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▶ コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-30
(54)【発明の名称】光学系およびその生産方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/125 20060101AFI20221122BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20221122BHJP
   G02B 5/26 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
H01S5/125
G02B5/20
G02B5/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022519309
(86)(22)【出願日】2020-09-24
(85)【翻訳文提出日】2022-05-24
(86)【国際出願番号】 EP2020076799
(87)【国際公開番号】W WO2021058690
(87)【国際公開日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】1910714
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】コラード・シャンカルポール
(72)【発明者】
【氏名】ウセイン・エル・ディラニ
【テーマコード(参考)】
2H148
5F173
【Fターム(参考)】
2H148AA07
2H148AA12
2H148AA18
2H148AA19
2H148AA21
2H148AA23
2H148FA05
2H148FA09
2H148FA12
2H148FA24
5F173AB03
5F173AB13
5F173AH14
5F173AH48
5F173AP33
5F173AP37
5F173AR04
5F173AR14
(57)【要約】
本発明は、屈折率n1を有するリボン100部分110、屈折率n3を有するコルゲーション112およびコルゲーション112からリボン100を分離し、n2<n3かつn2<n1であるように、屈折率n2を有する分離層111を備えるブラッグミラーを備える光学系に関する。
本発明は、そのようなミラーを製造するための方法、および出力ミラーとしてそのようなミラーを備えるレーザにも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 第1の屈折率n1を有する第1の材料に基づくリボン(100)であって、第1の方向(x)に主に延在し、前記第1の方向(x)に波長λの光放射の伝搬を導くように意図される、リボン(100)と、
- 前記リボン(100)の第1の部分から形成される第1のブラッグミラー(11)であって、前記第1のブラッグミラー(11)が、前記第1のリボン(100)部分(110)の少なくとも1つの面(1100)にコルゲーション(112)を更に備え、前記コルゲーション(112)が、前記第1の方向(x)に垂直の第2の方向(y)に主に延在し、前記第1および第2の方向(x、y)に垂直の第3の方向(z)に高さh3を有し、前記第1のブラッグミラー(11)の前記コルゲーション(112)が、前記第3の方向(z)にとられる厚さe2を有し、且つ第2の屈折率n2を有する第2の材料に基づく分離層(111)によって前記第1のリボン(100)部分(110)の前記少なくとも1つの面(1100)から分離され、前記コルゲーション(112)が、n2<n3かつn2<n1であるように、第3の屈折率n3を有する第3の材料に基づいている、第1のブラッグミラー(11)と、
- 前記リボン(100)の第2の部分を含む第2のブラッグミラー(12)と、
- 前記リボン(100)の第3の部分を含む、前記第1および第2のブラッグミラー(11、12)間に位置する光共振器と、
- 前記リボン(100)の前記第3の部分における、第4の材料に基づく増幅媒体と
を備える光学系。
【請求項2】
前記コルゲーション(112)が、前記第2の材料に基づく封止層で封止される、請求項1に記載の光学系。
【請求項3】
前記コルゲーションの前記高さh3が5nm以上および/または30nm以下である、請求項1または2に記載の光学系。
【請求項4】
前記分離層(111)の前記厚さe2が10nm以上および/または50nm以下である、請求項1から3のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項5】
前記コルゲーションが、前記第1および第2の方向(x、y)によって形成される主延在平面(xy)に突出する断熱パターン(30)を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項6】
前記高さh3および前記厚さe2が、前記ミラー(11)が0.5nm以下のスペクトルバンド幅δωDBRを有するように構成される、請求項1から5のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項7】
前記第1の屈折率n1が3以上であり、前記第2の屈折率n2が2以下であり、前記第3の屈折率n3が1.5以上である、請求項1から6のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項8】
前記第1の材料がシリコンであり、前記第2の材料が酸化シリコンであり、前記第3の材料が窒化シリコン、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化タンタルからとられる、請求項1から7のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項9】
前記光共振器が、500μm以上、好ましくは1mm以上、好ましくは3mm以上である前記第1の方向(x)の長さLcを有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項10】
前記第2のブラッグミラー(12)が、99%以上である反射率および2nm以上であるスペクトルバンド幅δωDBR2を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項11】
前記第2のブラッグミラー(12)が、前記リボン(100)の前記第2の部分(120)の少なくとも1つの面と直接接触する前記第1の材料に基づく第2のコルゲーションを備え、前記第2のコルゲーションは5nm以上の高さh2を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項12】
レーザ検出および測距システムに実装されるように構成されるリモートセンシングレーザを形成する、請求項1から11のいずれか一項に記載の光学系。
【請求項13】
- 第1の屈折率n1を有する第1の材料に基づくリボン(100)を準備するステップであって、前記リボン(100)は第1の方向(x)に主に延在し、前記第1の方向(x)および前記第1の方向(x)に垂直の第2の方向(y)によって形成される主延在平面(xy)に延在する面(1100)を有する、リボン(100)を準備するステップと、
- 前記リボンの前記面(1100)の少なくとも第1の部分に、n2<n1であるように第2の屈折率n2を有する第2の材料に基づく分離層(111)を堆積させるステップであって、前記分離層(111)は前記第1および第2の方向(x、y)に垂直の第3の方向(z)にとられる厚さe2を有する、分離層(111)を堆積させるステップと、
- 前記分離層(111)に、n2<n3であるように、第3の屈折率n3を有する第3の材料に基づく擾乱層を堆積させるステップであって、前記擾乱層は前記第3の方向(z)にとられる厚さe3を有する、擾乱層を堆積させるステップと、
- 前記第2の方向(y)に主に延在し、前記第3の方向(z)に高さh3≦e3を有するコルゲーション(112)を形成するために前記擾乱層をエッチングするステップであって、前記コルゲーション(112)は前記分離層(111)および前記リボン(100)の前記第1の部分とともに第1のブラッグミラー(11)を形成する、前記擾乱層をエッチングするステップと、
- 前記リボン(100)の第2の部分に第2のブラッグミラー(12)を形成するステップと、
- 前記第1および第2の部分間に位置する前記リボン(100)の第3の部分に、第4の材料に基づく増幅媒体を転写するステップと
を含む、光学系を製造するための方法。
【請求項14】
前記第2の材料に基づく封止層によって前記コルゲーション(112)を封止するステップを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記エッチングが、前記コルゲーション(112)の前記高さh3が前記擾乱層の前記厚さe3に等しいように、前記分離層(111)と前記擾乱層との間の界面(1110)において停止される、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記コルゲーション(112)の前記高さh3が5nm以上および/または30nm以下であり、前記分離層(111)の前記厚さe2が20nm以上および/または50nm以下である、請求項13から15のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オプトエレクトロニクスの分野に関する。それは、例えばLiDAR(ライダ)(表現「laser detection and ranging(レーザ検出および測距)」の頭字語)リモートセンシングレーザのためのまたは400Gイーサネット型の中距離データコムレーザのための、半導体レーザ光源の生産を特に有利な応用として見出せる。
【背景技術】
【0002】
ブラッグミラーは、光損失を制限しつつ、上記ミラーへの垂直入射での光放射を反射することを可能にする。それは、したがって所与の波長λの光放射に対して99%より大きな反射率Rを有することができる。
【0003】
ブラッグミラーは、それゆえにレーザ応用のための、特に半導体レーザ光源のための光共振器の製造のために特に有利である。
【0004】
公知の半導体レーザ光源アーキテクチャが図1A図1Bに示される。そのようなアーキテクチャは、2つの横ブラッグミラー11、12間に縦に延在するリボン導路100、および増幅媒体20を備えるファブリペロー型光共振器を典型的に備える。増幅媒体20は、本明細書において、シリコンリボン100に転写される、材料III-Vから作られる、例えばリン化インジウムInPから作られるビネットである。実際には、ブラッグミラーは、リボン導路100のコルゲーションによって生成される。それゆえに、それらは、それらの反射率特性を決定するコルゲーション係数κおよび長さLを各々有する。コルゲーション係数κは、
【0005】
【数1】
【0006】
として表現できる。
【0007】
式中、Ωはリボンを伝搬する光学モードの区間であり、ninfおよびnsupはそれぞれ図3Bに例示されるようにリボンの低段および高段とそれぞれ対応する光学モードの実効屈折率であり、neff,g=(ninf-nsup)dΛ+nsupはコルゲーションによって形成される格子の大域実効率(低段および高段に関連した率の加重平均)であり、Eはコルゲーションによって擾乱される領域外の光放射の電場である。
【0008】
このレーザ光源の動作原理は次の通りである:波長λ近辺を中心とした発光スペクトルを有する光放射を放出するように増幅媒体が電気的に励起される。この光放射は、キャビティモードまたは縦モードと呼ばれる共振伝搬モードに従って、ブラッグミラーによって数回反射されつつ光共振器内を誘導的に伝搬する。各反射後に、光放射は、放出を誘発するために増幅媒体へ再導入される。ブラッグミラーの一方は閉込めミラーと呼ばれており、反射率R≧99%を有し、キャビティの光損失を制限することを可能にする。他方のブラッグミラーは出力または抽出ミラーと呼ばれており、部分的に反射し(R≦50%)、コヒーレントレーザビームが伝送されるのを可能にする。
【0009】
このレーザビームは、光共振器および増幅媒体によって定められる波長に、波長λ近辺の微細線の離散集合を備える発光スペクトルを一般に有する。このレーザ発光スペクトルが図2に例示される。この発光スペクトルの別々の線はレーザビームの縦モードに対応する。線の幅は、光共振器の欠陥におよび増幅媒体内で発生される量子雑音に特に依存する。
【0010】
縦モード間の波長間隔は、光共振器の自由スペクトル領域FSRλに対応し、光共振器の長さLに特に依存する:
【0011】
【数2】
【0012】
effを光共振器の平均実効率とする。したがって、キャビティ長を増加させることによって、FSRλは減少し、レーザビームのスペクトルバンドはより多くの縦モードを潜在的に含む。
【0013】
レーザビームはそのスペクトル純度によって特徴付けることができ、これはその発光スペクトル内の縦モードの数を反映する。発光スペクトル内の縦モードの数が減少するにつれてレーザビームのスペクトル純度は増加する。スペクトル純度は、2つの最強線の強度の比として表現できる。電気通信において、頭字語SMSR(Side Mode Suppression Ratio(サイドモード抑圧比)の)によっても知られている、この強度の比が約30dBより大きければ、レーザビームは波長λの単一モードレーザビームと考えられる。
【0014】
レーザビームのスペクトル純度を改善することを可能にする1つの解決策は、キャビティ長を減少させることにある。この種類の解決策は、キャビティ長を減少させることによってレーザビームの光強度が減少するので、高光強度を必要とするレーザ光源に対しては適合されない。
【0015】
レーザビームのスペクトル純度を改善することを可能にする別の解決策は、レーザビームをスペクトルフィルタリングするように出力ブラッグミラーの寸法を設定することにある。
【0016】
光共振器のブラッグミラーは、波長λを中心とした反射率ピークを各々有する。
【0017】
この反射率ピークは、ブラッグミラーのスペクトルストップバンドまたは「阻止帯域」を定める或るスペクトル幅δωDBRを有する。
【0018】
この阻止帯域幅δωDBR(nm)は、格子強度とも呼ばれる、ブラッグ格子のコルゲーション係数κにおよびブラッグ格子の長さLに特に依存する:
【0019】
【数3】
【0020】
式中、vは光放射の群速度である。
【0021】
出力ミラーの十分に低い阻止帯域幅δωDBRが、レーザビームの発光スペクトルをフィルタリングし、この発光スペクトルの幅を減少させることを可能にする。レーザビームのスペクトル純度は、したがって出力ミラーの阻止帯域が狭いほど良い。
【0022】
図3Aは、波長λ=1547nmの光放射に対する、FSRλ=0.32nmの光共振器の閉込めミラー(L=500μm、R≒100%、δωDBR2≒2nm)のおよび出力ミラー(L=100μm、R≒46%、δωDBR≒4nm)の反射率Rおよび阻止帯域を例示する。垂直線はビームの別々の縦モードを例示しており、FSRλだけ分離される。
【0023】
この例では、光共振器は約1mmの長さLを有し、そして閉込めおよび出力ミラーは高さt=10nmのコルゲーションを有する。図3Bは、高さtの、周期Λあたり長さdのそのようなコルゲーションを有する長さLのブラッグミラーを断面で例示する。
【0024】
この種類の解決策は、5mWと20mWとの間に含まれる光強度を必要とするデータ伝送(データコム)または電気通信(テレコム)応用のための単一モード赤外レーザ光源(λ≒1550nm)を得ることを可能にする。
【0025】
他方で、LiDAR(レーザ検出および測距)型の応用または400Gイーサネット型の中距離データコム応用に対して、この種類の解決策は、十分な、典型的に100mWより大きな強度も単一モードレーザビームも両方を得ることは可能にしない。
【0026】
これらの応用のために必要とされる光強度を達成するために、増幅媒体の長さ、それゆえに光共振器の長さLが増加されなければならない。特に、光共振器の長さは、前例のそれより少なくとも3倍大きくなり得る。このキャビティ長の増加は、比例して自由スペクトル領域FSRλの減少を誘発する。
【0027】
前例の出力ミラーの特徴では、そのような光共振器のために単一モードビームを得ることをもはや可能にしない。特に、出力ミラーの阻止帯域幅(δωDBR≒4nm)は、そのような光共振器の自由スペクトル領域(FSRλ≒0.11nm)と比較してあまりに大きい。
【0028】
それゆえに、減少された阻止帯域幅を有する半導体レーザのための出力ブラッグミラーを提案することにある必要性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
本発明の目的は、そのような出力ブラッグミラーを備えるレーザを提供することである。
【0030】
特に、本発明の目的は、特に100mW以上の光強度を有する半導体レーザのための、レーザビームのスペクトル純度を改善する出力ブラッグミラーを備える半導体レーザを提供することである。
【0031】
本発明の別の目的は、そのようなレーザを生産するための方法を提供することである。
【0032】
本発明の別の目的は、光強度が100mW以上の単一モード半導体レーザを提供することである。
【0033】
本発明のその他の目的、特徴および利点は、以下の説明および添付の図面を吟味することで明らかになるであろう。他の利点が援用され得ることが理解される。特に、ブラッグミラーの一部の特徴および一部の利点は上記光学系におよび/または上記方法に準用し得る、また逆も同じである。
【課題を解決するための手段】
【0034】
この目的を達成するために、第1の態様は、第1の材料に基づくリボンと、上記リボンの第1の部分から形成される第1のブラッグミラーと、リボンの第2の部分から成る第2のブラッグミラーと、リボンの第3の部分から成る、第1および第2のブラッグミラー間に位置する光共振器と、リボンの上記第3の部分における、第4の材料に基づく増幅媒体とを備える光学系に関する。
【0035】
第1のブラッグミラーは、第1の屈折率n1を有する第1の材料に基づく第1のリボン部分から成る。リボンは、第1の方向xに主に延在し、上記第1の方向xに波長λの光放射の伝搬を導くと意図される。第1のブラッグミラーは、上記第1のリボン部分の少なくとも1つの面にコルゲーションを更に備え、上記コルゲーションは、第1の方向xに垂直の第2の方向yに主に延在し、第1および第2の方向x、yに垂直の第3の方向zに高さh3を有する。
【0036】
有利には、コルゲーションは、第3の方向zにとられる厚さe2を有し、第2の屈折率n2を有する第2の材料に基づく分離層によって第1のリボン部分の上記少なくとも1つの面から分離される。
【0037】
有利には、コルゲーションは、n2<n3かつn2<n1であるように、第3の屈折率n3を有する第3の材料に基づく。
【0038】
したがって、コルゲーションは、リボンの面に対向しかつ分離層によってリボンの上記面から分離される。
【0039】
リボンは、xに沿って、縦に光放射の伝搬を導く。光放射の光学モードは、それゆえにリボンに閉じ込められる。リボンは、したがって、xに沿ったその寸法より小さく、好ましくはかなり小さく、かつ方向y、zの少なくとも一方に関しては例えば少なくとも100倍小さな横方向y、zに沿った寸法を有する。閉込めは、低屈折率材料でリボンを外装することによって典型的に得られる。閉込めは、したがってリボン自体とリボンを囲む外装との間の、率の対比によって達成される。光閉込めは、部分的にリボンの幾何形状に、典型的にその横断面の形状によることもできる。
【0040】
光導路を形成するそのようなリボンは、それゆえに、一般にxにもyにも延在する基板とは別個である。基板は、1つの方向にまたは単一方向に光放射の伝搬を導くことは許容しない。基板は、複数のデバイスを搭載すると典型的に意図される。特に、基板は、本発明に係るブラッグミラーと関連付けられたリボン導路を搭載できる。
【0041】
リボンおよびこのリボンの一部から成るミラーは、したがって誘導光学の分野のために意図される。リボンは好ましくは単一モードである、すなわちそれは光放射の単一伝搬モード、典型的に基本モードを導く。ミラーへ統合されるリボン部分はリボン自体と同じ特徴を典型的に有する。リボンのこの部分は、特に光放射を閉じ込めることを可能にする。ミラーのリボン部分に閉じ込められる光放射の部分は、したがってミラーのコルゲーションの各々によってxに沿って反射される。同位相で反射される部分は、したがってxに沿って反射される光放射を再形成する。ミラーは、それゆえに一次反射機能を行うが、光伝搬機能も備える。
【0042】
コルゲーションは光放射の伝搬を擾乱する。コルゲーション係数κは、したがって阻止帯域幅δωDBRを部分的に決定する。コルゲーション係数が大きいほど、ミラーの阻止帯域幅は大きくなる。反対に、コルゲーション係数が減少すると、ミラーの阻止帯域幅は減少する。
【0043】
コルゲーション係数を低下させることを可能にする1つの解決策は、コルゲーションの高さを減少させることにある。本発明の開発との関連では、数ナノメートルの範囲の高さを有するコルゲーションを、再現可能かつ制御された様式で得るために必要とされるエッチング技術は実装するのが非常に困難であることが実際に判明した。
【0044】
逆に、この場合、コルゲーション係数の低下は、コルゲーションの高さの減少を克服することによって得られる。
【0045】
したがって、分離層の使用が、光放射が伝搬するリボンからコルゲーションを物理的に遠ざけることを可能にする。擾乱の強度は、コルゲーションとリボンとの間の、第3の方向zの距離の増加と共に減少する。ブラッグミラーのコルゲーション係数κおよび阻止帯域幅δωDBRは、したがってこの物理的距離または分離効果によって減少される。
【0046】
リボンおよびコルゲーションのそれらに対して低い屈折率を有するこの分離層のための第2の材料、典型的に誘電材料の使用は、光放射が伝搬するリボンからコルゲーションを光学的に分離することを更に可能にする。
【0047】
屈折率n2の分離層は、それゆえに、リボンからコルゲーションを物理的に分離することによって、および光放射を低率で光学的に変調することによって相乗効果を有する。これは、ブラッグミラーの阻止帯域幅を更に減少させることを可能にする。
【0048】
コルゲーションは、したがってリボンに対して「浮遊」している。電磁的観点から、コルゲーションは、リボンを伝搬する光放射の電磁場を擾乱する島を形成する。光放射の電磁擾乱は誘電体バリアによって減衰される。それらは、島とリボンとの間の距離の増加と共に更に自然に減少する。これらの浮遊コルゲーションは、減少されたコルゲーション係数を有する。
【0049】
上記光学系は、高スペクトル純度を有するレーザを有利にも形成できる。阻止帯域幅が減少された出力ミラーが備えられるそのようなレーザは、有利にも単一モードのままでありつつ増加されたキャビティ長を更に有することができる。レーザの光強度を、したがって、30dBより大きなSMSRを維持しつつ、例えば100mW以上の値に増加できる。
【0050】
第2の態様は、
- 第1の屈折率n1を有する第1の材料に基づくリボンであって、第1の方向xに主に延在し、第1の方向xおよび第1の方向xに垂直の第2の方向yによって形成される主延在平面xyに延在する面を有する、リボンを準備するステップと、
- リボンの上記面の少なくとも第1の部分に、n2<n1であるように第2の屈折率n2を有する第2の材料に基づく分離層であって、第1および第2の方向x、yに垂直の第3の方向zにとられる厚さe2を有する、分離層を堆積させるステップと、
- 分離層に、n2<n3であるように、第3の屈折率n3を有する第3の材料に基づく擾乱層であって、第3の方向zにとられる厚さe3を有する、擾乱層を堆積させるステップと、
- 第2の方向yに主に延在し、第3の方向zに高さh3≦e3を有するコルゲーションであって、分離層およびリボンの第1の部分で第1のブラッグミラーを形成する、コルゲーションを形成するように擾乱層をエッチングするステップと、
- リボンの第2の部分に第2のブラッグミラーを形成するステップと、
- 第1および第2の部分間に位置するリボンの第3の部分に、第4の材料に基づく増幅媒体を転写するステップとを含む、レーザを製造するための方法に関する。
【0051】
コルゲーションの高さh3は好ましくは10nmより大きく、更に好ましくは20nmより大きい。そのような高さh3のエッチングは、数ナノメートル未満、例えば5nm未満のエッチングより容易に達成可能である。本発明の方法に従ってコルゲーションをエッチングするステップは、それゆえに、コルゲーションの高さを減少させることを目指す解決策と比較して単純化される。有利には、分離層は、擾乱層のエッチングのためのストップ層として使用でき、h3=e3である。したがって、コルゲーションの高さh3は完全に再現可能でありかつ十分に制御される。リボンの面も、コルゲーションのエッチング中に起こり得るオーバエッチングから保護される。これは、高品質係数のブラッグミラーを生産することを可能にする。
【0052】
本発明の意図、目的の他に特徴および利点は、以下の添付図面によって例示されるその一実施形態の詳細な説明からより良好に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1A】公知の半導体レーザ光源アーキテクチャを上面図で例示する図である。
図1B】公知の半導体レーザ光源アーキテクチャを断面図で例示する図である。
図2】レーザの典型的な発光スペクトルを表す図である。
図3A】先行技術に係るレーザの閉込めおよび出力ミラーの反射率および阻止帯域を例示する図である。
図3B】先行技術に係るコルゲーションを有するブラッグミラーを断面で例示する図である。
図4A】本発明の一実施形態に係るブラッグミラーの平面yzにおける断面図である。
図4B】本発明の一実施形態に係るブラッグミラーの平面xzにおける断面図である。
図5A】本発明の一実施形態に係るブラッグミラーの上面図である。
図5B】本発明の別の実施形態に係るブラッグミラーの上面図である。
図6A】先行技術に係るブラッグミラーの反射率および阻止帯域を示す図である。
図6B】本発明の一実施形態に係るブラッグミラーの反射率および阻止帯域を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
図面は例として与えられており、本発明を限定するものではない。それらは、本発明の理解を容易にすると意図される概略原理表現を構成しており、必ずしも実際的応用にスケーリングされているわけではない。特に、ブラッグミラーの別々の層およびコルゲーションの相対寸法は現実を表していない。
【0055】
本発明の実施形態の詳細な検討を始める前に、第1のブラッグミラーが、組み合わせてまたは代替的に使用できる以下の任意選択の特徴を特に備えることが想起される。
【0056】
一例によれば、コルゲーションは、分離層が上記コルゲーション間に露出されるように互いから分離される。
【0057】
一例によれば、コルゲーションは、第2の材料に基づく封止層で封止される。
【0058】
一例によれば、コルゲーションの高さh3は5nm以上および/または30nm以下である。
【0059】
一例によれば、分離層の厚さe2は10nm以上および/または50nm以下である。
【0060】
一例によれば、コルゲーションは、第1および第2の方向x、yによって形成される主延在平面xyに突出する断熱パターンを有する。
【0061】
一例によれば、高さh3および厚さe2は、ミラーが0.5nm以下のスペクトルバンド幅δωDBRを有するように構成される。
【0062】
一例によれば、第1の屈折率n1は3以上であり、第2の屈折率n2は2以下であり、第3の屈折率n3は1.5以上である。
【0063】
一例によれば、第3および第2の屈折率はn3-n2≦0.5のようなものである。
【0064】
一例によれば、第1の材料はシリコンであり、第2の材料は酸化シリコンであり、第3の材料は窒化シリコン、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化タンタルからとられる。
【0065】
一例によれば、リボンは単一モード導路を形成する。
【0066】
一例によれば、ミラーは、光放射の伝搬の第1の方向xに直角な平面に沿った入力および出力を有する。
【0067】
一例によれば、コルゲーションは、光放射の伝搬の第1の方向xに平行な、擾乱層と呼ばれる層に含まれる。
【0068】
その第1の態様による本発明は、組み合わせてまたは代替的に使用できる以下の任意選択の特徴を特に備える。
【0069】
一例によれば、光共振器は、500μm以上、好ましくは1mm以上、更に好ましくは3mm以上である第1の方向(x)の長さLcを有する。
【0070】
一例によれば、第2のブラッグミラーは、99%以上である反射率および2nm以上であるスペクトルバンド幅δωDBR2を有する。
【0071】
一例によれば、第2のブラッグミラーは、リボンの第2の部分の少なくとも1つの面と直接接触する第1の材料に基づく第2のコルゲーションを備え、上記第2のコルゲーションは5nm以上の高さh2を有する。
【0072】
一例によれば、光学系は、LiDAR(「laser detection and ranging(レーザ検出および測距)」の頭字語)と呼ばれるレーザ検出および測距システムに実装されるように構成されるリモートセンシングレーザを形成する。
【0073】
本発明は、その第2の態様によれば、組み合わせてまたは代替的に使用できる以下の任意選択の特徴を特に備える。
【0074】
一例によれば、上記方法は、第2の材料に基づく封止層によってコルゲーションを封止するステップを更に含む。
【0075】
一例によれば、エッチングは、コルゲーションの高さh3が擾乱層の厚さe3に等しいように分離層と擾乱層との間の界面において停止される。
【0076】
一例によれば、エッチングは、2:1以上、好ましくは50:1以上である擾乱および分離層間の選択性Sp:sを有する。
【0077】
一例によれば、コルゲーションの高さh3は5nm以上および/または30nm以下であり、分離層の厚さe2は20nm以上および/または50nm以下である。
【0078】
非互換性を除けば、上記ミラー、上記製造方法および上記光学系が以上の全ての任意選択の特徴を、必要な変更を加えて含み得ることが理解される。
【0079】
本発明の文脈では、用語「ブラッグミラー」、「ブラッグ格子」または「分布ブラッグ反射器」もしくは他に「DBR」は同義語として使用される。ブラッグミラーは、本明細書において導波路における反射器として使用されるように構成される。それは、異なる屈折率の材料の交互配列から成る。この交互配列は、導波路における実効屈折率の周期変動を誘発する。そのような交互配列は、本発明に係るブラッグミラーの文脈では少なくとも2回再現される。
【0080】
ブラッグミラーと協働する導波路は、好ましくはリボンレーザ応用のために特に使用されるリボン型導波路である。リボンレーザはDBR型(Distributed Bragg Reflector(分布ブラッグ反射器))またはDFB型(Distributed FeedBack(分布帰還))であることができる。DBRレーザは2つのブラッグミラーを典型的に備える。DFBレーザは単一のブラッグミラーを典型的に備える。
【0081】
リボンは主方向xに沿って連続的に延在する。それはxに沿って光放射の伝搬を導く。図1Aに例示されるように、平面yzにおけるリボンの断面は、必ずしもリボン100に沿って一定であるわけではない。特に、1つまたは複数のテーパ101、102が光放射の伝搬を局所的に変調できる。これは、例えば、キャビティの部分10(リボン)における光放射の伝搬とキャビティの部分20(増幅媒体)における光放射の伝搬との間の断熱通路を可能にする。リボン断面は可変形状を有することもできる。図1Aに例示される例によれば、それは、ブラッグミラー11、12において矩形でよく、かつ光共振器10においてリッジプロファイルを有してよい。本発明の文脈では、リボンは、リボンもしくはストリップ導路を示し得る、またはリッジもしくはリブ導路の一部、典型的にリッジ導路の最厚中央部分だけを示し得る。したがって、リッジまたはリブ導路は本発明の意味内でリボンを構成する。
【0082】
リボンは、DBRまたはDFB型リボンレーザのブラッグミラーおよび光共振器の形成にそれぞれ寄与する幾つかの部分を典型的に備える。図1Bに例示されるように、リボン100の第1の部分110が第1のブラッグミラー11に相当し、リボン100の第2の部分120が第2のブラッグミラー12に相当し、そしてリボン100の第3の部分130が光共振器に相当する。ブラッグミラーに含まれるリボンの部分は、それゆえに必ずリボンの残りと協働する。
【0083】
ブラッグミラーは、リボンの少なくとも1つの面にコルゲーションを備える。これらのコルゲーションはリボンの面から突出する。それらは主縦方向xに直角に延在する。「コルゲーション」は、それゆえに突出した横レリーフに相当する。先行技術に係るブラッグミラーのコルゲーションは典型的にリボンの面と直接接触している(図3B)。本発明に係るブラッグミラーのコルゲーションは典型的に分離層によってリボン面から分離される(図4B)。
【0084】
本発明の文脈では、第1の層と第2の層との間に介在される第3の層は、必ずしも層が互いと直接接触していることを意味するわけではなく、別段の規定がない限り、第3の層が第1および第2の層と直接接触しているか、それらから少なくとも1つの他の層または少なくとも1つの他の要素によって分離されているかを意味することが明記される。
【0085】
層形成ステップ、特に分離のそれらおよび擾乱のそれは広義に理解されるものであり、それらは、必ずしも厳密に連続するわけではない幾つかのサブステップで実施できる。
【0086】
材料Mに「基づく」基板、フィルム、層は、この材料Mだけまたはこの材料Mおよび場合により他の材料、例えば合金元素、不純物もしくはドーピング元素から成る基板、フィルム、層を意味する。適宜、材料Mは異なる化学量を有してよい。したがって、窒化シリコンに基づく材料から作られる層は、例えばSiN層またはSi層(一般に化学量論的窒化シリコンと呼ばれる)であることができる。
【0087】
本特許出願において、第1、第2および第3の方向は、好ましくは正規直交座標系の軸x、y、zによって搬送される方向にそれぞれ対応する。この座標系は添付の図に表される。
【0088】
以下では、長さは第1の方向xにとられ、幅は第2の方向yにとられ、そして厚さは第3の方向zにとられる。
【0089】
以下では、屈折率が、材料に対して、場合により平均またはモデル材料に対して、およびこの材料における光放射の波長に対して定められる。屈折率は、考慮中の材料における光の伝搬速度に対する伝わり速度c(真空中の光速度)の比に等しい。光は、縦方向xに沿って伝搬すると仮定される。
【0090】
n1は、第1の材料における波長λの光束の伝搬に対する第1の屈折率である。
【0091】
n2は、第2の材料における波長λの光束の伝搬に対する第2の屈折率である。
【0092】
n3は、第3の材料における波長λの光束の伝搬に対する第3の屈折率である。
【0093】
用語「実質的に」、「ほぼ」、「の範囲の」は「10%以内」または角度方位の場合「10以内」を意味する。したがって、平面に実質的に垂直の方向は、平面に対して90±10°の角度を有する方向を意味する。
【0094】
ブラッグミラーの幾何形状を判定するために、走査電子顕微鏡(SEM)または透過電子顕微鏡(TEM)分析を実施できる。これらの技術は、ナノメートル構造の寸法を判定するために十分に適合されている。それらは、典型的な構造解析またはリバースエンジニアリング方法に従って、装置を通じて作製された冶金切片または薄切片から実装できる。
【0095】
異種材料の化学組成はEDXまたはX-EDS型分析(「energy dispersive x-ray spectroscopy(エネルギー分散型X線分光法)」の頭字語)から判定できる。この技術は、細いコルゲーションなどの小構造の組成を分析するように十分に適合されている。それは、走査電子顕微鏡(SEM)内の冶金切片にまたは透過電子顕微鏡(TEM)内の薄切片に実装できる。
【0096】
ブラッグミラーの反射率および阻止帯域測定は、赤外分光法によって、例えばフーリエ変換赤外(FTIR)分光法によって行うことができる。ブラッグミラーの阻止帯域幅は中間高さにおいて測定される。ブラッグミラーの反射率および阻止帯域は、FDTD(Finite Difference Time Domain(有限差分時間領域))方法と呼ばれる有限差分時間領域計算を通じても判定できる。
【0097】
本発明は、ここで幾つかの非限定的な実施形態を通じて詳細に記載されることになる。
【0098】
図4A図4Bおよび図5Aを参照しつつ、ブラッグミラー11の第1の実施形態は、シリコンから作られる第1のリボン100部分110、部分110の面1100に直接形成される、酸化シリコンから作られる分離層111、および分離層111の面1110に直接形成される、窒化シリコンから作られるコルゲーション112から成る。
【0099】
部分110は、代替的にシリコン合金、例えばシリコンゲルマニウム、またはゲルマニウムから作られてよい。それは、典型的に3より大きな屈折率n1を有する。それは、例えば500nmの範囲の厚さe1を有する。それは、シリコンオンインシュレータSOIまたはゲルマニウムオンインシュレータGeOI型基板からリソグラフィ/エッチングによって形成できる。この部分110は、50pmから1000pmの範囲の長さLg、および5pmから20pmの範囲の幅Wを有することができる。部分110は、したがって下の酸化物層におよび横の酸化物層に典型的に接している(例示せず)。
【0100】
この部分110の面1100は、リボンの面のコルゲーションの形態の周期構造化を用いる公知の解決策とは異なり、有利にも構造化されない。極細コルゲーション(<5nm)の複合エッチングの問題は、したがって有利にも排除される。部分110は、その面1100において分離層111に接している。
【0101】
分離層111は、好ましくは10nmと50nmとの間に含まれ、例えば20nmと40nmとの間に含まれる厚さe2を有する。それは、2より小さな屈折率n2を有する。酸化シリコンから作られるそのような分離層111の形成は完全に知られており、容易に達成可能である。それは、リボン100の部分110の面1100に露出されるシリコンの熱酸化によって形成できる。代替的に、それは、例えば化学蒸着型CVDの堆積技術によって堆積できる。分離層111は面1100全体を覆う。
【0102】
コルゲーション112は、好ましくは分離層111と直接接触している。それらは、5nmより大きく、好ましくは10nmより大きく、例えば20nmから25nmの範囲の、または約50nmまでもの高さh3を有する。コルゲーションのそのような範囲の高さh3は、ミラーのコルゲーション係数のより微細な調整を可能にする。
【0103】
コルゲーション112は、光放射の波長λの関数として計算される長さdおよび周期Λを有する。典型的に、長さdは、
【0104】
【数4】
【0105】
に等しい。
【0106】
周期Λは、
【0107】
【数5】
【0108】
に等しい。
【0109】
波長λが1.5pmにほぼ等しい放射に対して、長さdは典型的に150nmの範囲であり、周期Λは典型的に250nmの範囲である。コルゲーションの幅は好ましくはW以上である。リボン100の幅Wより僅かに大きなコルゲーションの幅が、リボンに対するコルゲーションのzに沿った任意の不整列を克服することを可能にする。コルゲーション112がリボンの幅W全体を覆う確率はしたがって改善される。平面xyにおけるコルゲーションの寸法設定は、それ自体が知られている。
【0110】
コルゲーションは、1.5より大きくかつn2より大きな屈折率n3を有する。それらは、好ましくは窒化シリコンから作られる。それらは、代替的にかつ限定することなく窒化アルミニウムから、または酸化アルミニウムから、または酸化タンタルから作ることができる。
【0111】
コルゲーションの形成は、好ましくは2つのステップで行われる。第1のステップは、分離層111に擾乱層と呼ばれる層を、例えばCVDによって堆積させることにある。この擾乱層は厚さe3を有する。第2のステップは、コルゲーション112を形成するようにリソグラフィ/エッチングによって擾乱層を構造化することにある。エッチングは、好ましくはドライプロセスによって行われる。エッチング深さはコルゲーションの高さh3に相当する。コルゲーション112は、好ましくは、図4Bに例示されるように、互いとは別個であり分離される。この場合、h3=e3であり、分離層111の面1110はエッチング後にコルゲーション間に露出される。分離層111は、それゆえにエッチングストップ層として有利にも使用される。エッチングは、好ましくは、ドライエッチングの場合2:1以上の、または特にウェットエッチングの場合50:1もの擾乱および分離層間の選択性Sp:sを有する。
【0112】
代替的に、コルゲーション112は、擾乱層の厚さe3より小さな高さh3を有する。それらは、分離層111と接触する擾乱層の下部分によって相互接続される。エッチングは、この場合、分離層111の面1110に達する前に停止される。
【0113】
エッチング後に、コルゲーション112は、好ましくは、例えばCVDによる酸化シリコン堆積物によって封止される。封止層は、好ましくはコルゲーションから成りかつリボンと反対のミラーの面全体を覆い、それは、有利にはコルゲーション間の空間も埋め、したがって分離層の露出部分(コルゲーションによって覆われない部分を意味する)を覆う。
【0114】
この第1の実施形態によれば、コルゲーションは、したがって、図5Aに例示されるように、酸化シリコンの母体に埋め込まれる窒化シリコンバーに類似している。コルゲーションは、好ましくは一定幅を有する。このように形成されるブラッグミラーは、その長さLgに沿って数十のコルゲーションを備える。コルゲーションの数は、例えば10と100との間に含まれる。
【0115】
図5Bに例示される第2の実施形態によれば、コルゲーション112は、断熱パターンと呼ばれるパターンに配置される。全ての条件が等しければ、コルゲーションのこの配置だけが第1の実施形態と異なる。そのような断熱パターンは、平面xyにおいて、コルゲーションが無い第1のゾーン31およびコルゲーション112が有る第2のゾーン32を画定する先細プロファイル30、例えば尖頭または放物線プロファイルを有する。分離層111の面1110は、この場合コルゲーション112を欠いたゾーン31全体にわたって露出される。ゾーン31は、好ましくは方向yにおいてゾーン32の中央とされる。
【0116】
そのような断熱パターンは、公知の様式で、ブラッグミラーの反射の間に光放射の伝搬を徐々に変調することを可能にする。これは、ブラッグミラーにおける回折による光損失を制限することを可能にする。光共振器の寄生損失がしたがって制限される。ゾーン31は、したがって、光放射が伝搬する光共振器または導波路に隣接すると意図されるミラーの第1の側から、方向xに第1の側と反対のミラーの第2の側に向けて徐々に減少する幅を有する。ゾーン32は、ゾーン31の境をなすコルゲーションの一部、およびミラーの第2の側における完全な-すなわち幅W全体に沿って延在する-コルゲーションを含む。ゾーン32内の完全なコルゲーションの数は5と20との間に含めることができる。
【0117】
ゾーン31の最大幅Wzは、好ましくはゾーン32の幅Wより小さい。幅比Wz/Wは0.5と0.9との間に含めることができる。ゾーン31の長さLzはゾーン32の長さLgより小さい。長さの比Lz/Lgは0.5と0.9との間に含めることができる。ゾーン31の面積はゾーン32のそれより小さくてよい。ゾーン31、32の面積の比は0.5と0.9との間に含まれてよい。
【0118】
これらの第1および第2の実施形態に従ってこのように形成されるブラッグミラーは減少された阻止帯域幅を有する。第2の実施形態に従って形成されるブラッグミラーは改善された効率を更に有する。
【0119】
図6Aおよび図6Bは、先行技術に係るミラー(図6A)のおよび本発明に係るミラー(図6B)の阻止帯域幅δωDBRを比較する。50%の範囲の類似した反射率に対して、本発明に係るミラーの阻止帯域幅(δωDBR≒0.6nm、図6B)は、先行技術に係るミラーの阻止帯域幅(δωDBR≒4nm、図6A)と比較して極めて有意に減少される。この例で提示される阻止帯域幅δωDBR≒0.6nmは本発明に係るミラーの阻止帯域幅限界値ではない。この阻止帯域幅は、例えば分離層の厚さe2を増加させることによっておよび/またはコルゲーションの高さh3を減少させることによって更に減少させることができる。
【0120】
そのようなブラッグミラーは、DBR型リボンレーザの出力ミラーとして有利にも実装できる。特に、先行技術に係るミラー11を本発明に記載されるブラッグミラーによって置き換えることによって、図1Aおよび図1Bに例示されるSi上のIII-Vアーキテクチャと呼ばれるアーキテクチャを使用できる。減少された阻止帯域幅のこのミラーの使用は、単一モードレーザビームを維持しつつ光共振器10を長くすることを可能にする。基準とされるレーザのキャビティの長さLに対して光共振器を係数Xだけ長くすることによって、自由スペクトル領域FSRλは同じ係数Xだけ減少される。基準レーザビームのSMSR比を保つために、次いで阻止帯域幅をこの同じ係数Xだけ減少させることが必要である。
【0121】
それゆえに、本発明に係るブラッグミラーが、基準レーザのそれよりX倍大きな光共振器を有するDBR型のSi上のIII-Vリボンレーザを生産するために適切であることが明らかなようである。増幅媒体の長さおよびそれゆえに体積を比例して増加させることによって、そのようなレーザの強度も基準レーザのそれより約X倍大きい。本発明に係るブラッグミラーは、それゆえに、先行技術に係るブラッグミラーを備える基準レーザよりほぼX倍強力なSi上のIII-Vレーザを生産することを可能にする。この係数Xは、本発明の文脈では少なくとも6である。
【0122】
本発明に記載されるような出力ミラーを備えるSi上のIII-Vレーザは、したがって3mmの範囲のキャビティ長L、2mmの範囲の増幅媒体長および0.11nmの範囲のFSRλを有することができる。そのようなレーザは、1.5pmの範囲の発光波長に対して30dBより大きなSMSRを維持しつつ、100mW以上の光強度を有利にも有する。このレーザの閉込めミラー12は、好ましくはリボン100の部分120に直接形成されるコルゲーションを備える。それは、したがって出力ミラー11のそれより非常に大きな阻止帯域幅を有する。これは、ミラー12に対して広帯域(例えばδωDBR2≧10nm)にわたるほとんど全反射率(R≧99%)から、およびミラー11に対して極狭帯域(例えばδωDBR≦0.6nm)での半反射率(R≦50%)から利益を得ることを可能にする。そのようなレーザは、LiDARおよび長距離400Gテレコム応用のために有利に使用できる。
【0123】
本発明は、上記した実施形態に限定されず、請求項によって包含される全ての実施形態に及ぶ。
【符号の説明】
【0124】
10 光共振器
11 第1のブラッグミラー
12 第2のブラッグミラー
20 増幅媒体
30 先細プロファイル
31 第1のゾーン
32 第2のゾーン
100 リボン
101、102 テーパ
110 第1の部分
111 分離層
112 コルゲーション
120 第2の部分
130 第3の部分
1100 面
1110 面
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
【国際調査報告】