(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-30
(54)【発明の名称】インライン分析のための揮発性試料の自動インライン調製及び脱気
(51)【国際特許分類】
G01N 1/00 20060101AFI20221122BHJP
【FI】
G01N1/00 101L
G01N1/00 101G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520198
(86)(22)【出願日】2020-09-22
(85)【翻訳文提出日】2022-04-25
(86)【国際出願番号】 US2020051953
(87)【国際公開番号】W WO2021067066
(87)【国際公開日】2021-04-08
(32)【優先日】2019-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516257707
【氏名又は名称】エレメンタル・サイエンティフィック・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ELEMENTAL SCIENTIFIC, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】シュルツ,オースティン
(72)【発明者】
【氏名】ウィーデリン,ダニエル アール
【テーマコード(参考)】
2G052
【Fターム(参考)】
2G052AD27
2G052AD42
2G052CA04
2G052CA11
2G052GA15
2G052GA24
2G052HC10
(57)【要約】
分析システムは、脱気セルと、少なくとも1つの第1バルブと、少なくとも1つの第2バルブと、を備える。少なくとも1つの第1バルブは、脱気セルの上部と流体結合される。少なくとも1つの第1バルブは、脱気セルを排出ガスの流れ及び真空源に選択可能に接続するように構成される。少なくとも1つの第2バルブは、脱気セルの側面部と流体接続され、脱気セルの底部と別に流体接続される。少なくとも1つの第2バルブは、試料輸送液の供給源、試料を分析装置に送達するように構成された移送ライン、又は廃棄出口部のいずれかと選択可能に結合される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部セル延長部、底部セル延長部、及び側方セル延長部を画定するように方向付けられた脱気セルと、
前記上部セル延長部と流体結合された少なくとも1つの第1バルブと、
前記側方セル延長部と流体接続され、前記底部セル延長部と別に流体接続された少なくとも1つの第2バルブと、
を備え、
前記側方セル延長部は、前記上部セル延長部と前記底部セル延長部との間の位置において、前記脱気セルの側面部から延び、
前記少なくとも1つの第1バルブは、前記脱気セルを排出ガスの流れ又は真空源に選択可能に接続するように構成され、
前記少なくとも1つの第2バルブは、試料輸送液の供給源、試料を分析装置に送達するように構成された移送ライン、又は廃棄出口部のうちの少なくとも1つと選択可能に結合される、
流体移送システム。
【請求項2】
前記少なくとも1つの第2バルブは、前記試料輸送液の流れを、前記底部セル延長部を介して前記脱気セルに供給するように構成され、
前記少なくとも1つの第1バルブは、前記試料輸送液の前記脱気セルへの導入時に、前記上部セル延長部へ排出ガスの流れを選択可能に供給するように構成される、
請求項1に記載の流体移送システム。
【請求項3】
前記少なくとも1つの第2バルブは、前記脱気セルの前記側方セル延長部から前記試料輸送液の流れを受け入れて、受け入れた前記試料輸送液を前記廃棄出口部に向けるように選択可能に構成され、
受け入れられた前記試料輸送液は、前記上部セル延長部への前記排出ガスの流れによって前記側方セル延長部から押し出される、
請求項2に記載の流体移送システム。
【請求項4】
少なくとも1つの第3バルブを更に備え、
前記少なくとも1つの第3バルブは、前記少なくとも1つの第2バルブを前記廃棄出口部と選択可能に流体相互接続するように構成される、
請求項3に記載の流体移送システム。
【請求項5】
さらに、少なくとも1つの第3バルブは、前記脱気セル内の前記試料輸送液の水位が、前記側方セル延長部と前記少なくとも1つの第2バルブとの間を延びる流体相互接続の位置よりも下に低下したときに、前記試料輸送液の流れを前記側方セル延長部から前記廃棄出口部に向けることを停止するように選択可能に構成される、
請求項3に記載の流体移送システム。
【請求項6】
前記少なくとも1つの第1バルブは、前記脱気セルが、前記試料輸送液によって、前記側方セル延長部と前記少なくとも1つの第2バルブとの間を延びる流体相互接続の位置以下で満たされるとき、真空源に選択可能に接続されるように構成され、
前記真空源は、前記試料輸送液を脱気するように構成される、
請求項1に記載の流体移送システム。
【請求項7】
前記真空源は、第2廃棄出口部に流体接続される、請求項6に記載の流体移送システム。
【請求項8】
前記少なくとも1つの第1バルブは、前記試料輸送液の脱気時に、前記排出ガスの流れに選択可能に接続するように構成され、
前記少なくとも1つの第2バルブは、この段階において、脱気された前記試料輸送液を中核的な分析装置に向かって移送ラインに向けるように構成される、
請求項6に記載の流体移送システム。
【請求項9】
前記排出ガスの流れは、脱気された前記試料輸送液を、前記移送ラインに向かって前記底部セル延長部の外に押し出し可能である、請求項8に記載の流体移送システム。
【請求項10】
前記少なくとも1つの第1バルブは、窒素ガスの供給源と接続するように選択可能に構成され、
前記窒素ガスは、前記排出ガスとして機能する、
請求項1に記載の流体移送システム。
【請求項11】
前記少なくとも1つの第1バルブ、前記少なくとも1つの第2バルブ、又は少なくとも1つの第3バルブのうちの少なくとも1つは、それぞれマルチポートバルブで構成される、請求項1に記載の流体移送システム。
【請求項12】
流体移送方法であって、
脱気セル、少なくとも1つの第1バルブ、及び少なくとも1つの第2バルブを備える流体移送システムを設けることを含み、
前記脱気セルは、上部セル延長部、底部セル延長部、及び側方セル延長部を画定するように方向付けられ、
前記側方セル延長部は、前記上部セル延長部と前記底部セル延長部との間の位置において、前記脱気セルの側面部から延び、
前記少なくとも1つの第1バルブは、前記上部セル延長部と流体結合し、
前記少なくとも1つの第2バルブは、側方流体コネクタを介して前記側方セル延長部と流体接続され、前記底部セル延長部と別に流体接続され、
前記流体移送方法は、
試料輸送液の流れを、前記底部セル延長部を通じて前記脱気セルへ提供することと、
前記試料輸送液の前記脱気セルへの流入開始時に、排出ガスの流れを前記上部セル延長部を介して前記脱気セルへ導入することと、
を含み、
前記排出ガスの流れは、前記上部セル延長部を通じて前記少なくとも1つの第1バルブに向かう前記試料輸送液の任意の脱出を妨げる、
流体移送方法。
【請求項13】
前記試料輸送液は、前記側方セル延長部から前記少なくとも1つの第2バルブに延びる前記側方流体コネクタより上の水位まで供給され、
前記試料輸送液の流れは、前記側方流体コネクタよりも上の水位に達すると停止し、
前記側方流体コネクタは、その時に前記少なくとも1つの第2バルブを介して第1廃棄出口部に選択可能に接続され、
前記排出ガスの流れは、前記側方流体コネクタ以上にある任意の前記試料輸送液を、前記側方流体コネクタへ押し出し、最終的には、前記少なくとも1つの第2バルブに関連する前記第1廃棄出口部に向かって押し出す、
請求項12に記載の流体移送方法。
【請求項14】
前記試料輸送液の水位が前記側方流体コネクタよりも下に低下したときに、前記試料輸送液を廃棄出口部に向けることを停止することを更に含む、請求項13に記載の流体移送方法。
【請求項15】
前記排出ガスの流れの代わりに、前記少なくとも1つの第1バルブを真空源と選択可能に接続して、前記脱気セル内に真空圧を生成することを更に含み、
前記真空圧は、前記試料輸送液の脱気を促進する、
請求項14に記載の流体移送方法。
【請求項16】
前記試料輸送液は、水酸化アンモニウムを含み、
前記真空圧の適用時に、水酸化アンモニウム又はアンモニアのうちの少なくとも一方を含むガスが前記試料輸送液から脱気される、
請求項15に記載の流体移送方法。
【請求項17】
前記排出ガスは、前記試料輸送液の脱気後に、前記少なくとも1つの第1バルブを介して前記脱気セルに再び供給され、
前記少なくとも1つの第2バルブを通じる流れは、分析装置に向かって移送ラインに向けられる、
請求項15に記載の流体移送方法。
【請求項18】
前記排出ガスの流れは、脱気された前記試料輸送液を、前記移送ラインに向かって前記底部セル延長部の外に押し出すのに十分である、請求項17に記載の流体移送方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つの第1バルブは、窒素ガスの供給源と接続するように選択可能に構成され、
前記窒素ガスは、前記排出ガスとして機能する、
請求項12に記載の流体移送方法。
【請求項20】
前記少なくとも1つの第1バルブ、前記少なくとも1つの第2バルブ、又は少なくとも1つの第3バルブのうちの少なくとも1つは、それぞれマルチポートバルブで構成される、請求項12に記載の流体移送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
多くの実験環境では、多数の化学的試料又は生物学的試料を一度に分析することがよく必要とされる。このような処理を合理化するために、試料の操作は機械化されてきている。このような機械化されたサンプリングは、オートサンプリングと呼ばれることができ、自動サンプリング装置又はオートサンプラを使用して行われ得る。
【背景技術】
【0002】
誘導結合プラズマ(ICP: Inductively Coupled Plasma)分光分析は、液体試料中の微量元素濃度及び同位体比を測定するために一般的に使用される分析技術である。ICP分光分析には、電磁的に生成されて部分的に電離したアルゴンプラズマが使用される。当該アルゴンプラズマは、約7000Kの温度に達する。試料がプラズマに導入されると、高温によって試料原子の電離又は発光が引き起こされる。各化学元素は特有の質量又は発光スペクトルを生じるため、発光の質量又は光のスペクトルを測定することによって、元の試料の元素組成を決定することが可能になる。
【0003】
液体試料を分析のためにICP分光分析装置(例えば、誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP/ICP-MS: Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometer)、誘導結合プラズマ原子発光分析装置(ICP-AES: Inductively Coupled Plasma Atomic Emission Spectrometer)など)又は他の試料検出器又は分析装置に導入するために、試料導入システムが使用され得る。例えば、試料導入システムは、容器から液体試料のアリコートを取り出し、その後にアリコートをネブライザに移送し得る。ネブライザは、アリコートをICP分光分析装置によってプラズマ中で電離させるために適した多分散エアロゾルに変える。その後、エアロゾルは、大きなエアロゾル粒子を除去するために、スプレーチャンバで選別される。エアロゾルは、スプレーチャンバを離れると、分析のためのICP-MS又はICP-AES装置のプラズマトーチアセンブリによってプラズマに導入される。
【図面の簡単な説明】
【0004】
詳細な説明は、添付の図面を参照しながら説明される。
【0005】
【
図1】
図1は、試料輸送液に気泡を形成し得る処理を示す一連の状況図であって、当該気泡がまとまって、分析システムに関連するチューブ内に空隙を形成し得る図である。
【
図2】
図2は、試料輸送液に気泡を形成し得る処理を示す一連の状況図であって、当該気泡がまとまって、分析システムに関連するチューブ内に空隙を形成し得る図である。
【
図3】
図3は、試料輸送液に気泡を形成し得る処理を示す一連の状況図であって、当該気泡がまとまって、分析システムに関連するチューブ内に空隙を形成し得る図である。
【
図4】
図4は、試料輸送液に気泡を形成し得る処理を示す一連の状況図であって、当該気泡がまとまって、分析システムに関連するチューブ内に空隙を形成し得る図である。
【
図5】
図5は、試料輸送液に気泡を形成し得る処理を示す一連の状況図であって、当該気泡がまとまって、分析システムに関連するチューブ内に空隙を形成し得る図である。
【
図6】
図6は、試料輸送液に気泡を形成し得る処理を示す一連の状況図であって、当該気泡がまとまって、分析システムに関連するチューブ内に空隙を形成し得る図である。
【
図7】
図7は、試料輸送液に気泡を形成し得る処理を示す一連の状況図であって、当該気泡がまとまって、分析システムに関連するチューブ内に空隙を形成し得る図である。
【
図8】
図8は、
図7の分析システムの処理を示す一連の状況図であって、分析システムが、当該処理によって、分析システムに関連するチューブ内での気泡形成が最小化されるように使用され得る図である。
【
図9】
図9は、
図7の分析システムの処理を示す一連の状況図であって、分析システムが、当該処理によって、分析システムに関連するチューブ内での気泡形成が最小化されるように使用され得る図である。
【
図10】
図10は、
図7の分析システムの処理を示す一連の状況図であって、分析システムが、当該処理によって、分析システムに関連するチューブ内での気泡形成が最小化されるように使用され得る図である。
【
図11】
図11は、
図7の分析システムの処理を示す一連の状況図であって、分析システムが、当該処理によって、分析システムに関連するチューブ内での気泡形成が最小化されるように使用され得る図である。
【
図12】
図12は、
図7の分析システムの処理を示す一連の状況図であって、分析システムが、当該処理によって、分析システムに関連するチューブ内での気泡形成が最小化されるように使用され得る図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
<概要>
様々な分析システムにおいて、水酸化アンモニウム(NH4OH)などの移送液は、試料をループ入口部から廃棄ループ又はネブライザに運搬するための移送溶液として使用され得る。一実施形態では、移送液は、29%NH4OHであり得る。溶液はまだ圧力下であり得、試料が減圧するのを待たずにすぐに分析を開始すると、プラズマは消滅し得る。NH4OHは、減圧によって、バルブの位置に応じて廃棄又はネブライザに流され得る。
【0007】
図1~
図6に示す例示的な分析システム1000は、気泡及び/又は空隙の発生に伴って生じ得る問題を説明するのに役立ち得る。分析システム1000は、ループ入口部1010と、チューブ1020(図示を容易にするために真っ直ぐに示されているが、例えば、チューブのループの形態であってもよい)と、ループ出口部1030と、を備えている。ループ出口部1030は、例えば、ネブライザ及び/又は廃棄ループの形態であってもよい。チューブ1020は、試料輸送液S2(例えば、NH
4OHなどの輸送液中を輸送される試料物質)を受け入れ、チューブ1020を通る試料輸送液S2の伝送を促進するように構成され得る。減圧を待つ間に、ループ入口部1010とループ出口部1030(例えば、廃棄ループ及び/又はネブライザの形態)との間に延びるチューブ1020の側面には、多くの小さい気泡1040(例えば、直径がチューブ1020の直径の半分以下)が形成され得る。
【0008】
図1に見られるように、減圧開始時には、気泡1040がチューブ1020内に存在しないことがある。
図2のように、分析開始時には、試料S2は、いくつかの気泡1040が形成された状態で安定であり得る。ネブライザ及び/又はICPMSに進入可能な気泡1040は、まだ無いか、又は実質的に無い。
図3に示すように、実施形態では、減圧が約2分後に終了するとともに、その後にチューブ1020内で試料の流れ(例えば、100μL/分)が始まることが予期され得る。
図4に見られるように、小さな気泡1040のうちいくつかは、直径の小さいチューブ1020内で流れによって互いに押されて、より大きな気泡1050(例えば、小さな気泡1040よりも大きく、直径がチューブ1020の直径の半分以上である可能性がある)を形成し始め得る。
図5及び
図6のように、液体試料S2中では、最終的に十分な気泡1040及び/又は気泡1050が互いに押し合って、空隙1060が形成され得る。
【0009】
空隙1060は、チューブ1020の全直径に及ぶ、チューブ1020内の試料液の欠如として定義され得る。実施形態では、空隙1060は、チューブ1020内のガスポケットの形態であり得る。当該空隙1060は、ラインを下流へ押されるにつれて、当該空隙1060自体により多くの気泡1040,1050(特に
図6に示す)及び/又は他の空隙1060を加えるので、成長し得る。いくつかの実施形態では、ループ又は流路部1020内には、ある時点で、約5-6個の大きな空隙1060が存在し得る。このような問題を考慮すると、気泡がまとまって(agglomerating)移送チューブ内に空隙を形成することを抑制するために、遠隔の場所で試料を脱気するための方法が必要である。
【0010】
<実施例>
図7~
図12を概して参照すると、例示的な分析システム100が図示及び説明されている。当該例示的な分析システム100は、遠隔位置において試料を脱気することにより、気泡がまとまって空隙を形成することを抑制するように構成されている。
図7に見られるように、分析システム100は、一般的に、少なくとも1つの第1バルブ102と、少なくとも1つの第2バルブ104と、少なくとも1つの第3バルブ106と、真空ポンプ108と、多岐管110と、脱気セル112と、試料入口部114と、少なくとも1つの廃棄出口部116と、複数の流体ライン118と、調製された試料輸送液を試験するための中核的な(central)分析装置(図示せず)と、を備えている。少なくとも1つの第1バルブ102は、例えば、第1マルチポートバルブであり、図示の実施形態のようにV5-P3バルブであってもよい。少なくとも1つの第2バルブ104は、例えば、第2マルチポートバルブであり、図示の実施形態のようにV4-P6バルブであってもよい。少なくとも1つの第3バルブ106は、例えば、第3マルチポートバルブであり、図示の実施形態のようにV3-P3バルブであってもよい。脱気セル112は、例えば、ピラーT字型コネクタ(pillar tee connector)であり、図示の実施形態のように、縦方向に間隔を空けられた2つの流体接続ポートと、横方向の流体接続ポートとを有する。少なくとも1つの廃棄出口部116は、例えば、116A,116Bである。複数の流体ライン118は、例えば、パイプ、チューブなどであり、様々な要素を互いに流体接続する。
【0011】
実施形態では、真空ポンプ108と第1廃棄出口部116Aとは、多岐管110を用いて結合されている。真空ポンプ108は、第1流体ライン118Aを介して、少なくとも1つの第1バルブ102と流体結合され得る。システム100は、上部セル延長部112Aと、底部セル延長部112Bと、側方セル延長部112C(すなわち、脱気セル112に関連する3つの接続部分)を画定するように方向付けられた脱気セル112(例えば、3/4インチのピラーT字型)を更に備えている。側方セル延長部112Cは、上部セル延長部112Aと底部セル延長部112Bとの間の位置において、脱気セル112の側面部から延び得る。分析システム100における中核的な分析装置(図示せず)よりも前の部分は、流体移送システムであるとみなされてもよい。実施形態では、流体移送システムは、遠隔操作式の試料調製及び送達システムであり得る。
【0012】
少なくとも1つの第1バルブ102は、第2流体ライン118B(すなわち、脱気セル112に対して上部の流体接続)を介して、脱気セル112の上部セル延長部112Aと流体結合され得る。少なくとも1つの第1バルブ102は、脱気セル112を排出ガスの流れ又は真空源に選択可能に接続するように構成され得る。脱気セル112は、側方セル延長部112Cを介して第3流体ライン118C(すなわち、脱気セル112に対して横方向の中央流体接続)によって、及び底部セル延長部112Bを介して第4流体ライン118D(すなわち、脱気セル112に対して下部流体接続)によって、別々に少なくとも1つの第2バルブ104と選択可能に結合され得る。少なくとも1つの第2バルブ104は、試料入口部114及び少なくとも1つの第3バルブ106(例えば、第5流体ライン118Eを介した後方接続)と流体結合し得る。少なくとも1つの第2バルブ104は、試料輸送液の供給源、試料を分析装置に送達するように構成された移送ライン、又は第2廃棄出口部のうち少なくとも1つと選択可能に結合され得る。第2廃棄出口部116Bは、少なくとも1つの第3バルブ106に選択可能に接続され得る。少なくとも1つの第3バルブ106は、少なくとも1つの第2バルブ104との選択可能な流体接続を作り出すために使用される。
【0013】
実施形態では、少なくとも1つの第1バルブ102、少なくとも1つの第2バルブ104、及び/又は少なくとも1つの第3バルブ106の各々は、図示の実施形態のようにマルチポートバルブの形態であってもよい。実施形態では、ここで使用される少なくとも1つの第1バルブ102、少なくとも1つの第2バルブ104、及び/又は少なくとも1つの第3バルブ106は、例えば、空気式に及び/又は電気的に制御されてもよく、及び/又は分配多岐管の形態であってもよい。また、実施形態では、少なくとも1つの第1バルブ102、少なくとも1つの第2バルブ104、及び/又は少なくとも1つの第3バルブ106は、マスフローコントローラ(MFC's: mass flow controllers)の形態であり得る。マスフローコントローラは、当該マスフローコントローラを通る流れを電気的に選択可能に制御することができる。また、実施形態では、少なくとも1つの第1バルブ102、少なくとも1つの第2バルブ104、及び/又は少なくとも1つの第3バルブ106は、複数のバルブ(例えば、対応するマルチポートバルブの例の代替)の形態であり得る。
【0014】
本開示の実施形態に係る分析システム100の動作を
図8~
図12に示す。
図8に関して、試料の流れ120(例えば、輸送液(例えば、水酸化アンモニウム及び/又は他の揮発性成分を含む輸送液)中の試料物質)は、底部セル延長部112Bに注がれることによって脱気セル112を通過する。試料の流れ120(すなわち、試料-輸送液)は、試料入口部114、少なくとも1つの第2バルブ104、及び第4流体ライン118Dを介して、底部セル延長部112Bに到達し得る。さらに、
図8に関して、少なくとも1つの第1バルブ102は、排出ガスとして機能する窒素ガス(すなわち、N
2)又は他の不活性ガスの流れを、第2流体ライン118Bを介して上部セル延長部112Aに選択可能に向けるように構成され得る。その結果、ある量のN
2又は他の排出ガスは、圧力下で脱気セル112の上部に追い込まれる。実施形態では、排出ガス及び排出ガスによって与えられる圧力は、試料輸送液が上部セル延長部112Aを越えて少なくとも1つの第1バルブ102に向かって流れることを防止するか、及び/又は遅らせることができる。
【0015】
図8に示す状況では、真空ポンプ108は、脱気セル112に流体接続(例えば、少なくとも1つの第1バルブ102を介する)されていない。脱気セル112の側方セル延長部112Cを介して脱気セル112を出る試料の流れ120は、第2バルブ104及び少なくとも1つの第3バルブ106を介して、最終的に第2廃棄出口部116Bに向けられ得る。すなわち、脱気セル112の上部及び底部を通る流体(例えば、窒素/不活性ガス、及び試料の流れ)の流入は、そのような流体の一部又は全てが側方セル延長部112C(すなわち、利用可能な唯一の脱出/放出箇所)を通じて追い出されることを必要とする。実施形態において、脱気セル112は、排出ガスが脱気セル112に導入される前に、試料輸送液で部分的に又は完全に満たされ得る。実施形態において、排出ガスの流れは、増大し、第3流体ライン118C以上(at or above)にある任意の試料輸送液を脱気セル112の外に押し出し、最終的には少なくとも1つの第3バルブ106に関連する廃棄出口部116Bに向けて押し出すのに役立ってもよい。
【0016】
図9に示すように、第2ステップでは、流れの接続は、N
2又は他の排出ガスの流れが継続する状態で試料の流れ120が遮断されることを除いて、同様のままである。窒素の継続する流れは、脱気セル112内に残存する試料に対する圧力を増加させる。当該圧力は、第3流体ライン118C以上にある任意の試料を脱気セル112から廃棄へ押し出す。
【0017】
図9のように、一度、脱気セル112内の過剰な試料が廃棄へ押し出されると、その後には、
図10に示す組合せの流れが作動し得る。
図10の状況では、試料入口部114からの試料の流れ120はオフのままであり、少なくとも1つの第3バルブ106を通じる流れは、分析装置(符号を付されていない)に向けて開放され、もはや第2廃棄出口部116Bを通じて流れてはいない。さらに、
図10のように、N
2/排出ガスの流れが切断されるとともに、流体が第1廃棄出口部116Aに向けられた真空ポンプ108を通じて吸引されることによって、脱気セル112は、少なくとも1つの第1バルブ102及び真空ポンプ108を介して真空にされる。
【0018】
図11は、
図10に規定された流れの接続を維持した結果を示す。真空によって促される流れの仕組みによって、第4流体ライン118Dから全ての液体が除去され、試料の流れ120からアンモニアガス(NH
3)及び/又は他のガス(例えば、水酸化アンモニウム又は他の揮発性成分)が除去され得る。
図11の状況の間、試料の流れ120は、真空によって活発に泡立つことができる。脱気セル112は、このステップ(例えば、アンモニア及び/又は他のガスの気化に関連する熱交換の一部)の間、冷たく感じられ得る。
【0019】
最後に、
図12に示すステップによって、脱気セル112は、N
2/排出ガスの流れと再接続され(例えば、第1バルブ102又は少なくとも1つの第2バルブ104を介する)、真空の流れ及び少なくとも1つの第3バルブ106から切断され得る。さらに、中核的な分析装置(図示せず)への移送ライン122への流れが、少なくとも1つの第2バルブ104において開放され得る。その結果、N
2/排出ガスの流れからの圧力は、アンモニア/水酸化アンモニウム及び/又は他の揮発性成分を保持しない又は実質的に保持しない(少なくとも、任意の空隙を生成するのに十分ではない)試料を、試料の流れ120として、第4流体ライン118Dを通じて、少なくとも1つの第2バルブ104及び移送ライン122へ押し出すことができる。システム100における、移送ライン122及び中核的な分析装置に送達可能な部分は、遠隔操作式フロー処理システムであるとみなされてもよい。
【0020】
実施形態では、分析システム100に試料を充填するとき、水酸化アンモニウム試料は、分析のために試料を移送する前に、約7分間で適切に脱気され得る。いくつかの実施形態では、脱気後に、脱気のない場合とは対照的に、試料をループ内で静止させる必要がないことが見出される。他の揮発性物質を含む他の試料では、脱気に要する時間は異なってもよい。脱気しない場合にが、ICPMSのプラズマを低温プラズマに維持するために、試料を静止させる必要がある。水酸化アンモニウム試料を脱気するための本システムの使用において、移送後の分析ループには、目に付く空隙が見られなくてもよい。脱気時には、いくつかの小さなNH4OH及び/又はNH3の気泡がなお形成されることがあるが、試験に影響するようには見えない程度である(すなわち、全てのアンモニアが、分析前に、少なくとも残存するアンモニア/水酸化アンモニウムが試験に干渉しない程度にまで、実質的に除去される)。この程度において、試料は、十分に脱気されたと見なされ得る。実施形態では、2つのバルブ及び真空ポンプを使用する、移送の遠隔操作のためのアップグレードキットは、本システムの範囲内であり、全ての部品が遠隔操作式流体処理システムの既存のブランク部に取付可能である。
【0021】
実施形態では、分析システム100(例えば、アップグレードキットとして実施される)は、シンナー試料又は脱気が必要になる他の試料(例えば、アンモニア系試料のみならず、潜在的に揮発性である(すなわち、蒸気圧が高い)試料輸送体が使用される場合)に使用されてもよい。実施形態では、本システムは、空隙の形成を抑制するために試料の脱気が必要になる場合に、任意の分析システムとともに使用されてもよいことが理解される。実施形態では、排出ガスとして、本明細書で説明された実施形態における窒素の代わりに、適切なガス(例えば、不活性ガス)が使用されてもよい。いくつかの実施形態では、試料は、脱気を促進するために加熱(例えば、分析システム100に入る前に、及び/又は脱気セル112において)されてもよい。実施形態では、試料は、特に脱気を促進するために特別に加熱される場合、中核部(central)の受入部において冷却され得る。
【0022】
実施形態では、分析システム100の動作(例えば、バルブ動作及び/又は真空動作、及び/又は任意の関連する流れの流入)を制御するために、システムコントローラ(図示せず)が利用可能である。システムコントローラは、プロセッサ、メモリ、及び通信インターフェースを有し得る。実施形態では、分析システム100は、システムの望まれる機能を達成するための必要に応じて、システムコントローラと共に動作可能な1つ以上のセンサ(例えば、流量センサ、圧力センサなど)を備え得る。プロセッサは、少なくともコントローラのための処理機能を提供する。プロセッサは、任意の数のプロセッサ、マイクロコントローラ、回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA: field programmable gate array)、又は他の処理システムと、データ、実行可能コード、及びコントローラによってアクセス又は生成される他の情報を記憶するための内在メモリ又は外部メモリと、有し得る。プロセッサは、非一時的コンピュータ可読媒体に実現される1つ以上のソフトウェアプログラムを実行できる。当該1つ以上のソフトウェアプログラムは、本明細書に記載の技術を実現する。プロセッサは、当該プロセッサを形成する材料及び本明細書に採用される処理機構によって限定されない。そのようなプロセッサは、半導体(複数の半導体)及び/又はトランジスタ(例えば、電子集積回路(IC: integrated circuit)部品を使用する)などによって実現され得る。
【0023】
メモリは、有形のコンピュータ可読記憶媒体、及び、場合により、本明細書に記載の機能を実行するためのシステム100の他の構成要素の例であり得る。当該有形のコンピュータ可読記憶媒体は、ソフトウェアプログラム及び/又はコードセグメントなどのコントローラの動作に関連する様々なデータ及び/又はプログラムコード、または、プロセッサ、及び、場合によっては、本明細書に記載の機能を実行するためのシステム100の他の構成要素に命令する他のデータを記憶するための記憶機能を提供する。したがって、メモリは、システム100(その構成要素を含む)を動作させるための命令のプログラムなどのようなデータを記憶できる。なお、単一のメモリが説明されているが、幅広い種類及び組合せのメモリ(例えば、有形メモリ、非一時的メモリ)が採用可能であることに留意されたい。メモリは、プロセッサと一体化されたメモリ、スタンドアロンメモリを構成するメモリ、又は両方の組合せであり得る。
【0024】
メモリのいくつかの例は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、フラッシュメモリ(例えば、SD(secure digital)メモリカード、mini-SDメモリカード、及び/又はmicroSDメモリカード)、磁気メモリ、光学メモリ、ユニバーサルシリアルバス(USB)メモリデバイス、ハードディスクメモリ、外部メモリ、リムーブ(例えば、サーバ及び/又はクラウド)メモリなどの、取り外し可能なメモリ要素及び取り外し不可能なメモリ要素を含み得る。実施においては、メモリは、SIM(subscriber identity module)カード、USIM(universal subscriber identity module)カード、UICC(universal integrated circuit card)などによって提供されるメモリのような、取り外し可能なICC(integrated circuit card)メモリを含み得る。
【0025】
通信インターフェースは、システム100の構成要素と通信するように動作的に構成され得る。例えば、通信インターフェースは、システム100によるデータの記憶装置への送信、システム100における記憶装置からのデータの取り出しなどを行うように構成され得る。また、通信インターフェースは、システム100の構成要素とプロセッサとの間のデータ転送を容易にするために、プロセッサと通信結合され得る。なお、通信インターフェースはコントローラの構成要素として説明されているが、通信インターフェースの1つ以上の構成要素は、有線接続及び/又は無線接続を介して、システム100又はシステム100の構成要素に通信結合された外部の構成要素として実装され得ることに留意されたい。また、システム100又はシステム100の構成要素は、ディスプレイ、マウス、タッチパッド、タッチ画面、キーボード、マイクロフォン(例えば、音声コマンドのためのマイクロフォン)などの1つ以上の入力/出力(I/O)デバイス(例えば、通信インターフェースを介する)を備えることができ、及び/又は、当該入力/出力デバイスに接続されることができる。
【0026】
通信インターフェース及び/又はプロセッサは、様々な異なるネットワークと通信するように構成され得る。様々な異なるネットワークとは、セルラネットワーク、3Gセルラネットワーク、4Gセルラネットワーク、5Gセルラネットワーク、又はGSM(global system for mobile communications)ネットワークなどの広域セルラ電話ネットワーク、WiFiネットワーク(例えば、IEEE 802.11ネットワーク規格によって運用されるワイヤレスローカルエリアネットワーク(WLAN))などの無線コンピュータ通信ネットワーク、アドホック無線ネットワーク、インターネット、広域ネットワーク(WAN)、ローカルエリアネットワーク(LAN)、パーソナルエリアネットワーク(PAN)(例えば、IEEE 802.15ネットワーク規格によって運用されるワイヤレスパーソナルエリアネットワーク(WPAN))、公衆電話網、エクストラネット、イントラネットなどである。しかしながら、この列挙は、例のみのために提供されるものであって、本開示を限定することを意図するものではない。さらに、通信インターフェースは、単一のネットワーク又は複数のネットワークと、異なるアクセスポイントにまたがって通信するように構成され得る。具体的な実施形態では、通信インターフェースは、コントローラから外部デバイス(例えば、携帯電話、WiFiネットワークに接続されたコンピュータ、クラウドストレージなど)へ情報を送信できる。他の具体的な実施形態では、通信インターフェースは、外部デバイス(例えば、携帯電話、WiFiネットワークに接続されたコンピュータ、クラウドストレージなど)から情報を受信できる。
【0027】
主題は、構造的特徴及び/又は方法論的行為に特有の言語で説明されている。しかしながら、添付の特許請求の範囲に規定される主題は、前記の特有の特徴又は行為に必ずしも限定されないことが理解される。むしろ、前記の特有の特徴及び行為は、特許請求の範囲の実施の例示的な形態として開示される。
【国際調査報告】