(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-30
(54)【発明の名称】ポリエステル多層フィルムおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 7/023 20190101AFI20221122BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20221122BHJP
B29C 48/21 20190101ALI20221122BHJP
B29C 48/08 20190101ALI20221122BHJP
B29C 48/88 20190101ALI20221122BHJP
B29C 55/12 20060101ALI20221122BHJP
B29C 55/14 20060101ALI20221122BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
B32B7/023
B32B27/36
B29C48/21
B29C48/08
B29C48/88
B29C55/12
B29C55/14
G02B5/30
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022519485
(86)(22)【出願日】2020-09-25
(85)【翻訳文提出日】2022-03-28
(86)【国際出願番号】 KR2020013113
(87)【国際公開番号】W WO2021066418
(87)【国際公開日】2021-04-08
(31)【優先権主張番号】10-2019-0121164
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ヒョングク
(72)【発明者】
【氏名】キム,ソルキョン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ハンス
【テーマコード(参考)】
2H149
4F100
4F207
4F210
【Fターム(参考)】
2H149AA01
2H149AB02
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2H149FD47
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4F210QG18
4F210QL16
4F210QM15
4F210QW07
4F210QW12
(57)【要約】
本発明は、二軸延伸時におけるMD及びTDの延伸速度及び倍率を適切に調節することで、配向角を低くし、位相差の偏差を最小化させて偏光ムラを画期的に抑制し、同時に、優れた光学特性、光機能性および外観品質を有し、厚さ偏差を最小化させるとともに、生産性が向上して高速加工に適した走行性を有する、二軸延伸ポリエステル多層フィルム、およびその製造方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ポリエステル樹脂を含むコア層と、
前記コア層の両面に形成された第2ポリエステル樹脂および粘着防止剤を含む、少なくとも1つ以上のスキン層と、を含み、
機械方向(MD)と幅方向(TD)の延伸速度および延伸倍率に対する関係式である下記式1および式2で表される条件を満たす範囲内で、幅方向を基準として、マイクロ波方式の分子配向計でもって測定された配向角が式3を満たし、位相差測定器でもって590nmにて測定された面内の位相差の標準偏差(Re標準偏差)が式4を満たす、
ポリエステル多層フィルム。
[式1] 45,000%/min.≦MDs≦55,000%/min.
[式2] 4,500%/min.≦TDs≦5,500%/min.
[式3] 0°<|配向角|<12°
[式4] 0≦Re標準偏差≦100
(前記式1において、MDsは、下記式5によって計算される機械方向の延伸速度であり、
[式5] 平均MD延伸速度=(S
1st+S
2nd)/2
前記式5において、S
1stおよびS
2ndは、それぞれ独立して、第1~第3の延伸ロールを備えた装置を用いる2段延伸工程における下記式6および7で表される各延伸ロール間の区間別の延伸速度(%/min)であり、
[式6] S
1st=E
1/[L
1/{(R
2-R
1)/2}]
[式7] S
2nd=E
2/[L
2/{(R
3-R
2)/2}]、
前記式6および7において、
E
1およびE
2は、それぞれ、前記2段延伸工程の各区間での延伸倍率(%)であり、
R
1、R
2、およびR
3は、それぞれ独立して、個別延伸ロール(R/L)の回転速度(m/min)であり、
L
1は第1延伸ロールから第2延伸ロールまでの間の距離(m)であり、L
2は第2延伸ロールから第3延伸ロールまでの間の距離(m)であり、
前記式2において、TDsは、下記式8によって計算される幅方向の延伸速度であり、
[式8] TD延伸速度=E/(L/LSP)
前記式8において、Eは、第1~第3の延伸ロールを備えた2段延伸工程の後、テンター式延伸工程における複数の延伸ゾーンでの延伸倍率(%)であり、
Lは、複数の延伸ゾーンの総長さ(m)であり、
LSPは、テンター式延伸工程における線速度(Line speed)(m/min)である。)
【請求項2】
表面粗さ(Ra)が下記式9を満たす、請求項1に記載のポリエステル多層フィルム。
[式9] 15nm≦Ra≦25nm
【請求項3】
前記コア層がフィルム全体の70~90重量%であり、スキン層がフィルム全体の10~30重量%である、請求項1に記載のポリエステル多層フィルム。
【請求項4】
前記粘着防止剤は有機粒子、無機粒子またはこれらの混合物を含む、請求項1に記載のポリエステル多層フィルム。
【請求項5】
前記ポリエステル多層フィルムは19~75μmの厚さを有する、請求項1に記載のポリエステル多層フィルム。
【請求項6】
a)i)第1ポリエステル樹脂チップと、ii)第2ポリエステル樹脂チップおよび粘着防止剤を含む組成物を用いて、コア層および前記コア層の両面に少なくとも1層以上のスキン層が含まれた多層になるように、共押出しを行い、30℃以下に急冷して未延伸シートを製造する段階と、
b)前記未延伸シートを逐次に二軸延伸してフィルムを製造する段階と、
c)前記二軸延伸されたフィルムを熱固定する段階と、を含み、
前記逐次に二軸延伸してフィルムを製造する段階は、
前記未延伸シートを85~110℃にて機械方向に45,000~55,000%/min.の速度で2~5倍に1次縦延伸する段階と、
前記1次延伸されたシートを95~140℃にて幅方向に4,500~5,500%/min.の速度で2~5倍に2次横延伸する段階と、を含む
請求項1に記載のポリエステル多層フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記フィルムを熱固定する段階は、
前記2次延伸されたフィルムを、第1熱処理ゾーン~第5熱処理ゾーンを含む合計5個の熱処理ゾーンにて200~250℃で熱固定しながら、第4熱処理ゾーンから第5熱処理ゾーンまでのMD弛緩率とTD弛緩率の総弛緩率が1~5%になるように弛緩する段階を含む、請求項6に記載のポリエステル多層フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記i)第1ポリエステル樹脂チップと、ii)第2ポリエステル樹脂チップは、固有粘度が0.6~0.7dl/gである、請求項6に記載のポリエステル多層フィルムの製造方法。
【請求項9】
前記粘着防止剤の含有量はフィルム全体の内の200~2,000ppmで含むように添加する、請求項6に記載のポリエステル多層フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互引用]
本出願は2019年9月30日付韓国特許出願第10-2019-0121164号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明はポリエステル多層フィルムおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
光学用フィルムは、ディスプレイ用光学素材として使用されるフィルムである。これは、液晶表示装置のバックライトユニット(LCD BLU;Back Light Unit)またはタッチパネル(Touch Panel)などの各種光学ディスプレイの表面保護および工程Carrier用の光学素材として使用される。このような光学フィルムには、主としてポリエステルフィルムが使用されている。
【0004】
ここで、前記光学ディスプレイ用に使用されるポリエステルフィルムが偏光板製造工程に用いられる場合、偏光板の欠点検査の際、離型フィルムが貼り付けられた偏光板の配向主軸と、検査器の結晶軸とを垂直に配置した状態で検査を行うので、離型フィルムの基材であるポリエステルフィルムの配向角が低い場合にのみ、検査時に色相の歪曲を防止して検査感度を向上させることができる。
【0005】
従来の技術は、偏光ムラまたはニジ(虹)ムラを抑制させるために、1軸延伸または1軸延伸に近い2軸延伸により配向角を低くする方法を提案した。
【0006】
しかし、前記方法は、生産性に限界があり、偏光板の欠点検査の際に検査感度を低下させ得る色相の歪曲を完全に制御できないという問題がある。また、従来の使用されるポリエステルフィルム場合、フィルムの配向角を所望する水準まで低くすることができず、光学特性および光機能性においてすべて優れた効果を奏することができなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、光学ディスプレイ用に適したポリエステルフィルムを製造するために、配向角を低くし、これと同時に幅方向の位相差偏差を低減させて偏光ムラまたはニジ(虹)ムラを抑制し、低い厚さ偏差率および高い光透過度を示すポリエステル多層フィルムを提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、生産性に優れた偏光板用ポリエステルフィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態によれば、第1ポリエステル樹脂を含むコア層;および
前記コア層の両面に形成された第2ポリエステル樹脂および粘着防止剤を含む、少なくとも1つ以上のスキン層;を含み、
MD(mechanical direction; 縦方向)及びTD(transverse direction; 幅方向)の延伸速度および延伸倍率に対する関係式の、下記式1および式2で表される条件を満たす範囲内で、幅方向(TD)を基準として、マイクロ波方式の分子配向計で測定された配向角が式3を満たし、位相差測定器でもって590nmにて測定された面内位相差標準偏差(Re標準偏差)が式4を満たす、
ポリエステル多層フィルムを提供する:
【0010】
[式1]
45,000%/min.≦MDs≦55,000%/min.
【0011】
[式2]
4,500%/min.≦TDs≦5,500%/min.
【0012】
[式3]
0°<|配向角|<12°
【0013】
[式4]
0≦Re標準偏差≦100
(前記式1において、MDsは下記式5によって計算される機械方向(縦方向:MD, mechanical direction)の延伸速度であり、
【0014】
[式5]
平均MD延伸速度=(S1st+S2nd)/2
【0015】
前記式5において、S1stおよびS2ndは、それぞれ独立して、第1~第3の延伸ロールを備えた装置を用いる2段延伸工程での、下記式6および7で表される各延伸ロール間の区間別の延伸速度(%/min)であり、
【0016】
[式6]
S1st=E1/[L1/{(R2-R1)/2}]
【0017】
[式7]
S2nd=E2/[L2/{(R3-R2)/2}]、
【0018】
前記式6および7において、
E1およびE2は、それぞれ、前記2段延伸工程の各区間での延伸倍率(%)であり、
R1、R2、およびR3は、それぞれ独立して個別延伸ロール(R/L)の回転速度(m/min)であり、
L1は第1延伸ロールから第2延伸ロールまでの間の距離(m)であり、L2は第2延伸ロールから第3延伸ロールまでの間の距離(m)であり、
【0019】
前記式2において、TDsは、下記式8によって計算される幅方向の延伸速度であり、
【0020】
[式8]
TD延伸速度=E/(L/LSP)
【0021】
前記式8において、Eは、第1~第3の延伸ロールを備えた2段延伸工程の後、テンター式延伸工程における複数の延伸ゾーンでの延伸倍率(%)であり、
Lは、複数の延伸ゾーンの総長さ(m)であり、
LSPは、テンター式延伸工程における線速度(Line speed)(m/min)である。)
【0022】
また、本発明の他の実施形態によれば、
a)i)第1ポリエステル樹脂チップと、ii)第2ポリエステル樹脂チップおよび粘着防止剤(antiblocking agent)を含む組成物を用いて、コア層および前記コア層の両面に少なくとも1層以上のスキン層が含まれた多層になるように、共押出しを行い、30℃以下に急冷して未延伸シートを製造する段階;および
b)前記未延伸シートを逐次に二軸延伸してフィルムを製造する段階;および
c)前記二軸延伸されたフィルムを熱固定する段階;を含み、
前記逐次に二軸延伸してフィルムを製造する段階は、
前記未延伸シートを85~110℃で機械方向に、45,000~55,000%/min.の速度で2~5倍に1次縦延伸する段階;および
前記1次延伸されたシートを95~140℃で幅方向に、4,500~5,500%/min.の速度で2~5倍に2次横延伸する段階;を含む
前記ポリエステル多層フィルムの製造方法を提供する。
【0023】
以下、発明の実施形態によるポリエステルフィルムおよびその製造方法について詳細に説明する。
【0024】
それに先立ち、本明細書で明示的な言及がない限り、専門用語は、単に特定の実施例を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。
【0025】
本明細書で使用される単数形は文脈上明らかに逆の意味を示さない限り複数形も含む。
【0026】
本明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素、成分および/または群の存在や付加を除外させるものではない。
【0027】
そして、本明細書で「第1」および「第2」のように序数を含む用語は、一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的で使用され、前記序数によって限定されない。例えば、本発明の権利範囲内で第1構成要素は第2構成要素と名付けてもよく、同様に第2構成要素は第1構成要素と名付けてもよい。
【0028】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0029】
発明の一実施形態により、第1ポリエステル樹脂を含むコア層;および前記コア層の両面に形成された第2ポリエステル樹脂および粘着防止剤を含む、少なくとも1つ以上のスキン層;を含み、MDとTDの延伸速度および延伸倍率に対する関係式である下記式1および式2でもって表される条件を満たす範囲内で、幅方向を基準として、マイクロ波方式の分子配向計でもって測定された配向角が式3を満たし、位相差測定器でもって590nmにて測定された面内位相差標準偏差(Re標準偏差)が式4を満たす、ポリエステル多層フィルムが提供される。
【0030】
[式1]
45,000%/min.≦MDs≦55,000%/min.
【0031】
[式2]
4,500%/min.≦TDs≦5,500%/min.
【0032】
[式3]
0°<|配向角|<12°
【0033】
[式4]
0≦Re標準偏差≦100
(前記式1において、MDsは、下記式5によって計算される機械方向の延伸速度であり、
【0034】
[式5]
平均MD延伸速度=(S1st+S2nd)/2
【0035】
前記式5において、S1stおよびS2ndは、それぞれ独立して、第1~第3の延伸ロールを備えた装置を用いる2段延伸工程での、下記式6および7で表される各延伸ロール間の区間別の延伸速度(%/min)であり、
【0036】
[式6]
S1st=E1/[L1/{(R2-R1)/2}]
【0037】
[式7]
S2nd=E2/[L2/{(R3-R2)/2}]、
【0038】
前記式6および7において、
E1およびE2は、それぞれ前記2段延伸工程の各区間での延伸倍率(%)であり、
R1、R2、およびR3は、それぞれ独立して、個別延伸ロール(R/L)の回転速度(m/min)であり、
L1は第1延伸ロールから第2延伸ロールまでの間の距離(m)であり、L2は第2延伸ロールから第3延伸ロールまでの間の距離(m)であり、
【0039】
前記式2において、TDsは下記式8によって計算される幅方向の延伸速度であり、
【0040】
[式8]
TD延伸速度=E/(L/LSP)
【0041】
前記式8において、Eは、第1~第3の延伸ロールを備えた2段延伸工程の後、テンター式延伸工程における複数の延伸ゾーンでの延伸倍率(%)であり、
Lは、複数の延伸ゾーンの総長さ(m)であり、
LSPは、テンター式延伸工程における線速度(Line speed)(m/min)である。)
【0042】
光学ディスプレイ用に使用されるポリエステルフィルムが偏光板製造工程に使用される場合、偏光板の欠点検査の際、離型フィルムが貼り付けられた偏光板の配向主軸と、検査器の結晶軸とを垂直に配置した状態で検査を行うので、離型フィルムの基材であるポリエステルフィルムの配向角が低い場合のみ、検査の際に色相の歪曲を防止して検査感度を向上させることができる。
【0043】
そこで、本発明は、光学ディスプレイ分野の偏光板に使用される副資材のうちの、偏光板用保護フィルムおよび離型フィルム用ベースフィルムとして用いられるための、主な要求条件である偏光ムラを抑制させ得るポリエステルフィルムを提供するためのものである。また、本発明は、優れた外観品質および後加工の工程の安定性確保のために、配向角および位相差偏差が制御されて光機能性に優れたポリエステルフィルムを提供する。
【0044】
そこで、前記目的を達成するために研究した結果、本発明者らは、ポリエステルフィルムの製造の際、機械方向(Machine Direction)と幅方向(Transverse Direction)の延伸速度および延伸倍率を適切に調節することによって、幅方向(TD)を基準として、配向角を低くし、位相差偏差を低減してTDの配向、光学特性および光機能性を付与した。
【0045】
したがって、本発明は、光学ディスプレイ用に適したポリエステルフィルムを製造するために、従来よりも、配向角を低くし、幅方向位相差偏差を低減して偏光ムラまたはニジ(虹)ムラを抑制して、低い厚さ偏差率および高い光透過度を示すポリエステル多層フィルムを製造することを特徴とする。
【0046】
また、一般的に従来には、フィルムの配向角を低くするために1軸延伸または1軸延伸に近い延伸方法を採択することが一般的であるが、生産性に劣る。したがって、本発明では、生産性の極大化のために、延伸速度が制御された2軸延伸方法を適用して、光学特性が大きく改善されたポリエステルフィルムを多層に製造する。
【0047】
さらに具体的には、本発明の一様態は、二軸延伸ポリエステルフィルムに関し、このようなポリエステルフィルムは、第1ポリエステル樹脂を含むコア層;および前記コア層の両面に形成された第2ポリエステル樹脂および粘着防止剤を含む、少なくとも1つ以上のスキン層;を含むポリエステル多層フィルムであり得る。
【0048】
また、前記ポリエステル多層フィルムは、MDとTDの延伸速度および延伸倍率に対する関係式である下記式1~2を満たし、全体フィルムの幅方向に対して分子配向計(MOA:Molecular Orientation Angle Analyzer)でもって配向角を測定した際に、TD(幅方向)を基準として中心部の配向角は0°であり、最縁部の配向角は絶対値が最大12°未満の配向角範囲を有する下記式3を満たし、位相差測定器でもって590nmにて測定された、主配向軸を基準として主配向軸の方向と垂直方向との屈折率の差を値で表した複屈折率(Δn)に、厚さ(d)を乗じた値の標準偏差である面内位相差(Re)の値が下記式4を満たす。
【0049】
[式1]
45,000%/min.≦MDs≦55,000%/min.
【0050】
[式2]
4,500%/min.≦TDs≦5,500%/min.
【0051】
[式3]
0°<|配向角|<12°
【0052】
[式4]
0≦Re標準偏差≦100
(前記式1において、MDsは機械方向の延伸速度であり、TDsは幅方向の延伸速度である。)
【0053】
前記式1において、MDsの値が、45,000%/min.よりも小さいと配向結晶が不足して厚さ均一性を確保しにくく、55,000%/min.よりも大きいとMD配向結晶が高まって配向角を低くすることが難しい。
【0054】
前記式2においてTDsの値が、4,500%/min.よりも小さいとTDへの応力伝達の均一性が不足して厚さの均一性を確保しにくく、5,500%/min.よりも大きいと延伸される際に応力が非常に高くなり、延伸方向にフィルムが裂けたり破断が起きたりし得るのであって、成形性や生産性を低下させる恐れがある。
【0055】
前記式3において、TD基準の配向角が12°以上になると、偏光板用保護フィルムまたは離型フィルムに適用した際、色相の歪曲によって異物や欠点の検査感度が顕著に低くなるので、12°未満に管理する必要がある。
【0056】
全体のフィルムの、幅方向を基準として測定された前記式4において、面内位相差値のRe標準偏差が、幅方向(TD)を基準として標準偏差の値が100より大きいと、光透過度の均一性が不足して光機能性を高めにくくなる。
【0057】
ここで、前記式1~2において、MDsは機械方向(縦方向;MD)の延伸速度(MD延伸速度)であり、TDsは幅方向の延伸速度(TD延伸速度)であり、各延伸速度は下記式5~8によって計算される。
【0058】
具体的には、前記機械方向の延伸速度は下記式5によって計算される。
【0059】
[式5]
平均MD延伸速度=(S1st+S2nd)/2
(前記式5において、S1stおよびS2ndは、それぞれ独立して、第1~第3の延伸ロールを備えた装置を用いる2段延伸工程での、下記式6および7で表される各延伸ロール間の区間別の延伸速度(%/min)であり、
【0060】
[式6]
S1st=E1/[L1/{(R2-R1)/2}]
【0061】
[式7]
S2nd=E2/[L2/{(R3-R2)/2}],
【0062】
式6および7において、
E1およびE2はそれぞれ前記2段延伸工程の各区間での延伸倍率(%)であり、
R1、R2、およびR3はそれぞれ独立して個別延伸ロール(R/L)の回転速度(m/min)であり、
L1は第1延伸ロールから第2延伸ロールまでの間の距離(m)であり、L2は第2延伸ロールから第3延伸ロールまでの間の距離(m)である。)
【0063】
前記第1~第3の延伸ロールを備えた2段延伸ロールの一例は
図1に示すとおりである。
【0064】
図1に示すように、機械方向の延伸速度は周速の差を利用したロールトゥロール(Roll to Roll)MD延伸工程でのMD延伸速度を示す。また、このような延伸工程は、機械方向にフラットである(MD Flat)2段延伸時の延伸工程図を基準として、上述した式5~7のパラメータにより計算される。そして、延伸段階を区分して各区間の延伸速度を計算して、最終的に得た平均値をMD延伸速度と定義する。
【0065】
また、前記幅方向の延伸速度は下記式8によって計算される。
【0066】
[式8]
TD延伸速度=E/(L/LSP)
(前記式8において、Eは、第1~第3の延伸ロールを備えた2段延伸工程の後、テンター式延伸工程における複数の延伸ゾーンでの延伸倍率(%)であり、
Lは、複数の延伸ゾーンの総長さ(m)であり、
LSPは、テンター式延伸工程における線速度(Line speed)(m/min)である。)
【0067】
したがって、本明細書で、前記ポリエステル多層フィルムは、1以上の複数の延伸ロールあるいは第1~第3の延伸ロールと、1つ以上の複数の延伸ゾーンが備えられた2段延伸工程により提供される。
【0068】
図2は、複数の延伸ゾーンを含むテンター式延伸工程の構成を簡略に示す図である。
【0069】
縦延伸の延伸比は、延伸前の長さに対する延伸後の長さの比、すなわち、延伸後の長さ/延伸前の長さを意味するが、実際の連続工程で計算する際にはロールトゥロール(roll-to-roll)縦延伸(機械方向の延伸)の場合、延伸前のロール速度に対する延伸後のロール速度の比を延伸比として使用する。前記テンター(tenter)を利用した横延伸(幅方向の延伸)の場合、テンター入口の幅に対する出口の幅の比を延伸比と定義しうる。
【0070】
さらに、前記ポリエステル多層フィルムは、従来よりも低い厚さ偏差率を示し、光学特性を改善することができる。
【0071】
また、本発明によれば、偏光ムラが抑制され、有機/無機粒子によって発生した凹凸の中心線の表面粗さのRa値が、下記式9を満たして、高速加工走行性に優れた二軸延伸ポリエステルフィルムを提供することができる。前記の特性を有するポリエステルフィルムは、19~75μmの厚さとなりうる。
【0072】
[式9]
15nm≦Ra≦25nm
【0073】
前記式9において、表面粗さ(表面粗度)の値が、15nmより小さいと、延伸工程のロール(Roll)を通過(Passing)する過程でスクラッチ(Scratch)を誘発する確率が高くなり、25nmより大きいと、巻き取り工程でフィルムとフィルムとの間に空気層が過多に形成されて、フォーム不良現象が発生する確率が高いため巻き取り不良が発生する確率が高い。
【0074】
この時、前記式3で定義される配向角はTDを基準としての配向角度を意味し、前記式4に記載されたReは、面内位相差を意味し、式10によって計算される。また、前記式4の面内位相差の標準偏差(Re標準偏差)は、式11によって計算される。
【0075】
[式10]
Re=(nx-ny)×d
(前記式10において、nxは主配向軸方向の屈折率であり、nyは主配向軸方向の垂直方向に該当する屈折率であり、dはフィルムの厚さである。)
【0076】
【0077】
(前記式11において、
は位相差測定値の個別の値であり、
は位相差測定値の全体の平均であり、nは位相差測定の回数である。)
【0078】
このような、MDおよびTDの延伸速度が前記式1~2を満たす範囲内で、配向角偏差および前記式4を満たす面内の位相差偏差をすべて満たすとき、偏光ムラが発生する現象を抑制することができる。また、配向角が前記式3を満たす範囲内で、偏光板用保護フィルムおよび離型フィルムとして使用するとき、色相の歪曲を防止して異物や欠点の検査感度を上げることができるのであり、より好ましくは配向角が0°以上~10°以下であることで、さらに優れた効果を奏することができる。
【0079】
また、前記式9を満たす表面粗さの範囲内でフィルムの走行性および巻き取り性に優れ、フィルムがロール(Roll)を通るときのスクラッチ(Scratch)の発生を防止でき、巻き取る際に過度な空気(Air)層によるフォーム不良を防止でき、後工程時のコーティング性に優れ、ユーザーが要求するコーティング安定性を満たすことができ、離型剤を均一に、かつ高速で塗布できるので好ましい。より好ましくはRaが16~23nmのものであり得る。
【0080】
このような本発明のポリエステル多層フィルムは、前記コア層がフィルム全体の70~90重量%であり、スキン層がフィルム全体の10~30重量%であり得る。
【0081】
前記粘着防止剤は、有機粒子、無機粒子またはこれらの混合物を含み得る。
【0082】
より具体的には、前記コア層およびスキン層に使用され、本発明のポリエステルフィルムをなすポリエステル樹脂は、特に制限されず、通常のポリエステル樹脂を使用するものであり得る。ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸を主成分とする酸性分と、アルキレングリコールを主成分とするグリコール成分とを縮重合して得られる。前記ジカルボン酸は、制限されないが、テレフタル酸またはそのアルキルエステルやフェニルエステルなどを使用でき、一部は、イソフタル酸、オキシエトキシ安息香酸、アジピン酸、セバシン酸および5-ナトリウムスルホイソフタル酸などの二官能性カルボン酸またはそのエステル形成誘導体に置き換えて使用することができる。また、グリコール成分としては、制限されないが、エチレングリコールを主に使用し、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-ビスオキシエトキシベンゼン、ビスフェノールおよびポリオキシエチレングリコールなどを混合して使用でき、一官能性化合物または三官能性化合物を一部併用することができる。
【0083】
この他にもポリエステル樹脂重合時、通常フィルム分野で使用される添加剤、すなわち、ピニング剤(pinning)、帯電防止剤、紫外線安定剤、防水剤、スリップ剤および熱安定剤より選択される1種または2種以上の成分を含み得るのであり、これに制限されるものではない。
【0084】
前記ポリエステル樹脂は、当該技術分野で通常の重合方法のTPA(テレフタル酸;Terephthalic acid)重合法またはDMT(テレフタル酸ジメチル;dimethyl terephthalate)重合法などにより製造でき、これに制限されるものではない。
【0085】
本発明の一様態で、前記ポリエステル樹脂はポリエチレンテレフタレートであり得る。すなわち、前記ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸としてテレフタル酸(Terephthalic acid)を使用し、グリコールとしてエチレングリコール(Ethyleneglycol)を使用して製造したポリエチレンテレフタレートであり得る。また、本発明のポリエステルフィルムは、表面粗度を均一に形成するために、粘着防止剤(Anti-Blocking Agent)として粒子を含むことが好ましい。粘着防止剤は、耐スクラッチ性および均一な表面粗度の形成のために添加されるもので、有機粒子および無機粒子より選択される、いずれか一つまたは二つ以上の混合物であり得る。前記無機粒子としては、当該技術分野で自明に使用される粒子であれば制限なく使用できる。例えば、炭酸カルシウム、シリカ、二酸化チタン、高陵土(カオリン)、硫酸バリウム、アルミナシリケートおよびカルシウムカーボネートなどより選択されるいずれか一つまたは二つ以上を混合して使用できるのであり、これに制限されるものではない。前記有機粒子は、シリコーン樹脂、架橋ジビニルベンゼンポリメタクリレート、架橋ポリメタクリレート、架橋ポリスチレン樹脂、ベンゾグアナミン-ホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミン-メラミン-ホルムアルデヒド樹脂、およびメラミン-ホルムアルデヒド樹脂からなる群より選ばれる、いずれか一つ、または二つ以上の混合物であり得るのであり、これに制限されるものではない。
【0086】
前記粘着防止剤の含有量は、制限されるものではないが、フィルム全体の内の200~2,000ppmで含むのであり得るのであり、より具体的には400~1,000ppmで含むのであり得る。また、前記粘着防止剤の大きさは、制限されるものではないが、平均粒径が0.01~5μm、より具体的には0.1~3μmのものであり得る。そして、前記粘着防止剤の投入は、ポリエステル樹脂の合成時、グリコール類に分散させたスラリーの形態で添加することが、分散性に優れ、粒子間の再凝集を防止できるので効果的であるが、これに制限されず、マスターバッチチップ(Master Batch Chip)の製造時に添加するのであり得る。
【0087】
したがって、本発明の一様態で、前記二軸延伸ポリエステルフィルムは、少なくとも2層以上が積層された多層フィルムであり得るのであり、前記多層フィルムは、コア層と、前記コア層の両面にそれぞれ少なくとも1層以上が積層されたスキン層を含むものであり得る。一例として、前記ポリエステル多層フィルムはスキン層/コア層/スキン層が順次積層された3層フィルムの構成であり得る。
【0088】
この時、コア層が全体フィルムの70~90重量%であり、スキン層が10~30重量%であり、前記スキン層に粘着防止剤を含むようにすることによって共押出時界面安定化に優れ、製膜が容易で、ヘイズが低く、上述した式1~3を満たして収縮が少ないフィルムを製造することができる。
【0089】
前記コア層はポリエステル樹脂、より具体的にはポリエチレンテレフタレート樹脂単独からなる。前記コーター層の場合、粘着防止剤を含み得るが製膜安定性およびフィルム走行性を向上させるための観点から、前記粘着防止剤はスキン層に含むことが好ましい。前記コア層に使用されるポリエチレンテレフタレート樹脂は固有粘度が0.6~0.7dl/gのものを使用することが耐熱性に優れ、共押出時の界面不安定が発生しないが、これに制限されるものではない。
【0090】
また、前記スキン層は、固有粘度が0.6~0.7dl/gのポリエステル樹脂と、粘着防止剤を含み、固有粘度が前記範囲を満たす範囲で界面不安定が発生せず、コア層と安定して積層されて多層フィルムを製造しやすく、加工性が容易であるという長所があるが、これに制限されるものではない。また、前記スキン層は、粘着防止剤の使用により、製膜安定性とフィルム走行性を向上させることができる。
【0091】
このような本発明の一様態で、前記二軸延伸ポリエステルフィルムは、総厚さが19~75μm、より好ましくは38~50μmのものであり得、前記範囲で薄膜に製造される傾向の電子材料用のベースフィルムとして好適に使用することができる。
【0092】
一方、本発明の他の実施形態により、a)i)第1ポリエステル樹脂チップと、ii)第2ポリエステル樹脂チップおよび粘着防止剤を含む組成物を用いて、コア層、および、前記コア層の両面に少なくとも1層以上のスキン層が含まれた多層になるように、共押出しを行い30℃以下に急冷して未延伸シートを製造する段階;および、b)前記未延伸シートを逐次に二軸延伸してフィルムを製造する段階;および、c)前記二軸延伸されたフィルムを熱固定する段階;を含み、前記逐次に二軸延伸してフィルムを製造する段階は、前記未延伸シートを85~110℃にて機械方向に45,000~55,000%/min.の速度で2~5倍1次縦延伸する段階;および前記1次延伸されたシートを95~140℃にて幅方向に4,500~5,500%/min.の速度で2~5倍2次横延伸する段階;を含む前記ポリエステル多層フィルムの製造方法が提供される。
【0093】
このような本発明の一様態で、前記二軸延伸ポリエステルフィルムは、有機粒子および無機粒子より選択される、いずれか一つまたは二つ以上の粘着防止剤を含み、単層フィルム、または2層以上が積層された多層フィルムであり得る。より具体的には、コア層と、前記コア層の両面にそれぞれ少なくとも1層以上が積層されたスキン層を含み、コア層がフィルム全体の70~90重量%であり、スキン層が10~30重量%であり、前記スキン層に有機粒子および無機粒子より選択される、いずれか一つまたは二つ以上の粘着防止剤を含むものであり得る。
【0094】
より具体的な本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法の一様態は、固有粘度が0.6~0.7dl/gのポリエステル樹脂を含む第1ポリエステル樹脂チップと、固有粘度が0.6~0.7dl/gのポリエステル樹脂を含む第2ポリエステル樹脂チップと粘着防止剤を含む組成を用いて、260~300℃で溶融して共押出しを行った後、ダイを通じて、単層、または二層以上の多層に吐出して30℃以下に急冷して未延伸シートを製造する。
【0095】
前記フィルムを熱固定する段階は、前記2次延伸されたフィルムを、第1熱処理ゾーン~第5熱処理ゾーンを含む合計5個の熱処理ゾーンで200~250℃で熱固定しながら、第4熱処理ゾーンから第5熱処理ゾーンまでのMD弛緩率とTD弛緩率の総弛緩率が1~5%になるように弛緩する段階を含み得る。
【0096】
このような方法で、第1ポリエステル樹脂を含むコア層;および、前記コア層の両面に形成された第2ポリエステル樹脂および粘着防止剤を含む、少なくとも1以上のスキン層;を含み、上述した数式によるパラメータ物性をすべて満たすポリエステル多層フィルムが提供される。
【発明の効果】
【0097】
本発明では、逐次二軸延伸方法を適用して、MDとTDの延伸速度および倍率を特定に調節することによって、低い配向角と位相差の偏差を最小化させて、偏光ムラを画期的に抑制し、優れた光学特性および光機能性と、優れた外観品質を有し、厚さ偏差を最小化させて、優れた生産性を有し、高速加工に適した走行性を有するポリエステルフィルムを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【
図1】本発明の一実施例による、MD延伸速度を計算するための機械方向にフラットな(MD Flatの)2段延伸時のロールトゥロール工程図を簡略に示す図である。
【
図2】本発明の一実施例による、TD延伸速度を計算するための、テンター式延伸設備での延伸区域を簡単に示す図である。
【
図3】偏光計(polarimeter)のニジ(虹)ムラの評価方法を簡単に示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0099】
以下、発明の具体的な実施例により、発明の作用および効果をより詳細に説明する。ただし、このような実施例は発明の例示として提示されたものに過ぎず、発明の権利範囲はこれによって定まるものではない。
【0100】
[実施例1]
コア層には、無機粒子を含まない、固有粘度が0.65dl/gのポリエチレンテレフタレート(PET)チップを使用し、スキン層には、平均粒径が2.6μmのシリカ粒子を400-1000ppm含む、固有粘度が0.65dl/gのポリエチレンテレフタレートチップを使用し、スキン層/コア層/スキン層が順次積層された3層フィルムを製造した。その後、前記積層フィルムを共押出しし、30℃以下に制御されている冷却ロールでキャスティングして未延伸シートを製造した。この際、前記のコア層はフィルム全体の重量の80重量%になるようにし、スキン層はフィルム全体の重量の20重量%になるようにした。
【0101】
その後、前記未延伸シートを用いて、機械方向および幅方向に延伸を行い、式1および2により計算された方法により、延伸速度と延伸倍率を調節した。
【0102】
すなわち、
図1の構成を含む機械方向にフラットな(MD flatの)2段延伸工程と、
図2のテンター式工程を用いて未延伸シートを延伸した。そのため、未延伸シートに対して機械方向(MD)に54631%/min.の延伸速度で3.2倍に延伸した後、幅方向(TD)に4,875%/min.の速度で4.5倍に延伸し、215℃で熱処理した。前記熱処理時に合計5個の区域(Zone)で構成されている熱処理ゾーン(Zone)を基準として、下記表1のように、第4熱処理ゾーンから第5熱処理ゾーンまでのMD弛緩およびTD弛緩を合わせて合計2.8%弛緩させて、38μmの厚さの多層フィルムを製造した。フィルム製膜条件は表1に示した。
【0103】
[実施例2~3および比較例1~4]
下記表1のように、MD延伸比およびMD延伸速度、TD延伸比およびTD延伸速度、フィルム厚さを調節することについて変化させたことを除いては、前記実施例1と同様の方法で多層フィルムを製造した。
【0104】
【0105】
[実験例]
前記実施例1~3および比較例1~4のフィルム製造後の物性は、以下の評価項目別の測定方法により測定し、その結果を表2に示した。
【0106】
<物性測定および評価方法>
1)ヘイズ(Haze)測定
それぞれ製造されたフィルムを、ヘーズメーター(Haze Meter)(日本電色工業株式会社(NIPPON DENSHOKU社)、NDH-5000,日本)を用いてASTM D-1003の測定方法により測定した。
【0107】
2)偏光計でのニジ(虹)ムラの評価方法
偏光歪み評価機器(新東科学株式会社(Shinto Scientific社)、Heidon-24W、日本)を用いて、下段の偏光軸と上段の偏光軸を直交(90°)するように調整した後、A4の大きさに裁断したサンプルを評価機器の下段に載せて、上から肉眼で、フィルムのニジムラの有無を評価した(
図3参照)。
【0108】
<評価基準>
ニジムラが視認される場合を「有」、ニジムラが視認されない場合を「無」と判断する。
【0109】
3)配向角の評価方法
マイクロ波方式の分子配向計(王子計測機器株式会社(Oji Scientific Instruments社)、MOA-7015,日本)を用いて、専用試料ホルダに、各フィルム試料を取り付けた後、分子配向計に挿入して配向角を測定した。MDを基準として配向角の値が出るので、TDを基準として配向角を有するために90°で実際の測定値を引いた値の絶対値を表2に示した。
【0110】
4)面内位相差の測定
平行ニコル回転方式の位相差測定装置(王子計測機器株式会社(Oji Scientific Instruments社)、KOBRA-WPR、日本)を用いて590nmの測定波長で位相差の値を測定した。
【0111】
5)厚さ評価方法および厚さ偏差R値の計算方法
電気マイクロメーター測定器(Mahr社、Millimar-1240,ドイツ)でもって、製造されたフィルムを幅方向に5cm間隔で測定し、測定した厚さを下記の式12により計算して、厚さ偏差R値を計算した。
【0112】
【0113】
(前記式12において、
は厚さ測定値の個別値であり、
は厚さ測定値の平均であり、nは厚さ測定回数である)
【0114】
6)表面粗さの評価方法
2次元接触式の表面粗さ測定器(株式会社小坂研究所(KOSAKA) SE-3300,日本)を用いてJIS B-0601の測定方法により、Ra(中心線平均粗さ)、Rz(10点平均粗さ)、Rmax(最大高さ粗さ)を測定した。
【0115】
具体的には、JIS-B0601を基準として、製造されたポリエステルフィルムを全体幅の横方向基準の中央部をA4の大きさに切断した後、再び30mm30mm大きさに切断して、表面粗さ測定器の試料台にスコッチテープで貼り付け、測定速度0.05mm/sec、基準長さ(Cut-Off)値0.08mmの条件下で表面粗さを測定した。
【0116】
フィルム単面の曲線から、その中心線方向に基準の長さ1.5mmを選択して、合計5回測定して平均値を算出し、Ra(Arithmetical Average Roughness)は中心線の平均粗さ値で中心線から断面曲線までの平均高さである。
【0117】
7)スクラッチ(Scratch)の評価方法
一枚のフィルムを壁に付けて落下させた後、ポラリオンクリーンルームライト(Search Light; Polarion社、PS-NP1,韓国)でもって、0~180°の角度に回しながら、視認の有無を確認する方法で肉眼評価した。
【0118】
<評価基準>
視認された場合を「有」と、視認されない場合を「無」と、肉眼で評価する。
【0119】
8)巻き取りフォームの評価方法
巻き取りされたロールの端面からフィルムがはみ出した長さを、長さ測定器(Mitutoyo社、CA-30PSX、日本)でもって、ゼロ点を合わせた後に測定した。
【0120】
*評価基準:フィルムがはみ出した長さについて2mm以上飛び出した場合を「有」、フィルムがはみ出した長さが2mm未満である場合を「無」と判断する。
【0121】
【0122】
前記表2の結果から見れば、実施例1~3はフィルム製造の際、MDとTDの延伸速度と倍率を特定に調節することにより、比較例1~4に比べて低い配向角を示すことで、面内位相差の偏差を顕著に減らすことができ、偏光ムラが画期的に抑制された。したがって、本発明のポリエステルフィルムは、優れた光学特性と光機能性を有し、外観特性にも優れ、厚さ偏差率も低くなり、光学ディスプレイ分野の偏光板に使用されることで性能改善に寄与することができる。また、本発明は、従来よりも生産性に優れ、高速加工に適した走行性を有するポリエステルフィルムの製造方法を提供し、経済的効果を図ることもできる。
【国際調査報告】