(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-01
(54)【発明の名称】電子基板用フィルムおよび積層体、並びにこれらを含む電子基板
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20221124BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20221124BHJP
B32B 15/09 20060101ALI20221124BHJP
B32B 15/20 20060101ALI20221124BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
C08J5/18 CFD
B32B27/36
B32B15/09 Z
B32B15/20
H05K1/03 670
H05K1/03 610M
H05K1/03 630H
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022519420
(86)(22)【出願日】2020-09-24
(85)【翻訳文提出日】2022-03-25
(86)【国際出願番号】 KR2020012987
(87)【国際公開番号】W WO2021066390
(87)【国際公開日】2021-04-08
(31)【優先権主張番号】10-2019-0122080
(32)【優先日】2019-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508148079
【氏名又は名称】エスケイシー・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SKC CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】ホ、ヨンミン
(72)【発明者】
【氏名】ノ、イルホ
(72)【発明者】
【氏名】キム、サンムック
(72)【発明者】
【氏名】イム、ビョンジェ
【テーマコード(参考)】
4F071
4F100
【Fターム(参考)】
4F071AA45X
4F071AA84X
4F071AA88X
4F071AF10
4F071AF17Y
4F071AF40Y
4F071AF61Y
4F071AG28
4F071AH13
4F071BB06
4F071BB08
4F071BC01
4F100AB17B
4F100AK42A
4F100BA01
4F100BA02
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100EJ38
4F100GB43
4F100JA03A
4F100JA04
4F100JA05
4F100JA06A
4F100JA11A
4F100JG01B
4F100JG05A
4F100JK17A
4F100YY00A
(57)【要約】
一実現例による電子基板用フィルムは、10GHz~40GHzの周波数範囲において2.9以下の低い誘電定数を有するので、従来の電子基板用フィルムに比べて第5世代(5G)移動通信のような高周波用途において信号伝送率を向上させ得る。また、前記電子基板用フィルムは、柔軟性および物理化学的な諸般の特性の面においても、従来のフィルムと比較して同等以上の特性を有するので、FCCLのような導電フィルムとの積層体およびFPCBのような電子基板の製造に適用され、工程性、耐久性、伝送容量などを向上させ得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,4-シクロヘキサンジメタノールを含むジオールおよび芳香族ジカルボン酸が重合されたポリエステル樹脂を含み、
10GHz~40GHzの周波数にて2.9以下の誘電定数を有する、電子基板用フィルム。
【請求項2】
前記電子基板用フィルムが100KHzの周波数および常温~130℃の温度にて2.9以下の誘電定数を有し、
前記電子基板用フィルムが3GHz~10GHzの周波数にて2.9以下の誘電定数を有する、請求項1に記載の電子基板用フィルム。
【請求項3】
前記電子基板用フィルムが100KHzの周波数および常温~100℃の温度範囲において0.1以下の誘電定数偏差を有し、
前記電子基板用フィルムが100KHzの周波数および100℃~130℃の温度範囲において2%~9%の誘電定数増加率を有し、
前記電子基板用フィルムが、100KHzの周波数および130℃~200℃の温度範囲において0.2以上の誘電定数偏差を有する、請求項2に記載の電子基板用フィルム。
【請求項4】
前記芳香族ジカルボン酸が、前記芳香族ジカルボン酸の総モル数を基準に、イソフタル酸を3モル%~25モル%で含み、
前記ポリエステル樹脂は、121℃および100%RH条件で96時間処理後に初期に対して70%~90%の固有粘度(IV)を有する、請求項1に記載の電子基板用フィルム。
【請求項5】
前記電子基板用フィルムが、破断が発生するまでの135°角度の繰り返しフォルディング回数が100回以上であり、
前記電子基板用フィルムが35%~55%の結晶化度を有する、請求項1に記載の電子基板用フィルム。
【請求項6】
前記電子基板用フィルムが、面内の互いに垂直な第1方向および第2方向を定義する際、150℃および30分の条件において前記第1方向の熱収縮率(s1)は1%以下であり、前記第2方向の熱収縮率(s2)は3%以下であり、前記第1方向の熱収縮率に対する前記第2方向の熱収縮率の比(s2/s1)が1~5である、請求項1に記載の電子基板用フィルム。
【請求項7】
基材層と、前記基材層の少なくとも一面上に配置された導電層とを含み、
前記基材層が、1,4-シクロヘキサンジメタノールを含むジオールおよび芳香族ジカルボン酸が重合されたポリエステル樹脂を含み、10GHz~40GHzの周波数にて2.9以下の誘電定数を有する、電子基板用積層体。
【請求項8】
前記電子基板用積層体が、フレキシブル銅張積層体(FCCL)を含む、請求項7に記載の電子基板用積層体。
【請求項9】
基材層と、前記基材層の少なくとも一面上に配置された導電パターン層とを含み、
前記基材層が、1,4-シクロヘキサンジメタノールを含むジオールおよび芳香族ジカルボン酸が重合されたポリエステル樹脂を含み、10GHz~40GHzの周波数にて2.9以下の誘電定数を有する、電子基板。
【請求項10】
前記電子基板が、フレキシブルプリント回路基板(FPCB)を含む、請求項9に記載の電子基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実現例は、フレキシブルプリント回路基板(FPCB)のような電子基板に使用されるフィルムおよび積層体、並びにこれらを含む電子基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器において必須部品である回路基板などの電子基板は、絶縁性基材フィルムに導電パターンが形成されたものであり、特に、フレキシブルプリント回路基板(FPCB)は、薄型化、軽量化および柔軟化が求められる最近の電子機器の傾向に符合している。
【0003】
フレキシブルプリント回路基板は、一般に、基材フィルムの一面または両面に銅箔を積層してフレキシブル銅張積層体(FCCL)を製造し、その銅箔をエッチングして導電パターンを形成することにより製造される。
【0004】
従来の電子基板は、基材フィルムとしてポリイミド(PI)フィルムが主に用いられており、最近ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムおよび液晶高分子(LCP)フィルムも活発に利用されている(特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、このような従来の電子基板に用いられる基材フィルムは、高温多湿条の件下で水分を吸収してフィルムの絶縁性が低下したり、耐熱性が不足し温度による誘電率などの電気的特性が不適だったり、やや高価であるため使用が難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、実現例の課題は、従来の電子基板に用いられていた基材フィルムの問題点を解決し、誘電特性のような電気的特性とともに物理化学的な特性にも優れる電子基板用フィルム、該フィルムと金属との積層体を提供することである。
【0008】
また、実現例の課題は、前記電子基板用フィルムまたは積層体を用いて、伝送容量等の性能が改善した電子基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実現例によると、1,4-シクロヘキサンジメタノールを含むジオールおよび芳香族ジカルボン酸が重合されたポリエステル樹脂を含み、10GHz~40GHzの周波数にて2.9以下の誘電定数を有する、電子基板用フィルムが提供される。
【0010】
他の実現例によると、基材層と、前記基材層の少なくとも一面上に配置された導電層とを含み、前記基材層が1,4-シクロヘキサンジメタノールを含むジオールおよび芳香族ジカルボン酸が重合されたポリエステル樹脂を含み、10GHz~40GHzの周波数にて2.9以下の誘電定数を有する、電子基板用積層体が提供される。
【0011】
また他の実現例によると、基材層と、前記基材層の少なくとも一面上に配置された導電パターン層を含み、前記基材層が1,4-シクロヘキサンジメタノールを含むジオールおよび芳香族ジカルボン酸が重合されたポリエステル樹脂を含み、10GHz~40GHzの周波数にて2.9以下の誘電定数を有する、電子基板が提供される。
【発明の効果】
【0012】
前記実現例による電子基板用フィルムは、10GHz~40GHzの周波数範囲において2.9以下の低い誘電定数を有するので、従来の電子基板用フィルムに比べて第5世代(5G)移動通信のような高周波用途において信号伝送率を向上させ得る。
【0013】
また、前記電子基板用フィルムは、柔軟性および物理化学的な諸般の特性の面においても従来のフィルムに比べて同等以上の特性を有するので、FCCLのような導電層との積層体およびFPCBのような電子基板の製造に適用され、工程性、耐久性、伝送容量などを向上させ得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、常温において周波数による実施例1のフィルムの誘電定数を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の実現例の説明において、1つ構成要素が他の構成要素の上または下に形成されるものと記載されることは、1つの構成要素が他の構成要素の上または下に直接、またはさらに他の構成要素を介して間接的で形成されるものをすべて含む。
【0016】
本明細書において、ある構成要素を「含む」とは、特に反する記載がない限り、それ以外の他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0017】
また、本明細書に記載された構成要素の物性値、寸法などを示す全ての数値範囲は、特に記載がない限り、全ての場合において「約」という用語で修飾されるものと理解すべきである。
【0018】
(電子基板用フィルム)
一実現例による電子基板用フィルムは、1,4-シクロヘキサンジメタノールを含むジオールおよび芳香族ジカルボン酸が重合されたポリエステル樹脂を含み、10GHz~40GHzの周波数にて2.9以下の誘電定数を有する。
【0019】
[誘電定数]
誘電定数(dielectric constant)は、相対誘電率(relative permittivity)とも呼ばれ、場合によっては単に誘電率と言及さることもある。厳密には、誘電率(permittivity)は、電荷の間で電場が作用する際に、その電荷間の媒質が電場に及ぼす影響を示す絶対値(F/m)のことを意味し、誘電定数は、ある物質の誘電率(ε)と真空の誘電率(ε0)との比(εr=ε/ε0)のことを意味し、このとき、真空の誘電率は約8.85×10-12F/mである。
【0020】
本明細書に記載する誘電定数の数値は、特に明記のない限り、常温(room temperature)、例えば20℃~25℃、または約20℃の温度における誘電定数のことを意味する。
【0021】
前記実現例による電子基板用フィルムは、10GHz~40GHzの周波数にて2.9以下の誘電定数を有する。前記範囲内であるとき、既存の電子基板用フィルムに比べて高周波範囲において信号伝送率を向上させ得る。
【0022】
具体的に、前記電子基板用フィルムの10GHz~40GHzの周波数における誘電定数は、2.8以下、2.7以下、2.6以下、2.5以下、2.0~2.9、2.0~2.8、2.0~2.7、2.0~2.6、2.3~2.9、または2.5~2.8であり得る。
【0023】
他の実現例によると、前記電子基板用フィルムは、3GHz~10GHzの周波数にて2.9以下の誘電定数を有する。また他の実現例によると、前記電子基板用フィルムは、3GHz~40GHzの周波数にて2.9以下の誘電定数を有する。
【0024】
一方、従来FPCBまたはFCCLに主に使用されていた基材フィルムであるPIフィルムの誘電定数は高周波領域で概ね3.0を超え、その他使用されるPETフィルムまたはPENフィルムの誘電定数は、PIフィルムよりやや低いレベルである。したがって、前記実現例による電子基板用フィルムは、第5世代(5G)移動通信に適用される主要周波数帯域において、従来よりも信号伝送率を向上させ得る。
【0025】
また、前記実現例による電子基板用フィルムは、100kHzの周波数および常温~130℃の温度にて2.9以下の誘電定数を有し得る。前記範囲内であるとき、既存の電子基板用フィルムに比べて様々な外部環境条件において信号伝送率を向上させ得る。
【0026】
具体的に、前記電子基板用フィルムの100kHzの周波数および常温~130℃の温度における誘電定数は、2.9以下、2.8以下、2.7以下、2.6以下、2.5以下、2.0~2.8、2.0~2.7、2.0~2.6、2.0~2.5、2.3~2.8、または2.5~2.8であり得る。
【0027】
また、前記電子基板用フィルムは、100kHzの周波数および130℃~200℃の温度にて3.2以下の誘電定数を有し得る。
【0028】
また、前記電子基板用フィルムは、100kHzの周波数および常温~200℃の温度にて2.9以下の誘電定数を有し得る。
【0029】
また、前記電子基板用フィルムは、100kHzの周波数および常温~100℃の温度範囲において、0.5以下、0.3以下、0.2以下、0.1以下、または0.05以下の誘電定数偏差を有し得る。具体的に、前記電子基板用フィルムは、100kHzの周波数および常温~100℃の温度範囲において0.1以下の誘電定数偏差を有し得る。前記誘電定数偏差とは、当該温度範囲内で誘電定数の最大値と最小値との差を意味する。
【0030】
また、前記電子基板用フィルムは、100kHzの周波数および100℃~130℃の温度範囲において1%~15%、2%~9%、または3%~8%の誘電定数増加率を有し得る。具体的に、前記電子基板用フィルムは、100kHzの周波数および100℃~130℃の温度範囲において2%~9%の誘電定数増加率を有し得る。前記誘電定数増加率とは、当該温度範囲内で昇温の際に初期誘電定数に対する最終誘電定数の増加分の百分率を意味する。
【0031】
また、前記電子基板用フィルムは、100kHzの周波数および130℃~200℃の温度範囲において、0.1以上、0.2以上、0.3以上、0.4以上、0.5以上、0.1~1、0.3~1、または0.4~0.7の誘電定数偏差を有し得る。前記誘電定数偏差とは、当該温度範囲内で誘電定数の最大値と最小値との差を意味する。
【0032】
一方、従来FPCBまたはFCCLに使用されていた基材フィルムであるPIフィルム、PETフィルムおよびPENフィルムは、100kHzの周波数および常温~200℃の温度における誘電定数が、概ね3.0を超える。したがって、前記実現例による電子基板用フィルムは、常温だけでなく高温条件においても従来よりも信号伝送率を向上させ得る。
【0033】
一実施例による電子基板用フィルムの10GHzの周波数における誘電定数は、3.1以下、3.0以下、2.9以下、2.0~3.1、2.0~3.0、2.0~2.95、2.3~2.95、または2.5~2.9であり得る。
【0034】
一実施例による電子基板用フィルムの28GHzの周波数における誘電定数は、3.1以下、3.0以下、2.9以下、2.0~3.1、2.0~3.0、2.0~2.95、2.3~2.95、または2.5~2.9であり得る。
【0035】
一実施例による電子基板用フィルムの50GHzの周波数における誘電定数は、3.1以下、3.0以下、2.9以下、2.0~3.1、2.0~3.0、2.0~2.95、2.3~2.95、または2.5~2.9であり得る。
【0036】
一実施例による電子基板用フィルムの80GHzの周波数における誘電定数は、3.1以下、3.0以下、2.9以下、2.0~3.1、2.0~3.0、2.0~2.95、2.3~2.95、または2.5~2.9であり得る。
【0037】
[フィルム特性]
前記電子基板用フィルムの厚さは、1μm~500μm、5μm~250μm、10μm~150μm、10μm~100μm、10μm~80μm、または40μm~60μmであり得る。一例として、前記電子基板用フィルムは、10μm~150μmの厚さを有し得る。
【0038】
前記電子基板用フィルムは、延伸されたフィルムであることが、結晶性が高いため機械的物性に優れる点で好ましい。具体的に、前記電子基板用フィルムは、2軸に延伸されたポリエステルフィルムであってよく、例えば、長手方向(MD)および幅方向(TD)に対してそれぞれ2.0~5.0の延伸比で延伸されたフィルムであり得る。
【0039】
前記電子基板用フィルムのガラス転移温度(Tg)は、80℃~110℃、80℃~95℃、85℃~105℃、または90℃~105℃であり得る。
【0040】
また、前記電子基板用フィルムの溶融温度(Tm)は、255℃~290℃、255℃~285℃、250℃~280℃、または255℃~280℃であり得る。
【0041】
前記電子基板用フィルムに含まれるポリエステル樹脂は、121℃および100%RH条件で96時間処理後に、初期に対する固有粘度(IV)が50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、70%~90%、または75%~85%であり得る。
【0042】
具体的に、前記ポリエステル樹脂は、121℃および100%RH条件で96時間処理後に、初期に対して70%~90%の固有粘度(IV)を有し得る。前記範囲内であるとき、高温多湿の条件において加水分解によるフィルムの特性低下を防止するのに有利である。
【0043】
また、前記ポリエステル樹脂の固有粘度(IV)は、0.6dl/g~0.9dl/g、0.65dl/g~0.85dl/g、または0.7dl/g~0.8dl/gであり得る。また、前記ポリエステル樹脂の121℃および100%RH条件で96時間後の固有粘度(IV)は、0.5dl/g~0.8dl/g、0.6dl/g~0.7dl/g、0.5dl/g~0.6dl/g、または0.55dl/g~0.65dl/gであり得る。
【0044】
前記電子基板用フィルムは、破断が発生するまでの135°角度の繰り返しフォルディング回数が100回以上、1000回以上、1万回以上、5万回以上、10万回以上、15万回以上、または20万回以上であり得る。前記範囲内であるとき、頻繁なフォルディングにも破断が発生しないため、フレキシブル電子素子への適用に有利である。
【0045】
また、前記電子基板用フィルムは、透湿度が10g/m2・day~100g/m2・day、10g/m2・day~50g/m2・day、または10g/m2・day~30g/m2・dayであり得る。
【0046】
また、前記電子基板用フィルムは、380nmの波長において透過率が10%以下、5%以下、または3%以下であり得る。一例として、前記電子基板用フィルムは、10g/m2・day~50g/m2・dayの透湿度、および380nmの波長において5%以下の透過率を有し得る。
【0047】
前記電子基板用フィルムは、35%~55%の結晶化度を有し得る。前記範囲内であるとき、引張強度などの機械的物性に優れながらも過度の結晶化が防止され得る。例えば、前記電子基板用フィルムの結晶化度は、35%~50%、40%~55%、35%~50%、45%~55%、または40%~50%であり得る。
【0048】
前記電子基板用フィルムは、面内の互いに垂直な第1方向および第2方向を定義する際、150℃および30分の条件で前記第1方向の熱収縮率(s1)に対する前記第2方向の熱収縮率(s2)の比(s2/s1)が1~5であり得る。具体的に、前記熱収縮率の比(s2/s1)は、1~4、1~3、または1.5~4であり得る。
【0049】
また、前記第1方向の熱収縮率(s1)は、1%以下、0.8%以下、0.6%以下、または0.4%以下であり得る。例えば、前記s1は、0~1.0%、0~0.8%、0~0.6%、または0~0.4%であり得る。また、前記第2方向の熱収縮率(s2)は、3%以下、2%以下、1.5%以下、1.2%以下、または1%以下であり得る。例えば、前記s2は、0.2%~3%、0.2%~2%、または0.2%~1.5%であり得る。一例として、前記第1方向がフィルムの幅方向(TD)であり、前記第2方向がフィルムの長手方向(MD)であり得る。前記電子基板用フィルムは、前述の熱収縮特性を有するので、導電フィルムとの積層の際に、高温条件において収縮による浮き現象が発生しないため、層間剥離等による性能低下を防止し得る。
【0050】
[フィルム組成]
前記電子基板用フィルムは、ジオールおよびジカルボン酸が重合されたポリエステル樹脂を含む。このようなポリエステル樹脂は、前記ジオールおよび前記ジカルボン酸のエステル交換反応後、重合して得られ得る。
【0051】
前記ジオールは、1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHDM)を含み、例えば、前記ジオールの総モル数を基準に、CHDMを50モル%以上、70モル%以上、80モル%以上、85モル%以上、90モル%以上、95モル%以上、または98モル%以上含み得る。前記ジオールに含まれるCHDMは、ポリエステル樹脂のモジュラスを下げることができ、また、ガラス転移温度(Tg)を向上させ、耐熱性および耐加水分解性を高めることができる。一例として、前記ジオールは、1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHDM)を100モル%で含み得る。
【0052】
前記ジオールは、CHDM以外のジオールをさらに含み得る。すなわち、前記ポリエステル樹脂は、共重合ポリエステル樹脂であり得る。
【0053】
前記追加のジオールの具体的な例としては、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-オクタンジオール、1,3-オクタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,1-ジメチル-1,5-ペンタンジオール、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0054】
前記ジカルボン酸は、1種または2種以上の芳香族ジカルボン酸を含む。
例えば、前記芳香族ジカルボン酸は、テレフタル酸、テレフタル酸ジメチルまたはこれらの組み合わせを含み得る。
【0055】
具体的に、前記芳香族ジカルボン酸は、前記芳香族ジカルボン酸の総モル数を基準に、テレフタル酸を75モル%~97モル%、具体的には80モル%~95モル%、82モル%~95モル%、または85モル%~95モル%で含み得る。または、前記芳香族ジカルボン酸は、前記芳香族ジカルボン酸の総モル数を基準に、テレフタル酸を80モル%以上、または90モル%以上、具体的には80モル%以上100モル%未満、90モル%以上100モル%未満、93モル%以上100モル%未満、または95モル%以上100モル%未満で含み得る。
【0056】
これにより、前記ポリエステル樹脂は、繰り返し単位として1,4-シクロヘキサンジメチレンテレフタレートを含み得る。具体的に、前記ポリエステル樹脂は、ポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)(PCT)樹脂を含み得る。
【0057】
前記PCT樹脂は、テレフタル酸(TPA)またはテレフタル酸ジメチル(DMT)と1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHDM)とのエステルもしくはエステル交換および重縮合反応により調製される結晶性ポリエステル樹脂であり、優れた融点(Tm)と結晶化特性とを有し得る。また、PCT樹脂は、汎用ポリエステルであるポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)に比べて優れた耐熱性、耐薬品性、耐吸湿性、および流れ性を有し得る。前記電子基板用フィルムはPCT樹脂を含むことにより、加熱、延伸等を経る製造過程において結晶化度が上昇し、引張強度などの機械的物性が向上され得る。
【0058】
一方、前記PCT樹脂は、結晶性が高くなりすぎると、フィルム製造のために押出したり、フィルムを延伸したりする際、望まない結晶化が発生し得る。これにより、前記ポリエステル樹脂は、結晶化速度を下げるために、前記芳香族ジカルボン酸としてイソフタル酸をさらに含み得る。
【0059】
例えば、前記芳香族ジカルボン酸は、前記芳香族ジカルボン酸の総モル数を基準に、イソフタル酸を3モル%~25モル%で含み得る。具体的に、前記芳香族ジカルボン酸は、前記芳香族ジカルボン酸の総モル数を基準に、イソフタル酸を5モル%~20モル%、5モル%~18モル%、または5モル%~15モル%で含み得る。または、前記芳香族ジカルボン酸は、前記芳香族ジカルボン酸の総モル数を基準に、イソフタル酸を10モル%以下、具体的に0モル%超過7モル%以下、または0モル%超過5モル%以下の量で含み得る。前記範囲内であるとき、CHDMが含まれることにより、高くなり過ぎる結晶化速度を下げながら、重合体の溶融温度(Tm)を下げて重合体の取扱性を高めるのにより有利である。
【0060】
これにより、前記ポリエステル樹脂は、繰り返し単位として1,4-シクロヘキサンジメチレンテレフタレートと1,4-シクロヘキサンジメチレンイソフタレートとをともに含み得る。具体的に、前記ポリエステル樹脂は、ポリ-1,4-シクロへキシレンジメチレンテレフタレート・イソフタレート共重合体(PCTA)樹脂を含み得る。その外にも、前記ジカルボン酸は、テレフタル酸ジメチル、ナフタレンジカルボン酸、オルトフタル酸などの芳香族ジカルボン酸;アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸;脂環式ジカルボン酸;およびこれらのエステル化物からなる群より選択される1種以上をさらに含み得る。
【0061】
前記電子基板用フィルムは、前記電子基板用フィルムの重量を基準に、ポリエステル樹脂、具体的にはPCTおよびPCTA樹脂のうち少なくとも1種を合計85重量%以上含むことができ、より具体的には90重量%以上、95重量%以上、または99重量%以上含み得る。
【0062】
他の例として、前記電子基板用フィルムは、PCTまたはPCTA樹脂以外に、他のポリエステル樹脂をさらに含み得る。具体的に、前記電子基板用フィルムは、前記電子基板用フィルムの重量を基準に、約15重量%以下のポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂またはポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂をさらに含み得る。より具体的に、前記電子基板用フィルムは、前記電子基板用フィルムの重量を基準に、約0.1重量%~10重量%、または約0.1重量%~5重量%のPETまたはPEN樹脂をさらに含み得る。
【0063】
前記ポリエステル樹脂は、30000g/mol~50000g/mol、または30000g/mol~40000g/molの重量平均分子量(Mw)を有し得る。
【0064】
[電子基板用フィルムの製造方法]
前記電子基板用フィルムの製造方法は、(1)1,4-シクロヘキサンジメタノールを含むジオールおよびジカルボン酸が重合されたポリエステル樹脂を含む組成物を押出してシートを形成する段階と、(2)前記シートを長手方向および幅方向に延伸する段階と、(3)前記延伸済みシートを熱固定する段階とを含み得る。
【0065】
前記製造方法において、電子基板用フィルムは、原料樹脂を押出して予熱、延伸および熱固定を経て製造される。この際、前記電子基板用フィルムの原料として用いられるポリエステル樹脂の組成は、前記例示の通りである。また、前記方法により最終的に製造されるフィルムが、前記実現例による電子基板用フィルムの特性(誘電定数の範囲)を満足するよう組成および工程条件を調節する。具体的に、最終フィルムが前記特性を満足するためには、ポリエステル樹脂の押出およびキャスティング温度を調節し、延伸時の予熱温度、各方向別の延伸比、延伸温度、移動速度等を調節するか、延伸後に熱処理および弛緩を行いながら、熱処理温度および弛緩率を調節し得る。
【0066】
以下、例示的な工程条件を記載するが、これらに限定されない。
【0067】
前記ポリエステル樹脂は、押出前に乾燥されてもよく、この際の乾燥温度は色変を防止するために150℃以下であることが好ましい。前記押出は、230℃~300℃、または250℃~290℃の温度条件で行われ得る。
【0068】
前記電子基板用フィルムは、延伸する前に一定の温度にて予熱される。前記予熱温度の範囲は、前記ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)を基準に、Tg+5℃~Tg+50℃を満足する範囲、例えば70℃~90℃の範囲であり得る。前記範囲内であるとき、前記電子基板用フィルムが延伸するのに容易な柔軟性を確保するとともに、延伸中に破断する現象を効果的に防止し得る。
【0069】
前記延伸は二軸延伸で行われ、例えば、同時二軸延伸法または逐次二軸延伸法により、長手方向(機械方向、MD)および幅方向(テンター方向、TD)の2軸に延伸され得る。好ましくは、まず一方向に延伸した後、その方向の直角方向に延伸する逐次二軸延伸法が行われ得る。
【0070】
前記長手方向の延伸比は2.0~5.0の範囲であり、より具体的に2.8~3.5の範囲であり得る。また、前記幅方向の延伸比は2.0~5.0の範囲であり、より具体的に2.9~3.7の範囲であり得る。好ましくは、長手方向延伸比と幅方向延伸比とは類似であり、具体的に、前記幅方向延伸比(d1)に対する長手方向延伸比(d2)の比(d2/d1)が、0.5~1.0、0.7~1.0、または0.9~1.0であり得る。前記延伸比(d1、d2)は、延伸前の長さを1.0としたとき、延伸後の長さを示す比である。また、前記延伸の速度は、6.5m/min~8.5m/minであり得るが、特に限定されない。
【0071】
前記延伸済みシートは、150℃~250℃、より具体的に200℃~250℃にて熱固定され得る。前記熱固定は5秒~1分間行われ、より具体的に10秒~45分間行われ得る。
【0072】
熱固定を開始した後、フィルムは長手方向および/または幅方向に弛緩されることがあり、この際の温度範囲は150℃~250℃であり、弛緩率は1%~10%、または3%~7%であり得る。
【0073】
前記実現例による電子基板用フィルムは、高周波帯域において誘電特性に優れ、柔軟性および物理化学的な諸般の特性の面においても従来のフィルムに比べて同等以上の特性を有するので、FCCLのような導電フィルムとの積層体およびFPCBのような電子基板の製造に適用され、工程性、耐久性、伝送容量などを向上させ得る。
【0074】
(電子基板用積層体)
一実現例による電子基板用積層体は、基材層と、前記基材層の少なくとも一面上に配置された導電層とを含み、前記基材層が1,4-シクロヘキサンジメタノールを含むジオールおよび芳香族ジカルボン酸が重合されたポリエステル樹脂を含み、10GHz~40GHzの周波数にて2.9以下の誘電定数を有する。
【0075】
前記電子基板用積層体は、銅張積層体(CCL)、具体的にフレキシブル銅張積層体(FCCL)を含み得る。
【0076】
[基材層]
前記基材層は、前述の一実現例による電子基板用フィルムと同一の特性および組成を有し得る。
【0077】
[導電層]
前記導電層は導電性物質を含み得る。例えば、前記導電層は導電性金属を含み得る。具体的に、前記導電層は金属ホイルであり得る。例えば、前記導電層は、銅、ニッケル、金、銀、亜鉛、および錫からなる群より選択される1種以上の金属を含み得る。より具体的に、前記導電層は銅ホイル(銅箔)であり得る。
【0078】
前記導電層の厚さは6μm~200μmであり、具体的に10μm~150μm、10μm~100μm、または20μm~50μmであり得る。
【0079】
[接着層]
前記電子基板用積層体は、構成要素間の接合力を高めるために接着層をさらに含み得る。例えば、前記基材層と前記導電層との間に接着層が挿入され得る。
【0080】
前記接着層は、熱硬化性樹脂、例えばエポキシ系樹脂を含み得る。前記エポキシ系樹脂は、例えばビスフェノール型エポキシ樹脂、スピロ環構造エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テルペン型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0081】
前記エポキシ系樹脂は、約80g/eq~1000g/eq、または約100g/eq~300g/eqのエポキシ当量を有し得る。また、前記エポキシ系樹脂は、約10000g/mol~50000g/molの範囲の数平均分子量を有し得る。
【0082】
前記接着層の厚さは1μm~50μmであり得る。より詳細に、前記接着層の厚さは、10μm~50μm、または20μm~40μmであり得る。
【0083】
[ビア]
前記電子基板用積層体は、前記基材層を厚さ方向に貫通しながら前記導電層を電気的に連結するビアをさらに含み得る。
【0084】
具体的に、前記電子基板用積層体は、前記基材層を厚さ方向に貫通するホールを含み、前記ホールの内部にビアが形成され、前記基材層の両面に積層されている導電層を電気的に連結し得る。
【0085】
前記ホールは、例えば、100μm~300μmの範囲、または120μm~170μmの範囲の直径を有し得る。
前記ホールは、必要に応じて前記積層体に多数存在し得る。
【0086】
前記ビアは、導電性物質を含み得る。例えば、前記ビアは、銅、ニッケル、金、銀、亜鉛、および錫からなる群より選択される1種以上の金属を含み得る。
【0087】
前記ビアは、前記ホールの内部が導電性物質で充填されたり、はんだまたは導電棒などが挿入されたり、またはメッキ処理により形成されたものであり得る。
【0088】
(電子基板)
一実現例による電子基板は、基材層と、前記基材層の少なくとも一面上に配置された導電パターン層とを含み、前記基材層が1,4-シクロヘキサンジメタノールを含むジオールおよび芳香族ジカルボン酸が重合されたポリエステル樹脂を含み、10GHz~40GHzの周波数にて2.9以下の誘電定数を有する。
【0089】
前記電子基板は、プリント回路基板(PCB)、具体的に、フレキシブルプリント回路基板(FPCB)を含み得る。
【0090】
[基材層]
前記基材層は、前述の一実現例による電子基板用フィルムと同一の特性および組成を有し得る。
【0091】
[導電パターン層]
前記導電パターン層は、1つ以上の導電パターンを含む。
【0092】
前記導電パターンは導電性物質を含み得る。例えば、前記導電パターンは導電性金属を含み得る。具体的に、前記導電パターンは、銅、ニッケル、金、銀、亜鉛および錫からなる群より選択される1種以上の金属を含み得る。より具体的に、前記導電パターンは銅パターンを含み得る。
【0093】
前記導電パターンの形態は特に限定されず、例えばラインパターンまたは平面螺旋パターンを含み得る。
【0094】
また、前記導電パターン層は回路パターンを含み得る。より具体的に、前記導電パターン層はプリント回路パターンを含み得る。
【0095】
また、前記導電パターン層は端子パターンを含み得る。前記端子パターンは外部の回路と電気的に連結され得る。
【0096】
[接着層]
また、前記電子基板は、構成要素間の接合力を高めるために接着層をさらに含み得る。例えば、前記基材層と前記導電パターン層との間に接着層が挿入され得る。
【0097】
前記接着層の組成および特性は、前述の電子基板用積層体における接着層と同一であり得る。
【0098】
[ビア]
また、前記電子基板は、前記基材層を厚さ方向に貫通しながら前記導電パターンを電気的に連結するビアをさらに含み得る。
【0099】
前記ビアの組成および特性は、前述の電子基板用積層体におけるビアと同一であり得る。
【0100】
(実施例)
以下、実施例によりさらに具体的に説明するが、これらの範囲に限定されるものではない。
【0101】
(製造例:樹脂A)
ジオールとして1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHDM)100モル%、ジカルボン酸としてイソフタル酸(IPA)5モル%およびテレフタル酸(TPA)95モル%を撹拌機に投入し、反応触媒としてTiを0.001重量%投入した後、275℃にてエステル交換反応を行った。エステル交換反応が完了した前記反応物を真空設備が備えられている別の反応器に移送した後、285℃にて160分間重合して樹脂Aを得た。
【0102】
(製造例:樹脂B~Eの調製)
前記樹脂Aの製造例の手順を繰り返すが、ジオールおよびジカルボン酸モノマーの種類および量を下記表1のように変更して、各々の樹脂B~Eを調製した。
【0103】
【0104】
(実施例1~3、比較例1および2:ポリエステルフィルムの製造)
前記調製した樹脂を150℃以下の温度にて乾燥し、押出機により約280℃にて押出し、キャスティングロールにより約20℃にてキャスティングしてシートを形成した。前記シートを予熱した後、110℃の温度にて長手方向(MD)および幅方向(TD)に延伸した。その後、延伸済みシートを約30秒間熱固定し、弛緩して、各々のポリエステルフィルムを製造した。フィルム製造に用いられた樹脂と工程条件を下記表2にまとめた。
【0105】
【0106】
(比較例3)
SKCコーロンPI社で販売する厚さ50μmポリイミド(PI)フィルムを使用した。
【0107】
[誘電定数]
まず、実施例1のフィルムの誘電定数を誘電試験キット(Dielectric Assessment Kit、DAK-TL、SPEAG社)により得て、下記表3および
図1に示す。
図1は、常温にて周波数による実施例1のフィルムの誘電定数を示すものである。
【0108】
また、実施例1および比較例1~3のフィルムの100KHzにて温度による誘電定数を、Triton Technology LTD社のDETA(DS6010)装置により得て、下記表4に示す。
【0109】
また、実施例2および3並びに比較例1~3のフィルムの、10GHz、28GHz、50GHz、および80GHzにおける誘電定数をKeysight社の共振方式の測定装置により得て、下記表5に示す。
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
前記表3~表5、および
図1から分かるように、実施例1~3のフィルムは、比較例1~3のフィルムに比べて5G移動通信等の信号伝達に優れる高周波領域において誘電定数が低いので、回路基板用フィルムとして使用するに好適である。また、前記表4から分かるように、実施例1のフィルムは、比較例1~3のフィルムに比べて様々な温度条件において誘電定数が低いので、高温における性能低下を防止し得る。
【0114】
[ガラス転移温度(Tg)]
フィルムサンプルのガラス転移温度(Tg)を示差走査熱量計(DSC、Q2000、TA Instrument社)を用いて測定し、下記表6に示す。
【0115】
[熱収縮率]
フィルムサンプルを20mm×150mmに裁断し、オーブンで150℃にて30分間熱処理して、熱処理前後の長手方向(MD)および幅方向(TD)のそれぞれについて熱収縮率(%)を測定し、下記表6に示す。
【0116】
[固有粘度(IV)]
フィルムサンプルについて固有粘度(IV)を測定した。また、高温高圧反応器(pressure cooker)にて121℃および100%RH条件で96時間処理して固有粘度(IV)を測定した。その結果を下記表6に示す。
【0117】
【0118】
前記表6から分かるように、実施例において製造されたフィルムは、比較例のフィルムに比べて高温多湿の条件においても粘度の変化が極めて少なく、その他の物性にも優れている。
【国際調査報告】