(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-01
(54)【発明の名称】特定の格子ひずみおよびドメインサイズの特性を有するCu-CHA SCR触媒
(51)【国際特許分類】
C01B 39/48 20060101AFI20221124BHJP
B01J 29/76 20060101ALI20221124BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20221124BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20221124BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
C01B39/48
B01J29/76 A ZAB
B01D53/94 222
B01D53/94 228
F01N3/08 B
F01N3/28 301E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022516433
(86)(22)【出願日】2020-09-24
(85)【翻訳文提出日】2022-03-14
(86)【国際出願番号】 IB2020058953
(87)【国際公開番号】W WO2021059197
(87)【国際公開日】2021-04-01
(32)【優先日】2019-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505470786
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】クンケス,エドゥアルド エル.
(72)【発明者】
【氏名】カーラス,カール シー.
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G073
4G169
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
本開示は、エンジン排気中の窒素酸化物(NO
x)排出を低減することができる触媒組成物を提供する。触媒組成物は、約1500オングストローム(Å)未満のドメインサイズ、約0.7%未満の結晶学的ひずみ、またはそれらの両方を有する金属イオン交換ゼオライトを含む。そのような組成物でコーティングされた触媒物品、そのような触媒組成物および物品を調製するためのプロセス、そのような触媒性物品を含む排気ガス処理システム、ならびにそのような触媒性物品およびシステムを使用して排気ガス流中のNO
xを還元するための方法がさらに提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼオライト材料であって、
a.約1500オングストローム(Å)未満のドメインサイズ、
b.粉末X線回折データの一般構造分析システム(GSAS)リートベルト解析法によるLYパラメータから決定される場合、約0.7%未満の結晶学的ひずみ、のうちの1つ以上を特徴とする、ゼオライト材料。
【請求項2】
前記ドメインサイズが、約1400Å未満である、請求項1に記載のゼオライト材料。
【請求項3】
前記ドメインサイズが、約1300Å未満である、請求項1に記載のゼオライト材料。
【請求項4】
前記ドメインサイズが、約800~約1400Åである、請求項1に記載のゼオライト材料。
【請求項5】
前記結晶学的ひずみが、約0.6%未満である、請求項1~4のいずれか一項に記載のゼオライト材料。
【請求項6】
前記結晶学的ひずみが、約0.5%未満である、請求項5に記載のゼオライト材料。
【請求項7】
前記結晶学的ひずみが、約0.4%未満である、請求項6に記載のゼオライト材料。
【請求項8】
前記ドメインサイズが約800~約1200Åであり、前記結晶学的ひずみが約0.2%~約0.6%である、請求項1~4のいずれか一項に記載のゼオライト材料。
【請求項9】
前記ドメインサイズが約800~約1100Åであり、前記結晶学的ひずみが約0.3%~約0.5%である、請求項1~4のいずれか一項に記載のゼオライト材料。
【請求項10】
前記ゼオライト材料が、アルミノシリケートゼオライトである、請求項1~9のいずれか一項に記載のゼオライト材料。
【請求項11】
約10~約45の範囲のシリカ対アルミナ比(SAR)を有する、請求項10に記載のゼオライト材料。
【請求項12】
約15~約20の範囲のSARを有する、請求項10または11に記載のゼオライト材料。
【請求項13】
前記ゼオライト材料が、CHA結晶骨格を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載のゼオライト材料。
【請求項14】
前記ゼオライト材料が、SSZ-13、SSZ-62、天然チャバザイト、ゼオライトK-G、Linde D、Linde R、LZ-218、LZ-235、LZ-236、ZK-14、SAPO-34、SAPO-4、SAPO-47、およびZYT-6からなる群から選択される、請求項1~13のいずれか一項に記載のゼオライト材料。
【請求項15】
排気ガス流中の窒素酸化物(NO
x)の軽減に効果的な選択的触媒還元(SCR)触媒組成物であって、鉄、銅、およびそれらの組み合わせから選択される金属で促進された、請求項1~14のいずれか一項に記載のゼオライト材料を含む、SCR触媒組成物。
【請求項16】
促進剤金属が、前記SCR触媒の総重量に基づいて金属酸化物として計算されて約1.0重量%~約10重量%の量で存在する、請求項15に記載のSCR触媒組成物。
【請求項17】
前記促進剤金属が、約4~約6重量%の量で存在する、請求項16に記載のSCR触媒。
【請求項18】
前記促進剤金属が、銅である、請求項15~17のいずれか一項に記載のSCR触媒組成物。
【請求項19】
リーンバーンエンジン排気ガスからの窒素酸化物(NO
x)を軽減するのに効果的なSCR触媒物品であって、請求項15~18のいずれか一項に記載の選択的触媒還元(SCR)触媒組成物が少なくともその一部上に配置された基材を含む、SCR触媒物品。
【請求項20】
前記基材が、ハニカム基材である、請求項19に記載のSCR触媒物品。
【請求項21】
前記ハニカム基材が、フロースルー基材またはウォールフローフィルタである、請求項19に記載のSCR触媒物品。
【請求項22】
前記排気ガス流中の前記NO
xの少なくとも一部が、約200℃~約600℃の温度でN
2に還元される、請求項19~21のいずれか一項に記載のSCR触媒物品。
【請求項23】
前記排気ガス流中の前記NO
xレベルが、200℃で少なくとも50%低減される、請求項22に記載のSCR触媒物品。
【請求項24】
前記排気ガス流中の前記NO
xレベルが、600℃で少なくとも70%低減される、請求項22または23に記載のSCR触媒物品。
【請求項25】
前記SCR触媒物品が、10体積%の蒸気および残りが空気の存在下で、800℃で16時間の熱エージング処理を行った後、前記SCR触媒組成物が、擬似定常状態条件下での80,000h
-1の排気ガスの体積ベースの毎時空間速度で、2.1g/in
3の触媒充填で400cpsiのセル密度および6milの壁厚を有するセルラーセラミックモノリス上に配置され、前記排気ガスが500ppmのNO、500ppmのNH
3、10%のO
2、5%のH
2O、および残りがN
2であるガス混合物を含む条件下で前記SCR触媒物品が試験される場合、200℃で約72%以上、600℃で約81%以上、またはそれらの両方の前記排気ガス流中の前記NO
xの軽減を呈する、請求項19~24のいずれか一項に記載のSCR触媒物品。
【請求項26】
排気ガス流を生成するリーンバーンエンジンの下流に、かつそれと流体連通して位置する、請求項19~25のいずれか一項に記載のSCR触媒物品を含む排気ガス処理システム。
【請求項27】
a.前記SCR触媒物品の上流に位置するディーゼル酸化触媒(DOC)、
b.前記SCR触媒物品の上流に位置する煤フィルタ、
c.前記SCR触媒物品の下流に位置するアンモニア酸化触媒(AMOx)、のうちの1つ以上をさらに含む、請求項26に記載の排気ガス処理システム。
【請求項28】
リーンバーンエンジンからの排気ガス流を処理する方法であって、前記排気ガス流を、請求項19~25のいずれか一項に記載の触媒物品または請求項26もしくは27に記載の排気ガス処理システムと、前記排気ガス流中の窒素酸化物(NO
x)のレベルを低減するのに十分な時間および温度で接触させることを含む、方法。
【請求項29】
前記排気ガス流中の前記NO
xレベルが、約200℃~約600℃の温度でN
2に低減される、請求項28に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、排気ガス処理触媒、具体的には、エンジン排気中の窒素酸化物を選択的に還元することができる触媒組成物、そのような組成物でコーティングされた触媒物品、およびそのような触媒組成物を調製するためのプロセスの分野に関する。より具体的には、選択的触媒還元(SCR)触媒として有用であり得る改善された金属促進ゼオライト、およびそれらを調製するためのプロセスが提供される。
【背景技術】
【0002】
長い年月にわたり、窒素酸化物(NOx)の有害な成分が大気汚染を引き起こしてきた。NOxは、内燃エンジン(例えば、自動車およびトラック)、燃焼設備(例えば、天然ガス、石油、石炭によって加熱される発電所)、および硝酸生成プラントなどからの排気ガスに含有される。
【0003】
NOx含有ガス混合物を処理して、大気汚染を減少させるために、様々な処理方法が使用されている。1つの処理タイプは、窒素酸化物の触媒還元を伴う。(1)一酸化炭素、水素、または低分子量炭化水素が還元剤として使用される非選択的還元プロセス、および(2)アンモニアまたはアンモニア前駆体が還元剤として使用される選択的還元プロセス、という2つのプロセスがある。選択的還元プロセスでは、高度な窒素酸化物除去は、化学量論量の還元剤を用いて達成され得る。
【0004】
選択的還元プロセスは、SCR(選択的触媒還元)プロセスと称される。SCRプロセスは、大気中の酸素の存在下で還元剤(例えば、アンモニア)を用いて窒素酸化物の触媒還元を使用し、結果として、主に窒素および蒸気の形成をもたらす:
4NO+4NH3+O2→4N2+6H2O(標準SCR反応)
2NO2+4NH3+O2→3N2+6H2O(低速SCR反応)
NO+NO2+2NH3→2N2+3H2O(高速SCR反応)
【0005】
SCRプロセスで用いられる触媒は、理想的には、水熱条件下で、広い使用温度条件範囲、例えば、200℃~600℃以上で良好な触媒活性を維持することができる必要がある。SCR触媒は、一般に、粒子の除去に使用される排気ガス処理システムの構成要素である煤フィルタの再生中などに、水熱条件で用いられる。
【0006】
SCRプロセスで用いられる現在の触媒は、酸素の存在下でアンモニア、尿素、または炭化水素のような還元剤と共に窒素酸化物のSCRで使用されている金属促進ゼオライトを含む。なかでも、鉄促進および銅促進ゼオライト触媒を含む金属促進ゼオライトSCR触媒が知られている。例えば、鉄促進ゼオライトベータは、アンモニアによる窒素酸化物の選択的還元のための効果的な市販の触媒であった。残念なことに、(例えば、局所的に700℃を超える温度での煤フィルタの再生中に示されるような)過酷な水熱条件下では、多くの金属促進ゼオライトの活性が低下し始めることが見出されている。この低下は、ゼオライトの脱アルミニウムおよびその結果として起こるゼオライト中の金属含有活性中心の損失に起因する。CHA構造タイプを有する金属促進、具体的には銅促進アルミノシリケートゼオライトは、窒素性還元剤を使用するリーンバーンエンジンにおける窒素酸化物のSCR用の触媒として、高い関心を集めている。これらの材料は、米国特許第7,601,662号に記載されているように、広い温度窓内で活性を呈し、かつ優れた水熱耐久性を呈する。
【0007】
米国特許第7,601,662号に記載されている触媒は優れた特性を呈し、例えば、SCR触媒作用の上では有用なものになるが、現在入手可能な金属促進ゼオライト性SCR触媒と比較して、改善された低温性能および向上した水熱安定性を有する金属促進ゼオライト性SCR触媒が引き続き所望されている。SCR触媒がしばしば煤フィルタの再生と関連する温度変動に曝露される軽質ディーゼル(LDD)用途では、ゼオライトの水熱安定性に特別な要求が課される。水熱安定性は、一般に、フレームワークアルミナの含有量が減少すると(すなわち、シリカ対アルミナのモル比またはSARが増加すると)増加するが、後者は、触媒活性Cuサイトの量も制限する。そのために、より低いSARのフレームワークの水熱安定性の向上は、LDD性能向上のための効果的な戦略を提示するであろう。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、一般に、特定のドメインサイズおよび結晶学的ひずみ値を特徴とするゼオライト材料を提供する。そのようなゼオライト材料は、金属で促進され、向上したNOx還元性能を有する選択的触媒還元(SCR)触媒を提供する。驚くべきことに、本開示によれば、約1500オングストローム(Å)未満のドメインサイズ、約0.7%未満の結晶学的ひずみ、またはそれらの両方を特徴とするゼオライト材料が、高温および低温の両方で優れたNOx還元性能を有する金属促進SCR触媒組成物をもたらすことが見出されている。
【0009】
したがって、一態様では、以下のうちの1つ以上を特徴とするゼオライト材料が提供される:約1500Å未満のドメインサイズ、粉末X線回折データの一般構造分析システム(GSAS)リートベルト解析法によるLYパラメータから決定される場合、約0.7%未満の結晶学的ひずみ。いくつかの実施形態では、ドメインサイズは、約1400Å未満である。いくつかの実施形態では、ドメインサイズは、約1300Å未満である。いくつかの実施形態では、ドメインサイズは、約800~約1400Åである。いくつかの実施形態では、結晶学的ひずみは、約0.6%未満である。
【0010】
いくつかの実施形態では、結晶学的ひずみは、約0.5%未満である。いくつかの実施形態では、結晶学的ひずみは、約0.4%未満である
【0011】
いくつかの実施形態では、ドメインサイズは約800~約1200Åであり、結晶学的ひずみは約0.2%~約0.6%である。いくつかの実施形態では、ドメインサイズは約800~約1100Åであり、結晶学的ひずみは約0.3%~約0.5%である。
【0012】
いくつかの実施形態では、ゼオライト材料は、アルミノシリケートゼオライト、ホウシリケート、ガロシリケート、SAPO、およびALPO、MeAPSO、およびMeAPOからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ゼオライト材料は、アルミノシリケートゼオライトである。いくつかの実施形態では、ゼオライト材料は、約10~約45の範囲のシリカ対アルミナ比(SAR)を有するアルミノシリケートゼオライトである。いくつかの実施形態では、SARは、約15~約20の範囲にある。
【0013】
いくつかの実施形態では、ゼオライト材料は、CHA結晶骨格を有する。いくつかの実施形態では、ゼオライト材料は、SSZ-13、SSZ-62、天然チャバザイト、ゼオライトK-G、Linde D、Linde R、LZ-218、LZ-235、LZ-236、ZK-14、SAPO-34、SAPO-4、SAPO-47、およびZYT-6からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ゼオライト材料は、チャバザイト(CHA)である。
【0014】
別の態様では、排気ガス流中の窒素酸化物(NOx)の軽減に効果的な選択的触媒還元(SCR)触媒組成物が提供され、SCR触媒組成物は、鉄、銅、およびそれらの組み合わせから選択される金属で促進された、本明細書に開示されるようなゼオライト材料を含む。いくつかの実施形態では、促進剤金属は、SCR触媒の総重量に基づいて金属酸化物として計算されて約1.0重量%~約10重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、促進剤金属は、約4~約6重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、促進剤金属は、銅である。
【0015】
別の態様では、リーンバーンエンジン排気ガスからの窒素酸化物(NOx)を軽減するのに効果的なSCR触媒物品が提供され、SCR触媒物品は、本明細書に開示されるような選択的触媒還元(SCR)触媒組成物がその少なくとも一部上に配置された基材を含む。いくつかの実施形態では、基材はハニカム基材である。いくつかの実施形態では、ハニカム基材は、フロースルー基材またはウォールフローフィルタである。
【0016】
いくつかの実施形態では、排気ガス流中のNOxの少なくとも一部は、約200℃~約600℃の温度でN2に還元される。いくつかの実施形態では、排気ガス流中のNOxレベルは、200℃で少なくとも50%低減される。いくつかの実施形態では、排気ガス流中のNOxレベルは、600℃で少なくとも70%低減される。
【0017】
いくつかの実施形態では、SCR触媒物品は、10体積%の蒸気および残りが空気の存在下で、800℃で16時間の熱エージング処理を行った後、SCR触媒組成物が、擬似定常状態条件下での80,000h-1の排気ガスの体積ベースの毎時空間速度で、2.1g/in3の触媒充填で400cpsiのセル密度および6milの壁厚を有するセルラーセラミックモノリス上に配置され、排気ガスが500ppmのNO、500ppmのNH3、10%のO2、5%のH2O、および残りがN2であるガス混合物を含む条件下でSCR触媒物品が試験される場合、200℃で約72%以上、600℃で約81%以上、またはそれらの両方の排気ガス流中のNOxの軽減を呈する。
【0018】
別の態様では、排気ガス流を生成するリーンバーンエンジンの下流に、かつそれと流体連通して位置する、本明細書に開示されるようなSCR触媒物品を含む排気ガス処理システムが提供される。いくつかの実施形態では、排気ガス処理システムは、SCR触媒物品の上流に位置するディーゼル酸化触媒(DOC)、SCR触媒物品の上流に位置する煤フィルタ、SCR触媒物品の下流に位置するアンモニア酸化触媒(AMOx)のうちの1つ以上をさらに含む。
【0019】
別の態様では、リーンバーンエンジンからの排気ガス流を処理する方法が提供され、本方法は、排気ガス流を本明細書に開示されるような触媒物品または排気ガス処理システムと、排気ガス流中の窒素酸化物(NOx)のレベルを低減するのに十分な時間および温度で接触させることを含む。いくつかの実施形態では、排気ガス流中のNOxレベルは、約200℃~約600℃の温度でN2に低減される。
【0020】
本発明は、以下の実施形態を非限定的に含む。
実施形態1:約1500オングストローム(Å)未満のドメインサイズ、粉末X線回折データの一般構造分析システム(GSAS)リートベルト解析法によるLYパラメータから決定される場合、約0.7%未満の結晶学的ひずみ、のうちの1つ以上を特徴とする、ゼオライト材料。
実施形態2:ドメインサイズが、約1400Å未満である、実施形態1に記載のゼオライト材料。
実施形態3:ドメインサイズが、約1300Å未満である、実施形態1または2に記載のゼオライト材料。
実施形態4:ドメインサイズが、約800~約1400Åである、実施形態1~3のいずれか1つに記載のゼオライト材料。
実施形態5:結晶学的ひずみが約0.6%未満である、実施形態1~4のいずれか1つに記載のゼオライト材料。
実施形態6:結晶学的ひずみが、約0.5%未満である、実施形態1~5のいずれか1つに記載のゼオライト材料。
実施形態7:結晶学的ひずみが、約0.4%未満である、実施形態1~6のいずれか1つに記載のゼオライト材料。
実施形態8:ドメインサイズが約800~約1200Åであり、結晶学的ひずみが約0.2%~約0.6%である、実施形態1~7のいずれか1つに記載のゼオライト材料。
実施形態9:ドメインサイズが約800~約1100Åであり、結晶学的ひずみが約0.3%~約0.5%である、実施形態1~8のいずれか1つに記載のゼオライト材料。
実施形態10:ゼオライト材料が、アルミノシリケートゼオライトである、実施形態1~9のいずれか1つに記載のゼオライト材料。
実施形態11:約10~約45の範囲のシリカ対アルミナ比(SAR)を有する実施形態1~10のいずれか1つに記載のゼオライト材料。
実施形態12:約15~約20の範囲のSARを有する、実施形態1~11のいずれか1つに記載のゼオライト材料。
実施形態13:ゼオライト材料が、CHA結晶骨格を有する、実施形態1~12のいずれか1つに記載のゼオライト材料。
実施形態14:ゼオライト材料が、SSZ-13、SSZ-62、天然チャバザイト、ゼオライトK-G、Linde D、Linde R、LZ-218、LZ-235、LZ-236、ZK-14、SAPO-34、SAPO-4、SAPO-47、およびZYT-6からなる群から選択される、実施形態1~13のいずれか1つに記載のゼオライト材料。
実施形態15:排気ガス流中の窒素酸化物(NOx)の軽減に効果的な選択的触媒還元(SCR)触媒組成物であって、鉄、銅、およびそれらの組み合わせから選択される金属で促進された、実施形態1~14のいずれか1つに記載のゼオライト材料を含む、SCR触媒組成物。
実施形態16:促進剤金属が、SCR触媒の総重量に基づいて金属酸化物として計算されて約1.0重量%~約10重量%の量で存在し、実施形態15に記載のSCR触媒組成物。
実施形態17:促進剤金属が、約4~約6重量%の量で存在する、実施形態15または16に記載のSCR触媒。
実施形態18:促進剤金属が、銅である、実施形態15~17のいずれか1つに記載のSCR触媒組成物。
実施形態19:リーンバーンエンジン排気ガスからの窒素酸化物(NOx)を軽減するのに効果的なSCR触媒物品であって、実施形態15~18のいずれか1つに記載の選択的触媒還元(SCR)触媒組成物が少なくとも一部上に配置された基材を含む、SCR触媒物品。
実施形態20:基材が、ハニカム基材である、実施形態19に記載のSCR触媒物品。
実施形態21:ハニカム基材が、フロースルー基材またはウォールフローフィルタである、実施形態19に記載のSCR触媒物品。
実施形態22:排気ガス流中のNOxの少なくとも一部が、約200℃~約600℃の温度でN2に還元される、実施形態19~21のいずれか1つに記載のSCR触媒物品。
実施形態23:排気ガス流中のNOxレベルが、200℃で少なくとも50%低減される、実施形態22に記載のSCR触媒物品。
実施形態24:排気ガス流中のNOxレベルが、600℃で少なくとも70%低減される、実施形態22または23に記載のSCR触媒物品。
実施形態25:SCR触媒物品が、10体積%の蒸気および残りが空気の存在下で、800℃で16時間の熱エージング処理を行った後、SCR触媒組成物が、擬似定常状態条件下での80,000h-1の排気ガスの体積ベースの毎時空間速度で、2.1g/in3の触媒充填で400cpsiのセル密度および6milの壁厚を有するセルラーセラミックモノリス上に配置され、排気ガスが500ppmのNO、500ppmのNH3、10%のO2、5%のH2O、および残りがN2であるガス混合物を含む条件下でSCR触媒物品が試験される場合、200℃で約72%以上、600℃で約81%以上、またはそれらの両方の排気ガス流中のNOxの軽減を呈する、実施形態19~24のいずれか1つに記載のSCR触媒物品。
実施形態26:排気ガス流を生成するリーンバーンエンジンの下流に、かつそれと流体連通して位置する、実施形態19~25のいずれか1つに記載のSCR触媒物品を含む、排気ガス処理システム。
実施形態27:SCR触媒物品の上流に位置するディーゼル酸化触媒(DOC)、SCR触媒物品の上流に位置する煤フィルタ、SCR触媒物品の下流に位置するアンモニア酸化触媒(AMOx)のうちの1つ以上をさらに含む、実施形態26に記載の排気ガス処理システム。
実施形態28:排気ガス流を、実施例19~25のいずれか1つに記載の触媒物品または実施形態26もしくは27に記載の排気ガス処理システムと、排気ガス流中の窒素酸化物(NOx)のレベルを低減するのに十分な時間および温度で接触させることを含む、リーンバーンエンジンからの排気ガス流を処理する方法。
実施形態29:排気ガス流中のNOxレベルが、約200℃~約600℃の温度でN2に低減される、実施形態28の方法。
【0021】
本開示のこれらおよび他の特徴、態様、および利点は、以下に簡潔に説明される添付の図面と共に以下の詳細な説明を読むことで明らかになるだろう。本発明は、上記の実施形態の2つ、3つ、4つ、またはそれを超える任意の組み合わせ、ならびに本開示に記載の任意の2つ、3つ、4つ、またはそれを超える特徴または要素の組み合わせを、そのような特徴または要素が本明細書の特定の実施形態の説明において明示的に組み合わされているかどうかに関わらず含む。本開示では、文脈が明らかに他のことを示さない限り、開示される発明の分離可能な特徴または要素が、その様々な態様および実施形態のいずれかにおいて、組み合わせ可能であると考えられるべきであると、全体として読み取られることが意図される。本発明の他の態様および利点は、以下で明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明の実施形態の理解を提供するために、添付図面が参照され、添付図面では、参照符号は、本発明の例示的な実施形態の構成要素を示す。図面は、単なる例であり、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。本明細書に記載の開示は、添付の図において、限定としてではなく、例として示されている。図を簡潔かつ明確にするために、図に示されている特徴は必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではない。例えば、一部の特徴の寸法は、分かりやすくするために他の特徴に対して誇張されている場合がある。さらに、適切であると考えられる場合、対応するまたは類似の要素を示すために、複数の図面で参照符号が繰り返し用いられる。
【0023】
【
図1】ウォールフローフィルタ基材の斜視図である。
【
図2】
図1aにおけるハニカムタイプの基材がウォールフローフィルタを表す、
図1に対して拡大された断面の切断図である。
【
図3A】ある特定の実施形態による3つの可能なコーティング構成の図である。
【
図3B】ある特定の実施形態による3つの可能なコーティング構成の図である。
【
図3C】ある特定の実施形態による3つの可能なコーティング構成の図である。
【
図4】本発明のSCR触媒物品が利用されている、排出処理システムの実施形態の概略図を示す。
【
図5】ある特定の実施形態による、200℃でのドメインサイズ対ひずみ%、およびNOx還元のプロットである。
【
図6】ある特定の実施形態による、600℃でのドメインサイズ対ひずみ%、およびNO
x還元のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本開示は、概して、特定のドメインサイズおよび結晶学的ひずみ値を特徴とするゼオライト性材料を提供する。これらのゼオライト性材料は、標準的なCu-チャバサイト参照SCR触媒組成物および物品と比較して、特に低温で、向上したNOx変換を有する高度な選択的触媒還元(SCR)触媒組成物および物品として有用であり得る。開示されるゼオライト性材料を調製する方法、ならびにSCR触媒組成物、触媒性物品、排気処理システム、および排気流を処理する方法がさらに提供され、各々は、開示されるゼオライト性材料を含む。
【0025】
いくつかの例示的な実施形態を記載する前に、本発明は、以下の説明に記載される構成またはプロセスステップの詳細に限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、様々な手法で実施または実行することができる。
【0026】
定義
本明細書における冠詞「1つの(a)」および「1つの(an)」は、文法的目的語の1つまたは1つより多く(例えば、少なくとも1つ)を指す。本明細書に引用される範囲は全て、包括的である。全体を通して使用される「約」という用語は、小さな変動を表現し、説明するために使用される。例えば、「約」は、数値が、±5%、±4%、±3%、±2%、±1%、±0.5%、±0.4%、±0.3%、±0.2%、±0.1%、または±0.05%変わり得ることを意味し得る。全ての数値は、明示的に示されているかどうかに関係なく、「約」という用語で修飾される。「約」という用語によって修飾された数値には、特定の識別された値が含まれる。例えば、「約5.0」は、5.0を含む。本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書で別途指示がない限り、単に範囲内に含まれる各個別の値を個々に参照する簡略的な方法として機能することを意図しており、各個別の値は、本明細書で個別に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。
【0027】
「軽減」という用語は、何らかの手段によって引き起こされる量の減少を意味する。
【0028】
「AMOx」とは、1つ以上の金属(典型的にはPtであるが、これに限定されることはない)とアンモニアを窒素に変換するのに好適なSCR触媒とを含有する触媒である、選択的アンモニア酸化触媒を指す。
【0029】
「結合された(associated)」という用語は、例えば、「備えられた」、「接続された」、または「通信している」、例えば、「電気的に接続された」または「流体連通している」、あるいはある機能を実行するように他の手法で接続されていることを意味する。「関連された(associated)」という用語は、例えば、直接的に関連している、または1つ以上の他の物品もしくは要素を介して間接的に関連していることを意味し得る。
【0030】
「平均粒径」はD50と同義であり、つまり、粒子の個数の半分がこれより大きな粒径を有し、半分がこれより小さな粒径を有することを意味する。粒径は、一次粒子を指す。粒径は、例えば、ASTM法D4464による、分散または乾燥粉末を用いるレーザー光散乱技術によって測定され得る。D90の粒径分布は、サブミクロンサイズの粒子については走査型電子顕微鏡(SEM)または透過型電子顕微鏡(TEM)によって測定され、担体含有粒子(ミクロンサイズ)については粒径分析器によって測定された場合、粒子の90%(数による)が、ある特定のサイズより小さいフェレット直径を有することを示す。
【0031】
本明細書で使用される場合、「BET表面積」は、N2吸着によって表面積を決定するためのBrunauer、Emmett、Tellerの方法に関連するその通常の意味を有する。細孔径および細孔容積は、BETタイプのN2吸着または脱着実験を使用して決定することもできる。
【0032】
「触媒」という用語は、化学反応を促進する材料を指す。触媒活性種は、化学反応を促進するため、「促進剤」とも呼ばれる。
【0033】
「触媒性物品(catalytic article)」または「触媒物品(catalyst article)」という用語は、所望の反応を促進するために使用される構成要素を指す。本触媒性物品は、少なくとも1つの触媒性コーティングがその上部に配置された「基材」を含む。
【0034】
本明細書において使用される「結晶サイズ」とは、結晶が針状でないという条件で、結晶の面の1つのエッジの長さ、好ましくは最長のエッジを意味する。結晶サイズの直接測定は、SEMおよびTEMのような顕微鏡法を使用して実施され得る。例えば、SEMによる測定では、材料の形態を高倍率(典型的には1000倍~10,000倍)で検査することを伴う。SEM法は、ゼオライト粉末の代表的な部分を好適なマウント上に分配することによって実行することができ、それによって、個々の粒子は、1000倍~10,000倍の倍率で視野全体に適度に均一に広がる。この集団から、ランダムな個々の結晶の統計的に有意な試料(例えば、50~200個)が調べられ、直線縁の水平線に対して平行な個々の結晶の最長寸法が測定および記録される。明らかに大きな多結晶凝集体である粒子は、測定に含まれない。これらの測定値に基づいて、試料の結晶サイズの算術平均が計算される。
【0035】
本明細書で使用される場合、「結晶子サイズ」は、X線を一貫して散乱する離散回折ドメインのサイズを指す。本明細書で使用される場合、「結晶子サイズ」は、「ドメインサイズ」と同義で使用される。走査型電子顕微鏡(SEM)イメージングによって決定される上で定義された実際の結晶サイズは、ドメインサイズよりもはるかに大きい(例えば、1000~2000Åよりはるかに大きい)。結晶子サイズの推定は、粉末回折ピークの幅を多結晶粉末中の結晶子の平均(体積)寸法に関連付けるシェラー方程式(Eq.1)を使用した粉末XRDの分析から実施され得、
βs(2θ)hkl=Kλ/T cosθhkl (Eq.1)、
式中、βsは、ラジアン単位のピーク幅(積分幅または半価全幅)に対する結晶子サイズの寄与であり、Kは、1に近い定数であり、Tは、回折面hklに垂直な方向の結晶の平均厚さである。ある特定のゼオライト材料の結晶子サイズの決定は、例えば、Burton et al.,Microporous and Mesoporous Materials 117(2009),75-90に記載されており、その開示は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0036】
「CSF」は、ウォールフローモノリスである触媒化スートフィルタを指す。ウォールフローフィルタは、交互に位置した入口チャネルと出口チャネルとからなり、入口チャネルは出口端部に差し込まれており、出口チャネルは入口端部に差し込まれている。入口チャネルに入る、煤を運搬する排気ガス流は、出口チャネルから出る前に、フィルタ壁に通過させられる。煤の濾過および再生に加えて、CSFは、下流のSCR触媒を加速させるために、またはより低い温度における煤粒子の酸化を促進するために、COおよびHCをCO2およびH2Oに酸化させるための、またはNOをNO2に酸化させるための酸化触媒を運搬し得る。CSFは、LNT触媒の後ろに位置する場合、H2S酸化機能を有し、LNT脱硫プロセスの間にH2S排出を抑制することができる。SCR触媒組成物は、SCRoFと呼ばれるウォールフローフィルタ上に直接コーティングすることもできる。
【0037】
「DOC」は、ディーゼルエンジンの排気ガス中の炭化水素および一酸化炭素を変換するディーゼル酸化触媒を指す。典型的には、DOCは、1つ以上の白金族金属、例えば、パラジウムおよび/または白金;担体材料、例えば、アルミナ;HC貯蔵のためのゼオライト;ならびに任意選択的に促進剤および/または安定剤を含む。
【0038】
一般に、「効果的」という用語は、重量またはモルにおける画定された触媒活性または貯蔵/放出活性に関して、例えば約35%~100%効果があること、例えば、約40%、約45%、約50%または約55%から、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%または約95%まで効果があることを意味する。
【0039】
「排気流」または「排気ガス流」という用語は、固体または液体の微粒子状物質を含有し得る流動ガスのあらゆる組み合わせを指す。流れは、ガス状成分を含み、例えば、液滴、固体微粒子などの特定の非ガス状成分を含有し得るリーンバーンエンジンの排気である。燃焼エンジンの排気ガス流は、典型的には、燃焼生成物(CO2およびH2O)、不完全燃焼生成物(一酸化炭素(CO)および炭化水素(HC))、窒素酸化物(NOx)、可燃性および/または炭素質微粒子状物質(煤)、ならびに未反応の酸素および窒素をさらに含む。
【0040】
「高表面積の耐火金属酸化物担体」という用語は、具体的には、20Å超の細孔および広い細孔分布を有する担体粒子を指す。高表面積の耐火金属酸化物担体、例えば、「ガンマアルミナ」または「活性アルミナ」とも称されるアルミナ担体材料は、典型的には、1グラム当たり60平方メートル(「m2/g」)超の、多くの場合、最大約200m2/g以上の新品の材料のBET表面積を呈する。そのような活性アルミナは、通常、アルミナのガンマ相とデルタ相との混合物であるが、相当量のエータ、カッパ、およびシータアルミナ相も含有し得る。
【0041】
本明細書で使用される場合、「含浸された」または「含浸」とは、担体材料の多孔質構造に触媒材料を浸透させることを指す。
【0042】
「流体連通」という用語は、同じ排気ラインに位置決めされた物品を指すために使用され、すなわち、共通の排気流が、互いに流体連通した物品を通過する。流体連通した物品は、排気ラインにおいて互いに隣接していてもよい。あるいは、流体連通した物品は、「ウォッシュコートモノリス」とも呼ばれる1つ以上の物品によって分離されていてもよい。
【0043】
「LNT」とは、白金族金属、セリア、およびリーン条件中にNOxを吸着するのに好適なアルカリ土類金属トラップ材料(例えば、BaOまたはMgO)を含有する触媒であるリーンNOxトラップを指す。リッチ条件下で、NOxが放出され、窒素に還元される。
【0044】
本明細書で使用される場合、「モレキュラーシーブ」という表現は、ゼオライトおよび他の骨格材料(例えば、同形置換材料)のような骨格材料を指し、これらは、微粒子形態で、1つ以上の促進剤金属と組み合わせて、触媒として使用され得る。モレキュラーシーブは、一般に四面体型の部位を含有し、かつ実質的に均一な細孔分布を有し、平均細孔径が20オングストローム(Å)以下の、広範な三次元ネットワーク構造の酸素イオンに基づく材料である。
【0045】
モレキュラーシーブは、主に、(SiO4)/AlO4四面体の頑強な網目構造によって形成される空隙の形状に従って区別することができる。空隙への入口は、入口開口部を形成する原子について、6個、8個、10個、または12個の環原子から形成される。モレキュラーシーブは、モレキュラーシーブのタイプ、ならびにモレキュラーシーブ格子に含まれるカチオンのタイプおよび量に応じて、直径が約3~10Åの範囲である、かなり均一な細孔径を有する結晶材料である。
【0046】
本明細書で使用される場合、「ゼオライト」という用語は、モレキュラーシーブの特定の例を指す。一般に、ゼオライトは、コーナー共有TO4四面体(式中、TはAlもしくはSi、または任意選択的にPである)で構成されるオープン三次元骨格構造を有するアルミノシリケートとして定義される。アルミノシリケートゼオライト構造は、骨格でリンまたは同形に置換された他の金属を含まない。すなわち、「アルミノシリケートゼオライト」は、SAPO、AlPO、およびMeA1PO材料のようなアルミノホスフェート材料を除外し、一方、より広い用語「ゼオライト」は、アルミノシリケートおよびアルミノホスフェートを含む。この開示のために、SAPO、A1PO、およびMeA1PO材料は、非ゼオライト性モレキュラーシーブとみなす。ゼオライトは、共通の酸素原子により結合されて三次元網目構造を形成するSiO4/AlO4四面体を含み得る。アニオン性骨格の電荷のバランスをとるカチオンは、骨格酸素と緩く関連しており、残りの細孔容積は水分子で満たされている。非骨格カチオンは一般に交換可能であり、水分子は除去可能である。多種多様なカチオンが、これらの細孔を占め得、これらのチャネルを通って移動し得る。
【0047】
「NOx」という用語は、NO、NO2、またはN2Oのような窒素酸化物化合物を指す。
【0048】
コーティング層に関連する「上」および「上方」という用語は、同義語として使用することができる。「上に直接」という用語は、直接接触していることを意味する。開示される物品は、特定の実施形態では、第2のコーティング層「上」に1つのコーティング層を含むと示されるが、そのような文言は、コーティング層間の直接接触が必要とされない、介在層を有する実施形態を包含することが意図されている(すなわち、「上」は「上に直接」とは同等ではない)。
【0049】
本明細書で使用される場合、「促進された」という用語は、ゼオライト中の固有の不純物とは対照的に、典型的にはイオン交換によって、例えばゼオライト性材料に意図的に添加される成分を指す。ゼオライトは、例えば、銅(Cu)および/または鉄(Fe)で促進され得るが、マンガン、コバルト、ニッケル、セリウム、白金、パラジウム、ロジウム、またはそれらの組み合わせのような他の触媒性金属を使用することができる。
【0050】
ゼオライトSCR触媒の文脈での「促進剤金属」という用語は、修飾された「金属促進」モレキュラーシーブを生成するためにイオン交換ゼオライトに添加される1つ以上の金属を指す。促進剤金属をイオン交換ゼオライトに添加することで、促進剤金属を含有しないイオン交換ゼオライトと比較して、ゼオライト中の交換部位に存在する活性金属の触媒活性が増強され、例えば、「促進剤金属」としてアルミニウムまたはアルミナ酸化物を銅イオン交換ゼオライトに添加することで、触媒的に活性の低い酸化銅クラスターの形成を防止および/または低減することによって、銅の触媒活性が増強される。
【0051】
助触媒金属は、液相交換プロセスによってゼオライトに交換され得、ここで、可溶性金属イオンは、ゼオライトと関連するプロトンまたはアンモニウムまたはナトリウムイオンと交換する。交換はまた、固体状態プロセスによっても実行され得、ここで、助触媒金属酸化物または金属塩の固体粒子が、ゼオライト粉末と混合され、蒸気を含有しても、または含有しなくてもよいある特定の温度およびガス環境下で処理される。交換プロセスはまた、スラリー調製中にインサイツプロセスを介しても達成され得、ここで、微細な金属酸化物粒子が、固体液体相互作用に好適な条件下でゼオライトスラリー中に懸濁される。
【0052】
本明細書で使用される場合、「選択的触媒還元」(SCR)という用語は、窒素性還元剤を使用して、窒素酸化物を二窒素(N2)に還元する触媒プロセスを指す。
【0053】
「SCRoF」とは、ウォールフローフィルタ上に直接コーティングされたSCR触媒組成物を指す。
【0054】
本明細書で使用される場合、「ひずみ」という用語は、測定可能な回折ピークの広がりをもたらす結晶材料の格子の歪みを指す。そのような歪みは、通常観察される材料のd間隔の周りにd間隔の分布を生成する圧縮力および引張力から発生し得る。圧縮力および引張力は、結晶内の機械的な力もしくは転位、結晶の双晶、ヘテロ原子置換による組成勾配、シラノール/シロキシ欠陥の密度の変化、または有機もしくは無機SDAカチオンによる細孔充填の変化の結果であり得る。結晶の双晶は、付随するひずみ勾配を伴う応力勾配を作成する。回折ピーク幅の広がりは、応力およびドメインサイズの両方に関連しており、式2によるひずみに関連しており、
βε(2θ)=4εtanθ (Eq.2)、
式中、εは、残留ひずみを表し、βεは、応力によって引き起こされるピークの広がりである。計算されたひずみは、サンプル内のd間隔の変動の程度を示す分数またはパーセンテージとして報告され得る。ウィリアムソンホールプロットの分析によるある特定のゼオライト材料のドメインサイズおよびひずみの両方の近似は、例えば、Burton et al.,Microporous and Mesoporous Materials 117(2009),75-90に記載されており、その開示は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0055】
「実質的に含まない」とは、「ほとんどもしくは全くない」または「意図的に添加されていない」ことを意味し、微量および/または偶発的な量しか有しないことも意味する。例えば、特定の実施形態では、「実質的に含まない」とは、示される組成全体の重量に基づいて、2重量%(重量%)未満、1.5重量%未満、1.0重量%未満、0.5重量%未満、0.25重量%、または0.01重量%未満を意味する。
【0056】
本明細書で使用される場合、「基材」という用語は、触媒組成物、すなわち触媒性コーティングが、典型的にはウォッシュコートの形態でその上に配置されているモノリシック材料を指す。1つ以上の実施形態では、基材は、フロースルーモノリスおよびモノリスウォールフローフィルタである。「モノリシック基材」への言及は、入口から出口まで均質かつ連続的な単一構造を意味する。
【0057】
本明細書で使用される場合、「担体」または「担体材料」という用語は、金属(例えば、PGM、安定剤、促進剤、バインダーなど)が沈殿、会合、分散、含浸または他の好適な方法によって適用される任意の材料、典型的には高表面積材料、通常は耐火金属酸化物材料を指す。例示的な担体としては、本明細書で以下に記載されるような多孔質の耐火金属酸化物担体が挙げられる。「担持された」という用語は、「の上に分散された」、「の中に組み込まれた」、「の中に含浸された」、「の上に含浸された」、「に含浸された」、「の上に堆積された」、または他の手法で結合されたことを意味する。
【0058】
本明細書で使用される場合、「上流」および「下流」という用語は、エンジンからテールパイプに向かうエンジン排気ガス流の流れに応じた相対的な方向を指し、エンジンが上流位置にあり、テールパイプならびにフィルタおよび触媒のような任意の汚染物軽減物品がエンジンの下流にある。基材の入口端部は、「上流」端部または「前」端部と同義である。出口端部は、「下流」端部または「後」端部と同義である。上流ゾーンは、下流ゾーンの上流にある。上流ゾーンはエンジンまたはマニホールドの近くにあってもよく、下流ゾーンはエンジンまたはマニホールドからさらに離れていてもよい。
【0059】
「ウォッシュコート」は、「基材」、例えば、ハニカムフロースルーモノリス基材または処理されるガス流の通過を可能にするのに十分に多孔性であるフィルタ基材に適用される材料(例えば、触媒)の薄くて付着性のあるコーティングの当技術分野におけるその通常の意味を有する。本明細書において使用され、Heck,Ronald,and Farrauto,Robert,Catalytic Air Pollution Control,New York:Wiley-Interscience,2002,pp.18-19に記載されているように、ウォッシュコート層は、モノリス基材または下側のウォッシュコート層の表面に配置された材料の、組成的に区別される層を含む。ウォッシュコートは、液体中に特定の固形物含有量(例えば10重量%~50重量%)の触媒を含有するスラリーを調製し、それから、これを基材にコーティングし、乾燥させてウォッシュコート層を提供することによって形成される。基材は、1つ以上のウォッシュコート層を含有することができ、各ウォッシュコート層は、何らかの態様が異なることができ(例えば、粒径または結晶子相のような、ウォッシュコートの物理的特性が異なり得る)、かつ/または化学触媒機能が異なり得る。
【0060】
特に明記しない限り、全ての部およびパーセントは、重量による。別途指示がない限り、「重量パーセント(重量%)」は、揮発性物質を含まない組成物全体、すなわち、乾燥固形物含有量に基づく。
【0061】
本明細書に記載される全ての方法は、本明細書で別途指示がない限り、または特に文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実行することができる。本明細書で提供されるありとあらゆる例または例示的文言(例えば「のような」)の使用は、材料および方法をより良好に説明することのみを意図したものであり、別途特許請求されない限り、範囲を限定するものではない。本明細書におけるいかなる文言も、特許請求されない要素が、開示された材料および方法の実施に必須であることを示すものと解釈されるべきではない。本明細書で参照される全ての米国特許出願、公開特許出願および特許は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0062】
ゼオライト性材料および特性
1つ以上の実施形態では、本明細書に開示されるようなゼオライト材料は、八環の小細孔アルミノシリケートゼオライトを含む。本明細書で使用される場合、「小細孔」は、約5Åより小さい、例えば、約3.8Åの細孔開口部を指す。「八環」ゼオライトという語句は、八環細孔開口部および二重六環二次構造単位を有し、かつ四環による二重六環構造単位の接続から生じるケージ様構造を有するゼオライトを指す。d6r二次構造単位を有するゼオライト性構造タイプは、AEI、AFT、AFX、CHA、EAB、EMT、ERI、FAU、GME、JSR、KFI、LEV、LTL、LTN、MOZ、MSO、MWW、OFF、SAS、SAT、SAV、SBS、SBT、SFW、SSF、SZR、TSC、およびWENを含む。
【0063】
1つ以上の実施形態では、本明細書に開示されるようなゼオライト材料は、8つの四面体原子の最大環サイズを有する小細孔ゼオライトである。他の実施形態では、小細孔モレキュラーシーブは、d6r単位を含む。したがって、1つ以上の実施形態では、小細孔ゼオライトは、AEI、AFT、AFX、CHA、EAB、ERI、KFI、LEV、LTN、MSO、SAS、SAT、SAV、SFW、TSC、およびそれらの組み合わせから選択される構造タイプを有する。いくつかの実施形態では、小細孔ゼオライト材料は、CHA、AEI、AFX、ERI、KFI、LEV、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される構造タイプを有する。いくつかの実施形態では、小細孔ゼオライト材料は、CHA、AEI、およびAFXから選択される構造タイプを有する。一実施形態では、ゼオライト材料は、チャバサイト(CHA)構造タイプを有する。1つ以上の実施形態では、本明細書に開示されるようなゼオライト材料は、CHA結晶構造を有し、アルミノシリケートゼオライト、ホウシリケート、ガロシリケート、SAPO、およびALPO、MeAPSO、およびMeAPOから選択される。いくつかの実施形態では、CHA結晶構造を有するゼオライト材料は、アルミノシリケートゼオライトである。本開示において有用であるCHA構造を有するゼオライトの特定の非限定的な例としては、SSZ-13、SSZ-62、天然チャバサイト、ゼオライトK-G、Linde D、Linde R、LZ-218、LZ-235、LZ-236、ZK-14、SAPO-34、SAPO-44、SAPO-47、CuSAPO-34、CuSAPO-44、CuSAPO-47、およびZYT-6が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、ゼオライト材料は、チャバサイト(CHA)である。
【0064】
本明細書に開示されるようなゼオライト材料は、典型的には、高度に結晶性の材料の形態で存在する。いくつかの実施形態では、ゼオライト材料は、少なくとも約75%結晶性、少なくとも約80%結晶性、少なくとも約85%結晶性、少なくとも約90%結晶性、少なくとも約95%結晶性、少なくとも約98%結晶性、少なくとも約99%結晶性、または少なくとも約99.5%結晶性である。
【0065】
本明細書に開示されるようなゼオライト材料は、良好な触媒性能を提供するゼオライト表面積(ZSA)と組み合わされた比較的低いメソ細孔表面積(MSA)を特徴とする。いくつかの実施形態では、ゼオライト材料のMSAは、約25m2/g未満または約15m2/g未満(例えば、約5~約25m2/g)である。ゼオライト材料のZSAは、典型的には、少なくとも約400m2/g、または少なくとも約450m2/g、または少なくとも約500m2/gであり、例示的なZSA範囲は、約400~約600m2/gまたは約450~約600m2/gである。細孔容積および表面積の特性は、窒素吸着(BET表面積法)によって決定され得る。
【0066】
本明細書に開示されるようなゼオライト材料は、典型的には、最大約3μm、または約200nm~約3μmの範囲、または約500nm~約2μm、または約800nm~約1.5μmの平均結晶サイズを有する。平均結晶サイズは、例えば、顕微鏡法、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して測定され得る。
【0067】
本ゼオライト材料のシリカ対アルミナの比(SAR)は、ある範囲にわたって変化し得る。いくつかの実施形態では、ゼオライト材料は、約10~約45、例えば、約10~約30、約15~約25、または約15~約20のSAR範囲を特徴とし得る。いくつかの実施形態では、SAR範囲は、約15、約16、または約17~約18、約19、または約20である。
【0068】
上記のように、一態様では、ゼオライト材料は、約1500Å未満のドメインサイズ、約0.7%未満の結晶学的ひずみ、またはそれらの両方を特徴とする。驚くべきことに、本開示によれば、銅とイオン交換されたときに、本明細書に開示されるように調製されたCHA骨格タイプゼオライトと関連するこれらの範囲のドメインおよび/またはひずみ値が、優れたNOx還元性能を有するSCR触媒性材料をもたらしたことが見出されている。いくつかの実施形態では、ドメインサイズは、約1400Å未満、約1300Å未満、約1200Å未満、約1100Å未満、約1000Å未満、約900Å未満、または約800Å未満である。いくつかの実施形態では、ドメインサイズは、約800~約1500Å、例えば、約800Å、約900Å、約1000Å、または~約1100Å、~約1200Å、約1300Å、約1400Å、または約1500Åである。いくつかの実施形態では、ドメインサイズは、約800~約1400Åである。いくつかの実施形態では、ドメインサイズは、約800~約1200Åである。いくつかの実施形態では、ドメインサイズは、約800~約1100Åである。いくつかの実施形態では、ドメインサイズは、約900~約1000Å、約1000~約1100Å、約1100~約1200Å、約1200~約1300Å、または約1300~約1400Åである。
【0069】
いくつかの実施形態では、結晶学的ひずみは、約0.7%未満、例えば、約0.6%未満、約0.5%未満、約0.4%未満、または約0.3%未満である。いくつかの実施形態では、結晶学的ひずみは、約0.2%~約0.7%、例えば、約0.2%、約0.3%、または約0.4%~約0.5%、または約0.6%、または約0.7%である。
【0070】
いくつかの実施形態では、ドメインサイズは約1300Å~約1500Åであり、結晶学的ひずみ値は約0.4%以下、例えば、約0.2%~約0.4%である。いくつかの実施形態では、ドメインサイズは約1100Å~約1200Åであり、結晶学的ひずみ値は約0.6%以下、例えば、約0.2%~約0.6%である。特定の実施形態では、ドメインサイズは約900~約1000Åであり、結晶学的ひずみ値は約0.7%以下、例えば、約0.2%~約0.7%である。いくつかの実施形態では、ドメインサイズは約800Å~約1200Åであり、結晶学的ひずみ値は約0.2%~約0.6%である。いくつかの実施形態では、ドメインサイズは約800Å~約1100Åであり、結晶学的ひずみ値は約0.3%~約0.5%である。
【0071】
ゼオライト性材料の調製方法
ゼオライト性材料の合成は、特定の構造タイプによって変化するが、典型的には、いくつかの成分(例えば、シリカ、アルミナ、リン、アルカリ、構造指向剤(SDA)など)を組み合わせて、合成ゲルを形成し、次いで、それを水熱結晶化して、最終生成物を形成することを伴う。結晶化中、四面体単位はSDAの周りで組織化して、所望の骨格を形成し、SDAはゼオライト結晶の細孔構造内に埋め込まれることがよくある。1つ以上の実施形態では、モレキュラーシーブ材料の結晶化は、構造指向剤/テンプレート、結晶核、または元素の添加によって得ることができる
【0072】
本明細書に開示されるようなゼオライト性材料を調製する方法は、一般に、ゼオライト(典型的には、FAU結晶骨格を有するゼオライト)を含む少なくとも1つのアルミナ源と、少なくとも1つのシリカ源(アルカリ金属ケイ酸塩溶液および/またはコロイダルシリカを含む源など)と、少なくとも1つの有機構造指向剤(OSDA)と、任意選択的に、反応混合物のアルカリ金属含有量を高めるための二次アルカリ金属カチオン源とを含む反応混合物を形成することを含む。反応混合物は、典型的には、アルカリ性水性条件下で提供される。反応混合物の各成分(本明細書では「合成ゲル」とも呼ばれる)が以下にさらに記載される。
【0073】
アルミナ源
少なくとも1つのアルミナ源は、一般に、ゼオライトを含む。アルミナ源として使用されるゼオライトは多様であり得るが、当技術分野で知られている様々なゼオライト材料、特に様々なケイ酸アルミノゼオライトが含まれるであろう。ある特定の実施形態では、FAU結晶構造を有するゼオライトが使用され、これは、十二環構造によって形成され、約7.4Åのチャネルを有する。そのようなゼオライトの例には、フォージャサイト、ゼオライトX、ゼオライトY、LZ-210、およびSAPO-37が含まれる。そのようなゼオライトは、2次構築単位4、6、および6-6を有する、x、y、およびz平面で互いに垂直に走る細孔を有する三次元細孔構造を特徴とする。バルクFAUゼオライト材料の例示的なシリカ対アルミナ比(SAR)の範囲は、約3~約6であり、典型的には、単位セルサイズの範囲は、XRDによって決定される場合、24.35~24.65である。ゼオライトYは、ある特定の実施形態では特に有用である。FAUゼオライトは、典型的には、Na+形態などのアルカリ金属形態で使用される。特定の一実施形態では、FAUゼオライトは、ナトリウム形態であり、約2.5重量%~13重量%のNa2Oを含む。
【0074】
シリカ源
少なくとも1つのシリカ源は、典型的には、アルカリ金属ケイ酸塩溶液、例えば、ケイ酸ナトリウムである。反応混合物で使用されるアルカリ金属ケイ酸塩溶液は、所望のアルカリ金属対Si、Al、およびOSDA比を達成するために必要なアルカリ金属含有量の全てを提供し得る。しかしながら、反応混合物のアルカリ金属含有量は、例えば、アルカリ金属硫酸塩(例えば、Na2SO4)、アルカリ金属酢酸塩(例えば、酢酸ナトリウム)、およびアルカリ金属臭化物(例えば、臭化ナトリウム)を含む二次アルカリ金属カチオン源で任意選択的に補足され得る。必要に応じて、ある特定の実施形態では、アルカリ金属ケイ酸塩溶液は、コロイドシリカ、ヒュームドシリカ、正珪酸テトラエチル(TEOS)、およびそれらの組み合わせなどの他のシリカ源で補足または置換され得る。
【0075】
合成ゲル中のシリコンに対するアルカリ金属のモル比(M/Si、式中、Mはアルカリ金属のモルである)は変化し得る。ある特定の実施形態では、M/Siは、少なくとも約0.4、または少なくとも約0.5、または少なくとも約0.6、または少なくとも約0.7、または少なくとも約0.8であり、例示的な範囲は、約0.4~約1.2、または約0.6~約1.0、または約0.7~約0.9である。アルカリ金属は、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、またはセシウムであり得る。ある特定の実施形態では、アルカリ金属は、ナトリウムまたはカリウムである。ある特定の実施形態では、アルカリ金属は、ナトリウムである。
【0076】
合成ゲル中のシリコンに対する水酸化物イオンのモル比(OH-/Si、式中、OH-/Siは水酸化物イオンのモルである)は変化し得る。いくつかの実施形態では、OH-/Siモル比は、約0.7未満、または約0.65未満、または約0.6未満、または約0.55未満であり、例示的な範囲は、約0.3~約0.7または約0.4~約0.65である。水酸化物イオンは、反応混合物に必要な唯一の必要な鉱化剤であり、上記の比率を達成するために必要な水酸化物の量は、アルカリ金属ケイ酸塩溶液のみから、かつより少ない程度に、有機構造指向剤源から提供され得る。必要に応じて、水酸化物イオン含有量は、NaOHまたはKOHなどの追加の水酸化物イオン源で補足され得る。
【0077】
ある特定の実施形態では、アルカリ金属対Siの合計モル比(M/Si、式中、Mはアルカリ金属のモル数である)および有機構造指向剤対Siのモル比(R/Si、式中、Rは有機構造指向剤のモル数である)は、水酸化物イオン対Siのモル比(OH-/Si)よりも大きい。換言すれば、M/Si+R/Siの合計モル比は、OH-/Siのモル比よりも大きい。
【0078】
ある特定の実施形態では、M/Si+R/Siの合計比は、約0.75超、または約0.80超、または約0.82超、または約0.85超であり、例示的な範囲は、約0.75~約0.95、または約0.80~約0.95、または約0.85~約0.95である。
【0079】
合成ゲル中のシリカ対アルミナ(SAR)のモル比は、変化し得る。いくつかの実施形態では、SAR範囲は、典型的には、約25~約40、例えば、約25~約35である。
【0080】
合成ゲル中のSiに対する水のモル比(H2O/Si)は、変化し得る。いくつかの実施形態では、H2O/Siモル比は、約12~約40の範囲にある。
【0081】
有機構造指向剤
合成ゲルに存在する有機構造指向剤(OSDA)は、典型的には、アミンおよび/または四級アンモニウム塩である。例には、アルキル、アダマンチル、シクロヘキシル、芳香族、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される置換基を有する四級アンモニウムカチオンが含まれる。OSDAの非限定的な例としては、アダマンチルトリメチルアンモニウム、シクロヘキシルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、およびジメチルピペリジニウムの水酸化物が挙げられる。いくつかの実施形態では、OSDAは、水酸化アダマンチルトリメチルアンモニウム(TMAdaOH)である。
【0082】
存在するOSDAの量は変化する可能性があり、存在する他の成分(例えば、シリカ)に対する比率で表され得る。ある特定の実施形態では、OSDA/Siモル比は、約0.12未満、または約0.11未満、または約0.10未満、または約0.08未満、または約0.06未満であり、例示的な範囲は、約0.04~約0.12、または約0.06~約0.10である。
【0083】
反応混合物は、シリカ(SiO2)およびアルミナ(Al2O3)の重量パーセンテージとして表される固体含有量という点を特徴とし得る。固体含有量は変化する可能性があり、例示的な範囲は、約5~約25%、または約8~約20%である。
【0084】
一般に、本明細書に記載されるようなゼオライト性材料の合成は、上記のような反応混合物を圧力容器内で撹拌しながら加熱して、所望の結晶性ゼオライト性生成物を得ることによって行われる。典型的な反応温度は、対応する自生圧力で、約100℃~約160℃、例えば、約120℃~約160℃の範囲である。典型的な反応時間は、約30時間~約3日間である。任意選択的に、生成物は遠心分離され得る。有機添加剤は、固形生成物の取り扱いおよび単離を助けるために使用され得る。噴霧乾燥は、生成物の処理における任意選択的ステップである。次いで、固体ゼオライト生成物は、空気または窒素中で熱処理または焼成され得る。典型的な焼成温度は、1~10時間の間にわたって、約400℃~約850℃(例えば、約500℃~約700℃)である。最初の焼成に続いて、ゼオライト性材料は、主にアルカリ金属形態(例えば、Na+形態)である。任意選択的に、単一または複数のアンモニアイオン交換を使用して、ゼオライトのNH4
+形態を得ることができる。NH4
+イオン交換は、当技術分野で知られている様々な技術、例えば、Bleken,et al.,Topics in Catalysis 52,(2009),218-228に従って実行され得る。任意選択的に、NH4交換ゼオライトがさらに焼成されて、H+形態が形成され得る。
【0085】
SCR触媒組成物
本開示は、還元剤の存在下で、リーンバーンエンジン排気ガスからのNOxの還元を触媒するのに効果的な選択的触媒還元(SCR)触媒組成物を提供し、触媒組成物は、金属で促進された本明細書に開示されるようなゼオライト材料を含む。本明細書で使用される場合、「促進された」は、ゼオライト性材料中の固有の不純物とは対照的に、ゼオライト性材料に意図的に添加される成分を指す。したがって、促進剤は、意図的に添加される促進剤を有しない触媒と比較して触媒の活性を向上させるために意図的に添加される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるようなゼオライト性材料(例えば、H+形態)は、促進剤金属とイオン交換されて、金属促進ゼオライト触媒が形成される。したがって、窒素酸化物のSCRを促進するために、1つ以上の実施形態では、1つ以上の実施形態におけるゼオライト性材料は、銅(Cu)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ランタン(La)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、バナジウム(V)、銀(Ag)、およびセリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、プラセオジム(Pr)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ハフニウム(Hf)、イットリウム(Y)、ならびにタングステン(W)などの1つ以上の促進剤金属とイオン交換され得る。いくつかの実施形態では、ゼオライト性材料は、Cu、Fe、またはそれらの組み合わせで促進される。いくつかの実施形態では、ゼオライト性材料は、Cuで促進される。
【0086】
1つ以上の実施形態では、酸化物として計算されるゼオライト性材料の促進剤金属含有量は少なくとも約0.1重量%であり、揮発物を含まない基準で報告される。1つ以上の実施形態では、促進剤金属は、全ての場合において、ゼオライト性材料の総重量に基づいて、約2~約5重量%の範囲、および約4~約6重量%の範囲を含む、約1~約10重量%の範囲の量で存在する。1つ以上の特定の実施形態では、促進剤金属はCuを含み、CuOとして計算されるCu含有量は、焼成されたゼオライト性材料の総重量に基づく各場合において、酸化物基準で9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.5、および0.1重量%を含む、最大約10重量%の範囲にあり、揮発物を含まない基準で報告される。特定の実施形態では、CuOとして計算されるCu含有量は、約2~約6重量%の範囲にある。
【0087】
SCR触媒性物品
別の態様では、リーンバーンエンジン排気ガスからの窒素酸化物(NOx)を軽減するのに効果的なSCR触媒物品が提供され、SCR触媒物品は、基材を含み、第1のウォッシュコートは、基材の少なくとも一部上に配置される、本明細書に開示されるようなSCR触媒組成物を含む。
【0088】
基材
1つ以上の実施形態では、本SCR触媒組成物は、SCR触媒の触媒性物品を形成するために基材上に配置されている。基材を含む触媒性物品は、一般に、排気ガス処理システムの一部として用いられる(例えば、触媒物品としては、本明細書に開示されるSCR触媒組成物を含む物品が挙げられるが、それらに限定されない)。有用な基材は、三次元であり、円柱に似た長さ、直径および体積を有する。形状は、必ずしも円柱に一致する必要はない。長さは、入口端および出口端によって画定される軸方向長さである。
【0089】
1つ以上の実施形態によると、開示される触媒のための基材は、自動車触媒を調製するために典型的に使用されるあらゆる材料から構成されてもよく、典型的には、金属またはセラミックのハニカム構造を含む。基材は、典型的には、触媒ウォッシュコートが適用および接着される複数の壁面を提供し、それによって触媒の基材として機能する。
【0090】
セラミック基材は、任意の好適な耐火性材料、例えば、コーディエライト、コーディエライト-α-アルミナ、チタン酸アルミニウム、チタン酸ケイ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコンムライト、リシア輝石、アルミナ-シリカ-マグネシア、ケイ酸ジルコン、シリマナイト、ケイ酸マグネシウム、ジルコン、ペタライト、α-アルミナ、アルミノシリケートなどから作製され得る。
【0091】
基材はまた、金属であり得、1つ以上の金属または金属合金を含む。金属基材は、チャネル壁に開口部または「パンチアウト」を有するような任意の金属基材を含み得る。金属性基材は、ペレット、圧縮金属性繊維、波形シート、またはモノリス形態のような様々な形状で用いられ得る。金属基材の具体例としては、耐熱性の卑金属合金、特に、鉄が実質的なまたは主要な成分である合金が挙げられる。そのような合金は、ニッケル、クロム、およびアルミニウムのうちの1つ以上を含有し得、これらの金属の合計は、有利には、いずれの場合も、基材の重量に基づいて、少なくとも約15重量%(重量パーセント)の合金、例えば、約10~約25重量%のクロム、約1~約8重量%のアルミニウム、および0~約20重量%のニッケルを含み得る。金属基材の例としては、直線的なチャネルを有するもの、ガス流を妨害し、チャネル間のガス流の連通を開くために軸方向チャネルに沿って突出したブレードを有するもの、ならびにブレードおよびモノリス全体にわたる半径方向のガス搬送を可能にする、チャネル間のガス搬送を向上させるための穴も有するもの、が挙げられる。
【0092】
通流する流体流に対して通路が開放するように、基材の入口または出口面から通流して延在する微細な平行なガス流路を有するタイプのモノリシック基材(「フロースルー基材」)などの、本明細書に開示されるSCR触媒性物品に好適な任意の基材が用いられ得る。別の好適な基材は、基材の長手方向軸線に沿って延在する複数の微細な実質的に平行なガス流路を有するタイプのものであり、典型的には、各通路は、基材本体の一方の端部において遮断されており、1つおきに通路が、反対側の端面において遮断されている(「ウォールフローフィルタ」)。フロースルーおよびウォールフロー基材は、例えば、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる国際特許出願公開第2016/070090号にも開示されている。
【0093】
いくつかの実施形態では、触媒基材は、ウォールフローフィルタまたはフロースルー基材の形態のハニカム基材を含む。いくつかの実施形態では、基材はウォールフローフィルタである。いくつかの実施形態では、基材はフロースルー基材である。フロースルー基材およびウォールフローフィルタについては、本明細書で以下にさらに考察される。
【0094】
フロースルー基材
いくつかの実施形態では、基材は、フロースルー基材(例えば、フロースルーハニカムモノリス基材を含むモノリス基材)である。フロースルー基材は、通路が流体流に対して開いているように、基材の入口端部から出口端部まで延在している微細で平行なガス流路を有する。流体の入口から流体の出口までの本質的に直線の経路である通路は、壁によって画定されており、壁の上または壁の中において、触媒性コーティングは、通路を通って流れるガスが触媒性材料と接触するように、配置されている。フロースルー基材の流路は、薄い壁のチャネルであり、台形、長方形、正方形、正弦波、六角形、楕円形、円形などのあらゆる好適な断面形状およびサイズであり得る。フロースルー基材は、上記のようにセラミックまたは金属であり得る。
【0095】
フロースルー基材は、例えば、約50in3~約1200in3の体積と、約60セル毎平方インチ(cpsi)~約500cpsiまたは最大で900cpsi、例えば、約200~約400cpsiのセル密度(入口開口部)と、約50~約200ミクロンまたは約400ミクロンの壁厚とを有する。
【0096】
ウォールフローフィルタ基材
いくつかの実施形態では、基材はウォールフローフィルタであり、これは一般に、基材の長手方向軸線に沿って延在する複数の微細で実質的に平行なガス流路を有する。典型的には、各通路は、基材本体の一端で遮断され、1つおきに通路は、反対の端面で遮断される。そのようなモノリスウォールフローフィルタ基材は、断面の平方インチ当たり最大約900以上の流路(または「セル」)を含有してもよいが、はるかに少ない数が使用されてもよい。例えば、基材は、平方インチ当たり約7~600、より一般には約100~400のセル(「cpsi」)を有し得る。セルは、長方形、正方形、円形、楕円形、三角形、六角形、または他の多角形の断面を有し得る。ウォールフローフィルタ基材は、上記のようにセラミックまたは金属性であってもよい。
【0097】
図1を参照すると、例示的なウォールフローフィルタ基材は、円筒形状を有し、円筒形の外表面は、直径Dおよび軸方向長さLを有する。
図2は、例示的なウォールフローフィルタの斜視図である。モノリシック壁流フィルタ基材セクションの断面図を
図2に例示してあり、交互になっている閉塞流路と開放流路(セル)が示されている。ブロックまたは閉塞端100は、開放流路101と交互になっていて、各対向端はそれぞれ開放およびブロックされている。フィルタは、入口端102および出口端103を有する。多孔質セル壁104を横切る矢印は、排気ガス流が、開放されたセル端部に入り、多孔質セル壁104を通って拡散し、開放された出口セル端部を出ることを表す。閉塞された端部100は、ガス流を妨げ、セル壁を通した拡散を促進する。各セル壁は、入口側104aおよび出口側104bを有する。通路は、セル壁によって包囲されている。
【0098】
ウォールフローフィルタ物品基材は、例えば、約50cm3、約100in3、約200in3、約300in3、約400in3、約500in3、約600in3、約700in3、約800in3、約900in3、または約1000in3から、約1500in3、約2000in3、約2500in3、約3000in3、約3500in3、約4000in3、約4500in3、または約5000in3までの体積を有し得る。ウォールフローフィルタ基材は、典型的には、約50ミクロン~約2000ミクロン、例えば、約50ミクロン~約450ミクロン、または約150ミクロン~約400ミクロンの壁厚を有する。
【0099】
ウォールフローフィルタの壁は、多孔質であり、一般に、機能性コーティングを配置する前に、少なくとも約40%または少なくとも約50%の壁多孔度を有し、平均細孔径は少なくとも約10ミクロンである。例えば、いくつかの実施形態におけるウォールフローフィルタ物品基材は、≧40%、≧50%、≧60%、≧65%、または≧70%の多孔度を有するであろう。例えば、ウォールフローフィルタ物品基材は、触媒性コーティングを配置する前に、約50%、約60%、約65%、または約70%から、約75%までの壁多孔度および約10ミクロンまたは約20ミクロンから、約30ミクロンまたは約40ミクロンまでの平均細孔径を有するであろう。「壁多孔度」および「基材多孔度」という用語は、同じ意味であり、置き換え可能である。多孔度は、空隙容量(または細孔容積)を基材材料の総体積で割った比率である。細孔径および細孔径分布は、典型的には、Hgポロシメトリー測定によって決定される。
【0100】
基材のコーティングプロセス
本開示のSCR触媒性物品を生成するために、本明細書に記載されるような基材を本明細書に開示されるようなSCR触媒組成物と接触させて、コーティングを提供する(すなわち、金属促進ゼオライト性材料の粒子を含むスラリーを基材上に配置する)。コーティングは、「触媒性コーティング組成物」または「触媒性コーティング」である。「触媒組成物」および「触媒性コーティング組成物」は同義である。
【0101】
金属促進ゼオライト性材料に加えて、コーティングスラリーは、アルミナ、シリカ、酢酸Zr、コロイドジルコニア、もしくは水酸化Zr、会合性増粘剤、および/または界面活性剤(アニオン性、カチオン性、非イオン性、または両性の界面活性剤を含む)の形態の結合剤を任意選択的に含有し得る。他の例示的な結合剤としては、ボヘマイト、ガンマアルミナ、またはデルタ/シータアルミナ、ならびにシリカゾルが挙げられる。存在する場合、結合剤は、典型的には、ウォッシュコートの総充填量の約1~5重量%の量で使用される。酸性または塩基性の種をスラリーに添加して、それによってpHを調整してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、スラリーのpHは、水酸化アンモニウムまたは硝酸水溶液の添加により調整される。スラリーの一般的なpH範囲は約3~6である。
【0102】
スラリーを粉砕して、粒径を低減させ、粒子の混合を促進してもよい。粉砕は、ボールミル、連続ミル、または他の同様の装置で達成することができ、スラリーの固形物含有量は、例えば、約20~60重量%、より具体的には、約20~40重量%であり得る。一実施形態では、粉砕後のスラリーは、約10~約40ミクロン、好ましくは10~約30ミクロン、より好ましくは約10~約15ミクロンのD90粒径を特徴とする。D90は、専用の粒径分析装置を使用して決定される。この装置は、2010年にSympatecにより製造され、レーザー回折を使用して少量のスラリーにおける粒径を測定する。
【0103】
本SCR触媒組成物は、典型的には、本明細書に開示されるようなSCR触媒組成物を含有する1つ以上のウォッシュコートの形態で適用され得る。ウォッシュコートは、液体ビヒクル中の触媒の特定の固形物含有量(例えば、約10~約60重量%)を含有するスラリーを調製することによって形成され、次いで、これを、当技術分野で知られている任意のウォッシュコート技術を使用して基材に適用し、乾燥および焼成してコーティング層を提供する。複数のコーティングが適用される場合、各ウォッシュコートが適用された後に、および/または所望の数の複数のウォッシュコートが適用された後に、基材は、乾燥および/または焼成される。1つ以上の実施形態では、触媒材料は、ウォッシュコートとして基材に適用される。
【0104】
いくつかの実施形態では、乾燥は、約100~約150℃の温度で実施される。いくつかの実施形態では、乾燥は、ガス雰囲気中で実施される。いくつかの実施形態では、ガス雰囲気は、酸素を含む。いくつかの実施形態では、乾燥は、10分~4時間の範囲、より好ましくは20分~3時間の範囲、より好ましくは50分~2.5時間の期間にわたって実施される。
【0105】
いくつかの実施形態では、焼成は、約300~900℃、約400~約650℃、または約450~約600℃の温度で実施される。いくつかの実施形態では、焼成は、ガス雰囲気中で実施される。いくつかの実施形態では、ガス雰囲気は、酸素を含む。いくつかの実施形態では、焼成は、10分~約8時間、約20分~約3時間、または約30分~約2.5時間の範囲の期間にわたって実施される。
【0106】
焼成後に、上記のウォッシュコート技術により得られる触媒充填量は、基材のコーティングされた重量とコーティングされていない重量との差を計算することにより求めることができる。当業者に明らかであるように、触媒充填量は、スラリーのレオロジーを変えることによって修正することができる。さらに、ウォッシュコート層(コーティング層)を生成するためのコーティング/乾燥/焼成プロセスを必要に応じて繰り返して、コーティングを所望の充填水準または厚さに構築することができ、すなわち、1つより多くのウォッシュコートを適用することが可能である。いくつかの実施形態では、触媒ウォッシュコート充填量は、約0.8~2.6g/in3、約1.2~2.2g/in3、または約1.5~約2.2g/in3の範囲にある。
【0107】
本SCR触媒性コーティングは、1つ以上のコーティング層を備え得、少なくとも1つの層は、本SCR触媒組成物を含む。触媒性コーティングは、基材の少なくとも一部上に配設されかつこれに付着している1つ以上の薄い付着性コーティング層を含み得る。コーティング全体は、個々の「コーティング層」を備える。
【0108】
コーティングの構成
いくつかの実施形態では、本SCR触媒性物品は、1つ以上の触媒層の使用、および1つ以上の触媒層の組み合わせを含み得る。触媒材料は、基材壁の入口側のみ、出口側のみ、入口側および出口側の両方に存在し得るか、または壁自体が全てもしくは部分的に触媒材料で構成され得る。触媒性コーティングは、基材壁面上および/または基材壁の細孔内、すなわち、基材壁の「中」および/または「上」にあってもよい。したがって、「基材上に配置されたウォッシュコート」という表現は、任意の表面上、例えば、壁面上および/または細孔表面上を意味する。
【0109】
ウォッシュコートは、異なるコーティング層が基材と直接接触され得るように適用することができる。あるいは、1つ以上の「アンダーコート」が存在していてもよく、それによって、触媒性コーティング層またはコーティング層の少なくとも一部は、基材と直接接触しない(むしろ、アンダーコートと接触する)。コーティング層の少なくとも一部がガス流または雰囲気に直接曝されないように(むしろ、オーバーコートと接触するように)、1つ以上の「オーバーコート」が存在してもよい。
【0110】
あるいは、本触媒組成物は、ボトムコーティング層の上を覆うトップコーティング層中に存在し得る。触媒組成物は、トップ層およびボトム層中に存在し得る。任意の1つの層は、基材の軸方向長さ全体に延在し得、例えば、ボトム層は、基材の軸方向長さ全体に延在し得、トップ層はまた、ボトム層の上方で基材の軸方向長さ全体に延在し得る。トップ層およびボトム層は各々、入口端部または出口端部のいずれかから延在し得る。
【0111】
例えば、ボトムコーティング層およびトップコーティング層はどちらも、同じ基材端部から延在し得、トップ層は、部分的または完全にボトム層をオーバーレイしており、ボトム層は、基材の部分長または全長に延在しており、トップ層は、基材の部分長または全長に延在している。あるいは、トップ層が、ボトム層の一部をオーバーレイしていてもよい。例えば、ボトム層は、基材の全長に延在し得、トップ層は、入口端部または出口端部のいずれかから、基材の長さの約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、または約90%まで延在し得る。
【0112】
あるいは、ボトム層は、入口端部または出口端部のいずれかから、基材の長さの約10%、約15%、約25%、約30%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、または約95%まで延在し得、トップ層は、入口端部または出口端部のいずれかから、基材長の約10%、約15%、約25%、約30%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、または約95%まで延在し得、トップ層の少なくとも一部は、ボトム層をオーバーレイしている。この「オーバーレイ」ゾーンは、例えば、基材の長さの約5%から、約80%、例えば、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60、または約70%まで延在し得る。
【0113】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるような基材上に配置された本明細書に開示されるようなSCR触媒組成物は、触媒基材の長さの少なくとも一部上に配置された第1のウォッシュコートを含む。
【0114】
いくつかの実施形態では、第1のウォッシュコートは、触媒基材上に直接配置されており、第2のウォッシュコート(同じであるか、または異なる触媒もしくは触媒成分を含む)は、第1のウォッシュコートの少なくとも一部上に配置されている。いくつかの実施形態では、第2のウォッシュコートは、触媒基材上に直接配置されており、第1のウォッシュコートは、第2のウォッシュコートの少なくとも一部上に配置されている。いくつかの実施形態では、第1のウォッシュコートは、入口端部から、全長の約10%~約50%の長さまで、触媒基材上に直接配置されており、第2のウォッシュコートは、第1のウォッシュコートの少なくとも一部上に配置されている。いくつかの実施形態では、第2のウォッシュコートは、入口端部から、全長の約50%~約100%の長さまで、触媒基材上に直接配置されており、第1のウォッシュコートは、第2のウォッシュコートの少なくとも一部上に配置されている。いくつかの実施形態では、第1のウォッシュコートは、入口端部から、全長の約20%~約40%の長さまで、触媒基材上に直接配置されており、第2のウォッシュコートは、入口端部から出口端部まで延在している。いくつかの実施形態では、第1のウォッシュコートは、出口端部から、全長の約10%~約50%の長さまで、触媒基材上に直接配置されており、第2のウォッシュコートは、第1のウォッシュコートの少なくとも一部上に配置されている。いくつかの実施形態では、第1のウォッシュコートは、出口端部から、全長の約20~約40%の長さまで、触媒基材上に直接配置されており、第2のウォッシュコートは、入口端部から出口端部まで延在している。いくつかの実施形態では、第2のウォッシュコートは、出口端部から、全長の約50%~約100%の長さまで、触媒基材上に直接配置されており、第1のウォッシュコートは、第2のウォッシュコートの少なくとも一部上に配置されている。いくつかの実施形態では、第1のウォッシュコートは、全長の100%をカバーする触媒基材上に直接配置されており、第2のウォッシュコートは、全長の100%をカバーする第1のウォッシュコート上に配置されている。いくつかの実施形態では、第2のウォッシュコートは、全長の100%をカバーする触媒基材上に直接配置されており、第1のウォッシュコートは、全長の100%をカバーする第2のウォッシュコート上に配置されている。
【0115】
触媒性コーティングは、有利には、「ゾーン化」させることができ、ゾーン化された触媒性層を含み、すなわち、触媒性コーティングは、基材の軸方向長さにわたって様々な組成物を含有する。これは、「横方向にゾーン化させた」と記載することもできる。例えば、層は、入口端部から出口端部に向かって延在していてもよく、基材長の約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、または約90%にわたって延在していてもよい。別の層は、出口端から入口端に向かって延在していてもよく、基材長さの約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、または約90%にわたって延在していてもよい。異なるコーティング層は、互いに隣接し、互いにオーバーレイしなくてもよい。あるいは、異なる層が、互いの一部にオーバーレイして、第3の「中間」ゾーンを提供してもよい。中間ゾーンは、例えば、基材長さの約5%~約80%、例えば、基材長さの約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、または約70%にわたって延在していてもよい。
【0116】
本開示のゾーンは、コーティング層の関係によって定義される。異なるコーティング層に関しては、いくつかの可能なゾーニング構成がある。例えば、上流ゾーンおよび下流ゾーンが存在する場合、上流ゾーン、中間ゾーン、および下流ゾーンが存在する場合、4つの異なるゾーンが存在する場合などがある。2つの層が隣接していて重なり合っていない場合は、上流ゾーンおよび下流ゾーンが存在する。2つの層がある程度重なり合っている場合、上流、下流、および中間のゾーンが存在する。例えば、コーティング層が基材の全長にわたって延在し、異なるコーティング層が出口端部からある長さまで延在しかつ第1のコーティング層の一部にオーバーレイしている場合、上流および下流ゾーンが存在する。
【0117】
例えば、SCR物品は、第1のウォッシュコート層を含む上流ゾーンと、異なる触媒材料または成分を含む第2のウォッシュコート層を含む下流ゾーンと、を含み得る。あるいは、上流ゾーンは第2のウォッシュコート層を含み得、下流ゾーンは第1のウォッシュコート層を含み得る。
【0118】
いくつかの実施形態では、第1のウォッシュコートは、入口端部から、全長の約10%~約50%の長さまで、触媒基材上に配置されており、第2のウォッシュコートは、出口端部から、全長の約50%~約90%の長さまで、触媒基材上に配置されている。いくつかの実施形態では、第1のウォッシュコートは、出口端部から、全長の約10%~約50%の長さまで、触媒基材上に配置されており、第2のウォッシュコートは、入口端部から、全長の約50%~約90%の長さまで、触媒基材上に配置されている。
【0119】
図3a、3b、および3cは、2つのコーティング層を有するいくつかの可能なコーティング層構成を示す。コーティング層201(トップコート)および202(ボトムコート)が配置されている基材壁200が示されている。これは簡略化された図であり、多孔質ウォールフロー基材の場合、細孔および細孔壁に付着したコーティングは示されておらず、閉塞された端部は示されていない。
図3aでは、コーティング層201および202は各々、基材の全長に延在しており、トップ層201は、ボトム層202にオーバーレイしている。
図3aの基材は、ゾーン化されたコーティング構成を含まない。
図3bは、出口から基材長さの約50%延在して、下流ゾーン204を形成するコーティング層202と、入口から基材長さの約50%延在して、上流ゾーン203を提供するコーティング層201と、を有するゾーン化された構成を例示している。
図3cでは、ボトムコーティング層202は、出口から基材長さの約50%延在しており、トップコーティング層201は、入口から長さの50%を超えて延在し、層202の一部をオーバーレイしており、上流ゾーン203、中間オーバーレイゾーン205、および下流ゾーン204を提供する。
図3a、3b、および3cは、ウォールスルー基材またはフロースルー基材上のSCR触媒組成物コーティングを例示するのに有用であり得る。
【0120】
いくつかの実施形態では、基材はハニカム基材である。いくつかの実施形態では、ハニカム基材は、フロースルー基材またはウォールフローフィルタである。ある特定の実施形態では、本明細書に開示されるような金属促進ゼオライト材料は、本明細書に開示されるようなSCR触媒性物品に組み込まれる場合、様々な温度でのSCR活性を特徴とし得る。例えば、いくつかの実施形態では、排気ガス流中のNOxの少なくとも一部は、約200℃~約600℃の温度でN2に還元される。いくつかの実施形態では、排気ガス流中のNOxレベルは、200℃で少なくとも50%低減される。いくつかの実施形態では、排気ガス流中のNOxレベルは、600℃で少なくとも70%低減される。いくつかの実施形態では、SCR触媒物品は、10体積%の蒸気および残りが空気の存在下で800℃で16時間の熱エージング処理を行った後、SCR触媒組成物が、擬似定常状態条件下での80,000h-1の排気ガスの体積ベースの毎時空間速度で、2.1g/in3の触媒充填で400cpsiのセル密度および6milの壁厚を有するセルラーセラミックモノリス上に配置され、排気ガスが500ppmのNO、500ppmのNH3、10%のO2、5%のH2O、および残りがN2であるガス混合物を含む条件下でSCR触媒物品が試験される場合、200℃で約72%以上、600℃で約81%以上、またはそれらの両方の排気ガス流中のNOxの軽減を呈す。
【0121】
排気ガス処理システム
さらなる態様では、排気ガス流を生成するリーンバーンエンジンの下流に、かつそれと流体連通して位置付けされる、本明細書に開示されるようなSCR物品を含む排気ガス処理システムが提供される。エンジンは、例えば、化学量論的燃焼に必要とされる空気よりも多くの空気を伴う燃焼条件、すなわちリーン条件で作動する、ディーゼルエンジンであり得る。他の実施形態では、エンジンは、固定源(例えば、発電機またはポンプ場)と関連したエンジンであり得る。いくつかの実施形態では、排出物処理システムは、1つ以上の追加の触媒構成要素をさらに含む。排出物処理システム内に存在する様々な触媒構成要素の相対的な配置は、変動し得る。
【0122】
本排気ガス処理システムおよび方法では、排気ガス流は、上流端部に入って下流端部を出ることによって、物品または処理システムに受け取られる。基材または物品の入口端部は、「上流」端部または「前」端部と同義である。出口端部は、「下流」端部または「後」端部と同義である。処理システムは、一般に、内燃エンジンの下流にあり、かつ内燃エンジンと流体連通している。
【0123】
本明細書に開示されるシステムは、本明細書に開示されるようなSCR触媒性物品を含み、1つ以上の追加の構成要素をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、1つ以上の追加の構成要素は、ディーゼル酸化触媒(DOC)、煤フィルタ(触媒化されていても、または触媒化されていなくてもよい)、尿素注入構成要素、アンモニア酸化触媒(AMOx)、低温NOx吸収剤(LT-NA)、リーンNOxトラップ(LNT)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。システムは、例えば、本明細書に開示されるような選択的触媒還元触媒(SCR)と、ディーゼル酸化触媒(DOC)と、還元剤注入器、煤フィルタ、アンモニア酸化触媒(AMOx)、またはリーンNOxトラップ(LNT)を含む1つ以上の物品と、を含み得る。還元剤注入器を含む物品は還元物品である。還元システムは、還元剤注入器および/またはポンプおよび/またはリザーバなどを含む。本処理システムは、煤フィルタおよび/またはアンモニア酸化触媒をさらに含み得る。煤フィルタは、触媒化されていなくても、または触媒化(CSF)されていてもよい。例えば、本処理システムは、上流から下流まで、DOCを含む物品、CSF、尿素注入器、SCR物品、およびAMOxを含む物品を備え得る。リーンNOxトラップ(LNT)も含まれ得る。
【0124】
排出物処理システム内に存在する様々な触媒構成要素の相対的な配置は、変動し得る。本排気ガス処理システムおよび方法では、排気ガス流は、上流端部に入り、下流端部を出ることによって、物品または処理システムに受け入れられる。基材または物品の入口端部は、「上流」端部または「前」端部と同義である。出口端部は、「下流」端部または「後」端部と同義である。処理システムは、一般に、内燃エンジンの下流にあり、かつ内燃エンジンと流体連通している。
【0125】
1つの例示的な排出物処理システムが、排出物処理システム20の概略図を図示する
図4に例示されている。示されるように、排出物処理システムは、リーンバーンガソリンエンジンのようなエンジン22の下流にある直列の複数の触媒構成要素を含み得る。触媒構成要素のうちの少なくとも1つは、本明細書に記載されるようなSCR触媒物品であるであろう。SCR触媒物品は、多数の追加の触媒材料と組み合わせることができ、追加の触媒材料と比較して様々な位置に置くことができる。
図4は、直列の5つの触媒構成要素24、26、28、30、32を例示するが、触媒構成要素の総数は変動する可能性があり、5つの構成要素は単なる一例である。当業者であれば、各物品の相対位置を、本明細書に例示されるものとは異なる順序で配置することが望ましい場合があることを認識するであろう。そのような代替的な順序付けが、本開示によって企図される。
【0126】
限定するものではないが、表1は、1つ以上の実施形態の様々な排気ガス処理システム構成を提示する。各触媒は、エンジンが触媒Aの上流にあり、それが触媒Bの上流にあり、それが触媒Cの上流にあり、それが触媒Dの上流にあり、それが触媒Eの上流にある(存在する場合)ように排気導管を介して次の触媒に接続されることに留意されたい。表中の構成要素A~Eに対する参照は、
図4の同じ記号で相互参照され得る。
【0127】
表1に記載されるLNT触媒は、NOxトラップとして従来から使用されている任意の触媒であり得、典型的には、卑金属酸化物(BaO、MgO、CeO2など)および触媒によるNOの酸化および還元のための白金族金属(例えば、PtおよびRh)を含むNOx吸着剤組成物を含む。
【0128】
表1に記載されるLT-NA触媒は、低温(<250℃)でNOx(例えば、NOまたはNO2)を吸着し、高温(>250℃)でそれをガス流に放出することができる任意の触媒であり得る。放出されたNOxは、一般に、本明細書に開示されるように、下流のSCRまたはSCRoF触媒上でN2およびH2Oに変換される。典型的には、LT-NA触媒は、Pd促進ゼオライトまたはPd促進耐火金属酸化物を含む。
【0129】
表中のSCRへの言及は、本開示のSCR触媒組成物を含み得るSCR触媒を指す。SCRoF(またはフィルタ上のSCR)への言及は、本開示のSCR触媒組成物を含み得る微粒子または煤フィルタ(例えば、ウォールフローフィルタ)を指す。SCRおよびSCRoFの両方が存在する場合、1つもしくは両方が本開示のSCR触媒を含み得るか、または触媒のうちの1つが従来のSCR触媒を含み得る。
【0130】
表中のAMOxへの言及は、本発明の1つ以上の実施形態の触媒の下流に提供されて、あらゆる漏れたアンモニアを排気ガス処理システムから除去することができる、アンモニア酸化触媒を指す。特定の実施形態では、AMOx触媒は、PGM成分を含み得る。1つ以上の実施形態では、AMOx触媒は、PGMを有するボトムコートと、SCR機能を有するトップコートとを含み得る。
【0131】
当業者によって認識されるように、表1に列挙された構成では、構成要素A、B、C、D、またはEのうちの任意の1つ以上は、ウォールフローフィルタのような微粒子フィルタ上に、またはフロースルーハニカム基材上に配置することができる。1つ以上の実施形態では、エンジン排気システムは、エンジンの近くの位置(直結位置、CC)に取り付けられた1つ以上の触媒構成要素を、車体の下の位置(床下位置、UF)に取り付けられた追加の触媒構成要素と共に含む。1つ以上の実施形態では、排気ガス処理システムは、尿素噴射構成要素をさらに備え得る。
【表1】
【0132】
エンジン排気の処理方法
本発明の別の態様は、リーンバーンエンジン、特に、リーンバーンガソリンエンジンまたはディーゼルエンジンの排気ガス流を処理する方法を対象とする。一般に、この方法は、排気ガス流を本開示の触媒性物品または本開示の排出物処理システムと接触させることを含む。本方法は、本発明の1つ以上の実施形態によるSCR触媒物品をエンジンの下流に置くこと、およびエンジン排気ガス流を触媒の上に流すことを含むことができる。1つ以上の実施形態では、この方法は、上記のように、追加の触媒構成要素をエンジンの下流に置くことをさらに含む。いくつかの実施形態では、この方法は、排気ガス流を、本開示の触媒性物品または排気ガス処理システムと、排気ガス流中に存在し得る1つ以上のNOx成分のレベルを低減するのに十分な時間および温度で接触させることを含む。
【0133】
本触媒組成物、本物品、本システム、および本方法は、内燃エンジン、例えば、ガソリン、小型ディーゼルおよび大型ディーゼルエンジンの排気ガス流の処理に好適である。触媒組成物はまた、静止した工業プロセスからの排出の処理、屋内空気からの有害または有毒物質の除去、または化学反応プロセスにおける触媒作用にも好適である。
【0134】
本明細書に記載される組成物、方法、および用途に対する好適な修正および適合が、任意の実施形態またはそれらの態様の範囲から逸脱することなく行われ得ることは、関連技術の当業者には容易に明らかであろう。提供される組成物および方法は例示的なものであり、特許請求される実施形態の範囲を限定することを意図するものではない。本明細書に開示される様々な実施形態、態様、および選択肢の全ては、全ての変更で組み合わされ得る。本明細書に記載される組成物、配合物、方法、およびプロセスの範囲には、本明細書の実施形態、態様、選択肢、例、および選好の全ての実際のまたは潜在的な組み合わせが含まれる。本明細書で引用された全ての特許および刊行物は、組み込まれた他の特定の記述が具体的に提供されない限り、記載されるように、それらの特定の教示について参照によって本明細書に組み込まれる
【実施例】
【0135】
本発明の態様は、以下の実施例によってさらに完全に例示され、これらは、本発明のある特定の態様を例示するために説明され、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。いくつかの例示的な実施形態を記載する前に、本発明は、以下の説明に記載される構成またはプロセスステップの詳細に限定されず、また他の実施形態が可能であり、様々な手法で実践または実行することができることを理解されたい。別段の定めがない限り、全ての部分およびパーセンテージは重量によるものであり、全ての重量パーセントは乾燥ベースで表され、すなわち、別途指示がない限り、含水量は除外されることを意味する。
【0136】
実施例1.CHAゼオライト合成
一連のCHAゼオライト(実施例1A~1D)を合成した。ゼオライト1A~1Dの結晶化のために、以下の組成を有するアルミノシリケート合成ゲルを調製した:SiO2/Al2O3=35、Na/Si=0.81、TMAda+/Si=0.09、OH/Si=0.50。H2O/Si比は、実施例1Aでは32、実施例1Bでは12、実施例1Cおよび1Dでは34であった。水酸化トリメチルアダマンチルアンモニウム(TMAdaOH)を、各調製のために有機構造指向剤(OSDA)として使用した。ケイ酸ナトリウム溶液(SiO2/Na2O=2.6(実施例1A~1C)またはSiO2/Na2O=3.3(実施例1D))、およびNa-FAU(SiO2/Al2O3=5.1)をそれぞれSiおよびAl源として使用した。ゲルのNa+含有量をNa2SO4で補足して、所望のNa/Si比を達成した。CHAシード(SAR=20;総SiO2含有量の5%)を実施例1Cのゲル組成物に添加した。さらに、H2SO4を用いて過剰OH-を中和し、所望のOH/Si比を取得した。ケイ酸ナトリウム溶液のためにNa+とOH-との間の1:1の比を仮定して、OH-/SiO2比を計算した。全ての結晶化を、2Lの撹拌オートクレーブ内で140℃で36時間(実施例1C)または72時間(実施例1A、1B、および1D)、自生圧力で行った。生成物を濾過によって単離し、乾燥させ、焼成(540℃、6時間)して、Na+形態を得た。各生成物のSiO2/Al2O3比は、17~20であった(表2)。
【0137】
実施例2.ゼオライトの特性
生成物を、XRDおよびN2-物理吸着によって特徴付けた(表2)。全ての結晶化によって、>90%の一次相の結晶化度およびそれに対応する高い微細孔表面積(>500m2/g)を有する生成物が得られた。メソ細孔およびゼオライト(微細孔)の表面積を、ISO9277法に従って、Micromeritics TriStar 3000シリーズ機器でN2吸着ポロシメトリーによって決定した。Micromeritics SmartPrep脱気装置で、試料を合計6時間脱気した(乾燥窒素流の下300℃まで2時間上昇させ、その後、300℃で4時間保持した)。窒素BET表面積を、0.08~0.20の5つの分圧点を使用して決定した。ゼオライトおよびマトリックスの表面積を、同じ5つの分圧点を使用して決定し、HarkinsおよびJuraのtプロットを使用して計算した。20Å超の直径を有する細孔は、マトリックスの表面積に寄与するとみなされる。
【0138】
結晶学的ひずみを、粉末X線回折データのリートベルト解析法を使用して測定した。具体的には、ひずみを、X線回折データの一般構造分析システム(GSAS)リートベルト解析法によるLYパラメータから計算した。使用されたGSAS法は、国際特許出願公開第2018/201046号の方法と同様であり、その開示は、そのような方法に関して参照によって本明細書に組み込まれる。GSASソフトウェアは、Los Alamos National Laboratoryで作成され、A.C.Larson and R.B.Von Dreele,General Structure Analysis System(GSAS),Los Alamos National Laboratory Report LAUR 86-748(2004)に開示されており、参照によって本明細書に組み込まれる。例えば、GSASマニュアルは、プロファイル関数2のパラメータLYから決定される場合のひずみの計算を次のように提供している。
S=(π/18000)*(LY-LYi)100%。
【0139】
この特定の例では、分析に使用された回折計の場合、LYiはゼロであると決定された。すなわち、使用された機器は、パラメータLYに寄与しなかった。
【0140】
ドメインサイズもGSAS法を使用して推定した。ドメインサイズには、GSAS LXパラメータを使用した。例えば、GSASマニュアルは、パラメータLXからのドメインサイズの計算を次のように提供している:
p=18000Kλ/πLX
式中、pは、オングストローム(Å)のドメインサイズである。
【表2】
【0141】
実施例3.SCR触媒組成物。
前述の材料からSCR触媒を調製するために、Cuイオンをイオン交換して、CHAゼオライトA~DのH+形態にし、4.5~5.0重量%のCuO充填および約18~20のゼオライトSARを達成した。Cu-CHAゼオライト触媒、酸化ジルコニウム、および擬ベーマイト(PB-250)結合剤を含有する触媒性コーティングを、400cpsiのセル密度および6milの壁厚を有するセルラーセラミックモノリス上にウォッシュコートプロセスで配置した。コーティングしたモノリスを110℃で乾燥させ、約550℃で1時間焼成した。コーティングプロセスは、2.1g/in3の触媒充填を提供し、その5%は酸化ジルコニウムであり、5%は酸化アルミニウム結合剤であった。SCR試験の前に、コーティングしたモノリスを、10%のH2O/空気の存在下で、800℃で16時間水熱エージングした。
【0142】
NO
x転換(表3)を、200℃~600℃への0.5℃/分の温度上昇で、500ppmのNO、500ppmのNH
3、10%のO
2、5%のH
2O、残りがN
2のガス混合物中で、疑似定常状態条件下での80,000h
-1であるガスの体積ベースの毎時空間速度で、実験室用反応器中で測定した。表3のデータは、200℃および600℃の両方でより高いレベルのNO
x変換が、約1000Åよりも小さいゼオライトドメインサイズで一般に得られることを示した(実施例1Aおよび1C)。走査型電子顕微鏡(SEM)イメージングによって決定された実際の結晶サイズは、1000~2000Åよりはるかに大きかった。表3のデータは、約0.50%未満のひずみ値を有するゼオライトで、200℃および600℃の両方でより高いレベルのNO
x変換が得られたことをさらに示した(実施例1A)。
【表3】
【0143】
ドメインサイズ、ひずみ、ならびに200℃および600℃でのNO
x変換性能の関係を、それぞれ
図5および
図6にグラフでさらに示し、そこから表3のデータを得た。理論に拘束されることを望むものではないが、比較的小さいドメインサイズ(例えば、約1200Å未満)、低ひずみ(例えば、約0.40~0.45%未満)、またはそれらの両方を特徴とするCu-CHAゼオライト触媒組成物は、低温および高温の両方で向上したNO
x SCR性能を提供すると考えられる。
【国際調査報告】