(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-01
(54)【発明の名称】修飾EHD2ドメインを含む結合モジュール
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20221124BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20221124BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20221124BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20221124BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20221124BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20221124BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20221124BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20221124BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20221124BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20221124BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221124BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20221124BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20221124BHJP
C07K 14/47 20060101ALN20221124BHJP
【FI】
C12N15/13
C12N15/62 Z
C07K16/00
C07K16/46
C07K19/00
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61P35/00
A61K39/395 N
C12N15/12 ZNA
C07K14/47
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022518946
(86)(22)【出願日】2020-09-25
(85)【翻訳文提出日】2022-05-23
(86)【国際出願番号】 EP2020077008
(87)【国際公開番号】W WO2021058804
(87)【国際公開日】2021-04-01
(32)【優先日】2019-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507054917
【氏名又は名称】ウニヴェルズィテート シュトゥットガルト
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【氏名又は名称】落合 康
(74)【代理人】
【識別番号】100103230
【氏名又は名称】高山 裕貢
(72)【発明者】
【氏名】コンテルマン,ローラント
(72)【発明者】
【氏名】ザイフェルト,オリヴァー
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C085AA14
4C085CC23
4C085GG04
4C085GG08
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、2つのポリペプチド鎖を含む結合分子であって、該ペプチド鎖は、ヘテロ二量体化のみを可能にし、それによってホモ二量体を防止する修飾EHD2ドメインを含む結合分子、そのような結合分子をコードする核酸、および治療におけるそのような結合分子またはそのような結合分子をコードする核酸の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の結合ドメイン(BD1)および第1の修飾EHD2ドメイン(EHD2-1)を含む第1のポリペプチド鎖、ならびに
第2の結合ドメイン(BD2)および第2の修飾EHD2ドメイン(EHD2-2)を含む第2のポリペプチド鎖、を含む結合分子であって、
EHD2-1およびEHD2-2のアミノ酸配列は、互いに異なっており、そしてそれぞれは、(i)配列番号:1に対して少なくとも70%のアミノ酸同一性を有し、かつ14位にCysを有しないアミノ酸配列、または(ii)配列番号:1に対して少なくとも70%のアミノ酸同一性を有し、かつ102位にCysを有しないアミノ酸配列、から選択され、
BD1およびBD2は一緒になって抗原結合部位を形成し、EHD2-1およびEHD2-2は互いに共有結合している、結合分子。
【請求項2】
BD1およびBD2が、互いに異なっており、そしてそれぞれは、V
HおよびV
Lから選択されるか、またはTCR α-鎖の可変領域およびTCR β-鎖の可変領域から選択される、請求項1に記載の結合分子。
【請求項3】
第1のFc鎖をさらに含む、請求項1~2のいずれか一項に記載の結合分子。
【請求項4】
第3の結合ドメイン(BD3)および第4の結合ドメイン(BD4)をさらに含み、ここで、BD3およびBD4は一緒になって抗原結合部位を形成し、好ましくは、BD3およびBD4は、互いに異なっており、そしてそれぞれは、V
HおよびV
Lから選択されるか、またはTCR α-鎖の可変領域およびTCR β-鎖の可変領域から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の結合分子。
【請求項5】
第3のポリペプチド鎖をさらに含み、好ましくは第3のポリペプチド鎖および第4のポリペプチド鎖をさらに含み、より好ましくは第2のFc鎖をさらに含む、請求項4または6に記載の結合分子。
【請求項6】
BD3を含む第3のポリペプチド鎖が、
(i)C
H1ドメイン、
(ii)C
Lドメイン、
(iii)第1の修飾EHD2ドメイン(EHD2-1)、および
(iv)第2の修飾EHD2ドメイン(EHD2-2)、の1つをさらに含み、
BD4を含む第4のポリペプチド鎖が、
(i)の場合にはC
Lドメイン、
(ii)の場合にはC
H1ドメイン、
(iii)の場合には第2の修飾EHD2ドメイン(EHD2-2)、および
(iv)の場合には第1の修飾EHD2ドメイン(EHD2-1)、をさらに含み、
ここで、EHD2-1およびEHD2-2のアミノ酸配列は、互いに異なっており、そしてそれぞれは、配列番号:1に対して少なくとも70%のアミノ酸同一性を有し、かつ14位にCysを有しないアミノ酸配列、または配列番号:1に対して少なくとも70%のアミノ酸同一性を有し、かつ102位にCysを有しないアミノ酸配列、から選択される、請求項5に記載の結合分子。
【請求項7】
第5の結合ドメイン(BD5)および第6の結合ドメイン(BD6)をさらに含み、ここで、BD5およびBD6は一緒になって抗原結合部位を形成し、好ましくは、BD5およびBD6は、互いに異なっており、そしてそれぞれは、V
HおよびV
Lから選択されるか、またはTCR α-鎖の可変領域およびTCR β-鎖の可変領域から選択される、請求項4~6のいずれか一項に記載の結合分子、より好ましくは、
BD5に結合する、
(i)C
H1ドメイン、
(ii)C
Lドメイン、
(iii)第1の修飾EHD2ドメイン(EHD2-1)、または
(iv)第2の修飾EHD2ドメイン(EHD2-2)、
および
BD6に結合する、
(i)の場合にはC
Lドメイン、
(ii)の場合にはC
H1ドメイン、
(iii)の場合には第2の修飾EHD2ドメイン(EHD2-2)、そして、
(iv)の場合には第1の修飾EHD2ドメイン(EHD2-1)、
をさらに含み、
ここで、EHD2-1およびEHD2-2のアミノ酸配列は、互いに異なっており、そしてそれぞれは、配列番号:1に対して少なくとも70%のアミノ酸同一性を有し、かつ14位にCysを有しないアミノ酸配列、または配列番号:1に対して少なくとも70%のアミノ酸同一性を有し、かつ102位にCysを有しないアミノ酸配列、から選択される、請求項4~6のいずれか一項に記載の結合分子。
【請求項8】
第7の結合ドメイン(BD7)および第8の結合ドメイン(BD8)をさらに含み、ここで、BD7およびBD8は一緒になって抗原結合部位を形成し、好ましくは、BD7およびBD8は、互いに異なっており、そしてそれぞれは、V
HおよびV
Lから選択されるか、またはTCR α-鎖可変領域およびTCR β-鎖の可変領域から選択される、請求項6~7のいずれか一項に記載の結合分子。
【請求項9】
BD7に結合する、
(i)C
H1ドメイン、
(ii)C
Lドメイン、
(iii)第1の修飾EHD2ドメイン(EHD2-1)、または
(iv)第2の修飾EHD2ドメイン(EHD2-2)、
および
BD8に結合する、
(i)の場合にはC
Lドメイン、
(ii)の場合にはC
H1ドメイン、
(iii)の場合には第2の修飾EHD2ドメイン(EHD2-2)、そして、
(iv)の場合には第1の修飾EHD2ドメイン(EHD2-1)、
をさらに含み、
ここで、EHD2-1およびEHD2-2のアミノ酸配列は、互いに異なっており、そしてそれぞれは、配列番号:1に対して少なくとも70%のアミノ酸同一性を有し、かつ14位にCysを有しないアミノ酸配列、または配列番号:1に対して少なくとも70%のアミノ酸同一性を有し、かつ102位にCysを有しないアミノ酸配列、から選択される、請求項8に記載の結合分子。
【請求項10】
修飾EHD2ドメインのいずれも1つのN-グリカンを担持しないか、または1つまたはそれ以上の修飾EHD2ドメインが1つのN-グリカンを担持する、請求項1~9のいずれか一項に記載の結合分子。
【請求項11】
配列番号:1の14位のCysが、Ser、Gly、Ala、Thr、Gln、Asn、およびTyrからなる群から選択されるアミノ酸、好ましくはSerによって置換されており、および/または
配列番号:1の102位のCysが、Ser、Gly、Ala、Thr、Gln、Asn、およびTyrからなる群から選択されるアミノ酸、好ましくはSerによって置換されている、請求項1~10のいずれか一項に記載の結合分子。
【請求項12】
1つまたはそれ以上の修飾EHD2ドメインのN39位に単一アミノ酸置換をさらに含み、好ましくは、単一アミノ酸置換がN39Qである、請求項1~11のいずれか一項に記載の結合分子。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の結合分子をコードする核酸または核酸のセット。
【請求項14】
請求項13に記載の核酸または核酸のセットを含むベクター。
【請求項15】
請求項14に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項16】
請求項1~12のいずれか一項に記載の結合分子、請求項13に記載の核酸もしくは核酸のセット、請求項14に記載のベクター、または請求項15に記載の宿主細胞、および薬学的に許容される担体、を含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つのポリペプチド鎖を含む結合分子であって、該ペプチド鎖は、ヘテロ二量体化のみを可能にし、それによってホモ二量体を防止する修飾EHD2ドメインを含む結合分子に関する。本発明はさらに、そのような結合分子をコードする核酸、および治療におけるそのような結合分子またはそのような結合分子をコードする核酸の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
少なくとも2つの異なる特異性を有する抗体(いわゆる二重特異性抗体)は、診断、イメージング、予防および治療を含む広範囲の適用にて関心をますます集めている。エフェクター分子、細胞および遺伝子ビヒクルの再標的化に加えて、二重標的化および前標的化戦略、タンパク質の自然機能の擬態、半減期の延長、および血液脳関門などの生物学的障壁を介した送達が利用されてきた(Labrijn et al., 2019, Nat. Rev. Drug. Discov. 18: 585-608)。二重特異性抗体は、癌、慢性炎症性疾患、自己免疫、神経変性、出血障害および感染症を含む、さまざまな徴候の潜在的な処置として評価されている。
【0003】
二重特異性抗体は、フォーマットおよび組成によって分類することができる(Brinkmann & Kontermann, 2017, MAbs 9: 182-212)。主な区別は、Fc領域の有無である。Fcを持たない二重特異性抗体は、抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞貪食(ADCP)、補体固定、およびFcRn介在性リサイクル(ほとんどの免疫グロブリンの長い半減期の原因)などのFc介在性エフェクター機能を欠くことになる。
【0004】
しかし、2価の二重特異性IgGまたはIg様分子の作製は、抗原結合部位が軽鎖および重鎖の可変ドメイン(VL, VH)によって構築されている事実によって、複雑なものとなっている。1つの細胞内に発現する2つの抗体の重鎖および軽鎖の無差別な対合は、理論上16個の異なる組み合わせ(10個の異なる分子)をもたらし、二重特異性のものは1つだけで、残りの対合は非機能性または単特異性の分子になる。正しい結合部位、すなわち正しい特異性の重鎖および軽鎖を直接、強制的に組み立てを修正することは、二重特異性抗体を作製する際の課題の1つである。このような問題を対処するために、過去20年間に様々な戦略が開発され、確立されてきた。
【0005】
2つの抗体産生細胞株の融合、例えば、複合型ハイブリドーマ(hybrid-hybridoma)(クアドロマ)の作製は、2つの異なる抗体の重鎖および軽鎖の組み合わせを可能にする。こうして得られた二重特異性抗体は、第1の抗体の重鎖および軽鎖ならびに第2の抗体の重鎖および軽鎖を含む。重鎖および軽鎖の定常領域は、同じアイソタイプであり得るが、異なるアイソタイプであってもよい。それらは異なる種からのものでさえあり得、これはトリオマブ(triomab)を作製するために利用される戦略である。このフォーマットにおいて、マウスハイブリドーマがラットハイブリドーマと融合され、二重特異性の非対称ハイブリッドIgG分子が産生される。軽鎖とそれに対応する重鎖との優先的な対合が説明されている。重要なことは、異種のFc部分は、結合が減少されているため、タンパク質Aクロマトグラフィーによる分画精製を可能にし、カラムからの溶出はすでに約5.8のpHで起こるということである。さらに、2つの異なる重鎖および軽鎖を産生する細胞株は遺伝学的な手段で作製され得る。これは、定義された組成、例えば特定のヒトアイソタイプの重鎖および軽鎖の使用や、変異配列の実行を可能にするが、重鎖および軽鎖の無作為対合は、これらのアプローチの主要な障害の1つを象徴する。
【0006】
重鎖のヘテロ二量体化を強制する遺伝子工学は、二重特異性IgG形成の問題の1つ、例えばCH3ドメインに導入されたknobs-into-hole変異および静電ステアリング変異を解決する(Krah et al., 2017, N. Biotechnol. 39: 167-173)。しかし、ヘテロ二量体の重鎖は、依然として2つの異なる軽鎖と会合することができ、その結果、1つの二重特異性分子、1つの非機能性組み合わせ、2つの単一特異性分子といった4つの可能な組み合わせが生じる。したがって、Fc修飾重鎖と組み合わされる同種の重鎖および軽鎖の正しい対合を可能にするアプローチが開発されてきた。1つのアプローチは、機能的な結合部位を形成するために、IgG分子の両方の重鎖に使用される共通の軽鎖を使用することである(Merchant et al., 1998, Nat. Biotechnol. 16: 677-681)。しかし、これには、同じVLドメインを利用する抗原-結合部位の同定と単離が必要である。
【0007】
あるいは、重鎖および軽鎖の正しい対合を強制するために、結合部位の1つの軽鎖および重鎖のFd断片(VH-CH1断片)に変異や修飾が導入されている(Krah et al., 2017, N. Biotechnol. 39: 167-173)。これらの戦略には、1つの重鎖および軽鎖のCH1およびCLドメインの修飾が含まれ、場合によってはVHおよびVLドメインの修飾も含まれる。例としては、1つの重鎖と軽鎖との間でCH1およびCLドメインを交換するCrossMab技術(Klein et al., 2012, MAbs 4: 653-663)、CH1およびCLドメインへの直交Fab変異の導入(Lewis et al., 2014, Nat. Biotechnol. 32: 191-198)、またはさらにVHおよびVLドメインへの直交Fab変異の導入(Golay et al., 2016, J. Immunol. 196: 199-211; Froning et al., 2017, Protein Sci. 26: 2021-2038; Bonisch et al., 2017, Protein Eng. Des. Sel., 2017, 30: 685-696)、およびCH1とCLとの間の天然のジスルフィド結合を除去し、新たに人工的に導入したジスルフィド結合によって置換するDuetmab技術(Mazor et al., 2015, MAbs 7: 461-469)がある。
【0008】
別のアプローチは、1つの重鎖および軽鎖のCH1およびCLドメインを、T細胞受容体(TCR)からのC-アルファおよびC-ベータドメインなどの他のタンパク質からの構造的に関連するドメインによって置換することである(Wu et al., 2015, MAbs 7: 470-482)。あるいは、CH1およびCLドメインは、ホモ二量体を天然に形成するIgEからの変異重鎖ドメイン2によって置換されていた。このいわゆるEFabモジュールに導入される変異は、ホモ二量体化を減少させ、ヘテロ二量体Fab様分子の形成を可能にするknob-into-hole様構造の形成を可能にした(Cooke et al., 2018, MAbs 10: 1248-1259)。しかし、これらのknob-into-hole変異の一般的な問題は、ホール変異含有ドメインのホモ二量体の相互作用が形成される可能性である。EFabフォーマットにおいて、これらのホール変異は軽鎖に存在し、したがって、軽鎖ホモ二量体の形成の危険性を有する(Kuglstatter et al., 2017, Protein Eng. Des. Sel. 30: 649-656)。さらに、EFabについて、野生型Fab断片および野生型EHD2 Fab分子と比較して、熱安定性の低下およびタンパク質切断に対する感受性の増加が観察され、これは、最終的にはこれらの変異ドメイン間の界面の無秩序な領域によるものである(Cooke et al., 2018, MAbs 10: 1248-1259)。
【0009】
最近、ヘテロ二量体化EHD2ドメインを作製するためのさらなる変異が提案されている(WO 2017/011342 Al)。ここでは、EHD2(EH2)ドメイン、あるいは、構造的・機能的に関連するMHD2(MH2)ドメインのどちらか一方に導入することにより(Seifert et al., 2014, Mol. Cancer Ther. 13: 101-111)、静電相互作用または疎水性相互作用を介してヘテロ二量体化を可能にするいくつかの変異が記載された。しかし、実行に移したすべての例では、MH2誘導体のみが使用されている。それにもかかわらず、これらの誘導体では、野生型配列からかなりの数の残基を修飾しなければならなかった。
【0010】
結合分子中のポリペプチドのホモ二量体化を満足できる程度に排除し、したがって、軽鎖と重鎖の対合問題、すなわち多重特異性、好ましくは二重特異性抗体中の軽鎖と重鎖の誤対合の解決法を提供する、ドメインを二量体化するに対する必要性が当該技術分野で残されている。
【発明の概要】
【0011】
本発明者らは、第1の修飾EHD2ドメインを含む第1のポリペプチド鎖を、第2の修飾EHD2ドメインを含む第2のポリペプチド鎖と共発現させることにより、ホモ二量体の形成を実質的に防止し、同時にヘテロ二量体の形成を満足できる程度に可能することを見出し、とりわけ結合分子の大量生産に適した修飾ドメインをレンダリングした。
【0012】
したがって、第一態様によれば、本発明は、第1の結合ドメイン(BD1)および第1の修飾EHD2ドメイン(EHD2-1)を含む第1のポリペプチド鎖、ならびに第2の結合ドメイン(BD2)および第2の修飾EHD2ドメイン(EHD2-2)を含む第2のポリペプチド鎖、を含む結合分子であって、EHD2-1およびEHD2-2のアミノ酸配列は、互いに異なっており、そしてそれぞれは、配列番号:1に対して少なくとも70%のアミノ酸同一性を有し、かつ14位にCysを有しないアミノ酸配列、または配列番号:1に対して少なくとも70%のアミノ酸同一性を有し、かつ102位にCysを有しないアミノ酸配列、から選択され、ここで、BD1およびBD2は一緒になって抗原結合部位を形成し、EHD2-1およびEHD2-2は互いに共有結合している、結合分子を提供する。
【0013】
一実施態様によれば、修飾EHD2ドメインの一方または両方は、N39位に単一アミノ酸置換をさらに含む。
【0014】
さらなる実施態様によれば、BD1およびBD2は、互いに異なっており、そしてそれぞれは、可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)から選択されるか、またはTCR α-鎖の可変領域およびTCR β-鎖の可変領域から選択される。
【0015】
さらに別の実施態様によれば、本発明の結合分子は、第1のFc鎖をさらに含む。
【0016】
さらなる実施態様によれば、本発明の結合分子は、第3の結合ドメイン(BD3)および第4の結合ドメイン(BD4)をさらに含み、ここで、BD3およびBD4は一緒になって抗原結合部位を形成する。
【0017】
さらなる実施態様によれば、BD3およびBD4は、互いに異なっており、そしてそれぞれは、VHおよびVLから選択されるか、またはTCR α-鎖の可変領域およびTCR β-鎖の可変領域から選択される。
【0018】
さらなる実施態様によれば、本発明の結合分子は、第3のポリペプチド鎖をさらに含む。好ましい実施態様によれば、本発明の結合分子は、第3のポリペプチド鎖および第4のポリペプチド鎖をさらに含む。
【0019】
さらに別の実施態様によれば、本発明の結合分子は、第2のFc鎖をさらに含む。
【0020】
一実施態様によれば、第1のFc鎖および第2のFc鎖は、互いに異なっており、ヘテロ二量体のFcを形成する。
【0021】
さらなる実施態様によれば、本発明の結合分子は、単一特異性または二重特異性である。
【0022】
さらに別の実施態様によれば、BD3を含む第3のポリペプチド鎖は、
(i)CH1ドメイン、
(ii)CLドメイン、
(iii)第1の修飾EHD2ドメイン(EHD2-1)、および
(iv)第2の修飾EHD2ドメイン(EHD2-2)の1つをさらに含み、そして、
ここで、BD4を含む第4のポリペプチド鎖は、
(i)の場合にはCLドメイン、
(ii)の場合にはCH1ドメイン、
(iii)の場合には第2の修飾EHD2ドメイン(EHD2-2)、および、
(iv)の場合には第1の修飾EHD2ドメイン(EHD2-1)、をさらに含み、
ここで、EHD2-1およびEHD2-2のアミノ酸配列は、互いに異なっており、そしてそれぞれは、配列番号:1に対して少なくとも70%のアミノ酸同一性を有し、かつ14位にCysを有しないアミノ酸配列、または配列番号:1に対して少なくとも70%のアミノ酸同一性を有し、かつ102位にCysを有しないアミノ酸配列、から選択される。
【0023】
一実施態様によれば、第3のポリペプチド鎖または第4のポリペプチド鎖の修飾EHD2ドメインの一方または両方は、N39位に単一アミノ酸置換をさらに含む。
【0024】
さらなる実施態様によれば、本発明の結合分子は、第5の結合ドメイン(BD5)および第6の結合ドメイン(BD6)をさらに含み、ここで、BD5およびBD6は一緒になって抗原結合部位を形成する。
【0025】
さらに別の実施態様によれば、本発明の結合分子は、
BD5に結合する、
(i)CH1ドメイン、
(ii)CLドメイン、
(iii)第1の修飾EHD2ドメイン(EHD2-1)、または
(iv)第2の修飾EHD2ドメイン(EHD2-2)、
および
BD6に結合する、
(i)の場合にはCLドメイン、
(ii)の場合にはCH1ドメイン、
(iii)の場合には第2の修飾EHD2ドメイン(EHD2-2)、そして
(iv)の場合には第1の修飾EHD2ドメイン(EHD2-1)、を含み、ここで、EHD2-1およびEHD2-2のアミノ酸配列は、互いに異なっており、そしてそれぞれは、配列番号:1に対して少なくとも70%のアミノ酸同一性を有し、かつ14位にCysを有しないアミノ酸配列、または配列番号:1に対して少なくとも70%のアミノ酸同一性を有し、かつ102位にCysを有しないアミノ酸配列、から選択される。
【0026】
一実施態様によれば、BD5またはBD6に結合する修飾EHD2ドメインの一方または両方は、N39位に単一アミノ酸置換をさらに含む。
【0027】
別の実施態様によれば、BD5およびBD6は、互いに異なっており、そしてそれぞれは、VHおよびVLから選択されるか、またはTCR α-鎖の可変領域およびTCR β-鎖の可変領域から選択される。
【0028】
さらに別の実施態様によれば、BD5またはBD6に結合するCH1ドメイン、CLドメイン、EHD2-1またはEHD2-2は、リンカーを介してBD1、BD2、BD3またはBD4に結合する。
【0029】
一実施態様によれば、本発明の結合分子は、単一特異性、二重特異性または三重特異性である。
【0030】
さらなる実施態様によれば、本発明の結合分子は、第7の結合ドメイン(BD7)および第8の結合ドメイン(BD8)をさらに含み、ここで、BD7およびBD8は一緒になって抗原結合部位を形成する。
【0031】
一実施態様によれば、本発明の結合分子は、
BD7に結合する、
(i)CH1ドメイン、
(ii)CLドメイン、
(iii)第1の修飾EHD2ドメイン(EHD2-1)、または
(iv)第2の修飾EHD2ドメイン(EHD2-2)、
および、
BD8に結合する、
(i)の場合にはCLドメイン、
(ii)の場合にはCH1ドメイン、
(iii)の場合には第2の修飾EHD2ドメイン(EHD2-2)、そして
(iv)の場合には第1の修飾EHD2ドメイン(EHD2-1)、をさらに含み、ここで、EHD2-1およびEHD2-2のアミノ酸配列は、互いに異なっており、そしてそれぞれは、配列番号:1に対して少なくとも70%のアミノ酸同一性を有し、かつ14位にCysを有しないアミノ酸配列、または配列番号:1に対して少なくとも70%のアミノ酸同一性を有し、かつ102位にCysを有しないアミノ酸配列、から選択される。
【0032】
さらに別の実施態様によれば、BD7またはBD8に結合する修飾EHD2ドメインの一方または両方は、N39位に単一アミノ酸置換をさらに含む。
【0033】
一実施態様によれば、BD7およびBD8は、互いに異なっており、そしてそれぞれは、VHおよびVLから選択されるか、またはTCR α-鎖の可変領域およびTCR β-鎖の可変領域から選択される。
【0034】
さらなる実施態様によれば、BD7またはBD8に結合するCH1ドメイン、CLドメイン、EHD2-1またはEHD2-2は、リンカーを介してBD5またはBD6に結合しないBD1、BD2、BD3またはBD4のいずれか1つに結合する。
【0035】
さらに別の実施態様によれば、本発明の結合分子は、単一特異性、二重特異性、三重特異性または四重特異性である。
【0036】
一般的な実施態様によれば、修飾EHD2ドメインのいずれも1つのN-グリカンを担持しないか、1つまたはそれ以上の修飾EHD2ドメインは1つのN-グリカンを担持する。
【0037】
さらなる一般的な実施態様によれば、配列番号:1の14位のCysは、Ser、Gly、Ala、Thr、Gln、Asn、およびTyr(C14S、C14G、C14A、C14T、C14Q、C14N、C14Y)からなる群から選択されるアミノ酸、好ましくはSer(C14S)によって置換されている。
【0038】
さらなる一般的な実施態様によれば、102位のCysは、Ser、Gly、Ala、Thr、Gln、Asn、およびTyr(C102S、C102G、C102A、C102T、C102Q、C102N、C102Y)からなる群から選択されるアミノ酸、好ましくはSer(C102S)によって置換されている。
【0039】
さらに別の一般的な実施態様によれば、N39位における単一アミノ酸置換はN39Qである。
【0040】
さらなる態様によれば、本発明は、本発明の結合分子をコードする核酸または核酸のセットを提供する。
【0041】
さらなる態様によれば、本発明は、本発明の核酸または核酸のセットを含むベクターを提供する。
【0042】
さらなる態様によれば、本発明は、本発明のベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0043】
さらなる態様によれば、本発明は、本発明の結合分子、核酸もしくは核酸のセット、ベクター、または宿主細胞、および薬学的に許容される担体、を含む医薬組成物を提供する。
【0044】
さらなる態様および実施態様は、本発明の以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0045】
以下では、本明細書で構成される図の内容について説明する。この文脈では、上記および/または下記の発明の詳細な説明も参照すること。
【0046】
【
図1】鎖間ジスルフィド結合(C14-C102)および鎖内ジスルフィド結合(C28-C86)ならびにN-グリコシル化部位(N39)がマークされたヒト野生型EHD2ドメインの配列(A)および構造(B)。
【0047】
【
図2】本発明の一実施態様による結合分子の構造を示す概略スキーム。
【0048】
【
図3】さまざまな原子価および特異性の分子を作製するためにhetEHD2ドメインを用いた抗体断片およびIg様分子の例。
【0049】
【
図4】修飾EHD2ドメイン(EHD2-1, EHD2-2)は、両方のドメインにN-グリカンを担持するか、片方のドメインのみに担持するか、あるいはN-グリカンを完全に欠くかのいずれかであり得る。
【0050】
【
図5】HER3およびMETに特異的な二重特異性2価eIgG分子の生化学的特性解析および結合。A 2つの二重特異性2価eIgG抗体の両重鎖および両軽鎖の略図。B 両方のeIgG抗体のドメインの概略構造(グリカンは五角形で示す;hetEHD2 = EHD2-1 (= EHD2(C14S, N39Q))、EHD2-2 (= EHD2(C102S)))。両方のeIgG分子は、異なるhetEHD2ドメインの異なるグリコシル化を示す。C 還元(R)および非還元(NR)条件(M:マーカー)下での二重特異性二価eIgG抗体のSDS-PAGE分析(12%PAA;Coomassie染色)。D eIgG抗体のサイズ排除クロマトグラフィー。E 二重特異性二価eIgG抗体の結合を、HER3(His-タグ付き)またはMETの細胞外ドメインの融合タンパク質(Fc融合タンパク質)を抗原として用いてELISAにより分析した。HER3-Hisを抗原として用いてHRP-コンジュゲート抗ヒトFc抗体で、MET-Fcを抗原として用いてHRP標識抗ヒトFab抗体で、結合したタンパク質を検出した。光学密度は450nmで測定した。平均値±SD。
【0051】
【
図6】HER3およびCD3に特異的な二重特異性2価eIgG分子の生化学的特性解析および結合。A 二重特異性2価eIgG抗体の両重鎖および両軽鎖の略図。B eIgG抗体のドメインの概略構造(グリカンは五角形で示す;hetEHD2 = EHD2-1(= EHD2(C14S, N39Q))、EHD2-2 (= EHD2(C102S)))。C 還元(R)および非還元(NR)条件(M:マーカー)下での二重特異性2価eIgG抗体のSDS-PAGE分析(10%PAA;Coomassie染色)。D eIgG抗体のサイズ排除クロマトグラフィー。E 二重特異性二価eIgG抗体の結合は、HER3(His-タグ付き)またはCD3の細胞外ドメインの融合タンパク質(Fc融合タンパク質)を抗原として用いてELISAにより分析した。HER3-Hisを抗原として用いてHRP-コンジュゲート抗ヒトFc抗体で、CD3-Fcを抗原として用いてHRP-コンジュゲート抗ヒトFab抗体で、結合したタンパク質を検出した。光学密度は450nmで測定した。平均値±SD。F HER3発現LIM1215細胞およびCD3発現Jurkat細胞を用いた二重特異性eIgG抗体のフローサイトメトリー。結合した抗体は、PE標識抗ヒトFc抗体で検出した。平均値±SD。
【0052】
【
図7】hetEHD2ドメインの鎖AのC14位および鎖BのC102位にさまざまな残基を有するeFab分子。(A)hetEHD2ドメインにおいて異なる置換を示すeFab分子の組成。(B)還元条件および非還元条件下でのさまざまなeFab分子のSDS-PAGE分析。(C)ELISA実験における、さまざまなFv3-43-hetEHD2融合タンパク質の固定化抗原HER3-Fcへの結合。結合したFv3-43-hetEHD2融合タンパク質は、抗His検出抗体で検出した。平均値±SD、n=1。
【0053】
【
図8】さまざまなFv3-43-EHD2分子を用いたサイズ排除クロマトグラム。抗HER3 eFabの鎖AのC14位および鎖BのC102位にさまざまな残基を導入し(
図7参照)、精製したタンパク質を東ソーTosoh TSKgel SuperSW mAb HRカラムを用いてHPLCによるサイズ排除クロマトグラフィーにより分析した。
【0054】
【
図9】さまざまなN-グリコシル化部位を有するFc3-43-hetEHD2分子の分析。(A)さまざまなN-グリコシル化部位を有するeFab分子の概略組成。(B)12%PAAゲルを用いた非還元条件下でのSDS-PAGE。(C)さまざまなN-グリコシル化部位を有するさまざまなFv3-43-hetEHD2分子(100nM)のELISA実験。HER3-Fcを固定化抗原として使用し、結合した分子は抗His検出抗体で検出した。平均値±SD、n=1。
【0055】
【
図10】二重特異性2価または3価のeIg分子の略図および生化学的特性解析。(A)Ig様eIg分子およびeIg-Fab分子の分子組成および概略組み立て。hetEHD2ドメインの1つにあるN-グリカンは黒い六角形で示している。(B)還元(R)および非還元(NR)条件下でのeIg分子のSDS PAGE分析(12%PAA、3μg/レーン、Coomassieブルー染色)。M、タンパク質マーカー。(C)Tosoh TSKgel SuperSW mAb HRカラムを用いたHPLCによるサイズ排除クロマトグラフィー。
【0056】
【
図11】eIg分子の結合性質。HER3発現LIM1215(A)、BT474(B)、およびCD3発現Jurkat細胞(C)への結合は、フローサイトメトリーにより分析した。結合したタンパク質は、PE標識抗ヒトFc mAbを用いて検出した。平均値±SD、n=3。
【0057】
【
図12】PBMCの細胞毒性の可能性に対するeIg分子およびeIg-Fab分子の影響。標的細胞((A)LIM1215、(B)BT474細胞)をeIg分子およびeIg-Fab分子の段階希釈液でインキュベートした後、エフェクター:標的細胞比(E:T)10:1のPBMCを添加した。3日間のインキュベーション後、クリスタルバイオレット染色を用いて細胞生存率を決定した。平均値±SD、n=3。
【0058】
【
図13】HER3およびFAPを標的とするeIg抗体の組成および生化学的解析。eIg分子の組成(A)および略図(B)。HC、重鎖;LC、軽鎖。(C)還元(R)および非還元(NR)条件下でのeIg分子のSDS PAGE分析(12%PAA、3μg/レーン、Coomassieブルー染色)。M、タンパク質マーカー。(D)Tosoh TSKgel SuperSW mAb HRカラムを用いたHPLCによるサイズ排除クロマトグラフィー。(E)HER3-HisおよびFAP-Flag分子を固定化抗原として用いたeIg分子のELISA法。結合したeIg抗体は、抗ヒトFc検出抗体で検出した。平均値±SD、n=1。
【0059】
【
図14】HER3を標的とするeIg抗体の組成および生化学的解析。eIg分子の組成(A)および略図(B)。HC、重鎖;LC、軽鎖。(C)還元(R)および非還元(NR)条件下でのeIg分子のSDS PAGE分析(12%PAA、3μg/レーン、Coomassieブルー染色)。M、タンパク質マーカー。(D)HER3-His分子を固定化抗原として用いたeIg分子のELISA。結合したeIg抗体は、抗ヒトFc検出抗体で検出した。平均値±SD、n=1。
【0060】
【
図15】EGFRおよびHER3を標的とするeIg-Fab抗体の組成および生化学的解析。eIg-Fab分子の組成(A)および略図(B)。HC、重鎖;LC、軽鎖。(C)還元(R)および非還元(NR)条件下でのeIg分子のSDS PAGE分析(12%PAA、3μg/レーン、Coomassieブルー染色)。M、タンパク質マーカー。(D)Tosoh TSKgel SuperSW mAb HRカラムを用いたHPLCによるサイズ排除クロマトグラフィー。(E) EGFR-HisまたはHER3-His分子を固定化抗原として用いたeIg-Fab分子のELISA。結合したeIg抗体は、抗ヒトFc検出抗体を用いて検出した。二機能性結合は、固定化EGFR-Fc抗原、eIg-Fab分子の力価測定および第二抗原としてのHER3-Hisを用いて分析した。結合したHER3-Hisは、抗His抗体で検出した。親抗体(IgG hu225およびIgG 3-43)はコントロールとして含ませた。平均値±SD、n=3。
【0061】
【
図16】EGFRおよびHER3を標的とするFab-eFab抗体の組成および生化学的解析。Fab-eFab分子の組成(A)および略図(B)。HC、重鎖;LC、軽鎖。(C)還元(R)および非還元(NR)条件下でのFab-eFab分子のSDS PAGE分析(12%PAA、3μg/レーン、Coomassieブルー染色)。M、タンパク質マーカー。(D)Tosoh TSKgel SuperSW mAb HRカラムを用いたHPLCによるサイズ排除クロマトグラフィー。(E)EGFR-His分子またはHER3-His分子を固定化抗原として用いたFab-eFab分子のELISA。結合したFab-eFab抗体または親抗体は、抗ヒトFab抗体で検出した。二機能性結合は、固定化HER3-His抗原、Fab-eFab分子の力価測定および第二抗原としてのEGFR-moFcを用いて分析した。結合したEGFR-moFcは、抗ムリンFc抗体で検出した。親抗体(IgG hu225およびIgG 3-43)はコントロールとして含ませた。平均値±SD、n=1。
【0062】
【
図17】FAPおよびマウスCD3を標的とするeIg抗体の組成および生化学的解析。eIg分子の組成(A)および略図(B)。HC、重鎖;LC、軽鎖。(C)還元(R)および非還元(NR)条件下での両方のeIg分子のSDS PAGE分析(12%PAA、3μg/レーン、Coomassieブルー染色)。M、タンパク質マーカー。(D)Tosoh TSKgel SuperSW mAb HRカラムを用いたHPLCによるサイズ排除クロマトグラフィー。(E)FAP発現HT1080-FAPまたはマウスCD3発現マウス脾臓細胞を用いた両方のeIg分子のフローサイトメトリー分析。結合したeIg抗体は、PEコンジュゲート抗ヒトFc抗体で検出した。平均値±SD、n=1。
【0063】
【
図18】eIg分子のヒトFcεRIへの結合の欠如。さまざまなeIg誘導体およびIgG対照抗体について、ELISAにより固定化FcRIおよび標的抗原への結合について分析した。50nMの抗体分子を用い、IgE、eIg誘導体およびIgG抗体のFabアームを認識するHRP-コンジュゲート抗ヒトFab抗体で検出を行った。
【0064】
【
図19】スパイクタンパク質のRBDを標的とするeIg抗体の組成および生化学的解析。eIg-Fab分子の組成(A)および略図(B)。HC、重鎖;LC、軽鎖。(C)還元(R)および非還元(NR)条件下でのeIg-Fab分子のSDS PAGE分析(12%PAA、3μg/レーン、Coomassieブルー染色)。M、タンパク質マーカー。(D)Tosoh TSKgel SuperSW mAb HRカラムを用いたHPLCによるサイズ排除クロマトグラフィー。(E)RBD-His分子を固定化抗原として用いたeIg-Fab分子のELISA。結合したeIg-Fab抗体は、抗ヒトFc検出抗体で検出した。平均値±SD、n=1。
【0065】
配列表
配列番号:1
(wtヒトEHD2コアアミノ酸配列;C14位、N39位およびC102位に下線付き)
DFTPPTVKIL QSSCDGGGHF PPTIQLLCLV SGYTPGTINI TWLEDGQVMD VDLSTASTTQ EGELASTQSE LTLSQKHWLS DRTYTCQVTY QGHTFEDSTK KCADSN
【0066】
配列番号:2
(14位にCysの置換を有する修飾EHD2アミノ酸配列;X=Cys以外のいずれかのアミノ酸、好ましくはSer、Gly、Ala、Thr、Gln、Asn、またはTyr、最も好ましくはSer)
DFTPPTVKIL QSSXDGGGHF PPTIQLLCLV SGYTPGTINI TWLEDGQVMD VDLSTASTTQ EGELASTQSE LTLSQKHWLS DRTYTCQVTY QGHTFEDSTK KCADSN
【0067】
配列番号:3
(102位にCysの置換を有する修飾EHD2アミノ酸配列;X=Cys以外のいずれかのアミノ酸、好ましくはSer、Gly、Ala、Thr、Gln、Asn、またはTyr、最も好ましくはSer)
DFTPPTVKIL QSSCDGGGHF PPTIQLLCLV SGYTPGTINI TWLEDGQVMD VDLSTASTTQ EGELASTQSE LTLSQKHWLS DRTYTCQVTY QGHTFEDSTK KXADSN
【0068】
配列番号:4
(14位にCysを含む修飾EHD2アミノ酸配列)
DFTPPTVKIL QSSSDGGGHF PPTIQLLCLV SGYTPGTINI TWLEDGQVMD VDLSTASTTQ EGELASTQSE LTLSQKHWLS DRTYTCQVTY QGHTFEDSTK KCADSN
【0069】
配列番号:5
(14位にSer、39位にGlnを含む修飾EHD2アミノ酸配列)
DFTPPTVKIL QSSSDGGGHF PPTIQLLCLV SGYTPGTIQI TWLEDGQVMD VDLSTASTTQ EGELASTQSE LTLSQKHWLS DRTYTCQVTY QGHTFEDSTK KCADSN
【0070】
配列番号:6
(102位にSerを含む修飾EHD2アミノ酸配列)
DFTPPTVKIL QSSCDGGGHF PPTIQLLCLV SGYTPGTINI TWLEDGQVMD VDLSTASTTQ EGELASTQSE LTLSQKHWLS DRTYTCQVTY QGHTFEDSTK KSADSN
【0071】
配列番号:7
(102位にSer、39位にGlnを含む修飾EHD2アミノ酸配列)
DFTPPTVKIL QSSCDGGGHF PPTIQLLCLV SGYTPGTIQI TWLEDGQVMD VDLSTASTTQ EGELASTQSE LTLSQKHWLS DRTYTCQVTY QGHTFEDSTK KSADSN
【0072】
配列番号:8
(Igκリーダー配列)
METDTLLLWVLLLWVPGSTG
【0073】
配列番号:9
(VL5D5-EHD2-1 (N39Q))
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCKSSQSLLYTSSQKNYLAWYQQKPGKAPKLLIYWASTRESGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYYAYPWTFGQGTKVEIKRTDFTPPTVKILQSSSDGGGHFPPTIQLLCLVSGYTPGTIQITWLEDGQVMDVDLSTASTTQEGELASTQSELTLSQKHWLSDRTYTCQVTYQGHTFEDSTKKCADSN
【0074】
配列番号:10
(VH5D5-EHD2-2-Fchole)
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFTSYWLHWVRQAPGKGLEWVGMIDPSNSDTRFNPNFKDRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCATYRSYVTPLDYWGQGTLVTVSSDFTPPTVKILQSSCDGGGHFPPTIQLLCLVSGYTPGTINITWLEDGQVMDVDLSTASTTQEGELASTQSELTLSQKHWLSDRTYTCQVTYQGHTFEDSTKKSADSNGTDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVCTLPPSRDELTKNQVSLSCAVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLVSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0075】
配列番号:11
(VL5D5-EHD2-2)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCKSSQSLLYTSSQKNYLAWYQQKPGKAPKLLIYWASTRESGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYYAYPWTFGQGTKVEIKRTDFTPPTVKILQSSCDGGGHFPPTIQLLCLVSGYTPGTINITWLEDGQVMDVDLSTASTTQEGELASTQSELTLSQKHWLSDRTYTCQVTYQGHTFEDSTKKSADSN
【0076】
配列番号:12
(VH5D5-EHD2-1(N39Q)-Fchole)
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFTSYWLHWVRQAPGKGLEWVGMIDPSNSDTRFNPNFKDRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCATYRSYVTPLDYWGQGTLVTVSSDFTPPTVKILQSSSDGGGHFPPTIQLLCLVSGYTPGTIQITWLEDGQVMDVDLSTASTTQEGELASTQSELTLSQKHWLSDRTYTCQVTYQGHTFEDSTKKCADSNGTDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVCTLPPSRDELTKNQVSLSCAVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLVSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0077】
配列番号:13
(VL3-43-CLλ)
QAGLTQPPAVSVAPGQTASITCGRDNIGSRSVHWYQQKPGQAPVLVVYDDSDRPAGIPERFSGSNYENTATLTISRVEAGDEADYYCQVWGITSDHVVFGGGTKLTVLGQPKAAPSVTLFPPSSEELQANKATLVCLISDFYPGAVTVAWKADSSPVKAGVETTTPSKQSNNKYAASSYLSLTPEQWKSHRSYSCQVTHEGSTVEKTVAPTECS
【0078】
配列番号:14
(VH3-43-CH1-Fcknob)
QVQLQQSGPGLVKPSQTLSLTCAISGDSVSSNRAAWNWIRQSPSRGLEWLGRTYYRSKWYNDYAQSLKSRITINPDTPKNQFSLQLNSVTPEDTAVYYCARDGQLGLDALDIWGQGTMVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCGTDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPCRDELTKNQVSLWCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0079】
配列番号:15
(VLhuU3-EHD2-1(N39Q))
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDIRNYLNWYQQKPGKAPKLLIYYTSRLHSGVPSRFSGSGSGTDFTFTISSLQPEDIATYYCQQGNTLPWTFGQGTKLEIKRTDFTPPTVKILQSSSDGGGHFPPTIQLLCLVSGYTPGTIQITWLEDGQVMDVDLSTASTTQEGELASTQSELTLSQKHWLSDRTYTCQVTYQGHTFEDSTKKCADSN
【0080】
配列番号:16
(VHhuU3-EHD2-2-Fchole)
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGGTFSGYTMNWVRQAPGQGLEWMGLINPYKGVSTYNGKFKDRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARSGYYGDSDWYFDVWGQGTLVTVSSDFTPPTVKILQSSCDGGGHFPPTIQLLCLVSGYTPGTINITWLEDGQVMDVDLSTASTTQEGELASTQSELTLSQKHWLSDRTYTCQVTYQGHTFEDSTKKSADSNGTDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVCTLPPSRDELTKNQVSLSCAVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLVSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0081】
配列番号:17
(VH5D5-EHD2-2-リンカー-VH3-43-CH1)
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFTSYWLHWVRQAPGKGLEWVGMIDPSNSDTRFNPNFKDRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCATYRSYVTPLDYWGQGTLVTVSSDFTPPTVKILQSSCDGGGHFPPTIQLLCLVSGYTPGTINITWLEDGQVMDVDLSTASTTQEGELASTQSELTLSQKHWLSDRTYTCQVTYQGHTFEDSTKKSADSNGTGGSGGGGSGGQVQLQQSGPGLVKPSQTLSLTCAISGDSVSSNRAAWNWIRQSPSRGLEWLGRTYYRSKWYNDYAQSLKSRITINPDTPKNQFSLQLNSVTPEDTAVYYCARDGQLGLDALDIWGQGTMVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSC
【0082】
配列番号:18
(VH3-43-CH1-リンカー-VH5D5-EHD2-2)
QVQLQQSGPGLVKPSQTLSLTCAISGDSVSSNRAAWNWIRQSPSRGLEWLGRTYYRSKWYNDYAQSLKSRITINPDTPKNQFSLQLNSVTPEDTAVYYCARDGQLGLDALDIWGQGTMVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCGTGGSGGGGSGGEVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFTSYWLHWVRQAPGKGLEWVGMIDPSNSDTRFNPNFKDRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCATYRSYVTPLDYWGQGTLVTVSSDFTPPTVKILQSSCDGGGHFPPTIQLLCLVSGYTPGTINITWLEDGQVMDVDLSTASTTQEGELASTQSELTLSQKHWLSDRTYTCQVTYQGHTFEDSTKKSADSN
【0083】
配列番号:19
(VH3-43-CH1-リンカー-VH5D5-EHD2-2-Fchole)
QVQLQQSGPGLVKPSQTLSLTCAISGDSVSSNRAAWNWIRQSPSRGLEWLGRTYYRSKWYNDYAQSLKSRITINPDTPKNQFSLQLNSVTPEDTAVYYCARDGQLGLDALDIWGQGTMVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCGTGGSGGGGSGGEVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFTSYWLHWVRQAPGKGLEWVGMIDPSNSDTRFNPNFKDRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCATYRSYVTPLDYWGQGTLVTVSSDFTPPTVKILQSSCDGGGHFPPTIQLLCLVSGYTPGTINITWLEDGQVMDVDLSTASTTQEGELASTQSELTLSQKHWLSDRTYTCQVTYQGHTFEDSTKKSADSNGTDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVCTLPPSRDELTKNQVSLSCAVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLVSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0084】
配列番号:20
(VH3-43-CH1-リンカー-VH3-43-CH1-Fcknob)
QVQLQQSGPGLVKPSQTLSLTCAISGDSVSSNRAAWNWIRQSPSRGLEWLGRTYYRSKWYNDYAQSLKSRITINPDTPKNQFSLQLNSVTPEDTAVYYCARDGQLGLDALDIWGQGTMVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCGTGGSGGGGSGGQVQLQQSGPGLVKPSQTLSLTCAISGDSVSSNRAAWNWIRQSPSRGLEWLGRTYYRSKWYNDYAQSLKSRITINPDTPKNQFSLQLNSVTPEDTAVYYCARDGQLGLDALDIWGQGTMVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCGTDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPCRDELTKNQVSLWCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0085】
配列番号:21
(VH5D5-EHD2-2-リンカー-VH3-43-CH1-Fchole)
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGYTFTSYWLHWVRQAPGKGLEWVGMIDPSNSDTRFNPNFKDRFTISADTSKNTAYLQMNSLRAEDTAVYYCATYRSYVTPLDYWGQGTLVTVSSDFTPPTVKILQSSCDGGGHFPPTIQLLCLVSGYTPGTINITWLEDGQVMDVDLSTASTTQEGELASTQSELTLSQKHWLSDRTYTCQVTYQGHTFEDSTKKSADSNGTGGSGGGGSGGQVQLQQSGPGLVKPSQTLSLTCAISGDSVSSNRAAWNWIRQSPSRGLEWLGRTYYRSKWYNDYAQSLKSRITINPDTPKNQFSLQLNSVTPEDTAVYYCARDGQLGLDALDIWGQGTMVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVCTLPPSRDELTKNQVSLSCAVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLVSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0086】
配列番号:22
(VH3-43-EHD2-2-Fc)
QVQLQQSGPGLVKPSQTLSLTCAISGDSVSSNRAAWNWIRQSPSRGLEWLGRTYYRSKWYNDYAQSLKSRITINPDTPKNQFSLQLNSVTPEDTAVYYCARDGQLGLDALDIWGQGTMVTVSSDFTPPTVKILQSSCDGGGHFPPTIQLLCLVSGYTPGTINITWLEDGQVMDVDLSTASTTQEGELASTQSELTLSQKHWLSDRTYTCQVTYQGHTFEDSTKKSADSNGTDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0087】
配列番号:23
(VL3-43-EHD2-1(N39Q))
QAGLTQPPAVSVAPGQTASITCGRDNIGSRSVHWYQQKPGQAPVLVVYDDSDRPAGIPERFSGSNYENTATLTISRVEAGDEADYYCQVWGITSDHVVFGGGTKLTVLGTDFTPPTVKILQSSSDGGGHFPPTIQLLCLVSGYTPGTIQITWLEDGQVMDVDLSTASTTQEGELASTQSELTLSQKHWLSDRTYTCQVTYQGHTFEDSTKKCADSN
【0088】
配列番号:24
(VHhu225-CH1-リンカー-VH3-43-EHD2-2-Fc)
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFSLTNYGVHWVRQAPGKGLEWLGVIWSGGNTDYNTPFTSRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARALTYYDYEFAYWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCGGSGGGGSGGQVQLQQSGPGLVKPSQTLSLTCAISGDSVSSNRAAWNWIRQSPSRGLEWLGRTYYRSKWYNDYAQSLKSRITINPDTPKNQFSLQLNSVTPEDTAVYYCARDGQLGLDALDIWGQGTMVTVSSDFTPPTVKILQSSCDGGGHFPPTIQLLCLVSGYTPGTINITWLEDGQVMDVDLSTASTTQEGELASTQSELTLSQKHWLSDRTYTCQVTYQGHTFEDSTKKSADSNGTDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0089】
配列番号:25
(VLhu225-CLk)
DIQLTQSPSFLSASVGDRVTITCRASQSIGTNIHWYQQKPGKAPKLLIKYASESISGVPSRFSGSGSGTEFTLTISSLQPEDFATYYCQQNNNWPTTFGAGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0090】
配列番号:26
(VH3-43-EHD2-2-リンカー-VHhu225-CH1-Fc)
QVQLQQSGPGLVKPSQTLSLTCAISGDSVSSNRAAWNWIRQSPSRGLEWLGRTYYRSKWYNDYAQSLKSRITINPDTPKNQFSLQLNSVTPEDTAVYYCARDGQLGLDALDIWGQGTMVTVSSDFTPPTVKILQSSCDGGGHFPPTIQLLCLVSGYTPGTINITWLEDGQVMDVDLSTASTTQEGELASTQSELTLSQKHWLSDRTYTCQVTYQGHTFEDSTKKSADSNGTGGSGGGGSGGEVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFSLTNYGVHWVRQAPGKGLEWLGVIWSGGNTDYNTPFTSRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARALTYYDYEFAYWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0091】
配列番号:27
(VH3-43-EHD2-2(C102A)-His)
QVQLQQSGPGLVKPSQTLSLTCAISGDSVSSNRAAWNWIRQSPSRGLEWLGRTYYRSKWYNDYAQSLKSRITINPDTPKNQFSLQLNSVTPEDTAVYYCARDGQLGLDALDIWGQGTMVTVSSDFTPPTVKILQSSCDGGGHFPPTIQLLCLVSGYTPGTINITWLEDGQVMDVDLSTASTTQEGELASTQSELTLSQKHWLSDRTYTCQVTYQGHTFEDSTKKAADSNAAAHHHHHH
【0092】
配列番号:28
(VH3-43-EHD2-2(C102W)-His)
QVQLQQSGPGLVKPSQTLSLTCAISGDSVSSNRAAWNWIRQSPSRGLEWLGRTYYRSKWYNDYAQSLKSRITINPDTPKNQFSLQLNSVTPEDTAVYYCARDGQLGLDALDIWGQGTMVTVSSDFTPPTVKILQSSCDGGGHFPPTIQLLCLVSGYTPGTINITWLEDGQVMDVDLSTASTTQEGELASTQSELTLSQKHWLSDRTYTCQVTYQGHTFEDSTKKWADSNAAAHHHHHH
【0093】
配列番号:29
(VH3-43-EHD2-2(C102N)-His)
QVQLQQSGPGLVKPSQTLSLTCAISGDSVSSNRAAWNWIRQSPSRGLEWLGRTYYRSKWYNDYAQSLKSRITINPDTPKNQFSLQLNSVTPEDTAVYYCARDGQLGLDALDIWGQGTMVTVSSDFTPPTVKILQSSCDGGGHFPPTIQLLCLVSGYTPGTINITWLEDGQVMDVDLSTASTTQEGELASTQSELTLSQKHWLSDRTYTCQVTYQGHTFEDSTKKNADSNAAAHHHHHH
【0094】
配列番号:30
(VH3-43-EHD2-2(C102T)-His)
QVQLQQSGPGLVKPSQTLSLTCAISGDSVSSNRAAWNWIRQSPSRGLEWLGRTYYRSKWYNDYAQSLKSRITINPDTPKNQFSLQLNSVTPEDTAVYYCARDGQLGLDALDIWGQGTMVTVSSDFTPPTVKILQSSCDGGGHFPPTIQLLCLVSGYTPGTINITWLEDGQVMDVDLSTASTTQEGELASTQSELTLSQKHWLSDRTYTCQVTYQGHTFEDSTKKTADSNAAAHHHHHH
【0095】
配列番号:31
(VH3-43-EHD2-2(C102S)-His)
QVQLQQSGPGLVKPSQTLSLTCAISGDSVSSNRAAWNWIRQSPSRGLEWLGRTYYRSKWYNDYAQSLKSRITINPDTPKNQFSLQLNSVTPEDTAVYYCARDGQLGLDALDIWGQGTMVTVSSDFTPPTVKILQSSCDGGGHFPPTIQLLCLVSGYTPGTINITWLEDGQVMDVDLSTASTTQEGELASTQSELTLSQKHWLSDRTYTCQVTYQGHTFEDSTKKSADSNAAAHHHHHH
【0096】
配列番号:32
(VL3-43-EHD2-1(C14A, N39Q))
QAGLTQPPAVSVAPGQTASITCGRDNIGSRSVHWYQQKPGQAPVLVVYDDSDRPAGIPERFSGSNYENTATLTISRVEAGDEADYYCQVWGITSDHVVFGGGTKLTVLDFTPPTVKILQSSADGGGHFPPTIQLLCLVSGYTPGTIQITWLEDGQVMDVDLSTASTTQEGELASTQSELTLSQKHWLSDRTYTCQVTYQGHTFEDSTKKCADSN
【0097】
配列番号:33
(VL3-43-EHD2-1(C14T, N39Q))
QAGLTQPPAVSVAPGQTASITCGRDNIGSRSVHWYQQKPGQAPVLVVYDDSDRPAGIPERFSGSNYENTATLTISRVEAGDEADYYCQVWGITSDHVVFGGGTKLTVLDFTPPTVKILQSSTDGGGHFPPTIQLLCLVSGYTPGTIQITWLEDGQVMDVDLSTASTTQEGELASTQSELTLSQKHWLSDRTYTCQVTYQGHTFEDSTKKCADSN
【0098】
配列番号:34
(VL3-43-EHD2-1(C14N, N39Q))
QAGLTQPPAVSVAPGQTASITCGRDNIGSRSVHWYQQKPGQAPVLVVYDDSDRPAGIPERFSGSNYENTATLTISRVEAGDEADYYCQVWGITSDHVVFGGGTKLTVLDFTPPTVKILQSSNDGGGHFPPTIQLLCLVSGYTPGTIQITWLEDGQVMDVDLSTASTTQEGELASTQSELTLSQKHWLSDRTYTCQVTYQGHTFEDSTKKCADSN
【0099】
配列番号:35
(VL3-43-EHD2-1(C14W, N39Q))
QAGLTQPPAVSVAPGQTASITCGRDNIGSRSVHWYQQKPGQAPVLVVYDDSDRPAGIPERFSGSNYENTATLTISRVEAGDEADYYCQVWGITSDHVVFGGGTKLTVLDFTPPTVKILQSSWDGGGHFPPTIQLLCLVSGYTPGTIQITWLEDGQVMDVDLSTASTTQEGELASTQSELTLSQKHWLSDRTYTCQVTYQGHTFEDSTKKCADSN
【0100】
配列番号:36
(VL3-43-EHD2-1(C14S, N39Q))
QAGLTQPPAVSVAPGQTASITCGRDNIGSRSVHWYQQKPGQAPVLVVYDDSDRPAGIPERFSGSNYENTATLTISRVEAGDEADYYCQVWGITSDHVVFGGGTKLTVLDFTPPTVKILQSSSDGGGHFPPTIQLLCLVSGYTPGTIQITWLEDGQVMDVDLSTASTTQEGELASTQSELTLSQKHWLSDRTYTCQVTYQGHTFEDSTKKCADSN
【0101】
配列番号:37
(VL3-43-EHD2-1(C14S))
QAGLTQPPAVSVAPGQTASITCGRDNIGSRSVHWYQQKPGQAPVLVVYDDSDRPAGIPERFSGSNYENTATLTISRVEAGDEADYYCQVWGITSDHVVFGGGTKLTVLDFTPPTVKILQSSSDGGGHFPPTIQLLCLVSGYTPGTINITWLEDGQVMDVDLSTASTTQEGELASTQSELTLSQKHWLSDRTYTCQVTYQGHTFEDSTKKCADSN
【0102】
配列番号:38
(VH3-43-EHD2-2(N39Q, C102S)-His)
QVQLQQSGPGLVKPSQTLSLTCAISGDSVSSNRAAWNWIRQSPSRGLEWLGRTYYRSKWYNDYAQSLKSRITINPDTPKNQFSLQLNSVTPEDTAVYYCARDGQLGLDALDIWGQGTMVTVSSDFTPPTVKILQSSCDGGGHFPPTIQLLCLVSGYTPGTIQITWLEDGQVMDVDLSTASTTQEGELASTQSELTLSQKHWLSDRTYTCQVTYQGHTFEDSTKKSADSNAAAHHHHHH
【0103】
配列番号:39
(VHhuU3-EHD2-2-リンカー-VH3-43-CH1-Fcknob)
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGGTFSGYTMNWVRQAPGQGLEWMGLINPYKGVSTYNGKFKDRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARSGYYGDSDWYFDVWGQGTLVTVSSDFTPPTVKILQSSCDGGGHFPPTIQLLCLVSGYTPGTINITWLEDGQVMDVDLSTASTTQEGELASTQSELTLSQKHWLSDRTYTCQVTYQGHTFEDSTKKSADSNGGSGGGGSGGQVQLQQSGPGLVKPSQTLSLTCAISGDSVSSNRAAWNWIRQSPSRGLEWLGRTYYRSKWYNDYAQSLKSRITINPDTPKNQFSLQLNSVTPEDTAVYYCARDGQLGLDALDIWGQGTMVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCGTDKTHTCPPCPAPPVAGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPCRDELTKNQVSLWCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0104】
配列番号:40
(VH3-43-CH1-Fchole)
QVQLQQSGPGLVKPSQTLSLTCAISGDSVSSNRAAWNWIRQSPSRGLEWLGRTYYRSKWYNDYAQSLKSRITINPDTPKNQFSLQLNSVTPEDTAVYYCARDGQLGLDALDIWGQGTMVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCGTDKTHTCPPCPAPPVAGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVCTLPPSRDELTKNQVSLSCAVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLVSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0105】
配列番号:41
(VH3-43- CH1-リンカー-VHhuU3-EHD2-2- Fchole)
QVQLQQSGPGLVKPSQTLSLTCAISGDSVSSNRAAWNWIRQSPSRGLEWLGRTYYRSKWYNDYAQSLKSRITINPDTPKNQFSLQLNSVTPEDTAVYYCARDGQLGLDALDIWGQGTMVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCGGSGGGGSGGQVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGGTFSGYTMNWVRQAPGQGLEWMGLINPYKGVSTYNGKFKDRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARSGYYGDSDWYFDVWGQGTLVTVSSDFTPPTVKILQSSCDGGGHFPPTIQLLCLVSGYTPGTINITWLEDGQVMDVDLSTASTTQEGELASTQSELTLSQKHWLSDRTYTCQVTYQGHTFEDSTKKSADSNGTDKTHTCPPCPAPPVAGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVCTLPPSRDELTKNQVSLSCAVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLVSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0106】
配列番号:42
(VHhu36-EHD2-2-Fchole)
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTENIIHWVRQAPGQGLEWMGWFHPGSGSIKYNEKFKDRVTMTADTSTSTVYMELSSLRSEDTAVYYCARHGGTGRGAMDYWGQGTLVTVSSDFTPPTVKILQSSCDGGGHFPPTIQLLCLVSGYTPGTINITWLEDGQVMDVDLSTASTTQEGELASTQSELTLSQKHWLSDRTYTCQVTYQGHTFEDSTKKSADSNGTDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVCTLPPSRDELTKNQVSLSCAVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLVSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0107】
配列番号:43
(VLhu36-EHD2-1(N39Q))
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASKSVSTSAYSYMHWYQQKPGKAPKLLIYLASNLESGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQHSRELPYTFGQGTKLEIKRDFTPPTVKILQSSSDGGGHFPPTIQLLCLVSGYTPGTIQITWLEDGQVMDVDLSTASTTQEGELASTQSELTLSQKHWLSDRTYTCQVTYQGHTFEDSTKKCADSN
【0108】
配列番号:44
(VHhu225-CH1-リンカー-VH3-43-EHD2-2-His)
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFSLTNYGVHWVRQAPGKGLEWLGVIWSGGNTDYNTPFTSRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARALTYYDYEFAYWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCGGSGGGGSGGQVQLQQSGPGLVKPSQTLSLTCAISGDSVSSNRAAWNWIRQSPSRGLEWLGRTYYRSKWYNDYAQSLKSRITINPDTPKNQFSLQLNSVTPEDTAVYYCARDGQLGLDALDIWGQGTMVTVSSDFTPPTVKILQSSCDGGGHFPPTIQLLCLVSGYTPGTINITWLEDGQVMDVDLSTASTTQEGELASTQSELTLSQKHWLSDRTYTCQVTYQGHTFEDSTKKSADSNAAAHHHHHH
【0109】
配列番号:45
(VLhu36-CLκ)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASKSVSTSAYSYMHWYQQKPGKAPKLLIYLASNLESGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQHSRELPYTFGQGTKLEIKRRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0110】
配列番号:46
(VHhu36-CH1-Fchole)
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTENIIHWVRQAPGQGLEWMGWFHPGSGSIKYNEKFKDRVTMTADTSTSTVYMELSSLRSEDTAVYYCARHGGTGRGAMDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCGTDKTHTCPPCPAPPVAGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVCTLPPSRDELTKNQVSLSCAVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLVSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0111】
配列番号:47
(VH2C11-EHD2-1(N39Q))
EVQLVESGGGLVQPGKSLKLSCEASGFTFSGYGMHWVRQAPGRGLESVAYITSSSINIKYADAVKGRFTVSRDNAKNLLFLQMNILKSEDTAMYYCARFDWDKNYWGQGTMVTVSSDFTPPTVKILQSSSDGGGHFPPTIQLLCLVSGYTPGTIQITWLEDGQVMDVDLSTASTTQEGELASTQSELTLSQKHWLSDRTYTCQVTYQGHTFEDSTKKCADSN
【0112】
配列番号:48
(VL2C11-EHD2-2-Fcknob)
DIQMTQSPSSLPASLGDRVTINCQASQDISNYLNWYQQKPGKAPKLLIYYTNKLADGVPSRFSGSGSGRDSSFTISSLESEDIGSYYCQQYYNYPWTFGPGTKLEIKDFTPPTVKILQSSCDGGGHFPPTIQLLCLVSGYTPGTINITWLEDGQVMDVDLSTASTTQEGELASTQSELTLSQKHWLSDRTYTCQVTYQGHTFEDSTKKSADSNGTDKTHTCPPCPAPPVAGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPCRDELTKNQVSLWCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0113】
配列番号:49
(VL2C11-EHD2-1(N39Q))
DIQMTQSPSSLPASLGDRVTINCQASQDISNYLNWYQQKPGKAPKLLIYYTNKLADGVPSRFSGSGSGRDSSFTISSLESEDIGSYYCQQYYNYPWTFGPGTKLEIKDFTPPTVKILQSSSDGGGHFPPTIQLLCLVSGYTPGTIQITWLEDGQVMDVDLSTASTTQEGELASTQSELTLSQKHWLSDRTYTCQVTYQGHTFEDSTKKCADSN
【0114】
配列番号:50
(VH2C11-EHD2-2-Fcknob)
EVQLVESGGGLVQPGKSLKLSCEASGFTFSGYGMHWVRQAPGRGLESVAYITSSSINIKYADAVKGRFTVSRDNAKNLLFLQMNILKSEDTAMYYCARFDWDKNYWGQGTMVTVSSDFTPPTVKILQSSCDGGGHFPPTIQLLCLVSGYTPGTINITWLEDGQVMDVDLSTASTTQEGELASTQSELTLSQKHWLSDRTYTCQVTYQGHTFEDSTKKSADSNGTDKTHTCPPCPAPPVAGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPCRDELTKNQVSLWCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0115】
配列番号:51
(VLS309-CLκ)
EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQTVSSTSLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQHDTSLTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0116】
配列番号:52
(VLP2B-2F6-EHD2-1(N39Q))
QSALTQPPSASGSPGQSVTISCTGTSSDVGGYNYVSWYQQHPGKAPKLMIYEVSKRPSGVPDRFSGSKSGNTASLTVSGLQAEDEADYYCSSYAGSNNLVCGGGTKLTVLDFTPPTVKILQSSSDGGGHFPPTIQLLCLVSGYTPGTIQITWLEDGQVMDVDLSTASTTQEGELASTQSELTLSQKHWLSDRTYTCQVTYQGHTFEDSTKKCADSN
【0117】
配列番号:53
(VHS309-CH1-VHP2B-2F6-EHD2-2-Fc)
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYPFTSYGISWVRQAPGQGLEWMGWISTYNGNTNYAQKFQGRVTMTTDTSTTTGYMELRRLRSDDTAVYYCARDYTRGAWFGESLIGGFDNWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCGGSGGGGSGGQVQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGYSISSGYYWGWIRQPPGKGLEWIGSIYHSGSTYYNPSLKTRVTISVDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCARAVVGIVVVPAAGRRAFDIWGQGTMVTVSSDFTPPTVKILQSSCDGGGHFPPTIQLLCLVSGYTPGTINITWLEDGQVMDVDLSTASTTQEGELASTQSELTLSQKHWLSDRTYTCQVTYQGHTFEDSTKKSADSNDKTHTCPPCPAPPVAGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0118】
(本発明の詳細な説明)
本発明を以下に詳細に説明する前に、本発明は、本明細書に記載の特定の方法論、プロトコルおよび試薬に限定されないと理解される。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施態様を説明する目的だけのものであり、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定することを意図していないと理解される。他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0119】
好ましくは、本明細書で使用される用語は、"A multilingual glossary of biotechnological terms: (IUPAC Recommendations)", Leuenberger, H.G.W, Nagel, バンド Klbl, H. eds. (1995), Helvetica Chimica Acta, CH-4010 Basel, Switzerland)に記載されている。
【0120】
本明細書およびそれに続く特許請求の範囲を通じて、文脈上他に必要とされない限り、「含む(comprise)」という単語、および「含む(comprises)」および「含む(comprising)」などの変形は、所定の整数もしくは工程または整数もしくは工程の群を含むことを意味し、他の整数もしくは工程または整数もしくは工程の群を排除しないことが理解されるであろう。以下の文章において、本発明のさまざまな態様をより詳細に定義する。このように定義された各側面は、反対のことが明確に示されていない限り、他の任意の側面または側面と組み合わされることができる。特に、任意である、好ましい、または有利であると示された任意の特徴は、任意である、好ましい、または有利であると示された任意の他の特徴または機能と組み合わせることができる。
【0121】
本明細書の本文を通じて、いくつかの文書を引用している。本明細書で引用された各文書(すべての特許、特許出願、科学出版物、製造者の仕様書、説明書などを含む)は、上述または下述にかかわらず、その全体が引用により本明細書に包含される。本明細書のいかなる内容も、本発明が先行発明の理由でそのような開示に先行する権利がないことを認めるものと解釈されるべきではない。本明細書で引用された文書の一部は、「引用により包含される」ものとして特徴付けられる。このような包含された文献の定義または教示と、本明細書に記載の定義または教示との間に矛盾がある場合、本明細書の本文が優先される。
【0122】
以下では、本発明の要素について説明する。これらの要素は、特定の実施態様と共に列挙されているが、追加の実施態様を作成するために、任意の方法および任意の数で組み合わせることができることが理解されるべきである。さまざまに説明された例および好ましい実施態様は、本発明を明示的に記載されている実施態様のみに限定するように解釈されるべきではない。本明細書は、明示的に記載されている実施態様と任意の数の開示および/または好ましい要素とを組み合わせた実施態様を支持し包含するものと理解されるべきである。さらに、本願に記載の全ての要素の任意の順列および組み合わせは、文脈が他に示さない限り、本願の説明によって開示されたものとみなされるべきである。
【0123】
定義
【0124】
以下では、本明細書で頻繁に使用される用語の定義をいくつか提供する。これらの用語は、その使用の各例において、本明細書の残りの部分では、それぞれ定義されている意味および好ましい意味を有する。
【0125】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」、および「the」は、内容が他に明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。
【0126】
本明細書で使用される用語「結合分子」とは、標的分子または標的エピトープに特異的に結合できるいずれかの分子または分子の一部を意味する。本発明の結合分子の結合性質は、(a)抗体またはその抗原結合断片;(b)オリゴヌクレオチド;(c)抗体様タンパク質;(d)T細胞受容体または(e)ペプチド模倣物に由来するものであり得る。
【0127】
本発明による用語「結合」は、好ましくは特異的結合に関する。「特異的結合」とは、結合タンパク質(例えば、抗体)が、別の標的に対する結合と比較して、それが特異的であるエピトープのような標的に対してより強く結合することを意味する。結合タンパク質は、第2の標的に対する解離定数よりも低い解離定数(Kd)で第1の標的に結合する場合、第2の標的に比較して第1の標的により強く結合する。好ましくは、結合タンパク質が特異的に結合する標的に対する解離定数(Kd)は、結合タンパク質が特異的に結合しない標的に対する解離定数(Kd)よりも10倍超、好ましくは20倍超、より好ましくは50倍超、さらに好ましくは100倍、200倍、500倍または1000倍超低いことである。
【0128】
本明細書で使用する場合、用語「Kd」(「mol/L」で測定、「M」と略記することもある)は、結合タンパク質(例えば、抗体またはその断片)と標的分子(例えば、抗原またはそのエピトープ)との間の特定の相互作用の解離平衡定数を意味することが意図される。化合物の結合親和性を決定する方法、すなわち解離定数KDを決定する方法は、当業者に知られており、例えば当技術分野で知られている以下の方法から選択することができる:表面プラズモン共鳴(SPR)ベースの技術、バイオレイヤー干渉法(BLI)、水晶振動子マイクロバランス(QCM)、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、フローサイトメトリー、等温滴定カロリメトリー(ITC)、分析用超遠心法、放射免疫測定法(RIAまたはIRMA)および増強ケミルミネッセンス(ECL)。本出願の文脈において、「Kd」値は、表面プラズモン共鳴スペクトロスコピー(BiacorTM)または室温(25℃)での水晶振動子マイクロバランス(QCM)によって決定される。
【0129】
本明細書で使用される用語「結合ドメイン」とは、抗原に特異的に結合する能力を有するアミノ酸の配列を意味し、例えば、抗体またはその抗原結合断片、T細胞受容体およびその抗原結合断片に由来することができるものである。用語「結合ドメイン」内に包含される例には、Fab断片、VL、VHドメインからなる一価の断片;抗体の単一アームのVLおよびVHドメインからなるFv断片、VHドメインもしくはVLドメイン、VHH、ナノボディ、またはIgNARの可変ドメインからなるdAb断片(Ward et al, (1989) Nature 341: 544-546)、;単離相補性決定領域(CDR)、および任意に合成ペプチドリンカーによって結合されているい2つまたはそれ以上の単離CDRの組合せを意味する。用語「結合ドメイン」とはまた、TCR α-およびTCR β-鎖の、またはTCR γ-鎖およびTCR δ-鎖の可変ドメインまたは領域を意味する。
【0130】
本明細書で使用される場合、「TCR」または「T細胞受容体」という用語は、T細胞の表面上に見出される分子を示す。TCRは、2本の別々のペプチド鎖からなり、ヒトの場合、ほとんどの場合、独立したT細胞受容体αおよびβ(TCRαおよびTCRβ)遺伝子から産生される。これらの鎖はα鎖およびβ鎖と称される。TCR α-鎖とTCR β-鎖は、それぞれ可変ドメインと定常ドメインを有する。各可変ドメインは、抗原に結合するための3つのCDRを担持する。TCR γ-およびTCR δ-鎖は、ヒトではあまり多くないが、可変ドメインと定常ドメインを担持し、各可変ドメインは抗原に結合するための3つのCDRを担持する。
【0131】
本明細書で使用される用語「抗原」は、抗原結合ドメインによって認識されるエピトープを含む物質に関するものである。用語「抗原」は、特にタンパク質およびペプチドを含む。抗原は、好ましくは、天然に存在する抗原に相当する、または天然に存在する抗原に由来する産物である。そのような天然に存在する抗原は、アレルゲン、ウイルス、細菌、真菌、寄生虫および他の感染性因子および病原体を含み得るか、またはそれらに由来し得るか、あるいは、抗原はまた、腫瘍抗原であり得る。本発明によれば、抗原は、天然に存在する産物、例えば、ウイルスタンパク質、またはその一部、または腫瘍タンパク質に相当し得る。
【0132】
本明細書で使用される用語「二量化ドメイン」とは、2つのポリペプチドまたはタンパク質鎖の二量体を形成することができるドメインであって、少なくとも1つの二量体化ドメインは第1の鎖上に存在し、少なくとも第2の二量体化ドメインは第2の鎖上に存在するドメインを意味する。二量化ドメインは、IgEおよびIgMのFc領域、ヘテロ二量体化Fc領域、CH1、CL、第2の重鎖定常ドメイン(CH2)(EHD2、MHD2)、本発明による修飾EHD2、IgG、IgD、IgA、IgMまたはIgEの最後の重鎖定常ドメイン(CH3またはCH4)およびそのヘテロ二量体化誘導体、ならびにT細胞受容体の定常ドメインC-αおよびC-βからなる群から選択される。それぞれの二量体化ドメインに応じて、二量体化ドメインのC末端およびN末端は変化し得る。二量化ドメインが天然に存在するタンパク質、例えば免疫グロブリンに由来する場合、該二量化ドメインは、好ましくは、本発明の意味において可変ドメインに直接結合することができ、すなわち、そのC末端またはN末端に天然に存在しないアミノ酸が無ければ、ペプチドリンカーなしで結合することができる。
【0133】
本発明の文脈で使用されるVHおよびVLドメインは、好ましくは抗体または免疫グロブリンに由来するものである。このような「抗体」または「免疫グロブリン」は、「Y」字型の形態を有し、4本のポリペプチド鎖からなり;2つの同一の重鎖および2つの同一の軽鎖がジスルフィド結合によって結合されている、天然または従来の抗体であってよい。各鎖は、構造ドメインからなる。2つの重鎖はジスルフィド結合によって互いに結合しており、各重鎖はジスルフィド結合によって軽鎖に結合している。軽鎖にはλ(ラムダ)およびカッパ(k)の2種類があり、抗体分子の機能的活性を決定する、5つの主な重鎖のクラス(またはアイソタイプ):IgM、IgD、IgG、IgA、IgEがある。各鎖は異なる配列ドメインを含む。軽鎖は、可変ドメイン(VL)と定常ドメイン(CL)の2つのドメインまたは領域を含む。重鎖は、可変ドメイン(VH)と3つの定常ドメイン(CH1、CH2、CH3、これらを総称してCHと称される)の4つのドメインを含み、IgE、IgMの場合は、可変ドメイン(VH)と4つの定常ドメイン(CH1、CH2、CH3、CH4)の5つのドメインを含む。軽鎖(VL)および重鎖(VH)の両方の可変領域により抗原に対する結合認識および特異性を決定する。軽鎖(CL)および重鎖(CH)の定常領域ドメインは、抗体鎖の結合、分泌、経胎盤移動(transplacental mobility)、補体結合、およびFc受容体(FcR)への結合などの重要な生物学的性質を付与するものである。Y字型の抗体の「アーム」は、特定の分子に結合できる部位を含み、特定の抗原を認識することができる。この抗体の領域は、Fab(断片、抗原結合)領域と称される。これは、抗体の重鎖および軽鎖それぞれからの1つの定常ドメインおよび1つの可変ドメインからなる。Yの基部は、免疫細胞の活性を調節する役割を果たす。この領域はFc(断片、結晶性)領域と称されており、抗体のクラスに応じて2つまたは3つの定常ドメインを寄与する2つの重鎖からなる。Fv断片は、免疫グロブリンのFab領域のN末端部分であり、1つの軽鎖および1つの重鎖の可変部分からなる。抗体の特異性は、抗体結合部位と抗原決定基との間の構造的相補性にある。抗体結合部位は、主に超可変領域または相補性決定領域(CDR)からの残基からなる。時たま、非超可変領域またはフレームワーク領域(FR)からの残基はドメイン全体の構造に影響を与え、それゆえに、結合部位に影響を与える。相補性決定領域またはCDRとは、一緒になって天然の免疫グロブリン結合部位の天然Fv領域の結合親和性および特異性を規定するアミノ酸配列を意味する。免疫グロブリンの軽鎖および重鎖は、それぞれCDR1-L、CDR2-L、CDR3-LおよびCDR1-H、CDR2-H、CDR3-Hと称される3つのCDRを有する。したがって、従来の抗体抗原結合部位は、重鎖および軽鎖のV領域のそれぞれからのCDRセットを含む6つのCDRを含む。
【0134】
本発明に使用可能な抗体およびその抗原結合断片は、鳥および哺乳動物を含むいずれかの動物由来のものであり得る。好ましくは、抗体または断片は、ヒト、チンパンジー、齧歯動物(例えば、マウス、ラット、モルモット、またはウサギ)、ニワトリ、シチメンチョウ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ラクダ、ウシ、ウマ、ロバ、ネコ、またはイヌ由来のものである。抗体がヒトまたはマウス由来のものであることが特に好ましい。本発明の抗体はまた、ある種、好ましくはヒトに由来する抗体の定常領域が、他の種、例えばマウスに由来する抗原結合部位と組み合わされたキメラ分子も含む。さらに、本発明の抗体は、非ヒト種(例えばマウス)由来の抗体の抗原結合部位がヒト由来の定常領域およびフレームワーク領域と組み合わされたヒト化分子を含む。
【0135】
本明細書に例示されるように、抗体は、抗体を発現するハイブリドーマから直接得ることができ、または宿主細胞(例えば、CHO細胞、またはリンパ球細胞)中でクローン化されて組換え的に発現され得る。宿主細胞のさらなる例は、大腸菌のような微生物、および酵母のような真菌である。あるいは、トランスジェニック非ヒト動物または植物において組換え的に産生される。
【0136】
本明細書で使用される場合、「EHD2」および「EHD2ドメイン」という用語とは、IgEの重鎖の第2の定常ドメインを意味する(Seifert et al., 2012, Protein Eng Des Sel.; 25:603-12; and Seifert et al., 2014, Mol Cancer Ther.;13:101-11)。同様に、用語「修飾EHD2ドメイン」とは、配列が、それが由来するオリジナルのEHD2配列と比較して修飾されたEHD2ドメインの一部を意味する。修飾は、アミノ酸の欠失、置換、および挿入を含む。修飾は、好ましくは、配列番号:1に関して示される位置における1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を含む。本発明による置換は、14位のCysまたは102位のCysに対してなされる。好ましい置換は、配列番号:1に関して、それぞれは、C14SおよびC102Sを含む。本明細書で使用される場合、用語「hetEHD2」は、2つの修飾EHD2ドメインのヘテロ二量体、すなわち本明細書で定義されるEHD2-1およびEHD2-2を含む二量体を示す。いくつかの例において特定のアミノ酸配列への言及がなされているが、本明細書で使用される「EHD2-1」および「EHD2-2」という用語は特定のアミノ酸配列を意味するものではなく、主に第1の修飾EHD2ドメインと第2のEHD2ドメインのアミノ酸配列間の差異を強調するために使用されていることが強調される。免疫グロブリンの定常ドメインについてLefranc et al., 2005 (Developmental and Comparative Immunology 29, 185-203)に定義されているアミノ酸番号付けスキームを用いると、配列番号:1のC14はC11に、配列番号:1のC28はC23に、配列番号:1のC86はC104に、配列番号:1のC102はC124に、配列番号:1のN39はN38に対応する。
【0137】
本明細書で使用される用語「モノクローナル抗体」とは、単一分子組成の抗体分子の調製物を意味する。モノクローナル抗体は、特定のエピトープに対して単一結合特異性および親和性を示す。一実施態様において、モノクローナル抗体は、非ヒト動物、例えばマウスから得られたB細胞を不死化細胞に融合させたものを含むハイブリドーマによって産生される。
【0138】
本明細書で使用される用語「組換え抗体」とは、組換え手段によって調製、発現、作製または単離されるすべての抗体、例えば、(a)免疫グロブリン遺伝子またはそれから調製されたハイブリドーマに関してトランスジェニックまたは導入染色体(transchromosomal)である、動物(例えば、マウス)から単離された抗体、(b)抗体を発現するように形質転換された宿主細胞、例えばトランスフェクトーマから単離される抗体、(c)組み換え、コンビナトリアル抗体ライブラリーから単離される抗体、および(d)免疫グロブリン遺伝子配列と他のDNA配列のスプライシングを伴う他の手段により調製、発現、作製または単離される抗体を含む。
【0139】
したがって、本発明での使用に適した「抗体およびその抗原結合断片」には、ポリクローナルのもの、モノクローナルのもの、一価のもの、二重特異性のもの、ヘテロコンジュゲートのもの、多重特異性のもの、組換えのもの、異種のもの、異種雑種(heterohybrid)のもの、ヒト化(特にCDRグラフト化)のもの、脱免疫化のもの、またはヒト抗体、Fab断片、Fab'断片、F(ab')2断片、Fab発現ライブラリーによって産生された断片、Fd、Fv、ジスルフィド結合Fv(dsFv)、単鎖抗体(例えば、scFv)、二重特異性抗体またはテトラボディ(Holliger P. et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90(14), 6444-6448)、ナノボディ(単一ドメイン抗体としても知られている)、抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、本発明の抗体に対する抗Id抗体を含む)、および上記のいずれかのエピトープ結合断片が含まれるが、これらに限定されない。
【0140】
本明細書で使用される場合、用語「二重特異性」は、2つの異なる抗原、または1つの抗原内の2つの異なるエピトープに結合することができる抗体などの結合分子を示す。同様に、「三重特異性」および「四重特異性」という用語は、それぞれ3つおよび4つの異なる抗原、または抗原内のエピトープに結合することができる結合分子を示す。
【0141】
本明細書で使用される、ある物体に適用される「天然に存在する」という用語は、その物体が自然界に見出され得るという事実を意味する。例えば、自然の中の供給源から単離される生物(ウイルスを含む)中に存在し、実験室で人により意図的に修飾されていないポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列は、天然に存在するものである。
【0142】
本明細書で使用される場合、用語「核酸アプタマー」は、インビトロ選択またはSELEX(指数濃縮によるリガンドの系統的進化)の反復ラウンドを通して標的分子に結合するように操作された核酸分子を意味する(レビューについては、Brody E.N. and Gold L. (2000), Aptamers as therapeutic and diagnostic agents. J. Biotechnol. 74(1):5-13を参照のこと)。核酸アプタマーは、DNA分子またはRNA分子であってもよい。アプタマーは、修飾、例えば、2'-フッ素置換ピリミジンなどの修飾ヌクレオチドを含み得る。
【0143】
本明細書で使用される場合、用語「抗体様タンパク質」とは、標的分子に特異的に結合するように(例えば、ループの変異誘発によって)操作されたタンパク質を意味する。典型的には、このような抗体様タンパク質は、タンパク質の足場に両端が結合した少なくとも1つの可変ペプチドを含む。この二重の構造的制約により、抗体様タンパク質の結合親和性を、抗体に匹敵するレベルまで大幅に向上させる。可変ペプチドループの長さは、通常10~20アミノ酸である。足場タンパク質は、良好な溶解度性質を有するいずれかのタンパク質であり得る。好ましくは、足場タンパク質は、小さな球状タンパク質である。抗体様タンパク質には、アフィボディ、アンチカリン、および設計されたアンキリンリピートタンパク質が含まれるが、これらに限定されない(レビューについては、Binz H.K. et al. (2005) 工学 novel binding proteins from nonimmunoglobulin domains. Nat. Biotechnol. 23(10):1257-1268を参照のこと)。抗体様タンパク質は、変異体の大型のライブラリー由来のものであり得、例えば、大型のファージディスプレイライブラリーからパンニングされるものであり得、通常の抗体と相似の方法で単離されるものであり得る。また、抗体様結合タンパク質は、球状タンパク質の表面露出残基のコンビナトリアル変異誘発によって得ることができる。抗体様タンパク質は、「ペプチドアプタマー」と称されることもある。
【0144】
「配列同一性の割合」は、最適に整列させた2つの配列を比較ウィンドウにわたって比較することによって決定され、比較ウィンドウ内の配列の部分は、2つの配列の最適配列のための参照配列(付加または削除を含まない)と比較して付加または削除(すなわちギャップ)を含むことができる。この割合は、両配列において同一の核酸塩基またはアミノ酸残基が出現する位置の数を決定して、マッチする位置の数を求め、該マッチする位置の数を比較のウィンドウにおける位置の総数で割り、その結果に100を乗じて配列同一性の割合を得る。
【0145】
本明細書で、用語「同一」とは、2つまたはそれ以上の核酸またはポリペプチド配列の文脈において、同一である、すなわちヌクレオチドまたはアミノ酸の同じ配列を含む、2つまたはそれ以上の配列または部分配列を意味するために使用される。配列は、ヌクレオチドまたはアミノ酸残基を同じ特定の割合で有する場合、互いに「同一」であるとされる。本発明によれば、少なくとも70%同一は、以下の配列比較アルゴリズムの1つを使用して、または手動整列および目視検査によって測定された比較ウィンドウ、または指定領域にわたって最大の対応のために比較および整列させる場合、特定配列にわたって少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を含む。これらの定義はまた、試験配列の相補配列(complement)を意味する。したがって、本明細書を通じて、ポリペプチドおよびポリヌクレオチドの配列比較に関して、「少なくとも70%の配列同一性」という用語が使用される。この表現は、好ましくは、それぞれの参照ポリペプチドまたはそれぞれの参照ポリヌクレオチドに対対する少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を意味する。
【0146】
本明細書で使用される「配列比較」とは、ある配列を参照配列とし、試験配列をその参照配列に比較するプロセスを意味する。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列と参照配列をコンピュータに入力し、必要に応じて部分配列の座標を指定し、配列アルゴリズムのプログラムパラメータを指定する。デフォルトのプログラムパラメータが一般的であるが、代替のパラメータを指定することもできる。その後、配列比較アルゴリズムは、プログラムパラメータに基づき、参照配列に対する試験配列の配列同一性のパーセントを計算する。2つの配列が比較される場合において、配列同一性の割合が計算される比較において参照配列が特定されていない場合、配列同一性は、特に示されていない限り、比較される2つの配列の長い方を基準にして計算される。参照配列が示されている場合、配列同一性は、特に示されていない限り、配列番号によって示されている参照配列の全長に基づいて決定される。
【0147】
配列整列において、用語「比較ウィンドウ」とは、同じ数の位置を有する配列の隣接する位置の参照ストレッチと比較される、配列の隣接する位置のそれらのストレッチを指す。典型的には、隣接する位置の数は、約20~100の隣接する位置、約25~90の隣接する位置、約30~80の隣接する位置、約40~約70の隣接する位置、約50~約60の隣接する位置の範囲である。本発明によれば、配列番号:1のような本発明の配列と割合同一性について比較する場合、参照配列が本発明の配列番号と同じ長さまたはそれより長い長さを有すれば、好ましくは、配列番号の全長、例えば、配列番号:1の106個のアミノ酸が参照配列と比較される。参照配列が本発明の配列番号よりも短い場合、参照配列の全長を本発明の配列番号の全長と比較しなければならない。
【0148】
比較のための配列の整列方法は、当技術分野でよく知られている。比較のための配列の最適な整列は、例えば、SmithおよびWatermanの局所相同性アルゴリズム(Adv. Appl. Math. 2:482, 1970)、NeedlemanおよびWunschの相同性整列アルゴリズム(J. Mol. Biol. 48:443, 1970)、PearsonおよびLipmanの類似性の検索方法(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444, 1988)、これらのアルゴリズムの計算機化実行(例えば、GAP, BESTFIT, FASTA, and TFASTA in the Wisconsin Genetics ソフトウェア Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, Wis.)、または手動整列および目視検査(例えば、Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology (1995 supplement)を参照のこと)により実施することができる。配列同一性パーセントおよび配列類似性を決定するのに適したアルゴリズムは、BLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズムであり、これらはそれぞれ、Altschulら(Nuc. Acids Res. 25:3389-402, 1977)、およびAltschulら(J. Mol. Biol. 215:403-10, 1990)に記載されている。BLAST分析を行うためのソフトウェアは、国立バイオテクノロジー情報センター(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を通じて公的に入手可能である。このアルゴリズムでは、まず、問い合わせ配列配列中の長さWの短い単語が、データベース配列中の同じ長さの単語と整列させたときに、ある正の値の閾値スコアTとマッチするか、それを満足するものを特定することによって、高スコア配列対(HSP)を特定する。Tは近隣ワードスコア閾値と称される(Altschul et al., supra)。これらの最初の近隣ワードヒットは、それらを含むより長いHSPを見つけるための検索を開始するためのシードとして機能する。ワードヒットは累積整列スコアが増加する限り、各配列に沿って両方向に拡張される。累積スコアはヌクレオチド配列の場合、パラメータM(マッチング残基の対に対する報酬スコア;常に>0)とN(ミスマッチング残基に対するペナルティスコア;常に<0)を使って計算される。アミノ酸配列の場合、スコアリングマトリックスを用いて累積スコアを計算する。各方向へのワードヒットの拡張は、次の場合にデフォルトされる:累積整列スコアが、達成された最大値から数量Xだけ落ちる;1つまたはそれ以上の負のスコアの残基整列の累積により、累積スコアがゼロまたはそれ以下になる;または、いずれかの配列の終わりに到達する。BLASTアルゴリズムパラメータW、T、およびXは、整列の感度と速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)は、デフォルトとして、ワード長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=-4、および両方の鎖の比較を使用する。アミノ酸配列の場合、BLASTPプログラムはデフォルトとしてワード長3、期待値(E)10、およびBLOSUM62スコアリングマトリックス(Henikoff and Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915, 1989を参照のこと)整列(B)50、期待値(E)10、M=5、N=-4、および両方のストランドの比較を使用する。BLASTアルゴリズムはまた、2つの配列間の類似性の統計的分析を実行する(例えば、Karlin and Altschul, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-87, 1993を参照のこと)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の尺度の1つは最小和確率(P(N))であり、これは2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間のマッチが偶然に起こる確率の徴候を提供するものである。例えば、核酸は、試験核酸と参照核酸の比較における最小和確率が約0.2未満、一般には約0.01未満、より一般には約0.001未満であれば参照配列に類似しているとみなされる。
【0149】
「核酸」および「核酸分子」という用語は、本明細書では同義語として使用され、一本鎖または二本鎖のオリゴまたはデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド塩基のポリマー、あるいはその両方として理解される。ヌクレオチド単量体は、核酸塩基、5炭素糖(リボースまたは2'-デオキシリボースなど、しかしこれらに限定されない)、および1~3個のリン酸基からなる。典型的には、核酸は、個々のヌクレオチド単量体間のホスホジエステル結合を介して形成される。本発明の文脈において、核酸という用語は、リボ核酸(RNA)およびデオキシリボ核酸(DNA)分子を含むがこれに限定されず、他の結合を含う合成形態の核酸(例えば、Nielsenら(Science 254:1497-1500, 1991)に記載のペプチド核酸)も含む。典型的には、核酸は一本鎖または二本鎖の分子であり、天然に存在するヌクレオチドからなる。核酸の一本鎖の説明により、相補ストランドの配列も(少なくとも部分的に)規定する。核酸は、一本鎖であっても二本鎖であってもよく、二本鎖と一本鎖の両方の配列の部分を含んでいてもよい。例示された、二本鎖核酸分子は、3'または5'オーバーハングを有することができ、そのようなものとして、その全長にわたって完全に二本鎖であることを要求または仮定する必要はない。核酸は、生物学的、生化学的または化学的合成法、または増幅法、およびRNAの逆転写法を含むがこれらに限定されない、当技術分野で知られている方法のいずれかによって得ることができる。核酸という用語は、染色体または染色体セグメント、ベクター(例えば、発現ベクター)、発現カセット、裸のDNAまたはRNAポリマー、プライマー、プローブ、cDNA、ゲノムDNA、組換えDNA、cRNA、mRNA、tRNA、マイクロRNA(miRNA)または低分子干渉RNA(siRNA)などを含む。核酸は、例えば、一本鎖、二本鎖、または三本鎖であり得、いずれかの特定の長さに限定されない。特に断らない限り、特定の核酸配列は、明示的に示されたいずれかの配列に加えて、相補的な配列を含むかまたはコードする。
【0150】
本発明の文脈内で言及される用語「C末端」(カルボキシル末端、カルボキシ末端、C末端テール、C末端、またはCOOH末端としても知られている)は、遊離カルボキシル基(-COOH)により終端する、アミノ酸鎖(タンパク質またはポリペプチド)の末端である。タンパク質がメッセンジャーRNAから翻訳されると、それはN末端からC末端まで作成される。用語「N末端」(アミノ末端、NH2末端、N末端またはアミン末端としても知られている)とは、遊離アミン基(-NH2)有するアミノ酸で終結するタンパク質またはポリペプチドの開始を意味する。ペプチド配列を書くための慣習は、左側にN末端を置き、N末端からC末端に配列を書くことである。
【0151】
本発明の文脈における「リンカー」または「ペプチドリンカー」という用語は、本発明の操作されたポリペプチド内の2つの部分を立体的に分離するアミノ酸配列、すなわちポリペプチドを意味する。典型的には、このようなペプチドリンカーは、1~100個、好ましくは3~50個、より好ましくは5~20個のアミノ酸からなる。したがって、このようなペプチドリンカーは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30個のアミノ酸の最小長を有し、少なくとも少なくとも100、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、または15個のアミノ酸またはそれ以下の最大長を有する。ペプチドリンカーは、一緒に結合される2つの部分の間に可撓性(flexibility)を与え得る。このような可撓性(flexibility)は、一般には、アミノ酸が小さい場合、増大する。したがって、可撓ペプチドリンカーは、小さなアミノ酸、特にグリシンおよび/またはアラニン、および/または親水性アミノ酸、例えばセリン、スレオニン、アスパラギンおよびグルタミンの増加した含有量を含む。好ましくは、ペプチドリンカーのアミノ酸の20%、30%、40%、50%、60%またはそれ以上が小さなアミノ酸である。好ましいペプチドリンカーは、配列GGGGS、[G4S]2、[G4S]3、[G2SG2]、[G2SG2]2、[G2SG2]3を有する。当業者は、1つのポリペプチド鎖内の鎖内相互作用を嫌うかまたは妨げるリンカーの適切な長さを容易に決定することができる。
【0152】
本明細書で使用される場合、用語「実質的に同じ」とは、開示される値または数値の10%までの偏差および10%を含む偏差、または15%までの偏差および15%を含む偏差を意味する。特に、この用語は、開示される値または数値の1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%または15%の偏差を包含する。
【0153】
本明細書で使用される用語「Fc鎖」とは、ホモ二量体またはヘテロ二量体を形成することができ、好ましくは増加または減少した親和性のいずれかでそれぞれのエフェクター分子に結合し、したがってエフェクター機能、例えばADCC、CMC、またはFcRn介在リサイクリングを変化させるFc部分を意味する。文献(Presta et al., 2008, Curr Opin Immunol. 20: 460-470), e.g. IgG1-DE (S239D, I332E)には、ヒトFcγRIIIa(CD16)の相互作用が変化したさまざまなIgGバリアント、例えば、10倍のADCC増加をもたらすIgG1-DE(S239D、I332E)、または100倍のADCC増加をもたらすIgG1-DE(S239D、I332E、A330L)が記載されている。文献には、エフェクター機能を増加させるほかにも、エフェクター機能を低下させるFc部分も記載されている。IgG1-P329G LALAバリアント(L234A、L235A、P329G)については、Fcγ受容体ファミリー全体との相互作用がほぼ完全に消失し、エフェクターサイレント分子となることが報告されている(Schlothauer et al., 2016, Protein Eng Des Sel. 29; 457-466)。さらに、IgG-Δabバリアント(E233P、L234V、L235A、Δ236G、A327G、A330S、P331S)について記載されたFcγRIへの結合の減少も、エフェクター機能の低下をもたらした(Armour et al., 1999; Eur J Immunol. 29: 2612-2624) (Strohl et al., 2009; Curr Opin Biotechnol; 20: 685-691にも記載されている)。免疫細胞の受容体(例えばヒトFcγRIIIa)への結合を変化させるほかにも、Fc部分に置換を導入することによってFcRnへの結合も変化させることができる。FcRn分子への結合の増加(または減少)により、Fc含有分子の半減期が影響を受け、例えば、IgG1-YTE(M252Y、S254T、T256E)ではタンパク質の終末半減期が3~4倍増加し、IgG1-QL(T250Q、M428L)では終末相半減期が2.5倍増加している(Presto et al, 2008;Strohl et al, 2009)。
【0154】
「ヘテロ二量体化Fc」または「ヘテロ二量体のFc」という用語は、ヘテロ二量体を形成することができる、Fc部分のバリアントに関するものである。knob-into-hole技術のほかにも、ヘテロ二量体Fc部分の生成について文献に記載されているFc部分の他のバリアントがある(Krah et al., 2017, N. Biotechnol. 39: 167-173; Ha et al., 2016, Front Immuno. 7: 394; Mimoto et al., 2016, Curr Pharm Biotechnol. 17: 1298-1314; Brinkmann & Kontermann, 2017, MAbs 9: 182-212)。「Knob-into-Hole」または「Knobs-into-Holes」とも称される技術は、ヘテロ多量体形成を促進するための、CH3-CH3界面における変異Y349C、T366S、L368AおよびY407V(Hole)とS354CおよびT366W(Knob)の両方を意味し、特に、特許US5,731,168およびUS8,216,805(両方は引用により本明細書に包含される)に記載されている。
【0155】
本発明の文脈で使用される二量化ドメインCH1およびCLは、免疫グロブリンに基づくものであり、任意のクラス(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)、または免疫グロブリン分子のサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)に由来するものであり得る。
【0156】
本明細書で使用される場合、用語「免疫エフェクター細胞上のトリガー分子」とは、パターン認識受容体(PRR)、トール様受容体(TLR)、キラー活性化およびキラー阻害受容体(KARおよびKIR)、補体受容体、Fc受容体、B細胞受容体およびT細胞受容体などの免疫系の受容体分子に結合している分子を意味する。これらの受容体に結合すると、トリガー分子を介して免疫系において反応が引き起こす。免疫エフェクター細胞上のトリガー分子の非限定的な例は、CD2、CD3、CD16、CD44、CD64、CD69、CD89、Mel14、Ly-6.2C、TCR複合体、Vy9V52 TCRおよびNKG2Dからなる群から選択されるがこれらに限定されない。
【0157】
本明細書で使用される用語「医薬組成物」とは、疾患又は組織の状態の特定、予防または処置に使用される物質および/または物質の組合せを意味する。医薬組成物は、疾患を予防および/または処置するために、患者への投与に適するように製剤化される。さらに、医薬組成物は、組成物を治療的使用に適するようにする、活性剤と不活性または活性な担体との組合せを意味する。医薬組成物は、その化学的および物理的性質により、経口、非経腸、局所、吸入、直腸、舌下、経皮、皮下または膣の適用経路に製剤化され得る。医薬組成物は、固体、半固体、液体、経皮治療系(TTS)を含む。固体組成物は、錠剤、コーティング錠剤、粉末、粒状、ペレット、カプセル、発泡性錠剤または経皮治療系からなる群から選択される。また、溶液、シロップ、点滴液、抽出物、静脈内適用のための溶液、点滴用溶液、または本発明の担体系の溶液からなる群から選択される液体組成物も含まれる。本発明の文脈で使用され得る半固体組成物は、エマルジョン、懸濁液、クリーム、ローション、ゲル、小球、頬側錠剤および坐薬を含む。
【0158】
用語「活性剤」とは、医薬組成物または製剤中の、生物学的に活性な、すなわち医薬的価値を提供する物質を意味する。本発明によれば、医薬組成物は、少なくとも本発明による結合分子を活性剤として含む。しかしながら、医薬組成物は、互いに連動してまたは独立して作用し得る1つを超える活性剤を含み得る。活性剤は、中性または塩の形態として製剤化され得る。薬学的に許容できる塩としては、遊離アミノ基、例えば、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸に由来するもので形成されるもの、および遊離カルボキシル基、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどから由来するがそれらに限定されないもので形成されるもの、を含む。
【0159】
本書で使用される用語は、"A multilingual glossary of biotechnological terms: (IUPAC Recommendations)", H.G.W. Leuenberger, B. Nagel, and H. Kolbl, Eds., (1995) Helvetica Chimica Acta, CH-4010 Basel, Switzerland.に記載されているように定義される。
【0160】
本発明の実施は、特に断らない限り、この分野の文献で説明されている生化学、細胞生物学、免疫学、および組換えDNA技術の従来の方法を使用する(例えば、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Edition, J. Sambrook et al. eds., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor 1989を参照)。
【0161】
本明細書に記載される全ての方法は、本明細書で特に断らない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実行することができる。本明細書で提供される任意のおよび全ての例、または例示的な言語(例えば、「など」)の使用は、単に本発明をより良く例示することを意図しており、他に請求される本発明の範囲に制限をもたらすものではない。本明細書におけるいかなる文言も、本発明の実施に不可欠な非請求項の要素を示すものとして解釈されるべきではない。
【0162】
実施態様の説明
以下では、本発明のさまざまな態様をより詳細に定義する。このように定義されている各態様は、反対のことが明確に示されない限り、他の任意の態様(複数可)と組み合わされ得る。特に、好ましいまたは有利であると示されている任意の特徴は、好ましいまたは有利であると示されている任意の他の特徴(複数可)と組み合わされ得る。
【0163】
第一態様において、本発明は、第1の結合ドメイン(BD1)および第1の修飾EHD2ドメイン(EHD2-1)を含む第1のポリペプチド鎖、ならびに第2の結合ドメイン(BD2)および第2の修飾EHD2ドメイン(EHD2-2)を含む第2のポリペプチド鎖、を含む結合分子を提供する。EHD2-1およびEHD2-2のアミノ酸配列は互いに異なっている。1つは、配列番号:1に対して少なくとも70%のアミノ酸同一性を有し、かつ14位にCysを有しないアミノ酸配列であり、他の1つは、配列番号:1に対して少なくとも70%のアミノ酸同一性を有し、かつ102位にCysを有しないアミノ酸配列である。Cysは、好ましくは、さまざまなアミノ酸、好ましくはSer、Gly、Ala、Thr、Gln、Asn、およびTyrからなる群から選択されるもの、最も好ましくはSerによって置換されている。配列番号:1の14位または102位におけるCysの置換は、第1の修飾EHD2ドメインのアミノ酸配列上の14位のアミノ酸と第2の修飾EHD2ドメインの102位のアミノ酸との間のジスルフィド架橋の形成を阻止する。それでもなお、修飾EHD2ドメインは、互いの間に共有結合、好ましくは1つのジスルフィド架橋を形成することができ、それによって結合ドメインのための二量体化ドメインとして機能する。本発明の結合分子において、結合ドメインBD1およびBD2は一緒になって抗原結合部位を形成し、結合分子の結合性質および特徴を生じさせる。
【0164】
したがって、本発明によれば、EHD2-1およびEHD2-2は、好ましくはジスルフィド結合の方法によって、互いに共有結合している。両方の修飾EHD2ドメイン(EHD2-1およびEHD2-2)は、好ましくは、同じまたは少なくとも実質的に同じ長さ、すなわち、同じまたは実質的に同じ数のアミノ酸を有する。
【0165】
いかなる理論にも束縛されることを望むものではないが、1つの修飾EHD2ドメインの14位におけるCysの置換、他の1つの修飾EHD2ドメインの102位におけるCysの置換により、これら2つの位置の間にジスルフィド架橋が形成されることを防止する。天然のEHD2ドメインにおいて、ジスルフィド結合により対称性を与え、ホモ二量体の形成が可能になる。修飾EHD2ドメイン間のジスルフィド結合を1つ削除すると、非対称性が生じ、ヘテロ二量体の形成のみが可能になる。このように、第1の修飾EHD2ドメインの14位のCysを例えばSerによって置換し、他の修飾EHD2ドメインの102位のCysを例えばSerによって置換すると、意外にも、このヘテロ二量体ドメインを応用して、第1のポリペプチド鎖の第1の修飾EHD2ドメイン(C14置換を担持する)に第1の結合ドメインを、第2のポリペプチド鎖の第2の修飾EHD2ドメイン(C102置換を持つ)に第2の結合ドメインを融合させることによって、ヘテロ二量体の結合分子を作製することができることを見出した。さらに、修飾EHD2ドメインの1つをFc領域に融合させることで、さまざまな特異性を有する2価、3価、4価の分子を作製することが可能である。2つのEHD2ドメインにおいてアミノ酸を1つずつ置換することで、変異の数を最小限に維持し、さらに2つのドメイン間の天然の界面を維持しながら、指向性または誘導性のジスルフィド結合形成によってヘテロ二量化を強制的に行うことができる。
【0166】
当技術分野の状態と比較して、代替EHD2修飾(hetEHD2)を使用する本発明の結合分子は、以下の利点のうちの1つまたはそれ以上を有する:
【0167】
ヘテロ二量体の熱安定性は、例えば動的光散乱または示差走査熱量測定によって決定されるように、低下しないか、または少なくともそれほど低下しない。
【0168】
ヘテロ二量体のタンパク質分解に対する感受性は、低下しないか、少なくともそれほど低下しない。
【0169】
ヘテロ二量体の免疫原性は、増加しないか、少なくともそれほど増加しない。
【0170】
修飾EHD2ドメインを使用することにより、ホモ二量体よりもヘテロ二量体の画分の増加をもたらす。
【0171】
修飾EHD2ドメインはヒンジ領域のシステインに干渉しない。
【0172】
配列番号:1のC28位とC86位との間のドメイン内ジスルフィド結合は、1つのEHD2ドメイン内でジスルフィド結合を生じさせ、修飾EHD2ドメイン(EHD2-1およびEHD2-2)で維持されることが好ましいことに留意される。
【0173】
本発明による結合分子の基本構造は、
図2に概略的に示されており、結合ドメインBD1がEHD2-1に、結合ドメインBD2がEHD2-2に結合されている。両方の修飾EHD2ドメインは一緒になって、hetEHD2として示されるヘテロ二量体のEHD2を形成する。
【0174】
好ましい実施態様によれば、14位のCysは、好ましくは、Ser、Gly、Ala、Thr、Gln、Asn、およびTyr(C14S、C14G、C14A、C14T、C14Q、C14N、およびC14Y)からなる群から選択されるアミノ酸によって置換されている。本発明の最も好ましい実施態様において、配列番号:1の14位のCysはSer(C14S)によって置換されている。
【0175】
さらなる好ましい実施態様によれば、102位のCysは、好ましくは、Ser、Gly、Ala、Thr、Gln、Asn、およびTyr(C102S、C102G、C102A、C102T、C102Q、C102N、C102Y)からなる群から選択されるアミノ酸によって置換されている。本発明の最も好ましい実施態様において、配列番号:1の102位のCysはSer(C102S)によって置換されている。上記で言及された置換は任意の方法で組み合わせることができるが、最も好ましい変異のセットは、1つの修飾EHD2ドメインにC14S、他の修飾EHD2ドメインにC102Sである。したがって、特に好ましい一実施態様によれば、修飾EHD2ドメイン(EHD2-1およびEHD2-2)1つは置換C14Sを含み、修飾EHD2ドメイン他の1つは置換C102Sを含む。
【0176】
修飾EHD2ドメイン(EHD2-1およびEHD2-2)のそれぞれは、配列番号:1に対して少なくとも70%のアミノ酸同一性を有し得るが、両方の修飾EHD2ドメインのアミノ酸配列が、それぞれ14位および102位の特定の置換を無視したアミノ酸配列に関して実質的に同じであることが好ましいことが留意される。
【0177】
さらに、すべての場合において配列番号:1に対して少なくとも70%同一の配列が、それぞれC14位およびC102位における置換のような、特定の置換を含むことが留意される。28位および86位のシステイン残基が維持され、単一アミノ酸置換のようないずれかの変異を受けないことがさらに好ましい。
【0178】
本発明の好ましい実施態様によれば、修飾EHD2ドメインの一方または両方は、N39位に単一アミノ酸置換をさらに含む。この位置のAsnの好ましい置換は、Gln(N39Q)である。
【0179】
さらに好ましい実施態様によれば、結合モジュールBD1およびBD2は、互いに異なっており、そしてそれぞれ、VHおよびVLから選択される。あるいは、BD1およびBD2は、互いに異なっており、そしてそれぞれTCR α-鎖およびTCR β-鎖から選択される。
【0180】
本発明の結合分子は、第1のFc鎖をさらに含み得る。該Fc鎖は、エフェクター機能が増加または低下され得る。この第1のFc鎖は、好ましくは第1のポリペプチドまたは第2のポリペプチドの1つに結合する。
【0181】
本発明の好ましい実施態様によれば、本発明の結合分子は、第3の結合ドメイン(BD3)および第4の結合ドメイン(BD4)をさらに含む。結合ドメインBD3およびBD4の両方は一緒になって抗原結合部位を形成する。この抗原結合部位は、BD1およびBD2によって形成される結合部位と同じであってもよく異なっていてもよい。
【0182】
一実施態様によれば、BD3およびBD4は、互いに異なっており、そしてそれぞれ、VHおよびVLから選択される。あるいは、BD3およびBD4は、互いに異なっており、そしてそれぞれ、TCR α-鎖およびTCR β-鎖から選択される。
【0183】
第3の結合ドメイン(BD3)は、第1の結合ドメインまたは第2の結合ドメイン(BD1、BD2)と同じポリペプチド上に位置し得る。同様に、第4の結合ドメイン(BD4)は、第1の結合ドメインまたは第2の結合ドメイン(BD1、BD2)と同じポリペプチド上に、好ましくは第3の結合ドメイン(BD3)と異なるポリペプチド上に位置し得る。
【0184】
さらに好ましい実施態様によれば、本発明の結合分子は、第2のFc鎖をさらに含む。この第2のFc鎖は、好ましくは第3のポリペプチドまたは第4のポリペプチドの1つに結合する。本発明の結合分子中のFc鎖は、BD1およびBD2とBD3およびBD4との二量体化を可能にし、2価の結合分子を生じさせる。該Fc鎖は、ホモ二量体化Fc鎖であってもよく、ヘテロ二量体化Fc鎖であってもよい。好ましい実施態様によれば、第1のFc鎖および第2のFc鎖は、互いに異なっており、ヘテロ二量体のFcを形成する。
【0185】
好ましい実施態様によれば、BD3を含む本発明の結合分子の第3のポリペプチド鎖は、CH1ドメイン、CLドメイン、第1の修飾EHD2ドメイン(EHD2-1)、および第2の修飾EHD2ドメイン(EHD2-2)からなる群から選択される二量体化ドメインをさらに含む。したがって、本発明の結合分子の第4のポリペプチド鎖は、CLドメイン、CH1ドメイン、第2の修飾EHD2ドメイン(EHD2-2)、および第1の修飾EHD2ドメイン(EHD2-1)からなる群から選択されるそれぞれのカウンター結合ドメイン(counter binding domain)を含む。言い換えれば、BD3がCH1ドメインを含む場合、BD4はCLドメインを含む。BD3がCLドメインを含む場合、BD4はCH1ドメインを含む。BD3が第1の修飾EHD2ドメイン(EHD2-1)を含む場合、BD4は第2の修飾EHD2ドメイン(EHD2-2)を含む。BD3が第2の修飾EHD2ドメイン(EHD2-2)を含む場合、BD4は第1の修飾EHD2ドメイン(EHD2-1)を含む。修飾EHD2ドメインは、上記に定義されているように、すなわちEHD2-1およびEHD2-2のアミノ酸配列は互いに異なっている。該修飾EHD2ドメイン(EHD2-1およびEHD2-2)の一つのアミノ酸配列は、配列番号:1に対して少なくとも70%のアミノ酸同一性を有し、かつ14位にCysを有しないアミノ酸配列であり、該修飾EHD2ドメイン(EHD2-1およびEHD2-2)の他の1つのアミノ酸配列は、配列番号:1に対して少なくとも70%のアミノ酸同一性を有し、かつ102位にCysを有しないアミノ酸配列である。上記に定義されているように、示された位置のCysは、好ましくは、Ser、Gly、Ala、Thr、Gln、Asn、およびTyrからなる群から選択される異なるアミノ酸、最も好ましくは、Serによって置換されている。
【0186】
したがって、本発明は、単一特異性または二重特異性のどちらか一方の2価の結合分子を包含する。
【0187】
これらの結合分子は、BD1およびBD2および修飾EHD2ドメインEHD2-1およびEHD2-2を含む第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチド鎖を含む。さらに、これらの結合分子は、
(i)BD3-CH1およびBD4-CL;
(ii)BD3-CLおよびBD4-CH1;
(iii)BD3-EHD2-1およびBD4-EHD2-2;または
(iv)BD3-EHD2-2およびBD4-EHD2-1、
を含む第3のポリペプチド鎖および第4のポリペプチド鎖を含み得る。
【0188】
実施態様(i)および(ii)についての非限定的な例は、
図3Bおよび3Cに示されている。実施態様(iii)および(iv)についての非限定的な例は、2価の単一特異性結合分子として例示される
図3Gに示されている。例示的な一実施態様によれば、結合分子は、配列番号:22+23で示される配列を有する。
【0189】
二重特異性結合分子の生成の場合、Fc領域は好ましくはヘテロ二量体であり、これは、第1のポリペプチド鎖および第2のポリペプチド鎖の1つが第1のFc鎖を含み、第3のポリペプチド鎖および第4のポリペプチド鎖の1つが第2の異なるFc鎖を含み、結合分子中にヘテロ二量体Fc領域を形成していることを意味する。ヘテロ二量体Fc領域を含むそのような2価の二重特異性結合分子の非限定的な例は、
図3Bおよび3Cの一番上の行に示されている。
【0190】
一実態様によれば、第3のポリペプチド鎖および第4のポリペプチド鎖が修飾EHD2ドメインを含む場合、修飾EHD2ドメインの一方または両方は、N39位に単一アミノ酸置換をさらに含む。この位置におけるアスパラギンの好ましい置換はグルタミン(N39Q)である。
【0191】
本発明によれば、4つの異なるポリペプチド鎖を1つの細胞内で発現させる場合、1つの鎖がCH1ドメインを有し、他の鎖が第1の修飾EHD2ドメイン(EHD2-1)を含むヘテロ二量化体化ポリペプチド鎖を用いて、CLドメインを含むポリペプチド鎖、および第2の修飾EHD2ドメイン(EHD2-2)を含むポリペプチド鎖を共発現させると、重鎖および軽鎖の正しい組み立てが観察され、それぞれの抗原に対する抗原結合特異性を完全に保持した2価の二重特異性抗体が得られる。
【0192】
あるいは、本発明の結合分子は、3つのポリペプチド鎖上に4つの結合ドメインを含み得る。それぞれの実施態様によれば、2つの結合ドメインは、それぞれ、第1のポリペプチド鎖上に位置し、他の2つの結合ドメインは、第2および第3のポリペプチド鎖上に位置する。
【0193】
3つのポリペプチド鎖を有するこのような2価の結合モジュールの例示的な実施態様は、
図3Aに示されており、以下のポリペプチド鎖を有し得る:
(i)BD1-(任意のリンカー)-EHD2-2-リンカー-BD3-(任意のリンカー)-C
H1
(ii)BD2-(任意のリンカー)-EHD2-1
(iii)BD4-(任意のリンカー)-C
L
【0194】
図3A左に示されるように、上記の3つのポリペプチド鎖の全てを細胞内で共発現させると、得られた本発明による結合分子において、ポリペプチド鎖(ii)は(i)のEHD2-1ドメインと対合シ、ポリペプチド鎖(iii)は(i)のC
H1ドメインと対合スル。例示的な一実施態様によれば、結合分子は、
図3Aに概略的に示されているように、配列番号:9+13+17で示される配列を有する。
【0195】
代替的な実施態様において、3つのポリペプチド鎖を含む本発明による結合分子は、以下のポリペプチド鎖を有し得る:
(i)BD3-(任意のリンカー)-CH1-リンカー-BD1-(任意のリンカー)-EHD2-2
(ii)BD2-(任意のリンカー)-EHD2-1
(iii)BD4-(任意のリンカー)-CL
【0196】
リンカーは、好ましくは、上記に定義されているようなペプチドリンカーである。
【0197】
図3Aの右に示されるように、上記の3つのポリペプチド鎖全てを細胞内で共発現させると、本発明による得られる結合分子において、ポリペプチド鎖(ii)は(i)のEHD2-1ドメインと対合し、ポリペプチド鎖(iii)は(i)のC
H1ドメインと対合する。例示的な一実施態様によれば、結合分子は、配列番号:9+13+18で示される配列を有する。
【0198】
4価結合分子内の二量体化ドメインおよび結合ドメインの順序または配置および選択は、ヘテロ二量体EHD2ドメインを生じさせる、本明細書に定義されているような修飾EHD2ドメインの少なくとも一対がある限り、個々の必要性に応じて変更および適合され得ることが理解される。
【0199】
本発明のさらなる実施態様によれば、結合分子は2価であり、4つのポリペプチド鎖を含む。例示のみのために、4つのポリペプチド鎖を含むそのような3価結合分子の例示的な実施態様は、
図3Bおよび3Cに示されている。この結合分子は、以下のポリペプチド鎖を有し得る:
(i)BD1-(任意のリンカー)-EHD2-1-Fc
(ii)BD2-(任意のリンカー)-EHD2-2
(iii)BD3-(任意のリンカー)-C
H1-Fc
(iv)BD4-(任意のリンカー)-C
L。
【0200】
図3Bおよび3Cに示されるように、4つのポリペプチド鎖全てを細胞内で共発現させると、本発明による得られる結合分子は、「重鎖」としてのポリペプチド鎖(i)および(iii)、ならびに対応する「軽鎖」としてのポリペプチド鎖(ii)および(iv)を含み、(ii)は(i)のEHD2-1ドメインと対合し、(iv)は(iii)のCH1ドメインと対合する。例示的な一実施態様によれば、結合分子は、
図3Bに概略的に示されているように、配列番号:9+10+13+14で示される配列を有する。
【0201】
本発明のさらなる実施態様によれば、結合分子は3価であり、したがって第5の結合ドメイン(BD5)および第6の結合ドメイン(BD6)をさらに含む。結合ドメインBD5およびBD6の両方は一緒になって抗原結合部位を形成する。
【0202】
本発明の好ましい実施態様によれば、結合分子は、BD5に結合するCH1ドメイン、CLドメイン、第1の修飾EHD2ドメイン(EHD2-1)、または第2の修飾EHD2ドメイン(EHD2-2)をさらに含む。本発明のこの実施態様において、BD6は、CLドメイン、CH1ドメイン、第2の修飾EHD2ドメイン(EHD2-2)、および第1の修飾EHD2ドメイン(EHD2-1)から選択されるそれぞれのカウンター部分に結合する。言い換えれば、BD5がCH1ドメインに結合する場合、BD6はCLドメインに結合する。BD5がCLドメインに結合する場合、BD6はCH1ドメインに結合する。BD5が第1の修飾EHD2ドメイン(EHD2-1)に結合する場合、BD6は第2の修飾EHD2ドメイン(EHD2-2)に結合する。BD5が第2の修飾EHD2ドメイン(EHD2-2)に結合する場合、BD6は第1の修飾EHD2ドメイン(EHD2-1)に結合する。修飾EHD2ドメインは上記に定義されている通りであり、すなわちEHD2-1およびEHD2-2のアミノ酸配列は互いに異なっている。該修飾EHD2ドメイン(EHD2-1およびEHD2-2)の一方のアミノ酸配列は、配列番号:1に対して少なくとも70%のアミノ酸同一性を有し、かつ14位にCysを有しないアミノ酸配列であり、該修飾EHD2ドメイン(EHD2-1およびEHD2-2)の他方のアミノ酸配列は、配列番号:1に対して少なくとも70%のアミノ酸同一性を有し、かつ102位にCysを有しないアミノ酸配列である。上記に定義されているように、示された位置のCysは、好ましくは、Ser、Gly、Ala、Thr、Gln、Asn、およびTyrからなる群から選択される異なるアミノ酸、最も好ましくはSerによって置換されている。
【0203】
本明細書で使用される場合、用語「に結合する」は、直接ペプチド結合を用いた、または上記に定義されているペプチドリンカーを介した、2つのポリペプチド間の結合を意味する。したがって、一実施態様によれば、BD5またはBD6に結合するCH1ドメイン、CLドメイン、EHD2-1またはEHD2-2は、リンカーを介してBD1、BD2、BD3またはBD4の1つに結合する。
【0204】
一実施態様によれば、BD5またはBD6に結合する修飾EHD2ドメインの一方または両方はN39位に単一アミノ酸置換をさらに含む。この位置におけるアスパラギンの置換はグルタミン(N39Q)である。
【0205】
好ましい実施態様によれば、BD5およびBD6は、互いに異なっており、そしてそれぞれ、VHおよびVLから選択される。あるいは、BD5およびBD6は、互いに異なっており、そしてそれぞれ、TCR α-鎖およびTCR β-鎖から選択される。
【0206】
本発明による、3つの結合部位を含む、すなわち3価である結合分子は、同じまたは異なる標的に結合し、3価の単一特異性、二重特異性または三重特異性の結合分子を生じさせ得る。好ましくは、本発明によるこれらの3価結合分子において、BD5またはBD6に結合するCH1ドメイン、CLドメイン、EHD2-1またはEHD2-2は、好ましくはリンカーを介してBD1、BD2、BD3またはBD4の1つに結合する。これらの3価の分子において、抗原結合部位を形成するための結合ドメインの空間的配置を提供するために、1セットまたは2セットの修飾EHD2ドメインが使用できることが強調される。
【0207】
このように、本発明による3価結合分子は、本質的に3つの単位を含み得て、それぞれが抗原結合部位を形成する:
(i)BD1およびBD2、ならびに修飾EHD2ドメインEHD2-1およびEHD2-2を含む第1および第2のポリペプチド鎖;
(ii)BD3およびBD4、ならびに、修飾EHD2ドメインEHD2-1およびEHD2-2、またはドメインCH1およびCLのどちらか一方を含む第3および第4のポリペプチド鎖;および
(iii)修飾EHD2ドメインEHD2-1およびEHD2-2、またはドメインCH1およびCLのどちから一方に結合するBD5およびBD6。
【0208】
3価結合分子の好ましい実施態様によれば、二量体化ドメインEHD2-1、EHD2-2、CH1およびCLの1つと組み合わされるBD5およびBD6の1つは、さらなる第5のポリペプチド鎖の一部を形成する。これに対応して、BD5およびBD6の他の1つは、それに結合する対応する二量化ドメイン(EHD2-1、EHD2-2、CH1、およびCLの他の1つ)と一緒になって、BD1、BD2、BD3またはBD4のいずれか1つに結合する。
【0209】
例示のみのために、5つのポリペプチド鎖を含むそのような3価結合分子の例示的な実施態様は
図3Dに示されている。この結合分子は、以下のポリペプチド鎖を有する:
(i)BD5-(任意のリンカー)-C
H1-リンカー-BD1-(任意のリンカー)-EHD2-1-(任意のリンカー)-Fc
(ii)BD2-(任意のリンカー)-EHD2-2
(iii)BD3-(任意のリンカー)-C
H1-Fc
(iv)BD4-(任意のリンカー)-C
L
(v)BD6-(任意のリンカー)-C
L。
【0210】
図3Dに示されるように、5つのポリペプチド鎖全てを細胞内で共発現させると、本発明による得られる結合分子は、「重鎖」としてのポリペプチド鎖(i)および(iii)ならびに対応する「軽鎖」としてのポリペプチド鎖(ii)、(iv)および(v)を含み、(ii)は(i)のEHD2-1ドメインと対合し、(iii)は(iv)と対合し、(v)は(i)のC
H1ドメインと対合する。例示的な一実施態様によれば、結合分子は、
図3Dに概略的に示されているように、配列番号:9+13+14+19で示される配列を有する。
【0211】
同様に、個々の需要に応じて、他のコンストラクトを作成することができる。さらなる非限定的な実施態様は
図3Eに示されている。本発明の一実施態様によるそのような結合分子はまた、5つのポリペプチド鎖を含む:
(i)BD1-(任意のリンカー)-EHD2-1-(任意のリンカー)-Fc
(ii)BD2-(任意のリンカー)-EHD2-2
(iii)BD5-(任意のリンカー)-C
H1-リンカー-BD3-(任意のリンカー)-C
H1-(任意のリンカー)-Fc
(iv)BD4-(任意のリンカー)-C
L
(v)BD6-(任意のリンカー)-C
L。
【0212】
図3Eに示されるように、上記の5つのポリペプチド鎖全てを細胞内で共発現させると、本発明による得られる結合分子は、「重鎖」としてのポリペプチド鎖(i)および(iii)ならびに対応する「軽鎖」としてのポリペプチド鎖(ii)、(iv)および(v)を含み、(ii)は(i)のEHD2-1ドメインと対合し、(iv)は(iii)のC
H1ドメインと対合し、(v)は(iii)のC
H1ドメインと対合する。例示的な一実施態様によれば、結合分子は、
図3Eに概略的に描かれているように、配列番号:9+10+13+20で示される配列を有する。
【0213】
さらなる非限定的な例は
図3Fに示されている。本発明の一実施態様によるそのような結合分子はまた5つのポリペプチド鎖を含む:
(i)BD1-(任意のリンカー)-EHD2-1-リンカー-BD3-(任意のリンカー)-C
H1-(任意のリンカー)-Fc
(ii)BD2-(任意のリンカー)-EHD2-2
(iii)BD5-(任意のリンカー)-C
H1-(任意のリンカー)-Fc
(iv)BD4-(任意のリンカー)-C
L
(v)BD6-(任意のリンカー)-C
L。
【0214】
図3Fに例示されるように、上記の5つのポリペプチド鎖全てを細胞内で共発現させると、本発明による得られた結合分子は、「重鎖」としてのポリペプチド鎖(i)および(iii)ならびに対応する「軽鎖」としてのポリペプチド鎖(ii)、(iv)および(v)を含み、(ii)は(i)のEHD2-1ドメインと対合し、(iv)は(i)のC
H1ドメインと対合し、(v)は(iii)のC
H1ドメインと対合する。例示的な一実施態様によれば、結合分子は、
図3Fに概略的に示されているように、配列番号:9+13+14+21で示される配列を有する。
【0215】
コンストラクト内の二量体化ドメインおよび結合ドメインの順序または配置および選択は、少なくとも1対の修飾EHD2ドメイン、すなわち本明細書に定義されているEHD2-1およびEHD2-2が存在する限り、個々の需要に合わせて変更および適合され得ることが強調される。このように、本発明による結合分子は、2対の修飾EHD2ドメインを有し得る。本発明によるそのような結合分子の例は、3価結合分子に限定されず、4価結合分子も包含する。
【0216】
本発明のさらなる実施態様によれば、結合分子は3価であり、したがって、第7の結合ドメイン(BD7)および第8の結合ドメイン(BD8)をさらに含む。結合ドメインBD7およびBD8の両方は一緒になって抗原結合部位を形成する。
【0217】
本発明の好ましい実施態様によれば、結合分子はBD7に結合するCH1ドメイン、CLドメイン、第1の修飾EHD2ドメイン(EHD2-1)、または第2の修飾EHD2ドメイン(EHD2-2)をさらに含む。本発明のこの実施態様において、BD8は、CLドメイン、CH1ドメイン、第2の修飾EHD2ドメイン(EHD2-2)、および第1の修飾EHD2ドメイン(EHD2-1)から選択されるそれぞれはのカウンター部分に結合する。言い換えれば、BD7がCH1ドメインに結合する場合、BD8はCLドメインに結合する。BD7がCLドメインに結合する場合、BD8はCH1ドメインに結合する。BD7が第1の修飾EHD2ドメイン(EHD2-1)に結合する場合、BD8は第2の修飾EHD2ドメイン(EHD2-2)に結合する。BD7が第2の修飾EHD2ドメイン(EHD2-2)に結合する場合、BD8は第1の修飾EHD2ドメイン(EHD2-1)に結合する。修飾EHD2ドメインは上記に定義されている通りであり、すなわちEHD2-1およびEHD2-2のアミノ酸配列は互いに異なっている。該修飾EHD2ドメイン(EHD2-1およびEHD2-2)の1つのアミノ酸配列は、配列番号:1に対して少なくとも70%のアミノ酸同一性を有し、かつ14位にCysを有しないアミノ酸配列であり、該修飾EHD2ドメイン(EHD2-1およびEHD2-2)の他の1つのアミノ酸配列は、配列番号:1に対して少なくとも70%のアミノ酸同一性を有し、かつ102位にCysを有しないアミノ酸配列である。上記に定義されているように、示された位置のCysは、好ましくは、Ser、Gly、Ala、Thr、Gln、Asn、およびTyrからなる群から選択される異なるアミノ酸によって、最も好ましくは、Serによって置換されている。
【0218】
本明細書で使用される場合、用語「に結合する」は、直接ペプチド結合を用いた、または上記に定義されているペプチドリンカーを介した、2つのポリペプチド間の結合を意味する。したがって、一実施態様によれば、BD7またはBD8に結合するCH1ドメイン、CLドメイン、EHD2-1またはEHD2-2は、リンカーを介してBD1、BD2、BD3、BD4、BD5またはBD6の1つに結合する。
【0219】
一実施態様によれば、BD7またはBD8に結合する修飾EHD2ドメインの一方または両方は、N39位に単一アミノ酸置換をさらに含む。この位置におけるアスパラギンの好ましい置換対象はグルタミン(N39Q)である。
【0220】
好ましい実施態様によれば、BD7およびBD8は、互いに異なっており、そしてそれぞれ、VHおよびVLから選択される。あるいは、BD7およびBD8は、互いに異なっており、そしてそれぞれ、TCR α-鎖およびTCR β-鎖から選択される。
【0221】
本発明による、4つの結合部位を含む、すなわち4価である結合分子は、同じまたは異なる標的に結合し、4価の単一特異性、二重特異性、三重特異性または四重特異性の結合分子を生じさせ得る。好ましくは、本発明によるこれらの4価結合分子において、BD7またはBD8に結合するCH1ドメイン、CLドメイン、EHD2-1またはEHD2-2は、好ましくはリンカーを介してBD1、BD2、BD3、BD4、BD5またはBD6の1つに結合する。これらの4価分子において、抗原結合部位を形成するための結合ドメインの空間的配置を提供するために、1セットまたは2セットの修飾EHD2ドメインを使用できることが強調されている。
【0222】
このように、本発明による4価結合分子は、本質的に4つの単位を含み、それぞれが抗原結合部位を形成する:
(i)BD1およびBD2、ならびに修飾EHD2ドメインEHD2-1およびEHD2-2を含む第1および第2のポリペプチド鎖;
(ii)BD3およびBD4、ならびに、修飾EHD2ドメインEHD2-1およびEHD2-2、またはドメインCH1およびCLのどちらか一方を含む第3および第4のポリペプチド鎖;
(iii)修飾EHD2ドメインEHD2-1およびEHD2-2、またはドメインCH1およびCLのどちらか一方に結合するBD5およびBD6;および
(iv)修飾EHD2ドメインEHD2-1およびEHD2-2、またはドメインCH1およびCLのどちらか一方に結合するBD7およびBD8。
【0223】
4価結合分子の好ましい実施態様によれば、二量体化ドメインEHD2-1、EHD2-2、CH1およびCLの1つと組み合わされるBD7およびBD8の1つはさらなる第6のポリペプチド鎖の一部を形成する。これに対応して、BD7およびBD8の他の1つは、それに結合する対応する二量体化ドメイン(EHD2-1、EHD2-2、CH1、およびCLの他の1つ)と一緒になって、BD1、BD2、BD3、BD4、BD5またはBD6のいずれか1つに結合する。
【0224】
本発明の4価結合分子の非限定的な例は
図3Hおよび3Iに示されている。本発明による4価結合分子の非限定的な実施態様は6つのポリペプチド鎖を含み得る。そのような結合分子の非限定的な実施態様は、以下のポリペプチド鎖を有し得る:
(i)BD5-(任意のリンカー)-C
H1-リンカー-BD1-(任意のリンカー)-EHD2-1-(任意のリンカー)-Fc
(ii)BD2-(任意のリンカー)-EHD2-2
(iii)BD7-(任意のリンカー)-C
H1-リンカー-BD3-(任意のリンカー)-EHD2-1-(任意のリンカー)-Fc
(iv)BD4-(任意のリンカー)-EHD2-2
(v)BD6-(任意のリンカー)-C
L
(vi)BD8-(任意のリンカー)-C
L。
【0225】
図3Hに示されるように、上記の6つのポリペプチド鎖全てを細胞内で共発現させると、本発明による得られる結合分子は、「重鎖」としてのポリペプチド鎖(i)および(iii)ならびに対応する「軽鎖」としてのポリペプチド鎖(ii)、(iv)、(v)および(vi)を含み、(ii)は(i)のEHD2-1ドメインと対合し、(iv)は(iii)のEHD2-1ドメインと対合し、(v)は(i)のC
H1ドメインと対合し、(vi)は(iii)のC
H1ドメインと対合する。例示的な一実施態様によれば、結合分子は、
図3Hに概略的に示されているように、配列番号:23+24+25で示される配列を有する。
【0226】
本発明による4価結合分子のさらなる非限定的な例は
図3Iに示されている。そのような結合分子の非限定的な実施態様は、以下の6つのポリペプチド鎖を有し得る:
(i)BD1-(任意のリンカー)-EHD2-1-リンカー-BD5-(任意のリンカー)-C
H1-(任意のリンカー)-Fc
(ii)BD2-(任意のリンカー)-EHD2-2
(iii)BD3-(任意のリンカー)-EHD2-1-リンカー-BD7-(任意のリンカー)-C
H1-(任意のリンカー)-Fc
(iv)BD4-(任意のリンカー)-EHD2-2
(v)BD6-(任意のリンカー)-C
L
(vi)BD8-(任意のリンカー)-C
L。
【0227】
図3Iに示されるように、上記の6つのポリペプチド鎖全てを細胞内で共発現させると、本発明による得られる結合分子は、「重鎖」としてのポリペプチド鎖(i)および(iii)ならびに対応する「軽鎖」としてのポリペプチド鎖(ii)、(iv)、(v)および(vi)を含む、(ii)は(i)のEHD2-1ドメインと対合し、(iv)は(iii)のEHD2-1ドメインと対合し、(v)は(i)のC
H1ドメインと対合し、(vi)は(iii)のC
H1ドメインと対合する。例示的な一実施態様によれば、結合分子は、
図3Iに概略的に示されているように、配列番号:23+25+26で示される配列を有する。
【0228】
本発明による3価結合分子について上記に説明されているように、4価結合分子内の二量体化ドメインおよび結合ドメインの順序または配置および選択は、本明細書で定義されているように、少なくとも2セットの修飾EHD2ドメインがある限り、個々の需要に応じて変更および適合され得ることが理解される。
【0229】
本発明の一実施態様によれば、本発明の結合分子において、1つまたはそれ以上の修飾EHD2ドメインは、1つのN-グリカンを担持する。これは、例えば、好ましくはN39位においてアミノ酸をさらに置換することによって達成することができる。好ましいアミノ酸置換は、この位置においてアスパラギンをグルタミンで置換することである(N39Q)。
図4には、両方のドメイン(EHD2-1、EHD2-2)に、一方のドメイン(EHD2-1またはEHD2-2)のみにN-グリカンを担持するか、またはN-グリカンが完全に欠いている、修飾EHD2ドメイン(EHD2-1、EHD2-2)を概略的かつ例示的に示されている。
【0230】
修飾EHD2ドメインにおいて必要とされるCys置換は、配列番号:1の14位または102位のどちらか一方であることが再び強調される。14位および102位それぞれのCysは、いずれかのアミノ酸によって置換され得る。置換アミノ酸は、14位および102位の両方について同じであってもよく異なっていてもよい。好ましい実施態様によれば、第1の修飾EHD2ドメインは、C14S、C14G、C14A、C14T、C14Q、C14N、C14Yからなる群から選択される置換、好ましくはC14Sを含む。この実施態様によれば、第2の修飾EHD2ドメインは、C102S、C102G、C102A、C102T、C102Q、C102N、C102Yからなる群から選択される置換、好ましくはC102Sを含む。
【0231】
本発明によれば、本発明の結合分子が結合し得る1つまたはそれ以上の抗原は、以下からなるがこれらに限定されない群から選択され得る:ABCF1;ACVR1;ACVR1B;ACVR2;ACVR2B;ACVRL1;ADORA2A;アグリカン;AGR2;AICDA;AIF1;AIG1;AKAP1;AKAP2;ALK;AMH;AMHR2;ANGPT1;ANGPT2;ANGPTL3;ANGPTL4;ANPEP;APC;APOC1;AR;AXL;AZGP1(亜鉛-a-糖タンパク質);B7.1;B7.2;BAD;BAFF;BAFF-R;BAG1;BAI1;BCL2;BCL6;BCMA;BDNF;BLNK;BLR1(MDR15);BlyS;BMP1;BMP2;BMP3B(GDF10);BMP4;BMP6;BMP8;BMPR1A;BMPR1BBMPR2;BPAG1(プレクチン);BRCA1;B7-H3;C19orf10(IL27w);C1s;C3;C4A;C5;C5R1;CA-125;CANT1;CASP1;CASP4;CAV1;CCBP2(D6/JAB61);CCL1(1-309);CCL11(エオタキシン);CCL13(MCP-4);CCL15(MIP-1d);CCL16(HCC-4);CCL17(TARC);CCL18(PARC);CCL19(MIP-3b);CCL2(MCP-1);MCAF;CCL20CMJP-3a);CCL21(MIP-2);SLC;エクソダス-2(exodus-2);CCL22(MDC/STC-1);CCL23(MPIF-1);CCL24(MPIF-2/エオタキシン-2);CCL25(TECK);CCL26(エオタキシン-3);CCL27(CTACK/ILC);CCL28;CCL3(MIP-1a);CCL4(MIP-1b);CCL5(RANTES);CCL7(MCP-3);CCL8(mcp-2);CCNA1;CCNA2;CCND1;CCNE1;CCNE2;CCR1(CKR1/HM145);CCR2(mcp-1RB/RA);CCR3(CKR3 CMKBR3);CCR4;CCR5(CMKBR5/ChemR13);CCR6(CMKBR6/CKR-L3 STRL22 / DRY6);CCR7(CKR7 EB11);CCR8(CMKBR81/TER1/CKR-L1);CCR9(GPR-9-6);CCRL1 (VSHK1);CCRL2(L-CCR);CD164;CD5;CD7;CD15;CD19;CD1G;CD11a;CD20;CD200;CD22;CD23;CD24;CD25;CD27;CD28;CD30;CD33;CD37;CD38;CD3E;CD3G;CD3Z;CD4;CD40;CD40L;CD41;CD4SRB;CD51;CD52;CD56;CD6;CD62L;CD70;CD72;CD73;CD74;CD79A;CD79B;CDB;CD80;CD81;CD83;CD86;CD105;CD117;CD123;CD125;CD137L;CD137;CD147;CD152;CD154;CD221;CD276;CD279;CD319;CDH1(Eカドヘリン);CDH10;CDH12;CDH13;CDH18;CDH19、CDH20;CDH5;CDH7;CDH8;CDH9;CDK2;CDK3;CDK4;CDK5;CDK6;CDK7;CDK9;CDKN1A(p21Wap1/Cip1);CDKNIB(p27Kipl);CDKN1C;CDKN2A(p16INK4a);CDKN2B;CDKN2C;CDKN3;CEA;CEACAM5;CEBPB;CER1;CFD;CHGA;CHGB;キチナーゼ;CHST10;CKLFSF2;CKLFSF3;CKLFSF4;CKLFSF5;CKLFSF6;CKLFSF7;CKLFSF8;CLDN3;CLDN7(クローディン-7);CLDN18.2;CLN3;CLU(clusterin);cMET;CMKLR1;CMKOR1(RDC1);CNR1;COL18A1;COL1A1;COL4A3;COL6A1;CR2;CRP;CSF1(M-CSF);CSFR1;CSF2(GM-CSF);CSF3(GCSF);CTLA4;CTNNB1(b-カテニン);CTSB(カテプシンB);CX3CL1(SCYD1);CX3CR1(V28);CXCL1(GRO1);CXCL10(IP-10);CXCL11(I-TAC/IP-9);CXCL12(SDF1);CXCL13;CXCL14;CXCL16;CXCL2(GR02);CXCL3(GRO3);CXCL5(ENA-78/LIX);CXCL6(GCP-2);CXCL9(MIG);CXCR3(GPR9/CKR-L2);CXCR4;CXCR6(TYMSTR/STRL33/Bonzo);CYB5;CYC1;CYSLTR1;DAB2IP;DES;DKFZp451J0118;DNCL1;DLL3;DPP4;DR3;DR4;DR5;DR6;E2F1;ECGF1;EDA1;EDA2;EDAR;EDA2R;EDG1;EpCAMEFNA1;EFNA3;EFNB2;EGF;EGFL7;EGFR;ELAC2;ENG;ENO1;ENO2;ENO3;EPHA3;EPHB4;EPO;ERBB2(Her-2);EREG;ERK8;ESR1;ESR2;F3(TF);F9またはF9a;F10またはF10a;FADD;FAP;FasL;FASN;FCER1A;FCER2;FCGR3A;FGF;FGF1(aFGF);FGF10;FGF11;FGF12;FGF12B;FGF13;FGF14;FGF16;FGF17;FGF18;FGF19;FGF2(bFGF);FGF20;FGF21;FGF22;FGF23;FGF3(int-2);FGF4(HST);FGF5;FGF6(HST-2);FGF7(KGF);FGF8;FGF9;FGFR1;FGFR2;FGFR3;FGFR4;FIGF(VEGFD);FIL1(EPSILON);FIL1(ZETA);FLJ12584;FLJ25530;FLRT1(フィブロネクチン);FLT1;葉酸受容体1;FOS;FOSL1(FRA-1);FY(DARC);GABRP(GABAa);GAGEB1;GAGEC1;GALNAC4S-GST;GATA3;ゼラチナーゼB;GD2;GD3;GDF5;GDF8;GFI1;GGT1;GITR;GITRL;GM-CSF;GNAS1;GNRH1;GPNMB;GPR2(CCR10);GPR31;GPR44;GPR81(FKSG80);GRCC10(C10);GRP;GSN(ゲルゾリン);GSTP1;HAVCR2;HDAC4;HDAC5;HDAC7A;HDAC9;HER2;HER3;HER4;HGF;H1F1A;HIP1;ヒスタミンおよびヒスタミン受容体;HLA-A;HLA-DRA;HM74;HMOX1;HMW-MAA Hsp-90;HVEM;TNF-RHUMCYT2A;ICAM-1;ICEBERG;ICOSL;ID2;IFN-a;IFNA1;IFNA2;IFNA4;IFNA5;IFNA6;IFNA7;IFNB1;IFNgamma;IFNW1;IGBP1;IGF1;IGF1R;IGP1R;IGF2;IGFBP2;IGFBP3;IGFBP6;IGHE;IL-1;IL10;IL10RA;IL10RB;IL11;IL11RA;IL-12;IL12A;IL12B;IL12RB1;IL12RB2;IL13;IL13RA1;IL13RA2;IL14;IL15;IL15RA;IL16;IL17;IL17B;IL17C;IL17R;IL18;IL18BP;IL18R1;IL18RAP;IL19;IL1A;IL1B;IL1F10;IL1F5;IL1F6;IL1F7;IL1F8;TL1F9;IL1HY1;IL1R1;IL1R2;ILLRAP;IL1RAPL1;IL1RAPL2;IL1RL1;IL1RL2 IL1RN;IL2;IL24;IL20RA;IL21R;IL22;IL22R;IL22RA2;IL23;IL24;IL25;IL26;IL27;IL28A;IL28B;IL29;IL2RA;IL2RB;IL2RG;IL3;IL30;IL3RA;IL4;IL4R;IL5;IL5RA;IL6;IL6R;IL6ST(糖タンパク質130);IL7;IL7R;IL8;IL8RA;IL8RB;IL8RB;IL9;IL9R;ILK;INHA;INHBA;INSL3;INSL4;インテグリンαvβ3;インテグリンβ7;IRAK1;IRAK2;TGA1;ITGA2;ITGA3;ITGA6(a6インテグリン);ITGAV;JTGB3;ITGB4(b4インテグリン);JAG1;JAK1;JAK3;JUN;K6HF;KAI1;KDR;KIR2D;KITLG;KLF5(GC Box BP);KLF6;KLK10;KLK12;KLK13;KLK14;KLK15;KLK3;KLK4;KLK5;KLK6;KLK9;KRT1;KRT19(ケラチン19);KRT2A;KRTHB6(毛髪特異性II型ケラチン);LAMA5;LEP(レプチン);LEY;LIGHT;Lingo-p75;Lingo-Troy;LIV-1;LPS;LTA(TNF-b);LTB;LTB4R(GPR16);LTB4R2;LTBR;MACMARCKS;MAGまたはOmgp;MAP2K7(c-Jun);MCAM;MCSP;MDK;MET;MER;MIB1;midkine;MIF;MIP-2;MKI67(Ki-67);MMP2;MMP9;MSLN;MS4A1;MSMB;MT3(メタロチオネクチン-III);MTSS1;MUC1(ムチン);MUC2;MYC;MYD88;ミオスタチン;NCA-2;NCK2;ネクチン-4;ニューロカン;NFKB1;NFKB2;NGFB(NGF);NGFR;NgRLingo;NOGO-A;NgR-Nogo66(Nogo);NgR-p75;NgR-Troy;NME1(NM23A);NOTCH-1;NOX5;NPPB;NR0B1;NR0B2;NR1D1;NR1D2;NR1H2;NR1H3;NR1H4;NR1I2;NR1I3;NR2C1;NR2C2;NR2E1;NR2E3;NR2F1;NR2F2;NR2F6;NR3C1;NR3C2;NR4A1;NR4A2;NR4A3;NR5A1;NR5A2;NR6A1;NRP1;NRP2;NT3;NT4;NT5E;NTN4;ODZ1;OPRD1;OX40;OX40L;P2RX7;PAP;PART1;PATE;PAWR;PCA3;PCDC1;PCNA;PCSK9;PD1;PD-L1;PDGFA;PDGFB;PDGR;igfPECAM1;PF4(CXCL4);PGF;PGR;ホスファカン;PIAS2;PIK3CG;PLAU(uPA);uPAR;PLG;PLXDC1;PPBP(CXCL7);PPID;PR1;PRKCQ;PRKD1;PRL;PROC;PROK2;PSAP;PSCA;PSMA;PTAFR;PTEN;PTGS2(COX-2);PTN;PTK7;VEGFR1;VEGFR2;VEGFR3;RAC2(p21Rac2);RANK;RANKL;RARB;RELT;RET;RGS1;RGS13;RGS3;RNF110(ZNF144);ROBO2;RON;ROR1;ROR2;RYK;S100A2;SCGB1D2(リポフィリンB);SCGB2A1(マンマグロビン2);SCGB2A2(マンマグロビン1);SCYE1(内皮単球活性化サイトカイン);SDF2;SERPINA1;SERPINA3;SERPINB5(マスピン);SERPINE1(PAI-1);SERPINF1;SHBG;SLA2;SLC2A2;SLC33A1;SLC43A1;SLIT2;SPAK;SPP1;SPRR1B(Spr1);SOST;ST6GAL1;STAB1;STAT6;STEAP;STEAP2;TACl;TAG-72;tau タンパク質;TB4R2;TBX21;TCP10;TDGF1;TEK;TGFA;TGFB1;TGPB1I1;TGFB2;TGFB3;TGFBI;TGFBR1;TGFBR2;TGFBR3;TH1L;THBS1(トロルットボスポンジン(throrttbospondin)-1);THBS2;THBS4;THPO;TIE(Tie-1);TIE-1;TIE-2;TIMP3;組織因子;TLR10;TLR2;TLR3;TLR4;TLR5;TLR6;TLR7;TLR8;TLR9;TNF;TNF-a;TNF-b;TNFAIP2(B94);TNFAIP3;TNFRSF11A;TNFRSF1A;TNFRSF1B;TNFRSP21;TNFRSF5;TNFRSF6(Fas);TNFRSF7;TNFRSF8;TNFRSF9;TNFSF10(TRAIL);TNFSF11(TRANCE);TNFSF12(APO3L);TNFSF13(April);TNPSF13B;TNFSF14(HVEM-L);TNFSF15(VEGI);TNFSF18;TNFSF4(OX40リガンド);TNFSF5(CD40リガンド);TNFSF6(FasL);TNFSF7(CD27リガンド);TNFSF8(CD30リガンド);TNFSF9(4-1BBリガンド);TNF-R1;TNF-R2;TOLLIP;トール様受容体;TOP2A(トポイソメラーゼIia);TP53;TPM1;TPM2;TRADD;TRAF1;TRAF2;TRAF3;TRAF4;TRAF5;TRAF6;TRAIL-R1;TRAIL-R2;TRAIL-R3;TRAIL-R4;TREM1;TREM2;TRPC6;TROY;TSLP;TWEAK;TYRO3;TYRP1;VAP-1;VEGF;VEGFB;VEGFC;バーシカン;VHL C5;ビメンチン;VLA-4;VWF;XCL1(リンホタクチン);XCL2(SCM-1b);XCR1(GPR5/CCXCR1);YY1;およびZFPM2。
【0232】
好ましい実施態様によれば、本発明の結合分子は、免疫エフェクター細胞上のトリガー分子、例えばT細胞受容体(TCR)(Brinkmann & Kontermann, 2017, mAbs 9:182-212)の一部としてのT細胞上のCD3に結合する。本発明によれば、免疫エフェクター細胞のトリガー分子は、CD2、CD3、CD16、CD44、CD64、CD69、CD89、Mel14、Ly-6.2C、TCR複合体、Vy9V52TCR、またはNKG2Dからなる群から選択されるが、これらに限定されない。
【0233】
さらなる実施態様によれば、本発明の結合分子はMET(5D5)(Jin et al., 2008, Cancer Res. 68, 4360-4368)に結合する。
【0234】
本発明による2価、3価または4価の結合分子の最も好ましい実施態様は、HER3に対して1つ、2つまたは3つの結合部位で結合し、CD3に対してそれぞれの残りの1つ、2つまたは3つの結合部位で結合するものである。実施例2は、HER3およびCD3に結合する好ましい二重特異性2価結合分子の例を提供する。
【0235】
本発明による2価、3価または4価の結合分子のさらに最も好ましい実施態様は、1つ、2つまたは3つの結合部位でHER3に結合し、残りの1つ、2つまたは3つの結合部位でMETに結合する。さらにより好ましくは、本発明の結合分子は、本明細書の以下の実施例1に例示されるように、METおよびHER3に結合する二重特異性2価のものである。
【0236】
本発明の結合分子は、ペプチドリーダー配列;精製するのを助ける1つまたはそれ以上の、好ましくはヘキサヒスチジル(hexahistidyl)-タグまたはFLAG-タグ;および/または1つまたはそれ以上の同時刺激の分子をさらに含み得る。
【0237】
本発明の結合分子が、例えば、T細胞またはマクロファージのような免疫エフェクター細胞が腫瘍細胞に動員される、細胞-細胞動員に使用される実施態様において、結合分子の2つの結合価が腫瘍細胞に結合し、残り1つまたは2つの結合価が免疫エフェクター細胞に結合することが好ましい。このアプローチは、一方では腫瘍細胞に結合する高いアビディティーを提供し、他方では免疫エフェクター細胞への標的の2価結合に起因し得る免疫エフェクター細胞の活性化を防止する。
【0238】
本発明によれば、修飾EHD2ドメインは、配列番号:1に対して少なくとも70%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を有する。好ましくは、配列番号:1からの偏位は、保守的な置換によるものである。より好ましくは、これらの置換は、1つまたはそれ以上のアミノ酸残基のシステインへの置換を含まない。導入された変異は、好ましくは、鎖間ジスルフィド結合の形成、すなわち、第1の修飾EHD2ドメインと第2の修飾EHD2ドメインとの間の追加のジスルフィド結合を生じさせない。「保守的な置換」は、例えば、極性、電荷、サイズ、溶解性、疎水性、親水性、および/または関与するアミノ酸残基の両親媒性の類似性に基づいて行われることがある。アミノ酸は、以下の6つの標準的なアミノ酸群に分類することができる:
(1)疎水性:Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖の配向に影響を与える残基:Gly、Pro;および
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0239】
本明細書で使用される場合、「保守的な置換」は、上記に示されている6つの標準アミノ酸群の同じ群内にリストされている別のアミノ酸によるアミノ酸の交換として定義される。例えば、AspをGluに交換すると、そのように修飾されたポリペプチド中の1つの負電荷が保持される。さらに、グリシンおよびプロリンは、α-ヘリックスを破壊するそれらの能力に基づいて、互いに置換され得る。上記の6つの群内のいくつかの好ましい保守的な置換は、次の下位群内の交換である:(i)Ala、Val、LeuおよびIle;(ii)SerおよびThr;(ii)AsnおよびGln;(iv)LysおよびArg;および(v)TyrおよびPhe。既知の遺伝暗号、および組換えおよび合成DNA技術を考えると、熟練した科学者は、保守的なアミノ酸変異体をコードするDNAを容易に組み立てることができる。
【0240】
本明細書で使用される場合、「非保守的な置換」または「非保守的なアミノ酸交換」とは、上記に示されている6つの標準アミノ酸群(1)~(6)の異なる群にリストされている別のアミノ酸によるアミノ酸の交換と定義される。
【0241】
本発明による特に好ましい分子は、
(1)軽鎖VL3-43-CLλ(配列番号:13)および重鎖VH3-43-CH1-Fcknob(配列番号:14)を有する定常部分と、(i)eIgG1という結果になるHC1-LC2(重鎖:VH5D5-EHD2-1(N39Q)-Fchole(配列番号:12)、軽鎖:VL5D5-EHD2-2 (配列番号:11))、または(ii)eIgG2という結果になるHC2-LC1(重鎖:VH5D5-EHD2-2-Fchole(配列番号:10)、軽鎖:VL5D5-EHD2-1(N39Q)(配列番号:9))のどちらか一方との組み合わせ;
(2)軽鎖のVL3-43-CLλ(配列番号:13)および重鎖のVH3-43-CH1-Fcknob(配列番号:14)とeIgG(重鎖:VHhuU3-EHD2-2-Fchole(配列番号:16)、軽鎖:VLhuU3-EHD2-1(N39Q)(配列番号:15));
(3)配列番号:13または15に特定される軽鎖、および配列番号:14、16、20、39、40または41に特定される重鎖;
(4)軽鎖のVL3-43-CLλ(配列番号:13)と重鎖のVH3-43-CH1-Fcknob(配列番号:14)との対合、および軽鎖のVLhu36-EHD2-1(N39Q)(配列番号:43)と重鎖のVHhu36-EHD2-2-Fchole(配列番号:42)との対合;
(5)軽鎖のVL3-43-EHD2-1(N39Q)(配列番号:23)および重鎖のVH3-43-EHD2-2-Fc(配列番号:22);
(6)軽鎖のVL3-43-EHD2-1(N39Q)(配列番号:23)およびVLhu225-CLκ(配列番号:25)、ならびに重鎖のVHhu225-CH1-VH3-43-EHD2-2-Fc(配列番号:24);
(7)軽鎖のVL3-43-EHD2-1(N39Q)(配列番号:23)およびVLhu225-CLκ(配列番号:25)、重鎖のVHhu225-CH1-VH3-43-EHD2-2(配列番号:44);
(8)軽鎖のVLhu36-CLκ(配列番号:45)および重鎖のVHhu36-CH1-Fc(hole)(配列番号:46)を含む第1の分子であって、軽鎖のVH2C11-EHD2-1(N39Q)(配列番号:47)および重鎖のVL2C11-EHD2-2-Fc(knob)(配列番号:48)を有するCD3-標的アームを有する分子、および軽鎖のVL2C11-EHD2-1(N39Q)(配列番号:49)および重鎖のVH2C11-EHD2-2-Fc(knob)(配列番号:50)を含む第2の分子;
(9)軽鎖のVLS309-CLκ(配列番号:51)およびVLP2B-2F6-EHD2-1(N39Q)(配列番号:52)、ならびに重鎖のVHS309-CH1-VHP2B-2F6-EHD2-2-Fc(配列番号:53)、を含む。
【0242】
本発明による最も好ましい分子は、
(i)配列番号:13、14、15および16;
(ii)配列番号:13、15、16および20;
(iii)配列番号:13、15、39および40;
(iv)配列番号:13、14、15および41;
(v)配列番号:23、24および25、を含む。
【0243】
本発明によるさらに好ましい分子は、上記の(1)~(9)および(i)~(v)の下で特定される配列に対して少なくとも90%の配列同一性、好ましくは上記の(1)~(9)および(i)~(v)の下で特定される配列に対して91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有する、上記の(1)~(9)および(i)~(v)として特定される分子を含む。この配列の同一性は、上記の各項目(1)~(9)および(i)~(v)でそれぞれ特定される個々の配列の1つ、2つ、3つまたは4つを意味し得ることが理解されるであろう。好ましくは、上記の(1)~(9)および(i)~(v)の下で特定される配列に対して少なくとも90%またはそれ以上の配列同一性を有するこれらの分子は、さらに上記の(1)~(9)および(i)~(v)の下で特定される配列を含むものに由来するそれぞれの分子と本質的に同じまたは同じ生物学的機能を維持するものである。好ましくは、本明細書で使用される用語「生物学的機能」とは、結合特異性および/または親和性を意味する。同じ生物学的機能を本質的に維持することは、それが由来する上記の(1)~(9)および(i)~(v)の下で特定される配列を含むそれぞれの分子の少なくとも50%の結合特異性および/または親和性、好ましくは少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の結合特異性および/または親和性を意味する。結合および/または親和性の決定は、当業者によく知られており、例えば、表面プラズモン共鳴測定および/またはインビトロ放出アッセイによって実施することができる。
【0244】
本発明による分子は、その精製を容易にするために、1つまたはそれ以上のポリペプチドにヒスチジン-タグ(His-タグ、6xHisタグなど)または本明細書に例示的に記載の相似の付加またはタグを有していてもいなくてもよいことが当業者には理解されるであろう。当業者は、そのような追加の構造が、本明細書に記載の分子の機能特性に特定の影響を与えないことを容易に理解する。
【0245】
さらなる態様によれば、本発明は、本発明による結合分子をコードする核酸または核酸のセットを提供する。核酸は、エンドヌクレアーゼまたはエクソヌクレアーゼ、特に細胞内に見られ得るDNaseおよびRNaseによって分解され得る。したがって、本発明の核酸を分解に対して安定化させるために修飾し、それによって、細胞内で高濃度の核酸が長期間維持されることを確保することが有利であり得る。典型的には、そのような安定化は、1つまたはそれ以上のヌクレオチド間リン基を導入することによって、または1つまたはそれ以上の非リンインターヌクレオチドを導入することによって得ることができる。したがって、核酸は、天然に存在しないヌクレオチドおよび/または天然に存在するヌクレオチドへの修飾、および/または分子のバックボーンへの変化からなり得る。核酸中の修飾されたヌクレオチド間ホスフェートラジカルおよび/または非リン橋には、メチルホスホネート、ホスホロチオエート、ホスホロアミデート、ホスホロジチオエートおよび/またはホスフェートエステルが含まれるがこれらに限定されなく、一方非リンヌクレオチド間類似物にはシロキサン架橋、カーボネート架橋、カルボキシメチルエステル、アセトアミデート(acetamidate)架橋および/またはチオエーテル架橋が含まれるが、これらに限定されない。ヌクレオチド修飾のさらなる例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない:それぞれ、ライゲーションまたはエクソヌクレアーゼ分解/ポリメラーゼ伸長の防止を可能にするための5'または3'ヌクレオチドのリン酸化;共有結合および共有結合に近い結合のためのアミノ、チオール、アルキンまたはビオチニル修飾;フルオロフォアおよびクエンチャー;および修飾塩基、例えばデオキシイノシン(dI)、5-ブロモ-デオキシウリジン(5-ブロモ-dU)、デオキシウリジン、2-アミノプリン、2,6-ジアミノプリン、逆位dT、逆位ジデオキシ-T、ジデオキシシチジン(ddC5-メチルデオキシシチジン(5-メチルdC)、ロックド核酸(LNA’s)、5-ニトロインドール、イソ-dCおよび-dG塩基、2‘-O-メチルRNA塩基、ヒドロキシメチルdC、5-ヒドロキシブチニル-2’-デオキシウリジン、8-アザ-7-デアザグアノシンおよびフッ素修飾塩基。したがって、核酸にはまた、ポリアミドまたはペプチド核酸(PNA)、モルホリノおよびロックド核酸(LNA)、ならびにグリコール核酸(GNA)およびスレオース核酸(TNA)が含まれるがこれらに限らない人工核酸であり得る。
【0246】
本発明による結合分子の上記の概略的な基本配置および実施態様のいずれにおいても、さらなる官能基の結合に利用可能なポリペプチド鎖の自由なN末端および/またはC末端が存在することが理解されるべきである。あるいは、または追加の官能基、特に医薬活性部分および/またはイメージング分子は、Lys、Arg、GluまたはAspなどのポリペプチド鎖内のアミノ酸の側鎖に結合し得る。
【0247】
一般的な発現系には、大腸菌宿主細胞およびプラスミドベクター、昆虫宿主細胞およびバキュロウイルスベクター、ならびに哺乳類宿主細胞およびベクターが含まれる。宿主細胞の他の例には、原核細胞(細菌など)および真核細胞(酵母細胞、哺乳類細胞、昆虫細胞、植物細胞など)が含まれるが、これらに限定されない。具体例としては、大腸菌、クルイベロマイセス酵母またはサッカロマイセス酵母、哺乳類細胞株(例えば、Vero細胞、CHO細胞、3T3細胞、COS細胞など)、ならびに初代または確立された哺乳類細胞培養物(例えば、リンパ芽細胞、線維芽細胞、胚細胞、上皮細胞、神経細胞、脂肪細胞などから産生される)が挙げられる。例としてはまた、マウスSP2/0-Ag14細胞(ATCC CRL1581)、マウスP3X63-Ag8.653細胞(ATCC CRL1580)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子(以下「DHFR遺伝子」という)が欠損したCHO細胞(Urlaub G et al; 1980)、ラットYB2/3HL.P2.G11.16Ag.20細胞(ATCC CRL1662、以下「YB2/0細胞」と称する)、HEK293細胞などが挙げられる。好ましい宿主細胞は、HEK293-6E細胞(Durocher et al., 2002, Nucl. Acids Res. 30(2)e9)またはCHO細胞である。
【0248】
それゆえ、さらなる態様によれば、本発明は、本発明の核酸または核酸のセットを含むベクターを提供する。宿主細胞内で核酸を発現するための適切なベクターは、当技術分野でよく知られている。
【0249】
本発明はまた、本発明による結合分子を発現する組換え宿主細胞を産生する方法であって、(i)上記の核酸もしくは核酸のセットまたはベクターをコンピテントな宿主細胞にインビトロまたはエクスビボで導入する工程、(ii)得られた組換え宿主細胞をインビトロまたはエクスビボで培養する工程、および(iii)、任意に、該結合分子を発現および/または分泌する細胞を選択する工程、を含む方法に関する。
【0250】
従って、本発明はまた、本発明によるベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0251】
さらなる態様によれば、本発明は、活性剤としての本発明による結合分子、核酸または核酸のセット、ベクター、または宿主細胞、および薬学的に許容される担体および/または適当な添加物を含む医薬組成物を提供する。医薬組成物は、1つまたはそれ以上のさらなる活性剤をさらに含む。医薬組成物は、好ましくは、固体、液体、半固体または経皮治療システムからなる群から選択される。本発明の医薬組成物は、本発明の第一態様の1つまたはそれ以上の複合体を含むことが想定される。
【0252】
さらなる態様において、本発明は、医薬に使用するための本発明の結合分子、核酸または核酸のセット、ベクター、宿主細胞、または医薬組成物に関する。
【0253】
本発明の結合分子、核酸または核酸のセット、ベクター、宿主細胞、または医薬組成物は、特に癌を処置するのに適したまのである。
【0254】
本発明は、特に以下の項目に関する:
【0255】
項目1.
第1の結合ドメイン(BD1)および第1の修飾EHD2ドメイン(EHD2-1)を含む第1のポリペプチド鎖、および
第2の結合ドメイン(BD2)および第2の修飾EHD2ドメイン(EHD2-2)を含む第2のポリペプチド鎖、を含む結合分子であって
EHD2-1およびEHD2-2のアミノ酸配列は、互いに異なっており、そしてそれぞれは、(i)配列番号:1に対して少なくとも70%のアミノ酸同一性を有し、かつ14位にCysを有しないアミノ酸配列、または(ii)配列番号:1に対して少なくとも70%のアミノ酸同一性を有し、かつ102位にCysを有しないアミノ酸配列、から選択され、
BD1およびBD2は一緒になって抗原結合部位を形成し、ここで、EHD2-1およびEHD2-2は互いに共有結合している、結合分子。
【0256】
項目2.
修飾EHD2ドメインの一方または両方が、N39位に単一アミノ酸置換をさらに含む、項目1に記載の結合分子。
【0257】
項目3.
BD1およびBD2が、互いに異なっており、そしてそれぞれは、VHおよびVLから選択されるか、またはTCR α-鎖の可変領域およびTCR β-鎖の可変領域から選択される、項目1~2のいずれか一項に記載の結合分子。
【0258】
項目4.
第1のFc鎖をさらに含む、項目1~3のいずれか一項に記載の結合分子。
【0259】
項目5.
第3の結合ドメイン(BD3)および第4の結合ドメイン(BD4)をさらに含み、ここで、BD3およびBD4は一緒になって抗原結合部位を形成する、請求項1~4のいずれか一項に記載の結合分子。
【0260】
項目6.
BD3およびBD4が、互いに異なっており、そしてそれぞれは、VHおよびVLから選択されるか、またはTCR α-鎖の可変領域およびTCR β-鎖の可変領域から選択される、項目5に記載の結合分子。
【0261】
項目7.
第3のポリペプチド鎖をさらに含み、好ましくは第3のポリペプチド鎖および第4のポリペプチド鎖をさらに含む、項目5または6に記載の結合分子。
【0262】
項目8.
第2のFc鎖をさらに含む、項目5~7のいずれか一項に記載の結合分子。
【0263】
項目9.
第1のFc鎖および第2のFc鎖が、互いに異なっており、そしてヘテロ二量体のFcを形成する、項目8に記載の結合分子。
【0264】
項目10.
単一特異性であるかまたは二重特異性である、項目5~9のいずれか一項に記載の結合分子。
【0265】
項目11.
BD3を含む第3のポリペプチド鎖が、
(i)CH1ドメイン、
(ii)CLドメイン、
(iii)第1の修飾EHD2ドメイン(EHD2-1)、および
(iv)第2の修飾EHD2ドメイン(EHD2-2)、の1つをさらに含み、
BD4を含む第4のポリペプチド鎖が、
(i)の場合にはCLドメイン、
(ii)の場合にはCH1ドメイン、
(iii)の場合には第2の修飾EHD2ドメイン(EHD2-2)、および
(iv)の場合には第1の修飾EHD2ドメイン(EHD2-1)、をさらに含み、
ここで、EHD2-1およびEHD2-2のアミノ酸配列は、互いに異なっており、そしてそれぞれは、配列番号:1に対して少なくとも70%のアミノ酸同一性を有し、かつ14位にCysを有しないアミノ酸配列、または配列番号:1に対して少なくとも70%のアミノ酸同一性を有し、かつ102位にCysを有しないアミノ酸配列、から選択される、項目5~10のいずれか一項に記載の結合分子。
【0266】
項目12.
第3のポリペプチド鎖または第4のポリペプチド鎖の修飾EHD2ドメインの一方または両方が、N39位に単一アミノ酸置換をさらに含む、項目11に記載の結合分子。
【0267】
項目13.
第5の結合ドメイン(BD5)および第6の結合ドメイン(BD6)をさらに含み、ここで、BD5およびBD6は一緒になって抗原結合部位を形成する、項目5~12のいずれか一項に記載の結合分子。
【0268】
項目14.
BD5に結合する、
(i)CH1ドメイン、
(ii)CLドメイン、
(iii)第1の修飾EHD2ドメイン(EHD2-1)、または
(iv)第2の修飾EHD2ドメイン(EHD2-2)、および
BD6に結合する、
(i)の場合にはCLドメイン、
(ii)の場合にはCH1ドメイン、
(iii)の場合には第2の修飾EHD2ドメイン(EHD2-2)、そして
(iv)の場合には第1の修飾EHD2ドメイン(EHD2-1)、
をさらに含み、ここで、EHD2-1およびEHD2-2のアミノ酸配列は、互いに異なっており、そしてそれぞれは、配列番号:1に対して少なくとも70%のアミノ酸同一性を有し、かつ14位にCysを有しないアミノ酸配列、または配列番号:1に対して少なくとも70%のアミノ酸同一性を有し、かつ102位にCysを有しないアミノ酸配列、から選択される、項目13に記載の結合分子。
【0269】
項目15.
BD5またはBD6に結合する修飾EHD2ドメインの一方または両方が、N39位に単一アミノ酸置換をさらに含む、項目14に記載の結合分子。
【0270】
項目16.
BD5およびBD6が、互いに異なっており、そしてそれぞれは、VHおよびVLから選択されるか、またはTCR α-鎖の可変領域およびTCR β-鎖の可変領域から選択される、項目14または15に記載の結合分子。
【0271】
項目17.
BD5またはBD6に結合するCH1ドメイン、CLドメイン、EHD2-1またはEHD2-2が、リンカーを介してBD1、BD2、BD3またはBD4の1つに結合する、項目14~16のいずれか一項に記載の結合分子。
【0272】
項目18.
単一特異性、二重特異性、または三重特異性である、項目11~17のいずれか一項に記載の結合分子。
【0273】
項目19.
第7の結合ドメイン(BD7)および第8の結合ドメイン(BD8)をさらに含み、ここで、BD7およびBD8は一緒になって抗原結合部位を形成する、項目11~18のいずれか一項に記載の結合分子。
【0274】
項目20.
BD7に結合する、
(i)CH1ドメイン、
(ii)CLドメイン、
(iii)第1の修飾EHD2ドメイン(EHD2-1)、または
(iv)第2の修飾EHD2ドメイン(EHD2-2)、
および
BD8に結合する、
(i)の場合にはCLドメイン、
(ii)の場合にはCH1ドメイン、
(iii)の場合には第2の修飾EHD2ドメイン(EHD2-2)、そして
(iv)の場合には第1の修飾EHD2ドメイン(EHD2-1)、
をさらに含み、ここで、EHD2-1およびEHD2-2のアミノ酸配列は、互いに異なっており、そしてそれぞれは、配列番号:1に対して少なくとも70%のアミノ酸同一性を有し、かつ14位にCysを有しないアミノ酸配列、または配列番号:1に対して少なくとも70%のアミノ酸同一性を有し、かつ102位にCysを有しない102アミノ酸配列、から選択される、項目19に記載の結合分子。
【0275】
項目21.
BD7またはBD8に結合する修飾EHD2ドメインの一方または両方が、N39位に単一アミノ酸置換をさらに含む、項目20に記載の結合分子。
【0276】
項目22.
BD7およびBD8が、互いに異なっており、そしてそれぞれは、VHおよびVLから選択されるか、またはTCR α-鎖の可変領域およびTCR β-鎖の可変領域から選択される、項目21に記載の結合分子。
【0277】
項目23.
BD7またはBD8に結合するCH1ドメイン、CLドメイン、EHD2-1またはEHD2-2が、リンカーを介してBD5またはBD6に結合していないBD1、BD2、BD3またはBD4の1つに結合する、項目20~22のいずれか一項に記載の結合分子。
【0278】
項目24.
単一特異性、二重特異性、三重特異性または四重特異性である、項目19~23のいずれか一項に記載の結合分子。
【0279】
項目25.
修飾EHD2ドメインのいずれも1つのN-グリカンを担持しないか、1つまたはそれ以上の修飾EHD2ドメインが1つのN-グリカンを担持する、項目1~24のいずれか一項の記載の結合分子。
【0280】
項目26.
配列番号:1の14位のCysが、Ser、Gly、Ala、Thr、Gln、Asn、およびTyrからなる群から選択されるアミノ酸、好ましくはSerによって置換されている、項目1~25のいずれか一項に記載の結合分子。
【0281】
項目27.
配列番号:1の102位のCysが、Ser、Gly、Ala、Thr、Gln、Asn、およびTyrからなる群から選択されるアミノ酸、好ましくはSerによって置換されている、項目1~26のいずれか一項に記載の結合分子。
【0282】
項目28.
N39位における単一アミノ酸置換が、N39Qである、項目1~27のいずれか一項に記載の結合分子。
【0283】
項目29.
項目1~28のいずれか一項に記載の結合分子をコードする核酸または核酸のセット。
【0284】
項目30.
項目29の核酸または核酸のセットを含むベクター。
【0285】
項目31.
項目30に記載のベクターを含む宿主細胞。
【0286】
項目32.
項目1~28のいずれか一項に記載の結合分子、項目29に記載の核酸もしくは核酸のセット、項目30に記載のベクター、または項目31に記載の宿主細胞、および薬学的に許容される担体、を含む医薬組成物。
【0287】
項目33.
配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15および配列番号:16を含む結合分子。
【0288】
項目34.
配列番号:13、配列番号:15、配列番号:16および配列番号:20を含む結合分子。
【0289】
項目35.
配列番号:13、配列番号:15、配列番号:39および配列番号:40を含む結合分子。
【0290】
項目36.
配列番号:13、配列番号:14、配列番号:15および配列番号:41を含む結合分子。
【0291】
項目37.
配列番号:23、配列番号:24および配列番号:25を含む結合分子。
【0292】
項目38.
項目33~37のいずれか一項に記載の結合分子をコードする核酸または核酸のセット。
【0293】
項目39.
項目38の核酸または核酸のセットを含むベクター。
【0294】
項目40.
項目39に記載のベクターを含む宿主細胞。
【0295】
項目41.
項目33~37のいずれか一項に記載の結合分子、項目38に記載の核酸もしくは核酸のセット、項目39に記載のベクター、または項目40に記載の宿主細胞、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【0296】
項目42.
医薬に使用するための、好ましくは癌の処置に使用するための、項目33~37のいずれか一項に記載の結合分子、項目38に記載の核酸もしくは核酸のセット、項目39に記載のベクター、項目40に記載の宿主細胞、または項目41に記載の医薬組成物。
【0297】
項目43.
処置を必要とする患者に、治療有効量の項目33~37のいずれか一項に記載の結合分子、項目38に記載の核酸もしくは核酸のセット、項目39に記載のベクター、項目40に記載の宿主細胞、または項目41に記載の医薬組成物を投与することを含む処置方法。
【0298】
項目44.
癌を処置する方法であって、それを必要とする患者に、治療有効量の項目33~37のいずれか一項に記載の結合分子、項目38に記載の核酸または核酸のセット、項目39に記載のベクター、項目40に記載の宿主細胞、または項目41に記載の医薬組成物を投与することを含む方法。
【0299】
項目45.
医薬に使用するための、好ましくは癌の処置に使用するための、項目1~28のいずれか一項に記載の結合分子、項目29に記載の核酸もしくは核酸のセット、項目30に記載のベクター、項目31に記載の宿主細胞、または項目32に記載の医薬組成物。
【0300】
項目46.
処置を必要とする患者に、治療有効量の項目1~28のいずれか一項に記載の結合分子、項目29に記載の核酸もしくは核酸のセット、項目30に記載のベクター、項目31に記載の宿主細胞、または項目32に記載の医薬組成物を投与することを含む処置方法。
【0301】
項目44.
癌を処置する方法であって、それを必要とする患者に、治療有効量の項目1~28のいずれか一項に記載の結合分子、項目30に記載の核酸もしくは核酸のセット、項目30に記載のベクター、項目31に記載の宿主細胞、または項目32に記載の医薬組成物を投与することを含む方法。
【実施例】
【0302】
実施例1:二重特異性2価抗cMETx抗HER3 eIgGs
二重特異性2価eIgG分子は、HER3(3-43)に特異的なFvドメイン(Schmitt et al., 2017, mAbs 9, 831-843)をIgG1のC
H1/C
Lヘテロ二量体と組み合わせ、MET(5D5)に特異的なFvドメイン(Jin et al., 2008, Cancer Res. 68, 4360-4368)をIgEの修飾C
H2ドメイン(hetEHD2)と組み合わせ、そしてヘテロ二量体のFc部分(knob-into-hole技術)とすることによって作製した。このように、二重特異性分子は、4つの異なるポリペプチド鎖からなる。さまざまな抗体の定常部分は、軽鎖のV
L3-43-C
Lλ(配列番号:13)および重鎖のV
H3-43-C
H1-Fc
knob(配列番号:14)からなる。第2の部分は、eIgG1という結果になるHC1-LC2(重鎖:V
H5D5-EHD2-1(N39Q)-Fc
hole(配列番号:12);軽鎖:V
L5D5-EHD2-2(配列番号:11))、またはeIgG2という結果になるHC2-LC1(重鎖:V
H5D5-EHD2-2-Fc
hole(配列番号:10);軽鎖:V
L5D5-EHD2-1(N39Q)(配列番号:9))のどちらか一方のEHD2配置からなる。二重特異性2価eIgG分子は、HER3に対する抗原結合部位1つおよびMETに対する結合部位1つを示す。それぞれのポリペプチド鎖は、
図5Aに例示的かつ概略的に示し、得られた結合分子は、
図5Bに概略的に示す。
【0303】
二重特異性2価eIgG分子は、ポリエチレンイミンをトランスフェクション試薬として用い、両重鎖および両軽鎖をコードする4つのプラスミドを共投与した後、一過性にトランスフェクトしたHEK293-6E細胞内で発現させた。細胞培養上清に分泌されたタンパク質は、タンパク質A親和性クロマトグラフィー(Protein A affinity chromatography)を用いて精製した。SDS-PAGE分析により、還元条件下での4つの主要なバンドを明かした:抗体の2つの重鎖に対応する約55kDaの2つのバンド、抗体の2つの軽鎖に対応する約25kDaの2つのバンド。さらに、eIgG1にはEHD2-2を含む軽鎖のグリコシル化バージョン(V
L5D5-EHD2-2)に該当する可能性が最も高い約30kDaのわずかなバンドも観察され、eIgG2にはEHD2-2を含む重鎖のグリコシル化バージョン(V
H5D5-EHD2-2-Fc
hole)に該当する可能性が最も高い約65kDaのわずかなバンドも観察された。非還元条件下では、4つの異なるポリペプチド鎖からなるインタクトな抗体に該当する可能性が最も高い約200kDaの1つの主要なバンドが観察された(
図5C)。二重特異性2価eIgG分子の純度、完全性および均質性は、サイズ排除クロマトグラフィーにより確認した(
図5D)。両方のeIgG分子のHER3(aa21-643)およびMET(aa25-787)の細胞外ドメイン(ECD)への結合は、ELISAにより決定した。Hisタグ付きHER3タンパク質とMET Fc融合タンパク質を、PBSで希釈した2μg/mlの濃度でポリスチレン製マイクロタイタープレート上にコーティングした。残りの結合部位は、PBS、2%脱脂乳(MPBS)でブロックした。次に、プレートを、二重特異性eIgG抗体の段階希釈液でインキュベートした。洗浄後、結合した抗体を、HER3-His抗原を用いたHRP-コンジュゲート抗ヒトFc抗体、MET-Fc抗原を用いたHRP-コンジュゲート抗ヒトFab抗体、および基質としてのTMB、H
2O
2で検出した。両方の二特異性2価eIgG抗体は、HER3-HisおよびMET-Fcに対して濃度依存的な結合(EC
50値がナノモル範囲(eIgG1およびeIgG2についてそれぞれ、HER3では1.0および1.4nM;METでは3.8および5.4nM))を示した(
図5E)。これらの実験により、両方の二重特異性2価eIgGs抗体の、HER3およびMETの両方の抗原への予想される範囲の結合を確認した(Schmitt et al., 2017, mAbs 9, 831-843)。
【0304】
実施例2:二重特異性2価の抗CD3x抗HER3 eIgG
二重特異性2価eIgG分子は、HER3(3-43)に特異的なFvドメイン(Schmitt et al., 2017, mAbs 9, 831-843)をIgG1のC
H1/C
Lヘテロ二量体と組み合わせ、CD3(huU3)に特異的なFvドメインをIgEの修飾C
H2ドメイン(hetEHD2)と組み合わせ、そしてヘテロ二量体のFc部分(knob-into-hole技術)を組み合わせることによって作製した。CD3結合部位は、抗CD3 mAb UCHT1のヒト化バージョンからなる。このように、二重特異性分子は、4つの異なるポリペプチド鎖からなる。さまざまな抗体の第1の部分は、軽鎖のV
L3-43-C
Lλ(配列番号:13)および重鎖のV
H3-43-C
H1-Fc
knob(配列番号:14)からなる。第2の部分は、eIgGという結果になるHC2-LC1(重鎖:V
HhuU3-EHD2-2-Fc
hole(配列番号:16);軽鎖:V
LhuU3-EHD2-1(N39Q)(配列番号:15))のEHD2配置からなる。二重特異性2価eIgG分子は、HER3対する抗原結合部位1つおよびCD3に対する結合部位1つを示す。それぞれのポリペプチド鎖は、
図6Aに例示的かつ概略的に示し、得られた結合分子は、
図6Bに概略的に示す。
【0305】
二重特異性2価eIgG分子は、ポリエチレンイミンをトランスフェクション試薬として用い、両重鎖および両軽鎖をコードする4つのプラスミドを同時投与した後、一過性にトランスフェクトしたHEK293-6E細胞内で発現させた。細胞培養上清に分泌されたタンパク質は、タンパク質A親和性クロマトグラフィーを用いて精製した。SDS-PAGE分析により、還元条件下での2つの主要なバンドを明かした:抗体のV
H3-43-C
H1-Fc
knob重鎖に該当する約50kDaの1つのバンド、および抗体の2つの軽鎖に該当する約25kDaの1つのバンド。さらに、EHD2-2を含む(非グリコシル化およびグリコシル化形態の)重鎖(V
HhuU3-EHD2-2-Fc
hole)に該当する約60kDaと65kDaの2つのわずかなバンドが観察された。非還元条件下では、4つの異なるポリペプチド鎖からなるインタクトな抗体に該当する約200kDaの1つの主要なバンドが観察された(
図6C)。二重特異性2価eIgG分子の純度、完全性および均質性は、サイズ排除クロマトグラフィーにより確認した(
図6D)。eIgG分子のHER3(aa21-643)およびCD3の細胞外ドメイン(ECD)への結合は、ELISAにより決定した。Hisタグ付きHER3タンパク質とCD3-Fc融合タンパク質を、PBSで希釈した2μg/mlの濃度でポリスチレン製マイクロタイタープレート上にコーティングした。残りの結合部位は、PBS、2%脱脂乳(MPBS)でブロックした。次に、プレートを、二重特異性eIgG抗体の段階希釈液でインキュベートした。洗浄後、結合した抗体を、HER3-His抗原を用いたHRP-コンジュゲート抗ヒトFc抗体、MET-Fc抗原を用いたHRP-コンジュゲート抗ヒトFab抗体、および基質としてのTMB、H
2O
2で検出した。二特異性2価eIgG抗体は、HER3-HisおよびCD3-Fcに対して濃度依存的な結合(EC
50値がHER3で2.1nM)を示した(
図6E)。これらの実験により、二重特異性2価eIgGs抗体の、HER3およびMETの両方の抗原に対する結合を確認した。二重特異性eIgG抗体のHER3発現細胞(LIM1215)およびCD3発現細胞(Jurkat)への結合試験は、フローサイトメトリーを介して分析した。付着したLIM1215細胞をPBSで洗浄し、37℃で直ちにトリプシン処理した。トリプシンをFCS含有培地でクエンチし、遠心分離(500xg、5分)により除去した。懸濁Jurkat細胞は、トリプシンを使用せずに使用した。ウェルあたり100,000個の細胞を播種し、PBA(2%(v/v)FCS、0.02%(w/v)NaN
3を含有するPBS)で希釈した二重特異性eIgG抗体の段階希釈液で4℃で1時間インキュベートした。細胞を、PBAを用いて2回洗浄した。結合した抗体を、PE標識抗ヒトFc二次抗体を用いて検出し、これを4℃でさらに1時間インキュベートした。洗浄後、Milltenyi MACSQuant(登録商標)Analyzer 10で蛍光強度(MFI)中央値を測定した。MACSQuant(登録商標)ソフトウェアおよびExcelで相対MFI(未染色細胞に対するもの)を計算した。eIgG抗体は細胞に濃度依存的な形で結合した(EC
50値は、LIM1215を用いた場合には0.4nM、Jurkat細胞を用いた場合には11.9nM)(
図6F)。
【0306】
実施例3:ヘテロ二量体のhetEHD2ドメインを作製するためのタンパク質工学
鎖A上の位置C14および鎖B上の位置C102をさまざまな残基(A、T、N、S、W)で置換し、機能的なヘテロ二量体のeFab分子(hetE-Fab)の形成に対するそれらの影響を評価した。モデルとして、2つのhetEHD2ドメインに融合させた、IgG3-43(抗HER3標的)の可変ドメインからなるhetE-Fabを使用した(
図1A)。分子は、Q5(登録商標)部位特異的変異誘発キット(NEB)を用いて部位特異的変異誘発により生成させた。さまざまな残基の正しい置換を確認した後、HEK293-6E細胞に2つのプラスミドの異なる組み合わせをコトランスフェクトし(
図7Aおよび表1)、すべての分子がVH-hetEHD2鎖上にHisタグを含んでいるので、Ni-NTA樹脂を用いて親和性クロマトグラフィーにより細胞培養上清からタンパク質を精製した。分子の濃度は、NanoDrop ND-1000を用いて280nMで測光法で決定し、収量は使用した上清の容量に対して計算した。
【0307】
表1:鎖Aの位置C14および鎖Bの位置C102においてさまざまな残基を有するさまざまなFv3-43-hetEHD2(eFab)分子のリスト。異なる組み合わせを有する分子を製造し、収量およびELISAで固定化抗原として使用したHER3への結合(EC
50値)について分析した。配列番号を表に示す。
【表1】
【0308】
収量はさまざまであるが、すべてのeFabの組み合わせを作成できた(表1)。タンパク質については、還元条件および非還元条件下でSDS-PAGEによりさらに分析した(
図7B)。還元条件により、VH-hetEHD2-2断片(hetEHD2ドメインにN-グリカンを担持する)の予想サイズが約27kDa、非グリコシル化軽鎖の予想サイズが23kDa、の2つの異なる鎖の存在を確認した。非還元条件により、分子の二量体の組み立ておよびジスルフィド結合を確認した。最後に、さまざまなeFab分子を用いて、Fc部分に融合させたHER3(aa21-643)の固定化細胞外ドメイン(ECD)への結合をELISAで決定した(
図7C)。HER3-Fc融合タンパク質を、PBSで希釈した2μg/mlの濃度でポリスチレン製マイクロタイタープレート上に固定化させた。残りの結合部位は、PBS、2%脱脂乳(MPBS)でブロックした。次に、プレートを、さまざまなeFab分子の段階希釈液でインキュベートした。洗浄後、結合したeFab分子をHRP-コンジュゲート抗His抗体で検出した。TMBおよびH
2O
2を基質として使用した。すべてのeFab分子は、HER3-Fc融合タンパク質に濃度依存的な結合(ナノモル範囲のEC
50値)を示した(表1)。
【0309】
要約すると、データでは、例えば、アラニン、アスパラギン、スレオニン、またはトリプトファンを用い、hetEHD2ドメイン(鎖Aにおける位置Cys14および鎖Bにおける位置Cys102)にさまざまな組み合わせの置換を導入し、それによってC14とC102の間の元の共有結合ジスルフィド結合の1つを除去することによって機能的なeFab分子を作製できることを示している。ヘテロ二量体形成や抗原結合に影響を与えることなく、さまざまな組み合わせの残基を導入できるという発見は、これらの位置での予想外の程度の可塑性を示している。興味深いことに、いくつかの置換、例えば1つの鎖においてアスパラギン(N)、他の1つの鎖においてアラニン(A)またはスレオニンは、生産性および抗原結合に関して他よりわずかに優れたeFabが得られた。
【0310】
第2の実験では、4つの新しいeFab分子(C14A,N39Q:N39,C102A; C14A,N39Q:N39,C102N; C14N,N39Q:N39,C102T; C14T,N39Q:N39,C102N)および最初に使用したeFab(C14S,N39Q:N39,C102S)を分析した。この場合も、分子をコトランスフェクトしたHEK293-6E浮遊細胞内で生成させ、Ni-NTA親和性精製を用いて精製した。分子の完全性は、サイズ排除クロマトグラフィーにより分析した。ここでは、すべての分子で正しいサイズの単一のピークが観察され、これは、すべてのバリアントでヘテロ二量体が正しく形成されていることを示している(
図8)。
【0311】
実施例4:さまざまなグリコシル化を有するさまざまなhetEHD2分子
EHD2ヘテロ二量体の形成のための新規設計に基づき、両鎖上のセリン置換(鎖A:C14S;鎖B:C102S)を用いて、hetEHD2ドメインのN-グリコシル化の変化が発現および機能的ヘテロ二量体の形成に及ぼす影響を研究した。当然ながら、EHD2ドメインは位置N39にN-グリカンを担持する。HER3を標的とするeFabを用い、両方のEHD2ドメインにN-グリカンを有するeFab(eFab1)(C14S、N39(配列番号:37):N39、C102S(配列番号:31))、グリコシル化EHD2部位を1つのみ有する2つのeFab(eFab2: C14S、N39Q(配列番号: 36):N39、C102S(配列番号:31);eFab3:C14S、N39(配列番号:37):N39Q、C102S(配列番号:38))、およびEHD2にいかなるN-グリコシル化もない1つの分子(eFab4)(C14S、N39Q(配列番号:36):N39Q、C102S(配列番号:38))を作製した。得られた分子は
図9Aに概略的に示す。V
H-hetEHD2鎖は、精製および検出のためにHis-タグをさらに含んでいた。1価eFab分子を、ポリエチレンイミンをトランスフェクション試薬として用い、V
H-hetEHD2-2鎖およびV
L-hetEHD2-1鎖をコードする2つのプラスミドの一過性コトランスフェクション後にHEK293-6E細胞内で発現させた。細胞培養上清に分泌されたタンパク質はNi-NTA親和性クロマトグラフィーを用いて精製した。SDS-PAGE分析における非還元条件下で、2つの異なるポリペプチド鎖からなるインタクトなeFab分子に該当する約50kDaの1つの主要なバンドが観察された(
図9B)。
【0312】
さまざまなFab分子のHER3(aa21-643)の細胞外ドメイン(ECD)への結合を、ELISAにより決定した(
図9C)。HER3-Fc融合タンパク質を、PBSで希釈した2μg/mlの濃度でポリスチレン製マイクロタイタープレートにコーティングした。残りの結合部位は、PBS、2%脱脂乳(MPBS)でブロックした。次に、プレートを、100nMのさまざまなFab分子でインキュベートした。洗浄後、結合した分子を、HER3-Fcを固定化抗原として用い、HRP-コンジュゲート抗His抗体で検出した。TMBおよびH2O2を基質として使用した。4つの異なるFab分子はすべて、HER3-Fcに対して相似の結合を示した(
図9C)。これらの実験により、hetEHD2部分のさまざまなグリコシル化誘導体を用いて機能的なヘテロ二量体が形成されることを確認した。
【0313】
実施例5:HER3およびCD3を標的とする二重特異性3価eIg-Fab分子
二重特異性2価eIg-Fab分子の作製、すなわちFab断片のeIg分子への融合のために、i)抗体3-43(抗HER3;Schmitt et al, 2017, mAbs, 9:831-843)に由来するFabドメイン2つ、すなわちIgG1のC
H1/C
Lヘテロ二量体に融合される、HER3に特異的なFvドメイン、ii)IgEの修飾C
H2ドメイン(hetEHD2)に融合される、CD3に特異的なFabドメイン1つ、iii)ヘテロ二量体のFc部分(knob-into-hole技術)、のさまざまな組み合わせを使用した(
図4)。CD3結合部位は、抗CD3 mAb UCHT1のヒト化バージョンに由来するものであった。二重特異性3価eIg-Fab分子は、HER3結合部位およびCD3結合部位の配置が異なる4つの異なるポリペプチド鎖からなる(詳細は、
図4を参照)。このように、二重特異性3価eIg-Fab分子は、HER3に対する2つの抗原結合部位およびCD3に対する1つの結合部位を示す。HER3に対する1つの結合部位、CD3に対する1つの結合部位を有する二重特異性2価eIg分子(eIg1)の分子構造は、実施例2に記載する。軽鎖および重鎖の配列は、表2に記載する。
【0314】
表2:eIg分子の作製のためのさまざまなポリペプチド鎖。2つの軽鎖および2つの重鎖を用い、さまざまな二重特異性eIgおよびeIg-Fab分子を作製した。
図10に、さまざまな分子の使用を示す。
【表2】
【0315】
二重特異性の、2価または3価のeIg分子は、ポリエチレンイミン(PEI;線形、25kDa、Sigma-Aldrich、764604)をトランスフェクション試薬として用い、一過性にトランスフェクトしたHEK293-6E細胞内で生成させた。トランスフェクション後96時間で上清を収集し、タンパク質をタンパク質A親和性クロマトグラフィーにより精製した。タンパク質の純度はSDS-PAGE分析で確認し(
図10B)、ここで、すべての二重特異性3価eIg-Fab分子により、還元条件下での3つの主要なバンドを明かした:それぞれ重鎖のV
H3-43-C
H1-リンカー-V
HhuU3-EHD2-Fc
hole、V
HhuU3-EHD2-リンカー-V
H3-43-C
H1-Fc
knobまたはV
H3-43-C
H1-リンカー-V
H3-43-C
H1-Fc
knobに該当する約77kDaの1つのバンド、V
H3-43-C
H1-Fc
knob、V
H3-43-C
H1-Fc
holeまたはV
LhuU3-EHD2-1(N39Q)に該当する約55kDaの第2のバンド、および2つの異なる軽鎖(V
L3-43-C
LλおよびV
LhuU3-EHD2-1(N39Q))に該当する約26kDaの第3のバンド。2価の二重特異性eIg分子では、重鎖のV
H3-43-C
H1-Fc
knobおよびV
HhuU3-EHD2-Fc
hole、ならびに軽鎖のV
LhuU3-EHD2-1(N39Q)およびV
L3-43-C
Lλに該当する約55kDaおよび26kDaの2つのバンドがそれぞれ観察された。全てのeIg-Fab分子では、非還元条件下で、インタクトな抗体に該当する180kDaを超える主要なバンドが観察された。二重特異性の2価および3価のeIg分子の純度、完全性および均質性は、Waters 2695 HPLCおよびTSKgel SuperSW mAb HRカラム(Tosoh Bioscience)を用い、0.1M Na
2HPO
4/NaH
2PO
4、0.1M Na
2SO
4、pH6.7を移動相にして、流速0.5ml/minでサイズ排除クロマトグラフィーにより決定した。ここで、すべてのタンパク質は、正しく会合された分子に該当する1つの主要なピークとして溶出した(
図10C)。
【0316】
eIg-Fab分子のさまざまなHER3レベルを示す癌細胞株(LIM1215:19,877 HER3/細胞;BT474:11,244 HER/細胞)およびCD3発現細胞株(Jurkat)への結合をフローサイトメトリーにより決定した(
図11)。付着した細胞をPBSで洗浄し、37℃で直ちにトリプシン処理した。トリプシンをFCS含有培地でクエンチし、遠心分離(500xg、5分)により除去した。1x10
5の標的細胞を、PBA(2%(v/v)FCS、0.02%(w/v)NaN
3を含有するPBS)で希釈したeIgまたはeIg-Fab分子の段階希釈液で、4℃で1時間インキュベートした。結合したタンパク質は、PE-コンジュゲート抗ヒトFc抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories Inc.)を用いて検出した。蛍光は、MACSQuant(登録商標)Analyzer10(Miltenyi Biotec)により測定し、データは、FlowJo(Tree Star)を用いて分析した。相対平均蛍光強度(MFI)は以下のように計算した:相対MFI=((MFI
サンプル-(MFI検出-MFI
細胞))/MFI
細胞s)。2つのHER3発現癌細胞株に対して、二重特異性3価eIg-Fab分子では、二重特異性2価eIg1に比べ優れた結合を示した。二重特異性3価eIg-Fab分子のEC
50値は低ナノモル範囲であったが、二重特異性2価eIg1分子では50倍まで弱い結合を示した(
図11A、B)(表3)。CD3発現ヒト細胞株Jurkatに対して、eIg1(配列番号:13、14、15、16)およびeIg-Fab4(配列番号:13、14、15、41)ではEC
50値がそれぞれ5.1±2.2 nMおよび5.9±0.5nMで相似の結合性を示したが、eIg-Fab2(配列番号:13、15、16、20)およびeIg-Fab3(配列番号:13、15、39、40)ではEC
50値がそれぞれ0.2±0.08nMおよび1.1±0.5nMで強い結合を示した(表3)。このように、3価の二重特異性eIgは、2価の二重特異性eIgと比較して、HER3に対する価数が高いため、HER3発現癌細胞に対する優れた結合をもたらした。対照的に、3価の二重特異性eIg分子のCD3発現Jurkat細胞への異なる結合は、CD3結合に対するeIg-Fab分子内のCD3結合部位の位置の影響を示している。
【0317】
表3:フローサイトメトリーにより分析したeIg分子の細胞結合。EC
50値(nM)は、HER3発現細胞(LIM1215およびBT474)およびCD3発現Jurkat細胞とeIg分子の段階希釈液との組み合わせを用いて決定した。平均値±SD、n=3。
【表3】
【0318】
二重特異性の、2価および3価のeIg分子によって媒介される標的細胞に対するPBMCの細胞毒性効果は、抗原発現の異なるHER3-陽性細胞株(LIM1215:19,877 HER3/細胞;BT474:11,244 HER/細胞)を用いて決定した。標的細胞(2x10
4細胞/ウェル)を、PBMC(E:T比10:1)を添加する前に、二重特異性の2価または3価のeIgまたはeIg-Fab抗体でRTで15分間インキュベートした。37℃で3日間インキュベートした後、上清を捨て、生存可能な標的細胞を、クリスタルバイオレットを用いて染色した。洗浄と乾燥後、残りの色素をメタノール(50μl/ウェル)に解かし、Tecan spark(Tecan)を用いて550nMで光学密度を測定した。eIg分子は、刺激されていないPBMCをリダイレクトして、HER3発現癌細胞を濃度依存的に溶解することができていた(
図12)。eIg抗体の細胞毒性活性は、効力(細胞死滅におけるEC
50値)によって評価した(表4)。
【0319】
LIM1215およびBT474の2つの細胞株に対して、二重特異性3価eIg-Fab4ではEC50値がそれぞれ0.1±0.09nMおよび0.2±0.1nMで最も高い効力が観察された。二重特異性3価分子Ig-Fab3では、約4倍弱い効力が観察された。二重特異性2価eIg分子eIg1では、EC50値が5.8±2.9nM(LIM1215)および3.8±0.6nM(BT474)で効力のさらなる低下が観察された。eIg-Fab2では非常に低い細胞殺傷効力が見られた。要約すると、これらの実験では、3価の二重特異性eIg-Fabが、2価の二重特異性eIgと比較して、すなわち追加の標的結合部位のために、T細胞再標的化を介して細胞毒性の増加を媒介できることを示している。しかしながら、実験ではまた、効力が分子組成、すなわち、eIg-Fab分子内でのHER3およびCD3結合部位の位置によって影響を受けることを示している。
【0320】
表4:種々の腫瘍細胞株に対するeIgおよびeIg-Fab分子の細胞毒性活性。EC
50(nM)は、HER3発現腫瘍細胞ならびにeIgおよびeIg-Fab分子の段階希釈液を用いて決定した。平均値±SD、n=3、n.d.=未定。
【表4】
【0321】
実施例6:HER3およびFAPを標的とする2価の二重特異性eIg分子
治療用抗体からの異なる可変ドメインに基づき、i)HER3に特異的なFvドメイン(抗体3-43;Schmitt et al, 2017, mAbs 9, 831-843)をIgG1のC
H1/C
Lヘテロ二量体と組み合わせ、ii)線維芽細胞活性化タンパク質(FAP; hu36; Fabre et al., 2020, Clin. Cancer Res. 26, 3420-3430)に特異的なFvドメインをIgEの修飾C
H2ドメイン(hetEHD2)と組み合わせ、iii)ヘテロダイマーのFc部分に融合させることにより(knob-into-hole技術)、二重特異性かつ2価eIg分子を作製した。このように、二重特異性分子は、4つの異なるポリペプチド鎖からなる:軽鎖のV
L3-43-C
Lλ(配列番号:13)は重鎖のV
H3-43-C
H1-Fc
knob(配列番号:14)と対合し、軽鎖のV
Lhu36-EHD2-1(N39Q)(配列番号:43))は重鎖のV
Hhu36-EHD2-2-Fc
hole(配列番号:42)と対合する。二重特異性2価eIg分子は、HER3に対する1つの抗原結合部位およびFAPに対する1つの結合部位を示す。それぞれのポリペプチド鎖は
図13Aに例示的に示し、得られた抗体分子は
図13Bに概略的に示す。
【0322】
二重特異性2価eIg分子は、両重鎖および両軽鎖をコードする4つのプラスミドを同時投与した後、ポリエチレンイミンをトランスフェクション試薬として用い、一過性にトランスフェクトしたHEK293-6E細胞内に発現させた。細胞培養上清に分泌されたタンパク質は、タンパク質A親和性クロマトグラフィーを用いて精製した。SDS-PAGE分析により、還元条件下での4つの主要なバンドを明かした:抗体の2つの重鎖に該当する約55kDaの2つのバンド、および抗体の2つの軽鎖に該当する約23kDaの2つのバンド。非還元条件下では、4つの異なるポリペプチド鎖からなるインタクトな抗体に該当する約200kDaの1つの主要なバンドが観察された(
図13C)。eIg分子の純度、完全性および均質性は、サイズ排除クロマトグラフィーにより確認した(
図13D)。eIg分子のHER3(aa21-643)およびFAP(aa32-728)の細胞外ドメイン(ECD)への結合はELISAにより決定した。Hisタグ付きHER3タンパク質およびFlagタグ付きFAPタンパク質を、PBSで希釈した2μg/mlの濃度でポリスチレン製マイクロタイタープレート上にコーティングした。残りの結合部位は、PBS、2%脱脂乳(MPBS)でブロックした。次に、プレートを二重特異性eIg抗体の段階希釈液でインキュベートした。洗浄後、結合した抗体は、HER3-HisまたはFAP-Flagを固定化抗原として用い、HRP-コンジュゲート抗ヒトFc抗体で検出した。TMBおよびH
2O
2を基質として使用した。eIg抗体は、HER3-HisおよびFAP-Flagに対して濃度依存的な結合(EC
50値はナノモル範囲(HER3では3.4nM、FAPでは7.6nM))を示した(
図13E)。これらの実験により、eIg抗体がHER3およびFAPの両方の抗原に結合することを確認した。
【0323】
実施例7:HER3を標的とする2価の単特異性eIg分子
抗HER3 2価eIg分子は、抗HER3抗体(3-43)(Schmitt et al., 2017, mAbs 9, 831-843)の可変ドメインをIgEの修飾CH2ドメイン(hetEHD2)と組み合わせ、さらにホモ二量体化Fc領域に融合させることによって作製した。このように、この分子は、2つの異なるポリペプチド鎖からなる:軽鎖のV
L3-43-EHD2-1(配列番号:23)および重鎖のV
H3-43-EHD2-2-Fc(配列番号:22)。単一特異性2価eIg分子は、HER3に対して2つの同一の抗原-結合部位を示す。それぞれのポリペプチド鎖は
図14Aに例示的に示し、得られた抗体分子は
図14Bに概略的に示す。
【0324】
重鎖および軽鎖をコードする2つのプラスミドを同時投与した後、ポリエチレンイミンをトランスフェクション試薬として用い、一過性にトランスフェクトしたHEK293-6E細胞内で単一特異性2価eIg分子を発現させた。細胞培養上清に分泌されたタンパク質は、タンパク質A親和性クロマトグラフィーを用いて精製した。SDS-PAGE分析に入り、還元条件下での2つの主要なバンドを明かした:抗体の重鎖に該当する約55kDaの1つのバンド、抗体の軽鎖に対応する約25kDaの1つのバンド(
図14C)。eIg分子のHER3(aa21-643)の細胞外ドメイン(ECD)への結合は、ELISA法により決定した。Hisタグ付きHER3タンパク質を、PBSで希釈した2μg/mlの濃度でポリスチレン製マイクロタイタープレート上にコーティングした。残りの結合部位は、PBS、2%脱脂乳(MPBS)でブロックした。次に、プレートを単一特異性eIg抗体の段階希釈液でインキュベートした。洗浄後、結合した抗体は、HRP-コンジュゲート抗ヒトFc抗体で検出した。TMBおよびH2O2を基質そして使用した。単一特異性2価eIg抗体は、HER3-Hisに対して濃度依存的な結合(EC
50値はナノモル範囲(HER3では1.4nM))を示した(
図14D)。親抗体のIgG 3-43は固定化HER3に対して相似の結合を示した。この実験により、単一特異性2価eIgs抗体の、固定化抗原としてのHER3への結合を確認した。要約すると、同じエピトープに対して2つの抗原-結合部位を有する単一特異性2価eIg分子の作製に成功した。
【0325】
実施例8:HER3およびEGFRを標的とする4価の二重特異性eIg分子
二重特異性4価eIg-Fab分子は、抗EGFR抗体(hu225; Seifert et al., 2014, Mol Cancer Ther 13, 101-111)の可変ドメインとIgG1のC
H1/C
Lヘテロ二量体、および抗HER3(3-43; Schmitt et al., 2017, mAbs 9, 831-843)の可変ドメインとIgEの修飾CH2ドメイン(hetEHD2)を組み合わせて、さらに、ホモ二量体化Fc部分と組み合わせることによって作製した。このように、4価の二重特異性分子は、3つの異なるポリペプチド鎖からなる:軽鎖のV
L3-43-EHD2-1(配列番号:23)およびV
Lhu225-C
Lκ(配列番号:25)、ならびに重鎖のV
Hhu225-C
H1-V
H3-43-EHD2-2-Fc(配列番号:24)。重鎖における2つのFab部分は、10個のアミノ酸を含むリンカー(GGSGG)
2により分離させた。この二重特異性4価eIg分子は、EGFRに対する2つの抗原結合部位とHER3に対する2つの結合部位を示している。それぞれのポリペプチド鎖は
図15Aに例示的に示し、得られた結合分子は
図15Bに概略的に示す。
【0326】
4価の二重特異性eIg-Fab分子は、重鎖および両軽鎖をコードする3つのプラスミドを同時投与した後、ポリエチレンイミンをトランスフェクション試薬として用い、一過性にトランスフェクトしたHEK293-6E細胞内で発現させた。細胞培養上清に分泌されたタンパク質は、タンパク質A親和性クロマトグラフィーを用いて精製した。SDS-PAGE分析により、還元条件下で3つの主要なバンドを明かした:抗体の重鎖に該当する約80kDaの1つのバンド、抗体の2つの軽鎖に対応する約26kDaの2つのバンド(
図15C)。非還元条件下では、3つの異なるポリペプチド鎖からなるインタクトな抗体に該当する約250kDaの1つの主要なバンドが観察された。二重特異性4価eIg-Fab分子の純度、完全性および均質性はサイズ排除クロマトグラフィーにより確認した(
図15D)。
【0327】
この4価eIg-Fab分子のEGFR(aa20-643)およびHER3(aa21-643)の細胞外ドメインへの結合はELISAにより決定した(
図15E)。Hisタグ付きEGFRまたはHER3タンパク質を、PBSで希釈した2μg/mlの濃度でポリスチレン製マイクロタイタープレート上に固定化した。残りの結合部位は、PBS、2%脱脂乳(MPBS)でブロックした。次に、プレートを、二重特異性eIg-Fab抗体の段階希釈液でインキュベートした。洗浄後、結合した抗体は、HRP-コンジュゲート抗ヒトFc抗体で検出した。TMBおよびH2O2を基質として使用した。二重特異性4価抗体は、EGFR-HisおよびHER3-Hisに対して濃度依存的な結合(EC
50値はナノモル範囲(EGFRでは0.39±0.25nM、HER3では3.3±2.7nM))を示した(
図15E)(表5)。両方の抗原の同時結合は、二重特異性eIg-Fab分子の段階希釈液で、続いてHER3-Hisタンパク質でインキュベートした固定化EGFR-Fcで実証した。結合したHER3-Hisは、HRP-コンジュゲート抗His検出抗体を介して検出した。濃度依存性結合は、約0.23±0.01nMのEC
50値で観察された。要約すると、データは、eIgプラットフォーム技術を用い、2+2結合部位を有する二重特異性4価eIg分子の作製を実証している。
【0328】
表5:ELISAにより分析した抗体のEGFRおよびHER3への結合。EC
50値(nM)は、抗原としてのEGFR-His、HER3-His、またはEGFR-FcおよびHER3-His、ならびに抗体の段階希釈液を用いて決定した。平均値±SD、n=3、n.d.=未定。
【表5】
【0329】
実施例9:HER3およびEGFRを標的とする2価の二重特異性Fab-eFab分子
抗EGFR(hu225; Seifert et al., 2014, Mol Cancer Ther 13, 101-111)の可変ドメインとIgG1のC
H1/C
Lヘテロ二量体、抗HER3(3-43; Schmitt et al., 2017, mAbs 9, 831-843)の可変ドメインとIgEの修飾CH2ドメイン(hetEHD2)を組み合わせることによって二重特異性2価Fab-eFab分子、すなわちFc領域のないものを作製した。Fab-eFab分子は、軽鎖のV
L3-43-EHD2-1(配列番号:23)およびV
Lhu225-C
Lκ(配列番号:25)、ならびに「重鎖」のV
Hhu225-C
H1-V
H3-43-EHD2-2(配列番号:44)からなる。この二重特異性2価Fab-eFab分子は、EGFRに対する1つの抗原結合部位およびER3に対する1つの結合部位を示した。重鎖は、分子の精製および検出のために、C-末端にHisタグを含んでいた。2つのFab/eFab部分は、10個のアミノ酸を含むリンカー(GGSGG)
2を介して結合していた。それぞれのポリペプチド鎖は
図16Aに例示的に示し、得られた抗体分子は
図16Bに概略的に示す。Fab-eFab分子の純度、完全性および均質性は、サイズ排除クロマトグラフィーにより確認した(
図16C)。
【0330】
このFab-eFab分子のEGFR(aa20-643)およびHER3(aa21-643)の細胞外ドメインへの結合をELISAにより分析した。Hisタグ付きEGFRおよびHER3タンパク質を、PBSで希釈した2μg/mlの濃度でポリスチレン製マイクロタイタープレート上にコーティングした。残りの結合部位は、PBS、2%脱脂乳(MPBS)でブロッキングした。次に、プレートを、二重特異性Fab-eFab抗体または親抗体(IgG hu225、IgG3-43)の段階希釈液でインキュベートした。洗浄後、結合した抗体は、両方の固定化抗原を用い、HRPコンジュゲート抗ヒトFab抗体で検出した。TMBおよびH
2O
2を基質をとして使用した。Fab-eFab抗体は、EGFR-HisおよびHER3-Hisに対して濃度依存的な結合(EC
50値はナノモル範囲(EGFRでは6.5nM;HER3では3.9nM))を示した(
図16D)(表6)。親抗体は、各分子に2つの抗原結合部位があるため、固定化抗原に対して高い結合能を示した。両抗原への同時結合は、固定化HER3-Hisを用いて、Fab-eFab分子の段階希釈液、そして第2の可溶性抗原としてのEGFR-moFcタンパク質でインキュベートすることにより実証した。結合した第2の抗原は、HRP-コンジュゲート抗マウスFc検出抗体を介して検出した。濃度依存的な結合(EC
50値は約1.4nM)が観察された。これらの実験により、二重特異性2価Fab-eFab抗体のEGFRおよびHER3への結合を確認した。
【0331】
表6:ELISAにより分析した、抗体のEGFRおよびHER3への結合。EC
50値(nM)は、EGFR-His、HER3-His、またはHER3-HisおよびEGFR-moFcを抗原として、抗体の段階希釈液と組み合わせて用いて決定した。平均値±SD、n=1、n.d.=未定、-=未実施。
【表6】
【0332】
実施例10:FAPおよびマウスCD3を標的とする2価の二重特異性eIg分子-マウスCD3を結合する可変ドメインの異なる組成
二重特異性2価eIg分子は、抗線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)抗体(hu36; Fabre et al., 2020, Clin Cancer Res. 26, 3420-3430)をIgG1のC
H1/C
Lヘテロ二量体と組み合わせ、抗マウスCD3(2C11; Leo et al., 1987, Proc Natl Acad USA 84, 1374-1378)をIgEの修飾C
H2ドメイン(hetEHD2)と組み合わせ、さらにヘテロ二量化Fc部分(knob-into-hole技術)に融合させることにより作製した。ポリペプチド鎖の組成は、
図17Aに示す。このように、eIg分子の第1の部分は、軽鎖のV
Lhu36-CLκ(配列番号:45)および重鎖のV
Hhu36-C
H1-Fc(hole)(配列番号:46)を有するFAP-標的化アームからなる。分子Iは追加的に、軽鎖のV
H2C11-EHD2-1(配列番号:47)および重鎖のV
L2C11-EHD2-2-Fc(knob)(配列番号:48)を有するマウスCD3標的化アームからなる。第2の分子は、軽鎖のV
L2C11-EHD2-1(配列番号:49)および重鎖のV
H2C11-EHD2-2-Fc(knob)(配列番号:50)からなる。得られた抗体分子は、
図17Bに概略的に示す。両方のeIg分子の純度、完全性および均質性は、サイズ排除クロマトグラフィーにより確認した(
図17C)。
【0333】
両方の二重特異性eIg抗体のFAP発現HT1080-FAP細胞およびマウス脾臓細胞(マウスCD3を発現)への結合はフローサイトメトリーにより分析した。付着したHT1080-FAP細胞をPBSで洗浄し、37℃で直ちにトリプシン処理した。トリプシンはFCS含有培地でクエンチし、遠心分離(500xg、5分)により除去した。脾臓からマウス免疫細胞を採取するために、脾臓を抽出し、セルストレーナーを通して脾臓を潰すことによって、均質な細胞懸濁液を調製した。遠心分離(250xg、7分)により細胞を集めた後、赤血球を除去し、脾臓細胞を培地に再懸濁させた。100,000個のHT1080-FAP細胞または200,000個のマウス脾臓細胞を、PBA(2%(v/v)FCS、0.02%(w/v) NaN
3を含むPBS)で希釈した二重特異性eIg抗体の段階希釈液で4℃で1時間インキュベートした。細胞をPBAで2回洗浄した。結合した抗体は、PE標識抗ヒトFc二次抗体を用いて検出し、これを4℃でさらに1時間インキュベートした。洗浄後、Milltenyi MACSQuant(登録商標)Analyzer10で蛍光強度(MFI)の中央値を測定した。相対MFI(未染色細胞に対する)は、Flow Jo(Tree star)およびExcelで計算した。eIg分子は、細胞に濃度依存的に結合した。eIg分子IおよびIIは、HT1080-FAP細胞に対してそれぞれ2.9nMおよび2.7nMのEC
50値、マウス脾臓細胞に対してそれぞれ7.3nMおよび24.2nMのEC
50値で結合した(
図17D)(表7)。
【0334】
表7:フローサイトメトリーにより分析した抗体の細胞結合。EC
50値(nM)は、FAP発現HT1080-FAPまたはマウスCD3発現マウス脾臓細胞を標的細胞として、抗体の段階希釈液と組み合わせて用いて決定した。平均値±SD、n=1。
【表7】
【0335】
実施例11:eIg分子のFcε-受容体Iへの結合の欠如
eIg技術において、ヒトIgEに由来する修飾C
H2ドメインがヘテロ二量体化モジュールとして使用されている。そこで、hetEHD2を含む抗体分子が、高親和性IgE受容体FcεRIへの結合を欠くかどうかを調べた。FcεRIは、FcεRIの細胞外領域を含むFc融合タンパク質として作製した。ELISA実験(
図18)において、精製したFcεRIを、HER3およびCD3に特異的なeIg(実施例5)、EGFRおよびHER3に特異的な4価の二重特異性eIg-Fab(実施例10)、およびEGFRおよびHER3に特異的な2価の二重特異性Fab-eFab(実施例9)を含むさまざまなeIg誘導体でインキュベートした固定化抗原として使用した。対照として、EGFRおよびHER3を追加の固定化抗原として使用し、抗体のこれらの受容体への結合を確認した。FcεRI、EGFRおよびHER3を、PBSで希釈した2μg/mlの濃度でポリスチレン製マイクロタイタープレート上にコーティングした。残りの結合部位は、PBS、2%脱脂乳(MPBS)でブロックした。次に、プレートを、50nM eIg、またはeIg-Fab、およびFab-eFab分子でインキュベートして、異なる固定化受容体への結合を研究した。さらに、Fcε受容体への結合を確認するために、ヒトIgEをこの実験に含めた。洗浄後、結合した抗体は抗ヒトFab抗体で検出した。TMBおよびH
2O
2を基質として使用した。IgEはFcεRIに特異的に結合した。3つのeIg誘導体はFcεRIへの結合を示さなかったが、それぞれの標的抗原を強く認識し、すなわち、eIg HER3xCD3はHER3に結合し、eIg-Fab EGFRxHER3およびFab-eFab EGFRxHER3はEGFRおよびHER3に結合した。HER3結合部位の由来である対照抗体IgG 3-43はHER3に結合し、EGFR結合部位の由来であるIgG hu225はEGFRに結合した。これら2つの対照IgG抗体では、FcεRIへの結合は見られなかった(
図18)。このように、この実験では、eIg分子が、肥満細胞および好塩基球によって発現されるIgE受容体FcεRIへの結合を欠いていることを実証している。したがって、EHD2またはhetEHD2を含む分子が、FcεRIに結合することによってこれらの免疫細胞の活性化をもたらすことを除外することができる。
【0336】
実施例12:SARS-CoV-2スパイクタンパク質を標的とするための二重特異性eIg分子
SARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質の異なるエピトープを二重標的化するために、二重特異性eIg-Fab分子を作製した。このアプローチでは、ウイルスのスパイクタンパク質のRBDドメインに結合する、公開されている抗体を使用した:P2B-2F6(Ju et al., 2020, Nature 584, 115-119)およびS309(Pinto et al., 2020, Nature 583, 290-295)。S309の可変ドメインをIgG1のC
H1/C
Lヘテロ二量体と組み合わせ、P2B-2F6の可変ドメインをhetEHD2ドメインと組み合わせ、さらにホモ二量体化Fc部と組み合わせて対称型4価の二重特異性eIg-Fab分子を作製した。この抗体は、軽鎖のV
LS309-CLκ(配列番号:51)およびV
LP2B-2F6-EHD2-1(配列番号:52)、ならびに重鎖のV
HS309-C
H1-V
HP2B-2F6-EHD2-2-Fc(配列番号:53)からなる。それぞれのポリペプチド鎖は
図19Aに例示的に示し、得られた抗体分子は
図19Bに概略的に示す。
【0337】
4価の二重特異性eIg-Fab分子は、重鎖および両軽鎖をコードする3つのプラスミドを同時投与し、ポリエチレンイミンをトランスフェクション試薬として用い、一過性にトランスフェクトしたHEK293-6E細胞内で発現させた。細胞培養上清に分泌されたタンパク質は、タンパク質A親和性 クロマトグラフィーを用いて精製した。SDS-PAGE分析により、還元条件下で3つの主要なバンド明かした:抗体の重鎖に該当する約85kDaの1つのバンド、抗体の2つの軽鎖に該当する約26kDaの2つのバンド(
図19C)。非還元条件下では、3つの異なるポリペプチド鎖からなるインタクトな抗体に対応する約250kDaの1つの主要なバンドが観察された。二重特異性4価eIg-Fab分子の純度、完全性および均質性はサイズ排除クロマトグラフィーにより確認した(
図19D)。
【0338】
このeIg-Fab分子のスパイクタンパク質のRBDドメインへの結合は、ELISAにより決定した。Hisタグ付きRBDを、PBSで希釈した2μg/mlの濃度でポリスチレン製マイクロタイタープレート上にコーティングした。残りの結合部位は、PBS、2%脱脂乳(MPBS)でブロックした。次に、プレートを、二重特異性eIg-Fab抗体の段階希釈液でインキュベートした。洗浄後、結合した抗体は、HRP-コンジュゲート抗ヒトFc抗体で検出した。TMBおよびH
2O
2を基質として使用した。二重特異性4価eIg-Fab抗体は、RBD-His抗原に対して濃度依存的な結合(EC
50値がナノモル範囲(1.0nM))を示した(
図19E)。これらの実験により、二重特異性4価eIg-Fab抗体のRBDへの結合を確認した。
【配列表】
【国際調査報告】