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特表2022-550355エンボス構造のコーティング表面への転写方法、及びエンボス型として使用可能な複合体
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  • 特表-エンボス構造のコーティング表面への転写方法、及びエンボス型として使用可能な複合体 図1
  • 特表-エンボス構造のコーティング表面への転写方法、及びエンボス型として使用可能な複合体 図2
  • 特表-エンボス構造のコーティング表面への転写方法、及びエンボス型として使用可能な複合体 図3
  • 特表-エンボス構造のコーティング表面への転写方法、及びエンボス型として使用可能な複合体 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-01
(54)【発明の名称】エンボス構造のコーティング表面への転写方法、及びエンボス型として使用可能な複合体
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/28 20060101AFI20221124BHJP
   B05D 3/12 20060101ALI20221124BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
B05D1/28
B05D3/12 C
B05D7/24 301T
B05D7/24 303A
B05D7/24 302Z
B05D7/24 302X
B05D7/24 302P
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022519339
(86)(22)【出願日】2020-09-24
(85)【翻訳文提出日】2022-05-24
(86)【国際出願番号】 EP2020076751
(87)【国際公開番号】W WO2021058658
(87)【国際公開日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】19199453.2
(32)【優先日】2019-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390008981
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D-48165 Muenster,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】クラッベンボルク,スフェン オレ
(72)【発明者】
【氏名】ブシャー,ティム
(72)【発明者】
【氏名】デュンネヴァルト,イェルク
【テーマコード(参考)】
4D075
【Fターム(参考)】
4D075AC41
4D075AC88
4D075BB06Y
4D075BB42Z
4D075BB46Z
4D075BB61X
4D075BB91Y
4D075CA07
4D075CA13
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA04
4D075DB48
4D075EA05
4D075EA21
4D075EA33
4D075EA35
4D075EB13
4D075EB22
4D075EB24
4D075EB38
4D075EB43
4D075EB51
4D075EB56
4D075EC07
4D075EC37
4D075EC51
(57)【要約】
本発明は、基材(S1)と、少なくとも部分的にエンボス加工した、かつ、少なくとも部分的に硬化したコーティング(C1)とを備える複合体(S1C1)を用いて、工程(1)、(2-i)及び(3-i)又は(2-ii)及び(3-ii)、さらに少なくとも工程(4)及び任意に工程(5-i)又は(5-ii)で、コーティング組成物の表面の少なくとも一部にエンボス構造を転写する方法に関する。コーティング組成物(C1a)は、ここに規定した構成の放射線硬化性コーティング組成物であり、複合体(S1C1)は、エンボス加工ツール(E2)のエンボス型(e2)として使用することが好ましい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合体(S1C1)を用いてコーティング組成物(C2a)の表面の少なくとも一部にエンボス構造を転写する方法であって、該方法は、少なくとも工程(1)、(2-i)及び(3-i)又は(2-ii)及び(3-ii)、さらに少なくとも工程(4)及び任意に工程(5-i)又は(5-ii)を含む、具体的には、
(1)基材(S1)と、少なくとも部分的にエンボス加工した、かつ、少なくとも部分的に硬化したコーティング(C1)とで構成された複合体(S1C1)を用意する工程、
及び
(2-i)少なくとも1つのコーティング組成物(C2a)を基材(S2)の表面の少なくとも一部に塗布して複合体(S2C2a)を用意する工程、
(3-i)複合体(S1C1)を用いて複合体(S2C2a)のコーティング組成物(C2a)を少なくとも部分的にエンボス加工して、複合体(S1C1C2aS2)を用意する工程、
又は
(2-ii)複合体(S1C1)の少なくとも部分的にエンボス加工した、かつ、少なくとも部分的に硬化した表面の少なくとも一部に少なくとも1つのコーティング組成物(C2a)を塗布し、複合体(S1C1)を用いてコーティング組成物(C2a)を少なくとも部分的にエンボス加工して複合体(S1C1C2a)を用意する工程、
(3-ii)任意に、複合体(S1C1C2a)の、コーティング組成物(C2a)によって形成された表面の少なくとも一部に基材(S2)を適用して複合体(S1C1C2aS2)を得る工程、
及び
(4)任意で基材(S2)に塗布した、少なくとも部分的にエンボス加工したコーティング組成物(C2a)を少なくとも部分的に硬化させて、複合体(S1C1C2)又は(S1C1C2S2)を用意する工程であって、該コーティング組成物(C2a)が、少なくとも部分的に硬化させる期間を通して複合体(S1C1)と接触している工程、
及び
(5-i)任意に、複合体(S1C1C2S2)内の複合体(C2S2)を複合体(S1C1)から除去して、工程(1)で用意した複合体(S1C1)を復元する工程、
又は
(5-ii)任意に、複合体(S1C1C2)内のコーティング(C2)を複合体(S1C1)から除去して、工程(1)で用意した複合体(S1C1)を復元する工程
を含み、
ここで、工程(1)で使用した、及び、工程(5-i)又は工程(5-ii)で復元した複合体(S1C1)の、少なくとも部分的にエンボス加工した、かつ、少なくとも部分的に硬化したコーティング(C1)を製造するために用いるコーティング組成物(C1a)は、放射線硬化性コーティング組成物であり、
(a)少なくとも1種の架橋性ポリマー及び/又はオリゴマーを5~45質量%、
(b)少なくとも1種の反応性希釈剤を40~95質量%、
(c)少なくとも1種の光重合開始剤を0.01~15質量%、及び
(d)少なくとも1種の添加剤を0~5質量%
含有するものであり、
ここで、(i)成分(a)、(b)、(c)、及び(d)について記載した合計量は、それぞれコーティング組成物(C1a)の総質量に基づくものであり、(ii)コーティング組成物(C1a)に存在する全ての成分の合計量は100質量%になり、
ここで、少なくとも1種の架橋性ポリマー及び/又はオリゴマー(a)は、コーティング組成物(C1a)中に含まれる全ての架橋性ポリマー及び/又はオリゴマーの総質量に基づいて、総量が、少なくとも25質量%、好ましくは少なくとも50質量%、より好ましくは少なくとも90質量%、非常に好ましくは100質量%の、少なくとも1種のシリコーン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記放射線硬化性コーティング組成物(C1a)が、コーティング組成物(C1a)の総質量に基づいて、50~95質量%、又は50~85質量%、又は50~83質量%の少なくとも1種の反応性希釈剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
転写する前記エンボス構造が、マイクロ構造及び/又はナノ構造であり、好ましくは10nm~500μmの範囲、より好ましくは25nm~400μmの範囲、非常に好ましくは50nm~250μmの範囲、より好ましくは100nm~100μmの範囲の構造幅を有し、また、好ましくは10nm~500μmの範囲、より好ましくは25nm~400μmの範囲、非常に好ましくは50nm~300μmの範囲、より好ましくは100nm~200μmの範囲の構造高さを有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
コーティング組成物(C2a)で被覆しない基材(S2)の他方の表面に、少なくとも1種の接着剤を塗布する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
複合体(S1C1)から除去する工程が、下記の工程、
5-i-a)少なくとも部分的にエンボス加工したコーティング(C2)と接触していない基板(S2)の表面上に少なくとも1種の接着剤層(AL)を塗布して複合体(S1C1C2S2AL)を用意する工程、
5-i-b)任意に、複合体(S1C1C2S2AL)を物体(O1)に少なくとも部分的に付着させる工程、
5-i-c)任意に少なくとも部分的に物体(O1)に付着させた複合体(C2S2AL)から複合体(S1C1)を取り外す、好ましくは剥がす、又はその逆を行う工程、
又は
5-ii-a)少なくとも部分的にエンボス加工したコーティング(C2)の非構造化表面の少なくとも一部に、少なくとも1種の接着剤層(AL)を塗布し、複合体(S1C1C2AL)を用意する工程、
5-ii-b)任意に、複合体(S1C1C2AL)を物体(O1)に少なくとも部分的に付着させる工程、
5-ii-c)任意に少なくとも部分的に物体(O1)に付着した複合体(C2S2AL)から複合体(S1C1)を取り外す、好ましくは剥がす、又はその逆を行う工程
を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程(1)で用意した複合体(S1C1)を、コーティング(C1)のエンボス構造をエンボス構造として、工程(3-i)、及び工程(2-ii)及び(3-ii)で、コーティング組成物(C2a)に転写するためにエンボス加工ツール(E2)のエンボス型(e2)として用い、
ここで、エンボス型(e2)として使用する複合体(S1C1)のコーティング(C1)の構造化表面の鏡像を、任意に基板(S2)上に適用した、少なくとも部分的にエンボス加工し、かつ、少なくとも部分的に硬化したコーティング(C2)の表面へエンボス加工するする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
基材(S1)が、フィルムウェブであり、好ましくは移動フィルムウェブ又は連続フィルムウェブ、より好ましくは連続移動フィルムウェブであり、及び/又は、基材(S2)が、フィルムウェブであり、好ましくは移動フィルムウェブ、より好ましくは連続移動フィルムウェブである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程(3-i)及び工程(2-ii)及び(3-ii)で使用する複合体(S1C1)が再利用可能であり、前記方法の工程(5i)又は(5-ii)を実施する際に少なくとも1つのエンボス構造の転写に繰り返し使用することができる、請求項1~7のいずれか一項に記載された方法。
【請求項9】
工程(1)で用意した複合体(S1C1)が、少なくとも、
(6)放射線硬化型コーティング組成物(C1a)を基材(S1)の表面の少なくとも一部に塗布し、複合体(S1C1a)を用意すること、
(7)少なくとも1つのエンボス型(e1)を備える少なくとも1つのエンボス加工ツール(E1)によって、基板(S1)の表面に少なくとも部分的に塗布したコーティング組成物(C1a)を少なくとも部分的にエンボス加工すること、
(8)基板(S1)に、少なくとも部分的に塗布した、少なくとも部分的にエンボス加工したコーティング組成物(C1a)を、少なくとも部分的に硬化することであって、基板(S1)が、少なくとも部分的に硬化する期間を通して、エンボス加工ツール(E1)の少なくとも1つのエンボス型(e1)と接触していること、
(9)複合体(S1C1)をエンボス加工ツール(E1)のエンボス型(e1)から取り外して、少なくとも部分的にエンボス加工し、かつ、少なくとも部分的に硬化した複合体(S1C1)を用意する、又はその逆を行うこと
によって得られる、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記コーティング組成物(C1a)が、コーティング組成物(C1a)中に含まれる全ての架橋性ポリマー及び/又はオリゴマーの総質量に基づいて、総量が、少なくとも25質量%の、好ましくは少なくとも50質量%、より好ましくは少なくとも90質量%、非常に好ましくは100質量%の、少なくとも1種のシリコーン(メタ)アクリレートオリゴマー、好ましくは厳密に1種のシリコーン(メタ)アクリレートオリゴマー、より好ましくは平均2~3個を持つ不飽和基からなる厳密に1種のシリコーン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記コーティング組成物(C1a)が、反応性希釈剤として、フリーラジカル重合性モノマー、好ましくはエチレン性不飽和モノマー、より好ましくは多官能性エチレン性不飽和モノマーを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記コーティング組成物(C1a)が少なくとも1種の反応性希釈剤を含むものであって、該反応性希釈剤が、ヘキサンジオールジアクリレート及び、互い異なっていてもよい、又は少なくとも部分的に同一であってもよい、一般式(I)、
【化1】
(式中、
ラジカルRは、互いに独立して、C-Cアルキレン基、非常に好ましくはCアルキレン基であり、
ラジカルRは、互いに独立に、H又はメチルであり、
記号mは、式(I)の構造単位の少なくとも1つにおいて、記号mは少なくとも2、好ましくは厳密に2であるという条件で、互いに独立して、1~15、非常に好ましくは1~4又は2~4の範囲の整数である)
で表される構造単位を少なくとも2個、好ましくは少なくとも3個、より好ましく3個含む化合物から選ばれる、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記コーティング組成物(C1a)が、コーティング組成物(C1a)の総質量に基づいて、総量が、40~95質量%、好ましくは50~85質量%、より好ましくは55~83質量%の、少なくとも1種の反応性希釈剤、好ましくはヘキサンジオールジアクリレート及び/又は、6倍エトキシル化トリメチロールプロパン由来の(メタ)アクリレートを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記コーティング組成物(C1a)中に含まれる光重合開始剤が、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド、ベンゾフェノン、1-ベンゾイルシクロヘキサン-1-オール、2-ヒドロキシ-2,2-ジメチルアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン及びこれらの混合物から選択される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
基材(S1)と、少なくとも部分的にエンボス加工した、かつ、少なくとも部分的に硬化したコーティング(C1)から構成される複合体(S1C1)であって、該コーティング(C1)が、基材(S1)の表面の少なくとも一部に塗布したコーティング組成物(C1a)を少なくとも部分的に硬化させ、かつ、放射線硬化によって、少なくとも部分的にエンボス加工することによって得ることができるものであり、ここで、コーティング組成物(C1a)が放射線硬化コーティング組成物であって、
(a)少なくとも1種の架橋性ポリマー及び/又はオリゴマーを5~45質量%、
(b)少なくとも1種の反応性希釈剤を40~95質量%、
(c)少なくとも1種の光重合開始剤を0.01~15質量%、及び
(d)少なくとも1種の添加剤を0~5質量%
を含み、
ここで、(i)成分(a)、(b)、(c)、及び(d)について記載された合計量は、それぞれコーティング組成物(C1a)の総質量に基づいており、(ii)コーティング組成物(C1a)に存在する全ての成分の合計量が100質量%になり、
ここで、少なくとも1種の架橋性ポリマー及び/又はオリゴマー(a)は、コーティング組成物(C1a)中に含まれる全ての架橋性ポリマー及び/又はオリゴマーの総質量に基づいて、総量が、少なくとも25質量%、好ましくは少なくとも50質量%、より好ましくは少なくとも90質量%、非常に好ましくは100質量%の、少なくとも1種のシリコーン(メタ)アクリレートオリゴマーを含むことを特徴とする複合体(S1C1)。
【請求項16】
放射線硬化性コーティング組成物(C1a)が、コーティング組成物(C1a)の総質量に基づいて、50~95質量%、又は50~85質量%、又は50~83質量%の少なくとも1種の反応性希釈剤を含む、請求項15に記載の複合体(S1C1)。
【請求項17】
複合体(S1C1)が、請求項9に記載の方法工程(6)~(9)を実施することにより得られる、請求項15又は16に記載の複合体(S1C1)。
【請求項18】
コーティング組成物(C2a)の表面の少なくとも一部、又は基材(S2)上に少なくとも部分的に塗布するコーティング組成物(C2a)の表面の少なくとも一部にエンボス構造を転写するためのエンボス加工ツール(E2)のエンボス型(e2)としての、請求項15、16又は17のいずれか一項に記載の複合体(S1C1)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、基材又は基板(S1)と、少なくとも部分的にエンボス加工した、かつ、少なくとも部分的に硬化したコーティング(C1)とから構成された複合体(コンポジット)(S1C1)を用いて、以下の工程(1)、(2-i)及び(3-i)又は(2-ii)及び(3-ii)、さらに少なくとも工程(4)及び任意に、工程(5-i)又は(5-ii)の際に、コーティング組成物(C2a)の表面の少なくとも一部にエンボス構造を転写する方法に関する。コーティング組成物(C1a)は、ここで定義した構成を持つ放射線硬化性コーティング組成物であり、複合体(S1C1)は、エンボス加工ツール(E2)のエンボス型(モールド)(e2)として使用することが好ましい。
先行技術
産業界の多くのアプリケーションでは、ワークピースの表面にマイクロメートルの範囲、さらにはナノメートルの範囲までもの構造的フィーチャーを有する構造を持たせることが、最近一般的になっている。このような構造は、マイクロ構造又は微細構造(マイクロメートル領域のフィーチャーを持つ構造)又はナノ構造(ナノメートル領域のフィーチャーを持つ構造)とも呼ばれる。このような構造は、例えば、材料表面の光学的性質、生体工学的性質及び/又は触覚的性質に影響を与えるのに使用されている。このような構造は、エンボス、エンボス構造、構造化表面とも呼ばれている。
【0002】
このような構造を持つ表面を作る一般的な方法として、これらの構造をコーティング材料に転写する方法がある。コーティング材料への構造の転写はエンボス加工操作により実現することが多く、この場合、形成するマイクロ構造及び/又はナノ構造をネガ形態で持つ型をコーティング材料に接触させ型押しする。コーティング材料は、通常、永久的に形成された構造を得るためにその場で硬化させる。
【0003】
WO90/15673A1には、放射線硬化型コーティング材料をフィルムに、又は、ネガ型の所望のエンボス構造を有するエンボス加工した型に塗布し、その後、箔に、すなわち、コーティング材料が設けられた箔に、エンボス加工ツールを印刷する方法が記載されている。放射線硬化型コーティング剤が箔とエンボス加工ツールの間に依然と位置している間に、硬化が行われ、その後、エンボス加工ツールを取り外すと、所望のポジ型フィーチャー構造を構成する放射線硬化型コーティング材料を備えたフィルムが得られる。欧州特許EP1135267B1にも、この種の方法として、硬化性コーティング材料を装飾用基板表面に塗布し、ネガパターンを持つ、対応するエンボス加工した型(mold)を未硬化コーティング層内にプレスする方法が記載されている。その後、コーティング層を硬化させ、その後エンボス金型を取り外すものとされている。EP3178653A1は、硬化性システムの複製鋳造(casting)に使用するための、テクスチャー表面を有する柔軟な布を備える物品を開示している。当該布は、単官能及び多官能のアクリレートを使用して製造することができるポリマー層を有していてもよい。
【0004】
米国特許第9,778,564号B2には、必然的に(メタ)アクリルアミド構造単位を持つ成分と、2~6個の重合性基を有する更なる成分であってアルキレンオキシド単位をも有するものと含むインプリント材料が開示されている。この材料を基材に塗布し、こうして得たフィルムに、UV紫外線を照射して当該フィルムを硬化させる過程で、ニッケル製のエンボス加工ツールを用いてパターンを付与することが可能である。
【0005】
US2007/0204953A1は、接着剤樹脂をパターニングする方法を開示しており、この方法は、接着剤樹脂の硬化性層を基材に適用し、前記層に構造化パターンを適用し、その後、その層の硬化を連続して行って、所望のパターンを備える硬化した接着剤樹脂を備えた基材を得ることを連続して提供するものである。
【0006】
WO2015/154866A1は、構造化表面を有する基材を製造するための方法に関する。その場合、まず、基材に第1の紫外線(UV)硬化型コーティングを適用し、硬化させる。この硬化したコーティングの上に、エンボス用ワニスとして、第2の紫外線(UV)硬化型コーティングを適用し、エンボス加工により微細構造を形成し、その後硬化させる。
【0007】
DE102007062123A1には、例えばUV架橋可能なエンボス用ワニスのような、エンボス用ワニスを担体フィルムに塗布し、エンボス用ワニスをマイクロメートル領域で構造化し、フィルムに塗布したエンボス用ワニスを硬化させ、エンボス加工したフィルムを得て、その微細構造を、続いて、エンボス加工した表面への金属の堆積、言い換えればフィルムの金属化によってモデル化(model:造形)する方法が記載されています。しかし、その後の金属化によるこのようなモデル化は、結果としてモデル化の質を低下させるという欠点があるので望ましくない。
【0008】
EP2146805B1には、テクスチャー表面を有する材料を製造する方法が記載されている。この方法は、硬化可能なコーティングを持った基材を用意し、当該コーティングをテクスチャリング媒体に接触させエンボス加工し、次にこのようにしてエンボス加工したコーティングを硬化させ、このコーティングをテクスチャリング媒体から剥離することを含む。テクスチャリング媒体は、アクリルオリゴマーを20%~50%、単官能モノマーを15%~35%、及び多官能モノマーを20%~50%含有する表面層からなる。WO2016/090395A1及びACS Nano Journal、2016年、10巻、第4926~4941頁には、同様の方法が記載されており、それぞれの場合、テクスチャー媒体の表面層を生成するために、テクスチャー媒体の比較的硬質の型を生成できるように、3倍エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート(TMP(EO)TA)の部数を多く使用すべきであることを明確に教示している。WO2016/090395A1によれば、さらに、表面層の製造に用いられるコーティング組成物は、例えばトリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)などの少なくとも2つのチオール基を有する構造単位も必ず含まなければならないとされている。しかしながら、対応するコーティング材料組成物におけるそのようなチオールの使用は、そのような組成物が必ずしも貯蔵上の十分な安定性を有するとは限らず、またそれらから製造されるコーティングが十分な耐候性を欠くので、不利になる場合も多い。さらに、チオールの使用による臭気の問題もあり、これも、同様に、もちろん好ましいことではない。
【0009】
KR2009/0068490Aは、ポリマー型を用いて数十ナノメートルの微細パターンのエンボス構造を転写する方法に関している。この場合、ポリマー型は、i)シリコーン(メタ)アクリレート及びフッ素(メタ)アクリレートから選択されるアクリレート、ii)特定の多官能ウレタン(メタ)アクリレート、iii)紫外線硬化性モノマー、及び(iv)光重合開始剤から構成され、同様に、これらの製造方法も開示されており、有機溶剤による膨潤がなく、基材からのポリマー型の剥離性が向上し、このポリマー型は、PDMS(ポリジメチルシロキサン)から作製した型と比較して、可撓性、機械強度、及び耐久性に優れている。
【0010】
最後に、WO2019185832A1及びWO2019185833A1には、基材(S1)と、エンボス加工し、かつ、硬化したコーティング(B1)とから構成される複合体(F1B1)を用いてコーティング組成物の表面(B2a)にエンボス構造を特定の工程に従って転写する方法が記載されている。この方法では、複合体(F1B1)の製造(B1)に使用するコーティング組成物(B1a)が定義された構成の放射線硬化性コーティング組成物である。また、コーティング組成物(B2a)の表面の少なくとも一部にエンボス構造を転写するためのエンボス加工ツール(P2)のエンボスダイ(p2)としての複合体(F1B1)の使用に関するものである。
【0011】
先行技術から知られているエンボス方法、例えば特にEP2146805B1、WO2016/090395A1、及びACS Nano Journal、2016年、10巻、4926~4941頁に記載されている方法は、しかしながら、特にマイクロメートル領域及び/又はナノメートル領域におけるエンボス、すなわちマイクロ構造及び/又はナノ構造の転写が必ずしも十分に可能ではなく、特にそのように転写した場合に許容できない程度に成形精度が低下しないとは言い切れない。同時に、エンボスの再現性が必ずしも十分でなく、あるいは、WO2019185832A1及びWO2019185833A1のように、エンボス型として用いた複合体を特定時間熟成させ、エンボス型と、エンボスを施し、かつ、硬化したコーティングとを硬化後に直接分離させないと、高度な再現性は得られず、両者を破壊することのなく分離することはできない。
【0012】
したがって、上記のような欠点を有さないエンボス加工方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】WO90/15673A1
【特許文献2】欧州特許EP1135267B1
【特許文献3】EP3178653A1
【特許文献4】米国特許第9,778,564(B2)
【特許文献5】US20070204953A1
【特許文献6】WO2015/154866A1
【特許文献7】DE102007062123A1
【特許文献8】EP2146805B1
【特許文献9】WO2016/090395A1
【特許文献10】KR2009/0068490A
【特許文献11】WO2019185832A1
【特許文献12】WO2019185833A1
【非特許文献1】ACS Nano Journal、2016年、10巻、4926~4941頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
目的
したがって、本発明の目的は、コーティング組成物、及びそのコーティング組成物を備えた基材又は基板(substrate)にエンボス構造を転写するための方法、より詳細には、この種の方法であって、対応するマイクロ構造及び/又はナノ構造の転写を可能にし、エンボス加工が調整(modulation)の深さの損失を伴わないように、大面積の基材でさえも、十分な成形精度及びエンボス構造を転写する際の高度な複製成功率を可能にする方法であり、特に、エンボス構造を転写するための、極めて大いに再利用可能なエンボス型(モールド)の製造を可能にすることができ、及び/又はこの種のエンボス型を使用して実施することができる方法を提供することである。同時に、例えば不適切な接着性などのような、(特に、型充填の低下及び調整の喪失をもたらす、表面エネルギーの不一致による、エンボス加工されるコーティング組成物の脱濡れによる、型からエンボス加工されるコーティング組成物の反発性の点で不十分な接着などを含む)、使用するコーティング及びコーティング組成物の側の、望ましくない又は不適切な特性によって、引き起こされるいかなる欠点も特徴とすることなく、また、特にエンボス型を製造しエンボス型とエンボス加工されるコーティング組成物を接触させた後の経過時間に依存せずに、エンボス型とエンボスし硬化させたコーティングとの分離が良好であり。転写するエ ンボス構造をかなり高い程度に複製することが可能となる。さらに、エンボス型の全幅にわたって成形精度を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
技術的解決法
この課題は、特許請求の範囲に記載された主題によって解決され、また、以下に説明するその主題の好適な実施形態によって解決される。
【0016】
したがって、本発明の第1の主題は、複合体(コンポジット)(S1C1)を用いてコーティング組成物(C2a)の表面の少なくとも一部にエンボス構造を転写する方法であって、該方法は、少なくとも工程(1)、(2-i)及び(3-i)又は(2-ii)及び(3-ii)、及び、さらに少なくとも工程(4)及び、任意に、工程(5-i)又は(5-ii)を含む、具体的には、
(1)基材(S1)と、少なくとも部分的にエンボス加工した、かつ、少なくとも部分的に硬化したコーティング(C1)とから構成された複合体(S1C1)を用意する工程、
及び
(2-i)少なくとも1つのコーティング組成物(C2a)を基材(S2)の表面の少なくとも一部に塗布して複合体(S2C2a)を用意する工程、
(3-i)該複合体(S1C1)を該複合体(S2C2a)の該コーティング組成物(C2a)の少なくとも一部に適用して複合体(S1C1C2aS2)を用意する工程、
又は
(2-ii)複合体(S1C1)の、少なくとも部分的にエンボス加工し、かつ、少なくとも部分的に硬化した表面の少なくとも一部に、少なくとも1つのコーティング組成物(C2a)を塗布し、複合体(S1C1)を用いて該コーティング組成物(C2a)に少なくとも部分的にエンボス加工を施して複合体(S1C1C2a)を用意する工程、
(3-ii)任意に、該複合体(S1C1C2a)の、コーティング組成物(C2a)によって形成された表面の少なくとも一部に基材(S2)を適用して複合体(S1C1C2aS2)を得る工程、
及び
(4)任意で基材(S2)に塗布した、少なくとも部分的にエンボス加工したコーティング組成物(C2a)を少なくとも部分的に硬化させて、複合体(S1C1C2)又は(S1C1C2S2)を用意する工程であって、該コーティング組成物(C2a)が、少なくとも部分的に硬化させる期間を通して複合体(S1C1)と接触している工程、
及び
(5-i)任意に、該複合体(S1C1C2S2)内の複合体(C2S2)を該複合体(S1C1)から除去して、工程(1)で用意した該複合体(S1C1)を復元する工程、
又は
(5-ii)任意に、該複合体(S1C1C2)内のコーティング(C2)を該複合体(S1C1)から除去して、工程(1)で用意した該複合体(S1C1)を復元する工程
を含み、
ここで、工程(1)で使用した、及び、工程(5-i)又は工程(5-ii)で復元した複合体(S1C1)の、該少なくとも部分的にエンボス加工し、かつ、少なくとも部分的に硬化したコーティング(C1)を製造するために用いるコーティング組成物(C1a)が、放射線硬化性コーティング組成物であり、
(a)少なくとも1種の架橋性ポリマー及び/又はオリゴマーを1~45質量%、
(b)少なくとも1種の反応性希釈剤を40~95質量%、
(c)少なくとも1種の光重合開始剤を0.01~15質量%、及び
(d)少なくとも1種の添加剤を0~5質量%
を含み、
ここで、(i)成分(a)、(b)、(c)、及び(d)について記載した合計量は、それぞれコーティング組成物(C1a)の総質量に基づくものであり、(ii)コーティング組成物(C1a)に存在する全ての成分の合計量は、100質量%になり、
ここで、少なくとも1種の架橋性ポリマー及び/又はオリゴマー(a)は、コーティング組成物(C1a)中に含まれる全ての架橋性ポリマー及び/又はオリゴマーの総質量に基づいて、総量が、少なくとも25質量%、好ましくは少なくとも50質量%、より好ましくは少なくとも90質量%、非常に好ましくは100質量%の、少なくとも1種のシリコーン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む
ことを特徴とする方法である。
【0017】
本発明の方法は、驚くべきことに、エンボス加工するコーティング組成物に、特に10nm~1000μmの構造幅の範囲及び1nm~1000μmの構造深さの範囲のエンボス加工したマイクロ構造及び/又はナノ構造を転写することができ、複合体(S1C1)を製造しそれにコーティング組成物(C2a)を塗布してからの経過時間に依存せずに、また、エンボス型として有利に使用できるそのような複合体(S1C1)に塗布したコーティング組成物(C2a)のエンボス加工と硬化工程との間の経過時間に依存せずに、型充填が少ないことによる複製時の高品質を損失することなく、非常に高い複製成功率を可能にすることできるものであって、複合体(S1C1)は、好ましくは、エンボス型の幅にわたって改善された層厚均一性を有するエンボス加工ツール(E2)のエンボス型(e2)として使用することができ、複合体(S1C1)に圧力をかければ、より均一に圧力をかけることができるものであることが見出された。
【0018】
これに関連して、驚くべきことであるが、特に、本発明の方法は、複合体(S1C1)を用いて、型の全幅にわたって、非常に高い成形精度及び高いレベルの複製の成功を伴ってエンボス構造の転写を可能にすることが見出された。この複合体(S1C1)は、放射線硬化型コーティング組成物(C1a)を好ましくは移動基材(S1)にコーティングすることによって得られ、また、エンボス加工ツール(E2)のエンボス型(e2)として好適に使用することができるものである。
【0019】
さらに驚くべきことに、本発明の方法は、非常に有利に利用できることが見出された。なぜなら、基材(S1)上のコーティング(C1)が、複合体(S1C1)の経時変化(age)やコーティング組成物(C2)についてのエンボス加工及び硬化処理からの経過時間に依存しない、非常に優れた接着性及び非常に優れた分離挙動によって特徴付けられ、このため、対応する複合体(S1C1)がエンボス型(e2)としても極めて有効に使用できるからである。
【0020】
さらに意外にも、本発明の方法内のエンボス加工ツール(E2)のエンボス型(e2)として利用可能な複合体(S1C1)は、特に連続エンボス型の形態で、マイクロ構造及び/又はナノ構造などのエンボス構造を転写するために再利用可能であり、これは経済性の理由からも有利であることが判明している。さらに、驚くべきことに、好ましくは連続したエンボス型(e2)の形態で存在するこの複合体(S1C1)は、再利用可能であり、したがって多様に利用可能であるだけでなく、大きな産業規模で安価かつ迅速に製造することができる。
【0021】
したがって、本発明の更なる主題は、基材(S1)と、少なくとも部分的にエンボス加工した、かつ、少なくとも部分的に硬化したコーティング(C1)とから構成される複合体(S1C1)であって、基材(S1)の表面の少なくとも一部に適用され、少なくとも部分的にエンボス加工されたコーティング組成物(C1a)を放射線硬化することによって製造可能な複合体(S1C1)である。
【0022】
ここで、コーティング組成物(C1a)が放射線硬化コーティング組成物であって、
(a)少なくとも1種の架橋性ポリマー及び/又はオリゴマーを1~45質量%、
(b)少なくとも1種の反応性希釈剤を40~95質量%、
(c)少なくとも1種の光重合開始剤を0.01~15質量%、及び
(d)少なくとも1種の添加剤を0~5質量%
を含み、
ここで、(i)成分(a)、(b)、(c)、及び(d)について記載した合計量は、それぞれコーティング組成物(C1a)の総質量に基づくものであり、(ii)コーティング組成物(C1a)に存在する全ての成分の合計量は、100質量%になり、
ここで、少なくとも1種の架橋性ポリマー及び/又はオリゴマー(a)は、コーティング組成物(C1a)中に含まれる全ての架橋性ポリマー及び/又はオリゴマーの総質量に基づいて、総量が、少なくとも25質量%、好ましくは少なくとも50質量%、より好ましくは少なくとも90質量%、非常に好ましくは100質量%の、少なくとも1種のシリコーン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む。
【0023】
好ましくは、この複合体(S1C1)は、以下でより詳細に説明する方法工程(6)~(9)の実施によって得ることが可能である。
【0024】
驚くべきことに、本発明の少なくとも部分的にエンボス加工した複合体(S1C1)は、再使用可能なエンボス型(e2)として、好ましくは、再使用可能な連続エンボス型(e2)として、本発明の方法などのエンボス方法において使用することができるのみならず、この複合体(S1C1)を製造するために使用される放射線硬化性コーティング組成物(C1a)中の成分が存在することによって、エンボス加工ツール(E2)内でエンボス型(e2)として使用することができる複合体(S1C1)と、エンボス加工したコーティング(C2)及び/又はコーティング(C2)のようなエンボス加工したコーティングを持つ複合体(S2C2)のような対応する複合体との間で、非常に有効な分離を達成することが可能であることが分かった。また、特に、本発明の方法を実施するとき、その中の任意の工程(5-i)又は(5-ii)内で、エンボス型として使用することができる複合体(S1C1)を製造しコーティング組成物を塗布してからの経過時間、又はこの生成したコーティング(C2)のエンボス加工及び硬化工程後の経過時間とは無関係に、非常に高品質の分離を達成することができることも分かった。さらには、特に、複合体(S1C1)を製造するための方法工程(6)~(9)を詳しく検討すると、コーティング(C1)のエンボス構造は、均質な層厚で型の全幅にわたりフルの型充填により、エンボス型のフィーチャーの複製及び複製品質を高成功率で得ることが可能であることも判明した。
【0025】
本発明の更なる主題は、さらに、エンボス構造、好ましくはマイクロ構造化及び/又はナノ構造化表面を有するエンボス構造を、任意に基材(S2)に適用されるコーティング組成物(C2a)の表面の少なくとも一部に転写するためのエンボス加工ツール(E2)のエンボス型(e2)としての本発明の複合体(S1C1)の使用である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の方法の工程(1)、(2-i)及び(3-i)、さらに(4)及び任意で工程(5-i)を実施するために用いることができ、本発明の方法の例示のために用いる装置の側面図を概略的に示す。
図2】エンボス型(e2)として有利に用いられる複合体(S1C1)を製造するための、すなわちマスターフィルムを製造するための、本発明の方法の工程(6)~(9)の実施に用いることができる装置の側面図を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
詳細な説明
本発明との関連で公定規格に言及する場合、これは出願日時点で容認されているバージョンの規格を意味し、又は、その出願日時点で容認されているバージョンのものが存在しない場合には、容認されているバージョンのうち最新のものを意味する。
【0028】
本発明との関連における用語「少なくとも」は、例えば少なくとも1種の架橋性ポリマー及び/又はオリゴマーを含むコーティング組成物(C1a)に関連して言えば、そこで特定した数(1)及びそれ以上を含むものとして理解され、例えばコーティング組成物(C1a)は1、2、3、又は4つの異なる又は同一の架橋性ポリマー及び/又はオリゴマーを含むものであるとされる。「少なくとも」という言葉の解釈に関する数学記号としては「≧」に類似している。これと同じことが、「少なくとも25質量%」のように、挙げられた数値範囲と組み合わせて用いる用語「少なくとも」の解釈にも当てはまり、本発明との関連では25質量%~100質量%を意味するものとして解釈されるべきである。75質量%未満などの「未満」という用語は、そこに特定されている数字(「75」)を含むのではなく、0質量%から75質量%までの範囲として解釈される。「未満」という言葉の解釈に関する数学記号としては「<」に類似している。
【0029】
本発明の説明において、便宜上、「ポリマー(重合体、高分子)」及び「樹脂」は、樹脂類、オリゴマー類、及びポリマー(重合体、高分子)類を包含するものとして互換的に使用する。
【0030】
ポリ(メタ)アクリレート」という用語は、ポリアクリレートとポリメタクリレートの両方を意味する。したがって、ポリ(メタ)アクリレートとは、アクリレート及び/又はメタクリレートから構成されてもよく、例えば、スチレン又はアクリル酸などのエチレン性不飽和モノマーをさらに含有することができる。本発明における意味での「(メタ)アクリロイル」という用語は、メタクリロイル化合物、アクリロイル化合物及びそれらの混合物を包含する。
【0031】
本発明において、C~C-アルキルとは、メチル、エチル、イソプロピル、n-プロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル及びtert-ブチルをいい、好ましくはメチル、エチル及びn-ブチル、より好ましくはメチル及びエチル、最も好ましくはメチルをいう。
【0032】
用語「含む(comprising)」は、本発明による、例えば、コーティング用組 成物(C1a)、及び本発明の方法、及びその方法工程などにより使用されるコーテ ィング組成物に関連する本発明の意味では、好ましくは、「からなる(consisting of)」という定義を有する。例えば、本発明により使用されるコーティング組成物(C1a)に関して、成分(a)及び(b)及びまた(c)並びに任意に(d)に加えて、以下に特定される、及び本発明により使用されるコーティング組成物(C1a)中に任意に存在する1種又は複数の他の構成成分をその組成物中に含ませることもさらに可能である。成分はすべて、以下に特定されているその好適な実施形態にそれぞれ存在してもよい。本発明の方法に関して、工程(1)、(2-i)及び(3-i)、又は(2-ii)及び(3-ii)、さらに少なくとも工程(4)、及び任意に工程(5-i)又は(5-ii)に加えて、例えば、工程(6)~(9)などの、更なる任意の方法工程を有してもよい。
【0033】
少なくとも工程(1)、(2-i)及び(3-i)又は(2-ii)及び(3-ii)、さらに少なくとも工程(4)及び任意に、工程(5-i)又は(5-ii)を含む、エンボス構造を転写するための本発明の方法
本発明の第1の主題は、複合体(S1C1)を用いて、コーティング組成物(C2a)の表面の少なくとも一部にエンボス構造を転写するための本発明の方法である。この方法は、後述する少なくとも工程(1)、(2-i)及び(3-i)、又は(2-ii)及び(3-ii)、さらに少なくとも工程(4)及び任意に、工程(5-i)又は(5-ii)を含む。
【0034】
本発明の方法は、好ましくは、連続的な方法である。
【0035】
エンボス構造は、方法工程(2-i)及び(3-i)に従って、基材(S2)の表面に少なくとも部分的に塗布したコーティング組成物(C2a)を少なくとも部分的にエンボスすることによって転写又は維持される。別の方法として、方法工程(2-ii)及び(3-ii)による転写も可能である。「エンボスする(embossing)」という用語は、任意に複合体(S2C2a)の一部としての、コーティング組成物(C2a)の、その表面の少なくとも一部に、エンボス構造を少なくとも部分的に設けることを意味する。この場合、コーティング組成物(C2a)の少なくともある領域にはエンボス構造が設けられる。任意に複合体(S2C2a)の一部としての、コーティング組成物(C2a)の表面全体にエンボス 構造を設けることが好ましい。同様の注釈が、好ましくはエンボス加工ツール(E2)のエンボス型(e2)として使用可能であり、基材(S1)と少なくとも部分的にエンボス加工され少なくとも部分的に硬化したコーティング(C1)とから構成され、以下に説明する工程(6)~(9)に従って製造することができる、少なくとも部分的にエンボス加工した複合体(S1C1)に関する用語「エンボス」に関しても該当する。
【0036】
工程(1)
本発明の方法の工程(1)では、基材(S1)と、少なくとも部分的に硬化した、かつ、少なくとも部分的にエンボス加工したコーティング(C1)とからなる複合体(S1C1)を用意する。
【0037】
複合体(S1C1)、エンボス型(e1)、及び次の工程で説明する複合体(S2C2a)及び複合体(S2C2)の各エンボス構造は、好ましくは、それぞれの場合に互いに独立して、繰り返しパターン及び/又は規則的に配置されたパターンに基づいているか、又は完全にランダム化されている。それぞれの場合の構造は、連続した溝構造のような連続したエンボス構造であってもよいし、そうでなければ、複数の好ましくは繰り返される個々のエンボス構造であってもよい。この場合、それぞれの個々のエンボス構造は、好ましくは、エンボス構造のエンボス高さを規定する多かれ少なかれ強く顕著な隆起(エンボス高さ)を有する溝構造に基づくものであってよい。好ましくは繰り返される個々のエンボス構造の稜線のそれぞれの形状に従って、平面図は、多様な、好ましくは繰り返される個々のエンボス構造を示すことができ、それらの各々は異なり、例えば、好ましくは屈曲状、のこぎり歯、六角形、ダイヤモンド形、菱形、平行四辺形、ハニカム状、円状、点状、星状、ロープ状、網状、多角形、好ましくは三角形、四角形、より好ましくは長方形及び正方形、五角形、六角形、七角形及び八角形、ワイヤー状、楕円形、楕円及び格子状のパターン、また少なくとも二つのパターンが互いに重畳していることが可能である。また、個々のエンボス構造の稜線は、湾曲部、すなわち、凸構造及び/又は凹構造を有していてもよい。
【0038】
エンボス加工したコーティング(C1)は、マイクロスケール及び/又はナノスケールの表面要素を備える少なくとも1つのマイクロ構造化及び/又はナノ構造化表面を含むことが好ましい。それぞれのエンボスした、マイクロスケール及び/又はナノスケール表面要素は、稜線の幅などのようなその幅、換言すればその構造幅によって、また、エンボスの高さ、換言すればその構造高さ(又は構造深さ)によって描写することができる。稜線の幅などの構造幅は、1センチメートルまでの長さを有していてもよいが、好ましくは10nm~1mmの範囲に位置するものである。構造高さは、0.1nm~1mmの範囲に位置することが好ましい。しかし、それぞれのエンボス構造は、マイクロ構造及び/又はナノ構造をもつことが好ましい。
【0039】
特定のマイクロスケール又はナノスケールの表面要素のサイズは、それぞれ、表面に平行な任意の方向におけるその最大延長(maximum extension)として、すなわち、例えば、円筒形の表面要素の直径又はピラミッド型の表面要素の底面の対角線として定義される。表面内の1つ以上の方向(又は表面に平行な方向)にマクロスケールの延長を有し、表面内の1つ以上の他の方向にマイクロスケール又はナノスケールの延長を有する表面要素の場合、表面要素のサイズという用語は、かかる表面要素のマイクロスケール及び/又はナノスケールの延長を意味する。特定のマイクロスケール又はナノスケールの表面要素のそれぞれの長さは、構造化された表面の長さ方向への延長として定義される。同様に、特定のマイクロスケール又はナノスケールの表面要素の幅は、それぞれ、構造化された表面の幅方向への延長として定義される。
【0040】
突出面要素(又は隆起面要素)の高さは、それぞれの突出面要素が配置された隣接する底面から、当該底面に垂直な方向に測定したそれぞれの延長線によって定義される。同様に、隣接する上面露出面から下方に延びる表面要素の深さは、窪みが延びる隣接する上面から、当該上面に垂直な方向に測定した、それぞれの下方への延びによって定義される。
【0041】
隣接する2つの表面要素間の距離は、構造化された表面内の方向において、かかる表面要素間の2つの最大値又は2つの極大点間の距離としてそれぞれ定義される。表面に平行な1つ又は複数の所定の方向に表面要素が規則的に配列している構造化表面は、その方向における1つ又は複数のピッチ長によって特徴づけることができる。表面と平行なある方向において、ピッチ長とは、隣接する2つの規則正しく繰り返される表面要素の対応する点の間の距離を表す用語である。これは、両表面要素が、巨視的に、互いに本質的に平行に、第1の長手方向に延在し、それぞれが当該長手方向に垂直なマイクロスケールの断面及び任意でナノスケールの断面を有する、交互配列のチャネル型及びレール型表面要素からなる構造化表面について説明し得る。このような構造化表面の、長手方向に垂直なピッチ長は、当該垂直方向におけるチャネル型表面要素の幅とレール型表面要素の幅との総和である。
【0042】
エンボス加工により転写する、それぞれのマイクロ構造及び/又はナノ構造表面は、構造幅が10nm~1000μmの範囲、好ましくは10nm~500μm、より好ましくは25nm~400μmの範囲、非常に好ましくは50nm~250μmの範囲、より好ましくは100nm~100μmの範囲に有利に位置しており、かつ、構造高さが10nm~1000μmの範囲に、好ましくは10nm~500μmの範囲に、より好ましくは25nm~400μmの範囲に、非常に好ましくは50nm~300μmの範囲に、より好ましくは100nm~200μmの範囲に有利に位置している、マイクロスケール及び/又はナノスケール表面要素を備えていることが好ましい。これらの寸法は、複合体(S1C1)と、複合体(C2S2)及びコーティング(C2)の両方のエンボス構造、並びに論理的には、任意の工程(7)におけるエンボス型(e1)にも適用される。
【0043】
マイクロ構造化及び/又はナノ構造化された表面要素を備えるそれぞれの表面の構造幅及び構造高さは、好ましくは、当該表面の断面を作製し、この断面の構造高さ及び構造幅を光学及び/又は走査電子顕微鏡によって測定することによって決定する。
【0044】
本発明の方法の工程(1)で用意する複合体(S1C1)は、種々のプロセスによって、例えば、ナノインプリントリソグラフィー、レーザーリソグラフィー及びフォトリソグラフィーなどのリソグラフィー法によって作製することができる。なお、後で詳細に規定する工程(6)~(9)により複合体(S1C1)を作製することが好ましい。
【0045】
工程(3-i)及び工程(2-ii)においてエンボス型(e2)として好ましく用いられ、基材(S1)と、少なくとも一部をエンボス加工し少なくとも一部が硬化したコーティング(C1)とで構成される複合体(S1C1)は、本発明において「マスター基材」又は「マスターフィルム」とも称される。基材(S1)がフィルムの場合、対応するマスターフィルムを「マスターホイル(箔)」と称する。基材(S1)がフィルムの場合、対応するマスターフィルムを「マスターホイル(箔)」と称する。以下、マスターフィルムのコーティング(C1)を「少なくとも部分的に硬化したマスターコーティング」又は「マスターコーティングフィルム」ともいい、硬化したマスターコーティングの製造に用いるコーティング組成物(C1a)を「マスターコーティング」ともいう。複合体(S1C1)の(S1)と(C1)の間には、更なる(コーティング)層が存在しないことが好ましい。しかしながら、複合体(S1C1)の(S1)と(C1)の間に少なくとも1つの接着促進剤層が存在することは可能であり、この場合、この層はUV放射に対して透過性であることが好ましい。
【0046】
工程(2-i)及び(3-i)
工程(1)に続いて、第1の代替案では、コーティング組成物(C2a)を基材(S2)に少なくとも部分的に塗布して複合体(S2C2a)を用意し、続いて複合体(S1C1)を用いて複合体(S2C2a)のコーティング組成物(C2a)を少なくとも部分的にエンボスして、複合体(S1C1C2S2)を用意する。本発明の方法の、この第1の代替案は、ここでは工程(2-i)及び(3-i)により説明する。
【0047】
工程(2-i)
本発明の方法の工程(2-i)は、基材(S2)の表面の少なくとも一部に放射線硬化性コーティング組成物(C2a)を塗布して、複合体(S2C2a)を用意する工程である。
【0048】
基材(S2)は、その上に塗布されるコーティング組成物(C2a)又はコーティング(C2)用の担体材料を表す。基材(S2)は、又は、コーティングした基材を使用する場合、基材(S2)の表面に位置し、コーティング組成物(C2a)と接触する層は、少なくとも1種の熱可塑性ポリマーからなることが好ましい。さらに詳細には、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート及びポリ酢酸ビニルを含むポリエステル、好ましくは、PBT及びPETなどのポリエステル、ポリアミド、(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、及びさらにはポリブタジエンなどの)ポリオレフィン、ポリアクリロニトリル、ポリアセタール、ポリアクリロニトリル-エチレン-プロピレン-ジエン-スチレンコポリマー(A-EPDM)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、セルローストリアセテート(TAC)、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、熱可塑性ポリウレタン(TPU)などのポリウレタン、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテル、ポリビニルアルコール、及びこれらの混合物からなる群から選択する。特に好適な基材又はその表面上の層としては、例えば、PP(ポリプロピレン)などのポリオレフィンであり、これは、代替的に、アイソタクチック、シンジオタクチック又はアタクチックであってもよく、代替的に、無配向又は一軸又は二軸延伸により配向されていてもよい、SAN(スチレン-アクリロニトリルコポリマー)、PC(ポリカーボネート)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、PBT(ポリ(ブチレンテレフタレート))、PA(ポリアミド)、ASA(アクリロニトリル-スチレン-アクリルエステルコポリマー)及びABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー)、及びさらにそれらの物理的混合物(ブレンド)であってもよい。特に好適なのは、PP、SAN、ABS、ASA、及びABS又はASAとPA又はPBT又はPCとのブレンドである。特に好適なのは、PET、PBT、PP、PE、ポリメチルメタクリレート(PMMA)又は衝撃改良型PMMAである。特に好適なのは、基材(S2)の材料として用いるポリエステルであり、最も好ましくはPETである。あるいは、基材(S2)自体(前述のポリマーの少なくとも1つの層を適用していても、所望により)は、ガラス、セラミック、金属、紙及び/又は布地などの異なる材料から作製してもよい。その場合、基材(S2)は、好ましくはプレート板であり、例えば、ロールツープレート(roll-to-plate)(R2P)エンボス装置で使用することができる。
【0049】
コーティング組成物(C2a)は、基材(S2)又は複合体(S1C1)を介して、好ましくは基材(S2)を介して、放射線を照射することが有利である。したがって、基材(S2)の放射線に対する透過性は、コーティング組成物(C2a)に使用する少なくとも1種の光開始剤の吸収最大値と、又は少なくとも吸収領域で調和することが好ましい。更なる層、例えば好ましくはUV照射に対して透過性である接着促進層を、複合体(S2C2a)の(S2)と(C2a)との間に存在させることができる。ただし、複合体(S2C2a)において、(S2)と(C2a)の間に更なる層が存在しないことが有利である。あるいは、複合体(S1C1)を介してコーティング組成物(C2a)に放射線を照射する場合、基材(S2)も、適用される紫外線放射などの放射線に対して非透過性であってよい。さらに、基材(S2)としては、(i)任意に剥離ライナーを含む片面又は両面粘着テープ又は(ii)自己粘着層で片面を覆ったポリマー基材から、又は自己粘着性のポリマー基材から選択することも可能である。
【0050】
基材(S2)の厚さは、2μm以上5mm以下であることが好ましい。特に好ましいのは、層厚が25~1000μm、より詳細には50~300μmであることである。
【0051】
基材(S2)としては、好ましくはフィルムであり、より好ましくはフィルムウェブであり、非常に好ましくは連続フィルムウェブである。その場合、基材(S2)は、好ましくは、ロールツーロール(roll-to-roll)(R2R)エンボス装置又はプレートツーロール(plate-to-roll)(P2R)エンボス装置で使用することができる。
【0052】
本発明に関連して、「連続フィルム」又は「連続フィルムウェブ」という用語は、好ましくは、100m~10kmの長さを有するフィルムをいう。
【0053】
工程(2-i)を実施するとき(好ましくは、本発明の方法の工程(3-i)、(4)及び(5-i)を実施するとき、並びに本発明の方法の工程(2-ii)、(3-ii)、(4)及び(5-i)又は(5-ii)を実施するときも)、基材(S2)は、移動しているので、移動基材であることが好ましい。工程(2-i)及び(3-ii)の実施中、基材(S2)は、ベルトコンベアなどの搬送装置によって移動させることが好ましい。したがって、工程(2-i)及び工程(3-ii)を実施するために用いる該当する装置としては、このような搬送装置を備えていることが好ましい。工程(2-i)を実施するために用いる該当する装置としては、好ましくは放射線硬化性コーティング組成物(C2a)を基材(S2)の表面の少なくとも一部に塗布するための手段をさらに備える。工程(3-ii)及び任意の工程(6)~(9)を実施するための該当する装置についても、同様のことがいえる。
【0054】
本発明の方法の工程(2-i)及び(2-ii)で用意するコーティング組成物(C2a)は、さらに後述するように、いかなる種類のコーティング組成物であってもよい。工程(2-i)及び(2-ii)で適用するコーティング組成物(C2a)は、少なくとも0.5μm、好ましくは少なくとも1μm~1000μm、より好ましくは少なくとも5μm~1000μmの乾燥膜厚で塗布することが有利である。
【0055】
工程(2-i)及び(2-ii)で適用するコーティング組成物(C2a)は、少なくとも0.5μm、好ましくは5~1000μm、さらに好ましくは6~900μm、さらにより好ましくは7~700μm、特に好ましくは8~500μm、特に好ましくは9~400μm、とりわけ10~300μmの乾燥膜厚で塗布することが有利である。なお、乾燥膜厚はDIN EN ISO2808:2007-05、手順12Aに従って決定する、本発明に関連して乾燥膜厚とは、好ましくは、コーティング(C2)又は類似のコーティング(C1)の表面のマイクロスケール及び/又はナノスケール表面要素を備えるエンボス構造の突起上の乾燥膜の膜厚をいう。
【0056】
工程(3-i)
本発明の方法の工程(3-i)では、基材(S2)の表面に少なくとも部分的に塗布したコーティング組成物(C2a)に対して、複合体(S1C1)を用いて、少なくとも部分的エンボス加工を施す。ここで、複合体(S1C1)を、エンボス加工ツール(E2)のエンボス型(e2)として使用することが好ましい。複合体(S1C1)は、基材(S1)と、少なくとも部分的にエンボス加工し、かつ、少なくとも部分的に硬化したコーティング(C1)とから構成され、少なくとも部分的なエンボス加工の結果として複合体(S1C1C2aS2)が用意される。好ましくはエンボス型(e2)として使用する複合体(S1C1)は、複合体(S1C1)がエンボス加工すべきコーティング組成物(C2a)と接触させられる前に、コーティング組成物(C2a)で予め湿潤してもよい。
【0057】
少なくとも部分的なエンボスは、基材(S2)に塗布したコーティング組成物(C2a)の表面に、少なくとも部分的にエンボス構造を転写する。用語「エンボスする」とは、複合体(S2C2)の一部としての、工程(3-i)及び(4)後のコーティング組成物(C2a)の表面の少なくとも一部が、エンボス構造を表すようになる工程をいう。この場合、複合体(S2C2)のコーティング組成物(C2a)の少なくともある領域には、エンボス構造が備えられる。複合体(S2C2)のコーティング組成物(C2a)の表面全体にエンボス構造が付与されることが好ましい。同様の注釈が、本発明の方法の工程(2-ii)及び(4)並びに複合体(S1C1)を用意する任意の工程(7)及び(8)に関する、用語「エンボスする」についても適合する。コーティング組成物(C2a)(又は、複合体(S1C1)を用意することに関しては、コーティング組成物(C1a))内にエンボスしたフィーチャー又は構造は、それによって、エンボス型の構造化表面の鏡像である。本発明の方法において、複合体(S1C1)のエンボス構造は、コーティング組成物(C2a)又は、少なくとも部分的に硬化した後のコーティング(C2)に転写され、ここで複合体(S1C1)は、エンボス加工ツール(E2)のエンボス型(e2)として使用されることが好ましい。したがって、コーティング組成物(C2a)内にエンボス加工した構造は、基材(S1)と、少なくとも部分的に硬化し、少なくとも部分的にエンボス加工したコーティング組成物(C1)とを備える複合体(S1C1)の少なくとも一方の表面のエンボス構造の鏡像である。したがって、少なくとも部分的にエンボス加工したコーティング組成物(C2a)、及び少なくとも部分的に硬化し部分的にエンボス加工したコーティング組成物(C2)のエンボス表面のイメージ像は、エンボス型(e1)のイメージ像に対応してもよく、エンボス型(e1)は、以下にさらに説明するように複合体(S1C1)のコーティング組成物(C1a)をエンボスするために使用したものであった。
【0058】
工程(3-i)では、コーティング組成物(C2a)上にエンボス構造としてマイクロ構造及び/又はナノ構造を転写することが好ましい。
【0059】
工程(3-i)(及び方法の工程(2-ii)及び(3-ii)について同様)を実施するために好ましく用いられる対応する装置は、少なくとも1つのエンボス型(e2)を備える少なくとも1つのエンボス加工ツール(E2)によって、基材(S2)の表面に少なくとも部分的に塗布したコーティング組成物(C2a)を少なくとも部分的にエンボスする手段を備えている。好ましく使用する装置は、放射線硬化性コーティング組成物(C2a)を(S2)に塗布した後に、エンボス加工ツール(E2)のエンボス型(e2)、したがって複合体(S1C1)を、好ましくは連続フィルムウェブの形態で用いられる基材(S2)に押し付ける手段をさらに備えており、この手段は、基材(S2)の搬送方向から見て、放射線硬化性コーティング組成物(C2a)を適用する手段の下流に位置させることが好ましい。
【0060】
必要であれば、工程(3-i)を30℃~100℃あるいは80℃までの高温で行ってもよい。その場合、複合体(S2C2a)は、まず加熱ロール機構を通過させ、続いて任意に赤外線の照射を実施する。その後、実際のエンボス加工手順を行い、すなわちエンボス加工ツール(E1)と接触している間に硬化させる。エンボス加工と硬化の後、エンボス加工した複合体(S2C2)は、任意で、冷却ロール機構を通過させ、冷却される。こうする代わりに、冷却しながら硬化させることも可能である。この場合、エンボス加工用の複合体(S2C2a)は、先に説明した実際のエンボス加工手順を行う前に、まず冷却ロール機構を通過させる。また、別個の加熱又は硬化ロール機構を使用する代わりに、エンボスツール(E2)を加熱又は冷却することも可能である。
【0061】
したがって、基材(S2)に塗布したコーティング組成物(C2a)をエンボス加工するために好ましく使用できる装置は、好ましくは以下の手段、すなわち、
(a)基材(S2)を搬送するための搬送手段、好ましくはコンベアベルト、
(b)好ましくは放射線硬化性コーティング組成物(C2a)を移動基材(S2)の表面の少なくとも一部に塗布する手段、
(c)少なくとも1つのエンボス型(e2)が、基材(S2)の搬送方向で見て、放射線硬化性コーティング組成物を塗布するための手段(C2a)の好ましくは下流に位置しているエンボス加工ツール(E2)であって、任意に、基材(S2)にエンボス加工ツール(E2)のエンボス型(e2)を押し付けるための手段を備えるエンボス加工ツール(E2)、
(d)任意の加熱手段、好ましくは任意に赤外線(IR)放射手段と組み合わせた加熱ロール機構、
(e)任意の冷却手段、好ましくは冷却ロール機構、及び
(f)放射線、好ましくは紫外線(UV)を照射するための手段
を備えている。
【0062】
エンボス加工ツール(E2)は、好ましくは、グリッド塗布機構、より好ましくはグリッドロール機構を備えたエンボスカレンダーであることができる。このカレンダーは、好ましくは高さ方向に一定の間隔をあけて互いに上下に配置された逆方向回転ロールを有し、エンボス構造を付与すべき複合体(S2C2a)がロールに供給され、形成するロールニップを通じて案内され、ニップ幅を可変に調整し得るものである。ここでのグリッドロール機構は、好ましくは、例えばスチールロール、銅層又は任意に少量のリンを含むニッケル層などの金属層で覆われたスチールロール、又は任意に少量のリンを含むニッケルスリーブで覆われたロールなどの金属ロール、あるいは他の石英系ロールなどの第1のロールを備える。しかし、代替的に、例えば、ゴム又はポリジメチルシロキサン(PDMS)などの軟質材料も、第1のロールとして、あるいは、ゴム又はPDMSなどの少なくとも1種の軟質材料で覆われたロールとして使用することも可能である。さらに、少なくとも1種のプラスチックをコーティングしたロールを採用することもできる。さらに、グリッドロール機構は、第2のロールを備えるものであって、第2のロールは、好ましくは、スチール製の押圧ロール、又は、少なくとも1種のプラスチック又はゴム若しくはPDMSなどの軟質材料をコーティングしたロールである。第2のロールは、インプレッションロール又はプレスロールとして機能する。エンボス加工される複合体(S2C2a)は、例えばコーティング組成物(C2a)を少なくとも部分的にコーティングしたフィルムウェブの形態で、第2のロール又はプレスロールによって第1のロールに対して反対方向に移動する。互いに一定の距離をおいて配置された逆回転ロールによって形成されるロールニップ部では、工程(3-i)に従ってエンボス加工が行われる。エンボス型(e2)としての複合体(S1C1)を搬送する第1のロールは、ここでは、このエンボスロールに対向する第2のロールによって案内される複合体(S2C2a)をエンボスする役割を果たし、第2のロールがエンボス構造を備えるべき複合体(S2C2a)を第1のエンボスロールに押し当てる。この工程により、本方法の工程(3-i)又は(2-ii)において、複合体(S1C1)のコーティング(C1)の表面のエンボス構造の鏡像が、複合体(S2C2a)のコーティング組成物(C2a)の表面に転写される。
【0063】
エンボス型(e2)を含むエンボス加工ツール(e2)は、工程(3-i)の実施中に、少なくとも部分的に、塗布されたコーティング組成物(C2a)上に押圧されることが好ましい。
【0064】
複合体(S1C1)は、エンボス加工ツール(E2)の再使用可能な連続エンボス型(e2)として採用することができ、また、当該複合体は、本発明の方法が必ず工程(5-i)又は(5-ii)を備える場合に本発明の方法内で、複合体(S1C1)と、構造化表面を備える基材(S2)に任意で適用した、少なくとも部分的に硬化し少なくとも部分的にエンボス加工したコーティング(C2)とを非常に効果的に分離させることができる。工程(3-i)は、好ましくは、工程(1)で用意する複合体(S1C1)に関連して先に説明した寸法のマイクロ構造及び/又はナノ構造を転写する。
【0065】
エンボス型(e2)、言い換えれば有利には複合体(S1C1)は、基材(S1)として、少なくとも部分的にエンボス加工した、かつ、少なくとも部分的に硬化したコーティング(C1)を備えるフィルムウェブを含んでなることが好ましい。特に好ましくは、基材(S1)は、少なくとも部分的にエンボス加工し、少なくとも部分的に硬化したコーティング(C1)を備える連続フィルムウェブであり、したがって、エンボス型(e2)として用いられる複合体(S1C1)を連続エンボス型とすることであり、これは特に基材(S2)が同様に連続フィルムウェブの場合、特に好ましい。
【0066】
工程(2-ii)及び(3-ii)
工程(1)に続いて、工程(2-i)及び(3-i)に代わって、コーティング組成物(C2a)をまず複合体(S1C1)に少なくとも部分的に塗布し、それによって少なくとも部分的にエンボス加工することもでき、その後、任意で基材(S2)をコーティング組成物(C2a)で形成された表面に少なくとも部分的に適用することも可能である。この本発明の方法の第2の選択肢は、工程(2-i)及び(3-i)からなる本発明の方法の第1の選択肢と比較して、ここでは工程(2-ii)及び(3-ii)により説明する。
【0067】
工程(2-ii)
本発明の方法の工程(2-ii)は、複合体(S1C1)の少なくとも部分的にエンボス加工し、かつ、少なくとも部分的に硬化した表面の少なくとも一部に、少なくとも1つのコーティング組成物(C2a)を塗布し、複合体(S1C1)を用いてコーティング組成物(C2a)を少なくとも部分的にエンボス加工して複合体(S1C1C2a)を用意するものである。
【0068】
好ましくはエンボス加工ツール(E2)のエンボス型(e2)として使用できる複合体(S1C1)には、コーティング組成物(C2a)を塗布する前に、任意に、予備湿潤させることができる。
【0069】
本発明の方法の工程(2-i)及び(2-ii)で用意するコーティング組成物(C2a)は、任意の種類のコーティング組成物であってもよく、後述するように、好ましくは放射線硬化型のコーティング組成物であることができる。工程(2-i)及び(2-ii)で塗布するコーティング組成物(C2a)は、少なくとも0.5μm、好ましくは少なくとも1μm、より好ましくは少なくとも5μmで、かつ、1.000μmまでの乾燥層厚で塗布することが有利である。
【0070】
工程(2-ii)により、複合体(S1C1)の基材(S1)上の少なくとも部分的にエンボス加工し、かつ、少なくとも部分的に硬化したコーティング(C1)の望ましい(鏡像)は、複合体(S1C1)からコーティング組成物(C2a)へ、さらに工程(4)の実施後、コーティング(C2)へ、好ましい放射線硬化性コーティング組成物(C2a)の適用によって、複合体(S1C1)の少なくとも部分的にエンボス加工した表面の少なくとも一部へ転写する。したがって、複合体(S1C1)は、(C2a)又は(C2)のキャリア材料として機能するだけでなく、さらに、エンボス型としても、好ましくは、エンボス加工ツール(E2)のエンボス型(e2)としても機能する。
【0071】
工程(2-ii)の少なくとも部分的なエンボス加工は、エンボス加工ツール(E2)のエンボス型(e2)として有利に用いる複合体(S1C1)上に、塗布したコーティング組成物(C2a)をプレスし押し付けることによって行うことが好ましい。当該圧力の印加は、例えば、コーティング組成物(C2a)を塗布した後に、ロール又は少なくとも1つのロールを備えるグリッドロール機構などの手段により達成することができる。通常印加する圧力は、1~10バール(bar)、好ましくは2~8バール、より好ましくは3~7バールの範囲である。ここでのグリッドロール機構は、例えばスチールロール、銅層、任意に少量のリンを含むニッケル層などの金属層で覆われたスチールロール、又は任意に少量のリンを含有するニッケルスリーブで覆われたロールなどの金属ロール、さもなければ石英ベースのロール又はPDMSなどの少なくとも一つのプラスチック、ゴム又はシリコーンでコーティングしたロールを備えるものであることが好ましい。任意で、塗布したコーティング組成物(C2a)を仮に箔で裏打ちして、少なくとも工程(2-ii)~工程(4)におけるエンボス及び硬化の間、しかし工程(5)の間も、酸素及び機械の影響から有利に保護することが可能である。厚さが有利には5μm~250μmの仮貼り箔を取り除くと、複合体(S1C1C2)が用意される。仮貼り箔に適する材料としては、上述した基材(S2)の製造にも使用できる材料と同じものから選択する。ここで、該当箇所を明示的に引用する。あるいは、前記箔は、剥離ライナーとして一般的に観察される材料、又はセルローストリアセテート(TAC)から選択することができる。仮貼り箔は、PET又はTACで構成するのが好ましい。
【0072】
工程(3-ii)
本発明の方法の工程(3-ii)は、複合体(S1C1C2a)の、コーティング組成物(C2a)により形成される表面の少なくとも一部に、基材(S2)を任意に貼り付け、複合体(S1C1C2aS2)を得るものである。
【0073】
工程(2-ii)においてエンボス型(e2)として有利に使用した複合体(S1C1)は、その少なくとも部分的にエンボス加工した表面の少なくとも一部にコーティング組成物(C2a)を塗布し複合体(S1C1C2a)を得た後、工程(3-ii)の実施中、エンボス加工ツール(E2)の一部として機能する第1のロールにより案内されることが好ましく、また、工程(3-ii)内で使用する基材(S2)は第2のロールを介して案内されることが好ましい。第2のロールは、第1のロールに対向しており、また、第1のロールと逆回転するか又は同方向回転(co-rotary)することができ、好ましくは逆回転する。
【0074】
工程(3-ii)による少なくとも部分的なエンボス加工は、逆方向又は同方向に回転する、2つの互いに対向するロールが形成するロールニップのレベルで、複合体(S1C1C2a)のコーティング組成物(C2a)が基材(S2)に面した状態で実施することが好ましい。この場合の少なくとも部分的なエンボスは、好ましくは、例えば第2のロール又はプレスロールによる、複合体(S1C1C2a)への基材(S2)の加圧又はプレスによって達成される。
【0075】
本方法の工程(2-i)及び(3-i)を実施するために優先的に使用する前述の対応する装置を、本方法の工程(2-ii)及び(3-ii)を実施するためにも、基本的に類似の方法で同様に採用することができる。
【0076】
工程(4)
本発明の方法の第1の選択肢としての工程(2-i)及び(3-i)に続いて、又は本発明の方法の第2の選択肢としての工程(2-ii)及び(3-ii)に続いて、本発明の方法の工程(4)は、少なくとも部分的にエンボス加工したコーティング組成物(C2a)を、任意に、工程(3-i)又は(3-ii)の後に得られた基材(S2)に塗布し、少なくとも部分的に硬化させて、複合体(S1C1C2)又は(S1C1C2S2)を用意するものである。ここでは、当該少なくとも部分的に硬化させる期間中、コーティング組成物(C2a)は、エンボス型(e2)として好ましく用いられる複合体(S1C1)と接触している。
【0077】
工程(4)では、塗布したコーティング組成物(C2a)を、少なくとも部分的に硬化させて、任意に基材(S2)を備える、少なくとも部分的にエンボス加工し部分的に硬化したコーティング材料を生じる。コーティング組成物(C2a)に関して「少なくとも部分的に硬化させる」という用語は、前記コーティング組成物(C2a)のある状態への変換を意味し、すなわち、コーティング組成物の少なくとも一部がフィルムに変化し、その結果、例えば二重結合変換比を高めるための露出後工程などのように、形成したコーティング(C2)をさらに加工又は処理することができ、又は、複合体(S2C2)の一部として又は自立したフィルム(C2)としてコーティング(C2)を取り外すことができるようなフィルムに変化することを意味すると理解されている。
【0078】
好ましくは、工程(4)における少なくとも部分的に硬化させる期間中、エンボス型(e2)として好適に用いられる少なくとも1つの複合体(S1C1)に向けて、塗布済みのコーティング組成物(C2a)を加圧又はプレスするための、工程(2-i)及び(3-i)又は工程(2-ii)及び(3-ii)で用いる手段は、コーティング組成物(C2a)と接触し、及び/又は、コーティング組成物から形成される少なくとも部分的に硬化したコーティング(C2)と接触している。
【0079】
工程(3-i)又は工程(2-ii)及び(3-ii)、及び工程(4)は、同時に実施することが好ましい。その場合、工程(4)による少なくとも部分的な硬化は、好ましくは、工程(3-i)の実施中にその場で(in situ)行われる。
【0080】
したがって、工程(4)の実施に好ましく用いる対応する装置は、コーティング組成物(C2a)に硬化性放射線を照射するための少なくとも1つの放射線源を備えていることが好ましい。なお、コーティング組成物(C2a)は、紫外線硬化型コーティング組成物であることが好ましいため、使用する硬化性放射線は、紫外線であることが好ましい。なお、コーティング組成物(C2a)が放射線硬化性でない場合、化学的に硬化性であることが好ましい。その場合、工程(4)の硬化は、例えば適切な熱放射源を使用することにより、熱的に行われる。もちろん、硬化法を組合せることも可能であり、熱硬化と紫外線(UV)による硬化とを併用することも可能である。
【0081】
放射性硬化の適切な放射線源の具体例としては、低圧、中圧、高圧の水銀エミッター、さらに蛍光管、パルスエミッター、メタルハライドエミッター(ハロゲンランプ)、レーザー、LED、さらに、光開始剤なしで放射性硬化を可能にする、電子フラッシュ装置、又はエキシマエミッターを挙げることができる。放射線硬化は、高エネルギーの放射線への曝露、すなわち紫外線(UV)照射又は太陽光への曝露、又は高エネルギー電子の照射によって行われる。紫外線(UV)硬化の場合、架橋に必要な照射量は、通常80~3000mJ/cmの範囲である。もちろん、2つ以上の放射線源を用いて硬化させることも可能であり、例えば2つ~4つの放射線源を用いることもできる。また、これらの光源はそれぞれ異なる波長域で発光する場合がある。
【0082】
工程(4)の少なくとも部分的な硬化は、有利には照射によって基材(S2)及び/又は複合体(S1C1)を通して行う。照射は複合体(S1C1)を通して行うことが好ましい。工程(3-ii)に基材が存在せず、複合体(S1C1)をエンボス加工ツール(E2)の少なくとも1つのエンボス型(e2)として有利に用いる場合、照射は基材として用いる複合体(S1C1)を通して行うことが好ましい。いずれの場合も、片面に(i)任意に剥離ライナーを備えた片面又は両面粘着テープ、又は(ii)自己粘着層を有する、基材(S2)の、又は自己粘着性ポリマー基材からなる基材(S2)の、及び/又は基材(S2)とコーティング組成物(C2a)間の更なる層の、又は複合体(S1C1)中の基材(S1)の透過性が、コーティング組成物(C2a)に存在することが好ましい、用いる少なくとも1種の光重合開始剤の吸収極大又は少なくとも吸収域と調和していることが有利である。したがって、例えば、基材(S2)としての材料PET、したがって、例えば、PETフィルムは、400nm未満の波長を有する放射線に対して透過性である。このような放射線でラジカルを発生する光重合開始剤としては、例えば、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート、及びフェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドなどが挙げられる。したがって、この場合、少なくとも1種のそのような光重合開始剤がコーティング組成物(C2a)中に存在することが好ましい。
【0083】
任意の工程(5-i)又は(5-ii)
工程(4)に続いて、基材(S2)の有無に応じて、任意の工程(5-i)又は(5-ii)を行う。このゆえに、工程(2-i)及び(3-i)によって定義される本発明の方法の第1の選択肢では、基材(S2)の存在が必須である。したがって、任意の工程(5-i)のみが適用可能である。工程(2-ii)及び(3-ii)により定義される、本発明の方法の第2の選択肢にあっては、任意の工程(5-i)は、工程(3-ii)における任意の基材(S2)をコーティング組成物(C2a)により形成された表面の少なくとも一部に貼り付けている場合に、適用可能である。ただし、工程(3-ii)で任意の基材(S2)を貼り付けなかった場合は、工程(5-ii)のみが適用可能である。
【0084】
本発明の方法における工程(5-i)及び(5-ii)は、好ましくはエンボス型(e2)として使用する複合体(S1C1)から、基材(S2)に任意で貼り付けたエンボス加工コーティング(C2)を任意で除去して、基材(S2)と、少なくとも部分的にエンボス加工し、少なくとも部分的に硬化したコーティング(C2)とから構成される複合体(S2C2)を生じさせる、あるいは、任意の基材(S2)が存在しない場合には、自立したコーティング(C2)を生じさせるものであり、本方法の工程(1)で用意した複合体(S1C1)の復元を伴うものである。優先的に、工程(5-i)又は(5-ii)が実施される。
【0085】
好ましくはエンボス型(e2)として使用する複合体(S1C1)から、上記のように除去する場合には、例えば、任意に基材(S2)に貼付した少なくとも部分的にエンボス加工し少なくとも部分的に硬化したコーティング(C2)を複合体(S1C1)から剥がすことによって、又はその逆を実施することによって行うことが可能である。その剥離は、手作業で行うか、一般的に知られている機械的な分割手段を用いて行うことができる。
【0086】
こうする代わりに、複合体(S1C1)から除去を行うには、以下の工程を含むことができる。
【0087】
5-i-a)少なくとも部分的にエンボス加工したコーティング(C2)と接触していない基板(S2)の表面上に少なくとも1種の接着剤層(AL)を塗布して複合体(S1C1C2S2AL)を用意する工程、
5-i-b)任意に、複合体(S1C1C2S2AL)を物体(O1)に少なくとも部分的に付着させる工程、
5-i-c)任意に少なくとも部分的に物体(O1)に付着させた複合体(C2S2AL)から複合体(S1C1)を除去する、好ましくは剥がす、又はその逆を行う工程、
又は
5-ii-a)少なくとも部分的にエンボス加工したコーティング(C2)の非構造化表面の少なくとも一部に、少なくとも1種の接着剤層(AL)を塗布し、複合体(S1C1C2AL)を用意する工程、
5-ii-b)任意に、複合体(S1C1C2AL)を物体(O1)に少なくとも部分的に付着させる工程、
5-ii-c)任意で、少なくとも部分的に物体(O1)に付着させた複合体(C2S2AL)から複合体(S1C1)を除去する、好ましくは剥がす、又はその逆を行う工程。
【0088】
接着剤層(AL)としては、例えば、ポリアクリレート又はポリアクリレート系接着剤などのラミネート用接着剤とすることができる。ただし、接着剤層(AL)は、自己粘着層構造又は多層構造であることが好ましい。このような自己粘着層は、接着剤をラミネート又はスプレーするなどの一般的な方法で塗布することができる。前記多層構造は、例えば、両表面に接着剤(AH)が塗布されたインライナーとも呼ばれる中間ポリマー層(PL)からなる。前記接着剤(AH)は、それぞれ、ポリアクリレート又はポリアクリレート系接着剤であってもよい。中間ポリマー層(PL)の作製には、原則としてどのような種類のポリマーも使用することができる。そのようなポリマーの具体例としては、既に基材(S2)として説明したポリマーが挙げられる。該当段落をここに明示的に引用する。好適な中間ポリマー層(PL)は、ポリ(メタ)アクリレート、PET及び/又はPBTなどのポリエステル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド及び/又はポリオレフィンである。特に、PETなどのポリエステルを使用することができる。ポリマー層(PL)の層厚は、5~55μm、好ましくは6~50μm、より好ましくは7~40μm、特に8~30μmの範囲であることができる。各接着剤(AH)は、取り扱い性を良くするために、最初はシリコーン紙などの剥離ライナーで覆われていてもよい。しかし、工程5-i)又は工程(5-ii)で接着剤層(AL)として使用する前に、その2つの剥離ライナーのうちの1つを取り除く。他の剥離ライナーは、好ましくは、本発明プロセスの後の工程で、より好ましくは、複合体(S1C1C2)又は(S1C1C2S2)を少なくとも1つの物体(O1)に少なくとも部分的に付着させる前に、取り除く。したがって、コーティング(C2)又は接着剤層(AL)を備えている複合体(C2S2)から複合体(S1C1)を分離する前に、これらの複合体をある物体(O1)に付着させ、その後初めて複合体(S1C1)を、コーティング(C2)から又は物体(O1)に接着剤層(AL)を介して少なくとも部分的に付着した複合体(C2S2)から、好ましくは剥離することにより、取り除く。適切な物体(O1)は、金属、プラスチック、強化材料、ガラス、ゴム、布、革、紙、木材、及びそれらの混合物を含む様々な材料で作ることができる。好ましくは、少なくとも1つの物体(O1)としては、液体及び気体と接触している表面、例えば、飛行機、船舶及び自動車、回転翼、掘削プラットフォーム、パイプライン、照明システム、ディスプレイ、光起電モジュール、構造要素及び装飾要素からなる群から選択される。
【0089】
工程5-i-a)及び5-i-b)、又は5-ii-a)及び5-ii-b)は、手動で行うか、又は機械によって行うことができる。当該機械としては、接着剤層(AL)用の少なくとも1つの搬送手段、少なくとも部分的にエンボス加工したコーティング(C2)の非構造化表面の少なくとも1部に、又は少なくとも部分的にエンボス加工したコーティング(C2)と接触していない基材(S2)の表面上に、接着剤層(AL)を固定する圧力を加えるための少なくとも1つの加圧手段、及び、エンボス加工ツール(E2)のエンボス型(e2)として有利に採用できる複合体(S1C1)から、それぞれコーティング(C2)又は複合体(S2C2)を取り除く、好ましくは剥離する、又はその逆を行うための少なくとも1つの分割手段を備える。
【0090】
少なくとも部分的にエンボス加工し、少なくとも部分的に硬化したコーティング(C2)又は複合体(S2C2)を、それぞれ、複合体(S1C1)から除去する手順は、好ましくは、構造化し及びエンボス加工した表面を破壊することなく、かつ複合体(S1C1)のコーティング(C1)の表面に有意な残留物を残すことなく、好ましくは、いかなる残留物をも残すことなく、容易に実施することが好ましい。
【0091】
図1は、本発明の方法の工程(1)、(2-i)及び(3-i)、さらに(4)及び任意で工程(5-i)を実施するために用いることができ、本発明の方法の例示のために用いる装置の側面図を概略的に示す。この装置は、基本的に類似した方法で、本発明の方法の工程(1)、(2-ii)及び(3ii)、さらに(4)、及び任意で、(5-i)又は(5-ii)を実施するためにも同様に使用することができる。この装置により、好ましくは、マスターフィルムとして存在するエンボス型(S1C1、e2)から、(C2a)をコーティングした基材(S2)上にマイクロ構造及び/又はナノ構造などの構造を転写することが可能である。したがって、この装置は一般に搬送装置とも呼ばれ、図1では参照符号(10)で示す。
【0092】
転写装置(10)の中核は、エンボス領域(1)であり、溶融シリカから作製したロールジャケットを有するプレスロール(2)が配置されている。プレスロール(2)は回転駆動される。プレスロール(2)と並んで配置されるのは、照明ユニット(3)の形態の放射源であり、これは紫外線(UV)を発生させ、特にプレスロール(2)の長さ方向に列状に配置したUV-LEDを備えることができる。また、図1に示すように、照明ユニット(3)は、プレスロール(2)の内部に配置されていてもよい。エンボス領域(1)において、プレスロール(2)に押し付けられるように配置されているのはプレスロール(4)である。転写装置(10)の型枠(5)には、2つのフィルムウェブローラー(6)、(7)が配置されており、これらはモータ駆動で回転させることができる。もちろん、フィルムウェブローラ(6)、(7)は、型枠(5)以外の場所、例えば、実際の転写装置(10)の外側のキャビネット要素などに取り付け、配置することも可能である。ここでは型枠内に配置されたものとして示したフィルムウェブローラー(6)及び(7)に巻き取られるのは、連続したエンボス型となるマスターフィルムウェブ(8)である。マスターフィルムウェブ(8)の転写面には、転写されるマイクロ構造体及び/又はナノ構造体のネガ形状を表面レリーフとして形成したマスターコーティング層(C1)が設けられている。マスターコーティング層(C1)は少なくとも部分的に硬化しているため、その中のレリーフ状の構造は安定である。マスターフィルムウェブ(8)は、本発明の方法の工程(6)~(9)の実施により得ることができ、従って、複合体(S1C1)を構成するものである。マスターフィルムウェブ(8)は、第1のフィルムウェブローラ(6)から離れて種々の偏向ローラシステムを介してエンボス領域(1)に供給され、図1で明らかなように、プレスロール(2)とプレシングロール(4)の間の領域に上方から垂直に走行している。その領域では、当該マスターフィルムウェブは、プレスロール(2)の外周の一区域全面にしっかりと張った状態で接触して案内され、その後再びプレスロール(2)から離れ、再びウェブテンショナー付きの偏向ローラーシステムを介して、第2のフィルムウェブローラー(7)に供給されて、そこで巻き取られる。マイクロ構造及び/又はナノ構造などの構造を付与すべき基材(S2)を形成するフィルムウェブ(9)が、フィルムウェブローラー(11)から出発して、ここで再度ウェブ締め付け装置を備えた様々な偏向ローラーシステムを介して、エンボス領域(1)に供され、この領域で、押圧ロール(4)の周辺区域の上をピンと張った状態で移動し、ここから、プレスロール(2)上の押圧ロール(4)の接触領域又はこれらの要素間に形成されるロールニップの領域に入る。フィルムウェブ(9)は、この領域を、図1では、垂直に下方向に離れ、フィルムウェブローラー(12)に案内され(再度、偏向ローラーシステム及びウェブ締め付け装置により案内される)、ここで、完全な処理済み製品として巻き取られる。エンボス領域(1)へのその経路上、又はプレスロール(2)と押圧ロール(4)との間のロールニップ上で、フィルムウェブ(9)には、コーティング適用ユニット(27)により、プレス領域(1)内のプレスロール(2)に面するその表面にコーティング層が設けられる。この場合、コーティング適用ユニット(27)はプレス領域(1)の外側に配置されている。したがって、コーティング適用ユニット(27)は、本発明の方法の工程(2-i)に従い、(S2)として使用するフィルムウェブ(9)にコーティング組成物(C2a)を塗布する。プレス領域(1)では、次に、本発明の方法の工程(2-i)を実施するため、フィルムウェブ(9)は、まだ未硬化のコーティング層を備えるその表面によって、マスターコーティング層を備える、マスターフィルムウェブ(8)の表面と、一緒に接合される。この場合、フィルムウェブ(9)は加圧ローラー(4)を介して移動し、マスターフィルムウェブ(8)はプレスロール(2)を介して移動する。フィルムウェブ(9)とマスターフィルムウェブ(8)の両方のウェブは、それぞれのコーティング層(マスターフィルムウェブ(8)の場合、コーティング(C1)に相当する少なくとも部分的に硬化したマスターコーティング層;フィルムウェブ(9)の場合、コーティング組成物(C2a)に相当する未硬化コーティング層)が表面に設けられて、互いに対向している。押圧ロール(4)がプレスロール(2)に押し当てられる領域では、マスターコーティング層(C1)に形成されたマイクロ構造及び/又はナノ構造などの被転写構造のネガ像(イメージ)が、コーティング組成物(C2a)に対応する未硬化コーティング層に圧印され、結果としてこれらの構造が転写される。同時に、照明ユニット(2)はUV照射を行い、したがって、フィルムウェブ(9)上のコーティング層のコーティング組成物(C2a)に対応する未硬化コーティング層の少なくとも部分的な硬化を実施する(このコーティング層がマスターコーティング層(8)と依然として接触している限りずっと)。したがって、構造の転写の間、直接に、及びその場で、コーティング層の少なくとも部分的な硬化が行われる。フィルムウェブ(9)又はその上に塗布した未硬化コーティング層の照射は、ここでは、外部からプレスシリンダ(2)に照射する場合には、フィルム材料(9)を通して行う。あるいは、プレスシリンダー(2)の外周面の溶融シリカ材料を通して、また、マスターフィルムウェ ブ(8)及びその上に塗布したマスターコーティング層の材料を通して照射を行うこともできる。したがって、マスターフィルムウェブ(8)とマスターコーティング層は、使用する放射線に対して、この場合はUV光に対して、透過性であるように設計する。ここでは、プレスロール(2)の外周面が溶融シリカからなるものとして説明する。しかしながら、プレスロール(2)の内部から放射される硬化性放射線(紫外線以外でもよい)に対して透過性であれば、他のいかなる材料も、原則としてここでも適している。あるいは、紫外線(UV)を供給する照明装置(3)の代わりに、例えば、コーティング組成物(C2a)が非放射線硬化型コーティング組成物であれば、熱放射体を使用することも可能である。紫外線(UV)照明による少なくとも部分的な硬化に続く可能性は、例えば赤外線(IR)放射による後露光である。本発明の方法の任意の工程(5-i)によるこの硬化操作の終了時に、フィルムウェブ(9)とマスターフィルムウェブ(8)は、今や構造化された層複合体(S2C2)とマスターフィルム(S1C1)のパーティングを伴って、互いに分離する。こうして所望の構造化(すなわち複合体(S2C2))を備えたコーティングフィルムウェブ(9)は、完成品としてフィルムウェブローラー(12)に供給され、そのローラーに巻き取られる。また、外部から照明装置(3)によりプレスロール(2)に照明がある場合、マスターフィルムウェブ(8)(すなわち、複合体(S1C1))とフィルムウェブ(9)(すなわち、複合体(S2C2))を切り替えるような配置を選択すれば、所望の構造を備える塗布フィルムウェブ(9)(すなわち、複合体(S2C2))を不透明化とすることもできる。その後、本発明の方法の工程(2i)に従ったコーティング適用ユニット(27)の塗布は、マスターフィルムウェブ(8)への操作上の制限なく行うことができる。
【0093】
複合体の製造(S1C1)
本発明方法の工程(1)で提供される複合体(S1C1)は、種々のプロセス、例えば、ナノインプリントリソグラフィー、レーザーリソグラフィー、フォトリソグラフィーなどのリソグラフィー法によって作製することができる。好ましいのは、以下により詳細に規定する工程(6)~(9)による複合体(S1C1)の調製である。したがって、本発明の方法の工程(6)~(9)は、エンボス加工ツール(E2)のエンボス型(e2)として使用することができる複合体(S1C1)を製造するために実施する。図2は、以下のこの図の説明からも明らかなように、本発明の方法の工程(6)~(9)の例示的な説明を提供するものである。
【0094】
複合体(S1C1)を製造するための本発明の方法の任意工程(6)~(9)
本発明の好適な実施形態によれば、基材(S1)と、少なくとも部分的にエンボス加工し少なくとも部分的に硬化したコーティング(C1)とから構成される、本方法の工程(1)で用意する複合体(S1C1)は、エンボス加工ツール(E1)のエンボス型(e1)の繰り返しパターン及び/又は規則的に配置されたパターンをコーティング組成物(C1a)に転写し、前記コーティング組成物を少なくとも部分的に硬化させ、エンボス加工ツールから、構造化した、かつ、少なくとも部分的に硬化したコーティング組成物(すなわち複合体(S1C1))を取り出すことにより調製される。したがって、工程(1)で用意する好適な複合体(S1C1)は、
(6)放射線硬化型コーティング組成物(C1a)を基材(S1)の表面の少なくとも一部に塗布し、複合体(S1C1a)を用意する;
(7)少なくとも1つのエンボス型(e1)を備えた少なくとも1つのエンボス加工ツール(e1)によって、基材(S1)の表面に少なくとも部分的に塗布したコーティング組成物(C1a)を少なくとも部分的にエンボス加工する;
(8)(少なくとも部分的な硬化の期間中、エンボス加工ツール(E1)の少なくとも1つのエンボス型(e1)と接触している)基材(S1)に少なくとも部分的に適用された、少なくとも部分的にエンボス加工したコーティング組成物(C1a)を少なくとも部分的に硬化する;
(9)エンボス加工ツール(E1)のエンボス型(e1)から複合体(S1C1)を取り外して、少なくとも部分的にエンボス加工し、かつ、少なくとも部分的に硬化した複合体(S1C1)を用意する、又はその逆を行う;
ことにより得られる。
【0095】
工程(6)
本発明の方法の工程(6)は、放射線硬化性コーティング組成物(C1a)を基材(S1)の表面の少なくとも一部に塗布する工程である。基材(S1)は、コーティング組成物(C1a)又はコーティング(C1)のそれぞれのための担体材料を構成する。基材(S1)又はその表面層に適した材料には、上述した基材(S2)の製造にも用いることができる材料と同じ材料が含まれる。ここで、該当箇所を明示的に引用する。更なる層、例えば、好ましくは紫外線を透過する接着促進層が、複合体(S1C1)の(S1)と(C1)の間に存在することができる。しかし、複合体(S1C1)には、(S1)と(C1)の間にそれ以上の層が存在しない方が有利である。基材(S1)としては、フィルムウェブであることが有利であり、移動フィルムウェブ又は連続フィルムウェブであることが好ましく、より好ましくは連続移動フィルムウェブである。その場合、基材(S1)は、好ましくはロールツーロール(R2R)エンボス装置で使用することができる。基材(S1)の好適な材料はポリエステルであり、より詳細にはポリエチレンテレフタレート(PET)である。基材(S1)の厚さは、2μm以上5mm以下であることが好ましい。特に好適なのは、層厚が25~1000μm、より詳細には50~300μmであることである。
【0096】
本発明の方法の任意の工程(6)で用意するコーティング組成物(C1a)は、以下に詳述するように、放射線硬化型コーティング組成物である。工程(6)で塗布するコーティング組成物(C1a)は、少なくとも0.5μm、好ましくは少なくとも1μm、より好ましくは少なくとも5μm~1.000μmの乾燥層厚で塗布することが有利である。
【0097】
工程(6)の実施中(及び、好ましくは、本方法の工程(7)、(8)及び(9)の実施中も)、基材(S1)は移動するものであることが好ましく、したがって移動性基材である。工程(6)の実施中、基材(S1)はベルトコンベアなどの輸送手段によって移動することが好ましい。したがって、工程(6)を実施するのに使用する対応する装置は、この種の輸送手段を備えることが好ましい。工程(6)を実施するために用いる対応する装置は、好ましくは放射線硬化性コーティング組成物(C1a)を基材(S1)の表面の少なくとも一部に塗布するための手段をさらに備える。
【0098】
工程(7)
本発明の方法の工程(7)は、基材(S1)の表面に少なくとも部分的に塗布したコーティング組成物(C1a)を、任意にコーティング組成物(C1a)で予め湿潤させた(pre-wetted)少なくとも1つのエンボス型(e1)を有する少なくとも1つのエンボス加工ツールによって、少なくとも部分的にエンボス加工する工程である。該エンボス型(e1)は、高分子エンボス型(e1)でも金属エンボス型(e1)でもよく、好ましくは金属エンボス型(e1)である。任意選択で、第1の複合体(S1C1)を製造した後、この第1の、いわゆる、以前の複合体(S1C1)をエンボス型(e1)として採用することが可能である。この、少なくとも部分的なエンボス加工により、基材(S1)に塗布したコーティング組成物(C1a)の表面に少なくとも部分的に、エンボス構造が転写される。用語「エンボス」は先に定義したところであり、該当する段落を明示的に引用する。
【0099】
工程(7)によって、エンボス構造として、マイクロ構造及び/又はナノ構造が、前述した構造幅及び構造高さなどの寸法でコーティング組成物(C1a)上に転写されることが好ましい。これらの先に記載した箇所をここで明示的に引用する。
【0100】
したがって、工程(7)を実施するために用いる対応する装置は、少なくとも1つのエンボス加工ツール(E1)により、基材(S1)の表面に少なくとも部分的に塗布したコーティング組成物(C1a)を少なくとも部分的にエンボス加工する手段を含む。好ましく使用できる装置は、(S1)への放射線硬化性コーティング組成物(C1a)の塗布後に、好ましくは連続フィルムウェブの形態で使用される基材(S1)にエンボス型(E1)の一部としてのエンボス型(e1)をプレスするための手段をさらに備える。この手段は、基材(S1)の搬送方向から見て、放射線硬化性コーティング組成物(C1a)を適用する手段の下流に好ましく位置させることが好ましい。
【0101】
本発明の方法の工程(7)による少なくとも部分的なエンボス加工は、エンボス加工ツール(E1)によって実施する。エンボス加工ツール(E1)は、好ましくは、グリッド塗布機構、より好ましくはグリッドロール機構を備えるエンボスカレンダーであることが好ましい。このカレンダーは、好ましくは高さ方向に一定の間隔をおいて互いに上下に配置された逆回転ロールを有し、エンボス構造を付与すべき複合体(S1C1a)は、該ロールに供給され、形成するロールニップ内に案内される。このニップ幅は可変に調整することができるものである。ここでのグリッドロール機構は、例えばスチールロール、銅層又は任意に少量のリンを含有するニッケル層などの金属層で覆われたスチールロール、又は任意に少量のリンを含有するニッケルスリーブで覆われたロールのような金属ロールなどの第1のロール、及び、第2のロールを備えることが好ましい。エンボス加工ツール(E1)の一部である第1のロール(エンボスロール)は、複合体(S1C1a)の表面にエンボス加工されるエンボス構造の鏡像を有するエンボス型(e1)を含む。したがって、エンボス型(e1)の構造のイメージ像は、好ましくはエンボス型(e2)として利用される複合体(S1C1)を用いて、工程(3-i)又は(2-ii)でコーティング組成物(C2a)へエンボス加工したイメージ像に対応するものである。第2のロールは、インプレッションロール又はプレスロールとして機能する。互いに一定の距離をおいて配置された逆回転ロールによって形成されるロールニップ部で、エンボス加工が行われる。使用できるエンボス加工ツール(E1)は、また、好ましくは、例えば鋼ロール、銅層又は任意に少量のリンを含有するニッケル層などの金属層で覆われた鋼ロールなどの金属ロールからなる従来のプレスシリンダであってもよく、これにより、複合体(S1C1a)の表面にエンボスされるべきエンボス構造の鏡像が搬送され、少なくとも部分的にエンボス加工するため複合体(S1C1a)に押圧(プレス)することが可能である。鏡像は、上記工程(1)で説明したように、マイクロスケール及び/又はナノスケールの表面要素からなるマイクロ構造及び/又はナノ構造の表面で構成されるものである。その該当箇所について、ここで明示的に引用する。エンボス加工する構造の鏡像は、当業者に慣習的に知られている方法に従って、エンボス加工ツール(E1)上で作製される。構造及び材料によっては、特定の方法が特に有利である場合がある。エンボス加工される複合体(S1C1a)は、例えばコーティング組成物(C1a)で少なくとも部分的にコーティングされたフィルムウェブの形態で、第2のロール又は押圧ロールによって第1のロールに対して反対方向に移動する。互いに一定の距離をおいて配置された逆回転ロールによって形成されるロールニップ部で、工程(7)に従ってエンボス加工が施される。エンボス型(e1)を搬送する第1のロールは、ここでは、このエンボスロールに対向する第2のロールによって案内される複合体(S1C1a)をエンボスする役割を果たし、第2のロールがエンボス構造を備えるべき複合体(S1C1a)を第1のエンボスロールに押し当てる。エンボス加工ツール(E1)は、好ましくは金属製のエンボスツールであり、より好ましくは鋼製のもの、又は銅層又は任意に少量のリンを含有するニッケル層などの金属層で覆われた鋼製ロール、又は任意に少量のリンを含有するニッケル製スリーブで覆われたロールである。従って、エンボス型(e1)は、好ましくは金属製、より好ましくは鋼製、銅製又はニッケル製、より好ましくは少量のリンを含有するニッケル製である。しかし、これに代えて、エンボス型(e1)をシリコーン(すなわちポリジメチルシロキサン(PDMS))などの材料で構成してもよいし、あるいは、予め作製した複合体(S1C1)をエンボス型(e1)として使用し、第1のエンボス加工でもともと作製したパターンを第1の複合体(S1C1)に多重化することも可能である。さらに、少なくとも1種のプラスチックをコーティングしたロールを採用することもできる。さらにまた、エンボス加工ツール(E1)は、エンボス型(e1)として、UVコーティングなどの構造化コーティングを有することができる。
【0102】
必要であれば、工程(7)は、例えば30℃~100℃又は80℃までのような、高温で実施することもができる。その場合、複合体(S1C1a)は、実際のエンボス加工手順、すなわちエンボス加工ツール(E1)と接触している間の硬化が行われる前に、まず加熱ロール機構を通過し、続いて任意で赤外線の照射が行われる。エンボス加工と硬化の後、エンボス加工した複合体(S1C1)は、任意で、冷却ロール機構を通過し、冷却される。こうする代わりに、冷却しながら硬化させることも可能である。この場合、エンボス加工用の複合体(S1C1a)は、先に説明した実際のエンボス加工手順が行われる前に、まず冷却ロール機構を通過する。また、別個の加熱又は硬化ロール機構を使用する代わりに、エンボス加工ツール(E2)を加熱又は冷却することも可能である。
【0103】
工程(8)
本発明の方法の工程(8)では、基材(S1)に少なくとも部分的に塗布した、少なくともエンボス加工したコーティング組成物(C1a)を少なくとも部分的に硬化させる。基材(S1)は、少なくとも部分的に硬化させる期間を通して、エンボス加工ツール(E1)の少なくとも1つのエンボス型(e1)と接触している。
【0104】
工程(7)と(8)は、同時に行うことが好ましい。その場合、工程(8)による硬化は、好ましくは工程(7)の実施中にその場で行う。
【0105】
したがって、工程(8)を実施するために用いる対応する装置は、放射線硬化性コーティング組成物(C1a)を硬化性放射線、好ましくはUV放射線で照射するための少なくとも1つの放射線源を備えていることが好ましい。
【0106】
放射性硬化のための適切な放射線源の具体例については、コーティング組成物(C2a)の硬化に関して前に説明したところである。その該当箇所を明示的に引用する。
【0107】
工程(8)の硬化は、基材(S1)を通して照射することによって行われることが好ましい。その場合、使用される放射線に対する基材(S1)の透過性が、コーティング組成物(C1a)中に含まれる少なくとも1種の光重合開始剤の透過性と調和していることが有利である。したがって、例えば、基材(S1)としての材料PET、ひいてはPETフィルムは、400nm未満の波長を有する放射線に対して透過性を有するものである。このような放射線でラジカルを発生する光重合開始剤としては、例えば、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート、及びフェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドなどが挙げられる。
【0108】
工程(9)
本発明の方法の工程(9)は、エンボス加工ツール(E1)からの複合体(S1C1)の取り外しを行うものであって、それによって所望の製品、すなわち、エンボス型(e2)として使用可能で、基材(S1)及び少なくとも部分的にエンボス加工し少なくとも部分的に硬化したコーティング(C1)から構成される複合体(S1C1)を製造する。
【0109】
任意選択で、複合体(S1C1)又はマスターフィルムは、エンボス型(e1)から分離した後、UVAランプなどの適切な放射線源で後露光することができ、これにより、特に、複合体(S1C1)のコーティング(C1)の表面での二重結合変換を増加又は最大化し、コーティング組成物(C2a)との共有結合架橋を減少又は最小化させることができる。前述した放射線源のいずれもがここに適しており、これらの前述の段落を明確に参照されたい。
【0110】
少なくとも部分的に硬化し、かつ、少なくとも部分的にエンボス加工したコーティング(C1)の複合体(S1C1)の表面は、マイクロ構造化及び/又はナノ構造化した表面であることが好ましい。
【0111】
図2は、エンボス型(e2)として有利に用いられる複合体(S1C1)を製造するための、すなわちマスターフィルムを製造するための、本発明の方法の工程(6)~(9)の実施に用いることができる装置の側面図を模式的に示すものであって、工程(6)~(9)に関連して本発明の方法を例示するために用いる。この装置では、エンボス加工ツール(E1)によって、微細構造及び/又はナノ構造のような構造を、(C1a)をコーティングした基材(S1)に転写し、少なくとも部分的に硬化した後、マスターフィルムとして使用できる複合体(S1C1)-図2内ではマスターフィルムウェブ(8)と称する-を製造することができる。この複合体は図1に関連して説明した方法において上述したエンボス型(e2)として使用することが可能である。
【0112】
図2に示すマスター転写装置(30)は、構造化されたプレスシリンダ又はプレスロール(ここではマスタープレスシリンダ(17))から、複合体(S1C1a)に対応するマスターフィルムウェブ(8b)に適用されたまだ未硬化のコーティング層へ、所望のネガ構造を直接エンボス加工するという転写原理に従って動作する。このコーティング層は、その上に適用した構造とともに、少なくとも部分的に硬化させる。その硬化は照明ユニット(3)により現場で実施し、マスターフィルムウェブ(8)(複合体(S1C1)に対応)を得る。この方法では、基材(S1)として使用するフィルムウェブ(8a)は、キャリア材料のみ、言い換えればマスターコーティング(C1a)が適用されていない純粋なフィルムを含むフィルムウェブローラー(18)から引き出され、種々の偏向ローラーシステム及びウェブテンショニングシステムを介して案内され、装置のエンボス領域(1)へ導入される。そこでは、フィルムウェブ(8a)は、まだ未硬化のマスターコーティング層(コーティング組成物(C1a)に相当)が設けられているコーティング適用手段(27)から、押圧ロール(4)とマスタープレスシリンダ(17)との間のプレス領域に走行する。この適用は、本発明の方法の工程(6)に相当する。マスタープレスシリンダー(17)の外周面の一部に、まだ未硬化のマスターコーティング層(C1a)を有するマスターフィルムウェブ(8b)が走行するエンボス領域(1)では、マスタープレスシリンダー(17)の外周面にエンボスされたマイクロ構造化及び/又はナノ構造化表面のマイクロスケール及び/又はナノスケールの表面要素が、マスターフィルムウェブ(8b)のマスターコーティング層中にネガ像として導入されて転写される。これは、本発明の方法の工程(7)に相当する。次いで、未硬化コーティング組成物(C1a)を備えたマスターフィルムウェブ(8b)を、本発明の方法の工程(8)に従い、少なくとも部分的に硬化させる。硬化は、ここで、照明ユニット(3)による照射によってその場で行われ、例えばUV-LEDで形成されたユニットによるUV放射によって行われる。続いて、得られたマスターフィルム(8)、換言すれば複合体(S1C1)を、本発明の方法の工程(9)に従って、マスタープレスシリンダー(17)の外周面から取り出し、こうして完成したマスターフィルムウェブ(8)をフィルムウェブローラー(19)に巻き取る。フィルムウェブローラー(19)は、マスターコーティング層が塗布され、かつ、マイクロ構造及び/又はナノ構造のネガ像がエンボス加工された、完成したマスターフィルムウェブ(8)を含む。このフィルムウェブローラー(19)は、取り外した後、図1による転写装置(10)又は同じ原理で動作する他の転写装置の第1のフィルムウェブローラー(6)として使用することができる。
【0113】
本発明で使用するコーティング組成物(C1a)及び(C2a)
コーティング組成物(C1a)
コーティング組成物(C1a)は、放射線硬化型コーティング組成物である。ここでいう「放射線硬化性の」と「放射線硬化する」の用語は、ここでは同じ意味である。「放射線硬化する」という用語は、好ましくは、電磁波放射線及び/又は微粒子放射線による重合性化合物のラジカル重合を意味し、放射線の具体例としては、λ=400~1200nm、好ましくは700~900nmの波長範囲の可視光から(N)IR光、及び/又はλ=100~400nm、好ましくはλ=200~400nm、より好ましくはλ=250~400nmの波長範囲の紫外線(UV)、及び/又は150~300keVの範囲の電子線、より好ましくは少なくとも80mJ/cm以上、好ましくは80~3000mJ/cmの放射量で照射されるものがある。放射線硬化は、特に紫外線(UV)を好んで使用して実施する。コーティング組成物(C1a)は、適切な放射線源の使用によって硬化させることができる。したがって,(C1a)は紫外線(UV)硬化型コーティング組成物であることが好ましい。
【0114】
コーティング組成物(C1a)は、
(a)少なくとも1種の架橋性ポリマー及び/又はオリゴマーを5~45質量%、
(b)少なくとも1種の反応性希釈剤を40~95質量%、
(c)少なくとも1種の光重合開始剤を0.01~15質量%、及び
(d)少なくとも1種の添加剤を0~5質量%
を含有することが好ましい。
【0115】
ここで、(i)成分(a)、(b)、(c)、及び(d)について記載した合計量は、それぞれコーティング組成物(C1a)の総質量に基づくものであり、(ii)コーティング組成物(C1a)に存在する全ての成分の合計量は、100質量%になり、
ここで、少なくとも1種の架橋性ポリマー及び/又はオリゴマー(a)は、コーティング組成物(C1a)中に含まれる全ての架橋性ポリマー及び/又はオリゴマーの総質量に基づいて、総量が、少なくとも25質量%、好ましくは少なくとも50質量%、より好ましくは少なくとも90質量%、非常に好ましくは100質量%の、少なくとも1種のシリコーン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む。
【0116】
コーティング組成物(C1a)は、コーティング組成物(C1a)の総質量に基づいて、総量が5~45質量%、好ましくは8~40質量%、より好ましくは9~35質量%の少なくとも1種の架橋性ポリマー及び/又はオリゴマーを含み、ここで、コーティング組成物(C1a)に含まれる全ての架橋性ポリマー及び/又はオリゴマーの総質量に基づいて、少なくとも25質量%、好ましくは少なくとも50質量%、より好ましくは少なくとも90質量%、非常に好ましくは100質量%の少なくとも1種の架橋性ポリマー及び/又はオリゴマーが、少なくとも1種のシリコーン(メタ)アクリレートオリゴマーである。
【0117】
用語「オリゴマー」とは、少数の、典型的には2~10個未満のモノマー単位からなる比較的低分子量の化合物を意味する。モノマー単位は、構造的に同一又は類似であってもよいし、互いに異なっていてもよい。オリゴマー化合物は、通常、室温23℃、常圧で液体であり、その動的粘度は、DIN EN ISO2555(ブルックフィールド法)に従って測定したところ、23℃において好ましくは500Pa*s未満、より好ましくは200Pa*s未満である。「架橋性」という用語は、架橋反応のためのフリーラジカルを形成することができる保留性不飽和基を平均で少なくとも1個、好ましくは少なくとも2個有するポリマー又はオリゴマーを指す。架橋性オリゴマー及び/又はポリマー化合物は、1つ又は複数の反応性希釈剤に可溶であることが好ましい。
【0118】
本発明で有用なシリコーン(メタ)アクリレートオリゴマー又はポリマーの調製は、典型的には、(メタ)アクリル酸とヒドロキシ官能性シリコーン(例えばα,ω-ポリジメチルシリコーンジオール)との縮合反応により行うことができる。シリコーン骨格を持つことから、シリコーンアクリレートは、構造化表面の弾性と伸びを向上させるが、引張強度及び堅牢性は損なわれる傾向にある。表面エネルギーが低いという特性から、高官能性シリコーン(メタ)アクリレートがよく使われる。有用なシリコーン(メタ)アクリレートの具体例としては、商品名SARTOMER(例えば、SARTOMER CN9800)でSartomer Co.から、商品名EBECRYL(例えば、EBECRYL350、EBECRYL1360)でUCB Radcure Inc.から、また、メタクリル酸塩として、商品名X-22(例えば、X-22-164、X-22-164A)でShin-Etsu Silicones Europe B.V.から市販されているものが挙げられる。
【0119】
コーティング組成物(C1a)は、特に好ましくは、コーティング組成物(C1a)中に含まれる全ての架橋性ポリマー及び/又はオリゴマーの総質量に基づいて、全量が、少なくとも25質量%、好ましくは少なくとも50質量%、より好ましくは少なくとも90質量%、非常に好ましくは100質量%の、少なくとも1種のシリコーン(メタ)アクリレートオリゴマー、好ましくは厳密に1種のシリコーン(メタ)アクリレートオリゴマー、より好ましくは平均2~3個の不飽和基を持つ、厳密に1種のシリコーン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む。
【0120】
シリコーン(メタ)アクリレートに次いで、コーティング組成物(C1a)中に任意に存在する他の架橋性ポリマー及び/又はオリゴマーとしては、好ましくは(メタ)アクリル化オリゴマー又はポリマー化合物、ウレタン(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、オレフィン(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル化油、及びこれらの混合物から選択することができ、好ましくはウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられる。コーティング組成物(C1a)は、そのコーティング組成物(C1a)中に含まれる全ての架橋性ポリマー及び/又はオリゴマーの総質量に基づいて、全量が、0~75質量%、好ましくは0~50質量%、より好ましくは0~10質量%、非常に好ましくは0質量%の当該他の架橋性ポリマー及び/又はオリゴマーを含む。言い換えれば、コーティング組成物(C1a)は、該少なくとも1種のシリコーン(メタ)アクリレートに次いで、他の架橋性ポリマー及び/又はオリゴマーを含まないことが極めて好ましい。
【0121】
ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリイソシアネートとヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート及び、任意に、ジオール、ポリオール、ジアミン、ポリアミン又はジチオール又はポリチオールなどの鎖延長剤との反応によって得ることが可能である。乳化剤を添加せずに水に分散可能なウレタン(メタ)アクリレートは、さらにイオン性及び/又は非イオン性の親水基を有しており、これらの基は例えばヒドロキシカルボン酸などの合成成分によりウレタンに導入される。このようなウレタン(メタ)アクリレートは、合成成分として本質的に以下のもの、すなわち、
(a)少なくとも1種の有機脂肪族、芳香族又は脂環式ジ-又はポリイソシアネート、
(b)少なくとも1つのイソシアネート反応性基を有する少なくとも1つの化合物、好ましくはヒドロキシル基を有するモノマー、及び、少なくとも1つのラジカル重合性不飽和基を有するもの、及び
(c)任意に、例えば多価アルコールのような、少なくとも2つのイソシアネート反応性基を有する少なくとも1つの化合物
を含む。
【0122】
ウレタン(メタ)アクリレートの数平均モル質量Mnは、200~20000、より特に500~10000、非常に好ましくは600~3000g/モルであることが好ましい(テトラヒドロフランを溶離液、ポリスチレンを標準とするゲル浸透クロマトグラフィーにより決定)。ウレタン(メタ)アクリレートは、ウレタン(メタ)アクリレート1000g当たり(メタ)アクリル基を好ましくは1~5、より好ましくは2~4モル含有する。
【0123】
エポキシド(メタ)アクリレートは、エポキシドと(メタ)アクリル酸を反応させることにより得ることができる。想定されるエポキシドの具体例としては、エポキシ化オレフィン、芳香族グリシジルエーテル又は脂肪族グリシジルエーテル、好ましくは芳香族又は脂肪族グリシジルエーテルのエポキシドである。可能なエポキシ化オレフィンの具体例としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、イソブチレンオキシド、1-ブテンオキシド、2-ブテンオキシド、ビニルオキシラン、スチレンオキシド又はエピクロロヒドリンを挙げることができ、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、イソブチレンオキシド、ビニルオキシラン、スチレンオキシド又はエピクロロヒドリンが好適であり、特に好ましいのは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、又はエピクロロヒドリンであり、エチレンオキシド及びエピクロロヒドリンが格別好適である。芳香族グリシジルエーテルとしては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールBジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、フェノール/ジシクロペンタジエンのアルキル化生成物、例えば、2,5-ビス[(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]オクタヒドロ-4,7-メタノ-5H-インデン、トリス[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]メタン異性体、フェノール系エポキシノボラック、及びクレゾール系エポキシノボラックが挙げられる。脂肪族グリシジルエーテルは、例えば、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、1,1,2,2-テトラキス[4-(2.3-エポキシプロポキシ)フェニル]エタン、ポリプロピレングリコール(α,ω-ビス(2,3-エポキシプロポキシ)ポリ(オキシプロピレン)(及び水素化ビスフェノールA(2,2-ビス[4-(2,3-エポキシプロポキシ)シクロヘキシル]プロパン)の)のジグリシジルエーテル)などがある。エポキシド(メタ)アクリレートは、好ましくは数平均モル質量Mnが200~20000、より好ましくは200~10000g/モル、非常に好ましくは250~3000g/モルであり、(メタ)アクリル基の量がエポキシド(メタ)アクリレート1000g当たり好ましくは1~5、より好ましくは2~4個である(ポリスチレン標準、溶媒をテトラヒドロフランとするゲル浸透クロマトグラフィーにより決定)。
【0124】
(メタ)アクリレート化ポリ(メタ)アクリレートは、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸、好ましくは(メタ)アクリル酸、より好ましくはアクリル酸の、ポリアクリレートポリオールとの対応エステルであり、ポリ(メタ)アクリレートポリオールの(メタ)アクリル酸によるエステル化により得ることが可能である。
【0125】
カーボネート(メタ)アクリレートは、各種の官能基を持つものがある。カーボネート(メタ)アクリレートの数平均分子量Mnは、好ましくは3000g/モル未満、より好ましくは1500g/モル未満、非常に好ましくは800g/モル未満である(ポリスチレンを標準、テトラヒドロフランを溶離液とするゲル浸透クロマトグラフィーにより決定)。カーボネート(メタ)アクリレートは、例えばEP0092269A1に記載されているように、炭酸エステルを多価アルコール、好ましくは二価アルコール(ジオール、例えばヘキサンジオール)でトランスエステル化し、続いて遊離OH基を(メタ)アクリル酸でエステル化するか又は(メタ)アクリルエステルでトランスエステル化することによる、簡単な方法で得ることが可能である。また、ホスゲン、尿素誘導体と多価アルコール、二価アルコールなどとを反応させることによっても得ることができる。また、ポリカーボネートポリオールのメタ(アクリレート)、例えば、前述のジオール又はポリオールの1種と炭酸エステルとの反応生成物、及び、さらにヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートも考えられる。適切な炭酸エステルの具体例としては、エチレンカーボネート、1,2-又は1,3-プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート又はジブチルカーボネートである。適切なヒドロキシル含有(メタ)アクリレートの具体例には、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-又は3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオルモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリルモノ-及びジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ-及びジ(メタ)アクリレート、さらにペンタエリトリトールモノ-、ジ-及びトリ(メタ)アクリレートがある。カーボネート(メタ)アクリレートについては、脂肪族カーボネート(メタ)アクリレートを優先して使用する。
【0126】
コーティング組成物(C1a)は、そのコーティング組成物(C1a)の総質量に基づいて、総量が5~45質量%、好ましくは8~40質量%、より好ましくは9~35質量%の、少なくとも1種の架橋性ポリマー及び/又はオリゴマーを含むことが特に好ましい。該少なくとも1種の架橋性ポリマー及び/又はオリゴマーは、i)少なくとも1種のシリコーン(メタ)アクリレートオリゴマー、好ましくは厳密に1種のシリコーン(メタ)アクリレートオリゴマー、非常に好ましくは、平均2~3個の不飽和基を持つ厳密に1種のシリコーン(メタ)アクリレートオリゴマー、及び、ii)(メタ)アクリル化オリゴマー又はポリマー化合物、ウレタン(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、オレフィン(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル化油、及びこれらの混合物から選択される他の架橋性ポリマー及び(又は)オリゴマー、好ましくはウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーからなる、群から選択される。
【0127】
したがって、コーティング組成物(C1a)は、そのコーティング組成物(C1a)中に含まれる全ての架橋性ポリマー及び/又はオリゴマーの総質量に基づいて、総量が少なくとも25質量%、好ましくは少なくとも50質量%、より好ましくは少なくとも90質量%の少なくとも1種のシリコーン(メタ)アクリレートオリゴマー、特に、平均2~3個の不飽和基を持つ、厳密に1種のシリコーン(メタ)アクリレートオリゴマー、及び、そのコーティング組成物(C1a)中に含まれる全ての架橋性ポリマー及び/又はオリゴマーの総質量に基づいて、75質量%未満、好ましくは50質量%未満、より好ましくは10質量%未満の、(メタ)アクリル化オリゴマー又はポリマー化合物、ウレタン(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、オレフィン(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル化油、及びこれらの混合物から選択される他の架橋性ポリマー及び/又はオリゴマー、好ましくはウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含むことが特に好ましい。
【0128】
コーティング組成物(C1a)は、そのコーティング組成物(C1a)の総質量に基づいて、全量が40~85質量%又は95質量%、好ましくは50~95質量%又は85質量%又は83質量%、より好ましくは55~83質量%の、少なくとも1種の反応性希釈剤を含む。適切な反応性希釈剤は、上記のポリマー及び/又はオリゴマー化合物と重合可能であり、硬化したマスターコーティング(C1)の共重合エラストマー網目構造を持つマスター基材を形成することができる。用語「反応性希釈剤」とは、重合反応に関与して重合体を形成することができる低質量モノマーをいう。かかるモノマー化合物の重量平均分子量Mwは、GPCで測定した場合、好ましくは1000g/モル未満、より好ましくは750g/モル未満である。
【0129】
好ましくは、反応性希釈剤は、フリーラジカル重合性モノマーであり、例えば、(メタ)アクリレート、スチレン、酢酸ビニル、及びこれらの混合物などのエチレン性不飽和モノマーを含む。好適なモノマーとしては、(メタ)アクリロイル官能性モノマー、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、アリールオキシアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、N-ビニル化合物及びこれらの組合せなどを挙げることができる。適切なモノマーは、当業者に知られており、例えば、WO2012/006207A1に列挙されている。
【0130】
特に好適なコーティング組成物(C1a)は、架橋密度を高めるために、反応性希釈剤として、少なくとも1種の多官能性エチレン性不飽和モノマー、すなわち1分子中に少なくとも2つの重合性二重結合を有する化合物を含んでなる。このような多官能性モノマーの代表例は、例えば、WO2012/006207A1に記載されている。特に好適な反応性希釈剤としては、ヘキサンジオールジアクリレート、及び/又は一般式(I)の構造単位を、少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つ、より厳密には3つ持つ化合物であってその構造単位が互いに異なっていてもよいし、又は、少なくとも部分的に同一でもよい化合物から選択する。
【0131】
【化1】
【0132】
式中、
ラジカルRは、互いに独立して、C-Cアルキレン基、非常に好ましくはCアルキレン基であり、
ラジカルRは、互いに独立して、H又はメチルであり、
記号mは、互いに独立して、1~15、非常に好ましくは1~4又は2~4の範囲の整数であり、但し、式(I)の構造単位の少なくとも1つでは、記号mは少なくとも2、好ましくは厳密に2である。特に好ましいのは、前記化合物が、一般式(I)の3つの同一の構造単位を持ち、mが2であることである。
【0133】
一般式(I)の全ての構造単位は、前記反応性希釈剤の骨格に記号
【化2】
を介して結合している。この結合は、ラジカル-[O-R-の酸素原子が当該成分の骨格の炭素原子に結合することを介して行われることが好ましい。したがって、一般式(I)の少なくとも2つの構造単位は、単一の成分、すなわち反応性希釈剤b)内に存在する。適切な骨格としては、例えば、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン又はペンタエリスリトールから選択する。
【0134】
前記化合物は、一般式「-O-R-」のエーテル基の総数が4~18の範囲にあることが好ましく、5~15の範囲にあることがより好ましく、6~12の範囲にあることが非常に好ましい。前記化合物は、好ましくは300~2000g/モル、より好ましくは400~1000g/モルの範囲の数平均分子量(Mn)を有する。
【0135】
前記化合物は、式(I)の構造単位を厳密に3つ有することが好ましい。その場合、前記化合物は、厳密に3つの官能性(メタ)アクリル基を有する。あるいは、式(I)の構造単位はそれぞれ、前記化合物の一部として3回を超えて存在することもできる。その場合、例えば、前記化合物は、例えば4、5又は6個の(メタ)アクリル基のように、3個を超える官能性(メタ)アクリル基を有していてもよい。
【0136】
前記ラジカルRは、それぞれ互いに独立して、C~Cアルキレン基、好ましくはC~Cアルキレン基、より好ましくはC~Cアルキレン基、非常に好ましくは、それぞれ互いに独立して、エチレン基及び/又はプロピレン基、特に好ましくはエチレン基である。特に、ラジカルRは全てエチレンである。各場合におけるプロピレン基として適切なのは、構造CH-CH-CH-又は構造-CH(CH)-CH-又は構造CH-CH(CH)-を有するラジカルRである。しかし、いずれの場合も特に好ましいのは、プロピレン構造CH-CH-CH-である。
【0137】
記号mは、それぞれ独立に、1~15の範囲の整数である。前記化合物は、式(I)の構造単位を少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つ有し、式(I)の構造単位の少なくとも1つにおいて記号mが少なくとも2であるので、前記化合物は、合計少なくとも3つ、好ましくは少なくとも4つの一般式「O-R-」のエーテル基を含んでいる。
【0138】
好ましくは、前記化合物は、合計で少なくとも5個、より好ましくは少なくとも6個の、一般式「O-R-」のエーテル基を有する。前記化合物内の一般式「O-R-」のエーテル基の数は、好ましくは4~18の範囲に、より好ましくは5~15の範囲に、非常に好ましくは6~12の範囲にある。
【0139】
前記化合物の式(I)の構造単位中に存在するエーテルセグメント-[O-Rの割合は、合計で、少なくとも35質量%、より好ましくは少なくとも38質量%であり、非常に好ましくは少なくとも40質量%、より好ましくはさらに少なくとも42質量%、より特に少なくとも45質量%である(それぞれの場合、前記化合物の総質量に基づく)。
【0140】
前記化合物の、GPCによって決定される数平均分子質量(Mn)は、300~2000g/モル、より好ましくは350~1500g/モル、より特に400~1000g/モルの範囲にあることが好ましい。
【0141】
特に好適な多官能エチレン性不飽和モノマーは、一般式(IIa)及び/又は(IIb)の少なくとも1種の化合物である。
【0142】
【化3】
【0143】
式中、各場合に、それぞれ独立して、
及びR、並びにmは、上記の好適な実施形態を含む、構造単位(I)に関連して上記で記載した定義を有し、
は、H、C~Cアルキル、OH又はO-C1~8アルキルであり、より好ましくはC~Cアルキル、OH又はO-C1~4アルキルであり、非常に好ましくはC~Cアルキル又はOHであり、又は
は、ラジカル-[O-R-O-C(=O)-C(R)=CH(式中、R、R及びmは、上記のその好適な実施形態を含む、構造単位(I)に関連して上記に記載した定義を有する)である。
【0144】
特に好ましいのは、一般式(IIa)の少なくとも1種の化合物の反応性希釈剤として多官能性エチレン性不飽和モノマーを使用することであり、当該式中、
ラジカルRは、互いに独立して、C-Cアルキレン基であり、
ラジカルRは、互いに独立して、H又はメチルであり、
記号mは、それぞれの場合、互いに独立して、1~15の範囲、好ましくは1~10の範囲、より好ましくは1~8又は2~8の範囲、非常に好ましくは1~6又は2~6の範囲、より特に1~4又は2~4の範囲の整数の変数であり、但し、式(I)の構造単位の少なくとも1つ、好ましくは全てにおいて、mは少なくとも2であり、
は、C~Cアルキル、OH又はO-C1~8アルキル、より好ましくはC~Cアルキル、OH又はO-C1~4アルキル、非常に好ましくはC~Cアルキル又はOHである。
【0145】
少なくとも2つの、一般式(I)の構造単位を持つ、特に好適な化合物は、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン又はペンタエリスリトールを合計4倍~20倍又は4倍~12倍アルコキシル化(例えば、エトキシル化、プロポキシル化、又は、エトキシル化及びプロポキシル化)した(メタ)アクリレートであって、より詳細には、専らエトキシル化した、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン又はペンタエリスリトールの(メタ)アクリレートである。最も好適なのは、アルコキシル化トリメチロールプロパンから誘導された、対応する(メタ)アクリレートである。これらの製品は市販されており、例えばSartomer(登録商標)SR499及びSartomer(登録商標)SR502、及びSartomer(登録商標)SR415及びSartomer(登録商標)SR9035、及びSartomer(登録商標)SR501という名称で販売されている。
【0146】
コーティング組成物(C1a)は、そのコーティング組成物(C1a)の総質量に基づいては、総量が40~95質量%、好ましくは50~85質量%、より好ましくは55~83質量%の少なくとも1種の反応性希釈剤、好ましくは、ヘキサンジオールジアクリレート、及び/又は、6倍エトキシル化トリメチロールプロパンから誘導された(メタ)アクリレートを含む。
【0147】
コーティング組成物(C1a)は、可視光から(N)IR-及び/又はUV光による硬化を行うために、そのコーティング組成物(C1a)の総質量に基づいて、総量が0.01~15質量%、好ましくは0.5~10質量%、より好ましくは1~8質量%の、少なくとも1種の光重合開始剤を含む。この光重合開始剤は、照射された波長の光によってラジカルに分解され、これにより、ラジカル重合を開始させることができる。電子放射線による硬化の場合は、逆に、このような光重合開始剤の存在は必要としない。コーティング組成物(C1a)は、照射された波長の光によってラジカルに分解され、ラジカル重合を開始することができる、少なくとも1種の光重合開始剤を含むことが好ましい。
【0148】
UV光重合開始剤などの光重合開始剤は、当業者に知られている。企図されるものの具体例としては、(アルキル)-ベンゾイルフェニルホスフィンオキシドなどのホスフィンオキシド、ベンゾフェノン、α-ヒドロキシアルキルアリールケトン、チオキサントン、アントラキノン、アセトフェノン、ベンゾイン及びベンゾインエーテル、ケタール、イミダゾール又はフェニルグリオキシル酸及びこれらの混合物などが含まれる。
【0149】
ホスフィンオキシドとしては、例えば、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィン、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド又はビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)(2,4,4-トリメチルペンチル)ホスフィンオキシドが挙げられる。ベンゾフェノンとしては、例えば、ベンゾフェノン、4-アミノベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、4-クロロベンゾフェノン、Michler‘s(ミヒラーズ)ケトン、o-メトキシベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、2,4-ジメチルベンゾフェノン、4-イソプロピルベンゾフェノン、2-クロロベンゾフェノン、2,2’-ジクロロベンゾフェノン、4-メトキシベンゾフェノン、4-プロポキシベンゾフェノン又は4-ブトキシベンゾフェノンなどが挙げられる。α-ヒドロキシアルキルアリールケトンとしては、例えば、1-ベンゾイルシクロヘキサン-1-オール(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)、2-ヒドロキシ-2,2-ジメチルアセトフェノン(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン)、1-ヒドロキシアセトフェノン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン又は2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-イソプロペン-2-イルフェニル)プロパン-1-オンを共重合形態で含むポリマーが挙げられる。キサントン及びチオキサントンとしては、例えば、10-チオキサンテノン、チオキサンテン-9-オン、キサンテン-9-オン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン又はクロロキサンテノンが挙げられる。アントラキノンは、例えば、β-メチルアントラキノン、tert-ブチルアントラキノン、アントラキノンカルボン酸エステル、ベンズ[de]アントラセン-7-オン、ベンズ[a]アントラセン-7,12-ジオン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン又は2-アミルアントラキノンが挙げられる。アセトフェノンとしては、例えば、アセトフェノン、アセトナフトキノン、バレロフェノン、ヘキサノフェノン、α-フェニルブチロフェノン、p-モルフォリノプロピフェノン、ジベンゾスベロン、4-モルフォリノベンゾフェノン、p-ジアセチルベンゼン、4’-メトキシアセトフェノン、α-テトラロン、9-アセチルフェナンスレン、2-アセチルフェナンスレン、3-アセチルフェナンスレン、3-アセチルインドール、9-フルオレノン、1-インダノン、1,3,4-トリアセチルベンゼン、1-アセトナフトン、2-アセトナフトン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、1-ヒドロキシアセトフェン、2.2-ジエトキシアセトフェノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-2-オン又は2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オンが挙げられる。ベンゾイン及びベンゾインエーテルとしては、例えば、4-モルフォリノデオキシベンゾイン、ベンゾイン、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインテトラヒドロピラニルエーテル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル又は7H-ベンゾインメチルエーテルが挙げられる。ケタールとしては、例えば、アセトフェノンジメチルケタール、2,2-ジエトキシアセトフェノン、又はベンジルジメチルケタール等のベンジルケタールが挙げられる。典型的な混合物としては、例えば、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-2-オンと1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)(2,4,4-トリメチルペンチル)ホスフィンオキシドと2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1オン、ベンゾフェノンと1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)(2,4.4-トリメチルペンチル)ホスフィンオキサイドと1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドと2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノンと4-メチルベンゾフェノン又は2,4,6-トリメチルベンゾフェノンと4-メチルベンゾフェノンとジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドが挙げられる。
【0150】
特に好ましい光重合開始剤は、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)(2,4,4-トリメチルペンチル)ホスフィンオキシド、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン、1-ベンゾイルシクロヘキサン-1-オール、2-ヒドロキシ-2,2-ジメチルアセトフェノン及び2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン及びこれらの混合物などが挙げられる。市販の光重合開始剤としては、例えば、IGM Resins B.V.社から入手できるIrgacure(登録商標)184、Irgacure(登録商標)500、Irgacure(登録商標)TPO、Irgacure(登録商標)TPO-L、及びLucirin(登録商標)TPO、さらにDarocure(登録商標)1173などの製品がある。
【0151】
コーティング組成物(C1a)は、任意に、少なくとも1種の添加剤をさらに含むことができる。添加剤の概念は、例えばRoempp Lexikon「Lacke und Druckfarben」、Thieme Verlag、1998年、13頁から当業者に知られている。使用される好適な添加剤は少なくとも1種のレオロジー添加剤である。この用語もまた、例えばRoempp Lexikon「Lacke und Druckfarben」、Thieme Verlag、1998年、497頁から当業者に知られている。ここで、「レオロジー(rheology)添加剤」、「レオロジー(rheological)添加剤」、「レオロジー補助剤」という用語は、同じ意味を持ち置き換え可能である。任意の添加剤としては、流動制御剤、(界面活性剤、湿潤剤及び分散剤などの)表面活性剤、さらには増粘剤、チクソトロピック剤、可塑剤、潤滑添加剤及びブロッキング防止添加剤、並びにこれらの混合物からなる群から選択することが好ましい。これらの用語も同様に、例えばRoempp Lexikon「Lacke und Druckfarben」、Thieme Verlag、1998年から当業者に知られている。流動制御剤は、コーティング材料の粘度及び/又は表面張力を低下させ、均一に流れ出るフィルム膜を形成させる成分である。湿潤剤や分散剤は、表面張力、一般的には界面張力を低下させる成分である。潤滑添加剤及びブロッキング防止添加剤は、相互の固着(ブロッキング)を軽減する成分である。
【0152】
市販の添加剤の具体例としては、Efka(登録商標)SL3259、Byk(登録商標)377、Tego(登録商標)Rad2500、Tego(登録商標)Rad2800、Byk(登録商標)394、Byk-SILCLEAN3710、Silixan(登録商標)A250、Novec FC4430及びNovec FC4432などの製品がある。少なくとも1種の添加剤についての好適な総量は、コーティング組成物(C1a)の総質量に基づいて、例えば、0.01~5質量%、0.2又は0.5~3質量%である。
【0153】
本発明との関連では、表面剤などの添加剤は、シリコーン(メタ)アクリレートを含むことができる。このようなシリコーン(メタ)アクリレートを含む添加剤は、架橋性ポリマー及び/又はオリゴマーとして用いる架橋性シリコーン(メタ)アクリレートオリゴマーと比較するべきではない。最小限でも、添加剤の場合コーティング組成物中に含まれる総量が少なく、また、シリコーン(メタ)アクリレート添加剤の持つ化学機能性又は反応性が異なりコーティング組成物に及ぼす技術的効果も全く異なるからである。シリコーン(メタ)アクリレートを含む添加剤は、例えば、コーティング組成物の表面エネルギーに影響を与えるだけで、架橋性ポリマー及び/又はオリゴマー又は反応性希釈剤によって形成される(共)重合ネットワークの骨格にわずかに寄与するのみである。シリコーン(メタ)アクリレートを含む添加剤とは異なり、架橋性ポリマー及び/又はオリゴマーとして使用するシリコーン(メタ)アクリレートオリゴマーは、架橋反応のためのフリーラジカルを形成できる不飽和基を保留してなり、反応性希釈剤とともに硬化マスターコーティング(C1)の共重合エラストマーネットワークを形成する。
【0154】
コーティング組成物(C1a)に含まれる成分(a)、(b)、(c)、及び(d)は、それぞれ互いに異なるものであって、同一ではないことが、特に、好ましい。
【0155】
特に好適なマスターコーティング(C1a)は、下記の成分(各質量%はコーティング組成物(C1a)の総質量に基づく)、すなわち、
― 平均2個の不飽和基を持つ、厳密に1種のシリコーン(メタ)アクリレートオリゴマーを9~35質量%、
― ヘキサンジオールジアクリレート及び/又は6倍エトキシ化トリメチロールプロパン由来の(メタ)アクリレート(すなわち一般式(I)の構造単位を3つ持つ化合物)を55~83質量%、
― エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート及び/又は1-ベンゾイルシクロヘキサン-1-オールを1~10質量%、及び
― 潤滑及びブロッキング防止添加剤を0又は0.5~3質量%
を含む。
【0156】
(C1a)から得られる少なくとも部分的に硬化したコーティング(C1)の二重結合変換率は、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくはなお少なくとも80%、非常に好ましくは少なくとも85%、より特に好ましくは少なくとも90%である。
【0157】
コーティング組成物(C1a)は、成分(a)~(d)とは異なる少なくとも1種の更なる成分(e)、例えば、充填剤、顔料、熱活性化可能な開始剤、例えば、ペルオキソ二硫酸カリウム、ジベンゾイルパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル、シクロヘキシルスルホニルアセチルパーオキサイド、ジイソプロピルパーカーボネート、tert-ブチルパーオクトエート又はベンゾピナコール、クメンヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、tert-ブチルパーベンゾエート、シリル化ピナコール、アルコキシアミン、及び有機溶剤、さらには安定化剤などを含むことができる。ただし、コーティング組成物(C1a)に有機溶媒を含ませないことが好ましい。コーティング組成物(C1a)は、少なくとも1種の成分(e)を、コーティング組成物(C1a)の総質量に基づいて、0~10質量%、好ましくは0~5質量%、より好ましくは0~1質量%の総量で含むことができる。
【0158】
コーティング組成物(C1a)は、溶剤系コーティング組成物であっても、固体系コーティング組成物であってもよい。速やかな硬化を促進し、硬化時に蒸発溶媒が多量に発生しないようにするため、コーティング組成物(C1a)は、固体コーティング組成物であることが好ましい。したがって、コーティング組成物(C1a)は、コーティング組成物(C1a)の総質量に基づいて、総量が10質量%未満、好ましくは5質量%未満、より好ましくは1質量%未満、非常に好ましくは0質量%の溶剤を含むことが有利であり、すなわち、非常に好ましくは、溶剤を含まないことである。したがって、コーティング組成物(C1a)は、DIN EN ISO3251:2008-06に従って125℃及び60分で測定したとき、コーティング組成物(C1a)の総質量に基づいて、75~100質量%の固形分含量を有することが有利である。また、化合物(a)、(b)、(c)及び任意に(d)を、コーティング組成物(C1a)の総質量に基づいて、90~100質量%、好ましくは95~100質量%、より好ましくは99~100質量%の総量で含むことが有利である。コーティング組成物(C1a)は、化合物(a)、(b)、(c)、及び任意に(d)から成ることが最も好ましい。
【0159】
コーティング組成物(C1a)は、チオールを含まないことが好ましく、特にトリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)を含まないことが好ましい。
【0160】
コーティング組成物(C2a)
本発明の方法の工程(2-i)又は(2-ii)におけるコーティング組成物(C2a)としては、任意の種類のコーティング組成物を採用することができる。コーティング組成物(C2a)は、物理的乾燥型、熱硬化型、化学硬化型及び/又は放射線硬化型のコーティング組成物(C2a)であることができる。好ましくは、コーティング組成物(C2a)は、化学硬化性、熱硬化性及び/又は放射線硬化性コーティング組成物であり、より好ましくは放射線硬化性コーティング組成物である。したがって、工程(4)による少なくとも部分的な硬化は、放射線硬化の手段によって行うのが好ましい。コーティング組成物(C2a)は、コーティング組成物(C1a)と同一であってもよい。ただし、(C2a)は(C1a)と異なることが好ましい。(C2a)は、(C1a)の調製にも使用する成分(a)~(e)と同一ではないが同様の成分から構築することが好ましいが、(C1a)に関する量的条件を(C2a)に適用する必要はない。
【0161】
ここでいう物理乾燥とは、好ましくは、コーティング(C2)を形成するための溶媒(複数可)の単純な蒸発を意味する。ここでいう熱硬化とは、好ましくは、室温を超える温度(23℃を上回る)に起因する硬化機構を必然的に伴う。これは、例えば、ラジカル又はイオンの形成、好ましくは、高温で分解する開始剤からのラジカルの形成であってもよく、したがって、ラジカル重合又はイオン重合を開始させるものであってもよい。このような熱的活性化の可能な開始剤の具体例としては、80℃における半減期が100時間未満のものが挙げられる。化学的硬化は、好ましくは、少なくとも2つの異なる、相互に補足的な反応性官能基の反応であって、例えば、OH基と-COOH基との反応のような重縮合、又は(NCO基と-OH又はアミノ基との反応である)重付加のような方法における反応性官能基の反応をいう。
【0162】
コーティング組成物(C2a)が物理乾燥性、熱硬化性及び/又は化学硬化性コーティング組成物である場合、当業者に知られている少なくとも1種の慣用的なポリマーをバインダーとして使用して調製される。熱的又は化学的に硬化可能なコーティング組成物の場合、このバインダーは架橋性官能基を有することが好ましい。当業者に知られている任意の慣用的な架橋性官能基は、この文脈で適している。より詳細には、架橋性官能基としては、水酸基、アミノ基、カルボン酸基、チオール基、イソシアネート、ポリイソシアネート及びエポキシドからなる群から選択される。ポリマーは、好ましくは発熱又は吸熱で硬化又は架橋可能であり、好ましくは-20℃~250℃、又は18℃~200℃の温度範囲で硬化又は架橋可能である。ポリマーとして特に好適なものは、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレア、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート、エポキシ樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリマーである。これらのポリマーは、特にOH官能性であってもよい。その場合、それらは一般的な用語「ポリオール」に包含されることがあります。このようなポリオールは、例えば、ポリ(メタ)アクリレートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリ尿素ポリオール、ポリエステル-ポリアクリレートポリオール、ポリウレタン-ポリアクリレートポリオン、ポリウレタン変性アルキド樹脂、脂肪酸変性ポリエステル-ポリウレタンポリオール、及びさらに、前述したポリオールの混合物でもよい。好適なものは、ポリ(メタ)アクリレートポリオール、ポリエステルポリオール、及びポリエーテルポリオールである。
【0163】
ここでは、イソシアネート基及び/又はオリゴマー化イソシアネート基の関与で硬化する少なくとも1種のポリマー、非常に好ましくは少なくとも1種の対応するポリウレタン及び/又は少なくとも1種の対応するポリウレア(例えば、「ポリアスパラギン酸バインダー」と呼ばれるもの)を用いることも可能である。ポリアスパラギン酸バインダーは、アミノ官能性化合物、特に2級アミンとイソシアネートとの反応により変換される成分である。少なくとも1種のポリウレタンを使用する場合、特に好適なものは、ポリオールなどのヒドロキシル含有成分と少なくとも1種のポリイソシアネート(芳香族及び脂肪族イソシアネート、ジ-、トリ-及び/又はポリイソシアネート)との重付加反応により調製可能なポリウレタン系樹脂である。通常、ポリオール中のOH基とポリイソシアネート中のNCO基を化学量論的に変換することが必要である。しかし、ポリイソシアネートは、「架橋過剰」又は「架橋不足」となるような量でポリオール成分に添加することができるため、使用する化学量論比を変化させることも可能である。エポキシ樹脂、すなわちエポキシド系樹脂を使用する場合、好適なものは、末端エポキシド基と分子内に官能基としてヒドロキシド基を有するグリシジルエーテルから調製されたエポキシド系樹脂であることが好ましい。これらは、ビスフェノールAとエピクロルヒドリン、及び/又はビスフェノールFとエピクロルヒドリンの反応生成物、及びそれらの混合物が好ましく、反応性希釈剤の存在下でも使用される。このようなエポキシド系樹脂の硬化又は架橋は、通例、エポキシド環のエポキシド基の重合によって、又は、硬化剤としての他の反応性化合物を化学量論的にエポキシド基と付加反応させる態様での重付加反応によって行うことができる。この後者の場合、それに応じて1エポキシド基当たり1活性水素当量の存在が必要である(すなわち、エポキシド当量1当たりの硬化につき1活性水素当量が必要である)。あるいは、エポキシド系樹脂の硬化又は架橋は、エポキシド基と水酸基を介して重縮合することによって行うことができる。適切な硬化剤の具体例としては、ポリアミン、特に(ヘテロ)脂肪族、(ヘテロ)芳香族及び(ヘテロ)脂環式ポリアミン、ポリアミドアミン、ポリアミノアミド、さらにポリカルボキシル酸及びその無水物がある。
【0164】
「放射線硬化」の概念については、既にコーティング組成物(C1a)に関連して上述したところであり、その該当箇所を明確に参照されたい。
【0165】
コーティング組成物(C2a)は、放射線源の使用、好ましくは紫外線(UV)照射の使用により硬化させることができる。したがって、(C2a)は紫外線(UV)照射硬化型のコーティング組成物であることが好ましい。
【0166】
したがって、好適な製品コーティング組成物(C2a)は、下記のもの、
a)平均して少なくとも2個の不飽和基を有する、少なくとも1種の化合物、
b)任意で、少なくとも1種の光重合開始剤、及び
c)任意で、少なくとも1種の添加剤
を含む。
【0167】
コーティング組成物(C2a)は、好ましくは、平均で少なくとも2個の、不飽和炭素二重結合、より好ましくは(メタ)アクリル基を有する。この目的のために、コーティング組成物(C2)は、(C1a)に関連して上記で特定された架橋性ポリマー及び/又はオリゴマー又は反応性希釈剤のいずれかを、例えば、特に、ポリエステル、ポリエーテル、カーボネート、エポキシド、ポリ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、及び/又はシリコーン(メタ)アクリレートオリゴマー及び/又は少なくとも1つの不飽和ポリエステル樹脂及び/又は1-、2-、及び/又は3-官能性(メタ)アクリルエステルを含むことができる。
【0168】
可視光から(N)IRによる、及び/又はUV光による硬化の際、コーティング組成物(C2a)は、照射された波長の光によってラジカルに分解できる少なくとも1種の光重合開始剤を含むことが好ましく、これらのラジカルがその後ラジカル重合を開始させることが可能である。これに対し、電子線による硬化の場合、このような光重合開始剤の存在を必要としない。光重合開始剤としては、コーティング組成物(C1a)の光重合開始剤に関連して上述したのと同じ成分を同じ量で使用することが可能である。
【0169】
コーティング組成物(C2a)は、少なくとも1種の更なる添加剤を含んでいてもよい。その場合は、コーティング組成物(C1a)の添加剤又は更なる成分(e)として、上記で特定したのと同じ成分を同じ量で使用することが可能である。
【0170】
また、コーティング組成物(C2a)として用いるコーティング組成物は、(メタ)アクリル基を有するものであることがより好ましい。好ましくは、このコーティング組成物(C2a)は、少なくとも1種のウレタン(メタ)アクリレートを含む。さらに、少なくとも1種の光重合開始剤を含むことが好ましい。
【0171】
コーティング組成物(C2a)は、溶剤系又は固体系のコ-ティング組成物であることができる。速やかな硬化を促進し、硬化時に蒸発溶媒が多量に発生しないようにするため、コーティング組成物(C2a)は、固体系コーティング組成物、すなわち、少量の溶媒しか含有しないコーティング組成物であることが好ましい。したがって、該コーティング組成物の固形分含量は、DIN EN ISO3251:2008-06に従って125℃及び60分で測定したとき、コーティング組成物(C2a)の総質量に基づいて、75~100質量%であることが有利である。また、該コーティング組成物は、化合物(a)、及び、任意の化合物の(b)と(c)を、コーティング組成物(C2a)の総質量に基づいて、90~100質量%、好ましくは95~100質量%、より好ましくは99~100質量%の総量で含むことが有利である。
【0172】
本発明の複合体(S1C1)
本発明の更なる主題は、基材(S1)と、少なくとも部分的にエンボス加工し、かつ、少なくとも部分的に硬化したコーティング(C1)とから構成された複合体(S1C1)であって、コーティング(C1)が、基材(S1)の表面の少なくとも一部に適用したコーティング組成物(C1a)を少なくとも部分的に硬化させ、少なくとも部分的にエンボス加工し、放射線硬化することにより得ることができ、コーティング組成物(C1a)が放射線硬化性のコーティング組成物であり、
(a)少なくとも1種の架橋性ポリマー及び/又はオリゴマーを5~45質量%、
(b)少なくとも1種の反応性希釈剤を40~95質量%又は~85質量%、好ましくは50~95質量%又は~85質量%又は~83質量%、
(c)少なくとも1種の光重合開始剤を0.01~15質量%、及び
(d)少なくとも1種の添加剤を0~5質量%
を含み、
ここで、(i)成分(a)、(b)、(c)、及び(d)について記載した合計量は、それぞれコーティング組成物(C1a)の総質量に基づくものであり、(ii)コーティング組成物(C1a)に存在する全ての成分の合計量は100質量%になり、
ここで、少なくとも1種の架橋性ポリマー及び/又はオリゴマー(a)は、コーティング組成物(C1a)中に含まれる全ての架橋性ポリマー及び/又はオリゴマーの総質量に基づいて、総量が、少なくとも25質量%、好ましくは少なくとも50質量%、より好ましくは少なくとも90質量%、非常に好ましくは100質量%の、少なくとも1種のシリコーン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む
ことを特徴とする複合体(S1C1)である。
【0173】
成分(a)、(b)、(c)、及び(d)の全ては、それぞれ互いに異なるものであることが好ましい。
【0174】
本発明の方法に関連して、特にそこで使用するコーティング組成物(C1a)及び基材(S1)、さらにはコーティング(C1)に関連して本明細書に記載した全ての好適な実施形態は、また、本発明の複合体(S1C1)に関連した好適な実施形態でもある。
【0175】
本発明の複合体(S1C1)は、本発明の方法の前記工程(6)~(9)を実施することにより得ることが好ましい。基材(S1)は、有利にはフィルムウェブ、好ましくは移動フィルムウェブ、より好ましくは連続移動フィルムウェブである。
【0176】
本発明に係る使用
本発明の更なる主題は、コーティング組成物(C2a)の表面の少なくとも一部に、又は、基材(S2)上に少なくとも部分的に塗布したコーティング組成物(C2a)の表面の少なくとも一部に、エンボス構造を転写するための、エンボス加工ツール(E2)のエンボス型(e2)としての本発明の複合体(S1C1)の使用である。
【0177】
本発明の方法及び本発明の複合体(S1C1)に関連して本明細書に記載した全ての好適な実施形態は、本発明の複合体(S1C1)の前記使用に関連する好適な実施形態でもある。
【0178】
なお、ここでのコーティング組成物(C2a)は、放射線硬化型のコーティング組成物であることが好ましい。
【0179】
本発明について、特に以下の実施形態により説明する。
【0180】
実施形態1:複合体(S1C1)を用いてコーティング組成物(C2a)の表面の少なくとも一部にエンボス構造を転写する方法であって、該方法は、少なくとも工程(1)、(2-i)及び(3-i)又は(2-ii)及び(3-ii)、さらに少なくとも工程(4)及び任意に工程(5-i)又は(5-ii)を含む、具体的には、
(1)基材(S1)と、少なくとも部分的にエンボス加工した、かつ、少なくとも部分的に硬化したコーティング(C1)とから構成された複合体(S1C1)を用意する工程、
及び
(2-i)少なくとも1つのコーティング組成物(C2a)を基材(S2)の表面の少なくとも一部に塗布して複合体(S2C2a)を用意する工程、
(3-i)複合体(S1C1)を用いて複合体(S2C2a)のコーティング組成物(C2a)を少なくとも部分的にエンボス加工して、複合体(S1C1C2aS2)を用意する工程、
又は
(2-ii)複合体(S1C1)の少なくとも部分的にエンボス加工し、かつ、少なくとも部分的に硬化した表面の少なくとも一部に少なくとも1つのコーティング組成物(C2a)を塗布し、複合体(S1C1)を用いてコーティング組成物(C2a)を少なくとも部分的にエンボス加工して複合体(S1C1C2a)を用意する工程、
(3-ii)任意に、該複合体(S1C1C2a)の、コーティング組成物(C2a)によって形成された表面の少なくとも一部に基材(S2)を適用して複合体(S1C1C2aS2)を得る工程、
及び
(4)任意で基材(S2)に塗布した、少なくとも部分的にエンボス加工したコーティング組成物(C2a)を少なくとも部分的に硬化させて、複合体(S1C1C2)又は(S1C1C2S2)を用意する工程であって、該コーティング組成物(C2a)が、少なくとも部分的に硬化させる期間を通して複合体(S1C1)と接触している工程、
及び
(5-i)任意に、複合体(S1C1C2S2)内の複合体(C2S2)を複合体(S1C1)から除去して、工程(1)で用意した複合体(S1C1)を復元する工程、
又は
(5-ii)任意に、該複合体(S1C1C2)内のコーティング(C2)を該複合体(S1C1)から除去して、工程(1)で用意した該複合体(S1C1)を復元する工程、
を含み、
ここで、工程(1)で使用した、及び、工程(5-i)又は工程(5-ii)で復元した複合体(S1C1)の、少なくとも部分的にエンボス加工し、かつ、少なくとも部分的に硬化したコーティング(C1)を製造するために用いるコーティング組成物(C1a)が、放射線硬化性コーティング組成物であり、
(a)少なくとも1種の架橋性ポリマー及び/又はオリゴマーを5~45質量%、
(b)少なくとも1種の反応性希釈剤を40~95質量%、
(c)少なくとも1種の光重合開始剤を0.01~15質量%、及び
(d)少なくとも1種の添加剤を0~5質量%
を含有し、
ここで、(i)成分(a)、(b)、(c)、及び(d)について記載した合計量は、それぞれコーティング組成物(C1a)の総質量に基づくものであり、(ii)コーティング組成物(C1a)に存在する全ての成分の合計量は、100質量%になり、
ここで、少なくとも1種の架橋性ポリマー及び/又はオリゴマー(a)は、コーティング組成物(C1a)中に含まれる全ての架橋性ポリマー及び/又はオリゴマーの総質量に基づいて、総量が、少なくとも25質量%、好ましくは少なくとも50質量%、より好ましくは少なくとも90質量%、非常に好ましくは100質量%の、少なくとも1種のシリコーン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む、
方法。
【0181】
実施形態2:複合体(S1C1)を用いてコーティング組成物(C2a)の表面の少なくとも一部にエンボス構造を転写する方法であって、該方法は、少なくとも工程(1)、(2-i)及び(3-i)、さらに少なくとも工程(4)及び任意に工程(5-i)を含む、具体的には、
(1)基材(S1)と、少なくとも部分的にエンボス加工した、かつ、少なくとも部分的に硬化したコーティング(C1)とから構成された複合体(S1C1)を用意する工程、
(2-i)少なくとも1つのコーティング組成物(C2a)を基材(S2)の表面の少なくとも一部に塗布して複合体(S2C2a)を用意する工程、
(3-i)複合体(S1C1)を用いて複合体(S2C2a)のコーティング組成物(C2a)を少なくとも部分的にエンボス加工して、複合体(S1C1C2aS2)を用意する工程、
(4)任意で基材(S2)に塗布した、少なくとも部分的にエンボス加工したコーティング組成物(C2a)を少なくとも部分的に硬化させて、複合体(S1C1C2S2)を用意する工程であって、該コーティング組成物(C2a)が、少なくとも部分的に硬化させる期間を通して複合体(S1C1)と接触している工程、
(5-i)任意に、複合体(S1C1C2S2)内の複合体(C2S2)を複合体(S1C1)から除去して、工程(1)で用意した複合体(S1C1)を復元する工程、
を含み、
ここで、工程(1)で使用した、及び、工程(5-i)で復元した複合体(S1C1)の、少なくとも部分的にエンボス加工し、かつ、少なくとも部分的に硬化したコーティング(C1)を製造するために用いるコーティング組成物(C1a)が、放射線硬化性コーティング組成物であり、
(a)少なくとも1種の架橋性ポリマー及び/又はオリゴマーを5~45質量%、
(b)少なくとも1種の反応性希釈剤を40~95質量%、
(c)少なくとも1種の光重合開始剤を0.01~15質量%、及び
(d)少なくとも1種の添加剤を0~5質量%
を含有し、
ここで、(i)成分(a)、(b)、(c)、及び(d)について記載した合計量は、それぞれコーティング組成物(C1a)の総質量に基づくものであり、(ii)コーティング組成物(C1a)に存在する全ての成分の合計量は、100質量%になり、
ここで、少なくとも1種の架橋性ポリマー及び/又はオリゴマー(a)は、コーティング組成物(C1a)中に含まれる全ての架橋性ポリマー及び/又はオリゴマーの総質量に基づいて、総量が、少なくとも25質量%、好ましくは少なくとも50質量%、より好ましくは少なくとも90質量%、非常に好ましくは100質量%の、少なくとも1種のシリコーン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む、
方法。
【0182】
実施形態3:複合体(S1C1)を用いてコーティング組成物(C2a)の表面の少なくとも一部にエンボス構造を転写する方法であって、該方法は、少なくとも工程(1)、(2-ii)、さらに少なくとも工程(4)及び任意に工程(5-ii)を含む、具体的には、
(1)基材(S1)と、少なくとも部分的にエンボス加工した、かつ、少なくとも部分的に硬化したコーティング(C1)とから構成された複合体(S1C1)を用意する工程、
(2-ii)複合体(S1C1)の少なくとも部分的にエンボス加工し、かつ、少なくとも部分的に硬化した表面の少なくとも一部に少なくとも1つのコーティング組成物(C2a)を塗布し、複合体(S1C1)を用いてコーティング組成物(C2a)を少なくとも部分的にエンボス加工して複合体(S1C1C2a)を用意する工程、
(4)少なくとも部分的にエンボス加工したコーティング組成物(C2a)を少なくとも部分的に硬化させて、複合体(S1C1C2S2)を用意する工程であって、該コーティング組成物(C2a)が、少なくとも部分的に硬化させる期間を通して複合体(S1C1)と接触している工程、
及び
(5-ii)任意に、該複合体(S1C1C2)内のコーティング(C2)を該複合体(S1C1)から除去して、工程(1)で用意した該複合体(S1C1)を復元する工程、
を含み、
ここで、工程(1)で使用した、及び、工程(5-ii)で復元した複合体(S1C1)の、少なくとも部分的にエンボス加工し、かつ、少なくとも部分的に硬化したコーティング(C1)を製造するために用いるコーティング組成物(C1a)が、放射線硬化性コーティング組成物であり、
(a)少なくとも1種の架橋性ポリマー及び/又はオリゴマーを5~45質量%、
(b)少なくとも1種の反応性希釈剤を40~95質量%、
(c)少なくとも1種の光重合開始剤を0.01~15質量%、及び
(d)少なくとも1種の添加剤を0~5質量%
を含有し、
ここで、(i)成分(a)、(b)、(c)、及び(d)について記載した合計量は、それぞれコーティング組成物(C1a)の総質量に基づくものであり、(ii)コーティング組成物(C1a)に存在する全ての成分の合計量は、100質量%になり、
ここで、少なくとも1種の架橋性ポリマー及び/又はオリゴマー(a)は、コーティング組成物(C1a)中に含まれる全ての架橋性ポリマー及び/又はオリゴマーの総質量に基づいて、総量が、少なくとも25質量%、好ましくは少なくとも50質量%、より好ましくは少なくとも90質量%、非常に好ましくは100質量%の、少なくとも1種のシリコーン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む、
方法。
【0183】
実施形態4:複合体(S1C1)を用いてコーティング組成物(C2a)の表面の少なくとも一部にエンボス構造を転写する方法であって、該方法は、少なくとも工程(1)、(2-ii)及び(3-ii)、及び、さらに少なくとも工程(4)及び任意に工程(5-ii)を含む、具体的には、
(1)基材(S1)と、少なくとも部分的にエンボス加工した、かつ、少なくとも部分的に硬化したコーティング(C1)とから構成された複合体(S1C1)を用意する工程、
(2-ii)複合体(S1C1)の少なくとも部分的にエンボス加工し、かつ、少なくとも部分的に硬化した表面の少なくとも一部に少なくとも1つのコーティング組成物(C2a)を塗布し、複合体(S1C1)を用いてコーティング組成物(C2a)を少なくとも部分的にエンボス加工して複合体(S1C1C2a)を用意する工程、
(3-ii)該複合体(S1C1C2a)の、コーティング組成物(C2a)によって形成された表面の少なくとも一部に基材(S2)を適用して複合体(S1C1C2aS2)を得る工程、
(4)基材(S2)に塗布した、少なくとも部分的にエンボス加工したコーティング組成物(C2a)を少なくとも部分的に硬化させて、複合体(S1C1C2S2)を用意する工程であって、該コーティング組成物(C2a)が、少なくとも部分的に硬化させる期間を通して複合体(S1C1)と接触している工程、
(5-i)任意に、複合体(S1C1C2S2)内の複合体(C2S2)を複合体(S1C1)から除去して、工程(1)で用意した複合体(S1C1)を復元する工程、
を含み、
ここで、工程(1)で使用した、及び、工程(5-i)で復元した複合体(S1C1)の、少なくとも部分的にエンボス加工し、かつ、少なくとも部分的に硬化したコーティング(C1)を製造するために用いるコーティング組成物(C1a)が、放射線硬化性コーティング組成物であり、
(a)少なくとも1種の架橋性ポリマー及び/又はオリゴマーを5~45質量%、
(b)少なくとも1種の反応性希釈剤を40~95質量%、
(c)少なくとも1種の光重合開始剤を0.01~15質量%、及び
(d)少なくとも1種の添加剤を0~5質量%
含有し、
ここで、(i)成分(a)、(b)、(c)、及び(d)について記載した合計量は、それぞれコーティング組成物(C1a)の総質量に基づくものであり、(ii)コーティング組成物(C1a)に存在する全ての成分の合計量は、100質量%になり、
ここで、少なくとも1種の架橋性ポリマー及び/又はオリゴマー(a)は、コーティング組成物(C1a)中に含まれる全ての架橋性ポリマー及び/又はオリゴマーの総質量に基づいて、総量が、少なくとも25質量%、好ましくは少なくとも50質量%、より好ましくは少なくとも90質量%、非常に好ましくは100質量%の、少なくとも1種のシリコーン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む、
方法。
【0184】
実施形態5:工程(2-i)及び工程(2-ii)において、前記少なくとも1つのコーティング組成物(C2a)を、少なくとも0.5μm、少なくとも1μm、より好ましくは少なくとも5μmの乾燥層厚で塗布する、実施形態1~4のいずれか一項に記載の方法。
【0185】
実施形態6:転写する前記エンボス構造が、微細構造及び/又はナノ構造であり、好ましくは10nm~500μmの範囲、より好ましくは25nm~400μmの範囲、非常に好ましくは50nm~250μmの範囲、より好ましくは100nm~100μmの範囲の構造幅を有し、また、好ましくは10nm~500μmの範囲、より好ましくは25nm~400μmの範囲、非常に好ましくは50nm~300μmの範囲、より好ましくは100nm~200μmの範囲の構造高さを有する、実施形態1~5のいずれか一項に記載の方法。
【0186】
実施形態7:少なくとも1種の接着剤を、コーティング組成物(C2a)と接触させない基材(S2)の表面に塗布する、実施形態1~6のいずれか一項に記載の方法。
【0187】
実施形態8:工程(5-i)において、複合体(S1C1C2S2)から剥離することによって複合体(C2S2)を得るとともに、工程(1)で用意した複合体(S1C1)を追加復元する、又はその逆を行う、実施形態1~7のいずれか一項に記載の方法。
【0188】
実施形態9:少なくとも部分的にエンボス加工し、かつ、少なくとも部分的に硬化した、工程(5-ii)のコーティング(C2)を、複合体(S1C1C2)から剥離することにより独立するフィルムとして得るとともに、工程(1)で用意した複合体(S1C1)を追加復元する、又はその逆を行う、実施形態1~7のいずれか一項に記載の方法。
【0189】
実施形態10:複合体(S1C1)から除去する工程が、下記の工程、
5-i-a)少なくとも部分的にエンボス加工したコーティング(C2)と接触していない基板(S2)の表面上に少なくとも1種の接着剤層(AL)を塗布して複合体(S1C1C2S2AL)を用意する工程、
5-i-b)任意に、複合体(S1C1C2S2AL)を物体(O1)に少なくとも部分的に付着させる工程、
5-i-c)任意に少なくとも部分的に物体(O1)に付着させた複合体(C2S2AL)から複合体(S1C1)を取り外す、好ましくは剥がす、又はその逆を行う工程
を含む、実施形態1~7のいずれか一項に記載の方法。
【0190】
実施形態11:複合体(S1C1)から除去する工程が、下記の工程、
5-ii-a)少なくとも部分的にエンボス加工したコーティング(C2)の非構造化表面の少なくとも一部に、少なくとも1種の接着剤層(AL)を塗布し、複合体(S1C1C2AL)を用意する工程、
5-ii-b)任意に、複合体(S1C1C2AL)を物体(O1)に少なくとも部分的に付着させる工程、
5-ii-c)任意で、少なくとも部分的に物体(O1)に付着させた複合体(C2S2AL)から複合体(S1C1)を取り外す、好ましくは剥がす、又はその逆を行う工程
を含む、実施形態1~7のいずれか一項に記載の方法。
【0191】
実施形態12:工程(1)で用意した複合体(S1C1)を、工程(2-i)、及び工程(2-ii)及び(3-ii)において、コーティング(C1)のエンボス構造をコーティング組成物(C2a)に、エンボス構造として転写するエンボス加工ツール(E2)のエンボス型(モールド)(e2)として使用し、
ここで、エンボス型(e2)として使用する複合体(S1C1)のコーティング(C1)の構造化表面の鏡像を、任意に基材(S2)上に適用された、少なくとも部分的にエンボス加工され、かつ、少なくとも部分的に硬化したコーティング(C2)の表面へエンボス加工する、実施形態1~11のいずれか一項に記載の方法。
【0192】
実施形態13:基材(S1)が、フィルムウェブ、好ましくは移動フィルムウェブ又は連続フィルムウェブ、より好ましくは連続移動フィルムウェブである、実施形態1~12のいずれか一項に記載の方法。
【0193】
実施形態14:基材(S2)がフィルムウェブ、好ましくは移動フィルムウェブ、より好ましくは連続移動フィルムウェブである、実施形態1~13のいずれか一項に記載の方法。
【0194】
実施形態15:工程(2-i)及び工程(2-ii)及び(3-ii)で使用する複合体(S1C1)が再利用可能であり、前記方法の工程(5-i)又は(5-ii)を実施する際に少なくとも1つのエンボス構造の転写に繰り返し使用することができる、実施形態1~14のいずれか一項に記載の方法。
【0195】
実施形態16:工程(3-i)の実施中、工程(3-i)における複合体(S1C1)は、エンボス加工ツール(E2)として機能する第1のロールを介して導き、複合体(S2C2a)は、第1のロールとは対向して配置された、第1のロールと反対回転する又は第1のロールと同方向回転(co-rotatory)する第2のロールを介して導き、
及び
工程(3-ii)の実施中、工程(3-i)における複合体(S1C1C2a)は、エンボス加工ツール(E2)として機能する第1のロールを介して導き、工程(3-ii)内で使用する基材(S2)は、第1のロールとは対向して配置された、第1のロールと反対回転する又は第1のロールと同方向回転する第2のロールを介して導く、実施形態1~15のいずれか一項に記載の方法。
【0196】
実施形態17:工程(3-i)の少なくとも部分的なエンボス加工は、2つの互いに対向するロールによって形成されるロールニップのレベルで行われ、ここで、両ロールは反対回転又は同方向回転するものであり、複合体(S1C1)の少なくとも部分的エンボス加工したコーティング(C1)は、複合体(S2C2a)のコーティング組成物(C2a)に面している、
及び
工程(3-ii)の少なくとも部分的なエンボス加工は、2つの互いに対向するロールによって形成されるロールニップのレベルで行われ、ここで両ロールは反対回転又は同方向回転するものであり、複合体(S1C1C2a)のコーティング組成物(C2a)は基材(S2)に面している、実施形態16に記載の方法。
【0197】
実施形態18:工程(1)で用意した複合体(S1C1)が、少なくとも、
(6)放射線硬化型コーティング組成物(C1a)を基材(S1)の表面の少なくとも一部に塗布し、複合体(S1C1a)を用意する;
(7)少なくとも1つのエンボス型(e1)を含む少なくとも1つのエンボス加工ツール(E1)によって、基材(S1)の表面に少なくとも部分的に塗布したコーティング組成物(C1a)を少なくとも部分的にエンボス加工する、
(8)少なくとも部分的な硬化の期間中エンボス加工ツール(E1)の少なくとも1つのエンボス型(e1)と接触している基材(S1)に、少なくとも部分的に塗布した少なくとも部分的にエンボス加工されたコーティング組成物(C1a)を、少なくとも部分的に硬化すること、
(9)エンボス加工ツール(E1)のエンボス型(e1)から複合体(S1C1)を取り外して、少なくとも部分的にエンボス加工し、かつ、少なくとも部分的に硬化した複合体(S1C1)を用意する、又はその逆を行う、
ことにより得られるものである、実施形態1~17のいずれか一項に記載の方法。
【0198】
実施形態19:工程(6)の少なくとも1つのコーティング組成物(C1a)を少なくとも0,5μm、好ましくは少なくとも1μm、より好ましくは少なくとも5μmの乾燥層厚で塗布する、実施形態18に記載の方法。
【0199】
実施形態20:コーティング組成物(C1a)が、そのコーティング組成物(C1a)の総質量に基づいて、総量が5~45質量%、好ましくは8~40質量%、より好ましくは9~35質量%の、少なくとも1種の架橋性ポリマー及び/又はオリゴマーを含む、実施形態1~19のいずれか一項に記載の方法。
【0200】
実施形態21:コーティング組成物(C1a)が、そのティング組成物(C1a)中に含まれる全ての架橋性ポリマー及び/又はオリゴマーの総質量に基づいて、総量が、少なくとも25質量%、好ましくは少なくとも50質量%、より好ましくは少なくとも90質量%、非常に好ましくは100質量%の、少なくとも1種のシリコーン(メタ)アクリレートオリゴマー、好ましくは厳密に1種のシリコーン(メタ)アクリレートオリゴマー、より好ましくは厳密に1種の、平均2~3個の不飽和基を持つシリコーン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む、実施形態1~20のいずれか一項に記載の方法。
【0201】
実施形態22:コーティング組成物(C1a)が、そのコーティング組成物(C1a)の総質量に基づいて、総量が5~45質量%、好ましくは8~40質量%、より好ましくは9~35質量%の、少なくとも1種の架橋性ポリマー及び/又はオリゴマーを含み、該少なくとも1種の架橋性ポリマー及び/又はオリゴマーが、i)少なくとも1種のシリコーン(メタ)アクリレートオリゴマー、好ましくは厳密に1種のシリコーン(メタ)アクリレートオリゴマー、非常に好ましくは、平均2~3個の不飽和基を持つ厳密に1種のシリコーン(メタ)アクリレートオリゴマー、及び、ii)(メタ)アクリル化オリゴマー又はポリマー化合物、ウレタン(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、オレフィン(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル化油、及びこれらの混合物から選択される他の架橋性ポリマー及び(又は)オリゴマー、好ましくはウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーからなる、群から選択される、実施形態1~21のいずれか一項に記載の方法。
【0202】
実施形態23:コーティング組成物(C1a)が、反応性希釈剤として、フリーラジカル重合性モノマー、好ましくはエチレン性不飽和モノマー、より好ましくは多官能性エチレン性不飽和モノマーを含む、実施形態1~22のいずれか一項に記載の方法。
【0203】
実施形態24:コーティング組成物(C1a)が、ヘキサンジオールジアクリレートと、一般式(I)
【0204】
【化4】

(式中、
ラジカルRは、互いに独立して、C~Cアルキレン基、非常に好ましくはCアルキレン基であり、
ラジカルRは、互いに独立に、H又はメチルであり、
記号mは、互いに独立して、1~15、非常に好ましくは1~4又は2~4の範囲の整数であり、但し、式(I)の構造単位の少なくとも1つでは、記号mは少なくとも2、好ましくは厳密に2である)
の構造単位を、少なくとも2つ、好ましくは少なくとも3つ、より好ましくは3つ持つ化合物であって、その構造単位が互いに異なっていてもよいし、又は、少なくとも部分的に同一でもよい化合物とから選択される、少なくとも1種の反応性希釈剤を含む、実施形態1~23のいずれか一項に記載の方法。
【0205】
実施形態25:前記化合物が、式(I)の3つの同一の構造単位を持ち、記号mが少なくとも2、好ましくは厳密に2である、実施形態24に記載の方法。
【0206】
実施形態26:少なくとも2つの、一般式(I)の構造単位を持つ、特に好適な化合物が、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン又はペンタエリスリトールを合計4倍~20倍又は4倍~12倍アルコキシル化(例えば、エトキシル化、プロポキシル化、又は、エトキシル化及びプロポキシル化)した(メタ)アクリレート類であって、より詳細には、専らエトキシル化した、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン又はペンタエリスリトールの(メタ)アクリレート類である、実施形態24又は25に記載の方法。
【0207】
実施形態27:コーティング組成物(C1a)が、そのコーティング組成物(C1a)の総質量に基づいて、総量が40~95質量%、好ましくは50~85質量%、より好ましくは55~83質量%の、少なくとも1種の反応性希釈剤、好ましくは、ヘキサンジオールジアクリレート、及び/又は、6倍エトキシル化トリメチロールプロパンから誘導された(メタ)アクリレートを含む、実施形態1~6のいずれか一項に記載の方法。
【0208】
実施形態28:コーティング組成物(C1a)が、そのコーティング組成物(C1a)の総質量に基づいて、0.01~15質量%、好ましくは0.5~10質量%、より好ましくは1~8質量%の総量で、前記少なくとも1種の光重合開始剤を含む、実施形態1~27のいずれか一項に記載の方法。
【0209】
実施形態29:コーティング組成物(C1a)に含まれる光重合開始剤が、(アルキル-)ベンゾイルフェニルホスフィンオキシドを含むホスフィンオキシド、ベンゾフェノン、α-ヒドロキシアルキルアリールケトン、チオキサントン、アントラキノン、アセトフェノン、ベンゾイン及びベンゾインエーテル、ケタール、イミダゾール又はフェニルグリオキシル酸及びこれらの混合物、好ましくは、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、ベンゾフェノン、1-ベンゾイルシクロヘキサン-1-オール、2-ヒドロキシ-2,2-ジメチルアセトフェノン及び2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン及びこれらの混合物から選択される、実施形態1~28のいずれか一項に記載の方法。
【0210】
実施形態30:コーティング組成物(C1a)が、そのコーティング組成物(C1a)の総質量に基づいて、総量が0.01~5質量%、好ましくは0.2又は0.5~5質量%、より好ましくは0.5~3質量%の、少なくとも1種の添加剤を含む、実施形態1~29のいずれか一項に記載の方法。
【0211】
実施形態31:コーティング組成物(C1a)が、そのコーティング組成物(C1a)の総質量に基づいて、総量が10質量%未満、好ましくは5質量%未満、より好ましくは1質量%未満の有機溶剤を含む、非常に好ましくは有機溶剤を含まない、実施形態1~30のいずれか一項に記載の方法。
【0212】
実施形態32:コーティング組成物(C1a)が、そのコーティング組成物(C1a)の総質量に基づいて、総量が90~100質量%、好ましくは95~100質量%、より好ましくは99~100質量%の成分(a)、(b)、(c)、及び任意に(d)で構成されている、実施形態1~30のいずれか一項に記載の方法。
【0213】
実施形態33:基材(S1)と、少なくとも部分的にエンボス加工し、かつ、少なくとも部分的に硬化したコーティング(C1)とから構成される複合体(S1C1)であって、コーティング(C1)が、基材(S1)の表面の少なくとも一部に塗布したコーティング組成物(C1a)を、放射線硬化により、少なくとも部分的に硬化させ、かつ、少なくとも部分的にエンボス加工することにより得られるものであり、コーティング組成物(C1a)が放射線硬化性のコーティング組成物であって、
(a)少なくとも1種の架橋性ポリマー及び/又はオリゴマーを5~45質量%、
(b)少なくとも1種の反応性希釈剤を40~95質量%、
(c)少なくとも1種の光重合開始剤を0.01~15質量%、及び
(d)少なくとも1種の添加剤を0~5質量%
を含み、
ここで、(i)成分(a)、(b)、(c)、及び(d)について記載した合計量は、それぞれコーティング組成物(C1a)の総質量に基づくものであり、(ii)コーティング組成物(C1a)に存在する全ての成分の合計量は、100質量%になり、
ここで、少なくとも1種の架橋性ポリマー及び/又はオリゴマー(a)は、コーティング組成物(C1a)中に含まれる全ての架橋性ポリマー及び/又はオリゴマーの総質量に基づいて、総量が、少なくとも25質量%、好ましくは少なくとも50質量%、より好ましくは少なくとも90質量%、非常に好ましくは100質量%の、少なくとも1種のシリコーン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む、複合体(S1C1)。
【0214】
実施形態34:複合体(S1C1)が、実施形態18又は19に記載の方法工程(6)~(9)を実施することにより得られるものである、実施形態33に記載の複合体(S1C1)。
【0215】
実施形態35:基材(S1)がフィルムウェブ、好ましくは移動フィルムウェブ、より好ましくは連続移動フィルムウェブである、実施形態33又は34に記載の複合体(S1C1)。
【0216】
実施形態36:コーティング組成物(C2a)の表面の少なくとも一部、へ、又は基材(S2)上に少なくとも部分的に塗布するコーティング組成物(C2a)の表面の少なくとも一部へ、エンボス構造を転写するためのエンボス加工ツール(E2)のエンボス型(e2)としての、実施形態33~35のいずれか一項に記載の複合体(S1C1)の使用。
【0217】
実施形態37:放射線硬化性コーティング組成物(C1a)が、コーティング組成物(C1a)の総質量に基づいて、50~95質量%、又は50~85質量%、又は50~83質量%の少なくとも1種の反応性希釈剤を含む、実施形態1~5のいずれか一項に記載の方法。
【0218】
実施形態38:放射線硬化性コーティング組成物(C1a)が、コーティング組成物(C1a)の総質量に基づいて、50~95質量%、又は50~85質量%、又は50~83質量%の少なくとも1種の反応性希釈剤を含む、実施形態33~36のいずれか一項に記載の組成物。
【0219】
測定又は決定方法
1.型充填(モールドフィリング)の判定
型充填の判定は、市販の走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて行う。SEMにより、例えば、エンボス加工後の異なるマスターフィルム(S1C1)の、例えば10nm~1000μmの構造幅と1nm~1000μmの範囲の構造深さのフィーチャーを持つ一定の格子構造の表面形態を比較することが可能である。三角形に成形した構造の先端などのシャープな形状が完全に複製できれば、型への充填は完全であると考えられる。各マスターフィルム(S1C1)の表面形態の比較に続いて、型充填を比較することもできる。
2.フロー時間の決定
フロー時間は、DIN EN ISO2431(日付:2012年3月)に準拠して決定する。その方法は、室温(20℃)で4mm粘度カップ(4号)、5mm粘度カップ(5号)、6mm粘度カップ(6号)を使ってフロー時間を測定するものである。
【0220】
4mm粘度カップで測定して40又は50~100秒の範囲のフロー時間、5mm粘度カップで測定して30~100秒の範囲のフロー時間、6mm粘度カップで測定して30~200秒、好ましくは30~150秒、より好ましくは30~115秒の範囲のフロー時間が許容範囲と考えられる。したがって、6mm粘度カップでフロー時間が200秒を超えるコーティング組成物は有利でないと考えられる。これは、コーティング組成物が基材又は複合体の全幅にわたって均一な層厚で十分に速く広がらず、型充填及び複製の質が低下し、フロー時間が長くなると塗布したコーティング組成物内に空気が入り込むリスクが増加するためである。一方、4mm粘度カップを用いフロー時間が40又は50秒未満の場合は、不利であると考えられる。これは、例えばロールツーロール(R2R)エンボス装置で塗布したとき、コーティング組成物が基材からたやすく流れ落ち、それによって、層内に十分な凝集力がもたらされず、したがって、十分な型充填と転写品質をもってマイクロ構造及びナノ構造をエンボスするのに十分な層厚を実現できないからである。
【0221】
3.接着性の判定
3.1 クロスハッチ試験
接着性は、DIN EN ISO2409(日付:2013年6月)に準拠し、クロスハッチ試験により判定する。この試験では、二重判定で、基材に対する調査対象のコーティング層の接着力を調べる。カット間隔2mmのByk Gardner社製クロスハッチ試験機を手動で使用する。その後、テサ(Tesa)テープNo.4651を損傷部に押し付け、剥離することで剥離領域を除去する。評価は、0(剥離が最小)~5(剥離が非常に多い)までの特性値に基づいて行う。平均値が3.5以下であれば十分と判断する。
【0222】
3.2 聖アンデレ十字(St.Andrew’s cross)
接着力は、独自のクロスカット試験で判定する。この試験では、聖アンデレ十字(長さ:10cm、角度:45°)をメスでコーティング層に手作業で切り込みを入れることで行う。その後、テサ(Tesa)テープNo.4651を損傷部に押し付け、剥離することで剥離領域を除去する。切り込みを入れたり、テープを剥がしたりしても、コーティング層の剥離が確認できない場合、コーティング層の接着力は「OK」と評価する。切り込みを入れたり、テープを剥がしたりして、コーティング層の剥離が見られる場合、コーティング層の接着力は「OKではない」と評価する。
【0223】
4.複製の成功率の判定
複製の成否は目視で判定し、首尾よく複製した領域の百分率を確定する。ここでは、複製に成功した領域としては、0%~100%の間の範囲にある。領域の100%未満の部分が複製された場合、これは、対応する割合の領域がエンボス型から除去することができなかったこと、言い換えれば、S1C1の形態のコーティングC1がエンボスツール(E1)のエンボス型(e1)に一部が付着して残ったこと、又はコーティングC2が分離後に複合体(S1C1)に一部が付着して残っていたことを意味する。
【0224】
5.層厚分布の決定
層厚分布は、インプリントした構造を含む複合体S1C1の層厚を測定することによって決定する。言い換えれば、層スタックS1C1について測定した合計厚さは、基材S1、コーティングC1の残留層、及びコーティングC1中又はその上に形成された構造物のそれぞれの高さの合計である。厚みの測定は、DIN EN ISO2808(日付:2007年5月)、手順12Aに従いElektroPhysik MiniTest(登録商標)2100マイクロプロセッサ膜厚計とF1.6プローブを組み合わせて(測定不確かさ:±(1%+1μm))用いることにより行った.強磁性基材の不存在下で、複合体S1C1を平坦な強磁性板の上に置いて測定した。S1C1の15cm×15cmのパッチ上で、3×3のマトリックス状配置の、9つのあらかじめ定めた測定点で層厚を測定する。すべての測定点は互いに5cm間隔にあり、最初の測定点すなわち測定開始点は、S1C1の15cm×15cmのパッチの上部から2.5cm、左側から2.5cmの位置であった。したがって、2つ目の測定点は、S1C1の15cm×15cmのパッチの上部から2.5cm、左側から7.5cmの位置にあることになる。
【0225】
6.可撓性の判定
それぞれの複合体(S1C1)を180°折り曲げて、その可撓性を判定した。折り畳み時及び/又は折り畳み後に,コーティング(C1)内にクラック及び/又は損傷が目視により観察されない場合,評価は「OK」である。また、折り畳み時及び/又は折り畳み後に、コーティング(C1)にクラック及び/又は損傷が目視観察された場合、評価は「OKではない」となる。
【実施例
【0226】
本発明実施例及び比較例
以下に記載する本発明実施例及び比較例は、本発明を説明するためのものであり、いかなる制限をも課すものと解釈されるべきではない。
【0227】
特に断りのない限り、部で表される量は質量部であり、パーセントで表される量は各場合に質量パーセントである。
【0228】
1.使用原料及び材料
Hostaphan(登録商標)GN CT01B - 市販のPETフィルムであって、コーティングの接着性を高めるために両面化学処理されたもので、層厚は175μmである。韓国SKC社から提供された、インク及びコーティング剤、特にUV硬化性インクへの接着性を高めるために両面ウレタン被覆した、層厚125μmの市販のPETフィルムである。
【0229】
Laromer(登録商標)UA9033(L UA9033) -BASF SE製の脂肪族ウレタンアクリレート
Laromer(登録商標)UA9089(L UA9089) -BASF SE製の脂肪族ウレタンアクリレート
ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)
ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)
Sartomer(登録商標)CN9800 (CN9800) - サルトマー社製脂肪族シリコーンアクリレート
Sartomer(登録商標)499 (SR499) - サルトマー社製の6倍エトキシル化されたTMPTA(トリメチロールプロパントリアクリレート)
Sartomer(登録商標)SR344(アルケマ社製)-ポリエチレングリコール(400)ジアクリレート
Irgacure(登録商標)184 (I-184) - BASF SE製の市販光重合開始剤
Irgacure(登録商標)TPO-L(I-TPO-L)-BASF SE製の市販光重合開始剤
Tego(登録商標)Rad2500(TR 2500) - Evonik社製の潤滑剤及びブロッキング防止添加剤(シリコーンアクリレート)
【0230】
2.実施例
2.1 本発明に係るコーティング組成物(C1a)の製造(C1a-1)及び対応する比較コーティング組成物の製造(C1a-2)

下記表1に従って、複合体(S1C1)製造用のコーティング組成物(C1a)として適するコーティング組成物を製造した。室温(20℃)で測定したフロー時間は、C1a-5及びC1a-9の製造の場合、26~172秒の範囲であった。
【0231】
【表1】
【0232】
上記2(フロー時間の決定)に記載の方法で測定した、反応性希釈剤の総量が、コーティング組成物(C1a)の総質量に基づいて40~80質量%の本発明実施例C1a-2~C1a-8のフロー時間は、4mm粘度カップで測定した50秒から6mm粘度カップで測定した200秒までの許容範囲内にある。一方、比較例C1a-1(反応性希釈剤の総量35質量%)、比較例C1a-10(反応性希釈剤の総量25質量%)及び比較例C1a-11(反応性希釈剤の総量25質量%、KR2009/0068490A、実施例1に沿った組成)のフロー時間は、不利に高く、したがって許容範囲外である。
【0233】
2.2 本発明に係るコーティング組成物(C1a-5)を用いる複合体(S1C1)の製造及び比較コーティング組成物(C1a-9)を用いる複合体(S1C1)の製造
以下の表2に従った多数の異なる組成物(S1C1)の製造を、エンボス加工される構造の所望のイメージ像を有するニッケル製のエンボス型(e1)を有するロールツープレート(R2P)エンボス加工装置を用いて行う。エンボス型(e1)にある構造のイメージは、それによって、後続の工程でコーティング組成物(C2a)にエンボス加工する構造のイメージに対応する。
【0234】
これらの実施例では、様々なポジ型構造を有するニッケル製エンボス型(e1)を用いた。具体的には、下記のような構造:
・マイクロ構造M1(高さ61μm、周期繰り返し130μmの三次元三角形構造、あるいは
・マイクロ構造M2(高さ42μm、構造間のスペース55μmの二次元三角形構造
を持つエンボス型を用いた。
【0235】
この目的のため、エンボス加工ツール(E1)のエンボス型(e1)に、上述したコーティング組成物C1a-5及びC1a-9をそれぞれ1つずつ塗布し、その上に基材(S1)としてのPETフィルムを貼り付ける。次に、得られたフィルムとそれぞれのコーティング組成物からなるスタックを、押圧ロールの下を通らせ、エンボス装置がそれぞれのスタックのコーティング組成物に接触している間、コーティング組成物をUV-LEDランプを用いて少なくとも部分的に硬化させる。エンボス型(e1)と比較するとネガ構造を有する、フィルムと共に少なくとも部分的に硬化したコーティングを、その後、エンボス装置から分離して、複合体(S1C1)としての構造化フィルム(マスターフィルム)を得る。その後、マスターフィルムに対し、UVAランプにより後露光を行う。なお、表中の記号「-」は、そのような後硬化を実施しなかったことを示す。
【0236】
【表2】
【0237】
マイクロ構造M1を持つマスターフィルムA、Bを、型への充填性、接着性、及び複製の成否の判定に使用する(2.3.1の節参照)。その他、後述する2.4~2.5.2の節で説明する転写フィルムの製造及びその検討にも使用する。マイクロ構造M2を有するマスターフィルムC,D,E,Fは,後述の2.3.2節の層厚均一性の判定に使用する。これらのマスターフィルムを製造するために、コーティング組成物(C1a-5)及び(C1a-9)を用い、これに対応して、コーティング(C1)が、それぞれコーティング組成物(C1a-5)又は(C1a-9)から得られるコーティング(C1-5)又は(C1-9)であって、エンボス構造としてマイクロ構造M1又はM2を有する複合体(S1C1)を得る。
【0238】
別の一連の実験では、表2に示す「マスターフィルムC」の製造パラメータに従って複合体(S1C1)を製造した。ここで、コーティング組成物(C1a-5)を、表1に示すコーティング組成物(C1a-1)~(C1a-8)、(C1a-10)又は(C1a-11)のいずれかにそれぞれ置き換え、マスターフィルムG~Pを得た。
【0239】
コーティング組成物(C1a1)~(C1a-8)、(C1a-10)又は(C1a-11)から製造したマスターフィルムG~Pは、いずれも203~225μmの範囲内の許容可能な層厚を示した。マスターフィルムG~Oについて、その可撓性を製造後7日目に、上記項目6に記載した方法で測定したところ「OK」であった。比較例コーティング組成物(C1a-11)から作製したマスターフィルムPの可撓性のみが「OKではない」であった。さらに、オリンパス社製実体顕微鏡SZX12でマスターフィルムG~Pを観察したところ、比較のコーティング組成物(C1a-11)から作製したマスターフィルムPの場合、許容できない量の空気の巻き込みが確認された。
【0240】
2.3 マスターフィルム(S1C1)の検討
2.3.1 接着性及び型充填性の判定
マスターフィルムA及びBについて行った検討を以下の表3にまとめる。これらの検討は、それぞれ上記の方法に従って実施した。
【0241】
【表3】
【0242】
表3のデータから、本発明マスターフィルムA(クロスハッチ試験、聖アンデレ十字試験)は良好な接着性を示すが、これに比して、比較マスターフィルムBで達成できる接着性は不十分であることが分かる(クロスハッチ試験評価5、聖アンデレ十字試験マイナス)。基材(S1)上のマスターコーティング(C1)の接着性、これらの例ではPETフィルム上のコーティング組成物(C1-5)及び(C1-9)の接着性が不十分な場合、コーティング組成物(C1a)への、及び、その後、マスターフィルムをエンボス型(e2)として用いる際にはコーティング組成物(C2a)への、両方へのエンボス加工時に問題が生じることがある。
【0243】
マスターフィルムAの複製成功率は、マスターフィルムBの複製成功率と同様に良好な状態を維持した(表3、複製成功率)。したがって、本発明で採用するコーティング組成物でも、エンボス型(e1)に残滓が残ることはなかった。
【0244】
マスターフィルムA及びBの型充填性は、エンボス加工ツール(E1)のエンボス型(e1)により、基板(S1)に塗布したコーティング組成物(C1a)にエンボス加工した三角形フィーチャーのSEM画像を目視検査し比較することにより、上記のようにして判定した(図3)。マスターフィルムAとBのSEM画像を比較すると、エッジ及び三角形フィーチャーなどのシャープなディテールを含め、エンボス型からコーティング組成物(C1a)へ構造が完全かつ同等に転写されていることが分かる。したがって、本発明による(C1a)のコーティング組成物にシリコーン(メタ)アクリレートオリゴマーを多量に導入しても、型充填性の低下は見られなかった。これは、コーティング組成物(C1a-5)と(C1a-9)の表面張力の違いから予想されたことであった。したがって、コーティング組成物C1a-1及びC1a-2のいずれの場合にも、型内のネガ型フィーチャー部を完全かつ同等に充填することが観察された。
【0245】
以上のことから、マスターフィルムAのみが、検討調査したすべての特性(接着性、型への充填性、複製成功率)において良好な結果をもたらすと言える。
【0246】
2.3.2 層厚の均一性の判定
マスターフィルムC,D,E,Fに関し行った検討調査事項を以下の表4にまとめた。検討調査は、それぞれ上述の方法に従って実施した。この一連の実験では,印加圧力(3.3バール)と,コーティング組成物を塗布するコーターのスロットサイズ(3.28mm)を同一とした。
【0247】
【表4】
【0248】
表4のデータは、本発明で採用したマスターフィルムC及びEの場合は、比較用マスターフィルムD及びFと比較して、2つの処理速度について、層厚の最大差(層厚の最小値から最大値までのデルタΔ(S1C1))が強力に減少したことを示している。このことは、また、標準偏差がはるかに小さいことによっても示されている。さらに、塗布したコーティング組成物の層厚も、はるかに均一であるばかりでなく、平均層厚自体も、増加させることができた。
【0249】
マスターコーティング(C1a)の層厚が、基材(S1)の幅にわたって不均一であり過ぎると、コーティング組成物(C1a)、及び、その後のコーティング組成物(C2a)の両方に対してエンボスする際にも問題が発生する可能性がある。エンボス加工ツール(E1)のエンボス型(e1)からの構造物の像の複製品質は、特に大きな寸法では、一般に、コーティング組成物(C1a)の層厚の均質性と共に改善される。これは、エンボス加工ツール(E1)のエンボス型(e1)のポジ型フィーチャーをコーティング組成物(C1a)内へインプレス(圧印)するために加える圧力が均一に分散され、エンボス加工ツールの全幅にわたって同等なインプレッション(圧印)ができるためである。したがって、コーティング組成物(C1a)の均一な層厚は、フィルムの全幅にわたって、又はほぼ全幅にわたって均一な残留層を有するコーティング(C1)におけるエンボス型(e1)のフィーチャーのより一層高い複製品質をもたらすことになる。その結果、複合体(S1C1)をエンボス型(e2)などのようなエンボス型そのものとして使用する場合、コーティング(C1)の層厚が均一であれば、コーティング組成物(C2a)へのエンボス構造の転写を向上させることが可能となる。ここでも、複合体(S1C1)に加わる圧力が複合体(S1C1)全体により一層、均等に分散されるため、より質の高い複製が可能になり、コーティング組成物(C2a)におけるエンボス構造の転写をより再現性よく行うことができる。
【0250】
まとめると、マスターフィルムCとEは、マスターフィルムDとFに比べて、層厚の均一性が強く改善されたと言える。
【0251】
2.4 転写フィルム(S1C1C2)の製造
次に、構造M1をそれぞれ持つマスターフィルム(S1C1)をそれぞれロールツープレート(R2P)エンボス装置に使用し、それぞれのマスターフィルムの構造化表面に、コーティング組成物(C2a)を乾燥層厚40μmで塗布する。得られたマスターフィルムとコーティング組成物(C2a)の積層スタックに対して、コーティング組成物(C2a)を酸素及び機械的影響から保護するために、TACフィルムで一時的に裏打ちする。得られた積層体はマスターフィルム(S1C1)と、その上に塗布したコーティング組成物(C2a)とコーティング組成物(C2a)に貼り付けたTACフィルムとから構成されているが、今後は、これを、UV-LEDランプでコーティング組成物(C2a)を少なくとも部分的に硬化させると同時の工程で、押圧ロール(印加圧力6バール)下を通過させる。今回使用したランプは、Easytec社の365nm、6WのUV-LEDランプである(ランプパワー100%、2m/分、2パス)。このようにして、保護用TACフィルムを除去した後、マスターフィルムAから複合体(S1C1C2-1)を、マスターフィルムBから複合体(S1C1C2-2)を得る。
【0252】
使用したコーティング組成物(C2a)は、少なくとも1種のウレタンアクリレート、少なくとも1種の光重合開始剤、及び市販の添加剤を含む市販の放射線硬化型コーティング組成物である。
【0253】
2.5 複合体(S1C1C2)に関する検討
2.5.1 (i)複合体(S1C1)を生成してからコーティング組成物(C2a)を塗布するまでの時間の関数として、及びii)コーティング組成物(C2a)を複合体(S1C1)に塗布してから分離するまでの時間の関数としての分離挙動
エンボスに使用したマスターフィルム(S1C1)を考慮し、複製品質で表されるマスターフィルム(S1C1)の経時変化による構造化マスターフィルムと生成するコーティング(C2)の分離挙動について検討した結果を以下の表5にまとめた。コーティング(C2)を剥離することにより複合体(S1C1)から取り除く。なお、表中の「-」は、特定の検討項目につき実施していないことを示す。
【0254】
【表5】
【0255】
マスターフィルムBを使用した場合、マスターフィルム(S1C1)とコーティング(C2)の分離時の複製成功率は100%未満を大きく下回る。コーティング組成物(C1a-9)からマスターフィルム(S1C1)を作製し、硬化後に直接分離した5日後にコーティング組成物(C2a)を塗布した場合は0%にもなる。それゆえ、コーティング(C2)の大部分は、コーティング(C2)又はマスターフィルムBを破壊することなく、マスターフィルムBのコーティング(C1)から分離又は取り外しを行うことができなかった。表2以下に記載した比較用コーティング組成物(C1a-11)から調製したマスターフィルム「P」は、硬化後も粘着性(tacky)が残っていたため、保存時にこれらのマスターフィルム同士がくっつき、硬化直後及び硬化1日後のコーティング(C2)からの分離挙動が0%と不良であった。これに対し、調査したマスターフィルムAを用いた場合、マスターフィルム作製からコーティング組成物(C2a)塗布までの経過時間又はマスターフィルム(S1C1)に塗布したコーティング組成物(C2a)のエンボスし硬化した後の経過時間に依存せず、分離時の複製成功率が100%又はほぼ100%(97%)に達成した。つまり、マスターフィルムAを使用することで、マスターフィルムフィルム自体の経時変化(エージング)とは無関係に、複製(分離挙動の指標として)の成功率が非常に高く、マスターフィルムフィルム(S1C1)とコーティング(C2)とで構成される積層スタック(S1C1C2)の保存や搬送も可能になる。したがって、マスターフィルムAは、マスターフィルムBと比較して、コーティング組成物(C2a)をマスターフィルムに直接塗布すること、数日後に塗布すること、あるいはコーティング組成物(C2a)を塗布してマスターフィルム(S1C1)と共に保存してからコーティング(C2)とマスターフィルム(S1C1)を分離することが可能であり、さらには、複合体(S1C1)のインプリントした構造の保護、複合体(S1C1)からの残留物のないきれいな離型が可能となり、それによってエンボス型としての複合体(S1C1)の再利用性を改善すること、また、自立し得るフィルムとしてエンボス加工したコーティング(C2)を得ることが可能となる。また、コーティング組成物(C1a-1)~(C1a-8)及び(C1a-10)から調製した9日経過したマスターフィルムG~Oについても同様に説明することができ、コーティング(C2)の硬化直後及び硬化1日後の分離挙動が100%であることを示した。
【0256】
2.5.2 型充填
エンボス型として使用可能なマスターフィルムA、Bへのコーティング組成物(C2a)の型充填性は、上記の通り、エンボスすることによりコーティング組成物(C2a)に転写された三角形状フィーチャーのSEM画像を目視及び比較することにより判定した。このエンボスでは、マスターホイルA又はBを作製してから11日後に同一のコーティング組成物(C2a)をそれぞれ塗布し、硬化直後に剥離を行った(図4)。マスターフィルムA及びBから分離した後のエンボス加工し、硬化したコーティング(C2)のSEM画像を比較すると、ここでもマスターフィルムA及びBからコーティング組成物(C2a)に、エッジや三角形フィーチャーなどのシャープな細部を含む構造が完全かつ同等に転写されていることが分かる。図4において、本発明によるマスターフィルムAから分離した後に得られたコーティング(C2)をコーティングC2-1と表記する。これに対応して、マスターフィルムBから分離した後に得られたコーティング(C2)をコーティングC2-2と表記する。したがって、本発明による(C1a)のコーティング組成物にシリコーン(メタ)アクリレートオリゴマーを大量に導入しても、型充填性が喪失したり、型充填が低下したりすることはなかった。このことは、コーティング組成物(C1-5)及び(C1-9)の表面エネルギーが、コーティング組成物(C2a)の表面張力と異なることから予想されたことであった。したがって、コーティング組成物(C1a-5)及び(C1a-9)を含むマスターフィルムA及びBのポジ型フィーチャーの完全かつ同等な転写が観察された。
【符号の説明】
【0257】
1 エンボス領域
2 プレスロール
3 照明ユニット
4 プレスロール
5 型枠
6、7 フィルムウェブローラ
8 マスターフィルムウェブ
9 フィルムウェブ
10 転写装置
11 フィルムウェブローラー
17 マスタープレスシリンダ
19 フィルムウェブローラー
27 コーティング適用ユニット
30 マスター転写装置
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】