(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-30
(54)【発明の名称】感圧装置の隔離キャビティ封止監視
(51)【国際特許分類】
G01L 19/06 20060101AFI20221122BHJP
G01L 13/00 20060101ALI20221122BHJP
G01L 7/00 20060101ALN20221122BHJP
【FI】
G01L19/06 A
G01L13/00 C
G01L7/00 L
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520092
(86)(22)【出願日】2020-05-15
(85)【翻訳文提出日】2022-05-25
(86)【国際出願番号】 US2020033123
(87)【国際公開番号】W WO2021066883
(87)【国際公開日】2021-04-08
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515231553
【氏名又は名称】ローズマウント インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュルテ、ジョン ポール
(72)【発明者】
【氏名】コロリョフ、ユージーン
【テーマコード(参考)】
2F055
【Fターム(参考)】
2F055AA31
2F055BB05
2F055CC02
2F055DD01
2F055FF31
2F055HH11
(57)【要約】
工業プロセス差圧検知装置は、第1及び第2のダイアフラムによってそれぞれ封止された第1及び第2の隔離キャビティを有するハウジングと、差圧センサと、静圧センサと、渦電流変位センサと、制御装置とを含む。静圧センサは、第1の隔離キャビティ内の充填流体の圧力に基づく静圧信号を出力するように構成される。差圧センサは、第1の隔離キャビティと第2の隔離キャビティとの間の圧力差を示す差圧信号を出力するように構成される。渦電流変位センサは、ハウジングに対する第1の隔離ダイアフラムの位置を示す位置信号を出力するように構成される。制御部は、位置信号、静圧信号、及び差圧信号に基づいて、隔離キャビティの封止の損失を検出するように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の隔離キャビティと、前記第1の隔離キャビティに含まれる充填流体と、第2の隔離キャビティと、前記第2の隔離キャビティに含まれる充填流体と、を含むハウジングと、
前記第1の隔離キャビティのプロセス界面をプロセス媒体から封止するように構成された第1の隔離ダイアフラムと、
前記第2の隔離キャビティのプロセス界面を前記プロセス媒体から封止するように構成された第2の隔離ダイアフラムと、
前記第1の隔離キャビティ内の前記充填流体の圧力に基づく静圧信号を出力するように構成された静圧センサと、
前記ハウジングに対する前記第1の隔離ダイアフラムの位置を示す第1の位置信号を出力するように構成された第1の渦電流変位センサと、
前記第1の隔離キャビティ及び前記第2の隔離キャビティのセンサ界面に露出され、前記第1の隔離キャビティ及び前記第2の隔離キャビティ内の充填流体間の圧力差を示す差圧信号を出力するように構成された差圧センサと、
前記第1の位置信号、前記静圧信号、及び前記差圧信号に基づいて、前記第1の隔離キャビティの封止の損失を検出するように構成された制御部と、を含む工業プロセス差圧検知装置。
【請求項2】
前記第1の渦電流変位センサが前記第1の隔離ダイアフラムから変位され、
前記第1の隔離キャビティが、前記第1の渦電流変位センサと前記第1の隔離ダイアフラムとの間に延在する請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記制御部は、
静圧と差圧に基づいて、前記ハウジングに対する前記第1の隔離ダイアフラムの予想位置を求め、
前記第1の位置信号によって示される位置と前記第1の隔離ダイアフラムの予想される位置との間の第1の差を決定し、
前記第1の差が第1の閾値を超えた場合に、前記第1の隔離キャビティの封止損失を検出するように構成されている請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記第1の渦電流変位センサは、前記ハウジングによって支持され、前記第1の隔離ダイアフラムに渦電流を誘導するように構成されたコイルを含み、
前記位置信号はコイルのインピーダンスに基づいている請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記装置は、前記第1の隔離キャビティに含まれる前記充填流体の温度を示す温度信号を有する温度センサを含み、
前記制御部は、前記温度信号に基づいて前記第1の隔離キャビティの封止の損失を検出するように構成されている請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記ハウジングに対する前記第2の隔離ダイアフラムの位置を示す第2の位置信号を出力するように構成された第2の渦電流変位センサをさらに備え、前記制御部は、前記第2の位置信号、前記静圧信号、及び前記差圧信号に基づいて前記第2の隔離キャビティの封止の損失を検出するように構成されている請求項3に記載の装置。
【請求項7】
前記制御部は、
静圧と差圧に基づいて、ハウジングに対する第2の隔離ダイアフラムの予想位置を取得し、
前記第2の位置信号によって示される位置と前記第2の隔離ダイアフラムの予想位置との間の第2の差を決定し、
前記第2の差が第2の閾値を超えた場合に、前記第2の隔離キャビティの封止損失を検出するように構成されている請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記第1の渦電流変位センサは、前記ハウジングによって支持され、前記第1の隔離ダイアフラムに渦電流を誘導するように構成された第1のコイルを含み、
前記第1の位置センサから出力される位置信号は、前記第1のコイルのインピーダンスに基づき、
前記第2の渦電流変位センサは、前記ハウジングによって支持され、前記第2の隔離ダイアフラムに渦電流を誘導するように構成された第2のコイルを含み、
前記第2の位置センサから出力される位置信号は、前記第2のコイルのインピーダンスに基づく請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記装置は、前記第1の隔離キャビティ及び前記第2の隔離キャビティに含まれる前記充填流体の温度を示す温度信号を有する温度センサを含み、
前記制御部は、前記温度信号に基づいて、前記第1の隔離キャビティの封止の損失と、前記第2の隔離キャビティの封止の損失とを検出するように構成されている請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記制御部は、静圧を前記第1の隔離ダイアフラムの位置の変化と相関させる特徴付けに基づいて、前記第1の隔離キャビティの封止の損失を検出するように構成されている請求項1に記載の装置。
【請求項11】
第1の隔離キャビティ及び第2の隔離キャビティを有するハウジングと、差圧センサと、静圧センサと、工業プロセス媒体から前記第1の隔離キャビティのプロセス界面を封止する第1の隔離ダイアフラムと、前記工業プロセス媒体から前記第2の隔離キャビティのプロセス界面を封止する第2の隔離ダイアフラムと、を含む、工業プロセス差圧検知装置における隔離構成の隔離キャビティの封止の損失を検出する方法であって、
第1の渦電流変位センサを用いて、前記ハウジングに対する前記第1の隔離ダイアフラムの位置を検出し、
静圧センサを用いて前記第1の隔離キャビティ内の充填流体の静圧を取得し、
差圧センサを用いて前記第1の隔離キャビティ及び前記第2の隔離キャビティの間の差圧を取得し、
制御部を用いて、前記静圧と前記差圧に基づいて、メモリから前記ハウジングに対する前記第1の隔離ダイアフラムの予想位置を取得し、
前記制御部を使用して、前記第1の隔離ダイアフラムの検出位置と前記第1の隔離ダイアフラムの予想位置との差が閾値を超えた場合に、前記第1の隔離キャビティの封止の損失を検出し、
前記制御部を用いて封止の損失を検知した場合に通知を発生する方法。
【請求項12】
温度センサを使用して前記第1の隔離キャビティ内の前記充填流体の温度を検出することを含み、
前記ハウジングに対する前記第1の隔離ダイアフラムの前記予想位置を得ることは、前記温度に基づく請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の渦電流変位センサが前記第1の隔離ダイアフラムから変位され、
前記第1の隔離キャビティは、前記第1の渦電流変位センサと前記第1の隔離ダイアフラムとの間に延在する請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の渦電流変位センサは、前記ハウジングによって支持され、前記第1の隔離ダイアフラムに渦電流を誘導するように構成されたコイルを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
第2の渦電流変位センサを用いて、前記ハウジングに対する前記第2の隔離ダイアフラムの位置を検出し、
制御部を用いて、前記静圧と前記差圧に基づいて、メモリから前記ハウジングに対する前記第2の隔離ダイアフラムの予想位置を取得し、
前記制御部を使用して、前記第2の隔離ダイアフラムの検出位置と前記第2の隔離ダイアフラムの予想位置との差が、閾値を超えた場合に、前記第2の隔離キャビティの封止損失を検出し、
前記制御部を用いて前記第2の隔離キャビティの封止の損失を検知した場合に通知を生成する請求項11に記載の方法。
【請求項16】
温度センサを使用して前記第1の隔離キャビティおよび前記第2の隔離キャビティ内の充填流体の温度を検出することを含み、
前記ハウジングに対する前記第1の隔離ダイアフラムの予想位置を得ることは前記温度に基づき、
前記ハウジングに対する前記第2の隔離ダイアフラムの予想位置を得ることは前記温度に基づく請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の渦電流変位センサが前記第1の隔離ダイアフラムから変位され、
前記第1の隔離キャビティが、前記第1の渦電流変位センサと前記第1の隔離ダイアフラムとの間に延在し、
前記第2の渦電流変位センサが前記第2の隔離ダイアフラムから変位され、
前記第2の隔離キャビティが、前記第2の渦電流変位センサと第2の隔離ダイアフラムとの間に延在する請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の渦電流変位センサは、前記ハウジングによって支持され、前記第1の隔離ダイアフラムに渦電流を誘導するように構成されたコイルを含み、
前記第2の渦電流変位センサは、前記ハウジングによって支持され、前記第2の隔離ダイアフラムに渦電流を誘導するように構成されたコイルを含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の隔離ダイアフラムの予想位置を得ることは、前記静圧を前記第1の隔離ダイアフラムの位置の変化と相関させる特徴付けに基づく、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
工業プロセス媒体を差圧センサから分離するように構成された圧力センサ隔離構成であって、
各々が差圧センサに曝される第1の隔離キャビティ及び第2の隔離キャビティを含むハウジングと、
前記第1の隔離キャビティ及び前記第2の隔離キャビティに含まれる充填流体と、
前記第1の隔離キャビティをプロセス媒体からプロセス界面で封止するように構成された第1の隔離ダイアフラムと、
前記第2の隔離キャビティを前記プロセス媒体からプロセス界面で封止するように構成された第2の隔離ダイアフラムと、
前記ハウジングに対する前記第1の隔離ダイアフラムの位置を示す第1の位置信号を出力するように構成された第1の渦電流変位センサと、を含み、
ここで、前記第1の位置信号は、前記第1の隔離キャビティの封止の状態を示す、
構成。
【請求項21】
前記第1の渦電流変位センサは、コイルと、前記コイルを通じて交流を駆動するように構成され、前記第1の隔離ダイアフラムに渦電流を誘導するコイルドライバと、を含み、
前記第1の位置信号は、前記第1の渦電流変位センサの前記コイルのインピーダンスに基づく請求項20に記載の構成。
【請求項22】
前記ハウジングに対する前記第2の隔離ダイアフラムの位置を示す第2の位置信号を出力するように構成された第2の渦電流変位センサをさらに含み、
前記第2の渦電流変位センサは、コイルと、前記コイルを通じて交流を駆動するように構成され、前記第2の隔離ダイアフラムに渦電流を誘導するコイルドライバと、を含み、 前記第2の位置信号は、前記第2の渦電流変位センサの前記コイルのインピーダンスに基づき、
前記第2の位置信号は、前記第2の隔離キャビティの封止の状態を示す
請求項21に記載の構成。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、工業プロセス感圧装置のための隔離構成に関し、より詳細には、封止破損のために隔離キャビティを監視するための技法に関する。
【背景技術】
【0002】
工業プロセス感圧装置、例えば、圧力送信機及び流量測定装置は、プロセス媒体の圧力に応答して出力を提供する圧力センサを使用してプロセス媒体の圧力を監視するために、工業プロセス制御システムで使用されている。1つの周知のタイプの圧力送信機は、ミネソタ州チャナッセンのローズマウント・インコーポレイテッドから入手可能なModel 3051送信機である。また、米国では圧力送信機も示されている。例えば、米国特許第.5,094,109号等を参照されたい。
【0003】
圧力センサがプロセス媒体にさらされると、プロセスセンサが損傷し、圧力測定値に悪影響を及ぼす可能性がある。圧力センサがプロセス媒体の圧力を検出することを可能にしながら、圧力センサをプロセス媒体から分離するために、隔離構成が使用される。隔離構成は、典型的には、プロセス媒体に曝される隔離ダイアフラムを含む。隔離ダイアフラムは、典型的には、プロセス媒体の圧力に応答して撓む非常に薄く順応的な部材である。プロセス媒体の圧力を表す隔離ダイアフラムの撓みは、流体ラインなどの隔離キャビティ内に含まれる隔離流体または充填流体を介して圧力センサに結合される。したがって、圧力センサは、プロセス媒体に曝されることなく、隔離流体の圧力を測定することによって、プロセス圧力を測定することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
隔離キャビティの封止は、例えば、腐食性又は研磨性のプロセス媒体への暴露による隔離ダイアフラムの破裂、又は封止の故障によって破られる可能性がある。隔離キャビティの封止の破損は、隔離流体の漏れをもたらす可能性があり、これは、圧力測定値の劣化につながる可能性がある。さらに、プロセス媒体が隔離キャビティに入る可能性があり、これは、プロセス流体によって圧力センサを損傷し、さらに圧力測定値を劣化させる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態は、一般に、工業プロセス差圧検知装置、差圧検知装置内の隔離構成の隔離キャビティの封止損失状態を検出する方法、及び差圧センサ隔離構成に関する。工業プロセス差圧検知装置の一実施形態は、第1及び第2のダイアフラムによってそれぞれ封止された第1及び第2の隔離キャビティを有するハウジングと、差圧センサと、静圧センサと、渦電流変位センサと、制御部とを含む。静圧センサは、第1の隔離キャビティ内の充填流体の圧力に基づく静圧信号を出力するように構成される。差圧センサは、第1の隔離キャビティと第2の隔離キャビティとの間の圧力差を示す差圧信号を出力するように構成される。渦電流変位センサは、ハウジングに対する第1の隔離ダイアフラムの位置を示す位置信号を出力するように構成される。制御部は、位置信号、静圧信号、及び差圧信号に基づいて、隔離キャビティの封止の損失を検出するように構成される。
【0006】
本方法の一実施形態は、第1および第2の隔離キャビティを有するハウジングと、差圧センサと、静圧センサと、第1の隔離キャビティのプロセス界面を工業プロセス媒体から封止する第1の隔離ダイアフラムと、第2の隔離キャビティのプロセス界面をプロセス媒体から封止する第2の隔離ダイアフラムとを含む、工業プロセス差圧検知装置における隔離構成に関する。この方法では、第1の渦電流変位センサを用いて、ハウジングに対する第1の隔離ダイアフラムの位置を検出する。第1の隔離キャビティ内の充填流体の静圧は、静圧センサを使用して得られ、第1の隔離キャビティと第2の隔離キャビティの間の差圧は、差圧センサを使用して得られる。そして、静圧と差圧とに基づいて、制御装置を用いて、メモリからハウジングに対する第1隔離ダイアフラムの予想位置を求める。第1の隔離ダイアフラムの検出位置と第1の隔離ダイアフラムの予想位置との差が閾値を超えると、第1の隔離キャビティの封止損失が検出される。そして、制御装置を用いて封止不良を検知した場合に報知するようになっている。
【0007】
差圧センサ隔離構成は、工業プロセス媒体を差圧センサから分離するように構成される。一実施形態では、隔離構成は、差圧センサにそれぞれ曝される第1および第2の隔離キャビティと、隔離キャビティに含まれる充填流体と、第1および第2の隔離ダイアフラムと、渦電流変位センサとを有するハウジングを含む。第1の隔離ダイアフラムは、プロセス媒体からプロセス界面で第1の隔離キャビティを封止するように構成される。第2の隔離ダイアフラムは、プロセス界面で第2の隔離キャビティをプロセス媒体から封止するように構成される。渦電流変位センサは、ハウジングに対する第1の隔離ダイアフラムの位置を示す位置信号を出力するように構成される。この位置信号は、第1の隔離キャビティの封止の状態を示している。
【0008】
この概要は、以下の「発明を実施するための形態」でさらに説明する概念の選択肢を簡略化した形で紹介するために提供される。この「発明の概要」は、特許請求される主題の主要な特徴又は本質的な特徴を識別することを意図するものではなく、特許請求される主題の範囲を決定する際の助けとして使用されることを意図するものでもない。特許請求される主題は、「背景技術」で言及された任意のまたはすべての欠点を解決する実装形態に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態による、例示的な工業プロセス測定システムの簡略図である。
【
図2】本発明の実施形態による、隔離構成を有する例示的な工業プロセス感圧装置の簡略図である。
【
図3】従来技術による例示的な圧力センサ及び隔離構成の簡略図である。
【
図4】本発明の実施形態による、隔離キャビティの封止の損失を検出するための例示的な方法を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の実施形態による例示的な渦電流変位センサの簡略図である。
【
図6】封止された隔離キャビティ条件及び封止されていない隔離キャビティ条件での静的流体充填圧力の範囲にわたる隔離ダイアフラムの撓みを示す図である。
【
図7】本発明の実施形態による、例示的な工業プロセス差圧検知装置の一部の単純化した断面図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る、工業プロセス差圧検知装置における隔離キャビティの封止損失を検知する例示的な方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態をより詳細に説明する。また、同一又は類似の符号を用いて識別される要素は、同一又は類似の要素を示すものとする。本開示の様々な実施形態は、多くの異なる形態で実施されてもよく、本明細書で説明される特定の実施形態に限定されるものとして解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、この開示が完全かつ完全となり、本開示の範囲を当業者に完全に伝えるように提供される。
【0011】
図1は、本発明の実施形態による、例示的な工業プロセス測定システム100の簡略図である。システム100は、材料をより価値の低い状態から、石油、化学品、紙、食品などのより価値があり有用な製品に変換するために、材料の処理に使用することができる。例えば、システム100は、原油をガソリン、燃料油、及び他の石油化学製品に加工することができる工業プロセスを実施する石油精製所で使用することができる。
【0012】
システム100は、プロセス媒体104に関する圧力(例えば、静圧又は差圧)を測定又は検知するために圧力センサを利用する送信機102を含む。いくつかの実施形態では、プロセス媒体104は、パイプ(図示せず)、タンク、または別のプロセス容器などのプロセス容器106に含まれるか、またはプロセス容器106を通じて輸送される流体(すなわち、液体またはガス)とすることができる。送信機102は、例えば、アダプタ108、マニホルド110、及びプロセスインターフェース112を通じて容器106に結合することができる。
【0013】
送信機102は、コンピュータ化された制御ユニット114とプロセス情報を通信することができる。制御ユニット114は、
図1に示されるように、システム100のための制御室116内など、送信機102から離れて配置されてもよい。プロセス情報は、例えば、静圧、差圧、又は差圧に基づく容器を通る流体流量などの関連するプロセスパラメータを含むことができる。
【0014】
制御ユニット114は、2線制御ループ118などの適切な物理通信リンク、またはワイヤレス通信リンクを介して送信機102に通信可能に結合され得る。制御ユニット114と送信機102との間の通信は、従来のアナログおよび/またはデジタル通信プロトコルに従って、制御ループ118を介して実行され得る。いくつかの実施形態では、制御ループ118は、4~20ミリアンペアの制御ループを含み、プロセス変数は、制御ループ118を流れるループ電流Iのレベルによって表すことができる。例示的なデジタル通信プロトコルは、HART(登録商標)通信規格などに従った、2線式制御ループ118のアナログ電流レベルへのデジタル信号の変調を含む。FieldBusおよびProfibus通信プロトコルを含む他の純粋にデジタルの技法を使用することもできる。
【0015】
また、送信機102は、従来の無線通信プロトコルを用いて制御部114と無線通信するように構成されていてもよい。例えば、送信機102は、WirelessHART(登録商標)(IEC 62591)もしくはISA 100.11a(IEC 62734)などの無線メッシュネットワークプロトコル、またはWiFi、LoRa、Sigfox、BLE、もしくは任意の他の適切なプロトコルなどの別の無線通信プロトコルを実装するように構成され得る。
【0016】
電力は、任意の適切な電源から送信機102に供給され得る。例えば、送信機102は、制御ループ118を流れる電流Iによって完全に電力供給されてもよい。1つまたは複数の電源を利用して、内部バッテリまたは外部バッテリなどの送信機102に電力を供給することもできる。また、発電機(例えば、ソーラーパネル、風力発電機など)を使用して、送信機102に電力を供給し、又は送信機102によって使用される電源を充電することができる。
【0017】
上記で論じたように、工業プロセス圧力送信機102の圧力センサは、隔離構成を介してプロセス媒体104に結合され、圧力センサがプロセス媒体にさらされるのを防止することができる。図。
図2は、本発明の実施形態による隔離構成132を有する、圧力送信機などの例示的な工業プロセス感圧装置130の簡略図である。隔離構成132は、隔離キャビティ136を有するハウジング134を含み、隔離キャビティ136は、プロセス媒体104に曝される隔離ダイアフラム140によってプロセス界面138で封止される。隔離ダイアフラム140は、金属(例えば、ステンレス鋼)で形成され、処理媒体104の圧力に応じて撓む。プロセス媒体104の圧力を表す隔離ダイアフラム140の撓みは、キャビティ136内に収容された隔離流体144(例えば、シリコーンオイル、作動流体など)を通じて圧力センサ142に伝達される。圧力センサ142は、隔離流体144及びプロセス媒体104の圧力(例えば、静圧)を示す圧力信号146を生成することができる。
【0018】
いくつかの実施形態では、装置130は、制御部150(
図2)を含む。これは、例えば、ハードディスク、CD-ROM、光記憶装置、または磁気記憶装置などの一時的な波または信号を含まない任意の適切な特許主題の適格なコンピュータ可読媒体またはメモリ152にローカルに記憶され得る、命令の実行に応答して本明細書で説明される1つまたは複数の機能を実行するように装置130の構成要素を制御する、1つまたは複数のプロセッサ(すなわち、マイクロプロセッサ、中央処理装置など)を表すことができる。
【0019】
制御部150のプロセッサは、1つまたは複数のコンピュータベースのシステムの構成要素とすることができる。いくつかの実施形態では、制御部150は、1つまたは複数の制御回路、マイクロプロセッサベースのエンジン制御システム、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などの1つまたは複数のプログラマブルハードウェアコンポーネントを含み、これらは、本明細書で説明する1つまたは複数の機能を実行するように装置130の構成要素を制御するために使用される。
【0020】
制御部150はまた、従来の通信プロトコルに従って、情報154を制御ユニット114に通信するように構成された通信回路などの他の装置回路を表してもよい。この情報は、圧力信号146から導出された圧力情報156を含むことができる。また、圧力情報156は、例えば、ハウジング134、充填流体144、及び/又はプロセス媒体104の温度を示すことができる温度センサ160によって生成される温度信号158に基づくことができる。
【0021】
圧力センサ142は、任意の適切な形態をとることができる。
図3は、従来技術による例示的な圧力センサ142及び隔離構成132の簡略図である。いくつかの実施形態では、圧力センサ142は、基準圧力を有する基準圧力キャビティ164を封止する感圧ダイアフラム162を含むことができる。絶対圧力センサの場合、基準圧力は真空であり、ゲージ圧力センサの場合、基準圧力は大気圧であり、差圧センサの場合、基準圧力は、例えば、監視されるプロセスの異なる圧力などの別の選択された圧力である。
【0022】
感圧ダイアフラム162は、隔離ダイアフラム140よりもはるかに剛性であってもよい。その結果、隔離ダイアフラム140の両端間の圧力降下は、感圧ダイアフラム162の両端間の圧力降下と比べて非常に小さくすることができる。プロセス媒体104の静水圧が上昇すると、隔離ダイアフラム140がキャビティ136内に撓み(破線)、キャビティ136内の充填流体144の静水圧が上昇し、感圧ダイアフラム162が基準キャビティ164内に撓む。感圧ダイアフラム162の撓み量(破線)は、感圧ダイアフラム162に取り付けられた撓みゲージ166によって測定することができる。ゲージ166は圧力信号146(
図2)を発生する。これは、プロセス媒体104の静水圧を示す。
【0023】
感圧ダイアフラム162の撓みによって掃引される容積は、充填流体144で満たされ、したがって、同様の容積の充填流体が、隔離ダイアフラム140の撓みによって掃引される。実際には、隔離ダイアフラム140は、隔離キャビティ136の膨張及び充填流体144の圧縮のために、感圧ダイアフラム162よりもわずかに大きい容積を掃引することができる。
【0024】
これにより、処理媒体104の圧力に応じたダイアフラム162、140の撓み位置(破線)が互いに繋がれる。すなわち、両ダイアフラム162、140は、プロセス媒体104の圧力に比例して撓む。
【0025】
時間の経過と共に、隔離ダイアフラム140は、穴又は亀裂を発生させる点まで損傷を受け、その結果、隔離キャビティ136の封止が失われる可能性がある。これは、腐食性または研磨性のプロセス媒体104、プロセス媒体中の粒子などのプロセス媒体104からの物理的損傷、または他の機械的干渉によって起こり得る。初期においては、隔離ダイアフラム140の破断の衝撃は非常に微妙であり得る。隔離ダイアフラム140を横切ってプロセス圧力を伝達する代わりに、圧力は充填流体144を通じて圧力センサ142へ直接伝達される。したがって、以前に封止された隔離ダイアフラム140の両端の圧力降下は、破裂によってゼロになる。上述したように、失われた圧力降下は、プロセス媒体104の圧力と比べて非常に小さい正圧又は負圧とすることができる。その結果、ダイアフラム140の両端間の圧力降下の損失によって引き起こされるプロセスセンサ142によって検知される圧力のわずかな増加又は減少が、圧力測定の精度に影響を及ぼす可能性があるが、隔離キャビティ136の封止が破られたことを警告するのに十分な起動要因ではない可能性がある。
【0026】
プロセス媒体104が液体である場合、最終的には、時間の経過と共に充填流体144に取って代わることになる。ガス又は蒸気処理媒体104の場合、充填流体144は、隔離キャビティ136から徐々に排出される。 何れの場合でも、圧力センサ142は処理媒体104に曝され、圧力センサ142の損傷及び/又はセンサ信号146の劣化を引き起こす可能性がある。
【0027】
いくつかの圧力センサ142は、ガルバニック漏れに対して非常に敏感にするインピーダンスレベルを有する。プロセス媒体104(液体又はガス)が隔離キャビティ136内へのそのような漏れを生じさせる場合、そのような高インピーダンスレベルの圧力センサは、誤った圧力信号146を生成する可能性が高い。例えば、塩水は導電性であり、露出した高インピーダンスノードを有する圧力センサ142による正確な圧力信号146を生成する能力を破壊する。
【0028】
本発明の実施形態は、例えば、隔離ダイアフラム140によって形成される封止の破損など、隔離キャビティ136の封止の破損を検出するための診断ツールとして動作する。そのため、圧力測定の劣化の可能性を早期に通知することができ、工業用プロセス感圧装置130の保守点検の必要性を高めることができる。
【0029】
図4は、本発明の実施形態による、隔離キャビティの封止の損失を検出するための例示的な方法を示すフローチャートである。本方法のステップ170では、位置センサ172(
図2)を用いて隔離ダイアフラム140の位置を検知する。いくつかの実施形態では、位置センサ172は、ハウジング134などの基準に対する隔離ダイアフラム140の位置を検出し、ハウジング134に対するダイアフラム140の位置を示す位置信号174を生成する。あるいは、位置センサ172がハウジング134又はキャビティ136と水平にならず、ハウジング134又はキャビティ136内にさらに埋め込まれる機械的構造を使用してもよい。ここで、検出される絞り140の位置は、例えば絞り140の中央部などの絞り140の一部の位置に対応する。ダイアフラム140の検出位置は、位置信号174に基づいて制御装置150によって決定され、隔離キャビティ136の封止の状態の指標として使用されてもよい。
【0030】
いくつかの実施形態では、位置センサ172は、
図2に示されるように、隔離ダイアフラム140から変位される。すなわち、位置センサ172は隔離ダイアフラム140と接触しない。いくつかの実施形態では、隔離ダイアフラム140からの位置センサ172のこの変位は、
図2に示されるように、隔離ダイアフラム140と位置センサ172との間に延びる隔離キャビティ136の一部をもたらす。いくつかの実施形態では、位置センサと隔離ダイアフラムとの間のギャップは、約4~20milである。
【0031】
位置センサ172は、任意の適切な形態をとることができる。一実施形態では、位置センサ172は、
図2に概略的に示されるように、エミッタ178から放出された電磁放射176が隔離ダイアフラム140から反射し、センサ172の受信機180によって受信されるまでの飛行時間を測定する光学変位センサを備える。あるいは、位置センサ172は、
図2に模式的に示されるように、隔離ダイアフラム140と、隔離ダイアフラム140から電気的に隔離された電極182との間の静電容量を検出する静電容量変位センサを備えてもよい。また、位置センサ172は、隔離ダイアフラム140に搭載され、ダイアフラム140の撓みに応答して変化する出力を有する表面弾性波(SAW)センサを備えてもよい。SAWセンサは、ハウジング134上の位置から遠隔で問い合わせることができる。位置センサ172の一実施形態は、送信機と受信機の間の音響信号の飛行時間を使用してハウジング134に対する隔離ダイアフラム140の位置を検出する音響センサを含むことができる。別の例示的な位置センサ172は、ハウジング134に対する隔離ダイアフラム140の位置と共に変化するハウジング134の2つの点の間の熱伝導率を検知する熱伝導率センサを含むことができる。
【0032】
位置センサ172の一実施形態は、渦電流変位センサ184を備え、その一例が
図5の簡略図に示されている。なお、分かり易くするため、
図5では、筐体134などの構成要素の図示を省略している。センサ184は、隔離ダイアフラム140に対する基準位置に支持されたコイル186と、コイルドライバ188と、を有している。一実施形態では、コイル186の基準位置はハウジング134に固定されている。コイルドライバ188は、コイル186を通じて交流を駆動して交流磁界190を生成するように構成される。隔離ダイアフラム140は金属製であり、コイル186に近接して磁界190に曝されている。磁界190は、隔離ダイアフラム140内に渦電流192を誘導し、これが次に入射磁界190と対向する磁界194(破線)を生成する。渦電流192の大きさ及びコイルのインピーダンスは、コイル186に対する隔離ダイアフラム140の位置によって変化する。したがって、隔離ダイアフラム140の、ハウジング134(
図1)に対する位置(例えば、隔離ダイアフラムの中央部分)は、コイルのインピーダンスによって推測することができる。隔離ダイアフラムがコイルに近づくにつれて、コイルのインピーダンスが減少し、隔離ダイアフラムがコイルから離れるにつれて、コイルのインピーダンスが増加する。したがって、コイル186のインピーダンスの測定値を位置信号174として使用することができる。
【0033】
渦電流変位センサ184のコイル186は、コイル186と隔離ダイアフラム140との間のギャップ198の少なくとも2倍の直径を有してもよい。いくつかの実施形態では、ギャップは、約4~20milの範囲にわたって隔離ダイアフラムの移動と共に変化する。したがって、いくつかの実施形態では、コイルは少なくとも40milの直径を有する。
【0034】
本方法の200では、ハウジング134に対する隔離ダイアフラム140の予想される位置が、圧力センサ142によって検出され、圧力信号146によって示される、隔離キャビティ136内に含まれる充填流体144の静圧に基づいて、制御部150によって得られる。以下で説明するように、圧力センサ142が差圧センサの形態である場合、静圧又はライン圧は、例えば、専用の静圧センサを用いて取得することができる。いくつかの実施形態では、制御部150は、充填流体の静圧を、メモリ152に記憶された予想位置データ202に対する指標として使用して、ハウジング134に対する隔離ダイアフラム140の予想位置を取得し、方法のステップ200を完了する。
【0035】
隔離キャビティ136が適切に封止されている場合の通常動作中の隔離ダイアフラム140の予想される位置は、経験的に決定することができる。例えば、隔離流体144の圧力範囲にわたるハウジング134に対する隔離ダイアフラム140の推定又は予想される位置は、隔離構成132の隔離流体144の圧力範囲にわたる隔離ダイアフラム位置の測定値、又は同様の隔離構成を通じて決定することができる。結果として得られる予想位置データ202は、隔離流体の静圧に基づいてハウジング134に対する隔離ダイアフラム140の予想位置を計算するために、多項式などのアルゴリズムによって定義することができる。そのような多項式はまた、(適用可能であれば)温度および差圧を説明することができる。あるいは、キャビティ136内の隔離流体144の静圧、場合によっては差圧(適用可能な場合)および温度を、測定された撓みまたは位置にリンクさせる、ルックアップテーブルまたは別の適切なデータ記憶インデックスを使用することができる。
【0036】
隔離流体144の所与の圧力に対する隔離ダイアフラム140の予想される位置は、温度などの追加の環境要因に基づくことができる。シリコーンオイルなどの充填流体144は、一般に、正の熱膨張係数を有する。充填流体の膨張は、他の熱膨張を支配し、その結果、隔離ダイアフラム140の位置は、隔離構成132が加熱されるにつれて圧力センサ142から離れるように撓む傾向がある。この影響は、充填流体144の静圧の範囲と各圧力における温度の範囲にわたってハウジング134に対する隔離ダイアフラム140の位置を測定することによって、隔離構成132の経験的分析中に決定することができる。その結果、ダイアフラム140の位置を充填流体144の圧力及び温度に割り出す予想位置データ202が得られる。したがって、ステップ200のいくつかの実施形態では、制御部150は、温度センサ160によって出力される温度信号158と、圧力信号146によって示される静圧とを使用して、充填流体144の温度を推定し、予想位置データ202を使用してハウジング134に対する隔離ダイアフラム140の予想位置を得る。
【0037】
この方法の204で、制御部150は、検出された位置(ステップ170)と予想される位置(ステップ200)との差(絶対値)が、
図2に示されるようにメモリ152から取り出すことができる閾値206を超えた場合に、隔離キャビティ136の封止の損失を検出する。閾値206は、充填流体144の所与の圧力、又は充填流体144の圧力と温度の組み合わせに対して経験的に設定することができる。さらに、異なる閾値を、充填流体144の圧力または圧力と温度の組み合わせの範囲にわたってインデックス付けすることができる。ハウジング134に対する隔離ダイアフラム140の予測位置と検出位置との差が閾値206を超えると、隔離キャビティ136の封止の破れが示される。
【0038】
図6は、封止及び非封止の隔離キャビティ状態における充填流体144の静圧範囲にわたる隔離ダイアフラム140の撓みを示す図である。この縦スケールは、隔離ダイアフラム140の撓み範囲に対して正規化されている。実線210は、適切に封止された隔離キャビティ136に対する隔離ダイアフラム140の撓みを表し、予想位置データ202によって定義されるダイアフラム140の予想撓み又は位置に対応する。
【0039】
破線212は、断裂した隔離ダイアフラム140の撓みを示している。ここで、隔離ダイアフラム140は、0.5として示される中立位置に移動するが、異なる値であってもよい。隔離ダイアフラム140の位置は、充填流体144の圧力とは無関係であり、したがって、隔離ダイアフラム140の位置は、位置線212が通常動作のために位置線210と交差する場所を除いて、充填流体144の所与の圧力および/または圧力ならびに温度に対する予想位置から逸脱することになる。したがって、圧力範囲の大部分について、予測位置と検出位置との差が閾値206よりも大きいため、破裂した隔離ダイアフラム140は、本方法のステップ204で検出可能である。
【0040】
図6の破線214は、漏れによる隔離キャビティ136からの充填流体144の部分的な損失を表す。ここで、隔離ダイアフラム140は依然としてプロセス媒体104の圧力変化に応答するが、隔離ダイアフラム(線214)の測定位置は、充填流体144の部分的損失のために予想位置(線210)からオフセットする。十分な量の充填流体144が隔離キャビティ136から漏出した後、隔離ダイアフラム140の測定位置と予想位置との差が対応する閾値206を超え、制御装置150が方法のステップ204で故障を検出する。
【0041】
本方法のいくつかの実施形態では、制御装置150は、本方法の220で示されるように、ステップ204で検出されたキャビティ136の封止状態の損失の通知を生成するように構成される。通知は、任意の適切な形式をとることができる。いくつかの実施形態では、通知は、
図2に示される装置130の適切な出力装置222(例えば、ストロボ、LED、スピーカなど)によって発行される可視アラームおよび/または可聴アラームを含むアラームを含む。通知のいくつかの実施形態は、制御ユニット114などの外部コンピューティング装置への通知情報224の通信を含む。通知224は、発生した隔離キャビティ封止の破損のタイプに関する情報を含むことができる。例えば、通知224は、
図6に示されるようなこれらの状態を区別する情報を使用するなど、隔離ダイアフラム140の予想位置に対する隔離ダイアフラム140の測定位置に基づいて、隔離ダイアフラム140が破裂したこと、又は隔離キャビティ136が漏れたことを示すことができる。
【0042】
図7は、本発明の実施形態による、例示的な工業プロセス差圧検知装置130の一部の単純化した断面図である。図示の装置130は、アダプタ108(
図1)に取り付けられた差圧送信機102を含むことができる。送信機102は、送信機102の電子機器を取り囲み、環境条件から保護するハウジング134と、差圧センサ232を含むことができる。ハウジング134は、プロセス開口部236Aおよび236Bなどの1つまたは複数のプロセス開口部236を含むことができるベース234を含む。プロセス開口部236は、
図1に示されるように、アダプタ108、マニホルド110、及び/又はプロセスインターフェース112などの適切な接続を通じてプロセス媒体104に結合することができる。
【0043】
例示的な送信機102は、本質的に2つの隔離構成132Aおよび132Bを含む。隔離構成132Aは、プロセス開口部236Aに提示されるプロセス圧力P1に曝される隔離ダイアフラム140Aを利用し、隔離構成132Bは、プロセス開口部236Bに提示されるプロセス圧力P2に曝される隔離ダイアフラム140Bを利用する。上述したように、隔離ダイアフラム140A及び140Bはそれぞれ、圧力P1及びP2に応答して撓み、圧力P1及びP2は、隔離流体144で充填されたライン238A及び238Bを含む対応する隔離キャビティ136A及び136Bを通じて差圧センサ232に連通される。
【0044】
差圧センサ232は、圧力P1とP2の差に応じた差圧信号146を生成する。差圧信号146は、リード線または別の適切な接続を通じて制御部150に送達されてもよく、制御部150は、信号146によって示される差圧測定値を任意の適切な技法を使用して制御ユニット114に伝達するために使用されてもよい。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態は、隔離構成132Aの隔離キャビティ136Aおよび/または隔離構成132Bの隔離キャビティ136Bの封止状態の損失を検出するように動作する。
図8は、本発明の実施形態による、そのような封止の損失を検出する方法のフローチャートである。
【0046】
いくつかの実施形態では、隔離構成132Aは位置センサ172Aを含み、かつ/または隔離構成132Bは位置センサ172Bを含む。一実施形態では、位置センサ172A及び172Bは、
図5を参照して上述したような渦電流変位センサである。
【0047】
本方法の250では、
図4の方法のステップ170に関して上述したように、位置センサ172Aを使用して、ハウジング134に対する隔離ダイアフラム140Aの位置が検出される。************位置センサ172Aは、隔離ダイアフラム140Aの検知位置を示す位置信号174Aを制御部150に出力する。いくつかの実施形態では、ハウジング134に対するダイアフラム140Bの位置は、位置センサ172Bを使用して検出され、位置センサ172Bは、検出された位置を示す位置信号174Bを制御部150に出力する。
【0048】
装置130は、静圧センサ242Aまたは242Bなどの少なくとも1つの静圧センサまたはライン圧力センサ242を含み、静圧センサ242Aまたは242Bは、隔離キャビティ136Aおよび136B内の充填流体144の静圧を測定し、測定された圧力を示す静圧信号246Aおよび246Bを生成するようにそれぞれ構成される。キャビティ136Aと136Bとの間の差圧が既知である場合、キャビティ136Aと136Bの両方の静圧を確立するために、静圧センサ242Aまたは242Bのうちの1つのみが必要とされ得る。 例えば、差圧(DP=P1-P2)と静圧P1とが既知である場合、圧力P1から差圧を差し引くことで静圧P2を算出してもよい。いくつかの工業プロセス用途では、静圧は極端であり、0~数千ポンド/平方インチ(psi)の範囲であり得る。工業プロセス差圧検知装置の中には、15,000psi(1034バール又は103MPaと同じ)までの静圧に耐えるように定格されているものがある。
【0049】
この方法の252で、制御装置150は、センサ242Aまたは242Bなどの静圧センサを使用して、隔離キャビティ136Aおよび136B内の充填流体の静圧を取得する。また、制御装置150は、本方法の254において、差圧センサ232を使用して、隔離キャビティ136Aと136Bとの間の差圧を得る。例えば、制御部150は、キャビティ136Aと136Bとの間の差圧を示す信号146を受信することができる。
【0050】
本方法の256において、制御装置150は、得られた静圧及び差圧に基づいて隔離ダイアフラム140Aの予想位置を得る。また、制御部150は、取得した静圧及び差圧に基づいて、隔離ダイアフラム140Bの予想位置を取得してもよい。さらに、上述したように、隔離ダイアフラム140A及び140Bの予想位置は、温度センサ160から出力される温度信号158に基づいてもよい。
【0051】
この方法の258において、制御装置150は、隔離ダイアフラム140Aの測定位置と予想位置との差が対応する閾値206(
図2)を超えた場合に、隔離キャビティ136Aの封止状態の損失を検出する。同様に、制御部150は、隔離ダイアフラム140Bの測定位置と予想位置との差が対応する閾値206を超えた場合に、隔離キャビティ136Bの封止状態の損失を検知することができる。
【0052】
封止状態の喪失が検出されると、制御部150は、260において、図の方法のステップ220に関して上述したような方法の通知を生成することができる。上記の情報に加えて、通知のいくつかの実施形態は、封止が破られた隔離構成132Aもしくは132B、または対応する隔離キャビティ136Aもしくは136Bを識別する情報を含む。
【0053】
センサ232によって測定されたキャビティ136Aと136Bとの間の差圧、温度センサ160によって測定された充填流体144の温度、及び静圧センサ242A又は242Bによって測定された充填流体144の静圧による、隔離ダイアフラム140Aと140Bの位置の変化に対する影響は、経験的技法を使用して特定の差圧検知装置について決定することができる。例えば、位置センサ172Aによって計測されるダイアフラム140Aの高圧側P1の位置が減少し、位置センサ172Bによって計測されるダイアフラム140Bの低圧側P2の位置が、差圧ゼロから最大差圧(例えば、約9psi)まで増加してもよい。また、センサ172A、172Bによって計測される隔離ダイアフラム140A、140Bの位置は、センサ160によって計測される充填流体の温度が高いほど高くなる場合がある。また、センサ172A、172Bによって計測されるダイアフラム140A、140Bの位置は、0~1000psiの静圧範囲で小さくなる場合がある。したがって、本方法のステップ256における隔離ダイアフラム140Aまたは140Bの予測位置の正確な決定は、差圧、充填流体144の温度、およびキャビティ136Aまたは136B内の充填流体144の静圧のこれらの影響の存在下での隔離ダイアフラム位置の正確な予測に依存する。
【0054】
静圧が充填流体144の圧縮及び隔離ダイアフラム140A又は140Bの位置に及ぼす影響は、センサ242A及び/又は242Bを用いて静圧を測定すること、並びに感圧装置130の母集団の経験的に導出されたファミリ特性又は感圧装置130の経験的に導出された工場特徴付けを用いて特徴付け(例えば、ルックアップテーブル、多項式、補正アルゴリズム)を形成することを含むことができ、特徴付けから、充填流体144の測定された静圧を用いて、所与の差圧及び/又は温度測定に対するダイアフラム140A及び/又は140Bの位置の予想される変化を決定することができる。制御部150は、特徴付けを使用して、センサ242A又は242Bによって検出された静圧に基づいてダイアフラム140A及び/又は140Bの位置変化を識別し、この方法のステップ256でダイアフラム140A又は140Bの予想される位置を決定する際にこの位置変化を考慮に入れることができる。
【0055】
ダイアフラム140A又は140Bの位置に対する充填流体の静圧の効果を確立するために装置130のファミリ特性を使用することは、装置130がユニット毎に実質的に同じ働きをする場合に一般に好ましい。装置130の母集団について経験的に確立されたファミリ特性を装置130のそれぞれで使用して、充填流体144の静圧、および任意選択で充填流体144の温度が隔離ダイアフラム140Aおよび140Bの予想される位置に及ぼす影響を考慮に入れることができる。このようなファミリ特性を利用することの利点は、個々の装置130を工場で特徴付ける必要がないことであり、その結果、製造コストが低減される。
【0056】
装置130の母集団が充填流体144の静圧に対して実質的に異なる特性応答を有する場合、感圧装置130の経験的に導出された工場特徴付けの使用が好ましくは使用される。この場合、各装置130は、充填流体144の静圧が隔離ダイアフラム140A及び/又は140Bの位置に及ぼす影響について工場で特徴付けられている。いくつかの実施形態では、この特徴付けは、特徴付けプロファイルの各温度について決定される。これにより、制御部150は、装置130が受ける可能性のある全ての圧力及び温度でセンサ242A又は242Bによって測定される充填流体144の静圧の影響を考慮することができる。このプロセスは、装置130のルックアップテーブルを形成するために静圧及び温度条件への曝露の影響を決定するために各装置130を分析しなければならないので、ファミリ特性を使用する場合よりも高価である。
【0057】
装置130または装置130のファミリの特徴付けは、装置130が受ける可能性が高い差圧、温度、および静圧の範囲にわたる特徴付けを含むことができる。例えば、特徴付けプロファイルは、以下を使用して確立することができる。範囲上限(URL)の[-100,-75,-50,-25,0,25,25,75,100]%の9つの差圧(DP)点、摂氏[-40,-10,25,55,85]度の5つの温度点、[0,1500,3000]psiの3つの静圧又はライン圧(LP)点。URLの負のパーセンテージは、装置130の下限範囲(LRL)をカバーするように動作し得ることに留意されたい。例えば、装置130のURLは9psiとすることができ、装置130のLRLは-9psiとすることができる。装置130の状態は各点で安定し、位置センサ172A、172Bなどを用いて絞り140A、140Bの位置を各点で計測する。位置測定値は、対応する差圧、温度、及び静圧の生データと共にルックアップテーブル又はマッピングに記録することができる。点の完全なセットは、上記の例では45の測定点をもたらす差圧点と温度点の組合せのすべてを含むことができる。さらに、点の完全なセットは、上記の例では10個の測定点をもたらす、すべての温度でのゼロ差圧点および非ゼロ静圧点を含むことができる。あるいは、ダイアフラム140Aおよび/または140Bの位置に対する静圧の影響を、複数の差圧について決定することができる。55個の測定点全てを有する装置130又は装置130のファミリの特徴を表す例示的なデータを、以下の表1-1、1-2に提供する。
【表1-1】
【表1-2】
【0058】
収集された特徴付けデータは、ルックアップテーブルを形成するために、又は隔離ダイアフラム140A及び140Bの予想位置を推定するために制御部150によって使用され得る補正アルゴリズムの係数を計算するために使用され得る。補正アルゴリズムは、多変量多項式、若しくはルックアップテーブル、又は多項式とルックアップテーブルの組み合わせに基づくことができる。このような補正アルゴリズムは、係数を使用して、補正された差圧、補正された温度、補正された静圧、ダイアフラム140Aの推定位置又は予想位置、及びダイアフラム140Bの推定位置又は予想位置を計算する。補正差圧は、温度及び静圧の影響を補償した推定差圧である。また、曲線当てはめ処理は、上記データテーブルの差圧を独立変数として用いてもよい。補正温度は、必要に応じて、差圧及び静圧を補償した充填流体温度の推定値とすることができる。曲線当てはめ処理は、上記の表からの試験ステーション温度を独立変数として使用することができる。補正された静圧又はライン圧は、必要に応じて温度及び差圧を補償する静圧の推定値とすることができる。曲線当てはめ処理は、上記の表から測定された静圧を独立変数として使用することができる。また、補正後の差圧、補正後の静圧、及び補正後の温度に基づいて、ダイアフラム140Aの推定位置又は予想位置を算出してもよい。曲線当てはめ処理は、位置センサ172Aなどによるダイアフラム140Aの測定された位置を、上記の表の特徴付けデータから独立変数として使用することができる。また、補正差圧、補正静圧、及び補正温度に基づいて、ダイアフラム140Bの推定位置又は予想位置を算出してもよい。曲線当てはめ処理は、位置センサ172Bなどによるダイアフラム140Bの測定された位置を、上記の表の特徴付けデータから独立変数として使用することができる。補正アルゴリズムはまた、従来の技法Iを使用して、圧力センサ142、差圧センサ232、温度センサ160、および位置センサ172によって生成された固有センサ信号から線形性誤差を除去することができる。
【0059】
補正アルゴリズムの係数は、
図2中の230で示されるように、装置130のメモリ152に記憶され、本方法のステップ256で絞り140A及び140Bの予想位置を決定するために制御部150によって使用されてもよい。例えば、制御部150は、圧力センサ232(
図7)から差圧を、静圧センサ242A、242Bから静圧を、温度センサ160から温度を、センサ172A、172Bからのダイアフラム140A、140Bの計測位置を受けてもよい。次いで、制御部150は、係数230(
図2)を、 補正された差圧、補正された静圧又はライン圧、補正された温度、及び隔離ダイアフラム140A及び140Bの予想位置の推定値を生成するための補正アルゴリズム(ステップ256)で使用してもよい。次いで、制御部150は、隔離ダイアフラム140A及び140Bの計算された予想位置と、位置センサ172A及び172Bによって示される測定位置との差を、対応する閾値206と比較して、隔離キャビティ136A又は136Bの封止の損失を検出することができる(方法ステップ258)。封止の損失が検出された場合、上記で論じたように、方法のステップ260で通知を生成することができる。
【0060】
本発明の実施形態を好ましい実施形態を参照して説明したが、当業者は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、形態及び詳細において変更を行うことができることを認識するであろう。
【国際調査報告】