(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-30
(54)【発明の名称】車体下複合保護部
(51)【国際特許分類】
C08L 75/04 20060101AFI20221122BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20221122BHJP
C08K 3/30 20060101ALI20221122BHJP
C08L 61/04 20060101ALI20221122BHJP
C08G 18/00 20060101ALI20221122BHJP
B62D 25/20 20060101ALN20221122BHJP
【FI】
C08L75/04
C08K3/34
C08K3/30
C08L61/04
C08G18/00 D
B62D25/20 N
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021578212
(86)(22)【出願日】2020-11-03
(85)【翻訳文提出日】2022-04-05
(86)【国際出願番号】 TR2020051030
(87)【国際公開番号】W WO2021137793
(87)【国際公開日】2021-07-08
(32)【優先日】2019-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522000511
【氏名又は名称】ピムサ オ-トモティヴ アノニム シルケティ
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】インセカラ、エムレ
【テーマコード(参考)】
3D203
4J002
4J034
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203AA13
3D203AA23
3D203BB03
3D203CA07
3D203CA73
3D203CB24
3D203CB25
4J002CC032
4J002CK021
4J002DG046
4J002DJ006
4J002FA042
4J002FD016
4J002GF00
4J002GN00
4J034PA05
4J034QD06
(57)【要約】
車体下複合保護部本発明は、フェノールフェルト、及び上記のフェノールフェルトに吹き付けることによって加えられるポリウレタン材料を含む剛性でモノリシックの車体下複合保護具、及び上記の車体下保護具の生産方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノールフェルトを含有する車体下複合保護部であって、複合構造体を剛性且つ一体的となるように形成するために前記フェノールフェルトに吹き付けることによって加えられるポリウレタン材料を含む、車体下複合保護部。
【請求項2】
好ましくは、方解石、重晶石、及びゼオライトのうちの少なくとも1つから成る充填材料を含む前記ポリウレタン材料を含む、請求項1に記載の車体下複合保護部。
【請求項3】
前記複合構造体におけるフェノールフェルトの使用比率は、60~90%、好ましくは75%である、請求項1又は2に記載の車体下複合保護部。
【請求項4】
前記複合構造体におけるポリウレタンの使用比率は、10~40%、好ましくは25%である、請求項1から3のいずれか一項に記載の車体下複合保護部。
【請求項5】
前記方解石、前記重晶石、及び前記ゼオライトのうちの少なくとも1つの使用比率は、前記ポリウレタン含有量の5~35%、好ましくは5%である、請求項2に記載の車体下複合保護部。
【請求項6】
適切なサイズに切断され且つ成形型に設置されるフェノールフェルトを使用する車体下保護部の生産方法であって、
a)成形用金型に設置された前記フェノールフェルト表面上に均一な分散をもたらすように、充填材料なしで、又は、方解石、重晶石、及びゼオライト充填材料を付加することによって、ポリウレタン材料を吹き付ける段階と、
b)剛性で一体的である複合構造体を提供するためにプレス型における温度及び圧力下での吹き付けられた前記ポリウレタン材料及びフェノールフェルトを成形/形成する段階と、
c)前記成形用金型から形成された前記複合構造体を除去してこれを載置する段階とを含む、車体下保護部の生産方法。
【請求項7】
前記段階(b)における前記プレス型の前記温度は、60~200度であるのが好ましい、請求項6に記載の車体下保護部の生産方法。
【請求項8】
前記段階(b)における前記プレス型の前記圧力は、好ましくは、30秒~5分間に250~450トン加えられる、請求項6に記載の車体下保護部の生産方法。
【請求項9】
前記段階(c)における前記載置する工程は、3~12時間行われるのが好ましい、請求項6から8のいずれか一項に記載の車体下保護部の生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車産業における車両の底部上に設置される車体下保護部に関する。
【0002】
とりわけ、本発明は、防音及び衝撃遮断を提供し、且つ耐化学性をもたらすように、自動車、トラック、トラクタなどのアンダーボディを保護するための低密度の複合構造体から構成されるアンダーボディ保護部に関する。
【背景技術】
【0003】
自動車産業における地上用の車両は全て、ある特定の道路及び走行条件に対するある程度の耐久性を有するように構成される。車両におけるいくつかのさらなる保護部品によってこの耐久性を増大させることがまた、開発されている。これらの構成部品のうちの1つはアンダーボディ保護部である。車体下保護具は、基本的に、車両の下底を被覆するように位置付けられ、且つ、音、衝撃、及び様々な化学物質に対するアンダーボディ構成部品の保護を提供する。
【0004】
車両の耐久性には、当たると衝撃をもたらし得る石及び砂利などのものから車両のアンダーボディを保護することが重要である。外部から車両内への音の伝達は、乗員及びドライバ両方を不安にさせるものであり、長く続く道路上での疲れ及び注意散漫を引き起こす上に、事故のリスクをもたらす。この理由のために、遮音を提供することは車両には非常に重要である。さらに、更新された規制及び安全性に対する期待感に関して、車両における高い耐火性を有する材料の重要性も高まっている。これらに加えて、現在の世界における技術の開発の次に、車両における軽量さも重要であり、使用される材料は、生産(一工程生産)時に、及び使用時に軽量で安価であり実用的である(除去及びプラグ接続がし易い)ことが期待されている。これらの開発及び要求に従って、車体下保護部は、高い雑音抵抗、耐衝撃性、及び耐化学性を有し、また、低密度構造を有することが必要とされる。しかしながら、軽量であり、防音及び衝撃遮断両方を提供でき、耐化学性を有し、非引火性の特徴を有し、一体で生産及び使用可能である既存の製品はない。
【0005】
トルコ特許出願第201911897号は、自動車両に使用するための、車両のアンダーボディ及び/又はエンジン室を全体的に又は部分的に被覆し且つ保護する複合部分に言及する。本発明の上記の複合部品は、熱及び外部要因によって引き起こされる衝撃に対して保護するための、複合ポリエステル繊維並びにリサイクルポリエステル繊維及び/又は元のポリエステル繊維から成る単層構造体である。この構造体は軽量であるが、耐熱性及び耐衝撃性しかない。
【0006】
トルコ特許出願第201710936号は、車両下部領域用のコーティング部品に関する。コーティング要素は、荷室部に面する被覆層と、車両本体に面する音響発泡層と、ポリプロピレンの厚い層であって、音響発泡層と厚い層との間に、及び、キャリア層、カバー層、及び音響発泡層の間に編成される、ポリプロピレンの厚い層とを含み、基本的に音響絶縁を提供するために使用され、構造体として多過ぎる構成部品を含むため、重構造物を供給する。
【0007】
トルコ特許出願第201415311号には、複合断熱板について述べられている。断熱板は、車両の屋内環境と屋外環境との間の断熱及び防音を提供する異なる性質を有する材料を組み合わせることによって形成される。複合構造体は、マルチコンポーネント構造体であり、非常に重い構成部品を含み、断熱及び防音のみを提供する。
【0008】
欧州特許出願公開第1986833号は、自動車両用の軽量の防音被覆に言及する。自動車両の本体部分の軽量の防音被覆は、ポリオール及びイソシアネートを含む反応混合物の注入によって一段階動作における吸音発泡成形部品として生産される。発泡成形部品は、一側面の厚さが少なくとも0.5mmであり、且つ開放気孔面を有する、一体的な、基本的にはポアフリーの外板、及び/又は上記の外板の逆側の薄い通音外板を有する。
【0009】
米国特許出願公開第2010108437号は、車両用の音響保護パネルに言及する。上記の音響保護パネルは、可撓性ポリウレタン基部を有する上部多孔質層であって、この多孔質層の少なくとも1つの区域は、とりわけ、フェルト又は再溶融させた可撓性発泡基部と共に1つのシール層上に配置される、上部多孔質層と、1つのバッキング層とから成る。
【0010】
上に示される出願及び同様の出願には、ほとんどの場合、保護及び防音の目的で使用される少なくとも2つの構成部品を有する構造体がある。これらの構造体を軽量にするために、様々な繊維強化材が使用されている。しかしながら、軽量であることに加えて、容易に組み立て可能であり、また、高い防音及び衝撃遮断、耐化学性、及び耐火性を同時に提供する構造体はない。
【0011】
結果として、上記の欠点及び既存の解決策の不十分な点に起因して、技術分野の改善が必要とされている。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、上記の要件を満たし、全ての欠点を解消し、及びいくつかのさらなる利点をもたらす地上用の車両のアンダーボディに使用される車体下保護具に関する。
【0013】
本発明の主目的は、車両アンダーボディにおける遮音及び衝撃絶縁を提供すべく、対応物と比較して低密度の構成を供給して、これを耐化学性にし且つ耐火性を有するようにする車体下保護部をもたらすことである。
【0014】
本発明の別の目的は、車両に対して容易に装着、取り付け、及び除去が可能であり、且つ交換可能である一体型車体下保護部を提供することである。
【0015】
本発明の別の目的は、単一工程において生産可能である車体下保護部を提供することである。
【0016】
本発明の別の目的は、最低限の構成部品の使用による低費用の車体下保護部をもたらすことである。
【0017】
上述される目的を果たすために、本発明は、フェノールフェルトの含有による車体下複合保護部に関する。従って、上記の車体下保護部は、上記の複合構造体を剛性で一体的となるように形成するために上記のフェノールフェルトに吹き付けることによって加えられるポリウレタン材料を含む。
【0018】
本発明の目的を達成するために、上記のポリウレタン材料は、好ましくは、方解石、重晶石、及びゼオライトのうちの少なくとも1つから成る充填材料を含む。
【0019】
本発明の目的を達成するために、上記の複合構造体におけるフェノールフェルトの使用比率は、60~90%、好ましくは75%である。
【0020】
本発明の目的を達成するために、上記の複合構造体におけるポリウレタンの使用比率は、10~40%、好ましくは25%である。
【0021】
本発明の目的を達成するために、述べられた方解石、重晶石、及びゼオライトのうちの少なくとも1つの使用比率は、上記のポリウレタン含有量の5~35%、好ましくは5%である。
【0022】
上述された目的を果たすために、本発明はまた、適切なサイズに切断され且つ成形型に設置されるフェノールフェルトを使用する複合構造化された車体下保護部の生産方法である。従って、上記の生産方法は、以下の工程段階、
a)成形用金型に設置されたフェノールフェルト表面上に均一な分散をもたらすように、充填材料なしで、又は、方解石、重晶石、及びゼオライト充填材料を付加することによって、ポリウレタン材料を吹き付ける段階と、
b)剛性で一体的である複合構造体を提供するためにプレス型における温度及び圧力下での吹き付けられたポリウレタン材料及びフェノールフェルトを成形/形成する段階と、
c)金型から形成された複合構造体を除去してこれを載置する段階とを含む。
【0023】
本発明の方法の目的を達成するために、上記の段階(b)におけるプレス型の温度は、60~200度であるのが好ましい。
【0024】
本発明の方法の目的を達成するために、上記の段階(b)におけるプレス型の圧力は、好ましくは、30秒~5分間に250~450トン加えられる。
【0025】
本発明の方法の目的を達成するために、上記の段階(c)における載置工程は、3~12時間行われるのが好ましい。
【0026】
以下の図面、及びこれらの図を参照することによってなされる詳細な説明において略述される本発明の構造的特徴及び特長並びに全ての利点は明確に理解されるものになるため、これらの図及び詳細な説明を考慮に入れることによって評価がなされるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
この詳細な説明において、本発明の車体下複合保護部は、主題のさらなる理解のみのために説明され、何の制限的効果もない。
【0028】
本発明の車体下保護部は、車両アンダーボディを被覆するように車両に適合される。軽量な複合構造体を供給して、車体下保護部は、防音及び衝撃遮断、耐化学性、及び耐火性を提供する。車体下保護部は、複合構造体を形成するために組み合わせられるフェルト及びポリウレタン材料から成る。
【0029】
フェルトは、多くの産業におけるニーズにより多種多様な目的で且つ様々な方法で生産され得る材料である。この材料は特に、様々な分野で防音及び衝撃遮断を提供する際に使用される。フェノール系及び熱可塑性フェルトがこれらに接着材をつけて剛性を高めた構造を得て、ある温度下でこれらの内側のバインダが溶融した結果、より衝撃に強くなる。これらの特徴に起因して、フェノールフェルトは、車体下保護構造体の主な構成部品として好ましいものになっている。熱可塑性フェルト又はエポキシを含むフェルトはまた、本発明の代替的な実施形態において、フェノールフェルトの代わりに使用可能である。車体下保護部を形成する複合構造体におけるフェノールフェルトの使用比率は、60~90%、好ましくは75%である。
【0030】
ポリウレタンは、自動車産業で使用される最も重要な材料のうちの1つである。この材料は、ニーズによって様々な密度、硬度、及び形状で生産可能である。これら、調合物の変更こと及び様々な添加剤/充填材の付加を行うによる使用の目的により生産される。ポリウレタンは、主に、自動車産業における吸音部品及び衝撃吸収部品の生産に使用される。これらの特徴により、MDI型ポリエーテル系ポリウレタンは、本発明の車体下保護部において好ましいものであった。車体下保護部を形成する複合構造体におけるポリウレタンの使用比率は、10~40%、好ましくは25%である。
【0031】
複合構造体におけるポリウレタンの必要な硬度及び低孔性を提供するために、充填材料がまた、異なる割合で付加可能である。方解石、重晶石、及びゼオライトは、上記の充填材料として使用されるのが好ましい。上記の充填材料は、ポリウレタンにおいて、別個に、二元で、又は合わせて付加可能である。方解石、重晶石、及びゼオライトの総使用比率は、ポリウレタン含有量の5~35%、好ましくは5%である。
【0032】
本発明の車体下保護用複合構造体を得ることは、以下の工程段階によって実行される。A.フェルトを使用領域に適切なサイズに切断すること。
B.成形用金型における切断されたフェルトの設置。
C.フェルトにポリウレタンを加えること。
【0033】
加えられるポリウレタン充填材料なしで、又は方解石、重晶石、及びゼオライト充填材料を付加することによってフェルトに吹き付けられる。吹き付け工程は、フェルト表面全体における一様分布を保証するためにポリウレタン吹き付け機によって実行される。吹き付け方法によって加えられたポリウレタン材料は、他の生産方法と比較して膨潤が極めて少ない。吹き付け方法によってフェルトに吹き付けられるポリウレタンは、表面上での樹脂の機能を果たし、フェルトに密着する。さらに、ポリウレタンは、フェルトの孔に浸潤することで、硬化後により堅牢な構造体が提供される。
D.ポリウレタンが吹き付けられるフェルトを成形/形成すること。
【0034】
ポリウレタンが吹き付けられたフェルトは、好ましくは、60~200度の温度でプレス型に設置され、且つ、好ましくは、30秒~5分間にわたって250~450トンの圧力下で成形(硬化)される。硬化された材料は、金型から除去され、好ましくは、3~12時間載置され、組み立ての準備ができる。形成フェーズでは、ポリウレタン材料はフェルトに浸潤する。ポリウレタンのフェルトへの漏入を可能にするような、ここで使用されるフェルトの密度及び細孔構造は、フェノールフェルトを選択する際の重要因子である。複合構造体は、硬化工程の間の温度及びフェルト内に浸潤するポリウレタンの影響下でフェノールフェルトにおけるバインダの活性化によって硬くなる。従って、結果として生じる車体下保護部は、防音、衝撃遮断、及び化学的隔離の性質を有し、また軽量なモノリシック部品である。
【0035】
本発明の車体下保護部は、一段階で成形され、且つ非常に早い生産工程によって得られる。結果として生じる車体下保護部は、現在の車両に必要とされる最も重要な要素のうちの1つである軽量さの特徴を、この構造体におけるポリウレタン及びフェノールフェルトによって、難なく満たしている。同時に、ポリウレタンの耐火性によって、高い耐火性を有する構造体が得られる。軽量で高い耐火性を有するこの材料のおかげで、車両のアンダーボディに配置された構成部品は、様々な衝撃に対して保護されるため、より安全な運転が提供される。しかしながら、車両製造業者の最も重要な要求のうちの1つであり、且つフェルト及びポリウレタンが非常に良好なレベルでのみ提供可能である遮音の成果は、2つの構成部品を組み合わせることによって非常に高い水準まで引き上げられる。
【国際調査報告】