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特表2022-549966音分析に基づくいびき音検出のための装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-29
(54)【発明の名称】音分析に基づくいびき音検出のための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/08 20060101AFI20221121BHJP
【FI】
A61B5/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520065
(86)(22)【出願日】2020-09-30
(85)【翻訳文提出日】2022-05-09
(86)【国際出願番号】 IB2020000830
(87)【国際公開番号】W WO2021064467
(87)【国際公開日】2021-04-08
(31)【優先権主張番号】62/908,545
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/910,408
(32)【優先日】2019-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519420115
【氏名又は名称】株式会社マリ
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100212705
【弁理士】
【氏名又は名称】矢頭 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】奥村 成皓
(72)【発明者】
【氏名】森本 和志
(72)【発明者】
【氏名】瀧 宏文
(72)【発明者】
【氏名】沖中 宏彰
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038SS08
4C038SV05
4C038SX07
(57)【要約】
いびき音検出装置は、被験者によって生成された音を受信する1つ以上のマイクロフォンと、被験者によって生成された音を受信信号に変換し、受信信号を音強度信号に変換し、1つ以上の音強度信号を使用して音強度信号の周期性を測定し、呼吸数に関する音強度信号の周期性の妥当性を評価し、音強度と呼吸数に関する音強度信号の周期性の妥当性とを使用していびき音を検出する回路を含むコントローラとを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
いびき音検出装置であって、
被験者によって生成される複数の音を受信する1つ以上のマイクロフォンと、
前記被験者によって生成された音を複数の受信信号に変換し、前記受信信号を複数の音強度信号に変換し、1つ以上の音強度信号を使用して音強度信号の周期性を測定し、呼吸数に関する音強度信号の周期性の妥当性を評価し、音強度と呼吸数に関する音強度信号の周期性の妥当性とを使用していびき音を検出するように構成された回路を備えるコントローラとを備える、いびき音検出装置。
【請求項2】
睡眠時呼吸障害推定装置であって、
被験者によって生成される複数の音を受信する1つ以上のマイクロフォンと、
前記被験者によって生成された音を複数の受信信号に変換し、前記受信信号を複数の音強度信号に変換し、1つ以上の音強度信号を使用して音強度信号の周期性を測定し、呼吸数に関する音強度信号の周期性の妥当性を評価し、音強度と呼吸数に関する音強度信号の周期性の妥当性とを使用していびき音を検出し、睡眠時呼吸障害の有病率を推定するために1つ以上の指数を計算するように構成された回路を備えるコントローラとを備える、睡眠時呼吸障害推定装置。
【請求項3】
いびき音検出方法であって、
被験者によって生成される複数の音を取得することと、
前記被験者によって生成された音を複数の受信信号に変換することと、
前記受信信号を複数の音強度信号に変換することと、
1つ以上の音強度信号を使用して音強度信号の周期性を測定することと、
呼吸数に関して音強度信号の周期性の妥当性を評価することと、
音強度と、呼吸数に関する前記音強度信号の周期性の妥当性とを使用していびき音を検出することとを含む、いびき音検出方法。
【請求項4】
睡眠時呼吸障害推定方法であって、
請求項3に記載のいびき音検出方法によっていびき音を検出することと、
睡眠時呼吸障害の有病率を推定するための1つ以上の指数を計算することと、を含む、睡眠時呼吸障害推定方法。
【請求項5】
前記いびき音検出方法は、フーリエ変換により音強度信号の周期性を測定することを含み、
前記フーリエ変換の時間窓の持続時間が10秒以上であり、
矩形窓、B-スプライン窓、ハン窓、ハミング窓、テューキー窓を含む窓関数のうちの1つが、フーリエ変換に対する時間窓の窓関数として用いられる、請求項3に記載のいびき音検出方法。
【請求項6】
各受信信号の開始及び/又は終了に情報のないデータを追加することをさらに含む、請求項5に記載のいびき音検出方法。
【請求項7】
フーリエ変換後の周波数ドメインにおける音強度データに補間を適用することをさらに含む、請求項5に記載のいびき音検出方法。
【請求項8】
前記いびき音検出方法は、フーリエ変換の代わりに、ウェーブレット変換、ラプラス変換、高速フーリエ変換、離散フーリエ変換、短時間フーリエ変換、Z変換、特異値分解を含むフーリエ関連変換のうちの1つによって、音強度信号の周期性を測定することを含む、請求項5に記載のいびき音検出方法。
【請求項9】
前記いびき音検出方法は、複数の受信信号を、複数の音強度信号として、複数の受信信号の包絡線または複数の受信信号の包絡線のべき乗に変換することを含む、請求項3に記載のいびき音検出方法。
【請求項10】
前記いびき音検出方法は、ローパスフィルタリングが後に続く整流を含む包絡線推定アルゴリズム、分析信号の大きさ、ピーク包絡線、及び二乗平均平方根包絡線のうちの1つによって、複数の受信信号の包絡線を計算することを含む、請求項9に記載のいびき音検出方法。
【請求項11】
前記いびき音検出方法は、前記複数の受信信号を、前記複数の音強度信号として、前記複数の受信信号の絶対値の複数の移動平均、又は前記複数の受信信号の絶対値の複数の移動平均のべき乗に変換することを含む、請求項3に記載のいびき音検出方法。
【請求項12】
前記いびき音検出方法は、受信信号の音強度の周期性が呼吸頻度またはその2倍に近いとき、受信信号がいびき音として妥当であるとの判定基準によって、音強度信号の周期性の妥当性を評価することを含む、請求項3に記載のいびき音検出方法。
【請求項13】
被験者情報にしたがって可能な呼吸頻度を調整することをさらに含む、請求項12に記載のいびき音検出方法。
【請求項14】
前記いびき音検出方法は、以下の2つの条件、
1つは、フーリエ変換適用後の周波数ドメインにおける音強度信号が、0.1から5Hzの周波数帯域内に1つ以上の極大値を有することであり、
もう1つは、0.1から5Hzの周波数帯域内の極大値のうちの最大値の周波数が0.15から2Hzの範囲である、
の両方を満たすときに、受信信号がいびき音として妥当であるとの判定基準により、音強度信号の周期性の妥当性を評価することを含む、請求項5に記載のいびき音検出方法。
【請求項15】
前記睡眠時呼吸障害推定方法は、前記睡眠時呼吸障害の有病率を推定する指数として無呼吸低呼吸指数を推定することを含み、
前記無呼吸低呼吸指数は、いびき持続時間単位によって正規化された1時間当たりのいびき持続時間の合計を使用して推定され、
前記いびき持続時間単位は20から40秒の範囲であり、
前記いびき持続時間はいびき音として検出された受信信号の持続時間によって計算される、請求項4に記載の睡眠時呼吸障害推定方法。
【請求項16】
前記睡眠時呼吸障害推定方法は、前記睡眠時呼吸障害の有病率を推定する指数として無呼吸低呼吸指数を推定することを含み、
呼吸数に関する音強度信号の周期性の妥当性が評価され、
音強度信号の持続時間が20から40秒の範囲であり、
前記無呼吸低呼吸指数は、妥当と判定された1時間当たりの前記音強度信号の数を使用して推定される、請求項4に記載の睡眠時呼吸障害推定方法。
【請求項17】
低強度の受信信号を分析から除外する、請求項3記載のいびき音検出方法。
【請求項18】
睡眠後の一定時間及び/又は起床前の一定時間の間に取得された音から変換された受信信号を分析から除外することをさらに含む、請求項3に記載のいびき音検出方法。
【請求項19】
発話を含む、被験者が覚醒している間に取得された音から変換された受信信号を除外することをさらに含む、請求項3に記載のいびき音検出方法。
【請求項20】
被験者がレム睡眠であると推定される間に取得された音から変換された受信信号を除外することをさらに含む、請求項3に記載のいびき音検出方法。
【請求項21】
前記睡眠時呼吸障害推定方法は、前記いびき持続時間の総和の計算において、いびきが一定期間継続したときに、いびき持続時間の総和を減少させることを含む、請求項15に記載の睡眠時呼吸障害推定方法。
【請求項22】
0.15から2Hzの周波数帯域内の極大値のうちの最大値が、周囲の周波数の強度と比較して十分に大きいときに、受信信号がいびき音として妥当であるという判定基準により、音強度信号の周期性の妥当性を評価することをさらに含む、請求項14に記載のいびき音検出方法。
【請求項23】
0.15から2Hzの周波数帯域内の極大値のうち最大値が周囲の周波数の強度と比較して大きく、最大値の周波数が近傍の受信信号の最大値の1つ以上の周波数に近いときに、受信信号がいびき音として妥当であるという判定基準により、音強度信号の周期性の妥当性を評価することをさらに含む、請求項22に記載のいびき音検出方法。
【請求項24】
睡眠中に0.15から2Hzの周波数帯域内の極大値のうち極大値の周波数が大きく変動したときに、前記方法は、無呼吸低呼吸指数の推定値を増加させる、請求項14に記載の睡眠時呼吸障害推定方法。
【請求項25】
いびき音検出装置であって、
被験者によって生成された複数の音を受信する1つ以上のマイクロフォンと、
前記被験者によって生成された音を複数の受信信号に変換し、前記受信信号の各々の基本周波数を推定し、前記受信信号にハイパスフィルタを適用し、ハイパスフィルタされた受信信号の包絡線を計算し、前記受信信号の基本周波数に関して前記ハイパスフィルタされた受信信号の前記包絡線の周期性を評価し、いびきを検出するための1つ以上の指数を計算するように構成された回路を備えるコントローラと、を備える、いびき音検出装置。
【請求項26】
いびき音検出方法であって、
被験者によって生成された複数の音を取得することと、
被験者によって生成された音を複数の受信信号に変換することと、
前記受信信号及び/又はフィルタリングされた受信信号を記憶することと、
前記受信信号の基本周波数を推定することと、
前記受信信号にハイパスフィルタを適用することと、
ハイパスフィルタリングされた受信信号の包絡線を計算することと、
前記ハイパスフィルタリングされた受信信号の前記包絡線の周期性を推定することと、
前記受信信号の基本周波数に関して、前記ハイパスフィルタリングされた受信信号の前記包絡線の周期性を評価することと、
いびきを検出するための1つ以上の指数を計算することと、を含む、いびき音検出方法。
【請求項27】
前記いびき音検出方法は、受信信号にフーリエ変換を適用することと、周波数ドメインにおける受信信号の強度を計算することと、受信信号の基本周波数を探索することとを含み、
フーリエ変換ための時間窓の持続時間は1秒以下であり、
フーリエ変換前の受信信号に、矩形窓、B-スプライン窓、ハン窓、ハミング窓、テューキー窓を含む窓関数のうちの1つが適用される、請求項26に記載のいびき音検出方法。
【請求項28】
各受信信号の開始及び/又は終了に情報のないデータを追加することをさらに含む、請求項27に記載のいびき音検出方法。
【請求項29】
フーリエ変換を適用した後の前記周波数ドメインにおける受信信号の強度に補間を適用することをさらに含む、請求項27に記載のいびき音検出方法。
【請求項30】
前記いびき音検出方法は、フーリエ変換の代わりに、ウェーブレット変換、ラプラス変換、高速フーリエ変換、離散フーリエ変換、短時間フーリエ変換、Z変換、特異値分解を含むフーリエ関連変換のうちの1つを用いることを含む、請求項27に記載のいびき音検出方法。
【請求項31】
前記いびき音検出方法は、カットオフ周波数を有するハイパスフィルタを受信信号に適用することを含み、
ハイパスフィルタのカットオフ周波数は、前記受信信号の基本周波数よりも高い、請求項26に記載のいびき音検出方法。
【請求項32】
指数を記憶することと、
いびきを検出するための1つ以上の指数の計算のために、記憶された指数を使用することと、をさらに含む、請求項26に記載のいびき音検出方法。
【請求項33】
前記いびき音検出方法は、周波数ドメインにおける受信信号の強度の極大値を検出することと、最も低い周波数を有する極大値を基本周波数として決定することとを含む、請求項26に記載のいびき音検出方法。
【請求項34】
前記いびき音検出方法は、各極大値の振幅、各極大値の強度、周波数ドメインにおける各極大値と他の極大値までの距離、及び各極大値のプロミネンスを使用する判定基準によって、周波数ドメインにおける受信信号の強度の極大値のうちの1つを基本周波数として決定することを含む、請求項33に記載のいびき音検出方法。
【請求項35】
前記いびき音検出方法は、時間ドメインにおける信号振幅の周期性を計算することによって、各受信信号の基本周波数を推定することを含む、請求項26に記載のいびき音検出方法。
【請求項36】
前記いびき音検出方法は、基本周波数が10から300Hzの範囲内にあることを含む複数の条件を使用して、受信信号の基本周波数を決定することを含む、請求項26に記載のいびき音検出方法。
【請求項37】
前記いびき音検出方法は、包絡線周波数が10から300Hzの範囲内にあるという条件下で、ハイパスフィルタリングされた受信信号の包絡線を計算することを含む、請求項26に記載のいびき音検出方法。
【請求項38】
前記いびき音検出方法は、ハイパスフィルタリングされた受信信号の包絡線にフーリエ変換を適用することと、ハイパスフィルタリングされた受信信号の包絡線の周期性を推定するために、フーリエ変換後の周波数ドメインにおける各受信信号の強度の極大値の最大値を探索することとを含む、請求項26に記載のいびき音検出方法。
【請求項39】
いびき音検出方法であって、
被験者によって生成される複数の音を取得することと、
前記被験者によって生成された音を受信信号に変換することと、
前記受信信号及び/又はフィルタリングされた受信信号を記憶することと、
前記受信信号の基本周波数を推定することと、
前記受信信号の第2高調波を探索することと、
前記受信信号にハイパスフィルタを適用することと、
ハイパスフィルタリングされた受信信号の包絡線を計算することと、
前記ハイパスフィルタリングされた受信信号の前記包絡線の周期性を推定することと、
前記受信信号の基本周波数に関して、前記ハイパスフィルタリングされた受信信号の前記包絡線の周期性を評価することと、
いびきを検出するための1つ以上の指数を計算することを含む、いびき音検出方法。
【請求項40】
前記いびき音検出方法は、前記受信信号の基本周波数から第2高調波までの周波数範囲における各受信信号の強度の極大値の最大値を探索することと、前記受信信号の基本周波数の強度及び第2高調波の強度の両方が、前記受信信号の基本周波数から第2高調波までの周波数範囲における各受信信号の強度の極大値の最大値よりも大きいときに、前記受信信号がいびき音を含むかもしれないと判定することとを含む、請求項39に記載のいびき音検出方法。
【請求項41】
前記いびき音検出方法は、前記受信信号の基本周波数未満の周波数範囲における各受信信号の強度の最大値を探索することと、前記受信信号の基本周波数の強度が前記受信信号の基本周波数未満の周波数範囲における各受信信号の強度の最大値よりも大きいときに、前記受信信号がいびき音を含むかもしれないと判定することを含む、請求項39に記載のいびき音検出方法。
【請求項42】
いびき音検出方法であって、
被験者によって生成された複数の音を取得することと、
前記被験者によって生成された音を受信信号に変換することと、
前記受信信号及び/又はフィルタリングされた受信信号を記憶することと、
前記受信信号にフーリエ変換を適用することと、
周波数ドメインにおける前記受信信号の強度を計算することと、
前記受信信号の基本周波数を探索することと、
前記受信信号の低周波成分が支配的であるか否かを調査することと、
前記受信信号にハイパスフィルタを適用することと、
ハイパスフィルタリングされた受信信号の包絡線を計算することと、
前記ハイパスフィルタリングされた受信信号の前記包絡線の周期性を推定することと、
前記受信信号の基本周波数に関して、前記ハイパスフィルタリングされた受信信号の前記包絡線の周期性を評価することと、
いびきを検出するための1つ以上の指数を計算することと、を含む、いびき音検出方法。
【請求項43】
受信信号の基本周波数の強度が周波数ドメインにおいて支配的であるときに、前記いびき音検出方法は、前記受信信号がいびき音を含むかもしれないと判定することを含む、請求項42に記載のいびき音検出方法。
【請求項44】
前記受信信号の基本周波数の強度が前記受信信号の強度和の10%以上を占めるときに、前記いびき音検出方法は、前記受信信号はいびき音を含むかもしれないと判定することを含む、請求項42に記載のいびき音検出方法。
【請求項45】
前記基本周波数の強度及び/又はプロミネンスが他の周波数の強度及びプロミネンスよりも高いときに、前記いびき音検出方法は、前記受信信号がいびき音を含むかもしれないと判定することを含む、請求項42に記載のいびき音検出方法。
【請求項46】
いびき音検出方法であって、
被験者によって生成される複数の音を取得することと、
前記被験者によって生成された音を受信信号に変換することと、
前記受信信号及び/又はフィルタリングされた受信信号を記憶することと、
20Hz以下のカットオフ周波数を有するハイパスフィルタを前記受信信号に適用することと、
複数の窓幅のスライディングウィンドウを使用して、時間ドメインにおける前記受信信号の自己相関係数を計算することと、
20ミリ秒以上の窓幅を用いた場合に、前記受信信号の自己相関係数が最大となったときに、前記受信信号はいびき音を含むと判定することとを含み、
前記自己相関係数の計算のためのタイムラグの範囲は、前記窓幅の1/2倍から2倍の範囲に含まれる、いびき音検出方法。
【請求項47】
複数の受信信号及び/又はフィルタリングされた受信信号を記憶することをさらに含む、請求項3に記載のいびき音検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年9月30日に出願された米国仮出願第62/908,545号、2019年10月3日に出願された米国仮出願第62/910,408号に基づいており、これらの優先権の利益を主張する。上記の出願の全ての内容は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、いびきに関連する音を検出し、音分析に基づいて睡眠時呼吸障害及び睡眠時無呼吸を推定する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
閉塞性睡眠時無呼吸は、睡眠時呼吸障害の最も一般的な形態である(NPL1)。閉塞性睡眠時無呼吸は、睡眠中に呼吸が繰り返し中断される睡眠障害である(NPL2)。睡眠時無呼吸は、不眠だけでなく、様々な疾患及び症状、例えば高血圧、心臓発作、心不整脈、脳卒中及びうつ病の発生率の増加も引き起こす。いくつかの発明者及び研究者は、音分析に基づくマルチパラメトリックアプローチを用いて閉塞性睡眠時無呼吸を診断することに焦点を当てている(PL1、NPL3)。しかしながら、マルチパラメトリックアプローチによって採用されるパラメータのほとんどは、いびき又は睡眠時呼吸障害の検出に適していない。さらに、それらの多くは既存の音声分析技術に基づくものであり、これまでの研究では3Hzより低い周波数帯域は見過ごされていた(NPL4、NPL5)。
【0004】
先行技術文献特許文献(Citation List Patent Literature)
PL 1 Udantha Abeyratne, Asela Samantha Karunajeewa, Houman Ghaemmaghami, “Multi-parametric analysis of snore sounds for the community screening of sleep apnea with non-gaussianity index, US20120004749A1.
【0005】
先行技術文献非特許文献(Citation List Non Patent Literature)
NPL 1 https://www.thoracic.org/patients/patient-resources/breathing-in-america/resources/chapter-23-sleep-disordered-breathing.pdf
NPL 2 https://www.sleepfoundation.org/sleep-apnea
NPL 3 Nir Ben-Israel, Ariel Tarasiuk, Yaniv Zigel, “Obstructive apnea hypopnea index estimation by analysis of nocturnal snoring signals in adults,” Sleep 2012 Sep; 35(9):1299-1305.
NPL 4 Li-Ang Lee, Yu-Lun Lo, Jen-Fang Yu, Gui-She Lee, Yung-Lun Ni, Ning-Hung Chen, Tuan-Jen Fang, Chung-Guei Huang, Wen-Nuan Cheng, Hsueh-Yu Li, “Snoring sounds predict obstruction sites and surgical response in patients with obstructive sleep apnea hypopnea syndrome,” Sci Rep.2016; 6:30629.
NPL 5 Li-Ang Lee, Jen-Fang Yu, Yu-Lun Lo, Yen-Sheng Chen, Ding-Li Wang, Chih-Ming Cho, Yung-Lun Ni, Ning-Hung Chen, Tuan-Jen Fang, Chung-Guei Huang, Hsueh-Yu Li, “Energy types of snoring sounds in patients with obstructive sleep apnea syndrome:A preliminary observation,” PLoS One 2012; 7(12): e53481.
【発明の概要】
【0006】
本発明の一態様によれば、いびき音検出装置は、被験者によって生成された音を受信する1つ以上のマイクロフォンと、被験者によって生成された音を受信信号に変換し、受信信号を複数の音強度信号に変換し、1つ以上の音強度信号を使用して音強度信号の周期性を測定し、呼吸数に関する音強度信号の周期性の妥当性を評価し、音強度と呼吸数に関する音強度信号の周期性の妥当性とを使用していびき音を検出する回路を含むコントローラとを含む。
【0007】
本発明の別の態様によれば、いびき音検出方法は、被験者によって生成された音を取得することと、被験者によって生成された音を受信信号に変換することと、受信信号を音強度信号に変換することと、1つ以上の音強度信号を使用して音強度信号の周期性を測定することと、呼吸数に関する音強度信号の周期性の妥当性を評価することと、音強度と呼吸数に関する音強度信号の周期性の妥当性とを使用していびき音を検出することとを含む。
【0008】
添付の図面に関連して考慮されるとき、以下の詳細な説明を参照することによって、本発明及びその付随する利点の多くがより良く理解されるにつれて、本発明及びその利点の多くのより完全な認識が容易に得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、音分析に基づく睡眠時呼吸障害推定装置の概略図であり、いびき音は、呼吸数に関する音強度信号の周期性の評価を使用して検出される。
図2図2は、音分析に基づく睡眠時呼吸障害推定方法の概略図であり、いびき音は、呼吸数に関する音強度信号の周期性の評価を使用して検出される。
図3図3は、音分析に基づく睡眠時呼吸障害推定方法の概略図を示しており、ここでは、フーリエ変換が音強度信号に適用されて、呼吸数に関して音強度信号の周期性が評価される。
図4図4は、音分析に基づくいびき音検出のための装置の概略図である。
図5図5は、音分析に基づくいびき音検出の方法の概略図である。
図6図6は、指数を計算するために指数を記憶するプロセスを用いるいびき音検出のための方法の概略図である。
図7図7は、いびき音が第2高調波を有するという条件を用いたいびき音検出方法の概略図である。
図8図8は、受信信号の低周波成分が支配的であるか否かを調べるいびき音検出方法の概略図である。
図9図9は、自己相関を用いたいびき音検出方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施形態は、これから、添付図面を参照して説明され、同様の参照番号は、様々な図面全体を通して対応する又は同一の要素を指定する。
【0011】
本発明の実施形態にしたがう睡眠時呼吸障害推定装置は、睡眠時呼吸障害の有病率を推定するための指数を計算する。装置には、1つ以上のマイクロフォン104、1つ以上の受信回路106、音強度変換フィルタ108、強度周期性測定フィルタ110、強度周期性フィルタ112、いびき音検出フィルタ114、及び受信回路106と、音強度変換フィルタ108と、強度周期性測定フィルタ110と、強度周期性評価フィルタ112と、いびき音検出フィルタ114とを制御するシステムコントローラ118が設けられる。
【0012】
本発明の実施形態にしたがう睡眠時呼吸障害推定装置は、睡眠時呼吸障害の有病率を推定するための指数を計算する。装置には、1つ以上のマイクロフォン104、1つ以上の受信回路106、音強度変換フィルタ108、強度周期性測定フィルタ110、強度周期性評価フィルタ112、いびき音検出フィルタ114、睡眠時呼吸障害推定フィルタ116、及び受信回路106と、音強度変換フィルタ108と、強度周期性測定フィルタ110と、強度周期性評価フィルタ112と、いびき音検出フィルタ114と、睡眠時呼吸障害推定フィルタ116とを制御するシステムコントローラ118が設けられる。
【0013】
システムコントローラ118は、中央処理ユニット(CPU)、ならびにリードオンリーメモリ(ROM)及びランダムアクセスメモリ(RAM)などのメモリを含むコンピュータであってもよい。コントローラのCPUは、シングルコアプロセッサ(単一の処理ユニットを含む)又はマルチコアプロセッサであってもよい。コンピュータは、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、ラップトップコンピュータ、フィールドプログラマブルゲートアレイ、又はセルラ電話機などのモバイルデバイスであってもよい。
【0014】
図1は、本発明の実施形態による、睡眠時呼吸障害推定のための概略図を示している。1つ以上の受信回路106を有する1つ以上のマイクロフォン104は、いびき音102を含む被験者100によって生成された複数の音を複数の受信信号に変換する。セル電話機内に受信回路を有するマイクロフォンも、複数の受信信号の取得のために適用可能である。音強度変換フィルタ108は、複数の受信信号を複数の音強度信号に変換する。強度周期性測定フィルタ110は、1つ以上の音強度信号を用いて音強度の周期性を測定する。強度周期性評価フィルタ112は、呼吸数に関する音強度の周期性の妥当性を評価する。いびき音検出フィルタ114は、強度周期性評価フィルタ112によって取得された音強度とその周期性の妥当性とを使用していびき音を検出する。睡眠時呼吸障害推定フィルタ116は、睡眠時呼吸障害の有病率を推定するために、1つ以上の指数を計算する。指数は、1時間当たりの大きないびきの頻度、1時間当たりの大きないびきの総持続時間、1夜当たりの睡眠の総持続時間、及び1夜当たりの覚醒回数を含む。
【0015】
本発明の実施形態に係るいびき音検出方法は、被験者によって生成された複数の音を取得することと、被験者によって生成された音を複数の受信信号に変換することと、受信信号を複数の音強度信号に変換することと、1つ以上の音強度信号を使用して音強度信号の周期性を測定することと、呼吸数に関する音強度信号の周期性の妥当性を評価することと、音強度と呼吸数に関する音強度信号の周期性の妥当性とを使用していびき音を検出することとを含む。
【0016】
図2は、本発明の実施形態による、睡眠時呼吸障害推定方法の概略図を示している。プロセス200において、本方法は、被験者によって生成された音を取得し、記憶する。プロセス201において、本方法は、音を受信信号に変換する。プロセス202において、本方法は、受信信号を記憶する。本方法は、フィルタリングされた受信信号と、取得された時間及び被験者情報を含む他の情報とを記憶することができる。方法がフィルタリングされた受信信号を記憶するとき、本方法は、受信信号へのフィルタ適用後にフィルタリングされた受信信号を記憶する。例えば、方法が音強度信号を記憶するとき、記憶プロセスは、プロセス203の後に位置する。プロセス203において、本方法は、複数の受信信号を複数の音強度信号に変換する。プロセス204では、本方法は、1つ以上の音強度信号を使用して音強度の周期性を測定する。プロセス206において、本方法は、呼吸数に関して音強度の周期性の妥当性を評価する。プロセス208では、本方法は、音強度の周期性の妥当性を評価するプロセス206によって取得した音強度とその周期性の妥当性を使用していびき音を検出する。プロセス210において、本方法は、睡眠時呼吸障害の有病率を推定するために、1つ以上の指数を計算する。
【0017】
プロセス204において、音強度信号の周期性を測定するためにフーリエ変換を使用することができる。図3は、本発明の実施形態による睡眠時呼吸障害推定のための方法の概略図を示す。プロセス200において、本方法は、被験者によって生成された音を取得し、記憶する。プロセス201において、本方法は、音を受信信号に変換する。プロセス202において、本方法は、受信信号を記憶する。プロセス300において、本方法は、時間窓の持続時間が10秒以上である窓関数を使用して受信信号を抽出する。プロセス302では、本方法は、抽出した受信信号の強度を判定する。プロセス203において、本方法は、複数の受信信号を複数の音強度信号に変換する。プロセス304において、本方法は、抽出された受信信号にフーリエ変換を適用する。プロセス306において、本方法は、低周波数帯域内の極大値を探索する。プロセス308において、本方法は、極大値のうちの最大値の周波数が呼吸頻度又はその2倍に近いか否かを判定する。プロセス310において、本方法は、極大値の最大値が周囲の周波数の強度と比較して十分に大きいか否かを判定する。十分に大きいという基準は、極大値の最大値が極大値の標準偏差の3倍より大きいことを含む。3倍のしきい値の代わりに、標準偏差の2倍や2.5倍のしきい値を用いることもできる。プロセス210では、本方法は、睡眠時呼吸障害の有病率を推定するために、1つ以上の指数を計算する。いびき音に起因する受信信号の強度変化の期間は、呼吸頻度と密接に関連していると考えられる。成人の呼吸頻度は0.2から0.3Hzであるので、周波数ドメインにおけるサンプリング間隔は0.1Hz以下であってもよい。したがって、フーリエ変換のための時間窓の持続時間は、10秒以上であってもよい。一般に、フーリエ変換の前に、矩形窓、B-スプライン窓、ハン窓、ハミング窓、テューキー窓を含む窓関数のうちの1つが適用される。
【0018】
プロセス306において周波数ドメインにおける極大値を探索するためには、周波数ドメインのポイントの数を増やす必要があるかもしれない。ゼロパディングと呼ばれる、各受信信号の開始又は/及び終了へのゼロの追加は、周波数ドメインにおけるサウンドデータにより多くの周波数ポイントを追加するために、プロセス304の前に使用されてもよい。また、プロセス304の後に周波数ドメインの音強度データへの補間は、フーリエ変換後の周波数ドメインの音強度データ、すなわち周波数ドメインの音強度データに対しても、より多くの周波数ポイントを追加する。
【0019】
プロセス304において、ウェーブレット変換、ラプラス変換、高速フーリエ変換、離散フーリエ変換、短時間フーリエ変換、Z変換及び特異値分解を含むフーリエ関連変換をフーリエ変換の代替として適用することができる。
【0020】
プロセス203において、複数の受信信号を複数の音強度信号に変換するために、信号包絡線又はそのパワーを用いることができる。信号包絡線の計算には、信号包絡線の計算のための、ローパスフィルタリングが後に続く整流、分析信号の大きさ、ピーク包絡線及び二乗平均平方根包絡線を含む包絡線推定アルゴリズムのうちの1つを使用することができる。ローパスフィルタリングが後に続く整流を使用するメトリックのうちの1つは、以下の式によって定義される。
【数1】
ここで、FL[]はローパスフィルタであり、s(t)は受信信号である。ローパスフィルタのうちの1つは、周波数ドメインにおいて次の式で定義される。
【数2】
【数3】
ここで、fは周波数であり、a,bは正の数であり、S'L(f)は周波数ドメインの信号S'(f)にローパスフィルタを適用することによって取得される周波数ドメインの信号である。分析信号の大きさを使用するメトリックのうちの1つは、以下の式によって定義される。
【数4】
ここで、SA(t)は受信信号の分析信号である。ピーク包絡線を使用するメトリックのうちの1つは、以下の式によって定義される。
【数5】
ここで、max()は最大値、lは自然数、kは整数、Δtは時間ドメインにおけるサンプリング間隔である。二乗平均平方根包絡線を使用するメトリックのうちの1つは、以下の式によって定義される。
【数6】
【0021】
プロセス203において、複数の受信信号を複数の音強度信号に変換するために、受信信号の絶対値又はそのパワーの移動平均を使用することができる。
【0022】
プロセス206において、音強度の周期性は、図3に示すように、周期性が呼吸頻度又はその2倍に近いときにいびき音として妥当である。呼吸頻度に近い周期性は、いびきが吸気時のみに生じることを示す。呼吸頻度の2倍に近い周期性は、いびきが吸気及び呼気の両方で発生することを示す。
【0023】
呼吸数は被験者によって大きく変化し、特に被験者の年齢に依存するので、プロセス206において、呼吸頻度は被験者情報に従って調整されてもよい。
【0024】
図3に示されるように、プロセス206において、本方法は、フーリエ変換適用後の周波数ドメインにおける音強度信号が0.1から5Hzの周波数帯域内に1つ以上の極大値を有し、0.1から5Hzの周波数帯域内の極大値のうちの最大値の周波数が0.15から2Hzの範囲であるときに音強度の周期性が妥当であると判定してもよく、その理由は、呼吸頻度及びその2倍が0.15から2Hzの範囲であると考えられるからである。
【0025】
プロセス210において、無呼吸-低呼吸指数が睡眠1時間当たりの無呼吸及び低呼吸の数であり、平均無呼吸-低呼吸持続時間が20から40秒の範囲であるので、本方法は、20から40秒の範囲の特定の持続時間によって正規化された1時間当たりのいびき持続時間の合計を使用して無呼吸-低呼吸指数を推定することができる。したがって、本方法は、いびき持続時間単位を20秒から40秒の範囲に設定し、本方法は、いびき音検出過程で妥当と判定された1時間当たりいびき持続時間の合計を計算し、本方法は、いびき持続時間単位で正規化された1時間当たりいびき持続時間の合計を使用して無呼吸-低呼吸指数を推定することができる。
【0026】
プロセス300において、各抽出された受信信号の持続時間は20から40秒の範囲であってもよく、本方法は、いびき音検出プロセスにおいて妥当と判定された1時間当たりの受信信号の数を使用して無呼吸-低呼吸指数を推定してもよい。
【0027】
プロセス302において、本方法は、低強度の受信信号を分析から除外することができる。本方法は、睡眠後の特定の時間及び/又は起床前の特定の時間の間の受信信号を分析から除外することができる。本方法は、発話を含む、被験者が覚醒している間の受信信号を除外することができる。本方法は、被験者がレム睡眠であると想定される間の受信信号を除外することができる。
【0028】
単純ないびきは長時間継続し、単純ないびきは呼吸低下や無呼吸を意味しないため、いびき持続時間の合計を計算する際に、本方法は、いびきが一定期間継続したときにいびき持続時間を過小評価するかもしれない。
【0029】
プロセス310において、本方法は、0.15から2Hzの周波数帯域内の極大値のうちの最大値が、周囲の周波数の強度と比較して十分に大きいときに、音強度の周期性の妥当性を評価することができる。これは、いびき音の優位性が、呼吸頻度及びその2倍に近い周波数において大きな強度を生じさせるかもしれないからである。プロセス308とプロセス310との順序は入れ替えてもよい。
【0030】
いびき音に起因する極大値の周波数が近傍の時刻における極大値の周波数に近いと考えられるため、極大値の周波数が近傍の受信信号の極大値のうちの1つ以上の周波数に近いとき、0.15から2Hzの周波数帯域内の極大値のうちの最大値に対するしきい値は、小さくされてもよい。例えば、極大値の最大値が極大値の標準偏差の3倍よりも大きいというしきい値を、極大値の最大値が極大値の標準偏差の2.5倍よりも大きいというしきい値に小さくしてもよい。
【0031】
重度の睡眠時無呼吸症候群の患者は呼吸頻度が不安定であるため、本方法は、0.15から2Hzの周波数帯域内の極大値のうちの最大値の周波数が睡眠中に大きく変動するとき、無呼吸-低呼吸指数の推定値を大きくしてもよい。
【0032】
本発明の実施形態によるいびき音検出装置は、いびきを検出するために指数を計算する。装置には、1つ以上のマイクロフォン104、1つ以上の受信回路106、基本周波数推定フィルタ400、ハイパスフィルタ402、包絡線計算フィルタ404、包絡線周期性推定フィルタ406、包絡線周期性評価フィルタ408、いびき検出フィルタ410、及び受信回路106と、基本周波数推定フィルタ400と、ハイパスフィルタ適用フィルタ402と、包絡線計算フィルタ404と、包絡線周期性推定フィルタ406と、包絡線周期性評価フィルタ408と、いびき検出フィルタ410とを制御するシステムコントローラ118が設けられる。
【0033】
図4は、音分析に基づくいびき音検出のための装置の概略図を示す。1つ以上の受信回路106を有する1つ以上のマイクロフォン104は、被験者によって生成された複数の音を複数の受信信号に変換する。基本周波数推定フィルタ400は、受信信号の基本周波数を推定する。ハイパスフィルタ402は、受信信号にハイパスフィルタを適用する。包絡線計算フィルタ404は、ハイパスフィルタリングされた受信信号の包絡線を計算する。包絡線周期性推定フィルタ406は、ハイパスフィルタリングされた受信信号の包絡線の周期性を推定する。包絡線周期性評価フィルタ408は、受信信号の基本周波数に関するハイパスフィルタリングされた受信信号の包絡線の周期性を評価する。いびき検出フィルタ410は、いびきを検出するために1つ以上の指数を計算する。
【0034】
図5は、音分析に基づくいびき音検出のための方法の概略図を示す。プロセス200において、本方法は、被験者によって生成された音を取得し、記憶する。プロセス201において、本方法は、音を受信信号に変換する。プロセス202において、本方法は、受信信号を記憶する。本方法は、フィルタリングされた受信信号と、取得された時間及び被験者情報を含む他の情報とを記憶することができる。方法がフィルタリングされた受信信号を記憶するとき、本方法は、受信信号へのフィルタ適用後にフィルタリングされた受信信号を記憶する。例えば、方法がハイパスフィルタリングされた受信信号を記憶するとき、記憶プロセスはプロセス502の後に配置される。プロセス500において、本方法は、受信信号の基本周波数を推定する。プロセス502において、本方法は、受信信号にハイパスフィルタを適用する。プロセス504において、本方法は、ハイパスフィルタリングされた受信信号の包絡線を計算する。プロセス506において、本方法は、ハイパスフィルタリングされた受信信号の包絡線の周期性を推定する。プロセス508において、ハイパスフィルタを使用していびき音の基本周波数を除去した後のいびき音の包絡線の周期性が基本周波数の周期性に近いと考えられるので、本方法は、受信信号の基本周波数に関してハイパスフィルタリングされた受信信号の包絡線の周期性を評価する。プロセス510において、本方法は、いびきを検出するために1つ以上の指数を計算する。
【0035】
プロセス500において受信信号の基本周波数を推定するために、フーリエ変換を使用することができる。本方法は、受信信号にフーリエ変換を適用することができる。本方法は、周波数ドメインにおける受信信号の強度を計算することができる。本方法は、受信信号の基本周波数を探索することができる。いびき音は時間変化する信号の1つであるため、いびき音の基本周波数は、1秒以下の短い時間窓を使用して計算されると考えられる。したがって、フーリエ変換の時間窓の持続時間は1秒以下に設定される。フーリエ変換の前に、矩形窓、B-スプライン窓、ハン窓、ハミング窓、テューキー窓を含む窓関数のうちの1つを適用してもよい。
【0036】
プロセス500において、ゼロパディングと呼ばれる、各受信信号の開始及び/又は終了への情報のないデータの追加は、周波数ドメインにおけるサウンドデータにより多くの周波数ポイントを追加する。フーリエ変換の適用後の周波数ドメインにおける受信信号の強度に対する補間はまた、周波数ドメインにおける受信信号の強度に対してより多くの周波数ポイントを追加する。
【0037】
プロセス500において、ウェーブレット変換、ラプラス変換、高速フーリエ変換、離散フーリエ変換、短時間フーリエ変換、Z変換及び特異値分解を含むフーリエ関連変換を、フーリエ変換の代替として適用することができる。
【0038】
プロセス502において、本方法は、カットオフ周波数を有するハイパスフィルタを受信信号に適用することができ、ハイパスフィルタのカットオフ周波数は、いびき音の基本周波数を除去するために、受信信号の基本周波数よりも高い。
【0039】
プロセス600において、本方法は、指数を記憶することができ、ここで、本方法は、図6に示されるように、プロセス510においていびきを検出するために、1つ以上の指数の計算のために記憶された指数を使用することができる。
【0040】
プロセス500において、本方法は、周波数ドメインにおける受信信号の強度の極大値を検出することができ、本方法は、最低周波数を有する極大値を基本周波数として決定することができる。
【0041】
プロセス500において、本方法は、周波数ドメインにおける受信信号の強度の極大値のうちの1つを基本周波数として決定することができ、決定に使用される因子は、各極大値の振幅、各極大値の強度、周波数ドメインにおける各極大値と他の極大値までの距離、及び各極大値のプロミネンスを含む。
【0042】
プロセス500において、本方法は、時間ドメインにおける信号振幅の周期性を計算することによって、各受信信号の基本周波数を推定することができる。
【0043】
プロセス500において、いびき音の基本周波数が10から300Hzの範囲にあると想定されるので、本方法は、基本周波数が10から300Hzの範囲にあることを含む複数の条件を使用して受信信号の基本周波数を決定することができる。
【0044】
プロセス504において、本方法は、包絡線周波数が10から300Hzの範囲内にあるという条件下で、ハイパスフィルタリングされた受信信号の包絡線を計算することができる。
【0045】
プロセス506において、本方法は、ハイパスフィルタリングされた受信信号の包絡線にフーリエ変換を適用することができ、本方法は、ハイパスフィルタリングされた受信信号の包絡線の周期性を推定するために、フーリエ変換後の周波数ドメインにおける各受信信号の強度の極大値の最大値を探索することができる。
【0046】
本方法は、いびき音が第2高調波を有するという条件を用いることができる。図7は、いびき音が第2高調波を有するという条件を用いたいびき音検出方法の概略図を示す。プロセス200において、本方法は、被験者によって生成された音を取得し、記憶する。プロセス201において、本方法は、音を受信信号に変換する。プロセス202において、本方法は、受信信号を記憶する。プロセス500において、本方法は、受信信号の基本周波数を推定する。プロセス700において、いびき音は第2高調波を有すると考えられるので、本方法は、受信信号の第2高調波を探索する。プロセス502において、本方法は、受信信号にハイパスフィルタを適用する。プロセス504において、本方法は、ハイパスフィルタリングされた受信信号の包絡線を計算する。プロセス506において、本方法は、ハイパスフィルタリングされた受信信号の包絡線の周期性を推定する。プロセス508において、ハイパスフィルタを使用していびき音の基本周波数を除去した後のいびき音の包絡線の周期性が基本周波数の周期性に近いと考えられるので、本方法は、受信信号の基本周波数に関してハイパスフィルタリングされた受信信号の包絡線の周期性を評価する。プロセス510では、いびきを検出するために、本方法は1つ以上の指数を計算する。
【0047】
プロセス510において、本方法は、受信信号の基本周波数から第2高調波までの周波数範囲における各受信信号強度の強度の極大値のうちの最大値を探索することができ、ここで、受信信号の基本周波数の強度及び第2高調波の強度の両方が、受信信号の基本周波数から第2高調波までの周波数範囲における各受信信号の強度の極大値のうちの最大値よりも高いとき、本方法は、受信信号がいびき音を含んでいるかもしれないと判定する。
【0048】
プロセス510において、本方法は、受信信号の基本周波数未満の周波数範囲内の各受信信号の強度の最大値を探索することができ、ここで、受信信号の基本周波数の強度が受信信号の基本周波数未満の周波数範囲内の各受信信号の強度の最大値より大きいとき、本方法は、受信信号がいびき音を含んでいるかもしれないと判定する。
【0049】
プロセス806において、受信信号の低周波数成分が支配的であると考えられることから、本方法は、受信信号の低周波数成分が支配的であるか否かを調査することができる。低周波成分が支配的でないときには、本方法は、受信信号がいびき音を含まないと判定する。図8は、受信信号の低周波数成分が支配的であるか否かを調べるいびき音検出方法の概略図を示す。プロセス200において、本方法は、被験者によって生成された音を取得し、記憶する。プロセス201において、本方法は、音を受信信号に変換する。プロセス202において、本方法は、受信信号を記憶する。プロセス800において、本方法は、フーリエ変換を受信信号に適用する。プロセス802において、本方法は、周波数ドメインにおける受信信号の強度を計算する。プロセス804において、本方法は、受信信号の基本周波数を探索する。プロセス806において、本方法は、受信信号の低周波数成分が支配的であるか否かを調査する。プロセス502において、本方法は、受信信号にハイパスフィルタを適用する。プロセス504において、本方法は、ハイパスフィルタリングされた受信信号の包絡線を計算する。プロセス506において、本方法は、ハイパスフィルタリングされた受信信号の包絡線の周期性を推定する。プロセス508において、ハイパスフィルタを使用していびき音の基本周波数を除去した後のいびき音の包絡線の周期性が基本周波数の周期性に近いと考えられるので、本方法は、受信信号の基本周波数に関してハイパスフィルタリングされた受信信号の包絡線の周期性を評価する。プロセス510では、いびきを検出するために、本方法は、1つ以上の指数を計算する。
【0050】
プロセス510において、受信信号の基本周波数の強度が周波数ドメインにおいて支配的であるとき、本方法は、受信信号がいびき音を含むかもしれないと判定してもよい。
【0051】
プロセス510において、受信信号の基本周波数の強度が受信信号の強度和の10%以上を占めるときに、本方法は、受信信号がいびき音を含むかもしれないと判定してもよい。
【0052】
プロセス510において、基本周波数の強度及び/又はプロミネンスが他の周波数の強度及びプロミネンスよりも高いときに、本方法は、受信信号がいびき音を含むかもしれないと判定してもよい。
【0053】
本方法は自己相関を用いることができる。図9は、自己相関を用いるいびき音検出方法の概略図を示す。プロセス200において、本方法は、被験者によって生成された音を取得し、記憶する。プロセス201において、本方法は、音を受信信号に変換する。プロセス202において、本方法は、受信信号を記憶する。プロセス900において、本方法は、20Hz以下のカットオフ周波数を有するハイパスフィルタを受信信号に適用する。プロセス902では、本方法は、複数の窓幅のスライディングウィンドウを使用して時間ドメインの受信信号の自己相関係数を計算し、自己相関係数計算のタイムラグの範囲は、窓幅の1/2から窓幅の2倍の範囲に含まれる。プロセス904では、20ミリ秒以上の窓幅を用いた場合に、受信信号の自己相関係数が最大となったときに、本方法は、受信信号がいびき音を含むと判定する。
【0054】
本方法は、複数の受信信号及び/又はフィルタリングされた受信信号を記憶することができる。方法がフィルタリングされた受信信号を記憶するとき、本方法は、受信信号へのフィルタ適用後にフィルタリングされた受信信号を記憶する。
【0055】
第1の例示的な実施形態
図1は、本発明の実施形態による、睡眠時呼吸障害推定のための装置の概略図を示す。1つ以上の受信回路106を有する1つ以上のマイクロフォン104は、いびき音102を含む、被験者100によって生成された複数の音を複数の受信信号に変換する。セル電話機内に受信回路を有するマイクロフォンも、複数の受信信号の取得のために適用可能である。音強度変換フィルタ108は、複数の受信信号を複数の音強度信号に変換する。強度周期性測定フィルタ110は、1つ以上の音強度信号を用いて音強度の周期性を測定する。強度周期性評価フィルタ112は、呼吸数に関する音強度の周期性の妥当性を評価する。いびき音検出フィルタ114は、強度周期性評価フィルタ112によって取得された音強度とその周期性の妥当性とを使用していびき音を検出する。睡眠時呼吸障害推定フィルタ116は、睡眠時呼吸障害の有病率を推定するために、1つ以上の指数を計算する。
【0056】
第2の例示的な実施形態
図2は、本発明の実施形態による、睡眠時呼吸障害推定のための方法の概略図を示す。プロセス200において、本方法は、被験者によって生成された音を取得し、記憶する。プロセス201において、本方法は、音を受信信号に変換する。プロセス202において、本方法は、受信信号を記憶する。プロセス203において、本方法は、複数の受信信号を複数の音強度信号に変換する。プロセス204では、1つ以上の音強度信号を使用して、音強度の周期性を測定する。プロセス206において、本方法は、呼吸数に関して音強度の周期性の妥当性を評価する。プロセス208では、本方法は、音強度の周期性の妥当性を評価するプロセス206によって取得した音強度とその周期性の妥当性を使用していびき音を検出する。プロセス210では、本方法は、睡眠時呼吸障害の有病率を推定するために、1つ以上の指数を計算する。
【0057】
第3の例示的な実施形態
図3は、本発明の実施形態による、睡眠時呼吸障害推定のための方法の概略図を示す。プロセス200において、本方法は、被験者によって生成された音を取得し、記憶する。プロセス201において、本方法は、音を受信信号に変換する。プロセス202において、本方法は、受信信号を記憶する。プロセス300において、本方法は、時間窓の持続時間が10秒以上である窓関数を使用して、受信信号を抽出する。プロセス302では、抽出した受信信号の強度を判定する。プロセス203において、本方法は、各受信信号の包絡線を計算することによって、複数の受信信号を複数の音強度信号に変換する。プロセス304において、本方法は、抽出された受信信号にフーリエ変換を適用する。プロセス306では、0.1から5Hzの低周波数帯域内の極大値を探索する。プロセス308では、本方法は、極大値の最大値の周波数が0.2から2Hzの周波数帯にあるか否かを判定する。プロセス310では、本方法は、極大値の最大値が周囲の周波数の強度と比較して十分に大きいか否かを判定する。プロセス210では、睡眠時呼吸障害の有病率を推定するために、1つ以上の指数を計算する。
【0058】
第4の例示的な実施形態
図4は、音分析に基づくいびき音検出のための装置の概略図を示す。1つ以上の受信回路106を有する1つ以上のマイクロフォン104は、患者によって生成された複数の音を複数の受信信号に変換する。基本周波数推定フィルタ400は、受信信号の基本周波数を推定する。ハイパスフィルタ402は、受信信号にハイパスフィルタを適用する。包絡線計算フィルタ404は、ハイパスフィルタリングされた受信信号の包絡線を計算する。包絡線周期性推定フィルタ406は、ハイパスフィルタリングされた受信信号の包絡線の周期性を推定する。包絡線周期性評価フィルタ408は、受信信号の基本周波数に関してハイパスフィルタリングされた受信信号の包絡線の周期性を評価する。いびき検出フィルタ410は、いびきを検出するために1つ以上の指数を計算する。
【0059】
第5の例示的な実施形態
図5は、音分析に基づくいびき音検出のための方法の概略図を示す。プロセス200において、本方法は、被験者によって生成された音を取得し、記憶する。プロセス201において、本方法は、音を受信信号に変換する。プロセス202において、本方法は、受信信号を記憶する。プロセス500において、本方法は、受信信号の基本周波数を推定する。プロセス502において、本方法は、受信信号にハイパスフィルタを適用する。プロセス504において、本方法は、ハイパスフィルタリングされた受信信号の包絡線を計算する。プロセス506において、本方法は、ハイパスフィルタリングされた受信信号の包絡線の周期性を推定する。プロセス508において、ハイパスフィルタを使用していびき音の基本周波数を除去した後のいびき音の包絡線の周期性が基本周波数の周期性に近いと考えられるので、本方法は、受信信号の基本周波数に関してハイパスフィルタリングされた受信信号の包絡線の周期性を評価する。プロセス510では、本方法は、いびきを検出するために、1つ以上の指数を計算する。
【0060】
第6の例示的な実施形態
図6は、指数を計算するために指数を記憶するプロセスを用いるいびき音検出のための方法の概略図を示す。プロセス200において、本方法は、被験者によって生成された音を取得し、記憶する。プロセス201において、本方法は、音を受信信号に変換する。プロセス202において、本方法は、受信信号を記憶する。プロセス500において、本方法は、受信信号の基本周波数を推定する。プロセス502において、本方法は、受信信号にハイパスフィルタを適用する。プロセス504において、本方法は、ハイパスフィルタリングされた受信信号の包絡線を計算する。プロセス506において、本方法は、ハイパスフィルタリングされた受信信号の包絡線の周期性を推定する。プロセス508において、ハイパスフィルタを使用していびき音の基本周波数を除去した後のいびき音の包絡線の周期性が基本周波数の周期性に近いと考えられるので、本方法は、受信信号の基本周波数に関してハイパスフィルタリングされた受信信号の包絡線の周期性を評価する。プロセス510では、本方法は、いびきを検出するために、1つ以上の指数を計算する。プロセス600において、本方法は指数を記憶することができ、本方法は、プロセス510においていびきを検出するために、1つ以上の指数の計算のために記憶された指数を使用することができる。
【0061】
第7の例示的な実施形態
図7は、いびき音が第2高調波を有するという条件を用いたいびき音検出方法の概略図を示す。プロセス200において、本方法は、被験者によって生成された音を取得し、記憶する。プロセス201において、本方法は、音を受信信号に変換する。プロセス202において、本方法は、受信信号を記憶する。プロセス500において、本方法は、受信信号の基本周波数を推定する。プロセス700において、いびき音が第2高調波を有すると考えられるので、本方法は、受信信号の第2高調波を探索する。第2高調波が存在しないとき、本方法は、受信信号がいびき音を含まないと判定する。プロセス502において、本方法は、受信信号にハイパスフィルタを適用する。プロセス504において、本方法は、ハイパスフィルタリングされた受信信号の包絡線を計算する。プロセス506において、本方法は、ハイパスフィルタリングされた受信信号の包絡線の周期性を推定する。プロセス508において、本方法は、ハイパスフィルタを使用していびき音の基本周波数を除去した後のいびき音の包絡線の周期性が基本周波数の周期性に近いと考えられるので、受信信号の基本周波数に関してハイパスフィルタリングされた受信信号の包絡線の周期性を評価する。プロセス510では、本方法は、いびきを検出するために、1つ以上の指数を計算する。
【0062】
第8の例示的な実施形態
図8は、受信信号の低周波数成分が支配的であるか否かを調べるいびき音検出方法の概略図を示す。プロセス200において、本方法は、被験者によって生成された音を取得し、記憶する。プロセス201において、本方法は、音を受信信号に変換する。プロセス202において、本方法は、受信信号を記憶する。プロセス800において、本方法は、受信信号にフーリエ変換を適用する。プロセス802において、本方法は、周波数ドメインにおける受信信号の強度を計算する。プロセス804において、本方法は、受信信号の基本周波数を探索する。プロセス806において、本方法は、受信信号の低周波数成分が支配的であるか否かを調査する。プロセス502において、本方法は、受信信号にハイパスフィルタを適用する。プロセス504において、本方法は、ハイパスフィルタリングされた受信信号の包絡線を計算する。プロセス506において、本方法は、ハイパスフィルタリングされた受信信号の包絡線の周期性を推定する。プロセス508において、ハイパスフィルタを使用していびき音の基本周波数を除去した後のいびき音の包絡線の周期性が基本周波数の周期性に近いと考えられるので、本方法は、受信信号の基本周波数に関してハイパスフィルタリングされた受信信号の包絡線の周期性を評価する。プロセス510では、本方法は、いびきを検出するために、1つ以上の指数を計算する。
【0063】
本発明は、以下の態様を有する。
1. いびき音検出装置であって、被験者によって生成される複数の音を受信する1つ以上のマイクロフォンと、前記被験者によって生成された複数の音を複数の受信信号に変換し、前記複数の受信信号を複数の音強度信号に変換し、1つ以上の音強度信号を使用して音強度信号の周期性を測定し、呼吸数に関する音強度信号の周期性の妥当性を評価し、音強度と呼吸数に関する音強度信号の周期性の妥当性とを使用していびき音を検出するように構成された回路を備えるコントローラとを備える、いびき音検出装置。
2. 睡眠時呼吸障害推定装置であって、被験者によって生成される複数の音を受信する1つ以上のマイクロフォンと、前記被験者によって生成された複数の音を複数の受信信号に変換し、前記複数の受信信号を複数の音強度信号に変換し、1つ以上の音強度信号を使用して音強度信号の周期性を測定し、呼吸数に関する音強度信号の周期性の妥当性を評価し、音強度と呼吸数に関する音強度信号の周期性の妥当性とを使用していびき音を検出し、睡眠時呼吸障害の有病率を推定するために1つ以上の指数を計算するように構成された回路を備えるコントローラとを備える、睡眠時呼吸障害推定装置。
3. いびき音検出方法であって、被験者によって生成される複数の音を取得することと、前記被験者によって生成された複数の音を複数の受信信号に変換することと、前記複数の受信信号を複数の音強度信号に変換することと、1つ以上の音強度信号を使用して音強度信号の周期性を測定することと、呼吸数に関して音強度信号の周期性の妥当性を評価することとと、音強度と、呼吸数に関する前記音強度信号の周期性の妥当性とを使用していびき音を検出することとを含む、いびき音検出方法。
4. 睡眠時呼吸障害推定方法であって、被験者によって生成された複数の音を取得することと、被験者によって生成された複数の音を複数の受信信号に変換することと、前記複数の受信信号を音強度信号に変換することと、1つ以上の音強度信号を使用して音強度信号の周期性を測定することと、呼吸数に関して音強度信号の周期性の妥当性を評価することとと、音強度と、呼吸数に関する前記音強度信号の周期性の妥当性とを使用していびき音を検出することと、睡眠時呼吸障害の有病率を推定するために1つ以上の指数を計算することとを含む、睡眠時呼吸障害推定方法。
5. 前記方法は、フーリエ変換により音強度信号の周期性を測定することを含み、前記フーリエ変換の時間窓の持続時間が10秒以上であり、矩形窓、B-スプライン窓、ハン窓、ハミング窓、テューキー窓を含む窓関数のうちの1つが、フーリエ変換に対する時間窓の窓関数として用いられる、3及び4に記載のいびき音検出又は睡眠時呼吸障害推定方法。
6. 各受信信号の開始又は/及び終了に情報のないデータを追加することをさらに含む、5に記載のいびき音検出又は睡眠時呼吸障害推定方法。
7. フーリエ変換後の周波数ドメインにおける音強度データに補間を適用することをさらに含む、5に記載のいびき音検出又は睡眠時呼吸障害推定方法。
8. 前記方法は、フーリエ変換の代わりに、ウェーブレット変換、ラプラス変換、高速フーリエ変換、離散フーリエ変換、短時間フーリエ変換、Z変換、特異値分解を含むフーリエ関連変換のうちの1つによって、音強度信号の周期性を測定することを含む、5に記載のいびき音検出又は睡眠時呼吸障害推定方法。
9. 前記方法は、複数の受信信号を、複数の音強度信号として、複数の受信信号の包絡線または複数の受信信号の包絡線のべき乗に変換することを含む、3及び4に記載のいびき音検出又は睡眠時呼吸障害推定方法。
10. 前記方法は、ローパスフィルタリングが後に続く整流を含む包絡線推定アルゴリズム、分析信号の大きさ、ピーク包絡線、及び二乗平均平方根包絡線のうちの1つによって、複数の受信信号の包絡線を計算することを含む、9に記載のいびき音検出又は睡眠時呼吸障害推定方法。
11. 前記方法は、前記複数の受信信号を、前記複数の音強度信号として、前記複数の受信信号の絶対値の複数の移動平均、又は前記複数の受信信号の絶対値の複数の移動平均のべき乗に変換することを含む、3及び4に記載のいびき音検出又は睡眠時呼吸障害推定方法。
12. 前記方法は、受信信号の音強度の周期性が呼吸頻度またはその2倍に近いとき、受信信号がいびき音として妥当であるとの判定基準によって、音強度信号の周期性の妥当性を評価することを含む、3及び5に記載のいびき音検出又は睡眠時呼吸障害推定方法。
13. 被験者情報にしたがって可能な呼吸頻度を調整することをさらに含む、12に記載のいびき音検出又は睡眠時呼吸障害推定方法。
14. 前記方法は、以下の2つの条件、1つは、フーリエ変換適用後の周波数ドメインにおける音強度信号が、0.1から5Hzの周波数帯域内に1つ以上の極大値を有することであり、もう1つは、0.1から5Hzの周波数帯域内の極大値のうちの最大値の周波数が0.15から2Hzの範囲である、の両方を満たすときに、受信信号がいびき音として妥当であるとの判定基準により、音強度信号の周期性の妥当性を評価することを含む、5に記載のいびき音検出又は睡眠時呼吸障害推定方法。
15. 前記方法は、前記睡眠時呼吸障害の有病率を推定する指数として無呼吸低呼吸指数を推定することを含み、前記無呼吸低呼吸指数は、いびき持続時間単位によって正規化された1時間当たりのいびき持続時間の合計を使用して推定され、前記いびき持続時間単位は20から40秒の範囲であり、前記いびき持続時間はいびき音として検出された受信信号の持続時間によって計算される、4に記載の睡眠時呼吸障害推定方法。
16. 前記方法は、前記睡眠時呼吸障害の有病率を推定する指数として無呼吸低呼吸指数を推定することを含み、呼吸数に関する音強度信号の周期性の妥当性が評価され、音強度信号の持続時間が20から40秒の範囲であり、前記無呼吸低呼吸指数は、妥当と判定された1時間当たりの前記音強度信号の数を使用して推定される、4に記載の睡眠時呼吸障害推定方法。
17. 低強度の受信信号を分析から除外する、3及び4記載のいびき音検出又は睡眠時呼吸障害推定方法。
18. 睡眠後の一定時間及び/又は起床前の一定時間の間に取得された音から変換された受信信号を分析から除外することをさらに含む、3及び4に記載のいびき音検出又は睡眠時呼吸障害推定方法。
19. 発話を含む、被験者が覚醒している間に取得された音から変換された受信信号を除外することをさらに含む、3及び4に記載のいびき音検出又は睡眠時呼吸障害推定方法。
20. 被験者がレム睡眠であると推定される間に取得された音から変換された受信信号を除外することをさらに含む、3及び4に記載のいびき音検出又は睡眠時呼吸障害推定方法。
21. 前記方法は、前記いびき持続時間の総和の計算において、いびきが一定期間継続したときに、いびき持続時間の総和を減少させることを含む、15に記載の睡眠時呼吸障害推定方法。
22. 0.15から2Hzの周波数帯域内の極大値のうちの最大値が、周囲の周波数の強度と比較して十分に大きいときに、受信信号がいびき音として妥当であるという判定基準により、音強度信号の周期性の妥当性を評価することをさらに含む、14に記載のいびき音検出又は睡眠時呼吸障害推定方法。
23. 0.15から2Hzの周波数帯域内の極大値のうち最大値が周囲の周波数の強度と比較して大きく、最大値の周波数が近傍の受信信号の最大値の1つ以上の周波数に近いときに、受信信号がいびき音として妥当であるという判定基準により、音強度信号の周期性の妥当性を評価することをさらに含む、22に記載のいびき音検出又は睡眠時呼吸障害推定方法。
24. 睡眠中に0.15から2Hzの周波数帯域内の極大値のうち極大値の周波数が大きく変動したときに、前記方法は、無呼吸低呼吸指数の推定値を増加させる、14に記載の睡眠時呼吸障害推定方法。
25. いびき音検出装置であって、被験者によって生成された複数の音を受信する1つ以上のマイクロフォンと、前記被験者によって生成された複数の音を複数の受信信号に変換し、前記受信信号の各々の基本周波数を推定し、前記受信信号にハイパスフィルタを適用し、ハイパスフィルタされた受信信号の包絡線を計算し、前記受信信号の基本周波数に関してハイパスフィルタされた受信信号の前記包絡線の周期性を評価し、いびきを検出するための1つ以上の指数を計算するために構成された回路を備えるコントローラとを備える、いびき音検出装置。
26. いびき音検出方法であって、被験者によって生成された複数の音を取得することと、被験者によって生成された複数の音を複数の受信信号に変換することと、前記複数の受信信号及び/又はフィルタリングされた受信信号を記憶することと、受信信号の基本周波数を推定することと、受信信号にハイパスフィルタを適用することと、ハイパスフィルタリングされた受信信号の包絡線を計算することと、前記ハイパスフィルタリングされた受信信号の前記包絡線の周期性を推定することと、前記受信信号の基本周波数に関して、ハイパスフィルタリングされた受信信号の前記包絡線の周期性を評価することと、いびきを検出するために1つ以上の指数を計算することとを含む、いびき音検出方法。
27. 前記方法は、受信信号にフーリエ変換を適用することと、周波数ドメインにおける受信信号の強度を計算することと、受信信号の基本周波数を探索することとを含み、フーリエ変換ための時間窓の持続時間は1秒以下であり、フーリエ変換前の受信信号に、矩形窓、B-スプライン窓、ハン窓、ハミング窓、テューキー窓を含む窓関数のうちの1つが適用される、26に記載のいびき音検出方法。
28. 各受信信号の開始又は/及び終了に情報のないデータを追加することをさらに含む、27に記載のいびき音検出方法。
29. フーリエ変換を適用した後の前記周波数ドメインにおける受信信号の強度に補間を適用することをさらに含む、27に記載のいびき音検出方法。
30. 方法は、フーリエ変換の代わりに、ウェーブレット変換、ラプラス変換、高速フーリエ変換、離散フーリエ変換、短時間フーリエ変換、Z変換、特異値分解を含むフーリエ関連変換のうちの1つを用いることを含む、27に記載のいびき音検出方法。
31. 前記方法は、カットオフ周波数を有するハイパスフィルタを受信信号に適用することを含み、ハイパスフィルタのカットオフ周波数は、前記受信信号の基本周波数よりも高い、26に記載のいびき音検出方法。
32. 指数を記憶することと、いびきを検出するために1つ以上の指数の計算のために、記憶された指数を使用することとをさらに含む、26に記載のいびき音検出方法。
33. 前記方法は、周波数ドメインにおける受信信号の強度の極大値を検出することと、最も低い周波数を有する極大値を基本周波数として決定することとを含む、26に記載のいびき音検出方法。
34. 前記方法は、各極大値の振幅、各極大値の強度、周波数ドメインにおける各極大値と他の極大値までの距離、及び各極大値のプロミネンスを使用する判定基準によって、周波数ドメインにおける受信信号の強度の極大値のうちの1つを基本周波数として決定することを含む、33に記載のいびき音検出方法。
35. 前記方法は、時間ドメインにおける信号振幅の周期性を計算することによって、各受信信号の基本周波数を推定することを含む、26に記載のいびき音検出方法。
36. 前記方法は、基本周波数が10から300Hzの範囲内にあることを含む複数の条件を使用して、受信信号の基本周波数を決定することを含む、26に記載のいびき音検出方法。
37. 前記方法は、包絡線周波数が10から300Hzの範囲内にあるという条件下で、ハイパスフィルタリングされた受信信号の包絡線を計算することを含む、26に記載のいびき音検出方法。
38. 前記方法は、ハイパスフィルタリングされた受信信号の包絡線にフーリエ変換を適用することと、ハイパスフィルタリングされた受信信号の包絡線の周期性を推定するために、フーリエ変換後の周波数ドメインにおける各受信信号の強度の極大値の最大値を探索することとを含む、26に記載のいびき音検出方法。
39. いびき音検出方法であって、被験者によって生成される複数の音を取得することと、前記被験者によって生成された複数の音を受信信号に変換することと、前記複数の受信信号及び/又はフィルタリングされた受信信号を記憶することと、受信信号の基本周波数を推定することと、受信信号の第2高調波を探索することと、受信信号にハイパスフィルタを適用することと、ハイパスフィルタリングされた受信信号の包絡線を計算することと、ハイパスフィルタリングされた受信信号の前記包絡線の周期性を推定することと、受信信号の基本周波数に関して、ハイパスフィルタリングされた受信信号の前記包絡線の周期性を評価することと、いびきを検出するために1つ以上の指数を計算することを含む、いびき音検出方法。
40. 前記方法は、前記受信信号の基本周波数から第2高調波までの周波数範囲における各受信信号の強度の極大値の最大値を探索することと、前記受信信号の基本周波数の強度及び第2高調波の強度の両方が、前記受信信号の基本周波数から第2高調波までの周波数範囲における各受信信号の強度の極大値の最大値よりも大きいときに、前記受信信号がいびき音を含むかもしれないと判定することとを含む、39に記載のいびき音検出方法。
41. 前記方法は、前記受信信号の基本周波数未満の周波数範囲における各受信信号の強度の最大値を探索することと、前記受信信号の基本周波数の強度が前記受信信号の基本周波数未満の周波数範囲における各受信信号の強度の最大値よりも大きいときに、前記受信信号がいびき音を含むかもしれないと判定することを含む、39に記載のいびき音検出方法。
42. いびき音検出方法であって、被験者によって生成された複数の音を取得することと、被験者によって生成された複数の音を受信信号に変換することと、前記複数の受信信号及び/又はフィルタリングされた受信信号を記憶することと、受信信号にフーリエ変換を適用することと、周波数ドメインにおける受信信号の強度を計算することと、受信信号の基本周波数を探索することと、受信信号の低周波成分が支配的であるか否かを調査することと、前記受信信号にハイパスフィルタを適用することと、ハイパスフィルタリングされた受信信号の包絡線を計算することと、ハイパスフィルタリングされた受信信号の前記包絡線の周期性を推定することと、受信信号の基本周波数に関して、ハイパスフィルタリングされた受信信号の前記包絡線の周期性を評価することと、いびきを検出するために1つ以上の指数を計算することとを含む、いびき音検出方法。
43. 受信信号の基本周波数の強度が周波数ドメインにおいて支配的であるときに、前記方法は、前記受信信号がいびき音を含むかもしれないと判定することを含む、42に記載のいびき音検出方法。
44. 前記受信信号の基本周波数の強度が前記受信信号の強度和の10%以上を占めるときに、前記方法は、前記受信信号はいびき音を含むかもしれないと判定することを含む、42に記載のいびき音検出方法。
45. 前記基本周波数の強度及び/又はプロミネンスが他の周波数の強度及びプロミネンスよりも高いときに、前記方法は、前記受信信号がいびき音を含むかもしれないと判定することを含む、42に記載のいびき音検出方法。
46. いびき音検出方法であって、被験者によって生成される複数の音を取得することと、被験者によって生成された複数の音を受信信号に変換することと、前記複数の受信信号及び/又はフィルタリングされた受信信号を記憶することと、20Hz以下のカットオフ周波数を有するハイパスフィルタを前記受信信号に適用することと、複数の窓幅のスライディングウィンドウを使用して、時間ドメインにおける受信信号の自己相関係数を計算することと、20ミリ秒以上の窓幅を用いた場合に、受信信号の自己相関係数が最大となったときに、前記受信信号はいびき音を含むと判定することとを含み、前記自己相関係数計算のタイムラグの範囲は、前記窓幅の1/2倍から2倍の範囲に含まれる、いびき音検出方法。
47. 複数の受信信号及び/又はフィルタリングされた受信信号を記憶することをさらに含む、3及び4に記載のいびき音検出又は睡眠時呼吸障害推定方法。
明らかに、本発明の多数の修正およびバリエーションは、上記の教示に照らして可能である。
【0064】
したがって、添付の特許請求の範囲内で、本発明は、本明細書に具体的に記載される以外の方法で実施されてもよいことを理解されたい。
【0065】
符号の説明
100 いびきをかく人
102 いびき音
104 マイクロフォン
106 受信回路
108 音強度変換フィルタ
110 強度周期性測定フィルタ
112 強度周期性評価フィルタ
114 いびき音検出フィルタ
116 睡眠時呼吸障害推定フィルタ
118 システムコントローラ
200 音を取得
201 音を受信信号に変換
202 受信信号を記憶
203 プロセス
204 プロセス
206 プロセス
208 プロセス
210 プロセス
300 プロセス
302 プロセス
304 プロセス
306 プロセス
308 プロセス
310 プロセス
400 基本周波数推定フィルタ
402 ハイパスフィルタ
404 包絡線計算フィルタ
406 包絡線周期性推定フィルタ
408 包絡線周期性評価フィルタ
410 いびき検出フィルタ
500 プロセス
502 プロセス
504 プロセス
506 プロセス
508 プロセス
510 プロセス
600 プロセス
700 プロセス
800 プロセス
802 プロセス
804 プロセス
806 プロセス
900 プロセス
902 プロセス
904 プロセス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】