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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-01
(54)【発明の名称】研磨組成物及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20221124BHJP
   C09K 3/14 20060101ALI20221124BHJP
   C09G 1/02 20060101ALI20221124BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20221124BHJP
【FI】
H01L21/304 622D
H01L21/304 622X
C09K3/14 550Z
C09K3/14 550D
C09G1/02
B24B37/00 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022519091
(86)(22)【出願日】2020-09-18
(85)【翻訳文提出日】2022-05-11
(86)【国際出願番号】 US2020051401
(87)【国際公開番号】W WO2021061510
(87)【国際公開日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】62/904,857
(32)【優先日】2019-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514251329
【氏名又は名称】フジフイルム エレクトロニック マテリアルズ ユー.エス.エー., インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リャン、イェンナン
(72)【発明者】
【氏名】ウェン、リーチン
(72)【発明者】
【氏名】フー、ピン
(72)【発明者】
【氏名】リン、ターウェイ
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158CB01
3C158CB10
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3C158DA12
3C158DA17
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5F057EA12
5F057EA21
5F057EA23
5F057EA25
5F057EA26
5F057EA27
5F057EA31
5F057EA33
(57)【要約】
研磨組成物は、研磨剤;pH調整剤;バリア膜除去速度上昇剤;第1のlow-k除去速度阻害剤;第2のlow-k除去速度阻害剤;アゾール含有防錆剤;及びコバルト防錆剤を含む。本開示は、本開示に記載の研磨組成物を用いてコバルトを含有する基板を研磨する方法にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨剤;
pH調整剤;
バリア膜除去速度上昇剤;
第1のlow-k除去速度阻害剤;
第1のlow-k除去速度阻害剤とは異なる第2のlow-k除去速度阻害剤;
アゾール含有防錆剤;及び
コバルト防錆剤
を含む研磨組成物。
【請求項2】
前記研磨剤が、アルミナ;シリカ;チタニア;セリア;ジルコニア;アルミナ、シリカ、チタニア、セリア、若しくはジルコニアの共形成産物(co-formed product);被覆された研磨剤;表面改質された研磨剤;並びにそれらの混合物、からなる群から選択される、請求項1に記載の研磨組成物。
【請求項3】
前記研磨剤が前記組成物に対して約0.1重量%~約50重量%の量で存在する、請求項1に記載の研磨組成物。
【請求項4】
前記バリア膜除去速度上昇剤が、グルコン酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、グリコール酸、マロン酸、ギ酸、シュウ酸、酢酸、プロピオン酸、過酢酸、コハク酸、乳酸、酢酸カリウム、クエン酸カリウム、アミノ酢酸、フェノキシ酢酸、ビシン、ジグリコール酸、グリセリン酸、トリシン、アラニン、ヒスチジン、バリン、フェニルアラニン、プロリン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、リシン、チロシン、安息香酸、1,2-エタンジスルホン酸、4-アミノ-3-ヒドロキシ-1-ナフタレンスルホン酸、8-ヒドロキシキノリン-5-スルホン酸、アミノメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ヒドロキシルアミンO-スルホン酸、メタンスルホン酸、m-キシレン-4-スルホン酸、ポリ(4-スチレンスルホン酸)、ポリアネトールスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタン-スルホン酸、エチルリン酸、シアノエチルリン酸、フェニルリン酸、ビニルリン酸、ポリ(ビニルホスホン酸)、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸、ニトリルトリ(メチルホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタキス(メチルホスホン酸)、N,N,N’,N’-エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、n-ヘキシルホスホン酸、ベンジルホスホン酸、フェニルホスホン酸、これらの塩、並びにこれらの混合物、からなる群から選択される有機酸又はその塩である、請求項1に記載の研磨組成物。
【請求項5】
前記バリア膜除去速度上昇剤が前記組成物に対して約0.02重量%~約4重量%の量で存在する、請求項1に記載の研磨組成物。
【請求項6】
前記第1のlow-k除去速度阻害剤がノニオン性界面活性剤である、請求項1に記載の研磨組成物。
【請求項7】
前記ノニオン性界面活性剤が、アルコールアルコキシレート、アルキルフェノールアルコキシレート、トリスチリルフェノールアルコキシレート、ソルビタンエステルアルコキシレート、ポリアルコキシレート、ポリアルキレンオキシドブロック共重合体、テトラヒドロキシオリゴマー、アルコキシル化ジアミン、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記第1のlow-k除去速度阻害剤が前記組成物に対して約0.005重量%~約5重量%の量で存在する、請求項1に記載の研磨組成物。
【請求項9】
前記第2のlow-k除去速度阻害剤が両親媒性共重合体である、請求項1に記載の研磨組成物。
【請求項10】
前記両親媒性共重合体がスチレン-無水マレイン酸共重合体である、請求項1に記載の研磨組成物。
【請求項11】
前記第2のlow-k除去速度阻害剤が前記組成物に対して約0.005重量%~約5重量%の量で存在する、請求項1に記載の研磨組成物。
【請求項12】
前記アゾール含有防錆剤が、トリアゾール、テトラゾール、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、エチルベンゾトリアゾール、プロピルベンゾトリアゾール、ブチルベンゾトリアゾール、ペンチルベンゾトリアゾール、ヘキシルベンゾトリアゾール、ジメチルベンゾトリアゾール、クロロベンゾトリアゾール、ジクロロベンゾトリアゾール、クロロメチルベンゾトリアゾール、クロロエチルベンゾトリアゾール、フェニルベンゾトリアゾール、ベンジルベンゾトリアゾール、アミノトリアゾール、アミノベンズイミダゾール、ピラゾール、イミダゾール、アミノテトラゾール、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の研磨組成物。
【請求項13】
前記アゾール含有防錆剤が前記組成物に対して約0.0001重量%~約1重量%の量で存在する、請求項1に記載の研磨組成物。
【請求項14】
前記コバルト防錆剤がアニオン性界面活性剤である、請求項1に記載の研磨組成物。
【請求項15】
前記アニオン性界面活性剤が、
1つ又は複数のリン酸基及び
1つ又は複数の以下の基:炭素数6~24のアルキル鎖、0~18個のエチレンオキシド基、又はそれらの組み合わせ、
を含む、請求項14に記載の研磨組成物。
【請求項16】
前記コバルト防錆剤が前記組成物に対して約0.0001重量%~約1重量%の量で存在する、請求項1に記載の研磨組成物。
【請求項17】
前記pH調整剤が、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、エチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ジエチルジメチルアンモニウムヒドロキシド、ジメチルジプロピルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、トリス(2-ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムヒドロキシド、コリンヒドロキシド、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の研磨組成物。
【請求項18】
前記pH調整剤が前記組成物に対して約0.05重量%~約10重量%の量で存在する、請求項1に記載の研磨組成物。
【請求項19】
エチレンジアミン四酢酸、イミノ二酢酸、N-ヒドロキシエチル-エチレンジアミン三酢酸、ニトリロ三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、ジアミノシクロヘキサン四酢酸、ニトリロトリメチルホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるキレート剤をさらに含む、請求項1に記載の研磨組成物。
【請求項20】
前記キレート剤が前記組成物に対して約0.001重量%~約1重量%の量で存在する、請求項19に記載の研磨組成物。
【請求項21】
前記組成物が、
前記組成物に対し約0.1重量%~約50重量%の量の前記研磨剤;
前記組成物に対し約0.05重量%~約10重量%の量の前記pH調整剤;
前記組成物に対し約0.02重量%~約4重量%の量の前記バリア膜除去速度上昇剤;
前記組成物に対し約0.005重量%~約5重量%の量の前記第1のlow-k除去速度阻害剤;
前記組成物に対し約0.005重量%~約5重量%の量の前記第2のlow-k除去速度阻害剤;
前記組成物に対し約0.0001重量%~約1重量%の量の前記アゾール含有防錆剤;及び
前記組成物に対し約0.0001重量%~約1重量%の量の前記コバルト防錆剤;
を含む、請求項1に記載の研磨組成物。
【請求項22】
前記組成物のpHが約7~約14である、請求項1に記載の研磨組成物。
【請求項23】
研磨剤;
pH調整剤;
有機酸又はその塩;
ノニオン性界面活性剤;
両親媒性共重合体;
アゾール含有防錆剤;及び
アニオン性界面活性剤
を含む研磨組成物。
【請求項24】
基板の表面に請求項1に記載の研磨組成物を付与(apply)するステップ、ここで、前記表面はコバルトを含む;及び、
前記基板の前記表面にパッドを接触させて前記基板に対して前記パッドを動かすステップ、
を含む、基板を研磨する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は2019年9月24日に出願された米国仮出願番号62/904,857からの優先権を主張し、該米国仮出願の内容はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体産業は、プロセス、材料、及び集積化の革新を通じてのデバイスのさらなる小型化によりチップ性能を改善するよう不断に駆られている。以前の材料革新としては、銅の導入、相互接続構造における導電材料としてのアルミニウムの置き換え、非導電性/絶縁体の誘電材料からCu導電材料を隔離する分散バリアとしてのタンタル(Ta)/窒化タンタル(TaN)の使用が挙げられる。銅(Cu)は、その低い抵抗率、及び電子移動に対する良好な抵抗のために相互接続材料として選択された。
【0003】
しかし、バックエンド(Back End of Line)(BEOL)における効果的な相互接続抵抗を維持するには、より新世代のチップのフィーチャがより縮小するのと共に、多層Cu/バリア/誘電体積層物はより薄く、また、よりコンフォーマルでなければならない。Cu及びTa/TaNバリア膜をより薄くするスキームは、抵抗率及び堆積のフレキシビリティについて問題を生じる。例えば、寸法がより小さくなり、製造ノードが先進となると共に、抵抗率は指数関数的に悪化してきており、(フロントエンド(Front End of Line)(FEOL)における)トランジスタ回路速度の向上は、導電性Cu/バリアの配線(BEOL)に由来する遅れにより半減している。ライナー材料、バリア層、及び導電層としての使用のための主要な候補としてコバルト(Co)が浮上している。さらに、コバルトは、W金属コンタクト、プラグ、ビア、及びゲート材料などの多様な用途におけるタングステン(W)を置き換えるものとしても目下研究されている。
【0004】
多くの現在入手可能なCMPスラリーは、従来の(older)チップ設計においてより一般的であった材料、例えば前述の銅及びタングステン、を除去するように特に設計されていた。コバルトがより化学腐食しやすいことから、これら従来の(older)CMPスラリー中の特定の成分はコバルトにおいて有害で許容できない欠陥をもたらし得る。結果として、コバルト層上で銅研磨スラリーを用いると、許容できない腐食、ウェハトポグラフィー、及び除去速度選択性がしばしば生じる。
【0005】
半導体製造における金属成分としてのコバルト(Co)の使用が増えると共に、顕著な(significant)Co腐食無しにCo含有表面上の誘電体成分又はバリア成分を効率的に研磨することができるCMPスラリーに対する市場ニーズが存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
この概要説明は、後述の詳細な説明においてさらに説明される概念からの抜粋を紹介するために設けたものである。この概要説明は、特許請求の範囲に記載の主題の重要あるいは必須の特徴を特定することを意図したものではなく、また、特許請求の範囲に記載の主題の範囲を制限するための助けとして使用することを意図したものでもない。
【0007】
本開示における定義では、他に断りの無い限り、記載された全てのパーセント値は、化学機械研磨組成物の総重量に対する重量パーセントであると理解すべきである。
【0008】
一つの態様では、本開示に記載の実施形態は、研磨剤;pH調整剤;バリア膜除去速度上昇剤;第1のlow-k除去速度阻害剤;第1のlow-k除去速度阻害剤とは異なる第2のlow-k除去速度阻害剤;アゾール含有防錆剤;及びコバルト防錆剤を含む研磨組成物に関する。
【0009】
別の態様では、本開示に記載の実施形態は、研磨剤;pH調整剤;有機酸又はその塩;ノニオン性界面活性剤;両親媒性共重合体;アゾール含有防錆剤;及びアニオン性界面活性剤を含む研磨組成物に関する。
【0010】
さらに別の態様では、本開示に記載の実施形態は、請求項1に記載の研磨組成物を基板の表面に付与するステップ、ここで前記表面はコバルトを含む;及び、前記基板の前記表面にパッドを接触させて該パッドを前記基板に対して動かすステップ、を含む、基板を研磨する方法に関する。
【0011】
特許請求の範囲に記載の主題の他の態様及び利点は、以下の記載及び添付の特許請求の範囲から明らかになるものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示に記載の実施形態は、概して、組成物、並びに、少なくともコバルト部分を含む基板、より具体的には少なくともコバルト部分及び銅部分を含んでいてもよい基板を研磨するために前記組成物を用いる方法に関する。本開示に記載の組成物は、効果的にlow-k除去率を抑制し、コバルトライナーの損失を最小化し、研磨後の銅表面上に観察される欠陥を減少させることが可能ながらも、依然としてバリア膜(例えば、Ta膜又はTaN膜)を効果的に除去する。例えば、本開示に記載の組成物は、銅、コバルトライナー、バリア(Ta、TaN)、及び誘電体材料(TEOS、low-k、ultra low-k、等々)を含む先進ノードの膜を研磨するのに特に有用であり得る。
【0013】
バリア層として、導電層として、及び/又はWを置換するものとしてコバルト(Co)が導入されると共に、顕著なCo腐食を生じずに有効な材料除去速度でCoを研磨することが可能であり、他の金属及び金属酸化物(Cu、Ti、Ta、TiO、RuO、等々)並びに絶縁膜(dielectric films)(SiN、ケイ素酸化物、ポリSi、low k誘電体(例えばカーボンドープしたケイ素酸化物)、等々)の研磨速度についての選択の範囲を有するCMPスラリーへの市場ニーズが存在する。CoはCu及びその他の貴金属よりも化学的により反応性であるため、Co腐食防止は先進ノードのスラリー設計において非常に難易度が高い(very challenging)。現在の金属研磨スラリーは、CMPプロセスにおいてCo腐食の問題を被るため、Coを含む表面を研磨する上では不適応(ill-equipped)である。加えて、後続の製造プロセスのためにパターン形成された半導体基板に平滑な表面を形成するよう、研磨中にある程度の量のCoを除去することは一般的に望ましい。例えば、いくつかの作製プロセスにおいては、過剰な銅堆積を除去した後では銅部分及びコバルト部分においてかなりの量のディッシングがしばしば存在する。この理由のため、後続のバリア研磨ステップにおいて、研磨された膜が平滑なトポグラフィーを有しうるように先のディッシングを補正するよう、本開示の研磨組成物は、銅金属を除去しライナーからコバルトを除去するよりも速い速度でバリア材料(Ta又はTaN)を研磨するように配合することができる。したがって、本開示における研磨組成物の目標の1つは、特定の標的材料(例えばTa又はTaN)を効果的に除去しながらも適切なCo除去速度を有することである。
【0014】
1つ又は複数の実施形態では、研磨組成物は、研磨剤;pH調整剤;バリア膜除去速度上昇剤;第1のlow-k除去速度阻害剤;第2のlow-k除去速度阻害剤;アゾール含有防錆剤;及びコバルト防錆剤を含む。1つ又は複数の実施形態では、前記研磨組成物はキレート剤も含んでもよい。1つ又は複数の実施形態では、本開示に係る研磨組成物は、約0.1重量%~約50重量%の研磨剤、約0.05重量%~約10重量%のpH調整剤、約0.02重量%~約4重量%のバリア膜除去速度上昇剤、約0.005重量%~約5重量%の第1のlow-k除去速度阻害剤、約0.005重量%~約5重量%の第2のlow-k除去速度阻害剤、約0.0001重量%~約1重量%のアゾール含有防錆剤、約0.0001重量%~約1重量%のコバルト防錆剤、及び残余の重量%(例えば、約20重量%~約99重量%)の溶媒(例えば、脱イオン水)を含んでもよい。1つ又は複数の実施形態では、前記研磨組成物は、さらに、約0.001重量%~約1重量%のキレート剤を含んでもよい。
【0015】
1つ又は複数の実施形態では、本開示は、使用前に水で2倍まで、又は4倍まで、又は6倍まで、又は8倍まで、又は10倍まで希釈されて使用することができる濃縮研磨組成物を提供する。他の実施形態では、本開示は、前記研磨組成物、水、及び任意に(optionally)酸化剤を含む、コバルト基板上で使用するための使用時点の(point-of-use)(POU)研磨組成物を提供する。
【0016】
1つ又は複数の実施形態では、POU研磨組成物は、約0.1重量%~約12重量%の研磨剤、約0.05重量%~約5重量%のpH調整剤、約0.02重量%~約2重量%のバリア膜除去速度上昇剤、約0.005重量%~約0.5重量%の第1のlow-k除去速度阻害剤、約0.005重量%~約0.5重量%の第2のlow-k除去速度阻害剤、約0.0001重量%~約0.1重量%のアゾール含有防錆剤、約0.0001重量%~約0.1重量%のコバルト防錆剤、任意に(optionally)約0.1重量%~約5重量%の酸化剤、及び約80重量%~約99重量%の溶媒(例えば、脱イオン水)を含んでもよい。1つ又は複数の実施形態では、前記POU研磨組成物は、さらに、約0.001重量%~約0.1重量%のキレート剤を含んでもよい。
【0017】
1つ又は複数の実施形態では、濃縮研磨組成物は、約1重量%~約50重量%の研磨剤、約0.5重量%~約10重量%のpH調整剤、約0.2重量%~約4重量%のバリア膜除去速度上昇剤、約0.05重量%~約5重量%の第1のlow-k除去速度阻害剤、約0.05重量%~約5重量%の第2のlow-k除去速度阻害剤、約0.001重量%~約1重量%のアゾール含有防錆剤、約0.001重量%~約1重量%のコバルト防錆剤、及び残余の重量%(例えば、約20重量%~約98.5重量%)の溶媒(例えば、脱イオン水)を含んでもよい。1つ又は複数の実施形態では、前記濃縮研磨組成物は、さらに、約0.01重量%~約1重量%のキレート剤を含んでもよい。
【0018】
1つ又は複数の実施形態では、本開示に記載の研磨組成物は少なくとも1種(例えば、2種又は3種)の研磨剤を含んでもよい。いくつかの実施形態では、前記少なくとも1種の研磨剤は、カチオン性研磨剤、実質的に中性の研磨剤、及びアニオン性研磨剤からなる群から選択される。1つ又は複数の実施形態では、前記少なくとも1種の研磨剤は、アルミナ、シリカ、チタニア、セリア、ジルコニア、その共形成産物(co-formed product)(つまり、アルミナ、シリカ、チタニア、セリア、又はジルコニアの共生成産物(co-formed product))、被覆された研磨剤、表面改質された研磨剤、並びにそれらの混合物、からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、前記少なくとも1種の研磨剤はセリアを含まない。いくつかの実施形態では、前記少なくとも1種の研磨剤は高純度であり、アルコールは約100ppm未満、アンモニアは約100ppm未満、また、ナトリウムカチオン等のアルカリカチオンは約100十億分率(ppb)未満であってもよい。研磨剤は、POU研磨組成物の総重量に対して約0.1%~約12%(例えば、約0.5%~約10%)、又はその任意の部分範囲(subrange)、の量で存在してもよい。
【0019】
いくつかの実施形態では、前記少なくとも1種の研磨剤は、本開示に記載の研磨組成物に対して約0.1重量%以上(例えば、約0.5重量%以上、約1重量%以上、約2重量%以上、約4重量%以上、約5重量%以上、約10重量%以上、約12重量%以上、約15重量%以上、又は約20重量%以上)~約50重量%以下(例えば、約45重量%以下、約40重量%以下、約35重量%以下、約30重量%以下、約25重量%以下、約20重量%以下、約15重量%以下、約12重量%以下、約10重量%以下、又は約5重量%以下)の量で存在する。
【0020】
1つ又は複数の実施形態では、本開示に記載の研磨組成物は、少なくとも1種の(例えば、2種又は3種の)pH調整剤を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、前記少なくとも1種のpH調整剤は、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、エチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ジエチルジメチルアンモニウムヒドロキシド、ジメチルジプロピルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、トリス(2-ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムヒドロキシド、コリンヒドロキシド、及びこれらの任意の組み合わせ、からなる群から選択される。
【0021】
いくつかの実施形態では、前記少なくとも1種のpH調整剤は、本開示に記載の研磨組成物に対して約0.05重量%以上(例えば、約0.1重量%以上、約0.2重量%以上、約0.4重量%以上、約0.5重量%以上、約0.8重量%以上、約1重量%以上、約2重量%以上、約5重量%以上、又は約7重量%以上)~約10重量%以下(例えば、約9重量%以下、約8重量%以下、約7重量%以下、約6重量%以下、約5重量%以下、約4重量%以下、約3重量%以下、約2重量%以下、約1重量%以下、約0.5重量%以下、約0.2重量%以下、又は約0.1重量%以下)の量で存在する。
【0022】
いくつかの実施形態では、前記研磨組成物のpH値は約7以上(例えば、約7.5以上、約8以上、約8.5以上、約9以上、約9.5以上、約10以上、約10.5以上、約11以上、約11.5以上、又は約12以上)~約14以下(例えば、約13.5以下、約13以下、約12.5以下、約12以下、約11.5以下、約11以下、約10.5以下、約10以下、約9.5以下又は約9以下)の範囲であってもよい。理論に拘束されることを望むものではないが、7より低いpHを有する研磨組成物はコバルト除去速度及び腐食を顕著に増加させることになり、14より高いpHを有する研磨組成物は、懸濁した研磨剤の安定性に影響するおそれがあり、粗さを顕著に増加させ、当該組成物により研磨された膜の全体的品質を低下させることになる。所望のpHを得るためには、本開示に記載の研磨組成物中の成分の相対濃度を調整すればよい。
【0023】
1つ又は複数の実施形態では、本開示に記載の研磨組成物は、少なくとも1種(例えば、2種又は3種)のバリア膜除去速度上昇剤を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、前記少なくとも1種のバリア膜除去速度上昇剤は有機酸(例えば、カルボン酸、アミノ酸、スルホン酸、若しくはホスホン酸)又はその塩である。いくつかの実施形態では、前記バリア膜除去速度上昇剤は、グルコン酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、グリコール酸、マロン酸、ギ酸、シュウ酸、酢酸、プロピオン酸、過酢酸、コハク酸、乳酸、アミノ酢酸、フェノキシ酢酸、ビシン、ジグリコール酸、グリセリン酸、トリシン、アラニン、ヒスチジン、バリン、フェニルアラニン、プロリン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、リシン、チロシン、安息香酸、1,2-エタンジスルホン酸、4-アミノ-3-ヒドロキシ-1-ナフタレンスルホン酸、8-ヒドロキシキノリン-5-スルホン酸、アミノメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ヒドロキシルアミンO-スルホン酸、メタンスルホン酸、m-キシレン-4-スルホン酸、ポリ(4-スチレンスルホン酸)、ポリアネトールスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタン-スルホン酸、エチルリン酸、シアノエチルリン酸、フェニルリン酸、ビニルリン酸、ポリ(ビニルホスホン酸)、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸、ニトリルトリ(メチルホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタキス(メチルホスホン酸)、N,N,N’,N’-エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、n-ヘキシルホスホン酸、ベンジルホスホン酸、フェニルホスホン酸、これらの塩、並びにこれらの混合物、からなる群から選択される有機酸又その塩である。理論に拘束されることを望むものではないが、(上に記載したもの等の)有機酸又はその塩が、半導体基板中のバリア膜(例えば、Ta膜又はTaN膜)の除去速度を向上するよう、本開示に記載の研磨組成物における効果的なバリア膜除去速度上昇剤として用いることができることは、驚くべきことである。
【0024】
いくつかの実施形態では、バリア膜除去速度上昇剤は本開示に記載の研磨組成物に対して約0.02重量%以上(例えば、約0.05重量%以上、約0.1重量%以上、約0.2重量%以上、約0.4重量%以上、約0.5重量%以上、約0.6重量%以上、約0.8重量%以上、約1重量%以上、約1.5重量%以上、約2重量%以上)~約4重量%以下(例えば、約3.5重量%以下、約3重量%以下、約2.5重量%以下、約2重量%以下、約1.5重量%以下、又は約1重量%以下)の量で存在する。
【0025】
1つ又は複数の実施形態では、本開示に記載の研磨組成物は少なくとも1種(例えば、2種又は3種)の第1のlow-k除去速度阻害剤を含んでもよい。いくつかの実施形態では、前記少なくとも1種の第1のlow-k除去速度阻害剤はノニオン性界面活性剤である。1つ又は複数の実施形態では、前記ノニオン性界面活性剤はアルコールアルコキシレート、アルキルフェノールアルコキシレート、トリスチリルフェノールアルコキシレート、ソルビタンエステルアルコキシレート、ポリアルコキシレート、ポリアルキレンオキシドブロック共重合体、テトラヒドロキシオリゴマー、アルコキシル化ジアミン、及びこれらの混合物からなる群から選択される。1つ又は複数の実施形態では、前記ノニオン性界面活性剤は、約1,000g/mol以上、又は約2,500g/mol以上、又は約5,000g/mol以上、又は約7,500g/mol以上、又は約10,000g/mol以上の数平均分子量を有するポリマーである。1つ又は複数の実施形態では、前記ノニオン性界面活性剤は約1,000,000g/mol以下、又は約750,000g/mol以下、又は約500,000g/mol以下、又は約250、000g/mol以下、又は約100,000g/mol以下の数平均分子量を有するポリマーである。1つ又は複数の実施形態では、前記アルコキシル化ノニオン性界面活性剤のアルコキシレート基はエトキシレート、プロポキシレート、又はエトキシレート基とプロポキシレート基との組み合わせである。理論に拘束されることを望むものではないが、(上に記載したもの等の)ノニオン性界面活性剤が、半導体基板中のlow-k膜(例えば、カーボンドープケイ素酸化物膜)の除去速度を減少又は最小化するよう、本開示に記載の研磨組成物におけるlow-k除去速度阻害剤として用いることができることは、驚くべきことである。
【0026】
いくつかの実施形態では、第1のlow-k除去速度阻害剤は、本開示に記載の研磨組成物に対し約0.005重量%以上(例えば、約0.01重量%以上、約0.05重量%以上、約0.1重量%以上、約0.5重量%以上、約1重量%以上、約1.5重量%以上、約2重量%以上、又は約3重量%以上)~約5重量%以下(例えば、約4.5重量%以下、約4重量%以下、約3.5重量%以下、約3重量%以下、約2.5重量%以下、約2重量%以下、約1.5重量%以下、約1重量%以下、約0.5重量%以下、又は約0.1重量%以下)の量で存在する。
【0027】
1つ又は複数の実施形態では、本開示に記載の研磨組成物は少なくとも1種の(例えば2種又は3種)の第2のlow-k除去速度阻害剤を含んでもよい。いくつかの実施形態では、前記少なくとも1種の第2のlow-k除去速度阻害剤は両親媒性共重合体である。1つ又は複数の実施形態では、前記両親媒性共重合体はスチレン-無水マレイン酸共重合体である。1つ又は複数の実施形態では、前記両親媒性共重合体は約1,000g/mol以上(例えば、約2,500g/mol以上、約5,000g/mol以上、約7,500g/mol以上、約10,000g/mol以上)~約200,000g/mol以下(例えば、約150,000g/mol以下、約100,000g/mol以下、約50,000g/mol以下、又は約25,000g/mol以下)の数平均分子量を有する。理論に拘束されることを望むものではないが、(上に記載したもの等の)両親媒性共重合体が、半導体基板中のlow-k膜(例えば、カーボンドープケイ素酸化物膜)の除去速度を減少又は最小化するよう、本開示に記載の研磨組成物におけるlow-k除去速度阻害剤として用いることができることは、驚くべきことである。
【0028】
いくつかの実施形態では、第2のlow-k除去速度阻害剤は、本開示に記載の研磨組成物に対し約0.005重量%以上(例えば、約0.01重量%以上、約0.05重量%以上、約0.1重量%以上、約0.5重量%以上、約1重量%以上、約1.5重量%以上、約2重量%以上、又は約3重量%以上)~約5重量%以下(例えば、約4.5重量%以下、約4重量%以下、約3.5重量%以下、約3重量%以下、約2.5重量%以下、約2重量%以下、約1.5重量%以下、約1重量%以下、約0.5重量%以下、又は約0.1重量%以下)の量で存在する。
【0029】
理論に拘束されることを望むものではないが、本開示に記載の研磨組成物にノニオン性界面活性剤(つまり、第1のlow-k除去速度阻害剤)と両親媒性共重合体(つまり、第2のlow-k除去速度阻害剤)との両方を含むことで、相乗効果が生じ得、それぞれの成分を個別に用いた場合のそれぞれの成分による除去速度減少の和よりもlow-k膜(例えば、カーボンドープケイ素酸化物膜)の除去速度を減少し得ることが、驚くべきことに見出された。
【0030】
1つ又は複数の実施形態では、本開示に記載の研磨組成物は少なくとも1種(例えば、2種又は3種)のアゾール含有防錆剤を含んでもよい。いくつかの実施形態では、前記少なくとも1種のアゾール含有防錆剤は、置換若しくは無置換のトリアゾール、置換若しくは無置換のテトラゾール、置換若しくは無置換のベンゾトリアゾール、置換若しくは無置換のピラゾール、及び置換若しくは無置換のイミダゾールからなる群から選択される。1つ又は複数の実施形態では、前記アゾール含有防錆剤は、トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、テトラゾール、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、エチルベンゾトリアゾール、プロピルベンゾトリアゾール、ブチルベンゾトリアゾール、ペンチルベンゾトリアゾール、ヘキシルベンゾトリアゾール、ジメチルベンゾトリアゾール、クロロベンゾトリアゾール、ジクロロベンゾトリアゾール、クロロメチルベンゾトリアゾール、クロロエチルベンゾトリアゾール、フェニルベンゾトリアゾール、ベンジルベンゾトリアゾール、アミノトリアゾール、アミノベンズイミダゾール、アミノテトラゾール、及びこれらの混合物からなる群から選択されてもよい。理論に拘束されることを望むものではないが、(上に記載したもの等の)アゾール含有防錆剤は半導体基板中の銅の除去速度を顕著に減少又は最小化することができると考えられる。
【0031】
いくつかの実施形態では、前記アゾール含有防錆剤は、本開示に記載の研磨組成物に対して約0.0001重量%以上(例えば、約0.0002重量%以上、約0.0005重量%以上、約0.001重量%以上、約0.002重量%以上、約0.005重量%以上、約0.01重量%以上、約0.02重量%以上、約0.05重量%以上、約0.1重量%以上、約0.2重量%以上、又は約0.5重量%以上)~約1重量%以下(例えば、約0.8重量%以下、約0.6重量%以下、約0.5重量%以下、約0.4重量%以下、約0.2重量%以下、約0.1重量%以下、約0.05重量%以下、約0.02重量%以下、約0.01重量%以下、又は約0.005重量%以下)の量で存在する。
【0032】
1つ又は複数の実施形態では、本開示に記載の研磨組成物は少なくとも1種(例えば2種又は3種)のコバルト防錆剤を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、前記少なくとも1種のコバルト防錆剤はアニオン性界面活性剤である。1つ又は複数の実施形態では、前記アニオン性界面活性剤は、1つ又は複数のリン酸基及び1つ又は複数の以下の基、つまり、炭素数6~24のアルキル鎖、0個~18個のエチレンオキシド基、又はそれらの組み合わせ、を含む。1つ又は複数の実施形態では、前記アルキル鎖は炭素数8以上、炭素数10以上、炭素数12以上、又は炭素数14以上であってもよい。1つ又は複数の実施形態では、アルキル鎖は炭素数22以下、又は炭素数20以下、又は炭素数18以下であってもよい。理論に拘束されることを望むものではないが、(上に記載したもの等の)アニオン性界面活性剤が、半導体基板中のコバルトの除去速度を減少又は最小化するよう、本開示に記載の研磨組成物におけるコバルト防錆剤として用いることができることは、驚くべきことである。
【0033】
いくつかの実施形態では、前記コバルト防錆剤は、本開示に記載の研磨組成物に対して約0.0001重量%以上(例えば、約0.0002重量%以上、約0.0005重量%以上、約0.001重量%以上、約0.002重量%以上、約0.005重量%以上、約0.01重量%以上、約0.02重量%以上、約0.05重量%以上、約0.1重量%以上、約0.2重量%以上、又は約0.5重量%以上)~約1重量%以下(例えば、約0.8重量%以下、約0.6重量%以下、約0.5重量%以下、約0.4重量%以下、約0.2重量%以下、約0.1重量%以下、約0.05重量%以下、約0.02重量%以下、約0.01重量%以下、又は約0.005重量%以下)の量で存在する。
【0034】
1つ又は複数の実施形態では、本開示に記載の研磨組成物は少なくとも1種(例えば2種又は3種)の任意で用いられる(optional)キレート剤を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、前記少なくとも1種の任意で用いられる(optional)キレート剤はアミノ含有カルボン酸(例えば、ポリアミノポリカルボン酸)又はホスホン酸であってもよい。いくつかの実施形態では、前記キレート剤は、エチレンジアミン四酢酸、イミノ二酢酸、N-ヒドロキシエチル-エチレンジアミン三酢酸、ニトリロ三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、ジアミノシクロヘキサン四酢酸、ニトリロトリメチルホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。理論に拘束されることを望むものではないが、本開示に記載の研磨組成物にキレート剤(例えば上記のもの)を含むことで、半導体基板(例えば銅ウェハ)上に観察される欠陥を顕著に減少又は最小化できることは、驚くべきことであると考えられる。
【0035】
いくつかの実施形態では、前記キレート剤は、本開示に記載の研磨組成物に対して約0.001重量%以上(例えば、約0.002重量%以上、約0.005重量%以上、約0.01重量%以上、約0.02重量%以上、約0.05重量%以上、約0.1重量%以上、約0.2重量%以上、又は約0.5重量%以上)~約1重量%以下(例えば、約0.8重量%以下、約0.6重量%以下、約0.5重量%以下、約0.4重量%以下、約0.2重量%以下、約0.1重量%以下、約0.05重量%以下、約0.02重量%以下、約0.01重量%以下、又は約0.005重量%以下)の量で存在する。
【0036】
任意で用いられる(optional)酸化剤は、濃縮スラリーを希釈してPOUスラリーを形成する際に添加してもよい。前記酸化剤は、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、硝酸銀(AgNO)、硝酸鉄(III)若しくは塩化鉄(III)、過酸又は過酸塩(per salt)、オゾン水、フェリシアン化カリウム、二クロム酸カリウム、ヨウ素酸カリウム、臭素酸カリウム、過ヨウ素酸カリウム、過ヨウ素酸、三酸化バナジウム、次亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸カルシウム、次亜塩素酸マグネシウム、硝酸鉄(III)、過マンガン酸カリウム、その他の無機若しくは有機の過酸化物、並びにこれらの混合物からなる群から選択されてもよい。1つの実施形態では、前記酸化剤は過酸化水素である。
【0037】
いくつかの実施形態では、前記酸化剤は、本開示に記載の研磨組成物に対して約0.05重量%以上(例えば、約0.1重量%以上、約0.2重量%以上、約0.4重量%以上、約0.5重量%以上、約1重量%以上、約1.5重量%以上、約2重量%以上、約2.5重量%以上、約3重量%以上、約3.5重量%以上、約4重量%以上、又は約4.5重量%以上)~約5重量%以下(例えば、約4.5重量%以下、約4重量%以下、約3.5重量%以下、約3重量%以下、約2.5重量%以下、約2重量%以下、約1.5重量%以下、約1重量%以下、約0.5重量%以下、又は約0.1重量%以下)で存在する。いくつかの実施形態では、理論に拘束されることを望むものではないが、前記酸化剤は、CMPプロセスにおいて金属を除去できるようにキレート剤により金属錯体を形成することで金属膜の除去を助けることができると考えられる。いくつかの実施形態では、理論に拘束されることを望むものではないが、金属膜と酸化剤との間で形成される金属錯体は不動態層を形成することができ、この不動態層は金属を腐食から保護できると考えられる。いくつかの実施形態では、前記酸化剤は研磨組成物の保管寿命を減少させうる。そのような実施形態では、前記酸化剤は研磨の直前に使用場所(point-of-use)で研磨組成物に添加してもよい。
【0038】
いくつかの実施形態では、本開示に記載の研磨組成物は、水等の溶媒(例えば、主たる(primary)溶媒)を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、溶媒(例えば水)は、本開示に記載の研磨組成物に対して約20重量%以上(例えば、約25重量%以上、約30重量%以上、約35重量%以上、約40重量%以上、約45重量%以上、約50重量%以上、約55重量%以上、約60重量%以上、約65重量%以上、約70重量%以上、約75重量%以上、約80重量%以上、約85重量%以上、約90重量%以上、約92重量%以上、約94重量%以上、約95重量%以上、又は約97重量%以上)~約99重量%以下(例えば、約98重量%以下、約96重量%以下、約94重量%以下、約92重量%以下、約90重量%以下、約85重量%以下、約80重量%以下、約75重量%以下、約70重量%以下、又は約65重量%以下)の量で存在してもよい。
【0039】
1つ又は複数の実施形態では、任意で用いられる(optional)副次的(secondary)溶媒(例えば有機溶媒)を、本開示の研磨組成物(例えば、POU研磨組成物又は濃縮研磨組成物)で用いることができ、前記副次的溶媒の使用は、アゾール含有防錆剤の溶解を助けることができる。1つ又は複数の実施形態では、前記副次的溶媒は1種又は複数種のアルコール、アルキレングリコール、又はアルキレングリコールエーテルとすることができる。1つ又は複数の実施形態では、前記副次的溶媒は、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、n-ブタノール、プロピレングリコール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、プロピレングリコールプロピルエーテル、及びエチレングリコールから成る群から選択される1種又は複数種の溶媒を含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、前記副次的溶媒は、本開示に記載の研磨組成物に対して約0.0025重量%以上(例えば、約0.005重量%以上、約0.01重量%以上、約0.02重量%以上、約0.05重量%以上、約0.1重量%以上、約0.2重量%以上、約0.4重量%以上、約0.6重量%以上、約0.8重量%以上、又は約1重量%以上)~約2重量%以下(例えば、約1.8重量%以下、約1.6重量%以下、約1.5重量%以下、約1.4重量%以下、約1.2重量%以下、約1重量%以下、約0.8重量%以下、約0.6重量%以下、約0.5重量%以下、又は約0.1重量%以下)の量で存在してもよい。
【0041】
1つ又は複数の実施形態では、本開示の研磨組成物は、有機溶媒、pH調整剤、四級アンモニウム化合物(例えば、塩若しくは水酸化物)、アミン、アルカリ塩基(例えばアルカリ水酸化物)、フッ素含有化合物、シラン(例えばアルコキシシラン)、イミン(例えば、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)及び1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン(DBN)等のアミジン)、塩(例えば、ハロゲン化物塩若しくは金属塩)、ポリマー(例えば、カチオン性若しくはアニオン性ポリマー)、界面活性剤(例えば、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、若しくはノニオン性界面活性剤)、可塑剤、酸化剤(例えばH)、防錆剤(例えば、アゾール防錆剤若しくは非アゾール防錆剤)、及び/又は特定の研磨剤(例えば、セリア研磨剤、ノニオン性研磨剤、表面改質研磨剤、若しくは負帯電/正帯電の研磨剤)等の、1種又は複数種の特定の成分を実質的に含まないものであってもよい。研磨組成物から排除してもよい前記ハロゲン化物塩としては、アルカリ金属ハロゲン化物(例えば、ハロゲン化ナトリウム若しくはハロゲン化カリウム)又はハロゲン化アンモニウム(例えば、塩化アンモニウム)が挙げられ、塩化物でも、臭化物でも、ヨウ化物でもよい。本開示において用いられる場合、研磨組成物に「実質的に含まれない」成分とは、研磨組成物に意図的に添加されることがない成分を指す。いくつかの実施形態では、本開示に記載の研磨組成物は、研磨組成物に実質的に含まれない、上記成分の1種又は複数種が約1000ppm以下(例えば、約500ppm以下、約250ppm以下、約100ppm以下、約50ppm以下、約10ppm以下、又は約1ppm以下)であってもよい。いくつかの実施形態では、本開示に記載の研磨組成物は、上記成分のうち1種又は複数種を全く含まなくてもよい。
【0042】
1つ又は複数の実施形態では、本開示に記載の研磨組成物は、Cu、Co、又はlow-k誘電材料についての除去速度に対するケイ素酸化物(例えば、TEOS)、バリア材料(例えば、Ta、TaN)についての除去速度の比(つまり、除去速度選択性)が約3:1の比以上(例えば、約4:1の比以上、約5:1の比以上、約10:1の比以上、約25:1の比以上、約50:1の比以上、約60:1の比以上、約75:1の比以上、約100:1の比以上、約150:1の比以上、約200:1の比以上、約250:1の比以上、又は約300:1の比以上)~約1000:1の比以下(例えば、約500:1の比以下)であってもよい。1つ又は複数の実施形態では、上記の比は、ブランケットウェハの研磨についての除去速度を測定した際に当てはめられても、パターン形成されたウェハ(例えば、導電層、バリア層、及び/又は絶縁層(dielectric layers)を含むウェハ)の研磨についての除去速度を測定した際に当てはめられてもよい。
【0043】
1つ又は複数の実施形態では、本開示に係る研磨組成物を用いてウェハを研磨した際の、直径12インチ(つまり、約300mm)を有するウェハ上(例えば、ウェハの銅表面上)の総欠陥カウントは800以下(例えば、700以下、600以下、500以下、400以下、300以下、250以下、200以下、150以下、100以下、又は50以下)である。1つ又は複数の実施形態では、欠陥は引っ掻き、有機残渣、粒子混入(例えば、研磨剤)、及びこれらの組み合わせから生じうる。一般に、欠陥はレーザー散乱検査システムを用いてカウントし、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影した研磨済みウェハの画像を検討することで分析及び分類してもよい。1つ又は複数の実施形態では、カウントされる欠陥はサイズが約100nm以上のものである。
【0044】
本開示は、上記の研磨組成物(例えば、濃縮物又はPOUスラリー)のうち任意のものを用いる方法も想定する。濃縮物の場合、前記方法は、該濃縮物を(例えば、2倍以上に)希釈してPOUスラリーを形成するステップ、及びその後に、コバルトを少なくとも部分的には含む表面を該POUスラリーと接触させるステップを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、前記希釈の前又は後に、前記スラリーに酸化剤を添加してもよい。POUスラリーの場合、前記方法は、コバルトを少なくとも部分的には含む表面を該スラリーと接触させるステップを含む。
【0045】
1つ又は複数の実施形態では、本開示は、自らの表面に少なくともコバルトを有する基板(例えば、ウェハ)に本開示に係る研磨組成物を付与(apply)すること;及び、前記基板の前記表面にパッドを接触させて前記基板に対して前記パッドを動かすこと、を含んでいてもよい研磨方法を1つの特色とする。いくつかの実施形態では、前記基板がケイ素酸化物及び/又はバリア材料(例えば、Ta、TaN)のうち1つ又は複数を少なくとも含む場合、前記方法は、コバルトを実質的に除去すること無しにこれらの材料の少なくとも一部を除去することができる。本開示に記載の「ケイ素酸化物」の語は、非ドープ型のケイ素酸化物とドープ型のケイ素酸化物の両方を含むことを明示的に意図している。例えば、1つ又は複数の実施形態では、ケイ素酸化物は、炭素、窒素、酸素、水素、及びケイ素酸化物のための他の任意の公知ドーパントから選択される少なくとも1種のドーパントでドープされていてもよい。ケイ素酸化物膜の種類のいくつかの例には、TEOS(テトラエチルオルトケイ酸)、SiOC、SiOCN、SiOCH、SiOH、及びSiONが含まれる。
【0046】
いくつかの実施形態では、本開示に記載の研磨組成物を用いる前記方法は、前記研磨組成物で処理された基板から、1つ又は複数のステップにより、半導体デバイスを製造することをさらに含んでもよい。例えば、フォトリソグラフィー、イオン注入、ドライ/ウェットエッチング、プラズマアッシュ、堆積(例えば、PVD、CVD、ALD、ECD)、ウェハマウント、ダイカット、パッケージング、及び検査(testing)を、本開示に記載の研磨組成物で処理された基板から半導体デバイスを製造するのに用いてもよい。
【0047】
以下の具体例は、単に例示的なものとして解釈すべきであり、本開示のうちの残りの部分をいかなる形でも限定するものではない。さらなる詳細を述べなくとも、当業者は本開示の記載に基づいて本発明をその全範囲にわたり利用可能であると考えられる。
【実施例
【0048】
これらの実施例では、研磨は、AMAT Mirra CMP研磨機、富士紡H804パッド、1.5psiのダウンフォース圧、120/114rpmのプラテンヘッド速度、及び175mL/分のスラリー流速を用いて、200mmウェハに対して行った。
【0049】
以下の実施例で用いられた一般的な組成を以下の表1に示す。試験された組成物間の差異の詳細については、それぞれの実施例について説明する際にさらに詳細に説明する。
【0050】
【表1】
【0051】
実施例1
以下の表2は、組成物1~6を用いて研磨された際の、TEOSブランケットウェハ、Taブランケットウェハ、Black Diamond 1(BD-1)ブランケットウェハ、及びBlack Diamond 2(BD-2)ブランケットウェハについての除去速度を示す。組成物1~6は、以下に記載の差異点及び表2に示した差異点以外は同じ成分を同じ濃度で含んでいた。組成物1は1種類のポリアルコキシレートlow-k除去速度阻害剤(LK RRI;ノニオン性界面活性剤)を含み、コントロールとして機能した。表2に示すように、組成物2~6はそれぞれ、2種類の別個のLK RRI(つまり、アルコキシル化ジアミンノニオン性界面活性剤(LK RRI-1)及び両親媒性共重合体(LK RRI-2))の組み合わせを種々の濃度で含んでいた。BD-1ブランケットウェハ及びBD-2ブランケットウェハは、シリコンウェハ上にコーティングされたlow-k誘電材料(つまり、カーボンドープケイ素酸化物)である。
【0052】
結果は驚くべきことに、ノニオン性界面活性剤及び両親媒性共重合体がlow-k除去速度阻害剤として用いることができ、これら2種の阻害剤(つまり、LK RRI-1及びLK RRI-2)の組み合わせは比較対象のLK RRIよりもより効果的に研磨速度を抑制したことを示した。さらに、LK RRI-1とLK RRI-2との組み合わせ中のLK RRI-1の濃度が上昇するにつれ、BD-1ブランケットウェハ及びBD-2ブランケットウェハ中のlow-k誘電材料の除去速度はTEOS除去速度及びTa除去速度よりもはるかに顕著に減少したことをデータは示しており、このことは、LK RRI-1及びLK RRI-2がlow-k除去速度に対して有する影響を示している。
【0053】
【表2】
【0054】
実施例2
以下の表3は、研磨組成物7~14を用いて研磨された際のCuブランケットウェハ、TEOSブランケットウェハ、Taブランケットウェハ、及びBD-1ブランケットウェハについての除去速度を示す。組成物7~14は、以下に記載された差異点及び表3に示された差異点以外は、同じ成分を同じ濃度で含んでいた。組成物7は、銅防錆剤としてLK RRI及びベンゾトリアゾールを用い(CI-1)、コントロールとして機能した。組成物8~14は2種の別個のLK RRI(LK RRI-1及びLK RRI-2)とCI-1(ベンゾトリアゾール)及びCI-3~CI-5(置換ベンゾトリアゾール)から選択される銅防錆剤との組み合わせを含んでいた。さらに、組成物8~14では、表3に示すように、防錆剤の濃度を6×~25×まで変動させた。
【0055】
2種の別個のLK RRI(LK RRI-1及びLK RRI-2)とCI-1及びCI-3~CI-5から選択される銅防錆剤との組み合わせは、組成物7により達成されるTEOS研磨速度及びTa研磨速度に比類するTEOS研磨速度及びTa研磨速度、並びにより優れたCu除去速度阻害性能を示した(組成物8~14参照)。つまり、この結果は、low-k除去速度阻害剤及び銅防錆剤はTEOS除去速度及びTa除去速度に実質的な影響を与えなかったことを示した。一方で、この結果は、置換ベンゾトリアゾールを含むことで銅除去速度が顕著に減少できたことを示した(組成物10~14参照)。
【0056】
【表3】
【0057】
実施例3
以下の表4は、研磨組成物15~21を用いて研磨した際の、Cuブランケットウェハ、Coブランケットウェハ、及びBDブランケットウェハについての除去速度及びCuウェハ上の欠陥のカウントを示す。組成物15~21は、以下に記載の差異点及び表4に示す差異点以外は、同じ成分を同じ濃度で含んでいた。組成物15は、2種の別個のLK RRI(LK RRI-1及びLK RRI-2)と、銅防錆剤としてのベンゾトリアゾール(CI-1)との組み合わせを含んでいた。組成物16は組成物15と組成的には同じであったが、用いた銅防錆剤がベンゾトリアゾール(CI-1)の代わりにアルキルベンゾトリアゾール(CI-5)であった。この変更の結果、Cuウェハ上に観察される欠陥が顕著に少なくなった。
【0058】
組成物17は、銅防錆剤(CI-5)に加えて、コバルト防錆剤(Co-CI)としてのリン酸系アニオン性界面活性剤を含んでいた。この添加によりコバルト研磨速度が顕著に減少し、また驚くべきことに、使用されたCI-5の量が組成物16中で用いられた量の半分であったにも関わらず、Cuウェハ上に観察された欠陥を顕著に減少させた。
【0059】
組成物18~21は、驚くべきことに、キレート剤(CA)を添加することでコバルト除去速度及び銅ウェハ上に観察される欠陥を減少させることができることを示した。特に、組成物19において高濃度のアミノポリカルボン酸系キレート剤CA-1を用いた結果、非常に低いコバルト除去速度及び銅ウェハ上の欠陥のより優れた減少となった。組成物20及び21は組成物18及び19と類似する(analogous)ものであるが、別の、比較用のキレート剤(CA-2)を用いていた。CA-2はスルホン酸系キレート剤であり、組成物19で用いたCA-1と比べると、高濃度においてCuウェハ上の欠陥を減少させる同じ能力は示さなかった。
【0060】
【表4】
【0061】
実施例4
この実施例では、コバルトライナー付きのパターン形成された銅クーポンを研磨組成物22~24のそれぞれに60℃で5分浸漬した。組成物22~24は、以下に記載の差異点及び表5に示す差異点以外は同じ成分(つまり、表1に示す成分の全て)を同じ濃度で含んでいた。浸漬の後、得られたスラリーをICP-MSで分析して、パターン形成されたクーポンからエッチング除去されたコバルトイオンの濃度を測定した。
【0062】
以下の表5は、研磨スラリー中のコバルトイオン濃度がCo防錆剤(CoCI)の添加と共に減少したことを示し、研磨の間におけるCo防錆剤の保護能力を示している。「60℃ SER Coイオン濃度」の欄を参照せよ。表5は、(組成物22がコバルト防錆剤を含んでいなかったことを除き)表1に示す成分の全てを含む研磨スラリー中で測定した際の、Cu又はCoのブランケットクーポンを試験して得られた電気化学的試験データを示し、コバルト及び銅についての腐食電位(Ecorr)及び腐食電位に対応する電流(Icorr)を比較している。一般に、Ecorrがより高い値であること、あるいはIcorrがより低い値であることは、着目している材料がよりよく保護/不動態化されていることを示す。したがって、最も高い量のCo防錆剤を含む組成物24がコバルトについて最も高い保護/不動態化を有したことが見て取れる。さらに、Co防錆剤の添加は、銅の腐食電位にはさほどの影響を与えないことが示されている。
【0063】
【表5】
【0064】
実施例5
以下の表6は、組成物25~29を用いて研磨した際のCuブランケットウェハ、TEOSブランケットウェハ、TaNブランケットウェハ、Black Diamond 1(BD-1)ブランケットウェハ、及びultra low-k(ULK)ブランケットウェハについての除去速度を示す。組成物25~29は、以下に記載の差異点及び表4に示す差異点以外は同じ成分を同じ濃度で含んでいた。具体的には、組成物25はlow-k除去速度阻害剤を含まず、組成物26は1種類のポリアルコキシレートlow-k除去速度阻害剤(LK RRI)を含み、組成物27及び28はLK RRI-1とLK RRI-2のうち一方のみを含み、そして、組成物29は2種の別個のLK RRI(つまり、アルコキシル化ジアミンノニオン性界面活性剤(LK RRI-1)及び両親媒性共重合体(LK RRI-2))の組み合わせを含んでいた。
【0065】
この結果は、驚くべきことに、ノニオン性界面活性剤(LK RRI及びLK RRI-1)並びに両親媒性共重合体(LK RRI-2)がlow-k除去速度阻害剤として用いることができたこと、LK RRI-1とLK RRI-2の両方からなる組み合わせが、比較用のLK RRI又は各々単独で用いた場合のLK RRI-1及びLK RRI-2よりもより効果的にBD-1の研磨速度を抑制したことを示している。
【0066】
【表6】
【0067】
以上ではわずかな数の例示的実施形態について詳細に説明してきたが、本発明から本質的に逸脱すること無しに前記例示的実施形態において多くの改変が可能であることを当業者は容易に理解するであろう。したがって、それらの改変も全て、以下に記載の特許請求の範囲に規定されるように、本開示の範囲に含まれることが意図されている。

【国際調査報告】