(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-30
(54)【発明の名称】電極、電気化学セル及びその形成方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/38 20060101AFI20221122BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20221122BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20221122BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20221122BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20221122BHJP
H01M 4/131 20100101ALI20221122BHJP
H01M 4/134 20100101ALI20221122BHJP
H01M 4/1395 20100101ALI20221122BHJP
H01M 4/1391 20100101ALI20221122BHJP
H01M 4/1397 20100101ALI20221122BHJP
H01M 4/136 20100101ALI20221122BHJP
C01B 32/907 20170101ALI20221122BHJP
C01B 32/05 20170101ALI20221122BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/58
H01M4/36 C
H01M4/131
H01M4/134
H01M4/1395
H01M4/1391
H01M4/1397
H01M4/136
C01B32/907
C01B32/05
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022519336
(86)(22)【出願日】2020-09-30
(85)【翻訳文提出日】2022-05-20
(86)【国際出願番号】 SG2020050551
(87)【国際公開番号】W WO2021066746
(87)【国際公開日】2021-04-08
(31)【優先権主張番号】10201909125Y
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517435434
【氏名又は名称】ナショナル ユニバーシティー オブ シンガポール
【氏名又は名称原語表記】National University of Singapore
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【氏名又は名称】江上 達夫
(74)【代理人】
【識別番号】100131015
【氏名又は名称】三輪 浩誉
(72)【発明者】
【氏名】オズユルマズ,バルバロス
(72)【発明者】
【氏名】セチン,カグダス
(72)【発明者】
【氏名】トー,チー タット
(72)【発明者】
【氏名】アビディ,イルファン ハイダー
(72)【発明者】
【氏名】カネパ,ピエレマヌエレ
(72)【発明者】
【氏名】リム,シャオ フェン
【テーマコード(参考)】
4G146
5H050
【Fターム(参考)】
4G146AA01
4G146AB07
4G146AC23A
4G146AD02
4G146AD25
4G146AD26
4G146BA11
4G146BC11
4G146BC16
4G146MB03
4G146MB27
4G146NA13
4G146NB12
5H050AA07
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB11
5H050HA00
5H050HA01
5H050HA04
5H050HA17
(57)【要約】
様々な実施形態は、電極に関してよい。電極は、電極活物質を含む電極コアを含んでよい。電極はまた、1つ以上の単層非晶質フィルムを含んでよい。1つ以上の単層非晶質フィルムの各々は、電極コアを囲む連続層であってよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極活物質を含む電極コアと、
1つ以上の単層非晶質フィルムと、
を含み、
前記1つ以上の単層非晶質フィルムの各々は、前記電極コアを囲む連続層である
電極
【請求項2】
前記電極活物質はアノード活物質である
請求項1に記載の電極。
【請求項3】
アノード活物質は、ケイ素、スズ、アルミニウム、及びゲルマニウムからなる群から選択されるいずれか1つの材料である
請求項2に記載の電極。
【請求項4】
電極活物質はアノード活物質である。
請求項1に記載の電極。
【請求項5】
アノード活物質が、リチウムコバルト酸化物(LiCoO
2)、リチウムマンガン酸化物(LiMn
2O
4)、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(LiNiMnCoO
2)、リチウム鉄リン酸塩(LiFePO
4)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(LiNiCoAlO
2)、及びリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(LiNiCoMnO
2)からなる群から選択されるいずれか1つの材料である
請求項4に記載の電極。
【請求項6】
前記1つ以上の単層非晶質フィルム中に存在する六方晶炭素環及び非六方晶炭素環の総数に対する六方晶炭素環の数の割合は、0.8以下である
請求項1に記載の電極。
【請求項7】
前記六方晶炭素環の平均直径は、0.76オングストローム~2.3オングストロームの範囲から選択される任意の数値であり、
前記非六方晶炭素環の平均直径は、0.76オングストローム~2.3オングストロームの範囲から選択される任意の数値である
請求項6に記載の電極。
【請求項8】
前記1つ以上の単層非晶質フィルムの各々は、面内結合を含む
請求項1に記載の電極。
【請求項9】
前記1つ以上の単層非晶質フィルムは、0.3nm~3nmの範囲から選択される厚さを有する
請求項1に記載の電極。
【請求項10】
前記1つ以上の単層非晶質フィルムは、10
-2Ωcm~10
3Ωcmの範囲から選択される数値の電気抵抗率を有する
請求項1に記載の電極。
【請求項11】
前記1つ以上の単層非晶質フィルムは、破壊することなく、1%~20%の範囲から選択されるパーセンテージ変形に耐えるように構成される
請求項1に記載の電極。
【請求項12】
前記1つ以上の単層非晶質フィルム中に存在するsp
2及びsp
3結合の総数に対するsp
2結合の結合比率は、0.8以上である
請求項1に記載の電極。
【請求項13】
前記1つ以上の単層非晶質フィルムは、50GPa~500GPaの範囲から選択される値のヤング率を有する
請求項1に記載の電極。
【請求項14】
前記1つ以上の単層非晶質フィルムの前記電極芯の面に対する接着力は、200以上である
請求項1に記載の電極。
【請求項15】
前記1つ以上の単層非晶質フィルムは、単層非晶質炭素(MAC)フィルム、層状非晶質シリコンオキシカーバイド(SiOC)フィルム、又は層状非晶質シリコン窒化炭素(SiCN)フィルムである
請求項1に記載の電極。
【請求項16】
前記1つ以上の単層非晶質フィルムは、1つ以上の単層非晶質カーボン(MAC)フィルム及び1つ以上の層状非晶質シリコンオキシカーバイド(SiOC)フィルムを含み、前記1つ以上の単層非晶質カーボン(MAC)フィルムは、前記1つ以上の層状非晶質シリコンオキシカーバイド(SiOC)フィルムと交互積層配置を形成する
請求項1に記載の電極。
【請求項17】
1つ以上の単層非晶質フィルムは、複数の単層非晶質フィルムを含む
請求項1に記載の電極。
【請求項18】
前記複数の単層非晶質フィルムのうちの第1の単層非晶質フィルムの構造が、前記複数の単層非晶質フィルムのうちの第2の単層非晶質フィルムの構造と異なる
請求項17に記載の電極。
【請求項19】
前記複数の単層非晶質フィルムのうちの前記第1の単層非晶質フィルムの特性が、前記複数の単層非晶質フィルムのうちの前記第2の単層非晶質フィルムの特性と異なる
請求項18に記載の電極。
【請求項20】
当該電極は、少なくとも84%の初期クーロン効率を示すように構成される
請求項1に記載の電極。
【請求項21】
当該電極は、50サイクルの間、0.35Cで85%を超えるサイクル安定性を示すように構成される
請求項1に記載の電極。
【請求項22】
請求項1に記載の電極と、
さらなる電極と、
前記電極及び前記さらなる電極と接触する電解質と、
を含む電気化学セル。
【請求項23】
前記さらなる電極は、
さらなる電極活物質を含むさらなる電極コアと、
1つ以上のさらなる単層非晶質フィルムと、
を含み、
前記1つ以上のさらなる単層非晶質フィルムの各々は、前記さらなる電極コアを囲む連続層である
請求項22に記載の電気化学セル。
【請求項24】
電極を形成する方法であって、
極活物質を含む電極コアを形成することと、
1つ以上の単層非晶質フィルムを形成することと、
を含み、
前記1つ以上の単層非晶質フィルムの各々は、前記電極コアを囲む連続層である
方法。
【請求項25】
電気化学セルを形成する方法であって、
請求項1に記載の電極を形成することと、
さらなる電極を提供することと、
前記電極及び前記さらなる電極と接触する電解質を提供することと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2019年9月30日に出願されたシンガポール出願10201909125Yの優先権の便益を主張するものであり、その内容は、すべての目的のために、ここでは参照により完全に盛り込まれている。
【0002】
(技術分野)
本開示の様々な態様は、電極に関する。本開示の様々な態様は、電気化学セルに関する。本開示の様々な態様は、電極を形成する方法に関する。本開示の様々な態様は、電気化学セルを形成する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
市販のリチウムイオン電池は、リチウム(Li)がインターカレートされた天然黒鉛及び合成黒鉛を含有する負極を使用する。生成されたグラフインターカレーション化合物は、LixC6として表すことができ、ここでxは一般に1未満である。完全に結晶構造のグラファイトのグラフェン面間の隙間に可逆的に挿入できるリチウムイオンの最大量はx=1に対応し、グラファイトアノードに対する372mAh/gの理論比容量を規定する。
【0004】
黒鉛系負極に加えて、LiaAの組成式を有するリチウム合金(Aは金属であり、“a”は0<a≦5に相当)は、それらの高い理論容量に起因して非常に興味深い。例えば、Li4.4Si、Li4.4Sn、LiAl、及びLi4.4Geは、それぞれ4200mAh/g、990mAh/g、993mAh/g、及び1623mAh/gの理論容量を有する。電荷担体の別の例は、ナトリウム(Na)イオンであり、これは、Naイオン電池の構成要素である。ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、及びアンチモン(Sb)を含むがこれらに限定されない元素は、ナトリウムと結合して、それぞれ954mAh/g、369mAh/g、847mAh/g、485mAh/g、及び660mAh/gの理論容量を有する合金を形成することができる。これらの合金アノード材料(負極材料)は、その高いイオン挿入容量と比較的低い放電電位により、最も有望なアノード材料候補と見なされている。しかしながら、これらの材料は、電荷キャリアイオンの反復挿入及び抽出中に、シェル内の活性材料の非偏析結晶コアとリチウム化非晶質相との間の界面を横切る歪みにより、最大425%の大きな体積膨張を受け、活性粒子の亀裂、電極の粉砕、集電体との電気的接触の損失、及び厚くて不均一な不安定固体電解質界面(SEI)層の形成を引き起こし得る。溶媒及び電解質塩の両方は熱力学的に不安定であり、アノード表面で還元される。これらのSEI層は、アノード表面を不動態化し、電解質のさらなる分解を防止し得る。しかしながら、電気化学的サイクル中の合金化アノード材料の高体積膨張は、厚いSEI層を破壊し、各サイクル中に活物質粒子の新鮮な表面を電解質に曝す可能性がある。Liイオン電池用のフッ化リチウム(LiF)及び炭酸リチウム(Li2CO3)、ならびにNaイオン電池用の炭酸ナトリウム(Na2CO3)及び水酸化ナトリウム(NaOH)から主に構成される不均一なSEI層の不安定性は、最終的に、電解質の消耗のために、著しい容量損失、短い電池寿命、及び電池セルからの乾燥をもたらし得る。
【0005】
電池のカソード(正極)側については、正極物質(例えば、LiCoO2)の容量は、電池が>4.0Vの電圧で充電される場合、その理論容量の50%までしか実用的に利用することができず、それ以上では、電極-電解質副反応に関連する格子欠陥、遷移金属溶解、構造劣化などの理由によって正極が不安定になる可能性がある。これらの副反応は、著しい容量劣化、短い電池寿命、及びより重要な安全問題をもたらし得る。電極-電解質副反応は、活物質の表面上で起こるので、正極を劣化から保護することができる表面コーティングが緊急に必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
様々な実施形態は、電極に関することができる。電極は、電極活物質を含む電極コアを含むことができる。電極はまた、1つ以上の単層非晶質フィルムを含み得る。1つ以上の単層非晶質フィルムの各々は、電極コアを囲む連続層であってもよい。
【0007】
様々な実施形態は、電気化学セルに関することができる。電気化学セルは、本明細書に記載されるような電極を含むことができる。電気化学セルはまた、さらなる電極を含むことができる。電気化学セルは、電極及びさらなる電極と接触する電解質をさらに含むことができる。
【0008】
様々な実施形態は、電極を形成する方法に関することができる。この方法は、電極活物質を含む電極コアを形成することを含むことができる。この方法はまた、1つ以上の単層非晶質フィルムを形成することを含み得る。1つ以上の単層非晶質フィルムの各々は、電極コアを囲む連続層であってもよい。
【0009】
様々な実施形態は、電気化学セルを形成する方法に関することができる。この方法は、本明細書に記載されるように電極を形成することを含むことができる。この方法はまた、さらなる電極を形成することを含み得る。この方法は、電極及びさらなる電極と接触する電解質を提供することをさらに含むことができる。
【0010】
本発明は、非限定的な実施例及び添付の図面と併せて考慮される場合、詳細な説明を参照してより良く理解されるであろう:
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】様々な実施形態による電極を示す概略図である。
【
図2】様々な実施形態による電気化学セルを示す概略図である。
【
図3】様々な実施形態による電極の形成方法を示す概略図である。
【
図4】様々な実施形態による電気化学セルを形成する方法を示す概略図である。
【
図5】(左)様々な実施形態による、六方晶及び非六方晶を含む単層非晶質フィルムの高分解能透過型電子顕微鏡(TEM)画像、及び(右)明確な回折パターンを有さない拡散環構造を示す左側画像の高速フーリエ変換(FFT)を示し、様々な実施形態によるフィルムの非晶質性を示す。
【
図6】様々な実施形態に従う層状非晶質炭化ケイ素(SiOC)フィルムの定電流充放電プロファイルを示す、容量(単位グラムあたりのミリアンペア時)の機能としての電圧電位(ボルト又はV)のプロットである。
【
図7】様々な実施形態による0.01V~1.5Vの電位範囲にわたる、経時的な1A/gの電流密度における、様々な実施形態による、高分子由来の厚い非晶質材料被覆活物質粒子ならびに2層の2次元(2D)非晶質材料粒子の容量の変化量を示す、サイクル数の関数としての正規化容量(パーセント又は%)のプロットである。
【
図8】(左)様々な実施形態による単層非晶質炭素(MAC)フィルムによっていくつかの孔が覆われ、気体が導入され、単層非晶質炭素(MAC)フィルムがそれぞれ膨らみを形成する気泡試験の光学画像、及び(右)高圧気体チャンバから取り出された後の様々な実施形態による単層フィルムの膨らみを示す原子間力顕微鏡(AFM)画像を示す。
【
図9】(左)インデンテーション後のグラフェンの結晶粒界に沿った亀裂伝播を示す光学画像、及び(右)インデンテーション後の亀裂伝播の欠如を示す様々な実施形態による単層非晶質カーボン(MAC)フィルムの光学画像を示す。
【
図10A】フィルム上に凹みが形成された後の種々の実施形態による懸濁単層非晶質炭素(MAC)フィルムの原子間力顕微鏡(AFM)画像;及び(下記)AFMが単層非晶質炭素(MAC)フィルムから引き出された後に凹みピークを示す対応する高さプロファイルを示す距離(ナノメートル又はnm)の機能としての高さ(ナノメートル又はnm)のグラフを示す。
【
図10B】様々な実施形態による懸濁単層非晶質炭素(MAC)フィルムの別の原子間力顕微鏡(AFM)画像を、フィルム(第1のくぼみの右側)上に第2のくぼみを作製した後に示し、(下記)高さ(ナノメートル又はnm)のグラフを、AFMが単層非晶質炭素(MAC)フィルムから引き出された後に第2のくぼみピークを示す対応する高さプロファイルを示す距離(ナノメートル又はnm)の関数として示す。
【
図10C】2つのくぼみを有する様々な実施形態による、懸濁単層非晶質カーボン(MAC)フィルムの3次元原子間力顕微鏡(AFM)画像を示す。
【
図11A】様々な実施形態に従う単層非晶質フィルムの電流-電圧(IV)曲線を示す電圧(V)の機能としての電流(アンペア又はA)のプロットである。
【
図11B】は、種々の実施形態による、特定の結晶化度(C)値の単層非晶質フィルムについて測定された抵抗率値のヒストグラムを示す、抵抗率(オーム-センチメートル又はΩ-cm)の機能としてのカウント(すなわち、分布)のプロットである。
【
図12】種々の実施形態による単層非晶質フィルムならびにナノ結晶グラフェンのラマンスペクトルを示す、ラマンシフト(センチメートル又はcm
-1で)の機能としての強度(任意の手段で)のプロットである。
【
図13】種々の実施形態による、sp
3/sp
2比率が20%である1つの原子層厚(6オングストローム)非晶質フィルムのX線光電子分光法(XPS)スペクトルを示す、結合エネルギー(電子ボルト又はeVで)の機能としての強度(任意の手段で)のプロットである。
【
図14A】は、様々な実施形態に従う活物質上の層状非晶質シリコンオキシカーバイド(SiOC)フィルムのX線回折(XRD)スペクトルを示す2θ(単位度)の機能としての強度(任意の手段)のプロットであり、一方、挿入図は、層状非晶質シリコンオキシカーバイド(SiOC)フィルムの非晶質特性を示す。
【
図14B】様々な実施形態による層状非晶質シリコンオキシカーバイド(SiOC)フィルム被覆活物質粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。
【
図15A】(上記)シリコン(Si)粒子上の層状非晶質シリコンオキシカーバイド(SiOC)フィルムのX線光電子分光法(XPS)調査スペクトルを示す結合エネルギー(電子ボルト又はeV)の機能としての相対強度(任意の手段又はa.u.)のプロット;及び(下)非晶質のシリコン(Si)粒子のX線光電子分光法(XPS)調査スペクトルを示す結合エネルギー(電子ボルト又はeV)の機能としての相対強度(任意の手段又はa.u.)のプロットを示す。
【
図15B】シリコン(Si)2p領域における種々の実施形態による層状非晶質シリコンオキシカーバイド(SiOC)フィルムの高分解能デコンボリューションX線光電子分光法(XPS)スペクトルを示す結合エネルギー(電子ボルト又はeV単位)の機能としての強度(任意の手段又はa.u.)のプロットである。
【
図16A】様々な実施形態による、活物質粒子を取り囲む様々な実施形態による、単層非晶質フィルムを示す概略図である。
【
図16B】(上)従来のコーティングでコーティングされたシリコン活物質粒子;及び(下)リチウム化、脱リチウム化及びサイクル下の様々な実施形態による単層非晶質フィルムでコーティングされたシリコン活物質粒子を示す概略図である。
【
図17】押し込み深さ(ナノメートル又はnm)の機能としての(マイクロニュートン又はμNにおける)押し込み荷重のプロットであり、活物質粒子上の厚い非晶質シリコンオキシカーバイド(SiOC)フィルムコーティングの荷重-深さ曲線を示す。
【
図18】活物質粒子上の厚い非晶質被覆の電気化学インピーダンス分光法(EIS)を示す、インピーダンス(オーム又はΩ)の実部の機能としての、インピーダンス(オーム又はΩ)の虚部のプロットである。
【
図19A】様々な実施形態による層状非晶質シリコンオキシカーバイド(SiOC)被覆電極材料のクーロン効率を示すサイクル数の関数としての効率(パーセント又は%)のプロットである。
【
図19B】様々な実施形態による層状非晶質フィルム被覆電極材料のサイクル安定性を示すサイクル数の関数としての正規化容量(パーセント又は%)のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の詳細な説明は、例示として、本発明が実施され得る特定の詳細及び実施形態を示す添付の図面を参照する。これらの実施形態は、当業者が本発明を実施することができるように十分詳細に記載されている。本発明の範囲から逸脱することなく、他の実施形態を利用し、構造的に変更することができ、論理的に変更することができる。いくつかの実施形態は、新しい実施形態を形成するために1つ以上の他の実施形態と組み合わせることができるので、様々な実施形態は、必ずしも相互に排他的ではない。
【0013】
方法又は電極/セルのうちの1つの文脈において記載される実施形態は、他の方法又は電極/セルについても同様に有効である。同様に、方法の文脈において記載される実施形態は、電極/セルについても同様に有効であり、その逆も同様である。
【0014】
一実施形態の文脈で説明される特徴は、それに対応して、他の実施形態における同じ又は類似の特徴に適用可能であり得る。一実施形態の文脈において記載される特徴は、これらの他の実施形態において明示的に記載されていなくても、他の実施形態に対応して適用可能であり得る。さらに、一実施形態の文脈における特徴について説明したような追加及び/又は組み合わせ及び/又は代替は、他の実施形態における同じ又は類似の特徴に対応して適用可能であり得る。
【0015】
本明細書に記載されるような電極又はセルは、様々な配向で動作可能であり得、したがって、以下の説明で使用される場合、「top」、「bottom」などの用語は、便宜のために、及び相対的位置又は方向の理解を助けるために使用され、電極又はセルの配向を限定することを意図しないことが理解されるべきである。
【0016】
様々な実施形態の文脈において、物品「a」、「an」及び「the」は、特徴又は元素に関して使用される場合、1つ又は複数の特徴又は元素への参照を含む。
【0017】
様々な実施形態の文脈において、数値に適用される「about」又は「approximately」という用語は、正確な値及び妥当な分散を包含する。
【0018】
本明細書中で使用される場合、用語「及び/又は」は、関連する列挙された項目の1つ又は複数の任意の及びすべての組み合わせを含む。
【0019】
様々な実施形態は、上記の問題に対処しようとすることができる。
【0020】
様々な実施形態は、1つ以上の単層非晶質フィルムを含む電極に関することができる。
図1は、様々な実施形態による電極を示す概略図である。電極は、電極活物質を含む電極コア102を含むことができる。電極はまた、1つ以上の単層非晶質フィルム(MAF)104を含むことができる。1つ以上の単層非晶質フィルム104の各々は、電極コア102を囲む連続層であってもよい。
【0021】
疑問を避けるために、
図1は、電極又はその構成要素の形状、サイズ、配向などを限定することを意図していない。例えば、
図1は、円形断面領域を有する電極芯102を示すが、様々な実施形態は、任意の好適な形状であり得る。さらに、
図1は、1つの単層非晶質フィルムを示すが、様々な実施形態は、複数の単層非晶質フィルムを含む電極に関することができる。
【0022】
現在の状況では、電極コア102を囲む1つ以上の単層非晶質フィルム104の各々は、電極コア102の全ての可能な外面を覆う1つ以上の単層非晶質フィルム104を指し得る。換言すれば、1つ以上の非晶質フィルム104を含むコーティングは、電極コア102の全体を覆ってもよい。
【0023】
現在の状況では、「非晶質」固体とは、結晶の特徴である長範囲順を欠く固体を指し得る。
【0024】
現在の文脈において、用語「単層」は、1原子厚層を指し得る。
【0025】
単層非晶質フィルムは、あるいは、二次元(2D)非晶質フィルムと呼ぶことができる。単層非晶質フィルムは、六方晶及び非六方晶環の混合物を有してもよい。非六方晶環は、4-、5-、7-、8-、9-員環などの形態であってもよい。環は、互いに完全に連結され得、そのスケールが少なくともミクロンである大領域フィルム中に多方晶の網目を形成する。結晶性(C)は、固体内の構造的秩序の程度を指し得るものであり、六方晶リングの数と(多方晶)リングの総数(六方晶、五方晶、八方晶、五方晶リングなどを含む)との割合に基づいて測定され得る。たとえば、フィルムの結晶化度が80%の場合、六方晶の環の数を環の総数で割った数は0.8である。言い換えれば、フィルムの結晶性は、環の総数に対する六方晶の環の割合に100を乗じて得られてもよい。現在の文脈において、単層非晶質フィルムは、80%以下(C≦80%)の結晶化度を有するフィルムであり得る。非晶質MACフィルムなどの様々な実施形態では、結晶化度は、50%以上(C≧50%)であってもよい。1つ以上の単層非晶質フィルムの結晶化度は、50%~80%(両端値を含む)の任意の適切な値に調整され得る。対照的に、完全なグラフェンは100%の結晶化度を有する。
【0026】
上述のように、様々な実施形態では、1つ以上の単層非晶質フィルム104は、複数の単層非晶質フィルムであってもよい。複数の単層非晶質フィルムは、積層体を形成してもよい。異なる単層は、互いに共有結合していなくてもよい。代わりに、スタック内の異なる単分子層間にファンデルワールス力が存在してもよい。対照的に、従来の非晶質フィルムについては、フィルムの厚さ全体にわたって共有結合が存在し得る。
【0027】
様々な実施形態では、複数の単層非晶質フィルムの積層中の個々の単層は、それらが自立しているときと同じ結晶性を有してもよい。様々な実施形態では、1つ又は複数の単層非晶質フィルム104は、電気的に絶縁性であってもよい。様々な実施形態では、1つ又は複数の単層非晶質フィルム104の電気伝導率は、調整されてもよい。単層非晶質フィルムの積層物については、個々の単層非晶質フィルム104の電気伝導率が改変される場合、積層物の電気伝導率は改変され得る。様々な実施形態では、1つ以上の単層非晶質フィルム(例えば、MAC)の電気伝導率は、単層の表面に平行な平面に沿った電気伝導率は無視できるが、垂直方向に沿った観察可能な伝導率があってもよい。
【0028】
様々な実施形態では、電極コア102は、代替として、活物質粒子、又は電極活性粒子と呼ぶことができる粒子であってもよい。様々な実施形態では、電極は、複数の電極コアを含むことができ、1つ以上の単層非晶質フィルム(MAF)が、各電極コア102を取り囲んでいる。
【0029】
1つ以上の単層非晶質フィルム104は、電極コア102の体積膨張を収容し得、粉砕を軽減し得る。さらに、1つ以上の単層非晶質フィルム104は、電極コア102と電解質との間の緩衝層として作用し得、それによって、電極コア102を隔離し、電極コア102が電解質に直接曝されることを防止し、したがって、イオンの繰り返しの挿入/抽出中の厚くて不安定な固体電解質界面(SEI)層の形成、及び正極活物質の劣化を著しく防止する。1つ以上の単層非晶質フィルム104はまた、空気酸化からの活物質粒子表面の保護を提供し得る。
【0030】
様々な実施形態では、電極活物質はアノード活物質であってもよい。負極活物質は、シリコン(Si)、錫(Sn)、アルミニウム(Al)、及びゲルマニウム(Ge)からなる群から選択される任意の1つの材料を含むが、これらに限定されない、負極として使用される任意の適切な材料であり得る。
【0031】
様々な実施形態では、電極活物質は、正極活物質であってもよい。正極活物質は、リチウムコバルト酸化物(LiCoO2)、リチウムマンガン酸化物(LiMn2O4)、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(LiNiMnCoO2)、リチウム鉄リン酸塩(LiFePO4)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(LiNiCoAlO2)、及びリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(LiNiCoMnO2)からなる群から選択される任意の1つの材料を含むが、これらに限定されない、正極として使用される任意の好適な材料であり得る。
【0032】
様々な実施形態では、1つ以上の単層非晶質フィルム104は、単層非晶質炭素(MAC)フィルムであってもよい。MACの各単層は、約0.6nmであり得る。他の単層非晶質フィルムについては、各単層は、0.3nm以上であり得る。
【0033】
様々な実施形態では、1つ以上の単層非晶質フィルム104、例えば、1つ以上の単層非晶質炭素(MAC)フィルム中に存在する、多数の六方晶炭素環と非六方晶炭素環(すなわち、多方晶炭素環の総数)との比率は、0.8以下、例えば、0.6に等しくてもよい。
【0034】
種々の実施形態において、六方晶炭素環の平均直径は、0.76オングストローム~2.3オングストロームの範囲から選択される任意の数値であり得る。非六方晶炭素環の平均直径は、0.76オングストローム~2.3オングストロームの範囲から選択される任意の数値であり得る。
【0035】
他の様々な実施形態では、1つ以上の単層非晶質フィルム104は、層状非晶質シリコンオキシカーバイド(SiOC)フィルム又は層状非晶質シリコンカーボン窒化物(SiCN)フィルムであってもよい。
【0036】
様々な実施形態では、1つ以上の単層非晶質フィルム104は、1つ以上の単層非晶質炭素(MAC)フィルム及び1つ以上の層状非晶質シリコンオキシカーバイド(SiOC)フィルムを含むことができる。1つ以上の単層非晶質炭素(MAC)フィルムは、1つ以上の層状非晶質シリコンオキシカーバイド(SiOC)フィルムと交互積層配置を形成することができる。MACフィルムは、2つの隣接するSiOCフィルムの間にあってもよい。SiOCフィルムは、2つの隣接するMACフィルムの間にあってもよい。
【0037】
様々な実施形態では、1つ以上の単層非晶質フィルム104の各々は、面内結合を含むことができる。
【0038】
様々な実施形態では、1つ以上の単層非晶質フィルム104は、0.3nm~3nmの範囲から選択される数値の厚さを有してもよい。様々な実施形態は、リチウムイオンの拡散性のため、及び弾性のために有益であり得る。
【0039】
様々な実施形態では、1つ以上の単層非晶質フィルム104は、10-2Ωcm~103Ωcmの範囲から選択される数値の電気抵抗率を有してもよい。
【0040】
様々な実施形態では、1つ以上の単層非晶質フィルム104は、破壊することなく、1%~20%の範囲から選択されるパーセンテージ変形に耐えるように構成されてもよい。
【0041】
様々な実施形態では、1つ又は複数の単層非晶質フィルム、例えば、MACフィルム中のsp2結合及びsp3結合の総計に対するsp2結合の結合比率は、0.8以上、例えば、0.9以上であり得る。換言すれば、種々の実施形態は、結合の総数のパーセンテージとして80%以上又は90%以下のsp2結合を含有し、結合の総数のパーセンテージとして20%未満又は10%未満のsp3結合を含有し得る。対照的に、従来の非晶質炭素(C)フィルムは、sp3及びsp2配置を有し、水素、酸素及び窒素などの汚染物を含有するランダムにハイブリダイズした炭素を含み得る。このような従来の非晶質炭素フィルムは、層ごと(すなわち、2次元又は2D)の形態では成長しないことがあるが、sp3含有量(結合層)のために、3次元又は3Dで成長することができる。
【0042】
対照的に、様々な実施形態では、1つ以上の単層非晶質フィルム104は、主にsp2結合を含むことができる。様々な実施形態では、1つ以上の単層非晶質フィルム中に存在するsp3/sp2の結合比率は、0%~20%(すなわち、0.2以下、例えば、0.1以下)であり得る。
【0043】
様々な実施形態では、1つ以上の単層非晶質フィルム104は、50GPa~500GPaの範囲から選択される値のヤング率を有してもよい。
【0044】
様々な実施形態において、1つ以上の単層非晶質フィルム104の電極芯102の面への接着力は、200Jm-2以上の値であってもよい。
【0045】
様々な実施形態では、1つ以上の単層非晶質フィルム104は、複数の単層非晶質フィルムを含むことができる。様々な実施形態では、複数の単層非晶質フィルム104の第1の単層非晶質フィルムの構造は、複数の単層非晶質フィルム104の第2の単層非晶質フィルムの構造とは異なっていてもよい。
様々な実施形態では、複数の単層非晶質フィルム104の第1の単層非晶質フィルムの特性は、複数の単層非晶質フィルム104の第2の単層非晶質フィルムの特性とは異なっていてもよい。
【0046】
様々な実施形態では、電極は、少なくとも84%の初期クーロン効率を示すように構成することができる。
【0047】
様々な実施形態では、電極は、0.35Cで50サイクルにわたって85%を超えるサイクル安定性を示すように構成することができる。
【0048】
図2は、様々な実施形態による電気化学セルを示す概略図である。様々な実施形態は、単層非晶質フィルムを含む一方又は両方の電極を有する電気化学セルに関する。
【0049】
電気化学セルは、本明細書に記載されるように、すなわち、1つ以上の単層非晶質フィルムを含む電極202を含むことができる。電気化学セルは、さらなる電極204をさらに含むことができる。電気化学セルはまた、電極202及びさらなる電極204と接触する電解質206を含むことができる。電解質206は、電極202の1つ以上の単層非晶質フィルムと接触してもよい。
【0050】
様々な実施形態では、さらなる電極204は、さらなる電極活物質を含むさらなる電極コアを含むことができる。さらなる電極204は、1つ以上のさらなる単層非晶質フィルムを含み得る。1つ以上のさらなる単層非晶質フィルムの各々は、さらなる電極コアを囲む連続層であってもよい。1つ以上のさらなる単層非晶質フィルムは、さらなる電極コアのすべての可能な外表面を覆うことができる。電解質206は、さらなる電極204の1つ以上のさらなる単層非晶質フィルムと接触してもよい。
【0051】
例えば、溶液206は、LiPF6(リチウム・ヘキサフルオロリント)溶液、LiBF4(リチウム・テトラフルオロボレート)溶液、又はLiClO4(リチウム・パークロレート)溶液を含むことができる。
【0052】
様々な実施形態では、電極202は、カソード(正極)であってもよく、一方、さらなる電極204は、アノード(負極)であってもよい。他の様々な実施形態では、電極202は、アノード(負極)であってもよく、一方、さらなる電極204は、カソード(正極)であってもよい。様々な実施形態では、さらなる電極204は、複数のさらなる電極コアを含むことができ、複数のさらなる電極コアは、さらなる電極活物質を含む。
【0053】
図3は、様々な実施形態による電極の形成方法を示す概略図である。この方法は、302において、電極活物質を含む電極コアを形成することを含むことができる。この方法はまた、304において、1つ以上の単層非晶質フィルムを形成することを含み得る。1つ以上の単層非晶質フィルムの各々は、電極コアを囲む連続層であってもよい。
【0054】
様々な実施形態では、1つ以上の単層非晶質フィルムは、スパークプラズマ焼結(SPS)、プラズマ合成、及び/又は水熱プロセスによって形成することができる。
【0055】
スパークプラズマ焼結(SPS)では、電極活物質の1つ以上の前駆体及び粒子を流体又は液体中に分散させて懸濁液を形成することができる。懸濁液は、電流パルスが、放電プラズマを形成し、ジュール加熱を生成するために1つ以上の前駆体でコーティングされた粒子を通過する前に、超音波処理され、続いて乾燥され得、それによって、1つ以上の単層非晶質フィルムが形成される。1つ以上の単層フィルムは、400℃以下の温度で形成することができ、これは、従来の方法よりも低くてもよい。ジュール加熱は、1つ以上の単層非晶質フィルムを形成するための自己制限成長を可能にし得る。
【0056】
プラズマ合成は、レーザ駆動化学蒸気熱分解に基づくことができる。1つ以上の化学前駆体が導入されてもよく、1つ以上の化学前駆体が電極活物質の粒子上に吸収されるように、赤外線(例えば、レーザーによって放出される)が提供されてもよい。吸収された1つ以上の化学前駆体は、熱分解され得、続いて、1つ以上の単層非晶質フィルムを形成し得る。1つ以上の単層非晶質フィルムの形成は、入ってくる化学前駆体の電極活物質の粒子上への衝突を介して補助され得る。
【0057】
水熱プロセスでは、1つ以上の前駆体、例えば、グルコースなどの炭素質前駆体、及び電極活物質の粒子を、流体又は液体中に分散させて、懸濁液を形成することができる。この懸濁液をオートクレーブ中で加熱することができる。1つ以上の前駆体は、最初に粒子上に物理吸着され得、ヒートは、1つ以上の前駆体を粒子に化学的に付着させるために使用され得る。40℃~70℃の範囲の温度を使用して、流体又は液体を蒸発させ、1つ以上の前駆体を粒子に化学的に付着させることができる。続いて、SPSを使用して、1つ以上の単層非晶質フィルムを形成することができる。
【0058】
図4は、様々な実施形態による電気化学セルを形成する方法を示す概略図である。この方法は、402において、本明細書に記載されるように、すなわち、1つ以上の単層非晶質フィルムを含む電極を形成することを含み得る。この方法はまた、404において、さらなる電極を提供又は形成することを含み得る。この方法は、406において、電極及びさらなる電極と接触する電解質を提供することをさらに含むことができる。
【0059】
疑義を避けるために、
図4は、種々の工程の順序を限定することを意図しない。例えば、様々な実施形態では、電極及びさらなる電極は、電解質が導入される前に、最初にセル内に形成又は提供されてもよい。他の様々な実施形態では、電解質は、電極及びさらなる電極がセル内に配置される前に、最初に導入されてもよい。
【0060】
様々な実施形態では、さらなる電極は、さらなる電極活物質を含むさらなる電極コアを含むことができる。さらなる電極は、1つ以上のさらなる単層非晶質フィルムを含むことができる。1つ以上のさらなる単層非晶質フィルムの各々は、さらなる電極コアを囲む連続層であってもよい。1つ以上のさらなる単層非晶質フィルムは、さらなる電極コアのすべての可能な外表面を覆うことができる。電解質は、さらなる電極の1つ以上のさらなる単層非晶質フィルムと接触してもよい。
【0061】
単層非晶質フィルムによる活物質粒子の被覆は、粉砕を緩和するために内部粒子の体積膨張を収容し得、電極活物質と電解質との間の緩衝層として作用し、電極活物質粒子が電解質に直接曝されることを隔離し得、したがって、イオンの繰り返しの挿入/抽出中の厚くて不安定なSEI層の形成、及び正の活物質の劣化を著しく防止する。コーティングはまた、空気酸化からの活物質粒子表面の保護を提供し得る。
【0062】
これまで、活物質に関する既存の研究は、電極粉砕及び劣化に関連する不満足な電池寿命のために、商業的応用に対する要求を未だ満たしていない。グラフェン、高分子由来炭素、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)などの金属酸化物を含む他の被覆材料は、正極及び負極の両方に関する現存する問題を解決することができない。様々な実施形態は、電荷担体(例えば、リチウムイオン(Li+)、ナトリウムイオン(Na+)、カリウムイオン(K+))のみの選択的拡散を可能にするために、はるかに低い温度で成長される連続層状非晶質フィルムに関することができる。単層非晶質フィルムは、正極及び/又は負極のための化学的及び機械的に安定なバリアとして作用し得る。
【0063】
現在、電池電極は、活物質粒子上に高分子由来の炭素シェルを含むことができる。
この炭素殻は選択的フィルムとして働く。このような構造の初期容量値は、典型的には1000mAh/g~1500mAh/gであり、イオン拡散に対する良好な性能を示唆する。しかしながら、シェル内でこのタイプの炭素で被覆された活物質は、典型的には、200サイクル未満で初期容量値の50%未満まで急速な容量低下を示す。200サイクル未満で発生する容量の不具合は、イオン選択性が低いことに起因する可能性がある。シェルは、電極-電解質副反応及び故障を引き起こす他の電解質塩をフィルムに通す可能がある。炭素コーティングは、炭素質前駆体の熱分解によって合成される。得られた炭素シェルは、その固有の脆性特性のために、イオンの挿入及び抽出中の内部粒子の体積膨張中に、少なくとも10nmの厚さで、不均一であり、持続不可能である。さらに、厚い炭素コーティングは、内部粒子へのイオン拡散を制限する。全体として、高分子由来炭素シェル構造は、粉砕と共に不均一な体積膨張を受け、急速な容量減衰を引き起こす。
【0064】
炭素質前駆体の熱分解は、80%までのsp2に対する高sp3を有する炭素被覆をもたらす。これらのコートはsp3とsp2の比率が高いために脆弱であり、早い周期で活性材料の破損と粒状化につながる。対照的に、種々の実施形態は、sp2対sp3の高比率を有し得る。様々な実施形態は、80%~100%の範囲の全結合の高いsp2パーセンテージを有してもよく、これは、物質を伸縮可能にし、歪誘発変形に対して抵抗性であるようにする。
【0065】
これらの前駆体の二次元(2D)高分子由来炭素シェルフィルムへの変換は、700℃より高い温度で架橋剤を有する高分子又はモノマーの熱分解を必要とし得る。内部電極材料と炭素シェルとの間の界面で、電気化学的に不活性で電気絶縁性の金属セラミック形成の可能性は、高温熱分解のために避けられない可能性がある。対照的に、種々の実施形態は、はるかに低い温度で成長させることができ、金属-セラミック形成の危険を排除する。
【0066】
種々の実施形態は、より均一な拡散バリアコーティングを可能にし得、これは、粒子上の電気化学的に不活性で低接着性の天然酸化物の形成を防止又は低減し得る。
【0067】
グラフェンは既知の2D炭素構造である。しかし、グラフェンは選択フィルムとして適した溶液ではない。六方晶環の数と環の総数の割合(六方晶、七方晶、八方晶、五方晶の環などを含む)は結晶化度(又は非晶質性)Cの尺度である。非六方晶は4-、5-、7-、8-、9-員環などの形態である。完全なグラフェンは、純粋な六方晶網目構造を有し、ここで、結晶化度(C)は1に等しい。2D非晶質フィルムは、80%(C≦80%)以下であるが、50%(C≧50%)以上である結晶化度を有してもよく、ここで、非六方晶は、六方晶マトリクス内に分布する。グラフェン用の各六方晶リング内の細孔径は約1.4Åであり、これは電荷担体の直径よりもはるかに小さく、内部活性物質粒子へのイオン拡散を制限し、その結果、電池容量が低くなる。対照的に、種々の実施形態は、より大きな孔直径を有する7又は8員環を有してもよく、これは、内部粒子への効率的なイオン拡散を可能にして、高い容量を維持する。
【0068】
グラフェンは、層均一性及び高sp2割合を有するバッテリ電極材料上で合成することができない。グラフェンの合成には高温が必要である。さらに、グラフェンは、粒界及び粒界三重接合として知られる固有のナノスケールの線欠陥を有し、これは、シェル内のグラフェンベースのシェル被覆の著しい脆性挙動をもたらす。グラフェンベースのシェルコーティングは、内部粒子の厳しい体積膨張に耐えることができない場合がある。対照的に、2D非晶質フィルムに関する種々の実施形態は、弾性であってもよく、電極活物質を含む電極コアの表面に強く結合されてもよい。電極活物質を含む電極コアの表面上の被覆としては、種々の実施形態が適切であり得る。優れた機械的性質は、2D非晶質フィルム中に存在する粒界の欠如に起因する可能性がある。
【0069】
~10-6Ω-cmの電気抵抗値を有するグラフェンとは異なり、2D非晶質フィルムの抵抗率は、六方晶対非六方晶の割合で調整可能であり得、102~1010Ω-cmの範囲を有し得る。原子的に薄い2D非晶質フィルムは、電子輸送を遮断することによって、電解質をさらなる還元から保護することができる。
【0070】
同様に、酸化アルミニウム(Al2O3)被覆のような金属酸化物被覆も電荷キャリア選択フィルムとして適さない場合がある。原子層堆積(ALD)は、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)などの無機金属酸化物の被覆をシリコン(Si)粒子の表面上に堆積させるために使用され、アノード及びカソード材料の直接電解質接触を防止し、それによってSEI層を安定化し、電極-電解質界面副反応を制限する。活電極材料上の金属酸化物被覆は1500mAh/gまでの初期容量値を示し、中程度の量のイオン拡散を示唆した。しかしながら、これらの金属酸化物は、内部電極粒子の体積膨張に対する耐久性が制限された脆性材料であり、従って、内部活物質粒子の体積膨張時の亀裂に抵抗することができず、その結果、150サイクル以内に初期値の60%未満に急速な容量損失をもたらす。対照的に、種々の実施形態による2D非晶質フィルムの弾性的性質は、体積膨張に適応し得る。金属酸化物コーティングはまた、ALD成長メカニズムの性質のために均一性に欠ける可能性があり、活物質粒子の部分的な被覆率のみをもたらす。たとえこれが達成されたとしても、そのような金属酸化物は、低いイオン伝導性を受け、物質の容量及び電池のエネルギー密度を制限する。
【0071】
厚い酸炭化ケイ素(SiOC)シェルは、ケイ素活物質ベースの電池のための選択フィルムとして使用される。前駆体及び架橋剤は、400℃未満の温度で架橋され、続いて架橋ポリマーを高温熱分解して、活物質粒子上にSiOCコーティング(~10nm厚)を形成する。しかしながら、この合成は、バッチ-バッチプロセス及び電気化学的に不活性な天然酸化物の形成を伴う複数の工程を含む。さらに、得られた厚いSiOC被覆は、sp2対sp3比率が高く、脆い性質を有し、この材料は、粉砕のために、電池における被覆として不適当である。このSiOCシェルがLiイオン透過に働いても、このSiOCシェルの弾力性の欠如は、微粉化に伴う構造破壊及び急速な容量損失をもたらす可能性がある。対照的に、種々の実施形態は、高いsp2対sp3割合を有する層状非晶質シリコンオキシカーバイド(SiOC)フィルムなどの単層非晶質フィルムに関することができる。sp2とsp3の比率が大きいと、弾力性が優れたフィルム構造になる場合がある。
【0072】
既存のバッテリ技術の比エネルギー密度は、100Wh/kgから265Wh/kgの範囲となる可能性がある。しかしながら、この範囲は、電動航空機、電気トラック、及び通常少なくとも320Wh/kgのエネルギー密度を必要とする高性能の民生用電子機器を含む広い範囲の技術進歩のエネルギー密度要件をはるかに下回っている。電池メーカーは、既存技術の現在のエネルギー密度が広い範囲のデバイスに電力を供給するのに十分でないため、既存のグラファイトベース技術をシリコン(Si)のような高容量活物質に置き換えようとしている。従来、200~400Wh/lの範囲の体積エネルギー密度が低いため、装置の総重量は高くなっている。シリコンは、400Wh/kgまでのエネルギー密度を供給できる次世代電池を可能にして、電気モビリティ技術と高性能消費者デバイスを作動可能にするために、重要であるかもしれない。シリコンベースの電極に直面する重大な課題は、粉砕、厚い不安定なSEI層、電極-電解質界面側反応による急速な容量減衰及びバッテリセル故障を含む。このような重要な問題は、この技術を実施するために解決されていない。種々の実施形態は、層状構造2D非晶質複合フィルムを使用することによって、貧弱なイオン選択性、電極-電解質副反応、不安定なSEI成長、及びアノード及びカソード材料、特に高容量活物質の構造完全性の技術的問題に対処又は解決し得る。様々な実施形態は、高度な技術に電力を供給するために、600~950Wh/lの範囲の高エネルギー密度を有する次世代電池の出現を可能にし得る。
【0073】
単層非晶質炭素フィルム及び層状非晶質シリコンオキシカーバイド(SiOC)フィルムを形成する方法を本明細書に記載する。しかしながら、これらの方法はまた、任意の他の適切な単層非晶質フィルムを形成するように適合され得る。
【0074】
種々の実施形態は、材料にパルス電流を流すことによって、前駆体を高速及び低温で薄い単層非晶質カーボン(MAC)又は層状非晶質(SiOC)構造に変換するために、放電プラズマ焼結(SPS)を使用してもよい。懸濁液を含む炭素質前駆体は、まず、活物質粒子上に被覆し、乾燥させることができる。SPSの間、電流パルスは、前駆体被覆粒子を通って流れ、それによって放電プラズマを生成し、前駆体被覆活物質粒子に効率的な方法で直接適用されるジュール加熱を提供することができる。粒子間の電流スパークによって生成された放電プラズマは、前駆体を単層非晶質フィルムに変換する。
【0075】
二次元層状非晶質シリコンオキシカーバイド(SiOC)フィルムを形成するために、シラン系前駆体(例えば、トリメトキシメチルシラン(TMMS)、ポリジメチルシロキサン、フェニルトリエトキシシラン、ポリシロキサン、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン)を使用してもよい。トリメトキシメチルシラン(TMMS)は、1mLのトリメトキシメチルシラン前駆体を溶媒中の活物質粒子の懸濁液中に添加することを例として記載されている。続いて、得られた懸濁液を2時間まで超音波処理する。次いで、溶媒中のTMMS前駆体被覆活物質粒子の分散体を、スプレーガンを使用して霧化することができる。噴霧された液滴は、集電装置(例えば、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)を含む)上に被覆を形成してもよい。放電プラズマ焼結(SPS)は、前駆体をSiOCに変換するために使用され得る。不活性環境下で1100℃までの温度で90分までSPSに付されたトリメトキシメチルシラン前駆体は、均一な単層非晶質SiOCフィルムを形成し得る。SPSプロセスの間、前駆体被覆活物質粒子を通過する電流パルスは、放電プラズマを生成し、前駆体被覆活物質粒子に直接適用されるジュール熱を生成し得る。このプロセスは、直流パルスが印加される一軸圧力下での前駆体被覆活物質粒子の処理に基づく。他の熱分解メカニズムとは異なり、構造体を流れる高電流は、試料への高電流のパーコレーション効果及びSPS中の界面を横切るエレクトロマイグレーションを生じさせる可能性がある。直接ジュール加熱メカニズムは、前駆体に直接十分なエネルギーを提供し得る。この局所的に分布したエネルギーは、熱分解に必要な温度が2時間以上にわたって900℃を超える他の標準的な熱アプローチと比較して、非常に短い時間(すなわち、30分未満)にわたって400℃以下というはるかに低い温度で、活物質粒子上に層状2D非晶質SiOCコーティングの面内結合形成を可能にし得る。不活性環境における有機ケイ素ポリマー(例えば、シランベースの前駆体)のSiOCへの変換は、エレクトロマイグレーションによって可能にされるフリーラジカル反応機構を介して進行し得、これは、他の標準的な熱支援形成とは異なる構造形成機構である。SPS法では、ジュール加熱を伴う高電流がSi―H,C―H,Si―C,Si―C-CH3結合を破壊し、活物質粒子上にSiOC被覆を形成する。他の熱プロセスとは異なり、高電流流を伴うジュール熱発生は、前駆体がそれ自体と反応することができないために、自己制限成長を可能にし得る。
SPSによるこの自己制限成長機構は、層状2D非晶質SiOCフィルムを生じる可能性がある。
【0076】
さらに、標準的な熱アプローチは、非晶質SiOCに変換するための前駆体の重合のために、架橋剤又は触媒のいずれかの使用を必要とする。このような架橋剤の必要性は、前駆体の層状2D非晶質SiOCへの変換を直接可能にするジュール加熱のために、SPSでバイパスされる。
【0077】
単層非晶質炭素(MAC)フィルムを形成するために、炭素質前駆体を使用することができる。スクロースの使用は、炭素質前駆体の一例として使用され得る。活性物質粒子は、超音波処理を用いて溶媒(例えば、エタノール)中に分散される。前駆体を分散液に添加した後、混合物をさらに1時間超音波処理する。次いで、SPSを使用して、前駆体を炭化して、700℃より高い温度を少なくとも2時間必要とする標準的な熱プロセスと比較して、400℃以下の温度で30分未満、活性電極粒子上にMAC被覆を形成する。他の標準的な熱的アプローチとは異なり、SPSは、前駆体被覆活性電極材料を通る高直流の流れを可能にし、粒子上にジュール加熱を発生し得る。この特徴は、それ自体と反応する前駆体の制限のために、自己制限成長を可能にし得る。このメカニズムは、触媒又は架橋剤(例えば、ケイ素(Si)、スズ(Sn)、リン酸鉄リチウム(LiFePO4))を必要とせずに、活性電極粒子上に単層非晶質炭素(MAC)フィルム形成を生じ得る。
【0078】
プラズマ合成は、レーザによって放射される赤外線が化学前駆体の流れによって吸収され、その熱分解温度をもたらし、続いて衝突支援プロセスによって活物質粒子上に均一な単層成長をもたらす、レーザ駆動化学蒸気熱分解温度に基づく。非晶質カーボンの非常に薄い層は、高周波(rf)プラズマを含む非熱的C2H2を使用して粒子上にコーティングされてもよい。rf発電は、50~60Wの範囲の間に設定されて、単層非晶質炭素フィルムを活物質粒子上に形成することができる。炭化水素ラジカルと結晶性粒子との反応の結果として、非晶質炭素と内部活物質粒子との間の界面で電気化学的に不活性な金属-セラミック形成が形成され得る。
【0079】
水熱プロセスの場合、一般に炭素質粒子を使用することができる。グルコースは、1つの例として本明細書に記載される。活物質粒子及び前駆体の懸濁液は、オートクレーブに移してもよい。単層非晶質2D材料は、熱水環境での凝集及び成長による係留を使用することによって、活性電極材料上に組み立てられ得る。このプロセスの間、前駆体は、最初に、懸濁溶液から活性電極材料の表面上に物理吸着され得る。次いで、加熱工程を適用して、この前駆体を粒子の表面に化学的に付着させることができる。得られた粉末溶液をリンスして、表面から任意の既存の多層を除去することができる。加熱工程の間、40℃~70℃の温度は、完全な溶媒蒸発及び化学吸着が、粒子上に自己組織化層状非晶質2D材料を形成するのに十分であり得る。層状非晶質2D材料は、SPSを使用することによって、面内で結合されて、均一で連続的なフィルムを形成することができる。
【0080】
図5は、(左)様々な実施形態による、六方晶及び非六方晶を含む単層非晶質フィルムの高分解能透過型電子顕微鏡(TEM)画像、及び(右)明確な回折パターンを有さない拡散環構造を示す左側画像の高速フーリエ変換(FFT)を示し、様々な実施形態によるフィルムの非晶質性を示す。左側の画像は、構造が、4、5、6、7、8員環を有する六方晶及び非六方晶を含み、このことは、フィルムが、電荷キャリアイオンの直径よりも大きい調整可能な細孔サイズを有することによって、優先的イオン拡散フィルムとして作用し得ることを示し、界面及び表面におけるさらなるSEIの増殖を低減又は防止するために、電解質分子及びガスの拡散を同時に遮断し得ることを示す。6員を超える環の濃度基づいて、単層非晶質フィルムのイオン拡散は、既存の2D物質よりも良好であり得る。環を通るイオン拡散のためのエネルギー必要量は、官能化によって減少され得る。
【0081】
図6は、様々な実施形態に従う層状非晶質炭化ケイ素(SiOC)フィルムの定電流充放電プロファイルを示す、容量(単位グラムあたりのミリアンペア時)の機能としての電圧電位(ボルト又はV)のプロットである。電圧電位は、リチウム/リチウムイオン(Li/Li
+)基準電極を基準として測定される。電圧プロファイルは、単層非晶質フィルム(MAF)被覆活物質の高い可逆容量挙動を明らかにし、層状非晶質SiOCを通した電極材料へのLiイオン拡散と、塩のような他の電解質生成物への不透過性による不安定で厚いSEI成長の著しい抑制を強く示唆する。
【0082】
図7は、様々な実施形態による0.01V~1.5Vの電位範囲にわたる、経時的な1A/gの電流密度における、様々な実施形態による、高分子由来の厚い非晶質材料被覆活物質粒子ならびに2層の2次元(2D)非晶質材料粒子の容量の変化量を示す、サイクル数の関数としての正規化容量(パーセント又は%)のプロットである。厚い2D非晶質材料で被覆した活物質粒子は、粉砕と不安定なSEI層形成により80サイクル以下でその初期値の70%まで急速な容量減衰を示す。比較のために、層状2D非晶質材料被覆粒子は、25%までの改善を示し得、選択的イオン透過性(すなわち、この例において、特定のイオン(Liイオン)の内部活物質粒子への拡散を可能にするが、他の電解質生成物のパーコレーションを遮断する)、及び活物質粒子の構造的完全性による安定な薄いSEI層の形成を示唆する。
【0083】
選択的障壁特性は、既存の不安定で時間のかかるSEI成長機構を置き換えるために、塩などの他の電解質副生成物に対する選択的イオン透過性及び不透過性にとって重要であり得る。気泡試験は、MACを評価するために実施される。
図8は、(左)様々な実施形態による単層非晶質炭素(MAC)フィルムによっていくつかの孔が覆われ、気体が導入され、単層非晶質炭素(MAC)フィルムがそれぞれ膨らみを形成する気泡試験の光学画像、及び(右)高圧気体チャンバから取り出された後の様々な実施形態による単層フィルムの膨らみを示す原子間力顕微鏡(AFM)画像を示す。バブルは加圧ガスをトラッピングすることによって形成される。これは、原子がMACを通過できないことを示唆するが、ただし、これに限定されるものではないが、リチウムイオン(Li
+)、ナトリウムイオン(Na
+)、カリウムイオン(K
+)がMAFを通過できることを含む、電荷キャリアイオンのみを通過できることを示唆する。膨らみは24時間後でも残る可能性があり、ガス原子に対するバリア材料としての有効性を示している。MAFは、電極への優先的なイオンを可能にするように高度に操作される特性を有し得るが、同時に、電極と電解質との反応性を制限する。これは、電解質分解、電極-電解質副反応、内部粒子/層状原子的に薄い非晶質フィルム界面でのさらなるSEI成長、及び活物質粒子の表面上又は界面での任意の電解質塩組成を回避又は低減するために重要であり得、高容量及び安定性のために選択イオンの拡散を可能にするだけである。
【0084】
また、ナノ機械的性質は、電池電極にとって非常に重要であろう。MACは、結晶粒界の欠如を伴うその非晶質原子構造に起因する例外的に高い破壊靭性(xyz)を示す可能性があり、破壊中に亀裂停止現象をもたらす。MACはまた、有意な可塑性を有し得る。塑性変形下では、炭素結合は障壁フィルムを破壊せずに再配列し、故障を防ぐ可能性がある。MACフィルムに孔が形成されても、破壊が伝播しないことがある。これは、イオンの挿入及び抽出中の内部活物質粒子の大きな体積膨張に対応するために、層状原子的に薄い非晶質フィルムにとって重要であり得る。これは、繰返しサイクルプロセス中の電池電極材料の表面上のMAFの完全な被覆を保証することができる。対照的に、結晶構造の対応物(すなわちグラフェン)については、亀裂が好ましい結晶方向又は結晶粒界に沿って伝播し、物質の破壊靭性を低下させる可能性がある。
図9(左)インデンテーション後のグラフェンの結晶粒界に沿った亀裂伝播を示す光学画像、及び(右)インデンテーション後の亀裂伝播の欠如を示す様々な実施形態による単層非晶質カーボン(MAC)フィルムの光学画像を示す。同様に、他の従来のコーティング材料もまた、機械的に剛性及び脆性であり得、これらのコーティングは、塑性的に変形するよりもむしろ破壊することを示唆する。
【0085】
また、MACは破断することなく5%より大きい変形の高い塑性を示す可能性があり、これは高い破壊靭性を得るためにも重要である。従来のフィルムでは顕著な可塑性は観察されていなかった。
図10Aは、フィルム上に凹みが形成された後の種々の実施形態による懸濁単層非晶質炭素(MAC)フィルムの原子間力顕微鏡(AFM)画像;及び(下)AFMが単層非晶質炭素(MAC)フィルムから引き出された後に凹みピークを示す対応する高さプロファイルを示す距離(ナノメートル又はnm)の機能としての高さ(ナノメートル又はnm)のグラフを示す。
図10Bは、様々な実施形態による懸濁単層非晶質炭素(MAC)フィルムの別の原子間力顕微鏡(AFM)画像を、フィルム(第1のくぼみの右側)上に第2のくぼみを作製した後に示し、(下)高さ(ナノメートル又はnm)のグラフを、AFMが単層非晶質炭素(MAC)フィルムから引き出された後に第2のくぼみピークを示す対応する高さプロファイルを示す距離(ナノメートル又はnm)の関数として示す。
図10Cは、2つのくぼみを有する様々な実施形態による、懸濁単層非晶質カーボン(MAC)フィルムの3次元原子間力顕微鏡(AFM)画像を示す。
【0086】
高い破壊靭性は、コア‐シェル構造における高いサイクル応力に耐える鍵となる可能性がある。高い可塑性、層状薄い非晶質構造、及びイオン選択性を含む重要な特徴はまた、厚く、非常に脆く、不均一である天然に成長したSEI層と比較して明確な利点を有する、安定な人工SEI層として単層非晶質フィルムを認識するために重要であり得る。
【0087】
結晶化度(C)値に依存して、単層非晶質炭素(MAC)は、0.01Ω-cm~1000Ω-cmの範囲から選択される電気抵抗率値を有し得る。単層非晶質フィルムは、10
2Ω-cm~10
10Ω-cmの範囲から選択される電気抵抗率を有することができる。
図11A様々な実施形態に従う単層非晶質フィルムの電流-電圧(IV)曲線を示す電圧(V)の機能としての電流(アンペア又はA)のプロットである。
図11Bは、種々の実施形態による、特定の結晶化度(C)値の単層非晶質フィルムについて測定された抵抗率値のヒストグラムを示す、抵抗率(オーム-センチメートル又はΩ-cm)の機能としてのカウント(すなわち、分布)のプロットである。
【0088】
これに対して、活物質微粒子の塗料としても使用されているグラフェンは、抵抗率が~10-6Ω-cmである。原子的に薄い2D非晶質フィルムのより高い電気抵抗率は、活物質粒子の表面へのトンネル通過から電子を阻止し、それにより、さらなる電解質の還元を妨げる可能性がある。これは、はるかに薄く安定なSEI層形成を確実にし得る。MAFのイオン伝導性及び高い電気抵抗性の性質は、電極活物質、特に高電位の正極活物質による分解から電解質(固体及び液体の両方)を保護するために最も重要であり得る。種々の実施形態は、バッテリの容量、高率能力、サイクル寿命の大幅な改善をもたらすことができ、安全に関連するリスクを緩和することができる。
【0089】
図12は、種々の実施形態による単層非晶質フィルムならびにナノ結晶グラフェンのラマンスペクトルを示す、ラマンシフト(センチメートル又はcm
-1で)の機能としての強度(任意の手段で)のプロットである。
図12に示されるように、2D非晶質フィルムのラマン分光法は、2Dピーク(~2700cm
-1)を示さず、長範囲順の非存在を示唆するが、代わりに、広いGピーク(~1600cm
-1)及びDピーク(~1350cm
-1)を示した。D及びGピークの広がりは、通常、ナノ結晶グラフェンから非晶質フィルムへの遷移を示す。ナノ結晶グラフェンは、炭素(C)sp
3ピーク(Dピーク)の強い無秩序様式を示し、一方、2D非晶質フィルムはDピークを抑制した。既に報告したように、sp
3ピークの優勢は脆弱な特徴をもたらし、潜在的に活物質粒子の局所的な微小亀裂破壊をもたらし得る。
【0090】
図13は、種々の実施形態による、sp
3/sp
2比率が20%である1つの原子層厚(6オングストローム)非晶質フィルムのX線光電子分光法(XPS)スペクトルを示す、結合エネルギー(電子ボルト又はeVで)の機能としての強度(任意の手段で)のプロットである。薄い層状構造は成長表面に強く付着する可能性があり、フィルムの弾性はイオンの挿入及び抽出中のより良いサイクル性のために電池電極材料の体積膨張に効果的に適応できる。
【0091】
容易に剥離できる表面上のグラフェン(10~100J/m2からの接着力)とは異なり、様々な実施形態は、200J/m2を超える接着力で基板に非常に良好に接着し得る。2D非晶質フィルムは、内部活物質粒子の構造的完全性を維持するために、繰り返しイオン挿入及び抽出の間、常に、活物質の表面上に完全な被覆を提供し得る。
【0092】
図14Aは、様々な実施形態に従う活物質上の層状非晶質シリコンオキシカーバイド(SiOC)フィルムのX線回折(XRD)スペクトルを示す2θ(単位度)の機能としての強度(任意の手段)のプロットであり、一方、挿入図は、層状非晶質シリコンオキシカーバイド(SiOC)フィルムの非晶質特性を示す。活物質はシリコン粒子であり、一例として用いられる。X線回折(XRD)スペクトルは、結晶構造のSiと組み合わされた層状SiOCフィルムの非晶質特性を示し、
図14Bは、種々の実施形態による、層状非晶質シリコンオキシカーバイド(SiOC)フィルム被覆活物質粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。SiOCの層状非晶質フィルムのSEM画像は、芯と全体殻の明瞭なコントラストを強調し、連続層状非晶質フィルムの存在を強く示唆した。連続層状非晶質フィルムは、電解質接触から内部粒子の表面全体を保護し、それによって、電解質のフッ化リチウム(LiF)又は水酸化ナトリウム(NaOH)などの化学物質への分解を防止又は低減することができる。層状非晶質SiOCの存在は、MAFの一例として、シェル上に構造的完全性を維持し得、電解質と接触する人工SEI層として作用し得、イオンの拡散を選択的に可能にし、高容量及び高耐久性電極構造をもたらし得る。活物質粒子は、イオンの挿入及び抽出の間に425%までの任意の値まで膨張し得る。膨張前(V1)と膨張後(V2)の音量変化は、次のように計算できる:
【0093】
【0094】
V2/V1は、4.25まで可能である。例えば、シリコン(Si)は、リチウム化の際に400%の体積膨張を受け、スズ(Sn)は、一方、ソディエーションの際に423%まで、リチウム化の際に360%まで膨張し得る。したがって、1.6程度とすればよい。したがって、歪誘起粉砕及び破損を防止するために、選択的イオン透過性を有する均一かつ層状の非晶質フィルムの提供が重要であり得る。様々な実施形態は、その弾性のために、破壊なしにこの歪に耐えることができるが、以前の報告では、厚い非晶質被覆では、密着性及び均一性が十分でないところに微小亀裂が形成され、これらの亀裂が内側粒子表面に伝播する可能性があることが示された。
【0095】
図15Aは、(上)シリコン(Si)粒子上の層状非晶質シリコンオキシカーバイド(SiOC)フィルムのX線光電子分光法(XPS)調査スペクトルを示す結合エネルギー(電子ボルト又はeV)の機能としての相対強度(任意の手段又はa.u.)のプロット;及び(下)非晶質のシリコン(Si)粒子のX線光電子分光法(XPS)調査スペクトルを示す結合エネルギー(電子ボルト又はeV)の機能としての相対強度(任意の手段又はa.u.)のプロットを示す。活物質粒子の一例としての原始Si、及び層状非晶質SiOCが一例として使用されるMAFの調査走査XPSは、いくつかの明確なピークを示す。283.8eVのC 1s,533.5eVのO 1s,100.5eVのSi 2pの増加したピーク強度から、Si粒子の表面に2D非晶質SiOC被覆が存在することが示唆された。Si 2p領域の高分解能XPSをデコンボリューションして、活物質粒子上に存在する層状非晶質SiOCフィルムを検証し、そのSiをここで例として用いた。101.8eVのピーク位置は層状SiOCに対応する。
【0096】
図15Bシリコン(Si)2p領域における種々の実施形態による層状非晶質シリコンオキシカーバイド(SiOC)フィルムの高分解能デコンボリューションX線光電子分光法(XPS)スペクトルを示す結合エネルギー(電子ボルト又はeV単位)の機能としての強度(任意の手段又はa.u.)のプロットである。
【0097】
Raman、XPS、及びXRDの組み合わせは、MAFの均一な成長が、アノード及び負極の両方について任意の活物質粒子の表面上で可能であり得ることを強く示唆する。
図16Aは、様々な実施形態による、活物質粒子を取り囲む様々な実施形態による、単層非晶質フィルムを示す概略図である。
図16Bは、(上)従来のコーティングでコーティングされたシリコン活物質粒子;及び(下)リチウム化、脱リチウム化及びサイクル下の様々な実施形態による単層非晶質フィルムでコーティングされたシリコン活物質粒子を示す概略図である。
図16Bは、粉砕、不安定なSEI層、及び厚い被覆を伴う電池故障を強調する。単層非晶質フィルムを有する活物質粒子は、安定で薄いSEI層を示し、これは、連続サイクル中の活物質粒子の完全性に利益を与える。
【0098】
図16Bは、MAFの選択的イオン透過性、層状非晶質フィルム構造、機械的及び化学的安定性、直接電解質接触からの活物質粒子の完全な被覆率、及び安定な薄いSEI層形成から利益を受ける、サイクル中の活性電極材料の構造的完全性を単層非晶質フィルム(MAF)がどのように維持するかを示す。
【0099】
シリコン活物質粒子は、電極材料粒子の一例として強調されている。
【0100】
5nm以上の厚さの前駆体由来SiOC被覆は、高いYoung率と弾性の欠如に起因する歪誘起割れと微粉化を受けることが報告された。
図17は、押し込み深さ(ナノメートル又はnm)の機能としての(マイクロニュートン又はμNにおける)押し込み荷重のプロットであり、活物質粒子上の厚い非晶質シリコンオキシカーバイド(SiOC)フィルムコーティングの荷重-深さ曲線を示す。厚い非晶質シリコンオキシカーバイド(SiOC)フィルムコーティングは、~2.6GPaの比較的高いヤング率を有する。単層非晶質フィルムの場合、ヤング率は、0.5GPa~1GPaの範囲ではるかに低くてもよい。
【0101】
先に述べたように、sp3対sp2比率が20%~0%の範囲の間である層状の原子的に薄い2D非晶質材料を使用して、活物質粒子を被覆してもよい。0.5GPaから1GPaまでのヤング率によって示される弾性の範囲は、内部活性物質粒子の400%までの体積膨張に適応するために臨界的であり得る。これは、電気化学的サイクルの間に400%までの体積膨張に対応するために、シェルの適切な延伸性を確実にし得る。
【0102】
電気化学インピーダンス分光法(EIS)は、そのWarburg素子からの電荷移動抵抗とLiイオン拡散定数を評価する有用なツールである。EISは、
図18に示すように、サイクリング前後の厚い(~10nm) SiOC被覆上で行った。
図18は、活物質粒子上の厚い非晶質被覆の電気化学インピーダンス分光法(EIS)を示す、インピーダンス(オーム又はΩ)の実部の機能としての、インピーダンス(オーム又はΩ)の虚部のプロットである。本来の合金化活物質粒子の電荷移動抵抗は200Ω~600Ωの範囲である。厚いSiOC被覆は、イオン拡散が厚い被覆と不安定なSEI層によって制限されるため、電荷移動抵抗をあるレベルのみに下げる可能性がある。対照的に、種々の実施形態は、サイクル後に、10~20Ωの範囲まで電荷移動抵抗を低減し得る。これは、より速いイオン拡散に有益であり、得られた電極材料に対して高いC速度能力を可能にし得る。
【0103】
図19Aは、様々な実施形態による層状非晶質シリコンオキシカーバイド(SiOC)被覆電極材料のクーロン効率を示すサイクル数の関数としての効率(パーセント又は%)のプロットである。層状非晶質シリコンオキシカーバイド(SiOC)被覆電極材料は、少なくとも84%の初期クーロン効率を示し得る。
図19Bは、様々な実施形態による層状非晶質フィルム被覆電極材料のサイクル安定性を示すサイクル数の関数としての正規化容量(パーセント又は%)のプロットである。層状非晶質フィルムコーティングされた電極材料は、50サイクルに対して0.35Cで85%以上の周期安定性を示す可能性がある。
【0104】
以下の表は、単層非晶質フィルム(MAF)の特徴及びそれらの関連する利点/利点を例示する:
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
SEIは、電力能力、安全性、リチウム堆積物の形態、電池電極の比容量、及び電池のサイクル寿命に著しい影響を及ぼす、電池電極の主要な構造構成要素である。MAFは、SEI層を安定化するために、高容量活物質上の被覆として必要とされ得る。MAFはまた、原子選択性、Li+,Na+,K+などのイオンの選択的拡散、層状原子薄構造、塩などの他の電解質材に対する不浸透性、高強度、高破壊靭性及び可塑性、充電及び放電中の膨張及び収縮応力に対する例外的に高い耐性、動作温度及び電位の範囲にわたる安定性、ならびに電解質中の不溶性を含む、その独特の特性のために、電池性能を有意に改善し得る。MAFは、高い電気抵抗率とイオン伝導性の両方の特性を有し、従って、MAFは、高い電圧で活物質による分解から電解質(液体と固体の両方)を著しく保護することを可能にし、これにより、電池は、サイクル寿命を最大3倍まで高めて、理論値に近い容量を実用的に達成することが可能になる。既存の溶液は、これらの臨界材料特性を有さず、したがって、活性材料の初期比容量は、依然としてそれらの理論値を十分に下回り、次いで、リチウム化時に活性物質粒子に膨潤からの制約を提供し、粉砕及び切断された粒子をもたらすSEIの厚い層のために、100サイクル~150サイクルの範囲内に、初期値の50%までの有意な容量損失をもたらし得る。既存の溶液と比較して、単層非晶質フィルムを含む種々の実施形態は、それらの初期比容量の75%~90%を維持することによって、600サイクルまでの電池サイクル安定性を改善し得る。種々の実施形態は、1800mAh/g~2500mAh/gの範囲の非常に高い比容量を、高いサイクル安定性で達成することができ、これは、既存の溶液の比容量のほぼ2.5倍である。電荷移動抵抗が200Ωより高い既存の溶液と比較して、単原子層非晶質フィルムを含む電荷移動抵抗は、安定で薄いSEI層による観測可能なインピーダンス増大なしに、10Ωから20Ωの範囲の間の値まで著しく減少し得る。電荷移動抵抗の顕著な減少は、バッテリのより高い電力密度を送達するために、10A/gまでの電流密度での高いサイクル速度能力に利益をもたらす可能性がある。
【0110】
実施形態は、以下を含むことができるが、これらに限定されない:
(A)電極活物質を含む電極コア;及び1つ以上の単層非晶質フィルムを含む電極であって、前記1つ以上の単層非晶質フィルムの各々が、前記電極コアを取り囲む連続層である、電極。
【0111】
(B)前記電極活物質がアノード活物質であることを特徴とする前記(A)に記載の電極。
【0112】
(C)前記アノード活物質が、ケイ素、スズ、アルミニウム、及びゲルマニウムからなる群から選択されるいずれか1つの材料であることを特徴とする、前記(B)に記載の電極。
【0113】
(D)前記電極活物質が正極活物質であることを特徴とする前記(A)に記載の電極。
【0114】
(E)正極活物質が、リチウムコバルト酸化物(LiCoO2)、リチウムマンガン酸化物(LiMn2O4)、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(LiNiMnCoO2)、リチウム鉄リン酸塩(LiFePO4)、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(LiNiCoAlO2)、及びリチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(LiNiCoMnO2)からなる群から選択されるいずれか1つの材料である、前記(D)に記載の電極。
【0115】
(F)前記1種以上の単層非晶質フィルム中に存在する六方晶系炭素環及び非六方晶系炭素環の総数に対する六方晶系炭素環の数の割合が0.8以下であることを特徴とする前記(A)~(E)のいずれかに記載の電極。
【0116】
(G)前記六方晶炭素環の平均直径は、0.76オングストローム~2.3オングストロームの範囲から選択される任意の値であり、前記非六方晶炭素環の平均直径は、0.76オングストローム~2.3オングストロームの範囲から選択される任意の値である、前記(F)に記載の電極。
【0117】
(H)前記1種以上の単層非晶質フィルムの各々が面内結合を含むことを特徴とする、前記(A)~(G)のいずれかに記載の電極。
【0118】
(I)前記1つ以上の単層非晶質フィルムは、0.3nm~3nmの範囲から選択される値の厚さを有することを特徴とする、前記(A)~(H)のいずれか1項に記載の電極。
【0119】
(J)前記1つ以上の単層非晶質フィルムは、10-2Ωcm~103Ωcmの範囲から選択される数値の電気抵抗率を有する、前記(A)~(I)のいずれか一項に記載の電極。
【0120】
(K)前記1つ以上の単層非晶質フィルムが、破壊することなく、1%~20%の範囲から選択されるパーセンテージ変形に耐えるように構成される、前記(A)~(J)のいずれか一項に記載の電極。
【0121】
(L)前記1以上の単層非晶質フィルムに存在するsp2及びsp3結合の総数に対するsp2結合の結合割合が0.8以上であることを特徴とする、前記(A)~(K)のいずれかに記載の電極。
【0122】
(M)前記1つ以上の単層非晶質フィルムは、50GPa~500GPaの範囲から選択される値のヤング率を有することを特徴とする、前記(A)~(L)のいずれか1項に記載の電極。
【0123】
(N)前記1種以上の単層非晶質フィルムの前記電極芯材の表面に対する密着力が200Jm-2以上であることを特徴とする前記(A)~(M)のいずれかに値の電極。
【0124】
(O)前記1つ以上の単層非晶質フィルムが、単層非晶質カーボン(MAC)フィルム、層状非晶質シリコンオキシカーバイド(SiOC)フィルム、又は層状非晶質シリコンカーボン窒化物(SiCN)フィルムである、前記(A)~(N)のいずれか1項に記載の電極。
【0125】
(P)前記1つ又は複数の単層非晶質フィルムが、1つ又は複数の単層非晶質カーボン(MAC)フィルム及び1つ又は複数の層状非晶質シリコンオキシカーバイド(SiOC)フィルムを含み、前記1つ又は複数の単層非晶質カーボン(MAC)フィルムが、前記1つ又は複数の層状非晶質シリコンオキシカーバイド(SiOC)フィルムと交互積層配置を形成する、前記(A)~(N)のいずれか1つに記載の電極。
【0126】
(Q)前記1種以上の単層非晶質フィルムは、複数の単層非晶質フィルムを含むことを特徴とする前記(A)~(P)のいずれかに記載の電極。
【0127】
(R)前記複数の単層非晶質フィルムのうちの第1の単層非晶質フィルムの構造が、前記複数の単層非晶質フィルムのうちの第2の単層非晶質フィルムの構造と異なることを特徴とする前記(Q)に記載の電極。
【0128】
(S)前記複数の単層非晶質フィルムのうちの第1の単層非晶質フィルムの特性が、前記複数の単層非晶質フィルムのうちの第2の単層非晶質フィルムの特性と異なることを特徴とする前記(R)に記載の電極。
【0129】
(T)前記電極が、少なくとも84%の初期クーロン効率を示すように構成されている、前記(A)~(S)のいずれか一項に記載の電極。
【0130】
(U)前記電極が、0.35℃で50サイクルにわたって85%を超えるサイクル安定性を示すように構成されている、前記(A)~(T)のいずれか1つに記載の電極。
【0131】
(V)前記(A)~(U)のいずれか1つに記載の電極と、さらなる電極と、前記電極及び前記さらなる電極と接触する電解質とを含む、電気化学セル。
【0132】
(W)さらなる電極が、さらなる電極活物質を含むさらなる電極コアと、1つ以上のさらなる単層非晶質フィルムとを含み、1つ以上のさらなる単層非晶質フィルムの各々が、さらなる電極コアを囲む連続層である、前記(V)に記載の電気化学セル。
【0133】
(X)電極を形成する方法であって、電極活物質を含む電極コアを形成することと、1つ以上の単層非晶質フィルムを形成することとを含み、前記1つ以上の単層非晶質フィルムの各々が、前記電極コアを取り囲む連続層である、方法。
【0134】
(Y)電気化学セルを形成する方法であって、前記(A)~(U)のいずれか1つに記載の電極を形成することと、さらなる電極を提供することと、電極及びさらなる電極と接触する電解質を提供することとを含む、方法。
【0135】
以上、本発明を具体的な実施形態に基づいて詳細に説明したが、当業者であれば、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく、形態及び詳細に様々な変更を加えることができることを理解すべきである。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の均等の意味及び範囲内に入るすべての変更は、包含されることが意図される。
【国際調査報告】