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特表2022-550381ポリヌクレオチド含有サンプルの増幅を強化するためのマイクロ流体カートリッジ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-01
(54)【発明の名称】ポリヌクレオチド含有サンプルの増幅を強化するためのマイクロ流体カートリッジ
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20221124BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20221124BHJP
   G01N 1/44 20060101ALI20221124BHJP
   G01N 1/28 20060101ALI20221124BHJP
   C12Q 1/6844 20180101ALI20221124BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20221124BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20221124BHJP
   B81B 7/00 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
C12M1/00 A
G01N37/00 101
G01N1/44
G01N1/28 J
C12Q1/6844 Z
C12M1/34 B
B81B3/00
B81B7/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022519557
(86)(22)【出願日】2020-09-30
(85)【翻訳文提出日】2022-03-28
(86)【国際出願番号】 US2020053399
(87)【国際公開番号】W WO2021067353
(87)【国際公開日】2021-04-08
(31)【優先権主張番号】62/909,628
(32)【優先日】2019-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417-1880, UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100168871
【弁理士】
【氏名又は名称】岩上 健
(72)【発明者】
【氏名】ラオ ロヒニ
(72)【発明者】
【氏名】ケラー ジョシュア
(72)【発明者】
【氏名】チョン ソン
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィッドチク トーマス
(72)【発明者】
【氏名】レンツ カレン エル
(72)【発明者】
【氏名】クレイヤー ジョエル ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】キャレッセ エドワード
【テーマコード(参考)】
2G052
3C081
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
2G052AA28
2G052AB20
2G052AD06
2G052AD26
2G052AD46
2G052DA09
2G052DA22
2G052DA26
2G052EB12
2G052GA11
2G052GA29
2G052HA17
2G052JA07
2G052JA11
2G052JA16
3C081AA01
3C081BA11
3C081BA21
3C081BA23
3C081BA24
3C081BA25
3C081BA26
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3C081BA42
3C081CA13
3C081CA23
3C081CA32
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3C081EA28
4B029AA07
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4B063QQ52
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4B063QS39
(57)【要約】
本技術は、一般にマイクロ流体カートリッジに関する。本技術は、より詳細には、マイクロ流体カートリッジに適用される圧縮性パッドに関し、マイクロ流体カートリッジは、カートリッジ内のマイクロ流体チャネル内で、特に複数の生体サンプルから目的のヌクレオチドを並行して増幅し、これらのヌクレオチドの検出を可能にするように構成される。本技術の圧縮性パッドは、反応チャンバ容積が向上したマイクロ流体カートリッジにて実装することができ、その結果、カートリッジ内の熱均一性と増幅効率が改善される。本技術のマイクロ流体カートリッジを用いたアッセイは、検出下限(LOD)及び定量下限(LOQ)を有利に改善することができる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の側部と対向する第2の側部とを含むマイクロ流体カートリッジであって、
第1の増幅チャンバと、
第2の増幅チャンバと、
前記第1の側部に配置され、前記第1の増幅チャンバと流体連通している第1の入口と、
前記第1の側部に配置され、前記第2の増幅チャンバと流体連通している第2の入口と、
第1の側部に配置された圧縮性パッドと、
を備え、
前記圧縮性パッドは、前記マイクロ流体カートリッジの前記第2の側部と接触する複数の接触熱源から前記第1の増幅チャンバ及び前記第2の増幅チャンバへのより完全で一貫した熱伝達を提供するように構成され、前記圧縮性パッドは、前記第1の増幅チャンバの上方の第1の窓と、前記第2の増幅チャンバの上方の第2の窓とを含み、前記第1の窓及び前記第2の窓は、それぞれ前記第1の増幅チャンバ及び前記第2の増幅チャンバとの間で前記マイクロ流体カートリッジの前記第1の側部を通して光が透過できるように構成されている、
マイクロ流体カートリッジ。
【請求項2】
前記第1の増幅チャンバ及び前記第2の増幅チャンバは、約25μLの容積を有する、請求項1に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項3】
前記第1の増幅チャンバ及び前記第2の増幅チャンバは、約3.5mmの幅寸法、約0.83mmの深さ寸法、及び約10mmの長さ寸法を有する、請求項1に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項4】
前記マイクロ流体カートリッジは、前記圧縮性パッドの上方にラベルを備える、請求項1に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項5】
前記第1の増幅反応チャンバ、前記第2の増幅反応チャンバ、前記第1の入口、及び前記第2の入口が剛性基体層内に形成され、前記マイクロ流体カートリッジの前記第2の側部は、前記第1の増幅チャンバ及び前記第2の増幅チャンバの下方に柔軟な積層体層を含む、請求項1に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項6】
前記圧縮性パッドは、30psi未満の圧縮力撓みを有する材料を含む、請求項1に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項7】
前記圧縮性パッドは、20psi未満の圧縮力撓みを有する材料を含む、請求項1に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項8】
前記圧縮性パッドは、診断検査装置の構成要素からの圧力分布を改善する、請求項1に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項9】
前記圧縮性パッドへの圧力印加は、前記複数の接触熱源から前記第1の増幅チャンバ及び前記第2の増幅チャンバへの熱の印加の均一性を高めるように構成されている、請求項1に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項10】
前記圧縮性パッドは、前記第1の増幅チャンバ及び前記第2の増幅チャンバへの熱の印加の均一性を高める、請求項1に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項11】
前記圧縮性パッドは、急激な温度サイクルに依存するPCR増幅を強化する、請求項1に記載のマイクロ流体カートリッジ。
【請求項12】
複数のポリヌクレオチド含有サンプル上で増幅する方法であって、
複数のサンプルをマイクロ流体カートリッジに導入するステップであって、前記カートリッジは、前記複数のサンプルの熱サイクルを互いに独立して可能にするように構成された複数の増幅チャンバを含む、ステップと、
前記複数のサンプルを前記それぞれの複数の増幅チャンバに移動させるステップと、
前記増幅チャンバに連続的な加熱及び冷却サイクルを適用することによって前記複数のサンプルに含まれるポリヌクレオチドを増幅するステップと、
増幅中に前記マイクロ流体カートリッジのパッドを圧縮するステップと、
を含む、方法。
【請求項13】
前記圧縮性パッドに圧力を加えて、前記マイクロ流体カートリッジと1又は2以上のヒーターを含む基体との間の接触を増加させるステップを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記圧縮性パッドに圧力を加えて熱均一性を高めるステップを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記圧縮性パッドに圧力を加えて、前記複数のポリヌクレオチド含有サンプルの増幅を強化するステップを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
マイクロ流体カートリッジを備えたシステムであって、
前記マイクロ流体カートリッジは、
第1のPCR反応チャンバと、
第2のPCR反応チャンバと、
前記第1のPCR反応チャンバと流体連通している第1の入口と、
前記第2のPCR反応チャンバと流体連通している第2の入口と、
圧縮性パッドと、
を備え、
前記マイクロ流体カートリッジは、装置と共に使用するように構成され、
前記装置は、
前記マイクロ流体カートリッジを受け入れるように構成されたベイと、
前記カートリッジに熱的に結合され、前記マイクロ流体カートリッジ内の1又は2以上のポリヌクレオチド含有サンプルにPCRを行う熱サイクルを適用するように構成された少なくとも1つの熱源と、
前記1又は2以上のサンプル中の1又は2以上のポリヌクレオチドの存在を検出するように構成された検出器と、
前記熱源に結合され、前記マイクロ流体カートリッジの1又は2以上の領域の加熱を制御するように構成されたプロセッサと、
を含む、
システム。
【請求項17】
前記圧縮性パッドは、前記ベイと前記マイクロ流体カートリッジとの間の接触を改善するように構成されている、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記圧縮性パッドは、前記少なくとも1つの熱源と前記マイクロ流体カートリッジとの間の接触を改善するように構成されている、請求項16に記載のシステム。
【請求項19】
前記圧縮性パッドは、検出中に前記マイクロ流体カートリッジの上方に配置される検出器によって圧縮されるように構成されている、請求項16に記載のシステム。
【請求項20】
前記検出器は、前記圧縮性パッドを圧縮するために下方に移動して前記マイクロ流体カートリッジと物理的に接触するように構成されている、請求項16に記載のシステム。
【請求項21】
前記カートリッジは、前記圧縮性パッドを圧縮するために上方に移動して、前記検出器と物理的に接触するように構成されている、請求項16に記載のシステム。
【請求項22】
前記圧縮性パッドは、前記マイクロ流体カートリッジに圧力を加える前記装置の別の構成要素によって圧縮されるように構成されている、請求項16に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2019年10月2日に出願された米国仮出願第62/909628号の利益を主張し、その全体が引用により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
本明細書に記載される技術は、一般に、マイクロ流体カートリッジに関する。一態様において、本技術は、より詳細には、マイクロ流体カートリッジに適用される圧縮性パッドに関し、マイクロ流体カートリッジは、目的のヌクレオチドを受け取り増幅するように構成される。別の態様では、本技術は、処理されたサンプルからより大量の流体溶出物を受け取って増幅するように構成された反応チャンバを有するマイクロ流体カートリッジに関する。本明細書に記載されたカートリッジの実施形態は、カートリッジ内のマイクロ流体チャネル内で複数の生体サンプルから目的のヌクレオチドを並行して増幅し、これらのヌクレオチドの検出を可能にすることができる。
【背景技術】
【0003】
分子診断検査におけるアッセイの感度は、幾つかの要因に左右される。これらの要因には、幾つか要因のなかでも特に、増幅準備サンプルを得るための検体処理中の抽出効率、サンプルの増幅効率、増幅プロセス中に反応容積内で達成される熱均一性が挙げられる。反応容積の寸法を大きくすることは、増幅効率の向上に寄与し、検出下限(LOD)の改善及び定量下限(LOQ)の向上をもたらす。反応容積と熱源間の熱伝達の均一性及び分布を改善することにより、熱均一性を向上させることができる。
【0004】
現在のマイクロ流体カートリッジの1つの実施構成は、約4μLの反応容積を有する反応チャンバを有する。このような小さな反応容積を有する反応チャンバを含むカートリッジに関連して重要な利点がある。しかしながら、反応チャンバの容積が小さくなるにつれて、所望の分析感度の達成に関連する課題が発生する可能性がある。同時に、増幅効率の向上を達成し標的送達の制限を克服するために反応チャンバの容積が増加すると、熱均一性の達成に関連する課題が発生する可能性がある。従って、これらの課題を克服し、改善された増幅効率と熱均一性の両方を達成して、改善された検出下限(LOD)及び改善された定量下限(LOQ)を有するアッセイをもたらすマイクロ流体カートリッジに対する必要性がある。
【0005】
本明細書における本技術の背景に関する議論は、本技術の関連状況を説明するために含まれている。これは、言及される内容の何れかが、請求項の何れかの優先日において、公開されていた、周知であった、又は共通一般知識の一部であったことを自認するものとして解釈されるものではない。
【0006】
本明細書の説明及び請求の範囲を通じて、「comprise」並びに「comprising」及び「comprises」などのその派生語は、他の付加物、構成要素、整数又はステップを除外することを意図していない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本技術は、マイクロ流体デバイス全体の圧力分布を改善し、マイクロ流体デバイス内の熱均一性を高め、マイクロ流体デバイスにて実行される増幅パラメータを強化する方法及び装置を含む。本発明の技術の実施構成は、マイクロ流体チャネル内で目的のヌクレオチドを増幅するマイクロ流体デバイスの特徴を改善する。本技術は、これらのヌクレオチドの検出を改善するための方法及び装置を含む。
【0008】
本技術のマイクロ流体デバイスは、増幅が起こるマイクロ流体デバイス内の複数のチャンバに熱を加える加熱組立体と相互作用することができる。加熱組立体は、マイクロ流体デバイスに接触するように構成されたヒーターのアレイを含むことができる。一部の事例では、加熱組立体は、マイクロ流体デバイスに押し付けられ、ヒーターのアレイをマイクロ流体デバイスと熱的に連通して配置する。他の事例では、マイクロ流体デバイスは、加熱組立体に押し付けられ、ヒーターのアレイをマイクロ流体デバイスと熱的に連通して配置する。本技術によるマイクロ流体デバイスの実施形態は、マイクロ流体デバイスに加えられる圧力の分布を改善し、マイクロ流体デバイスに供給される熱の均一性を高める圧縮性パッドを含むことができる。本技術による圧縮性パッドは、マイクロ流体デバイスに加えられる圧力の均一性を高め、その結果、熱損失を低減し、マイクロ流体デバイスの複数のチャンバで生じる増幅の一貫性及び効率を向上させることができる。
【0009】
本技術のマイクロ流体デバイスはまた、増幅チャンバ容積を約4μLから約25μLに増加させながら、依然として増幅プロセス中にチャンバ全体で最適な熱均一性を達成することによって、アッセイ感度の改善を達成することが可能である。本技術の増幅チャンバが増大することで、検体から抽出されたDNA/RNA標的分析物を含む、より多くの容積の溶出液を受けることができ、これによりアッセイ感度を向上させることができる。本技術のマイクロ流体デバイスは、現行のマイクロ流体デバイスと比較して、場合によっては6倍の反応チャンバ容積を達成する。本技術のこのような大きな容積の反応チャンバと、本技術の圧縮性パッドに関連する圧力分布及び熱均一性の向上が組み合わされると、検出下限(LOD)及び定量下限(LOQ)の向上により測定されるアッセイ性能が向上する。
【0010】
改善されたマイクロ流体デバイスの実施構成は、マイクロ流体カートリッジを含む。マイクロ流体カートリッジは、第1のPCR反応チャンバを含むことができる。マイクロ流体カートリッジは、第2のPCR反応チャンバを含むことができる。マイクロ流体カートリッジは、第1のPCR反応チャンバと流体連通している第1の入口を含むことができる。マイクロ流体カートリッジは、第2のPCR反応チャンバと流体連通している第2の入口を含むことができる。マイクロ流体カートリッジは、マイクロ流体カートリッジとヒーターとの間のコンプライアンスを増大させるように構成された圧縮性パッドを含むことができる。
【0011】
幾つかの実施形態では、第1の側部と対向する第2の側部とを含むマイクロ流体カートリッジが提供される。マイクロ流体カートリッジは、第1の増幅チャンバを含むことができる。マイクロ流体カートリッジは、第2の増幅チャンバを含むことができる。マイクロ流体カートリッジは、第1の側部に配置され、第1の増幅チャンバと流体連通している第1の入口を含むことができる。マイクロ流体カートリッジは、第1の側部に配置され、第2の増幅チャンバと流体連通している第2の入口を含むことができる。マイクロ流体カートリッジは、第1の側部に配置された圧縮性パッドを含むことができる。幾つかの実施形態では、圧縮性パッドは、マイクロ流体カートリッジの第2の側部と接触した複数の接触熱源から第1の増幅チャンバ及び第2の増幅チャンバへのより徹底的且つ一貫した熱伝達を提供するように構成される。幾つかの実施形態では、圧縮性パッドは、第1の増幅チャンバの上にある第1の窓と、第2の増幅チャンバの上にある第2の窓とを含む。幾つかの実施形態では、第1の窓及び第2の窓は、光がマイクロ流体カートリッジの第1の側部を通って第1の増幅チャンバ及び第2の増幅チャンバにそれぞれ透過できるように構成される。
【0012】
幾つかの実施形態において、第1の増幅チャンバ及び第2の増幅チャンバは、約25μLの容積を有する。幾つかの実施形態では、第1の増幅チャンバ及び第2の増幅チャンバは、約3.5mmの幅寸法、約0.83mmの深さ寸法、及び約10mmの長さ寸法を有する。幾つかの実施形態では、マイクロ流体カートリッジは、圧縮性パッドの上方にラベルを含む。幾つかの実施形態では、第1の増幅反応チャンバ、第2の増幅反応チャンバ、第1の入口、及び第2の入口は、剛性基体層に形成される。幾つかの実施形態では、マイクロ流体カートリッジの第2の側部は、第1の増幅チャンバ及び第2の増幅チャンバの下方に柔軟な積層体層を含む。幾つかの実施形態では、圧縮性パッドは、30psi未満の圧縮力撓みを有する材料を含む。一部の実施形態では、圧縮性パッドは、20psi未満の圧縮力撓みを有する材料を含む。一部の実施形態では、圧縮性パッドは、診断検査装置の構成部品からの圧力分布を改善する。幾つかの実施形態では、圧縮性パッドへの圧力の印加は、複数の接触熱源から第1の増幅チャンバ及び第2の増幅チャンバへの熱の印加の均一性を高めるように構成される。幾つかの実施形態では、圧縮性パッドは、第1の増幅チャンバ及び第2の増幅チャンバへの熱の印加の均一性を増大させる。幾つかの実施形態では、圧縮性パッドは、急激な温度サイクルに依存するPCR増幅を強化する。
【0013】
幾つかの実施形態では、複数のポリヌクレオチド含有サンプル上で増幅するための方法が提供される。本方法は、複数のサンプルをマイクロ流体カートリッジに導入することを含むことができ、カートリッジは、複数のサンプルの熱サイクリングを互いに独立して可能にするように構成された複数の増幅チャンバを含む。本方法は、複数のサンプルをそれぞれの複数の増幅チャンバに移動させることを含むことができる。本方法は、増幅チャンバに連続的な加熱及び冷却サイクルを適用することによって、複数のサンプルとともに含まれるポリヌクレオチドを増幅することを含むことができる。本方法は、増幅中にマイクロ流体カートリッジのパッドを圧縮することを含むことができる。幾つかの実施形態において、本方法は、圧縮性パッドに圧力を加えて、マイクロ流体カートリッジと1又は2以上のヒーターを含む基体との間の接触を高めることを含むことができる。幾つかの実施形態において、本方法は、圧縮性パッドに圧力を加えて熱均一性を高めることを含むことができる。幾つかの実施形態において、本方法は、圧縮性パッドに圧力を加えて、複数のポリヌクレオチド含有サンプルの増幅を強化することを含むことができる。
【0014】
幾つかの実施形態では、システムが提供される。本システムは、マイクロ流体基体を含むことができる。マイクロ流体基体は、第1のPCR反応チャンバを含むことができる。マイクロ流体基体は、第2のPCR反応チャンバを含むことができる。マイクロ流体基体は、第1のPCR反応チャンバと流体連通している、第1の入口を含むことができる。マイクロ流体基体は、第2のPCR反応チャンバと流体連通している第2の入口を含むことができる。マイクロ流体基体は、圧縮性パッドを含むことができる。幾つかの実施形態では、マイクロ流体カートリッジは、装置と共に使用するように構成される。本装置は、マイクロ流体カートリッジを受け入れるように構成されたベイを含むことができる。本装置は、カートリッジに熱的に結合され、カートリッジ内の1又は2以上のポリヌクレオチド含有サンプルにPCRを実施する熱サイクルを適用するように構成された少なくとも1つの熱源を含むことができる。本装置は、1又は2以上のサンプル中の1又は2以上のポリヌクレオチドの存在を検出するように構成された検出器を含むことができる。本装置は、熱源に結合され、マイクロ流体カートリッジの1又は2以上の領域の加熱を制御するように構成されたプロセッサを含むことができる。
【0015】
幾つかの実施形態では、圧縮性パッドは、ベイとマイクロ流体カートリッジとの間の接触を向上するように構成される。幾つかの実施形態では、圧縮性パッドは、少なくとも1つの熱源とカートリッジとの間の接触を向上するように構成される。幾つかの実施形態では、圧縮性パッドは、検出中にカートリッジの上に配置される検出器によって圧縮されるように構成されている。幾つかの実施形態では、検出器は、圧縮性パッドを圧縮するために、下方に移動してカートリッジと物理的に接触するように構成される。幾つかの実施形態では、カートリッジは、圧縮性パッドを圧縮するために、上方に移動して検出器と物理的に接触するように構成されている。幾つかの実施形態では、圧縮性パッドは、カートリッジに圧力を加える装置の別の構成要素によって圧縮されるように構成されている。
【0016】
本技術の1又は2以上の実施形態の詳細は、添付図面及び本明細書の更なる説明に記載されている。本技術の他の特徴、目的、及び利点は、本明細書及び図面、並びに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A】マルチレーンマイクロ流体カートリッジの一例を示す平面図である。
図1B】反応チャンバを示す図1Aのカートリッジの一部の拡大図である。
図2A】強化された特徴を有する反応チャンバを備えたマルチレーンカートリッジの別の例の平面図である。
図2B】反応チャンバを示す図2Aのカートリッジの一部の拡大図である。
図2C図2Aのカートリッジの反応チャンバの一例を示す図である。
図2D】様々な容積の反応チャンバを備えたマルチレーンマイクロ流体カートリッジの更に別の例を示す図である。
図3A】圧縮性パッドを含むカートリッジの更なる実施例の切り欠き部層構成図を示す。
図3B図3Aのカートリッジの分解斜視図である。
図4図3Aのカートリッジの圧縮性パッドを示す図である。
図5A】受け入れベイのヒーターモジュールの一例を示す図である。
図5B】2つの受け入れベイを有するシステムの一例を示す図である。
図5C】2つの受け入れベイを有するシステムの一例を示す図である。
図5D】2つの受け入れベイを有するシステムの一例を示す図である。
図6】光学検出器を示す図である。
図7A】圧縮性パッドがない場合の目的の分析物のアッセイ試験の結果を示す図である。
図7B】圧縮性パッドがない場合の目的の分析物のアッセイ試験の結果を示す図である。
図7C】圧縮性パッドがない場合の目的の分析物のアッセイ試験の結果を示す図である。
図8A】低デュロメータシリコーン圧縮性パッドを用いた、目的の分析物のアッセイ試験の結果を示す図である。
図8B】低デュロメータシリコーン圧縮性パッドを用いた、目的の分析物のアッセイ試験の結果を示す図である。
図8C】低デュロメータシリコーン圧縮性パッドを用いた、目的の分析物のアッセイ試験の結果を示す図である。
図8D】低デュロメータシリコーン圧縮性パッドを用いた、目的の分析物のアッセイ試験の結果を示す図である。
図9A】PORON(登録商標)フォーム圧縮性パッドを用いた分析対象物のアッセイ検査の結果を示す。
図9B】PORON(登録商標)フォーム圧縮性パッドを用いた分析対象物のアッセイ検査の結果を示す。
図9C】PORON(登録商標)フォーム圧縮性パッドを用いた分析対象物のアッセイ検査の結果を示す。
図9D】PORON(登録商標)フォーム圧縮性パッドを用いた分析対象物のアッセイ検査の結果を示す。
図10】強化された特徴を有する反応チャンバを備えたマルチレーンカートリッジの更に別の実施例の図である。
図11】強化された特徴を有する反応チャンバを備えたマルチレーンカートリッジの更に別の実施例の図である。
図12】強化された特徴を有する反応チャンバを備えたマルチレーンカートリッジの更に別の実施例の図である。
図13】強化された特徴を有する反応チャンバを備えたマルチレーンカートリッジの更に別の実施例の図である。
図14】強化された特徴を有する反応チャンバを備えたマルチレーンカートリッジの更に別の実施例の図である。
図15】強化された特徴を有する反応チャンバを備えたマルチレーンカートリッジの更に別の実施例の図である。
図16】強化された特徴を有する反応チャンバを備えたマルチレーンカートリッジの更に別の実施例の図である。
図17】強化された特徴を有する反応チャンバを備えたマルチレーンカートリッジの更に別の実施例の図である。
図18】強化された特徴を有する反応チャンバを備えたマルチレーンカートリッジの更に別の実施例の図である。
図19】強化された特徴を有する反応チャンバを備えたマルチレーンカートリッジの更に別の実施例の図である。
図20】強化された特徴を有する反応チャンバを備えたマルチレーンカートリッジの更に別の実施例の図である。
図21】強化された特徴を有する反応チャンバを備えたマルチレーンカートリッジの更に別の実施例の図である。
図22】強化された特徴を有する反応チャンバを備えたマルチレーンカートリッジの更に別の実施例の図である。
図23】強化された特徴を有する反応チャンバを備えたマルチレーンカートリッジの更に別の実施例の図である。
図24】強化された特徴を有する反応チャンバを備えたマルチレーンカートリッジの更に別の実施例の図である。
図25】強化された特徴を有する反応チャンバを備えたマルチレーンカートリッジの更に別の実施例の図である。
図26】強化された特徴を有する反応チャンバを備えたマルチレーンカートリッジの更に別の実施例の図である。
図27】強化された特徴を有する反応チャンバを備えたマルチレーンカートリッジの更に別の実施例の図である。
図28】強化された特徴を有する反応チャンバを備えたマルチレーンカートリッジの更に別の実施例の図である。
図29】強化された特徴を有する反応チャンバを備えたマルチレーンカートリッジの更に別の実施例の図である。
図30】強化された特徴を有する反応チャンバを備えたマルチレーンカートリッジの更に別の実施例の図である。
図31】強化された特徴を有する反応チャンバを備えたマルチレーンカートリッジの更に別の実施例の図である。
図32】強化された特徴を有する反応チャンバを備えたマルチレーンカートリッジの更に別の実施例の図である。
図33】強化された特徴を有する反応チャンバを備えたマルチレーンカートリッジの更に別の実施例の図である。
図34】強化された特徴を有する反応チャンバを備えたマルチレーンカートリッジの更に別の実施例の図である。
図35】強化された特徴を有する反応チャンバを備えたマルチレーンカートリッジの更に別の実施例の図である。
図36】強化された特徴を有する反応チャンバを備えたマルチレーンカートリッジの更に別の実施例の図である。
図37】強化された特徴を有する反応チャンバを備えたマルチレーンカートリッジの更に別の実施例の図である。
図38A】マイクロ流体カートリッジに熱を加えるように構成された加熱装置のヒーターアレイ及びヒーター素子微細構造の一例の態様を示す図である。
図38B】マイクロ流体カートリッジに熱を加えるように構成された加熱装置のヒーターアレイ及びヒーター素子微細構造の一例の態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本技術は、1又は2以上のサンプルから1又は2以上のポリヌクレオチドのPCRなどによる増幅を実施するように構成されたマイクロ流体デバイスに関する。特にそうでないと明確に示されていない限り、PCRという用語が本明細書で使用される場合、リアルタイム及び定量化を含むがこれに限定されないPCRの何れかの変形形態、及びポリヌクレオチド増幅の他の何れかの形態が包含されることを意図している。
【0019】
マイクロ流体カートリッジは、カートリッジが熱的に連通している外部装置において存在する1又は2以上の加熱要素から熱エネルギーを受け入れるように構成することができる。例示的なそのような装置は、本明細書で更に説明され、このような装置の追加の実施形態は、2007年11月14日出願の「Microfluidic System for Amplifying and Detecting Polynucleotides in Parallel」と題する米国特許出願第11/985,577号に記載されており、この明細書は引用により本明細書に組み込まれる。本技術は、サンプル中、特に生体サンプルからポリヌクレオチドを検出するための装置を提供する。本技術は、より詳細には、マイクロ流体チャネル内で目的のヌクレオチドに対してPCRを行い、これらのヌクレオチドを検出するマイクロ流体システムに関する。本装置は、複数のサンプルを受け入れるように構成されたマイクロ流体カートリッジを含み、各サンプルに対して個別に、又は複数のサンプルのグループに対して、或いは複数のサンプルの全てに対して同時にPCRを実施することができる。2007年11月14日に出願された「Heater Unit for Microfluidic Diagnostic System」と題する米国特許出願第11/940,315号は、引用により本明細書に組み込まれる。2007年11月14日に出願された「Microfluidic Cartridge and Method of Using Same」と題する米国特許出願第11/940,310号は、引用により本明細書に組み込まれる。本技術は、複数のポリヌクレオチド含有サンプルに対してPCRを並行して実施するように構成されたマイクロ流体基体を提供する。この基体は、マイクロ流体カートリッジ内の単層基体とすることができる。また、このような基体を含むマイクロ流体カートリッジを製造する方法も提供される。2007年3月26日に出願された「Integrated System for Processing Microfluidic Samples and Methods of Using Same」と題する米国特許出願第11/728,964号は、引用により本明細書に組み込まれる。本技術は、ポリヌクレオチド含有サンプルを処理するため及びこれに対する診断結果を提供するための統合装置を提供する。
【0020】
カートリッジとは、使い捨て、或いは全体又は一部が再利用可能とすることができ、カートリッジを受け取ってカートリッジ上で動作する(エネルギーを供給するなど)ように好適で相補的に構成された幾つかの他の装置と併用して使用するように構成されたユニットを意味する。
【0021】
本明細書で使用される場合のマイクロ流体とは、サンプル及び/又は試薬、及び/又は増幅ポリヌクレオチドの容積が、約0.1μl~約999μl、例えば、1~100μl、又は1~50μlであることを意味する。幾つかの実施形態では、容積は、本明細書に記載されるように、より小さいウェルでは0~10μlの間であり、より広く深いウェルでは10~30μlの間である。同様に、カートリッジに適用される場合、マイクロ流体という用語は、本明細書に更に記載されるように、カートリッジの様々な構成要素及びチャネルが、サンプル、試薬、又は増幅ポリヌクレオチドのマイクロ流体容積の通過を受け入れ、及び/又は保持し、及び/又は容易にするように構成されることを意味する。本明細書の特定の実施形態はまた、ナノリットル容積(100ナノリットルなど、10~500ナノリットルの範囲で)で機能することができる。
【0022】
本技術の一態様は、分析が2又は3以上のレーンにおいて並行して(例えば同時に)行うことができるように配置され、各レーンが所与のサンプル(以下、「サンプルレーン」と呼ぶ)に独立して関連付けられている、2又は3以上のサンプルレーンを有するマイクロ流体カートリッジに関する。
【0023】
サンプルレーンは、本明細書に記載された方法並びに当該技術分野で知られている他の方法に従って、サンプルを分析することができる要素の独立制御可能なセットである。サンプルレーンは、本明細書で更に説明するように、少なくともサンプル入口と、1又は2以上のマイクロ流体構成要素を有するマイクロ流体ネットワークとを含む。
【0024】
カートリッジは、複数のマイクロ流体ネットワークを含むことができ、各ネットワークは様々な構成要素を有し、各ネットワークはまた、1又は2以上のポリヌクレオチドの存否が決定されるべきサンプルに対してPCRを実施するように構成される。
【0025】
本技術の実施形態は、複数のサンプルレーンを有するカートリッジ(以下、「マルチレーンカートリッジ」と呼ばれる)を含む。しかしながら、本技術の実施形態は、僅か1つのサンプルレーンを含むカートリッジにて実施できることは理解されるであろう。マルチレーンカートリッジは、複数のサンプルを直列又は並列に、同時又は連続して受け入れるように構成される。幾つかの実施形態では、マルチレーンカートリッジは、24個のサンプル、又は他の何れかの好適な数のサンプルを受け入れるように構成される。幾つかの事例では、マルチレーンカートリッジは、少なくとも第1のサンプルと第2のサンプルを受け入れるように構成されており、ここで第1のサンプル及び第2のサンプルは各々、増幅に適した形態の1又は2以上のポリヌクレオチドを含む。当該ポリヌクレオチドは、異なるサンプルにおいて、従ってカートリッジの異なるサンプルレーンにおいて互いに同じであっても、異なっていてもよい。カートリッジは、決定すべきポリヌクレオチドの濃度を増加させることによって、及び/又は決定すべきポリヌクレオチドの濃度に対する阻害物質の濃度を減少させることによって、各サンプルを処理することができる。
【0026】
マルチレーンカートリッジは、第1のマイクロ流体ネットワークを有する第1のサンプルレーンと、第2のマイクロ流体ネットワークを有する第2のサンプルレーンとを少なくとも含み、第1のマイクロ流体ネットワーク及び第2のマイクロ流体ネットワークの各々は、本明細書に記載の特徴を含み、第1のマイクロ流体ネットワークは、第1のサンプル中のポリヌクレオチドを増幅するよう構成され、第2のマイクロ流体ネットワークは、第2のサンプル中のポリヌクレオチドを増幅するよう構成されている。
【0027】
様々な実施形態において、マイクロ流体ネットワークは、中和されたポリヌクレオチドサンプルからPCRアンプリコンを作成するのに適した熱サイクル条件下で、外部熱源からの熱をPCR試薬及び中和されたポリヌクレオチドサンプルを含むサンプル混合物に結合するように構成することができる。
【0028】
少なくとも外部熱源は、各サンプルレーンの1又は2以上の構成要素を互いに独立して動作させるための、及びPCR反応チャンバの1又は2以上のチャンバからの蛍光を測定する検出器から信号を受信するためのコンピュータ可読命令を実行するように構成されたコンピュータプロセッサの制御下で動作することができる。
【0029】
次に、本技術によるマイクロ流体カートリッジの非限定的な実施構成について、図1A及び図1Bを参照して説明する。図1Aは、サンプルレーン102、104、106、108を含む24個の独立したサンプルレーンを有するマイクロ流体カートリッジ100の平面図である。図1Bは、隣接するサンプルレーン102、104、106、108の反応チャンバ112、114、116、118を例示する、図1Aのカートリッジ100の一部の拡大図である。各サンプルレーンにおけるマイクロ流体ネットワークは、典型的には、PCR対応のサンプルに対してPCRによるような増幅を実施するように構成される。各サンプルレーン内のマイクロ流体ネットワークは、何れかの適切な方法を用いて検体から抽出された核酸含有サンプルを受け入れて増幅することができる。PCR対応サンプルを受け入れるカートリッジの例では、サンプルは、PCR試薬と中和されたポリヌクレオチドサンプルを含む混合物を含み、中和されたポリヌクレオチドサンプルからPCRアンプリコンを生成する熱サイクル条件にかけるのに適している。一例では、PCR対応サンプルは、ポリメラーゼ酵素、陽性コントロールプラスミド、プラスミドの少なくとも一部と複数のヌクレオチドに対して選択的な蛍光性ハイブリダイゼーションプローブ、及びポリヌクレオチド配列に対して選択的な少なくとも1つのプローブを含むPCR試薬混合物である。例示的なプローブは、本明細書に更に記載されている。本技術の実施形態において、マイクロ流体ネットワークは、中和されたポリヌクレオチドサンプルからPCRアンプリコンを作成するのに適した熱サイクル条件下で、外部熱源からの熱と、PCR試薬及び中和されたポリヌクレオチドサンプルを含む混合物とを結合するように構成される。
【0030】
次に、本技術によるマイクロ流体カートリッジの別の非限定的な実施構成について、図2A及び図2Bを参照して説明する。図2Aは、サンプルレーン202、204、206、208を含む24個の独立したサンプルレーンを有するマイクロ流体カートリッジ200の平面図である。図2Bは、隣接するサンプルレーン202、204、206、208の反応チャンバ212、214、216、218を例示する図2Aのカートリッジ200の一部の拡大図である。カートリッジ200のサンプルレーンは各々、サンプルを受け入れるように構成された専用のサンプル入口を含む。例えば、サンプルレーン202、204、206、208は、それぞれサンプル入口222、224、226、228を含み、各サンプル入口は、独立してサンプルを受け入れるように構成される。カートリッジ200は、専用のサンプル入口を有するマルチレーンPCRカートリッジと称することができる。サンプル入口は、シリンジ、ピペット、又はPCR対応サンプルを含むPCRチューブなどの液体移送部材(図示せず)を受け入れるように構成することができる。本技術によるカートリッジの実施形態では、1つの入口が1つのサンプルレーンと連動して動作する。
【0031】
図2Aの実施形態において、各反応チャンバ212、214、216、218は、図1Aの実施形態の各反応チャンバ112、114、116、118よりも大きい少なくとも1つの寸法を有する。反応チャンバ212、214、216、218は、より幅広と考えることができ、ここで、幅寸法は、マイクロ流体カートリッジのX軸に沿って測定される。反応チャンバ212、214、216、218は、より深いと考えられ、ここで深さ寸法は、マイクロ流体カートリッジのz軸に沿って測定される。幾つかの実施形態では、反応チャンバ212、214、216、218は、より長いと考えられ、長さ寸法は、マイクロ流体カートリッジのy軸に沿って測定される。長さ寸法及び幅寸法は、垂直軸に沿って配置することができる。例示的な実施形態では、反応チャンバ212、214、216、218は、反応チャンバ112、114、116、118よりも広く且つ深い。各反応チャンバ212、214、216、218は、各反応チャンバ112、114、116、118よりも大きな容積を有することができる。その結果、各反応チャンバ212、214、216、218は、各反応チャンバ112、114、116、118よりも大きな容積の流体を保持することができる。
【0032】
幾つかの実施形態では、カートリッジ200は、図2Aのより深い反応チャンバを収容するために増加した厚さを含み、ここで厚さ寸法は、マイクロ流体カートリッジのz軸に沿って測定される。カートリッジ200は、約1.24mmの厚さを有することができるカートリッジ100と比較して、約1.68mmの厚さを有することができる。幾つかの実施形態では、より厚いカートリッジは、エッジ効果故障(サンプルレーンの外側)、逆エッジ効果故障(サンプルレーンの内側)、及びランダム故障を含む、より薄いカートリッジよりも劣る熱性能特性を有する場合がある。本明細書に記載されるような、本技術による圧縮性パッドの実施形態は、カートリッジ200と加熱装置との間の熱伝導性及び/又は熱結合を改善し、これらの故障を低減することができる。
【0033】
反応チャンバ212、214、216、218は、何れかの形状を有することができる。例示的な実施形態では、反応チャンバ212、214、216、218は、長円の形状を有することができる。反応チャンバ212、214、216、218の縁部は丸みを帯びることができる。反応チャンバの他の形状も企図される。
【0034】
隣接するサンプルレーン202、204、206、208のチャンバ212、214、216、218は、互いに対して千鳥配置される。幾つかの実施形態では、サンプル入口は全て、マイクロ流体カートリッジのX軸に平行な単一のライン232に沿って配置される。24レーンカートリッジは、図2A及び2Bに示す、12個のPCR反応チャンバの2つのバンク226、228を有する。各ネットワークは、反応チャンバを含むことができる。幾つかの実施形態では、各ネットワークは、反応チャンバの両側に2つのバルブを含むことができる。バルブは、最初は通常開いており、作動時にチャネルを閉じる。バルブはマイクロバルブを含むことができる。幾つかの実施形態では、各ネットワークは、出口又は通気孔を含むことができる。幾つかの例では、出口又は通気孔は、サンプルが入口からチャンバへマイクロ流体ネットワークを通して移動する際に、マイクロ流体ネットワーク内のガスがマイクロ流体ネットワークを避けることを可能にすることができる。幾つかの例では、出口又は通気孔は、増幅されたサンプルがマイクロ流体ネットワークから除去されることを可能にすることができる。
【0035】
幾つかの実施形態では、反応チャンバ226の第1のバンクにおける反応チャンバ212は、PCRサンプルレーンの第2のバンクにおける反応チャンバ214と整列している。反応チャンバ212、214は、サンプル入口の単一ライン232に対して横方向に整列することができる。隣接するネットワークは、図示された実施形態に示されるように、千鳥状の反応チャンバを形成することができる。幾つかの実施形態では、24レーンカートリッジは、12個の反応チャンバ226、228の2つのバンクを有する。12個の反応チャンバ226、228の1つの第1のバンクは、入口に近接している。12個の反応チャンバ226、228の他のバンクは、入口からより離れている。12個の反応チャンバの第1のバンク226は、第1の軸256に沿って軸方向に整列することができ、12個の反応チャンバの第2のバンク228は、第2の軸258に沿って軸方向に整列することができる。12個の反応チャンバの第1バンク226の反応チャンバ212と、反応チャンバの第2バンク228の反応チャンバ214は、第3の軸260に沿って整列することができる。第3の軸は、第1の軸及び/又は第2の軸に対して横断方向又は垂直方向とすることができる。他の構成も企図される。
【0036】
一例として、反応チャンバ112、114、116、118は各々、4マイクロリットルPCR反応チャンバとすることができる。一例として、反応チャンバ112、114、116、118は各々、幅約1.5mm、深さ約0.30mm(300ミクロン)、及び長さ約10mmとすることができる。反応チャンバの容積は約4μlとすることができる。これらの寸法とレイアウトは例示的なものであり、図示のものからの逸脱は、このようなカートリッジの動作の同等の方法と矛盾しないことは理解されるであろう。マイクロ流体カートリッジ100は、PCRが濃縮反応容積(約4μl)で実施することを可能にし、1サイクル当たり約20秒での迅速な熱サイクルを可能にすることができる。別の例として、反応チャンバの典型的な寸法は、奥行き150μ×幅700μであり、典型的な容積は、約1.6μlである。カートリッジ100のサンプルレーンにおけるマイクロ流体ネットワークのチャネルは、少なくとも1つのミリメートル未満の断面寸法を有することができる。例えば、このようなネットワークのチャネルは、1mm未満(例えば、約750ミクロン以下、約500ミクロン以下、又は約250ミクロン以下)の幅及び/又は深さを有することができる。
【0037】
本技術の実施構成において、反応チャンバ212、214、216.218は、マイクロ流体カートリッジ100の反応チャンバ112、114、116、118に対して、増加した幅及び/又は増加した深さ(しかしながら、同じ又は類似の長さ)を有することができる。第1の実施例では、反応チャンバ212、214、216、218は各々、幅が約3.5mm、深さが約0.54mm(540ミクロン)、及び長さが約10mmである。反応チャンバの容積は約16.8μLである。第2の実施例では、反応チャンバ212、214、216、218は各々、幅が約2.5mm、深さが約0.86mm(860ミクロン)、及び長さが約10mmである。反応チャンバの容積は約18.6μLである。幾つかの実施形態では、反応チャンバ212、214、216、218は各々、約25マイクロリットルの容積を有するPCR反応チャンバとすることができる。図2Cに示される第3の例では、反応チャンバ212、214、216、218は各々、幅が約3.5mm、深さが約0.83mm(830ミクロン)、及び長さが約10mmを有する。反応チャンバの容積は約25.2μLである。第4の実施例では、反応チャンバ212、214、216、218は各々、幅が約2.5mm、深さが約1.35mm(1350ミクロン)、及び長さが約10mmである。反応チャンバの容積は約25.2μLである。以下の非限定的な実施例に記載されるウイルス負荷アッセイ検査の関連において、第3の実施例は、改善されたウイルス負荷アッセイ検査のための最適な性能特性を示したことが判定された。
【0038】
上記の実施例の反応チャンバは、以下の表にまとめられる。
表1
【0039】
本明細書に記載のマイクロ流体カートリッジの実施形態は、異なる容積を有する反応チャンバを含むことができる。例えば、図2Dに例示される1つの非限定的な実施形態において、マイクロ流体カートリッジ600は、約4μLの容積を有する反応チャンバ612と、約16μLの容積を有する反応チャンバ614とを含む。マイクロ流体カートリッジ600の実施形態は、図2Dに例示された反応チャンバの特定の配置に限定されず、反応チャンバ容積の他の配置及び組み合わせが可能であることが理解されるであろう。
【0040】
幾つかの実施形態では、反応チャンバ212、214、216、218の幅は、1~4mm(例えば、1mm、1.5mm、2mm、2.5mm、3mm、3.5mm、4mm、1mmと2mmの間、2と3mmの間、3と4mmの間、又は前述の値のうちの2つの何れかの範囲)とすることができる。幾つかの実施形態では、反応チャンバ212、214、216、218の深さは、0と2mmの間(例えば、0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.5mm 0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mm、1.0mm、1.1mm、1.2mm、1.3mm、1.4mm、1.5mm、1.6mm、1.7mm、1.8mm、1.9mm、2mm、0.25mm、0.5mm、0.75mm、1mm、1.25mm、1.5mm、1.75mm、0と0.5mmの間、0と1mmの間、1と1.5mmの間、又は前述の値のうちの何れかの2つの範囲)とすることができる。幾つかの実施形態では、反応チャンバ212、214、216、218の長さは、8mmと12mmの間(例えば、8mm、9mm、10mm、11mm、12mm、9mmと11mmの間、約10mm、又は前述の値のうちの2つの何れかの範囲)とすることができる。幾つかの実施形態では、反応チャンバ212、214、216、218の容積は、10μlと30μlの間(例えば、10μl、11μl、12μl、13μl、14μl、15μl、16μl、17μl、18μl、19μl、20μl、21μl、22μl、23μl、24μl、25μl、26μl、27μl.28μl、29μl、30μl、10μlと15μlの間、15μlと20μlの間、20μlと25μlの間、25μlと30μlの間、又は前述の値のうちの2つの何れかの範囲)とすることができる。これらの寸法及びレイアウトは例示的なものであり、図示のものからの逸脱は、このようなカートリッジの動作の同等の方法と矛盾しないことは理解されるであろう。幾つかの実施形態では、各反応チャンバ112、114、116、118は、4mlの容積を有する。幾つかの実施形態では、各反応チャンバ212、214、216、218は、25mlの容積を有し、すなわち反応チャンバ112、114、116、118の約6倍の容積を有している。
【0041】
(より大きな容積の反応チャンバを有する強化されたマイクロ流体カートリッジ)
マイクロ流体カートリッジ200は、核酸増幅のために設計することができる。本明細書に記載されるように、マイクロ流体カートリッジ200は、総容積が約25.2μlの増加した容積PCR反応チャンバを有し、大容量の液体溶出物を処理中の検体から増幅することが可能である。詳細には、マイクロ流体カートリッジ200の実施形態は、サンプル処理手順からの液体溶出物のより大きな割合がPCR反応チャンバに装填されて、PCR反応チャンバ内で増幅できることを確実にすることができる。一部の事例では、増幅できる液体溶出液の容積に6倍の増加がある。本技術の強化型マイクロ流体カートリッジの実施構成は、より大きな容積の反応チャンバを有するため、より大きな液体溶出液の入力に対応することができる。その結果、本技術の強化型マイクロ流体カートリッジは、サンプル及びカートリッジにわたってより一貫した増幅プロセスを可能にし、サンプル及びカートリッジにわたる増幅プロセスのばらつきを低減し、アッセイ全体の性能を向上させる。
【0042】
マイクロ流体カートリッジ200がプラスチック基体層を含む実施構成では、各反応チャンバ212、214、216、218の幾何学的形状は、本明細書に記載されるように各反応チャンバ212、214、216、218が積層体層によってシールされる一面を除く全ての面でプラスチック基体層内に形成される。サンプル核酸及びPCR試薬ミックスは、入口ポート及びマイクロ流体チャネルを通してチャンバ内に装填することができる。各反応チャンバ212、214、216、218は、流体経路に広がってチャンバの何れかの側で冷却する熱活性化ワックスバルブによってシールすることができる。本明細書で説明するように、カートリッジ200の底面側の積層体層を介して各反応チャンバ212、214、216、218に熱が加えられ、PCR反応を行い、カートリッジ200の上側にあるチャンバを覆って配置された外部光学系を介して蛍光変化が測定される。
【0043】
マイクロ流体カートリッジ100は、反応チャンバ112、114、116、118ごとに約4.2μlの反応容積を収容する。幾つかの実施形態では、マイクロ流体カートリッジ200は、マイクロ流体カートリッジ100と比較して、改善された分析感度を達成する。幾つかの実施形態において、マイクロ流体カートリッジ200のより大きなPCRチャンバ容量は、マイクロ流体カートリッジ100の標的送達の制限を克服する。幾つかの実施形態では、マイクロ流体カートリッジ200は、PCRチャンバ容積を約25.2μlに増加させることによって感度の性能向上を達成する。幾つかの実施形態では、検体抽出からのより多くのDNA/RNA入力が感度を増大させることができるので、より大きな容積のPCRチャンバが望まれる。幾つかの実施形態では、より大きな容積のPCRチャンバはより良い性能を提供する。幾つかの実施形態では、より大きな容量のPCRチャンバは、より大きな容量のPCRチャンバで行われる増幅の検出下限を向上させる。幾つかの実施形態では、より大きな容積のPCRチャンバは、より大きな容積のPCRチャンバで行われる増幅の定量下限を向上させる。幾つかの実施形態では、より大きな容積のPCRチャンバは、PCR効率を向上させる。
【0044】
アッセイの感度は、抽出効率、PCR効率、及び熱均一性を含む、複数の要因に依存する。幾つかの実施形態では、チャンバの寸法を大きくすることは、検出下限及び定量下限の改善をもたらすPCR効率を向上させる一因である。幾つかの実施形態では、マイクロ流体カートリッジ200は、マイクロ流体カートリッジ100と比較して、6倍の容積増加を達成する。他の構成が企図される(例えば、2倍の容積増加、3倍の容積増加、4倍の容積増加、5倍の容積増加、6倍の容積増加、7倍の容積増加、8倍の容積増加、又は2又は3以上の前述の値の何れかの範囲)。増幅プロトコルの各サイクル中に、チャンバ全体の最適な温度均一性を達成しながら、チャンバの寸法を増加させることができる量には上限がある。これは、信頼性のあるPCRを実現するために特定の最適化されたサイクルタイムを有する増幅プロトコルの場合に特に当てはまる。幾つかの実施形態では、マイクロ流体カートリッジ200は、検体に対して実行されるサンプル処理手順からのより大きな溶出液入力を収容することができる。幾つかの実施形態において、マイクロ流体カートリッジ200は、アッセイの検出下限及び定量下限を改善することができる。幾つかの実施形態では、マイクロ流体カートリッジ200は、サンプル処理からの液体溶出物のより大きな割合を、増加した寸法チャンバに装填できることを保証することができる。幾つかの実施形態では、マイクロ流体カートリッジ200は、より一貫したPCR増幅を容易にすることができる。幾つかの実施形態では、マイクロ流体カートリッジ200は、PCR増幅のばらつきを低減することができる。幾つかの実施形態では、マイクロ流体カートリッジ200は、サンプルに対して実行されるアッセイの全体的な性能を向上させることができる。
【0045】
所与のサンプルレーンの反応チャンバは、反応チャンバ内に受け入れられたサンプルに存在するポリヌクレオチドをPCRが増幅するのを可能にする長さ、幅、及び深さの寸法を有する。各反応チャンバの上部は、検出器が窓の上方に位置しているときに、反応チャンバ内の蛍光物質からの蛍光の検出を可能にする窓を含む。窓の他の構成は、限定ではないが、カートリッジの幅にわたって各PCR反応器にまたがる単一の窓を含むことが可能であることを理解されたい。
【0046】
隣接するサンプルレーンのサンプル入口は、カートリッジ内の隣接するサンプル入口にサンプルを導入する際に、1つのサンプル入口の何らかの汚染を防ぐように、互いに間隔を置いて配置されている。幾つかの実施形態では、サンプル入口は、サンプルが既に当該サンプルレーンに導入された後で、所与のサンプルレーンへのその後のサンプルの意図しない導入を防止するように構成される。幾つかの実施形態では、マルチサンプルカートリッジは、サンプル入口の中心間の間隔が業界で認められた標準である6mmになるように設計されている。これは、特定の実施形態において、カートリッジの入口孔間の中心間距離が6mmであることを意味する。入口孔は、業界標準のピペットチップ(2μl、20μl、200μl容量、その他)がそこに緊密に収まるように適切な円錐角度を有する円錐形に製造することができる。本明細書のカートリッジは、当業者であれば理解されるように、本明細書に別途記載されていない他の後に発生する業界標準に適合させることができる。
【0047】
幾つかの実施形態では、マイクロ流体カートリッジは、複数のマイクロ流体ネットワークを共に定める、第1、第2、及び第3の層を含み、各ネットワークは、その存在が決定されることになる1又は2以上のポリヌクレオチドを有するサンプルに対してPCRを実施するように構成された様々な構成要素を有する。本明細書に記載されるように、マイクロ流体カートリッジは、圧力分布を改善し、熱均一性を高め、及びPCR増幅を強化するように設計された第4の層を含むことができる。幾つかの実施形態では、第4の層は圧縮性パッドである。4つの層が記載されているが、マイクロ流体カートリッジは、より少ない層を含むことができ、1又は2以上の層を単一の統合された層に組み合わせることができる。4つの層が説明されているが、追加の層を含めることができ、1又は2以上の層は、2又は3以上の層に分けることができる。
【0048】
カートリッジは、1又は2以上のサンプルレーンを含み、各サンプルレーンは、同時処理のために所与のサンプルと独立して関連付けられ、各サンプルレーンは、独立して構成されたマイクロ流体ネットワークを含む。カートリッジは、典型的には、各サンプル中に存在する決定すべき1又は2以上のポリヌクレオチドの(増幅によるなど)濃度を増加させることによって、1又は2以上のサンプルを処理する。
【0049】
本明細書におけるカートリッジは、図3A及び図3Bの実施形態300に示されるように、その構造において3又は4以上の層を有する実施形態を含む。カートリッジ300は、基体302、積層体304(図3Aでは見えない)、及びラベル306を含む。カートリッジ300において、マイクロ流体基体302は、上側308と、基体の反対側に下側310(図3Aでは見えない)とを有する。基体302は、対応する複数のサンプルレーン312に配置された、複数のマイクロ流体ネットワークを含む。カートリッジ300は、複数のカートリッジレーン330を含む。この非限定的な実施形態では、カートリッジ300は、12個のカートリッジレーン330を含む。この非限定的な実施形態では、各カートリッジレーン330は、2つのサンプルレーン312を含むカートリッジ300の領域に対応する。この非限定的な実施形態では、カートリッジ300は、12個の平行なカートリッジレーン330に配置された24個のサンプルレーン312を含む。カートリッジ300は、マイクロ流体ネットワークの様々な構成要素(例えば、バルブ)をシールするために、基体302の下側310に取り付けられた積層体304を含むことができる。積層体304は、専用の加熱要素(本明細書で更に説明する)とマイクロ流体ネットワーク内の構成要素との間に有効な熱伝達層を提供することができる。カートリッジ300は、基体302の上側308に取り付けられた、ラベル306を含むことができる。幾つかの実施形態では、各反応チャンバは、各反応チャンバが1又は2以上の追加層によってシールされる1又は2以上の側部を除く全てのマイクロ流体基体層内に形成されている。幾つかの実施形態では、各反応チャンバは積層体304によってシールされる。幾つかの実施形態では、各反応チャンバは積層体304によってシールされる。幾つかの実施形態では、各反応チャンバは、ラベル306によってシールされる。
【0050】
カートリッジ300は、圧縮性パッド314を含むことができる。幾つかの実施形態では、圧縮性パッド314は、基体302の上側308の上方に配置される。幾つかの実施形態では、圧縮性パッド314は、基体302の上側308とラベル306の間に配置される。ある例示的な実施形態では、圧縮性パッド314はラベル306の下方に配置される。別の例示的な実施形態では、圧縮性パッド314は、ラベル306の上方に配置される。圧縮性パッド314がラベル306の上方に配置される実施形態では、ラベル306は、マイクロ流体ネットワークのバルブなどの構成要素を熱応答性材料で装填するための製造プロセスで使用される孔を覆い、シールすることができる。圧縮性パッド314がラベル306の上方に配置されるこのような実施形態において、通常はラベル306に含まれることになるマーキング(以下で詳述する)を圧縮性パッド314に含めることができる。幾つかの実施形態では、圧縮性パッド314がラベル306の下方に配置されるときに、各反応チャンバは、圧縮性パッド314によってシールされる。
【0051】
図示しない幾つかの実施形態では、圧縮性パッド314は、基体302の下側310の下方に配置される。幾つかの実施形態では、圧縮性パッド314は、基体302の下側310と積層体304との間に配置される。幾つかの実施形態では、圧縮性パッド314は、積層体304の上方にある。幾つかの実施形態では、圧縮性パッド314は積層体304の下方にある。このような実施形態では、圧縮性パッドは、熱伝導性材料で形成することができ、又は熱伝導性特性を含むことができる。
【0052】
このように、本明細書におけるマイクロ流体カートリッジの実施形態は、基体302、積層体304、及びラベル306を含む層からなり、圧縮性パッド314が層のうちの少なくとも1つに隣接して配置される実施形態を含む。幾つかの実施形態では、マイクロ流体カートリッジは、基本的に、基体、積層体、ラベル、及び圧縮性パッドである4つの層からなる。幾つかの実施形態では、マイクロ流体カートリッジは、基体、積層体、ラベル、及び圧縮性パッドである4つの層を備える。
【0053】
マイクロ流体基体層302は、典型的には、プラスチック、好ましくはゼオノアプラスチック(環状オレフィンポリマー)から射出成形され、複数のマイクロ流体ネットワーク(図1A及び2Aに示される)を含む。本明細書に記載されるように、幾つかの実施形態では、基体302は、PCR増幅のための材料を含む24個の反応チャンバを備える。各マイクロ流体ネットワークは、反応チャンバ及び関連するチャネルを含む。幾つかの実施形態では、マイクロ流体ネットワークは、1又は2以上のバルブを含む。バルブは、存在する場合には、第1の(例えば、下)側部(積層体に向かって配置される)に配置することができる。幾つかの実施形態では、マイクロ流体ネットワークは、ワックス又は他の熱反応性物質をバルブに装填するための装填孔を含む。幾つかの実施形態では、マイクロ流体ネットワークは、1又は2以上の通気孔チャネルを含む。幾つかの実施形態では、マイクロ流体ネットワークは、第2の(例えば、上)側部(ラベル層に向かって配置される)上に1又は2以上の液体入口孔を含む。典型的には、所与のカートリッジにおいて、反応チャンバ及び入口孔を含むマイクロ流体ネットワークの全てが一緒になって、単一の基体層、すなわち基体302に定められる。
【0054】
基体302は、基体(ひいてはカートリッジ)の剛性を向上させる材料から形成することができる。基体302が形成される材料は、剛体又は非変形性とすることができる。剛性は、本明細書で更に説明するように、加熱組立体との効果的で均一な接触を容易にするので、有利である。幾つかの実施形態では、基体302は、空気又は液体を通さないので、カートリッジの動作中の空気又は液体の入出は、入口又は様々な通気孔を通してのみ可能である。基体302が形成される材料は、空気及び他の気体に対して非通気性とすることができる。非通気性の材料を使用することはまた、液体形態の様々な種類の濃度が分析中に変化する可能性を低減するので、有利である。幾つかの実施形態では、基体302は、ここで定められたマイクロ流体回路で行われる増幅反応中にポリヌクレオチドの検出を容易にするために、低い自家蛍光性を有する。低い自家蛍光性を有する材料の使用はまた、バックグラウンド蛍光が目的の分析物からの蛍光性の測定を損なわないようにするために重要である。
【0055】
基体302は、検出を容易にするために、厚さが減少した領域を有することができる。幾つかの実施形態では、減少した厚みの領域は、各サンプルレーンの各反応チャンバの上方に存在することができる。幾つかの実施形態では、減少した厚みの領域は、長円形又は細長い形状を有することができる。減少した厚みの領域は、対応する反応チャンバの面積と同じか又はそれよりも大きい表面積を有することができる。
【0056】
積層体層304は、ヒートシール可能な積層体層とすることができる。積層体層304は、典型的には、約100~約125ミクロンの厚さとすることができる。積層体層304は、例えば、熱接着、圧着、又はこれらの組み合わせを使用して、マイクロ流体基体302の底面に取り付けることができる。積層体層304はまた、一方の側部のみに接着性コーティングを有する材料から作ることができ、この側部は、基体302の下面に接触する側部である。この層304は、3M(登録商標)社製のAdhesive 420(登録商標)の層を有する単一コーティングテープから作ることができる。例示的なテープは、製品番号9783、9795、及び9795Bを有する両面テープの片面形態を含み、3M(登録商標)から入手可能である。積層体層は、典型的には、50~200μ厚さ、例えば125μ厚さである。他の許容可能な層は、マイクロカプセルベースの接着剤を利用する接着テープから作ることができる。
【0057】
ラベル306は、感圧接着剤を有するポリプロピレン又は他のプラスチックから作ることができる。ラベル306は、典型的には約50~150ミクロンの厚さとすることができる。幾つかの実施形態では、ラベル306は、基体302のバルブのワックス装填孔をシールするように構成することができる。幾つかの実施形態では、ラベル306は、弁作動に使用される空気を捕捉することができる。幾つかの実施形態では、ラベル306は、オペレータマーキングのための場所として機能することができる。ラベル306は、カートリッジのバーコード番号、ロット番号、及び有効期限などの識別特性を含むことができる。幾つかの実施形態では、ラベル306は、ユーザーが手でラベル上に識別注釈をつけることを可能にする空間と書き込み可能な表面とを有する。ラベル306は、単一成形層とすることができるが、ラベル306が2又は3以上の別個の要素で形成できることは、当業者には理解されるであろう。
【0058】
ラベル306には、限定ではないが、製造者のロゴ、部品番号、サンプルレーンの各々のインデックス番号を含む、様々な種類の情報を印刷することができる。様々な実施形態において、ラベル306は、ロット番号、有効期限、又は一意の識別子など、特定の識別指標を含むことができるコンピュータ可読部分又はスキャン可能部分を含む。例えば、ラベル306は、バーコード、無線周波数タグ、又は1又は2以上のコンピュータ読み取り可能な又は光学的にスキャン可能な文字を含むことができる。ラベル306の読み取り可能部分は、サンプル識別検証器によって読み取ることができるように位置決めすることができる。ラベル306は、ラベル306の縁部又はコーナーからの切り欠き部318を含むことができる。
【0059】
幾つかの実施形態では、マイクロ流体カートリッジ300は更に、カートリッジが、例えば装置の受け入れベイにおいて、単一の向きで相補的な診断装置によって受け入れられることを保証する位置合わせ部材316を含む。位置合わせ部材316は、(図3Aに示すように)カートリッジの縁部又はコーナーからの切り欠き部とすることができ、或いは、一連のノッチ、くさび形もしくは曲線形の切り欠き部、又は装置における配置の固有の向きを必要とする形状の他の構成とすることができる。
【0060】
幾つかの実施形態では、マイクロ流体カートリッジ300は、当該技術分野で慣習的に使用されている96ウェルプレートのサイズと実質的に同じサイズを有する。有利には、次に、カートリッジは、当該技術分野において他の場所で使用されるプレートハンドラと共に使用することができる。
【0061】
幾つかの実施形態では、マイクロ流体カートリッジ300は、バルブに熱応答性材料を充填する際に使用するための2又は3以上の位置決め要素、すなわちフィデューシャルを含む。位置決め要素は、基体302、典型的にはその上面上に配置することができる。幾つかの実施形態では、フィデューシャルは、基体の対角線上にあることができるが、このような位置に限定されるものではない。
【0062】
本明細書で説明するように、各反応チャンバの上方には、検出器が窓320の上方に位置するときに、蛍光性ハイブリダイゼーションプローブからなど、反応チャンバ内の蛍光物質から蛍光の検出などの光学的検出を可能にする窓320がある。複数の窓320は、ラベル306に形成することができる。窓320の数は、反応チャンバの数に対応することができる(例えば、24個の反応チャンバ、24個の窓又は12個の反応チャンバ、12個の窓など、1:1である)。窓320については、形状、位置、及び/又は数など、他の構成が企図される。図示された実施形態では、窓320は長円の形状を有する。窓320は、対応する反応チャンバの面積と同じかそれよりも大きい表面積を有することができる。
【0063】
次に、本技術による圧縮性パッドの実施形態について説明する。図4は、本技術による圧縮性パッド314の非限定的な一例を示す図である。カートリッジ300は、圧縮性パッド314を含むことができる。圧縮性パッド314は、本明細書で説明したように、圧縮力の撓みが小さい材料で形成することができる。圧縮性パッド314は、本明細書で説明するように、容易に圧縮する材料で形成することができる。圧縮性パッド314は、機械的にコンプライアントな材料で形成することができる。例えば、圧縮性パッド314の機械的に柔軟な材料は、約0.035インチ(約0.9mm)の厚さを有することができる。例えば、約0.5mm、約1mm、約1.5mm、約2mm、0mmと1mmの間、0.5mmと1.5mmの間、1mmと2mmの間、1.5mmと2.5mmの間、0mmと2mmの間、0.5mmと2.5mmの間、1mmと3mmの間、1.5mmと3.5mmの間、その他等、他の厚さも好適である。
【0064】
幾つかの実施形態では、圧縮性パッド314は、消耗品、例えば、マイクロ流体カートリッジに組み込まれる。幾つかの実施形態では、圧縮性パッド(図示せず)は、診断機器に(例えば、検出手順の際にマイクロ流体カートリッジと物理的に接触する検出器に)組み込まれる。
【0065】
圧縮性パッド314は、ヒートシール可能な層とすることができ、例えば、感圧接着剤を用いてマイクロ流体カートリッジに取り付けることができる。圧縮性パッド314は、本明細書に記載されるように圧縮可能とすることができる。圧縮性パッド314の厚さは、無圧縮で0.1~2.5mm、典型的には無圧縮で約1.5mm厚とすることができる。
【0066】
本明細書で説明するように、カートリッジ300、特に基体302は、カートリッジが、例えば装置の受け入れベイにおいて単一の向きで相補的診断装置によって受け入れられることを保証する位置合わせ部材316を含むことができる。位置合わせ部材316は、(図3Aに示すように)カートリッジの縁部又はコーナーからの切り欠き部とすることができ、或いは、一連のノッチ、くさび形又は曲線形の切り欠き部、又は装置における配置の固有の向きを必要とする形状の他の構成とすることができる。圧縮性パッド314は、圧縮性パッド314の端部又は角部からの切り欠き部322を含むことができる。切り欠き部322は、図3Aに示されるラベル306の切り欠き部318に対応することができる。
【0067】
本明細書で説明したように、各反応チャンバの上方には、検出器が窓320の上方に位置するときに反応チャンバでの光学的検出を可能にするラベル306の窓320がある。圧縮性パッド314は、複数の窓324を含むことができる。窓324の数は、反応チャンバの数に対応することができる(例えば、24個の反応チャンバ、24個の窓、又は12個の反応チャンバ、12個の窓など、1:1である)。窓324については、形状、位置、及び/又は数など、他の構成が企図される。図示された実施形態では、窓324は、長円形又は細長い形状を有する。窓324は、対応する反応チャンバの面積と同じかそれよりも大きい表面積を有することができる。窓324は、図3に示されるラベル306の窓320に対して数及び/又は形状で対応することができる。
【0068】
本明細書で説明するように、隣接するサンプルレーンの反応チャンバは、互いに対して千鳥状に配置される。幾つかの実施形態では、サンプル入口は全て、マイクロ流体カートリッジ300のX軸に平行な単一ラインに沿って配置される。サンプルレーンの第1のバンクにおける反応チャンバは、サンプルレーンの第2のバンクにおける反応チャンバと整列することができ、反応チャンバは、サンプル入口の単一ラインに対して横方向に整列することができる。幾つかの実施形態では、24レーンカートリッジは、12個の反応チャンバ326、328の2つのバンクを有する。12個の反応チャンバの第1のバンク326は、位置合わせ部材316を有する縁部に近接している。12個の反応チャンバの第2のバンク328は、位置合わせ部材316のある縁部から遠くにある。反応チャンバは、グリッドを形成することができる。他の構成も企図される。
【0069】
幾つかの実施形態では、24レーンカートリッジは、ラベル306の窓320と圧縮性パッド314の窓324から形成される、12個の窓の2つのバンクを有する。窓320、324は、グリッドを形成することができる。幾つかの実施形態では、ラベル306の窓320と窓324とが互いに重なり合って、窓のペアを形成し、光がそこを透過できるようにする。窓320、324の各々の表面積は、対応する反応チャンバの表面積より大きくすることができる。図示された実施形態では、各窓のペア320、324は、1つの反応チャンバの周囲の領域を包含する。別の実施形態(図示せず)において、各窓のペア320、324は、2又は3以上の反応チャンバの周囲の領域を包含する。更に別の実施形態(図示せず)では、各窓のペア320、324は、反応チャンバのバンクの周囲の領域を包含する。この実施形態では、ラベル306及び圧縮性パッド314は各々、2つの窓、すなわち、第1バンク326上の第1の窓と第2バンク328上の第2の窓とを含む。更なる実施形態(図示せず)において、カートリッジ300の24個の反応チャンバ全ての周囲を包含する単一の窓のペア320、324が存在する。この実施形態では、カートリッジ300の全ての反応チャンバにわたって単一の窓がある。
【0070】
幾つかの実施形態では、圧縮性パッド314は、ラベル306に結合された別個の層とすることができる。ラベル306及び/又は圧縮性パッド314は、構成要素を共に結合するために接着面を含むことができる。他の結合方法が企図される。図3Aは、圧縮性パッド314がPCRカートリッジ300の上部に接着され、白色カートリッジラベル306が圧縮性パッド314の上部に接着されている実施形態を示す。ラベル306は、ラベル306の下の圧縮性パッド314を示すために、部分的に除去されている。
【0071】
幾つかの実施形態では、圧縮性パッド314及びラベル306は、単一の層に組み合わせることができる。幾つかの実施形態では、ラベル306は省略することができる。このような実施形態では、圧縮性パッド314は、上述したように、バーコード及び製造情報を表示するための上面を含むことができる。幾つかの実施形態では、圧縮性パッド314は、白色又は明色である。幾つかの実施形態では、ラベル情報は、圧縮性材料に直接印刷することができ、これによりラベル306を排除することができる。幾つかの実施形態において、ラベル306を省略することにより、圧縮性パッド314とラベル306との間で剥離が生じる可能性を排除することができる。
【0072】
幾つかの実施形態において、圧縮性パッド314は、完全に分離可能な圧縮性パッドである。幾つかの実施形態では、圧縮性パッド314は、別個の又は独立して形成された構成要素である。圧縮性パッド314は、カートリッジ300の上面308など、カートリッジ300上に配置することができる。幾つかの実施形態では、圧縮性パッドは、カートリッジ300のラベル306の上部に適用される(この実施形態は、図3Aには示されていない)。幾つかの実施形態では、圧縮性パッドは、例えば、圧縮性パッド314を第1のカートリッジ300から取り外し、この同じ圧縮性パッド314を第2のカートリッジ300に適用することによって、PCR増幅の完了後に再使用可能とすることができる。この実施形態は、本明細書に開示された他の実施形態と同様に、反応チャンバへの熱エネルギー伝達の改善を示している。本明細書に記載されるような幾つかの実施形態では、圧縮性パッド314は、カートリッジ300上又はカートリッジ300内に一体化されている。例えば、圧縮性パッド314は、再使用可能であることを意図しておらず、1又は2以上のサンプルの増幅後のカートリッジ300の廃棄はまた、カートリッジ300と一体化された圧縮性パッド314も廃棄する。圧縮性パッド314は、カートリッジ300の構成に一体化することができる。圧縮性パッド314は、一体化されると、使用中の剥離のリスクを低減することができる。
【0073】
幾つかの実施形態において、カートリッジ300は使い捨てである。PCRがサンプル上で実施され、目的のポリヌクレオチドの有無が決定された後、増幅されたサンプルは、カートリッジ上に残り、カートリッジは(1又は2以上のサンプルレーンが開いたままであれば)再度使用されるか、又は廃棄されるのが典型的である。ユーザーが、ゲル電気泳動など増幅後の分析を行いたい場合、ユーザーは、カートリッジ300の積層体304を貫通して孔を開け、典型的には約1.5マイクロリットルの量のPCR産物を回収することができる。非限定的な一実施形態では、ユーザーは、個々のサンプルレーンを特殊な狭い加熱プレート上に置き、当該サンプルレーンのバルブ内のワックスを溶融する温度に維持し、次に、当該サンプルレーンの入口孔から反応したサンプルを吸引することができる。
【0074】
マイクロ流体カートリッジ300はまた、容易な保管又は輸送などのために積み重ね可能とすることができ、又は複数のカートリッジを互いに接触することなく互いに近接して保持する装填装置によって受け入れられるように構成することができる。様々な実施形態において、輸送及び保管中に、マイクロ流体カートリッジは、例えば水蒸気の影響を低減するためにシールされたパウチによって更に囲むことができる。マイクロ流体カートリッジは、不活性ガスでパウチ内にシールすることができる。マイクロ流体カートリッジは、単回使用を意図するなど、使い捨てにすることができる。マイクロ流体カートリッジは、例えば、そのサンプルレーンの1又は2以上が使用された後に使い捨てにすることができる。
【0075】
次に、本技術による加熱組立体の非限定的な例について、詳細に説明する。図5Aは、受け入れベイ402の例示的なヒーターモジュール400を示す図である。ヒーターモジュール400は、受け入れベイにおいてマイクロ流体カートリッジを支持するためのプラットフォームを提供する凹状面を含むことができる。使用時には、カートリッジ300は、典型的には、装置の様々な構成要素(例えば、反応チャンバ)に熱を加えるように構成された熱源のアレイと熱的に関連付けられる。熱源を含む例示的なこのようなヒーターアレイについて、本明細書で更に説明する。ヒーターアレイの追加の実施形態は、2007年11月14日に出願された「Heater Unit for Microfluidic Diagnostic System」と題する米国特許出願第11/940,315号に記載されており、この明細書は引用により本明細書に組み込まれる。
【0076】
図5Bは、受け入れベイ702の別の例示的なヒーターモジュール700を示す。この非限定的な実施形態では、システムは、本技術のマイクロ流体カートリッジを受け入れるように各々が構成された2つの受け入れベイ702を含む。図5Cは、左受け入れベイ702のヒーターモジュール700の拡大図を示している。図5Dは、マイクロ流体カートリッジ200が受け入れベイ702に受け入れられた図5Cのヒーターモジュール700の拡大図を示している。
【0077】
本明細書に記載されたマイクロ流体基体は、ヒーターユニットに見られるような接触熱源からの熱を受け入れるように構成される。ヒーターユニットは、典型的には、特定の時間において、限定ではないが1又は2以上のマイクロ流体構成要素を含む、マイクロ流体基体の特定の領域に熱を供給するように構成されたヒーターボード又はヒーターチップを備える。例えば、熱源は、特定の加熱要素が基体上のマイクロ流体ネットワークの特定の構成要素に隣接して位置するように構成される。特定の実施形態では、装置は、マイクロ流体ネットワークの領域の加熱を均一に制御する。例示的な実施形態では、複数のヒーターは、マイクロ流体基体のPCR反応チャンバなどの領域を同時に且つ均一に加熱するように構成することができる。
【0078】
ヒーターは、マイクロ流体基体の直下にあるヒーター基体層に位置する。非限定的な例では、ヒーターは、金の金属層(典型的には約3,000Åの厚さ)をフォトリソグラフィで定めてエッチングすることができる。金層の上部及び下部に400ÅのTiWの層を堆積して、接着層として機能させる。基体は、0.4mm、0.5mm、0.7mm、又は1mmの厚さを有する、ガラス、溶融石英、又は石英ウェーハとすることができる。2μmの酸化ケイ素の薄い電気絶縁層が、金属層の上部で絶縁層として機能する。2~4g/mのパリレンのような追加の薄い電気絶縁性層もまた、酸化ケイ素表面の上部に堆積することができる。
【0079】
PCR反応チャンバを周期的に加熱するように構成されたヒーターの例示的なセットを提供することができる。他のゲート、バルブ、及びアクチュエータ(カートリッジに存在する場合)など、マイクロ流体カートリッジの他の領域を作動させるためのヒーター構成は、本明細書に記載されるヒーターを管理するものと同様の原理に従って設計及び配備できることは理解されたい。
【0080】
マイクロ流体基体内の例示的な反応チャンバ、典型的にはある容積を有するチャンバ又はチャネルは、長い側部及び短い側部を有し、各々が関連する加熱要素を備えて構成される。反応チャンバはまた、本明細書ではPCR反応器とも呼ばれることがあり、反応チャンバが位置するカートリッジの領域は、ゾーンと呼ばれることがある。この非限定的な例におけるヒーター基体は、所与の反応チャンバの側部に沿って配置されて所与の反応チャンバを加熱するように構成された4つのヒーター:すなわち、長い上部ヒーター、長い下部ヒーター、短い左ヒーター、及び短い右ヒーターを含む。長い上部ヒーターと長い下部ヒーターの間の小さなギャップは、無視できる温度勾配(反応チャンバの長さに沿った何れかの点での反応チャンバの幅の両端の1℃未満の差)をもたらし、従って、反応チャンバ全体で事実上均一な温度となる。反応チャンバの短い縁部にあるヒーターは、反応チャンバの中心から縁部までの2つの長いヒーターによって作られる勾配を打ち消すために熱を提供する。
【0081】
当業者であれば、反応チャンバの周りに位置する1又は2以上のヒーターの更に別の構成が、本明細書に記載される方法及び装置と適合することが理解されるであろう。例えば、反応ゾーンの「長い」側部は、2又は3以上のヒーターによって加熱されるように構成することができる。ガラス、又は石英、ポリイミド、FR4、セラミック、又は溶融シリカ基体の熱伝導率の低さを利用して、バルブ(カートリッジに存在する場合)などの様々なマイクロ流体構成要素の独立した動作及び様々なサンプルレーンの独立した動作の助けとなるので、ヒーターの特定の方向及び構成が、熱伝導率の低い基体上でも加熱の均一ゾーンを生成するために使用される。反応ゾーン周辺のヒーターの構成の基礎となる原理は、アクチュエータ、バルブ、及びゲート(カートリッジに存在する場合)などのマイクロ流体カートリッジの他の構成要素に隣接するヒーターの配置にも同様に適用できることが、当業者であれば更に理解できるであろう。
【0082】
図38は、本開示によるマイクロ流体カートリッジに熱を加えるように構成された加熱装置のヒーターアレイのセットを示す図である。例えば、図38Aは、24個のサンプルレーンを含むマイクロ流体カートリッジに熱を加えるように構成されたヒーターアレイを例示している。図38Bは、動作中に電流を流すヒーター及び温度センサを含む、24サンプルレーンカートリッジの1つの反応チャンバに熱を加えるように構成された1つのアレイの引き延ばした図である。
【0083】
幾つかの実施形態では、熱源は、コンピュータプロセッサによって制御され、所望のプロトコルに従って作動する。マイクロ流体デバイスを動作させるように構成されたプロセッサは、例えば、2008年7月14日に出願された「Integrated Apparatus for Performing Nucleic Acid Extraction and Diagnostic Testing on Multiple Biological Samples」と題する米国特許出願第12/173,023号に記載されており、この明細書は引用により本明細書に組み込まれる。マイクロプロセッサなどのプロセッサは、図示のようにシステムの様々な構成要素の機能を制御するように構成され、これによって制御を必要とする各このような構成要素と通信している。このような制御機能の多くは、任意選択的に手動で実行することができ、プロセッサの制御下にはないことを理解されたい。更に、様々な機能が以下で説明される順序は、装置が動作しているときにプロセッサが命令を実行する順序に限定されるものではない。このように、プロセッサは、例えば、バーコードリーダー、光学文字リーダー、又はRFIDスキャナ(無線周波数タグリーダー)とすることができるサンプルリーダーから、分析されることになるサンプルに関するデータを受信するように構成することができる。また、単一のプロセッサが全ての動作を制御するものとして説明されているが、このような動作は、便利なように、複数のプロセッサに分散されてもよいことが理解される。
【0084】
プロセッサは、入力からユーザーの指示を受け付けるように構成することができ、このような指示は、サンプルの分析を開始する指示、及び動作条件の選択を含むことができる。様々な実施形態において、入力は、限定ではないが、キーボード、タッチセンサ面、マイクロフォン、トラックパッド、網膜スキャナ、入力デバイスのホログラフィック投影、及びマウスなどの1又は2以上の入力デバイスを含むことができる。
【0085】
プロセッサは、ディスプレイと通信するように構成することもでき、例えば、分析に関する情報をディスプレイに送信して、これによってシステムのユーザーに伝えるようにする。このような情報は、限定ではないが、装置の現在のステータス、PCR熱サイクルの進行状況、システム又はカートリッジの何れかの機能不全が生じた場合の警告メッセージを含む。更に、プロセッサは、ディスプレイ上に表示される1又は2以上の質問を送信し、これに応答して入力するようにユーザーに促すことができる。このように、特定の実施形態では、入力及びディスプレイは互いに一体化されている。
【0086】
プロセッサは、任意選択として、分析結果をプリンタ、視覚ディスプレイ、ホログラフィック投影を利用するディスプレイ、又はスピーカーなどの出力装置、或いはこれらの組み合わせに送信するように更に構成することができる。
【0087】
プロセッサは、更に任意選択的に、ネットワークインターフェースなどの通信インターフェースを介してコンピュータネットワークに接続することができる。通信インターフェースは、シリアル接続、パラレル接続、無線ネットワーク接続、USB接続、及び有線ネットワーク接続からなるグループから選択される1又は2以上のインターフェースとすることができる。これにより、システムがネットワーク上で適切にアドレス指定された場合、リモートユーザーは、プロセッサにアクセスして、プロセッサに関連するメモリ(図示せず)、又はプロセッサと通信状態にある他のコンピュータ可読媒体に格納できるような命令を送信し、データを入力し、又はデータを取り出すことができる。インターフェースはまた、これによって、パーソナルコンピュータ、パーソナルデジタルアシスタント、又はコンピュータサーバー又はディスクファームなどのネットワークストレージデバイスのような遠隔位置へのデータの抽出を可能にすることができる。本装置は更に、ユーザーが、医療提供者、診断施設、又は患者などの他の当事者に分析結果を直接電子メールで送信できるように構成することができる。
【0088】
加えて、様々な実施形態において、装置は更に、プロセッサ、入力装置、及び通信インターフェースのうちの1又は2以上からデータを受け入れるように構成されたデータ記憶媒体を備えることができ、データ記憶媒体は、ハードディスクドライブ、光ディスクドライブ、フラッシュカード、及びCD-ROMからなるグループから選択された1又は2以上の媒体である。
【0089】
プロセッサは更に、概要として以下のように、及び本明細書で更に詳細に説明するように、サンプル調製及び診断の様々な側部を制御するように構成することができる。マイクロ流体カートリッジ200、300は、相補的なラック(図示せず)と共に動作するように構成される。ラックは、それ自体、本明細書で更に説明するように、ワークアップ及び診断分析に適した形態の複数の生体サンプルと、種々の試薬、ピペットチップ及びレセプタクルを備えた複数のホルダーとを受け入れるように構成される。ラックは、サンプルのワークアップ中に、サンプルがそれぞれのホルダー内で処理されるように構成されており、処理は、ヒーター組立体を介して個別に加熱及び冷却を受けることを含む。ヒーター組立体の加熱機能は、プロセッサによって制御することができる。ヒーター組立体は、磁性粒子のような粒子が存在する、ホルダーに関連する1又は2以上の処理チャンバに近接して出入りするために、プロセッサによって制御することができる磁気分離器のような分離器と連動して動作する。
【0090】
液体ディスペンサー(図示せず)は、同様にプロセッサによって制御可能であり、サンプルから核酸を抽出するために、ホルダー内のそれぞれのサンプル、液体及び試薬に対して様々な吸引及び分注動作を行うように構成されている。液体ディスペンサーは、複数のホルダーに対して同時にこのような動作を行うことができる。サンプルリーダーは、サンプル及び場合によってはホルダーに関する識別指標をプロセッサに送信するように構成されている。幾つかの実施形態において、サンプルリーダーは、液体ディスペンサーに取り付けられ、これによって液体ディスペンサーがその上方に位置するサンプルに関する指標を読み取ることができる。他の実施形態では、サンプルリーダーは、液体ディスペンサーに取り付けられておらず、プロセッサの制御の下で独立して移動可能である。液体ディスペンサーはまた、1又は2以上のサンプルから抽出された核酸を含む液体のアリコートを取り、マイクロ流体カートリッジ200、300が受け入れられる受け入れベイにこれらを導くように構成されている。受け入れベイは、ヒーター又はヒーターのセットと連通しており、ヒーターは、分析中にカートリッジの特定の領域が特定の時間に加熱されるように、プロセッサによって制御することができる。液体ディスペンサーは、1又は2以上のサンプルから抽出された核酸を含む液体のアリコートを取り、マイクロ流体カートリッジの各々の入口に導くように構成されている。カートリッジは、それぞれの核酸に対してPCRを行うなどして増幅するように構成されている。プロセッサはまた、カートリッジから診断の指示を受け取る検出器を制御するようにも構成されている。診断内容は、本明細書で説明したように、出力装置及び/又はディスプレイに送信することができる。
【0091】
適切なプロセッサは、それぞれ、当該技術分野で周知の設計原理及び半導体処理方法に従って設計及び製造することができる。幾つかの実施形態では、装置は、マイクロ流体カートリッジを選択的に受け入れるように構成されたベイと、ベイに熱的に結合され、本明細書に更に記載されるプロセッサに結合された少なくとも1つの熱源とを含み、熱源がカートリッジ内の個々のサンプルレーンを加熱するように構成され、プロセッサが、個々のサンプルレーンに熱を加えるのを個別に、全て同時に、又はグループで同時に制御するように構成されている、ことを含む。使用時には、カートリッジ200、300は、典型的には、装置の構成要素(例えば、バルブ、ゲート、及び処理領域)を動作するように構成された熱源のアレイと熱的に関連付けられる。幾つかの実施形態では、熱源は、使用中に装置を動作させるオペレーティングシステムによって動作される。オペレーティングシステムは、所望のプロトコルに従って熱源を作動させるように構成されたプロセッサ(例えば、コンピュータ)を含む。幾つかの実施形態では、温度センサは、好ましくは、ヒーターがこれらを加熱させる電流を受け取っていないような時間に、その近傍の温度に関する情報をプロセッサに送信するように構成される。これは、電流サイクルの適切な制御によって達成することができる。
【0092】
本明細書に記載されているように、圧力を加えることによって、マイクロ流体カートリッジとヒーターアレイの熱源との間の接触を容易にすることができる。幾つかの実施形態では、圧力は約1psiとすることができる。この圧力は、熱源とカートリッジの受熱可能な部分との間の良好な熱接触を達成するのを助けるために、カートリッジと熱源との間の接触を強化するのに十分である。幾つかの実施形態では、圧力は、PCRチャネルが液体で部分的に充填されて、捕捉された空気が熱サイクルの間に熱的に膨張する場合に起こり得るような、底部積層体層304の膨張を防止することができる。
【0093】
各反応チャンバは、増幅プロトコルに従ってサンプル中のヌクレオチドの増幅を実施するために、一連のサイクルを通して加熱される。PCR反応器内のチャネルの内壁は、典型的には、製造時に非常に滑らかに作られ、光沢のある仕上げにまで研磨されている。これは、熱サイクル中に気泡を発生させるPCRチャネルの表面に捕捉される微小量の空気を最小限にするためである。特にPCRチャネルの検出領域での気泡の存在はまた、PCRの進行状況をモニターする際に誤った又は不正確な読み取りを引き起こす可能性がある。
【0094】
図1Aを参照すると、反応チャンバは、チャネルの深さにわたる温度勾配が最小になるような寸法(浅い深さなど)を有することができる。図2Aを参照すると、反応チャンバは、例えば、PCRのためのより大きなサンプルを収容するために、より深くより幅広である。図2Aの例示的な実施形態では、より幅広でより深いウェルは、チャネルの深さにわたる温度勾配が最小になるのを確保し、カートリッジとヒーター基体との間の熱接触を増やす必要があり、これによって最適な熱均一性を確保し、PCR増幅を強化することができる。幾つかの実施形態では、圧縮性パッド314は、圧力分布を改善し、従ってマイクロ流体カートリッジとヒーター基体との間の接触を増加させることによって、より幅広でより深いウェルの使用を可能にすることができる。
【0095】
幾つかの実施形態では、反応チャンバの上方の基体302の領域は、基体内のプラスチックからの熱質量及び自家蛍光性を低減するために、薄肉化された部分とすることができる。また、本明細書に記載されているように、ラベル306は、窓320を含むことができ、圧縮性パッド314は、反応チャンバの可視化及び反応チャンバとの間の光の透過を可能にするために窓324を含むことができる。カートリッジ300の設計は、光学検出器が反応の進行をより確実に監視し、またある量の増幅ヌクレオチドに結合するプローブからの蛍光を検出することを可能にすることができる。幾つかの実施形態では、基体302の領域は、基体302の残りの部分よりも薄い材料で作られ、グレア、自家蛍光、及び蛍光の過度の吸収を低減するようにすることができる。
【0096】
本明細書で説明するように、マイクロ流体カートリッジは、ヒーターユニットを含む装置内の相補的な受け入れベイに位置付けられるように構成することができる。ヒーターユニットの非限定的な例は、図5A及び図5B~5Dに示されている。ヒーターユニットは、1又は2以上の反応チャンバを含むがこれに限定されないカートリッジの特定領域に特定の時間に熱を供給するように構成される。特定の実施形態において、装置は、マイクロ流体ネットワークの領域の加熱を均一に制御する。例示的な実施形態では、複数のヒーターは、マイクロ流体カートリッジのPCR反応チャンバなどの単一の領域を同時に且つ均一に加熱するように構成することができる。他の実施形態では、異なるサンプルレーンの一部は、同時に且つ互いに独立して加熱される。
【0097】
マイクロ流体カートリッジ300は、受け入れベイの相補的な特徴に適合する位置合わせ部材316を有することができる。位置合わせ部材316は、例えば、カートリッジ300の縁部上の切り欠き部とすることができ、受け入れベイは、位置合わせ部材316に対して相補的な特徴を含むことができる。カートリッジを選択的に受け入れることによって、受け入れベイは、装置がカートリッジ上で適切に動作することができるようにカートリッジを配置するのを助けることができる。
【0098】
受け入れベイはまた、マイクロ流体カートリッジ300上で動作する装置の熱源がそこで適切に動作するように構成することができる。例えば、接触熱源は、ベイに選択的に受け入れられるマイクロ流体カートリッジ300上の1又は2以上の別個の位置に熱的に結合できるように、受け入れベイに位置付けることができる。本明細書で更に説明するようなヒーターモジュール内のマイクロヒーターは、対応する熱要求マイクロ構成要素(バルブ、ポンプ、ゲート、反応チャンバ、その他)と整列される。カートリッジ300の特定の領域に熱を供給するためにセットで配置されたマイクロヒーターは、熱を必要とするマイクロ流体構成要素よりも僅かに大きく設計することができ、カートリッジがヒーターセットから中心外れにあっても、個々の構成要素が有効に機能できるようにすることができる。
【0099】
本明細書の他の箇所で更に説明するように、カートリッジの下面は、マイクロ流体カートリッジ300とヒーターモジュールのヒーター基体との間の熱接触を可能にすることができる機械的にコンプライアントな熱伝達積層体304の層を有することができる。幾つかの実施形態では、本明細書に記載されるように、マイクロ流体カートリッジに存在する反応チャンバの信頼性の高い動作のために、1psiの圧力などの最小限の圧力を利用することができる。
【0100】
図3に戻って参照すると、PCR反応チャンバ(例えば、深さ150μ×幅700μの反応チャンバ)が、カートリッジ300の基体層302に示されている。カートリッジの積層体層304(例えば、厚さ125μ)は、PCR反応チャンバの直下にある。幾つかの実施形態において、基体302の領域は、基体302の残りの部分よりも薄い材料で作られ、PCR反応チャンバが加熱サイクルに対してより反応可能にすることができる(例えば、変性ステップ及びアニーリングステップに適切な温度間で急激に加熱及び冷却するために)。ヒーターは、カートリッジがヒーターモジュールによって受け入れられるとき、積層体層304の直下のヒーターモジュールに位置する。
【0101】
幾つかの実施形態では、各反応チャンバは、長い側部と短い側部を有するように構成される。側部の各々は、ヒーター基体に配置された関連する加熱要素に対応する。従って、ヒーター基体は、PCR反応チャンバの側部に沿って配置され、PCR反応チャンバを加熱するように構成された4つのヒーター:すなわち、長い上部ヒーター、長い下部ヒーター、短い左ヒーター、及び短い右ヒーターを含む。幾つかの実施形態では、長い上部ヒーターと長い下部ヒーターの間の小さなギャップは、無視できる温度勾配(PCR反応チャンバの長さに沿った何れかの点でのPCRチャネルの両端で1℃未満の差)をもたらし、従ってPCR反応チャンバ全体で効果的に均一な温度をもたらす。PCR反応器の短い縁部にあるヒーターは、反応器の中心から反応器の縁部までの2つの長いヒーターによって生成される勾配を相殺するように熱を供給する。PCR反応チャンバの周りに位置する1又は2以上のヒーターの他の構成が、本明細書に記載された方法及び装置と適合することは、当業者であれば理解されるであろう。例えば、反応チャンバの「長い」側部は、2又は3以上のヒーターによって加熱されるように構成することができる。
【0102】
熱源は、例えば、抵抗ヒーター又は抵抗ヒーターのネットワークとすることができる。幾つかの実施形態では、少なくとも1つの熱源は、抵抗ヒーター(又はそのネットワーク)、ラジエーター、流体熱交換器及びペルチェ素子から選択される接触熱源とすることができる。接触熱源は、受け入れベイにおいて、受け入れベイにて受け入れられたマイクロ流体カートリッジの1又は2以上の異なる位置に熱的に結合されるように構成することができ、これによって、異なる位置が選択的に加熱される。接触熱源は、典型的には、複数の接触熱源を含み、各々が受け入れベイにおいて、そこに受け入れられたマイクロ流体カートリッジの異なる別個の位置に独立して熱結合されるように構成され、これによって別個の位置が独立して加熱される。接触熱源は、ベイに受け入れられたマイクロ流体カートリッジの1又は2以上の別個の位置と物理的に直接接触するように構成することができる。様々な実施形態において、各接触熱源は、約1ミリメートル(mm)~約15mm(典型的には約1mm~約10mm)の2次元の平均直径を有する別個の場所、又は約1mm2~約225mm2(典型的には約1mm2~約100mm2、又は幾つかの実施形態では約5mm2~約50mm2)の表面積を有する別個の場所を加熱するように構成することができる。熱源の様々な構成は更に、2007年11月14日に出願された「Heater Unit for Microfluidic Diagnostic System」と題する米国特許出願第11/940,315号は、引用により本明細書に組み込まれる。
【0103】
幾つかの実施形態では、ヒーターは、フォトリソグラフィで定義され、エッチングされた金の金属層(典型的には約3,000Åの厚さ)である。400ÅのTiWの層は、金層の上部及び下部に堆積され、接着層として機能することができる。一部の実施形態では、ヒーター基体は、0.4mm、0.5mm、0.7mm、又は1mmの厚さを有するガラス、溶融シリカ又は石英ウェーハである。一部の実施形態では、2μmの酸化ケイ素の薄い電気絶縁層が、金属層の上部で絶縁層として機能する。幾つかの実施形態では、2~4μmのパリレンのような追加の薄い電気絶縁性層もまた、酸化ケイ素表面の上に堆積することができる。幾つかの実施形態では、2つの長いヒーターと2つの短いヒーターが並行して延在し、各PCR反応チャンバに対応する領域を囲んでいる。例示的なヒーターアレイは、2007年11月14日に出願された「Heater Unit for Microfluidic Diagnostic System」と題する米国特許出願第11/940,315号に記載されており、この明細書は、引用により全体が本明細書に組み込まれる。
【0104】
熱伝導率の悪い基体上でも均一な加熱ゾーンを作るために、ヒーターの特定の向き及び配置が使われる。ヒーター基体は、ガラス、石英、ポリイミド、FR4、セラミック、溶融シリカ基体を含む、様々な材料で形成することができる。ヒーターモジュールは、PCR反応チャンバなどの各種マイクロ流体構成要素の独立した動作及び各種サンプルレーンの独立した動作を助けるのに利用される。単一のPCR反応チャンバに対して均一な加熱を行う構成は、複数の独立したPCR反応が行われるマルチレーンPCRカートリッジに適用することが可能である。他の実施形態では、2007年11月14日に出願された「Heater Unit for Microfluidic Diagnostic System」と題する米国特許出願第11/940,315号に更に記載されるように、ヒーターは関連する温度センサを有することができ、或いは、それ自身がセンサとして機能してもよい。
【0105】
一般に、PCR反応チャンバなどのマイクロ流体構成要素の加熱は、適切に構成された微細加工されたヒーターに電流を流すことによって制御される。適切な回路の制御の下で、マルチレーンカートリッジのサンプルレーンは、互いに独立して制御することが可能である。このことは、全てのヒーターが同時に加熱される訳ではなく、所与のヒーターは加熱が必要な時間の一部分だけ電流を受けるので、装置のエネルギー効率がより高くなる。様々な加熱要素を制御可能に加熱する制御システム及び方法は更に、2007年11月14日に出願された「Heater Unit for Microfluidic Diagnostic System」と題する米国特許出願第11/940,315号に記載されている。
【0106】
本明細書に記載のような構成で得られるPCR反応チャンバにおける熱サイクル性能の一例は、反応混合物を92℃に加熱し、この温度を1秒間保持した後、62℃に冷却して、10秒間とどまるように設定されたプロトコルを含むことができる。図示のサイクルタイムは約29秒であり、62℃から加熱して92℃で安定させるのに8秒、92℃から冷却して62℃で安定させるのに10秒が必要である。検出可能な量の増幅材料を生成するために有効なPCRに必要な全体時間を最小限にするために、各サイクルに必要な時間を最小限にすることが重要である。サイクルタイムは、18~25秒、及び20~22秒など15~30秒が望ましい。一般に、25秒の平均PCRサイクル時間、及び20秒の短いサイクル時間は、本明細書に記載された技術では典型的なものである。幾つかの非限定的な例では、マイクロリットル未満(数百ナノリットル又はそれ未満など)の反応容積を使用すると、関連のより小さなPCRチャンバを使用でき、15秒の短いサイクルタイムが可能となる。
【0107】
次に、本技術のマイクロ流体カートリッジと共に使用するのに適した光学検出器の非限定的な例について説明する。図6を参照すると、光学検出器500の一実施形態が示されている。上述したように、ヒーターモジュール400は、マイクロ流体カートリッジ300の下方に配置される。幾つかの実施形態では、圧縮性パッド314のような熱伝導性の機械的コンプライアントな層が、マイクロ流体カートリッジ300と光学検出器500の間の界面に敷設することができる。典型的には、マイクロ流体カートリッジ300及びヒーターモジュール400は、これらのそれぞれの界面表面で平坦とすることができ、例えば、約100ミクロン以内、より典型的には約25ミクロン以内で平坦である。圧縮性パッド314は、マイクロ流体カートリッジ300とヒーターモジュール400との間の熱結合を改善することができる。光学検出器500は、マイクロ流体カートリッジ300の上面上に配置することができる。
【0108】
様々な実施形態において、本装置は更に、1又は2以上の熱源を含む受け入れベイ402に受け入れられたマイクロ流体カートリッジ300の少なくとも一部に力を加えるように構成された1又は2以上の力部材を含むことができる。図6が示す非限定的な実施形態では、力部材は、光学検出器500に関連するレバー組立体502を含む。幾つかの実施形態では、システムは、カートリッジ300に加えられる圧力に依存する。光学検出器500の底面は、平坦にすることができ(例えば、250ミクロン以内、典型的には100ミクロン以内、より典型的には25ミクロン以内)、底面は、カートリッジ300を押圧することができる。カートリッジ300は、圧縮性パッド314を含むことができる。その結果、光学検出器500は、カートリッジ300を圧縮することができ、これによって圧力を生じ、従って、下にあるヒーターモジュール400のへーター基体との熱的接触を形成し、マイクロ流体カートリッジ300全体をおよそ均一にする。
【0109】
本技術は、レバー組立体502を含む光学検出器に限定されないことが理解されるであろう。他の力部材を好適に実装することができる。一実施例では、光学検出器500を含む自動化プラットフォームは、マイクロ流体カートリッジ300上に降下されて押し付けられ、ここでマイクロ流体カートリッジ300が、静止したままの受け入れベイに受け入れられる。自動化プラットフォームの移動は、診断装置のプロセッサによって制御することができる。別の実施例では、受け入れベイ402(及びマイクロ流体カートリッジ300)を含む自動化プラットフォームは、上昇し、光学検出器500の底面に押し付けられ、ここで、光学検出器500は静止したままになる。自動プラットフォームの移動は、診断装置のプロセッサによって制御することができる。
【0110】
従って、本技術による診断装置の実施形態は、少なくとも1つの熱源をマイクロ流体カートリッジ300の少なくとも一部に熱的に結合するために力を加えるように構成される。力の印加は、ヒーターモジュール400とマイクロ流体カートリッジ300内のPCR反応チャンバとの間の一貫した熱接触を確保するために重要である。幾つかの実施形態では、レバー組立体502、類似の機械的力部材、又は自動化プラットフォームは、力を供給し(例えば、5~500N、典型的には約200~250N)、マイクロ流体カートリッジ300の上部又はその一部に圧力(例えば、2psi)を発生させることができる。光学検出器500が静止した受け入れベイ402の上方を移動する実施形態において、光学検出器500の機械的特徴は、光学検出器500が所定位置にある後にマイクロ流体カートリッジ300を押圧し、反応チャンバをヒーターモジュール400とより良好に熱接触させるようにすることができる。このように光学検出器500の位置決めにより、カートリッジ300に圧力を加えることができる。受け入れベイ402が静止した光学検出器500の下方を移動する実施形態において、受け入れベイ402の機械的特徴は、受け入れベイ402が所定位置にある後にマイクロ流体カートリッジ300に押し上げられ、反応チャンバがヒーターモジュール400とより良好に熱接触するようにすることができる。このように受け入れベイ402の位置決めにより、カートリッジ300に圧力を加えることができる。
【0111】
診断装置の別の構成要素で圧力を加えることを含めて、温度均一性及びPCR効率を改善するためにカートリッジ300に圧力を加える他の構成も企図される。図示の実施形態では、圧力はカートリッジ300の上面に加えられ、ヒーターモジュール400はカートリッジ300の下方に配置されるが、他の構成も企図される。
【0112】
光学検出器500は、蛍光色素の吸収帯の光を選択的に放出する光源と、蛍光色素の発光帯の光を選択的に検出する光学検出器とを含むことができ、ここで、蛍光色素は、蛍光ポリヌクレオチドプローブ又はその断片に相当する。或いは、例えば、光学検出器500は、蛍光色素の吸収帯の光を選択的に放出するバンドパスフィルター付きダイオードと、蛍光色素の発光帯の光を選択的に検出するバンドパスフィルター付きフォトダイオードを含むことができる。光学検出器500は、異なる蛍光発光スペクトルを有する複数の蛍光色素を独立して検出するように構成することができ、各蛍光色素は、蛍光ポリヌクレオチドプローブ又はその断片に対応するものである。光学検出器500は、マイクロ流体カートリッジの複数の異なる位置で複数の蛍光色素を独立して検出するように構成することができ、各蛍光色素は、異なるサンプル中の蛍光ポリヌクレオチドプローブ又はその断片に対応する。光学検出器500はまた、所与のサンプルレーンのPCR反応チャンバ内のサンプル中の目的の分析物の有無を検出し、サンプルの存在の肯定的検出時に熱サイクルの開始を条件付けるように構成することができる。幾つかの実施形態では、カートリッジ及び装置は、光学検出器500の読取ヘッドがサンプル入口を覆わないように構成されており、これによって他のサンプルがPCR熱サイクルを受けている間に別個のサンプルの装填を可能にする。好適に構成された検出器の更なる説明は、2007年11月14日に出願された、「Fluorescence Detector for Microfluidic Diagnostic System」と題される米国特許出願第11/940,321号に記載されており、引用により全体が本明細書に組み込まれる。本技術は、ポリヌクレオチドに特徴的なプローブに対して放出される光を検出するように構成された蛍光学検出器を提供するものである。ポリヌクレオチドは、検出器が光通信しているマイクロ流体チャネル内で増幅されている。検出器は、マイクロチャネルに含まれるような微量のポリヌクレオチドを検出するよう構成されている。検出器は、複数のポリヌクレオチドを同時に測定できるように多重化することもできる。
【0113】
本明細書における様々な描写は、マイクロ流体カートリッジの下方に配置されたヒーター基体、及びマイクロ流体カートリッジの上部に配置された検出器を記載しているが、反転配置も同様に機能することは理解されるであろう。このような実施形態では、ヒーターはマイクロ流体基体上に押し下げられてこれと接触し、検出器は、基体の下方に取り付けられ、マイクロ流体カートリッジに向かって上向きに光を放出して、マイクロ流体カートリッジから出る光を検出器に向かって下向きに集めるように配置される。
【0114】
圧縮性パッド314は、本明細書に記載されるような多くの利点を提供することができる。マイクロ流体カートリッジ300の圧縮性パッド314は、例えば、マイクロ流体カートリッジの上面上の検出器の底面の圧力分布、ひいては受け入れベイによってマイクロ流体カートリッジの底面全体にかかる圧力の分布を改善するように設計することが可能である。マイクロ流体カートリッジ300の圧縮性パッド314は、例えば、カートリッジとヒーターモジュールの間の均一な接触を改善するために、熱均一性を高めるように設計することができる。マイクロ流体カートリッジ300のための圧縮性パッド314は、例えば、より広い及び/又はより深い反応チャンバへの熱の均一な適用を促進することによって、PCR増幅を強化するように設計することができる。
【0115】
上述したように、幾つかの実施形態では、圧縮性パッド314は、マイクロ流体カートリッジ300の上部に接着される。カートリッジ300は、本明細書に記載されるようなシクロオレフィンポリマー(COP)で作られた基体302を含むことができる。カートリッジ300は、PCR増幅のための分子材料を含むように構成された24個のマイクロ流体反応チャンバを含むことができる。PCR増幅は、所与の時間内に各反応チャンバ内の流体を特定の温度まで加熱及び冷却することを必要とする。使用時には、カートリッジ300は、ヒーター基体の上に置かれる。幾つかの実施形態では、ヒーター基体は、下にあるヒーターとの表面である。使用時には、圧縮荷重が加えられ、カートリッジ300をヒーターモジュール400と光学検出器500の間にしっかりと保持する。光学検出器500は、剛性のある金属表面を含む剛性のある表面を含むことができる。本技術の実施形態で適用される圧縮荷重は、カートリッジ300とヒーターモジュール400の間の最適に分散された物理的接触を含む、カートリッジ300とヒーターモジュール400との間の物理的接触を確保する。幾つかの実施形態では、熱は、熱伝導又は直接のヒーター接触を介してヒーターからカートリッジ300内の流体に伝達される。
【0116】
表面粗さ、機械的変動、及び/又は固有の材料の不規則性に起因して、一緒にされるマイクロ流体カートリッジ300の剛性表面及びヒーターモジュール400の剛性表面は、互いに最適な接触に十分な平坦性を提供することができない。幾つかの実施形態では、圧縮性パッド314は、カートリッジ300の上に付着される高圧縮性材料を含む。圧縮性パッド314は、別の剛体システムにコンプライアンスの要素を導入することによって、2つの剛性表面の間の接触を改善することができる。圧縮性パッド314の材料の圧縮性により、ある領域が他の領域と異なる量を圧縮することが可能となる。この差動圧縮は、2つの表面における固有の機械的及び材料表面の変動に対応し、カートリッジ300全体にわたってはるかに均一な圧力分布をもたらす。コンプライアントなパッド314は、カートリッジ300とヒーターモジュール400との間のより均一な接触を可能にし、従って、マイクロ流体反応チャンバの各々に、より完全で一貫した熱伝達を提供する。
【0117】
圧縮性パッド314により、カートリッジ300とヒーターモジュール400との間のより均一な物理的接触及び圧力分布を可能にする。このことは、圧力が均一であることで熱損失が少なく、より多くの熱をカートリッジ300に直接伝達することができるため有利である。これは、有利には、加熱の均一性を改善し、本技術の実施形態におけるPCR増幅の達成と一貫性に直接影響する。
【0118】
ヒーターモジュール400のヒーターは、カートリッジ300にて受け入れられた流体サンプルに熱伝導を与える。ヒーターモジュール400に対して圧縮性パッドなしのカートリッジ300を圧縮すると、機械的及び材料表面のばらつき、並びにヒーター表面及び/又はマイクロ流体カートリッジの表面における固有の屈曲及び湾曲に起因して、他の領域よりも接触が少ない領域が存在する。この結果、カートリッジ300全体にわたって不均一な圧力分布が生じる。使用時には、ヒーターとカートリッジ300の間の物理的接触が不十分な領域は、熱損失を生じることになる。従って、物理的な接触が不十分な反応チャンバには、より少ない熱が供給される。この結果、PCR増幅に対する遅延と不整合が生じる。物理的な接触の不整合は、アッセイ全体の性能に有意な変動をもたらす可能性がある。
【0119】
本技術による圧縮性パッド314の実施形態は、パッドの一部の領域が他の領域よりも圧縮されることを可能にする。この圧縮性は、システムにおける固有の機械的及び材料表面のばらつきに対応し、カートリッジ300の全ての領域がより均等な圧力分布を有することを保証する。圧縮性パッド314は、カートリッジ300とヒーターモジュール400内のヒーターとの間の物理的接触を改善し、熱損失を低減し、及び/又はより良いPCR性能をもたらすことができる。
【0120】
上述したように、圧縮性パッド314は、ラベル306に直接組み込むことができる。ラベル306は、バーコード及び製造情報並びに他の種類の情報を表示するための上面を含むことができる。ラベル306は、薄いポリエステルフェイストック材で作られており、これは固有のコンプライアンスを有していない。幾つかの実施形態では、圧縮性パッド314は、既存のラベル構造に直接統合される。これを達成するための様々な方法がある。第1の非限定的な例では、ラベル306は、圧縮性パッド314に結合して一体化ラベル-パッド構造を形成することができる接着剤下面を含むことができる。第2の非限定的な例では、ラベル情報は、圧縮性材料上に直接適用され、ラベル306のポリエステルフェイスストックは完全に排除される。幾つかの実施形態では、コンプライアント材料を既存のラベルに直接統合することで、他の実施形態と比較して剥離を低減することができ、既存の製造プロセス及びサプライチェーンシステムに容易に導入することができる。図3は、上述の第1の非限定的な例の実施形態を示し、圧縮性パッド314は、PCRカートリッジ300の上部に接着され、圧縮性パッド314の上に白色のカートリッジラベル306が付着している。ラベル306は、構造が見やすいように剥がされている。
【0121】
幾つかの実施形態では、圧縮性パッド314は、完全に別個の圧縮性パッドであり、最終製造のマイクロ流体カートリッジの一体部分を形成しない。圧縮性パッド314は、カートリッジ300の上面308など、カートリッジ300と接触して可逆的に配置することができる。幾つかの実施形態では、圧縮性パッドは、カートリッジ300のラベル306の上に適用される(この実施形態は、図3Aには示されていない)。幾つかの実施形態では、圧縮性パッドは、PCR増幅の完了後、別のカートリッジ300上に適用するために再使用可能とすることができる。この実施形態は、本明細書に開示される他の実施形態と同様に、反応チャンバへの熱エネルギー伝達の改善を示す。
【0122】
幾つかの実施形態では、圧縮性パッドが、カートリッジの代わりに、光学リーダー又はその表面に適用される(実施形態は図示せず)。この実施形態の1つの利点は、圧縮性パッドがもはやマイクロ流体カートリッジの一部でないことである。本明細書に記載されるように、幾つかの実施形態において、マイクロ流体カートリッジは使い捨てである。この実施形態では、圧縮性パッドは、使い捨てのマイクロ流体カートリッジの一部を形成せず、代わりに、器具の恒久的な部分となる(ここで、各カートリッジが使用され、廃棄されるので、複数回再使用される)。本実施形態における圧縮性パッドは、パッドの再利用性に起因して、大幅なコスト削減を生み出すことができる。幾つかの実施形態では、光学検出器500は、再使用可能な圧縮性パッドを収容するために再設計又は変更されてもよい。場合によっては、本例の圧縮性パッドは、特定の使用回数の後、又は特定の時間の後に交換される。このように圧縮性パッドを定期的に交換することで、器具に組み込まれたパッドが最適な圧縮特性を有することを保証することができる。
【0123】
本明細書で説明するように、カートリッジ300にわたる熱均一性は、カートリッジとヒーターモジュール400の表面との間の物理的接触に依存する。幾つかの実施形態では、カートリッジ300への熱伝達は、直接伝導に依存することができる。本明細書に記載されるように、ヒーター基体及びカートリッジの1又は2以上に固有の表面不規則性、曲率、及び機械的変動があり、2つの表面は、互いに最適な接触のために十分な平坦性を提供できない場合がある。有利には、本技術の実施形態は、極めて低い圧縮力撓みを有する材料を組み込んだ圧縮性パッド314を含む。圧縮力撓みは、材料を所与の距離だけ圧縮するのに要する力の量である。圧縮力撓みが小さい材料は、より容易に圧縮される。本発明による圧縮性パッドの実施形態は、高度に圧縮可能であるので、ヒーター表面、マイクロ流体カートリッジ、及び光学検出器の異なる部分は、これらの構成要素が他の構成要素と接触するタイミングに応じて、僅かに異なる量だけ圧縮することができる。例えば、圧縮性パッド314は、ヒーターモジュール400及び/又はカートリッジ300の異なる部分が、表面間の接触が最初に起こるタイミング及び場所によって、僅かに異なる量だけ圧縮することができる。圧縮性パッド314は、他の剛性システムにあるレベルの柔軟性を導入することができる。圧縮性パッド314は、システム全体における何れかの固有のばらつきを調整することができる。従って、圧縮性パッド314は、カートリッジ300全体にわたる圧力分布を改善することができる。圧縮性パッド314は、従って、24個の反応チャンバの全てが、ヒーターモジュール400のヒーターと十分に接触するだけでなく、ヒーターモジュール400のヒーターと最適に接触することを保証するのを助けることができる。この改善された熱均一性は、PCR増幅をより一貫したものにし、変動を減少させ、アッセイ全体の性能を改善することができる。
【0124】
本明細書に記載されるように、材料の特性を決定する方法には、デュロメータ検査と圧縮力撓み試験の2つがある。これらの方法は、材料の相対的な硬度又は固さを決定するのに有用である。デュロメータ検査は、固体材料の硬度を測定するのに有効であり、例えば固体材料にはある範囲の硬度を有する。圧縮力撓み(CFD)検査は、フォーム又はスポンジ状、もしくは他の固くない素材の測定に有用とすることができる。どちらのタイプの測定もASTMのガイドライン及び方法に基づいており、これらは、引用により全体が本明細書に組み込まれる。
【0125】
デュロメータ検査は、ショアハーネススケール、例えばショアAを利用する。ショアスケールは、利用される検査装置、特に材料に接触する検査圧子の構成と相関がある。圧子は、材料上の小さな接触点に荷重を加える。デュロメータ検査では、材料の表面は検査接触点に対して比較的均一な硬度であると仮定している。硬さの異なる材料など、材料の種類によって異なるショアスケールが使用されるのが一般的である。一例として、ショアAはより柔らかいエラストマー材料に、ショアDはより硬いエラストマー材料に一般的に有用である。
【0126】
これに対し、圧縮力撓み検査は、材料サンプル全体を圧縮するもので、サンプルは通常10cm程度である。この方法は、様々なレベルの歪みで応力量を決定することを含む。本方法は、異なる圧縮レベルで硬度又は硬さを測定することができる。デュロメータ検査と比較して、圧縮力撓み検査は、より大きな検査サンプルを可能にし、大きなサンプルは、材料の特性をより正確に測定することを容易にすることができる。
【0127】
本技術の実施形態において、本発明者らは、圧縮性パッド314の硬度を決定するため、ひいては特定の圧縮性パッド材料の適合性を評価して改善されたPCR検査結果を達成するために、デュロメータ検査が圧縮力撓み検査よりも典型的には正確さが低いことを発見した。圧縮性パッド314は、本明細書に記載されるような圧縮性材料を含む。これらの材料の硬度は、圧縮レベルに依存することができる。これらの材料の硬度は、検査領域に依存することができ、検査領域から検査領域まで変化することができる。本明細書に記載されるように、デュロメータ検査用の圧子は、材料上の小さな点のみを測定し、材料の全表面の小さな領域をカバーする。この小さな点は、圧縮性パッド314の材料によっては、より大きなサンプルを代表するものではない可能性がある。これに対して、圧縮力撓み検査は、より大きなサンプルサイズに対する平均的な固さを決定する。圧縮力撓み検査は、設計された用途に典型的な圧縮レベルに基づいて、材料の硬度を決定することができる。例えば、圧縮力撓み検査は、検査装置の典型的な圧縮レベル、及び幾つかの実施形態では、圧縮性パッド314を圧縮するように設計された光学検出器500の圧縮レベルに基づいて、材料の硬度を決定することができる。本明細書で説明するように、圧縮力撓み検査は、圧縮性パッド314がマイクロ流体カートリッジ300に適用されたときにどのように機能するかの、より代表的な測定とすることができる。
【0128】
[実施例1]
本技術の実施形態を一般的に説明してきたが、例示のみを目的として本明細書に提供され、限定を意図しない特定の具体例を参照することにより、更なる理解を得ることができる。
【0129】
本実施例では、圧縮性パッド314の材料の同定について説明する。図7A~7Cは、圧縮性パッドなしの場合の目的の分析物のアッセイ検査の結果を示す。図8A~8Dは、低デュロメータシリコーン圧縮性パッドを用いた目的の分析物に対するアッセイ検査の結果を示す図である。図9A-9Dは、PORON(登録商標)フォーム圧縮性パッドを用いた目的の分析物に対するアッセイ検査の結果を示す。
【0130】
本明細書に記載されるように、マイクロ流体カートリッジ100、200、300は、多くの異なるタイプの目的の分析物の有無を検出するように調製されたサンプルに対して増幅プロトコルを実行するために使用することができる。本明細書に記載の自動分子診断検査システムの実施形態は、分析物特有アッセイに従って検体を調製してPCR対応サンプルを得ることができ、これが、システム内に受け入れられるマイクロ流体カートリッジに導入される。一例の分析物特有検査は、目的のウイルス分析物に対するアッセイ検査を含む。この検査は、分子ウイルス負荷アッセイを用いた目的のウイルス分析物の検出に関する。このアッセイは、サンプル中の目的のウイルス分析物の量(「ウイルス負荷」)を定量化するリアルタイムRT-PCRアッセイである。アッセイは、上述したように、本技術による自動分子診断検査システムで実施することができる。ウイルス負荷とは、所与の容積中のウイルスの量の数値化表現である。これは、1mL当たりのウイルス粒子として表すことができる。ウイルス負荷が多いほど、ウイルス感染症が重症であることと関連性がある。患者から採取した流体検体中の生きたウイルス量を推定することで、ウイルス量/mLを算出することができる。例えば、ウイルス負荷は、血漿1ml当たりのRNAコピー数で示すことができる。アッセイは、抗レトロウイルス療法中のウイルス負荷を追跡するのに使用することができ、これにより、介護者は、治療中のウイルス分析物の量の変化を測定し評価することができる。
【0131】
本実施例のアッセイは、2つのRNAキャリブレータシーケンス、すなわち、Hi Cal及びLo Calを使用することができる。RNAキャリブレータシーケンス(「キャリブレータ」)は、アッセイ測定の出力を調整するために使用される、既知のシーケンス及び量の合成RNA転写物である。これは「コントロール」とは対照的に、検査結果の妥当性を評価するためにアッセイに含めることができる標準サンプルである(検査結果の出力を調整するためではなく)。キャリブレータは、相補的な塩基配列を有する分子と結合するように設計されており、プローブとも呼ばれる。この特定の結合プロセスをハイブリダイゼーションと呼ぶ。サンプル調製時に、既知量のキャリブレータが患者検体及びPCR試薬と混合される。調製した検体を増幅し、サンプル中の標的核酸(目的のウイルス分析物)を検出し定量する。キャリブレータと対応するプローブの間のハイブリダイゼーションの程度を用いて、対応するプローブとの標的核酸の測定値を正規化する。キャリブレータは、標的核酸と同じ効率で増幅し、変動要因(装置やマトリックスのばらつきなど)に対して同様に反応するよう設計されている。以下の実施例では、検査サンプル中のHi Calキャリブレータ、目的のウイルス分析物、Lo Calキャリブレータの量(qCt測定で示される)を測定し、他の特性(例えば、ymaxEP)を評価するための検査を実施した。
【0132】
サンプル中の標的核酸の定量化は、対数スケールでの蛍光と増幅サイクル数との関係に依存する。蛍光が所与の検出閾値を超えるサイクル数をサイクル閾値(Ct)と呼ぶことがある。増幅の際、標的核酸の量は1サイクルごとに2倍になる。よって、例えば、サイクル閾値が他のサンプルより3サイクル早いサンプルには、23=8倍の標的核酸が含まれていることになる。以下のアッセイ検査では、2つのパラメータを検査した。第1のパラメータは、複数の増幅サイクルを含むサーマルサイクリングプロトコルにおいて蛍光が検出された第1の増幅サイクルを示すqCtスコアである。第2のパラメータは、複数の増幅サイクルの後の最終的な静止振幅における最大蛍光単位を示すymaxEPスコアである。
【0133】
本明細書に記載される目的のウイルス分析物のウイルス負荷アッセイ検査の実施形態に最適なサンプル量は、約25μL(約4μLではなく)の範囲である。上記のように、このようなサンプル量は、本技術のマイクロ流体カートリッジの厚いバージョン(約1.24mmのカートリッジ厚さに対して、より広く深いウェルを有するカートリッジの厚さは約1.68mm)において、より広く深い反応チャンバを使用して得ることができる。厚みを増したカートリッジは、上記のように6倍の容積を含む、増量されたPCR反応チャンバに対応することができる。しかしながら、ウイルス負荷検査用に実装された厚いカートリッジは、エッジエフェクト不良(サンプルレーンの外側)、リバースエッジエフェクト不良(サンプルレーンの内側)、及びランダム不良が発生する可能性がある。本明細書に記載したように、圧縮性パッド314をカートリッジ300の上部に追加したとき、本技術の発明者らは、ウイルス負荷アッセイ検査の結果が著しく改善されたことを見出した。本明細書に記載の圧縮性パッド314は、器具又は消耗品(例えば、マイクロ流体カートリッジ)にパッドを組み込むことに関する長期的な課題を克服することができる。圧縮性パッド314は、増加した厚さ及び増加した容積のウェルを有するマイクロ流体カートリッジに関連する圧力分布効果に対する解決策と考えることができる。以下の例は、カートリッジベースの解決策を説明しているが、幾つかの実施形態では、光学検出器500に結合された圧縮性パッドは、本明細書に記載された圧縮性パッドの特徴の何れかを含むことができる。
【0134】
この実施例では、ウイルス負荷アッセイ検査は、本明細書に記載のカートリッジ200を含み、カートリッジ200は、本明細書に記載のカートリッジ100よりも広く深いウェル(例えば、PCR反応チャンバー)を有する。この調査デザインは、Geometry C Prototypeカートリッジを使用し、このカートリッジでは、各反応チャンバは、約3.5mmの幅寸法、約0.83mmの深さ寸法、約10mmの長さ寸法、及び約25.2μLの容積を有している。調査デザインは、液体マスターミックスと、テスターが手作業で充填したカートリッジとを含んでいた。各実行では、カートリッジの第1バンクの反応チャンバと第2バンクの反応チャンバの両方をテストした。実施した検査はPCR増幅である。検査は、BD MAX(商標)装置(Becton,Dickinson and Company, Franklin Lakes, NJ)2台で実施した。ウイルス負荷アッセイ検査には、Hi CalとLo Calという2つのRNAキャリブレータシーケンスを使用した。
【0135】
図7A~7Cは、本技術による圧縮性パッドを使用しない場合のウイルス負荷アッセイ検査の結果を示す。この検査では、より広くより深いウェルを有するカートリッジ200が、圧縮性パッドなしで利用された。図7Aは、サンプル中の標的核酸の定量化を示す図である。これは、蛍光量と増幅サイクル数との関係を対数スケールで示したものである。X軸は、蛍光の変化率を示すqCtスコアである。サイクル数がy軸に沿って示される。PCRなどの熱サイクル中、1サイクルごとに標的核酸の量が2倍になる。グラフ上の各色の線は、別個の反応チャンバを示す。本明細書に記載されるように、マイクロ流体カートリッジは、12のカートリッジレーンに配置された24のサンプルレーンを含むことができ、各カートリッジレーンは、2つのサンプルレーン312を含むカートリッジ300の領域に対応する。各カートリッジレーンは、反応チャンバの第1バンクにおける反応チャンバと、反応チャンバの第2バンクにおける反応チャンバとを含むことができる。同じカートリッジレーン内の各反応チャンバのqCtスコアは、図7Aにおいて同じ色が割り当てられている。図7Aの各曲線において、蛍光が検出される第1の増幅サイクルを示すqCtスコアがある。図7Aの各曲線には、複数のサイクルの後の最終的な静止振幅における最大蛍光単位を示すymaxEPスコアがある。このデータは、図7B及び図7Cにも示されている。
【0136】
図7Bは、カートリッジ200の24個の反応チャンバの各反応チャンバの個々のqCtスコアを示す図である。上側のグラフは、反応チャンバ226の第1バンクの反応チャンバを示す。下段のグラフは、第2バンクの反応チャンバ228の反応チャンバを示す。12個のカートリッジレーンをY軸に示す。蛍光が検出された最初の増幅サイクルを示すqCt scoreをx軸に示す。Hi CalのqCtスコアはカートリッジレーン間でほぼ一定であり、Lo CalのqCtスコアはカートリッジレーン間でほぼ一定であるが、第1バンクのカートリッジレーン5と10で大きなばらつきがあり、このことは、蛍光が検出される第1の増幅サイクルが、24個の検出チャンバ間で大きく異なることを示している。このような反応チャンバのばらつきは、表面のばらつき、カートリッジとヒーター基体との接触不良、力の印加によるカートリッジの圧縮不良、その他など、様々な要因に起因している。特に、第1のバンクのカートリッジレーン4~10の反応チャンバは、第1のバンクのカートリッジレーン1~3及び11~12の反応チャンバよりも、目的のウイルス分析物に対するqCtスコアが高くなっている。特に、第2のバンクのカートリッジレーン2、3、5、10の反応チャンバは、第2のバンクのカートリッジレーン1、4、6-9、11-12の反応チャンバよりも目的のウイルス分析物に対するqCtスコアが高くなる。
【0137】
図7Cは、各反応チャンバのymaxEPを示す図である。上側のグラフは、第1のバンクの反応チャンバに含まれる反応チャンバを示す。下段のグラフは、第2のバンクの反応チャンバにおける反応チャンバを示す。12個のカートリッジレーンをY軸に示している。ymaxEPスコアは、複数サイクル後の最終静止振幅における最大蛍光単位を示す。Hi CalのymaxEPスコア、Lo CalのymaxEPスコア、ウイルス分析物サンプルのymaxEPスコアは、反応チャンバによってばらつきがある。最終的な静止振幅は、反応チャンバにわたって一貫していない。この反応チャンバのymaxEPスコアのばらつきは、表面のばらつき、カートリッジとヒーター基体の接触不良、力を加えてのカートリッジの圧縮不良など、様々な要因に起因する。このばらつきは、PCR反応の非効率性を示し、あるカートリッジのレーンが同じ最大蛍光を満たさないようになる。特に、第1のバンクのカートリッジレーン1、2、11、12の反応チャンバは、第1のバンクのカートリッジレーン3~10の反応チャンバよりも、目的のウイルス分析物について高いymaxEPスコアを有している。特に、第2のバンクのカートリッジレーン1、4、6、7、8、9、11、12の反応チャンバは、第2のバンクのカートリッジレーン2、3、5、10の反応チャンバと比較して、目的のウイルス分析物に対するymaxEPスコアが高い。このベースラインは、本技術の圧縮性パッドが実施されていない場合にマイクロ流体カートリッジ200に生じる可能性がある変動を示すものである。全体として、反応チャンバにおける増幅結果は一貫していない。例えば、異なる反応チャンバは、他のチャンバよりもPCRの効率が高い。図7A~7Bにおいて、qCtスコア及びymaxEPスコアの両方において広い変動を示唆するデータは、強固にクラスタ化されていない。
【0138】
図8A~8Dは、低デュロメータシリコーン圧縮性パッドを実装するカートリッジを使用したウイルス負荷アッセイ検査の結果を示す図である。使用された低デュロメータ固体シリコンは、Rogers CorporationによるBISCO(登録商標)HT-6210シリコーンであった。図8Aは、カートリッジ200の上部に結合された低デュロメータシリコーン圧縮性パッドの実施形態を示す。図8Bは、サンプル中の標的核酸の定量化を示す図である。蛍光と増幅サイクル数との関係を対数スケールで示した図である。x軸は、蛍光の変化率を示すqCtスコアである。y軸は、サイクル数である。図8Bでは、図7Aよりも初期増幅においてデータがよりタイトにクラスタ化されており、各反応チャンバにおけるqCtスコアのばらつきが少ないことが示唆される。図8Bでは、振幅が一定になるにつれてデータがタイトにクラスタリングされておらず、ymaxEPスコアのばらつきが大きいことが示唆される。
【0139】
図8Cは、各反応チャンバの個々のqCtスコアを示す図である。上側のグラフは、反応チャンバ226の第1のバンクにおける反応チャンバを示す。下側のグラフは、第2のバンクの反応チャンバ228の反応チャンバを示す。Hi CalとLo CalのqCtスコアは、カートリッジのレーン間でほぼ一定である。しかしながら、ウイルス分析物サンプルについては、第1のバンクのカートリッジレーン5及び7でqCtスコアにばらつきがある。
【0140】
図8Dは、各反応チャンバのymaxEPを示す図である。上側のグラフは、第1のバンクの反応チャンバにおける反応チャンバを示す。下側のグラフは、第2のバンクの反応チャンバに含まれる反応チャンバを示す。Lo CalのymaxEPスコアとウイルス検体サンプルのymaxEPスコアは、第1のバンクの反応チャンバでばらつきがある。複数サイクル後の最終静止振幅の最大蛍光値は一定ではない。特に、第1のバンクのカートリッジレーン1-3、9-12の反応チャンバは、第1のバンクのカートリッジレーン4-8の反応チャンバよりも、ウイルス分析物及びLo CalのymaxEPスコアが高くなっている。従って、低デューロシリコン圧縮性パッドは、グラフに示すように一貫性のないPCR反応を生じる。低デューロシリコン圧縮パッドを使用したこの例では、異なる反応チャンバが他のチャンバよりも効率的にPCRを行うことができる。
【0141】
図9A-9Dは、PORON(登録商標)フォームで作られた圧縮性パッドを実装したカートリッジを使用したウイルス負荷アッセイ検査の結果を示している。図9Aは、カートリッジ200の上部に結合されたPORON(登録商標)フォーム圧縮性パッドの実施形態を示す図である。PORON(登録商標)フォームは、Rogers Corporationによるファインピッチのオープンセル・ウレタン・フォームである。材料は、PORON(登録商標)セルラーポリエステルウレタン4790-92を使用した。図9Bは、サンプル中の標的核酸の定量化を説明する図である。これは、蛍光量と増幅サイクル数との関係を対数スケールで示したものである。x軸は、蛍光の変化率を示すqCtスコアである。y軸は、サイクル数である。図9Bでは、図7A及び図8Bに比べて、初期増幅についてデータがより密にクラスタ化されており、各反応チャンバのqCtスコアのばらつきが少ないことが示唆される。図9Bにおいて、データは、図7A及び8Bよりも最終増幅についてより堅くクラスタ化されており、各反応チャンバについてのymaxEPスコアのばらつきがより少ないことを示唆する。図9Bにおいて、左から右で、線の第1のクラスタはHi Calに関連し、線の第2のクラスタはLo Calに関連し、線の第3のクラスタはウイルス分析物サンプルに関連する。
【0142】
図9Cは、各反応チャンバの個々のqCtスコアを示す図である。上側のグラフは、反応チャンバ226の第1のバンクにおける反応チャンバを示す。下側のグラフは、第2のバンクの反応チャンバ228の反応チャンバを示す。Hi Cal、Lo Cal、及びウイルス分析物サンプルのqCtスコアは、カートリッジレーン全体で一貫している。Hi Cal RNAキャリブレータシーケンスについては、初期振幅、言い換えれば第1の検出は、約20サイクル目で発生した。HiCal RNAキャリブレータシーケンスでは、初期振幅、つまり第1の検出は約32周期目に起こった。Lo Cal RNAキャリブレータシーケンスの場合、初期振幅、つまり第1の検出は約36周期目に起こった。これらの結果は、各カートリッジレーンで一貫している。これらの結果は、第1のバンク及び第2のバンクの各バンクで一貫している。これらの結果は、24個の反応チャンバのうち各反応チャンバについて一貫している。
【0143】
図9Dは、各反応チャンバのymaxEPスコアを示す図である。上側のグラフは、第1のバンクの反応チャンバに含まれる反応チャンバを示す。下側のグラフは、第2のバンクの反応チャンバである。Hi Cal、Lo Cal、及びウイルス分析物サンプルのymaxEPスコアは、カートリッジレーン全体で一貫している(ばらつきが比較的小さい)。Hi Cal RNAキャリブレータシーケンスの場合、複数サイクル後の最終静止振幅における最大蛍光単位は約2000である。Lo Cal RNAキャリブレータシーケンスの場合、複数回繰り返した後の最終的な静止振幅における最大蛍光単位は約7000である。ウイルス分析物サンプル配列の場合、複数サイクル後の最終静止振幅における最大蛍光単位は約5500である。これらの結果は、各カートリッジレーンについて一貫している。これらの結果は、第1のバンクと第2のバンクの各バンクで一貫している。これらの結果は、24個の反応チャンバの各反応チャンバについて一貫している。
【0144】
上記で概略的に示されたように、異なる材質の圧縮パッドを用いて追加検査を実施した。追加の検査は、グラファイトフォイルで形成された圧縮性パッドを含む。グラファイトフォイルはLaird社のTgon(商標) 820であった。別の検査では、熱伝導性シリコンを塗布したグラスファイバー製の圧縮パッド含んでいた。この材料は、ThermaCool(登録商標)社のTF-1879であった。更なる検査には、シリコーンスポンジで形成された圧縮性パッドを含んでいた。材料は、ロジャース社製BISCO(登録商標) HT-800 シリコーンスポンジであった。更に別の検査は、熱伝導性シリコーンスポンジに熱伝導性コーティングを施した圧縮パッドを含んでいた。材料は、ThermaCool(登録商標)社のR-10404シリコーンスポンジであった。検査設計は、低デュロメータシリコーン圧縮性パッド(図8A-8D)及びPORON(登録商標)フォーム圧縮性パッド(図9A-9D)に関して上に概説したものと同様であった。
【0145】
圧縮性パッド314と共に使用するための材料の評価において、選択された材料のグループについて予想外の結果が得られた。幾つかの実施形態では、圧縮性パッドは、圧縮性材料を含む。幾つかの実施形態では、圧縮性パッドに適した材料は、圧縮力撓み(この場合、材料をその元の高さの25%に撓ませるための応力の量(psiで測定))に基づいて選択される。材料は、圧縮力撓みが30psi未満、29psi未満、28psi未満、27psi未満、26psi未満、25psi未満、24psi未満、23psi未満、22psi未満、21psi未満、20psi未満、19psi未満、18psi未満、17psi未満、16psi未満、15psi未満、14psi未満、13psi未満、12psi未満、11psi未満、10psi未満、9psi未満、8psi未満、7psi未満、6psi未満、5psi未満、4psi未満、3psi未満、2psi未満、1psi未満、その他である材料を含む。材料は、0~5psi、5~10psi、10~15psi、15~20psi、20~25psi、25~30psi、0~3psi、1~4psi、2~5psi、3~6psi、4~7psi、5~8psi、6~9psi、7~10psi、8~11psi、9~12psi、10~13psi、11~14psi、12~15psi、13~16psi、14~17psi、15~18psi、16~19psi、17~20psi、21~24psi、22~25psi、23~26psi、24~27psi、25~28psi、26~29psi、27~30psiなどの間の圧縮力撓みを有する材料を含むことができる。材料は、圧縮力撓みが5psi以下、10psi以下、15psi以下、20psi以下、25psi以下、30psi以下、その他である材料を含むことができる。一部の実施形態では、検査方法は、0.51cm/min(0.2”/min) Strain Rate with Force Measured @ 25% Deflectionである。一部の実施形態では、0.3~3.5psi(2~24kPa)の範囲である。幾つかの実施形態では、典型的な値は1.7psi(12kPa)である。
【0146】
本明細書に記載されるように、25%で測定されたデュロメータショアA及び圧縮力撓みの両方は、圧縮性の測定値である。これらの測定において、数値が低いほど圧縮しやすいことを示し、より良い圧力分布とより良いPCR性能につながると期待される。予想外なことに、本発明者らは、デュロメータショアAは、適切な材料の指標としては不十分であることを発見した(図7B~7Dを参照)。低デュロメータシリコーンは、通常、硬度、デュロメータ、ショア「A」が10であり、PORON(登録商標)フォームは、通常、硬度、デュロメータ、ショア「A」が3未満である。当業者であれば、これらの材料は両方とも容易に圧縮され、従って同様のPCR性能をもたらすと予想される。しかしながら、予想に反して、低デュロメータシリコーンはPORON(登録商標)フォームと著しく異なる性能を示した。追加の材料についても検査を行ったが、デュロメータショアAとPCR性能の間に相関は見られなかった。
【0147】
意外なことに、25%で測定した圧縮力撓みは、適切な材料の優れた指標となった。低デュロメータシリコーンは通常、約30psiの圧縮力撓みを示し、PORON(登録商標)フォームは、通常2~5psiの圧縮力撓みを示す。追加の材料についても検査を行ったところ、圧縮荷重撓み量とPCR性能に相関が見られた。特に、25%撓みで測定した圧縮力撓みが30psi未満の材料は、改善されたPCR性能を示した。幾つかの実施形態では、0~20psiの圧縮力撓みを有する材料は、改善されたPCR性能を有していた。
【0148】
本明細書に記載されるように、硬度、デュロメータ、ショア「A」、及び25%で測定した圧縮力撓みの両方が、材料の特性を決定する。これらの方法は、材料の相対硬度又は固さを決定するのに有用である。当業者であれば、硬度、デュロメータ、ショア「A」が低く、25%で測定した圧縮荷重撓みが低い材料は、より良好なPCR性能につながることが期待される。しかしながら、(硬度、デュロメータ、ショア「A」ではなく)25%で測定された圧縮荷重撓みのみが、PCR性能を向上させるのに適した材料を示す相関性を有していた。
【0149】
幾つかの実施形態において、圧縮性パッドは、以下に示されるような材料特性を含む。幾つかの実施形態において、圧縮性パッドは、ASTM D 3574-95、テストAによる密度を含む。密度は、225~255kg/m3の間とすることができる。幾つかの実施形態では、圧縮性パッドは、パッドのz軸に沿って測定された厚さを含む。厚さは、0~5mm、例えば、0~1mm、1~2mm、2~3mm、3~4mm、4~5mm、約3mm(0.12インチ)+/-10%の範囲とすることができる。幾つかの実施形態において、圧縮性パッドは、ASTM D 2240-97の2による硬度、デュロメータ、ショア「O」を含む。ASTM D 1667-90 Test D @ 23°C (73°F)による2の圧縮永久歪みを含む。一部の実施形態では、圧縮性パッドは、ASTM D 3574-95 テスト D @ 70°C (158°F)に従って、10の圧縮永久歪を含む。幾つかの実施形態では、圧縮性パッドは、ASTM D 2632-96による、4の垂直反発による復元力を含む。
【0150】
幾つかの実施形態において、圧縮性パッドは、以下に示されるような材料特性を含む。幾つかの実施形態において、圧縮性パッドは、ASTM D412による120psi(828kPa)の引張強度を含む。幾つかの実施形態では、圧縮性パッドは、パッドのz軸に沿って測定された厚さを含む。厚さは、0~5mm、例えば、0~1mm、1~2mm、2~3mm、3~4mm、4~5mm、約1mm(0.035インチ)+/-10%の範囲とすることができる。幾つかの実施形態では、圧縮性パッドは、150%のASTM D412による伸び率を含む。幾つかの実施形態では、圧縮性パッドは、13のASTM D 2240による硬度、デュロメータ、ショア「A」を含む。一部の実施形態では、圧縮性パッドは、ASTM D1056による25%での圧縮撓みが18psi(125kPa)を含む。一部の実施形態では、圧縮性パッドは、ASTM D 1056に準拠した15の圧縮永久歪を含む。幾つかの実施形態では、圧縮性パッドは、69lbs/ft3(1105kg/m3)のASTM297による密度を含む。
【0151】
幾つかの実施形態において、圧縮性パッドは、以下に示されるような材料特性を含む。幾つかの実施形態では、圧縮性パッドは、パッドのz軸に沿って測定された厚さを含む。厚さは、0~5mm、例えば、0~1mm、1~2mm、2~3mm、3~4mm、4~5mm、約1mm(0.032インチ)+/-10%の範囲とすることができる。幾つかの実施形態では、圧縮性パッドは、80%のASTM D412による伸び率を含む。幾つかの実施形態において、圧縮性パッドは、ASTM D1056による25%での圧縮撓みが9psi(62kPa)であることを含む。一部の実施形態では、圧縮性パッドは、ASTM D1056による圧縮永久歪が、70℃で1未満、100℃で5未満であることを含む。幾つかの実施形態において、圧縮性パッドは、ASTM1056による密度が22lbs/ft3(352kg/m3)であることを含む。幾つかの実施形態では、圧縮性パッドは、本明細書の何れかの2つの値の範囲を含む材料特性を含む。幾つかの実施形態では、圧縮性パッドは、本明細書の値の±50%を有する何れかの値を含む材料特性を含む。
【0152】
本技術の圧縮性パッドの実施形態は、マイクロ流体カートリッジと関連する熱源(例えば、マイクロ流体カートリッジの下方にある熱源のアレイ)との間の熱伝達を改善するように設計されている。本明細書に記載されるように、ウイルス負荷は、所与の容積におけるウイルスの量の数値表現である。PCRを介してなど、ウイルス負荷を決定するために設計されたマイクロ流体カートリッジは、より大きな反応容積と標的検出を高めるために、より広くより深いウェルを必要とする場合がある。これらの状況では、より広く深いウェルを有するマイクロ流体カートリッジと、下にある熱源との間の熱伝達が、極めて重要になる。接触は、各PCR反応チャンバが下にある熱源と最適に接触するように、より均一な圧力分布によって改善することができる。圧力分布を均一にすることで、サンプルレーン、カートリッジレーン、又はカートリッジ間でのサーマルサイクリングプロトコルの再現性の悪化を防ぐことができる。また、均一な圧力分布により、ホットスポット又は空気伝導による熱伝達の非効率性を回避することができる。
【0153】
本明細書に記載されるように、本技術の圧縮性パッドは、マイクロ流体カートリッジの上面又は下面に配置することができる。幾つかの実施形態では、マイクロ流体カートリッジの底面上の圧縮性パッドは、熱伝導を低減することができる。一部の実施形態では、マイクロ流体カートリッジの上面にある圧縮性パッドは、光学的検出を可能にするために窓又は他の切り込みを必要とする可能性がある。幾つかの実施形態では、圧縮性パッドは、可能な限り大きくされ、例えば、本明細書に記載されるようにラベルの表面積と同一の広がりを有する。幾つかの実施形態では、圧縮性パッドは、カートリッジの表面の表面積の少なくとも50%(例えば、カートリッジの上面の50%)、表面の少なくとも60%、表面の少なくとも70%、表面の少なくとも80%、又は表面の少なくとも90%、その他を含むことができる。
【0154】
次に、本技術によるマイクロ流体カートリッジの別の非限定的な実施構成を図10図37を参照して説明する。図10図37は、24個の独立したサンプルレーンを含むマイクロ流体カートリッジ200の図である。
【0155】
図10図16は、圧縮性パッドのないマイクロ流体カートリッジ200の第1の実施形態を示す図である。図10は、透視図である。図11は、上面図である。図12は、底面図である。図13は、第1の側部図である。図14は、第2の側部図である。図15は、第3の側部図である。図16は、第4の側部図である。
【0156】
図17~23は、圧縮性パッドを備えたマイクロ流体カートリッジ200の第2の実施形態を示す図である。図17Aは透視図である。図17Bは分解斜視図である。図18は、上面図である。図19は、底面図である。図20は、第1の側部図である。図21は、第2の側部図である。図22は、第3の側部図である。図23は、第4の側部図である。
【0157】
図24図30は、図10のマイクロ流体カートリッジの追加図である。図24は、透視図である。図25は、上面図である。図26は、底面図である。図27は、第1の側部図である。図28は、第2の側部図である。図29は、第3の側部図である。図30は、第4の側部図である。
【0158】
図31図37は、図10のマイクロ流体カートリッジの追加図である。図31は、透視図である。図32は、上面図である。図33は、底面図である。図34は、第1の側部図である。図35は、第2の側部図である。図36は、第3の側部図である。図37は、第4の側部図である。破線は、特許請求された設計の一部を形成しないカートリッジの特徴を例示するのに使用される。
【0159】
本開示は、サンプル中の目的の分析物の存在及び/又は量を決定する分子診断検査装置、システム、及び方法に関する。本明細書で使用される場合、「分析物」は、一般に、検出される物質を指す。例えば、抗原物質、ハプテン、抗体、及びこれらの組み合わせを含むことができる。分析物には、限定ではないが、毒素、有機化合物、タンパク質、ペプチド、微生物、アミノ酸、核酸、ホルモン、ステロイド、ビタミン、薬剤(治療目的の投与と違法目的の投与を含む)、薬剤中間体又は副産物、細菌、ウイルス粒子、及び上記物質の何れかの代謝物又は抗体が挙げられる。
【0160】
分析物の具体例としては、限定ではないが、B群レンサ球菌症、クラミジア・トラコマティス、淋菌、トリコモナス膣炎、細菌性膣炎、カンジダ群、カンジダ・グラブラタ、カンジダ・クルセイ、サルモネラ属菌、赤痢菌種/腸管侵入性大腸菌(EIEC)、カンピロバクター種(jejuni及びcoli)及び志賀毒素生産菌(STEC、Shigella dysenteriae)、腸炎エルシニア、毒素原生大腸菌(ETEC)、プレジオモナス・シゲロイデス、ビブリオ属(ビブリオ・バルニフィカス/腸炎ビブリオ)、ランブル鞭毛虫、クリプトスポリジウム属原虫(C. parvum及びC. hominis)、赤痢アメーバ、ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルス(40/41)、サポウイルス及びヒトアストロウイルス、クリプトスポリジウム属原虫(tcdB)、MRSA、黄色ブドウ球菌が挙げられる。分析物の追加の具体例としては、限定ではないが、フェリチン、クレアチニンキナーゼ MB(CK-MB)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、ジゴキシン、フェニトイン、フェノバルビタール、カルバマゼピン、バンコマイシン、ゲンタマイシン、テオフィリン、バルプロ酸、キニジン、黄体形成ホルモン(LH);卵胞刺激ホルモン(FSH);エストラジオール、プロゲステロン;C反応性タンパク質(CRP);リポカリン;IgE抗体;サイトカイン;TNF関連アポトーシス誘導リガンド(TRAIL);ビタミンB2マイクログロブリン;インターフェロンガンマ誘導タンパク質10(IP-10);インターフェロン誘導型GTP結合タンパク質(マイクソウイルス(インフルエンザウイルス)耐性1、MX1、MxA、IFI-78K、IFI78、MX、MXダイナミン様GTPase 1とも呼ばれる);プロカルシトニン(PCT);糖化ヘモグロビン(Gly Hb);コルチゾール;ジギトキシン;N-アセチル・プロカインアミド(NAPA);プロカインアミド;風疹IgG及び風疹IgMなどの風疹に対する抗体;トキソプラズマ症IgG(Toxo-IgG)及びトキソプラズマ症IgM(Toxo-IgM)などトキソプラズマ症に対する抗体;テストステロン;サリチル酸塩;アセトアミノフェン;B型肝炎ウイルス表面抗原(HBsAg);抗B型肝炎コア抗原IgG及びIgM(抗HBC)などのB型肝炎コア抗原に対する抗体;ヒト免疫不全ウイルス1及び2(HIV 1及び2);ヒトT細胞白血病ウイルス1及び2(HTLV);B型肝炎e抗原(HBeAg);B型肝炎e抗原に対する抗体(Anti-HBe);インフルエンザウイルス;甲状腺刺激ホルモン(TSH);チロキシン(T4);総トリヨードサイロニン(T3);遊離トリヨードサイロニン(F3);癌胎児性抗原(CEA);リポタンパク質、コレステロール、及びトリグリセリド;並びにアルファフェトプロテイン(AFP)が挙げられる。乱用薬物及び規制薬物には、限定ではないが、アンフェタミン;メタンフェタミン;アモバルビタール、セコバルビタール、ペントバルビタール、フェノバルビタール、及びバルビタールなどのバルビツール酸塩;リブリウム及びバリウムなどのベンゾジアゼピン系;ハシシ、マリファナなどのカンナビノイド類;コカイン;フェンタニル;LSD;メタカロン;ヘロイン、モルヒネ、コデイン、ヒドロモルフォン、ハイドロコドン、メタドン、オキシコドン、オキシモルフォン、アヘンなどのアヘン剤;フェンシクリジン;及びプロポキシフェンなどが挙げられる。目的の生物学的又は環境上物質の目的で、更に分析対象が含めることができる。
【0161】
前述の説明は、本技術の様々な側部を説明するためのものである。本明細書に提示された実施例は、本技術の範囲を限定することを意図するものではない。本技術は、現在完全に説明されているが、添付の特許請求の範囲の精神又は範囲から逸脱することなく、多くの変更及び修正ができることは、当業者には明らかであろう。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図9C
図9D
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17A
図17B
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38A
図38B
【国際調査報告】