IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェの特許一覧

特表2022-550020心臓系をモデル化するための方法及びシステム
<>
  • 特表-心臓系をモデル化するための方法及びシステム 図1
  • 特表-心臓系をモデル化するための方法及びシステム 図2
  • 特表-心臓系をモデル化するための方法及びシステム 図3
  • 特表-心臓系をモデル化するための方法及びシステム 図4
  • 特表-心臓系をモデル化するための方法及びシステム 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-30
(54)【発明の名称】心臓系をモデル化するための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/06 20060101AFI20221122BHJP
   A61B 5/33 20210101ALI20221122BHJP
   A61B 5/02 20060101ALI20221122BHJP
   A61B 5/021 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
A61B8/06
A61B5/33 210
A61B5/02 D
A61B5/021
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022518221
(86)(22)【出願日】2020-09-16
(85)【翻訳文提出日】2022-03-22
(86)【国際出願番号】 EP2020075792
(87)【国際公開番号】W WO2021058339
(87)【国際公開日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】19202538.5
(32)【優先日】2019-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】62/906,172
(32)【優先日】2019-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】ラウ ケヴィン ダニエル セン フン
(72)【発明者】
【氏名】シャラウウェン イェル
(72)【発明者】
【氏名】ハーク アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】バラゴナ マルコ
(72)【発明者】
【氏名】マーセン ラルフ テオドルス ヒュベルトゥス
【テーマコード(参考)】
4C017
4C127
4C601
【Fターム(参考)】
4C017AA01
4C017AA08
4C017AA19
4C017AB04
4C127AA02
4C127BB05
4C601BB02
4C601BB03
4C601DD03
4C601DD15
4C601DE03
4C601EE09
4C601EE10
4C601FF08
4C601JB34
(57)【要約】
本発明は、被験者のリアルタイム弁機能を決定するためのシステムを提供する。システムは、心臓系の数値モデルを取得するように構成された処理ユニットを有し、数値モデルは、0D数値モデル又は1D数値モデルであり、数値モデルは、入力として生理学的データを受け取り、リアルタイムで心臓系のシミュレートされた機能を出力するように構成され、心臓系のシミュレートされた機能は、心臓系内の弁のシミュレートされた機能を有する。プロセッサは、被験者から生理学的データの連続ストリームを取得し、心臓系の数値モデルへの入力として生理学的データの連続ストリームを提供し、それによって被験者の心臓系のシミュレートされたリアルタイム機能を生成し、被験者の心臓系のシミュレートされたリアルタイム機能に基づいて被験者のリアルタイム弁機能を決定するように更に構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者のリアルタイム弁機能を決定するシステムにおいて、 前記システムが、
心臓系の数値モデルを取得し、前記数値モデルは、0D数値モデル又は1D数値モデルであり、前記数値モデルは、生理学的データを入力として受け取り、前記心臓系のシミュレートされた機能をリアルタイムで出力するように構成され、前記心臓系の前記シミュレートされた機能は、前記心臓系内の弁のシミュレートされた機能を有し、
前記被験者から生理学的データの連続ストリームを取得し、

前記生理学的データの連続ストリームを前記心臓系の前記数値モデルへの入力として提供し、それによって前記被験者の前記心臓系のシミュレートされたリアルタイム機能を生成し、前記被験者の前記心臓系の前記シミュレートされたリアルタイム機能に基づいて前記被験者のリアルタイム弁機能決定する、
ように構成された処理ユニット、
を有する、システム。
【請求項2】
前記生理学的データの連続ストリームは、弁機能の変化を受けている被験者から得られ、前記心臓系の前記シミュレートされたリアルタイム機能から決定された前記リアルタイム弁機能は、前記弁機能の変化を表す、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記被験者が弁修復を受けている間に使用するように構成された、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記システムが、前記被験者から生理学的データを取得するように構成された生理学的センサを更に有し、前記生理学的センサが、
前記生理学的データが心電図データを有する、心電図センサと、
前記生理学的データが数値圧力データ及び/又は圧力波形データを有する、血圧測定装置と、
前記生理学的データがボリューム波形データを有する、ボリューム波形センサと、
のうちの1つ以上を有する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記ボリューム波形センサは、
前記ボリューム波形データが超音波データを有する、超音波トランスデューサと、
前記被験者によって着用されるように構成された膨張可能なカフと、
前記ボリューム波形データが熱希釈技術を使用して導出される、サーミスタ先端カテーテルと、
のうちの1つ又は複数を有する、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記数値モデルは、身体的パラメータに基づいており、前記プロセッサは、前記生理学的データの連続ストリームの少なくとも一部に基づいて、前記数値モデルの前記身体的パラメータを調整するように更に構成される、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記数値モデルは、身体的パラメータに基づいており、前記プロセッサは、
前記被験者から予備的な生理学的データを取得し、
前記被験者からの前記予備的な生理学的データに基づいて前記数値モデルの前記身体的パラメータを調整する、
ように更に構成される、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記数値モデルは、身体的パラメータに基づき、前記プロセッサは、
前記数値モデルの前記身体的パラメータを調整し、それによって予測的数値モデルを生成し、
前記生理学的データの連続ストリームを前記予測的数値モデルへの入力として提供し、それによって前記被験者の前記心臓系の予測的機能をシミュレートし、
前記被験者の前記心臓系の前記シミュレートされた予測的機能に基づいて前記被験者の将来の血行動態機能を予測する、
ように更に構成される、請求項1乃至7のいずれかに記載のシステム。
【請求項9】
前記生理学的データが、
心電図データと、
圧力数値データと、
圧力波形データと、
心エコー検査に基づく生理学的データと、
ボリューム波形データと、
のうちの1つ以上を有する、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記ボリューム波形データは、
心室ボリューム波形と、
心房ボリューム波形と、
のうちの1つ又は複数を有する、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記ボリューム波形データは、超音波データを有する、請求項9乃至10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記圧力波形データは、
心房圧力波形と、
動脈圧力波形と、
のうちの1つ以上を有する、請求項9乃至11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記生理学的データは、推定された生理学的データを有する、請求項1乃至12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
被験者のリアルタイム弁機能を決定する方法において、
心臓系の数値モデルを取得するステップであって、前記数値モデルは、0D数値モデル又は1D数値モデルであり、前記数値モデルは、生理学的データを入力として受け取り、前記心臓系のシミュレートされた機能をリアルタイムで出力するように構成され、前記心臓系のシミュレートされた機能は、前記心臓系内の弁のシミュレートされた機能を有する、ステップと、
前記被験者から生理学的データの連続ストリームを取得するステップと、
前記心臓系の前記数値モデルへの入力として前記生理学的データの連続ストリームを提供し、それによって前記被験者の前記心臓系のシミュレートされたリアルタイム機能を生成するステップと、
前記被験者の前記心臓系の前記シミュレートされたリアルタイム機能に基づいて前記被験者のリアルタイム弁機能を決定するステップと、
を有する方法。
【請求項15】
コンピュータ上で実行されるときに、請求項14に記載の方法を実施するように構成されたコンピュータプログラムコード手段を有するコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心臓系モデル化の分野に関し、より具体的には、血行動態機能モデル化の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の心臓は、4つの心臓弁、大動脈弁、僧帽弁(MV)、肺動脈弁及び三尖弁を含む。左心房と左心室の間に配置されて、MVは、2つの重要な機能、すなわち、心室駆出時に血行動態密閉を維持すること、及び心室駆出後に迅速な心室再充満を保証することを有する。最適なMV機能は、血行動態負荷、MV連結組織の生体力学的特性、及び左心の機能的解剖学的構造のようないくつかの要因に依存する。これらの要因のうちの1つ以上の機能不全は、準最適な充満又は駆出をもたらし得る。
【0003】
僧帽弁逆流(MVR)は、最も一般的なMV機能不全であり、本来のMV機能不全の約70%を占める。MV機能の変化(例えば、MV脱出又は心筋症)のために、MVは、もはやMVRにおける一方向の流れを維持しない。心室駆出時には、逆流が、左心房に入る。これは、左心における血行動態負荷(ボリューム過負荷とも称される)を増加させ、心房細動などの他の心臓関連病態を引き起こす可能性がある。
【0004】
MVRは、既存の弁を修復すること、又は人工弁置換術のいずれかによって補正され得る。しかしながら、修復は、低下された死亡率(2.0%修復、6.1%置換)及び血栓症など他の合併症の最小化など、有意な利益を有する。MVRに対する1つのそのような修復技術は、脱出領域を物理的に結合することによってMV接合を回復しようと試みるエッジトゥエッジ修復(ETER)である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ETERは、当初、開胸手術(すなわち、正中胸骨切開)として開発された。しかしながら、現在では、低侵襲アプローチが、利用可能であり、それによって、修復が、経皮的に送達される装置を使用して実行される。このような装置は、脱出領域を一緒に持ってくるクリップの形であってもよい。しかしながら、そのような装置の展開の間、弁の適切な機能を回復するために必要とされる装置の数には、いくらかの不確実性が残っている。典型的には、処置中に、臨床医は、現在の修復が十分であるかどうか、又は被験者が更なる修復を必要とするかどうかを決定しなければならない。
【0006】
ETERは、MVRを軽減するが、心室充満に悪影響を及ぼす可能性がある。従って、ETERは、心室収縮中の心房への逆流を減少させることと、心室充満を損なう開口部領域の減少を回避することとのバランスを見出すことを目的とする。この理由のために、典型的に遭遇するジレンマは、追加の修復装置を配置する(それによって、開口部領域を更に減少させ、おそらく心室充満を損なう)か、又はMVRを不十分に減少させるリスクを伴う現在の構成を受け入れるかの決定である。
【0007】
撮像ツールが、追加の修復装置を提供する決定の不確実性を低減するように解剖学的ガイダンスを提供するのに使用されてもよい。しかしながら、これらのツールは、修復の領域の血液の流れに関連する血行動態情報を欠いている。
【0008】
文献US2018/174068は、血流及び/又は構造的特徴をシミュレートするための、心臓血管系における少なくとも1つの構成要素の被験者固有のシミュレーションモデルを開示する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、請求項により規定される。
【0010】
本発明の一態様による例によれば、被験者のリアルタイム弁機能を決定するためのシステムが、提供され、システムは、
心臓系の数値モデルを取得し、数値モデルは、0D数値モデル又は1D数値モデルであり、数値モデルは、生理学的データを入力として受け取り、心臓系のシミュレートされた機能をリアルタイムで出力するように構成され、心臓系のシミュレートされた機能は、心臓系内の弁のシミュレートされた機能を有し、
被験者から生理学的データの連続的なストリームを取得し、
生理学的データの連続ストリームを心臓系の数値モデルへの入力として提供し、それによって被験者の心臓系のシミュレートされたリアルタイム機能を生成し、
被験者の心臓系のシミュレートされたリアルタイム機能に基づいて被験者のリアルタイム弁機能を決定する、
【0011】
ように構成された処理ユニット、
を有する。
【0012】
このシステムは、被験者のリアルタイム血行動態機能を決定する手段を提供する。
【0013】
例えば、経皮的弁修復を受ける場合、臨床医は、決定を下すために被験者の血行動態機能に関するデータを必要とし得る。このようなデータは、典型的には、定性的な解剖学的検査及びユーザ依存の測定値に基づいて決定され、これらの両方は精度が異なり得る。
【0014】
しかしながら、これらの決定及びその結果は、しばしば、不明確なままである。したがって、被験者固有の測定値に基づいて、被験者のリアルタイム血行動態機能の正確なモデルを提供することによって、経時的な被験者の血行動態機能のより正確な描写を生成することが、可能である。これは、心臓系の状態に対するより明確な洞察につながり、その後、臨床医によるより有益な決定につながり得る。
【0015】
一実施形態では、生理学的データの連続ストリームが、弁機能の変化を受けている被験者から取得され、心臓系のシミュレートされたリアルタイム機能から決定されたリアルタイム弁機能は、弁機能の変化を表す。
【0016】
このようにして、弁機能の変化は、数値モデルによって心臓系全体を考慮に入れて、システムによって監視されてもよく、又は予測されてもよい。
【0017】
更なる実施形態では、システムは、被験者が弁修復を受けている間の使用に対して構成される。
【0018】
このようにして、システムは、弁を修復する処理中に、ユーザに対してガイダンス及びサポートのための情報を提供してもよい。
【0019】
一実施形態では、システムは、被験者から生理学的データを取得するように構成された生理学的センサを更に有し、生理学的センサは、
生理学的データが心電図データを有する、心電図センサと、
生理学的データが数値圧力データ及び/又は圧力波形データを有する、血圧測定装置と、
生理学的データがボリューム波形データを有する、ボリューム波形センサと、
のうちの1つ又は複数を有する。
【0020】
更なる実施形態では、ボリューム波形センサは、
ボリューム波形データが超音波データを有する、超音波トランスデューサと、
被験者によって着用されるように構成された、膨張可能なカフと、
ボリューム波形データが熱希釈技術を使用して導出される、サーミスタ先端カテーテルと、
のうちの1つ又は複数を有する。
【0021】
一実施形態では、数値モデルは、身体的パラメータに基づいており、プロセッサは、生理学的データの連続ストリームの少なくとも一部に基づいて数値モデルの身体的パラメータを調整するように更に構成される。
【0022】
このようにして、数値モデルは、経時的な生理学的データの分散に従って、被験者に適合されてもよい。
【0023】
一実施形態では、数値モデルは、身体的パラメータに基づいており、プロセッサは、
被験者から予備的な生理学的データを取得し、
被験者からの予備的な生理学的データに基づいて数値モデルの身体的パラメータを調整する、
ように更に構成される。
【0024】
このようにして、数値モデルは、シミュレーションが開始する前に被験者に適合されてもよく、それにより、決定された血行動態機能の精度を高める。
【0025】
一実施形態では、数値モデルは、身体的パラメータに基づき、方法は、被験者の将来の血行動態機能を予測することを更に有し、プロセッサは、
数値モデルの身体的パラメータを調整し、それによって予測数値モデルを生成し、
生理学的データの連続ストリームを予測数値モデルに対する入力として提供し、それによって被験者の心臓系の予測的機能をシミュレートし、
被験者の心臓系のシミュレートされた予測的機能に基づいて被験者の将来の血行動態機能を予測する、
ように更に構成される。
【0026】
このようにして、何らかの方法で血行動態機能に影響を及ぼす様々な異なるシナリオが、シミュレートされてもよい。例えば、心臓系に対する様々なストレス又は様々な薬剤の影響が、シミュレーションの安全性において検査されてもよい。
【0027】
一実施形態では、生理学的データは、
心電図データと、
圧力数値データと、
圧力波形データと、
心エコー検査に基づく生理学的データと、
ボリューム波形データと、
のうちの1つ又は複数を有する。
【0028】
更なる実施形態では、ボリューム波形データは、
心室ボリューム波形と、
心房ボリューム波形と、
のうちの1つ又は複数を有する。
【0029】
一実施形態によると、ボリューム波形データは、超音波データを有する。
【0030】
一実施形態では、圧力波形データは、
心房圧力波形と、
動脈圧力波形と、
のうちの1つ又は複数を有する。
【0031】
一実施形態では、生理学的データは、推定された生理学的データを有する。
【0032】
このようにして、間欠的なデータ取得は、推定データを提供することによって考慮されてもよい。
【0033】
本発明の一態様による例によれば、被験者のリアルタイム弁機能を決定するための方法が、提供され、方法は、
心臓系の数値モデルを取得するステップであって、数値モデルは、0D数値モデル又は1D数値モデルであり、数値モデルは、生理学的データを入力として受け取り、心臓系のシミュレートされた機能をリアルタイムで出力するように構成され、心臓系のシミュレートされた機能は、心臓系内の弁のシミュレートされた機能を有する、ステップと、
被験者からの生理学的データの連続ストリームを取得するステップと、
心臓系の数値モデルへの入力として生理学的データの連続ストリームを提供するするステップであって、これにより、被験者の心臓系のシミュレートされたリアルタイム機能を生成する、ステップと、
被験者の心臓系のシミュレートされたリアルタイム機能に基づいて被験者のリアルタイム弁機能を決定するステップと、
を有する。
【0034】
本発明の一態様による例によれば、コンピュータプログラムがコンピュータ上で実行されるときに、上述の方法を実施するように構成されたコンピュータプログラムコード手段を有するコンピュータプログラムが、提供される。
【0035】
本発明のこれら及び他の態様は、以下に記載される実施形態から明らかになり、これを参照して説明される。
【0036】
本発明をより良く理解するため、及び本発明がどのように実施されるかをより明確に示すために、例としてのみ、添付の図面が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】一般的な動作を説明するための超音波診断撮像システムを示す。
図2】本発明の方法を示す。
図3】数値モデルの概略的表現を示す。
図4】心臓系のシミュレートされた血行動態機能の例を示す。
図5】被験者の心臓系の血行動態機能を導出するためのシステムの概略的表現を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明は、図面を参照して説明される。
【0039】
詳細な説明及び特定の例は、装置、システム及び方法の例示的な実施形態を示しながら、例示のみの目的を意図されたものであり、本発明の範囲を限定することを意図されたものではないことを理解されたい。本発明の装置、システム及び方法のこれら及び他の特徴、態様、及び利点は、以下の説明、添付の特許請求の範囲、及び添付の図面からより良く理解されるであろう。図面は、単に概略的なものであり、一定の縮尺で描かれていないことを理解されたい。また、同じ参照番号が、同じ又は類似の部分を示すために、図面全体にわたって使用されることを理解されたい。
【0040】
本発明は、被験者のリアルタイム弁機能を決定するためのシステムを提供する。システムは、心臓系の数値モデルを取得するように構成された処理ユニットを有し、数値モデルは、0D数値モデル又は1D数値モデルであり、数値モデルは、入力として生理学的データを受け取り、リアルタイムで心臓系のシミュレートされた機能を出力するように構成され、心臓系のシミュレートされた機能は、心臓系内の弁のシミュレートされた機能を有する。プロセッサは、被験者から生理学的データの連続ストリームを取得し、心臓系の数値モデルへの入力として生理学的データの連続ストリームを提供し、それによって被験者の心臓系のシミュレートされた機能を生成し、被験者の心臓系のシミュレートされたリアルタイム機能に基づいて被験者のリアルタイム弁機能を決定するように更に構成される。
【0041】
例示的な超音波システムの一般的な動作は、まず、図1を参照して説明され、本発明が、トランスデューサアレイによって測定される信号の処理に関するので、システムの信号処理機能に重点を置いて説明される。
【0042】
このシステムは、超音波を送信し、エコー情報を受信するためのトランスデューサアレイ6を有するアレイトランスデューサプローブ4を有する。トランスデューサアレイ6は、容量性微細加工超音波トランスデューサ(CMUT)、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)又はPVDF(ポリフッ化ビニリデン)などの材料で形成された圧電トランスデューサ、又は任意の他の適切なトランスデューサ技術を有してもよい。この例では、トランスデューサアレイ6は、関心領域の2D平面又は3次元ボリュームのいずれかをスキャンすることができるトランスデューサ8の2次元アレイである。別の例では、トランスデューサアレイが、1Dアレイであってもよい。
【0043】
トランスデューサアレイ6は、トランスデューサ素子による信号の受信を制御するマイクロビームフォーマ12に結合されている。マイクロビームフォーマは、米国特許第5,997,479号(Savord他)、第6,013,032号(Savord)、及び第6,623,432号(Powers他)に記載されているように、トランスデューサの、一般に「グループ」又は「パッチ」と称される、サブアレイによって受信される信号の少なくとも部分的にビーム形成することができる。
【0044】
マイクロビームフォーマは、全体的に任意選択であることに注意する必要がある。更に、システムは、マイクロビームフォーマ12が結合されることができ、送信モードと受信モードとの間でアレイを切り替える、送信/受信(T/R)スイッチ16を含み、マイクロビームフォーマが使用されず、トランスデューサアレイが主システムビームフォーマによって直接的に操作される場合には、主ビームフォーマ20を高エネルギ送信信号から保護する。トランスデューサアレイ6からの超音波ビームの送信は、T/Rスイッチ16及び主送信ビームフォーマ(図示せず)によってマイクロビームフォーマに結合されたトランスデューサコントローラ18によって方向づけられ、主送信ビームフォーマは、ユーザインタフェース又は制御パネル38のユーザ操作から入力を受け取ることができる。コントローラ18は、送信モード中に(直接又はマイクロビームフォーマを介してのいずれかで)アレイ6のトランスデューサ素子を駆動するように構成された送信回路を含むことができる。
【0045】
典型的なラインバイライン撮像シーケンスでは、プローブ内のビーム形成システムが、以下のように動作してもよい。送信中、ビームフォーマ(実装に応じて、マイクロビームフォーマ又は主システムビームフォーマであってもよい)は、トランスデューサアレイ、又はトランスデューサアレイのサブ開口を起動する。サブアパーチャは、トランスデューサの一次元ラインであってもよいし、より大きなアレイ内のトランスデューサの二次元パッチであってもよい。送信モードでは、アレイによって生成される超音波ビームの集束及びステアリング、又はアレイのサブアパーチャは、以下に説明されるように制御される。
【0046】
被験者から後方散乱エコー信号を受信すると、受信信号は、受信信号をアラインするために(以下に説明するように)受信ビーム形成を受け、サブアパーチャが使用されている場合には、サブアパーチャが、例えば1つのトランスデューサ素子だけ、シフトされる。次いで、シフトされたサブアパーチャが、起動され、このプロセスは、トランスデューサアレイのトランスデューサ素子の全てが起動されるまで繰り返される。
【0047】
各ライン(又はサブアパーチャ)について、最終的な超音波画像の関連するラインを形成するために使用される合計受信信号は、受信期間中に所与のサブアパーチャのトランスデューサ素子によって測定された電圧信号の合計である。以下のビーム形成プロセスに続いて、結果として得られるライン信号は、典型的には、無線周波数(RF)データと称される。次いで、様々なサブアパーチャによって生成される各ライン信号(RFデータセット)は、最終的な超音波画像のラインを生成するために、付加的な処理を受ける。経時的なライン信号の振幅の変化は、深度に対する超音波画像の輝度の変化に寄与し、高振幅ピークは、最終画像における明るい画素(又は画素の集合体)に対応する。ライン信号の開始付近に現れるピークは、浅い構造からのエコーを表し、一方、ライン信号において次第に遅く現れるピークは、被験者内の増大する深度における構造からのエコーを表す。
【0048】
トランスデューサコントローラ18によって制御される機能の1つは、ビームがステアリングされ、集束される方向である。ビームは、トランスデューサアレイから真っ直ぐに(直交して)、又はより広い視野のために異なる角度でステアリングされてもよい。送信ビームのステアリング及び集束は、トランスデューサ素子作動時間の関数として制御されてもよい。
【0049】
平面波撮像及び「ビームステアリング」撮像の2つの方法が、一般的な超音波データ取得において区別されることができる。2つの方法は、送信モード(「ビームステアリング」撮像)及び/又は受信モード(平面波撮像及び「ビームステアリング」撮像)におけるビーム形成の存在によって区別される。
【0050】
最初に集束機能を見ると、トランスデューサ素子のすべてを同時に起動することによって、トランスデューサアレイは、被験者を通過するにつれて発散する平面波を生成する。この場合、超音波のビームは、未集束のままである。トランスデューサの起動に対する位置依存時間遅延を導入することによって、焦点ゾーンと称される所望の点においてビームの波面を収束させることが、可能である。焦点ゾーンは、横方向ビーム幅が送信ビーム幅の半分より小さい点として規定される。このようにして、最終的な超音波画像の横方向解像度が、改善される。
【0051】
例えば、時間遅延が、トランスデューサアレイの最も外側の素子で開始し、中央素子(複数可)において終わる、系列においてトランスデューサ素子を起動させる場合、焦点ゾーンは、中央素子(複数可)と一直線上で、プローブから所与の距離において形成される。プローブからの焦点ゾーンの距離は、トランスデューサ素子起動の各後続のラウンド間の時間遅延に応じて変化する。ビームが焦点ゾーンを通過した後、発散し始め、遠視野撮像領域を形成する。トランスデューサアレイに近接して配置された焦点ゾーンについて、超音波ビームは、遠視野において迅速に発散して、最終的な画像においてビーム幅のアーチファクトをもたらすことに留意されたい。典型的には、トランスデューサアレイと焦点ゾーンとの間に配置される近視野が、超音波ビームにおける大きな重複のために、ほとんど詳細を示さない。したがって、焦点ゾーンの位置を変化させることは、最終的な画像の品質に著しい変化をもたらす可能性がある。
【0052】
送信モードでは、超音波画像が複数の焦点ゾーン(それぞれが異なる送信焦点を有し得る)に分割されない限り、1つの焦点のみが、規定され得ることに留意されたい。
【0053】
加えて、被験者内からのエコー信号を受信すると、受信集束を実行するために上述された処理の逆を実行することが可能である。換言すれば、入ってくる信号は、トランスデューサ素子によって受信されてもよく、信号処理のためにシステム内に渡される前に電子的な時間遅延を受けてもよい。これの最も単純な例は、遅延及び合計ビーム形成と称される。時間の関数としてトランスデューサアレイの受信集束を動的に調整することが可能である。
【0054】
ここで、ビームステアリングの機能を見ると、トランスデューサ素子に対する時間遅延の正しい適用によって、トランスデューサアレイを離れるときに、超音波ビームに所望の角度を付与することが、可能である。例えば、トランスデューサアレイの第1の側面上のトランスデューサを起動させ、続いて、残りのトランスデューサを、アレイの反対側で終了するシーケンスで起動させることによって、ビームの波面は、第2の側面に向かって角度を付けられる。トランスデューサアレイの法線に対するステアリング角度の大きさは、後続のトランスデューサ素子の起動間の時間遅延の大きさに依存する。
【0055】
更に、ステアリングされたビームを集束させることが可能であり、ここで、各トランスデューサ素子に適用される合計時間遅延は、集束及びステアリング時間遅延の両方の和である。この場合、トランスデューサアレイは、フェーズドアレイと称される。
【0056】
それらの起動のためにDCバイアス電圧を必要とするCMUTトランスデューサの場合、トランスデューサコントローラ18は、トランスデューサアレイのためのDCバイアス制御部45を制御するために結合されることができる。DCバイアス制御部45は、CMUTトランスデューサ素子に印加されるDCバイアス電圧(複数可)を設定する。
【0057】
トランスデューサアレイの各トランスデューサ素子に対して、典型的にはチャネルデータと称される、アナログ超音波信号が、受信チャネルを介してシステムに入る。受信チャネルでは、部分的にビーム形成された信号が、マイクロビームフォーマ12によってチャネルデータから生成され、次いで、主受信ビームフォーマ20に渡され、そこで、トランスデューサの個々のパッチからの部分的にビーム形成された信号が、無線周波数(RF)データと称される完全にビーム形成された信号に結合される。各段階で実行されるビーム形成は、上述のように実行されてもよく、又は追加の機能を含んでもよい。例えば、主ビームフォーマ20は、128のチャネルを有してもよく、その各々は、数ダース又は数百のトランスデューサ素子のパッチから部分的にビーム形成された信号を受信する。このようにして、トランスデューサアレイの数千のトランスデューサによって受信される信号は、単一のビーム形成された信号に効率的に寄与することができる。
【0058】
ビーム形成された受信信号は、信号プロセッサ22に結合される。信号プロセッサ22は、帯域通過フィルタリング、デシメーション、I及びQ成分分離、及び組織及びマイクロバブルから戻された非線形(基本周波数の高次高調波)エコー信号の識別を可能にするように線形及び非線形信号を分離するように作用する高調波信号分離のような様々な方法で受信したエコー信号を処理することができる。また、信号プロセッサは、スペックル低減、信号複合、及びノイズ除去などの追加の信号強化を実行してもよい。信号プロセッサ内の帯域通過フィルタは、追跡フィルタであることができ、その通過帯域は、増大する深度からエコー信号が受信されるにつれて、より高い周波数帯域からより低い周波数帯域へとスライドし、それによって、典型的には解剖学的情報を欠く、より大きな深度からのより高い周波数におけるノイズを排除する。
【0059】
送信及び受信のためのビームフォーマは、異なるハードウェアで実施され、異なる機能を有することができる。もちろん、受信器ビームフォーマは、送信ビームフォーマの特性を考慮に入れて設計される。図1では、単純化のために、受信器ビームフォーマ器12、20のみが、示される。完全なシステムでは、送信マイクロビームフォーマ、及び主送信ビームフォーマを有する送信チェーンも存在するであろう。
【0060】
マイクロビームフォーマ12の機能は、アナログ信号経路の数を減少させるために信号の初期の組み合わせを提供することである。これは、典型的には、アナログ領域で実行される。
【0061】
最終的なビーム形成は、主ビームフォーマ20で行われ、典型的にはデジタル化後である。
【0062】
送信及び受信チャネルは、固定周波数帯域を有する同じトランスデューサアレイ6を使用する。しかしながら、送信パルスが占める帯域幅は、使用される送信ビーム形成に応じて変化することができる。受信チャネルは、トランスデューサ帯域幅全体(これは古典的なアプローチである)を捕捉することができ、又は帯域通過処理を使用することによって、所望の情報(例えば、主高調波の高調波)を含む帯域幅のみを抽出することができる。
【0063】
次いで、RF信号は、Bモード(すなわち、輝度モード、又は2D撮像モード)プロセッサ26及びドップラプロセッサ28に結合され得る。Bモードプロセッサ26は、器官組織及び血管のような身体内の構造の撮像のために、受信された超音波信号に対して振幅検出を実行する。ラインバイライン撮像の場合、各ライン(ビーム)は、関連するRF信号振幅によって表され、その振幅は、Bモード画像内の画素に割り当てられるべき輝度値を生成するために使用される。画像内の画素の正確な位置は、RF信号に沿った関連振幅測定の位置と、RF信号のライン(ビーム)数によって決定される。このような構造のBモード画像は、米国特許6,283,919 (Roundhillら)及び米国特許6,458,083 (Jagoら)に記載されているように、高調波又は基本波画像モード、又は両方の組み合わせで形成されてもよい。。ドップラプロセッサ28は、画像フィールド内の血液細胞の流れのような、動く物質の検出のために、組織の動き及び血流から生じる時間的に異なる信号を処理する。ドップラプロセッサ28は、典型的には、体内の選択されたタイプの材料から戻されたエコーを通過させる又は拒絶するように設定されたパラメータを有するウォールフィルタを含む。
【0064】
Bモード及びドップラプロセッサによって生成される構造及び動き信号は、スキャンコンバータ32及び多平面リフォーマッタ44に結合される。スキャンコンバータ32は、エコー信号を所望の画像フォーマットで受信されたた空間関係に配置する。換言すれば、スキャンコンバータは、円筒座標系からのRFデータを、超音波画像を画像ディスプレイ40に表示するのに適した直交座標系に変換するように作用する。Bモード撮像の場合、所与の座標における画素の輝度は、その位置から受信されるRF信号の振幅に比例する。例えば、スキャンコンバータは、エコー信号を二次元(2D)扇形状フォーマット又はピラミッド状三次元(3D)画像内に配置してもよい。スキャンコンバータは、画像フィールド内の点における動きに対応する色を有するBモード構造画像をオーバレイすることができ、そこでは、ドップラ推定速度が所与の色を生成する。組み合わされたBモード構造画像及びカラードップラ画像は、構造画像フィールド内の組織の動き及び血流を描写する。多平面リフォーマッタは、米国特許第6,443,896号(Detmer)に記載されるように、身体の体積領域内の共通平面内の点から受信されるエコーをその平面の超音波画像に変換する。 ボリュームレンダラ42は、米国特許第6,530,885号(Entrekinら)に記載されるように、3Dデータセットのエコー信号を所与の基準点から見た投影3D画像に変換する。
【0065】
2D又は3D画像は、スキャンコンバータ32、多平面リフォーマッタ44、及びボリュームレンダラ42から、画像ディスプレイ40上に表示するための、更なる強化、バッファリング、及び一時記憶のために画像プロセッサ30に結合される。撮像プロセッサは、例えば強い減衰器又は屈折によって引き起こされる音響陰影、例えば弱い減衰器によって引き起こされる後方増強、例えば高反射性組織界面が近接して配置される場合の残響アーチファクト等のような、特定の撮像アーチファクトを最終的な超音波画像から除去するように構成されてもよい。加えて、画像プロセッサは、最終的な超音波画像のコントラストを改善するために、特定のスペックル低減機能を操作するように構成されてもよい。
【0066】
撮像に使用されることに加えて、ドップラプロセッサ28によって生成された血流値及びBモードプロセッサ26によって生成された組織構造情報は、定量化プロセッサ34に結合される。定量化プロセッサは、器官のサイズ及び妊娠期間などの構造的測定に加えて、血流の体積速度などの異なる流れ状態の測定値を生成する。定量化プロセッサは、測定が行われるべきである画像の解剖学的構造内の点のような、ユーザ制御パネル38からの入力を受け取ってもよい。
【0067】
定量化プロセッサからの出力データは、ディスプレイ40上の画像を用いて測定グラフィックス及び値を再生するため、及びディスプレイ装置40からの音声出力のために、グラフィックプロセッサ36に結合される。グラフィックプロセッサ36は、超音波画像と共に表示するためのグラフィックオーバーレイを生成することもできる。これらのグラフィックオーバーレイは、患者名、画像の日時、撮像パラメータ等の標準的な識別情報を含むことができる。これらの目的のために、グラフィックプロセッサは、患者名のような、ユーザインタフェース38からの入力を受け取る。また、ユーザインタフェースは、トランスデューサアレイ6からの超音波信号の生成、したがって、トランスデューサアレイ及び超音波システムによって生成される画像の生成を制御するために、送信コントローラ18に結合される。コントローラ18の送信制御機能は、実行される機能のうちの1つに過ぎない。コントローラ18は、また、動作モード(ユーザによって与えられる)と、受信器アナログ-デジタル変換器における対応する必要な送信器設定及び帯域通過設定とを考慮する。コントローラ18は、固定された状態を有するステートマシンであることができる。
【0068】
ユーザインタフェースは、MPR画像の画像フィールドにおいて定量化された測定を実行するために使用され得る複数の多平面リフォーマット(MPR)画像の平面の選択及び制御のために、多平面リフォーマッタ44にも結合される。
【0069】
本明細書で説明される方法は、処理ユニット上で実行され得る。このような処理ユニットは、図1を参照して上述したシステムのような超音波システム内に配置されてもよい。例えば、上述した画像プロセッサ30は、以下に詳述する方法ステップの一部又は全部を実行してもよい。代わりに、処理ユニットは、被験者に関する入力を受信するように構成された監視システムなどの任意の適切なシステム内に配置されてもよい。
【0070】
図2は、被験者のリアルタイム血行動態機能を決定するための方法100を示す。リアルタイム血行動態機能は、血液の移動又は流れが関与する任意の身体的機能を指してもよい。例えば、リアルタイム血行動態機能は、僧帽弁又は大動脈弁などの弁を通過する血液の動きを指してもよい。更に、リアルタイム血行動態機能は、心房又は心室などの所与の心腔のボリュームの変化を指してもよい。
【0071】
本方法は、ステップ110において、心臓系の数値モデルを取得することによって開始し、数値モデルは、入力として生理学的データを取り、心臓系の機能を出力するように構成され、心臓系のシミュレートされた機能は、心臓系内の弁のシミュレートされた機能を有する。
【0072】
言い換えれば、数値モデルは、多数の心室、心房及び全身の動脈、心臓の左側、心臓全体など、所定の心臓系の機能をシミュレートする。例えば、心臓系は、左心及び全身動脈を含み得る。心臓系の数値モデルの一例を、図3を参照して以下に説明される。
【0073】
数値モデルは、様々な身体的パラメータに基づいて構築されてもよい。例えば、数値モデルは、圧力-体積関係、心臓系の剛性、エネルギの保存、質量の保存、及び運動量の保存のうちの任意の1つ以上に基づき得る。数値モデルは、また、被験者の動脈系を表す全身動脈モデルを含んでもよい。
【0074】
数値モデルに対する身体的パラメータの組み込みは、様々なソースからのデータ(例えば、超音波データ、末梢血圧データ、全身血圧データ、又は心臓内血圧データ、臨床ガイドライン、機械学習推定値など)が一緒に融合されることができ、質量、運動量、及びエネルギの保存などの物理的原理に従う、フレームワークを提供する。したがって、リアルタイム血行動態機能などの数値モデルから得られる推定値は、特に、入力が雑音が多い又は異なる撮像モダリティから受信され、及び/又は異なる時間的瞬間が使用される場合に、より一貫性を持たされてもよい。
【0075】
数値モデルが1つ又は複数の身体的パラメータに基づく場合、方法は、生理学的データの連続ストリームの少なくとも一部に基づいて数値モデルの身体的パラメータを調整することを更に含んでもよい。代わりに、予備的な生理学的データが、被験者から得られ、数値モデルの身体的パラメータを調整するために使用されてもよい。更に、数値モデルの身体的パラメータは、多数の被験者から収集された生理学的データに基づいて、すなわち、生理学的データの母集団セットを使用して、調整されてもよい。
【0076】
言い換えると、患者固有のデータが、数値モデルを個々のユーザに対して調整するように使用されてもよい。これは、検査中に、生理学的データの連続ストリームを使用して、又は検査前に、生理学的データの連続ストリームと同じソースを使用して収集されうる予備的な生理学的データを使用して、実行されてもよい。患者固有の入力(超音波データ又は末梢圧力測定値から得られる超音波ボリュームセグメンテーションなど)を使用することによって、数値モデルが、各患者に個別化されることができ、これにより、心臓機能、例えばリアルタイム血行動態機能の患者固有の推定値を提供する。
【0077】
数値モデルの調整は、生理学的データに基づいて身体的パラメータを識別すること、及び身体的パラメータを数値モデルに提供することを含んでもよい。
【0078】
例えば、身体的パラメータは、体循環パラメータ、充満パラメータ、放出パラメータ、心拍数パラメータ、剛性パラメータ、弁逆流又は弁開口サイズなどの弁関連パラメータ、血流パラメータなどのうちの1つ又は複数を含んでもよい。
【0079】
例えば、動脈血圧測定値が、全身動脈モデルのパラメータを調整するように使用されてもよい。動脈血圧測定値は、最大血圧値、最小血圧値、及び平均血圧値のうちの1つ又は複数を有してもよい。動脈血圧測定は、数値モデルにおける全身系の抵抗及びコンプライアンスを調整するために使用されてもよく、又はその逆であってもよい。
【0080】
一例では、心室圧力測定値が、大動脈弁にわたる圧力勾配の推定値を使用して導出されてもよい。大動脈弁にわたる圧力勾配は、ドップラ超音波測定を使用して推定されてもよい。最も単純な実施形態では、大動脈弁にわたる圧力勾配が、0であると仮定されてもよい。
【0081】
数値モデルの調整は、完全な血圧力波形を使用して更に改善されてもよい。このようにして、数値モデルは、例えば心臓系のシミュレーションに圧力減衰定数を含めることによって、被験者に更に個別化されてもよく、これは、心腔の剛性及び弛緩をモデル化するのに使用されてもよい。
【0082】
数値モデルを調整するのに使用される血圧情報は、上腕動脈若しくは橈骨動脈などの末梢動脈、又は大動脈若しくは大腿動脈などの全身動脈から得られてもよい。このような位置における末梢圧力の測定値は、血管の直径及び剛性の変動に起因して、中心大動脈圧力値に対して増幅される。
【0083】
数値モデルでは、身体的パラメータが、多段階アプローチを使用して識別されてもよい。例えば、心臓の駆出及び充満を表すパラメータが識別される前に、体循環を表す身体的パラメータ(すなわち、心臓系の後負荷に関連するパラメータ)が、最初に識別されてもよい。これらの患者固有の身体的パラメータは、生理学に基づくルール、直接最適化方法、順次的フィルタリング方法などのような技術の混合を使用して推定されてもよい。
【0084】
ステップ120では、生理学的データの連続ストリームが、被験者から得られる。生理学的データの連続ストリームは、用途に応じて任意の適切な方法で被験者から得られてもよい。
【0085】
生理学的データは、心電図データ、心房圧力波形及び/又は動脈圧力波形を含み得る圧力波形データ、及び心室ボリューム波形及び/又は心房ボリューム波形を含み得るボリューム波形データのうちの1つ又は複数を有し得る。ボリューム波形データは、被験者から収集された超音波データに基づきうる。加えて、生理学的データは、推定された生理学的データを有し、推定された生理学的データは、利用可能な間欠的な生理学的データに基づいて推定され、それによって、間欠的な生理学的データに基づいて生理学的データの連続ストリームを生成する。
【0086】
ステップ130では、生理学的データの連続ストリームが、心臓系の数値モデルへの入力として提供され、それによって被験者の心臓系のリアルタイム機能をシミュレートする。心臓系のリアルタイム機能のシミュレーションの例は、図4を参照して以下に更に論じられる。
【0087】
ステップ140において、被験者のリアルタイム血行動態機能は、被験者の心臓系のシミュレートされたリアルタイム機能に基づいて決定される。
【0088】
低侵襲ETERによるMVRに対するMV修復術を受ける患者では、目標は、心室充満を著しく低下させることなくMV逆流のレベルを低下させることである。ETERの約40%において、これは、クリップのような複数の装置の使用を必要とし、第2の装置の利点は、典型的には、第1の装置の成功した展開の後に術中に決定される。現在の意思決定プロセスは、主に、心エコー検査評価(すなわち、定性的な解剖学的検査)又はユーザ依存の測定(例えば、MVにわたる圧力勾配)に依存する。
【0089】
しかしながら、追加の装置の利点が不明確なままである状況が残っている。そのような被験者において、ETERの血行動態機能(例えば、心周期の特定の相における逆流のレベル対充満ボリューム)は、正常状態をより表す血行動態状態(すなわち、介入後)を模倣するために、被験者の血行動態状態を薬理学的に変化させることによって更に試験され得る。これらの変化した状態に対する血行動態反応を観察することは、心臓専門医が現在のETER構成の適合性を決定することを可能にする。
【0090】
上述の方法は、数値モデルを使用してETER処置中の血行動態機能のリアルタイム評価を提供しうる。患者固有の入力(超音波ボリュームセグメント化、圧力波形など)を使用して、そのようなモデルは、各被験者に対して拍動ごとに個別化され、リアルタイム血行動態機能の被験者固有の推定値を提供しうる。
【0091】
例として、本方法は、以下のように展開されてもよい。ETER処置の間、典型的には間欠的な超音波が、利用可能であり、さもなければ、被験者の心臓系の血行動態機能の限定された評価しか提供しないであろう。しかしながら、左心房及び動脈圧力などの圧力波形が、連続的に記録されてもよい。
【0092】
数値モデルは、入力として、圧力波形及び同時のボリューム波形(利用可能な場合、超音波データからセグメント化される)を取り、被験者の血行動態機能の連続推定値を出力してもよい。ボリューム波形は、また、例えば、膨張可能なフィンガカフ、熱希釈技術を使用すること、又は利用可能な超音波データに基づいて完全なボリューム波形を推定することなどの代替技術によって取得されてもよい。数値モデルの出力は、追加の修復装置を展開する有効性に関する決定サポートを提供してもよい。
【0093】
更に、数値モデルは、また、左心(心房及び心室)の対応する圧力-ボリュームループを生成し、それによって、変化した状態(運動及び/又はストレスなど)に適応する心臓の能力など、臨床評価のための更なる生理学的情報を提供し得る。
【0094】
換言すれば、心臓系は、被験者の心臓、具体的には左心を表してもよく、方法は、被験者の心臓系のシミュレートされたリアルタイム機能に基づいて、心臓系の左心室及び/又は左心房の圧力-ボリュームループを決定することを更に含んでもよい。
【0095】
上述の方法では、被験者の弁のリアルタイム機能が、生理学的データの連続ストリームから生成されたリアルタイムシミュレーションに基づいて決定される。リアルタイムシミュレーションにより、生理学的データの連続ストリームを受け取る数値モデルと心臓系のシミュレーションの生成との間には、目立った遅延がほとんどないことを意味する。言い換えると、心臓系のリアルタイムシミュレーションは、被験者の実際の心臓系の現在の状態と同時である、又はほぼ同時である出力を生成する。このようにして、システムは、処置の進行を評価するために、エッジトゥエッジ修復などの介入処置中に使用され得る心臓系の機能の正確なリアルタイムシミュレーションを提供し得る。
【0096】
変化した心臓状態を薬理学的に達成することは常に可能である、又は望ましいとは限らないので、数値モデルは、被験者の将来の血行動態機能を予測するために使用され得る。例えば、弁の排出又は逆流などの数値モデルの身体的パラメータは、所望の予測シナリオに従って調整されてもよい。次いで、生理学的データの連続ストリームは、予測数値モデルへの入力として提供され得、それによって、被験者の心臓系の予測的な機能をシミュレートする。したがって、被験者の将来の血行動態機能は、被験者の心臓系のシミュレートされた予測的な機能に基づいて予測されうる。
【0097】
例えば、ETER処置の間、被験者は、血管緊張、従って心臓の後負荷を一時的に減少させる麻酔薬を提供される。したがって、ETER処置中に評価される被験者の血行動態機能は、正常な状況を表すものではない可能性がある。したがって、数値モデルは、増加した後負荷の効果を仮想的に予測するために使用され得、それによって、介入後の血行動態機能の推定を提供する。したがって、数値モデルが、更なる修復装置の追加に関する追加の決定サポートを提供するのに使用されてもよい。
【0098】
言い換えると、被験者のリアルタイム弁機能を決定するためのシステムは、1つ又は複数のエッジトゥエッジ弁修復装置と、上で概説したステップを実施するように構成された処理ユニットとを含んでもよい。
【0099】
より具体的には、処理ユニットは、本明細書に記載されるように、心臓系の数値モデルを取得し、被験者から生理学的データの連続ストリームを取得するように構成されてもよい。生理学的データの連続ストリームは、例えば、弁において展開されているエッジトゥエッジ弁修復装置に起因して、弁機能の変化を受けている被験者から得られ得る。
【0100】
生理学的データの連続ストリームは、心臓系の数値モデルへの入力として提供されてもよく、それによって、被験者の心臓系のシミュレートされたリアルタイム機能を生成し、被験者のリアルタイム弁機能は、被験者の心臓系のシミュレートされたリアルタイム機能に基づいて決定されてもよい。心臓系のシミュレートされたリアルタイム機能から決定されたリアルタイム弁機能は、弁機能の変化を表しうる。
【0101】
被験者のリアルタイム弁機能を決定することは、被験者に提供される麻酔薬による心臓系の血管緊張の変化に基づいて、心臓系のシミュレートされたリアルタイム機能を調整することによって実行されてもよい。更に、数値モデルは、被験者の決定されたリアルタイム弁機能に基づいて、弁に対する追加のエッジトゥエッジ弁修復装置の提供に基づいて、将来のシミュレートされた弁機能を予測するように更に構成されてもよい。
【0102】
図3は、心臓系の一部、すなわち左心210及び大動脈220の数値モデル200の概略図の一例を示す。
【0103】
この例では、心周期中の血流又は血行動態機能をモデル化するための単純化された0Dアプローチが、表される。しかしながら、記載されたフレームワーク内で1D/3Dモデル化アプローチを組み合わせることも可能であり、完全な循環系のモデルを含むことも更に可能である。
【0104】
集中パラメータモデルとも称されるゼロ次元(0D)モデルは、Shi, Y., Lawford, P. & Hose, R. "Review of Zero-D and 1-D Models of Blood Flow in the Cardiovascular System" BioMed Eng OnLine 10, 33 (2011), https://doi.org/10.1186/1475-925X-10-33に詳細に記載されているように、心臓系の挙動を記述する一組の連立常微分方程式(ODE)を生じる。脈管構造の表現では、各区画に対して2つのODEが存在することが多く、これは、質量の保存及び運動量の保存を表し、これは、区画ボリュームを圧力に関連付ける代数平衡方程式によって補完され得る。0D成分から構築された数値モデルは、一般に、心臓、心臓弁、及び血管系の区画などの心臓系の主要構成要素を特徴とし、生理学的状態の範囲にわたる圧力、流量、及び血液量の全体的分布の検査に適している。
【0105】
一次元(1D)、二次元(2D)及び三次元(3D)モデルは、質量及び運動量の保存を記述する一連の偏微分方程式(ナビエーストークス方程式)を生じ、これは、代数的平衡方程式によって補完され得る。心血管数値モデルの文脈において、1Dモデルは、大動脈及びより大きな全身動脈を表すために使用されることができる、血管系内の波送信効果を表すための機能を有する。3Dモデルは、例えば、心室内、心臓弁の周り、分岐部の近く、又は渦流又は分離流を有する任意の領域内の複雑な流れパターンを計算するために使用されてもよい。解析解は、最も単純な幾何学的形状について利用可能であるが、任意の3Dモデルについて利用可能ではなく、数値解が、常に頼られる。
【0106】
例えば、ETER処置中に、数値モデルは、被験者の僧帽弁のリアルタイム血行動態機能を推定するために必要とされ得る。図3は、電子回路として表される0D数値モデル200の一例を示す。
【0107】
0Dモデル化を実行する際に、油圧-電気アナログの概念が、しばしば適用される。一般に、循環系における血流と回路における電気伝導との間には、多くの類似性が存在する。例えば、循環ループ内の血圧勾配は、油圧インピーダンスに逆らって流れるように血液を駆動し、回路内の電圧勾配は、電気インピーダンスに逆らって流れるように電流を駆動する。油圧インピーダンスは、摩擦損失、血管壁弾性、及び血流中の血液慣性の組み合わされた効果を表し、一方、電気インピーダンスは、回路中の抵抗、キャパシタンス、及びインダクタンスの組み合わせを表す。
【0108】
図3に示すモデルでは、電圧は、血圧を表し、電流は、血流を表す。このアプローチにおいて、動脈系の異なる区画(例えば、心房、心室、大きな動脈など)は、抵抗及びキャパシタンスのような血行動態アナログに関連する電気成分に一緒にグループ化される。
【0109】
左心210から始めて、ソース(Pla)は、可変キャパシタ230を充電し、左心室に血を送り込む左心房を模倣する。左心房は、その受動限界まで左心室(可変キャパシタ)を充填する。被験者から得られる生理学的データは、左心房の挙動についてモデルを通知するために使用され得る、左心房圧力の連続ストリームを含んでもよい。
【0110】
可変キャパシタ230のキャパシタンスは、心室の剛性、すなわち筋肉収縮を表す。ボリュームは、ユーザの生理学的データから導出され得る状態変数である。
【0111】
Elvは、左心室のエラスタンスを指す。これは、心室ボリュームを左心室内の圧力に関連付ける。剛性(すなわち、心室の筋収縮)の尺度ではあるが、厳密には材料剛性ではない。この関係は、同時の心室圧力及びボリューム波形から実験的に測定された。
【0112】
電荷は、回路に沿って進み、ダイオード240は、弁として作用して流れの方向を規定する。次いで、血液(電荷)は、大動脈220内に移動し、体循環系に入る。
【0113】
抵抗用語(僧帽弁抵抗、Rmv、大動脈弁抵抗、Rav、近位全身抵抗、Rsys=p、遠位全身抵抗、Rsys=d)は、血流に対する血管及び弁の抵抗を表し、所与の領域の圧力に直接的に関連する。Csysは、全身コンプライアンスを表す。抵抗項は、心臓系内の様々な狭窄を表しうる。
【0114】
この例では、モデルパラメータが、電気的アナログを使用して表される。しかしながら、そのようなモデルは、質量の保存などの物理的原理に従い、例えば、モデルの各ノードへの血流(電流)が、保存される。更に、電気的アナログは、変形可能な血管内の血流に対する質量及び運動量保存方程式の線形化から導出されることができる。
【0115】
生理学的データの連続ストリーム及び入力(例えば、被験者から得られた超音波データ及び圧力波形の組み合わせ)をとることによって、数値モデルは、被験者の心臓系のリアルタイム血行動態機能の表現を出力することが可能である。
【0116】
図3に示す例は、左心の多くの可能なモデルのうちの1つに過ぎないことに留意されたい。モデルの異なるコンポーネントは、特定の用途に応じて交換されてもよい。ETER処置の例では、数値モデルが、逆流僧帽弁を含むように構成されてもよい。更に、モデルは、動的左心房、動的左心室などを含むように構成されてもよい。上述のように、数値モデルは、また、全身動脈モデルを含んでもよい。
【0117】
モデルは、心臓診断におけるドップラ波形のような特定の用途のための追加の超音波データを組み込むように構成され得るが、しかしながら、この追加のデータは、定期的に収集されなければならない。
【0118】
上述の数値モデルは、超音波分析プラットフォームに統合されてもよい。これは、モデルが左心の患者固有セグメント化を利用することを可能にしうる。
【0119】
換言すれば、図3に示された例では、0D数値モデルが、心臓内の血流の物理学をシミュレートするために利用される。数値モデルは、被験者の心臓系のリアルタイム血行動態機能などのリアルタイムの患者固有の心拍出量又は僧帽弁逆流計算を提供するように構成される。このモデルのための入力は、例えば、心腔の定量的な心エコー検査データ(被験者から得られた超音波データに基づいてもよい)、又は被験者の血圧に関する侵襲的又は非侵襲的に測定された圧力波を含んでもよい。
【0120】
数値モデルは、0D数値モデル又は1D数値モデルであってもよい。0D及び1D数値モデルは、計算的に単純であるので、被験者からの入ってくる生理学的データをほとんど又は全く遅延なく処理することが、可能であり、それによって、リアルタイムで心臓系のシミュレートされた機能を提供する。
【0121】
このモデルベースのフレームワークでは、事前に計算された情報は、例えば複雑な3D数値モデルから、提供されてもよい。事前に計算された情報は、作成されるべき重要な身体的パラメータの初期推定値を提供してもよく、次いで、生理学的データ(例えば、ETERにおける非線形弁抵抗)に従って更に個人化されてもよい。このような非線形圧力-流量関係のマッピングは、結合された流体及び固体数値シミュレーションを用いて、異なる弁サイズ及び修復置換の範囲にわたって事前に計算されてもよい。次いで、事前に計算された値は、適切な技術(機械学習アルゴリズム、適切な直交分解など)を介して、収集された生理学的データに基づいて患者にマッピングされてもよい。
【0122】
言い換えれば、高い計算負荷を有する計算は、被験者の生理学的データに対する数値モデルの適用の前に実行されてもよく、それによって、心臓系をシミュレートするのに必要な計算資源及び時間を削減してもよい。
【0123】
図4は、ETER処置の後に修復された僧帽弁300のシミュレートされた血行動態機能の視覚的表現を示す。図4に示された例では、リボン310は、僧帽弁を通る血流の経路を表し、弁の血行動態機能を評価するために使用されてもよい。
【0124】
図5は、被験者400のリアルタイム血行動態機能を決定するためのシステムの概略図を示す。
【0125】
ETER処置の例において、利用可能であり得る生理学的データは、以下の表1に示される。
【表1】
表1-ETERにおいて利用可能なデータ
【0126】
図5を参照すると、心室ボリューム波形及び心房ボリューム波形は、超音波システム410によって得られてもよい。動脈圧力波形は、麻酔セット420によって得られてもよく、心房圧力波形は、介入圧力測定装置430によって得られてもよい。
【0127】
上述の入力データを使用して、数値モデル440の患者固有の身体的パラメータ(抵抗、コンプライアンスなど)は、例えば、生理学的ルール、直接最適化、及び順次的推定の組み合わせを使用して推定され得る。次いで、数値モデルは、僧帽弁などの被験者の心臓系のリアルタイム血行動態機能450を出力してもよい。
【0128】
表1に詳述されるように、例えば超音波システムによって得られるボリュームデータは、間欠的であってもよい。したがって、数値モデルは、ボリューム波形入力なしの期間に対して動作する必要がありうる。この場合、心臓の収縮性を支配する身体的パラメータ(最大収縮性など)は、失われた生理学的データを自動的に推定するのに使用されてもよい。生理学的データは、例えば、直接推定技術と非線形状態推定(例えば、アンセンテッドカルマンフィルタ)との組み合わせによって推定されてもよい。ボリューム波形データが、次に利用可能であるとき、数値モデルは、新しいボリュームデータを使用して更新され、それによって、数値モデルを再較正してもよい。
【0129】
超音波システムに加えて、ボリューム波形データは、被験者及び/又はサーミスタ先端カテーテルによって装着されるように構成された膨張可能なカフによって取得されてもよく、ボリューム波形データは、熱希釈技術を使用して導出される。
【0130】
開示された実施形態に対する変形例は、図面、開示、及び添付の特許請求の範囲の検討から、特許請求された発明を実施する際に当業者によって理解され、実施されることができる。請求項において、単語「有する」は、他の要素又はステップを排除するものではなく、不定冠詞「a」又は「an」は、複数性を排除するものではない。単一のプロセッサ又は他のユニットが、請求項に列挙されるいくつかの項目の機能を果たしてもよい。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用されることができないことを示すものではない。コンピュータプログラムが上述される場合、コンピュータプログラムは、適切な媒体、例えば他のハードウェアと一緒に又はその一部として供給される光記憶媒体若しくはソリッドステート媒体に記憶/配布されてもよいが、他の形態、例えばインターネット又は他の有線若しくは無線電気通信システムを介して配布されてもよい。「に適応される」という用語が請求項又は明細書に用いられる場合、「に適応する」という用語は、「ように構成される」と言う用語と同等であることを意図される。請求項におけるいかなる参照符号も、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】