(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-30
(54)【発明の名称】量子データバッファリングのためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
G06N 10/40 20220101AFI20221122BHJP
【FI】
G06N10/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022518692
(86)(22)【出願日】2020-09-22
(85)【翻訳文提出日】2022-03-22
(86)【国際出願番号】 US2020051982
(87)【国際公開番号】W WO2021061634
(87)【国際公開日】2021-04-01
(32)【優先日】2019-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522113361
【氏名又は名称】ジョン・エイ・ブルース
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100173565
【氏名又は名称】末松 亮太
(74)【代理人】
【識別番号】100195408
【氏名又は名称】武藤 陽子
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・エイ・ブルース
(57)【要約】
量子データバッファリングシステムには、光子経路量子データバッファに接続されたデータプロセッサ、量子力学的要素源、二重スリットフィルタ、非線形光学結晶、自発型パラメトリックダウンコンバータ、およびグラン・トムソンプリズムが含まれる。出力チャネルには、データ符号化センサ、量子ビットストレージ、および単一光子記録ストレージが含まれる。入力チャネルには、データ復号化センサおよび経路情報を含む単一光子記録ストレージが含まれる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子データバッファリングのための方法であって、量子データバッファを提供するステップと、
量子力学的要素を重ね合わせて配置するステップと、
測定により、前記バッファ内の重ね合わせデータを符号化するステップと、
定義された状態に重ね合わせて前記測定および観測を制御することにより、前記符号化されたデータの状態を設定するステップと、
前記バッファを備えた外部インターフェースを提供するステップであって、前記外部インターフェースが、重ね合わせデータの出力チャネルと、前記重ね合わせデータの前記状態を設定するための入力チャネルと、を含む、ステップと、
前記バッファ内の前記重ね合わせデータの観測と組み合わせて測定を遅延させて、前記データの未確定状態を維持するステップと、
前記入力データチャネルを介して前記重ね合わせデータの所望の状態を送信することによって、情報伝送を実現するステップと、
前記重ね合わせデータを復号化するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記量子データバッファ内に量子ビットを生成する追加のステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
データ符号化センサを提供する追加のステップと、
前記データ符号化センサが、重ね合わせデータの記録状態をデータプロセッサに送信する追加のステップと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記データ記録状態を、前記データプロセッサに不定的に未確定状態で重ね合わせて記憶する追加のステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
データ復号化センサを提供する追加のステップと、
前記データ復号化センサが量子力学的要素の特性の測定状態を前記データプロセッサに送信する追加のステップと、を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記測定状態を確定状態で不定的に前記データプロセッサに記憶する追加のステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記データプロセッサが前記重ね合わせデータを前記出力チャネルに伝送する追加のステップを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記データプロセッサが前記入力チャネルからデータを受信する追加のステップと、前記データプロセッサが前記データ復号化センサのデータの測定情報を破棄する追加のステップと、を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
測定値を選択して、前記入力チャネルからの前記データを使用することによって前記データを破棄し、それにより、0または1を設定すると測定値が破棄され、0または1の他方を設定するとバイナリデータを表す測定値が保持される追加のステップを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記量子データバッファの出力チャネルから前記重ね合わせデータを受信した任意の場所に情報を瞬時に転送する追加のステップと、
前記出力チャネルデータの前記状態を前記入力チャネルデータを用いて設定する追加のステップと、前記重ね合わせデータを観測する追加のステップと、を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
量子データバッファと、
前記バッファ内の重ね合わせデータを符号化するように構成されたエンコーダと、
定義された状態に重ね合わせて前記測定および観測を制御することにより、前記符号化されたデータの前記状態を設定するように構成された前記バッファと、
前記バッファに接続され、重ね合わせデータの外部出力を提供するように構成された外部インターフェースと、を含む、量子データバッファリングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年9月29日に出願された「Method for Quantum Data Buffering」に関する米国仮特許出願第62/907,645号において優先権を主張しており、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、概して、データ状態バッファリングのための量子力学、特に量子データバッファリングのためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術の説明
現在、データの状態は、無線信号、電気信号、光信号などの方法を使用して転送されている。これらの方法には、干渉、レイテンシ、距離、および視界(line of sight)の制限がある。量子もつれを使用したデータ転送は、これらの転送の制限を克服することが実証されている。
【0004】
現在、重ね合わせデータの状態を不定的に記憶し、量子もつれを使用して、干渉、レイテンシ、距離、視界に関係なくデータを瞬時に転送できる実用的な方法は存在していない。
【0005】
これまで、本発明の利点および特徴を備えた量子データバッファリングのためのシステムまたは方法は存在しなかった。
【0006】
本発明の追加の背景情報は、https://laser.physics.sunysb.edu/amarch/eraser/index.htmlにあり、その内容は参照により組み込まれている。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、概して、重ね合わせデータを符号化し、その後、測定および観測の制御によって、その重ね合わせデータの状態を定義された状態に設定する量子データバッファリングのためのシステムおよび方法を提供する。本方法の好ましい実施形態は、重ね合わせデータの出力チャネルと、重ね合わせデータの状態を設定するための入力チャネルとを備えた外部インターフェースを有する。本方法の好ましい実施形態は、重ね合わせ状態で伝送されるデータを内部的に符号化する。重ね合わせデータの観測と組み合わせた測定は、データの未確定状態を維持するために遅延される。次に、重ね合わせデータの所望の状態を重ね合わせデータを復号化する入力データチャネルを介して送信することによって、情報の伝送を実現することができる。
【0008】
図面は、本明細書の一部を構成しており、種々の目的およびその特徴を示す本発明の例示的な実施形態を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の好ましい態様または実施形態を具現化する量子データバッファリングシステムの概略図である。
【
図2】本発明の好ましい態様または実施形態を具現化する量子データバッファリング方法を示すフローチャートである。
【
図3】量子データのバッファリング方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
I.導入および環境
必要に応じて、本発明の詳細な態様が本明細書に開示されるが、開示される態様は、種々の形態で具現化され得る本発明の単なる例示であることが理解されるべきである。したがって、本明細書に開示される特定の構造的および機能的詳細は、限定的であると解釈されるべきではなく、単に特許請求の範囲の基礎として、および事実上任意の適切に詳細な構造で本発明を種々に使用する方法を当業者に教示するための代表的な基礎として解釈されるべきである。
【0011】
以下の説明では、参照の便宜のために特定の用語が使用されるのみであり、これに限定されるものではない。上記の用語には、具体的に言及されている用語、その派生語、および同様の意味の用語が含まれる。
【0012】
II.好ましい実施形態の量子データバッファリングシステム2
好ましい光子経路ベースのシステム2の実施形態では、
図1に示されるように、データプロセッサ4は、光子経路量子データバッファ5および量子力学的要素源6、例えば、非線形光学結晶10および二重スリットフィルタ8を備えたレーザに接続されている。システム2はまた、自発型パラメトリックダウンコンバータ12およびグラン・トムソンプリズム14を含み得る。量子もつれ光子対は、データ符号化センサ16に入力され、そこでパターンが確定され得る。量子もつれ光子対経路は、データ復号化センサ26によって測定される。
【0013】
好ましい光子経路ベースの実施形態では、符号化センサ16は、もつれた対の個々の光子を検出し得るカメラセンサであり、このカメラセンサは、光子のパターンを波または粒子として記録して、重ね合わせデータを符号化する。あるいは、復号化センサ26には、個々の光子を検出し、それによって光子の経路を確定し得る一対のカメラセンサが含まれ得る。観測と組み合わせたこの経路測定は、重ね合わせた光子パターンから作成されたデータを復号化および設定するために使用される。
【0014】
好ましい光子経路ベースのシステム2の実施形態では、データプロセッサ4はコンピュータである。データプロセッサ4は、カメラ16からデータを取得し、パターン認識を使用して、光子がバイナリ0の干渉パターンを形成するか、またはバイナリ1の二重線パターンを形成するかを判定する。このバイナリデータは、測定および観測の組み合わせが状態を崩壊させるまで、0と1とを同時に重ね合わせる。測定が行われた後、観測を遅延させて重ね合わせデータが維持される。
【0015】
データ符号化センサ16は、重ね合わせデータの記録状態をデータプロセッサ4の量子ビットストレージ18に送信し、そこでデータは未確定状態で不定的に記憶され得、出力チャネル22の一部を形成する粒子または波パターングループ20での単一光子記録ストレージへの入力を提供する。
【0016】
入力チャネル24は、データプロセッサ4から入力を受信し、経路情報28を有する単一光子記録ストレージに接続されたデータ復号化センサ(例えば、カメラセンサ)26を含む。データ復号化センサ26は、量子力学的要素の特性の測定された状態をデータプロセッサ4に送信し、そこで、該状態は、確定状態で不定的に記憶され得る。
【0017】
データプロセッサ4は、データ符号化センサ16およびデータ復号化センサ26からデータを取得して、不定的に記憶する。データプロセッサ4は、重ね合わせデータを出力チャネル22に伝送する。データプロセッサ4は、入力チャネル24からデータを受信し、データ復号化センサ26の測定情報を破棄し、観測されたときに重ね合わせデータの崩壊を選択的に引き起こす。破棄する測定値の選択は、入力チャネル24からのデータを使用することによって行われる。0を設定すると測定値が破棄され、1を設定すると、バイナリデータを表す測定値が保持されるが、このスキームは、一貫している限り、任意のデータセットで逆にすることができる。
【0018】
これにより、量子データバッファ出力チャネル22から重ね合わせデータを受信した任意の場所への情報の瞬時の転送が実現される。入力チャネル24のデータが出力チャネル22のデータの状態を設定することで、それを観測することができる。
【0019】
入力チャネル24によって設定される前に重ね合わせて出力チャネル22からのデータを観測することは、重ね合わせデータの状態を確定状態に崩壊させ、方法が状態を転送することを妨げる。
【0020】
III.量子データバッファリングシステム2のアプリケーション
量子データバッファ(QDB)は、任意のデジタルシステムで使用することができる。QDBからそのシステムに記憶されたこのデータは、観測されるまで重ね合わせられる。これにより、自動化されたシステムが観測の外で作業することができ、作業が完了した後にその作業を確定することができる。これを利用する例示的なアプリケーションには、以下が含まれる。
【0021】
1)プライベート一方向通信システム
QDBをデジタル通信に使用することで、干渉または傍受の機会なく任意の距離でデータ状態を瞬時に転送することができる。また、観測対象のデータをいつ公開するかを判定するタイミングに基づく通信プロトコルも必要になる。これは1つの方法であるが、データを複製して配布することが可能である。これにより、マルチキャストと同様に1対多の通信が可能になるが、共有バッファデータを有する人は誰でも、バッファデータ全体を観測して通信を妨害する可能性がある。この方法を使用できるデバイスの例として、リモートコントロール(テレビ、おもちゃ、ゲームコントローラ)、デジタルコンテンツ配信(最初にダウンロードし、後でデータを設定)、オーディオスピーカ(無線)、ビデオディスプレイ、リモートセンサ、コンピュータのマウス/キーボード、およびデジタル信号を一方向に送信するすべてのデバイスなどがある。
【0022】
2)プライベート双方向通信システム
QDBをデジタル通信に使用することで、干渉または傍受の機会なく任意の距離でデータ状態を瞬時に転送することができる。双方向通信には、2つの別個のQDBが必要である。2つのコミュニケータの出力データは、分離する前に交換する必要がある。また、観測対象のデータをいつ公開するかを判定するタイミングに基づく通信プロトコルも必要になる。通信するデータを有しているのは2つの通信当事者のみであるため、データは非公開になる。これによって恩恵を受ける可能性のあるデバイスには、トランシーバのペア(無制限の範囲)、イヤホン/ヘッドフォン、ケーブルの交換(デジタル信号を伝送するケーブルはすべてQDBを用いて2つのコネクタに変換できる)、分散型マルチプロセッサコンピューティング、ドローン、ロボット工学、安全な衛星制御、双方向デジタル信号を使用するすべてのものが含まれる。
【0023】
3)信頼される当事者間の通信システム
QDBでは、通信の前にデータを交換する必要がある。通信する前にローカルでデータを交換する必要があると、不便である。信頼できるサードパーティを使用すると、電話番号と同様のアドレス指定プロトコルを使用して情報を交換できる。通信を希望するすべての当事者は、信頼できるサードパーティと量子ビットを共有する。信頼できるサードパーティシステムは、通信用に任意の2つのバッファを接続するためのスイッチボードとして機能する。アプリケーションには、電気通信(例えば、通話の切断を最小限に抑える)およびコンピュータネットワーク(遅延を最小限に抑えたデジタルネットワークおよび量子ネットワーク)が含まれる。
【0024】
4)安全なドキュメントの印刷
QDBの量子ビットを使用してドキュメントを安全に印刷できる。未定義のため、安全に発送することができる。制御レコードを使用してデータが設定される前に観測された場合は、すべてがバイナリ1であり、何も表示されない。物理的に受信されると、観測される前に、受信者は従来の方法でデータを設定できることを通知できる。最後に、ドキュメントは意図したデータコンテンツで観測できる。
【0025】
5)製造
QDBは、自動化された製造を制御するために使用できる。観測せずに完全に作業を行う限り、最終製品を確定する前に作業を完了することができる。アプリケーションには、仕上げ塗装、3D印刷、およびその他のカスタマイズ可能な制作が含まれる。
【0026】
6)観測センサ
QDBは、観測の影響を受ける量子ビットを生成する。量子ビットが観測に供されると、それらは確定状態になる。これは、データが観測された後にデータにパターンを設定しようとすることで検出できる。データの過去の観測結果を公開しようとすると失敗する。アプリケーションには、セキュリティシステム、コンピュータインターフェース、および観測されたことを検出するセンサを使用できるあらゆるものが含まれる。
【0027】
7)量子コンピューティング
QDBは、不定的に安定した量子ビットを生成する。これは、既存のコンピュータ上での量子コンピューティングに使用できる。
【0028】
図2は、本発明の一態様を具現化した量子データバッファリング方法のフローチャートである。
図3は、本発明の一態様を具現化する量子データバッファリング方法の別のフローチャートである。
【0029】
結論
本発明の特定の実施形態および/または態様を示し、説明したが、本発明はこれに限定されず、種々の他の実施形態および態様を包含することが理解されるべきである。
【国際調査報告】