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特表2022-550273強化された熱伝達及び安全性を有する原子炉炉心構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-01
(54)【発明の名称】強化された熱伝達及び安全性を有する原子炉炉心構造
(51)【国際特許分類】
   G21C 5/00 20060101AFI20221124BHJP
   G21C 5/16 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
G21C5/00 A
G21C5/00 C
G21C5/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022516343
(86)(22)【出願日】2020-10-04
(85)【翻訳文提出日】2022-05-12
(86)【国際出願番号】 US2020054190
(87)【国際公開番号】W WO2021067903
(87)【国際公開日】2021-04-08
(31)【優先権主張番号】62/910,561
(32)【優先日】2019-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520271676
【氏名又は名称】ウルトラ セーフ ニュークリア コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】ULTRA SAFE NUCLEAR CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンネリ, パオロ, フランチェスコ
(72)【発明者】
【氏名】イーズ, マイケル, ジョン
(72)【発明者】
【氏名】スーザ, ケルシー
(72)【発明者】
【氏名】ディーソン, ウェスリー
(57)【要約】
原子炉炉心のための高度な構造は、(1)核燃料タイル(S-Block)、及び(2)安全性、信頼性、熱伝達、効率、及び小型化を向上させるための低温固相減速材(U-Mod)を備えた高温熱絶縁体及びチューブライナなどの、いくつかの技術を含む。S-Blockでは、核燃料タイルは、核燃料タイル間及び燃料冷却剤への熱伝達を最適化し、燃料冷却剤を核燃料タイルと直接接触させるために、インターロッキング幾何学形状パターンで設計された燃料形状を含む。核燃料タイルは、不連続な核燃料横方向ファセットを有するように成形することができ、燃料冷却剤と核燃料タイルとの間の直接接触を実現するために燃料冷却剤通路を内部に形成することができる。U-Modでは、水素拡散性が低いチューブライナは、高温でも低温固相減速材中に水素を保持し、高温熱絶縁体は、固相減速材を核燃料タイルから絶縁する。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁体要素の絶縁体要素アレイと、減速材要素の減速材要素アレイとを含む原子炉炉心であって、それぞれの減速材要素が、それぞれの絶縁体要素の内側に配置された低温固相減速材から形成される、原子炉炉心と、
核燃料タイルの核燃料タイルアレイであって、それぞれの核燃料タイルが、前記それぞれの絶縁体要素又は別のそれぞれの核燃料タイルに隣接する複数の核燃料横方向ファセットを含む、核燃料タイルの核燃料タイルアレイと
を備え、
前記それぞれの減速材要素が、前記それぞれの絶縁体要素によって前記核燃料タイルの核燃料タイルアレイから絶縁されている、原子炉システム。
【請求項2】
前記原子炉炉心が、水素バリア材料で形成された複数のチューブライナをさらに含み、
前記それぞれの減速材要素が、水素保持のためにそれぞれのチューブライナの内側に配置されている、請求項1に記載の原子炉システム。
【請求項3】
当該原子炉システムは、複数の減速材冷却剤通路をさらに備え、
前記それぞれのチューブライナが、それぞれの減速材冷却剤通路によって囲まれ、
前記それぞれの減速材冷却剤通路が、前記それぞれの絶縁体要素によって囲まれている、請求項2に記載の原子炉システム。
【請求項4】
前記それぞれのチューブライナが、前記それぞれの減速材要素と前記それぞれの減速材冷却剤通路との間にあり、
前記それぞれの減速材冷却剤通路が、前記それぞれのチューブライナと前記それぞれの絶縁体要素との間にある、請求項3に記載の原子炉システム。
【請求項5】
前記それぞれの絶縁体要素が、前記それぞれの減速材冷却剤通路と前記それぞれの核燃料タイルとの間にある、請求項3に記載の原子炉システム。
【請求項6】
前記それぞれのチューブライナが、前記それぞれの減速材要素を被覆するクラッディングとして形成されている、請求項2に記載の原子炉システム。
【請求項7】
前記クラッディングが、密閉容器を含み、
前記それぞれの減速材要素を形成する前記低温固相減速材材料が、前記密閉容器の内側に配置されている、請求項6に記載の原子炉システム。
【請求項8】
前記それぞれのチューブライナが、前記それぞれの減速材要素上にコーティングとして形成され、
前記それぞれの減速材要素を形成する前記低温固相減速材材料が、前記コーティングの内側に配置されている、請求項6に記載の原子炉システム。
【請求項9】
前記水素バリア材料が、Al、SiC、ZrC、MgO、Mo、W、Cu、Ni、Cr、又はそれらの組み合わせを含む、請求項2に記載の原子炉システム。
【請求項10】
前記絶縁体要素がそれぞれ、高温熱絶縁体で形成され、
前記高温熱絶縁体が、低密度SiC、安定化酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、低密度ZrC、低密度炭素、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の原子炉システム。
【請求項11】
前記低温固相減速材が、MgH、YH、ZrH、CaH、ZrO、CaOx、BeO、BeC、Be、濃縮炭化ホウ素、11C、CeH、LiH、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の原子炉システム。
【請求項12】
前記それぞれの絶縁体要素が、中に長手方向に形成された減速材開口部を含む角柱又は円筒として成形され、
前記それぞれの減速材要素が、前記減速材開口部の内側に配置されている、請求項1に記載の原子炉システム。
【請求項13】
前記それぞれの絶縁体要素が、前記角柱として前記それぞれの絶縁体要素を集合的に形成する複数の絶縁体要素横方向ファセットを含む、請求項12に記載の原子炉システム。
【請求項14】
前記それぞれの絶縁体要素が、前記角柱として成形され、
前記角柱が、複数の絶縁体要素境界壁を含み、
前記絶縁体要素境界壁がそれぞれ、前記絶縁体要素横方向ファセットのサブセットを含む、請求項13に記載の原子炉システム。
【請求項15】
前記絶縁体要素横方向ファセットが、平面、非球面、球面、又は自由曲面である、請求項14に記載の原子炉システム。
【請求項16】
前記絶縁体要素境界壁が、非球面又は球面を有する平面の交互パターンを含む、請求項15に記載の原子炉システム。
【請求項17】
前記角柱が、三角柱であり、
前記それぞれの絶縁体要素が、3つの絶縁体要素境界壁を含む、請求項14に記載の原子炉システム。
【請求項18】
前記核燃料タイルがそれぞれ、高温マトリックスの内側に埋め込まれたコーティングされた燃料粒子からなる燃料コンパクトから形成され、
前記高温マトリックスが、炭化ケイ素、炭化ジルコニウム、炭化チタン、炭化ニオブ、タングステン、モリブデン、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の原子炉システム。
【請求項19】
前記コーティングされた燃料粒子が、三構造等方性(TRISO)燃料粒子又は二構造等方性(BISO)燃料粒子を含む、請求項18に記載の原子炉システム。
【請求項20】
前記複数の核燃料横方向ファセットが不連続であり、前記それぞれの核燃料タイルの外周を形成している、請求項1に記載の原子炉システム。
【請求項21】
前記外周が、複数の平面、非球面、球面、又は自由曲面を含む、請求項20に記載の原子炉システム。
【請求項22】
前記核燃料横方向ファセットが、前記それぞれの絶縁体要素と他のそれぞれの核燃料タイルとの境界を互い違いにする、請求項1に記載の原子炉システム。
【請求項23】
前記核燃料横方向ファセットが、複数のタイル境界壁及び複数の絶縁体要素境界壁を含み、
それぞれのタイル境界壁が、それぞれの絶縁体要素境界壁と交互になって、外周の交互パターンを形成している、請求項1に記載の原子炉システム。
【請求項24】
前記それぞれのタイル境界壁が平面を含む、請求項23に記載の原子炉システム。
【請求項25】
前記それぞれのタイル境界壁が、対向する端部に2つの核燃料横方向ファセットを含み、その間に核燃料横方向ファセットが延在し、
対向する端部上の前記2つの核燃料横方向ファセットが、平面を含み、
間に延在する前記核燃料横方向ファセットが、非球面又は球面を含む、請求項23に記載の原子炉システム。
【請求項26】
前記それぞれのタイル境界壁が、他のそれぞれの核燃料タイルに隣接し、
前記それぞれの絶縁体要素境界壁が、前記それぞれの絶縁体要素に隣接している、請求項23に記載の原子炉システム。
【請求項27】
前記それぞれの絶縁体要素境界壁が、非球面又は球面を含む、請求項23に記載の原子炉システム。
【請求項28】
前記それぞれの絶縁体要素が、チューブ又はパイプとして成形され、
前記それぞれの絶縁体要素が、2つ以上の核燃料タイルの前記それぞれの絶縁境界壁をライニングしている、請求項27に記載の原子炉システム。
【請求項29】
前記それぞれの減速材要素が内側に配置された前記それぞれの絶縁体要素が、内部に形成されたそれぞれの減速材冷却剤通路を含む、請求項1に記載の原子炉システム。
【請求項30】
前記それぞれの減速材冷却剤通路が、前記それぞれの減速材要素と前記それぞれの絶縁体要素との間に位置している、原子炉システム29。
【請求項31】
前記それぞれの減速材冷却剤通路が、平坦なリング形状の開口部である、原子炉システム29。
【請求項32】
前記それぞれの減速材冷却剤通路が、冷却剤を、(i)前記冷却剤を加熱することと、(ii)前記それぞれの減速材要素を冷却することとの両方を介して流し、
前記それぞれの核燃料タイルが、前記冷却剤が前記減速材冷却剤通路を通って流れた後に前記それぞれの核燃料タイルによって前記冷却剤をその後加熱するために内部に形成された1つ又は複数の燃料冷却剤通路を含み、
前記冷却剤が気体又は液体である、原子炉システム29。
【請求項33】
前記それぞれの減速材冷却剤通路が、減速材冷却剤を、(i)前記減速材冷却剤を加熱することと、(ii)前記それぞれの減速材要素を冷却することと、の両方を介して流し、
前記それぞれの核燃料タイルが、前記それぞれの核燃料タイルとの直接接触を介して核燃料冷却剤を加熱するために前記核燃料冷却剤を流す、内部に形成された1つ又は複数の核燃料冷却剤通路を含む、請求項29に記載の原子炉システム。
【請求項34】
前記それぞれの減速材冷却剤通路を通って流れる前記減速材冷却剤が、前記減速材要素の減速材要素アレイ専用の減速材冷却剤ループ内にあり、前記核燃料冷却剤通路を含む燃料冷却剤ループから熱的に隔離され、分離されている、請求項33に記載の原子炉システム。
【請求項35】
前記減速材冷却剤ループが、前記減速材冷却剤を前記核燃料冷却剤から熱的に隔離して前記減速材要素から熱を能動的に除去し、前記原子炉炉心の動作中に前記減速材要素を前記燃料タイルの核燃料タイルアレイと比較してより低い温度に維持する、請求項34に記載の原子炉システム。
【請求項36】
前記減速材冷却剤が、前記核燃料冷却剤とは異なる、請求項34に記載の原子炉システム。
【請求項37】
前記減速材冷却剤が、核熱推進のための推進剤であるか、又は、
前記減速材冷却剤が、原子力電気推進又は核分裂面出力用の作動流体である、請求項34に記載の原子炉システム。
【請求項38】
前記減速材冷却剤が、複数の前記核燃料タイルと化学的に不適合である、請求項34に記載の原子炉システム。
【請求項39】
前記減速材冷却剤ループが、ヒートシンクを含み、
前記減速材冷却剤が、前記ヒートシンクに熱的に結合される、請求項34に記載の原子炉システム。
【請求項40】
当該原子炉システムは、ポンプ、圧縮機、送風機、又はそれらの組み合わせをさらに備え、
前記ポンプ、前記圧縮機、前記送風機、又は前記それらの組み合わせが、前記原子炉炉心の動作中に複数の前記複数の減速材要素を冷却するため、前記減速材冷却剤を前記ヒートシンクを通って流れるように流す、請求項39に記載の原子炉システム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
[0001]本出願は、2019年10月4日出願の「Nuclear System for Power Production in Space」と題する米国仮特許出願第62/910,561号の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002]本出願は、2020年10月4日出願の「Integrated In-Vessel Neutron Shield」と題する国際出願第PCT/US2020/XXXXXX号に関し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本出願はまた、2020年10月4日出願の「Automatic Shutdown Controller for Nuclear Reactor System with Control Drums」と題する、国際出願第PCT/US2020/XXXXXX号にも関し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0003】
[0003]本主題は、例えば、宇宙空間などの遠隔地域における発電及び推進力のための原子炉システム及び原子炉の例に関する。本主題はまた、核燃料タイル及び低温固相減速材を含む原子炉炉心構造も包含する。
【背景技術】
【0004】
[0004]核分裂原子炉には、熱型又は高速型の原子炉が含まれる。現在、運転中のほとんどすべての核分裂原子炉は熱型である。核分裂原子炉は、原子炉炉心内の核燃料と、核分裂が継続できるように高速中性子を減速させる減速材とを含む。典型的には、核燃料は、円筒形状の燃料コンパクト又はペレットで形成される。燃料コンパクトは、燃料ピン又はロッドに装填され、原子炉炉心内の燃料要素の多数のカラムの内部に覆われて、積み重ねられる。残念ながら、そのような核燃料幾何学的形状は、核燃料から冷却剤への熱伝達を最大化せず、原子炉炉心の幾何学的形状に制限を課すという点で制限的である。
【0005】
[0005]現在の核分裂原子炉の高温原子炉設計では、冷却経路及び/又は熱除去機構は、核燃料と減速材との間で共有される。これは、固体中性子減速材が核燃料と同じ高温環境に耐えることができなければならないことを意味する。この問題は、原子炉の現在の設計では、典型的には黒鉛(C)を中性子減速材として使用するか、又は中性子減速材の使用を完全に避けることによって回避される。
【0006】
[0006]黒鉛は、天然に存在する六角形構造に原子が配置された元素炭素の結晶形態である。黒鉛は、標準条件下で最も安定な炭素の形態である。黒鉛は、中性子吸収断面積は小さいが、中性子散乱断面積は比較的大きい。黒鉛の中性子散乱断面積(σ)は4.7バーンであり、黒鉛の中性子吸収断面積(σ)は0.0035バーンである。
【0007】
[0007]今日、多くのガス冷却システム(例えば、角柱状又はペブルベッド型)及び塩冷却システムは、非常に大きな黒鉛減速原子炉炉心装填を前提とする。黒鉛を単一の減速材料として処理する方法は継続的に改良がなされ、黒鉛のより純度が高くより良好な(より等方性の高い)形態の両方が与えられてきたが、黒鉛には厳しい減速材寿命限界が残っている。本質的に、放射線照射によって誘発される異方性結晶膨張の物理特性は、黒鉛減速材材料の全体的な寸法変化、微小亀裂、及び黒鉛減速材材料の完全性の喪失につながる。約200メガワットの電気(MWe)の典型的な高温ガス冷却炉(HTGR)は、約600トンの関連する黒鉛装填量を有する。新たに期待される溶融塩冷却システムは、同様に大きな黒鉛廃棄物流を有する。
【0008】
[0008]残念なことに、汚染された黒鉛は、現在までに処分された約250,000トンの黒鉛廃棄物によって明らかなように、これらの原子炉システムにとって深刻な廃棄物問題を引き起こす。汚染のレベルは、原子炉システム、核燃料、及び核燃料の質によるが、炭素14(14C)及びT汚染は不可避である。この核廃棄物問題は、高出力(高中性子影響)システムでの黒鉛減速材の寿命により、原子炉炉心の相当量を使用中に交換する必要があるという事実によって悪化する。したがって、原子炉炉心用の減速材の改善が必要とされている。
【0009】
[0009]従来、宇宙用途、例えば核熱推進(NTP)用の原子力システムの分野では、電力システムは「兵器級材料」又は「兵器級核燃料」を利用する。そのような兵器級核燃料は、20%を超えるウラン235又は同等の核分裂性材料組成物で濃縮された高濃縮ウランである。これは増殖リスクを誘発するだけでなく、個人所有の事業体がシステムを開発及び/又は運用するのを防ぐ。
【0010】
[0010]太陽光、風力、化石燃料、化学、及び地熱発電システムなどの非原子力システムは、原子力の代替選択肢であるが、それらの動作のために連続的な燃料供給ライン及び複雑で扱いにくい物理的装置、並びにそれらの寿命全体にわたる定期的な保守を必要とする。さらに、そのような非原子力システムは出力密度が低く、その結果、大型の重電力システムとなり、地球軌道への及び地球軌道を超える重搭載物並びに大型の物体の発射に関連する固有の困難のために、宇宙空間でのそれらの使用を妨げる。
【0011】
[0011]原子力システムは、非原子力システムよりも単位質量当たりの出力が高く、原子力システムの成功した実施態様は、将来の宇宙の探査及び定住を可能にすることができる。しかしながら、非兵器級核燃料を有する現在の原子炉炉心構造は、宇宙空間の商業的かつ自立的な定住に対する障害となっている。したがって、原子炉炉心用の核燃料の改善が必要とされている。
【発明の概要】
【0012】
[0012]本明細書に開示される様々な例は、宇宙又は陸上用途の両方のための原子炉システム用原子炉炉心技術に関する。原子炉システム100は、いくつかの有効な技術、(1)核燃料タイル104A~N(S-Block)、及び(2)高温熱絶縁体102A~N及び低温固相減速材103A~N(U-Mod)を有するチューブライナ106A~Nを実装する原子炉炉心101を含む。S-Block及びU-Modは、原子炉炉心101の安全性、事故耐性、信頼性、熱伝達、効率、及びコンパクト性を改善する。
【0013】
[0013]S-Blockでは、核燃料タイル104A~Nは、核燃料タイル104A~N間及び核燃料冷却剤170Bへの熱伝達を有益に最適化し、核燃料冷却剤170Bを核燃料タイル104A~Nと直接接触させるために、インターロッキング幾何学形状パターンで設計された燃料形状を含む。核燃料タイル104A~Nは、不連続な核燃料横方向ファセット181A~Nを有して成形することができ、核燃料冷却剤170Bと核燃料タイル104A~Nとの間に直接接触を与えるように、内部に形成された燃料冷却剤通路141A~Nを有することができる。
【0014】
[0014]U-Modでは、個々のチューブライナ106A~Nは、個々の低温固相減速材要素103A~Nの周りのクラッディング又はコーティングである。チューブライナ106A~Nは、高温でも水素を保持することができる水素拡散性の低い材料で形成される。減速材要素103A~Nは、絶縁体要素102A~Nによって核燃料タイル104A~Nから断熱された低温固相減速材から形成される。チューブライナ106A~Nは、高動作温度でも減速材要素103A~N内に水素を保持するため水素拡散性の低い水素バリア材料で形成される。減速材冷却剤通路121A~Nと絶縁体要素102A~Nとの組み合わせにより、減速材要素103A~Nが核燃料タイル104A~Nよりも著しく低い動作温度にあることが可能になる。U-Modは、有利には、核燃料タイル104A~Nから明確に分離され断熱された減速材要素103A~Nのための冷却経路及び/又は熱除去機構、並びに核燃料タイル104A~Nのための冷却及び/又は熱除去経路を実現する。
【0015】
[0015]さらに、黒鉛減速原子炉システムは大規模であり、宇宙用途には適さない。黒鉛は中性子吸収が低いが、高速中性子を減速させるために大規模な量を必要とする。減速材がコンパクトかつ効果的に減速する能力は、巨視的減速力と呼ばれ、黒鉛は、巨視的減速力が低い。U-Modは、黒鉛よりも高い巨視的減速力を有することができる減速材の使用を可能にする。より高い減速力(例えば、ZrH、Be、BeOなど)を有する減速材により、より小型の原子炉炉心101が可能になる。
【0016】
[0016]S-Block及びU-Modを実装する例示的な原子炉システム100は、絶縁体要素102A~Nの絶縁体要素アレイ112及び減速材要素103A~Nの減速材要素アレイ113を含む原子炉炉心101を含む。それぞれの減速材要素103A~Nは、それぞれの絶縁体要素102A~Nの内部に配置された低温固相減速材から形成される。原子炉炉心101は、核燃料タイル104A~Nの核燃料タイルアレイ114をさらに含む。それぞれの核燃料タイル104A~Nは、それぞれの絶縁体要素102A~N又は別のそれぞれの核燃料タイル104A~Nに隣接する複数の核燃料横方向ファセット181A~Nを含む。それぞれの減速材要素103A~Nは、それぞれの絶縁体要素102A~Nによって核燃料タイル104A~Nの核燃料タイルアレイ114から絶縁される。
【0017】
[0017]例のさらなる目的、利点及び新規な特徴は、以下の説明に部分的に記載され、以下及び添付の図面を検討することによって当業者に部分的に明らかになるか、又は例の作製又は作業によって習得され得る。本主題の目的及び利点は、添付の特許請求の範囲において特に指摘される方法、手段及び組み合わせによって実現及び達成され得る。
【0018】
[0018]図面は、限定ではなく例としてのみ、本概念による1つ又は複数の実施態様を示す。図において、同様の参照符号は、同一又は同様の要素を指す。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】原子炉システムの原子炉炉心の断面図である。
図2】減速材冷却剤通路及び燃料冷却剤通路の詳細を示す、図1の原子炉炉心の一部の斜視図である。
図3】絶縁体要素、チューブライナ、減速材要素、及び核燃料タイルの詳細を示す、図1の原子炉炉心の断面の拡大図である。
図4A】絶縁体要素の絶縁体要素アレイ、減速材要素の減速材要素アレイ、及び核燃料タイルの核燃料タイルアレイの第1のインターロッキング幾何学形状パターンを示す。
図4B】絶縁体要素の絶縁体要素アレイ、減速材要素の減速材要素アレイ、及び核燃料タイルの核燃料タイルアレイの第1のインターロッキング幾何学形状パターンを示す。
図5】絶縁体要素アレイ、減速材要素アレイ、及び核燃料タイルアレイの第2のインターロッキング幾何学形状パターンを示す。
図6】絶縁体要素アレイ、減速材要素アレイ、及び核燃料タイルアレイの第3のインターロッキング幾何学形状パターンを示す。
図7】最大原子炉出口温度及び名目出力レベルを示す原子炉出口温度グラフである。
図8】黒鉛と比較した、絶縁体要素を形成する2つの候補高温熱絶縁体と、減速材要素を形成する6つの候補低温固相減速材とのU-Mod物理的特性表である。
図9】軸線方向距離による温度変化の様子を示す、S-Block及びU-Modを実装する原子炉炉心の熱解析グラフである。
図10】S-Block及びU-Modを実装する原子炉炉心の逓減グラフである。
図11】6つの異なる原子炉システムの原子炉質量、出力レベル、質量当たりの出力、出口温度、及びウラン235(U-235)濃縮を比較する原子炉炉心性能及び特性比較表である。
【符号の説明】
【0020】
[0030]
100 原子炉システム
101 原子炉炉心
102A~N 絶縁体要素
103A~N 減速材要素
104A~N 核燃料タイル
106A~N チューブライナ
107 原子炉
112 絶縁体要素アレイ
113 減速材要素アレイ
114 核燃料タイルアレイ
115A~N 制御ドラム
116 反射体材料
117 吸収体材料
121A~N 減速材冷却剤通路
140 反射体
141A~N 燃料冷却剤通路
150 燃料コンパクト
151A~N TRISO燃料粒子
152 高温マトリックス
160 圧力容器
170 冷却剤
170A 減速材冷却剤
170B 核燃料冷却剤
181A~N 核燃料横方向ファセット
182A~N タイル境界壁
183A~N 絶縁体要素境界壁
186 外周
191A~N 核燃料横方向ファセット
195A~N 減速材開口部
196A~N 絶縁体要素横方向ファセット
198A~N 絶縁体要素境界壁
700 原子炉出口温度グラフ
705 名目出力レベル
710 最大原子炉出口温度
720 ベースライン原子炉炉心
730 基本型の(以下、単に「基本」という)S-Block及びU-Mod
740 先進型の(以下、単に「先進」という)S-Block及びU-Mod
800 U-Mod物理的特性表
802A~B 候補高温熱絶縁体
803A~F 候補低温固相減速材
810 黒鉛
900 熱解析グラフ
903 減速材要素最高温度
904 核燃料タイル最高温度
905 軸線方向距離
910 温度
970A 減速材冷却剤最高温度
970B 核燃料冷却剤最高温度
1000 原子炉炉心の逓減グラフ
1005 寿命
1010 K-有効
1100A~F 原子炉システム
1101 原子炉炉心性能及び特性比較表
1105A~F 原子炉質量
1106A~F 出力レベル
1107A~F 質量当たりの出力
1108A~F 出口温度
1109A~F ウラン235濃縮度
【発明を実施するための形態】
【0021】
[0031]以下の詳細な説明では、関連する教示の完全な理解を提供するために、例として多数の具体的な詳細が記載される。しかしながら、本教示がそのような詳細なしで実施され得ることは、当業者には明らかであるはずである。他の例では、周知の方法、手順、構成要素、及び/又は回路は、本教示の態様を不必要に不明瞭にすることを避けるために、詳細なしに比較的高レベルで説明されている。
【0022】
[0032]本明細書で使用される「結合された」という用語は、任意の論理的又は物理的接続を指す。別段の記載がない限り、結合された要素又は装置は、必ずしも互いに直接連結されている必要はなく、中間構成要素、要素などによって分離されてもよい。
【0023】
[0033]特に明記しない限り、以下の特許請求の範囲を含む本明細書に記載されている任意の、及びすべての測定値、値、定格、位置、大きさ、サイズ、角度、及び他の仕様は、近似的であり、正確ではない。そのような量は、それらが関連する機能及びそれらが関連する技術分野で慣用的なものと一致する合理的な範囲を有することが意図されている。例えば、特に明記しない限り、パラメータ値などは、記載された量から±5%程度又は±10%程度変動し得る。「およそ」又は「実質的に」という用語は、パラメータ値などが記載された量から±10%まで変動することを意味する。
【0024】
[0034]図面のいずれかに示されているような、原子炉炉心101、原子炉107、関連する構成要素、及び/又は原子炉炉心101を組み込んだ任意の原子炉システム100の向きは、例示及び説明の目的のため例としてのみ与えられている。特定の原子炉システム100の動作において、原子炉107は、原子炉107の特定の用途に適した任意の他の方向、例えば直立、横方向、又は任意の他の向きに配向されてもよい。また、本明細書で使用される範囲で、横方向、長手方向、上、下、上方、下方、上部、底部、及び側面などの任意の方向を示す用語は、例としてのみ使用され、本明細書で別途説明されるように構築された任意の原子炉107又は原子炉107の構成要素の方向又は向きに関して限定するものではない。ここで、添付の図面に示され、以下で説明される例を詳細に参照する。
【0025】
[0035]図1は、原子炉システム100の原子炉炉心101の断面図である。原子炉システム100は、いくつかの強化技術、すなわち、(1)核燃料タイル104A~N(「S-Block」と呼ばれる)、及び(2)低温固相減速材を有する高温熱絶縁体(「U-Mod」と呼ばれる)を含む原子炉炉心101のための構造を含む。
【0026】
[0036]S-Block技術では、核燃料タイル104A~Nは、核燃料冷却剤170Bを核燃料タイル104A~Nに直接接触させることによって核燃料冷却剤170Bへの熱伝達を最適化するように設計された燃料形状を含む。核燃料タイル104A~Nは、タイル幾何学的形状の形状及びサイズのために製造が比較的簡単な単位格子要素として成形することができる。U-Mod技術では、高温減速材は、減速材要素103A~Nの周りに水素バリアクラッディング又はコーティングとして適用されたチューブライナ106A~Nによって囲まれている。チューブライナ106A~Nは、固相水素化物から形成することができ、核燃料タイル104A~Nの高温でも水素を保持することができる。絶縁体要素102A~Nは、高温熱絶縁体材料で形成されている。減速材冷却剤通路121A~Nと絶縁体要素102A~Nとの組み合わせにより、減速材要素103A~Nが核燃料タイル104A~Nよりも著しく低い温度にあることが可能になる。
【0027】
[0037]原子炉システム100は、核燃料冷却剤170Bへの熱伝達を最大にするために、核燃料タイル104A~N(S-Block)のカスタム幾何学的形状で高温核燃料を実装する高温ガス冷却熱スペクトル原子炉とすることができる。原子炉システム100はまた、絶縁体要素102A~N、減速材要素103A~N、チューブライナ106A~N、及び減速材冷却剤通路121A~N(U-Mod)の組み合わせによって形成された高温高性能中性子減速材を実装する。
【0028】
[0038]原子炉システム100は、原子炉107を含む。原子炉107は、制御された核連鎖反応が起こり、エネルギーが放出される原子炉炉心101を含む。原子炉炉心101内の中性子連鎖反応は、各核分裂原子核からの単一の中性子が別の原子核の分裂をもたらし、危険であり、連鎖反応は制御されなければならない。
【0029】
[0039]制御された核分裂を持続することにより、原子炉システム100は熱エネルギーを生成する。例示的な実施態様では、原子炉システム100は、減速材冷却剤170A及び核燃料冷却剤170Bが性能向上を達成するためのガスであるガス冷却原子炉107として実装される。ガス冷却式原子炉107では、S-Block及びU-Modによって可能にされる原子炉炉心101の高出力密度、定格出力、及び安全ケースは、原子力エネルギーのコストを大幅に低減し、モジュール式のオフサイト建設を可能にする。しかしながら、S-Block及びU-Mod技術はまた、大型発電所規模の原子炉、ヒートパイプ原子炉、及び溶融塩冷却原子炉を含む他の熱スペクトル原子炉システム100において画期的性能を可能にすることができる。
【0030】
[0040]図示の例では、原子力熱推進(NTP)システムなどの原子炉炉心101を有する原子炉システム100は、宇宙環境で利用される。原子炉炉心101のS-Block及びU-Mod構造を実装することができる例示的なNTPシステムは、図1及び図2並びにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、「Passive Reactivity Control of Nuclear Thermal Propulsion Reactors」と題する、2020年5月5日交付の、ワシントン州シアトルのUltra Safe Nuclear Corporationに対する米国特許第10,643,754号の関連する本文に記載されている。別の例では、原子炉炉心101を有する原子炉システム100は、惑星表面での電力生成のために宇宙原子炉で利用される。
【0031】
[0041]従来の宇宙原子炉設計は、典型的には、低質量及び高温出力の両方を有するために高濃縮ウラン(HEU)燃料(兵器級)を利用する。本明細書に記載の原子炉炉心101の構造は、効率を高めるために低質量高温低濃縮ウラン(LEU)燃料(非兵器級)原子炉の開発を可能にするために直接適用可能であり、特に宇宙用途向けに設計することができる。例えば、原子炉炉心101を含む原子炉システム100は、核熱ロケット原子炉、原子力電気推進原子炉、火星表面原子炉、又は月面原子炉であり得る。
【0032】
[0042]そのようなNTPシステム(例えば、小型宇宙原子炉)では、生成された推力は、ロケット、ドローン、無人航空機(UAV)、航空機、宇宙船、ミサイルなどの原子炉炉心101を収容する、原子炉炉心101と一体的に形成される、原子炉炉心に連結する、又は原子炉炉心に取り付ける車両を推進する。典型的には、これは、原子炉炉心101からの熱エネルギーを利用することによって、推進剤、典型的には低分子量水素を2,600°ケルビンを越えて加熱することによって行われる。追加で、NTP原子炉システム100は、潜水艦又は船舶の推進に使用することができる。
【0033】
[0043]上述したように、原子炉システム100はまた、例えば、宇宙空間、天体、惑星体、及び地球上の遠隔地域を含む遠隔地域用途のために原子力(例えば、熱及び/又は電力)を提供するための陸上用途の原子力発電所であり得る。原子炉炉心101のS-Block及びU-Mod構造を実装することができる例示的な陸上原子炉システムは、図1及びその全体が参照により本明細書に組み込まれる、「Composite Moderator for Nuclear Reactor Systems」と題する、2020年1月23日公開、ワシントン州シアトルのUltra Safe Nuclear Corporationの米国特許公開第2020/0027587号の関連する本文に記載されている。
【0034】
[0044]原子炉システム100はまた、核分裂表面発電(FSP)システム用の原子力電気推進(NEP)システムなどの地上発電システムであり得る。NEPは、ロボット及び有人宇宙船用のホール効果スラスタなどの電気スラスタに動力を供給する。FSPは、月や火星などの惑星体に電力を供給する。NEP及びFSP電力用途では、S-Block及びU-Mod技術によって可能になる原子炉システム100は、電力変換システム(例えば、Brayton)を介して作動流体(例えば、He、HeXe、Ne、CO)を加熱して電気を生成する。さらに、NEP及びFSPの発電用途では、原子炉システム100は推進剤を含まず、むしろ電力を生成するときに原子炉入口を通過する作動流体を含む。NEP及びFSP電力用途では、減速材要素103A~Nは、作動流体が核燃料タイル104A~Nを通過する前に、原子炉入口作動流体(例えば、復熱器から出る流れ)を介して冷却することができる。
【0035】
[0045]本明細書に記載の2つのS-Block及びU-Mod原子炉技術を利用することにより、高温、コンパクト、かつ事故耐性があり、原子炉システム100の寿命全体にわたって安全かつ確実に動作する原子炉システム100が可能になる。例えば、原子炉システム100は、短期的な宇宙作業用の小型商用核分裂発電システム、月着陸機、又は高出力宇宙船及び現場資源利用などの大規模な地上作業用の商用核分裂発電システムとすることができる。
【0036】
[0046]図示のように、原子炉炉心101は、U-Mod技術を実装する絶縁体要素アレイ112及び減速材要素アレイ113を含む。U-Mod技術は、商業的に実行可能な十分に大きい出力密度、定格出力、及び寿命を有する小型原子炉システム100の構築を可能にする。図示のように、絶縁体要素アレイ112は37個の絶縁体要素102A~Nを含み、減速材要素アレイ113は37個の減速材要素103A~Nを含む。それぞれの減速材要素103A~Nは、それぞれの絶縁材要素102A~Nの内部に配置された(例えば、中に位置する)低温固相減速材で形成される。Aはアルファベットの最初の文字であり、Nはアルファベットの14番目の文字であるが、アルファベットの制約により、102、103、104、121、141などの参照番号に続く場合、名称「A~N」は、それらの同一要素の26を超えるものを指すことができる。
【0037】
[0047]U-Mod技術は、閉ループ出力サイクルを利用して原子炉炉心101内の固相減速材を冷却するための現在の方法に対する改善である。U-Modは、核燃料タイル104A~Nから明確に分離され断熱された減速材要素103A~Nのための冷却経路及び/又は熱除去機構、並びに核燃料タイル104A~Nのための冷却及び/又は熱除去経路を実現する。減速材要素103A~Nの断熱は、2つの別個の絶縁機構、すなわち、(1)高温熱絶縁体(例えば、絶縁体要素102A~N)、及び(2)減速材冷却剤通路121A~Nを含む減速材冷却剤170A(例えば、気体又は液体)用の別個の減速材冷却ループによって達成される。絶縁体要素102A~Nを形成する高温熱絶縁体は、核燃料タイル104A~Nと減速材要素103A~Nの減速材要素アレイ113との間の境界である固体熱絶縁体である。高温熱絶縁体は、核燃料タイル104A~Nの高温で動作することができる低熱伝導性材料で作られる。
【0038】
[0048]U-Mod技術により、減速材要素103A~Nを核燃料タイル104A~Nから明確に分離してより低い動作温度に維持することが可能になる。したがって、U-Mod技術により、減速材要素103A~Nを形成する低温固相中性子減速材材料が、閉ループ出力サイクルを利用して高温熱原子炉システム100内でより低い温度に維持できるようになる。U-Modでは、絶縁体要素102A~Nはそれぞれ、熱伝導率の低い高温熱絶縁体材料で形成される。絶縁体要素102A~Nは、低水素拡散性を可能にする減速材冷却剤通路121A~N及びチューブライナ106A~Nと併せて形成される。
【0039】
[0049]高温断熱材料は、低密度炭化物、金属炭化物、金属酸化物、又はそれらの組み合わせを含むことができる。より具体的には、高温断熱材料には、低密度SiC、安定化酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、低密度ZrC、低密度炭素、又はこれらの組み合わせが挙げられる。チューブライナ106A~Nは、水素拡散性の低い水素バリア材料で形成される。水素バリア材料は、減速材要素103A~N中に水素を保持するために、Al、SiC、ZrC、MgO、Mo、W、Cu、Ni、Cr、又はそれらの組み合わせを含む。減速材要素103A~Nは、低温固相減速材で形成されている。低温固相減速材は、MgH、YH、ZrH、CaH、ZrO、CaO、BeO、BeC、Be、濃縮炭化ホウ素、11C、CeH、LiH、又はそれらの組み合わせを含む。一実施態様では、減速材要素103A~Nは、チューブライナ106A~N(図3参照)がコーティングされたZrHを含む低温固相減速材から形成される。減速材要素103A~Nは、核燃料タイル104A~Nに実装される原子炉炉心101及びLEU核燃料の小型サイズを可能にする2パス炉心内冷却剤経路に結合される。それぞれの減速材要素103A~Nは、水素保持のためにそれぞれのチューブライナ106A~Nの内側に配置される。
【0040】
[0050]減速材要素103A~Nを形成する低温固相減速材の温度をさらに高め、動作中及び事故状態中の核燃料冷却剤170B(例えば、水素などの推進剤)の損失を防止するため、チューブライナ106A~Nが水素バリア材料として実装される。チューブライナ106A~Nの水素バリア材料は、低温固相減速材材料中の水素を保持する。低温固相減速材材料中の水素は、原子炉炉心101内の中性子を減速させるものである。水素バリア材料は、水素が常に低温固相減速材材料から逃れようとするため必要であり、水素は低温固相減速材材料を通って拡散する。
【0041】
[0051]第1の実施態様では、チューブライナ106A~Nは、水素バリア材料コーティングの内側に配置された減速材要素103A~Nを形成する低温固相減速材材料で低温固相減速材材料の表面に塗布された、例えば、表面の周り又は上にコーティングされた、水素バリア材料コーティングである。第2の実施態様では、チューブライナ106A~Nは、水素バリア材料クラッディングの内側に配置された減速材要素103A~Nを形成する低温固相減速材材料を有する密閉容器などの水素バリア材料クラッディングとして実装することができる。
【0042】
[0052]原子炉炉心101は、原子炉炉心101のモジュール式構造を強化し、原子炉システム100の現場固有の環境設計の必要性を低減するためS-Block技術を実装する核燃料タイルアレイ114をさらに含む。さらに、S-Block燃料の安全特性は、リスクを低減し、原子炉システム100を監視するための人的要件を低減することができる。S-Block技術は、複数の核燃料タイル104A~Nを含む核燃料タイルアレイ114によって達成される。核燃料タイル104A~Nは、核燃料タイル104A~Nへの熱伝達を増加させ、安全マージンを効果的に低減し、より高出力の原子炉システムを実現し、その結果、原子炉炉心101の経済性を改善するために燃料形状に形成される。
【0043】
[0053]核燃料タイル104A~Nは、核燃料タイル104A~Nの間に熱伝導経路を作製し、製造コストを改善するためモジュール幾何学的形状を有する。図3の例に示すように、核燃料タイル104A~Nは、三構造等方性燃料(TRISO)燃料粒子151A~Nを含むベース核燃料から形成することができる。TRISO燃料粒子151A~Nは、(1)低密度黒鉛、(2)熱分解黒鉛(PyG)、(3)炭化ケイ素(SiC)、(4)PyG、及び(5)SiCの層によってコーティングされた燃料粒子を含む。TRISO燃料粒子151A~Nは、ベース核燃料を形成するために高温マトリックス152内で懸濁される。高温マトリックス152(図3参照)は、SiC、高融点金属炭化物、タングステン、モリブデン、又はそれらの組み合わせを含むことができる。高温マトリックスを形成する高融点金属炭化物として、炭化ジルコニウム(ZrC)、炭化チタン(TiC)、炭化ニオブ(NbC)等を挙げることができる。
【0044】
[0054]核燃料タイル104A~Nは、既存の核燃料限界を超える高性能核燃料、すなわち、3,000度ケルビン(K)を超える原子炉炉心101の動作を可能にするための耐火性炭化物コンパクトの使用を可能にする。高性能耐火性炭化物は、NERVA/Roverプログラムなどの宇宙用途(例えば、NTP)における高温水素環境及び関連する燃料粒子コーティング(PyC)と化学的に適合性があり、高温での最低気化速度の一部を実現して、全体的なエンジン寿命を向上させ、原子炉炉心の再利用を可能にする。反応性放電プラズマ焼結(SPS)及び高度な酸化物添加剤などの現代の製造技術は、耐火性炭化物を利用して核燃料タイル104A~Nを形成可能にできる。多くの耐火性炭化物は、低中性子吸収断面積及び高減速力を有する。これにより、燃料核としてLEUを用いて臨界を達成することができる。
【0045】
[0055]核燃料タイル104A~Nは、底面形状(例えば、図4A図4B図5図6に示す)又はその切頭部分で実装され、好適には、核燃料タイル104A~N間の直接接触を可能にして、核燃料タイル104A~N間の熱伝達を増加させる。核燃料タイル104A~Nの底面形状はまた、核燃料冷却剤170Bへの熱伝達を増加させる。核燃料タイル104A~Nは、複雑な炉心幾何学的形状を含む複数の原子炉炉心101の幾何学的形状要件に適合するように容易にタイル張りされる複製可能な単位セルを提供し、高密度中性子減速材を活性原子炉炉心101内の減速材要素103A~Nとして利用することを可能にする。従来の円筒形状の核燃料ペレットとは対照的に、核燃料タイル104A~Nは、核燃料タイル104A~Nと核燃料冷却剤170Bとの間の温度差を低減し、冷却剤事故の損失の場合に、核燃料タイル104A~Nから原子炉炉心101の外側の原子炉システム100の構造への伝導経路を提供し、核燃料冷却剤170Bへの熱伝達を改善する。
【0046】
[0056]核燃料タイル104A~Nの燃料形状は、L/Dが1未満(プレート状)であるため、放電プラズマ焼結(SPS)又は他の焼結技術を使用して製造することができる。これにより、高密度化の最終段階の垂直プレス距離を短縮するための要素の比較的簡単な製造が可能になる。代わりに、付加製造を使用することができる。
【0047】
[0057]NTP、NEP、又はFSP原子炉システム100では、原子炉107は、複数の制御ドラム115A~N及び反射体140を含むことができる。制御ドラム115A~Nは、制御ドラム115A~Nを回転させることによって原子炉炉心101の反応度を変化させるために、絶縁体要素102A~Nの絶縁体要素アレイ112、減速材要素103A~Nの減速材要素アレイ113、及び核燃料タイル104A~Nの核燃料タイルアレイ114を横方向に取り囲むことができる。図示のように、制御ドラム115A~Nは、圧力容器160の周囲又は周辺に存在し、原子炉炉心101の絶縁体要素102A~N、チューブライナ106A~N、減速材要素103A~N、及び核燃料タイル104A~Nの周りに円周方向に位置付けられる。制御ドラム115A~Nは、運転中に中性子集団及び原子炉発電レベルを選択的に調節するために、反射体140の領域、例えば、原子炉炉心101を直接取り囲む外側反射体領域に位置することができる。例えば、制御ドラム115A~Nは、円筒形状とすることができ、第1の外面上の反射体材料116(例えば、ベリリウム(Be)、酸化ベリリウム(BeO)、BeSiC、BeMgO、Alなど)及び第2の外面上の吸収体材料117の両方から形成することができる。
【0048】
[0058]反射体材料116及び吸収体材料117は、制御ドラム115A~Nの円筒形状の対向する両側、例えば外周の部分にあり得る。反射体材料116は、円筒又はその切頭部分として成形された反射体基板を含むことができる。吸収体材料117は、吸収体プレート又は吸収体コーティングを含むことができる。吸収体プレート又は吸収体コーティングは、制御ドラム115A~Nのそれぞれの円筒形状を形成するように反射体基板上に配置される。例えば、吸収体プレート又は吸収体コーティングは、反射体材料で形成された反射体基板を覆い、制御ドラム115A~Nを形成する。
【0049】
[0059]図示の円筒形状の制御ドラム115A~Nを回転させると、制御ドラム115A~Nの吸収体材料117(例えば、炭化ホウ素、BC)の原子炉炉心101への近接度が変化し、中性子反射量が変化する。反射体材料116が原子炉炉心101に向かって内向きであり、吸収体材料117が外向きである場合、中性子は散乱されて原子炉炉心101内に戻って(反射されて)、より多くの核分裂を引き起こし、原子炉炉心101の反応度を高める。吸収体材料117が原子炉炉心101に向かって内向きであり、反射体材料116が外向きであるとき、中性子が吸収され、さらなる核分裂が停止して原子炉炉心101の反応性が低下する。陸上用途では、原子炉炉心101は、それ自体が核分裂することなく多くの中性子を吸収することができるホウ素、銀、インジウム、及びカドミウムなどの化学元素で構成された制御棒(図示せず)を含むことができる。
【0050】
[0060]例えば、外側反射体領域として示される中性子反射体140は、最も外側の核燃料タイル104A~Nと制御ドラム115A~Nとの間、並びに制御ドラム115A~Nの周りに配置された充填要素であり得る。反射体140は、最も外側の核燃料タイル104A~Nと任意選択のバレル(例えば、ベリリウムから形成される)との間に配置された減速材から形成することができる。反射体140は、六角形又は部分的に六角形状の充填材要素を含むことができ、中性子減速材(例えば、酸化ベリリウム、BeO)から形成することができる。必須ではないが、原子炉107は、絶縁体要素アレイ112、チューブライナ106A~N、減速材要素アレイ113、原子炉炉心101の核燃料タイルアレイ114、並びに反射体140を含む束ねられた集合体を取り囲む任意選択のバレル(図示せず)を含むことができる。図示するように、制御ドラム115A~Nは、圧力容器160の周囲に存在し、例えば、反射体140を形成する充填要素(例えば、反射体ブロック141A~N)のサブセットを取り囲むように、反射体140内に点在される又は配置されることができる。
【0051】
[0061]圧力容器160は、アルミニウム合金、炭素複合材、チタン合金、放射弾性SiC複合材、ニッケル基合金(例えば、Inconel(商標)又はHaynes(商標))、又はそれらの組み合わせで形成することができる。圧力容器160及び原子炉システム100は、減速材冷却剤通路121A~Nを通って流れる減速材冷却剤170A、及び燃料冷却剤通路141A~Nを通って流れる推進剤(例えば、水素ガス又は液体)などの別個の核燃料冷却剤170Bを移送するシリンダ、配管、及び貯蔵タンクを含む他の構成要素から構成することができる。減速材冷却剤170A及び核燃料冷却剤170Bは、例えば、NTP原子炉システム100における推力発生のための原子炉炉心101の燃焼サイクル中に液体から気体状態に移行する気体又は液体であり得る。水素はNTP原子炉システム100用である。NEP又はFSP用途では、原子炉システム100は、代わりにHe、neon、HeXe、COなどの作動流体を循環させる。
【0052】
[0062]原子炉システム100は、好適には、減速材冷却剤170Aが減速材冷却剤通路121A~Nを通って流れることを可能にし、別個の核燃料冷却剤170B(例えば、水素ガスなどの推進剤)が燃料冷却剤通路141A~Nを通って流れることを可能にする。減速材冷却剤通路121A~Nは、例えば、専用の減速材冷却剤ループを介して、減速材冷却剤170Aが原子炉炉心101内を通過してヒートシンク(図示せず)に入ることを可能にするチャネル又は孔などの平坦なリング形状(例えば、O字形)の開口部である。燃料冷却剤通路141A~Nは、例えば、別個の核燃料冷却剤ループ内で推進するために、核燃料冷却剤170Bが原子炉炉心101内を通過して推力室(図示せず)に入ることを可能にするチャネル又は孔である。
【0053】
[0063]代替的な実施態様では、減速材要素103A~Nと核燃料タイル104A~Nとの間で共有される冷却剤170は、減速材冷却剤通路121A~N及び燃料冷却剤通路141A~Nの両方を通って流れることができるが、代替的な実施態様は、本明細書に記載の強化された性能向上を達成しない可能性がある。代替的な実施態様では、核燃料タイル104A~Nを通って流れる冷却剤170は、ヘリウム、フッ化リチウム(LiF)から形成されたFLiBe溶融塩、フッ化ベリリウム(BeF)、ナトリウム、He、HeXe、CO、ネオン、又はHeNを含むことができる。代替的な実施態様では、共有冷却剤170は、共有冷却剤170が核燃料タイル104A~N内で加熱される前に、減速材冷却剤通路121A~Nを通って流れる。これにより、減速材要素103A~Nが低温に保たれる。
【0054】
[0064]図2は、減速材冷却剤通路121A~N及び燃料冷却剤通路141A~Nの詳細を示す、図1の原子炉炉心101の一部の斜視図である。図示のように、それぞれの絶縁体要素102A~Nは、チューブ又はパイプとして成形される。それぞれの減速材要素103A~Nが内側に配置されたそれぞれの絶縁体要素102A~Nは、その中に形成されたそれぞれの減速材冷却剤通路121A~Nを含む。それぞれの減速材冷却剤通路121A~Nは、それぞれの減速材要素103A~Nとそれぞれの絶縁体要素102A~Nとの間に位置する。
【0055】
[0065]いくつかの例(例えば、図4A図4B及び図5を参照)では、絶縁体要素102A~Nは、円筒形状のチューブ又はパイプとして示され、減速材要素103A~Nは、シリンダとして示され、減速材冷却剤通路121A~Nは、リング形状として示され、燃料冷却剤通路141A~Nは、シリンダとして示される。しかしながら、絶縁体要素102A~N、減速材要素103A~N、減速材冷却剤通路121A~N、及び燃料冷却剤通路141A~Nは、様々な形状に形成することができる。2次元空間で円形又は他の丸形であることに加えて、絶縁体要素102A~N、減速材冷却剤通路121A~N、及び燃料冷却剤通路141A~Nは、楕円形、正方形、長方形、三角形、又は別の多角形とすることができる。例えば、絶縁体要素102A~Nは、3次元空間における多面体(例えば、図6に示すような三角柱又は直方体)とすることができる。絶縁体要素102A~Nの内側に配置するために、減速材要素103A~Nは、絶縁体要素102A~N及び減速材冷却剤通路121A~Nの形状に適合する形状とすることができる。
【0056】
[0066]原子炉炉心101の構造は、原子力発電炉内の減速材要素103A~Nとして示される固相減速材の冷却を改善する。閉ループ冷却剤サイクルは、核燃料タイル104A~Nとして示される核燃料の冷却システムに干渉しない減速材冷却剤通路121A~Nを介して減速材要素103A~Nを冷却するための別個の断熱された機構を達成する。
【0057】
[0067]低温固相減速材からなる減速材要素103A~Nを断熱して別々に冷却することにより、低温固相減速材を核燃料(例えば、核燃料タイル104A~N)に比べて低温に保つことができる。これにより、高温固相減速材(例えば、炭素系黒鉛)に対して低温固相減速材の中性子減速能力が高いために魅力的な低温固相減速材(ヒドリド系及びベリリウム系など)の実装が可能になる。
【0058】
[0068]より高い温度に到達させると、減速材要素103A~Nを形成する低温固相減速材が解離又は分解し始め、反応度の正味の喪失をもたらし、分裂又は連鎖反応を遅くすることができる。減速材要素103A~Nをチューブライナ106A~N(図3参照)内に収容又はコーティングし、減速材要素103A~Nを絶縁体要素102A~Nで核燃料タイル104A~Nから絶縁し、次いで、核燃料タイル104A~Nの燃料冷却剤通路141A~Nとは別個の減速材冷却ループ内に減速材冷却剤通路121A~Nを作成することによって、小型に最適化された高温原子炉107が達成される。
【0059】
[0069]減速材要素103A~Nに低温固相減速材を使用することは、核燃料として低濃縮ウラン(LEU)を使用する小型に最適化された高温原子炉にとって重要である。減速材要素103A~Nを形成する低温固相減速材は、より高い減速力及び減速比(巨視的減速力)を有するので、低温固相減速材は、より少量の核分裂性材料(例えば、原子炉炉心101内で必要とされるウランの量を低減する)を有する小型原子炉システム100を可能にする。したがって、図示の原子炉炉心101は、より広い範囲の動作温度、ループ構成、及び用途を提供する。
【0060】
[0070]したがって、図2の図示の例では、それぞれの減速材冷却剤通路121A~Nは、減速材冷却剤170Aを、(i)減速材冷却剤170Aを加熱すること、及び(ii)それぞれの減速材要素103A~Nを冷却すること、の両方を介して流す。それぞれの核燃料タイル104A~Nは、それぞれの核燃料タイル104A~Nとの直接接触を介して核燃料冷却剤170Bを加熱するために、減速材冷却剤170Aとは別個かつ異なる核燃料冷却剤170Bを流す、内部に形成された1つ又は複数の核燃料冷却剤通路141A~Nを含む。核燃料冷却剤170Bは、原子力熱推進(NTP)用の推進剤(例えば、水素)であり得る。言い換えれば、それぞれの減速材冷却剤通路121A~Nを通って流れる減速材冷却剤170Aは、減速材要素103A~Nの減速材要素アレイ113専用の減速材冷却剤ループ内にあり、核燃料冷却剤170Bを流すために燃料冷却剤通路141A~Nを含む核燃料冷却剤ループから熱的に隔離され分離されている。NEP又はFSP原子炉107では、代わりにHe、ネオン、HeXe、COなどの作動流体が循環される。
【0061】
[0071]減速材冷却剤ループは、減速材冷却剤170Aを核燃料冷却剤170Bから熱的に隔離して、減速材要素103A~Nから熱を能動的に除去して、原子炉炉心101の動作中に燃料タイル104A~Nの核燃料タイルアレイ114と比較してより低い温度に減速材要素103A~Nを維持する。減速材冷却剤ループは、圧力容器160の外部又は原子炉システム100の他の構成要素上に取り付けることができるヒートシンクを含み、減速材冷却剤170Aはヒートシンクに熱的に結合される。
【0062】
[0072]図示されていないが、原子炉システム100は、少なくとも1つのタービンと、原子炉炉心101の動作中に複数の減速材要素103A~Nを冷却するために減速材冷却剤170Aをヒートシンクを通って流れるように移動させるポンプとを備える減速材冷却剤ターボポンプアセンブリをさらに含むことができる。減速材冷却剤ターボポンプアセンブリ内のポンプ及びタービンは、減速材冷却剤配管、減速材冷却剤通路121A~N、及びヒートシンクを介して減速材冷却剤170Aを流し、減速材冷却剤170Aはヒートシンクを通過した後、冷却される。原子炉システム100はまた、減速材冷却剤170Aを移動させる圧縮機及び送風機を含むことができる。減速材冷却剤170Aが液体状態ではなく気体状態にある場合、圧縮機及び送風機は、減速材冷却剤配管、減速材冷却剤通路121A~N、及びヒートシンクを介して減速材冷却剤170Aを移動させる。減速材冷却剤170Aが液体状態である場合、ポンプは減速材冷却剤170Aを流す。NTP原子炉システム100では、減速材要素103A~N及び核燃料タイル104A~Nは、同じターボポンプアセンブリから引き出すことができる。
【0063】
[0073]原子炉システム100は、原子炉炉心101の動作中に電力を生成するために、核燃料冷却剤170Bを核燃料タイル104A~Nを通って流れるように流す核燃料冷却剤ターボポンプアセンブリをさらに含む。核燃料冷却剤ターボポンプアセンブリ内のポンプ及びタービンは、核燃料冷却剤170B(例えば、推進剤)を、核燃料冷却剤配管、次いで燃料冷却剤通路141A~Nを通して移動させる。燃料冷却剤通路141A~Nを通過することによって、核燃料冷却剤170Bは、原子炉炉心101の核燃料タイル104A~N内で過熱され、例えば、推力又は発電のために気体に膨張する。NEP又はFSP用途では、原子炉システム100は、冷却剤170A~B用のターボポンプアセンブリの代わりに、ターボジェット(例えば、タービン及び圧縮機)を含む。
【0064】
[0074]上述したように、分離された減速材冷却剤ループ及び核燃料冷却剤ループは、減速材要素103A~Nを核燃料タイル104A~Nからさらに隔離するとともに、内部加熱により減速材要素103A~Nから熱を能動的に除去するのに役立つ。低温固相減速材材料をより低い温度に維持することを可能にすることに加えて、加熱された減速材冷却剤170A自体を以下の好適な目的に使用することもできる。第1に、減速材冷却剤170Aは、二次出力サイクルを駆動する、及び/又は原子炉システム100内に追加の中性子減速材を供給する、複数の核燃料タイル104A~Nと化学的に不適合であり得る。NEP又はFSP用途では、原子炉システム100のポイントは、発電することである。第2に、減速材冷却剤170Aにより、間接的又は直接的に核燃料冷却剤170Bの予熱が可能になり、原子炉出口温度をより高くできる。第3に、減速材冷却剤170Aは、核燃料タイル104A~Nの冷却経路及び/又は熱除去機構の動的流体システム性能に影響を与えることなく、原子炉システム100の他の部分の冷却を可能にする。第4に、減速材冷却剤170Aは、減速材要素103A~Nが水素系低温固相減速材で形成される場合、水素の過圧を維持することを可能にする。第5に、減速材冷却剤170Aは、事故シナリオで到達したより高い温度に起因して中性子減速材の分解が起こる固有の安全機構の適用を可能にする。中性子減速材の分解は、再臨界の発生を抑制する。
【0065】
[0075]高温で小型の原子炉システム100を達成することが重要ではない用途では、減速材冷却剤通路121A~Nは、燃料冷却剤通路121A~Nと同じ冷却ループ内にあり得る。したがって、そのような用途では、それぞれの減速材冷却剤通路121A~Nは冷却剤170を、(i)冷却剤170を加熱すること、及び(ii)それぞれの減速材要素103A~Nを冷却することの両方を介して流す。
【0066】
[0076]図3は、絶縁体要素102A~D、チューブライナ106A~D、減速材要素103A~C、及び核燃料タイル104A~Bの詳細を示す、図1の原子炉炉心101の断面の拡大図である。2つの核燃料ファイル104A~Bが図3の断面に示されている。核燃料タイル104A~Nはそれぞれ、高温マトリックス152の内側に埋め込まれた三構造等方性(tristructural-isotropic:TRISO)燃料粒子151A~Nなどのコーティングされた燃料粒子からなる燃料コンパクト150から形成される。いくつかの実施態様では、燃料コンパクト150は、高温マトリックス152の内側に埋め込まれた二構造等方性(BISO)燃料粒子からなる。高温マトリックス152は、炭化ケイ素、炭化ジルコニウム、炭化チタン、炭化ニオブ、タングステン、モリブデン、又はそれらの組み合わせを含む。TRISO燃料粒子151A~Nはそれぞれ、多孔質炭素バッファ層、内側熱分解炭素層、セラミック層、及び外側熱分解炭素層によって囲まれた燃料粒子を含むことができる。
【0067】
[0077]円筒形状の核燃料コンパクトを形成するために炭化ケイ素マトリックス中に分散されたTRISO燃料粒子の説明は、ワシントン州シアトルのUltra Safe Nuclear Corporationの以下の特許及び特許公開、「Fully Ceramic Nuclear fuel and Related Methods」と題する2016年3月29日交付の米国特許第9,299,464号明細書、「Fully Ceramic Micro-encapsulated(FCM)fuel for CANDU and Other Reactors」と題する2018年7月24日交付の米国特許第10,032,528号明細書、「Method for Fabrication of Fully Ceramic Microencapsulation Nuclear Fuel」と題する2018年10月23日交付の米国特許第10,109,378号明細書、「Dispersion Ceramic Micro-encapsulated(DCM)Nuclear Fuel and Related Methods」と題する2017年4月11日交付の米国特許第9,620,248号明細書及び2019年11月12日交付の米国特許第10,475,543号明細書、「Composite Moderator for Nuclear Reactor Systems」と題する2020年1月23日公開の米国特許公開第2020/0027587号明細書、「Nuclear Fuel Particle Having a Pressure Vessel Comprising Layers of Pyrolytic Graphite and Silicon Carbide」と題する2020年2月25日交付の米国特許第10,573,416号明細書に提供されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。これらのUltra Safe Nuclear Corporationの特許に記載されているように、核燃料は、一般に、円筒形状核燃料コンパクトを作成するために炭化ケイ素マトリックスの内側に埋め込まれたTRISO燃料粒子からなる円筒形の燃料コンパクト又はペレットを含む。
【0068】
[0078]核燃料タイル104A~Nを形成するTRISO燃料粒子151A~N又はBISO燃料粒子を含む、コーティングされた燃料粒子を埋め込むための可能な高温マトリックス152材料のうち、炭化ケイ素(SiC)は、良好な放射線照射挙動及び成形加工を提供する。SiCは、高温の空気に曝されると高密度の付着性二酸化ケイ素(SiO)表面スケールが急速に形成され、さらなる酸化を防ぐため、優れた耐酸化性を有する。TRISO燃料粒子151A~Nは、1つ又は複数の等方性材料を取り囲む1つ又は複数の層でコーティングされた燃料核(例えば、中央にUC又はウラン炭酸化物(UCO))を含むことができる。TRISO燃料粒子151A~Nは、3つの等方性材料の4つの層を含む。例えば、4つの層は、(1)炭素でできた多孔質緩衝層、続いて(2)熱分解炭素(PyC)の緻密内層、続いて(3)高温で核分裂生成物を保持し、TRISO燃料粒子151A~Nに強い構造的完全性を与えるための二元炭化物層(例えば、SiCのセラミック層又は高融点金属炭化物層)、続いて、(4)PyCの緻密外層を含むことができる。TRISO燃料粒子151A~Nの高融点金属炭化物層は、炭化チタン(TiC)、炭化ジルコニウム(ZrC)、炭化ニオブ(NbC)、炭化タンタル、炭化ハフニウム、ZrC-ZrB複合材、ZrC-ZrB-SiC複合材、又はそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含むことができる。高温マトリックス152は、TRISO燃料粒子151A~Nの二元炭化物層と同じ材料で形成することができる。
【0069】
[0079]TRISO燃料粒子151A~Nは、1,600℃を超える温度で応力又は核分裂ガス圧力に起因して亀裂しないように設計されており、したがって、最悪の事故シナリオでは燃料核を含むことができる。TRISO燃料粒子151A~Nは、原子炉炉心101を含み、LWRの温度よりもはるかに高い温度で動作する高温ガス冷却炉(HTGR)で使用するように設計されている。核燃料タイル104A~Nは、例外的な核分裂生成物保持力を有する。TRISO燃料粒子151A~Nは、1500℃未満では極めて故障が少ない。さらに、高温マトリックス152の存在は、核分裂生成物の放出に対する追加の強固な障壁を実現する。
【0070】
[0080]それぞれの核燃料タイル104A~Nは、それぞれの絶縁体要素102A~N又は別のそれぞれの核燃料タイル104A~Nに隣接する複数の核燃料横方向ファセット181A~N(図4A図4B図5、及び図6を参照)を含む。核燃料横方向ファセット181A~Nは、観察者には、多くのファセットを有する切断された宝石原石様の曲面又は平面として見える。「ファセット」は、平坦化セグメント(例えば、平面)又は湾曲セグメント(例えば、非球面又は球面)とすることができる。複数の核燃料横方向ファセット181A~Nは、核燃料タイル104Aの不連続な(例えば、不均一又はギザギザした)外周186を形成する。本明細書で使用される場合、「境界壁」は、外周186が分割される外周186の一部分を含む。境界壁は、図4Bの絶縁体要素境界壁183Aのような1つのファセット(単面)又は図4Bのタイル境界壁182Aのような複数のファセット(多面)から形成することができる。
【0071】
[0081]原子炉炉心101は、減速材冷却ループの流路内で絶縁体要素102A~Nと減速材要素103A~Nとの間を接合するために、減速材冷却剤170Aの絶縁境界内にチューブライナ106A~Nを含む。それぞれのチューブライナ106A~Nは、核燃料タイル104A~Nの核燃料タイルアレイ114からそれぞれの減速材要素103A~Nを被覆するより低い水素透過性を有するクラッディングとして形成される。したがって、減速材要素103Aは、好適には、チューブライナ106A、減速材冷却剤通路121A、絶縁体要素102A、そして最後に核燃料タイル104Aによって囲まれる。
【0072】
[0082]それぞれの減速材要素103A~Nは、それぞれの絶縁体要素102A~Nによって核燃料タイル104A~Nの核燃料タイルアレイ114から絶縁される。第1の核燃料タイル104Aを見ると、第1の減速材要素103Aが第1のチューブライナ106Aの内側に配置され、第1の核燃料タイル104Aの内側には、第1の絶縁体要素102Aが配置されている。第1の減速材冷却剤通路121Aは、第1のチューブライナ106Aと第1の絶縁体要素102Aとの間に配置される。第2の減速材要素103B、第2のチューブライナ106B、及び第2の減速材冷却剤通路121B(拡大図では見えず)は、同様の関係で配置される。第1の核燃料タイル104Bは、第1の複数の核燃料横方向ファセット181A~Nを含む。核燃料横方向ファセット181Aは、第1の絶縁体要素102Aに隣接し、核燃料横方向ファセット181Cは、第2の核燃料タイル104Bに隣接する。図3では、核燃料横方向ファセット181Aは球面を含み、核燃料横方向ファセット181Cは平面を含む。
【0073】
[0083]第3の核燃料タイル104Cを見ると、第3の減速材要素103Cが第3のチューブライナ106Cの内側に配置され、第2の核燃料タイル104Bの内側には、第3の絶縁体要素102Cが配置されている。第3のチューブライナ106Cと第3の絶縁体要素102Cとの間には、第3の減速材冷却剤通路121Cが配置されている。第4の減速材要素103D、第4のチューブライナ106D、及び第4の減速材冷却剤通路121D(拡大図では見えず)は、同様の関係で配置される。第2の核燃料タイル104Bは、第2の複数の核燃料横方向ファセット191A~Nを含む。核燃料横方向ファセット191Aは、第3の絶縁体要素102Cに隣接し、核燃料横方向ファセット191Cは、第1の核燃料タイル104Aに隣接する。この例では、核燃料横方向ファセット191Aは球面を含み、核燃料横方向ファセット191Cは平面を含む。
【0074】
[0084]さらに示すように、第1の複数の核燃料横方向ファセット181A~N及び第2の複数の核燃料横方向ファセット191A~Nは、互いに隣接して5つの燃料冷却剤通路141A~Eを集合的に形成する。この例では、第1の核燃料タイル104Aの核燃料横方向ファセット181D及び第2の核燃料タイル104Bの核燃料横方向ファセット191Dはそれぞれ、第2の燃料冷却剤通路141Bのそれぞれの部分(例えば、ハーフリング)を形成する球面を含む。
【0075】
[0085]U-Modを実装する原子炉炉心101は、水素保持のためにそれぞれのチューブライナ106A~Nの内側に配置されたそれぞれの減速材要素103A~Nを含む。それぞれのチューブライナ106A~Nは、それぞれの減速材要素103A~Nとそれぞれの減速材冷却剤通路121A~Nとの間にある。それぞれの減速材冷却剤通路121A~Nは、それぞれのチューブライナ106A~Nとそれぞれの絶縁体要素102A~Nとの間にある。それぞれの絶縁体要素102A~Nは、それぞれの減速材冷却剤通路121A~Nとそれぞれの核燃料タイル104A~Nとの間にある。
【0076】
[0086]チューブライナ106A~Nは、高温熱絶縁体(絶縁体要素102A~N)及び低温固相中性子減速材(減速材要素103A~N)のための支持体を含むことができる。チューブライナ106A~Nは、減速材要素103A~N内の水素保持を実現し、減速材冷却剤通路121A~Nと絶縁体要素102A~Nとの組み合わせは、減速材要素103A~Nが核燃料タイル104A~Nよりも著しく低い温度にあることを可能にする。チューブライナ106Aは、減速材要素103Aと減速材冷却剤通路121Aとの間に位置する。減速材冷却剤通路は、チューブライナ106Aと核燃料タイル104Aとの間に位置する。
【0077】
[0087]チューブライナ106Aは水素バリア材料で形成され、絶縁体要素102Aは低熱伝導性材料で形成される。チューブライナ106A~Nは、減速材要素103A~Nを被覆する連続織り原子炉級SiC/SiC複合閉端管とすることができる。端部接合設計は、良好な照射及び機械的性能を達成する機械的及び液相焼結(LPS)接合部の組み合わせであり得る。
【0078】
[0088]U-Modシステムを実装するために、原子炉システム100は、より低温のヒートシンクも含むことができる。閉ループ出力サイクルについて、最も直接的な方法は、出力サイクルのコールドエンドである。別の選択肢は、非加熱原子炉入口であり、減速材冷却剤170Aは、原子炉入口、圧縮機出口、又は出力サイクルのコールドエンドなどの出力サイクルの冷却部から来る。追加で、外部ヒートシンク、外部コールドシンク、又は別個の出力サイクルを一緒に使用することもできる。
【0079】
[0089]図4A図4Bは、絶縁体要素102A~Nの絶縁体要素アレイ112、減速材要素103A~Nの減速材要素アレイ113、及び核燃料タイル104A~Nの核燃料タイルアレイ114の第1のインターロッキング幾何学形状パターン400を示す。図4A図4Bの第1のインターロッキング幾何学形状パターン400には、19個の絶縁体要素102A~N、19個の減速材要素103A~N、42個の核燃料タイル104A~N、19個の減速材冷却剤通路121A~N、及び78個の完成燃料冷却剤通路141A~Nが示される。
【0080】
[0090]核燃料タイル104A~Nは、連続的なインターロッキングパターンを有する最適化された幾何学的形状を有し、核燃料タイル104A~N間のギャップを最小にし、事故シナリオ中の原子炉炉心101の熱伝達を最大化する。最適化された幾何学的形状は、核燃料から核燃料冷却剤170B及び周囲の構造への熱伝達を最大化し、核燃料タイル104A~N間の熱伝導を可能にし、コア内高性能減速材と一体化し、高温マトリックス152内に埋め込まれたTRISO燃料粒子151A~Nを実装する。核燃料タイル104A~Nの高温マトリックス152内に懸濁されたTRISO燃料粒子151A~Nは、減速材要素103A~N内の温度を制限しながら、発電及び/又は処理熱のための高温ガス出口を提供する。
【0081】
[0091]図示のように、核燃料タイル104Aは、それぞれの核燃料タイル104A~Nの外周186を形成するために不連続である複数の核燃料横方向ファセット181A~Lを含む。本明細書で使用される場合、「不連続」とは、核燃料横方向ファセット181A~Nによって集合的に形成された外周186が連続的な丸い(例えば、円形又は楕円形)周囲を形成しないことを意味する。外周186は、複数の平面、非球面、球面、又は自由曲面を含む。本明細書で使用される場合、「自由曲面」は、平面などの規則的な面とは異なり、堅い半径方向寸法、あるいは非球面又は球面(例えば、円筒面、円錐面、二次面)を有さない。
【0082】
[0092]核燃料横方向ファセット181A~C、181E~G、181I~Kは、それぞれタイル境界壁182A~Cを形成する。核燃料横方向ファセット181D、181H、及び181Lは、それぞれ絶縁体要素境界壁183A~Cを形成する。それぞれのタイル境界壁182A~Cは、それぞれの絶縁体要素境界壁183A~Cと交互になって、外周186の交互パターンを形成する。それぞれのタイル境界壁182A~Cは、平面を含む。
【0083】
[0093]図4Bに示すように、タイル境界壁182Aは、対向する端部に2つの核燃料横方向ファセット181A、181Cを含み、その間に核燃料横方向ファセット181Bが延在する。タイル境界壁182Aの例では、2つの核燃料横方向ファセット181A、181C(例えば、第1及び第2の端部セグメント)は、対向する端部にあり、それぞれ平面を含む。その間に延在する核燃料横方向ファセット181B(例えば、中央セグメント)は、非球面又は球面を含む。タイル境界壁182A~Cは、タイル境界壁182Aの幾何学的形状のようなそれぞれの幾何学的形状で形成される。それぞれのタイル境界壁182A~Cは、他のそれぞれの核燃料タイル104A~Nに隣接する。それぞれの絶縁体要素境界壁183A~Cは、それぞれの絶縁体要素102A~Nに隣接する。それぞれの絶縁体要素境界壁183A~Cは、非球面又は球面を含む。
【0084】
[0094]上記のように、黒鉛減速原子炉は、一般に非常に大規模である。黒鉛減速原子炉をより小さくするには、炉心がほとんど核分裂性材料を含まないため、原子炉炉心燃料補給が必要である。頻繁な燃料補給は、オンサイト燃料補給を行わない小型原子炉とは適合しない。U-Modは、減速材要素103A~N(例えば、ZrH又はBe系低温固相減速材)を絶縁体要素102A~N(例えば、耐放射線性高温材料)で包囲して低温固相減速材の構造強度を高め、許容可能な低温を維持するように断熱することによって実装される。これにより、減速材要素103A~Nではなく原子炉炉心101のより大きな体積として核燃料タイル104A~N(Sブロック)が使用可能になり、小型原子炉炉心101からのより長い寿命が可能になる。U-Modによって使用可能になるより小さい原子炉炉心101のサイズは、黒鉛減速システムよりも小型のフォームファクタを可能にし、また、高い出力密度で動作しながら、建設コストを低減し、輸送性を高めることができる。
【0085】
[0095]U-Modの別の利点は、TRISO燃料粒子151A~N中の低アッセイ低濃縮ウラン(LEU)燃料(一般に10%未満の235U)を利用することができる小型原子炉システム100の実施可能性要件である。多くの新しい先進原子炉システムは、高アッセイ低濃縮ウラン燃料(一般に10%より大きい235U)を必要とし、これは現在製造されておらず、より多くの増殖関連の懸念を有する。
【0086】
[0096]図5は、絶縁体要素102A~Nの絶縁体要素アレイ112、減速材要素103A~Nの減速材要素アレイ113、及び核燃料タイル104A~Nの核燃料タイルアレイ114の第2のインターロッキング幾何学形状パターン500を示す。図5では、それぞれの核燃料タイル104A~Nの核燃料横方向ファセット181A~Fは、それぞれの絶縁体要素102A~Nと他のそれぞれの核燃料タイル104A~Nとの境界を互い違いにする。
【0087】
[0097]図5の第2のインターロッキング幾何学形状パターン500では、7つの絶縁体要素102A~G、7つの減速材要素103A~G、24個の核燃料タイル104A~X、7つの減速材冷却剤通路121A~G、及び24個の燃料冷却剤通路141A~Xが示されている。それぞれの絶縁体要素102A~Gは、チューブ又はパイプとして成形される。それぞれの絶縁体要素102A~Nは、炭化ケイ素を含むことができる。それぞれの絶縁体要素102A~Gは、2つ以上の核燃料タイル104A~Nのそれぞれの絶縁境界183A~C壁をライニングしている。絶縁体要素102A~Gは、減速材要素103A~Gを被覆するための原子炉級SiC又はSiC複合閉端管とすることができる。
【0088】
[0098]図示のように、それぞれの絶縁体要素102A~Gは、その中に長手方向に形成された複数の減速材開口部195A~Gのそれぞれの減速材開口部195A~G(例えば、空間又は孔)を含む円筒として成形される。それぞれの減速材要素103A~Gは、それぞれの減速材開口部195A~Gの内側に配置される。それぞれの減速材要素103A~Nは、例えば、炭化ベリリウム又は酸化ベリリウムなどのベリリウムを含むことができる。
【0089】
[0099]第1のU-Modの例では、減速材要素103A~Gは、ベリリウムが浸透した高体積分率チョップド繊維炭化ベリリウム(BeC)複合材から形成される。BeC-Be複合体の焼結は、BeとCとの間の発熱反応を利用することができ、湿潤を促進するために少量のSiを使用する。焼結することにより、減速材要素103A~Gは、BeCウェブ内のBeから構成することができるBe金属マトリックスとして形成される。Be金属マトリックスは、マトリックス体積分率セット(約0~約50%)を含む。第2のU-Modの例では、減速材要素103A~Gの固相減速材はZrHを含み、これは構造的に強固な絶縁体要素102A~Gで被覆された円筒形ペレットとして成形することができる。減速材要素103A~Gは、減速材冷却剤通路121A~Gによって、核燃料タイル104A~Xとは別個の冷却経路で冷却される。
【0090】
[0100]高温マトリックス152に埋め込まれたTRISO燃料粒子151A~Nから形成された核燃料タイル104A~Nは、直流焼結(DCS)によって形成することができる。核燃料タイル104A~Nは、高レベルの燃料燃焼度(>>100GWd/メートルトン)を達成し、極端な温度(例えば、約1,200℃)で動作し、照射下で優れた挙動を有する。核燃料タイル104A~Nは、高温マトリックス152内に50%を超える体積充填率のTRISO燃料粒子151A~Nを含むことができる。高温マトリックス152中に分散されたTRISO燃料粒子151A~Nは、低密度炭素、二元炭化物層、及び熱分解黒鉛の交互又は連続層によってコーティングされた燃料核を含むことができる。二元炭化物層は、炭化ケイ素(SiC)、又は炭化チタン(TiC)、炭化ジルコニウム(ZrC)、炭化ニオブ(NbC)、若しくはそれらの組み合わせなどの高融点金属炭化物を含むことができる。二元炭化物層が高融点金属炭化物で形成される場合、いくつかの利点を提供することができる。まず、二元炭化物層を形成する高融点金属炭化物は、TRISO燃料粒子151A~Nが、超高温動作(>3000度ケルビン)のための核分裂性燃料核を保持する複数の保護障壁を提供することを可能にする。高融点金属炭化物はまた、高温マトリックス152の照射損傷を低減するために核分裂生成物を減衰させる。したがって、高融点炭化物層は、核分裂生成物を捕捉して、NTP原子力システム100内の核燃料冷却剤170B(例えば、水素などの推進剤)への漏出、又は高温マトリックス152との相互作用を防止する圧力容器層として挙動する。
【0091】
[0101]図6は、絶縁体要素102A~Nの絶縁体要素アレイ112、減速材要素103A~Nの減速材要素アレイ113、及び核燃料タイル104A~Nの核燃料タイルアレイ114の第3のインターロッキング幾何学形状パターン600を示す。図6の例では、2つの絶縁体要素102A~B、2つの減速材要素103A~B、10個の核燃料タイル104A~J、2つの減速材冷却剤通路121A~B、及び32個の完成燃料冷却剤通路141A~Nが示される。図6の第3のインターロッキング幾何学形状パターン600では、それぞれの核燃料タイル104A~Jは、2つのタイル境界壁182A~B及び2つの絶縁体要素境界壁183A~Bを含む。タイル境界壁182A~Bはそれぞれ、それぞれ10個の核燃料横方向ファセット181A~J及び181M~Vから形成され、これらは平面を有する球面又は非球面の交互パターンである。絶縁体要素界面壁183A~Bはそれぞれ、それぞれ2つの核燃料横方向ファセット181K~L及び181W~Xから形成され、これらは同様に、平面を有する球面又は非球面の交互パターンである。
【0092】
[0102]図6に示すように、それぞれの絶縁体要素102A~Bは、その中に長手方向に形成されたそれぞれの減速材開口部195A~Bを含む角柱として成形される。それぞれの減速材要素103A~Bは、それぞれの減速材開口部195A~Bの内側に配置される。それぞれの絶縁体要素102A~Bは、この例では三角柱である、角柱としてそれぞれの絶縁体要素102A~Nを集合的に成形する複数の絶縁体要素横方向ファセット196A~N(例えば、30個が示されている)を含む。絶縁体要素横方向ファセット196A~Nは、平面、非球面、球面、又は自由曲面である。角柱は、複数の絶縁体要素境界壁198A~Cを含み、例えば、三角柱の例では3つの絶縁体要素境界壁198A~Cが示されている。絶縁体要素境界壁198A~Cはそれぞれ、絶縁体要素横方向ファセット196A~Nのサブセットを含む。
【0093】
[0103]絶縁体要素境界壁198A~Cは、非球形又は球形の表面を有する平面の交互パターンを含む。図6の例では、10個の絶縁体要素横方向ファセット196A~Jが、非球形又は球形の表面を有する平面形状の表面の交互パターンを有する第1の絶縁体要素境界壁198Aを形成する。
【0094】
[0104]図7は、摂氏での最大原子炉出口温度710及びメガワット(MW)での名目出力レベル705を示す原子炉出口温度グラフ700である。原子炉出口温度グラフ700は、ベースライン原子炉炉心720と、図5及び先進(Adv.)に示すような基本S-Block及びU-Mod730を実装する原子炉炉心101の構造とを比較する。図6に示すようなS-Block及びU-Mod740。原子炉出口温度グラフ700に示すように、ベースライン原子炉炉心720と比較して、S-Block及びU-Mod730、740を実装する原子炉炉心101は、安全性、信頼性、小型化、及び効率を維持しながら、より広い範囲の最大原子炉出口温度710及び名目出力レベル705を達成する。図示のように、先進S-Block及びU-Mod740は、500℃の出口温度で約70MWth、又は1000℃に近い10MWthのいずれかで動作することができる。基本S-Block及びU-Mod730並びに先進S-Block及びU-Mod740構造の両方は、より良好な原子炉内炉心101内の熱伝達、平均原子炉炉心101の比熱を可能にし、原子炉炉心101から熱を除去する能力を高める。
【0095】
[0105]図8は、黒鉛810と比較した、絶縁体要素102A~Nを形成するための2つの候補高温熱絶縁体802A~Bと、減速材要素103A~Nを形成する6つの候補低温固相減速材803A~FとのU-Mod物理的特性表800である。U-Mod物理的特性表800に示すように、すべての低温固相減速材803A~Fは減速能では黒鉛810よりも著しく良好な中性子減速材である。高温熱絶縁体802A~Bは、減速能では黒鉛よりも良好な中性子減速材ではない。高温熱絶縁体802A~Bを低温固相減速材803A~Fと組み合わせることにより、U-Modによって優れた加工性能が達成される。U-Modの2つの加工構造は優れている。第1の加工U-Mod構造では、減速材要素103A~Nは、原子炉級化学気相成長(CVD)SiC複合材クラッディングから形成された剛性被覆高温熱絶縁体802A内に収容された水素化ジルコニウム(ZrH)803Aを含む固相減速材803Aから形成される。第2の加工U-Mod構造では、減速材要素103A~Nは、原子炉級のSiC複合材クラッディングから形成された高温熱絶縁体802Aに同様に収容される炭化ベリリウム(BeC)803Bを含む固相減速材803Bから形成される。
【0096】
[0106]図9は、S-Block及びU-Modを実装する原子炉炉心101の熱分析グラフ900であり、軸線方向距離905に応じた温度変化の様子910を示す。熱分析グラフ900に示すように、核燃料タイル104A~N(S-Block)の核燃料タイル最大温度904は、約0センチメートル~0.3センチメートルの軸線方向距離905において約1,200度ケルビンである。核燃料冷却剤170Bの核燃料冷却剤最高温度970Bは、約0センチメートル~0.1センチメートルの軸線方向距離905で約1,150度ケルビンである。減速材要素103A~N(U-Mod)の減速材要素最大温度903は、約0.3センチメートル~0.7センチメートルの軸線方向距離905で約800度ケルビンである。減速材冷却剤170Aの減速材冷却剤最高温度970Aは、約0.5センチメートル~0.7センチメートルの軸線方向距離905で約750度ケルビンである。したがって、核燃料タイル104A~NのS-Block構造は、効率を高めるために核燃料タイル104A~N間の熱伝達を増加させ、減速材要素103A~N及び絶縁体要素102A~NのU-Mod構造は、減速材要素103A~Nから熱を除去する能力を増加させる。
【0097】
[0107]図10は、S-Block及びU-Modを実装する2つの異なる原子炉炉心101A~Bの逓減グラフ1000である。図示のように、原子炉炉心101の年数で測定された寿命1005にわたる係数k-有効(k-eff)1010が、改善される。中性子増倍係数としても知られるK-eff1010は、核燃料タイル104A~Nの高温マトリックス152に懸濁されたTRISO燃料粒子151A~N中の核分裂性材料の臨界状態を特徴付ける。一般に、K-eff=生成された中性子の数/失われた中性子の数(漏れ又は吸収による)である。K-eff1010が1以上である場合にのみ、核分裂連鎖反応を持続させることができる。図示のように、基本S-Block及びU-Mod730は、約10年の寿命1005Aを有する原子炉炉心101Aを可能にする。先進S-Block及びU-Mod740は、約15年の寿命1005Bを有する原子炉炉心101Bを可能にする。基本S-Block及びU-Mod730並びに先進S-Block及びU-Mod740の両方は、原子炉システム1000を商業的に実現可能にする大規模出力密度を可能にする。
【0098】
[0108]図11は、6つの異なる原子炉システム1100A~Fの原子炉質量1105、出力レベル1106、質量当たり出力1107、出口温度1108、及びウラン235(U-235)濃縮1109を比較する原子炉炉心性能及び特性比較表1101である。原子炉質量1105(キログラム(kg))、出力レベル1106(キロワット電気(kWe))、出力/質量1107(ワット電気/キログラム(We/kg))、及び出口温度1108(ケルビン(K)度)によって測定されるように、原子炉炉心101内で基本S-Block及びU-Mod730を実装する第1の原子炉システム1100Aは、JIMO原子炉システム1100Dと比較してわずかに改善された性能を達成する。重要なことに、基本S-Block及びU-Mod730で達成されるこのわずかに改善された性能は、JIMO原子炉システム1100Dで実施される高濃縮ウラン(HEU)U-235濃縮ではなく、低濃縮ウラン(LEU)であるU-235濃縮1109Aで達成される。JIMO原子炉システム1100Dは、米国航空宇宙局「Prometheus Project Final Report」982-R120461に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0099】
[0109]原子炉炉心101内に先進S-Block及びU-Mod740を実装する第2の原子炉システム1100Bは、キロ出力導出型原子炉システム1100Cの原子炉質量1105Eと同じ原子炉質量1105Bを有するが、先進S-Block及びU-Mod740は、出力レベル1106B、質量あたりの出力1107B、及び出口温度1108Bを主に改善する。キロ出力導出型原子炉システム1100Cは、Patrick McClure、David Postonの「Design and Testing of Small Nuclear Reactors for Defense and Space Applications、Invited Talk to ANS Trinity Section」に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0100】
[0110]基本S-Block及びU-Mod730の原子炉質量1105Aはわずか1,500kgであり、先進S-Block及びU-Mod740の原子炉質量1105Bは3,000kgである。S-Block及びU-Modと同様に、メガ出力原子炉システム1100Fは、LEUU-235濃縮1109Fを実装するが、原子炉質量1105Fは、基本S-Block及びU-Mod730の100We/kgの改善された質量当たり出力1107A、及び先進Sブロック及びU-Mod740の333We/kgの質量当たり出力1107Bと比較して、ほぼ22,000キログラムで91We/kgの質量当たり出力1107Fである。メガ出力原子炉システム1100Fは、Patrick McClure、David Postonの「Design and Testing of Small Nuclear Reactors for Defense and Space Applications」、Invited Talk to ANS Trinity Sectionにも記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0101】
[0111]最後に、NASA核分裂面システム原子炉システム1100Cは、David I.Postonの「Reference Reactor Module Design for NASA’s Lunar Fission Surface Power System」、Proceedings of Nuclear and Emerging Technologies for Space 2009、Atlanta、GA、2009年6月に記載され、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。全体として、NASA核分裂面システム原子炉システム1100Dは、HEU U-235濃縮1109Cを利用するにもかかわらず、原子炉質量1105C、出力レベル1106C、質量当たりの出力1107C、出口温度1108C、及びウラン235(U-235)濃縮1109Cを含む性能及び特性が、基本S-Block及びU-Mod730並びに先進S-Block及びU-Mod740の両方と比較して劣っている。
【0102】
[0112]図11の原子炉炉心性能及び特性比較表1101は、原子炉炉心101の構造に実装されたS-Block及びU-Mod技術が、LEU U-235濃縮を用いても、比較的低い原子炉質量1105、高出力レベル1106、質量当たり高出力1107、及び高出口温度1108を達成することを実証する。要約すると、S-Block及びU-Modは、原子炉炉心101の安全性、信頼性、熱伝達、効率、及び小型化を向上させる。
【0103】
[0113]保護の範囲は、以下の特許請求の範囲によってのみ限定される。その範囲は、本明細書及び以下の審査履歴に照らして解釈されるときに特許請求の範囲で使用される文言の通常の意味と一致するほど広く、すべての構造的及び機能的均等物を包含するように解釈されるべきである。それにもかかわらず、特許請求の範囲のいずれも、米国特許法第101条、102条又は103条の要件を満たさない主題を包含することを意図しておらず、そのように解釈されるべきでもない。このような主題の意図しない包含は、本明細書によって放棄される。
【0104】
[0114]本明細書で使用される用語及び表現は、特定の意味が本明細書に別途記載されている場合を除いて、それらの対応するそれぞれの調査及び研究の分野に関してそのような用語及び表現に与えられる通常の意味を有することが理解されよう。第1及び第2などの関係用語は、そのような実体又は動作間の実際のそのような関係又は順序を必ずしも必要とせず、又は暗示せずに、1つの実体又は動作を別の実体又は動作から区別するためにのみ使用され得る。「備える(comprises)」、「備える(comprising)」、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」、「有する(with)」、「形成される(formed of)」という用語、又はそれらの任意の他の変形は、非排他的な包含を網羅することを意図しており、それにより、要素又は工程の列挙を備える又は含むプロセス、方法、物品、又は装置は、それらの要素又は工程のみを含むのではなく、明示的に列挙されていない、又はそのようなプロセス、方法、物品、若しくは装置に固有ではない他の要素又は工程を含むことができる。「a」又は「an」が先行する要素は、さらなる制約なしに、その要素を含むプロセス、方法、物品、又は装置における追加の同一の要素の存在を排除しない。
【0105】
[0115]追加で、上記の詳細な説明では、本開示を簡素化する目的で、様々な特徴が様々な例で一緒にグループ化されていることが分かる。この開示方法は、特許請求される例が各請求項に明示的に記載されているよりも多くの特徴を必要とするという意図を反映すると解釈されるべきではない。むしろ、以下の特許請求の範囲が反映するように、保護されるべき主題は、任意の単一の開示された例のすべての特徴よりも少ない特徴にある。したがって、以下の特許請求の範囲は詳細な説明に組み込まれ、各請求項は別個に特許請求される主題として独立している。
【0106】
[0116]上記は、最良の形態及び/又は他の例であると考えられるものを説明したが、その中で様々な修正が行われてもよく、本明細書に開示される主題は様々な形態及び例で実装されてもよく、それらは多数の用途に適用されてもよく、そのうちのいくつかのみが本明細書に記載されていることが理解される。以下の特許請求の範囲によって、本概念の真の範囲内に入る任意の、及びすべての修正及び変形を請求することが意図されている。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2022-05-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
[0001]本出願は、2020年10月4日に出願された国際出願第PCT/US2020/054190号の米国移行特許出願であり、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。国際出願第PCT/US2020/054190号は、「Nuclear System for Power Production in Space」と題する、2019年10月4日に出願された米国仮特許出願第62/910,561号の優先権を主張し、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0002
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0002】
[0002]本出願は、2020年10月4日出願の「Integrated In-Vessel Neutron Shield」と題する国際出願第PCT/US2020/054188号(国際公開第WO2021/067901号として2021年4月8日に公開)に関し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本出願はまた、2020年10月4日出願の「Automatic Shutdown Controller for Nuclear Reactor System with Control Drums」と題する、国際出願第PCT/US2020/054189号(国際公開第WO2021/067902号として2021年4月8日に公開)にも関し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁体要素の絶縁体要素アレイと、減速材要素の減速材要素アレイとを含む原子炉炉心であって、それぞれの減速材要素が、それぞれの絶縁体要素の内側に配置された低温固相減速材から形成される、原子炉炉心と、
核燃料タイルの核燃料タイルアレイであって、それぞれの核燃料タイルが、前記それぞれの絶縁体要素又は別のそれぞれの核燃料タイルに隣接する複数の核燃料横方向ファセットを含む、核燃料タイルの核燃料タイルアレイと
を備え、
前記それぞれの減速材要素が、前記それぞれの絶縁体要素によって前記核燃料タイルの核燃料タイルアレイから絶縁されている、原子炉システム。
【請求項2】
前記原子炉炉心が、水素バリア材料で形成された複数のチューブライナをさらに含み、
前記それぞれの減速材要素が、水素保持のためにそれぞれのチューブライナの内側に配置されている、請求項1に記載の原子炉システム。
【請求項3】
当該原子炉システムは、複数の減速材冷却剤通路をさらに備え、
前記それぞれのチューブライナが、それぞれの減速材冷却剤通路によって囲まれ、
前記それぞれの減速材冷却剤通路が、前記それぞれの絶縁体要素によって囲まれている、請求項2に記載の原子炉システム。
【請求項4】
前記それぞれのチューブライナが、前記それぞれの減速材要素と前記それぞれの減速材冷却剤通路との間にあり、
前記それぞれの減速材冷却剤通路が、前記それぞれのチューブライナと前記それぞれの絶縁体要素との間にある、請求項3に記載の原子炉システム。
【請求項5】
前記それぞれの絶縁体要素が、前記それぞれの減速材冷却剤通路と前記それぞれの核燃料タイルとの間にある、請求項3に記載の原子炉システム。
【請求項6】
前記それぞれのチューブライナが、前記それぞれの減速材要素を被覆するクラッディングとして形成されている、請求項2に記載の原子炉システム。
【請求項7】
前記クラッディングが、密閉容器を含み、
前記それぞれの減速材要素を形成する前記低温固相減速材材料が、前記密閉容器の内側に配置されている、請求項6に記載の原子炉システム。
【請求項8】
前記それぞれのチューブライナが、前記それぞれの減速材要素上にコーティングとして形成され、
前記それぞれの減速材要素を形成する前記低温固相減速材材料が、前記コーティングの内側に配置されている、請求項6に記載の原子炉システム。
【請求項9】
前記水素バリア材料が、Al、SiC、ZrC、MgO、Mo、W、Cu、Ni、Cr、又はそれらの組み合わせを含む、請求項2に記載の原子炉システム。
【請求項10】
前記絶縁体要素がそれぞれ、高温熱絶縁体で形成され、
前記高温熱絶縁体が、低密度SiC、安定化酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、低密度ZrC、低密度炭素、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の原子炉システム。
【請求項11】
前記低温固相減速材が、MgH、YH、ZrH、CaH、ZrO、CaOx、BeO、BeC、Be、濃縮炭化ホウ素、11C、CeH、LiH、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の原子炉システム。
【請求項12】
前記それぞれの絶縁体要素が、中に長手方向に形成された減速材開口部を含む角柱又は円筒として成形され、
前記それぞれの減速材要素が、前記減速材開口部の内側に配置されている、請求項1に記載の原子炉システム。
【請求項13】
前記それぞれの絶縁体要素が、前記角柱として前記それぞれの絶縁体要素を集合的に形成する複数の絶縁体要素横方向ファセットを含む、請求項12に記載の原子炉システム。
【請求項14】
前記それぞれの絶縁体要素が、前記角柱として成形され、
前記角柱が、複数の絶縁体要素境界壁を含み、
前記絶縁体要素境界壁がそれぞれ、前記絶縁体要素横方向ファセットのサブセットを含む、請求項13に記載の原子炉システム。
【請求項15】
前記絶縁体要素横方向ファセットが、平面、非球面、球面、又は自由曲面である、請求項14に記載の原子炉システム。
【請求項16】
前記絶縁体要素境界壁が、非球面又は球面を有する平面の交互パターンを含む、請求項15に記載の原子炉システム。
【請求項17】
前記角柱が、三角柱であり、
前記それぞれの絶縁体要素が、3つの絶縁体要素境界壁を含む、請求項14に記載の原子炉システム。
【請求項18】
前記核燃料タイルがそれぞれ、高温マトリックスの内側に埋め込まれたコーティングされた燃料粒子からなる燃料コンパクトから形成され、
前記高温マトリックスが、炭化ケイ素、炭化ジルコニウム、炭化チタン、炭化ニオブ、タングステン、モリブデン、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の原子炉システム。
【請求項19】
前記コーティングされた燃料粒子が、三構造等方性(TRISO)燃料粒子又は二構造等方性(BISO)燃料粒子を含む、請求項18に記載の原子炉システム。
【請求項20】
前記複数の核燃料横方向ファセットが不連続であり、前記それぞれの核燃料タイルの外周を形成している、請求項1に記載の原子炉システム。
【請求項21】
前記外周が、複数の平面、非球面、球面、又は自由曲面を含む、請求項20に記載の原子炉システム。
【請求項22】
前記核燃料横方向ファセットが、前記それぞれの絶縁体要素と他のそれぞれの核燃料タイルとの境界を互い違いにする、請求項1に記載の原子炉システム。
【請求項23】
前記核燃料横方向ファセットが、複数のタイル境界壁及び複数の絶縁体要素境界壁を含み、
それぞれのタイル境界壁が、それぞれの絶縁体要素境界壁と交互になって、外周の交互パターンを形成している、請求項1に記載の原子炉システム。
【請求項24】
前記それぞれのタイル境界壁が平面を含む、請求項23に記載の原子炉システム。
【請求項25】
前記それぞれのタイル境界壁が、対向する端部に2つの核燃料横方向ファセットを含み、その間に核燃料横方向ファセットが延在し、
対向する端部上の前記2つの核燃料横方向ファセットが、平面を含み、
間に延在する前記核燃料横方向ファセットが、非球面又は球面を含む、請求項23に記載の原子炉システム。
【請求項26】
前記それぞれのタイル境界壁が、他のそれぞれの核燃料タイルに隣接し、
前記それぞれの絶縁体要素境界壁が、前記それぞれの絶縁体要素に隣接している、請求項23に記載の原子炉システム。
【請求項27】
前記それぞれの絶縁体要素境界壁が、非球面又は球面を含む、請求項23に記載の原子炉システム。
【請求項28】
前記それぞれの絶縁体要素が、チューブ又はパイプとして成形され、
前記それぞれの絶縁体要素が、2つ以上の核燃料タイルの前記それぞれの絶縁境界壁をライニングしている、請求項27に記載の原子炉システム。
【請求項29】
前記それぞれの減速材要素が内側に配置された前記それぞれの絶縁体要素が、内部に形成されたそれぞれの減速材冷却剤通路を含む、請求項1に記載の原子炉システム。
【請求項30】
前記それぞれの減速材冷却剤通路が、前記それぞれの減速材要素と前記それぞれの絶縁体要素との間に位置している、請求項29に記載の原子炉システム
【請求項31】
前記それぞれの減速材冷却剤通路が、平坦なリング形状の開口部である、請求項29に記載の原子炉システム
【請求項32】
前記それぞれの減速材冷却剤通路が、冷却剤を、(i)前記冷却剤を加熱することと、(ii)前記それぞれの減速材要素を冷却することとの両方を介して流し、
前記それぞれの核燃料タイルが、前記冷却剤が前記減速材冷却剤通路を通って流れた後に前記それぞれの核燃料タイルによって前記冷却剤をその後加熱するために内部に形成された1つ又は複数の燃料冷却剤通路を含み、
前記冷却剤が気体又は液体である、請求項29に記載の原子炉システム
【請求項33】
前記それぞれの減速材冷却剤通路が、減速材冷却剤を、(i)前記減速材冷却剤を加熱することと、(ii)前記それぞれの減速材要素を冷却することと、の両方を介して流し、
前記それぞれの核燃料タイルが、前記それぞれの核燃料タイルとの直接接触を介して核燃料冷却剤を加熱するために前記核燃料冷却剤を流す、内部に形成された1つ又は複数の核燃料冷却剤通路を含む、請求項29に記載の原子炉システム。
【請求項34】
前記それぞれの減速材冷却剤通路を通って流れる前記減速材冷却剤が、前記減速材要素の減速材要素アレイ専用の減速材冷却剤ループ内にあり、前記核燃料冷却剤通路を含む燃料冷却剤ループから熱的に隔離され、分離されている、請求項33に記載の原子炉システム。
【請求項35】
前記減速材冷却剤ループが、前記減速材冷却剤を前記核燃料冷却剤から熱的に隔離して前記減速材要素から熱を能動的に除去し、前記原子炉炉心の動作中に前記減速材要素を前記燃料タイルの核燃料タイルアレイと比較してより低い温度に維持する、請求項34に記載の原子炉システム。
【請求項36】
前記減速材冷却剤が、前記核燃料冷却剤とは異なる、請求項34に記載の原子炉システム。
【請求項37】
前記減速材冷却剤が、核熱推進のための推進剤であるか、又は、
前記減速材冷却剤が、原子力電気推進又は核分裂面出力用の作動流体である、請求項34に記載の原子炉システム。
【請求項38】
前記減速材冷却剤が、複数の前記核燃料タイルと化学的に不適合である、請求項34に記載の原子炉システム。
【請求項39】
前記減速材冷却剤ループが、ヒートシンクを含み、
前記減速材冷却剤が、前記ヒートシンクに熱的に結合される、請求項34に記載の原子炉システム。
【請求項40】
当該原子炉システムは、ポンプ、圧縮機、送風機、又はそれらの組み合わせをさらに備え、
前記ポンプ、前記圧縮機、前記送風機、又は前記それらの組み合わせが、前記原子炉炉心の動作中に複数の前記減速材要素を冷却するため、前記減速材冷却剤を前記ヒートシンクを通って流れるように流す、請求項39に記載の原子炉システム。
【国際調査報告】