IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フェルトン ホールディング ソシエテ アノニムの特許一覧

特表2022-550038粉末およびその粉末の使用による歯のクリーニングのためのプロセス
<>
  • 特表-粉末およびその粉末の使用による歯のクリーニングのためのプロセス 図1
  • 特表-粉末およびその粉末の使用による歯のクリーニングのためのプロセス 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-30
(54)【発明の名称】粉末およびその粉末の使用による歯のクリーニングのためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/02 20060101AFI20221122BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20221122BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20221122BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20221122BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20221122BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
A61K8/02
A61Q11/00
A61K8/73
A61K8/60
A61K8/44
A61K8/19
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022518827
(86)(22)【出願日】2020-09-24
(85)【翻訳文提出日】2022-04-05
(86)【国際出願番号】 EP2020076780
(87)【国際公開番号】W WO2021058679
(87)【国際公開日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】19199272.6
(32)【優先日】2019-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500000485
【氏名又は名称】フェルトン ホールディング ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】Ferton Holding SA
【住所又は居所原語表記】rue Saint Maurice 34 CH-2800 Delemont,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ドネ、マルセル
(72)【発明者】
【氏名】ガッティ、シモーネ
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC131
4C083AC132
4C083AC581
4C083AD201
4C083AD211
4C083AD212
4C083AD261
4C083AD262
4C083AD351
4C083BB21
4C083CC41
4C083DD16
4C083DD17
4C083EE31
(57)【要約】
本発明は、歯のクリーニングのために粉末噴射装置内で使用するための粉末に関連し、前記粉末は、20μmから220μmの平均粒子サイズを有する顆粒を含み、前記顆粒は一次粒子及び結合剤を含む。前記一次粒子は、顆粒の平均粒子サイズよりも小さい平均粒子サイズを有する。本発明はまた、粉末の準備のためのプロセス及び歯のクリーニングのための粉末の使用にも関連する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末吹付けによる歯の表面のクリーニングのために粉末噴射装置内で使用される粉末であって、20μmから220μmの平均粒子サイズを有する顆粒を含む粉末において、前記顆粒が一次粒子及び結合剤を含み、前記一次粒子は前記顆粒の平均粒子サイズよりも小さい平均粒子サイズを有することを特徴とする、粉末。
【請求項2】
前記顆粒の平均粒子サイズが、25μmから150μmであることを特徴とする、請求項1に記載の粉末。
【請求項3】
前記結合剤が、食物繊維、多糖、合成ポリマ、塩、糖類、アミノ酸、前記一次粒子の材料と同様の材料、又はそれらの混合物であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の粉末。
【請求項4】
前記結合剤が、セルロース、ヘミセルロース、メチルセルロース、セルロース誘導体、マルトデキストリン、コーンデキストリン、アラビアゴム、キサンタンガム、グアーゴム及びそれらの混合物から選択された材料から作製されることを特徴とする、請求項1から3のうちいずれか一項に記載の粉末。
【請求項5】
前記顆粒が、80~95重量%の前記粒子及び0.5~20重量%の前記結合剤を含むことを特徴とする、請求項1から4のうちいずれか一項に記載の粉末。
【請求項6】
前記一次粒子の平均粒子サイズが5μmから40μmであることを特徴とする、請求項1から5のうちいずれか一項に記載の粉末。
【請求項7】
前記顆粒が、粉末吹付けの間に破砕されて断片になることを特徴とする、請求項1から6のうちいずれか一項に記載の粉末。
【請求項8】
破砕後の前記粉末が、10μmから75μmの平均粒子サイズを有することを特徴とする、請求項7に記載の粉末。
【請求項9】
(1-(ノズル後のd50/0.5bar(0.05MPa)におけるd50))×100%によって規定される粉末噴射装置中のサイズ減少が少なくとも20%であることを特徴とする、請求項1から8のうちいずれか一項に記載の粉末。
【請求項10】
前記一次粒子が、有機塩、無機塩、糖類、アミノ酸、アルジトール、及びそれらの混合物からなるグループから選択された材料から作製されることを特徴とする、請求項1から9のうちいずれか一項に記載の粉末。
【請求項11】
前記一次粒子が、炭酸水素ナトリウム、マンニトール、エリトリトール、グリシン、トレハロース、タガトース、及びそれらの混合物からなるグループから選択された材料から作製されることを特徴とする、請求項1から10のうちいずれか一項に記載の粉末。
【請求項12】
請求項1から11のうちいずれか一項に記載の粉末が、ノズルを通って歯の表面上へ気体キャリア媒体と共に吹き付けられることを特徴とする、歯のクリーニングのためのプロセス。
【請求項13】
前記顆粒が、前記ノズルの中又は歯の表面に当たる時に破砕されることを特徴とする、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
粉末吹付けによる歯の表面のクリーニングのための粉末噴射クリーニング装置中において、請求項1から11のうちいずれか一項に記載の粉末を使用する方法。
【請求項15】
結合剤が水と混合され、得られた混合物が一次粒子上に吹き付けられ、そしてその粒子が前記顆粒を形成するために乾燥される工程を含む、請求項1から11のうちいずれか一項に記載の粉末を準備するためのプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末の吹付けによって歯の表面をクリーニングするための粉末噴射装置内で使用するための粉末に関連する。本発明はさらに、粉末噴射装置を使用することによって歯をクリーニングするためのプロセスであって、粉末が歯の表面上に気体キャリア媒体と共に吹き付けられるプロセスに関連する。また本発明は、粉末吹付けによる歯の表面のクリーニングのための粉末噴射装置内での粉末の使用に関連する。
【背景技術】
【0002】
粉末噴射クリーニング又は空気研磨は、インプラント、ブラケット及び歯列矯正器具だけでなく全ての歯の表面及び歯の間の空間に届くとともにクリーニングできるため、特に効果的な歯科予防法である。
【0003】
粉末は、気体キャリア媒体、通常は空気と共に歯の表面上に吹き付けられ、それによって効率の良い歯の表面のクリーニングを達成する。さらに、又は気体キャリア媒体の代わりとして、液体キャリア媒体、例えば水も原理上は使用され得る。これは、粉末が十分に柔らかく、かつ粒子が十分に小さいならば、エナメル、象牙質及び柔らかい組織への損傷なく行われる。
【0004】
歯科クリーニング粉末は、例えば、特許文献1において説明されている。粉末は重炭酸ナトリウム、代わりに炭酸カルシウム又はグリシンの基礎粉末、及び抗微生物化合物又は歯の再石灰化に寄与する要素のような追加の活性成分を含む。
【0005】
粉末噴射装置内での使用のための別の粉末は、特許文献2において説明され、その粉末はアルジトール、具体的にはマンニトール及び/又はエリトリトールに基づいている。
粒子は、低刺激でありながら効果的な歯のクリーニングのために10μmから100μmの平均粒径、特に10μmから65μmの平均粒径を有するべきであることが特許文献3から知られている。約10μmから30μmのようなより小さな粒径は、歯肉縁下の歯の表面のクリーニングのために好ましい。歯肉縁上の歯の表面の歯のクリーニングのためには、より大きな粒径、具体的には約40μmから65μmが通常好ましい。明細書中に使用される時、粒径又は粒子サイズは通常、それぞれの粉末混合物の平均の粒径又は粒子サイズに言及するものである。
【0006】
小さな平均粒子サイズを有する粉末は、低刺激かつ効果的な歯のクリーニングを可能にするが、このような粉末はいくつかの問題の原因となる。第一に、例えば装置が充填される時、取り扱い中に高い粉塵発生が起こる。さらには、小さな平均粒子サイズを有する粉末は、それらが自由に流動する時又は圧縮されている時に、見掛け密度において大きな差異を示すため、高精度な装置充填がしばしば不可能である。それ故にクリーニング装置に最大レベルまで充填することは、低速の粉末圧縮によって粉末レベルが経時的に変化するため、困難である。見掛け密度の変化から生じる別の問題は、製造中にボトルに充填することが厄介であるとともに、最大レベルの変化により容量の半分のみでボトルを充填することが通常は必要とされることである。上記は、製造者だけでなく使用者にとっても取り扱いの困難さにつながる。反対に、これらの制約のないより大きな粒径を有する粉末は、それらが研磨しすぎるとともにより大きな粒子の衝撃が柔らかい組織(歯肉)上に感知され傷つけるため、歯肉縁下の適用のためには使用され得ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国実用新案第20009665号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第2228175号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第3253359号明細書
【発明の概要】
【0008】
上記を考慮すると、従来の粉末の前述の欠点、具体的には粉塵形成及び粉末圧縮の困難さを克服するとともに効果的かつ低刺激な歯のクリーニングを可能にする歯のクリーニングのための粉末噴射装置内での使用のための粉末を提供することが、本発明の目的である。本発明のさらなる目的は、歯のクリーニングのための対応する方法又はプロセスを提供することである。
【0009】
この目的は、本発明によれば粉末吹付けによる歯の表面のクリーニングのために粉末噴射装置内で使用されるための粉末(歯科クリーニング粉末)によって達成される。粉末は20μmから220μmの平均粒子サイズ(平均顆粒サイズ)を有する顆粒を含む。顆粒は一次粒子及び結合剤を含み、一次粒子は顆粒の平均粒子サイズよりも小さな平均粒子サイズを有する。
【0010】
目的は、本発明に従った粉末がノズルを通って歯の表面上に気体キャリア媒体と共に吹き付けられるという、歯のクリーニングのためのプロセスによってさらに達成される。
目的は、粉末吹付けによる歯の表面のクリーニングのための粉末噴射クリーニング装置内での本発明に従った粉末の使用によっても達成される。
【0011】
本発明の好ましい実施形態は、以下の説明だけでなく従属請求項の主題である。
本発明は、二つの反対の効力、すなわち大きな粒子及び小さな粒子の有利な効力の利点を組み合わせたものである。これは、小さな粒子(明細書中では一次粒子と呼ばれる)をより大きな粒子(明細書中では顆粒と呼ばれる)に結合させることによって達成される。顆粒は、クリーニングプロセスが始まる前の取り扱い中、すなわち粉末製造において粉末ボトルに充填される間、及び歯のクリーニングのために粉末噴射装置に充填される間に存在する。一方、一次粒子又は少なくとも顆粒の断片は、粉末噴射装置のノズルの中又はノズルの近辺において、もしくは顆粒が歯の表面に向かって飛んでいくか又は歯の表面に当たる時に、顆粒粉砕によって形成される。結果としてクリーニング効力、特に摩滅性は一次粒子(小さな粒子)に相当するとともに、取り扱いは顆粒(大きな粒子)に相当する。
【0012】
非常に驚くべきことに、本発明に従った粉末の摩滅性は、一次粒子単独の摩滅性よりもさらに低い。本説明によって結合されなければ、この肯定的な効力は、顆粒を粒子に破砕することを許容するほど十分に柔らかい結合剤であって、かつ摩滅性及びクリーニング効果に関与する粒子表面の一部になお存在する結合剤によって達成されると推測される。
【0013】
顆粒は、好ましくは20μmから180μm、より好ましくは25μmから150μm、さらにより好ましくは25μmから120μm、そして最も好ましくは30μmから100μmの平均粒子サイズ(平均顆粒サイズd50,g)を有する。このサイズの範囲における顆粒は、効果的な無粉塵取り扱いを可能にするとともに、細かい粒子からなる粉末の低速圧縮に起因する問題を回避する。
【0014】
低刺激でありながら効果的な歯のクリーニングのために、結合剤と共に顆粒を一体に形成する一次粒子は、好ましくは5μmから75μm、より好ましくは10μmから70μmの平均粒子サイズ(d50,p)を有する。粒子サイズは、提供される歯科クリーニング粉末の適用の分野に適合され得る。例えば一次粒子の小さな平均粒子サイズ、具体的には約5μmから40μm、好ましくは10μmから30μmは、歯肉縁下の歯の表面のクリーニングのために好ましい。歯肉縁上の歯の表面のティースクリーニングのためには、一次粒子の大きな粒子サイズが好ましく、具体的には約20μmから75μm、より好ましくは30μmから50μmである。
【0015】
本発明の文脈において、d50値は粒子の50%が容量に関してd50値よりも小さく、かつ粒子の50%が容量に関してd50値よりも大きい顆粒サイズ又は粒子サイズである。d50値は乾式分散ユニットを使用するレーザ回折によって決定される。測定前に壊れやすい顆粒を破砕しないために、平均顆粒サイズを測定する時には小さな分散気圧、具体的には0.5bar(0.05MPa)のみを使用するように特別な注意が払われるべきである。平均粒子サイズを測定するために使用される道具は、シロッコ乾式分散ユニットに備え付けられるとともに、0.5bar(0.05MPa)分散圧力にて作動されるマルバーンマスタサイザ2000である。測定方法は、実験の項にてさらに説明される。
【0016】
結合剤は、一次粒子を顆粒の中に結合させる。本発明の好ましい実施形態において結合剤は、食物繊維、多糖、合成ポリマ、塩、糖類、アルジトール、アミノ酸、一次粒子の材料と同じ材料、又はそれらの混合物である。それらは粒子の柔らかい結合を許容するため、より小さな断片への顆粒の効果的な破砕または粉砕が、歯のクリーニングのための通常の粉末噴射装置において可能である。
【0017】
粉砕は通常、粉末噴射装置のノズル内にて及び/又は粉末が歯の表面に当たる時に好ましくは顆粒の50から99.0%が破砕されて断片になる部分的な粉砕である(50から99.9%粉砕)。90から99.9%の粉砕は、より好ましい。粉砕後の対応するサイズ減少を測定するために、二つの可能性が存在する。シロッコユニットを有するマルバーンマスタサイザのようなレーザ回折ユニットにおいて、二つの異なる分散圧の間のサイズ減少を測定するか、又はEMSエアーフロー(登録商標)プロフィラキシスマスタのような粉末噴射装置(空気研磨装置)のノズルを通過した後の粉末のサイズ減少を測定する。詳細は、実験の項において説明される。
【0018】
本発明の好ましい実施形態では、結合剤の材料は、セルロース、ヘミセルロース、セルロース誘導体、マルトデキストリン、コーンデキストリン、キサンタンガム、グアーゴム及びアラビアゴムからなるグループから一つ以上選択される。好ましいコーンデキストリンの流通名は、ニュートリオース(Nutriose登録商標)である。これらの結合剤は粉末噴射装置において、具体的にはノズル内及び/又は顆粒及びそれらの部分的な断片が歯の表面に当たる時に効果的な粉砕を生み出す柔らかい結合を提供する。
【0019】
本発明に従った粉末は、結合剤が水と混合され、得られた混合物が一次粒子上に吹き付けられ、そして粒子が乾燥されて顆粒を形成する工程を含むプロセスによって準備され得る。好ましくは粉末は、流動床造粒装置を使用することによって準備される。結合剤は、水と混合され、粉末流動床上に吹き付けられ、そして乾燥される。乾燥は、室温又は高温にて実施され得る。液体追加の割合及び温度は、結合溶液が一次粒子上に落下し、かつ、完全に乾燥して、顆粒を形成するために一次粒子を接着するように、選択される。造粒パラメータは、特定の結合剤溶液に従って最適化される。
【0020】
顆粒の部分的な粉砕が存在するという事実を考慮すると、ノズル内及び/又は歯の表面上における粉砕後の粉末の平均粒子サイズは、顆粒の平均粒子サイズよりも低い。破砕又は粉砕後の粉末の平均粒子サイズ(d50,p-b)は、粉砕の程度及び粉末内に追加された要素の粒子サイズに依存する。
【0021】
粉砕又は破砕後の粉末は、好ましくは5μmから75μm、特に10μmから70μmの平均粒子サイズd50,p-bを有する。好ましいサイズの範囲は、提供される歯科クリーニング粉末の適用の分野に依存する。より小さな平均粒子サイズは、歯肉縁下の歯の表面のクリーニングに好ましく、より大きな平均粒子サイズは、歯肉縁上の歯の表面のクリーニングに好ましい。歯肉縁下の歯の表面のクリーニングのための粉末は、好ましくは粉砕後に5μmから40μm、より好ましくは10μmから30μmの平均粒子サイズを有する。粉砕後の歯肉縁上の歯の表面のクリーニングのための粉末は、好ましくは20μmから75μm、より好ましくは30μmから50μmの平均粒子サイズを有する。
【0022】
顆粒は、好ましくは80~99.5重量%の粒子及び0.5~20重量%の結合剤、特に90~99.5重量%の粒子及び0.5~10重量%の結合剤を含む。
粒子は、歯科クリーニングプロセスに適合する物質から作製される。適合する物質は、歯科クリーニング粉末の適用の分野、例えば歯肉縁上の歯の表面のクリーニングか歯肉縁下の歯の表面のクリーニングかによって選択される。可溶性塩、アルジトール、アミノ酸、及び糖類が好ましい。可溶性塩は有機塩又は無機塩、具体的には炭酸水素ナトリウムであり得る。アルジトールはマンニトール又はエリトリトールであり得る。アミノ酸はグリシンであり得る。糖類はトレハロース又はタガトースであり得る。本発明の一実施形態によると粒子は、炭酸カルシウムから作製されない。本発明に従った粉末の粒子の材料は、より好ましくはマンニトール、エリトリトール、グリシン、トレハロース、タガトース及び炭酸水素ナトリウムからなるグループから一つ以上選択される。粉末の形成においてこれらの物質は、歯の表面を破壊することなく効果的にクリーニングするための適度な摩滅性を提供する。
【0023】
一次粒子は、上記の物質、例えば炭酸水素ナトリウム、アルジトール、マンニトール、エリトリトール、グリシン、トレハロース、タガトース又はこれらの混合物の好ましくは少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも90重量%を含む。
【0024】
本発明のさらなる好ましい実施形態では、結合剤及び一次粒子は、同じ材料から作製される。結合剤及び一次粒子の材料が同じである時、好ましい材料は、一次粒子の好ましい材料、具体的には可溶性塩、アルジトール、アミノ酸、糖類及びこれらの混合物である。「可溶性」は、水に可溶であることを意味する。本発明の一実施形態によると、材料は炭酸カルシウムでない。これは、一次粒子及び/又は結合剤の材料は好ましくは炭酸カルシウムを除く可溶性塩、アルジトール、アミノ酸、糖類及びこれらの混合物であることを意味する。マンニトール、エリトリトール、グリシン、トレハロース、タガトース及び炭酸水素ナトリウムからなるグループから選択された一つ以上の化合物が、より好ましい。結合剤が一次粒子と同じ材料の場合には、結合剤は微粒子形状にないが一次粒子間の結合剤として機能するため、一次粒子から区別され得る。
【0025】
本発明に従った粉末は、シリカゲル、漂白剤、鎮痛剤、殺菌剤及び/又は香味用添加物のような添加物を任意に含み得る。これらの添加物は、少なくとも部分的に顆粒の一部となるように顆粒を準備する(造粒工程)の前に結合剤溶液中に混合され得る。もしくは添加物は、追加粒子の形成において粉末の一部となるために顆粒を形成した後に加えられ得る。添加剤は、顆粒の一部となるように結合剤溶液中に加えられることが好ましい。
【0026】
本発明は歯のクリーニングのためのプロセスにも関連し、粉末は歯の表面をクリーニングするために気体キャリア媒体、具体的には空気及び任意に水のような流体と共にノズルを通って歯の表面上へ吹き付けられる。好ましいプロセスでは、粉末噴射装置のノズル内又はノズルの近辺において、もしくはクリーニングプロセス中に歯の表面に当たる時に顆粒は破砕される。本発明の粉末は、一般的な粉末噴射装置と共に使用され得る。
【0027】
本発明は、歯のクリーニングのための粉末の使用、具体的には粉末吹付けによる歯の表面のクリーニングのために粉末噴射クリーニング装置内で粉末を使用することにも関連する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】エアーフロー(登録商標)プロフィラキシマスタにおいて使用する時の粉末のノズル前後の平均粒子サイズを示す。
図2】実施例5に従ったアルミニウム表面上の摩損性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下の例は、本発明に従った好ましい粉末を提供する。
【実施例1】
【0030】
ニュートリオース(Nutriose登録商標)とともに造粒されたエリトリトール
実験は、円錐形のパイロットバッチ流動床の中で実施された。一次粒子質量1kg、入口空気温度80℃、液体供給量10mLmin-1及び相対空気吹付圧力1.5bar(0.15MPa)がプロセスパラメータとして選択された。5%ニュートリオース(Nutriose登録商標)の溶液が、20分間吹き付けられた。実験の間、全てのプロセスパラメータ(空気入口温度、空気流量、液体供給量及び吹付圧力)は、一定に維持された。実験の終了時に、造粒された粉末が取り出され、その固形分は98%よりも多いことが確認された。
【実施例2】
【0031】
セルロースとともに造粒されたエリトリトール
実験は、円錐形のパイロットバッチ流動床の中で実施された。一次粒子質量1kg、入口空気温度80℃、液体供給量8.6mLmin-1及び相対空気吹付圧力1.5bar(0.15MPa)がプロセスパラメータとして選択された。7%メチルセルロース(登録商標)の溶液が、15分間吹き付けられた。実験の間、全てのプロセスパラメータ(空気入口温度、空気流量、液体供給量及び吹付圧力)は、一定に維持された。実験の終了時に、造粒された粉末が取り出され、その固形分は98%よりも多いことが確認された。
【実施例3】
【0032】
マルトデキストリンとともに造粒されたエリトリトール
実験は円錐形のパイロットバッチ流動床の中で実施された。一次粒子質量1kg、入口空気温度80℃、液体供給量10mLmin-1及び相対空気吹付圧力1.5bar(0.15MPa)がプロセスパラメータとして選択された。20%マルトデキストリンの溶液が、20分間吹き付けられた。実験の間、全てのプロセスパラメータ(空気入口温度、空気流量、液体供給量及び吹付圧力)は、一定に維持された。実験の終了時に、造粒された粉末が取り出され、その固形分は98%よりも多いことが確認された。
【実施例4】
【0033】
アラビアゴムとともに造粒されたエリトリトール
実験は円錐形のパイロットバッチ流動床の中で実施された。一次粒子質量1kg、入口空気温度80℃、液体供給量7mLmin-1及び相対空気吹付圧力1.5bar(0.15MPa)がプロセスパラメータとして選択された。1%アラビアゴムの溶液が、30分間吹き付けられた。実験の間、全てのプロセスパラメータ(空気入口温度、空気流量、液体供給量及び吹付圧力)は、一定に維持された。実験の終了時に、造粒された粉末が取り出され、その固形分は98%よりも多いことが確認された。
【実施例5】
【0034】
アルミニウム表面上の摩損性
摩損性は、EMSエアーフロー(登録商標)プロフィラキシマスタ装置を使用して45°かつ2mmの発射距離にて直接表面上にノズルを用いて粉末を発射することによって試験される。この表面は、純粋なアルミニウム(99.5%)から作製されている。適用時間は30秒である。プレートは、2mmの距離に到達するように昇降機上に置かれる。ノズルは、ノズル位置をしっかりと固定するために樹脂型内に固定される。質量は、試験前後に粉末チャンバを計量することによって知られる。いかなる測定も少なくとも3回繰り返される。孔の深さは、レーザ表面形状測定装置によって測定された。
【0035】
平均粒子サイズ及びサイズ減少の測定
サイズ減少を測定するために、二つの可能性が存在する:
1)シロッコ分散ユニットを有するマルバーンマスタサイザのレーザ回折ユニットを用いて、0.5bar(0.05MPa)及び1.5bar(0.15MPa)にて粉末の平均粒子サイズを測定すること。ここではサイズ減少は、(1-(1.5bar(0.15MPa)におけるd50/0.5bar(0.05MPa)におけるd50))×100%として規定され得る。
【0036】
2)シロッコ分散ユニットを有するマルバーンマスタサイザにおいて0.5bar(0.05MPa)にて粉末の平均粒子サイズを測定すること(平均顆粒サイズ)、および、最大圧力にてEMSエアーフロー(登録商標)プロフィラキシマスタのような空気研磨装置を使用し、レーザ回折装置において直接粉末を吹き付けることによって粉末噴射装置のノズル後の平均粒子サイズを測定すること(ノズル後の平均粒子サイズ)。ここではサイズ減少は、(1-(ノズル後のd50/0.5bar(0.05MPa)におけるd50))×100%として規定され得る。
【0037】
(1-(ノズル後のd50/0.5bar(0.05MPa)におけるd50))×100%によって規定される本発明に従った粉末のサイズ減少は、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%、さらにより好ましくは少なくとも35%、及び最も好ましくは35から75%である。(1-(1.5bar(0.15MPa)におけるd50/0.5bar(0.05MPa)におけるd50))×100%によって規定される本発明に従った粉末のサイズ減少は、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%、最も好ましくは30から70%である。
【0038】
表1は、レーザ回折測定ユニットの分散圧の機能における実施例1から3に従った3つの異なる粉末の平均粒子サイズの傾向を示す。0.5bar(0.05MPa)における平均粒子サイズは、顆粒の平均粒子サイズである。
【0039】
【表1】
【0040】
本発明は、図面1及び2(図1及び2)を参照して以下でさらに説明される。
図1は、エアーフロー(登録商標)プロフィラキシマスタにおいて使用する時の実施例1から3に従った三つの異なる粉末(ニュートリオース(Nutriose登録商標)、セルロース及びマルトデキストリンとともに造粒されたエリトリトール)のノズル前の平均粒子サイズ(平均顆粒サイズd50,g)及びノズル後の平均粒子サイズ(破砕後の平均粒子サイズd50,p-b)を示す。ノズル前の平均粒子サイズは約90μmから約150μmであるとともに、破砕後の平均粒子サイズは約45μmから70μmである。
【0041】
図2は、実施例5に従ったアルミニウム表面上の摩損性を示す。本発明に従った二つの異なる粉末(ニュートリオース(Nutriose登録商標)及びアラビアゴムと造粒されたエリトリトール)のアルミニウム表面上の摩損性は、結合剤のないエリトリトール粒子と比較される。本発明に従った粉末の摩損性は、エリトリトール一次粒子、すなわち結合剤のないエリトリトール粒子の摩損性よりも有意に低い。
【0042】
本発明に従った粉末は、小さな粒子の取り扱いの困難さを避けるように十分に高い平均顆粒サイズを有し、同時に低刺激かつ歯肉縁下の歯の表面のクリーニングを含む効果的な歯のクリーニングを可能にする歯の表面における粒子サイズを提供することが明示されている。
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2022-05-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項5
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項5】
前記顆粒が、80~99.5重量%の前記粒子及び0.5~20重量%の前記結合剤を含むことを特徴とする、請求項1から4のうちいずれか一項に記載の粉末。
【国際調査報告】