(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-30
(54)【発明の名称】自動的で客観的な症状の重症度スコア
(51)【国際特許分類】
A61B 10/00 20060101AFI20221122BHJP
A61B 5/08 20060101ALI20221122BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20221122BHJP
【FI】
A61B10/00 L
A61B5/08
A61B5/11 120
A61B5/11 200
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022532701
(86)(22)【出願日】2020-12-09
(85)【翻訳文提出日】2022-06-01
(86)【国際出願番号】 EP2020085147
(87)【国際公開番号】W WO2021122178
(87)【国際公開日】2021-06-24
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】デリモア キラン ハミルトン ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】セイニ プリヴェンダー コール
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038SX07
4C038VA05
4C038VB31
4C038VC05
(57)【要約】
本発明は、患者の呼吸器疾患の重症度を決定するためのシステム及び方法に関する。患者は、前記システムによって、フレーズを読み上げるように指示される。前記システムは、患者により読み上げられたフレーズを音響信号として受信し、前記音響信号を呼吸器疾患の重症度に関して分析する。分析の結果が提供され、この結果は、患者の呼吸器疾患の重症度を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の呼吸器疾患の重症度を決定するためのシステムにおいて、
ユーザインターフェースであり、前記ユーザインターフェースは、フレーズを読み上げるための指示を前記患者に提供するように構成され、前記ユーザインターフェースは、身体的な動作を行うための指示を前記患者に提供するように構成される、前記ユーザインターフェース、
前記患者の音響信号を受信するように構成される受信装置、
前記患者の動きを検出するように構成される測定装置、及び
分析装置であり、前記分析装置は、前記受信される音響信号を、前記呼吸器疾患の重症度に関して分析するように構成され、前記分析装置は、前記検出される患者の動きを、前記ユーザインターフェースによって指示される前記身体的な動作に関して分析するように構成され、前記分析装置は、前記受信される音響信号の分析の結果を提供するように構成され、前記結果は、前記患者の呼吸器疾患の重症度を示す、前記分析装置
を有する、前記システムであり、
前記分析装置は、前記患者の動きが、前記ユーザインターフェースにより指示される前記身体的な動作に対応しているかどうかを決定するようにさらに構成され、並びに
前記検出される患者の動きが、前記ユーザインターフェースにより指示される前記身体的な動作に対応している場合、前記ユーザインターフェースは、前記患者に前記フレーズを読み上げるように指示するように構成される、及び/又は
前記検出される患者の動きが、前記ユーザインターフェースにより指示される前記身体的な動作に対応していない場合、前記ユーザインターフェースは、前記患者に前記指示を繰り返すように構成される、
ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記呼吸器疾患は、慢性閉塞性肺疾患である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記受信される患者の音響信号は、前記患者の声であり、前記分析装置は、前記受信される音響信号を、前記ユーザインターフェースにより指示される前記読み上げられるフレーズに関して分析するように構成される、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記分析装置は、前記受信される患者の音響信号を、呼吸、息切れ、喘鳴、呼吸のピッチ、咳の頻度、気分、健康、声のピッチ、インフルエンザ又は感染の状態、声色、声振及びこれらの組み合わせの少なくとも1つに関して分析し、そこから前記患者の呼吸器疾患の重症度を得るように構成される、請求項1乃至3の何れか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記分析装置は、前記受信される音響信号と、複数の患者から得られるデータとの比較に基づいて、前記受信される音響信号を、前記呼吸器疾患の重症度に関して分析するように構成される、請求項1乃至4の何れか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記システムは、例えば、電話、スマートフォン、タブレット、スマートウォッチ又はスマートグラスのような通信装置である、請求項1乃至5の何れか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記測定装置は、加速度計、ジャイロスコープ及び/又は気圧センサを有する慣性測定装置を有する、及び/又は
前記測定装置は、カメラを有する
請求項1乃至6の何れか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記ユーザインターフェースにより指示される前記身体的な動作は、立ち座りテスト、強制呼気法、タイムアップアンドゴー(TUG)運動及び/又はバルサルバ法である、請求項1乃至7の何れか一項に記載のシステム。
【請求項9】
患者の健康状態を決定するための方法であって、前記方法は、
身体的な動作を行うための指示を前記患者に提供するステップ、
前記患者の動きを検出するステップ、
前記検出される患者の動きを、前記身体的な動作に関して分析するステップ、
前記患者の動きが、前記身体的な動作に対応しているかどうかを決定するステップ、
前記検出される患者の動きが、前記身体的な動作に対応していない場合、前記指示を前記患者に繰り返すステップ、
前記検出される患者の動きが、前記身体的な動作に対応している場合、フレーズを読み上げるための指示を前記患者に提供するステップ、
前記患者の音響信号を受信するステップ、
前記受信される音響信号を前記健康状態に関して分析するステップ、及び
前記受信される音響信号の分析の結果を提供するステップ
を有し、前記結果は前記患者の健康状態を示している、方法。
【請求項10】
処理ユニット上で実行されるとき、処理ユニットに請求項9に記載の方法を実行するように命令するコンピュータプログラム要素。
【請求項11】
請求項10に記載のコンピュータプログラム要素を実行するように構成される処理ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の呼吸器疾患の重症度を決定するためのシステム及び患者の呼吸器疾患の重症度を決定するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
慢性閉塞性肺疾患のような呼吸器疾患を患う患者は、しばしば自宅において、自分の状態を自己管理している。毎日の電話が、患者の遠隔医療モニタリングの一部とすることができる。この電話の間、患者は、通例、自分の症状に関する質問表に答えるよう求められる。次に、これらの質問表に対する回答を用いて、症状の重症度スコアを作成し、このスコアは、患者の健康状態を評価する、及び増悪の危険性を決定することを可能にする。これらの質問に回答することの順守はしばしば低いことがあり、これは、欠損又は不完全なデータ、及び及び高いエラー確率を持つ症状の重症度スコアの計算につながる。さらに、質問票に回答する際、患者が不正確又は信頼できない情報を提供する可能性があり、これが、前記症状の重症度スコアのエラー確率をさらに高くすることがある。
【0003】
米国特許公開第US2018296092A1号は、ユーザの通信装置を介して、そのユーザの医学的状態を監視及び決定するためのシステム並びに方法を開示している。このシステムは、メモリ及びプロセッサを有し、このプロセッサは、ユーザの発話に関する音声信号を受信し、この音声信号を基準の音声信号と比較することに基づいて、ユーザの疾患の進行を決定するように構成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した欠点で苦しまない患者の呼吸器疾患の重症度を決定するためのシステム及び方法を持つことが有利である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、患者の呼吸器疾患の重症度の自動的で客観的な決定を用いて、前記重症度を決定するシステム及び方法を提供することである。
【0006】
本発明の目的は、独立請求項の主題により解決され、さらなる実施形態が従属請求項に組み込まれる。記載される実施形態は、同様に、患者の呼吸器疾患の重症度を決定するためのシステム、及び患者の呼吸器疾患の重症度を決定するための方法に関する。そのことを詳細に説明していないが、これらの実施形態の異なる組み合わせから相乗効果が生じることがある。
【0007】
さらに、方法に関する本発明の全ての実施形態が、記載されるようなステップの順序で実行されてもよいが、これは、この方法のステップの唯一であり必須の順序である必要はないことに注意されたい。本明細書に示される方法は、以下に特段の記載がない限り、夫々の方法の実施形態から逸脱することなく、開示されるステップの別の順序で実行されることができる。
【0008】
本発明の第1の態様によれば、患者の呼吸器疾患の重症度を決定するためのシステムが提供される。このシステムは、ユーザインターフェースを有し、このユーザインターフェースは、フレーズを読み上げるための指示を患者に提供するように構成され、このユーザインターフェースは、身体的な動作を行うための指示を患者に提供するように構成される。前記システムは、患者の音響信号を受信するように構成される受信装置、及び患者の動きを検出するように構成される測定ユニットをさらに有する。前記システムは、分析装置をさらに有し、この分析装置は、前記受信される音響信号を、呼吸器疾患の重症度に関して分析するように構成され、この分析装置は、前記検出される患者の動きを、ユーザインターフェースにより指示される前記身体的な動作に関して分析するように構成され、この分析装置は、前記受信される音響信号の分析の結果を提供するように構成され、この結果は、患者の呼吸器疾患の重症度を示す。前記分析装置は、前記患者の動きが、前記ユーザインターフェースにより指示される前記身体的な動作に対応しているかどうかを決定するように構成され、前記検出される患者の動きが、前記ユーザインターフェースにより指示される身体的な動作に対応している場合、前記ユーザインターフェースは、患者にフレーズを読み上げるように指示するように構成され、及び/又は前記検出される患者の動きが、前記ユーザインターフェースにより指示される身体的な動作に対応していない場合、前記ユーザインターフェースは、前記患者への指示を繰り返すように構成される。
【0009】
前記システムは、患者の呼吸器系に関する、この患者の疾患の重症度又は程度を決定することができる。呼吸器疾患は、しばしば、例えば、患者の声又は呼吸に影響を及ぼし、故に、患者により生成される音を分析することによって、音響的に検出されることができる。本発明のこの態様によるシステムは、患者に指示を提供するために使用されるインターフェースを有する。このインターフェースは、例えば、患者が指示を読むことができるスクリーン、又はユーザに口頭の指示を提供するスピーカ或いはヘッドホンのような光学又は音響的インターフェースとすることができる。これらの指示は、患者にフレーズを読み上げることを促し、このフレーズは、多音節の文でもよい。この文は、幾つかの異なる音声を有することができ、これら音声は、呼吸器疾患により影響を受けるので、呼吸器疾患を検出するのに適している。さらに、この文は、患者に無意識に影響を与えるために、肯定的な意味をさらに持ってもよい。患者によってフレーズが読み上げられるとき、受信装置が患者の音響信号を検出する。この受信装置は、患者の声及び関連する音を記録するマイクロフォンとすることができる。分析装置は、受信される音響信号を、呼吸器疾患の重症度に関して分析する。前記分析の結果が提供され、この結果は、患者の呼吸器疾患の重症度又は程度の尺度である。前記重症度は、スコアを提供することによって、又は前記疾患の傾向を提供することによって示されることができる。前記結果は、インターフェースを介して患者に提供されることができる。前記結果が記憶される、又は介護者或いは医師に送信されることもできる。本発明に従って、患者の症状の重症度は、質問票に関する明確な患者の入力を必要とすることなく、客観的に評価されることができる。
【0010】
前記インターフェースは、身体的な動作を行うための指示を患者に提供するように構成されることができる。この動作は、特定の動き又は一連の動きとすることができ、これは、繰り返し行われることもできる。繰り返す回数は、年齢、性別、疾患の重症度又は疾患の重症度の過去の測定値/検査のような患者の健康状態に依存する。身体的な動作は、患者の呼吸を速めるのに適切であり、これが患者の呼吸器疾患に関する音響信号の分析を容易にする。前記システムは、本発明のこの実施形態において、患者の動きを検出する測定ユニットを有する。前記分析装置は、検出される患者の動きを身体的な動作に関して分析するように構成される。この分析装置は、前記検出される動きを身体的な動作と比較し、前記動きがユーザに指示した前記身体的な動作に対応しているかどうかを検出することができる。前記検出される患者の動きを、前記身体的な動作と比較するために、テンプレートマッチングアルゴリズムが行われる。さらに、身体的な動作を行う前と、身体的な動作を行った後との音響信号の差を見ることが有益である。疾患の重症度が大きい患者ほど、より大きな差を示す可能性が高い。これは、一般に、患者の疾患の重症度に関する追加の情報も提供する。
【0011】
前記分析装置は、検出される患者の動きを、ユーザインターフェースにより指示される身体的な動作と比較することができる。本発明のこの実施形態において、前記分析装置は、患者が身体的な動作を従順であり正しく行っているかどうかを決定することができる。
【0012】
前記検出される動きが前記身体的な動作に対応している、故に、患者が指示に従っている場合、ユーザインターフェースは、患者にフレーズを読み上げるように指示することができる。別の方法で、前記分析装置が、前記身体的な動作に対応している患者の動きを検出することができない場合、ユーザインターフェースは、前記身体的な動作を行うための前記指示を患者に繰り返すことができる。これは、数回繰り返されることができる。或いは、このことが、患者の呼吸器疾患の重症度の分析の正確であり信頼できる結果にとって必要であるため、ユーザインターフェースによって、患者は前記身体的な行動を行うことの重要性について知らされる。患者との通信のためにチャットボット(chatbot)が設けられることができる。さらに、前記システムによって、患者の介護者又は医師は、患者が身体的な動作を行うことができない又は行う意思がないかに関して知られることができる。前記チャットボットは、例えば、患者の気分/健康状態を確認するためのような、データの検証に、又はチャットボットを使用することにより、患者と対話し、より多くの気分/健康データを取得するために、使用されることもできる。さらに、対話型のチャットボットは、前記検出される気分/健康状態に基づいて患者との対話を適応させて、信頼できる追加のデータの取得を支援することができる。例えば、患者が浮かない気分である場合、チャットボットは、やる気の出るフレーズを言って、患者を励ますことができる。
【0013】
本発明の一実施形態において、呼吸器疾患は、慢性閉塞性肺疾患である。
【0014】
前記呼吸器疾患は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)とすることができる。或いは、本発明のこの実施形態によるシステムが、例えば喘息のような他の呼吸器疾患を検出するように構成することができる。
【0015】
本発明の一実施形態において、受信される患者の音響信号は、患者の声であり、前記分析装置は、前記受信される音響信号を、ユーザインターフェースにより指示される前記読み上げたフレーズに関して分析するように構成される。
【0016】
本発明のこの実施形態において、前記受信される患者の音響信号は、フレーズを読み上げる患者の声である。前記分析装置は、前記音響信号を分析し、患者がユーザインターフェースによる指示通りにフレーズを読み上げたかどうかを決定することができる。従って、患者が指示通りにフレーズを読み上げる場合、この分析は、最も上手く行われるので、呼吸器疾患に関する音響信号の信頼できる正確な分析が行われ得ることが保証される。それに加えて又はその代わりに、例えば呼吸又は咳のように、患者の声に直接関係しない音が検出され、分析されることができる。さらに、指示されるフレーズに関係のない、患者が言う単語又はフレーズが、前記分析装置により分析されることができる。
【0017】
本発明の一実施形態において、前記分析装置は、受信される患者の音響信号を、呼吸、息切れ、喘鳴、呼吸のピッチ、咳の頻度、気分、健康(well-being)、声のピッチ、インフルエンザ又は感染の状態、声色、声振、及びこれらの組み合わせの少なくとも1つに関して分析し、そこから患者の呼吸器疾患の重症度を得るように構成される。
【0018】
患者の呼吸器疾患の重症度を決定するために、前記分析装置によって、幾つかのパラメタが考慮されることができる。呼吸器疾患の重症度を決定するために、分析装置によって、どのパラメタが使用される、又はどのパラメタの組み合わせが使用されるかは、検出又は分類される疾患に依存する。
【0019】
本発明の一実施形態において、前記分析装置は、受信される音響信号と複数の患者から得られたデータとの比較に基づいて、前記受信される音響信号を、呼吸器疾患の重症度に関して分析するように構成される。
【0020】
呼吸器疾患の重症度を決定するために、本発明のこの実施形態において、前記受信される患者の音響信号は、複数の患者から受信されるデータと比較される。前記複数の患者は、呼吸器疾患を患い、疾患の異なる重症度を持つ。複数の患者の疾患は、医師により分類され、それにより、重症度のスコアを提供する。患者の重症度は、同様の重症度を持つ患者のデータとの、受信される音響信号の類似性に従って分類することができる。或いは、疾患の重症度を決定するために、人工知能モジュールが使用されることができる。この人工知能モジュールは、複数の患者のデータセットを用いて訓練することができ、このデータは、夫々の重症度スコアを持つ複数の患者の音響信号を有する。
【0021】
本発明の一実施形態において、前記システムは、例えば、電話、スマートフォン、タブレット、スマートウォッチ又はスマートグラスのような通信装置である。
【0022】
前記システムは、適切なアプリケーションがインストールされた通信装置とすることができる。スクリーン又はスピーカは、ユーザインターフェースとして使用される一方、マイクロフォンは、患者の音響信号を受信するための受信装置として使用されることができる。前記通信装置の慣性測定装置(IMU)が患者の動きを検出するための測定ユニットとして使用され、前記分析装置は、前記通信装置のプロセッサとすることができる。前記通信装置は、データ接続又は音声接続を介した接続を確立し、インターネット又は電話を介して患者に指示することができる。受信される音響信号及び/又は測定される動きは、前記接続を介して送信され、分析装置としてのサーバにより分析されることができる。
【0023】
本発明の一実施形態において、前記測定装置は、加速度計、ジャイロスコープ及び/又は気圧センサを含む慣性測定装置を有する。
【0024】
前記測定装置は、患者の動きを検出するように構成される。これは、慣性測定装置によって達成され得る。前記慣性測定装置は、1つ以上の加速度計及び/又はジャイロスコープを有することができる。気圧センサの相対的な高さの変化として、患者の動きを検出するために気圧センサが使用されることもでき、従って、患者が決定されることができる。
【0025】
本発明の一実施形態において、前記測定装置はカメラを有する。
【0026】
カメラは、患者のビデオ又は一連の画像を記録することができる。このカメラのビデオ又は画像を分析することによって、患者の動きを決定することができる。前記カメラは、慣性測定装置に加えて、例えば、運動中の咳又は会話、或いは環境ノイズにより、慣性測定装置の信号にアーチファクトが発生する状況における、患者の不正確な又は誤った動きを検出する信頼性を高めるために使用されてもよい。さらに、カメラからのデータが処理され、患者の現在の健康状態に関する追加の客観的なパラメタを提供することができる。特に、ビデオデータは、患者の気分/健康状態を確認するために処理され、声のピッチのみに基づく評価を改善する。画像データからの気分/健康状態の評価は、例えば、最近傍分類器(Nearest Neighbor classifier)、ニューラルネットワーク、SVM、ベイジアンネットワーク(Bayesian Networks)、アダブースト(AdaBoost)分類器及びマルチレベルの隠れマルコフモデルのような顔の表情の分類器を用いて行われる。
【0027】
本発明の一実施形態において、ユーザインターフェースにより指示される身体的な動作は、立ち座り(sit-to-stand)テスト、強制呼気法(forced expiratory maneuver)、タイムアップアンドゴー(TUG: timed get up and go)運動、及び/又はバルサルバ法(Valsalva maneuver)とすることができる。
【0028】
患者が行う身体的な動作は、例えば、立ち座りテスト又はタイムアップアンドゴー運動のような、患者に負荷を与え、心拍数や呼吸回数を増大させる動作である。その代わりに又はそれに加えて、この身体的な活動は、強制呼気法又はバルサルバ法のような、患者の呼吸器系の動き又は操作とすることができる。
【0029】
本発明の別の態様によれば、患者の健康状態を決定する方法が提供される。この方法は、患者にフレーズを読み上げるための指示を提供するステップ、患者の音響信号を受信するステップ、前記受信される音響信号を呼吸器疾患の重症度に関して分析するステップ、及び受信される音響信号の分析の結果を提供するステップを有し、前記結果は、前記患者の健康状態を示す。
【0030】
本発明による方法は、患者の健康状態を決定する。第1のステップにおいて、フレーズを読み上げるための指示が患者に提供される。第2のステップにおいて、患者の音響信号が受信され、この音響信号は、患者の声及び/又は患者によって作成された他の音である。第3のステップにおいて、前記受信される音響信号が、患者の呼吸器疾患の重症度に関して分析される。第4のステップにおいて、前記受信し音響信号の分析の結果が提供され、この結果は、患者の健康状態を示す。
【0031】
前記方法は、身体的な動作を行うための指示を患者に提供するステップ、患者の動きを検出するステップ及び前記検出した患者の動きを前記身体的な動作に関して分析するステップをさらに有する。
【0032】
前記方法は、身体的な動作を行うための指示を患者に提供するステップ、及び患者の動きを検出するステップをさらに有し、これは続いて、前記検出した患者の動きを前記身体的な動作に関して分析するステップ、前記患者の動きが前記身体的な動作に対応しているかどうかを決定するステップ、前記検出した患者の動きが前記身体的な動作に対応していない場合、前記指示を患者に繰り返すステップ、及び前記検出した患者の動きが前記身体的な動作に対応している場合、フレーズを読み上げるための指示を患者に供給するステップを有する。これらのステップは、好ましくは、フレーズを読み上げるための指示を患者に提供する第1のステップが行われる前に行われる。従って、患者は、前記身体的な動作を行った後に、フレーズを読み上げるようにだけ指示されることが保証される。さらに、前記身体的な動作を行う前と、前記身体的な動作を行った後と音響信号の差を見ることが有益である。健康状態が悪い患者ほど、より大きな差を示す可能性が高い。これは、一般に、患者の健康状態に関する追加の情報も提供する。
【0033】
前記方法は、本発明のこの実施形態において、患者の呼吸器疾患の重症度を決定するためのシステムによって自動的に行われる。前記方法は、ネットワーク接続の有無にかかわらず、スマートフォンのような通信装置によって行われることができる。医師のような人間の操作者が、この方法の如何なるステップも行う必要はない。
【0034】
本発明の別の態様によれば、処理ユニット上で実行されるとき、上記の実施形態の何れかによる方法を行うように前記処理ユニットに命令するコンピュータプログラム要素が提供される。
【0035】
前記コンピュータプログラム要素は、1つ以上の処理ユニット上で行われ、これら処理ユニットは、患者の健康状態を決定するための前記方法を行うように指示される。
【0036】
本発明の別の態様によれば、上記の実施形態によるコンピュータプログラム要素を実行するように構成される処理ユニットが提供される。
【0037】
前記処理ユニットは、例えば、電話、スマートフォン、タブレット、スマートウォッチ又はスマートグラスのような通信装置のプロセッサとすることができる。この処理ユニットは、コンピュータプログラム要素の一部が前記通信装置上で実行され、別の部分が例えばサーバ上で実行されるように、1つ以上の異なる装置にわたり分散することもできる。
【0038】
従って、上記態様の何れかにより提供される利点は、他の態様全てに等しく適用され、その逆も同様である。
【0039】
要旨は、本発明は、患者の呼吸器疾患の重症度を決定するためのシステム及び方法に関する。患者は、前記システムによってフレーズを読み上げるように指示される。前記システムは、患者が読み上げたフレーズを音響信号として受信し、この音響信号を呼吸器疾患の重症度に関して分析する。分析の結果が提供され、この結果は、患者の呼吸器疾患の重症度を示す、
【0040】
上記態様及び実施形態は、以下に記載される例示的な実施形態から明らかとなり、これら例示的な実施形態を参照して説明される。本発明の例示的な実施形態は、以下の図面を参照して以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態による、患者の呼吸器疾患の重症度を決定するためのシステムの概略的な構成を示す。
【
図2】
図2は、本発明の第2の実施形態による、患者の呼吸器疾患の重症度を決定するためのシステムの概略的な構成を示す。
【
図3】
図3は、患者の呼吸器疾患の重症度を決定するための方法のブロック図を示す。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態による、患者の呼吸器疾患の重症度を決定するための方法のブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1は、本発明の第1の実施形態による、患者140の呼吸器疾患の重症度を判定するためのシステム100の概略的な構成を示す。ユーザインターフェース110は、患者140にフレーズ151を読み上げるように指示する。フレーズ151を読み上げる患者140の声である患者140の音響信号161が受信装置120により受信される。分析装置130は、音響信号を患者の呼吸器疾患に関して分析する。前記分析の結果170が提供される。この結果170は、患者140に、及び/又は患者140の介護者或いは医師に提供されることができる。処理ユニット200は、ユーザインターフェース110、受信装置120及び分析装置130と通信可能に接続される。
【0043】
図2は、本発明の第2の実施形態による、患者140の呼吸器疾患の重症度を判定するためのシステム100の概略的な構成を示す。ユーザインターフェース110は、身体的な動作152を行うための指示を患者140に提供し、フレーズ151を読み上げるための指示を患者に提供するように構成される。患者140は、身体的な活動152に対応している動き162を行うことができる。測定装置180は、患者140の動き162を検出するように構成される。測定ユニット180は、慣性測定装置181及び/又はカメラ182を有することができる。フレーズ151を読み上げている患者140の声である患者140の音響信号161が受信装置120により受信される。分析装置130は、前記検出される動き162を、前記指示される身体的な動作152に関して分析する。分析装置130は、音響信号161を患者140の呼吸器疾患に関して分析する。音響信号161の分析は、前記検出される動き162が、前記指示される身体的な動作152に対応している場合にのみ行われてよい。分析の結果170が提供される。前記結果は、患者140に、及び/又は患者140の介護者或いは医師に提供されることができる。処理ユニット200は、ユーザインターフェース110、受信装置120、測定装置180及び分析装置130と通信可能に接続される。
【0044】
図3は、患者140の呼吸器疾患の重症度を決定するための方法のブロック図を示す。前記方法は、フレーズ151を読み上げるための指示を患者140に提供する第1のステップを有する。このステップは、患者140の音響信号161を受信する第2のステップが続く。第3のステップは、前記受信される音響信号161を、呼吸器疾患の重症度に関して分析するステップを有する。第4のステップは、前記受信される音響信号161の分析の結果を提供するステップを有し、前記結果は、患者140の呼吸器疾患の重症度を示す。
【0045】
図4は、本発明の一実施形態による、患者140の呼吸器疾患の重症度を決定するための方法のブロック図を示す。本発明のこの実施形態は、
図3に示される方法と比較して、3つの追加のステップを有し、これらステップは、好ましくは、第1のステップの前に実行される。しかしながら、これらステップの異なる順序も可能である。これらの3つの追加のステップは、身体的な動作152を行うための指示を患者140に提供するステップ、患者140の動き162を検出するステップ、及び前記検出した患者140の動きを、前記身体的な動作に関して分析するステップである。
【0046】
本発明は、図面及び上記説明において詳細に例示及び説明されてきたが、そのような例示及び説明は、例示的又は説明的であり、限定的ではないと考えられるべきである。開示される実施形態に対する変形例は、図面、本開示及び添付の請求項を検討することにより、請求される発明を実施する際に当業者によって理解及び実施されることができる。
【0047】
請求項において、"有する"という言葉は、他の要素又はステップを排除するものではなく、複数あることを述べなくとも、それが複数あることを排除しない。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用されることができないことを示すものではない。請求項における如何なる参照符号も、その範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【手続補正書】
【提出日】2022-06-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の呼吸器疾患の重症度を決定するためのシステムにおいて、
ユーザインターフェースであり、前記ユーザインターフェースは、フレーズを読み上げるための指示を前記患者に提供するように構成され、前記ユーザインターフェースは、身体的な動作を行うための指示を前記患者に提供するように構成される、前記ユーザインターフェース、
前記患者の音響信号を受信するように構成される受信装置、
前記患者の動きを検出するように構成される測定装置、及び
分析装置であり、前記分析装置は、前記受信される音響信号を、前記呼吸器疾患の重症度に関して分析するように構成され、前記分析装置は、前記検出される患者の動きを、前記ユーザインターフェースによって指示される前記身体的な動作に関して分析するように構成され、前記分析装置は、前記受信される音響信号の分析の結果を提供するように構成され、前記結果は、前記患者の呼吸器疾患の重症度を示す、前記分析装置
を有する、前記システムであり、
前記分析装置は、前記患者の動きが、前記ユーザインターフェースにより指示される前記身体的な動作に対応しているかどうかを決定するようにさらに構成され、並びに
前記検出される患者の動きが、前記ユーザインターフェースにより指示される前記身体的な動作に対応している場合、前記ユーザインターフェースは、前記患者に前記フレーズを読み上げるように指示するように構成される、及び/又は
前記検出される患者の動きが、前記ユーザインターフェースにより指示される前記身体的な動作に対応していない場合、前記ユーザインターフェースは、前記患者に前記指示を繰り返すように構成される、
ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記呼吸器疾患は、慢性閉塞性肺疾患である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記受信される患者の音響信号は、前記患者の声であり、前記分析装置は、前記受信される音響信号を、前記ユーザインターフェースにより指示される前記読み上げられるフレーズに関して分析するように構成される、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記分析装置は、前記受信される患者の音響信号を、呼吸、息切れ、喘鳴、呼吸のピッチ、咳の頻度、気分、健康、声のピッチ、インフルエンザ又は感染の状態、声色、声振及びこれらの組み合わせの少なくとも1つに関して分析し、そこから前記患者の呼吸器疾患の重症度を得るように構成される、請求項1乃至3の何れか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記分析装置は、前記受信される音響信号と、複数の患者から得られるデータとの比較に基づいて、前記受信される音響信号を、前記呼吸器疾患の重症度に関して分析するように構成される、請求項1乃至4の何れか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記システムは、例えば、電話、スマートフォン、タブレット、スマートウォッチ又はスマートグラスのような通信装置である、請求項1乃至5の何れか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記測定装置は、加速度計、ジャイロスコープ及び/又は気圧センサを有する慣性測定装置を有する、及び/又は
前記測定装置は、カメラを有する
請求項1乃至6の何れか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記ユーザインターフェースにより指示される前記身体的な動作は、立ち座りテスト、強制呼気法、タイムアップアンドゴー(TUG)運動及び/又はバルサルバ法である、請求項1乃至7の何れか一項に記載のシステム。
【国際調査報告】