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特表2022-550174マンノシル化デキストランおよび他のCD206リガンドの非特異的局在をブロックするための組成物および関連する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-30
(54)【発明の名称】マンノシル化デキストランおよび他のCD206リガンドの非特異的局在をブロックするための組成物および関連する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/54 20170101AFI20221122BHJP
   A61K 31/721 20060101ALI20221122BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221122BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20221122BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20221122BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221122BHJP
   A61K 45/06 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
A61K47/54
A61K31/721
A61P35/00
A61P37/06
A61P29/00
A61P43/00 121
A61K45/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022519804
(86)(22)【出願日】2020-09-30
(85)【翻訳文提出日】2022-04-19
(86)【国際出願番号】 US2020053604
(87)【国際公開番号】W WO2021067479
(87)【国際公開日】2021-04-08
(31)【優先権主張番号】62/908,136
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】594012483
【氏名又は名称】ナビディア、バイオファーマスーティカルズ、インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NAVIDEA BIOPHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ、デイビッド エイ.
(72)【発明者】
【氏名】アーノルド、ジェフリー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076BB11
4C076CC04
4C076CC07
4C076CC27
4C076DD67
4C076EE38
4C076FF67
4C084AA20
4C084MA66
4C084NA06
4C084NA13
4C084ZB111
4C084ZB112
4C084ZB131
4C084ZB132
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC751
4C084ZC752
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA20
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA66
4C086NA06
4C086NA13
4C086ZB11
4C086ZB13
4C086ZB26
4C086ZC75
(57)【要約】
少なくとも、骨格と、それに結合した1つ以上のCD206標的化部分とを含むブロッキング組成物を投与することと、デキストラン骨格と、それに結合した1つ以上のCD206標的化部分および1つ以上の治療薬とを含む、有効量のマンノシル化デキストラン治療用または診断用化合物を投与することとによって、マンノシル化デキストラン治療用または診断用化合物の標的特異性を高めるための方法が開示される。例示的な実現態様において、ブロッキング組成物骨格の分子質量は、マンノシル化デキストラン骨格化合物の分子質量より少なくとも約2倍大きい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンノシル化デキストラン治療用または診断用化合物の標的特異性を高めるための方法であって、
a.少なくとも、骨格と、それに結合した1つ以上のCD206標的化部分とを含むブロッキング化合物を投与することと、
b.デキストラン骨格と、それに結合した1つ以上のCD206標的化部分および1つ以上の治療薬または診断薬とを含む、有効量の前記マンノシル化デキストラン治療用または診断用化合物を投与することと、を含み、
前記ブロッキング組成物骨格の分子質量が、前記マンノシル化デキストラン骨格化合物の分子質量より少なくとも2倍大きい、方法。
【請求項2】
前記マンノシル化デキストラン治療用または診断用化合物が、式(I):
【化1】
(式中、
各Xは、独立して、H、L1-A、またはL2-Rであり、
各L1およびL2は、独立して、リンカーであり、
各Aは、独立して、治療薬、診断薬、またはHを含み、
各Rは、独立して、マンノース結合C型レクチン受容体標的化部分またはHを含み、
nは、ゼロより大きい整数であり、
少なくとも1つのRは、マンノース、フコース、およびn-アセチルグルコサミンからなる群から選択されるマンノース結合C型レクチン受容体標的化部分を含み、少なくとも1つのAは、治療薬または診断薬を含む)の化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ブロッキング化合物骨格が、デキストラン、セルロース、ポリエチレングリコール、およびポリペプチドからなるリストから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記骨格がデキストランである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記1つ以上のCD206標的化部分が、リーシュで前記ブロッキング化合物骨格に結合されている、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ブロッキング化合物骨格が、少なくとも約35kDaである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ブロッキング化合物骨格が、約35kDa~約180kDaである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ブロッキング化合物骨格が、約35kDa~約500kDaである、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記ブロッキング化合物が、式(I):
【化2】
(式中、
各XはHであり、
各Rは、独立して、マンノース結合C型レクチン受容体標的化部分またはHを含み、
nは、ゼロより大きい整数であり、
少なくとも1つのRは、マンノース、フコース、およびn-アセチルグルコサミンからなる群から選択されるマンノース結合C型レクチン受容体標的化部分を含む)の化合物である、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記ブロッキング化合物骨格が、約110kDaであり、前記マンノシル化デキストラン治療用または診断用化合物のデキストラン骨格が、約10kDaである、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記ブロッキング化合物が治療薬または診断薬を含有しない、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
前記ブロッキング化合物を投与するステップの後、前記マンノシル化デキストラン治療用または診断用化合物を投与するステップの前に少なくとも0~60分の時間間隔が続く、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記時間間隔が、約10分~約20分である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ブロッキング化合物および前記マンノシル化デキストラン治療用または診断用化合物が、同時に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記マンノシル化デキストラン治療用または診断用化合物が、少なくとも1つの治療用部分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
肝臓、腎臓、および/または脾臓以外の所望の標的組織に局在する前記マンノシル化デキストラン治療用または診断用化合物の注射用量の割合が、前記ブロッキング化合物を投与しない場合の前記マンノシル化デキストラン治療用または診断用化合物が局在する割合よりも高い、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記マンノシル化デキストラン治療用または診断用化合物の有効用量が、前記ブロッキング化合物を投与しない場合の前記マンノシル化デキストラン治療用または診断用化合物の前記有効用量よりも低い、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記ブロッキング化合物が、肝臓、腎臓、および/または脾臓でCD206発現細胞に優先的に結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記マンノシル化デキストラン治療用または診断用化合物が、前記ブロッキング化合物を投与せずに同等の用量のマンノシル化デキストラン治療用または診断用化合物を投与した対象と比較して、肝臓、腎臓、および/または脾臓におけるCD206細胞への結合を減少させた、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記対象が、自己免疫疾患、炎症性疾患、またはがんと診断されている、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
マンノシル化デキストラン治療用または診断用化合物の標的特異性を高めるための方法であって、
a.少なくとも、骨格と、それに結合した1つ以上のCD206標的化部分とを含むブロッキング化合物を投与することであって、前記ブロッキング化合物が、約35kDa~約500kDaである、投与することと、
b.デキストラン骨格と、それに結合した1つ以上のCD206標的化部分および1つ以上の治療薬または診断薬とを含む、有効量の前記マンノシル化デキストラン治療用または診断用化合物を投与することと、を含み、
前記ブロッキング組成物骨格の分子質量が、前記マンノシル化デキストラン骨格化合物の分子質量より少なくとも2倍大きい、方法。
【請求項22】
診断または治療を必要とする対象の診断または治療のためのキットであって、
a.骨格と、それに結合した1つ以上のCD206標的化部分とを含むブロッキング化合物と、
b.デキストラン骨格と、それに結合した1つ以上のCD206標的化部分および1つ以上の治療薬とを含む、マンノシル化デキストラン治療用または診断用化合物と、を含み、
前記ブロッキング組成物骨格の分子質量が、前記マンノシル化デキストラン骨格化合物の分子質量より少なくとも2倍大きい、キット。
【請求項23】
前記マンノシル化デキストラン治療用または診断用化合物が、式(I):
【化3】
(式中、
各Xは、独立して、H、L1-A、またはL2-Rであり、
各L1およびL2は、独立して、リンカーであり、
各Aは、独立して、治療薬、診断薬、またはHを含み、
各Rは、独立して、マンノース結合C型レクチン受容体標的化部分またはHを含み、
nは、ゼロより大きい整数であり、
少なくとも1つのRは、マンノース、フコース、およびn-アセチルグルコサミンからなる群から選択されるマンノース結合C型レクチン受容体標的化部分を含み、少なくとも1つのAは、治療薬または診断薬を含む)の化合物である、請求項22に記載のキット。
【請求項24】
前記ブロッキング化合物骨格が、約110kDaであり、前記マンノシル化デキストラン治療用または診断用化合物のデキストラン骨格が、約10kDaである、請求項22に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年9月30日に出願された米国仮出願第62/908,136号、表題「Compositions and Related Methods for Blocking Off-Target Localization of Mannosylated Dextrans and Other Cd206 Ligands」に対する、米国特許法第119条(e)の利益を主張するものであり、すべての目的のために、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
マクロファージは、多くの社会的に重要な疾患の病理生物学に大きく寄与している。マクロファージが関与する疾患の病変中に、マクロファージが大量に発生する場合がある。マクロファージが関与する疾患の例としては、がん、アテローム性動脈硬化症、および関節リウマチが挙げられるが、これらに限定されない。マクロファージは、潜在的には数百個もの多くの遺伝子の発現パターンを変化させることによって、それらの局所微小環境において様々な刺激に応答する。そのような表現型を変化させたマクロファージは、活性化されたマクロファージであると言われる。マクロファージがどの刺激に応答しているかに応じて、広範囲の活性化された表現型状態を達成することができる。マクロファージの活性化時に差異的に発現させることができる遺伝子の中には、マクロファージマンノース受容体CD206があり、これは、限定されないが、腫瘍(すなわち、腫瘍関連マクロファージ、TAM)、アテローム性動脈硬化、および関節リウマチ等の炎症部位に存在する活性化マクロファージの大部分において高度に上方制御される。
【0003】
マクロファージは、マクロファージが関与する疾患の病変中に豊富であるだけでなく、これらの疾患の病理生物学にも大きく寄与するため、多くの研究者が、これらの状態(例が挙げられる)を診断するためのツールとして、マクロファージにイメージング剤を標的化し、かつ/またはマクロファージが関与する状態(例が挙げられる)を治療するための戦略として、マクロファージに治療薬を標的化してきた。また、CD206は、典型的には、マクロファージが関与する疾患の病変中に存在する活性化マクロファージ上で高度に発現されるため、多くの研究者が、CD206を標的とする薬剤を評価し、これらの病変または疾患を画像化および/または治療してきた。
【0004】
CD206は、複数の糖の部分を示す結合リガンドであるマンノースに対して高い親和性を有する膜貫通C型レクチンである。CD206は、マクロファージおよび骨髄系由来サプレッサー細胞を含む骨髄系、ならびに樹状細胞およびミクログリアのいくつかの集団を含む、様々な細胞型上で発現される。重要なことに、CD206はクッパー細胞によって発現される。クッパー細胞は、正弦波毛細血管の壁に沿って大量に生じる、肝臓の常在マクロファージ様細胞である。したがって、クッパー細胞は、血液と直接接触している。CD206発現細胞の別の重要なクラスは、腎臓の糸球体に存在するメサンギウム細胞からなる。メサンギウム細胞は、関連する基底膜を有しない内皮細胞によってのみ血液から分離されるため、メサンギウム細胞は、ほぼ妨げられることなく、血液中の巨大分子と接触することができる。
【0005】
チルマノセプトは、マンノース部分およびキレート剤ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)を、アミン末端リーシュ(leash)を介して10kDのデキストラン骨格に結合させることによって作製される合成分子構築物である。チルマノセプトは、デキストラン骨格分子当たり、平均17個のマンノース部分、5個のDTPA部分、および様々な数の占有されていないアミン末端リーシュを有する。チルマノセプトは、マンノシル化デキストランと称される関連構築物のクラスのメンバーである。マンノシル化デキストランは、様々な組成の分子リーシュによってデキストラン骨格に結合された様々な数のマンノース部分を有する様々なサイズのデキストランを使用して構築することができる。これらの構築物には、多くの種類の他の部分(ほんの一例としてはDTPA)がコンジュゲートされ得る。マンノシル化デキストランは概して、チルマノセプトは特に、ある特定のC型レクチン、特にマクロファージマンノース受容体CD206に対する高親和性リガンドであるように意図的に設計される。しかしながら、特に肝臓および腎臓におけるCD206発現細胞への結合による非特異的局在は、望ましくない、かつ/または用量制限的な結果を有する。したがって、当該技術分野において、マンノシル化デキストランベースの治療薬および診断薬の標的特異性を高める方法が必要である。
【発明の概要】
【0006】
少なくとも、骨格と、それに結合した1つ以上のCD206標的化部分とを含むブロッキング組成物を投与することと、デキストラン骨格と、それに結合した1つ以上のCD206標的化部分および1つ以上の治療薬とを含む、有効量のマンノシル化デキストラン治療用または診断用化合物を投与することとによって、マンノシル化デキストラン治療用または診断用化合物の標的特異性を高めるための方法が開示される。例示的な実現態様において、ブロッキング組成物骨格の分子質量は、マンノシル化デキストラン骨格化合物の分子質量より少なくとも2倍大きい。
【0007】
ある特定の態様において、マンノシル化デキストラン治療用または診断用化合物は、式(I):
【0008】
【化1】
【0009】
(式中、
各Xは、独立して、H、L1-A、またはL2-Rであり、
各L1およびL2は、独立して、リンカーであり、
各Aは、独立して、治療薬、診断薬、またはHを含み、
各Rは、独立して、マンノース結合C型レクチン受容体標的化部分またはHを含み、
nは、ゼロより大きい整数であり、
少なくとも1つのRは、マンノース、フコース、およびn-アセチルグルコサミンからなる群から選択されるマンノース結合C型レクチン受容体標的化部分を含み、少なくとも1つのAは、治療薬または診断薬を含む)の化合物である。
【0010】
ある特定の態様において、ブロッキング化合物骨格は、デキストラン、セルロース、ポリエチレングリコール、またはポリペプチドから選択される。例示的な実現態様において、骨格はデキストランである。
【0011】
さらなる態様において、1つ以上のCD206標的化部分は、リーシュでブロッキング化合物骨格に結合されている。
ある特定の態様によれば、ブロッキング化合物骨格は、少なくとも約35kDaである。さらなる態様において、ブロッキング化合物骨格は、約35kDa~180kDaである。さらにさらなる態様において、ブロッキング化合物骨格は、約35kDa~500kDaである。
【0012】
ある特定の態様によれば、ブロッキング化合物は、式(I):
【0013】
【化2】
【0014】
(式中、
各XはHであり、
各Rは、独立して、マンノース結合C型レクチン受容体標的化部分またはHを含み、
nは、ゼロより大きい整数であり、
少なくとも1つのRは、マンノース、フコース、およびn-アセチルグルコサミンからなる群から選択されるマンノース結合C型レクチン受容体標的化部分を含む)の化合物である。
【0015】
ある特定の態様において、ブロッキング化合物骨格は、約110kDaであり、マンノシル化デキストラン治療用または診断用化合物のデキストラン骨格は、約10kDaである。
【0016】
ある特定の態様において、ブロッキング化合物は、治療薬または診断薬を含有しない。
ある特定の態様において、ブロッキング化合物を投与するステップの後、マンノシル化デキストラン治療用または診断用化合物を投与するステップの前に約1秒~60分の時間間隔が続く。さらなる態様において、時間間隔は、約10分~約20分である。ある特定の代替的な実施形態において、ブロッキング化合物およびマンノシル化デキストラン治療用または診断用化合物は、同時に投与される。
【0017】
ある特定の態様によれば、マンノシル化デキストラン治療用または診断用化合物は、少なくとも1つの治療用部分を含む。
ある特定の態様において、肝臓、腎臓、および/または脾臓以外の所望の標的組織に局在するマンノシル化デキストラン治療用または診断用化合物の注射用量の割合は、ブロッキング化合物を投与しない場合のマンノシル化デキストラン治療用または診断用化合物が局在する割合よりも高い。さらなる態様において、マンノシル化デキストラン治療用または診断用化合物の有効用量は、ブロッキング化合物を投与しない場合のマンノシル化デキストラン治療用または診断用化合物の有効用量よりも低い。さらにさらなる態様において、ブロッキング化合物は、肝臓、腎臓、および/または脾臓でCD206発現細胞に優先的に結合する。さらなる態様において、マンノシル化デキストラン治療用または診断用化合物は、ブロッキング化合物を投与せずに同等の用量のマンノシル化デキストラン治療用または診断用化合物を投与した対象と比較して、肝臓、腎臓、および/または脾臓におけるCD206細胞への結合を減少させた。
【0018】
ある特定の態様において、対象は自己免疫疾患、炎症性疾患、またはがんと診断されている。
本明細書では、診断または治療を必要とする対象の診断または治療のためのキットであって、骨格と、それに結合した1つ以上のCD206標的化部分とを含むブロッキング化合物と、デキストラン骨格と、それに結合した1つ以上のCD206標的化部分および1つ以上の治療薬とを含む、マンノシル化デキストラン治療用または診断用化合物とを含み、ブロッキング組成物骨格の分子質量は、マンノシル化デキストラン骨格化合物の分子質量より少なくとも2倍大きいキットがさらに開示される。ある特定の態様において、キットは、式(I):
【0019】
【化3】
【0020】
(式中、
各Xは、独立して、H、L1-A、またはL2-Rであり、
各L1およびL2は、独立して、リンカーであり、
各Aは、独立して、治療薬、診断薬、またはHを含み、
各Rは、独立して、マンノース結合C型レクチン受容体標的化部分またはHを含み、
nは、ゼロより大きい整数であり、
少なくとも1つのRは、マンノース、フコース、およびn-アセチルグルコサミンからなる群から選択されるマンノース結合C型レクチン受容体標的化部分を含み、少なくとも1つのAは、治療薬または診断薬を含む)の化合物であるマンノシル化デキストラン治療用または診断用化合物を含む。さらなる態様において、ブロッキング化合物骨格は、約110kDaであり、マンノシル化デキストラン治療用または診断用化合物デキストラン骨格は、約10kDaである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】ある特定の実施形態に従って、肝臓(L)および腎臓(K)への強力な局在を示している、5mCiの99mテクネチウムで標識した25μgの99mTc-チルマノセプトを1時間前にIV注射(尾静脈)した雄Sprague Dawleyラットからの切片のオートラジオグラフを示す。
図2A】Cy5-チルマノセプトをIV注射した(A)、またはCy5-チルマノセプトを注射しなかった(C)、4T1腫瘍を有するBalb/Cマウスの例示的な偽色蛍光画像を示す。画像Bは、Aに示されるマウスから切除した肝臓(L)、腎臓(K)、脾臓(S)、および腫瘍(T)を示す。図2Aおよび図2Bの偽色スケールが異なること、ならびに図2Bの赤色領域は、図2Aの黄色領域と同レベルの蛍光を有することに留意されたい。
図2B】同上。
図2C】同上。
図3】脾臓、肝臓および腎臓への広範囲の局在を示している、ガリウム68を注射した正常な対象のPETスキャンを示す。膀胱への局在は、尿の排泄に起因する。
図4A図4Aおよび図4Bは、90分間の動的PET+CTを示す。L;肝臓、K;腎臓、S;脾臓。ブロッキング剤は肝臓局在を減少させる。この例では、尾静脈カテーテルを介して300μCiの[68Ga](300μL)で標識した5μgの[68Ga]DOTA-チルマノセプトをWistarラットに注射した。ブロッキング剤は、[68Ga]DOTA-チルマノセプトの直前に(650μL)投与された350kDのマンノシル化デキストランであった。
図4B】同上。
図5】WistarラットにおいてPET-CTにより可視化および定量化された[68Ga]DOTA-チルマノセプトの肝臓局在を示す。すべてのラットに、300μCiの[68Ga]で標識した5μgの[68Ga]DOTA-チルマノセプトを静脈内(IV)投与した。1匹のラットにはブロッキング剤を投与しなかった。[68Ga]DOTA-チルマノセプトの投与直前に、3匹のラットに2.5mgの350kDブロッキング剤をIV注射した。
図6】WistarラットにおいてPET-CTにより可視化および定量化された[68Ga]DOTA-チルマノセプトの筋肉局在を示す。すべてのラットに、300μCiの[68Ga]で標識した5μgの[68Ga]DOTA-チルマノセプトを静脈内(IV)投与した。1匹のラットにはブロッキング剤を投与しなかった。[68Ga]DOTA-チルマノセプトの投与直前に、3匹のラットに2.5mgの350kDブロッキング剤をIV注射した。
図7】ブロックラットおよび非ブロックラットにおける[68Ga]DOTA-チルマノセプト(%ID/グラム)の筋肉/肝臓局在比(×100)を示す。ブロッキング剤を用いておよび用いずに、[68Ga]DOTA-チルマノセプトを注射したラットにおいて。筋肉/肝臓の[68Ga]DOTA-チルマノセプトの局在比(×100)は、高分子量ブロッキング剤の使用による肝臓局在の減少が、筋肉中の深部組織マクロファージへの相対的な局在の増加を伴うことを示す。相対的な局在の増加は、2.7倍~8倍を超える範囲であった。
【発明を実施するための形態】
【0022】
範囲は、本明細書において「約」1つの特定の値から、および/または「約」別の特定の値までとして表され得る。そのような範囲が表される場合、さらなる態様は、1つの特定の値から、および/または他の特定の値までを含む。同様に、値が先行詞「約」の使用により近似値として表される場合、特定の値がさらなる態様を形成することを理解されたい。各範囲のエンドポイントは、他のエンドポイントとの関連において、また他のエンドポイントとは無関係に重要であることもさらに理解されたい。本明細書に開示されるいくつかの値が存在し、各値もまた、その値自体に加えて「約」その特定の値として本明細書に開示されることもまた理解されたい。例えば、値「10」が開示される場合、「約10」もまた開示される。また、2つの特定の単位間の各単位も開示されることも理解されたい。例えば、10および15が開示される場合、11、12、13、および14もまた開示される。
【0023】
化学種の残基は、本明細書および結びの請求項で使用される場合、その部分が実際に化学種から得られるかどうかにかかわらず、特定の反応スキームにおける化学種の結果として得られる生成物、またはその後の製剤もしくは化学製品である部分を指す。したがって、ポリエステル中のエチレングリコール残基は、ポリエステルを調製するためにエチレングリコールが使用されるかどうかにかかわらず、ポリエステル中の1つ以上の-OCH2CH2O-単位を指す。同様に、ポリエステル中のセバシン酸残基は、その残基が、ポリエステルを得るためにセバシン酸またはそのエステルを反応させることによって得られるかどうかにかかわらず、ポリエステル中の1つ以上の-CO(CH2)8CO-部分を指す。
【0024】
本明細書で使用される場合、「置換された」という用語は、有機化合物のすべての許容される置換基を含むことが企図される。広い態様において、許容される置換基は、有機化合物の非環状および環状、分岐および非分岐、炭素環式および複素環式、ならびに芳香族および非芳香族の置換基を含む。例示的な置換基としては、例えば、後述するものが挙げられる。許容される置換基は、1つ以上であり得、適切な有機化合物に対して同じであっても異なってもよい。本開示の目的のために、窒素等のヘテロ原子は、ヘテロ原子の原子価を満たす、本明細書に記載される有機化合物の水素置換基および/または任意の許容される置換基を有することができる。本開示は、いかなる方法によっても、有機化合物の許容される置換基によって制限されることを意図しない。また、「置換」または「で置換された」という用語は、そのような置換が、置換された原子および置換基の許容される原子価に従うものであり、置換が安定な化合物、例えば、再配列、環化、消失等による形質変換を自発的に受けない化合物をもたらすという黙示的な条件を含む。ある特定の態様において、明示的にそうではないと指示されない限り、個々の置換基は、さらに任意選択的に置換され得る(すなわち、さらに置換されるか、または置換されない)こともまた企図される。
【0025】
様々な用語を定義する際に、「A1」、「A2」、「A3」、および「A4」が、様々な特定の置換基を表すための一般的な記号として本明細書で使用される。これらの記号は、本明細書に開示されるものに限定されず、任意の置換基であり得、それらが、1つの例において、ある特定の置換基であると定義される場合、別の例において、いくつかの他の置換基として定義され得る。
【0026】
「R1」、「R2」、「R3」、「Rn」(式中、nは整数である)は、本明細書で使用される場合、独立して、上に列挙される基のうちの1つ以上を有することができる。例えば、R1が直鎖アルキル基である場合、アルキル基の水素原子のうちの1つは、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アルキル基、ハロゲン化物等で任意選択的に置換されてもよい。選択される基に応じて、第1の基が第2の基内に組み込まれ得るか、または代替的に、第1の基が第2の基に対するペンダントであり得る(すなわち、結合され得る)。例えば、「アミノ基を含むアルキル基」という句では、アミノ基は、アルキル基の骨格内に組み込むことができる。代替的に、アミノ基をアルキル基の骨格に結合させることができる。選択される基の性質が、第1の基が第2の基に埋め込まれるかまたは結合されるかを決定する。
【0027】
本明細書に記載されるように、本発明の化合物は、「任意選択的に置換された」部分を含有し得る。一般に、「置換された」という用語は、「任意選択的に」という用語が前に付されるか否かにかかわらず、指定された部分の1つ以上の水素が好適な置換基で置き換えられることを意味する。別段の指示がない限り、「任意選択的に置換された」基は、基の各々の置換可能な位置に好適な置換基を有してもよく、任意の所与の構造内の2つ以上の位置が、特定の基から選択される2つ以上の置換基で置換され得る場合、置換基は、すべての位置で同じであっても異なってもよい。本発明によって想定される置換基の組み合わせは、好ましくは、安定なまたは化学的に実現可能な化合物の形成をもたらすものである。ある特定の態様において、明示的にそうではないと指示されない限り、個々の置換基は、さらに任意選択的に置換され得る(すなわち、さらに置換されるか、または置換されない)こともまた企図される。
【0028】
本明細書に開示されるある特定の材料、化合物、組成物、および構成要素は、商業的に得ることができるか、または当業者に一般に既知の技術を用いて容易に合成することができる。例えば、開示される化合物および組成物の調製に使用される出発物質および試薬は、Aldrich Chemical Co.,(Milwaukee,Wis.)、Acros Organics(Morris Plains,N.J.)、Fisher Scientific(Pittsburgh,Pa.)、もしくはSigma(St.Louis,Mo.)等の商業的供給業者から入手可能であるか、またはFieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis,Volumes 1-17(John Wiley and Sons,1991);Rodd’s Chemistry of Carbon Compounds,Volumes 1-5 and Supplementals(Elsevier Science Publishers,1989);Organic Reactions,Volumes 1-40(John Wiley and Sons,1991);March’s Advanced Organic Chemistry(John Wiley and Sons,4th Edition);およびLarock’s Comprehensive Organic Transformations(VCH Publishers Inc.,1989)等の参考文献に記載の手順に従って、当業者に既知の方法により調製されるかのいずれかである。
【0029】
本発明の組成物を調製するために使用される構成要素、および本明細書に開示される方法内で使用される組成物自体が開示される。これらおよび他の材料が本明細書に開示され、これらの材料の組み合わせ、サブセット、相互作用、基等が開示される場合、これらの化合物の各様々な個々のおよび集合的な組み合わせ、ならびに順列の具体的な言及は明示的に開示され得ないが、各々が本明細書において具体的に企図され、記載されることを理解されたい。例えば、特定の化合物が開示され、論じられ、化合物を含むいくつかの分子に対して行われ得るいくつかの修飾が論じられる場合、具体的にそうではないと指示されない限り、化合物のあらゆる組み合わせおよび順列、ならびに可能な修飾が明確に企図される。したがって、分子A、B、およびCのクラスだけでなく、分子D、E、およびFのクラス、ならびに組み合わせ分子の一例として、A-Dが開示される場合、各々が個別に列挙されていない場合でも、各々が個別にかつ集合的に企図され、すなわち、A-E、A-F、B-D、B-E、B-F、C-D、C-E、およびC-Fが開示されていると見なされる。同様に、これらの任意のサブセットまたは組み合わせも開示される。したがって、例えば、A-E、B-F、およびC-Eのサブグループが開示されると見なされるであろう。この概念は、限定されないが、本発明の組成物の作製および使用方法におけるステップを含む、本出願のすべての態様に適用される。したがって、実施され得る様々な追加のステップが存在する場合、これらの追加のステップの各々は、本発明の方法の任意の特定の実施形態または実施形態の組み合わせによって実施され得ることを理解されたい。
【0030】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」または「担体」という用語は、滅菌水溶液または非水溶液、コロイド、分散液、懸濁液またはエマルジョン、ならびに使用直前に滅菌注射液または分散液に再構成するための滅菌粉末を指す。好適な水性および非水性担体、希釈剤、溶媒またはビヒクルの例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)、カルボキシメチルセルロースおよびそれらの好適な混合物、植物油(例えば、オリーブ油)、ならびにオレイン酸エチル等の注射可能な有機エステルが挙げられる。適切な流動性は、例えば、レシチン等のコーティング材料を使用することによって、分散液の場合には必要とされる粒径を維持することによって、および界面活性剤を使用することによって維持され得る。これらの組成物はまた、防腐剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤等のアジュバントも含有することができる。微生物の作用の予防は、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸等の様々な抗菌剤および抗真菌剤の包含によって保証することができる。また、糖、塩化ナトリウム等の等張剤を含めることが望ましい場合もある。注射可能な医薬品形態の長期吸収は、吸収を遅延させるモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン等の薬剤の包含によってもたらされ得る。注射可能なデポー形態は、ポリラクチド-ポリグリコリド、ポリ(オルトエステル)、およびポリ(無水物)等の生分解性ポリマー中に、薬物のマイクロカプセルマトリックスを形成することによって作製される。薬物対ポリマーの比、および使用される特定のポリマーの性質に応じて、薬物放出速度を制御することができる。デポー注射用製剤はまた、体組織と適合性のあるリポソームまたはマイクロエマルジョン中に薬物を封入することによっても調製される。注射用製剤は、例えば、細菌保持フィルタを通した濾過によって、または使用直前に滅菌水もしくは他の滅菌注射用媒体に溶解または分散することができる滅菌固体組成物の形態で滅菌剤を組み込むことによって、滅菌され得る。好適な不活性担体としては、ラクトース等の糖を挙げることができる。望ましくは、活性成分の粒子の少なくとも95重量%が、0.01~10マイクロメートルの範囲の有効粒径を有する。
【0031】
本明細書で使用される場合、「がん」という用語は、自律的な成長能力を有する細胞を指す。そのような細胞の例としては、急速に増殖する細胞の成長を特徴とする異常な状態または状態を有する細胞が挙げられる。この用語は、組織病理学的タイプまたは侵襲の段階に関係なく、がん性成長、例えば、腫瘍、発がん性プロセス、転移性組織、および悪性形質転換した細胞、組織、または器官を含むことを意味する。また、呼吸器系、心血管系、腎臓系、生殖器系、血液系、神経系、肝臓系、消化管系、および内分泌系等の様々な臓器系の悪性腫瘍だけでなく、ほとんどの結腸がん、腎細胞がん、前立腺がんならびに/または精巣腫瘍、非小細胞肺がん、小腸がん、および食道がん等の悪性腫瘍を含む腺がんも含まれる。「自然に発生する」がんは、対象へのがん細胞の移植によって実験的に誘発されない任意のがんを含み、例えば、自発的に誘発されるがん、発がん物質への患者の曝露によって引き起こされるがん、トランスジェニックがん遺伝子の挿入または腫瘍抑制遺伝子のノックアウトに起因するがん、および感染症、例えば、ウイルス感染によって引き起こされるがんが挙げられる。「がん」という用語は、当該技術分野において認識されており、上皮組織または内分泌組織の悪性腫瘍を指す。いくつかの実施形態において、本方法を用いて、上皮がん、例えば、上皮由来の固形腫瘍、例えば、肺がん、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、腎臓がん、膵臓がん、または結腸がんを有する対象を治療することができる。
【0032】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、投与の標的、例えば、動物を指す。したがって、本明細書に開示される方法の対象は、哺乳類、魚類、鳥類、爬虫類、または両生類等の脊椎動物であり得る。代替的に、本明細書に開示される方法の対象は、ヒト、非ヒト霊長類、ウマ、ブタ、ウサギ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ネコ、モルモット、またはげっ歯類であり得る。この用語は、特定の年齢または性別を示すものではない。したがって、成人および新生児の対象、ならびに雌雄を問わない胎児が包含されることが意図される。一態様において、対象は哺乳動物である。患者は、疾患または障害に罹患している対象を指す。「患者」という用語は、ヒトおよび動物対象を含む。開示される方法のいくつかの態様において、対象は、投与ステップの前に、1つ以上のがん障害の治療の必要性があると診断されている。
【0033】
本明細書で使用される場合、「治療」という用語は、疾患、病態、または障害を治癒、改善、安定化、または予防することを意図した患者の医学的管理を指す。この用語は、積極的治療、すなわち、具体的に疾患、病態、または障害の改善に向けた治療を含み、また、原因治療、すなわち、関連する疾患、病態、または障害の原因の除去に向けた治療も含む。加えて、この用語は、緩和治療、すなわち、疾患、病態、または障害の治癒ではなく、症状の軽減のために設計された治療;予防的治療、すなわち、関連する疾患、病態、または障害の発症を最小限に抑える、または部分的にもしくは完全に阻害することに向けた治療;ならびに支持治療、すなわち、関連する疾患、病態、または障害の改善に向けた別の特定の治療法を補完するために用いられる治療を含む。様々な態様において、この用語は、哺乳動物(例えば、ヒト)を含む対象の任意の治療を包含し、(i)疾患に罹患しやすい可能性があるが、まだそれを有すると診断されていない対象において疾患が発生するのを予防すること、(ii)疾患を抑制すること、すなわち、その発症を阻止すること、または(iii)疾患を軽減すること、すなわち、疾患の退縮を引き起こすことを含む。一態様において、対象は霊長類等の哺乳動物であり、さらなる態様において、対象はヒトである。「対象」という用語には、飼い慣らされた動物(例えば、ネコ、イヌ等)、家畜(例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ等)、および実験動物(例えば、マウス、ウサギ、ラット、モルモット、ショウジョウバエ等)も含まれる。
【0034】
本明細書で使用される場合、「予防する(prevent)」または「予防すること(preventing)」という用語は、特に事前の行為によって、何かが起こるのを妨げる、回避する、排除する、未然に防ぐ、阻止する、または妨害することを指す。減少させる、阻害する、または予防するが本明細書で使用される場合、具体的に別段の指示がない限り、他の2つの語の使用も明示的に開示される。
【0035】
本明細書で使用される場合、「診断された」という用語は、当業者、例えば、医師による身体検査を受け、本明細書に開示される化合物、組成物、または方法によって診断または治療することができる状態を有することが見出されたことを意味する。例えば、「がんと診断された」とは、当業者、例えば、医師による身体検査を受け、腫瘍のサイズまたは腫瘍の成長速度を低下させることができる化合物または組成物によって診断または治療することができる状態を有することが見出されたことを意味する。がん、腫瘍、または少なくとも1つのがんもしくは腫瘍細胞を有する対象は、当該技術分野において既知の方法を用いて同定され得る。例えば、がん細胞または腫瘍の解剖学的位置、総サイズ、および/または細胞組成は、造影剤増強MRIまたはCTを使用して決定されてもよい。がん細胞を特定するための追加の方法は、超音波検査、骨スキャン、外科的生検、および生物学的マーカー(例えば、血清タンパク質レベルおよび遺伝子発現プロファイル)を含み得るが、これらに限定されない。本発明の細胞増感組成物を含むイメージング液は、例えば、がん細胞を特定するために、MRIまたはCTと組み合わせて使用してもよい。
【0036】
本明細書で使用される場合、「投与すること」および「投与」という用語は、対象に医薬調製物を提供する任意の方法を指す。そのような方法は、当業者に周知であり、経口投与、経皮投与、吸入による投与、経鼻投与、局所投与、膣内投与、眼科投与、耳内投与、脳内投与、直腸投与、舌下投与、口腔投与、ならびに静脈内投与、動脈内投与、浸潤による特定の臓器への投与、筋肉内投与、腫瘍内投与、および皮下投与を含む非経口投与を含むが、これらに限定されない。投与は、連続的または間欠的であり得る。様々な態様において、調製物は、治療的に投与することができる、すなわち、既存の疾患または状態を治療するために投与される。さらなる様々な態様において、調製物は、予防的に投与され得る、すなわち、疾患または状態の予防のために投与される。
【0037】
本明細書で使用される場合、「有効量」および「有効な量」という用語は、所望の結果を達成するのに十分であるか、または望ましくない状態に影響を及ぼすのに十分な量を指す。例えば、「治療有効量」は、所望の治療結果を達成するのに十分であるか、または望ましくない症状に影響を及ぼすのに十分であるが、有害な副作用を引き起こすには一般的に不十分な量を指す。任意の特定の患者への具体的な治療有効用量レベルは、治療される障害および障害の重症度、使用される特定の組成物;患者の年齢、体重、全身の健康、性別および食事;投与時期;投与経路;使用される特定の化合物の排泄率;治療期間;使用される特定の化合物と組み合わせてまたは同時に使用される薬物、および医学分野において周知の同様の因子を含む、様々な因子に依存する。例えば、所望の治療効果を達成するために必要なレベルよりも低いレベルで化合物の用量を開始し、所望の効果が達成されるまで徐々に投与量を増加させることは、十分に当該技術分野の技術の範囲内である。所望であれば、有効な1日用量は、投与のために複数の用量に分割することができる。結果的に、単回用量組成物は、1日用量を構成するためにそのような量またはその約数を含有することができる。任意の禁忌が発生した場合、個々の医師によって投与量が調整され得る。投与量は、異なってもよく、1日または数日間、1日1回以上の用量投与で投与することができる。ガイダンスは、所与のクラスの医薬品の適切な投与量についての文献に見出すことができる。さらなる様々な態様において、調製物は、「予防有効量」、すなわち、疾患または状態の予防に有効な量で投与することができる。
【0038】
有効投与量は、最初にインビトロアッセイから推定してもよい。例えば、動物で使用するための初回投与量は、インビトロアッセイで測定される特定の化合物のIC50以上である活性化合物の循環血液濃度または血清濃度を達成するように製剤化されてもよい。特定の活性剤のバイオアベイラビリティを考慮に入れて、そのような循環血液濃度または血清濃度を達成するための投与量を計算することは、十分に当業者の能力の範囲内である。ガイダンスについては、読者は、Fingl&Woodbury,“General Principles,”In:Goodman and Gilman’s The Pharmaceutical Basis of Therapeutics,Chapter 1,pp.1-46(最新版)、Pergamagon Press(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)、およびその中で引用される参考文献を参照されたい。
【0039】
「抗がん組成物」という句は、抗悪性腫瘍効果、化学療法効果、抗ウイルス効果、抗有糸分裂効果、抗腫瘍作用、抗血管新生効果、抗転移効果、および/または免疫療法効果を発揮する組成物、例えば、腫瘍細胞上で直接的に、例えば、細胞抑制効果もしくは細胞除去効果によって、および生物学的応答修飾等の機構を介して間接的に、腫瘍細胞の発生、成熟、または拡散を防ぐことができる組成物を含むことができる。商業用途、臨床評価、および臨床前開発において利用可能な多数の抗増殖剤が存在し、これらは併用薬物化学療法によって本出願に含まれ得る。議論の便宜のために、抗増殖剤は、以下のクラス、サブタイプ、および種に分類される:ACE阻害剤、アルキル化剤、血管新生阻害剤、アンジオスタチン、アントラサイクリン/DNAインターカレーター、抗がん抗生物質または抗生物質型薬剤、代謝拮抗剤、抗転移性化合物、アスパラギナーゼ、ビスホスホネート、cGMPホスホジエステラーゼ阻害剤、炭酸カルシウム、シクロオキシゲナーゼ-2阻害剤、DHA誘導体、DNAトポイソメラーゼ、エンドスタチン、エピポドフィロトキシン、ゲニステイン、ホルモン抗がん剤、親水性胆汁酸(URSO)、免疫調節剤または免疫学的薬剤、インテグリンアンタゴニスト、インターフェロンアンタゴニストまたは薬剤、MMP阻害剤、種々の抗悪性腫瘍剤、モノクローナル抗体、ニトロソウレア、NSAID、オルニチン脱炭酸酵素阻害剤、pBATT放射線増感剤/化学増感剤/保護剤、レチノイド、内皮細胞の増殖および遊走の選択的阻害剤、エンドセリンの増殖阻害剤、セレニウム、ストロメライシン阻害剤、タキサン、ワクチン、およびビンカアルカロイド。
【0040】
いくつかの抗増殖剤が属する主要なカテゴリーは、代謝拮抗剤、アルキル化剤、抗生物質型薬剤、ホルモン抗がん剤、免疫学的薬剤、インターフェロン型薬剤、および種々の抗悪性腫瘍薬を含む。いくつかの抗増殖剤は、複数のまたは未知の機構を介して機能し、したがって、1つより多くのカテゴリーに分類することができる。
【0041】
「チルマノセプト」は、LYMPHOSEEK(登録商標)診断薬の非放射性標識前駆体を指す。チルマノセプトは、マンノシルアミノデキストランである。それはデキストラン骨格を有し、そのコアのグルコース要素に複数のアミノ末端リーシュ(-O(CHS(CHNH)が結合している。加えて、マンノース部分が、いくつかのリーシュのアミノ基にコンジュゲートされ、キレート剤ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)が、マンノースを含まない他のリーシュのアミノ基にコンジュゲートされ得る。チルマノセプトは概して、デキストラン骨格を有し、その中で複数のグルコース残基がアミノ末端リーシュを含み、
【0042】
【化4】
【0043】
マンノース部分が、アミジンリンカーを介してリーシュのアミノ基にコンジュゲートされ、
【0044】
【化5】
【0045】
キレート剤ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)が、アミドリンカーを介してリーシュのアミノ基にコンジュゲートされている。
【0046】
【化6】
【0047】
チルマノセプトは、化学名デキストラン3-[(2-アミノエチル)チオ]プロピル17-カルボキシ-10,13,16-トリス(カルボキシメチル)-8-オキソ-4-チア-7,10,13,16-テトラアザヘプタデカ-1-イル3-[[2-[[1-イミノ-2-(D-マンノピラノシルチオ)エチル]アミノ]エチル]チオ]プロピルエーテル錯体を有し、チルマノセプトTc99mは、以下の分子式:[C10n・(C192899mTc)b・(C1324c・(C11NS)を有し、3~8個のコンジュゲートしたDTPA分子(b)、12~20個のコンジュゲートしたマンノース分子(c)、および0~17個のアミン側鎖(a)を遊離したまま含有する。チルマノセプトは以下の一般構造を有する。
【0048】
【化7】
【0049】
グルコース部分のいくつかは、結合したアミノ末端リーシュを有しない場合がある。
本開示は、診断用および治療用部分を担持する比較的小さなマンノシル化デキストランが、病理学的プロセスの部位に凝集したCD206細胞に結合する能力を比例的に低下させることなく、これらのより小さなマンノシル化デキストランが肝臓および腎臓におけるCD206受容体発現細胞に結合する能力をブロックする(すなわち、競合を通じて排除する)ための、高分子マンノシル化デキストランの組成物およびそれらの使用方法を記載する。開示される発明の有用性は、診断用および治療用部分を担持するマンノシル化デキストランの病理学的プロセスの部位への強力な局在を可能にする一方で、肝臓および腎臓等の非特異的部位への局在を減少させるまたは排除することである。非特異的局在は、望ましくない、かつ/または用量制限的な結果を有する。また、他の画像診断薬および治療薬は、肝臓、腎臓および/または他の非特異的部位、ならびに病理学的プロセスの部位に生じる受容体に結合する。マンノシル化デキストランを用いた状況と同様に、高分子量デキストランは、これらの他の画像診断薬および/または治療薬に、直接的にまたは様々な組成の分子リーシュによってコンジュゲートされ得、非特異的部位におけるこれらの他の画像診断薬および/または治療薬の蓄積をブロックするために使用される一方で、それらのコンジュゲートされていない(より小さな分子量)形態の病理学的病変への局在を可能にする。
【0050】
ある特定の態様において、少なくとも、骨格と、それに結合した1つ以上のCD206標的化部分とを含むブロッキング組成物を投与することと、デキストラン骨格と、それに結合した1つ以上のCD206標的化部分および1つ以上の治療薬とを含む、有効量のマンノシル化デキストラン治療用または診断用化合物を投与することとによって、マンノシル化デキストラン治療用または診断用化合物の標的特異性を高めるための方法が開示される。例示的な実現態様において、ブロッキング組成物骨格の分子質量は、マンノシル化デキストラン骨格化合物の分子質量より少なくとも2倍大きい。
【0051】
ある特定の態様において、開示される方法は、肝臓のクッパー細胞(例えば、標的組織が血液に浸っていない)の場合のように、CD206発現細胞が循環血液と直接接触しないか、またはより狭い範囲で直接接触する標的組織に対する特異性を高める。そのような標的は、関節(例えば、関節リウマチの診断のため)、ならびに肝臓および腎臓以外の様々ながんを含み得る。筋肉に対する特異性を高める能力は、血管形成が制限されている他の組織において標的特異性を高める能力の代用として、当業者に理解されるであろう。
【0052】
マンノシル化デキストラン治療用または診断用化合物
ある特定の態様において、本明細書に開示される化合物は、コンジュゲートされたマンノース結合C-レクチン型受容体標的化部分(例えば、マンノース)を有する高分子(例えば、炭水化物)骨格を含む担体構築物を用いて、1つ以上の活性治療薬を送達する。そのような構築物の例としては、骨格のグルコース残基にコンジュゲートされたマンノース分子を有し、かつ骨格のグルコース残基にコンジュゲートされた活性医薬成分を有するデキストラン骨格を含む、マンノシルアミノデキストラン(MAD)が挙げられる。チルマノセプトはMADの具体例である。DTPAがコンジュゲートしていないチルマノセプトであるチルマノセプト誘導体は、MADのさらなる例である。
【0053】
ある特定の実現態様において、本開示は、1つ以上のマンノース結合C型レクチン受容体標的化部分を有するデキストランベース部分または骨格と、それに結合した1つ以上の治療薬とを含む化合物を提供する。デキストランベース部分は、概して、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,409,990号(’990特許)に記載されるものと同様のデキストラン骨格を含む。したがって、骨格は、α-1,6グリコシド結合によって連結された複数のグルコース部分(すなわち、残基)を含む。α-1,4および/またはα-1,3結合等の他の結合も存在し得る。いくつかの実施形態において、すべての骨格部分が置換されるわけではない。いくつかの実施形態において、マンノース結合C型レクチン受容体標的化部分は、デキストラン骨格のグルコース残基の約10%~約50%、またはグルコース残基の約20%~約45%、またはグルコース残基の約25%~約40%に結合している。いくつかの実施形態において、デキストラン骨格は、約1~約20kDaのMWを有し、他の実施形態において、デキストラン骨格は、約5~約15kDaのMWを有する。さらに他の実施形態において、デキストラン骨格は、約8~約15kDa、例えば、約10kDaのMWを有する。他の実施形態において、デキストラン骨格は、約1~約5kDa、例えば、約2kDaのMWを有する。
【0054】
さらなる態様によれば、マンノース結合C型レクチン受容体標的化部分は、限定されないが、マンノース、フコース、およびn-アセチルグルコサミンから選択される。いくつかの実施形態において、標的化部分は、デキストラン骨格のグルコース残基の約10%~約50%、またはグルコース残基の約20%~約45%、またはグルコース残基の約25%~約40%に結合している。本明細書で言及されるMW、ならびにデキストラン骨格に結合した受容体基質、リーシュ、および診断用/治療用部分のコンジュゲーションの数および程度は、合成技術がいくらかの変動をもたらすため、所与の量の担体分子の平均量を指す。
【0055】
ある特定の実施形態によれば、1つ以上のマンノース結合C型レクチン受容体標的化部分および1つ以上の治療薬または診断薬は、リンカーを介してデキストランベース部分に結合している。リンカーは、骨格部分の約50%~約100%、または約70%~約90%に結合してもよい。リンカーは同じであっても異なってもよい。いくつかの実施形態において、リンカーは、アミノ末端リンカーである。いくつかの実施形態において、リンカーは、-O(CH2)3S(CH2)2NH-を含んでもよい。いくつかの実施形態において、リンカーは、炭素、酸素、硫黄、窒素、およびリンから選択される1~20個の構成原子の鎖であってもよい。リンカーは、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。リンカーはまた、限定されないが、ハロ基、ペルフルオロアルキル基、ペルフルオロアルコキシ基、C1-4アルキル等のアルキル基、C1-4アルケニル等のアルケニル基、C1-4アルキニル等のアルキニル基、ヒドロキシ基、オキソ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アルコキシ基、ニトロ基、アジドアルキル基、アリールまたはヘテロアリール基、アリールオキシまたはヘテロアリールオキシ基、アラルキルまたはヘテロアラルキル基、アラルコキシ基またはヘテロアラルコキシ基、HO-(C=O)-基、ヘテロシクリル基、シクロアルキル基、アミノ基、アルキル-およびジアルキルアミノ基、カルバモイル基、アルキルカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基、アリールカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、-NH-NH2;=N-H;=N-アルキル;-SH;-S-アルキル;-NH-C(O)-;-NH-C(=N)-等を含む1つ以上の置換基で置換されてもよい。当業者に明らかなように、他の好適なリンカーが可能である。
【0056】
いくつかの実施形態において、1つ以上の治療薬は、生分解性リンカーを介して結合している。いくつかの実施形態において、生分解性リンカーは、ヒドラゾン等のpH感受性部分を含む。より低い(より酸性の)pHでは、ヒドラゾンリンカーは、pHが低下するにつれて増加する速度で自発的に加水分解する。マンノシル化デキストランは、CD206に結合すると、経時的に次第に酸性化されるエンドソームに内在化され、それによって治療薬ペイロードを細胞内に放出する。
【0057】
さらなる実施形態によれば、治療薬は、細胞傷害性剤(例えば、ドキソルビシン)である。なおもさらなる実施形態において、治療薬は、抗がん剤である。
ある特定の態様において、キレート剤は、開示される化合物に結合され得るかまたは組み込まれ得、Cu(II)等の治療薬をキレートするために使用され得る。例示的なキレート剤としては、DTPA(Mx-DTPA等)、DOTA、TETA、NETAまたはNOTAが挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の例示的な実現態様によれば、キレート剤は、DOTAである。
【0058】
様々な目的のために、様々な検出可能な部分のいずれかを、直接的または間接的に担体分子に結合することができる。本明細書で使用される場合、「検出可能な部分」または「診断用部分」(これらの用語は互換的に使用され得る)という用語は、以下の原子、同位体、または化学構造を意味する:(1)担体分子との結合が可能である、(2)ヒトに対して無毒である、および(3)直接的または間接的に検出可能なシグナル、特に、測定できるだけでなく、その強度が検出可能な部分の量に関連している(例えば、比例している)シグナルを提供する。シグナルは、分光、電気、光学、磁気、聴覚、無線シグナル、または触診検出手段を含む任意の好適な手段、および本明細書に記載の測定プロセスによって検出され得る。
【0059】
好適な検出可能な部分は、放射性同位体(放射性核種)、フルオロフォア、化学発光剤、生物発光剤、磁気部分(常磁性部分を含む)、金属(例えば、造影剤として使用するため)、RFID部分、酵素反応物質、比色放出剤、色素、および粒子形成剤を含むが、これらに限定されない。
【0060】
具体例として、好適な診断部位は、限定されないが以下を含む:
・ガドリニウム(Gd3+)等の磁気共鳴画像法(MRI)に好適な造影剤、超常磁性酸化鉄等の常磁性および超常磁性材料;
-ヨウ素化分子、イッテルビウムおよびジスプロシウム等のコンピュータ断層撮影(CT)イメージングに好適な造影剤;
-99mTc、210Bi、212-n-213-n-214n・131n Ba,,,、140n Ba,,,、11C,-、14^C、51、C-.r、67^da,,,、68^a,,,、153^d.、88vY、90vY、91vY、123T 124T、Bi、Bi、Bi、1、1、125I、131I、i nIn、115mIn、18F、13N、105Rh、153Sm、67Cu、“Cu、166Ho、177Lu、223Ra、62Rb、186Reおよび188Re、32P、33P、46Sc、47Sc、72Se、75Se、35S、89Sr、182Ta、123mTe、127Te、129Te、132Te、65Znおよび89Zr、95Zr、または他のキレート可能な同位体等の、シンチグラフィーイメージング(またはシンチグラフィー)に好適な放射性同位体;
-99mTc、mIn、および123I等の単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)に好適なガンマ線放射剤
-光学イメージングに好適な色素および蛍光剤
-18F等の陽電子放出断層撮影(PET)に好適な薬剤。
【0061】
診断用部分は、直接結合または担体分子に結合したキレート剤を使用する等、様々な方法で担体分子に結合させることができる。いくつかの実施形態において、診断用部分は、担体骨格に結合したリーシュを用いて結合させることができる。その後、および直接攻撃による場合に関連して記載されているように、1つ以上のリーシュのアミノ基にコンジュゲートすることができ、また診断用部分をそれに結合させるために使用することができる。いくつかの場合において、グルコース部分にアミノチオールリーシュが結合していない場合があることに留意されたい。ある特定の実施形態は、単一の種類の診断用部分または異なる診断用部分の混合物を含んでもよい。例えば、本明細書に開示される化合物の実施形態は、MRIに好適な造影剤およびシンチグラフィーイメージングに好適な放射性同位体、ならびに本明細書に記載の診断用部分のさらなる組み合わせを含み得る。
【0062】
1つ以上の診断用部分は、好適なキレート剤を使用して1つ以上のリーシュに結合させることができる。好適なキレート剤は、例えば、限定されないが、テトラアザシクロドデカン四酢酸(DOTA)、メルカプトアセチルグリシルグリシル-グリシン(MAG3)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ジメルカプトコハク酸、ジフェニルエチレンジアミン、ポルフィリン、イミノ二酢酸、およびエチレンジアミン四酢酸(EDTA)等の、当業者に既知であるか、または今後開発されるものを含む。
【0063】
ある特定の態様において、開示される化合物は、薬学的に許容される担体の形態で存在する。
ある特定の実施形態によれば、開示される化合物は、式(I):
【0064】
【化8】
【0065】
(式中、各Xは、独立して、H、L1-A、またはL2-Rであり、
各L1およびL2は、独立して、リンカーであり、
各Aは、独立して、治療薬またはHを含み、
各Rは、独立して、マンノース結合C型レクチン受容体標的化部分またはHを含み、
nは、ゼロより大きい整数であり、
少なくとも1つのRは、マンノース、フコース、およびn-アセチルグルコサミンからなる群から選択されるマンノース結合C型レクチン受容体標的化部分を含み、少なくとも1つのAは、治療薬を含む)の化合物である。
【0066】
ある特定の実施形態において、少なくとも1つのL1は、-(CH2)pS(CH2)-NH-を含み、式中、pおよびqは、0~5の整数である。
さらなる実施形態によれば、少なくとも1つのL2は、O、SおよびNからなる群から選択される最大3個のヘテロ原子によって任意選択的に中断されたC2-12炭化水素鎖である。
【0067】
さらにさらなる実施形態において、少なくとも1つのL2は、-(CH2)pS(CH2)-NH-を含み、式中、pおよびqは、独立して、0~5の整数である。
さらなる実施形態において、開示される組成物は式(II)の組成物であり、
【0068】
【化9】
【0069】
式中、*は、治療薬または診断薬が結合している点を示す。ある特定の実施形態において、治療薬は、リンカーを介して結合している。
ある特定の実施形態によれば、開示される化合物(例えば、マンノシル化デキストラン治療用もしくは診断用化合物、および/またはブロッキング化合物)は、薬学的に許容される担体、および本明細書に開示される化合物、または化合物の薬学的に許容される塩を含み得る。開示される化合物、またはその薬学的に許容される塩は、1つ以上の他の治療活性化合物と組み合わせて医薬組成物に含まれ得る。
【0070】
ブロッキング化合物
ある特定の態様において、本明細書に開示されるブロッキング化合物は、コンジュゲートされたマンノース結合C-レクチン型受容体標的化部分(例えば、マンノース)を有する高分子(例えば、炭水化物)骨格を含む担体構築物を用いて、腎臓および/または肝臓に発現するCD206に優先的に結合する。そのような構築物の例としては、骨格のグルコース残基にコンジュゲートされたマンノース分子を有するデキストラン骨格を含むマンノシルアミノデキストラン(MAD)が挙げられる。代替的な実施形態において、ブロッキング組成物骨格は、対象への安全な投与に好適な任意のポリマーと、C-レクチン型受容体標的化部分とのコンジュゲーション(リーシュを伴うか、または伴わない)とを含み得る。例としては、セルロース、ポリエチレングリコール、および様々なポリペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
ある特定の態様において、ブロッキング化合物骨格は、約35~500kDである。ブロッキング化合物骨格は、少なくとも約50kD、少なくとも約60kD、少なくとも約70kD、少なくとも約80kD、少なくとも約90kD、少なくとも約100kD、少なくとも約110kD、少なくとも約120kD、少なくとも約130kD、少なくとも約140kD、少なくとも約150kD、少なくとも約150kD、少なくとも約160kD、少なくとも約170kD、少なくとも約180kD、少なくとも約190kD、少なくとも約200kD、少なくとも約210kD、少なくとも約220kD、少なくとも約230kD、少なくとも約240kD、および少なくとも約250kDであり得る。ブロッキング化合物骨格は、約100kD未満、約90kD未満、約80kD未満、約70kD未満、または約60kD未満であり得る。
【0072】
ある特定の実施形態によれば、ブロッキング化合物骨格は、マンノシル化デキストラン治療用または診断用化合物骨格の約1.5~約50倍の分子質量を有する。ある特定の態様において、ブロッキング化合物骨格は、マンノシル化デキストラン治療用または診断用化合物骨格の約2~約3倍の分子質量を有する。さらなる実施形態において、ブロッキング化合物骨格は、マンノシル化デキストラン治療用または診断用化合物骨格の約2倍の分子質量を有する。
【0073】
いくつかの実施形態において、マンノース結合C型レクチン受容体標的化部分は、限定されないが、マンノース、フコース、およびn-アセチルグルコサミンから選択される。いくつかの実施形態において、標的化部分は、ブロッキング化合物骨格の利用可能な残基の約10%~約50%、または残基の約20%~約45%、または残基の約25%~約40%に結合している。
【0074】
ある特定の実施形態によれば、1つ以上のマンノース結合C型レクチン受容体標的化部分は、リンカーを介して骨格に結合している。リンカーは、骨格部分の約50%~約100%、または約70%~約90%に結合してもよい。リンカーは同じであっても異なってもよい。いくつかの実施形態において、リンカーは、アミノ末端リンカーである。いくつかの実施形態において、リンカーは、-O(CH2)3S(CH2)2NH-を含んでもよい。いくつかの実施形態において、リンカーは、炭素、酸素、硫黄、窒素、およびリンから選択される1~20個の構成原子の鎖であってもよい。リンカーは、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。リンカーはまた、限定されないが、ハロ基、ペルフルオロアルキル基、ペルフルオロアルコキシ基、C1-4アルキル等のアルキル基、C1-4アルケニル等のアルケニル基、C1-4アルキニル等のアルキニル基、ヒドロキシ基、オキソ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アルコキシ基、ニトロ基、アジドアルキル基、アリールまたはヘテロアリール基、アリールオキシまたはヘテロアリールオキシ基、アラルキルまたはヘテロアラルキル基、アラルコキシ基またはヘテロアラルコキシ基、HO-(C=O)-基、ヘテロシクリル基、シクロアルキル基、アミノ基、アルキル-およびジアルキルアミノ基、カルバモイル基、アルキルカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基、アリールカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、-NH-NH2;=N-H;=N-アルキル;-SH;-S-アルキル;-NH-C(O)-;-NH-C(=N)-等を含む1つ以上の置換基で置換されてもよい。当業者に明らかなように、他の好適なリンカーが可能である。ある特定の代替的な実施形態において、標的化部分は、リンカーを使用せずに骨格に直接結合される。
【0075】
使用される薬学的担体は、例えば、固体、液体、または気体であり得る。固体担体の例としては、ラクトース、テラアルバ、スクロース、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アカシア、ステアリン酸マグネシウム、およびステアリン酸が挙げられる。液体担体の例は、シュガーシロップ、ピーナッツ油、オリーブ油、および水である。気体担体の例としては、二酸化炭素および窒素が挙げられる。
【0076】
経口剤形のための組成物の調製において、任意の便利な薬学的媒体を用いることができる。例えば、水、グリコール、油、アルコール、香味剤、防腐剤、着色剤等は、懸濁液、エリキシル剤および溶液等の経口液体調製物を形成するために使用することができ、一方、デンプン、糖、微結晶性セルロース、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤等の担体は、粉末、カプセルおよび錠剤等の経口固体調製物を形成するために使用することができる。投与が容易であるため、錠剤およびカプセルが好ましい経口投与単位であり、それによって固体の薬学的担体が用いられる。任意選択的に、錠剤は、標準的な水性または非水性技術によってコーティングされ得る。
【0077】
ブロッキング化合物が、治療薬または診断薬を含有しない、先行請求項に記載の方法。
ある特定の実施形態によれば、マンノシル化デキストラン治療用または診断用化合物の標的特異性を高めるための方法であって、少なくとも、骨格と、それに結合した1つ以上のCD206標的化部分とを含むブロッキング組成物を投与することと、デキストラン骨格と、それに結合した1つ以上のCD206標的化部分および1つ以上の治療薬とを含む、有効量のマンノシル化デキストラン治療用または診断用化合物を投与することとを含む、方法が開示される。例示的な実現態様において、ブロッキング組成物骨格の分子質量は、マンノシル化デキストラン骨格化合物の分子質量より少なくとも2倍大きい。
【0078】
ある特定の態様において、ブロッキング化合物を投与するステップの後、マンノシル化デキストラン治療用または診断用化合物の投与前に時間間隔が続く。これらの実施形態によれば、この時間間隔の間に、ブロッキング化合物は、対象の全身を循環し、腎臓および肝臓でCD206発現細胞に結合して、マンノシル化デキストラン治療用または診断用化合物を、後のそのような細胞への結合から競合的に排除することを可能にする。ある特定の態様において、時間間隔は、少なくとも約10分である。さらなる態様において、時間間隔は、約10分~約60分である。さらなる態様において、時間間隔は、10分~約30分である。なおもさらなる態様において、時間間隔は、10分~約20分である。
【0079】
開示される方法のある特定の実施形態によれば、マンノシル化デキストラン治療用または診断用化合物は、少なくとも1つの治療用部分を含む。これらの実施形態のある特定の例示的な実現態様において、マンノシル化デキストラン治療用または診断用化合物の有効用量は、ブロッキング化合物を投与しない場合のマンノシル化デキストラン治療用または診断用化合物の有効用量よりも低い。
【0080】
さらなる実施形態によれば、ブロッキング化合物は、肝臓および/または腎臓でCD206発現細胞に優先的に結合する。例示的な実現態様において、マンノシル化デキストラン治療用または診断用化合物は、ブロッキング化合物を投与せずに同等の用量のマンノシル化デキストラン治療用または診断用化合物を投与した対象と比較して、肝臓および/または腎臓におけるCD206細胞への結合を減少させた。
【0081】
ある特定の態様において、化合物は、治療有効量で投与される。化合物は、予防有効量で投与される。
さらにさらなる態様において、方法は、化合物を、静脈内に、腹腔内に、筋肉内に、経口的に、皮下的に、眼内に、腫瘍内注射で、もしくは経皮的に投与すること、または侵襲的技術によって腫瘍臓器に直接送達することをさらに含む。
【0082】
本明細書に提供される方法は、アジュバント設定において実施され得る。いくつかの実施形態において、方法は、ネオアジュバント設定で実施され、すなわち、方法は、一次/根治治療の前に行われ得る。いくつかの実施形態において、方法は、以前に治療されたことのある個体を治療するために使用される。本明細書に提供される治療方法のいずれも、以前に治療されたことのない個体を治療するために使用することができる。いくつかの実施形態において、方法は、第一選択治療として使用される。いくつかの実施形態において、方法は、第二選択治療として使用される。
【0083】
ある特定の態様によれば、対象は、黒色腫、乳がん、肺がん、膵臓がん腫、腎臓がん、卵巣がん、前立腺がんもしくは子宮頸がん腫、膠芽腫、または結腸直腸がん、脳脊髄腫瘍、頭頸部がん、胸腺がん、中皮腫、食道がん、胃がん、肝臓がん、膵臓がん、胆管がん、膀胱がん、精巣がん、生殖細胞がん、卵巣がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、リンパ腫、急性白血病、慢性白血病、多発性骨髄腫、肉腫、あるいはそれらの任意の組み合わせと診断されている。
【0084】
ある特定の態様において、方法は、組成物をボーラスとして、および/または規則的な間隔で投与することをさらに含む。ある特定の態様において、開示される方法は、組成物を静脈内、腹腔内、筋肉内、経口、皮下、腫瘍内、または経皮投与することをさらに含む。
【0085】
ある特定のさらなる実施形態によれば、方法は、対象をがんと診断することをさらに含む。さらなる態様において、対象は組成物の投与前にがんと診断される。なおもさらなる態様によれば、方法は、組成物の有効性を評価することをさらに含む。さらにさらなる態様において、組成物の有効性を評価することは、組成物を投与する前に腫瘍サイズを測定することと、化合物を投与した後に腫瘍サイズを測定することとを含む。さらにさらなる態様において、組成物の有効性を評価することは、規則的な間隔で行われる。ある特定の態様によれば、開示される方法は、方法の少なくとも1つの態様を任意選択的に調整することをさらに含む。さらにさらなる態様において、方法の少なくとも1つの態様を調整することは、組成物の用量、組成物の投与頻度、または化合物の投与経路を変更することを含む。
【0086】
ある特定の代替的な実施形態によれば、対象は、CD206+マクロファージおよび/またはMDSCのレベルの上昇と関連する疾患と診断されている。そのような疾患または状態は、後天性免疫不全症候群(AIDS)、急性播種性脳脊髄炎(ADEM)、アジソン病、無ガンマグロブリン血症、アレルギー性疾患、無毛症、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、強直性脊椎炎、抗リン脂質症候群、抗シンテターゼ症候群、動脈プラーク障害、喘息、アテローム性動脈硬化症、アトピー性アレルギー、アトピー性皮膚炎、自己免疫性再生不良性貧血、自己免疫性心筋症、自己免疫性腸症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性甲状腺機能低下症、自己免疫性内耳疾患、自己免疫性リンパ球増殖症候群、末梢神経障害、自己免疫性膵炎、自己免疫性多発性内分泌症候群、自己免疫性プロゲステロン皮膚炎、自己免疫性血小板減少性紫斑病、自己免疫性蕁麻疹、自己免疫性ブドウ膜炎、バロー病/バロー同心円硬化症、ベーチェット病、バージャー病、ビッカースタッフ脳炎、ブラウ症候群、水疱性類天疱瘡、キャッスルマン病、セリアック病、シャーガス病、慢性炎症性脱髄性多発神経障害、慢性再発性多発性骨髄炎、慢性閉塞性肺疾患、慢性静脈うっ血性潰瘍、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、コーガン症候群、寒冷凝集素症、補体成分2欠乏症、接触性皮膚炎、頭蓋動脈炎、CREST症候群、クローン病、クッシング症候群、皮膚白血球破砕性血管炎、デゴス病、ダーカム病、疱疹状皮膚炎、皮膚筋炎、I型真性糖尿病、II型真性糖尿病、びまん性皮膚全身性硬化症、ドレスラー症候群、薬剤誘発性ループス、円板状エリテマトーデス、湿疹、気腫、子宮内膜症、腱付着部炎関連関節炎、好酸球性筋膜炎、好酸球性胃腸炎、好酸球性肺炎、後天性表皮水疱症、結節性紅斑、胎児赤芽球症、必須混合クリオグロブリン血症、エヴァンス症候群、進行性骨化性線維異形成症、線維性肺胞炎(または特発性肺線維症)、胃炎、消化性類天疱瘡、ゴーシェ病、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、ギラン・バレー症候群(GBS)、橋本脳症、橋本甲状腺炎、心疾患、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、妊娠性疱疹(妊娠性類天疱瘡としても知られる)、化膿性汗腺炎、HIV感染症、ヒューズ・ストビン症候群、低ガンマグロブリン血症、感染性疾患(細菌性感染症を含む)、特発性炎症性脱髄性疾患、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病、IgA腎症、封入体筋炎、炎症性関節炎、炎症性腸疾患、炎症性認知症、間質性膀胱炎、間質性肺炎、若年性特発性関節炎(若年性関節リウマチとしても知られる)、川崎病、ランバート・イートン筋無力症候群、白血球破砕性血管炎、扁平苔癬、硬化性苔癬、線状IgA病(LAD)、ルポイド肝炎(自己免疫性肝炎としても知られる)、エリテマトーデス、リンパ腫様肉芽腫症、マジード症候群、がんを含む悪性腫瘍(例えば、肉腫、カポジ肉腫、リンパ腫、白血病、がん腫およびメラノーマ)、メニエール病、顕微鏡的多発血管炎、ミラー・フィッシャー症候群、混合性結合組織病、モルフェア、ミュシャ・ハーバーマン病(急性痘瘡状苔癬状粃糠疹としても知られる)、多発性硬化症、重力性筋無力症、筋炎、ナルコレプシー、視神経脊髄炎(デビック病としても知られる)、神経性筋強直症、眼瘢痕性類天疱瘡、オード甲状腺炎、回帰性リウマチ、PANDAS(連鎖球菌に関連する小児自己免疫性神経精神障害)、傍腫瘍性小脳変性症、パーキンソン病、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、パリーロンバーグ症候群、パーソネイジ・ターナー症候群、毛様体扁平部炎、尋常性天疱瘡、末梢動脈疾患、悪性貧血、静脈周囲脳炎、POEMS症候群、結節性多発動脈炎、リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、進行性炎症性神経障害、乾癬、乾癬性関節炎、壊疽性膿皮症、赤芽球癆、ラスムッセン脳炎、レイノー現象、再発性多発軟骨炎、ライター症候群、再狭窄、下肢静止不能症候群、後腹膜線維症、関節リウマチ、リウマチ熱、サルコイドーシス、統合失調症、シュミット症候群、シュニッツラー症候群、強膜炎、強皮症、敗血症、血清病、シェーグレン症候群、脊椎関節症、スチル病(成人発症性)、全身硬直症候群、脳卒中、亜急性細菌性心内膜炎(SBE)、スザック症候群、スイート症候群、シデナム舞踏病、交感性眼炎、全身性エリテマトーデス、高安動脈炎、側頭動脈炎(「巨細胞性動脈炎」としても知られる)、血小板減少症、トロサ・ハント症候群、移植(例えば、心臓/肺移植)拒絶反応、横断性脊髄炎、結核、潰瘍性大腸炎、未分化結合組織病、未分化脊椎関節症、蕁麻疹様血管炎、血管炎、白斑、およびウェゲナー肉芽腫症を含むが、これらに限定されない。
【0087】
開示される化合物または組成物を含有する医薬製剤のキットも本明細書に提供される。キットは、単一の製剤または製剤の組み合わせを示すように構築され得る。組成物は、適切な量の化合物を含有するように細分化され得る。単位投与量は、包装された粉末、バイアル、アンプル、予め充填された注射器、または液体を含む小袋等の、包装された組成物であり得る。
【0088】
本明細書に記載される化合物または組成物は、単回用量であっても、または連続投与もしくは定期的な不連続投与のためのものであってもよい。連続投与のために、キットは、各投与単位中に化合物を含み得る。定期的な中止のために、キットは、化合物が送達されない期間中のプラセボを含み得る。組成物の濃度、組成物の構成要素、または組成物内の化合物もしくは他の薬剤の相対比率を経時的に変化させることが所望される場合、キットは一連の投与単位を含むことができる。
【0089】
キットは、所望の送達経路のために製剤化された化合物とともに包装または容器を含み得る。キットはまた、投与説明書、化合物に関する添付文書、化合物の循環レベルを監視するための説明書、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。化合物を使用して実施するための材料をさらに含んでもよく、限定されないが、試薬、ウェルプレート、容器、マーカーまたはラベル等が含まれ得る。そのようなキットは、所望の適応症の治療に好適な様式で包装される。そのようなキットに含まれる他の好適な構成要素は、所望の適応症および送達経路を考慮に入れると、当業者には容易に明らかになるであろう。キットはまた、対象の体内における化合物の注射/投与もしくは配置を補助するための器具を含んでもよいか、またはそれとともに包装されてもよい。そのような器具には、吸入剤、注射器、ピペット、鉗子、計量スプーン、点眼剤、または任意のそのような医学的に承認された送達手段が含まれるが、これらに限定されない。他の器具には、インビトロでの反応の読み取りまたは監視を可能にするデバイスが含まれ得る。
【0090】
これらのキットの化合物または組成物はまた、乾燥、凍結乾燥、または液体形態で提供されてもよい。試薬または構成要素が乾燥形態として提供される場合、再構成は、一般に溶媒の添加によって行われる。溶媒は、別の包装手段で提供されてもよく、当業者によって選択されてもよい。
【0091】
医薬品を分注するためのいくつかのパッケージまたはキットが、当業者に既知である。一実施形態において、パッケージは、ラベル付けされたブリスターパッケージ、ダイヤルディスペンサーパッケージ、またはボトルである。
【0092】
ある特定の態様において、本明細書に開示されるキットは、骨格と、それに結合した1つ以上のCD206標的化部分とを含むブロッキング化合物と、デキストラン骨格と、それに結合した1つ以上のCD206標的化部分および1つ以上の治療薬とを含むマンノシル化デキストラン治療用または診断用化合物とを含み、ブロッキング組成物骨格の分子質量は、マンノシル化デキストラン骨格化合物の分子質量より少なくとも2倍大きい。ある特定の態様において、キットは、式(I):
【0093】
【化10】
【0094】
(式中、
各Xは、独立して、H、L1-A、またはL2-Rであり、
各L1およびL2は、独立して、リンカーであり、
各Aは、独立して、治療薬、診断薬、またはHを含み、
各Rは、独立して、マンノース結合C型レクチン受容体標的化部分またはHを含み、
nは、ゼロより大きい整数であり、
少なくとも1つのRは、マンノース、フコース、およびn-アセチルグルコサミンからなる群から選択されるマンノース結合C型レクチン受容体標的化部分を含み、少なくとも1つのAは、治療薬または診断薬を含む)の化合物であるマンノシル化デキストラン治療用または診断用化合物を含む。さらなる態様において、ブロッキング化合物骨格は、約110kDaであり、マンノシル化デキストラン治療用または診断用化合物デキストラン骨格は、約10kDaである。
【実施例
【0095】
以下の実施例は、本明細書に特許請求される化合物、組成物、物品、デバイスおよび/または方法がどのように作製および評価されるかのある特定の例の完全な開示および記載を当業者に提供するために提示され、純粋に本発明の例示であることを意図しており、発明者らが自分達の発明と見なすものの範囲を限定することを意図していない。しかしながら、当業者は、本開示に照らして、開示される具体的な実施形態において多数の変更を行うことが可能であり、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、なおも同様または類似の結果が得られることを理解されたい。
【0096】
実施例1:
CD206に対する高い親和性のために、マンノシル化デキストランは概して、99mTc-チルマノセプトは特に、マクロファージが関与する疾患であるアテローム性動脈硬化症、がんおよび関節リウマチのためのイメージング剤または薬物送達ビヒクルのいずれかとして研究されてきた(結果は未発表)。SLN関連適応症に用いられる腫瘍周囲または皮内注射といった投与経路ではなく、静脈内(IV)注射によって投与されるLymphoseek(99mTc-チルマノセプト)を使用して、画像診断試験を行った。これらの研究の結果は概して肯定的であったが、図1および図2に示すように、99mTc-チルマノセプトのIV投与は、肝臓および腎臓によるマンノシル化デキストランの非常に有意な取り込みをもたらした。図1は、5mCiの99mテクネチウムで標識した25μgの99mTc-チルマノセプトを1時間前にIV注射(尾静脈)した雄Sprague Dawleyラットからの切片のオートラジオグラムを示す。注射された放射能の大部分は、注射後1時間までに尿中に排泄された(図1には示さず)。臓器の中では、肝臓および腎臓(図1中、それぞれLおよびK)に多くのクッパー細胞およびメサンギウム細胞が存在するため、これらの臓器で最も多く放射能の局在が起こった。また、マクロファージが存在することが知られている脾臓にも、(他よりも少ないが)有意な局在が見られた。本試験のSprague Dawleyラットは健康であったため、99mTc-チルマノセプトが局在し得る疾患病変はなかった。
【0097】
実施例2:
第2の実験では、蛍光標識した(Cy5)チルマノセプトを、4T1同系腫瘍を有するBalb/Cマウスに注射した。励起されると、Cy5は、光スペクトルの近赤外線領域で蛍光を発する。図2は、この実験から得られた偽色画像を提供し、黄色は赤色領域よりも高い蛍光を有する領域を示している。図2Aは、Cy5-チルマノセプトを注射したマウスの画像を示し、図2Cは、いずれの蛍光材料も注射しなかった動物の画像を示す。図2A図2Cと比較すると、動物の毛および腸(I)からかなりの自家蛍光があったことが分かる。しかしながら、蛍光マンノシル化デキストランを注射した動物では、腫瘍(T)におけるCy5-チルマノセプトの局在が顕著に明らかである。図2Aに示す動物を解剖し、肝臓、腎臓、脾臓および腫瘍の蛍光を調べることを可能にした(図2B)。図2Bでは、腫瘍(T)が、TAMにおけるCD206発現に起因して、かなりの量のCy5-チルマノセプトを特異的に局在させたことが明らかである。それぞれ、CD206を発現するクッパー細胞およびメサンギウム細胞の存在に起因して、肝臓(L)および腎臓(K)への局在の強さが腫瘍よりも高かった。脾臓のマクロファージおよび腫瘍のTAMの存在に起因して、脾臓(S)および腫瘍における蛍光の強度は類似していた。肝臓および腎臓による非特異的取り込みは、多数のCD206を発現するマクロファージを有する病理学的病変への局在に悪影響を及ぼし、CD206を標的とするマンノシル化デキストラン薬物送達構築物にとって望ましくない非特異的毒性をもたらす可能性がある。
【0098】
実施例3:
99mTc-チルマノセプトまたは同様のサイズの薬物送達ビヒクル等の低分子量マンノシル化デキストランの、肝臓または腎臓等の非特異的部位への局在をブロックするために、高分子量マンノシル化デキストランを合成することができる。デキストランは、α-1,6グリコシド結合を有するグルコースのポリマーである。デキストランのマンノシル化は、‘990特許に記載されている。チルマノセプトの合成は、’990特許に記載されている。本実施例では、10kDaのデキストラン骨格から開始してチルマノセプトを合成する。高分子量マンノシル化デキストランは、110kDaのデキストラン骨格から開始して合成することができる。前述の‘990特許のように、これらの骨格の各々に対して、アミン末端リーシュをデキストラン骨格に付加することができる。(チルマノセプトの場合、次いで、キレート剤であるDTPAを、アミン末端リーシュの一部に付加することができる。大分子量構築物には、キレート剤または任意の他の検出部分もしくは治療用部分は付加されない。最後に、チルマノセプトおよび高分子量構築物の両方で、様々な数の糖、マンノースを、占有されていないアミン末端リーシュの一部に付加することができる。マンノースに加えて他の糖をアミン末端リーシュに結合させて、CD206に結合する構築物を作製することができるが、複数のマンノース部分の結合は、CD206への高親和性結合を可能にするために必要かつ十分であることに留意されたい。
【0099】
実施例4:
ガリウム68標識DOTA-チルマノセプトのIV投与の直前に静脈内(IV)投与された高分子量マンノシル化デキストランは、肝臓局在の選択的ブロッキング(すなわち、減少)および筋肉中の深部組織マクロファージへの局在の増加をもたらす。
【0100】
ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)の代わりにキレート剤ドデカン四酢酸(DOTA)を担持するチルマノセプト誘導体を合成した。この構築物は、DOTA-チルマノセプトと称され、市販のチルマノセプトのDTPAがDOTAと交換されたことを除いて、市販のチルマノセプトと同一である。このDTPAのDOTAとの交換は、構築物であるDOTA-チルマノセプトを、ガリウム6868Ga]を含む様々なイオンで効果的に標識することができるように行われた。ガリウム68は、本実施例で使用されたイメージングモダリティであった陽電子放出断層撮影(PET)によるイメージングを可能にする。DOTA-チルマノセプトは、約20kDの平均分子量を有する。
【0101】
4匹のWistarラット(約250グラム)に、300μCiのガリウム68で標識した5μgの[68Ga]DOTA-チルマノセプトを静脈内(IV)注射して実験を行った。動的PETイメージングは、注射時から注射後90分まで実施した。標準的な取り込み値(SUV)を計算して、様々な臓器への放射性標識の体内分布を決定し、各臓器のグラム当たりの注射用量のパーセント(%ID/g)として報告した。本実施例では、肝臓と大腿筋という2つの臓器からの結果を報告している。大腿筋は、血液に直接曝露されない組織マクロファージに対する[68Ga]DOTA-チルマノセプトの局在の汎化可能なモデルとして使用された。腫瘍関連マクロファージおよび関節リウマチの病理生物学に関連するマクロファージは、多くの組織マクロファージの中の2つの例である。対照的に、肝臓は、CD206を発現し、かつ血液循環に直接曝露される、多数のクッパー細胞を含有する。クッパー細胞は、血液中に注射されたマンノシル化デキストランの著しい沈殿を示す。
【0102】
出発デキストラン骨格が10kDの代わりに150kDであり、得られたマンノシル化デキストランにキレート剤がコンジュゲートされていないことを除いて、チルマノセプトまたはDOTA-チルマノセプトを作製するために使用されるのと同じ化学手順を用いて、高分子量(HMW)マンノシル化デキストラン(Mw約350kD)を合成した。このHMW構築物は、クッパー細胞上のCD206に結合し、それによって[68Ga]DOTA-チルマノセプトの肝臓への局在をブロックするように設計されているが、血流から出て、その比較的大きなサイズのために組織内に非効率的に浸透するようにも設計されている。組織内への比較的不良な浸透は、HMW構築物が、組織マクロファージへの局在について[68Ga]DOTA-チルマノセプトと競合することを妨げるであろう。加えて、より少ない[68Ga]DOTA-チルマノセプトがクッパー細胞に局在するため、より多くの[68Ga]DOTA-チルマノセプトが、血液循環から出て、組織マクロファージ上に発現されるCD206に結合するように利用可能である。
【0103】
本実施例に記載の実験では、[68Ga]DOTA-チルマノセプトのIV投与の直前に、4匹のラットのうち3匹に2.5mgのHMWブロッキング構築物をIV注射した。図4Aおよび図4Bでは、HMWブロッキング剤を投与していないラット(図4A)およびHWMブロッキング剤を投与したラット(図4B)の代表的な80~90分間のPET-CT画像を示す。画像の定性的評価は、HMWブロッキング剤が肝臓への[68Ga]DOTA-チルマノセプトの局在を減少させたことを示す。図5は、非ブロックラットおよびHMWブロッキング剤を投与した3匹のラットの%ID/gとして表される、肝臓への[68Ga]DOTA-チルマノセプトの局在のグラフを示す。平均して、HMWブロッキング剤を投与したラットは、非ブロックラットと同等の26.7%の局在を示した。図6は、4匹のラットの大腿筋における%ID/gとして表される[68Ga]DOTA-チルマノセプトの局在量を示す。結果は様々であったが、平均して、HMWブロッキング剤を投与したラットは、ブロッキング剤を投与しなかったラットに観察されたよりも29.7%高い局在性を示した。結果の第3のグラフ表示(図7)では、4匹のラットの各々について、大腿筋/肝臓の%ID/gの比率(×100)を示す。HMWブロッキング剤を投与したすべてのラットは、ブロッキング剤を投与しなかったラットに観察されたものよりも2.7倍~8.5倍の範囲の、より高い筋肉/肝臓比を示した。これらの結果は、HMWマンノシル化デキストランブロッキング剤が、肝臓への[68Ga]DOTA-チルマノセプトの結合を選択的に阻害したが、大腿筋内のマクロファージへの[68Ga]DOTA-チルマノセプトの局在を減少させず、恐らくは増加させたことを示す。マクロファージが関与する病理学的病変の部位等の、組織マクロファージの他の部位も同様に機能することが予想される。
【0104】
本発明は好ましい実施形態に関して記載されてきたが、当業者は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態および詳細に変更が行われ得ることを認識するであろう。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
【国際調査報告】