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特表2022-550065アルカンの光誘起触媒的C-H酸素化
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-30
(54)【発明の名称】アルカンの光誘起触媒的C-H酸素化
(51)【国際特許分類】
   C07C 29/50 20060101AFI20221122BHJP
   C07C 33/22 20060101ALI20221122BHJP
   C07C 407/00 20060101ALI20221122BHJP
   C07C 409/10 20060101ALI20221122BHJP
   C07C 49/78 20060101ALI20221122BHJP
   C07C 45/53 20060101ALI20221122BHJP
   C07B 41/00 20060101ALN20221122BHJP
【FI】
C07C29/50
C07C33/22
C07C407/00
C07C409/10
C07C49/78
C07C45/53
C07B41/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022519143
(86)(22)【出願日】2020-09-27
(85)【翻訳文提出日】2022-03-23
(86)【国際出願番号】 IL2020051057
(87)【国際公開番号】W WO2021059287
(87)【国際公開日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】62/906,197
(32)【優先日】2019-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PYREX
(71)【出願人】
【識別番号】519011865
【氏名又は名称】アリエル サイエンティフィック イノベーションズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】シュピルマン,アレックス マーティン
(72)【発明者】
【氏名】サントラ,スーラヴ クマール
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC41
4H006AC44
4H006BA93
4H006BA95
4H006FE11
(57)【要約】
ベンジルC-H結合を酸素化する方法が提供される。本方法は、開始剤の光誘起活性化、およびその後の酸素との反応を含み、フリーラジカルの形成をもたらす。その後、フリーラジカルは、ベンジルC-H結合の酸素との反応を触媒し、それによって酸素化された化合物を形成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベンジルC-H結合を修飾し、それによって式1:
【化1】
で表される化合物を形成する方法であって、前記方法は、
前記化合物を形成するのに十分な条件下で、開始剤の存在下において前記ベンジルC-H結合を含む基質を酸素と反応させることを含み、式中、
【化2】
は、(i)nが2のときに単結合、および(ii)nが0~1のときに二重結合、のうちのいずれか1つを表し、
Xが、芳香族環を含み、
Rが、アルキル、アリール、水素、およびシクロアルキルからなる群から選択され、
が、水素、ヒドロキシからなる群から選択されるか、または不在であり、
前記開始剤が、励起時にラジカルを生成し、
nが、0~2である、方法。
【請求項2】
前記条件が、前記開始剤を励起するのに十分なエネルギー源を提供する、請求項1に記載の方法
【請求項3】
前記エネルギー源が、前記開始剤を励起するのに十分な範囲の光を生成する光源である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記範囲が、200~900nmである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ラジカルが、ハロゲンラジカルである、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記条件が、0~100℃の範囲の温度を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記条件が、1~40時間の範囲の反応時間を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記反応させることが、前記基質および前記開始剤を溶媒と混合し、それによって反応混合物を形成することをさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記基質が、前記反応混合物中で0.01~2mol/Lの範囲の濃度にある、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記基質対前記開始剤のモル比率が、少なくとも1:0.01である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記開始剤が、式4:
【化3】
で表され、式中、
各Xが、独立して、芳香族シクロアルカンを含み、
各Aが、独立して、ハロ基を表す、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記芳香族シクロアルカンが、芳香族環、縮合芳香族環、置換芳香族環からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記開始剤が、9,10-ジブロモアントラセンである、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年9月26日に出願された米国仮特許出願第62/906,197号の優先権の利益を主張し、その内容は参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、とりわけ、触媒的ラジカル反応によってベンジルC-H結合を酸素化する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
非官能化汎用化学物質を官能化生成物に転化する能力があるため、C-H結合の酸化は学術的に非常に興味深いものである。しかしながら、そのようなプロセスは、化学業界ですでに数十年にわたって使用されている。
【0004】
最も重要なC-H活性化プロセスのうちの1つは、クメンをHock酸素化してクメンペルオキシドを得ることである。その後のクメンペルオキシドの酸触媒による熱的C-C結合切断は、フェノールおよびアセトンを製造するための主要なプロセスのうちの1つである。このプロセスを通して、年間数百万トンのフェノールおよびアセトンが製造されている。
【0005】
現在の工業的C-H酸素化プロセスは、Hockによる独創的な研究を完全に最適化させたバージョンである。例示的な工業的プロセスでは、クメンは、開始剤としての準化学量論量のクメンヒドロペルオキシドの存在下で、80~120℃で1~7気圧の空気または純粋な酸素にさらされ、クメンペルオキシド、未反応クメン、ならびにアセトフェノン、フェノールおよびヒドロキシアセトンを含む様々な他の副生成物の混合物をもたらす。転化率が低いため(典型的には20~40%)、残りのクメンは濃縮装置で取り除かれ、反応条件に対して再投入される。
【0006】
一般に、クメンからクメンヒドロペルオキシドへの高い総括転化率を達成するために、2~4つの気泡反応器が使用される。典型的な平均滞留時間は、約10時間である。低転化率、高温、高圧、および必要な大型インフラストラクチャの組み合わせ、かつ反応ストリームを複数回分離して再投入する必要性によって、プロセスは非常に非効率的となる。これは、所望の生成物(クメンペルオキシド)からの副産物の煩雑で危険な分離を伴う。
【0007】
したがって、ベンジルC-H結合の酸化のための新しい工業的に適用可能な手順を開発する必要性が存在する。
【0008】
関連技術の前述の例およびそれに関連する限定は、例証的であり、排他的ではないことが意図される。関連技術の他の制限は、本明細書を読み、図を検討すれば、当業者には明らかになるであろう。
【発明の概要】
【0009】
以下の実施形態およびその態様は、範囲を限定するものではなく、例示的かつ例証的であることを意味するシステム、ツール、および方法と併せて説明され、図示される。
【0010】
本発明の一態様では、ベンジルC-H結合を修飾し、それによって式1:
【化1】
で表される化合物を形成する方法であって、本方法は、
化合物を形成するのに十分な条件下で、開始剤の存在下においてベンジルC-H結合を含む基質を酸素と反応させることを含み、式中、
【化2】
は、(i)nが2のときに単結合、および(ii)nが1のときに二重結合、のうちのいずれか1つを表し、
Xが、芳香族環を含み、
Rが、アルキル、アリール、水素、およびシクロアルキルからなる群から選択され、
が、水素、ヒドロキシからなる群から選択されるか、または不在であり、
開始剤が、励起時にラジカルを生成し、
nが、1~2である、方法が提供される。
【0011】
一実施形態では、条件は、開始剤を励起するのに十分なエネルギー源を提供することを含む。
【0012】
一実施形態では、エネルギー源は、開始剤を励起するのに十分な範囲の光を生成する光源である。
【0013】
一実施形態では、範囲は、200~900nmである。
【0014】
一実施形態では、ラジカルは、ハロゲンラジカルである。
【0015】
一実施形態では、条件は、0~100℃の範囲の温度を含む。
【0016】
一実施形態では、条件は、1~40時間の範囲の反応時間を含む。
【0017】
一実施形態では、反応させることは、基質および開始剤を溶媒と混合し、それによって反応混合物を形成することをさらに含む。
【0018】
一実施形態では、基質は、反応混合物中で0.01~2mol/Lの範囲の濃度にある。
【0019】
一実施形態では、基質対開始剤のモル比率は、少なくとも1:0.01である。
【0020】
一実施形態では、開始剤は、式4:
【化3】
で表され、式中、
各Xは、独立して、芳香族シクロアルカンまたは脂肪族シクロアルカンを含み、
各Aは、独立して、ハロ基を表す。
【0021】
一実施形態では、芳香族シクロアルカンは、芳香族環、縮合芳香族環、置換芳香族環からなる群から選択される。
【0022】
一実施形態では、開始剤は、9,10-ジブロモアントラセンである。
【0023】
上記の例示的な態様および実施形態に加えて、さらなる態様および実施形態は、図を参照することによって、および以下の詳細な説明を検討することによって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
例示的な実施形態が、参照図に示されている。図に示されているコンポーネントおよび特徴の寸法は、概して、表示の便宜と明確さのために選択されており、必ずしも縮尺どおりに示されていない。図は以下のとおりである。
【0025】
図1】クメン[2]の光誘起触媒的酸素化のための反応条件の最適化を示す表(本明細書では表1とも称される)を示す。表は、[2]の転化比率および反応の選択性に関するいくつかの反応条件を示しており、[3]:[4]:[5]のモル比で表されている。a:太陽光の代わりに青色LED(光出力は100ワットである)を使用した。b:LEDランプの存在下におけるガラスフィルターw.360nmでのカットオフ。c:暗闇の中で行われた反応。d:クメンヒドロペルオキシドは爆発性である。e:48%水溶液からアリコートとして添加された。F:クメンの1.2グラムスケールで行われた。したがって、転化率、生成物比率および収率は、反応混合物のNMR分析によって決定された。NHPIは、N-ヒドロキシフタルイミドである。エントリー1に示されている反応は、330nmの光波長カットオフを備えるPyrex反応器内で実施される。
図2】ペルオキシド(13)およびケトン(14)のフリーラジカル形成の例示的な限定されないメカニズムを示すスキーム(本明細書ではスキーム3とも称される)である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
その一態様における本発明は、ベンジルC-H結合を酸素化する方法であって、本方法は、好適な条件下で開始剤の存在下においてベンジルC-H結合を酸素と反応させることを含み、開始剤が、励起時にラジカルを生成する、方法に関する。
【0027】
本発明は、準化学量論量の光活性化9,10-ジブロモ-アントラセンが、ベンジルC-H結合の選択的酸素化を誘起するのに十分であるという驚くべき発見に部分的に基づいている。
【0028】
プロセス
本発明の一態様では、ベンジルC-H結合を修飾し、それによって式1:
【化4】
で表される化合物を形成する方法であって、本方法は、化合物を形成するのに十分な条件下で、開始剤の存在下においてベンジルC-H結合を含む基質を酸素と反応させることを含み、式中、
nが、0~2であり、
【化5】
は、(i)nが2のときに単結合、および(ii)nが0~1のときに二重結合、のうちのいずれか1つを表し、
Xが、芳香族環を含み、
Rが、アルキル、アリール、およびシクロアルキル、またはこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、
が、水素、ヒドロキシからなる群から選択されるか、または不在であり、
開始剤が、励起時にラジカルを生成する、方法が存在する。
【0029】
いくつかの実施形態では、ベンジルC-H結合を修飾し、それによって式1:
【化6】
で表される化合物を形成する方法であって、本方法は、化合物を形成するのに十分な条件下で、開始剤の存在下においてベンジルC-H結合を含む基質を酸素と反応させることを含み、式中、
nが、1または2であり、
【化7】
は、(i)nが2のときに単結合、および(ii)nが1のときに二重結合、のうちのいずれか1つを表し、
Xが、芳香族環を含み、
【化8】
が二重結合を表す場合、Rが、水素、アルキル、アリール、およびシクロアルキル、またはこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、
【化9】
が単結合を表す場合、Rが、アルキル、アリール、およびシクロアルキル、またはこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、
が、水素、ヒドロキシからなる群から選択されるか、または不在であり、
開始剤が、励起時にラジカルを生成する、方法が存在する。
【0030】
いくつかの実施形態では、ベンジルC-H結合、スルフィド結合、または両方を含む化合物を酸素化するための方法であって、本方法は、化合物を酸素化するのに十分な条件下で、開始剤の存在下において化合物を酸素と反応させることを含み、開始剤が、励起時にラジカルを生成する、方法が存在する。いくつかの実施形態では、本方法は、スルフィド結合を酸素化し、それによってスルホン結合を形成することを含む。いくつかの実施形態では、本方法は、アリール-スルホン結合を形成するために、アリール-スルフィド結合を酸素化するためのものである。
【0031】
いくつかの実施形態では、本方法は、スキーム1:
【化10】
で示される反応を含み、
式中、XおよびRは、本明細書で先に定義されたとおりである。
【0032】
いくつかの実施形態では、本方法は、スキーム2:
【化11】
で示される反応を含み、
式中、Rは、アルキル、水素、アリール、およびシクロアルキル、またはこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、Rは、任意選択的に、ヘテロ原子、置換基、または両方を含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、本方法は、スキーム3a:
【化12】
で示される反応を含み、
式中、Xは、本明細書で上述されたとおりであり、Rは、アルキル、アリール、シクロアルキル、および水素、またはこれらの組み合わせを含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、本方法は、スキーム3b:
【化13】
で示される反応を含み、
式中、XおよびRは、本明細書で先に定義されたとおりである。
【0035】
いくつかの実施形態では、基質は、ベンジルC-H結合を含む化合物である。いくつかの実施形態では、基質は、1つ以上のベンジルC-H結合を含む。いくつかの実施形態では、基質は、複数のベンジルC-H結合を含む。
【0036】
本明細書で使用される場合、「ベンジル」という用語は、芳香族環に対してアルファ位にある(すなわち、直接結合している)炭素原子に関する。
【0037】
いくつかの実施形態では、基質は、1つ以上の芳香族環を含む。いくつかの実施形態では、基質は、1つ以上の縮合芳香族環を含む。いくつかの実施形態では、基質は、1つ以上の縮合芳香族環を含む。いくつかの実施形態では、基質は、1つ以上のヘテロ芳香族環を含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、基質(例えば、芳香族環)は、1つ以上の反応性基をさらに含む。
【0039】
反応性基の非限定的な例としては、エステル基、ヒドロキシ基、ハロ基、アミド基、アルコキシ基、カルボニル基、アリールオキシ基、チオアリールオキシ基、メルカプト基、シアノ基、チオアルコキシ基、アミノ基、アゾ基、ビニル基、ホスフィニル基、またはこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
いくつかの実施形態では、基質は、式1で表される化合物を含み、式中、Xは芳香族またはヘテロ芳香族環であり、Xは任意選択的に置換基を含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、Xは、ヘテロ芳香族環を含む。いくつかの実施形態では、Xは、任意選択的にヘテロ原子を含む、二環式芳香族環を含む。いくつかの実施形態では、Xは、任意選択的にヘテロ原子を含む、縮合芳香族環を含む。いくつかの実施形態では、Xは、任意選択的にヘテロ原子を含む、架橋芳香族環を含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、基質は、式1A1:
【化14】
で表される化合物を含み、式中、各Rは、本明細書で説明されるとおりであり、Xは、置換または非置換の芳香族環またはヘテロ芳香族環を表し、nは、1または2である。
【0043】
いくつかの実施形態では、Rは、水素または少なくとも1つの置換基を表す。いくつかの実施形態では、Rは、独立して、ハロゲン、NO、CN、任意選択的に置換されたC~Cアルキル、C~Cハロアルキル、NH、NH(C~Cアルキル)、N(C~Cアルキル)、OH、C~Cアルコキシ、C~Cハロアルコキシ、ヒドロキシ(C~Cアルキル)、ヒドロキシ(C~Cアルコキシ)、アルコキシ(C~Cアルキル)、アルコキシ(C~Cアルコキシ)、アミノ(C~Cアルキル)、CONH、CONH(C~Cアルキル)、CON(C~Cアルキル)、COH、CO(C~Cアルキル)、CO(C~Cヘテロシクリル)、CO(C~Cシクロアルキル)、CO(C~Cヘテロアリール)、CO(C~Cアリール)、CO(C~C20多環式アリール)、CO(C~C20多環式ヘテロアリール)、CO(C~C20二環式アリール)、CO(C~C20二環式ヘテロアリール)、C~Cアルカリール、SOR、SOOR、SON(R)、シクロプロピルエチニル、任意選択的に置換された(C~C20)アリール、任意選択的に置換された(C~C20)ヘテロアリール、任意選択的に置換されたヘテロシクリル、および任意選択的に置換されたC~Cシクロアルキル、またはこれらの組み合わせを含む置換基を表す。いくつかの実施形態では、Rは、パラ-ヒドロキシ(C~Cアルキル)を含まない。
【0044】
いくつかの実施形態では、Xは、任意選択的に置換されたヘテロアリール、任意選択的に置換されたアリール、任意選択的に置換された多環式ヘテロアリール、任意選択的に置換された多環式アリール、任意選択的に置換された二環式ヘテロアリール、任意選択的に置換された二環式アリール、任意選択的に置換された二環式ヘテロシクリル、またはこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、Xは、任意選択的に置換された芳香族(C~C10)環、またはこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、Xは、芳香族(CまたはC)環、二環式脂肪族(C~C20)環、二環式芳香族(C~C20)環、またはこれらの組み合わせを含み、各環は、任意選択的に置換される。
【0045】
本明細書で使用される場合、任意のC~Cアルキル関連化合物を含む「C~Cアルキル」という用語は、これらの間の任意の範囲を含む、1~6個、1~2個、2~3個、3~4個、4~5個、5~6個の炭素原子を含む任意の線状または分岐アルキル鎖を指す。いくつかの実施形態では、C~Cアルキルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、およびtert-ブチルのいずれか、またはこれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、本明細書で説明されるC~Cアルキルは、不飽和結合をさらに含み、不飽和結合は、C~Cアルキルの1位、2位、3位、4位、5位または6位に位置する。
【0046】
本明細書で使用される場合、「(C~C10)環」という用語は、任意選択的に置換されたC5、C6、C7、C8、C9またはC10環を指す。
【0047】
本明細書で使用される場合、「(C~C)シクロアルキル」という用語は、任意選択的に置換されたC5、C6、C7、またはC8シクロアルキルを指す。いくつかの実施形態では、(C~C)シクロアルキルは、任意選択的に置換されたシクロプロパン、シクロブテン、シクロペンタン、シクロヘキサン、またはシクロヘプタンを含む。
【0048】
本明細書で使用される場合、「(C~C20)アリール」という用語は、これらの間の任意の範囲を含む、任意選択的に置換されたC5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19、C20の芳香族環を指す。いくつかの実施形態では、(C~C20)アリールは、これらの間の任意の値を含む、5~20、5~6、6~8、8~10、10~12、12~15、15~20員の任意選択的に置換された芳香族環を含む。
【0049】
本明細書で使用される場合、「(C~C20)ヘテロアリール」という用語は、これらの間の任意の範囲を含む、任意選択的に置換されたC5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19、C20のヘテロ芳香族環を指す。いくつかの実施形態では、(C~C20)ヘテロアリールは、これらの間の任意の値を含む、5~20、5~6、6~8、8~10、10~12、12~15、15~20員の任意選択的に置換されたヘテロ芳香族環を含む。
【0050】
ヘテロアリールの非限定的な例としては、任意選択的に1つ以上のRによって置換された、ピロール、フラン、チオフェン、チアゾール、ピラゾール、イソチアゾール、イミダゾール、またはこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
二環式ヘテロアリールの非限定的な例としては、任意選択的に1つ以上のRによって置換された、インドール、イソインドール、ベンゾチアゾール、ベンズオキサゾール、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾトリアゾール、キノリン、クロメン、クロマン、キナゾリン、1-ベンゾチオフェン、2-ベンゾチオフェン、インダゾール、およびプリン、またはこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
多環式アリールの非限定的な例としては、ナフタレン、ビフェニル、フルオレン、アントラセン、フェナントレン、フェナレン、テトラセン、クリセン、トリフェニレン、ピレン、ペンタセン、ペリレン、ベンゾピレン、コランニュレン(corranulene)、オバレン、およびベンゾフルオレン、またはこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
多環式ヘテロアリールの他の非限定的な例としては、アゼピン、アクリジン、ベンズイミダゾール、ベンズインドール、1,3-ベンゾジオキソール、ベンゾフラン、ベンズオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾチアジアゾール、ベンゾ[b][1,4]ジオキセピン、ベンゾ[b][1,4]オキサジン、1,4-ベンゾジオキサン、ビピリジン、ベンゾナフトフラン、ベンズオキサゾール、ベンゾジオキソール、ベンゾジオキシン、ベンゾピラン、ベンゾピラノン、ベンゾフラン、ベンゾフラノン、ベンゾチエン(ベンゾチオフェン)、ベンゾチエノ[3,2-d]ピリミジン、ベンゾトリアゾール、ベンゾ[4,6]イミダゾ[1,2-a]ピリジン、カルバゾール、シンノリン、シクロペンタ[d]ピリミジン、6,7-ジヒドロ-5H-シクロペンタ[4,5]チエノ[2,3-d]ピリミジン、5,6-ジヒドロベンゾ[h]キナゾリン、5,6-ジヒドロベンゾ[h]シンノリン、7’、8’-ジヒドロ-5’H-スピロ[[1,3]ジオキソラン-2,6’-キノリン]-3’-e、6,7-ジヒドロ-5H-ベンゾ[6,7]シクロヘプタ[1,2-c]ピリダジン、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、フラン、フラノン、フロ[3,2-c]ピリジン、フロピリミジン、フロピリダジン、フロピラジン、イソチアゾール、イミダゾール、イミダゾピリミジン、イミダゾピリダジン、イミダゾピラジン、インダゾール、インドール、インダゾール、イソインドール、インドリン、イソインドリン、イソキノリン、インドリジン、イソキサゾール、ナフチリジン、1,6-ナフチリジノン、オキサジアゾール、2-オキソアゼピン、オキサゾール、オキシラン、5,6,6a,7,8,9,10,10a-オクタヒドロベンゾ[h]キナゾリン、1-フェン-1H-ピロール、フェナジン、フェノチアジン、フェノキサジン、フタラジン、フェナントリジン、プテリジン、プリン、ピロール、ピラゾール、ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン、ピリジン、ピリド[3,2-d]ピリミジン、ピリド[3,4-d]ピリミジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、ビピリダジン、ピロール、ピロロピリミジン、ピロロピリダジン、ピロロピラジン、キナゾリン、キノキサリン、キノリン、キヌクリジン、イソキノリン、テトラヒドロキノリン、5,6,7,8-テトラヒドロキナゾリン、2,3,4,5-テトラヒドロベンゾ[b]オキセピン、3,4-ジヒドロ-2H-ベンゾ[b][1,4]ジオキセピン、6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-シクロヘプタ[b]ピリジン、6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-ピリド[3,2-c]アゼピン、5,6,7,8-テトラヒドロベンゾ[4,5]チエノ[2,3-d]ピリミジン、6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-シクロヘプタ[4,5]チエノ[2,3-d]ピリミジン、5,6,7,8-テトラヒドロピリド[4,5-c]ピリダジン、チアゾール、チアジアゾール、トリアゾール、テトラゾール、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-7-e、トリアジン、チエノ[2,3-d]ピリミジン、チエノピリミジン(例えば、チエノ[3,2-d]ピリミジン)、チエノ[2,3-c]ピリジン、チエノピリダジン、チエノピラジン、またはこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
いくつかの実施形態では、置換された芳香族または脂肪族環は、本明細書で説明される1つ以上の置換基を含む。いくつかの実施形態では、置換された芳香族または脂肪族環は、1つ以上の置換基を含み、置換基は、Rで表される。
【0055】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのRおよびXは、二環式環を形成するように一緒に連結されている。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのRおよびXは、縮合環を形成するように一緒に連結されている。
【0056】
いくつかの実施形態では、Rは、ハロゲン、水素、NO、CN、任意選択的に置換されたC~Cアルキル、(C~C)アルキル-COOH、C~Cハロアルキル、NH、NH(C~Cアルキル)、N(C~Cアルキル)、N(C~Cアルキル)、NH(C~Cアルカリール)、N(C~Cアルカリール)、N(C~Cアルカリール)、NH(C~C20アリール)、N(C~C20アリール)、(C~C)アルキル-N(C~Cアルキル)、(C~C)アルキル-NH(C~Cアルキル)、(C~C)アルキル-O(C~Cアルキル)、(C~C)アルキル-S(C~Cアルキル)、OH、C~Cアルコキシ、C~Cハロアルコキシ、ヒドロキシ(C~Cアルキル)、ヒドロキシ(C~Cアルカリール)、ヒドロキシ(C~C20アリール)、SH、S(C~Cアルキル)、S(C~Cアルカリール)、SOO(C~C20アリール)、SOO(C~Cアルキル)、SOO(C~Cアルカリール)、SOO(C~C20アリール)、ヒドロキシ(C~Cアルコキシ)、アルコキシ(C~Cアルキル)、アルコキシ(C~Cアルコキシ)、アミノ(C~Cアルキル)、C~Cアルカリール、CONH、CONH(C~Cアルキル)、CON(C~Cアルキル)、(C~C20)アリール、(C~C20)ヘテロアリール、COH、C~Cアルキル-COH、(C~C)アルキル-CO(C~Cアルキル)、CO(C~Cアルキル)、CO(C~Cアルカリール)、CO(C~Cアルキルヘテロアリール)、(C~C)アルキル-CO(C~Cアルカリール)、(C~C)アルキル-CO(C~Cアルキルヘテロアリール)、またはこれらの任意の組み合わせを含む。
【0057】
いくつかの実施形態では、基質は、式1B1:
【化15】
で表される化合物を含み、式中、Rは本明細書で説明されるとおりであり、各Rは、独立して、ハロゲン、水素、NO、CN、任意選択的に置換されたC~Cアルキル、(C~C)アルキル-COOH、C~Cハロアルキル、NH、NH(C~Cアルキル)、N(C~Cアルキル)、N(C~Cアルキル)、NH(C~Cアルカリール)、N(C~Cアルカリール)、N(C~Cアルカリール)、NH(C~C20アリール)、N(C~C20アリール)、(C~C)アルキル-N(C~Cアルキル)、(C~C)アルキル-NH(C~Cアルキル)、(C~C)アルキル-O(C~Cアルキル)、(C~C)アルキル-S(C~Cアルキル)、OH、C~Cアルコキシ、C~Cハロアルコキシ、ヒドロキシ(C~Cアルキル)、ヒドロキシ(C~Cアルカリール)、ヒドロキシ(C~C20アリール)、SH、S(C~Cアルキル)、S(C~Cアルカリール)、SOO(C~C20アリール)、SOO(C~Cアルキル)、SOO(C~Cアルカリール)、SOO(C~C20アリール)、ヒドロキシ(C~Cアルコキシ)、アルコキシ(C~Cアルキル)、アルコキシ(C~Cアルコキシ)、アミノ(C~Cアルキル)、C~Cアルカリール、CONH、CONH(C~Cアルキル)、CON(C~Cアルキル)、(C~C20)アリール、(C~C20)ヘテロアリール、COH、C~Cアルキル-COH、(C~C)アルキル-CO(C~Cアルキル)、CO(C~Cアルキル)、CO(C~Cアルカリール)、CO(C~Cアルキルヘテロアリール)、(C~C)アルキル-CO(C~Cアルカリール)、(C~C)アルキル-CO(C~Cアルキルヘテロアリール)、またはこれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのRおよびXは、二環式環を形成するように一緒に連結されている。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのRおよびXは、縮合環を形成するように一緒に連結されている。
【0058】
いくつかの実施形態では、基質は、式1B2:
【化16】
で表される化合物を含み、式中、Rは本明細書で説明されるとおりであり、Rは、水素、ハロゲン、NO、CN、任意選択的に置換されたC~Cアルキル、(C~C)アルキル-COOH、C~Cハロアルキル、NH、NH(C~Cアルキル)、N(C~Cアルキル)、N(C~Cアルキル)、NH(C~Cアルカリール)、N(C~Cアルカリール)、N(C~Cアルカリール)、NH(C~C20アリール)、N(C~C20アリール)、(C~C)アルキル-N(C~Cアルキル)、(C~C)アルキル-NH(C~Cアルキル)、(C~C)アルキル-O(C~Cアルキル)、(C~C)アルキル-S(C~Cアルキル)、OH、C~Cアルコキシ、C~Cハロアルコキシ、ヒドロキシ(C~Cアルキル)、ヒドロキシ(C~Cアルカリール)、ヒドロキシ(C~C20アリール)、SH、S(C~Cアルキル)、S(C~Cアルカリール)、SOO(C~C20アリール)、SOO(C~Cアルキル)、SOO(C~Cアルカリール)、SOO(C~C20アリール)、ヒドロキシ(C~Cアルコキシ)、アルコキシ(C~Cアルキル)、アルコキシ(C~Cアルコキシ)、アミノ(C~Cアルキル)、C~Cアルカリール、CONH、CONH(C~Cアルキル)、CON(C~Cアルキル)、(C~C20)アリール、(C~C20)ヘテロアリール、COH、C~Cアルキル-COH、(C~C)アルキル-CO(C~Cアルキル)、CO(C~Cアルキル)、CO(C~Cアルカリール)、CO(C~Cアルキルヘテロアリール)、(C~C)アルキル-CO(C~Cアルカリール)、(C~C)アルキル-CO(C~Cアルキルヘテロアリール)、またはこれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのRおよびXは、二環式環を形成するように一緒に連結されている。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのRおよびXは、縮合環を形成するように一緒に連結されている。
【0059】
いくつかの実施形態では、基質は、式1B3:
【化17】
で表される化合物を含み、式中、Rは本明細書で説明されるとおりであり、Rは、水素、ハロゲン、NO、CN、任意選択的に置換されたC~Cアルキル、(C~C)アルキル-COOH、C~Cハロアルキル、NH、NH(C~Cアルキル)、N(C~Cアルキル)、N(C~Cアルキル)、NH(C~Cアルカリール)、N(C~Cアルカリール)、N(C~Cアルカリール)、NH(C~C20アリール)、N(C~C20アリール)、(C~C)アルキル-N(C~Cアルキル)、(C~C)アルキル-NH(C~Cアルキル)、(C~C)アルキル-O(C~Cアルキル)、(C~C)アルキル-S(C~Cアルキル)、OH、C~Cアルコキシ、C~Cハロアルコキシ、ヒドロキシ(C~Cアルキル)、ヒドロキシ(C~Cアルカリール)、ヒドロキシ(C~C20アリール)、SH、S(C~Cアルキル)、S(C~Cアルカリール)、SOO(C~C20アリール)、SOO(C~Cアルキル)、SOO(C~Cアルカリール)、SOO(C~C20アリール)、ヒドロキシ(C~Cアルコキシ)、アルコキシ(C~Cアルキル)、アルコキシ(C~Cアルコキシ)、アミノ(C~Cアルキル)、C~Cアルカリール、CONH、CONH(C~Cアルキル)、CON(C~Cアルキル)、(C~C20)アリール、(C~C20)ヘテロアリール、COH、C~Cアルキル-COH、(C~C)アルキル-CO(C~Cアルキル)、CO(C~Cアルキル)、CO(C~Cアルカリール)、CO(C~Cアルキルヘテロアリール)、(C~C)アルキル-CO(C~Cアルカリール)、(C~C)アルキル-CO(C~Cアルキルヘテロアリール)、またはこれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのRおよびXは、二環式環を形成するように一緒に連結されている。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのRおよびXは、縮合環を形成するように一緒に連結されている。
【0060】
いくつかの実施形態では、化合物は式1B3で表され、Rは、任意選択的に置換されたC~Cアルキル、(C~C)アルキル-COOH、C~Cハロアルキル、NH、NH(C~Cアルキル)、N(C~Cアルキル)、N(C~Cアルキル 、NH(C~Cアルカリール)、N(C~Cアルカリール)、N(C~Cアルカリール)、NH(C~C20アリール)、N(C~C20アリール)、(C~C)アルキル-N(C~Cアルキル)、(C~C)アルキル-NH(C~Cアルキル)、(C~C)アルキル-O(C~Cアルキル)、(C~C)アルキル-S(C~Cアルキル)、C~Cアルコキシ、C~Cハロアルコキシ、ヒドロキシ(C~Cアルキル)、ヒドロキシ(C~Cアルカリール)、ヒドロキシ(C~C20アリール)、アルコキシ(C~Cアルコキシ)、アミノ(C~Cアルキル)、C~Cアルカリール、CONH、CONH(C~Cアルキル)、CON(C~Cアルキル)、(C~C20)アリール、(C~C20)ヘテロアリール、COH、C~Cアルキル-COH、(C~C)アルキル-CO(C~Cアルキル)、CO(C~Cアルキル)、CO(C~Cアルカリール)、CO(C~Cアルキルヘテロアリール)、(C~C)アルキル-CO(C~Cアルカリール)、(C~C)アルキル-CO(C~Cアルキルヘテロアリール)、またはこれらの任意の組み合わせを含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、化合物は式1B3で表され、Rは、任意選択的に置換されたC~Cアルキル、(C~C)アルキル-COOH、C~Cハロアルキル、NH、NH(C~Cアルキル)、N(C~Cアルキル)、N(C~Cアルキル 、NH(C~Cアルカリール)、N(C~Cアルカリール)、N(C~Cアルカリール)、NH(C~C20アリール)、N(C~C20アリール)、(C~C)アルキル-N(C~Cアルキル)、(C~C)アルキル-NH(C~Cアルキル)、(C~C)アルキル-O(C~Cアルキル)、(C~C)アルキル-S(C~Cアルキル)、C~Cアルコキシ、C~Cハロアルコキシ、アルコキシ(C~Cアルコキシ)、アミノ(C~Cアルキル)、C~Cアルカリール、(C~C20)アリール、(C~C20)ヘテロアリール、C~Cアルキル-COH、(C~C)アルキル-CO(C~Cアルキル)、(C~C)アルキル-CO(C~Cアルカリール)、(C~C)アルキル-CO(C~Cアルキルヘテロアリール)、またはこれらの任意の組み合わせを含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、ベンジル炭素は、一級、二級、および三級炭素のうちのいずれかである。いくつかの実施形態では、ベンジル炭素は、環式アルキルの一部である。
【0063】
いくつかの実施形態では、基質は、ベンジル炭素を含むオリゴマーである。いくつかの実施形態では、基質は、複数のベンジル炭素を含むオリゴマーである。いくつかの実施形態では、基質は、複数のベンジル炭素を含むポリマーである。
【0064】
複数のベンジル炭素を含むポリマーの非限定的な例としては、ポリスチレン、ポリジビニル-ベンゼン、ポリ(1,4-フェニレン-エチレン)、およびポリ(1,3-フェニレンメチレン)、またはこれらの任意のコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
いくつかの実施形態では、本方法によって形成された化合物は、酸素化されたベンジルC-H結合を含む。
【0066】
いくつかの実施形態では、酸素化されたベンジルC-H結合は、ヒドロペルオキシドを含む。いくつかの実施形態では、本発明は、式1B1の化合物の酸素化によってヒドロペルオキシドを形成する方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明の方法によって形成された化合物は、ヒドロペルオキシド系化合物である。いくつかの実施形態では、本発明は、三級ベンジル炭素(例えば、Rが水素を含まない置換基である場合)の酸素化によってヒドロペルオキシドを形成する方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明の方法によって形成された化合物は、式1a:
【化18】
で表され、式中、Xは芳香族環を含む。
【0067】
いくつかの実施形態では、Rは、アルキル、アリール、およびシクロアルキルからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、Rは、任意選択的にヘテロ原子、置換基、または両方を含む。
【0068】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのRおよびXは、二環式環を形成するように一緒に連結されている。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのRおよびXは、縮合環を形成するように一緒に連結されている。
【0069】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのRおよびXは、本明細書で上述されたとおりである。
【0070】
いくつかの実施形態では、本発明の方法によって形成された化合物は、式1b:
【化19】
で表される。
【0071】
いくつかの実施形態では、本発明の方法によって形成された化合物は、クメンヒドロペルオキシドである。
【0072】
いくつかの実施形態では、本発明の方法によって形成された化合物は、式1c:
【化20】
で表され、式中、X、RおよびRは、本明細書で説明されるとおりであり、nは、1または2である。いくつかの実施形態では、本発明の方法によって形成された化合物は、式1cで表され、式中、Rは水素を含まない。いくつかの実施形態では、nは2である。
【0073】
いくつかの実施形態では、本発明の方法によって形成された化合物は、式1cで表され、式中、Rは、ハロゲン、水素、NO、CN、任意選択的に置換されたC~Cアルキル、(C~C)アルキル-COOH、C~Cハロアルキル、NH、NH(C~Cアルキル)、N(C~Cアルキル)、N(C~Cアルキル)、NH(C~Cアルカリール)、N(C~Cアルカリール)、N(C~Cアルカリール)、NH(C~C20アリール)、N(C~C20アリール)、(C~C)アルキル-N(C~Cアルキル)、(C~C)アルキル-NH(C~Cアルキル)、(C~C)アルキル-O(C~Cアルキル)、(C~C)アルキル-S(C~Cアルキル)、OH、C~Cアルコキシ、C~Cハロアルコキシ、ヒドロキシ(C~Cアルキル)、ヒドロキシ(C~Cアルカリール)、ヒドロキシ(C~C20アリール)、SH、S(C~Cアルキル)、S(C~Cアルカリール)、SOO(C~C20アリール)、SOO(C~Cアルキル)、SOO(C~Cアルカリール)、SOO(C~C20アリール)、ヒドロキシ(C~Cアルコキシ)、アルコキシ(C~Cアルキル)、アルコキシ(C~Cアルコキシ)、アミノ(C~Cアルキル)、C~Cアルカリール、CONH、CONH(C~Cアルキル)、CON(C~Cアルキル)、(C~C20)アリール、(C~C20)ヘテロアリール、COH、C~Cアルキル-COH、(C~C)アルキル-CO(C~Cアルキル)、CO(C~Cアルキル)、CO(C~Cアルカリール)、CO(C~Cアルキルヘテロアリール)、(C~C)アルキル-CO(C~Cアルカリール)、(C~C)アルキル-CO(C~Cアルキルヘテロアリール)、またはこれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、Rは、プロトン化アミン(例えば、一級アミンおよび/または二級アミン)を含まない。
【0074】
いくつかの実施形態では、本発明の方法によって形成された化合物は、式1d:
【化21】
で表され、式中、RおよびRは、本明細書で説明されるとおりであり、nは、1または2である。いくつかの実施形態では、本発明の方法によって形成された化合物は、式1dで表され、式中、Rは、ハロゲン、NO、CN、任意選択的に置換されたC~Cアルキル、(C~C)アルキル-COOH、C~Cハロアルキル、NH、NH(C~Cアルキル)、N(C~Cアルキル)、N(C~Cアルキル)、NH(C~Cアルカリール)、N(C~Cアルカリール)、N(C~Cアルカリール)、NH(C~C20アリール)、N(C~C20アリール)、(C~C)アルキル-N(C~Cアルキル)、(C~C)アルキル-NH(C~Cアルキル)、(C~C)アルキル-O(C~Cアルキル)、(C~C)アルキル-S(C~Cアルキル)、OH、C~Cアルコキシ、C~Cハロアルコキシ、ヒドロキシ(C~Cアルキル)、ヒドロキシ(C~Cアルカリール)、ヒドロキシ(C~C20アリール)、SH、S(C~Cアルキル)、S(C~Cアルカリール)、SOO(C~C20アリール)、SOO(C~Cアルキル)、SOO(C~Cアルカリール)、SOO(C~C20アリール)、ヒドロキシ(C~Cアルコキシ)、アルコキシ(C~Cアルキル)、アルコキシ(C~Cアルコキシ)、アミノ(C~Cアルキル)、C~Cアルカリール、CONH、CONH(C~Cアルキル)、CON(C~Cアルキル)、(C~C20)アリール、(C~C20)ヘテロアリール、COH、C~Cアルキル-COH、(C~C)アルキル-CO(C~Cアルキル)、CO(C~Cアルキル)、CO(C~Cアルカリール)、CO(C~Cアルキルヘテロアリール)、(C~C)アルキル-CO(C~Cアルカリール)、(C~C)アルキル-CO(C~Cアルキルヘテロアリール)、またはこれらの任意の組み合わせを含み、nは、2である。
【0075】
いくつかの実施形態では、酸素化されたC-H結合は、カルボニル(例えば、アルデヒドまたはケトン)である。いくつかの実施形態では、本発明は、式1B2の化合物を酸素化することによってカルボニルを形成する方法を提供し、酸素化は、本明細書で上述されたとおりである。いくつかの実施形態では、本発明は、一級および/または二級ベンジル炭素の酸素化によってカルボニルを形成する方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明の方法によって形成された化合物(例えば、カルボニル系化合物)は、式2:
【化22】
で表され、式中、RおよびXは、本明細書で上述されたとおりである。
【0076】
いくつかの実施形態では、RおよびXは、式2a:
【化23】
で表される縮合環を形成するように一緒に連結され、式中、Rは、本明細書で説明されるとおりである。
【0077】
いくつかの実施形態では、本発明の方法によって形成された化合物は、式2a1:
【化24】
で表され、式中、RおよびRは、本明細書で説明されるとおりである。
【0078】
いくつかの実施形態では、本発明の方法によって形成された化合物は、式2a1で表され、式中、Rは、水素、ハロゲン、NO、CN、任意選択的に置換されたC~Cアルキル、(C~C)アルキル-COOH、C~Cハロアルキル、NH、NH(C~Cアルキル)、N(C~Cアルキル)、N(C~Cアルキル)、NH(C~Cアルカリール)、N(C~Cアルカリール)、N(C~Cアルカリール)、NH(C~C20アリール)、N(C~C20アリール)、(C~C)アルキル-N(C~Cアルキル)、(C~C)アルキル-NH(C~Cアルキル)、(C~C)アルキル-O(C~Cアルキル)、(C~C)アルキル-S(C~Cアルキル)、OH、C~Cアルコキシ、C~Cハロアルコキシ、ヒドロキシ(C~Cアルキル)、ヒドロキシ(C~Cアルカリール)、ヒドロキシ(C~C20アリール)、SH、S(C~Cアルキル)、S(C~Cアルカリール)、SOO(C~C20アリール)、SOO(C~Cアルキル)、SOO(C~Cアルカリール)、SOO(C~C20アリール)、ヒドロキシ(C~Cアルコキシ)、アルコキシ(C~Cアルキル)、アルコキシ(C~Cアルコキシ)、アミノ(C~Cアルキル)、C~Cアルカリール、CONH、CONH(C~Cアルキル)、CON(C~Cアルキル)、(C~C20)アリール、(C~C20)ヘテロアリール、COH、C~Cアルキル-COH、(C~C)アルキル-CO(C~Cアルキル)、CO(C~Cアルキル)、CO(C~Cアルカリール)、CO(C~Cアルキルヘテロアリール)、(C~C)アルキル-CO(C~Cアルカリール)、(C~C)アルキル-CO(C~Cアルキルヘテロアリール)、またはこれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、本発明の方法によって形成された化合物は、式2b~2yで表される。
【0079】
いくつかの実施形態では、化合物は、式2b~2d:
【化25】
のいずれかで表される。
【0080】
いくつかの実施形態では、化合物は、式2e~2g:
【化26】
のうちのいずれかで表される。
【0081】
いくつかの実施形態では、化合物は、式2h~2k:
【化27】
のうちのいずれかで表される。
【0082】
いくつかの実施形態では、化合物は、式2l~2m:
【化28】
のうちのいずれかで表される。
【0083】
いくつかの実施形態では、化合物は、式2n~2p:
【化29】
のうちのいずれかで表される。
【0084】
いくつかの実施形態では、化合物は、式2r~2t:
【化30】
のうちのいずれかで表される。
【0085】
いくつかの実施形態では、化合物は、式2u~2x:
【化31】
のうちのいずれかで表される。
【0086】
いくつかの実施形態では、化合物は、式2y:
【化32】
で表される。
【0087】
いくつかの実施形態では、本発明の方法によって形成された化合物は、式3:
【化33】
で表され、式中、RおよびRは、本明細書で説明されるとおりである。
【0088】
いくつかの実施形態では、本発明の方法によって形成された化合物は、式3a:
【化34】
で表され、式中、RおよびRは、本明細書で説明されるとおりである。
【0089】
いくつかの実施形態では、本方法は、式1B3の化合物を酸素化することによって、式3のスルホキシド系化合物および/または式3aのスルホン系化合物を形成することを含み、酸素化は、本明細書で上述されたとおりである。
【0090】
いくつかの実施形態では、本発明の方法によって形成された化合物は、式3bのうちのいずれかで表される。
【0091】
いくつかの実施形態では、本方法は、開始剤を励起することを含む。いくつかの実施形態では、励起は、エネルギー源によるものである。いくつかの実施形態では、エネルギー源は、開始剤を励起状態に提供するのに十分である。
【0092】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、適切な条件下で、開始剤の存在下において基質を酸素と反応させることによって、本発明の基質を酸素化することを含む。いくつかの実施形態では、適切な条件は、本発明の開始剤の励起に十分な電磁放射によって基質を照射することを含む。いくつかの実施形態では、適切な条件は、光源を介して基質を照射することを含む。いくつかの実施形態では、適切な条件は、基質を含む反応混合物を照射することを含む。いくつかの実施形態では、適切な条件は、基質を含む溶液を照射することを含む。いくつかの実施形態では、適切な条件は、反応混合物を含む反応器を照射することを含み、照射は、本明細書で説明されるように、適切な条件下で実施される。
【0093】
いくつかの実施形態では、本方法は、これらの間の任意の範囲または値を含む、1~1000mJ/cm、150~400mJ/cm、50~150mJ/cm、150~400mJ/cm、200~400mJ/cm、300~400mJ/cm、1~10mJ/cm、10~100mJ/cm、100~1000mJ/cmの範囲の電磁放射線量を有するエネルギー源(例えば、光源)によって開始剤を励起することを含む。
【0094】
いくつかの実施形態では、本方法は、これらの間の任意の範囲または値を含む、10~1000W、10~50W、50~100W、100~200W、200~300W、300~500W、500~1000Wの放射光のエネルギーを有するエネルギー源(例えば、光源)によって開始剤を励起することを含む。
【0095】
本明細書で使用される場合、「励起状態」という用語は、分子の基底状態よりも高いエネルギーを有する分子の量子状態を指す。
【0096】
いくつかの実施形態では、エネルギー源は、少なくとも1つの光源である。いくつかの実施形態では、光源は、開始剤を励起するのに十分なスペクトル範囲を有する光を生成する。いくつかの実施形態では、光源は、開始剤の光励起のために使用される。
【0097】
いくつかの実施形態では、光源は、光学フィルターをさらに含む。いくつかの実施形態では、光学フィルターは、光スペクトルの少なくとも一部分を減衰および/または保持する。
【0098】
いくつかの実施形態では、光源によって放射される光スペクトルは、開始剤の吸収波長範囲に一致するように調整されなければならない。
【0099】
いくつかの実施形態では、スペクトル範囲の少なくとも一部は、開始剤の吸収波長と重なる。いくつかの実施形態では、光源は、これらの間の任意の範囲または値を含む、200~900nm、250~800nm、250~500nm、250~300nm、250~350nm、300~500nm、300~400nm、300~600nm、300~700nm、300~900nmの範囲のスペクトルを有する光を生成する。
【0100】
いくつかの実施形態では、光源は、太陽光、人工光源、または両方を含む。例えば、ハロゲンランプ、またはLEDデバイスを光源として使用することができる。いくつかの実施形態では、光源は、太陽光および人工光源を含む。いくつかの実施形態では、光源は、1つ以上の人工光源を含む。いくつかの実施形態では、光源は、プロセッサと連通している。
【0101】
いくつかの実施形態では、光源は、反応混合物を含む反応器に光学的に結合される。いくつかの実施形態では、光源から放射された光は、光ファイバーによって反応器に伝達される。
【0102】
いくつかの実施形態では、本方法は、開始剤の存在下において基質を酸素と反応させることを含む。いくつかの実施形態では、開始剤は、エネルギー源によって励起時にラジカルを生成し、エネルギー源は、本明細書で上述されたとおりである。いくつかの実施形態では、開始剤は、光源によって励起時に複数のラジカルを生成し、光源は、本明細書で上述されたとおりである。
【0103】
いくつかの実施形態では、光源は、これらの間の任意の値を含む、200nm超、250nm超、300nm超、350nm超、400nm超、450nm超、500nm超、600nm超、700nm超のスペクトル範囲の光を生成する。
【0104】
いくつかの実施形態では、光源は、単色光を生成する。いくつかの実施形態では、単色光の波長は、これらの間の任意の範囲または値を含む、200nm~900nm、200nm~500nm、300nm~500nm、500nm~700nm、700nm~900nm、300nm~900nmの範囲である。
【0105】
いくつかの実施形態では、開始剤は、これらの間の任意の値を含む、200nm超、250nm超、260nm超、270nm超、280nm超、290nm超、300nm超、310nm超、320nm超、330nm超、340nm超、350nm超のスペクトル範囲を有する光によって励起時に複数のラジカルを生成する。いくつかの実施形態では、開始剤は、これらの間の任意の範囲または値を含む、200nm~900nm、200nm~300nm、300nm~400nm、300nm~350nm、250nm~350nm、200nm~500nm、350nm~400nm、400nm~500nm、300nm~500nm、500nm~700nm、700nm~900nm、300nm~900nm、900nm~1500nmのスペクトル範囲を有する光によって励起時に複数のラジカルを生成する。
【0106】
いくつかの実施形態では、光は、太陽光である。いくつかの実施形態では、光源は、LEDである。いくつかの実施形態では、光源は、複数のLEDを含むアレイを含む。いくつかの実施形態では、光源は、複数の光源を含む。
【0107】
ラジカルの非限定的な例としては、ハロゲンラジカル(例えば、Br-、Cl-、F-ラジカル)、およびヒドロキシラジカル、またはこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、ラジカルは、ハロゲンラジカルである。いくつかの実施形態では、ラジカルは、臭素ラジカルである。いくつかの実施形態では、励起された開始剤によって形成されたラジカルは、一重項酸素を含まない。いくつかの実施形態では、ラジカルは、超酸化物を含まない。いくつかの実施形態では、開始剤は、エネルギー源によって励起時に1つ以上のラジカルを生成することができ、エネルギー源および1つ以上のラジカルは、本明細書で説明されるとおりである。
【0108】
いくつかの実施形態では、ラジカルは、基質と反応するのに十分な反応性を有する。いくつかの実施形態では、ラジカルは、水素ラジカルを引き抜くのに十分な反応性を有し、それによって基質のベンジルラジカルを形成する。いくつかの実施形態では、開始剤は、エネルギー源によって開始剤の励起時に基質と反応することができ、それによって基質のベンジルラジカルを形成する。いくつかの実施形態では、開始剤は、基質と反応することができ、その結果、基質のベンジルラジカルの形成をもたらす。いくつかの実施形態では、ベンジルラジカルは、本明細書で以下のスキーム3(図2を参照)によって示されるように、酸素との反応時にエンドペルオキシド7を形成するのに十分な反応性を有する。いくつかの実施形態では、開始剤は、本明細書で以下のスキーム3(図2を参照)によって示されるように、基質の酸素との反応時にエンドペルオキシド7の形成を促進するのに十分な反応性を有する。
【0109】
いくつかの実施形態では、開始剤は、光反応性分子を含む。いくつかの実施形態では、開始剤は、光増感剤である。いくつかの実施形態では、開始剤は、プレ触媒である。いくつかの実施形態では、開始剤は、ラジカル反応を開始させる。いくつかの実施形態では、開始剤は、ラジカル形成を開始させる。
【0110】
いくつかの実施形態では、開始剤は、式4:
【化35】
で表され、
式中、各Xは、本明細書で上述されたとおりであるか、または不在であり、
各Aは、独立して、ハロ基を表す。
【0111】
いくつかの実施形態では、各Xは、独立して、アリール(1つ以上のRによって任意選択的に置換される)を含むか、または不在である。いくつかの実施形態では、各Xは、独立して、C3~C10シクロアルカンを含む。
【0112】
いくつかの実施形態では、その中のアリールは、芳香族環、縮合芳香族環、および置換芳香族環、またはこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0113】
いくつかの実施形態では、開始剤は、式4a:
【化36】
で表され、
式中、AおよびRは、本明細書で上述されたとおりであるか、またはRは不在である。いくつかの実施形態では、開始剤は、式4または4aで表される複数の化合物を含む。
【0114】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのAは、ブロモである。いくつかの実施形態では、開始剤は、9,10-ジブロモアントラセンを含む。
【0115】
いくつかの実施形態では、開始剤(例えば、9,10-ジブロモアントラセン)は、光増感剤である。
【0116】
いくつかの実施形態では、開始剤は、CBr(四臭化炭素)である。いくつかの実施形態では、CBrは、本明細書で上述されたようにスペクトル範囲を有する光源によって、照射時に臭素ラジカルを形成する。いくつかの実施形態では、開始剤は、臭素ラジカル形成を誘起し、その後にラジカル反応を開始させる。
【0117】
いくつかの実施形態では、本方法は、励起されたCBrの存在下において基質を酸素と反応させ、それによってヒドロペルオキシド(図1)を形成することを含む。いくつかの実施形態では、基質は、三級ベンジル炭素を含む。
【0118】
いくつかの実施形態では、開始剤は、追加の反応性化合物を実質的に含まない。いくつかの実施形態では、開始剤は、金属(例えば、これらの任意の錯体の任意の塩を含む、Cu、Ru、Pt、Au、Pd、Irなどの遷移金属触媒)を実質的に含まない。いくつかの実施形態では、開始剤は、非金属開始剤である。いくつかの実施形態では、開始剤は、アクリジンまたはその誘導体(例えば、9-メシチル-10-メチルアクリジニウム)を実質的に含まない。いくつかの実施形態では、開始剤は、エオシンYを実質的に含まない。いくつかの実施形態では、開始剤は、アントラキノン、またはその誘導体、例えばカルボキシ-アントラキノンを実質的に含まない。いくつかの実施形態では、開始剤は、アントラセンを実質的に含まない。
【0119】
いくつかの実施形態では、開始剤は、非ラジカル開始剤である。いくつかの実施形態では、開始剤は、ラジカルを実質的に含まない。いくつかの実施形態では、開始剤は、追加の光反応性分子を実質的に含まない。いくつかの実施形態では、開始剤は、ラジカル開始剤を実質的に含まない。AIBNおよびペルオキシド(例えば、ベンゾイルペルオキシドおよびペルオキシジサルフェート)などの様々なラジカル開始剤が、当技術分野で周知である。いくつかの実施形態では、開始剤は、N-ヒドロキシスクシンイミドを実質的に含まない。いくつかの実施形態では、開始剤は、N-ヒドロキシフタルイミドを実質的に含まない。いくつかの実施形態では、開始剤は、ハロゲン(例えば、臭素または塩素ガス)を実質的に含まない。いくつかの実施形態では、開始剤は、N-ブロモフタルイミドまたはN-クロロフタルイミドを実質的に含まない。いくつかの実施形態では、開始剤は、n-ブロモスクシンイミドまたはn-クロロスクシンイミドを実質的に含まない。いくつかの実施形態では、開始剤は、四塩化炭素を実質的に含まない。いくつかの実施形態では、開始剤は、四臭化炭素を実質的に含まない。いくつかの実施形態では、実質的には、本明細書で以下に説明されるとおりである。
【0120】
いくつかの実施形態では、開始剤は、式4および/または式4aの1つ以上の化合物から本質的になる。いくつかの実施形態では、少なくとも90重量%、少なくとも91重量%、少なくとも92重量%、少なくとも93重量%、少なくとも94重量%、少なくとも95重量%、少なくとも96重量%、少なくとも97重量%、少なくとも98重量%、少なくとも99重量%、少なくとも99.5重量%、少なくとも99.9重量%の開始剤が、式4および/または式4aの1つ以上の化合物からなる。
【0121】
いくつかの実施形態では、酸素化されたベンジルC-H結合を形成する方法は、スキーム1およびスキーム2のいずれか1つによって示される反応を含む。
【0122】
いかなる特定の理論またはメカニズムに限定されることなく、式1a、1b、および2で表される化合物のいずれか1つのフリーラジカル形成のための例示的な反応メカニズムを、本明細書(スキーム3)に提供した。
【0123】
ここで、ペルオキシド(13)およびケトン(14)のフリーラジカル形成のための例示的なメカニズムを示す図2を参照する。
【0124】
スキーム3(図2を参照)で示されている例示的な開始剤(9,10-ジブロモアントラセン)による例示的なメカニズムは、段階:1)開始、2)生長、および任意選択的に3)さらなる伝搬(一級および二級ベンジル炭素の場合)を含む。
【0125】
開始経路は、開始剤(例えば、9,10-ジブロモアントラセン)1の光誘起励起、かつ後の励起された開始剤と酸素との相互作用によって一重項酸素の形成を伴い、それによって一重項酸素が形成される。次に、一重項酸素が付加環化によって開始剤と反応し、続いてエンドペルオキシド7が形成され得る。このエンドペルオキシドが解離して、アントラキノン6および2当量の臭素ラジカル8が得られる。
【0126】
その後、生長サイクルにおいて、ラジカル8が、ベンジル位で基質9から水素原子を引き抜き、HBr10および炭素中心ラジカル11が得られる。11の酸素との速い反応によりペルオキシルラジカル12が得られ、これが次にHBr10からH・を引き抜き、基質9が消費されるまで連鎖を続ける臭素ラジカル8が再生される。代替的に、ペルオキシルラジカル12は、出発材料から水素原子を引き抜くのに役立つことができる。基質がクメンなどの三級ベンジル炭素である場合、得られた生成物3はクメンヒドロペルオキシドである。
【0127】
追加の水素原子を含有する二級ベンジル炭素の場合、第2の水素原子の引き抜きは、弱いペルオキシド結合の同時開裂を伴って起こり得、観察された生成物のケトン14およびヒドロキシラジカル15をもたらす(さらなる生長段階)。次に、ヒドロキシラジカル15は、水の形成を伴う、9または13からの水素引き抜き剤としても機能し得る。
【0128】
いくつかの実施形態では、本方法は、基質および開始剤を溶媒と混合し、それによって反応混合物を形成することを含む。いくつかの実施形態では、反応混合物は、光誘起開始段階の前に形成される。
【0129】
いくつかの実施形態では、反応混合物中の基質のモル濃度は、これらの間の任意の範囲を含む、0.01~2mol/L、0.01~0.02mol/L、0.02~0.03mol/L、0.03~0.04mol/L、0.04~0.05mol/L、0.05~0.06mol/L、0.06~0.08mol/L、0.08~0.1mol/L、0.1~0.2mol/L、0.2~0.4mol/L、0.4~0.6mol/L、0.6~0.8mol/L、0.8~1mol/L、1~1.2mol/L、1.2~1.4mol/L、1.4~1.6mol/L、1.6~1.8mol/L、1.8~2mol/Lの範囲である。
【0130】
いくつかの実施形態では、反応混合物中の基質対開始剤のモル比率は、これらの間の任意の値を含む、少なくとも1:0.01、少なくとも1:0.04、少なくとも1:0.06、少なくとも1:0.08、少なくとも1:0.1、少なくとも1:0.15、少なくとも1:0.2、少なくとも1:0.3、少なくとも1:0.5である。
【0131】
いくつかの実施形態では、反応混合物中の基質対開始剤のモル比率は、これらの間の任意の範囲を含む、1:0.01~1:0.5、1:0.01~1:0.05、1:0.05~1:0.1、1:0.1~1:0.2、1:0.2~1:0.5の範囲である。
【0132】
いくつかの実施形態では、溶媒は、反応条件(例えば、ラジカル、一重項酸素)に対する十分な酸素溶解度および不活性を特徴とする。
【0133】
反応に適切な溶媒の非限定的な例としては、アセトニトリル、n-ブチロニトリル、イソ-ブチロニトリル、アセトン、メチル-エチルケトン、炭化水素(例えば、ヘキサン、ペンタン、シクロヘキサン)、またはこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0134】
いくつかの実施形態では、溶媒は、アセトニトリルを含む。いくつかの実施形態では、溶媒は、アセトニトリルおよび追加の有機溶媒の混合物を含む。
【0135】
反応に適切な溶媒の選択は、当業者に既知の様々な態様に依存する。いくつかの例示的な態様は、(酸素および基質の両方の)溶解度、費用効率、リサイクル、および毒性である。
【0136】
いくつかの実施形態では、本方法は、化合物形成に十分な条件下で実行される。「化合物」および「生成物」という用語は、本明細書では互換的に使用される。例示的な方法は、実施例1により詳細に説明されている。追加の方法は、本明細書に上述されている。
【0137】
いくつかの実施形態では、条件は、生成物の最適な収率を提供するように選択される。いくつかの実施形態では、条件は、基質のほぼ完全な転化率をもたらすように選択される。いくつかの実施形態では、条件は、反応物質の濃度、反応温度、および反応時間のいずれかに関して最適化され、それによって最大の生成物収率をもたらす。
【0138】
いくつかの実施形態では、条件は、高い選択性を有する反応をもたらすように選択される。本明細書で使用される場合、「選択性」という用語は、ベンジルC-H結合に対するラジカル種の優勢な反応性、かつ同時に他の官能基に対するラジカル種の無視できるほどの反応性に関する。反応の選択性は、副産物の形成を最小限に抑えるのに十分でなければならない。いくつかの実施形態では、選択性は、本発明の生成物(例えば、本発明のカルボニル系化合物またはヒドロペルオキシド系化合物)の優勢な形成を含む。いくつかの実施形態では、選択性は、ベンジルカルボニルおよび/またはベンジルヒドロペルオキシドを超える本発明のスルホン系生成物の優勢な形成を含む。
【0139】
いくつかの実施形態では、反応は、これらの間の任意の範囲を含む、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%の選択性を特徴とする。
【0140】
いくつかの実施形態では、反応は、本発明の所望の酸素化された化合物の選択性および高収率を特徴とする。いくつかの実施形態では、反応の収率は、これらの間の任意の範囲を含む、30~99%、30~50%、50~70%、70~75%、75~80%、80~85%、85~90%、90~95%、95~99%である。
【0141】
いくつかの実施形態では、反応は、基質の選択性および高転化率を特徴とする。いくつかの実施形態では、高転化率は、これらの間の任意の範囲を含む、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99%を含む。
【0142】
驚くべきことに、本発明者らは、本発明の開始剤が、反応選択性および/または基質転化率に関して、一重項酸素を形成する開始剤(例えば、アントラキノンなどの光増感剤)よりも優れていることを見出した。
【0143】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される化合物を形成するのに十分な条件は、最適化された条件である。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、最適化された条件を提供し、したがって、図1に示されるように、高い反応選択性および高い生成物収率をもたらす。
【0144】
いくつかの実施形態では、適切な条件は、これらの間の任意の範囲を含む、0~100℃、10~20℃、20~25℃、25~30℃、30~35℃、35~40℃、40~50℃、50~60℃、60~70℃、70~100℃の範囲の温度を含む。いくつかの実施形態では、温度は、これらの間の任意の範囲を含む、40℃未満、38℃未満、35℃未満、30℃未満、25℃未満、20℃未満である。いくつかの実施形態では、温度は、35℃未満である。
【0145】
いくつかの実施形態では、適切な条件は、開始剤と基質(例えば、式1A1、1B1、1B2、および1B3のいずれか1つの化合物)との間のモル比率が、これらの間の任意の範囲を含む、1~30mol%、1~5mol%、5~7mol%、7~10mol%、10~12mol%、12~15mol%、15~20mol%、20~30mol%であることを含む。いくつかの実施形態では、適切な条件は、開始剤と基質との間のモル比率が、8~12mol%であることを含む。いくつかの実施形態では、十分な条件は、開始剤と基質との間のモル比率が、9~11mol%であることを含む。
【0146】
いくつかの実施形態では、適切な条件は、これらの間の任意の範囲を含む、1~40時間、1~2時間、2~3時間、3~4時間、4~6時間、6~10時間、10~20時間、20~30時間、30~40時間の範囲の反応時間を含む。
【0147】
本発明の別の態様では、本発明の方法によって合成された化合物を本明細書に提供する。いくつかの実施形態では、化合物は、微量の本発明の開始剤を含む。いくつかの実施形態では、化合物は、微量のアントラセンを含む。いくつかの実施形態では、化合物は、クメンである。いくつかの実施形態では、化合物は、化合物2b~2yのいずれか1つである。
【0148】
いくつかの実施形態では、化合物は、微量のアントラセンおよび微量の本発明の開始剤を含む。本明細書で使用される場合、「微量」という用語は、最終生成物中の化合物(例えば、不純物)の重要でない量、例えば、これらの間の任意の範囲を含む、1ppm~2%、1ppm~10ppm、10ppm~100ppm、100ppm~0.1%、0.1%~1%、1~2%を指す。
【0149】
一般的用語
本明細書で使用する場合、「約」という用語は、±10%を指す。
【0150】
「含む(comprise)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(having)」という用語およびこれらの同根語は、「含むが、限定されない」ことを意味する。「からなる」という用語は、「含みかつこれ(ら)に限定されること」を意味する。「から本質的になる」という用語は、組成、方法、または構造が追加の成分、ステップ、および/またはパーツを含むことができるが、追加の成分、ステップ、および/またはパーツが特許請求された組成、方法または構造の基本的かつ新規の特徴を実質的に変えない場合にのみであることを意味する。
【0151】
いくつかの実施形態では、「から本質的になる」という用語は、少なくとも80重量%、少なくとも85重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも97重量%、少なくとも98重量%、少なくとも99重量%、少なくとも99.5重量%、少なくとも99.9重量%の、本発明の化合物(例えば、基質または開始剤)の乾燥含有量を指す。
【0152】
「例示的」という用語は、本明細書では、「例、事例、または例示として役立つ」ことを意味するために使用される。「例示的」として説明されるいかなる実施形態も、他の実施形態よりも好ましいかもしくは有利であると必ずしも解釈されるべきではなく、および/または他の実施形態からの特色の組み込みを必ずしも除外するものではない。
【0153】
「任意選択的に」という単語は、本明細書では、「いくつかの実施形態では提供され、かつ他の実施形態では提供されない」ことを意味するために使用される。本発明のいかなる特定の実施形態も、このような特色が矛盾しない限り、複数の「任意選択の」特色を含み得る。
【0154】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明確に他のことを指示しない限り、複数の指示対象を含む。例えば、「1つの化合物」または「少なくとも1つの化合物」という用語は、これらの混合物を含む、複数の化合物を含み得る。
【0155】
本出願全体を通して、本発明の様々な実施形態は、範囲形式で提示されている場合がある。範囲形式での説明は、単に便宜性および簡潔性のためであり、本発明の範囲への確固たる限定として解釈するべきではないことを理解すべきである。したがって、範囲の説明は、すべての可能な部分範囲ならびにその範囲内の個々の数値を具体的に開示しているとみなされるべきである。例えば、1~6などの範囲の説明は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの部分範囲、ならびに、その範囲内の個々の数、例えば、1、2、3、4、5、および6を具体的に開示しているとみなされるべきである。これは、範囲の幅に関係なく適用される。
【0156】
本明細書で数値範囲が示される場合は常に、指示範囲内の任意の引用数字(分数または整数)を含むことを意味している。第1の指示数~第2の指示数「の範囲(ranging/ranges between)」、および第1の指示数「~」第2の指示数「の範囲(ranging/ranges from)」という句は、本明細書では互換的に使用され、第1および第2の指示数ならびにそれらの間のすべての分数および整数の数字を含むことを意味する。
【0157】
本明細書で使用する場合、「方法」という用語は、化学分野、薬理学分野、生物学分野、生化学分野および医学分野の実務者に既知であるかまたは実務者によって既知の様式、手段、技術および手順から容易に開発されるかのいずれかである様式、手段、技術および手順を含むがこれらに限定されない、所与の課題を達成するための様式、手段、技術および手順を指す。
【0158】
「A、B、およびC等のうちの少なくとも1つ」に類似する慣例が使用される場合、概して、そのような構成は、当業者がその慣例を理解する意味で意図されている(例えば、「A、B、およびCのうちの少なくとも1つを有するシステム」は、A単独、B単独、C単独、AおよびBともに、AおよびCともに、BおよびCともに、ならびに/またはA、B、およびCともになどを有するシステムを含むが、これらに限定されない)。
【0159】
本明細書で使用される場合、「実質的に」という用語は、これらの間の任意の範囲または値を含む、組成物の少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、少なくとも92重量%、少なくとも95重量%、少なくとも97重量%、少なくとも98重量%、少なくとも99重量%である。
【0160】
本出願全体を通して、本発明の様々な実施形態は、範囲形式で提示されている場合がある。範囲形式での説明は、単に便宜性および簡潔性のためであり、本発明の範囲への確固たる限定として解釈するべきではないことを理解すべきである。したがって、範囲の説明は、すべての可能な部分範囲ならびにその範囲内の個々の数値を具体的に開示しているとみなされるべきである。例えば、1~6などの範囲の説明は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの部分範囲、ならびに、その範囲内の個々の数、例えば、1、2、3、4、5、および6を具体的に開示しているとみなされるべきである。これは、範囲の幅に関係なく適用される。
【0161】
本明細書、特許請求の範囲、または図面に関わらず、2つ以上の代替用語を提示する実質的に任意の離接語および/または語句が、用語のうちの1つ、用語のいずれか、または両方の用語を含む可能性を企図すると理解されるべきであることが、当業者によってさらに理解されるであろう。例えば、「AまたはB」という語句は、「A」または「B」または「AおよびB」の可能性を含むことが理解されるであろう。
【0162】
本明細書で使用する場合、「アルキル」という用語は、直鎖基および分岐鎖基を含む脂肪族炭化水素を表す。アルキル基は、1~100個の炭素原子、より好ましくは1~50個の炭素原子を有する。数値範囲、例えば、「1~100」、が本明細書に明記されているときはいつでも、基、この場合、アルキル基は、1個の炭素原子、2個の炭素原子、23個の炭素原子など、100個以下の炭素原子を含有することができることを意味する。本発明の文脈において、「長アルキル」または「高級アルキル」は、その主鎖(連続的な共有結合で接続された原子の最長経路)に少なくとも10個、または少なくとも15個、または少なくとも20個の炭素原子を有するアルキルであり、例えば、10~100個、または15~100個、または20~100個、または21~100個、または21~50個の炭素原子を含むことができる。「短アルキル」または「低級アルキル」は、10個以下の主鎖炭素を有する。本明細書で定義されるように、アルキルは置換または非置換であり得る。
【0163】
また、本明細書で使用する場合、「アルキル」という用語は、飽和または不飽和の炭化水素を包含し、したがって、この用語は、アルケニルおよびアルキニルをさらに包含する。
【0164】
「アルケニル」という用語は、本明細書で定義されるように、少なくとも2つの炭素原子と少なくとも1つの炭素間二重結合とを有する、不飽和アルキルを説明する。アルケニルは、本明細書で上述されたとおり、1つ以上の置換基によって置換されてもまたは非置換であってもよい。
【0165】
「アルキニル」という用語は、本明細書で定義されるように、少なくとも2つの炭素原子と少なくとも1つの炭素間三重結合とを有する不飽和アルキルである。本明細書で上述されたように、アルキニルは、1つ以上の置換基によって置換され得るかまたは非置換であり得る。
【0166】
「シクロアルキル」または「シクロアルカン」という用語は、環のうちの1つ以上が完全に共役したπ電子系を有しない、全炭素の単環式または縮合環(すなわち、隣接する対の炭素原子を共有する環)基を説明する。シクロアルキル基は、本明細書で示すように、置換され得るかまたは非置換であり得る。
【0167】
「アリール」または「芳香族」という用語は、完全に共役したπ電子系を有する全炭素の単環式または縮合環多環式(すなわち、隣接する対の炭素原子を共有する環)基を説明する。アリール基は、本明細書で示すように、置換され得るかまたは非置換であり得る。いくつかの実施形態では、アリール基は、Rのうちの1つ以上(例えば、2、3、4または5つ)によって置換され得、Rは、本明細書で説明されるとおりである。
【0168】
「アルコキシ」という用語は、本明細書で定義されるように、-O-アルキルおよび-O-シクロアルキル基の両方を説明する。
【0169】
「アリールオキシ」という用語は、本明細書で定義されるように、-O-アリールを説明する。
【0170】
本明細書の一般式におけるアルキル基、シクロアルキル基およびアリール基の各々は、1つ以上の置換基によって置換され得、それにより、各置換基は、独立して、置換基および分子内での該置換基の位置に応じて、例えば、ハロゲン化物、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、アルコキシ、ニトロ、アミン、ヒドロキシル、チオール、チオアルコキシ、チオヒドロキシ、カルボキシ、アミド、アリール、およびアリールオキシであり得る。追加の置換基も考えられる。
【0171】
「ハロゲン化物」、「ハロゲン」または「ハロ基」という用語は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を説明する。
【0172】
「ヒドロキシル」または「ヒドロキシ」という用語は、-OH基を説明する。
【0173】
「チオヒドロキシ」または「チオール」という用語は、-SH基を説明する。
【0174】
「チオアルコキシ」という用語は、本明細書で定義されるように、-S-アルキル基および-S-シクロアルキル基の両方を説明する。
【0175】
「チオアリールオキシ」という用語は、本明細書で定義されるように、-S-アリールおよび-S-ヘテロアリール基の両方を説明する。
【0176】
「アミン」という用語は、本明細書で説明されるようなR’およびR”を有する、-NR’R”基を説明する。
【0177】
「ヘテロアリール」という用語は、環中に、例えば、窒素、酸素および硫黄などを有し、加えて、完全に共役したπ電子系を有する単環式環または縮合環(すなわち、隣接する対の原子を共有する環)基を説明する。ヘテロアリール基の例としては、限定されないが、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、イソキノリンおよびプリンが挙げられる。
【0178】
「ヘテロ脂環式」または「ヘテロシクリル」という用語は、環内に窒素、酸素および硫黄などの1つ以上の原子を有する単環式基または縮合環基を説明する。環はまた、1つ以上の二重結合を有し得る。しかしながら、環は、完全に共役したπ電子系を有していない。代表的な例は、ピペリジン、ピペラジン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、モルホリノなどである。
【0179】
「カルボキシ」または「カルボキシラート」という用語は、-C(=O)-OR’基を説明し、式中、R’は、本明細書で定義されるように、水素、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール(環炭素を介して結合)またはヘテロ脂環式(環炭素を介して結合)である。
【0180】
「カルボニル」という用語は、-C(=O)-R’基を説明し、式中、R’は、本明細書で先に定義されたとおりである。
【0181】
上記の用語は、そのチオ誘導体(チオカルボキシおよびチオカルボニル)も包含する。
【0182】
「チオカルボニル」という用語は、-C(=S)-R’基を説明し、式中、R’は、本明細書で先に定義されたとおりである。
【0183】
「チオカルボキシ」基は、-C(=S)-OR’基を説明し、式中、R’は本明細書で定義されるとおりである。
【0184】
「スルフィニル」基は、-S(=O)-R’基を説明し、式中、R’は本明細書で定義されるとおりである。
【0185】
「スルホニル」基または「スルホナート」基は、-S(=O)-R’基を説明し、式中、Rxは本明細書で定義されるとおりである。
【0186】
「カルバミル」基または「カルバマート」基は、-OC(=O)-NR’R”基を説明し、式中、R’は、本明細書で定義されるとおりであり、R”はR’について定義されるとおりである。
【0187】
「ニトロ」基は、-NO2基を指す。
【0188】
「シアノ」基または「ニトリル」基は、-C≡N基を指す。
【0189】
本明細書で使用される場合、「アジド」という用語は、-N基を指す。
【0190】
「スルホンアミド」という用語は、-S(=O)2-NR’R”基を指し、R’およびR”は、本明細書で定義されるとおりである。
【0191】
「ホスホニル」または「ホスホナート」という用語は、-O-P(=O)(OR’)2基を説明し、R’は、本明細書で先に定義されたとおりである。
【0192】
「ホスフィニル」という用語は、-PR’R”基を説明し、R’およびR”は本明細書で先に定義されたとおりである。
【0193】
「アルカリール」という用語は、本明細書で定義されるとおり、アリールによって置換した、本明細書で説明されるようなアルキルを説明する。例示的なアルカリールは、ベンジルである。
【0194】
「ヘテロアリール」という用語は、環中に、例えば、窒素、酸素および硫黄などを有し、加えて、完全に共役したπ電子系を有する単環式環または縮合環(すなわち、隣接する対の原子を共有する環)基を説明する。ヘテロアリール基の例としては、限定されないが、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、イソキノリンおよびプリンが挙げられる。ヘテロアリール基は、本明細書で上述されたように、1つ以上の置換基によって置換されてもまたは非置換であってもよい。いくつかの実施形態では、ヘテロアリール基は、Rのうちの1つ以上(例えば、2、3、4または5つ)によって置換され得、Rは、本明細書で説明されるとおりである。代表的な例は、チアジアゾール、ピリジン、ピロール、オキサゾール、インドール、プリンなどである。
【0195】
「ハロアルキル」という用語は、1つ以上のハロゲン化物によってさらに置換された、先に定義されたようなアルキル基を説明する。
【0196】
明確にするために、別個の実施形態の文脈において説明される本発明の特定の特徴がまた、単一の実施形態で組み合わせて提供され得ることが理解される。逆に、簡潔にするために単一の実施形態の文脈において説明される本発明の様々な特徴はまた、別々に、または任意の好適な部分組み合わせで、あるいは本発明の任意の他の説明された実施形態で好適なものとして提供され得る。様々な実施形態の文脈で説明されている特定の特徴は、実施形態がそれらの要素なしでは機能しない場合を除いて、それらの実施形態の本質的な特徴とみなされるべきではない。
【0197】
上記に記述され、かつ以下の特許請求の範囲のセクションで特許請求されるような本発明の様々な実施形態および態様は、以下の実施例において実験的証拠を見出す。
【実施例
【0198】
材料および方法
実験手順:すべての空気および湿気に敏感な試薬の取り扱いには、標準的な不活性雰囲気技術を使用した。反応は、オーブンで乾燥されたガラス器具(オーブンの温度を100~120℃に維持した)中にてN2雰囲気下で行った。必要なすべての溶媒は、使用前に標準的な手順および技術に従って乾燥させた。室温とは28~30℃を指し、反応の実際の温度は合成手順に記載される。ロータリーエバポレーターを使用して、バルク溶液を減圧下で蒸発させた。
【0199】
反応を薄層クロマトグラフィー(MerckからのTLCシリカゲル60 F254)によってモニターし、短波/長波のデュアルUV蛍光(λmax=254および365nm)で可視化し、ヨウ素およびKMnO4染色で発色させた後、必要に応じて加熱した。
【0200】
カラムクロマトグラフィーをシリカ(230~400メッシュサイズ)上で実施した。融点は、Stuart融点測定器にて測定され、補正されていない。フーリエ変換赤外(FT-IR)スペクトルは、600~4000cm-1の領域にユニバーサルZn-Se ATR(減衰全反射)アクセサリを備えるBruker Optics ALPHA-E分光計にて取得した。
【0201】
NMR分光法:1H NMR分光法の測定は、特に明記しない限り、内部標準としてCDCl(δ7.26)を用いてBruker 400MHzNMR分光計にて行った。13C NMRスペクトルは、特に明記しない限り、内部標準としてCDCl(δ77.16)を用いて101MHzで記録した。化学シフト(δ)は、TMSからのppmダウンフィールドで示され、カップリング定数(J)は、ヘルツ(Hz)である。
【0202】
1H NMRスペクトルは、次のように報告される:δ/ppm(多重度、カップリング定数とそれに続くプロトン数)。1H NMRの多重度は、次のように省略される:s=シングレット、d=ダブレット、dd=ダブレットのダブレット、t=トリプレット、dt=トリプレットのダブレット、q=カルテット、dq=カルテットのダブレット、m=マルチプレット。
【0203】
HR質量分析:高分解能質量スペクトルを、TechnionでのMSサービスによって記録した。ESI-MS(m/z):Waters Micromass LCT premier機器にて70eVで、ポジティブモードまたはネガティブモードで記録した。APCIを、Bruker Impact II機器にて記録した。
【0204】
実施例1
ヒドロペルオキシド系化合物の形成のためのベンジルsp C-H酸素化
クメンおよび誘導体の酸素化のための一般手順A(結果を図1にまとめた):
オーブンで乾燥した100mLの光化学フラスコ内に、1.0mmol(0.12g、0.14mL)のクメンおよび9,10-ジブロモアントラセン(10mol%、0.034g)を添加した。25mLのアセトニトリルを添加し、溶液を太陽光および大気にさらして、明記された時間数にわたって撹拌した。反応の進行を薄層クロマトグラフィー(TLC)によってモニターした。生成物の転化率および比率を、H NMRによって決定した。例示的な転化比率および収率を表1に示す。
【0205】
青色LEDを使用するsp C-H酸化のための一般手順C(化合物2u、2g、2j、2m、2l、2o、2p):
オーブンで乾燥されたフラスコ内で、基質(1mmol、1.0当量)および9,10-ジブロモアントラセン(0.1当量)を、25mLのアセトニトリル中に溶解させた。溶液を、室温で空気に開放しながら、青色LEDからの光にさらして撹拌した。温度は、通常15~20℃であった。反応をTLCによってモニターした。
【0206】
反応の完了後、任意選択的に混合物をカラムクロマトグラフィー(標準的な分離条件下)によって精製して、対応する生成物を得た。
【0207】
9,10-ジブロモ-アントラセンは、Pyrex容器(330nmでのカットオフによる光のフィルター処理)ソーラー光またはLEDランプを使用して反応の効率的な開始剤として機能することが見出された。(表1、エントリー1)。最初に、本発明者らは、電荷移動錯体を得るために、N-ブロモ-およびN-クロロスクシンイミド、ニトロキシド、ならびにCClを様々なアミンとの組み合わせで含む一連のラジカル開始剤または試薬を調査した。これらの開始剤システムはいずれも、クメンヒドロペルオキシドを任意の感知可能な量で得られなかった。加えて、クメンヒドロペルオキシドの形成は、アセトフェノン(5)および2-フェニル-2-プロパノール(4)などの他の典型的なクメンヒドロペルオキシド副生成物の形成を変わらずに伴う。
【0208】
10mol%の9,10-ジブロモアントラセンは、最もきれいで、最も効率的な転化率をもたらす。これらの条件下で、93%のクメン(2)が転化され、10%の2-フェニル-2-プロパノール(4)および4%のアセトフェノン(5)とともに>87%の収率でクメンヒドロペルオキシド(3)が得られる(表1、エントリー1の収率はすべて既知の生成物および出発材料の比率によって決定した)。より少量の9,10-ジブロモ-アントラセン(表1、エントリー2)は、他の点では同一の条件下においてクメン(1)の不完全な転化率をもたらす(表1、エントリー2およびエントリー3)。
【0209】
条件の最適化は、酸素の溶解度が比較的高いことで周知のアセトニトリルが、反応に好ましい溶媒とみなすことができることを示した。濃度を2倍にすると、クメンの転化率はより低くなった(表1、エントリー4)。反応時間を9時間に延長すると、クメンの転化率は約95%となるが、アセトフェノンの形成もより多くなる(表1、エントリー6)。可視光源として青色LEDランプを使用すると、8時間で同等の結果が達成されるが(表1、エントリー5)、エントリー1の条件よりもアセトフェノンの量がわずかに多くなる。
【0210】
反応混合物からの9,10-アントラキノンの単離は、9,10-ジブロモ-アントラセンが触媒ではなく開始剤として作用することを示している。しかしながら、9,10-ジブロモアントラセンを一重項酸素形成のために周知の増感剤である9,10-アントラキノンに置き換えると、主要生成物として2-フェニル-2-プロパノール(4)およびアセトフェノン(5)が形成される(表1、エントリー7)。
【0211】
主に360nm未満を吸収するアントラキノンによる一重項酸素形成を回避することを試みるために、360nmのカットオフ周波数によるガラスフィルターを使用して反応を行った。しかしながら、これらの条件下では、反応速度が低下し、18時間でわずか53%の転化率に到達するだけである(表1、エントリー8)。代替的に、アントラキノンは、周知の合成手順によって、9,10-ジブロモアントラセンに容易に再転化することができる。
【0212】
光源がない状態では、反応は生じない(表1、エントリー9)。4時間の光照射後、反応を暗所に保持した場合、暗所ではほとんど転化が生じなかった(表1、エントリー10)。
【0213】
さらに、クメンの高い転化率のために10mol%の開始剤が必要であり、5または7mol%では不完全な反応をもたらす(表1、エントリー2および3)。9,10-ジブロモ-アントラセンがない状態では(表1、エントリー11)、クメンヒドロペルオキシド(3、R=H)の形成は生じない。ラジカル反応の指標は、10mol%のTEMPOの存在下で行われる実験であると想定されている(表1、エントリー12)。TEMPOは、臭素ラジカル8または11のような炭素中心ラジカル(スキーム3)と容易に反応し、それによってラジカル連鎖反応を阻害するニトロキシドである。実際、この反応では、9,10-ジブロモアントラセンから2つのBrラジカルが形成される可能性があるにも関わらず、反応は生じない(スキーム3に示すように)。反応に追加のHBr(10mol%)を添加しても効果は少ないが、ヒドロペルオキシド3(R=H)の分解がさらに生じ、アセトフェノン5(R=H)およびアルコール4(R=H)が得られた(表1、エントリー13)。
【0214】
NHPIの量を変えて添加することは、いずれの利点も得られず、それが反応を阻害することもなかった(表1、エントリー1対エントリー14および15を参照)。いつものように、スケールアップは光化学反応の弱点(Achilles heel)である。500mLのPyrex容器内で1.2グラムスケールで反応を実行したとき、転化率はわずか14%まで低下した。この実験から、アントラキノン(47%)とともに、回収された開始剤(41%の単離収率)が単離された。したがって、本発明者らは、青色LEDを使用してこの実験を行った(表1、エントリー16)。反応は、93%の転化率に到達するのに33時間を必要とし、ヒドロペルオキシド3(R=H)、アルコール4(R=H)、およびアセトフェノン5(R=H)の比率が47対21対32となった。
【0215】
反応に対する電子供与および電子吸引置換基の影響の予備調査として、本発明者らは、反応における基質として1-イソプロピル-4-メトキシベンゼン(2、R=OMe)および1-クロロ-4-イソプロピルベンゼン(2、R=Cl)を試験した(表1、エントリー17~19)。1-イソプロピル-4-メトキシベンゼン(2、R=OMe)では、7時間の照射後に唯一の生成物としてp-メトキシ-アセトフェノン5(R=OMe)が得られた(表1、エントリー18)。出発材料は残らなかった。これが中間体ヒドロペルオキシドの分解によるものであるかどうかを試験するために、したがって、反応を同様に4時間実行した。興味深いことに、この実験では、89%の出発1-イソプロピル-4-メトキシベンゼン(2、R=OMe)が反応して、46対56の比率にて対応するヒドロペルオキシド3(R=OMe)およびp-メトキシ-アセトフェノン5(R=OMe)が得られた(表1、エントリー17)。これは、ケトン5(R-OMe)の主要部分またはすべてが、ヒドロペルオキシド3(R=OMe)から形成されていることを明確に示している。対照的に、1-クロロ-4-イソプロピルベンゼン(2、R=Cl)は、クメン(2、R=H)と同様の様式で反応した。したがって、標準条件下での9時間の照射後、95%の転化率を達成した。ヒドロペルオキシド3(R=Cl)、アルコール4(R=Cl)、およびケトン5(R=Cl)は、77対4対16の比率で形成された(表1、エントリー19)。数字(3、4、5)は、図1に示す化合物を表す。
【0216】
実施例2
カルボニル系化合物の形成のためのベンジルC-H酸素化
太陽光を使用するベンジルC-H酸素化のための一般手順B(化合物2b~2f、2h、2i、2k、2n、2r~2t、2v、および2y):
オーブンで乾燥されたフラスコ内で、基質(1mmol、1.0当量)および9,10-ジブロモアントラセン(0.1当量)を、25mLのアセトニトリル中に溶解させた。溶液を、空気に開放しながら、太陽光にさらして撹拌した。内部温度は32~35℃であった。反応をTLCによってモニターした。反応の完了後、混合物を50mLの丸底フラスコに移し、減圧下で濃縮した。濃縮した反応混合物に、30mLのエチルアセテートを添加した。有機層を、飽和NaHCO溶液(10mL)を用いて洗浄し、乾燥させ(NaSO)、減圧下で濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン中にて2→50%EtOAc)によって精製し、対応する生成物を得た。
【0217】
青色LEDを使用するベンジルC-H酸素化のための一般手順C:
オーブンで乾燥されたフラスコ内で、基質(1mmol、1.0当量)および9,10-ジブロモアントラセン(0.1当量)を、25mLのアセトニトリル中に溶解させた。溶液を、室温で空気に開放しながら、青色LEDからの光にさらして撹拌した。温度は、通常15~20℃であった。反応をTLCによってモニターした。反応の完了後、混合物を50mLの丸底フラスコに移し、減圧下で濃縮した。濃縮した反応混合物に、30mLのエチルアセテートを添加した。有機層を、飽和NaHCO溶液(10mL)を用いて洗浄し、乾燥させ(NaSO)、減圧下で濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(n-ヘキサン中にて2→50%EtOAc)によって精製し、対応する生成物を得た。
【0218】
本発明者らは、範囲および官能基選択性を概説するために、一連の官能化二級アルキルベンゼン基質からのベンジルケトンの合成を調査した(式2b~2yを参照)。一般に、ケトンはきれいに形成され、予想どおり、残留ヒドロペルオキシド中間生成物は観察することができなかった。周囲温度で反応を実行することは、アルコール系の副生成物を形成するために、中間体ヒドロペルオキシド13の弱いペルオキシル結合の熱的開裂を防止するので、このプロトコルの利点である。
【0219】
本発明者らは、青色LED光およびソーラー光の両方の使用を調査した。両方の光源について、反応は非常にクリーンであり、生成物のバランスは単に出発材料を回収するのみである。すなわち、収率はほぼ転化割合でもあり、単に光照射時間を延長することによってより高い収率を達成することができる。
【0220】
ジフェニル-メタン、1-フェニル-プロパン、およびノニル-ベンゼンなどの単純なアルキルベンゼンは、それぞれケトンをきれいに生成する。ソーラー光またはLEDを使用する生成物には、識別可能な速度の差はないようにみえる。LEDを使用する反応は、通常、屋内で15~20℃で実行されたが、ソーラー光を照射する状態で屋外で実行された反応は、通常、32~35℃の内部温度に達した。
【0221】
1,3,5-トリエチルベンゼンの場合、単一の生成物のみが、太陽の下で9時間後に62%の収率で単離された。テトラヒドロナフタレンでは、青色LEDランプを用いて14時間照射した後、70%の単離収率でカルボニル化合物が得られる。反応は、分岐鎖の存在下でベンジル位に対して選択性を維持し、11時間後(LED)に72%の収率で生成物が得られる。
【0222】
本発明者らは、アルキル側鎖における官能基の存在を調査した。1-フェニルエタンの反応により、わずか8時間の照射(LED)後に91%の単離収率でアセトフェノンが得られた。1-ヒドロキシ-3-フェニル-プロパンは、9時間の照射後に、38%の収率で対応するケトンをきれいに得る。単純な1-フェニル-プロパンと比較して、反応は著しく遅い。これは、水素結合による拡散効率の低下によるものであると推測した。実際、アルコールをエステルに置き換えると、速度および転化率が増え、対応するカルボニルが10時間後に61%の収率で単離された。類似のメチルエーテルに対しても同じことを観察することができ、9時間後に62%の収率で対応するカルボニルが得られた。類似のアセトアミドを使用すると、転化レートが再び減少し、33時間のLED照射後に81%の収率で対応するカルボニルが単離される。対照的に、4-フネイル(phneyl)-ブタン酸の酸化では、9時間後に59%の収率で対応するカルボニルが得られた。
【0223】
選択性は、4-フェニル-ブタン酸メチルエステルでも観察され、14時間のソーラー光照射後に58%の単離収率で2kが得られる。アミド窒素はまた、1-(3,4-ジヒドロキノリン-1(2H)-イル)エタン-1-オンにおいても許容され、64%の収率で2nが得られる。対照的に、2つの異なるベンジル位が存在する場合、1つは単純で1つはアルコキシであり、所望の生成物である2mは、約30%のアセトフェノンおよび他の未確認の分解生成物とともに54%の収率で分離された。2つの異なるベンジル位を同時に酸化して、28時間のLED照射後に68%の収率でジケトン2lを得ることができる。芳香族環の置換は、十分に許容される。例えば、4-アセトキシ-1-プロピル-ベンゼンはきれいに反応し、16時間後(LED)に62%の収率で2oが得られる。2pのようなヘテロ芳香族基も許容される。これは薬剤用途にとって重要である。
【0224】
興味深いことに、スルフィドは、12%の収率で分離されたそのスルホキシド2yと一緒に分離された、生成物2x(79%の収率)に見ることができるように、ベンジル酸化ではなく、スルホキシドを介してスルホンに酸化される。
【0225】
最後に、本発明者らは、いくつかのアルデヒドを調製する可能性を試験した。本発明者らは、本明細書に列挙される反応条件下で、48~66%の収率でアルデヒド(2r~2t)を首尾よく得た。
【0226】
例示的なベンジル化合物の酸化のためのスペクトルデータおよび合成手順は、本明細書で上にさらに説明される。
【0227】
本発明は具体的に記載されているが、当業者は、多くの変形および修正を行うことができることを理解するであろう。したがって、本発明は、具体的に記載された実施形態に限定されると解釈されるべきではなく、本発明の範囲および概念は、以下の特許請求の範囲を参照することによってより容易に理解されるであろう。

図1-1】
図1-2】
図2-1】
図2-2】
【国際調査報告】