(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-02
(54)【発明の名称】クロマトグラフィー媒体の超臨界乾燥
(51)【国際特許分類】
F26B 3/00 20060101AFI20221125BHJP
B01J 20/26 20060101ALI20221125BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20221125BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20221125BHJP
F26B 21/14 20060101ALI20221125BHJP
C12M 1/26 20060101ALN20221125BHJP
B01J 20/281 20060101ALN20221125BHJP
【FI】
F26B3/00
B01J20/26 H
B01J20/28 Z
B01J20/30
F26B21/14
C12M1/26
B01J20/281 R
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022515628
(86)(22)【出願日】2020-09-14
(85)【翻訳文提出日】2022-03-08
(86)【国際出願番号】 IB2020000832
(87)【国際公開番号】W WO2021048633
(87)【国際公開日】2021-03-18
(32)【優先日】2019-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522091346
【氏名又は名称】メルク ミリポワ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】MERCK MILLIPORE LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【氏名又は名称】樋口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100116540
【氏名又は名称】河野 香
(72)【発明者】
【氏名】ボイル,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】スカリャ,ゲイリー
(72)【発明者】
【氏名】ラーギブ,アムロ
【テーマコード(参考)】
3L113
4B029
4G066
【Fターム(参考)】
3L113AA01
3L113AB02
3L113AB10
3L113AC20
3L113AC23
3L113AC67
3L113BA36
3L113CA08
3L113CA10
3L113CB01
3L113CB12
3L113CB15
3L113DA24
4B029HA05
4G066AA43D
4G066AA52D
4G066AA53D
4G066AB01D
4G066AB06D
4G066AC02C
4G066AC03B
4G066AC13C
4G066AC21D
4G066AC23D
4G066BA03
4G066BA23
4G066CA54
4G066DA07
4G066EA01
4G066FA20
4G066FA21
4G066FA38
(57)【要約】
複合材料を臨界点乾燥する方法が開示される。複合材料を超臨界流体に曝露した後、複合材料は、超臨界流体が減圧により蒸発するにつれて乾燥する。複合材料はクロマトグラフィー分離媒体として有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合材料を臨界点乾燥する方法であって、
a.以下を含む複合材料を提供する工程:
i.支持部材であって、該支持部材を通って延在する複数の細孔を含む、支持部材;および
ii.マクロ多孔性架橋ゲルであって、1つまたは複数の架橋剤との1つまたは複数の重合性モノマーの反応から形成されるポリマーを含み;前記支持部材の前記細孔内に位置し;かつ、前記マクロ多孔性架橋ゲルの前記マクロ細孔が前記支持部材の前記細孔よりも小さい、マクロ多孔性架橋ゲル;
b.前記複合材料を、超臨界流体の臨界点を超える温度および圧力で前記超臨界流体と接触させる工程であって、気相および液相が区別できない工程;および
c.圧力を低下させる工程
を含み、
これにより、前記複合材料を臨界点乾燥させる、方法。
【請求項2】
複合材料を臨界点乾燥する方法であって、
a.以下を含む複合材料を提供する工程:
i.支持部材であって、該支持部材を通って延在する複数の細孔を含む、支持部材;および
ii.マクロ多孔性架橋ゲルであって、1つまたは複数の架橋剤との1つまたは複数の重合性モノマーの反応から形成されるポリマーを含み;前記支持部材の前記細孔内に位置し;かつ、前記マクロ多孔性架橋ゲルの前記マクロ細孔が前記支持部材の前記細孔よりも小さく、前記複合材料が水溶液で湿潤される、マクロ多孔性架橋ゲル;
b.前記水溶液を極性有機溶媒と置換する工程であって、前記複合材料が前記極性有機溶媒で湿潤される、工程;
c.前記複合材料を、超臨界流体の臨界点を超える温度および圧力で前記超臨界流体と接触させる工程であって、気相および液相が区別できず、前記極性有機溶媒が前記超臨界流体と混和性である、工程;および
d.圧力を低下させる工程
を含み、
これにより、前記複合材料を臨界点乾燥させる、方法。
【請求項3】
複合材料を臨界点乾燥する方法であって、
a.以下を含む複合材料を提供する工程:
i.支持部材であって、該支持部材を通って延在する複数の細孔を含む、支持部材;および
ii.マクロ多孔性架橋ゲルであって、1つまたは複数の架橋剤との1つまたは複数の重合性モノマーの反応から形成されるポリマーを含み;生体分子または生体イオンである複数のリガンドを含み;前記支持部材の前記細孔内に位置し;かつ、前記マクロ多孔性架橋ゲルの前記マクロ細孔が前記支持部材の前記細孔よりも小さく、前記複合材料が水溶液で湿潤される、マクロ多孔性架橋ゲル;
b.前記水溶液を極性有機溶媒と置換する工程であって、前記複合材料が前記極性有機溶媒で湿潤される、工程;
c.前記複合材料を、超臨界流体の臨界点を超える温度および圧力で前記超臨界流体と接触させる工程であって、気相および液相が区別できず、前記極性有機溶媒が前記超臨界流体と混和性である、工程;および
d.圧力を低下させる工程
を含み、
これにより、前記複合材料を臨界点乾燥させる、方法。
【請求項4】
前記超臨界流体が、二酸化炭素、水、メタン、エタン、プロパン、エチレン、プロピレン、メタノール、エタノール、アセトン、および亜酸化窒素からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記超臨界流体が、二酸化炭素、メタン、エタン、プロパン、エチレン、プロピレン、メタノール、エタノール、アセトンおよび亜酸化窒素からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記超臨界流体が、二酸化炭素であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
サンプル体積に対する前記超臨界流体の総量、パージサイクルの数、前記超臨界流体との接触中の温度、前記超臨界流体との置換速度、蒸発工程中の温度、加熱速度、および減圧速度からなる群から選択される1つまたは複数のパラメータが調整されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記極性有機溶媒が、アセトン、アセトニトリル、アンモニア、t-ブタノール、n-プロパノール、エタノール、メタノールおよび酢酸からなる群から選択されることを特徴とする、請求項2~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記生体分子または生体イオンが、アルブミン、リゾチーム、ウイルス、細胞、ヒトおよび動物起源のγ-グロブリン、ヒトおよび動物の両方の期限の免疫グロブリン、合成または天然起源のポリペプチドを含む組換えまたは天然起源のタンパク質、インターロイキン-2およびその受容体、酵素、モノクローナル抗体、抗原、レクチン、細菌免疫グロブリン結合タンパク質、トリプシンおよびその阻害剤、シトクロムC、ミオグロブリン、組換えヒトインターロイキン、組換え融合タンパク質、プロテインA、プロテインG、プロテインL、ペプチドH、核酸由来産物、合成または天然起源のいずれかのDNA、および合成または天然起源のいずれかのRNAからなる群から選択されることを特徴とする、請求項3~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記生体分子または生体イオンが、プロテインAであることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記支持部材が、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリカーボネート、ポリエステル、セルロース、およびセルロース誘導体からなる群から選択されるポリマー材料を含むことを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記複合材料が膜であることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記複合材料が、1つまたは複数のインターリーフ層と接触していることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記1つまたは複数のインターリーフ層が、スクリーン、ポリプロピレン、ポリエチレン、および紙からなる群から選択されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記架橋ゲルが、中性ヒドロゲル、荷電ヒドロゲル、高分子電解質ゲル、疎水性ゲル、中性ゲル、または官能基を含むゲルであることを特徴とする、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記マクロ多孔性架橋ゲルが、約10nm~約3000nmの平均サイズを有するマクロ細孔を含むことを特徴とする、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記支持部材の細孔が、約0.1μm~約50μmの平均細孔直径を有することを特徴とする、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2019年9月16日出願の米国仮特許出願第62/900,798号;および2019年9月13日出願の米国仮特許出願第62/900,155号に対する優先権の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
超臨界流体(SCF)技術は、様々な分野において、特に、粒子および結晶工学などの医薬用途において、多くの用途を見出しており、生成される粒子の物理化学的特性に対する良好な制御および結晶形成の制御が非常に望ましい。複合粒子形成、抽出、コーティング、およびリポソームの調製などの他の用途は、SCF技術において深い関心が見出されている。
【0003】
臨界点乾燥(CPD)の使用はまた、走査電子顕微鏡プロセスのための生物学的標本の乾燥などの、乾燥中に構造の保存を必要とするいくつかの分野において関心を集めている。概して、特にCO2からのCPDは、通常の乾燥と比較して、シリカエアロゲルなどの多孔質材料の高い表面積を維持することが見出された。
【0004】
さらに、この技術における最近の進歩によって、空孔3次元金属有機構造体(MOF)の合成、並びに、ポリマー、エアロゲル、およびコンクリートなどの無秩序な多孔質材料の加工のために、超臨界CO2流体中での反応プロセスを開発することにより、多孔質材料の合成が探求された。
【0005】
超臨界流体技術はまた、タンパク質微粉化、粒子内へのカプセル化、バイオポリマー微小孔性発泡体の作製(超臨界発泡を使用する)、および生物医学的および薬学的製剤または装置を開発するための超臨界含浸のために首尾よく使用される。タンパク質をポリマーで乾燥させるために、SCFを様々な方法で使用して、バイオポリマーを生成することができる。方法の選択は、超臨界流体(例えば、CO2)と、活性成分(例えば、タンパク質)、溶媒、および対象とするコーティング材料またはポリマーとの相互作用に大きく依存し、ポリマーと超臨界流体(例えば、CO2)との相互作用が重要な役割を果たす。
【0006】
他の乾燥方法は、乾燥状態で限られた保管時間に亘って膜特性を保存することができるのみである。乾燥状態においてCPD後に所蔵によって一貫した特性を示す乾燥複合材料を生成する方法が必要とされている。
【発明の概要】
【発明の課題】
【0007】
生体分子の分離および精製を含む様々な用途に使用され得る複合材料を臨界点乾燥するための方法が開示される。具体的には、CPD技術を使用して、乾燥状態の膜の湿潤細孔構造、表面積、および透過性を維持またはほぼ維持した。複合材料を超臨界流体に暴露した後、複合材料は、超臨界流体が減圧下で蒸発するにつれて乾燥する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、本開示は、複合材料を臨界点乾燥する方法に関し、この方法は:
a.以下を含む複合材料を提供する工程:
i.支持部材であって、該支持部材を通って延在する複数の細孔を含む、支持部材;および
ii.マクロ多孔性架橋ゲルであって、1つまたは複数の架橋剤との1つまたは複数の重合性モノマーの反応から形成されるポリマーを含み;支持部材の細孔内に位置し;かつ、前記マクロ多孔性架橋ゲルの前記マクロ細孔が支持部材の細孔よりも小さい、マクロ多孔性架橋ゲル;
b.前記複合材料を、超臨界流体の臨界点を超える温度および圧力で超臨界流体と接触させる工程であって、気相および液相が区別できない工程;および
c.圧力を低下させる工程
を含み、これにより、前記複合材料を臨界点乾燥させる。
【0009】
別の態様では、本開示は、複合材料を臨界点乾燥する方法に関し、この方法は:
a.以下を含む複合材料を提供する工程:
i.支持部材であって、該支持部材を通って延在する複数の細孔を含む、支持部材;および
ii.マクロ多孔性架橋ゲルであって、1つまたは複数の架橋剤との1つまたは複数の重合性モノマーの反応から形成されるポリマーを含み;支持部材の細孔内に位置し;かつ、前記マクロ多孔性架橋ゲルの前記マクロ細孔が支持部材の細孔よりも小さく、前記複合材料が水溶液で湿潤される、マクロ多孔性架橋ゲル;
b.前記水溶液を極性有機溶媒と置換する工程であって、前記複合材料が前記極性有機溶媒で湿潤される、工程;
c.前記複合材料を、超臨界流体の臨界点を超える温度および圧力で超臨界流体と接触させる工程であって、気相および液相が区別できず、前記極性有機溶媒が前記超臨界流体と混和性である、工程;および
d.圧力を低下させる工程
を含み、これにより、前記複合材料を臨界点乾燥させる。
【0010】
別の態様では、本開示は、複合材料を臨界点乾燥する方法に関し、この方法は:
a.以下を含む複合材料を提供する工程:
i.支持部材であって、該支持部材を通って延在する複数の細孔を含む、支持部材;および
ii.マクロ多孔性架橋ゲルであって、1つまたは複数の架橋剤との1つまたは複数の重合性モノマーの反応から形成されるポリマーを含み;生体分子または生体イオンである複数のリガンドを含み;支持部材の細孔内に位置し;かつ、前記マクロ多孔性架橋ゲルの前記マクロ細孔が支持部材の細孔よりも小さく、前記複合材料が水溶液で湿潤される、マクロ多孔性架橋ゲル;
b.前記水溶液を極性有機溶媒と置換する工程であって、前記複合材料が前記極性有機溶媒で湿潤される、工程;
c.前記複合材料を、超臨界流体の臨界点を超える温度および圧力で超臨界流体と接触させる工程であって、気相および液相が区別できず、前記極性有機溶媒が前記超臨界流体と混和性である、工程;および
d.圧力を低下させる工程
を含み、これにより、前記複合材料を臨界点乾燥させる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】螺旋巻きまたはロールアセンブリにおけるインターリーフ(例えば、スクリーン)の層を有する例示的な複合材料を示す。
【
図1B】CPDホルダ内の膜スタックアセンブリ内にインターリーフ(例えば、スクリーン)の層を有する例示的な複合材料(例えば、膜ディスク)を示す。
【
図2】アルコール、緩衝液、および塩成分との置換プロトコルを有する表3を示す。
【
図3A】他の乾燥方法(安定剤なし、菱形;およびグリセリンあり、三角形)と比較した、膜フラックスにおける臨界点乾燥(CPD)効果(丸)を示す。
【
図3B】他の乾燥方法(安定剤なし、菱形;およびグリセリンあり、三角形)と比較した、結合能における臨界点乾燥効果(丸)を示す。
【
図4A】3.3の膜対エタノール比での臨界点乾燥保管後の膜特性を示す。
【
図4B】4.3の膜対エタノール比での臨界点乾燥保管後の膜特性を示す。
【
図4C】4.3の膜対エタノール比での臨界点乾燥保管後の膜特性を示す。
【
図4D】5.6の膜対エタノール比での臨界点乾燥保管後の膜特性を示す。
【
図5A】CPD後のエポキシ膜IgG動的結合能における抽出プロトコルの効果を示す。
【
図5B】CPD後のエポキシ膜フラックスにおける抽出プロトコルの効果を示す。
【
図5C】CPD後のエポキシ膜IgG動的結合能における抽出プロトコルの効果を示す。
【
図5D】CPD後のエポキシ膜フラックスにおける抽出プロトコルの効果を示す。
【
図6】臨界点乾燥パラメータおよび関連する膜エタノール抽出体積を有する表4を示す。
【
図7】様々な結合能および透過性を有する膜についての臨界点乾燥パラメータを有する表5を示す。
【
図8A】フラックスに基づく様々な臨界点乾燥エポキシ膜の安定性を示す。
【
図8B】フラックスに基づく様々な臨界点乾燥プロテインA膜の安定性を示す。
【
図8C】IgG動的結合能に基づく様々な臨界点乾燥エポキシ膜の安定性を示す。
【
図9A】置換された湿潤サンプルにおけるエポキシ膜孔径分布の変化を示す。
【
図9B】25日後のCPDサンプルにおけるエポキシ膜孔径分布の変化を示す。
【
図9C】1日後のEtOHから50℃で10分間乾燥させたサンプルにおけるエポキシ膜孔径分布の変化を示す。
【
図9D】1日後の水から50℃で10分間乾燥させたサンプルにおけるエポキシ膜孔径分布の変化を示す。
【
図10A】溶媒置換および他の乾燥方法(すなわち、水からおよびエタノールから)と比較した、膜フラックスおよびIgG動的結合能に対するCPD効果を示す。
【
図10B】溶媒置換および他の乾燥方法(水およびエタノールから)と比較した、エポキシ膜孔径特性に対するCPD効果を示す。
【
図11】CPDエポキシ膜およびオーブン乾燥膜の表面積測定値を示す。
【
図12】CPD実行の重要なパラメータおよび関連する膜アルコール抽出体積を有する表6を示す。
【
図13A】オーブン乾燥法と比較した膜IgG動的結合能に対するCPD効果を示す。
【
図13B】オーブン乾燥法と比較した膜フラックスに対するCPD効果を示す。
【
図14A】CPDによるプロテインA膜IgG動的結合能に対する緩衝液との置換プロトコルの効果を示す。
【
図14B】CPDによるプロテインA膜フラックス能に対する緩衝液との置換プロトコルの効果を示す。
【
図15】例示的な緩衝液プロトコルで置換された臨界点乾燥プロテインA膜の長期安定性を示す。
【
図16A】CPDによるプロテインA膜IgG動的結合能に対する塩との置換プロトコルの効果を示す。
【
図16B】CPDによるプロテインA膜フラックス容量に対する塩との置換プロトコルの効果を示す。
【
図17】例示的な塩プロトコルで置換された臨界点乾燥プロテインA膜の長期安定性を示す。
【
図18】CPDプロテインA膜性能に対する異なる置換プロトコルの効果の比較を示す。
【
図19A】AwB3置換プロトコルからのCPD膜についての結合能データを示す。
【
図19B】AwB3置換プロトコルからのCPD膜についてのフラックスデータを示す。
【
図20A】限定アルコール置換プロトコルAwB3-SVからのCPD膜についての結合能データを示す。
【
図20B】限定アルコール置換プロトコルAwB3-SVからのCPD膜についてのフラックスデータを示す。
【
図21A】プロトコルTP1-AWOB1およびTP2-AWOB1(20%アルコール中で1日間保存)を用いて置換したCPDプロテインA膜についての結合能経時変化試験を示す。
【
図21B】プロトコルTP1-AWOB1およびTP2-AWOB1(20%アルコール中で1日間保存)を用いて置換したCPDプロテインA膜についてのフラックス経時変化試験を示す。
【
図22A】プロトコルTP1-AWOB1およびTP2-AWOB1(20%アルコール中で7日間保存)を用いて置換したCPDプロテインA膜についての結合能経時変化試験を示す。
【
図22B】プロトコルTP1-AWOB1およびTP2-AWOB1(20%アルコール中で7日間保存)を用いて置換したCPDプロテインA膜についてのフラックス経時変化試験を示す。
【
図23A】プロトコルTP3-AWOB1およびTP4-AWOB1(pH7.5の20mMリン酸塩中の16%アルコール中で7日間保存)を用いて置換されたCPDプロテインA膜についての結合能経時変化試験を示す。
【
図23B】プロトコルTP3-AWOB1およびTP4-AWOB1(pH7.5の20mMリン酸塩中の16%アルコール中で7日間保存)を用いて置換されたCPDプロテインA膜についてのフラックス経時変化試験を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
概要
生体分子の分離および精製を含む、様々な用途に使用され得る複合材料を臨界点乾燥するための方法が開示される。いくつかの実施形態では、複合材料は、生体親和性クロマトグラフィー用である。いくつかの実施形態では、複合材料は膜である。いくつかの実施形態では、複合材料は多孔質ポリマーゲル膜である。具体的には、CPD技術を使用して、乾燥状態の膜の湿潤細孔構造、表面積、および透過性を維持またはほぼ維持した。さらに、臨界点乾燥法は、乾燥状態でCPD後に所蔵によって一貫した特性を示す乾燥膜を生成する。いくつかの実施形態では、CPDは、生体親和性媒体を乾燥させるための乾燥アプローチとして使用され、生体親和性媒体は、他の用途の中でも、バイオ分離のためのクロマトグラフィー媒体として使用することができる、多孔質ゲルまたは多孔質ゲル複合材料に結合したバイオリガンドを有する。具体的には、CPD技術を使用して、生体親和性媒体の構造および機能性を維持しながら、コンジュゲートタンパク質-ポリマー材料を乾燥させる。対照的に、他の乾燥方法は、乾燥状態で限られた保管時間に亘って膜特性を保存することができるのみである。
【0013】
定義
便宜上、本発明のさらなる説明の前に、本明細書、実施例および添付の特許請求の範囲で使用される特定の用語をここに集める。これらの定義は、本開示の残りに照らして読まれるべきであり、当業者によって理解されるべきである。他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、当業者によって通常理解されるものと同じ意味を有する。
【0014】
本発明を説明する際に、様々な用語が本明細書で使用される。標準的な用語は、濾過、流体送達、および一般的な流体処理技術において広く使用されている。
【0015】
本明細書で使用する場合、冠詞「a」及び「an」は、その冠詞の文法上の目的物の1つまたは2つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指す。例として、「1つの(an)要素」とは、1つの要素または2つ以上の要素を意味する。
【0016】
「comprise」および「comprising」なる用語は、包括的なオープンな意味で使用され、これは、追加の要素が含まれ得ることを意味する。
【0017】
「including」なる用語は、「including but not limited to.」、「Including」および「including but not limited to」が互換的に使用されることを意味するために使用される。
【0018】
「ポリマー」なる用語は、繰り返し単位(モノマー)の結合によって形成される大きな分子を意味するために使用される。ポリマーという用語は、コポリマーも包含する。
【0019】
「コポリマー」なる用語は、少なくとも2つ以上の異なるモノマーのポリマーを意味するために使用される。コポリマーは、架橋剤が二官能性モノマーである場合、架橋剤およびモノマーから構成され得る。
【0020】
「超臨界流体」(SCF)なる用語は、気相および液相が区別できない、その臨界点より高い温度および圧力に置かれる任意の化学物質を意味するために使用される。超臨界流体の重要な特徴は、臨界領域では流体が液体のような密度を示すが、粘度および拡散率は気体と同様であることである。したがって、超臨界流体は、良好な混合および物質移動特性を有し、任意の溶質を可溶化するそれらの能力は、当然のことながら温度および圧力の両方に対して感受性ではない。異なる温度および圧力における溶解度のこの変動は、溶質の可溶化および沈殿/分離が臨界領域条件を変更することによって制御され得るいくつかの用途において超臨界流体を使用する機会を提供する。
【0021】
「プロテインA」または「PrA」なる用語は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcusaureus)由来の細菌タンパク質、プロテインA誘導体、または免疫グロブリンG(IgG)クラスの哺乳動物抗体に高い親和性で結合する能力を有する組換えプロテインAを意味するために使用される。プロテインAの遺伝子は、大腸菌においてクローニングおよび発現されており、大量の組換えプロテインAおよびプロテインA誘導体の生成を可能にする。いくつかの実施形態では、プロテインAは親和性リガンドである。いくつかの実施形態では、プロテインAは、モノクローナル抗体(例えば、IgG抗体)に結合するリガンド、および、ペンダント反応性官能基(例えば、CysのチオールまたはLysのアミン)と共有結合を形成することができる部分を含むタンパク質、ペプチド、または組換えタンパク質である。いくつかの実施形態では、プロテインAは、抗体のFcドメインと結合するリガンド、および、ペンダント反応性官能基と共有結合を形成することができる部分を含むタンパク質、ペプチド、または組換えタンパク質である。いくつかの実施形態では、プロテインAは、抗体のFabドメインと結合するリガンド、および、ペンダント反応性官能基と共有結合を形成することができる部分を含むタンパク質、ペプチド、または組換えタンパク質である。
【0022】
使用方法
ペンダント反応性官能基を含む複合材料は、化学反応によってリガンドとグラフト結合することができる。例えば、活性エポキシペンダント基を含有する多孔質膜は、生体親和性リガンド上に存在する好適な基との求核共役反応を介して、生体親和性リガンドとグラフト結合され得る。コンジュゲート膜は、モノクローナル抗体などの特定の標的の生体親和性分離に有用なクロマトグラフィー媒体として作用し得る。高度に生産的な分離性能を有するために、膜プラットフォームは、充分な流動透過性および所望の標的結合能をもたらす多孔質構造を維持しなければならず、これらの特徴は保管に対して安定でなければならない。
【0023】
概して、生体親和性クロマトグラフィー媒体は、リガンドと標的との間の結合力を低減する移動相を使用して、後続の工程において放出され得る、他の分析物の中で特異的標的に選択的に結合することを可能にする、固定化リガンド特異性に依存する。リガンドのこの生物活性は、活性中心の幾何学的構造並びに化学構造に大きく依存し、したがって、化学構造または立体構造のいずれかにおける任意の変化は、クロマトグラフィー媒体の結合能に影響を及ぼす可能性が高い。
【0024】
クロマトグラフィー媒体を作製する際の主要な課題の1つは、特異的リガンドを界面に固定化し、特に乾燥形態でそれらの生物活性を維持することである。一般に、タンパク質分子を乾燥させることは、水の除去による様々な物理的力、および大分子の三次元構造に圧力をかける分子内相互作用力に生体分子を曝露し、不可逆的である3D構造の変化をもたらす可能性が高い。
【0025】
凍結乾燥および新生のSCF乾燥技術を含むタンパク質乾燥のための多くの技術が試験された。歴史的に、凍結乾燥(リュフィリゼーションとしても知られる)は、タンパク質を脱水するための好ましい方法である。しかしながら、特に凍結工程において、凍結プロセス自体に関連するストレスがあり、これはタンパク質変性のリスクをもたらし得る。SCFプロセスに関連する高圧がタンパク質安定性に影響を及ぼす可能性があり、有機溶媒の使用が変性または凝集をもたらし得るため、超臨界流体乾燥は、タンパク質構造に対する異なるストレスも伴う比較的新しい技術である。
【0026】
固定化されたリガンドまたは生体分子の場合、媒体表面との様々な相互作用(疎水性およびイオン性相互作用)に起因する追加の力が乾燥効果を増幅し、リガンド生物活性を低下させる可能性があるため、課題はより複雑である。特に媒体表面が乾燥プロセスによっても影響を受ける場合、生物活性を維持するために乾燥プロセスを制御することが不可欠である。凍結乾燥はタンパク質を乾燥させるのに有効であるが、固定化された生体分子は、特にプラットフォームが乾燥技術に感受性のある材料である場合に、固定化された分子およびプラットフォームの両方を同様に乾燥させることができる乾燥技術を必要とし得る。
【0027】
膜プラットフォームは通常、多孔質強化ゲル材料を得るために、不織繊維状ポリマー基材内へのアクリレート/アクリルアミドモノマーおよび架橋剤のin-situ重合によって作製される。例えば、エポキシ含有膜は、多孔質ゲル材料を得るために、不織繊維状ポリマー基材上のアクリレートおよびアクリルアミドモノマーおよび架橋剤を用いて作製された。膜の多孔質ゲルの多孔性および構造は、所望の特性、例えば透過性およびタンパク質結合能を生じるように熱処理プロセスによって調整された。
【0028】
いくつかの実施形態では、多孔質エポキシ膜は、活性エポキシ基を有し、生体分子上のアミノ基を利用する求核共役反応を介して、生体親和性リガンドとグラフト結合することができる。いくつかの実施形態において、エポキシ膜は、求核付加反応を通して生体分子をカップリングする2段階プロセスを通してバイオリガンドとコンジュゲートされ、その後、表面上の活性エポキシ基を低減するためのキャッピング工程が行われた。いくつかの実施形態では、コンジュゲート膜は、モノクローナル抗体などの特定の標的の生体親和性分離を実施するためのクロマトグラフィープラットフォームとして作用し得る。良好な分離性能を有するために、コンジュゲート膜は、高い表面積および良好な透過性を有し、並びに固定化リガンド生物活性を維持する、良好な多孔質構造を有する。
【0029】
コンジュゲート膜の乾燥は、リガンドの安定性を増加させ、バイオポリマーの保管寿命を増加させ、材料の取り扱いを容易にし、汚染のリスクを低減することができる。生体親和性媒体を乾燥させる間、2つの成分を考慮しなければならない:固定化リガンドの安定性およびポリマー担体の安定性。
【0030】
しかしながら、このようにして得られた構造体の乾燥状態での特性は、経時的に変化することが分かった。理論に拘束されるものではないが、乾燥プロセスに対する膜ゲルの感受性は、乾燥プロセス中に不可逆的に変化し得るゲルの細孔構造に関連し得る。特に、比較的高い表面張力を有する水性湿潤相から膜ゲルを乾燥させることは、乾燥工程における水の除去中にゲル構造を高い剪断力に曝露し得る。
【0031】
例えば、共役生体親和性膜の乾燥は、膜の機能性およびクロマトグラフィー性能が乾燥プロセスとともに変化し、時間とともに劣化し続けるので、困難であることが見出されている。これは、室温またはより高い温度(40~50℃)のいずれかで乾燥させた場合に限られた安定性を示したエポキシ基含有膜について観察されている。膜プラットフォーム感度に加えて、乾燥プロセスストレスに対するリガンド感受性は無視することができず、生物活性の喪失の原因となり得る。
【0032】
理論に拘束されるものではないが、リガンドは、膜表面の近傍でタンパク質を様々な分子内および分子間相互作用力に曝露する水除去によって影響を受け得ることも予想される。生体分子-表面相互作用力は、タンパク質の空間構造を変化させ、変性および活性の喪失をもたらし得る。
【0033】
臨界点乾燥は、膜ゲル構造に対するこれらの力を最小限にする非常に低い表面張力条件下で超臨界流体(例えば、二酸化炭素)相から膜を乾燥させる機会を提供し、それによって湿潤特性を維持する。すなわち、SCFは、本質的にゼロの表面張力環境を提供し、気相および液相が区別不能であり得る臨界条件において独自の流体特性に起因して材料を乾燥させる。
【0034】
二酸化炭素は、他の液体または気体と比較して比較的穏やかな条件下で超臨界状態に達することができるので、臨界点乾燥のための良好な超臨界流体候補である。例えば、水の臨界点は374℃および228×105Pa(228バール)であり、これらの条件は、対象の多くの材料に不可逆的変化をもたらし得る。すなわち、水の臨界点は、物理的だけでなく、場合によっては化学的にポリマーおよびリガンドに影響を及ぼし得る、到達するのがより困難で極端な条件セットを提示する。対照的に、二酸化炭素の臨界点は31.2℃および73.8×105Pa(73.8バール)であり、これらはサンプル特性を不可逆的に変化させる可能性がはるかに低く、厳しい機器設計および制御をあまり必要としない。さらに、CO2は非毒性であり、大規模プロセスに対して費用効率が高い。
【0035】
しかしながら、水との非混和性のため、水相からCO2乾燥相に直接転移させることはできない。したがって、乾燥される複合材料(例えば、膜)中の水を極性有機溶媒(例えば、アルコールまたはケトン)とまず置換して、水を有機溶媒と置換しなければならない。したがって、置換流体は、置換プロセスを可能にするために水と良好な混和性を有しなければならず、CO2乾燥流体への膜の最終置換を可能にするためにCO2と混和性でなければならない。いくつかの実施形態では、克服すべき1つのハードルは、生体分子をこれらの有機溶媒に曝露することの予想される負の効果である。
【0036】
最終工程では、対象の材料(膜)およびCO2乾燥流体が封入されるチャンバの温度が、臨界点温度および圧力を超えて超臨界領域まで上昇され、その後、減圧による制御された蒸発が起こり、表面張力がない状態で乾燥が起こる。
【0037】
いくつかのタンパク質は、溶媒中の含水率が低い(通常10~20%未満)という条件で、いくつかの有機溶媒中で安定であり得ることが知られている。乾燥プロセス中の立体構造変化を最小限に抑えることは、乾燥プロセス中のタンパク質の安定化を助けることも知られている。したがって、いくつかの実施形態では、成功したCSF乾燥プロセスを有するために、置換プロトコルは、充分なイオンを提供するために(CSF乾燥中の分子内イオン相互作用を低減するために)、および低含水率(<10%)を有する有機溶媒の勾配を厳密に使用するために、緩衝液/塩置換の初期工程を含まなければならない。
【0038】
一態様では、本開示は、複合材料を臨界点乾燥する方法に関し、この方法は:
a.以下を含む複合材料を提供する工程:
i.支持部材であって、該支持部材を通って延在する複数の細孔を含む、支持部材;および
ii.マクロ多孔性架橋ゲルであって、1つまたは複数の架橋剤との1つまたは複数の重合性モノマーの反応から形成されるポリマーを含み;支持部材の細孔内に位置し;かつ、前記マクロ多孔性架橋ゲルの前記マクロ細孔が支持部材の細孔よりも小さい、マクロ多孔性架橋ゲル;
b.前記複合材料を、超臨界流体の臨界点を超える温度および圧力で超臨界流体と接触させる工程であって、気相および液相が区別できない工程;および
c.圧力を低下させる工程
を含み、これにより、前記複合材料を臨界点乾燥させる。
【0039】
別の態様では、本開示は、複合材料を臨界点乾燥する方法に関し、この方法は:
a.以下を含む複合材料を提供する工程:
i.支持部材であって、該支持部材を通って延在する複数の細孔を含む、支持部材;および
ii.マクロ多孔性架橋ゲルであって、1つまたは複数の架橋剤との1つまたは複数の重合性モノマーの反応から形成されるポリマーを含み;支持部材の細孔内に位置し;かつ、前記マクロ多孔性架橋ゲルの前記マクロ細孔が支持部材の細孔よりも小さく、前記複合材料が水溶液で湿潤される、マクロ多孔性架橋ゲル;
b.前記水溶液を極性有機溶媒と置換する工程であって、前記複合材料が前記極性有機溶媒で湿潤される、工程;
c.前記複合材料を、超臨界流体の臨界点を超える温度および圧力で超臨界流体と接触させる工程であって、気相および液相が区別できず、前記極性有機溶媒が前記超臨界流体と混和性である、工程;および
d.圧力を低下させる工程
を含み、これにより、前記複合材料を臨界点乾燥させる。
【0040】
別の態様では、本開示は、複合材料を臨界点乾燥する方法に関し、この方法は:
a.以下を含む複合材料を提供する工程:
i.支持部材であって、該支持部材を通って延在する複数の細孔を含む、支持部材;および
ii.マクロ多孔性架橋ゲルであって、1つまたは複数の架橋剤との1つまたは複数の重合性モノマーの反応から形成されるポリマーを含み;生体分子または生体イオンである複数のリガンドを含み;支持部材の細孔内に位置し;かつ、前記マクロ多孔性架橋ゲルの前記マクロ細孔が支持部材の細孔よりも小さく、前記複合材料が水溶液で湿潤される、マクロ多孔性架橋ゲル;
b.前記水溶液を極性有機溶媒と置換する工程であって、前記複合材料が前記極性有機溶媒で湿潤される、工程;
c.前記複合材料を、超臨界流体の臨界点を超える温度および圧力で超臨界流体と接触させる工程であって、気相および液相が区別できず、前記極性有機溶媒が前記超臨界流体と混和性である、工程;および
d.圧力を低下させる工程
を含み、これにより、前記複合材料を臨界点乾燥させる。
【0041】
いくつかの実施形態では、超臨界流体は、二酸化炭素、水、メタン、エタン、プロパン、エチレン、プロピレン、メタノール、エタノール、アセトン、および亜酸化窒素からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、超臨界流体は水ではない。いくつかの実施形態では、超臨界流体は、二酸化炭素、メタン、エタン、プロパン、エチレン、プロピレン、メタノール、エタノール、アセトン、および亜酸化窒素からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、超臨界流体は二酸化炭素である。
【0042】
いくつかの実施形態では、サンプル体積に対する超臨界流体の総量、パージサイクルの数、超臨界流体との接触中の温度、超臨界流体との置換速度、蒸発工程中の温度、温度を上昇させる加熱速度、および圧力低下の速度からなる群から選択される1つまたは複数のパラメータを、本明細書に開示する方法において変化させてもよい。例えば、乾燥プロセスに影響を及ぼすように変更することができるパラメータは、以下を含む:1)サンプル体積に対する液体CO2の総量(またはパージサイクルの数)、2)CO2置換中のチャンバ温度、液体CO2置換速度、3)乾燥工程について設定される温度(典型的にはTcより高い)、4)チャンバ温度が上昇する加熱速度、および5)蒸発工程中のCO2圧力低下速度。
【0043】
いくつかの実施形態では、極性有機溶媒は、アセトン、アセトニトリル、アンモニア、t-ブタノール、n-プロパノール、エタノール、メタノールおよび酢酸からなる群から選択される。
【0044】
いくつかの実施形態では、支持部材は、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリカーボネート、ポリエステル、セルロース、およびセルロース誘導体からなる群から選択されるポリマー材料を含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、複合材料は膜である。
【0046】
いくつかの実施形態では、複合材料は、1つまたは複数のインターリーフ層と接触している。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のインターリーフ層は、スクリーン、ポリプロピレン、ポリエチレン、および紙からなる群から選択される。
【0047】
いくつかの実施形態では、架橋ゲルは、中性ヒドロゲル、荷電ヒドロゲル、高分子電解質ゲル、疎水性ゲル、中性ゲル、または官能基を含むゲルである。
【0048】
特定の実施形態において、本発明において膜として使用される複合材料は、米国特許第7,316,919号明細書;同第8,206,958号明細書;同第8,187,880号明細書;同第8,211,682号明細書;同第8,652,849号明細書;同第8,192,971号明細書;同第8,206,982号明細書;同第8,367,809号明細書;同第8,383,782号明細書;同第8,133,840号明細書;同第9,962,691号明細書;および同第10,357,766;および米国特許出願第14/190,650号明細書、同第16/055,786号明細書、および同第16/516,500号明細書に記載される;これらの全ては、参照により本明細書に組み込まれる。
【0049】
いくつかの実施形態では、マクロ多孔性架橋ゲルは、約10nm~約3000nmの平均サイズを有するマクロ細孔を含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、支持部材の細孔は、約0.1μm~約50μmの平均細孔直径を有する。
【0051】
いくつかの実施形態では、架橋ゲルはペンダント反応性官能基を含む。いくつかの実施形態では、ペンダント反応性官能基は、アルデヒド、アミン、炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合、エポキシド、ヒドロキシル、チオール、無水物、アジド、反応性ハロゲン、酸塩化物、およびこれらの混合物からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、ペンダント反応性官能基はエポキシドである。いくつかの実施形態では、ペンダント反応性官能基を含む1つまたは複数のモノマーは、グリシジルメタクリレート、アクリルアミドオキシム、アクリル酸無水物、アゼライン酸無水物、マレイン酸無水物、ヒドラジド、塩化アクリロイル、2-ブロモエチルメタクリレート、およびビニルメチルケトンからなる群から選択される。
【0052】
いくつかの実施形態では、架橋ゲルは複数のリガンドを含む。いくつかの実施形態では、架橋ゲルは、官能基を含む複数のリガンドを含む。いくつかの実施形態では、官能基は、カチオン性、アニオン性、疎水性、親水性、チオフィリック、水素結合供与性、水素結合受容性、pi-pi結合供与性、pi-pi結合受容性、金属キレート化、生体分子、および生体イオンからなる群から選択される。
【0053】
いくつかの実施形態では、複数のリガンドは、アルブミン、リゾチーム、ウイルス、細胞、ヒトおよび動物起源のγ-グロブリン、ヒトおよび動物の両方の起源の免疫グロブリン、合成または天然起源のポリペプチドを含む組換えまたは天然起源のタンパク質、インターロイキン-2およびその受容体、酵素、モノクローナル抗体、抗原、レクチン、細菌免疫グロブリン結合タンパク質、トリプシンおよびその阻害剤、シトクロムC、ミオグロブリン、組換えヒトインターロイキン、組換え融合タンパク質、プロテインA、プロテインG、プロテインL、ペプチドH、核酸由来生成物、合成または天然起源のいずれかのDNA、および合成または天然起源のいずれかのRNAからなる群から選択される生体分子または生体イオンである。いくつかの実施形態では、複数のリガンドは、ヒトおよび動物起源のγ-グロブリン、ヒトおよび動物の両方の起源の免疫グロブリン、合成または天然起源のポリペプチドを含む組換えまたは天然起源のタンパク質、モノクローナル抗体、細菌免疫グロブリン結合タンパク質、組換え融合タンパク質、プロテインA、プロテインG、およびプロテインLからなる群から選択される生体分子または生体イオンである。いくつかの実施形態では、複数のリガンドは、ポリペプチド、タンパク質、組換えタンパク質、細菌免疫グロブリン結合タンパク質、組換え融合タンパク質、プロテインA、プロテインG、プロテインL、およびペプチドHからなる群から選択される生体分子または生体イオンである。いくつかの実施形態では、複数のリガンドはプロテインAである。
【0054】
いくつかの実施形態では、複合材料(例えば、膜)は、アフィニティークロマトグラフィーに有用な様々なリガンドを含有するポリマーを含む。例えば、生体分子(例えば、タンパク質)のクロマトグラフィー分離である。例えば、このアプローチは、複合材料(例えば、膜)にイオン置換官能基(例えば、カルボキシラート、スルホネート、第四級アンモニウム、アミン)、疎水性相互作用部分(例えば、1-オクタンチオールまたは1-オクテンを使用することによるオクチル基)、および生体親和性クロマトグラフィーのための生体分子(例えば、モノクローナル抗体精製のためのシステイン-プロテインA)を導入するために使用することができる。
【0055】
いくつかの実施形態では、複合材料は、従来の乾燥プロセス中およびその後に不安定性を示す。いくつかの実施形態では、臨界点乾燥は、複合材料を損傷することなく水の除去を可能にする。いくつかの実施形態において、臨界点乾燥は、リガンドを含む膜を損傷することなく水の除去を可能にする。いくつかの実施形態では、本発明は、複合材料が初期水湿潤複合材料と同等の性質を示すように複合材料を臨界点乾燥する方法に関する。
【0056】
いくつかの実施形態では、複合材料の臨界点乾燥の方法は、複合材料の保管、最終デバイスへの膜の組み立て、およびバイオバーデン負荷の低減を伴う安定した輸送を改良する。
【実施例】
【0057】
以下の実施例は、例示として提供される。しかしながら、各実施例において与えられる具体的な詳細は、例示を目的として選択されたものであり、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことが理解されるであろう。概して、実験は、特記しない限り、同様の条件下で行った。
【0058】
実施例1-一般的な材料および方法
化学
液化二酸化炭素(医療グレード99.99%)をPraxAir Canada Inc.から入手し、無水アルコール試薬(<0.005%水)および塩化カルシウムをMilliporeSigmaから入手し、緩衝液10×PBS濃縮液(GrowCells)をVWRから購入した。
【0059】
タンパク質
アフィニティー精製したヒトIgGをInnovative Research Inc.(Novi,米国ミシガン州)から入手した。
【0060】
膜材料
エポキシ膜は、UV開始反応において支持メッシュ材料内でアクリレートおよび/またはアクリルアミドモノマーおよび架橋剤を重合させることによって作製した。タンパク質結合基を含有する様々な機能性膜は(例えば、イオン置換、疎水性相互作用および親水性相互作用)、ゲル重合溶液に適切な機能性重合基を導入することによって、単一の重合工程で生成することができる。湿式洗浄された膜はまた、それらの性能、最終細孔構造、および透過性を調整するために、追加の熱処理工程に供されてもよい。
【0061】
その後、エポキシ膜を求核付加反応によってプロテインAリガンドとコンジュゲートさせ、リガンド分子上の求核基(アミノ基またはチオール基)の大部分がオキシラン環を開き、バイオリガンドを膜ゲルに共有結合させた。
【0062】
他のリガンドもまた、ウイルスなどの他の生体分子または実体を標的とするようにコンジュゲートすることができる。
【0063】
典型的なコンジュゲーションプロトコルでは、膜ディスク(25mm)をNatrixステンレス鋼ホルダに装着し、次いでAKTAクロマトグラフィー機器に接続し、膜をPBSで平衡化し、次いでリン酸緩衝液中のリガンド(プロテインA)溶液を、選択した流速下で適切な時間に亘って膜に通過させた。これに続いて緩衝液洗浄工程を行い、次いで膜を通してクエンチング溶液を流すことによって膜の未反応エポキシ基を不動態化し、続いて緩衝液洗浄工程で残留クエンチング溶液を除去した。
【0064】
膜性能試験
膜の透過性(ペンダント反応基を含有する膜にリガンドをコンジュゲートさせたときのコンジュゲート前およびコンジュゲート後の両方の状態)および特異的生体分子標的に対する膜の結合能を評価した。
【0065】
透過性については、フラックス試験を規定の圧力(100kPa)で実施し、典型的には水を試験流体として使用して、特定の膜表面積を通過する流体の量を測定し、最終透過性結果をkg/m2hで表した。
【0066】
膜結合能を、規定の流動条件下で試験体積膜によって捕捉された選択されたタンパク質の量(すなわち、動的結合能、dBC)を特定することによって測定し、結合したタンパク質mg/膜のmLとして表した。
【0067】
膜生物親和性について、結合能を、緩衝液中の標的分子(この場合IgG)の通過試験溶液の10%ブレークスルー吸光度で活性膜体積によって捕捉されたIgGタンパク質の量を特定することによって測定した。動的結合能(dBC)は、標的分子のmg/膜体積のmLとして表される。
【0068】
膜フォーマット
フォーマットA
膜サンプルは概して溶媒置換され、ロール形式で臨界点乾燥された。膜ストリップを、同様の幅およびわずかに長い長さ(2~3cm長い)のポリプロピレンスクリーンのストリップで積層し、次いで巻き取った(
図1A)。ロールは、臨界点乾燥(CPD)チャンバサンプルホルダ(ほとんどの場合、幅が4cmであり、ODが~4.5cmである)に適合するか、または場合によっては、機器チャンバ自体(幅<5.5cmおよびODが5.8cm未満)に直接適合する寸法で作製された。
【0069】
フォーマットA’
膜サンプルを置換し、手作りのロール形式で乾燥させた。プロテインA膜ストリップ(~4×36cm)を、同様の幅およびわずかに長いストリップ(2~3cm長い)のPPスクリーンで積層し、次いで巻き取った(
図1A)。スクリーンを使用して、置換プロセスおよびプロセスの整合性を改良した。ロールは、器具ホルダ(ほとんどの場合、幅が4cmであり、ODが~4.5cmである)に適合するか、または場合によっては器具チャンバ自体(幅<5.5cmおよびODが5.8cm未満)に直接適合する寸法で作製された。ワイヤを使用して、200mLビーカー中で実施した置換プロセス中に、インターリーフしたロールを一緒に保持し、次いで、ロールをホルダ(またはより大きいロールセットアップのためのチャンバ)に入れる直前に除去した。
【0070】
フォーマットB
膜サンプルを、同じ直径の膜およびスクリーンディスクの置換スタックとして臨界点乾燥させた。プロトコルに従って各工程において適切な溶液体積を有する別個の容器中で完全に置換した後、膜ディスク(25mm)を、
図1Bに示すように、同じ直径のスクリーンディスクを置換可能に備えた修正サンプルブロック(25mmのIDを有する)中で積層した。スクリーンディスクは、溶媒置換工程、並びにアルコールとCO
2との置換が乾燥の成功に重要であるCPD乾燥プロセスの間のより良好な混合およびアクセス可能性を促進するセパレータとして機能する。スタックを新鮮な量の無水アルコールに短時間浸漬した後、CPD機器の置換チャンバ上に取り付けた。
【0071】
水/エタノール置換プロトコル
二酸化炭素臨界圧力および温度は、それぞれ73.8×105Pa(73.8バール)および31.2℃である。超臨界流体状態に達するこれらの穏やかな条件は、二酸化炭素を、プロセス中に脆弱な構造を維持しながら臨界点乾燥を行うのに適した選択肢にする。しかしながら、CO2中の水の低い混和性は、水をエタノールと置換することを必要とし、エタノールは、乾燥プロセスの前に液体二酸化炭素で容易に置換することができるよりCO2混和性の中間液相である。
【0072】
膜ロールは通常、水エタノール勾配を介してエタノール置換流体に移され、最終的に膜中の水相を、非常に低い含水量を有する無水アルコールで置換した。異なる工程数、可変アルコール含有量、および滞留時間を有するいくつかのプロトコルを調べた。主に2つのプロトコルを調べた:含水量の漸減を伴う5つの短い工程を有するプロトコルA(表1)および8つの工程を有するプロトコルB(表2)。
【表1】
【0073】
【0074】
CO2はCPDプロセスに最も適した選択であるにもかかわらず、水との混和性が乏しいため、水相(この場合は緩衝液)を、液体二酸化炭素と容易に置換することができるより混和性の高い液相であるアルコールと置換する必要がある。典型的には、CPDのための置換プロトコルは、水中のアルコールの上昇勾配溶液中で対象を置換する工程、SCF工程に進む前に全ての水を除去するために無水アルコール浸漬/置換で終了する工程、および最終的に、超臨界相から気相への遷移を行うために圧力を低下させることによってCO2を蒸発させる工程を含む。
【0075】
しかしながら、コンジュゲート形態は膜に結合したリガンドを有するので、置換プロトコルは、有機溶液へのリガンド分子の曝露の予想される負の効果を最小限にするかまたは軽減するように修正された。第1に、置換プロトコルの最初の工程は、緩衝溶液中での長時間の浸漬を行うことによって、膜およびリガンドの対イオンによる濃縮を促進するように設計される。第2に、膜を無水アルコール相に徐々に移行させる代わりに、変性を促進し得る高含水量のアルコール混合物にタンパク質を曝露することを回避するために、膜を100%水相から90%アルコール含有相に直接移行させた。最後に、置換保持時間を制限し、アルコール溶液への長時間の曝露を回避した。
【0076】
異なる工程および可変アルコール溶液を用いていくつかのプロトコルを調べたが、これについては実施例のセクションで詳述する。修正した置換プロトコルの重要性を実証するために、エポキシ膜のCPDで使用した典型的なプロトコル(プロトコルC-表3;
図2)も、以下の実施例で詳述するように、プロテインAコンジュゲート膜で試験した。
【0077】
先に記載したように、25mmのディスクを、特定の置換プロトコルに従って適切な溶液/容量を有する別個の容器中で置換した。置換工程が終了したら、膜クーポンをスクリーンセパレータで積層し、ホルダ全体を新鮮な無水アルコール溶液と共に200mLビーカーに入れ、最後に機器チャンバに移した。
【0078】
臨界点乾燥
液体CO2排出用のサイフォン管(~55×105Pa(55バール))を有する液体二酸化炭素タンク、および出口CO2/アルコール混合物から抽出エタノールを収集するためのセパレータボトルを備えたLeica EM CPD300を用いて、臨界点乾燥(CPD)プロセスを実施した。典型的な自動モード運転では、膜ロールをチャンバ内の円筒形ホルダに配置し、サンプルがエタノールでほとんど覆われるまで無水エタノール溶液を添加し、次いで蓋を締めてチャンバを密封した。あるいは、チャンバを最初に設定温度まで冷却し、次いで膜ロールを前述のように装填してもよい。
【0079】
機器プログラムは、指定された充填温度(10または15℃)までチャンバを冷却し、次いでチャンバを充填するために液体CO2を供給することによって、プロセスを自動的に開始した。アルコールと二酸化炭素液体との初期混合を可能にするように設定された予め定めた遅延期間の後、アルコールパージプロセスは、複数のサイクル(12~99サイクル)に亘って液体CO2を注入することによって開始し、ここで、チャンバ内の圧力を一定の範囲内に維持しながら(CO2を液体状態に維持しながら)、新鮮なCO2が、各サイクルにおいて連続的な態様で、チャンバ内の溶液混合物の一部を置き換える。置換サイクルの数を設定することに加えて、CO2がチャンバを通して供給される速度を設定することも可能である。
【0080】
パージプロセスが完了すると、機器は加熱工程に切り替えられ、チャンバ温度は臨界温度(34~36℃)を超えて上昇され、圧力は臨界圧力(>74×105Pa(74バール))より高く設定されて、膜が超臨界CO2液体に浸漬された。最終工程において、蒸発プロセスは、CO2をゆっくりと放出し、温度を維持しながら圧力を低下させることによって行われ、これは、いかなる有意な表面張力の非存在下でも超臨界相から気相への遷移を可能にした。乾燥膜がチャンバから除去される最終圧力を1×105Pa(1バール)にすることによって、プロセスを終了した。機器は、速度を3つの異なるレベルに設定することができるので、加熱/蒸発工程に対するいくらかの制御を可能にする。
【0081】
乾燥プロセスに影響を及ぼすために、以下を含むいくつかのパラメータを変更することができる:1)サンプル体積に対する液体CO2の総量(またはパージサイクルの数)、2)CO2置換中のチャンバ温度、液体CO2置換速度、3)乾燥工程について設定される温度(典型的にはTcより高い)、4)チャンバ温度が上昇する加熱速度、および5)蒸発工程中のCO2圧力低下速度。CPDプロセスパラメータのいずれかに対するいかなる制限または限定も意味するものでなく、単に保管安定性の乾燥膜を得るためにCPDプロセスを使用する概念を実証するために、選択されたプロトコルのみを調査した。
【0082】
孔径測定
膜孔径(直径)を、3GWinソフトウェア(V2.2)によって操作される3G Porometer、キャピラリーフローポロメータ(Quantochrome Instruments、フロリダ州Boynton Beach)を使用して測定した。乾燥膜の小さなディスク(直径1.8cm)を、Porofil湿潤液(Quantochrome Corp.)、表面張力=16ダイン/cm)中に10分間浸漬し、次いで、2つの予め湿潤させた濾紙ディスク(Whatman 5~70mm)の間で穏やかに圧搾して、過剰な溶液を除去し、湿潤した膜の厚さを、マイクロメータを使用して特定した。膜ディスクを、指定されたホルダ内のステンレス鋼メッシュ支持ディスク上に、膜を上にして配置した。次いで、金属カバーをホルダ上に穏やかに置いて閉じ、次いで、0~200psiの圧力範囲内で試験を実施した。
【0083】
実施例2-他の乾燥方法および保管中の性能に対するそれらの効果とのエポキシ含有膜の臨界点乾燥の比較
同様の透過性を有するエポキシ膜の様々なバッチ、および同等のタンパク質結合能を有するそれらのバイオリガンド誘導体化形態を、2段階臨界点乾燥プロセスを使用して乾燥させた。第1の工程では、ロール形式の膜を水/エタノール置換プロセスに供し、置換プロトコルB(表2)に概説されるように、膜ロールを特定のアルコール含有量の置換溶媒中に所定時間に亘って置き、次いで試薬を静かに注ぎ、次の工程の新鮮な所定量のアルコール溶液を添加した。第2の工程では、エタノール湿潤膜ロールを臨界点乾燥機器チャンバ(Leica CPD300)内に配置し、エタノールを液体CO2で置換するためにパージプロセスに供し、続いて乾燥チャンバ条件を超臨界状態(34℃および79×105Pa(79バール))に移し、最後に圧力を解放して超臨界流体CO2を蒸発させた。
【0084】
他の方法と比較した安定性に対するCPDプロセスの影響を説明するために、エポキシ含有膜をオーブン中で乾燥させ(50℃-15分間)、別の実験では、50%グリセリン溶液中に30分間浸漬し、次いでオーブン中で乾燥させた(50℃-15分間)。結果(
図3Aおよび
図3B)は、オーブン乾燥法(グリセリン安定剤ありまたはなし)と比較して、湿潤膜性能を維持するCPD法の有効性を示す。湿潤膜と比較して、臨界点乾燥膜の結合能(5~10%)に初期の小さな低下があった(
図3B)。しかしながら、膜特性は、以下の保管-試験期間の間、本質的に変化しなかった。
【0085】
図4A~4Dに示すように、長期保管試験は、臨界点乾燥膜(エポキシ形態)透過性(フラックス)が、試験した90日間の試験期間に亘って有意に変化しなかったことを実証した。さらに、臨界点乾燥膜は、同じ90日間の保管期間に亘って同様の性能(フラックスおよび結合能)を有する誘導体化プロテインA膜を生成することが証明された。これは、短い保管時間に亘るオーブン乾燥膜の挙動とは著しく異なる。
【0086】
実施例3-異なる置換プロトコルを用いたエポキシ含有膜の臨界点乾燥
超臨界流体を使用する乾燥プロセスを成功させるためには、水を除去し、エタノールと置換しなければならない。水除去プロセスに影響を及ぼすと予想されるいくつかの要因がある:エタノール置換溶液中の含水量、置換時間、置換工程の数、インターリーフスクリーン材料、および最後に膜対溶液比。
【0087】
勾配エタノール含量を有する2つの異なる置換プロトコルを調べた。プロトコルAでは、膜をエタノール溶液と置換して、含水量が徐々に減少する溶液を使用して最終的に無水エタノール試薬との置換工程に到達する5段階置換プロトコルによって膜中の水をアルコールと置換する。プロトコルBでは、置換プロセスは、膜中の水をエタノールで置換するために、8つの置換工程に亘って完全に行われる。2つのプロトコルAおよびBを、それぞれ表1および表2に概説する。
【0088】
結果は、
図5A~5Dに示されるように、膜中の水が抽出されたとき(
図6、表4に列挙されている、固定された膜対エタノール溶液比(1:9.5)において)、両方のプロトコルが水を除去するのに効率的であり、90日間の保管試験に亘って一貫した特性を有する乾燥膜をもたらしたことを明らかにする。
【0089】
実施例4-異なる膜対アルコール溶液比で置換されたエポキシ含有膜の臨界点乾燥
理想的には、効率的な水抽出に必要とされるアルコールの量を最小限に抑えることが好ましく、したがって、関連するコスト、取扱い、および廃棄物の問題を、特に大規模な操作に関して軽減することができる。エポキシ含有膜の湿潤状態特性を維持しながら、エポキシ含有膜を乾燥させるためのCPD法の柔軟性を実証するために、異なる膜対溶液比(
図6、表4:CPD190404、CPD190409-1、およびCPD190411-1)を使用しながら、プロトコルBに従ってロール形式のいくつかの膜を抽出した。
【0090】
結果(
図4A~4D)は、勾配アルコール溶液と置換され、5.6~3.3という低い範囲であり得る膜対溶液比で、臨界点乾燥のための膜を首尾よく調製することが可能であることを示す。実際、初期の実験(プロトコルAおよびB、
図5A~5Dを調査した)の結果が、臨界点乾燥が実際にその比で保管安定性エポキシ膜を生成し、これは乾燥後長期に亘り同じ性能特性を有し続けたことを示したので、9.5の比もまた有効範囲に含まれる。
【0091】
実施例5-様々の透過性の複数のエポキシ含有膜の臨界点乾燥
任意の特定の用途について、特に生物分離について、膜構造、多孔性、および透過性を調整することは、成功したクロマトグラフィープラットフォームを開発する重要な部分であり、異なる特性を有する様々な膜の湿潤状態性能を保つ臨界点乾燥技術の能力を実証することが重要である。この実施例では、表5(
図7)に列挙されるプロセスパラメータを使用して、異なる透過性および異なる結合能(コンジュゲートされる場合)のいくつかのエポキシ含有膜を置換し(プロトコルB、表2)、臨界点乾燥させた。
【0092】
再び、結果(
図8A~8C)は、CPDプロセスが長期保管時間(その後のProAコンジュゲーション工程後に結合能を測定した)に亘って膜特性を保存したことを示した。それらの性能特性の差にもかかわらず、全ての臨界点乾燥膜は、(コンジュゲート後の)保管中にそれらの初期透過性および結合能レベルを維持した。
【0093】
実施例6-他の乾燥方法と比較した膜多孔性に対する臨界点乾燥の効果
オーブン乾燥と比較して、膜孔径および分布に対するCPD法の効果を実証するために、膜サンプルを様々な方法に従って乾燥させ、孔径の変化を追跡するためにポロメトリー試験を行った。
【0094】
プロトコルB(表2)を使用してエポキシ膜サンプルをエタノールと置換し、次いで以下の方法を使用して膜を乾燥させた:A)臨界点乾燥;B)膜を水に浸漬し、次いで50℃で10分間オーブン中で乾燥させた;および最後にC)膜を50℃で10分間オーブン中でエタノールから直接乾燥させた。
【0095】
非乾燥の参照としての役割を果たすエタノール湿潤置換サンプルについて、膜クーポンをビーカー中で5~10mLのPorofil溶液中で約10~15分間置換して、試験前にエタノールをPorofil試験流体と置換した。全ての他の乾燥サンプル(A、B、およびC)について、各膜の小さなディスク(直径18mm)を、試験前に少なくとも10分間Porofil溶液に浸漬した(方法のセクションに概説されるように)。
【0096】
結果は、エタノール湿潤対照膜が、乾燥サンプルの全てと比較して、比較的狭い孔径分布を有することを示す。しかしながら、孔径および孔径分布の変化は、水由来であろうとエタノール由来であろうと、オーブン乾燥したサンプルと比較してCPD膜サンプルでは著しく有意でなかった(
図9A~9D)。膜孔径特性において示される差異は、概して、膜性能特性と相関する、すなわち、より小さい孔径は、プロテインAコンジュゲート形態のより低い膜フラックスおよびより高い結合能と相関する(
図10Aおよび10B)。
【0097】
実施例7-オーブン乾燥と比較した臨界点乾燥エポキシ膜の表面積
任意の膜の表面積は、特にバイオ分離においてほとんどの吸着プロセスが界面で生じるので、移動相中の標的分子とのその相互作用の程度を決定する際に重要な役割を果たす。より大きいアクセス可能表面積は、概して、より大きい結合能を意味し、イオン性、疎水性、または生体親和性相互作用を介するかどうかにかかわらず、生体分子が機能的表面と相互作用する機会が表面積の増加に比例して増加する。
【0098】
この実施例では、臨界点乾燥法を用いて乾燥させたエポキシ含有膜の複数のサンプルを、BET試験を用いて総表面積について分析した。さらに、オーブン乾燥したサンプルも調べて、両方の種類の膜の表面積および乾燥プロセスの効果を比較した。
【0099】
いくつかのCPD膜の表面積(
図11)は、オーブン乾燥したサンプルよりも実質的に大きく、オーブン乾燥した膜についてのわずか4.3m
2/gと比較して、CPD膜の表面積は22~25m
2/gの範囲であった。これは、CPDプロセスが、オーブン乾燥よりも有意に大きい総表面積をもたらし、これが、有意に高いタンパク質結合能(表面限定プロセス)をもたらす可能性が非常に高いことを実証する。おそらく、単純なオーブン乾燥によるゲル崩壊は、総膜表面積および関連する結合能を有意に減少させる。
【0100】
臨界点乾燥(液体CO2からの)は、膜の湿潤状態特性を維持し、長い保管時間に亘って膜特性を維持するために、膜を乾燥するための好適なプロセスであることが証明されている。そのような膜のコンジュゲート形態の透過性および結合能は、水またはエタノールから乾燥させると、比較的穏やかな温度でさえ劇的に変化するが、臨界点乾燥を使用して乾燥させたそれらの対応物は、それらの湿潤形態と同様の透過性および結合能を有していた。臨界点乾燥技術は、他の方法と比較して、膜ゲル孔径に対する乾燥効果を低減し、高い表面積を有する膜を生じ得ることが、種々の実施例を通して示された。
【0101】
実施例8-通常の乾燥と比較したプロテインA膜の臨界点乾燥
この実施例では、典型的なCPD法を用いてプロテインAコンジュゲート膜を乾燥させ、得られた材料をプロテインA膜の他の乾燥法(40℃で20分間オーブン乾燥)と比較した。
【0102】
プロテインA膜は、実施例1の膜材料セクションに概説したコンジュゲーション方法に従って、エポキシ含有膜(ディスク形式)にプロテインAリガンドをコンジュゲートすることによって作製した。膜クーポンを乾燥前に試験して、未乾燥ベースラインを確立するためにそれらの結合能およびそれらのフラックスを特定した。
【0103】
第2段階では、表3(
図2)に概説されるように、アルコール溶液を使用する典型的な勾配置換システムであるプロトコルCを使用して膜ディスクを置換した。第3段階において、より良好な混合および置換効率を促進するために、セパレータと同じ直径のスクリーンディスクを用いて膜ディスクをホルダに装填し、次いで膜ディスク/スクリーンスタックを有するホルダをCPD機器に装填し、CPDプロセスを実験セクションに記載したように進めた(
図12;表6)。
【0104】
プロテインA膜上でのCPDアプローチと典型的な乾燥方法との間の対照、および膜安定性に対する両方のプロセスの効果を実証するために、プロテインA膜のさらなるサンプルを40℃で20分間オーブン中で乾燥させた。両方の材料(臨界点乾燥およびオーブン乾燥)を調べ、それらの結合能(dBC)および透過性(フラックス)を特定し、比較した。
【0105】
結果(
図13Aおよび13B)は、オーブン乾燥したサンプルフラックスが乾燥後1日経過後に顕著な増加を示したのに対し、CPD法は膜のフラックスがわずかな変化しか示さずにどのように膜透過性を保存したかを明確に示す。他方で、結果はまた、生体親和性膜の結合能の喪失を示し、これは、アルコール勾配のみを用いた典型的な置換プロトコルが膜プラットフォーム構造に影響を及ぼさなかったが、膜のdBCが有意に減少したため、リガンドに悪影響を及ぼし、生物活性喪失を引き起こしたことを示唆する。
【0106】
実施例9-緩衝液/アルコール置換プロトコルを用いたプロテインA膜の臨界点乾燥
この実施例では、有機相(アルコール溶液および液体CO
2の両方)およびCPDプロセス中の高圧に曝露されたときのタンパク質の安定性を増加させるために、タンパク質に対イオンを提供することを目的として、緩衝液による長い浸漬工程を含む修正置換プロトコルを使用して、生体親和性膜を乾燥させた。2つのプロトコル、すなわちAwb3およびAwb7が開発され、両方のプロトコルの第1の工程は、表3(
図2)に概説されるように、高塩濃度緩衝溶液(それぞれ、5×および10×のPBS)への膜の比較的長い浸漬である。
【0107】
緩衝液浸漬工程に加えて、開発されたプロトコルは、水/有機溶液の中間混合物がリガンド変性および結果として生じる生物活性の喪失のリスクを増加させ得るため、比較的大量の水を有する有機溶液にリガンドを曝露することを回避する。したがって、両方のプロトコルにおける緩衝液工程の後、次の2つの工程において有機流体含有量が0%から90%まで急増した。概して、タンパク質は、低含水量の有機溶液中でより安定であり得る。CPDは、前述のように進行する(
図12;表6)。
【0108】
結果(
図14Aおよび14B)は、両方の置換プロトコルが、湿潤膜に匹敵する特性、特に結合能を有するCPD膜を生成することができたことを実証した。これは、乾燥膜のdBCが著しく低下したプロトコルCとは明らかに対照的である。
【0109】
さらに、プロトコルAwB7により置換されたCPDプロテインA膜の安定性を、選択された期間の乾燥保存後の膜の性能を試験することによって調べた。
図15に示すように、乾燥膜は、試験期間に亘って概して安定した性能を有していた。
【0110】
実施例9A-緩衝液/アルコール置換プロトコル(AwB3)を用いたプロテインA膜の臨界点乾燥
インターリーフ膜ロールを、前のセクションで概説したように作製し、次いで、置換プロセスの開始時に緩衝液置換工程を含む開発されたプロトコルAwB3(表7)を使用して、水溶液から本質的に純粋なエタノール溶液中に置換した。膜ロールを単に200mLビーカー中の指定量の溶液に配置し、次いで2~3分毎に撹拌しながら指定時間に亘って置換した。各工程の終わりに、溶液を静かに注ぎ、表に概説した組成に従って新鮮な量の溶液を添加した。置換プロセスの終わりに、膜ロールをCPD機器の予め冷却したチャンバに移し、(表8)に示すように、予め定められた主要パラメータを用いて、自動モードで指定プログラムに従ってプロセスを進めた。
【0111】
【0112】
結果は、
図19Aおよび19Bに示すように、膜結合能および透過性の保存における乾燥プロセスの成功を示す。それらはまた、結合能および膜透過性が膜の通常の変動の範囲内であり、初期の膜状態に近いので、90日間の保管に亘る乾燥膜の安定性を明確に示す。
【0113】
実施例9B-修正された緩衝液/アルコール置換プロトコル(AwB3-SV)を用いたプロテインA膜の臨界点乾燥
この実施例では、表9(AwB3-SV)に概説されるように、修正された(短いバージョンの)プロトコルを使用して、膜インターリーフロールを置換し、ここで膜は、最初に緩衝液(5×PBS)で置換され、次いで、オリジナルのAwB3プロトコルにおける通常の4つの工程の代わりに、2つの工程からなる限られたアルコール置換プロセスを受けた。
【0114】
結果は、
図20Aおよび20Bに示されるように、限られた置換プロトコルを使用するにもかかわらず、依然として、乾燥保管中に安定であるCP乾燥膜を生成することが可能であったことを示した。膜は、最初の2週間以内に結合能およびフラックスのわずかな変化を経た後、試験期間の残りに亘って安定化した。
【0115】
実施例9C-生物静力学的溶液(水中に20%のアルコール)中で保管した後のプロテインA膜の臨界点乾燥
この乾燥アプローチの柔軟性を例示するために、プロトコルは、アルコール置換およびCP乾燥プロセスに進む前に、生物静力学的溶液中での第1の保管期間を含んだ。この場合、プロトコルを2つのサブプロトコルに分割した:1)膜を調製し、生物静力学的保管溶液に移す工程、および2)単純化されたより短いプロトコルを適用し、CP乾燥プロセスのための準備において本質的に純粋なアルコールのために保管溶液を置換する工程。1つのプロトコルは、(TP1-AWOB1、表10)に概説されるように、膜を直接移し、20%アルコール溶液中で置換し、次いで除去し、密封PPバッグ中に1(または7)日間保存するプロセス工程を示す。代替的なプロトコル(TP2-AWOB1、表11)では、膜ロールを緩衝液(5×PBS)で最初に置換して充分なイオン基の取り込みを可能にし、その後、膜を20%アルコール(水中)中で置換し、次いで短時間保存する(第1のセットでは1日、第2のセットでは7日)。各実験保存期間の終わりに、膜を置換プロトコルに供して、CP乾燥プロセスに備えて主として水性の保存溶液をアルコールで置換する。
【0116】
【0117】
膜が2つのアルコール置換プロトコルを使用して1日間保存された第1のセット(
図21Aおよび21B)の結果は、CP乾燥プロセスが元の湿潤形態に非常に類似した膜を生成し、それらが試験期間に亘って乾燥保存で本質的に安定であったことを示す。
【0118】
緩衝液置換工程の存在は、透過性のわずかな増加を伴う膜を生成する傾向があるが、第1のプロトコルにおいて緩衝液置換工程がないことが、乾燥プロセスの結果に悪影響を及ぼさなかったことは注目に値する。これは、ここで使用される短い保管時間(1日)、および置換溶液中のアルコールパーセンテージが非常に低い(<20%)かまたは非常に高い(90および100%)かのいずれかであったことに起因し得る。これらの濃度は、タンパク質が主に水溶性の溶液または純粋な有機溶媒のいずれかにおいてより安定である傾向があるため、リガンド構造変化を回避するように意図的に選択された。
【0119】
他方で、膜を20%アルコール溶液中で7日間保存した第2のセット(
図22Aおよび22B)の結果は、20%アルコール保存(プロトコルTP2-AWOB1)の前に緩衝液置換工程を含めることが、どのように乾燥膜結合能の増加をもたらしたかを示すが、膜透過性に対する明確な効果はない(フラックスによって測定されるように)。
【0120】
実施例9D-20mMのリン酸緩衝液(pH7.5)中16%のアルコールにおける保管を備えた置換プロトコルを用いたプロテインA膜の臨界点乾燥
この実施例では、別の生物静力学的保管溶液(20mMリン酸緩衝液、pH7.5中の16%アルコール)を使用して、プロトコルTP3-AWOB1を概説する表12、および緩衝液置換工程(5×PBS)を含む代替プロトコルTP4-AWOB1を概説する表13に示すように、アルコール置換およびCP乾燥の前に7日間膜を保管した。
【0121】
【0122】
結果は、
図23Aおよび23Bに示されるように、湿潤形態に類似する乾燥膜を生成するCPDプロセスの能力を再び実証した。両方の置換プロトコルについて、乾燥プロセスの影響は非常に小さかったが、第2のプロトコルにおける緩衝液置換工程の存在は、結合能についてわずかに良好な結果を有した。
【0123】
実施例10-塩/アルコール置換プロトコルを用いたプロテインA膜の臨界点乾燥
この実施例では、CPDプロセスの前に溶媒置換系を修正するために、イオン、特に二価カルシウムカチオンなどの多価カチオンの供給源として緩衝液の代わりに塩を使用することが示された。二価カルシウムカチオンは、溶液中の生体分子構造を安定化させる作用をする配位結合を介してタンパク質構造に影響を及ぼすことがよく知られている。さらに、カルシウム塩は、無水アルコール溶液への良好な溶解性を有し、これはPBS緩衝液が有しない利点である。これにより、置換プロトコルの最後の数工程中にカルシウムカチオンを膜に継続的に供給して、カチオンがCPDプロセスに移行する前に膜と接触したままであることを確実にすることが可能になる。
【0124】
先の実施例と同様に、プロテインA膜ディスクを、エポキシ含有膜を官能化することによって作製し、次いで、同様であるがPBS緩衝溶液の代わりに水中に塩化カルシウム溶液(2M)を有するAwB9プロトコル(表3;
図2)に従って置換し、次いで、表6(
図12;プログラム8)に列挙した重要なパラメータを使用して、先に概説したように臨界点乾燥させた。
【0125】
結果(
図16Aおよび16B)は、プロトコルCと比較した、置換プロトコル(AwB9)にカルシウムカチオンを組み込むことの正の効果、特に本質的に変化しないままである結合能における正の効果、および膜フラックスにおけるわずかな初期低下のみを示した。長期乾燥保存試験は、膜フラックスおよび結合能が選択された試験期間に亘って不変であることを示した(
図17)。
【0126】
塩を組み込んだ置換プロトコルおよび緩衝液を組み込んだプロトコルを使用した結果と、添加剤を含まない平坦な勾配プロトコルを使用した結果とを比較すると(
図18)、塩および/または緩衝液の浸漬工程を加えることにより、膜結合能および透過性に対する置換プロセスの影響が軽減されることが明らかであった。これは、本明細書に記載されるCPD技術を使用して、繊細な多孔質構造および固定化されたリガンドを効果的に処理および乾燥し得ることを示唆する。修正された置換プロトコルを使用する臨界点乾燥は、バイオリガンドが膜表面に共有結合的にコンジュゲートされる、生体親和性膜を乾燥するための成功した方法であることが証明された。臨界点乾燥材料は、それらの予め乾燥された形態に類似したクロマトグラフィー性能を有し、それらの性能および特性は、長時間に亘って乾燥状態で保管した場合に不変であった。
【0127】
典型的な置換プロトコルの修正は、記載されるCPDプロセスに必要であった:緩衝液および塩置換工程をプロトコルに組み込むことにより、媒体が、置換および乾燥の両方のプロセスの流体および条件への曝露から生じる悪影響に耐えることが可能になる。
【0128】
本発明は、感受性リガンドおよび頑丈なマトリックスまたは膜、あるいは不安定なマトリックスもしくは膜上の頑丈なバイオリガンド、あるいは不安定なマトリックスまたは膜上に固定化された感受性バイオリガンドを含有する、広範囲の材料を処理し乾燥させるためにCPDアプローチを使用する機会を提供する。全ての場合において、CPDプロセスおよび関連する置換プロトコルは、バイオリガンドまたはその上にリガンドが固定化されるプラットフォームのいずれかの感度に適応するように修正されなければならない。
【0129】
参照による援用
本明細書に引用される米国特許並びに米国および国際特許出願公開の全ては、参照により本明細書に組み込まれる。
【0130】
均等物
当業者は、日常的な実験を用いるだけで、本明細書に記載される本発明の特定の実施形態に対する多くの均等物を認識する、または確認することができるであろう。そのような均等物は、以下の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。
【国際調査報告】