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特表2022-550142アルミニウム合金めっき鋼板、熱間成形部材及びこれらの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-30
(54)【発明の名称】アルミニウム合金めっき鋼板、熱間成形部材及びこれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 2/12 20060101AFI20221122BHJP
   C22C 21/10 20060101ALI20221122BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20221122BHJP
   C22C 38/14 20060101ALI20221122BHJP
   C21D 9/00 20060101ALI20221122BHJP
   B21D 22/20 20060101ALI20221122BHJP
   C23C 2/40 20060101ALI20221122BHJP
   C23C 2/02 20060101ALI20221122BHJP
   C23C 2/28 20060101ALI20221122BHJP
   C21D 1/18 20060101ALI20221122BHJP
   C22C 38/38 20060101ALN20221122BHJP
【FI】
C23C2/12
C22C21/10
C22C38/00 301T
C22C38/14
C21D9/00 A
B21D22/20 E
B21D22/20 H
C23C2/40
C23C2/02
C23C2/28
C21D1/18 C
C22C38/00 301W
C22C38/38
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022519555
(86)(22)【出願日】2020-12-11
(85)【翻訳文提出日】2022-03-28
(86)【国際出願番号】 KR2020018115
(87)【国際公開番号】W WO2021125696
(87)【国際公開日】2021-06-24
(31)【優先権主張番号】10-2019-0170140
(32)【優先日】2019-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコ
【氏名又は名称原語表記】POSCO
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】ホワン、 ヒョン-ソク
(72)【発明者】
【氏名】イ、 スク-キュ
(72)【発明者】
【氏名】オー、 ジョン-ギ
(72)【発明者】
【氏名】ミン、 クワン-チ
(72)【発明者】
【氏名】シン、 ドン-ソク
【テーマコード(参考)】
4E137
4K027
4K042
【Fターム(参考)】
4E137AA01
4E137BA01
4E137BB01
4E137BC01
4E137BC07
4E137CA21
4E137DA03
4E137DA10
4E137EA26
4K027AA05
4K027AA23
4K027AB02
4K027AB28
4K027AB48
4K027AC12
4K027AC73
4K027AE02
4K027AE12
4K042AA25
4K042BA01
4K042BA06
4K042BA11
4K042CA02
4K042CA06
4K042CA12
4K042DA01
4K042DA06
4K042DC02
4K042DC03
4K042DE02
4K042DE05
(57)【要約】
本発明の一実施形態は、素地鋼板;及び上記素地鋼板上に形成されたアルミニウム合金めっき層;を含み、上記アルミニウム合金めっき層は、重量%で、Zn:21~35%、Si:1~6.9%、Fe:2~12%、残部Al及びその他の不可避不純物を含む表面品質及び溶接性に優れたアルミニウム合金めっき鋼板、熱間成形部材及びこれらの製造方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
素地鋼板;及び
前記素地鋼板上に形成されたアルミニウム合金めっき層;を含み、
前記アルミニウム合金めっき層は、重量%で、Zn:21~35%、Si:1~6.9%、Fe:2~12%、残部Al及びその他の不可避不純物を含むアルミニウム合金めっき鋼板。
【請求項2】
前記素地鋼板は、重量%で、C:0.15~0.39%、Mn:0.5~3%、B:0.01%以下(0%を含む)、Ti:0.1%以下(0%を含む)、残部Fe及びその他の不可避不純物を含む、請求項1に記載のアルミニウム合金めっき鋼板。
【請求項3】
前記アルミニウム合金めっき層はMg:1.4%以下をさらに含む、請求項1に記載のアルミニウム合金めっき鋼板。
【請求項4】
前記アルミニウム合金めっき層はAl/(Zn+Si)が1.3~2.6である、請求項1に記載のアルミニウム合金めっき鋼板。
(但し、上記Al、Zn及びSiの含量単位は重量%である。)
【請求項5】
素地鋼板;及び上記素地鋼板上に形成されたアルミニウム合金めっき層;を含み、前記アルミニウム合金めっき層は、重量%で、Zn:21~35%、Si:1~6.9%、Fe:2~12%、Mg:1.2%以下(0%を含む)、残部Al及びその他の不可避不純物を含むアルミニウム合金めっき鋼板を熱間成形して得られる熱間成形部材であって、
面積%で、マルテンサイト:90%以上と、残部フェライト、ベイナイトのうち1種以上を含む微細組織を有する熱間成形部材。
【請求項6】
前記熱間成形部材は1200MPa以上の引張強度を有する、請求項5に記載の熱間成形部材。
【請求項7】
素地鋼板を準備する段階;及び
前記素地鋼板を580~680℃のめっき浴に浸漬して前記素地鋼板の表面にアルミニウム合金めっき層を形成させる段階;を含み、
前記めっき浴は、重量%で、Zn:23~40%、Si:1~8%、残部Al及びその他の不可避不純物を含むアルミニウム合金めっき鋼板の製造方法。
【請求項8】
前記素地鋼板は、重量%で、C:0.15~0.39%、Mn:0.5~3%、B:0.01%以下(0%を含む)、Ti:0.1%以下(0%を含む)、残部Fe及びその他の不可避不純物を含む、請求項7に記載のアルミニウム合金めっき鋼板の製造方法。
【請求項9】
前記めっき浴はMg:1.4%以下をさらに含む、請求項7に記載のアルミニウム合金めっき鋼板の製造方法。
【請求項10】
前記めっき浴はAl/(Zn+Si)が1.3~2.6である、請求項7に記載のアルミニウム合金めっき鋼板の製造方法。
(但し、前記Al、Zn及びSiの含量単位は重量%である。)
【請求項11】
前記アルミニウム合金めっき層を形成する段階の前に、前記素地鋼板を650~850℃で熱処理する段階をさらに含む、請求項7に記載のアルミニウム合金めっき鋼板の製造方法。
【請求項12】
前記熱処理は、体積%で、25%以下(0%を含む)の水素ガス及び残部窒素ガスで構成される還元性雰囲気で行われる、請求項11に記載のアルミニウム合金めっき鋼板の製造方法。
【請求項13】
前記めっき浴の温度は、めっき液の融点+20℃~めっき液の融点+80℃である、請求項7に記載のアルミニウム合金めっき鋼板の製造方法。
【請求項14】
前記素地鋼板のめっき浴の引き込み温度は、めっき浴の温度+5℃~めっき浴の温度+50℃である、請求項7に記載のアルミニウム合金めっき鋼板の製造方法。
【請求項15】
前記アルミニウム合金めっき層を形成する段階の後に、前記アルミニウム合金めっき層のめっき付着量を制御する段階をさらに含む、請求項7に記載のアルミニウム合金めっき鋼板の製造方法。
【請求項16】
前記めっき付着量は片面基準15~150g/mである、請求項15に記載のアルミニウム合金めっき鋼板の製造方法。
【請求項17】
請求項7から16のいずれか一項に記載の方法により得られたアルミニウム合金めっき鋼板をAc3温度以上に加熱する段階;
前記加熱されたアルミニウム合金めっき鋼板を金型を用いて熱間成形して熱間成形部材を得る段階;及び
前記成形部材を10℃/s以上の冷却速度で冷却する段階を含む、熱間成形部材の製造方法。
【請求項18】
前記加熱の前に、前記アルミニウム合金めっき鋼板をブランクとして作製する段階をさらに含む、請求項17に記載の熱間成形部材の製造方法。
【請求項19】
前記加熱は1~15分間行われる、請求項17に記載の熱間成形部材の製造方法。
【請求項20】
前記加熱されたアルミニウム合金めっき鋼板を金型に移送するとき、前記移送時間は20秒以内である、請求項17に記載の熱間成形部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム合金めっき鋼板、熱間成形部材及びこれらの製造方法に関するものであって、より詳細には、自動車用鋼板に好ましく適用できる表面品質及び溶接性に優れたアルミニウム合金めっき鋼板、熱間成形部材及びこれらの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アルミニウムめっき鋼板は、犠牲防食性がなく、スクラッチ等による耐食性に劣る。また、アルミニウムめっき鋼板を製造する際には、めっき浴の融点が高く、生産時にめっき浴に浸漬されているシンクロール(Sink roll)などの設備がめっき浴に浸食され、設備の交換サイクルが短く、生産性が低下する。
【0003】
一方、亜鉛系めっき鋼板は、耐食性には優れているが、熱間プレス成形後にはめっき層の表面に亜鉛酸化物が厚く形成され、溶接性に極めて劣る。さらに、溶接のためには、めっき層の酸化物を除去するためのショットブラスト(Shot blasting)などの二次加工が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一態様は、表面品質及び溶接性に優れたアルミニウム合金めっき鋼板、熱間成形部材及びこれらの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態は、素地鋼板;及び上記素地鋼板上に形成されたアルミニウム合金めっき層;を含み、上記アルミニウム合金めっき層は、重量%で、Zn:21~35%、Si:1~6.9%、Fe:2~12%、残部Al及びその他の不可避不純物を含むアルミニウム合金めっき鋼板を提供する。
【0006】
本発明の他の実施形態は、素地鋼板;及び上記素地鋼板上に形成されたアルミニウム合金めっき層;を含み、上記アルミニウム合金めっき層は、重量%で、Zn:21~35%、Si:1~6.9%、Fe:2~12%、Mg:1.2%以下(0%を含む)、残部Al及びその他の不可避不純物を含むアルミニウム合金めっき鋼板を熱間成形して得られる熱間成形部材であって、面積%で、マルテンサイト:90%以上と、残部フェライト、ベイナイトのうち1種以上を含む微細組織を有する熱間成形部材を提供する。
【0007】
本発明のさらに他の実施形態は、素地鋼板を準備する段階;及び上記素地鋼板を580~680℃のめっき浴に浸漬して、上記素地鋼板の表面にアルミニウム合金めっき層を形成させる段階;を含み、上記めっき浴は、重量%で、Zn:23~40%、Si:1~8%、残部Al及びその他の不可避不純物を含むアルミニウム合金めっき鋼板の製造方法を提供する。
【0008】
本発明のさらに他の実施形態は、上述したアルミニウム合金めっき鋼板の製造方法により得られたアルミニウム合金めっき鋼板をAc3温度以上に加熱する段階;上記加熱されたアルミニウム合金めっき鋼板を金型を用いて熱間成形して熱間成形部材を得る段階;及び上記成形部材を10℃/s以上の冷却速度で冷却する段階を含む熱間成形部材の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によると、表面品質及び溶接性に優れたアルミニウム合金めっき鋼板、熱間成形部材及びこれらの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態によるアルミニウム合金めっき鋼板について説明する。本発明の一実施形態によるアルミニウム合金めっき鋼板は、素地鋼板;及び上記素地鋼板上に形成されたアルミニウム合金めっき層;を含む。
【0011】
本発明では、上記素地鋼板の種類やその含量について特に限定しないが、例えば、その種類としては、熱延鋼板、熱延酸洗鋼板、冷延鋼板等を用いることができ、その含量としては、重量%で、C:0.15~0.39%、Mn:0.5~3%、B:0.01%以下(0%を含む)、Ti:0.1%以下(0%を含む)、残部Fe及びその他の不可避不純物を含むものであってもよい。さらに、本発明の素地鋼板は、当該技術分野において通常用いられる含量範囲でSiやCrなどをさらに含むことができる。
【0012】
C:0.15~0.39%
上記Cは、素材の強度と硬度を高め、高温に加熱されたブランク状態でオーステナイトがフェライトとパーライトに変態することを抑制する効果を有し、熱間プレス成形時に強度確保に役立つ。また、マルテンサイト変態開始温度を下げる効果を有するため金型の冷却効率にも役立つ。このような効果のために、上記Cの含量は0.15%以上であることが好ましい。しかし、Cの含量が0.39%を超える場合には、溶接性を阻害する要因となり、最終製品の延性を阻害する。したがって、上記Cの含量は0.15~0.39%の範囲を有することが好ましい。上記C含量の下限は0.17%であることがより好ましく、0.19%であることがさらに好ましく、0.21%であることが最も好ましい。上記C含量の上限は0.37%であることがより好ましく、0.35%であることがさらに好ましく、0.33%であることが最も好ましい。
【0013】
Mn:0.5~3%
上記Mnは、素地鋼板の硬化能を確保し、オーステナイト変態温度を下げる効果があり、熱間プレス成形中に炉(furnace)の温度を下げることができる。また、ベイナイトの形成を抑制して熱間プレス成形の後、最終製品の組織をマルテンサイトに形成されやすくして強度を向上させる上で利点がある。さらに、マルテンサイト変態開始温度(Ms)温度を下げることができる。上記Mnの含量が0.5%未満の場合には、一般的な炉(furnace)加熱中に十分なオーステナイト分率を得ることが難しいため、熱間プレス成形後に硬化能が弱くなり十分な強度確保が難しく、3%を超える場合には、熱間プレス加工中に焼入れ過程で素材にクラックが発生する恐れがある。したがって、上記Mnの含量は0.5~3%の範囲を有することが好ましい。上記Mn含量の下限は0.8%であることがより好ましく、1.0%であることがさらに好ましく、1.2%であることが最も好ましい。上記Mn含量の上限は2.5%であることがより好ましく、2.0%であることがさらに好ましく、1.8%であることが最も好ましい。
【0014】
B:0.01%以下(0%を含む)
上記Bは硬化能を効果的に確保するための元素である。Bは、非常に少量でも強度を高めることができ、フェライトとパーライトの形成を抑制して、熱間プレス成形中、冷却時にマルテンサイト分率を高めることができる効果を有する。しかし、上記Bの含量が0.01%を超える場合には、めっき過程のための焼鈍過程中にボロンが表面濃化して酸化物を形成し、めっき浴に対して濡れ性が低下するようになり、未めっきが発生しやすく、表面品質に劣るという欠点がある。したがって、上記Bの含量は0.01%以下の範囲を有することが好ましい。上記B含量の下限は0.0005%(5ppm)であることがより好ましく、0.0010(10ppm)%であることがさらに好ましく、0.0015%(15ppm)であることが最も好ましい。上記B含量の上限は0.008%(80ppm)であることがより好ましく、0.005%(50ppm)であることがさらに好ましい。
【0015】
Ti:0.1%以下(0%を含む)
チタン(Ti)は、窒素(N)と結合して窒化物を形成し、BN形成による焼入れ性の低下を抑制する効果を有する。また、Tiは、熱間プレス成形のための加熱時にオーステナイトを微細化し、鋼板の靭性等を高める役割を果たす。しかし、上記Tiの含量が0.1%を超える場合には、上記効果が飽和するだけでなく、Ti窒化物が過度に析出して鋼の靭性を低下させる。したがって、上記Tiの含量は0.1%以下の範囲を有することが好ましい。一方、上記Tiは0.01%以上含まれることがより好ましい。
【0016】
上記アルミニウム合金めっき層は、重量%で、Zn:21~35%、Si:1~6.9%、Fe:2~12%、残部Al及びその他の不可避不純物を含むことが好ましい。
【0017】
通常、アルミニウムめっき鋼板は基本的な犠牲防食性がないため、亜鉛を添加することにより耐食性を向上させることができ、めっき浴の融点を下げる役割を果たす。上記Znの含量は21~35%であることが好ましいが、21%未満の場合には、耐食性が十分に確保されないという欠点があり、35%を超える場合には、めっき浴の融点は低くなり、Znの含量は相対的に高くなるため、Znが気化して蒸発するという欠点があるだけでなく、上記蒸発されたZnはスナウト内に付着してZnアッシュ(ash)を形成するようになる。このようなZnアッシュは、めっき中に素地鋼板の表面に付着して深刻な表面品質を誘発する。したがって、上記Znの含量は21~35%の範囲を有することが好ましい。上記Zn含量の下限は22%であることがより好ましく、24%超であることがさらに好ましく、25%であることが最も好ましい。上記Zn含量の上限は34%であることがより好ましく、33%であることがさらに好ましく、32%であることが最も好ましい。
【0018】
ケイ素は、めっき浴のアルミニウムと素地鋼板の鉄が反応して生成される金属間化合物層の過度な形成を抑制するだけでなく、めっき浴の融点を下げる役割を果たす。上記Siの含量は1~6.9%であることが好ましいが、1%未満の場合には、Siによる合金化反応の抑制効果が起こらず、アルミニウムが素地鉄に拡散したアルミニウム拡散層が素地鉄に厚く形成されて溶接性を低下させる。また、素地鉄とめっき層との界面が不均一に形成され、めっき表面にまで影響を及ぼし、表面品質を低下させる。ケイ素の含量が多い場合には、めっき浴の融点を高めて表面欠陥を誘発させる。亜鉛が30%含有されたアルミニウムめっき浴においてSiとAlの共晶点は6.9%であって、上記Siの含量が6.9%を超える場合には、亜鉛を含むAl-Si共晶相組成を超えてSiが増加するほど、めっき浴の融点が急速に高くなり、めっき浴の温度が高くなると、めっき浴のアッシュ発生量が急増するという問題点がある。また、6.9%を超えると、めっき浴から出た素地鋼板の表面で凝固を開始するめっき層内にAlではなくSiが先に析出するようになり、めっき層の表面が不均一になる。したがって、上記Siの含量は1~6.9%の範囲を有することが好ましい。上記Si含量の下限は1.1%であることがより好ましく、1.5%であることがさらに好ましく、2%であることが最も好ましい。上記Si含量の上限は6.5%であることがより好ましく、6.0%であることがさらに好ましく、5.0%未満であることが最も好ましい。
【0019】
上記めっき層におけるFeの含量は2~12%であることが好ましいが、2%未満の場合には、めっき浴のAlと素地鉄のFeが素地鉄の表面において均一な合金相ではなく、不均一なAl-Fe合金相が形成、又は合金相が形成されないため、このような不均一な合金相によりめっき表面が粗くなり、めっき欠陥が多くなるという欠点がある。12%を超える場合には、過度なAl-Fe合金層が形成され、延性の小さい表面合金相によりめっき層の剥離が発生する恐れがある。また、めっき時に生じた過度な合金相は、熱間プレス成形時に行われる熱処理工程においてFeの拡散を抑制する役割を果たし、めっき層が液相状態で長く残り、加熱炉内で焼着問題を発生させる。したがって、上記Feの含量は2~12%の範囲を有することが好ましい。上記Fe含量の下限は3%であることがより好ましく、4%であることがさらに好ましく、5%超であることが最も好ましい。上記Fe含量の上限は12%であることがより好ましく、11.5%であることがさらに好ましく、11%であることが最も好ましい。一方、上記Feはめっき浴内には含まれていないが、めっき時に素地鋼板に存在するFeがめっき浴に溶出するため、アルミニウム合金めっき層に含まれることができる。
【0020】
一方、上記アルミニウム合金めっき層は、耐食性向上のために、選択的にMg:1.4%以下をさらに含むことができる。上記Mgは、腐食環境で亜鉛酸化物がさらに分解されることを抑制するバッファーの役割を果たし、耐食性を向上させる。したがって、上記Mgの含量は1.4%以下の範囲を有することが好ましい。一方、上記Mgの含量が1.4%を超える場合には、溶接性が低下する可能性が高くなる。上記Mg含量の下限は0.05%であることがより好ましく、0.1%であることがさらに好ましく、0.15%であることが最も好ましい。上記Mg含量の上限は1.2%であることがより好ましく、1.0%であることがさらに好ましく、0.8%であることが最も好ましい。
【0021】
また、上記アルミニウム合金めっき層は、Al/(Zn+Si)が1.3~2.6であってもよい。上記Al/(Zn+Si)の制御は、溶接性及び耐食性を確保するためのものである。亜鉛は添加されると、耐食性を向上させるが、過剰な場合、熱間プレス工程後に表面に亜鉛酸化物を形成して溶接性を阻害する。ケイ素の場合は、含量が低いと、アルミニウム拡散層が厚く形成され、溶接性が低下し、共融点以上添加される場合はめっき浴の融点を上昇させるようになる。上記Al/(Zn+Si)が1.3未満の場合には溶接性に劣るという欠点があり、2.6を超える場合には、マグネシウムを添加しないと、耐食性に劣るという欠点が生じる。したがって、上記Al/(Zn+Si)は1.3~2.6の範囲を有することが好ましい。上記Al/(Zn+Si)の下限は1.35であることがより好ましく、1.40であることがさらに好ましく、1.45であることが最も好ましい。上記Al/(Zn+Si)の上限は2.55であることがより好ましく、2.5であることがさらに好ましく、2.45であることが最も好ましい。一方、上記Al、Zn及びSiの含量単位は重量%である。
【0022】
上述のように提供される本発明のアルミニウム合金めっき鋼板は、基本的に耐食性に優れるだけでなく、表面品質及び溶接性にも優れたレベルとして確保することができる。
【0023】
以下では、本発明の一実施形態による熱間成形部材について説明する。本発明の一実施形態による熱間成形部材は、上述した特徴を有するアルミニウム合金めっき鋼板を熱間成形して得られる熱間成形部材であって、面積%で、マルテンサイト:90%以上と、残部フェライト、ベイナイトのうち1種以上を含む微細組織を有することが好ましい。上記マルテンサイトは強度確保に非常に有利な組織であって、本発明では、その分率を90%以上となるように制御する。上記マルテンサイトの分率が90%未満の場合には、十分な強度を確保することが困難である。したがって、上記マルテンサイトの分率は90%以上であることが好ましい。上記マルテンサイトの分率は93%以上であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましく、97%であることが最も好ましい。一方、強度確保の観点から、上記マルテンサイトは100%であることが最も好ましいが、製造工程上、不可避にフェライト、ベイナイト等の微細組織が不純組織として形成されることがある。
【0024】
上述のように提供される本発明の熱間成形部材は、引張強度が1200MPa以上であって、非常に優れた強度を確保することができる。
【0025】
以下では、本発明の一実施形態によるアルミニウム合金めっき鋼板の製造方法について説明する。まず、素地鋼板を準備する。上記素地鋼板を準備するとき、オイル等、鋼板の表面に付いている不純物を除去することにより、上記素地鋼板の表面清浄化のために、脱脂、洗浄又は酸洗工程を行うことができる。
【0026】
その後、上記素地鋼板を650~850℃で熱処理することができる。上記熱処理は、再結晶以上の温度で実施し、連続めっき工程で素材の加工硬化を防止し、素地鋼板をめっき浴より高い温度に維持してめっき性を向上させるためのものである。上記熱処理温度が650℃未満の場合には、連続工程のようなロールを通過する際に加工硬化による素材変形及び蛇行が発生し得るという欠点があり、850℃を超える場合には、素地内に存在するMn及びSiが素地の表面に濃化して酸化物を形成し、めっき性を低下させるという欠点がある。したがって、上記熱処理温度は650~850℃であることが好ましい。上記熱処理温度の下限は680℃であることがより好ましく、700℃であることがさらに好ましく、730℃であることが最も好ましい。上記熱処理温度の上限は850℃であることがより好ましく、830℃であることがさらに好ましく、810℃であることが最も好ましい。
【0027】
上記熱処理は、体積%で、25%以下(0%を含む)の水素ガス及び残部窒素ガスで構成される還元性雰囲気で行うことができる。高純度の窒素ガスを使用しない場合、熱処理炉内の還元性雰囲気が維持されにくく、素地鋼板の表面清浄化が困難になる可能性があるが、この場合、水素ガスを添加すると、熱処理炉内の露点を下げることができ、還元性雰囲気を維持して素地鉄のさらなる酸化を防止し、素地の表面を清浄化することができる。但し、上記水素ガスの分率が25%を超える場合には、大気に漏出されたとき、酸素との接触により熱処理炉が爆発する危険性がある。上記水素ガス含量の上限は20%であることがより好ましく、15%であることがさらに好ましく、10%であることが最も好ましい。一方、上記水素ガス含量の下限は0.5%であることがより好ましく、1%であることがさらに好ましく、2%であることが最も好ましい。
【0028】
その後、上記素地鋼板を560~680℃のめっき浴に浸漬して、上記素地鋼板の表面にアルミニウム合金めっき層を形成させる。上記めっき浴の温度が560℃未満の場合には、めっき浴の温度が低く粘性が増加し、めっき浴内に浸漬されているシンクロール等の設備を駆動することが難しくなり、これにより操業性に劣るという欠点がある。680℃を超える場合には、亜鉛が含まれためっき浴のため、アッシュによる製品の表面品質の低下を誘発するだけでなく、シンクロール等の設備がめっき浴により急速に浸食し、設備の交換サイクルが短くなるという欠点がある。したがって、上記めっき浴の温度は560~680℃であることが好ましい。上記めっき浴の温度の下限は565℃であることがより好ましく、570℃であることがさらに好ましく、575℃であることが最も好ましい。上記めっき浴の温度の上限は675℃であることがより好ましく、665℃であることがさらに好ましく、650℃であることが最も好ましい。
【0029】
このとき、上記めっき浴は、重量%で、Zn:23~40%、Si:1~8%、残部Al及びその他の不可避不純物を含むことが好ましい。
【0030】
上記Znの含量は23~40%であることが好ましいが、23%未満の場合には、耐食性が十分に確保されないという欠点があり、40%を超える場合には、めっき浴の融点が低くなることによって、Znが気化して蒸発するという欠点があるだけでなく、上記蒸発したZnはスナウト内に付着してZnアッシュ(ash)を形成し、このようなZnアッシュはめっき中に素地鋼板の表面に付着して深刻な表面品質を誘発させる。したがって、上記Znの含量は23~40%の範囲を有することが好ましい。上記Zn含量の下限は24%であることがより好ましく、25%であることがさらに好ましく、26%であることが最も好ましい。上記Zn含量の上限は39%であることがより好ましく、38%であることがさらに好ましく、37%であることが最も好ましい。一方、上記めっき浴内のZn含量は、アルミニウム合金めっき層に含まれるZn含量に対して高いレベルであるが、これは、アルミニウム合金めっき層に、めっき浴内のZnの代わりに素地鋼板から溶出したFeが含まれるためである。すなわち、本発明が提案するレベルのアルミニウム合金めっき層内のZn含量を満たすためには、めっき浴内のZn含量がアルミニウム合金めっき層内のZn含量より高いレベルである必要がある。
【0031】
上記Siの含量は1~6.9%であることが好ましいが、1%未満の場合には、Siによる合金化反応の抑制効果が起こらず、アルミニウムが素地鉄に拡散したアルミニウム拡散層が素地鉄に厚く形成されて溶接性を低下させる。また、素地鉄とめっき層との界面が不均一に形成され、めっき表面にまで影響を及ぼし、表面品質を低下させる。ケイ素の含量が多い場合には、めっき浴の融点を高めて表面欠陥を誘発させる。亜鉛が30%含有されたアルミニウムめっき浴においてSiとAlの共融点は6.9%であって、上記Siの含量が6.9%を超える場合には、亜鉛を含むAl-Si共融相組成を超えてSiが増加するほど、めっき浴の融点が急速に高くなり、めっき浴の温度が高くなると、めっき浴のアッシュ発生量が急増するという問題点がある。また、6.9%を超えると、めっき浴から出た素地鋼板の表面で凝固を開始するめっき層内にAlではなくSiが先に析出するようになり、めっき層の表面が不均一になる。したがって、上記Siの含量は1~6.9%の範囲を有することが好ましい。上記Si含量の下限は1.1%であることがより好ましく、1.5%であることがさらに好ましく、2%であることが最も好ましい。上記Si含量の上限は6.5%であることがより好ましく、6.0%であることがさらに好ましく、5.0%未満であることが最も好ましい。
【0032】
一方、上記めっき浴は、耐食性向上のために、選択的にMg:1.4%以下をさらに含むことができる。上記Mgは、腐食環境において亜鉛酸化物がさらに分解されることを抑制するバッファーの役割を果たし、耐食性を向上させる。したがって、上記Mgの含量は1.4%以下の範囲を有することが好ましい。一方、上記Mgの含量が1.4%を超える場合には、溶接性が低下する可能性が高くなる。上記Mg含量の下限は0.05%であることがより好ましく、0.1%であることがさらに好ましく、0.15%であることが最も好ましい。上記Mg含量の上限は1.2%であることがより好ましく、1.0%であることがさらに好ましく、0.8%であることが最も好ましい。
【0033】
上記めっき浴の温度は、めっき液の融点+20℃~めっき液の融点+80℃であることが好ましい。このように、めっき浴の温度をめっき液の融点より20~80℃高く管理することにより、めっき浴内のシンクロールの駆動性を向上させることができる。通常的に、めっき液の粘度はめっき浴の温度と反比例関係を有し、温度が高くなるほど粘度が低下してめっき作業性が良くなる。万一、上記めっき浴の温度がめっき液の温度+20℃未満の場合には、シンクロールの駆動性が劣り、ロールのテンション(tension)管理が難しく、シンクロールの振動等による製品の表面欠陥が発生する可能性がある。これに対し、めっき液の温度+80℃を超える場合には、亜鉛の蒸発による表面欠陥が発生する可能性があり、高温により機器設備が劣化する可能性がある。
【0034】
上記素地鋼板をめっき浴に浸漬するとき、上記素地鋼板のめっき浴の引き込み温度は、めっき浴の温度+5℃~めっき浴の温度+50℃であってもよい。このように、素地鋼板のめっき浴の引き込み温度をめっき浴の温度より5~50℃高く管理することにより、めっき浴の温度の低下を防止することができる。万一、上記素地鋼板のめっき浴への引入温度がめっき浴の温度+5℃未満である場合には、めっき浴と素地鉄の合金化反応が遅れてめっき密着性に劣る恐れがあるという欠点があり、めっき浴の温度+50℃を超える場合には、素地鉄の潜熱によるめっき浴温度の上昇のため、めっき浴の温度管理が難しいという欠点がある。
【0035】
一方、上記アルミニウム合金めっき層を形成する段階の後には、上記アルミニウム合金めっき層のめっき付着量を制御する段階をさらに含むことができる。上記めっき付着量の制御は、エアナイフ(Air knife)というガスを噴射するノズルによって行われることができる。上記めっき付着量の制御時に、上記めっき付着量は片面基準15~150g/mであってもよい。上記めっき付着量が15g/m未満の場合には、十分な耐食性を確保しにくい可能性があり、150g/mを超える場合には、フローパターン等による付着量の偏差のため、局部的な合金化の不均一により表面欠陥及びめっき層の金型焼着問題等が発生する可能性がある。上記めっき付着量の下限は25mであることがより好ましく、上記めっき付着量の上限は100mであることがさらに好ましい。
【0036】
以下では、本発明の一実施形態による熱間成形部材の製造方法について説明する。まず、上述のように提案された方法により得られたアルミニウム合金めっき鋼板をAc3温度以上に加熱する。上記加熱は、アルミニウム合金めっき鋼板の微細組織がオーステナイトとなるようにするためのものである。万一、加熱温度がAc3未満の場合には、オーステナイト+フェライトの二相域で加熱されてオーステナイト化が十分に行われない。一方、上記加熱は1~15分間行われることができるが、上記維持時間が1分未満の場合には、オーステナイト化が十分に行われない可能性があり、15分を超える場合には、既にオーステナイト化変態が完了して、更なる加熱が必要でない部材を加熱し続けることにより生産コストが上昇し、部品生産に長時間がかかるため、生産性が低下するという欠点がある。上記加熱時間の下限は1.5分であることがより好ましく、2分であることがさらに好ましく、2.5分であることが最も好ましい。上記加熱時間の上限は12分であることがより好ましく、10分であることがさらに好ましく、8分であることが最も好ましい。
【0037】
一方、上記加熱前には、上記アルミニウム合金めっき鋼板をブランクとして作製する段階をさらに含むことができる。上記ブランク作製は、最終的に所望の形状に応じて行うことができるため、本発明では、上記ブランク作製工程について特に限定しない。
【0038】
上記加熱工程の後には、上記加熱されたアルミニウム合金めっき鋼板を金型を用いて熱間成形して熱間成形部材を得る。本発明では、上記熱間成形工程について特に限定せず、当該技術分野において通常的に用いられる全ての工程を用いることができる。
【0039】
一方、上記加熱されたアルミニウム合金めっき鋼板を金型に移送する際、上記移送時間は20秒以内であってもよい。上記移送時間が20秒を超える場合には、加熱されたアルミニウム合金めっき鋼板の温度が移送中に低下して金型に到達したとき、Ms温度以下に到達し、マルテンサイト変態が円滑でなく強度確保が難しい可能性がある。上記移送時間は18秒以内であることがより好ましく、16秒以内であることがさらに好ましく、15秒以内であることが最も好ましい。
【0040】
その後、上記成形部材を10℃/s以上の冷却速度で冷却する。上記冷却速度が10℃/s未満の場合には、マルテンサイトが十分に形成されず、目標とする引張強度を確保しにくい。上記冷却速度は15℃/s以上であることがより好ましく、18℃/s以上であることがさらに好ましく、20℃/s以上であることが最も好ましい。
【実施例
【0041】
以下では、実施例を通じて本発明をより具体的に説明する。但し、下記の実施例は、本発明を例示してより詳細に説明するためのものであり、本発明の権利範囲を限定するためのものではないことに留意する必要がある。これは、本発明の権利範囲は、特許請求の範囲に記載された事項及びこれにより合理的に類推される事項によって決定されるものであるためである。
【0042】
(実施例)
重量%で、C:0.23%、Mn:1.3%、B:0.002%、Ti:0.03%、Si:0.25%、Cr:0.15%、残部Fe及びその他の不可避不純物を含む鋼板を窒素と5%の水素混合雰囲気において800℃で熱処理した後、下記表1に記載の条件でめっき浴に浸漬して上記鋼板上にアルミニウム合金めっき層を形成させた。その後、エアナイフを介して下記表1に記載の条件でめっき付着量を制御してアルミニウム合金めっき鋼板を製造した。上記アルミニウム合金めっき層の合金組成とめっき付着量は、上記アルミニウム合金めっき層を溶解した後、ICP-OES(Inductively Coupled Plasma Optical Emission Spectroscopy)によって測定した。
【0043】
その後、上記製造されたアルミニウム合金めっき鋼板に対して試片を採取した後、ブランクとして剪断し、900℃の炉(furnace)に入れて上記ブランク試片が900℃に到達した後2分間維持した。その後、上記加熱されたブランク試片を20秒以内に金型に移送した後、上記金型を用いて熱間成形することにより熱間成形部材を得て、この熱間成形部材を20℃/sの冷却速度で冷却した。このように製造された熱間成形部材について、微細組織、表面品質、耐食性及び溶接性を評価した後、その結果を下記表2に示した。
【0044】
表面品質は、めっき時に発生する亜鉛アッシュによる表面欠陥の発生量とスナウト設備に別途付着した試片に蒸着されたアッシュ量とを測定して比較した。亜鉛アッシュの発生量はめっき浴の温度及び亜鉛の含量に密接な関係を有するが、めっき浴の温度にさらに大きな影響を受けるため、めっき浴の温度が最も低い比較例9を基準にして以下のように評価した。
○:良好(比較例9に対してアッシュの発生量が130%未満)
△:普通(比較例9に対してアッシュの発生量が130~200%未満)
×:不良(比較例9に対してアッシュの発生量が200%以上)
【0045】
耐食性は、塩水噴霧試験機で腐食環境を造成し、素地鋼板が腐食するまで実験を進めて相対的な比較を行った。熱間プレス鋼板が自動車において主に構造部材として使用され、鋼材が腐食する場合、最も薄い部分で破断が起こる現象を考慮し、試片において最大に浸食された腐食深さを耐食性の評価基準として設定した。このとき、試片ごとに少しずつ異なる付着量の差を相殺するために、素地鋼板のクラック深さをめっき付着量でnormalizedした後、最も深いクラックが発生した比較例1を基準にして比較値(Normailzed Crack Depth、NCD)を作成した。このとき、基準である比較例1のNCD値は1であり、NCD値が小さいほど耐食性が良いと判断することができる。
◎:0.5以下
○:0.5超過~0.7
△:0.7超過~0.9
×:0.9超過~1.0
【0046】
溶接性の評価は50Hzスポット溶接機を使用して行われ、SEP1220規定に従って評価を行った。溶接性は、最大溶接電流と最小溶接電流の間隔で評価した。最大溶接電流とは、溶接部内の板材間にスプラッシュが発生した場合を意味し、この場合100Aずつ下げて3回の連続実験においてもスプラッシュが発生しない電流を指す。最小溶接電流は、スポット溶接部の直径が4t0.5以下(t=鋼材の厚さ)であるときの電流を指し、100Aずつ電流を上げて5回の溶接を行って確認した。最大溶接電流と最小溶接電流間の間隔が広いほど溶接性が良好であると判断することができる。
◎:1kA以上
○:0.6kA~1kA未満
△:0kA超過~0.6kA未満
×:スプラッシュ発生などにより電流範囲を測定不可
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
上記表1及び2から分かるように、本発明が提案する条件を全て満たす発明例1~3の場合には、表面品質、耐食性及び溶接性がいずれも良好であることが分かる。
【0050】
これに対し、比較例1の場合には、Znが含まれていないことから耐食性が不良なレベルであることが分かる。比較例2及び3の場合には、Znが本発明が提案する範囲より低いレベルであり、十分な耐食性が確保できなかった。比較例4の場合には、Znが本発明で提案する範囲より低いレベルであるが、Mgの添加により耐食性は良好であった。しかし、過度なMgの添加により溶接性が不良であることが確認できる。比較例5は、Siが本発明で提案する範囲より低いレベルであるため、良好な表面品質及び溶接性を確保していなかった。比較例6は、Siが本発明で提案する範囲より高いレベルであるため、良好な表面品質を確保していなかった。比較例7は、Znが本発明で提案する範囲より高いレベルであるため、良好な表面品質及び溶接性が確保できなかった。比較例8は、通常の亜鉛系めっき鋼板であって、耐食性には優れているが、亜鉛酸化物のため溶接性が不良であることが分かる。
【手続補正書】
【提出日】2022-03-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
素地鋼板;及び
前記素地鋼板上に形成されたアルミニウム合金めっき層;を含み、
前記アルミニウム合金めっき層は、重量%で、Zn:21~35%、Si:1~6.9%、Fe:2~12%、残部Al及びその他の不可避不純物を含むアルミニウム合金めっき鋼板。
【請求項2】
前記素地鋼板は、重量%で、C:0.15~0.39%、Mn:0.5~3%、B:0.01%以下(0%を含む)、Ti:0.1%以下(0%を含む)、残部Fe及びその他の不可避不純物を含む、請求項1に記載のアルミニウム合金めっき鋼板。
【請求項3】
前記アルミニウム合金めっき層はMg:1.4%以下をさらに含む、請求項1又は2に記載のアルミニウム合金めっき鋼板。
【請求項4】
前記アルミニウム合金めっき層はAl/(Zn+Si)が1.3~2.6である、請求項1~3のいずれか1項に記載のアルミニウム合金めっき鋼板。
(但し、上記Al、Zn及びSiの含量単位は重量%である。)
【請求項5】
素地鋼板;及び上記素地鋼板上に形成されたアルミニウム合金めっき層;を含み、前記アルミニウム合金めっき層は、重量%で、Zn:21~35%、Si:1~6.9%、Fe:2~12%、Mg:1.2%以下(0%を含む)、残部Al及びその他の不可避不純物を含むアルミニウム合金めっき鋼板を熱間成形して得られる熱間成形部材であって、
面積%で、マルテンサイト:90%以上と、残部フェライト、ベイナイトのうち1種以上を含む微細組織を有する熱間成形部材。
【請求項6】
前記熱間成形部材は1200MPa以上の引張強度を有する、請求項5に記載の熱間成形部材。
【請求項7】
素地鋼板を準備する段階;及び
前記素地鋼板を580~680℃のめっき浴に浸漬して前記素地鋼板の表面にアルミニウム合金めっき層を形成させる段階;を含み、
前記めっき浴は、重量%で、Zn:23~40%、Si:1~8%、残部Al及びその他の不可避不純物を含むアルミニウム合金めっき鋼板の製造方法。
【請求項8】
前記素地鋼板は、重量%で、C:0.15~0.39%、Mn:0.5~3%、B:0.01%以下(0%を含む)、Ti:0.1%以下(0%を含む)、残部Fe及びその他の不可避不純物を含む、請求項7に記載のアルミニウム合金めっき鋼板の製造方法。
【請求項9】
前記めっき浴はMg:1.4%以下をさらに含む、請求項7又は8に記載のアルミニウム合金めっき鋼板の製造方法。
【請求項10】
前記めっき浴はAl/(Zn+Si)が1.3~2.6である、請求項7~9のいずれか1項に記載のアルミニウム合金めっき鋼板の製造方法。
(但し、前記Al、Zn及びSiの含量単位は重量%である。)
【請求項11】
前記アルミニウム合金めっき層を形成する段階の前に、前記素地鋼板を650~850℃で熱処理する段階をさらに含む、請求項7~10のいずれか1項に記載のアルミニウム合金めっき鋼板の製造方法。
【請求項12】
前記熱処理は、体積%で、25%以下(0%を含む)の水素ガス及び残部窒素ガスで構成される還元性雰囲気で行われる、請求項11に記載のアルミニウム合金めっき鋼板の製造方法。
【請求項13】
前記めっき浴の温度は、めっき液の融点+20℃~めっき液の融点+80℃である、請求項7~12のいずれか1項に記載のアルミニウム合金めっき鋼板の製造方法。
【請求項14】
前記素地鋼板のめっき浴の引き込み温度は、めっき浴の温度+5℃~めっき浴の温度+50℃である、請求項7~13のいずれか1項に記載のアルミニウム合金めっき鋼板の製造方法。
【請求項15】
前記アルミニウム合金めっき層を形成する段階の後に、前記アルミニウム合金めっき層のめっき付着量を制御する段階をさらに含む、請求項7~14のいずれか1項に記載のアルミニウム合金めっき鋼板の製造方法。
【請求項16】
前記めっき付着量は片面基準15~150g/mである、請求項15に記載のアルミニウム合金めっき鋼板の製造方法。
【請求項17】
請求項7から16のいずれか一項に記載の方法により得られたアルミニウム合金めっき鋼板をAc3温度以上に加熱する段階;
前記加熱されたアルミニウム合金めっき鋼板を金型を用いて熱間成形して熱間成形部材を得る段階;及び
前記熱間成形部材を10℃/s以上の冷却速度で冷却する段階を含む、熱間成形部材の製造方法。
【請求項18】
前記加熱の前に、前記アルミニウム合金めっき鋼板をブランクとして作製する段階をさらに含む、請求項17に記載の熱間成形部材の製造方法。
【請求項19】
前記加熱は1~15分間行われる、請求項17又は18に記載の熱間成形部材の製造方法。
【請求項20】
前記加熱されたアルミニウム合金めっき鋼板を金型に移送するとき、前記移送時間は20秒以内である、請求項17~19のいずれか1項に記載の熱間成形部材の製造方法。
【手続補正書】
【提出日】2022-07-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0023】
以下では、本発明の一実施形態による熱間成形部材について説明する。本発明の一実施形態による熱間成形部材は、上述した特徴を有するアルミニウム合金めっき鋼板を熱間成形して得られる熱間成形部材であって、面積%で、マルテンサイト:90%以上と、残部フェライト、ベイナイトのうち1種以上を含む微細組織を有することが好ましい。上記マルテンサイトは強度確保に非常に有利な組織であって、本発明では、その分率を90%以上となるように制御する。上記マルテンサイトの分率が90%未満の場合には、十分な強度を確保することが困難である。したがって、上記マルテンサイトの分率は90%以上であることが好ましい。上記マルテンサイトの分率は93%以上であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましく、97%以上であることが最も好ましい。一方、強度確保の観点から、上記マルテンサイトは100%であることが最も好ましいが、製造工程上、不可避にフェライト、ベイナイト等の微細組織が不純組織として形成されることがある。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0031
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0031】
上記Siの含量は1~%であることが好ましいが、1%未満の場合には、Siによる合金化反応の抑制効果が起こらず、アルミニウムが素地鉄に拡散したアルミニウム拡散層が素地鉄に厚く形成されて溶接性を低下させる。また、素地鉄とめっき層との界面が不均一に形成され、めっき表面にまで影響を及ぼし、表面品質を低下させる。ケイ素の含量が多い場合には、めっき浴の融点を高めて表面欠陥を誘発させる。亜鉛が30%含有されたアルミニウムめっき浴においてSiとAlの共融点は6.9%であって、上記Siの含量が%を超える場合には、亜鉛を含むAl-Si共融相組成を超えてSiが増加するほど、めっき浴の融点が急速に高くなり、めっき浴の温度が高くなると、めっき浴のアッシュ発生量が急増するという問題点がある。また、%を超えると、めっき浴から出た素地鋼板の表面で凝固を開始するめっき層内にAlではなくSiが先に析出するようになり、めっき層の表面が不均一になる。したがって、上記Siの含量は1~%の範囲を有することが好ましい。上記Si含量の下限は1.1%であることがより好ましく、1.5%であることがさらに好ましく、2%であることが最も好ましい。上記Si含量の上限は6.5%であることがより好ましく、6.0%であることがさらに好ましく、5.0%未満であることが最も好ましい。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0033
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0033】
上記めっき浴の温度は、めっき液の融点+20℃~めっき液の融点+80℃であることが好ましい。このように、めっき浴の温度をめっき液の融点より20~80℃高く管理することにより、めっき浴内のシンクロールの駆動性を向上させることができる。通常的に、めっき液の粘度はめっき浴の温度と反比例関係を有し、温度が高くなるほど粘度が低下してめっき作業性が良くなる。万一、上記めっき浴の温度がめっき液の融点+20℃未満の場合には、シンクロールの駆動性が劣り、ロールのテンション(tension)管理が難しく、シンクロールの振動等による製品の表面欠陥が発生する可能性がある。これに対し、めっき液の融点+80℃を超える場合には、亜鉛の蒸発による表面欠陥が発生する可能性があり、高温により機器設備が劣化する可能性がある。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0035
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0035】
一方、上記アルミニウム合金めっき層を形成する段階の後には、上記アルミニウム合金めっき層のめっき付着量を制御する段階をさらに含むことができる。上記めっき付着量の制御は、エアナイフ(Air knife)というガスを噴射するノズルによって行われることができる。上記めっき付着量の制御時に、上記めっき付着量は片面基準15~150g/mであってもよい。上記めっき付着量が15g/m未満の場合には、十分な耐食性を確保しにくい可能性があり、150g/mを超える場合には、フローパターン等による付着量の偏差のため、局部的な合金化の不均一により表面欠陥及びめっき層の金型焼着問題等が発生する可能性がある。上記めっき付着量の下限は25g/であることがより好ましく、上記めっき付着量の上限は100g/であることがさらに好ましい。
【手続補正5】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
素地鋼板;及び
前記素地鋼板上に形成されたアルミニウム合金めっき層;を含み、
前記アルミニウム合金めっき層は、重量%で、Zn:21~35%、Si:1~6.9%、Fe:2~12%、残部Al及びその他の不可避不純物を含むアルミニウム合金めっき鋼板。
【請求項2】
前記素地鋼板は、重量%で、C:0.15~0.39%、Mn:0.5~3%、B:0.01%以下(0%を含む)、Ti:0.1%以下(0%を含む)、残部Fe及びその他の不可避不純物を含む、請求項1に記載のアルミニウム合金めっき鋼板。
【請求項3】
前記アルミニウム合金めっき層はMg:1.4%以下をさらに含む、請求項1又は2に記載のアルミニウム合金めっき鋼板。
【請求項4】
前記アルミニウム合金めっき層はAl/(Zn+Si)が1.3~2.6である、請求項1~3のいずれか1項に記載のアルミニウム合金めっき鋼板。
(但し、上記Al、Zn及びSiの含量単位は重量%である。)
【請求項5】
素地鋼板;及び上記素地鋼板上に形成されたアルミニウム合金めっき層;を含み、前記アルミニウム合金めっき層は、重量%で、Zn:21~35%、Si:1~6.9%、Fe:2~12%、Mg:1.2%以下(0%を含む)、残部Al及びその他の不可避不純物を含むアルミニウム合金めっき鋼板を熱間成形して得られる熱間成形部材であって、
面積%で、マルテンサイト:90%以上と、残部フェライト、ベイナイトのうち1種以上を含む微細組織を有する熱間成形部材。
【請求項6】
前記熱間成形部材は1200MPa以上の引張強度を有する、請求項5に記載の熱間成形部材。
【請求項7】
素地鋼板を準備する段階;及び
前記素地鋼板を560~680℃のめっき浴に浸漬して前記素地鋼板の表面にアルミニウム合金めっき層を形成させる段階;を含み、
前記めっき浴は、重量%で、Zn:23~40%、Si:1~8%、残部Al及びその他の不可避不純物を含むアルミニウム合金めっき鋼板の製造方法。
【請求項8】
前記素地鋼板は、重量%で、C:0.15~0.39%、Mn:0.5~3%、B:0.01%以下(0%を含む)、Ti:0.1%以下(0%を含む)、残部Fe及びその他の不可避不純物を含む、請求項7に記載のアルミニウム合金めっき鋼板の製造方法。
【請求項9】
前記めっき浴はMg:1.4%以下をさらに含む、請求項7又は8に記載のアルミニウム合金めっき鋼板の製造方法。
【請求項10】
前記めっき浴はAl/(Zn+Si)が1.3~2.6である、請求項7~9のいずれか1項に記載のアルミニウム合金めっき鋼板の製造方法。
(但し、前記Al、Zn及びSiの含量単位は重量%である。)
【請求項11】
前記アルミニウム合金めっき層を形成する段階の前に、前記素地鋼板を650~850℃で熱処理する段階をさらに含む、請求項7~10のいずれか1項に記載のアルミニウム合金めっき鋼板の製造方法。
【請求項12】
前記熱処理は、体積%で、25%以下(0%を含む)の水素ガス及び残部窒素ガスで構成される還元性雰囲気で行われる、請求項11に記載のアルミニウム合金めっき鋼板の製造方法。
【請求項13】
前記めっき浴の温度は、めっき液の融点+20℃~めっき液の融点+80℃である、請求項7~12のいずれか1項に記載のアルミニウム合金めっき鋼板の製造方法。
【請求項14】
前記素地鋼板のめっき浴の引き込み温度は、めっき浴の温度+5℃~めっき浴の温度+50℃である、請求項7~13のいずれか1項に記載のアルミニウム合金めっき鋼板の製造方法。
【請求項15】
前記アルミニウム合金めっき層を形成する段階の後に、前記アルミニウム合金めっき層のめっき付着量を制御する段階をさらに含む、請求項7~14のいずれか1項に記載のアルミニウム合金めっき鋼板の製造方法。
【請求項16】
前記めっき付着量は片面基準15~150g/mである、請求項15に記載のアルミニウム合金めっき鋼板の製造方法。
【請求項17】
請求項7から16のいずれか一項に記載の方法により得られたアルミニウム合金めっき鋼板をAc3温度以上に加熱する段階;
前記加熱されたアルミニウム合金めっき鋼板を金型を用いて熱間成形して熱間成形部材を得る段階;及び
前記熱間成形部材を10℃/s以上の冷却速度で冷却する段階を含む、熱間成形部材の製造方法。
【請求項18】
前記加熱の前に、前記アルミニウム合金めっき鋼板をブランクとして作製する段階をさらに含む、請求項17に記載の熱間成形部材の製造方法。
【請求項19】
前記加熱は1~15分間行われる、請求項17又は18に記載の熱間成形部材の製造方法。
【請求項20】
前記加熱されたアルミニウム合金めっき鋼板を金型に移送するとき、前記移送時間は20秒以内である、請求項17~19のいずれか1項に記載の熱間成形部材の製造方法。
【国際調査報告】