(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-30
(54)【発明の名称】動物性タンパク質の処理方法
(51)【国際特許分類】
A23B 4/24 20060101AFI20221122BHJP
A23K 10/20 20160101ALI20221122BHJP
A23K 20/22 20160101ALI20221122BHJP
A23J 3/04 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
A23B4/24
A23K10/20
A23K20/22
A23J3/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022515847
(86)(22)【出願日】2020-09-30
(85)【翻訳文提出日】2022-05-06
(86)【国際出願番号】 US2020053454
(87)【国際公開番号】W WO2021067384
(87)【国際公開日】2021-04-08
(32)【優先日】2019-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390037914
【氏名又は名称】マース インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】MARS INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】ヌブー,ジャン-ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】モリナ,ルイス
【テーマコード(参考)】
2B150
【Fターム(参考)】
2B150AA06
2B150AB04
2B150AB20
2B150AE29
2B150BA01
2B150BC02
2B150BC03
2B150BD01
2B150BD06
2B150BE04
2B150CD02
2B150DD02
2B150DH02
(57)【要約】
本開示の主題は、動物性タンパク質及びそれを含むペットフード製品を処理する方法を提供する。方法は、動物性タンパク質を1つ以上の塩基化合物で処理して、そのpHを上昇させ、動物性タンパク質の保存性の向上及び腐敗の低減を提供することを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上のタンパク質源を処理する方法であって、該方法が、前記タンパク質源に1つ以上の塩基成分を添加するステップを含み、
前記処理されたタンパク質源が約300ppm未満のヒスタミンレベルを有する、
方法。
【請求項2】
前記塩基成分が水酸化ナトリウム(NaOH)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水酸化ナトリウム(NaOH)が、約0.25質量%~約0.5質量%の濃度で存在する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記1つ以上のタンパク質源が、動物性タンパク質、動物由来のタンパク質、又はそれらの組合せを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記1つ以上のタンパク質源が内臓を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記処理されたタンパク質源が約10ppm~約200ppmのヒスタミンレベルを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記処理されたタンパク質源が約5~約8のpHを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記処理されたタンパク質源が約6~約7のpHを有する、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の主題は、動物性タンパク質及びそれを処理する方法に関する。詳細には、本開示の動物性タンパク質は、該動物性タンパク質の保存性を有利に高め、劣化を低減するために、1つ以上の塩基成分で処理することができる。本開示に従って処理された動物性タンパク質は、他の成分と組み合わせて使用して、例えばペットフード製品を形成することができる。
【背景技術】
【0002】
ペットフード製品は、ペットに給餌するための広範な手段を提供する。製造されたペットフード製品に関しては、より長い貯蔵寿命の利便性も提供しつつ、鮮度及び品質を高めた天然成分を取り入れることへの需要が高まっている。肉及び内臓などの原料の鮮度、並びにそれらの発酵の減少は、例えば、凍結又は冷却するために成分の温度を下げることによってなど、さまざまな方法で達成されている。他の知られている方法は、原材料を酸性化すること、又は原材料のpHを低下させることを含む。例えば、バクテリアの増殖を低減又は防止し、原材料を保存するためにpHを下げている市販の製品は、容易に入手可能である。このようなペットフード製品に用いられる乾燥及び湿潤動物性タンパク質の品質と鮮度の両方を改善すると、嗜好性が向上することに起因してペットの製品性能が向上する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、高レベルの鮮度及び品質を有する原料を含むペットフードの製造、並びにその製造方法に対する消費者の需要が高まってきている。処理中の完全性を維持し、ペットフード製品の嗜好性を高めることができる成分が、継続的に必要とされている。本開示の主題は、これら及び他のニーズに対処するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の主題は、動物性タンパク質を処理するプロセスを提供する。このような処理されたタンパク質は、ペットフード製品を形成するための他の成分と組み合わせて使用することができる。驚くべきことに、塩基成分を使用して動物性タンパク質のpHを上昇させると、発酵が減少し、このような原材料の鮮度及び品質の向上をもたらすことが有利に見出された。本開示に従って原材料のpHを上昇させることにより、原材料の腐敗及び発酵を有利に低減又は防止することができる。さらには、ペットフードの品質は、例えば、生体アミンのレベルによって示されるように、このような処理された動物性タンパク質に起因して、より新鮮な原材料を得ることによって向上させることができる。この品質の向上は、嗜好性に影響を与えることができ、さらに生体アミンによって引き起こされる副作用に有利に影響を与えることができる。
【0005】
本開示は、1つ以上のタンパク質源を処理する方法を提供する。該方法は、1つ以上の塩基成分を1つ以上のタンパク質源に添加することを含みうる。処理されたタンパク質源は約300ppm未満のヒスタミンレベルを有しうる。特定の非限定的な実施形態では、処理されたタンパク質源は、約10ppm~約200ppmのヒスタミンレベルを有しうる。その態様の1つによれば、本発明は、1つ以上の塩基成分をタンパク質源に添加することを含む、1つ以上のタンパク質源を処理する方法に関し、処理されたタンパク質源は、約300ppm未満のヒスタミンレベルを有する。
【0006】
ある特定の非限定的な実施形態では、塩基成分は水酸化ナトリウム(NaOH)を含みうる。ある特定の非限定的な実施形態では、塩基成分は水酸化ナトリウム(NaOH)のみである。ある特定の非限定的な実施形態では、水酸化ナトリウムは、約0.25質量%~約0.5質量%の量で存在しうる。
【0007】
ある特定の非限定的な実施形態では、酸成分の添加なしに、塩基成分が添加される。
【0008】
ある特定の非限定的な実施形態では、1つ以上のタンパク質源は、動物性タンパク質、動物由来のタンパク質、又はそれらの組合せを含みうる。特定の非限定的な実施形態では、1つ以上のタンパク質源は内臓を含みうる。
【0009】
ある特定の非限定的な実施形態では、処理された動物性タンパク質は、約5~約8のpHを有しうる。特定の非限定的な実施形態では、処理された動物性タンパク質は約6~約7のpHを有しうる。
【0010】
上記は、以下の詳細な説明をよりよく理解することができるように、本出願の特徴及び技術的利点を広く概説したものである。本出願の特許請求の範囲の主題を形成する本出願の追加の特徴及び利点が、以下に説明される。当業者は、開示された概念及び特定の実施形態が本出願の同じ目的を実施するために他の構造を修正又は設計するための基礎として容易に利用することができることを認識すべきである。当業者は、このような同等の構造が添付の特許請求の範囲に記載されている本出願の精神及び範囲から逸脱しないこともまた認識すべきである。本出願の特性であると考えられている新規特徴は、その構成及び動作方法の両方に関して、さらなる目的及び利点とともに、以下の説明からよりよく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】実施例1及びある特定の非限定的な実施形態による、未粉砕の内臓を塩基成分として水酸化カリウム(KOH)を用いてさまざまな最終濃度で処理することによる保存試験の結果を示すグラフ。横軸:質量%で表したKOHレベル。縦軸:ppmで表したヒスタミンの量。ヒスタミンの量(ppm単位)は、菱形を付した曲線で表されている。pH値は正方形を付した曲線で表されている。
【
図1B】実施例1及びある特定の非限定的な実施形態による、粉砕した内臓を塩基成分として水酸化カリウム(KOH)を用いてさまざまな最終濃度で処理することによる保存試験の結果を示すグラフ。横軸:質量%で表したKOHレベル。縦軸:ppmで表したヒスタミンの量。ヒスタミンの量(ppm単位)は、菱形を付した曲線で表されている。pH値は正方形を付した曲線で表されている。
【
図2A】実施例1及びある特定の非限定的な実施形態による、未粉砕の内臓を塩基成分として水酸化ナトリウム(NaOH)を用いてさまざまな最終濃度で処理することによる保存試験の結果を示すグラフ。横軸:質量%で表したNaOHレベル。縦軸:ppmで表したヒスタミンの量。ヒスタミンの量(ppm単位)は、菱形を付した曲線で表されている。pH値は正方形を付した曲線で表されている。
【
図2B】実施例1及びある特定の非限定的な実施形態による、粉砕した内臓を塩基成分として水酸化ナトリウム(NaOH)を用いてさまざまな最終濃度で処理することによる保存試験の結果を示すグラフ。横軸:質量%で表したNaOHレベル。縦軸:ppmで表したヒスタミンの量。ヒスタミンの量(ppm単位)は、菱形を付した曲線で表されている。pH値は正方形を付した曲線で表されている。
【
図3】実施例2及びある特定の非限定的な実施形態による、内臓を含む家禽用食餌を塩基成分として水酸化ナトリウム(NaOH)を用いてさまざまな最終濃度及びさまざまな時間で処理することによる保存試験の結果を示すグラフ。グラフの横軸の各バーは、上記の各条件についてのヒスタミンの量(mg/kg単位)を示している。縦軸:mg/kg単位のヒスタミンの量。
【
図4】実施例2及びある特定の非限定的な実施形態による、内臓を含む家禽用食餌を塩基成分として水酸化ナトリウム(NaOH)を用いてさまざまな最終濃度及びさまざまな時間で処理することによる保存試験の結果を示すグラフ。グラフの横座標の各バーは、上記の各条件についてのカダベリンの量(mg/kg単位)を示している。縦軸:mg/kgで表したカダベリンの量。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の主題は、動物性タンパク質及びそれを処理する方法に関する。具体的には、本開示の動物性タンパク質は、1つ以上の塩基成分で処理されうる。驚くべきことに、動物性タンパク質のpHを上昇させると、材料の劣化が低減又は防止されることが有利に見出された。本開示に従って処理された動物性タンパク質は、他の成分と組み合わせて使用して、例えばペットフード製品を形成することができる。開示された主題のこれら及び他の態様が、以下にさらに詳細に論じられる。
【0013】
明確にするためであって、限定ではないが、この詳細な説明は次の小区分に分けられる:
1.定義;
2.動物性タンパク質源;
3.ペットフード組成物;
4.ペットフード組成物の製造方法;及び
5.用途。
【0014】
1.定義
本明細書で用いられる用語は、概して、本主題の文脈内及び各用語が用いられる特定の文脈内で、当技術分野における通常の意味を有する。開示された主題の組成及び方法、並びにそれらを製造及び使用する方法を説明する際の追加の手引きを提供するために、ある特定の用語を以下に定義する。
【0015】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられる場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が特に明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「1つの(a)化合物」についての言及は、化合物の混合物を含む。
【0016】
「約」又は「およそ」という用語は、当業者によって決定される特定の値の許容誤差範囲内であることを意味し、これは、一部には、値を測定又は決定する方法、すなわち、測定システムの制限に依存するものである。例えば、「約」は、当技術分野の慣行に従って、3以内又は3を超える標準偏差を意味しうる。あるいは、「約」は、所与の値の20%まで、好ましくは10%まで、さらに好ましくは5%まで、さらになお好ましくは1%までの範囲を意味しうる。また、特に、システム又はプロセスに関して、この用語は、ある値の1桁以内、好ましくは5倍以内、さらに好ましくは2倍以内を意味しうる。
【0017】
本明細書で用いられる場合、「動物」又は「ペット」という用語は、イヌ、ネコなどを含むがこれらに限定されない、動物を指す。飼いイヌ及び飼いネコは、動物又はペットの特定の非限定的な例である。
【0018】
本明細書で用いられる場合、「動物性タンパク質」という用語は、動物をベースとしたタンパク質源を指す。このような動物性タンパク質には、例えば、限定はしないが、肉(例えば、豚肉、牛肉、又は子牛肉)、家禽(例えば、鶏)、魚、臓器(例えば、肝臓、脾臓、又は心臓)、内臓(例えば、鶏又は豚の内臓)、及びそれらの組合せが含まれる。
【0019】
本明細書で用いられる場合、「含む」、「含んでいる」という用語、又はそれらの任意の他の変形は、要素のリストを含んでいるプロセス、方法、物品、又は装置が、それらの要素のみを含むのではなく、このようなプロセス、方法、物品、又は装置に明示的に列挙されていない、又は固有ではない他の要素を含むことができるように、非排他的な包含にも及ぶことが意図されている。
【0020】
本明細書で用いられる場合、「栄養的に完全な」という用語は、例えば動物用栄養の分野で認められた管轄当局の推奨に基づいて、ペットフード製品の意図された受益者に必要とされるすべての既知の栄養素をすべての適切な量及び割合で含むペットフード製品を指す。したがって、このような食品は、補足的な栄養源を追加することなしに、生命を維持するための食事摂取源としての働きをすることができる。本明細書で用いられる「栄養的にバランスのとれた」という用語は、栄養的に完全でありうるペットフード製品を指す。あるいは、本明細書で用いられる「栄養的にバランスのとれた」は、栄養的に完全ではないペットフード製品を指すこともできる。
【0021】
本明細書で用いられる場合、「嗜好性」又は「嗜好的」という用語は、嗜好又は味覚にとって望ましいことを指す。さらには、本明細書で用いられる「嗜好性」又は「嗜好的」という用語は、ペットフード製品が動物の嗜好又は味覚に訴えかける度合いを指す。これは、給餌試験、例えば、識別試験又は格付け試験での測定に適している。ある特定の実施形態では、「嗜好性」とは、ある食品が別の食品よりも相対的に好まれることを意味しうる。例えば、動物が2つ以上の食品のうちの1つを好む場合、その好ましい食品はより「嗜好的」であり、「高められた嗜好性」又は「向上した嗜好性」を有する。ある特定の実施形態では、1つ以上の他の食品と比較した1つの食品の相対的な嗜好性は、例えば、食品の相対的な消費、又は他の適切な、嗜好性を示す選好の尺度によって、例えば共存させた随意選択の比較において、決定することができる。
【0022】
本明細書で交換可能に用いられる場合、「ペットフード」又は「ペットフード組成物」という用語は、動物又はペットによる摂取を意図した組成物を指す。ペットフードは、栄養的にバランスが取られうる、毎日の飼料並びにおやつに適した栄養的にバランスの取れた組成物を含みうるが、これに限定されない。
【0023】
本明細書で用いられる場合、「タンパク質源」という用語は、動物性タンパク質の供給源、動物由来のタンパク質の供給源、又はそれらの組合せを指す。
【0024】
本明細書で用いられる場合、「内臓」という用語は、身体の腸の部分を指す。内臓はさらに、身体の他の内臓、例えば、心臓、胃、又は肺を自然な比率で含みうる。
【0025】
本明細書で用いられる場合、「重量パーセント」という用語は、例えば、ペットフード組成物中の構成物質又は成分の重量による量を、ペットフード組成物の総重量のパーセンテージとして指すことを意味する。「重量パーセント」という用語はまた、例えば、加水分解物組成物中の構成物質又は成分の重量による量を、加水分解物組成物の総重量のパーセンテージとして指すこともできる。「重量パーセント」、「重量%」、「wt%」、及び「質量%」という用語は互換的に用いられる。
【0026】
2. 動物性タンパク質を処理する方法
ある特定の非限定的な実施形態では、本開示の動物性タンパク質は、本明細書に開示されるプロセスに従って処理することができる。特定の実施形態では、動物性タンパク質のpHは、1つ以上の塩基成分によって上昇させることができる。このような処理により、驚くべきことに、有利に、動物タンパク質の劣化の低減及び保存特性の向上をもたらした。
【0027】
動物性タンパク質源
ある特定の非限定的な実施形態では、1つ以上のタンパク質源は、動物性タンパク質、動物由来のタンパク質、又はそれらの組合せを含みうる。1つ以上のタンパク質源は、鶏肉又は豚肉などの動物性タンパク質源を含みうる。1つ以上のタンパク質源は、例えば、気管、腎臓、肝臓、又は内臓を含みうる。本明細書で用いられる場合、「タンパク質」という用語は、1つ以上の原料によって適切に提供される1つ以上のタンパク質を指す。タンパク質は、適切には、動物性タンパク質、動物由来のタンパク質、又はそれらの任意の組合せでありうる。動物性タンパク質には、動物由来のタンパク質(脊椎動物及び無脊椎動物のタンパク質を含む)、例えば、哺乳動物、家禽、魚、及び昆虫に由来するタンパク質が含まれる。適切な動物性タンパク質の例には、鶏肉、七面鳥、牛肉、子羊肉、豚肉、鹿肉、水牛、アヒル、カンガルー、貝類、甲殻類、シャケ、マグロ、白身魚などに由来するものが含まれる。それらは、筋肉、器官、腱、骨などに適切に由来しうる。タンパク質は、任意の適切な形態、例えば、単離された又は部分的に単離された;濃縮された;粉砕されたものなどでありうる。例えば、限定はしないが、1つ以上のタンパク質源は、豚の気管、豚の腎臓、家禽の部位、鶏の肝臓、鶏の内臓、鶏の首、器官、七面鳥の枝肉、又はそれらの組合せのうちの1つ以上を含みうる。特定の非限定的な実施形態では、1つ以上のタンパク質源には、例えば、鶏、七面鳥、豚、牛、子羊、又は魚の肝臓が含まれうる。当業者は、多種多様なタンパク質源が本開示での使用に適していることを認識するであろう。
【0028】
ある特定の非限定的な実施形態では、1つ以上のタンパク質源は、動物の内臓、例えば家禽の内臓を含みうる。このような原材料は、発酵及び劣化を起こしやすい可能性がある。さらには、材料の状態は、発酵及び劣化の速度及び発生に影響を与える可能性がある。例えば粉砕した内臓中の酵素は細菌及び基質と混合される可能性があることから、例えば粉砕した内臓は、天然又は未粉砕の内臓と比較して、発酵及び劣化しやすい可能性がある。
【0029】
ある特定の非限定的な実施形態では、1つ以上のタンパク質源の初期pHは、約5~約7、約5~約6.5、又は約5~6でありうる。特定の非限定的な実施形態では、1つ以上のタンパク質源の初期pHは、約5、約5.5、約6、又は約6.5でありうる。当業者は、1つ以上のタンパク質源の初期pHが、例えば、原材料及びその状態(例えば、粉砕又は未粉砕)に応じて変化しうることを認識するであろう。
【0030】
ある特定の非限定的な実施形態では、1つ以上のタンパク質源は、処理前に冷却又は冷蔵することができる。ある特定の非限定的な実施形態では、水を1つ以上のタンパク質源から少なくとも部分的に除去することができる。ある特定の非限定的な実施形態では、1つ以上の動物性タンパク質を一緒に混合することができる。
【0031】
塩基成分
ある特定の非限定的な実施形態では、1つ以上のタンパク質源を、1つ以上の塩基成分で処理することができる。1つ以上の塩基成分を使用して、1つ以上のタンパク質源のpHを上昇させることができる。1つ以上の塩基成分には、任意の適切な塩基化合物が含まれうる。当業者は、多種多様な塩基成分が本開示での使用に適していることを認識するであろう。ある特定の実施形態では、1つ以上の塩基成分は、水酸化ナトリウム(NaOH)又は水酸化カリウム(KOH)を含みうる。ある特定の実施形態では、塩基成分は、水酸化ナトリウム(NaOH)のみを含む。
【0032】
ある特定の非限定的な実施形態では、1つ以上の塩基成分を、約0.1質量%~約5質量%、約0.1質量%~約4質量%;約0.1質量%~約3質量%;約0.1質量%~約2質量%;約0.1質量%~約2質量%;約0.1質量%~約1.5質量%;約0.1質量%~約1.0質量%、又は約0.1質量%~約0.5質量%の最終濃度で、1つ以上のタンパク質源に添加することができる。さらなる非限定的な実施形態では、1つ以上の塩基成分を、約0.25質量%~約5質量%、約0.25質量%~約4質量%;約0.25質量%~約3質量%;約0.25質量%~約2質量%;約0.25質量%~約2質量%;約0.25質量%~約1.5質量%;約0.25質量%~約1.0質量%、又は約0.25質量%~約0.5質量%の最終濃度で、1つ以上のタンパク質源に添加することができる。さらに非限定的な実施形態では、1つ以上の塩基成分を、約0.5質量%~約5質量%、約0.5質量%~約4質量%;約0.5質量%~約3質量%;約0.5質量%~約2質量%;約0.5質量%~約2質量%;約0.5質量%~約1.5質量%;約0.5質量%~約1.0質量%の最終濃度で、1つ以上のタンパク質源に添加することができる。特定の非限定的な実施形態では、1つ以上の塩基成分を、約0.1質量%、約0.25質量%、約0.5質量%、約0.75質量%、約1質量%、約1.2質量%、約1.4質量%、約1.5質量%、又は約2質量%の最終濃度で、1つ以上のタンパク質源に添加することができる。
【0033】
ある特定の非限定的な実施形態では、1つ以上の塩基成分は、約0.25質量%~約0.5質量%の水酸化ナトリウム(NaOH)を含む。ある特定の実施形態では、1つ以上の塩基成分は、約0.25質量%~約0.5質量%の水酸化ナトリウム(NaOH)のみを含む。
【0034】
ある特定の非限定的な実施形態では、処理後の1つ以上のタンパク質源のpHは、約5.1~約8、約6~約7.8、約6.5~約7.5、又は約6~約7の範囲でありうる。特定の非限定的な実施形態では、処理後の1つ以上のタンパク質源のpHは、約6、約6.5、約7、約7.2、約7.5、又は約7.8でありうる。
【0035】
1つ以上の塩基成分を1つ以上のタンパク質源に均一に適用することができる。例えば、ある特定の非限定的な実施形態では、1つ以上の塩基成分を1つ以上のタンパク質源に噴霧することができる。
【0036】
処理されたタンパク質源の特徴
本開示に従って処理されたタンパク質源は、驚くべきことに、材料の劣化の低減又は防止を有利にもたらす。本開示に従って原材料のpHを上昇させることにより、原材料の腐敗及び発酵を有利に低減又は防止することができる。さらには、ペットフードの品質は、本開示の方法に従ってpHを上昇させることにより、より新鮮な原材料を得ることによって高めることができる。このような品質は、嗜好性に影響を与えることができ、さらに、生体アミンによって引き起こされる副作用に有利に影響を与えることができる。
【0037】
ある特定の非限定的な実施形態では、処理されたタンパク質源は、約0ppm~約500ppm、約10ppm~約300ppm、約100ppm~約200ppm、from 約10ppm~約200ppm、又は約10ppm~約150ppmのヒスタミンレベルを有しうる。特定の非限定的な実施形態では、処理された動物性タンパク質は、約0ppm、約10ppm、約15ppm、約50ppm、約100ppm、約125ppm、約150ppm、約200ppm、約250ppm、約275ppm、約300ppm、又は約500ppmのヒスタミンレベルを有しうる。ある特定の非限定的な実施形態では、処理された動物性タンパク質は、約500ppm未満、約300ppm未満、約250ppm未満、約200ppm未満、約100ppm未満、約50ppm未満、又は約25ppm未満のヒスタミンレベルを有しうる。
【0038】
ある特定の非限定的な実施形態では、処理されたタンパク質源は、約0mg/kg~約200mg/kg、約10mg/kg~約150mg/kg、約100mg/kg~約150mg/kg、約10mg/kg~約90mg/kg、又は約10mg/kg~約50mg/kgのヒスタミンレベルを有しうる。特定の非限定的な実施形態では、処理された動物性タンパク質は、約0mg/kg、約1mg/kg、約5mg/kg、約10mg/kg、約15mg/kg、約25mg/kg、約50mg/kg、約100mg/kg、約125mg/kg、約150mg/kg、又は約200mg/kgのヒスタミンレベルを有しうる。ある特定の非限定的な実施形態では、処理された動物性タンパク質は、約200mg/kg未満、約150mg/kg未満、約100mg/kg未満、約90mg/kg未満、約50mg/kg未満、約25mg/kg未満、約15mg/kg未満、約10mg/kg未満、約5mg/kg未満、約2mg/kg未満、又は約1mg/kg未満のヒスタミンレベルを有しうる。
【0039】
ヒスタミン、他の生体アミン、例えばプトレシン、カダベリン、スペルミン、スペルミジン、チアミン、トリプタミン、2-フェニルエチルアミン、セロトニン、又はアグマチン、及びヘキサナールの量を測定する方法は、当業者によく知られている。これらの量を測定するための方法の例もまた、本明細書の実験部分に開示されている。
【0040】
3.ペットフード組成物
ある特定の非限定的な実施形態では、ペットフード組成物が提供される。ペットフード組成物は、本開示に従った、1つ以上の処理された動物性タンパク質、及び任意選択的に、1つ以上の追加の成分、例えば、乾燥成分、液体成分、又はそれらの組合せを含みうる。当業者は、多種多様なペットフード組成物が本開示での使用に適していることを認識するであろう。
【0041】
4.ペットフード組成物の製造方法
ある特定の非限定的な実施形態では、ペットフード組成物を製造する方法が提供される。ある特定の非限定的な実施形態では、1つ以上の乾燥成分を1つ以上の湿潤成分と混合して、エマルション又は生地を形成することができる。エマルション又は生地は、圧力下で所定の温度に加熱され、徐々に冷却されうる。あるいは、エマルションが形成され、これを粉砕し、所定の温度に加熱し、続いて処理ゾーンに導入することができる。処理ゾーンでは、エマルションを所定の圧力に供し、排出することができる。あるいは、塊状の製品を製造するために、スラリーを所定の圧力でかき取り式熱交換器に導入し、加熱して、ある特定の温度を有する熱処理製品を製造することができる。ある特定の非限定的な実施形態では、1つ以上の乾燥成分を、例えば水などの1つ以上の湿潤成分と混合して、生地を形成することができる。生地は、高温、高圧、又はそれらの組合せの条件下で、押出成形中に調理することができる。押出機は、特定の形状を有するダイを備えていてよく、製品が押出される際に、押出物を粒子又は断片へと分割することができる。
【0042】
当業者は、ペットフード組成物を製造する多種多様な方法が本開示での使用に適していることを認識するであろう。
【0043】
5.用途
本開示に従って処理された動物性タンパク質は、ペットフード製品を形成するための他の成分と共に、原材料として使用することができる。ある特定の非限定的な実施形態では、ペットフード組成物は、ペットフード製品として単独で使用してもよく、あるいは他の成分と組み合わせて使用して、混合ペットフード製品を形成することができる。任意の適切なペットフード用途を、本開示の動物性タンパク質と共に使用することができる。例えば、限定はしないが、本開示に従って処理された動物性タンパク質は、グレイビー、おやつ、ベーカリー、又はピロー関連のペットフード製品の乾燥した、湿った、例えばローフ又はチャンクなどでの使用に適しうる。
【実施例】
【0044】
以下の実施例は、本開示の主題の単なる例示であり、いかなる方法でも主題の範囲を限定するものと見なされるべきではない。
【0045】
以下の実施例では、ヒスタミン、チアミン、プトレシン、カダベリン、セロトニン、フェニルエチルアラミン(phenylethylalamine)、スペルミジン、スペルミン、トリプタミン、及びヘキサナールの量を、次のように測定した。
【0046】
生体アミンプロファイルの分析方法:原理は、生体アミンの酸抽出と、o-フタルジアルデヒド(OPA)カラム後誘導体化の後の蛍光検出を伴った高速液体クロマトグラフィー(HPLC-FLD)による決定にある。このプロトコルは、AOAC International (Association of Official Analytical Chemists - International) volume 78, n°4, 1995、及びAOAC International volume 81, n°5, 1998から採用している。ヒスタミン、チアミン、プトレシン、カダベリンについての拡張された[k=2]の不確かさは、次の通りである:
- 値≧10mg/kg:値の30%,
- 値<10mg/kg:値の40%、最小値は5mg/kg(ヒスタミンでは2mg/kg)。
【0047】
セロトニンについての拡張された[k=2]の不確かさは、次の通りである:
-値の50%。
【0048】
マトリクス中の定量限界は、ヒスタミンで2mg/kgであり、他のすべての生体アミンでは5mg/kgである。
【0049】
ヘキサナールの分析方法:原理は、静的ヘッドスペース抽出を使用してヘキサナールを抽出し、内部定量化を使用して水素炎イオン化型検出器(GC-FID)を備えたガスクロマトグラフィーで分析することにある。
【0050】
ヘキサナールについての拡張された[k=2]の不確かさは40%である。
【0051】
実施例1:内臓の水酸化カリウム(KOH)及び水酸化ナトリウム(NaOH)前処理試験(さまざまな最終濃度)
2つの塩基化合物、水酸化カリウム(KOH)と水酸化ナトリウム(NaOH)を、動物の内臓の前処理において、それぞれ異なる最終濃度で試験した。動物の内臓は、粉砕及び未粉砕の両方の状態で試験した。水酸化カリウム(KOH)前処理は、未粉砕の動物の内臓について、0質量%、0.5質量%、1質量%、1.2質量%、1.4質量%、及び1.5質量%の最終濃度で試験し、粉砕した動物の内臓については、0質量%、0.75質量%、1質量%、1.2質量%、1.4質量%、及び1.5質量%の最終濃度で試験した。水酸化ナトリウム(NaOH)前処理は、未粉砕の動物の内臓について、0質量%、0.25質量%、0.5質量%、及び1質量%の最終濃度で試験し、粉砕した動物の内臓については、0.25質量%、0.5質量%、1質量%、及び1.5質量%の最終濃度で試験した。すべてのサンプルについてヒスタミンのレベル(ppm)及びpHを測定した。ヒスタミンはアミノ酸発酵(ヒスチジン)の副生成物であり、生体アミンのトレーサーとして使用することができる。ヒスタミンのレベルが低いと、原材料が新鮮であることを示しうる。
【0052】
動物の内臓の水酸化カリウム(KOH)前処理の結果が表1A(未粉砕)及び表1B(粉砕)に提示されており、これらは、それぞれ、
図1A(未粉砕)及び
図1B(粉砕)に対応している。動物の内臓の水酸化ナトリウム(NaOH)前処理の結果が表2A(未粉砕)及び表2B(粉砕)に提示されており、これらは、それぞれ、
図2A(未粉砕)及び
図2B(粉砕)に対応している。
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
表1A~1B及び表2A~2B、並びに
図1A~1B及び
図2A~2Bに示されるように、水酸化ナトリウム(NaOH)を用いた動物の内臓(粉砕又は未粉砕)の前処理は、水酸化カリウム(KOH)を用いた前処理よりも効率的であった。未粉砕の動物の内臓と粉砕した動物の内臓の両方で、水酸化ナトリウム(NaOH)を用いた前処理によって、材料のpHレベルが上昇し、ヒスタミンのレベルが低下した。
【0058】
実施例2:内臓を含む家禽用食餌の水酸化ナトリウム(NaOH)前処理試験(0.25質量%及び0.5質量%のNaOH)
水酸化ナトリウム(NaOH)を、動物性タンパク質、すなわち家禽用食餌の前処理において、0質量%、0.25質量%、及び0.5質量%の最終濃度で、ある期間にわたって試験した。ヒスタミンのレベル(mg/kg)を水酸化ナトリウム(NaOH)の前処理の各最終濃度について、1時間、5時間、12時間、20時間、24時間、及び30時間で測定した。標準的な鶏の内臓を、運搬及びスクリーニングの直後に屠殺場から取り出した。新鮮な内臓の均質な混合物を、屠殺後すぐに同じ重量の3つの容器(すなわち、「対照」、「0.25質量%で添加されたNaOH」、及び「0.5質量%で添加されたNaOH」)に分けた。回収から約1時間後、3つの容器のそれぞれに80質量%の炭酸水(soda)を加えた。次に、3つの容器を30秒間、ハンドブレンドした。試験期間の間、容器を20℃に維持した制御された室内に置いた。表3に示すように、3つの容器の各々から同じ時点(T0~T5)でサンプルを採取し、すぐに冷凍庫に保管した。合計16のサンプルを試験した。対照をT0で試験し、3つの容器すべて(対照、0.25質量%のNaOH、及び0.5質量%のNaOH)をT1~T5で試験した。各中間サンプリングのステップの前に、各容器において攪拌を行った。30時間の保管後、すべてのサンプルを115℃のオーブンで24時間脱水した後、ヘキサナール(酸化)、生体アミン、及びナトリウムについて試験した。
【0059】
【0060】
ヘキサナール、ナトリウム、及び生体アミンの試験の結果を表4に提示する。ヒスタミンレベル(mg/kg)の結果は
図3に示されている。カダベリンレベル(mg/kg)の結果は
図4に示されている。
【0061】
【0062】
【0063】
ヒスタミンレベル(mg/kg)の結果を示す表4及び
図3に示されるように、水酸化ナトリウム(NaOH)を動物性タンパク質の保存に使用することができる。最終濃度0.5質量%の水酸化ナトリウム(NaOH)は、最終濃度0.25質量%の水酸化ナトリウム(NaOH)と比較して、動物性タンパク質の保存においてより効率的であり、また、動物性タンパク質のpHにより大きい影響を与えた。より高い最終濃度0.5質量%の水酸化ナトリウム(NaOH)は、最終濃度0.25質量%の水酸化ナトリウム(NaOH)と比較して、材料のpHをより塩基性のレベルへと上昇させた。表4及び
図3に示されるように、材料のヒスタミンレベルは、水酸化ナトリウム(NaOH)の最終濃度の増加すなわち、0質量%、0.25質量%から0.5質量%への増加と相関して減少した。
【0064】
図示され、特許請求されるさまざまな実施形態に加えて、開示される主題はまた、本明細書に開示及び特許請求される特徴の他の組合せを有する他の実施形態も対象とする。したがって、本明細書に提示される特定の特徴は、開示される主題が本明細書に開示される特徴の任意の適切な組合せを含むように、開示される主題の範囲内で他の方法で互いに組み合わせることができる。開示された主題の特定の実施形態の前述の説明は、例示及び説明の目的で提示されている。網羅的であること、又は開示された主題をそれらの開示された実施形態に限定することは意図されていない。
【0065】
当業者にとって、開示された主題の精神又は範囲から逸脱することなく、開示された主題のシステム及び方法においてさまざまな修正及び変形がなされうることは明白であろう。したがって、開示された主題は、添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物の範囲内にある修正及び変形を含むことが意図されている。
【国際調査報告】