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特表2022-550467調整可能な眼内レンズ及び眼内レンズの手術後の調整方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-01
(54)【発明の名称】調整可能な眼内レンズ及び眼内レンズの手術後の調整方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/16 20060101AFI20221124BHJP
【FI】
A61F2/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520555
(86)(22)【出願日】2020-10-01
(85)【翻訳文提出日】2022-05-30
(86)【国際出願番号】 US2020053767
(87)【国際公開番号】W WO2021067579
(87)【国際公開日】2021-04-08
(31)【優先権主張番号】62/911,039
(32)【優先日】2019-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100165995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 寿人
(72)【発明者】
【氏名】テラ ホワイティング スマイリー
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA25
4C097BB01
4C097CC01
4C097CC11
4C097CC18
4C097DD06
4C097SA02
4C097SA05
(57)【要約】
調整可能な眼内レンズ及び眼内レンズを手術後に調整する方法が開示される。ある実施形態では、調整可能な眼内レンズは光学部及び周辺部を備えていてもよい。周辺部はエネルギー吸収成分と複数の膨張性要素を含む複合材料を含んでもよい。光学部のベース度数は複合材料に向けられた外部エネルギーに応じて変化してもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学部と、
前記光学部に接続された周辺部と、を備え、
前記周辺部はエネルギー吸収成分と複数の膨張性要素を含む複合材料を含み、
前記光学部のベース度数は前記複合材料に向けられた外部エネルギーに応じて変化し、
前記光学部の前記ベース度数は、前記眼内レンズが水晶体嚢内に移植された時に前記水晶体嚢によって前記周辺部に印加された力に反応しない、
眼内レンズ。
【請求項2】
前記膨張性要素は膨張性微小球であり、前記各膨張性微小球は熱可塑性樹脂製シェル内に包含された発泡剤を含む、請求項1に記載の眼内レンズ。
【請求項3】
前記エネルギー吸収成分はアゾ染料である、請求項1に記載の眼内レンズ。
【請求項4】
前記エネルギー吸収成分は黒鉛化カーボンブラックである、請求項1に記載の眼内レンズ。
【請求項5】
前記周辺部は一部が共重合体混合物を含む架橋共重合体から成り、前記複合材料は一部が前記共重合体混合物から成る、請求項1に記載の眼内レンズ。
【請求項6】
前記光学部の前記ベース度数は前記複合材料に向けられた前記外部エネルギーのパルスに応じて正又は負の方向に約0.05Dから約0.5Dの間で変化する、請求項1に記載の眼内レンズ。
【請求項7】
前記外部エネルギーは約488nmから約650nmの間の波長を有するレーザー光である、請求項1に記載の眼内レンズ。
【請求項8】
前記外部エネルギーは約946nmから約1120nmの間の波長を有するレーザー光である、請求項1に記載の眼内レンズ。
【請求項9】
前記外部エネルギーはフェムト秒レーザーにより発せられるレーザー光である、請求項1に記載の眼内レンズ。
【請求項10】
前記複合材料は独立周辺要素として形成され、前記外部エネルギーを1つの独立周辺要素へ向けることにより前記光学部の前記ベース度数の変化が起こり、前記外部エネルギーを別の独立周辺要素へ向けることにより前記光学部の前記ベース度数の変化が更に起こる、請求項1に記載の眼内レンズ。
【請求項11】
前記光学部は光学流体室を備え、前記周辺部は前記光学流体室と流体連通である少なくとも1つの周辺流体室を備える、請求項1に記載の眼内レンズ。
【請求項12】
前記複合材料は室膨張部であり、前記室膨張部は前記室膨張部に向けられた前記外部エネルギーに応じて膨張し前記室膨張部の膨張により前記周辺流体室の体積が増加する、請求項11に記載の眼内レンズ。
【請求項13】
前記光学部の前記ベース度数は前記室膨張部に向けられた前記外部エネルギーに応じて減少する、請求項12に記載の眼内レンズ。
【請求項14】
前記室膨張部は室前壁から室後壁へ延びる膨張性支柱である、請求項12に記載の眼内レンズ。
【請求項15】
前記複合材料は空間充填部であり、前記空間充填部は前記空間充填部に向けられた前記外部エネルギーに応じて膨張し、前記空間充填部の膨張により前記周辺流体室の体積が減少する、請求項11に記載の眼内レンズ。
【請求項16】
前記光学部の前記ベース度数は前記空間充填部に向けられた前記外部エネルギーに応じて増加する、請求項15に記載の眼内レンズ。
【請求項17】
前記周辺部は少なくとも1つのハプティックであり、前記周辺流体室は前記ハプティック内に画定され、前記周辺流体室は前記ハプティック内の一部にのみ延びる、請求項11に記載の眼内レンズ。
【請求項18】
前記周辺部は第1のハプティック流体室を備える第1のハプティック及び第2のハプティック流体室を備える第2のハプティックであり、前記光学部は光学流体室を備える、請求項1に記載の眼内レンズ。
【請求項19】
前記第1のハプティック流体室は第1の流体チャネルを介して前記光学流体室と流体連通であり、前記第2のハプティック流体室は第2の流体チャネルを介して前記光学流体室と流体連通であり、前記第1の流体チャネルは前記第2の流体チャネルと直径方向に対向する位置に配されている、請求項18に記載の眼内レンズ。
【請求項20】
前記光学流体室、前記第1のハプティック流体室、及び前記第2のハプティック流体室は総液量が約10μLから約20μLの間である流体を備える、請求項18に記載の眼内レンズ。
【請求項21】
前記第1のハプティック流体室及び前記第2のハプティック流体室のそれぞれは約0.5μLの前記流体を備える、請求項20に記載の眼内レンズ。
【請求項22】
前記複合材料の膨張に応じて、前記第1のハプティック流体室又は前記第2のハプティック流体室のどちらかと前記光学流体室の間で約15nLの前記流体が交換される、請求項20に記載の眼内レンズ。
【請求項23】
前記周辺部は第1の複合材料と第2の複合材料を含み、前記第1の複合材料は第1のエネルギー吸収成分を含み、前記第2の複合材料は第2のエネルギー吸収成分を含み、前記第1のエネルギー吸収成分の色は前記第2のエネルギー吸収成分の色と異なる、請求項1に記載の眼内レンズ。
【請求項24】
光学部と、
前記光学部に接続された周辺部であって、前記周辺部は第1の周辺要素と第2の周辺要素とを備える周辺部と、を備え、
前記第1の周辺要素はエネルギー吸収成分と複数の膨張性要素を含む複合材料から成り、
前記第2の周辺要素は前記エネルギー吸収成分と前記複数の膨張性要素を含む前記複合材料から成り、
前記光学部のベース度数は前記第1の周辺要素に向けられた外部エネルギーに応じて増加し、
前記光学部の前記ベース度数は前記第2の周辺要素に向けられた前記外部エネルギーに応じて減少する、
眼内レンズ。
【請求項25】
前記光学部は光学流体室を備え、前記周辺部は前記光学流体室と流体連通である少なくとも1つの周辺流体室を備える、請求項24に記載の眼内レンズ。
【請求項26】
前記第1の周辺要素は空間充填部であり、前記空間充填部は前記空間充填部に向けられた前記外部エネルギーに応じて膨張し、前記空間充填部の膨張により前記周辺流体室の体積が減少する、請求項25に記載の眼内レンズ。
【請求項27】
前記第2の周辺要素は室膨張部であり、前記室膨張部は前記室膨張部に向けられた前記外部エネルギーに応じて膨張し、前記室膨張部の膨張により前記周辺流体室の体積が増加する、請求項25に記載の眼内レンズ。
【請求項28】
前記第1の周辺要素及び前記第2の周辺要素は前記同じ周辺流体室内に配されている、請求項25に記載の眼内レンズ。
【請求項29】
前記第2の周辺要素は前記同じ周辺流体室内の前記第1の周辺要素の遠位に配されている、請求項28に記載の眼内レンズ。
【請求項30】
前記第1の周辺要素は前記第2の周辺要素の近傍に前記同じ周辺流体室内にて配され、前記第1の周辺要素は前記第2の周辺要素よりも前記光学流体室を前記周辺流体室に接続する流体チャネルのより近くに配される、請求項28に記載の眼内レンズ。
【請求項31】
前記眼内レンズの周辺部内の複合材料に外部エネルギーを向けることにより固定焦点眼内レンズのベース度数を変えることを含み、
前記周辺部は前記周辺部の半径方向に内側に配された光学部に接続されていて、
前記複合材料はエネルギー吸収成分と複数の膨張性要素を含む、
固定焦点の眼内レンズを手術後に調整する方法。
【請求項32】
前記光学部は光学流体室を備え前記周辺部は前記光学流体室と流体連通である少なくとも1つの周辺流体室を備え、前記眼内レンズの前記ベース度数は、前記外部エネルギーが前記複合材料に向けられた結果として、前記光学流体室と前記周辺流体室との間の流体の移動に応じて変化する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記複合材料の膨張に応じて、前記周辺流体室と前記光学流体室との間で約15nLの流体が交換される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記眼内レンズの前記ベース度数の調整は更に、前記周辺部内に画定された周辺流体室内に位置する空間充填部である前記複合材料に前記外部エネルギーを向けることにより前記ベース度数を増加させることを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記眼内レンズの前記ベース度数の調整は更に、前記周辺部内に画定された周辺流体室内に位置する室膨張部である前記複合材料に前記外部エネルギーを向けることにより前記ベース度数を減少させることを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
前記複合材料は第1の複合材料及び第2の複合材料を含み、前記方法は更に
前記外部エネルギーを前記第1の複合材料に向けることにより、前記ベース度数を第1の方向へ調整することであり、前記第1の複合材料は第1の色を有する第1のエネルギー吸収成分を含むことと、
前記外部エネルギーを前記第2の複合材料に向けることにより、前記ベース度数を第2の方向へ調整することであり、前記第2の複合材料は前記第1の色と異なる第2の色を有する第2のエネルギー吸収成分を含むことと、を含む、
請求項31に記載の方法。
【請求項37】
前記眼内レンズの前記ベース度数を、前記外部エネルギーのパルスを前記複合材料に向けることにより、正又は負の方向に約0.05Dから約0.50Dの間で調整することを更に含む、請求項31に記載の方法。
【請求項38】
前記眼内レンズの前記ベース度数を、前記外部エネルギーの複数のパルスを前記複合材料に向けることにより、正又は負の方向に約1.0Dから約2.0Dの間で調整することを更に含む、請求項31に記載の方法。
【請求項39】
前記外部エネルギーを前記複合材料に向けることは更に、約488nmから約650nmの間の波長を有するレーザー光を前記複合材料に向けることを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項40】
前記外部エネルギーを前記複合材料に向けることは更に、約946nmから約1120nmの間の波長を有するレーザー光を前記複合材料に向けることを含む、請求項31に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年10月4日に出願されその内容が参照により本明細書に援用される米国特許仮出願第62/911039号明細書の利益を主張する。
【0002】
本開示は概して眼内レンズの分野に関し、より具体的には、調整可能な眼内レンズ及び手術後に眼内レンズを調整する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
白内障は、患者の眼内の、正常であれば透明な水晶体が曇る病気である。白内障は、加齢、遺伝、外傷、炎症、代謝異常、又は放射線被曝などの原因により発生する。加齢に関係する白内障が最も一般的な種類の白内障である。白内障の治療として、外科医は患者の水晶体基盤を水晶体被膜から取り外し、眼内レンズ(IOL)と置換する。
【0004】
しかしながら、現在のIOLの手術では屈折矯正の結果に満足できない患者もいる可能性がある。ある場合では、術前に患者の眼について行われる生体計測に誤りがあることもあり、その場合誤ったレンズ度数のIOLが処方され、患者の眼に移植される。他の場合では、IOLが水晶体嚢内に移植された時、水晶体嚢内の細胞による攻撃的な治癒反応がIOLの光学度数に影響し得る。更に、患者の眼内の角膜又は筋肉は、怪我、病気、加齢の結果変化し得る。そのような場合、そのような変化に対応するために、患者に移植されたIOLを調整することが必要にもなり得る。
【0005】
したがって、上に挙げた問題に対処するために、追加で手術を行わずに移植後のIOLを調整するための解決策が必要である。そのような解決策は過度に複雑でなく、IOLをコスト効率良く製造できるものであるべきである。
【発明の概要】
【0006】
本明細書では調整可能な眼内レンズ及び眼内レンズを手術後に調整する方法が開示される。そのような調整可能な眼内レンズはまた、調整可能な固定焦点眼内レンズ、又は非調節式の流体調整可能眼内レンズと称されてもよい。
【0007】
ある実施形態では、光学部と、光学部に接続された周辺部を備える眼内レンズが開示される。周辺部はエネルギー吸収成分と複数の膨張性要素を含む複合材料を含んでもよい。光学部のベース度数は複合材料に向けられた外部エネルギーに応じて変化してもよい。光学部のベース度数は、眼内レンズが水晶体嚢内に移植された時に水晶体嚢によって周辺部に印加された力に反応しなくてもよい。
【0008】
幾つかの実施形態では、膨張性要素は膨張性微小球であってもよい。膨張性微小球のそれぞれは、熱可塑性樹脂製シェル内に包含された発泡剤を含んでもよい。熱可塑性樹脂製シェルの厚さは複合材料に向けられた外部エネルギーに応じて変化してもよい。
【0009】
特定の実施形態では、発泡剤は分枝鎖型の炭化水素であってもよい。例えば分枝鎖型の炭化水素はイソペンタンであってもよい。また、例えば、熱可塑性樹脂製シェルは一部がアクリロニトリル共重合体から成っていてもよい。
【0010】
幾つかの実施形態では、複合材料に外部エネルギーが向けられた結果、少なくとも1つの膨張性微小球の直径は約2倍から約4倍の間に増加してもよい。少なくとも1つの膨張性要素の体積は複合材料に向けられた外部エネルギーに応じて約10倍から50倍の間に膨張してもよい。
【0011】
幾つかの実施形態では、膨張性要素は約5%から約15%の間の重量の複合材料を含んでもよい。例えば、膨張性要素は約10%の重量の複合材料を含んでもよい。
【0012】
幾つかの実施形態では、エネルギー吸収成分はエネルギー吸収着色剤であってもよい。エネルギー吸収着色剤の色は眼内レンズが眼内に移植されるときに視覚的に知覚可能であってもよい。
【0013】
幾つかの実施形態では、エネルギー吸収着色剤は染料であってもよい。例えば、染料はアゾ染料であってもよい。より具体的な例としては、染料はディスパースレッド1であってもよい。
【0014】
幾つかの実施形態では、エネルギー吸収着色剤はエネルギー吸収色素であってもよい。例えば、エネルギー吸収色素は黒鉛化カーボンブラックであってもよい。特定の実施形態では、エネルギー吸収成分は複合材料の重量の約0.025%から約1.00%の間を構成していてもよい。
【0015】
幾つかの実施形態では、周辺部の一部は共重合体混合物を含む架橋共重合体でできていてもよい。これらの実施形態では、複合材料はまた一部が共重合体混合物から成っていてもよい。
【0016】
複合材料は硬化され、周辺部内の位置にて架橋共重合体になってもよい。複合材料は概ねその位置に固定されていてもよい。
【0017】
光学部のベース度数は複合材料に向けられた外部エネルギーのパルスに応じて約±0.05Dから約±0.5Dの間で変化してもよい。例えば、光学部のベース度数は複合材料に向けられた外部エネルギーのパルスに応じて約0.1D変化してもよい。
【0018】
光学部のベース度数は合計約±1.0Dから約±2.0Dの間で変化してもよい。ベース度数の変化は永続的な変化であってもよい。
【0019】
幾つかの実施形態では、外部エネルギーは光エネルギーであってもよい。これらの実施形態では、光エネルギーはレーザー光であってもよい。レーザー光は約488nmから約650nmの間の波長を有していてもよい。例えば、レーザー光は緑色レーザー光であってもよい。緑色レーザー光は約532nmの波長を有していてもよい。
【0020】
他の実施形態では、レーザー光は約946nmから約1120nmの間の波長を有していてもよい。例えば、レーザー光は約1030nmの波長を有していてもよい。また、例えば、レーザー光は約1064nmの波長を有していてもよい。
【0021】
幾つかの実施形態では、レーザー光は、ネオジムドープイットリウムアルミニウムガーネット(Nd:YAG)レーザーであってもよい。他の実施形態では、レーザー光は、フェムト秒レーザーにより発せられてもよい。
【0022】
エネルギー吸収成分は、複合材料に向けられた外部エネルギーに応じて熱エネルギーを複数の膨張性要素へと移送する。
【0023】
幾つかの実施形態では、複合材料は独立周辺要素であってもよく、外部エネルギーを1つの独立周辺要素へ向けることにより光学部のベース度数の変化が起こり、外部エネルギーを別の独立周辺要素へ向けることにより光学部のベース度数の変化もまた起こる。特定の実施形態では、周辺部は20から40の間の周辺要素を備えていてもよい。
【0024】
IOLの光学部は光学流体室を備えてもよく、周辺部は光学流体室と流体連通である少なくとも1つの周辺流体室を備えていてもよい。幾つかの実施形態では、周辺流体室は湾曲していて、周辺流体室は光学部の曲率に沿う。
【0025】
周辺流体室は室高さを有していてもよい。室高さは約0.1mmから約0.3mmの間であってもよい。
【0026】
幾つかの実施形態では、複合材料は室膨張部であってもよい。室膨張部は、室膨張部に向けられた外部エネルギーに応じて膨張してもよい。室膨張部の膨張により周辺流体室の体積が増加してもよい。光学部のベース度数は室膨張部に向けられた外部エネルギーに応じて減少してもよい。室膨張部は室前壁から室後壁へ延びる膨張性支柱であってもよい。
【0027】
幾つかの実施形態では、複合材料は空間充填部又はピストンであってもよい。空間充填部又はピストンは、空間充填部又はピストンに向けられた外部エネルギーに応じて膨張してもよい。空間充填部又はピストンの膨張により周辺流体室の体積が減少してもよい。空間充填部又はピストンは室前壁又は室後壁のどちらかから延びるパッドであってもよい。光学部のベース度数は空間充填部又はピストンに向けられた外部エネルギーに応じて増加してもよい。
【0028】
外部エネルギーが複合材料に向けられた結果として光学流体室と周辺流体室との間の流体の移動に応じてベース度数が変化してもよい。
【0029】
特定の実施形態では、周辺部は第1の複合材料と第2の複合材料を含んでいてもよい。これらの実施形態では、第1の複合材料は第1のエネルギー吸収成分を含んでいてもよく、第2の複合材料は第2のエネルギー吸収成分を含んでいてもよい。第1のエネルギー吸収成分は第2のエネルギー吸収成分の色と異なっていてもよい。
【0030】
幾つかの実施形態では、周辺部は少なくとも1つのハプティックであってもよく、周辺流体室はハプティック内に画定されていてもよい。これらの実施形態では、周辺流体室はハプティック内の一部に対してのみ延びてもよい。
【0031】
ハプティックはハプティック近位部とハプティック遠位部を備えていてもよい。ハプティック遠位部は、ハプティック近位部を介した接続を除いて光学部に接続されていない、ハプティック遠位アームを備えていてもよい。
【0032】
幾つかの実施形態では、ハプティック遠位アームはねじれ、又は曲がりを備えていてもよい。
【0033】
周辺流体室はハプティック近位部内に画定されていてもよく、ハプティック近位部の室区画は、隙間や空間により、光学部に接続されていないか、分離されていてもよい。ハプティックはハプティックの近位端及び室区画から遠位に配された遠位接続部により光学部に接続されていてもよい。
【0034】
幾つかの実施形態では、ハプティックの近位端は光学部の側面に接続され、そこから延びていてもよい。これらの実施形態では、側面は約0.65mmの側面高さを有していてもよい。
【0035】
周辺部は第1のハプティック流体室を備える第1のハプティック及び第2のハプティック流体室を備える第2のハプティックであってもよい。光学部は光学流体室を備えていてもよい。
【0036】
第1のハプティック流体室は、光学流体室と、第1の流体チャネルを介して流体連通であってもよい。第2のハプティック流体室は、光学流体室と、第2の流体チャネルを介して流体連通であってもよい。第1の流体チャネルは第2の流体チャネルから概ね直径方向に対向する位置に配されてもよい。
【0037】
幾つかの実施形態では、光学流体室、第1のハプティック流体室、及び第2のハプティック流体室は総液量が約10μLから約20μLの間である流体を備えていてもよい。第1のハプティック流体室及び第2のハプティック流体室のそれぞれは約0.5μLの流体を備えていてもよい。特定の実施形態では、複合材料に外部エネルギーのパルスが向けられることに応じて、第1のハプティック流体室又は第2のハプティック流体室のどちらかと光学流体室の間で約15nLの流体が交換されてもよい。幾つかの実施形態では、流体はシリコンオイルであってもよい。
【0038】
別の実施形態では、光学部と、光学部に接続された周辺部を備える眼内レンズが開示される。周辺部は第1の周辺要素と第2の周辺要素を備えていてもよい。第1の周辺要素はエネルギー吸収成分と複数の膨張性要素を含む複合材料から成っていてもよい。第2の周辺要素もまたエネルギー吸収成分と複数の膨張性要素を含む複合材料から成っていてもよい。光学部のベース度数は第1の周辺要素に外部エネルギーが向けられることに応じて増加してもよく、光学部のベース度数は第2の周辺要素に外部エネルギーが向けられることに応じて減少してもよい。しかしながら、光学部のベース度数は、眼内レンズが水晶体嚢内に移植された時に水晶体嚢によって周辺部に印加された力に反応しなくてもよい。
【0039】
幾つかの実施形態では、光学部は光学流体室を備えてもよく、周辺部は光学流体室と流体連通である少なくとも1つの周辺流体室を備えていてもよい。外部エネルギーが第1の周辺要素又は第2の周辺要素に向けられた結果としての光学流体室と周辺流体室との間の流体の移動に応じてベース度数が変化してもよい。
【0040】
幾つかの実施形態では、第1の周辺要素は空間充填部であってもよい。空間充填部は、空間充填部に向けられた外部エネルギーに応じて膨張してもよい。空間充填部の膨張により周辺流体室の体積が減少してもよい。例えば、空間充填部は室前壁又は室後壁のどちらかから延びる膨張性のパッドであってもよい。
【0041】
幾つかの実施形態では、第2の周辺要素は室膨張部又はジャッキであってもよい。室膨張部又はジャッキは室膨張部又はジャッキに向けられた外部エネルギーに応じて膨張してもよい。室膨張部又はジャッキの膨張により周辺流体室の体積が増加してもよい。例えば、室膨張部又はジャッキは室前壁から室後壁へ延びる膨張性支柱であってもよい。
【0042】
特定の実施形態では、第1の周辺要素及び第2の周辺要素は同じ周辺流体室内に配されていてもよい。これらの実施形態では、第2の周辺要素は同じ周辺流体室内の第1の周辺要素の遠位に配されていてもよい。また、これらの実施形態では、第1の周辺要素は同じ周辺流体室内の第2の周辺要素の近傍に配されていてもよい。第1の周辺要素は、第2の周辺要素と比較して、光学流体室を周辺流体室に接続する流体チャネルのより近くに配されていてもよい。
【0043】
第1の周辺要素及び第2の周辺要素は独立周辺要素であってもよく、外部エネルギーを1つの独立周辺要素へ向けることにより光学部のベース度数の変化が起こってもよく、外部エネルギーを別の独立周辺要素へ向けることにより光学部のベース度数の変化もまた起こってもよい。
【0044】
幾つかの実施形態では、1つの周辺流体室は少なくとも10個の第1の周辺要素を備えていてもよい。それらの及び他の実施形態では、同じ又は異なる周辺流体室は少なくとも10個の第2の周辺要素を備えていてもよい。
【0045】
眼内レンズを手術後に調整する方法がまた開示される。方法は外部エネルギーを眼内レンズの周辺部内の複合材料に向けることにより眼内レンズのベース度数を調整することを含んでいてもよい。周辺部は、周辺部の半径方向に内側に配された光学部に接続されていてもよい。複合材料はエネルギー吸収成分と複数の膨張性要素を含んでいてもよい。眼内レンズのベース度数は、眼内レンズが水晶体嚢内に移植された時に水晶体嚢によって周辺部に印加された力に反応しなくてもよい。
【0046】
光学部は光学流体室を備えていてもよく、周辺部は光学流体室と流体連通である少なくとも1つの周辺流体室を備えていてもよい。眼内レンズのベース度数は外部エネルギーが複合材料に向けられた結果として光学流体室と周辺流体室との間の流体の移動に応じて変化してもよい。幾つかの実施形態では、複合材料に外部エネルギーのパルスが向けられることに応じて、周辺流体室と光学流体室の間で約15nLの流体が交換されてもよい。
【0047】
幾つかの実施形態では、眼内レンズのベース度数の調整は更に、周辺部内に画定された周辺流体室内に位置する空間充填部である複合材料に外部エネルギーを向けることによりベース度数を増加させることを含んでもよい。
【0048】
方法は更に、外部エネルギーを周辺部内に位置する室膨張部である複合材料の別の実例に向けることによりベース度数を減少させることを含んでもよい。
【0049】
幾つかの実施形態では、眼内レンズのベース度数の調整は更に、周辺部内に画定された周辺流体室内に位置する室膨張部である複合材料に外部エネルギーを向けることによりベース度数を減少させることを含んでもよい。ベース度数を減少させることは更に周辺流体室内に位置する空間充填部である複合材料の別の実例に外部エネルギーを向けることを含んでもよい。
【0050】
特定の実施形態では、眼内レンズのベース度数の調整は更に、周辺部内に画定された周辺流体室内の第1の周辺要素に対して外部エネルギーのパルスを向けることと、同じ周辺流体室内の第2の周辺要素に外部エネルギーの追加のパルスを向けることと、を含んでもよい。第1の周辺要素は複合材料から成っていてもよく、第2の周辺要素は同じ複合材料から成っていてもよい。
【0051】
追加の実施形態では、眼内レンズのベース度数の調整は更に、周辺部内に画定された第1の周辺流体室内の第1の周辺要素に対して外部エネルギーのパルスを向けることと、周辺部内に画定された第2の周辺流体室内の第2の周辺要素に外部エネルギーの追加のパルスを向けることと、を含んでもよい。第1の周辺要素は複合材料から成っていてもよく、第2の周辺要素は同じ複合材料から成っていてもよい。第1の周辺流体室は光学部内に画定された光学流体室を介して第2の周辺流体室と流体連通であってもよい。
【0052】
幾つかの実施形態では、ベース度数を第1の方向に調整することは更に外部エネルギーを第1の複合材料に向けることを含み、ベース度数を第2の方向に調整することは外部エネルギーを第2の複合材料に向けることを含む。第1の複合材料は第1の色を有する第1のエネルギー吸収成分を含んでいてもよい。第2の複合材料は第1の色と異なる第2の色を有する第2のエネルギー吸収成分を含んでいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1A図1Aは調整可能眼内レンズ(IOL)の実施形態の、IOL内の構成要素をよりよく描画するために調整可能IOLの前方部分の一部を除いた平面図である。
図1B図1Bは対象の水晶体嚢内に移植された調整可能IOLを示す。
図2A図2Aは調整可能IOLの透視図である。
図2B図2Bは調整可能IOLの、IOL内の構成要素をよりよく描画するために調整可能IOLの前方部分の一部を除いた透視図である。
図3A図3A図2AのA-Aに沿った、調整可能IOLの断面図である。
図3B図3Bは、図2AのB-Bに沿った、調整可能IOLの断面図である。
図3C図3Cは、調整可能IOLの第1の周辺要素に向けられた外部エネルギーを示す。
図3D図3Dは、調整可能IOLの第2の周辺要素に向けられた外部エネルギーを示す。
図4A図4Aは、調整可能眼内レンズの少なくとも一部を作製するために使用される複合材料を示す。
図4B図4Bは、調整可能眼内レンズの膨張性要素の1つの実施形態を示す。
図5図5は調整可能IOLの別の実施形態の、IOL内の構成要素をよりよく描画するために調整可能IOLの前方部分の一部を除いた平面図である。
図6図6は、光分割レンズ表面プロファイルを有する調整可能IOLの平面図である。
図7図7は、IOLを手術後に調整する方法の1つの実施形態を示す。
図8図8は、IOLを手術後に調整する方法の別の実施形態を示す。
図9図9は、IOLを手術後に調整する方法の更に別の実施形態を示す。
図10図10は、IOLを手術後に調整する方法の追加の実施形態を示す。
【詳細な説明】
【0054】
図1Aは調整可能固定焦点眼内レンズ(IOL)100の実施形態の、IOL内の構成要素をよりよく描画するために調整可能IOL100の前方部分の一部を除いた平面図である。図1Aに示されるように、調整可能IOL100は光学部102及び周辺部103を備えていてもよい。周辺部103は、光学部102から周辺に延びる、又は光学部102に接続された、第1のハプティック104A及び第2のハプティック104Bを含む1つ以上のハプティック104を備えていてもよい。
【0055】
例えば、調整可能IOL100は、周辺部103が光学部102に接続され光学部102から延びる、一体型レンズ(たとえば図1Aから図3B参照)であってもよい。この実施例では、周辺部103は光学部102と共に形成され、後続のステップにより光学部102に接着又は接続されるものではない。
【0056】
他の実施形態では、周辺部103は光学部102に接続及び接着される。例えば、周辺部103はそれぞれが別々に形成された後に光学部102に接着されてもよい。
【0057】
光学部102は光学流体室106(例えば図2B図3A及び図3Bも参照)及び光学流体室106と流体連通である1つ以上の周辺流体室108を備えていてもよい。1つ以上の周辺流体室108は周辺部103内に画定されていてもよい。例えば、少なくとも1つの周辺流体室108は周辺部103の内部へと延びていてもよい。
【0058】
幾つかの実施形態では、少なくとも1つの周辺流体室108は周辺部103の内部の一部分のみへと延びていてもよい。例えば、少なくとも1つの周辺流体室108は、周辺部103の3分の1、2分の1、又は4分の3だけ内部へと延びていてもよい。また、例えば、少なくとも1つの周辺流体室108は、周辺部103の3分の1から2分の1の間、又は周辺部103の2分の1から4分の3の間、内部へと部分的にのみ延びていてもよい。
【0059】
特定の実施形態では、少なくとも1つの周辺流体室108は周辺部103のハプティック104のうちの1つの内部の一部分のみへと延びていてもよい。例えば、少なくとも1つの周辺流体室108は、ハプティック104の3分の1、2分の1、又は4分の3だけ内部へと延びていてもよい。また、例えば、少なくとも1つの周辺流体室108は、ハプティック104の3分の1から2分の1の間、又はハプティック104の2分の1から4分の3の間だけ内部へと延びていてもよい。
【0060】
図1Aに示されるように、周辺部103は2つのハプティック104(例えば第1のハプティック104A及び第2のハプティック104B)を備えていてもよい。この実施形態では、周辺流体室108は2つのハプティック104のそれぞれの内部へと延びていてもよい。周辺流体室108はハプティック104の一部分の内部へのみ延びていてもよい。
【0061】
1つ以上の周辺流体室108はまた1つ以上のハプティック流体室と称されてもよい。周辺部103が第1のハプティック104A及び第2のハプティック104Bを備える時、周辺部103は、第1のハプティック流体室と称される1つの周辺流体室108、及び第2のハプティック流体室と称される別の周辺流体室108を備えてもよい。
【0062】
少なくとも1つのハプティック104(例えば第1のハプティック104A、第2のハプティック104B、又はそれらの組み合わせ)は湾曲していてもよい。これらの実施形態では、周辺流体室108(例えばハプティック流体室)は湾曲していてもよい。周辺流体室108はハプティック104の曲率に沿っていてもよい。ハプティック104の少なくとも一区画が光学部102の少なくとも一部の曲率に沿う時、周辺流体室108もまた光学部102の少なくとも一部の曲率に沿っていてもよい。
【0063】
周辺流体室108は光学流体室106と流体連通であってもよく、又は流体チャネル110を介して光学流体室106に流体接続されていてもよい。流体チャネル110は周辺流体室108を光学流体室106へ接続する通路又は導管であってもよい。流体チャネル110は光学部102の後方要素300(例えば図3A及び図3B参照)に沿って画定されていてもよい。
【0064】
流体チャネル110もまた、光学部102の側面111又は側方表面(例えば図2A図2B図3A図3Bも参照)に沿って画定された、隙間又は開口のことであってもよい。流体チャネル110は湾曲していてもよい。流体チャネル110は概ね環状の区画として形成されていてもよい。
【0065】
周辺流体室108は光学流体室106と流体連通であってもよく、又は単一の流体チャネル110を介して光学流体室106に流体接続されていてもよい。調整可能IOL100が複数の周辺流体室108を備える場合、周辺流体室108のそれぞれは光学流体室106と流体連通であってもよく、又は単一の流体チャネル110を介して光学流体室106に流体接続されていてもよい。
【0066】
他の実施形態では、周辺流体室108は光学流体室106と流体連通であってもよく、又は複数の(例えば2以上の)流体チャネルを介して光学流体室106に流体接続されていてもよい。これらの実施形態では、2以上の流体チャネル110はチャネル分割部又は分割壁により分離されていてもよい。
【0067】
周辺部103が第1のハプティック流体室を有する第1のハプティック104A及び第2のハプティック流体室を有する第2のハプティック104Bを備えるとき、第1のハプティック流体室は第1の流体チャネルを介して光学流体室106と流体連通であるか流体接続されていてもよく、第2のハプティック流体室は第2の流体チャネルを介して光学流体室106と流体連通であるか流体接続されていてもよい。これらの実施形態では、第1の流体チャネルは第2の流体チャネルから概ね直径方向に対向する位置に配されてもよい(例えば図1A図1B図2B及び図3A)。
【0068】
図1Aは周辺部103が1つ以上のハプティック104として実装された時、ハプティック104のそれぞれはハプティック近位部112及びハプティック遠位部114を有してもよいことを示す。周辺流体室108又はハプティック流体室はハプティック近位部112内に画定されてもよい。
【0069】
ハプティック近位部112の少なくとも一区画は湾曲していてもよい。ハプティック近位部112の少なくとも一区画は光学部102の少なくとも一部の曲率に沿っていてもよい。
【0070】
ハプティック遠位部114はハプティック遠位アーム116を備えていてもよい。ハプティック遠位アーム116は、ハプティック近位部112を介した接続を除いて、光学部102に接続されていなくてもよい。
【0071】
ハプティック遠位アーム116はハプティック遠位アーム116に沿って画定されたねじれ又は曲がり118を備えていてもよい。ねじれ又は曲がり118により、水晶体嚢の変形に応じてハプティック遠位アーム116が圧縮又は屈曲してもよい。ハプティック遠位アーム116は自由又は非接続であるハプティック遠位端120にて終結してもよい。
【0072】
周辺部103が2つのハプティック104を備えるとき(例えば第1のハプティック104A及び第2のハプティック104B)、調整可能IOL100は、第1のハプティック104Aのハプティック遠位端120から第2のハプティック104Bのハプティック遠位端120まで計測した、非圧縮ハプティック長122を有してもよい。非圧縮ハプティック長122は約12.0mmから約14.0mmの間であってもよい。例えば、非圧縮ハプティック長122は約13.0mmであってもよい。
【0073】
各ハプティック104のハプティック遠位端120は光学部102に接続されていないハプティック104の閉鎖端であってもよい。ハプティック遠位端120は、ハプティック遠位端120の終端に球根状の特徴又は小さな節を備えていてもよい。
【0074】
図1Aに示されるように、光学部102は光学部直径124を有してもよい。光学部直径124は約5.0mmから8.0mmの間であってもよい。例えば、光学部直径124は約6.0mmであってもよい。
【0075】
ハプティック104は光学部102にハプティック104の近位端126にて接続されていてもよい。ハプティック104はまた光学部102に遠位接続部128にて接続されていてもよい。遠位接続部128は、周辺流体室108又はハプティック流体室の遠位端に遠位に配される、ハプティック104の一部であってもよい。
【0076】
ハプティック104の、近位端126と遠位接続部128との間の一区画(本明細書では室区画129と称する)は光学部102から物理的に切り離されていてもよい。室区画129は周辺流体室108の、半径方向に内側の室壁132と半径方向に外側の室壁134の間の一区画を少なくとも含む。例えば、室区画129の半径方向に内側の室壁132は、細長い隙間又は空間により、光学部102から分離されていてもよい。細長い隙間又は空間は、図1Aに示すように湾曲した隙間130であってもよい。
【0077】
湾曲した隙間130により、半径方向に内側の室壁132が光学部102の室区画129に隣接した側面111(例えば図2A図2B図3A、及び図3Bも参照)に衝突したり又は圧力をかけたりすることなく、周辺流体室108又はハプティック流体室が膨張又は変形することが可能になる。
【0078】
図1Aに示されるように、半径方向に外側の室壁134は半径方向に内側の室壁132よりも厚いか又は大きくてもよい。幾つかの実施形態では、半径方向に外側の室壁134は、半径方向に内側の室壁132及び周辺流体室108の両方よりも厚いか又は大きくてもよい。
【0079】
厚い又は大きい、半径方向に外側の室壁134は、水晶体嚢の収縮又は変形により室区画129に半径方向に力が加えられた時、室区画129に剛性又は弾力性を与えてもよい。例えば、厚い又は大きい、半径方向に外側の室壁134により、周辺部103の室区画129が、毛様体筋の運動により水晶体嚢の変形により周辺部103に加えられる半径方向の力に対してより鈍感になってもよい。
【0080】
幾つかの実施形態では、遠位接続部128は光学部102の隣接する部分に固定されていなく、又は接続されていなくてもよく、その結果、IOL100の移植中に、ハプティック104の大部分が、折りたたんだり広げたりすることを目的に自由に動くことができる。IOL100が水晶体嚢内に移植されれば、遠位接続部128は光学部102の隣接する部分に寄りかかったり又は接したりすることができ、ハプティック104を安定化させ、水晶体嚢の収縮又は変形によりハプティック104が捩れたり動き回ったりすることを防ぐ。他の実施形態では、ハプティック104もまた光学部102に遠位接続部128にて接続されていてもよい。
【0081】
図1Aに示されるように、周辺流体室108はハプティック遠位部114に到達する前に終結する。幾つかの実施形態では、ハプティック遠位アーム116はハプティック室壁と同じ材料から成っていてもよい。
【0082】
出願者が直面する1つの技術的な問題は、手術後に臨床医又は他の医療従事者により調整可能な、流体で満たされたIOLに対して水晶体嚢により加えられる半径方向の力に反応しない、又は鈍感である、流体で満たされたIOLをどのようにして設計するか、ということである。出願者が発見した1つの解決策は、調整可能IOLのハプティック内の一部分にのみ延びる周辺流体室を有し、ハプティックの室区画は半径方向に内側の室壁よりも厚い半径方向に外側の室壁を有し、細長い隙間又は空間により光学部から分離された半径方向に内側の室壁を有する、本明細書で開示する調整可能IOLである。ハプティックはまたハプティックの近位端及び室区画から遠位に配された遠位接続部により光学部に接続されていてもよい。
【0083】
周辺部103は複合材料400(例えば図4A参照)を含んでいてもよく、又は周辺部103の少なくとも一部が複合材料400から成っていてもよい。後の章でより詳しく議論するように、複合材料400はエネルギー吸収成分404及び複数の膨張性要素406(例えば図4A及び図4B参照)を含んでいてもよい。
【0084】
幾つかの実施形態では、複合材料400は複数の空間充填部310(例えば図3A及び図3B参照)又はピストンであってもよい。空間充填部310のうち1つ以上は、1つ以上の空間充填部310に向けられた外部エネルギー318(例えば図3C参照)に応じて膨張してもよい。1つ以上の空間充填部310の膨張により、1つ以上の空間充填部310を収容する周辺流体室108の体積が減少してもよい。少なくとも1つの空間充填部310は周辺流体室108(例えば図3B参照)の室前壁314又は室後壁316のどちらかから延びるパッドであってもよい。
【0085】
これらの及び他の実施形態では、複合材料400は複数の室膨張部312(例えば図3B参照)又はジャッキであってもよい。室膨張部312のうち1つ以上は、1つ以上の室膨張部312に向けられた外部エネルギー318(例えば図3D参照)に応じて膨張してもよい。1つ以上の室膨張部312の膨張により、1つ以上の室膨張部312を収容する周辺流体室108の体積が増加してもよい。少なくとも1つの室膨張部312は周辺流体室108(例えば図3B参照)の室前壁314から室後壁316へ延びる、膨張性支柱であってもよい。
【0086】
光学部102のベース度数又は光学/屈折度数は複合材料400に向けられた外部エネルギー318(例えば図3C及び図3D参照)に応じて変化してもよい。しかしながら、光学部102のベース度数は、調整可能IOL100が水晶体嚢内に移植された時、水晶体嚢により周辺部103に加えられた力に反応しなくても、又は鈍感であってもよい。
【0087】
光学部102のベース度数は外部エネルギー318が複合材料400に向けられた結果として光学流体室106と周辺流体室108との間の流体の移動に応じて変化してもよい。
【0088】
周辺部103の複合材料400は複数の独立周辺要素136として形成され、形作られ、又は構成されてもよい。例えば、周辺要素136のそれぞれは、近隣の、又は隣接した周辺要素136と空間又は隙間により分離されていてもよい。
【0089】
周辺要素136は周辺流体室108の内部に配され、又は設置されてもよい。幾つかの実施形態では、周辺要素136は周辺流体室108の全室長を占めてもよい。他の実施形態では、周辺要素136は周辺流体室108の全室長を占めてもよい。
【0090】
幾つかの実施形態では、周辺要素136の1つに外部エネルギー318を向けることにより、他の周辺要素136に概ね影響することなく、その特定の周辺要素136が変形又は膨張してもよい。例えば、周辺要素136の1つに外部エネルギー318を向けることにより、他の周辺要素136が類似した変形又は膨張を行うことなく、その特定の周辺要素136が変形又は膨張してもよい。
【0091】
光学部102のベース度数を変化させるために、パルス又は設定された量の外部エネルギー318が1つの周辺要素136に向けられてもよい。これらの実施形態では、光学部102のベース度数に別の変化を起こすために、追加のパルス又は設定された追加の量の外部エネルギー318が別の周辺要素136に向けられてもよい。
【0092】
幾つかの実施形態では、周辺部103は20から40の間の周辺要素136を備えていてもよい。他の実施形態では、周辺部103は10から20の間の周辺要素136を備えていてもよい。追加の実施形態では、周辺部103は40から60の間の周辺要素136を備えていてもよい。
【0093】
特定の実施形態では、1つの周辺流体室108は20の周辺要素136を備えていてもよい。他の実施形態では、1つの周辺流体室108は10から20の間の周辺要素136を備えていてもよい。更なる実施形態では、1つの周辺流体室108は20から30の間の周辺要素136を備えていてもよい。追加の実施形態では、1つの周辺流体室108は5から10の間の周辺要素136を備えていてもよい。
【0094】
周辺要素136は1つ以上の第1の周辺要素138、1つ以上の第2の周辺要素140、又はそれらの組み合わせを備えていてもよい。第1の周辺要素138及び第2の周辺要素140は同じ周辺流体室108内に配され、又は設置されていてもよい。
【0095】
幾つかの実施形態では、1つの周辺流体室108は少なくとも10個の第1の周辺要素138を備えていてもよい。他の実施形態では、1つの周辺流体室108は5から10の間の第1の周辺要素138又は10から20の間の第1の周辺要素138を備えていてもよい。
【0096】
これらの及び他の実施形態では、1つの周辺流体室108は少なくとも10個の第2の周辺要素140を備えていてもよい。他の実施形態では、1つの周辺流体室108は5から10の間の第2の周辺要素140又は10から20の間の第2の周辺要素140を備えていてもよい。
【0097】
図1Aに示された実施形態では、1つの周辺流体室108は10個の第1の周辺要素138と10個の第2の周辺要素140を備えていてもよい。更に、調整可能IOL100は、各ハプティックが10個の第1の周辺要素138及び10個の第2の周辺要素140を含むハプティック流体室を有する、2つのハプティック104を備えてもよい。
【0098】
第1の周辺要素138は周辺流体室108内の第2の周辺要素140の近傍に配されてもよい(すなわち、第2の周辺要素140は周辺流体室108内のより深くに配されてもよい)。例えば、第1の周辺要素138は、第2の周辺要素140と比較して、光学流体室106を周辺流体室108に接続する流体チャネル110のより近くに配されていてもよい。第2の周辺要素140(例えば室膨張部312又はジャッキ)を周辺流体室108内にてより深く又は遠位に配する1つの理由は、第2の周辺要素140の膨張は周辺流体室108の全断面に影響するため、(不要な収差を生み出し得る)光学部102にかかる圧力を最小化するためである。
【0099】
他の実施形態では、少なくとも幾つかの第2の周辺要素140は、第1の周辺要素138よりも、流体チャネル110のより近傍又は近くに配されていてもよい。更なる実施形態では、要素が交互の模様を形成するよう、第1の周辺要素138に第2の周辺要素140が差しはさまれてもよい。
【0100】
図1Aに示される実施形態では、(第1の周辺要素138、第2の周辺要素140、又はそれらの組み合わせを含む)周辺要素136は周辺流体室108の長さに沿って単一の列(たとえば単一の湾曲した列)にて配置されてもよい。図示されないが本開示により考慮されるその他の実施形態にて、周辺要素136はジグザグ、湾曲した模様、若しくは2又は3列の模様、すなわち周辺要素136の2以上の隣り合った列に配されてもよい。
【0101】
光学部102のベース度数は外部エネルギー318が周辺要素136に向けられた結果として光学流体室106と周辺流体室108との間の流体の移動に応じて変化してもよい。例えば、外部エネルギー318が周辺要素136に向けられることに応じて、流体は周辺流体室108から流出し、光学流体室106に流入してもよく、又は光学流体室106から流出し、周辺流体室108へと戻ってもよい。
【0102】
光学部102のベース度数は第1の周辺要素138に向けられた外部エネルギー318に応じて第1の方向へ変化してもよい。光学部102のベース度数もまた第2の周辺要素140に向けられた外部エネルギー318に応じて第1の方向と逆の方向である第2の方向へ変化してもよい。
【0103】
例えば、光学部102のベース度数は第1の周辺要素138に向けられた外部エネルギー318に応じて増加してもよい。より具体的な例として、周辺流体室108内の流体は、第1の周辺要素138に外部エネルギーが向けられることに応じて光学流体室106に流入してもよい。
【0104】
また、例えば、光学部102のベース度数は第2の周辺要素140に向けられた外部エネルギー318に応じて減少してもよい。より具体的な例として、光学流体室106内の流体は、第2の周辺要素140に外部エネルギーが向けられることに応じて周辺流体室108に流入してもよい。
【0105】
後の章でより詳しく議論するように、第1の周辺要素138は空間充填部310(例えば図3A及び図3B参照)又はピストンであってもよい。空間充填部310は、空間充填部310に向けられた外部エネルギー318に応じて膨張してもよい。空間充填部310の膨張により周辺流体室108の体積が減少してもよく、その結果流体が周辺流体室108から光学流体室106に移動してもよい。
【0106】
第2の周辺要素140は室膨張部312(例えば図2B図3A、及び図3B参照)又はジャッキであってもよい。室膨張部312は、室膨張部312に向けられた外部エネルギー318に応じて膨張してもよい。室膨張部312の膨張により周辺流体室108の体積が増加してもよい。
【0107】
幾つかの実施形態では、光学流体室106内、及び周辺流体室108、又はそれらの組み合わせの内部の流体はオイルであってもよい。より具体的には、特定の実施形態では、光学流体室106、周辺流体室108、又はそれらの組み合わせの内部の流体は、シリコンオイル又は流体であってもよい。
【0108】
光学流体室106、周辺流体室108、又はそれらの組み合わせの内部の流体は、ジフェニルシロキサン及びジメチルシロキサンを含むか、一部がそれらから成る、シリコンオイル又は流体であってもよい。他の実施形態では、シリコンオイル又は流体は、2単位のジメチルシロキサンに対して1単位の割合のジフェニルシロキサンを含むか、一部が上記から成っていてもよい。特定の実施形態では、シリコンオイルは約20mol%のジフェニルシロキサン及び約80mol%のジメチルシロキサンを含んでいてもよい。
【0109】
より具体的には、幾つかの実施形態では、シリコンオイルはジフェニルテトラメチルシクロトリシロキサンを含んでいてもよい。追加の実施形態では、シリコンオイル又は流体は、ジフェニルシロキサン及びジメチルシロキサン共重合体を含むか、一部がそれらから成っていてもよい。
【0110】
流体(例えばシリコンオイル)は光学部102の作製に使用したレンズ本体の材料にインデックスマッチしてもよい。流体がレンズ本体の材料とインデックスマッチすると、流体を含んだ光学部102全体は単一のレンズとしてふるまう。例えば、流体は屈折率が約1.48から1.53の間(又は約1.50から1.53の間)であるように選択されてもよい。幾つかの実施形態では、流体(例えばシリコンオイル)は、約1.2から1.3の間の多分散指数を有してもよい。他の実施形態では、流体(例えばシリコンオイル)は、約1.3から1.5の間の多分散指数を有してもよい。他の実施形態では、流体(例えばシリコンオイル)は、約1.1から1.2の間の多分散指数を有してもよい。その他の流体の例は、その内容が参照により本明細書に援用される、米国特許出願公開第2018/0153682号明細書に説明される。
【0111】
図1Bは調整可能な固定焦点IOL100が、生来の水晶体が除去された後の生来の水晶体嚢に移植されてもよいことを示す。生来の水晶体嚢内に移植されると、光学部102は、眼に進入し網膜に達する光を屈折させるように適合され得る。1つ以上のハプティック104(例えば第1のハプティック104A及び第2のハプティック104B)は、調整可能IOL100を水晶体嚢内の決まった場所に保持するために水晶体嚢と係合してもよい。
【0112】
図2Aは調整可能IOL100の透視図である。前に議論したように、光学流体室106及び周辺流体室108は流体(例えばシリコンオイル)で満たされていてもよい。光学部102のベース度数は流体で満たされた光学流体室106の内部の流体圧力に基づいて変化してもよい。
【0113】
光学流体室106へ流体が流入することに応じて光学部102の形状もまた変化してもよい。特定の実施形態においては、光学流体室106への流体の出入りに応じて光学部102の前方要素200の形状が変化してもよい。例えば、光学流体室106に流体が流入することに応じて、前方要素200の曲率が増加してもよい。また、例えば、光学流体室106から流体が流出することに応じて、前方要素200の曲率が減少してもよい。
【0114】
他の実施形態においては、光学流体室106への流体の出入りに応じて光学部102の後方要素300(例えば図3A及び図3B参照)の形状が変化(例えば曲率が増加又は曲率が減少)してもよい。更なる実施形態においては、光学流体室106へ流体が出入りするに従って前方要素200と後方要素300双方が変形してもよい。
【0115】
前方要素200、後方要素300、又はそれらの組み合わせの変形に応じて光学部102のベース度数が増加又は減少してもよい。前方要素200、後方要素300、又はそれらの組み合わせの曲率の増加により、光学部102のベース屈折度数を増加させることができ、より良い近くの視界が得られる。前方要素200、後方要素300、又はそれらの組み合わせの曲率の減少により、光学部102のベース屈折度数を減少させることができ、より良い遠くの視界が得られる。
【0116】
例えば、周辺流体室108(例えばハプティック流体室)から光学流体室106へ流体が流入するに従って光学部102のベース度数が増加してもよい。1つ以上の第1の周辺要素138の膨張に応じて周辺流体室108の体積が減少するに従い、流体が周辺流体室108から光学流体室106へ流出してもよい。1つ以上の第1の周辺要素138は、外部エネルギー318が第1の周辺要素138に向けられることに応じて、膨張してもよい。
【0117】
また、例えば、流体で満たされた光学流体室106から周辺流体室108へ流体が流出するか、又は引き出されるに従って光学部102のベース度数が減少してもよい。1つ以上の第2の周辺要素140の膨張に応じて周辺流体室108の体積が増加するに従い、流体が光学流体室106から周辺流体室108へ流出してもよい。1つ以上の第2の周辺要素140は、外部エネルギー318が第2の周辺要素140に向けられることに応じて、膨張してもよい。
【0118】
図2Bは調整可能IOL100の、IOL内の構成要素をよりよく描画するために調整可能IOL100の前方部分の一部を除いた透視図である。調整可能IOL100は、周辺流体室108内に複数の周辺要素136を含む、周辺部103を備えていてもよい。例えば、周辺部103の部分は周辺要素136として形成されていてもよい。
【0119】
図2Bに示されるように、光学流体室106は流体チャネル110を通して周辺流体室108のそれぞれと流体連通であってもよい。流体チャネル110は周辺流体室106を光学流体室108又はハプティック流体室へ接続する導管又は通路であってもよい。光学流体室106を各周辺流体室108に接続する単一の流体チャネル110のみが示されているが、本開示においては複数の流体チャネル(例えば2つの流体チャネル)が光学流体室106を各周辺流体室108に接続してもよいと考える。
【0120】
光学部102のベース度数は周辺要素136に向けられた外部エネルギー318に応じて変化(例えば増加又は減少)してもよい。前に議論したように、周辺要素136のそれぞれは複合材料400から成っていてもよい。
【0121】
後の章でより詳しく議論するように、第1の周辺要素138のそれぞれは空間充填部310(例えば図3A図3B及び図3Cも参照)であってもよい。空間充填部310は、空間充填部310に向けられた外部エネルギーに応じて膨張してもよい。空間充填部310の膨張により周辺流体室108の体積が減少してもよく、その結果流体が周辺流体室108から光学流体室106に移動してもよい。
【0122】
第2の周辺要素140のそれぞれは室膨張部312であってもよい(図3B及び図3Dも参照)。室膨張部312は、室膨張部312に向けられた外部エネルギーに応じて膨張してもよい。室膨張部312の膨張により、周辺流体室108が膨張し、周辺流体室108の体積が増加してもよく、その結果流体が光学流体室106から周辺流体室108に流れ、又は流出してもよい。
【0123】
光学流体室106及び周辺流体室108は総液量が約10μLから約20μLの間である流体(例えばシリコンオイル)を備えて、又は保持していてもよい。例えば、光学流体室106及び周辺流体室108は総液量が約15μLである流体(例えばシリコンオイル)を備えていてもよい。
【0124】
図2Bに示される実施形態では、周辺部103は第1のハプティック104A及び第2のハプティック104Bを備えていてもよい。第1のハプティック104Aは第1のハプティック流体室を有していてもよく、第2のハプティック104Bは第2のハプティック流体室を有していてもよい。第1のハプティック流体室及び第2のハプティック流体室のそれぞれは周辺流体室108のうちの1つと考えられてもよい。この実施形態では、ハプティック流体室のそれぞれ(例えば第1のハプティック流体室、及び第2のハプティック流体室のそれぞれ)液量が約0.3μLから0.6μLの間(又は約0.5μL)である流体を備えて、又は保持していてもよい。
【0125】
幾つかの実施形態では、周辺要素136の1つに外部エネルギー318のパルスが向けられることに応じて、周辺流体室108(例えば第1のハプティック流体室又は第2のハプティック流体室)と光学流体室106との間で約10ナノリットル(nL)から20nLの間の流体が交換又は移動されてもよい。より具体的には、周辺要素136の1つに外部エネルギー318のパルスが向けられることに応じて、1つ以上の周辺流体室108(例えば第1のハプティック流体室又は第2のハプティック流体室)と光学流体室106との間で約15nLの流体が交換又は移動されてもよい。
【0126】
幾つかの実施形態では、光学部102のベース度数は、周辺要素136のうちの1つに向けられた外部エネルギー318のパルスに応じて、正又は負の方向に約0.05ジオプトリ(D)から約0.5Dの間で変化してもよい。例えば、光学部102のベース度数は周辺要素136の1つに向けられた外部エネルギー318のパルスに応じて約0.1D変化してもよい。
【0127】
光学部102のベース度数の変化は永続的、又は概ね永久的な変化であってもよい。永続的、又は概ね永久的な変化は、変化が起こった後、周辺要素136は概ね当初の形又はサイズに戻らないことを意味してもよい。
【0128】
特定の実施形態では、光学部102のベース度数は正又は負の方向に合計約1.0Dから約2.0Dの間で変化してもよい。これらの実施形態では、合計の度数の変化は、周辺要素136の総数、周辺要素136のサイズ及び/又は膨張特性、周辺流体室108及び/又は光学流体室106の室容積、それらの室内のオイルの体積、又はそれらの組み合わせにより規定されてもよい。
【0129】
他の実施形態では、光学部102のベース度数は正又は負の方向に合計約2.0Dから約3.0Dの間で変化してもよい。追加の実施形態では、光学部102のベース度数は正又は負の方向に合計約3.0Dから約5.0Dの間で変化してもよい。更なる実施形態では、光学部102のベース度数は正又は負の方向に合計約5.0Dから約10.0Dの間で変化してもよい。
【0130】
幾つかの実施形態では、光学部102は約11Dから13Dの間の(「ゼロ度数」レンズ)、非充填又は製造されたままの状態における光学度数(すなわち光学流体室106が空又は充填されていない場合の光学部102の光学度数)を有してもよい。例えば、光学部102は、約12Dの、非充填又は製造されたままの状態における光学度数を有してもよい。光学部102の光学度数は光学流体室106が流体(例えばシリコンオイル)で充填されるに従って増加してもよい。
【0131】
光学流体室106は充填された光学部102(流体及び光学部102のレンズ表面の双方が寄与する)ベース度数が約15D(低度数IOL)から約30D(高度数IOL)の間になるまで充填されてもよい。例えば、光学流体室106は、充填された光学部102のベース度数が約20Dになるまで充填されてもよい。
【0132】
対象の水晶体嚢内に移植された調整可能IOL100は約15Dから約30Dの間(例えば約20D)のベース度数を有していてもよい。調整可能IOL100が対象の水晶体嚢内に移植された時、臨床医又は医療従事者は光学部102のベース度数を増加又は減少させるために外部エネルギー318(例えばレーザー光)を周辺要素136へ向けてもよい。
【0133】
例えば、調整可能IOL100は、対象の眼内に移植された時、約20Dのベース度数を有してもよい。レンズの度数を増加させるような度数の修正が望まれる場合、臨床医又は医療従事者は、光学部102のベース度数を段階的に約+0.1Dから+0.2Dの間増加させ、最終ベース度数が約21D(合計+1.0Dの変化)から22D(合計+2.0Dの変化)の間になるように、外部エネルギー318を第1の周辺要素138のそれぞれに向けてもよい。
【0134】
他の実施形態では、臨床医又は医療従事者は、光学部102のベース度数を段階的に約+0.1Dから+0.2Dの間増加させ、最終ベース度数が約22D(合計+2.0Dの変化)から25D(合計+5.0Dの変化)の間になるように、外部エネルギー318を第1の周辺要素138のそれぞれに向けてもよい。
【0135】
別の例として、調整可能IOL100は、対象の眼内に移植された時、約25Dのベース度数を有してもよい。レンズの度数を減少させるような度数の修正が望まれる場合、臨床医又は医療従事者は、光学部102のベース度数を段階的に約-0.1Dから-0.2Dの間減少させ、最終ベース度数が約24D(合計-1.0Dの変化)から23D(合計-2.0Dの変化)の間になるように、外部エネルギー318を第2の周辺要素140のそれぞれに向けてもよい。
【0136】
他の実施形態では、臨床医又は医療従事者は、光学部102のベース度数を段階的に約-0.1Dから-0.2Dの間減少させ、最終ベース度数が約23D(合計-2.0Dの変化)から20D(合計-5.0Dの変化)の間になるように、外部エネルギー318を第2の周辺要素140のそれぞれに向けてもよい。
【0137】
幾つかの実施形態では、調整可能IOL100は1ジオプトリあたり約100nLから200nLの間(例えば約150nL)の流体移動の光学感度を有していてもよい。すなわち、周辺流体室108と光学流体室106との間を約100nLから200nL(例えば約150nL)の間の流体が移動した時、光学部102のベース度数は約1.0D変化してもよい。より具体的な例としては、外部エネルギー318が第1の周辺要素138に向けられた結果として約100nLから200nLの間(例えば約150nL)の流体が周辺流体室108から光学流体室106に流入した時、光学部102のベース度数は+1D増加してもよい。更に、外部エネルギー318が第2の周辺要素140に向けられた結果として約100nLから200nLの間(例えば約150nL)の流体が光学流体室106から周辺流体室108へ流出又は引き出された時、光学部102のベース度数は-1.0D減少してもよい。
【0138】
特定の実施形態では、周辺流体室108のそれぞれは10個の第1の周辺要素138と10個の第2の周辺要素140を備えていてもよい。これらの実施形態では、外部エネルギー318を第1の周辺要素138のそれぞれ又は第2の周辺要素140のそれぞれに向けることにより、約10nLから20nLの間(例えば約15nL)の流体が光学流体室106と周辺流体室108との間で移動又は交換されてもよい。例えば、外部エネルギー318を第1の周辺要素138の1つへ向けることにより、第1の周辺要素138が膨張し、第1の周辺要素138を収容している周辺流体室108の体積が減少してもよい。これにより約10nLから約20nLの間(例えば約15nL)の流体が周辺流体室108から光学流体室106へと流入してもよい。また、例えば、外部エネルギー318を第2の周辺要素140の1つへ向けることにより、第2の周辺要素140が膨張し、第2の周辺要素140を収容している周辺流体室108の体積が増加してもよい。これにより約10nLから約20nLの間(例えば約15nL)の流体が光学流体室106から周辺流体室108へと流入してもよい。
【0139】
調整可能IOL100は、流体の交換又は移動の結果光学部102のベース度数が約0.05Dから0.5Dの間で変化してもよい。より具体的な例としては、約15nLの流体が光学流体室106と周辺流体室108の間で移動又は交換された時、光学部102のベース度数は約0.1D変化してもよい。
【0140】
図3A図2AのA-Aに沿った、調整可能IOL100の断面図である。光学部102は前方要素200及び後方要素300を備えていてもよい。前方要素200と後方要素300の間に流体で満たされた光学流体室106が画定されてもよい。
【0141】
前方要素200は前方光学面と、前方光学面の反対側である前方内面とを備えていてもよい。後方要素300は後方光学面と、後方光学面の反対側である後方内面とを備えていてもよい。前方光学面、後方光学面、又はそれらの組み合わせのうち任意のものは光学外表面と考えられ、称されてもよい。前方内面及び後方内面は光学流体室106に面していてもよい。前方内面の少なくとも一部及び後方内面の少なくとも一部は光学流体室106の室壁の役割を果たしてもよい。幾つかの実施形態では、周辺部103(例えばハプティック104)は光学部102の後方要素300の少なくとも一部へ接続されているか、そこから延びていてもよい。
【0142】
後の章にて詳しく議論するように、調整可能IOL100は光学外表面上に画定されるレンズ表面プロファイル又はパターン(例えば光分割レンズプロファイル又はパターン)を有していてもよい。例えば、レンズ表面プロファイルは回析表面プロファイル又はパターン、若しくは移送変化構造又はプロファイルを備えていてもよい。レンズ表面プロファイル又はパターンにより、調整可能IOL100が、例えば1つの特定の距離に対する焦点を提供する(短焦点)又は複数の距離に対する焦点を提供するといった、異なるユースケースに順応することが可能になる。例えば、光学外表面上に画定されたレンズ表面プロファイル又はパターンにより、調整可能IOL100は調整可能短焦点IOL、調整可能多焦点IOL(例えば調整可能二焦点又は三焦点IOL)、又は調整可能焦点深度拡張型(EDOF)IOLとして構成されてもよい。
【0143】
光学流体室106への流体の出入りに応じて光学部102は変形、又は屈曲してもよい。幾つかの実施形態では、光学流体室106へ流体が出入りするに従って前方要素200は変形、又は屈曲(例えば曲率が変化)してもよい。他の実施形態では、光学流体室106へ流体が出入りするに従って後方要素300は変形、又は屈曲(例えば曲率が変化)してもよい。更なる実施形態においては、光学流体室106へ流体が出入りするに従って前方要素200と後方要素300双方が変形又は屈曲してもよい。変形光学部102(例えば前方要素200、後方要素300、又はそれらの組み合わせ)の変形構成要素による変形に応じて光学部102のベース度数が変化してもよい。
【0144】
光学部102の一部は変形可能な、又は曲げやすい材料でできていてもよい。幾つかの実施形態では、光学部102の一部は変形可能な、又は曲げやすい高分子材料でできていてもよい。例えば、前方要素200、後方要素300、又はそれらの組み合わせは、一部が変形可能な又は曲げやすい高分子材料でできていてもよい。1つ以上のハプティック104(例えば第1のハプティック104A、第2のハプティック104B、又はそれらの組み合わせ)のような周辺部103の少なくとも一部分は、光学部102と同じ、変形可能な又は曲げやすい材料から成っていてもよい。他の実施形態では、1つ以上のハプティック104の一部は光学部102と異なる材料でできていてもよい。
【0145】
幾つかの実施形態では、複合材料400から成っていない光学部102及び周辺部103の部分は共重合体混合物を含むポリマー又は架橋共重合体を含むか、又は一部がそれらから成っていてもよい。
【0146】
例えば、幾つかの実施形態では、共重合体混合物はアルキルアクリレート又はメタクリレート、フルオロアルキル(メタ)アクリレート、及びフェニルアルキルアクリレート、若しくはそれらの組み合わせを含んでいてもよい。これらの種類のアクリル架橋共重合体は一般的に複数のアクリレート又はメタクリレートの共重合体であることが本開示では考慮され当業者に理解されるべきである。本明細書で使用する「アクリレート」の用語は、別途特定されない限り、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0147】
例えば、複合材料400から成っていない光学部102及び周辺部103の部分は疎水性のアクリル材料から成っていてもよい。例えば、疎水性アクリル材料は疎水性アクリレート/メタクリレート共重合体を含んでいてもよい。幾つかの実施形態では、疎水性アクリル材料はフェニルエチルアクリレート(PEA)及びフェニルエチルメタクリレート(PEMA)の組み合わせを含んでいてもよい。
【0148】
ある実施例では、架橋共重合体は、約3%から20%(wt%)の量のアルキルアクリレート、約10%から35%(wt%)の量のフルオロアルキルアクリレート、そして約50%から80%(wt%)の量のフェニルアルキルアクリレートを含んでいてもよい。幾つかの実施形態では、架橋共重合体は、アルキルアクリレートとしてnブチルアクリレート、フルオロアルキルアクリレートとしてトリフルオロエチルメタクリレート、フェニルアルキルアクリレートとしてフェニルエチルアクリレートを含むか、一部がこれらから成っていてもよい。より具体的には、架橋共重合体は、約3%から20%(wt%)の量(例えば約12%から16%の間)のnブチルアクリレート、約10%から35%(wt%)の量(例えば約17%から21%の間)のトリフルオロエチルメタクリレート、約50%から80%(wt%)(例えば約64%から67%の間)の量のフェニルエチルアクリレートを含んでもよい。
【0149】
架橋共重合体の最終組成はまた、ジメタクリル酸エチレングリコール(EGDMA)のような架橋剤を含んでいてもよい。例えば、架橋共重合体の最終組成はまた架橋剤(例えばEGDMA)を含んでいてもよい。架橋共重合体の最終組成はまた開始材(例えばパーカドックス16、カンファキノン、1-フェニル-1,2-プロパンジオン、及び2-エチルヘキシル-4-((ジメンチルアミノ)ベンゾエート)及びUV吸収剤を含んでいてもよい。
【0150】
幾つかの実施形態では、光学部102の作製に使用される材料の屈折率は約1.48から約1.53の間であってもよい。特定の実施形態では、光学部102の作製に使用される材料の屈折率は約1.50から約1.53の間であってもよい。
【0151】
幾つかの実施形態では、複合材料400から成っていない光学部102及び周辺部103の部分は、反応性(重合性)UV吸収剤及び反応性青色光吸収剤を含んでいてもよい。例えば、反応性UV吸収剤はペンシルベニア州Warringtonのポリサイエンス社よりo-Methallyl Tinuvin P(“oMTP”)として入手可能な2-(2’-ヒドロキシ-3’-メタリル-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、3-(2H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール-2-yl)-4-ヒドロキシフェニルエチルメタクリレート、及び2-(3-(ターシャリーブチル)-4-ヒドロキシ-5-(5-メトキシ-2H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール-2-イル)フェノキシ)エチルメタクリレートから成るか、これらを含んでいてもよい。特定の実施形態では、反応性UV吸収剤は約0.1%から5%(wt%)の量存在してもよい。存在する場合には、反応性UV吸収剤は典型的には約1.5%から2.5%(wt%)の量、又は約1.5%から2%(wt%)の量存在する。
【0152】
特定の実施形態では、反応性青色光吸収剤混合物は、その内容が参照により本明細書に援用される、米国特許第5470932号明細書、米国特許第8207244号明細書、及び米国特許第8329775号明細書に記載されたものであってもよい。例えば、青色光吸収染料はN-2-[3-(2’-メチルフェニルアゾ)-4-ヒドロキシフェニル]エチルメタクリルアミドであってもよい。存在する場合には、青色光吸収剤は典型的には約0.005%から1%(wt%)の量、又は約0.01%から0.1%(wt%)の量存在する。
【0153】
図3Bは、図2AのB-Bに沿った、調整可能IOLの断面図である。図3Bに示されるように、周辺流体室108は室高さ302を有してもよい。幾つかの実施形態では、室高さ302は約0.1mmであってもよい。他の実施形態では、室高さ302は約0.1mmから0.3mmの間であってもよい。
【0154】
他の実施形態では、室高さ302は約0.3mmから1.0mmの間であってもよい。更なる実施形態では、室高さ302は約1.0mmから1.5mmの間であってもよい。
【0155】
図3Bはまた光学部102の側面111は(前方から後方の方向に計測された)側面高さ304を有してもよいことを示す。幾つかの実施形態では、側面高さ304は約0.50mmから0.75mmの間であってもよい。例えば、側面高さ304は約0.65mmであってもよい。他の実施形態では、側面高さ304は約0.40mmから0.50mmの間又は約0.75mmから1.25mmの間であってもよい。
【0156】
周辺部103もまた周辺部高さ306(ハプティック高さ又は厚みとも称される)を有してもよい。幾つかの実施形態では、周辺部高さ306は約0.50mmから0.60mmの間であってもよい。他の実施形態では、周辺部高さ306は約0.60mmから0.65mmの間又は約0.45mmから0.50mmの間であってもよい。
【0157】
図3Bに示されるように、光学部102の側面111の側面高さ304は周辺部高さ306よりも大きくてもよい。例えば、周辺部103が1つ以上のハプティックを備えるとき、ハプティックの(前方から後方の方向へ計測した)厚さ又は高さは光学部102の全ての部分に沿った光学部102の厚さ又は高さよりも小さくてもよい。
【0158】
幾つかの実施形態では、(前方から後方の方向へ計測した)周辺部高さ306又は厚さは、周辺部103のいかなる部分も周辺部103の他の部分より高く又は厚くならないように、概ね一様であってもよい。周辺部103が複数のハプティック104を備えるとき、全てのハプティック104は同じ高さ又は厚さを有してもよい。
【0159】
図3Bはまた、前方要素200は(前方から後方の方向へ計測された)前方要素厚さ308を有してもよいことを示す。幾つかの実施形態では、前方要素厚さ308は約0.15mmから約0.25mmの間であってもよい。例えば、前方要素厚さ308は約0.20mmであってもよい。
【0160】
図3A及び図3Bはまた第1の周辺要素138は空間充填部310であってもよいことを示す。空間充填部310は、空間充填部310に向けられた外部エネルギー318に応じて膨張してもよい。空間充填部310の膨張により周辺流体室108の体積が減少してもよい。
【0161】
より具体的な例として、空間充填部310は室前壁314及び室後壁316のうち少なくとも1つから延びる膨張性のパッドとして実装されてもよい。光学部102のベース度数は外部エネルギー318が空間充填部310に向けられることに応じて増加してもよく、その結果、空間充填部310の体積増加により流体が周辺流体室108から外へと移動する。
【0162】
図3Bはまた第2の周辺要素140は室膨張部312であってもよいことを示す。室膨張部312は、室膨張部312に向けられた外部エネルギー318に応じて膨張してもよい。室膨張部312の膨張により周辺流体室108の体積が増加してもよい。
【0163】
より具体的な例として、室膨張部312は室前壁314から室後壁316へ延びる膨張性支柱として実装されてもよい。膨張性支柱の膨張により周辺流体室108の体積が増加してもよい。光学部102のベース度数は外部エネルギー318が膨張性支柱に向けられることに応じて減少してもよく、その結果、室膨張部312が伸展し周辺流体室108の体積が増加する。
【0164】
図3Cは、空間充填部310の変形を促すために外部エネルギー318が調整可能IOL100の空間充填部310へ向けられてもよいことを示す。
【0165】
第1の周辺要素138は複合材料400から成っていてもよい。第1の周辺要素138は周辺流体室108の内部に配されていてもよい。
【0166】
幾つかの実施形態では、第1の周辺要素138の作製に使用される複合材料400は、周辺流体室108を構成する残りの材料と共に、周辺流体室108の内部で硬化されてもよい。これらの実施形態では、第1の周辺要素138は周辺流体室108の内部にて、その場で硬化されてもよい。
【0167】
他の実施形態では、第1の周辺要素138は周辺流体室108の内壁又は表面に接着剤を使用して接着されていてもよい。接着剤は第1の周辺要素138を周辺流体室108の内壁又は表面に固定するために硬化されてもよい。
【0168】
第1の周辺要素138は空間充填部310であってもよい。幾つかの実施形態では、空間充填部310は膨張性の円盤形状のパッドとして実装されていてもよい(例えば図2B図3A及び図3B参照)。図には空間充填部310が平らな円柱又はディスクとして示されているが、本明細書では空間充填部310は概ね球体、半球体、卵型、楕円体、直方体又はその他の多面体、若しくはそれらの組み合わせであってもよいと考える。
【0169】
空間充填部310は室前壁314又は室後壁316のどちらかから延びていてもよく、そこに接着されていてもよく、又はそこに接続されていてもよい。幾つかの実施形態では、周辺流体室108が複数の空間充填部310を備える場合、空間充填部310のうち少なくとも1つは室前壁314から延びているか、室前壁314に接着されているか、又は接続されていてもよく、空間充填部310の別のものは、室後壁316から延びているか、室後壁316に接着されているか、又は接続されていてもよい。
【0170】
他の実施形態では、空間充填部310は室内側壁320から延びていてもよく、室内側壁320に接着又は接続されていてもよい。
【0171】
図3Cに示されるように、空間充填部310は、空間充填部310に向けられた外部エネルギー318のバーストに応じて膨張してもよい。空間充填部310の膨張により周辺流体室108の内容積が減少してもよく、流体が周辺流体室108から光学流体室106に移動してもよい。光学部102のベース度数は空間充填部310に向けられた外部エネルギー318に応じて増加してもよい。
【0172】
図3Cは、空間充填部310が、空間充填部310が室内側壁320と接しないようなサイズであってもよいことを示す。図3Cはまた、外部エネルギー318が空間充填部310に向けられ空間充填部310が膨張した時でさえも離隔距離322又は隙間が空間充填部310と室内側壁320のそれぞれとの間に維持されてもよいことを示す。これにより、膨張した空間充填部310は周辺流体室108を膨張させたり、また空間充填部310の膨張による周辺流体室108の体積減少効果を打ち消す程度まで周辺流体室108を膨張させたりしないことが保証される。更に、空間充填部310の前方から後方に向けた高さは室高さ302よりも非常に小さいため、膨張した空間充填部310は室前壁314と接しない。
【0173】
幾つかの実施形態では、外部エネルギー318は光エネルギーであってもよい。より具体的には、外部エネルギー318はレーザー光であってもよい。外部エネルギー318はレーザー光のバーストであってもよい。
【0174】
特定の実施形態では、レーザー光は約488nmから約650nmの間の波長を有していてもよい。例えば、レーザー光は緑色レーザー光であってもよい。緑色レーザー光は約520nmから約570nmの間の波長を有していてもよい。一例では、実施形態では、外部エネルギー318は約532nmの波長を有する緑色レーザー光であってもよい。
【0175】
例えば、レーザー光は眼科レーザーにより放出されるレーザー光であってもよい。例えば、レーザー光は網膜凝固レーザーにより放出されるレーザー光であってもよい。
【0176】
特定の実施形態では、レーザー光は、ネオジムドープイットリウムアルミニウムガーネット(Nd:YAG)レーザーであってもよい。より具体的な例としては、レーザー光は、Q-スイッチングモードで動作し532nmにてレーザー光を生成するために周波数を倍増したパルスNd:YAGレーザーであってもよい。
【0177】
他の実施形態では、レーザー光は、フェムト秒レーザー又は赤外線又は近赤外レーザーにより発せられてもよい。例えば、そのようなレーザーにより発せられたレーザー光は約1030nmから1064nmの間の波長を有していてもよい。
【0178】
後の章でより詳しく議論するように、外部エネルギー318が光エネルギーである場合、複合材料400内のエネルギー吸収成分404(図4A参照)は、光エネルギーを吸収又は捕捉して光エネルギーを熱エネルギーに変換し、膨張性要素406を膨張させるために熱エネルギーを複合材料400中の膨張性要素406(図4A及び図4B参照)へ運搬してもよい。
【0179】
前に議論したように、幾つかの実施形態では、空間充填部310のうち1つの膨張に応じて、約15nLの流体は周辺流体室108から光学流体室106へ(流体チャネル110を通じて)流れてもよい。これらの、及び他の実施形態では、光学部102のベース度数は空間充填部310の1つに向けられた外部エネルギー318のパルスに応じて約+0.1D変化してもよい。
【0180】
図3Dは、第2の周辺要素140の変形を促すために、外部エネルギー318が調整可能IOL100の第2の周辺要素140へ向けられてもよいことを示す。
【0181】
第2の周辺要素140は複合材料400から成っていてもよい。第2の周辺要素140は周辺流体室108の内部に配されていてもよい。
【0182】
幾つかの実施形態では、第2の周辺要素140の作製に使用される複合材料400は、周辺流体室108を構成する残りの材料と共に、周辺流体室108の内部で硬化されてもよい。これらの実施形態では、第2の周辺要素140は周辺流体室108の内部にて、その場で硬化されてもよい。
【0183】
他の実施形態では、第2の周辺要素140は周辺流体室108の内壁又は表面に接着剤を使用して接着されていてもよい。接着剤は第2の周辺要素140を周辺流体室108の内壁又は表面に固定するために硬化されてもよい。
【0184】
第2の周辺要素140は室膨張部312であってもよい。幾つかの実施形態では、室膨張部312は室前壁314から室後壁316(例えば図3B参照)へ延びる膨張性支柱として実装されてもよい。図は室膨張部312が概ね長い円柱として示されているが、本明細書では室膨張部312は概ね長い卵型、長い楕円体、長い直方体、又はその他の多面体、円錐、円錐台、若しくはそれらの組み合わせであってもよいと考える。
【0185】
より具体的な例として、室膨張部312は室前壁314から室後壁316へ延びる膨張性支柱として実装されてもよい。膨張性支柱の膨張により、室高さ302を増加させるために室内壁314と室後壁316の一方又は双方が押されることにより、周辺流体室108の体積が増加してもよい。光学部102のベース度数は膨張性支柱に向けられた外部エネルギー318に応じて減少してもよい。
【0186】
図3Dに示されるように、室膨張部312は、室膨張部312に向けられた外部エネルギー318のバーストに応じて膨張してもよい。室膨張部312の膨張により周辺流体室108の体積が増加してもよく、その結果流体が光学流体室106から周辺流体室108に流出してもよい。光学部102のベース度数は室膨張部312に向けられた外部エネルギー318に応じて減少してもよい。
【0187】
外部エネルギー318は先に開示した外部エネルギー318と同じものであってもよい。例えば、外部エネルギー318は光エネルギーであってもよい。
【0188】
図3Dは、室膨張部312が、室膨張部312が(膨張時であっても)室内側壁320と接しないようなサイズであってもよいことを示す。これにより、拡大した室膨張部312が前方から後方へ、一時的に、半径方向に内側の室壁132には(光学部102の側面へ加えられる圧力に変換され、結果光学度数に意図せず影響する)圧力を加えずに、周辺流体室108を膨張させることが保証される。
【0189】
前に議論したように、幾つかの実施形態では、外部エネルギー318のパルスが室膨張部312のうち1つに向けられることに応じて、約15nLの流体が光学流体室106から周辺流体室108へ(流体チャネル110を通じて)流れてもよい。これらの、及び他の実施形態では、光学部102のベース度数は、室膨張部312に外部エネルギー318が向けられることにより室膨張部312の1つが膨張することに応じて、約-0.1D変化してもよい。
【0190】
図1A図1B図2B及び図5が空間充填部310及び室膨張部312の双方を備える各周辺流体室108(例えば各ハプティック流体室)を示すが、本開示では、周辺流体室108のそれぞれはまた空間充填部310のみ、又は室膨張部312のみを備えていてもよいと考えられ、このことは当業者によって理解されるべきである。
【0191】
出願者が直面する1つの技術的な問題は、臨床医又は他の医療従事者に対して、移植されたIOLの光学的度数をどのようにして双方向に微調整する能力を提供するかということ(すなわち臨床医に、移植されたIOLの光学度数を、手術後に増加又は減少させる能力を提供すること)である。出願者が発見した1つの解決策は、例えば複合材料から成る空間充填部及び室膨張部を含む、本明細書で開示される周辺要素である。より具体的な例として、各周辺流体室(又はハプティック流体室)は複数の空間充填部、室膨張部、又は空間充填部と室膨張部の両方を備えていてもよい。各周辺要素は、周辺要素に向けられた外部エネルギーのバーストに応じて調整可能IOLの光学部が約0.1D変化するよう構成されていてもよい。
【0192】
図4Aは複合基材402、エネルギー吸収成分404、及び複数の膨張性要素406を含む複合材料400の図式表現である。前に議論したように、周辺部103内の少なくとも一部又は周辺部103の構成要素は複合材料400から成っていてもよい。
【0193】
複合基材402は疎水アクリル材料を含んでいてもよい。例えば、複合基材402はフェニルエチルアクリレート(PEA)、フェニルエチルメタクリレート(PEMA)、又はそれらの組み合わせを含んでいてもよい。
【0194】
ある実施例では、複合基材402はメタクリル官能性又はメタクリレート官能性架橋性ポリマー並びにラウリルメタクリレート(n-ドデシルメタクリレート又はSR313)及びADMAを含む反応性アクリルモノマー希釈材を含んでいてもよい。ADMAに対するラウリルメタクリレート(SR313)の量を制御することにより、硬化した複合材料400の全体的な対応する硬さ(すなわちADMAが多い)又は柔らかさ(すなわちSR313が多い)を制御し得る。メタクリレート官能性又はメタクリル官能性架橋性ポリマーは、架橋性ポリマー前駆体組成物を使用して成っていてもよい。
【0195】
架橋性ポリマー前駆体組成物は光学部及びハプティックの作製に使用されたものと同じ共重合体混合物を含んでいてもよい。
【0196】
共重合体混合物はアルキルアクリレート又はメタクリレート(例えばnブチルアクリレート)、フルオロアルキル(メタ)アクリレート(例えばトリフルオロエチルメタクリレート)、及びフェニルアルキルアクリレート(例えばフェニルエチルアクリレート)を含んでいてもよい。例えば、共重合体混合物は例えば約41%から約45%(wt%)の量のnブチルアクリレート、例えば約20%から約24%(wt%)の量のトリフルオロエチルメタクリレート、及び例えば約28%から約32%(wt%)の量のフェニルエチルアクリレートを含んでもよい。架橋性ポリマー前駆体組成物は共重合体混合物、ヒドロキシル官能性アクリルモノマー(例えばHEA)、及び光重合開始材(例えばDarocur4265、又はジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドと2-ヒドロキシ2-メチルプロピオフェノンとの50対50の混合物)を含むか、又は一部がこれらから成っていてもよい。
【0197】
複合基材402は、約50%から約65%(例えば約55%から約60%)(wt%)の量の(上述の)メタクリレート官能性又はメタクリル官能性架橋性ポリマーと、約32%から約38%(例えば約32.70%)(wt%)の量の反応性アクリルモノマー希釈材ラウリルメタクリレート(SR313)と、約5%から約9%(例えば約7.30%)(wt%)の量の反応性アクリルモノマー希釈材アダマントリーメタクリレート(ADMA)を含んでいてもよい。
【0198】
以下の表1は複合材料400の組成の例である。
表1 複合材料の組成(wt%)
【表1】
【0199】
複合材料400は幾つかの操作により作製することができる。第1の操作は無着色の複合基材402を準備することを含んでもよい。第2の操作は複合基材402をエネルギー吸収成分404、膨張性要素406、及び1つ以上の光重合開始材、熱開始材、又はそれらの組み合わせのような開始材と混合することを含んでもよい。第3の操作は硬化していない複合材料400を周辺部103内の所望の位置(例えば周辺流体室108及び/又はハプティック104)へ配し、複合材料400をその場で硬化させることを含んでもよい。
【0200】
例えば、非着色の複合基材402は染料(例えばディスパースレッド1)又は色素(黒鉛化カーボンブラック)等のエネルギー吸収成分404と混合されてもよい。エネルギー吸収成分404についてはこの後により詳しく議論する。
【0201】
幾つかの実施形態では、膨張性要素406は複合材料400の最終組成における重量の約5.0%から約15.0%を占めてもよい。より具体的には、膨張性要素406は複合材料400の最終組成(表1参照)における重量の約8.0%から約12.0%(例えば約10.0%)を占めてもよい。これらの及び他の実施形態では、エネルギー吸収成分404は複合材料400の最終組成における重量の約0.044%から約0.44%(又は約0.55%)を占めてもよい。
【0202】
光重合開始材はOmnirad 2022(ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド/2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン)であってもよい。光重合開始材は複合材料400の最終組成(例えば表1参照)の重量の約1.30%を占めてもよい。加えて、複合材料400はまた熱開始材を含んでいてもよい。熱開始材は複合材料400の最終組成(例えば表1参照)の重量の約1.00%を占めてもよい。幾つかの実施形態では、熱開始材はルペロックス(登録商標)過酸化物のようなジアルキルペルオキシドであってもよい。他の実施形態では、熱開始材はパーカドックスであってもよい。
【0203】
幾つかの実施形態では、エネルギー吸収成分(例えば染料又は色素)は非着色の複合基材402に隣接して位置してもよく、又は設置されてもよい。この実施形態では、エネルギー吸収成分404は外部エネルギー318(例えばレーザーエネルギー)を吸収してもよく、エネルギーを熱に変換してもよく、複合基材402を膨張させるためにエネルギーを複合基材402へ伝導してもよい。この手法における1つの追加の利点は、エネルギー吸収成分404はより独立して作製でき、臨床医又は外科医によりレーザー又はその他の外部エネルギー318をより簡単に的中させる標的となることができることである。
【0204】
図4Bは、膨張性要素406が、膨張性熱可塑性樹脂製シェル408及び膨張性熱可塑性樹脂製シェル408内に包含された発泡剤410を含む、膨張性微小球であってもよいことを示す。微小球は、微小球のうち少なくとも1つの直径412が当初の直径の約2倍に増加するように膨張してもよい。他の実施形態では、微小球は、微小球のうち少なくとも1つの直径412が当初の直径の約4倍に増加するように膨張してもよい。更なる実施形態では、微小球は、微小球のうち少なくとも1つの直径412が当初の直径の約2倍から約4倍の間(又は約3.5倍)に増加するように膨張してもよい。例えば、微小球は、当初は約12μmの直径412を有してもよい。複合材料400に外部エネルギーが当てられ、又は向けられることに応じて、又は微小球にエネルギーが伝送又は送信されることに応じて、微小球の直径412は約40μmまで増加してもよい。
【0205】
複合材料400に対して外部エネルギーが当てられ、又は向けられることに応じて、又は微小球にエネルギーが伝送又は送信されることに応じて、微小球の少なくとも1つの体積は約10倍から約50倍の間になるように構成されていてもよい。
【0206】
幾つかの実施形態では、発泡剤410は膨張性ガスのような膨張性の流体であってもよい。より具体的には、発泡剤410は分枝鎖型の炭化水素であってもよい。例えば、発泡剤410はイソペンタンであってもよい。他の実施形態では、発泡剤410はシクロペンタン、ペンタン、又はシクロペンタン、ペンタン及びイソペンタンの混合物を含んでいてもよい。
【0207】
膨張性要素406は異なる量の発泡剤410を含んでいてもよい。例えば、幾つかの膨張性要素406は、そのような膨張性要素406がより大きく膨張できるように、そしてその結果膨張性要素406を含む複合材料400がより大きく膨張できるように、発泡剤をより多く、又はより多い量(例えばより多くの膨張性ガス)含んでいてもよい。
【0208】
図4Bは各膨張性要素406が熱可塑性樹脂製シェル408を含んでいてもよいことを示す。図4Bはまた、熱可塑性樹脂製シェル408の厚さは膨張性要素406の大きさが増加するに従い変化してもよいことを示す。より具体的には、熱可塑性樹脂製シェル408の厚さは膨張性要素406の大きさが増加するに従い減少してもよいことを示す。例えば、膨張性要素406が膨張性微小球である場合、熱可塑性樹脂製シェル408の厚さ(すなわち半径方向の厚さ)は、膨張性微小球の直径412が増加するに従い減少してもよい。
【0209】
例えば、前に議論したように、膨張性微小球の少なくとも1つは、当初は約12μmの直径412を有してもよい。この実施形態では、膨張性微小球の熱可塑性樹脂製シェル408は約2.0μmの厚さを有してもよい。複合材料400に外部エネルギーが当てられ、又は向けられることに応じて、又は微小球にエネルギーが伝送又は送信されることに応じて、微小球の直径412は約40μmへと増加(そして体積は約10倍から50倍の間に膨張)してもよく、微小球のシェルの厚さは約0.1μmへと減少してもよい。
【0210】
図4A及び図4Bにて膨張性要素406は球体又は微小球として示されるが、本開示では、膨張性要素406は概ね卵型、楕円体、直方体、又はその他の多面体、若しくはこれらの組み合わせとして形成されていてもよいと考えられる。
【0211】
幾つかの実施形態では、熱可塑性樹脂製シェル408は一部がニトリル又はアクリロニトリル共重合体から成っていてもよい。例えば、熱可塑性樹脂製シェル408は、一部がアクリロニトリル、スチレン、ブタジエン、メチルアクリレート、又はそれらの組み合わせから成っていてもよい。
【0212】
前に議論したように、膨張性要素406は複合材料400の最終組成の重量のうち約8.0%から約12%の間を占めてもよい。膨張性要素406は複合材料400の最終組成における重量の約10%を占めてもよい。
【0213】
膨張性要素406は複合材料400の大半を形成する複合基材402中に分散又は分配されていてもよい。複合基材402は膨張性要素406を保持又は担持する基盤として機能してもよい。膨張性要素406(例えば熱可塑性樹脂製微小球)の膨張に応じて複合材料400が膨張してもよい。例えば、膨張性要素406の膨張に応じて、複合材料400の体積が増加してもよい。
【0214】
複合材料400はまたエネルギー吸収成分404を含む。幾つかの実施形態では、エネルギー吸収成分404はエネルギー吸収着色剤であってもよい。
【0215】
特定の実施形態では、エネルギー吸収着色剤はエネルギー吸収染料であってもよい。例えば、エネルギー吸収染料はアゾ染料であってもよい。幾つかの実施形態では、アゾ染料はディスパースレッド1のような赤色のアゾ染料であってもよい。他の実施形態では、アゾ染料はディスパースオレンジ(例えばディスパースオンレンジ1)のようなオレンジ色のアゾ染料、ディスパースイエロー(例えばディスパースイエロー1)のような黄色のアゾ染料、ディスパースブルー(例えばディスパースブルー1)のような青色のアゾ染料、又はそれらの組み合わせであってもよい。
【0216】
追加の実施形態では、エネルギー吸収着色剤は色素であるか、色素を含んでもよい。例えば、エネルギー吸収着色剤は黒鉛化カーボンブラックであるか、色素として黒鉛化カーボンブラックを含んでいてもよい。
【0217】
膨張性要素406と同様に、エネルギー吸収成分404は複合材料400の大半を形成する複合基材402中に分散又は分配されていてもよい。複合基材402は膨張性要素406及びエネルギー吸収成分404を保持又は担持する基盤として機能してもよい。
【0218】
前に議論したように、エネルギー吸収成分404は複合材料400の最終組成の重量の約0.025%から約1.0%(又は、より具体的には約0.045%から約0.45%)の間を占めてもよい。例えば、エネルギー吸収成分404が染料(例えばディスパースレッド1のようなアゾ染料)である場合、エネルギー吸収成分404は複合材料400の最終組成の重量のうち約0.45%から約1.0%の間を占めていてもよい。エネルギー吸収成分404が黒鉛化カーボンブラック又は他の種類の色素である場合、エネルギー吸収成分404は複合材料400の最終組成の重量の約0.025%から約0.045%の間を占めていてもよい。
【0219】
エネルギー吸収成分404(例えばアゾ染料、黒鉛化カーボンブラック、又はそれらの組み合わせ)は複合材料400に当てられた又は向けられた外部エネルギーを吸収又は捕捉してもよい。エネルギー吸収成分404は外部エネルギーを吸収又は捕捉してもよく、エネルギーを膨張性要素406へと、熱エネルギー又は熱へ変換又は運搬してもよい。
【0220】
熱エネルギーが膨張性要素406へ伝送又は送信されると、熱可塑性樹脂製シェル408は軟化し流出を開始してもよい。膨張性要素406へ熱エネルギーが伝送又は送信されることに応じて、膨張性要素406の熱可塑性樹脂製シェル408は痩せ、又は厚さが減少し始めてもよい。熱可塑性樹脂製シェル408が軟化し厚さが減少し始めると、膨張性要素406中の発泡剤410が膨張してもよい。発泡剤410はまた、熱エネルギー又は熱が膨張性要素406へ伝送又は送信されことに応じて膨張してもよい。発泡剤410の膨張により膨張性要素406(例えば熱可塑性樹脂製微小球)が膨張又は体積増加してもよい。これにより最終的には複合材料400が膨張又は体積増加する。
【0221】
複合材料400が全ての方向に膨張するように、複合材料400は、等方的に膨張又は体積増加してもよい。このような等方性の膨張は、調整可能IOL100のハプティック(単数又は複数)104又は光学部102に沿った周辺流体室108内の特定の位置に複合材料400を配し又は位置付けることによって、特定の方向への拡張又は材料変位を生じるように利用されてもよい。
【0222】
後の章でより詳しく議論するように、幾つかの実施形態では、外部エネルギーは光エネルギーであってもよく、エネルギー吸収成分404は複合材料400に向けられた光エネルギーを吸収又は捕捉し、光エネルギーを、膨張性要素406へ、熱エネルギー又は熱に変換又は運搬してもよい。膨張性要素406内の発泡剤410は熱エネルギー又は熱に応じて膨張又は活性化されてもよい。膨張性要素406及び、最終的には複合材料400は、この光エネルギーが複合材料400に当てられることに応じて、膨張又は体積増加してもよい。
【0223】
膨張性要素406の変形(例えば体積増加)は永続的、又は概ね永久的な変化であってもよい。永続的、又は概ね永久的な変化は、変化(例えば体積の増加)が起こった後、膨張性要素406は概ね当初の形又はサイズに戻らないことを意味する。結果、膨張性要素406のサイズ又は体積の変化により引き起こされる複合材料400のサイズ又は体積の変化もまた、永続的、又は概ね永久的なものである。後の章でより詳しく議論するように、上記は調整可能IOL100内に統合された複合材料400に向けられた外部エネルギー又は刺激の結果として調整可能IOL100に施された構造変化は、永続するか、概ね永久的に残ってもよいことを意味する。
【0224】
外部エネルギーが複合材料400にもはや向けられなくなった時に膨張性要素406の熱可塑性樹脂製シェル408は再び硬化してもよい。例えば、熱可塑性樹脂製シェル408は膨張性要素406の周辺の温度が特定の閾値以下まで下がったときに再び硬化してもよい。例えば、膨張性微小球の熱可塑性樹脂製シェル408は光エネルギーがもはや複合材料400に向けられなくなったときに硬化してもよい。熱可塑性樹脂製シェル408が硬化した後は、膨張性要素406は新しいサイズ及び膨張後の構成にロックされる。
【0225】
エネルギー吸収成分404が染料又は黒鉛化カーボンのようなエネルギー吸収着色剤である場合、複合材料400の少なくとも一部の色はエネルギー吸収着色剤の色になってもよい。例えば、エネルギー吸収成分404が赤色を有するディスパースレッド1のようなアゾ染料である場合、エネルギー吸収成分404を含む複合材料400の少なくとも一部は赤色であってもよい。更に、エネルギー吸収成分404が黒色を有する黒鉛化カーボンである場合、エネルギー吸収成分404を含む複合材料400の少なくとも一部は黒色であってもよい。本開示では2つの色(例えば赤と黒)に言及したが、本開示では、エネルギー吸収性の黄色、オレンジ色、又は青色の染料又は材料といった、他の種類の色を有するエネルギー吸収着色剤もまた使用されてもよいと考えられ、このことは当業者に理解されるべきである。
【0226】
調整可能IOL100の少なくとも一部がエネルギー吸収着色剤を含む複合材料400から成る場合、エネルギー吸収着色剤の色は臨床医又は他の医療従事者により視覚的に知覚可能であってもよい。調整可能IOL100が患者の眼内に移植された場合、エネルギー吸収着色剤の色は臨床医又は他の医療従事者により視覚的に知覚可能であってもよい。例えば、複合材料400はエネルギー吸収着色剤の役割を果たすディスパースレッド1を含んでいてもよい。本例では、調整可能IOL100が患者の眼内に移植された場合、調整可能IOL100の少なくとも一部が臨床医又は他の医療従事者により赤色に見えてもよい。
【0227】
エネルギー吸収着色剤の色により、臨床医又は他の医療従事者が、調整可能IOL100内の複合材料400の位置又は場所を検出又は決定することが可能になってもよい。エネルギー吸収着色剤の色により、臨床医又は他の医療従事者が調整可能IOL100内を調整するための外部エネルギー又は刺激をどこに導くかを決定することがまた可能になってもよい。
【0228】
出願者が直面する1つの技術的な問題は、複合材料が調整可能IOLの他の部分に使用される材料へ接着され周辺部内の特定の位置に概ね固定されるようにするために、複合材料をどのようにして調整可能IOLの周辺部(例えばハプティック)へ統合するかということである。出願者により発見され本明細書に開示される1つの解決策は、レンズの他の部分を作製するために用いたものと同じ共重合体混合物を取り入れた、複合材料400の独特な組成である。調整可能IOLをこのように設計することにより、複合材料400は周辺部を構成するために使用された残りの材料と相性が良くなり、移動することなく概ね自身の場所に留まる。
【0229】
出願者が直面する別の技術的な問題は、調整可能IOLに対して行った調整が、調整手順が終わった後に長く持続することをどのようにして保証するかということである。出願者により発見され本明細書に開示される1つの解決策は、一部分が膨張性微小球から成り熱可塑性樹脂製シェル内に発泡剤を含む複合材料の膨張を促すことである。(熱又は熱エネルギーが膨張性微小球に伝送又は送信される結果に成り得る)外部エネルギーが複合材料に向けられるか又は当てられることに応じて、熱可塑性樹脂製シェルは柔らかくなって(そして熱可塑性樹脂製シェルの厚さが減少して)もよい。熱可塑性樹脂製シェル内の発泡剤は、熱可塑性樹脂製シェルが柔らかくなるに従って膨張してもよい。発泡剤の膨張により、微小球が膨張し、その結果、複合材料の大半として機能する複合基材が膨張してもよい。外部エネルギーがもはや複合材料に当てられなくなっても、膨張性微小球は新しい、拡大又は膨張した構成を維持してもよい。
【0230】
更に、複合材料400のエネルギー吸収成分は、複合材料に向けられた比較的無害な外部エネルギー又は刺激を捕捉又は吸収してもよく、外部エネルギーを熱可塑性樹脂製微小球が膨張し得るエネルギーへと変換又は運搬してもよい。このように調整可能IOL100を設計することにより、調整可能IOL100の少なくとも一部の形又は大きさへの永続的な変化を促すために、比較的無害なエネルギー又は刺激(例えば光エネルギー)を使用することができる。この調整可能IOL100の形又はサイズへの永続的な変化は、レンズの、例えばベース度数を含む光学的パラメーターに対する継続的な効果を有してもよい。
【0231】
図5は調整可能な固定焦点IOL100の別の実施形態の、IOL内の構成要素をよりよく描画するために調整可能IOL100の前方部分の一部を除いた平面図である。図5に示されるように、第1の周辺要素138は第1の色を有する第1のエネルギー吸収成分を含む第1の複合材料から成っていてもよく、第2の周辺要素140は第1の色と異なる第2の色を有する第2のエネルギー吸収成分を含む第2の複合材料から成っていてもよい。この色の違いは臨床医又は他の医療従事者にとって視覚的に知覚可能であり、これにより臨床医又は他の医療従事者が2つの種類の周辺要素136を視覚的に区別することが可能になってもよい。
【0232】
例えば、第1のエネルギー吸収成分はエネルギー吸収染料であってもよい。より具体的な例として、エネルギー吸収染料は赤色アゾ染料(例えばディスパースレッド1)のようなアゾ染料であってもよい。この例では、第2のエネルギー吸収成分は、黄色アゾ染料又は別のより薄い色をした染料のような、別のエネルギー吸収染料であってもよい。
【0233】
他の例では、第1のエネルギー吸収成分は、(黒色を呈する)黒鉛化カーボンブラックのような色素であるか、それを含んでいてもよい。これらの例では、第2のエネルギー吸収成分はエネルギー吸収染料(例えば赤色アゾ染料)であってもよい。
【0234】
追加の例では、第2のエネルギー吸収成分は、(黒色を呈する)黒鉛化カーボンブラックのような色素であるか、それを含んでいてもよい。これらの例では、第1のエネルギー吸収成分はエネルギー吸収染料(例えば赤色アゾ染料)であってもよい。
【0235】
他の実施形態では、第1の複合材料及び第2の複合材料の一部は、同じエネルギー吸収成分又は着色剤から成っているが、それらの成分又は着色剤が異なる量又は重量パーセンテージ含まれていてもよい。
【0236】
特定の実施形態では、第1の複合材料から成る(そして第1の色を有する)第1の周辺要素138は第1の複合材料に向けられる第1の種類の外部エネルギー(例えば520nmから540nmの間の光エネルギー)に応じて膨張又は変形してもよく、第2の複合材料から成る(そして第1の色と異なる第2の色を有する)第2の周辺要素140は第2の複合材料に向けられる第2の種類の外部エネルギー(例えば600nmから650nmの間の光エネルギー)に応じて膨張又は変形してもよい。
【0237】
このようにして調整可能IOL100を設計することにより、臨床医又は他の医療従事者は、複合材料の異なる色をガイド又はマーカーとして利用して、外部エネルギー又は刺激を、周辺部103に沿った異なる標的部位に向けることができる。更に、異なる色を有する複合材料はまた、光学部102のベース度数に特定の変化を起こすために外部エネルギー又は刺激をどこに向けるかの指標又は視覚的な手がかりの役割を果たしてもよい。
【0238】
例えば、調整可能IOL100は調整可能IOL100のベース度数が、(第1の色を有する)第1の複合材料から成る第1の周辺要素138に外部エネルギーを向ける又は当てることである第1の方法(例えばベース度数が増加可能)により調整可能であるように構成されてもよい。調整可能IOL100のベース度数はまた、(第1の色と異なる第2の色を有する)第2の複合材料から成る第2の周辺要素140に外部エネルギーの追加のバースト又はパルスを向けるか又は当てることである第2の方法(例えばベース度数が減少可能)により調整されてもよい。
【0239】
図6は、光分割レンズ表面プロファイル600を備える光学部102を有する調整可能IOL100別の実施形態の平面図である。光学部102を強調するために、調整可能IOL100の周辺部103は破線で示される。
【0240】
出願者が直面する1つの技術的な問題は、異なる種類の視界の補助を探し求める患者により使用されてもよい、流体で満たされたIOLをどのように設計するかということである。出願者により発見された1つの解決策は、本明細書で開示される調整可能IOLであり、回転対称性と乱視を補正するトーリックプロファイルの双方を有する異なるレンズ表面プロファイルを光学部の光学外表面(例えば前方光学面)に画定することができ、同じ調整可能IOL構造を、トーリック及び非トーリック双方の形状において調整可能短焦点IOL、調整可能二焦点IOL、調整可能三焦点IOL、又は調整可能EDOF IOLとして適合させることが可能になる。
【0241】
図6に示されるように、調整可能IOL100の光学部102は光学部102のレンズ表面に画定された光分割レンズ表面プロファイル600を備えていてもよい。幾つかの実施形態では、光分割レンズ表面プロファイル600は複数の回折区域又はステップを含む中央回折領域又は構造を備えていてもよい。これらの、そして他の実施形態では、回折区域は、レンズの周辺における区域の幅がレンズの中央付近における区域幅よりも小さくなるように、半径方向に外側に向かって減少していてもよい。
【0242】
光分割レンズ表面プロファイル600は複数の焦点へと光を分割してもよい。これらの実施形態では、調整可能IOL100は調整可能多焦点IOL又は非調節式の流体調整可能多焦点IOLと考えられてもよい。光分割レンズ表面プロファイル600が複数の焦点へと光を分割し得ても、各焦点は固定であり、流体調整可能多焦点IOLは非調節式と考えられてもよい。
【0243】
幾つかの実施形態では、光分割レンズ表面プロファイル600は2つの焦点へ光を分割してもよい(例えば近くと遠くの視界を得られるようにする)。これらの実施形態では、調整可能IOL100は調整可能二焦点IOL又は非調節式の流体調整可能二焦点IOLと考えられてもよい。これらの実施形態では、光分割レンズ表面プロファイル600が2つの焦点へと光を分割し得ても、各焦点は固定であり、流体調整可能二焦点IOLは非調節式と考えられてもよい。
【0244】
光分割レンズ表面プロファイル600はまた3つの焦点へ光を分割してもよい(例えば近く、中間、及び遠くの視界を得られるようにする)。これらの実施形態では、調整可能IOL100は調整可能三焦点IOL又は非調節式の流体調整可能三焦点IOLと考えられてもよい。
【0245】
図6に示されない他の実施形態では、調整可能IOL100の光学部102は、単一の距離への合焦能力を提供する一様に湾曲した(例えば球面の)レンズ表面、又は非球レンズ表面を有してもよい。これらの実施形態では、調整可能IOL100は調整可能単焦点IOL又は非調節式の流体調整可能単焦点IOLと考えられてもよい。
【0246】
図6に示されない追加の実施形態では、調整可能IOL100の光学部102は、拡張された深度又は焦点、若しくは単一の延長された焦点を提供するレンズ表面プロファイル又はパターンを有してもよい。これらの実施形態では、調整可能IOL100は、調整可能焦点深度拡張型(EDOF)IOL又は非調節式の流体調整可能EDOF IOLと考えられてもよい。
【0247】
本明細書では、本明細書にて開示する独特な周辺部103は様々なレンズ表面プロファイルを有する光学部102と互換であってもよいと考える。従って、外部エネルギー(例えばレーザー光)を周辺部103内の複合材料400から成る周辺要素136に向けることによりこのようなレンズ表面プロファイルにより提供される合焦能力又は焦点距離が調整されてもよい。
【0248】
調整可能単焦点IOL、調整可能多焦点IOL、及び調整可能EDOF IOLのうち任意のものはトーリックレンズプロファイルを有していてもよい。
【0249】
図7は、IOL100を手術後に調整する方法700の1つの実施形態を示す。方法700は、操作702にて、IOL100の周辺部103内に画定された周辺流体室108内に位置する空間充填部310である複合材料400に、手術後に外部エネルギー318を向けることによりIOL100のベース度数を増加させることを含んでもよい。方法700はまた、操作704にて、周辺流体室108内に位置する室膨張部312である複合材料400の別の実例に外部エネルギー318を向けることによりベース度数を減少させることを含んでもよい。
【0250】
図8は、IOL100を手術後に調整する方法800の別の実施形態を示す。方法800は、操作802にて、IOL100の周辺部103内に画定された周辺流体室108内の第1の周辺要素138に、手術後に外部エネルギー318のパルスを向けることによりIOL100のベース度数を調整することを含んでもよい。方法800はまた、操作804にて、周辺流体室108内の第2の周辺要素140に、外部エネルギー318の追加のパルスを向けることによりベース度数を更に調整することを含んでもよい。
【0251】
例えば、第1の周辺要素138は空間充填部310であってもよく、外部エネルギー318を空間充填部310に向けることにより空間充填部310が膨張し、周辺流体室108の体積が減少し、流体が周辺流体室108から光学流体室106に移動してもよい(その結果光学部102のベース度数が増加する)。第2の周辺要素140は室膨張部312であってもよく、外部エネルギー318を室膨張部312に向けることにより室膨張部312が膨張し、周辺流体室108の体積が増加し、流体が光学流体室106から周辺流体室108に移動する(その結果光学部102のベース度数が減少する)。
【0252】
代わりに、光学部102のベース度数を減少させるために外部エネルギー318が室膨張部312に最初に向けられてもよく、光学部102のベース度数を増加させるために外部エネルギー318が次に空間充填部310へ向けられてもよい。
【0253】
図9は、IOL100を手術後に調整する方法900の更に別の実施形態を示す。方法900は、操作902にて、IOL100の周辺部103内に画定された第1の周辺流体室108(例えば第1のハプティック流体室)内の第1の周辺要素138に外部エネルギーのパルスを向けることによりIOL100のベース度数を調整することを含んでもよい。方法900は、操作904にて、第2の周辺要素140又はIOL100の周辺部103の第2の周辺室108(例えば第2のハプティック流体室)内の第1の周辺要素138の別の実例に、外部エネルギーの追加のパルスを向けることによりIOL100のベース度数を調整することを更に含んでもよい。
【0254】
第1の周辺要素138は空間充填部310であってもよく、外部エネルギー318を空間充填部310に向けることにより空間充填部310が膨張し、第1の周辺流体室の体積が減少し、流体が第1の周辺流体室から光学流体室106に移動してもよい(その結果光学部102のベース度数が増加する)。第2の周辺要素140は室膨張部312であってもよく、外部エネルギー318を室膨張部312に向けることにより室膨張部312が膨張し、第2の周辺流体室の体積が増加し、流体が光学流体室106から第2の周辺流体室に移動してもよい(その結果光学部102のベース度数が減少する)。
【0255】
幾つかの実施形態では、外部エネルギー318のパルスが光学部102のベース度数を減少させるために第1の周辺流体室内の室膨張部312に最初に向けられてもよく、光学部102のベース度数を増加させるために外部エネルギー318の追加のパルスが次に第2の周辺流体室内の空間充填部310へ向けられてもよい。
【0256】
図10は、IOL100を手術後に調整する方法1000の追加の実施形態を示す。方法1000は、操作1002にて、外部エネルギー318を第1の複合材料に向けることにより、IOL100のベース度数を第1の方向に調整することを含んでいてもよい。第1の複合材料は第1の色を有する第1のエネルギー吸収成分を含んでいてもよい。方法1000は更に、操作1004にて、外部エネルギーを第2の複合材料に向けることにより、IOL100のベース度数を第2の方向に調整することを含んでいてもよい。第2の複合材料は第1の色と異なる第2の色を有する第2のエネルギー吸収成分を含んでいてもよい。
【0257】
例えば、第1の複合材料は空間充填部310として形成されていてもよい。この例では、第1の複合材料の第1のエネルギー吸収成分は第1の色(例えば赤色)を有するアゾ染料であってもよい。また、この例では、第2の複合材料は室膨張部312として形成されていてもよく、第2の複合材料の第2のエネルギー吸収成分は、第1の色と異なる第2の色(例えば青色又は黄色)を有する黒鉛化カーボンブラック又はアゾ染料のようなエネルギー吸収色素であってもよい。
【0258】
他の実施形態では、第1の複合材料は室膨張部312として形成されていてもよく、第1の複合材料の第1のエネルギー吸収成分は第1の色(例えば赤色)を有するアゾ染料であってもよい。これらの実施形態では、第2の複合材料は空間充填部310として形成されていてもよく、第2の複合材料の第2のエネルギー吸収成分は、黒鉛化カーボンブラック又は第1の色と異なる第2の色(例えば青色又は黄色)を有するアゾ染料のようなエネルギー吸収色素であってもよい。
【0259】
本明細書で開示した方法の1つ以上において、IOL100のベース度数を調整することは複合材料400を膨張させるために複合材料400に外部エネルギー318のパルスを向けることにより、光学部102のベース度数を約±0.05Dから約±0.50Dの間において調整することを含んでもよい。例えば、IOL100のベース度数を調整することは複合材料400を膨張させるために複合材料400に外部エネルギー318のパルスを向けることにより、光学部102のベース度数を約±0.10D調整することを含んでもよい。
【0260】
例えば、光学部102のベース度数は、外部エネルギー318のパルスが周辺要素136に向けられることにより起こる周辺要素136の膨張の結果としての周辺流体室108の体積の変化により、流体の光学流体室106と周辺流体室108の1つの間での移動又は交換の結果、約±0.05Dから約±0.50Dの間で調整されてもよい。より具体的な例としては、外部エネルギー318のパルスが第1の周辺要素138に向けられることにより起こる第1の周辺要素138の膨張の結果としての周辺流体室108の体積の減少により、流体が光学流体室106へ周辺流体室108の一つから流入した結果、光学部102のベース度数は、約+0.05Dから約+0.50Dの間で増加してもよい。より具体的な別の例として、外部エネルギー318のパルスが第2の周辺要素140に向けられることにより起こる第2の周辺要素140の膨張の結果としての周辺流体室108の体積の増加により、流体が光学流体室106から流出し周辺流体室108の1つへ流入する結果、光学部102のベース度数は、約-0.05Dから約-0.50Dの間減少してもよい。
【0261】
本明細書で開示した方法の1つ以上において、IOL100のベース度数を調整することは、複数の周辺要素136に外部エネルギー318のパルスを向けることによりIOL100のベース度数を合計約±1.0Dから約±2.0Dの間において調整することを含んでもよい。
【0262】
本明細書で開示した1つ以上の方法において、外部エネルギー318を複合材料に向けることは更に、光エネルギーを複合材料400に向けることを含んでもよい。例えば、外部エネルギー318を複合材料400に向けることは更に、レーザー光を複合材料400に向けることを含んでもよい。より具体的な例としては、外部エネルギー318を複合材料400に向けることは更に、緑色レーザー光を複合材料400に向けることを含んでもよい。
【0263】
本明細書で開示した方法の1つ以上において、外部エネルギー318を複合材料400に向けることは、約488nmから約650nmの間の波長を有するレーザー光を複合材料400に向けることを含んでもよい。他の実施形態では、外部エネルギー318を複合材料400に向けることは更に約946nmから約1120nmの間の波長を有するレーザー光を複合材料400に向けることを含んでもよい。
【0264】
(調光式レンズのような)現在入手可能な調光可能IOLの1つの欠点は、調光手順の効果が出るためには時間がかかること、診療所を複数回訪れなければならないかもしれないこと、及び臨床医はそのような調光過程を実行するために高価な新しい装置を頻繁に購入しなければならないことである。本明細書で開示する固定焦点調整可能IOL100の1つの利点は、このような固定焦点調整可能IOL100では手術後の屈折異常の修正を時間単位というよりも秒単位で行えることである。これにより患者が屈折異常修正に関するフィードバックをほとんど瞬時に提供することが可能になる。更に、本明細書で開示したIOL100はほとんどの診療所で一般的に見られる市販のレーザー(例えば532nmのレーザー光凝固装置)を使用して調整することができる。更に、患者は治癒期間に紫外線防御のための眼鏡を着用する必要がなく、屈折異常矯正は最初の移植手術の数か月後、又は数年後でも行うことができる。
【0265】
本明細書で開示した眼内レンズは、光学部と光学部に接続された周辺部と、を備え、周辺部はエネルギー吸収成分と複数の膨張性要素を含む複合材料を含み、光学部のベース度数は複合材料に向けられた外部エネルギーに応じて変化し、光学部のベース度数は、眼内レンズが水晶体嚢内に移植された時に水晶体嚢によって周辺部に印加された力に反応しない。
【0266】
本明細書で開示した眼内レンズは、膨張性要素が膨張性微小球であり、各膨張性微小球は熱可塑性樹脂製シェル内に包含された発泡剤を含む。
【0267】
本明細書で開示した眼内レンズは、熱可塑性樹脂製シェルの厚さが複合材料に向けられた外部エネルギーに応じて変化する。
【0268】
本明細書2で開示した眼内レンズは、発泡剤が分枝鎖型の炭化水素である。
【0269】
本明細書で開示した眼内レンズは、分枝鎖型の炭化水素がイソペンタンである。
【0270】
本明細書で開示した眼内レンズは、熱可塑性樹脂製シェルの一部がアクリロニトリル共重合体から成る。
【0271】
本明細書で開示した眼内レンズは、複合材料に外部エネルギーが向けられることの結果、少なくとも1つの膨張性微小球の直径が約2倍から約4倍の間に増加する。
【0272】
本明細書で開示した眼内レンズは、少なくとも1つの膨張性要素の体積が複合材料に向けられた外部エネルギーに応じて約10倍から50倍の間で膨張する。
【0273】
本明細書で開示した眼内レンズは、膨張性要素が約5%から約15%の間の重量の複合材料を含む。
【0274】
本明細書で開示した眼内レンズは、膨張性要素が約10%の重量の複合材料を含む。
【0275】
本明細書で開示した眼内レンズは、エネルギー吸収成分がエネルギー吸収着色剤である。
【0276】
本明細書で開示した眼内レンズは、エネルギー吸収着色剤の色は眼内レンズが眼内に移植されるときに視覚的に知覚可能である。
【0277】
本明細書で開示した眼内レンズは、エネルギー吸収着色剤が染料である。
【0278】
本明細書で開示した眼内レンズは、染料がアゾ染料である。
【0279】
本明細書で開示した眼内レンズは、染料がディスパースレッド1である。
【0280】
本明細書で開示した眼内レンズは、エネルギー吸収着色剤がエネルギー吸収色素である。
【0281】
本明細書で開示した眼内レンズは、エネルギー吸収色素が黒鉛化カーボンブラックである。
【0282】
本明細書で開示した眼内レンズは、エネルギー吸収成分が約0.025%から約1.00%の間の重量の複合材料を含む。
【0283】
本明細書で開示した眼内レンズは、周辺部は一部が共重合体混合物を含む架橋共重合体から成り、複合材料は一部が共重合体混合物から成る。
【0284】
本明細書で開示した眼内レンズは、複合材料が硬化され、周辺部内の位置にて架橋共重合体になり、複合材料は概ねその場に固定される。
【0285】
本明細書で開示した眼内レンズは、光学部のベース度数が複合材料に向けられた外部エネルギーのパルスに応じて約±0.05Dから約±0.5Dの間で変化する。
【0286】
本明細書で開示した眼内レンズは、光学部のベース度数が複合材料に向けられた外部エネルギーのパルスに応じて約0.1D変化する。
【0287】
本明細書で開示した眼内レンズは、光学部のベース度数が合計約±1.0Dから約±2.0Dの間で変化する。
【0288】
本明細書で開示した眼内レンズは、ベース度数の変化が永続的な変化である。
【0289】
本明細書で開示した眼内レンズは、外部エネルギーが光エネルギーである。
【0290】
本明細書で開示した眼内レンズは、光エネルギーがレーザー光である。
【0291】
本明細書で開示した眼内レンズは、レーザー光が約488nmから約650nmの間の波長を有する。
【0292】
本明細書で開示した眼内レンズは、レーザー光が緑色レーザー光である。
【0293】
本明細書で開示した眼内レンズは、緑色レーザー光が約532nmの波長を有する。
【0294】
本明細書で開示した眼内レンズは、レーザー光が約946nmから約1120nmの間の波長を有する。
【0295】
本明細書で開示した眼内レンズは、レーザー光が約1030nmの波長を有する。
【0296】
本明細書で開示した眼内レンズは、レーザー光が約1030nmから1064nmの間の波長を有する。
【0297】
本明細書で開示した眼内レンズは、レーザー光がフェムト秒レーザーにより発せられる。
【0298】
本明細書で開示した眼内レンズは、レーザー光がネオジムドープイットリウムアルミニウムガーネット(Nd:YAG)レーザーにより発せられる。
【0299】
本明細書で開示した眼内レンズは、エネルギー吸収成分が、複合材料に向けられた外部エネルギーに応じて熱エネルギーを複数の膨張性要素へと移送する。
【0300】
本明細書で開示した眼内レンズは、複合材料が独立周辺要素として形成され、外部エネルギーを1つの独立周辺要素へ向けることにより光学部のベース度数の変化が起こり、外部エネルギーを別の独立周辺要素へ向けることにより光学部のベース度数の変化もまた起こる。
【0301】
本明細書で開示した眼内レンズは、周辺部が20から40の間の周辺要素を備える。
【0302】
本明細書で開示した眼内レンズは、光学部が光学流体室を備え、周辺部は光学流体室と流体連通である少なくとも1つの周辺流体室を備える。
【0303】
本明細書で開示した眼内レンズは、周辺流体室が湾曲していて、周辺流体室は光学部の曲率に沿う。
【0304】
本明細書で開示した眼内レンズは、周辺流体室が室高さを有し、室高さは約0.1mmから約0.3mmの間である。
【0305】
本明細書で開示した眼内レンズは、複合材料が室膨張部であり、室膨張部は、室膨張部に向けられた外部エネルギーに応じて膨張し、室膨張部の膨張により周辺流体室の体積が増加する。
【0306】
本明細書で開示した眼内レンズは、光学部のベース度数が室膨張部に向けられた外部エネルギーに応じて減少する。
【0307】
本明細書で開示した眼内レンズは、室膨張部が室前壁から室後壁へ延びる膨張性支柱である。
【0308】
本明細書で開示した眼内レンズは、複合材料は空間充填部であり、空間充填部は空間充填部に向けられた外部エネルギーに応じて膨張し、空間充填部の膨張により周辺流体室の体積が減少する。
【0309】
本明細書で開示した眼内レンズは、空間充填部は室前壁又は室後壁のどちらかから延びるパッドである。
【0310】
本明細書で開示した眼内レンズは、光学部のベース度数が空間充填部に向けられた外部エネルギーに応じて増加する。
【0311】
本明細書で開示した眼内レンズは、外部エネルギーが複合材料に向けられた結果として光学流体室と周辺流体室との間の流体の移動に応じてベース度数が変化する。
【0312】
本明細書で開示した眼内レンズは、周辺部が少なくとも1つのハプティックであり、周辺流体室はハプティック内に画定され、周辺流体室はハプティック内の一部にのみ延びる。
【0313】
本明細書で開示した眼内レンズは、少なくとも1つのハプティックがハプティック近位部及びハプティック遠位部を備え、ハプティック遠位部はハプティック近位部を介した接続を除いて光学部に接続されていないハプティック遠位アームを備える。
【0314】
本明細書で開示した眼内レンズは、ハプティック遠位アームがねじれ又は曲がりを備える。
【0315】
本明細書で開示した眼内レンズは、周辺流体室がハプティック近位部内に画定され、ハプティック近位部の室区画は光学部に接続されていない。
【0316】
本明細書で開示した眼内レンズは、少なくとも1つのハプティックがハプティックの近位端及び室区画から遠位に配された遠位接続部により光学部に接続されている。
【0317】
本明細書で開示した眼内レンズは、ハプティックの近位端が光学部の側面に接続され、そこから延びていて、側面は側面高さを有し、側面高さは約0.65mmである。
【0318】
本明細書で開示した眼内レンズは、周辺部が第1のハプティック流体室を備える第1のハプティック及び第2のハプティック流体室を備える第2のハプティックであり、光学部は光学流体室を備える。
【0319】
本明細書で開示した眼内レンズは、第1のハプティック流体室が第1の流体チャネルを介して光学流体室と流体連通であり、第2のハプティック流体室は第2の流体チャネルを介して光学流体室と流体連通であり、第1の流体チャネルは第2の流体チャネルと直径方向に対向する位置に配されている。
【0320】
本明細書で開示した眼内レンズは、光学流体室、第1のハプティック流体室、及び第2のハプティック流体室が、総液量が約10μLから約20μLの間である流体を備える。
【0321】
本明細書で開示した眼内レンズは、第1のハプティック流体室及び第2のハプティック流体室のそれぞれが約0.5μLの流体を備える。
【0322】
本明細書で開示した眼内レンズは、複合材料の膨張に応じて、第1のハプティック流体室又は第2のハプティック流体室のどちらかと光学流体室の間で約15nLの流体が交換される。
【0323】
本明細書で開示した眼内レンズは、流体がシリコンオイルである。
【0324】
本明細書で開示した眼内レンズは、周辺部が第1の複合材料と第2の複合材料を含み、第1の複合材料が第1のエネルギー吸収成分を含み、第2の複合材料が第2のエネルギー吸収成分を含み、第1のエネルギー吸収成分の色が第2のエネルギー吸収成分の色と異なる。
【0325】
本明細書で開示した眼内レンズはまた、光学部と、光学部に接続された周辺部と、を備え、周辺部は第1の周辺要素と第2の周辺要素とを備え、第1の周辺要素はエネルギー吸収成分と複数の膨張性要素を含む複合材料から成り、第2の周辺要素はエネルギー吸収成分と複数の膨張性要素を含む複合材料から成り、光学部のベース度数は第1の周辺要素に向けられた外部エネルギーに応じて増加し、光学部のベース度数は第2の周辺要素に向けられた外部エネルギーに応じて減少し、光学部のベース度数は、眼内レンズが水晶体嚢内に移植された時に水晶体嚢によって周辺部に印加された力に反応しない。
【0326】
本明細書で開示した眼内レンズは、光学部が光学流体室を備え、周辺部は光学流体室と流体連通である少なくとも1つの周辺流体室を備える。
【0327】
本明細書で開示した眼内レンズは、外部エネルギーが第1の周辺要素又は第2の周辺要素に向けられた結果としての光学流体室と周辺流体室との間の流体の移動に応じてベース度数が変化する。
【0328】
本明細書で開示した眼内レンズは、第1の周辺要素は空間充填部であり、空間充填部は空間充填部に向けられた外部エネルギーに応じて膨張し、空間充填部の膨張により周辺流体室の体積が減少する。
【0329】
本明細書で開示した眼内レンズは、空間充填部が室前壁又は室後壁のどちらかから延びる膨張性のパッドである。
【0330】
本明細書で開示した眼内レンズは、第2の周辺要素が室膨張部であり、室膨張部が室膨張部に向けられた外部エネルギーに応じて膨張し、室膨張部の膨張により周辺流体室の体積が増加する。
【0331】
本明細書で開示した眼内レンズは、室膨張部が室前壁から室後壁へ延びる膨張性支柱である。
【0332】
本明細書で開示した眼内レンズは、第1の周辺要素及び第2の周辺要素が同じ周辺流体室内に配されている。
【0333】
本明細書で開示した眼内レンズは、第2の周辺要素が同じ周辺流体室内の第1の周辺要素の遠位に配されている。
【0334】
本明細書で開示した眼内レンズは、第1の周辺要素が第2の周辺要素の近傍に同じ周辺流体室内にて配され、第1の周辺要素が第2の周辺要素よりも光学流体室を周辺流体室に接続する流体チャネルのより近くに配される。
【0335】
本明細書で開示した眼内レンズは、第1の周辺要素及び第2の周辺要素が独立周辺要素として形成され、外部エネルギーを1つの独立周辺要素へ向けることにより光学部のベース度数の変化が起こり、外部エネルギーを別の独立周辺要素へ向けることにより光学部のベース度数の変化もまた起こる。
【0336】
本明細書で開示した眼内レンズは、1つの周辺流体室が少なくとも10個の第1の周辺要素を備える。
【0337】
本明細書で開示した眼内レンズは、1つの周辺流体室が少なくとも10個の第2の周辺要素を備える。
【0338】
本明細書で開示した眼内レンズは、膨張性要素が膨張性微小球であり、各膨張性微小球は熱可塑性樹脂製シェル内に包含された発泡剤を含む。
【0339】
本明細書で開示した眼内レンズは、エネルギー吸収成分がエネルギー吸収着色剤である。
【0340】
本明細書で開示した眼内レンズは、光学部のベース度数が第1の周辺要素又は第2の周辺要素に向けられた外部エネルギーのパルスに応じて約±0.05Dから約±0.5Dの間で変化する。
【0341】
本明細書で開示した眼内レンズは、光学部のベース度数が第1の周辺要素又は第2の周辺要素に向けられた外部エネルギーのパルスに応じて約0.1D変化する。
【0342】
本明細書で開示した眼内レンズは、光学部のベース度数が合計約±1.0Dから約±2.0Dの間で変化する。
【0343】
本明細書で開示した眼内レンズは、外部エネルギーは光エネルギーである。
【0344】
本明細書で開示した眼内レンズは、光エネルギーはレーザー光である。
【0345】
本明細書で開示した眼内レンズを手術後に調整する方法はまた、外部エネルギーを眼内レンズの周辺部内の複合材料に向けることにより眼内レンズのベース度数を調整することを含み、周辺部は、周辺部の半径方向に内側に配された光学部に接続され、複合材料はエネルギー吸収成分と複数の膨張性要素を含み、眼内レンズのベース度数は、眼内レンズが水晶体嚢内に移植された時に水晶体嚢によって周辺部に印加された力に反応しない。
【0346】
本明細書で開示した方法は、光学部が光学流体室を備え、周辺部は光学流体室と流体連通である少なくとも1つの周辺流体室を備え、眼内レンズのベース度数は外部エネルギーが複合材料に向けられた結果として光学流体室と周辺流体室との間の流体の移動に応じて変化する。
【0347】
本明細書で開示した方法は、複合材料の膨張に応じて、周辺流体室と光学流体室との間で約15nLの流体が交換される。
【0348】
本明細書で開示した方法は、眼内レンズのベース度数の調整が更に、周辺部内に画定された周辺流体室内に位置する空間充填部である複合材料に外部エネルギーを向けることによりベース度数を増加させることを含む。
【0349】
本明細書で開示した方法は更に、周辺部に位置する室膨張部である複合材料の別の実例に外部エネルギーを向けることによりベース度数を減少させることを含む。
【0350】
本明細書で開示した方法は、眼内レンズのベース度数の調整が更に、周辺部内に画定された周辺流体室内に位置する室膨張部である複合材料に外部エネルギーを向けることによりベース度数を減少させることを含む。
【0351】
本明細書で開示した方法は更に、周辺流体室内に位置する空間充填部である複合材料の別の実例に外部エネルギーを向けることによりベース度数を減少させることを含む。
【0352】
本明細書で開示した方法は、眼内レンズのベース度数の調整が更に周辺部内に画定された周辺流体室内の第1の周辺要素に対して外部エネルギーのパルスを向けることであり第1の周辺要素は複合材料から成っていることと、同じ周辺流体室内の第2の周辺要素に対して外部エネルギーの追加のパルスを向けることであり第2の周辺要素は複合材料から成っていることと、を含む。
【0353】
本明細書で開示した方法は、眼内レンズのベース度数の調整が更に周辺部内に画定された第1の周辺流体室内の第1の周辺要素に対して外部エネルギーのパルスを向けることであり第1の周辺要素は複合材料から成っていることと、周辺部内に画定された第2の周辺流体室内の第2の周辺要素に対して外部エネルギーの追加のパルスを向けることであり第2の周辺要素は複合材料から成っていることと、を含む。
【0354】
本明細書で開示した方法は、第1の周辺流体室が光学部内に画定された光学流体室を介して第2の周辺流体室と流体連通である。
【0355】
本明細書で開示する方法は、複合材料が第1の複合材料と第2の複合材料とを含み、方法は更に外部エネルギーを第1の複合材料に向けることによりベース度数を第1の方向へ調整することであり第1の複合材料は第1の色を有する第1のエネルギー吸収成分を含んでいることと、外部エネルギーを第2の複合材料に向けることによりベース度数を第2の方向へ調整することであり第2の複合材料は第1の色と異なる第2の色を有する第2のエネルギー吸収成分を含んでいることと、を含む。
【0356】
本明細書で開示した方法は、膨張性要素が膨張性微小球であり、各膨張性微小球は熱可塑性樹脂製シェル内に包含された発泡剤を含む。
【0357】
本明細書で開示した方法は、眼内レンズのベース度数を外部エネルギーのパルスを複合材料に向けることにより約±0.05Dから約±0.50Dの間で変化させることを更に含む。
【0358】
本明細書で開示した方法は、外部エネルギーのパルスを複合材料に向けることにより眼内レンズのベース度数を約±0.10D調整することを更に含む。
【0359】
本明細書で開示した方法は、外部エネルギーの複数のパルスを複合材料に向けることにより眼内レンズのベース度数を合計約±1.0Dから約±2.0Dの間で変化させることを更に含む。
【0360】
本明細書で開示した方法は、外部エネルギーを複合材料に向けることは更に、光エネルギーを複合材料に向けることを含む。
【0361】
本明細書で開示した方法は、外部エネルギーを複合材料に向けることは更にレーザー光を複合材料に向けることを含む。
【0362】
本明細書で開示した方法は、外部エネルギーを複合材料に向けることは更に、緑色レーザー光を複合材料に向けることを含む。
【0363】
本明細書で開示した方法は、外部エネルギーを複合材料に向けることは更に、約488nmから約650nmの間の波長を有するレーザー光を複合材料に向けることを含む。
【0364】
本明細書で開示した方法は、外部エネルギーを複合材料に向けることは更に約946nmから約1120nmの間の波長を有するレーザー光を複合材料に向けることを含む。
【0365】
多数の実施形態が開示された。それでも、実施形態の精神及び範囲から逸脱することなく本開示に様々な変更及び修正が行われ得ることが当業者によって理解される。実施形態と共に示されたシステム、装置、機器、及び方法は特定の実施形態のために例示されたものであり、本開示内の他の実施形態と組み合わせて、又は他の実施形態にて使用され得る。例えば、図中に示された、又は本開示内で説明された方法のステップは、所望の結果を達成するためには、示され又は説明された特定の順序又は連続的な順序を必要としない。加えて、所望の結果を達成するためには、その他の操作ステップが提供されてもよく、説明した方法又はプロセスからステップ又は操作を削除又は省略してもよい。更に、所望の結果を達成するために、本開示にて説明された、又は図に示された装置又はシステムの構成要素又は部分は、除去、削除、又は省略されてもよい。加えて、本明細書中に示された又は説明されたシステム、装置、又は機器の特定の構成要素又は部分は、簡潔さ及び明快さのために省略されている。
【0366】
従って、その他の実施形態は下記の請求項の範囲内であり、明細書及び/又は図は限定的なものというよりも説明的なものとみなされてもよい。
【0367】
本明細書中の各修正又は説明及び例示された実施形態は独立した構成要素及び機能を有し、それらはその他の修正又は実施形態の機能と容易に分離又は結合してもよい。特定の状況、材料、組成物、プロセス、プロセスの行為又はステップに対して、本発明の目的、精神又は範囲に適合させるために、修正を行ってもよい。
【0368】
本明細書中に挙げられた方法については、事象の挙げられた順序に加えて、挙げた事象を論理的に可能な任意の順序で実行してもよい。更に、所望の結果を達成するために、追加のステップ又は操作が提供されてもよく、又はステップ又は操作が削除されてもよい。
【0369】
更に、値の範囲が提供されている場合、その範囲の上限と下限の間にある全ての値、及びその他の示された又は示された範囲内の値は発明の範囲に包含される。また、説明された発明の修正の随意の機能は独立して、又は本明細書中に説明された機能のうち任意の1つ以上のものと共に明らかにされ請求されてもよい。例えば、1から5の範囲の説明は、1から3、1から4、2から4、2から5、3から5、等の副範囲、加えて例えば1.5、2.5等のような範囲内の独立した数、及びその間の数の全体又は部分的な増加を開示したと考えられるべきである。
【0370】
本明細書で言及された存在する全ての主題(例えば公開、特許、特許出願)は、主題が本発明の主題と矛盾する場合を除き(その場合は本明細書の内容が優先される)、その内容が参照により本明細書に援用される。参照された項目は本願の出願日より前の開示のみのために提供される。本明細書中のいかなる内容も、本発明が先行発明によってそれらの資料に先行する権利がないことを認めるものと解釈されない。
【0371】
単数の項目への参照は、同項目が複数存在する可能性を含む。より具体的には、本明細書及び添付する請求項にて、単数形の「a」、「an」、及び「前記」は、文脈にて明確に他のものが示されない限り、複数への参照も含む。請求項は随意の構成要素を除外するよう立案されてもよいことを更に留意されたい。従って、この記述は、請求項の要素の詳述に関連した「単独で」「唯一の」等の排他的な用語の使用、又は「否定的な」限定を使用することの先行根拠としての役割を果たすことが意図される。別に定義されない限り、本明細書中にて使用される全ての技術的及び科学的な用語は、本発明が属する分野の通常の知識を有する者により共通に理解される意味と同じ意味を有する。
【0372】
「少なくとも1つの」の熟語は、この熟語が複数の物品又は構成要素(又は物品又は構成要素の列挙されたリスト)を修飾するとき、それらの物品又は構成要素のうち1つ以上の組み合わせを示すことを意味する。例えば、「A、B及びCのうち少なくとも1つ」は(i)A、(ii)B、(iii)C、(iv)A、B、及びC、(v)A及びB、(vi)B及びC、又は(vii)A及びCを意味する。
【0373】
本開示の範囲を理解するにあたり、「備える」及びその派生は、本明細書にて使用される場合、言及された機能、要素、構成要素、グループ、整数、及び/又はステップを明示するが、その他の言及されていない機能、要素、構成要素、グループ、整数、及び/又はステップを除外しない、オープンエンド形式の用語であることが意図される。上記は「含む」、「有する」、及びそれらの派生のような、同様の意味を持つ用語にも当てはまる。また、「部品」、「部分」、「一部」、「部材」、「要素」、又は「構成要素」の用語が単数形で使用された場合は1つの部分と複数の部分の二重の意味を持つ。本明細書で使用されるように、方向を示す用語「前へ、後ろへ、上へ、下へ、垂直に、水平に、下に、横切って、横向きに、及び縦向きに」及び他の類似した方向を示す用語は、装置又は機器の位置、又は装置又は機器が移される、又は移動される方向を示す。
【0374】
最後に、本明細書で使用される「概ね」「約」及び「おおよそ」のような程度を示す用語は、特定の値又は特定の値及び最終結果が著しく又は実質的に変わらないような指定値からの合理的な変動量(例えばそのような変化が適切であるような±0.1%、±1%、±5%、又は±10%までの変動)を意味する。例えば、「約1.0cm」は「1.0cm」又は「0.9cmと1.1cmの間」を意味すると解釈してもよい。「約」又は「おおよそ」のような程度を示す用語は範囲の一部である数字又は値を示すように使用され、用語は最低及び最高の数又は値を修飾するよう使用されてもよい。
【0375】
本開示は特定の形態の範囲に限定されることは意図せず、本明細書で説明される修正又は実施形態の代替、修正、及び同等のものを対象とすることを意図している。更に、本開示の範囲は、本開示に鑑みて当業者にとって明らかになり得る他の修正又は実施形態を完全に包含するものである。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】