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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-30
(54)【発明の名称】流体におけるタンパク質濃度の決定
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/59 20060101AFI20221122BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
G01N21/59 Z
G01N21/27 F
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022518170
(86)(22)【出願日】2020-10-01
(85)【翻訳文提出日】2022-05-18
(86)【国際出願番号】 US2020053750
(87)【国際公開番号】W WO2021067565
(87)【国際公開日】2021-04-08
(31)【優先権主張番号】62/909,004
(32)【優先日】2019-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503393010
【氏名又は名称】レプリゲン・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Repligen Corporation
【住所又は居所原語表記】41Seyon Street,Building#1,Suite100,Waltham,Massachusetts02139,United StatesOfAmerica
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ペイサー、ジェームズ ロナルド
(72)【発明者】
【氏名】シャンバキー、ラムゼイ
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB04
2G059CC16
2G059DD04
2G059DD12
2G059DD13
2G059EE01
2G059EE12
2G059GG01
2G059GG02
2G059HH03
2G059JJ01
2G059KK01
2G059LL01
2G059LL03
2G059MM01
2G059MM04
2G059MM12
(57)【要約】
本開示は、傾き分光法を用いて第1濃度を決定し、選択的吸着によって発現されたタンパク質の流体を逓減し、傾き分光法を用いて第2濃度を決定することによって、ユーザが力価を迅速に決定し、ホールド段階を除去することを可能にするシステムおよび方法を提供する。さらに、本開示のシステムおよび方法は、ユーザがバイオアナライザまたはHPLCの使用を控えることを可能にする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体における発現されたタンパク質の濃度を決定する方法であって、
傾き分光法を用いて前記流体の第1吸光傾き値を測定し、前記タンパク質の既知の消光係数で前記第1吸光傾き値を除算して第1濃度を得る段階と、
選択的吸着によって前記発現されたタンパク質の前記流体を逓減する段階と、
傾き分光法を用いて前記逓減された流体の第2吸光傾き値を測定し、前記タンパク質の前記既知の消光係数で前記第2吸光傾き値を除算して第2濃度を得る段階と、
前記第1濃度および前記第2濃度に基づいて、前記選択的吸着によって除去された材料の量を算出する段階と
を備える方法。
【請求項2】
除去された材料の量を算出する前記段階は、前記第1濃度から前記第2濃度を減算し、差分に前記流体の容積を乗算する段階を含む、
前記流体の前記第1吸光傾き値および前記第2吸光傾き値の測定は、同じ波長で測定される、
発現されたタンパク質の前記濃度の前記算出は、前記発現されたタンパク質の既知の消光係数を用いる
のうち1または複数である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
選択的吸着によって前記発現されたタンパク質の前記流体を逓減する段階は、固体サポートに固定されている標的タンパク質に親和性リガンドを用いる段階をさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記標的タンパク質は固定されたプロテインAである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
選択的吸着による前記発現されたタンパク質の前記流体の逓減は、樹脂、膜、フィルタプレート、またはパックされたカラムのうち1または複数の使用をさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記樹脂は二水和物である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記流体を逓減する前記段階は、前記第1吸光傾き値を測定する前記段階と第2吸光傾き値を測定する前記段階との間で流体の容積を増加させる段階を含まず、および/または、
前記流体を逓減する前記段階は、予め定められた量だけ流体の容積を増加させる段階を含む
請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記段階は自動化されている、
前記流体は、測定の前にろ過されている、
前記流体は、測定の前に成長期間を必要とする
のうち1または複数である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
流体における発現されたタンパク質の逓減レベルを決定するためのシステムであって、
選択的吸着によって前記発現されたタンパク質の前記流体を逓減するための逓減モジュールと、
前記流体の流路において、前記逓減モジュールの上流および下流に位置する第1流体サンプリングモジュールおよび第2流体サンプリングモジュールと、
前記第1流体サンプリングモジュールおよび前記第2流体サンプリングモジュールから流体を受け、複数の流路長において前記第1流体サンプリングモジュールおよび前記第2流体サンプリングモジュールからの前記流体の吸光度を測定し、そこから流体濃度を決定するように構成される傾き分光法装置と、
を備え、
前記逓減は、前記第1流体サンプリングモジュールからの流体における前記発現されたタンパク質の濃度から、前記第2流体サンプリングモジュールからの流体における前記発現されたタンパク質の濃度を減算し、それらの間の差分に前記流体の容積を乗算することによって決定される、
システム。
【請求項10】
前記逓減モジュールはクロマトグラフィカラムを含む、および/または、前記傾き分光法装置は傾き分光器である、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記逓減モジュールは、固定されたプロテインA、樹脂、膜、フィルタプレート、またはパックされたカラムのうち1または複数を含む、請求項9または10に記載のシステム。
【請求項12】
流体における、発現されたタンパク質のクロマトグラフィカラムへの結合を評価する方法であって、
(a)第1経路長において、前記流体における前記発現されたタンパク質の第1吸光度スペクトルを取得する段階と、
(b)前記第1経路長をインクリメントによって変化させて第2経路長を提供し、予め定められた波長において第2吸光度スペクトル読み取り値を取得する段階と、
(c)選択的吸着によって前記発現されたタンパク質の前記流体を逓減する段階と、
(d)前記逓減した流体に対して段階(a)および(b)を反復する段階と、
(e)所与の波長における吸光度値から回帰直線を生成し、これにより、前記発現されたタンパク質の逓減の前および後の前記流体に対する前記回帰直線の傾きが得られる、段階と、
(f)前記逓減していない流体の傾きから、前記逓減した流体の前記傾きを減算する段階と、
(g)(f)において算出された量を逓減前の前記流体の前記傾きで除算することによって、発現されたタンパク質の逓減割合を算出する段階と、
を備える方法。
【請求項13】
発現されたタンパク質の濃度の前記算出は、前記発現されたタンパク質の既知の消光係数を用いる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
選択的吸着による前記発現されたタンパク質の前記流体の逓減は、固体サポートに固定されている標的タンパク質に親和性リガンドを用いることをさらに含む、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記標的タンパク質は固定されたプロテインAである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
選択的吸着によって前記発現されたタンパク質の前記流体を逓減する段階は、樹脂、膜、フィルタプレート、またはパックされたカラムのうち1または複数の使用をさらに含む、請求項12から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記樹脂は二水和物である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記段階は自動化されている、
前記流体は、測定の前にろ過されている、
前記流体は、測定の前に成長期間を必要とする
のうち1または複数である、請求項12から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
請求項1から8および12から18のいずれか一項に記載の方法における、請求項9から11のいずれか一項に記載のシステムの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、2019年10月1日に出願された米国仮出願第62/909,004号に対する優先権の利益を主張する。本願は、参照により本明細書に、その全体において、かつ全ての目的のために、明確に組み込まれている。
【0002】
本開示は、概して、流体における発現されたタンパク質の濃度を決定する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
製造プロセスのモニタリングおよび制御は、全産業において重要であるが、特に、バイオテクノロジープロセスの場合に重要である。バイオテクノロジープロセスは、タンパク質、細胞、組織、炭水化物およびワクチンのような多種多様な製品を生成するために用いられる。製造プロセスのモニタリングは、インサイチュー分析、オフラインモニタリングまたはオンラインモニタリングによって実現されてよい。バイオ製造プロセスは時間がかかり、通常、バッチ式で実行される。製造プロセス全体は言うまでもなく、個々のクロマトグラフィ段階の各々に対する連続処理は、商業的プロセスにおいてまだ実現されていない。このことは、プロセスの効率を確保するために、プロセスの各ステージにおいてサンプルを取り、次に分析する必要があり得るという事実に部分的に起因する。これらのサンプルの分析は、製造プロセスの各段階間におけるプロセスパラメータの調整を可能にし得る情報を提供し得る。
【0004】
現在、バイオ医薬品の製造プロセスを制御するために必要とされるセンサの多くは、(280nmにおける)UV吸光度センサを除いて利用可能であり、かつ正確である。非常に小さい経路長でさえ、UVセンサはプロセス中に飽和状態になり、それによって、プロセスのオペレータにほとんどまたは全く情報を提供することができなくなる。これは、UV吸光度の追跡によってなされるプロセス決定が、センサの線形領域においてのみ可能であることを意味する。
【0005】
この問題を回避するために、300nmのような光の代替え波長が用いられてよく、全ての場合、このプロセスを特徴づける分子のプロセス開発ステージにおいて、280nmにおける読み取り値がより大きなスケールで必要とされないように、大いなる取り組みがなされている。このことは、プロセス中に問題が生じ得ないことを保証するものではなく、実際、A300値は必ずしもA280値を示すものではない。数百万ドルというバッチのコストにより、不良センサに起因して失われるバッチは受容できないリスクである。プロセス中、開発サンプルは、とりわけUV吸光度で、プロセスの各ステージで30超の点にわたって取られて分析される必要がある。この段階は、開発プロセスの各段階で、単一の分子に対して何回も反復される必要がある。
【0006】
精製開発は、生体分子開発の合計R&Dコストの1-3%を占めている。上位12企業では、これは、薬剤あたりおよそ$750M-$2.2Bの開発コストを計上している。プロセス開発タイムラインの低減は、わずかであってでも、産業に対して大きな価値を有し得る。プロセスを通してタンパク質濃度を280nmで直接測定することは、サンプリング時間を著しく低減し、連続処理スキームを可能にし、プロセスの全ステージ中の製品純度を潜在的に示すことができる。
【0007】
したがって、化合物の複合混合物における特定の物質の存在を、単純に、かつ精製、修飾または希釈をせずに決定するための方法の必要性が存在している。
【0008】
分光分析は幅広い分野であり、ここで、気体、液体、固体のあらゆる相において、材料の組成および特性が、エネルギーとの相互作用(例えば、吸光、発光、または放出)から発生する電磁スペクトルから決定される。分光法として知られる分光化学分析の一態様は、放射エネルギーと対象材料との相互作用を伴う。そのような物体-照射相互作用の研究のために用いられる特定の方法は、分光法の多くの下位分野を定義している。1つの分野は、特に、吸光分光法として知られており、ここで、液体物質の光の吸光スペクトルが測定される。吸光スペクトルは、光波長の関数としての(吸光度に起因する)光減衰分布である。単純な分光光度計では、研究対象のサンプル物質は、キュベットまたはサンプルセルとしても知られる透過性のコンテナに配置される。既知の波長λおよび強度Iの電磁照射(光)(すなわち、紫外線、赤外線、可視光線など)は、キュベットの一方の側に入射する。出ていく光の強度を測定する検出器は、キュベットの反対側に配置される。光がサンプルを通って伝搬する長さが、距離dである。最も標準的なUV/可視分光光度計は、1cmの経路長を有し、標準的にはサンプルの50から2000μLを保持する標準キュベットを利用する。濃度cの単一のホモジニアス物質からなるサンプルに対して、サンプルを通って伝送される光は、Beerの法則A=εclとして知られる関係に従う。ここで、Aは、波長λにおけるサンプルの吸光度(光濃度(OD)としても知られる。ここで、OD=入射光に対して伝送される光の比率の-log)であり、εは吸光率または消光係数(標準的には、所与の波長において一定)であり、cはサンプルの濃度であり、lはサンプルを通した光の経路長である。
【0009】
溶液の分光測定は、様々な分野において広く用いられている。溶液における対象化合物は、高濃度に濃縮されることが多い。例えば、タンパク質、DNAまたはRNAのような生物学的サンプルは、吸光度が測定される場合、分光光度計の線形範囲外に低下した濃度で単離されることが多い。したがって、サンプルの希釈は、機器の線形範囲に含まれる吸光度値の測定が必要とされることが多い。多くの場合、サンプルの複数の希釈が必要とされ、これは、任意の下流での用途のために希釈されるサンプルの希釈エラーおよび除去の両方につながる。したがって、可能な濃度の知見なく既存のサンプルを取り、これらのサンプルの吸光を希釈せずに測定することが望ましい。
【0010】
複数のサンプルキュベットは、反復サンプリングの問題を解決し得る。しかしながら、このアプローチは、さらに、複数のサンプルキュベットの準備が必要であり、さらなる使用からいくつかのサンプルを除去する。更に、大半の分光光度計において、経路長lは固定である。
【0011】
希釈の問題に対する別のアプローチは、吸光度測定を行う際に経路長を低減することである。測定経路長を低減することによって、サンプルの容積が低減し得る。経路長の低減は、経路長の減少に比例して、測定される吸光も減少させる。例えば、経路長を、標準的な1cmから0.2mmの経路長に低減することで、仮想的に50倍の希釈を提供する。したがって、より高濃度に濃縮されたサンプルの吸光度は、サンプルを通って進む光の経路長が減少する場合、機器の線形範囲内で測定可能となる。標準キュベットの寸法1cmを維持しつつ、内部容積を減少させることによって、サンプルを通る経路長を減少させたキュベットを製造するいくつかの企業がある。内部容積を減少させることによって、必要とされるサンプルがより少なくなり、より濃縮されたサンプルが大半の標準的な分光光度計の線形範囲内で測定可能となる。これらの低容積キュベットは、より濃縮されたサンプルの測定を可能としつつ、これらのキュベット内の経路長はさらに固定される。サンプル濃度が分光光度計の線形範囲外に低下した場合、サンプルは、希釈されることをさらに必要とすることがあり、または、より一層小さい経路長の別のキュベットが、正確な吸光度の読み取りが行われる前に必要とされることがある。
【0012】
従来技術も、低容量サンプルの吸光度値を測定可能な分光光度計およびフローセルを説明している。これらの装置は、吸光度を測定するために短い経路長を利用するように設計されており、これにより、少量のサンプルのみが必要とされる。 Grossらへの米国特許第4,643,580号は、小さい試験容積を受け付けおよび支持するハウジングがある光度計ヘッドを開示する。ファイバ光送信機および受信機がハウジング内で離間しており、これにより、2つの端部間で液滴が停止可能となる。
【0013】
McMillanへの米国特許第4,910,402号は、シリンジが2つの固定ファイバ間の間隙に液体を落下させ、LEDレーザからのIRパルスが液滴を通して供給される装置を開示する。出力信号は、照射と液滴の液体との相互作用の関数として分析される。
【0014】
Robertsonへの米国特許第6,628,382は、極めて小さい液体サンプルに対して分光光度測定を実行するための装置を説明する。ここで、液滴は、表面張力によって2つの対向する表面間で保持される。2つの表面は、互いに対して移動可能であり、光ファイバによる分光光度測定が可能となるように、サンプルにおける表面張力を維持する。
【0015】
Leveilleらへの米国特許第6,747,740号は、0.1mm未満まで調整可能な測定経路長を有する光度測定フローセルを説明する。フローセルは、様々な長さにすることができる軸部を含む段階状の光学要素を含む。測定経路長は、特定の長さの段階状要素の1つを、異なる長さの別の段階状要素と置換することによって調整可能である。
【0016】
Dussaultらへの米国特許第6,188,474号は、2つの調整可能プレートを含んだ分光法で使用するためのサンプルセルを説明する。これにより、ユーザは、2つまたはそれより多くの構成間で、サンプルセル流路の断面形状を異ならせることが可能となる。
【0017】
Stellmanらへの米国特許第6,091,490号は、長い経路長のキャピラリー分光法を利用した、小容積サンプルの分光光度測定のための、ガラスキャピラリーに結合されたファイバ光学ピペットを説明する。
【0018】
Molecular Devices Corporationに譲渡された一連の特許は、マイクロタイタープレートにおける複数の液体サンプルに対して吸光測定値を決定可能なマイクロプレートリーダーを説明する。マイクロタイタープレートの各ウェルは、各ウェルにおけるサンプル溶液の量および各ウェルの溶液のメニスカスの曲率に基づいて、異なる光経路長を提供し得る。
【0019】
これらの機器のいくつかは、高濃度に濃縮された低容量サンプルの測定に対して経路長を異ならせる機能を提供するが、本明細書中に説明される適用は、主に、単一の経路長および単一の波長の測定に関する。機器のいくつかは、限定的な数の経路長を提供し、全ては、0.2mmより大きい経路長に限定される。更に、従来技術の装置および方法は、サンプルの濃度を機器の吸光度検出の線形範囲に含まれるように調整する必要がないように、分光光度計のダイナミックレンジを拡張することを提供しない。従来技術が、非常に濃縮されたサンプルまたは低容量サンプルの濃度を決定するために、より短い経路長を教示しているという点で、これらの装置は、単一の経路長で単一の吸光度の読み取りを得ることを焦点としている。このように、従来技術文献は、正確な濃度測定が可能となるように、経路長が高精度で既知であることを必要としている。
【0020】
本開示は、可変経路長の分光光度計を提供する装置および方法を提供する。これは、ソフトウェア制御を介して、リアルタイム測定に応答してパラメータに動的に適合し、従来の分光光度計のダイナミックレンジを拡張し、これにより、ほぼあらゆる濃度のサンプルが希釈なしで、または元のサンプルの濃縮なしで、測定可能となる。更に、本開示の特定の方法は、サンプルの濃度を決定するために、経路長が既知であることを必要としない。本開示のこの目的および他の目的ならびに利点は、追加の発明の特徴と共に、本明細書において提供される本開示の説明から明らかとなろう。
【0021】
流体を処理するためには、処理段階の前および後に、タンパク質の濃度を決定することが望ましいことがある。生成を低速化する膨大な待ち時間を防止するために、この決定段階が迅速かつ効率的となることが、ユーザにとって有用である。HPLCのような現在の方法は、適切な較正曲線および他のサンプル情報のような情報の入力とともに、カラム分離段階および分析者からの算出を必要とする。同様に、バイオアナライザは、時間のかかる酵素反応を用いることがある。
【発明の概要】
【0022】
本開示は、ユーザが迅速に力価を決定し、ホールド段階を除去することを可能にするシステムおよび方法を提供する。さらに、本開示のシステムおよび方法は、ユーザが、これらの測定に必要とされることの多いバイオアナライザまたはHPLCの使用を控えることを可能にする。したがって、以前は3-10分の間の時間を費やすことのあった処理が、今や2-3分で実行可能となっている。
【0023】
これらのシステムおよび方法は、サンプルの分光測定のためのインタラクティブな可変経路長装置および方法を提供することによって、従来技術の欠点および短所を克服する。本開示の機器は、約0.2μmおよびそれより長い経路長を提供することによって、非常に濃縮されたサンプルの濃度を測定するために利用可能である。そのような小さい経路長は、従来の分光光度計によって測定するには濃縮され過ぎたサンプルの測定を可能にする。更に、本開示の機器および方法は、2または3の異なる経路長ゾーンにおいてスペクトルスキャンを提供可能である。これにより、ユーザは、単一の実行で、サンプルの最適な吸光度ピークを決定することが可能となる。この方法の利益は、これが、複数の流路長および複数の波長における吸光度ピークデータを比較することによって、これらの値はサンプルの内容に起因して異なることがあるので、濃度測定の最適化に関する情報を提供可能であることである。標準的な固定経路長キュベットを用いる機器は、同時にこのデータの全てを提供することはできない。可変経路長機器は、プローブチップと、サンプル容器と、プローブチップおよびサンプル容器を互いに対して動かすメカニズム(例えば、サンプル容器が静止してプローブが動く、またはプローブが静止してサンプル容器が動く、または両方が移動可能である)と、伝送光ファイバと、検出器と、経路長制御および測定パラメータに適切なソフトウェアとを含んでよい。
【0024】
本開示は、サンプルの濃度を決定する方法を含み、方法は、サンプルを容器に配置する段階と、プローブが容器の底部と接触するように、容器に対してプローブを動かす段階と、プローブが容器の底部からサンプルを通して予め定められたインクリメントだけ動くように、容器に対してプローブを動かし、これにより、溶液を通して予め選択された経路長が得られる、段階と、予め定められた波長で吸光度の読み取り値を取得する段階と、サンプルに対しプローブを動かし、測定値を取得する段階を反復する段階と、吸光度および経路長から回帰直線を生成し、これにより、回帰直線の傾きが得られる、段階と、回帰直線の傾きをサンプルの消光係数で除算することによってサンプルの濃度を決定する段階と、を備える。
【0025】
本開示は、複数の流路長でサンプルの濃度を決定するための機器も含む。機器は、プローブと動作可能にリンクする光源と、サンプルを含むことができるサンプル容器と、可変経路長を提供するために、プローブに対してサンプル容器が移動可能となるように、サンプル容器に動作可能にリンクするモータと、モータによってサンプル容器に対して移動可能な電磁照射を保持するプローブと、電磁照射を検出する検出器であって、プローブから発生する電磁照射と実質的に垂直になるように配置される検出器と、予め定められた経路長において検出器によって提供される情報に基づいてサンプルの濃度を算出可能なソフトウェアと、を備える。
【0026】
本開示の機器および方法は、電磁照射を測定するために電磁源および/または検出器を提供するために用いられてよい標準的な分光光度計と共に利用可能である。態様および実施形態は上述される。
【0027】
本開示は、光源と、経路長と、検出器とを有し、スペクトルの複数の測定が異なる経路長で行われるように経路長が変更されるフロースルーメカニズムにおいて、スペクトルを検出し、次に、物質の濃度を経時的に比較することによって、物質のスペクトルをリアルタイムに連続的にモニタリングすることによって、溶液における物質の濃度の経時的変化を決定する方法に関してよい。他のプロセスパラメータと共に、濃度信号をリアルタイムに有することによって、生体分子量がリアルタイムで決定可能となる。本開示は、限定されるものではないが、溶液の入力部および流出部を含む1より多くの位置で、物質の濃度をモニタリングすることを提供する。限定されるものではないが、界面活性剤、生体分子、タンパク質、細胞およびウィルス粒子、低分子、ペプチドまたは共役タンパク質を含む様々な物質が、モニタリング可能である。
【0028】
本開示は、物質のスペクトルをリアルタイムに連続的にモニタリングすることによって、溶液における物質の濃度の経時的変化を決定する方法に関してよい。ここで、物質の濃度変化は、限定されるものではないが、沈殿、ろ過、電気泳動、クロマトグラフィ分離、化学反応およびこれらの組み合わせを含む1または複数の精製プロセスにかけられている溶液に起因する。クロマトグラフ分離は、陰イオン交換クロマトグラフィ、陽イオン交換クロマトグラフィ、ゲルろ過クロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィおよび親和性クロマトグラフィであってよい。
【0029】
本開示は、溶液における物質の濃度の経時的変化を決定する方法に関してよい。方法は、光源と、経路長と、検出器とを備え、スペクトルの複数の測定が異なる経路長で別個の時点において行われるように経路長が変更されるフロースルーメカニズムにおいて、スペクトルを検出し、別個の時点における物質の濃度を比較することによって、別個の時点における物質の紫外線スペクトルをリアルタイムでモニタリングする段階を備える。本開示は、光源と、経路長と、検出器とを備え、スペクトルの複数の測定が異なる経路長で行われるように経路長が変更されるフロースルーメカニズムにおいて、物質の紫外線スペクトルを検出し、物質の濃度を経時的に比較することによって、限外ろ過膜を通過する溶液における物質の濃度をリアルタイムに連続的にモニタリングすることによって、限外ろ過に用いられる膜の寿命を決定する方法に関する。
【0030】
本開示は、光源と、経路長と、検出器とを備え、スペクトルの複数の測定が異なる経路長で行われるように経路長が変更されるフロースルーメカニズムにおいて、物質の紫外線スペクトルを検出し、物質の濃度を経時的に比較することによって、樹脂を通過する溶液における物質の濃度をリアルタイムに連続的にモニタリングすることによって、クロマトグラフィの樹脂の結合能を決定する方法に関してよい。
【0031】
本開示は、バイオ製造プロセスの少なくとも1つのステージ中に、生体分子のフィンガープリントを特徴づける生体分子の紫外線スペクトルをインサイチューかつリアルタイムに検出し、検出された紫外線スペクトルに応答して、バイオ製造における制御段階を可能にする少なくとも1つの制御信号を生成することによって、生体分子のバイオ製造プロセスを制御する方法に関する。
【0032】
本開示は、生体分子をフィンガープリントし、これにより、生体分子のスペクトルが較正曲線と比較され得て、生体分子溶液の識別情報を決定する方法に関する。
【0033】
本開示は、流体における発現されたタンパク質の濃度を決定するための方法を含んでよい。この方法は、傾き分光法を用いて流体の第1吸光傾き値を測定する段階と、第1吸光傾き値をタンパク質の既知の消光係数で除算して第1濃度を得る段階とを含んでよい。流体は、(例えば、選択的吸着、沈殿、ろ過などによって)発現されたタンパク質が逓減してよく、逓減した流体の第2吸光傾き値は傾き分光法を用いて測定され、第2吸光傾き値をタンパク質の既知の消光係数で除算して第2濃度を得る。第1および第2濃度に基づいて、選択的吸着によって除去された材料の量が算出されてよい。除去された材料の量を算出する段階は、第1濃度から第2濃度を減算する段階と、差に流体の容積を乗算する段階とを含んでよい。さらに、流体の第1および第2傾き値を測定する段階は、同じ波長で測定されてよい。発現されたタンパク質の濃度の算出は、発現されたタンパク質の既知の消光係数を用いてよい。選択的吸着によって発現されたタンパク質の流体を逓減する段階は、固体サポートに固定されている標的タンパク質に親和性リガンドを用いる段階をさらに含んでよい。固定された標的タンパク質は、プロテインAであってよい。選択的吸着による発現されたタンパク質の流体の逓減は、樹脂、膜、フィルタプレート、またはパックされたカラムのうち1または複数の使用をさらに含んでよい。樹脂は、二水和物であってよい。流体を逓減する段階は、第1測定と第2測定との間で流体の容積を増加させる段階を含まなくてよい。流体を逓減する段階は、予め定められた量だけ流体の容積を増加させる段階を含んでよい。段階は、自動化されてよい。流体は、測定の前にろ過されてよい。流体は、測定の前に成長期間を必要としてよい。
【0034】
本開示は、流体における発現されたタンパク質の逓減レベルを決定するためのシステムを含んでよい。このシステムは、選択的吸着によって発現されたタンパク質の流体を逓減するための逓減モジュールと、流体の流路において、逓減モジュールの上流および下流に位置する第1および第2流体サンプリングモジュールと、第1および第2流体サンプリングモジュールから流体を受け、複数の流路長においてサンプリングモジュールからの流体の吸光度を測定し、そこから流体濃度を決定するように構成される傾き分光法装置と、を含んでよく、逓減は、第1モジュールからの流体における発現されたタンパク質の濃度から、第2モジュールからの流体における発現されたタンパク質の濃度を減算し、それらの間の差分に流体の容積を乗算することによって決定される。逓減モジュールは、クロマトグラフィカラムを含んでよい。発現されたタンパク質の流体を逓減する方法は、固定されたプロテインA、樹脂、膜、フィルタプレート、またはパックされたカラムのうち1または複数を含んでよい。樹脂は、二水和物であってよい。傾き分光法装置は、傾き分光器であってよい。
【0035】
本開示は、流体における、発現されたタンパク質のクロマトグラフィカラムへの結合を評価する方法も提供する。この方法は、(a)第1経路長において、流体における発現されたタンパク質の第1吸光度スペクトルを取得する段階と、(b)第1経路長をインクリメントによって変化させて第2経路長を提供し、予め定められた波長において第2吸光度スペクトル読み取り値を取得する段階と、(c)例えば、選択的吸着によって発現されたタンパク質の流体を逓減する段階と、(d)逓減した流体に対して(a)および(b)を反復する段階と、(e)所与の波長における吸光度値から回帰直線を生成し、これにより、発現されたタンパク質の逓減の前および後の流体に対する回帰の傾きが得られる、段階と、(f)逓減していない流体の傾きから、逓減した流体の傾きを減算する段階と、
(g)発現されたタンパク質の濃度を算出する段階と、を含んでよい。発現されたタンパク質の濃度の算出は、発現されたタンパク質の既知の消光係数を用いてよい。選択的吸着によって発現されたタンパク質の流体を逓減する段階は、固体サポートに固定されている標的タンパク質に親和性リガンドを用いる段階をさらに含む。標的タンパク質は、固定されたプロテインAであってよい。選択的吸着による発現されたタンパク質の流体の逓減は、樹脂、膜、フィルタプレート、またはパックされたカラムのうち1または複数の使用をさらに含んでよい。樹脂は、二水和物であってよい。段階は、自動化されてよい。流体は、測定の前にろ過されてよい。流体は、測定の前に成長期間を必要としてよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】可変経路長装置のソフトウェアセットアップの1つの可能な実施形態のフロー図である。
【0037】
図2】可変経路長機器ソフトウェアのデータ取得のフロー図である。
【0038】
図3A】本発明の機器の一実施形態の概略図である。
【0039】
図3B】プローブチップアセンブリの一実施形態の概略図である。
【0040】
図4】本発明の機器においてサンプル容器として機能し得るフロースルー装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
概要
本開示のシステムおよび方法は、概して、傾き分光法の使用によって、流体における発現されたタンパク質を決定するために必要とされる時間を低減することに対処する。傾き分光法は、異なる経路長において吸光度を測定することによって、溶液の濃度を決定する方法である。
【0042】
当業者であれば、流体における発現されたタンパク質を決定するための傾き分光法の使用が、既存の産業における標準的なプロセスからのいくつかの乖離を伴うことを理解しよう。さらに、これは、流体を処理するために必要とされる時間を大幅に低減する。
【0043】
本開示は、バイオプロセスの、より具体的には、処理段階の入力および出力の濃度を測定する方法を説明する。これらの方法は、処理段階の前および後に、システムからサンプルを採取してよい。
【0044】
本開示の方法およびシステムによって集められる情報は、バイオプロセスにおいて取られる動作を決定するために用いられてよい。例えば、バイオプロセスは、発現されたタンパク質の算出された濃度に起因して、遅延または加速されてよい。さらに、情報は、バイオ処理における誤りまたはエラーを示唆してよく、その結果、救済段階が取られる。流体にタンパク質が無いと決定することは、プロセス完了のトリガーとなり得るので、バッファの使用を最小化し、時間を節約する。
【0045】
ユーザは、これらの方法を通して集められる情報を、期待される浸透の出力容積の知見と組み合わせて、発現されたタンパク質が流体から逓減したときを決定してよい。さらに、ユーザは、固定されたプロテインAによる逓減によって、モノクローナル抗体を測定してよい。
【0046】
説明される方法は、樹脂の結合能を評価するために用いられてよい。これらは、さらに、樹脂の効率を決定する、フィルタの篩分け特性を評価する、またはどれだけの量の材料がフィルタを通過せずにとどまり目詰まりを生じさせるかを決定するために用いられてよい。
【0047】
用語「容器に対してプローブを動かす」または「サンプルに対してプローブを動かす」は、プローブに対して容器またはサンプルが動かされることを意味する。これは、プローブが動き、容器またはサンプルが静止している状況、容器またはサンプルが動き、プローブが静止している状況、およびサンプルまたは容器が動き、プローブが動く状況を包含する。
【0048】
用語「吸光度の読み取り値を取る」は、装置または機器によって任意の吸光度の読み取り値が測定されることを意味する。これは、吸光度の読み取り値が単一の波長および/または単一の経路長で取られる状況、または読み取り値が(スキャンのような)複数の波長および/または複数の流路長で取られる状況を包含する。
【0049】
用語「サンプル」は、限定されるものではないが、化合物、混合物、表面、溶液、エマルジョン懸濁液、細胞培養、発酵培養、細胞、組織、分泌および抽出を含んでよい。
【0050】
用語「モータ」は、サンプルを通した可変経路長を提供するように制御可能な任意の装置である。
【0051】
用語「選択的吸着」は、流体から製品を逓減するための親和性ベースの方法を指す。選択的吸着は、例えば、ペプチドリガンドのような親和性結合剤、抗体またはその機能的断片、毒素、アプタマー、薬理学的アゴニストまたはアンタゴニスト、または他の適切な試薬によって媒介されてよい。親和性結合剤は、いくつかの場合、樹脂または粒子のような固体サポートに結合する。他の場合、親和性結合剤は未結合であり、この場合、逓減は、例えば、親和性結合剤における官能基の反応を介して基板に結合した親和性結合剤の共有結合リンクによって、および/または、抗体のような第2結合剤の使用によって実現されてよい。他の適切な親和性結合剤および逓減方法は、当業者に明らかであろう。
【0052】
傾き分光法
本開示は、対象パラメータの複数の決定に対して可変経路長の使用を可能にするアプローチを採用する、溶液の分光光度特性を決定するための装置および方法に関する。例えば、溶液における化合物の濃度決定において、本開示は、様々な経路長において溶液の吸光度を決定するための方法および装置を提供する。様々な経路長における吸光度の値は、次に、溶液における化合物の濃度を算出するために用いられてよい。本開示の装置および方法は、具体的には、サンプルの単一または複数の希釈に頼ることなく、高濃度に濃縮されたサンプルの濃度を決定するために有用である。この特性は、本開示の装置が実現可能な小さい経路長に起因して可能となる。本開示の機器は、約0.2μmおよびそれより長い経路長を提供することによって、非常に濃縮されたサンプルの濃度を測定するために利用可能である。本開示の機器は、約0.5μmから約15cmまで、または約1μmから約50mmの間の経路長を提供可能である。装置および方法は、より大きい経路長を提供することによって、極めて希釈された溶液の濃度測定も提供する。本質的に、本開示の装置および方法は、溶液の吸光度値を測定するために広範囲な経路長を可能にすることによって、標準的な分光光度計のダイナミックレンジを拡張する。この広いダイナミックレンジにより、ユーザは、サンプルを変更(希釈または濃縮)することなく、これらのサンプルの濃度を決定することが可能となる。本開示の方法および装置の実施形態は、特定のサンプルまたはサンプルのセットの吸光度、消光係数または濃度を決定するためのものであるが、本開示の装置および方法は、散乱、発光、フォトルミネセンス、フォトルミネセンス分極、時間分解フォトルミネセンス、フォトルミネセンス寿命、および化学発光ならびに他の様式のような異なるモードにおいて用いられてもよい。本開示の装置および方法は、所与の時間で1または複数のサンプルの光学的値を決定するために用いられてよい。本開示は、キュベットまたは任意のサンプルホルダのような単一のサンプルフォーマットの使用を、マイクロタイタープレートおよび複数のキュベットまたは複数のサンプル構成のような複数のサンプルフォーマットと共に予期する。
【0053】
本開示の装置の可変経路長は、プローブチップと、サンプル容器と、モータと、伝送光ファイバと、検出器と、単方向スライドメカニズムと、経路長制御および測定パラメータに適切なソフトウェアとを備えてよい。
【0054】
プローブチップ
本開示において、プローブチップは、光をサンプルに伝送する光伝送装置である。プローブチップは、1または複数の電磁源とインタフェースを取り、サンプルを通した光の通過を可能にする光ファイバケーブルのような単一の光伝送装置であってよい。代替的に、プローブチップは、プローブチップアセンブリに収容されてよい。プローブチップアセンブリは、光伝送装置、ハウジング、終端端部およびお他の光学コンポーネントおよびコーティングを備えてよい。光伝送装置は、溶解シリカ、ガラス、プラスチックまたは電磁源および検出器の波長範囲に適切な任意の伝送可能材料であってよい。光伝送装置は、単一のファイバまたは複数のファイバを備えてよく、これらのファイバは、機器の利用に応じて異なる直径であってよい。ファイバは、ほぼ任意の直径であってよいが、大半の実施形態において、ファイバの直径は、約0.005mmから約20.0mmまでの範囲にある。実施形態において、光伝送装置は、直径約0.1mmから約1.0mmまでの単一の光ファイバである。プローブチップは、任意選択的に、光伝送装置を含むためのハウジングを利用する。このハウジングは、主に、光伝送装置をシールドするために用いられ、金属、プラスチック、セラミックまたはその使用に適合する任意の他の材料から形成されてよい。プローブチップは、任意選択的に、コネクタ、フェルールまたは機械的相互接続を容易にするあらゆるもののような終端端部を含んでよい。終端は、装置の用途に適合する任意の様式で、研磨、切断、成形または操作可能である。本開示の機器は、レンズまたはフィルタのような追加の光学コンポーネントを有するプローブチップを含む。プローブチップは、ファイバチップの端部に、フィルタ、pH指示薬、触媒または封止メカニズムとして機能するコーティングを含んでよい。プローブチップは、機器および/またはプローブアセンブリ装置の恒久的部分であってよく、または代替的に、プローブチップは、これがプローブチップアセンブリから除去され得るように取り外し可能であってよい。機器の恒久的部分として、プローブチップは、光伝送装置の一体的部分である。実施形態において、プローブチップは、一端において光源に取り付けられ、他端においてサンプルに浸漬される単一の光ファイバである。代替的に、プローブチップは取り外し可能であってよく、そのような実施形態において、プローブチップは、様々なメカニズムを通して光伝送装置から分離可能である。実施形態において、プローブチップは、Touhey Borstアダプタを通して光伝送装置に取り付けられており、これにより、使用後にプローブチップが除去されて別のプローブチップと置換可能となる。取り外し可能なプローブチップは、サンプルを貫通し、かつ、光伝送アセンブリに取り付けるために十分な長さである。取り外し可能なプローブチップの実施形態において、プローブチップの長さは、少なくとも約20mmの長さである。その用途に応じて、プローブチップは、除去後は単に廃棄されてよい。使い捨てプローブチップは、プローブチップの清掃に関連する問題を未然に防ぎ、1つのサンプルから別のサンプルへの汚染可能性を回避する。本開示の機器は、単一の光伝送装置に関連づけられ得る複数のプローブチップを含む。代替的に、複数の光伝送装置は、各プローブチップに関連づけられてよい。
【0055】
経路長は、プローブチップの端部と、液体を保持するサンプル容器の内面との間の距離であり、内面は、プローブチップと実質的に垂直な容器の表面である。経路長を画定し、かつ、液体と接触するプローブチップの端面は、検出器に隣接するサンプル容器の内面と実質的に平行である。一実施形態において、プローブチップはサンプル容器の上方に位置し、サンプル容器は、サンプルを保持し、プローブチップを出る光がサンプル容器を通過して検出器(または検出光ガイド)に至るように整列している。プローブチップは、機器の範囲内の波長を送信可能である。
【0056】
光源
電磁照射源は、予め定められた様式で、広いスペクトル範囲にわたって、または狭い帯域で、光を提供する。光源は、アークランプ、白熱灯、蛍光灯、エレクトロルミネセンスデバイス、レーザ、レーザダイオード、および発光ダイオード、ならびに他の源を含んでよい。実施形態において、照射源は、キセノンアークランプまたはタングステンランプである。本開示の実施形態において、光源は、光ガイドを通してプローブチップに結合されている。代替的に、光源は、プローブチップに直接取り付け可能な発光ダイオードであってよい。
【0057】
サンプル容器
容器は、液体を含むことが可能で、光がそれを通過して検出光ガイドまたは検出器に至ることを可能にしなければならない。容器は、プローブチップが液体を貫通するように光を伝送することを可能にするための開口も有する。この容器は、機器の範囲内、典型的には約200から1100nmまでの波長を送信可能でなければならない。紫外光の適用では、石英容器が必要とされることがあるが、多くの場合、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、ポリスチレン(PS)またはポリメチルメタクリレート(PMMA)で形成されたプラスチック容器で十分である。本開示で用いられるサンプル容器は、適用および分析に利用可能なサンプルの量に応じて、異なるサイズおよび形状であってよい。本開示のサンプル容器は、吸光度値が取得可能なあらゆるものであってよい。そのような容器は、キュベットまたはマイクロタイタープレートのような静止したサンプル容器、またはフロースルー装置(図4)に示すような動くサンプルを含む。サンプルサイズは、静止したサンプルにおいて、0.1μLから数リットルの間であってよい。容器の形状は、検出器に面して、実質的に平坦で、検出器の面と実質的に平行な側面を有するものである。検出器は、サンプルを通って入る電磁照射の後方反射に起因するノイズを低減するために、容器に対してやや角度付けられて配置されてよい。サンプル容器は、例えばマイクロタイタープレートに、複数のウェルを有してよい。サンプル容器は、光学材料または抗体のような化学もしくは生化学材料でコーティングされてよい。サンプル容器は、任意選択的に、機器によって加熱または冷却されてよく、滅菌または非無菌であり得る封止エリアに保持されてよい。サンプルは、ステージによってサポートされたサンプルホルダに保持されてよい。サンプルは、化合物、混合物、表面、溶液、エマルジョン懸濁液、細胞培養、発酵培養、細胞、組織、分泌、抽出などを含んでよい。サンプルの分析は、そのような組成における光活性検体の存在、濃度または物理的特性の測定を伴ってよい。サンプルは、単一のウェルまたはキュベットまたはサンプルホルダの内容を指してよく、または、マイクロタイタープレート内の複数のサンプルを指してよい。いくつかの実施形態において、ステージは、機器の外にあってよい。
【0058】
モータ
モータは、容器との間でチッププローブを駆動する。モータは、正確な段階においてプローブチップを駆動し、サンプルを通した経路長を異ならせる。経路長の変化は、装置構成に応じて0mmからそれより大きい値であってよい。モータは、サンプル内におけるプローブの動きを可能にし、プローブチップを正確な予め決定された経路長に配置する。本開示の機器と共に使用可能なモータは、ステッピングモータ、サーボ、圧電、電気および磁気モータまたはサンプルを通した可変経路長を提供するように制御可能な任意の装置を含む。本開示の機器の実施形態において、モータは、サンプル容器が配置されたステージを駆動し、これにより、サンプル容器に対してプローブチップが動く。この構成において、ステージおよびプローブは、0.2μmから1cmまでの範囲のインクリメントで互いに対して移動する。実施形態において、インクリメントの範囲は、約1μmから約50μmまでの間である。プローブに対するステージの相対的移動は、0.2μmまたはそれより小さい解像度で正確である。本開示の機器の実施形態において、プローブおよびステージの相対的移動の解像度は、約0.5μmと約0.01μmとの間である。
【0059】
単方向スライドメカニズム
単方向スライドメカニズムは、「0経路長」位置を確立するために、プローブチップの端部とサンプル容器の(プローブチップに垂直な)「底部」との間の物理的接触を可能するように設計されたシステムである。「0経路長」位置は、ほぼ0のベンチマークであり、ここから全ての他の経路長が参照されてよい。本開示の実施形態において、単方向スライドメカニズムは、プローブチップがサンプル容器表面と物理的接触をすることを確実にし、それによって、プローブチップが「0経路長」位置にあることを保証する。物理的接触は、サンプル容器またはプローブチップのいずれかを損傷させることなく実現されなければならない。実施形態において、その位置は、物理的接触が実現されると、一方向におけるプローブチップまたはサンプル容器のいずれかの線形変位を可能/必要とすることによって実現される。これにより、その方向における変位が、大部分はスケール上で重み機構を用いるのと同じように、0経路長位置が設定されることを可能にする。プローブチップと容器表面とが分離されているので、移動が制限され、バックラッシュまたは反動を低減または除去する。装置は、これらの機構が単方向スライドメカニズムと称されることを可能にする。単方向スライドメカニズムの多くの実施形態が存在する。
【0060】
実施形態において、単方向スライドメカニズムは、Touhy Borstアダプタ(TBA)と称されるモデル化プラスチック結合装置を含む。TBAは、シリコンゴム、または同様に準拠したガスケット材料を含む。これは、その中心に孔を有し、共にねじ込まれたときに内部ガスケットを圧縮し、したがって、内部孔の直径を低減し、孔内のあらゆるものの周りに封止を形成する2つのネジ山付きプラスチックコンポーネントによって収容される。封止および圧縮の量は、TBAの2つのネジ山付きコンポーネントの間のネジ山係合の長さを変化させることによって制御可能である。実施形態において、プローブチップは、TBAガスケットにおける孔を通して挿入し、次に、TBAは締め付けられて、プローブチップ周りのTBAガスケットを圧縮する。ネジ山は、プローブチップとTBAガスケットとの間の摩擦力がプローブチップの重さを超えるように調整され、したがって、鉛直方向に保持さたときに、プローブチップがTBAから離脱することを不可能にするが、プローブチップがガスケットの内部でスライドすることが不可能なほどにはタイトではない。この摩擦相互作用の結果、単方向スライドの変位が、0経路長位置の確立を可能にする。
【0061】
これを実現可能な他の手段およびメカニズムが存在する。一実施形態において、孔、線形スリットまたは2つのブロック間に包囲された2つの直交するスリットを有する薄膜は、わずかにプローブチップより大きい孔を含み、これにより、プローブチップはブロックに挿入可能となり、膜は、一方向における変位を可能にする摩擦力を形成する。
【0062】
別の実施形態において、プローブチップまたはサンプル容器のための結合メカニズムは、力が一方向に印加されたときにプローブチップまたはサンプル容器を解放するが、力が解放されたときはよりきつくグリップする、ばね装填型の圧縮リングと同様のばね装填型のテーパ形スライド結合部を含んでよい。
【0063】
別の実施形態において、サンプル容器のプローブチップのための結合メカニズムは、歯付きスライドを変位させるばね装填型ラチェットメカニズムを含んでよい。歯付きスライドは、一方向に変位したときに適切な位置にロックするが、装填解除または反対方向での移動を可能にするためには解放ボタンを必要とし得る。
【0064】
単方向スライドメカニズムの実施形態の各々において、0経路長位置は受動的に設定される。これは、ユーザが、システムの移動を駆動して物理的接触状態を実現する以外に、装置とやり取りする必要はないことを意味する。ユーザの介入を必要とする他の実施形態が存在し、これらは、本開示の機器の経路長およびフローが長いバージョンで利用されてよい。一実施形態において、プローブチップ結合メカニズムはスライド結合を有する。物理的接触が実現し、変位が生じた後、ユーザは、つまみねじ、止めねじ、コレクト(collect)の締め付け、機械的クランプ、磁気クランプ、またはプローブチップ、プローブチップ結合メカニズム、サンプル容器またはサンプル容器保持装置のいずれかの位置をロックする他の手段によって、変位を設定する。
【0065】
検出器
検出器は、検出された光からのエネルギーを、装置によって処理され得る信号に変換可能なメカニズムを含む。適切な検出器は、とりわけ、光電子増倍管、フォトダイオード、アバランシェフォトダイオード、電荷結合素子(CCD)、およびインテンシファイドCCDを含む。検出器、光源、およびアッセイモードに応じて、そのような検出器は、限定されるものではないが、ディスクリート、アナログ、ポイントまたは撮像モードを含む様々な検出モードで用いられてよい。検出器は、吸光度、フォトルミネセンスおよび散乱を測定するために利用可能である。本開示の装置は1または複数の検出器を用いてよいが、実施形態において、単一の検出器が用いられる。実施形態において、光電子増倍管が検出器として用いられる。本開示の機器の検出器は、機器に統合されるか、または、サンプルを通って検出器に進む電磁照射を保持可能な光伝送装置に検出器を動作可能にリンクすることによってリモートに配置されるかのいずれかであってよい。光伝送装置は、溶解シリカ、ガラス、プラスチックまたは電磁源および検出器の波長範囲に適切な任意の伝送可能材料であってよい。光伝送装置は、単一のファイバまたは複数のファイバを備えてよく、これらのファイバは、機器の利用に応じて異なる直径であってよい。ファイバは、ほぼ任意の直径であってよいが、大半の実施形態において、ファイバの直径は、約0.005mmから約20.0mmまでの範囲にある。
【0066】
本開示の機器の一実施形態は、プローブチップが「上部」にあり、検出器が「底部」にある(図3A)ように方向付けられたシステムの光学系を有する。この垂直方向において、サンプル容器は検出器の上方にあり、プローブチップはサンプル容器との間で上下に移動可能であり、これにより、プローブチップからの光はサンプル容器内のサンプルを通って移動し、下方の検出器に作用する。他の向き、例えば、検出器およびプローブチップが実質的に水平方向にあり(図4)、サンプルが検出器とプローブとの間で流れるフローセルシステムが可能である。絶対的空間の向きまたはプローブおよび検出器に関係なく、プローブチップおよび検出器の表面は、互いに対して実質的に垂直でなければならない。
【0067】
ソフトウェア
制御ソフトウェアは、限定されるものではないが、波長、経路長、(波長/経路長の両方に対する)データ取得モード、キネティクス、トリガー/ターゲット、個別の経路長/波長帯のような様々な基準に基づいて、スペクトルの異なるエリアに対して異なるダイナミックレンジ/解像度、吸光度/経路長カーブを形成する断面プロット、回帰アルゴリズムおよび傾き決定、傾き値からの濃度決定、消光係数決定、ベースライン補正、および散乱補正を提供するように、装置の挙動を適合させる。図1は、本開示のソフトウェアスキームの実施形態のフロー図である。ソフトウェアは、スキャンまたは個別の波長読み取りオプション、信号平均時間、波長間隔、スキャンまたは個別の経路長読み取りオプション、ベースライン補正、散乱補正、リアルタイム波長断面のようなデータ処理オプション、(波長、経路長、吸光度、傾き、中断、決定係数などのような)閾値オプション、動的/連続的測定オプションを提供するように構成される。図2は、可変経路長装置ソフトウェアのデータ取得の一実施形態のフロー図である。
【0068】
図3Aは、本開示の機器の一実施形態の概略図である。モータ(1)は、サンプル容器(3)が配置されるステージ(4)を駆動する。ファイバチッププローブ(2)はモータに対して固定され、これにより、ステージがプローブを上下動させると、サンプル容器に対する距離がそれぞれ増加または減少する。ステージの下方には検出器(5)があり、これがサンプルを通過すると、プローブチップから電磁照射を受け取る。図3Bは、プローブチップアセンブリの一実施形態の概略図である。
【0069】
図4は、本開示の機器においてサンプル容器として機能し得るフロースルー装置の概略図である。フロースルー装置は、フローセル装置との間でサンプル溶液の流れを可能にするフローセル本体(8)を含む。フローセル本体(8)は、典型的には200-1100nmの電磁源範囲で電磁照射に透過性である少なくとも1つの窓(7)を有する。窓は、様々な材料から形成可能であるが、紫外光適用クオーツ、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、ポリスチレン(PS)またはポリメチルメタクリレートPMMAが必要とされ得る。窓は、電磁照射が窓を通過して検出器(5)に当たる限り、異なるサイズおよび形状であってよい。フローセル本体は、プローブチップが通過し得るポートも含む。このポートは、動的シール(9)で封止されており、これにより、サンプル溶液がフロースルー装置から漏れることなく、プローブチップがポートを通過可能となる。そのようなシールは、ユタ州ウェストソルトレークシティのParker Hannifin Corporation EPS Divisionから入手可能なFlexiSeal Rod and Piston Sealsを含む。図では、サンプル溶液が流入ポートで入り流出ポートを出るように流れる単一の経路が存在する。代替的な実施形態は、複数の経路、ならびに複数の流入および流出ポートを含んでよい。図4におけるフローセル装置の実施形態において、プローブチップは、サンプル溶液の流れと実質的に垂直に動き、検出器と実質的に垂直である。
【0070】
本開示の方法の一実施形態において、複数の吸光度測定は、経路長距離を正確に知らずに、複数の流路長で行われてよい。従来技術は、サンプルの濃度の正確な決定が可能となるように、吸光度の読み取りにおいて、どのように経路長を正確に決定するかを教示する方法が多数示している。本開示の本実施形態において、異なる経路長で行われる複数の吸光度測定は、吸光度および経路長の情報から回帰直線を算出する機器の能力に基づいて、濃度の正確な算出を可能にする。回帰直線の傾きは、次に、サンプルの濃度を算出するために使用可能である。回帰直線を算出するために用いられるソフトウェアが最も正確な線を提示されたデータセットから選択するようにプログラム可能であるという事実に起因して、各経路長を正確に知る必要はない。これらの方法で取られるデータ点の数は、経路長または吸光度の読み取り値におけるあらゆる摂動を「平滑化」する傾向があり、これにより、非常に高いR2値の回帰直線を得ることができる。本開示の方法において、少なくとも0.99999のR2値が実現されている。明らかに、R2値がより高いほど、傾きはより正確であり、その結果、サンプルの濃度の極めて正確な決定をもたらす。0と0.99999との間のあらゆるR2値が、本開示の機器および方法において実現可能である。しかしながら、本開示の方法のいくつかの実施形態において、R2値は0.95000を超え、いくつかの実施形態において、R2は0.99500を超える。本開示の実施形態において、R2値は約0.95000と約0.99999との間である。他の実施形態は、約0.99500と約0.99999との間、および約0.99990と約0.99999との間のR2値を含む。R2は線形回帰に対する適合度の測定値であるが、適合度を測定する任意の他の算術式が、本開示の方法において利用可能である。
【0071】
本開示の機器および方法は、ユーザが、吸光度のような予め決定されたパラメータを選択することによってデータ収集を最適化することを可能にする。ユーザは、例えば、吸光度を1.0と定義し、サンプルの吸光度が1.0である(波長または経路長のような)他のパラメータに対して機器をサーチさせることができる。この特徴は、ユーザが、複数の希釈を行う、または機器のパラメータを手動で絶えず変化させることを強いられることなく、実験のパラメータを定義することを可能にする。本開示のソフトウェアは、ユーザが、結果の精度レベルがデータ取得前に定義可能となるように、期待されるR2値を定義することも可能にする。
【0072】
本開示の機器および方法は、吸光度、経路長および波長の測定を含む3次元データセットを含む様々なデータセットの収集を可能にする。ソフトウェアは、ユーザが、これらのデータセットの3次元グラフを生成することを可能にする。更に、本開示の機器および方法は、リアルタイムデータの収集を提供する。
【0073】
本開示の機器および方法は、異なる波長において、特定のサンプルの消光係数の算出を可能にする。吸光率としても知られる消光係数は、所与の波長における、単位経路長および濃度あたりの溶液の吸光度である。第1波長(ε1)において、所与のサンプルに対する消光係数が既知の場合、第2波長(ε2)における消光係数が算出可能である。これは、第1波長における吸光度/経路長(A/l)1の第2波長における吸光度/経路長(A/l)2に対する比率を測定し、この比率を消光係数の比率と一致させる(A/l)1/(A/l)2=ε1/ε2ことによって行われる。
【0074】
本開示の機器および方法は、サンプルにおける複数の成分を特定する波長が分離可能である限り、ユーザが、複合混合物の成分を同時に測定することも可能にする。例えば、従来の分光光度計は、単一の実験において、高濃度に濃縮され、主に300nmで吸光する成分A、および非常に希釈され、600nmで吸光する成分Bという2つの成分が存在するサンプルの濃度を決定することが可能ではないことがある。従来の分光光度計では、Aの濃度が検出器を動作不良にするほど十分に高いと、成分Bに起因して、吸光度の測定は成分Aの吸光度の測定を排除することがある。元のサンプルは、成分Aを決定するために希釈される必要があることがあり、これを行うと、成分Bはその濃度の測定を可能するために十分な信号を生成しないことがある。従来の分光光度計では、成分AおよびBの濃度は、同時に測定できない。本開示において、経路長は、成分AおよびBの両方の濃度が共に決定可能となるように変更可能である。明らかに、サンプル内の成分を一意に特定するピークが存在する限り、本開示の方法は、非常に複合的なサンプルの成分濃度を測定可能である。さらに、機器はデータをリアルタイムに生成可能であるので、サンプル内の成分の相互作用がモニタリングされ、動的データまたは時間経過が必要とされるあらゆるデータを生成可能である。
【0075】
当業者であれば、多くの吸着方法が、例えばクロマトグラフィ媒体の使用を通して、流体をシステムに加えることを含んでよいことを理解しよう。追加の流体は、エンドユーザが、物質または対象製品の逓減に起因する傾きまたは絶対吸光度の減少を、対象製品の希釈に起因する減少から区別することが不可能であり得る限りにおいて、本開示の方法に係る第2吸着方法の解釈を複雑にし得る。これは、発現されたタンパク質の流体の逓減段階中に、システムに追加され得る流体のあらゆる容積を低減または除去することによって、特定の実施形態において対処される。流体を逓減する段階は、第1測定と第2測定との間で流体の容積を増加させる段階を含まなくてよい。二水和物樹脂が用いられてよい。この二水和物樹脂はプロテインAを含んでよい。他の実施形態において、流体を逓減する段階は、予め定められた量だけ流体の容積を増加させる段階を含んでよい。
他の可能な態様
1.流体における発現されたタンパク質の濃度を決定する方法であって、
傾き分光法を用いて前記流体の第1吸光傾き値を測定し、前記タンパク質の既知の消光係数で前記第1吸光傾き値を除算して第1濃度を得る段階と、
選択的吸着によって前記発現されたタンパク質の前記流体を逓減する段階と、
傾き分光法を用いて前記逓減された流体の第2吸光傾き値を測定し、前記タンパク質の前記既知の消光係数で前記第2吸光傾き値を除算して第2濃度を得る段階と、
前記第1および第2濃度に基づいて、前記選択的吸着によって除去された材料の量を算出する段階と
を備える方法。
2.除去された材料の量を算出する前記段階は、前記第1濃度から前記第2濃度を減算し、差分に前記流体の容積を乗算する段階を含む、項目1に記載の方法。
3.前記流体の前記第1および第2傾き値を測定する段階は、同じ波長で測定される、項目1に記載の方法。
4.発現されたタンパク質の前記濃度の前記算出は、前記発現されたタンパク質の既知の消光係数を用いる、項目1に記載の方法。
5.選択的吸着によって前記発現されたタンパク質の前記流体を逓減する段階は、固体サポートに固定されている標的タンパク質に親和性リガンドを用いる段階をさらに含む、項目1に記載の方法。
6.前記標的タンパク質は固定されたプロテインAである、項目5に記載の方法。
7.選択的吸着によって前記発現されたタンパク質の前記流体を逓減する段階は、樹脂、膜、フィルタプレート、またはパックされたカラムのうち1または複数の使用をさらに含む、項目1に記載の方法。
8.前記樹脂は二水和物である、項目7に記載の方法。
9.前記流体を逓減する段階は、前記第1測定と第2測定との間で流体の容積を増加させる段階を含まない、項目7に記載の方法。
10.前記流体を逓減する段階は、予め定められた量だけ流体の容積を増加させる段階を含む、項目7に記載の方法。
11.前記段階は自動化されている、項目1に記載の方法。
12.前記流体は、測定の前にろ過されている、項目1に記載の方法。
13.前記流体は、測定の前に成長期間を必要とする、項目1に記載の方法。
14.流体における発現されたタンパク質の逓減レベルを決定するためのシステムであって、
選択的吸着によって前記発現されたタンパク質の前記流体を逓減するための逓減モジュールと、
前記流体の流路において、前記逓減モジュールの上流および下流に位置する第1および第2流体サンプリングモジュールと、
前記第1および第2流体サンプリングモジュールから流体を受け、複数の流路長において前記サンプリングモジュールからの前記流体の吸光度を測定し、そこから流体濃度を決定するように構成される傾き分光法装置と、
を備え、
前記逓減は、前記第1モジュールからの流体における前記発現されたタンパク質の濃度から、前記第2モジュールからの流体における前記発現されたタンパク質の濃度を減算し、それらの間の差分に前記流体の容積を乗算することによって決定される、
システム。
15.前記逓減モジュールはクロマトグラフィカラムを含む、項目12に記載のシステム。
16.前記発現されたタンパク質の前記流体を逓減する前記方法は、固定されたプロテインA、樹脂、膜、フィルタプレート、またはパックされたカラムのうち1または複数を含む、項目14に記載のシステム。
17.前記傾き分光法装置は傾き分光器である、項目14に記載のシステム。
18.流体における、発現されたタンパク質のクロマトグラフィカラムへの結合を評価する方法であって、
(a)第1経路長において、前記流体における前記発現されたタンパク質の第1吸光度スペクトルを取得する段階と、
(b)前記第1経路長をインクリメントによって変化させて第2経路長を提供し、前記予め定められた波長において第2吸光度スペクトル読み取り値を取得する段階と、
(c)選択的吸着によって前記発現されたタンパク質の前記流体を逓減する段階と、
(d)前記逓減した流体に対して段階(a)および(b)を反復する段階と、
(e)所与の波長における前記吸光度値から回帰直線を生成し、これにより、前記発現されたタンパク質の逓減の前および後の前記流体に対する前記回帰の傾きが得られる、段階と、
(f)前記逓減していない流体の傾きから、前記逓減した流体の前記傾きを減算する段階と、
(g)(f)において算出された量を逓減前の前記流体の前記傾きで除算することによって、発現されたタンパク質の逓減割合を算出する段階と、
を備える方法。
19.発現されたタンパク質の前記濃度の前記算出は、前記発現されたタンパク質の既知の消光係数を用いる、項目18に記載の方法。
20.選択的吸着によって前記発現されたタンパク質の前記流体を逓減する段階は、固体サポートに固定されている標的タンパク質に親和性リガンドを用いる段階をさらに含む、項目18に記載の方法。
21.前記標的タンパク質は固定されたプロテインAである、項目20に記載の方法。
22.選択的吸着によって前記発現されたタンパク質の前記流体を逓減する段階は、樹脂、膜、フィルタプレート、またはパックされたカラムのうち1または複数の使用をさらに含む、項目18に記載の方法。
23.前記樹脂は二水和物である、項目22に記載の方法。
24.前記段階は自動化されている、項目18に記載の方法。
25.前記流体は、測定の前にろ過されている、項目18に記載の方法。
26.前記流体は、測定の前に成長期間を必要とする、項目18に記載の方法。
図1
図2
図3A
図3B
図4
【国際調査報告】