を使用して、3電極CV曲線の放電シーケンスから計算した。体積比容量(C)は、Cに電極密度(1.74g/cm)を乗じることによって計算した。種々のスキャン速度でのCVを、その速度正規化電流をプロットすることによって比較し:電流を、対応するスキャン速度で割った。
【0162】
計装および試料調製
粉末X線回折(PXRD)パターンを、Gobelミラー、回転試料ステージ、LynxEye検出器、およびCu Kα(λD 1.5405)X線源であってθ=2θBragg-Brentano幾何形状にあるものを備えたBruker D8 Advance回折計で記録した。抗散乱スリット(2mm)および交換可能な検出器スリット(8mm)を使用した。管電圧および電流は、それぞれ40kVおよび40mAであった。ナイフエッジアタッチメントを使用して、低角度での散乱を除去した。PXRD用の試料は、電極または粉末をゼロバックグラウンドケイ素(510)結晶板上に配置することによって調製した。分極したNiBHT電極は、NiBHT粉末をNiフォーム上で加圧し、3電極セル内で分極させることによって調製した。製作されたセルを、最初に一晩そのままにし、次いでスキャン速度10mV/秒で100サイクルにわたりサイクル動作させ、-1.7V対OCPで5分間保持し、その後、分解した。
【0163】
制限視野電子回折(SAED)画像をJEOL-2100で得、200kVの加速電圧で操作した。試料を、メタノール中に分散された粉末から、Cu TEMグリッド上にドロップキャストした。走査型電子顕微鏡法(SEM)画像を、3kVの動作電圧でInLens検出器を使用するZeiss Supra 55VP FEG SEMを使用して記録した。窒素ガス吸着等温線を、液体窒素浴(77K)を使用するMicromeritics ASAP 2020表面積および多孔度分析器で測定した。試料を、0.2mtorrの真空下で24時間にわたり90℃に加熱し、その後、分析した。熱重量分析(TGA)を、TA機器Q500熱重量分析器で、1℃/分の加熱速度で、10mL/分の窒素ガス流の下、白金パン上で行った。
【0164】
固相Li NMR実験を、4mmの二重共鳴H-Xマジック角回転(MAS)Bruker NMRプローブを備えたBruker NEO 500(Bo=11.75T、500MHz H)NMR分光計で行った。粉末化試料を、4mmのo.d.ZrO NMRローター内に充填し、Kel-Fキャップで閉鎖した。NMRデータを、Bloch減衰またはHahnエコー(γB1/2π=62.5kHz)パルスシーケンスを使用して収集し、14kHzの回転周波数でMASにより獲得した。Blochパルス実験は、π/4(2μs)またはπ/2(4μs)のいずれかの励起パルスを実現し、Hahnエコーパルスは各試料ごとに最適化された。リサイクル遅延は、反転回復法によってLi核スピン格子緩和(T1)時間を測定することによって決定され、75から300msの間に及んだ。全てのLi NMRスペクトルを、外部参照として1M LiCl溶液を使用して、0ppmに参照させた。NMRスペクトルを、-5Hzを使用して、指数関数線拡大を使用してTopspin内で処理した。データは、Hデカップリングを使用しても試みられたが、NMR線幅として提示されず、これらの材料の内部でH-Liヘテロ核双極子カップリングによって目に見えて影響を受けなかった。試料を、単に電解質中に浸漬しまたはスーパーキャパシタ内で負に分極させることのいずれかで調製した。浸漬された試料は、ガラスバイアル内で、約2mlのLiPF/MeCN電解質を25mgのNi3BHTに添加し、一晩静置させることによって調製した。分極したNiBHT電極は、NiBHT粉末をペレットとして加圧し、3電極セル内で分極することによって調製した。製作されたセルを、最初に一晩静置し、次いで電位範囲0から-1.7V対OCPで、5mV/秒で20サイクルにわたりスキャンし、-1.7Vで5分間保持し、その後、分解した。浸漬および分極手順の両方は、様々な利用可能な収着部位でのLiイオンの吸着をもたらし、したがってssNMR技法を使用した局所化学環境の分析が可能になった。NiBHTの、浸漬粉末および分極電極の湿潤試料を、MeCN溶媒で穏やかに洗浄して、マクロ細孔内に遊離種として残された過剰な電解質イオンを除去し、次いで真空下で乾燥した。
【0165】
X線吸収分光法(XAS)実験を、Argonne National LaboratoryのAdvanced Photon Source(APS)で、10-BMビームラインで行った。全ての測定は、エッジよりも低い250eVからエッジよりも高い550eVの高速スキャンで、透過モードのNi Kエッジ(8.333keV)で行い、スキャン当たり約10分を要した。試料をステンレス鋼試料ホルダー内に加圧し、試料セル内に置いた。セルを密封し、測定のためにビームラインに移した。Ni Kエッジで、Ni-S(CN=1、R=2.28Å)散乱対をシミュレートした。S を、箔を当て嵌めることによって較正した。これは0.75であることがわかった。r空間のおよび単離されたq空間の第1のシェルの最小二乗法を、大きさおよび虚数成分を当て嵌めるため、各スペクトルごとに2.7から10Å-1の範囲にわたり、k重み付きフーリエ変換データに関して行った。分極NiBHT試料を、3電極セル内の作用電極として未処理のNiBHTペレットを使用することにより、調製した。電極を、最初に一晩静置させ、次いで0から-1.7V対OCPの電位範囲で20サイクルにわたり5mV/秒でスキャンし、-1.7Vで5分間保持し、その後、分解した。分解後、作用電極を慎重に収集し、MeCNで濯ぎ、乾燥した。
【0166】
X線光電子分光法(XPS)を、半球分析器を備えた光電子分光計K-アルファXPSシステム(Thermo Scientific)で行った。スペクトルを、単色化アルミニウム源Al Kα(ED1,486.6eV)を使用して、標準放出幾何形状のビームスポットサイズ400ミクロンで、分析器エネルギー分解能0.1eVで獲得した。表面電荷中和を、低エネルギーフラッドガンを使用することにより行った。スペクトルは、偶発的なC 1s、C-Cピーク(284.8eVで)で参照された電荷であった。ex situ分析に関する分極試料を、XAS試料と同様に調製した。
【表1】

【表2】
【0167】
分極下でのX線回折パターン
未処理のNiBHTおよび陰性分極した電極のPXRDパターンは、ピーク位置に明らかな変化のない類似のパターンを示し(図37)、Liイオンのインターカレーション後に、層間充填距離の最小限に抑えられた変化を示す。このデータは、溶媒-電極表面相互作用の性質に応じて、インターカレーション中に電解質のLiイオンが部分的または完全な脱溶媒和を受ける可能性があることを示すと考えられる。
【0168】
NMRに関する対照材料としてのNiHITP
Li NMR研究を、1M LiPF電解質中に浸漬されたまたは陰性分極した試料に関して行った。浸漬および分極の両方の手順は、様々な利用可能な収着部位でのLiイオンの吸着をもたらし、したがって、NMR技法を使用して局所化学環境の分析が可能になる。湿潤試料を、アセトニトリルで穏やかに洗浄して、遊離種として残された過剰な電解質イオンを除去し、次いで真空下で乾燥した。NiBHTのNMR研究は、吸着されたLiイオンに関して2つの明らかに異なる化学環境の存在を示し、2Dシート間でのインターカレーションによるイオン収着の可能性を示唆した。NiBHTからのこの追加のシグナルをさらに理解するために、NiHITPを対照材料として研究した。NiHITPおよびNiBHTは共に、金属ノードとしてNiを持つ2D構造を有し、2桁以内の導電率値も有する。
【0169】
本発明のいくつかの実施形態について本明細書に記述しかつ例示してきたが、当業者なら、本明細書に記述される機能を発揮するためのおよび/または結果および/または利点のうちの1つもしくは複数を得るための、様々な他の手段および/または構造を容易に想像することになり、そのような変形例および/または修正例のそれぞれは、本発明の範囲内にあるものと見なす。より一般的には、当業者なら、本明細書に記述される全てのパラメーター、寸法、材料、および構成は例示を意味するものであること、ならびに実際のパラメーター、寸法、材料、および/または構成は、本発明の教示が使用される1つまたは複数の特定の適用例に依存するようになることが、容易に理解される。当業者なら、単に通常の実験のみ使用して、本明細書に記述される本発明の特定の実施形態の多くの均等物を理解しまたは確認できる。したがって、前述の実施形態は単なる例として提示されること、ならびに添付される特許請求の範囲およびその均等物の範囲内で本発明を、特に記述され請求項に記載される以外の手法で実施され得ることを、理解されたい。本発明は、本明細書に記述される個々の特徴、システム、物品、材料、および/または方法のそれぞれを対象とする。さらに、2つまたはそれよりも多くのそのような特徴、システム、物品、および/または方法の任意の組合せは、そのような特徴、システム、物品、材料、および/または方法が相互に矛盾しない場合、本発明の範囲内に含まれる。
【0170】
不定冠詞「a」および「an」は、本明細書でおよび請求項で使用される場合、反対の内容が明示されない限り、「少なくとも1つ」を意味することを理解すべきである。
【0171】
「および/または」という文言は、本明細書でおよび請求項で使用される場合、そのように結び付けられた要素の「いずれかまたは両方」、即ち、ある場合に結合的に存在し、その他の場合には分離的に存在する要素を意味することを理解すべきである。他の要素は、反対の内容が明示されない限り、特に特定されたそれらの要素に関係しても関係しなくても、「および/または」という句により特に特定された要素以外が必要に応じて存在し得る。したがって、非限定的な例として、「Aおよび/またはB」という表現は、「含む(comprising)」などの非制約的言語と併せて使用される場合、一実施形態ではBのないA(必要に応じてB以外の要素を含む);別の実施形態ではAのないB(必要に応じてA以外の要素を含む);さらに別の実施形態ではAおよびBの両方(必要に応じて他の要素を含む);などを指すことができる。
【0172】
本明細書でおよび請求項で使用される場合、「または」は、上記定義された「および/または」と同じ意味を有することを理解すべきである。例えば、リスト内の項目を分離するとき、「または」または「および/または」は、包括的と解釈されるものとし、即ち、いくつかの要素または要素のリストの少なくとも1つを含むが1を超える数も含み、必要に応じて追加の列挙されていない項目も含むと解釈される。反対の内容を明示する用語のみ、例えば「~のただ1つ」または「~のちょうど1つ」、あるいは請求項で使用される「~からなる」は、いくつかの要素または要素のリストの厳密に1つの要素を含むことを指すことになる。一般に、本明細書で使用される「または」という用語は、「いずれか」、「~の1つ」、「~のただ1つ」、または「~のちょうど1つ」などの排他的な用語が先行する場合、排他的代替例(即ち、「1つまたはその他であるが両方ではない」)を示すと単に解釈されるものとする。「~から本質的になる」は、請求項で使用される場合、特許法の分野で使用されるその通常の意味を有するものとする。
【0173】
本明細書でおよび請求項で使用される場合、「少なくとも1つ」という文言は、1つまたはそれよりも多くの要素のリストの参照において、要素のリストにおける要素のうちのいずれか1つまたは複数から選択される少なくとも1つの要素を意味し、しかし要素のリスト内に特に列挙されたそれぞれおよび全ての要素の少なくとも1つを含むことを必ずしも必要とせず、要素のリスト内の要素の任意の組合せを除外しないことを理解すべきである。この定義は、特に特定されたような要素に関連しても関連していなくても、要素が、「少なくとも1つの」という文言が指す要素のリスト内で特に特定された要素以外を必要に応じて提示し得ることも可能にする。したがって、非限定的な例として、「AおよびBの少なくとも1つ」(または、同等に、「AまたはBの少なくとも1つ」または同等に、「Aおよび/またはBの少なくとも1つ」)は、一実施形態では、必要に応じて1を超える数を含む少なくとも1つのAであってBが存在しないもの(および必要に応じてB以外の要素を含む);別の実施形態では、必要に応じて1を超える数を含む少なくとも1つのBであってAが存在しないもの(および必要に応じてA以外の要素を含む);さらに別の実施形態では、必要に応じて1を超える数を含む少なくとも1つのAと、必要に応じて1を超える数を含む少なくとも1つのBと(および必要に応じて他の要素を含む)を指すことができる。
【0174】
請求項ならびに上記明細書では、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「保持する(carrying)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」「関わる(involving)」、「保持する(holding)」、および同様のものなどの全ての移行句は、非制限的であること、即ちそれらを含むがそれらに限定するものではないことを意味することを、理解されたい。「~からなる」および「~から本質的になる」という移行句のみ、the United States Patent Office Manual of Patent Examining Procedures, Section 2111.03に記述されるように、それぞれ閉鎖的または半閉鎖的な移行句であるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10
図11A
図11B
図12
図13A
図13B
図13C
図14A
図14B-C】
図14D
図15
図16
図17A
図17B-C】
図17D
図18A
図18B
図19A
図19B
図19C
図19D
図20A
図20B
図21
図22
図23A
図23B
図24
図25A
図25B
図26
図27
図28
図29
図30
図31A
図31B
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41A
図41B
図42
図43
図44
図45
図46
図47
図48
図49
図50
図51
図52
図53
図54
図55
図56
【国際調査報告】