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特表2022-550395半径方向に閉じた薄肉の外部導体を有する同軸ケーブルの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-01
(54)【発明の名称】半径方向に閉じた薄肉の外部導体を有する同軸ケーブルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 13/016 20060101AFI20221124BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20221124BHJP
【FI】
H01B13/016 Z
B23K26/21 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022519678
(86)(22)【出願日】2020-09-16
(85)【翻訳文提出日】2022-04-13
(86)【国際出願番号】 EP2020075861
(87)【国際公開番号】W WO2021063682
(87)【国際公開日】2021-04-08
(31)【優先権主張番号】19306240.3
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517228814
【氏名又は名称】ネクサンス
【氏名又は名称原語表記】NEXANS
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】エゲラー,ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】ピーターセン,オラフ
(72)【発明者】
【氏名】ディンケル,スティーヴン
【テーマコード(参考)】
4E168
5G323
【Fターム(参考)】
4E168BA12
4E168BA21
4E168DA03
4E168FB03
5G323EA02
(57)【要約】
半径方向に閉じた薄肉の非鉄金属製の外部導体を有する同軸ケーブル(224)の連続製造方法は、非鉄金属製の平帯を成形装置(212)に供給することであって、帯の厚さが同軸ケーブルの肉厚に対応する、ことを含む。成形装置は、同軸ケーブルの外部導体に対応する形態に、且つ外部導体が閉じられる前に供給されたケーブル芯線の周りに、供給された平帯を連続的に成形するように構成される。成形後、平帯の2つの両側の縁部は、接触領域において互いに接触して同一平面上に置かれ、600nm未満の波長を有する光を放射するレーザによって溶接装置(216)によって互いに連続的に溶接される。レーザは、同軸ケーブルの断面寸法の20%未満の直径を有する、溶接領域における点を加熱する。溶接された同軸ケーブルは、溶接領域から引き取られ、環状又はらせん状の波付けが導入された後、受取デバイス(226)に受け取られる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半径方向に閉じた薄肉の非鉄金属製の外部導体を有する同軸ケーブル(224)の連続製造方法(100)であって、
前記非鉄金属製の平帯(204)を第1の供給速度で成形装置(212)に供給すること(102)であって、前記帯の厚さが、製造される中空形材(224)の肉厚に対応する、ことと、
誘電体で包まれた内部導体を供給すること(107)と、
前記同軸ケーブル(224)の前記外部導体に対応する形態に前記供給された平帯(204)を連続的に成形すること(108)であって、前記成形動作の後に、前記平帯(204)の2つの両側の縁部が、前記中空形材の長手方向に延びる接触領域において互いに接触して同一平面上に置かれ、前記外部導体を形成する前記中空形材を閉じる前に、誘電体で包まれた前記内部導体が供給され、その結果、前記誘電体に包まれた前記内部導体が、前記中空形材に置かれる、ことと、
光の反射を低減するための事前処理なしで、前記接触領域において互いに接触して同一平面上に置かれた前記縁部を連続的に溶接すること(110)であって、溶接される前記縁部が、前記方法を実施する装置(200)に対して静止している溶接領域を前記第1の供給速度で通過するように案内され、前記溶接領域における点が、600nm未満の波長を有する光を放射するレーザ(216)によって加熱され、前記加熱された点の直径が、前記中空形材の断面寸法の20%未満である、ことと、
前記溶接領域から前記溶接された同軸ケーブル(224)を引き取ること(114)と、
前記同軸ケーブル(224)の前記外部導体にらせん状又は環状の波付けを導入すること(119)と、
受取デバイス(226)において前記同軸ケーブル(224)を受け取ること(120)と
を含む、方法(100)。
【請求項2】
少なくとも前記溶接領域が、前記加熱の際に不活性シールドガスを周囲に流される、又は不活性シールドガスによって覆われる、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項3】
前記成形動作の前に、非鉄金属製の前記平帯の1つ又は2つの縁部をトリミングすること(106)
を更に含む、請求項1又は2に記載の方法(100)。
【請求項4】
前記溶接することの後の前記同軸ケーブル(224)の少なくとも1つの寸法を前記溶接すること及び/又は前記測定すること(116)の前に前記トリミングされた非鉄金属製の帯の幅を測定することと、
測定結果及び仕様値に応じて、切断幅を閉ループで制御すること及び/又は成形の目的のための装置(212)を制御することと
を更に含む、請求項3に記載の方法(100)。
【請求項5】
溶接シームに対して直交する方向の温度プロファイルを測定することと(112)、前記温度プロファイルと仕様プロファイルとの比較に応じて、前記溶接領域に導入されるエネルギーを開ループで制御することと
を更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項6】
超音波、渦電流測定、及び/又はX線によって前記溶接シームを検査すること(118)
を更に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項7】
前記非鉄金属製の前記平帯及び/又は前記溶接された同軸ケーブル(224)にかかる張力を測定すること(104、122)と、
前記成形動作、前記溶接動作、前記波付け動作、及び/又は前記受取装置(226)における受取動作に前記平帯及び/又は前記溶接された同軸ケーブル(224)を供給する駆動部を閉ループで制御することと
を更に含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項8】
半径方向に閉じた薄肉の非鉄金属製の外部導体を有する同軸ケーブル(224)の連続製造のための装置(200)であって、
前記非鉄金属製の平帯(204)を供給するように構成された供給デバイス(202)と、
誘電体で包まれた内部導体(209)を供給するように構成された供給装置(207)と、
前記同軸ケーブル(224)の前記外部導体の形材に、且つ前記非鉄金属製の前記平帯の両側の縁部が互いに突き合わされて同一平面上に当接するように前記供給された内部導体(209)の周囲で、非鉄金属製の前記平帯(204)を成形する成形装置(212)と、
互いに間隔をあけて配置された2つの案内手段(214、218)であって、前記2つの案内手段(214、218)の間に前記縁部が互いに接触して同一平面上に置かれて保持される、2つの案内手段(214、218)と、
前記案内手段(214、218)の間で互いに接触して同一平面上に置かれた前記縁部を溶接する溶接装置(216)であって、前記溶接装置(216)が、前記非鉄金属を局所的に融解させるエネルギーで600nm未満の波長を有する光を前記当接する縁部の両側に放射するレーザを備える、溶接装置(216)と、
前記溶接された同軸ケーブル(224)を更に搬送する送りデバイス(219)と、
前記同軸ケーブル(224)の前記外部導体にらせん状又は環状の波付けを導入するためのコルゲータ(223)と、
前記同軸ケーブル(224)を受け取る受取デバイス(226)と
を備える、装置(200)。
【請求項9】
前記成形デバイス(212)の上流に配置され、前記供給された帯(204)に作用する張力を測定する役割を果たす測定装置(206)であって、前記測定された張力が、前記装置(200)の駆動部の開ループ制御の目的のために供給される、測定装置(206)
を更に備える、請求項8に記載の装置(200)。
【請求項10】
前記溶接装置(216)の下流に配置され、前記溶接された同軸ケーブル(224)に作用する張力を測定する、測定及び/又は閉ループ制御デバイス(222)であって、前記測定された張力が閉ループ制御の目的のために前記送りデバイス(219)の駆動部に供給される、測定及び/又は閉ループ制御デバイス(222)
を更に備える、請求項8又は9に記載の装置(200)。
【請求項11】
前記成形デバイス(212)の上流に配置された切断デバイス(208)であって、前記切断デバイス(208)によって、前記供給された非鉄金属製の前記平帯(204)の一方又は両方の縁部がトリミングされ、前記トリミングされた帯の幅が、前記同軸ケーブル(224)の前記外部導体の中立素分に沿った円周に対応する、切断デバイス(208)
を更に備える、請求項8、9、又は10のいずれか一項に記載の装置(200)。
【請求項12】
切れ端を受け取るための装置(205)
を更に備える、請求項11に記載の装置(200)。
【請求項13】
前記切断デバイス(208)の下流に配置され、特定のサイズに切断された非鉄金属製の平帯の幅を測定する役割を果たす測定デバイス(210)
を更に備える、請求項11又は12に記載の装置(200)。
【請求項14】
溶接シームに対して直交する方向の温度プロファイルを測定するための測定デバイスであって、前記測定された温度プロファイルが、放出されるエネルギーの開ループ制御の目的のために前記溶接装置(216)に供給される、並びに/又は供給速度の開ループ制御の目的のために前記供給デバイス(202)及び/若しくは前記送りデバイス(219)に供給される、測定デバイス
を更に備える、請求項8~13のいずれか一項に記載の装置(200)。
【請求項15】
前記溶接(110)後の前記同軸ケーブル(224)の少なくとも1つの寸法を測定するための測定デバイス(220)
を更に備える、請求項8~14のいずれか一項に記載の装置(200)。
【請求項16】
前記溶接シームを検査するため、及び/又は材料の欠陥若しくは不均質性をチェックするための測定デバイス
を更に備える、請求項8~15のいずれか一項に記載の装置(200)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非鉄金属製の外部導体を有する同軸ケーブルの製造に関し、より詳細には、薄肉の非鉄金属製の外部導体を有する同軸ケーブルの連続製造に関する。
【背景技術】
【0002】
RFケーブル又は同軸ケーブルの外部導体として、半径方向に閉じた薄肉の中空形材であって、特に円形断面を有する薄肉の中空形材が使用され得る。そして、このような中空形材の中心には、誘電体で包まれた内部導体が配置される。誘電体は、例えば、適切な比誘電率を有するプラスチック材料を含むこともできるが、実質的に空気又は他の非導電性のガスの存在によってのみ外部導体から内部導体を分離することも可能である。この目的のために、間隔を置いて配置されたスペーサによって内部導体を中空形材の中央に保持したり、又は空気若しくはガスを主に含む大孔径発泡プラスチックを利用したりすることができる。最小限の曲げ半径で様々な方向に敷設するために必要な、同軸ケーブルの柔軟性を高めると同時に、寸法的に安定した外部導体を得るために、同軸ケーブルの外部導体は、図4に例示するように、らせん状又は環状に波付けされる。波付けプロセスでは、外部導体を形成する中空形材の肉厚ができるだけ均一である必要があるが、同時に、材料の節約及びコストの削減の理由から、肉厚はできるだけ薄いことが望ましい。加えて、より長尺のまとまった同軸ケーブルを製造できるようにするためには、外部導体を連続プロセスで製造することが望ましい。
【0003】
同軸ケーブルの連続製造プロセスの場合では、内部導体と誘電体とから構成されるケーブル芯線が、管形成プロセスに供給される。管形成プロセスの際、銅などの非鉄金属製の平帯が、長手方向にスロットの入った管に形成され、ケーブル芯線を包む。管に形成された平帯は、スロットに沿って長手方向のシームを入れて溶接された後、波付けされる。
【0004】
溶接は、タングステン不活性ガス溶接(TIG)などのアーク溶接法で行われる。しかしながら、このことは、0.15mm未満の肉厚を確実に溶接できないことを意味する。また、既知のアーク溶接法を用いて溶接された管もまた溶接ビードが顕著になり、このような溶接ビードは、管の内部に突出して同軸ケーブルの電磁波特性に悪影響を及ぼす。更に、φ4.0mm未満の溶接径を有する管は、既知の方法を用いては製造することができない。その結果、外部導体を形成する波付管の寸法には下限があり、したがって同軸ケーブルの最小径にも下限がある。このことにより、同軸ケーブルの最小曲げ半径が大きくなる。
【0005】
銅やアルミニウムなどの非鉄金属製の中空形材が、特定の用途に特に適している。特に、銅管もまた、同軸ケーブルの電気的シールド若しくは外部導体として、又は導波管に使用され得る。同軸ケーブルでは、材料の使用量及び重量を少なく保つために、中でも、比較的小さい直径及び小さい肉厚を有する薄肉の中空形材が必要とされる。特に、アーク溶接によって確実に且つ溶接シームの要求品質で0.15mm未満の肉厚を製造することは、管の直径に関わらず、もはや不可能である。したがって、上述した肉厚及び直径未満の肉厚及び直径を有する非鉄金属製の中空形材は、実際の管の製造に続く加工ステップによって、それぞれの所望の最終寸法に必ずしなければならない。長尺の同軸線を連続製造する場合には、内部導体及び絶縁体は、スロットの入った中空形材に成形される非鉄金属製の平帯内に溶接前に導入されていなければならないため、溶接後に肉厚を減らす絞りプロセスを用いることはもはやできない。このように、中空形材は、所望の肉厚を有する材料から既に製造されていなければならない。
【0006】
原則として、できるだけ長尺の同軸導体を得るためには、同軸導体は、中断ができるだけ低頻度であるはずである概ね連続的な製造プロセスで製造されると都合がよい。そうすると、適切な場合には、切れ端があったとしてもわずかな量しか残さずに、長尺の同軸導体から必要な長さの同軸導体を切り出すことができる。当然のことながら、一般に、製造の際のプロセスステップを削減できると都合がよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、長尺の同軸ケーブルを連続的に製造するために必要な材料の量を減らし、ケーブルの重量を減らすことを可能にする方法及び装置を規定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的は、請求項1において規定された方法及び請求項8において規定された装置により達成される。更なる発展形態及び実施形態は、それぞれの従属請求項において規定される。
【0009】
本発明による、薄肉の同軸ケーブル、また特に小さい断面を有する薄肉の同軸ケーブルの連続製造方法では、まず、製造される同軸ケーブルの外部導体の肉厚に対応する厚さを有する非鉄金属製の平帯が供給される。好ましくは、供給される金属帯の幅は、同軸ケーブルの外部導体の円周に既に対応している。供給された金属帯が、同軸ケーブルの外部導体の円周に必要とされるよりも幅広である場合、又は金属帯の縁部が十分に滑らかではない場合、金属帯は、供給動作中の連続プロセスにおいて一方の側又は両側を特定のサイズにトリミングされ得る。本明細書において、「小さい断面を有する同軸ケーブル」という表現は、数ミリメートルの断面を有する同軸ケーブルをいう。「薄肉」という表現は、十分の数ミリメートル、特に0.15mm未満の肉厚をいう。本明細書では、非鉄金属という用語は、金属そのものとそれらの合金との両方に使用される。
【0010】
適切な幅を有する金属帯は、1段階又は多段階の連続成形プロセスにおいて、所望の断面を有し、同軸ケーブルの外部導体を形成する中空形材に形成される。成形プロセスは、例えば適切に構成されたローラ及び形材に対する、帯の長手方向における連続した多段階の曲げ動作を含み得る。この場合、断面は、円形、楕円形、又は他の任意の所望の多角形形状であり得る。成形プロセスの前又は成形プロセスの際に、中空形材が閉じられる前に、誘電体で包まれた内部導体を備えるケーブル芯線が供給される。ケーブル芯線は更なる層を備えていてもよい。
【0011】
成形後、ケーブル芯線を受け入れた中空形材は、中空形材の長手方向に走る領域を有し、その領域において、金属帯の縁部が互いに接触して同一平面上に置かれる。ここで、互いに接触して同一平面上に置かれた中空形材の縁部は、当接する縁部に沿って互いに溶接され、これにより半径方向に閉じられる。本発明によれば、溶接は、600nm未満の波長、好ましくは550~450nmの範囲にある波長の光を放射するレーザを用いて行われる。本発明によれば、450nm未満の範囲にある波長を用いることも好都合な場合がある。レーザは、溶接領域の点に光エネルギーを導入し、光エネルギーは、溶接材料の表面に衝突すると、吸収されて熱に変換される。本発明により使用される上述の波長範囲にある光は、室温であっても、約800nm超の波長を有する赤外スペクトルの光などよりも非常に良好に多くの非鉄金属に吸収される。実際、約600nm超の波長であっても、多くの非鉄金属によって吸収される光はわずかでしかないため、非鉄金属を溶接するためには、特に高い出力パワーを持つレーザと特別な冷却手段とが必要になる。更に、600nm超の波長では、吸収は表面仕上げに強く依存するが、本発明により使用される波長では、表面仕上げの影響は大きく低減される。加えて、特に長い波長では吸収の温度依存性が大きいという理由から、溶接活性領域に導入されるエネルギーを迅速に調整する必要が更にあり、このことは実現がほとんど不可能であるため、溶接シームの品質が大きく変動し得る。本発明による、600nm未満の波長を有する光の使用によって、より安定した溶融池が形成され、全体的により安定したプロセスがもたらされ、このことにより、溶接プロセスの高いエネルギー効率に伴って、長手方向のシームで溶接され、高い品質を有する中空形材が提供され、生じる不合格部品が少なくなる。加えて、本発明により使用される600nm未満の波長では、反射を抑えることによりレーザ光の吸収率を上げる、溶接領域の準備を省くことができる。よって、溶接領域は、例えば粗くしたり予熱したりする必要がなく、また、照射された光エネルギーを熱に変換して溶接材料に放出する物質の層を「仲介物」として溶接領域に適用する必要もなく、その結果、上記の温度依存性の吸収率が、使用される波長に対してより好ましい領域に入る。このことにより、仲介物として使用される物質の部分が溶接シームに入るリスクが排除される。
【0012】
吸収された光によって、金属はかなり加熱される。溶接される材料に十分に高いエネルギー量を導入するためには、光を極度に集束させなければならない。また、溶接はスロットに沿った縁部の接触領域でのみ行われることが意図されているため、極度の集束も必要になる。非鉄金属内の熱伝導に起因して、レーザビームの衝突点に直接隣接する領域も同様にかなり加熱され、場合によっては融解することがある。したがって、特に、断面寸法が小さい中空形材を製造する場合、例えば直径が4mm未満である場合、レーザビームの集束は、液化した材料の無秩序な流出又は材料の脱離を避けるために非常に重要である。本発明による方法では、レーザビームは、中空形材の断面寸法の最大で20%、好ましくは10%未満の直径をワークピース上で有する。断面寸法の5%まで減らしたレーザビームの直径でも、良好な溶接シームが依然として得られることが試験で示されており、この場合には、焦点を溶接領域上で移動させるなど、更なる対策が必要となる可能性がある。4mmの直径を有する中空形材の場合、それに応じてレーザビームの直径は、例えば400μm、好ましくは200μm以下とすることができる。本明細書で使用される「断面寸法」という用語は、中空形材の直径をいうこともあれば、縁部の長さをいうこともある。文脈によっては、本用語は、縁部の曲げ半径などをいうこともある。
【0013】
ワークピース上でのレーザビームの衝突点における局所エネルギー密度が高いことにより、当接する縁部の両側に材料の局所的な融解が生じ、その結果、融解物が互いに流入し合う。レーザビームの照射がなくなると材料は再び凝固し、溶接シームを形成する。ケーブル芯線を受け入れた中空形材が固定式レーザを通り過ぎて連続的に案内されるため、2つの縁部を接続する連続した溶接シームが形成される。小さい肉厚では実際に存在する液状の材料の無秩序な流出を防ぐためには、導入されるレーザ出力と、管がレーザを通り過ぎて案内される速度とが互いに調整されなければならない。適切に調整することにより、再加工を必要としない滑らかな溶接シームが外側及び内側に形成される。
【0014】
融解物が周囲空気と反応するのを不活性ガス雰囲気によって防ぐことにより高レベルのシーム品質を可能にする、タングステン不活性ガス溶接法(TIG)又は金属不活性ガス溶接法(MIG)による既知のアーク溶接とは対照的に、本発明で使用されるレーザ溶接により、エネルギー入力の制御性が向上した結果、シールドガスがなくても、ケーブル芯線があるために内側に自由にアクセスできなくなる管の内側に溶接ビードが形成されないように、0.15mm未満の材料厚を有する非鉄金属を互いに突き合わせ溶接することが可能になる。しかしながら、本方法の実施形態では、溶接点は、アルゴンなどの不活性シールドガスを周囲に流されても不活性シールドガスによって覆われてもよい。シールドガス雰囲気の使用は、中でも、溶接される材料及びその厚さに依存し得る。
【0015】
レーザによるエネルギーの入力は、比較的大きな目標領域に集束させて、その結果、利用可能なエネルギーが必要に応じてより大きな領域若しくは小さな領域に作用すること、又は特に強く集束させたレーザビームを適切に前後に移動させることのいずれかによって開ループ制御され得る。また、比較的大きな目標領域への集束は、高強度の中心焦点と、中心焦点を囲む低強度の環状領域とを有するレーザプロファイルによって実現され得る。このようにして、温度プロファイルに沿って狙いどおりに溶接領域を加熱及び冷却することができ、その結果、よりきれいな溶接シームを得ることができ、凝固した構造にも狙いどおりに影響を与えることができる。更に、レーザビームは、パルス持続時間及びパルス間隔などによって開ループでエネルギーの入力を制御しながら、容易にパルス状にすることができる。
【0016】
レーザによる溶接は、熱伝導溶接とも呼ばれ、更なる再加工の必要がない、滑らかで丸みを帯びた溶接シームを形成する。熱伝導溶接の場合、レーザが当たる領域の外側では、エネルギーは熱伝導によってのみワークピース内に広がる。したがって、レーザ出力及び材料の熱伝導率に応じて、シーム深さは十分の数ミリメートルから約1ミリメートルになる。この点において、材料の熱伝導率が最大シーム深さを制限する。一般に、シーム幅はシーム深さより大きい。熱が十分に速く放散できない場合、金属蒸気が発生する蒸発温度を超えて加工温度が上昇し、溶接深さが急激に大きくなる。そうすると、プロセスは深溶け込み溶接に変わる。
【0017】
溶接シームに沿った顕著な材料の膨らみがない、本発明により製造された管の外側、また特に内側における溶接シームの品質は、精密に制御可能な溶接点へのエネルギーの入力のおかげで高く、連続プロセスで薄肉且つ小径の同軸ケーブルを製造することを可能にする。
【0018】
本方法の1つ又は複数の実施形態では、供給された帯の幅が測定され、測定結果及び仕様値に応じて切断幅が調整される。幅は、同軸ケーブルの外部導体を形成する中空形材の中立素分に沿った円周に略対応する。ここでは、仕様値を変化させることができ、それに対応して、例えばきれいな溶接シームに必要な材料の量を適合させるために、帯の幅の変化に応じて成形デバイスを制御することができる。
【0019】
本方法の実施形態では、溶接シームに対して直交する方向の温度プロファイルが測定される。測定された温度プロファイルは、溶接点に導入されるエネルギーの開ループ制御に使用され得る。測定された温度プロファイルは、例えば、仕様プロファイルと比較されてもよく、導入されるエネルギーの開ループ制御は、焦点直径の変動、溶接材料上で焦点の描く経路の変動、並びに/又はレーザビームのパルス持続時間及び/若しくはパルス間隔の修正を含み得る。同様に、測定された温度プロファイルに応じて閉ループで供給速度を制御することも想定される。測定された温度プロファイルはまた、品質管理及びドキュメンテーションの目的のために記憶され得る。
【0020】
本方法の実施形態では、溶接シームは、超音波、X線、渦電流測定、又は他の非破壊測定法によって検査される。検査の結果は、例えば、溶接点に導入されるエネルギー及び/又は供給速度の開ループ制御に使用され得る。
【0021】
本方法の実施形態では、非鉄金属製の平帯及び/又は溶接された同軸ケーブルに作用する張力が測定され、以前に測定された張力が、平帯を成形動作及び/若しくは溶接動作のために供給する、並びに/又は溶接された同軸ケーブルを波付けデバイス又は受取デバイスに供給する駆動部の閉ループ制御のために使用される。特に、供給される帯の肉厚が極めて小さい場合、過度の張力によって帯が破れ、プロセスが中断されることがある。溶接された同軸ケーブルに作用する張力についても同様である。
【0022】
本発明による、半径方向に閉じた薄肉の非鉄金属製の外部導体を有する同軸ケーブルの連続製のための装置は、非鉄金属製の平帯を供給するように構成された供給デバイスを備える。供給デバイスは、例えば、巻枠又はコイルに巻かれた非鉄金属製の平帯のためのマウントを備え得る。帯は、巻枠から巻き出されて成形装置に供給され、成形装置は、非鉄金属製の平帯の両側の縁部が互いに突き合わされて同一平面上に当接するように、同軸ケーブルの外部導体を形成する中空形材の形材に非鉄金属製の平帯を成形する。成形デバイスは、例えば、複数のローラ及び形材、例えば絞りダイスを有していてもよく、これらは、帯が長手方向に通過する際に、所望の中空形材を形成するように帯を成形する。成形デバイスは、成形された帯又は中空形材の長手方向に互いに間隔をあけて配置された2つ以上の案内手段であって、2つ以上の案内手段の間に、少なくとも溶接される点で互いに接触して同一平面に置かれるように縁部が保持される、2つ以上の案内手段を更に有し得る。適切な場合には、帯の横方向の動きを最小化するために、帯は、工具の上流及び工具内の1つ又は複数の点で横方向に案内され得る。
【0023】
本デバイスは、中空形材の寸法に合わせたケーブル芯線を供給するように構成された供給デバイスを更に備える。ケーブル芯線は、誘電体及び場合により更なる層で包まれた内部導体を備える。供給デバイスは、溶接された中空形材の送り速度に合わせた速度でケーブル芯線を供給する。
【0024】
本装置は、案内手段の間で互いに接触して同一平面上に置かれた縁部同士を溶接する溶接装置を更に備える。溶接デバイスは、非鉄金属を局所的に融解させるエネルギーで600nm未満の波長を有する光を縁部の両側に放射するレーザを備える。成形及び溶接された中空形材又は同軸ケーブルが連続的に送られることに起因して、材料が融解した領域は、レーザが材料を加熱している領域を離れ、融解した材料は再び凝固する。材料を加熱するために材料に導入されるエネルギーは、材料は互いに接触して同一平面上に置かれる縁部に直接置かれる領域において融解するが、中空形材の内部に液状の材料が流れ込まないように、材料、材料の厚さ、及び中空形材又は同軸ケーブルが溶接点を通り過ぎて導かれる速度によって調整される。レーザの光学系と溶接される中空形材の縁部との間の間隔は、案内手段によって一定に保つことができる。互いに当接する縁部の位置をレーザの光学系に対して一定に保つために、長手方向のスロットを閉じる案内手段の上流には、らせん状のねじれを防ぐために、縁部の間に置かれた長手方向のスロット内に配置された案内ブレードと呼ばれるものが存在し得る。
【0025】
本装置は、同軸ケーブルを受け取る受取デバイスに更に搬送する前に、同軸ケーブルの外部導体にらせん状又は環状の波付けを導入するコルゲータに溶接された同軸ケーブルを更に搬送する1つ又は複数の送りデバイスを更に備える。送りデバイスは、例えば、既知の構造の1つ又は複数の引取コレット、引取クリート、引取キャップスタン、又は引取ベルトを備えることができ、これは、異なる送りデバイスを組み合わせることも可能である。送りデバイスは、コルゲータの上流側と下流側との両方に配置され得る。
【0026】
本装置の1つ又は複数の実施形態では、張力を測定するための測定装置が成形装置の上流に設けられる。測定された張力は、実測値として閉ループコントローラに供給され、セットポイント値と共に、本装置の駆動部の閉ループ制御のために、例えば非鉄金属製の帯の供給速度の閉ループ制御のために使用され得る。更に、溶接デバイスの下流には、溶接された中空形材若しくは同軸ケーブルにかかる張力を測定する、及び/又は溶接された中空形材を受取デバイスに供給する送りデバイスの駆動部を閉ループで制御する測定デバイス及び/又は閉ループ制御デバイスが配置され得る。送りデバイスと受取デバイスとの間の張力は、例えば、溶接された中空形材又は同軸ケーブルのたるみを検出し、受取デバイスの駆動コントローラに対応する信号を供給するダンサによって、閉ループで制御され得る。
【0027】
1つ又は複数の実施形態では、本装置は、成形デバイスの上流に配置された切断デバイスであって、切断デバイスによって、供給された非鉄金属製の平帯の一方又は両方の縁部がトリミングされる、切断デバイスを更に備え、トリミングされた帯の幅は、同軸ケーブルの外部導体を形成する中空形材の円周に対応する。これらの実施形態では、供給された金属帯を必要な幅に切断し、本装置の更なるツールを適合させることによって、異なる円周を有する同軸ケーブル用の中空形材を大きな支出なしに製造することが可能である。
【0028】
1つ又は複数の実施形態では、帯の一方又は両方の縁部で切り離された部分は、切れ端を受け取るために設けられた装置に供給され得る。
【0029】
切断デバイスを備えた本装置の1つ又は複数の実施形態では、切断デバイスの下流に、特定のサイズに切断された帯の幅を測定するための測定デバイスが設けられる。測定値に基づいて、非鉄金属製の帯の所望の幅を長時間にわたって維持するように切断デバイスが制御され得る。切断デバイスには、切断デバイスの設定のための制御信号を発生させるために、非鉄金属製の帯の測定された幅と比較される対応する仕様値が供給され得る。幅は、同軸ケーブルの外部導体を形成する中空形材の中立素分に沿った円周に略対応する。
【0030】
溶接装置は、非鉄金属製の帯の供給速度が遅い場合でも、要求品質で縁部同士を溶接するように構成され得る。
【0031】
1つ又は複数の実施形態では、本装置は、溶接シームに対して直交する方向の温度プロファイルを測定するための測定デバイスを更に備える。測定された温度プロファイルは、出力されるエネルギーの開ループ制御のために溶接装置に、供給速度の開ループ制御のために供給デバイスに、及び/又は送りデバイスに供給され得る。
【0032】
1つ又は複数の実施形態では、本装置はまた、溶接後の同軸ケーブルの少なくとも1つの寸法を測定するための測定デバイスを備える。この測定デバイスは、1つ又は複数の実施形態において、溶接シームの検査のため、及び/又は材料の欠陥若しくは不均質性をチェックするための測定デバイスと同様に、提供される統合品質管理のために使用され得る。好ましくは、寸法は、レーザなどを用いて非接触で測定され得る。
【0033】
1つ又は複数の実施形態では、コルゲータを通過した後、波付き同軸ケーブルは、封入又はラッピングなどの絶縁手段で包まれ得る。
【0034】
600nm未満の波長を有するレーザ光が使用されて薄肉の非鉄金属板を溶接する上記の方法は、0.15mm未満の肉厚、4mm未満の直径又は寸法の中空形材を高レベルの品質で、複雑な再加工なしに容易に製造することを可能にし、中空形材は、ケーブル芯線を導入することにより同軸ケーブルに同じ手順で更に加工され得る。400μm未満の焦点径のレーザビームを使用することにより、連続溶接の際に中空形材の寸法に対して熱に影響される領域が確実に十分に小さくなり、その結果、材料の脱離が発生せず、管の内側に顕著なビードのない溶接シームが形成される。中空形材は、肉厚の薄い非鉄金属帯から直接製造されるため、同軸ケーブルの場合には中空形材の内部にケーブル芯線が置かれるために問題となる場合がある、肉厚を削減する目的でのその後の管の絞り加工を省くことが可能である。
【0035】
上記の方法により、6m/分超の溶接速度で、溶接後の絞りプロセスなしで、0.10mmの肉厚を有する外部導体を備えた同軸ケーブルを製造することが可能となり、溶接シームの品質を数時間一定に保つことができ、その結果、長尺の同軸ケーブルを製造することができる。
【0036】
同軸ケーブルの外部導体の肉厚を薄くすることにより、銅及び他の合金元素を節約することができ、ひいては貴重な資源を節約することができる。肉厚を薄くすることにより、溶接に必要なレーザ出力が低減され、ひいてはエネルギー削減が伴い、或いは同じレーザ出力を維持したまま、プロセス速度を上げることが可能になる。
【0037】
最終製品に関しても同様に、外部導体の肉厚を薄くすることは、単位長さあたりの重量が軽くなって輸送及び設置が容易になるため好都合であることが判明している。
【0038】
より薄肉であることにより、外部導体が形成されるときの直径を小さくすることが更に可能になる。このことにより、同じ設計を維持しながら、ケーブルの外径を小さくすることが可能になる。更なる軽量化だけではなく、このことは、最小曲げ半径を小さくすることにつながり、ひいては敷設の柔軟性を高めることにもつながる。
【0039】
以下、添付の図面を参照しながら、実施形態に基づいて例として本発明を更に詳細に説明する。図面はすべて純粋に概略的なものであり、原寸に比例していない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明による、半径方向に閉じた薄肉の中空形材の連続製造方法の一例を示す。
図2】本発明による、半径方向に閉じた薄肉の中空形材の連続製造のための装置の一例を示す。
図3】本発明による方法によって製造された中空形材の溶接シームの画像を示す。
図4】それぞれらせん状及び環状に波付けされた2つの例示的な同軸ケーブルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図面では、同一又は類似の要素には同じ又は同様の参照符号が付けてある。
【0042】
図1は、本発明の一態様による、半径方向に閉じた薄肉の外部導体を有する同軸ケーブルの製造方法100の各ステップを示す。本方法のステップ102において、非鉄金属製の平帯が、第1の供給速度で成形装置に供給される。例えば、銅平帯がコイルから巻き出される。成形装置では、ステップ108において、供給された平帯が、外部導体の所望の中空形材に対応する形態に成形される。成形は、例えば、ロール成形機によって実現され得る。
【0043】
成形の際、外部導体を形成する中空形材が完全に閉じられる前に、誘電体で包まれた内部導体と、必要に応じて更なる層とを備えるケーブル芯線が供給される。ケーブル芯線は、例えば、第1の成形段階の直前のステップ107において既に供給されいてもよい。
【0044】
成形の前に、非鉄金属製の帯の一方又は両方の縁部がトリミングされる、又は何らかの他の仕方で準備される任意選択のステップ104が、切断デバイスにおいて行われてもよい。このようにして、非鉄金属製の帯の縁部の品質が劣悪である場合でも、帯の幅を均一且つ正確に整えることができ、縁部は、適切な場合には、その後の溶接動作のために準備され得る。切断デバイスは、トリミング動作後に非鉄金属製の帯の幅を検出する測定装置からの測定値が供給され得る。切れ端は、対応する受取装置において受け取られ得る。
【0045】
成形の際、帯の縁部は、溶接前のねじれが防止されるように案内要素によって案内され、互いに接触して同一平面上に置かれる縁部は、規定位置及び規定間隔で溶接装置を通り過ぎて案内される。案内要素は、例えば、1つ又は複数のフィン型ワッシャ又は案内ブレードと、中空形材の幾何学的形状に適合され、製造される中空の幾何学的形状に適合された1つ又は複数の案内ブッシングとを備え得る。幾何学的形状は、例えば、絞りダイス、クロージングリング、又はサイドローラステージによって閉じることができる。
【0046】
成形後、平帯の2つの両側の縁部は、接触領域において互いに接触して同一平面上に置かれる。ステップ110において、接触領域において互いに接触して同一平面上に置かれる縁部は、互いに連続的に溶接される。溶接は、600nm未満の波長を有する光を放射するレーザによって実現される。適切な場合には、溶接シームは、溶接シームの要求品質に適合するようにシールドガスによって覆われ得る。
【0047】
溶接後、ステップ114において、今や半径方向に閉じた外部導体を有する同軸ケーブルは、溶接領域から引き取られ、ステップ119において、外部導体にらせん状又は環状の波付けが導入された後、ステップ122において、今や波付けされた同軸ケーブルが受取の目的のために受取デバイスに供給される。引き取りは、送りデバイスによって、例えば、引取コレット、引取クリート、又は引取ベルトによって実現される。送りデバイスは、コルゲータの上流又は下流に配置することができ、2つの送りデバイスをコルゲータの上流に1つ、下流に1つ設けることも可能である。
【0048】
溶接シームの品質をモニタリングするために、任意選択のステップ112において、溶接シームに対して直交する方向の温度プロファイルを測定することが可能である。測定された温度プロファイルは、レーザのコントローラと、本方法を実施する装置の他の要素、特に非鉄金属製の帯の供給速度又は溶接された同軸ケーブルが溶接領域から引き取られる速度の閉ループ制御を行う1つ又は複数の駆動部とに供給され得る。
【0049】
本方法はまた、任意選択で、ステップ106において成形前の帯の張力を測定すること、及び/又はステップ120において溶接後の同軸ケーブルの張力を測定することも含み得る。測定された張力は、同様に、閉ループ制御のための測定された変数として、1つ又は複数の駆動部に供給され得る。
【0050】
本方法は、溶接された同軸ケーブルの1つ又は複数の寸法が測定される任意選択のステップ116を更に含み得る。測定された寸法は、特に、帯の幅を整えるための成形プロセス及び切断プロセスの閉ループ制御のための入力変数として供給され得る。
【0051】
本方法は、材料欠陥に関連する溶接シーム及び/又は溶接材料の品質が、例えば渦電流検査、超音波、又はX線によって非破壊で検査される任意選択のステップ118を更に含み得る。
【0052】
中空形材を各片に切断したり、同軸ケーブルを絶縁層で包んだり、ケーブルをプラグに組み付けたりするその後のプロセスは図示していない。
【0053】
図2は、本発明による、半径方向に閉じた薄肉の外部導体を有する同軸ケーブルの連続製造のための装置の一例を示す。銅帯などの非鉄金属製の薄帯204が、巻枠又は巻出機202から巻き出される。帯204はロール成形機212に供給され、ロール成形機212によって、外部導体の所望の中空形材の形態にされ、例えば、長手方向にスロットの入った円形の管に成形される。巻枠又は巻出機202とロール成形機212との間には切断装置208が設けられ得、切断装置208は、帯204を必要な幅に切断する、又はきれいで滑らかな縁部を得るために帯204の一方又は両方の縁部を切断する。帯204の切れ端部分を受け取るための受取デバイス205が設けられ得る。特定のサイズに切断された帯204の幅は、帯幅測定装置210において検査され得る。測定結果は、閉ループ制御の目的のために、切断デバイス208に供給され得る。更に、コイル又は巻出機202とロール成形機212との間には、張力を測定するための測定デバイス206が配置され得、その測定値は、例えば、デバイスの駆動部の閉ループ制御に使用され得る。外部導体を形成する中空形材を閉じる前に、供給装置207からケーブル芯線209が供給され、非鉄金属製の平帯が成形された後に中空形材に受け取られる。外部導体を形成する中空形材が成形された後に互いに接触して置かれる帯のそれらの縁部は、溶接前の中空形材のねじれが防止され、レーザ溶接装置216の光学系の下を通過する間隔が維持されるように、1つ又は複数の案内要素214によってレーザ溶接装置216の前に案内され得る。案内要素は、1つ又は複数のフィン型ワッシャ又は案内ブレードと、外部導体を形成する中空形材に適合された1つ又は複数の案内ブッシングとを備え得る。溶接される中空形材の幾何学的形状は、絞りダイス、クロージングリング、サイドローラステージ、又は案内ブッシング218によって閉じられ、その結果、中空形材を形成するように成形された帯204の縁部は、レーザ溶接装置216の領域において互いに接触して置かれる。レーザ溶接装置216は、600nm未満の波長、好ましくは550~450nmの範囲にある波長の高エネルギー光を放射する。本発明によれば、450nm未満の範囲にある波長を用いることも好都合な場合がある。溶接領域は、溶接材料と雰囲気との反応を防ぐために、図示していないシールドガス装置により、アルゴンなどのシールドガスで覆われ得る。溶接された同軸ケーブル224は、送りデバイス219によって供給される。送りデバイス219は、例えば、1つ又は複数の引取コレット、引取クリート、引取キャップスタン、若しくは引取ベルト、又はこれらの組み合わせを備え得る。溶接された同軸ケーブル224が巻取機226に巻き取られる前に、同軸ケーブル224の1つ又は複数の寸法が、測定ユニット220によって好ましくは非接触で検出され得、コルゲータ223によって同軸ケーブルにらせん状又は環状の波付けが導入され得る。同軸ケーブル224に作用する張力を検出するために、更なる張力測定装置222が巻取機226の上流に更に設けられ得る。
【0054】
図3は、本発明による方法によって製造された中空形材の溶接シームの画像を示す。中空形材は0.1mmの肉厚を有する銅管であり、6m/分の送り速度で銅帯から連続的に成形され、溶接されたものである。ここでは、アルゴンで溶接点を覆った。図3a)は、中空形材の外側に140~150μmの幅を有する溶接シームを示す。図3b)は、溶接シームが約242μmの幅を有する、中空形材の内側の写真を示す。また、溶接シームは内側及び外側の両方において極めて均一であり、その結果、ほとんどの使用状況で再加工の必要がないはずであることが明確に分かる。
【0055】
図4は、それぞれらせん状波付け及び環状波付けされた2つの例示的な同軸ケーブル500、502を示す。同軸ケーブル500、502は、その他の点では従来の構造の同軸ケーブルであり、誘電体506に囲まれた内部導体504と、それぞれらせん状波付け及び環状波付けされた外部導体508、510とを有する。外部導体508、510は、外部絶縁層512によって囲まれる。
【符号の説明】
【0056】
1 管
2 形態
3 プラグ
100 方法
102 帯を供給する
104 張力を測定する
106 縁部をトリミングする
107 ケーブル芯線を供給する
108 中空形材を形成する
110 溶接動作
112 温度プロファイルを測定する
114 中空形材を引き取る
116 寸法を測定する
118 品質を測定する
119 波付け
120 張力を測定する
122 受取デバイスに供給する
200 装置
202 巻取機/巻出機
204 非鉄金属製の帯
205 切れ端用の受取装置
206 張力測定装置
207 供給装置
208 切断デバイス
209 ケーブル芯線
210 帯幅測定装置
212 ロール成形機
214 案内要素
216 レーザ溶接装置
218 絞りダイス/案内ブッシング
219 送りデバイス
220 測定ユニット
222 張力測定装置
223 コルゲータ
224 同軸ケーブル
226 巻取機
500 同軸ケーブル(らせん状波付き)
502 同軸ケーブル(環状波付き)
504 内部導体
506 誘電体
508 外部導体
510 外部導体
512 絶縁層
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2022-06-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.15mm未満の肉厚を有する、半径方向に閉じた非鉄金属製の外部導体を有する同軸ケーブル(224)の連続製造方法(100)であって、
前記非鉄金属製の平帯(204)を第1の供給速度で成形装置(212)に供給すること(102)であって、前記帯の厚さが、製造される中空形材(224)の肉厚に対応する、ことと、
誘電体で包まれた内部導体を供給すること(107)と、
前記同軸ケーブル(224)の前記外部導体に対応する形態に前記供給された平帯(204)を連続的に成形すること(108)であって、前記成形動作の後に、前記平帯(204)の2つの両側の縁部が、前記中空形材の長手方向に延びる接触領域において互いに接触して同一平面上に置かれ、前記外部導体を形成する前記中空形材を閉じる前に、誘電体で包まれた前記内部導体が供給され、その結果、前記誘電体に包まれた前記内部導体が、前記中空形材に置かれる、ことと、
光の反射を低減するための事前処理なしで、前記接触領域において互いに接触して同一平面上に置かれた前記縁部を連続的に溶接すること(110)であって、溶接される前記縁部が、前記方法を実施する装置(200)に対して静止している溶接領域を前記第1の供給速度で通過するように案内され、前記溶接領域における点が、600nm未満の波長を有する光を放射するレーザ(216)によって加熱され、前記加熱された点の直径が、前記中空形材の断面寸法の20%未満である、ことと、
前記溶接領域から前記溶接された同軸ケーブル(224)を引き取ること(114)と、
前記溶接することに続く絞りプロセスによって事前に前記断面寸法及び/又は前記肉厚を小さくすることなしに、前記同軸ケーブル(224)の前記外部導体にらせん状又は環状の波付けを導入すること(119)と、
受取デバイス(226)において前記同軸ケーブル(224)を受け取ること(120)と
を含む、方法(100)。
【請求項2】
少なくとも前記溶接領域が、前記加熱の際に不活性シールドガスを周囲に流される、又は不活性シールドガスによって覆われる、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項3】
前記成形動作の前に、非鉄金属製の前記平帯の1つ又は2つの縁部をトリミングすること(106)
を更に含む、請求項1又は2に記載の方法(100)。
【請求項4】
前記溶接することの後の前記同軸ケーブル(224)の少なくとも1つの寸法を前記溶接すること及び/又は前記測定すること(116)の前に前記トリミングされた非鉄金属製の帯の幅を測定することと、
測定結果及び仕様値に応じて、切断幅を閉ループで制御すること及び/又は成形の目的のための装置(212)を制御することと
を更に含む、請求項3に記載の方法(100)。
【請求項5】
溶接シームに対して直交する方向の温度プロファイルを測定することと(112)、前記温度プロファイルと仕様プロファイルとの比較に応じて、前記溶接領域に導入されるエネルギーを開ループで制御することと
を更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項6】
超音波、渦電流測定、及び/又はX線によって前記溶接シームを検査すること(118)
を更に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項7】
前記非鉄金属製の前記平帯及び/又は前記溶接された同軸ケーブル(224)にかかる張力を測定すること(104、122)と、
前記成形動作、前記溶接動作、前記波付け動作、及び/又は前記受取デバイス(226)における受取動作に前記平帯及び/又は前記溶接された同軸ケーブル(224)を供給する駆動部を閉ループで制御することと
を更に含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項8】
半径方向に閉じた薄肉の非鉄金属製の外部導体を有する同軸ケーブル(224)の連続製造のための装置(200)であって、
前記非鉄金属製の平帯(204)を供給するように構成された供給デバイス(202)と、
誘電体で包まれた内部導体(209)を供給するように構成された供給装置(207)と、
前記同軸ケーブル(224)の前記外部導体の形材に、且つ前記非鉄金属製の前記平帯の両側の縁部が互いに突き合わされて同一平面上に当接するように前記供給された内部導体(209)の周囲で、非鉄金属製の前記平帯(204)を成形する成形装置(212)と、
互いに間隔をあけて配置された2つの案内手段(214、218)であって、前記2つの案内手段(214、218)の間に前記縁部が互いに接触して同一平面上に置かれて保持される、2つの案内手段(214、218)と、
前記案内手段(214、218)の間で互いに接触して同一平面上に置かれた前記縁部を溶接する溶接装置(216)であって、前記溶接装置(216)が、前記非鉄金属を局所的に融解させるエネルギーで600nm未満の波長を有する光を前記当接する縁部の両側に放射するレーザを備える、溶接装置(216)と、
前記溶接された同軸ケーブル(224)を更に搬送する送りデバイス(219)と、
前記同軸ケーブル(224)の前記外部導体にらせん状又は環状の波付けを導入するためのコルゲータ(223)と、
前記同軸ケーブル(224)を受け取る受取デバイス(226)と
を備える、装置(200)。
【請求項9】
前記成形デバイス(212)の上流に配置され、前記供給された帯(204)に作用する張力を測定する役割を果たす測定装置(206)であって、前記測定された張力が、前記装置(200)の駆動部の開ループ制御の目的のために供給される、測定装置(206)
を更に備える、請求項8に記載の装置(200)。
【請求項10】
前記溶接装置(216)の下流に配置され、前記溶接された同軸ケーブル(224)に作用する張力を測定する、測定及び/又は閉ループ制御デバイス(222)であって、前記測定された張力が閉ループ制御の目的のために前記送りデバイス(219)の駆動部に供給される、測定及び/又は閉ループ制御デバイス(222)
を更に備える、請求項8又は9に記載の装置(200)。
【請求項11】
前記成形デバイス(212)の上流に配置された切断デバイス(208)であって、前記切断デバイス(208)によって、前記供給された非鉄金属製の前記平帯(204)の一方又は両方の縁部がトリミングされ、前記トリミングされた帯の幅が、前記同軸ケーブル(224)の前記外部導体の中立素分に沿った円周に対応する、切断デバイス(208)
を更に備える、請求項8、9、又は10のいずれか一項に記載の装置(200)。
【請求項12】
切れ端を受け取るための装置(205)
を更に備える、請求項11に記載の装置(200)。
【請求項13】
前記切断デバイス(208)の下流に配置され、特定のサイズに切断された非鉄金属製の平帯の幅を測定する役割を果たす測定デバイス(210)
を更に備える、請求項11又は12に記載の装置(200)。
【請求項14】
溶接シームに対して直交する方向の温度プロファイルを測定するための測定デバイスであって、前記測定された温度プロファイルが、放出されるエネルギーの開ループ制御の目的のために前記溶接装置(216)に供給される、並びに/又は供給速度の開ループ制御の目的のために前記供給デバイス(202)及び/若しくは前記送りデバイス(219)に供給される、測定デバイス
を更に備える、請求項8~13のいずれか一項に記載の装置(200)。
【請求項15】
前記溶接(110)後の前記同軸ケーブル(224)の少なくとも1つの寸法を測定するための測定デバイス(220)
を更に備える、請求項8~14のいずれか一項に記載の装置(200)。
【請求項16】
前記溶接シームを検査するため、及び/又は材料の欠陥若しくは不均質性をチェックするための測定デバイス
を更に備える、請求項8~15のいずれか一項に記載の装置(200)。
【国際調査報告】