(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-30
(54)【発明の名称】組織再生用ハイドロゲル組成物及びこれを用いて製造された支持体
(51)【国際特許分類】
A61L 27/52 20060101AFI20221122BHJP
A61L 27/20 20060101ALI20221122BHJP
A61L 27/24 20060101ALI20221122BHJP
A61L 27/36 20060101ALI20221122BHJP
A61L 27/22 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
A61L27/52
A61L27/20
A61L27/24
A61L27/36 100
A61L27/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022519191
(86)(22)【出願日】2020-09-01
(85)【翻訳文提出日】2022-05-25
(86)【国際出願番号】 KR2020011731
(87)【国際公開番号】W WO2021060730
(87)【国際公開日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】10-2019-0118641
(32)【優先日】2019-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522077443
【氏名又は名称】リジェン バイオチャーム カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】キム,ギョン ギュン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ミョン
(72)【発明者】
【氏名】キム,サン ジン
【テーマコード(参考)】
4C081
【Fターム(参考)】
4C081AB11
4C081BA13
4C081BA16
4C081CD011
4C081CD081
4C081CD121
4C081CD27
4C081CD34
4C081CE02
4C081CE11
4C081DA12
(57)【要約】
本発明は組織再生用ハイドロゲル組成物及びこれを用いて製造された支持体に関し、より詳細には、陰イオン性多糖類、アミン化したヒアルロン酸及びコラーゲンを含んでなる。上記の成分からなるハイドロゲル組成物及びこれを用いて製造された支持体は、一般的な一端或いは両端にエポキシド基又はアミン基が存在する架橋剤の投入無しで自発的な架橋結合によって迅速に3次元的な構造を形成できるので、軟組織移植が可能な構造を提供する効果を奏する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰イオン性多糖類1~10重量%、アミン化したヒアルロン酸0.1~2重量%、及び、コラーゲン0.1~3重量%を含み、前記陰イオン性多糖類100重量部に対して、2価陽イオン150~400重量部及びメタノール0.1~2重量部がさらに含まれることを特徴とする組織再生用ハイドロゲル組成物。
【請求項2】
前記陰イオン性多糖類は、重量平均分子量が100~500kDaであり、β-D-マンヌロン酸50~70重量%及びα-L-グルロン酸30~50重量%からなることを特徴とする、請求項1に記載の組織再生用ハイドロゲル組成物。
【請求項3】
前記アミン化したヒアルロン酸は、重量平均分子量が100~500kDaであることを特徴とする、請求項1に記載の組織再生用ハイドロゲル組成物。
【請求項4】
前記コラーゲンは、重量平均分子量が100~500kDaであり、アテロコラーゲンからなることを特徴とする、請求項1に記載の組織再生用ハイドロゲル組成物。
【請求項5】
前記2価陽イオンは、質量濃度が0.5~2%であり、アルカリ土金属又はその化合物からなることを特徴とする、請求項1に記載の組織再生用ハイドロゲル組成物。
【請求項6】
前記メタノールは質量濃度が40~60%であることを特徴とする、請求項1に記載の組織再生用ハイドロゲル組成物。
【請求項7】
前記組織再生用ハイドロゲル組成物100重量部に対して、添加剤0.1~1重量部がさらに含まれ、前記添加剤は、細胞、細胞成長因子、緩衝剤、防腐剤、等張性調節剤、塩、酸化防止剤、滲透圧調節剤、乳化剤、湿潤剤、甘味料、香料剤、痲酔剤からなる群から選ばれる一つ以上からなることを特徴とする、請求項1に記載の組織再生用ハイドロゲル組成物。
【請求項8】
前記細胞は、幹細胞、感覚細胞、脳細胞、生殖細胞、上皮細胞及び免疫細胞からなる群から選ばれる一つ以上からなることを特徴とする、請求項7に記載の組織再生用ハイドロゲル組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項による組織再生用ハイドロゲル組成物で製造されることを特徴とする組織再生用ハイドロゲル支持体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織再生用ハイドロゲル組成物及びこれを用いて製造された支持体に関し、より詳細には、一般的な一端或いは両端にエポキシド基又はアミン基が存在する架橋剤の投入無しで自発的な架橋結合によって迅速に3次元的な構造を形成できるので、軟組織移植が可能な構造を提供する組織再生用ハイドロゲル組成物及びこれを用いて製造された支持体に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の組織工学は、様々な細胞で構成された機能を有する人体の組織と器官を作り、損傷した組織と器官を代替することが主な目標である。バイオプリンティングインクは、このような組織工学の目標を早めに実現可能に助ける技術であり、バイオプリンティングは、自動化したバイオプリンタ技術に基づいて、細胞と生体材料を用いて所望の3次元構造の組織と器官を作る。自動化したコンピュータバイオプリンティング技術は、インクジェットベースのプロセス(inkjet-based process)、レーザーベースのプロセス(laser-based process)、及び押出ベースのプロセス(extrusion-based process)に発展してきた。このようなバイオプリンティングの基本プロセスは、コンピュータ利用設計モデルから取得されたイメージを模し、細胞と物質を含んでいるバイオインクを用いて3次元構造の形態を作ることである。コンピュータ利用設計モデルは、核磁気共鳴イメージ及びコンピュータ化した位相スキャニングにより、3D医療イメージを用いて作ることができる。ここで、生きている細胞を含む生体材料を、バイオプリンティングプロセスの基本材料として使用する。
【0003】
細胞を含む3Dプリントされた生体摸倣構造体が構造的側面と生物学的側面で機能を発揮するためには、バイオインクは、印刷適性、細胞適合性、生分解性、ゲル化特性/機械的物性、そして細胞の成長と分化を調節できる特性を有する必要がある。
【0004】
すなわち、バイオプリントされた構造物は、所望の模様を再生期間中に保持しなければならず、生体内での再生中に適切な速度で分解されなければならない。現在活用されているバイオインクとしては、スキャフォールドに基づく水和ゲル(hydrogel)、マイクロキャリア、細胞の除去された細胞外基質(extracellular matrix)などがあり、スキャフォ-ルド(scaffold)無しで細胞集合体をバイオインクとして使用することもある。
【0005】
水和ゲルは、商品化しバイオインクの代表であり、生体適合性に優れ、人体の組織と類似な構造を有しており、細胞及び生理活性物質のカプセル化が容易である。コラーゲン、ゼラチン、アルジネート、ヒアルロン酸とポリ(エチレングルコール)ジアクリレート(poly(ethylene glycol)diacrylate;PEGDA))、コラーゲンメタクリロイル(collagen methacryloyl;CollagenMA)、ゼラチンメタクリロイル(gelatin methacayloyl;GelMA)などが代表的な水和ゲルバイオインク製品である。
【0006】
押出ベースのプリンティングは、最も一般的に3Dバイオプリンティングで用いられる方法であり、商品化した3Dバイオプリンタは、たいてい押出ベースのプリンティングプロセスを使用する。押出ベースのプリンティングは、空気圧又は機械的な力を用いて、注射器中のバイオインクを細い糸状に押出することで、3D細胞構造体を製造する。押出ベースのプリンティングでは、幅広い粘性(30-6×106mPa・s)と高濃度の細胞と細胞楕円集合体(spheroids)のバイオインクを使用することができる。ただし、押出ベースのプリンティングは、低い解像度(resolution:200~1000μm)を有し、押出過程中に細胞にせん断応力を加えることがあり、細胞の生存力に影響を及ぼし得る。このため、押出ベースのプリンティングに用いられるバイオインクは、せん断減少特性(shear thinning properties)を有するべきであり、プリンティング後に、プリントされた形態をよく保持し、細胞をせん断応力から保護しなければならない。
【0007】
インクジェットベースのプリンティングは、圧電気(piezoelectric)又は熱(thermal)を用いて、細胞を含むバイオインクから小さい水滴(10~50μm)を生成し、ノズルから噴射する原理を利用する。インクジェットベースのプリンティングプロセス期間においてバイオインク中の細胞は、短い期間(2μs)の高熱に露出されるが、細胞生存性に大きく影響を受けない。インクジェットベースのプリンティングにおいてバイオインクは低い粘性(10mPa.S未満)を有しなければならず、低い細胞濃度(106cells/ml未満)を使用しなければならないという短所がある。
【0008】
レーザーベースのプリンティングは、ノズルが不要であり、ノズルによって塞がる現象がなく、ノズルを通過しないので、バイオインク中の細胞がせん断応力に露出されないという長所がある。レーザーベースのプリンティングは、パルスされたレーザービームを、金又はチタンの吸収層とバイオインク層とから構成されたドナーリボン(donor ribbon)に晒して泡を生成・推進する原理を利用する。レーザーベースのプリンティングは、1~300mPa.sの粘性と108cells/mlの細胞の濃度を持つバイオインクを使用することができ、10~100μmの解像度を有する。高エネルギーのレーザーは一時的加熱をバイオインクに与えることができ、熱伝導性が大きくないバイオインクは、インク中の細胞生存性を向上させることができる。
【0009】
現在用いられているプリンティング技術の共通点は、生体適合性素材を用いたバイオインクの重要性にある。
【0010】
このような3次元支持体は、組織類似器官及び移植可能な構造体を精密に製造するための素材を用いて作製した。このような技術は、人間の実際の組織をほぼ同一に摸倣した微細及び巨大組織構造体を生成することを可能にしている。
【0011】
しかしながら、このような細胞を運搬する支持体、すなわちバイオインクは、その活用度において多くの限界点を示している。このようなバイオ素材の限界点である活用範囲を広めるために、バイオプリンティング及び注射注入が可能なハイドロゲル複合体が必要な現状にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2018-0117417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、一般的な一端或いは両端にエポキシド基又はアミン基が存在する架橋剤の投入無しで自発的な架橋結合によって迅速に3次元的な構造を形成できるので、軟組織移植が可能な構造を提供する組織再生用ハイドロゲル組成物及びこれを用いて製造された支持体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の目的は、陰イオン性多糖類、アミン化したヒアルロン酸及びコラーゲンを含むことを特徴とする組織再生用ハイドロゲル組成物を提供することによって達成される。
【0015】
本発明の好ましい特徴によれば、前記組織再生用ハイドロゲル組成物は、陰イオン性多糖類1~10重量%、アミン化したヒアルロン酸0.1~2重量%、及びコラーゲン0.1~3重量%を含むものとする。
【0016】
本発明のより好ましい特徴によれば、前記陰イオン性多糖類は、重量平均分子量が100~500kDaであり、β-D-マンヌロン酸50~70重量%、及びα-L-グルロン酸30~50重量%からなるものとする。
【0017】
本発明のさらに好ましい特徴によれば、前記アミン化したヒアルロン酸は、重量平均分子量が100~500kDaであるものとする。
【0018】
本発明のさらに好ましい特徴によれば、前記コラーゲンは、重量平均分子量が100~500kDaであり、アテロコラーゲンからなるものとする。
【0019】
本発明のさらに好ましい特徴によれば、前記組織再生用ハイドロゲル組成物には、前記組織再生用ハイドロゲル組成物に含まれた陰イオン性多糖類100重量部に対して、2価陽イオン150~400重量部及びメタノール0.1~2重量部がさらに含まれるものとする。
【0020】
本発明のさらに好ましい特徴によれば、前記2価陽イオンは、質量濃度が0.5~2%であり、アルカリ土金属又はその化合物からなるものとする。
【0021】
本発明のさらに好ましい特徴によれば、前記メタノールは、質量濃度が40~60%であるものとする。
【0022】
本発明のさらに好ましい特徴によれば、前記組織再生用ハイドロゲル組成物には、前記組織再生用ハイドロゲル組成物100重量部に対して、添加剤0.1~1重量部がさらに含まれ、前記添加剤は、細胞、細胞成長因子、緩衝剤、防腐剤、等張性調節剤、塩、酸化防止剤、滲透圧調節剤、乳化剤、湿潤剤、甘味料、香料剤、痲酔剤からなる群から選ばれる一つ以上からなるものとする。
【0023】
本発明のさらに好ましい特徴によれば、前記細胞は、幹細胞、感覚細胞、脳細胞、生殖細胞、上皮細胞及び免疫細胞からなる群から選ばれる一つ以上からなるものとする。
【0024】
また、本発明の目的は、前記組織再生用ハイドロゲル組成物で製造されることを特徴とする組織再生用ハイドロゲル支持体を提供することによって達成される。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る組織再生用ハイドロゲル組成物及びこれを用いて製造された支持体は、一般的な一端或いは両端にエポキシド基又はアミン基が存在する架橋剤の投入無しで自発的な架橋結合によって迅速に3次元的な構造を形成できるので、軟組織移植が可能な構造を提供する優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の製造例5で製造されたハイドロゲル支持体を撮影した写真である。
【
図2】本発明の製造例5で進行されるハイドロゲル支持体の製造過程を示す概略図である。
【
図3】2価陽イオンの濃度による圧縮強度を測定して示すグラフである。
【
図4】本発明の製造例3で製造されたハイドロゲル組成物を撮影した写真である。
【
図5】製造例3で製造されたハイドロゲル組成物を凍結乾燥後に光学顕微鏡で撮影した写真である。
【
図6】本発明の製造例5で製造されたハイドロゲル支持体を凍結乾燥後に光学顕微鏡で撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下には、本発明の好ましい実施例と各成分の物性を詳細に説明するが、これは、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が発明を容易に実施できる程度に詳細に説明するためのものであり、これによって本発明の技術的な思想及び範ちゅうが限定されることを意味するものではない。
【0028】
本発明に係る組織再生用ハイドロゲル組成物は、陰イオン性多糖類、アミン化したヒアルロン酸及びコラーゲンを含んでなり、陰イオン性多糖類1~10重量%、アミン化したヒアルロン酸0.1~2重量%、及びコラーゲン0.1~3重量%を含んでなることが好ましい。
【0029】
上記のように、陰イオン性多糖類、アミン化したヒアルロン酸及びコラーゲンからなるハイドロゲルを用いることにより、速い架橋結合及びプリンティングされた構造物を保持する機械的特性を示すと同時に、皮膚軟組織に注射注入が可能な特性を示し、バイオ素材の限界点を解決することができる。
【0030】
また、上記の成分からなるハイドロゲル組成物に組織由来細胞外基質成分を添加する又は特定の細胞分化調節物質を添加することが可能であり、特定組織への分化を誘導することもできる。
【0031】
また、本発明で使われる「ハイドロゲル」とは、薬物伝達及び生体組織的合成材料として使用可能な水膨潤性高分子のことを意味する。このような水膨潤性高分子は、水を吸収するか水に溶解されない高分子、すなわち十分の水膨潤性を保有している親水性高分子を意味し、細胞及び成長因子とブレンディング可能なので、より生体適合性を有する支持体を提供することができる。
【0032】
前記陰イオン性多糖類は1~10重量%が含まれ、重量平均分子量が100~500kDaであり、β-D-マンヌロン酸(β-D-Mannuronic acid)50~70重量%及びα-L-グルロン酸(α-L-Guluronic acid)30~50重量%からなるが、前記陰イオン性多糖類の含有量は、本発明に係る組織再生用ハイドロゲル組成物全体に対して1~10重量%を占め、好ましくは4~10重量%を占めることができる。
【0033】
上記の陰イオン性多糖類の含有量が1重量%未満である又は10重量%を超えると、2価陽イオン添加時にエグボックス(egg box)が形成されずに済むか、局所的にエグボックスが形成されても、水不溶性ハイドロゲルが形成されずに済む。
【0034】
前記アミン化したヒアルロン酸は、0.1~2重量%が含まれ、重量平均分子量が100~500kDaを示すが、アミン化したヒアルロン酸は、ヒアルロン酸の水酸基水素原子中の少なくとも一部が、4級アンモニウム陽イオン基を有する基に置換されたものを使用することが好ましい。
【0035】
上記のように、4級アンモニウム陽イオン基を有するヒアルロン酸は、第1ハイドロゲルの0.1~2重量%が含まれ、0.5~1重量%が含まれることが好ましいが、上記のアミン化したヒアルロン酸の含有量が2重量%を超えると、ハイドロゲル組成物の陰イオン性を有する多糖類との共存により、アミン化したヒアルロン酸との両者の静電的相互作用によってポリイオンコンプレックスを形成し、局所的に不均一な水不溶性ゲルが沈殿し、前記アミン化したヒアルロン酸の含有量が0.1重量%未満であると、溶媒上でコラーゲンとのβシートが正常に形成されなくなる問題点が発生する。
【0036】
前記コラーゲンは0.1~3重量%が含まれ、重量平均分子量が100~500kDaであるアテロコラーゲンからなるが、アテロコラーゲンのうち、第1型、第2型、第3型の1つ又はそれ以上を任意に選択して使用することができ、官能基末端にコハク酸或いは硫化結合で置換されたものを使用することが好ましい。
【0037】
前記コラーゲンは、組織再生用ハイドロゲル組成物中に0.1~3重量%で含まれ、0.5~1.5重量%含まれることが好ましいが、前記コラーゲンの含有量が3重量%を超えると、溶媒によってβシートへの転換が急激に起きて部分的に不均一となり、均一なハイドロゲル組成物及び支持体を製造できなく、前記コラーゲンの含有量が0.1重量%未満であると、ハイドロゲル組成物状態では均一な形状を示すが、支持体を製造する過程で不均一な繊維化現象が発生する問題点がある。
【0038】
また、本発明に係る組織再生用ハイドロゲル組成物には、前記組織再生用ハイドロゲル組成物に含まれた陰イオン性多糖類100重量部に対して、2価陽イオン150~400重量部及びメタノール0.1~2重量部がさらに含まれてよいが、上記のように、陽イオンがさらに含まれると、本発明に係る組織再生用ハイドロゲル組成物が水不溶化される。
【0039】
このとき、前記2価陽イオンは質量濃度が0.5~2%であり、アルカリ土金属又はその化合物からなることが好ましく、前記アルカリ土金属には、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム及びラジウムからなることがより好ましい。
【0040】
また、前記メタノールは、組織再生用ハイドロゲル組成物を、上記のように水不溶化する過程でハイドロゲル組成物の構造に変化を与える役割を担うが、質量濃度が40~60%であることが好ましい。
【0041】
上記の2価陽イオンとメタノールを混合してハイドロゲル組成物を水不溶化する過程は特に限定されないが、製品の均一性及び大量生産化に適している製造方式を選択して使用することが好ましく、より詳細には、ハイドロゲル組成物を製造した後に2価陽イオンを噴射し、メタノールを滴加した後、0~60℃の温度で-0.05Mpaの陰圧を加えてメタノールを除去する過程からなることがより好ましい。
【0042】
このとき、上記の温度及び陰圧の条件は、本発明の権利範囲を限定するものでなく、様々に変更可能であり、前記メタノール除去工程は、温度及び陰圧の方法に限定されず、透析膜を用いて除去する工程も利用可能である。
【0043】
また、本発明に係る組織再生用ハイドロゲル組成物には、前記組織再生用ハイドロゲル組成物100重量部に対して、添加剤0.1~1重量部がさらに含まれてよく、前記添加剤は、細胞、細胞成長因子、緩衝剤、防腐剤、等張性調節剤、塩、酸化防止剤、滲透圧調節剤、乳化剤、湿潤剤、甘味料、香料剤、痲酔剤からなる群から選ばれる一つ以上からなることが好ましい、
【0044】
このとき、前記細胞は、幹細胞、感覚細胞、脳細胞、生殖細胞、上皮細胞及び免疫細胞からなる群から選ばれる一つ以上からなってよい。
【0045】
また、前記痲酔剤は、例えば、アミノアミド(aminoamide)局所痲酔又はアミノエステル(aminoester)局所痲酔のような局所痲酔剤であってよい。局所痲酔剤の例に、リドカイン(lidocaine)、アムブカイン(ambucaine)、アモラノン(amolanone)、アミロカイン(amylocaine)、ベノキシネート(benoxinate)、ベンゾカイン(bensocaine)、べトキシカイン(betoxycaine)、ビフェナミン(biphenamine)、ブピバカイン(bupivacaine)、ブタカイン(butacaine)、ブタンホウ素(butamben)、ブタニリカイン(butanilicaine)、ブテタミン(butethamine)、ブトキシカイン(butoxycaine)、カチカイン(carticaine)、クロロプロカイン(chloroprocaine)、コカエチレン(cocaethylene) 、シクロメチカイン(cyclomethycaine)、ジブカイン(dibucaine)、ジメチコキノン(dimethisoquin)、ジメトカイン(dimethocaine)、ジフェロドン(diperodon)、ジシクロミン(dicyclomine)、エゴニジン(ecgonidine)、エゴニン(ecgonine)、エチルクロリド(ethyl chloride)、エチドカイン(etidocaine)、β-ユカイン(β-eucaine)、ユープロシン(euprocin)、フェナルコミン(fenalcomine)、フォルモカイン(formocaine)、ヘキシルカイン(hexylcaine),ヒドロキシテトラカイン(hydroxytetracaine)、イソブチルp-アミノベンゾエート(isobutyl p-aminobenzoate)、ロイシノカインメシレート(leucinocaine mesylate)、レボキサドロール(levoxadrol)、リドカイン(lidocaine)、メピバカイン(mepivacaine) 、メプリルカイン(meprylcaine)、メタブトキシカイン(metabutoxycaine)、メチルクロリド(methyl chloride)、ミルテカイン(myrtecaine)、ネパイン(naepaine)、オクタカイン(octacaine)、オルソカイン(orthocaine)、オキセサゼイン(oxethazaine)、パレトキシカイン(parethoxycaine)、フェナカイン(phenacaine)、フェノール(phenol)、ピペロカイン(piperocaine)、ピリドカイン(piridocaine)、ポリドカノール(polidocanol)、パラモキシン(pramoxine)、プリロカイン(prilocaine)、プロカイン(procaine)、プロパノカイン(propanocaine)、プロパラカイン(proparacaine)、プロピポカイン(propipocaine)、プロポキシカイン(propoxycaine)、プソイドコカイン(pseudococaine)、ピロカイン(pyrrocaine)、ロピバカイン(ropivacaine)、サリチルアルコール(salicyl alcohol)、テトラカイン(tetracaine)、トリカイン(tolycaine)、トリメカイン(trimecaine)、ゾラミン(zolamine)、それらの組み合わせ、及びそれらの塩があり、これらに限定されない。アミノエステル局所麻酔剤の例としては、プロカイン(procaine)、クロロプロカイン(chloroprocaine)、コカイン(cocaine)、シクロメチルカイン(cyclomethycaine)、ジメトカイン(ラロカイン)(dimethocaine(larocaine))、プロポキシカイン(propoxycaine)、プロカイン(ノボカイン)(procaine(novocaine))、プロパラカイン(proparacaine)、テトラカイン(アメトカイン)(tetracaine(amethocaine))があり、これに限定されない。アミノアミド(aminoamide)の局所麻酔剤の非限定的な例としては、アーティカイン(articaine)、ブピバカイン(bupivacaine)、シンコカイン(ジブカイン)(cinchocaine(dibucaine))、エチドカイン(etidocaine)、レボブピカイン(levobupivacaine)、リドカイン(リグノカイン)(lidocaine (lignocaine))、メピバカイン(mepivacaine)、ピペロカイン(piperocaine)、プリロカイン(prilocaine)、ロピバカイン(ropivacaine)、トリメカイン(trimecaine))、又はそれらの組み合わせが含まれる。
【0046】
上記のような成分からなる添加剤が含まれると、本発明に係るハイドロゲル組成物が皮膚の状態を改善する、シワを埋める、或いは顔面又は身体輪郭を形成する目的で利用可能である。のみならず、真皮充填剤として有用に利用可能である。
【0047】
以下では、本発明に係る組織再生用ハイドロゲル組成物の製造方法及びその製造方法で製造されたハイドロゲル組成物を用いて支持体を製造する方法とそれぞれの物性を、実施例を挙げて説明する。
【0048】
<製造例1>注射注入用ハイドロゲル組成物の製造
重量平均分子量が100kDa~500kDaである陰イオン性多糖類(β-D-マンヌロン酸とα-L-グルロン酸が50:50で混合)7重量%を常温で混合した後、重量平均分子量が100kDa~500kDaであるアミン化したヒアルロン酸を0.7重量%混合して混合物を製造し、前記混合物のpHを6.0を保持した後、重量平均分子量が100kDa~500kDaであるアテロ第1型コラーゲン1重量%を混合して、注射注入用ハイドロゲル組成物を製造した。
【0049】
<製造例2>添加剤が含まれた注射注入用ハイドロゲル組成物の製造
前記製造例1で製造された注射注入用ハイドロゲル組成物100重量部に、添加剤(緩衝剤、滲透圧調節剤、乳化剤、リドカインが混合)0.5重量部を混合して、添加剤が含まれた注射注入用ハイドロゲル組成物を製造した。
【0050】
<製造例3>注射注入用不水溶性ハイドロゲル組成物の製造
前記製造例1で製造されたハイドロゲル組成物に、質量濃度が1%である塩化カルシウムを常温で混合し、100rpmの速度で撹拌して反応させた後に、質量濃度60%のメタノールを投入した後、常温で500rpmの速度で撹拌し、撹拌が完了した後、透析膜或いは回転式真空蒸発器で残留メタノールを除去し、注射注入用の不水溶性ハイドロゲル組成物を製造した。
【0051】
<製造例4>添加剤が含まれた注射注入用不水溶性ハイドロゲル組成物の製造
前記製造例2で製造されたハイドロゲル組成物に、質量濃度が1%である塩化カルシウムを常温で混合し、100rpmの速度で撹拌して反応させた後に、質量濃度60%のメタノールを投入した後、常温で500rpmの速度で撹拌し、撹拌が完了した後、透析膜或いは回転式真空蒸発器で残留メタノールを除去し、注射注入用不水溶性ハイドロゲル組成物を製造した。
【0052】
<製造例5>3Dプリンタ用ハイドロゲル支持体の製造
第1溶液(重量平均分子量が100kDa~500kDaであるβ-D-マンヌロン酸とα-L-グルロン酸を常温で50:50に混合して製造)7重量%を、質量濃度が1%である塩化カルシウムと常温で混合し、100rpmの速度で撹拌して反応させた後に乾燥させて支持体を製造し、製造された支持体を、第2溶液(重量平均分子量が100kDa~500kDaであるアミン化したヒアルロン酸のpHを6.0を保持した後、重量平均分子量が100kDa~500kDaであるアテロ第1型コラーゲン1重量%を混合して製造)に浸漬して支持体内部に第2溶液を浸透させた後に、第2溶液の浸透した支持体を質量濃度60%のメタノールに浸漬し、真空乾燥させて、3Dプリンタ用ハイドロゲル支持体を製造した。
【0053】
<製造例6>添加剤が含まれた3Dプリンタ用ハイドロゲル支持体の製造
前記製造例5と同一に行うが、第1溶液として重量平均分子量が100kDa~500kDaであるβ-D-マンヌロン酸とα-L-グルロン酸を常温で50:50に混合して製造された混合物に、添加剤(緩衝剤、滲透圧調節剤、乳化剤、リドカインが混合)0.5重量部を混合して製造されたものを使用し、添加剤が含まれた3Dプリンタ用ハイドロゲル支持体を製造した。
【0054】
<実施例1>2価陽イオンの濃度による製造
2価陽イオンの濃度による固体状態の変化を測定し、下記の表1に示した。
【0055】
【0056】
前記表1には、2価陽イオンの濃度及びβ-D-マンヌロン酸、α-L-グルロン酸混合物濃度による状態変化を示しているが、前記β-D-マンヌロン酸、α-L-グルロン酸混合物の濃度が第1ハイドロゲル中に4重量%であり、カルシウムイオンの質量濃度が1.0~1.5%であるとき、
図4のような状態になった。
【0057】
また、前記β-D-マンヌロン酸、α-L-グルロン酸混合物の濃度が、ハイドロゲル組成物中に6重量%であり、カルシウムイオンの質量濃度が0.5~1.0%であるとき、
図4のような状態になったし、カルシウムイオンの質量濃度が1.5%のときに、
図1のように固いゲルを形成した。
【0058】
また、前記β-D-マンヌロン酸、α-L-グルロン酸混合物の濃度がハイドロゲル組成物中に8重量%であり、カルシウムイオンの質量濃度が0.5%であるときに、
図4のような状態になり、カルシウムイオンの濃度が1.0%のときに、
図1のような固いゲルを形成した。
【0059】
また、前記β-D-マンヌロン酸、α-L-グルロン酸混合物の濃度がハイドロゲル組成物中に10重量%であり、カルシウムイオンの質量濃度が0.5%であるときに、
図4のような状態になった。
【0060】
前記表1示したように、β-D-マンヌロン酸、α-L-グルロン酸混合物の濃度及び2価陽イオンの濃度によって注射注入用又は3Dプリンタ用支持体へと適用範囲が区分される。このとき、前記カルシウムイオンの投入量は、β-D-マンヌロン酸、α-L-グルロン酸の混合物と3:7に投入する条件であった。
【0061】
<実施例2>2価陽イオンの濃度によるモルフォロジー変化
前記実施例1でβ-D-マンヌロン酸、α-L-グルロン酸の混合物の濃度が、ハイドロゲル組成物に対して4、6、8、10重量%であり、2価陽イオンの濃度によるモルフォロジー変化を測定した。
【0062】
【0063】
前記表2示したように、β-D-マンヌロン酸、α-L-グルロン酸の混合物の濃度及び2価陽イオンの濃度によってゲルの引張強度はたいてい増加するが、混合物の濃度が高くなると同時に2価陽イオンの濃度が高くなると、β-D-マンヌロン酸、α-L-グルロン酸の内部カルボキシル基と2価陽イオンが、急激なエグボックスが起きて不均一なゲル化が進行されることが分かる。
【0064】
<実施例3>β-D-マンヌロン酸、α-L-グルロン酸、アミン化したヒアルロン酸及びコラーゲン混合物のモルフォロジー変化
【0065】
【0066】
前記表3示したように、前記表2と同様に、β-D-マンヌロン酸、α-L-グルロン酸の混合物の濃度及び2価陽イオンの濃度によってゲルの引張強度はたいてい増加するが、混合物の濃度が高くなると同時に2価陽イオンの濃度が高くなると、β-D-マンヌロン酸、α-L-グルロン酸の内部カルボキシル基と2価陽イオンが、急激なエグボックスが起きて不均一なゲル化が進行されることが分かる。すなわち、2価陽イオンの濃度によるエグボックス化に影響を受けないことを示している資料である。
【0067】
<試験例1>製造例3のハイドロゲル細胞毒性実験
前記製造例3で製造されたハイドロゲル組成物を10wt%でPBSに溶解し、この混合物にフィブロブラストを1×106/100μl追加した。細胞の混ざっている液にDEME(FBS 10%、抗生物質1%)培地で3日間培養後に、Live and Deadキットを用いて細胞毒性実験を実施した。
【0068】
観察の結果、3日後に、細胞生存率が平均して96%以上と示された。
【0069】
<試験例2>製造例5のハイドロゲル支持体の細胞毒性実験
前記製造例5で製造されたハイドロゲル支持体を10wt%でPBSに溶解し、この混合物にフィブロブラストを1×106/100μl追加した。細胞が混ざっている溶液にDEME(FBS 10%、抗生物質1%)培地で3日間培養後に、Live and Deadキットを用いて細胞毒性実験を実施した。
【0070】
観察の結果、3日後に、細胞生存率が平均して98%以上と示された。
【国際調査報告】