(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-29
(54)【発明の名称】呼吸治療システムの音響解析
(51)【国際特許分類】
A61B 5/083 20060101AFI20221121BHJP
A61M 16/00 20060101ALI20221121BHJP
A61B 5/029 20060101ALI20221121BHJP
G10L 21/0208 20130101ALI20221121BHJP
A61B 7/04 20060101ALI20221121BHJP
【FI】
A61B5/083
A61M16/00 370Z
A61B5/029
G10L21/0208 100Z
A61B7/04 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520082
(86)(22)【出願日】2020-09-30
(85)【翻訳文提出日】2022-05-30
(86)【国際出願番号】 AU2020051037
(87)【国際公開番号】W WO2021062466
(87)【国際公開日】2021-04-08
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500046450
【氏名又は名称】レスメド・プロプライエタリー・リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】508354647
【氏名又は名称】レスメッド センサー テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100218604
【氏名又は名称】池本 理絵
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】ホーリー,リアム
(72)【発明者】
【氏名】ショルディス,レドモンド
(72)【発明者】
【氏名】ライス,アンナ
(72)【発明者】
【氏名】フォックス,ナイル
(72)【発明者】
【氏名】マクマホン,スティーヴン
(72)【発明者】
【氏名】リオン,グレアム
【テーマコード(参考)】
4C017
4C038
【Fターム(参考)】
4C017AA03
4C017AA14
4C017AB10
4C017AC30
4C038ST09
4C038SU19
4C038SV05
4C038SX04
4C038SX07
(57)【要約】
【解決手段】方法及び装置は、患者に呼吸治療を施すように構成される患者及び/又は呼吸治療システムに関する情報を得る。この呼吸治療システムは、空気回路に沿って患者インタフェースに加圧空気の供給を生じるように構成されている流れ発生器を備えることができる。空気回路中の音を表す音信号が処理され、ケプストラムデータを得ることができる。ケプストラムデータの音響シグネチャに基づく時系列になっている遅延推定を生成することができる。各音響シグネチャは、患者インタフェースから空気回路に沿った音の反射を表することができる。時系列になった遅延推定における変動を解析することができる。変動に基づく1つ以上の出力指標を生成することができる。1つ以上の出力指標は、患者及び/又はシステムのステータスに関するものとすることができる。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に呼吸治療を施すように構成され、患者のインタフェースまで空気回路に沿って加圧空気供給を生じるように構成されている流れ発生器を備える呼吸治療システムにより、患者又はシステムあるいはそれらの両方のステータスの示度を生成するための、1つ以上のプロセッサによる方法であって、
ケプストラムデータを得るために、マイクロフォンからの前記空気回路中の音を表す音信号を処理することと、
前記ケプストラムデータの音響シグネチャに基づいて、時系列になった遅延推定を生成することと、ここで、前記音響シグネチャは、各々、前記空気回路に沿った前記患者インタフェースからの音の反射を表し、
前記時系列になった遅延推定の変動を解析することと、
前記変動に基づいて1つ以上の出力指標を生成することと、ここで、前記1つ以上の出力指標は、患者又はシステムあるいはそれらの両方のステータスに関する、
を含む方法。
【請求項2】
前記時系列を生成することは、
前記ケプストラムデータのケプストラムから音響シグネチャを分離することと、
前記時系列になった遅延推定に対する前記音響シグネチャ遅延を推定することと、
前記分離することと前記推定することとを繰り返すことと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記解析することは、前記時系列になった遅延推定をフィルタリングして、呼吸数の周波数帯域内で周波数を通過させることを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記解析することは、前記時系列になった遅延推定を、前記空気回路中の二酸化炭素の濃度の示度に変換することをさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記1つ以上の出力指標は、前記患者の呼気終末の二酸化炭素濃度(EtCO
2)の示度を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
EtCO
2の示度に基づいて前記呼吸治療システムのパラメータを調整することをさらに含む、前記請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記1つ以上の出力指標は、前記患者の心拍出量の推定を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
改定フィック技術関数を適用することと、前記時系列になった遅延推定で生成されたEtCO
2の示度の変化を測定して、前記心拍出量の推定を生成することとをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記解析することを繰り返して、前記患者の心拍出量の推定を複数生成することをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記患者の心拍出量の複数の推定における傾向を判定することをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記複数の推定における傾向の判定に基づいて、アクションをとることをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記アクションをとることは、出力通信又はディスプレイあるいはそれらの両方に対する出力を生成することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記解析することは、
前記呼吸治療システムの1つ以上の環境パラメータを判定することと、
前記二酸化炭素濃度の判定中に、前記1つ以上の環境パラメータを補正することと
をさらに含む、請求項4への従属時の請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記1つ以上の環境パラメータには、空気温度、周囲の圧力、周囲の二酸化炭素濃度、背景ノイズ、又はこれらの組み合わせが含まれる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記背景ノイズは、音信号を生成した音センサとは異なる音センサによって生成される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記解析することは、前記時系列になった遅延推定から呼吸数の周波数帯域の変動を除去して、時系列の非呼吸関連の遅延推定を得ることを含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記1つ以上の出力指標は、前記空気回路又は前記患者インタフェースあるいはそれらの両方の構成要素の交換条件の示度を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記解析することは、前記時系列の非呼吸関連の遅延推定を、前記空気回路の時系列になった長さの値にマッピングすることをさらに含む、請求項16及び17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記解析することは、多数の治療セッションに亘って、前記空気回路の長さの増加が閾値を上回るかを判定することをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記解析することは、一回の呼吸治療セッションに亘って、前記空気回路の長さの変動性を判定することをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記処理することは、前記音信号から、前記呼吸治療システムの前記環境からの背景ノイズを除去することを含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記1つ以上の出力指標は、
(a)治療デバイスの治療出力の調整を制御するための制御信号と、
(b)出力通信又はディスプレイの出力と
のうちの1つ以上をさらに含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
患者に呼吸治療を施すように構成され、空気回路に沿って患者インタフェースへ加圧空気の供給を生じるように構成されている流れ発生器を備える呼吸治療システムにより、患者又はシステムあるいはそれらの両方のステータスの示度を生成するためのデバイスであって、
前記空気回路中の音を表す音信号を生成するように構成されているセンサと、1つ以上のプロセッサ及びメモリを備えるコントローラとを備え、
前記1つ以上のプロセッサは、前記メモリに記憶されたプログラム命令により、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成されているデバイス。
【請求項24】
送風機をさらに備え、前記コントローラは、前記送風機の動作を制御するように構成されている、請求項23に記載のデバイス。
【請求項25】
患者に呼吸治療を施すように構成され、空気回路に沿って患者インタフェースへ加圧空気の供給を生じるように構成されている流れ発生器を備える呼吸治療システムにより、患者又はシステムあるいはそれらの両方のステータスの示度を生成するためのデバイスであって、
前記空気回路中の音を表す音信号を生成するように構成されているセンサと、コントローラとを備え、
前記コントローラは、
前記空気回路中の音を表す前記音信号を処理して、ケプストラムデータを得ることと、
前記ケプストラムデータ中の音響シグネチャに基づいて、時系列になった遅延推定を生成することと、ここで、前記音響シグネチャは、各々、前記空気回路に沿った前記患者インタフェースからの音の反射を表し、
前記時系列になった遅延推定の変動を解析することと、
前記変動に基づいて1つ以上の出力指標を生成することと、ここで、前記1つ以上の出力指標は、患者又はシステムあるいはそれらの両方のステータスに関し、
を行うように構成されているデバイス。
【請求項26】
前記呼吸治療システムの環境における背景ノイズを表す音信号を生成するように構成されている第2のセンサをさらに備える、請求項25に記載のデバイス。
【請求項27】
前記コントローラは、前記呼吸治療システムの前記環境における背景ノイズを表すように生成された前記音信号を使用して、前記空気回路中の前記音を表すように生成された前記音信号から、前記呼吸治療システムの前記環境からの前記背景ノイズを除去するようにさらに構成されている、請求項26に記載のデバイス。
【請求項28】
前記時系列を生成するために、前記コントローラは、
前記ケプストラムデータのケプストラムから音響シグネチャを分離することと、
前記時系列になった遅延推定に対する前記音響シグネチャ遅延を推定することと、
前記分離することと前記推定することとを繰り返すことと
を行うように構成されている、請求項25~27のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項29】
前記コントローラは、変動を解析するために、前記時系列になった遅延推定をフィルタリングして、呼吸数の周波数帯域内で周波数を通過させるように構成されている、請求項25~28のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項30】
前記コントローラは、変動を解析するために、前記時系列になった遅延推定を、前記空気回路中の二酸化炭素の濃度の示度に変換するように構成されている、請求項25~29のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項31】
前記1つ以上の出力指標は、前記患者の呼気終末二酸化炭素濃度(EtCO
2)の示度を含む、請求項25~30のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項32】
前記コントローラは、EtCO
2の示度に基づいて、前記呼吸治療システムのパラメータを調整するようにさらに構成されている、請求項31に記載のデバイス。
【請求項33】
前記1つ以上の出力指標は、前記患者の心拍出量の推定を含む、請求項25~32のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項34】
前記コントローラは、改定フィック技術関数を適用することと、前記時系列になった遅延推定で生成されたEtCO
2の示度の変化を測定して、心拍出量の推定を生成することとを行うように構成されている、請求項33に記載のデバイス。
【請求項35】
前記コントローラは、前記解析することを繰り返して、前記患者の心拍出量の推定を複数生成するように構成されている、請求項33に記載のデバイス。
【請求項36】
前記コントローラは、前記患者の心拍出量の複数の推定における傾向を判定するように構成される、請求項35に記載のデバイス。
【請求項37】
前記コントローラは、前記判定された複数の推定の傾向に基づいて、アクションをとるようにさらに構成される、請求項36に記載のデバイス。
【請求項38】
前記アクションには、出力通信又はディスプレイあるいはそれらの両方に対する出力を生成することが含まれる、請求項37に記載のデバイス。
【請求項39】
前記コントローラは、変動を解析するために、前記時系列になった遅延推定から呼吸数の周波数帯域の変動を除去して、時系列の非呼吸関連の遅延推定を得るように構成される、請求項25~38のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項40】
前記1つ以上の出力指標は、前記空気回路又は前記患者インタフェースあるいはそれらの両方の構成要素の交換条件の示度を含む、請求項39に記載のデバイス。
【請求項41】
前記コントローラは、変動を解析するために、前記時系列の非呼吸関連の遅延推定を、前記空気回路の時系列になった長さの値にマッピングするように構成されている、請求項39及び40のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項42】
前記コントローラは、変動を解析するために、多数の治療セッションに亘って、前記空気回路の長さの増加が閾値を上回るかを判定するように構成されている、請求項41に記載のデバイス。
【請求項43】
前記コントローラは、変動を解析するために、一回の呼吸治療セッションに亘って、前記空気回路の長さの変動性を判定するように構成されている、請求項41に記載のデバイス。
【請求項44】
前記1つ以上の出力指標は、
(a)治療デバイスの治療出力の調整を制御するための制御信号と、
(b)出力通信又はディスプレイの出力と
のうちの1つ以上をさらに含む、請求項25~43のいずれか一項に記載の装置。
【請求項45】
出口から空気回路に沿って患者インタフェースまで加圧空気の供給を生じるように構成されている流れ発生器を備える呼吸治療システムの前記空気回路中の音を表す音信号を生成する手段と、
ケプストラムデータを得るために、前記空気回路中の音を表す前記音信号を処理する手段と、
前記ケプストラムデータ中の音響シグネチャに基づいて、時系列になった遅延推定を生成する手段と、ここで、前記音響シグネチャは、各々、前記空気回路に沿った前記患者インタフェースからの音の反射を表し、
前記時系列になった遅延推定の変動を解析する手段と、
前記変動に基づいて1つ以上の出力指標を生成する手段と、ここで、前記1つ以上の出力指標は、患者又はシステムあるいはそれらの両方のステータスに関し、
を備える装置。
【請求項46】
患者に呼吸治療を施すように構成され、空気回路に沿って患者インタフェースに加圧空気の供給を生じるように構成されている流れ発生器を備える呼吸治療システムに関連付けられた、前記患者インタフェースに関するステータスの示度を生成するための1つ以上のプロセッサによる方法であって、
ケプストラムデータを得るために、前記空気回路における音を表す音信号を処理することと、
前記ケプストラムデータから音響シグネチャを分離することと、ここで、前記音響シグネチャは、前記患者インタフェースから前記空気回路に沿った音の反射を表し、
前記音響シグネチャの内部遅延を推定することと、ここで、前記内部遅延は、マスクチューブによって分離された前記患者インタフェースの各構成要素からの反射を表す前記音響シグネチャの2つの部分の間の遅延であり、
前記時系列になった内部遅延の推定を生成するために、前記処理することと分離することと推定することとを繰り返すことと、
前記時系列になった内部遅延の推定を解析することと、
前記解析に基づいて、1つ以上の出力指標を生成することと、ここで、前記1つ以上の出力指標は、患者インタフェースのステータスに関し、
を含む方法。
【請求項47】
前記解析することは、時系列になった内部遅延の推定をフィルタリングして、呼吸数の周波数帯域内で周波数を通過させることを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記解析することは、前記フィルタリングした時系列になった内部遅延の推定を解析して、前記マスクチューブ中の二酸化炭素濃度の示度を生成することをさらに含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記解析することは、前記時系列になった内部遅延の推定から呼吸数の周波数帯域の変動を除去して、時系列の非呼吸関連の内部遅延の推定を得ることを含む、請求項46~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記解析することは、前記時系列の非呼吸関連の内部遅延の推定を、前記マスクチューブの時系列になった長さの値にマッピングすることをさらに含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記解析することは、多数の治療セッションに亘って、前記マスクチューブの長さの増加が閾値を上回るかを判定することをさらに含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記解析することは、一回の呼吸治療セッションに亘って、前記マスクチューブの長さの変動性を判定することをさらに含む、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
患者に呼吸治療を施すように構成され、空気回路に沿って患者インタフェースに加圧空気の供給を生じるように構成されている流れ発生器を備える呼吸治療システムに関連付けられた、前記患者インタフェースに関するステータスの示度を生成するデバイスであって、
前記空気回路中の音を表す音信号を生成するように構成されているセンサと、1つ以上のプロセッサ及びメモリを備えるコントローラとを備え、
前記1つ以上のプロセッサは、前記メモリに記憶されたプログラム命令により、請求項46~52のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成されているデバイス。
【請求項54】
患者に呼吸治療を施すように構成され、空気回路に沿って患者インタフェースに加圧空気の供給を生じるように構成されている流れ発生器を備える呼吸治療システムのための、前記患者インタフェースに関するステータスの示度を生成するデバイスであって、
前記空気回路中の音を表す音信号を生成するように構成されているセンサと、コントローラとを備え、
前記コントローラは、
ケプストラムデータを得るために、前記空気回路中の音を表す前記音信号を処理することと、
前記ケプストラムデータから音響シグネチャを分離することと、ここで、前記音響シグネチャは、前記患者インタフェースから前記空気回路に沿った音の反射を表し、
前記音響シグネチャの内部遅延を推定することと、ここで、前記内部遅延は、マスクチューブによって分離される前記患者インタフェースの対応する構成要素からの反射を各々表す、前記音響シグネチャの2つの部分の間の遅延であり、
前記時系列になった内部遅延の推定を生成するために、前記処理することと分離することと推定することとを繰り返すことと、
前記時系列になった内部遅延の推定を解析することと、
前記解析に基づいて、1つ以上の出力指標を生成することと、ここで、前記1つ以上の出力指標は、患者インタフェースのステータスに関し、
とを行うように構成されている、デバイス。
【請求項55】
前記コントローラは、前記時系列を解析するために、前記時系列になった内部遅延の推定をフィルタリングして、呼吸数の周波数帯域内で周波数を通過させるように構成されている、請求項54に記載のデバイス。
【請求項56】
前記コントローラは、前記時系列を解析するために、前記フィルタリングした時系列になった内部遅延の推定を解析して、前記マスクチューブ中の二酸化炭素濃度の示度を生成するようにさらに構成されている、請求項55に記載のデバイス。
【請求項57】
前記コントローラは、前記時系列を解析するために、前記時系列になった内部遅延の推定から呼吸数の周波数帯域の変動を除去して、時系列の非呼吸関連の内部遅延の推定を得るように構成されている、請求項54~56のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項58】
前記コントローラは、前記時系列を解析するために、前記時系列になった非呼吸関連の内部遅延の推定を、前記マスクチューブの時系列になった長さの値にマッピングするようにさらに構成されている、請求項57に記載のデバイス。
【請求項59】
前記コントローラは、前記時系列を解析するために、多数の治療セッションに亘って、前記マスクチューブの長さの増加が閾値を上回るかを判定するようにさらに構成されている、請求項58に記載のデバイス。
【請求項60】
前記コントローラは、前記時系列を解析するために、一回の呼吸治療セッションに亘って、前記マスクチューブの長さの変動性を判定するようにさらに構成されている、請求項59に記載のデバイス。
【請求項61】
出口から空気回路に沿って患者インタフェースまで加圧空気の供給を生じるように構成されている流れ発生器を備える呼吸治療システムの前記空気回路中の音を表す音信号を生成する手段と、
ケプストラムデータを得るために、前記空気回路中の音を表す前記音信号を処理する手段と、
前記ケプストラムから、前記患者インタフェースから前記空気回路に沿った音の反射を表す音響シグネチャを分離する手段と、
前記音響シグネチャの内部遅延を推定する手段と、ここで、前記内部遅延は、マスクチューブによって分離される前記患者インタフェースの対応する構成要素からの反射を各々表し、前記音響シグネチャの2つの部分の間の遅延であり、
前記時系列になった内部遅延の推定を生成するために、前記処理することと分離することと推定することとを繰り返す手段と、
前記時系列になった内部遅延の推定を解析する手段と、
前記解析に基づいて、1つ以上の出力指標を生成する手段と、ここで、前記1つ以上の出力指標は、患者インタフェースのステータスに関し、
を備える装置。
【請求項62】
患者に呼吸治療を施すための呼吸治療システムであって、
加圧空気の供給を生じるように構成されている流れ発生器と、
患者インタフェースに前記加圧空気の供給を送達するように、前記流れ発生器に接続された空気回路と、
前記呼吸治療システムにより、患者又はシステムあるいはそれらの両方のステータスの示度を生成する、請求項25~44のいずれか一項に記載のデバイスと
を備えるシステム。
【請求項63】
加圧空気の供給を生じるように構成されている流れ発生器と、
患者インタフェースに前記加圧空気の供給を送達するように、前記流れ発生器に接続された空気回路と、
前記患者インタフェースに関するステータスの示度を生成するための、請求項54~60のいずれか一項に記載のデバイスと
を備える、患者に呼吸治療を施すための呼吸治療システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2019年9月30日出願の米国仮出願第62/908,364号と、2019年10月9日出願のオーストラリア仮出願第2019903799号との利益を主張するものであり、各々の開示全体を引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0002】
本技術は、呼吸関連疾患の検出、診断、処置、予防、及び改善のうちの1つ以上に関する。本技術はまた、医療機器又は装置と、その使用に関する。
【背景技術】
【0003】
[2.2.1 ヒトの呼吸器系及びその疾患]
身体の呼吸器系は、ガス交換を促進する。鼻と口は、患者の気道への入口を形成する。
【0004】
気道には、肺に深く貫通するほど、より狭く、より短く、より多数となるように枝分かれした一連の管が含まれる。肺の主要機能は、ガス交換であり、酸素を吸気(inhaled air)から静脈血(venous blood)内へと移動させ、二酸化炭素を反対方向に移動させる。気管(trachea)は、右側及び左側の主気管支(main bronchi)に分かれ、さらに最終的には、終末細気管支(terminal bronchioles)へと分かれる。気管支は、誘導気道を補い、ガス交換には関与しない。気道は、さらに分化して、呼吸細気管支に繋がり、最終的には肺胞(alveoli)へと繋がる。肺の胞状領域は、ガス交換が発生する箇所であり、呼吸領域(respiratory zone)と称される。John B. Westによる「Respiratory Physiology」、Lippincott Williams & Wilkins、第9版、2012年出版を参照のこと。
【0005】
広範に亘る呼吸器疾患(respiratory disorder)が存在する。特定の疾患は、特定の事象、例えば、無呼吸、低呼吸、及び過呼吸によって特徴付けられる。
【0006】
閉塞性睡眠時無呼吸症(OSA:Obstructive Sleep Apnea)は、睡眠中の上気道の閉塞又は妨害などの事象を特徴とする呼吸器疾患である。これは、上気道が通常より小さいことと、睡眠中、舌、軟口蓋、及び中咽頭後壁の領域で正常な筋緊張が失われることとの組み合わせの結果、生じる。この症状により、罹患した患者は、無呼吸とされる期間、通常は30~120秒、場合によっては一晩につき200~300回呼吸を停止する。これにより、日中に過度の眠気を引き起こすことが多く、心血管疾患(cardiovascular disease)や脳損傷を引き起こす可能性がある。この症候群は、特に中年の太った男性によく見られる障害であるが、罹患者は、その問題に気付いていない可能性がある。米国特許第4,944,310号(Sullivan)を参照のこと。
【0007】
このような症状を処置又は改善するために、広範に亘る治療が使用されてきた。さらに、健常者も、呼吸器疾患の発生を予防するために、このような治療を利用することもある。しかしながら、これらには、多数の欠点がある。
【0008】
[2.2.2 治療]
持続的気道陽圧(CPAP:Continuous Positive Airway Pressure)療法、高流量療法(HFT:High flow therapy)、非侵襲的通気(NIV:non-invasive ventilation)、侵襲的通気(IV:invasive ventilation)等の種々の治療を使用して、上述の呼吸器疾患のうちの1つ以上の処置を行ってきた。
【0009】
[2.2.3 治療システム]
これらの治療は、呼吸治療システム又はデバイスによって提供することができる。このようなシステム及びデバイスは、処置を行うことなく、症状を診断するのにも使用することができる。
【0010】
呼吸治療システムは、呼吸治療デバイス(RT(Respiratory Therapy)デバイス)、空気回路(air circuit)、加湿器、患者インタフェース、及びデータ管理を備えることができる。
【0011】
[2.2.3.1 患者インタフェース]
患者インタフェースを使用して、例えば、気道への入口に空気の流れ(flow of air)を提供することにより、その装着者と呼吸装備との間でインタフェースを行ってもよい。空気の流れは、マスクから鼻及び/又は口、チューブから口、又は患者の気管の気管切開チューブを介して提供することができる。適用される治療に応じて、患者インタフェースは、例えば、患者の顔の領域との封止を形成し、例えば、周囲圧力に対して約10cmH2Oの正の圧力等、治療を有効にするように周囲の圧力と十分な変化のある圧力でガスを送達することを促進することができる。酸素の送達等、他の形態の治療においては、患者インタフェースは、約10cmH2Oの正の圧力でガスの供給を行う気道への送達を促進するのに十分な封止を備えてなくてもよい。
【0012】
[2.2.3.2 呼吸治療(RT)デバイス]
呼吸圧力治療(RPT:respiratory pressure therapy)デバイス等の呼吸治療(RT)デバイスを使用して、気道の入口に送達する気流を生成することなどにより、上述の多数の治療のうちの1つ以上を実施することができる。空気の流れは加圧することができる。RPTデバイスの例として、CPAPデバイス及びベンチレータが挙げられる。場合によっては、呼吸治療(RT)デバイスは、高流量呼吸治療を提供する高流量療法(HFT)デバイスとすることができる。
【0013】
空気圧力発生器は、例えば、産業用規模の換気システム等の広範に亘る適用で知られている。しかしながら、医療目的のための空気圧力発生器は、医療デバイスの信頼性、サイズ、及び重量の要件等、より一般的な空気圧力発生器では満足されない特定の要件を有する。
【0014】
RPTデバイスの例として、ResMed Limited製のS9 Sleep Therapy System、Adult and Paediatric VentilatorsのResMed Stellar(登録商標)シリーズ、及びResMed Astral(登録商標)150ベンチレータが挙げられる。
【0015】
[2.2.3.3 空気回路]
空気回路は、使用時、RTデバイス及び患者インタフェース等、呼吸治療システムの2つの構成要素間で空気の流れを行き来させるように構築及び配置された導管又はチューブである。場合によっては、吸気(inhalation)と呼気(exhalation)とで空気回路が枝部に分かれていてもよい。他の場合、単一の枝部の空気回路を吸気及び呼気の双方に使用する。
【0016】
[2.2.3.4 加湿器]
加湿を行わず気流を送達すると、気道の乾燥を生じることもある。RTデバイスと患者インタフェースとともに加湿器を使用することで、鼻粘膜の乾燥を最少化し、患者の気道の快適さを増す加湿ガスを生じる。加えて、より寒冷な気候では、通常、患者インタフェース内及び周辺の顔領域には、冷たい空気よりも、温かい空気がより快適である。
【0017】
[2.2.3.5 通気技術]
呼吸治療システムのいくつかの形態では、呼気の二酸化炭素を洗い流す通気(vent:換気)が含まれてもよい。通気により、例えば、プレナムチャンバの患者インタフェースの内部空間から、例えば、周囲の患者インタフェースの外部へ、空気を流れさせることができる。
【0018】
[2.2.3.6 感知及びデータ管理]
患者、介護者、臨床医、保険会社、又は技術者は、呼吸治療、これらが患者、治療に使用される個々の構成要素、又は治療システム全体に関連するかに関するデータの収集を望むこともある。関与する一名以上の患者が治療関連データの収集及び収集データの活用から利益を受け得るような、患者に呼吸治療を提供する多数のシチュエーションが存在する。
【0019】
[2.2.4 構成要素の特定]
上述のとおり、呼吸治療システムは、通常、RPTデバイス、加湿器、空気回路、及び患者インタフェースを備える。様々な異なる形態の患者インタフェースが、例えば、鼻枕、鼻カニューレ、鼻マスク、鼻及び口(口鼻)マスク、又はフルフェースマスク等、所与のRPTデバイスとともに使用することができる。さらに、空気回路中等には、異なる種別(type:型)(長さ、直径)の導管を使用することができる。患者インタフェースに施される治療の制御を改善するために、患者インタフェース中の圧力、リーク流量、及び通気流量等、処置パラメータを推定することが好都合となることもある。処置パラメータの推定を使用するシステムにおいて、構成要素の種別の知識が患者に使用されることで、処置パラメータ推定と、ひいては治療の有効性との精度を向上することができる。この知識を得るために、いくつかのRPTデバイスは、例えば、ブランド、形態、モデル等の使用されている患者インタフェースを含む、システム構成要素の種別を患者に選択させるメニューシステムを備える。一旦構成要素の種別が患者に選択されると、RPTデバイスは、選択された構成要素と最もよく協調する流れ発生器の適切な動作パラメータを選択することができ、治療中、より処置パラメータをより正確にモニタリングすることができる。しかしながら、患者は、構成要素の種別を正確に入力しないか、又は全く入力せず、RPTデバイスをエラーで放置するか、使用中の構成要素の種別に関して無知であるかもしれない。
【0020】
呼吸治療システムのいくつかの構成要素は、効果的な治療のため、他より高い頻度で交換される必要がある。例えば、シリコーン封止形成部(silicone seal-forming portion)を備える患者インタフェースは、数か月ごと(例えば、3か月)の期間で、何らかの患者らによって交換されてもよく、一方でRTデバイスは、数年ごと(例えば、3年)に交換又は更新されてもよい。比較的頻繁に交換される構成要素(患者インタフェースなど)では、患者又は介護者は、構成要素との交換時期になると、低コストで確実かつ正確に通知されるという課題に定期的に直面する。交換時、治療システムの1つ以上の設定(例えば、RTデバイスのソフトウェア設定)は、システムが新たな構成要素を確実に完全に使用するように、変更される必要がありうる。したがって、治療を最適化することと、患者と介護者に交換タイミングについて知らせ続けることとの双方のためには、呼吸治療システムの構成要素を自動的に識別する能力が重要である。
【0021】
過去には、構成要素の識別に関する呼吸治療分野では、ソリューションのアレイが採用又は提示されてきた。例えば、環境条件に関するデータ、患者に関する情報、構成要素の識別、治療動作条件等を収集するために、多くの形態で、センサ/トランスデューサ(transducer)(すなわち、センサ又はトランスデューサ)が使用及び提示されてきた。実際のところ、多くのRTデバイスは、流量センサ、圧力センサ、湿度センサ、温度センサ等の1つ以上のセンサを備える。このようなセンサによって生成された信号を解析して、呼吸治療システム中の特定の構成要素の識別、患者インタフェース等の治療関連データを生成することができる。
【0022】
しかしながら、センサ/トランスデューサは、通常、追加構成部分を一式必要とするが、これらが多くの形態でその適合を妨げうる。例えば、センサ/トランスデューサによって収集されたデータは、その後、保存及び/又は解析(つまり、保存又は解析あるいはそれらの両方)のための、例えば、センサからメモリ及び/又はプロセッサに通信されなければならない。このことと、前述のセンサとにより、医療デバイスメーカーに対して、設計、テスト、及び/又は、製造のコストがさらに増加することもあり、及び/又は、患者に対するコストと複雑さを増加させることもある。
【0023】
また患者インタフェース等の頻繁に交換される構成要素に対して高価な電気的及び/又は機械的特徴を統合することは、最もコスト効果の高い治療の提供の弊害となることもあり、無駄が増えるため、潜在的に環境上も持続可能でない。
【0024】
さらに、センサ及び/又はトランスデューサに関して提示された多くのソリューション(solution:解決法)は、センサがデータの保存及び/又は解析場所から離れて配置されると、さらに複雑さ及び/又は実施コストを増加させることが多いという点で、限定的となりうる。例えば、患者インタフェースがセンサを備えると、RTデバイスに対する電気的接続を必要とし、これが複雑さ及び/又は実施コストをさらに増加させうる。
【0025】
また、RTデバイスの設計者は、多数の選択肢に直面し、競合や、同じメーカーであっても異なるときに作成される場合、市場の他のデバイスと比較して、異なるソリューションに到達することが多い。結果として、提供される関連の電気コネクタは、特定のRTデバイスにのみ接続可能となりうる。これは、意図せず、非互換性を生じる効果を有して消費者の特定のサブセグメントに対して不都合となりえてしまい、及び/又は、消費者の選択肢を狭めてしまうこともある。
【0026】
[2.2.5 呼気ガスの組成]
患者の呼気ガスの組成は、患者の健康状態の有用な指標(indicator)である。特に、カプノグラフィセンサ(capnography sensor)は、例えば、麻酔及び集中ケア中、又は、COPDの進行のより長い期間に亘って、治療及びモニタリングの目的で、呼気の二酸化炭素の分割濃度(fractional concentration)を測定するように構成される。
【0027】
心拍出量(cardiac output)は、患者の重要な血行動態パラメータ(hemodynamic parameter)である。これは、医師、臨床医、技術者、介護者等によって使用され、治療及び/又は医学的治療又は介入に対する患者の反応を規定することができる。心拍出量は、単位時間あたりに心臓によって汲み上げられる血液量をいう。これは、心拍数(HR:heart rate)と一回拍出量(SV:stroke volume)との積である。HRは、1分あたりの心拍の数(bpm)等の単位時間あたりの心拍の数である。SVは、心拍あたりの心室から汲み上げられる血液量である。通常、心拍出量は、1分あたりの単位で提供される(L/分)。
【0028】
フィック法(Fick method)は、心拍出量の判定に使用されるアプローチである。これには、酸素(O2)、二酸化炭素(CO2)、及びパラアミノ馬尿酸(PAH:para-aminohippuric)の測定が含まれる。通常、フィック法には、二酸化炭素交換を計算するため、閉鎖空間での酸素消費をモニタリングすることが含まれる。しかしながら、心拍出量は、改定フィック法を使用して推定可能である。改定フィック法(modified Fick method)は、酸素消費と二酸化炭素生成とが既知の関係(線形関係等)を有するという前提で、二酸化炭素生成に関連する。
【0029】
カプノグラフィセンサは、呼吸治療システム内に組み込むには、高価であり、存在する場合であっても、リアルタイムのCO2モニタリングには相応しくない大きなレイテンシ(latency:待ち時間)を有することもある。したがって、呼吸器系には、その空気回路内のCO2の濃度を推定するのに、低コストの手段を有することが望ましく、リアルタイムに近く、このような推定をサポートできるものであることがさらに望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
本技術は、快適さ、コスト、有効性、使用の容易さ、患者との協働(patient engagement)、及び製造性の改善のうちの1つ以上を有する、呼吸器疾患の診断、改善、処置、又は予防において使用される医療デバイスを提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本技術の第1の態様は、呼吸器疾患の診断、改善、処置、又は予防に使用される装置に関連する。
【0032】
本技術の他の態様は、呼吸器疾患の診断、改善、処置、又は予防に使用される方法に関連する。
【0033】
本技術は、音響解析を通じて、特に、異なる時間尺度の音響反射シグネチャ(signature:特徴)の遅延(delay)の時間変動を解析することにより、呼吸治療システムに関する有用な情報を得るための既知の装置を改善するものであってもよい。一例によると、呼吸周波数帯域の遅延変動により、呼気の二酸化炭素濃度の測定値を提供してもよく、ひいては、患者の心拍出量を推定することなど、診断及び治療の目的で使用されてもよい。
【0034】
本技術のいくつかの実施には、患者に呼吸治療を施すように構成されている呼吸治療システムにより、患者及び/又はシステム(つまり、患者又はシステムあるいはそれらの両方)のステータスの示度を生成するための、1つ以上のプロセッサの方法が含まれる。この呼吸治療システムは、空気回路に沿って患者インタフェースに加圧空気の供給を生じるように構成されている流れ発生器(flow generator)を備えてもよい。この方法は、マイクロフォンからの空気回路内の音(sound)を表す音信号を処理して、ケプストラムデータを得ることを含んでもよい。この方法は、ケプストラムデータ(cepstum data)の音響シグネチャ(acoustic signature)に基づいて、時系列になっている遅延の推定を生成することを含むことができる。音響シグネチャは、各々、患者インタフェースから空気回路に沿った音の反射を表すことができる。この方法は、この時系列になった遅延推定の変動を解析することを含むことができる。この方法は、変動に基づいて、1つ以上の出力指標を生成することを含むことができ、1つ以上の出力指標は、患者及び/又はシステムのステータスに関する。
【0035】
いくつかの実施において、時系列を生成することには、ケプストラムデータのケプストラムから音響シグネチャを分離することを含むことができる。時系列を生成することには、時系列になった遅延推定に対する音響シグネチャ遅延を推定することを含むことができる。時系列を生成することには、分離することと、推定することとを繰り返すことを含むことができる。解析することは、時系列になった遅延推定をフィルタリングして、呼吸数の周波数帯域内で周波数を通過させることを含むことができる。解析することは、時系列になった遅延推定を、空気回路中の二酸化炭素の濃度の示度に変換することをさらに含むことができる。1つ以上の出力指標は、患者の呼気終末の二酸化炭素濃度(EtCO2)の示度(indication)を含んでもよい。この方法は、EtCO2の示度に基づいて、呼吸治療システムのパラメータを調整することをさらに含んでもよい。
【0036】
いくつかの実施において、1つ以上の出力指標は、患者の心拍出量の推定を含むことができる。この方法は、改定フィック技術関数を適用することと、時系列になった遅延推定で生成されたEtCO2の示度の変化を測定して、心拍出量の推定を生成することとをさらに含むことができる。この方法は、解析することを繰り返して、患者の心拍出量の推定を複数生成することをさらに含むことができる。この方法は、患者の心拍出量の複数の推定における傾向を判定することをさらに含んでもよい。この方法は、判定された複数の推定における傾向に基づいて、アクションをとることをさらに含むことができる。アクションをとることは、出力通信及び/又はディスプレイ上への出力を生成することを含むことができる。解析することは、呼吸治療システムの1つ以上の環境パラメータを判定することと、二酸化炭素濃度の判定中、1つ以上の環境パラメータを補正することとをさらに含むことができる。1つ以上の環境パラメータには、空気の温度、周囲の圧力、周囲の二酸化炭素濃度、背景ノイズ(background noise)、又はこれらの組み合わせを含むことができる。背景ノイズは、音信号を生成した音センサ(sound sensor)とは異なることができる音センサによって生成すことができる。
【0037】
いくつかの実施において、解析することは、時系列になった遅延の推定から呼吸数の周波数帯域の変動を除去して、時系列の非呼吸関連の遅延推定(non-respiratory-related delay estimate)を得ることを含むことができる。1つ以上の出力指標は、空気回路及び/又は患者インタフェースの構成要素の交換条件の示度を含むことができる。解析することは、時系列になっている非呼吸関連の遅延推定を、空気回路の時系列になった長さの値にマッピングすることをさらに含むことができる。解析することは、多数の治療セッションに亘って、空気回路の長さの増加が閾値を上回るかを判定することをさらに含むことができる。解析することは、一回の呼吸治療セッションに亘って、空気回路の長さの変動性(variability)を判定することをさらに含んでもよい。この処理は、音信号から、呼吸治療システムの環境からの背景ノイズを除去することを含むことができる。
【0038】
いくつかの実施において、1つ以上の出力指標は、(a)治療デバイスの治療出力の調整を制御するための制御信号、及び/又は、(b)出力通信又はディスプレイへの出力をさらに含むことができる。
【0039】
本技術のいくつかの実施には、患者に呼吸治療を施すように構成されている呼吸治療システムにより、患者及び/又はシステムのステータスの示度を生成するためのデバイスが含まれ、呼吸治療システムは、空気回路に沿って患者インタフェースへ加圧空気の供給を生じるように構成されている流れ発生器を含むことができる。このデバイスは、空気回路内の音を表す音信号を生成するように構成されているセンサを備えることができる。このデバイスは、1つ以上のプロセッサと、メモリとを有することができるコントローラを備えることができる。1つ以上のプロセッサは、メモリに記憶されたプログラム命令により、本明細書に記載の方法の態様のうちのいずれか1つ以上を実行するように構成することができる。いくつかの実施において、このデバイスは、送風機(blower)をさらに備えることができ、コントローラは、送風機の動作を制御するように構成することができる。
【0040】
本技術のいくつかの実施には、患者に呼吸治療を施すように構成されている呼吸治療システムにより、患者及び/又はシステムのステータスの示度を生成するためのデバイスが含まれ、呼吸治療システムは、空気回路に沿って患者インタフェースへ加圧空気の供給を生じるように構成されている流れ発生器を含むことができる。このデバイスは、空気回路内の音を表す音信号を生成するように構成されているセンサを備えることができる。このデバイスは、コントローラを備えてもよい。このコントローラは、空気回路中の音を表す音信号を処理して、ケプストラムデータを得るように構成することができる。このコントローラは、ケプストラムデータ中の音響シグネチャに基づいて、時系列の遅延推定を生成するように構成することができる。音響シグネチャは、各々、患者インタフェースから空気回路に沿った音の反射を表すことができる。このコントローラは、時系列の遅延推定における変動を解析するように構成することができる。このコントローラは、変動に基づいて、1つ以上の出力指標を生成するように構成することができ、1つ以上の出力指標は、患者及び/又はシステムのステータスに関する。
【0041】
いくつかの実施において、このデバイスは、呼吸治療システムの環境における背景ノイズを表す音信号を生成するように構成されている第2のセンサをさらに備えることができる。このコントローラは、呼吸治療システムの環境における背景ノイズを表すように生成された音信号を使用して、空気回路における音を表すように生成された音信号から、呼吸治療システムの環境からの背景ノイズを除去するようにさらに構成することができる。このコントローラは、時系列を生成するために、ケプストラムデータのケプストラムから音響シグネチャを分離するように構成することができる。このコントローラは、時系列を生成するために、時系列になった遅延推定に対する音響シグネチャ遅延を推定するように構成することができる。このコントローラは、時系列を生成するために、分離と推定を繰り返すように構成することができる。
【0042】
いくつかの実施において、コントローラは、変動を解析するために、時系列になった遅延推定をフィルタリングして、呼吸数の周波数帯域内で周波数を通過させるように構成することができる。コントローラは、変動を解析するために、時系列になった遅延推定を、空気回路中の二酸化炭素の濃度の示度に変換するように構成することができる。1つ以上の出力指標は、患者の呼気終末の二酸化炭素濃度(EtCO2)の示度を含むこともできる。このコントローラは、EtCO2の示度に基づいて、呼吸治療システムのパラメータを調整するようにさらに構成することができる。1つ以上の出力指標は、患者の心拍出量の推定を含むこともできる。コントローラは、改定フィック技術関数を適用することと、時系列になった遅延推定で生成されたEtCO2の示度の変化を測定して、心拍出量の推定を生成することとを行うように構成することができる。コントローラは、解析することを繰り返して、患者の心拍出量の推定を複数生成するように構成されてもよい。コントローラは、患者の心拍出量の複数の推定における傾向を判定するように構成することができる。コントローラは、判定された複数の推定の傾向に基づいて、アクションをとるようにさらに構成することができる。アクションには、出力通信及び/又はディスプレイへの出力を生成することを含むことができる。コントローラは、変動を解析するために、時系列になっている遅延推定から呼吸数周波数帯域の変動を除去して、時系列の非呼吸関連の遅延推定を得るように構成することができる。1つ以上の出力指標は、空気回路及び/又は患者インタフェースの構成要素の交換条件の示度を含むことができる。
【0043】
いくつかの実施において、コントローラは、変動を解析するために、時系列の非呼吸関連の遅延推定を、空気回路の時系列になった長さの値にマッピングするように構成することができる。コントローラは、変動を解析するために、多数の治療セッションに亘って、空気回路の長さの増加が閾値を上回るかを判定するように構成することができる。コントローラは、変動を解析するために、一回の呼吸治療セッションに亘って、空気回路の長さの変動性を判定するように構成することができる。1つ以上の出力指標には、(a)治療デバイスの治療出力の調整を制御するための制御信号、及び/又は、(b)出力通信又はディスプレイへの出力をさらに含むことができる。
【0044】
本技術のいくつかの実施には、呼吸治療システムの空気回路中の音を表す音信号を生成するための手段を備えることができる装置が含まれ、呼吸治療システムは、出口から空気回路に沿って患者インタフェースへの加圧空気の供給を生じるように構成されている流れ発生器を備えることができる。この装置は、空気回路における音を表す音信号を処理して、ケプストラムデータを得る手段をさらに備えることができる。装置は、ケプストラムデータ中の音響シグネチャに基づいて、時系列になった遅延推定を生成する手段をさらに備えることができ、音響シグネチャは、各々、空気回路に沿った患者インタフェースからの音の反射を表す。装置は、時系列になった遅延推定の変動を解析する手段を備えることができる。装置は、変動に基づいて、1つ以上の出力指標を生成する手段とを備えることができ、1つ以上の出力指標は、患者及び/又はシステムのステータスに関する。
【0045】
本発明のいくつかの実施には、患者に呼吸治療を施すように構成されている呼吸治療システムに関連付けられた患者インタフェースに関するステータスの示度を生成するための1つ以上のプロセッサの方法が含まれ、呼吸治療システムは、空気回路に沿って患者インタフェースに加圧空気の供給を生じるように構成されている流れ発生器を備えることができる。この方法は、空気回路における音を表す音信号を処理して、ケプストラムデータを得ることを備えることができる。この方法は、ケプストラムデータから音響シグネチャを分離することをさらに含むことができ、ここで、音響シグネチャは、患者インタフェースから空気回路に沿った音の反射を表すものである。この方法は、音響シグネチャの内部遅延を推定することをさらに含むことができ、内部遅延は、マスクチューブによって分離された患者インタフェースの各構成要素からの反射を表す音響シグネチャの2つの部分の間の遅延とすることができる。この方法は、処理することと分離することと推定することとを繰り返し、時系列になった内部遅延の推定を生成することを含むことができる。この方法は、時系列になった内部遅延の推定を解析することを含むことができる。この方法は、解析に基づいて、1つ以上の出力指標を生成することとを含むことができ、1つ以上の出力指標は、患者インタフェースのステータスに関する。
【0046】
いくつかの実施において、解析することは、時系列になった内部遅延の推定をフィルタリングして、呼吸数の周波数帯域内で周波数を通過させることを含むことができる。解析することは、フィルタリングした時系列になった内部遅延の推定を解析して、マスクチューブ中の二酸化炭素濃度の示度を生成することをさらに含むことができる。解析することは、この時系列になった内部遅延の推定から呼吸数の周波数帯域の変動を除去して、時系列になった非呼吸関連の内部遅延の推定を得ることを含んでもよい。解析することは、時系列になった非呼吸関連の内部遅延の推定を、マスクチューブの時系列になった長さの値にマッピングすることをさらに備えることができる。解析することは、多数の治療セッションに亘って、マスクチューブの長さの増加が閾値を上回るかを判定することをさらに含むことができる。解析することは、一回の呼吸治療セッションに亘って、マスクチューブの長さの変動性を判定することをさらに含むことができる。
【0047】
本技術のいくつかの実施には、患者に呼吸治療を施すように構成されている呼吸治療システムに関連付けられた患者インタフェースに関するステータスの示度を生成するためのデバイスが含まれ、呼吸治療システムは、空気回路に沿って患者インタフェースに加圧空気の供給を生じるように構成されている流れ発生器を備えてもよい。このデバイスは、空気回路内の音を表す音信号を生成するように構成されているセンサを備えることができる。このデバイスは、コントローラを備えることができる。このコントローラは、1つ以上のプロセッサと、メモリとを備えることができる。1つ以上のプロセッサは、メモリに記憶されたプログラム命令により、本明細書に記載の方法のいずれか1つ以上の態様を実行するように構成することができる。
【0048】
本技術のいくつかの実施には、患者に呼吸治療を施すように構成されている呼吸治療システムのための患者インタフェースに関するステータスの示度を生成するためのデバイスが含まれ、呼吸治療システムは、空気回路に沿って患者インタフェースに加圧空気の供給を生じるように構成されている流れ発生器を備えることができる。このデバイスは、空気回路内の音を表す音信号を生成するように構成されているセンサを備えることができる。このデバイスは、コントローラを備えることができる。このコントローラは、空気回路における音を表す音信号を処理して、ケプストラムデータを得るように構成ることができる。このコントローラは、ケプストラムデータから音響シグネチャを分離するように構成することができる。この音響シグネチャは、患者インタフェースから空気回路に沿った音の反射を表すことができる。このコントローラは、音響シグネチャの内部遅延を推定するように構成することができる。この内部遅延は、音響シグネチャの2つの部分の間の遅延とすることができる。各部分は、マスクチューブによって分離される患者インタフェースの対応構成要素からの反射を表すことができる。このコントローラは、処理することと、分離することと、推定することとを繰り返し、時系列になった内部遅延の推定を生成するように構成することができる。このコントローラは、時系列になった内部遅延の推定を解析するように構成されてもよい。このコントローラは、解析に基づいて、1つ以上の出力指標を生成するように構成することができ、1つ以上の出力指標は、患者インタフェースのステータスに関する。
【0049】
いくつかの実施において、コントローラは、時系列を解析するために、時系列になっている内部遅延の推定をフィルタリングして、呼吸数の周波数帯域内で周波数を通過させるように構成することができる。コントローラは、時系列を解析するために、フィルタリングした時系列になった内部遅延の推定を解析して、マスクチューブ中の二酸化炭素濃度の示度を生成するようにさらに構成することができる。コントローラは、時系列を解析するために、時系列になった内部遅延の推定から呼吸数の周波数帯域の変動を除去して、時系列になった非呼吸関連の内部遅延の推定を得るように構成することができる。コントローラは、時系列を解析するために、時系列になった非呼吸関連の内部遅延の推定を、マスクチューブの時系列になった長さの値にマッピングするようにさらに構成することができる。コントローラは、時系列を解析するために、多数の治療セッションに亘って、マスクチューブの長さの増加が閾値を上回るかを判定するようにさらに構成することができる。コントローラは、時系列を解析するために、一回の呼吸治療セッションに亘って、マスクチューブの長さの変動性を判定するようにさらに構成することができる。
【0050】
本技術のいくつかの実施には、呼吸治療システムの空気回路中の音を表す音信号を生成するための手段を備えることができる装置が含まれ、呼吸治療システムは、出口から空気回路に沿って患者インタフェースへの加圧空気の供給を生じるように構成されている流れ発生器を備えることができる。この装置は、空気回路における音を表す音信号を処理して、ケプストラムデータを得る手段をさらに備えることができる。この装置は、ケプストラムから、患者インタフェースから空気回路に沿った音の反射を表す音響シグネチャを分離する手段をさらに備えることができる。この装置は、音響シグネチャの内部遅延を推定する手段を備えることができ、内部遅延は、マスクチューブによって分離される患者インタフェースの対応する構成要素からの反射を各々表す、音響シグネチャの2つの部分の間の遅延とすることができる。この装置は、処理することと、分離することと、推定することとを繰り返し、前記時系列になった内部遅延の推定を生成する手段を備えることができる。この装置は、時系列になった内部遅延の推定を解析する手段を備えることができる。この装置は、解析することに基づいて、1つ以上の出力指標を生成する手段を備えることができ、1つ以上の出力指標は、患者インタフェースのステータスに関する。
【0051】
本技術のいくつかの実施には、患者に呼吸治療を施すための呼吸治療システムが含まれる。このシステムは、加圧空気の供給を生じるように構成されている流れ発生器を備えることができる。このシステムは、患者インタフェースに加圧空気の供給を送るように、流れ発生器に接続された空気回路を備えることができる。このシステムは、呼吸治療システムにより、患者及び/又はシステムのステータスの示度を発生するデバイスを備えることができ、このデバイスは、本明細書に記載の特徴のうちのいずれか1つ以上を備えることができる。
【0052】
本技術のいくつかの実施には、患者に呼吸治療を施すための呼吸治療システムが含まれる。このシステムは、加圧空気の供給を生じるように構成されている流れ発生器を備えることができる。このシステムは、患者インタフェースに加圧空気の供給を送るように、流れ発生器に接続された空気回路を備えることができる。このシステムは、患者インタフェースに関するステータスの示度を生成するためのデバイスを備えることができ、このデバイスは、本明細書に記載の特徴のうちのいずれか1つ以上を備える。
【0053】
本明細書に記載の方法、システム、デバイス、及び装置は、特定目的のコンピュータ、呼吸モニタ、及び/又は、呼吸治療装置等のプロセッサの機能を改善することができる。さらに、記載の方法、システム、デバイス、及び装置は、例えば、睡眠時の呼吸障害を含む、呼吸状況の自動管理、モニタリング、及び/又は、処置の技術分野における改善に繋がりうる。
【0054】
当然のことながら、これら態様の一部が、本技術の副次的な態様を形成することができる。さらに、副次的態様及び/又は態様の種々のものを種々に組み合わせることができ、これらが本技術のさらなる態様又は副次的態様を構築することができる。
【0055】
本技術の他の特徴は、以下の詳細な説明、要約、図面、及び特許請求の範囲に含まれる情報を考慮することで明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0056】
本技術を例示のために図示するが、限定を表すものでなく、添付の図面の特徴において、同様の参照符号は同様の要素を表す。
【0057】
【
図1A】[4.1 呼吸治療システム]
図1Aは、鼻枕の形態で患者インタフェース3000を装着した患者1000を含み、RPTデバイス4000から正の圧力で空気の供給を受けるシステムを示している。RPTデバイス4000からの空気は、加湿器5000で加湿され、空気回路4170から患者1000まで通過する。ベッドパートナー1100も図示されている。患者は、仰向け睡眠姿勢で睡眠している。
【
図1B】
図1Bは、鼻マスクの形態で患者インタフェース3000を装着した患者1000を含み、RPTデバイス4000から正の圧力で空気の供給を受けるシステムを示している。RPTデバイスからの空気は、加湿器5000で加湿され、空気回路4170に沿って患者1000まで通過する。
【
図1C】
図1Cは、フルフェースマスクの形態で患者インタフェース3000を装着した患者1000を含み、RPTデバイス4000から正の圧力で空気の供給を受けるシステムを示している。RPTデバイスからの空気は、加湿器5000で加湿され、空気回路4170に沿って患者1000まで通過する。患者は、横向きの睡眠姿勢で睡眠している。
【
図2】[4.2 呼吸器系及び顔面解剖学]
図2は、鼻腔及び口腔、咽頭、声帯、食道、気管、気管支、肺、肺胞嚢、心臓、及び横隔膜を含む、ヒトの呼吸器系の全体図を示している。
【
図3】[4.3 患者インタフェース]
図3は、本技術の1つの形態に係る鼻マスクの形態の患者インタフェースの一例を示している。
【
図4A】[4.4 RPTデバイス]
図4Aは、本技術の1つの形態に係る一例としての呼吸圧力治療(RPT)デバイス4000の展開図を示している。
【
図4B】
図4Bは、本技術の1つの形態に係るRPTデバイスの空気圧経路の概略図である。上流及び下流の方向が示されている。
【
図5A】[4.5 加湿器]
図5Aは、本技術の1つの形態に係る加湿器の等角図を示している。
【
図5B】
図5Bは、本技術の1つの形態に係る加湿器の等角図を示しており、加湿器貯蔵部ドック5130から外された加湿器貯蔵部5110を示している。
【
図6】[4.6 呼吸波形]
図6は、睡眠時のヒトのモデルとしての一般的な呼吸の波形を示している。横軸は時間であり、縦軸は呼吸流量である。パラメータ値は変動するものの、一般的な呼吸では、以下の様な大体の値を有しうる。一回呼吸量(tidal volume)Vt:0.5L、吸気時間Ti:1.6秒、ピーク吸気流量Qpeak:0.4L/s、呼気時間Te:2.4s、ピーク呼気流量Qpeak:-0.5L/sである。呼吸の総持続時間Ttotは、約4秒である。ヒトは、通常、1分あたり約15回の呼吸(BPM:breaths per nimute)のレートで、約7.5L/分の換気Ventで呼吸を行う。通常のデューティサイクル、TiのTtotに対する比率は、約40%である。
【
図7】[4.7 音響解析]
図7は、本明細書においてより詳細に説明するとおり、音響解析装置を含むことができる本技術の一例に係る呼吸治療システムの概略図である。
【
図8】
図8は、
図7の呼吸治療システムのインパルス応答関数(Impulse Response Function)の一例を含むグラフである。
【
図9】
図9は、
図7の呼吸治療システムにおける種々の送風機の速度での種々の例としてのマスクに関するケプストラムを含むグラフである。
【
図10】
図10は、本技術の一例としての態様に係る呼吸治療システムの概略図である。
【
図11】
図11は、本技術の一例に係る
図7の呼吸治療システムの空気回路の音響シグネチャ遅延(acoustic signature delay)を推定する方法を示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、同一の時間軸上にプロットされた2つの同時期の時系列、すなわち、音響シグネチャ遅延(頂部のトレース)と、
図7の呼吸治療システムの導管中で測定された二酸化炭素濃度(底部のトレース)とを含んでいる。
【
図13】
図13は、
図7の呼吸治療システムにおけるマスクチューブを含む枕マスクに関するケプストラムを含むグラフである。
【
図14】
図14は、本明細書おいてより詳細に説明するとおり、音響解析装置を含むことができる本技術の一例に係る呼吸治療システムの概略図である。
【
図15】
図15は、本技術の一態様に係る患者の心拍出量を判定する一例としてのプロセスを示すフローチャートである。
【
図16】
図16は、本技術の一態様に係る、
図7又は
図14等の音響解析装置の実施の例としての構成要素の図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
本技術をさらに詳細に説明するのに先立って、本技術は、本明細書に記載の特定の実施例に限定されるものでないことが理解されなければならず、これは変動し得るものである。本開示で使用される用語は、本明細書に記載の特定の実施例のみを説明することを目的とするものであり、限定を意図するものでないことも理解されなければならない。
【0059】
以下の説明は、1つ以上の共通の性質及び/又は特徴を共有し得る種々の実施例に関して提供される。いずれか1つの実施例の1つ以上の特徴が他の一実施例又は複数の実施例の1つ以上の特徴と組み合わせることができることが理解されなければならない。また実施例のうちのいずれかのうち、いずれか単一の特徴又は特徴の組み合わせが、さらなる実施例を構築してもよい。
【0060】
本明細書中、構成要素の「識別(identification)」は、その構成要素の種別の識別を意味する。本明細書において、「マスク」とは、簡潔さのために、「患者インタフェース」と同義的に使用されるが、一般には「マスク」とは称されない患者インタフェースも存在する。
【0061】
[5.1 治療]
一形態において、本技術には、患者1000の気道の入口に正の圧力を印可するステップを備える、呼吸器疾患を治療するための方法が含まれる。
【0062】
[5.2 治療システム]
一形態において、本技術には、呼吸器疾患の処置を行うシステムが含まれる。呼吸治療(RT)システムは、空気回路4170及び患者インタフェース3000を備える空気経路を介して、患者1000に正の圧力の加湿空気を供給するため、RPTデバイス4000と、加湿器5000とを備えてもよい。
【0063】
[5.3 患者インタフェース]
一例としての非侵襲的(non-invasive)患者インタフェース3000は、
図3に示されており、以下の機能的態様(functional aspect)、つまり、封止形成構造(seal-forming structure)3100と、プレナムチャンバ(plenum chamber)3200、位置決め及び安定化構造(positioning and stabilising structure)3300、ベント(vent)3400、空気回路4170との接続のための一形態の接続ポート(connection port)3600、及び額サポート(forehead support)3700を備える。いくつかの形態において、機能的態様は、1つ以上の物理要素で提供することができる。いくつかの形態において、1つの物理要素は、1つ以上の機能的態様を提供することができる。使用に際して、封止形成構造3100は、気道に正の圧力で空気を供給することを促進するように、患者の気道への入口を包囲するように配置される。
【0064】
本技術の一形態に係る患者インタフェース3000は、周囲に対して、少なくとも4cmH2O、又は少なくとも10cmH2O、又は少なくとも20cmH2O、又は少なくとも25cmH2O等の正の圧力で空気を供給することができるように構築及び配置される。
【0065】
[5.3.1 封止形成構造]
本技術の一形態において、封止形成構造3100は、対象封止形成表面領域(target seal-forming surface region)を提供し、さらにクッション機能を提供してもよい。対象封止形成領域は、封止が発生しうる封止形成構造3100上の領域である。封止が実際に発生する領域、つまり実際の封止面は、例えば、患者インタフェースが顔上に載置された箇所、構造の位置決め及び安定化における引っ張り(tension)、及び患者の顔の形状を含む、広範に亘る因子に応じて、日ごとに、且つ、患者ごとに所与の処置セッション内で変化し得る。
【0066】
[5.3.2 プレナムチャンバ]
プレナムチャンバ3200は、使用時に封止が形成される領域における、平均的なヒトの顔の表面の輪郭(surface contour)を補完するように整形された外周を有する。使用に際して、プレナムチャンバ3200の周縁エッジは、顔の隣接面に近接して位置決めされる。面との実際の接触は、封止形成構造3100によって提供される。封止形成構造3100は、使用時、プレナムチャンバ3200の全周に亘って延設されてもよい。いくつかの形態において、プレナムチャンバ3200及び封止形成構造3100は、材料の単一の均質片(homogeneous piece)から形成される。
【0067】
[5.3.3 位置決め及び安定化構造]
本技術の患者インタフェース3000の封止形成構造3100は、ヘッドギア等の位置決め及び安定化構造3300により、使用時、封止位置に保持することができる。
【0068】
[5.3.4 ベント]
一形態において、患者インタフェース3000は、例えば、二酸化炭素等、呼気ガスの洗い流しが可能となるように構築及び配置されたベント3400を備える。
【0069】
特定の形態において、ベント3400は、プレナムチャンバ3200の内部から周辺に連続的な通気流れ(continuous vent flow)を許容するように構成され、プレナムチャンバ内の圧力は、周囲に対して正である。ベント3400は、使用時、通気流量(vent flow rate)が、プレナムチャンバ内の治療圧力を維持しつつ、患者による呼気の二酸化炭素の再呼吸を低減するのに十分な大きさを有するように構成される。本技術に係るベント3400の一形態は、複数の孔部(hole)、例えば、約20~約80の孔部、又は約40~約60の孔部、又は約45~約55の孔部を備える。
【0070】
ベント3400は、プレナムチャンバ3200内に配置することができる。或いは、ベント3400は、例えば、スイベル(swivel)等の切り離し構造内に配置される。
【0071】
[5.3.5 接続ポート]
接続ポート3600により、患者インタフェース3000を空気回路4170に接続させる。
【0072】
いくつかの実施において、プレナムチャンバ3200と接続ポート3600とを分離する、或る長さのフレキシブルチューブ(図示せず)があってもよい。このような長さのチューブは、本明細書中、空気回路4170を作る導管又はチューブから区別するため、「マスクチューブ」と称される。
【0073】
[5.4 RPTデバイス]
本技術の一態様に係る呼吸圧力治療(RPT)デバイス4000が、
図4A中に展開図として示されており、機械的、空気圧的、及び/又は、電気的構成要素を備え、1つ以上のアルゴリズム4300を実行するように構成される。RPTデバイス4000は、本文書中の他の箇所で記載された呼吸症状のうちの1つ以上を処置する等、患者の気道へ送達する気流を生成するように構成することができる。本明細書に記載の音響技術及び方法は、例としてのRPTデバイス4000に関して全般的に図示されているが、このような技術及び方法は、HFTデバイス内で、又は、これらにより、他のRTデバイス内で、又は、これらにより、同様に実施することができる。
【0074】
一形態において、RPTデバイス4000は、少なくとも4cmH2O、又は少なくとも10cmH2O、又は少なくとも20cmH2O、又は少なくとも25cmH2Oの正の圧力を維持しつつ、-20L/分~+150L/分の範囲内で、気流を送達することができるように構築又は配置される。
【0075】
RPTデバイスは、2つの部分、つまり上方部分4012と下方部分4014とに形成された外部ハウジング4010を有することができる。さらに、外部ハウジング4010は、1つ以上のパネル4015を備えることができる。RPTデバイス4000は、RPTデバイス4000の1つ以上の内部構成要素をサポートするシャーシ4016を備える。RPTデバイス4000は、ハンドル4018を備えることができる。
【0076】
RPTデバイス4000の空気圧経路(pneumatic path)は、1つ以上の空気経路アイテム(air path item)、例えば、入口空気フィルタ4112,入口マフラー4122、正の圧力で空気を供給できる圧力発生器4140(例えば、送風機4142)、出口マフラー4124、及び圧力センサや流量センサ等の1つ以上のトランスデューサ4270を備えることができる。
【0077】
1つ以上の空気経路アイテムは、空気圧ブロック4020と称される、取り外し可能な一体構造内に配置することができる。空気圧ブロック4020は、外部ハウジング4010内に配置することができる。一形態において、空気圧ブロック4020は、シャーシ4016により支持されるか、又は、シャーシ4016の一部として形成される。
【0078】
RPTデバイス4000は、電源4210、1つ以上の入力デバイス4220、中央コントローラ4230、治療デバイスコントローラ4240、圧力発生器4140、1つ以上の保護回路4250、メモリ4260、トランスデューサ4270、データ通信インタフェース4280、及び1つ以上の出力デバイス4290を有することができる。電気部品4200は、単一のプリント回路基板アセンブリ(PCBA)4202に搭載することができる。他の形態において、RPTデバイス4000は、2以上のPCBA4202を備えることができる。
【0079】
[5.4.1 RPTデバイスの機械的&空気圧部品]
RPTデバイスは、統合ユニット内に以下の構成要素のうちの1つ以上を備えてもよい。代替の形態において、以下の構成要素のうちの1つ以上が、各別個のユニットとして配置することができる。
【0080】
[5.4.1.1 圧力発生器]
本技術の一形態において、正の圧力の空気の流れ又は供給等、下流気流(downstream air flow)を生じるための圧力発生器4140は、制御可能な送風機4142である。送風機は、約4cmH2O~約20cmH2O、又は他の形態では約30cmH2Oまでの範囲の正の圧力で、例えば、約120リットル/分までのレートで、空気供給を可能とすることができる。送風機は、以下の特許又は特許出願のうちのいずれか1つに記載のものであってもよく、これらの内容全体を引用することにより本明細書の一部をなすものとする。米国特許第7,866,944号、米国特許第8,638,14号、米国特許第8,636,479号、及びPCT特許出願公開WO2013/020167号。
【0081】
圧力発生器4140は、治療デバイスコントローラ4240の制御下にある。
【0082】
他の形態において、圧力発生器4140は、ピストン駆動ポンプ、高圧力源(例えば、加圧空気貯蔵部)に接続された圧力レギュレータ、又はベロ―(bellow)とすることができる。
【0083】
[5.4.1.2 メモリ]
本技術の一態様によると、RPTデバイス4000は、メモリ4260、例えば、非揮発性メモリを備える。いくつかの形態において、メモリ4260は、バッテリ駆動式スタティックRAMを備えることができる。いくつかの形態において、メモリ4260は、揮発性RAMを備えることができる。
【0084】
メモリ4260は、PCBA4202上に配置することができる。メモリ4260は、EEPROM又はNANDフラッシュの形態とすることができる。
【0085】
追加又は代替として、RPTデバイス4000は、脱着可能なメモリ4260であって、例えば、セキュアデジタル(SD)規格に準じたメモリカードを備えることができる。
【0086】
本技術の一態様において、メモリ4260は、1つ以上のアルゴリズム4300等、本明細書に記載の1つ以上の方法論を表すコンピュータプログラム命令又はプロセッサ制御命令を記憶した持続性コンピュータ可読記憶媒体として作動する。
【0087】
[5.4.1.3 データ通信システム]
本技術の一態様において、データ通信インタフェース4280が設けられ、中央コントローラ4230に接続される。データ通信インタフェース4280は、遠隔外部通信ネットワーク4282及び/又は局所外部通信ネットワーク4284に接続可能とすることができる。遠隔外部通信ネットワーク4282は、遠隔外部デバイス4286に接続可能とすることができる。局所外部通信ネットワーク4284は、局所外部デバイス4288に接続可能とすることができる。
【0088】
一形態において、データ通信インタフェース4280は、中央コントローラ4230の一部である。他の形態において、データ通信インタフェース4280は、中央コントローラ4230から分離されており、集積回路又はプロセッサを備えることができる。
【0089】
一形態において、遠隔外部通信ネットワーク4282は、インターネット(the Internet)である。データ通信インタフェース4280は、有線通信(例えば、イーサネット(登録商標)又は光ファイバ)又は無線プロトコル(例えば、CDMA、GSM、LTE)を使用して、インターネットに接続することができる。
【0090】
一形態において、局所外部通信ネットワーク4284は、Bluetooth(登録商標)又は消費者赤外線プロトコル等、1つ以上の通信規格を利用する。
【0091】
一形態において、遠隔外部デバイス4286は、1つ以上のコンピュータであり、例えば、ネットワーク化されたコンピュータのクラスタである。一形態において、遠隔外部デバイス4286は、物理的コンピュータでなく、仮想コンピュータとすることができる。いずれの場合であっても、このような遠隔外部デバイス4286は、臨床医等、適切な資格を備えた人にアクセス可能である。
【0092】
局所外部デバイス4288は、パーソナルコンピュータや、スマートフォン又はタブレットデバイス等のモバイルコンピューティングデバイス、又はリモコンとすることができる。
【0093】
[5.4.2 RPTデバイスアルゴリズム]
上述のとおり、本技術のいくつかの形態において、中央コントローラ4230は、メモリ4260等の非一時的コンピュータ可読記憶媒体に記憶されたコンピュータプログラムとして表現される1つ以上のアルゴリズム4300を実施するように構成することができる。アルゴリズム4300は、一般的に、モジュールと称される群にグループ化される。
【0094】
[5.5 加湿器]
[5.5.1 加湿器の概要]
本技術の一形態において、RTシステムは、RPTデバイス4000と空気回路4170(
図4Aに図示)との間に加湿器5000を備え、患者に送達する空気の絶対湿度を、周囲の空気に対して変化させる。通常、加湿器5000を使用して、絶対湿度を上昇させ、患者の気道に送達するのに先立って、気流の温度を(周囲の空気に対して)上昇させる。
【0095】
加湿器5000(例えば、
図5Aに図示)は、加湿器貯蔵部5110と、気流を受ける加湿器入口5002と、加湿した気流を送達する加湿器出口5004とを備えることができる。いくつかの形態において、
図5A及び
図5Bに示されるとおり、加湿器貯蔵部5110の入口及び出口は、各々、加湿器入口5002及び加湿器出口5004とすることができる。加湿器5000は、加湿器ベース5006をさらに備えてもよく、加湿器貯蔵部5110を受け入れるように適合することができ、加熱要素5240を備えることができる。
【0096】
[5.5.2 加湿器の構成要素]
[5.5.2.1 貯水部]
1つのアレンジによると、加湿器5000は、気流の加湿のために蒸発される或る容量の液体(例えば、水)を保持又は留め置くように構成されている貯水部5110を備えてもよい。貯水部5110は、一晩の睡眠等、少なくとも呼吸治療セッションの持続時間中、十分な加湿を提供するように、所定の最大量の水を保持するように構成することができる。通常は、貯蔵部5110は、数百ミリリットルの水で、例えば、300ミリリットル(ml)、325ml、350ml、又は400mlの水を保持するように構成される。他の形態において、加湿器5000は、建物の給水システム等の外部の水源からの給水を受けるように構成することができる。
【0097】
一態様によると、貯水部5110は、気流が通過する際、RPTデバイス4000からの気流に湿度を付与するように構成される。一形態において、貯水部5110は、気流が内部の或る容量の水と接触しつつ、貯蔵部5110を通って曲がりくねった経路を通過するよう促すように構成することができる。
【0098】
一態様によると、貯蔵部5110は、例えば、
図5A及び
図5Bに示されるとおり、横方向に加湿器5000から取り外し可能とすることができる。
【0099】
貯蔵部5110は、任意の開度、及び/又は、そのサブ構成要素間等の、その正常の作動方向から変位及び/又は回転されるときなどに、そこから液体が退出してしまうのを妨げるようにも構成されてよい。加湿器5000によって加湿される気流は、通常は、加圧されるので、貯蔵部5110は、リーク及び/又は流れインピーダンスを通じて、空気圧力が損なわれるのを防ぐようにも構成することができる。
【0100】
[5.5.2.2 伝導性部分]
1つのアレンジによると、貯蔵部5110は、加熱要素5240から貯蔵部5110内の或る容量の液体まで熱を効率的に伝達させるように構成されている伝導性部分5120を備える。一形態において、伝導性部分5120は、プレートとして配置することができるが、他の形状を好適とすることもできる。伝導性部分5120の全部又は一部は、アルミニウム(例えば、約2mmの厚さ、1mm、1.5mm、2.5mm、又は3mm)、他の伝熱性金属、又はプラスチック等の伝熱性材料で作成することもできる。場合によっては、好適な伝熱性は、好適なジオメトリによるより導電性の低い材料で達成することもできる。
【0101】
[5.5.2.3 加湿器貯蔵部ドック]
一形態において、加湿器5000は、加湿器貯蔵部5110を受け入れるように構成されている加湿器貯蔵部ドック5130(
図5Bに図示)を備えてもよい。いくつかのアレンジにおいて、加湿器貯蔵部ドック5130は、加湿器貯蔵部ドック5130内の貯蔵部5110を留め置くように構成されている係止レバー(locking lever)5135等の係止特徴を備えることができる。
【0102】
[5.5.2.4 水位インジケータ]
加湿器貯蔵部5110は、
図5A及び
図5Bに示されるとおり、水位インジケータ(water level indicator)5150を備えてもよい。いくつかの形態において、水位インジケータ5150は、加湿器貯蔵部5110内の或る容量の水の量に関し、患者1000又は介護者等のユーザに1つ以上の示度を提供することができる。水位インジケータ5150によって提供される1つ以上の示度には、最大所定容量の水、25%、50%、又は75%等の任意の部分、又は200ml、300ml、又は400ml等の容量の示度が含まれうる。
【0103】
[5.5.2.5 加湿器トランスデューサ]
加湿器5000は、上述のトランスデューサ4270の代替又は追加として、1つ以上の加湿器トランスデューサ(センサ)5210を備えることができる。加湿器トランスデューサ5210は、空気圧力センサ5212、空気流量トランスデューサ(air flow rate transducer)5214、温度センサ5216、又は湿度センサ5218のうちの1つ以上を備えることができる。加湿器トランスデューサ5210は、中央コントローラ4230及び/又は加湿器コントローラ5250等のコントローラに通信されてもよい1つ以上の出力信号を生成することができる。いくつかの形態において、加湿器トランスデューサは、出力信号をコントローラ5250に通信しつつ、加湿器5000(空気回路4170等)の外部に配置することができる。
【0104】
[5.6 空気回路]
本技術の態様に係る空気回路4170は、使用時、加湿器5000と患者インタフェース3000等の2つの構成要素間で加圧気流を移動させるように構築及び配置された導管又はチューブである。
【0105】
特に、空気回路4170は、加湿器5000の出口5004と患者インタフェース3000の接続ポート3600と流体連通(in fluid communication)することができる。
【0106】
[5.7 トランスデューサ]
RTシステムは、RTシステム、その患者、及び/又は、その環境に関する任意の数のパラメータのうちの1つ以上を測定するように構成されている1つ以上のトランスデューサ(センサ)4270を備えることができる。トランスデューサは、トランスデューサが測定をするように構成されている1つ以上のパラメータを表す出力信号を生成するように構成することができる。
【0107】
出力信号は、電気信号、磁気信号、機械信号、視覚信号、光学信号、音信号、又は任意の数の従来既知の他の信号のうちの1つ以上とすることができる。
【0108】
トランスデューサは、RTシステムの他の構成要素に統合することができ、1つの例としてのアレンジメント(arrangement)では、トランスデューサがRPTデバイスの内部に設けられる。トランスデューサは、RTシステムの実質的な「スタンドアロン」構成要素とすることができ、その例としてのアレンジでは、トランスデューサがRPTデバイスの外部に設けられる。
【0109】
トランスデューサは、RPTデバイス、局所外部デバイス、又は遠隔外部デバイス等のRTシステムの1つ以上の構成要素にその出力信号を通信するように構成することができる。外部トランスデューサは、例えば、患者インタフェース上、又はスマートフォン等の外部コンピューティングデバイス内に配置することができる。外部トランスデューサは、例えば、患者インタフェースの空気回路の一部上、又はこの一部から配置されてもよい。
【0110】
1つ以上のトランスデューサ4270は、流量、圧力、又は温度の特性を表す信号を生成するように構築及び配置することができる。空気は、RTデバイスから患者への気流、患者から大気、周囲の空気、又は何らか他のものへの気流とすることができる。信号は、RTデバイスと患者との間の空気経路の空気の流量等、特定の地点における気流の特性を表すことができる。本技術の一形態において、1つ以上のトランスデューサ4270は、加湿器5000の下流等のRTデバイスの空気圧経路内に配置される。
【0111】
[5.7.1 圧力センサ]
本技術の一態様によると、1つ以上のトランスデューサ4270は、RTデバイスの空気圧経路と流体連通して配置された圧力センサを備える。好適な圧力センサの一例として、HONEYWELL ASDXシリーズのトランスデューサである。代替の好適な圧力センサとして、GENERAL ELECTRICのNPAシリーズのトランスデューサである。一つの実施において、圧力センサは、加湿器5000の出口5004に隣接した空気回路4170内に配置される。
【0112】
圧力センサ(マイクロフォン)4270は、空気回路4170内の圧力の変動を表す音信号を生成するように構成される。マイクロフォン4270は、音に対する感度をより高くするために、空気回路4170内の気流に直接露出することができ、又は、可撓性膜材料の薄い層の後ろにカプセル化されてもよい。この膜は、マイクロフォン4270を熱及び/又は湿度から保護するように機能することができる。
【0113】
マイクロフォン4270からの音信号は、本明細書において以下に説明するアルゴリズム/方法のうちの1つ以上によって音響処理及び解析を行うために、音響解析装置としての役割を担う中央コントローラ4230によって受信することができる。代替として、マイクロフォン4270からの音信号は、本明細書において以下に説明するアルゴリズム/方法のうちの1つ以上によって音響処理及び解析を行うために、その他の音響解析装置によって受信することができる。
【0114】
[5.8 音響解析]
本技術の1つ以上の態様によると、音響解析は、呼吸器疾患又は呼吸器疾患の処置のためのシステムに関する1つ以上のパラメータを判定するため、本明細書に記載の装置等により、実施することができる。
【0115】
本技術の態様に係る音響解析は、介護コストの低減、より高品質の治療の実施、治療システムの使用の容易性の向上、無駄の低減(reducing waste)、及び低コストでのデジタル接続性の提供等の従来技術を超える1つ以上の利点を有することができる。
【0116】
本文書の残りの部分での文脈において明らかとなるように、本文書中の「音響(acoustic)」、「音(sound)」、又は「ノイズ(noise)」という用語は、通常は、これらが聴覚可能であるか不能であるかを問わず、空中振動を含むものが意図されている。このように、本文書中の「音響」、「音」、又は「ノイズ」という用語は、特に指定のない限り、超音波又は亜音速範囲内の空中振動を含むものが意図されている。
【0117】
本開示の音響解析技術のいくつかの実施では、ケプストラム解析(cepstrum analysis)を実施することができる。ケプストラムは、信号の順方向フーリエ変換(forward Fourier Transform)の対数の逆フーリエ変換(inverse Fourier Transform)と考えられてもよい。動作は、本質的に、インパルス応答関数(IRF:impulse response function)及び入力音信号の畳み込みを追加動作に変換できることで、入力音信号が、その後、解析のために、IRFのデータを分離するように、より容易に考慮又は除去され得るようにするものである。ケプストラム解析の技術については、科学誌の標題「ケプストラム:処理ガイド(The Cepstrum: A Guide to Processing)」(Childersら、Proceedings of IEEE、Vol.65、第10号、1977年10月)及びRandall RB、周波数解析(Frequency Analysis)、コペンハーゲン:Bruel & Kjaer、344頁(1977年改定版、1987年)に詳細に記載されている。呼吸治療システムの空気経路特性の検出にケプストラム解析を適用することについては、PCT公開WO2010/091462号の標題「呼吸処置装置のための音響検出(Acoustic Detection for Respiratory Treatment Apparatus)」に詳細に記載されており、その内容全体を引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0118】
ケプストラム解析は、畳み込みの特性に関して理解されてもよい。fとgの畳み込みは、f*gと書き表すことができる。この操作は、1つが逆転及びシフトされた後の2つの関数(fとg)の積の積分であってもよい。このように、これは、以下のような一種の積分変換である。
【数1】
【0119】
以上では記号tが使用されているが、これは、時間領域を表す必要はない。しかしながら、そのような文脈では、畳み込み方程式が瞬間tにおける関数f(τ)の重量平均として記載することができ、ここで重みづけは、量tによって単にシフトされたg(-τ)で与えられる。tが変化すると、重みづけ関数は、入力された関数の異なる部分を強調する。
【0120】
呼吸治療システムの空気経路等の、時不変(time-invariant)の線形音響システムのため、出力を入力に関連付けることのできる数学的モデルは、畳み込みに基づくものとすることができる。空気回路4170中の音を感知するように適合されたマイクロフォン4270によって生成された音信号は、時間(t)の関数として、システムインパルス応答関数(IRF)で「畳み込み」を行った入力(音)信号と見なすことができる。
y(t) = S1(t) * h1(t) (2)
【0121】
ここで、y(t)はマイクロフォン4270によって生成された出力(音)信号であり、s1(t)は呼吸治療デバイス4000の圧力発生器4140内で、又はこれによって生成された音(例えば、モータ動作ノイズ)を表す入力信号であり、h1(t)が音源からマイクロフォン4270までのシステムIRFである場合には、システムIRFのh1(t)は、ユニットインパルス入力へのシステム応答と考えられてもよい。呼吸治療システムの空気経路等、線形音響システムにおいて、システムIRFのh1(t)は、2つの構成要素間の接合等の空気経路中の任意の不連続点からのユニットインパルスの反射からなる。
【0122】
音信号y(t)のフーリエ変換による等式(2)の周波数領域への変換(例えば、離散フーリエ変換(「DFT(discrete Fourier Transform)」)又は高速フーリエ変換(「FFT(fast Fourier Transform)」)及び畳み込み定理(Convolution Theorem)を考慮することで、以下の等式が作成される。
Y(f) = S1(f)H1(f) (3)
【0123】
ここで、Y(f)はy(t)のフーリエ変換(スペクトル)、S1(t)はs1(f)のフーリエ変換、及びH1(f)はh1(t)のフーリエ変換である。換言すると、時間領域の畳み込みは、周波数領域における乗算となる。
【0124】
対数演算は、乗算が加算に変換されるように、等式(3)に適用されてもよい。
【数2】
【0125】
その後、等式(4)は、逆フーリエ変換(IFT)(例えば、逆DFT又は逆FFT)により、時間領域に戻すように変換することができ、これが結果として、複素数値化された「ケプストラム」-スペクトラムY(f)の対数の逆フーリエ変換を生じる。
【数3】
【0126】
横座標(abscissa)τは、ケフレンシ(quefrency)として既知の実数値化変数であり、単位は秒で測定される。したがって、時間領域において畳み込みをする効果は、スペクトラムの対数における加法的な扱い(additive)となり、ケプストラム又はケフレンシ領域中にそのまま残る。特に、出力されたケプストラム
【数4】
は、2つの加法的成分、すなわち、入力信号s
1(t)のケプストラム
【数5】
と、システムIRFのh
1(t)のケプストラム
【数6】
からなる。
【0127】
ケフレンシ領域中のデータ値の調査等のケプストラム解析からのデータの考察により、RTシステムに関する情報を提供することができる。例えば、システムに対するケプストラムデータの過去又は既知のベースラインからシステムのケプストラムデータを比較することにより、差異等のこの比較を使用して、機能又は目的を変動させる自動制御を実施するのに使用することができるシステム中の差異又は類似点を認識することができる。
【0128】
[5.8.1 音響シグネチャの抽出]
本技術の1つの実施には、呼吸治療システム中のマスク等、構成要素の音響シグネチャを抽出するためのデバイス、装置、及び/又は、方法が含まれる。この実施では、以上のように配置されたマイクロフォン4270等の音センサによって生成された音信号の解析を利用してもよい。
【0129】
本技術には、送風機の音を含むが、これに限定されない他のシステムのノイズ及び応答からの音響マスクの反射を分離することのできる解析方法が含まれる。
【0130】
マスクの音響シグネチャを抽出する例としての方法は、少なくとも例えば、20kHzの、ナイキストレート等の所望のサンプリングレートで、マイクロフォン4270によって生成される出力信号y(t)のサンプリングを行うものである。ケプストラム
【数7】
は、サンプリングされた出力信号から計算することができる。ケプストラムの反射成分は、その後、ケプストラムの入力信号成分から分離することができる。ケプストラムの反射成分は、入力信号のマスクからの音響反射を含むため、マスクの「音響シグネチャ(acoustic signature)」と称される。その後、音響シグネチャが、その音響シグネチャからマスクを特定するために、既知のマスクを含むシステムから得られた過去に測定された音響シグネチャのうち、任意の好適な種別のデータ記憶構造等の所与又は所定のデータベースと比較することができる。任意選択的に、いくつかの基準(criteria)を設定して、適切な類似性を判定することができる。一例としての実施形態において、この比較は、測定された音響シグネチャと記憶された音響シグネチャとの間の相関における単一且つ最大のデータピークに基づいて完成することができる。しかしながら、このアプローチは、いくつかのデータピークに亘る比較によって、又は代替として改善することができ、この比較は、抽出された固有の組(unique set)のケプストラムの特徴上で完成される。
【0131】
図7は、本技術の一態様に係るRTシステム7000の概略図である。
図7に示されるこの一例としての実施形態において、(長さLを備えた)導管7010は、スピーカからの音を含むか、又は代わりに送風機(例えば、モータ及び/又はインペラ)の動作のノイズのみを含む等のRPTデバイス7040(加湿器を備えることができる)によって出される音の音響導波路(acoustic waveguide)として効果的に作動する。この一例としての実施形態において、入力信号は、RPTデバイス/加湿器7040により発生される音である(すなわち、スピーカからの音を要求又は使用しない)。入力信号(例えば、インパルス)は、導管7010の一端に位置決められたマイクロフォン7050に入り、導管7010に沿ってマスク7020まで進み、空気経路(導管及びマスクを含む)内の特徴によって導管7010に沿って反射して戻され、マイクロフォン7050にもう一度入る。したがって、システムIRF(入力インパルスで生成された出力信号)には、入力信号成分と反射成分とが含まれる。RTシステム7000のキーとなる特徴は、音が空気経路の一端から反対の端部まで進むのに掛かる時間である。マイクロフォン7050は、RPTデバイス/加湿器7040から来る入力信号を受信し、その後しばらくして、導管7010でフィルタリングされてマスク7020(及び潜在的には、マスクに取り付けられた他の任意のシステム7030で、例えば、マスク7020が患者に助付けられたときのヒトの呼吸器系)によって反射及びフィルタリングされた入力信号を受信するため、システムIRF内に現れる。これは、導管7010(反射成分)のマスク端部からの反射に関連付けられたシステムIRFの成分が、比較的短い遅延の後にマイクロフォンに到達する入力信号(入力信号成分)に関連付けられたシステムIRFの成分に関して、遅延されることを意味する。(実際の目的では、この短い遅延は、マイクロフォン7050が最初に入力信号に応答するとき、無視され、ゼロ時間近似することができる。)反射成分の遅延は、2L/cに等しい(ここでLは、導管の長さであり、cは、導管中の音の速度である)。
【0132】
システム7000は、接続7025を介してマイクロフォン7050と通信する音響解析装置7015を備える。例えば、音響解析装置は、マイクロフォンから信号を受信する入力インタフェースを備えることができる。以下にさらに詳細に説明するとおり、音響解析装置7015は、導管7010内の二酸化炭素の濃度と、次いで二酸化炭素濃度から患者の心拍出量とを判定するための特定の方法論を実施するように構成されている1つ以上のプロセッサを備える。したがって、音響解析装置7015は、これらの方法論を実施するための集積チップ、メモリ及び/又はその他の制御命令、データ、又は情報記憶媒体を備えることができる。例えば、このような検出方法論を網羅したプログラム化命令は、音響解析装置7015のメモリ内の集積チップ上でコード化されてもよい。このような命令は、適切な持続性データ記憶媒体を使用して、ソフトウェア又はファームウェアとしてロードされ、さらに又は代替的にロードされてもよい。
【0133】
RTシステム7000の他の特徴として、空気経路が損失を頻発するため、導管が十分に長いと、入力信号成分がシステムIRFの反射成分の開始した時間分、無視可能な量まで減衰するということである。この場合には、入力信号成分は、システムIRFの反射成分から分離することができる。一例として、
図8は、入力信号がRPTデバイスの送風機4142から発せられてもよい例としての治療システムのうち、このようなシステムIRFの一例を示している。或いは、入力信号は、空気経路のデバイス端部におけるスピーカから発せられる音を(RPTデバイス/加湿器7040によって生成された音の有無を問わず)含むことができる。
図8は、システムIRFの反射成分8020が、2L/cに等しい遅延を伴って、システムIRF内の入力信号成分8010から遅延して現れることを示している。
【0134】
前述の等式(2)、(4)、及び(5)に関連付けられたシステムIRFのケプストラム
【数8】
は、一般的に、システムIRF h
1(t)と同一の特性を有する。すなわち、ケプストラム
【数9】
は、2L/cのケフレンシ付近に集中した反射成分と、ケフレンシのゼロ付近に集中した入力信号成分とを含む。本技術は、ケプストラム解析は、例えば、出力されたケプストラムデータの位置及び振幅の検討により、(入力信号成分
【数10】
を含むが、これに限定されない)その他のシステムアーティファクトから、出力ケプストラム
【数11】
の反射成分を分離するように構成される。
【0135】
この分離は、入力信号s
1(t)が過渡的(例えば、インパルス)又は定常的なランダムのいずれかである場合に達成することができる。いずれの場合であっても、ケプストラムの入力信号成分
【数12】
は、ゼロのケフレンシ付近に集中するであろう。例えば、入力信号は、マイクロフォンの測定期間中、一定速度で作動するRPTデバイスで生成された音とすることができる。この音は、「周期定常(cyclestationary)」と称されてもよい。すなわち、これは定常的なランダムであり、その統計値において周期的である。これは、任意の時点で、出力信号y(t)は入力信号及びシステムIRFのすべての過去の値の関数である(等式(2)参照のこと)であるため、システムIRFの入力信号及び反射成分は、出力信号y(t)の測定時間全体に亘って「スミア(smeared)」されてもよいことを意味する。しかしながら、以上に記載のケプストラム解析は、この畳み込みの混合(convolutive mixture)から出力ケプストラム
【数13】
の反射成分を分離するように実施することができる。
【0136】
図9は、3つの異なるマスクで実施された、
図7のシステムのような呼吸治療システムの測定からの種々の例としてのケプストラムの実際の部分を描いており、入力信号はRPTデバイス送風機によって生成された音である。この例の各マスクは、送風機の2つの異なる動作速度、すなわち、10krpmと15krpmでテストされた。この例ではこれらの速度を使用したが、この方法論は、特に、結果として得られる音がマイクロフォンで検知可能であれば、他の送風機速度で実施されてもよい。
【0137】
図9において、反射成分は、12ミリ秒(12ms)のケフレンシの音で開始する、合計6つのケプストラム中にはっきりと見ることができる。例としての治療システムでは、2メートルの導管が使用され、音の速度は343m/sであるため、この位置は、(2L/c)であると予測される。
図9において、グラフは、上から下へ、以下の順でマスクからのケプストラムを示している。
・10krpmにおけるResMed Ultra Mirage(登録商標)
・15krpmにおけるResMed Ultra Mirage(登録商標)
・10krpmにおける使用のResMed Mirage Quattro(登録商標)
・15krpmにおけるResMed Mirage Quattro(登録商標)
・10krpmにおけるResMed Swift II(登録商標)
・15krpmにおけるResMed Swift II(登録商標)
【0138】
図7は、1つ以上の代替の実施において、単一のマイクロフォン7050を有するシステム7000を示しているが、多数のマイクロフォンを有することができる。
図14は、本技術の態様に係るこのようなシステム1400を示している。システム1400は、以下に記載の差異を除いて、
図7のシステム7000と同一である。したがって、
図14の特徴は、
図7を参照して説明した、
図7においてラベル付けした特徴と同一であり、指定のない限り、類似のラベル番号を付してある。
【0139】
システム7000は、第1のマイクロフォン1450と、第2のマイクロフォン1460とを備え、双方ともに、マイクロフォン7050に類似している。第1のマイクロフォン1450は、空気回路に沿って第2のマイクロフォン1460から分離されている。一つの実施において、分離距離は、Lであり、導管1410の長さである。システム1400は、接続1425を介して第1のマイクロフォン1450と、また接続1435を介して第2のマイクロフォン1460と、連通した音響解析装置1415を備える。
【0140】
1つ以上の実施において、第2のマイクロフォン1460は、追加測距情報(extra ranging information)(1つ以上の音源からの飛行時間のモデル化)、ノイズ低減、又はその他の機能を提供する能力等のより高い精度を提供することができる。いくつかの実施において、第1のマイクロフォン1450は、導管1410内の音を感知し、第2のマイクロフォン1460は、導管1410又はRPTデバイス/加湿器1440の外側の環境(例えば、背景ノイズ)を感知する。2つ以上のマイクロフォンを備えたシステムでは、信号処理は、RPTデバイス/加湿器1440によって生成された音の反射から、患者の音又は環境におけるその他の干渉ノイズを取り除くことにより、システム1400の信号対ノイズ比を増加させるように配置することができる。
【0141】
他の実施において、第2のマイクロフォン1460を使用して、導管1410内の音を感知する。音は、RPTデバイス/加湿器1440によって生成され、導管1410を下って進む。音がRPTデバイス/加湿器1440から第1のマイクロフォン1450に、その後、第1のマイクロフォン1450から第2のマイクロフォン1460に進むのに要する時間は、導管1410内の音の速度cに応じて決まる。
【0142】
一般的に、生成された音が第1のマイクロフォン1450に出現する時間と、同一の音が第2のマイクロフォン1460に出現する時間との間の遅延は、約L/cであり、Lは、第1及び第2のマイクロフォン1450及び1460の間の導管1410の長さであり、cは、導管1410内の音の速度である。このような実施は、遅延が約2L/cである反射ベースシステムと区別するため、「透過ベースシステム(transmission-based system)」と称される。
【0143】
透過ベースシステムでは、第1のマイクロフォン1450で生成された信号のケプストラム
【数14】
は、ケフレンシのゼロ付近に集中する入力信号成分
【数15】
を含む。第2のマイクロフォン1460で生成された信号
【数16】
のケプストラムは、IRFケプストラム
【数17】
(透過ベースシステムの音響シグネチャ)を含み、これはおおよそ、L/cのケフレンシにおける単一のピークであり、入力信号成分
【数18】
に加えられる。したがって、音響シグネチャ
【数19】
は、このケプストラム
【数20】
からケプストラム
【数21】
を減算することによって得ることができる。次いで、音響シグネチャ遅延を、音響シグネチャ
【数22】
のピークのケフレンシ位置として推定することもできる。システム1400等の透過ベースシステムにおける音響シグネチャは、マスク1420の特性を表さず、導管1410の特性のみを表すため、マスク特定又はその他のマスク特性解析には相応しくない。
【0144】
[5.8.1.1 後方反射の最少化]
音響シグネチャの抽出における1つの複雑な因子は、導管7010のデバイス(RPTデバイス)端部から音響の「後方反射(bask-reflection)」である。導管7010と導管7010が接続されるRPTデバイス/加湿器7040の内部キャビティとの間の音響インピーダンスの変化の結果として、マスク7020から反射された音が導管7010に沿って逆に進行(travelled back)した後、これらの後方反射が導管7010のデバイス端部から発生する。このような後方反射は、マスクの音響シグネチャに対すマッディング効果(maddying effect)を有する。したがって、いくつかの実施では、後方反射が低減又は最少化可能であれば、音響シグネチャ解析はより正確に行われる。例えばマスクの寸法が、音響センサと流れ発生器内部の横断面積におけるいずれかの非連続との間の距離と同様の物理的尺度である場合には、マスクからの反射は、流れ発生器の後方反射の応答上の出力信号に畳み込みされてもよい。いくつかの場合では、後方反射を特徴づけし、成分反射からこれらをデコンボリューション(deconvolve)することが望ましいこともある。しかしながら、設計により、後方反射を最少化することが望ましいこともある。
【0145】
図10に示される、このような一つの実施において、マイクロフォン1050に最も近い導管1010の端部は、後方反射を低減するように構成されている構造1060を備える。構造1060は、導管1010のデバイス端部から徐々に直径が増加するRPTデバイス/加湿器1040の内部キャビティへと延設された、直径が導管1010の直径と同一のホーン(horn)として図示されている。音響導波路の音響インピーダンスは導波路の直径に関連するため、ホーン構造1060は、導管1010とRPTデバイス/加湿器1040のキャビティとの間の音響インピーダンスの変化を漸次的にする(gradualising)ことにより、後方反射を最少化する。ホーン構造1060は、
図10に示されるような円錐状のプロファイルとすることができ、又はホーンの横断面は、金管楽器のベル(bell)のように湾曲してもよい。ホーン構造1060の効果は、システム構成要素1020の音響シグネチャにおける後方反射成分を低減することである。
【0146】
[5.8.1.2 スペクトルの平坦化]
ケプストラム
【数23】
を計算する等式(5)においてIFTを実施する前に、対数スペクトルLog{Y(f)}のローパスフィルタバージョンをそれ自体から減算することで、例えば、対数スペクトルLog{Y(f)}の移動平均を対数スペクトルLog{Y(f)}から減算することで、対数スペクトルの全体形状を平坦化し、入力信号s
1(t)のランダムさに対する音響シグネチャの分離の感度を低減することができる。すなわち、入力信号s
1(t)が性質上特にランダムでなくても、このような平坦化は、原点(τ=0)の周辺の出力ケプストラム
【数24】
における入力信号成分
【数25】
を集中させるであろう。この濃度は、出力ケプストラム
【数26】
におけるシステムIRF(音響シグネチャ)の反射成分からの入力信号成分
【数27】
の分離可能性を増加させる。導管共鳴周波数が平坦化プロセスにおいて除去されないように、フィルタを設定には注意を払うことを必要とする。例えば、フィルタカットオフ点は、導管共鳴がフィルタで顕著に取り除かれた後、平坦化プロセスによって保存されるのに十分な低さでなければならない(又は、移動平均のウィンドウが十分に低くなければならない)。代替的な実施において、対数スペクトルLog{Y(f)}は、ケプストラム
【数28】
を計算する等式(5)においてIFTを実施するのに先立ってハイパスフィルタリングすることができる。
【0147】
[5.8.2 音響シグネチャ遅延の解析]
出力ケプストラム
【数29】
は、サンプリングされた出力信号y(t)の有限時間ウィンドウに亘って計算することができる。ウィンドウが長くなるほど、音響シグネチャと入力信号成分との間により明確な分離を生成することができる。しかしながら、空気経路の音響特性は、呼吸サイクルに亘るガス消費の変化、湿度の変化、チューブの抗力(tube drag)(予測不能に空気経路を長くし得る)等の因子のために、時間が経過するにつれて変動することがあるため、ウィンドウは、ウィンドウに亘る空気経路特性の顕著な変動を予期することができるように、ウィンドウを長く作成してはならない。一例において、ウィンドウは、約200msの持続時間である。他の好適なウィンドウ持続時間が実施されてもよい。
【0148】
複数の出力ケプストラム
【数30】
は、複数のウィンドウに亘って計算することができ、各ウィンドウから抽出された音響シグネチャ遅延を推定することができる。結果は、時系列になっている音響シグネチャ遅延の推定である。このような時系列になった遅延推定は、アレイ、ベクトル、バッファ等の解析又は処理のための任意の好適なデータ構造を使用して実施することができる。上述のとおり、反射ベースシステムにおいて、音響シグネチャ遅延は、2L/cに等しく、(ここで、Lは、導管の長さであり、cは、導管内の音速度である)、透過ベースシステムにおいて、音響シグネチャ遅延は、L/cに等しい。したがって、音響シグネチャ遅延の変動は、導管の長さ及び/又は導管中の音の速度の変動を反射する。
【0149】
ガス混合物中の音の速度は、混合物の組成に応じて変動する。特に、呼吸治療システムの導管中の音cの速度は、導管中の二酸化炭素の濃度が増えるに連れて減少する。
【0150】
例えば、2メートル導管は(室温及び室内圧力の大気中の音の速度に基づいて)2メートルの長さであると、より高い二酸化炭素濃度が一旦導管に充填された際に、導管の効果的な長さが変化して現れる。これは、二酸化炭素ガス中の音の速度が20℃で一秒あたり約267メートル(m/s)であり、大気中の音の速度は、20℃で約343m/sであるからである。したがって、ケプストラム解析又はその他の信号処理技術を通じて導管内の音を解析する際、音のこの特性を利用して、導管内の二酸化炭素濃度を推定することができる。
【0151】
一般的に、呼吸治療システムの導管内の二酸化炭素の濃度は、呼気の終わりに最高となり、吸気の終わりに最低となる呼吸サイクルに亘って変動する。1つの推定によると、20℃で、呼吸導管中の音の速度は、このCO2の濃度の変化が故に、呼吸サイクルに亘って約0.67%変動する。この変動は、呼吸速度における音響シグネチャ遅延の周期的変動として反射されることとなる。導管の長さLが呼吸サイクル(breathing rate)とともに周期的に変動しないものとすることが安全である。結果として、時系列になった音響シグネチャ遅延の推定と、特に、その遅延推定の変動とは、患者の呼吸数周辺の周波数帯域からの成分に関連して、呼吸治療システムの導管中のCO2の濃度に関する情報を生じるであろう。任意選択的に、CO2の濃度を判定することは、(例えば、デバイス設定、使用中であるか否かを問わず加湿器とその構成、導管の種別、加熱の有無等に基づいて、)温度、湿度、圧力、周囲のCO2濃度、背景ノイズ等、1つ以上の環境パラメータを補正することを含むことができる。
【0152】
図11は、本技術の一態様に係る呼吸治療システムの空気経路の音響シグネチャ遅延を推定する方法11000を示すフローチャートである。方法11000は、ステップ1110で開始してもよく、等式(5)に関して上述したようなウィンドウの間、出力信号y(t)から出力ケプストラム
【数31】
を演算する。ステップ1110は、上述のとおり、出力ケプストラム
【数32】
を演算するのに先立って、対数スペクトルLog{Y(f)}を任意選択的に平坦化する。
【0153】
ステップ1120が続き、反射成分(音響シグネチャ)がステップ1110で演算されたケプストラムから分離される。次のステップ1130で、音響シグネチャ遅延は、対応ウィンドウの時間に沿って推定及び記録される。
【0154】
次いで、ステップ1140では、より多くの音響シグネチャ遅延が得られるかをチェックする。そうであれば(「Y」)、方法11000は、ステップ1160に進み、ステップ1110に戻って、次のウィンドウから新たなケプストラムを計算するのに先立って、次のウィンドウまで待つ。そうでない場合(「N」)、方法11000は、ステップ1150で終わる。
【0155】
[5.8.2.1 呼吸数の周波数帯域の解析(例えば、CO2濃度及び/又は心拍出量)]
時系列になった音響シグネチャ遅延の推定は、導管中のCO2濃度の変動が故に変動が大きくなる音響シグネチャ遅延の時系列を抽出するために、呼吸数の周波数帯域にバンドパスフィルタリングすることができる。安静時の正常な成人の呼吸数の周波数帯域は、約0.1Hz~0.5Hzである。
【0156】
バンドパスフィルタされた遅延時系列は、透過ベースシステム等の各遅延推定によって空気回路の現在の長さLを分割することにより、音の推定の速度cの時系列に変換することができる。システム7000等、反射ベースシステムにおいて、結果としての推定は、その後、2で乗算することができる。次いで、音の推定の速度cは、窒素、酸素、及びCO2の特性を使用して、空気回路中のCO2濃度の推定に変換することができる。
【0157】
一実施において、分割濃度p
iによって重みづけられた混合物のガス中の音の速度c
iの重みづけ和としての、ガス混合物中の音の速度cの単純なモデルを使用することができる。
【数33】
【0158】
表1は、室温における大気中の4つの主要原料ガスの純粋形態における音の速度c
iの推定を、それらの大気中における通常の分割濃度p
iとともに含んでいる。
【表1】
【0159】
導管中の窒素及びアルゴンの分割濃度(fractional concentration)p
1及びp
2が呼吸サイクルに亘って変化しないという前提で、空気回路内の酸素及び二酸化炭素の濃度は、補完的に呼吸サイクルに亘って変化する。これは、任意の瞬間の二酸化炭素の分割濃度をpと書き表すとすると、酸素の分割濃度は、(1-(p
1+p
2)-p)と書き表すこともできる。これらの値を等式(6)に代入すると、空気回路の音の測定速度cに関して、CO
2の分割濃度pに対する式が導出され得る。
【数34】
【0160】
表1の値を使用すると、等式(7)は、測定された音速cを空気回路内のCO
2の分割濃度pに関連付ける次の式に簡略化できる。
【数35】
【0161】
したがって、システムは、フィルタリングされた時系列になった音響シグネチャ遅延の推定に基づいて、1つ以上のCO2濃度示度、又はその変動を生成するように構成することもでき、ここでフィルタリングは、呼吸の周波数(respiration frequency)に関連付けられた周波数を分離又は包含する役割を担う。このような生成は、判定された濃度示度が閾値を満足する(例えば、超過する)か等の取りうる示度及び/又はその評価に基づいて、表示又は通信されたメッセージ、及び/又は、提供された治療を変更又は変化させる(例えば、圧力又は流れ)制御信号を含む、1つ以上の出力信号を含むことができる。
【0162】
例えば、
図12は、同一の時間軸上にプロットされた2つの同時期に起こった時系列を含んでいる。上方トレース1200は、呼吸数の周波数帯域にバンドパスフィルタリングされた時系列になった推定の音響シグネチャ遅延値である。下方トレース1250は、トレース1200に発生した音響シグネチャが反射されるマスクのプレナムチャンバにおけるCO
2センサからの時系列になった同時期のCO
2濃度の測定値である。これは、例えば、音響シグネチャ遅延のトレース1200における、例えば1210のピーク、すなわち、音の遅延が増した瞬間又は速度が最も遅い瞬間が予期されるように、呼気による測定されたCO
2濃度におけるピーク、例えば、1260と合致するが、これは、空気中のCO
2濃度が上昇するほど、空気中の音速度が減少するためであることが見て取れる。
【0163】
追加の例として、呼吸サイクルに亘る導管中のCO2濃度の変動の示度から、他の実施可能な情報を抽出することができる。一例において、呼気の終末における導管中のCO2の分割濃度(呼気終末(end-tidal)のCO2濃度、又はEtCO2)、すなわち、呼吸サイクルに亘るCO2濃度のピーク値を、患者の心拍出量を測定する改定フィック技術において使用することができる。改定フィック技術は、[1]呼吸治療システムのデッドスペースにステップ変化を加えることと、EtCO2への効果を測定して、患者の心拍出量を推定することとを含む。改定フィック技術の1つの実施において、デッドスペースの有効容量は、CPAP処置圧力又はHFT流量への変更で代替されてもよい。例えば、圧力又は流量がより低いと、システムベントを通じた洗い流しの流量を低くすることにより、有効なデッドスペースを増加させる。結果として得られるEtCO2の変化が推定され、患者の心拍出量の推定に変換される。
【0164】
図15は、本技術の一態様に係る患者の心拍出量を判定するためのプロセス1500の一例を示すフローチャートである。プロセス1500は、音響解析装置7015等の音響解析装置によって実行されるものとして、以下に説明するが、プロセス1500は、上述のとおり、アルゴリズム4300の一部として、中央コントローラ4230によっても実行されてよい。
【0165】
ステップ1510において、音響解析装置は、患者に連結された導管内の少なくとも1つの音センサを使用して、音の測定値を判定する。音センサは、呼吸治療システム7000の導管7010等、導管内の種々の音を検出するマイクロフォン7050とすることができる。1つ以上の実施形態において、ステップ1510に先立って、又はこれと同時に、音源により、導管内に音を生成することができる。音源は、RPTデバイス/加湿器7040等、呼吸治療システムの要素とすることができ、この場合、導管は、連続空気陽圧(「CPAP」)システム又は同様のシステム等の呼吸治療システムの空気経路の一部である。代替的に、導管が呼吸治療システムの空気経路の一部である場合と、導管が呼吸治療システムの空気経路から分離されている場合との双方において、音源は、スピーカとすることができる。音の測定値は、音源によって生成された導管内の音の測定値とすることができる。1つ以上の実施形態において、少なくとも1つの音センサは、マイクロフォンであってもよく、導管は、マイクロフォンが連結された呼吸治療システムの空気経路の一部とすることができる。
【0166】
ステップ1520では、音響解析装置が、少なくとも部分的に音の測定値に基づいて、導管内の二酸化炭素濃度を判定する。1つ以上の実施形態において、二酸化炭素濃度を判定することは、音の測定値を表すデータサンプルのフーリエ変換を計算することを含むことができる。1つ以上の実施形態において、二酸化炭素濃度を判定することは、音の測定値を表すデータサンプルのフーリエ変換の対数を計算することをさらに含むことができる。1つ以上の実施形態において、二酸化炭素濃度を判定することは、音の測定値を表すデータサンプルのフーリエ変換の対数の逆フーリエ変換を計算することをさらに含むことができる。1つ以上の実施形態において、二酸化炭素濃度を判定することは、(a)音の測定値を表すデータサンプルのフーリエ変換の対数の逆フーリエ変換と、(b)呼吸治療システムの空気経路中のベースライン二酸化炭素濃度を表すデータサンプルのフーリエ変換の対数の逆フーリエ変換との間の差異を計算することをさらに含む。
【0167】
1つ以上の実施形態において、音響解析装置は、導管又は呼吸治療システムの1つ以上の環境パラメータ及び/又はシステムに入力されるその他のデータを検出するように構成されているセンサ等により、このようなパラメータを判定することができる。1つ以上の環境パラメータには、空気温度、周囲の圧力、周囲の二酸化炭素濃度、背景ノイズ、又はこれらの組み合わせのうちのいずれか1つ以上を含むことができる。次いで、音響解析装置は、二酸化炭素濃度の判定時、1つ以上の環境パラメータを修正することができる。例えば、温度は、導管内の音の速度に影響を与えうる。温度を考慮することは、続く二酸化炭素濃度の判定がより正確になるように、音の速度に対する温度の影響を考慮する。
【0168】
1つ以上の実施形態において周囲二酸化炭素濃度に対して、音響解析装置は、導管が患者に連結されないとき、導管中のベースラインの二酸化炭素濃度を判定することができる。このような状況下において、導管中の二酸化炭素の濃度は、周囲の二酸化炭素濃度を表している。代替又は追加として、音響解析装置は、音響解析装置の位置に対する二酸化炭素濃度の情報を有する1つ以上の外部データベースをクエリ(query)することができる。代替又は追加として、音響解析装置は、音の測定値を間接的に感知するのでなく、導管中の二酸化炭素の濃度を直接感知することのできる二酸化炭素センサを備えることができる。音響解析装置は、二酸化炭素濃度を評価する二酸化炭素センサからの二酸化炭素濃度で、音の測定値を判定することにより、判定された二酸化炭素濃度を比較することができる。
【0169】
1つ以上の実施形態において、音センサは、背景ノイズを検出することができる。例えば、音センサは、患者が導管に連結されるのに先立ち、背景ノイズを検出することができる。例えば、導管が呼吸治療システムの空気経路の一部である場合、少なくとも1つの音センサは、呼吸治療システムを使用して、患者が開始する前に背景ノイズを検出することができる。代替的に、音の測定値が導管中の音源に基づく場合、少なくとも1つの音センサは、音源が音を生成する前後のいずれか、又は音源が音を生成する前後との両方で、背景ノイズを検出することができる。
【0170】
ステップ1530では、音響解析装置は、少なくとも部分的に二酸化炭素濃度に基づいて、患者の心拍出量を判定する。患者の心拍出量を判定することは、少なくとも部分的に以上に検討の改定フィック法に基づいて、且つ、少なくとも部分的に二酸化炭素濃度に基づくものとすることができる。改定フィック法は、等式(9)に依存する。
【数36】
【0171】
ここで、COは心拍出量であり、VCO2は呼気の二酸化炭素濃度であり、CvCO2は静脈の二酸化炭素含有量であり、CaCO2は、動脈の二酸化炭素含有量である。
【0172】
心拍出量が正常(N)及び再呼吸(R)条件下で変化しないままであるという前提で、等式(9)は、結果として、以下である。
【数37】
【0173】
正常及び再呼吸の比率を減算することにより、以下の微分フィック等式が得られる。
【数38】
【0174】
二酸化炭素は血液中に迅速に拡散するため(すなわち、酸素より22倍速い)、CvCO
2が正常条件と再呼吸条件との間で異なることはないと仮定することができるため、等式(11)の分子から静脈含有量が消滅し、等式(12)を残す。
【数39】
【0175】
CaCO
2におけるデルタは、二酸化炭素の解離曲線のスロープ(S)で乗算されたetCO2におけるデルタで近似可能である。この曲線は、二酸化炭素容量(二酸化炭素含有量の計算に使用される)と二酸化炭素の部分圧力との間の関係を表している。この関係は、二酸化炭素の部分圧力の15~70mmHgの間で線形であるとみなすことができ、結果として、等式(13)が得られる。
【数40】
【0176】
以上によると、患者の心拍出量は、患者の呼気の二酸化炭素濃度に基づいて判定可能である。したがって、患者は、睡眠中一晩を通じて等の睡眠セッション全体を通じて、呼吸治療システムを使用することができる。使用中、呼吸治療システム内又はこれとは分離された本技術の音響解析装置は、患者の心拍出量を判定することができる。このような判定は、非侵襲的に、患者の妨げとなることなく、実施することができる。しかしながら、患者又はその他のユーザは、患者の心拍出量のさらなる理解を得ることができる。
【0177】
図15のプロセス1500は、一旦実施されると、患者の個別の心拍出量を判定することができる。代替として、プロセス600のプロセスステップのうちの1つ以上を繰り返すことができる。例えば、二酸化炭素濃度の判定と心拍出量の判定との双方は、患者の複数の個別の心拍出量を判定するため、1つのセッション中に複数回実施することができる。上述のとおり、導管が呼吸治療システムの一部である場合、このセッションは、一晩の間、又は複数の異なる晩を通じて、呼吸治療システムを使用する間とすることができる。音響解析装置は、次いでセッション中の心拍出量の傾向を判定することができる。この傾向に基づいて、1つ以上のアクションをとることができる。例えば、この傾向は、心拍出量の悪化を示すこともある。そのような場合には、医療処置が探し求められるように、患者に通知されてもよい。代替的に、この傾向は、心拍出量の改善を示すこともある。そのような場合には、医療処置が停止又は減少可能である。
【0178】
単一のセッション又は複数のセッションの心拍出量は、1つ以上の閾値として、年齢、性別、心臓の健康、投薬計画等の人口規範値と比較可能である。表示又は通信されるメッセージ、及び/又は、心拍出量及び/又はその評価に基づいて治療(例えば、圧力又は流れ)を作成する治療デバイスのセットポイント(set point:設定点)を変更又は変化させる制御信号を含む、1つ以上の出力信号の生成等のアクションは、判定された心拍出量が閾値を満足している(例えば、超過している)か等の比較によって調整することができる。傾向のデータは、(a)音響解析装置での1つ以上の課題に基づいて、正確でない心拍出量を特定することにおける音響解析装置の支援と、(b)心拍出量における悪化(又は改善)傾向を示す患者のデータにおける変化の検出とを行うため、患者の通常のベースラインを検出するのに使用することができる。悪化傾向が観察される場合には、システムは、ヘルスケア専門家によるチェックアップ(check-up)を推奨する出力を生成することもできる。例えば、浮腫による心不全は、心拍出量の低下によって見出すことができる。心拍出量の低下の検出により、心不全を表すことができる。本音響解析装置による心拍出量の低下の検出により、患者に、解析に基づいて生成された出力メッセージに応じて医学的関心を持たせることができる。慢性閉塞性肺疾患(COPD:Chronic Obstructive Pulmonary Disease)の悪化も、このようなアプローチを使用して予測又は検出することができる。
【0179】
1つ以上の実施形態において、呼吸治療システム内の圧力センサ、流れセンサ、速度センサ、又はその他のセンサからの信号は、呼吸の速度及び深さ(速度が増加すること、及び呼吸がより浅くなること)に関して解析可能である。この情報は、心代償不全(cardiac decompensation)を予測又は検出するために、心拍及び/又は心拍出量とともに使用することができる。呼吸治療システムを使用した患者の他のパラメータを心拍出量と組み合わせることができる。このようなパラメータには、一回の呼吸量(tidal volume)、毎分換気量等が含まれうる。
【0180】
一体化された音響解析装置と心拍出量の検出を備えた呼吸治療システムとは、本技術によって考慮されるものであるが、本装置の構成要素の方法論は、システム内の複数の構成要素に亘って共有することができる。例えば、測定デバイスは、導管の遅延を判定し、データを他の処理システムに転送する測定プロセスを単に実施することができる。第2の処理システムは、次いで、二酸化炭素濃度を判定するためにデータを解析してもよく、次いで、上述のとおり、心拍出量を判定するために、他のデバイスにデータを送信することができる。第3の処理システムは、例えば、患者又は臨床医又は医師への表示のために、測定装置又は他の装置に戻すように、電子形態で記載されたメッセージのうちの1つ以上を送信する等により、本明細書に記載の心拍出量を示してもよい。
【0181】
EtCO2の使用の他の例として、以下が挙げられる。
・COPDの進行のモニタリング
・圧力サポート、容量送達、及び毎分換気量目標等の滴定換気パラメータ
・気管内の気管内チューブの正しい配置の判定
【0182】
[5.8.2.2 付加的な呼吸数の周波数帯域解析(例えば、CO2分布)]
音響シグネチャ遅延全体に関し、時系列になった音響シグネチャ内部遅延の推定、特に、患者の呼吸数付近及びこれを含む周波数帯域からの成分の解析を行うことで、マスクチューブ内のCO2の濃度に関する情報が生成される。より一般的には、マスクの空気経路に沿った異なる構造に対応している別個のシリーズの反射成分を含む、任意の種別のマスクの音響シグネチャの構造における呼吸数周波数帯域変動を解析することにより、マスクの種々の部分におけるCO2の相対的濃度の分布に関する情報を生成することができる。これを、導管7010内のCO2の濃度を示す音響シグネチャ遅延、空気圧回路内のCO2の分布の写真、及び時間経過に伴うその進化の解析と組み合わせることが、築かれてもよい。この写真より、アクション可能な情報を抽出することができる。一例において、RPTデバイス/加湿器7040に向かうCO2の相対的濃度の増加は、システム換気によって呼気のCO2の洗い流しが不十分であること、結果としてCO2の再呼吸が過度であることの示度とすくことができ、これは、中枢性無呼吸、頭痛、又は閉塞感に繋がりうる。したがって、このシステムは、CO2の分布又はその分布の変化に基づいて、表示又は通信されたメッセージ及び/又は提供された治療(例えば、マスクベント等のベント領域の圧力、流れ、又は制御調整)の変更又は変化させる制御信号を含む1つ以上の出力信号を生成するように構成することができる。
【0183】
[5.8.2.3 非呼吸数の周波数帯域解析(例えば、導管の長さ)]
呼吸数の周波数帯域内にない音響シグネチャ遅延の時系列の変動は、呼吸関連でない。したがって、本来の遅延の時系列からバンドパスフィルタ済みのバージョンの遅延の時系列を減算する等により、本来の遅延時系列から呼吸数の周波数帯域変動を除去することにより、時系列の非呼吸関連の遅延推定が与えられる。非呼吸関連の遅延変動の主な源は、導管の長さLの変動である。非呼吸関連の時系列の各遅延値は、c/2(反射ベースのシステム用)又はc(透過ベースシステム用)で遅延値を乗算することにより、導管の長さLの値にマップすることができ、ここでcは、大気中の音の速度である(20℃で約343m/s)。
【0184】
非呼吸関連の音響遅延の時系列で検出された導管の長さLの変動は、患者又は呼吸治療システムのステータスの示度として捉えることができる。例えば、前述のとおり、チューブ抗力は、導管の長さの変化の要因の可能性の1つである。チューブ抗力は、患者の睡眠姿勢が治療セッションに亘って変化すると変動する。したがって、治療セッションに亘る導管の長さの変動性は、治療セッション中の患者の活動又は情動不安(restlessness)の示度として捉えることができる。このような患者の活動は、多数のやり方により、システムにおいて使用又は実施することができる。
・治療有効性の指標として
・睡眠状態(睡眠/覚醒)の指標として
・無呼吸又は低呼吸を検出するプロセスの補助として高活動期間に合致する無呼吸又は低呼吸は、真の気道妨害をより表しにくいため、治療アルゴリズムによって軽視又は無視することができる。
【0185】
また、持続性の抗力が導管7010にその弾性を失わせるため、チューブ抗力の累積の測定値は、導管の寿命の指標として使用することができる。一例において、導管の長さの長期に亘る増加は、導管7010が永続的に伸長している旨の示度として捉えることができる。したがって、呼吸治療システムは、多くの治療セッションに亘って導管の長さの変動の統計解析を行うことにより、多くの治療セッションに亘って導管の長さの増加が閾値を超えている、又はこれから超えるタイミングを判定又は予測することができ、したがって、導管が交換の時期にある、又はこれからそうなるというタイミングを推定又は予測することができる。このような評価に基づいて、システムは、交換の示度又は提案を行う1つ以上の出力メッセージの生成をトリガすることができる。
【0186】
[5.8.3 音響シグネチャの形状解析(例えば、マスクチューブ又はヘッドギア)]
本技術のさらなる実施形態において、反射ベースシステムにおける音響シグネチャの形状は、システムによって解析されて、マスクの特定の特性を検出することができる。例えば、音響シグネチャは、システムによって解析され、マスクの特性を検出することができる。特性には、マスクの直径、構成材料、空気キャビティの容量、全体的構成等を含むことができる。
【0187】
マスクのこのような1つの特性は、マスクチューブの長さであり、これは、音響シグネチャの形状解析から検出することができる。マスクチューブを備えたマスクの音響シグネチャは、2つの別の部分、すなわち、空気回路4170とマスクチューブとの間の接続ポート3600からの音の反射に対応する部分と、マスク3000の本体からの音の反射に対応する第1の部分からのケフレンシに遅延した部分とを含む。2つの部分間の遅延は、マスクチューブ内の音の速度で除算したマスクチューブの長さの2倍に等しい。
【0188】
図13は、呼吸治療システム7000にマスクチューブを備えた枕マスク7020のケプストラム1300を含むグラフである。音響シグネチャに対応するケプストラム1300の一部が、1350として示されている。音響シグネチャ1350の一部1310は、空気回路4170とマスクチューブとの間の接続ポート3600からの音の反射に対応する。音響シグネチャの部分1320は、枕マスクの本体からの音の反射に対応する。2つの部分1310と1320との間の「内部遅延」1330は、c(マスクチューブ内の音の速度)で除算したマスクチューブの長さlの2倍に等しい。
【0189】
マスクの他の特性は、ヘッドギアの弾性である。ヘッドギアを位置決め及び安定化構造3300として使用するとき、ヘッドギアは伸長する。伸長の効果は、封止形成構造3100が患者の顔に対して加圧されるのが控えられるということである。この加圧の低減は、マスク本体からの音の反射に対応する音響シグネチャの部分の変化として現れてもよい。したがって、呼吸治療システムは、多くの呼吸セッションに亘ってその部分の解析を行うことにより、ヘッドギアの伸長のせいでマスクの交換が必要となっている、又はこれから必要となるタイミングを推定又は予測することができる。例えば、この部分の過去の形状又は位置等からのこの部分の形状の変位又はその他の変化を検出することは、交換示度の根拠としての役割を担うことができる。したがって、このような評価に基づいて、システムは、交換を指示又は提案する1つ以上の出力メッセージの生成をトリガすることができる。
【0190】
[5.8.3.1 非呼吸数の周波数帯域解析(例えば、マスクチューブの長さ)]
音響シグネチャ遅延全体に関して、マスクシグネチャの内部遅延における非呼吸関連の変動は、本来の内部遅延の時系列からバンドパスフィルタ済みのバージョンの内部遅延の時系列を減算する等、本来の内部遅延の時系列から呼吸数の周波数帯域変動を除去することによって得られてもよい。結果として得られる内部遅延の時系列の非呼吸関連の変動は、c/2で乗算されて、マスクチューブの長さIの時系列になっている変動を得る。したがって、上述のような形状解析の追加又は代替として、マスクチューブの長さの変動を、フィルタリングで導出することができる。
【0191】
チューブ抗力は、マスクチューブの長さlと、空気回路の長さLとの変動を生じる。一つに実施において、マスクチューブの長さの長期的増加は、マスクチューブが永続的に引っ張られることを示す。したがって、呼吸治療システムは、多くの治療セッションに亘ってマスクチューブの長さの変動の統計解析を行うことにより、マスクの現在の寿命を評価することもできる。特に、多くの治療セッションに亘ってマスクチューブの長さの増加が閾値を超えているタイミング、又はこれから超えるタイミングを判定又は予測するために統計解析を行うことによって、呼吸治療システムは、マスクがマスクチューブの引っ張りのせいで交換が必要になっているタイミング、又はこれからなるタイミングを推定又は予測することができる。
【0192】
他の実施において、治療セッションに亘るマスクチューブの長さの変動性を、治療セッション中の患者の活動又は情動不安の代理又は示度として使用することができる。
【0193】
[5.8.4 例としてのシステム設計の実施]
図11及び
図15に関して説明した信号処理解析と、上述の遅延検出及びケプストラム又はケフレンシ関連解析等を使用した本明細書中に記載の追加の方法論とは、以上に検討したとおり、ファームウェア、ハードウェア、及び/又は、ソフトウェア等のコントローラ又はプロセッサにより実施することができる。いくつかの例としての実施において、このようなコントローラは、呼吸治療システム内の1つ以上の箇所におけるCO
2濃度を推定することができる。この改定フィック技術からのCO
2濃度データ及び/又は心拍出量データは、その後、さらなるコントローラ、プロセッサ、システム、又はコンピュータに中継されるか、又はコントローラによって使用することができる。その後、この情報は、呼吸治療システムによる呼吸治療の実施において、治療、又はRPTデバイスの制御のためのその他の設定を調整する際に利用することができる。
【0194】
例えば、前述の技術は、CPAP装置等、呼吸治療システムのコントローラの一部として実施することができる。
【0195】
代替的に、前述の技術は、音響解析装置自体が圧力発生器(例えば、流れ発生器)を備えないように、CPAP装置の外部にあるようにすることができる
図7の音響解析装置7015等の音響解析装置によって実施することができる。例えば、このようなモニタリング装置は、
図16に示されるように実施されてもよい。これに関して、
図16は、本技術の一態様に係る
図7の音響解析装置7015の実施の構成要素の図である。例として、
図16の音響解析装置1600は、上述の他の機能の実施に加え、ユーザの心拍出量を判定するための1つ以上の構成要素を備える。これらの構成要素の機能は、1つ以上の構成要素に組み合わせることができるか、又は同等の機能の他の構成要素によって実施することもできる。
【0196】
プロセッサ1602等、1つ以上のプロセッサは、コンピュータプログラムコードで特定されるような、音トランスデューサからの音の測定値を表すデータサンプル等の情報に一組の動作を実行する。コードはさらに、このようなデータを処理して、本明細書中に検討のいずれか1つ以上の方法論に加え、CO2濃度示度、及び/又は、ユーザの心拍出量の検出に関連するもの等の前述の他の出力を生成することができる。コンピュータプログラムコードは、特定の機能を実行するプロセッサ1602の動作のための制御命令を提供する一組の命令又は提示である。コードは、例えば、プロセッサ1602のネイティブな命令セットにコンパイルされたコンピュータプログラミング言語で書き表すことができる。コードはまた、ネイティブな命令セット(例えば、機械言語)を使用して、直接書き表すことができる。このセットの動作には、通常は、2つ以上の単位の情報を比較すること、これらの単位の情報の位置をシフトすること、及び加算又は乗算又はORや排他的OR(XOR)のような論理的演算等により、2つ以上の単位の情報を組み合わせることが含まれる。プロセッサ1602によって実行可能なセットの演算を各々行うことは、1つ以上の桁の演算コード等の命令と称される情報によってプロセッサ1602に提示される。一連の演算コード等のプロセッサ1602によって実行される一連の演算が、プロセッサの命令であって、コンピュータシステム命令とも称され、又は単にコンピュータ命令とも称されるものを構築する。
【0197】
メモリ1604は、本明細書中に開示の他の方法論とともに、ユーザの心拍出量を判定するため等の前述のプロセッサ制御命令を含む情報を記憶する。さらに、これは、ケプストラムデータ、音響シグネチャデータ、遅延データ、遅延の時系列データ(フィルタリング済み、及び/又は、未フィルタリング)、CO2濃度データ、心拍出量データ等、音信号データ又は出力データ等、生成されたデータ又は受信されたデータをさらに記憶することができる。メモリ1604は、ランダムアクセスメモリ(RAM)又は他の任意の動的記憶装置とすることができる。動的メモリでは、内部に記憶された情報を、プロセッサ1602によって変更させることができる。RAMは、或る箇所(例えば、メモリアドレス)に記憶された情報の単位(unit)を、付近のアドレスの情報とは独立して記憶及び検索させる。メモリ1604もまた、命令の実行中、一時的な値を記憶するために、プロセッサ1602によって使用される。代替的又は追加的に、メモリ1604は、変更されない命令を含む静的情報を記憶するために連結された、読み取り専用メモリ(ROM)又は他の任意の静的記憶装置とすることができる。
【0198】
1つ以上の実施形態において、メモリ1604は、測定フィルタリング、フーリエ変換、対数、位置判定、程度判定、差異判定等の音信号処理及び音響解析のために記憶されたプロセッサ制御命令を含むことができる。1つ以上の実施形態において、本開示の方法論を制御するためのプロセッサ制御命令及びデータは、本明細書中に検討される方法論のいずれかに係る特定目的プロセッサであるプロセッサ1602によって使用される、ソフトウェア等のメモリ1604内に含むことができる。
【0199】
1つ以上の実施形態において、音響解析装置1600は、出力データを表すため、モニタ、LCDパネル、タッチスクリーン等のディスプレイ1606を任意選択的に含むことができる。音響解析装置1600は、データを入力するか、さもなければ本明細書中に記載の方法論を起動又は作動させるために、任意選択的に、キーボード、タッチパネル、制御ボタン、マウス等の制御インタフェース1608も備えることができる。音響解析装置1600は、音センサ104等の他のデバイスへのプログラミング命令、設定データ、音データ等のデータの送受信のためのバス等のデータインタフェース1610も任意選択的に備えることができる。
【0200】
さらに、いくつかの実施形態において、遅延解析から得られた情報は、このような情報をメーカー、医師、又は臨床医等に通信することで、その情報が患者のトラブルシューティングを支援するように使用されるべく、1つ以上のサーバ等、他のシステムに選択的に送信することができる。例えば、このようなデータは、例えば、Bluetooth(登録商標)及び/又はWiFi(登録商標)又はその他の通信プロトコル(複数の場合もある)を含む無線通信プロトコル等、有線及び/又は無線の通信で送信することができる。
【0201】
さらにいくつかの実施形態において、遅延解析から得られた情報は、例えば、マスクの調整を行うやり方等の特定のマスクに関連のパーソナルなコーチング又はトレーニングの内容を手動又は自動で展開すること等のアクションをトリガするために使用することができる。このような資料は、治療装置のスクリーン、又はサポートを行うモバイルデバイスアプリケーション、又は電子メールやSMSメッセージ等のその他の通信手段を介して、ユーザに通信することができる。一例において、CO2濃度が過度に高いか、又は低い場合、処置圧力又は流量の増減、又はマスク種別の変更の推奨をトリガすることができる。
【0202】
いくつかの実施形態において、以上に示された速度よりも速い送風機の速度は、音響シグネチャ遅延の推定中に実施されてもよい。例えば、導管によっては、ノイズを低減し得る特性を備えた材料を使用する。このようなシステムにおいて、システムの音響損失が上下することがある。測定された信号によって検出される損失が増加すると(例えば、振幅が減少する)、音源又はノイズ源のデシベルが増加して、音損失の効果が克服されうる。これは、テスト測定プロセス中の送風機の速度を上げることによって達成されてもよい。さらに、空気経路に含まれる他の要素は、音響損失を増加し得る。これらの要素には、加湿器、ノイズバッフル、及び弁が含まれてもよい。改めて、このような構成要素に起因する損失もまた、ノイズ源レベル又は振幅を増加させることによって克服されうる。通常は、入力信号に対して好適な音レベルは、約20dBa以上とすることができる。
【0203】
マイクロフォン4270の周波数の範囲は、遅延推定に要求されるジオメトリの解像度に応じて選択することができる。小さな寸法に関する情報の解像には、通常は、生成された音信号中に高周波数のコンテンツを必要とするであろう。呼吸治療のための通常の空気回路は、100Hz未満の基本周波数でチューブ共鳴を示すが、10kHz超までの基本周波数の整数倍としてのスペクトルでは、より高い高調波が現れた。マイクロフォン4270の周波数範囲は、高調波間隔に関連付けられた期間が対数スペクトルの逆フーリエ変換中に存在する共鳴高調波(resonant harmonics)を十分に感知させるのに十分な大きさとなるように、選択されてもよい。したがって、一つの実施において、マイクロフォン4270は、少なくとも10kHzの周波数上限までの周波数を検出するように構成されてもよい。
【0204】
前述のとおり、いくつかの実施形態において、音インパルス又は白色ノイズを生成するスピーカ等の音源を利用することができる。これは、多くのノイズを生成しない、非常に静かな送風機を備えた呼吸治療システムで特に有用であり得る。例えば、通常、6krpm未満の速度でResMed(登録商標)RPTデバイスを使用する時、送風機は、非常に静かである。この条件下において、入力信号を生成するのに音源として送風機の音のみを使用すると、音響シグネチャ遅延の推定には不十分となるかもしれない。これは、空気経路中に追加の音源を含むことによって克服されうる。これは、マスクが導管に最初に取り付けられるとき等の測定期間中に起動されてもよい。追加の音源は、スピーカであってもよいが、他の音発生器が利用されてもよい。例えば、単純な音響発生器は、選択的に起動及び停止されてもよい(例えば、システムの空気経路から機械的に取り付け及び取り外しされる)リード等のRPTデバイスからの気流に応じて振動するように構成されてもよい。これは、音のインパルス(sound impulse)を選択的に生じる役割を担ってもよい。代替的に、RPTデバイスの駆動弁が、追加の音源としての役割を担ってもよい。
【0205】
さらに、スピーカ等の音源を使用して、送風機によって生成される音スペクトラムのギャップを埋めることができる。例えば、スピーカを使用して、送風機ノイズとスピーカ音の追加により白色スペクトラムを作るように、特定のスペクトルを有するように設計された信号を生成することができる。これにより、システムの検出精度を向上してもよく、治療デバイスユーザが経験する音の知覚品質を向上してもよい。
【0206】
いくつかの実施形態において、自己相関(autocorrelation)(すなわち、パワースペクトルの逆フーリエ変換)を、ケプストラム解析の代わりに実施することができる。
【0207】
[5.9 本技術の態様]
以下の説明段落では、上述の技術のさらなる実施例について説明する。
【0208】
実施例1
心拍出量を判定するための方法であって、
ユーザに連結された呼吸処置装置の導管内の少なくとも1つの音センサにより、音の測定値を判定することと、
少なくとも部分的に、音の測定値に基づいて、導管内の二酸化炭素濃度を判定することと、
少なくとも部分的に二酸化炭素濃度に基づいて、ユーザの心拍出量を判定することと
を含む方法。
【0209】
実施例2
導管は、呼吸処置装置の気道である、実施例1に記載の方法。
【0210】
実施例3
二酸化炭素濃度を判定することは、音の測定値を表すデータサンプルからフーリエ変換を計算することを含む、実施例1に記載の方法。
【0211】
実施例4
二酸化炭素濃度を判定することは、音の測定値を表すデータサンプルからフーリエ変換の対数を計算することをさらに含む、実施例3に記載の方法。
【0212】
実施例5
二酸化炭素濃度を判定することは、音の測定値を表すデータサンプルからフーリエ変換の対数の逆変換を計算することをさらに含む、実施例4に記載の方法。
【0213】
実施例6
二酸化炭素濃度を判定することは、(a)音の測定値を表すデータサンプルからのフーリエ変換の対数の逆変換と、(b)導管内のベースラインの二酸化炭素濃度を表すデータサンプルからのフーリエ変換の対数の逆変換との間の差異を計算することをさらに含む、実施例5に記載の方法。
【0214】
実施例7
導管内の音源で音を生成することをさらに含み、
音の測定値を判定することは、音源からの音を検出する少なくとも1つの音センサに基づく、実施例1に記載の方法。
【0215】
実施例8
音源は、呼吸処置装置内の流れ発生器である、実施例7に記載の方法。
【0216】
実施例9
音源は、導管内のスピーカである、実施例7に記載の方法。
【0217】
実施例10
少なくとも1つの音センサは、マイクロフォンであり、導管は、マイクロフォンが連結される呼吸処置装置の気道である、実施例1に記載の方法。
【0218】
実施例11
呼吸処置装置の1つ以上の環境パラメータを判定することと、
二酸化炭素濃度の判定中、1つ以上の環境パラメータを考慮することと
をさらに含む、実施例1に記載の方法。
【0219】
実施例12
1つ以上の環境パラメータには、空気温度、周囲の圧力、周囲の二酸化炭素濃度、背景ノイズ、又はこれらの組み合わせが含まれる、実施例11に記載の方法。
【0220】
実施例13
背景ノイズは、少なくとも1つの音センサによって検出される、実施例12に記載の方法。
【0221】
実施例14
背景ノイズは、音の測定値を判定する少なくとも1つの音センサとは異なる、第2の音センサによって検出される、実施例12に記載の方法。
【0222】
実施例15
少なくとも1つの音センサは、第1の音センサと、第2の音センサとを備え、第1の音センサは、第2の音センサとは異なる導管の位置内に配置される、実施例1に記載の方法。
【0223】
実施例16
音の測定値には、第1の音センサと音の第2センサとの間の飛行時間を含む、実施例15に記載の方法。
【0224】
実施例17
少なくとも部分的に第1の音センサと第2の音センサとの音の測定値に基づいて、音の測定値の信号対ノイズ比を増加させることをさらに含む、実施例15に記載の方法。
【0225】
実施例18
導管内の二酸化炭素濃度を判定することは、少なくとも部分的に音の測定値を表すデータサンプルのケプストラムに基づく、実施例1に記載の方法。
【0226】
実施例19
ユーザの心拍出量を判定することは、少なくとも部分的に二酸化炭素濃度に基づき、少なくとも部分的に改定フィック法に基づく、実施例1に記載の方法。
【0227】
実施例20
二酸化炭素濃度を判定することと、単一のセッション中に複数回の心拍出量を判定することとを繰り返すことと、
少なくとも部分的に二酸化炭素濃度、心拍出量、又はこれらの組み合わせがセッションに対する閾値範囲内であることに基づいて、単一セッションに対する二酸化炭素濃度、心拍出量、又はこれらの組み合わせを評価することと
をさらに含む、実施例1に記載の方法。
【0228】
実施例21
二酸化炭素濃度を判定することと、一回のセッション中に複数回の心拍出量を判定することと、を繰り返すことと、
セッションに対する心拍出量における傾向を判定することと
をさらに含む、実施例1に記載の方法。
【0229】
実施例22
呼吸処置装置の位置に対する背景の二酸化炭素レベルを判定することをさらに含み、
ユーザの心拍出量を判定することは、少なくとも部分的にその位置の背景二酸化炭素レベルに基づく、実施例1に記載の方法。
【0230】
実施例23
傾向に基づいて、心拍出量の悪化を判定することと、
心拍出量の悪化に基づいて、介入のニーズを判定することと
をさらに含む、実施例22に記載の方法。
【0231】
実施例24
導管内の二酸化炭素濃度を判定することは、導管との定常波及び高調波を解析することに基づく、実施例1に記載の方法。
【0232】
実施例25
ユーザに連結された導管を有する呼吸処置装置と、
導管内の音の測定値を検出するように構成されている少なくとも1つのセンサと、
機械可読命令を記憶するメモリと、
機械可読命令を実行するように構成されている1つ以上のプロセッサを含む制御システムと
を備え、機械可読命令により、
少なくとも部分的に音の測定値に基づいて、導管内の二酸化炭素濃度を判定することと、
少なくとも部分的に二酸化炭素濃度に基づいて、ユーザの心拍出量を判定することと
を行う心拍出量を判定するシステム。
【0233】
実施例26
導管は、呼吸処置装置の気道である、実施例25に記載のシステム。
【0234】
実施例27
1つ以上のプロセッサは、機械可読命令を実行して、音の測定値を表すデータサンプルからフーリエ変換を計算することに基づいて、二酸化炭素濃度を判定するように構成される、実施例25に記載のシステム。
【0235】
実施例28
1つ以上のプロセッサは、機械可読命令を実行して、音の測定値を表すデータサンプルからのフーリエ変換の対数を計算することに基づいて、二酸化炭素濃度を判定するように構成される、実施例27に記載のシステム。
【0236】
実施例29
1つ以上のプロセッサは、機械可読命令を実行して、音の測定値を表すデータサンプルからフーリエ変換の対数の逆変換を計算することに基づいて、二酸化炭素濃度を判定するように構成される、実施例28に記載のシステム。
【0237】
実施例30
1つ以上のプロセッサは、機械可読命令を実行して、(a)音の測定値を表すデータサンプルからのフーリエ変換の対数の逆変換と、(b)導管中のベースラインの二酸化炭素濃度を表すデータサンプルからのフーリエ変換の対数の逆変換との差異を計算することに基づいて、二酸化炭素濃度を判定するように構成される、実施例29に記載のシステム。
【0238】
実施例31
導管内で音を生成するように構成されている音源を備え、
1つ以上のプロセッサは、機械可読命令を実行して、音源からの音を検出する少なくとも1つの音センサに基づいて、音の測定値を判定するように構成される、実施例25に記載のシステム。
【0239】
実施例32
音源は、呼吸処置装置内の流れ発生器である、実施例31に記載のシステム。
【0240】
実施例33
音源は、導管内のスピーカである実施例31に記載のシステム。
【0241】
実施例34
少なくとも1つの音センサは、マイクロフォンであり、導管は、マイクロフォンが連結された呼吸処置装置の気道である、実施例25に記載のシステム。
【0242】
実施例35
1つ以上のプロセッサは、機械可読命令を実行するように構成され、
呼吸処置装置の1つ以上の環境パラメータを判定することと、
二酸化炭素濃度の判定時に、1つ以上の環境パラメータを考慮することと
を実行する、実施例25に記載のシステム。
【0243】
実施例36
1つ以上の環境パラメータには、空気温度、周囲の圧力、周囲の二酸化炭素濃度、背景ノイズ、又はこれらの組み合わせが含まれる、実施例35に記載のシステム。
【0244】
実施例37
背景ノイズは、少なくとも1つの音センサで検出される、実施例36に記載のシステム。
【0245】
実施例38
背景ノイズは、音の測定値を判定するように構成されている少なくとも1つの音センサとは異なる第2の音センサで検出される実施例36に記載のシステム。
【0246】
実施例39
少なくとも1つの音センサは、第1の音センサと、第2の音センサとを備え、第1の音センサは、第2の音センサとは異なる導管の位置内に配置される、実施例25に記載のシステム。
【0247】
実施例40
音の測定値には、第1の音センサと音の第2センサとの間の飛行時間が含まれる、実施例39に記載のシステム。
【0248】
実施例41
1つ以上のプロセッサは、機械可読命令を実行して、少なくとも部分的に第1の音センサと第2の音センサとの音の測定値に基づいて、音の測定値の信号対ノイズ比を増加させるように構成される、実施例39に記載のシステム。
【0249】
実施例42
1つ以上のプロセッサは、機械可読命令を実行して、少なくとも部分的に音の測定値を表すデータサンプルのケプストラムに基づいて、導管内の二酸化炭素濃度を判定するように構成される、実施例25に記載のシステム。
【0250】
実施例43
1つ以上のプロセッサは、機械可読命令を実行して、少なくとも部分的に二酸化炭素濃度に基づいて、少なくとも部分的に改定フィック法に基づき、ユーザの心拍出量を判定するように構成される、実施例25に記載のシステム。
【0251】
実施例44
1つ以上のプロセッサは、機械可読命令を実行するように構成され、
機械可読命令は、
二酸化炭素濃度を判定することと、単一のセッション中に複数回、心拍出量を判定することとを繰り返すことと、
少なくとも部分的に二酸化炭素濃度、心拍出量、又はこれらの組み合わせが単一のセッションの閾値範囲内にあることに基づいて、そのセッション中の二酸化炭素濃度、心拍出量、又はこれらの組み合わせを評価することと
を実行する、実施例25に記載のシステム。
【0252】
実施例45
1つ以上のプロセッサは、機械可読命令を実行するように構成され、
機械可読命令は、
二酸化炭素濃度を判定することと、セッション中に複数回の心拍出量を判定することとを繰り返すことと、
セッション中の心拍出量における傾向を判定することと
を実行する、実施例25に記載のシステム。
【0253】
実施例46
1つ以上のプロセッサは、機械可読命令を実行するように構成され、
呼吸処置装置の位置に対する背景の二酸化炭素レベルを判定し、
ユーザの心拍出量を判定することは、少なくとも部分的にその場所に対する背景の二酸化炭素レベルに基づく、実施例25に記載のシステム。
【0254】
実施例47
1つ以上のプロセッサは、機械可読命令を実行するように構成され、
機械可読命令は、
傾向に基づいて、心拍出量の悪化を判定することと、
心拍出量の悪化に基づいて、介入のニーズを判定することと
を実行する、実施例46に記載のシステム。
【0255】
実施例48
1つ以上のプロセッサは、機械可読命令を実行するように構成され、機械可読命令は、導管との定常波及び高調波を解析することに基づいて、導管内の二酸化炭素濃度を判定する、実施例25に記載の方法。
【0256】
[5.10 用語集]
本技術の開示の目的のために、本技術の或る形態によると、以下の定義のうちの1つ以上を適用することができる。本技術の他の形態によれば、代替的な定義を適用することができる。
【0257】
[5.10.1 一般]
空気:本技術の或る形態によると、空気は、大気を意味するものと解されてもよく、本技術の他の形態によると、空気は、例えば、酸素強化した大気等の何らかその他の呼吸可能なガスの組み合わせと解されてもよい。
【0258】
周囲(ambient):本技術の或る形態によると、周囲という用語は、(i)呼吸治療システム又は患者の外部、及び(ii)呼吸治療システム又は患者のすぐ周辺を意味するものと解されるであろう。
【0259】
例えば、加湿器に対する周囲の湿度とは、加湿器の直近の空気の湿度とすることができ、例えば、患者の睡眠している部屋の湿度であってもよい。このような周囲の湿度は、患者の睡眠している部屋の外の湿度とは異なってもよい。
【0260】
自動気道陽圧(APAP:Automatic Positive Airway Pressure)治療:例えば、SDB事象を示唆するものの有無に応じて、呼吸から呼吸までの、最大値と最小値との間で処置圧力(treatment pressure)が自動調整可能なCPAP治療。
【0261】
持続的気道陽圧(CPAP:Continuous Positive Airway Pressure)治療:処置圧力が患者の呼吸サイクルを通してほぼ一定である呼吸圧力治療。いくつかの形態において、気道への入口における圧力は、呼気の間にはわずかに高くなり、吸気の間にはわずかに低くなるであろう。いくつかの形態において、圧力は、例えば、部分的な上方気道障壁(upper wairway abstruction)を示唆するものを検出したことに応じて増加し、部分的な上方気道障壁を示唆するものがないときに減少するなど、患者の異なる呼吸サイクル間で変動する。
【0262】
流量(Flow rate):単位時間あたりに供給される空気の容量(又は質量)。流量は、瞬間的な量を指すこともある。場合によっては、流量について言及することは、スカラー量について、すなわち大きさのみを有する量について言及するものである。また場合によっては、流量について言及することは、ベクトル量について、すなわち大きさと方向との双方を有する量について言及するものである。流量には、符号Qが与えられることもある。「流量」は、単に「流れ(flow)」又は「気流(airflow)」と短縮されることもある。
【0263】
リーク(Leak):リークという言葉は、意図しない空気の流れと解されるであろう。一例によると、リークは、マスクと患者の顔との間の封止が不完全である結果として生じることもある。他の例によると、周囲へのリークは、スイベル継手(swivel elbow)で生じることもある。
【0264】
患者:ヒトであり、呼吸症状を患うか否かを問わない。
【0265】
圧力:単位面積あたりの力。圧力は、cmH2O、g-f/cm2、及びヘクトパスカルを含む範囲に亘る単位で表現することができる。1cmH2Oは、1g-f/cm2に等しく、約0.98ヘクトパスカルである。本明細書において、言及のない限り、圧力はcmH2Oの単位で与えられる。
【0266】
呼吸圧力治療(RPT:Respiratory Pressure Therapy):雰囲気に対して、通常は正の処置圧力で、気道の入口に空気の供給を行うこと。
【0267】
封止(Seal):構造を言及する名詞形(「封止(a seal)」)、又は効果を言及する動詞形(「封止する(to seal)」)とすることができる。2つの要素が、本質的には、別個の「封止」要素を必要とすることなく、その間で「封止」するように、又は「封止」の効果を発揮するように構築及び/又は配置されてもよい。
【0268】
[5.10.2 患者インタフェース]
プレナムチャンバ(Plenum chamber):マスクプレナムチャンバは、使用に際して、大気圧を上回るように加圧された空気を内部に有する或る体積の空間を少なくとも部分的に包囲する壁部を有した患者インタフェースの部分を意味するものと解される。シェルは、マスクプレナムチャンバの壁部の一部を形成してもよい。
【0269】
シェル(Shell):シェルは、屈曲、引っ張り、及び加圧剛性を有する、湾曲した比較的薄い構造を意味するものと解されるであろう。例えば、マスクの湾曲構造壁部がシェルであってもよい。いくつかの形態において、シェルは、ファセット面を有してもよい。いくつかの形態において、シェルは、気密であってもよい。いくつかの形態において、シェルは、非気密とすることもできる。
【0270】
通気(Vent)(名詞):呼気を臨床的に有効に洗い流すために、マスク又は導管の内部から空気の流れを可能にする構造。例えば、臨床的に有効な洗い流しには、マスクの設計と処置圧力とに応じて、1分あたり約10リットル~1分あたり約100リットルの流量を含むことができる。
【0271】
[5.11 その他備考]
本特許文書の開示の一部には、著作権の保護を受ける資料が含まれる。著作権所有者は、特許庁の特許ファイル又は記録に記載のとおり、本特許文書又は本特許開示のいずれかの者による複製に異議を唱えるものでないが、それ以外の場合はすべての著作権を留保する。
【0272】
文脈が明確に否定しない限り、また値の範囲が提供される場合、下限の単位の10分の1までで、その範囲の上限と下限の間に介在する各値と、言及された範囲内の他の任意の言及値又は介在値が本技術の範囲内に含まれることが理解されなければならない。このような介在範囲の上限及び下限は、介在範囲内に独立して含まれ得るものであるが、これらも本技術の範囲内に含まれ、言及された範囲内で具体的に除外される任意の限界に供される。言及された範囲に、これら限界のうちの一方又は双方が含まれる場合、これら含まれている限界のうちのいずれか又は双方を除外した範囲もまた、本技術に含まれる。
【0273】
さらに、値が本技術の一部として実施されているものとして本明細書中に言及される場合、このような値は、言及のない限り、近似していてもよく、このような値を、実際の技術的実施がこれを許容又は要求してもよい程度に、任意の好適な有効数字に利用してもよい。
【0274】
規定のない限り、本明細書中で使用されるすべての技術的及び科学的用語は、本技術の属する分野で通常のスキルを備えた者によって一般的に理解されるのと同一の意味を有する。本明細書中に記載のものと同様又は同等の任意の方法及び材料は、実際に、又は本技術の試験においても使用可能であり、限られた数の例としての方法及び材料が、本明細書中に記載されている。
【0275】
特定の材料が構成要素を構築するのに使用されるものと特定されるとき、同様な特性を備えた明らかに代わりの材料が代替として使用されてもよい。さらに、反対のことが特定されない限り、本明細書に記載のいずれか及びすべての構成要素は、ともに、又は、別個に製造可能であり、同様に、製造されてもよいことが理解される。
【0276】
本明細書及び添付の特許請求の範囲に使用されるとおり、「一つの」又は「或る」(「a」、「an」)、及び「その(the)」といった単数形には、文脈で明らかに否定することのない限り、それらの複数の同等物も含むことに留意しなければならない。
【0277】
「約(about)」という用語は、参照量に対して30%程度、好ましくは20%程度、より好ましくは10%程度、変動する量を指して本明細書中で使用される。数を制限するのに「約」という単語を使用するのは、単に、その数が正確な値として解釈されるべきでないことを示唆している。
【0278】
本明細書において言及されるすべての出版物は、これらの出版物の主題である方法及び/又は材料を開示及び説明するため、その内容全体を引用することにより本明細書の一部をなすものとする。本明細書において検討される出版物は、本願の出願日に先立つ、これらの開示のみのために提供される。本明細書中のいずれも、本技術が先行技術のためにこのような出版物に先行するものでない旨を認めるものとして理解されてはならない。さらに、与えられる公開日が実際の公開日とは異なってもよく、これは独立して確認される必要があってもよい。
【0279】
「備える(comprise)」及び「備えている(comprising)」という用語は、非排他的に要素、構成要素、又はステップをいうものとして解釈されなければならず、参照された要素、構成要素、又はステップが、明示されていない他の要素、構成要素、又はステップとともに存在、利用、又は組み合わせることができることを示す。したがって、本明細書全体を通じて、文脈が反対のことを要求しない限り、「備える」及び「備えている」という用語は、言及されたステップ又は要素、若しくはステップ又は要素のグループを含むものの、他の任意のステップ又は要素、若しくはステップ又は要素のグループを除外しないことを含意するものとして理解されるであろう。本明細書において使用される「含んでいる」又は「含んだ」(「including」、「which includes」、又は「that includes」)という用語のうちのいずれか1つもまた、少なくともその用語に続く要素/特徴を含むものの、それ以外を除外しないことを意味するオープンな用語である。したがって、「含んでいる」は、「備えている」と同義であり、これを意味する。
【0280】
本明細書に概要を示した種々の方法又はプロセスは、種々の動作システム又はプラットフォームのうちのいずれか1つを採用する1つ以上のプロセッサ上で実行可能なソフトウェアとしてコード化されてもよい。さらに、このようなソフトウェアは、多数の好適なプログラミング言語及び/又はプログラミング又はスクリプティングツールのいずれかを使用して書き込まれてもよく、フレームワーク又は仮想機械上で実行可能である実行可能機械言語コード又は中間コードとしてもコンパイルされてよい。
【0281】
この点に関して、種々の進歩的な概念は、1つ以上のコンピュータ又はその他のプロセッサ上での実行時、以上に検討した本技術の種々の実施形態を実施する方法を実施する1つ以上のプログラム又はプロセッサ制御命令でコードされた、プロセッサ可読媒体又はコンピュータ可読記憶媒体(又は多数のこのような記憶媒体)(例えば、コンピュータメモリ、1つ以上のフロッピーディスク、コンパクトディスク、光学ディスク、磁気テープ、フラッシュメモリ、フィールドプログラマブルゲートアレイ又はその他の半導体装置における回路構成、又はその他の持続性媒体、又は有形コンピュータ記憶媒体)として実現されてもよい。コンピュータ可読媒体は、可搬性とすることができ、これに記憶されたプログラムが、1つ以上の異なるコンピュータ又はその他のプロセッサ上にロードされて、以上に検討の本技術の種々の態様を実施することができる。
【0282】
「プログラム」又は「ソフトウェア」という用語は、本明細書中、以上に検討した実施形態の種々の態様を実施するように、コンピュータ又はその他のプロセッサをプログラムするのに採用可能な任意の種別のコンピュータコード又は一連のコンピュータ実行可能な命令を示す、一般的な意味で使用される。さらに、一態様によると、実行時、本技術の方法を実施する1つ以上のコンピュータプログラムは、単一のコンピュータ又はプロセッサ内に据え置かれる必要はなく、多数の異なるコンピュータ又はプロセッサ間でモジュラー方式で分配されて、本技術の手術の態様を実施するようにしてもよいことが理解されなければならない。例えば、本技術のいくつかのバージョンには、本明細書中に記載のとおり、コンピュータ可読又はプロセッサ可読の媒体のいずれかにアクセスするサーバが含まれてもよい。サーバは、通信ネットワーク、1つのインターネット(an internet)、又は例のインターネット(the Internet)等のネットワークを通じて、スマートモバイルフォン又はスマートスピーカ等の電子デバイスに、媒体のプロセッサ制御命令又はプロセッサ実行可能命令をダウンロードするリクエストを受信するように構成されてもよい。したがって、電子デバイスには、媒体の命令を実行するような媒体も含まれてよい。同様に、本技術は、本明細書に記載の媒体のうちのいずれかにアクセスするサーバの方法として実施されてもよい。この方法は、サーバにて、ネットワークを通じて電子デバイスの媒体のプロセッサ実行可能命令をダウンロードするリクエストを受信することと、このリクエストに応じて、電子デバイスに媒体の命令を送信することと、を含んでもよい。任意選択的に、サーバは、媒体の命令を実行するため、媒体にアクセスしてもよい。
【0283】
コンピュータ実行可能な命令は、1つ以上のコンピュータ又はその他のデバイスによって実行される、プログラムモジュール等、多くの形態であってもよい。一般的に、プログラムモジュールには、特定のタスクを実施するか、又は特定の抽象データ型を実施する、ルーチン、プログラム、オブジェクト、成分、データ構造等が含まれる。通常は、プログラムモジュールの機能は、種々の実施形態において、所望に応じて、組み合わせ又は分配されてもよい。
【0284】
またデータ構造は、任意の好適な形態でコンピュータ可読媒体に記憶されてもよい。例示を簡易にするため、データ構造は、データ構造内の位置を通じて関連付けられたフィールドを有するものとして示されてもよい。このような関係は、フィールド間の関係を伝達するコンピュータ可読媒体における位置に、フィールドの記憶を割り当てることによって、同様に達成されてもよい。しかしながら、任意の好適な機構を使用して、データ要素間の関係を構築するポインタ、タグ、又はその他の記憶を使用する等、データ構造のフィールドにおける情報間の関係を構築してもよい。
【0285】
特定の実施例を参照して本明細書中の技術を説明したが、これらの実施例は、本技術の原則及び応用の単なる例示であることが理解されなければならない。例えば、音響発生器及び音響モニタリング技術は、本明細書中、特にRPTデバイスの使用及び構成要素に関する実施例において説明したが、このような音響発生器及び音響モニタリング技術は、患者インタフェースを通じて治療流れレベル(therapeutic flow level)で制御された空気の流れを提供する高流量療法(HFT)デバイス等、任意の呼吸治療(RT)デバイスの構成要素で同様に実施されてもよいことが理解されるであろう。したがって、HFTデバイスは、圧力制御RPTデバイスと同様であるが、流れ制御を行うように適合されたコントローラで構成される。このような実施例において、音響発生器は、HFTデバイスによって生成された高流量療法に関連付けられたガス特性を測定するために構成されてもよく、患者回路、その導管カプラ、及び/又は、HFTデバイスの患者インタフェースのガス流れをサンプリングするように統合されてもよい。したがって、HFTデバイスは、音響発生器実施HFTデバイスによって生成された音響/音信号を受信するために、本明細書において検討されるような音響解析のための処理技術と、音響受信機とを任意選択的に、備えてもよい。
【0286】
本明細書中のいくつかの例において、用語及び符号は、本技術の実施に必要とされない具体的な詳細を含意するものであってもよい。例えば、「第1の」及び「第2の」という用語が使用されることもあるが、指定のない限り、任意の順を示すことが意図されるものでなく、別の要素間で区別するために使用されてもよい。さらに、方法論における工程のステップは、ある順に説明又は図示されることもあるが、このような順序付けは必要とされない。当業者は、このような順序付けが変更されてもよいこと、及び/又は、それらの態様は、同時又は同期的に実行されてもよいことを認識するであろう。
【0287】
したがって、本技術の要旨及び範囲から逸脱することなく、例示された実施例に多数の変更がなされてもよいこと、及びその他のアレンジが工夫されてもよいことが理解されなければならない。
【0288】
[5.12 参照符号一覧]
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【0289】
[5.13 参照文献]
[1]心拍出量の非侵襲的測定のための部分的CO2再呼吸フィック技術(Partial CO2 rebreathing Fick technique for noninvasive measurement of cardic output)、Bailey, P.L.;Haryadi, D.G.;Orr, J.A..;Westenskow, D.R. Anesthesia & Analgesia,1998年4月,Vol.86、第4S版、第53頁参照
【国際調査報告】