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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-30
(54)【発明の名称】抗CSF-1R抗体
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20221122BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20221122BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20221122BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20221122BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C12Q1/02
G01N33/574 A
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022519164
(86)(22)【出願日】2020-09-25
(85)【翻訳文提出日】2022-03-29
(86)【国際出願番号】 EP2020076850
(87)【国際公開番号】W WO2021058718
(87)【国際公開日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】19199834.3
(32)【優先日】2019-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BRIJ
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ.ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100157923
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴喰 寿孝
(72)【発明者】
【氏名】カサゴルダ,バルリベラ・ダビド
(72)【発明者】
【氏名】ゲルク,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】シュレームル,ミヒャエル
【テーマコード(参考)】
4B063
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA19
4B063QQ08
4B063QQ79
4B063QS33
4B063QX02
4H045AA11
4H045DA76
4H045EA50
(57)【要約】
本発明は、CSF-1R(コロニー刺激因子1受容体)、特にヒトCSF-1Rに結合するモノクローナル抗体又はその断片に関する。本発明は更に、試料中のCSF-1Rの検出のための本発明のモノクローナル抗体又はその断片のin vitro使用に関する。本発明のモノクローナル抗体又はその断片と、ヒトCSF-1Rポリペプチド等のCSF-1Rとを含む複合体も本発明によって更に包含される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CSF-1R(olony timulating actor 1 eceptor:コロニー刺激因子1受容体)に結合するモノクローナル抗体又はその断片であって、前記モノクローナル抗体又はその断片が、配列番号2に示される配列を有する軽鎖可変ドメインと少なくとも85%同一の軽鎖可変ドメインを含み、前記モノクローナル抗体又はその断片が、配列番号3に示される配列を有する重鎖可変ドメインと少なくとも85%同一の重鎖可変ドメインを含む、モノクローナル抗体又はその断片。
【請求項2】
CSF1-RがヒトCSF-1Rである、請求項1に記載のモノクローナル抗体又はその断片。
【請求項3】
前記モノクローナル抗体又はその断片のエピトープが、配列番号1(YKNIHLEKKY)に示される配列を含む、請求項1又は2に記載のモノクローナル抗体又はその断片。
【請求項4】
前記エピトープの2つのチロシン残基のうちの少なくとも1つがリン酸化されている、請求項3に記載のモノクローナル抗体又はその断片。
【請求項5】
前記エピトープの両方のチロシン残基がリン酸化されている、請求項4に記載のモノクローナル抗体又はその断片。
【請求項6】
前記モノクローナル抗体又はその断片が、配列番号2に示される配列を有する軽鎖可変ドメインと少なくとも90%同一の軽鎖可変ドメインを含み、且つ/又は前記モノクローナル抗体又はその断片が、配列番号3に示される配列を有する重鎖可変ドメインと少なくとも90%同一の重鎖可変ドメインを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体又はその断片。
【請求項7】
前記モノクローナル抗体又はその断片が、配列番号2に示される配列を有する軽鎖可変ドメインと少なくとも95%同一の軽鎖可変ドメインを含み、且つ/又は前記モノクローナル抗体又はその断片が、配列番号3に示される配列を有する重鎖可変ドメインと少なくとも95%同一の重鎖可変ドメインを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体又はその断片。
【請求項8】
モノクローナル抗体又はその断片であって、
(a)以下を含む軽鎖可変ドメイン:
(a1)配列番号4(QSSESVYSNNFLS)に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1とは合計3個以下のアミノ酸の付加、置換及び/又は欠失により異なる軽鎖CDR1、
(a2)配列番号5(EASKVAS)に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2とは合計3個以下のアミノ酸の付加、置換及び/又は欠失により異なる軽鎖CDR2、及び/又は
(a3)配列番号6(AGGYDVSDDA)に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3とは合計3個以下のアミノ酸の付加、置換及び/又は欠失により異なる軽鎖CDR3、
(b)以下を含む重鎖可変ドメイン:
(b1)配列番号7(TASGFSLSRYWMT)に示されるアミノ酸配列を有する重鎖CDR1とは合計3個以下のアミノ酸の付加、置換及び/又は欠失により異なる重鎖CDR1、
(b2)配列番号8(RSGNTYFADWAKG)に示されるアミノ酸配列を有する重鎖CDR2とは合計3個以下のアミノ酸の付加、置換及び/又は欠失により異なる重鎖CDR2、及び/又は
(b3)配列番号9(GGQNNGYDL)に示されるアミノ酸配列を有する重鎖CDR3とは合計3個以下のアミノ酸の付加、置換及び/又は欠失により異なる重鎖CDR3、
又は
(c)(a)で定義される軽鎖可変ドメインと(b)で定義される重鎖可変ドメインの両方、
を含む、モノクローナル抗体又はその断片。
【請求項9】
前記モノクローナル抗体又はその断片が、
(a)以下を含む軽鎖可変ドメイン:
(a1)配列番号4(QSSESVYSNNFLS)に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1とは1個以下のアミノ酸の付加、置換又は欠失により異なる軽鎖CDR1、
(a2)配列番号5(EASKVAS)に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2とは1個以下のアミノ酸の付加、置換又は欠失により異なる軽鎖CDR2、及び/又は
(a3)配列番号6(AGGYDVSDDA)に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3とは1個以下のアミノ酸の付加、置換又は欠失により異なる軽鎖CDR3、
(b)以下を含む重鎖可変ドメイン:
(b1)配列番号7(TASGFSLSRYWMT)に示されるアミノ酸配列を有する重鎖CDR1とは1個以下のアミノ酸の付加、置換又は欠失により異なる重鎖CDR1、
(b2)配列番号8(RSGNTYFADWAKG)に示されるアミノ酸配列を有する重鎖CDR2とは1個以下のアミノ酸の付加、置換又は欠失により異なる重鎖CDR2、及び/又は
(b3)配列番号9(GGQNNGYDL)に示されるアミノ酸配列を有する重鎖CDR3とは1個以下のアミノ酸の付加、置換又は欠失により異なる重鎖CDR3、
又は
(c)(a)で定義される軽鎖可変ドメインと(b)で定義される重鎖可変ドメインの両方、
を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体又はその断片。
【請求項10】
前記モノクローナル抗体又はその断片が、
(a)以下を含む軽鎖可変ドメイン:
(a1)配列番号4(QSSESVYSNNFLS)に示される配列を有する軽鎖CDR1と、
(a2)配列番号5(EASKVAS)に示される配列を有する軽鎖CDR2と、
(a3)配列番号6(AGGYDVSDDA)に示される配列を有する軽鎖CDR3、
を含み、
(b)以下を含む重鎖可変ドメイン:
(b1)配列番号7(TASGFSLSRYWMT)に示される配列を有する重鎖CDR1と、
(b2)配列番号8(RSGNTYFADWAKG)に示される配列を有する重鎖CDR2と、
(b3)配列番号9(GGQNNGYDL)に示される配列を有する重鎖CDR3、
を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体又はその断片。
【請求項11】
試料中のCSF-1Rの検出のための、請求項1~10のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体又はその断片のIn vitro使用。
【請求項12】
(a)前記試料ががんの処置のための候補化合物と接触させたものであるか、又は前記試料が前記候補化合物と接触させた対象から得たものであり、
(b)前記試料ががん細胞又はがん組織であり、
(c)前記対象がヒト対象等の哺乳動物の対象であり、
(d)前記CSF-1Rの検出がCSF-1Rの定量的検出であり、且つ/又は
(e)前記CSF-1Rの検出がCSF-1Rの免疫組織化学的検出である、請求項11に記載のin vitro使用。
【請求項13】
試料中のCSF-1Rを検出する方法であって、
(a)CSF-1Rを含む試料を、請求項1~10のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体又はその断片と接触させ、それによってCSF-1Rと前記モノクローナル抗体又はその断片とを含む複合体を形成すること、及び
(b)工程(a)で形成された複合体を検出し、それによって前記試料中のCSF-1Rを検出すること、を含む、方法。
【請求項14】
請求項1~10のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体又はその断片と、CSF-1Rと、を含む複合体。
【請求項15】
前記CSF-1Rが、ヒトCSR-1Rの699位に対応する位置にリン酸化チロシン残基及び/又はヒトCSR-1Rの708位に対応する位置にリン酸化チロシン残基を含む、請求項11若しくは12に記載のin vitro使用、請求項13に記載の方法、又は請求項14に記載の複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CSF-1R(olony timulating actor 1 eceptor:コロニー刺激因子1受容体)、特にヒトCSF-1Rに結合するモノクローナル抗体又はその断片に関する。本発明は更に、試料中のCSF-1Rの検出のための本発明のモノクローナル抗体又はその断片のin vitro使用に関する。本発明のモノクローナル抗体又はその断片と、ヒトCSF-1Rポリペプチド等のCSF-1Rとを含む複合体も本発明によって更に包含される。
【背景技術】
【0002】
ヒトCSF-1受容体(CSF-1R;コロニー刺激因子1受容体)は増殖因子であり、c-fmsがん原遺伝子によってコードされる(例えば、Roth,P.,and Stanley,E.R.,Curr.Top.Microbiol.Immunol.181(1992)141-167において総説される)。
【0003】
現在、CSF-1Rの細胞外ドメインに結合する2つのCSF-1Rリガンドが知られている。1つ目はCSF-1(コロニー刺激因子1)であり、ジスルフィド結合ホモ二量体として細胞外に見出される(Stanley et al.,Stem Cells 12 Suppl.1(1995)15-24)。2つ目はIL-34(Hume et al.,Blood 119(2012)1810-1820)である。CSF-1Rシグナル伝達の主な生物学的効果は、造血前駆細胞からマクロファージ系株への分化、増殖、遊走、及び生存である。CSF-1Rの活性化は、そのCSF-1RリガンドであるCSF-1及びIL-34によって媒介される。CSF-1Rに対するCSF-1の結合は、ホモ二量体の形成及びチロシンリン酸化によるキナーゼの活性化を誘導する(Stanley et al.,Mol.Reprod.Dev.46(1997)4-10)。
【0004】
CSF-1Rは、多くの疾患及び障害に関連している(例えば、Cannarile,M.A.,et al.(2017),J Immunother Cancer 5(1):53,Ries,C.H.,et al.(2014),Cancer Cell 25(6):846-859を参照されたい)。例えば、CSF-1Rは、炎症性、がん及び骨の障害の開始において重要な役割を果たす。したがって、多くのCSF-1R阻害剤(小分子阻害剤及びモノクローナル抗体等)が記載されており、臨床試験で分析されている(El-Gamal et al.,J Med Chem.2018,61(13):5450-5466によって総説される)。
【0005】
抗CSF-1R抗体は、例えば、国際公開第2011/123381号、国際公開第2011/140249号及び国際公開第2012/110360号に開示されている。
【0006】
CSF-1受容体の細胞外ドメイン(CSF-1R-ECD)は、5つのサブドメイン(D1~D5)を含む。生物学的に活性なホモ二量体CSF-1は、サブドメインD1~D3内のCSF-1Rに結合する。細胞外ドメインのサブドメインD4~D5は、CSF-1結合に関与しない(Wang et al.,Molecular and Cellular Biology 13(1993)5348-5359)。サブドメインD4は、二量体化に関与している(Pixley et al.,Trends Cell Biol.14(2004)628-638)。
【0007】
多くの治療候補抗CSF-1R抗体は、CSF-1受容体(CSF-1R-ECD)の細胞外ドメインに結合する。例えば、国際公開第2009/026303号及び国際公開第2009/112245号は、細胞外ドメインの最初の3つのサブドメイン(D1~D3)内のCSF-1Rに結合する抗CSF-1R抗体を開示している。国際公開第2011/070024号は、二量体化ドメイン(D4~D5)内のCSF-1Rに結合する抗CSF-1R抗体を開示している。
【0008】
CSF-1受容体の細胞外ドメインに結合する抗体に加えて、CSF-1Rキナーゼドメインに結合する抗体等の他のドメインに結合する抗体が記載されている。例えば、CSF-1Rのリン酸化部位に結合するポリクローナル抗体は、ホスホ-CSF1R(Tyr561)、ホスホ-CSF1R(Tyr699)、ホスホ-CSF1R(Tyr708)、ホスホ-CSF1R(Tyr723)、ホスホ-CSF1R(Tyr809)、ホスホ-CSF1R(Tyr921)等、Thermo Fisherから市販されている。ポリクローナル抗体は、免疫原として化学合成されたホスホペプチドを使用することによって生成された。
【0009】
また、ヒトCSF-1R受容体タンパク質のTyr708を囲む残基に相当する合成ホスホペプチドでウサギを免疫することによりモノクローナル抗体を作製した。「ホスホ-M-CSF受容体(Tyr708)(D5F4Y)ウサギmAb#14591」と呼ばれる抗体は、Bioke(オランダ、ライデン)から市販されている。抗体は、Tyr708でリン酸化された場合にのみCSF-1Rの内因性レベルを認識するが、ホスホ-Src等の他の活性化タンパク質チロシンキナーゼと交差反応し得る。したがって、抗体は免疫組織化学(IHC)に適していない可能性がある。
【0010】
国際公開第2012/150320号は、抗体の産生のための足場技術を記載している。この文書は、ペプチジル-プロリルシス/トランスイソメラーゼ又はFKBPドメインファミリーメンバーの1つ以上の断片を含む融合ポリペプチド、及び抗体スクリーニング/選択のための方法におけるその使用、エピトープマッピングのための使用、並びに融合ポリペプチドによって提示される免疫原性ペプチド又は二次構造に特異的に結合する抗体の産生のための免疫原としてのその使用を記載する。国際公開第2015/044083号は、テルムス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)SlyD FKBPドメインが抗体を生成するための融合ポリペプチドに適していることを開示している。
【0011】
本発明者らは、ヒトCSF-1Rのキナーゼドメインの断片をテルムス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)SlyD FKBP足場に移植した。作製した融合ポリペプチドを、ウサギにおけるモノクローナル抗体の作製のための免疫原として使用した。抗体は、CSF-1R、特に「1H11」と呼ばれる抗体に対して高い抗体/受容体親和性及び特異性を示すことが示された。抗体は優れた免疫組織化学的性能を示したことから、CSF-1Rを標的とする小分子又は抗体を用いた臨床試験に適用することができた。驚くべきことに、抗体は、天然及び変性CSF-1Rの両方を検出することができた。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、CSF-1R(olony timulating actor 1 eceptor:コロニー刺激因子1受容体)、特にヒトCSF-1Rに結合するモノクローナル抗体又はその断片に関する。
【0013】
本発明の一実施形態では、モノクローナル抗体又はその断片は、配列番号2に示される配列を有する軽鎖可変ドメインと少なくとも85%同一の軽鎖可変ドメインを含み、且つ/又は当該モノクローナル抗体又はその断片は、配列番号3に示される配列を有する重鎖可変ドメインと少なくとも85%同一の重鎖可変ドメインを含む。
【0014】
本発明の一実施形態では、モノクローナル抗体又はその断片は、
(a)以下を含む軽鎖可変ドメイン:
(a1)配列番号4(QSSESVYSNNFLS)に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1とは合計3個以下のアミノ酸の付加、置換及び/又は欠失により異なる軽鎖CDR1、
(a2)配列番号5(EASKVAS)に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2とは合計3個以下のアミノ酸の付加、置換及び/又は欠失により異なる軽鎖CDR2、及び/又は
(a3)配列番号6(AGGYDVSDDA)に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3とは合計3個以下のアミノ酸の付加、置換及び/又は欠失により異なる軽鎖CDR3、
(b)以下を含む重鎖可変ドメイン:
(b1)配列番号7(TASGFSLSRYWMT)に示されるアミノ酸配列を有する重鎖CDR1とは合計3個以下のアミノ酸の付加、置換及び/又は欠失が異なる重鎖CDR1、
(b2)配列番号8(RSGNTYFADWAKG)に示されるアミノ酸配列を有する重鎖CDR2とは合計3個以下のアミノ酸の付加、置換及び/又は欠失により異なる重鎖CDR2、及び/又は
(b3)配列番号9(GGQNNGYDL)に示されるアミノ酸配列を有する重鎖CDR3とは合計3個以下のアミノ酸の付加、置換及び/又は欠失により異なる重鎖CDR3、
又は
(c)(a)で定義される軽鎖可変ドメインと(b)で定義される重鎖可変ドメインの両方、を含む。
【0015】
本発明のモノクローナル抗体又はその断片の一実施形態では、モノクローナル抗体又はその断片のエピトープは、配列番号1(YKNIHLEKKY)に示される配列を含む。好ましくは、当該エピトープの2つのチロシン残基のうちの少なくとも1つ、特に両方のチロシン残基がリン酸化される。
【0016】
一実施形態では、モノクローナル抗体又はその断片は、
(a)以下を含む軽鎖可変ドメイン:
(a1)配列番号4(QSSESVYSNNFLS)に示される配列を有する軽鎖CDR1、
(a2)配列番号5(EASKVAS)に示される配列を有する軽鎖CDR2、及び
(a3)配列番号6(AGGYDVSDDA)に示される配列を有する軽鎖CDR3、
並びに
(b)以下を含む重鎖可変ドメイン:
(b1)配列番号7(TASGFSLSRYWMT)に示される配列を有する重鎖CDR1、
(b2)配列番号8(RSGNTYFADWAKG)に示される配列を有する重鎖CDR2、及び
(b3)配列番号9(GGQNNGYDL)に示される配列を有する重鎖CDR3、を含む。
【0017】
本発明は更に、試料中のCSF-1Rの検出のための本発明のいずれか1つのモノクローナル抗体又はその断片のin vitro使用に関する。
【0018】
本発明は更に、試料中のCSF-1Rを検出する方法であって、
(a)CSF-1Rを含む試料を本発明のモノクローナル抗体又はその断片と接触させ、それによってCSF-1R及び当該モノクローナル抗体又はその断片を含む複合体を形成すること、並びに
(b)工程(a)で形成された複合体を検出し、それによって上記試料中のCSF-1Rを検出すること、を含む方法を企図する。
【0019】
本発明は更に、本発明のモノクローナル抗体又はその断片と、ヒトCSF-1Rポリペプチド等のCSF-1Rとを含む複合体を企図する。
図面は以下を示す:
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】円偏光二色性分析。TtSlyD-CSF1R免疫原を用いた温度上昇/下降実験。TtSlyD-CSF1Rは、少なくとも60℃まで安定であり、冷却すると再構築する。
図2】加熱/冷却前後の免疫原TtSlyD-CSF1Rの円偏光二色性分析。TtSlyD-CSF1Rは、熱変性後に再構築する。
図3】溶液中の分析物としての捕捉抗体1H11対リン酸化TtSlyD-CSF1Rの濃度依存的動態、分析物濃度のオーバーレイ及びラングミュアフィッティングモデル(黒い直線)を示すBiacoreセンサーグラム。親和性K 0.2nM、k 5.78E+05 1/Ms、k 1.22E-04 1/s。
図4】溶液中の4つの分析物の300nM単一分析物濃度注入のオーバーレイを示すBiacoreセンサーグラム。最も高いシグナル振幅は、分析物TtSlyD-CSF1R(破線)で見られ、2番目に高いシグナル応答は、分析物pY723リン酸化ペプチドCSF1R[716-729](太い黒線)で見られた。陰性対照分析物は、バックグラウンド結合シグナルレベルのみを有するTtSlyDsh3及び非リン酸化ペプチドCSF1R[716-729](灰色)である。抗体1H11は、ホスホチロシン特異的エピトープ結合特性を示す。
図5】CelluSpot(商標)エピトープマッピング技術。右:CSF-1R 15-merペプチドを二連で含むスライドガラス。左:CSF-1Rペプチド配列は、単一アミノ酸コードとして与えられる。pYはリン酸化チロシンを意味する。 配列番号13:P-E-G-G-V-D-pY-K-N-I-H-L-E-K-K, 配列番号14:E-G-G-V-D-pY-K-N-I-H-L-E-K-K-pY 配列番号15:G-G-V-D-pY-K-N-I-H-L-E-K-K-pY-V 配列番号16:G-V-D-pY-K-N-I-H-L-E-K-K-pY-V-R 配列番号17:V-D-pY-K-N-I-H-L-E-K-K-pY-V-R-R 配列番号18:D-pY-K-N-I-H-L-E-K-K-pY-V-R-R-D 配列番号19:pY-K-N-I-H-L-E-K-K-pY-V-R-R-D-S 配列番号20:K-N-I-H-L-E-K-K-pY-V-R-R-D-S-G 配列番号21:N-I-H-L-E-K-K-pY-V-R-R-D-S-G-F CSF-1R配列による単一アミノ酸工程分析によって、1H11エピトープ配列を決定した。
図6】IHC二重染色。弱い染色のみを示した本発明の基礎となる研究で単離された他の抗体(図示せず)と比較して、抗体1H11は非常に強い染色を示した。
図7-1】選択された抗体のウエスタンブロット分析。(レーン1:ウエスタン標準;レーン2:NIH3T3 wt;レーン2 NIH3T3+CSF1K4;レーン4:NIH3T3+CSF1K8、レーン5:タンパク質標準)抗体1H11は最も強い染色を示し、ブロットを過度に露出した。他の試験された抗体は、弱い染色のみを示した。
図7-2】選択された抗体のウエスタンブロット分析。(レーン1:ウエスタン標準;レーン2:NIH3T3 wt;レーン2 NIH3T3+CSF1K4;レーン4:NIH3T3+CSF1K8、レーン5:タンパク質標準)抗体1H11は最も強い染色を示し、ブロットを過度に露出した。他の試験された抗体は、弱い染色のみを示した。
【発明を実施するための形態】
【0021】
上記のように、本発明は、CSF-1R(olony timulating actor 1 eceptor:コロニー刺激因子1受容体)、特にヒトCSF-1Rに結合するモノクローナル抗体又はその断片に関する。
【0022】
CSF-1Rは、受容体チロシンキナーゼのクラスIIIサブファミリーに属するポリペプチドであり、c-fmsがん原遺伝子によってコードされる。CSF-1Rの同義語は、M-CSF受容体であるマクロファージコロニー刺激因子1受容体、Fmsがん原遺伝子及びc-fmsである。CSF-1又はIL-34の結合は、受容体二量体化を誘導し、続いて自己リン酸化及び下流のシグナル伝達カスケードの活性化を誘導する。CSF-IRの活性化は、単球及びマクロファージの生存、増殖及び分化を調節する(Xiong,Y.et al.,J.Biol.Chem.286(2011)952-960)。好ましくは、本発明のモノクローナル抗体(又はその抗原結合断片)は、ヒトCSF-1Rポリペプチドに結合する。ヒトCSF-IRは、1986年以来知られている(Coussens,L.,et al,Nature 320(1986)277-280)。受容体のクローニングは、Roussel,M.F.,et al.,Nature 325(1987)549-552に初めて記載された。CSF-1Rは、一本鎖膜貫通受容体チロシンキナーゼ(RTK)であり、受容体の細胞外ドメイン(ECD)内の5つの反復Ig様サブドメインD1~D5を特徴とするRTKを含有する免疫グロブリン(Ig)モチーフのファミリーのメンバーである(Wang,Z.,et al Molecular and Cellular Biology 13(1993)5348-5359)。CSF-1Rの細胞内ドメインは、とりわけ、CSF-1Rのキナーゼドメインを含む。
【0023】
完全長ヒトCSF-1Rのアミノ酸配列は以下の通りである(配列番号10):
MGPGVLLLLLVATAWHGQGIPVIEPSVPELVVKPGATVTLRCVGNGSVEWDGPPSPHWTLYSDGSSSILSTNNATFQNTGTYRCTEPGDPLGGSAAIHLYVKDPARPWNVLAQEVVVFEDQDALLPCLLTDPVLEAGVSLVRVRGRPLMRHTNYSFSPWHGFTIHRAKFIQSQDYQCSALMGGRKVMSISIRLKVQKVIPGPPALTLVPAELVRIRGEAAQIVCSASSVDVNFDVFLQHNNTKLAIPQQSDFHNNRYQKVLTLNLDQVDFQHAGNYSCVASNVQGKHSTSMFFRVVESAYLNLSSEQNLIQEVTVGEGLNLKVMVEAYPGLQGFNWTYLGPFSDHQPEPKLANATTKDTYRHTFTLSLPRLKPSEAGRYSFLARNPGGWRALTFELTLRYPPEVSVIWTFINGSGTLLCAASGYPQPNVTWLQCSGHTDRCDEAQVLQVWDDPYPEVLSQEPFHKVTVQSLLTVETLEHNQTYECRAHNSVGSGSWAFIPISAGAHTHPPDEFLFTPVVVACMSIMALLLLLLLLLLYKYKQKPKYQVRWKIIESYEGNSYTFIDPTQLPYNEKWEFPRNNLQFGKTLGAGAFGKVVEATAFGLGKEDAVLKVAVKMLKSTAHADEKEALMSELKIMSHLGQHENIVNLLGACTHGGPVLVITEYCCYGDLLNFLRRKAEAMLGPSLSPGQDPEGGVDYKNIHLEKKYVRRDSGFSSQGVDTYVEMRPVSTSSNDSFSEQDLDKEDGRPLELRDLLHFSSQVAQGMAFLASKNCIHRDVAARNVLLTNGHVAKIGDFGLARDIMNDSNYIVKGNARLPVKWMAPESIFDCVYTVQSDVWSYGILLWEIFSLGLNPYPGILVNSKFYKLVKDGYQMAQPAFAPKNIYSIMQACWALEPTHRPTFQQICSFLQEQAQEDRRERDYTNLPSSSRSGGSGSSSSELEEESSSHLTCCEQGDIAQPLLQPNNYQFC
【0024】
上記の配列においてヒトCSF-1Rの細胞外ドメインに下線が引かれており、細胞内ドメインは斜体で示されている。最初の19アミノ酸(シグナルペプチド)は、翻訳後に切断されて、CSF-1Rポリペプチドの成熟形態を形成する。本発明の基礎となる研究で同定された抗体のエピトープ領域を太字で示す。エピトープの配列は、配列番号1(YKNIHLEKKY)にも示されている。本明細書で以下により詳細に記載されるように、699位のチロシン残基及び/又は708位のチロシン残基がリン酸化されている。
【0025】
有利には、本発明の抗体は、天然形態、すなわち未変性形態のCSF-1Rと変性形態のCSF-1Rの両方に結合する。したがって、「CSF-1R」という用語は、天然CSF-1R及び変性CSF-1を含む。
【0026】
本発明の抗体又は抗原結合断片は、以下の配列を有するものとする:
好ましくは、CSF-1R(コロニー刺激因子1受容体)に結合するモノクローナル抗体又はその断片は、好ましい順に、配列番号2に示される配列を有する軽鎖可変ドメインと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、若しくは99%同一である軽鎖可変ドメイン、及び/又は配列番号3に示される配列を有する重鎖可変ドメインと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、若しくは99%同一である重鎖可変ドメインを含む。特に、上記モノクローナル抗体又はその断片は、好ましい順に、配列番号2に示される配列を有する軽鎖可変ドメインと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、若しくは99%同一である軽鎖可変ドメインと、配列番号3に示される配列を有する重鎖可変ドメインと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、若しくは99%同一である重鎖可変ドメインとを含む。例えば、上記モノクローナル抗体又はその断片は、好ましい順に、配列番号2に示される配列を有する軽鎖可変ドメインと少なくとも85%同一である軽鎖可変ドメインと、配列番号3に示される配列を有する重鎖可変ドメインと少なくとも85%同一である重鎖可変ドメインとを含む。
【0027】
一態様では、モノクローナル抗体は、配列番号2に示される配列を有する軽鎖可変ドメインと、配列番号3に示される配列を有する重鎖可変ドメインとを含む。
軽鎖可変領域の配列は以下の通りである(配列番号2):
AAVLTQTPSPVSAAVGGTVTISCQSSESVYSNNFLSWYQLKPGQRPRLLIYEASKVASGVPSRFSGSGSGTQFTLTISGVQCDDAATYYCAGGYDVSDDAFGGGTEVLVK
重鎖可変領域の配列は以下の通りである(配列番号3):
QSVEESGGRLVTPGTPLTLTCTASGFSLSRYWMTWVRQAPGKGLEYIGWIDRSGNTYFADWAKGRFTGSKTSTTRDLKITSPTTEDTATYFCGRGGQNNGYDLWGPGTLVTVSS
【0028】
代替的又は追加的に、本発明のモノクローナル抗体又はその断片は、
(a)以下を含む軽鎖可変ドメイン:
(a1)配列番号4(QSSESVYSNNFLS)に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1とは合計3個、2個、又は特に1個以下のアミノ酸の付加、置換及び/又は欠失により異なる軽鎖CDR1、
(a2)配列番号5(EASKVAS)に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2とは合計3個、2個、又は特に1個以下のアミノ酸の付加、置換及び/又は欠失により異なる軽鎖CDR2、及び/又は
(a3)配列番号6(AGGYDVSDDA)に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3とは合計3個、2個、又は特に1個以下のアミノ酸の付加、置換及び/又は欠失により異なる軽鎖CDR3、及び/又は
(b)以下を含む重鎖可変ドメイン:
(b1)配列番号7(TASGFSLSRYWMT)に示されるアミノ酸配列を有する重鎖CDR1とは合計3個、2個、又は特に1個以下のアミノ酸の付加、置換及び/又は欠失により異なる重鎖CDR1、
(b2)配列番号8(RSGNTYFADWAKG)に示されるアミノ酸配列を有する重鎖CDR2とは合計3個、2個、又は特に1個以下のアミノ酸の付加、置換及び/又は欠失により異なる重鎖CDR2、及び/又は
(b3)配列番号9(GGQNNGYDL)に示されるアミノ酸配列を有する重鎖CDR3とは合計3個、2個、又は特に1個以下のアミノ酸の付加、置換及び/又は欠失により異なる重鎖CDR3、
又は
(c)(a)で定義される軽鎖可変ドメインと(b)で定義される重鎖可変ドメインの両方、を含む。
【0029】
代替的又は追加的に、本発明のモノクローナル抗体又はその断片は、
(a)以下を含む軽鎖可変ドメイン:
(a1)配列番号4(QSSESVYSNNFLS)に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1とは合計3個、2個、又は特に1個以下のアミノ酸の付加、置換及び/又は欠失により異なる軽鎖CDR1と、
(a2)配列番号5(EASKVAS)に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2とは合計3個、2個、又は特に1個以下のアミノ酸の付加、置換及び/又は欠失により異なる軽鎖CDR2と、
(a3)配列番号6(AGGYDVSDDA)に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3とは合計3個、2個、又は特に1個以下のアミノ酸の付加、置換及び/又は欠失により異なる軽鎖CDR3、
並びに
(b)以下を含む重鎖可変ドメイン:
(b1)配列番号7(TASGFSLSRYWMT)に示されるアミノ酸配列を有する重鎖CDR1とは合計3個、2個、又は特に1個以下のアミノ酸の付加、置換及び/又は欠失により異なる重鎖CDR1と、
(b2)配列番号8(RSGNTYFADWAKG)に示されるアミノ酸配列を有する重鎖CDR2とは合計3個、2個、又は特に1個以下のアミノ酸の付加、置換及び/又は欠失により異なる重鎖CDR2と、
(b3)配列番号9(GGQNNGYDL)に示されるアミノ酸配列を有する重鎖CDR3とは合計3個、2個、又は特に1個以下のアミノ酸の付加、置換及び/又は欠失により異なる重鎖CDR3、を含む。
【0030】
一態様では、本発明のモノクローナル抗体又はその断片は、
(a)以下を含む軽鎖可変ドメイン:
(a1)配列番号4(QSSESVYSNNFLS)に示されるアミノ酸配列の少なくとも11個、特に少なくとも12個の連続アミノ酸を含む軽鎖CDR1、
(a2)配列番号5(EASKVAS)に示されるアミノ酸配列の少なくとも5個、特に少なくとも6個の連続アミノ酸を含む軽鎖CDR2、及び/又は
(a3)配列番号6(AGGYDVSDDA)に示されるアミノ酸配列の少なくとも8個、特に少なくとも9個の連続アミノ酸を含む軽鎖CDR3、
及び/又は
(b)以下を含む重鎖可変ドメイン:
(b1)配列番号7(TASGFSLSRYWMT)に示されるアミノ酸配列の少なくとも11個、特に少なくとも12個の連続アミノ酸を含む重鎖CDR1、
(b2)配列番号8(RSGNTYFADWAKG)に示されるアミノ酸配列の少なくとも11個、特に少なくとも12個の連続アミノ酸を含む重鎖CDR2、及び/又は
(b3)配列番号9(GGQNNGYDL)に示されるアミノ酸配列の少なくとも7個、特に少なくとも8個の連続アミノ酸を含む重鎖CDR3を含む。
【0031】
一態様では、本発明のモノクローナル抗体又はその断片は、
(a)以下を含む軽鎖可変ドメイン:
(a1)配列番号4(QSSESVYSNNFLS)に示される配列を有する軽鎖CDR1、
(a2)配列番号5(EASKVAS)に示される配列を有する軽鎖CDR2、及び/又は
(a3)配列番号6(AGGYDVSDDA)に示される配列を有する軽鎖CDR3、
及び/又は
(b)以下を含む重鎖可変ドメイン:
(b1)配列番号7(TASGFSLSRYWMT)に示される配列を有する重鎖CDR1、
(b2)配列番号8(RSGNTYFADWAKG)に示される配列を有する重鎖CDR2、及び/又は
(b3)配列番号9(GGQNNGYDL)に示される配列を有する重鎖CDR3、を含む。
【0032】
一態様では、本発明のモノクローナル抗体又はその断片は、
(a)以下を含む軽鎖可変ドメイン:
(a1)配列番号4(QSSESVYSNNFLS)に示される配列を有する軽鎖CDR1と、
(a2)配列番号5(EASKVAS)に示される配列を有する軽鎖CDR2と、
(a3)配列番号6(AGGYDVSDDA)に示される配列を有する軽鎖CDR3、
及び
(b)以下を含む重鎖可変ドメイン:
(b1)配列番号7(TASGFSLSRYWMT)に示される配列を有する重鎖CDR1と、
(b2)配列番号8(RSGNTYFADWAKG)に示される配列を有する重鎖CDR2と、
(b3)配列番号9(GGQNNGYDL)に示される配列を有する重鎖CDR3、を含む。
【0033】
また、CSF-1R(コロニー刺激因子1受容体)に結合するモノクローナル抗体又はその断片は、好ましい順に、配列番号2に示される配列を有する軽鎖可変ドメインと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、若しくは100%同一である軽鎖可変ドメイン、及び/又は配列番号3に示される配列を有する重鎖可変ドメインと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、若しくは100%同一である重鎖可変ドメインを含み、
軽鎖可変ドメインが、
(a1)配列番号4(QSSESVYSNNFLS)に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1とは合計3個、2個、又は特に1個以下のアミノ酸の付加、置換及び/又は欠失により異なる軽鎖CDR1と、
(a2)配列番号5(EASKVAS)に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2とは合計3個、2個、又は特に1個以下のアミノ酸の付加、置換及び/又は欠失により異なる軽鎖CDR2と、
(a3)配列番号6(AGGYDVSDDA)に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3とは合計3個、2個、又は特に1個以下のアミノ酸の付加、置換及び/又は欠失により異なる軽鎖CDR3と、
を含み、
重鎖可変ドメインが、
(b1)配列番号7(TASGFSLSRYWMT)に示されるアミノ酸配列を有する重鎖CDR1とは合計3個、2個、又は特に1個以下のアミノ酸の付加、置換及び/又は欠失により異なる重鎖CDR1と、
(b2)配列番号8(RSGNTYFADWAKG)に示されるアミノ酸配列を有する重鎖CDR2とは合計3個、2個、又は特に1個以下のアミノ酸の付加、置換及び/又は欠失により異なる重鎖CDR2と、
(b3)配列番号9(GGQNNGYDL)に示されるアミノ酸配列を有する重鎖CDR3とは合計3個、2個、又は特に1個以下のアミノ酸の付加、置換及び/又は欠失により異なる重鎖CDR3と、を含む。
【0034】
参照ポリペプチド配列に関する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、最大パーセントの配列同一性を達成するために、配列をアライメントし、必要に応じてギャップを導入した後の、参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列のアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。好ましくは、2つの配列の配列同一性の程度を決定するために標準的なパラメータが適用される。好ましくは、同一性の程度は、比較ウィンドウにわたって2つの最適にアラインメントされた配列を比較することによって決定されるべきであり、比較ウィンドウ内のアミノ酸配列の断片は、最適なアラインメントのために、参照配列(付加又は欠失を含まない)と比較して、付加又は欠失(例えば、ギャップ又はオーバーハング)を含み得る。パーセンテージは、両方の配列において同一のアミノ酸残基が出現する位置の数を決定して一致した位置の数を産出し、一致した位置の数を比較ウィンドウ内の位置の総数で割り、結果に100を乗じて配列同一性のパーセンテージを産出することによって、算出される。比較のための配列の最適なアラインメントは、Smith and Waterman Add.APL.Math.2:482(1981)の局所相同性アルゴリズム、Needleman and Wunsch J.Mol.Biol.48:443(1970)によるホモロジーアラインメントアルゴリズム、Pearson and Lipman Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)85:2444(1988)による類似検索法、これらのアルゴリズムのコンピュータ実装(Wisconsin Genetics Software Package(Genetics Computer Group(GCG)、ウィスコンシン州マディソン、サイエンスドライブ575)のソフトウェアパッケージ、GAP、BESTFIT、BLAST、PASTA、及びTFASTA)、又は目視検査によって行われ得る。比較のために2つの配列が同定されていることを考えると、GAP及びBESTFITを用いて、それらの最適なアラインメント、したがって同一性の程度を決定することが好ましい。好ましくは、ギャップ重みについては5.00、ギャップ重み長については0.30のデフォルト値が使用される。一実施形態では、2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、EMBOSSソフトウェアパッケージのニードルプログラム(EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite,Rice,P.,Longden,I.,and Bleasby,A.,Trends in Genetics 16(6),276-277,2000)に組み込まれているNeedleman及びWunschのアルゴリズム(Needleman 1970,J.Mol.Biol.(48):444-453)、BLOSUM62スコアリングマトリクス、並びにギャップオープニングペナルティ10及びギャップ伸長ペナルティ0.5を用いて決定される。ニードルプログラムを使用して2つのアミノ酸配列をアライメントするために使用されるパラメータの好ましい非限定的な例は、EBLOSUM 62スコアリングマトリクス、10のギャップオープニングペナルティ及び0.5のギャップ伸長ペナルティを含むデフォルトパラメータである。
【0035】
「抗体」という用語は、例えば、限定されるものではないが、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgM、これらの組み合わせ、並びに、任意の脊椎動物、例えば、ヤギ、ウサギ、及びマウス等の哺乳類における免疫応答の間に産生される同様の分子、並びに、非哺乳類種、例えばサメ免疫グロブリンを含む免疫グロブリン又は免疫グロブリン様分子を指す。例えば、抗体はウサギ抗体であり得る。「抗体」という用語は、インタクトな免疫グロブリン、及び他の分子への結合を実質的に排除して目的の分子(又は非常に類似した目的の分子の群)に特異的に結合する「抗体断片」又は「抗原結合断片」を含む。「抗体」という用語には、キメラ抗体(例えば、ヒト化マウス抗体)、ヘテロコンジュゲート抗体(例えば、二重特異性抗体)等の遺伝子操作された形態も含まれる。Pierce Catalog and Handbook,1994-1995(Pierce Chemical Co.,Rockford,111.);Kuby,J.,Immunology,3rd Ed.,W.H.Freeman&Co.,New York,1997も参照されたい。
【0036】
特に、「抗体」という用語は、抗原のエピトープを特異的に認識し、特異的に結合する、少なくとも軽鎖及び重鎖免疫グロブリン可変領域を含むポリペプチドリガンドを意味する。抗体は、重及び軽鎖で構成されており、それらの各々には可変重(VH)領域及び可変軽(VL)領域と呼ばれる可変領域がある。合わせて、VH領域及びVL領域は、抗体によって認識される抗原の結合を担う。典型的には、本発明の抗体は、ジスルフィド結合によって相互接続された重(H)鎖及び軽(L)鎖を有する。本明細書で使用される場合、「軽鎖」という用語は、完全長軽鎖、及び結合特異性を付与するのに十分な可変領域配列を有するその断片を含む。完全長軽鎖は、可変領域ドメインV及び定常領域ドメインCを含む。軽鎖の可変領域ドメインは、ポリペプチドのアミノ末端にある。軽鎖には、カッパ鎖及びラムダ鎖が含まれる。「重鎖」という用語は、完全長重鎖、及び結合特異性を付与するのに十分な可変領域配列を有するその断片を含む。完全長重鎖は、可変領域ドメインV、並びに3つの定常領域ドメインC1、C2、及びC3を含み、Vドメインはポリペプチドのアミノ末端にあり、Cドメインはカルボキシル末端にあり、C3はポリペプチドのカルボキシ末端に最も近くにある。
【0037】
抗体分子の機能活性を決定する5つの主要な重鎖クラス(又はアイソタイプ):IgM、IgD、IgG、IgA及びIgEが存在する。各重及び軽鎖は、定常領域及び可変領域を含有する(領域は「ドメイン」としても知られている)。組み合わせると、重及び軽鎖可変領域は特異的に、抗原を結合する。軽及び重鎖可変領域は、「相補性決定領域」又は「CDR」とも呼ばれる、3つの超可変領域により中断された「フレームワーク」領域を含有する。CDRは主に、抗原のエピトープへの結合を担う。各鎖のCDRは通常、N末端から始まって連続して番号付けされている、CDR1、CDR2、及びCDR3と呼ばれ、また、通常は、特定のCDRが位置する鎖により同定される。したがって、VH CDR3は、それが見出される抗体の重鎖の可変ドメインに位置し、一方、VL CDR1は、それが見出される抗体の軽鎖の可変ドメイン由来のCDR1である。CSF-1Rに結合する抗体は、特異的VH領域及びVL領域配列、したがって特異的CDR配列を有する。
【0038】
本発明の抗体又はその断片は、一本鎖抗体、IgD抗体、IgE抗体、IgM抗体、IgG抗体及びその断片であり得る。例えば、抗体はIgG抗体、例えばIgG1抗体、IgG2抗体、IgG3抗体、又はIgG4抗体であり得る。一実施形態では、抗体又はその断片は組換え生産されている。
【0039】
本発明のモノクローナル抗体の断片も本発明に包含される。断片は、免疫学的に機能的な断片、すなわち抗原結合断片であるものとする。したがって、本発明のモノクローナル抗体の断片は、ヒトCSF-1R等のCSF-1Rに結合することができるものとする。したがって、抗体の「免疫学的に機能的な断片」という用語は、本明細書で使用される場合、完全長鎖に存在するアミノ酸の少なくとも一部を欠くが、CSF-1Rに特異的に結合することができる抗体の部分を指す。免疫学的に機能的な免疫グロブリン断片としては、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)断片及びFv断片が含まれる。抗原結合断片の作製方法は当技術分野で周知である。例えば、断片は、本発明の抗体の酵素的切断によって作製され得る。さらに、断片は、合成又は組換え技術によって生成され得る。Fab断片は、好ましくは、抗体のパパイン消化により、Fab’断片はペプシン消化及び部分還元により、F(ab’)断片はペプシン消化により生成される。Fv断片は、好ましくは分子生物学技術によって産生される。
【0040】
抗体の断片は、2つの抗原結合部位を有する小さな抗体断片であるダイアボディであってもよい。ダイアボディは、好ましくは、同じポリペプチド鎖内の軽鎖可変ドメインに接続された重鎖可変ドメインを含む。
【0041】
本発明の抗体は、好ましくはモノクローナル抗体である。本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」という用語は、Bリンパ球の単一クローンによって、又は単一抗体の軽鎖及び重鎖遺伝子がトランスフェクトされた細胞によって産生される抗体を指す。モノクローナル抗体は、当業者に知られている方法によって、例えば、骨髄腫細胞と免疫脾臓細胞との融合からハイブリッド抗体形成細胞を作製することによって産生される。
【0042】
一実施形態では、本発明の抗体は単離された抗体である。したがって、抗体は精製された抗体とする。抗体の精製は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)等の当技術分野で周知の方法によって達成され得る。したがって、抗体は、抗体が産生された細胞から単離されているものとする。いくつかの実施形態では、単離された抗体は、例えば、ローリー(Lowry)法によって測定される場合、抗体の70重量%超まで、いくつかの実施形態では、80%、90%、95%、96%、97%、98%又は99重量%超まで精製される。或る好ましい実施形態では、本発明による単離された抗体は、タンパク質検出のためにクーマシーブルー染色を使用する還元条件下でSDS-PAGEによって決定される場合、90%超の純度まで精製される。
【0043】
本発明のモノクローナル抗体又はその断片は、CSF-1Rポリペプチド、例えばヒトCSF-1Rポリペプチドに特異的に結合するものとする。「結合する」及び「特異的に結合する」という表現はよく理解されており、抗体(又はその断片)が他の生体分子に有意に結合しないことを示すために使用される。
【0044】
好ましくは、本発明の抗体(又はそのフ断片)は、CSF-1Rポリペプチドの細胞内ドメイン、特にキナーゼドメインに特異的に結合するものとする。モノクローナル抗体又はその断片のエピトープは、好ましくは、配列番号1(YKNIHLEKKY)に示される配列を含む。配列番号1は、ヒトCSF-1Rのアミノ酸699~708に対応する(配列番号10を参照されたい)。したがって、本発明のモノクローナル抗体又はその断片は、この領域に特異的に結合するものとする。好ましくは、上記エピトープの2つのチロシン残基の少なくとも一方、すなわち699位のチロシン残基又は708位のチロシン残基がリン酸化されている。より好ましくは、当該エピトープの両方のチロシン残基、すなわち、699位のチロシン残基及び708位のチロシン残基がリン酸化されている。したがって、本発明の抗体又はその断片は、699位のチロシン残基及び/又は708位のチロシン残基がリン酸化されているヒトCSF-1Rポリペプチドに結合することが想定される。
【0045】
「エピトープ」という用語は、抗体に特異的に結合することができるタンパク質決定基を表す。したがって、この用語は、好ましくは、本発明の抗体(又はその断片)によって特異的に結合され得るCSF-1Rポリペプチド(例えば、ヒトCSF-1Rポリペプチド)の部分を指す。エピトープは、通常、アミノ酸等の分子の化学的に活性な表面集団からなり、通常、特定の三次元構造特性と並んで特定の電荷特性を有する。立体配座エピトープ及び非立体配座エピトープは、変性溶媒の存在下では前者への結合が失われるが後者への結合は失われないという点で区別される。
【0046】
好ましい実施形態ではて、本発明の抗体又はその断片は、検出可能な標識に連結される。本明細書に記載の検出可能な標識は、好ましくは、抗体又はその抗原結合断片に天然に連結されていない標識である。したがって、検出可能な標識は、好ましくは抗体に関して異種である。好適な標識は、適切な検出方法で検出可能な任意の標識である。一実施形態では、当該検出可能な標識は、酵素、ビオチン、放射性標識、蛍光標識、化学発光標識、電気化学発光標識、金標識、又は磁気標識であり得る。である。
【0047】
酵素標識としては、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ及びルシフェラーゼが挙げられる。これらの酵素の基質は当技術分野で周知である。検出に適した基質としては、ジ-アミノ-ベンジジン(DAB)、3,3’-5,5’-テトラメチルベンジジン、NBT-BCIP(4-ニトロブルーテトラゾリウムクロリド及び5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルホスフェート)が挙げられる。適切な酵素-基質の組み合わせにより、着色された反応産物、蛍光又は化学発光が生じてもよく、これは、当該技術分野で公知の方法に従って測定することができる。蛍光標識としては、例えば、5-カルボキシフルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、テトラメチルローダミン、Cy2、Cy3及びCy5、蛍光タンパク質、例えばGFP(緑色蛍光タンパク質)、Texas Red及びAlexa色素が挙げられる。放射性標識としては、例えば、ヨウ化物、コバルト、セレン、トリチウム、炭素、硫黄及びリンの放射性同位体が挙げられる。放射性標識は、公知かつ適切な、例えば感光膜又はホスホイメージャー(phosphor imager)等の任意の方法により検出され得る。磁気標識としては、例えば、常磁性標識及び超常磁性標識が挙げられる。使用される化学発光標識としては、ルミノール、イソルミノール、芳香族アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩又はシュウ酸エステルが挙げられ得る。
【0048】
本明細書での上記の定義及び説明は、好ましくは、以下について準用する。
【0049】
本発明の抗体又はその抗原結合断片は、CSF-1Rポリペプチドの局在化及び/又は定量に関する方法において有用である。例えば、抗体又はその断片は、試料中のCSF-1Rポリペプチドの量を決定すること、診断方法で使用すること、又はCSF-1Rポリペプチドを画像化することを可能にする。
【0050】
したがって、本発明は、試料中のCSF-1Rを検出する方法であって、
(a)CSF-1Rを含む試料を本発明のいずれかのモノクローナル抗体又はその断片と接触させ、それによってCSF-1R及び当該モノクローナル抗体又はその断片を含む複合体を形成すること、並びに
(b)工程(a)で形成された複合体を検出することによって、上記試料中のCSF-1Rを検出することを含む、方法に関する。
【0051】
本明細書でいう「対象」は、好ましくは哺乳動物である。哺乳類としては、家畜化動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、及びウマ)、霊長類(例えば、ヒト、及びサル等の非ヒト霊長類)、ウサギ、及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、対象は、ヒト対象等の哺乳動物の対象である。上記方法のいくつかの態様では、試料は、がんを有すると診断された、がんを有すると疑われる、又はがんを有するリスクがある対象から得られる。
【0052】
本明細書で使用される場合、「試料」という用語は、対象から単離された組織、細胞及び生体体液、並びに対象内に存在する組織、細胞及び流体を含むことを意図している。本開示の生体試料としては、例えば、全血、血漿、精液、唾液、涙、尿、糞便物質、汗、頬側、皮膚、脳脊髄液及び毛髪が挙げられるが、これらに限定されない。生体試料はまた、内臓の生検又はがんから得ることができる。
【0053】
一実施形態では、試料はがん細胞を含む。がん細胞は、それらを患者にとって病的なものにする悪性形質転換を受けた細胞である。本明細書で使用される場合、「がん細胞」という用語は、原発性がん細胞だけでなく、がん細胞の祖先に由来する任意の細胞も含む。これには、転移したがん細胞、並びにがん細胞に由来するin vitro培養物及び細胞株が含まれる。
【0054】
好ましくは、がん細胞を含む試料は、がん細胞を含む生検組織である。したがって、試料は、がんに罹患している対象から得られたものである。
【0055】
本発明によれば、試料は、がんの処置のための候補化合物と接触した対象から得られたものである。したがって、当該候補化合物は、試験される試料を得る前に、対象、特にがんに罹患している対象に投与されている。あるいは、試料をがんの処置のための候補化合物と接触させている。
【0056】
一実施形態では、がんを処置するための候補化合物は、CSF-1Rの阻害剤、例えば小分子阻害剤、又はCSF-1Rに結合するモノクローナル抗体、例えばCSF-1Rの細胞外ドメインに結合するモノクローナル抗体である。
【0057】
一実施形態では、CSF-1Rの阻害剤が、キシダルチニブ、PLX7486、ARRY-382、JNJ-40346527、BLZ945、エマクツズマブ、AMG820、及びIMC-CS4から選択される(Cannarile et al.,2017 Journal for Immunotherapy of Cancer.5(1):53を参照されたい)。
【0058】
上記の方法の一実施形態では、CSF-1Rの検出は、CSF-1Rの定量的検出である。したがって、試料中のCSF-1Rの量が決定される。CSF-1Rの決定された量を、対照生体試料中のCSF-1Rの量と比較することができる。したがって、例えば、試験試料中のCSF-1Rの量が対照試料と比較して増加しているか減少しているかを評価することができる。
【0059】
上記の方法の一実施形態では、CSF-1Rの検出は、CSF-1Rの免疫組織化学的検出である。したがって、CSF-1Rは、顕微鏡で視覚化できる方法で試験試料を本発明の(その抗原結合断片の)抗体で標識することによって、無傷の細胞との関連において同定される。組織環境又は細胞環境に関連してCSF-1Rを同定することにより、バイオマーカーと細胞又は組織試料の他の形態学的又は分子的特徴との間の空間的関係を解明することができ、これは他の分子又は細胞技術からは明らかではない情報を明らかにし得る。
【0060】
CSF-1Rを検出するため、本発明の抗体(又はその断片)は、本明細書の他の箇所に記載される検出可能な標識を含み得る。
【0061】
本発明は更に、試料中のヒトCSF-1R等のCSF-1Rの検出のための本発明のモノクローナル抗体又はその断片のin vitro使用に関する。
【0062】
「試料」及び「対象」という用語は上記で定義されている。試料は、がん細胞又はがん組織である。上記定義は、適宜、適用される。上記のように、試料はがんの処置のための候補化合物と接触していてもよい。あるいは、上記候補化合物と接触させた対象から試料を得た。
【0063】
本発明はまた、本発明のモノクローナル抗体又はその断片と、CSF-1Rとを含む複合体に関する。典型的には、モノクローナル抗体又はその断片は、上記複合体内のCSF-1R(ヒトCSF-1R等)に結合されている。
【0064】
本発明の方法及び使用の一実施形態では、CSF-1Rの天然形態(ヒトCSF-1R等)が検出される。したがって、未変性CSF-1Rが検出される。代替の実施形態では、変性CSF-1Rが検出される。したがって、試料は、CSF-1Rの変性をもたらす少なくとも1つの前処理工程に供されてもよい。例えば、試料が加熱されていてもよく、又は少なくとも1つの変性剤が試料に添加されていてもよい。
【0065】
本発明はまた、本発明の抗体又はその抗原結合断片を産生する宿主細胞に関する。好ましい実施形態では、本発明の抗体を産生する宿主はハイブリドーマ細胞である。さらに、宿主細胞は、本発明による抗体を生成するように操作することができる任意の種類の細胞系であり得る。例えば、宿主細胞は動物細胞、特に哺乳動物細胞であり得る。或る実施形態では、実施例の欄で使用されるHEK293-F細胞等のHEK293(ヒト胎児腎臓細胞)又はCHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞が宿主細胞として使用される。別の実施形態では、宿主細胞は、非ヒト動物又は哺乳動物細胞である。
【0066】
宿主細胞は、好ましくは、本発明の抗体又はその断片をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む。例えば、宿主細胞は、本発明の抗体の軽鎖をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド、及び本発明の抗体の重鎖をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む。当該ポリヌクレオチド(複数可)は、適切なプロモーターに作動可能に連結されているものとする。
【0067】
本発明は更に、本発明のモノクローナル抗体又はその断片と、薬学的に許容され得る希釈剤、溶媒、担体、塩及び/又はアジュバントとを含む医薬組成物に関する。
【0068】
本発明は、CSF-1Rを発現している標的細胞におけるCSF-1R発現を減少させるためのin vivo又はin vitro方法を提供し、当該方法は、有効量の本発明のモノクローナル抗体若しくはその断片又は医薬組成物を当該細胞に投与することを含む。
【0069】
本発明は、疾患を処置又は予防する方法であって、治療有効量又は予防有効量のモノクローナル抗体若しくはその断片、又は本発明の医薬組成物を、疾患に罹患しているか、又は疾患に罹患しやすい対象に投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、疾患は、がんである。
【0070】
本発明は、医薬に使用するためのモノクローナル抗体若しくはその断片、又は本発明の医薬組成物を提供する。
【0071】
本発明は、がんの処置又は予防に使用するための本発明のモノクローナル抗体若しくはその断片又は医薬組成物を提供する。
【0072】
本発明は、がんを処置又は予防するための医薬を調製するための、本発明のモノクローナル抗体若しくはその断片又は医薬組成物の使用を提供する。
【実施例
【0073】
本発明は、以下の実施例によって単に例示されるものである。上記実施例は、いかなる場合でも、本発明の範囲を限定する方法で解釈されないものとする。
実施例1:免疫原の調製
【0074】
TtSlyD-CSF1R及びTtSlyD-sh3 ORFをGeneArtによって合成し、アンピシリン耐性クローニングベクター内に送達した。TtSlyD-CSF1Rは、以下のアミノ酸配列をコードする:
>TtSlyD-CSF1R(配列番号11)
MRSKVGQDKV VTIRYTLQVE GEVLDQGELS YLHGHRNLIP GLEEALEGRE EGEAFQAHVP AEKAYGAGSM LGPSLSPGQD PEGGVDYKNI HLEKKYVRRD SGFSSQGVDT YVEMRPVSTS SNDSFSEQDL DKEDGRPGSS GKDLDFQVEV VKVREATPEE LLHGHAHGGG SRPLLPPLPG GGSRKHHHHH HHH
TtSlyD-sh3は挿入フリー対照タンパク質として適用され、以下のアミノ酸配列をコードする:
>TtSlyDsh3(配列番号12)
MRSKVGQDKV VTIRYTLQVE GEVLDQGELS YLHGHRNLIP GLEEALEGRE EGEAFQAHVP AEKAYGAGSG SSGKDLDFQV EVVKVREATP EELLHGHAHG GGSRPLLPPL PGGGSRKHHH HHHHH
【0075】
制限酵素及び「Rapid DNA Ligation Kit」をRocheから入手した。大腸菌(E.coli)XL1-Blueスーパーコンピテント細胞及びBL21 Codon PlusをStratageneから入手した。DNAの精製には、「High Pure Plasmid Isolation Kit」及び「High Pure PCR Product Purification Kit」(Roche)を用いた。pQE80Lをクローニング及び発現ベクターとして使用した。
【0076】
細菌を、選択抗生物質(100μg/mlアンピシリン)を含むLysogenyブロス(LB:5g/l酵母抽出物、10g/lトリプトン、5g/l NaCl、pH7.0)中で増殖させた。タンパク質発現中の増殖を改善するため、LB培地をスーパーブロス培地(SB:20g/l酵母抽出物、32g/lトリプトン、5g/l NaCl、pH7.0)に交換した。
【0077】
TtSlyD-CSF1Rを、EcoRI及びHindIIIを含む送達ベクターから放出させ、発現ベクターpQE80-Lにライゲートし、その後EcoRI及びHindIIIで消化した。大腸菌XL1-Blue細菌の形質転換後、プラスミドDNAを得て、大腸菌BL21 Codon Plusで形質転換した。簡潔には、組換え発現及び精製のため、細胞を37℃のSB培地中で成長させた。指数期に達したら、0.5mMイソプロピル-β-D-チオガラクトシド(IPGT)を用いて少なくとも3時間、TtSlyD変異体の発現を誘導した。細胞ペレットからの封入体を、7.0M GdmClを含有する冷却したリン酸ナトリウム緩衝液(pH8.0)に再懸濁し、完全な細胞溶解まで2時間撹拌した。事前に清澄化した溶解物をNi-NTAカラムに適用し、10~15カラム容量の洗浄緩衝液(リン酸緩衝液pH8.0、7.0M GdmCl、10mMイミダゾール)を適用した。同時精製プロテアーゼの再活性化を回避するため、プロテアーゼ阻害剤カクテル(完全EDTA不含、Roche)をリフォールディング緩衝液(リン酸緩衝液pH8.0、20mMイミダゾール)に含めた。合計20~25カラム容量のリフォールディング緩衝液を一晩ゆっくりと適用した。250mMイミダゾールの勾配でタンパク質を溶出する前に、阻害剤カクテルを、リフォールディング緩衝液で5~10カラム容量の更なる洗浄で除去した。タンパク質含有画分をプールし、保存緩衝液(50mM KHP04 pH6.95、100mM KCl、0.5mM EDT)中のサイズ排除クロマトグラフィーカラム(HiLoad(商標)26/60 Superdex(商標)75サイズ排除クロマトグラフィーカラム、Amersham Pharmacia)を通して再度精製した。モノマー含有画分のみを回収し、SDS変性ゲル中の純度について評価した。ウエスタンブロット分析のために、Novex(登録商標)NuPAGE(登録商標)SDS-PAGE Gel Systems(Invitrogen)を使用した。SimplyBlue(商標)Safe-Stain(Invitrogen)を用いてクマシー様タンパク質染色を行った。タンパク質濃度の測定を、DU7400分光光度計(Beckman Coulter(商標))を用いて行った。融合タンパク質のモル吸光係数(ε280)を、バイオインフォマティクスによって計算した。
実施例2:円偏光二色性スペクトル分析
【0078】
タンパク質濃度の測定を、DU7400分光光度計(Beckman Coulter(商標))を用いて行った。融合タンパク質のモル吸光係数(ε280)を、バイオインフォマティクスによって計算した。
【0079】
近UV CDスペクトルを、20℃に設定したサーモスタット式セルホルダーを備えたJasco-720分光偏光計を使用して記録し、平均残基楕円率に変換した。緩衝液は、50mMリン酸カリウム(pH6.95)、100mM KCl及び0.5mM EDTAであった。スペクトルを、経路長0.2cmで330~250nmの間で記録し、タンパク質濃度は500μMであった。バンド幅は1nm、走査速度は分解能0.5nmで20nm/分、応答は1秒であった。シグナル対ノイズ比を改善するために、スペクトルを9回測定し、平均した。遠UV CDスペクトルを、20℃に設定したサーモスタット式セルホルダーを備えたJasco-720分光偏光計を使用して記録し、平均残基楕円率に変換した。緩衝液は、10mMリン酸カリウム(pH6.95)及び10mM KClであった。スペクトルを、経路長0.2cmで250~190nmの間で記録し、タンパク質濃度は5μMであった。バンド幅は1nm、走査速度は分解能0.5nmで20nm/分、応答は1秒であった。シグナル対ノイズ比を改善するために、スペクトルを9回測定し、平均した。
【0080】
融合タンパク質の熱的アンフォールディング転移について、50mMリン酸カリウム(pH6.95)、100mM KCl及び0.5mM EDTA中500μMでタンパク質を測定した。熱誘導されたアンフォールディング-リフォールディング転移を278nmで記録し、キュベットの経路長は0.2cmであった。加熱及び冷却速度は1℃/分であり、応答時間は4秒であった。アンフォールディングの可逆性を評価するため、熱誘導されたアンフォールディング-リフォールディングサイクルの前後に、融合タンパク質の近UV CDスペクトルを記録した。
【0081】
タンパク質濃度の測定を、DU7400分光光度計(Beckman Coulter(商標))を用いて行った。融合タンパク質のモル吸光係数(ε280)を、Gasteiger et al 2005に従い、バイオインフォマティクスによって計算した。
【0082】
蛍光スペクトルを、20℃に設定した恒温セルホルダーを備えたCary Eclipse蛍光分光光度計(Varian)を使用して記録した。緩衝液は、50mMリン酸カリウム(pH6.95)、100mM KCl及び0.5mM EDTAであった。試料を280/290/295nmで励起し、1cmの経路長で300~425nmの間でスペクトルを記録した。タンパク質濃度は10~30μMであった。バンド幅は5nm、走査速度は分解能1nmで120nm/分、応答は0.5秒であった。
【0083】
融合タンパク質の熱的アンフォールディング転移のため、同じ濃度及び緩衝液を使用した。単回測定と同じ仕様で、熱誘導アンフォールディング転移について全スペクトルを記録した。加熱間隔を5℃に設定し、温度変化間の安定化期間を10分に設定した。アンフォールディングの可逆性を評価するため、熱誘導されたアンフォールディング-リフォールディングサイクルの前後に融合タンパク質の蛍光スペクトルを記録した。
実施例3:TtSlyD-CSF1Rのリン酸化及び精製
【0084】
緩衝液成分はMerck、Roche及びSigmaから入手した。Src(1-530)活性キナーゼは、Upstate(Millipore)から購入した。製造説明書に従い、Srcキナーゼを希釈し(20mM MOPS-NaOH pH7.0、1mM EDTA、0.01%Brij-30、5%グリセロール、0.1%β-メルカプトエタノール及び1mg/ml BSA)、アリコートに分け、-80℃で保存した。ウエスタンブロット分析のために、Novex(登録商標)NuPAGE(登録商標)SDS-PAGE Gel Systems(Invitrogen)を使用した。リン酸化タンパク質を検出するため、いくつかのpan-pTyrの一次抗体:P-Tyr-4G10(Millipore)、P-Tyr-100及びP-Tyr-102(Cell Singaling)、並びに二次抗体としてのHRPコンジュゲートヤギ抗マウスIgG(Invitrogen)を使用した。結果をChemiDoc(商標)MP(Bio-Rad)によって分析し、膜をLumi-Light PLUSウェスタンブロッティング基質(IRoche)とインキュベートした。
【0085】
4.5mgのTtSlyD-CSF1Rを反応緩衝液(10mM MOPS-NaOH pH7.0、50mM NaCl、0.3mM EDTA、0.001%Brij-30、0.5%グリセロール、10mM MgAc、0.1mM ATP、0.25mMオルトバナジン酸塩及び0.1mg/ml BSA)で60μM濃度に希釈した。4単位のSrc(1.97U/μg)を添加し、反応物を30℃で2時間インキュベートした。その後、EDTAを使用してMg2+カチオンをキレート化することによって反応を停止した。緩衝液及び混入タンパク質を除去するために、滅菌濾過したPBS pH6.95をシース溶液として使用して、溶液をHiLoad(商標)16/60 Superdex(商標)200サイズ排除クロマトグラフィーカラム(Amersham,Pharmacia)に充填した。TtSlyD-CSF1R含有画分を回収し、Ultracell(商標)10k Amicon(Millipore)を使用してタンパク質を濃縮した。初期タンパク質の81%が回収された。
実施例4:ウサギモノクローナル抗体の産生
【0086】
ウサギをそれぞれ30日間、100μgの抗原で皮下免疫した。血清を45日目から採取し、抗原に対する抗体力価を試験した。2ヶ月後、免疫原力価は200.000超であった。末梢血をブーストの5~6日後に毎月採取した。血液をクエン酸塩で処置して凝固を回避し、同日に新たに処理した。末梢血単核細胞(PBMC)は、抗体産生B細胞又はそれらの分泌増殖因子に対するマクロファージのいずれかを得るために必要であった。PBMCを末梢ウサギ血液から得て、Seeber et al.(2014),PLoS One.2014 Feb 4;9(2)に記載されているように抗原特異的モノクローナル抗体を生成した。5.10e7 PMBC/mlを、250nMのビオチン化抗原と共にFACS Puffer(PBS+0.1%BSA)に再懸濁した。4℃で15~20分間インキュベートした後、細胞をPBS 40mlで洗浄し、標識緩衝液(PBS+2mM EDTA)中で10e8 PMBC/mlに再懸濁した。10%体積のストレプトアビジンビーズを添加し(MACS Miltenyi Biotec)、それらを4℃で15~20分間インキュベートした。細胞を40mlのPBSで洗浄し、MACS緩衝液(PBS+2mM EDTA+0.5%BSA)中で2.10e8 PMBC/mlに再懸濁した。懸濁液を予備平衡化MSカラム(MACS Mitenyi Biotec)に充填し、3容量のMACS緩衝液で洗浄し、結合した細胞を1mlのMACS緩衝液中に回収した。細胞型を識別するため、回収した細胞をウサギIgGに対する蛍光抗体(AbD Serotec)で染色し、FACSAria Iセルソーター(BD Biosciences)を用いてIgG陽性細胞を単一細胞選別を行った。Seeber et al.に記載されているように、細胞をB細胞培地中で1週間インキュベートした。1週間後、クローンの上清を、HitELISA技術を用いてIgG産生及び抗原特異性について試験した。陽性クローンを選択し、RNA溶解緩衝液を用いて-80℃で保存した。HitELISAを細胞培養上清及び精製mAbを用いて行った。ELISAプレート(Roche)を炭酸塩緩衝液(pH9.6)中100~250ng/mlの抗原でコーティングした。ビオチン化抗原を、同じ抗原濃度を使用してストレプトアビジン被覆プレート(Roche)に直接結合させた。洗浄後、プレートをインキュベーション緩衝液(IB:1%BSA 0.05%Tween-PBS)でブロッキングした。プレートを細胞上清又はIBで希釈した精製mAbと共にインキュベートした。洗浄後、HRPコンジュゲートF(ab’)2断片ヤギ抗ウサギIgG(Dianova)と1時間インキュベートし、100μlのABTS溶液(Roche)を添加することによってプレートを展開した。ELISAマイクロプレートリーダーを使用して適切な波長で光学密度を測定した。IgG濃度サンドイッチELISA。ELISAプレートを、炭酸塩緩衝液(pH9.6)中の3μg/mlのヤギ抗ウサギIgGでコーティングした。洗浄後、プレートをIBでブロッキングした。プレートをIBで希釈した細胞上清と共にインキュベートした。その後のELISAを上記と同様に行った。
【0087】
B細胞mRNAを、-80℃で凍結した陽性単一メモリーB細胞培養物からRNeasy Plus Mini Kit(Qiagen)を用いて精製した。Transcription Universal cDNA Master(Roche)を用いて逆転写を行った。cDNAプレートを更に使用するまで-20℃で保存した。IgH、Igλ及びIgκ可変遺伝子を、Expand High Fidelity PCR System(Roche)を用いて鋳型として2μlのcDNAから開始して、適切なプライマーを用いたPCRにより独立して増幅した。精製された単一増幅バンド及びIgG定常領域を含むプラスミドをT4 DNAポリメラーゼ(Roche)で消化して5’オーバーハングを生成し、続いてRecA処置(NE Biolabs)を行って配列及びライゲーション非依存性クローニング(SLIC)によって再度ライゲートした。組み換えたプラスミドを形質転換し、標準的な消化及び配列決定プロトコルを使用して正しい挿入クローニングについて試験した。
【0088】
293-Free(商標)Transfection Reagent(Novagen)を使用して、無血清FreeStyle(商標)293発現培地(GibcoInvitrogen)中で増殖させたFreeStyle 293-F細胞(Invitrogen)への、対になった重鎖及び軽鎖TIPEプラスミドの一過性コトランスフェクションによって、完全長IgG mAbを産生した。細胞を180rpmで連続振盪しながら37℃/5~8%COで1週間培養した。上清を遠心分離によって回収し、-20℃で保存した。
実施例5:相互作用分析
【0089】
Biacore B 3000装置(GE Healthcare)を使用して、TtSlyD-CSF1Rに対する動態及び結合特異性についてウサギ抗体を動態評価した。CM5シリーズセンサーをシステムに取り付け、製造業者の指示に従ってHBS-ET緩衝液(10mM HEPES pH7.4、150mM NaCl、3mM EDTA、0.005% w/v Tween 20)中で正規化した。試料緩衝液は、1mg/mlのCMD(カルボキシメチルデキストラン、Sigma #86524)を追加したシステム緩衝液であった。システムは25℃で動作した。10000 RUのGAR<F(ab)2>(相対単位のヤギ抗ウサギF(ab)2/Jackson Laboratories、カタログ番号100018)を、全てのフローセルに対してEDC/NHS化学を用いて製造者の説明書に従って固定化した。センサを1Mエタノールアミンで飽和させた。分析物に対する抗体の結合活性を速度論的に試験した。溶液中の分析物は、Y723がリン酸化及び非リン酸化された2つの2kDaペプチドCSF1R(716~729)、CSF1R非関連挿入ドメインを有する14kDa TtSlyDsh3対照タンパク質、及び21kDa TtSlyD-CSF1Rタンパク質であった。試料緩衝液で1:2に希釈した10μl/分の細胞培養HEK上清の2分間の注射によって抗体を捕捉した。流速を100μl/分とした。分析物を、0nM、1.1nM、3.7nM、11.1nM、33.1nM、100nM及び300nMの異なる濃度段階で2分間注入した。解離を5分間監視した。速度論的シグネチャを、Biaevaluation Software及びRMAXローカルを用いたバイナリーラングミュアフィッティングモデルを用いて監視及び評価した。センサ表面の酸性再生を、10mMグリシンpH1.7を30μl/分で60秒間の3回の連続注入を用いて達成した。
実施例6:線形エピトープマッピング
【0090】
ペプチドベースのエピトープマッピングを、記載され、CelluSpot(商標)技術を使用してIntavis(ドイツ国ケルン、http://www.intavis.com)により市販されているとおりに行った。エピトープマッピングを、ヒトCSF1R KIDドメインの配列に対応する重複固定化ペプチド断片(長さ:15アミノ酸)のライブラリーによって行った。合成された各ペプチドは、一つのアミノ酸だけシフトしており、すなわち、前のペプチド及び次のペプチドとそれぞれ14個のアミノ酸がオーバーラップしていた。ペプチドアレイの調製のため、Intavis CelluSpot(商標)技術を使用した。このアプローチでは、合成後に溶解される修飾セルロースディスク上で自動合成装置(Intavis MultiPep RS)を用いてペプチドを合成する。次いで、高分子セルロースに共有結合した個々のペプチドの溶液を、コーティングされた顕微鏡スライド上にスポットする。CelluSpot(商標)合成は、384ウェル合成プレート中のアミノ修飾セルロースディスク上で9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)化学を利用して段階的に実施した。各カップリングサイクルにおいて、対応するアミノ酸をDMF中のDIC/HOBtの溶液で活性化した。カップリング工程の間に、未反応アミノ基を無水酢酸、ジイソプロピルエチルアミン及び1-ヒドロキシベンゾトリアゾールの混合物でキャッピングした。合成が完了すると、セルロースディスクを96ウェルプレートに移し、側鎖脱保護のためトリフルオロ酢酸(TFA)、ジクロロメタン、トリイソプロピルシラン(TIS)及び水の混合物で処置した。切断溶液の除去後、セルロース結合ペプチドをTFA、TFMSA、TIS及び水の混合物と共に溶解し、ジイソプロピルエーテルで沈殿させ、DMSOに再懸濁させる。続いて、ペプチド溶液を、Intavisスライドスポッティングロボットを使用してIntavis CelluSpot(商標)スライド上にスポットした。
【0091】
線形エピトープ分析のため、上記のように調製したスライドを、BenchMark XT自動スライド調製システム(Ventana)を用いて処置した。スライドを、OptiView DAB IHC検出キットに加えてOptiView増幅キット(Ventana)を用いて、標準化されたプロトコルに従って発色させた。簡潔には、スライドをシステムに「湿式充填」し、リン酸緩衝液(PBS)中の1%BSAで32分間ブロッキングした。抗体を抗体希釈剤(Ventana)で1μg/mlに希釈し、室温で1時間スライドに手動で適用し、Amplifier及びAmplification Multimer試薬の両方を、対比染色なしでそれぞれ8分間インキュベートした。比色染色を分析するため、ChemiDoc Analyzer(BioRAD)を使用した。
【0092】
高シグナルが望まれる場合、スライドを化学発光試薬で手動で処置した。簡潔には、スライドをエタノールで洗浄し、次いで、5mLの10×ウェスタンブロッキング試薬(Roche Applied Science)、TBS中2.5gスクロース、0.1%Tween 20で4℃で16時間ブロッキングする前に、トリス緩衝生理食塩水(TBS;50mM Tris、137mM NaCl、2.7mM KCl、pH8)で洗浄した。スライドをTBS及び0.1%Tween 20で洗浄し、その後、TBS及び0.1%Tween 20中の1μg/mLの対応する抗体と共に周囲温度で2時間インキュベートし、続いてTBS+0.1%Tween 20で洗浄した。検出のため、スライドを抗ウサギ/抗マウス二次HRP抗体(TBS-Tで1:20000)とインキュベートし、続いて化学発光基質ルミノールとのインキュベーションを行い、LumiImager(Roche Applied Science)で可視化した。ELISA陽性SPOTを定量し、対応するペプチド配列の割り当てにより、抗体結合エピトープを同定した。
免疫組織化学
【0093】
BenchMark XT自動スライド調製システム(Ventana)を使用して免疫組織化学を実施した。スライドを、標準化されたプロトコルに従って、iVIEW DAB Detection Kit(Ventana)を用いて発色させた。簡単に説明すると、スライドをCell Conditioning 1(CC1、Ventana)で脱パラフィンし、リン酸緩衝液(PBS)中1%BSAで32分間ブロッキングした。抗体をAntibody Diluent(Ventana)で1μg/mlに希釈し、室温で1時間、スライドに手動で適用した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7-1】
図7-2】
【配列表】
2022550069000001.app
【国際調査報告】