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特表2022-550095オンボーディング及び1日総インスリンの適応性
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-30
(54)【発明の名称】オンボーディング及び1日総インスリンの適応性
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/142 20060101AFI20221122BHJP
【FI】
A61M5/142 530
A61M5/142 520
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022519275
(86)(22)【出願日】2020-09-23
(85)【翻訳文提出日】2022-05-20
(86)【国際出願番号】 US2020052125
(87)【国際公開番号】W WO2021061711
(87)【国際公開日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】16/586,499
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519167449
【氏名又は名称】インスレット コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100196601
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 祐市
(72)【発明者】
【氏名】チュン ポク イー
(72)【発明者】
【氏名】イーピン チョン
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン オコナー
(72)【発明者】
【氏名】トラン リー
(72)【発明者】
【氏名】エリック ベンジャミン
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066BB01
4C066CC01
4C066QQ61
4C066QQ77
4C066QQ82
(57)【要約】
デバイス、コンピュータ可読媒体、及びオンボーディング・プロセス及び適応プロセスを薬物送達デバイスに提供する技術が開示される。オンボーディング・プロセスを実行するプロセッサは、ユーザーに送達されたインスリンの履歴が特定の充分要件を満たすかどうかを判断する。オンボーディング・プロセスにより、プロセッサは、インスリン送達履歴の充分性に基づいて決定される初期の1日総インスリン投与量の計算に従って、薬物送達デバイスがユーザーにインスリン投与量を投与させることができる。初期の1日総インスリンは、新しいインスリン送達が収集されるときに、適応プロセスに従って適応されてもよい。インスリン送達履歴は、充分な場合、薬物送達デバイスの交換時に自動インスリン送達を可能にする1日総インスリン投薬量を設定するために使用されてもよい。適応プロセスは、初期のインスリン送達投与量を変更し、適応されたインスリン送達投与量を提供するために実行されてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサによって実行可能なプログラミング・コードで具体化される非一時的なコンピュータ可読媒体であって、前記プログラミング・コードを実行するとき、前記プロセッサは機能を実行するよう作動して、
ユーザーに関連するインスリン送達履歴の部分を取得し、
前記インスリン送達履歴の前記部分が充分要件を満たすかどうかを判断し、
前記インスリン送達履歴が前記充分要件を満たすという決定に応じて、一定期間に亘って送達されるインスリンの量に対する制限として安全性上限を選択し、前記選択された安全性上限は、安全性下限に関連するインスリンの量を越えるインスリンの量であり、
前記安全性上限を下回る薬物送達デバイスによって送達されるインスリンの量を設定し、及び
前記設定されたインスリンの量によるインスリンの量の送達を開始する機能を含む、非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項2】
前記プロセッサによって実行可能なプログラミング・コードでさらに具体化され、前記プログラミング・コードを実行するとき、前記プロセッサは、前記インスリン送達履歴の前記部分が充分要件を満たすかどうかを判断するよう作動して、
所定の基準について前記インスリン送達履歴の前記取得された部分を分析し、
前記分析の結果に基づいて、前記インスリン送達履歴が、以前の日数内にある連続した期間内のデータの合計時間数を満足させる前記充分要件を満たすことを確認し、及び
前記インスリン送達履歴が前記充分要件を満たすことの確認を示す確認信号を生成するさらなる機能を実行する、請求項1に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項3】
前記プロセッサによって実行可能なプログラミング・コードでさらに具体化され、前記プログラミング・コードを実行するとき、前記プロセッサは、
更新されたインスリン送達履歴から、前記薬物送達デバイスによって送達されるインスリンの量に関連する新しい情報を取得し、
適応モードがアクティブであることを決定し、
前記適応モードがアクティブであるという前記決定に応じて、以前に設定された1日総インスリン投薬量と前記更新されたインスリン送達履歴に基づくインスリン投与量の1日平均の加重和で1日総インスリン投薬量を設定し、及び
ウェアラブル薬物送達デバイスで受信するために、前記設定された1日総インスリン投薬量を送信するさらなる機能を実行するよう作動する、請求項1に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項4】
前記プロセッサによって実行可能なプログラミング・コードでさらに具体化され、前記プログラミング・コードを実行するとき、前記プロセッサは、
インスリン送達が所定の最後のインスリン送達期間内に行われたかどうかを判断し、及び
前記インスリン送達が前記所定の最後のインスリン送達期間内に行われたという決定に応じて、前記選択された安全性限界の設定を前記薬物送達デバイスに送信するさらなる機能を実行するよう作動する、請求項3に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項5】
前記プロセッサによって実行可能なプログラミング・コードでさらに具体化され、前記プログラミング・コードを実行するとき、前記プロセッサは、
前記薬物送達デバイスが、所定の最後のインスリン送達期間内にインスリン送達を行ったかどうかを判断し、及び
前記薬物送達デバイスが前記所定の最後のインスリン送達期間内にインスリン送達を行わなかったという決定に応じて、前記設定された1日総インスリン投薬量の割合に等しい開始インスリン搭載設定を確立するさらなる機能を実行するよう作動する、請求項3に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項6】
前記プロセッサによって実行可能なさらなるプログラミング・コードでさらに具体化され、前記さらなるプログラミング・コードを実行するとき、前記プロセッサはさらなる機能を実行するよう作動して、
更新されたインスリン送達履歴から、前記薬物送達デバイスによって送達されるインスリンの量に関連する新しい情報を取得し、
適応モードが非アクティブであると決定し、
前記適応モードが非アクティブであるとの決定に応じて、前記取得された新しい情報に基づいて、1日総インスリン投薬量を1日平均に設定し、
前記適応モードをアクティブに設定し、及び
前記設定された総インスリン投薬量を前記薬物送達デバイスに提供する機能を含む、請求項1に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項7】
前記プロセッサによって実行可能なプログラミング・コードでさらに具体化され、前記プログラミング・コードを実行するとき、前記プロセッサは、
前記薬物送達デバイスが、所定の最後のインスリン送達期間内にインスリン送達を行ったかどうかを判断し、及び
前記薬物送達デバイスが前記所定の最後のインスリン送達期間内にインスリン送達を行ったという決定に応じて、前記選択された安全性限界の設定を前記薬物送達デバイスに送信するさらなる機能を実行するよう作動する、請求項6に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項8】
前記プロセッサによって実行可能なプログラミング・コードでさらに具体化され、前記プログラミング・コードを実行するとき、前記プロセッサは、
前記薬物送達デバイスが、所定の最後のインスリン送達期間内にインスリン送達を行ったかどうかを判断し、及び
前記薬物送達デバイスが前記所定の最後のインスリン送達期間内にインスリン送達を行わなかったという決定に応じて、前記設定された1日総インスリン投薬量の割合に等しい開始インスリン搭載設定を確立するさらなる機能を実行するよう作動する、請求項6に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項9】
前記プロセッサによって実行可能なプログラミング・コードでさらに具体化され、前記インスリン送達履歴の前記部分が充分要件を満たすかどうかを判断するための前記プログラミング・コードを実行するとき、前記プロセッサは、
前記インスリン送達履歴の前記部分が前記充分要件を満たしていないことを決定し、
前記インスリン送達履歴が前記充分要件を満たしていないという決定に応じて、一定期間の間送達されるインスリンの量に対して安全性下限を選択し、前記選択された安全性下限は前記選択された安全性上限よりも低く、前記薬物送達デバイスによって送達されるインスリンの最小量を越えている、及び
前記ウェアラブル薬物送達デバイスによって送達される前記インスリンの量を前記選択された安全性下限以下に制限するよう作動する、請求項1に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項10】
前記プロセッサによって実行可能なプログラミング・コードでさらに具体化され、前記プログラミング・コードを実行するとき、前記プロセッサは、
前記安全性下限を、基礎インスリン制限設定に適用される乗数に等しいインスリン・レベルに設定するようさらに作動して、前記期間は1日である、請求項9に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項11】
前記プロセッサによって実行可能なプログラミング・コードでさらに具体化され、前記プログラミング・コードを実行するとき、前記プロセッサは、
適応モードが非アクティブであるという表示を提供するようさらに作動する、請求項9に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項12】
前記プロセッサによって実行可能なプログラミング・コードでさらに具体化され、前記プログラミング・コードを実行するとき、前記プロセッサは機能を実行するよう作動し、前記インスリン送達履歴が充分であるかどうかを判断するとき、
前記インスリン送達履歴のデータが約54時間の連続した期間に亘って約6時間を越えるギャップなしに合計約48時間にわたり、及び
約30日間より古くないことを決定する機能を含む、請求項5に記載の非一時的なコンピュータ可読媒体。
【請求項13】
プロセッサと、
前記プロセッサに通信可能に結合され、プログラミング・コード、人工膵臓アプリケーション、オンボーディング・アプリケーション・コード、適応アプリケーション・コード、及び前記人工膵臓アプリケーション、前記オンボーディング・アプリケーション・コード、又は前記適応アプリケーション・コードに関連するデータを格納するよう作動するメモリと、
前記プログラミング・コード、前記人工膵臓アプリケーション、前記オンボーディング・アプリケーション・コード、及び前記適応アプリケーション・コードは、前記プロセッサによって実行可能であり、
前記プロセッサに通信可能に結合され、前記人工膵臓アプリケーション、前記オンボーディング・アプリケーション・コード、及び前記適応アプリケーション・コードによって使用可能な又は生成される情報を含む信号を送受信し、信号をウェアラブル薬物送達デバイスと交換するよう作動するトランシーバとを備え、
前記人工膵臓アプリケーション、前記オンボーディング・アプリケーション・コード、又は前記適応アプリケーション・コードを実行するとき、前記プロセッサはインスリンの送達を制御し、機能を実行するよう作動し、
ユーザーに関連するインスリン送達履歴の部分を取得し、前記インスリン送達履歴が前記ユーザーに投与されるいくらかのインスリン送達投薬量ごとに送達されるインスリンの量を含み、
前記インスリン送達履歴の前記部分がインスリン履歴の充分要件を満たすかどうかを判断し、
前記インスリン送達履歴が前記インスリン履歴の充分要件を満たすという決定に応じて、初期の1日総インスリン値を設定し、及び
前記ウェアラブル薬物送達デバイスで受信するために、前記初期の1日総インスリン値を送信する機能を含む、デバイス。
【請求項14】
前記プロセッサは血糖センサーに通信可能に結合され、前記プロセッサは、
前記血糖センサーから複数の血糖測定値を受信し、それぞれの血糖測定値は、一定期間に亘って所定の時間間隔で受信され、
前記受信された複数の血糖測定値に基づいて前記初期の1日総インスリン値を変更し、適合された1日総インスリン値を生成し、及び
前記適合された1日総インスリン値を使用して、前記ウェアラブル薬物送達デバイスの動作を実行するようさらに作動する、請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
前記プロセッサは、
前記ウェアラブル薬物送達デバイスが交換用ウェアラブル薬物送達デバイスと交換されているという表示を受信し、
前記交換されているウェアラブル薬物送達デバイスの動作の間に収集される更新されたインスリン送達履歴データを取得し、及び
前記取得されたインスリン送達履歴に基づいて、パラメーターの合計に基づいて前記交換用ウェアラブル薬物送達デバイスによって送達される1日総インスリンを設定するようさらに作動し、前記パラメーターは、前記ウェアラブル薬物送達デバイスに設定される1日総インスリン、及び前記交換されているウェアラブル薬物送達デバイスのライフサイクルの間に送達されるインスリンの量に対応し、重みは各パラメーターに適用される、請求項13に記載のデバイス。
【請求項16】
前記プロセッサは、
パラメーターに適用される前記重みの値は、前記更新されたインスリン送達履歴の長さに基づくことを決定するようさらに作動し、各パラメーターに適用される前記重みの前記値は1未満である、請求項15に記載のデバイス。
【請求項17】
前記プロセッサは、
前記ウェアラブル薬物送達デバイスから警報信号を受信するようさらに作動し、前記警報信号は前記ウェアラブル薬物送達デバイスの誤動作を示す、請求項13に記載のデバイス。
【請求項18】
前記プロセッサに通信可能に結合されるタッチスクリーン・ディスプレイ・デバイスと、
前記プロセッサによって生成され、前記タッチスクリーン・ディスプレイ・デバイスに提示されるユーザー・インターフェースとをさらに備え、
前記プロセッサは、前記タッチスクリーン・ディスプレイ・デバイス及び前記ユーザー・インターフェースを介して、基礎インスリン投薬量を示す入力を受信するよう作動する、請求項13に記載のデバイス。
【請求項19】
前記プロセッサは、
前記ウェアラブル薬物送達デバイスによって一定期間に亘って自動的に送達されるインスリン投与量の数の計算を維持し、
前記ウェアラブル薬物送達デバイスによって一定期間に亘って送達されるユーザー入力インスリン投与量の数の計算を維持し、
送達されるユーザー入力インスリン投与量の前記数に対する自動的に送達されたインスリン投与量の割合に基づいて、加重信頼度を生成し、及び
ユーザーが要求したインスリン送達と比較して、自動送達のより高い割合の日中の間により高い重みを前記インスリン送達に割り当てるようさらに作動する、請求項13に記載のデバイス。
【請求項20】
前記プロセッサは、
前記ウェアラブル薬物送達デバイスによって投与される1日総インスリンの量をユーザーの基礎インスリン投薬量の倍数に制限するようさらに作動し、
1番目の乗数は、前記プロセッサが前記インスリン送達履歴は充分であると決定する場合に選択され、及び
2番目の乗数は、前記プロセッサが前記インスリン送達履歴は不充分であると決定する場合に選択される、請求項13に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
説明された例は、閉ループ・アルゴリズムで使用するためのユーザー・データのオンボーディングを可能にし、更新されたユーザー・データを使用してユーザーのインスリン要件を継続的に評価する適応技術を実行する薬物送達システムのための特徴を提供する。
【0002】
関連出願
この出願は、2019年9月27日に出願された“オンボーディング及び1日総インスリンの適応性”と題された米国特許出願第16/586、499号明細書の優先権を主張する。前述の出願の内容はその全体が参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0003】
より正確なインスリン投与量をユーザーに提供するために、連続血糖モニタリングデバイス(CGM)及びウェアラブル・インスリン注射デバイスで作動する糖尿病管理デバイスが利用可能である。ウェアラブル・インスリン注射デバイスは、正常に機能している場合、通常、数日後に交換される。ウェアラブル・インスリン注射デバイスを交換すると、糖尿病管理デバイスで実行する糖尿病管理アルゴリズムは、糖尿病管理デバイスが自動インスリン投与レジメン(“閉ループ”動作と呼ばれる)を開始できるようになるまでの期間、数日又は数週間などの期間に亘ってアルゴリズムがデータを収集する間、ユーザーにインスリン投与入力(“開ループ”動作と呼ばれる)をアルゴリズムに提供するように要求することができる。その結果、糖尿病管理デバイスが開ループ動作中に数日又は数週間、閉ループの自動インスリン送達動作が開始できる前に、ユーザーは手動でインスリン投与入力を提供しなければならないかもしれない。
【0004】
閉ループ動作の部分である自動インスリン投与レジメンの開始の遅れは、ユーザーにとって不便であり、ウェアラブル・インスリン注射デバイスを再度交換する前の短時間にユーザーの真のインスリン必要量の正確な推定値を提供することや、開ループ及び閉ループ動作のサイクルを繰り返すことの糖尿病管理デバイスを制限する。
【発明の概要】
【0005】
プロセッサによって実行可能なプログラミング・コードで具体化される非一時的なコンピュータ可読媒体の例が開示される。プログラミング・コードを実行するとき、プロセッサは機能を実行するよう作動し、ユーザーに関連するインスリン送達履歴の部分を取得する機能を含む。プログラミング・コードを実行するとき、プロセッサは、インスリン送達履歴の部分が充分要件を満たしているかどうかを判断するよう作動することができる。インスリン送達履歴が充分要件を満たすという決定に応じて、一定期間に送達されるインスリンの量の限界として、安全性上限が選択されてもよい。選択された安全性上限は、安全性下限に関連するインスリンの量を越えるインスリンの量であってもよい。選択された安全性上限を下回る一定期間の間に送達されるインスリンの量が、設定されてもよい。インスリンの設定された量に応じて、インスリンの量の送達を開始されてもよい。
【0006】
プロセッサ、メモリ、及びトランシーバを備えるデバイスが開示される。メモリは、プログラミング・コード、人工膵臓アプリケーション、オンボーディング・アプリケーション・コード、適応アプリケーション・コード、並びに人工膵臓アプリケーション、オンボーディング・アプリケーション・コード、及び適応アプリケーション・コードに関連するデータを格納するよう作動してもよい。トランシーバは、プロセッサに通信可能に結合され、人工膵臓アプリケーション、オンボーディング・アプリケーション・コード、又は適応アプリケーション・コードによって使用できる又は生成される情報を含む信号を送受信するよう作動してもよい。プログラミング・コード、人工膵臓アプリケーション、オンボーディング・アプリケーション・コード、及び適応アプリケーション・コードは、プロセッサによって実行可能であってもよい。人工膵臓アプリケーション、オンボーディング・アプリケーション・コード、又は適応アプリケーション・コードを実行するとき、プロセッサはインスリンの送達を制御し、機能を実行するよう作動する。機能には、ユーザーに関連するインスリン送達履歴の部分を取得することが含まれる。インスリン送達履歴は、ユーザーに投与されるいくらかのインスリン送達投薬量のそれぞれについて送達されるインスリンの量を含むことができる。プロセッサは、インスリン送達履歴の部分がインスリン履歴の充分要件を満たすかどうかを判断することができる。インスリン送達履歴がインスリン履歴充分要件を満たすという決定に応じて、初期の1日総インスリン値が設定されてもよい。ウェアラブル薬物送達デバイスで受け取るために、初期の1日総インスリン値を送信する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】インスリン送達システムの設定を決定するための例示的プロセスのフロー・チャートを示す図である。
図2】ウェアラブル薬物送達デバイスの使用に関連する例示的状況に関連する例示的プロセスを示す図である。
図3】ウェアラブル薬物送達デバイスの使用に関連する別の例示的状況に関連するさらなる例示的プロセスを示す図を示す図である。
図4】ウェアラブル薬物送達デバイスの使用に関連するさらなる例示的状況に関連する別の例示的プロセスを示す図である。
図5】ウェアラブル薬物送達デバイスの使用に関連する例示的状況に関連するさらに別の例示的プロセスを示す図である。
図6】ウェアラブル薬物送達デバイスの使用に関連する追加された例示的状況に関連する例示的プロセスを示す図である。
図7】本明細書に説明される例示的プロセス及び技術を実行するのに適した薬物送達システムの機能ブロックを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
さまざまな例は、ユーザー・インスリン療法プログラム及び/又は任意の一般的なインスリン送達システムのユーザーのインスリン必要量の正確な推定値を決定するよう作動する適応スキームの凝縮されたオンボーディングを容易にするための方法、システム、デバイス、並びにコンピュータ可読媒体を提供する。例えば、ユーザーのインスリン必要量として捉えられるユーザーの推定値は、特定のユーザーの1日総インスリン(TDI)パラメーターに基づいてもよい。また、例示的プロセスにより、インスリン送達の履歴が不充分な場合、合理的な“オンボーディング”スキームはTDIの開始推定値及び最大信頼度の合理的な限界を提供することができる。
【0009】
いくつかのインスリン送達システムは、過去のインスリン送達履歴の経過を追うことができる。例えば、保存された過去のインスリン送達履歴は、インスリンの投薬量がいつ投与されるか、投薬量中のインスリンの量、投与されるインスリンのタイプ(例えば、速効型、標準、中間作用型、長時間作用型又は同種のもの)、血糖測定などの経過を追うことができる。インスリン送達履歴を使用すると、説明された例は、ますます長い履歴期間に亘ってインスリン送達履歴を使用して高血糖症及び低血糖症のリスクを低減する自動インスリン送達システム内の総インスリン送達評価のための方法を提供する。ほぼすべてのインスリン送達は、通常、高精度で経時的にインスリン送達システムに知られているので、本明細書に説明される例は、新しい薬物送達デバイスを開始するとき、及び薬物送達デバイスが作動している間、既知のインスリン送達履歴を使用して、総インスリン送達の評価を提供し、より正確に各ユーザーの1日総インスリン(TDI)必要量を決定する。
【0010】
説明されたアルゴリズムの正確さによると、説明された例により、インスリン送達履歴の時間範囲及び最小の有効なインスリン送達履歴の長さ、並びに充分な期間のインスリン送達履歴の最初と最後のエントリのタイム・スタンプ間の最大差を後退させることを可能にする。その充分な期間は、特定のユーザーの堅牢で一般化可能なTDI推定値であるTDIパラメーターを生成するために使用される。例示的プロセスは、このTDIパラメーターを計算するよう機能し、ユーザーの生理機能への長期的な変化に基づいて、時間の経過とともにTDI推定値を動的に更新することができる。例示的方法は、病気、急激な体重減少、激しい運動療法又は同種のものの、一時的な生活上の出来事のために起こるかもしれないインスリン感受性の任意の短期間の急性変動に対応するのに充分に力強くてもよい。
【0011】
プロセス例は、血糖レベル、インスリン送達、及び一般的で全体的なインスリン療法を管理するよう機能する任意の追加のアルゴリズム又はコンピュータ・アプリケーションとともに使用されてもよい。このようなアルゴリズムは、“人工膵臓”アルゴリズムベースのシステム、又はより概して人工膵臓(AP)アプリケーションと呼ばれてもよい。APアルゴリズムは、CGMなどから受信されるものなどの血糖センサー入力に基づいてインスリンの自動送達を提供するよう機能する。一例では、プロセッサによって実行されるときの人工膵臓(AP)アプリケーションにより、システムはユーザーのグルコース値を監視し、監視されたグルコース値(例えば、血糖濃度又は血糖測定値)及び炭水化物の摂取量、運動時間、食事時間又は同種のもののユーザー提供情報など、他の情報に基づいてユーザーの適切なインスリン・レベルを決定し、ユーザーの血糖値を適切な範囲内で維持するための措置を講じることができる。適切な血糖値の範囲は、特定のユーザーの目標血糖値と見なされてもよい。例えば、目標血糖値は、糖尿病治療への対処となる臨床基準を満足させる範囲である80mg/dlから120mg/dlの範囲内にある場合、許容できるかもしれない。しかしながら、本明細書に説明される方法及びプロセスによって強化されるAPアプリケーションは、インスリン投薬量をより正確に、また確立されたインスリン投薬量を投与するためのタイミングを確立することができるかもしれない。図1~7の例を参照してより詳細に説明されているように、APアプリケーションは、インスリン送達履歴及び他の情報を利用し、コマンドを生成し、例えば、ポンプを含むウェアラブル薬物送達デバイスにコマンドを送信し、他の機能を制御するのと同様に、決定されたインスリン投与量のユーザーへの送達を制御し、将来のインスリン投与量又はタイミングを変更することができる。
【0012】
説明された例は、“閉ループ”処理アルゴリズム又は自動インスリン送達機構の任意のアプリケーションに有利でかつ有益であり、最初のポッド使用時に自動送達の実質的に即時かつ安全な開始を可能にし、また一方、送達機構は時間の経過とともにユーザーのインスリン必要量の任意の変化に一致させることができる。
【0013】
説明されたプロセスは、ユーザーが最初に、OmniPod(登録商標)(Insulet Corporation、ビレリカ、マサチューセッツ州)などのウェアラブル薬物送達デバイス又は同様の性能を備えた同様に構成されたデバイスを使用又は交換するとき、特に有利であるかもしれない。これらのウェアラブル薬物送達デバイスは、インスリンの投与量を数日間投与することができるが、議論を容易にするために、ウェアラブル薬物送達デバイスが使用できる日数は3日に制限されるかもしれない。加えて、ユーザーが最初に新しいウェアラブル薬物送達デバイスを使用するか、使用済みのウェアラブル薬物送達デバイスを交換するかにかかわらず、新しいウェアラブル薬物送達デバイスの設置又は交換用ウェアラブル薬物送達デバイスの設置、ウェアラブル薬物送達デバイス(新しくするか、又は交換するか)の設置は、初期の設置又は最初の設置と呼ばれてもよい。
【0014】
図7を参照してより詳細に後に説明されるように、ウェアラブル薬物送達デバイスは、上記のAPアルゴリズムを実行し、かつ、本明細書で説明される例示的プロセスを実行するよう作動できるプロセッサによって制御されてもよい。プロセッサは、スマートフォン、専用インスリン治療プログラム・プロセッサ、タブレット、スマート・ウェアラブル・デバイス(例えば、スマート・ウォッチ、スマート・フィットネス・デバイス又は同種のもの)又はモバイル・デバイスの他のタイプなど、モバイル・デバイスの構成装置であるように構成されてもよい。あるいは、又は加えて、プロセッサはまた、ウェアラブル薬物送達デバイス又はウェアラブル薬物送達デバイスと通信するよう作動する別のデバイスの部分であってもよい。
【0015】
例では、オンボーディングと呼ばれるプロセスは、ユーザーの治療のためのウェアラブル薬物送達デバイスの初期又は最初の設置での充分なインスリン送達履歴の利用可能性に基づいて実行されてもよい。オンボーディング・プロセスは、プロセッサがウェアラブル薬物送達デバイスを制御して自動インスリン送達を提供するためのユーザー・パラメーターを受信できるプロセスであってもよい。一例では、ユーザー・パラメーターは、血糖測定値、投与されたインスリンの投与量(すなわち、投薬量)、インスリンが投与される時間、炭水化物対インスリン比、インスリン感受性評価、インスリン調整因子、基本プロファイル又は同種のものを含むことができる。注意として、基本プロファイルは、各間隔の開始終了時間及び基本送達率によって定義される基本必要量の24時間プロファイルであってもよい。例えば、1つの基本プロファイルは次のようになる。
【表1】
【0016】
“基本プロファイル”とは、上記の表全体を指す。その個々の必要量に応じて、さまざまなユーザーはさまざまな基本プロファイルを有することができる。
【0017】
充分なインスリン送達履歴が利用可能であって、アクセス可能である場合、オンボーディング・プロセスは省略されてもよい。オンボーディング手順の例としては、ユーザーのインスリン送達履歴に充分長いギャップがあって、インスリン送達履歴が不充分なとき、1日総インスリン(TDI)推定値をリセットするプロセスを挙げることができる。
【0018】
別のプロセス例では、自動インスリン送達を開始するインスリン送達システムの設定を確立するためにオンボーディングの間に使用されるユーザー・パラメーターは、プロセッサが適応モードに入るときに実行されるプロセスによって時間とともに適応されてもよい。プロセッサは、インスリンの送達、新しい血糖測定値又は同種のものを含む新しい情報に基づいて、システムが経時的に性能を調整するのにインスリン送達履歴が充分であると決定されるときに、適応モードを開始することができる。インスリン送達システムの設定は、新しい情報及び受信したユーザー・パラメーターに基づいて更新されたパラメーターを計算することによって更新されてもよい。
【0019】
任意の“閉ループ”又は自動インスリン送達機構の適用の間のオンボーディング・プロセスと適応プロセスの組み合わせにより、最初のポッド使用時に自動送達を即座に安全に開始できる(即ち、また送達機構をユーザーの本当のインスリン必要量の任意の変化に時間とともに一致させる間に)。
【0020】
図1は、インスリン送達システムの設定を決定するための例示的プロセスのフロー・チャートを示す。プロセス100は、ある期間に亘ってウェアラブル薬物送達デバイスを制御するよう作動するプロセッサによって実行されてもよい。例えば、105では、ユーザーに関連するインスリン送達履歴の部分は、プロセッサのメモリなどのデータ記憶デバイスから、クラウドベースのデータ記憶システム又は同種のもののリモート・サーバーなどから取得されてもよい。110では、プロセッサは、インスリン送達履歴の部分が充分要件を満たすかどうかを判断することができる。オンボーディング・プロセスの110での充分な履歴の評価は、ユーザーが通常ウェアラブル薬物送達デバイス及び/又は個人用糖尿病管理デバイス(図7を参照してより詳細に説明される)と情報をやりとりする標準時間に実行されてもよい。典型的なチューブ・ポンプ薬物送達デバイスなどの一例では、110でのこの評価は、ユーザーがインスリン管理及び送達システム(この例には示されていない)内のインスリン容器を交換するたびに発生するかもしれない。例では、110で、プロセッサは、もし存在するなら、インスリン送達履歴の充分要件を満足させる所定の基準に対してインスリン送達履歴の取得された部分を分析することができる。例えば、プロセッサによるインスリン送達履歴の部分の分析は、充分なインスリン送達履歴が利用できないときに(すなわち、インスリン送達履歴が不充分である)、適応性又はオンボーディングを実行し、ユーザーのために安全なオンボーディング・プロセスを実行するのに充分な履歴があるかどうかを判断することができる。
【0021】
図1の110でのプロセスは以下のように要約され得る、以下の条件は、任意のTDIの推定値が、1日のすべての時間に亘ってインスリン必要量の充分な期間及び充分なサンプルをカバーしていることを確認するように評価することができる、1)システムは、既知のインスリン送達履歴の少なくとも可変のMIN長さ時間を有することができ、2)MIN長さ以上の既知のインスリン履歴は、合計でMAXブロック時間以内の期間に及ぶかもしれない、及び3)最初の2つの条件を満たす既知のインスリン送達履歴は、MAX履歴日より古くはないかもしれない。
【0022】
1つの好ましい例では、MIN長さ時間は、48、又はインスリン送達履歴の少なくとも2日間に設定されてもよい。MAXブロック時間は、54時間、又は最大スパンの2.5日に設定されてもよい。MAX履歴は30日に設定されてもよい、即ち、考慮されたインスリン送達履歴は30日より古くすることはできない。
【0023】
時間MIN長さの最小長さの設計は、TDIの妥当な見積もりを計算するのに充分なデータがあることを確認するために使用される。このデータMAXブロックの最大スパンの設計は、利用可能なデータが1日の特定の期間に過度に重み付けされていないことを確認するために使用される。例えば、12日間の午前8時から午後12時までの朝食後の朝食期間のみに亘るユーザーのインスリン必要量の評価では、48時間のデータが提供されるが、ユーザーの本当のインスリン必要量を表すものではないかもしれない。そして、インスリン送達履歴MAX履歴の最大年齢の設計は、既知のインスリン履歴に大きなギャップがあるためにインスリン必要量の任意の長期的な変化が捕捉されない場合に、システムがインスリン送達履歴を再評価することを確認するために実行される。
【0024】
不充分なインスリン送達履歴の例は、ユーザーのインスリン送達履歴に長いギャップがあるときであるかもしれない。インスリン送達履歴の長いギャップは、例えば、48時間期間又は30日より古い48時間の期間で、2~8時間より長いギャップと見なされてもよい。もちろん、例えば、36時間の期間で9時間、24時間の期間で2時間、1時間の期間で15分又は同種のものなど、他のギャップも長いと見なされてもよい。
【0025】
加えて、特定の例では、このインスリン履歴評価では、30日未満のインスリン履歴の短期間のギャップも考慮することができる。これらの特定の例では、プロセッサは、これらのギャップの間に未知のインスリン送達履歴の可能性を考慮し、インスリンの固定値又は可変値がインスリン・オン・ボード又はIOBとして発生したかもしれないと仮定してその計算を実行してもよい。一例では、この追加のインスリン送達IOBエクストラは、1つの標準的な食事を表すためにTDIの1/6に設定され得る(TDIの1/2は概して、食事のボーラスに起因し、ユーザーは概して、1日当たり3つの食事のボーラスを摂取する)。
【0026】
図1の例に戻ると、インスリン送達履歴が充分要件を満たすという110での決定に応じて、プロセッサは、分析の結果に基づいて、インスリン送達履歴が以前の日数内にある連続した期間内のデータの合計時間数を満足させる充分要件を満たすことを確認する確認信号を生成することができ、プロセス100は120に進む。特定の例では、オンボーディング及び適応プロセスを自動インスリン送達アルゴリズムと組み合わせて、アルゴリズムによって可能な最大インスリン送達に対する制約を減らすことができる。112では、この制限は、基礎インスリン制限の“2倍”であり得る乗数Aを使用して設定されてもよいし、特定の例では、これは充分な履歴があれば、基礎インスリン制限の“4倍”であり得る乗数B倍からの低減であって、120に設定されているとおりである。
【0027】
例えば、110での判断に基づいて、プロセッサは、ウェアラブル薬物送達履歴によって投与される1日総インスリン量を、ユーザーによって設定される基礎インスリン投薬量の倍数に制限することができる。例えば、プロセッサがインスリン送達履歴は充分であると決定する場合、B(4、6、又は8に等しくてもよい)などの基礎インスリン投薬量の第1の乗数が選択されてもよい、一方、A(1.5、2、又は3に設定されてもよい)などの第2の乗数は、プロセッサがインスリン送達履歴は不充分であると決定する場合に選択されてもよい。充分なインスリン送達履歴の例では、基礎入力限界は、基礎インスリン投薬量の4倍として設定されてもよい、一方、不充分なインスリン送達履歴に対しては、基礎入力限界は、基礎インスリン投薬量の2倍として設定されてもよい。
【0028】
120では、プロセッサは、1日総インスリン又は同種のものなど、1日に送達されるインスリンの量の安全性上限を選択することができる。例えば、選択された安全性上限は、送達のためのインスリンの最大量と薬物送達デバイスによって送達されるインスリンの最小量との間の基礎制限を乗数B倍したものであってもよい。値Bは、一定期間送達されるインスリンの量に適用される乗数であり得る。例えば、値Bは約3.5~5.0の範囲、又は4又は同種のものの特定の値であってもよい。一例では、値Bが適用され得る期間は、時間、1日、2日又は3日又は同種のもののいくらかの日数、薬物送達デバイスのライフサイクルに関連する時間などであってもよい。
【0029】
逆に、プロセッサが110で、インスリン送達履歴が充分要件を満たさない(例えば、合計時間数が必要な合計時間(例えば、48時間)を満たさなくて、あまりに長いギャップ(例えば、2~8時間を越える)を有し、データの必要な経過時間よりも古い(例えば、30日を越える)と決定する場合、プロセッサはオンボーディング・モードをトリガーして、ユーザーへの任意のリスクを最小限に抑えることができる。オンボーディング・モードでは、プロセス100は110から112に進むことができる。112では、プロセッサは、インスリン送達履歴が充分要件を満たさないという決定に応じて、送達されるインスリンの量について安全性下限を選択するよう作動してもよい。インスリンが安全性下限で送達され得る期間は、1日(すなわち、24時間)、12時間、8時間又は同種のものであってもよい。選択された安全性下限は、選択された安全性上限よりも低く、薬物送達デバイスによって送達されるインスリンの最小量を越える。安全性下限の値は、最大インスリン送達を標準的な使用よりも低くなるように制限するために、ユーザーのTDIベースの基礎に乗算され得る値Aを有する乗数であってもよい。この値Aは、正常な毎日の血糖変動を維持するのに充分なインスリンの送達をさらに可能にする間にユーザーの安全性を向上させるように選択されてもよい。例えば、選択された安全性下限は、選択された安全性上限よりも少なく、薬物送達デバイスによって送達されるインスリンの最小量を越えるかもしれない。この例では充分なインスリン送達履歴がないため、薬物送達デバイスの設置時に送達されるインスリンの初期量が設定され得る。
【0030】
その日に送達されるように設定されるインスリンの量は、選択された安全性下限(114)より低く設定されてもよい。オンボーディング・プロセスの間、システムはユーザー入力の基本パラメーターを利用してTDIを計算する。例えば、APアルゴリズムは、オンボーディング・プロセスで使用するためのユーザーの基礎インスリン入力の平均を提供することができる。例えば、ユーザーの基礎インスリン入力が、朝にインスリンの0.6単位/時間、午後にインスリンの1.2単位/時間、夕方及び夜にインスリンの0.8単位/時間であってもよい。アルゴリズムは、ユーザーの基礎インスリンの平均を24時間使用するよう機能する。インスリンの必要量は、時間の経過とともに大幅に変化しない。例えば、10代の若者のインスリン投薬量は、1年以内に20%変化するだけかもしれない。特定の例では、TDIは、以下の式1のように、2を乗じることにより各ユーザー入力基本セグメントの合計によって計算される(各基本セグメントの期間で重み付けされ、これは通常、基本セグメントの開始時間と基本セグメントの終了時間の間の差として定義される)。
式1 TDIオンボーディング=2Σb(t)*(tb、終了-tb、開始
【0031】
ここで、b(t)はユーザー入力の基本セグメントであり、tb、開始は基本セグメントが開始する時間(時間又はその端数で)であり、tb、終了は基本セグメントが終了する時間(時間又はその端数で)であり、24は1日の時間を表す。次いで、このオンボーディングTDIは、追加の安全フラグの可能性をもって任意の手動又は自動のインスリン送達をユーザーに案内するために使用される。その追加の安全フラグは、TDIの推定値が不充分な履歴に基づいていること、及びシステムがこのシステムの精度について自信がないことをシステムに示すように設定されてもよい。
【0032】
例えば、114では、プロセッサは、インスリン送達のための現在のアクティブなユーザー入力基本プロファイルに安全性下限に関連する乗数を掛けたものを使用して、安全性下限の1日総インスリンを設定することができる。乗数は、約1.2~3.5の範囲又は同種のものにあり得る値Cを有することができる。一例では、期間は、2又は3、薬物送達デバイスのライフサイクルに関連する時間又は同種のものなど、時間、1日、数日であってもよい。
【0033】
1日総インスリンが114で安全性下限に基づいて設定された後、プロセッサはインスリン送達履歴が不充分であることを示すかもしれない(116)。例えば、プロセッサは、適応フラグを偽、すなわち、真でないことに設定することができ、これは、プロセス100以外のプロセスに、適応モード及び/又は関連する機能のための不充分なインスリン送達履歴があることを示す。
【0034】
ステップ116又はステップ120のいずれかの実行の後、プロセス100は、決定ステップ130につながることができる。130で、プロセッサは、プロセッサの適応モードがアクティブであるか非アクティブであるかについて更新されたインスリン送達履歴から取得される薬物送達デバイスによって送達されるインスリンの量に関連する新しい情報に基づいて判断することができる。例えば、プロセッサは、適応フラグが真に設定されていると決定してもよい。その場合、決定の結果に基づいて、プロセッサは、更新されたインスリン送達履歴から、ウェアラブル薬物送達デバイスによって送達されるインスリンの量に関連する新しい情報を取得することができる。例えば、新しい情報は、ステップ105でインスリン送達履歴が取得された以降に収集された情報であってもよい。一例では、プロセッサは、(インスリン送達履歴が不充分な場合に)新しい情報に基づいて1日総インスリン(140)を設定又はリセットしてもよい。
【0035】
例えば、インスリン送達履歴が充分であると決定され、安全性上限が選択され、適応フラグが真に設定されると仮定すると、1日総インスリンは、以前に設定された1日総インスリンの加重和に基づいて一定期間に送達されるインスリンの量、及び新しい情報から、待機期間の間に送達されるインスリンの量の1日平均(例えば、更新されたインスリン送達履歴に基づいて)に設定(140)されてもよい。重み付けは、例えば、インスリン送達履歴に関連する条件、インスリン送達履歴よりも新しい血糖測定値又は同種のものに応じて、80:20、60:40、50:50又は同種のものの割合であり得る。もちろん、他の重み付けが使用されてもよいし、又はコスト関数又は同種のものが実行され、新しい1日総インスリン設定を行ってもよい。
【0036】
あるいは、130では、プロセッサは、適応フラグが真に設定されていない(すなわち、適応フラグは偽に設定されている)と決定することができ、その場合、プロセス100は133に進む。133では、1日総インスリンは、待機期間(例えば、新しいインスリン送達履歴)の間に送達されるインスリンの量の1日平均に基づいて、ある期間に送達されるインスリンの量に設定され得る。133の後、プロセス100は、プロセッサが適応フラグを真に設定する135に進み、プロセッサは適応モードを開始する。
【0037】
ステップ140又はステップ135のいずれかが実行された後、プロセス100は150に進む。150では、最後のインスリン送達が過去のY時間以内に行われたかどうかの判断が行われる。この例では、Yは、6時間、120分又は同種のものなど、分又は時間の値を有することができる時間値である。例えば、ウェアラブル薬物送達デバイスは、作動信号の受信に応じて、又はインスリンの投与量が送達されたことに応じて、プロセッサに確認応答信号を提供するよう作動することができる。あるいは、ウェアラブル薬物送達デバイスは、インスリンがウェアラブル薬物送達デバイスのポンプ機構に結合されるポンプ・コントローラによって送達されるときはいつでも信号を送信することができる。この例では、ポンプ・コントローラは、薬物送達が行われたことの確認を提供していないか、又は薬物送達デバイスによりインスリン送達の不具合の何らかの兆候を提供しているかもしれない(例えば、利用できるインスリンがない、リザーバが空である、ポンプ機構が故障した、又は同種のもの)。
【0038】
一例では、最後のインスリン送達が過去のY時間以内に行われなかったという決定に応じて、プロセス100は155に進むことができる。155では、ギャップ・フラグは真に設定でき、これは、インスリン送達履歴(現在、任意の更新された又は新しいデータを含む)を不充分とするギャップが存在することを意味するかもしれない。加えて、所定の最後のインスリン送達期間内にインスリン送達が行われなかったという決定に応じて、プロセッサは、設定された1日総インスリン投薬量の割合に等しい開始インスリン・オン・ボード(IOB)設定を確立することができる。これは、また、APアルゴリズムを実行するプロセッサによって実行される計算、並びに適応性及びオンボード・プログラミング・コードに基づいて、あまりに多くのインスリンがユーザーに送達されないようにするための安全上の制約でもある。このIOBは、オンボーディングの残り及び適応プロセスでのTDI計算が影響を受けないようにするために、インスリン送達履歴に含まれないかもしれない。ステップ155の後、プロセス100は160に進む。
【0039】
逆に、最後のインスリン送達が過去のY時間以内に行われたという150での決定に応じて、プロセス100は160に進む。
【0040】
160では、プロセッサは、ウェアラブル薬物送達デバイスで確立される有線又は無線接続を介して、設定された1日総インスリン投薬量、選択された安全性限界設定、及びギャップ・フラグ設定をウェアラブル薬物送達デバイス(WDDD)へ送信することができる。160から、プロセス100は、170に進むことができる。
【0041】
170では、プロセッサは、選択された安全性上限に応じてインスリン量の送達を開始することができる。例えば、プロセッサは、ウェアラブル薬物送達デバイスで確立される接続を介して信号を送信することができ、ウェアラブル薬物送達デバイスはその機構を作動させて、適切なインスリンの量をユーザーに送達させる。インスリンの適切な量は、設定された1日総インスリンに関連する投与量、又は選択された安全性上限よりも少ない投与量である。
【0042】
170の後、プロセス100は、別のポッドが起動の準備が整うまで105に戻ることができる。
【0043】
特定の例では、プロセス100は、インスリン送達履歴の充分性に基づいて、APアプリケーション又はアルゴリズム内の異なる設定を提供することができる。第1の例では、初期のポッドが起動され、インスリン送達履歴が不充分なとき(ステップ110)、APアプリケーションは安全性限界を基本入力投薬量のA倍に設定でき(ステップ112)、TDIはアクティブなユーザー入力基本プロファイルに設定されてもよく(ステップ114)、及び起動時に適応性が偽に設定される(ステップ116)。別の例では、起動されて、充分なインスリン送達履歴にアクセスする(ステップ110)第1のポッドは、プロセス100に基づいて、この第1のポッドとは異なる設定を有することができる。例えば、次のポッドの設定では、安全性限界を基礎インスリン投薬量のB倍に設定することができ(ステップ120)、適応フラグは起動時に偽に設定されてもよい(これはデフォルト値であるかもしれないので、設定は以前のポッド(第1のポッド)又は同種のものから持ち越され(ステップ130))、及びTDIは以前のポッドの使用法に基づいて設定されてもよい。第2のポッドに対しては、第1のポッドに続く、充分なインスリン送達履歴を有する後続のポッドは、安全性限界が基本入力投薬量のB倍(例えば、いくつかの例では4倍)に設定することができる。TDIは加重和(1番目の重みX以前のポッド使用法+2番目重みX以前のポッド起動TDI設定)に設定されてもよく、及び適応フラグが真に設定されてもよい。どのようなポッドに対しても、ポッドが起動されると、APアプリケーションが機能するTDIパラメーターは、ポッドのライフサイクルの間に変更されないかもしれない。しかしながら、インスリン送達履歴で送達され、反映されるインスリンによって測定されるポッドの実際のTDIは、それぞれのポッドの起動の間に設定されるTDIとは異なるかもしれない。したがって、適応フラグが真に設定されるとき、測定されるTDIと起動されるTDIの加重和は、後続のポッドを起動するために使用される。
【0044】
図2~6を参照にして、オンボーディング・プロセス及び適応プロセスの詳細を説明することは有益であるかもしれない。図2の例では、プロセス100は、ウェアラブル薬物送達デバイスが交換されるときはいつでも、個人用糖尿病管理デバイス、スマート・アクセサリ・デバイス、薬物送達デバイス又は同種のもの(又は、さまざまなデバイスの間の分散処理構成により)のプロセッサによって実行され得る。
【0045】
例えば、オンボーディング・プロセス及び適応プロセスは、各“ポッド起動” (本明細書で使用される“ポッド”という用語は、ウェアラブル薬物送達デバイスと同等で、用語は交互に使用される)でプロセッサ又はポッドによる制限されたユーザーの相互作用がないか、又は制限されたユーザーの相互作用で自動的に実行され得る。例えば、ポッド210の起動では、過去又は以前の履歴(この例では、短期の履歴も長期の履歴もない)がないので、その結果、インスリン送達履歴は、図1の110で、不充分であると決定される。インスリン送達履歴がポッド210の初期設定に対して不充分であるという決定に応じて、オンボーディング・ロジック(プロセッサで実行する)は、プロセス100を図1のステップ112~116で開始することができる。例えば、ポッド210の起動(行A)では、不充分なインスリン送達履歴があるというプロセッサによる決定は、任意の1サイクルで送達される総インスリンを制限するプロセッサによって実行される閉ループ・アルゴリズムをもたらす。これは、1、5、10、15分又は同種のもので、ユーザーの入力基本プロファイルの平均のC倍(又は図2の例に示すような“2×”及び式1)以下であるかもしれない。さらに、この例では、プロセッサは加えて、6時間を越えるインスリン送達履歴に最近のギャップがあるので、インスリン送達をさらに制限するために搭載されたインスリンを開始することとして、式1のようにユーザーの基本プロファイルの合計の2倍と推定される、ユーザーの1日総インスリンの1/6を追加する。もちろん、1日総インスリン又は基礎インスリン送達の他の端数又は割合が選択又は設定され得る。この設定は、ポッド210のライフサイクルに使用され得る(例えば、約3日又は同種のもの)。ポッド210のライフサイクルが満了した後、ポッド220などの別のポッドが起動され得る。ポッド220の起動の部分として、プロセッサは、ポッド210のインスリン送達履歴を取得することができる。行Bに示されるように、ポッド210のインスリン送達履歴は、任意のギャップなしで約72時間(インスリン送達履歴(IDH)の)に及ぶことができる。結果として、プロセッサは、インスリン送達履歴が充分であると評価することができる。インスリン送達履歴が充分であるとの決定の結果として、プロセッサは、送達されうる1日総インスリンの安全性限界を、その日の基礎インスリン送達制限のB倍(又はこの例に示されるように、4倍(4×))に設定することができる。
【0046】
ポッド220はそのライフサイクルの終了に到達するかもしれない、ポッド230の起動の間に、プロセッサはポッド220の新しいインスリン送達履歴を取得することができる。ポッド220の新しいインスリン送達履歴を使用して、プロセッサは、安全性限界を1日総インスリン(TDI)のB倍に設定することができる。図2の例では、ポッド230、240、及び250のそれぞれは、充分なインスリン送達履歴を蓄積し、1日総インスリン(TDI)のB倍に設定される安全性限界を使用して起動されてもよい。
【0047】
図3の例では、インスリン送達履歴の評価は、各新しいウェアラブル薬物送達デバイスの起動の間に、インスリン送達履歴が不充分であることを明らかにすることができ、例えば、インスリン送達履歴は、例えば、48時間などの閾値時間数未満であるかもしれない。図3の例のポッド310のインスリン送達履歴が閾値時間数に到達しないので、ポッド310の起動は、搭載されたインスリンを1日総インスリンの割合又は端数に設定することができる。図3の例では、6時間を越えるインスリン送達履歴のギャップにより、プロセッサは、1日総インスリンの1/6に搭載されているインスリンに対してポッド310の設定を確立するよう作動してもよい。加えて、安全性限界は、基礎インスリン制限のA倍に、又はこの例では基礎インスリン制限の2倍に設定されてもよい。
【0048】
適切に作動するとき、プロセッサ(この例には示されていない)は、例えば、制御信号をポッド310に送信して、ポッド310にインスリンの投与量を送達するように命令することができる。インスリンの投与量を送達することに応じて、ポッド310は、プロセッサに送信される確認応答信号を生成することができる。
【0049】
例では、311で、ポッド310は、欠陥になるか、インスリンを使い果たすか、又はインスリンの不送達をもたらす別の故障を経験するかもしれない、42時間(2日間)の間使用されるだけかもしれない。故障に応じて、ポッド310は、例えば、インスリンが送達されていないという警報又は他の表示を生成するよう作動してもよいし、警報信号をプロセッサに転送することができる。プロセッサは、所定の期間内又は同種のものに確認応答信号が受信されない場合に警報状況を示すよう作動することができる。一例では、インスリンが送達されているにもかかわらず、ポッド310内のトランシーバが、プロセッサとの接続を失ったかもしれない、又は他の何らかの通信障害を持っているかもしれない。ポッド310及び/又はプロセッサは、インスリン送達履歴が充分であるかどうかを判断するために、警報が設定されていた期間がどれくらいかを追跡するよう作動することができる。
【0050】
ポッド320の起動時に、プロセッサは、6時間のギャップによりインスリン送達履歴が不充分であることを決定するよう作動することができる。結果として、ポッド320の起動時に、6時間を越えるインスリン送達履歴のギャップにより、プロセッサは、1日総インスリンの1/6に搭載されたインスリンの設定を確立することができ、安全性限界は基礎インスリン制限の2倍に設定される。ポッド320は、ポッド320が適切に動作し、プロセッサによって示されるポッド設定に従ってインスリンを送達できる約24時間の間データを提供することができる。もちろん、ポッド320は欠陥があるか、ユーザーから除去されるかもしれない。結果として、この例では、インスリン送達履歴データの収集は再び失敗するかもしれない、その結果、ポッド320のライフサイクルの終了にインスリン送達履歴が不充分になる。
【0051】
ポッド330の起動は、オンボーディングの例の改善及び洗練の例である。この例では、ポッド330の起動時に、プロセッサは、インスリン送達履歴が、6時間を越えるギャップ(ポッド310のギャップが6時間であることを思い起こす)なしに、約2.75日又は72時間のうちの68時間であると決定するよう作動することができ、インスリン送達履歴は30日未満である(すなわち、最後のデータが収集されてから48時間(又は2日)であり、及びインスリン送達履歴データが継続的に収集されてから72時間(又は3日)である)。この情報に基づいて、プロセッサは、インスリン送達履歴が充分であると決定するよう作動し、安全性限界を基礎インスリン制限のB倍、又はこの例では、基礎インスリン制限の4倍に設定することができる。しかしながら、最後のインスリン送達がY時間、この例では6時間など、を越えているので、ギャップ・フラグは真に設定され、及び搭載されているインスリンを1日総インスリンの割合又は端数、例えば1/6又は同種のもの、に設定される。提案された適応アプローチの柔軟性は、各ポッドセッションの開始時に搭載されているこの追加のインスリンが利用され、1日総インスリン必要量の推定値に影響を与えることなくアルゴリズムの動作を制限できることを意味する。例えば、充分なインスリン履歴により、ポッド340及び350は、すべて適応モードで動作を開始することができる(例えば、図3に示すようにポッド330など、適応性のためのインスリン履歴は、ポッド340の起動について評価される)。
【0052】
図3の例では、ポッド330は、ポッド340及び350がそうであるように、インスリン送達履歴データを失効させることなく継続的に動作し、ポッド340及び350は、図1に示されるプロセス例によるポッド330と同様の方法で起動される。
【0053】
図4の例は、別の例示的プロセスを示す。図4の例では、ポッド410の起動の間、プロセッサは、インスリン送達履歴が不充分であることに注意するよう作動することができる。結果として、図4の例では、プロセッサは1日総インスリンの1/6で搭載されているインスリンについてポッド410の設定を確立するよう作動することができる。加えて、安全性限界は、基礎インスリン制限のA倍、又はこの例では、基礎インスリン制限の2倍に設定されてもよい。
【0054】
行4Aに示されるように、ポッド410はそのライフサイクル全体に亘って動作し、データを提供する。ポッド410のライフサイクルの終了は、ポッド410をポッド420に交換するときである。ポッド420の起動時に、プロセッサは、ポッド410のライフサイクルの間に提供されるインスリン送達履歴が充分であると決定するよう作動してもよい、その結果、ポッド420の安全性限界を基礎インスリン制限のB倍に設定することができる。適応フラグは偽に設定され、ポッド410の新しいインスリン送達履歴に従って送達されるインスリンの1日平均として1日総インスリンを設定することができる(行4Aに示されるようにTDI推定値を開始するためのインスリン履歴、ポッド420)。
【0055】
ポッド420のライフサイクルは短縮され、プロセッサ又はポッド420は警報を生成することができる。ポッド420の短縮されたライフサイクルの結果として、行4Bに示されるように、インスリン送達履歴は、直近の24時間からデータを欠いている(421に示されるように)。欠落データの期間(すなわち、24時間)は、欠落データの閾値Y時間(例えば、6時間)を越えてもよい(図1の150に評価されるように)。プロセッサは、6時間を越えるギャップがあるが、30日未満のデータでは、48時間の中断のないインスリン送達履歴データが連続しているので、インスリン・デバイスの履歴は充分であると決定するよう作動してもよい。結果として、プロセッサは、インスリン送達履歴に基づいて1日総インスリンを設定し、安全性限界を基礎インスリン制限のB倍に設定するが、搭載された開始インスリンを搭載されたインスリンの割合又は端数に制限するよう作動してもよい。例えば、プロセッサは、搭載されたインスリンを、1日総インスリンの1/6又は同種のものに設定するよう作動してもよい。
【0056】
ポッド430は、その72時間(又は3日)のライフサイクル全体に亘ってインスリン送達データを生成し、充分なインスリン送達履歴を提供する(行4Cに示されるように)ので、ポッド440の起動は、ポイント440に対して適応フラグの真への設定を含めて簡単である。同様に、ポッド440のライフサイクルは、ギャップ(行4Dに示されるように)のない充分なインスリン送達履歴で完了され、その結果、ポッド450の起動は、ポイント450に対して適応フラグの真への設定を含めて簡単である。ポッド430、440、及び450のすべては、充分なインスリン履歴により適応モードで動作を開始することができる(例えば、図4に示されるように、適応性のためのインスリン履歴、ポッド430など)。
【0057】
図1のプロセス100が不充分なインスリン送達履歴に反応する別の例は、図5に示されている。図5の例は、インスリン送達履歴データの長いギャップに対応するプロセス100の例を示す。図5の例では、ポッド510の起動の間、プロセッサは、不充分なインスリン送達履歴があることに注意するよう作動することができる。結果として、図5の例では、プロセッサは、1日総インスリンの1/6に、搭載されているインスリンに対してポッド510の設定を確立するよう作動することができる。加えて、安全性限界は、基礎インスリン制限のA倍、又はこの例では、基礎インスリン制限の2倍に設定されてもよい。
【0058】
行5Aに示されるように、ポッド510は、そのライフサイクル全体に亘って作動し、データを提供する。ポッド510のライフサイクルの終了に、ポッド510をポッド520に交換するときとなる。ポッド520の起動時に、プロセッサはインスリン送達履歴が充分であると決定するよう作動し、安全性限界を基礎インスリン制限のB倍に設定し、例えば、以前の1日総インスリン設定の加重和として、1日総インスリン及び新しいインスリン送達履歴に従って送達されるインスリンの1日平均を設定することができる。
【0059】
この例では、一定期間の連続48時間後、ポッド520は、何らかの理由でインスリン送達履歴が更新されていないことを示す警報の生成をもたらすことができる。加えて、28日を越えてインスリン送達履歴は収集されない。例えば、ユーザーは何らかの理由でポッド(例えば、ウェアラブル薬物送達デバイス)の使用を中止するかもしれない。
【0060】
この例では、欠落データは28日(例えば、28日と半日又は28日を越える任意の端数)を越える。ポッド530が起動されると、プロセッサはインスリン送達履歴が不充分であると決定するよう作動することができる。なぜなら、たとえインスリン送達履歴の最後のデータが連続する48時間の期間からであったとしても、データのギャップが28日を越えていて、これは閾値30日より古い連続48時間の始めのデータとする。連続48時間の始めのデータが30日より古い結果として、インスリン送達履歴は不充分である。したがって、プロセッサが平均的なユーザー入力基礎インスリン値を使用して1日総インスリンを設定するよう作動できるとき、安全性限界は基礎インスリン制限の2倍になり、ギャップ・フラグは真になる。
【0061】
行5Bに示されるように、ポッド530からのインスリン送達履歴は、ポッド540の起動に充分である。ポッド540の起動時に、プロセッサは、インスリン送達履歴がギャップなしで連続して72時間に亘って収集され、72時間のデータが30日より古くないので、インスリン送達履歴が充分であると決定するよう作動することができる。インスリン送達履歴が充分であるので、プロセッサは、安全性限界を基礎インスリン制限のB倍(例えば、4又は6倍)に設定するよう作動することができ、例えば、新しいインスリン送達履歴に従って送達されるインスリンの1日平均として、1日総インスリンを設定することができる。ポッド540は、基礎インスリン制限のB倍の最初のポッドであるので、1日総インスリンは、新しいインスリン送達履歴に従って送達されるインスリンの1日平均に設定される。これは、ポッド540の新しい開始TDI推定値と見なされてもよい。
【0062】
ポッド540のライフサイクルの間に生成される充分なインスリン送達履歴(行5Cに示されるように)により、ポッド550を起動するときにプロセッサはその充分なインスリン送達履歴を使用し、新しい1日総インスリン値を生成し、安全性限界の設定を基礎インスリン制限のB倍(例えば、4倍)に維持することができる。ポッド55は、適応モードで作動を開始することができる。
【0063】
前述の例で論じられるように、毎日、適応性及びオンボーディング・プロセスはインスリン履歴を継続的に更新する。例えば、毎日収集されるインスリン送達データは、インスリン送達履歴からの以前の履歴を交換することができ、その結果として、APアルゴリズムは、搭載されているインスリンをより正確に推定し、ユーザーのインスリン投薬量要件に最適に一致するように1日総インスリンを適応させる。適応モードがインスリンの自動送達を約7日間自動的に有効にしながらユーザーがAPアルゴリズムを一貫して使用する限りは、現在のインスリン値と実質的に最適な値の差の約80%は克服される。
【0064】
別の例では、ユーザーは、ポッドを交換する前に、インスリンの投与量を手動で投与することができる。結果として、搭載されているインスリンは、インスリン送達履歴によって示されるものを越えていてもよい。オンボーディング・プロセスは、この可能性を考慮に入れ、インシュリン搭載補正係数を適用してインスリンを保守的に送達して、安全性上限かそれとも安全性下限を越えないようにすることができる。
【0065】
上記のように、開示されたプロセス及びアプリケーションは、プロセッサが、図7を参照してより詳細に説明される血糖センサー又はウェアラブル薬物送達デバイス(すなわち、ポッド)などの他の構成装置からデータを受信するときに設定を変更する適応モードを含むことができる。
【0066】
以下は、TDIの正確な推定値を計算するのに充分なインスリン送達履歴があるときにトリガーされる適応プロセスの例の図6を参照した議論である。提案された例では、上記の評価に基づいて充分な履歴がある場合、システムはスマート適応プロセスをトリガーして、既知のインスリン送達履歴を活用し、ユーザーのインスリン必要量の信頼性がより高いとき既存の安全性限界を緩和することができる。
【0067】
適応プロセスの目標は、実際のTDIとは異なるかもしれないオンボーディングTDIを調整し、オンボーディング以来の短期間の使用で、オンボーディングTDIと真のTDI(すなわち、実際のユーザーのTDI)の間の違いのかなりの部分を補償し、人工膵臓アルゴリズムによって処理できないユーザーの必要量の変化(例えば、年を重ねる10代のユーザー)に基づいてTDIを調整することである。
【0068】
連続した使用年数に亘って、適応モードは、時間の経過に伴う長期的な変化(26%以上の増加/年、及び子供の頃の5~10倍の変化など)に対する補償を改善すると予想される。
【0069】
適応モードの例は図6の例に示される。ポッド610の初期の起動として、過去のインスリン履歴は利用できない、その結果、プロセッサはインスリン送達履歴が不充分であると決定する。不充分なインスリン送達履歴の決定に基づいて、プロセッサは、ユーザー入力の基礎インスリン投薬量の平均及び基本限界のA倍(図6の例では、Aは2に等しい)の安全性限界に基づいて1日総インスリン・レベルを設定することができる。ポッド610の起動時に、プロセッサは、例えば、ポッド610のライフサイクルの開始を示すタイム・スタンプを生成することができる。一例では、プロセッサは、ウェアラブル薬物送達デバイスによる送達インスリンの作動を示す信号、又は確認応答信号がポッド610などのポッドから受信されるたびに、タイム・スタンプを生成することができる。
【0070】
行6Aは、ポッド(すなわち、ウェアラブル薬物送達デバイス)が使用されるA-Iとラベル付けされた毎日を示す。適応モードにあるときに、プロセッサは、可能な場合はそれぞれの日のA-Iごとに、血糖センサー(図7の例を参照してより詳細に説明される)からインスリン送達データ及び血糖測定データを収集するよう作動することができる。もちろん、プロセッサは、食事の炭水化物、運動、ボーラス投薬量、インスリンの種類又は同種のものに関連するユーザー入力データなどの他のデータを収集するよう作動することができる。
【0071】
この例では、ポッド610のライフサイクルの間、プロセッサは、A、B、及びC日ごとのインスリン送達履歴データを収集するよう作動することができる。ポッド610のライフサイクルの終了に、プロセッサは、ポッド620を起動するよう作動することができる。一例では、プロセッサは、ポッド620の起動の間にインスリン送達履歴データの3日(すなわち、A、B、及びC日)にアクセスすることができる。あるいは、プロセッサは、交換されるウェアラブル薬物送達デバイスであるウェアラブル薬物送達デバイス610の動作の間に収集される更新されたインスリン送達履歴データを取得することができる。ポッド620の起動時、A、B、及びC日の間に収集されるインスリン送達履歴データを使用してプロセッサは、インスリン送達履歴が充分であると決定し、A、B、及びC日からのインスリン送達履歴に基づいて1日総インスリンを設定することができる。あるいは、プロセッサは、更新されたインスリン送達履歴から、薬物送達デバイスによって送達されるインスリンの量に関連する新しい情報を取得することができる。プロセッサは、適応モードがアクティブであると決定し、それに応じて、更新されたインスリン送達履歴に基づいて、以前に設定された1日総インスリン投薬量及びインスリン投与量の日平均の加重和で1日総インスリン投薬量を設定することができる。
【0072】
例えば、プロセッサは、適応モードにあるとき、式2に従って過去3日間(例えば、A、B、及びC)に亘って送達される平均インスリンに等しい、ポッド620の1日総インスリンを設定することができる。
【0073】
式2 TDIポッド620=(I+I+I)/3
ここで、TDIはそれぞれのポッドの1日総インスリン、IはA日目に送達されるインスリン、IはB日目に送達されるインスリン、及びIはC日目に送達されるインスリンである。
【0074】
プロセッサは、式2に示されるようにTDIを設定することができ、ウェアラブル薬物送達デバイス(すなわち、ポッド620)による受領のために、設定された1日総インスリン投薬量を送信することができる。ポッド620のライフサイクルは、D、E、及びF日に亘って延長することができる。ポッド620のライフサイクルの間に、インスリン送達履歴は、行6Bに示されるように、D、E、及びF日の間に収集されるデータを含むことができる。インスリン送達履歴が充分である限り、プロセッサは適応モードにとどまることができる。ポッド630の起動時に、プロセッサは、以前の1日総インスリン設定(すなわち、TDIポッド620)の加重和及び直近の3日間(例えば、D、E、及びF)に亘って送達される平均インスリンの平均に基づいてポッド630の1日総インスリンを設定することができる。これは、例えば、図1のステップ140に示される。式3は例を示す。
【0075】
式3 TDIポッド630=0.4*TDIポッド620+0.6*(I+I+I)/3
ここで、TDIはそれぞれのポッドの1日総インスリン、IはD日目に送達されるインスリン、IはE日目に送達されるインスリン、IはF日目に送達されるインスリンであり、除数3は日数である。
【0076】
重み0.4及び0.6は、それぞれ、以前のポッドのライフサイクルに亘るユーザーに対してインスリン・オン・ボード計算がどの程度信頼があるのかの信頼レベルに基づいて、選択されてもよい。例えば、加重信頼度は、送達されるユーザー入力インスリン投与量の数に対する自動的に送達されたインスリン投与量の割合に基づいて生成されてもよい。この例では、プロセッサは、ウェアラブル薬物送達デバイスによって自動的に送達されるインスリン投与量の数のカウント、及びウェアラブル薬物送達デバイスによって一定期間に亘って送達されるユーザー入力インスリン投与量の数のカウントを維持することができる。期間は、例えば、以前のポッドのライフサイクル、又は現在実行されているポッドの現在のライフサイクルの1日であってもよい。ユーザーが要求したインスリン送達と比較して、自動送達の割合が高い日中のインスリン送達の信頼性は、より高く重み付けされるかもしれない。より高い信頼値の結果として、最近決定された1日総インスリン値はより大きく重み付けされるかもしれない。あるいは、信頼スコアが低いと、適応アルゴリズムが最近決定された1日総インスリン値に重みを付けて重みを小さくさせるかもしれない。
【0077】
いくつかの例では、ポッド又はウェアラブル薬物送達デバイスが誤動作するかもしれないが、ほとんどすぐに新しいポッド又はウェアラブル薬物送達デバイスと交換され得る。このようなシナリオは、ポッド630に関して示される。行6Cに示されるように、新しいインスリン送達履歴のデータは1日G日に対してだけ収集される。ポッド630の誤動作により、警報が生成されるかもしれない。生成された警報に応じて、ポッド630は、ほぼすぐにポッド640と交換されるかもしれない。即時交換の結果として、将来のデータは収集されないこととして示されず、新しい又は更新されたインスリン送達履歴に検出可能なギャップはない。ポッド640の起動時、ポッド630のライフサイクルの間に(すなわち、G日目)新しい又は更新されたインスリン送達履歴について収集されるデータは、ポッド640の新しい1日総インスリン推定値を決定する際に使用される。しかしながら、この例では、限られた量のデータ、1日だけのデータが、新しい又は更新されたインスリン送達に追加されるので、プロセッサは、式4に示されるようにそれぞれのパラメーターの重み付けを調整することができる。
【0078】
式4 TDIポッド640=0.8*TDIポッド630+0.2I
ここで、TDIはそれぞれのポッドに対する1日総インスリンであり、IはG日目に送達されるインスリンの平均に等しい。
【0079】
0.8及び0.2の重みは、それぞれ、それぞれの新しいインスリン送達履歴が1日以下に制限されるというプロセッサによる決定に基づいて選択されてもよい。あるいは、又は加えて、重み0.8及び0.2は、上記のように重み付き信頼度に基づいて選択されてもよい。新しいインスリン送達履歴は限られているので、新しいインスリン送達履歴は、ポッド630(すなわち、TDIポッド630)の1日総インスリンを決定するために使用されるインスリン送達履歴ほど信頼できるとは見なされないかもしれない。結果として、プロセッサは、G日目に送達される平均インスリンにより少ない重み(例えば、0.2)を適用し、以前のポッドの1日総インスリン設定(例えば、TDIポッド630)により多くの重み(例えば、0.8)を適用するよう作動してもよい。
【0080】
行6Dに示されるように、ポッド640は、誤動作を経験する前に2日間、H日及びI日作動してもよい。ポッド640は、誤動作に応じて警報を生成することができる。誤動作に応じて、ポッド640はほとんどすぐにポッド650と交換され得る。即時交換の結果として、将来のデータは収集されないこととして示されず、新しい又は更新されたインスリン送達履歴に検出可能なギャップはない。ポッド640の起動時に、プロセッサは、ポッド640(すなわち、H日とI日)のライフサイクルの間に新しい又は更新されたインスリン送達履歴のために収集されるデータが、ポッド650の新しい1日総インスリン推定値を決定するために使用され得ることを決定するよう作動することができる。加えて、プロセッサは、ポッド640のライフサイクルの間に収集される新しい又は更新されたインスリン送達履歴が、ポッド630のライフサイクルの間に収集される1日のインスリン送達履歴と比較して2日のインスリン送達履歴を含むことを決定するよう作動することができる。決定の結果として、プロセッサは、ポッド650(すなわち、TDIポッド650)の1日総インスリン推定値の重みを調整するよう作動することができる。例えば、プロセッサは、以下の式5に示されるように、1日総インスリンを設定してもよい。
【0081】
式5 TDIポッド650=0.6*TDIポッド640+0.4*(I+I)/2
ここで、TDIはそれぞれのポッドの1日総インスリン、IはH日目に送達されるインスリン、及びIはI日目に送達されるインスリンである。
【0082】
示されるように、ポッドごとの1日総インスリンの設定は、以前のポッドのライフサイクルの間に収集されるデータに基づいて、それぞれのポッドの起動時に決定されてもよい。いくつかの例では、直前のポッドのインスリン送達履歴が、1日総インスリンの設定に最も関連があると見なされるかもしれない。
【0083】
一例では、プロセッサによって実行されるオンボーディング及び適応アルゴリズムは、ウェアラブル薬物送達デバイスによって自動的に送達されるインスリン投与量の数の計算、及び1日や24時間などの期間に亘ってウェアラブル薬物送達デバイスによって送達されるユーザー入力インスリン投与量の数の計算を維持することができる。結果として、1日を通してすべてのインスリン送達の一般的な合計を実行する代わりに、プロセッサは、1日総インスリン送達の“加重信頼度”を生成することができる。例えば、オンボーディング及び適応アルゴリズムが閉ループ自動インスリン送達アルゴリズム(人工膵臓(AP)アルゴリズムなど)と組み合わせる場合、手動送達(すなわち、ユーザーによって開始される送達)と比較して、自動インスリン送達(すなわち、APアルゴリズムによって開始される送達)の割合が高い場合、ユーザーの実際の必要量に一致するインスリン送達の信頼性がより高くなってもよい。この例では、適応アルゴリズムは、ユーザーが要求したインスリン送達と比較して、自動送達の割合がより高い日中のインスリン送達により高い重みを割り当てることができる。
【0084】
上記の適応プロセスの利点は、適応プロセスの上記の参照目的を達成しながら、インスリン送達の短期的ではあるが大きな変化に対するプロセスの回復力である。プロセッサが適応モードにある間に実行される適応プロセスにより、欠落したデータポイントに対応する堅牢な実行が可能になる。例えば、病気、欠落したボーラス、又はライフイベントは、TDI推定値又はインスリン送達の長期的な変化に大きな影響を与えるべきではない。加えて、インスリンの履歴が欠落しても、TDIの推定値に大きな影響を与えるべきではない。
【0085】
これらの目的を前提として、提案された適応アプローチは、各ポッド交換サイクルで過去のすべてのインスリン送達履歴を評価し、以前の総インスリン送達値と現在のインスリン送達値の間の1日インスリン必要量の指数移動平均を実行しようとする。
【0086】
この例では、図2~6の例を参照して説明されるものなど、インスリン送達履歴の全体的な適応性は次の式6で表され得る。
【0087】
式6 TDI=(1-F適応・n日、新しいインスリン・データ)TDIN-1+F適応・Σ新しいインスリン・データ
【0088】
ここで、TDIは、N番目の適応ステップ(又は図1のステップ105-170のサイクル)に対するユーザーのTDIの推定値を表し、F適応は、TDI推定値が新しいインスリン送達履歴からのインスリン送達データにどれだけ速く適応するかを表す収束係数を表す。新しいインスリン・データは、最後のTDI計算以降に利用可能で、ユーザーのTDIの(N-1)番目の推定値に使用されなかった任意のインスリン送達履歴を表し、n日、新しいインスリン・データは、新しいインスリン送達履歴及び数日の新しいインスリン・データの合計で利用可能である新しいインスリン・データの日数を表す。例えば、ユーザーのTDIのN番目の適応は、TDI=(1-0.2*3)TDIN-1+0.2*3*(A+B+C)/3=(1-0.2*3)TDI+0.2*(A+B+C)に等しくなり得る。ここで、F適応は(0.2)、3はn日数、新しいインスリン・データに等しく、TDIN-1は以前のTDIであり、A、B、及びCはユーザーによって使用される1日総インスリンの量を表す。
【0089】
さまざまな方法が、F適用の最適値を決定するために使用されてもよい。例えば、いくつかの使用ケースは、この係数0.2の例示的な値が適切であるかどうか判断するために精査されてもよい。この係数は、ユーザーの実際のTDIへの収束率に基づいて調整されてもよい。F適用の値は、TDI値のN番目の推定値がユーザーの実際のTDI必要量に収束する収束率を表し、F適用の値が高いほどユーザーの実際の必要量により迅速に収束できるが、ユーザーの感度の変動に対する脆弱性が高くなる。F適用の最適値は、ユーザーのインスリン必要量の平均変動を評価し、ノイズの場合にユーザーのTDI必要量を過大又は過小評価する許容リスクを評価することで推定され得る。次いで、F適用の最適値は、ユーザーの実際の平均TDI必要量(すなわち、この特定のユーザーに送達する必要のある平均TDI)への収束率を最大化しながら、リスクを最小化する値になるかもしれない。
【0090】
次の図は、異なる開始TDIと48Uの真のTDIとを比較したさまざまな使用例、並びに1日のインスリン必要量の変化の影響、及びこれらの変化に対するシステムの感度を示す。オンボーディング・アルゴリズム及び適応アルゴリズムの前述の説明は、他の要素を組み込むように拡張されてもよい。
【0091】
上記の処理は、ポッド又はウェアラブル薬物送達デバイスに存在しないかもしれないデータを格納することを含むので、図1の例のプロセス及び図2~6の例は、パーソナル糖尿病管理デバイス(PDM)、スマートフォン、ウェアラブル・スマート・デバイス(例えば、スマート・ウォッチ、GPSデバイス又は同種のもの)、長期(例えば、1年又は2年の使用)ウェアラブル・インスリン送達デバイス又は同種のもので実行するコンピュータ・アプリケーションによって実行されてもよい。しかしながら、より大きなポンプには、説明されたプロセスを実行するのに充分な計算能力及びデータ記憶性能があるかもしれない。これら及び他の例は、図7に示される糖尿病治療システムの例の機能ブロック図を参照して、より詳細に議論されてもよい。
【0092】
2~3のハードウェア構成の例が上記に提供されたが、代替のハードウェア構成により、ワイヤレス通信性能を介して、ポッド又はウェアラブル薬物送達デバイスで処理性能を利用できるようになり、収集される任意の新しいデータ又は以前に収集されたデータは無線通信範囲内の他のデバイスを介して、無線通信の範囲内又は利用しやすい別のデバイスに保存されてもよい。例えば、ポッドは、前述の例を可能にし、スマートフォンと通信するよう作動するコンピュータ・アプリケーションを実行するプロセッサを含むことができる。スマートフォンは、収集される新しいデータ又は以前に収集されたデータを保存するか、クラウド・ベース・サーバーなどのリモート・サーバーにアクセスすることができる。
【0093】
図1~6のプロセス例を実行することができる薬物送達システムの例を議論することは役立つかもしれない。図7は、薬物送達システム700の例を示す。
【0094】
薬物送達システム700は、オンボーディング・プロセスを提供する機能性を含むAPアプリケーションを実行し、オンボーディング・プロセスの間に確立される設定を変更する適応プロセスを実行するよう作動してもよい。薬物送達システム700は、ウェアラブル薬物送達デバイス(ポンプ)702、血糖センサー704、及び管理デバイス(PDM)706を含み得る自動化された薬物送達システムであってもよい。システム700は、一例では、スマート・アクセサリ・デバイス707も含むことができ、これは、791-793などの有線又は無線通信リンクのいずれかを介してシステム700の他の構成装置と通信することができる。
【0095】
一例では、ウェアラブル薬物送達デバイス702は、患者又は糖尿病患者などのユーザーの身体に取り付けられ、インスリン又は同種のものの任意の薬物又は医薬を含む任意の治療薬をユーザーに送達することができる。ウェアラブル薬物送達デバイス702は、例えば、ユーザーが着用するウェアラブル・デバイスであってもよい。例えば、ウェアラブル薬物送達デバイス702は、ユーザーに直接結合されてもよい(例えば、接着剤又は同種のものを介してユーザーの身体部分及び/又は皮膚に直接取り付けられる)。一例では、ウェアラブル薬物送達デバイス702の面は、ユーザーへの取り付けを容易にするための接着剤を含むことができる。
【0096】
ウェアラブル薬物送達デバイス702は、ユーザーへの薬物(治療薬とも呼ばれる)の自動送達を容易にするためのいくつかの構成装置を含むことができる。ウェアラブル薬物送達デバイス702は、薬物を格納し、薬物をユーザーに提供するよう作動することができる。ウェアラブル薬物送達デバイス702は、ユーザーに送達するためにリザーバ725から薬物を排出する動作に関連して、ポンプ又はインスリン・ポンプと呼ばれることが多い。例は、インスリンを格納するリザーバ725に言及しているが、リザーバ725は、モルヒネ又は同種のものの自動送達に適した他の薬物又は治療薬を格納するよう作動することができる。
【0097】
さまざまな例において、ウェアラブル薬物送達デバイス702は、自動化されたウェアラブル薬物送達デバイスであってもよい。例えば、ウェアラブル薬物送達デバイス702は、薬物(インスリンなど)を格納するためのリザーバ725、薬物をユーザーの体内(皮下であってもよい)に送達させるための針又はカニューレ(図示せず)、及び薬物をリザーバ725から針又はカニューレ(図示せず)を介してユーザーに移送するためのポンプ機構(機械)724、又は他の駆動機構を含むことができる。ポンプ機構724は、リザーバ725に流体的に結合され、プロセッサ721に通信可能に結合されてもよい。ウェアラブル薬物送達デバイス702はまた、ポンプ機構724及び/又はウェアラブル薬物送達デバイス702の他の構成装置(プロセッサ721、メモリ723、及び通信デバイス726など)に電力を供給するための電池、圧電デバイス又は同種のものの電源728を含むことができる。図示されていないが、電力を供給するための電源は、同様に、センサー704、スマート・アクセサリ・デバイス707、及び個人用糖尿病管理デバイス(PDM)706のそれぞれに同様に含まれてもよい。
【0098】
血糖センサー704は、プロセッサ761又は721に通信可能に結合されるデバイスであってもよい、また5分ごと又は同種のものに所定の時間間隔で血糖値を測定するよう作動することができる。血糖センサー704は、721、761、及び771などのそれぞれのデバイスで機能するAPアプリケーションを実行するプロセッサに、いくつかの血糖測定値を提供してもよい。
【0099】
ウェアラブル薬物送達デバイス702は、センサー704及び/又は個人用糖尿病管理デバイス(PDM)706によって提供される情報(例えば、血糖測定値)に基づいて、リザーバ725に格納されるインスリンをユーザーに提供することができる。例えば、ウェアラブル薬物送達デバイス702は、薬物又は治療薬の送達を制御するためのプロセッサ721(又はプロセッサ)として実行され得るアナログ及び/又はデジタル回路を含んでもよい。プロセッサ721を実行するために使用される回路は、個別の特殊な論理及び/又は構成装置、特定用途向け集積回路、ソフトウェア命令、ファームウェア、プログラミング命令、又はメモリ723に格納されるプログラミング・コード(例えば、図1及び3のプロセス例と同様に、人工膵臓アプリケーション(AP App)729を有効にする)、又はそれらの任意の組み合わせを実行するマイクロコントローラ・デバイス又はプロセッサを含むことができる。例えば、プロセッサ721は、人工膵臓アプリケーション729などの制御アルゴリズム、及びプロセッサ721を動作可能にして、ポンプに所定の間隔で、又は図1~6の例で議論されるTDI設定に基づいて必要とされるような、ユーザーへの薬物又は治療薬の投与量を送達させることができる他のプログラミング・コードを実行することができる。投与量のサイズ及び/又はタイミングは、例えば、人工膵臓アプリケーション729又は同種のものによって決定されてもよい。一例では、ポンプ又はウェアラブル薬物送達デバイス702は、無線リンク720を介して、又はスマート・アクセサリ・デバイス707からの791又はセンサー704から708などの無線リンクを介して、個人用糖尿病管理デバイスのプロセッサ761に通信可能に結合される。ウェアラブル薬物送達デバイスのポンプ機構724は、プロセッサ761から作動信号を受信し、作動信号の受信に応じて、設定されたインスリンボーラス投薬量に従って、リザーバ725からインスリンを排出するよう作動することができる。
【0100】
管理デバイス706、スマート・アクセサリ・デバイス707、及びセンサー704などのシステム700の他のデバイスもまた、ウェアラブル薬物送達デバイス702の制御を含むさまざまな機能を実行するよう作動することができる。例えば、個人用糖尿病管理デバイス706は、通信デバイス764、プロセッサ761、及び管理デバイス・メモリ763を含んでもよい。個人用糖尿病管理デバイス・メモリ763は、プログラミング・コードを含み、プロセッサ761によって実行されるとき、図1~6の例を参照して説明されるプロセス例を提供するAPアプリケーション769のインスタンスを格納することができる。個人用糖尿病管理デバイス・メモリ763はまた、図1~6の例を参照して説明されるプロセス例を提供するためのプログラミング・コードを格納することができる。
【0101】
スマート・アクセサリ・デバイス707は、例えば、アップル・ウォッチ(登録商標)、他の製造業者によって提供される眼鏡を含む他のウェアラブル・スマート・デバイス、全地球測位システム対応ウェアラブル、ウェアラブル・フィットネス・デバイス、スマート衣類又は同種のものであるかもしれない。個人用糖尿病管理デバイス706と同様に、スマート・アクセサリ・デバイス707はまた、ウェアラブル薬物送達デバイス702の制御を含むさまざまな機能を実行するよう作動することができる。例えば、スマート・アクセサリ・デバイス707は、通信デバイス774、プロセッサ771、ユーザー・インターフェース778、及びメモリ773を含んでもよい。メモリ773は、図1~6の例を参照して説明されるプロセス例を提供するためのプログラミング・コードを含むAPアプリケーション779のインスタンスを格納することができる。メモリ773はまた、プログラミング・コードを格納し、APアプリケーション779に関連するデータを格納するよう作動することができる。システム700のセンサー704は、プロセッサ741、メモリ743、感知又は測定デバイス744、及び通信デバイス746を含むことができる、上記のような連続グルコース・モニタ(CGM)であってもよい。メモリ743は、他のプログラミング・コードと同様にAPアプリケーション749のインスタンスを格納することができ、APアプリケーション749に関連するデータを格納するよう作動することができる。APアプリケーション749は、また、図1~6の例を参照して説明されるプロセス例を提供するためのプログラミング・コードを含むことができる。ユーザー・インターフェース778は、タッチスクリーン・ディスプレイ・デバイス、いくつかのボタン及びディスプレイでのプレゼンテーション、ボタン及びタッチスクリーン・ディスプレイ・プレゼンテーションの組み合わせ又は同種のものに提示されてもよい。
【0102】
ユーザー(例えば、薬物又は治療薬の任意の投与量のサイズ及び/又はタイミング)への薬物又は治療薬(例えば、ボーラス投薬量として)の送達を決定するための命令は、ウェアラブル薬物送達デバイス702によって局所的に開始し、又は遠隔で開始することができ、ウェアラブル薬物送達デバイス702に提供されてもよい。薬物又は治療薬送達の局所的決定の例では、ウェアラブル薬物送達デバイス702に結合されるメモリ723に格納される人工膵臓アプリケーション729のインスタンスなどのプログラミング命令は、ウェアラブル薬物送達デバイス702により決定するように使用されてもよい。加えて、ウェアラブル薬物送達デバイス702は、通信デバイス726及び通信リンク788を介してクラウドベース・サービス711と通信するよう作動することができる。
【0103】
あるいは、遠隔命令は、個人用糖尿病管理デバイス(PDM)706による、有線又は無線リンクを介してウェアラブル薬物送達デバイス702に提供され得る。個人用糖尿病管理デバイス(PDM)706は人工膵臓アプリケーション769のインスタンスを実行するプロセッサ761を有する。又は、スマート・アクセサリ・デバイス707は、人工膵臓アプリケーション769のインスタンス、並びにウェアラブル薬物送達デバイス702、スマート・アクセサリ・デバイス707及び/又はセンサー704などのさまざまなデバイスを制御するための他のプログラミング・コードを実行するプロセッサ771を有する。ウェアラブル薬物送達デバイス702は、薬物又は治療薬をユーザーに送達するために任意の受信した命令(内部で又は個人用糖尿病管理デバイス706から由来する)を実行することができる。このようにして、ユーザーへの薬物又は治療薬の送達は自動化され得る。
【0104】
さまざまな例において、ウェアラブル薬物送達デバイス702は、無線リンク720を介して個人用糖尿病管理デバイス706と通信することができる。個人用糖尿病管理デバイス706は、例えば、スマートフォン、タブレット、専用の糖尿病治療管理デバイス又は同種のものの電子デバイスであってもよい。個人用糖尿病管理デバイス706は、ウェアラブル・ワイヤレス・アクセサリ・デバイスであってもよい。無線リンク708、720、722、791、792、及び793は、任意の既知の無線規格によって提供される任意のタイプの無線リンクであるかもしれない。一例として、無線リンク708、720、722、791、792、及び793は、例えば、ブルートゥース(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)、近距離無線通信規格、セルラー規格、又は任意のその他のワイヤレス光又は無線周波数プロトコルに基づくウェアラブル薬物送達デバイス702、個人用糖尿病管理デバイス706、及びセンサー704の間の通信を有効にすることができる。
【0105】
センサー704は、血糖を測定し、血糖値又は血糖値を表すデータを出力するよう作動するグルコースセンサーであってもよい。例えば、センサー704は、グルコースモニター又は連続グルコースモニター(CGM)であってもよい。センサー704は、プロセッサ741、メモリ743、感知/測定デバイス744、及び通信デバイス746を含むことができる。センサー704の通信デバイス746は、無線リンク722を介して個人用糖尿病管理デバイス706、又はリンク708を介してウェアラブル薬物送達デバイス702と通信するための1つ又は複数の感知要素、電子送信機、受信機、及び/又はトランシーバを含むことができる。感知/測定デバイス744は、グルコース測定、心拍数モニター又は同種のもののような1つ又は複数の感知要素を含むことができる。プロセッサ741は、個別の特殊なロジック及び/又は構成装置、特定用途向け集積回路、ソフトウェア命令、ファームウェア、メモリ(メモリ743など)に格納されるプログラミング命令、又はそれらの任意の組み合わせを実行するマイクロコントローラ・デバイス又はプロセッサを含むことができる。例えば、メモリ743は、プロセッサ741によって実行可能であるAPアプリケーション749のインスタンスを格納することができる。
【0106】
センサー704は、ウェアラブル薬物送達デバイス702とは別個のものとして示されているが、さまざまな例において、センサー704及びウェアラブル薬物送達デバイス702は、同じ装置に組み込まれてもよい。すなわち、さまざまな例において、センサー704は、ウェアラブル薬物送達デバイス702の部分であってもよく、ウェアラブル薬物送達デバイス702(例えば、センサー704は、ウェアラブル薬物送達デバイス702内に配置されてもよく、又はその中に埋め込まれてもよい)の同じハウジング内に含まれてもよい。センサー704によって得られるグルコース・モニタリング・データ(例えば、測定された血糖値)は、ウェアラブル薬物送達デバイス702、スマート・アクセサリ・デバイス707、及び/又は個人用糖尿病管理デバイス706に提供されてもよく、及び1日総インスリンの設定、安全性限界の設定、インスリン送達履歴に関連するデータの保存又は同種のものを決定するために使用されてもよく、ウェアラブル薬物送達デバイス702によるインスリンの改善された自動送達を可能にする。
【0107】
センサー704はまた、例えば、接着剤又は同種のものによりユーザーに結合されてもよく、1つ又は複数の病状及び/又はユーザーの身体的属性に関する情報又はデータを提供することができる。センサー704によって提供される情報又はデータは、ウェアラブル薬物送達デバイス702の薬物送達動作を調整するために使用されてもよい。
【0108】
一例では、個人用糖尿病管理デバイス706は、個人用糖尿病管理者であってもよい。個人用糖尿病管理デバイス706は、ウェアラブル薬物送達デバイス702及び/又はセンサー704の動作をプログラム又は調整するために使用されてもよい。個人用糖尿病管理デバイス706は、例えば、プロセッサ761などの専用プロセッサ、スマートフォン、又はタブレットを含む任意の携帯型電子デバイスであってもよい。一例では、個人用糖尿病管理デバイス(PDM)706は、プロセッサ761、管理デバイス・メモリ763、及び通信デバイス764を含むことができる。個人用糖尿病管理デバイス706は、ユーザーの血糖レベルを管理するためのプロセスを実行し、ユーザーへの薬物又は治療薬の送達を制御するためのプロセッサ761(又はプロセッサ)として実行されてもよいアナログ及び/又はデジタル回路を含むことができる。プロセッサ761はまた、個人用糖尿病管理デバイス・メモリ763に格納されるプログラミング・コードを実行するよう作動することができる。例えば、個人用糖尿病管理デバイス・メモリ763は、プロセッサ761によって実行され得る人工膵臓アプリケーション769を格納するよう作動することができる。人工膵臓アプリケーション769を実行するときプロセッサ761は、図1及び3の例に関して説明されるものなどのさまざまな機能を実行するよう作動することができる。通信デバイス764は、1つ又は複数の無線周波数プロトコルに従って作動する受信機、送信機、又はトランシーバであってもよい。例えば、通信デバイス764は、セルラー・トランシーバ及び個人用糖尿病管理デバイス706がセルラー・トランシーバを介してデータ・ネットワークと、更に、センサー704及びウェアラブル薬物送達デバイス702と通信することを可能にするブルートゥース(登録商標)・トランシーバを含むことができる。通信デバイス764のそれぞれのトランシーバは、APアプリケーション又は同種のものによって使用可能な、又は生成される情報を含む信号を送信するよう作動することができる。ウェアラブル薬物送達デバイス702、センサー704、及びスマート・アクセサリ・デバイス707のそれぞれの通信デバイス726、746、及び776は、APアプリケーション又は同種のものによって使用可能な、又は生成される情報を含む信号を送信するよう作動することができる。
【0109】
ウェアラブル薬物送達デバイス702は、無線リンク708を介してセンサー704と通信することができ、無線リンク720を介して個人用糖尿病管理デバイス706と通信することができる。センサー704及び個人用糖尿病管理デバイス706は、無線リンク722を介して通信することができる。スマート・アクセサリ・デバイス707は、存在する場合、無線リンク791、792、及び793それぞれを介して、ウェアラブル薬物送達デバイス702、センサー704、及び個人用糖尿病管理デバイス706と通信することができる。無線リンク708、720、722、791、792、及び793は、既知の無線規格又は独自の規格を使用して作動する任意のタイプの無線リンクであってもよい。一例として、無線リンク708、720、722、791、792、及び793は、ブルートゥース(登録商標)、Wi-Fi、近距離無線通信規格、セルラー規格、又はそれぞれの通信デバイス726、746及び764を介した他の任意の無線プロトコルに基づく通信リンクを提供することができる。いくつかの例では、ウェアラブル薬物送達デバイス702及び/又は個人用糖尿病管理デバイス706は、キーパッド、タッチスクリーン・ディスプレイ、レバー、ボタン、マイクロフォン、スピーカー、ユーザーが情報を入力し、個人用糖尿病管理デバイスがユーザーに提示するための情報を出力することを可能にするよう作動するディスプレイ又は同種のもの、ユーザー・インターフェース727及び768をそれぞれ含むことができる。
【0110】
さまざまな例において、薬物送達システム700は、インスリン薬物送達システムでもよい。さまざまな例において、ウェアラブル薬物送達デバイス702は、米国特許第7,303,549号明細書、米国特許第7,137,964号明細書、又は米国特許第6,740,059号明細書に説明されるように、OmniPod(登録商標)(Insulet Corporation、ビレリカ、マサチューセッツ州)薬物送達デバイスでもよい、それぞれはその全体が参照により本明細書に援用される。
【0111】
さまざまな例において、薬物送達システム700は、人工膵臓(AP)アルゴリズム(及び/又はAP機能性を提供する)を実行して、ユーザーへのインスリンの自動送達を管理又は制御する(例えば、正常血糖を維持するために―血中のグルコースの正常なレベル)。APアプリケーションは、ウェアラブル薬物送達デバイス702及び/又はセンサー704によって実行されてもよい。APアプリケーションは、インスリン送達の時間及び投薬量を決定するために使用され得る。さまざまな例において、APアプリケーションは、ユーザーの性別、年齢、体重、又は身長などのユーザーについて知られる情報、及び/又はユーザーの身体的属性又は状態(例えば、センサー704から)について収集される情報に基づいて、送達の時間及び投薬量を決定することができる。例えば、APアプリケーションは、センサー704を介したユーザーのグルコース・レベル・モニタリングに基づいて、インスリンの適切な送達を決定することができる。APアプリケーションはまた、ユーザーがインスリン送達を調整することを可能にし得る。例えば、APアプリケーションは、ユーザーが、インスリン投薬量又はボーラス投薬量を送達するためのコマンドなどの、ウェアラブル薬物送達デバイス702にコマンドを発行する(例えば、入力を介して)ことを可能にし得る。いくつかの例では、APアプリケーションの異なる機能は、2つ以上の個人用糖尿病管理デバイス706、ウェアラブル薬物送達デバイス(ポンプ)702、又はセンサー704の間で分散され得る。他の例では、APアプリケーションの異なる機能は、個人用糖尿病管理デバイス706、ウェアラブル薬物送達デバイス(ポンプ)702、又はセンサー704などの1つのデバイスによって実行され得る。さまざまな例において、薬物送達システム700は、2016年11月22日に出願された米国特許出願第15/359,187号明細書に説明される薬物送達システムの特徴又は機能に従って作動し、それらを含むことができ、その内容はその全体が参照により本明細書に援用される。
【0112】
本明細書に説明されるように、薬物送達システム700又はウェアラブル薬物送達デバイスなどのその任意の構成装置は、AP機能性を提供するか、又はAPアプリケーションを実行すると見なされてもよい。したがって、APアプリケーション(例えば、機能性、動作、又はその性能)への言及は、便宜上行われ、薬物送達システム700又はその任意の構成装置(例えば、ウェアラブル薬物送達デバイス702及び/又は個人用糖尿病管理デバイス706)の動作及び/又は機能性を参照し、及び/又は含むことができる。薬物送達システム700、例えば、APアプリケーションを実行するインスリン送達システムとして、薬物送達システム、又はセンサー入力(例えば、センサー704によって収集されるデータ)を使用するAPアプリケーションベース送達システムであると見なされてもよい。
【0113】
一例では、1つ又は複数のデバイス702、704、706又は707は、無線通信リンク788を介してクラウドベース・サービス711と通信するよう作動することができる。クラウドベース・サービス711は、サーバー及びデータ記憶デバイス(図示せず)を利用してもよい。通信リンク788は、セルラー・リンク、Wi-Fiリンク、ブルートゥース(登録商標)・リンク、又はそれらの組み合わせであり、それはそれぞれのデバイス702、706、又は707とシステム700のセンサー704との間に確立されてもよい。クラウドベース・サービス711によって提供されるデータ記憶デバイスは、ユーザーの体重、血糖測定値、年齢、食事の炭水化物情報又は同種のものの匿名化されたデータを格納することができる。加えて、クラウドベース・サービス711は、複数のユーザーからの匿名化されたデータを処理して、APアプリケーションによって使用されるさまざまなパラメーターに関連する一般化された情報を提供することができる。例えば、年齢に基づく一般的な目標血糖値は、匿名化されたデータから導出され得る、それは説明されるようにウェアラブル薬物送達デバイスが起動されるときのオンボーディング・プロセスの間に役立つかもしれない。クラウドベース・サービス711はまた、図2の例のプロセス100又は図3を参照して以下に説明されるような追加プロセスを実行するように、処理サービスをシステム700に提供することができる。
【0114】
一例では、ウェアラブル薬物送達デバイス702は、通信デバイス764を含むことができ、それは上記のように、ブルートゥース(登録商標)、Wi-Fi、近距離無線通信規格、セルラー規格などの1つ又は複数の無線周波数プロトコルに従って作動し、それぞれのデバイスがクラウドベース・サービス711と通信することを可能にし得る受信機、送信機、又はトランシーバであってもよい。例えば、センサー704又はウェアラブル薬物送達デバイス(ポンプ)702からの出力は、通信デバイス764のトランシーバを介して保存又は処理するために、クラウドベース・サービス711に送信されてもよい。同様に、ウェアラブル薬物送達デバイス702、管理デバイス706、及びセンサー704は、通信リンク788を介してクラウドベース・サービス711と通信するよう作動することができる。
【0115】
一例では、それぞれのデバイス702、706、又は707のそれぞれの受信機及びトランシーバは、センサー704によって送信され得る血糖測定値のそれぞれの血糖測定値を含む信号を受信するよう作動することができる。それぞれのデバイス702、706、又は707のそれぞれのプロセッサは、それぞれの血糖測定値のそれぞれを、723、763、又は773などのそれぞれのメモリに格納するよう作動することができる。加えて、それぞれのメモリ723、763又は773は、インスリン送達履歴を含むインスリン送達に関連する情報、及びインスリン送達履歴への新しいデータを含む更新を格納するよう作動することができる。それぞれの血糖測定値は、729、749、769又は779などの人工膵臓アルゴリズムに関連するデータとして保存されてもよい。さらなる例では、個人用糖尿病管理デバイス706、スマート・アクセサリ・デバイス707、又はセンサー704のいずれかで機能するAPアプリケーションは、それぞれの通信デバイス764、774、746によって実行されるトランシーバを介してウェアラブル薬物送達デバイスによる受信のための制御信号を送信するよう機能することができる。この例では、制御信号は、ウェアラブル薬物送達デバイス702によって排出されるインスリンの量を示すことができる。
【0116】
システム700によって実行されるプロセスのさまざまな動作シナリオ及び例が本明細書に説明されている。例えば、システム700は、図1~6のプロセス例を実行するよう作動することができる。メモとして、例では3日について説明されるが、新世代のポッド又は702などのウェアラブル薬物送達デバイスが3日以上使用できるかもしれない場合、図2~6の例で説明されるライフサイクルは、新世代のポッドのライフサイクルの期間の間に実行されるかもしれない。
【0117】
薬物送達システム(例えば、システム700又はその任意の構成装置)について本明細書に説明されるようなオンボーディング及び適応プロセスを提供するための本明細書に説明される技術は、ハードウェア、ソフトウェア、又はそれらの任意の組み合わせで実行されてもよい。例えば、システム700又はその任意の構成装置は、ハードウェア、ソフトウェア、又はそれらの任意の組み合わせで実行されてもよい。本明細書に説明される技術の実行に関連するソフトウェアは、ファームウェア、アプリケーション固有のソフトウェア、又は1つ又は複数のプロセッサによって実行され得る他の任意のタイプのコンピュータ可読命令を含むことができるが、これらに限定されない。本明細書に説明される技術の実行に関連するハードウェアは、集積回路(IC)、特定用途向けIC(ASIC)、フィールド・プログラマブル・アレイ(FPGA)、及び/又はプログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)を含むことができるが、これらに限定されない。いくつかの例では、本明細書に説明される技術、及び/又は本明細書に説明される任意のシステム又は構成装置は、1つ又は複数のメモリ構成装置に格納されるコンピュータ可読命令を実行するプロセッサで実行されてもよい。
【0118】
開示されたデバイスのいくつかの例は、例えば、記憶媒体、コンピュータ可読媒体、又は機械(すなわち、プロセッサ又はコントローラ)によって実行される場合に、本開示の例に従って、機械に方法及び/又は動作を実行させ得る命令又は一組の命令を格納することができる製造品を使用して実行されてもよい。そのような機械は、例えば、任意の適切な処理プラットフォーム、コンピューティング・プラットフォーム、コンピューティング・デバイス、処理デバイス、コンピューティング・システム、処理システム、コンピュータ、プロセッサ又は同種のものを含むことができ、ハードウェア及び/又はソフトウェアの任意の適切な組み合わせを使用して実行されてもよい。コンピュータ可読媒体又は部品は、例えば、任意の適切なタイプのメモリ装置、メモリ、メモリ部品、メモリ媒体、記憶デバイス、記憶部品、記憶媒体、及び/又は記憶装置、例えば、メモリ(非一時的なメモリを含む)、リムーバブル又は非リムーバブル・メディア、消去可能又は非消去可能メディア、書き込み可能又は再書き込み可能メディア、デジタル又はアナログ・メディア、ハード・ディスク、フロッピー・ディスク、コンパクト・ディスク読み取り専用メモリ(CD-ROM)、コンパクト・ディスク記録可能(CD-R)、コンパクト・ディスク書き換え可能(CD-RW)、光ディスク、磁気メディア、磁気光学メディア、リムーバブル・メモリ・カード又はディスク、さまざまなタイプのデジタル多用途ディスク(DVD)、テープ、カセット又は同種のものを含むことができる。命令は、任意の適切な高レベル、低レベル、オブジェクト指向、ビジュアル、コンパイル及び/又はインタプリタ・プログラミング言語を使用して実行される、ソース・コード、コンパイル・コード、インタプリタ・コード、実行可能コード、静的コード、動的コード、暗号化コード、プログラミング・コードなどの任意の適切なタイプのコードを含むことができる。プログラミング・コードで具体化される非一時的なコンピュータ可読媒体は、プログラミング・コードを実行するとき、プロセッサに本明細書で説明されるものなどの機能を実行させることができる。
【0119】
本開示の特定の例は上記に説明された。しかしながら、本開示はこれらの例に限定されるものではなく、本明細書に明示的に説明されたものへの追加及び修正もまた開示された例の範囲内に含まれることをむしろ意図していることに明確に留意されたい。さらに、本明細書に説明されるさまざまな例の特徴は、相互に排他的ではなく、そのような組み合わせ又は順列が本明細書で明示されていなくても、開示された例の精神及び範囲から逸脱することなく、さまざまな組み合わせ及び順列で存在し得ることを理解されたい。実際、本明細書で説明されたものの変形、修正、及び他の実行は、開示された例の精神及び範囲から逸脱することなく、当業者に生じるであろう。したがって、開示された例は、前述の例示的な説明によってのみ定義されるべきではない。
【0120】
技術のプログラムの側面は、通常、実行可能コード及び/又は機械可読媒体のタイプで実行又は具体化される関連データの形式の“製品”又は“製造品”と考えることができる。記憶タイプのメディアには、コンピュータ、プロセッサ又は同種のものの有形メモリのいずれか又はすべて、あるいは、さまざまな半導体メモリ、テープ・ドライブ、ディスク・ドライブなどの関連モジュールが含まれ、それはソフトウェア・プログラミングに対していつでも非一時的な記憶を提供できる。読者が技術的開示の性質を迅速に確認できるように、開示の要約が提供されることが強調される。それは、請求項の範囲又は意味を解釈又は制限するために使用されないことを理解した上で提出される。加えて、前述の詳細な説明において、開示を合理化するために、さまざまな特徴が1つの例にまとめられている。この開示方法は、請求された例が各請求項で明示的に説明されているよりも多くの特徴を必要とする意図を反映していると解釈されるべきではない。むしろ、以下の請求項が反映するように、発明の主題は、単一の開示された例のすべての特徴よりも少ないものにある。したがって、以下の請求項は、これにより詳細な説明に援用され、各請求項は、別個の例としてそれ自体で立っている。添付の請求項において、“含む”及び“ここで”という用語は、それぞれ“含む”及び“ここで”というそれぞれの用語の平易な英語の同等物として使用される。さらに、“第1”、“第2”、“第3”などの用語は、単にラベルとして使用され、それらの対象に数値要件を課すことを意図したものではない。
【0121】
例示的な例の前述の説明は、実例及び説明の目的で提示されている。網羅的であること、又は本開示を開示される正確な形態に限定することを意図するものではない。この開示に照らして、多くの修正及び変形が可能である。本開示の範囲は、この詳細な説明によってではなく、むしろ本明細書に添付される請求項によって限定されることが意図されている。この出願の優先権を主張する将来の出願は、開示された主題を異なる方法で主張することができ、概して、本明細書でさまざまに開示又は他の方法で示されるように任意のセットの1つ又は複数の制限を含むことができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】