(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-01
(54)【発明の名称】黒鉛製造方法及び縦型黒鉛化炉
(51)【国際特許分類】
C01B 32/205 20170101AFI20221124BHJP
【FI】
C01B32/205
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022519802
(86)(22)【出願日】2020-08-27
(85)【翻訳文提出日】2022-05-11
(86)【国際出願番号】 EP2020073932
(87)【国際公開番号】W WO2021063603
(87)【国際公開日】2021-04-08
(31)【優先権主張番号】102019126394.8
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520086885
【氏名又は名称】ウォンチュン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】マティーアス ムック
(72)【発明者】
【氏名】ペートルス ヤーコブス フェルフォールト
【テーマコード(参考)】
4G146
【Fターム(参考)】
4G146AA02
4G146AB01
4G146AD23
4G146BC04
4G146BC35B
4G146BC36B
4G146DA04
4G146DA25
(57)【要約】
加熱ゾーン(28)を画定する少なくとも1つのプロセス室(22)を有する縦型黒鉛化炉で黒鉛を製造する方法において、加熱ゾーン(28)で2200℃~3200℃、特に3000℃の温度を発生させ、粒子状の黒鉛化可能な材料(14)が、入口(30)を通ってプロセス室(22)に供給され、黒鉛化可能な材料(14)が、プロセス室(22)の加熱ゾーン(28)を通って搬送され、そこで黒鉛化されて黒鉛になり、得られた黒鉛(12)は、出口(40)を通ってプロセス室(22)から排出される。この場合、変形例Aとして、粒子の粒径が3mm未満である黒鉛化可能な材料(14)が使用され、及び/又は、変形例Bとして、特定のプロセス室(22)の加熱ゾーン(28)全体に材料柱状体(94)が形成され、黒鉛化可能な材料(14)が、入口(30)を通って供給された後、プロセス室(22)の投入ゾーン(24)を通って上方から材料柱状体(94)上に流下し、及び/又は、変形例Cとして、加熱ゾーン(28)に含まれる特定のプロセス室(22)の静止加熱ゾーン(98)で材料柱状体(94)が形成され、黒鉛化可能な材料(14)が、入口(30)を通って供給された後、同様に加熱ゾーン(28)に含まれる落下加熱ゾーン(96)を通って上方から材料柱状体(94)上に流下し、及び/又は、変形例Dとして、黒鉛化可能な材料(14)が、1つ以上の材料容器(100)に入れられて、特定のプロセス室(22)とその加熱ゾーン(28)を通って搬送される。更に、特に変形例C及びDに関して最適化された縦型黒鉛化炉(10)が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱ゾーン(28)を画定する少なくとも1つのプロセス室(22)を有する縦型黒鉛化炉で黒鉛を製造する方法であって、
a)加熱ゾーン(28)で2200℃~3200℃、特に2700℃~3200℃、好ましくは3000℃の温度を発生させ、
b)粒子状の黒鉛化可能な材料(14)が、入口(30)を通ってプロセス室(22)に供給され、
c)黒鉛化可能な材料(14)が、プロセス室(22)の加熱ゾーン(28)を通って搬送され、そこで黒鉛化されて黒鉛になり、
d)得られた黒鉛(12)は、出口(40)を通ってプロセス室(22)から排出される、
黒鉛を製造する方法において、
変形例Aとして、粒子の粒径が3mm未満である黒鉛化可能な材料(14)が使用され、及び/又は
変形例Bとして、特定のプロセス室(22)の加熱ゾーン(28)全体に材料柱状体(94)が形成され、入口(30)を通って供給された黒鉛化可能な材料(14)が、プロセス室(22)の投入ゾーン(24)を通って上方から材料柱状体(94)上に流下し、及び/又は
変形例Cとして、特定のプロセス室(22)の静止加熱ゾーン(98)で材料柱状体(94)が形成され、ここで、前記静止加熱ゾーン(98)が、加熱ゾーン(28)に含まれており、かつ入口(30)を通って供給された黒鉛化可能な材料(14)が、同様に加熱ゾーン(28)に含まれる落下加熱ゾーン(96)を通って上方から材料柱状体(94)上に流下し、及び/又は
変形例Dとして、黒鉛化可能な材料(14)が、1つ以上の材料容器(100)に入れられて、特定のプロセス室(22)とその加熱ゾーン(28)を通って搬送される、
ことを特徴とする、黒鉛を製造する方法。
【請求項2】
特定のプロセス室(22)から黒鉛(12)が排出される単位時間当たりの体積に等しい単位時間当たりの体積の黒鉛化可能な材料(14)が、このプロセス室(22)に供給されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
黒鉛化可能な材料(14)が特定のプロセス室(22)に連続的又は断続的に供給され、黒鉛(12)がこのプロセス室(22)から連続的又は断続的に排出されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
変形例B及び/又は変形例Cで、材料柱状体(94)の充填レベル(92)はほぼ一定に保たれることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
変形例Cで、ガスを、黒鉛化可能な材料(14)の落下方向に対して向流に又は落下方向に対して並流に、落下加熱ゾーン(96)に吹き入れることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
複数のプロセス室(22)を有する黒鉛化炉(10)であって、その複数のプロセス室(22)が時間的に並行して運転される黒鉛化炉(10)が使用されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
黒鉛化可能な材料(14)の粒子が、5μm超、かつ、3000μm未満、2500μm未満、2000μm未満、1500μm未満、1000μm未満、又は500μm未満の平均粒径を有すること、又は黒鉛化可能な材料(14)の粒子が、5μm~3000μm、500μm~2000μm、又は1000μm~1500μmの平均粒径を有することを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
加熱ゾーン(28)の温度が、特に加熱ゾーン(28)の上端(28a)及び/又は加熱ゾーン(28)のほぼ中央及び/又は加熱ゾーン(28)の下端(28b)及び/又は存在する各プロセスパイプ(16)の材料柱状体(94)で測定されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
加熱ゾーン(28)を画定する少なくとも1つのプロセス室(22)を有する縦型黒鉛化炉であって、
a)加熱ゾーン(28)で2200℃~3200℃、特に3000℃の温度を発生させることができる加熱装置(46)と、
b)粒子状の黒鉛化可能な材料(14)を、入口(30)を通ってプロセス室(22)に供給できる搬入コンベア(34)と、
を備え、
c)黒鉛化可能な材料(14)が、プロセス室(22)の加熱ゾーン(28)を通って搬送され、そこで黒鉛化されて黒鉛になり、
d)得られた黒鉛(12)を、出口(40)を通ってプロセス室(22)から排出することができる搬出コンベアが存在し、
e)少なくとも1つのプロセス室(22)における加熱ゾーン(28)は落下加熱ゾーン(96)と静止加熱ゾーン(98)を含み、両ゾーンは、静止加熱ゾーン(98)では材料柱状体(94)が形成されていて、入口(30)を通って供給された黒鉛化可能な材料(14)が、落下加熱ゾーン(96)を通って上方から材料柱状体(94)上に流下できるように構成されており、及び/又は
f)コンベアシステム(106)が存在し、それによって、黒鉛化可能な材料(14)が、1つ以上の材料容器(100)に入れられて少なくとも1つのプロセス室(22)とその加熱ゾーン(28)を通って搬送可能であることを特徴とする縦型黒鉛化炉。
【請求項10】
搬入コンベア(34)と搬出コンベア(44)は、材料を入れた材料容器(100)を搬送するように構成されており、コンベアシステム(106)は、材料容器(100)を入口(30)から出口(40)まで搬送するように構成されたプロセス室コンベア(108)を備えることを特徴とする、請求項9に記載の縦型黒鉛化炉。
【請求項11】
コンベアシステム(106)が循環コンベアシステムであり、材料容器(100)を搬出コンベア(44)から搬入コンベア(34)へ搬送できる接続コンベア(110)を備えることを特徴とする、請求項10に記載の縦型黒鉛化炉。
【請求項12】
材料容器(100)は、坩堝蓋(104)を有する坩堝(102)であることを特徴とする、請求項9~11のいずれか一項に記載の縦型黒鉛化炉。
【請求項13】
複数のプロセス室(22)が存在することを特徴とする、請求項9~12のいずれか一項に記載の縦型黒鉛化炉。
【請求項14】
加熱ゾーン(28)の温度を、特に加熱ゾーン(28)の上端(28a)及び/又は加熱ゾーン(28)のほぼ中央及び/又は加熱ゾーン(28)の下端(28b)及び/又は存在する各プロセスパイプ(16)の材料柱状体(94)で測定できる温度監視装置が設けられていることを特徴とする、請求項9~13のいずれか一項に記載の縦型黒鉛化炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱ゾーンを画定する少なくとも1つのプロセス室を有する縦型黒鉛化炉で黒鉛を製造する方法であって、
a)加熱ゾーン(28)で2200℃~3200℃、特に2700℃~3200℃、好ましくは3000℃の温度を発生させ、
b)粒子状の黒鉛化可能な材料が、入口を通ってプロセス室に供給され、
c)黒鉛化可能な材料が、プロセス室の加熱ゾーンを通って搬送され、そこで黒鉛化されて黒鉛になり、
d)得られた黒鉛は、出口を通ってプロセス室から排出される方法に関する。
【0002】
更に、本発明は、加熱ゾーンを画定する少なくとも1つのプロセス室を有する縦型黒鉛化炉であって、
a)加熱ゾーンで2200℃~3200℃、特に3000℃の温度を発生できる加熱装置を備え、
b)粒子状の黒鉛化可能な材料を、入口を通ってプロセス室に供給できる搬入コンベアを備え、
c)黒鉛化可能な材料は、プロセス室の加熱ゾーンを通って搬送され、そこで黒鉛化されて黒鉛になり、
d)得られた黒鉛を、出口を通ってプロセス室から排出できる搬出コンベアが存在する縦型黒鉛化炉に関する。
【背景技術】
【0003】
黒鉛化可能な材料の黒鉛化は、不活性ガス雰囲気中で行われる。負極材に用いられる多結晶黒鉛を、黒鉛化可能な材料を黒鉛化する、いわゆるアチソン炉のバッチプロセスで製造することが知られている。
【0004】
更に、欧州特許第2980017号明細書(B1)から、冒頭に記載したタイプの縦型黒鉛化炉で、3mm以上の大きい粒径を有する黒鉛化可能な材料を黒鉛化することが知られている。このプロセスの後で得られた黒鉛は、負極材としては粒子が大きすぎるため、粉砕して黒鉛粉末にしなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、エネルギー効率が高く、ほぼ一定で再現可能な黒鉛品質を可能にする、冒頭に記載したタイプの方法及び縦型黒鉛化炉を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題は、冒頭に記載した種類の方法において、
変形例Aとして、粒子の粒径が3mm未満である黒鉛化可能な材料が使用され、及び/又は
変形例Bとして、特定のプロセス室の加熱ゾーン全体に材料柱状体が形成され、入口を通って供給された黒鉛化可能な材料が、プロセス室の投入ゾーンを通って上方から材料柱状体上に流下し、及び/又は
変形例Cとして、特定のプロセス室の静止加熱ゾーンで材料柱状体が形成され、ここで、前記静止加熱ゾーンが、加熱ゾーンに含まれており、かつ入口を通って供給された黒鉛化可能な材料が、同様に加熱ゾーンに含まれる落下加熱ゾーンを通って上方から材料柱状体上に流下し、及び/又は
変形例Dとして、黒鉛化可能な材料が、1つ以上の材料容器に入れられて、特定のプロセス室とその加熱ゾーンを通って搬送される、ことによって解決される。
【0007】
本発明によれば、上記の課題は冒頭に記載したタイプの方法において、複数の方策によって解決され、これらの方策は単独で、又は相乗的に組み合わせて、あるいは、複数のプロセス室を有する黒鉛化炉を使用する場合には、並行して適用されて、従来技術と比較してより効果的なプロセス手順に寄与することが認識された。変形例A、B、C及びDは並行して実施することもできるため、変形例B、C及びDの各場合並びに適切な場合に、それぞれ「特定の」プロセス室が言及されることがある。これは、炉のプロセス室が複数ある場合に1つの特定のプロセス室を対象としていることを表すものである。このプロセス室は、別の変形例が同時に進行できる限り、その変形例が進行するプロセス室であってもよいが、そうである必要はない。これは変形例B及びCでは可能ではない。
【0008】
変形例Aにより、最も有利な場合において、得られた黒鉛を後から粉砕することを不要にできる。いずれにしても十分な粉砕に要する労力を軽減することができる。
【0009】
変形例Bでは、所定の雰囲気中で連続的なプロセスを可能にする。
【0010】
変形例Cでは、落下加熱ゾーンで一種の予熱を行うことができるので、既に予熱された黒鉛化可能な材料から形成される材料柱状体を加熱するのに必要なエネルギーが低減される。
【0011】
変形例Dでは、より少ない体積が材料容器内で黒鉛化され、それによりプロセス手順が向上している。
【0012】
常に制御可能なプロセスを達成するために、特定のプロセス室から黒鉛が排出される単位時間当たりの体積に等しい単位時間当たりの体積の黒鉛化可能な材料が、このプロセス室に供給されることが有利である。
【0013】
黒鉛化可能な材料が特定のプロセス室に連続的又は断続的に供給でき、黒鉛がこのプロセス室から連続的又は断続的に排出でき、連続的な供給及び排出が好ましい。断続的プロセスでは、供給と排出は同時に又は時間をずらして行うことができる。
【0014】
方法変形例B及びCを再現可能に実施するために、変形例B及び/又は変形例Cにおいて、材料柱状体の充填レベルがほぼ一定に保たれると有利である。
【0015】
変形例Cにおける予熱の制御と監視のために、ガスを、黒鉛化可能な材料の落下方向に対して向流に又は落下方向に対して並流に、落下加熱ゾーンに吹き入れことが有利であり得る。
【0016】
既に上述したように、複数のプロセス室を有する黒鉛化炉を使用でき、その複数のプロセス室は時間的に並行して運転される。
【0017】
変形例Aに関して、黒鉛化可能な材料の粒子が、5μm超、かつ、3000μm未満、2500μm未満、2000μm未満、1500μm未満、1000μm未満、又は500μm未満の平均粒径を有すること、又は黒鉛化可能な材料の粒子が、5μm~3000μm、500μm~2000μm、又は1000μm~1500μmの平均粒径を有することが有利である。
【0018】
効果的な運転のために、加熱ゾーンの温度が、特に加熱ゾーンの上端及び/又は加熱ゾーンのほぼ中央及び/又は加熱ゾーンの下端及び/又は存在する各プロセス管の材料柱状体で測定されることが有利である。このようにして、望ましくない温度変化を補償するように加熱装置を制御することによって、加熱ゾーンの温度変動を迅速に考慮することができる。
【0019】
冒頭に記載したタイプの縦型黒鉛化炉において、上記の課題は、
e)少なくとも1つのプロセス室において、加熱ゾーンは落下加熱ゾーンと静止加熱ゾーンを含み、両ゾーンは、静止加熱ゾーンでは材料柱状体が形成されていて、入口を通って供給された黒鉛化可能な材料が、落下加熱ゾーンを通って上方から材料柱状体上に流下できるように構成されており、及び/又は
f)コンベアシステムが存在し、それによって、黒鉛化可能な材料が、1つ以上の材料容器に入れられて少なくとも1つのプロセス室とその加熱ゾーンを通って搬送可能であることによって解決される。
【0020】
これにより黒鉛化炉は、特にプロセス変形例C及びDに関して最適化されている。
【0021】
この場合、搬入コンベアと搬出コンベアは、材料を入れた材料容器を搬送するように構成されており、コンベアシステムは、材料容器を入口から出口まで搬送するように構成されたプロセス室コンベアを備えることが有利である。
【0022】
縦型黒鉛化炉は、コンベアシステムが循環コンベアシステムであり、材料容器を搬出コンベアから搬入コンベアへ搬送できる連結コンベアを追加的に備える場合に、特に効果的に運転できる。
【0023】
有利には、材料容器は坩堝蓋を有する坩堝である。
【0024】
上述したように、黒鉛化炉に複数のプロセス室が存在する場合が有利である。
【0025】
更に、加熱ゾーンの温度を、特に加熱ゾーンの上端及び/又は加熱ゾーンのほぼ中央及び/又は加熱ゾーンの下端及び/又は存在する各プロセス管の材料柱状体で測定できる温度監視装置が有利である。
【0026】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながらより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、黒鉛化可能な材料が材料柱状体としてプロセス室内を上方から下法へ案内される、第1の実施形態による縦型黒鉛化炉を示す図であって、第1のタイプのプロセス手順が示されている。
【
図2】
図2は、
図1縦型黒鉛化炉であって、第2のタイプのプロセス手順が示されている。
【
図3】
図3は、並行して延びる2つのプロセス室を有する第2の実施形態による縦型黒鉛化炉を示す図である。
【
図4】
図4は、並行して延びる2つのプロセス室が互いに間隔を置いている、
図3の実施形態の変形例を示す図である。
【
図5】
図5は、黒鉛化可能な材料を入れた材料容器のためのコンベアシステムを有する、第3の実施形態による縦型黒鉛化炉を示す図である。
【0028】
図1は、負極材用の多結晶黒鉛12を製造するために使用される縦型黒鉛化炉10を示しており、以下では単に炉10と称する。多結晶黒鉛12の製造の出発材料として、粒子状の黒鉛化可能な材料14が用いられる。黒鉛化可能な材料は炭素を含み、黒鉛化の過程で非晶質炭素から多結晶黒鉛に変換される。黒鉛化可能な材料の例は、褐炭や瀝青炭、場合によってはプラスチックである。
【0029】
好ましくは、黒鉛化可能な材料14の粒子の粒径は3mm未満である。好ましくは、黒鉛化可能な材料14の粒子は、5μm超、かつ、3000μm未満、2500μm未満、2000μm未満、1500μm未満、1000μm未満、又は500μm未満の平均粒径を有する。あるいは、粒子は、5μm~3000μm、500μm~2000μm、又は1000μm~1500μmの平均粒径を有することができる。
【0030】
炉10は、黒鉛製の管壁18を有するプロセス管16を備え、プロセス管16は、その内室20にプロセス室22を収容しており、プロセス室22は、垂直上方に配置された投入ゾーン24と、垂直下方に配置された排出ゾーン26と、これらの間に配置され、黒鉛化可能な材料14の粒子が黒鉛化されて黒鉛12になる加熱ゾーン28とを画定している。
【0031】
これにより加熱ゾーン28の上端28aが、投入ゾーン24から加熱ゾーン28への移行部に画定されており、これに対応して加熱ゾーン28の下端28bは、加熱ゾーン28から排出ゾーン26への移行部に画定されている。内室20又はプロセス室22は、好ましくは円形断面を有する。しかしながら、楕円形や正方形や長方形など、別の断面も可能である。一般的に、管壁18は、内室20又はプロセス室22の断面の形状を再現し、対応する外側断面を有するが、この外側断面は内室20又はプロセス室22の外側断面と異なっていてもよい。
【0032】
プロセス管16の投入ゾーン24は、入口30で黒鉛化可能な材料14のための搬入コンベア34の出口側32と接続されており、その入口側36に材料貯蔵器38から黒鉛化可能な材料14が供給される。この実施形態では、搬入コンベア34は、黒鉛化可能な材料14をそのまま供給するように構成されており、特にこの目的のためにそれ自体公知のスクリューコンベアとして構成されている。プロセス室22の排出ゾーン24は、対応して出口40で搬出コンベア44の入力側42と接続されていて、製造された黒鉛12が排出ゾーン26から取り出されて搬出される。この実施形態では、搬出コンベア44は黒鉛12をそのまま搬送するように構成されており、そのために搬出コンベア44も同様にスクリューコンベアとして構成されている。このスクリューコンベアは水冷システムによって追加的に冷却されるが、これもそれ自体公知である。
【0033】
搬入コンベア34及び搬出コンベア44は、プロセス管16との気密接続を形成することができ、周囲雰囲気の排除下で搬送も行うことができるように構成されている。この目的のために、代替的な搬送コンセプト、例えばロータリーバルブや、コンベアベルトや振動シュートなどと組み合わせたダブルフラップシステムなども考慮される。
【0034】
加熱ゾーン28の領域では、プロセス室16は黒鉛化プロセスのために加熱装置46によって約2200℃~約3200℃、好ましくは約3000℃に加熱され、図ではプロセス管16の濃い斜線領域によって示されている。加熱装置46は、実際には電気加熱装置である。この目的のために、例えばプロセス管16の壁厚が加熱ゾーン28の領域で減少されて、プロセス管16がそこで高い電気抵抗のためにより効果的に加熱されるようにすることができる。加熱ゾーン28は、実質的に同じ黒鉛化温度が存在するプロセス室22の連続した部分によって画定されている。
【0035】
プロセス管16は、例えば鋼板製の絶縁ハウジング56の上側の天井壁50の貫通開口部48と、下側の底部壁54の貫通開口部52を貫通して、プロセス管16が絶縁ハウジング56から上端部分16aで上方に突出し、下端部分16bで下方に突出するように延びている。天井壁50と底部壁54の内側にはそれぞれ、好ましくは黒鉛フェルト製の板状の絶縁要素58が配置されていて、プロセス管16のための軸方向に段差のある貫通部60を備え、それぞれ段差領域62を画定している。段差のある貫通部60の断面が小さいそれぞれの領域は、段差領域62が互いに向き合うように、絶縁ハウジング56の天井壁50若しくは底部壁54の方に向けられている。絶縁要素58は一体であってもよく、又は段差のある貫通部60が全体として形成されるように、直径が異なる貫通開口部を有する2つの板状要素によって形成されてもよい。
【0036】
プロセス管16と保護ハウジング64との間に環状室66が形成されるように、天井壁50における絶縁要素58の段差領域62から底部壁54における絶縁要素58の段差領域62まで、プロセス管16のための黒鉛製の保護ハウジング64、例えば保護管がプロセス管延びており、環状室66は、上部と下部で天井壁50と底部壁54の貫通開口部48及び52に向かって開いている。
【0037】
保護ハウジング64に半径方向に隣接して、保護ハウジング64、絶縁ハウジング56及び絶縁要素58によって画定された絶縁環状室68が形成されている。この実施形態では、絶縁環状室68にカーボンブラックが充填されている。
【0038】
天井壁50の貫通開口部48は、上部接続キャップ70によって覆われている。この実施形態では、プロセス管16の上端部分16aは、絶縁ハウジング56の天井壁50とプロセス管16の入口30との間に上部接続環状室72が形成されるように上部接続キャップ70を貫通して延びており、この接続環状室72は、貫通開口部48と、天井壁50と、上部絶縁要素58の貫通部60を介して環状室66に流体接続されている。
【0039】
これに対応して、底部壁54の貫通開口52は、下部接続キャップ74によって覆われている。この実施形態では、プロセス管16の下端部分16bは、絶縁ハウジング56の底部壁54とプロセス管16の出口40との間に下部接続環状室76が形成されるように下部接続キャップ74を貫通して延びており、この接続環状室76は、底部壁54の貫通開口52と下部絶縁要素58の貫通部60を介して環状室66に流体接続されている。
【0040】
絶縁ハウジング56と接続キャップ70、74との間の上下の移行部にはそれぞれ、それ自体公知の水冷システムとして設計された、ハウジング部品を保護するためのハウジング冷却装置78が設けられている。
【0041】
接続環状室72及び76と、環状室66と、絶縁要素58の貫通部60によって、保護ガスシステム82の一部であるガス室80が形成されている。
【0042】
保護ガスシステム82は、更に上部接続キャップ70に第1の保護ガス送入ポート84.1と、下部接続キャップ74に第2の保護ガス送入ポート84.2とを備え、これらを介して保護ガスをガス室80に吹き入れることができる。
【0043】
絶縁要素58は多孔質であってガスに対して透過性があるため、保護ガスはガス室80から貫通部60の断面が小さい領域で絶縁要素58に拡散し、更に絶縁環状室68に拡散する。絶縁ハウジング56の天井壁50には、保護ガスを排出できるように保護ガス排出ポート86が存在する。絶縁ハウジング56の底部壁54には、保護ガスを絶縁環状室66にも選択的に送入できるように、第3の保護ガス送入ポート84.3も補足的に設けられる。
【0044】
プロセス管16の周囲に保護ガスが必要なのは、黒鉛化可能な材料12の黒鉛化がプロセス室22内に存在する不活性ガス雰囲気下で行われるからである。保護ガスとしては、一般的に不活性ガスと同じガスが用いられ、プロセス管16の管壁18の両側に同じ種類のガスが存在するようにする。保護ガスと不活性ガスに異なるガスを使用することもできるが、その場合は保護ガスも不活性であることが必要である。保護ガス及び/又は不活性ガスとして、例えばアルゴン、窒素、ヘリウム又はそれらの混合ガスを使用することができる。
【0045】
不活性ガスをプロセス室22に導入するために、プロセス管16は下端部分16bで不活性ガス送入ポート88に結合されており、それを通して不活性ガスをプロセス室22に吹き入れることができる。プロセス管16の上端部分16aは、排ガス排出ポート90と接続されており、黒鉛化中に発生したガスを不活性ガスと混合してプロセス室22から排出できる。したがって、この場合、炉10は、不活性ガスがプロセス室22内をプロセス室22内にある材料の移動方向と反対方向に流れる向流で運転される。代わりに、不活性ガス送入ポート88がプロセス管16の上端部分16aに配置され、排ガス排出ポート90がプロセス管16の下端部分16bに配置されてもよい。別の変形例で、不活性ガス送入ポートと排ガス排出ポートをそれぞれ上部と下部の両方でプロセス室22と接続して、適宜切り替えることにより黒鉛化を向流法又は並流法のいずれかで選択的に行うこともできる。これらのいずれの場合も、排ガスはそれ自体公知の熱的な後燃焼に供給される。
【0046】
更に別の変形例では、上端部分16aに配置された不活性ガス送入ポート88から、ガス供給パイプが材料柱状体94の充填レベル92の直上まで下方に延びて、材料柱状体94の上方のそこでプロセス室22内に不活性ガスを吹き入れるようにしてもよい。
【0047】
なお、保護ガス、不活性ガス又は排ガスを搬送するために必要な搬送部品、例えば送風機、ガスポンプなどや、関連する配管、並びに制御装置は、それぞれ、簡略化のために図示されていない。
【0048】
ここで、炉10は以下のように運転される:
最初の運転開始の前に、まず、プロセス室22又はそこにあるプロセス室雰囲気から、特に存在する空気による酸素と水分を除去しなければならない。このためにプロセス室22を不活性ガスでパージし、ガス室80と絶縁環状室68も不活性ガスでパージする。
【0049】
加熱装置46が作動し、黒鉛化可能な材料14が搬入コンベア34によってプロセス室22に充填レベル92まで供給される。その後、搬出コンベア44が作動すると、最初は、加熱ゾーン28で得られた黒鉛12が搬出コンベア44に到達するまで、完全に変換されていない材料がプロセス室22から運び出される。
【0050】
進行中の黒鉛化プロセスでは、黒鉛化可能な材料14が搬入コンベア34によってプロセス室22に連続的に供給され、そこから得られた黒鉛12が搬出コンベア44によってプロセス室22から連続的に取り出される。その際に単位時間当たり、場合によっては1分間当たり搬出される黒鉛12の体積に等しい単位時間当たり、例えば1分間当たりの体積の黒鉛化可能な材料14が投入されるので、プロセス管92内の充填レベル92がほぼ一定に保たれる。この場合、炉10は材料収支の観点で全体として連続的に運転される。
【0051】
一変形例では、炉10は材料収支の観点で全体として断続的に運転される。この場合、供給と排出は同時に行われ、黒鉛化可能な材料14が搬入コンベア34でプロセス室22に連続的に供給されると同時に、そこから得られた黒鉛12が搬出コンベア44でプロセス室22から連続的に取り出され、このとき材料交換作業が行われて、一定体積の黒鉛12が取り出され、それに対応する体積の黒鉛化可能な材料14が補給される。
【0052】
いずれにしても、連続炉運転では、黒鉛化可能な材料14が約3000℃の加熱ゾーン28に滞留する時間が約2~3時間となるように、搬入コンベア34と搬出コンベア44の搬送速度が設定される。場合によっては、加熱ゾーン28の下部領域には、もはや黒鉛化可能な材料と混合されていない黒鉛12が既に存在することがある。
【0053】
加熱ゾーン28の温度が約2700℃の場合、黒鉛化可能な材料14の滞留時間が約10~20時間であることがある。
【0054】
図1は、プロセス管16内の充填レベル92が加熱ゾーン28の上端28aの高さレベルに対応しているプロセス手順を示す。言い換えれば、材料柱状体94が、充填レベル92から下方に延び、更に排出ゾーン26を通ってプロセス管16の出口40まで延びており、加熱ゾーン28全体に形成されている。これに対して、投入ゾーン24は黒鉛化可能な材料14が通過するだけで、入口30を通ってプロセス室22に供給された後、投入ゾーン24を通って上方から材料柱状体94上に流下し、材料柱状体94の一部となる。ここで「流下」という用語は、バルク材料の流動性などの技術的なパラメータに関係なく、材料が下方に落下することの一般用語として理解される。
【0055】
図2は、充填レベル92が加熱ゾーン28の上端28aの下方にある代替タイプのプロセス手順を示している。したがって材料柱状体94は、加熱ゾーン28全体に形成されていない。むしろ、材料柱状体94、即ち充填レベル92と、加熱ゾーン28の上端28aとの間に落下加熱ゾーン96が形成されており、そこに黒鉛化可能な材料14が上方の投入ゾーン24から進入し、更に落下加熱ゾーン94を通って材料柱状体94上に流下又は落下し、材料柱状体94に衝突してその一部となる。したがって、黒鉛化可能な材料14が落下中に又は上方から下方に落下するときに、落下加熱ゾーン94を通過する。
【0056】
ここで述べるプロセス手順において、落下加熱ゾーン96は、黒鉛化可能な材料14が上方から下方に自由落下する一種の自由落下加熱ゾーンである。この場合、プロセス管16内の雰囲気の排ガス排出ポート90に向かう向流により、黒鉛化可能な材料14の粒子の落下を自由落下よりも遅らせ、落下加熱ゾーン96での滞留時間を長くすることができる。排ガス排出ポート90がプロセス管16の底部に設けられている前述の変形例では、ガス流によって、黒鉛化可能な材料の粒子の落下を自由落下に比べて結果的に加速させ、落下加熱ゾーン96での滞留時間を短縮させることができる。
【0057】
特に図示しない変形例では、落下加熱ゾーン96における滞留時間を選択的に調整するために黒鉛化可能な材料14の粒子の落下速度を選択的に遅らせたり加速させたりするために、必要に応じて、不活性ガスを落下方向に対して向流に又は落下方向に対して並流に落下加熱ゾーン96に吹き入れることができる。
【0058】
加熱ゾーン28のうち、材料柱状体94が形成されている部分は、加熱ゾーン28に含まれる静止加熱ゾーン98を画定する。「静止」という用語は、単に材料柱状体94そのものはほぼ静止した状態で存在するが、材料柱状体94は炉10の運転中に材料供給及び材料除去によって変化することを指すことを意図している。落下加熱ゾーン94と静止加熱ゾーン98は、少なくとも実質的に等しい温度である。
【0059】
落下加熱ゾーン94では、黒鉛化可能な材料14は既に流下中に加熱され、加熱ゾーン28の上端28aに充填レベル92がある材料柱状体94の場合よりも既に高い初期温度で材料柱状体94に到達する。その結果、黒鉛化可能な材料14の材料粒子はより迅速に黒鉛化に必要な温度に達する。
【0060】
図2に示す変形例では、落下加熱ゾーン96と静止加熱ゾーン98は、それぞれ加熱ゾーン28の約50%を占めている。実際、効果的な黒鉛化は、落下加熱ゾーン96が加熱ゾーン28の10%~60%、好ましくは20%~55%、より好ましくは30%~50%、特に30%、又は図示の50%を占める炉10において達成できた。
【0061】
図3は、2本のプロセス管16.1及び16.2が絶縁ハウジング56を貫通して延びる、第2の実施形態による炉10を示す。この実施形態は、2本よりも多くのプロセス管56が存在し、対応する方法で絶縁ハウジング56を通って延びる別の変形例も例示する。
【0062】
図3では、簡略化のため、すべての部品及び構成要素に参照符号が付されているわけではなく、
図1及び
図2による部品及び構成要素に対応する識別された部品及び構成要素には同じ参照符号が付されており、第1のプロセス管16.1と第2のプロセス管16.2のいずれに属するかは、場合によりインデックス.1又は.2で識別されている。
【0063】
ここでは、保護ハウジング64が両プロセス管16.1、16.2を取り囲んでいるが、各プロセス管16.1、16.2に別々の保護ハウジング64を割り当てることも可能である。
【0064】
更に
図3は、プロセス管16.1、16.2が互いに隣接していることを示しているが、
図4に示すように、一変形例において、プロセス管16.1、16.2は互いに間隔を置いて存在していてもよく、プロセス管16.1とプロセス管16.2の間にもカーボンブラックが配置されていて、環状室68はそれに応じて変形されている。それに応じて、取り囲むハウジング及び関連する貫通部や開口部も変更されている。その結果として、2つの保護ハウジング64及び環状室66が存在し、同様に2つの上部接続キャップ70及び2つの下部接続キャップ74が存在するが、図では2回現れるすべての構成要素がそれぞれ参照符号を有するわけではない。
【0065】
図3に示す例では、各プロセス管16.1、16.2に別々の搬入コンベア34.1又は34.2と、別々の搬出コンベア44.1又は44.2が割り当てられている。変形例では、両プロセス管16.1、16.2に材料を供給する単一の搬入コンベア34のみが存在することもできる。したがって両プロセス管16.1、16.2から黒鉛12を受け取り搬出する単一の搬出コンベア44のみが存在することもできる。
【0066】
2つより多くのプロセス管16が存在する場合、単一の搬入コンベア34が、1つのプロセス管16のみ、1対のプロセス管16、又は3つ以上のプロセス管16のグループ、及び場合によってはすべてのプロセス管16に黒鉛化可能な材料14を供給することができる。同様に、2つより多くのプロセス管16が存在する場合、単一の搬出コンベア44が、1つのプロセス管16のみ、1対のプロセス管16、又は3つ以上のプロセス管16のグループ、及び場合によってはすべてのプロセス管16から、得られた黒鉛12を受け取って、それを排出することができる。
【0067】
2つのプロセス管16.1、16.2にそれぞれ別々の搬入コンベア34.1、34.2と別々の搬出コンベア44.1、44.2が割り当てられている場合、プロセス管16.1、16.2に、それぞれの加熱ゾーン28.1、28.2又は静止加熱ゾーン98で異なる滞留時間を必要とする異なる黒鉛化可能な材料14を供給することができる。静止加熱ゾーン98については、
図3では、プロセス管16.2における静止加熱ゾーン98.2のみに示されている。これは、異なるプロセス管16.1、16.2を異なるモードで運転することもできることを示している。
【0068】
プロセス管16の総数にかかわらず、加熱ゾーン28.1、28.2は、2つの異なるプロセス管16.1、16.2に対して同じ長さであっても、異なる長さであってもよい。プロセス管16.1、16.2がそれぞれ、落下加熱ゾーン96が存在する状態で運転される場合、それらの長さ、したがって落下加熱ゾーン96と静止加熱ゾーン98のそれぞれの長さ比も異なることが可能である。
【0069】
図5は、炉10の第3の実施形態を示しており、黒鉛化可能な材料14がバルク材料又は流下材料としてそのままプロセス室22に導入されるのではなく、材料容器100に入れられてプロセス室22と加熱ゾーン28を通って搬送される。3つだけ参照符号を付した材料容器100は、この実施形態では、坩堝蓋104を有する坩堝102として設けられている。コンベアシステム106は、黒鉛化可能な材料14で満たされた材料容器100が、入口30を通過する過程でプロセス室22に搬送され、そこからプロセス室22を通り抜けて出口40に向かい、出口40を通過する過程でプロセス室22から出ることができるように構成されている。
【0070】
このためにコンベアシステム106は、この実施形態では、材料を入れた材料容器100を搬送するように構成された搬入コンベア34と搬出コンベア44を備える。更に、コンベアシステム106は、材料を入れた材料容器100をプロセス室22内でも搬送するように構成されたプロセス室コンベア108を備えており、材料容器100を入口30から出口40まで搬送する。
【0071】
更に、この実施形態では、コンベアシステム106は、循環コンベアシステムとして設計されており、この目的のために材料容器100を搬出コンベア44から搬入コンベア34に搬送することができる連結コンベア110を備える。
【0072】
ここでは搬入コンベア34及び搬出コンベア44は、それぞれ回転コンベア112及び114として設計されており、いずれもそれぞれの垂直回転軸120を中心に回動可能な回転要素116又は118を備える。プロセス室コンベア108及び連結コンベア110はリニアコンベア122又は124として設計されており、そのために、ここでは、押し棒の形態にある駆動式押し要素128を有する押し装置126が各場合に存在する。プロセス室コンベア108の場合、材料容器100が投入ゾーン24でプロセス室22に入った後に、押し要素128が材料容器100を押す。材料容器100はその下にある材料容器100に突き当たり、それによってプロセス室22内にあるすべての材料容器100が1つ分進むことになる。これが機能するためには、この時点でプロセス室22の出口40には材料容器100がない空所が存在する。
【0073】
材料容器100がプロセス室22を通る過程で加熱ゾーン28を通過するときに、黒鉛化可能な材料14は黒鉛化されて黒鉛12になる。その結果、出口40にある材料容器100は黒鉛12を含む。材料容器100がプロセス管16の出口40に到達したとき入口30には空所が形成されているので、黒鉛化可能な材料14を積んだ材料容器100が、搬入コンベア34によってプロセス室22内に搬送されることができる。このとき連結コンベア110の搬送区間の終端で搬入コンベア34に空所が生じ、そこにプロセス室コンベア108と同様に作動する連結コンベア110によって空の材料容器100が押し込まれる。次に、搬出コンベア44がプロセス管16から黒鉛12を積んだ材料容器100を取り出すと、連結コンベア110の入口に生じる空所は、搬出コンベア44により空の材料容器100で満たされる。
【0074】
搬入コンベア34は、空の材料容器100に黒鉛化可能な材料14を充填できる充填ステーション130を備える。搬出コンベア44は、黒鉛12を材料容器100から取り出すことができる荷降ろしステーション132を備える。その際に炉内雰囲気が外気で汚染されないように、適切なエアロック設計が実現されている。
【0075】
図5に示す状況では、回転要素116及び118は、4つの材料容器100を収容するように設計されており、各サイクルで回転軸120を中心に90°の回転が行われるようになっている。この場合、充填ステーション130は、プロセス管16の入口30の1サイクル前に空の材料容器100が到達し、荷下ろしステーション132に、プロセス管16の出口40の1サイクル後に黒鉛12で満たされた材料容器100が到達する。
【0076】
したがって上述した炉10では、プロセス室22を材料容器100が断続的に搬送される。変形例でそのために設計されたコンベアシステム106では、材料容器100がプロセス室22内を連続的に搬送されることもできる。
【0077】
上述したすべての実施形態において、加熱ゾーン28内の温度若しくは材料柱状体94の温度は、温度監視装置で監視される。
【0078】
この目的のために、温度は、存在する各プロセス管16の加熱ゾーン28の上端28a及び/又は加熱ゾーン28のほぼ中央及び/又は加熱ゾーン28の下端28bで測定される。
【0079】
代替的又は追加的に、温度測定は材料柱状体94の充填レベル92の上方で行うこともできる。
【0080】
温度測定は、好ましくはそれ自体公知のパイロメーター管を備えたパイロメーターで行われ、パイロメーター管の測定端は、それぞれの測定箇所に配置されている。測定は、好ましくは加熱装置46のそばで行われる。
【0081】
加熱ゾーン28における測定のために、パイロメーター管は、例えば外側から絶縁ハウジング56の外壁を通り、絶縁環状室66を通り、更に保護ハウジング64の壁を通って環状室66内のプロセス管16の管壁18の前まで延びている。関連するパイロメーターは保護ハウジング56の外側でパイロメーター管の自由端に配置されている。対応するパイロメーター管は、水平に配置されていることが好ましい。このようにしてプロセス管の外側で測定した温度から、温度を求めることができる。
【0082】
材料柱状体94の充填レベル92の上方で測定する場合、パイロメーター管は上方からプロセス管16内の充填レベル92のすぐ上まで延びる。この場合、パイロメーター管は好ましくは垂直に延び、パイロメーターは相応にパイロメーター管の上部に配置されている。しかしながら、パイロメーター管を水平に配置することも可能である。しかしながら、この場合もパイロメーター管は、プロセス管16の管壁18を貫通して、プロセス室22内に通じている。
【国際調査報告】