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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-30
(54)【発明の名称】誘電体フィルタおよび通信デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01P 1/205 20060101AFI20221122BHJP
   H01P 7/06 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
H01P1/205 H
H01P7/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022519770
(86)(22)【出願日】2019-09-30
(85)【翻訳文提出日】2022-05-10
(86)【国際出願番号】 CN2019109711
(87)【国際公開番号】W WO2021062787
(87)【国際公開日】2021-04-08
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503433420
【氏名又は名称】華為技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】HUAWEI TECHNOLOGIES CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Huawei Administration Building, Bantian, Longgang District, Shenzhen, Guangdong 518129, P.R. China
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133569
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 進
(72)【発明者】
【氏名】▲喬▼ 冬春
(72)【発明者】
【氏名】徐 芳▲海▼
(72)【発明者】
【氏名】石 晶
(72)【発明者】
【氏名】杜 ▲暁▼▲亮▼
【テーマコード(参考)】
5J006
【Fターム(参考)】
5J006HA03
5J006HC03
5J006JA01
5J006JA22
5J006LA02
5J006NB01
5J006ND03
(57)【要約】
本出願の実施形態は、誘電体フィルタおよび通信デバイスを提供する。誘電体フィルタは、誘電体と、誘電体に設けられた第1の行き止まりヴィアおよび第2の行き止まりヴィアと、第1の行き止まりヴィアと第2の行き止まりヴィアとの間に位置する貫通孔と、絶縁部分とを含み、第1の行き止まりヴィア、第2の行き止まりヴィア、および貫通孔の内壁は、各々が金属層で覆われ、誘電体の外面は、金属層で覆われ、絶縁部分は、誘電体の表面の金属層を覆わないことによって実現され、絶縁部分は、貫通孔を部分的に取り囲んでいる。本出願の実施形態における誘電体フィルタを使用することによって、第1の行き止まりヴィアに進入する信号波が貫通孔を通過するとき、信号波の位相が負に90度シフトして、信号波が第2の行き止まりヴィアに伝達され、したがって誘電体フィルタの電気的結合が実現される。電気的結合を実現するこのようなやり方においては、第1の行き止まりヴィアと第2の行き止まりヴィアとの間に貫通孔が設けられるため、モデリング処理の複雑さが低減される。さらに、このような電気的結合のやり方は、寄生共振効果を有さず、低帯域抑制に悪影響を及ぼさない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体と、前記誘電体に設けられた第1の行き止まりヴィアおよび第2の行き止まりヴィアと、前記第1の行き止まりヴィアと前記第2の行き止まりヴィアとの間に位置する貫通孔と、絶縁部分とを備えており、前記第1の行き止まりヴィア、前記第2の行き止まりヴィア、および前記貫通孔の内壁は、各々が金属層で覆われ、前記誘電体の外面は、金属層で覆われ、
前記絶縁部分は、前記誘電体の表面の金属層を覆わないことによって実現され、前記絶縁部分は、前記貫通孔を部分的に取り囲んでいる、誘電体フィルタ。
【請求項2】
前記第1の行き止まりヴィアの開口部、前記第2の行き止まりヴィアの開口部、および前記貫通孔の第1の開口部が、いずれも前記誘電体の第1の平面上に設けられ、前記貫通孔の第2の開口部が、前記誘電体の第2の平面上に設けられ、前記第1の平面と前記第2の平面とが反対向きに配置される、
請求項1に記載の誘電体フィルタ。
【請求項3】
前記貫通孔は、連通された第1の貫通孔部分および第2の貫通孔部分を備え、前記第1の貫通孔部分の開口は、前記第2の貫通孔部分の開口よりも小さく、
前記第1の貫通孔部分の第1の開口部が、前記貫通孔の前記第1の開口部であり、前記第2の貫通孔部分の第2の開口部が、前記貫通孔の前記第2の開口部であり、前記第1の貫通孔部分は、前記第1の貫通孔部分の第2の開口部および前記第2の貫通孔部分の第1の開口部を介して、前記第2の貫通孔部分に連通され、前記貫通孔の前記第1の開口部は、前記誘電体の第1の平面上に設けられ、前記貫通孔の前記第2の開口部は、前記誘電体の第2の平面上に設けられ、前記第1の平面と前記第2の平面とが反対向きに配置される、
請求項1または2に記載の誘電体フィルタ。
【請求項4】
前記絶縁部分は、前記第2の貫通孔部分を部分的に取り囲む、
請求項3に記載の誘電体フィルタ。
【請求項5】
前記絶縁部分は、前記第2の平面上に設けられ、前記第2の貫通孔部分の前記第2の開口部を部分的に取り囲む、
請求項4に記載の誘電体フィルタ。
【請求項6】
前記絶縁部分は、前記第2の貫通孔部分の内壁に設けられる、
請求項4に記載の誘電体フィルタ。
【請求項7】
前記第2の平面への前記第1の貫通孔部分の前記第1の開口部の投影が、前記第2の貫通孔部分の前記第2の開口部の中央位置に位置する、
請求項3から6のいずれか一項に記載の誘電体フィルタ。
【請求項8】
前記第2の平面への前記第1の貫通孔部分の前記第1の開口部の投影が、前記第2の貫通孔部分の前記第2の開口部の非中央位置に位置する、
請求項3から6のいずれか一項に記載の誘電体フィルタ。
【請求項9】
前記絶縁部分は、前記第2の平面への前記第1の貫通孔部分の前記第1の開口部の投影を取り囲む、
請求項7または8に記載の誘電体フィルタ。
【請求項10】
前記絶縁部分と前記第2の貫通孔部分との間に距離が存在する、請求項4または5に記載の誘電体フィルタ。
【請求項11】
前記絶縁部分の縁部が前記第2の貫通孔部分の縁部に一致する、請求項4または5に記載の誘電体フィルタ。
【請求項12】
少なくとも2つの第2の貫通孔部分が存在し、前記第2の貫通孔部分の開口は、前記第1の貫通孔部分から遠ざかる方向に順次大きくなっている、請求項3に記載の誘電体フィルタ。
【請求項13】
前記絶縁部分は、前記第2の平面上に設けられ、前記絶縁部分は、最大の開口を有する第2の貫通孔部分を部分的に取り囲む、請求項12に記載の誘電体フィルタ。
【請求項14】
前記絶縁部分は、任意の第2の貫通孔部分の内壁に設けられている、請求項12に記載の誘電体フィルタ。
【請求項15】
前記第1の貫通孔部分は円柱形であり、前記第2の貫通孔部分は細長い、請求項3から14のいずれか一項に記載の誘電体フィルタ。
【請求項16】
前記誘電体はセラミックである、請求項1から15のいずれか一項に記載の誘電体フィルタ。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか一項に記載の誘電体フィルタを備える、通信デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願の実施形態は、通信技術に関し、とくには誘電体フィルタおよび通信デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
現代の移動通信技術において、無線周波数コンポーネントが通信デバイスの必須の一部分になっている。これに対応して、基本無線周波数ユニットとして、フィルタが、或る特定の周波数の信号をフィルタ処理し、目的の信号を得ることができる。誘電体フィルタは高Qセラミック誘電体フィルタであるため、従来からの金属フィルタと比較して、低挿入損失、高抑制、高相互変調、および低い温度ドリフトという利点を有する。したがって、誘電体フィルタは、さまざまな通信デバイスに広く用いられている。
【0003】
図1が、従来からの技術による誘電体フィルタの構造の概略図である。図1に示されるように、既存の誘電体フィルタは、誘電体として誘電体材料(例えば、セラミック)を用いており、誘電体に3つの行き止まりヴィアR1、R2、およびR3が設けられている。R1およびR2は、共振空洞と呼ばれ、フィルタの共振器に相当する。R1とR2との間のR3は、結合空洞と呼ばれる。R3の共振周波数は、R1およびR2の共振周波数よりも低く、したがって極性反転の原理を使用することによって共振器R1およびR2の間の電気的結合が実現されることができる。
【0004】
従来からの技術において、R1とR2との間の電気的結合を実現するこのようなやり方は、寄生共振効果を発生させ、通過帯域の低帯域抑制にさらに悪影響を及ぼす。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本出願の実施形態は、モデリング処理の複雑さを低減するために、誘電体フィルタおよび通信デバイスを提供する。さらに、誘電体フィルタの結合のやり方が、寄生共振効果を有さず、低帯域抑制に悪影響を及ぼさない。
【0006】
第1の態様によれば、本出願の実施形態は、誘電体フィルタを提供する。誘電体フィルタは、信号波をフィルタ処理するために、通信デバイスに適用されることができる。誘電体フィルタは、誘電体と、誘電体に設けられた第1の行き止まりヴィアおよび第2の行き止まりヴィアと、第1の行き止まりヴィアと第2の行き止まりヴィアとの間に位置する貫通孔と、絶縁部分とを含み、第1の行き止まりヴィア、第2の行き止まりヴィア、および貫通孔の内壁は、各々が金属層で覆われ、誘電体の外面は、金属層で覆われ、絶縁部分は、誘電体の表面の金属層を覆わないことによって実現され、絶縁部分は、貫通孔を部分的に取り囲んでいる。
【0007】
本出願のこの実施形態における誘電体フィルタにおいて、第1の行き止まりヴィアと第2の行き止まりヴィアとの間に貫通孔が設けられ、絶縁部分が貫通孔を部分的に取り囲むため、第1の行き止まりヴィアに進入する信号波が貫通孔を通過するとき、信号波の位相が負に90度シフトして、信号波が第2の行き止まりヴィアに伝達され、したがって誘電体フィルタの電気的結合が実現される。加えて、電気的結合を実現するこのようなやり方においては、第1の行き止まりヴィアと第2の行き止まりヴィアとの間に貫通孔が設けられるため、モデリング処理の複雑さが低減される。さらに、このような電気的結合のやり方は、寄生共振効果を有さず、低帯域抑制に悪影響を及ぼさない。
【0008】
可能な設計において、第1の行き止まりヴィアの開口部、第2の行き止まりヴィアの開口部、および貫通孔の第1の開口部が、いずれも誘電体の第1の平面上に設けられ、貫通孔の第2の開口部が、誘電体の第2の平面上に設けられ、第1の平面と第2の平面とが反対向きに配置される。
【0009】
このような配置のやり方は、誘電体フィルタのモデリング処理を容易にし、絶縁部分の配置を容易にし、貫通孔の複数の実現を容易にすることができる。
【0010】
第1の行き止まりヴィアの開口部および第2の行き止まりヴィアの開口部の配置のやり方に対応して、以下で、本出願のこの実施形態における貫通孔および絶縁部分の配置のやり方を説明する。
【0011】
可能な設計において、貫通孔は、連通された第1の貫通孔部分および第2の貫通孔部分を含み、第1の貫通孔部分の開口は、第2の貫通孔部分の開口よりも小さく、第1の貫通孔部分の第1の開口部が、貫通孔の第1の開口部であり、第2の貫通孔部分の第2の開口部が、貫通孔の第2の開口部であり、第1の貫通孔部分は、第1の貫通孔部分の第2の開口部および第2の貫通孔部分の第1の開口部を介して、第2の貫通孔部分に連通され、貫通孔の第1の開口部は、誘電体の第1の平面上に設けられ、貫通孔の第2の開口部は、誘電体の第2の平面上に設けられ、第1の平面と第2の平面とが反対向きに配置される。
【0012】
可能な設計において、第1の貫通孔部分の第1の開口部の第2の平面への投影が、第2の貫通孔部分の第2の開口部の中心位置にあり、あるいは第1の貫通孔部分の第1の開口部の第2の平面への投影が、第2の貫通孔部分の第2の開口部の非中心位置にある。
【0013】
可能な設計において、絶縁部分は、第2の貫通孔部分を部分的に取り囲む。
【0014】
この設計において、絶縁部分は、第2の平面上に設けられ、第2の貫通孔部分の第2の開口部を部分的に取り囲む。
【0015】
この設計において、絶縁部分と第2の貫通孔部分との間に距離が存在し、あるいは絶縁部分の縁部が第2の貫通孔部分の縁部と一致する。
【0016】
可能な設計において、絶縁部分は、第2の貫通孔部分の内壁に設けられる。
【0017】
第1の貫通孔部分および第2の貫通孔部分の相対位置、ならびに絶縁部分の配置にかかわらず、絶縁部分が、電気的結合を実現するために、第2の平面上の第1の貫通孔部分の第1の開口部の投影を取り囲む必要があることを、理解されたい。
【0018】
可能な設計において、少なくとも2つの第2の貫通孔部分が存在し、第2の貫通孔部分の開口は、第1の貫通孔部分から遠ざかる方向に順次大きくなっている。
【0019】
この設計において、絶縁部分は、第2の平面上に設けられ、絶縁部分は、最大の開口を有する第2の貫通孔部分を部分的に取り囲む。
【0020】
この設計において、絶縁部分は、任意の第2の貫通孔部分の内壁に設けられる。
【0021】
この設計において、複数の絶縁部分が存在してよく、各々の絶縁部分が、1つの第2の貫通孔部分を部分的に取り囲み、絶縁部分は、第2の貫通孔部分の内壁に設けられてよい。
【0022】
可能な設計において、第1の貫通孔部分は円柱形であり、第2の貫通孔部分は細長い。
【0023】
可能な設計において、誘電体はセラミックである。
【0024】
第2の態様によれば、本出願の実施形態は、通信デバイスをさらに提供する。通信デバイスは、第1の態様による誘電体フィルタを含む。本出願のこの実施形態において提供される通信デバイスは、誘電体フィルタと同じ技術的効果を実現することができる。詳細については、上述の実施形態の関連の説明を参照されたい。
【0025】
本出願の実施形態は、誘電体フィルタおよび通信デバイスを提供する。誘電体フィルタは、誘電体と、誘電体に設けられた第1の行き止まりヴィアおよび第2の行き止まりヴィアと、第1の行き止まりヴィアと第2の行き止まりヴィアとの間に位置する貫通孔と、絶縁部分とを含み、第1の行き止まりヴィア、第2の行き止まりヴィア、および貫通孔の内壁は、各々が金属層で覆われ、誘電体の外面は、金属層で覆われ、絶縁部分は、誘電体の表面の金属層を覆わないことによって実現され、絶縁部分は、貫通孔を部分的に取り囲んでいる。本出願のこの実施形態における誘電体フィルタにおいて、第1の行き止まりヴィアと第2の行き止まりヴィアとの間に貫通孔が設けられ、絶縁部分が貫通孔を部分的に取り囲むため、第1の行き止まりヴィアに進入する信号波が貫通孔を通過するとき、信号波の位相が負に90度シフトして、信号波が第2の行き止まりヴィアに伝達され、したがって誘電体フィルタの電気的結合が実現される。加えて、電気的結合を実現するこのようなやり方においては、第1の行き止まりヴィアと第2の行き止まりヴィアとの間に貫通孔が設けられるため、モデリング処理の複雑さが低減される。さらに、このような電気的結合のやり方は、寄生共振効果を有さず、低帯域抑制に悪影響を及ぼさない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】従来からの技術による誘電体フィルタの構造の概略図である。
図2】フィルタの原理参照の概略図である。
図3図1に示されるR1とR2との間にR3が配置されていることを示す等価回路図である。
図4】R3の共振周波数がR1およびR2の共振周波数よりも大きいことを示す等価回路図である。
図5】R3の共振周波数がR1およびR2の共振周波数よりも小さいことを示す等価回路図である。
図6図1に対応する等価回路図である。
図7図1に対応する誘電体フィルタの上面図である。
図8】本出願の実施形態による誘電体フィルタの第1の上面図である。
図9】本出願の実施形態による誘電体フィルタの第2の上面図である。
図10】本出願の実施形態による誘電体フィルタの構造の第1の概略図である。
図11図10に示した貫通孔における信号波の伝達の概略図である。
図12】本出願の実施形態による誘電体フィルタの構造の第2の概略図である。
図13】本出願の実施形態による誘電体フィルタの構造の第3の概略図である。
図14】本出願の実施形態による誘電体フィルタの構造の第4の概略図である。
図15図13の誘電体フィルタに対応する上面図である。
図16】本出願の実施形態による誘電体フィルタの上面図である。
図17図13の貫通孔を通過する信号波の伝達の概略図である。
図18】本出願の実施形態による誘電体フィルタにおける貫通孔および絶縁部分の配置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
参照符号の説明
R1 第1の行き止まりヴィア
R2 第2の行き止まりヴィア
H 貫通孔
H1 第1の貫通孔部分
H2 第2の貫通孔部分
I 絶縁部分
【0028】
本出願の実施形態において提供される誘電体フィルタをよりよく理解するために、以下で、従来からの技術におけるフィルタの構造および原理を詳細に説明する。
【0029】
図2が、フィルタの原理参照の概略図である。図2は、2つの行き止まりヴィアR1およびR2が設けられた誘電体の上面図である。行き止まりヴィアの深さは、行き止まりヴィアの共振周波数に関連し、行き止まりヴィアの深さが大きいほど、共振周波数は低くなる。図2に示されるように、誘電体に同じ深さの2つの行き止まりヴィアR1、R2が設けられている場合、2つの行き止まりヴィアR1、R2の共振周波数は同じである。外部信号波が、R1に進入し、R1を介してR2に伝達され、次いでR2を介して別のデバイスに伝達される。R1およびR2の共振周波数が同じであるため、R1およびR2はいかなる電気的結合も生じず、したがって信号波をフィルタ処理することはできない。
【0030】
例えば、信号波が外部からR1に伝達されるとき、信号波の伝達方向は時計回りである。R1とR2との間に電気的結合が生じられていないため、R1に伝達された信号波は、空間伝達の様相でR2に伝達され、すなわちR2に伝達される信号波の伝達方向も時計回りである。
【0031】
可能な実施態様において、外部信号波は、R1へと挿入されたコンタクト線を介してR1に伝達される。同様に、R2に進入する信号波は、R2へと挿入されたコンタクト線を介して他のデバイスに伝達される。以下の実施形態において、外部信号波がR1へと伝達され、R2を介して別のデバイスへと伝達されるやり方が、このやり方と同じであっても、違ってもよいことが、理解されるべきである。これは、本出願のこの実施形態において限定されない。
【0032】
R1とR2との間に電気的結合を生じさせて信号波をフィルタ処理することを可能にするために、図1に示されるように、従来からの技術においては、極性反転の原理を使用することによってR1とR2との間の電気的な結合を実現するために、R1とR2との間に、より低い共振周波数を有する行き止まりヴィアR3が設けられる。図3図6を参照して、図1に示されるR1とR2との間の電気的結合の原理を、以下で説明する。
【0033】
図3は、図1に示されるR1とR2との間にR3が配置されていることを示す等価回路図である。図4は、R3の共振周波数がR1およびR2の共振周波数よりも大きいことを示す等価回路図である。図5は、R3の共振周波数がR1およびR2の共振周波数よりも小さいことを示す等価回路図である。図6は、図1に対応する等価回路図である。図3に示されるように、R3がR1とR2との間に配置されており、これはインダクタとキャパシタとを並列に接続することに相当する。R3の共振周波数がR1およびR2の共振周波数よりも大きいとき、図4に示されるように、インダクタは開ループに相当する。したがって、R3をR1とR2との間に配置することは、キャパシタを並列に接続することに相当する。同様に、R3の共振周波数がR1およびR2の共振周波数よりも小さいとき、図5に示されるように、キャパシタンスは開ループに相当する。したがって、R3をR1とR2との間に配置することは、キャパシタを並列に接続することに相当する。
【0034】
図6に示されるように、従来からの技術において、より低い共振周波数を有するR3がR1とR2との間に配置されるとき、それはR1とR2との間にキャパシタを接続することに相当し、すなわちR1とR2との間にインダクタを直列に接続することに相当する。行き止まりヴィアR1とR2との間の磁気的結合に鑑み、R1およびR2は、直列に接続された2つのインダクタに相当する。これに基づき、R1とR2との間に、より低い共振周波数を有するR3が配置される。これは、直列に接続された3つのインダクタに相当する。一般に、信号波の位相は、信号波がインダクタを通過した後に正に90度シフトする。したがって、信号波が外部から図1に示されるフィルタに進入するとき、それは、信号波が3つのインダクタを通過することに相当し、信号波の位相が正に270度シフトし、すなわち負に90度シフトする。このようにして、フィルタ処理のために電気的結合が実現される。
【0035】
したがって、図7が、図1に対応する誘電体フィルタの上面図である。図7に示されるように、信号波が外部からR1に伝達されるとき、信号波の伝達方向は時計回りである。より低い共振周波数を有するR3ゆえに、R1とR2との間に電気的結合が生じられ、換言すると、R2に伝達される信号波の伝達方向が変化する。図7に示されるように、R2へと伝達される信号波の伝達方向は、反時計回りへと変化する。
【0036】
従来からの技術におけるR1とR2との間の電気的結合の強度が、R3の深さに依存することを理解すべきである。R3の深さがR1およびR2の深さよりも大きい場合、電気的結合が実現されることができる。R1とR2との間に弱い電気的結合が実現される必要がある場合、R3の深さをより大きくする必要がある。第1に、誘電体の材料ゆえに、R1とR2との間に電気的結合が実現される必要がある場合、通常は、さまざまな深さの貫通孔がドライプレス成形法にて誘電体に設けられ、モデリング処理は実現困難である。加えて、弱い結合が実現されるべき場合、R3の深さをより大きくする必要がある。この場合、R3の深さとR1およびR2の深さとの間の差が大きく、ドライプレスモデリングでは密度が不均一になり、大量生産の一貫性が悪化し、したがって手直しなしでの歩留まりに悪影響が及ぶ。さらに、従来からの技術においては、電気的結合が実現される場合に寄生共振効果が発生され、したがって通過帯域の低帯域抑制に悪影響が及ぶ。とりわけ、フィルタが図1に示される複数の構造を有する場合、低帯域抑制が明らかに弱められる。結果として、フィルタが実際の要件を満たすことができない。
【0037】
上述の問題を解決するために、本出願の実施形態は、誘電体フィルタを提供する。誘電体における2つの行き止まりヴィアの間に、貫通孔が設けられる。貫通孔は、貫通孔に進入する信号波が負の180度の位相シフトを生じることを可能にすることができ、すなわち、信号波をフィルタ処理するために2つの行き止まりヴィアの間に電気的結合が生成されるように、貫通孔に進入する信号波の位相が正の90度から負の90度に変化することを可能にすることができる。
【0038】
本出願の実施形態における電気的結合は、負結合またはキャパシタ結合と呼ばれることもできることを、理解されるべきである。
【0039】
以下で、特定の実施形態を参照して、本出願の実施形態において提供されるフィルタの構造を詳細に説明する。以下のいくつかの実施形態が互いに組み合わせられることが可能であり、一部の実施形態において、同じまたは類似の概念またはプロセスについて再度の説明は行われないかもしれない。
【0040】
図8が、本出願の実施形態による誘電体フィルタの第1の上面図である。図9が、本出願の実施形態による誘電体フィルタの第2の上面図である。図8に示されるように、本出願のこの実施形態における誘電体フィルタは、誘電体10と、誘電体10内に設けられた第1の行き止まりヴィアR1および第2の行き止まりヴィアR2と、第1の行き止まりヴィアR1と第2の行き止まりヴィアR2との間に位置する貫通孔Hと、絶縁部分Iとを含む。
【0041】
随意により、本出願のこの実施形態における誘電体は、セラミックであってよい。
【0042】
貫通孔Hが第1の行き止まりヴィアR1と第2行き止まりヴィアR2との間に設けられているとは、貫通孔Hの中心位置が図8に示されるとおりに設けられてよく、第1の行き止まりヴィアR1の中心位置および第2の行き止まりヴィアR2の中心位置と同じ線上に設けられていることを意味し、あるいは図9に示されるとおりに設けられてよく、第1の行き止まりヴィアR1の中心位置および第2の行き止まりヴィアR2の中心位置と同じ線上には設けられていないことを意味する。本出願のこの実施形態において、貫通孔Hは、第1の行き止まりヴィアR1と第2の行き止まりヴィアR2との間に設けられるが、貫通孔Hと第1の行き止まりヴィアR1または第2の行き止まりヴィアR2との間の相対的な位置関係は、とくに限定されない。本出願のこの実施形態において、貫通孔Hと行き止まりヴィアとを区別するために、異なる線が表現に使用されることを理解されたい。本出願のこの実施形態において、誘電体における破線の領域は、貫通孔Hを表し、実線の領域は、行き止まりヴィアを表す。
【0043】
本出願のこの実施形態において、第1の行き止まりヴィアR1、第2の行き止まりヴィアR2、および貫通孔Hの内壁はそれぞれ金属層で覆われ、誘電体の外面は金属層で覆われる。図8において、第1の行き止まりヴィアR1、第2の行き止まりヴィアR2、および貫通孔Hが、内壁が金属層で覆われていることを示すために、濃い灰色で示されていることを理解されたい。本出願のこの実施形態における誘電体の外面も、やはり金属層で覆われており、換言すると、本出願のこの実施形態において外部とつながる誘電体のすべての部分(例えば、外面、ならびに第1の行き止まりヴィアR1、第2の行き止まりヴィアR2、および貫通孔Hの内壁)が、信号波を伝達するために金属層で覆われてよいことを理解されたい。本出願のこの実施形態において、第1の行き止まりヴィアR1、第2の行き止まりヴィアR2、および貫通孔Hの内壁、ならびに誘電体の外面を金属層で覆うやり方について、従来からの技術における金属層の被覆の方法を参照されたい。ここでは詳細は説明されない。
【0044】
誘電体、第1の行き止まりヴィアR1、第2の行き止まりヴィアR2、および貫通孔Hを明瞭に示すために、本出願の実施形態において、誘電体の外面が添付の図面において濃い灰色で表されていないことが理解され得るであろう。
【0045】
本出願のこの実施形態における誘電体フィルタが、絶縁部分Iをさらに含むことに留意されたい。絶縁部分Iは、誘電体の表面を金属層で被覆しないことによって実現されることができる。例えば、絶縁部分Iを形成するために、誘電体の外面または内面(例えば、貫通孔Hの内壁)が金属層で覆われなくてよい。絶縁部分Iは金属層で覆われていないため、図8において濃い灰色ではない領域が破線を用いて表されていることを理解されたい。
【0046】
絶縁部分Iは、貫通孔Hを部分的に取り囲む。本出願のこの実施形態において、絶縁部分Iが貫通孔Hを部分的に取り囲むとは、絶縁部分Iが貫通孔Hを完全には取り囲まないことを意味すると理解されたい。随意により、本出願のこの実施形態における絶縁部分Iは、図8に示されるような角張った環状、図9に示されるような円形、または貫通孔Hを部分的に取り囲むことができる別の形状であってよい。絶縁部分Iの形状は、本出願のこの実施形態において限定されない。
【0047】
本出願のこの実施形態において、第1の行き止まりヴィアR1に進入する信号波が、貫通孔Hを通過するときに負の90度の位相シフトを生じ、第2の行き止まりヴィアR2へと伝達されるように、絶縁部分Iが貫通孔Hを部分的に取り囲むことを理解されたい。換言すると、貫通孔Hに進入する信号波を負の90度の位相シフトが生じた後に第2の行き止まりヴィアR2に伝達できるように、絶縁部分Iが貫通孔Hを部分的に取り囲む。
【0048】
例えば、図8および図9に示されるように、信号波が外部からR1へと伝達されるとき、信号波の伝達方向は時計回りであり、信号波は、貫通孔Hの通過後に負の90度の位相シフトが生じた後に、第2の行き止まりヴィアR2に伝達される。R2へと伝達される図8および図9に示される信号波の伝達方向は、反時計回りへと変化する。
【0049】
随意により、本出願のこの実施形態において、第1の行き止まりヴィアR1の開口部および第2の行き止まりヴィアR2の開口部の両方が、誘電体の第1の平面上に配置されてよい。これに対応して、貫通孔Hの第1の開口部が誘電体の第1の平面上に配置されてよく、貫通孔Hの第2の開口部が誘電体の第2の平面上に配置されてよい。第1の平面および第2の平面は、反対向きに配置される。
【0050】
随意により、第1の行き止まりヴィアR1の開口部および第2の行き止まりヴィアR2の開口部は、誘電体の異なる平面上に配置されてよい。これに対応して、貫通孔Hの第1の開口部および第1の行き止まりヴィアR1の開口部が、同じ平面上に配置されてよく、貫通孔Hの第2の開口部および第2の行き止まりヴィアR2の開口部が、同じ平面上に配置されてよい。
【0051】
随意により、本出願のこの実施形態において、第1の行き止まりヴィアR1の開口部、第2の行き止まりヴィアR2の開口部、貫通孔Hの第1の開口部、および貫通孔Hの第2の開口部は、代案において、別のやり方で誘電体の異なる平面上に設けられてよい。第1の平面、第2の平面、同じ平面、または異なる平面における「平面」が、誘電体の外面であることを理解されたい。以下の実施形態において、第1の行き止まりヴィアR1の開口部および第2の行き止まりヴィアR2の開口部の両方が誘電体の第1の平面上に配置され、貫通孔Hの第1の開口部が誘電体の第1の平面上に配置され、貫通孔Hの第2の開口部が誘電体の第2の平面上に配置されてよく、第1の平面と第2の平面とが反対向きに配置される例が、説明のために使用されることを理解されたい。
【0052】
図10が、本出願の実施形態による誘電体フィルタの構造の第1の概略図である。図10に示されるように、可能な実施態様において、貫通孔Hは、図10に示される傾斜した円柱貫通孔Hであってよく、絶縁部分Iは、誘電体の外面(例えば、誘電体の下面)に設けられてよく、金属層を覆わないことによって実現され、絶縁部分Iは、誘電体の表面における傾斜した円柱貫通孔Hの開口部1の投影を取り囲む。すなわち、傾斜した円柱貫通孔Hの開口部1が位置される表面における絶縁部分Iの投影が、傾斜した円柱貫通孔Hの開口部1を取り囲む。本出願において、絶縁部分Iが破線の囲みを使用して表されていることを理解されたい。
【0053】
図11が、図10に示した貫通孔における信号波の伝達の概略図である。この状況において、図11に示されるように、第1の行き止まりヴィアR1に進入する信号波が貫通孔Hへと伝達されるとき、貫通孔Hが絶縁部分Iによって部分的に取り囲まれていることで、貫通孔Hに進入する信号波の貫通孔Hにおける伝達は、図11に示されるような「Z」字形になることができ、具体的には、第1の行き止まりヴィアR1に進入する信号波が貫通孔Hを通過するときに、信号波の位相が負に90度シフトし、信号波が第2の行き止まりヴィアR2に伝達される。すなわち、図10に示される誘電体フィルタの電気的結合が実現されることができる。
【0054】
図12が、本出願の実施形態による誘電体フィルタの構造の第2の概略図である。図12に示されるように、可能な実施態様において、貫通孔Hは、図10に示される傾斜した円柱貫通孔Hであってよく、絶縁部分Iは、誘電体の内面(例えば、貫通孔Hの内壁)に設けられてよく、金属層を覆わないことによって実現され、絶縁部分Iは、誘電体の表面における傾斜した円柱貫通孔Hの開口部1の投影を取り囲む。同様に、第1の行き止まりヴィアR1に進入する信号波が貫通孔Hへと伝達されるとき、貫通孔Hが絶縁部分Iによって部分的に取り囲まれていることで、貫通孔Hに進入する信号波の貫通孔Hにおける伝達は、やはり図11に示されるような「Z」字形になることができ、具体的には、第1の行き止まりヴィアR1に進入する信号波が貫通孔Hを通過するときに、信号波の位相が負に90度シフトし、信号波が第2の行き止まりヴィアR2に伝達される。すなわち、図12に示される誘電体フィルタの電気的結合が実現されることができる。
【0055】
本出願の実施形態において提供される誘電体フィルタは、誘電体と、誘電体に設けられた第1の行き止まりヴィアおよび第2の行き止まりヴィアと、第1の行き止まりヴィアと第2の行き止まりヴィアとの間に位置する貫通孔と、絶縁部分とを含み、第1の行き止まりヴィア、第2の行き止まりヴィア、および貫通孔の内壁がそれぞれ金属層で覆われ、誘電体の外面が金属層で覆われ、絶縁部分は、誘電体の表面の金属層を覆わないことによって実現され、絶縁部分は、貫通孔を部分的に取り囲む。本出願のこの実施形態における誘電体フィルタにおいて、第1の行き止まりヴィアと第2の行き止まりヴィアとの間に貫通孔が設けられ、絶縁部分が貫通孔を部分的に取り囲むため、第1の行き止まりヴィアに進入する信号波が貫通孔を通過するとき、信号波の位相が負に90度シフトして、信号波が第2の行き止まりヴィアに伝達され、したがって誘電体フィルタの電気的結合が実現される。加えて、電気的結合を実現するこのようなやり方においては、第1の行き止まりヴィアと第2の行き止まりヴィアとの間に貫通孔が設けられるため、モデリング処理の複雑さが低減される。さらに、このような電気的結合のやり方は、寄生共振効果を有さず、低帯域抑制に悪影響を及ぼさない。
【0056】
上述の実施形態に基づき、本出願の実施形態における貫通孔Hの構造および絶縁部分Iの配置のやり方が、以下の実施形態を参照して詳細に説明される。
【0057】
本出願の実施形態において提供される誘電体フィルタにおいて、第1の行き止まりヴィアR1の開口部、第2の行き止まりヴィアR2の開口部、および貫通孔Hの第1の開口部は、すべて誘電体の第1の平面上に設けられ、貫通孔Hの第2の開口部は、誘電体の第2の平面上に設けられ、第1の平面と第2の平面とは反対向きに配置される。
【0058】
このような配置のやり方は、誘電体フィルタのモデリング処理を容易にし、絶縁部分Iの配置を容易にし、貫通孔Hの複数の実現を容易にすることができる。
【0059】
可能な実施態様において、貫通孔Hは、連通された第1の貫通孔部分H1および第2の貫通孔部分H2を含み、換言すると、貫通孔Hは、互いに連通された2つの貫通孔H部分で実現される。第1の貫通孔部分H1の開口は、第2の貫通孔部分H2の開口よりも小さい。
【0060】
第1の行き止まりヴィアR1の開口部、第2の行き止まりヴィアR2の開口部、および貫通孔Hの開口部(第1の開口部および第2の開口部)の任意の可能な配置の状況において、本出願のいくつかの実施形態では、第1の貫通孔部分H1の第1の開口部が、貫通孔Hの第1の開口部であり、第2の貫通孔部分H2の第2の開口部が、貫通孔Hの第2の開口部であり、第1の貫通孔部分H1は、第1の貫通孔部分H1の第2の開口部および第2の貫通孔部分H2の第1の開口部を介して、第2の貫通孔部分H2と連通される。貫通孔Hの第1の開口部は、誘電体の第1の平面上に設けられ、貫通孔Hの第2の開口部は、誘電体の第2の平面上に設けられ、第1の平面と第2の平面は反対向きに配置される。
【0061】
随意により、第1の貫通孔部分H1および第2の貫通孔部分H2は、円柱状であってよく、第1の貫通孔部分H1および第2の貫通孔部分H2は、細長くてもよく、第1の貫通孔部分H1が円柱状であって、第2の貫通孔部分H2が細長くてもよく、第1の貫通孔部分H1が細長くて、第2の貫通孔部分H2が円柱状であってもよく、あるいは第1の貫通孔Hおよび第2の貫通孔Hは、他の形状に設定されてもよい。以下の実施形態において、第1の貫通孔部分H1が円柱状であり、第2の貫通孔部分H2が細長い例が、本出願の実施形態における誘電体フィルタを説明するために使用されることを理解されたい。
【0062】
図13が、本出願の実施形態による誘電体フィルタの構造の第3の概略図である。図13に示されるように、第1の行き止まりヴィアR1と第2の行き止まりヴィアR2との間に設けられた貫通孔Hは、円柱状の第1の貫通孔部分H1および細長い第2の貫通孔部分H2である連通された2つの貫通孔部分を含む。本出願のこの実施形態において、円柱状の貫通孔部分の第1の開口部は、誘電体の第1の平面上に設けられ、細長い貫通孔部分の第2の開口部は、誘電体の第2の平面上に設けられ、円柱状の貫通孔部分は、円柱状の貫通孔部分の第2の開口部および細長い貫通孔部分の第1の開口部を介して、細長い貫通孔部分と連通される。
【0063】
この状況において、第1の行き止まりヴィアR1に進入する信号波が、貫通孔H(第1の貫通孔部分H1および第2の貫通孔部分H2を含む)を通過するときに負の90度の位相シフトを生じ、第2の行き止まりヴィアR2に伝達されることで、電気的結合を実現するように、絶縁部分Iが第2の貫通孔部分H2を部分的に取り囲むことができる。
【0064】
図13に基づいて、絶縁部分Iの配置の様相を以下で説明する。
【0065】
可能な実施態様において、図13に示されるように、絶縁部分Iは、第2の平面上に設けられ、第2の貫通孔部分H2の第2の開口部を部分的に取り囲むことができる。
【0066】
この状況において、可能な実施態様では、図13に示されるように、誘電体フィルタのモデリング処理を容易にするために、絶縁部分Iと第2の貫通孔部分H2との間に距離が存在してよい。絶縁リングが、絶縁リングを具体化するために灰色に塗られていることが理解されるべきであるが、絶縁リングが、金属層で覆われていないことに留意されるべきである。
【0067】
この状況において、可能な実施態様では、絶縁部分Iの縁部が第2の貫通孔部分H2の縁部と一致してもよく、すなわち、絶縁部分Iの縁部は、第2の貫通孔部分H2の第2の開口部の縁部と一致してもよい。
【0068】
可能な実施態様において、図14が、本出願の実施形態による誘電体フィルタの構造の第4の概略図である。図14に示されるように、絶縁部分Iが、第2の貫通孔部分H2の内壁に設けられている。図14が絶縁部分Iおよび貫通孔Hのみを示していることを、理解されたい。
【0069】
貫通孔Hが第1の貫通孔部分H1および第2の貫通孔部分H2を含む状況で、可能な実施態様において、図13および図14に示されるように、第2の平面上の第1の貫通孔部分H1の第1の開口部の投影が、第2の貫通孔部分H2の第2の開口部の非中心位置にあることに留意されたい。図15が、図13の誘電体フィルタに対応する上面図である。
【0070】
可能な実施態様において、第2の平面上の第1の貫通孔部分H1の第1の開口部の投影は、第2の貫通孔部分H2の第2の開口部の中心位置にある。図16が、本出願の実施形態による誘電体フィルタの上面図である。図16に示されるように、第1の貫通孔部分H1が円柱状であり、第2の貫通孔部分H2が細長いことを、理解されたい。図16に示されるように、第2の平面上の円柱状の貫通孔部分の第1の開口部の中心の投影は、第2の貫通孔部分H2の第2の開口部の中心位置にある。
【0071】
本出願のこの実施形態において、絶縁部分Iが、第2の平面上の第1の貫通孔部分H1の第1の開口部の投影を取り囲むことに留意されたい。貫通孔Hが第1の貫通孔部分H1および第2の貫通孔部分H2を含む状況で、例えば、図13および図14に示される状況において、絶縁部分Iが、第2の平面上の第1の貫通孔部分H1の第1の開口部の投影を取り囲む必要があることを、理解されたい。すなわち、本出願の実施形態において、第2の平面上の第1の貫通孔部分H1の投影が第2の貫通孔部分H2の第2の開口部の中心位置にあるかどうか、および絶縁リングが第2の平面または第2の貫通孔部分H2の内壁のどちらに配置されているかにかかわらず、絶縁部分Iは、誘電体フィルタの電気的結合を実現するために、第2の平面上の第1の貫通孔部分H1の第1の開口部の投影を取り囲む必要がある。
【0072】
図17を参照して、貫通孔Hが第1の貫通孔部分H1および第2の貫通孔部分H2を有する場合に誘電体フィルタの電気的結合を実現する原理を、以下で説明する。図17は、図13の貫通孔を通過する信号波の伝達の概略図である。図17に示されるように、貫通孔Hへと伝達された信号波は、第1の貫通孔部分H1の第1の開口部を介して下方に伝達されることができる。絶縁リングが第2の平面上の第1の貫通孔部分H1の第1の開口部の投影を取り囲んでいるため、信号波は、下方に直接伝達されるのではなく、負の90度の位相シフトを生じた後に左方に伝達され、その後に下方に伝達される。これに基づき、信号波は、貫通孔Hを通過するときに負の90度の位相シフトを生じ、電気的結合を実現する。
【0073】
したがって、図15に示されるように、信号波が外部からR1へと伝達されるとき、信号波の伝達方向は時計回りであり、信号波は、貫通孔Hの通過後に負の90度の位相シフトが生じた後に、第2の行き止まりヴィアR2に伝達される。R2へと伝達される図15に示される信号波の伝達方向は、反時計回りへと変化する。
【0074】
本出願の実施形態において、誘電体フィルタの電気的結合は、以下のやり方のうちの少なくとも1つにてさらに実現されてもよいことに留意されたい。
1.第2の貫通孔部分H2の深さに対する第1の貫通孔部分H1の深さの比を調整する。
2.絶縁部分Iの長さを調整する。
3.絶縁リングの幅を調整する。
【0075】
本出願のこの実施形態において提供される誘電体フィルタにおいて、第1の行き止まりヴィアと第2の行き止まりヴィアとの間に設けられる貫通孔は、連通された第1の貫通孔部分および第2の貫通孔部分を含み、第1の貫通孔部分の開口は、第2の貫通孔部分の開口よりも小さい。第1の貫通孔部分と第2の貫通孔部分との相対位置は、第1の貫通孔部分の第1の開口部の第2の平面への投影が、第2の貫通孔部分の第2の開口部の中心位置にあるか、あるいは第1の貫通孔部分の第1の開口部の第2の平面への投影が、第2の貫通孔部分の第2の開口部の非中心位置にあるかであってよい。これに対応して、絶縁部分は、誘電体の第2の平面上に設けられてよく、第2の貫通孔部分の第2の開口部を取り囲み、あるいは第2の貫通孔部分の内壁に設けられてよい。第1の貫通孔部分および第2の貫通孔部分の相対位置、ならびに絶縁部分の配置にかかわらず、絶縁部分が、電気的結合を実現するために、第2の平面上の第1の貫通孔部分の第1の開口部の投影を取り囲む必要があることを、理解されたい。
【0076】
上述の実施形態の誘電体フィルタの構造においては、第2の貫通孔部分H2が1つ存在する。図18を参照して、複数の第2の貫通孔部分H2を有する誘電体フィルタの構造が、以下の実施形態において説明される。誘電体フィルタにおける貫通孔Hおよび絶縁部分Iの配置のやり方をより明瞭に説明するために、図18は、誘電体フィルタにおける貫通孔Hおよび絶縁部分Iのみを図示している。
【0077】
図18は、本出願の実施形態による誘電体フィルタにおける貫通孔および絶縁部分の配置の概略図である。図18に示されるように、少なくとも2つの第2の貫通孔部分H2が存在し、第2の貫通孔部分H2の開口は、第1の貫通孔部分H1から遠ざかる方向に順次大きくなっている。
【0078】
図18に示されるように、2つの第2の貫通孔部分H2が存在し、第2の貫通孔部分H2の開口は、第1の貫通孔部分H1から遠ざかる方向に順次大きくなっている。
【0079】
図18に示される状況において、可能な実施態様では、絶縁部分Iが誘電体の第2の平面上に設けられてよく、絶縁部分Iは、最大の開口を有する第2の貫通孔部分H2を部分的に取り囲む。図18に示されるように、絶縁部分Iは、誘電体の第2の平面上に設けられ、絶縁部分Iは、最大の開口を有し、第1の貫通孔部分H1から最も遠い第2の貫通孔部分H2を部分的に取り囲む。
【0080】
可能な実施態様において、絶縁部分Iは、第2の貫通孔部分H2の内壁に設けられる。例えば、絶縁部分Iは中央位置において第2の貫通孔部分H2の内壁に設けられることができる。任意の第2の貫通孔部分H2の内壁上の絶縁部分Iの配置のやり方について、第2の貫通孔部分H2の内壁に設けられた図14に示される実施形態における絶縁部分Iの関連の説明および配置のやり方を参照されたい。
【0081】
可能な実施態様においては、複数の絶縁部分Iが存在し、各々の絶縁部分Iが、1つの第2の貫通孔部分H2を部分的に取り囲み、絶縁部分Iは、第2の貫通孔部分H2の内壁に設けられてよい。各々の絶縁部分Iは、同一または異なる長さまたは幅を有してよいが、第2の平面上の第1の貫通孔部分H1の第1の開口部の投影を取り囲む。この状況において、第1の貫通孔部分H1に近い絶縁部分Iのみが機能することを理解されたい。
【0082】
本出願のこの実施形態において、第1の貫通孔部分H1と第2の貫通孔部分H2との相対位置が、第1の貫通孔部分H1の第1の開口部の第2の平面への投影が、第2の貫通孔部分H2の第2の開口部の中心位置にあるか、あるいは第1の貫通孔部分H1の第1の開口部の第2の平面への投影が、第2の貫通孔部分H2の第2の開口部の非中心位置にあるかであってよいことに、留意されたい。第1の貫通孔部分H1および第2の貫通孔部分H2の相対位置、ならびに絶縁部分Iの配置にかかわらず、絶縁部分Iが、電気的結合を実現するために、第2の平面上の第1の貫通孔部分H1の第1の開口部の投影を取り囲む必要があることを、理解されたい。
【0083】
上述の状況において、図18は、信号波の伝達の例を示している。信号波の伝達の例の原理は、図17のものと同様である。貫通孔Hへと伝達された信号波は、第1の貫通孔部分H1の第1の開口部を介して下方に伝達されることができる。絶縁リングが第2の平面上の第1の貫通孔部分H1の第1の開口部の投影を取り囲んでいるため、信号波は、下方に直接伝達されるのではなく、負の90度の位相シフトを生じた後に左方に伝達され、その後に下方に伝達される。これに基づき、信号波は、貫通孔Hを通過するときに負の90度の位相シフトを生じ、電気的結合を実現する。
【0084】
本出願のこの実施形態において、誘電体フィルタに少なくとも2つの第2の貫通孔部分が存在でき、第2の貫通孔部分の開口は、第1の貫通孔部分から遠ざかる方向に順次大きくなる。この状況において、絶縁部分は第2の平面上に設けられることができ、絶縁部分は、最大の開口を有する第2の貫通孔部分を部分的に取り囲み、あるいは絶縁部分は、任意の第2の貫通孔部分の内壁上に設けられ、もしくは各々の第2の貫通孔部分の内壁に、1つの絶縁部分が設けられる。第1の貫通孔部分および第2の貫通孔部分の相対位置、ならびに絶縁部分の配置にかかわらず、絶縁部分が、電気的結合を実現するために、第2の平面上の第1の貫通孔部分の第1の開口部の投影を取り囲む必要があることを、理解されたい。
【0085】
本出願の実施形態は、通信デバイスをさらに提供する。通信デバイスは、上述の実施形態において説明した誘電体フィルタを含む。本出願のこの実施形態において提供される通信デバイスが、誘電体フィルタと同じ技術的効果を実現できることを理解されたい。詳細については、上述の実施形態の関連の説明を参照されたい。本明細書において、詳細は重ねて説明されない。随意により、通信デバイスは、基地局またはトランシーバであってよい。
【符号の説明】
【0086】
1 開口部
10 誘電体
H 貫通孔
H1 第1の貫通孔部分
H2 第2の貫通孔部分
I 絶縁部分
R1 第1の行き止まりヴィア
R2 第2の行き止まりヴィア
R3 行き止まりヴィア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【国際調査報告】