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特表2022-550452ターゲティングされた肺送達組成物およびそれを使用する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-01
(54)【発明の名称】ターゲティングされた肺送達組成物およびそれを使用する方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/06 20060101AFI20221124BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20221124BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20221124BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221124BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20221124BHJP
   A61K 35/761 20150101ALI20221124BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20221124BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20221124BHJP
   A61K 51/12 20060101ALI20221124BHJP
   A61K 49/00 20060101ALI20221124BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20221124BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20221124BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20221124BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20221124BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20221124BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20221124BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20221124BHJP
   C07K 17/00 20060101ALI20221124BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20221124BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20221124BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20221124BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20221124BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20221124BHJP
   C40B 40/08 20060101ALN20221124BHJP
【FI】
C07K7/06
A61P37/04 ZNA
A61P31/00
A61P43/00 121
A61K48/00
A61K35/761
A61K35/76
A61K45/00
A61K51/12 100
A61K51/12 200
A61K49/00
A61K39/00 G
A61K39/39
A61K9/14
A61K47/42
A61K47/64
A61K9/72
C12N7/01
C07K17/00
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/11 Z
C40B40/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520386
(86)(22)【出願日】2020-10-01
(85)【翻訳文提出日】2022-05-16
(86)【国際出願番号】 US2020053758
(87)【国際公開番号】W WO2021067571
(87)【国際公開日】2021-04-08
(31)【優先権主張番号】62/910,998
(32)【優先日】2019-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.TRITON
3.MATLAB
(71)【出願人】
【識別番号】517349186
【氏名又は名称】ラトガース ザ ステイト ユニバーシティー オブ ニュージャージー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】パスカリーニ レナタ
(72)【発明者】
【氏名】アラップ ワディー
(72)【発明者】
【氏名】スタキチーニ ダニエラ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA98X
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA45
4B065CA46
4C076AA24
4C076AA29
4C076AA93
4C076AA95
4C076BB21
4C076BB22
4C076BB25
4C076BB27
4C076CC07
4C076CC31
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE41N
4C076EE59
4C076EE59N
4C076FF01
4C076FF34
4C084AA12
4C084AA13
4C084AA17
4C084MA05
4C084MA13
4C084MA43
4C084MA56
4C084MA57
4C084MA59
4C084NA11
4C084NA13
4C084ZB091
4C084ZB092
4C084ZB311
4C084ZB312
4C084ZC751
4C085AA03
4C085AA38
4C085BA01
4C085EE01
4C085EE06
4C085GG10
4C085HH01
4C085HH03
4C085JJ11
4C085JJ17
4C085KA26
4C085KA29
4C085KA40
4C085KB82
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA09
4C087CA12
4C087MA05
4C087MA13
4C087MA43
4C087MA56
4C087MA57
4C087MA59
4C087NA11
4C087NA13
4C087ZB09
4C087ZB31
4C087ZC75
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA15
4H045BA60
4H045EA31
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、1つの局面において、肺における空気血液関門を通過する固体粒子の輸送を可能とするある特定のペプチドの同定に関する。ある特定の態様において、前記固体粒子は、本開示において企図されるペプチドが付着し得る任意の種類の固体カーゴを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸配列を含む、輸送ペプチド。
【請求項2】
SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含む、請求項1記載の輸送ペプチド。
【請求項3】
SEQ ID NO:1~4からなる群より選択されるアミノ酸配列から本質的になる、請求項1記載の輸送ペプチド。
【請求項4】
SEQ ID NO:1~4からなる群より選択されるアミノ酸配列からなる、請求項3記載の輸送ペプチド。
【請求項5】
固体粒子の表面が、請求項1記載の輸送ペプチドを提示しており、前記固体粒子が、バクテリオファージ、操作された細胞、組織断片、ナノ粒子、小胞、デンドリマー、ウイルス様粒子、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノ随伴ウイルスファージ(AAVPと称される)、およびこれらの任意の組合せからなる群より選択される、前記固体粒子。
【請求項6】
前記輸送ペプチドが、前記固体粒子の表面に付着しているか、または前記固体粒子の表面上に提示されている、請求項5記載の固体粒子。
【請求項7】
前記輸送ペプチドが、前記固体粒子の表面の少なくとも一部分に付着しているか、または前記固体粒子の表面の少なくとも一部分上に提示されている、請求項6記載の固体粒子。
【請求項8】
糸状ファージである、請求項5記載の固体粒子。
【請求項9】
治療用物質、生物学的に活性な分子、イメージング剤、放射性物質、塩、ペプチド、タンパク質、脂質、核酸、気体、およびこれらの任意の組合せからなる群より選択される作用物質をさらに含み、前記作用物質が、前記固体粒子に付着しており、かつ/または前記固体粒子内に含有されている、請求項5記載の固体粒子。
【請求項10】
糸状ファージである、請求項5記載の固体粒子。
【請求項11】
前記糸状バクテリオファージがfd、fl、またはM13バクテリオファージを含む、請求項10記載の固体粒子。
【請求項12】
前記固体粒子が糸状ファージであり、かつ前記固体粒子の表面が抗原を提示している、請求項5記載の固体粒子。
【請求項13】
対象の肺において空気血液関門を通過する固体粒子の輸送を促進しかつ/または増加させる方法であって、前記対象に請求項5記載の固体粒子を投与することを含み、投与が、経鼻、頬側、吸入、気管内、肺内、または気管支内を含む経路を通じたものである、前記方法。
【請求項14】
対象において固体粒子の全身循環を促進する方法であって、前記対象に請求項5記載の固体粒子を投与することを含み、投与が、経鼻、頬側、吸入、気管内、肺内、または気管支内を含む経路を通じたものである、前記方法。
【請求項15】
疾患または障害に対して対象を免疫化する方法であって、前記対象に請求項5記載の固体粒子を投与することを含み、前記固体粒子の表面が、前記対象における前記疾患または障害に対する免疫応答を促進する抗原を用いてさらに誘導体化されており、投与が、経鼻、頬側、吸入、気管内、肺内、または気管支内を含む経路を通じたものである、前記方法。
【請求項16】
対象において疾患または障害を処置し、寛解させ、かつ/または予防する方法であって、前記対象に請求項5記載の固体粒子を投与することを含み、前記固体粒子の表面が、前記対象における前記疾患または障害に対する免疫応答を促進する抗原を用いてさらに誘導体化されており、投与が、経鼻、頬側、吸入、気管内、肺内、または気管支内を含む経路を通じたものである、前記方法。
【請求項17】
疾患または障害を発症するリスクがある対象を処置する方法であって、前記対象に請求項5記載の固体粒子を投与することを含み、前記固体粒子の表面が、前記対象における前記疾患または障害に対する免疫応答を促進する抗原を用いてさらに誘導体化されており、投与が、経鼻、頬側、吸入、気管内、肺内、または気管支内を含む経路を通じたものである、前記方法。
【請求項18】
前記ペプチドがSEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含む、請求項13~17のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
前記ペプチドがSEQ ID NO:2のアミノ酸配列からなる、請求項13~17のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
前記固体粒子が糸状ファージである、請求項13~17のいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
前記糸状バクテリオファージがfd、fl、またはM13バクテリオファージを含む、請求項20記載の方法。
【請求項22】
免疫原性アジュバントをさらに含む組成物中で、前記固体粒子が前記対象に投与される、請求項13~17のいずれか1項記載の方法。
【請求項23】
前記対象が哺乳動物である、請求項13~17のいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
前記対象がヒトである、請求項13~17のいずれか1項記載の方法。
【請求項25】
固体粒子を含み、前記固体粒子の表面が、請求項1記載の輸送ペプチドを少なくとも1つ提示しており、かつ前記固体粒子が、バクテリオファージ、操作された細胞、組織断片、ナノ粒子、小胞、デンドリマー、ウイルス様粒子(VLP)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノ随伴ウイルスファージ(AAVPと称される)、およびこれらの組合せからなる群より選択される、ワクチン。
【請求項26】
DNAワクチン、RNAワクチン、複製性ウイルスベクターワクチン、非複製性ウイルスベクターワクチン、不活化ウイルスベクターワクチン、ウイルス様粒子ワクチン、およびこれらの任意の組合せからなる群より選択される、請求項25記載のワクチン。
【請求項27】
前記粒子が、DNA、RNA、複製性ウイルスベクター、非複製性ウイルスベクター、不活化ウイルスベクター、ウイルス様粒子、およびこれらの任意の組合せからなる群より選択されるワクチン活性物質を含む、請求項25記載のワクチン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年10月4日に出願された米国仮特許出願第62/910,998号の35 U.S.C.§119(e)の下での優先権を主張し、該仮出願は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
背景
特に発展途上国および災害地域において、迅速な免疫化を達成するための、吸入ベースのエアロゾルワクチン接種は、ニードルフリーでありかつ経口療法とは異なり、初回通過代謝にさらされない。肺組織の呼吸区画は、総臓器体積の90%より多くを構成し、これは約80平方メートルと同等である。薄くかつ高度に透過性の肺上皮は、一般に、通過して血流に入ることを許される分子の選択的な透過性を定義する。小分子、ペプチドまたはタンパク質、例えばインスリン、およびウイルスワクチンは、吸入療法のための最も好適な候補である。親油性分子は、恐らくは形質膜を通過する受動拡散により、肺を通じて急速に吸収されるが、親水性分子は、特有の細胞受容体によりまたはタイトジャンクションを介して輸送され得る。
【0003】
実際に、エアロゾルモードのファージベースワクチン導入は多くの感染の経路をたどっている。過去20年以上にわたり、大きな努力が、インスリンの原型的な吸入ベースの形態の最適化に集中した。FDAにより承認された現行の製剤は依然として大集団ベースの試験における評価を受けており、安全性および/または有効性の懸念がその広い商業的アピールを妨害している。最近では、エアロゾルベースのワクチン接種プラットフォームが、空気中の病原体、例えば結核、インフルエンザ、エボラ、および麻疹に対する有効なフィールド保護のために特に注目を集めている。
【0004】
エアロゾル化および肺薬物送達は、より迅速な作用の開始を達成することにより潜在的な副作用を低減させながら薬物バイオアベイラビリティを向上させる。しかしながら、この経路もまた、特に全身適用について、多くの課題を課し、呼吸器疾患へのその使用を制限している。エアロゾル処理療法は、一般に、インビボで薬理学的なエンドポイントをモニターすることにより評価される。新たな効率的な療法の開発は、エアロゾル化された剤の輸送および運命の機序についての知識、つまり、吸入された粒子が空気血液関門とどのように相互作用するのかの実際の機序、肺表面との接触におけるエアロゾル化された分子の物理化学的変化、バイオアベイラビリティ、ならびに最後に不溶性活性化合物のクリアランスプロセスおよび除去における著しいギャップによりさらに邪魔される。
【発明の概要】
【0005】
従って、生物活性物質の肺送達を可能とする新規の組成物に対する必要性が当技術分野において存在する。ある特定の態様において、そのような構築物は、ターゲティングされた肺ワクチン接種を促進するために使用され得る。本開示は、この必要性に対処し、それを満足する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本開示の特有の態様の以下の詳細な説明は、添付の図面と組み合わせて読まれた場合により良好に理解されるであろう。本開示を説明する目的のために、例示的な態様が図面において示される。しかしながら、本開示は、図面に示される態様の正確な構成および手段に限定されないことが理解されるべきである。
図1図1A~1Fは、ファージディスプレイライブラリーのコンビナトリアルエアロゾル選択および新たなリガンドペプチド媒介性輸送の同定を描写する。図1A:ランダムファージディスプレイライブラリー(CX8C)をエアロゾルを介して投与し、6時間までの固定された時点において血流から回収した。図1B:4ラウンドのファージディスプレイライブラリー選択ならびに各ラウンド:R1(60分)、R2(30分)、R3(10分)およびR4(5分)についての収集時間の図式。(C)選択を通じたファージ濃縮。データは平均±SDである(*P<0.05;***P<0.001)。図1D:第4ラウンドの選択(R4)から回収されたペプチドモチーフのパーセンテージ。5%に等しいまたはそれよりも高い頻度で回収された環状ペプチドは、CAINSLSRKC、CAKSMGDIVC、CGRKQVESSC、およびCRGKSAEGTCである。5%よりも低い頻度を有する16のペプチドもまた同定された。図1E:R4において同定されたペプチドモチーフを提示するファージ粒子の輸送。無挿入ファージを対照として使用した。データは平均±SDである(***P<0.001;n.s.は統計的に有意でないことを表す)。図1F:インビボでのターゲティングされたCAKSMGDIVC提示ファージ粒子および陰性対照無挿入ファージ粒子の輸送。データは平均±SEMである(*P<0.05;***P<0.001)。
図2図2A~2Dは、肺ホメオスタシスはペプチド媒介性ファージ輸送において正常なままであることを描写する。図2A:エアロゾルを介してビヒクル単独(PBS)、陰性対照無挿入ファージ粒子、ターゲティングされたCAKSMGDIVC提示ファージ粒子、またはLPS-デキストランを投与されたマウスからの肺組織切片の巨視的形態ならびにヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色。図2B:肺透過性、BALFから回収された総タンパク質、および浸潤性好中球を、エアロゾルを介してターゲティングされたCAKSMGDIVC提示ファージ粒子、陰性対照(無挿入ファージもしくはビヒクル単独のいずれか)、またはLPS傷害モデル(陽性対照:LPS-デキストラン)を投与されたマウスにおいて測定した(n=3匹のマウス/群)。データは3つの独立した実験の代表的なものである。バーは平均±SEMを表す(***P<0.0001;**P<0.01)。図2C:マウス組織切片の肺または対照臓器(膵臓)におけるターゲティングされたCAKSMGDIVC提示ファージ粒子または対照無挿入ファージ粒子を用いたファージオーバーレイ結合アッセイの免疫組織化学。図2D:経時的な肺全体におけるファージ粒子の数の相対的な定量化(***P<0.001)。スケールバー、100μm。
図3図3A~3Iは、ターゲティングされたCAKSMGDIVC提示ファージ粒子の受容体としてのα3β1インテグリンの同定およびインビトロでの検証を描写する。図3A: ターゲティングされたCAKSMGDIVC提示ファージ粒子はヒト組換えα3β1インテグリンに結合する。BSAおよび無挿入ファージを陰性対照として使用した(***P<0.001)。図3B:無関連対照ペプチドと比べたそのコグネイト合成ペプチドによるα3β1インテグリンへのターゲティングされたCAKSMGDIVC提示ファージ粒子の結合の濃度依存性阻害。図3C:DAPI(青)および抗α3鎖抗体、続いてCy3コンジュゲート二次抗体(赤)で染色されたA549細胞の免疫蛍光画像(スケールバー、100μm)。図3D:A549細胞の表面上のファージ結合(***P<0.001)。図3E:トランスウェルアッセイにおけるA549細胞単層を通じたターゲティングされたCAKSMGDIVC提示ファージ粒子または対照無挿入ファージ粒子の輸送。図3F~3I:抗ファージ抗体、続いて二次抗Cy3コンジュゲート抗体(赤)を用いた免疫蛍光分析によるA549野生型細胞およびshRNA ITGA3を形質導入されたA549細胞におけるファージ内部移行(スケールバー、50μm)。トランスウェルシステムにおけるターゲティングされたCAKSMGDIVC提示ファージ粒子輸送阻害アッセイ:異なる濃度で1h、α3鎖(shRNA ITGA3)もしくはβ1鎖(shRNA ITGB1)についてサイレンシングされた(***P=0.001、*P=0.0417、***P=0.008、**P=0.0136)(図3F)または組換えタンパク質:GST(100ng)(図3G)、もしくはCAKSMGDIVC-GST(100ng)(図3H)、もしくは抗α3遮断抗体(図3I)を用いたA549細胞。阻害効果は、対照、野生型A549細胞、または非ターゲティングshRNA(pLKO)をもしくはGST単独もしくはアイソタイプ対照IgG抗体を形質導入された対照細胞のいずれにおいても観察されなかった(***P<0.001)。
図4-1】図4A~4Fは、肺組織切片中のα3β1インテグリンに対するリガンドCAKSMGDIVCペプチドの発現、局在性、および結合を描写する。図4A~4B:切片化パラフィン包埋肺組織切片の免疫蛍光。肺胞上皮細胞1型(AT1)を抗ポドプラニン抗体(紫)で染色し、肺胞上皮細胞2型(AT2)を抗プロSPC抗体(緑)、抗α3鎖抗体(赤)およびDAPI(青)で染色した。白矢印は、呼吸器細気管支中のα3β1インテグリンの存在を指し示す。図4A~Bは、気道および肺の肺胞領域中の細胞、特には肺胞上皮1型(AT1)、肺胞上皮2型(AT2)および呼吸器細気管支の細胞におけるα3β1インテグリンの検出を示す。スケールバー:50μm。図4C:エアロゾルを介してターゲティングされたCAKSMGDIVC提示ファージ粒子または対照無挿入ファージ粒子を投与された動物から得られた肺組織切片の免疫蛍光分析:AT1細胞(紫色)、AT2細胞(緑色)、ファージ(赤)およびDAPI(青)を共焦点顕微鏡でイメージングした。白矢印は、AT1およびAT2細胞と共局在化している、ターゲティングされたCAKSMGDIVC提示ファージ粒子または対照無挿入ファージ粒子の存在を示す。黄矢印は肺胞マクロファージ中のファージ粒子を示す。
図4-2】図4A~4Fは、肺組織切片中のα3β1インテグリンに対するリガンドCAKSMGDIVCペプチドの発現、局在性、および結合を描写する。図4D:肺胞上皮AT1またはAT2細胞と共局在化したCAKSMGDIVC提示ファージ粒子または対照無挿入ファージ粒子についてのMandersのオーバーラップ係数(*P=0.0439、**P=0.0053)。図4E:クラブ細胞を抗CCSP抗体(白)および抗α3インテグリン鎖抗体(赤)で染色した。DAPI(青)を使用して個々の細胞核を染色した。スケールバー:100μm。図4F:抗CCSP抗体(白色)で染色された細胞と共局在化した、ターゲティングされたCAKSMGDIVC提示ファージ粒子(赤)または対照無挿入ファージ粒子の存在を示す。スケールバー:50μm。
図5図5A~5Eは、リガンドCAKSMGDIVCペプチドは肺胞上皮AT1、AT2濃縮細胞集団およびクラブ細胞に結合することを描写する。図5A:フローサイトメトリーによる細胞選別。ターゲティングされたCAKSMGDIVC提示ファージ粒子または対照無挿入ファージ粒子をエアロゾルを介して投与された動物(n=5)のコホートから肺細胞を単離および精製し、以下の抗体:抗EPCAM、抗CD45、抗T1-α、抗CD31、および抗F4/80で染色した。図5B:細胞をそれらの特有の表現型に基づいてゲーティングし(ゲート1:CD31およびT1-α;ゲート2:CD31およびF4/80)、選別し、遠心分離し、TUをカウントすることによりファージの量を決定した。データは3つの独立した実験の代表的なものである(**P=0.0053、*P=0.0375)。図5C:血管外(肺)投与を用いた2区画薬物動態モデルの図式。血流ならびに急速に灌流させた臓器(中心区画)および緩徐に灌流させた臓器(末梢区画)。単核食細胞系(MPS)隔離はMPS臓器(肝臓、脾臓)によるファージ粒子のクリアランスを指す。投与の部位である肺は、肺気腔および単核食細胞に区画化される。肺気腔からのエアロゾルファージ粒子を、血流(中心区画)に輸送するか、またはマクロファージに内部移行させる。図5D:ターゲティングされたCAKSMGDIVC提示ファージ粒子または対照無挿入ファージ粒子についての薬物動態モデルのフィット。データは平均±SDを表す(n=3)。図5E:ピアソン相関係数R>0.99は、観察されたデータおよびモデルフィットの間の強い相関を示す。注記:y軸は図5D~5Eにおいてlog10スケールである。
図6図6A~6Iは、CAKSMGDIVC提示ファージ粒子の気管内投与はアカゲザルにおいて堅牢かつ特異的な全身性抗体応答を誘発することを描写する。図6A:アカゲザルにおけるターゲティングされたCAKSMGDIVC提示ファージ粒子または対照無挿入ファージ粒子の気管内投与の図式。処理の前に、血液試料(ベースライン)を収集した。第1の用量の時点(1日目)に開始して、血液試料(1mL)を1hから6hまで1時間毎に収集した。研究の経過にわたり、血清試料を指し示されるように14日毎に収集した。図6B:アカゲザルからの肺組織切片の肺胞上皮細胞におけるα3β1インテグリン(赤)の免疫蛍光分析。DAPI(青)を使用して個々の細胞核を染色した。スケールバー:100μm。図6C:ターゲティングされたCAKSMGDIVC提示ファージ粒子を投与されたアカゲザルの血流中のファージ粒子の存在。ファージ負荷をTUカウントにより決定した。図6D:全体的な精製ファージ特異的血清IgG抗体の力価を、1010ファージ粒子/ウェルでコーティングされた96ウェルプレートにおけるELISAにより分析した(**P<0.01、***P=0.0004)。図6E:各時点からの抗体力価の平均をベースラインからの抗体力価の平均で割ることでファージ特異的IgGの力価における倍数変化を算出した。図6F~6G:全体的な精製ファージ特異的血清IgA(図6F)およびIgA抗体の力価における倍数変化(図6G)を上記のように決定した(*P<0,05、**P<0.01)。図6H~6I:CAKSMGDIVC特異的IgG(図6H)およびCAKSMGDIVC特異的IgA(図6I)を、合成CAKSMGDIVCペプチドまたは無関連対照ペプチドでコーティングされた96ウェルプレートにおけるELISAにより分析した(*P<0,05、***P<0.001)。注記:y軸は図6D図6F図6H、および図6Iにおいてlog2スケールである。
図7図7A~7Dは、α3β1インテグリンはA549細胞におけるCAKSMGDIVC提示ファージ粒子の輸送を媒介することを描写する。図7A:ヒトITGA3およびITGB1遺伝子を標的とするshRNAレンチウイルス粒子での形質導入後のA549細胞におけるα3およびβ1インテグリン鎖の発現のウエスタンブロット。抗βアクチンをタンパク質負荷対照として使用した。図7B:培養された細胞の代表的な画像。shRNA ITGA3クローン#3およびITGB1クローン#1を形質導入されたA549細胞を用いて機能アッセイを行った。図7C:接着A549細胞における抗α3インテグリン鎖遮断抗体飽和曲線。図7D:インビトロでのファージ粒子の輸送速度論の数学的なモデリング。ターゲティングされたCAKSMGDIVC提示ファージ粒子(赤)または対照無挿入ファージ粒子(青)についての平均透過性アッセイデータ(マーカー)に対する指数関数のフィット(赤線および青線)。両方についてのピアソン相関係数R>0.96は優れた適合度を示す。データは平均±SDを表す(n=3)。注記:y軸はlog10スケールである。
図8図8A~8Cは、マウス肺組織中のα3β1インテグリン転写物の免疫組織化学および単一細胞RNAシークエンシングを描写する。図8A:抗α3インテグリン鎖抗体またはアイソタイプ対照抗体での切片化パラフィン包埋肺組織の免疫組織化学染色。肺胞または気道の代表的な画像を示す。図8B:肺上皮細胞種におけるscRNA-seqによるマウスα3β1インテグリンのItga3およびItgb1転写物。図8C: ターゲティングされたCAKSMGDIVC提示ファージ粒子または対照無挿入ファージ粒子の末梢区画(緩徐に灌流させた臓器)およびMPS隔離についての薬物動態モデルの予測。注記:y軸はlog10スケールである。
図9図9A~9Fは、ヒト患者または非ヒト霊長動物からの肺組織切片におけるα3β1インテグリンの発現、およびCAKSMGDIVC提示ファージ粒子の気管内投与での液性応答を描写する。図9A:アカゲザルの肺組織切片中の肺胞上皮細胞におけるα3β1インテグリン(赤)の発現の免疫蛍光分析。肺胞上皮細胞を抗RAGE(緑)抗体および細胞核を染色するためのDAPI(青)で共染色した。図9B:免疫組織化学による正常ヒト肺組織切片におけるα3β1インテグリンの発現。図9C~9D:対照無挿入ファージ粒子と比べたファージ特異的血清IgG(図9C)または血清IgA(図9D)の力価における倍数変化。図9E~9F:各時点からの抗体力価の平均をベースラインからの抗体力価の平均で割ることでCAKSMGDIVC特異的IgG(図9E)およびIgA(図9F)の力価における倍数変化を算出した。スケールバー:100μm。
図10】CAKSMGDIVC提示ファージ粒子のエアロゾル投与はマウスにおいて堅牢かつ特異的な肺および全身性抗体応答を誘発することを描写する。ターゲティングされたCAKSMGDIVC提示ファージ粒子または対照無挿入ファージ粒子の14日のエアロゾル投与後のマウスから収集された血清およびBALF。血清または気管支肺胞洗浄液からのファージ特異的IgG、IgMまたはIgA抗体の力価を、1010ファージ粒子/ウェルでコーティングされた96ウェルプレートにおけるELISAにより分析した(***P<0.001)。注記:y軸はlog2スケールである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
詳細な説明
本開示は、1つの局面において、肺における空気血液関門を通過する固体粒子の輸送を可能とするある特定のペプチドの同定に関する。ある特定の態様において、固体粒子は、本開示において企図されるペプチドが付着し得る任意の種類の固体カーゴを含む。他の態様において、固体粒子は、治療的に有用な化合物を用いて、例えば、限定されるものではないが、本開示の組成物が投与される対象における免疫応答のトリガーとなるために使用され得る抗原を用いて、さらに誘導体化される。さらに他の態様において、治療的に有用な化合物は、固体粒子の表面上に提示される。さらに他の態様において、治療的に有用な化合物は、固体粒子の表面に付着している。さらに他の態様において、治療的に有用な化合物は、固体粒子内に含有される。
【0008】
本明細書に記載されるように、バイアスなしのコンビナトリアルファージディスプレイベース戦略を適用して、空気血液関門を通過する粒子の安全かつ有効な輸送のためのリガンド/受容体媒介性経路を同定した。本明細書に記載の送達戦略は、肺組織損傷の非常に低いリスクで全身性の効果を誘導することに成功する。ある特定の非限定的な態様において、本開示の構築物は、全身性の非呼吸器疾患を処置するためのファージベースのワクチンとして使用することができる。エアロゾル化ファージディスプレイリガンドライブラリーをインビボでスクリーニングして、インタクトな肺の空気血液関門を通過することができるターゲティングモチーフを単離した。リガンドモチーフCAKSMGDIVCを選択および単離し、肺のクラブ細胞および肺胞上皮細胞の表面上のそのコグネイト受容体、インテグリンα3β1を精製した。α3β1インテグリンへのCAKSMGDIVCモチーフを提示するターゲティングされたファージ粒子の結合は、インビトロおよびインビボで特異的なファージ粒子取込みおよび輸送を促進した。これらの発見は、非ヒト霊長動物モデルにおいて検証された。高度に安定な抗原担体(すなわち、ファージ粒子)の肺送達のこの非侵襲的な方法は、堅牢かつ特異的な免疫応答を誘発することができ、ワクチン開発のための限りない用途を有する。以上を合わせて、本明細書において議論されるコンビナトリアル選択システムおよび結果は、吸入療法およびそれらの全身適用のための新たな翻訳的手段を提供する。
【0009】
空気血液関門を通過する分子の生理学的輸送における機構的な洞察を得、それに結び付けられる表面受容体の多様性を探索するために、エアロゾル化ファージディスプレイランダムペプチドライブラリーのコンビナトリアルスクリーニングを設計し、マウスにおいて行った。血流から回収されたペプチド提示ファージ粒子のプールから、4つの有力なリガンドペプチド候補は肺関門を通過するファージ輸送を媒介した。これらの選択されたリガンドのうち、インデックスペプチドCAKSMGDIVCは、インビボで最も高い輸送効率のうちの1つであると示し、データは特異的なリガンド-受容体相互作用が肺標的送達の作因となる可能性があることを示唆した。エアロゾル処理で気道中に沈着したCAKSMGDIVC提示ファージ粒子の分布、輸送、およびクリアランスをインビボおよびエクスビボでモニターしたところ、ファージ輸送は検出可能な肺傷害をもたらさず、解剖学的な肺障害も機能的な肺障害もなかったことが指し示された。これらの結果は、ファージ粒子は安全な吸入投与のために好適であり得るという発見をサポートする。
【0010】
リガンドCAKSMGDIVCペプチドの推定上の受容体を同定するために、一連のファージ結合アッセイをインビトロおよびインビボで行った。ヒト組換えα3β1インテグリンへの特異的結合、続いてCAKSMGDIVC提示ファージ粒子の機能的な結合および肺胞上皮サロゲートの細胞単層を通過するその輸送はリガンド-受容体相互作用を裏付けた。しかしながら、ターゲティングされたファージ粒子はリガンド-受容体媒介性の機序を通じて肺関門を通過することの鍵となる証拠は、インビボでのAT1、AT2およびクラブ細胞の表面上のα3β1インテグリンへのCAKSMGDIVC提示ファージ粒子の特異的結合により明確に実証された。α3β1インテグリンは、肺胞細胞の頂端膜側および基底膜側において発現される。いかなる理論によっても限定されることを望まないが、一般的機序、例えばトランスサイトーシス(能動的な受容体媒介性の)または傍細胞性(隣接する細胞の間の受動的な通過)輸送は、血流へのファージ粒子トラフィックの潜在的な促進因子であり得る。そのため、α3β1インテグリンの選択的なターゲティングを通じたリガンド指向性送達は、透過増強剤または可溶化担体を必要とし、それにより薬物安定性および分散に影響する伝統的な非ターゲティングエアロゾル製剤に対する実質的な進歩となる。
【0011】
本明細書において導入されるリガンドペプチド指向性肺送達アプローチの翻訳的意義をサポートするために、ターゲティングされたファージベースのワクチン接種プロトコールを、非ヒト霊長動物における疾患ワクチン接種に向けた概念実証として全身性の液性免疫化のためのエアロゾル処理アプローチとして非ヒト霊長動物において設計した。CAKSMGDIVC提示ファージ粒子の選択的な肺輸送、続いて特異的な全身性の液性応答の活性化は、ウイルスワクチン学の長年の原則を再現し、従来の部位特異的なワクチン接種経路に対する優位な進歩を付与する。
【0012】
ある特定の非限定的な態様において、ファージ粒子は苛酷な環境条件下で高度に安定である。他の非限定的な態様において、ファージ粒子の大スケール製造は費用効果の高いものである(Bao,et al.,2018,Adv Drug Deliv Rev;Barbu,et al.,2016,Phage Therapy in the Era of Synthetic Biology.Cold Spring Harb Perspect Biol 8)。さらに他の非限定的な態様において、ファージベースのワクチンは、検出可能な毒性副作用を誘導しない(Aghebati-Maleki,et al.,2016,J Biomed Sci 23:66)。さらに他の非限定的な態様において、ネイティブなファージ粒子は、哺乳動物細胞に対するトロピズムを有さず、真核細胞の内側で複製せず、それらの使用は、他の古典的なウイルスベースのワクチン接種戦略と比較した場合に安全であると一般に考えられる(Barbu,et al.,2016,Cold Spring Harb Perspect Biol 8;Aghebati-Maleki,et al.,2016,J Biomed Sci 23:66)。さらに他の非限定的な態様において、最小の温度可動域(約1℃)に起因して多くの場合に不活性化され得る従来のペプチドワクチンとは異なり、本明細書において導入されるシステムは、フィールド適用の間のいわゆる「コールドチェーン」を保つための面倒かつ高価な必要条件を有しない。さらに他の非限定的な態様において、本発明のファージベースのシステムのリガンド-受容体の発見およびワクチン接種特性はまた、アデノ随伴ウイルス(AAV)およびファージのハイブリッドベクター(AAVPと称される)のライブラリーを用いた肺導入遺伝子標的送達の開発のために使用され得る(Hajitou,et al.,2006,Cell 125:385-398;Suwan,et al.,2019,PNAS doi:10.1073/pnas.1906653116)。さらに他の非限定的な態様において、ファージ粒子自体が非常に強い免疫原であり、持続的な液性応答を誘発するための強力なアジュバントとして働く(Trepel,et al.,2001,Cancer Res 61:8110-8112)。
【0013】
開示される主題のある特定の態様がこれより詳細に参照され、該主題の例は添付の図面において部分的に図示される。開示される主題が、列挙された請求項と組み合わせて記載されるが、例示される主題は、開示される主題に請求項を限定することは意図されないことが理解されるであろう。
【0014】
この文献の全体を通じて、範囲の形式で表される値は、範囲の限度として明示的に記載される数値を含むだけでなく、その範囲内に包含されるすべての個々の数値または部分的範囲も、各数値および部分的範囲が明示的に記載されたかのように含む、柔軟な方式で解釈されるべきである。例えば、「約0.1%~約5%」または「約0.1%~5%」の範囲は、約0.1%~約5%だけでなく、指し示される範囲内の個々の値(例えば、1%、2%、3%、および4%)ならびに部分的範囲(例えば、0.1%~0.5%、1.1%~2.2%、3.3%~4.4%)も含むと解釈されるべきである。「約X~Y」という記載は、他に指し示されなければ、「約X~約Y」と同じ意味を有する。同様に、「約X、Y、または約Z」という記載は、他に指し示されなければ、「約X、約Y、または約Z」と同じ意味を有する。
【0015】
本明細書に記載の方法において、行為は、時間的なまたは操作上の順番が明示的に記載されている場合を除いて、任意の順序で実行され得る。さらには、指定される行為は、明示的な請求項の表現が、それらが別々に実行されることを記載しなければ、並行して実行され得る。例えば、Xを行う主張される行為およびYを行う主張される行為は、単一の操作内で同時に実行することができ、結果としてもたらされる方法は、主張される方法の文言上の範囲内に入る。
【0016】
定義
他に定義されなければ、本明細書において使用されるすべての科学技術用語は、本開示が関する技術分野の当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似または同等の任意の方法および材料を本開示の試験のための実施において使用することができるが、選択された材料および方法が本明細書において記載される。本開示の説明およびクレームにおいて、以下の学術用語が使用される。
【0017】
一般に、本明細書において使用される学術用語ならびに細胞培養、分子遺伝学、薬理学、タンパク質化学、および有機化学における実験室手順は、当技術分野において周知かつ一般的に用いられるものである。
【0018】
標準的な技術が生化学的および/または生物学的マニピュレーションのために使用される。技術および手順は、一般に、当技術分野における従来の方法および様々な一般的な参考文献にしたがって行われ、これらはこの文献の全体を通じて提供される。
【0019】
この文献において、「1つの(a)」、「1つの(an)」、または「その(the)」という用語は、文脈が他に明確に規定しなければ、1つまたは1つよりも多くを含むために使用される。「または」という用語は、他に指し示されなければ、非排他的な「または」を指すために使用される。「AおよびBのうちの少なくとも1つ」または「AまたはBのうちの少なくとも1つ」は、「A、B、またはAおよびB」と同じ意味を有する。追加的に、本明細書において用いられ、他に定義されない、術語または学術用語は、限定ではなく説明の目的のために過ぎないことが理解されるべきである。セクションの見出しの任意の使用は、文献を読むことを補助することが意図され、限定的として解釈されるべきではなく、セクションの見出しに関連する情報は、その特定のセクション内またはその外側に存在し得る。この文献中で参照されるすべての刊行物、特許、および特許文献は、個々に参照により組み入れられるかのように、参照により全体が本明細書に組み入れられる。
【0020】
「約」は、測定可能な値、例えば量、時間的な持続期間などを指す場合に本明細書において使用される場合、指定される値からの±20%または±10%、より好ましくは±5%、よりいっそう好ましくは±1%、さらにより好ましくは±0.1%のバリエーションを包含することが意味され、そのようなバリエーションは開示される方法を行うために適切である。
【0021】
「アジュバント」は、抗原の免疫原性を増強することができる物質を指す。アジュバントは、1つの物質または物質の混合物であることができ、免疫系に直接的に作用することによりまたは抗原の遅い放出を提供することにより機能することができる。アジュバントの例は、アルミニウム塩、ポリアニオン、細菌糖ペプチド、および遅延放出剤、例えばフロイント不完全アジュバントである。
【0022】
「寛解させる」または「処置する」という用語は、疾患と関連付けられる臨床徴候および/または症状が、行われる行為の結果として減少されることを意味する。モニターされる徴候または症状は、熟練した臨床医に周知である。
【0023】
「抗体」という用語は、本明細書において使用される場合、抗原と特異的に結合する免疫グロブリン分子を指す。抗体は、天然供給源または組換え供給源に由来するインタクトな免疫グロブリンであることができ、インタクトな免疫グロブリンの免疫応答性部分であることができる。抗体は典型的には免疫グロブリン分子の四量体である。本開示における抗体は、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、Fv、FabおよびF(ab)2の他に、単鎖抗体(scFv)およびヒト化抗体、ならびにエフェクター活性を増強または変更するためのこれらの任意の改変、例えばFcドメイン中のグリコシル化または突然変異を含めて、様々な形態で存在することができる(Harlow,et al.,1999,In:Using Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,NY;Harlow,et al.,1989,In:Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor,New York;Houston,et al.,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883;Bird,et al.,1988,Science 242:423-426)。
【0024】
「抗原」または「Ag」という用語は、本明細書において使用される場合、免疫応答を惹起する分子として定義される。この免疫応答は、抗体産生、もしくは特異的な免疫学的コンピテント細胞の活性化のいずれか、または両方を伴うことができる。当業者は、実質的にすべてのタンパク質またはペプチドを含めて、任意の高分子は抗原として働き得ることを理解する。さらには、抗原は組換えまたはゲノムDNAに由来することができる。免疫応答を誘発するタンパク質をコードするヌクレオチド配列または部分的なヌクレオチド配列を含む任意のDNAは、本明細書において使用される用語としての「抗原」をコードすることを当業者は理解する。さらには、抗原は遺伝子の全長ヌクレオチド配列によってのみコードされる必要はないことを当業者は理解する。本開示は1つより多くの遺伝子の部分的なヌクレオチド配列の使用を含むがこれに限定されないこと、およびこれらのヌクレオチド配列は、所望の免疫応答を誘発するために様々な組合せで並べられることは容易に明らかである。さらに、抗原は「遺伝子」によりコードされる必要は全くないことを当業者は理解する。抗原は、生成、合成され得ることまたは生物学的試料に由来し得ることは容易に明らかである。そのような生物学的試料は、組織試料、腫瘍試料、細胞または生体液を含むことができるがこれらに限定されない。
【0025】
本明細書において使用される場合、「併用療法」により、第1の剤は別の剤と組み合わせて投与されることが意味される。「組み合わせて」または「組合せで」は、別の処置モダリティーに加えて1つの処置モダリティーの投与を指す。そのため、「組み合わせて」は、個体への他の処置モダリティーの送達の前、間、または後の1つの処置モダリティーの投与を指す。そのような組合せは、単一の処置レジメンまたはレジームの部分であると考えられる。
【0026】
本明細書において使用される場合、「保存的配列改変」という用語は、アミノ酸配列を含有する抗体の結合的特徴に著しい影響も変更も与えないアミノ酸改変を指すことが意図される。そのような保存的改変としては、アミノ酸置換、付加および欠失が挙げられる。改変は、当技術分野において公知の標準的な技術、例えば部位特異的突然変異誘発およびPCR媒介突然変異誘発により本開示の抗体に導入され得る。保存的アミノ酸置換は、アミノ酸残基が、類似した側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられるものである。類似した側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当技術分野において定義されている。これらのファミリーは、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β分岐側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸を含む。そのため、抗体のCDR領域内の1つまたは複数のアミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリーからの他のアミノ酸残基で置き換えることができ、変更された抗体は、本明細書に記載の機能アッセイを使用して抗原に結合する能力について試験することができる。
【0027】
「疾患」は、動物がホメオスタシスを維持できず、疾患が寛解されない場合に動物の健康が悪化し続ける、動物の健康状態である。対照的に、動物における「障害」は、動物がホメオスタシスを維持できるが、動物の健康状態が、障害の非存在下におけるよりも都合が悪いものである、健康状態である。処置されないままの場合、障害は、動物の健康状態におけるさらなる低下を必ずしも引き起こさない。
【0028】
本明細書において使用される場合、「免疫応答を誘発する」または「免疫化する」という用語は、異種タンパク質に対するB細胞および/またはT細胞応答を生成するプロセスを指す。
【0029】
「コードする」は、定義されたヌクレオチドの配列(すなわち、rRNA、tRNAおよびmRNA)または定義されたアミノ酸の配列のいずれかならびにそれらの結果としてもたらされる生物学的特性を有する生物学的プロセスにおける他のポリマーおよび高分子の合成のための鋳型として働く、ポリヌクレオチド、例えば遺伝子、cDNA、またはmRNA中のヌクレオチドの特有の配列の本来的な特性を指す。そのため、遺伝子は、その遺伝子に対応するmRNAの転写および翻訳が細胞または他の生物学的システムにおいてタンパク質を産生する場合に、タンパク質をコードする。そのヌクレオチド配列がmRNA配列と同一であり、配列表において通常提供されるコーディング鎖、および遺伝子またはcDNAの転写のための鋳型として使用される非コーディング鎖の両方は、その遺伝子またはcDNAのタンパク質または他の生成物をコードするとして言及され得る。
【0030】
本明細書において使用される場合、「内因性の」は、生物、細胞、組織またはシステムからのまたはその内部で産生される任意の材料を指す。
【0031】
本明細書において使用される場合、「外因性の」という用語は、生物、細胞、組織またはシステムの外部から導入されるまたはその外部で産生される任意の材料を指す。
【0032】
「発現」という用語は、本明細書において使用される場合、そのプロモーターにより駆動される特定のヌクレオチド配列の転写および/または翻訳として定義される。
【0033】
「発現ベクター」は、発現されるべきヌクレオチド配列に機能的に連結された発現制御配列を含む組換えポリヌクレオチドを含むベクターを指す。発現ベクターは、発現のための十分なシス作用性エレメントを含み、発現のための他のエレメントは、宿主細胞によりまたはインビトロ発現系において供給され得る。発現ベクターとしては、当技術分野において公知のすべての物が挙げられ、これは例えば、組換えポリヌクレオチドを組み込んだコスミド、プラスミド(例えば、ネイキッドまたはリポソーム中に含有されたもの)ならびにウイルス(例えば、センダイウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルス)である。
【0034】
「相同の」は、本明細書において使用される場合、2つのポリマー分子の間、例えば、2つの核酸分子、例えば、2つのDNA分子もしくは2つのRNA分子の間、または2つのポリペプチド分子の間の、サブユニット配列同一性を指す。2つの分子の両方におけるサブユニット位置が同じ単量体サブユニットにより占有される場合、例えば、2つのDNA分子の各々における位置がアデニンにより占有される場合、それらはその位置において相同である。2つの配列の間の相同性は、マッチするまたは相同の位置の数の直接的な関数であり、例えば、2つの配列中の位置の半分(例えば、10サブユニットの長さのポリマー中の5つの位置)が相同である場合、2つの配列は50%相同であり、位置の90%(例えば、10個のうちの9個)がマッチするまたは相同である場合、2つの配列は90%相同である。
【0035】
「同一性」は、本明細書において使用される場合、2つのポリマー分子の間、特には2つのアミノ酸分子の間、例えば2つのポリペプチド分子の間の、サブユニット配列同一性を指す。2つのアミノ酸配列が同じ位置において同じ残基を有する場合、例えば、2つのポリペプチド分子の各々における位置がアルギニンにより占有される場合、それらはその位置において同一である。同一性または2つのアミノ酸配列がアライメントにおける同じ位置において同じ残基を有する程度は、多くの場合にパーセンテージとして表される。2つのアミノ酸配列の間の同一性は、マッチするまたは同一の位置の数の直接的な関数であり、例えば、2つの配列中の位置の半分(例えば、10サブユニットの長さのポリマー中の5つの位置)が同一である場合、2つの配列は50%同一であり、位置の90%(例えば、10個のうちの9個)がマッチするまたは同一である場合、2つのアミノ酸配列は90%同一である。
【0036】
「免疫原性」という用語は、本明細書において使用される場合、抗原または生物が動物に投与された場合に動物において免疫応答を誘発する抗原または生物の先天的な能力を指す。そのため、「免疫原性を増強する」は、抗原または生物が動物に投与された場合に動物において免疫応答を誘発する抗原または生物の能力を増加させることを指す。免疫応答を誘発する抗原または生物の増加した能力は、特に、抗原または生物に結合する抗体のより大きい数、抗原または生物に対する抗体のより大きい多様性、抗原または生物に特異的なT細胞のより大きい数、抗原または生物に対するより大きい細胞傷害性またはヘルパーT細胞応答、抗原に応答したサイトカインのより高い発現などにより測定することができる。
【0037】
「免疫グロブリン」または「Ig」という用語は、本明細書において使用される場合、抗体として機能するタンパク質のクラスとして定義される。B細胞により発現される抗体は、BCR(B細胞受容体)または抗原受容体と称されることがある。タンパク質のこのクラスに含まれる5つのメンバーは、IgA、IgG、IgM、IgD、およびIgE、ならびに各クラス内のサブクラスである。IgAは、身体分泌物、例えば唾液、涙液、母乳、胃腸分泌物ならびに呼吸器および尿生殖路の粘液分泌物中に存在する主要な抗体である。IgGは、最も一般的な循環性抗体である。IgMは、ほとんどの対象において一次免疫応答において産生される主な免疫グロブリンである。それは、凝集、補体固定、および他の抗体応答において最も効率的な免疫グロブリンであり、細菌およびウイルスからの防御において重要である。IgDは、既知の抗体機能を有しないが抗原受容体として働き得る免疫グロブリンである。IgEは、アレルゲンへの曝露で肥満細胞および好塩基球からのメディエーターの放出を引き起こすことにより即時の過敏性を媒介する免疫グロブリンである。
【0038】
「免疫応答」という用語は、本明細書において使用される場合、リンパ球が抗原性分子を異物として同定し、抗原を除去するために抗体の形成を誘導しかつ/またはリンパ球を活性化させる場合に起こる抗原に対する細胞応答として定義される。
【0039】
「免疫学的有効量」、「自己免疫疾患阻害有効量」または「治療量」が指し示される場合、投与される本開示の組成物の正確な量は、疾患状態の考慮と共に医師または研究者により決定され得る。
【0040】
「単離された」は、天然の状態から変更または除去されていることを意味する。例えば、生きた動物中に天然に存在する核酸またはペプチドは「単離された」ものではないが、その天然の状態で一緒に存在する材料から部分的にまたは完全に分離された同じ核酸またはペプチドは「単離された」ものである。単離された核酸またはタンパク質は、実質的に精製された形態で存在することができ、またはネイティブでない環境、例えば、宿主細胞中などに存在することができる。
【0041】
本明細書において使用される「改変された」という用語により、本開示の分子または細胞の変化した状態または構造が意味される。分子は、化学的、構造的、および機能的なものを含めて、多くのやり方で改変することができる。細胞は、核酸の導入を通じて改変することができる。
【0042】
本明細書において使用される「モジュレートする」という用語により、処置なしの場合の対象もしくは化合物の非存在下での対象における応答のレベルと比較した、かつ/またはそれ以外は同一であるが処置されていない対象における応答のレベルと比較した、対象における応答のレベルにおける検出可能な増加または減少を媒介することが意味される。該用語は、ネイティブなシグナルまたは応答を撹乱させかつ/またはそれに影響し、それにより対象、好ましくは、ヒトにおいて有益な治療奏功を媒介することを包含する。
【0043】
免疫原性組成物の「非経口」投与は、例えば、皮下(s.c.)、静脈内(i.v.)、筋肉内(i.m.)、または胸骨内注射、または注入技術を含む。
【0044】
本明細書において使用される場合、「ペプチド」、「ポリペプチド」、および「タンパク質」という用語は交換可能に使用され、ペプチド結合により共有結合的に連結されたアミノ酸残基を含む化合物を指す。タンパク質またはペプチドは少なくとも2つのアミノ酸を含有しなければならず、タンパク質またはペプチドの配列を構成し得るアミノ酸の最大数は限定されない。ポリペプチドは、ペプチド結合により互いに接合された2つまたはそれより多くのアミノ酸を含む任意のペプチドまたはタンパク質を含む。本明細書において使用される場合、該用語は、当技術分野において例えばペプチド、オリゴペプチドおよびオリゴマーとして一般的に称される、短い鎖、ならびに当技術分野において多くの種類があるタンパク質として一般に称されるより長い鎖の両方を指す。「ポリペプチド」は、例えば、特に、生物学的に活性な断片、実質的に相同のポリペプチド、オリゴペプチド、ホモ二量体、ヘテロ二量体、ポリペプチドのバリアント、修飾ポリペプチド、誘導体、アナログ、融合タンパク質を含む。ポリペプチドは、天然ペプチド、組換えペプチド、合成ペプチド、またはこれらの組合せを含む。ペプチドは、直鎖状または分岐鎖状であることができ、修飾されたアミノ酸を含むことができ、非アミノ酸を差し挟まれることができる。該用語はまた、天然にまたは介入により修飾されたアミノ酸ポリマーを包含し、修飾は、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または任意の他のマニピュレーションもしくは修飾、例えば、標識成分とのコンジュゲーションである。例えば、アミノ酸の1つまたは複数のアナログ(例えば、非天然アミノ酸などを含む)の他に、当技術分野において公知の他の修飾を含有するポリペプチドおよびタンパク質もまた定義内に含まれる。ポリペプチドは、単一の鎖または会合した鎖として存在することができる。
【0045】
本明細書において使用される場合、「薬学的組成物」という用語は、他の化学成分、例えば担体、安定化剤、希釈剤、アジュバント、分散剤、懸濁化剤、増稠剤、および/または賦形剤との本開示内で有用な少なくとも1つの化合物の混合物を指す。薬学的組成物は、生物への化合物の投与を促す。化合物を投与する複数の技術が当技術分野において存在し、これには静脈内、経口、エアロゾル、非経口、眼、肺、および外用投与が含まれるがそれに限定されるわけではない。
【0046】
「薬学的に許容される担体」という記載は、その意図される機能を行うことができるように対象内でまたは対象に本開示の化合物を運搬または輸送することに関与する、薬学的に許容される塩、薬学的に許容される材料、組成物または担体、例えば液体または固体充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒または被包性材料を含む。典型的には、そのような化合物は、身体の1つの臓器、または部分から、身体の別の臓器、または部分に運搬または輸送される。各塩または担体は、製剤の他の成分と適合性であり、かつ対象に対して有害でないという意味で「許容される」ものでなければならない。薬学的に許容される担体として働き得る材料の一部の例としては、以下が挙げられる:糖、例えばラクトース、グルコースおよびスクロース;デンプン、例えばコーンスターチおよびジャガイモデンプン;セルロース、およびその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロース;粉末トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;賦形剤、例えばココアバターおよび坐剤ワックス;油、例えばピーナッツ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油およびダイズ油;グリコール、例えばプロピレングリコール;ポリオール、例えばグリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコール;エステル、例えばオレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル;寒天;緩衝化剤、例えば水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;アルギン酸;発熱物質非含有水;等張食塩水;リンゲル溶液;エチルアルコール;リン酸緩衝溶液;希釈剤;造粒剤;滑沢剤;結合剤;崩壊剤;湿潤剤;乳化剤;着色剤;放出剤;コーティング剤;甘味剤;香味剤;芳香剤;防腐剤;抗酸化剤;可塑剤;ゲル化剤;増稠剤;硬化剤(hardener);硬化剤(setting agent);懸濁化剤;界面活性剤;湿潤剤;担体;安定化剤;ならびに薬学的製剤において用いられる他の非毒性の適合性物質、またはこれらの任意の組合せ。本明細書において使用される場合、「薬学的に許容される担体」はまた、化合物の活性と適合性であり、かつ対象にとって生理学的に許容される、任意およびすべてのコーティング、抗菌および抗真菌剤、ならびに吸収遅延剤などを含む。補助的な活性化合物もまた組成物に組み込むことができる。
【0047】
「ポリヌクレオチド」という用語は、本明細書において使用される場合、ヌクレオチドの鎖として定義される。さらには、核酸はヌクレオチドのポリマーである。そのため、核酸およびポリヌクレオチドは、本明細書において使用される場合、交換可能である。当業者は、核酸はポリヌクレオチドであり、単量体「ヌクレオチド」に加水分解され得るという一般的知識を有する。単量体ヌクレオチドはヌクレオシドに加水分解され得る。本明細書において使用される場合、ポリヌクレオチドとしては、当技術分野において利用可能な任意の手段により得られるすべての核酸配列が挙げられるがこれに限定されず、該技術としては、非限定的に、組換え手段、すなわち、通常のクローニング技術およびPCR(商標)などを使用する組換えライブラリーまたは細胞ゲノムからの核酸配列のクローニング、ならびに合成手段によるものが挙げられる。
【0048】
抗体に関して本明細書において使用される「特異的に結合する」という用語により、特有の抗原を認識するが、実質的に試料中の他の分子を認識することも該分子に結合することもない抗体が意味される。例えば、1つの種からの抗原に特異的に結合する抗体はまた、1つまたは複数の種からのその抗原に結合することができる。しかし、そのような種交差反応性はそれ自体では、抗体の分類を特異的なものに変更しない。別の例では、抗原に特異的に結合する抗体はまた、抗原の異なるアレル形態に結合することができる。しかしながら、そのような交差反応性はそれ自体では、抗体の分類を特異的なものに変更しない。一部の事例において、「特異的結合」または「特異的に結合する」という用語は、抗体、タンパク質、またはペプチドの、第2の化学種との相互作用に関して、相互作用が化学種上の特定の構造(例えば、抗原決定基またはエピトープ)の存在に依存性であること、例えば、抗体は、タンパク質全般ではなく、特有のタンパク質構造を認識してそれに結合することを意味するために使用することができる。抗体がエピトープ「A」に特異的な場合、エピトープAを含有する分子(または遊離の、非標識のA)の存在は、標識された「A」および抗体を含有する反応において、抗体に結合した標識されたAの量を低減させる。
【0049】
「対象」という用語は、免疫応答が誘発され得る生きた生物(例えば、哺乳動物)を含むことが意図される。「対象」または「患者」は、それにおいて使用される場合、ヒトまたは非ヒト哺乳動物であることができる。非ヒト哺乳動物としては、例えば、非ヒト霊長動物、ならびに家畜動物および愛玩動物、例えばヒツジ科、ウシ科、ブタ科、イヌ科、ネコ科およびネズミ科哺乳動物が挙げられる。好ましくは、対象はヒトである。
【0050】
「標的部位」または「標的配列」は、結合が起こるために十分な条件下で結合性分子が特異的に結合できる核酸の部分を定義するゲノム核酸配列を指す。
【0051】
「治療的」という用語は、本明細書において使用される場合、処置および/または予防を意味する。治療効果は、疾患状態の抑制、軽快、または根絶により得られる。
【0052】
疾患を「処置する」ことは、該用語が本明細書において使用される場合、対象により経験される疾患または障害の少なくとも1つの徴候または症状の頻度または重症度を低減させることを意味する。
【0053】
「ベクター」は、単離された核酸を含み、かつ単離された核酸を細胞の内部に送達するために使用され得る、物質の組成物である。多数のベクターが当技術分野において公知であり、これには、直鎖状ポリヌクレオチド、イオン性または両親媒性化合物と会合したポリヌクレオチド、プラスミド、およびウイルスが含まれるがこれらに限定されない。そのため、「ベクター」という用語は、自律複製プラスミドまたはウイルスを含む。該用語はまた、細胞への核酸の移入を促す非プラスミドおよび非ウイルス化合物、例えば、ポリリジン化合物、およびリポソームなどを含むと解釈されるべきである。ウイルスベクターの例としては、センダイウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、およびレンチウイルスベクターなどが挙げられるがこれらに限定されない。
【0054】
範囲:本開示の全体を通じて、本開示の様々な局面は、範囲の形式で提示され得る。範囲形式での記載は単に便宜および簡潔性のためであり、本開示の範囲に関して柔軟性のない限定として解釈してはならないことを理解しなければならない。したがって、範囲の記載は、可能な部分範囲、同様にまた、その範囲に含まれる個々の数値をすべて具体的に開示しているとみなされなければならない。例えば、範囲、例えば1~6の記載は、特に開示される部分的範囲、例えば1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの他に、その範囲内の個々の数、例えば、1、2、2.7、3、4、5、5.3、および6を有すると解釈されるべきである。このことは、範囲の広さにかかわらず、当てはまる。
【0055】
化合物および組成物
本開示は、1つの局面において、肺における空気血液関門を通過する固体粒子の輸送を可能とするある特定のペプチドの同定に関する。ある特定の態様において、固体粒子は、治療的に有用な化合物を用いて、例えば、限定されるものではないが、本開示の組成物が投与される対象における免疫応答のトリガーとなるために使用され得る抗原を用いて、さらに誘導体化される。さらに他の態様において、治療的に有用な化合物は、固体粒子の表面上に提示される。さらに他の態様において、治療的に有用な化合物は、固体粒子内に含有される。
【0056】
ある特定の態様において、本開示内で企図される輸送ペプチドは、CAINSLSRKC(SEQ ID NO:1)、CAKSMGDIVC(SEQ ID NO:2)、CGRKQVESSC(SEQ ID NO:3)、および/またはCRGKSAEGTC(SEQ ID NO:4)を含むがこれらに限定されない。ある特定の態様において、本開示の輸送ペプチドは環状であり、位置nのシステインおよび位置n+8のシステインがジスルフィド結合を形成している。他の態様において、本開示の輸送ペプチドは環状ではない。さらに他の態様において、輸送ペプチドはCAINSLSRKC(SEQ ID NO:1)からなる。さらに他の態様において、輸送ペプチドはCAKSMGDIVC(SEQ ID NO:2)からなる。さらに他の態様において、輸送ペプチドはCGRKQVESSC(SEQ ID NO:3)からなる。さらに他の態様において、輸送ペプチドはCRGKSAEGTC(SEQ ID NO:4)からなる。さらに他の態様において、輸送ペプチドはCAINSLSRKC(SEQ ID NO:1)から本質的になる。さらに他の態様において、輸送ペプチドはCAKSMGDIVC(SEQ ID NO:2)から本質的になる。さらに他の態様において、輸送ペプチドはCGRKQVESSC(SEQ ID NO:3)から本質的になる。さらに他の態様において、輸送ペプチドはCRGKSAEGTC(SEQ ID NO:4)から本質的になる。さらに他の態様において、輸送ペプチドはCAINSLSRKC(SEQ ID NO:1)を含む。さらに他の態様において、輸送ペプチドはCAKSMGDIVC(SEQ ID NO:2)を含む。さらに他の態様において、輸送ペプチドはCGRKQVESSC(SEQ ID NO:3)を含む。さらに他の態様において、輸送ペプチドはCRGKSAEGTC(SEQ ID NO:4)を含む。さらに他の態様において、輸送ペプチドは、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、またはSEQ ID NO:4のペプチドと少なくとも70%、80%、90%、または100%の相同性を有する。さらに他の態様において、輸送ペプチドは、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、またはSEQ ID NO:4のペプチドと少なくとも70%、80%、90%、または100%の同一性を有する。
【0057】
ある特定の態様において、本開示内で企図される輸送ペプチドは、AINSLSRK(SEQ ID NO:5)、AKSMGDIV(SEQ ID NO:6)、GRKQVESS(SEQ ID NO:7)、および/またはRGKSAEGT(SEQ ID NO:8)を含む。他の態様において、輸送ペプチドは、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、またはSEQ ID NO:8のペプチドと少なくとも70%、80%、90%、または100%の相同性を有する。さらに他の態様において、輸送ペプチドは、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、またはSEQ ID NO:8のペプチドと少なくとも70%、80%、90%、または100%の同一性を有する。
【0058】
ある特定の態様において、本発明において企図される輸送ペプチドはポリペプチドの部分であり、輸送ペプチドのN末端はポリペプチドのN末端である(すなわち、輸送ペプチドのN末端は他のアミノ酸/ペプチドに連結されていない)。ある特定の態様において、本発明において企図される輸送ペプチドはポリペプチドの部分であり、輸送ペプチドのN末端はポリペプチドのN末端ではない。ある特定の態様において、本発明において企図される輸送ペプチドはポリペプチドの部分であり、輸送ペプチドのN末端は、第1のアミノ酸(これは(ポリ)ペプチドの単一のアミノ酸またはC末端である)のC末端へのアミド結合を通じて連結されている。ある特定の態様において、第1のアミノ酸はアスパラギン酸である。ある特定の態様において、第1のアミノ酸はグルタミン酸である。ある特定の態様において、第1のアミノ酸はリジンである。ある特定の態様において、第1のアミノ酸はアルギニンである。ある特定の態様において、第1のアミノ酸はヒスチジンである。ある特定の態様において、第1のアミノ酸はアラニンである。ある特定の態様において、第1のアミノ酸はバリンである。ある特定の態様において、第1のアミノ酸はロイシンである。ある特定の態様において、第1のアミノ酸はイソロイシンである。ある特定の態様において、第1のアミノ酸はプロリンである。ある特定の態様において、第1のアミノ酸はフェニルアラニンである。ある特定の態様において、第1のアミノ酸はメチオニンである。ある特定の態様において、第1のアミノ酸はトリプトファンである。ある特定の態様において、第1のアミノ酸はグリシンである。ある特定の態様において、第1のアミノ酸はアスパラギンである。ある特定の態様において、第1のアミノ酸はグルタミンである。ある特定の態様において、第1のアミノ酸はシステインである。ある特定の態様において、第1のアミノ酸はセリンである。ある特定の態様において、第1のアミノ酸はスレオニンである。ある特定の態様において、第1のアミノ酸はチロシンである。ある特定の態様において、第1のアミノ酸はアスパラギン酸ではない。ある特定の態様において、第1のアミノ酸はグルタミン酸ではない。ある特定の態様において、第1のアミノ酸はリジンではない。ある特定の態様において、第1のアミノ酸はアルギニンではない。ある特定の態様において、第1のアミノ酸はヒスチジンではない。ある特定の態様において、第1のアミノ酸はアラニンではない。ある特定の態様において、第1のアミノ酸はバリンではない。ある特定の態様において、第1のアミノ酸はロイシンではない。ある特定の態様において、第1のアミノ酸はイソロイシンではない。ある特定の態様において、第1のアミノ酸はプロリンではない。ある特定の態様において、第1のアミノ酸はフェニルアラニンではない。ある特定の態様において、第1のアミノ酸はメチオニンではない。ある特定の態様において、第1のアミノ酸はトリプトファンではない。ある特定の態様において、第1のアミノ酸はグリシンではない。ある特定の態様において、第1のアミノ酸はアスパラギンではない。ある特定の態様において、第1のアミノ酸はグルタミンではない。ある特定の態様において、第1のアミノ酸はシステインではない。ある特定の態様において、第1のアミノ酸はセリンではない。ある特定の態様において、第1のアミノ酸はスレオニンではない。ある特定の態様において、第1のアミノ酸はチロシンではない。
【0059】
ある特定の態様において、本発明において企図される輸送ペプチドはポリペプチドの部分であり、輸送ペプチドのC末端はポリペプチドのC末端である(すなわち、輸送ペプチドのC末端は他のアミノ酸/ペプチドに連結されていない)。ある特定の態様において、本発明において企図される輸送ペプチドはポリペプチドの部分であり、輸送ペプチドのC末端はポリペプチドのC末端ではない。ある特定の態様において、本発明において企図される輸送ペプチドはポリペプチドの部分であり、輸送ペプチドのC末端は、第2のアミノ酸(これは(ポリ)ペプチドの単一のアミノ酸またはN末端である)のN末端へのアミド結合を通じて連結されている。ある特定の態様において、第2のアミノ酸はアスパラギン酸である。ある特定の態様において、第2のアミノ酸はグルタミン酸である。ある特定の態様において、第2のアミノ酸はリジンである。ある特定の態様において、第2のアミノ酸はアルギニンである。ある特定の態様において、第2のアミノ酸はヒスチジンである。ある特定の態様において、第2のアミノ酸はアラニンである。ある特定の態様において、第2のアミノ酸はバリンである。ある特定の態様において、第2のアミノ酸はロイシンである。ある特定の態様において、第2のアミノ酸はイソロイシンである。ある特定の態様において、第2のアミノ酸はプロリンである。ある特定の態様において、第2のアミノ酸はフェニルアラニンである。ある特定の態様において、第2のアミノ酸はメチオニンである。ある特定の態様において、第2のアミノ酸はトリプトファンである。ある特定の態様において、第2のアミノ酸はグリシンである。ある特定の態様において、第2のアミノ酸はアスパラギンである。ある特定の態様において、第2のアミノ酸はグルタミンである。ある特定の態様において、第2のアミノ酸はシステインである。ある特定の態様において、第2のアミノ酸はセリンである。ある特定の態様において、第2のアミノ酸はスレオニンである。ある特定の態様において、第2のアミノ酸はチロシンである。ある特定の態様において、第2のアミノ酸はアスパラギン酸ではない。ある特定の態様において、第2のアミノ酸はグルタミン酸ではない。ある特定の態様において、第2のアミノ酸はリジンではない。ある特定の態様において、第2のアミノ酸はアルギニンではない。ある特定の態様において、第2のアミノ酸はヒスチジンではない。ある特定の態様において、第2のアミノ酸はアラニンではない。ある特定の態様において、第2のアミノ酸はバリンではない。ある特定の態様において、第2のアミノ酸はロイシンではない。ある特定の態様において、第2のアミノ酸はイソロイシンではない。ある特定の態様において、第2のアミノ酸はプロリンではない。ある特定の態様において、第2のアミノ酸はフェニルアラニンではない。ある特定の態様において、第2のアミノ酸はメチオニンではない。ある特定の態様において、第2のアミノ酸はトリプトファンではない。ある特定の態様において、第2のアミノ酸はグリシンではない。ある特定の態様において、第2のアミノ酸はアスパラギンではない。ある特定の態様において、第2のアミノ酸はグルタミンではない。ある特定の態様において、第2のアミノ酸はシステインではない。ある特定の態様において、第2のアミノ酸はセリンではない。ある特定の態様において、第2のアミノ酸はスレオニンではない。ある特定の態様において、第2のアミノ酸はチロシンではない。
【0060】
保存的なアミノ酸置換、すなわち、関連する側鎖を有する別のアミノ酸での1つのアミノ酸の置換もまた本明細書において企図される。遺伝学的にコードされるアミノ酸は一般に4つのファミリーに分けられる:(1)酸性、すなわち、アスパラギン酸、グルタミン酸;(2)塩基性、すなわち、リジン、アルギニン、ヒスチジン;(3)非極性、すなわち、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン;および(4)非荷電性極性、すなわち、グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン、チロシン。フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンは、芳香族アミノ酸として一緒に分類されることがある。一般に、これらのファミリー内の単一のアミノ酸の置換は、生物学的活性に対して大きな効果を有しない。ポリペプチドは、例示される配列と比べて1つまたは複数(例えば、1つ、2つ、3つなど)の単一アミノ酸欠失を有することができる。ポリペプチドはまた、例示される配列と比べて1つまたは複数(例えば、1つ、2つ、3つなど)の挿入を含むことができる。
【0061】
本開示は、本開示の輸送ペプチドのいずれかをコードする任意の核酸配列の他に、本開示の輸送ペプチドのいずれかをコードする任意の核酸配列を含む任意のベクターの他に、本開示の輸送ペプチドのいずれかをコードする任意の核酸配列を含む任意のベクターを含む任意の細胞をさらに企図する。本開示は、本明細書において提供される核酸配列に対して約85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有する核酸配列をさらに企図する。
【0062】
ある特定の態様において、輸送ペプチド内の、および/または輸送ペプチドのカルボキシ末端の、および/または輸送ペプチドのアミノ末端の少なくとも1つの残基は、本開示の組成物および/または方法内で輸送ペプチドの活性に不利に影響することなく、メチル化、アミド化、アシル化(以下に限定されないが例えばアセチル化)、および/または任意の他の化学基で置換されている。他の態様において、輸送ペプチドのN末端は、アシル化、以下に限定されないが例えばアセチル化されている。他の態様において、輸送ペプチドのC末端はアミド化されている。
【0063】
ある特定の態様において、本開示は、固体粒子を提供し、輸送ペプチドが固体粒子の表面上に提示されている。他の態様において、輸送ペプチドは固体粒子の表面に付着している。さらに他の態様において、輸送ペプチドは固体粒子の表面に共有結合的に付着していている。さらに他の態様において、固体粒子は、ファージ、操作された細胞、組織断片、ナノ粒子、小胞、デンドリマー、ウイルス様粒子(VLP)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノ随伴ウイルスファージ(AAVPと称される)、およびこれらの任意の組合せからなる群より選択される。一部の事例において、ナノ粒子は、ナノメートルスケールの直径を有し、約1nmの直径から約1,000nmの直径まで変動することができる。一部の事例において、ファージは、約10nmよりも短い、以下に限定されないが例えば約1nm、2nm、3nm、4nm、5nm、6nm、7nm、8nm、9nm、または10nmの直径を有する。一部の事例において、ファージは、1,000nmよりも短い、以下に限定されないが例えば約100nm、200nm、300nm、400nm、500nm、600nm、700nm、800nm、900nm、または1,000nmの長さを有する。さらに別の態様において、組成物は、治療用物質、生物学的に活性な分子、イメージング剤、放射性物質、塩、ペプチド、タンパク質、脂質、核酸、気体、およびこれらの任意の組合せからなる群より選択される作用物質をさらに含み、作用物質は、固体粒子に付着しておりかつ/または固体粒子内に含有される。ある特定の態様において、輸送ペプチドは、固体粒子の表面全体に付着しておりかつ/または該表面全体上に提示されている。他の態様において、輸送ペプチドは、固体粒子の表面の少なくとも一部分に付着しており、かつ/または固体粒子の表面の少なくとも一部分上に提示されている。固体粒子は、当業者に公知の方法を使用して調製することまたは商用の供給元から購入することができる。
【0064】
一部の態様において、本開示は、本明細書の他の箇所に記載される輸送ペプチドを含むワクチン組成物を提供する。一部の態様において、ワクチン組成物は、弱毒生ワクチン、不活性化ワクチン、サブユニット、組換え、多糖、またはコンジュゲートされたワクチン、および/または毒素ワクチンである。一部の態様において、ワクチン組成物は、経鼻、頬側、吸入、気管内、肺内、および/または気管支内送達のために有用であることが公知である、DNAワクチン、RNAワクチン、複製性ウイルスベクターワクチン、非複製性ウイルスベクターワクチン、不活化ウイルスベクターワクチン、および/またはウイルス様粒子ワクチンを含む。一部の態様において、ワクチン組成物はアジュバントを含む。例示的なアジュバントは本明細書の他の箇所に記載される。
【0065】
本開示の輸送ペプチドは、化学合成またはペプチド合成の技術分野における当業者に公知の化学的および生化学的方法を使用して合成することができる。輸送ペプチドは、当業者に公知の任意の方法を使用して固体粒子の表面に付着することができる。ある特定の態様において、輸送ペプチドは、共有結合を介して固体粒子の表面に付着することができる。非限定的な例において、輸送ペプチド中の遊離アミノ基は、共有アミド結合を介して固体粒子の表面上の遊離カルボキシレート基に付着することができる。非限定的な例において、輸送ペプチド中の遊離カルボン酸基は、共有アミド結合を介して固体粒子の表面上の遊離アミノ基に付着することができる。他の態様において、輸送ペプチドは、非共有結合を介して固体粒子の表面に付着することができる。
【0066】
ある特定の態様において、固体粒子はバクテリオファージ、以下に限定されないが例えば糸状ファージである。糸状バクテリオファージは、fd、fl、またはM13バクテリオファージを含むことができるがこれらに限定されない。ある特定の態様において、バクテリオファージはfdバクテリオファージである。他の態様において、バクテリオファージは、T4、T7、またはλファージである。一部の態様において、糸状ファージは、約10nmに等しいまたはそれよりも短い直径を有する。一部の態様において、糸状ファージは、約9nmに等しいまたはそれよりも短い直径を有する。一部の態様において、糸状ファージは、約8nmに等しいまたはそれよりも短い直径を有する。一部の態様において、糸状ファージは、約7nmに等しいまたはそれよりも短い直径を有する。一部の態様において、糸状ファージは、約6nmに等しいまたはそれよりも短い直径を有する。一部の態様において、糸状ファージは、約5nmに等しいまたはそれよりも短い直径を有する。一部の態様において、糸状ファージは、約4nmに等しいまたはそれよりも短い直径を有する。一部の態様において、糸状ファージは、約3nmに等しいまたはそれよりも短い直径を有する。一部の態様において、糸状ファージは、約2nmに等しいまたはそれよりも短い直径を有する。一部の態様において、糸状ファージは、約1nmに等しいまたはそれよりも短い直径を有する。一部の態様において、糸状ファージは、約9nmに等しいまたはそれよりも長い直径を有する。一部の態様において、糸状ファージは、約8nmに等しいまたはそれよりも長い直径を有する。一部の態様において、糸状ファージは、約7nmに等しいまたはそれよりも長い直径を有する。一部の態様において、糸状ファージは、約6nmに等しいまたはそれよりも長い直径を有する。一部の態様において、糸状ファージは、約5nmに等しいまたはそれよりも長い直径を有する。一部の態様において、糸状ファージは、約4nmに等しいまたはそれよりも長い直径を有する。一部の態様において、糸状ファージは、約3nmに等しいまたはそれよりも長い直径を有する。一部の態様において、糸状ファージは、約2nmに等しいまたはそれよりも長い直径を有する。一部の態様において、糸状ファージは、約1nmに等しいまたはそれよりも長い直径を有する。
【0067】
典型的には、糸状ファージ(M13、fd、fl)は、環状ssDNA分子を有する糸状カプシドを有する。ゲノムは、典型的には、10種類の遺伝子を含有するが、溶解タンパク質のための遺伝子を含有しない。ビリオンはエンベロープ被包されている。糸状ファージは、典型的には、Fプラスミドを有する大腸菌(E.coli)細胞にのみ感染し、その理由は、ファージは、細胞への侵入を獲得するためにF線毛に吸着しなければならないからである。それらのライフサイクルは、細胞内でのdsDNA中間複製形態を伴い、これはカプシド形成の前にssDNA分子に変換される。ファージは、DNAシークエンシングのためのssDNAを調製するための容易な手段を提供する。最良の公知の例はバクテリオファージM13であり、これはクローニングおよびシークエンシングベクターとしての使用のために適合されている。野生型Ml3ゲノムは6,407bpの長さである。Ml3の他の関連物はfdおよびflである。ファージ改変クローニングベクターfUSE5は約9,200pbの長さを有する。
【0068】
ファージディスプレイの様々な方法およびペプチドの多様な集団を製造する方法は当技術分野において周知である。例えば、米国特許第5,223,409号;同第5,622,699;同第5,866,363;および同第6,068,829;ならびに日本国特許番号4875497 B2は、これらの各々が参照により本明細書に組み入れられ、ファージライブラリーを調製する方法を記載する。ファージディスプレイ技術は、小さいペプチドがそれらの表面上に発現され得るようにバクテリオファージを遺伝学的にマニピュレートすることを伴う[Smith,1985,Science 228(4705):1315-1317]。この技術において、関心対象のタンパク質をコードする遺伝子がファージコートタンパク質遺伝子に挿入され、それにより、ファージは、その内側におけるタンパク質のための遺伝子を含有しながらその外側にタンパク質を「提示」し、遺伝子型および表現型の間の繋がりが結果としてもたらされる。M13糸状ファージディスプレイの場合、関心対象のタンパク質またはペプチドをコードするDNAが、マイナーまたはメジャーコートタンパク質をそれぞれをコードするpIIIまたはpVIII遺伝子にライゲートされる。断片が3つすべての可能なリーディングフレームで挿入され、その結果、cDNA断片が適切なフレームで翻訳されることを確実にするために、複数のクローニング部位が使用されることがある。ファージ遺伝子およびインサートDNAハイブリッドが次に大腸菌細菌細胞、例えばTG1、SS320、ER2738、またはXL1-Blue大腸菌に挿入される(「形質導入」として公知のプロセス)。「ファージミド」ベクターが使用される場合、ファージ粒子は、ヘルパーファージが感染するまで大腸菌細胞から放出されず、これは、ファージDNAのパッケージングおよびマイナー(pIII)またはメジャー(pVIII)コートタンパク質上の外被の部分としての関連するタンパク質断片を有する成熟したビリオンのアセンブリーを可能にする。
【0069】
ファージディスプレイ法は、輸送ペプチドだけでなく、ファージの表面上に提示されるべき任意のペプチドおよび/またはタンパク質(以下に限定されないが例えば、生物学的に活性なペプチドおよび/または抗原)にも適用できることが留意されるべきである。
【0070】
本開示において企図されるペプチドおよびタンパク質は、いくつかの公知のやり方で、例えば、化学合成(全体的または部分的)により、プロテアーゼを使用してより長いポリペプチドを消化することにより、RNAからの翻訳により、細胞培養物から(例えば、組換え発現から)、生物自体から(例えば、細菌培養後、または直接的に患者から)の精製により、およびその他により調製することができる。本開示のタンパク質を製造する方法は当業者に公知である。例えば、タンパク質製造は、タンパク質発現を誘導する条件下で本開示の宿主細胞を培養する工程を含むことができる。
【0071】
40アミノ酸未満の長さのペプチドの製造の非限定的な方法はインビトロ化学合成を伴う(Raddrizzani,et al.,2000,Briefs in Bioinformatics 14(2):121-130;Fields,et al.,1997,Principles of Peptide Synthesis.ISBN:0387564314)。固相ペプチド合成が利用可能であり、これは例えば、tPocまたはFmoc化学に基づく方法である(Chan,et al.,2000,Fmoc solid phase peptide synthesis.ISBN:0849368413)。酵素的合成もまた部分的または全体的に使用することができる。化学合成の代替として、生物学的合成を使用することができ、例えば、ポリペプチドを翻訳により製造することができる。これはインビトロまたはインビボで実行することができる。生物学的方法は、一般に、L-アミノ酸に基づくポリペプチドの製造に制限されるが、翻訳機構の(例えば、アミノアシルtRNA分子の)マニピュレーションを使用して、D-アミノ酸(または他の非天然アミノ酸、例えばヨードチロシンもしくはメチルフェニルアラニン、アジドホモアラニンなど)を導入することができる(Ibba,1996,Biotechnology and Genetic Engineering Review 13:197-216)。D-アミノ酸が含まれる場合には、しかしながら、化学合成を使用することが可能である。本開示のタンパク質は、C末端および/またはN末端に共有結合性の修飾を有することができる。
【0072】
本開示内で有用なタンパク質は様々な形態(例えば、ネイティブ、融合物、グリコシル化、非グリコシル化、脂質化、非脂質化、リン酸化、非リン酸化、ミリストイル化、非ミリストイル化、単量体、多量体、粒子状、変性など)をとることができる。本開示のタンパク質は、精製されたまたは実質的に精製された形態、すなわち、実質的に他のポリペプチドを含まない(例えば、天然に存在するポリペプチドを含まない)形態で提供することができ、一般に少なくとも約50(重量)%純粋、通常少なくとも約90%純粋、すなわち、組成物の約50%未満、より好ましくは約10%未満(例えば5%)が他の発現されるタンパク質から構成されている。
【0073】
本開示のポリペプチドは、検出可能な標識(例えば、放射性もしくは蛍光標識、またはビオチン標識)を含むことができる。本開示のタンパク質は、天然にまたは非天然にグリコシル化(すなわち、ポリペプチドは、対応する天然に存在するポリペプチドにおいて見出されるグリコシル化パターンとは異なるグリコシル化パターンを有する)されたものであり得る。
【0074】
様々な試験を使用して本開示のタンパク質のインビボ免疫原性を評価することができる。例えば、ポリペプチドを組換えにより発現させ、それを使用してイムノブロットにより患者血清をスクリーニングすることができる。ポリペプチドおよび患者血清の間の陽性反応は、患者は以前に、問題とするタンパク質に対して免疫応答、特に抗体応答を開始されており、すなわち、タンパク質は免疫原であることを指し示す。この方法はまた、免疫優性タンパク質を同定するために使用することができる。
【0075】
方法
1つの局面において、本開示は、対象の肺において空気血液関門を通過する固体粒子の輸送を促進または増加させる方法を提供する。ある特定の態様において、方法は、本開示の輸送ペプチドが表面に付着している固体粒子を対象に投与することを含む。他の態様において、投与は、経鼻、頬側、吸入、気管内、肺内、または気管支内を含む経路を通じたものである。
【0076】
1つの局面において、本開示は、対象において固体粒子の全身循環を促進する方法を提供する。ある特定の態様において、方法は、本開示の輸送ペプチドが表面に付着している固体粒子を対象に投与することを含む。他の態様において、投与は、経鼻、頬側、吸入、気管内、肺内、または気管支内を含む経路を通じたものである。
【0077】
1つの局面において、本開示は、疾患または障害に対して対象を免疫化する方法を提供する。ある特定の態様において、方法は、本開示の輸送ペプチドが表面に付着している固体粒子を対象に投与することを含み、固体粒子の表面は、疾患または障害に対する免疫応答を促進する抗原を用いてさらに誘導体化されている。他の態様において、投与は、経鼻、頬側、吸入、気管内、肺内、または気管支内を含む経路を通じたものである。
【0078】
別の局面において、本開示は、疾患または障害に対して対象をワクチン接種する方法を提供する。ある特定の態様において、方法は、本開示の輸送ペプチドが表面に付着している固体粒子を含むワクチンを対象に投与することを含み、固体粒子の表面は、疾患または障害に対する免疫応答を促進する抗原を用いてさらに誘導体化されている。他の態様において、投与は、経鼻、頬側、吸入、気管内、肺内、または気管支内を含む経路を通じたものである。
【0079】
1つの局面において、本開示は、対象において疾患または障害を処置および/または予防する方法を提供する。ある特定の態様において、方法は、本開示の輸送ペプチドが表面に付着している固体粒子を対象に投与することを含み、固体粒子の表面は、疾患または障害に対する免疫応答を促進する抗原を用いてさらに誘導体化されている。他の態様において、投与は、経鼻、頬側、吸入、気管内、肺内、または気管支内を含む経路を通じたものである。
【0080】
1つの局面において、本開示は、疾患または障害を発症するリスクがある対象を処置する方法を提供する。ある特定の態様において、方法は、本開示の輸送ペプチドが表面に付着している固体粒子を対象に投与することを含み、固体粒子の表面は、疾患または障害に対する免疫応答を促進する抗原を用いてさらに誘導体化されている。他の態様において、投与は、経鼻、頬側、吸入、気管内、肺内、または気管支内を含む経路を通じたものである。
【0081】
本開示の組成物は、処置(または予防)されるべき疾患または障害にとって適切な方式で投与することができる。投与の量および頻度は、患者の状態、ならびに患者の疾患の種類および重症度などの要因により決定されるが、適切な投薬量およびスケジュールは臨床試験により決定され得る。
【0082】
本開示の組成物は、一般に、患者に直接的に投与することができる。直接的な送達は、非経口注射(例えば、皮下、腹腔内、静脈内、筋肉内、もしくは組織の間質空間への注射)により、または直腸、経口、膣、外用、経皮、鼻腔内、舌下、目、耳、肺もしくは他の粘膜投与により達成することができる。ある特定の態様において、投与は、経鼻、頬側、吸入、気管内、肺内、または気管支内を含む経路を通じたものである。
【0083】
投薬処置は、単回用量スケジュールまたは複数回用量スケジュールであることができる。例えば、複数回用量は、一次免疫化スケジュールおよび/またはブースター免疫化スケジュールにおいて使用することができる。一次用量スケジュールに続いて、ブースター用量スケジュールを行うことができる。プライミング用量の間(例えば、4~16週の間)、ならびにプライミングおよびブースティングの間の好適なタイミングは、常法により決定することができる。
【0084】
注射前の液体ビヒクル中への溶解、または懸濁のために好適な固体形態もまた調製することができる(例えば、凍結乾燥組成物)。組成物は、例えば、微粉末またはスプレーを使用する、吸入器として、肺投与のために調製することができる。組成物は、鼻、耳または眼投与のために、例えば、スプレー、液滴、ゲルまたは粉末として調製することができる。例えば、Almeida,et al.,1996,J.Drug Targeting 3:455-467。
【0085】
組成物中の抗原は、典型的には、それぞれ少なくとも1μg/mlの濃度で存在することができる。一般に、任意の所与の抗原の濃度は、その抗原に対する免疫応答を誘発するために十分なものである。
【0086】
薬学的組成物
本開示のある特定の態様は、それを必要とする個体を予防的に処置することを対象とする。本明細書において使用される場合、「予防的処置」という用語は、処置が、疾患、病理、または医学的障害を縮小するか、予防するか、またはそのリスクを減少させる目的のために実施されるように、疾患、病理、もしくは医学的障害の徴候もしくは症状を示していない対象または疾患、病理、もしくは障害の早期の徴候もしくは症状のみを示す対象への抗原の投与を含むがこれに限定されない。予防的処置(prophylactic treatment)は、疾患または障害に対する予防的(preventative)な処置として機能する。
【0087】
本開示のある特定の態様は、それを必要とする個体を治療的に処置することを対象とする。本明細書において使用される場合、「治療的に」という用語は、病理、疾患、または障害の症状または徴候を示す対象への抗原の投与を含むがこれに限定されず、ここで、処置が、病理、疾患、または障害のそれらの徴候または症状を縮小または排除する目的のために対象に実施される。
【0088】
本開示の態様は、1つまたは複数の抗原に対する対象の免疫応答を増強するための組成物および方法を対象とする。本明細書において使用される場合、「対象」および「宿主」という用語は、生きた生物、例えば哺乳動物を含むことが意図される。対象または宿主の例としては、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、ラット、マウス、アレチネズミ、非ヒト霊長動物、およびヒトなど、非哺乳動物、例えば、非哺乳性脊椎動物、例えば鳥(例えば、ニワトリもしくはアヒル)、魚またはカエル(例えば、ゼノパス(Xenopus))、ならびに非哺乳性無脊椎動物の他に、これらのトランスジェニック種が挙げられるがこれらに限定されない。好ましくは、対象はヒトである。
【0089】
本開示の組成物は、1つまたは複数の薬学的または生理学的に許容される担体を含むことができる。薬学的に許容される担体は、組成物を与えられる個体に対してそれ自体では有害効果を誘導しない化合物である。好適な担体は、典型的には、大きい、緩徐に代謝される高分子、例えばタンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマー性アミノ酸、アミノ酸コポリマー、スクロース、トレハロース、ラクトース、および脂質凝集物(例えば油小滴またはリポソーム)である。そのような担体は当業者に周知である。ワクチンはまた、希釈剤、例えば水、食塩水、およびグリセロールなどを含有することができる。追加的に、助剤物質、例えば湿潤剤または乳化剤、およびpH緩衝化物質などが存在することができる。無菌の、発熱物質非含有の、リン酸緩衝化生理食塩水は典型的な担体である。
【0090】
本開示の組成物は、特には複数用量フォーマットでのパッケージの場合、抗微生物剤を含むことができる。本開示の組成物は、界面活性剤、例えば、Tween(ポリソルベート)、例えばTween 80を含むことができる。界面活性剤は、一般に、低いレベル、例えば、<0.1%で存在する。本開示の組成物は、張度を与えるためにナトリウム塩(例えば、塩化ナトリウム)を含むことができる。10±2mg/mlの塩化ナトリウムの濃度が典型的である。本開示の組成物は緩衝液を一般に含むことができる。リン酸緩衝液が典型的である。本開示の組成物は、糖アルコール(例えば、マンニトール)または二糖(例えば、スクロースもしくはトレハロース)を例えば約15~30mg/ml(例えば、25mg/ml)で含むことができ、これは特には、それらが凍結乾燥される場合、またはそれらが、凍結乾燥された材料から再構成された材料を含む場合に当てはまる。凍結乾燥用の組成物のpHは、注射の前に約6.1に調整することができる。
【0091】
本開示の組成物は免疫原性アジュバントを含むことができる。アジュバントは、他の剤の効果を改変する薬理学的または免疫学的剤である。アジュバントは、免疫応答をブーストしてより多くの抗体およびより長期持続性の免疫を生じさせ、必要とされる抗原の用量を最小化するために、ワクチンに加えることができる。アジュバントはまた、例えば、ワクチンの目的に依存して抗体分泌性B細胞の代わりにT細胞を活性化させることにより、特定の種類の免疫系細胞に対する免疫応答の改変を助けることによりワクチンの有効性を増強するために使用することができる。免疫原性アジュバントとしては、ミョウバン、MF59、AS03、ビロソーム、AS04、水酸化アルミニウム、およびパラフィン油が挙げられるがこれらに限定されない。
【0092】
本開示におけるアジュバントとしての使用のために好適な鉱物含有組成物としては、鉱物塩、例えばアルミニウム塩およびカルシウム塩が挙げられる。本開示は、鉱物塩、例えば水酸化物(例えば、オキシ水酸化物)、リン酸塩(例えば、水酸化リン酸塩、オルトリン酸塩)、および硫酸塩など、または異なる鉱物化合物の混合物を含み、化合物は任意の好適な形態(例えば、ゲル、結晶性、および非晶性など)をとり、吸着が好ましい。鉱物含有組成物はまた、金属塩の粒子として製剤化することができる。
【0093】
リン酸アルミニウムは、特にはオリゴ糖抗原を含む組成物において、有用であり、典型的なアジュバントは、0.6mg Al/mlで含まれる、0.84~0.92のPO/Alモル比の非晶性水酸化リン酸アルミニウムである。低用量のリン酸アルミニウムを用いる吸着は、例えば、50~100μg/コンジュゲート/用量で使用することができる。
【0094】
本開示におけるアジュバントとしての使用のために好適な油エマルション組成物としては、スクアレン-水エマルション、例えばMF59(5%スクアレン、0.5%Tween 80、0.5%Span 85、マイクロフルイダイザーを使用してサブミクロン粒子に製剤化される)が挙げられる。完全フロイントアジュバント(CFA)および不完全フロイントアジュバント(IFA)もまた使用することができる。
【0095】
サポニン組成物もまた、本開示におけるアジュバントとして使用することができる。サポニンは、広範な植物種の樹皮、葉、茎、根、そして花にも見出されるステロールグリコシドおよびトリテルペノイドグリコシドの異種群である。キラヤ・サポナリア・モリナ(Ouillaia saponaria Molina)の木の樹皮からのサポニンは、アジュバントとして広く研究されている。サポニンはまた、スミラックス・オルナタ(Smilax ornata)(サルサパリラ(sarsaprilla))、ジプソフィラ・パニクラータ(Gypsophilla paniculata)(ブライドヴェール(brides Veil))、およびクロロガラム・ポメリジアナム(Chlorogalum pomeridianum)(カスミソウ)からのものを商業的に得ることができる。サポニンアジュバント製剤としては、精製された製剤、例えばQS21の他に、脂質製剤、例えばISCOMが挙げられる。QS21はStimulon(商標)として市販されている。
【0096】
本開示における使用のために好適な追加のアジュバントとしては、細菌または微生物誘導体、例えば腸内細菌リポ多糖(LPS)の非毒性誘導体、リピドA誘導体、免疫賦活性オリゴヌクレオチドならびにADPリボシル化毒素およびその解毒化誘導体が挙げられる。LPSの非毒性誘導体としては、モノホスホリルリピドA(MPL)および3-O-脱アシル化MPL(3dMPL)が挙げられる。3dMPLは、4、5または6アシル化鎖との3脱-O-アシル化モノホスホリルリピドAの混合物である。「小粒子」形態の3脱-O-アシル化モノホスホリルリピドAもまた利用可能である。3d MPLのそのような「小粒子」は、0.22um膜を通じて滅菌濾過されるために十分に小さい。他の非毒性のLPS誘導体としては、モノホスホリルリピドA模倣体、例えばアミノアルキルグルコサミニドリン酸誘導体、例えば、RC-52950,51が挙げられる。リピドA誘導体としては、大腸菌(Escherichia coli)、例えばOM-174からのリピドAの誘導体が挙げられる。
【0097】
本開示におけるアジュバントとしての使用のために好適な免疫賦活性オリゴヌクレオチドとしては、CpGモチーフ(グアノシンへのリン酸結合により連結された非メチル化シトシンを含有するジヌクレオチド配列)を含有するヌクレオチド配列が挙げられる。パリンドロームまたはポリ(dG)配列を含有する二本鎖RNAおよびオリゴヌクレオチドもまた、免疫賦活性であることが示されている。CpGは、ヌクレオチド修飾/アナログ、例えばホスホロチオエート修飾を含むことができ、二本鎖または一本鎖であることができる。CpG配列は、TLR9、例えばモチーフGTCGTTまたはTTCGTTに向けられたものであり得る。CpG配列は、Th1免疫応答を誘導するために特異的なもの、例えばCpG-A ODNであることができ、B細胞応答を誘導するためにより特異的なもの、例えばCpG-BODNであることができる。好ましくは、CpGはCpG-A ODNである。
【0098】
好ましくは、CpGオリゴヌクレオチドは、5'末端が受容体認識のために接近可能であるように構築される。任意で、2つのCpGオリゴヌクレオチド配列がそれらの3'末端で付着して、「イムノマー(immunomer)」を形成することができる。細菌ADPリボシル化毒素およびその解毒化誘導体は、本開示におけるアジュバントとして使用され得る。好ましくは、タンパク質は、大腸菌(大腸菌熱不安定エンテロトキシン「LT」)、コレラ(「CT」)、または百日咳(「PT」)に由来する。毒素またはトキソイドは、好ましくは、AサブユニットおよびBサブユニットの両方を含むホロ毒素の形態である。好ましくは、Aサブユニットは、解毒性突然変異を含有し、好ましくは、Bサブユニットは突然変異されていない。好ましくは、アジュバントは、解毒されたLT突然変異体、例えばLT-K63、LT-R72、およびLT-G192である。ADPリボシル化毒素およびその解毒化誘導体、特にはLT-Kを使用することができる。アミノ酸置換のための数値的参照は、好ましくは、ADPリボシル化毒素のAおよびBサブユニットのアライメントに基づく。
【0099】
投与/投薬量/製剤
投与のレジメンは、有効量を構成するものに影響し得る。治療用製剤は、本開示において想定される疾患または障害の開始の前または後のいずれかにおいて対象に投与することができる。さらに、いくつかの分割された投薬量の他に、変動する投薬量を1日毎にもしくは逐次的に投与することができ、または用量を連続的に注入することができ、または用量はボーラス注射であることができる。さらに、治療用製剤の投薬量は、治療的または予防的状況の緊急性により指し示されるように比例的に増加または減少させることができる。
【0100】
患者、例えば哺乳動物、例えばヒトへの本開示の組成物の投与は、公知の手順を使用して、本開示において想定される疾患または障害を処置するために有効な、投薬量および時間的期間において実行することができる。治療効果を達成するために必要な治療用化合物の有効量は、患者における疾患または障害の状態;患者の年齢、性別、および体重;ならびに本開示において想定される疾患または障害を処置するための治療用化合物の能力などの要因にしたがって変動し得る。投薬レジメンは、最適な治療奏功を提供するために調整することができる。例えば、いくつかの分割された用量を1日毎に投与することができ、または治療的な状況の緊急性により指し示されるように用量を比例的に低減させることができる。本開示の治療用化合物の有効用量範囲の非限定的な例は、1日当たりで体重1kg当たり約1~5,000mgである。当業者は、過度の実験なしに、関連する要因を研究し、治療用化合物の有効量に関して決定することができる。
【0101】
ある特定の態様において、有効用量範囲は、ファージ用量の記載のために好適であることが当業者に公知の単位で測定される。一部の態様において、本開示のワクチンまたは治療用化合物の有効用量範囲は、形質導入単位(TU)/kg/日または粒子/kg/日により測定される。一部の態様において、患者に提供される投薬量は約106~1012TU/kg/日である。一部の態様において、有効用量範囲は、プラーク形成単位(PFU)、コロニー形成単位(CFU)、50%組織培養感染用量(TCID50)、プラーク減少中和試験(PRNT)、およびこれらの組合せにより測定される。
【0102】
本開示の薬学的組成物中の活性成分の実際の投薬レベルは、患者に対して毒性となることなく、特定の患者、組成物、および投与のモードについて所望の治療奏功を達成するために有効な活性成分の量を得るように変更され得る。
【0103】
本開示の化合物の治療有効量または治療有効用量は、患者の年齢、性別および体重、患者の現行の医学的状態、ならびに本開示において想定される疾患または障害の進行に依存する。
【0104】
当技術分野における通常の技能を有する医学博士、例えば、医師または獣医は、必要とされる薬学的組成物の有効量を容易に決定し、処方することができる。例えば、医師または獣医は、所望の治療効果を達成するために必要とされるよりも低いレベルで薬学的組成物において用いられる本開示の化合物の用量を開始し、所望の効果が達成されるまで投薬量を徐々に増加させることができる。
【0105】
ある特定の態様において、本開示の組成物は、1~5回/日またはより多くの投薬で患者に投与される。他の態様において、本開示の組成物は、1日1回、2日毎、3日毎~週1回、および2週毎に1回が挙げられるがこれらに限定されない投薬の範囲内で患者に投与される。本開示の様々な組合せ組成物の投与の頻度は、年齢、処置されるべき疾患または障害、性別、全体的な健康状態、および他の要因が挙げられるがこれらに限定されない多くの要因に依存して個体毎に異なることが当業者に容易に明らかとなる。そのため、本開示は、任意の特定の投薬レジームに限定されると解釈されるべきではなく、任意の患者に投与される正確な投薬量および組成物は、患者についてのすべての他の要因を考慮に入れて担当医により決定される。
【0106】
1日当たりに投薬される化合物の量は、非限定的な例において、毎日、1日おき、2日毎、3日毎、4日毎、5日毎、週毎、2週毎、3週毎、4週毎、または月毎に、投与され得ることが理解される。例えば、1日おきの投与の場合、5mg/日の用量を月曜日に開始し、第1のその後の5mg/日の用量を水曜日に投与し、第2のその後の5mg/日の用量を金曜日に投与し、などとすることができる。第2の例として、免疫化目的のための4週毎の投与の場合、各用量を28日毎に投与することができる。開示される製剤または組成物が免疫化目的のために28日毎に投与されるある特定の態様において、血清が14日毎に収集される。
【0107】
患者の状態が改善する場合、医師の自由裁量で本開示の阻害剤の投与が任意で連続的に与えられ、代替的に、投与される薬物の用量は一時的に低減され、またはある特定の時間的長さにわたり一時的に中止される(すなわち、「休薬日」)。休薬日の長さは、任意で、2日~1年、単なる例として、2日、3日、4日、5日、6日、7日、10日、12日、15日、20日、28日、35日、50日、70日、100日、120日、150日、180日、200日、250日、280日、300日、320日、350日、または365日で変動する。休薬日の間の用量低減としては、10%~100%、単なる例として、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%が挙げられる。
【0108】
患者の状態の改善が起こったら、必要な場合に維持用量が投与される。その後に、投薬量もしくは投与の頻度、または両方は、疾患または障害の関数として、疾患の改善が保持されるレベルに低減される。ある特定の態様において、患者は、症状の任意の再発および/または感染症で長期間を基準にして間欠的な処置を必要とする。
【0109】
本開示の方法における使用のための化合物は、単位剤形に製剤化することができる。「単位剤形」という用語は、処置を受けている患者のための単位投薬量として好適な物理的に別々の単位を指し、各単位は、任意で好適な薬学的担体と合わせて、所望の治療効果を生じさせるために算出される予め決定された量の活性材料を含有する。単位剤形は、単一の1日当たりの用量または複数の1日当たりの用量(例えば、1日当たり約1~4回またはそれより多くの回数)のうちの1回のためのものであり得る。複数の1日当たりの用量が使用される場合、単位剤形は各用量について同じまたは異なるものであることができる。
【0110】
そのような治療レジメンの毒性および治療有効性は、任意で細胞培養物または実験動物において決定され、これには、LD50(集団の50%にとって致死的な用量)およびED50(集団の50%において治療的に有効な用量)の決定が含まれるがこれらに限定されない。毒性効果および治療効果の間の用量比は治療指数であり、これはLD50およびED50の間の比として表される。細胞培養アッセイおよび動物研究から得られるデータは、任意で、ヒトにおける使用のための投薬量の範囲の定式化において使用される。そのような化合物の投薬量は、ある特定の態様において、最小の毒性と共にED50を含む循環濃度の範囲内にある。投薬量は、任意で、用いられる剤形および利用される投与の経路に依存してこの範囲内で変動する。
【0111】
ある特定の態様において、本開示の組成物は、1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤または担体を使用して製剤化される。ある特定の態様において、本開示の薬学的組成物は、治療有効量の本開示の化合物および薬学的に許容される担体を含む。
【0112】
担体はまた、例えば、食塩水、緩衝食塩水、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、これらの好適な混合物、および植物油を含有する溶媒または分散媒体であることができる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用により、分散体の場合には必要とされる粒子サイズの維持により、および界面活性剤の使用により維持することができる。微生物の作用の予防は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、およびチメロサールなどにより達成することができる。多くの場合、等張剤、例えば、糖、塩化ナトリウム、またはポリアルコール、例えばマンニトールおよびソルビトールを組成物に含めることが賢明である。
【0113】
ある特定の態様において、本開示は、単独でのまたは第2の薬学的剤と組み合わせた、治療有効量の本開示の化合物を保持する容器;および本開示において想定される疾患または障害を処置するか、予防するか、またはその1つもしくは複数の症状を低減させるために該化合物を使用するための使用説明書を含む、パッケージ化された薬学的組成物を対象とする。
【0114】
製剤は、従来の賦形剤、すなわち、当技術分野において公知の、任意の好適な投与のモードのために好適な薬学的に許容される有機または無機担体物質と組み合わせて用いることができる。薬学的調製物は、滅菌することができ、所望の場合、助剤、例えば、滑沢剤、防腐剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を及ぼすための塩、緩衝剤、着色剤、香味剤および/または芳香性物質などと混合することができる。それらはまた、所望の場合、他の活性剤、例えば、鎮痛剤と組み合わせることができる。
【0115】
本開示の任意の組成物の投与の経路は、経口、経鼻、肺、直腸、腟内、非経口、頬側、舌下、または外用を含む。本開示における使用のための化合物は、任意の好適な経路、例えば経口または非経口の経路による投与、例えば、経皮、経粘膜(例えば、舌下、舌、(経)頬側、(経)尿道、膣(例えば、経膣および膣周囲)、鼻(内)および(経)直腸)、膀胱内、肺内、十二指腸内、胃内、髄腔内、皮下、筋肉内、皮内、動脈内、静脈内、気管支内、吸入、ならびに外用投与のために製剤化することができる。ある特定の態様において、本開示の任意の組成物の投与の経路としては、経鼻、頬側、吸入、気管内、肺内、および気管支内が挙げられる。
【0116】
好適な組成物および剤形としては、例えば、分散体、懸濁液、溶液、シロップ、顆粒、ビーズ、粉末、ペレット、経鼻もしくは経口投与用の液体スプレー、乾燥粉末または吸入用のエアロゾル化製剤などが挙げられる。本開示において有用な製剤および組成物は、本明細書に記載される特定の製剤および組成物に限定されないことが理解されるべきである。
【0117】
本開示の薬学的調製物の粉末化および顆粒製剤は、公知の方法を使用して調製することができる。そのような製剤は、対象に直接的に投与することができ、例えば、対象への投与に好適な材料を形成するために使用することができる。これらの製剤の各々は、分散または湿潤剤、懸濁化剤、および防腐剤のうちの1つまたは複数をさらに含むことができる。追加の賦形剤、例えば充填剤および甘味材、香味剤、または着色剤もまた、これらの製剤に含めることができる。
【0118】
経口投与
経口的適用のために、錠剤、糖衣錠、液体、液滴、坐剤、またはカプセル、カプレットおよびジェルキャップは特に好適である。経口的使用のために意図される組成物は、当技術分野において公知の任意の方法にしたがって調製することができ、そのような組成物は、錠剤の製造のために好適な不活性で非毒性の薬学的賦形剤からなる群より選択される1つまたは複数の剤を含有することができる。そのような賦形剤としては、例えば、不活性希釈剤、例えばラクトース;顆粒化剤および崩壊剤、例えばコーンスターチ;結合剤、例えばデンプン;ならびに潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウムが挙げられる。錠剤はコーティングされていないものであり得るか、またはエレガンスのためもしくは活性成分の放出を遅延させるために公知の技術によりコーティングされたものであり得る。経口的使用のための製剤はまた、活性成分が不活性希釈剤と混合された硬質ゼラチンカプセルとして提示され得る。
【0119】
非経口投与
本明細書において使用される場合、薬学的組成物の「非経口投与」は、対象の組織の物理的入口(physical breaching)を特徴とする投与および組織中の入口を通じた薬学的組成物の投与の任意の経路を含む。非経口投与としては、そのため、薬学的組成物の、組成物の注射による投与、外科的切開を通じた組成物の適用による投与、および組織透過性非外科的創傷を通じた組成物の適用による投与などが挙げられるがこれらに限定されない。特に、非経口投与は、皮下、静脈内、腹腔内、筋肉内、胸骨内注射、および腎臓透析注入技術を含むことが想定されるがこれらに限定されない。
【0120】
頬側、肺、吸入、および鼻腔内投与など
本開示の薬学的組成物は、頬腔を介する肺投与のために好適な製剤において調製、パッケージ化、または販売することができる。そのような製剤は、本開示の1つまたは複数のターゲティングペプチドを含む液体または乾燥/粉末製剤であることができる。一部の態様において、製剤は、本明細書の他の箇所に記載される活性成分を含む。一部の態様において、乾燥/粉末製剤の粒子は、約0.5~約7マイクロメートル、ある特定の態様において約1~約6マイクロメートルの範囲内の直径を有する。そのような組成物は、好都合には、噴射剤のストリームを向かわせて粉末を分散させることができる乾燥粉末リザーバーを含むデバイスを使用する投与のため、または自己噴射性溶媒/粉末分配容器、例えば密封容器中の低沸騰性噴射剤に溶解もしくは懸濁された活性成分を含むデバイスを使用する投与のための乾燥粉末の形態である。ある特定の態様において、そのような粉末は、重量により粒子の少なくとも98%が0.5マイクロメートルより大きい直径を有し、かつ数により粒子の少なくとも95%が7マイクロメートルより小さい直径を有する、粒子を含む。ある特定の態様において、重量により粒子の少なくとも95%は1マイクロメートルより大きい直径を有し、かつ数により粒子の少なくとも90%は6マイクロメートルより小さい直径を有する。乾燥粉末組成物は、固体微粉末希釈剤、例えば糖を含むことができ、好都合には単位用量形態で提供される。EP特許番号EP 02 12 753B1および同番号1 370 318B1も参照。
【0121】
低沸騰性噴射剤は、一般に、大気圧で65oF未満の沸点を有する液体噴射剤を含む。一般に、噴射剤は組成物の50~99.9%(w/w)を構成することができ、活性成分は組成物の0.1~20%(w/w)を構成することができる。噴射剤は、追加の成分、例えば液体非イオン性もしくは固体陰イオン性界面活性剤または固体希釈剤(ある特定の態様において、活性成分を含む粒子と同じオーダーの粒子サイズを有する)をさらに含むことができる。
【0122】
肺送達のために製剤化される本開示の薬学的組成物はまた、溶液または懸濁液の小滴の形態で活性成分を提供することができる。そのような製剤は、活性成分を含む、任意で無菌の、水性または希薄アルコール溶液または懸濁液として調製、パッケージ化、または販売することができ、好都合には、任意の噴霧化または微粒化デバイスを使用して投与することができる。そのような製剤は、香味剤、例えばサッカリンナトリウム、揮発油、緩衝化剤、表面活性剤、または防腐剤、例えばヒドロキシ安息香酸メチルが挙げられるがこれらに限定されない1つまたは複数の追加の成分をさらに含むことができる。ある特定の態様においてこの投与の経路により提供される小滴は、約0.1~約200マイクロメートルの範囲内の平均直径を有する。
【0123】
本開示の薬学的組成物は、吸入器、例えば、参照により全体が本明細書に組み入れられる米国特許第US 8,333,192 B2号に記載のものを使用して、送達することができる。
【0124】
肺送達のために有用であるとして本明細書に記載される製剤はまた、本開示の薬学的組成物の鼻腔内送達のために有用である。
【0125】
鼻腔内投与のために好適な別の製剤は、活性成分を含み、かつ約0.2~500マイクロメートルの平均粒子を有する粗い粉末である。そのような製剤は、嗅ぎタバコが摂取される方式で、すなわち、鼻孔の近くに保持された粉末の容器からの鼻通過を通じた急速な吸入により投与される。経鼻投与のために好適な製剤は、例えば、約0.1%(w/w)~100%(w/w)の活性成分を含んでもよく、本明細書に記載の追加の成分のうちの1つまたは複数をさらに含むことができる。
【0126】
追加の投与形態
本開示の追加の剤形としては、米国特許第6,340,475号;同第6,488,962号;同第6,451,808号;同第5,972,389号;同第5,582,837号;および同第5,007,790号に記載されるような剤形が挙げられる。本開示の追加の剤形としてはまた、米国特許出願第20030147952号;同第20030104062号;同第20030104053号;同第20030044466号;同第20030039688号;および同第20020051820号に記載されるような剤形が挙げられる。本開示の追加の剤形としてはまた、PCT出願番号WO 03/35041;WO 03/35040;WO 03/35029;WO 03/35177;WO 03/35039;WO 02/96404;WO 02/32416;WO 01/97783;WO 01/56544;WO 01/32217;WO 98/55107;WO 98/11879;WO 97/47285;WO 93/18755;およびWO 90/11757に記載されるような剤形が挙げられる。
【0127】
制御放出製剤および薬物送達システム
ある特定の態様において、本開示の製剤は、短期間の急速な消失の他に、制御放出、例えば、持続放出、遅延放出およびパルス放出製剤であり得るがこれらに限定されない。
【0128】
持続放出という用語は、その従来の意味において使用され、長期の時間的期間にかけての薬物の段階的な放出を提供し、かつ、必ずしもそうではないが、長期の期間にかけて薬物の実質的に一定の血中レベルを結果としてもたらし得る、薬物製剤を指す。時間的期間は、月またはそれより長いものであることができ、ボーラス形態で投与される同じ量の剤よりも長い放出であるべきである。
【0129】
持続放出のために、化合物は、化合物に持続放出特性を提供する好適なポリマーまたは疎水性材料と共に製剤化され得る。そのため、本開示の方法での使用のための化合物は、マイクロ粒子の形態で例えば注射により、またはウェーハもしくはディスクの形態で埋込みにより投与することができる。
【0130】
本開示のある特定の態様において、本開示の化合物は、持続放出製剤を使用して、単独でまたは別の薬学的剤と組み合わせて、患者に投与される。
【0131】
遅延放出という用語は、その従来の意味において使用され、薬物投与後の何らかの遅延後に薬物の初期放出を提供し、かつ、必ずしもそうではないが、約10分から約12時間までの遅延を含み得る、薬物製剤を指す。
【0132】
パルス放出という用語は、その従来の意味において使用され、薬物投与後の薬物のパルス状血漿プロファイルを生じさせるようなやり方で薬物の放出を提供する薬物製剤を指す。
【0133】
即時放出という用語は、その従来の意味において使用され、薬物投与後に直ちに薬物の放出を提供する薬物製剤を指す。
【0134】
本明細書において使用される場合、短期間は、薬物投与後の薬物投与後の約8時間まで、約7時間まで、約6時間まで、約5時間まで、約4時間まで、約3時間まで、約2時間まで、約1時間まで、約40分まで、約20分まで、または約10分までおよびこれらのいずれかまたはすべての全体的または部分的な増分までの、ならびに約8時間、約7時間、約6時間、約5時間、約4時間、約3時間、約2時間、約1時間、約40分、約20分、または約10分およびこれらのいずれかまたはすべての全体的または部分的な増分を含む、任意の時間的期間を指す。
【0135】
本明細書において使用される場合、急速な消失は、薬物投与後の約8時間まで、約7時間まで、約6時間まで、約5時間まで、約4時間まで、約3時間まで、約2時間まで、約1時間まで、約40分まで、約20分まで、または約10分までおよびこれらのいずれかおよびすべての全体的または部分的な増分までの、ならびに約8時間、約7時間、約6時間、約5時間、約4時間、約3時間、約2時間、約1時間、約40分、約20分、または約10分およびこれらのいずれかまたはすべての全体的または部分的な増分を含む、任意の時間的期間を指す。
【0136】
当業者は、本明細書に記載の特有の手順、態様、請求項、および例に対する多数の均等物を認識するか、または常法に過ぎない実験を使用して確認することができる。そのような均等物は本開示の範囲内であると考えられ、本明細書に添付の請求項によりカバーされる。例えば、当技術分野において認識される代替物での、および常法に過ぎない実験を使用した、反応条件における改変、以下に限定されないが例えば、反応時間、反応サイズ/体積、および実験試薬、例えば溶媒、触媒、圧力、大気条件、例えば、窒素雰囲気、および還元/酸化剤における改変は、本出願の範囲内であることが理解されるべきである。
【0137】
値および範囲が本明細書において提供される場合は常に、これらの値および範囲に包含されるすべての値および範囲は本開示の範囲内に包含されることが意味されることが理解されるべきである。さらに、これらの範囲内に入るすべての値の他に、値の範囲の上限または下限もまた本出願により想定される。
【0138】
以下の実施例は本開示の局面をさらに実例と共に説明する。しかしながら、それらは決して、本明細書に示されるような本開示の教示または開示の限定ではない。
【0139】
本開示の実施は、他に指し示されなければ、分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学および免疫学の従来技術を用い、これらは十分に当業者の認識範囲内である。そのような技術は文献において十分に説明されており、該文献としては例えば、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」,4th edition(Sambrook,2012);「Oligonucleotide Synthesis」(Gait,1984);「Culture of Animal Cells」(Freshney,2010);「Methods in Enzymology」「Handbook of Experimental Immunology」(Weir,1997);「Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells」(Miller and Calos,1987);「Short Protocols in Molecular Biology」(Ausubel,2002);「Polymerase Chain Reaction:Principles,Applications and Troubleshooting」,(Babar,2011);「Current Protocols in Immunology」(Coligan,2002)がある。これらの技術は本開示のポリヌクレオチドおよびポリペプチドの製造に適用可能であり、そのため、本開示の製造および実施において考慮することができる。
【0140】
本開示において有用な方法および組成物は、実施例に示される特定の製剤に限定されないことが理解されるべきである。以下の実施例は、本開示の細胞、拡大増殖および培養方法、ならびに治療方法の製造および使用の方法の完全な開示および記載を当業者に提供するために提示され、本発明者らが自身の開示とみなすものの範囲を限定することは意図されない。
【実施例
【0141】
実験例
本開示はこれより、以下の実施例を参照して記載される。これらの実施例は実例の目的のためにのみ提供され、本開示はこれらの実施例に限定されず、むしろ本明細書において提供される教示の結果として自明なすべてのバリエーションを包含する。
【0142】
材料および方法
動物:
BALB/cマウスはThe Jackson Laboratory(Sacramento,CA)から購入した。The Institutional Care and Use Committees(IACUCs)of the University of Texas M.D.Anderson Cancer Center(UTMDACC)、the University of New Mexico Health Sciences Center、およびRutgers Cancer Institute of New Jerseyによりすべての動物実験は承認された。ワクチン接種研究において使用された成体アカゲザルは、the University of Texas M.D.Anderson Cancer Center(UTMDACC)におけるMichale E.Keeling Center for Comparative Medicine and Research,an Association for Assessment and Accreditation of Laboratory Animal Care(AAALAC)公認動物施設において飼育した。エアロゾル投与のために、訓練されたマウスおよび霊長動物取扱者は、the National Research Council's Guide for the Care and Use of Laboratory Animalsに従った。
【0143】
組織培養:
ヒト肺胞上皮腺癌A549細胞はAmerican Type Culture Collection(ATCC)から購入し、10%ウシ胎仔血清(FBS)、ビタミン、非必須アミノ酸、ペニシリン/ストレプトマイシン、およびL-グルタミンを補充したダルベッコ改変イーグル最小必須培地(DMEM)(Gibco)中、37℃の5%CO2加湿インキュベーター中で維持した。
【0144】
エアロゾル化ファージディスプレイライブラリーのインビボ選択:
肺関門を通じた血流中へのファージ粒子送達を媒介するリガンドペプチド配列を同定するために、インサートCX8C(Xは任意のアミノ酸残基であり、Cはシステイン残基である)を提示するランダムファージペプチドライブラリーをインビボスクリーニングのために使用した。6~8週齢BALB/c雌を使用した。マウスにおけるファージインプットは109 TU/マウスであった。高圧力シリンジ(Penn-Century)および小動物喉頭鏡(Penn-Century)に連結されたMICROSPRAYER(登録商標)Aerosolizerを用いて、ファージライブラリーを含有する50μLのリン酸緩衝化食塩水(PBS)で気管内経路を介して動物をエアロゾル処理した。該デバイスを使用して、空気フリー液体エアロゾルを、イソフルラン(1%)で深く麻酔した動物の気管に直接的に投与した。4ラウンドの選択を記載されるように行った。ラウンド1(R1)において、動物にエアロゾル処理により109 TUのCX8Cライブラリーを与えた(図1Bのスキームを参照)。1h後に、ファージ粒子を血流から回収し、増幅し、R1としてプールした。ラウンド2(R2)において、R1でプールしたファージを投与し、エアロゾル処理の30分後に回収した。その後のR2を増幅し、ラウンド3(R3)における投与のためにプールした。10分後に、R3でプールしたファージを回収し、最終のラウンド4(R4)におけるエアロゾル処理のために処理した。5分後に、ファージ粒子を血流から回収し、増幅し、シークエンシングした。ファージ粒子の精製およびファージのDNAシークエンシングは記載されるように行った(Arap,et al.,1998,Science 279:377-380)。
【0145】
抗体および試薬:
抗マウスインテグリンα3/CD49c抗体はR&D Systemからのものであった。抗ヒトインテグリンα3(ASC-1)遮断抗体はMerck-Milliporeからのものであった。ヒトITGA3(クローン:002204.2-1161s21c1;002204.1-2356s1c1および002204.1-2887s1c1)、ITGB1(クローン:TRCN0000275133;TRCN0000275134およびTRCN0000275135)、ならびに対照pLKO.1非哺乳動物shRNAのためのshRNAレンチウイルス形質導入粒子はMISSION(登録商標)shRNA(Sigma-Aldrich)から購入した。
【0146】
LPS誘導性肺傷害および肺透過性アッセイ:
マウスを無作為に以下の群に分けた(各n=3~5):ビヒクルのみ(PBS)、陰性対照(無挿入ファージ粒子)、ターゲティングされたファージ(CAKSMGIDVC提示ファージ粒子)および陽性対照(LPS-デキストラン処理)。急性肺傷害を誘導するために、マウスを1%イソフルランで麻酔し、50μLのPBS中のLPS(0.5mg/kg;クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、Sigma)でエアロゾル処理した。5時間後に、無菌PBSに溶解した10mg/kg体重の高分子量デキストラン(70kDa、Invitrogen)を含有する50μLの溶液で動物をエアロゾル処理した。残りの群を50μLのPBSのみ(ビヒクル)、109 TUの無挿入ファージ(陰性対照)または109 TUのターゲティングされたファージ(CAKSMGIDVCを提示する)でエアロゾル処理した。マウスを1h後に屠殺した。終点の30分前に、エバンスブルー色素(20mg/kg)を静脈内(IV)に投与した。エバンスブルー色素抽出測定のためにPBS中で肺を灌流およびホモジナイズした。組織ホモジネートを620nmの吸光度で定量化し、ヘム色素の存在について補正した。エバンスブルー色素の濃度を標準軟正曲線にしたがって決定し、総タンパク質(タンパク質のμg/mL)として表した。BALF中の好中球を、Trypan Blue(ThermoFisher Scientific)を用いて細胞カウンターにおいてカウントした。BALF中の総タンパク質をビシンコニン酸(BCA)熱量測定アッセイ(ThermoFisher Scientific)により決定した。蛍光デキストランはInvitrogenから購入し、エバンスブルー色素はSigma-Aldrichから購入した。抗fdバクテリオファージ抗体はSigma-Aldrichから購入した。
【0147】
ファージ結合アッセイ:
組換えタンパク質(α3β1、α6β1、α6β4、NRP-1およびSDC-1)ならびにBSA(Sigma)へのファージ結合は記載されるように行った(Cardo-Vila,et al.,2008,PLoS One 3:e3452)。簡潔に述べれば、50μLのPBSに溶解させた100ngの指し示されるタンパク質の各々をマイクロタイターウェル中4℃で終夜(ON)固定化した。ウェルをPBSで2回洗浄し、3%のBSAを含有するPBSで室温(RT)で1hブロッキングし、1.5%のBSAを含有する50μLのPBS中で、ターゲティングされたCAKSMGDIVC提示ファージ粒子または対照無挿入ファージ粒子とインキュベートした。RTで2hの後に、ウェルをPBSで10回穏やかに洗浄し、宿主細菌感染によりファージを回収し、記載(Arap,W.et al.,Nat.Med.,2002,8:121-127;Cardo-Vila,et al.,2008,PLoS One 3:e3452)されたように互いに比較した場合の生物学的複製物および対照の経験的測定値として「相対TU」として表した。ヒト組換えタンパク質α3β1、α6β1、α6β4、NRP-1およびSDC-1はすべてR&D Systemsから商業的に得た。組換えGSTおよびCAKSMGDIVC-GSTは、pGEX4T-1プラスミド(Amersham、GE Healthcare)で形質転換した大腸菌において製造し、標準的なプロトコールを用いて精製した。すべての合成ペプチドは、メリフィールド合成により特別製造し、必要な仕様(Biomatik and PolyPeptide Laboratories)に対して品質管理した。
【0148】
細胞障壁透過性アッセイ:
細胞を完全なコンフルエンスまでTRANSWELL(登録商標)inserts(0.4μmの細孔径)上で増殖させた。予め温めた無血清DMEMでの平衡化(30分、37℃)後に、ターゲティングされたCAKSMGDIVC提示ファージ粒子または対照無挿入ファージ粒子のいずれか(各109 TU)を含有する用量溶液をそれぞれTRANSWELL(登録商標)システムの上チャンバー(ドナー)に加えた。細胞単層を通過して輸送されたファージ粒子を、温かい培地でのレシーバーチャンバー流体の置換と共に実験の全体を通じて予め決定された間隔で下チャンバー(レシーバー)のサンプリングにより収集した。ファージ粒子輸送をTUカウントにより決定した。ヒトITGA3、ITGB1、および対照pLKO.1非哺乳動物shRNAのためのshRNAレンチウイルス形質導入粒子はMISSION(登録商標)shRNA(Sigma-Aldrich)から購入し、細胞形質導入は製造者により指し示されるように行った。
【0149】
蛍光顕微鏡法イメージング:
細胞を24ウェルプレート中の円形カバーガラス(1.5×105細胞/カバーガラス)上の完全培地に播種し、5%のCO2中37℃でON増殖させた。細胞をPBSで3回洗浄し、4%のパラホルムアルデヒド(PFA)を含有するPBS(Electron Microscopy Science)中RTで10分間固定し、続いて50mMの塩化アンモニウム緩衝液中で30分間、1%のBSAを含有するPBSのブロッキング溶液中で1hインキュベートした。ファージ粒子の細胞内染色のために、細胞を、37℃の30%のFBSを含有するDMEMで1hブロッキングし、続いて37℃の10%のFBSを含有するDMEM中で109 TUのファージ粒子と1hインキュベートした。10%のBSAを含有するPBSで細胞を5回洗浄し、続いて50mMのグリシンおよび150mMのNaClを含有するpH 2.8のグリシン緩衝液で各3分間5回洗浄して接着ファージ粒子を除去した。細胞を次にPBSで洗浄し、4%のPFAを含有するPBS中で10分間固定し、0.2%のTriton X-100で10分間透過処理し、PBSで洗浄し、次に5%の正常血清を含有するPBSおよび1%のBSAを含有するPBSで30分間ブロッキングした。一次抗fdバクテリオファージ(Sigma-Aldrich)および抗マウスα3インテグリン/CD49c(R&D System)抗体を、1%のBSAを含有するPBS中で希釈し、細胞とRTで2hインキュベートし、PBSで5回洗浄し、次に二次抗体とRTで1hインキュベートした。核染色のために、4',6-ジアミノ-2-フェニルインドールを含有するVECTASHIELDマウンティング培地(DAPI、Vector Laboratories)を使用した。蛍光画像をNikon Eclypse Ti2倒立蛍光顕微鏡(Nikon)上で取得した。組織免疫蛍光のために、パラフィン包埋肺組織切片(10μmの厚さ)をHistochoice(Sigma-Aldrich)とインキュベートし、続いてキシレンおよびエタノールを用いてパラフィンを除去した。pH 6.0のDako Target Retrieval Solution(Agilent Dako)での抗原賦活化後に、スライドを洗浄し、0.1%のTween 20を含有するTRIS緩衝食塩水(TBST)中の10%ロバ血清で1hブロッキングし、抗体:抗proSPC(1:50)(Millipore、AB3786)、抗ポドプラニン(1:100)(Thermo-Invitrogen、eBio8.1.1)、抗CCSP抗体(Millipore-Merck、07-623)、抗fdバクテリオファージ抗体(1:500)(Sigma-Aldrich)、および抗α3インテグリン/CD49c(R&D System)とインキュベートし、続いてコンジュゲートされた二次抗体とインキュベーした。高解像度画像をthe Advanced Light Microscopy Core Facility,University of Colorado(Denver)において2フォトン共焦点顕微鏡法により得た。ピクセル共局在性をFiji ImageJ Softwareで分析した。
【0150】
ファージオーバーレイおよび組織免疫組織化学:
肺組織切片(5μm)を脱パラフィンし、再水和させ、内因性ペルオキシダーゼおよび非特異的タンパク質結合をブロッキングした(Agilent Dako)。ファージオーバーレイアッセイのために、組織切片を、ターゲティングされたCAKSMGDIVC提示ファージ粒子または陰性対照無挿入ファージ粒子(各2×109 TU)とRTで2hインキュベートした。0.1%のTween 20を含有するTRIS緩衝食塩水(TBST)での洗浄後に、スライドを一次抗fdバクテリオファージ抗体(1:800)とインキュベートし、続いてウサギホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲート二次抗体とインキュベートした。抗α3鎖抗体(1:500)、続いて適切なHRPコンジュゲート二次抗体を用いてインテグリンα3を検出した。画像をNikon Eclypse Ti2倒立顕微鏡において取得した。
【0151】
肺細胞の単離および細胞選別:
6~8週齢雌BALB/cマウスを使用した。エアロゾル処理後に、動物を屠殺し、10mLのPBSを灌流させ、続いて空気で肺の穏やかな膨張を行った。5mMのEDTAおよび5mMのEGTAを含有するPBS溶液、続いてRPMI培地ならびに25mMのHEPESおよびエラスターゼ(4.5U/mL)を含有するRPMIで肺を洗浄し、続いて直ちに、1%の低融点アガロースを含有する水の溶液(Promega)での肺の膨張および37℃で45分間の組織消化を行った。組織を穏やかにミンチした後に、細胞を100μm(Falcon #352360)、40μm(Falcon #352340)、および20μm(Pluriselect #43-50020-01)フィルターで濾過し、15mLのコニカルチューブ中150μLの100%Percoll(Sigma-Aldrich)のクッション層と共に遠心分離した。細胞選別のために、細胞をFc block anti-mouse CD16/CD32 antibody(BD Pharmigen、553142)でブロッキングし、rat anti-mouse EPCAM brilliant violet 421 conjugated(BioLegend、118225)、rat anti-mouse CD45 Alexa fluor 700 conjugated(eBioscience、56-0451-80)、Syrian hamster anti-mouse podoplanin monoclonal antibody PE-Cyanine 7 conjugated(eBioscience、25-5382-80)、rat anti-CD31 FITC conjugated(BD Pharmigen、553372)、およびrat anti-mouse F4/80 PE-conjugated(BD Pharmigen、565410)で染色した。補正ビーズ(UltraComp eBeads、Thermo Scientific)で以前に軟正されたiCyt sy3200(Sony)細胞選別機において細胞を選別した。AT1、AT2濃縮細胞集団およびマクロファージを遠心分離し、細胞種当たりのファージ粒子の数をTUカウントにより決定した。
【0152】
数学的なモデリング:
細胞単層を通過するファージ粒子の輸送を調べるために、インビトロトランスウェルアッセイからのデータ(図3E)を使用して、下チャンバーにおけるファージ蓄積の経験的な数学モデル(式1)のパラメーターを定量化した。時間tにおける細胞障壁を通過して輸送されたファージ粒子の質量[N(t)、TUとして実験的に測定される]は、式(式1):
N(t)=Ns(1-e-kt)(式1)
により表された。式中、Nsは飽和における下チャンバー中のファージ粒子の質量(TU)を表し;kは輸送速度定数であり、その逆数は輸送プロセスの特徴時間(τ=1/k)を与える。式1の1次導関数
は、インビトロ細胞障壁を通過するファージ粒子の時間依存的輸送速度を提供する。実験データに対するモデルの最小二乗フィッティングをMATLABにおいて行った。輸送速度は速度kにおいて時間と共に指数関数的に減衰し、その最大値は、時間t=0において、
のように決定することができる。
【0153】
インビボでのファージ粒子の全身配置速度論を理解するために、2区画薬物動態モデルを開発した(図5C)。このモデルは、質量保存の法則および質量作用の法則に基づき、以下の常微分方程式系(式2~5):
肺気腔亜区画
単核食細胞亜区画
中心区画(血流)
末梢区画(緩徐に灌流させた臓器)
により表される。式中、NL,a、NC、およびNPは、それぞれ肺気腔、中心、および末梢区画中のファージ粒子の質量(TU)を表し;N0は、吸入されたファージの質量であり;NL,macは、肺胞マクロファージ亜区画中のファージ粒子の質量であり;k1,2は、中心区画から末梢区画への1次ファージ移行速度定数を表し、k2,1は、末梢区画から中心区画への1次ファージ移行速度定数を表す。常微分方程式(ODE)系をMATLABにおいてビルトインnon-stiff ODE solver ode45を使用して初期値問題として数値的に解き、次にインビボデータに対するモデルの最小二乗フィッティングをMATLABにおいて行った。
【0154】
CAKSMGDIVC提示ファージ粒子の気管内投与:
マウスにおけるファージインプットは、高圧力シリンジ(Penn-Century)および小動物喉頭鏡(Penn-Century)に連結されたMicroSprayer(登録商標)Aerosolizerを用いて50μLのPBSと共に気管内経路を介して投与されたマウス(各群n=4)当たり109 TUのターゲティングされたCAKSMGDIVC提示ファージ粒子または陰性対照無挿入ファージであった。ターゲティングされたCAKSMGDIVC提示ファージ粒子または対照無挿入ファージ粒子の2回の連続用量の気管内エアロゾル投与をペアのアカゲザルにおいて行った。マウスから非ヒト霊長動物およびヒトへの気道の解剖学的形態の他に、身体サイズ、呼吸パターン、吸入方法、およびデバイスにおける種特異的な差異のため、ファージ投与の用量を個々のサル当たり1012 TUに増加させた。導入のためにTelazol(チレタミンおよびゾラゼパム)の筋肉内注射、続いて気管内挿管法および吸入イソフルランの維持(パーセンテージは、麻酔の深さ-心拍数、呼吸速度、刺激への応答のモニタリングに基づいて調整した)を使用してサルを麻酔した。無菌IVチュービングを気管内チューブよりも約4cm長い長さに切断し、CAKSMGDIVCターゲティングファージまたは対照無挿入ファージを含有するシリンジに取り付けた。チュービングを気管内チューブに挿入し、ファージを60秒にかけて気管中に緩徐に投与した。血液収集のために、サルをケタミンの筋肉内注射で麻酔した。用量1の投与時(1日目とする)に、血液試料をエアロゾル処理後6hまで1時間毎に収集した。血清収集を14日毎に行いながら第2の用量を28日後に投与した。エンドトキシンの除去を各ファージ調製物について各気管内用量の投与の前に行った。エンドトキシンを含有するファージ溶液をエンドトキシンフリー水中の10%のTriton X-114を用いて氷上で10分間処理した。溶液を次に37℃に10分間温め、続いて14,000rpmでの1分間の遠心分離によりTriton X-114相を除去した。LonzaのLimulus Amebocyte Lysate(LAL)Kinetic-QCL kitを使用してエンドトキシンのレベルを測定した。<0.05EU/mLのエンドトキシンのファージ調製物をこの研究において使用した。
【0155】
非ヒト霊長動物における血清学的分析:
サルからのIgGをプロテインGアガロース樹脂(Sigma Aldrich)を用いて血清から精製した。フロースルーを使用して、ジャカリンアガロース樹脂(Thermo Fisher Scientific)でIgAを精製した。4℃においてONで96ウェルプレート(Nunc MaxiSorp flat bottom、Thermo Scientific)にコーティングした1010粒子/50μLを用いてELISAを行った。このアッセイのために、fUSEプライマー(以下の通りのfUSE5フォワード: 5’-TGAGGTGGTATCGGCAATGA-3’、およびfUSE5リバース: 5’-GGATGCTGTATTTAGGCCGTTT-3’)を用いる定量qPCRによりファージ滴定を行った。他に指定されなければ4℃で終夜合成ペプチド(10μg/mL)CAKSMGDIVCまたは無関連対照ペプチド(CGRRAGGSC)でコーティングした96ウェルプレートを用いたELISAも行った。コーティングしたプレートを、5%の低脂肪乳および1%のBSA(Sigma-Aldrich)を含有するPBSを用いて37℃で1hブロッキングした。精製されたIgGおよびIgAの2倍段階希釈液(1:4で開始)をウェルにアプライし、37℃で2hインキュベートした。PBSおよびPBSTでの3回の洗浄後に、結合した抗体を抗サルIgG(KPL;074-11-021)またはIgA(KPL:074-11-011)HRPコンジュゲートで検出した。精製されたポリクローナルIgG抗CAKSMGDIVC抗体(Biomatik USA、Delaware)および抗fdバクテリオファージ抗体(Sigma)を陽性対照とした。プレートを450nmの吸光度で読み取った。
【0156】
統計分析:
群間の差異をスチューデントt検定または分散分析(二元配置ANOVA)で統計的有意性について試験した。統計的有意性はp<0.05として設定した。分析はGraphPad Prism 8およびMATLAB R2015bにおいて行った。
【0157】
選択された結果
特に発展途上国および災害地域において、迅速な免疫化を達成するための、吸入ベースのワクチン接種は、ニードルフリーでありかつ、経口経路とは異なり、望ましくない初回通過代謝にさらされない。肺表面積は測定技術および膨張の程度により変動し、概算値は、膨張した肺において70~130平方メートルで変動し得る。肺胞上皮1型(ATI)および2型(AT2)細胞、ならびに関連付けられる微小血管内皮を含む、肺の薄い高度に透過性の肺胞領域は、通過して血流中に入ることを許される分子の選択的な透過性を一般に定義する。低分子量薬物、ペプチド、またはタンパク質、例えばインスリン、小さいウイルス、およびさらには免疫原は、吸入剤投与のための好適な候補である。より最近では、吸入ベースのワクチン接種プラットフォームは、有効なフィールド使用ならびに空気中の病原体、例えば結核、インフルエンザ、エボラウイルス、および麻疹からの保護のために特に注目を得ており、実際に、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)により引き起こされるコロナウイルス疾患(COVID-19)の進行中のパンデミックは、世界的なパンデミックの状況における満たされていない公共の健康上の必要性の大きさの一応(prima facie)の証拠を提供する。
【0158】
理論では、肺送達は、作用のより急速な開始を達成することにより潜在的な副作用を低減させながら治療バイオアベイラビリティを向上させるが、吸入はまた、特には全身性の適用について、本来的な課題を提起し、呼吸器疾患に対するこの時点での使用を制限している。一般に、吸入ベースの療法は、インビボでの薬理学的エンドポイントのモニタリングを通じて評価される。しかし驚くべきことに、吸入された粒子が空気血液関門と相互作用する実際の機序、肺表面との接触における分子の物理化学的変化、バイオアベイラビリティ、局所免疫系による取込みおよび不溶性活性化合物のクリアランスプロセスまたは除去はほとんど未知のままである。
【0159】
ある特定の態様において、親油性部分は、肺胞細胞形質膜を横切る受動拡散により肺を通じて急速に吸収され得る一方、親水性部分は、特有の表面受容体によりまたは細胞タイトジャンクションを通じて輸送される傾向がある。呼吸機能およびホメオスタシスを保存しながら肺を通じた活性粒子の選択的輸送を可能とする生理学的機序を明らかにすることは、複数の適用のための一般的な肺送達システムの設計にとって重要である。
【0160】
本開示に記載されるように、ファージディスプレイベースのコンビナトリアルランダムペプチドプラットフォームが開発および適用され、ワクチンが挙げられるがこれに限定されないファージベースの標的適用に向けて、空気血液関門を通過する粒子の安全かつ有効な吸収のための独特のリガンド/受容体媒介性肺輸送経路を明らかにした。
【0161】
1つの局面において、エアロゾルファージディスプレイランダムペプチドライブラリーをインビボでスクリーニングして、インタクトな肺空気血液関門を通過して血流に入ることができるターゲティングペプチドが選択および単離した。新たなリガンドペプチドモチーフ、CAKSMGDIVCを検証し、その対応する受容体、インテグリンα3β1を、アフィニティークロマトグラフィーを介して生化学的に精製した。インテグリンα3β1は、肺胞上皮細胞の他に、肺の末端および呼吸器細気管支中に見出される上皮分泌細胞であるクラブ細胞の表面上に発現される。CAKSMGDIVCモチーフを提示するターゲティングされたファージ粒子のα3β1への特異的結合は、インビボでファージ粒子取込みおよび循環への輸送を促進することが見出された。別の局面において、肺標的投与でのファージ粒子の全身配置速度論を理解および予測するために2区画薬物動態数学モデルを開発した。さらに別の局面において、リガンド/受容体ベースのエアロゾルシステムを非ヒト霊長動物モデルにおいて評価したところ、システムは、肺標的送達およびファージベースのワクチンの潜在的な開発のために有用であることが見出された。以上を合わせて、本明細書において報告されるコンビナトリアル選択システムおよび発見は、広いトランスレーショナルな適用を有する、リガンド指向性肺エアロゾル送達のための汎用的な可能化プラットフォームを提供する。
【0162】
実施例1:インビボでのインタクトな肺関門を通過するファージ粒子の連続スクリーニング
インタクトな肺上皮を通過して生理学的に輸送されるリガンドペプチドモチーフの同定は、約1010導入単位(TU)のランダム環状ペプチドを含むファージディスプレイライブラリー(109個の独特の配列)をインビボでの気管内エアロゾル処理によりマウスに投与することにより行った。この方法は、肺薬物沈着の前臨床研究(Guillon,et al.,2018,Int J Pharm 536:116-126)に示されるように遠位気腔に達することが予測される、2.5μmよりも小さいサイズの粒子の高圧力生成に基づく、水性調製物のマイクロスプレーエアロゾル化装置を利用する。初期ラウンドの選択において、マウスにおいて肺関門の通過が、エアロゾル処理後の固定された時点および6時間までに収集された血液試料中のファージ粒子の検出により確認された(図1A)。インビボスクリーニングをマウスの連続コホート(各n=3)において行った。各その後のラウンドの選択後に、回収されたファージ粒子をプールし、増幅し、再エアロゾル処理して(図1B)、肺上皮-内皮層を通過するファージ粒子の輸送を効率的に媒介するリガンドペプチドを選択し、収集時間はラウンド1(R1)における60分からラウンド4(R4)における5分まで段階的に低減させた(図1B)。進行性の濃縮が観察され(図1C)、R4から回収された個々のペプチドをコードする対応するDNAをシークエンシングした。各濃縮されたペプチドのパーセンテージを描写しているが、顕著なことに、4つの優勢なペプチドのみで配列の総数の半分近くが構成された一方、配列の他の半分(n=16)は、さらなる研究およびこの研究における開発のための実験閾値として任意選択的に設定された5%未満の頻度であった(図1D)。これらのペプチド提示ファージ粒子を気腔を介してマウスに個々に投与した場合、4つすべての優勢なリガンド候補は、陰性対照として働く無挿入ファージ粒子と比べて(50~200倍の範囲;平均約110倍)、投与後1h以内に肺関門を通過して全身循環に達した(図1E)。
【0163】
いかなる理論によっても限定されることを望まないが、機能的な分析はインデックスリガンドペプチド配列CAKSMGDIVC(ファージクローン2)に集中し、その理由は、それは全身循環への最も高い輸送効率のうちの1つを示したからである(図1E)。実際に、CAKSMGDIVC提示ファージ粒子ペプチドは、肺を通じて最も効率的に輸送され、エアロゾル処理の2h後までに非常に高濃度で血流中に存在した一方、非ターゲティング(無挿入)陰性対照ファージ粒子はほとんど検出できなかった(図1F)。血流からのファージクリアランスがエアロゾル投与の8h後に観察された。いかなる理論にも限定されることを望まないが、これは、網内皮系により媒介される非特異的なクリアランスを通じて起こる可能性がある(Staquicini,F.I.et al.,J Clin Invest.,2011,121:161-173;Pasqualini,R.et al.,Nature,1996,380:364-366;Hajitou,A.et al.,Cell,2006,125:385-398)。以上を合わせて、これらのデータは、CAKSMGDIVC提示ファージ粒子は沈着され、肺から全身循環へと選択的に輸送されることを指し示す。そのため、本ペプチド提示ファージ粒子のファージ取込みおよび輸送は、特異的なリガンド-受容体相互作用により媒介される可能性がある。
【0164】
実施例2:ペプチド媒介性ファージ輸送による分布、クリアランス、および肺ホメオスタシス
インデックスターゲティングファージ粒子の増強された輸送が、気管内エアロゾル処理の間に誘導された組織損傷により引き起こされた可能性を除外するために、ビヒクルのみまたは陰性対照無挿入ファージ粒子でエアロゾル処理された動物と比較してCAKSMGDIVC提示ファージ粒子でエアロゾル処理された動物からの肺の形態およびホメオスタシス(図2A~2D)を評価した。エアロゾル処理の24h後までの肉眼的な形態分析または病理組織分析により肺組織損傷の検出可能な証拠(肺浮腫および/または炎症を含む)は観察されなかった(図2A)。肺傷害での肺組織中のエバンスブルー血管外漏出(血清アルブミンに対して非常に高い親和性を有するアゾ色素)または気管支肺胞洗浄液(BALF)中のタンパク質含有量の定量化により肺透過性を評価した。ターゲティングされたファージ粒子および対照無挿入ファージ粒子の間で検出可能な差異は観察されなかった。さらには、CAKSMGDIVC提示ファージ粒子または陰性対照無挿入ファージ粒子で処理されたマウスのBALFにおける好中球カウントにより急性炎症の証拠は検出されなかった。
【0165】
データを次に、エアロゾルファージ粒子と、白血球浸潤および血管流体の血管外漏出を特徴とする組織損傷の陽性対照としての、エアロゾルを介して投与された、肺傷害の規範的な誘導因子、リポ多糖(LPS)、続いて高分子量デキストラン(以後、LPS-デキストランと称する)のものとで比較した。LPS-デキストラン処理マウスにおいて、肺胞損傷、著明な血管うっ血、および微小血管傷害が肉眼的な形態分析および病理組織分析により確認された(図2A)。追加的に、LPS-デキストラン(陽性対照)で処理されたマウスは、著明な肺傷害の徴候、肺組織の完全性の障害、および著明な好中球浸潤を示した(図2B)。
【0166】
ある特定の非限定的な態様において、肺から血流へのインデックスターゲティングファージの輸送は、細胞表面受容体へのリガンドCAKSMGDIVCの特異的結合により媒介され得る。一連のファージ結合アッセイを設計して、インビトロおよびインビボで標的細胞へのCAKSMGDIVC提示ファージ粒子の結合を評価した。最初に、ファージオーバーレイアッセイ(Staquicini,et al.,2011,Proc Natl Acad Sci U S A 108:18637-18642)を使用したところ、肺組織切片の細胞へのファージ結合が示された一方(図2C)、対照臓器(膵臓が示される)からの組織切片において結合は検出されなかった。対照無挿入ファージ粒子はバックグラウンド染色のみを示した(図2C)。
【0167】
最後に、時間の関数としてのターゲティングされたファージ粒子および対照ファージ粒子の結合および血流中への輸送を、エアロゾル処理されたマウスの肺において定量化した(図2D)。肺において存在するCAKSMGDIVC提示ファージ粒子の数における著明な低減が、エアロゾル処理後1hに開始して8hまで継続して観察された。24h後に、非常に少数のターゲティングされたファージ粒子が依然として肺において検出された(図1F)。対照的に、陰性対照無挿入ファージ粒子のレベルは、同じ時間枠の間に不変のままであった。これらの結果は、エアロゾル処理後1h~4hの間に血流中のファージ粒子の高い量を示した、全身循環へのCAKSMGDIVC提示ファージ粒子輸送の速度論を再現する(図1F)。血流からのファージクリアランスがエアロゾル処理の8h後に観察された。いかなる理論によっても限定されることを望まないが、これは網内皮系非特異的クリアランスを通じて起こり得る。以上を合わせて、これらのデータは、CAKSMGDIVC提示ファージ粒子は沈着され、肺から全身循環へと選択的に輸送されることを指し示す。
【0168】
実施例3:インビトロでの受容体の同定および検証
ペプチドアフィニティークロマトグラフィーを使用して、CAKSMGDIVCリガンドにより標的とされる対応する候補受容体を同定した。ヒト肺腺癌細胞系(A549細胞)からの総タンパク質抽出物をCAKSMGDIVCペプチドコンジュゲート化カラムにロードし、相互作用性タンパク質を過剰量の可溶性CAKSMGDIVC合成ペプチド(メリフィールド合成を通じて製造)で溶出させた。溶出したタンパク質をその後に質量分析により同定した(表1)。
【0169】
5つの主な潜在的な受容体候補を選択した:インテグリンα3β1、α6β1、およびα6β4の他に、ニューロピリン-1(NRP-1)およびシンデカン-1(SDC-1)。インビトロでの固定化された組換えタンパク質に対する無細胞結合アッセイは、ターゲティングされたCAKSMGDIVC提示ファージ粒子は、他の受容体候補と比較して優先的にα3β1インテグリンに結合することを示した(図3A)。ウシ血清アルブミン(BSA)および無挿入ファージは陰性対照として働き、最小のバックグラウンドレベルに過ぎない結合を示した。増加性モル濃度のターゲティングされた合成ペプチドまたは無関連陰性対照合成ペプチド(配列CGRRAGGSC;Cardo-Vila,M.et al.,PLoS One,2008,3:e3452)のいずれかの存在下での競合アッセイは、α3β1インテグリンへのCAKSMGDIVC提示ファージの結合特異性を裏付けた(図3B)。
【0170】
ヒト肺胞上皮腺癌細胞(A549)の表面上に発現される内因性α3β1インテグリンとの相互作用を評価した。A549細胞表面上のα3β1インテグリンの存在が報告されており、免疫蛍光によっても確認された(図3C)。選択的相互作用リガンドのバイオパニング迅速分析(Biopanning and Rapid Analysis of Selective Interactive Ligand)(BRASILと称される)方法論(Giordano,et al.,2001,Nat Med 7:1249-1253)を使用して、A549細胞へのCAKSMGDIVC提示ファージ粒子の結合を実証した。バックグラウンドよりも高い結合は対照無挿入ファージ粒子で観察されなかった(図3D)。
【0171】
細胞単層を通じたCAKSMGDIVC提示ファージ粒子の取込みおよび輸送を評価した。A549細胞をトランスウェルチャンバーの上チャンバー上に播種し、CAKSMGDIVC提示ファージ粒子または対照無挿入ファージ粒子のいずれかに曝露した。上チャンバーからのA549細胞単層を通過するファージ輸送を、下チャンバーから回収されたTUカウントにより決定した。ターゲティングされたCAKSMGDIVC提示ファージ粒子の輸送は、添加後1hもの早くに検出され、最も高い蓄積は8~24hで起こった(図3E)。無挿入ファージ粒子の最小の輸送が実験の全体を通じて観察された。細胞単層の完全性は、蛍光デキストラン輸送の非存在により実証されたように(表2)、ターゲティングされたファージ粒子または対照ファージ粒子のいずれによっても影響されなかった。最後に、結合特異性を確認するために、A549細胞からα3またはβ1インテグリン鎖を遺伝学的に枯渇させた。α3β1インテグリンのノックダウンは、α3インテグリン鎖をコードするヒトITGA3遺伝子およびβ1インテグリン鎖をコードするヒトITGB1遺伝子を標的とするshRNAレンチウイルス粒子を用いてA549細胞への形質導入を行うことにより得た。非ターゲティングshRNA(pLKO)レンチウイルス粒子を対照として使用した(図7A~7B)。ターゲティングされたファージの結合、内部移行、および輸送は、α3インテグリン鎖をサイレンシングされたA549細胞において著明に低減された一方、陰性対照shRNAで形質導入された細胞において効果は観察されなかった(図3F)。β1インテグリン鎖がサイレンシングされた場合に部分的な結合阻害のみが観察された(図3G)。生化学的には、組換えCAKSMGDIVC-GSTペプチド(図3H)または抗α3インテグリン鎖抗体のいずれかを用いた競合アッセイ(図3Iおよび図7C)は濃度依存性のリガンド-受容体特異性を裏付け、CAKSMGDIVC提示ファージ粒子の結合はα3β1インテグリンヘテロ二量体のα3鎖内の部位を標的とする可能性があることを示唆した。
【0172】
受容体媒介性ファージ輸送プロセスを特徴決定するために、経験的な数学的関数(式1)をインビトロトランスウェルデータにフィッティングし、細胞単層を通過するファージ粒子輸送のモデルパラメーターを決定した(図7D)。ピアソン相関係数(両方の場合についてR>0.96)による評価で、モデルフィットおよびそれらの対応する実験データの間の強い相関が観察されたため、数学モデルにおける信頼性が提供された。輸送プロセスの特徴時間τは、示されるように、対照無挿入ファージについて、ターゲティングされたCAKSMGDIVC提示ファージについてよりも小さい(約1.5h対約4.8h)(表3)。無挿入ファージとは異なり、ターゲティングされたCAKSMGDIVC提示ファージは、細胞単層を通過するためにα3β1インテグリンとエンゲージメントする追加の工程を行い、これはその輸送についてのより長い特徴時間を説明する可能性がある。しかしながら、特異的なターゲティングは、より多くの数のファージ粒子Nsが細胞障壁を通過することを可能とする。2つのモデルパラメーターτおよびNsを組み合わせて、全体的な輸送プロセスは輸送の初期速度により特徴決定することができ、それは、対照無挿入ファージ粒子についてよりも、ターゲティングされたCAKSMGDIVC提示ファージ粒子について約4桁大きい値を有する(表3)。以上を合わせて、CAKSMGDIVC提示ファージ粒子は、α3β1インテグリンにより媒介される受容体依存性の機序により細胞単層に結合し、それを通過して輸送されることをデータは指し示す。
【0173】
実施例4:CAKSMGDIVC提示ファージ粒子はインビボでα3β1インテグリンを標的とする
無細胞および細胞ベースのアッセイにおいてCAKSMGDIVC提示ファージ粒子の観察されたペプチド誘導性の輸送を特異的に媒介する対応する膜受容体としてα3β1インテグリンが同定されたので、免疫組織化学および免疫蛍光を使用して、肺組織切片におけるα3β1の細胞発現および組織局在性を研究した。α3β1インテグリンの存在は気道および肺の肺胞領域中の細胞において検出された(図4A~4B、4Eおよび図8A)。特に(図4A)、α3β1インテグリン(赤)の発現は、1型(AT1、紫)および2型(AT2、緑)肺胞上皮細胞、ならびに呼吸器細気管支の細胞(図4B)において検出された。α3β1インテグリンのレベルにおけるある程度の変動が免疫蛍光分析による検出で認められたが、α3β1インテグリンの存在がマウス肺組織における単一細胞RNAシークエンシング(scRNA-seq)によりこれらの細胞集団において確認された。フローサイトメトリー選別された細胞集団のトランスクリプトーム分析は、マウスα3β1インテグリンをコードするItga3およびItgb1転写物が、基底細胞、気道上皮線毛および非線毛細胞の他に肺胞上皮細胞において、ならびにAT1においてより高い程度(AT2細胞よりも約6倍多くのItga3および約2倍多くのItgb1)で存在することを裏付けた(図8B)。AT1細胞は肺胞表面の95%より多くをカバーするので、該細胞でのα3β1インテグリンの高い発現は、肺組織を通過して血流中への効率的なファージ輸送を促すことができる。
【0174】
α3β1インテグリン発現細胞がインビボでの肺関門を通過するCAKSMGDIVC提示ファージ粒子の輸送に実際に結び付けられるのかどうかを決定するために試験を行った。ターゲティングされたファージ粒子または対照ファージ粒子のいずれかをエアロゾルを介して投与し、1h後に、マウスを屠殺し、リン酸緩衝化食塩水(PBS)を心臓を通じて灌流させた。肺を固定し、包埋し、免疫蛍光分析のために切片化した。エアロゾルを介してCAKSMGDIVC提示ファージ粒子または対照無挿入ファージ粒子のいずれかを投与されたマウスからの肺組織切片を各細胞集団のための特異的なマーカーおよび抗ファージ抗体で免疫染色した。共焦点顕微鏡分析は、CAKSMGDIVC提示ファージ粒子は肺胞中の肺胞上皮AT1およびAT2を標的とすることを示す。AT1細胞(紫)およびAT2細胞(緑)とのCAKSMGDIVC提示ファージ粒子の共局在性が白矢印により指し示され(図4C)、相対的な定量化もまた表されており(図4D)、肺胞細胞に対する対照無挿入ファージ粒子のバックグラウンド染色のみが観察された。顕著なことに、AT1およびAT2細胞のすべてがファージ染色について陽性なわけではなかった。理論によって限定されることを望まないが、α3β1インテグリン発現におけるバリエーションは、これらの細胞集団におけるCAKSMGDIVC提示ファージ粒子の結合および輸送を決定する可能性があることをこれは示唆する。高濃度のターゲティングされたCAKSMGDIVC提示ファージ粒子または対照無挿入ファージ粒子がマクロファージにおいて検出された(黄矢印、図4C)。
【0175】
α3β1インテグリンの著明な発現はまた、細気管支の細胞(図4B、白矢印)、主に非線毛クラブ細胞(図4E)において観察された。マウスにおいて、肺の線毛および非線毛細胞は細気管支の主要な構成要素である。クラブ細胞は、気腔を裏打ちする細胞外流体へのクラブ細胞分泌タンパク質(CCSPと称される)の主な供給源である。CCSPに対する特異的な抗体を使用することにより、クラブ細胞は、細気管支中のα3β1インテグリンを発現する細胞のほとんどを構成することが確認された。また、陰性対照無挿入ファージ粒子と比べたCAKSMGDIVC提示ファージ粒子、およびクラブ細胞の高い共局在性が細気管支領域において存在し、これもまたCCSPに対する抗体を用いて確認された(図4F)。以上を合わせると、これらの実験結果は、CAKSMGDIVC提示ファージ粒子は、AT1およびAT2肺胞上皮細胞ならびにクラブ細胞の形質膜上に発現されるα3β1インテグリンに結合することを確立する。
【0176】
実施例5:CAKSMGDIVC提示ファージ粒子はインビボでα3β1インテグリンを標的とする
エアロゾル投与後のCAKSMGDIVC提示ファージ粒子のバイオアベイラビリティをさらに評価するために、特有の肺細胞へのファージ粒子の結合能力をフローサイトメトリーにより決定した。ターゲティングされたおよび非ターゲティングファージ粒子のエアロゾル後に、肺を採取し、単一細胞のコレクションに消化した。肺の特有の細胞集団を単離し、3つの主な細胞集団においてフローサイトメトリー選別した(図5A):AT1濃縮集団(EPCAM、CD45-、CD31-、T1αhigh);AT2濃縮集団(EPCAM、CD45-、CD31-、T1αlow)および単核食細胞(EPCAM-、CD45、CD31-、F4/80)。各細胞集団に結合した、ターゲティングされたファージ粒子または対照ファージ粒子のいずれかの数を、宿主細菌への感染後のTUカウントにより決定した。CAKSMGDIVC提示ファージ粒子をAT1濃縮集団およびAT2濃縮集団の両方から回収したところ、AT1濃縮集団への結合はAT2濃縮細胞への結合よりも約2倍高かった。これらの結果はまた、α3β1インテグリンの転写物はAT1細胞においてAT2細胞におけるよりも約2倍高いscRNA-seq分析と合致する(図8B)。陰性対照ファージ粒子は、両方の細胞集団へのバックグラウンド結合のみを示した。多くの量の、ターゲティングされたファージまたは対照ファージのいずれかが、単核食細胞濃縮細胞集団から回収され、これは肺気腔内の非特異的なファゴサイトーシスと合致する結果であった(図5B)。
【0177】
肺から全身循環への輸送、および単核食細胞系(MPS)によるクリアランスを伴うファージ粒子のインビボ配置速度論を理解および予測するために非限定的な2区画薬物動態モデルを開発した(図5C)。非限定的なモデルは、(i)全身血液プールおよび急速に灌流させた臓器(中心区画と呼称される)ならびに(ii)緩徐に灌流させた臓器、すなわち脂肪および筋肉(末梢区画と呼称される)からなる。肺気腔から全身血液プール(すなわち、中心区画)へのファージ粒子の輸送は1次吸収速度定数kaにより特徴決定される。肺気腔は、1次マクロファージ取込み速度定数kmacにより特徴決定される速度でファージ粒子を内部移行させることができる単核食細胞集団を含む。中枢および末梢区画は、1次移動速度定数k1,2およびk2,1により特徴決定される速度でファージ粒子を交換する。最後に、肝臓-脾臓経路またはMPSによる血液からの粒子のクリアランスは1次排出速度定数kexにより特徴決定される。薬物動態モデルは、質量保存の法則および質量作用の法則に基づき、常微分方程式(式2~5)の系により表される。図5Dに示されるように、モデルを、ファージ分布に対応するデータ(肺および血液)にフィッティングし、概算された速度論的パラメーターを示す(表4)。数学モデルフィットおよび実験的観察の間の強い相関(R>0.99、P<0.0001)はモデリングアプローチを裏付け、速度論的パラメーター概算値における信頼性を提供する(図5E)。CAKSMGDIVC提示ファージ粒子の全身バイオアベイラビリティは、中心区画速度論曲線の曲線下面積(AUC0-inf)による定量化で、対照無挿入ファージよりも約2桁大きい。さらに、モデルにより予測されるように、ターゲティングされたファージ粒子および非ターゲティングファージ粒子の両方は、示されるように、MPS臓器(例えば、肝臓、脾臓)中の隔離に起因して全身循環から急速にクリアランスされる(表4;図8C)。対照無挿入ファージの高い比率は肺区画に制限されたままであることを考慮すれば、血流(すなわち、中心区画)および緩徐に灌流させた臓器(すなわち、末梢区画)中のCAKSMGDIVC提示ファージ粒子の存在は、示されるように少なくとも1桁大きく(図5E;図8C)、肺投与でのターゲティングされたCAKSMGDIVC提示ファージ粒子の優れた全身バイオアベイラビリティを裏付ける。
【0178】
実施例6:CAKSMGDIVCは、非ヒト霊長動物において、ターゲティングされたファージ粒子の輸送を促進し、全身性で、堅牢で、かつ特異的な液性応答を誘発する
肺関門を通過するCAKSMGDIVC提示ファージ粒子のリガンド媒介性輸送はマウスにおいて効率的かつ安全であったことを考慮して、ワクチン接種戦略に向けた免疫化のためのエアロゾルファージベースの適用を検証するためにトランスレーショナル実験を大型動物モデルに拡張した。このアプローチの非限定的な目標は、CAKSMGDIVCリガンドペプチドの属性、および肺上皮細胞上に発現される対応する受容体α3β1インテグリンとのその機能的な相互作用の基礎となる独特の機序を探索して、エアロゾル送達に基づくターゲティングされた免疫化システムを開発することであった。ある特定の態様において、リガンド指向性ファージ粒子は、リンパ節を優先的に標的として特異的な全身性液性応答を誘導することができる。
【0179】
非ヒト霊長動物におけるワクチン接種プロトコールを設計するために、より早期の分析を拡張して、マウスでの肺および全身循環における液性応答を決定した。14日のファージエアロゾル投与後に、ファージ粒子に対して反応性のIgG、IgA、およびIgM免疫応答における全体的な増加が、CAKSMGDIVC提示ファージ粒子を投与されたマウスの血清およびBALFにおいて観察された。この増加は、対照、免疫前または無挿入ファージ粒子で免疫化されたマウスと比べて見られた(図10)。肺関門を通過するCAKSMGDIVC提示ファージ粒子のリガンド媒介性輸送はマウスにおいて安全であったことを考慮して、先を見据えてヒト患者にはるかによりよく似た実験モデルとして、旧世界ザルの周知の種であるアカゲザル(Macaca mulatta)にワクチン接種プロトコールを適用した。
【0180】
ファージエアロゾル処理を模倣するためのアカゲザルの免疫化用の前臨床試験プロトコールを設計し、それは、気管内経路を通じた2つの連続用量の1012 TUのターゲティングされたCAKSMGDIVC提示ファージ粒子または対照無挿入ファージ粒子のいずれかの投与を含んでいた。免疫化のスケジュールは図6Aに描写される。アカゲザルからの肺組織切片中のα3β1インテグリンの存在が共焦点顕微鏡法により確認された(図6B)。AT1細胞は、肺胞上皮細胞上に豊富に発現される終末糖化産物受容体(Receptor for Advanced Glycation Endproduct)(RAGE)の陽性タンパク質染色により同定された。α3インテグリン鎖およびRAGEは、AT1細胞の全体を通じて共局在化していた(図9A)。追加的に、健常なヒト患者からの肺組織切片上の肺胞および気道上皮細胞におけるα3β1インテグリンの発現が免疫組織化学により確認され(図9B)、これはこの技術のトランスレーションの努力をサポートする結果であった。
【0181】
各用量を28日毎に投与し、血清を14日毎に収集した。肺関門を通過する全身循環へのCAKSMGDIVC提示ファージ粒子の輸送が、第1の用量後に1時間毎に収集された血液試料において実証された。CAKSMGDIVC提示ファージ粒子は、末梢血中に投与の3h後に初めて検出され、5hまでさらに蓄積した。TUによる決定で、ファージ粒子における減少が6hの時点において観察された(図6C)。明確に対照的に、陰性対照無挿入ファージ粒子は、すべての時点において血流中に最小のレベルでのみ検出された。いかなる理論によっても限定されることを望まないが、肺関門を通過する血流へのターゲティングされたCAKSMGDIVC提示ファージ粒子の輸送は全身免疫応答を向上させることができる。ターゲティングされたCAKSMGDIVC提示ファージ粒子は、対照無挿入ファージよりも高い力価のファージ特異的IgG血清抗体を生成し、これは投与後28日目に開始して、第2の用量後、投与後42および56日目に著明に増加したことをELISAによる抗体応答の分析は指し示した(図6D)。
【0182】
CAKSMGDIVC提示ファージ粒子の肺輸送により生成された抗体応答の程度を評価するために、IgGおよびIgA血清抗体をさらに分析し、力価における倍数変化として表した。ベースラインと比べたターゲティングされたCAKSMGDIVC提示ファージ粒子または対照無挿入ファージの気管内投与により生成された液性応答を比較した。28日目に、ターゲティングされたCAKSMGDIVC提示ファージ粒子により誘導されたファージ特異的IgG抗体応答は、ベースラインと比べて力価における約6,000倍の増加を示した(図6E)。これは、対照無挿入ファージと比べたファージ特異的IgG力価における約4倍(ベースラインに対して約1,000倍)の増加を表す(図6Eおよび図9C)。CAKSMGDIVC提示ファージ粒子の第2の用量の投与は、42および56日目までに抗体レベルにおける実質的な増加を結果としてもたらし、最も高い差異は投与後56日目に観察され、その時点においてファージ特異的血清IgG抗体の平均力価は、無挿入対照ファージに対する持続的な約4倍の差異と共にベースラインよりも約200,000倍高かった(図6Eおよび図9C)。
【0183】
類似した結果がIgA血清抗体について観察された。CAKSMGDIVC提示ファージ粒子の投与は、ファージ特異的IgA血清抗体のより高い力価を生成し、これは投与後14日目に開始して、第2の用量後に、42および56日目までに大きく増加した(図6F)。28日目に、IgA抗体の平均力価は、ベースラインと比べて約50倍(図6G)および無挿入対照ファージよりも約3倍高い(図9D)増加を示す。
【0184】
ターゲティングされたCAKSMGDIVC提示ファージ粒子は強い特異的な全身液性応答を生成したという観察を、そのコグネイト合成ペプチドおよび対照無関連ペプチドを使用してELISAによるCAKSMGDIVC特異的IgGおよびIgA血清抗体の検出を用いてさらに実証した。CAKSMGDIVC特異的IgGおよびIgA血清抗体の検出が、血清IgGについて14日目(図6H)、および血清IgAについて28日目(図6I)に開始して観察された。CAKSMGDIVC特異的IgGおよびIgA抗体のいずれも、ベースラインと比べて力価において約8~12倍の増加を示し(図9E~9F)、第2の用量後に力価における実質的な変化はなかった。最小のバックグラウンド交差反応性のみが無関連の合成陰性対照ペプチドに対して検出された。ある特定の非限定的な態様において、ペプチド配列(CAKSMGDIVC)をコードする組換えマイナーコートタンパク質の低い質量表現があり、ファージ粒子当たり約3~5コピーのみのpIIIであり、高いコピー数を有するタンパク質(例えば、数百コピーと概算されるメジャーコートタンパク質pVIII)により凌駕される傾向がある。ある特定の態様において、ペプチドに対する抗体応答の特異性は、特異的な細胞性免疫応答のエピトープ認識および活性化を指し示す。以上を合わせて、空気血液関門を通過して血流へのCAKSMGDIVC提示ファージ粒子の選択的輸送はファージ粒子およびその選択されたリガンドペプチドに対する特異的な液性応答を著明に増加させ、そのため、エアロゾルファージベースのワクチンの開発における進歩となることをこれらの結果は指し示す。
【0185】
ある特定の態様において、これらの発見は、複数の適用のための肺標的送達におけるリガンドCAKSMGDIVCペプチドの有用性および効率をサポートし、α3β1インテグリンを内部移行させることにより媒介される肺上皮-内皮輸送の新たな分子的機序を明らかにする。
【0186】
(表1)質量分析により同定された候補受容体
【0187】
(表2)ターゲティングされたファージ粒子または対照ファージ粒子の輸送による細胞完全性
A549細胞障壁完全性
【0188】
(表3)経験的な数学的モデリングから得られた細胞単層を通過するファージ粒子輸送
【0189】
(表4)数学的モデリング分析から得られたファージ粒子のインビボ薬物動態
【0190】
選択されたコメント
エアロゾルベースの投与経路は過去何年にもわたり開発されてきたが、恐らくは運命および体内分布に関する機構的な洞察の欠如、ならびに非ターゲティングエアロゾル剤の潜在的に不都合な肺副作用のため、相対的にわずかな受け入れを達成したに過ぎない。本開示に記載されるように、バイアスなしのコンビナトリアルアプローチを使用して、検出可能な肺損傷なしに全身性の効果を成功裏に誘導するリガンド指向性肺送達システムを同定および検証した。α3β1インテグリンの独特かつ特有の役割の他に、インビボでの肺関門を通過して血流への新たなインデックスリガンドペプチド(すなわち、CAKSMGDIVC)を提示するターゲティングされたファージ粒子の取込みおよび輸送についての予測的な数学的モデリングの適用が示された。概念実証として、エアロゾルファージベースの適用を、ヒト患者に適用するためのエアロゾルファージベースのワクチンの開発に向けた初期工程として非ヒト霊長動物において試験した。高度に安定かつ免疫原性の抗原キャリア(すなわち、ウイルスファージ粒子)の肺送達のこの標的方法は、堅牢かつ特異的な液性免疫応答を誘発し、非限定的な方式において、ワクチンおよび/または他の治療的な開発のための、フィールド適用を有した。
【0191】
空気血液関門を通過する分子の生理学的輸送における機構的な洞察を得、それに結び付けられる表面受容体の多様性を探索するために、エアロゾルファージディスプレイランダムペプチドライブラリーのコンビナトリアルスクリーニングをマウスにおいて行った。血流から回収されたペプチド提示ファージ粒子のプールから、4つの有力なリガンドペプチド候補は肺関門を通過するファージ輸送を媒介した。これらの選択されたリガンドのうち、インデックスペプチドCAKSMGDIVCはインビボで最も高い輸送効率のうちの1つであると示し、データは、特異的なリガンド-受容体相互作用が肺標的送達の作因となる可能性があることを示唆した。エアロゾル投与で気道中に沈着したCAKSMGDIVC提示ファージ粒子の分布、輸送、およびクリアランスをインビボおよびエクスビボでモニターしたところ、ファージ輸送は検出可能な肺傷害をもたらさず、解剖学的な肺障害も生理学的な肺障害もなかったことが指し示され、この結果は、ファージ粒子は安全に吸入でヒトに投与するために好適であることをサポートする。
【0192】
リガンドCAKSMGDIVCペプチドの受容体を同定するために、一連のファージ結合アッセイをインビトロおよびインビボで行った。ヒト組換えα3β1インテグリンへの特異的結合、続いてCAKSMGDIVC提示ファージ粒子の機能的な結合および肺胞上皮サロゲートの細胞単層を通過するその輸送はリガンド-受容体相互作用を裏付けた。ターゲティングされたファージ粒子による肺関門の通過はリガンド-受容体媒介性の機序を通じて媒介されることの証拠が、インビボでの肺AT1、AT2およびクラブ細胞の表面上のα3β1インテグリンへのCAKSMGDIVC提示ファージ粒子の特異的結合により明確に確立された。クラブ細胞におけるα3β1の発現は高いが、ファージ輸送におけるそれらの機能的な関与は現在まで不明確なままであった。そのため、α3β1インテグリンの選択的なターゲティングを通じたリガンド指向性送達は、薬物安定性および分散のために透過増強剤または可溶化担体を必要とする従来の非ターゲティングエアロゾル製剤(Liang,Z.et al.,Drug Discov.Today,2015,20:380-389)に対する実質的な進歩となる。本開示は、肺におけるα3β1インテグリンによる選択的なリガンドの内部移行の機序を確立し、これは、非限定的な例において、インビボでの肺送達および結果的な免疫化での適用のために、有用である。
【0193】
本開示において導入されるリガンドペプチド指向性肺送達アプローチのトランスレーショナル適用をサポートするために、ターゲティングされたファージディスプレイベースのプロトコールを、複数の疾患に対する肺ワクチン接種に向けた原理証明としての肺および全身液性免疫化のためのエアロゾル戦略としてマウスおよび非ヒト霊長動物において設計した。気道を通じた病原体への一定の免疫原性曝露を考慮すれば、肺組織は、効率的な抗原提示が起こる宿主防御の高度に活発な部位である(しかし多くの場合に、評価されていないかまたは過少評価されている)。そのため、エアロゾル化された抗原の肺送達は、特には呼吸器感染症(SARS-CoV-2が挙げられるがこれに限定されない)に対する候補ワクチンまたは治療法の開発のために、他の投与の経路を上回る多くの利点を有する。さらに、CAKSMGDIVC提示ファージ粒子の選択的な肺輸送、続いて特異的な局所性および全身性の液性応答の活性化は、ワクチン学の長年の原則を再現する。本明細書において研究される肺送達システムは、空気中の病原体に対するワクチンの開発に向けた独特のトランスレーショナルな関連性を有する。
【0194】
エアロゾルファージベースのワクチンのトランスレーショナルな利益は多面的である。1つの局面において、ファージ粒子は苛酷な環境条件下で高度に安定であり、それらの大スケール製造は、ワクチン製造のために使用される伝統的な方法と比較した場合に極めて費用効果の高いものである(Barbu,E.M.et al.,Cold Spring Harb.Perspect.Biol.,2016,8(10):a023879;Bao,Q.et al.,Adv.Drug Deliv.Rev.,2019,145:40-56)。別の局面において、ファージ療法およびファージベースのワクチンは、検出可能な毒性副作用を誘導しない。実際に、ファージ粒子は、多剤耐性細菌に対する抗生物質として、または免疫原性ワクチンキャリアとして1世紀近く使用されており、安全かつ有効であることが証明されている(Schmidt,C.,Nat.Biotechnol.,2019,37:581-586;Barbu,E.M.et al.,Cold Spring Harb.Perspect.Biol.,2016,8(10):a023879)。実際に、ファージ投与は、マウス、ペットのイヌ、非ヒト霊長動物、さらに患者におけるファージライブラリーの投与を含めて、発見(discovery)および導入遺伝子送達適用に向けて活用されてきた(Staquicini,F.I.et al.,J.Clin.Invest.,2011,121:161-173;Pasqualini,R.et al.,Nature,1996,380:364-366;Hajitou,A.et al.,Cell,2006,125:385-398;Arap,W.et al.,Nat.Med.,2002,8:121-127)。さらに別の局面において、ネイティブなファージ粒子は、哺乳動物細胞に対するトロピズムを有さず、真核細胞の内側で複製せず、それらの使用は、他の古典的なウイルスベースのワクチン接種戦略と比較した場合に安全であると一般に考えられる。さらに別の局面において、最小の温度可動域(約1℃)に起因して多くの場合に不活性化され得る従来のペプチドベースのワクチンとは異なり、本明細書において導入されるシステムは、特に発展途上国における、フィールド適用の間の厳格ないわゆる「コールドチェーン」を保つための面倒かつ高価な必要条件を有しない。さらに別の局面において、開示されるファージディスプレイベースのシステムのリガンド-受容体の発見およびワクチン接種特性はまた、アデノ随伴ウイルス(AAV)およびファージのハイブリッドベクター(AAVPと称される)を使用することにより他のウイルス抗原、または導入遺伝子全体を提示するファージキメラの肺標的送達の開発のために使用することができる。さらに別の局面において、ファージ粒子は、免疫原性ワクチンキャリアとして数十年にわたり使用されており、それら自体が非常に強い免疫原であり、持続的な液性応答を誘発するための強力なアジュバントとして働く(Trepel,M.et al.,Cancer Res.,2001,61:8110-8112;de la Cruz,V.F.et al.,J.Biol.Chem.,1988,263:4318-4322;Aghebati-Maleki,L.et al.,J.Biomed.Sci.,2016,23:66;Barbu,E.M.et al.,Cold Spring Harb.Perspect.Biol.,2016,8(10):a023879)。実際に、ある特定の態様において、多剤耐性細菌感染症または進行中のSARS-CoV-2コロナウイルスのパンデミックの状況における抗菌剤としてのファージ粒子は、本明細書に記載のターゲティングされたエアロゾル戦略内での使用のために良好に適したものであり得る。
【0195】
列挙された態様:
以下の列挙された態様が提供されるが、そのナンバリングは、重要性のレベルを指定するものとして解釈されるべきではない。
態様1は、以下を提供する:
からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸配列を含む、単離された輸送ペプチド。
態様2は、以下を提供する:
SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含む、態様1の輸送ペプチド。
態様3は、以下を提供する:
SEQ ID NO:1~4からなる群より選択されるアミノ酸配列から本質的になる、態様1~2のいずれかの輸送ペプチド。
態様4は、以下を提供する:
SEQ ID NO:1~4からなる群より選択されるアミノ酸配列からなる、態様1~3のいずれかの輸送ペプチド。
態様5は、以下を提供する:
固体粒子の表面が、態様1~4のいずれかの輸送ペプチドを提示しており、前記固体粒子が、バクテリオファージ、操作された細胞、組織断片、ナノ粒子、小胞、デンドリマー、ウイルス様粒子、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノ随伴ウイルスファージ(AAVPと称される)、およびこれらの任意の組合せからなる群より選択される、前記固体粒子。
態様6は、以下を提供する:
前記輸送ペプチドが、前記固体粒子の表面に付着しているか、または前記固体粒子の表面上に提示されている、態様5の固体粒子。
態様7は、以下を提供する:
前記輸送ペプチドが、前記固体粒子の表面の少なくとも一部分に付着しているか、または前記固体粒子の表面の少なくとも一部分上に提示されている、態様5~6のいずれかの固体粒子。
態様8は、以下を提供する:
糸状ファージである、態様5~7のいずれかの固体粒子。
態様9は、以下を提供する:
治療用物質、生物学的に活性な分子、イメージング剤、放射性物質、塩、ペプチド、タンパク質、脂質、核酸、気体、およびこれらの任意の組合せからなる群より選択される作用物質をさらに含み、前記作用物質が、前記固体粒子に付着しており、かつ/または前記固体粒子内に含有されている、態様5~8のいずれかの固体粒子。
態様10は、以下を提供する:
糸状ファージである、態様5~9の固体粒子。
態様11は、以下を提供する:
前記糸状バクテリオファージがfd、fl、またはM13バクテリオファージを含む、態様10の固体粒子。
態様12は、以下を提供する:
前記固体粒子が糸状ファージであり、かつ前記固体粒子の表面が抗原を提示している、態様10~11のいずれかの固体粒子。
態様13は、以下を提供する:
対象の肺において空気血液関門を通過する固体粒子の輸送を促進しかつ/または増加させる方法であって、前記対象に態様5~12のいずれかの固体粒子を投与することを含み、投与が、経鼻、頬側、吸入、気管内、肺内、または気管支内を含む経路を通じたものである、前記方法。
態様14は、以下を提供する:
対象において固体粒子の全身循環を促進する方法であって、前記対象に態様5~12のいずれかの固体粒子を投与することを含み、投与が、経鼻、頬側、吸入、気管内、肺内、または気管支内を含む経路を通じたものである、前記方法。
態様15は、以下を提供する:
疾患または障害に対して対象を免疫化する方法であって、前記対象に態様5~12のいずれかの固体粒子を投与することを含み、前記固体粒子の表面が、前記対象における前記疾患または障害に対する免疫応答を促進する抗原を用いてさらに誘導体化されており、投与が、経鼻、頬側、吸入、気管内、肺内、または気管支内を含む経路を通じたものである、前記方法。
態様16は、以下を提供する:
対象において疾患または障害を処置し、寛解させ、かつ/または予防する方法であって、前記対象に態様5~12のいずれかの固体粒子を投与することを含み、前記固体粒子の表面が、前記対象における前記疾患または障害に対する免疫応答を促進する抗原を用いてさらに誘導体化されており、投与が、経鼻、頬側、吸入、気管内、肺内、または気管支内を含む経路を通じたものである、前記方法。
態様17は、以下を提供する:
疾患または障害を発症するリスクがある対象を処置する方法であって、前記対象に態様5~12のいずれかの固体粒子を投与することを含み、前記固体粒子の表面が、前記対象における前記疾患または障害に対する免疫応答を促進する抗原を用いてさらに誘導体化されており、投与が、経鼻、頬側、吸入、気管内、肺内、または気管支内を含む経路を通じたものである、前記方法。
態様18は、以下を提供する:
前記ペプチドがSEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含む、態様13~17のいずれかの方法。
態様19は、以下を提供する:
前記ペプチドがSEQ ID NO:2のアミノ酸配列からなる、態様13~18のいずれかの方法。
態様20は、以下を提供する:
前記固体粒子が糸状ファージである、態様13~19のいずれかの方法。
態様21は、以下を提供する:
前記糸状バクテリオファージがfd、fl、またはM13バクテリオファージを含む、態様20の方法。
態様22は、以下を提供する:
免疫原性アジュバントをさらに含む組成物中で、前記固体粒子が前記対象に投与される、態様13~21のいずれかの方法。
態様23は、以下を提供する:
前記対象が哺乳動物である、態様13~22のいずれかの方法。
態様24は、以下を提供する:
前記対象がヒトである、態様13~23のいずれかの方法。
態様25は、以下を提供する:
固体粒子を含み、前記固体粒子の表面が、請求項1の輸送ペプチドを少なくとも1つ提示しており、かつ前記固体粒子が、バクテリオファージ、操作された細胞、組織断片、ナノ粒子、小胞、デンドリマー、ウイルス様粒子(VLP)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、アデノ随伴ウイルスファージ(AAVPと称される)、およびこれらの組合せからなる群より選択される、ワクチン。
態様26は、以下を提供する:
DNAワクチン、RNAワクチン、複製性ウイルスベクターワクチン、非複製性ウイルスベクターワクチン、不活化ウイルスベクターワクチン、ウイルス様粒子ワクチン、およびこれらの任意の組合せからなる群より選択される、態様25のワクチン。
態様27は、以下を提供する:
前記粒子が、DNA、RNA、複製性ウイルスベクター、非複製性ウイルスベクター、不活化ウイルスベクター、ウイルス様粒子、およびこれらの任意の組合せからなる群より選択されるワクチン活性物質を含む、態様25~26のいずれかのワクチン。
【0196】
他の態様:
本明細書における可変要素の任意の定義における要素の列記の記載は、列記される要素の任意の単一の要素または組合せ(もしくは部分的組合せ)としてのその可変要素の定義を含む。本明細書における態様の記載は、任意の単一の態様としての、または任意の他の態様もしくはその部分と組み合わせた、その態様を含む。
【0197】
本明細書において参照される各々のおよびあらゆる特許、特許出願、および刊行物の開示は、参照により全体が本明細書に組み入れられる。本開示が特有の態様を参照して開示されたが、本開示の真の精神および範囲から離れることなく本開示の他の態様およびバリエーションが当業者により開発され得ることは明らかである。添付の請求項は、すべてのそのような態様および同等なバリエーションを含むと解釈されることが意図される。
図1
図2
図3
図4-1】
図4-2】
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【配列表】
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【国際調査報告】