(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-01
(54)【発明の名称】ライフスタイルイベントの検出に基づくコントローラ
(51)【国際特許分類】
A61M 5/142 20060101AFI20221124BHJP
A61M 5/172 20060101ALI20221124BHJP
A61M 5/168 20060101ALI20221124BHJP
【FI】
A61M5/142 530
A61M5/172
A61M5/168 500
A61M5/168 540
A61M5/168 550
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022520802
(86)(22)【出願日】2020-10-01
(85)【翻訳文提出日】2022-06-03
(86)【国際出願番号】 US2020053732
(87)【国際公開番号】W WO2021067554
(87)【国際公開日】2021-04-08
(32)【優先日】2019-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】519397541
【氏名又は名称】チェイス,アーノルド
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェイス,アーノルド
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD02
4C066EE11
4C066HH01
4C066KK19
4C066QQ14
4C066QQ27
4C066QQ41
4C066QQ51
4C066QQ61
4C066QQ76
4C066QQ77
4C066QQ78
4C066QQ82
4C066QQ92
(57)【要約】
薬剤の自動投与を増強するためのコントローラおよび関連するセンサシステムが提供される。コントローラおよび関連するセンサシステムは、特定の身体的ライフスタイルイベントの検出および判定に基づいている。特定の一例として、ポンプ増強システムは、6軸加速度センサと、ジャイロピッチセンサと、コントローラと、を含む。コントローラは、6軸加速度センサからの動作データおよびジャイロピッチセンサからの方向データを受信するように構成される。コントローラは、動作データおよび方向データに基づいて、ユーザへの薬剤の投与量を変化させるためのポンプ指示信号を提供する。ポンプがインスリンポンプである場合、ポンプ増強システムは、インスリンポンプ増強システムであり、ユーザの血糖値を制御するための正確なインスリン制御を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インスリンポンプ増強システムであって、
装置本体と、
前記装置本体内または前記装置本体上に配置され、検出された動作に基づいて動作データを出力するように構成された加速度センサと、
前記装置本体内または前記装置本体上に配置され、検出された方向に基づいて方向データを出力するように構成されたジャイロピッチセンサと、
前記加速度センサおよび前記ジャイロピッチセンサと通信し、前記動作データおよび/または前記方向データを受信するように構成されるコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、前記動作データおよび/または前記方向データに基づいてポンプ指示信号を生成するように構成され、
前記ポンプ指示信号は、インスリンポンプのインスリン投与量を変化させる信号を含む、
インスリンポンプ増強システム。
【請求項2】
前記コントローラは、時間加重に基づいて前記動作データおよび/または前記方向データを分析するように、および事前に入力したパターンデータに対してパターンマッチングアルゴリズムを利用して、ユーザのライフスタイルイベントの発生の判定結果を提供するように構成され、
前記ポンプ指示信号は、判定された前記ライフスタイルイベントにさらに基づいている、
請求項1に記載のインスリンポンプ増強システム。
【請求項3】
前記コントローラは、前記ユーザの血中インスリン濃度を示す血中インスリン濃度データを受信するように構成され、
前記ポンプ指示信号は、前記血中インスリン濃度データにさらに基づいている、
請求項2に記載のインスリンポンプ増強システム。
【請求項4】
前記コントローラは、前記ユーザの血糖値を示す血糖値データを受信するように構成され、
前記ポンプ指示信号は、前記血糖値データにさらに基づいている、
請求項2に記載のインスリンポンプ増強システム。
【請求項5】
前記コントローラは、前記ユーザの血中インスリン濃度を示す血中インスリン濃度データを受信するように、および前記ユーザの血糖値を示す血糖値データを受信するように構成され、
前記コントローラは、前記血中インスリン濃度データおよび前記血糖値データを分析するようにさらに構成され、
前記ポンプ指示信号は、前記血中インスリン濃度データおよび前記血糖値データの分析結果にさらに基づいている、
請求項2に記載のインスリンポンプ増強システム。
【請求項6】
前記コントローラは、判定された前記ライフスタイルイベントに関して、前記血中インスリン濃度データおよび前記血糖値データを分析するように構成され、
前記ポンプ指示信号は、判定された前記ライフスタイルイベントに関する前記血中インスリン濃度データおよび前記血糖値データの分析結果にさらに基づいている、
請求項4に記載のインスリンポンプ増強システム。
【請求項7】
前記コントローラは、時間加重に基づいて前記動作データおよび/または前記方向データを分析するように、およびパターンマッチングアルゴリズムを利用して、前記動作データと、1つまたは複数の所定の動作データパターンとを比較するように構成され、
前記コントローラは、ユーザが摂取している食品のタイプ、前記ユーザが摂取している前記食品の量および前記ユーザによる摂取の結果としての糖質負荷のうちの少なくとも1つを判定するように構成され、
前記コントローラは、判定された前記食品のタイプ、判定された前記食品の量および判定された前記糖質負荷のうちの少なくとも1つに基づいてインスリンの目標量を決定するように構成され、
前記コントローラによる前記ポンプ指示信号は、決定された前記インスリンの目標量にさらに基づいている、
請求項1に記載のインスリンポンプ増強システム。
【請求項8】
前記コントローラは、時間加重に基づいて前記動作データおよび/または前記方向データを分析するように、およびパターンマッチングアルゴリズムを利用して、ライフスタイルイベントの発生の判定結果を提供するように構成される、
請求項1に記載のインスリンポンプ増強システム。
【請求項9】
前記インスリンポンプのインスリン投与量を変化させる前記信号は、インスリンのボーラス投与量を投与させる信号である、
請求項2に記載のインスリンポンプ増強システム。
【請求項10】
前記コントローラは、メモリを含み、ユーザのライフスタイルイベント中に前記コントローラが受信した前記動作データおよび前記方向データを前記メモリに格納するように構成され、前記動作データおよび前記方向データは、複数のライフスタイルイベントタイプのうちの特定のライフスタイルイベントタイプに関連付けられる、
請求項1に記載のインスリンポンプ増強システム。
【請求項11】
前記装置本体は、前記ユーザによって装着されるように構成されたウェアラブル装置である、
請求項10に記載のインスリンポンプ増強システム。
【請求項12】
前記ウェアラブル装置は、前記ユーザの四肢のうちの1つに装着されるように構成される、
請求項11に記載のインスリンポンプ増強システム。
【請求項13】
前記ウェアラブル装置は、前記ユーザの手首に装着されるように構成され、
前記インスリンポンプ増強システムは、音声を検出するように、および検出された前記音声に基づいて音声データを出力するように構成されたマイクロフォンをさらに備え、
前記コントローラは、出力された前記音声データを受信するように構成され、
前記ポンプ指示信号は、受信した前記音声データにさらに基づいている、
請求項11に記載のインスリンポンプ増強システム。
【請求項14】
前記コントローラは、前記メモリを含み、食品の摂取中に前記コントローラが受信した前記音声データを前記メモリに格納するように構成され、
前記コントローラが前記音声データを受信したときに、前記コントローラは、前記ユーザが摂取した前記食品の特定の食品タイプを特定するための前記ユーザからの入力を受信するように構成され、
前記コントローラは、前記入力が示す前記特定の食品タイプに関連付けて受信した前記音声データを格納するように構成される、
請求項13に記載のインスリンポンプ増強システム。
【請求項15】
前記コントローラは、格納され且つ受信した前記音声データに基づいて前記特定の食品タイプを判定するように構成される、
請求項14に記載のインスリンポンプ増強システム。
【請求項16】
前記コントローラは、メモリを含み、食品の摂取中に前記コントローラが以前に受信した前記動作データおよび前記方向データを前記メモリに格納するように構成され、前記動作データおよび前記方向データは、複数の食品タイプのうちの特定の食品タイプに関連付けられる、
請求項1に記載のインスリンポンプ増強システム。
【請求項17】
前記加速度センサは、X/Y/Zの方向データ、およびピッチ/ロール/ヨー軸の動きを提供する少なくとも6軸加速度計である、
請求項1に記載のインスリンポンプ増強システム。
【請求項18】
前記コントローラは、前記動作データ、前記方向データおよび音声データのうちの少なくとも1つに基づいて、メモリに格納された複数の食品タイプの中から特定の食品タイプを選択するように構成され、
前記コントローラは、前記特定の食品タイプの選択結果に基づいて前記ポンプ指示信号を生成するようにさらに構成される、
請求項1に記載のインスリンポンプ増強システム。
【請求項19】
前記コントローラは、ユーザが摂取したカロリーの量を推定するように、および特定の期間中に前記ユーザが摂取したカロリーの合計を代表する連続カロリーカウントを維持するように構成される、
請求項1に記載のインスリンポンプ増強システム。
【請求項20】
前記コントローラは、ユーザが摂取した炭水化物の量を推定するように、および特定の期間中に前記ユーザが摂取した炭水化物の合計を代表する連続炭水化物カウントを維持するように構成される、
請求項1に記載のインスリンポンプ増強システム。
【請求項21】
前記コントローラは、前記ユーザが摂取した前記カロリーの合計が所定のカロリー閾値以上であるときに、信号を生成するように構成される、
請求項19に記載のインスリンポンプ増強システム。
【請求項22】
前記コントローラは、前記ユーザが摂取した前記炭水化物の合計が所定の炭水化物閾値以上であるときに、信号を生成するように構成される、
請求項20に記載のインスリンポンプ増強システム。
【請求項23】
緊急電話を発生させる、または前記ユーザに関連する医療情報および/または位置情報を含むメッセージを生成する通信装置を含む、
請求項22に記載のインスリンポンプ増強システム。
【請求項24】
音または振動を発するように構成されたインジケータ発生装置をさらに備え、
前記コントローラは、前記インジケータ発生装置に動作可能に接続され、
前記コントローラは、前記音に対してユーザが無反応であると前記コントローラが判断したときに、音レベルおよび/または振動レベルを増加させるように、および/または前記音または前記振動の持続時間を増加させるように構成される、
請求項1に記載のインスリンポンプ増強システム。
【請求項25】
前記コントローラは、通信装置に動作可能に接続され、
前記コントローラは、増大した一連の音または振動に対してユーザが無反応であると前記コントローラが判断したときに、通信装置を起動させるように構成される、
請求項1に記載のインスリンポンプ増強システム。
【請求項26】
装置本体と、
前記装置本体内または前記装置本体上に配置され、検出された動作に基づいて動作データを出力するように構成された加速度センサと、
前記装置本体内または前記装置本体上に配置され、検出された方向に基づいて方向データを出力するように構成されたジャイロピッチセンサと、
前記加速度センサおよび前記ジャイロピッチセンサに接続され、前記動作データおよび/または前記方向データを受信するように構成されたコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、前記動作データおよび/または前記方向データに基づいてポンプ指示信号を生成するように構成され、
前記ポンプ指示信号は、ポンプの材料投与量を変化させる信号を含む、
ポンプ増強システム。
【請求項27】
ポンプシステムを増強する方法であって、
動作データおよび/または方向データを監視するステップと、
前記動作データおよび/または前記方向データに基づいてポンプ指示信号を生成するステップと、
を含み、
前記ポンプ指示信号は、ポンプの材料投与量を変化させる信号を含む、
方法。
【請求項28】
前記ポンプシステムは、
装置本体と、
前記装置本体内または前記装置本体上に配置され、検出された動作に基づいて前記動作データを出力するように構成された加速度センサと、
前記装置本体内または前記装置本体上に配置され、検出された方向に基づいて前記方向データを出力するように構成されたジャイロピッチセンサと、
前記加速度センサおよび前記ジャイロピッチセンサに接続され、前記動作データおよび/または前記方向データを受信するように構成されたコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、前記ポンプ指示信号の生成を行う、
請求項27に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、ライフスタイルイベントの検出に基づくコントローラおよび関連するセンサシステムに関し、より詳細には、特定のライフスタイルイベントの検出および判定に基づいて薬剤の自動投与を増強するためのコントローラおよび関連するセンサシステムに関する。一態様において、コントローラおよび関連するセンサシステムは、インスリンポンプの動作に関し、より詳細には、ライフスタイルイベントの検出に基づいてユーザへのインスリンポンプによるインスリンの投与を補助するためのインスリンポンプ増強システム(IPAS:Insulin Pump Augmentation System)に関する。
【背景技術】
【0002】
「クローズドループ型」のアプローチを用いた連続グルコース監視を導入および統合したインスリンポンプを介した糖尿病管理法の技術的進歩にもかかわらず、従来のインスリンポンプシステムの能力では、個人の生理学的行動、ライフスタイルおよび運動の変化について検出および補完を依然として十分に行うことができない。これらの状況はすべて、血糖値の予期しない上昇および/または下降をもたらすことが多く、この場合、血糖値が望ましい目標または許容されるグルコース範囲から外れるようなことが起きやすい。
【0003】
例えば、日常生活において個人が単に覚醒するだけでも、血糖値を上昇させるホルモンの分泌が引き起こされる。糖尿病でない人の場合、血糖値は有機的に調整されるため、このような状況は気付かれない。しかしながら、糖尿病患者では、このような状況を認識して補完する生理学的機構が存在しない(または限定的である)。現在、糖尿病の治療は、変化した血糖値を正常な範囲に戻すための「事後対処的」な補正手段に頼るのが一般的である。
【0004】
糖尿病患者は、血糖値の上昇を治療する必要がある一方で、「クローズドループ型」のインスリンポンプによる治療を用いても常に逆の問題にも直面する。仕事、散歩または運動などの通常の身体活動によって、糖尿病患者の血糖値が危険なレベルまで下降することが頻繁に起きる。さらに問題を複雑にするのは、特定の状況下で、血糖値が上昇している期間中に同じ身体活動を行うと、血糖値をさらに危険なレベルまで上昇させる可能性が実際にあることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
基本的に、インスリンの連続的な投与量(基礎インスリン投与量)を得るために、インスリンポンプが1日の時間ベースの厳格な投与プロセスに従っているという事実と、偏位が生じた後またはその最中でしかインスリンポンプが異常なグルコース値に反応できないという事実から、全体的な制御問題が生じる。
【0006】
最良の状態では、従来のインスリンポンプまたはクローズドループ型インスリンポンプは、それ自体が真の血糖値の遅延尺度である間質液グルコース値の変化に間接的に反応することに本質的に制限されている。現在の治療法は、事前対応的に動的且つ自動的にインスリン投与量を増減させる能力がない。そのため、このような治療法は、単に、ライフスタイルまたは生理的活動の結果として生じる影響に対応するだけである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様によれば、ライフスタイルイベントの検出に基づくコントローラが提供されてもよく、より詳細には、特定のライフスタイルイベントの検出および判定に基づいて薬剤の自動投与を増強するためのコントローラが提供されてもよい。
【0008】
例えば、一実施形態において、インスリンポンプ増強システムは、本体と、加速度センサと、ジャイロピッチセンサと、コントローラと、を含んでいてもよい。加速度センサは、本体上に配置されてもよく、検出された動作に基づいて動作データを出力するように構成されてもよい。ジャイロピッチセンサは、本体上に配置されてもよく、検出された方向に基づいて方向データを出力するように構成されてもよい。コントローラは、加速度センサおよびジャイロピッチセンサと通信していてもよい。さらに、コントローラは、動作データおよび/または方向データを受信するように構成されてもよい。コントローラは、動作データおよび/または方向データに基づいてポンプ指示信号を生成するように構成されてもよい。ポンプ指示信号は、インスリンポンプのインスリン投与量を変化させる信号を含んでいてもよい。
【0009】
インスリンポンプのインスリン投与量を変化させる信号は、インスリンの流れを増減させる信号、インスリンの流れを開始させる信号、インスリンの流れを停止させる信号、またはインスリンのボーラス投与量を投与させる信号であってもよい。
【0010】
別の実施形態によれば、コントローラは、時間加重に基づいて動作データおよび/または方向データを分析するように構成されてもよい。さらに、コントローラは、パターンマッチングアルゴリズム(data pattern matching algorithm)を利用して、ユーザのライフスタイルイベントの発生の判定結果を提供するように構成されてもよい。パターンマッチングアルゴリズムは、ユーザが事前に入力したパターンデータを利用してもよい。ポンプ指示信号は、全体的または部分的に、判定されたライフスタイルイベントに基づいていてもよい。
【0011】
また、コントローラは、ユーザの血中インスリン濃度を示す血中インスリン濃度データを受信するように構成されてもよい。ポンプ指示信号は、全体的または部分的に、血中インスリン濃度データに基づいていてもよい。
【0012】
コントローラは、ユーザの血糖値を示す血糖値データを受信するように構成されてもよい。ポンプ指示信号は、全体的または部分的に、血糖値データに基づいていてもよい。
【0013】
コントローラは、血中インスリン濃度データおよび血糖値データを分析するように構成されてもよい。ポンプ指示信号は、全体的または部分的に、血中インスリン濃度データおよび血糖値データの分析結果に基づいていてもよい。
【0014】
別の態様によれば、コントローラは、判定されたライフスタイルイベントに関して、血中インスリン濃度データおよび血糖値データを分析するように構成されてもよい。ポンプ指示信号は、全体的または部分的に、判定されたライフスタイルイベントに関する血中インスリン濃度データおよび血糖値データの分析結果に基づいていてもよい。
【0015】
さらなる実施形態によれば、コントローラは、時間加重に基づいて動作データおよび/または方向データを分析するように構成されてもよい。コントローラは、パターンマッチングアルゴリズムを利用して、動作データと、ポンプ増強システムに格納された1つまたは複数の所定の動作データパターンとを比較するように構成されてもよい。さらに、コントローラは、ユーザが摂取している食品タイプ、ユーザが摂取している食品の量およびユーザによる摂取の結果としての糖質負荷のうちの少なくとも1つを判定するように構成されてもよい。コントローラは、判定された食品タイプ、判定された食品の量および判定された糖質負荷のうちの少なくとも1つに基づいてインスリンの目標量を決定するように構成されてもよい。ポンプ指示信号は、全体的または部分的に、決定されたインスリンの目標量に基づいていてもよい。
【0016】
別の実施形態によれば、コントローラは、メモリを含んでいてもよく、ユーザのライフスタイルイベント中にコントローラが受信した動作データおよび方向データをメモリに格納するように構成されてもよい。さらに、動作データおよび方向データは、複数のライフスタイルイベントタイプのうちの特定のライフスタイルイベントタイプに関連付けられてもよい。
【0017】
一実施形態によれば、インスリンポンプ増強システムは、ユーザによって装着される内部または外部インスリンポンプのいずれかの中に組み込まれて動作可能に接続されてもよい。
【0018】
一実施形態によれば、インスリンポンプ増強システムの本体は、ユーザによって装着されるように構成されたスタンドアロン型のウェアラブル装置であってもよい。ウェアラブル装置は、ユーザの手首のようなユーザの四肢の1つに装着されるように構成されてもよく、ユーザによって装着される内部または外部インスリンポンプのいずれかに動作可能に接続される。
【0019】
別の実施形態によれば、インスリンポンプ増強システムは、音声を検出するように、および検出された音声に基づいて音声データを出力するように構成されたマイクロフォンを含んでいてもよい。コントローラは、音声データを受信するように構成されてもよい。ポンプ指示信号は、全体的または部分的に、コントローラが受信した音声データに基づいていてもよい。
【0020】
さらに別の実施形態によれば、コントローラは、メモリを含んでいてもよく、食品の摂取中にコントローラが受信した、以前に格納された特定の音声データをメモリに格納するように構成されてもよい。また、コントローラは、ユーザが以前に摂取した食品の特定の食品タイプを定義して一致させるために、また、コントローラが受信した音声データと一致させるために、ユーザからの識別入力を受信するように構成されてもよい。コントローラは、入力が示す特定の食品タイプに関連付けて音声データを格納するように構成されてもよい。さらに、コントローラは、格納された音声データに基づいて特定の食品タイプを判定するように構成されてもよい。
【0021】
コントローラは、以前に特定の食品タイプを摂取中にコントローラが受信した動作データおよび方向データをメモリに格納するように構成されてもよい。メモリにおいて、動作データおよび方向データは、複数の食品タイプのうちの特定の食品タイプに関連付けられてもよい。
【0022】
コントローラは、格納された動作データおよび方向データ、または他の身体的摂取特性に基づいて特定の食品タイプの身体的摂取特性をもつユーザからの選択結果を受信するように構成されてもよい。
【0023】
一実施形態によれば、コントローラは、動作データ、方向データおよび音声データのうちの少なくとも1つに基づいて、メモリに格納された複数の食品タイプの中から特定の食品タイプを選択するように構成されてもよい。さらに、コントローラは、特定の食品タイプの選択結果に基づいてポンプ指示信号を生成するように構成されてもよい。
【0024】
コントローラは、ユーザが摂取したカロリーの量を推定するように、および特定の期間中にユーザが摂取したカロリーの合計を代表する連続カロリーカウントを維持するように構成されてもよい。さらに、コントローラは、ユーザが摂取したカロリーの合計が所定のカロリー閾値以上であるときに、信号を生成するように構成されてもよい。
【0025】
コントローラは、ユーザが摂取した炭水化物の量を推定するように、および特定の期間中にユーザが摂取した炭水化物の合計を代表する連続炭水化物カウントを維持するように構成されてもよい。さらに、コントローラは、ユーザが摂取した炭水化物の合計が所定の炭水化物閾値以上であるときに、信号を生成するように構成されてもよい。
【0026】
別の実施形態によれば、インスリンポンプ増強システムは、音または振動を発するように構成されたインジケータ発生装置を含んでいてもよい。コントローラは、インジケータ発生装置に動作可能に接続されてもよく、音または振動に対してユーザが無反応であるとコントローラが判断したときに、音レベルおよび/または振動レベルを増加させるように、および音および/または振動の持続時間を増加させるように構成されてもよい。
【0027】
コントローラは、通信装置に動作可能に接続されてもよく、増大した一連のアラームまたは振動に対してユーザが無反応であるとコントローラが判断したときに、通信装置を起動させるように構成されてもよい。任意選択で、通信装置が起動されたときに、緊急電話をかけるか、ユーザに関連するリアルタイムの医療情報および/または位置情報を含むメッセージが送信されてもよい。
【0028】
別の態様によれば、ポンプ増強システムは、本体と、少なくとも6軸加速度センサと、ジャイロピッチセンサと、コントローラと、を含んでいてもよい。6軸加速度センサは、本体内または本体上に配置されてもよく、検出された動作に基づいて動作データを出力するように構成されてもよい。ジャイロピッチセンサは、本体内または本体上に配置されてもよく、検出された方向に基づいて方向データを出力するように構成されてもよい。コントローラは、6軸加速度センサおよびジャイロピッチセンサに動作可能に接続されてもよく、動作データおよび/または方向データを受信するように構成されてもよい。コントローラは、動作データおよび/または方向データに基づいてポンプ指示信号を生成するように構成されてもよい。ここで、ポンプ指示信号は、ポンプの材料投与量を変化させる信号を含んでいてもよい。
【0029】
別の態様によれば、ポンプシステムを増強する方法は、動作データおよび/または方向データを監視するステップと、動作データおよび/または方向データに基づいてポンプ指示信号を生成するステップと、を含む。ポンプ指示信号は、ポンプの材料投与量を変化させる信号を含んでいてもよい。ポンプシステムは、装置本体と、検出された動作に基づいて動作データを出力するように構成された、装置本体内または装置本体上に配置された加速度センサと、検出された方向に基づいて方向データを出力するように構成された、本体内または本体上に配置されたジャイロピッチセンサと、加速度センサおよびジャイロピッチセンサに接続されたコントローラと、を含んでいてもよい。ここで、コントローラは、動作データおよび/または方向データを受信するように構成される。コントローラは、ポンプ指示信号の生成を実施してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
本発明の上記およびその他の目的、特徴および利点は、添付の図面を参照して記載した本発明の実施形態およびそれらの特徴の説明からより明確になるであろう。
【
図1】本発明の実施形態による例示的なIPAS対応インスリンポンプを示す図である。
【
図2】本発明の実施形態による例示的なIPAS対応手首装着型装置を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態による、
図1のIPASの動作のための例示的なフロー図である。
【
図4】本発明の実施形態による、
図1のIPASの動作のための例示的なフロー図である。
【
図5】本発明の実施形態による、
図1のIPASの動作のための例示的なフロー図である。
【
図6】本発明の実施形態による、
図1のIPASの動作のための例示的なフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の様々な実施形態を詳細に説明する前に、本発明が本明細書に記載する特定の実施形態に限定されるものではないことに留意されたい。また、本明細書に記載する方法および装置は、対応する用途にあわせて適切に適合および修正されてもよく、本明細書に記載する装置、システムおよび方法は、他の適切な用途に用いられてもよく、このような追加および修正は、本発明の範囲から逸脱しないことに留意されたい。
【0032】
簡素化のために様々な特徴を異なる図に示しているが、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な特徴を組み合わせることができることは、当業者にとって明らかであろう。
【0033】
本発明の特定の態様によれば、ポンプ増強システム(PAS)またはインスリンポンプ増強システム(IPAS)に関するコントローラは、ポンプまたはインスリンポンプと共に使用するために、改善されたポンプ動作またはインスリンポンプ動作の制御スキーム、装置およびシステムを提供する。
【0034】
例えば、本発明は、ユーザがリアルタイムで受けている様々な生理学的行動および/またはライフスタイル活動に関する見解をクローズドループ型インスリンポンプに独自に提供するインスリンポンプ増強システム(IPAS)を提供する。これにより、これらの活動を事前対応的に動的且つ自動的に補完して、糖尿病患者(または他の個人)の血糖値を「望ましい」目標範囲内に良好に保つことができる。手動注入プロセスであれインスリンポンプを介してであれ、体内へのインスリンの機械的注入は、「正常な」(非糖尿病性の)有機溶液が提供するものと比較して、糖尿病患者のグルコース値に同じ即時血糖反応をもたらさない点で、上記事前対応は非常に重要であるといえる。
【0035】
血糖値の変化とその変化が間質液の測定値に反映されるタイミングにはタイムラグがある。そのため、既存の「事後対処的」なインスリン投与反応および外部生活要因に対する補正方法は、典型的には望ましくない「範囲外」の状況をもたらす。一般に、インスリンポンプは、固定された所定の時間スケジュールに基づいて事前に設定された異なる基礎インスリン注入(投与)量を提供することができるが、これらの量は、インスリンポンプのユーザの変動するスケジュールに対応した典型的なバリエーションを考慮することができない。
【0036】
例えば、「暁現象」の結果として糖尿病患者が覚醒時に経験するグルコース値の上昇について、現在の技術でできることは、事前に設定された特定の時間枠の間に基礎インスリン投与の増加が可能になるように、静的にプログラムされることである。しかしながら、この方法における明らかな問題は、予想されるインスリン投与の増加に対応する厳格な時間スケジュールに個人が正確に従わない限り、この時間的に増加したインスリン投与レベルは、実際のグルコース値のインスリン要件と一致せず、異常に低いまたは異常に高い血糖値をもたらす可能性があることである。
【0037】
日常的に起きる多数の「現実世界」の変化を考慮すると、ホルモン分泌がいつ生じるかを予測できるように、正確な就寝時間と正確な起床時間の両方を一貫して達成して、一貫した睡眠時間を維持することはほとんど不可能である。現在設計されるインスリンポンプは、睡眠パターンの変化(平日の睡眠スケジュールと週末または休暇中の睡眠スケジュールとの間の変動など)を認識する能力を有しないので、「暁現象」の血糖変化に対する適切な応答を妨げる現在の治療法特有のタイミングの問題がある。
【0038】
同様に、従来のインスリンポンプは、緊急事態(緊急避難中に多数の階段を駆け下りなければならないような状況など)であろうと趣味(予定になかったテニスまたはその他のスポーツ活動の自発的な追加ラウンドなど)であろうと、自発的な身体活動に事前対応する方法がなく、そのため、クローズドループ型インスリンポンプは、制御を維持するために、事後対処的なインスリン投与を反応的に減少または停止させようとする粗雑なものになる。
【0039】
「従来型」の(PAS非対応またはIPAS非対応の)「スマートウオッチ」または同様の装置が総歩数または他の身体活動に関する報告を生成および情報を保存できる場合、これらの装置は、消費カロリーおよび距離などの事前情報を表示するだけであり、インスリンポンプを制御または修正するためにこれらの情報に基づいて自動的に応答する動作を行うように構成されていない。対照的に、本発明の一態様によれば、コントローラ(例えばIPASに統合されたコントローラ)は、感知したデータを使用して、インスリンポンプのインスリン投与量を自動的に判定し、有益な変化(例えばインスリン投与量の増加および/または減少)を提供する。この新規に使用されるインスリンポンプ増強システム(IPAS)は、1つまたは複数の6軸加速度センサ/ジャイロピッチセンサ(または他の多軸加速度計)が組み込まれている場合があり、人工知能ソフトウエアプログラムを介してそのデータ出力をリアルタイムで処理および分析することができるクローズドループ型インスリンポンプに生理学的および/または物理的状況を認識させ、インスリン投与レベルを体の実際のインスリン必要量とより良好にマッチングさせる機能を初めて実現した。また、IPASは、インスリンポンプユーザが、運動前および/または運動中にポンプのインスリン投与を一時的に停止することを忘れた場合、および/または計画的なまたは摂取した炭水化物の負荷についてボーラス投与を忘れた場合など、よくある厄介な状況にも理想的に対応する。上述した状況は両方とも潜在的に深刻な血糖値上昇の発生をもたらす場合があるが、これは、本発明の実施形態によるIPASの使用を通じて回避することができる。
【0040】
本発明の目的のために、「ライフスタイル」という用語は、人の現在の睡眠状態(例えば人が覚醒しているか睡眠中かの判定)、人の現在の運動状態または身体的動作状態(または移動状態)、人の現在の食品摂取状態(食べている、噛んでいる、飲んでいるなど)および人が現在摂取している特定の食品ならびに摂取した食品の総量のリアルタイム識別などのイベントを含んでいる。IPASによってインスリンポンプに提供される「ライフスタイル」状況の認識増強機能によって、クローズドループ型インスリンポンプは、ユーザのグルコース値を変化させる可能性のある身体運動活動を監視および自動的に補正し、摂取した食品の範囲について「リアルタイム」で監視、識別およびインスリン補完し、個人の睡眠/覚醒状態を監視して、睡眠終了時のホルモン分泌によるユーザの血糖値の変化を補完する能力を実現することができる。
【0041】
特定の態様によれば、コントローラは、インスリンポンプ増強システム(IPAS)に関連する。IPASは、異なる物理的実施形態で構成することができ、これには、以下の3つの例示的な実施形態が含まれる。
(1)第1の実施形態では、IPAS対応インスリンポンプの本体にIPAS要素が完全に統合されている。ポンプに統合されたIPASセンサからのデータは、IPAS内の関連する人工知能サブシステムによって処理され、結果として得られたガイダンスは、インスリンポンプの投与システム(またはインスリンポンプの投与システムのコントローラ)に作用するように提供される。
(2)第2の実施形態は、物理的に分離している第2の6軸加速度センサおよびジャイロピッチセンサ、ならびにマイクロフォンを第1の実施形態の構成とあわせて使用することでさらに増強される。マイクロフォンは、インスリンポンプユーザの腕または手首(好ましくは利き腕またはその手首)上に配置された、IPAS対応スマートウオッチまたは独自のIPAS対応ウェアラブル装置である手首装着型装置内に統合されている。これらの追加のセンサからのデータ出力は、(例えば無線通信手段を介して)IPAS搭載型インスリンポンプに送信される。ここで、追加されたデータストリームは、ポンプに統合されたセンサからのデータと組み合わされ、その後、両方のデータストリームは、インスリンポンプ内の人工知能サブシステムによって処理される。
(3)第3の実施形態は、IPAS非対応のクローズドループ型インスリンポンプと使用するための構成である。この構成において、IPAS感知要素およびIPASデータ処理機能のすべてが、インスリンポンプユーザの手首または腕(例えば利き腕またはその手首)に装着される「スマートウオッチ」またはその他のIPASウェアラブル装置の本体に物理的に統合されている。入力装置として、一体型の6軸加速度センサおよびジャイロピッチセンサ、ならびにマイクロフォンが使用される。この実施形態において、IPAS対応の腕装着型装置自体が、補充インスリンおよび/または投与変更指示を計算し、指示を実行するために、これらの指示を「従来型」のインスリンポンプ、すなわちIPAS非対応インスリンポンプに無線で送信する。また、インスリンポンプは、血糖値および血中インスリンなどの「リアルタイム」パラメータをIPAS装置に送信する。
【0042】
新たに発見されたライフスタイル認識機能がインスリンポンプに送達する第1の例では、増強されたポンプは、ユーザの睡眠状態または覚醒状態を動的に判定し、覚醒時における体内からのホルモンの推定分泌量に対応するインスリン投与量を補完的且つ事前対応的に調整することができる。この新しいライフスタイル認識機能を用いて、インスリンによるグルコース下降作用をより良好なタイミングで発生させて、インスリンポンプユーザの身体的覚醒状態をIPASが感知したときに、起床時のホルモン分泌による血糖上昇作用と、対応するインスリン分泌とを一致させることができる。
【0043】
本発明の実施形態によれば、IPASに関連するコントローラは、個人の身体的な向きに基づいて個人が睡眠状態または非睡眠状態であることを判定してもよい。例えば、個人が長時間にわたって動作が減少した状態とともに睡眠に特徴的な姿勢を身体的に維持しているかどうかにかかわらず、IPASは、6軸加速度センサおよびジャイロピッチセンサを介して、個人の物理的位置および長期間にわたる動作の欠如を認識し、そのデータをその個人の睡眠状態を示す格納されたテンプレートと照合することができる。その一方で、IPASに関連するコントローラが、検出された多軸の動作によって、個人が限られた動作または長時間の睡眠時間の姿勢から直立した姿勢に変わったことを検出したときに、IPASによる非睡眠状態(または覚醒状態または朝の覚醒)の姿勢を判定することもできる。IPASの人工知能サブシステムは、例えば、時間加重に基づく動作分析(短時間覚醒が朝の覚醒と誤って解釈されることを防ぐため)と、検出された動作の範囲および速度の観察とを含むアルゴリズムを介して判定を行って、実際の覚醒状態から様々な睡眠段階における個人の典型的な一過性の動きおよび姿勢の変化をフィルタリングすることができる。
【0044】
ユーザの睡眠状態を検出するIPASに関連するコントローラ特有の能力のより、IPASは、予めプログラムされた時間に基づく基礎投与量を早めるまたは遅らせる能力を有することができ、また、固定された/事前に設定された基礎投与量を、睡眠時またはタイムゾーンをまたぐ移動時など、実際に観察された状態に補正して合わせることができる。同様に、本発明の実施形態によるIPASは、現在の基礎投与量を一時的に歪めて、瞬間的または予測される近い将来の体のインスリン必要量とより良好に合わせることができる。
【0045】
また、IPASの睡眠/覚醒判定は、重要なユーザ状態判定と応答を提供することをできる。ユーザが睡眠中であると推定される間にIPAS搭載型インスリンポンプに関連するコントローラが異常に低い(または過度に高い)血糖測定値を感知した場合、低血糖値を示している睡眠中の人を起こすことは特に難しいため、通常の日中のパラメータを超えて警告アラームの音量レベルおよびそのアラームの持続時間を増加させることができる。一部の実施形態において、増大したアラームシーケンスの完了後にIPAS搭載型インスリンポンプが覚醒状態を感知できない場合、IPASに関連するコントローラは、ユーザが意識を失った(または無反応である)ことを推定し、自動的に近くのモバイル装置に医療支援を求める緊急電話をかける命令を送るように構成されている。同時に、IPASに関連するコントローラは、インスリンポンプにインスリン投与を自動的に中断させることができる。極端に低い血糖値を示す無反応の個人の場合、IPASは、インスリン投与を自動的に中断し、且つ/またはGlucagonなどのグルコース上昇薬の注入を行うように構成されてもよい。過度に高い血糖値の場合、IPASは、ケトン状態を回避または補正するために、インスリンの適切なボーラス投与を自動的に行うように構成されてもよい。例えば、IPASに関連するコントローラは、Bluetooth無線通信などを介して近くのモバイル装置に命令を送ることができる。意識がない個人が会話をすることができなくても、デジタル化された音声メッセージで、緊急電話対応オペレータに医療緊急事態の性質を伝え、GPSを通してユーザの位置を中継するか、その情報がE911(enhanced 911)システムを介して利用できない場合はモバイル装置の他の位置情報技術を通してユーザの位置を中継することができる。任意選択で、IPASは、ファーストレスポンダによるよりタイムリーな状況認識と活動のために、観察された血糖値を緊急電話対応オペレータに送信することができる。
【0046】
第2の例において、IPAS非対応インスリンポンプは、そのユーザの「刻一刻」のライフスタイル活動に関して完全に無知であり、そのため、事前に設定された投与設定から事前対応的に逸脱する能力を有しない。糖尿病患者の運動時の血糖値に応じた血糖値の下降または上昇のように、身体活動が糖尿病患者の血糖値に影響を与えることはよく知られている。統合された多軸加速度センサおよびピッチ感知センサ(または別個の補助的な多軸加速度センサとジャイロピッチセンサ)を使用することで、インスリンポンプは、ユーザの運動/身体活動を連続的に(または半連続的に)把握することができ、従来のインスリンポンプ装置のように血糖値の変化を反応的に補正するのではなく、ユーザのインスリン投与量を適宜動的に且つ事前対応的に調整することができる。
【0047】
本発明の実施形態によれば、IPASは、ユーザの「範囲内」のグルコース測定値の改善を達成することができる。これにより、運動または身体活動の変化を即座に(またはほぼ即座に)検出して、運動開始後、即座に(またはほぼ即座に)ユーザの基礎インスリン投与量を同時に変化させることができる。ユーザの現在の血糖値を分析すると同時に、(インスリンポンプによって提供された、現在の)血中インスリン濃度を判定し、必要に応じてポンプで適切なインスリン調整を行うために、人工知能(A.I.)ロジックを用いてもよい。運動時の瞬間的な血中インスリン濃度が適切であると判断され、検出された血糖値が「正常」範囲内(または所定の範囲内)にある場合、IPASに関連するコントローラは、インスリンポンプに作用して、感知した値および運動の持続時間に対応して基礎インスリン投与量を停止または低下させるように構成されてもよい。運動開始時に、検出された血糖値が正常値を大きく上回っている(または所定の閾値を上回っている)および/または血中インスリン濃度が低い(または所定の閾値を下回る)場合、IPASに関連するコントローラは、運動によって引き起こされる血糖値のさらなる上昇を防止するように運動を補完するために、インスリンポンプに、ボーラス投与量および/またはその基礎投与量を増加させるように構成されてもよい。
【0048】
運動またはその他の激しい活動(テニスなど)の判定は、A.I.動作アルゴリズムを介して行われてもよい。A.I.動作アルゴリズムは、いくつの活動軸が所定の動作閾値レベルを上回る動作を報告しているか、それを報告している軸の偏位範囲、および(ランニングまたはその他の特定の活動を検出するための)活動リズムの繰り返しパターンに基づいて判定を行ってもよい。アルゴリズムは、例えば、個人が車に乗っているとき(上下運動の繰り返し)の上下の垂直方向の「跳ねる」動きと、ランニングを連想することができるなど垂直方向の動作とを混同しないように、「誤った」運動報告の状況をフィルタリングするように設計されてもよい。動作アルゴリズムでは、垂直方向の動作(および他の動作の可能性)はあるものの、運動から予想される偏位距離には制限があり、前方への動きと他の軸の測定値が欠落しており、非常に異なるリズムパターンが見られることが示される。
【0049】
インスリンポンプ増強システム(IPAS)は、本明細書に記載のライフスタイルの例に限定されるものではない。従来のインスリンポンプは、ライフスタイルを認識するための直接的な手段を有さず、この欠陥により、ポンプは、ユーザの食品摂取をまったく認識することができない。摂取した糖質負荷を感知する「リアルタイム」な方法がなければ、従来のクローズドループ型ポンプは、摂取される食品を認識せず、単に、ユーザの血糖値が目標範囲または目標量に向かうまたはそれを超えた上昇を感知したときに、間接的且つ反応的に補正アクションを開始するのみである。インスリンポンプユーザが食品の摂取前に手動でインスリンをボーラス投与する場合でさえ、その後どのくらいの炭水化物が消費されるか、または消費されないかについては推測することしかできない。
【0050】
本発明を使用することで、IPAS搭載型インスリンポンプでは、食品摂取を示すリアルタイム情報が同時に提供されるだけでなく、多くの場合、正確な食品タイプ、消費された食品の実際の量、結果として計算された摂取糖質負荷、食品のグリセミックインデックス、およびその摂取に対するインスリンの補完的ボーラス投与量と分泌タイミングも推定されてポンプに提供され得る。これにより、インスリンポンプは、IPAS非搭載型ポンプが不完全且つ「事後対処的」に食品摂取を反応的に補完する必要があるのとは対照的に、摂取される食品タイプと同様に、元の量に補充インスリン投与量を即座に(またはほぼ即座に)且つ同時に事前対応的に対応させることができる。
【0051】
例えば、ポップコーンを食べている人の場合、IPASセンサを装着した利き手(または非利き手)は、固定された「供給容器」から食品を取ってポップコーンを口に運ぶ間、明確なパターンで繰り返し動く。この活動中における1つまたは複数の6軸加速度センサおよび/または1つまたは複数のジャイロスコープによるピッチ/ヨー/ロールセンサからのデータを分析することで、(例えばA.I.アルゴリズムが組み込まれている)コントローラが、特徴的な繰り返しパターンに基づいて検出した腕と手の動きを記録することができる。これは、摂取している特定の食品を表すテンプレートとして正確に保存され得る。コントローラ/A.I.システムは、その動きの繰り返される多軸位置、速度および活動リズムを分析してもよく、手首装着型装置がユーザの口に最も近い位置にあると判定されたときに、手首装着型マイクロフォンからデジタル音声ファイルを生成してもよい。音声ファイルは、例えば、ポップコーンを食べている人とポテトチップスを食べている人の特徴的な咀嚼音とそれらの咀嚼音の持続時間を区別することで、A.I.アルゴリズムをさらに補助することができる。
【0052】
口やその近くに手を置いている「滞留」時間、ならびに口から離れるまでの手および手首の角度が付けられた連続した動きの回数および種類を判定および分析することにより、摂取した食品をさらに定量的に判定し、補足的な単純計算を用いてその動きサイクルごとの瞬間的な炭水化物の摂取量を計算し、インスリンの「ボーラス投与」を補完的に判定することができる。特定された食品のグリセミックインデックスによって調整されたインスリンを摂取の付近で(且つ適切な補完レベルで)注入することで、インスリンと糖質負荷に対して優れた事前対応を行うことができる。
【0053】
食品のタイプは非常に多彩である。本発明の実施形態によるIPASに関連するコントローラは、個人が食べている様々な食品を「記録」すること、および記録された食品のデータをラベリングすることで、インスリンポンプに必要な投与値とインスリンの必要性およびタイミングに正確に合わせるために炭水化物値、グリセミックインデックスおよびカロリーなどを容易に一致させて参照して、食品を摂取したときにその食品によって引き起こされる血中のグルコース値の上昇を補完することができる。
【0054】
様々な食品を食べるときに一般的に行われる身体的動作および活動リズムは、特定の食品に対して非常に特徴的な場合がある。その例として、トウモロコシを食べること、リンゴを食べること(一口ごとに特徴的な「スナップバック」動作を伴う)、アイスクリームコーンを舐めること、およびバナナの皮を剥いて食べることなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。各食品に関連する食事中の固有の物理的動きおよび/または食事中の音に基づいて、一連の特殊な食品テンプレートが生成および/またはIPASに関連するコントローラに予め格納されてもよい。また、ユーザが、例えば手首装着型装置のボタンを押下し、特定の食品の名称を発話してIPASに食品タイプを手動で入力すると、食品テンプレートに基づく自動認識が困難な食品について、炭水化物およびカロリー情報が呼び出され(または特定され)、IPASは、摂取量を監視して糖質負荷およびインスリンのボーラス投与を解決(または判定)することができる。肉類などの低糖質食品については、IPASは、(ユーザが摂取のための準備をする場合)摂取前に肉を切る固有の動作を認識してもよい。
【0055】
飲料を実際に摂取したときの音、およびボトルまたは容器が実際に発する(または発さない)音の特性が、その飲料(およびその炭水化物含有量)を特定する上で特に重要な場合がある。例えば、使い捨ての水用ペットボトルは、炭酸の圧力を扱う必要がないため、一般的に「ソーダ」用ボトルよりもはるかに薄いプラスチック材料から構成されており、そのため、取り扱ったときおよび摂取されたときに、特徴的な独特の「プラスチックが曲がる/ひび割れるような」音が生じる。IPASは、水用ペットボトル固有のこの音を使用して、ゼロカロリー/ゼロ炭水化物が摂取されていると判定する。その一方で、炭酸飲料の場合、異なるタイプのボトルが使用されて、異なる摂取音/炭酸音が生じる。炭酸飲料が「ダイエット製品」なのか通常製品(炭水化物の含有量が大きく異なる)なのかの判定について、IPASのアルゴリズムは、摂取時におけるユーザの血糖値を分析するだけで論理的に区別することができる。IPASのユーザが糖尿病患者であると推定されるため、摂取時のユーザのグルコース値が低くない限り(その場合、「通常」のソーダなどを摂取することが望ましい)、飲料は常に「ダイエット製品」であると想定される。
【0056】
すべての食品は、摂取したときに、口に対する位置と回転、明確な噛み砕きパターンおよび音、液体を吸う音、咀嚼音、手を元の位置に戻す回転および位置などの固有の組み合わせを有する。
【0057】
一部の実施形態において、IPASに関連するコントローラは、予め格納された食品テンプレートに基づいて食品タイプを直接特定するのではなく、個々の食品テンプレートが摂取中のユーザによって記録および保存され、次いで、ユーザが異なる食品の各々を手動で特定および登録するマッチングプロセスを使用してもよい。それ以降の食品の特定は、リアルタイムのアクティブな食品摂取と、保存されたテンプレートのデジタル動作パターンおよび音パターンとをIPASがリアルタイムで自動的に比較することで達成されてもよい。一致した場合、炭水化物値、グリセミックインデックス、カロリー情報およびその他の情報が、インスリン投与量およびその投与量のタイミングを判定するためにインスリン投与システムに提供される。
【0058】
摂取した食品タイプを判定するためにIPASに関連するコントローラが使用するアルゴリズムは、精度を高めるために1つまたは複数の検証方法を組み込んでいてもよい。これらの方法の1つに、ユーザの手が口に近接した位置にあるとIPASの動作分析が判定した期間中にのみ(手首装着型装置が捕捉した)食品の音声マッチングを許可することが挙げられる。このような「音声ゲーティング」を使用することで、IPASは、対象IPASに近接している複数の人が同じタイプまたは異なるタイプの食品を食べているときに誤った分析が行われることを防止することができる。また、音声ゲーティングは、手を挙げて口に近づいていることをシステムが検出しないときは、常に、手首のマイクロフォンがミュートされているため、本質的なプライバシーのレベルを提供する。したがって、IPASは、IPASユーザの口の近接した位置にIPASがないと判定された場合にはマイクロフォンからの音声データを記録せず、IPASが音声データを記録している場合には記録された音声データを無視することができる。
【0059】
一部の実施形態において、IPASに関連するコントローラは、覚醒、ランニング、または他の活動を即座に認識するために、多数の「汎用」動作テンプレートを元から含むように構成される。IPASは、ユーザがユーザ独自にカスタマイズされたテンプレートを生成して「汎用」テンプレートを置き換えることで、イベント認識と精度の両方をさらに高めることができ、且つ格納されているテンプレートの範囲を補完することができるように構成される。また、覚醒、ランニングまたはその他の活動を認識するために、汎用動作テンプレートを、カスタマイズされたテンプレートで置き換えることができ、またはカスタマイズされたテンプレートに加えて使用することができる。
【0060】
本発明の実施形態によるIPASに関連するコントローラの別の利点は、低血糖の発症中に示される。一部の状況において、個人は、典型的には、低血糖症の即時の症状を治療するために炭水化物の摂取を過剰に行う。一部の実施形態において、IPASは、血糖値、血中インスリンの量および摂取している炭水化物の量を監視するように構成される。IPASに関連するコントローラは、その後高血糖症をもたらす炭水化物の過剰摂取を防止するために、ユーザに「オーバーシュート」保護警告を提供するように構成されてもよい。IPASは、瞬間グルコース値と血中インスリンの量の両方に対して摂取量を比較することで、瞬間炭水化物摂取量を監視してユーザの血糖値を正常化するために必要な炭水化物の適正量を計算(または判定)し、過剰補完の時点で警告を発することができる。
【0061】
一部の実施形態において、コントローラは、ポンプ増強システム(PAS)に関連していてもよい。また、PASは、例えばパーキンソン病を治療するための薬など、他の注入可能な薬の投与のために使用されてもよいが、これに限定されるものではない。この使用例において、注入された薬の投与時間および量を、例えばPASが検出するであろう振戦レベルの増加によって判定されるような、瞬時の必要性と一致させることができる。
【0062】
本発明の目的のために、本明細書に記載の主な用途は、インスリンポンプの増強のためであるが、僅かなソフトウエアの修正で、同じまたは類似のハードウエア構成を他の目的に使用されてもよい。コントローラのさらなる実施形態において、自動食品摂取感知は、摂取ではなく「燃焼」されたカロリーのみを報告する現在の装置とは対照的に、「摂取」カロリーを監視するために使用されてもよい。一部の実施形態において、カロリー摂取を監視するように構成されたコントローラは、任意選択で、目標カロリー摂取量が特定の時間までに達成された場合または達成できなかった場合に、触覚または視覚アラーム、またはその他の案内通知を提供するように構成されてもよい。
【0063】
本発明は、「ライフスタイル」活動を感知および判定するためのシステムに関連するコントローラを提供する。
【0064】
特定の実施形態によれば、インスリンポンプのユーザの「ライフスタイル」活動を感知および判定するためのインスリンポンプ増強システム(IPAS)が提供される。
図1に示すように、本発明の実施形態によるインスリンポンプ増強システム10は、ポンプ本体12を有するインスリンポンプ100に組み込まれ、および/またはそれと動作可能に通信する。IPAS10は、コントローラ14と、加速度センサ16と、ジャイロピッチセンサ18と、インジケータ発生装置20と、送信機22と、を含む。加速度センサは、多軸加速度センサであってもよく、例えば6軸加速度センサであってもよい。
【0065】
コントローラ14は、6軸加速度センサ16、ジャイロピッチセンサ18、インジケータ発生装置20および送信機22に動作可能に接続される。コントローラ14は、6軸加速度センサ16、ジャイロピッチセンサ18、インジケータ発生装置20および送信機22に物理的に接続されるように示されているが、コントローラ14は、無線通信方法および無線通信接続を介してこれらの要素に「接続」されてもよい。
【0066】
6軸加速度センサ16は、動作(または動き)を検出し、動作データ(または動きデータ)を出力するように構成される。コントローラ14は、6軸加速度センサ16からの動作データを受信および/または記録または格納するように構成される。ジャイロピッチセンサ18は、方向を検出し、方向データを出力するように構成される。コントローラ14は、ジャイロピッチセンサ18から方向データを受信および/または記録するように構成される。インジケータ発生装置20は、様々な音レベルにおいて1つまたは複数の音(例えばアラーム音)を発するように、および/または1つまたは複数の視覚インジケータ(例えば点滅する光)を表示するように構成される。コントローラ14は、インジケータ発生装置20に動作可能に接続される。送信機22は、1つまたは複数の通信装置と通信するように構成される。
【0067】
コントローラ14は、インスリンポンプ100と通信して、様々なインスリンポンプ100のデータを受信するように構成される。例えば、コントローラ14は、インスリンポンプ100のユーザの血中インスリン濃度データ、インスリンポンプ100のユーザの報告された血糖値データ、および/またはインスリンポンプ100の現在のまたは予定されたインスリン投与量データを受信してもよいが、これらに限定されるものではない。コントローラ14は、ホストインスリンポンプ100に動作可能に接続される。また、コントローラ14は、送信機22に動作可能に接続される。動作データ、方向データ、音声データ、血中インスリン濃度データ、報告された血糖値データ、および/または現在または予定されたインスリン投与量データに基づいて、1つまたは複数の所定の基準が満たされる場合、コントローラ14は、送信機22に自動緊急電話またはメッセージを起動させる。
【0068】
図2に示すように、IPAS10は、ウェアラブル装置24に組み込まれ、および/またはウェアラブル装置24と動作可能に通信する。本実施形態において、ウェアラブル装置24は、手首装着型装置である。IPAS10は、ウェアラブル装置24内に配置された6軸加速度センサ25およびジャイロピッチセンサ26を含む。IPAS10は、マイクロフォン28をさらに含む。マイクロフォン28は、音声を検出し、音声データを出力するように構成される。コントローラ14は、マイクロフォン28から音声データを受信するように構成され、且つ/またはウェアラブル装置24は、動作データ、方向データおよび/または音声データをコントローラ14に分配するように構成された追加のコントローラを含む。なお、ウェアラブル装置24の他の位置にマイクロフォン28が配置されてもよく、且つ/または追加のマイクロフォンが設けられてもよいことに留意されたい。
【0069】
一部の実施形態において、コントローラ14は、ウェアラブル装置24内またはウェアラブル装置24上に配置される。
図1に示すように、一部の実施形態において、コントローラ14は、インスリンポンプ100内またはインスリンポンプ100上に配置され、第2のコントローラは、ウェアラブル装置24内またはウェアラブル装置24上に配置される。第2のコントローラは、第1のコントローラ14および/またはインスリンポンプ100の専用のコントローラと通信するように構成される。
【0070】
図3を参照すると、フロー
図30は、本発明の実施形態による
図1のIPAS10の動作の例示的な方法を示す。ブロック32では、コントローラ14は、1つまたは複数の6軸加速度センサ16および25から受信した動作データ、および1つまたは複数のジャイロピッチセンサ18および26から受信した方向データについて監視する。ブロック34では、コントローラ14は、動作データおよび/または方向データが変化したかどうかを判定する。動作データおよび/または方向データに変化がないとコントローラ14が判定した場合、コントローラ14は、ブロック32に戻って監視を行う。動作データおよび/または方向データに変化があったとコントローラ14が判定した場合、コントローラ14は、ブロック36へ進む。ここで、コントローラ14は、動作データおよび方向データの変化を分析する。コントローラ14はブロック38へ進む。ここで、コントローラ14は、IPAS10に格納されたプロファイルテンプレートとの類似性について、時間加重され得る動作データおよび方向データを比較する。動作データおよび/または方向データが格納されたプロファイルテンプレートと類似していないとコントローラ14が判定した場合、コントローラ14は、ブロック32に戻って監視を行う。動作データおよび/または方向データが格納されたテンプレートと類似しているとコントローラ14が判定した場合、コントローラ14は、検出された動作および方向が食品の摂取に関連していると判定し、識別されたプロファイルテンプレート方法へ進む。
【0071】
図4を参照すると、フロー
図39は、本発明の実施形態によるブロック38(
図3)において、動作データおよび/または方向データが食品摂取プロファイルと類似していると判定されたときの、
図1のIPAS10の動作の例示的なプロファイルテンプレート方法を示す。コントローラ14は、ブロック40へ進む。ここで、コントローラ14は、任意選択で、マイクロフォン28(
図2)から音声入力42を受信する。コントローラ14は、1つまたは複数の格納された食品摂取テンプレートとの類似性について、食品の摂取と同時であると判定された時間帯に対応する動作データ、方向データおよび/または音声データを比較する。データが格納された食品摂取テンプレートと類似しているとコントローラ14が判定した場合、コントローラは、ブロック48へ進む。これは、以下でより詳細に説明する。データが格納された食品摂取テンプレートと類似していないとコントローラ14が判定した場合、コントローラは、ブロック44へ進み、摂取されている食品のタイプについてのユーザ入力を要求する。ユーザ入力を受信しない場合、コントローラ14は、ブロック32に戻って監視を行う。ユーザ入力を受信した場合、コントローラ14は、ブロック46へ進み、提供された入力の新しい食品摂取テンプレートに対応するものとして、動作データ、方向データおよび/または音声データを格納する。この新しい食品摂取テンプレートは、ブロック40で将来の食品摂取テンプレートの比較のために(例えばコントローラに関連するメモリに)格納される。次いで、コントローラ14は、ブロック48へ進む。
【0072】
ブロック48では、コントローラ14は、ユーザが摂取する食品を示すものとして識別された特定の食品タイプを判定する。コントローラ14は、ブロック50へ進む。ここで、コントローラ14は、(例えばインスリンポンプ100に問い合わせることで)ユーザの報告された血糖値を確認する。報告された血糖値が所定の閾値(例えば100mg/dl)以上である場合、コントローラ14は、ブロック52でポンプ指示信号を生成し、インスリンポンプ100に、コントローラ14が判定したように摂取した(または消費した)糖質負荷の量に基づいてユーザへのインスリンをボーラス投与させる。これにより、インスリンポンプ100の現在のまたは予定されたインスリン投与量を変化させることができる。報告された血糖値が所定の閾値(例えば100mg/dl)未満である場合、コントローラ14は、ブロック54で、(例えばインスリンポンプ100に問い合わせることで)ユーザの血中インスリン濃度を確認する。血中インスリン濃度が所定の閾値を下回る場合、コントローラ14は、ブロック56で、ポンプ指示信号を生成して、コントローラ14が判定したように摂取した(または消費した)糖質負荷の量に基づいてユーザへのインスリンをボーラス投与させる。血中インスリン濃度が所定の閾値を上回る場合、コントローラ14は、ブロック58で、ポンプ指示信号を生成しないか、または現在のまたは予定されたインスリン投与量からインスリン投与量を減少させるポンプ指示信号を生成する。次いで、コントローラ14は、ブロック32に戻って監視を行う。
【0073】
有利には、ブロック44および46でユーザからの入力を要求および受信するように構成されたコントローラ14によって、コントローラ14は、ユーザ特有の身体的特性および/または癖について繰り返し学習することができる。格納されたパターンは、ユーザに対して個別化されており、コントローラ14は、食品テンプレート(または他のテンプレート)をより正確に特定することができる。コントローラ14は、ユーザが入力した任意の数のテンプレートを格納するように構成されてもよく、これにより、コントローラ14は、ユーザ特有の実質的に無限のパターンを格納する能力を有することができる。ユーザ特有のパターンを格納する能力によって、有利には、コントローラ14は、食品テンプレート(または他のテンプレート)に対応するユーザの傾向(または事前に入力されたパターンデータ)を「学習」することができる。例えば、一旦格納された特定のテンプレートとしてコントローラ14が識別することができる身体的ライフスタイルイベントにユーザが参加しているときに、ユーザは、1つまたは複数の固有の動作、方向または音を起こす傾向がある。このため、ユーザが、例えば特定の身体的手段でポテトチップスを食べるなど、そのライフスタイルイベントに再び参加するとき、コントローラ14は、本明細書に記載するようにライフスタイルイベントを特定し、それに応じてポンプ指示信号を生成するように構成される。
【0074】
図5を参照すると、フロー
図60は、本発明の実施形態によるブロック38(
図3)において、動作および/または方向データが運動プロファイルと類似していると判定されたときの、
図1のIPAS10の動作の例示的な方法を示す。ブロック62では、コントローラ14は、特定の運動プロファイルとの類似性について、動作データおよび/または方向データを比較する。ブロック64では、動作データおよび/または方向データが特定の運動プロファイルと対応していないと判定された場合、コントローラ14は、ブロック32に戻って監視を行う。データが特定の運動プロファイルに対応しているとコントローラ14が判定した場合、コントローラ14は、ブロック66へ進む。ここで、コントローラ14は、報告された血糖値について確認を行う。報告された血糖値が第1の閾値を下回る場合、コントローラ14は、ブロック68へ進み、インスリンポンプ100にインスリン投与を中断させるか、またはインスリン投与を減少させるよう指示するポンプ指示信号を生成する。報告された血糖値が第1の閾値を上回り、且つ第2の閾値(例えば250mg/dl)を下回る場合、コントローラ14は、ブロック70へ進み、ユーザの血中インスリン濃度を確認する。血中インスリン濃度が第1のインスリン閾値を下回る場合、コントローラ14は、ブロック72へ進み、既存のインスリン投与量を維持する(または少なくともインスリン投与量を大きく変化させない)。血中インスリン濃度が第2のインスリン閾値を上回る場合、コントローラは、ブロック74へ進み、基礎インスリン投与量を減少させる。ブロック66に説明を戻すと、血糖値が第3の閾値を上回る場合、コントローラ14は、ブロック76へ進み、特定の運動プロファイルに対応するインスリン投与量および/またはインスリンのボーラス投与量の上昇を判定し、ポンプ指示信号を生成し、判定結果に対応するインスリン投与またはボーラス投与をインスリンポンプ100に投与させる。
【0075】
図4に関連して上述した方法と同様に、コントローラ14は、記録された運動プロファイルに対応するものとして格納される運動テンプレートを入力するようユーザに要求するように構成されてもよい。一部の実施形態において、コントローラ14は、運動または食品テンプレートを入力するようユーザに要求する必要がない。ユーザは、コントローラ14に要求されなくとも、対応するテンプレートを入力することができる。入力されたテンプレートは、IPAS10からの記録されたデータと共に格納される。一部の実施形態において、テンプレートとして格納された記録されたデータは、ユーザによるテンプレートの入力前の所定の時間の間に記録されたデータに対応する。所定の時間の例として、1分、2分または3分が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一部の実施形態において、ユーザは、入力されたテンプレートにどの記録されたデータを関連付けるかを選択することができる。例えば、ユーザは、テンプレートの入力前の時間を選択することができ、またはユーザは、当日の早い時間に発生した、記録されたデータの期間を選択することができる。例えば、ユーザが午後1時から午後2時までテニスをした場合、その後、テニスをしていない当日の午後6時に、ユーザは、テニスをした時間を選択して、それをテニスの運動プロファイルまたはテンプレートとして格納するこができる。
【0076】
図6を参照すると、フロー
図78は、プロファイル本発明の実施形態によるブロック38(
図3)において、動作および/または方向データが睡眠状態に類似していると判定されたときの、
図1のIPAS10の動作の例示的な方法を示す。ブロック80では、コントローラ14は、睡眠状態が検出されたと判定する。コントローラ14は、ブロック82へ進む。ここで、コントローラ14は、データの時間加重評価に基づくことができる睡眠から覚醒への移行の判定について、動作データおよび/または方向データの監視を継続する。睡眠から覚醒への移行が検出されない場合、コントローラは、ブロック80に戻り、データが睡眠プロファイルと類似しているかどうかを確認し、睡眠状態にある場合、睡眠から覚醒への移行が発生したかどうかを判定するためにブロック82に戻る。(例えばユーザが動いているか歩いていることを示す動作データ、またはIPAS10の向きか変化したことを示す方向データによって)睡眠から覚醒への移行が発生したとコントローラ14が判定した場合、コントローラ14は、ブロック84へ進み、ユーザの報告された血糖値について確認を行う。報告された血糖値が第1の閾値を下回る場合、コントローラ14は、ブロック86へ進む。ここで、コントローラ14は、本明細書に記載するように覚醒状態への移行に関連するホルモン分泌を補完するためのインスリンのボーラス投与が必要ないと判定する。報告された血糖値が第2の閾値を上回る場合、コントローラ14は、ブロック88へ進む。ここで、コントローラ14は、ユーザのホルモン分泌を補完するためのインスリン投与量および/またはインスリンのボーラス投与量の増加を決定し、次いで、コントローラ14は、インスリンポンプ100に適切なインスリンを適切な投与量で投与させるポンプ指示信号を生成する。次いで、コントローラ14、ブロック32に戻って監視を行う。
【0077】
一部の実施形態において、IPAS10は、全体的にインスリンポンプ100内またはインスリンポンプ100上に配置される(例えば
図1)。一部の実施形態において、IPAS10は、インスリンポンプ100内またはインスリンポンプ100上、およびウェアラブル装置24内またはウェアラブル装置24上に配置され(例えば
図1および
図2)、本明細書に記載するように、ウェアラブル装置24内のIPAS10の要素は、インスリンポンプ100内のIPAS10の要素と通信および動作するように構成される。一部の実施形態において、IPAS10は、全体的にウェアラブル装置24内またはウェアラブル装置24上に配置され(例えば
図2)、IPAS非搭載型インスリンポンプ(すなわち、それ自体がIPAS機能を有さない)と通信および動作するように構成される。ここでは、インスリンポンプがIPAS搭載型インスリンポンプと同様に動作するように、ウェアラブル装置24のIPAS10がIPAS非搭載型インスリンポンプの機能の少なくとも一部の制御を補完するかオーバーライドする。一部の実施形態において、ユーザは、IPAS10の要素を含む1つまたは複数のウェアラブル装置を装着することができ、例えばユーザの各手首にウェアラブル装置を装着することができるが、これに限定されるものではない。
【0078】
有利には、IPAS対応ポンプは、IPAS非対応ポンプよりも多くの利点を提供するように構成される。例えば、インスリンポンプにユーザの睡眠状態のリアルタイム情報を提供しなければ、従来のインスリンポンプは、内容に関係なく不要なアラームを発生させる可能性がある。例として、一部のインスリンポンプは、そのリザーバに内のインスリンの残量を追跡し、様々なインスリンの残量レベルで、ポンプが状況を示すアラームを発生させることができる。その結果、インスリンポンプのユーザは、状況がまだ危機的でないにもかかわらず、リザーバを交換するなどの特定の行動をとるために起こされることが多く、このような行動を夜中の寝起き直後に行うのは危険であるといえる。一部の実施形態において、IPAS対応インスリンポンプは、ユーザが睡眠中であるかどうかを判定し、アラームが時間的または状況的に重大ではなく単に助言的であると判定された場合、IPAS対応インスリンポンプは、ユーザの覚醒まで、および/またはアラームの状態が時間的に重大になるまで、アラームおよび/または通知を遅らせることができる。
【0079】
以上、本発明の実施形態を例示および詳述する目的で説明した。上記の説明は、本発明を網羅するものでも開示された形態に限定するものでもない。上述した開示に基づいて、明らかな変形例およびバリエーションが可能である。本明細書に記載された実施形態は、本発明の原理および応用を最もよく説明するために選択され、当業者は、特定の用途に適した様々な実施形態および様々な変形例において本発明を利用することができる。
【国際調査報告】