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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-01
(54)【発明の名称】熱特性が向上した電気モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/32 20060101AFI20221124BHJP
   H02K 9/19 20060101ALI20221124BHJP
   H02K 3/34 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
H02K3/32
H02K9/19 A
H02K3/34 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520481
(86)(22)【出願日】2020-07-07
(85)【翻訳文提出日】2022-04-26
(86)【国際出願番号】 US2020040964
(87)【国際公開番号】W WO2021066917
(87)【国際公開日】2021-04-08
(31)【優先権主張番号】62/909,850
(32)【優先日】2019-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513307933
【氏名又は名称】パーカー-ハネフィン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】PARKER-HANNIFIN CORPORATION
【住所又は居所原語表記】6035 Parkland Blvd. Cleveland, OH 44124 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ドブマイアー,ジョセフ・エル
(72)【発明者】
【氏名】ウアード,スティーヴン
【テーマコード(参考)】
5H604
5H609
【Fターム(参考)】
5H604AA03
5H604BB14
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC15
5H604DA04
5H604DA23
5H604DA25
5H604PB03
5H609PP06
5H609PP09
5H609QQ01
5H609QQ08
5H609QQ18
5H609QQ23
5H609RR37
5H609RR58
(57)【要約】
電気モータの例示的な固定子は、放射状配列で互いに隣接して配置された複数のセグメントを備えるラミネーションスタックと、ラミネーションスタックの複数のセグメントのうちのセグメントに形成されたスロットと、スロットに配置され、電気絶縁性であるように構成されたスロットライナと、スロットライナとセグメントとの間のギャップに配置された熱伝導性ギャップ充填剤と、スロットに配置された巻線とを含む。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気モータの固定子であって、
ラミネーションスタックと、
前記ラミネーションスタックに形成されたスロットと、
前記スロットに配置され、電気絶縁性であるように構成されたスロットライナと、
前記スロットライナと前記ラミネーションスタックとの間のギャップに配置された熱伝導性ギャップ充填剤と、
前記スロットに配置された巻線とを備える、固定子。
【請求項2】
前記スロットライナは、第1の側面部と、第2の側面部と、前記第1の側面部を前記第2の側面部に接続するように構成された接続部とを備え、前記熱伝導性ギャップ充填剤は、前記第1の側面部、前記第2の側面部、または前記接続部のうちの1つまたは複数に沿って配置される、請求項1に記載の固定子。
【請求項3】
前記ラミネーションスタックの外周面に配置されたチャネルに配置された冷却チューブと、
前記冷却チューブと、前記ラミネーションスタックの前記外周面との間のそれぞれのギャップに配置されたそれぞれの熱伝導性ギャップ充填剤とをさらに備える、請求項1に記載の固定子。
【請求項4】
前記チャネルは、形状が半円形であり、前記ラミネーションスタックの前記外周面を横切って長手方向に配置された、請求項3に記載の固定子。
【請求項5】
前記ラミネーションスタックは、放射状アレイで互いに隣接して配置された複数のセグメントを備え、前記スロットは、前記複数のセグメントのうちのセグメントに形成され、前記固定子はさらに、
前記巻線と前記セグメントとの間の前記セグメントの第1の端部に配置され、電気絶縁性であるように構成された第1のエンドターン絶縁体と、
前記巻線と前記セグメントとの間の前記セグメントの第2の端部に配置され、電気絶縁性であるように構成された第2のエンドターン絶縁体とを備える、請求項1に記載の固定子。
【請求項6】
前記熱伝導性ギャップ充填剤は、中に熱伝導性固体粒子が懸濁している鉱油を備える、請求項1に記載の固定子。
【請求項7】
前記熱伝導性ギャップ充填剤は、(i)ポリマゲル成分と、(ii)粒子状充填剤成分との混合物を備える、請求項1に記載の固定子。
【請求項8】
電気モータのアセンブリであって、
開放環状空間を有する固定子であって、
放射状アレイに互いに隣接して配置された複数のセグメントを備えるラミネーションスタックと、
前記ラミネーションスタックの前記複数のセグメントの隣接するセグメント間に形成された複数のスロットと、
前記複数のスロットに配置され、電気絶縁性であるように構成されたそれぞれのスロットライナと、
前記それぞれのスロットライナと、前記ラミネーションスタックの前記複数のセグメントとの間のそれぞれのギャップに配置された熱伝導性ギャップ充填剤と、
前記複数のスロットに配置された巻線とを備える固定子と、
前記固定子の前記開放環状空間に配置された回転子であって、
鋼製コアと、
前記鋼製コアの周りにそれぞれの放射状アレイに配置された複数の磁石とを備える回転子とを備える、アセンブリ。
【請求項9】
各スロットライナは、2つの個別のスロットライナを備え、各個別のスロットライナは、第1の側面部と、第2の側面部と、前記第1の側面部を前記第2の側面部に接続するように構成された接続部とを備え、前記熱伝導性ギャップ充填剤は、前記第1の側面部、前記第2の側面部、または前記接続部のうちの1つまたは複数に沿って配置される、請求項8に記載のアセンブリ。
【請求項10】
複数の冷却チューブであって、前記複数の冷却チューブの各冷却チューブは、前記ラミネーションスタックの前記複数のセグメントのうちのセグメントの外周面に配置されたチャネルに配置された、複数の冷却チューブと、
前記冷却チューブと、前記セグメントの前記外周面との間のそれぞれのギャップに配置されたそれぞれの熱伝導性ギャップ充填剤とをさらに備える、請求項8に記載のアセンブリ。
【請求項11】
前記チャネルは、形状が半円形であり、前記セグメントの前記外周面を横切って長手方向に配置された、請求項10に記載のアセンブリ。
【請求項12】
前記巻線とそれぞれの前記セグメントとの間の前記複数のセグメントのそれぞれのセグメントの第1の端部に配置され、電気絶縁性であるように構成された第1のエンドターン絶縁体と、
前記巻線とそれぞれの前記セグメントとの間のそれぞれの前記セグメントの第2の端部に配置され、電気絶縁性であるように構成された第2のエンドターン絶縁体とをさらに備える、請求項8に記載のアセンブリ。
【請求項13】
前記熱伝導性ギャップ充填剤は、中に熱伝導性固体粒子が懸濁している鉱油を備える、請求項8に記載のアセンブリ。
【請求項14】
前記熱伝導性ギャップ充填剤は、(i)ポリマゲル成分と、(ii)粒子状充填剤成分との混合物を備える、請求項8に記載のアセンブリ。
【請求項15】
方法であって、
電気モータの固定子のラミネーションスタックのセグメントを提供することであって、前記ラミネーションスタックの前記セグメントはスロットを備える、提供することと、
電気絶縁材料で形成されたスロットライナを提供することと、
前記スロットライナの外面に熱伝導性ギャップ充填剤を塗布することと、
前記熱伝導性ギャップ充填剤が、前記スロットライナの前記外面と前記セグメントとの間に配置されるように、前記熱伝導性ギャップ充填剤が塗布された前記スロットライナを、前記ラミネーションスタックの前記セグメントの前記スロットに挿入することと、
前記スロットライナおよび前記熱伝導性ギャップ充填剤が、前記ワイヤと前記セグメントとの間に配置されるように、前記セグメントの周りにワイヤを巻くこととを含む、方法。
【請求項16】
前記スロットライナは、第1の側面部と、第2の側面部と、前記第1の側面部を前記第2の側面部に接続するように構成された接続部とを備え、前記熱伝導性ギャップ充填剤を、前記スロットライナの前記外面に塗布することは、前記第1の側面部、前記第2の側面部、または前記接続部のうちの1つまたは複数に沿って前記熱伝導性ギャップ充填剤を塗布することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
それぞれの熱伝導性ギャップ充填剤を冷却チューブのそれぞれの外面に塗布することと、
前記セグメントの外周面に配置されたチャネルに前記冷却チューブを挿入することとをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記チャネルに前記冷却チューブを挿入することは、半円形チャネルに前記冷却チューブを挿入することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ワイヤが前記セグメントの第1の端部から電気的に絶縁されるように、前記セグメントの前記第1の端部に第1のエンドターン絶縁体を取り付けることと、
前記ワイヤが前記セグメントの第2の端部から電気的に絶縁されるように、前記セグメントの前記第2の端部に第2のエンドターン絶縁体を取り付けることとをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記熱伝導性ギャップ充填剤を塗布することは、(i)中に熱伝導性固体粒子が懸濁している鉱油、または(ii)ポリマゲル成分と粒子状充填剤成分との混合物を塗布することを含む、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年10月3日に出願された米国仮出願第62/909,850号の優先権を主張し、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に、熱特性が向上し、電気モータの周囲環境への熱伝達が向上した電気モータを含むシステムおよびアセンブリに関する。
【背景技術】
【0003】
電気モータは、電気エネルギを機械エネルギに変換する電気機械である。ほとんどの電気モータは、モータの磁場と巻線の電流との相互作用によって動作し、シャフトの回転の形態で力を生成する。電気モータは、バッテリ、自動車、または整流器などの直流(DC)電源、または送電網、インバータ、または発電機などの交流(AC)電源から電力を供給できる。
【0004】
モータのシャフトで生成されるトルクおよび電力は、巻線を介して導入される電流または電力の量によって制限される。電流が一定の制限を超えて増加すると、巻線の温度が上昇し、ワイヤおよび電気モータに損傷を与える可能性がある。
【0005】
したがって、巻線からの熱伝達を高め、それによって所与の電流導入に対する巻線の温度を下げ、モータへの損傷を防ぎ、そして電流制限の増加を可能にするために、熱特性が向上した電気モータを有することが望ましい場合がある。これらおよび他の考慮事項に関して、本明細書でなされる開示が提示される。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、熱特性が向上した電気モータに関する実施を説明する。
【0007】
第1の例示的な実施において、本開示は、電気モータの固定子を説明する。固定子は、(i)ラミネーションスタックと、(ii)ラミネーションスタックに形成されたスロットと、(iii)スロットに配置され、電気絶縁性であるように構成されたスロットライナと、(iv)スロットライナとラミネーションスタックとの間のギャップに配置された熱伝導性ギャップ充填剤と、(v)スロットに配置された巻線とを備える。
【0008】
第2の例示的な実施において、本開示は、電気モータのアセンブリを説明する。アセンブリは、開放環状空間を有する固定子を含む。固定子は、(i)放射状アレイに互いに隣接して配置された複数のセグメントを備えるラミネーションスタックと、(ii)ラミネーションスタックの複数のセグメントの隣接するセグメント間に形成された複数のスロットと、(iii)複数のスロットに配置され、電気絶縁性であるように構成されたそれぞれのスロットライナと、(iv)それぞれのスロットライナと、ラミネーションスタックの複数のセグメントとの間のそれぞれのギャップに配置された熱伝導性ギャップ充填剤と、(v)複数のスロットに配置された巻線とを備える。アセンブリはさらに、固定子の開放環状空間に配置され、鋼製コアと、鋼製コアの周りにそれぞれの放射状アレイに配置された複数の磁石とを備える、回転子を含む。
【0009】
第3の例示的な実施において、本開示は方法を説明する。方法は、(i)電気モータの固定子のラミネーションスタックのセグメントを提供することであって、ラミネーションスタックのセグメントはスロットを備える、提供することと、(ii)電気絶縁材料で形成されたスロットライナを提供することと、(iii)スロットライナの外面に熱伝導性ギャップ充填剤を加えることと、(iv)熱伝導性ギャップ充填剤が、スロットライナの外面とセグメントとの間に配置されるように、熱伝導性ギャップ充填剤が加えられたスロットライナを、ラミネーションスタックのセグメントのスロットに挿入することと、(v)スロットライナおよび熱伝導性ギャップ充填剤が、ワイヤとセグメントとの間に配置されるように、セグメントの周りにワイヤを巻くこととを含む。
【0010】
前述の概要は単なる例示であり、決して限定することを意図するものではない。上記の例示的な態様、実施、および特徴に加えて、さらなる態様、実施、および特徴は、図面および以下の詳細な説明を参照することによって明らかになるであろう。
【発明の効果】
【0011】
例示的な例の特徴であると信じられている新規の特徴は、添付の特許請求の範囲に記載されている。しかしながら、例示的な例、ならびに好ましい使用モード、さらなる目的およびその説明は、添付の図面と併せて読むとき、本開示の例示的な例の以下の詳細な説明を参照することによって最もよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、例示的な実施による、電気モータの斜視図である。
図2図2は、例示的な実施による、固定子と固定子内に取り付けられた回転子の斜視図である。
図3図3は、例示的な実施による、固定子のラミネーションスタックの斜視図である。
図4図4は、例示的な実施による、ラミネーションスタックのそれぞれのスロットに配置された断熱スロットライナの分解図である。
図5図5は、例示的な実施による、個々のスロットライナの斜視図である。
図6図6は、例示的な実施による、固定子のワイヤの組み立ておよび巻き付け前のラミネーションスタックのセグメントに関連付けられた構成要素を示す図である。
図7図7は、例示的な実施による、構成要素を組み立ててワイヤを巻き付けた後のラミネーションスタックのセグメントを示す図である。
図8図8は、例示的な実施による、ラミネーションスタックのセグメントの部分断面図である。
図9図9は、例示的な実施による、スロットライナと、ラミネーションスタックのセグメントとの間、および、冷却チューブと、ラミネーションスタックのセグメントとの間のギャップの部分に、熱伝導性ギャップ充填剤を配置することを示す図である。
図10図10は、例示的な実施による、スロットライナと、ラミネーションスタックのセグメントとの間、および、冷却チューブと、ラミネーションスタックのセグメントとの間の界面全体に熱伝導性ギャップ充填剤を配置することを示す図である。
図11図11は、例示的な実施による、固定子または電気モータを組み立てるための方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
電気モータのシャフトで生成されるトルクおよび電力は、電気モータの巻線を介して導入される電流または電力の量によって制限できる。電流が一定の制限を超えて増加すると、ワイヤおよびモータに損傷を与える可能性がある。
【0014】
例の中で、本明細書に開示されるものは、熱的および熱伝達特性を向上した電気モータに関連するシステムおよびアセンブリである。特に、開示されたシステムは、巻線絶縁ライナと電気モータのラミネーションスタックとの間に熱伝導性ギャップ充填剤を使用する。熱伝導性ギャップ充填剤は、電気モータの冷却チューブと、冷却チューブが配置されるラミネーションスタックチャネルとの間に配置することもできる。熱伝導性ギャップ充填剤は、電気モータの巻線からの熱伝達を向上させることができる。
【0015】
熱伝達の向上により、電気モータの電流制限を高めることができるため、同じ電気モータで、より高いトルクおよび電力を生成できる。また、熱伝達の向上により、所与のトルク出力に対して、より低い温度で電気モータを運転することが可能となり、それによって、電気モータの効率を向上させる。
【0016】
図1は、例示的な実施形態による、電気モータ100の斜視図を示す。電気モータ100は、固定子102を含む。固定子102は、磁場を生成するように構成される。特に、以下に説明するように、固定子102は、ラミネーションスタックの周りに巻き付けられた巻線を含むことができ、巻線に電流が提供されると、磁場が発生する。固定子102はまた、電気モータ100を利用する機械またはデバイスへの電気モータ100の取り付けを可能にするための取付場所103を含むことができる。
【0017】
電気モータ100は、回転子104をさらに含む。固定子102は、回転子104が配置される開放環状空間を有することができる。回転子104には、回転してトルクを生成するために、固定子102によって生成された磁場と相互作用することができる磁石が取り付けられ得る。回転子104は、たとえば、ベアリング106を介して固定子102に取り付けられることにより、固定子102に対して回転することができる。
【0018】
シャフト108は、回転子104に結合することができ、シャフト108は、回転子104によって生成されたトルクを、たとえば、ギアボックスまたは機械の構成要素に伝達して、そのような構成要素を回転させるように構成される。電気モータ100は、発生したトルクおよび結果として生じるシャフト108の回転運動を利用する機械への電気モータ100の取り付けをさらに容易にするために、別の取付場所109を含むことができる。
【0019】
電気モータ100は、回転子104の位置を示すセンサ情報を、電気モータ100の電子コントローラに提供するフィードバックデバイス110(たとえば、センサ)などの他の構成要素を含むことができる。次に、電子コントローラは、適切な時間に固定子102の巻線に通電して、所望のトルクを達成することができる。
【0020】
ケーブル112を使用して、固定子102の巻線に電流を供給することができる。ケーブル112はまた、フィードバックデバイス110によって生成された電気信号を送信して、回転子104の位置を増幅器に示すために使用することができる。
【0021】
図2は、例示的な実施形態による、固定子102および固定子102内に取り付けられた回転子104のアセンブリ200の斜視図を示す。固定子102は、鋼製コアを有することができる。固定子102は、ラミネーションスタックを含むことができる。ラミネーションスタックは、単一部品(たとえば、単一体構造)として作成することも、図3に関して以下に説明するように、複数のセグメントを備えることもできる。
【0022】
電線は、ラミネーションスタックのセグメントに巻かれる。たとえば、図2は、固定子102のセグメントに巻かれたコイル201などの個々のコイル(ワイヤの束)を示す。電気的短絡の発生を防ぐために、コイルは互いに分離されている。ワイヤに電流が提供されると、コイルは電磁石として動作し、磁場を発生させることができる。
【0023】
回転子104はまた、鋼製コアを有することができる。回転子104はさらに、回転子104の鋼製コアの周りに放射状または円周方向のアレイに配置された磁石202などの複数の磁石(たとえば、永久磁石)を有することができる。
【0024】
固定子102のコイルに提供される電流を、特定のシーケンスで、固定子102のそれぞれのセグメントの個々のコイルに提供することができる。このように、固定子のコイルによって生成された磁場は、固定子102の周りを円形に効果的に移動または変化することができる。磁場は、回転子104の磁石と相互作用し、磁場と磁石とのそのような相互作用により、回転子104(およびそれに結合されたシャフト108)を回転させる。
【0025】
図3は、例示的な実施による、固定子102のラミネーションスタック300の斜視図を示す。図3に示されるように、ラミネーションスタック300は、一般にドーナツ型であり、回転子104を配置することができる開放環状空間302を有する。ラミネーションスタック300は、ラミネート電磁鋼板を備える。ラミネーションは、複合材料が、向上された強度、安定性、遮音性、外観、または他の望ましい電気的特性を実現するように、複数の層で材料を製造する技法/処理である。
【0026】
ラミネーションスタック300は、シリコンが添加された鋼を備える、電気鋼としても知られるケイ素鋼でできている。鋼にシリコンを追加すると、電気抵抗が増加し、磁場が鋼を貫通する能力が向上し、鋼のヒステリシス損失が減少する。ラミネーションスタック300は、固定子102のコアを表し、電流が固定子102の巻線によって変調されるときに、誘導される循環電流および関連する熱を低減するために、ラミネートおよび絶縁される。
【0027】
例では、ラミネーションスタック300は、セグメント化されていない単一部品または単一構成要素として作成することができる。たとえば、ラミネーションスタック300は、歯車と同様の歯を有することができ、歯の間のスロットまたは空間を介してワイヤを受け入れるように構成することができる。
【0028】
別の例では、ラミネーションスタック300は、セグメント304、セグメント306、およびセグメント308などの複数のセグメントを含み、放射状アレイにおいて互いに隣接して配置され、おのおのと接する。セグメントは、一般に、その両側にC字形のサイドチャネルまたはスロットを有するIビームとして形成または成形される。したがって、2つの隣接するセグメントが互いに接するとき、スロットがそれらの間に形成され、2つの隣接するセグメントのC字形のチャネルまたはそれぞれのスロットを備える。たとえば、スロット310は、セグメント304とセグメント306との間に形成され、スロット312は、セグメント306とセグメント308との間に形成される。以下の説明は、ラミネーションスタック300の複数セグメント構造に言及しているが、同様の説明が、単一構造を有し、セグメント化されていない単一構成要素として作成されたラミネーションスタックに適用されることを理解されたい。そのような構成要素は、以下に説明するスロットライナを受け入れるためにその中に作られたスロット310、312と同様の穴、チャネル、またはスロットを有することができる。
【0029】
スロット310、312のおのおのは、ラミネーションスタック300の1つのセグメントに形成された1つのスロット(部分スロット)と、ラミネーションスタック300の隣接するセグメントに形成された第2のスロット(部分スロット)とを備える。「スロット」という用語は、本明細書では、スロット310またはスロット312などの完全なスロットを指すために使用され、ラミネーションスタックのセグメントの個々のスロットまたは部分スロット(C字型のチャネル)を指すためにも使用される。ワイヤは、図2に示されるコイル201のようなワイヤ束またはコイルのラミネーションスタック300のスロットに巻かれる。
【0030】
ワイヤに電流が提供されると、ワイヤの温度が上昇し、熱が発生する。熱は巻線損失と呼ばれることがある。ワイヤの温度上昇は、以下に説明するように、損傷を引き起こし、電気モータ100の性能を制限する可能性がある。
【0031】
例では、ラミネーションスタック300およびその中に配置されたワイヤを冷却するために、ラミネーションスタック300を液冷することができる。図3に図示されるように、セグメントのおのおのは、形状が半円形であるチャネルをその中に配置することができる。たとえば、セグメント304は、セグメント304の外周面を横切って長手方向に配置された半円形チャネル314を有する。チューブは、半円形チャネル314を介して配置することができ、冷却流体は、そのようなチューブを介して提供することができ、それによって、ワイヤによって生成される熱の一部を吸収し、ラミネーションスタック300およびその中に配置されたワイヤを冷却する。
【0032】
固定子102のコイルは、上述したように個別に通電されて、移動または変化する磁場を生成する。そのため、コイルのワイヤをラミネーションスタック300から電気的に絶縁して、2つの隣接するコイルのワイヤ間の短絡または電気的接続を防ぐことが望ましい。ラミネーションスタック300のセグメントからワイヤを隔離するために、絶縁ライナをラミネーションスタック300のスロットに配置して、電気絶縁体として機能させることができる。たとえば、紙のライナを断熱ライナとして使用できる。
【0033】
図4は、例示的な実施による、ラミネーションスタック300のそれぞれのスロットに配置された絶縁スロットライナの分解図を示し、図5は、個々のスロットライナ500の斜視図を示す。ラミネーションスタック300のスロットは、図4の放射状アレイに示されているそれぞれの断熱紙スロットライナをその中に受け入れることができる。たとえば、絶縁紙スロットライナ400をスロット310に挿入することができ、絶縁紙スロットライナ402をスロット312に挿入することができる。例では、絶縁紙スロットライナは、2つの個別のスロットライナで構成することができ、2つの個別のスロットライナの各スロットライナは、U字形またはC字形を有することができ、その結果、それらが横方向の縁で出会うとき、スロットまたはチャネルがそれらの間に形成され、それを通して、固定子102のコイルのワイヤが配置される。
【0034】
図5は、そのようなスロットライナ500の例を示す。スロットライナ500は、第1の側面部502、第2の側面部504、および側面部502を側面部504に結合または接続する接続部506を有することができる。この構成によって、スロットライナ500は、その中にチャネル(たとえば、C字型のチャネル)を形成する。
【0035】
スロットライナ500と同様の2つのスロットライナが、スロットライナの側面部のそれぞれの縁が互いに接するように(すなわち、接続部が互いに接するのではなく、それぞれのCチャネルが間に配置された状態で、むしろ互いに反対に配置されるように)互いに隣に配置され、図4に示される絶縁紙スロットライナの絶縁紙スロットライナが形成される。スロットライナ(たとえば、スロットライナ500)は、ラミネーションスタック300のそれぞれのセグメントのスロットに個別に挿入することができる。
【0036】
別の例では、絶縁紙スロットライナ400、402は、2つの個別のスロットライナではなく、単一の長方形のライナとして作成することができる。さらに別の例では、絶縁紙スロットライナ400、402のような別個の絶縁紙スロットライナを有するのではなく、ラミネーションスタック300全体のスロットライナを、一周してラミネーションスタック300のそれぞれのスロットを裏打ちする単一構成要素として作成することができる。
【0037】
図6は、例示的な実施による、固定子102の組み立ておよびワイヤの巻き付け前の、ラミネーションスタック300のセグメント600に関連付けられた構成要素を示す。セグメント600は、ラミネーションスタック300のセグメントのいずれか(たとえば、セグメント304、306、308のいずれか)を表すことができる。
【0038】
上述したように、ラミネーションスタック300のセグメントは、一般に、その両側にC字形のチャネルを有するIビームとして形成または成形される。セグメント600は、第1のスロットまたは第1のチャネル602と、第2のスロットまたは第2のチャネル604とを有することができる。第1のスロットライナ606は、第1のチャネル602に配置することができ、同様に、第2のスロットライナ608は、第2のチャネル604に配置することができる。スロットライナ606、608はまた、セグメント600のチャネル602、604の形状に適合するようにC字形にすることができる。ワイヤがセグメント600の周りに巻かれるとき、スロットライナ606、608は、ワイヤをセグメント600の側面(すなわち、チャネル602、604の表面)から絶縁する。
【0039】
スロットライナ606、608は、セグメント600の端部まで延在せず、ワイヤがセグメント600の端部を包むので、セグメント600の端面をワイヤのエンドターンから隔離しない場合がある。ワイヤのエンドターンを絶縁するために、第1のエンドターン絶縁体610を、セグメント600の第1の端部に挿入することができ、ワイヤを巻く前に、第2のエンドターン絶縁体612をセグメント600の第2の端部に挿入することができる。
【0040】
図7は、例示的な実施による、その構成要素を組み立て、ワイヤ700を巻いた後のセグメント600を示す。図7に示されるように、スロットライナ606などのスロットライナは、セグメント600のそれぞれのチャネルに配置され、エンドターン絶縁体610、612もまた、セグメント600のそれぞれの端部に挿入される。次に、ワイヤ700をセグメント600の周りに巻き付けて、セグメント600に関連付けられたコイルを形成することができる。
【0041】
この構成によって、ワイヤ700は、セグメント600から電気的に絶縁され、したがって、ラミネーションスタック300の複数のセグメントが放射状アレイに組み立てられて、ラミネーションスタック300を形成するとき、それらのそれぞれのコイルは、互いに電気的に絶縁される。さらに、ワイヤを、電気絶縁材料(たとえば、ナイロンポリアミドなどの合成ポリマ)でコーティングして、所与のセグメントの個々のワイヤを互いに隔離し、電気的短絡を防ぐことができる。
【0042】
チャネル602、604に挿入されると、スロットライナ606、608の外面は、ラミネーションスタック300のセグメント600の内面と接することができる。しかしながら、ギャップは、スロットライナ606、608の外面と、セグメント600の内面とを分離することができる。
【0043】
図8は、例示的な実施による、セグメント600の部分断面図を示す。図8に示されるように、スロットライナ606がセグメント600のチャネル602に挿入されるとき、ギャップ800は、側面部(たとえば、側面部502、504)および接続部(たとえば、接続部506)の外面を、スロットライナ606が配置されているセグメント600のチャネル602の内面から分離することができる。
【0044】
図3に関して上述したように、ラミネーションスタック300のセグメントのおのおのは、冷却チューブを受け入れるために、中に配置された半円形チャネルを有することができる。たとえば、セグメント600は、図8に示されるように、冷却チューブ802を受け入れることができる。別のギャップ804は、冷却チューブ802が配置されている半円形チャネルを境界付けるセグメント600の内面から冷却チューブ802を分離することができる。
【0045】
電気モータ100のワイヤ(たとえば、ワイヤ700)を介して電流が提供されると、熱が発生し、電気モータ100の構成要素の温度が上昇する可能性がある。電気モータ100のワイヤまたはコイルから発生する熱は、巻線損失と呼ぶことができ、ワイヤの電流(I)および電気抵抗(R)の大きさに基づいて決定することができる。特に、巻線損失は、IRとして決定することができる。
【0046】
さらに、発生した熱(巻線損失)は、ワイヤの温度(Tw)、周囲温度(Ta)、および巻線から周囲への熱抵抗(Rthwa)に基づく特定の熱伝達率(q)で、電気モータ100の周囲環境に伝達することができる。特に、熱伝達は、以下の式、
【0047】
【数1】
【0048】
によって決定することができる。
【0049】
所与の周囲温度Ta、電気抵抗R、および巻線から周囲への熱抵抗Rthwaに対して、式(1)は、巻線温度Twが電流の2乗(I)に比例することを示す。電気モータ100の動作中に、巻線温度Twが、しきい値レベルを超えると、電気モータ100に損傷を与える可能性がある。たとえば、ワイヤのコーティング(たとえば、ポリアミドコーティング)が損傷する可能性があり、それにより、コイルまたは巻線の個々のワイヤが互いに接触し、電気的短絡が発生する可能性がある。
【0050】
電気モータ100への損傷を防ぐために、電流(I)の大きさは、巻線損失が特定のレベルを超えて、巻線温度Twがしきい値レベルを超えるのを防ぐように制限される。しかしながら、電流(I)の大きさを制限することはまた、電気モータ100が生成することができるトルクの大きさを制限することもできる。特に、電気モータ100が生成するトルク(T)は、T=KIとして決定することができ、ここで、Kは、モータトルク定数であり、固定子102の長さおよびワイヤの巻き数によって乗じられた定数に基づく。電気モータ100によって生成される電力(P)は、P=Tω=KIωとして決定することができ、ここで、ωは、回転子104またはそれに結合されたシャフト108の回転速度である。
【0051】
そのため、電流Iの大きさを制限することはまた、電気モータ100が生成することができるトルクTおよび電力Pも制限する。さらに、特定の電力レベルでは、発生する熱の量は、電気モータ100の効率(たとえば、電気モータ100によって生成される電力Pを、電気モータ100に提供される電力で除した比)に影響を及ぼす可能性がある。特定の電力出力Pに対してより低い巻線温度Twで電気モータ100を運転することで、電気モータ100の効率を高めることができる。
【0052】
上記で論じたスロットライナ(たとえば、スロットライナ500、606、608)は、電気絶縁性であるように構成されているが、熱伝導性ではない可能性があり、したがって、環境に対するより高い熱抵抗を引き起こし、ワイヤから環境への熱伝達を妨げる可能性がある。言い換えれば、熱伝導性材料でできているように構成されていないスロットライナは、Rthwaを増加させる可能性がある。さらに、スロットライナとラミネーションスタックのセグメントとの間にギャップ(たとえば、ギャップ800)がある場合、ギャップは空気で満たされ得、これは、Rthwaをさらに増加させる可能性がある。
【0053】
電気モータ100が、その構成要素に損傷を与えることなくより大きな電流(I)を受け取ることを可能にする1つの手法は、巻線から周囲への熱抵抗(Rthwa)を低減することを含む。上記の式(1)に基づいて、Rthwaを低減することにより、より大きな電流(I)に対して、巻線温度Twを、特定のレベルに維持することができ、これにより、電気モータ100は、その構成要素を損傷することなく、より高いトルク(T)および電力(P)の生成が可能となる。あるいは、同じ電流レベル(I)を使用することができ、電気モータ100は、巻線温度Twを低下させながら同じトルク(T)および電力(P)を生成することができ、それによって電気モータ100の効率を高める。
【0054】
例では、巻線から周囲への熱抵抗(Rthwa)を低減することは、スロットライナ(たとえば、スロットライナ606)と、(たとえば、ギャップ800における)ラミネーションスタック300との間のギャップに、熱伝導性ギャップ充填剤を配置することによって達成できる。追加的または代替的に、熱伝導性ギャップ充填剤は、冷却チューブ(たとえば、冷却チューブ802)と、(たとえば、ギャップ804における)ラミネーションスタック300との間のギャップに配置することができる。そのような熱伝導性ギャップ充填剤は、熱抵抗(巻線からラミネーションスタック300、その後、環境への熱流に対する抵抗)を低減し、したがってRthwaを低減することができる。
【0055】
例では、熱伝導性ギャップ充填剤は、それぞれのギャップ(たとえば、ギャップ800および/またはギャップ804)の一部に配置できるか、または裏打ちできる。他の例では、熱伝導性ギャップ充填剤を使用して、スロットライナとラミネーションスタック300との間の界面全体、および冷却チューブとラミネーションスタック300との間の界面を充填することができる。
【0056】
図9は、例示的な実施にしたがって、ギャップ800およびギャップ804の部分に熱伝導性ギャップ充填剤を配置することを示す。図9に示されるように、(破線で示される)熱伝導性ギャップ充填剤900は、スロットライナ606の接続部(たとえば、垂直部分)と、ラミネーションスタック300のセグメント600の内面との間の部分に配置することができる。(曲線破線で示される)それぞれの熱伝導性ギャップ充填剤902は、冷却チューブ802のそれぞれの外面と、冷却チューブ802が配置されているセグメント600の半円形チャネルの内面との間のギャップ804の一部に配置することもできる。
【0057】
例では、熱伝導性ギャップ充填剤900、902は、スロットライナ606および冷却チューブ802を挿入する前に、ラミネーションスタック300のセグメント600に配置することができる。あるいは、熱伝導性ギャップ充填剤900、902は、ラミネーションスタック300のそれぞれのチャネルに挿入される前に、スロットライナ606および冷却チューブ802の外面に塗布され得る。
【0058】
図10は、例示的な実施による、スロットライナ606とセグメント600との間、および冷却チューブ802とセグメント600との間の界面全体に熱伝導性ギャップ充填剤を配置することを示す。図10に示されるように、(破線で示される)熱伝導性ギャップ充填剤1000は、スロットライナ606の側面部および接続部と、スロットライナ606が配置されるチャネルを境界付けるセグメント600の内面との間のギャップ800全体に配置されるか、または、スロットライナ606の側面部および接続部と、スロットライナ606が配置されるチャネルを境界付けるセグメント600の内面とに沿って配置される。(曲線破線で示される)熱伝導性ギャップ充填剤1002は、冷却チューブ802と、冷却チューブ802が配置されているセグメント600の半円形チャネルの内面との間のギャップ804全体に配置することもできる。
【0059】
図9図10は、セグメント600の片側または半分を示し、セグメント600の一部に関して熱伝導性ギャップ充填剤を使用している部分断面を示す。しかしながら、熱伝導性ギャップ充填剤は、セグメント600の反対側で使用することができ、ラミネーションスタック300の他のセグメントのすべてまたはいくつかとともに使用することができることを理解されたい。さらに、上述したように、熱伝導性ギャップ充填剤は、スロットライナ606および冷却チューブ802を挿入する前に、ラミネーションスタック300のセグメントに配置することができるか、あるいは、熱伝導性ギャップ充填剤を、それぞれのチャネルへの挿入前に、冷却チューブ(たとえば、冷却チューブ802)およびスロットライナに適用することができる(たとえば、スロットライナ500の側面部502、504および接続部506に適用される)。
【0060】
様々なタイプの熱伝導性充填剤を使用できる。たとえば、熱伝導性充填剤は、中に熱伝導性固体粒子(たとえば、金属材料)が懸濁している鉱油を含むペーストの形態を採ることができる。他の例では、熱伝導性充填剤は、熱媒体(たとえば、セラミック)と組み合わされたシリコンポリマを含む熱伝導性パッドの形態を採ることができる。
【0061】
例では、熱伝導性ギャップ充填剤は、酸化アルミニウムなどの熱伝導性材料を充填されたシリコングリースまたはワックスを含むことができる。そのようなシリコングリースは、通常の室温では半液体または固体の材料の形態を採ることができ、高温で液化または軟化して流動し、スロットライナと、ラミネーションスタック300のセグメントとの間、または冷却チューブとラミネーションスタック300との間の界面の任意の不規則性に良好に適合する。いくつかの例では、シリコングリースまたはワックスは、薄膜の形態で提供することができる。そのような薄膜を提供するために、基板、ウェブ、または他の担体を提供することができる。
【0062】
別の例では、熱伝導性ギャップ充填剤は、硬化したシート状の材料を含むことができる。そのような材料は、ポリマバインダ内に分散された1つまたは複数の熱伝導性粒子状充填剤を含むように配合することができ、硬化シート、テープ、パッド、または薄膜の形態で提供され得る。例示的なバインダ材料は、シリコン、ウレタン、熱可塑性ゴム、および他のエラストマを含み、例示的な充填剤は、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、窒化ホウ素、および窒化アルミニウムを含む。
【0063】
別の例では、熱伝導性ギャップ充填剤は、熱エネルギを、巻線およびラミネーションスタック300から環境に伝達するための、硬化した、形状安定性の、シート状の、熱伝導性材料を含むことができる。そのような材料は、ウレタンバインダ、硬化剤、および1つまたは複数の熱伝導性充填剤から形成することができる。充填剤は、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化マグネシウム、または酸化亜鉛を含み得、粒子サイズが約1~50ミクロンの範囲であるか、またはたとえばナノ粒子を含むことができる。
【0064】
例では、熱伝導性ギャップ充填剤は、相変化材料を含むことができ、これは、取り扱いを容易にするために、自立型であり、室温で形状安定性であることができる。そのような相変化材料は、電気モータ100の動作温度範囲内の温度で液化、さもなければ軟化して、粘性のチキソトロピー相を形成でき、これは、スロットライナと、ラミネーションスタック300のセグメントとの間、または冷却チューブとラミネーションスタック300との間の界面に良好に適合する。自立型の薄膜として、または基板表面に印刷された加熱スクリーンとして供給できる相変化材料は、平方インチ毎に約5ポンド(psi)の比較的低いクランプ圧力の下で、電気モータ100の動作温度内で順応して流れるグリースおよびワックスとして作用することができる。
【0065】
別の例では、熱伝導性ギャップ充填剤は、内側および外側の剥離ライナと、熱化合物の中間層とを備えるテープまたはシートを含むことができる。テープまたはシートの片面を、感圧接着剤(PSA)の薄層でコーティングして、スロットライナとラミネーションスタック300のセグメントとの間、または冷却チューブとラミネーションスタック300との間の熱伝達面に材料を塗布することができる。
【0066】
他の例示的な熱伝導性ギャップ充填剤材料は、熱界面化合物、コーキング、インプレース形成材料、または封止材を含むことができる。これらの材料は、室温または高温で硬化して、ギャップ(たとえば、ギャップ800、804)内にインプレース形成される、1つまたは2つの部分からなる液体の、さもなければ流動性の充填反応系として、1つまたは複数のチューブ、容器内に充填された状態で提供される。
【0067】
別の例では、熱伝導性ギャップ充填剤は、ノズルまたは他のオリフィスからビードまたは塊として放出されたとき、加えられた圧力の下で分配可能である熱伝導性化合物を含むことができる。チューブ、カートリッジ、または他の容器に充填され得る材料は、スロットライナまたは冷却チューブの表面に分配することができ、これは、ラミネーションスタック300のセグメントとのギャップ(たとえば、ギャップ800、804)を形成するか、または直接的に、隣接する表面間に形成されたギャップになる。塗布されると、材料は、材料のビードまたは塊を「インプレース」で形成することができる。ギャップ内で、インプレース形成された材料のビードまたは塊は、ギャップを少なくとも部分的に埋め、それによって表面間に熱伝導経路を提供し、巻線から周囲への熱抵抗(Rthwa)を低減するように適合している界面材料として機能することができる。例では、材料は、チューブ、カートリッジ、または他の容器内に充填されるか、さもなければ供給されるように、完全に架橋されるか、さもなければ硬化され得る。流動性のある粘度である一方、材料は一般に粘弾性である可能性があり、充填されると、金属充填剤粒子の感知できるほどの沈降を示さない可能性がある。
【0068】
熱伝導性化合物は、熱伝導性粒子またはそれらの混合物であり得る(i)ポリマゲル成分、および(ii)粒子状充填剤成分のブレンドまたは混合物として、表面にまたはギャップ内に加えられたとき、加圧下で流動性があるが、形状安定的であるように作り出すことができる。ゲル成分は、たとえば、熱可塑性ゲル、または、有機ポリシロキサンであり得るシリコンゲルであり得る。
【0069】
上記の熱伝導性化合物に使用できるゲルは、シリコンに基づく系、すなわち、ポリオルガノシロキサンなどのポリシロキサンのみならず、ポリウレタンや、ポリ尿素や、フルオロポリマや、クロロスルホン酸塩や、ポリブタジエンや、ブチルや、ネオプレンや、ニトリルや、ポリイソプレンや、ブナ-Nや、エチレン-プロピレン(EPR)、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)、エチレン-プロピレンなどのコポリマ-ジエンモノマ(EPDM)、ニトリルブタジエン(NBR)、スチレン-エチレン-ブタジエン(SEB)、およびスチレン-ブタジエン(SBR)のようなコポリマや、エチレンまたはプロピレン-EPDM、EPR、またはNBRのようなそれらのブレンドのように、熱可塑性または熱硬化性であり得る他のポリマに基づく系をも含む。
【0070】
ポリマゲルは、化学的に、たとえば、イオン的または共有的に、または物理的に架橋され得る連続的なポリマ相または網、およびシリコンまたは他の油、可塑剤、未反応のモノマなどの油を含む流体拡張ポリマ系、または、網の隙間を膨潤、さもなければ充填する他の流体拡張剤を含むことができる。そのような網の架橋密度および拡張剤の比率を制御して、ゲルの弾性率、すなわち、柔らかさ、および他の特性を調整することができる。ポリマゲルはまた、ゲルと同様の粘弾性特性を有するものとして、疑似ゲルまたはゲル状として大まかに分類することができる材料を包含することができ、たとえば、比較的長い架橋鎖によって形成される「緩い」架橋網を有するが、たとえば、流体拡張剤がない。ポリマまたはシリコンゲルの例は、NuSilTMによる「GEL-8100」などの柔らかいシリコンゲルを含むことができる。
【0071】
ポリマゲル成分は、ニッケル、銅、スズ、アルミニウム、およびニッケルなどの貴金属および非貴金属や、銀メッキの銅、ニッケル、アルミニウム、スズ、または金などの貴金属メッキの貴金属または非貴金属や、ニッケルメッキの銅または銀のような非貴金属メッキの貴金属および非貴金属や、銀またはニッケルメッキのグラファイト、ガラス、セラミック、プラスチック、エラストマ、または雲母などの貴金属または非貴金属メッキの非金属や、それらの混合物のような、熱伝導性充填剤を充填することにより、熱伝導性にすることができる。
【0072】
図11は、例示的な実施による、電気モータ100の固定子102を組み立てるための方法1100のフローチャートである。
【0073】
方法1100は、ブロック1102~1110のうちの1つまたは複数によって示されるような1つまたは複数の操作または動作を含むことができる。ブロックは順番に示されているが、これらのブロックはまた、並行して、および/または本明細書に説明されるものとは異なる順序で実行され得る。また、様々なブロックは、より少ないブロックに結合され、追加のブロックに分割され、および/または所望の実施に基づいて削除され得る。本明細書に開示されるこの処理および他の処理および方法について、フローチャートは、本例の1つの可能な実施の機能および操作を示すことを理解されたい。代替の実施は、当業者によって理解されるように、関与する機能に応じて、実質的に同時または逆の順序を含む、図示または議論されたものから順不同で機能が実行され得る本開示の例の範囲内に含まれる。
【0074】
ブロック1102において、方法1100は、電気モータ100の固定子102のラミネーションスタック300のセグメント(たとえば、セグメント600)を提供することを含み、ラミネーションスタックのセグメント600は、スロット(たとえば、チャネル602またはチャネル604)を備える。本明細書で使用される「提供する」という用語は、たとえば、ラミネーションスタック300または他の構成要素(たとえば、スロットライナ606)のセグメントに関して、セグメントを供給するか、またはセグメントを装置または作業環境に持ち込んで、さらに処理(たとえば、他の構成要素の取り付け、ワイヤの巻き付けなど)するような、セグメントまたは他の任意の構成要素を使用可能にするための任意の動作を含む。
【0075】
ブロック1104において、方法1100は、電気絶縁材料(たとえば、絶縁紙)で形成されたスロットライナ(たとえば、スロットライナ606)を提供することを含む。
【0076】
ブロック1106において、方法1100は、熱伝導性ギャップ充填剤(たとえば、熱伝導性ギャップ充填剤900、1000)をスロットライナの外面に塗布することを含む。
【0077】
ブロック1108において、方法1100は、熱伝導性ギャップ充填剤がスロットライナの外面とセグメントとの間に配置されるように、熱伝導性ギャップ充填剤が加えられたスロットライナを、ラミネーションスタックのセグメントのスロットに挿入することを含む。
【0078】
ブロック1110において、方法1100は、スロットライナおよび熱伝導性ギャップ充填剤が、ワイヤとセグメントとの間に配置されるように、セグメントの周りにワイヤ(たとえば、ワイヤ700)を巻くことを含む。
【0079】
方法1100はさらに、スロットライナの第1の側面部、第2の側面部、または接続部のうちの1つまたは複数に沿って熱伝導性ギャップ充填剤を塗布することと、熱伝導性ギャップ充填剤902、1002を冷却チューブ802の外面に塗布することと、セグメント600の外周面に配置された半円形チャネルに冷却チューブ802を挿入することと、エンドターン絶縁体610、612をセグメント600に取り付けることなどのような、上記の固定子102および電気モータ100の組み立てに関連付けられた他のステップを含むことができる。
【0080】
上記の詳細説明は、添付の図面を参照して、開示されたシステムの様々な特徴および動作を説明する。本明細書で説明される例示的な実施は、限定することは意図されていない。開示されたシステムの特定の態様は、多種多様な異なる構成で配置および組み合わせることができ、それらのすべてが本明細書で企図されている。
【0081】
さらに、文脈が別のことを示唆しない限り、図面のおのおのに例示されている特徴は、互いに組み合わせて使用することができる。したがって、図面は一般に、各実施のために例示されたすべての特徴が必要とされる訳ではないという理解の下で、1つまたは複数の全体的な実施の構成要素の態様と見なされるべきである。
【0082】
それに加えて、本明細書または特許請求の範囲における要素、ブロック、またはステップの列挙は、明確化の目的のためである。したがって、そのような列挙は、これらの要素、ブロック、またはステップが特定の配置に準拠している、または特定の順序で実行されることを要求または示唆するものとして解釈されるべきではない。
【0083】
さらに、デバイスまたはシステムは、図示されている機能を実行するために使用または構成され得る。いくつかの事例では、デバイスおよび/またはシステムの構成要素は、そのような性能を可能にするために構成要素が実際に構成および構造化されるように(ハードウェアおよび/またはソフトウェアを用いて)機能を実行するように構成され得る。他の例では、デバイスおよび/またはシステムの構成要素は、特定の方式で操作される場合など、機能を実行するように適合されるか、可能であるか、または適しているように構成され得る。
【0084】
「実質的に」または「約」という用語は、記載された特性、パラメータ、または値が正確に達成される必要はないが、たとえば、当業者に知られている公差、測定誤差、測定精度限界、および他の要因を含む偏差または変動は、特性が提供することを意図された効果を排除しない量で発生する可能性がある。
【0085】
本明細書で説明される構成は、例示のみを目的とされる。そのため、当業者は、他の構成および他の要素(たとえば、機械、インターフェース、操作、順序、および操作のグループ化など)を代わりに使用することができ、いくつかの要素は、所望される結果にしたがって完全に省略され得ることを理解するであろう。さらに、説明される要素の多くは、任意の適切な組合せおよび場所で、個別または分散された構成要素として、または他の構成要素と組み合わせて実施できる機能エンティティである。
【0086】
様々な態様および実施が本明細書に開示されているが、他の態様および実施が当業者には明らかであろう。本明細書に開示される様々な態様および実施は、例示目的であり、限定を意図するものではなく、真の範囲は、そのような特許請求の範囲が権利を有する同等物の全範囲とともに、以下の特許請求の範囲によって示される。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施を説明することのみを目的としており、限定を意図するものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】