(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-01
(54)【発明の名称】LIDARシステムにおける波長選択
(51)【国際特許分類】
G01S 17/34 20200101AFI20221124BHJP
G01S 7/4911 20200101ALI20221124BHJP
G01S 7/4915 20200101ALI20221124BHJP
【FI】
G01S17/34
G01S7/4911
G01S7/4915
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021566110
(86)(22)【出願日】2020-05-15
(85)【翻訳文提出日】2021-11-05
(86)【国際出願番号】 US2020033301
(87)【国際公開番号】W WO2020236663
(87)【国際公開日】2020-11-26
(32)【優先日】2019-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520437076
【氏名又は名称】シルク テクノロジーズ インコーポレイティッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003007
【氏名又は名称】特許業務法人謝国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルフィ、ブラッドレー ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】フォン、ダゾン
(72)【発明者】
【氏名】アスガリ、メヘディ
(72)【発明者】
【氏名】ボロリアン、マジッド
【テーマコード(参考)】
5J084
【Fターム(参考)】
5J084AA05
5J084AA07
5J084AA10
5J084AB01
5J084AB07
5J084BA04
5J084BA08
5J084BA20
5J084BA21
5J084BA36
5J084BA38
5J084BA49
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5J084BB14
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5J084BB33
5J084BB40
5J084CA31
5J084CA42
5J084CA48
5J084CA49
5J084DA01
5J084EA01
5J084EA29
5J084FA01
(57)【要約】
周波数変調連続波(FMCW)LIDARシステムは、1290~1310 nmの波長のLIDAR出力信号を出力するように構成されたLIDARチップを有する。該LIDARチップはまた、LIDARチップから離れてLIDAR入力信号を受信するように構成される。該LIDAR入力信号は、LIDARチップから離れた物体によるLIDAR出力信号の反射後に該LIDAR出力信号からの光を含む。LIDARチップは、比較光信号からの光と参照信号からの光とを含む複合信号を生成するように構成される。前記比較信号は、LIDAR出力信号からの光を含むが、前記参照信号は、LIDAR出力信号からの光を含まない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1290~1310 nmの波長を有するLIDAR出力信号を出力するように構成されたLIDARチップを含む、周波数変調連続波(FMCW)LIDARシステムであって、
前記LIDARチップは、該LIDARチップの外からLIDAR入力信号を受信するように構成され、
前記LIDAR入力信号は、該LIDARチップから離れた物体による前記LIDAR出力信号の反射後のLIDAR出力信号からの光を含み、
前記LIDARチップは、比較光信号からの光及び参照信号からの光を含む複合信号を生成するように構成され、
該比較信号は、前記LIDAR出力信号からの光を含み、かつ、
該参照信号は、前記LIDAR出力信号からの光を含まない、
周波数変調連続波(FMCW)LIDARシステム。
【請求項2】
前記LIDAR出力信号が、出発LIDAR信号からの光を含み、かつ前記参照信号が、該出発LIDAR信号からの光を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記LIDAR入力信号が、前記物体と前記LIDARチップとの間の視線速度及び/または距離の関数である、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記参照信号が、前記物体と前記LIDARチップとの間の視線速度及び/または距離の関数ではない、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記参照信号が、前記複合信号に含まれる前に前記LIDARチップから出射しない、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記LIDARチップが、前記LIDAR出力信号及び前記LIDAR入力信号の両方を誘導する導波路を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記複合信号が、前記参照信号に対して拍動している比較信号を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記LIDARチップが、シリコンを介して、光を誘導するように構成された1つ以上の導波路を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
視野内のサンプル領域にそれぞれ同時に誘導される複数のLIDAR出力信号を出力するように構成されたLIDARシステムを含むLIDARシステムであって、前記サンプル領域は、該視野に含まれる複数のサンプル領域のうちの1つであり、
前記LIDAR出力信号は、異なる波長で1つのチャネルをそれぞれ運び、
前記異なるチャネルの波長は、波長スペクトル上で非周期的に間隔を置いて配置され、かつ、
前記LIDARシステムは、該LIDARシステムの外、かつ該サンプル領域の中に位置する物体によってそれぞれ反射された複数のLIDAR入力信号を同時に受信するように構成され、該LIDAR入力信号は、前記LIDAR出力信号の異なる1つからの光をそれぞれ含む、
LIDARシステム。
【請求項10】
前記波長スペクトル上で互いに隣接する少なくとも1対のチャネルは、10 nmよりも離れた波長を有する、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記波長スペクトル上で互いに隣接する少なくとも2対のチャネルは、30 nmよりも離れた波長を有する、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記LIDARシステムが、視野内のサンプル領域にそれぞれ同時に誘導され、かつ、それぞれが異なる波長で1つのチャネルを運ぶ少なくとも3つのLIDAR出力信号を出力する、請求項9に記載のシステム。
【請求項13】
前記LIDAR出力信号の少なくとも1つは、量子ドットを含む利得媒体を有するレーザ光源からの光を含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項14】
前記LIDAR出力信号の少なくとも1つは、1290~1310 nm範囲の波長を有する1つのチャネルを運ぶ、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記LIDARシステムと前記物体との間の視線速度及び/または距離の関数である電気信号に関して数学的に変換する電子機器をさらに含む、請求項9に記載のシステムであって、
前記変換が、前記サンプル領域内の物体に関連付けられる1つの周波数解答のみを出力し、該物体が該サンプル領域から除去された場合、該物体に関連付けられるいずれの周波数解答は、該数学的変換によって出力されない、システム。
【請求項16】
前記数学的変換が、前記電子機器が実行するように構成される複数の数学的変換のうちの1つであり、各変換は、前記LIDARシステム間の視線間隔及び/または距離の関数である電気信号に関して実行され、かつ、異なるチャネルを運ぶ電気信号に関して異なる変換が実行される、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
視野内のサンプル領域にそれぞれ同時に誘導される複数のLIDAR出力信号を出力するように構成されるLIDARシステムを含むLIDARシステムであって、前記サンプル領域は、該視野に含まれる複数のサンプル領域のうちの1つであり、
前記LIDAR出力信号は、異なる波長で1つのチャネルをそれぞれ運び、
前記異なるチャネルの波長は、少なくとも1つのチャネルペアに含まれるチャネルの波長間の差が10 nmより大きく、各チャネルペアの中のチャネルは、波長スペクトル上で互いに隣接して配置された波長を有するようなものであり、かつ、
前記LIDARシステムは、該LIDARシステムの外、かつ前記サンプル領域の中に位置する物体によってそれぞれ反射された複数のLIDAR入力信号を同時に受信するように構成され、該LIDAR入力信号は、前記LIDAR出力信号の異なる1つからの光をそれぞれ含む、LIDARシステム。
【請求項18】
前記LIDARシステムが、視野内のサンプル領域にそれぞれ同時に誘導され、それぞれは異なる波長で1つのチャネルを運ぶ少なくとも3つのLIDAR出力信号を出力する、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
少なくとも1つのチャネルが、1290~1310 nm範囲の波長を有する、請求項17に記載のシステム。
【請求項20】
少なくとも1つのチャネルが、1540~1560 nm範囲の波長を有する、請求項19に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2019年5月17日に出願された“LIDARシステムにおける波長選択”と題された米国特許出願シリアル番号62/849,747号の継続である。
【分野】
【0002】
本発明は、光学装置、具体的にはLIDARシステムに関する。
【背景】
【0003】
ADAS(先進運転支援システム)及びAR(拡張現実)のような応用において経済的に展開できる3D感知システムに対する商業的需要が増大している。LIDAR(光による検知と測距)システムは、これらの3D画像を構築するために使用できる技術の一例である。LIDARシステムは、光でシーンを照射し、照射されたシーンから該LIDARシステムに戻る光信号を計測することによってこれらの画像を構築する。しかし、LIDARシステムにおいて、レーザは光信号源として使用されることが多いため、皮膚や目に対する安全性が利用可能なLIDARの応用を拡大させる課題の1つである。そのため、安全性を高めたLIDARシステムが必要とされている。
【概要】
【0004】
周波数変調連続波(FMCW)LIDARシステムは、LIDAR出力信号を出力するように構成されたLIDARチップを有する。前記LIDARチップはまた、該LIDARチップの外からLIDAR入力信号を受信するように構成される。前記LIDAR入力信号は、該LIDARチップから離れた物体によって反射された後のLIDAR出力信号からの光を含む。該LIDARチップは、比較光信号からの光及び参照信号からの光を含む複合信号を生成するように構成される。該比較信号は、前記LIDAR出力信号からの光を含むが、該参照信号は、前記LIDAR出力信号からの光を含まない。前記LIDAR出力信号は、1290~1310 nmの波長を有する。
【0005】
別のLIDARシステムは、視野内のサンプル領域にそれぞれ同時に誘導される複数のLIDAR出力信号を出力するように構成される。前記サンプル領域は、前記視野に含まれる複数のサンプル領域のうちの1つである。前記LIDAR出力信号は、異なる波長でチャネルをそれぞれ運ぶ。前記異なるチャネルの波長は、波長スペクトル上で非周期的に間隔を置いて配置されている。前記LIDARシステムは、該LIDARシステムの外、かつサンプル領域の中に位置する物体によってそれぞれ反射された複数のLIDAR入力信号を同時に受信するように構成される。前記LIDAR入力信号は、前記LIDAR出力信号の異なる1つからの光をそれぞれ含む。
【0006】
別のLIDARシステムは、視野内のサンプル領域にそれぞれ同時に誘導される複数のLIDAR出力信号を出力するように構成される。該サンプル領域は、前記視野に含まれる複数のサンプル領域のうちの1つである。前記LIDAR出力信号は、異なる波長でチャネルをそれぞれ運ぶ。少なくとも1つのチャネルペアに含まれるチャネルの波長の差は、20 nmより大きい。各チャネルペアのチャネルは、他のチャネルが各ペアに含まれる2つのチャネルの間の波長を有しないという点で、波長スペクトル上で互いに隣接して配置された波長を有する。前記LIDARシステムは、該LIDARシステムの外、かつサンプル領域の中に位置する物体によってそれぞれ反射された複数のLIDAR入力信号を同時に受信するように構成される。前記LIDAR入力信号は、前記LIDAR出力信号の異なる1つからの光をそれぞれ含む。
【0007】
LIDARシステムを生成及び/または動作させる方法は、LIDARシステムからのLIDAR出力信号を該LIDARシステムに反射する物体に含まれる可能性のある材料を識別することを含む。該方法はまた、複数のLIDAR出力信号を、他のLIDAR出力信号のいずれよりも、識別された材料の1つに対してより高い反射率を有する波長を有するように構成することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【0009】
【
図1B】LIDARシステムの他の実施形態の概略図である。
【0010】
【0011】
【
図2B】時間の関数として異なるチャネルを運ぶLIDAR出力信号の周波数を示す。
【0012】
【
図3A】
図1A及び/または
図1BのLIDARシステムと共に使用するのに適した処理ユニットの一例を示す。
【0013】
【
図3B】
図3Aに従って構築された処理ユニットと共に使用するのに適した電子機器の概略図を示す。
【0014】
【
図3C】振幅対周波数のグラフである。該グラフ上の実線は、複合フーリエ変換の結果を示す。
【0015】
【
図4A】出力要素として機能する導波路ファセットを示す。
【0016】
【
図4B】オフチップ走査機構と共に使用される
図4AのLIDARチップを示す。
【0017】
【
図4C】オフチップ走査機構の別の実施形態と共に使用される
図4AのLIDARチップを示す。
【0018】
【
図5】ビーム操縦能力を任意選択で含む出力要素の一例を示す。
【説明】
【0019】
LIDARシステムからの出力光信号に選択する動作波長に影響を及ぼす要因として主に4つがある。その1つとして、LIDARシステムからの光に照射される目や皮膚に対する安全性が含まれる。もう1つの要因は、選択された波長における太陽背景活動である。動作波長における高レベルの太陽背景活動は、LIDARシステムの動作を妨害することがある。またもう1つの要因は、選択された波長における光の大気透過率である。低レベルの大気透過率は、物体から反射された後にLIDARシステムに戻る光の量を減少させる。従って、低レベルの透過率は、LIDARシステムの性能を低下させ、うまく動作させるのに必要なパワーレベルを増加させる。4つ目の要因は、対象物体の光反射率である。反射される光の量を増加させると、LIDARシステムに戻される光の量が増加し、それによってLIDARシステムの性能が向上する。
【0020】
本発明者らは驚くべきことに、狭い範囲の波長の光信号を出力するFMCW LIDARシステムを用いて4つの要因の全てを満たせることを見出した。目や皮膚に対する安全性に関して、本発明者らは、波長1290~1310 nmのLIDAR出力信号が300~400 mW/cm2のMPE(国際標準IEC 60825-1,2014による最大許容被曝量)を有することを見出した。対照的に、目や皮膚の安全性のために使用される波長は、典型的には1350~15500 nmの波長である。しかし、これらの波長におけるMPEは、典型的には100~200 mW/cm2であるため、波長1290~1310 nmのLIDAR出力信号は、目や皮膚に対する安全性が実質的に従来のシステムよりも向上されている。さらに、FMCW LIDARシステムの使用は、太陽背景活動のLIDARシステムの性能に対する影響を効果的に排除する。また、本発明者らは、1290~1310 nmの波長が1280~1310 nm範囲での大気透過率窓の中の1つに入ることを見出した。対照的に、1350~1390 nmの波長は、ほとんど大気透過率窓の外にある。最後に、顔認識や自動運転車両のような多くの用途において、標的の1つは皮膚である。皮膚反射率のピークは1090 nm及び1270 nmにあることが発見されていることから、1290 nm~1310 nmの波長範囲は、これらの皮膚反射率のピークの1つを利用する。従って、1290~1310 nm範囲の波長を有するFMCW LIDARシステムの出力信号は、動作波長を選択するための4つの要因の全てを満たすことができる。
【0021】
いくつかの例では、前記LIDARシステムは、視野内の一連のサンプル領域にわたって走査されるLIDAR出力信号を複数生成するように構成される。異なるLIDAR出力信号は、それぞれ異なるチャネルを運ぶが、走査中に各サンプル領域を同時に照射する。前記LIDARシステムは、各LIDAR出力信号についてLIDARデータ(LIDAR出力信号の光源と反射物体との間の距離及び/または視線速度)の結果を生成することができる。その結果、該LIDARは、各サンプル領域について、複数のLIDARデータの結果を生成することができる。前記LIDAR出力信号によって搬送される異なるチャネルの波長は、視野内に存在し得る特定の材料に対して有効であるように選択することができる。上記のように、波長範囲1290~1310 nmのチャネルは、有効であり、皮膚と共に使用しても安全である。しかし、いくつかの標的については、該波長範囲内のチャネルは、他の波長のチャネル程の反射性がない。一例として、鈍いアルミニウムや亜鉛のような金属の反射率は、1290~1310 nm範囲の波長より、1540~1560 nm範囲の波長に対して約22%高い。その結果、1540~1560 nm範囲の波長のチャネルを運ぶLIDAR出力信号は、金属が視野内にある場合に、1290~1310 nm範囲の波長よりも高い信頼性のLIDARデータの結果を提供することができる。従って、波長1290~1310 nmのチャネルを運ぶLIDAR出力信号、及び波長1290~1310 nmのチャネルを運ぶLIDAR出力信号を生成するLIDARシステムは、視野内の皮膚及び金属の両方についてLIDARデータを効率的に生成することができる。従って、異なる波長のLIDAR出力信号を使用することによって、LIDARデータを確実に生成できる材料の範囲が広められる。
【0022】
図1Aは、周波数変調連続波(FMCW)LIDARシステムを含むLIDARチップの上面図である。該LIDARシステムでは、LIDARチップから離れた物体で反射されたLIDAR入力信号からの光は、該LIDARチップによって受信され、該物体で反射されていない参照光信号からの光と結合され、それによって、LIDARデータが生成される複合信号が生成される。参照光信号とLIDAR入力信号との間の周波数差がある場合、該複合信号を拍動信号とすることができる。該周波数差は、物体とLIDARチップ(即ち、ドップラー効果)との間の相対的な移動、及び/または、LIDAR出力信号及び経時的に変化する周波数を有する参照信号の使用によるものであり得る。
【0023】
前記システムは、出発LIDAR信号を出力するレーザのような光源(10)を含む。該LIDAR出発LIDAR信号は、それぞれ異なる波長の1つ以上の異なるチャネルを運ぶ。一例では、出発LIDAR信号は、1つのチャネルを運ぶ。一例では、出発LIDAR信号は、1290~1310 nmの波長を有する1つのチャネルを運ぶ。一例では、出発LIDAR信号は、それぞれ異なる波長の複数のチャネルを運ぶ。
【0024】
前記LIDARシステムはまた、光源(10)から出発LIDAR信号を受信するユーティリティ導波路(12)を含む。ユーティリティ導波路(12)に沿って、増幅器(16)は任意選択で配置される。出発LIDAR信号のパワーは、複数のチャネルの間で分配されるので、増幅器(16)は、ユーティリティ導波路(12)において、各チャネルに望ましいレベルのパワーを提供することが望ましい。好適な増幅器には、半導体光増幅器(SOA)が含まれるが、これに限定されない。
【0025】
ユーティリティ導波路(12)は、出発LIDAR信号を信号誘導要素(18)に運ぶ。該信号誘導要素(18)は、出発LIDAR信号をLIDAR分岐(20)及び/またはデータ分岐(22)に誘導することができる。該LIDAR分岐は、LIDAR出力信号を出力し、LIDAR入力信号を受信する。該データ分岐は、LIDARデータ(LIDAR出力信号の光源と反射物体との間の距離及び/または視線速度)の生成するために、LIDAR入力信号を処理する。
【0026】
前記LIDAR分岐は、前記信号誘導要素(18)からの出発LIDAR信号の少なくとも一部を受信するLIDAR信号導波路(24)を含む。LIDAR信号導波路(24)は、出発LIDAR信号の少なくとも一部を、該出発LIDAR信号がLIDARチップから出射する出力要素(26)に運ぶ。該出発LIDAR信号が異なる波長で複数の異なるチャネルを含む場合、出力要素(26)は、それぞれの異なるチャネルが視野内の同じサンプル領域に入射するように構成することができる。例えば、出力要素(26)は、それぞれの異なるチャネルがLIDARチップから同じ方向に、または実質的に同じ方向に移動するように構成することができる。
【0027】
出力要素(26)から出射した後、前記の異なるチャネルは、それぞれ、異なる波長(チャネル)のLIDAR出力信号として機能する。LIDAR出力信号は、LIDARシステムの外に配置された反射物体(図示せず)によって反射され得る。各々の反射されたLIDAR出力信号は、LIDAR入力信号として出力要素(26)に戻る。出力要素(26)は、該LIDAR入力信号を受信し、その結果を入射LIDAR信号としてLIDAR信号導波路(24)の上に出力する。
【0028】
いくつかの例では、出力要素(26)はまた、ビーム操縦機能を含む。これらの例では、出力要素(26)は、出力要素(26)は、視野内のサンプル領域の1つから視野内の他のサンプル領域にLIDAR出力信号を操縦するように出力要素(26)を操作することができる電子機器(図示せず)と電気通信することができる。前記出力要素(26)及び/または電子機器は、異なるLIDAR出力信号が同時に操縦されるように構成することができる。
【0029】
出力要素(26)は単一な要素として示されているが、該出力要素(26)は、複数の光学的な要素及び/または電気的な要素を含むことができる。好適な出力要素(26)には、光フェーズドアレイ(OPA)、透過回折格子、反射回折格子、及び回折光学素子(DOE)が含まれるが、これらに限定されない。好適なビーム操縦能力を有する出力要素(26)には、アレイ導波路上に能動位相制御素子を有する光フェーズドアレイ(OPA)が含まれるが、これに限定されない。
【0030】
LIDAR信号導波路(24)は、入射LIDAR信号を信号誘導要素(18)に運ぶ。該信号誘導要素(18)は、入射LIDAR信号をユーティリティ導波路(12)及び/または比較信号導波路(28)に誘導する。該比較信号導波路(28)に誘導された入射LIDAR信号の一部は、比較入射LIDAR信号として機能する。
【0031】
前記比較信号導波路(28)は、前記比較入射LIDAR信号を比較分波器(30)に運ぶ。該比較光信号が複数のチャネルを含む場合、前記比較分波器(30)は、比較入射LIDAR信号を、それぞれが異なる1つのチャネルを運ぶ異なる比較信号に分割する。該比較分波器(30)は、比較信号を異なる比較導波路(32)に出力する。該比較導波路(32)は、比較信号のうちの1つを異なる処理要素(34)にそれぞれ運ぶ。従って、前記異なる処理要素(34)は、異なる1つのチャネルを運ぶ比較信号をそれぞれ受信する。
【0032】
信号誘導要素(18)は、それが入射LIDAR信号の少なくとも一部を比較導波路(32)に誘導するとき、出発LIDAR信号の少なくとも一部を参照信号導波路(36)にも誘導するように構成される。該参照信号導波路(36)によって受信された出発LIDAR信号の一部は、参照光信号として機能する。
【0033】
前記参照信号導波路(36)は、参照光信号を参照分波器(38)に運ぶ。該参照光信号が複数のチャンネルを運ぶとき、該参照分波器(38)は、参照光信号をそれぞれ異なる1つのチャンネルを運ぶ異なる参照信号に分割する。前記参照分波器(38)は、異なる参照導波路(40)上に参照信号を出力する。該参照導波路(40)は、参照信号のうちの1つを処理要素(34)の異なる1つにそれぞれ運ぶ。従って、異なる処理要素(34)は、異なる1つのチャネルを運ぶ参照信号をそれぞれ受信する。
【0034】
比較導波路(32)及び参照導波路(40)は、比較信号及び対応する参照信号が同一の処理要素(34)で受信されるように構成される。例えば、比較導波路(32)及び参照導波路(40)は、比較信号及び同じ波長の対応する参照信号が同一の処理要素(34)で受信されるように構成される。従って、前記異なる処理要素(34)は、比較信号及び同じチャネルを運ぶ参照信号をそれぞれ受信する。
【0035】
以下で詳しく説明するように、処理要素(34)は、それぞれ、比較信号と対応する参照信号とを結合して、視野上のサンプル領域に関するLIDARデータを運ぶ複合信号を形成する。従って、該複合信号を処理して、該サンプル領域に関するLIDARデータを抽出することができる。
【0036】
信号誘導要素(18)は、光結合器とすることができる。信号誘導要素(18)が光結合器である場合、これは、出発LIDAR信号の第1部分をLIDAR信号導波路(24)に誘導し、該出発LIDAR信号の第2部分を参照信号導波路(36)に誘導するとともに、入射LIDAR信号の第1部分をユーティリティ導波路(12)に誘導するとともに、該入射LIDAR信号の第2部分を比較信号導波路(28)に誘導する。従って、入射LIDAR信号の第2部分は、比較入力LIDAR信号として機能することができ、出発LIDAR信号の第2部分は、参照光信号として機能することができる。
【0037】
信号誘導要素(18)は、交差スイッチのような光スイッチとすることができる。好適な交差スイッチは、クロスモードまたはパスモードで動作することができる。パスモードでは、出発LIDAR信号は、LIDAR信号導波路(24)に誘導され、入射LIDAR信号は、ユーティリティ導波路(12)に誘導される。クロスモードでは、出発LIDAR信号は、参照信号導波路(36)に誘導され、入射LIDAR信号は、比較信号導波路(28)に誘導される。従って、入射LIDAR信号またはその一部は、比較光信号として機能し、出発LIDAR信号またはその一部は、参照光信号として機能することができる。
【0038】
交差スイッチのような光スイッチは、電子機器によって制御することができる。例えば、電子機器は、前記スイッチがクロスモードまたはパスモードにあるようにスイッチの動作を制御することができる。LIDAR出力信号がLIDARシステムから送信される場合、前記電子機器は、スイッチがパスモードにあるように該スイッチを操作する。LIDAR入力信号がLIDARシステムによって受信される場合、前記電子機器は、スイッチがクロスモードにあるように該スイッチを操作する。スイッチを使用することによって、信号誘導要素(18)として光結合器を使用する場合における光の損失レベルを低減することができる。
【0039】
信号誘導要素(18)の動作に関する上記の説明において、比較光信号及び参照光信号は、同時にデータ分岐に誘導される。その結果、処理要素(34)は、それぞれ、比較信号と対応する参照信号とを結合することができる。
【0040】
いくつかの例では、光増幅器(42)は、任意選択で、LIDAR信号導波路(24)に沿って配置され、出発LIDAR信号及び/または入射LIDAR信号を増幅させるように構成される。従って、前記信号誘導要素(18)における光の損失効果を低減することができる。
【0041】
図1Bは、信号誘導要素(18)として光循環器を含むように変更された
図1AのLIDARシステムを示す。該光循環器は、出発LIDAR信号がLIDAR信号導波路(24)に誘導され、入射LIDAR信号が比較信号導波路(28)に誘導されるように構成される。該比較信号導波路(28)は、比較入射LIDAR信号を比較分波器(30)に運ぶ。また、タップ要素(44)は、ユーティリティ導波路(12)に沿って配置される。該タップ要素(44)は、出発LIDAR信号の第1部分を取り出し、これにより、出発LIDAR信号の第1部分が参照信号導波路(36)上に受信されるように構成される。参照信号導波路(36)によって受信された出発LIDAR信号の第1部分は、参照光信号として機能する。参照信号導波路(36)は、参照光信号を参照分波器(38)に運ぶ。従って、電子機器は、
図1Aに開示されているように、
図1BのLIDARシステムを操作することができる。好適な光循環器には、ファラデー回転子に基づく光ファイバ循環器及び集積光循環器が含まれるが、これらに限定されない。
図1Bの信号誘導要素(18)は光循環器として開示されているが、これは、光結合器または光スイッチとすることができる。
【0042】
図2Aは、複数のレーザ光源(84)を含む光源(10)の一例を示している。いくつかの例では、各々のレーザ光源(84)は、光源導波路(86)上において、1つ以上のチャネルを出力する。該光源導波路(86)は、チャネルを結合してチャネル導波路またはユーティリティ導波路(12)上に受信される光信号を形成するレーザ合波器(88)にチャネルを運ぶ。好適なレーザ合波器(88)には、アレイ導波路格子(AWG)合波器、エシェル格子合波器、及びスター結合器が含まれるが、これらに限定されない。電子機器は、レーザ光源(84)を動作させて、それにより、レーザ光源(84)が各チャネルを同時に出力することができる。電子機器は、レーザ光源(84)を動作させて、それにより、レーザ光源(84)が各チャネルを同時に出力することができる。
【0043】
いくつかの例では、各々のレーザ光源(84)は、光源導波路(86)上において1つのチャネルを出力する。光源(10)に含まれるレーザ光源(84)の総数は、サンプル領域に同時に誘導されるLIDAR出力信号の数よりも大きくてもよく、またはそれに等しくてもよい。いくつかの例では、光源(10)に含まれるレーザ光源(84)の総数は、サンプル領域に同時に誘導されるLIDAR出力信号の数に等しい。その結果、各レーザ光源(84)は、サンプル領域に同時に誘導されるLIDAR出力信号の異なる1つの光源とすることができる。
【0044】
電子機器は、レーザ光源(84)を単独に動作させることができる。例えば、電子機器は、レーザ光源(84)を動作させ、特定の周波数対時間波形の特定のLIDAR出力信号を提供することができる。電子機器は、レーザ光源(84)を単独に動作させることができ、各レーザ光源(84)はLIDAR出力信号の異なる1つの光源とすることができるので、電子機器は、レーザ光源(84)を動作させ、それにより、異なるLIDAR出力信号が異なる周波数対時間波形を有することができる。
【0045】
変調器(14)は、任意選択で、1つ以上の光源導波路(86)に沿って配置することができる。該変調器(14)は、それぞれ、1つのチャネルのパワーを変調し、それにより、得られるLIDAR出力信号の振幅を変調するように構成することができる。電子機器は、変調器(14)を動作させることができる。従って、電子機器は、LIDAR出力信号のパワーを変調することができる。好適な変調器(14)には、PINダイオードキャリア注入装置、マッハツェンダー変調装置、及び電気吸収変調装置が含まれるが、これらに限定されない。変調器(14)をシリコン・オン・インシュレータ・プラットフォーム上に構築する場合の好適な変調器は、1993年9月21日に出願された、“統合シリコンPINダイオード電気光学導波路”と題する米国特許出願シリアル番号617,810号に開示されている。
【0046】
増幅器(16)は、任意選択で、1つ以上の光源導波路(86)に沿って配置することができる。変調器(16)は、チャネルのうちの1つの強度を変調し、それにより、得られたLIDAR出力信号のパワーを変調するようにそれぞれ構成することができる。電子機器は、該変調器(16)を動作させることができる。従って、電子機器は、1つ以上のLIDAR出力信号のパワーを増幅することができる。好適な増幅器(16)には、エルビウム添加光ファイバ増幅器(EDFA)またはプラセオジム添加光ファイバ増幅器(PDF)のような光ファイバ増幅器、及び半導体光増幅器(SOA)が含まれるが、これらに限定されない。
【0047】
電子機器は、変調器(14)及び/またはレーザ光源(84)を動作させ、これにより、異なる波形を有する異なるLIDAR出力信号を提供することができる。例えば、電子機器は、1つ以上のレーザ光源(84)を動作させて、連続波のような時間の関数ではない周波数を有するLIDAR出力信号をそれぞれ生成することができる。さらにまたは代替的に、電子機器は、1つ以上のレーザ光源(84)及び関連する変調器(14)を動作させ、それにより、各々がチャープされた振幅を有する1つ以上のLIDAR出力信号を生成することができる。さらにまたは代替的に、電子機器は、1つ以上のレーザ光源(84)及び関連する変調器(14)を動作させ、時間と共に変化する周波数を有する1つ以上のLIDAR出力信号を生成する。一例では、電子機器は、1つ以上のレーザ光源(84)及び/または関連する変調器(14)を動作させ、それにより、時間の関数である周波数を有する正弦波の関数である電界を有する少なくとも1つのLIDAR出力信号を生成することができる。別の例では、各々の光源導波路(86)は、変調器(14)を排除し、電子機器は、1つ以上のレーザ光源(84)及び/または関連する変調器(14)を動作させ、それにより、時間の関数である周波数を有する正弦波の関数である電界を有する少なくとも1つのLIDAR出力信号を生成する。
【0048】
LIDARシステムの動作中、LIDARデータの生成は、各周期にはLIDARデータが生成される一連の周期に分割される。いくつかの例では、該周期のいずれは、視野内の異なるサンプル領域に対応する。従って、異なる周期は、視野内の異なる領域に関するLIDARデータを生成することができる。前記周期は、各周期の持続時間を異なる期間に分割できるように行うことができる。例えば、1周期の持続時間は、LIDAR入力信号がLIDARチップに生成され受信される1つ以上のデータ期間、及びLIDAR出力信号が1つのサンプル領域から別のサンプル領域に移動される1つ以上の再配置期間を含むことができる。連続走査モードでは、前記周期は、再配置期間を含まず、LIDAR出力信号は連続的に移動される。一例では、前記周期は、複数のデータ期間を含み、複数のLIDAR出力信号は、それぞれ、異なるチャネルを運び、LIDAR出力信号は、視野内の同じサンプル領域に同時に誘導される。一例では、LIDAR出力信号の少なくとも1つは、時間の関数として変化する周波数を有する正弦波の関数である。一例では、各々のLIDAR出力信号は、時間の関数として変化する周波数を有する正弦波の関数である。
【0049】
図2Bは、LIDAR出力信号を調整するための模式図の一例を示している。周波数は、いくつかの周期
j~周期
j+2で標記された周期の周波数について示されている。各周期は、それぞれが周期指数kに関連付けられ、DP
kと標記されたKのデータ期間を含む。
図2Bの例では、各周期は、k = 1及びk = 1のDP
kと標記された2つのデータ期間を含む。図示された周期のいずれは、それぞれが周期指数mに関連付けられ、SR
m~SR
m+2と標記されたM個の異なるサンプル領域の1つに対応する。従って、図示の例では、各周期で生成されたLIDAデータは、他の構成が可能であるが、異なるサンプル領域に対するものである。図示されている再配置期間がないため、該LIDARシステムは、連続走査あり、または走査なしで動作されている。
【0050】
図2Bの例では、LIDAR出力信号は、それぞれλ
iと標記されたチャネルを運ぶ。ここで、iは0から始まる整数のチャネル指数である。各チャネルの電界は、
図2Bに示されている周波数を有する正弦波の関数である。LIDAR出力信号λ
0及びλ
1は、それぞれ、時間とともに変化する周波数を有する正弦波の関数である電界を有する。同じデータ期間中に、該λ
0及びλ
1の周波数変化は逆方向であるが、その速度は同一である。その結果、
図2Bは、周波数が増加する少なくとも1つのLIDAR出力信号及び周波数が減少する少なくとも1つのLIDAR出力信号によって同時に照射されるサンプル領域を示している。ここで、前記周波数の変化速度が同一である。
【0051】
一例では、
図2Bに示されている各チャネルのLIDAR出力信号の電界は、次の方程式で表される周波数を有する正弦波の関数であり得る:(式1) f=f
i+0.5×α
i×DP×[(-1)
j+1]+(-1)
(j-1){t-[(j-1)(DP)}α
i、及び(式2) f=f
i+0.5×α
i×DP×[(-1)
(j+1)+1]-(-1)
(j-1){t-[(j-1)](DP)}α
i。ここで、α
iはデータ期間中のチャネルiの周波数の変化速度を表し、f
iは1周期中のチャネルiの最低周波数(基本周波数)を表す。変数tは時間を表し、新しい各周期の開始時及び/または各DP
kの開始時に、tは0である。
図2Bは、α
0=α
1の一例を示している。いくつかの例では、f
iの値は、
図2Bに示すように、様々なLIDAR出力信号の周波数に重複がないように選択される。一例では、LIDAR出力信号の電界は、数式:N×cos(2π×i×t+E×t
2)で表される。ここで、N及びEは定数であり、Eはゼロであってもよく、またはゼロではなくてもよい(N≠0)。いくつかの例では、fは式1または式2によって提供される周波数である。
【0052】
図2Bにおいて、λ
0と標記されたチャネルは、式1で表される周波数を有する正弦波の関数である電界を有し、λ
1と標記されたチャネルは、式2で表される周波数を有する正弦波の関数である電界を有する。
図2Bは、式1及び式2のいずれかに従った周波数を有する1つのチャネルを示しているが、前記LIDARシステムは、式1及び式2からなる群から選択される式によって表される周波数を有する正弦波の関数である電界を有する1つ以上のLIDAR出力信号を生成することができる。さらにまたは代替的に、前記LIDARシステムによって生成された1つ以上のLIDAR出力信号は、式1及び式2からなる群から選択される式によって表される周波数を有する正弦波の関数である電界を有する任意のLIDAR出力信号を排除することができる。従って、前記LIDARシステムによって生成された1つ以上のLIDAR出力信号は、式1及び式2からなる群から選択された式によって表される周波数を有する正弦波の関数である電界を有するLIDAR出力信号のみであり得る。
【0053】
LIDARシステムの一例は、
図2Aに従って構成された光源を含み、該光源は、2つのLIDAR出力信号を生成するように構成される。前記LIDAR出力信号の一つは、
図2Bのチャネルλ
0に従っている周波数対時間のチャネルを運び、前記LIDAR出力信号のもう一つは、
図2Bのチャネルλ
1に従っている周波数対時間のチャネルを運ぶ。前記LIDARシステムに含まれる処理要素(34)の数は、それぞれが異なるチャネルを運ぶLIDAR出力信号の数と一致することができる。従って、該LIDARシステムは、
図1Aに従って2つの処理要素(34)で構築することができる。
図2Bは、2つの異なるチャネルに関する周波数対時間波形を示しているが、前記LIDARシステムは、それぞれが異なるチャネルを運ぶ2つ以上のLIDAR出力信号を出力するように構成することができる。
【0054】
図2Aに従って構築された光源(10)と共に使用されるレーザ光源(84)は、レーザ光源(84)によって出力されたチャネルの波長に対して効率的であるように選択することができる。例えば、量子ドットを含むか、またはそれから構成される利得媒体を有するレーザ光源は、波長1290~1310 nmの光を効率的に出力し、量子井戸を含むか、またはそれから構成される利得媒体を有するレーザ光源は、波長1480~1550 nmの光を効率的に出力する。従って、光源(10)は、異なるレーザ光源が異なる利得媒体を有する複数のレーザ光源を含むことができる。いくつかの例では、レーザシステムは、量子ドットを含むか、またはそれから構成される利得媒体を有するレーザ光源、及び量子井戸を含むか、またはそれから構成される利得媒体を有するレーザ光源からなる群から選択される1つ、2つ以上、または2つのレーザ光源を含む。一例では、レーザシステムは、1つ以上のレーザ光源を含む光源(10)を含み、該レーザ光源の少なくとも一部は、量子ドットを含むか、またはそれから構成される利得媒体を有し、1290~1310 nmの波長を有するチャネルを出力するように構築される。好適なレーザ構築物には、外部キャビティレーザ、分布帰還レーザ(DFB)、及びFabry-Perot(FP)レーザが含まれるが、これらに限定されない。外部キャビティレーザは、該実施形態では、それらの一般的に狭い線幅のために有利であり、検出された信号におけるノイズを低減することができる。
【0055】
図2Aは、各光源(84)、任意の変調器(14)、及びLIDARチップ上に集積され、及び/または配置された任意の増幅器(16)を示しているが、光源(84)、任意の変調器(14)、及び任意の増幅器(16)からなる群から選択される1つ以上の構成要素は、LIDARチップの外にあって、かつ該LIDARチップ及び/または他の構成要素、例えば光ファイバ等の導波路で接続してもよい。
【0056】
図3A~
図3Bは、
図1A及び
図1BのLIDARシステムに適用する処理要素(34)の一例を示している。前記処理ユニットは、参照導波路(40)に搬送された参照信号を第1参照導波路(110)及び第2参照導波路(108)に分割する第1分割器(102)を含む。該第1参照導波路(110)は、該参照信号の第1部分を光結合要素(111)に運ぶ。該第2参照導波路(108)は、該参照信号の第2部分を第2光結合要素(112)に運ぶ。
【0057】
前記処理ユニットは、比較導波路(32)に搬送された比較信号を第1比較導波路(104)及び第2比較導波路(106)に分割する第2分割器(100)を含む。該第1比較導波路(104)は、該比較信号の第1部分を光結合要素(111)に運ぶ。該第2比較導波路(108)は、該比較信号の第2部分を第2光結合要素(112)に運ぶ。
【0058】
第2光結合要素(112)は、前記比較信号の第2部分と前記参照信号の第2部分とを第2複合信号に結合する。前記比較信号の第2部分と前記参照信号の第2部分との間の周波数の差により、該第2複合信号は、該比較信号の第2部分と該参照信号の第2部分との間で拍動している。
【0059】
第2光結合要素(112)はまた、得られた第2複合信号を第1補助検出器導波路(114)及び第2補助検出器導波路(116)の上に分割する。該第1補助検出器導波路(114)は、前記第2複合信号の第1部分を、該第2複合信号の第1部分を第1補助電気信号に変換する第1補助光センサ(118)に運ぶ。前記第2補助検出器導波路(116)は、前記第2複合信号の第2部分を、該第2複合信号の第2部分を第2補助電気信号に変換する第2補助光センサ(120)に運ぶ。好適な光センサの例には、ゲルマニウムフォトダイオード(PD)及びアバランシェフォトダイオード(APD)が含まれる。
【0060】
いくつかの例では、第2光結合要素(112)は、第2複合信号を分割し、これにより、該第2複合信号の第1部分に含まれる比較信号の部分(即ち、該比較信号の第2部分の部分)が該第2複合信号の第2部分における比較信号の部分(即ち、該比較信号の第2部分の部分)に対して180°位相シフトされるが、該第2複合信号の第2部分における参照信号の部分(即ち、該参照信号の第2部分の部分)が該第2複合信号の第1部分における参照信号の部分(即ち、該参照信号の第2部分の部分)に対して位相シフトされない。あるいは、第2光結合要素(112)は、第2複合信号を分割し、これにより、該第2複合信号の第1部分における参照信号の部分(即ち、該参照信号の第2部分の部分)が該第2複合信号の第2部分における参照信号の部分(即ち、該参照信号の第2部分の部分)に対して180°位相シフトされるが、該第2複合信号の第1部分における比較信号の部分(即ち、該比較信号の2部分の部分)が該第2複合信号の第2部分における比較信号の部分(即ち、該比較信号の第2部分の部分)に対して位相シフトされない。好適な光センサの例には、ゲルマニウムフォトダイオード(PD)及びアバランシェフォトダイオード(APD)が含まれる。
【0061】
第1光結合要素(111)は、比較信号の第1部分と参照信号の第1部分とを第1複合信号に結合する。該比較信号の第1部分と該参照信号の第1部分との間の周波数の差により、該第1複合信号は、該比較信号の第1部分と該参照信号の第1部分との間で拍動している。
【0062】
光結合要素(111)はまた、第1複合信号を第1検出器導波路(121)及び第2検出器導波路(122)の上に分割する。該第1検出器導波路(121)は、該第1複合信号の第1部分を、第2複合信号の第1部分を第1電気信号に変換する第1光センサ(123)に運ぶ。該第2検出器導波路(122)は、第2複合信号の第2部分を、第2複合信号の第2部分を第2電気信号に変換する第2補助光センサ(124)に運ぶ。好適な光センサの例には、ゲルマニウムフォトダイオード(PD)及びアバランシェフォトダイオード(APD)が含まれる。
【0063】
いくつかの例では、光結合要素(111)は、第1複合信号を分割し、これにより、該複合信号の第1部分に含まれる比較信号の部分(即ち、該比較信号の第1部分の部分)が該複合信号の第2部分における比較信号の部分(即ち、該比較信号の第1部分の部分)に対して180°位相シフトされるが、該複合信号の第1部分における参照信号の部分(即ち、該参照信号の第1部分の部分)が該複合信号の第2部分における参照信号の部分(即ち、該参照信号の第1部分の部分)に対して位相シフトされない。あるいは、光結合要素(111)は、複合信号を分割し、これにより、該複合信号の第1部分における参照信号の部分(即ち、該参照信号の第1部分の部分)が該複合信号の第2部分における参照信号の部分(即ち、該参照信号の第1部分の部分)に対して180°位相シフトされるが、該複合信号の第1部分における比較信号の部分(即ち、該比較信号の第1部分の部分)が該複合信号の第2部分における比較信号の部分(即ち、該比較信号の第1部分の部分)に対して位相シフトされない。
【0064】
第2光結合要素(112)が第2複合信号の第1部分における比較信号の部分が該第2複合信号の第2部分における比較信号の部分に対して180°位相シフトされるように該第2複合信号を分割する場合、光結合要素(111)も該複合信号を分割し、これにより、該複合信号の第1部分における比較信号の部分が該複合信号の第2部分における比較信号の部分に対して180°位相シフトされる。第2光結合要素(112)が、第2複合信号の第1部分における参照信号の部分が該第2複合信号の第2部分における参照信号の部分に対して180°位相シフトされるように該第2複合信号を分割する場合、光結合要素(111)も該複合信号を分割し、これにより、該複合信号の第1部分における参照信号の部分が該複合信号の第2部分における参照信号の部分に対して180°位相シフトされる。
【0065】
第1参照導波路(110)及び第2参照導波路(108)は、参照信号の第1部分と参照信号の第2部分との間に位相シフトを提供するように構築される。例えば、第1参照導波路(110)及び第2参照導波路(108)は、参照信号の第1部分と参照信号の第2部分との間に90度の位相シフトを提供するように構築することができる。一例として、1つの参照信号部分は、同相成分であってもよく、他方は、直交成分であってもよい。従って、参照信号部分の1つは正弦関数とすることができ、他方の参照信号部分は余弦関数とすることができる。一例では、第1参照導波路(110)及び第2参照導波路(108)は、第1参照信号部分が余弦関数であり、第2参照信号部分が正弦関数であるように構築される。従って、第2複合信号における参照信号の部分は、第1複合信号における参照信号の部分に対して位相シフトされるが、該第1複合信号における比較信号の部分は、該第2複合信号における比較信号の部分に対して位相シフトされない。
【0066】
第1光センサ(123)及び第2光センサ(124)は平衡検出器として接続することができ、第1補助光センサ(118)及び第2補助光センサ(120)も平衡検出器としても接続することができる。例えば、
図3Bは、電子機器、第1光センサ(123)、第2光センサ(124)、第1補助光センサ(118)、及び第2補助光センサ(120)間の関係の概略を提供する。フォトダイオード用のシンボルは、第1光センサ(123)、第2光センサ(124)、第1補助光センサ(118)、及び第2補助光センサ(120)を表すために使用されるが、これらのセンサの1つ以上は、他の構造を有することができる。いくつかの例では、
図3Bの概略図に示された全ての要素がLIDARチップ上に含まれる。いくつかの例では、
図3Bの概略図に示された要素は、LIDARチップと、LIDARチップから離れて配置された電子機器との間に分配される。
【0067】
電子機器は、第1光センサ(123)と第2光センサ(124)とを接続し、第1平衡検出器(125)とし、また、第1補助光センサ(118)と第2補助光センサ(120) とを接続し、第2平衡検出器(126)とする。具体的に、第1光センサ(123)と第2光センサ(124)とは直列に接続される。また、第1補助光センサ(118)と第2補助光センサ(120)とは直列に接続される。第1平衡検出器における直列接続は、第1平衡検出器からの出力を第1データ信号として運ぶ第1データ線(128)と通信する。第2平衡検出器における直列接続は、第2平衡検出器からの出力を第2データ信号として運ぶ第2データ線(132)と通信する。第1データ信号は、第1複合信号の電気的表現であり、第2データ信号は、第2複合信号の電気的表現である。従って、第1データ信号は、第1波形及び第2波形からの寄与を含み、第2データ信号は、第1波形と第2波形との複合体である。第1データ信号における第1波形の部分は、第1データ信号における第1波形の部分に対して位相シフトされるが、該第1データ信号における第2波形の部分は、第1データ信号における第2波形の部分に対して同相である。例えば、第2データ信号は、第1データ信号に含まれる参照信号の異なる部分に対して位相シフトされた参照信号の一部を含む。また、第2データ信号は、第1データ信号に含まれる比較信号の異なる部分と同相である比較信号の一部を含む。該比較信号と参照信号との間の拍動、即ち、第1複合信号及び第2複合信号における拍動の結果として、第1データ信号及び第2データ信号は拍動している。
【0068】
電子機器(62)は、第1データ信号及び第2データ信号について数学的に変換するように構成された変換機構(138)を含む。例えば、該数学的変換は、第1データ信号及び第2データ信号をインプットとする複合フーリエ変換であってもよい。第1データ信号は同相成分であり、第2データ信号は直交成分であるため、該第1データ信号及び第2データ信号は共に複合データ信号として機能し、そこで、該第1データ信号がインプットの実数成分であり、該第2データ信号がインプットの虚数成分である。
【0069】
変換機構(138)は、第1データ線(128)から第1データ信号を受信する第1アナログ-デジタル変換器(ADC)(164)を含む。該第1アナログ-デジタル変換器(ADC)(164)は、第1データ信号をアナログ形式からデジタル形式に変換して、第1デジタルデータ信号を出力する。変換機構(138)は、第2データ線(132)から第2データ信号を受信する第2アナログ-デジタル変換器(ADC)(166)を含む。該第2アナログ-デジタル変換器(ADC)(166)は、第2データ信号をアナログ形式からデジタル形式に変換して、第2デジタルデータ信号を出力する。第1デジタルデータ信号は、第1データ信号のデジタル表現であり、第2デジタルデータ信号は、第2データ信号のデジタル表現である。従って、第1デジタルデータ信号及び第2デジタルデータ信号は共に複合信号として機能し、そこで、第1デジタルデータ信号は複合信号の実数成分として機能し、第2デジタルデータ信号は複合データ信号の虚数成分として機能する。
【0070】
変換機構(138)は、前記複合データ信号を受信する変換要素(168)を含む。例えば、該変換要素(168)は、第1アナログ-デジタル変換器(ADC)(164)から第1デジタルデータ信号をインプットとして受信し、また、第1アナログ-デジタル変換器(ADC)(166)から第2デジタルデータ信号もインプットとして受信する。変換要素(168)は、時間領域から周波数領域に変換するように複合信号について数学的に変換するように構成することができる。該数学的変換は、複合高速フーリエ変換(FFT)のような複合変換であってもよい。複合高速フーリエ変換(FFT)のような複合変換は、反射物体とLIDARチップとの間の視線速度によるLIDAR出力信号に対するLIDAR入力信号の周波数シフトに明確な解答を提供する。変換要素(168)は、ファームウェア、ハードウェア、ソフトウェア、またはそれらの組み合わせを用いて、帰属される機能を実行することができる。
【0071】
図3C中の実線は、複合フーリエ変換がインプットを時間領域から周波数領域へ変換するときの変換機構のアウトプットの一例を示している。該実線は、1つの単一周波数ピークを示す。LIDAR出力信号に対するLIDAR入力信号の周波数シフトが、反射物体とLIDARチップとの間の視線速度及び/または距離によって引き起こされるので、該ピークに関連する周波数は、電子機器に用いられる。LIDAR出力信号が
図2Bのλ
2に示されるように時間と共に変化しない周波数を有する場合、LIDAR出力信号に対するLIDAR入力信号の周波数シフトは、反射物体とLIDARチップとの間の距離ではなく、反射物体とLIDARチップとの間の視線速度に起因する。電子機器は、さらに処理するために、変換要素(168)から出力される周波数を用いて、LIDARデータ(反射物体とLIDARチップまたはLIDARシステムとの間の距離及び/または視線速度)を生成する。
【0072】
図3Cはまた、破線で示されたもう1つのピークも含む。従来のLIDAR入力信号の周波数を分解する方法は、上述した複合フーリエ変換技術ではなく、実のフーリエ変換を用いた。これらの従来の方法は、破線及び実線で示されるピークの両方を出力する。従って、従来の方法は、物体がサンプル領域から除去された場合に関連付けられた周波数のそれぞれが存在しないという点で、両方ともサンプル領域内の単一の物体に関連付けられた複数の異なる周波数を出力する。上記のように、LIDAR応用を使用する場合、正しいピークを識別することは困難になることがある。上記の周波数を分解する技術は、単一周波数の解答を生成するので、本発明者らは、周波数分解における多義性の問題を解決した。
【0073】
電子機器は、
図3C中の実線で表される単一周波数を用いてLIDARデータを生成する。例えば、次の式は、DP
1と標記されたデータ期間中に
図2BのLIDAR出力信号λ
0と共に発生するように、LIDAR出力の周波数がデータ期間中に増加するデータ期間中に適用される:+f
ub = -f
d + ατ
0 。ここで、f
ubは変換要素によって与えられる周波数であり、f
dはドップラーシフト(f
d = 2νf
c/c)を表し、ここで、f
cはデータ期間の開始時(即ち、t=0)におけるLIDAR出力信号の周波数であり、νは反射物体とLIDARチップとの間の視線速度であり、ここで、反射物体からチップに向かう方向が正方向であると仮定され、cは光の速度であり、αは期間中に出発LIDAR信号の周波数が増加または減少する速度を表し、τ
0は、静止した反射物体の往復遅延(LIDARチップから出るLIDAR出力信号と該LIDARチップに戻る関連のLIDAR入力信号との間の時間)である。次の式は、DP
2と標記されたデータ期間中に
図2BのLIDAR出力信号λ
1と共に発生するように、電子機器がデータ期間中にLIDAR出力信号の周波数を低下させるデータ期間中に適用される:-f
db = -f
d - ατ
0 。ここで、f
dbは変換機構によって与えられる周波数である。これらの2つの式において、f
d及びτ
0は未知数である。これら2つの式は、2つの未知数f
d及びτ
0について解かれる。解答に置換されたf
db及びf
ubの値は、同じチャネルから、従って同じ処理ユニット(
図1A及び
図1Bでは(34)で示されている)から来るが、同じ周期において異なるデータ期間中に発生する。周期は視野内のサンプル領域と関連するので、該解答は、視野内のサンプル領域についてのf
d及びτ
0の値を生成する。次いで、該サンプル領域に関する視線速度は、ドップラーシフト(ν = c×f
d/(2f
c))から測定でき、該サンプル領域に関する分離距離は、c×τ
0/2から測定できる。その結果、サンプル領域に関するLIDARデータは、該サンプル領域を照射する単一のLIDAR出力信号(チャネル)に関して測定される。
【0074】
上記のように、前記LIDARシステムは、それぞれが異なるチャネルを運ぶ2つ以上のLIDAR出力信号を出力することができる。例えば、前記LIDARシステムは、
図2Bに従って、周波数対時間波形を有する3つのLIDAR出力信号を出力することができる。該LIDAR出力信号は、視野内の同じサンプル領域に同時に誘導されることができる。また、該LIDAR出力信号は、各LIDAR出力信号が周波数内の各サンプル領域に同時に誘導されるように、一連のサンプル領域にわたって順次に走査されることができる。いくつかの例では、前記周波数は、視野内の全てのサンプル領域を含む。
【0075】
前記LIDARシステムは、サンプル領域を同時に照射する各チャネルについてLIDARデータの結果を生成できるため、該LIDARシステムは、各サンプル領域に関する複数のLIDARデータの結果を生成することができる。異なるチャネルの波長は、視野内に存在し得る特定の材料に効果的であるように選択することができる。上記のように、1290~1310 nm範囲の波長を有するチャネルは、皮膚に使用するのに効果的である。しかし、他の波長は、反射率の増加による多くの金属に対してより効果的である。例えば、1540~1560 nm範囲の波長を有するチャネルは、多くの金属に対してより高い反射率を有する。一例として、鈍いアルミニウム及び亜鉛のような金属の反射率は、1290~1310 nm範囲の波長より1540~1560 nm範囲の波長に対して約22%高い。対照的に、1290~1310 nm範囲の波長に対する皮膚の反射率は、1540~1560 nm範囲の波長のそれの3倍以上の反射率を有する。その結果、少なくとも1つのLIDAR出力信号が1540~1560 nm範囲の波長を有し、少なくとも1つのLIDAR出力信号が1290~1310 nm範囲の波長を有するようにLIDAR出力信号を生成するLIDARシステムが、金属物体及び皮膚の両方に効果的である。選択される波長は、LIDARシステムの適用に特異的であり得る。例えば、皮膚及び金属は、車両の経路内に存在し得る材料であるので、1290~1310 nm及び1540~1560 nmの波長範囲は、自動運転車両での使用に適している。
【0076】
波長範囲1540~1560 nmのチャネルを運ぶLIDAR出力信号は、波長範囲1290~1310 nmのチャネルを運ぶLIDAR出力信号より他の利点を有している。例えば、波長範囲1540~1560 nmの光のための増幅器は、波長範囲1290~1310 nmの光のための増幅器よりも容易に利用可能である。その結果、波長範囲1540~1560 nmを運ぶLIDAR出力信号は、波長範囲1290~1310 nmのLIDAR出力信号よりも高い強度を有することができる。また、1540~1560 nm範囲の波長は、1290~1310 nm範囲の波長よりも高い大気透過率を有することができる。増強されたパワーレベル及び大気透過率は、ある材料の低い反射率を補償することができる。
【0077】
また、1290~1310 nm範囲の波長もまた、ポリエステル及び湿潤木材(例えば、オーク材、雪、針葉樹、落葉木、及び草)を含む湿潤及び乾燥した織物に関するLIDARデータの生成における使用に有効である。さらに、1540~1560 nm及び1290~1310 nm範囲の波長は、オーク材等の乾燥した木材、湿潤及び乾燥したコンクリート、アスファルト、土壌、PVC等のプラスチック、及び雲に関するLIDARデータの生成に有効である。その結果、LIDARシステムが、少なくとも1つのLIDAR出力信号が1540~1560 nm範囲の波長を有し、少なくとも1つのLIDAR出力信号が1290~1310 nm範囲の波長を有するように、LIDAR出力信号を生成する場合、該LIDARシステムは、広範囲の材料に対して有効であり、従って、広範囲の用途に適している。
【0078】
いくつかの例では、LIDARシステムを生成及び/または動作させる方法は、LIDARシステムからのLIDAR出力信号を反射してLIDARシステムへの戻し得る1つ以上の物体に含まれ得る材料を識別することを含む。該方法はまた、LIDAR出力信号の少なくとも一部を、他のLIDAR出力信号のいずれよりも、識別された材料の1つに対してより高い反射率を有する波長を有するように構成することを含む。いくつかの例では、LIDAR出力信号の一部に含まれるLIDAR出力信号の数は、LIDARシステムから出力されるLIDAR出力信号の総数に等しい。
【0079】
特定の材料に有効な波長範囲の他の例には、樹木に有効な850~905 nm範囲の波長、及び雨や霧を含む視界不良時の大気を透過することに有効な2000~2500 nm範囲の波長が含まれるが、これらに限定されない。従って、前記LIDARシステムは、それぞれ1290~1310 nm、1540~1560 nm、850~905 nm、及び1290~1310 nmからなる群に含まれる範囲のうちの異なる1つの範囲内の波長を有する少なくとも1つ、2つ、3つ、または4つのLIDAR出力信号を生成することができる。
【0080】
波長選択については、特定の材料に有効な波長を選択することになるため、異なるチャネルの波長は、一般に、波長スペクトル上で周期的に間隔を置いているのではなく、波長スペクトル上で不規則に間隔を置いて配置される。さらにまたは代替的に、チャネルをペアとして考えることができ、各ペアのチャネルが、波長スペクトル上で互いに隣接して配置され、他のチャネルが、該ペアに含まれる2つのチャネルの間の波長を有しない。この構成では、波長スペクトル上で互いに隣接する2対以上のチャネルに単一のチャネルが含まれることができる。材料に基づく波長の選択は、チャネルペアにおけるチャネル間の間隔を増大させることができる。例えば、前記LIDARシステムは、少なくとも1つ、2つ、または3つのチャネルペアが10 nm、20 nm、または30 nm以上に離れた波長を有するように、LIDAR出力信号を生成することができる。
【0081】
いくつかの実施形態では、前記LIDARシステムを、異なる波長範囲にそれぞれ対応する複数のLIDAR出力信号(例えば、2つ以上のLIDAR出力信号)を、同じサンプル領域を走査するように誘導するように構成してもよい。次に、前記LIDARシステムは、ローカルに生成された参照信号と組み合わされて、上述の
図1A~3Cのように複数のLIDARデータ信号を生成できる異なる波長範囲にそれぞれ対応する複数の反射されたLIDAR入力信号を受信することができる。
【0082】
いくつかの例では、前記システムは、複数のLIDAR出力信号で同じサンプル領域を同時に走査することができる。該LIDARシステムを、複数のLIDARデータ信号を結合し、走査されたサンプル領域内の物体の距離及び/または速度に関連する結合されたデータを生成するように構成してもよい。これらの例では、システムソフトウェアは、得られたサンプル領域に関する情報の量を最大限にするために、結合されたLIDARデータの結果を処理することができる。結合されたデータは、物体に入射する各々の異なる波長範囲についての物体の反射率に依存し得る。いくつかの例では、異なる材料を含む物体は、異なるLIDAR出力信号に対応するLIDAR入力信号に関連した異なるシグナル対ノイズ比を生じ得る。
【0083】
例えば、1人のユーザ及び一台の車両を含むサンプル領域をLIDARで走査する場合、ユーザの皮膚に関連するサンプル領域に誘導されたときに、受信される1250~1300 nm範囲のLIDAR波長に対するLIDARリターン信号パワーのレベルは、他のLIDAR波長(例えば、1540~1560 nm)に対するものより高いことがある。一方、大きな金属本体を含む車両に関連するサンプル領域に誘導されたときに、その逆になることがある。このように、約1540~1560 nmのLIDAR波長は、1250~1300 nmのLIDAR波長より、車両の金属体に強く反射され得る。そして、該LIDARシステムは車両を走査するときに、約1540~1560 nmの波長に関連するより高いレベルのLIDAR戻り信号パワーを受信でき、その結果、信号パワーの高いLIDARデータが得られる。
【0084】
パワーレベルの高いLIDARリターン信号は、より高いシグナル対ノイズ比により、システム性能(例えば、正確性、精度、走査速度及び/または範囲)の改善をもたらすことがある。従って、異なる波長で生成されたLIDARデータの組み合わせに基づいて生成された、結合されたLIDARデータは、異なる材料からなる様々な物体を同時に正確に検出することができる。これは、いくつかの実施形態では、LIDARシステムがチャープ期間を減少させることによって走査速度を増加させることを可能にし得る。他の例では、LIDAR入力信号における改善されたシグナル対ノイズ比は、LIDARシステムが低いレーザパワーレベルで動作することを可能にし、そうでなければ検出されにくい材料について、より高いレーザパワーレベルで動作する必要性を回避することができる。これにより、広範囲の異なる材料を検出する確率が増加し、かつ/または偽陽性の確率が低減する。
【0085】
上記のように、前記LIDARシステムは、1つ以上のLIDAR出力信号をサンプル領域に誘導するときに、サンプル領域に関する1つ以上のLIDARデータの結果を生成することができる。これらの例では、電子機器は、得られたサンプル領域に関する情報の量を最大限にするために、結合されたLIDARデータの結果を処理することができる。一例では、サンプル領域の反射特性が単一チャネルを除く全てのチャネルで非常に低いため、該LIDARデータの結果は、単一のチャネルを除いて、全てのチャネルについて測定不可能であり得る。その場合、測定可能な反射率を有するチャネルからのLIDARデータは、サンプル領域に関する最終的なLIDARデータとして扱われる。
【0086】
別の例では、各チャネルについて測定された反射率は、サンプル領域内の材料を示すパターンで変化し得る。例えば、1つ以上の異なるLIDAR入力信号の強度の比は、どの材料がサンプル領域内にあるかを示すことができる。識別された材料に好ましいLIDAR出力信号から生成されたLIDARデータは、サンプル領域に関する最終的なLIDARデータとして処理することができる。別の例では、サンプル領域は、背景材料に囲まれた目的物体(例えば、上空から見た雪中の北極熊)からなることができる。この場合、北極熊とその周囲の雪を含むサンプル領域の反射率を、熊と周囲の反射率に大きな違いがあるチャネルを使用して比較すると有利な場合がある。これにより、熊とその周囲との間のコントラストを増加させることができる。例えば、1500 nmにおいて、熊の毛皮の反射率は20~60%範囲であるが、雪の反射率は5%未満である。そのため、コントラストが増加され、物体認識に助かる。
【0087】
さらにまたは代替的に、複数の異なるLIDARデータの結果を組み合わせる他の方法も使用できる。例えば、サンプル領域に関する複数の異なるLIDARデータの結果を平均化して、最終的なLIDARデータの結果を見つけることができ、その中央値を最終的なLIDARデータの結果として使用することができる。また、LIDARデータの結果の加重平均を最終的なLIDARデータの結果として使用することができる。一例では、前記加重平均は、異なるLIDAR入力信号の強度によって重み付けされる。
【0088】
上記のように、複合データ信号は、同相成分と、参照信号の相外部分を含む直交成分とを有するものとして説明されているが、明確なLIDARデータ解答は、他の複合データ信号を生成することによって達成され得る。例えば、明確なLIDARデータ解答は、同相成分及び直交成分が比較信号の相外部分を含む複合データ信号を使用して達成され得る。例えば、第1比較導波路(104)及び第2比較導波路(106)は、比較信号の第1部分と該比較信号の第2部分との間に90度の位相シフトを提供するように構築することができ、また、第1参照導波路(110)及び第2参照導波路は、参照信号の第1部分と該参照信号の第2部分とが複合信号内で同相となるように構築される。従って、第1複合信号における比較信号の部分は、第2複合信号における比較信号の部分に対して位相シフトされるが、該第1複合信号における参照信号の部分は、該第2複合信号における参照信号の部分に対して位相シフトされない。
【0089】
図1A~3CのLIDARシステムで使用するための好適な出力要素(26)は、導波路ファセットであってもよい。例えば、
図4Aは、ファセット(300)で終端するLIDAR信号導波路(24)を含むLIDARチップの一部の上面図である。該ファセット(300)を通って、LIDAR出力信号はLIDARチップを出射し、かつ/またはLIDAR入力信号はLIDARチップに入射する。
【0090】
いくつかの例では、LIDAR出力信号を視野内の複数の異なるサンプル領域に走査することが望ましく、それにより、異なるサンプル領域に関するLIDARデータは生成され得る。LIDAR信号導波路(24)がファセット(300)で終端するとき、様々な走査機構を用いてLIDAR出力信号を走査することができる。例えば、LIDAR出力信号は、1つ以上の反射装置及び/または1つ以上の視準装置によって受信され得る。前記1つ以上の反射装置は、LIDAR出力信号の走査を提供するため、該LIDAR出力信号を再誘導かつ/または操縦するように構成することができる。好適な反射装置には、機械的に駆動されるミラー及びマイクロ電気機械システム(MEMS)ミラーのようなミラーが含まれるが、これらに限定されない。前記1つ以上の視準装置は、LIDAR出力信号の視準を提供し、これにより、LIDAR信号導波路(24)に入射するLIDAR入力信号の部分を増加させることができる。好適な視準装置には、個別レンズ及び複合レンズが含まれるが、これらに限定されない。
【0091】
図4Bは、反射装置(302)及び視準装置(304)と共に使用される
図4Aに示されたLIDARチップの一部を示している。例えば、レンズは、LIDAR出力信号を受信し、該LIDAR出力信号の視準を提供する視準装置として機能する。ミラーは、視準されたLIDAR出力信号を受信し、視準されたLIDAR出力信号を所望の方向に反射する反射装置(302)として機能する。矢印Aで示されているように、電子機器は、視準されたLIDAR出力信号を操縦し、かつ/または視準されたLIDAR出力信号を走査するようにミラーを移動させることができる。ミラーは、2次元的にまたは3次元的に移動することができる。好適なミラーには、機械的に駆動されるミラー及びマイクロ電気機械システム(MEMS)ミラーが含まれるが、これらに限定されない。
【0092】
図4Cは、反射装置(302)及び視準装置(304)と共に使用される
図4Aに示されたLIDARチップの一部分を示している。例えば、ミラーは、LIDAR出力信号を受信し、該LIDAR出力信号を所望の方向に反射する反射装置(302)として機能する。矢印Aで示されているように、電子機器は、LIDAR出力信号を操縦し、かつ/またはLIDAR出力信号を走査するようにミラーを移動させることができる。レンズは、ミラーからLIDAR出力信号を受信し、該LIDAR出力信号の視準を提供する視準装置(304)として機能する。該レンズは、ミラーの動きと共に移動するように構成することができ、それにより、該レンズは、ミラーの異なる位置でLIDAR出力信号を受信し続ける。あるいは、ミラーの移動を、レンズがミラーの異なる位置でLIDAR出力信号を受信し続けるように十分に制限することができる。ミラーは、2次元的にまたは3次元的に移動することができる。好適なミラーには、機械的に駆動されるミラー及びマイクロ電気機械システム(MEMS)ミラーが含まれるが、これらに限定されない。
【0093】
図5は、任意選択でビーム操縦能力を含むことができる好適な出力要素(26)の一例を示している。該出力要素(26)は、LIDAR信号導波路(24)から出射光信号を受信する分割器(384)を含む。該分割器(384)は、該出射光信号を、操縦導波路(386)上にそれぞれ搬送された複数の出力信号に分割する。各操縦導波路は、ファセット(388)で終端する。該ファセットは、ファセット(388)を介してLIDARチップから出射する出力信号が結合してLIDAR出力信号を形成するように配置される。
【0094】
分割器(384)及び操縦導波路(386)は、隣接する操縦導波路のファセットにおける出力信号間に位相差がないように構築することができる。例えば、分割器は、該分割器から出射する際に、各々の出力信号が同相であり、各々の操縦導波路が同じ長さを有するように構築することができる。出力信号間における位相差の欠如により、出発LIDAR信号内の各チャネルは、同じ方向(θ)において出力要素(26)から離れるように移動する。操縦導波路(386)の好適な数(M)は、10または500より大きく、かつ/または1000または2000未満を含むが、これらに限定されない。好適な分割器には、スター結合器、カスケードされたY接合、及びカスケードされた1X2 MMI結合器が含まれるが、これらに限定されない。
【0095】
いくつかの例では、位相チューナ(390)は、任意選択で、操縦導波路の少なくとも一部に沿って配置される。位相チューナが最初及び最後の操縦導波路に沿って配置されるように示されているが、これらの位相チューナの一方または両方は任意である。例えば、出力要素(26)は、操縦導波路k=1の上に位相チューナを含む必要はない。
【0096】
電子機器は、隣接する操縦導波路(386)のファセットにおける出力信号間の位相差を生成するように位相チューナ(390)を動作させるように構成することができる。電子機器は、位相差が操縦導波路にわたって直線的に増加するように、一定であるように位相チューナ(390)を動作させることができる。例えば、電子機器は、操縦導波路数kのチューナ誘起位相が(k-1)βであるように(ここで、kは1~Mの整数であり、操縦導波路が
図5に示されるように順次付番されているときの操縦導波路に関連する数を表し、βは隣接する操縦導波路の間のチューナ誘起位相差である)、位相チューナを動作させることができる。従って、操縦導波路数kの位相は、f
0+(k-1)f+(k-1)βである。
図5は、例示を簡略化するために4本のみの操縦導波路を有するチップを示しているが、該チップは、より多くの操縦導波路を含むことができる。例えば、前記チップは、4本、100本、または1000本より多く、かつ/または10000本未満の操縦導波路を含むことができる。
【0097】
電子機器は、位相差βの値を調整するように位相チューナ(390)を動作させるように構成することができる。位相差βの値を調整することは、LIDAR出力信号がチップから離れる方向(θ)を変化させる。従って、電子機器は、位相差αを変化させることでLIDAR出力信号を走査することができる。LIDAR出力信号を走査できる角度の範囲は、ΦRであり、いくつかの例では、Φvから-Φvまで拡大し、β=0のときに、LIDAR出力信号の方向で測定される場合は、Φ=0°である。
【0098】
位相差の産生以外に、またはその代わりに、位相チューナ(390)は、LIDAR出力信号を視準または集束するように操作することができる。例えば、位相チューナ(390)は、連続する導波路間に一定の位相差βが誘導されるように操作できる。これにより、導波路kの誘導位相は、φk = (k-1)β(ここで、βは視準ビームの場合には定数である)になる。集束ビームの場合、好適な非線形の位相依存性を誘導することができる。
【0099】
図5に従って構築された出力要素(26)の構築及び動作に関する他の詳細は、2018年6月5日に出願された米国仮特許出願シリアル番号62/680,787号に記載され、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0100】
異なるLIDAR出力信号が出力要素(26)から離れるにつれて、それらが出発LIDAR信号にある程度に拡散することがある。LIDAR出力信号は同じサンプル領域に誘導されるため、各LIDAR出力信号のスポットサイズは、LIDARシステムがLIDARデータを提供するように構成されている最大距離で、重複閾値百分率以上に、他のLIDAR出力信号の少なくとも1つと重複する程の拡散となりえる。好適な重複閾値は、スポットサイズの5%、25%、または50%より大きい。上記のように、最大距離は、LIDARシステムが適用される応用の仕様において共通に設定される。出力要素(26)から離れるにつれて、出発LIDAR信号における異なるLIDAR出力信号のある程度の拡散が存在し得る状況の例は、操縦導波路(386)の間の経路長の差がゼロでない場合である。
【0101】
本発明の他の実施形態、組合せ及び改変は、これらの教示を考慮して当業者に容易に行われるであろう。従って、本発明は、上記の明細書及び付随の図面に関連して見た場合に、全てのこのような実施形態及び改変を含む以下の請求の範囲のみに限定されるべきである。
【国際調査報告】