(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-30
(54)【発明の名称】器具を保持する関節アーム付きのロボット手術介入装置
(51)【国際特許分類】
A61B 34/35 20160101AFI20221122BHJP
【FI】
A61B34/35
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022519128
(86)(22)【出願日】2020-09-21
(85)【翻訳文提出日】2022-05-19
(86)【国際出願番号】 FR2020051636
(87)【国際公開番号】W WO2021058899
(87)【国際公開日】2021-04-01
(32)【優先日】2019-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522116421
【氏名又は名称】コリン
【氏名又は名称原語表記】COLLIN
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【氏名又は名称】赤岡 明
(72)【発明者】
【氏名】ステファヌ、マザレグ
(72)【発明者】
【氏名】アルマン、チャプリンスキー
(57)【要約】
このロボット手術介入装置は、作動モータ(M1、M2、M3、M4、M5、M6)を有する関節アーム(10)、関節アーム(10)によって保持される手術器具(12)、手術器具(12)の機能的遠位端(24)を動かすための関節アーム(10)の周辺制御機器(28)、及び周辺制御機器(28)によって提供される運動命令を処理して、関節アーム(10)の作動モータ(M1、M2、M3、M4、M5、M6)の各々のための個々の制御命令へと変換するための手段(32)を含む。処理手段(32)は、手術器具(12)に関係している局所デカルト座標系(Xp、Yp、Zp)の少なくとも1つの軸に沿って、又はこれの周りで禁止されるように事前に規定された並進又は回転における少なくとも1自由度に従って、手術器具(12)の機能的遠位端(24)のいかなる運動も阻止することからなる、周辺制御機器(28)によって提供される運動命令にさらなる処理を追加するように設計される電子的制限(44、46、48、52)を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
-作動モータ(M1、M2、M3、M4、M5、M6)を有する関節アーム(10)、
-前記関節アーム(10)への装着の近位端(26)及び機能的遠位端(24)を有する、前記関節アーム(10)によって保持される手術器具(12)、
-前記手術器具(12)の前記機能的遠位端(24)を動かす前記関節アーム(10)の周辺制御機器(28)、並びに
-前記周辺制御機器(28)によって供給される運動命令を処理して、それらを前記関節アーム(10)の前記作動モータ(M1、M2、M3、M4、M5、M6)の各々の個々の制御命令へと変換する手段(32)、を含むロボット手術介入装置であって、
前記処理手段(32)が、前記手術器具(12)に関係している局所デカルト座標系(Xp、Yp、Zp)の少なくとも1つの軸に沿って、又はこれの周りで禁止されるように事前に規定された少なくとも1つの並進又は回転自由度に従って、前記手術器具(12)の前記機能的遠位端(24)のいかなる運動も阻止することからなる、前記周辺制御機器(28)によって提供される前記運動命令にさらなる処理を追加するように設計される電子的制限(44、46、48、52)を含むことを特徴とする、ロボット手術介入装置。
【請求項2】
前記周辺制御機器(28)は、6Dジョイスティックである、請求項1に記載のロボット手術介入装置。
【請求項3】
前記電子的制限(44、46、48、52)を有効化及び無効化する手段(54)を含む、請求項1又は2に記載のロボット手術介入装置。
【請求項4】
前記電子的制限(44、46、48、52)は、前記局所デカルト座標系(Xp、Yp、Zp)が周りに規定される第1軸を形成する前記手術器具(12)の主軸(Zp)に沿った、及びこれの周りの並進自由度及び回転自由度から外れる任意の運動の阻止を含む、請求項1~3いずれか一項に記載のロボット手術介入装置。
【請求項5】
前記手術器具(12)の前記主軸(Zp)は、その近位装着端(26)の中心点を前記手術器具(12)の機能的遠位端(24)の中心点に接続するところのものである、請求項4に記載のロボット手術介入装置。
【請求項6】
前記手術器具(12)の前記主軸(Zp)は、前記手術器具(12)の直線遠位部のものであり、前記手術器具(12)の近位装着端(26)の中心点を前記手術器具(12)の直線遠位部の前記機能的遠位端(24)の中心点に接続する軸(Z6)から軸外である、請求項4に記載のロボット手術介入装置。
【請求項7】
-前記周辺制御機器(28)によって提供される命令は、前記ロボット装置の固定基部に関係しているグローバル座標系(X0、Y0、Z0)で表現され、
-前記処理手段(32)は、メモリ(36)に格納されたヤコビアンパラメータを使用して、このグローバル座標系(X0、Y0、Z0)で表現された前記命令を、前記関節アーム(10)の前記作動モータ(M1、M2、M3、M4、M5、M6)の各々を制御する個々の命令にするヤコビアン変換器(50)を含み、
-前記電子的制限(44、46、48)は、
・前記周辺制御機器(28)によって提供された前記命令を、前記手術器具(12)の前記局所デカルト座標系(Xp、Yp、Zp)で表現された局所運動命令へと変換し(44)、
・制限付きの局所運動命令を提供して、前記少なくとも1つの禁止された並進又は回転自由度に関連したそれらの局所運動命令のいかなる構成要素も削除し(46)、
・前記制限付きの局所運動命令を、前記グローバル座標系(X0、Y0、Z0)で表現された制限付きの運動命令へと変換し(48)、
・前記グローバル座標系(X0、Y0、Z0)で表現された前記制限付きの運動命令を前記ヤコビアン変換器(50)に提供する(48)
ようにプログラムされる、請求項1~6のいずれか一項に記載のロボット手術介入装置。
【請求項8】
前記電子的制限(44、46、48、52)は、前記手術器具の局所座標系(Xp、Yp、Zp)における前記手術器具の前記機能的遠位端の任意の並進の阻止を含む、請求項1~3いずれか一項に記載のロボット手術介入装置。
【請求項9】
-前記関節アーム(10)は、その基部からその保持端までに、直列の3つのモータ駆動の角柱リンク(L1、L2、L3)に続く直列の3つのモータ駆動のロトイド(rotoid)リンク(L4、L5、L6)を有し、前記3つのロトイドリンク(L4、L5、L6)の3つのそれぞれの回転軸(Z4、Z5、Z6)が、前記手術器具(12)の前記機能的遠位端(24)の同じ中心点で収束し、
-前記周辺制御機器(28)によって提供される前記命令は、前記ロボット装置の固定基部に関係しているグローバル座標系(X0、Y0、Z0)で表現され、
-前記処理手段(32)は、メモリ(36)に格納されたヤコビアンパラメータを使用して、このグローバル座標系(X0、Y0、Z0)で表現された前記命令を、前記関節アーム(10)の前記作動モータ(M1、M2、M3、M4、M5、M6)の各々を制御する個々の命令にするヤコビアン変換器(50)を含み、
-前記電子的制限(52)は、前記ヤコビアン変換器(50)の適用後、前記3つの角柱リンク(L1、L2、L3)の前記作動モータ(M1、M2、M3)の個々の制御命令を削除するように設計される、請求項8に記載のロボット手術介入装置。
【請求項10】
患者の中耳又は内耳手術介入のために構成及び寸法決定され、前記手術器具(12)自体が患者の中耳又は内耳手術介入器具である、請求項1~9のいずれか一項に記載のロボット手術介入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術介入のためのロボット装置、特に、耳鼻科の分野に関するが、これに限られない。
【0002】
本発明は、より詳細には、
-作動モータを有する関節アーム、
-関節アームへの装着のための近位端及び機能的遠位端を有する、関節アームによって保持される手術器具、
-手術器具の機能的遠位端を動かすための関節アーム周辺制御機器、並びに
-周辺制御機器によって供給される運動命令を処理して、それらを、関節アームを動作させるための作動モータの各々を制御するための個々の命令へと変換するための手段
を含むロボット装置に当てはまる。
【背景技術】
【0003】
そのような装置は、台湾の台北にて、2010年10月18~22日に開催されたIEEE/RSJ International Conference on Intelligent Robots and Systemsにおいて公開された「RobOtol: from design to evaluation of a robot for middle ear surgery」という表題のMiroirらによる論文に説明されている。それは、患者の中耳又は内耳に対する耳科手術介入に特によく適した構造及び運動学を提示する。これらの介入は、誤った運動に敏感であり、そのため、ロボット支援は大いに役立つ。
【0004】
それにもかかわらず、この支援があったとしても、彼又は彼女が一般的に手術しなければならない狭い体積を考えると、医師は、周辺制御機器を操作するときに誤った行為をする場合がある。大半の場合において、手術行為の精度が、わずかな偏向は全く重大ではなく、容易に修正され得るようなものであっても、許容誤差がゼロ又はほぼゼロであるという特定の状況も存在する。これは、例えば、患者の耳の内側で耳鼻科手術器具の直線接触もしくは離脱をもたらすとき、又は、器具の機能的遠位端を動かすことなく、可視化軸、例えば、顕微鏡の光軸をクリアにすることに該当する。
【0005】
より一般的には、手術器具を保持し、周辺制御機器の助けを借りて操作されるロボット装置によって支援される任意の種類の手術介入において、ほんのわずかな不正確さが重大な結果を及ぼし得る状況は非常に多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
故に、上述した問題及び制約の少なくとも一部を回避するロボット装置を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、
-作動モータを有する関節アーム、
-関節アームへ接続する近位端及び機能的遠位端を有する、関節アームに保持される手術器具、
-手術器具の機能的遠位端を動かすための関節アームの周辺制御機器、並びに
-周辺制御機器によって供給される運動命令を処理して、それらを、関節アームを動作させるための作動モータの各々を制御するための個々の制御命令へと変換するための手段、を含むロボット手術介入装置であって、
処理手段は、手術器具に関係している局所デカルト座標系の少なくとも1つの軸に沿って、又はこれの周りで禁止されるように事前に規定された少なくとも1つの並進又は回転自由度に従って、手術器具の機能的遠位端のいかなる運動も阻止することからなる、制御装置によって提供される運動命令にさらなる処理を追加するように設計される電子的制限を含む、ロボット手術介入装置を提供することが提案される。
【0008】
故に、電子的制限は、手術器具に関係している軸に対して所定の規定された望ましくない運動のフィルタとして作用する。上述した厄介な状況において、これは、周辺制御機器によって出される命令に関係なく、望ましい繊細な運動からの偏向を防ぐ。例えば、耳鼻科においては、患者の耳内での手術器具の正確な直線係止又は離脱のため、電子的制限が、直線係止又は離脱が望ましいもの以外の手術器具に関連した局所デカルト基準系の2つの軸に沿った、及びその周りの並進及び回転自由度における手術器具の機能的遠位端のいかなる運動も阻止するように、本発明に従って設計されることで十分である。同様に、損傷なしに視認軸を離脱させるためには、ソフトウェア制限が、手術器具に関係している局所デカルト座標系の3つの軸に沿ったいかなる並進も阻止するように、本発明に従ってプログラムされることで十分である。より一般的には、及び望ましい正確な行為に応じて、本発明のおかげで、手術器具に関係している局所デカルト座標系の少なくとも1つの軸に沿った、又はこれの周りの特定の並進又は回転運動を禁止することができることが有利である。
【0009】
任意選択で、制御装置は、6Dジョイスティックである。
【0010】
また任意選択で、本発明に係るロボット手術介入装置は、電子的制限を有効化及び無効化するための手段を含み得る。
【0011】
また任意選択で、電子的制限は、局所デカルト座標系が周りに規定される第1軸を形成する手術器具の主軸に沿った、及びこれの周りの並進自由度及び回転自由度から外れる任意の運動の阻止を含む。
【0012】
また任意選択で、手術器具の主軸は、手術器具の近位装着端の中心点を手術器具の機能的遠位端の中心点に接続するところのものである。
【0013】
また任意選択及び代替として、手術器具の主軸は、手術器具の直線遠位部のものであり、手術器具の近位装着端の中心点を手術器具の直線遠位部の機能的遠位端の中心点に接続する軸からオフセットされるものである。
【0014】
また任意選択で、
-周辺制御機器によって提供される命令は、ロボット装置の固定基部に関係しているグローバル座標系で表現され、
-処理手段は、メモリに格納されたヤコビアンパラメータを使用して、このグローバル座標系で表現された命令を、関節アームの作動モータの各々を制御するための個々の命令にするヤコビアン変換器を含み、
-電子的制限は、
・周辺制御機器によって提供された命令を、手術器具の局所デカルト座標系で表現された局所移動命令へと変換し、
・制限付きの局所運動命令を提供するために、少なくとも1つの禁止された並進又は回転自由度に関連したそれらの局所運動命令のいかなる構成要素も削除し、
・制限付きの局所運動命令を、グローバル座標系で表現された制限付きの運動命令へと変換し、
・グローバル座標系で表現された制限付きの運動命令をヤコビアン変換器に提供するようにプログラムされる。
【0015】
また任意選択で、電子的制限は、手術器具の局所座標系における手術器具の機能的遠位端の任意の並進の阻止を含む。
【0016】
また任意選択で、
-関節アームは、その基部からその保持端までに、直列の3つのモータ駆動の角柱リンクに続く直列の3つのモータ駆動のロトイド(rotoid)リンクを有し、3つのロトイドリンクの3つのそれぞれの回転軸が、手術器具の機能的遠位端の単一の中心点で収束し、
-周辺制御機器によって提供される命令は、ロボット装置の固定基部に関係しているグローバル座標系で表現され、
-処理手段は、メモリに格納されたヤコビアンパラメータを使用して、このグローバル座標系で表現された命令を、関節アームの作動モータの各々を制御するための個々の命令にするヤコビアン変換器を含み、
-電子的制限は、ヤコビアン変換器の適用後、3つの角柱リンクの作動モータの個々の制御命令を削除するように設計される。
【0017】
また任意選択で、本発明に係るロボット手術介入装置は、患者の中耳又は内耳手術介入のために構成及び寸法決定されてもよく、手術器具自体は患者の中耳又は内耳の手術介入器具である。
【0018】
本発明は、単に例として提供され、添付の図面を参照する、以下の説明の助けを借りてよりよく理解されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係る、ロボット手術介入装置の全体構造を概略的に示す図である。
【0020】
【
図2】本発明の第1実施形態に係る、
図1のロボット装置を使用した手術介入方法の連続ステップを示す図である。
【0021】
【
図3】本発明の第2実施形態に係る、
図1のロボット装置を使用した手術介入方法の連続ステップを示す図である。
【0022】
図1を参照すると、本発明の実施形態に係るロボット手術介入装置は、手術器具12を保持する作動モータ付きの関節アーム10を含む。この図に示された非限定的な例は、より具体的には、患者の中耳又は内耳の耳科手術における応用のためのロボット装置のものであり、その構造及び運動学は、Miroirらによる上述した文書の教示に従って最適化される。関節アーム10は、故に、その基部から手術器具12を保持するその端までに、直列の3つのモータ駆動の角柱リンクに続く直列の3つのモータ駆動のロトイドリンクを有する。
【0023】
第1モータM1によって駆動される第1角柱リンクL1は、第1モータM1に関係している第1局所直交デカルト座標系(X1、Y1、Z1)の軸Z1(例えば、垂直)に沿った関節アーム10の第1部材14の並進運動を可能にする。第1モータM1は、第1局所座標系(X1、Y1、Z1)がロボット装置の固定基部に関係しているグローバル直交デカルト座標系(X0、Y0、Z0)と同じ方向を有するように、ロボット装置に装着される。したがって、第1部材14の運動軸は、Z0に平行である。
【0024】
第2モータM2によって作動され、第1部材14の一端によって保持される第2角柱リンクL2は、第2モータM2に関係している第2局所直交デカルト座標系(X2、Y2、Z2)の軸Z2に沿って関節アーム10の第2部材16の並進変位を可能にする。第2局所座標系(X2、Y2、Z2)は、そのZ2軸がX1軸に平行であるように、第1局所座標系(X1、Y1、Z1)のY1軸に対して直角に回される。したがって、第2部材16の運動軸は、X0に平行である。
【0025】
第3モータM3によって作動され、第2部材16の一端によって保持される第3角柱リンクL3は、第3モータM3に関係している第3局所直交デカルト座標系(X3、Y3、Z3)の軸Z3に沿って関節アーム10の第3部材18の並進変位を可能にする。第3局所座標系(X3、Y3、Z3)は、そのZ3軸がY2軸に平行であるように第2局所座標系(X2、Y2、Z2)のX2軸に対して直角に回され、Y2軸自体はY1軸に平行である。したがって、第3部材18の運動軸は、Y0に平行である。
【0026】
第4円柱モータM4によって作動され、第3部材18の一端によって保持される第4ロトイドリンクL4は、第4モータM4に関係している第4局所直交デカルト座標系(X4、Y4、Z4)軸Z4の周りの、関節アーム10の第4部材20の回転運動を可能にする。
【0027】
第5円柱モータM5によって作動され、第4部材20の一端によって保持される第5ロトイドリンクL5は、第5モータM5に関係している第5局所直交デカルト座標系(X5、Y5、Z5)の軸Z5の周りの、関節アーム10の第5部材22回転運動を可能にする。
【0028】
最後に、第6の円柱モータM6によって作動され、第5部材22一端によって保持される第6のロトイドリンクL6は、第6のモータM6に関係している第6の局所直交デカルト座標系(X6、Y6、Z6)の軸Z6の周りの、手術器具12回転運動を可能にする。
【0029】
図1の特に興味深い構成に従って、3つのロトイドリンクの3つのそれぞれの回転軸Z4、Z5、及びZ6は、手術器具12機能的遠位端24の同じ中心点で収束し、故にこの点を枢支点にする。これは、角柱リンクのモータM1、M2、M3いかなる作動もなしに、ロトイドリンクのモータM4、M5、M6のうちの少なくとも1つを作動させる任意の命令が、グローバル座標系(X0、Y0、Z0)における手術器具12いかなる運動もなしに、手術器具12をその枢支点を中心に回転させることを意味する。
【0030】
手術器具12は、関節アーム10への、より正確には、モータM6に接続されているアーム10の対応する装着端への、装着のための近位端26を有する。この装着は、例えば、有利には、特許FR2 998 344 B1に説明されるロックシステムに従ってなされるが、これは必須ではない。意図した用途に好適な任意の他の固定システムも好適である。
【0031】
手術器具12は、その主軸Zpが、手術器具12近位装着端26の中心点を手術器具12遠位機能端24の枢支点に接続するものであるように、直線形状を有してもよく、局所デカルト座標系(Xp、Yp、Zp)は、主軸Zpの周りに規定され、そこに関係している。この場合、
図1に示されないが、Zp軸は、Z6軸と併合する。
【0032】
代替として、及び
図1に示されるように、それは、特許出願FR 3 066 378 A1に説明されるようなずれた部を有する手術器具であってもよい。この場合、その主軸Zpは、この器具の直線遠位部のものであり、手術器具の近位固定端26の中心点を手術器具の機能的遠位端24の枢支点に接続する軸Z6に対して軸外であり、主軸Zpの周りに、それに関係している局所デカルト座標系(Xp、Yp、Zp)が依然として規定される。
【0033】
ロボット手術介入装置は、6つのモータM1~M6を作動させることによって、並進における3自由度及び回転における3自由度に従って手術器具12機能的遠位端24の運動を可能にするように適合される、6Dジョイスティック又は任意の他の均等な装置などの、関節アーム10のための周辺制御装置28をさらに含む。それはまた、特に、手術フェーズ中に手術器具12任意の運動を表示及び監視するための、画面30を含み得る。
【0034】
ロボット手術介入装置は、周辺制御機器28によって提供される運動命令を、関節アーム10のモータM1~M6の各々を制御するための個々の命令へと変換するための手段をさらに含む。これらの処理手段は、電子回路32の形態をとる。
【0035】
電子回路32は、モータM1~M6を制御するための個々の命令を関節アーム10に伝送するために関節アーム10に、及びその運動命令を受信するために周辺制御機器28に、接続される。これらの命令は、一般的には、グローバル座標系(X0、Y0、Z0)で表現される。
【0036】
それは、個々の制御命令を関節アーム10に送信するように、及び周辺制御機器28から運動命令を受信するように設計されるマイクロプロセッサなどの中央処理装置34、並びに上述した変換を実施し、中央装置34によって実行される少なくとも1つのコンピュータプログラムが格納されるメモリ36を有する。ソフトウェアスイッチ42に従って選択可能な2つのコンピュータプログラム38及び40が
図1に示される。それらは、2つの機能的に異なるがおそらくは相補的な実施形態を実装する本発明の2つの異なる用途に関連する。2つのプログラムのうちの一方のみが、本発明の範囲から逸脱することなく実装され得る。
【0037】
本発明の1つの潜在的な実施形態によると、2つのコンピュータプログラム38、40の各々は、局所座標系(Xp、Yp、Zp)の少なくとも1つの軸に沿って、又はこれの周りで禁止されるように事前に規定された少なくとも1並進又は回転自由度に従って、手術器具12機能的遠位端24のいかなる運動も阻止することからなる、周辺制御機器28によって提供される運動命令にさらなる処理を追加するようにプログラムされるソフトウェア制限を実施するための命令を含む。
【0038】
図1に概略的に表されるような電子回路32は、例えば、データファイル及びコンピュータプログラムの格納のための1つ以上のメモリと関連付けられたプロセッサを含む従来のコンピュータなどのコンピュータ装置、又はプログラム38、40の命令、及び同様にコンピュータプログラムを構成し得るソフトウェアスイッチ42命令など、プロセッサによって実行されるコンピュータプログラムによって実装され得ることに留意されたい。これらのプログラムは、別々に示されるが、この区別は単に機能的である。それらは、任意の組み合わせに従って、1つ以上のソフトウェアプログラムへと、同じくらい容易にグループ分けされ得る。それらの機能はまた、少なくとも部分的に、専用集積回路へとマイクロプログラム又はマイクロワイヤードされ得る。故に、代替として、電子回路32を実装するコンピュータ装置は、同じアクションを実施するためにデジタル回路のみで(コンピュータプログラムなしに)作製された電子装置によって置き換えられ得る。特に、上述したソフトウェア制限は、より一般的には、機能がハードウェア及び/又はソフトウェアに実装され得る電子的制限である。
【0039】
電子回路32に実装される電子的制限に加えて、ロボット手術介入装置には、任意選択で、しかしながら有利に、この電子的制限を有効化及び無効化するための手段54が設けられる。任意の既存の選択装置、特に、表示画面30のタッチもしくはマウスで選択可能なボタン、周辺制御機器28の特定の装置、又は別の周辺機器に提供される、例えば、キーボード上の、もしくはペダルを用いた、独立した選択装置さえも、想定される。
【0040】
図1に示される例では、上で論じられるように、電子的制限は、実際に、耳科手術において特に簡便かつ賢明である2つの異なる機能制限を含む。第1機能制限は、コンピュータプログラム38にプログラムされる。それは、手術器具12直線又は偏向形状にかかわらず手術器具12主軸Zpに沿った、及びその周りの1並進自由度及び1回転自由度を外れたいかなる運動も阻止するように設計される。それは、耳鼻科において、直感的に単純かつ迅速に、いかなる誤った行為もなしに患者の耳の内側での手術器具12正確な直線接触又は離脱をもたらす可能性に対応する。第2機能制限は、コンピュータプログラム40にプログラムされる。それは、手術器具12に関係している局所座標系の3つの軸Xp、Yp、及びZpに沿ったいかなる並進も阻止するように設計される。それは、耳鼻科において、直感的に単純かつ迅速に、患者の耳に向かう手術器具12機能的遠位端24の可視化軸、例えば、顕微鏡の光軸を損傷なしに解放することをもたらす可能性に対応し、顕微鏡の光軸の使用は、Miroirらの上述した文書のロボット装置においてとりわけ想定される。他の機能制限は、より一般的には、望ましく、とりわけコンピュータプログラム38にプログラムされる、正確な行為に従って想定される。それらはすべて、手術器具12に関係している局所座標系(Xp、Yp、Zp)少なくとも1つの軸に沿った、又はこれの周りの特定の並進又は回転運動を禁止することからなる。これらのすべての可能な電子的制限は、有利には、患者の中耳又は内耳のものなど、狭い円すい形の体積における厄介な介入の間に有効化される。
【0041】
より正確には、コンピュータプログラム38は、グローバル座標系(X0、Y0、Z0)で表現された、周辺制御機器28によって提供される命令の、手術器具12局所座標系(Xp、Yp、Zp)で表現された局所運動命令への変換を実施するための命令44を含む。空間内の手術器具12配置の単純な知識が、この変換を実施する伝達行列を容易に再構築することを可能にする。
【0042】
コンピュータプログラム38は、第1機能制限を実施、すなわち、手術器具12主軸Zpに沿った、又はこれの周りの並進及び回転自由度のみを維持するために、Xp及びYp軸に沿った、並びにこれの周りのこれらの局所運動命令の構成要素の削除するための、命令44の後に実行されるべき命令46を含む。これらの命令は、少なくとも1つの禁止された並進又は回転自由度を伴う他の機能制限を実装するために一般化され得るということに留意されたい。これは、制限付きの局所運動命令を結果としてもたらす。
【0043】
コンピュータプログラム38は、局所座標系(Xp、Yp、Zp)で表現された制限付きの局所運動命令の、グローバル座標系(X0、Y0、Z0)で表現された制限付きの運動命令への逆変換を実施するための、命令46の後に実行されるべき命令48を含む。
【0044】
最後に、コンピュータプログラム38は、メモリに格納されたヤコビアンパラメータを使用して、グローバル座標系(X0、Y0、Z0)で表現された制限付きの運動命令(又は、電子的制限が選択されない場合は、制限なし)の、関節アーム10を作動させるためのモータM1~M6の各々を制御するための個々の命令へのヤコビアン変換を実施するための、命令48の後に、又は電子的制限が選択されない場合は、命令44、46、及び48を実行することなく直接的に、実行されることが意図される、命令50を含む。このヤコビアン変換器関数は、当業者によく知られているため、詳述されないものとする。コンピュータプログラム38の実行によって提供される個々の制御命令は、中央装置34によって関節アーム10に伝送されることになる。
【0045】
上に規定される第2機能制限はまた、コンピュータプログラム38を実行することによって、並びに、命令46を適合させることによって、他の可能な機能制限によって実装され得る。しかしながら、プログラム40は、その実装形態を単純化するために、
図1の関節アーム10の特定の構造及び運動学を利用する。実際には、この第2機能制限を実装するために、及び以前に見られるように、モータM1、M2、及びM3を対象とし、上述したヤコビアン変換から生じる、個々の命令を削除することで十分である。
【0046】
故に、コンピュータプログラム40は、周辺制御機器28によって提供される制御命令のヤコビアン変換を直接的に実施するための上述した命令50を含む。
【0047】
それは、第2機能制限、すなわち、3つの角柱リンクL1、L2、及びL3をそれぞれ作動させるためのモータM1、M2、M3個々の制御命令の削除を実施するための、命令50の後に実行されることが意図される命令52をさらに含む。コンピュータプログラム40の実行によって提供される個々の制御命令は、中央装置34によって関節アーム10に伝送されることになる。
【0048】
ソフトウェアスイッチ42は、第1及び第2電子的制限のいずれかが有効化及び無効化手段54によって選択されるか否かに応じて、コンピュータプログラム38全体、コンピュータプログラム38の命令50のみ、又はコンピュータプログラム40の実行の選択を可能にする。
【0049】
図2は、第1電子的制限を適用することからなる、本発明の第1実施形態に係る、
図1のロボット装置を使用した手術介入方法の連続ステップを示す。
【0050】
第1ステップ100において、第1電子的制限が有効化され、オペレータは、周辺制御機器28を使用して関節アーム10によって保持される手術器具12の機能的遠位端24の運動を開始する。
【0051】
後続ステップ102において、中央処理装置34は、周辺制御機器28によって提供される命令を、モータM1~M6を制御するための個々の制限付きの命令に変換するために、コンピュータプログラム38の命令44、46、48、及び50を実行する。これらの制限付きの命令は、手術器具12の機能的遠位端24のZp軸に沿った、又はその周りの並進又は回転運動のみを可能にし、その結果として、周辺制御機器28の操作によってもたらされるいかなる偏向にもかかわらず、望ましい直線係止又は離脱のみがこのステップの間に迅速かつ直感的に実行される。
【0052】
後続ステップ104において、第1電子的制限は無効化される。これは、例えば、後続ステップ106において、コンピュータプログラム38命令50の命令50の実行のみによって、モータM1~M6の自由作動により可能にされるすべての自由度に従って、手術器具12任意のさらなる運動を開始することを可能にする。いかなる時も、ステップ100へ戻ることが可能である。
【0053】
図3は、第2電子的制限を適用することからなる、本発明の第2実施形態に係る、
図1のロボット装置を使用した手術介入方法の連続ステップを示す。
【0054】
第1ステップ200において、第2電子的制限が有効化され、オペレータは、患者の耳へ向かう視認軸をクリアにするために、周辺制御機器28を使用して関節アーム10によって保持される手術器具12運動を開始する。
【0055】
後続ステップ202において、中央処理装置34は、周辺制御機器28によって提供される命令を、モータM4~M6を制御するための個々の制限付きの命令に変換するために、コンピュータプログラム40の命令50及び52を実行する。これらの制限付きの命令は、軸Z4、Z5、及びZ6の周りの回転運動のみを可能にする。これらの軸が手術器具12枢支点で収束することから、器具は、周辺制御機器28の操作によってもたらされるいかなる偏向にもかかわらず、静止したままであり、望ましい視覚的解放は、このステップの間に迅速かつ直感的に実行される。
【0056】
後続ステップ204において、第2電子的制限は無効化される。これは、例えば、後続ステップ206において、コンピュータプログラム38(又は40)の命令50の実行のみによって、モータM1~M6の自由作動により可能にされるすべての自由度において、手術器具12任意のさらなる運動が開始されることを可能にする。いかなる時も、ステップ200へ戻ることが可能である。
【0057】
図2及び
図3の手術介入方法は、上に想定される2つ以外の他の電子的制限の実装形態に容易に一般化可能である。
【0058】
明白には、上に説明されるものなどのロボット装置は、制限付きの運動のいくつかの状況における安全な手術介入を可能にし、任意の誤った運動又は望ましい既定の並進又は回転からの偏向を防ぐようである。
【0059】
本発明は、上に説明される実施形態に限定されないということにも留意されたい。
【0060】
本発明は、
図1の関節アーム10の構造及び運動学に有利に適用されるが、それは、対応する変換(すなわち、座標系変化及びヤコビアン変換)を適合させることによって、他の構造及び運動学に一般化され得る。
【0061】
様々な修正が、先述の開示を鑑みて、上に説明した実施形態に対してなされ得ることは、当業者にとって、より広く明白であるものとする。本発明の上の詳細な提示において、使用される用語は、本発明を本説明に明記される実施形態に限定すると解釈されるべきではなく、すべての均等物を含むと解釈されるべきであり、すべての均等物の予測は、当業者にまさに開示された教示の実装形態に当業者の一般的知識を当てはめることにより、当業者が把握できるものである。
【国際調査報告】