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特表2022-550508誘導電力伝達パッド及び誘導電力伝達パッドの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-02
(54)【発明の名称】誘導電力伝達パッド及び誘導電力伝達パッドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20221125BHJP
   B60M 7/00 20060101ALI20221125BHJP
   B60L 53/12 20190101ALI20221125BHJP
   B60L 53/302 20190101ALI20221125BHJP
   H02J 50/10 20160101ALI20221125BHJP
【FI】
H02J7/00 301D
B60M7/00 X
B60L53/12
B60L53/302
H02J50/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022515098
(86)(22)【出願日】2020-09-08
(85)【翻訳文提出日】2022-04-28
(86)【国際出願番号】 EP2020075116
(87)【国際公開番号】W WO2021048150
(87)【国際公開日】2021-03-18
(31)【優先権主張番号】1912955.0
(32)【優先日】2019-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516149435
【氏名又は名称】ボンバルディアー プリモーフ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Bombardier Primove GmbH
【住所又は居所原語表記】Eichhornstrasse 3, 10785 Berlin, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106404
【弁理士】
【氏名又は名称】江森 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100112977
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 有子
(72)【発明者】
【氏名】ジーモン ヴェヒスラー
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ラープ
【テーマコード(参考)】
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503FA06
5G503GB08
5H125AA01
5H125AC25
5H125BE02
5H125FF15
5H125FF21
(57)【要約】
本発明は、車両への誘導電力伝達用システムの誘導電力伝達パッド(10)及びその製造方法に関するものである。
すなわち、車両への誘導電力伝達用システムの誘導電力伝達パッド(10)は、固定部(14)と、可動部(12)とを含んでおり、可動部(12)が、収縮状態と伸長状態との間で移動可能であり、可動部(12)が、一次巻線構造体(26)と、当該一次巻線構造体(26)に電気的に接続される少なくとも1つのインバータ(34)と、を更に含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両への誘導電力伝達用システムの誘導電力伝達パッド(10)であって、
前記誘導電力伝達パッド(10)が、固定部(14)と、可動部(12)とを含み、
前記可動部(12)が、収縮状態と伸長状態との間で移動可能であり、
前記可動部(12)が、一次巻線構造体(26)と、当該一次巻線構造体(26)に電気的に接続される少なくとも1つのインバータ(34)と、を更に含むことを特徴とする誘導電力伝達パッド。
【請求項2】
前記可動部(12)が、前記固定部(14)への電気接続を有していないことを特徴とする請求項1に記載の誘導電力伝達パッド。
【請求項3】
前記固定部(14)が、前記一次巻線構造体(26)に通電するための電気部品(32)を有していないことを特徴とする請求項1又は2に記載の誘導電力伝達パッド。
【請求項4】
前記可動部(12)が、外部電源に接続するための接続端子(54)及び/又は接続ケーブル(20)を含むことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の誘導電力伝達パッド。
【請求項5】
前記誘導電力伝達パッド(10)が、前記可動部(12)を動かすためのアクチュエータ(11)を更に含み、当該アクチュエータ(11)が、前記可動部(12)と電気的に接続されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の誘導電力伝達パッド。
【請求項6】
前記可動部(12)が、前記アクチュエータ(11)に前記外部電源から電力を供給するように構成されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の誘導電力伝達パッド。
【請求項7】
前記アクチュエータ(11)が、前記固定部(14)に対して機械的に静止していることを特徴とする請求項5又は6に記載の誘導電力伝達パッド。
【請求項8】
前記誘導電力伝達パッド(10)が、気流発生ユニット(52)を更に含み、当該気流発生ユニット(52)が、前記可動部(12)に電気的に接続されていることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の誘導電力伝達パッド。
【請求項9】
前記可動部(12)が、前記気流発生ユニット(52)に前記外部電源から電力を供給するように構成されていることを特徴とする請求項4又は8に記載の誘導電力伝達パッド。
【請求項10】
前記気流発生ユニット(52)が、前記可動部(12)に配置されること、又は、前記可動部(12)の内部に配置されることを特徴とする請求項8又は9に記載の誘導電力伝達パッド。
【請求項11】
前記気流発生ユニット(52)が、周囲から取り込んだ空気の流れを、前記可動部(12)に沿って及び/又は前記可動部(12)の内部に発生させるように構成されていることを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の誘導電力伝達パッド。
【請求項12】
前記可動部(12)が、前記一次巻線構造体(26)及び前記インバータ(34)を支持するベース部材(22)を含むことを特徴とする前記請求項1~11のいずれか一項に記載の誘導電力伝達パッド。
【請求項13】
前記インバータ(34)が、前記可動部(12)の移動軸(M)に沿った状態で見たとき、前記ベース部材(22)と前記一次巻線構造体(26)との間に少なくとも部分的に配置されていることを特徴とする請求項12に記載の誘導電力伝達パッド。
【請求項14】
前記インバータ(34)が、前記ベース部材(22)の内部にある凹部(36)に少なくとも部分的に配置されていることを特徴とする請求項12又は13に記載の誘導電力伝達パッド。
【請求項15】
前記ベース部材(22)が、金属材料からなることを特徴とする請求項12~14のいずれか一項に記載の誘導電力伝達パッド。
【請求項16】
前記可動部(12)が、前記固定部(14)が覆う面積のうち、少なくとも80%の面積を覆うことを特徴とする請求項1~15のいずれか一項に記載の誘導電力伝達パッド。
【請求項17】
前記可動部(12)の占有面積が、前記固定部(14)の占有面積と少なくとも同じ大きさであることを特徴とする請求項1~16のいずれか一項に記載の誘導電力伝達パッド。
【請求項18】
前記可動部(12)と前記固定部(14)との間の空間(50)が、カバー部材(16)によって、少なくとも部分的に囲まれていることを特徴とする請求項1~17のいずれか一項に記載の誘導電力伝達パッド。
【請求項19】
前記インバータ(34)が、前記カバー部材(16)に囲まれた前記空間(50)に面する前記可動部(12)の下側よりも、周囲に面する前記可動部(12)の上側の近くに配置されていることを特徴とする請求項18に記載の誘導電力伝達パッド。
【請求項20】
前記気流発生ユニット(52)が、前記カバー部材(16)に囲まれた前記空間(50)に面する前記可動部(12)の下側に配置され、及び/又は、前記気流発生ユニット(52)が、前記カバー部材(16)に囲まれた前記空間(50)に面する前記可動部(12)の下側よりも、周囲に面する前記可動部(12)の上側の近くに配置されていることを特徴とする請求項8、18、又は19のいずれか一項に記載の誘導電力伝達パッド。
【請求項21】
前記空間(50)の内部において、外部電源から前記可動部(12)に電力を供給するためのケーブル(20)が、前記可動部(12)に接続可能であること、又は、接続されていることを特徴とする請求項18又は19に記載の誘導電力伝達パッド。
【請求項22】
前記誘導電力伝達パッド(10)が、前記ケーブル(20)を前記外部電源へ案内するために使用される少なくとも2つの開口部(18)又は少なくとも2つの開閉可能な部分を含むことを特徴とする請求項21に記載の誘導電力伝達パッド。
【請求項23】
前記可動部(12)が、前記インバータ(34)及び前記一次巻線構造体(26)を周囲からシールされるように収容することを特徴とする請求項22に記載の誘導電力伝達パッド。
【請求項24】
前記誘導電力伝達パッド(10)において、
前記気流発生ユニット(52)が、周囲から空気を吸い込むことができる少なくとも1つの吸気口(23)と、
前記気流発生ユニット(52)により発生した気流からの空気を、周囲へ排出するための少なくとも1つの排気口(25)と、のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項8に記載の誘導電力伝達パッド。
【請求項25】
車両への誘導電力伝達用システムの誘導電力伝達パッド(10)の製造方法であって、
誘導電力伝達パッド(10)が、固定部(14)と、可動部(12)とを含み、
前記可動部(12)が、収縮状態と伸長状態との間で移動可能であり、
前記製造方法が、前記可動部(12)に、一次巻線構造体(26)と、当該一次巻線構造体(26)に電気的に接続される少なくとも1つのインバータ(34)と、を配置することを特徴とする誘導電力伝達パッドの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導電力伝達パッド及び誘導電力伝達パッドの製造方法に関する。特に、電気エネルギーを車両に伝達するための誘導電力伝達パッド、及び、そのような誘導電力伝達パッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車、特に、軌道系車両(以下、走路拘束型車両と称する場合がある。)、及び/又は、道路系自動車(以下、路面走行用自動車と称する場合がある。)は、誘導電力伝達によって伝達される電気エネルギーによって作動させることができる。
そのような車両等は、交流電磁界を受信し、電磁誘導によって交流電流を生成するように適合された受信装置を含んでおり、更には、車両等のトラクションシステム又はトラクションシステムの一部とすることができる所定回路構成を含んでいる。
又、このような車両は、交流(AC)を直流(DC)に変換するための整流器を含んでいる。この場合、DCは、トラクションバッテリーの充電や電気機械の操作に使用することができ、後者の場合、DCは、インバータによってACに変換可能である。
【0003】
又、誘導電力の伝達は、例えば三相巻線の2つのセットを使用して行われる。
第1セットの巻き線(以下、一次巻線又は一次巻線構造体と称する場合がある。)は、地面に設置され、ウェイサイドパワーコンバータ(wayside power converter、以下、単に、WPCと称する場合がある。)から給電される。
又、第2セットの巻き線(以下、二次巻線又は二次巻線構造体と称する場合がある。)は、車両に設置される。
従って、例えば、路面電車の場合には、その複数の台車のうちの一部の下に、第2セットの巻き線を取り付けることになる。
一方、自動車の場合には、車両のシャーシに、第2セットの巻き線を取り付けることになる。
そして、第2セットの巻線につき、一般的に、二次側は、多くの場合、ピックアップ構成又はレシーバーと呼ばれる。
従って、第1セットの巻線と第2セットの巻線との組み合わせは、電気エネルギーを車両に伝達するために、高周波変圧器を形成する。
このような電気エネルギーの伝達は、車両の動きがない場合である静的状態のみならず、車両が動いている場合である動的状態においても行うことができる。
【0004】
特に、道路系自動車の場合には、固定式一次ユニットは、しばしば空間的に離れて配置される複数のエレメント(以下、単に、素子又は要素と称す場合がある。)を含んでいる。
典型的な既知の誘導電力伝達システムは、一次ユニットと二次ユニットとの間の空隙(以下、エアギャップと称する場合がある。)を減少させるために、可動式の一次素子を含んでいる。
例えば、特許文献1には、一次素子と、車両に取り付けられる二次素子とを有する誘導型送信機が開示されている。
かかる一次素子は、所定の空間領域の内部で3つの空間座標の全てにおいて移動するように動力駆動される。
又、特許文献2にも同様に、一次巻線構造体を収容する可動式の一次素子が開示されている。
【0005】
これまでのところ、可動式の一次素子は、典型的には、一次巻線構造体のみを収容し、当該一次巻線構造体に電気エネルギーを供給するためのインバータ等のパワーエレクトロニクス機器を収容していなかった。
すなわち、例えば、特許文献2では、そのような更なる構成要素(以下、単に、部品と称する場合がある。)は、ステーショナリー部(stationary part)としての固定部(以下、静止部と称する場合がある。)に配置されていた。
【0006】
しかしながら、現在利用可能な誘導電力伝達パッド、特に、可動部を含んでいる誘導電力伝達パッドは、製造コストが高く、信頼性が低いという問題が見られた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】US5654621A(特許請求の範囲及び図面等)
【特許文献2】WO2015/128450A1(特許請求の範囲及び図面等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、コスト及び/又は信頼性の観点から、誘導電力伝達パッド、特に、可動部を含む改善された誘導電力伝達パッド及びそのような誘導電力伝達パッドの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、上述した問題点は、添付の特許請求の範囲に記載の独立請求項1及び25等に準じた装置及び方法によって解決することができる。
又、本発明の有利な実施形態は、添付の特許請求の範囲に記載の従属請求項に定義されている。
更に、本明細書の導入部で言及された特徴は、他に言及されていないか、又は明らかでない場合、個別に又はそれらの任意の組み合わせで、現在開示されている解決策においても提供され得る。
【0010】
本発明者らは、誘導電力伝達パッドの固定部と可動部とに、パワーエレクトロニクス機器と一次巻線構造体とをそれぞれ配置することで、パワーエレクトロニクス機器と一次巻線構造体とを分離することは、多くのデメリットを伴うことを明らかにしている。
【0011】
まず、固定部のパワーエレクトロニクス機器と、可動部の一次巻線構造体とを接続するための、例えばケーブル等の電気接続が必要となる。
この場合、可動部の移動により、ケーブル(以下、接続ケーブルと称す場合がある。)が頻繁に動き、応力を受ける場合があり、そのため、固定部のパワーエレクトロニクス機器に電気接続されたケーブルが、断線等のように破損するリスクが高まり、信頼性が低下するという問題が見られた。
更に、これらのケーブルの長さが長くなる場合には、コストが上昇するという問題も見られた。
【0012】
更に、可動部と固定部との間の空間が、例えば、折り畳み式の及び/又は可撓性のベローズ等のカバー部材によって少なくとも部分的に囲まれている場合であっても、一次巻線構造体及び/又はパワーエレクトロニクス機器、特に、それらの間の電気接続を、シール(密閉)することが頻繁に要求される。この要求には、特に防水シールを含んでいることが好ましい。
しかしながら、可動部と固定部との間に、上記の一次巻線構造体等の構成要素を分配するには、追加の電気インターフェース及び/又は接続端子を設ける必要がある。
すなわち、多数のインターフェース及び接続端子のそれぞれが、シールされる必要があり、又、言い換えれば、例えば、可動部と固定部とを接続するケーブルと、シールされた接続を形成する必要がある。このシールのために、コストと労力が増大することになる。
【0013】
更に、可動部と固定部との間に前述した構成要素を分散させて配置した場合の別の結果として、これらの構成要素のそれぞれに対して、別々のハウジング部品を用意する必要がある。
これは、例えば射出成形又はダイカスト鋳造によって、それぞれ個別のハウジング部品を製造する必要があり、金型費用が増加することになる。
【0014】
更に、上方から見た場合、例えば、誘導電力伝達パッドを下向きに見た場合に、固定部及び可動部は、典型的には、完全に重なるか、もしくは全く重ならないように互いに隣接して配置される。
こうすることで、可動部が収縮状態にあるときの誘導電力伝達パッドの高さを制限することができる。
しかしながら、固定部と可動部が互いに隣接して配置されることで、より具体的には誘導電力伝達パッドの少なくとも水平方向の寸法が増加することになる。
かかる寸法の増加には、それぞれ大型のハウジング部品等のコスト増大を伴う。
【0015】
最後に、パワーエレクトロニクス機器、特にインバータには、冷却が必要となる場合が多い。
これまで、固定部にパワーエレクトロニクス機器が配置された場合、効率的に冷却を行うことは困難であった。
例えば、固定部は通常、少なくとも部分的に露出しており、可動部によって完全に覆われていないため、可動部が使用者によって触られる危険性があった。そのため、熱源となるパワーエレクトロニクス機器を、固定部の表面近くに配置できないことが多かった。
すなわち、熱源となるパワーエレクトロニクス機器は、固定部の表面に近づけられないことが多く、例えば固定部の外表面から距離を置いて設ける必要があった。
しかしながら、このような場合には、固定部の内部から周囲に熱を伝導させることが難しくなり、強力な気流循環ファン、追加の金属製冷却フィン又は冷却プレート、あるいは固定部の内部に気流を循環させるためのチャネル(流路)等の追加コストのかかる手段が必要となる場合があった。
更に、冷却のために気流を使用する場合、気流が、典型的には、長距離にわたって案内されなければならず、特に固定部の内部で循環させなければならないので、除熱性能が制限される場合があった。
【0016】
上述の問題の少なくともいくつかを解決するために、本明細書等の開示においては、一般的に、インバータ又は一次巻線構造を通電するためのパワーエレクトロニクス機器全般、及び一次巻線構造体の両方を可動部の内部に配置することを提案している。
【0017】
このような配置とすることで、インバータと一次巻線構造体との間の例えばケーブル等の電気接続を短くすることができ、コスト削減を図ることができる。
又、インバータと一次巻線構造体とが一緒に移動するため、互いに相対的な位置の変化がなく、その間の電気接続の伸びやストレスも小さくなる。
これにより、ケーブルが破損するリスクが制限され、信頼性を向上させることができる。
【0018】
更に、インバータ及び一次巻線構造体は、少なくとも部分的に、又は、完全に重なるように配置することが好ましい。
そうすることにより、誘導電力伝達パッドの大きさ、及び、特にフットプリント(footprint)としての占有面積を小さくすることができ、コスト削減が可能となる。
【0019】
更には、別個のハウジング部品の数を減らすことが好ましい。
本発明の一実施形態によれば、可動部のハウジング部品は、インバータを収容し、少なくとも一次巻線構造体を機械的に支持し、又は同様に収容する。従って、生産用具のコストを削減することができる。
【0020】
より詳細には、誘導電力伝達パッド、特に、車両への誘導電力伝達用システムの誘導電力伝達パッドが提案されている。
かかる誘導電力伝達パッドは、固定部と可動部とを含んでおり、可動部が、収縮状態と伸長状態との間で、例えば、固定部に対して移動可能であり、可動部が、一次巻線構造体と、当該一次巻線構造体に電気的に接続される少なくとも1つのインバータとを更に含んでいる。
又、かかるインバータは、一般的に、誘導電力伝達が起こり得るように、すなわち、例えば所望する強度の所望の電磁場が生じるように、一次巻線構造体に通電されるように構成されることが好ましい。
【0021】
又、誘導電力伝達パッドは、誘導電力伝達用システムの一次ユニットの一部とすることが好ましい。
更に、かかる一次巻線構造体は、例えばインバータによって一次巻線構造体に通電又は動作電流が供給されると、交流電磁界を生成するように構成されることが好ましい。
【0022】
又、誘導電力伝達パッドは、少なくとも1つのアクチュエータを含んでいることが好ましく、可動部は、少なくとも1つのアクチュエータによって動かすことができる。
本発明の流れにおいて、「アクチュエータ」という用語は、可動部の動きが生成される全ての構成要素又は要素の実体を示すことが好ましい。
従って、「アクチュエータ」という用語は、少なくとも1つの作動手段及び/又は少なくとも1つの昇降機構を含んでいることが好ましい。
更に、かかる作動手段は、アクチュエータと昇降機構とを機械的に結合するための結合手段及び/又は可動部の移動を案内するための少なくとも1つの案内手段を含んでいることが好ましい。
既知の案内手段としては、可動部と固定部とを連結するシザーレッグ(scissor legs)である、はさみ状脚部が挙げられる。
【0023】
又、可動部は、移動方向である少なくとも第1の方向に、特に少なくとも1つのアクチュエータによって移動可能であることが好ましい。
かかる第1の方向は、一次巻線構造体によって生成される電磁場の主伝搬方向と平行に配向させることが好ましい。
特に、かかる第1の方向は、誘導電力伝達パッドの底面又は誘導電力伝達パッドが搭載される地表面に対して垂直に配向することが好ましく、かかる第1の方向は、地面から離れる方向に配向される。又、可動部を、逆の動きで、収縮状態にすることも同様に好ましい。
【0024】
又、一例では、第1の方向は、垂直方向と一致し、すなわち、重力方向と一致する。そして、以下の説明において、「上部の(upper)」、「下部の(lower)」、「上(上方)に(above)」、「下(下方)に(under)」、「最も低い(lowest)」、「最も高い(highest)」、「底(最下)の(bottom)」という用語は、垂直方向に沿った場合を前提として、所定の意味を表している。
【0025】
又、可動部の収縮状態において、可動部、特に可動部の上側が、特に第1の方向に対して、収縮された位置、例えば、所定の最も低い垂直位置に配置されることが好ましい。
又、可動部の収縮状態において、誘導電力伝達パッドの高さ、すなわち誘導電力伝達パッドの最も高い部分、例えば可動部の上側の、第1の方向に沿った誘導電力伝達パッドの取付部からの距離を、最小とすることが好ましい。
これに対応して、伸長状態において、可動部、特に可動部の上側は、伸長位置、例えば、所定の最も高い垂直位置に配置させることが好ましい。
又、伸長状態において、誘導電力伝達パッドの高さを最大とすることが好ましい。
又、誘導電力伝達パッドの取付部は、誘導電力伝達パッドの底面、特に固定部に一致することが好ましい。
又、誘導電力伝達パッドの取付部が、誘導電力伝達パッドを取付構造体、特に床面(地表面)に取り付けるために、使用されることが好ましい。
更に又、可動部の収縮状態及び伸長状態は、例えば停止素子等の機械的な要素、及び/又は、アクチュエータの設計によって規定されることが好ましい。
【0026】
又、収縮状態の誘導電力伝達パッドにおいて、誘導電力伝達パッドの取付部に対する、可動部の上側の垂直方向の高さは、50~110mmの範囲内の値とすることが好ましく、70~90mmの範囲内の値とすることがより好ましく、80mmの値とすることが更に好ましい。
又、伸長状態の誘導電力伝達パッドにおいて、誘導電力伝達パッドの取付部に対する、可動部の上側の垂直方向の高さは、例えば、95~155mmの範囲内の値とすることが好ましく、115~135mmの範囲内の値とすることがより好ましく、125mmの値とすることが更に好ましい。
【0027】
又、一次巻線構造体は、例えば交流の1相をもたらす少なくとも1つの相線を含んでいることが好ましい。
かかる一次巻線構造体の少なくとも1つの相線は、蛇行したコース又はループ状のコースを有することが好ましい。
一例では、一次巻線の少なくとも1つの相線は、相線のコースが、互いに隣接して配置される偶数又は奇数の副巻線(サブ巻線)を提供するように設計されることが好ましい。
本明細書の流れにおいて、副巻線は、所定の領域を囲む、完全な導体ループであることが好ましい。
かかる導体ループは、それぞれの副巻線の1ターン又は複数ターンを提供すること又は含んでいることが好ましい。
ここで、互いに隣接しているとの表現は、副巻線の中心軸、特に対称軸が、例えば一次巻線構造体の延在方向に対応し得る共通の直線に沿って、例えば、所定の距離で、互いに離間していることを意味する。
又、一次巻線構造体の少なくとも1つの相線のコースは、8の字の形状とすることが好ましい。
これは、相線が、互いに隣接して配置される2つの、例えば円形状の副巻線を含んでいることを示している。
更に又、特に、一次巻線構造体が、三相線(以下、三相巻線と称する場合もある。)を含んでいることが好ましい。
【0028】
又、誘導電力伝達パッドの可動部は、ケーブルベアリングエレメント(cable bearing element)を含んでいることが好ましい。
かかるケーブルベアリングエレメントは、一次巻線構造体、特にそのラインセクション、及び/又は、相線を所定位置に適合させ、及び/又は、保持することが好ましい。
これは、上述の副巻線、蛇行したコース又はループ状のコースのいずれかを規定及び維持するために、相線のラインセクションが配置される、凹部及び/又は溝を設けることによって、行なわれることが好ましい。
【0029】
又、ケーブルベアリングエレメントは、プラスチック材料などの非金属材料からなることが好ましい。
後述するように、ケーブルベアリングエレメントは、可動部のベース部材によって支持され、及び/又は少なくとも部分的に重なり合うか、又は少なくとも部分的に覆われていることが好ましい。
又、ケーブルベアリングエレメント及びベース部材は、シーリングカバーで囲まれていることが好ましく、及び/又は、シール又は、ケーブルベアリングエレメントとベース部材との間に配置されたシールによって、互いに接続されていることが好ましい。
特に、ケーブルベアリングエレメントとベース部材との間に防水接続及び/又はシールを提供することが好ましい。
更に又、ケーブルベアリングエレメント、及び/又は、ケーブルベアリングエレメントに接続され、カバーとケーブルベアリングエレメントとの間で少なくとも部分的に一次巻線構造体を囲む外側カバーが、ベース部材及び特に、ベース部材に配置された、例えばインバータ等の構成要素のためのカバーとして機能することも好ましい。
【0030】
一般的に、可動部は、信頼性を高めるために、防水方法で、一次巻線構造体及びインバータを封入することが好ましい。
これは、例えば、特に信頼性が高く、費用対効果の高い方法で、ケーブルベアリングエレメントや、外側カバー及び/又はベース部材の上述したような配置によって、達成される。
【0031】
更に、誘導電力伝達パッドにおいて、特に、可動部が、磁気シールド要素(以下、単にシールド要素と称す場合がある。)を含んでいることが好ましい。
かかる磁気シールド要素は、誘導電力伝達中に生成される電磁場から誘導電力伝達パッドの外部領域をシールドするために使用されることが好ましい
又、可動部、特にそのハウジング部品及び/又は後述するベース部材は、それぞれが磁気シールド機能を提供し、及び/又は、それぞれの磁気シールド要素として機能することが好ましい。
しかしながら、追加の磁気シールド要素を提供することも好ましく、例えば、少なくともインバータと、特に一次巻線構造体に面するインバータの一部を覆っていることが好ましい。
【0032】
更なる実施形態によれば、可動部が、固定部への電気接続を有していない、すなわち、固定部に電気的に接続されていないことが好ましい。
これにより、可動部と固定部との間の電気接続の量、特に、シールする必要のある電気インターフェースとの間の電気的な接続(電気配線)の量を制限することができる。
【0033】
或いは、電気接続があったとしても、可動部又は少なくとも一次巻線構造体が、固定部から電力を受けとらないか、又は、一次巻線構造体の通電に必要な量よりも少ない量しか受け取らないようにすることが好ましい。
又、アクチュエータが固定部に組み込まれている場合、これは本発明によれば可能な実施形態であるが、好ましくはない。
そして、可動部は、電力をアクチュエータに送り、それによって、固定部に送ることができるが、可動部が、固定部から電力を受け取らないことが好ましい。
【0034】
更に別の実施形態によれば、固定部が、いかなる電気部品、特に一次巻線構造体を通電するための電気部品も有していないことが好ましい。
従って、固定部は単なる機械システムであることが好ましく、例えば、可動部の安定性と支持を提供することが好ましい。
又、固定部が、電気部品を含んでいる場合には、これらの電気部品が、可動部の移動、及び/又は、一次巻線構造による電界の発生を可能にしないことが好ましい。
又、特に、固定部が、電気部品を含んでいる場合には、これらの電気部品は、可動部と相互に作用しない、及び/又は、可動部と接続されていないことが好ましい。
この場合も、固定部、可動部、及び電気部品との間のケーブルと、シールする必要のある電気インターフェース間のケーブル、を制限することができる。
【0035】
又、更なる例では、外部電源に接続するために、可動部が、接続端子、例えば接続ケーブル用の接続端子、及び/又は接続ケーブルを含んでいることが好ましい。
従って、可動部は、例えばケーブル用接続端子を介して、ケーブルに接続又は接続できる状態にすることができる。
又、外部電源は、家庭用電源又は家庭用電力網であることが好ましく、例えば公共電力網に接続されていることも好ましい。
従って、接続ケーブルは、ソケットに接続するためのプラグを含んでいることが好ましい。
かかるプラグは、地域の基準及び規格に適合させるために交換可能とすることが好ましい。
又、接続ケーブルの長さは、例えば、プラグを含む更なるケーブルセクションを接続することができるインターフェースを含む接続ケーブルによって、調節可能であることが好ましい。
【0036】
又、接続ケーブルは、接続端子に対して、例えば、手動による抜き差しで、交換できるように接続可能であることが好ましい。
或いは、かかる接続ケーブルが、手動による抜き差し、例えば、単なる手動での押し引き操作ができないように、接続端子に固定されていることが好ましい。
例えば、接続ケーブルは、溶接、はんだ付け、又は接着によって接続端子に固定されることが好ましい。
加えて、又は代替的に、接続ケーブルと接続端子との間に恒久的な接続が形成されることが好ましい。
かかる恒久的な接続は、工具無しで、及び/又は、ワイヤ接続を破壊することなしには、ユーザーによって取り外すことができない。
【0037】
又、接続端子は、少なくとも一部が、後述するカバー部材で囲まれた空間の内部に配置されていることが好ましく、接続ケーブルが、かかる空間の内部から外部へ案内されていることが好ましい。
そうするために、例えば、カバー部材の内部に開口部を設けることが好ましい(下記参照)。
一般的に、接続端子は固定位置に留まるが、誘導電力伝達パッドから外部電源への接続ケーブルのコースが、例えば、接続ケーブルが、上述のカバー部材で囲まれた空間の内部から外部に案内される様々なオプションを有することによって、柔軟に調整できることが考えられている。
このように、ユーザーは、接続ケーブルをどのように配置するのか選択肢があり、例えば、誘導電力伝達パッドの上に自分の車両を配置するために、接続ケーブルを横切ることでケーブルの圧迫するような運転を回避することができる。
【0038】
又、1つの好ましい例では、接続ケーブルは、少なくとも誘導電力伝達パッドの第1の側面及び第2の側面において、上述の空間の内部から外部に案内されることが好ましく、第1及び第2の側面は、誘導電力伝達パッドの反対の端、側面又はその上側に位置することが好ましい。
【0039】
更に別の実施形態によれば、誘導電力伝達パッドは、可動部を動かすためのアクチュエータを更に含み、当該アクチュエータが、可動部と電気的に接続されている、及び/又は、可動部から電力を供給されていることが好ましい。
特に、かかるアクチュエータが、可動部を動かすための電力を、可動部から受けることが好ましい。
又、かかるアクチュエータの接続端子が、可動部に対して相対的に動かないようにすることが好ましく、例えば可動部へ固定されていることが好ましい。
このように可動部と、アクチュエータとの間の電気接続の動き、特に、その頻繁な伸長と収縮が制限され、ひいては、ケーブルが断線するリスクを抑えることができる。
【0040】
又、可動部とアクチュエータとの間の電気接続は、本明細書で論じられているように、カバー部材によって大部分が囲まれた空間の内部に形成されることが好ましい。
これは、かかる電気接続が、誘導電力伝達パッドの外装部に形成される場合と比較して、シーリングに関する要件を低減することができる。
【0041】
又、可動部が、アクチュエータに外部電源から電力を供給するように構成されていることが好ましい。
すなわち、外部電源からの電力が、可動部に案内され、可動部からアクチュエータへ転送されることが好ましい。
このように、アクチュエータを外部電源に直接接続する必要がないため、個別の電源ケーブルの数や、関連するコストを抑えることができる。
【0042】
一般的に、誘導電力伝達パッドは、外部電源に接続するための1つのケーブル又は1つの接続を含んでいることが好ましく、当該1つのケーブル又は1つの接続は、可動部に含まれ、及び/又は、可動部に接続されていることが好ましい。
又、可動部は、外部電源から受け取った電力を、インバータ、上述のアクチュエータ、又は後述する気流発生ユニット等の更なるユニットに分配するための分配器として機能することが好ましい。
【0043】
又、アクチュエータは、一般的に、伸縮可能なシリンダ又は同様の伸縮可能な部材を含んでいることが好ましい。
それぞれの伸長又は収縮を提供するために、アクチュエータが、電気モーター又は電気ポンプ、例えば電気駆動式の油圧又は空気圧ポンプを含んでいることが好ましい。
【0044】
又、更なる例によれば、アクチュエータが、固定部に対して機械的に静止している(rests)ことが好ましい。
すなわち、アクチュエータは、例えば、その延出部が、可動部を固定部に対して上方に押すために固定ベースとして固定部を使用するように、固定部によって支持されていることが好ましい。
又、アクチュエータは、例えば、固定部に直接的に又は間接的に固定することが好ましい。
加えて、又は代替的に、アクチュエータは、一般的に、可動部に直接的又は間接的に固定されることも好ましく、及び/又は、可動部に対して静止していることも好ましい。
しかしながら、上述したように、固定部への電気接続はないことが好ましく、アクチュエータへの電力は、例えば、可動部を外部電源に接続することにより、可動部で供給されることが好ましい。
【0045】
更に別の実施形態によれば、誘導電力伝達パッドが、気流発生ユニットを更に含み、気流発生ユニットが電気的に接続されているか、又は可動部によって、電気が供給されるようにすることが好ましい。
又、気流発生ユニットは、例えば、可動部と連動して移動可能であることが好ましい。
更に又、電気接続は、例えば、可動部と気流発生ユニットの接続端子との間にケーブルを配置し、接続端子又は気流発生ユニット全般が、可動部に固定され、及び/又は、可動部に対する相対的な動きが生じないように構成されることが好ましい。
このようにすることで、必要なケーブルの長さを制限されるため、コストを抑えることができ、ケーブルが破損するリスクも抑えることができる。
【0046】
更に、気流発生ユニットは、ファンであるが好ましく、又は、ファンを含んでいることが好ましい。
かかる気流発生ユニットは、可動部の一部に、又は可動部の一部に沿って、例えば固定部に面する可動部の下側に、又は、可動部の下側に沿って、配向された気流を生成することが好ましい。
一般的に、気流は、インバータ又は他の電気部品等の熱源に近い部分に、又は、近い部分に沿って、配向することが好ましい。
従って、気流は、例えば、インバータ又は電気部品を収容する可動部のベース部材の表面又は部分に、又は、ベース部材の表面又は部分に沿って、配向することが好ましい。
更に、気流は、後述のカバー部材によって囲まれた空間の内部を少なくとも部分的に流れることが好ましい。
【0047】
又、可動部が、気流発生ユニットに外部電源から電力を供給するように構成されていることが好ましい。
又、上述のアクチュエータの電源供給と同様に、外部電源からの電力を、可動部を経由して気流発生ユニットへ導くことで達成することが好ましい。
本明細書の流れにおいて、気流発生ユニットが、可動部に配置されること、又は、可動部の内部に配置されることが好ましい。
このように配置することで、気流発生ユニットと可動部が連動して動作できるようになり、又、損傷がなく、安価な電気接続が可能となる等、様々な面で好ましいと言える。
【0048】
例えば、気流発生ユニットが、固定部に面した可動部の下側に、配置されることが好ましい。
具体的には、後述するカバー部材によって囲まれた空間の内部に配置されることが好ましい。
加えて、又は代替的に、気流発生ユニットが、可動部の内部の熱源に近くに、例えば、可動部の内部の熱源に近くに隣接して、配置されていることが好ましく、又は、可動部の高温部に沿って気流が発生するように配置されていることも好ましい。
一例では、気流発生ユニットは、可動部のそれぞれ長い部分に沿って、例えば、好ましくは可動部の下側の長さ又は幅の少なくとも半分に沿って、気流を案内するために、可動部の縁部又は少なくとも可動部に対して中心から離れた部分に位置決めされている。
【0049】
又、一例では、気流発生ユニットが、周囲から取り込んだ空気の流れを、可動部に沿って及び/又は可動部の内部に発生させるように構成されていることが好ましい。
これに関連して、空気が、気流を発生させるために周囲から取り込まれ、その後、再び周囲へ排出されることが好ましい。
従って、誘導電力伝達パッドが、少なくとも1つの吸気口と、少なくとも1つの排気口とを含み、気流発生ユニットが、これらの吸気口と排気口との間に気流を生成するように構成されることが好ましい。
この構成とすることで、例えば、空気が長いチャネルを循環しているため、急速に加熱され、関連する全ての部分で十分な量の熱を除去できない既知の固定部の冷却と比較して、効率的な除熱を提供するのに役立つ。
【0050】
更に別の実施形態によれば、可動部が、一次巻線構造体及び/又はインバータを支持する、又は、言い換えれば、一次巻線構造体及び/又はインバータを運ぶ、ベース部材を含んでいることが好ましい。
しかしながら、可動部が、必ずしもベース部材と接している必要はない。
かかるベース部材は、板状であることが好ましく、溝、凹部、貫通孔等を含んでいることも好ましい。
又、かかるベース部材が、可動部の下側を形成することが好ましい。
又、かかるベース部材には、シザーレッグ機構等の案内手段、及び/又は、可動部に移動力を与えるためのアクチュエータを取り付けることが好ましい。
更に又、かかるベース部材は、インバータ及び/又は一次巻線構造を収容するための可動部によって提供される、シールされた封入成形物の一部を形成することが好ましく、防水シールされた封入成形物の一部を形成することがより好ましい。
【0051】
これに関連して、インバータが、特に可動部の移動軸、例えば、地表面に対する垂直軸に沿った状態で見たときに、ベース部材と一次巻線構造体との間に少なくとも部分的に配置されていることが好ましい。
例えば、かかるインバータは、ベース部材によって少なくとも1つの面で覆われていることが好ましく、3つ又は5つの側面で覆われていることが更に好ましい。
これは、例えば、更に別の実施形態によれば、インバータが、ベース部材にある凹部の内部に少なくとも部分的に配置されることによって達成されることが好ましい。
このように配置することで、湿気のような外部の影響からインバータを保護することができき、又、一般的に潜在的熱源となるインバータをベース部材の近くに、そして、外部の近くに配置することができる。従って、インバータからの熱を効率的に外部に伝導させることができる。
又、例えば、生成された気流が、ベース部材のうちインバータに近い部分、特にインバータを受ける部分に沿って向けられることが好ましい。
【0052】
一般的に、インバータは、ベース部材の一次巻線構造体に面する側に配置されることが好ましい。
一方、気流発生ユニットは、ベース部材の下側等の、インバータが配置される面とは反対側に配置されることが好ましい。
このように気流発生ユニットを配置することで、可動部の内部に吸気口や排気口を設けることなく、ベース部材の外面に沿って空気の流れを導き、効率的に冷却することができる。
このような吸気口や、排気口があると、可動部に湿気が入る可能性のある可動部においてインターフェース及び/又は開口部が追加されるため、実質的にシーリングするのに多大な労力が必要となる。
【0053】
又、一例では、複数の電気部品が、少なくとも2つのグループの機能ユニットに、例えば、集約されるように提供されることが好ましい。
かかる少なくとも2つのグループの機能ユニットのそれぞれは、ベース部材の内部の凹部に用意されることが好ましい。
又、気流発生ユニットが、これらの凹部の間もしくは、ベース部材の反対側、例えば、その下側に用意されることが好ましい。
こうすることで、熱源を空間的に分散させることができため、効率的な冷却が提供され、局所的に高くなる熱集中を回避することができる。
更に、熱源である両方のグループからの除熱が、場合によっては1つの気流発生ユニットだけ達成されることが好ましい。
【0054】
上述された凹部は、ベース部材の下側において突出部を形成していることが好ましい。
そして、隣接する凹部、すなわち、より正確には、隣接する凹部によって形成される突出部は、突出部のそれぞれの側壁を規定することで、チャネル又は溝を閉じ込めている(confine)ことが好ましい。
従って、このチャネル又は溝は、気流発生ユニットによって生成された気流を、ベース部材に沿って所望の方法で案内することができる。
このようにすることで、それぞれのチャネルを規定するために、これまで必要としていた追加の部品を抑えることができ、製造コストを低減することができる。
【0055】
又、一例では、ベース部材が、金属材料からなることが好ましい。
一般的に、金属材料に関しては、平均以上の熱伝導係数を有する金属材料を選択することが好ましい。
このような金属材料を選択することにより、特にベース部材の外側に沿って気流を向けたときに、可動部の内部に収容されたインバータ等の熱源からの効率的な除熱を行うことができる。又、ダイカスト鋳造や射出成形によるベース部材の製造も可能となり、コスト面でも有益である。
【0056】
一般に、可動部と固定部とは、誘導電力伝達パッドのサイズとサイズに関するコストを抑えるために、大部分が、或いは完全に重なるように配置されていることが好ましい。
従って、可動部の移動軸に沿ってなる、可動部の収縮状態においても、可動部と固定部とが完全に隣接することなく、互いに上方に配置されることが好ましい。
又、収縮状態において、可動部は、固定部又は本明細書で説明されているカバー部材のカバーとして機能することも好ましい。
このように機能することで、固定部又はカバー部材を損傷から保護するのに役立ち、固定部やカバー部材等の耐久性において、設計要件を低減することができるため、コストを削減することができる。
【0057】
例えば、一態様によれば、可動部が、固定部が覆う面積のうち、少なくとも80%の面積を覆うことが好ましい。
この面積は、水平空間平面の内部及び/又は可動部の移動方向と直交して延在する平面の内部の面積に関連することが好ましい。
こうすることにより、可動部と固定部の少なくとも部分的な重なりを達成することができる。
【0058】
加えて、又は代替的に、可動部の占有面積が、固定部の占有面積と少なくとも同じ大きさであるか、又は、その大きさが、固定部の占有面積の大きさの少なくとも80%であることが好ましい。
この場合も、可動部の占有面積は、水平空間平面及び/又は可動部の移動方向と直交して延在する平面に投影したときの関連部品の形状又は円周に関連していることが好ましい。
【0059】
更なる一態様によれば、可動部と固定部との間の空間が、カバー部材によって、少なくとも部分的に囲まれていることが好ましい。
このようにすることで、かかる空間が、固定部に対する可動部の移動量の関数として増減する、例えば、可動部の伸長状態で最大、収縮状態で最小となる、可動部と固定部との間の体積を規定することができる。
【0060】
又、空間の形状は、円筒形状とすることが好ましく、固定部及び可動部の少なくとも一部が、円筒形状の空間の底面を規定するか、又は、円筒形状の空間の底面に対して平行に延在していることが好ましい。
又、カバー部材は、円筒形状の空間の側面又は外郭面を規定するか、又は、制限することが好ましい。
更に又、一般的に、カバー部材は、4つの側面で空間を取り囲むことが好ましい。
【0061】
又、インバータや、任意の更なる熱源や、任意の電気部品、及び/又は、一次巻線構造体の少なくとも一部は、可動部と静止部との間の空間の内部又は空間の上方に配置されていることが好ましい。
すなわち、上記のインバータ等が、可動部と静止部との間の空間と少なくとも部分的に重なるように、又は、例えば上から見たときに、少なくとも空間の占有面積と重なるように配置されていることが好ましい。
特に、可動部の移動軸に沿った状態で見たとき、及び/又は、空間の外郭面を仮想的に延在して、カバー部材の向こう側へ、例えば、可動部の移動軸に沿って延在させたときに、インバータ等のいずれかが、空間又は仮想的に延在された仮想空間の内部に配置されていることが好ましい。
【0062】
又、カバー部材が、例えば、外部電源に接続するためのケーブルを案内するための孔を含んでいることが好ましい。
それでも、かかるカバー部材は、大部分が、或いは完全にとじた表面を有していることが好ましい。
従って、例えば、カバー部材における潜在的な孔の大きさは、カバー部材の総面積の5%未満である。
【0063】
又、カバー部材が、可撓性又は弾力性のある材料でできていることが好ましく、例えば、ゴム又はプラスチック材料であることが好ましい。
更に、カバー部材が、折り目、又は、他の所定の変形可能なセクションを含んでいることが好ましい。
又、一例では、カバー部材は、可動部の動きに応じて折り畳まれたり、展開されたりする折り畳み式のベローズとすることが好ましい。
【0064】
更に別の実施形態によれば、インバータが、カバー部材に囲まれた空間に面する可動部の下側よりも、周囲に面する可動部の上側の近くに配置されていることが好ましい。
このように配置することで、発生した熱が、この空間の内部に伝導され、例えば、本明細書で論じられる気流発生ユニットを介して、この空間の除熱ができるため、熱管理の観点から有利である。更には、空間効率の良い配置となる。
一般的に、インバータが、一次巻線構造体の下に配置され、インバータと一次巻線構造体とが互いに重なっていることが好ましい。
【0065】
又、一例では、気流発生ユニットが、固定部、及び/又は、カバー部材により囲まれた空間に面する可動部の下側、例えば可動部にあるベース部材の下側、に配置されることが好ましい。
より具体的には、気流発生ユニットが、カバー部材に囲まれた空間の内部に配置されていることが好ましい。
加えて、又は代替的に、気流発生ユニットが、周囲に面する可動部の周囲に面した上側よりも下側に近い位置に配置されることが好ましい。
一般的に、インバータ等の熱源が、一次巻線構造体の下に配置され、従って、かかる下側にも近い位置に配置されることが好ましいので、気流発生ユニットを上記のように配置することで、効率的な除熱をすることができる。
【0066】
更なる一態様によれば、カバー部材に囲まれた空間の内部において、外部電源から可動部に電力を供給するためのケーブルが、可動部に接続可能であること、又は、接続されていることが好ましい。
すなわち、かかるケーブルが、誘導電力伝達パッドの周囲から、かかる空間の内部に案内され、かかる空間の内部で、可動部に、例えば、可動部の接続端子に接続されることが好ましい。
従って、可動部へのこの接続は、カバー部材によって少なくとも部分的に囲まれていることが好ましく、そうすることにより、追加のシーリングに関して要件を制限することができる。
又、上述したように、カバー部材が、ケーブルをその中に案内するための所定の開口部を含んでいることが好ましい。
【0067】
又、例えば、誘導電力伝達パッド、例えば、固定部又は固定部とカバー部材との間に形成されるギャップと特にカバー部材とが、ケーブルを外部電源へ案内するために使用される少なくとも2つの開口部又は少なくとも2つの所定の開放可能な部分を含んでいることが好ましい。
この開放可能な部分には、例えば、取り外し可能なカバー、又は、局所的に材料強度を低くしたものを使用することが好ましい。
従って、ユーザーは、誘導電力伝達パッドに対してケーブルをどのように配置すべきかを決定することができる。
一般的に、開口部又は開放可能な部分は、互いに距離をとって配置されることが好ましく、又、誘導電力伝達パッドの異なる側に配置されていることが好ましい。
例えば、開口部又は開放可能な部分が、ケーブルが誘導電力伝達パッドの異なる側、例えば前面又は背面で誘導電力伝達パッドからそれぞれ離れることができるように配置されていることが好ましい。
このように開口部又は開放可能な部分を配置することで、誘導電力伝達パッドの設置自由度を向上させることができる。
更に、誘導電力伝達パッドの上に車両を配置する際に、車両がケーブルを横切る、すなわち、車両がケーブルを乗り越えて圧迫することを避けられるような案内を行うことができる。
【0068】
一般的に、可動部が、インバータ及び一次巻線構造体を収容するか、別の言い方をすれば、封入し、特に防水方法で、周囲からシールされるようにすることが好ましい。
これは、固定部と可動部に配置される電気部品のために、固定部と可動部にそれぞれ別のハウジングとシーリングが必要となる既知のソリューションと比較して、生産労力と関連コストを抑えることができる。
すなわち、本明細書に開示されるソリューションを用いて、部品点数、ハウジング部、及び/又は必要なシールの数あるいはその長さ、並びに関連する製造及び組立の工程を減らすことができる。
【0069】
上述したように、誘導電力伝達パッドにおいて、
気流発生ユニットが、周囲から空気を吸い込むことができる、例えば、本明細書で論じられるカバー部材の内部、又は、固定部の内部又は下の開口部又はギャップの内部に設けられた少なくとも1つの吸気口と、
気流発生ユニットにより発生した気流からの空気を、周囲へ排出するための、例えば、本明細書で論じられるカバー部材の内部、又は、固定部の内部又は下の開口部又はギャップの内部に設けられた少なくとも1つの排気口と、のうちの少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0070】
更に、本明細書においては、誘導電力伝達パッドの、特に車両への誘導電力伝達用システムの誘導電力伝達パッドの製造方法が提案されている。
そして、かかる誘導電力伝達パッドは、固定部と可動部とを含み、可動部は、収縮状態と伸長状態との間で移動可能である。
更に、かかる製造方法が、可動部に、一次巻線構造体と、一次巻線構造体に電気的に接続される少なくとも1つのインバータと、を配置することを特徴としている。
【0071】
この製造方法が、前述、もしくは後述する相互作用、動作状態又は、機能のいずれかを提供し、誘導電力伝達パッドの、更なる部材のいずれかを提供又は統合するための、任意の更なるステップ、任意の展開又は任意の更なる特徴を含んでいることが好ましい。
具体的には、誘導電力伝達パッドの特徴に関する、本明細書における前述の又は後述の説明及び展開のいずれもが、同等の方法の特徴にも適用されることが好ましい。
一般的に、この製造方法が、前述もしくは後述の態様のいずれかに従って、誘導電力伝達パッドを製造することを含むことが好ましい。
【0072】
以下では、本発明の実施形態を、添付の図面を参照して説明する。又、以下では、図面全体を通して割り当てられた同じ参照符号は、同じ又は類似の技術的特徴を示している。
【図面の簡単な説明】
【0073】
図1図1は、本発明の実施形態による方法で製造された、本発明の実施形態による、収縮状態における誘導電力伝達パッドを説明するための図である。
図2図2は、本発明の実施形態による、伸長状態における誘導電力伝達パッドを説明するための図である。
図3図3(a)は、図2における第1の線A-Aに沿って切断した場合の断面図であり、図3(b)は、図1における第1の線A-Aに沿って切断した場合の断面図である。
図4図4(a)は、図2における第2の線B-Bに沿って切断した場合の断面図であり、図4(b)は、図1における第2の線B-Bに沿って切断した場合の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0074】
図1は、誘導電力伝達パッド(以下、単にパッドと称する場合がある。)10を示している。
かかる誘導電力伝達パッド10は、誘導電力伝達パッド10の大部分が覆われた非可動である固定部14が配置された地表面に対して移動可能な可動部12を含んでいる。
図1に示された状態では、可動部12は収縮状態にある。従って、誘導電力伝達パッド10が、水平空間平面に対してほぼ平行に延在している。
【0075】
これに対して、図2では、可動部12が伸長状態にある誘導電力伝達パッドが示されている。この伸長状態にするために、垂直方向の空間軸と一致する移動軸Mに沿って、後述するアクチュエータによって、可動部12が、持ち上げられるように移動される。
一方、図1の収縮状態に戻るためには、移動軸Mに沿って反対方向への移動が行われる。
【0076】
可動部12と固定部14は、カバー部材16によって互いに接続されていることが理解される。
かかるカバー部材16は、可動部12の移動に応じて折り畳まれたり展開されたりする折り畳み式のベローズとして、構成されていることが好ましい。
かかるカバー部材16は、以下に更に詳細に説明するように、可動部12と固定部14との間の空間を閉じ込める。
【0077】
カバー部材16は、図2において、観察者に面する誘導電力伝達パッド10の側面に開口部18を含んでいることが好ましい。
かかる開口部18を通して、グレートケーブル(grate cable)などのケーブル20が、公共グリッドのような外部電源(図示せず)に接続するために、案内されることが好ましい。
かかるケーブル20は、誘導電力伝達パッド10の外部電源への唯一の接続である。
又、図2の上部に示しているように、ケーブル20が、誘導電力伝達パッド10から異なる向きで、外部電源へ案内することも好ましい。
このように誘導電力伝達パッド10から外部電源へ方向を変えて接続するために、カバー部材16の反対側にも同様の開口部18が設けられている。
【0078】
又、上述の開口部18はいずれも、顧客へ届けられた時点で既に存在しているか、又は、取り外し可能なカバーを有していることや、容易に穴を開けることができる限定された材料強度を有することで手動で開閉可能なものである。
従って、顧客には、ケーブル20を外部電源へ向けて案内するための少なくとも2つの選択肢がある。
このように選択肢を設けることで、顧客は、現地の条件に応じて、特に車両でケーブル20を轢くことがないように、ケーブル20を配置することができる。例えば、ケーブル20とは反対側から誘導電力伝達パッド10に接近し、誘導電力伝達パッド10を離れるときには、誘導電力伝達パッド10の後方へ運転することで、車両でケーブル20を轢くことがなくなる。
【0079】
カバー部材16の開口部18の代わりに、固定部14に開口部又は開閉可能な部分を等しく設けて提供することも好ましい。
同様に、カバー部材16と固定部14との間にギャップを設け、それぞれの開口部として使用することも好ましい。
【0080】
以下では、第1の線(想定線)A-Aに沿って切断した場合の断面図について説明する。
すなわち、図3(a)及び図3(b)は、いくつかの参照符号が、これらの図の両方ではなく一方にのみ与えられていることがあるが、以下では、特に断りが無い限り、同じく第1の線A-Aに沿って切断した場合の断面を示している。
更に、図3(a)は、図2の上昇状態又は伸長状態を示し、図3(b)は、図1の収縮状態を示している。
【0081】
又、誘導電力伝達パッド10の標準的かつ既知の構成要素として、固定部14に対して可動部12を上下に動かす、電気駆動式の伸縮可能なシリンダ形態のアクチュエータ11が存在することが示されている。
更に、案内手段13、又は別の言い方をすれば、可動部12の移動を支持する機械的構造体が、2つの標準的なシザーレッグ機構(以下、はさみ状脚部と称する場合がある。)の形態で提供される。
【0082】
更に、固定部14は、後述する空間50と、周囲とを連通する中央開口部21を有するフレーム状の部材として構成される。かかる固定部14は、いかなる電気部品も含んでおらず、又、可動部12との電気接続もない。
しかしながら、アクチュエータ11は、可動部12を上方に押すとき、又は下方に引くときに、機械的に静止するように、固定部14に対して固定される。
公知のソリューションと比較して、固定部14は、その限られたサイズ、大きな開口部である中央開口部21、及び単純なフレームのようなデザインを有することによって、かなり小さく、安価に製造することができる。
【0083】
又、可動部12は、金属材料で作られたベース部材22を含み、示されたケースでは、アルミニウムで作られている。
かかるベース部材22は、ダイカスト鋳造によって製造されていることが好ましい。
かかるベース部材22は、一般的には、平板状の部材として構成されるが、いくつかの凹部、突出部、張り出し部(overhangs)などを有しており、すなわち完全な平面を規定しているわけではない。
ベース部材22の下側は、固定部14に面しており、全体として可動部12の下側を形成する。
【0084】
又、ベース部材22、ひいては可動部12によって覆われた面積又は占有面積A1は、固定部14の対応する面積又は占有面積A2を超える。
すなわち、ベース部材22、ひいては可動部12は、固定部14を完全に覆っている。
これは、例えば、固定部14だけでなくカバー部材16も、特に後者が収縮状態にあるときに、ベース部材22によって周囲の環境から保護されるという点で有利である。
【0085】
又、ベース部材22の上には、プラスチック材料からなるケーブルベアリングエレメント24が配置される。
かかるケーブルベアリングエレメント24は、一般に知られている方法で、一次巻線構造体26の相線が配置される凹部を含んでいる。
ケーブルベアリングエレメント24及び一次巻線構造体26の構成は、本発明におけるソリューションの中心ではなく、既知のソリューションに従って実施することが好ましい。
これは、一次巻線構造体26の下側に設けられる標準的なフェライト素子28にも関係する。
又、具体的には図示されていない異物検出システムが含まれ、当該異物検出システムが、既知の検出巻線を含んでいることが好ましい。
又、ケーブルベアリングエレメント24は、誘導電力伝達パッド10と同様に、可動部12の上側を形成する平面なカバー部材としてのシール30によって覆われている。
【0086】
ケーブルベアリングエレメント24は、ベース部材22の上側に配置され、従って、ベース部材22の上側を覆っている。
そして、シール30が、ケーブルベアリングエレメント24とベース部材22との間に配置されていることも好ましい。
【0087】
ここで、ベース部材22の説明に戻ると、例えば誘導電力伝達パッド10のパワーエレクトロニクス機器を含み、そのうちの少なくとも1つが一次巻線構造体26に通電するためのインバータ34からなる電気部品32のグループが、ベース部材22に配置されていることが示されている。
より正確には、電気部品32のグループが、ケーブルベアリングエレメント24に面する側、すなわちベース部材22の上側に配置されている。
【0088】
単なる例として、図示されている実施形態のベース部材22は、電気部品32が5つの側面で少なくとも部分的に囲まれるように配置される凹部36を含んでいる。
更なる任意であるが好ましい手段として、凹部36の開放側は、一次巻線構造体26と電気部品32を互いに電磁的にシールドするように配置されたシールド要素38によって、少なくとも部分的に覆われている。
【0089】
図3(b)に示された誘導電力伝達パッド10の収縮状態から明らかなように、凹部36を設けることは、空間効率の面で有利である。
例えば、かかる凹部36は、収縮状態におけるアクチュエータ11及び/又は案内手段13の高さと同様の寸法であることが好ましく、いずれも多かれ少なかれ固定又は変更不可能な寸法であることが好ましい。
従って、電気部品及び特に凹部36は、誘導電力伝達パッド10の高さを著しく増加させないが、誘導電力伝達パッド10の機械的に規定された最小の高さにおいて利用可能な空間を使用することが好ましい。
【0090】
全体として、電気部品32、特にインバータ34、及び一次巻線構造体26は、可動部12の内部に収容され、防水方法で、封入されることが好ましい。
【0091】
従って、電気部品32及び特にインバータ34と、例えば一次巻線構造体26との間の、具体的には示されていないケーブル等の電気接続は、限られた長さを有する。
又、両方とも可動部12に配置されているため、接続された要素は相互に移動可能ではなく、ケーブルもほとんど動かない。
従って、ケーブルが、頻繁に持ち上げられたり、広げられたりされることがなく、ひいては、ケーブルが破損するリスクを低減することができる。
【0092】
更なる利点は、誘導電力伝達パッド10の熱管理が改善されることである。
例えば、電気部品32のいずれかが熱源として作用するが、これらの電気部品32は、ベース部材22の下側の近くに、実際には直接隣接して配置されている。特に、これらの電気部品32は、可動部12の上側よりも下側に近いことが好ましい。
すなわち、図2中、想定される移動軸Mに沿って移動した場合において、電気部品32、特にインバータ34は、ベース部材22又は少なくともその下側と、一次巻線構造体26との間に配置されることが好ましい。
【0093】
従って、電気部品32によって発生した熱は、金属製のベース部材22、特にその下側によって、可動部12と固定部14との間の、カバー部材16で囲まれた空間50に伝導させることが好ましい。
更にそこから、電気部品32によって発生した熱は、図4(a)及び図4(b)に関して更に議論されるように、例えば電動ファンの形態である気流発生ユニット52によって、周囲に輸送することが好ましい。
【0094】
図3(a)では、外部電源に接続するケーブル20を再び確認することができる。
具体的には、開口部18のうち、図2に図示されている開口部18とは異なり、誘導電力伝達パッド10の反対側にある更なる開口部18を介して空間50にケーブル20が入っていることを確認することができる。
更に、ケーブル20は、可動部12、より具体的には、空間50を介して接続端子54に接続していることが分かる。図示されていないが、かかる接続端子54に対して、電気部品32、特にインバータ34が接続される。
従って、電力は、外部電源から電気部品32、特にインバータ34へ供給され、次いで、インバータ34が、一次巻線構造体26を通電することができる。
それとは反対に、外部電源からの電力は固定部14に供給されず、ケーブル20と固定部14との間、又は一般的に可動部12と固定部14との間に電気接続が形成されることはない。
【0095】
又、図4(a)及び図4(b)では、図1の第2の線B-Bによる誘導電力伝達パッド10の断面が示されている。
そして、図4(a)では、はさみ状の案内手段13を再び確認することができる。又、ケーブル20の配置については、前述のように、2通りの可能な方法が示されている。
【0096】
図4(a)、図4(b)では、気流発生ユニット52が、ベース部材22の下側の縁部に配置され、一般的に、ベース部材22に対して、中心から外れて配置されていることも分かる。
従って、ベース部材22の実質的な長さに沿って小さな矢印で示すような気流を案内し、それによって、相当量の熱を除去することが好ましい。
具体的には、描かれた気流を、凹部36によって及び凹部36の間に、形成されたチャネルを介して、電気部品32の形態での熱源に隣接するベース部材22の表面のごく近くに案内することが好ましい。
【0097】
又、凹部36が、ベース部材の下側に突出部を形成しており、図3(a)及び図3(b)で確認することができる。
従って、これらの突出部が互いに向かい合う外側側壁82が、気流が通過するチャネルの側壁となることが好ましい。
【0098】
又、図4(b)により具体的に示されるように、固定部14の下側には、気流発生ユニット52が周囲から空気を吸い込むことができる開口部のためのギャップの形をした吸気口23が設けられている。
更に、排気口25が設けられ、この排気口25を通して、加熱された空気が周囲へ排出されることが好ましい。
【0099】
本発明の実施形態の更なる詳細に限定されない一般的な態様として、ケーブル20が、任意で案内される可能性のある開口部18の1つを、例えば開口部18の少なくとも1つをそれぞれ大きな断面で寸法付けすることによって、排気口又は吸気口として使用することも好ましいと言える。
【0100】
又、任意の特徴として、ベース部材22の表面積、特にベース部材22の下側の表面積を大きくするための冷却構造体80が、図4(b)示されている。
かかる冷却構造体80は、例えば、冷却フィン又は冷却リブを形成することが好ましい。
このようにすることで、冷却構造体80に沿って気流を案内する際に、除熱量を増加させることができる。
【符号の説明】
【0101】
10:誘導電力伝達パッド、11:アクチュエータ、12:可動部、13:案内手段、14:固定部、16:カバー部材、18:開口部、20:ケーブル、21:中央開口部、22:ベース部材、23:吸気口、24:ケーブルベアリングエレメント、25:排気口、26:一次巻線構造体、28:フェライト素子、30:シール、32:電気部品、34:インバータ、36:凹部、38:シールド要素、50:空間、52:気流発生ユニット、54:接続端子、80:冷却構造体、82:側壁、A-A:第1の線、A1、A2:占有面積、B-B:第2の線、M:移動軸
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】