(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-01
(54)【発明の名称】ガスセル
(51)【国際特許分類】
G01N 21/03 20060101AFI20221124BHJP
G01N 21/3504 20140101ALI20221124BHJP
G01N 21/39 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
G01N21/03 B
G01N21/3504
G01N21/39
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022518924
(86)(22)【出願日】2020-09-21
(85)【翻訳文提出日】2022-04-21
(86)【国際出願番号】 EP2020076324
(87)【国際公開番号】W WO2021058439
(87)【国際公開日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】102019006763.0
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】599082218
【氏名又は名称】メトラー-トレド ゲーエムベーハー
【住所又は居所原語表記】Im Langacher, 8606 Greifensee, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100092967
【氏名又は名称】星野 修
(74)【代理人】
【識別番号】100220065
【氏名又は名称】高梨 幸輝
(72)【発明者】
【氏名】ベルグストレム,ペル・ヴィルヘルム
(72)【発明者】
【氏名】タツライター,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】コンジエラ,ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】ベントゥリーニ,フランチェスカ
(72)【発明者】
【氏名】ヘルテル,マルティン
【テーマコード(参考)】
2G057
2G059
【Fターム(参考)】
2G057AA01
2G057AB04
2G057AB06
2G057AB08
2G057AC03
2G057BA01
2G057BB10
2G057BC10
2G057BD10
2G057DA03
2G057DA09
2G057DB03
2G057DC01
2G059AA01
2G059BB01
2G059DD13
2G059EE01
2G059GG01
2G059GG02
2G059GG09
2G059JJ14
2G059JJ16
2G059JJ17
2G059JJ26
2G059LL03
2G059LL10
2G059PP02
(57)【要約】
ガスが電磁放射の入射光線ビーム(S)に暴露され、ガスから出射する電磁放射の光線ビーム(S
A)が測定信号を形成するために検出される、ガスの分光分析、特に吸収分光分析のためのガスセル(1)であって、ガスセル(1)は、多孔性の電磁放射散乱材料によって形成される本体部(10)、入射光線ビーム(S)をガスセル(1)内にカップリングするためのインカップリングデバイス(20)、および出射光線ビーム(S
A)をガスセル(1)からカップリングアウトするためのアウトカップリングデバイス(30)を備え、本発明に従って、ガスセルは、本体部(10)内に材料なしの空洞(12)を形成することによって本発明に従ってさらに開発され、空洞(12)は、材料内に延び、かつ電磁放射の拡散反射および透過の両方を行う、内面(14)によって囲まれる、ガスセル(1)。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスが電磁放射の入射光線ビーム(S)に暴露され、測定信号を形成するために前記ガスから出射する電磁放射の光線ビーム(S
A)が記録される、ガスの分光分析、特に吸収分光分析のためのガスセル(1)であって、前記ガスセル(1)は、
電磁放射を散乱する多孔性材料からなる本体部(10)、ならびに
前記入射光線ビーム(S)を前記ガスセル(1)内にカップリングするためのインカップリングデバイス(20)、および前記出射光線ビーム(S
A)を前記ガスセル(1)からアウトカップリングするためのアウトカップリングデバイス(30)
を有し、
材料を含有しない空洞(12)は、前記本体部(10)に形成され、前記材料の内側に延び、前記電磁放射を拡散反射ならびに透過する内面(14)によって囲まれることを特徴とする、ガスセル(1)。
【請求項2】
請求項1に記載のガスセル(1)であって、前記材料は、前記空洞(12)が中に形成される多孔性セラミック材料を有する、ガスセル(1)。
【請求項3】
請求項1または2に記載のガスセル(1)であって、気孔率は、最低25%、好ましくは最低30%、より好ましくは最低35%、ならびに最大70%、好ましくは最大65%、およびより好ましくは最大60%となる、ガスセル(1)。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のガスセル(1)であって、前記空洞(12)は、半径R
Kを有する球形シェルの形態を有する、ガスセル(1)。
【請求項5】
請求項4に記載のガスセル(1)であって、前記球形シェルの前記半径R
Kは、信号対雑音比を考慮して選択され、前記球形シェルの前記半径R
Kは、好ましくは最低2mm、より好ましくは最低5mm、より好ましくは最低10mm、およびさらにより好ましくは最低15mmである、ガスセル(1)。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のガスセル(1)であって、前記本体部(10)は、前記空洞(12)の前記内面(14)を囲む外面(16)を、前記外面(16)において出射する漏れ放射線が既定の損失限界よりも小さい距離のところに、有し、前記既定の損失限界は、好ましくは前記入射光線ビーム(S)の強度の99%以下、より好ましくは前記入射光線ビーム(S)の強度の95%以下、およびさらにより好ましくは前記入射光線ビーム(S)の強度の90%以下である、ガスセル(1)。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のガスセル(1)であって、前記本体部(10)の前記外面(16)に包囲されるガスセル容積(V)に対する前記ガスセル(1)内で前記光線ビーム(S)によって進行される光路長(L
O)の比率は、10
5m
-2以上、好ましくは2・10
5m
-2以上、より好ましくは3・10
5m
-2以上である、ガスセル(1)。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のガスセル(1)であって、前記インカップリングデバイス(20)は、前記入射光線ビーム(S)の前記空洞(12)内への発散的なカップリングのために設計される、ガスセル(1)。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のガスセル(1)であって、前記インカップリングデバイス(20)および/または前記アウトカップリングデバイス(30)は、光ガイドを有する、ガスセル(1)。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のガスセル(1)であって、前記インカップリングデバイス(20)は、前記入射光線ビーム(S)の電磁放射を前記空洞(12)内にカップリングするために設計され、および/または前記アウトカップリングデバイス(30)は、前記出射光線ビーム(S
A)を形成する電磁放射を前記空洞(12)からアウトカップリングするために設計される、ガスセル(1)。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載のガスセル(1)であって、前記本体部(10)内の前記インカップリングおよび/またはアウトカップリングデバイス(20、30)によって占有される面積のサイズは、吸光度および/または信号対雑音比を考慮して選択される、ガスセル(1)。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載のガスセル(1)であって、前記インカップリングデバイス(20)は、前記入射光線ビーム(S)の電磁放射を、前記多孔性材料を含有する前記本体部(10)のエリア(18)内にカップリングするために構成され、および/または前記アウトカップリングデバイス(30)は、前記出射光線ビーム(S
A)を形成する電磁放射を、前記多孔性材料を含有する前記本体部(10)の前記エリア(18)からアウトカップリングするために構成される、ガスセル(1)。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載のガスセル(1)、入射光線ビーム(S)を生成するための電磁放射源、および出射光線ビーム(S
A)を検出するための検出器装置を有する、ガスの吸収分光分析のための装置。
【請求項14】
請求項13に記載の装置であって、前記電磁放射源は、調節可能なレーザダイオードである、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、ガスが電磁放射の入射光線ビームに暴露され、ガスから出射する電磁放射の光線ビームが測定信号を形成するために検出される、ガスの分光分析、特に、吸収分光分析のためのガスセルであって、電磁放射を散乱する材料で作製される本体部、ならびに入射光線ビームをガスセル内にカップリングするためのインカップリングデバイスおよび出射する光線ビームをガスセルからアウトカップリングするためのアウトカップリングデバイスを有する、ガスセルに関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]ガスの分光分析、例えば、吸収分光法またはラマン分光法は、特徴特性、特にガス濃度、の決定を可能にする。これは、例えば、工業プロセスにおいて、または環境変化の観察において、幅広い応用を有する。
【0003】
[0003]吸収分光法は、ガス通過の間に電磁放射の入射光線ビームが経る吸収の測定に基づく。電磁放射の周波数が、ガスの共鳴周波数と一致する場合、電磁放射の吸収が発生し、これは、出射光線ビームの強度の弱まりによって検出され得る。好適な放射源は、特に、指定の周波数範囲内で調節可能であるレーザを含む。このとき、吸収は、ガスの対応する共鳴周波数における出射光線ビームの強度の減少として検出可能である。
【0004】
[0004]吸収分光法の基礎は、ランベルト・ベールの法則である。強度I0で既知の濃度のガスに入射する光線ビームの場合、ガスによって透過される放射線の強度Iは、以下の方程式によって得られる。
I=I0・e-α・z
[0005]ここで、zは、光路長、すなわち、放射線がガス内で進行した経路長である。αは、吸収係数、α=c・εを示し、式中、εは、吸光係数であり、cは、ガスの濃度である。故に、吸光係数および光路長が分かっている場合、ガスの濃度cが決定され得る。
【0005】
[0006]吸収分光法内の特別な技術は、TDLAS(調節可能ダイオードレーザ吸収分光法)としても知られる、調節可能なダイオードを使用するいわゆる吸収分光法である。ここでは、レーザ放射源はレーザダイオードである。レーザ放射は、ガスの典型的な吸収線を使用して調節され、出射光線ビームの強度の減少は、検出器を使用して測定される。TDLASは、非常に低いガス濃度の測定を可能にする。
【0006】
[0007]ガス濃度を決定するための吸収分光方法の検出感度が光路長に依存することは、提示される式から明らかである。故に、改善された検出感度を達成するために吸収分光方法において光路長を延長することが目標である。
【0007】
[0008]光路長を延長する1つの既知の方法は、いわゆるマルチガスセルを使用することからなる。これらにより、電磁放射は、検査されているガスを通って繰り返し誘導される。マルチパスガスセルの既知の例としては、ホワイトガスセルおよびヘリオットガスセルが挙げられる。これらにおいて、達成可能な光路長は、ガスセル容積(本体部の外面に包囲される容積と定義される)に比例し、ホワイトガスセルの場合はガスセル容積Vに対する光路長LOの比率LO/V=7.5・102m-2、およびヘリオットガスセルの場合はLO/V=3・104m-2が達成され得る。したがって、比較的大きいガスセル容積が、数メートルの範囲の光路長延長に必要である。しかしながら、大きいガスセル容積を有するガスセルは、特定の応用では実現不可能である。ガスセル容積と共に増加するガスセルの応答時間もまた、使用には不利である。
【0008】
[0009]マルチパスガスセルの検出感度もまた、マルチパスガスセルの反射または分散面、例えば、ミラー、レンズなどの間のファブリペローエタロンの形成により引き起こされる干渉効果によって制限される。干渉効果を低減するために、さらなる光学部品がガスセルに追加される。しかしながら、これらは、スペックル形成を引き起こす電磁放射の拡散反射をもたらす。
【0009】
[0010]これらの問題を解決するため、吸収分光法のためのいわゆるウルブリヒト球の使用が提案された(例えば、J.Hodgkinsonら、Applied Optics Vol.48,No.30,2009を参照)。ここでは、測定されることになるガスの導入のための球形へこみが、本体部に形成される。へこみの表面は、使用される放射線に対して反射性である。このとき、球形シェル内の光路長は、式g
【0010】
【0011】
によって近似され得、式中、Rは、球形シェルの半径であり、ρは、球形シェルの内面における反射率である。光路長は、球形シェルの半径の線形関数であるため、大きい半径を有する球形シェルの使用が必要であり、これは特定の応用には不利であり得る。ウルブリヒト球に伴うさらなる問題は、ガス交換である。ガスは、へこみ内へ導入されなければならず、流入および流出デバイスの提供が、達成可能な光路長を減じる。
【0012】
[0011]光路長を延長するための別の可能性は、いわゆるGASMAS方法(散乱媒体吸収分光法におけるガス)によって提供される(M.Sjoholmら、Optics Letters Vol.26,16-18,2001)。この方法は、経路長を延長するための多孔性材料の使用に基づく。多孔性材料は、測定されることになるガスによって浸透される。材料は、ガスの吸収波長のための高分散特性、および低吸収性を有するように選択される。材料に入射する電磁放射は、このとき、孔において複数回散乱され(多重散乱)、故に、多孔性材料の厚さの倍数に対応する光路長の達成を可能にする。GASMAS方法の使用のさらなる可能性は、例えば、L.Meiら、「Pathlength Determination for gas in Scattering Media absorption Spectroscopy」、Sensors2014;14(3):3871-3890に開示されており、巨視的に均質な多孔性の媒体、および1つまたは複数のより大きい空洞が孔のない分散性マトリックス材料内に形成される不均一に多孔性の媒体の使用を含む。WO2018/210583 A1は、ガスセルのための多孔性セラミックの使用を開示する。
【0013】
[0012]過去には、GASMASは、多孔性材料内のガスの吸収分光分析を行うためにTDLASと組み合わされており、こうして検出感度の改善を達成した。しかしながら、そのような場合、検出感度は、光干渉ノイズによって制限される。この問題を解決するために、いわゆるレーザビームディザリングが提案されたが、これは、光学部品が移動されることを必要とし、これは市販のセルにおいて実現するのは困難である。WO2018/210583 A1は、多孔性材料内のガスセルに当たる、広がった集束されないレーザビームの使用を代替案として提案する。これは、干渉効果の除去をもたらす。
【0014】
[0013]現在まで吸収分光法のための多孔性材料の使用により、使用される多孔性層の厚さに伴って増加する光路長が得られる。しかしながら、透過放射線の強度は、層厚に伴って増加し、そのため、層厚は、出射光線ビームの強度が、それを検出するのに必要な最小値に低下したところまでしか増加することができない。故に、この効果およびガスセルの寸法は、最大達成可能光路長を制限する。
【0015】
[0014]EP2 520 924 A1および米国特許第4,709,150 A号もまた、ガス測定システムを開示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
[0015]述べられた先行技術における問題の観点から、本発明の目的は、高検出感度が、同時に小型設計を伴って達成されるように、最初に述べたタイプのガスセルをさらに開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
[0016]この目的は、電磁放射を拡散発射し、さらにはこれを透過する表面によって囲まれる材料なしの空洞が本体部に形成されるという点で、本発明により達成される。
[0017]本発明は、このタイプのガスセルが、従来のガスセルと比較して、ガスセル容積に対する光路長のかなりより高い比率を提供するという理解に基づく。この場合、ガスセル容積は、ガスセルの本体部の外面に包囲される容積と定義される。
【0018】
[0018]ここでは、ガスセル容積に対する光路長の高比率は、空洞の内面における放射線の拡散反射、および放射線散乱多孔性材料内への放射線の透過の両方によってもたらされる。2つの効果の相互作用は、以下のように理解され得る。
【0019】
[0019]インカップリングデバイスを使用してガスセル内にカップリングされ得る電磁放射の光線ビームは、空洞に入る。入射光線ビームは、収束性、発散的、または円筒状であり得る。光線ビームは、空洞の内面のある領域に衝突し、部分的に表面上で拡散反射され、部分的に多孔性材料内に透過される。放射線の拡散反射された部分は、空洞の内面のさらなるエリアに衝突し、ここでも再び、拡散反射または透過が起こる。
【0020】
[0020]放射線の透過された部分は、多孔性材料に入る。上に説明されたように、放射線の多重散乱が多孔性材料内で起こる。好ましくは、材料は、放射線の吸収をほとんどあるいは全く呈さない。複数の散乱に続いて、材料内に透過された放射線は、空洞に再び入る。このとき、透過放射線は、表面で反射される放射線と比較して、追加の経路長を進行している。放射線が空洞に再び入ると、それは、空洞の内面のさらなる領域に衝突する。そこでは、上にちょうど説明されるように、放射線は、部分的に反射され、また部分的に多孔性材料内へ透過される。このプロセスは、放射線がデカップリングデバイスによってガスセルからデカップリングされるまで繰り返される。
【0021】
[0021]内面での拡散反射および多孔性材料内の散乱の結果として、電磁放射の出射光線ビームは、本体部および空洞内の異なる経路長をカバーしている複数の光線で構成される。平均して、出射光線ビームは、経路長L+Zを進行しており、式中、Lは、空洞の内側の平均経路長の部分であり、Zは、多孔性材料内の平均経路長の部分である。この場合、多孔性材料内の平均経路長Zは、空洞内の平均経路長Lよりもはるかに大きい。
【0022】
[0022]故に、上に説明されるガスセルは、吸収分光法における使用に非常によく適している。このために、ガスセルは、測定されているガスと接触状態にされる。多孔性材料は、測定されているガスに対してガス透過可能である。ガスは、多孔性材料内へ、および空洞内へ浸透する。入射光線ビームがその後ガスセル内にカップリングされる場合、出射光線ビームは、平均して、サンプルガスを通る経路長L+Zを進行している。ZはLよりもはるかに大きいため、吸光度の大部分は、多孔性材料内のガスとの電磁放射の相互作用に起因する。
【0023】
[0023]電磁放射は、空洞を囲む多孔性材料に複数回入り、そこでガスと相互作用する。故に、ガスセル容積に対する光路長の超高比率は、本発明に従うガスセルにより達成され得る。これは、同時に高い検出感度および高速を伴った小型設計を可能にする。高い検出感度は、大きい達成可能光路長に基づく。高速応答時間は、比較的小さいガスセル容積およびガスセルの表面全体にわたるガス交換に起因する。同時に、多孔性構造は、数秒以内のガス交換、および故に濃度変化の高速検出を可能にする。管類およびポンプの複雑なシステムによるガス入力またはガス出力は、これのために必要とされない。小型設計の結果として、本発明に従うガスセルは、多数の潜在的な応用を有し、妥当な費用で生産され得る。
【0024】
[0024]上に説明されたように、空洞の内面で反射される電磁放射の一部は、空洞の内面に再び衝突する際に部分的に多孔性材料に入る。結果として、光線ビームの入口側での反射によって引き起こされる、従来のガスMAプロセスで見られる出射光線ビームの強度の損失は回避される。
【0025】
[0025]さらには、干渉効果の発生は、空洞の表面上および材料内の放射線の散漫散乱が理由で回避される。これは、ガスセルの検出感度のさらなる改善を結果としてもたらす。
[0026]本発明に従うガスセルのさらなる利点は、多孔性材料が、空洞内へまたは多孔性材料自体の中へのより大きい分子の侵入を阻むバリアとして作用することにある。孔のサイズよりも小さいサイズの分子のみが、ナノ多孔性材料内へ浸透することができるか、またはそれを通過して空洞に到達することができる。故に、多孔性材料は、フィルタまたは膜として作用する。したがって、空洞の内部は、汚れから保護され、清浄を保ったままである。
【0026】
[0027]さらには、空洞を包囲する材料は、火炎防止器として作用する。一方では、多孔性材料自体は、容易に可燃しない。他方では、ガスセル内の多重反射が理由で、測定は、入射光線ビームによるガスセルの加熱が防がれ得る、または少なくとも強力に低減され得るように、全体的により少ない出力パワーで実施され得る。それにもかかわらず空洞内の発火が発生する場合、ガスがすでに極端に冷却されているため、炎がガスセルから漏れ出ることはない。したがって、より高い光学性能が可能にされ得、結果として、本ガスセルは、ATEXおよび/またはFM爆発防止ガイドラインの要件を同時に満たすことができる。
【0027】
[0028]本発明の1つの実施形態によると、材料は、空洞が中に形成される多孔性セラミック材料を含む。孔の最適サイズおよびそれらの分布は、実験的に決定され、評価されているガスに使用される波長、および使用されるセラミック材料に依存する。20nm~10μmの孔サイズが、中間赤外領域内の放射線には有利である。例えば、100~300nmの孔サイズは、760nmの波長のために使用され得る。
【0028】
[0029]多孔性セラミック材料は、例えば、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化イットリウム、ガリウムリン、多孔性シリコン、またはそれらの混合物を含有し得る。
【0029】
[0030]気孔率は、最低25%、好ましくは最低30%、より好ましくは最低35%、ならびに最大70%、好ましくは最大65%、およびより好ましくは最大60%となり得る。気孔率が25%未満の場合、材料は非常に高密度であり、孔における散乱による経路長延長の効果はわずかである。その一方で、気孔率が70%よりも大きい場合、多孔性材料は、不安定であり、ガスセルの本体部のための使用に好適ではない。
【0030】
[0031]空洞は、いかなる任意形状も有し得る。1つの潜在的な実施形態において、空洞は、半径RKを有する球形シェルを有する。しかしながら、空洞はまた、他の形状、例えば、楕円体の形状、を有し得る。
【0031】
[0032]ここでは、空洞の容積および/または内面は、信号対雑音比を考慮して選択され得る。実際、信号対雑音比は、空洞容積および内部表面積の関数であることが実験的に示されており、したがって、信号対雑音比の改善は、空洞の容積および/または内部表面積を好適に寸法決定することによって達成され得る。空洞が球形シェルの形態を有する場合、球形シェルの半径RKは、信号対雑音比を考慮して選択され得、球形シェルの半径RKは、好ましくは最低2mm、より好ましくは最低5mm、さらにより好ましくは最低10mm、および依然としてより好ましくは最低15mmとなり得る。あまりにも小さい球形シェルの半径が選択される場合、吸光度が低すぎて、乏しい信号対雑音比をもたらす。
【0032】
[0033]本発明の1つの実施形態によると、本体部は、空洞の内面を囲む外面を、外面において出射する漏れ放射線が指定の損失限界未満である距離のところに、有する。損失限界は、好ましくは入射光線ビームの強度の99%、より好ましくは入射光線ビームの強度の95%、およびさらにより好ましくは入射光線ビームの強度の90%である。先に説明されたように、空洞の内面は、電磁放射に対して反射性および透過性の両方である。材料に入射する透過放射線は、本体部の外面に到達し、そこで漏れ放射線として本体部から出る。しかし、空洞の内面と本体部の外面との間の距離が十分に大きくなるように選択される場合、多孔性材料内に浸透した放射線のほんのわずかな部分のみが外面に到達する。残りは、材料の孔で散乱することによって空洞内へ向け直される。強力に散乱する材料の場合、空洞の内面と本体部の外面との間の3~4mmの距離が、漏れ放射線の漏れ出しを妥当な量に制限するのに十分であり得る。これが、出射光線ビームの強度および故に信号対雑音比を改善する。
【0033】
[0034]本発明に従うガスセルにおいて、包囲されたガスセル容積Vに対するガスセル内で光線ビームによって進行される光路長LOの比率LO/Vは、105m-2以上、好ましくは2・105m-2以上、より好ましくは3・105m-2以上であり得る。例えば、V=4・10-5m3のガスセル容積を有するガスセルでは、8m超の光路長LOに到達し得る。V=4.5・10-6m3のガスセル容積を用いた本発明のさらなる例示的な実施形態においては、1.4mの光路長LOに到達し得る。これは、ホワイトガスセルおよびヘリオットガスセルなどの従来のガスセルに勝る大きな改善である。
【0034】
[0035]本発明の1つの実施形態において、入射光線ビームの発散的なインカップリングのためのインカップリングデバイスが、空洞に形成され得る。発散的な光線ビームが空洞に入るとき、破壊的な干渉効果の展開がさらに抑制される。インカップリングデバイスおよび/またはアウトカップリングデバイスは、光ガイドを含み得る。発散的なインカップリングは、このとき、できる限り高い開口数を有する光ガイドを使用することによって達成され得る。例えば、0.22~0.50の開口数を有するファイバが使用され得る。加えて、または代替的に、光線ビームを広げるレンズが、ガスセル内にカップリングする光ガイドの端部に配設され得る。
【0035】
[0036]インカップリングデバイスは、入射光線ビームの電磁放射を空洞内にカップリングするために使用され得る。インカップリングデバイスは、入射光線ビームの電磁放射のすべてを空洞内にカップリングするように設計され得る。代替的に、インカップリングデバイスは、入射光線ビームの電磁放射の一部のみを空洞内にカップリングするように設計され得る。追加的または代替的に、アウトカップリングデバイスもまた、出射光線ビームを形成する電磁放射を空洞からカップリングアウトするために設計され得る。アウトカップリングデバイスは、出射光線ビームの電磁放射のすべてを空洞からカップリングアウトするように設計され得る。代替的に、アウトカップリングデバイスは、出射光線ビームの電磁放射の一部のみを空洞からアウトカップリングするように設計され得る。インカップリングデバイスおよび/またはアウトカップリングデバイスが光ガイドを有する場合、これは、本体部の外面から、本体部を通って、空洞へ誘導され得る。言い換えると、光ガイドは、空洞まで、または空洞内へ延びる。これにより、電磁放射の空洞内へ/空洞外への特に単純なインカップリングおよび/またはアウトカップリングを可能にする。
【0036】
[0037]上に説明される実施形態において、光ガイドは、空洞の内面に交差する。その結果、電磁放射が反射され得る内面の面積は減少され得る。加えて、光ガイドが多孔性材料を通って延びるため、このエリアでは、入射電磁放射は、多孔性材料内で散乱することができない。両方の効果が、光路長延長の減少をもたらす。これが吸光度を減少させる。その一方で、大きい断面を有する光ガイドの使用は、信号対雑音比の改善を可能にする。したがって、本発明の1つの実施形態において、本体部内のインカップリングおよび/またはアウトカップリングデバイスのサイズは、吸光度および/または信号対雑音比を考慮して選択される。半径RK=7mmを有する球形シェルの形態を有する空洞では、特に良好な吸光度は、300μmの半径を有するファイバによって達成され得る。その一方で、信号対雑音比は、750μmの半径を有するファイバを使用して最適化され得る。RK=7mmの半径を有する空洞では、300μm~750μmの半径を有する光ファイバが有利である。
【0037】
[0038]インカップリングデバイスは、入射光線ビームの電磁放射を本体部の多孔性材料含有エリア内へカップリングするために設計され得る。インカップリングデバイスは、入射光線ビームの電磁放射のすべてが本体部の多孔性材料含有エリア内へカップリングされるように設計され得る。代替的に、インカップリングデバイスは、入射光線ビームの電磁放射の一部のみを、多孔性材料を含有する本体部のエリア内にカップリングするように設計され得る。追加的または代替的に、アウトカップリングデバイスはまた、出射光線ビームを形成する電磁放射を、多孔性材料を含有する本体部のエリアからアウトカップリングするために設計され得る。アウトカップリングデバイスは、出射光線ビームの電磁放射のすべてを、多孔性材料を含有する本体部のエリアからアウトカップリングするように設計され得る。代替的に、アウトカップリングデバイスは、出射光線ビームを形成する電磁放射の一部のみを多孔性材料を含有する本体部のエリアからアウトカップリングするように設計され得る。
【0038】
[0039]例えば、アウトカップリングデバイスが光ガイドを有する場合、放射線を本体部からアウトカップリングする光ガイドの端部からの放射線は、多孔性材料内の空洞の内面から距離aのところに配置され得る。このやり方では、空洞に入射する光線ビームが、反射の後、多孔性材料を通過することなく、再び空洞から直ちにデカップリングされるのを防ぐことが可能である。これは、空洞の内面とファイバのアウトカップリング端部との間の距離が理由であり、電磁放射は常に、アウトカップリングデバイスに入る前に少なくとも距離aを横行する。例えば、aは、1mmであり得る。
【0039】
[0040]アウトカップリングデバイスはまた、本体部の完全に外側に配置され得る。しかしながら、このとき、空洞の内面と本体部の外面との間の距離は、電磁放射が十分な強度でアウトカップリングデバイスに到達することができるように選択され得る。この配置は、吸光度を最大限にすることを可能にする。
【0040】
[0041]本発明の1つの実施形態において、インカップリングデバイスは、入射光線ビームの電磁放射のすべてを空洞内にカップリングすることができる。アウトカップリングデバイスは、このとき、出射光線ビームを形成する電磁放射のすべてを空洞からアウトカップリングするように設計され得る。代替的に、アウトカップリングデバイスは、出射光線ビームを形成する電磁放射のすべてを、多孔性材料を含有する本体部の領域からアウトカップリングするように設計され得る。
【0041】
[0042]本発明に従うガスセルは、ガスの吸収分光分析のために使用され得る。この目的のため、ガスセルは、測定されることになるガスと接触状態にされる。多孔性材料は、測定されているガスに対して透過可能である。ガスは、多孔性材料内へ、および空洞内へ浸透する。好適な波長の電磁放射がインカップリングデバイスを通じてガスセル内にカップリングされる場合、ガスの濃度は、ランベルト・ベールの法則(先を参照)に従って、アウトカップリングデバイスを通じてデカップリングされる放射線の強度を測定することによって決定され得る。ガスセル内の光路長は、既知の濃度のガスを用いた測定を使用して前もって決定される。
【0042】
[0043]加えて、本発明は、ガスの吸収分光分析のための装置に関し、本装置は、
[0044]上述の態様のうちのいずれか1つに従うガスセル、
[0045]入射光線ビームを生成するための電磁放射源、および
[0046]出射光線ビームを記録するための検出器装置、を有する。
【0043】
[0047]電磁放射源は、レーザ光源を有し得る。特に、それは、調節可能なレーザダイオードを有し得る。検出器装置は、光検出器を有し得る。
[0048]ガスの吸収分光分析のための、本発明に従うガスセルならびに本発明に従う装置は、以下のガス:酸素、二酸化炭素、一酸化炭素、一酸化窒素、メタン、アミン、アンモニア、硫化水素、硫化硫黄、HClもしくはHFなどのハロゲン化水素、水、またはそれらの混合物のうちの1つまたは複数の濃度を決定するために使用され得る。
【0044】
[0049]以下の説明において、本発明は、例として図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】[0050]本発明に従うガスセルの第1の実施形態の断面図であり、ガスセルの内側のビーム経路の一部が例として示される図である。
【
図2b】
図2aに示されるガスセルの第1の修正形態の断面図である。
【
図2c】
図2aに示されるガスセルの第2の修正形態の断面図である。
【
図3a】本発明に従うガスセルの第2の実施形態の断面図である。
【
図3b】
図3aに示されるガスセルの修正形態の断面図である。
【
図4a】本発明に従うガスセルの第3の実施形態の断面図である。
【
図4b】
図4aに示されるガスセルの修正形態の断面図である。
【
図5】本発明に従うガスセルの第4の実施形態の構成要素の断面図である。
【
図6】本発明に従うガスセルの第5の実施形態の断面図である。
【0046】
[0051]
図1は、発明1に従うガスセル1の第1の実施形態の断面図であり、ガスセル1内のビーム経路の一部が例として示される。ガスセル1は、本体部10を有する。本体部10は、例えば、ブロック形状であり得る。本体部10は、電磁放射を散乱する多孔性材料で作製される。本体部10内には、材料なしの空洞12が形成される。本実施形態において、空洞12は、球形シェルの形態を有する。空洞12は、内面14によって区切られる。本体部10は、ある距離のところで空洞12の内面14を囲む外面16を有する。
【0047】
[0052]ガスセル1はまた、入射光線ビームSをガスセル1内にカップリングするためのインカップリングデバイス20を有する。本実施形態において、インカップリングデバイス20は、光ガイドを有する。この目的のため、材料なしのエリアが本体部10に提供され、ここを通って光ガイドが、ガスセル1の外側から空洞12内へ導入され得る。本実施形態において、インカップリングデバイス20は、入射光線ビームの電磁放射のすべてを空洞12内にカップリングする。加えて、ガスセル1は、アウトカップリングデバイス30を有する。本実施形態において、アウトカップリングデバイス30は、出射光線ビームSAを形成する電磁放射のすべてを空洞からアウトカップリングする。さらには、本実施形態において、アウトカップリングデバイス30は、光ガイドを有する。本体部10内のさらなる材料なしのエリアが提供され、ここを通って光ガイドは、空洞12から本体部10の外側へ進むことができる。
【0048】
[0053]光線ビームは、インカップリングデバイス20の光ガイドを通じて本体部10の外側から空洞12内へカップリングされる。インカップリングデバイス20は、入射光線ビームSが空洞12内にカップリングされるように設計され得る。この目的のため、例えば、高い開口数を有する光ガイドが使用され得る。代替的に、レンズが、空洞12内へと開口する光ガイドの端部に提供され得る。
【0049】
[0054]以下では、ガスセル1内のビーム経路が説明される。視覚化を促進するため、光線ビームの主光線(またビームSと略される)の進路のみが記される。
[0055]空洞12内にカップリングされるビームSは、空洞12のエリアを通過し、次いで空洞12の内面14上の点P1に衝突する。本発明によると、内面14は、電磁放射に対して拡散反射性および透過性の両方である。故に、ビームSの一部は、空洞12の内面14上の点P1において拡散反射され、放射線の一部は、内面14上の点P1において多孔性材料内へ透過される。例として、3つの反射ビームS(R1)、S
1(R1)、およびS
2(R1)が
図1に示される。しかしながら、視覚化を促進するため、反射ビームS(R1)の先の経路のみが示される。ビームS
1(R1)およびS
2(R1)の経路は先まで示されないため、ビームは、破線矢印として表される。ビームSの透過された部分は、様々な方向で多孔性材料に入る。反射された放射線の場合のように、視覚化を簡略にするため、単一のビームS(T1)の経路のみが示される。明確性のため、点P1において材料に入る3つの追加のビームが描写される。それらの経路は以後さらに説明されないため、これらは破線矢印として示される。多孔性材料内を進行するビームS(T1)は、空洞12に再び入る前に多孔性材料内で複数回散乱される。
【0050】
[0056]反射ビームS(R1)および透過ビームS(T1)の経路がこれより説明される。反射ビームS(R1)は、第2の点P2において空洞12の内面14に衝突し、その点において、反射したビームS(R1)の一部が再び拡散反射される一方、別の部分は、多孔性材料内へ透過される。ここでもまた、点P1の場合のように、いくつかの反射および透過ビームが存在し、視覚化を促進するため、1つの反射ビームおよび1つの透過ビームのみがそれぞれの場合において示される。反射部分S(R1,R2)は、空洞12の内面14上の点P5に衝突するまで、空洞12を通ってさらに進行する。ここでもその一部が反射され、別の部分は透過される。
【0051】
[0057]点P1で透過されるビームS(T1)は、空洞12に再び入った後、点P3において空洞12の内面14に衝突するまで空洞12を通過し、点P3でこれは部分的に反射され、部分的に透過される。反射部分S(T1,R2)は、アウトカップリングデバイス30の光ガイドに入り、出射光線ビームSAへの寄与としてガスセル1からデカップリングされる(簡略化のため、1つのビームSAのみが図面に示される)。同様に、他のビームは、空洞12を通っておよび部分的に多孔性材料を通って進行し続け、最終的にアウトカップリングデバイス30の光ガイドに入り、ガスセル1からアウトカップリングされる。
【0052】
[0058]故に、出射光線ビームSAは、ガスセル1内の異なる光路長をカバーしている複数の出射ビームで構成される。出射光線ビームSAは、有効経路長Leff=L+Zをカバーしており、式中、Lは、空洞12の内側の有効経路長を表し、Zは、多孔性材料内の有効経路長を表す。
【0053】
[0059]以後、
図1に示されるガスセル1のダイ光路長延長が、ウルブリヒト球のものと比較される。後者において、内面はほぼ完全に反射性であり、空洞は、多孔性材料によって囲まれないため、経路長延長は、球形シェル内の経路によってのみもたらされる。5mmの半径および0.985の反射率を有する球形シェルでは、ウルブリヒト球の場合の有効経路長は、0.44mである。
図1に示される実施形態の場合、有効経路長は3m超である。15mmの半径および0.985の反射率を有する球形シェルの場合、ウルブリヒト球の有効経路長は、1.33mであり、
図1に示されるガスセルの有効経路長は、8m超である。言い換えると、本発明に従うガスセル1を使用すると、有効経路長は、ウルブリヒト球と比較して著しく増加され得る。
【0054】
[0060]
図2a~
図2cは、球形シェルの形態にある空洞12を有するガスセル1のためのアウトカップリングデバイス30を設定するための3つの可能性を示す。これらの可能性は、しかしながら、球形シェルの形態にある空洞に限定されず、空洞のいかなる任意形態にも使用され得る。
【0055】
[0061]
図2aは、
図1に提示される本発明の第1の実施形態を示す。
図1に関連して説明されたように、インカップリングデバイス20およびアウトカップリングデバイス30の両方(例えば、光ガイド、特に光ファイバの形態にある)は、ガスセル1の外側から多孔性材料を通って空洞12内へ延びる。以下の問題が、インカップリングおよびアウトカップリングデバイス20、30のこの配置により発生し得る。
【0056】
[0062]空洞内へ入った後、反射面においてのみ反射された出射光線ビームSAの一部が存在する。したがって、光線ビームのこの部分は、多孔性材料を通って進行していない。これは、達成可能な光路長の減少を結果としてもたらす。
【0057】
[0063]加えて、インカップリングおよびアウトカップリングデバイス20、30は、電磁放射が反射され得る内面14の面積、および電磁放射が反射され得る多孔性材料の容積の両方を減少させる。
【0058】
[0064]これらの問題に対する1つの解決策が
図2bに示される。ここでは、アウトカップリングデバイス30は、空洞12に到達せず、多孔性材料内で終了する。アウトカップリングデバイス30によってデカップリングされるためには、したがって、電磁放射は、ガスセル1からデカップリングされるために、少なくとも、空洞12の内面14とアウトカップリングデバイス30の入口端32との間のエリアを進行しなければならない(点P’において多孔性材料内へ透過され、透過ビームS
Tとして光ガイドに入るビームS’の経路を参照)。ここでは、放射線は、多孔性材料を通過し、故に、さらなる経路長延長を経る。故に、アウトカップリングデバイス30は、出射光線ビームS
Aを形成する電磁放射を、多孔性材料を含有する本体部10のエリア18からアウトカップリングする。
【0059】
[0065]
図2cに示される修正形態の結果として、
図2bに示される効果のさらなる拡大が達成され得る。ここでは、アウトカップリングデバイス30は、本体部10の完全に外側に位置する。しかしながら、この場合、空洞12からアウトカップリングデバイス30の入口端32までの距離は、適切な信号を受信するのに十分に小さくなければならない。光ガイドの場合、信号対雑音比の改善は、光ガイドの直径を増加させることによって達成され得る。
【0060】
[0066]
図3aおよび
図3bは、本発明に従うガスセル1の第2の実施形態の断面図を示す。ここでは、空洞12は、凸形状を有し、球形のものではない。
図3aに示される実施形態において、アウトカップリングデバイス30は、多孔性材料を含有する本体部10のエリア18内の空洞12からある距離に配置される。故に、いずれの場合にも、多孔性材料内での散乱から結果として生じる経路長延長が達成される。
【0061】
[0067]
図3bは、
図3aに示される実施形態の修正形態を示す。アウトカップリングデバイス30、例えば、光ガイドは、ガスセル1の完全に外側に配置される。これにより、多孔性材料内で反射される放射線の特に大部分が獲得される(ビームS
Tを参照)。
【0062】
[0068]
図4aは、本発明に従うガスセル1の第3の実施形態の断面図を示す。ここでは、空洞12は、楕円体の形態を有する。インカップリングデバイス20は、空洞12と接続される。アウトカップリングデバイス30は、多孔性材料を含有する本体部10のエリア18内の空洞12からある距離に位置する。故に、いずれの場合においても、アウトカップリングデバイス30によってガスセル1からデカップリングされる放射線は、多孔性材料を通って進行している(ビームS
Tを参照)。
【0063】
[0069]
図4bは、
図4aに示される第3の実施形態の修正形態を示す。ここでは、アウトカップリングデバイス30は、入口端32が楕円体の焦点に配置されるように配置される。
【0064】
[0070]
図5aは、本発明に従うガスセル1の第4の実施形態の構成要素の断面図を示す。このガスセル1の本体部10は、左側部分10a、中央部分10b、および右側部分10cの3つの部分からなる。部分10aおよび10cにおいては、いずれの場合も、球形シェルは空洞化される。中央部分10bにおいては、円筒区域が空洞化される。これらの凹所は、セラミック本体部をフライス加工することによって作成され得る。部分10a、10b、および10cは、次いで、組み立てられ、一緒に本体部10を形成し、そこに空洞12が形成される。
【0065】
[0071]
図6は、発明1に従うガスセル1の第5の実施形態の断面図を示す。本体部10には、2つの別個の空洞12aおよび12bが提供され、これらは、
図6に提示されるものでは、球形シェルの形態を有する。インカップリングデバイス20は、空洞12aに接続されるため、電磁放射は、インカップリングデバイス20を通じて空洞12a内へカップリングされ得る。アウトカップリングデバイス30は、空洞12bと接続される。ダイ放射線がアウトカップリングデバイス30によってデカップリングされるためには、それは、第1の空洞12aから多孔性材料を通って第2の空洞12b内へ進まなければならない(ビームS
T)。故に、この実施形態でも同様に、多孔性材料内の放射線の経路を通じた経路長延長として、貢献が得られた。
【符号の説明】
【0066】
[0072]
1 ガスセル
10 本体部
12 空洞
14 内面
16 外面
18 多孔性材料を含有するエリア
20 インカップリングデバイス
30 アウトカップリングデバイス
32 入口端
S 入射光線ビーム
SA 出射光線ビーム
LO 光路長
V ガスセル容積
【国際調査報告】