(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-01
(54)【発明の名称】混合酸化物のナノ粒子の懸濁液
(51)【国際特許分類】
C01G 25/00 20060101AFI20221124BHJP
B01J 21/06 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
C01G25/00
B01J21/06 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520015
(86)(22)【出願日】2020-09-28
(85)【翻訳文提出日】2022-05-24
(86)【国際出願番号】 EP2020077137
(87)【国際公開番号】W WO2021063900
(87)【国際公開日】2021-04-08
(32)【優先日】2019-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508079739
【氏名又は名称】ローディア オペレーションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】アルル, ヴィルジニー
(72)【発明者】
【氏名】イフラー, シモン
(72)【発明者】
【氏名】シャベール, ボリス
(72)【発明者】
【氏名】フォーレ, ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】ラルエ, オリビエ
【テーマコード(参考)】
4G048
4G169
【Fターム(参考)】
4G048AA03
4G048AB02
4G048AC08
4G048AD04
4G048AD10
4G048AE05
4G169AA03
4G169AA08
4G169BA05A
4G169BA05B
4G169BC42B
4G169BC43B
4G169BC51B
4G169BD02B
4G169CA03
4G169CA09
4G169DA06
4G169EA01Y
(57)【要約】
本発明は、セリウム及びジルコニウムをベースとする混合酸化物のナノ粒子の懸濁液に関する。本発明はまた、触媒付きガソリン微粒子フィルターの調製のための前記懸濁液の使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉱酸か、又は2~12個の炭素原子、好ましくは2~8個の炭素原子を含有するカルボン酸かのどちらかである酸を含む水性液体媒体中の、ジルコニウムの、セリウムの、任意選択的にランタンの並びに任意選択的にセリウム以外及びランタン以外の少なくとも1種の希土類元素(RE)の少なくとも1種の混合酸化物の粒子の懸濁液であって、前記懸濁液が、以下の特性:
- 前記懸濁液のpHは、2.0~7.0(この後者の値は除外される)であり;
- 前記混合酸化物の割合は、20.0重量%~50.0重量%であり;
- 前記懸濁液の比表面積は、前記混合酸化物がLaもREも含まない場合には15m
2/g超であり、前記混合酸化物がLa及び/又はREを含む場合には21m
2/g超であり、前記比表面積は、前記懸濁液から単離された固体の空気中で1100℃での4時間の焼成後に測定され;
ここで:
- 前記混合酸化物の粒子は、20.0nm~900nmのD50を示し;
- 前記混合酸化物に対する酸化物の重量で表される、前記元素Ce、Zr、La及びREの割合は、下記:
・ 20.0重量%~55.0重量%のセリウム;
・ 10.0重量%以下のランタン;
・ 15.0重量%以下の、セリウム以外及びランタン以外の希土類元素(RE);
・ ジルコニウムとしての残り
である、
を有する懸濁液。
【請求項2】
・ ジルコニウムの、セリウムの、任意選択的にランタンの並びに任意選択的にセリウム以外及びランタン以外の少なくとも1種の希土類元素(RE)の少なくとも1種の混合酸化物の粒子;
・ 水性液体媒体;
・ 鉱酸か又は2~12個の炭素原子、好ましくは2~8個の炭素原子を含有するカルボン酸かのどちらかである酸
からなる懸濁液であって;
前記懸濁液が、以下の特性:
- 前記懸濁液のpHは、2.0~7.0(この後者の値は除外される)であり;
- 前記混合酸化物の割合は、20.0重量%~50.0重量%であり;
- 前記懸濁液の比表面積は、前記混合酸化物がLaもREも含まない場合には15m
2/g超であり、前記混合酸化物がLa及び/又はREを含む場合には21m
2/g超であり、前記比表面積は、前記懸濁液から単離された固体の空気中で1100℃での4時間の焼成後に測定され;
ここで:
- 前記混合酸化物の粒子は、20.0nm~900nmのD50を示し;
- 前記混合酸化物に対する酸化物の重量で表される、前記元素Ce、Zr、La及びREの割合は、下記:
・ 20.0重量%~55.0重量%のセリウム;
・ 10.0重量%以下のランタン;
・ 15.0重量%以下の、セリウム以外及びランタン以外の希土類元素;
・ ジルコニウムとしての残り
である、
を有する懸濁液。
【請求項3】
前記混合酸化物が、元素ハフニウムをも含む請求項1又は2に記載の懸濁液。
【請求項4】
前記混合酸化物が元素ハフニウムを含み、その割合が、2.5重量%以下、更に2.0重量%以下であり、この割合が、前記混合酸化物に対する酸化物の重量で表される請求項1~3のいずれか一項に記載の懸濁液。
【請求項5】
前記混合酸化物が、
- 元素Ce及びZrを;又は
- 元素Ce、Zr及びLaを;又は
- 元素Ce、Zr、La及び少なくとも1種のREを
ベースとする請求項1~4のいずれか一項に記載の懸濁液。
【請求項6】
元素Ce及びZr、La又はRE(存在する場合)、並びにHf(存在する場合)が、酸化物として前記混合酸化物中に存在する請求項1~5のいずれか一項に記載の懸濁液。
【請求項7】
前記混合酸化物中のセリウムの割合が、
- 30.0重量%~55.0重量%;又は
- 30.0重量%~45.0重量%;又は
- 25.0重量%~35.0重量%
である請求項1~6のいずれか一項に記載の懸濁液。
【請求項8】
前記混合酸化物中のランタンの割合が1.0重量%~10.0重量%である請求項1~7のいずれか一項に記載の懸濁液。
【請求項9】
前記混合酸化物中のセリウム以外及びランタン以外の希土類元素の合計割合が10.0重量%以下である請求項1~8のいずれか一項に記載の懸濁液。
【請求項10】
前記pHが3.0~6.0である請求項1~9のいずれか一項に記載の懸濁液。
【請求項11】
前記混合酸化物の割合が、25.0重量%~50.0重量%、より具体的には30.0重量%~45.0重量%又は35.0重量%~45.0重量%である請求項1~10のいずれか一項に記載の懸濁液。
【請求項12】
前記酸が硝酸又は式R
1-COOH(式中、R
1は、1~11個、より具体的には1~7個の炭素原子を含有する直鎖若しくは分岐アルキル基である)のカルボン酸である請求項1~11のいずれか一項に記載の懸濁液。
【請求項13】
前記酸が、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ヘキサン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸及びクエン酸からなる群の中で選択されるカルボン酸である請求項1~12のいずれか一項に記載の懸濁液。
【請求項14】
前記酸が酢酸である請求項1~13のいずれか一項に記載の懸濁液。
【請求項15】
前記酸が、OH、C=O、アルデヒド及びエステル基からなる群の中で選択され得る、COOH以外の少なくとも1つの官能基を含有するカルボン酸である請求項1~11のいずれか一項に記載の懸濁液。
【請求項16】
前記懸濁液が、前記混合酸化物以外のいかなる金属酸化物も含まず、前記金属酸化物が、少なくとも1種の金属の酸化物と定義される請求項1~15のいずれか一項に記載の懸濁液。
【請求項17】
前記懸濁液が、前記混合酸化物以外のいかなる金属酸化物も含まず、前記金属酸化物が、Al、Zr又はTiからなる群の中で選択される少なくとも1種の金属の酸化物と定義される請求項1~15のいずれか一項に記載の懸濁液。
【請求項18】
少なくとも35m
2/gの、より具体的には少なくとも40m
2/gの比表面積(BET)を示し、前記比表面積が、前記懸濁液から単離された固体の空気中で1000℃での4時間の焼成後に測定される、請求項1~17のいずれか一項に記載の懸濁液。
【請求項19】
前記懸濁液の前記比表面積が、以下の工程:
(i)固体が前記懸濁液から単離される工程;
(ii)次いで、前記固体が空気中で500℃において1時間乾燥させられる工程;
(iii)前記乾燥させられた固体が、空気中で1100℃において4時間又は1000℃において4時間焼成される工程
を含む方法によって単離された前記固体に関して測定される請求項1~18のいずれか一項に記載の懸濁液。
【請求項20】
前記懸濁液が、0.50mL/g超、より具体的には0.60mL/g超の全細孔容積TPVを示し、前記TPVが、以下の工程:
(i)固体が前記懸濁液から単離される工程;
(ii)次いで、前記固体が、空気中で500℃において1時間乾燥させられる工程
を含む方法によって単離された前記固体に関して水銀ポロシメトリーによって測定される請求項1~19のいずれか一項に記載の懸濁液。
【請求項21】
前記懸濁液が、0.15mL/g超、より具体的には0.25mL/g超である、300nm未満の直径を有する細孔について水銀ポロシメトリーによって測定される細孔容積(PV
0~300nm)を示し、PV
0~300nmが、以下の工程:
(i)固体が前記懸濁液から単離される工程;
(ii)次いで、前記固体が、空気中で500℃において1時間乾燥させられる工程
を含む方法によって単離された前記固体に関する水銀ポロシメトリーによって測定される請求項1~20のいずれか一項に記載の懸濁液。
【請求項22】
D50が、20.0nm~800.0nm、より具体的には20.0nm~500.0nm、更により具体的には20.0nm~400.0nm、更により具体的には20.0nm~300.0nm又は20.0nm~200.0nm又は20.0~100.0nmである請求項1~21のいずれか一項に記載の懸濁液。
【請求項23】
前記粒子が1000nm未満のD90を示す請求項1~22のいずれか一項に記載の懸濁液。
【請求項24】
前記粒子が、50nm~1000nm、より具体的には50nm~700nm、更により具体的には50nm~500nmであるD90を示す請求項1~23のいずれか一項に記載の懸濁液。
【請求項25】
前記粒子が、50nm~500nmであるD90を示す請求項1~24のいずれか一項に記載の懸濁液。
【請求項26】
D90が200nm未満である請求項1~25のいずれか一項に記載の懸濁液。
【請求項27】
D90が100nm未満である請求項1~26のいずれか一項に記載の懸濁液。
【請求項28】
空気中で1100℃での4時間の焼成後の前記比表面積が40m
2/g以下である請求項1~27のいずれか一項に記載の懸濁液。
【請求項29】
前記懸濁液が、1000cP未満、より具体的には500cP未満、更により具体的には100cP未満である粘度Vを示し、Vが、以下の方法:試料が、先ず5分のランプ時間にわたって1s
-1から100s
-1まで増加するせん断速度に、次いでまた5分間にわたって100s
-1から1s
-1まで減少するせん断速度にさらされる、にしたがって円筒クエットジオメトリーを用いるレオメーターを使って20℃で測定され、前記粘度値(V)が、前記せん断速度の減少中に10s
-1のせん断速度で測定される値に対応する請求項1~28のいずれか一項に記載の懸濁液。
【請求項30】
前記水性液体媒体が水である請求項1~29のいずれか一項に記載の懸濁液。
【請求項31】
前記水性液体媒体が、水と混和性である少なくとも1種の他の液体を含む請求項1~29のいずれか一項に記載の懸濁液。
【請求項32】
20nm~100nmのD50及び50nm~120nmのD90を有する請求項1~31のいずれか一項に記載の懸濁液。
【請求項33】
40nm~100nmのD50及び50nm~120nmのD90を有する請求項1~31のいずれか一項に記載の懸濁液。
【請求項34】
重量比ZrO
2/CeO
2が1.0超、又は更に1.5超である請求項1~33のいずれか一項に記載の懸濁液。
【請求項35】
前記酸を含む水性液体媒体中に分散させられた混合酸化物Mを含む分散系が、前記混合酸化物の粒子のサイズを縮小するために機械的処理を受ける請求項1~34に記載の懸濁液の調製方法。
【請求項36】
機械的に処理される前記混合酸化物Mの比表面積が、
- 前記混合酸化物MがLaもREも含まない場合には、17m
2/g超、好ましくは20m
2/g超であり;並びに
- 前記混合酸化物がLa及び/又はREを含む場合には、25m
2/g超、好ましくは27m
2/g超であり、
この比表面積が、前記混合酸化物の空気中で1100℃での4時間の焼成後に測定される請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記機械的処理が、前記固体と接触して動き出すビーズでの前記混合酸化物の摩耗をベースとする請求項35又は36に記載の方法。
【請求項38】
cGPFの調製のための請求項1~34のいずれか一項に記載の懸濁液の使用。
【請求項39】
請求項1~34のいずれか一項に記載の懸濁液が、少なくとも1種の無機材料及び任意選択的に少なくとも1種のPGMと接触させられる触媒組成物の調製方法。
【請求項40】
前記無機材料が、任意選択的にドープされたアルミナ、酸化チタン、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、シリカ、スピネル、ゼオライト、シリケート、結晶性ケイ素-アルミニウムホスフェート及び結晶性リン酸アルミニウムからなる群の中で選択される請求項39に記載の方法。
【請求項41】
液体、好ましくは水の添加を含む請求項39又は40に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年10月1日出願の欧州特許出願第19315119.8号の優先権を主張するものであり、その内容は、あらゆる目的のため参照により本明細書に全て援用される。用語又は表現の明確さに影響を与えるであろう本出願とこの欧州出願との間の何らかの矛盾がある場合には、本出願のみが参照されるべきである。
【0002】
本発明は、セリウム及びジルコニウムをベースとする混合酸化物のナノ粒子の懸濁液に関する。本発明はまた、触媒付きガソリン微粒子フィルター(cGPF)の調製のための前記懸濁液の使用に関する。
【0003】
欧州及び中国における現行法律が粒子数(PN)限度の遵守を要求している状態で、微粒子フィルターが、ガソリンエンジンのために、特にガソリン直接噴射技術(GDI)のために適用されている。ガス状汚染物質の変換のための触媒活性を一段階で微粒子の低減と組み合わせることが有利である。これは、触媒付きガソリン微粒子フィルター(cGPF)で達成することができる。この結果として、cGPFが開発されており、全ての運転条件下で粒子の数及び汚染物質を低減するための有効なルートを提供している。cGPFはまた、排ガスラインにおける触媒成分の数の低減と共に後処理レイアウトを最適化するための効率的な手段である。
【0004】
cGPFの動作原理は、十分に確立された触媒付きディーゼル微粒子フィルター(cDPF)に匹敵する。粒子は、排ガス触媒基材に似た、しかしチャネルが交互端で遮断されたハニカム構造を用いる物理濾過によって排ガスから除去される。排ガスは、こうして、チャネル間の多孔壁を通って流れるように強いられ、粒子は、壁上及び壁中に堆積する。触媒コーティングは、三元触媒(TWC)活性を提供し、一酸化炭素(CO)、非燃焼炭化水素(HC)及び窒素酸化物(NOx)を同時に変換する。TWCコーティングはまた、すすがcGPFにおいて燃えるのを支援する。ガソリンエンジン用のフィルター基材は、典型的にはコージライトでできているが、炭化ケイ素又はチタン酸アルミニウムなどの他の基材組成物もまた、本発明のいかなる制限もなしに可能である。cDPFと比較して、より狭い多孔質フィルターが必要とされる結果としてガソリン排ガスにおける粒度分布は異なる(より小さい粒子へとシフトする)。エンジン効率、燃費及びCO2排出への悪影響を制限するために背圧は最小限にされなければならないので、狭い多孔質フィルターのコーティングは困難だがやりがいがあることは周知である。ガソリンエンジンについての排ガスの温度は、ディーゼルエンジンについてよりも一般に高い-平均運転温度がcGPFについて典型的により高い結果として。このより高い温度はまた、ディーゼルと比較してフィルターのより容易な再生を可能にする。TWCウォッシュコートの存在のおかげで、すすの一部は、連続的に燃やすことができる。定期的にcDPF再生は、すすを完全に燃やすきっかけとなる。
【0005】
cGPFの調製は、通常、次の工程:多孔質フィルター基材を触媒組成物の分散系と接触させる工程;真空の印加によって触媒組成物をフィルター基材のチャネル中へ引き込む工程;コートされたフィルター基材を乾燥させ、焼成する工程を含む。分散系は、典型的には、貴金属(好ましくは白金、パラジウム及び/又はロジウム)の溶液を、セリウム及びジルコニウム、アルミナ並びに他の無機及び有機成分をベースとする混合酸化物と混合することによって製造される。
【0006】
セリウム及びジルコニウムをベースとする混合酸化物は、通常、固体形態で商業化されている。その上、触媒分散系の調製は、混合酸化物を液体に分散させる追加の工程を必要とする。それ故、触媒分散系の調製に直接使用することができる液体媒体中の前記混合酸化物の懸濁液が必要とされる。混合酸化物の懸濁液は、触媒分散系の調製中に容易に使用し、処理することができるように、特性の折衷を示さなければならない。特に、前記懸濁液は、触媒分散系の調製とcGPFを調製するための使用とに好適である粘度を示さなければならない。懸濁液中の固体の割合はまた、便利な使用の及び生産性のために十分に高いものであるべきである。
【0007】
混合酸化物の特性はまた、cGPFの性能に影響を及ぼす。例えば、フィルター上のウォッシュコートの存在による背圧増加を減らすために、ウォッシュコートは、できるだけ一様にフィルター内に設置されなければならない。混合酸化物の粒子はまた、高い熱抵抗を保ちながらフィルターに含浸されるべきである。
【0008】
本発明の懸濁液は、そのような折衷を狙っている。
【背景技術】
【0009】
国際公開第2017/056067号パンフレットは、約5μmのd50の触媒分散系を使って調製されたcGPFを開示している。
【0010】
米国特許第8,173,087号明細書は、触媒分散系を開示しているが、それは、本発明の懸濁液を開示していない。
【0011】
米国特許第10,207,253 B1号明細書は、別個のナノ粒子の形態にあり得るCeO2の及びZrO2の粒子を含む触媒組成物を開示している。
【0012】
セリウム及びジルコニウムをベースとする混合酸化物の開示は全くない。
【0013】
国際公開第2006/030120号パンフレットは、フィルターをコートするために使用される混合酸化物を開示している。同パンフレットは、特許請求されるような懸濁液を開示していない。
【0014】
米国特許第7,713,908号明細書は、50nm以下の直径の金属酸化物粉末の懸濁液を開示している。この懸濁液のpHは、セリウム及びジルコニウム並びにアルミナをベースとする混合酸化物の組合せについて5~9であり得る。
【0015】
国際公開第2017/187086号パンフレットは、セリウムを及びジルコニウムをベースとする混合酸化物を開示している。国際公開第2017/187086号パンフレットは、混合酸化物が500nm~50000nmのD50にすり潰され得ることを明記しているが、懸濁液についての言及もいかなる酸についての言及も全くない。懸濁液を使用するロジウムを使った耐候性試験について、D50は、1000nm~20000nmであり、だから特許請求される範囲外である。国際公開第2017/187086号パンフレットは、それ故、特許請求されるような懸濁液を開示していない。
【0016】
焼成、より具体的には、焼成後の比表面積の又は気孔率の値が与えられている焼成は、特に記載しない限り、空気中での焼成である。本説明の継続のために、特に明記しない限り、与えられている範囲の値において、限界値は含められることがまた明記される。これは、「少なくとも」又は「最大でも」を含む表現にも当てはまる。
【発明の概要】
【0017】
本発明は、請求項1~34のいずれか一項に開示されるような粒子の懸濁液に関する。懸濁液は、鉱酸か、2~12個の炭素原子、好ましくは2~8個の炭素原子を含有するカルボン酸かのどちらかである酸を含む水性液体媒体中の、ジルコニウムの、セリウムの、任意選択的にランタンの並びに任意選択的にセリウム以外及びランタン以外の少なくとも1種の希土類元素(言及RE)の少なくとも1種の混合酸化物の粒子を含み、懸濁液は、以下の特性:
- 懸濁液のpHは、2.0~7.0(この後者の値は除外される)、より具体的には3.0~6.0であり;
- 混合酸化物の割合は、20.0重量%~50.0重量%、より具体的には25.0重量%~50.0重量%、更により具体的には30.0%~45.0%又は35.0重量%~45.0重量%であり;
- 懸濁液の比表面積は、混合酸化物がLaもREも含まない場合には15m2/g超であり、混合酸化物がLa及び/又はREを含む場合には21m2/g超であり、比表面積は、懸濁液から単離された固体の空気中で1100℃での4時間の焼成後に測定され;
ここで:
- 混合酸化物の粒子は、20.0nm~900nm、より具体的には20.0nm~800.0nm、より具体的には20.0nm~500.0nm、更により具体的には20.0nm~400.0nm、更により具体的には20.0nm~300.0nm又は20.0nm~200.0nm又は20.0~100.0nmのD50を示し;
- 混合酸化物に対する酸化物の重量で表される、元素Ce、Zr、La及びREの割合は、下記:
・ 20.0重量%~55.0重量%のセリウム;
・ 10.0重量%以下のランタン;
・ 15.0重量%以下の、セリウム以外及びランタン以外の希土類元素(RE);
・ ジルコニウムとしての残り
である、
を有する。
【0018】
本発明は、下記:
・ ジルコニウムの、セリウムの、任意選択的にランタンの並びに任意選択的にセリウム以外及びランタン以外の少なくとも1種の希土類元素(RE)の少なくとも1種の混合酸化物の粒子;
・ 水性液体媒体;
・ 鉱酸か、2~12個の炭素原子、好ましくは2~8個の炭素原子を含有するカルボン酸かのどちらかである酸
からなる懸濁液であって;
懸濁液が、以下の特性:
- 懸濁液のpHは、2.0~7.0(この後者の値は除外される)、より具体的には3.0~6.0であり;
- 混合酸化物の割合は、20.0重量%~50.0重量%、より具体的には25.0重量%~50.0重量%、更により具体的には30.0%~45.0%又は35.0重量%~45.0重量%であり;
- 懸濁液の比表面積は、混合酸化物がLaもREも含まない場合には15m2/g超であり、混合酸化物がLa及び/又はREを含む場合には21m2/g超であり、比表面積は、懸濁液から単離された固体の空気中で1100℃での4時間の焼成後に測定され;
ここで:
- 混合酸化物の粒子は、20.0nm~900nm、より具体的には20.0nm~800.0nm、より具体的には20.0nm~500.0nm、更により具体的には20.0nm~400.0nm、更により具体的には20.0nm~300.0nm又は20.0nm~200.0nm又は20.0~100.0nmのD50を示し;
- 混合酸化物に対する酸化物の重量で表される、元素Ce、Zr、La及びREの割合は、下記:
・ 20.0重量%~55.0重量%のセリウム;
・ 10.0重量%以下のランタン;
・ 15.0重量%以下の、セリウム以外及びランタン以外の希土類元素(RE);
・ ジルコニウムとしての残り
である、
を有する懸濁液に関する。
【0019】
本発明はまた、請求項35~37のいずれか一項に開示されるような懸濁液の調製方法にも関する。この方法によれば、酸を含む水性液体媒体中に分散させられた混合酸化物Mを含む分散系は、混合酸化物の粒子のサイズを縮小するために機械的処理を受ける。
【0020】
本発明はまた、請求項38に開示されるようなcGPFの調製のための懸濁液の使用にも、及び懸濁液が請求項39~41のいずれか一項に開示されるように少なくとも無機材料及び任意選択的に少なくとも1種のPGMと接触させられる触媒組成物の調製方法にも関する。
【0021】
これらの本発明に関するより明確な詳細は、以下に与えられる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
用語「懸濁液」は、固体粒子がその中に分散させられている液体媒体を意味する。
【0023】
懸濁液は、水性液体媒体中に、ジルコニウムの、セリウムの、任意選択的にランタンの並びに任意選択的にセリウム以外及びランタン以外の少なくとも1種の希土類元素(RE)の少なくとも1種の混合酸化物を含む。懸濁液中の混合酸化物の割合は、20.0重量%~50.0重量%、より具体的には25.0重量%~50.0重量%、更により具体的には30.0%~45.0%又は35.0重量%~45重量%である。%単位でのこの割合は、懸濁液の総重量に対する混合酸化物の重量で表される。例えば、40.0重量%の混合酸化物の割合は、懸濁液の100.0g当たり40.0gの混合酸化物に対応する。
【0024】
本発明による混合酸化物は、第一に、その構成要素の性質及び割合で特徴付けられる。混合酸化物は、元素Ce、Zr、任意選択的にLa及び任意選択的に少なくとも1種のREをベースとしている。例えば、混合酸化物は、元素Ce及びZrを;元素Ce、Zr及びLaを又は元素Ce、Zr、La及びREをベースとし得る。
【0025】
混合酸化物中のセリウムの割合は、広い範囲内で変わり得る。実際に、セリウムの割合は、20.0重量%~55.0重量%である。この割合は、30.0重量%~55.0重量%、より具体的には30.0重量%~45.0重量%であり得る。この割合はまた、25.0重量%~35.0重量%であり得る。
【0026】
混合酸化物中のランタンの割合は、10.0重量%以下である。この割合は、0重量%~10.0重量%、より具体的には1.0重量%~10.0重量%であり得る。
【0027】
混合酸化物はまた、セリウム以外及びランタン以外の少なくとも1種の希土類元素(RE)を含み得る。REは、セリウムでもランタンでもない希土類元素を示す。REは、ジスプロシウム(Dy)、エルビウム(Er)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、ホルミウム(Ho)、ルテチウム(Lu)、ネオジム(Nd)、プラセオジム(Pr)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、スカンジウム(Sc)、テルビウム(Tb)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)及びイットリウム(Y)からなる群の中で選択され得る。REは、より具体的には、Nd、Y及びPrからなる群の中で選択され得る。混合酸化物は、セリウム以外及びランタン以外の少なくとも1種若しくは2種の希土類元素を含み得る。セリウム以外及びランタン以外の希土類元素の合計割合は、15.0重量%以下、より具体的には10.0重量%以下である。
【0028】
混合酸化物はまた、元素ハフニウムを含み得る。実際に、この元素は、通常、天然の状態で存在する鉱石中にジルコニウムとの組合せで存在する。ジルコニウムに対するハフニウムの相対的割合は、ジルコニウムが抽出される鉱石に依存する。一部の鉱石における重量による相対的割合Zr/Hfは、約50/1であり得る。したがって、バデレアイトは概ね98%のZrO2及び2%のHfO2を含有する。ハフニウムの割合は、2.5重量%以下、更には2.0重量%以下である。
【0029】
上述の元素は、一般に、混合酸化物中に酸化物として存在する。とはいえ、それらはまた、水酸化物又はオキシ水酸化物の形態で部分的に存在し得る。このように、元素Ce及びZr、並びにもしあれば、La又はRE、及びもしあれば、Hfは、混合酸化物中に酸化物として存在するが、それらはまた、酸化物として及びまた部分的に水酸化物又はオキシ水酸化物の形態で混合酸化物中に存在し得る。
【0030】
混合酸化物の分野において通例であるように、元素の割合は、全体としての混合酸化物に対する酸化物の重量で与えられる。これらの割合の計算については、以下の酸化物が考慮される:CeO2、ZrO2、HfO2、La2O3;Pr6O11が考慮されるPrを除いた全てのREについてRE2O3。したがって、例として、20.0重量%のセリウムの割合は、混合酸化物中の20.0重量%のCeO2の割合を意味する。元素の割合は、蛍光X線分析のような通常の分析方法によって又は誘導結合プラズマ質量分析法によって測定される。
【0031】
本発明の混合酸化物は、上述の元素を上述の割合で含むが、それはまた、不純物のような他の元素を追加的に含み得る。不純物は、混合酸化物の調製のプロセスにおいて使用される原材料又は出発物質に由来し得る。不純物の合計割合は、一般に、混合酸化物に対して、0.25重量%以下(≦0.25重量%)、より具体的には0.20重量%以下(≦0.20重量%)であり得る。
【0032】
酸化ジルコニウムは、組成物の残りである。ジルコニウムの重量割合は、混合酸化物の他の元素(Ce,La、もしあればRE、もしあればHf)の100%への残りとしてである。混合酸化物中のジルコニウムの割合は、典型的には35.0重量%超、より具体的には45.0重量%超、更により具体的には50.0重量%超である。ジルコニウムの割合は、典型的には79.0重量%未満である。
【0033】
ある実施形態によれば、混合酸化物は、1.0超、典型的には1.5超の重量比ZrO2/CeO2を示す。
【0034】
水性液体媒体は、鉱酸か、2~12個の炭素原子、好ましくは2~8個の炭素原子を含有するカルボン酸かのどちらかである酸を含む。鉱酸は、例えば、硝酸である。酸の割合は、全体懸濁液に対して酸の重量で表される、使用される酸に依存して0.01重量%~10.0重量%、より具体的には0.5重量%~6.0重量%である。
【0035】
ある実施形態によれば、懸濁液は、上で開示された混合酸化物以外のいかなる金属酸化物も含まない。金属酸化物は、少なくとも1種の金属の酸化物と定義される。金属は、より具体的には、Al、Zr又はTiからなる群の中で選択される。金属酸化物は、例えばアルミナ、ジルコニア又はチタニアであり得る。
【0036】
懸濁液はまた、高い比表面積でも特徴付けられる。懸濁液の比表面積(BET)は、混合酸化物がLaもREも含まない場合には15m2/g超であり、比表面積は、懸濁液から単離された固体の空気中で1100℃での4時間の焼成後に測定される。これは、セリウム及びジルコニウムの混合酸化物についてのケースである。懸濁液の比表面積(BET)は、混合酸化物がLa及び/又はREを含む場合には21m2/g超であり、比表面積は、懸濁液から単離された固体の空気中で1100℃での4時間の焼成後に測定される。これは、例えば、セリウム、ジルコニウム及びランタンの混合酸化物又はセリウム、ジルコニウム、ランタン並びにセリウム以外及びランタン以外の少なくとも1種の希土類の混合酸化物についてのケースである。両ケースにおいて、この比表面積は、一般に40m2/g以下、より具体的には35m2/g以下、更により具体的には30m2/g以下である。
【0037】
空気中で1000℃での4時間の焼成後に、懸濁液はまた、少なくとも35m2/g、より具体的には少なくとも40m2/gの比表面積(BET)を示し、比表面積は、懸濁液から単離された固体の空気中で1000℃での4時間の焼成後に測定される。この比表面積は、一般に70m2/g以下、より具体的には65m2/g以下、更により具体的には60m2/g以下である。
【0038】
特定の実施形態によれば、上で開示された1100℃及び1000℃での懸濁液の比表面積は、以下の工程を含む以下の方法によって単離された固体に関して測定される:
(i)固体が懸濁液から単離される工程;
(ii)次いで、固体が空気中で500℃において1時間乾燥させられる工程;
(iii)乾燥させられた固体が、空気中でそれぞれ1100℃において4時間又は1000℃において4時間焼成される工程。
【0039】
こうして、それぞれ1100℃/4hにおいて又は1000℃/4hにおいて比表面積を測定するために懸濁液に関して以下の工程:(i)→(ii)→(iii)→比表面積(BET)の測定の工程が行われる。
【0040】
明確化のために、表現「懸濁液の比表面積(BET)」は、したがって、懸濁液から単離された固体(混合酸化物)の比表面積(BET)を言う。
【0041】
用語「比表面積(BET)」は、窒素吸着によって測定されるBET比表面積を意味すると理解される。比表面積は、当業者に周知であり、Brunauer-Emmett-Teller法にしたがって測定される。この方法の理論は、最初は、定期刊行の「The Journal of the American Chemical Society,60,309(1938)」に記載された。この理論に関するより詳細な情報はまた、「Powder surface area and porosity」、第2版、ISBN 978-94-015-7955-1の第4章に見いだされ得る。窒素吸着の方法は、標準ASTM D 3663-03(2008年再認可)に開示されている。実際には、比表面積(BET)は、コンストラクターのガイドラインにしたがってMicromeriticsの装置Flowsorb II 2300又は装置Tristar 3000を使って自動的に測定され得る。それらはまた、コンストラクターのガイドラインにしたがってMountechのMacsorbアナライザーモデルI-1220を使って自動的に測定され得る。測定の前に、試料は、任意選択的に真空下で、最高でも300℃の温度で加熱して吸着揮発性種を除去することによって脱気される。より具体的な条件は、実施例において見いだされ得る。
【0042】
懸濁液はまた、水銀ポロシメトリーによって測定される比空隙率を示し得る。実際に、懸濁液はまた、0.15mL/g超、より具体的には0.25mL/g超である、300nm未満の直径を有する細孔について水銀ポロシメトリーによって測定される細孔容積(言及PV0~300nm)を示し得る。PV0~300nmは、0.15~0.80mL/gであり得る。
【0043】
懸濁液はまた、0.50mL/g超、より具体的には0.60mL/g超の全細孔容積を示し得る。TPVは、0.50~2.00mL/g、より具体的には0.50~1.50mL/g、更により具体的には0.50~1.30mL/gであり得る。
【0044】
特定の実施形態によれば、上で開示された細孔容積は、以下の工程:
(i)固体が単離される工程;
(ii)固体が空気中で500℃において1時間乾燥させられる工程
にしたがって測定される。
【0045】
したがって、以下の工程:(i)→(ii)→気孔率の測定の工程が、気孔率を測定するために懸濁液に関して行われる。
【0046】
比表面積に関しては、細孔容積は、したがって、懸濁液から単離された固体(混合酸化物)の細孔容積を言う。
【0047】
比表面積の及び細孔容積の測定について上で開示された方法は、固体が懸濁液から単離される工程(i)を含む。工程(i)は、濾過によって便利に行われる。工程(ii)において、工程(i)から単離された固体は、空気中で500℃において1時間乾燥させられる。工程(ii)は、酸を含む水性液体媒体の残りを除去するのに役立つ。乾燥工程(ii)後に、固体は、便利に解集塊化され得る小片を形成し得る。解集塊化は、乳鉢を用いて便利に行われる。
【0048】
水銀ポロシメトリーは、多孔性触媒の分野において用いられる標準技法であり、制御された圧力下での多孔性構造の細孔中への水銀の前進侵入に存する。気孔率は、当分野における周知の技法にしたがって水銀侵入によって測定される。気孔率は、Micromeritics V 9620 Automatic Mercury Porosimeterを用いて、コンストラクターのガイドラインにしたがって測定され得る。ポロシメーターは、粉末硬度計を含む。本方法は、細孔サイズ(V=f(d)、Vは細孔容積を意味し、dは孔径を意味する)の関数としての細孔容積の決定に基づく。本データから、導関数dV/dlogDを与える曲線(C)を得ることが可能である。曲線(C)から、細孔容積PV0~300nm及び全細孔容積TPV(両方とも空気中で500℃での1時間の焼成後に測定される)が決定される。実施例において示される手順が好ましくはしたがわれる。
【0049】
混合酸化物は、20.0nm~900nmのD50を示す粒子の形態にある。D50は、より具体的には、20.0nm~800.0nm、より具体的には20.0nm~500.0nm、更により具体的には20.0nm~400.0nm、更により具体的には20.0~300.0nm又は20.0nm~200.0nm又は20.0~100.0nmであり得る。
【0050】
粒子は、好ましくは、1000nm未満のD90を示す。D90は、より具体的には50nm~1000nm、より具体的には50nm~700nm、更により具体的には50nm~500.0nmであり得る。D90は、好ましくは、200nm未満又は更に100nm未満である。
【0051】
ある実施形態によれば、懸濁液は、20nm~100nmのD50及び50nm~120nmのD90を示す。
【0052】
別の実施形態によれば、懸濁液は、40nm~100nmのD50及び50nm~120nmのD90を示す。
【0053】
D50及びD90は、レーザー回折粒径アナライザーを使って得られた粒子のサイズの分布(体積単位での)から決定される。D50及びD90は、粒径分析の分野において用いられる通常の意味を有する。例えばhttps://www.horiba.com/fileadmin/uploads/Scientific/Documents/PSA/PSA_Guidebook.pdfを参照されたい。D50(メジアン)は、50%での累積分布に相当するサイズ値と定義される。同様に、D90は、90%での累積分布に相当するサイズ値と定義される。
【0054】
D50及びD90は、機器ソフトウェアによってあらかじめ定められた標準手順を用いてBeckman Coulter LS 13320レーザー回折粒径アナライザー(Beckman coulter,Inc)を使って決定され得る。コンストラクターのガイドライン(https://www.beckmancoulter.com/wsrportal/techdocs?docname=B05577AB.pdf)にしたがって、フラウンホーファー(Fraunhofer)モードが用いられ得る。1.6の相対屈折率が用いられる。実施例において開示される方法が便利に用いられ得る。
【0055】
懸濁液はまた、鉱酸か、2~12個の炭素原子、好ましくは2~8個の炭素原子を含有するカルボン酸かのどちらかである酸を含む。鉱酸は、より具体的には硝酸であり得る。カルボン酸はまた、COOH以外の少なくとも1つの官能基を含有し得る。官能基は、OH、C=O、酸無水物及びエステル基からなる群の中で選択され得る。カルボン酸は、モノカルボン酸、ジ-若しくはトリ-カルボン酸又はアルファ-ヒドロキシ-カルボン酸であり得る。カルボン酸は、より具体的には式:R1-COOH(式中、R1は、1~11個、より具体的には1~7個の炭素原子を含有する直鎖若しくは分岐アルキル基である)のものであり得る。より具体的には、カルボン酸は、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ヘキサン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸及びクエン酸からなる群の中で選択され得る。カルボン酸は、典型的には酢酸である。
【0056】
水性液体媒体は水を含む。ある実施形態によれば、水が、液体媒体の主な構成成分である。水性液体媒体は、例えば水であり得る。
【0057】
別の実施形態によれば、水性液体媒体は、水と混和性である少なくとも1種の他の液体を含み得る。他の液体は、例えば、アルコール、エステル又はケトンなどの有機液体であり得る。他の液体の性質及び量は、好ましくは、それが懸濁液の安定性に影響を及ぼさないようなものであるべきである。重量比水/他の液体は、好ましくは100/0~80/20、より好ましくは100/0~90/10、更により好ましくは100/0~95/5である。
【0058】
水性液体媒体はまた、酸を含み得る。それはまた、機械的に処理される混合酸化物中に存在する不純物を含み得る。不純物は、機械的処理中に放出され得る。
【0059】
懸濁液のpHは、2.0~7.0であり、この後者の値は除外される(2.0≦pH<7.0)。懸濁液のpHは特に3.0~6.0であり得る。D50及びD90の特許請求される値の到達を低下させる能力に及びまた懸濁液の粘度にpHが影響を及ぼすことが観察された。
【0060】
懸濁液は、典型的には、1000cP未満、より具体的には500cP未満、更により具体的には100cP未満である粘度Vを示す。Vは、円筒クエットジオメトリー(cylindrical couette geometry)を用いるレオメーターを使って20℃で測定される。試料は、先ず5分のランプ時間にわたって1s-1から100s-1まで増加するせん断速度に、次いでまた5分間にわたって100s-1から1s-1まで減少するせん断速度にさらされる。保有される粘度値(V)は、せん断速度の減少中に10s-1のせん断速度で測定される値である。
【0061】
本発明による懸濁液の使用に関しては、これは、動力車汚染防止触媒反応の分野内に入る。本発明の懸濁液は、cGPFの調製のために使用され得る。
【0062】
cGPFは、典型的には、多孔質基材と、多孔質基材の少なくとも一部上に適用された混合酸化物を含むコーティングとから形成される。コーティングは、1つ以上の層でできていることができ、少なくとも1つの層は、混合酸化物を含む触媒組成物でできている。コーティング層は、TWC技術において使用されるものに似ている触媒組成物でできている。
【0063】
cGPFの調製は、通常、以下の工程:(i)多孔質フィルター基材を触媒組成物の水性分散系と接触させる工程;好ましくは真空の印加によって、触媒組成物をフィルターのチャネル中へ及び/又は多孔質基材中へ引き込む工程;コートされたフィルターを乾燥させ、焼成する工程を含む。
【0064】
多孔質基材について
多孔質基材は、通常、例えば、コージライト、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニア、ムライト、リシア輝石、アルミナ-シリカ-マグネシア、ケイ酸ジルコニウム、及び/又はチタン酸アルミニウム、典型的には、コージライト又は炭化ケイ素などのセラミック様材料でできている。多孔質基材は、ガソリンエンジンの排ガス処理システムにおいて典型的に使用される基材に全く似ていると思われる。例えば、多孔質基材は、従来のハニカム構造を示し得る。
【0065】
フィルターは、「スルーフローフィルター」又は「壁流フィルター」(WFF)の形態を取り得る。フィルターは、好ましくは、壁流フィルターである。壁流フィルターは、排ガス(粒子状物質を含む)の流れを、多孔質材料で形成された壁を通過するように強いることによって動作する。
【0066】
壁流フィルターは、典型的には、それらの間で縦方向を画定する第1表面及び第2表面を有する。使用中に、第1表面及び第2表面の一方は、排ガス用の入口表面であり、他方は、処理された排ガス用の出口表面であろう。
【0067】
壁流フィルターは、典型的には、縦方向に伸びる第1及び第2の複数のチャネルを有する。第1の複数のチャネルは、第1表面において開放し、第2表面において閉鎖している。第2の複数のチャネルは、第2表面において開放し、第1表面において閉鎖している。チャネルは、好ましくは、チャネルの間に一定の壁の厚さを提供するために互いに平行である。結果として、複数のチャネルの1つに入るガスは、チャネル壁を通って他の複数のチャネル中へ拡散することなく、モノリスを出ることができない。チャネルは、チャネルの開放端中へのシーラント材料の導入で閉鎖される。好ましくは、第1の複数におけるチャネルの数は第2の複数におけるチャネルの数に等しく、それぞれの複数が、モノリスの全体にわたって均一に分配される。チャネルは、長方形、正方形、円形、卵形、三角形、六角形、又は他の多角形の形状である横断面を有することができる。
【0068】
基材は、多くの場合、コージライトでできており、低い背圧の効率的なcGPFの調製に適合するために最小限の気孔率を示す。
【0069】
触媒組成物について
コーティング(「ウォッシュコート」として一般的に知られる)が、基材の少なくとも一部上に適用される。コーティング層は、本発明の懸濁液から調製される触媒組成物から形成される。典型的には、触媒組成物は、本発明の懸濁液及び少なくとも1種の無機材料及び任意選択的に少なくとも1種のPGMを接触させることによって調製される。触媒組成物は、したがって典型的には、
(i)混合酸化物(上で定義されたような)と;
(ii)少なくとも1種の無機材料と;
(ii)任意選択的に少なくとも1種のPGMと
を含む。
【0070】
無機材料は、任意選択的にドープされたアルミナ、酸化チタン、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、シリカ、スピネル、ゼオライト、シリケート、結晶性ケイ素-アルミニウム(silico-aluminum)ホスフェート及び結晶性リン酸アルミニウムからなる群の中で選択することができる。組成物はまた、各配合剤に特有である他の添加剤:H2S捕捉剤、コーティングを容易にするという役割を有する有機又は無機改質剤、コロイド状アルミナ等を含むことができる。コーティングはまた、Pt、Rh又はPdからなる群の中でより具体的には選択される、少なくとも1種の分散白金族金属(PGM)を含む。PGMは、一般に、塩の形態に、例えば硝酸塩の形態にある。
【0071】
本発明は、したがってまた、本発明の懸濁液が、少なくとも1種の無機材料及び任意選択的に少なくとも1種のPGMと接触させられる触媒組成物の調製方法にも関する。無機材料は、固体の又は水性液体媒体中の分散系の形態にあり得る。懸濁液中の混合酸化物の割合が通常既に高いので、無機材料は、好ましくは、水性液体媒体中の分散系の形態にある。加えて、触媒組成物の調製方法は、通常、触媒組成物の構成要素の良好な混合を確実にするために、液体、好ましくは水の添加を含む。
【0072】
PGMは、固体の又は水溶液の形態にあり得る。
【0073】
コーティングの役割は、化学反応によって、排ガスのある種の汚染物質、特に一酸化炭素、非燃焼炭化水素及び窒素酸化物を、環境に対して害が少ない生成物へ変換することである。関与する化学反応は、次のものである可能性がある:
2CO+O2→2CO2
2NO+2CO→N2+2CO2
4CxHy+(4x+y)O2→4×CO2+2yH2O
【0074】
本発明の懸濁液はまた、触媒コンバーターの調製のためにも使用され得る。
【0075】
懸濁液の調製方法
本発明の懸濁液は、酸を含む水性液体媒体中に分散させられた混合酸化物Mを含む分散系が、混合酸化物の粒子のサイズを縮小するために機械的処理を受ける方法によって調製される。
【0076】
機械的に処理される分散系の調製
機械的に処理される混合酸化物Mは、懸濁液の混合酸化物と同じ組成を有し得る。それはまた、懸濁液の混合酸化物と実質的に同一の組成を有し得る。混合酸化物Mは、好ましくは、100μm未満、より具体的には60μm未満、更により具体的には50μm未満のD90を示すべきである。
【0077】
機械的処理によって誘導される比表面積の低下により、懸濁液の比表面積が特許請求される値内にあるために、混合酸化物Mは、特許請求される値よりも典型的には高い比表面積を示すべきである。機械的に処理される混合酸化物の比表面積は、
- 混合酸化物MがLaもREも含まない場合には、17m2/g超、好ましくは20m2/g超であるべきであり;
- 混合酸化物がLa及び/又はREを含む場合には、25m2/g超、好ましくは27m2/g超であるべきであり、
この比表面積は、混合酸化物の空気中で1100℃での4時間の焼成後に測定される。
【0078】
混合酸化物Mは、国際公開第2011/138255号パンフレット、国際公開第2016/037059号パンフレット、国際公開第2017/072509号パンフレット、欧州特許第1527018号明細書又は欧州特許第1621251号明細書の教示にしたがって調製され得る。欧州特許第1527018号明細書に開示されている便利な技法は、以下の工程:
a)セリウムの、ランタンの及び任意選択的にREの化合物と、ジルコニウム化合物のゾルとを含む混合物を調製する工程と;
b)工程a)の混合物に塩基性化合物の溶液を添加し、それによって沈殿物が得られる工程と;
c)前記沈殿物を水性媒体中で加熱する工程と;
d)工程c)においてこのようにして得られた沈殿物を焼成する工程と
を含む。
【0079】
より具体的には、混合酸化物M、より具体的にはLa及びREを含む混合酸化物の調製のために欧州特許第1527018号明細書の実施例のレシピにしたがうか又はそれを改良することができる。
【0080】
国際公開第2017185224号パンフレットに開示されている別の便利な技法は、以下の工程:
a)少なくとも塩化ジルコニウム塩、セリウム塩、並びに任意選択的にセリウム以外及びランタン以外の、少なくとも1種の希土類塩を含む水溶液であって、スルフェートアニオン(SO4
2-)を含有する前記水溶液と塩基性化合物を反応させて沈殿物を形成する工程と;
b)沈殿物を液体媒体から分離する工程と;
c)工程b)において得られた沈殿物を水性媒体中で加熱する工程と;
d)ランタン塩を、任意選択的に塩基性化合物と共に添加する工程と;
e)ラウリン酸を添加する工程と;
f)沈殿物を液体媒体から分離する工程と;
g)沈殿物を焼成する工程と
を含む。
【0081】
より具体的には、混合酸化物M、より具体的にはLa及び/又はREを含む混合酸化物の調製のために国際公開第2017/185224号パンフレットの実施例に開示されているレシピにしたがうかそれを改良することができる。
【0082】
分散系は、混合酸化物Mを、酸を含む水性液体媒体中に分散させることによって調製される。得られた分散系のpHは、次いで、酸又は塩基の添加によって任意選択的に調整される。分散系のpHは、最終懸濁液のpHと実質的に同じものである。均一な分散系を得るために激しい撹拌下に粉末形態での混合酸化物Mを、酸を含む水性液体媒体中に添加することによって分散系を調製することが通例である。
【0083】
混合酸化物Mの分散系は、粒子のサイズを縮小するために機械的処理を受ける。比表面積に有意に影響を及ぼすことなく粒子のサイズを縮小するのに十分なエネルギー/せん断を提供するデバイスが用いられる。混合酸化物の粒子は、一次粒子又は一次粒子のより小さい凝集体へ壊される塊の形態にあると考えられる。デバイスはまた、分散系の均一な処理を確実にするために良好な混合を提供するべきである。デバイスは、高圧ホモジナイザー、湿式ジェットミル、アジテータビーズミル、高せん断攪拌機、超音波ホモジナイザーであり得る。
【0084】
高圧ホモジナイザー(HPH)は、1500~4000バールほどの高圧で狭い間隙(例えば、0.1~0.2mmの直径のノズル)を通して分散系を無理に送り、次いでこのノズルを通して分散系を大気圧までリラックスさせることに存する。分散系は、次いで、非常に高いせん断応力、キャビテーション、塊の解集塊化を引き起こす乱流にさらされる。せん断は、制限的ノズルを通しての流れの突然の制限によって誘発される。
【0085】
湿式ジェットミルの技術は、HPHの技術とのいくつかの類似性を示す。湿式ジェットミルにおいて、分散系は、通常1500~2500バールでのチャンバー中で圧縮され、2つの流れに分けられ、それらは、0.1~0.2mmの直径を有する2つのそれぞれのノズルを通過する。次いで、大気圧でのノズルから放出される分散系は、液体の2つのジェットを形成する。2つのノズルは、向かい合った位置にあり、2つのジェットは互いに高速で衝突する。衝突は、高いせん断応力を粒子に発生させ、それらの解集塊化を引き起こす。この技術及びHPHは、60μm未満の一次粒子、及び5000cP未満の分散系粘度により良く適応させられる。
【0086】
アジテータビーズミルの技術は、固体と接触する及び高速で動く硬質ビーズでの固体の磨砕に基づいている。ビーズは、多くの場合、ジルコニアなどの硬質材料でできている。ビーズは、500μm未満、より具体的には50~500μm、更により具体的には200~500μmである直径を好ましくは示す。直径が少なければ少ないほど、ビーズは、固体と接触してより多く添加することができ;それは、ビーズと固体の粒子との間のより多くの衝突を得ることを可能にする。この技術に関するより詳細は、実施例において見いだされ得る。当業者は、実施例に開示される湿式ミリングの条件を用いて特許請求されるような懸濁液を得ることができる。アジテータビーズミルは、ビーズを含有する細砕容器と容器内部のビーズを動かすための手段とからなる。前記手段は、容器内部のビーズの激しい動きを確実にする。市場で入手可能な様々なアジテータビーズミルが本発明のプロセスに用いられ得る。アジテータビーズの技術は、実施例において開示される懸濁液の調製のために便利に用いられた。
【実施例】
【0087】
比表面積(BET)
表面積は、Micromeritics TRISTAR 3020アナライザーで液体N2温度(77K)においてN2吸着でのBETフロー法(多点)によって測定した。比表面積は、周知のBrunauer-Emmett-Teller(BET)法によって計算した。測定の前に、試料を、いかなる残存水分及び吸着種も除去するために300℃において15分間真空オーブン中で前処理した。
【0088】
上で議論されたように、懸濁液の比表面積(BET)は、分散系から単離された固体に関して測定する。
【0089】
水銀ポロシメトリー
細孔容積は、コンストラクターのガイドラインにしたがって、Micromeritics Autopore IV 9500 Automatic Mercury Porosimeterで測定した。130°の値を接触角(θ)のために使用し、水銀の表面張力を480dyne/cmに固定した。真空を50μmHgまで試料にかける。低圧スロットについては0.98Psiから30Psiまで及び高圧スロットについては30Psiから60000Psiまでの圧力範囲で水銀侵入曲線を集め;これは、広範囲、典型的には直径3nm~200μmの細孔の分析を可能にする。
【0090】
粒径分析
レーザー粒径アナライザーを用いた。1.6の相対屈折率を使用した。懸濁液(およそ10g)を、懸濁液のpHと同一のpHの水溶液(60mL)に希釈した。外部超音波浴での希釈懸濁液の超音波処理(5分;45kHz)後に、希釈懸濁液を測定セルへ導入した。45%~55%の範囲のPIDS(偏光強度微分散乱)(45%<PIDS<55%)で測定を行うことが好ましい。
【0091】
懸濁液の粘度
円筒クエットジオメトリーを使ったMalvern Kinexus Pro+応力制御レオメーターを用いた。懸濁液のレオロジーは20℃で測定した。試料を先ず、5分のランプ時間にわたって1s-1から100s-1まで増加するせん断速度に、次いでまた5分間にわたって100s-1から1s-1まで減少するせん断速度にさらした。保有される粘度値(V)は、100s-1から1s-1までのせん断速度の減少中に10s-1のせん断速度で測定される値である。
【0092】
XRD
X線粉末回折パターンは、Cu Kα(1.5406オングストローム)放射線源及び線型検出器X Celerator Detectorを備えたX’pertPro MPD粉末回折計(PANAlytical Company)で取得した。各ステップにおいて28秒の計数時間を使って0.017°ステップで走査することによって19~85°の2θ値から散乱強度データを集めた。International Centre for Diffraction Data Powder Diffraction File(ICDD-PDF)とマッチさせることによって結晶相を特定した。計器幅を考慮に入れた線広がりからScherrer方程式の助けを借りて試料の平均微結晶サイズ(DXRD)を決定し、最も目立ったピーク(111)の強度を用いて標準キュービック指数化方法(standard cubic indexation method)によって格子パラメーターを推定した。
【0093】
全ての実施例1~6及び比較例1~2について、出発原料として以下の比表面積:空気中で1100℃での4時間の焼成後の29m2/gで特徴付けられる以下の組成(酸化物の重量で表される%):Zr/Ce/La 58.5%/36.0%/5.5%の混合酸化物Mを使用した。この混合酸化物は、欧州特許第1527018 B1号明細書の教示にしたがって調製した。実施例に使用される混合酸化物Mの粉末は当初、4.1μmのD50及び11.5μmのD90を示す。XRDによって測定されるような微結晶サイズはおよそ8nmであった。機械的処理後の混合酸化物の微結晶サイズは実質的に変化しないままであることが観察された。
【0094】
実施例1
120mLの脱イオン水での溶液を、3.5のpHに達するように0.1gの酢酸を使って調製した。次いで、80gのM粉末をこの120mLの溶液中へ添加することによって混合酸化物の分散系を調製した。分散系のpHは6.2であった。4.0のpHが得られるまで酢酸(96重量%での2.5gの酢酸)を滴々添加することによってpHを更に調整した(分散系の最終重量=202.6g)。磁気攪拌機での高撹拌下に分散系を数時間均質化した。
【0095】
次いで、湿式ミリングのために、116mLの均一な分散系(167.8gの分散系)を、ジルコニアビーズ(605.5g;平均サイズ350μm)を含有する実験室ビーズミルのボウル(500ml容量の容器、ボウル直径10cm)に入れた。20分間1500rpmでの(これは、酸化物の1kg当たり300分の継続時間に相当する)ビーズアジテータを使ってボウル中で分散系をミリングした。
【0096】
実施例2
実施例1を、実施例1におけるのと同じ条件下で再現した。
【0097】
実施例3
実施例3は、混合酸化物Mの割合がより低い:39重量%の代わりに25重量%を除いては実施例1の条件下で再現した。ミリング後の懸濁液の特性:D50=70nm及びD90=250nm。表1に見ることができるように、D50及びD90の低下がもっと多く希釈された懸濁液で観察された。ミリング中のpHはまた、4.0の初期pHからpH4.6まで著しく上昇した。懸濁液の測定される粘度は、1s-1~1000s-1のいかなるせん断速についても3cPで低い。
【0098】
実施例4
この実施例は、実施例1及び2についての20分の代わりに40分のミリング時間で行った。分散系は、実施例1におけるように調製した。スラリーを、1500rpmで40分間のビーズ撹拌を使ってボウル中でミリングした。ミリング時間の増加は、粒径の縮小をもたらす:D50=140nm及びD90=590nm。ボウルの表面上及びビーズ上への材料のいくらかの損失のために、回収された懸濁液中の混合酸化物の割合は36.6%であることが分かったことは、注目されなければならない。
【0099】
実施例5
この実施例は、実施例1についてよりも高い分散系のpHで行った。分散系は、実施例1におけるように調製し、混合酸化物の割合は36.6%(ミリング後)であり、ミリング前のpHはpH4の代わりに6であった。スラリーを1500rpmで40分間ビーズアジペーターを使ってボウル中でミリングした。実施例4と比較して、より高いpHは、D50及びD90にわずかに影響を及ぼし、それらは、増加する傾向がある:D50=250nm及びD90=650nm。ミリング中のpHはまた、6.0の初期pHからpH6.6へと著しく上昇した。
【0100】
実施例6
分散系の調製のために使用された酸は、酢酸の代わりに硝酸であった。混合酸化物の分散系は、120mLの脱イオン水プラス数滴の硝酸の溶液中へ80gのM粉末を添加することによって調製した。分散系のpHは5.9であった。4.0の最終pHを得るためにもっと多くの硝酸(合計1.3gの69重量%の硝酸を使用した)を添加することによってpHを次いで調整した。調製された懸濁液の最終重量は201.3gであった。40分間1500rpmでのビーズアジテータを使ってボウル中でスラリーを次いでミリングした。ミリング後の粒子の特性:D50=180nm及びD90=590nm。
【0101】
実施例7
実施例7は、混合酸化物Mが異なる組成(酸化物の重量で表される):Zr/Ce/La/Y 60.0%/30.0%/5.0%/5.0%を有したことを除いては実施例4の条件下で再現した。この混合酸化物は、欧州特許第1527018 B1号明細書の実施例のレシピにしたがうことによって調製した。懸濁液中の混合酸化物の割合は36.9重量%であった。最終pHは4.7であった。得られた懸濁液は、実施例4の懸濁液のように流動的であった。
【0102】
実施例8
実施例8は、混合酸化物Mが異なる組成(酸化物の重量で表される):Zr/Ce/La/Y/Nd 45.0%/40.0%/2.0%/8.0%/5.0%を有したことを除いては実施例4及び7の条件下で再現した。この混合酸化物は、欧州特許第1527018 B1号明細書の実施例のレシピにしたがうことによって調製した。懸濁液中の混合酸化物の割合は37.8重量%であった。得られた懸濁液は、実施例7の懸濁液のように流動的であった。
【0103】
実施例9
実施例9は、混合酸化物Mが異なる組成(酸化物の重量で表される):Zr/Ce/La/Nd 63.0%/30.0%/1.75%/5.25%を有したことを除いては実施例4及び7の条件下で再現した。懸濁液中の混合酸化物の割合は34.1重量%であった。懸濁液の最終pHは4.7であった。得られた懸濁液は、実施例7の懸濁液のように流動的であった。
【0104】
実施例10
実施例10は、混合酸化物Mが異なる組成(酸化物の重量で表される):Zr/Ce/La/Y 50.0%/40.0%/5.0%/5.0%を有したことを除いては実施例4及び7の条件下で再現した。懸濁液中の混合酸化物の割合は23.0重量%であった。得られた懸濁液は、実施例7の懸濁液のように流動的であった。
【0105】
実施例11
実施例11は、懸濁液中の混合酸化物Mの割合が19.0重量%であったことを除いては実施例10の条件下で再現した。得られた懸濁液は、実施例7の懸濁液のように流動的であった。
【0106】
実施例12
実施例12は、混合酸化物Mが異なる組成(酸化物の重量で表される):Zr/Ce/La 59.0%/35.5%/5.5%を有することを除いては実施例4及び7の条件下で再現した。懸濁液中の混合酸化物の割合は29.0重量%であった。最終pHは4.2であった。ミリング中のpHはまた、3.8の初期pHからpH4.2まで上昇した。得られた懸濁液は、実施例4の懸濁液のように流動的であった。
【0107】
比較例1
懸濁液のpHは、前の実施例におけるものとは異なった。分散系を実施例1におけるように、しかし7.0のpHで調製した。このpHでは、約39重量%での分散系の粘度が実施例1の懸濁液についてよりもはるかに高く、その結果分散系は、1500rpmで30分間ミリングを行うために34.4重量%まで希釈されなければならないことが観察された。30分後に、懸濁液の粘度は余りにも高くなり、ミリングをやめた。D90を1μm未満に低下させることは可能ではなかった(D90=7.15μm)。
【0108】
比較例2
27.8重量%での懸濁液を、実施例1におけるように、しかしいかなる酸もなしに調製した。懸濁液のpHは8.3であった。30分間1500rpmでのビーズアジテータを使ってボウル中でミリングを行った。30分後に、懸濁液の粘度は余りにも高くなり、ミリングをやめた。D90を1μm未満に低下させることが可能ではないことが観察された(D90=10.7μm)。
【0109】
表1は、懸濁液の特性を提供する。D50及びD90は、Beckman-Coulterのレーザー粒径アナライザーLS13320を使って測定した。
【0110】
【国際調査報告】